くにさくロゴ
1971/06/09 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第22号
姉妹サイト
 
1971/06/09 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第22号

#1
第068回国会 社会労働委員会 第22号
昭和四十七年六月九日(金曜日)
   午後一時十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中村 英男君
    理 事
                鹿島 俊雄君
                高田 浩運君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                川野辺 静君
                高橋文五郎君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                佐野 芳雄君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                藤原 道子君
                高山 恒雄君
                小笠原貞子君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  斎藤  昇君
   政府委員
       厚生政次務官   登坂重次郎君
       厚生大臣官房審
       議官       江間 時彦君
       厚生省保険局長  戸澤 政方君
       社会保険庁医療
       保険部長     穴山 徳夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   参考人
       社会福祉評論家 日下部禧代子君
       成蹊大学教授   肥後 和夫君
       日本労働組合総
       評議会医療共闘
       委員会事務局長  渡辺 素良君
       長野県社会保険
       協会会長     古村 敏章君
       北里大学教授   石川  哲君
       ヤクルト健康保
       険組合理事長   川上 和吉君
       全日本労働総同
       盟生活福祉局長  加藤 俊郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として社会福祉評論家日下部禧代子君、成蹊大学教授肥後和夫君、日本労働組合総評議会医療共闘委員会事務局長渡辺素良君、長野県社会保険協会会長古村敏章君、北里大学教授石川哲君、ヤクルト健康保険組合理事長川上和吉君、及び全日本労働総同盟生活福祉局長加藤俊郎君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。参考人の方々には御多用中のところを御出席いただきましてまことにありがとうございます。何とぞ率直な御意見をお述べ願いたいと存じます。
 なお、議事の都合上、最初に御意見を十分程度に要約してお述べいただき、そのあと委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。
 それではまず日下部参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(日下部禧代子君) トップバッターということになりましてたいへんあれなんですけれども、私の場合は、私がイギリスに一九六四年から六九年の終わりくらいまでにおりまして、滞在しておりました。それからまた昨年も半年くらい滞在しておりましたが、そこにおりました経験と、それからの私がその国におきまして老人福祉というものを少しやってまいりましたその二つの観点からまず最初に、個人的な経験というもの、福祉国家といわれているイギリスにおいて一般の市民がどのような形で恩恵といいますか、福祉の適用が行なわれたかということを私の体験を通じまして、まずお話ししてみたいと思います。
 私が参りましたのは先ほど申し上げましたように、一九六四年でございました。そのときにはまだ保守党の内閣だったと思います。そのときに私が病気というわけでもないんですけれども、かぜをひきましてかかりましたのがまずイギリスにおけるお医者さまとのかかわり合いのまず最初だったわけですけれども、その際にどういうふうな手続を経ますかと申しますと、私の場合には外国人でありながら学生ということ、その二つで、どういうふうなことで、一体私にはイギリスの医療制度というものがかかわりになるのかと思って、たいへん興味を持っておりました。まず、私がやらなければならなかったことは、私の住んでおります地区におけるファミリードクター、日本で言いますとホームドクターということだと思いますが、ファミリードクターに登録するわけでございます。そのファミリードクターをさがすのにはどこで名前をさがし出しますかと申しますと近くの郵便局、それからまた公共の図書館でございます。そこに行きますと、その地域におけるどこどこの地域にどういうふうなお医者さまがいるというファミリードクターのリストがございます。そこで、最も私の近いところのお医者さまを選びまして、そのお医者さまのところに登録をするわけです。そういたしますと、どのようなものがもらえますかと言いますと、ナショナルヘルスカードといいまして、こういうふうなカードがもらえるわけでございます。これに私の名前とそれからお医者さまの名前が書いてありますね。この場合、私の場合には病気になってからこういうことをやったわけなんですけれども、普通イギリスの国民というのはもうほとんど九八%以上がナショナルヘルスサービスというものに加入しておりまして、その場合に、病気にならなくても、自分のファミリードクターというものを常に持っていなければならない、登録しなければならないということになっております。
 そこで、登録した私のお医者さまはミスターファーマーという方だったのですけれども、そこのお医者さまに来ていただいたときは熱があったものですから来ていただきまして、そこで見ていただいたわけですけれども、そのあとたいしたことはないというので、薬をあげますからということで処方せんを書いてくださいまして、その処方せんを持って私の友人が薬局に行きまして、そこでかぜ薬というものをもらうわけなんです。自分が歩ける場合にはそこへ自分で行くわけなんです。
 その次かかりましたのが歯医者さんです。歯医者さんの場合には、この場合と違いまして一ポンドほど、日本の現在のお金で申しますと約八百円ぐらいになりますかしら、その当時に約千円でございましたが、一ポンドをまずそこに出しておきまして、そのあと全くお金は出さなくてもいいわけなんです。そういうふうな意味で私はまず無料だということ、お金がかからない、そういうことに驚いたと同時に、もう一つはお医者さまの態度が非常に親切で、たとえば私がお医者さまに行きましたときに、もちろんアポイントメント、予約制でございますので、私の行きましたときには私以外にはだれも見当たらない、お医者さんと看護婦さん以外にはだれも見当たらない、それは歯医者さんの場合でも普通のファミリードクターの場合でも全く同じでございます。何時に行くと言いましたら、私以外の者は患者さんはいないわけなんですけれども、そういうところで、まず、そこでもびっくりいたしましたけれども、お医者さまの態度というものが日本では想像できないほど親しみやすく、やさしかったわけなんです、私が女性だったからということはないと思うのですけれども、処方せんを書きながらお医者さまが、まず私に言いましたことは、このお薬はピンク色をしているけれども、このお薬を半分ぐらい飲んでしまえばあなたの頬がまたピンク色みたいな健康の色に戻りますよというふうなことをおっしゃいながら処方せんを書いてくださいました。だから、お薬を飲む前に、もうすでに私の気持ちというものはずいぶん元気になってきたわけなんです。それで歯医者さんの場合でもそういった冗談というものはまず最初に言ってくださるわけなんです。あなたの恋人が悲しむような歯にはいたしませんよというふうなことを言われて、ほほ、なんて自分で笑い出しちゃって、それで恐怖心というものが取り除かれる、それだけの余裕みたいなものが私にあったこと。それからもう一つは無料であったこと。私は外国人ですから、まあ日本で行きますと、私、日本の医療制度についてはたいして詳しくないのでございますが、外国人の場合には一応のお金を出さなきゃならないということを伺っておりますが、私その点でも非常に驚きました。一般の市民と同じような形での適用が受けられるということ、その点ずいぶん……。
 次に私の専門的なことになりますが、老人関係の問題、老人と医療というものは、非常に皆さま御承知のように密接な関係があるものなんですけれども、その場合、特に老人の場合には健康診査というものに重きを置いております。老人というものは病気がちなものであり、そして老人になっての病気というものは治療不可能であるというふうな、そういうふうな偏見というものをなるべく取り除こうとすること、それに力が入れられておりました。で、老人の九八%は国民健康保険と申しますか、ナショナルヘルスサービスの加入者でございます。その加入者としての当然の利益といいますか、適用を受ける場合にはどういう場所で受けるかと申しますと、各地域にあります、歩いて十分ぐらいの周囲にあります老人クラブだとか、それからデーセンター、これはからだの不自由な老人のための一日の日を過すというためのセンターなわけなんですけれども、そういったところで健康診査というものは一週間に一度は必ず、自分が望みさえすれば受けられるようになっております。そこで特に重点が置かれておりますのは、視力のテスト、それから聴力のテスト、そして適当な度の合っためがねをいかにしてかけさせるかということ、それから補聴器と申しますか、それをいかにして自分の聴力に合ったものを使わせるかということ、それはめがねは別といたしまして、補聴器というものはただで貸与をされております。そのほかに、私は非常に印象的だったものの中にカイロポデイというものがある。皆さまはこういうことばをお聞きになったことがおありでしょうか。キロポデイあるいはカイロポデイと英語で申します。日本語に直しますと……日本にはないものですから直せないかと思いますが、内容を平たく申し上げますと、足の治療なんです。何だと思われると思うんですけれども、その何だと思われることに非常に力を入れている。それはなぜかと申しますと、人間のからだ、そして特に老人において行動の自由ということは精神的な自立、肉体的な自立ということと最も密接に関係があるということで、目立たないことではありますけれども、手術とかそういったような、非常にはなやかな医者の分野以外の、最も目立たない、じみなところでもって同じような重要性を置かれているものがこのカイロポデイというものなんです。イギリスの老人たちの保健サービスの中で、これは最も望まれている保健サービスであり、そしてまた最も力を入れて普及されつつある保健サービスというものがこのカイロポデイなわけなんです。で、私はその中で非常に興味を持ったということは、このじみなもの、すなわち内容を言いますと、足のまめを取ったり、たこを取ったり、それから足の爪を切ったりするということが最も大きなカイロポデイの仕事なわけなんですけれども、その専門の、カイロポディストといいますが、カイロポディストには国家試験というものがございまして、きちんとその国家試験に通った者がカイロポディストということができるわけなんですけれども、カイロポデイが行なわれるのは、いま申しましたデーセンター、老人クラブそれからまた特に足のためだけのクリニックというものがありまして、それはフットクリニックと呼ばれておりますが、それがやはり各地区にございます。そういうところで足のケアーというふうな、日本ではちょっと考えられないようなことに非常にポイントが置かれているということ、それは私はイギリスの福祉施策だとか、医療に対する考え方の根本的なものがそこにあるんじゃないかと思ったわけなんです。日本の場合には、非常にはなやかなこと、目立つことにお金がかけられておりますけれども、それは確かにキャンサー、――ガンだとか、それから手術とか、そういった大きなことにはもちろん重要性がございます。だけど、それと同じような形で人間が自分の足で立てるということ、それで行動の自由が確保できるということ、そういうことのために力を入れているということ、これは私は非常にイギリスの考え方として、日本と比べました場合に興味があることじゃないかと思ったわけなんです。
 それに関連をいたしまして、一つほどつけ加えさせていただきたいのは、一九六八年から、それまではナショナルアシスタンスといわれておりました、いわゆる国家扶助と申しますか、それがサプリメンタリーペンション、日本語に直しますと扶助年金という名称に変えられたわけなんです。なぜ、そういうふうにかえられたかと申しますと、内容はほとんど同じで変わっておりませんが、その変えられた理由というのはナショナルアシスタンスといいますと、そういう名前で呼びますと、国家からの慈善みたいなものを何かちょうだいするというような感覚が国民にある。しかしペンション――年金という名前にいたしますと、これは当然の国民の権利であるという考え方になる。そういうことを考えまして、そして老人のプライドということを考えまして、それは一九六八年以降、補助年金――サプリメンタリーペンションという名前に書きかえられたわけなんです。
 そのサプリメンタリーペンションにまつわる一つの私の印象的なことをもう一つ申し上げますと、それはどういうふうな形で給付されますかといいますと、家賃とかそれから医療費でございますね、そういったものが自分の収入ではなかなかまかない切れない場合には、医療費と申しますものは普通全部ただなんでございますが、特別な、たとえばめがねだとか、それから義歯、そういったもので、やはりお金を出さなけりゃならないような、そういった場合に、老人の場合には自分のお金で、年金だけでまかなえない場合には、扶助年金という形で給付されるわけなんです。ところが、その給付のされ方が一たん、すべて全く現実的にはそれは無料になるわけなんですけれども、年金という形におきまして、一たん老人たちの個人の手に渡されるわけなんです。そして、それからまたそれを自分の手から、これは自分のお金として、医療費として、また家賃として自分の手でもって渡すことができる。日本なんかでございましたら、どうせ無料にして、こっちが取ってしまうんだからということでもって、最初から差し引いてしまうんじゃないかと思えるわけなんです。そのほうが合理化という名前にふさわしいと、しかし、イギリスの場合にはそういったことのむだよりも、やはり個人のプライドというもの、老人のプライドというほうを重んじて、そういうふうな繁雑な手段をとっているわけなんです。で、私は、そういうことを経験いたしまして、または日常の生活の中で、たとえば目の不自由な人が道を歩いている、こちら側に渡ってこようと思いましたら、私の、これはまあ非常に個人的な経験なんでございますが、私と一緒に歩いていたボーイフレンドの人がいたんですけれども、彼は黙って、ちょっと待っててねと言って、どうしたかと思うと、ととっと自分が道の向こう側に行って、その目の不自由な方の手を引いてぱっとこちらに渡って、その間のことについては、何にもそれについては一言も触れないで、そのまままた一緒に歩き出すというような……。それからまたは電車の中なんかで目の不自由な方などが入ってきた場合には、隣にすわった方がどこまで行くかということを聞きまして、その方が目の不自由な人のおりる、何といいますか、駅の前でおりる場合には、隣にすわっている人に頼んでいくわけですね。こちらの方はどこの駅でおりられるそうだけど、あなた行くのだったらそれを手伝ってあげてくださいというふうなことをリレー式にやっていく、それが何げなく行なわれている。そういうふうな社会の中に住んでみまして、やっぱり人間の尊厳とか、それから命の大切さというふうなことが日本でも非常にいわれております。至るところで私はそれを聞きます。しかし、実際に命がどれほど大切にされているのか、人間の尊厳ということがどれほど現実には実現されているのかということを考えましたときに、ことばでは言わないでも、やはりそれを実行するというふうな雰囲気、それは一体どこからくるか、ほんとうにそれはもう命の尊厳、命がとうといなんということは、ことばではなくて実際にそれを実行すること、それもじみちの小さなことから、全く私たちがちょっと笑ってしまいそうな小さなことの積み重ね、それが初めてほんとうに人間の命を大切にすることだと、私はしみじみと感じたわけなんです。そういった意味で、私、日本に帰ってまいりまして、非常にもういささかノイローゼぎみになってしまいました。それはなぜかと申しますと、非常に東京というのはエネルギーがあります。そのかわりに騒音があります。そして、私は町を歩くたびに町の中で楽しむどころか、足をけっ飛ばされてヒールのうしろのところはみんなけっ飛ばされたあとが一ぱいつきます。そのときにも絶対にごめんなさいと言われることはなしに、そういうことの前に、満員電車の中でゆられて、私は疲労こんばいしてしまって、ほんとうに何か自分の祖国でありながら、足のほうとからだのほうが何か向こう側のほうに向いてしまいそうな情ない自分で気持ちなんです。それで、自分のわが愛する祖国ということをよその国にいても考えることができる、ほんとうになつかしみを持って自分のわが愛する日本である、美しい日本というふうなことが言えるような自分の国になってほしいと、このごろ切実に感じるわけなんです。その最も大きな原因、自分の愛する国といわれること、やはり命が大切にされるということ、その中で具体的に申しますと、自分が安心感が持っていられるということ、そういうことじゃないかと思うわけなんです。で、私はほんとうにそういった意味では安心感もありませんし、いつも不安にかられておるわけなんです。何か私はいつかはどっかでやられちゃうんじゃないかしらと、どこにいてもその不安感におそわれるわけなんです。自分の国にいて、こういう不安感におそわれ、よその国に行って自分の健康の面でもお医者さんにいつでも相談できるという安心感というものを持てるということは、私は、自分が国籍を日本に持つ者として非常に悲しいことなんです。で、そういった意味からも、この私たちの健康というものに直接関係あるこの健保の改正ということに関しまして、私の個人的な経験ということをおもにお話いたしましたけれども、そういう点から、もう一度あらためて、その健康保険の改正にあたりましてこの点をお考え願いたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#4
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 次に肥後参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(肥後和夫君) それじゃ、日下部参考人にならいましてすわって供述さしていただきます。
 いま日下部参考人からナショナルミニマムとしての医療サービスが全額税金でまかなわれておりますイギリスの医療保障制度を中心にして興味のあるお話がありましたが、申すまでもなく日本の医療サービスは社会保険方式を中心にして提供されておりまして、そしてその社会保険が政管について大幅な赤字を続けているわけでございます。そういうことで、私の供述は四十七年度の政管健保の財政対策を中心にして述べさしていただきたいと思います。まあ書いてまいりましたので一応読ましていただきます。
 一、改正の必要性。――昭和三十六年から三十八年にかけて、保険におけるいわゆる制限診療が撤廃されることとなり、これに伴って医療費は急速に増加することになったわけでございますが、政管健保の財政は、この三十七年ごろから悪化することになりまして、収支の改善を見ることなく今日に至っているわけでございます。今日、国民が保険によって享受している医療の質的水準は、心臓外科や脳外科を例にあげるまでもなく、きわめて高度のものになっており、じん機能の障害に対する人工透析や心臓手術のように個人としてはとうてい負担できないような高度医療をも保険は国民に提供することになっているわけでございますが、それに見合う財源の確保がなければ制度の維持ができないことも、これはまた火を見るよりも明らかなところであります。政管健保のように財政が破局化した場合、その再建策は、高額医療等、個人としては負担できない医療に限って保険で給付し、軽微な低額医療は全額自己負担とするというような思い切った支出面の対応策を講ずるか、あるいは国民の所得水準が相当高くなった今日、医療サービスを国民が受益する度合いに応じて多少の負担増を容認してもらうという収入面の対応策しか基本的にはあり得ないのではないかと考えます。
 で、私は健康管理体制が整備確立していない現状におきまして、前者の道を選ぶことには問題があると考えており、したがって、残された道は後者の財政対策以外にはないと考えるものであります。
 このような見地から今回の改正は政管健保の制度を維持していくためにやむを得ない措置であると考えております。医療保険の足かせになっている当面の赤字問題に終止符を打ちまして、今後は前向きの行政に積極的に取り組み得る体制を整えることが医療保障の将来の発展充実にとって必要であると考える次第でございます。
 二、改正内容についての若干のコメント。――修正案を含めて、今回の改正内容について若干のコメントをつけ加えてみたいと思います。
 まず(一)、国庫補助について。政管健保の対象者が中小企業に働く人たちであることを考えますと、政府原案で国庫補助の定率化をはかり、さらに衆議院修正で五%を一〇%としたことは一応評価してよいものと思っております。私はわが国の医療保障を充実するためには伸びのよい財源を確保することが当面重視されなければならないと考えておりますので、社会保険料を重点財源とし、効率的な社会保険方式で医療給付を行なっていくことは、負担の公平という観点から見れば次善の手段ではありますが、必要やむを得ない政策であると考えております。その場合、負担の不均衡の問題につきましては、国庫補助のほかに、たとえば社会連帯の精神に基づいて財政調整等により解決をはかっていくようつとめることが望ましいと考えているのでございますが、直面する問題の解決に一〇%の国庫補助が投入されたことは、直ちに財政調整等を実施することについて世論の十分な同意が得られていないこと等を勘案しました場合、妥当なものと考えます。しかしながら、医療供給体制において自由診療制度を前提としていることを考えますと、納税者の負担による一般財源を特定の保険集団に投入することにつきましてはそれなりの理由づけと慎重な判断がなければならないということをつけ加えたいと思います。
 (二)、累積赤字について。政府原案においては、保険料の弾力条項により将来の収支の均衡が担保されることを前提として過去の累積赤字のたな上げ措置がとられたわけでございますが、衆議院の修正において保険料の弾力条項が削除されたこととの見合いにおいて過去の累積赤字のたな上げが見送られることになりました。この修正はやむを得ない面を持つことも確かでありますが、過去の累積赤字の処理をあいまいなものとしておきますと、依然として政管健保の財政問題が今後も尾を引き、将来における医療保険の量的質的充実の足かせになるものと予想されますので、何らかの形で実質的な解決策を見出しておくことが望ましいと考えております。
 (三)、保険料率の引き上げ等について。――標準報酬の手直し、まあ上限十万四千円を二十万円にし、下限の三千円を一万二千円にするという手直しでございます。次に、保険料率の千分の三の引き上げ、ボーナスに対する特別保険料の創設につきましては、特別保険料が五万円未満の者について免除をされることとなった以外は政府原案どおりでありますが、政管健保の財政の改善をはかるためには、これらの措置はやむを得ないし、負担の公平の見地からは若干の前進もあったのではないかと考えております。
 衆議院の修正によりまして国庫補助が増加したこととの見合いにおいて、短期的には黒字を生じるが、四十八年度以降において黒字を生じることとなるのではないかということを指摘する向きもあるようでありますが、保険料の弾力条項が削除されました以上は今後とも医療需給機構の両面にわたって改善並びに調整を必要とする課題が山積していることにかんがみ、若干の財政的なゆとりを持つことは制度運営上必要なものであると考えます。もちろん、この場合、累積赤字のたな上げ問題でも触れたところでありますが、短期的にせよ、黒字が生じたようなときには、将来における被保険者の負担増を回避するために使い得るようにされなければならないと考えます。
 三、結び。――最後に、一言健保法の改正について所感を申し上げてみたいと思います。
 政管健保の経営体質の改善、支出面における対策としまして、保険医療機関に対する指導、監査の強化、診療報酬体系の適正化等が世上強く指摘されており、政府のこれらの面における努力は世間を納得させるだけの十分なものでないという点につきましては、私も同様強く反省を求めるものであります。その点で、四十七年度の財政収支の改善が、単なる財政対策にとどまることのないよう強く要望をしたいと思います。しかし、いずれにしましても、財政面を無視して医療保障の充実を語ることはできないわけでありますので、長期的な医療需給の改善と両立する長期的に安定した財政基盤の確立のために、議会におかれましても、今後一そうの御尽力を心から希望いたしたいと思います。
 以上でございます。
#6
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 次に、渡辺参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(渡辺素良君) 渡辺でございます。
 私は、日本労働組合総評議会に結集をしております労働者の立場と、なおその中で医療に従事をしております労働者の立場と、二つの立場で、今回提起になっております医療保険法の政府管掌健康保険を中心とする財政対策について意見を申し述べたいと思います。
 まず、一般的に医療を受ける労働者なり、家族の立場に立って見ますと、今回の改定は何らの給付改善がなく、保険料の増額のみの措置である。もちろん国庫負担等も若干増額になっており、さらに衆議院でこれが増額の措置がとられているわけですけれども、労働者の負担が非常に大きいということについては変わらない措置であるというふうに思います。この措置が、一つはいままでの医療保険の累積赤字を生じているという問題と同時に、本年二月に引き上げられた医療費の改定による措置であるということは理解はできますけれども、しかし医療費の改定によって、はたして医療を受ける側が、給付改善として受けとれるであろうかというふうに考えますときに、医療を経営する側にとっては、確かにこの医療費の引き上げはわずかながら福音としてはね返ると思いますけれども、医療を受ける側にとっては、何ら改善ではない。その立場で言えば、改善面がないところで保険料の増額だけが行なわれる。こういう意味では、やはりどうしても納得がいかない提案であるというふうに思わざるを得ないわけです。
 もう一つの面で、政府管掌の赤字対策として今回の問題が大きく提起をされていますけれども、医療に従事をしております私たちの立場から見ますと、今回のような措置ではたして将来にわたって政府管掌健康保険の赤字を解消することができるのかどうかという点については、非常に深い疑問を持たざるを得ないということを指摘せざるを得ません。すなわち、私たちが日ごろ患者さんに接している、医療に従事をしている立場から見ますと、私たち日本のすべての医療機関は非常に矛盾に満ちているということが言えると思うのでございます。よく待ち時間三時間に診療二分ないし三分ということばが十年来いわれてきておりますけれども、何ら改善がされていません。そういう立場が医療の回りを見てみますと、より改善をしなければならない部分が非常に山積をしているということが言えるのではないかと思いますし、その改善は当然医療費にはね返り、当然医療保険の財政にはね返ってくる問題であるということから考えますと、今回のような改定では、当面の赤字対策という点ではできるかもしれませんが、将来にわたる赤字を解消するということはとうてい不可能なそういう問題であるということから、以下四点にわたって、今回の措置が十分な赤字対策になり得ないという点を意見として申し述べたいと思います。
 まず第一に、日本における病人の増大の問題がございます。これは当然病人がふえれば医療費が増大をするわけでございますから、何とかしてこの病人の増大を食いとめる措置がなければ、根本的な保険の収支均衡はあり得ないのではないか、こう思います。で、政府の発表いたしております資料によりましても、昭和三十年から昭和四十四年までの十四年間の間に、日本の病人は二・四倍にふえました。二百九十五万人の病人が七百二万人になったというふうに発表をされています。そういう中において、今回提起されております政府管掌の問題を振り返ってみましたならば、政府管掌健康保険の労働者並びに家族というのは、中小企業に雇用されている労働者が多いわけですし、当然賃金及び労働条件の面でも、組合健保なり共済組合の労働者に比べて非常に劣悪な状態にあるということはすでにいわれているところです。また、これも資料によりましても、平均賃金で二割方安い、また医療費の面では二割方高いというふうに、八〇%の収入を受けて一二〇%の医療費を払う。これは組合健保に比較しての問題ですけれども、そういう状態があるわけで、この状態は当然政管健保の赤字を導き出さざるを得ない、そういう問題になっていると思います。その中には、いま申しました中小企業における労働条件や賃金の問題と同時に、組合健保からはじき出された高齢の労働者をかかえているという問題もあると思います。高齢者は当然に病人が多いということも政府統計で明らかですから、そういう意味では、この日本の病人の増大の中で、よりひどい病人の増大が政府管掌健康保険にしわ寄せになっている。この点の解明なしには、まず政管健保の赤字対策はないのではないかということを第一点に思うわけでございます。
 第二点として、いままで政府では保険優先の立場を主張をしておられます。そうして公費医療については、保険で出した以外の部分について公費で負担をするのだというふうに言っておられますし、来年から実施されます七十歳以上の老人医療の無料化についても、やはり自己負担分についての公費負担であるというふうに主張をされており、何らその態度は変わっていないというふうに思います。しかしながら、老人の七十歳以上の高齢者の医療の問題にせよ、また三歳以下の乳児幼児の医療費の問題にせよ、また難病奇病といわれておりますいろいろの病気の治療にせよ、また高額医療といわれる、非常に高額な医療費がかかる、自己負担をたくさんしいられる、そういう医療の問題にいたしましても、社会的なそういう疾患といいますか、社会的な原因によって生じたものについては、公費優先をはかることが何よりも必要であるというふうに思いますし、公費優先がはかられることによって、政管健保の財政としては非常に荷が軽くなってくるのではないだろうか。したがって、保険財政の収支の面であれこれするよりも、公費医療の優先という方針こそ打ち出されるべきではないだろうかというのが第二点の問題でございます。
 第三点の問題は、医学医療がどんどん進歩をしてまいります。これについては詳しくは触れませんけれども、こういう進歩をしてくる医学医療の中では、当然医療費というものは高くかかってくるということは論を待たないことでございますし、医学医療の進歩が、たとえば政管健保にどういうふうにはね返りてくるかということをはじいて、それをまた、保険収支の、保険収入の中でまかなおうという保険主義をとっている限り、やはり医学医療の進歩を、保険財政の点で押えるということにもなりかねない。現実には、日本の現在の医療は、社会保険の財政に従属した医療が行なわれるということが、とみに世間でいわれているわけでございますが、さらに、それを強化するようになるのではないか。医学医療の進歩の中では、医療費は増高するものであり、そういうものは社会保険の保険中心主義の考えではまかなえないものであるという点を、第三点に申し述べたいと思います。
 第四点は、日ごろ私たちが従事をしております、医療の供給体制側からくる問題でございます。先ほど申しましたように、この十四年間に日本の病人が二・四倍にふえました。しかし、その中で、医療従事者の伸びは非常にわずかな数字にとどまっているわけです。この十四年間で見ますと、医師が八万六千人から十一万人へと、二七%ぐらいの増加にすぎません。したがって、患者百人当たりの医師数ということで見ていきますと、昭和三十年の、患者百人当たり二・九人おりました医師が、わずかに一・六人というふうに減少をしてまいりました。看護婦につきましても、中卒二年教育という准看護婦――まあ需給対策を中心にし過ぎたというふうに、いまや、反省の時期に入っているようでございますが、そういう准看護婦を中心とした大量養成をしながら、就業者数では十三万人が二十五万五千人しか伸びておりません。したがって、患者百人当たりの看護婦数で見ましても、昭和三十年の四・四人が昭和四十四年では三・六人に減少をする。すなわち、保険料をちゃんちゃんと払いながら、しかも、家族は五割の負担をしながら、薄められた医療しか受けていない。これが今日の医療の現状であろうというふうに思いますし、その他の医療従事者の数について言いますと、理学療法士や作業療法士の、いわゆるリハビリテーション関係の職種の数が非常に少ないこと等を代表例として、これはもう指摘するにし切れないほどの問題が生じています。しかも、そういう薄められた医療は、保険収支には関係をしないわけですが、保険財政の観点から、日本の医療が規制をされていますために、たとえば医療法施行規則等に基づきます看護婦の標準の数等も、昭和二十三年につくられたものがそのまま今日まで続いています。しかも、昭和二十三年当時につくられたものは、その当時、いわゆる当時の医学医療に基づいて患者にどういう看護を、どの程度するのだという、下から必要数を積み上げたものでなくて、機械的に就業看護婦数で割り出されたものであるということは、国会の討論等でも明らかになっていますけれども、それが今日まで改められていないというふうな問題があり、したがって、欧米の資本主義諸国における、医療機関における医療従事者の総数と、わが国における総数を比べた場合に、もう比較にならないほどの隔たりが今日生じているわけでございます。
 日本病院管理学会が、昭和四十二年に、世界のそういう調査をして報告を行なっていますけれども、オランダでも、またイギリスでも、アメリカでも、それぞれ患者一床当たりの従事者数は、大体三人から、多いところでは四人と、こういうふうなことが報告をされています。それに対して、厚生省の医療施設調査によりますと、日本では百床当たり六十人というのが現実の医療従事者数でございますから、大体四倍ないし六倍の医療従事者数の増加を行なわなければ、国際水準に達しないということが明らかになっています。
 いま、医療機関における人件費率は、五〇%をこえるということがいわれているわけですが、人数を四倍ないし六倍にした場合、一体、いまの医療というものがどう変わるかということと同時に、医療費にどうはね返ってくるのか。また、それが社会保険の、医療保険の経済にどうはね返ってくるかということを考えました場合に、国民に十分な医療を供給するという、一つの立場に立ちながら、その医療費を保険中心主義で、はたしてまかない切れるものであるかどうか。これは非常に大きい疑問であるというふうに思います。
 なお、この点については、四床対一人の看護婦の規制が、ことしの二月の医療費改定で、三対一という、特類看護婦の創設等も行なわれました。このこともまた、社会保険の医療費に当然はね返りを生じてくるところだというふうに考えるところです。
 また、医療供給体制の問題では、日本の八割の医療機関が、独立採算をたてまえとする医療機関になっているという問題がございます。すなわち、国立病院療養所なり、また、大学の付属病院、国立大学の付属病院、または地方自治体立病院、これらはそれぞれ一般会計のワクでなく運営をされていますけれども、一応、国及び地方自治体からの相当の繰り入れを行なって、独立採算的な運営ではありますけれども、現実には相当の繰り入れを行なっているという状態があります。しかし、公的医療機関といわれている病院は、日本赤十字病院等をはじめといたしまして、すべて患者収入によってまかなわなければならない状態になっているわけです。こういう比率は、国及び地方自治体立で、独立採算ではない運営をしておりますのは、いまや、病床数では三五%にとどまり、病院数では二〇%にとどまっているという状態になっています。これらは、この十四年間の間に、日本の病院、病床数が、五十一万床から百三万床に、約倍にふえるという中で、国立の伸びはわずかに六・三%、地方自治体立の病床の伸びが七五%。ところが、一方、医療法人は四・八倍の伸びを示していますし、個人立は二・九倍の伸びである。こういうことが示していますように、公的医療機関のベッド規制が行なわれるということの中で、私的医療機関が大幅に伸びてきた。結果的に、日本の、施設数で八割の医療機関が、独立採算をたてまえとする医療機関になっています。特に、精神病院等におきましては、施設数では国公立は五%にとどまり、病床数では一三%という、欧米では、資本主義国においても八割が国公立であるということに比べて、全く異様な状態を示しております。
 そして、このことは、私的医療機関は、当然独立採算をたてまえといたしますために、その中で、可能な限りの増収政策ということを考えざるを得ません。その増収政策が、一つは、医療保険のらち外であるという付き添い、患者がみずから自費で付き添いをつけざるを得ないという状態になってあらわれたり、または、病院経営を助けるための差額徴収となってあらわれているということになります。
 たとえば、公的医療機関の最たるものと目されております日本赤十字病院にありましても、すでに全国で、全ベッド差額徴収というのが二病院あらわれていますし、四〇%以上のベッドについて差額が取られているというのが、九十三病院中十七、八の病院で、ベッド数の四〇%以上に差額が取られるということになっています。また、私立大学の付属病院等でも、たとえば慶応で九〇%のベッドが差額徴収が行なわれているということが示しますように、完全な医療を保障するものではない。薄められた医療が行なわれている上に、――その薄められた医療すら差額徴収という中で排除されるという、いま労働者の状態が起きているのではないかというふうに思います。
 この状態は、やはり医療を保障するという立場に立って処理をされなければならないと思いますし、当然そういうことは医療費にはね返りをしてくる。その医療費は、社会保険の財政にはね返ってくる、こういうことを考えました場合に、今回政府から提案されております健康保険法の改正では、とうてい、いわゆる赤字解消策とも言い得ないのではなかろうかというふうに思う次第でございます。
#8
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 次に、古村参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(古村敏章君) 私は長野県社会保険協会の会長でございます。そうした立場から申し上げます。
 全国都道府県の社会保険協会といたしますれば、この健康保険の被保険者及びその家族は二千五百万人もございますので、これらの人々の健康と生活を守るための制度である健康保険はどうしても守っていかなければならないのでありますけれども、その財政が悪化いたしまして崩壊の危機にさらされておるのでございます。政府はこの赤字解消のために法を改正し、そのつど必要な措置をしてまいったわけでございまするが、われわれ事業主の団体といたしましては、健康保険制度の立て直しをはかり、各企業に雇用されている勤労者やその家族の今後の不安を解消し、より一そう国民福祉の向上につとめることが最も重要な当面する課題であると考えるのでございます。さような立場からすれば、今回政府が提案している健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法案につきましては、今後一切赤字を出さないという条件のもとで、制度の円滑な運営の基盤を策定することを確信するとともに、今後の努力を期待をいたしまして、各項目について賛意を表する次第でございます。以下、改正案の内容について意見を述べさしていただきます。
 まず、第一点として、国庫補助の問題でありまするが、政府管掌健康保険が財政基盤の弱い中小企業の集団であることにかんがみ、保険財政を安定さす必要から今度の定率国庫負担は一歩前進であると考えます。私ども社会保険協会といたしましても、また全国社会保険協会連合会といたしましても、従前から一〇%の負担を厚生省へ向かって働きかけてまいった経過もございますので、今回の衆議院の修正によって一〇%をきめていただいたことは、われわれの主張が実現したことでもあり、全面的に賛意を表する次第でございます。
 また、標準報酬の改定は四十一年四月以来のことで、この間に賃金も大幅に上昇してまいっておるのでございまして、一応改正案は妥当であると思うのでございます。すなわち、私の経営しておる会社の例をとってみまするに、四十一年の女子中学校卒業初任給が一万三千八百円であったものが、四十六年には三万円になっております。したがいまして今回の下限を一万二千円に引き上げるということは当然でございまして、なお上限につきましても同様のことが言えると思うのでございます。
 また、累積赤字を一般会計で補てんするということについて、衆議院の修正で削除されたのでございますけれども、これはやむを得ないといたしましても、次の機会にはぜひ健康保険財政の基本的な立て直しのためにも復活していただきたいと思うのでございます。
 以上申し上げましたが、これだけの財政対策をする以上は、今後赤字にならないというようなことに努力をしていただきたいのでございます。
 第一に、まず健康保険、健康管理、それから保険施設のより充実をはかり、被保険者の健康づくりの施設を積極的に取り上げてほしいのでございます。試みに疾病の予防費等を取り上げてみましても、健康保険組合連合会とわれわれ政府管掌との間においては非常に比較にならない差があるのでございます。
 第二に、さらに支出対策を合わせて取り入れていただきたいのでございます。たとえば、政府の指導によりまして世間で申しまする乱診乱療というものをチェックするというようなこともきわめて必要なことでございます。さらにまた政府の行政指導等によりまして、レセプトを厳重に監査してほしいということでございます。そのためにはいろいろ設備、人が必要であると思うのでございまして、私の身近かに考えて見ましても、長野県には医療に関する医官が一人おるわけでございます。歯科につきましても一人でございまして、これだけの手をもってしてはとうてい各保険事務所の職員の皆さんが力を合わせてやっていただいてもなかなかこの目的を達することは困難であると存じまするので、この点政府の姿勢としてこの二つのことにつきましては、今後御考慮をいただきたいと思う次第でございます。
 最後に、この政府管掌健康保険というのは、中小企業の事業主の大部分のものが入っておるものでございまして、この考えがこの制度に反映することは望ましいのでございます。すなわち社会保険審査会というものについて法をひもといて見ますると、本来社会保険審議会及び社会保険医療協議会法第一条に規定されたように、すなわち「政府の管掌する健康保険事業並びに日雇労働者健康保険事業、船員保険事業及び厚生年金保険事業の運営に関する事項を審議するため、厚生省に、社会保険審議会――を置く。」とあるわけでございまするが、われわれこの中小企業の大部分を占める政府管掌の健康保険からは一人も政府関係のこの審議会に顔を出していない。ほとんどが大企業の代表者で運営されているということにつきましては、私は不満を持っておるものでございます。今後、政府のあり方といたしまして、われわれ全国の五〇%以上の従業員並びに経営者を包含しております政府管掌健康保険の代表者をこうした制度にも繰り入れて、そうして全く密着した社会保険についての運営をされることを切に希望する次第でございます。
 私は今回の法案に対して賛成の意を表しまして終わりといたします。
#10
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 次に、石川参考人にお願いいたします。
#11
○参考人(石川哲君) 北里大学の石川でございます。
 今回の健保法改正に関しまして意見提出を求められましたが、私自身この問題に関しては専門ではございませんが、私自身の経験を織りまぜまして、教育に従事する医師側からの意見として、若干意見を述べさせていただきます。
 今回の措置、すなわち三つの修正案によって政管健保はほぼ赤字が出ない勘定になるというねらいがあるのではないかと思われます。ここで被保険者の負担だけを主として考え、収入をあげる道をとったということで、これまでの大きな赤字がうまくバランスがとれて、そして当初うまくいきましてもすぐに現在と同じように将来なってこないかと危惧する次第でございます。一般に政管健保に加入している方々は低所得者が多く、他の保険の方々よりも罹病率がきわめて高うございます。将来はさらに高くなっていくものと私は考えております。このような政管に私の印象としましては非常にきびしい保険料の引き上げであるように思われてならない次第であります。
 これに関連しまして、当然以前から約束されておりましたこの保険法の抜本改正が行なわれなければならないと思われます。今回の法案は、われわれにとりましては単に財政収支バランスの問題だけで終わってしまうもので、もっと根本にあるようなものに触れる必要があるのではないかと思っております。私の理想論といたしましては、病気にかかって――ただしこれはほんとうに病気にかかっていなければならないわけでございますが、診療を受ける場合は、社会保障制度の発達している国家としましては、少なくとも患者から一切金銭を取ることはなく、十分なる医療が受けられるというのが望ましく、このためにはその費用すべてが国費で支給される形が本来の形であると思われます。このような方向の実現のためにも、今後何とかして抜本改正を行ないまして、その改正下において今回提出されたような法案の審議に入っていくのが正しい筋ではないかと私は思われてなりません。
 この抜本改正が行なわれるためには、国と医療行為を行なう医師たちとの間でもっともっと歩み寄りが行なわれなければならないと思われます。たとえば、これに対して、何でもないのに、医者に子供をつれていく、そしてついでに母親と、そしておばあさんも見てもらうと、患者でない患者の医師へのかかり過ぎ現象が私のまわりで毎日行なわれております。たとえば私が行っておりましたスウェーデンのゲーデブルグ大学では、このような初診の問診患者は、初診の問診時にすぐに発見されて問診料だけで追い返されるということを私自身が見ております。わが国のある保険患者の申しますことには、先生に見てもらうと、あとで会社から主人のもとにお金が返ってくるから来るのだと、そういう例もございます。このようなとき、医師はこの受診患者をむげに追い返すこともできず、忙しい中で何でもない人に対してルチンの検査をするというむだが非常にあるのではないかと思います。まあ薬を多量に使わないと生活できない医師の制度も問題だと思います。
 次に、現在のわれわれには、過去になかった難病や奇病が続出してまいりました。たとえばスモンがそうであり、ベーチェットがあり、水俣があり、すべてその群に入ってくると思われます。わが国にしかない病気、そしてそれが昭和三十年代ごろから続々と登場してきておりますが、私は自分の専門分野で、これらの難病、奇病に全精力をあげて戦っております。一例をあげますと、中毒を疑う患者の場合に、毒物の検出にどうしてもガスクロマトグラフによる分析法が必要となってまいります。これは尿でも血液でもそれを分析するのにばく大な時間と労力その他が必要となってまいります。たとえば尿中よりの有機塩素とか、燐とか、毛髪よりの水銀を分析してもらうのに、大体一検体につき五千円、したがって三つの検査で一万五千円のお金が飛んでいくわけです。これらは一切保険の適用とならず、各自が非常に乏しい家計の中から捻出した私費でこれを払っていくという状態でございます。また、これらの病気が概して上位レベルの収入者には少なくて、どちらかというと低所得者、極端に申しますと政管健保のほうに圧倒的に患者が多いような印象を得ております。つい最近のスカンジナビアのレポートでは、わが国でも難病になりました多発性硬化症という難病が、上層にはなく、中の下から下の階級に多く、特に下から中の生活環境において、さらにその層が出世した層に非常に発見されるというショッキングなレポートがあります。そしてそれらの人は、労働の忙しさと経済的な理由から医師にかかるのがきわめておくれるという事実を報道しております。前述の疾病に対しても中毒例では高価な解毒剤が必要でございますし、そしてなおっていくという形をとりますが、それまでの出費を考えますと、どうしても治療についていけず脱落する例がかなりございます。ある公害病でも特効薬でほとんどなおすことができるはずでございますが、たとえば血球のむずかしい測定法が高価で、さらに先ほどお述べしましたような分析料が非常に高いものですから、何例かは、治療の途中で脱落していってしまいます。そうなると手おくれでどうしようもなくなる例がたくさんございます。このように現在の病気は従来の打聴診、レントゲンなどではとうていわからないような複雑な病気がふえ続けているわけでございまして、どうしても抜本改正の中に、このような疾病の流動性、医学の高度の進歩と、それによる高い費用を考慮に入れましていろいろ検討を加えなければならないと思います。私は医療は医学の社会的適用であり、医学教育と密接に関係する。たとえば公害病についてはほとんどの医師が生活に追われ、勉強する時間が少ないことと、これを知らないという問題もございます。人間関係尊重の原則もうたわなければならぬと信じております。このような背景を考えますと、健保の一元化も必要ですし、政管法の改正だけではとてもこの難問は処理し切れず、何とかして抜本改正をまず行なっていただき、大幅な国費の援助をお願いしたいと思っております。
#12
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 次に川上参考人にお願いいたします。
#13
○参考人(川上和吉君) 川上でございます。
 健康保険法の改正法案について意見を申し述べます。私の意見を一言で申しますると、私は衆議院の勇断とあえて申しまするが、衆議院の勇断ある議決を生かしていただきたい。いろいろどなたにも不満の点はおありと思いまするが、この国会で法案の成立をはかっていただきたいということを希望するものであります。
 その理由の一つといたしまして、当初国会に提出されました政府原案と、それから今回衆議院で修正後の法案とでは、ある意味において大きい変化があるのであります。それは当初の政府原案ではどうしてもあれも上げる、これも上げるという印象を免れなかったのでありますが、衆議院の修正によりまして国庫補助率がいわゆる一〇%ということの基本が出されました。もっとも政府原案でも五%というのがございましたが、私どもの立場から見ますると五%と一〇%というのは、ただ数字が五から十に変わったということじゃなしに――これは少し説明を要すると思いますが、説明を省略いたしまして、かなり質的な変化があったというように私どもは理解するのであります。と申しまするのは、これによりまして、不十分ながら国の責任による財政基盤の強化という一つの柱ができたというように理解をいたすのであります。これが私がこの法案を何とか成り立たせていただきたいという理由の一つであります。
 それからもう一つの理由は、これは実態的になりまするが、保険制度それ自体にいろいろの問題があることは先ほど来先生方がお述べになったとおりでありまするが、しかし保険制度の仕組みをとっております以上これは財政の均衡ということは不可欠でありまして、これはまあ私どもの扱っておりまする健康保険組合の立場から申しますると、これは常々財政の均衡、むろん財政オンリーじゃないということは申すまでもありませんが、しかし財政の均衡ということを離れては保険制度というものはこれは成り立たないということ、さような意味で健康保険組合を扱っておりまする場には常々さような考え方を念頭に置いて運営をいたしておるのであります。その場合に、政府管掌健康保険が御承知のように年々累積赤字が非常に大きなものになるというような状態、これを放置しておいてよろしいということはどなたもおっしゃるまいと思います。で、やはりわが国の保険制度、医療保険制度の一番の大きい規模でありまする政府管掌健康保険がよたよたしておりまするということは、これは医療保険制度全般の非常に大きな欠陥であります。さような意味合いにおきまして今回国庫補助率の増額によりまして、私のいま申しましたような国の責任もある程度明らかにする方向が打ち出されました以上、多少の負担はこれはやむを得ないと存ずるのであります。ただ、この負担の点が、おそらくいろいろ問題になると思うのでありまするが、一挙に上げておるじゃないかという点が問題になるかと思います。ただ、これは、私どもに言わせれば、一挙に上げるようになったと、もっといままでから手を打たれるべきだと、いままでから手を打たれるのがおそかったじゃないか。私どもの健康保険組合の立場、これはまあ、あり方が違いまするから直ちに比較にはなりませんが、健康保険組合の場合におきましては、いわゆる弾力的、機動的に早くに手を打つということが可能であります。それに対して政府管掌健康保険の場合は、そう手っとり早くいかぬのはもっともではありますが、しかし、その点が政府管掌健康保険と健保組合の大きな違いでありまして、それにしてももう少し早く手の打ちようがあったものだということを感じられてしかたがない。そういうことの累積のために、結果において一挙に上げるような感じをいなめないのでありますが、しかし、むしろ私どもに言わせると、原因はそちらにあって、当然財政の見地からもある程度上げるべきものは上げるということは、これはやむを得ぬことだと考えるのであります。これが成立さしていただきたい理由の第二点であります。
 以上が私が一般的に意見として申し述べたい点でありまするが、もう少し細部にわたって改正法案の個々の点について一、二意見を申し上げます。
 まずその一つは、標準報酬の上限、下限の改定の問題であります。これも負担増にはつながるのでありまするが、私どもから言わせれば、この点こそいま申したことの一例になるのでありまするが、こういうかっこうになって、いま一挙に上げられる観を呈するから議論になるので、もっと早くにやっておかれるべきだ。これは具体的に私ども健康保険組合の数字から申しますると、いわゆる標準報酬の頭打ち、上限ということでありまするが、現在の十万四千円の頭打ちになりまする被保険者がどのくらいの割合になるかと申しますると、健康保険組合で申しますると、四人に一人は二六%、四人に一人は頭打ちになってしまうのであります。そうすると、実際は十万四千円よりも給与が多い、賃金が多いにかかわらず十万四千円で押えられておる、比較的高額な人がそのままの保険料で済んでおるということ、これは明らかに保険料負担の均衡ということから申しましてもむしろ困るのでありまして、もっと早くに手を打っていただきたかった。それがたまっていま一挙にやられるからそういう感を与えますので、上げるほうはむしろ当然なんだと、上げるというよりは合理化し是正するのは当然なんですが、それが一ぺんに上がる感を与えるのは、むしろ原因はそちらにあるということ、やむを得ない原因かもしれませんが、そういうことで理解すべきものじゃないかと、かように考えるのであります。
 それからもう一つは、保険料率の引き上げと、いわゆる特別保険料の点であります。これはまあ、これこそはっきり上げることのほうでありまして、だれしも喜ばぬのは当然であります。上げぬで済めばそれに越したことはありません。ただ冒頭に申しましたように、保険制度を維持する以上、ある程度の負担をしのばなければならぬといたしますれば、これもやむを得ないんじゃないかと考えるわけであります。そこで、特別保険料でありまするが、これは結局、料率の引き上げでいくか、保険料の新設でいくか二つの選択の問題だとも考えられます。上げ幅、あるいは全体の上げる量その他を勘案いたしまして、どの程度が適当だという結論が出ますれば、それをどちらの方法でとるか、どちらを選択するか、これはむろん一長一短はございます。保険料で上げるか、あるいは何らか別の方法でいくかという問題、その場合に、やはり賞与が――賞与の性格についてもこれは議論があると思いまするが、賃金の変形だという部分も確かにあるのであります。さような点をとらえて、負担についてそういうことから考えていきますると、保険料でいくか、あるいは別の賞与の観点でいくかという選択の問題に相なってまいります。で、それには、これも衆議院の修正案で、賞与のいわゆる特別保険料につきましては標準報酬の五万円未満の低所得者には免除をするとか、特別保険料を付加しない、あるいはまた実際上、賞与は高額所得者に大体高率の賞与がなされておるというような状況等を考えますると、特別保険料の考え方は、高い所得者に高い負担をという一つの考え方があらわれておると思います。むろん、特別保険料についてはいろいろ問題があると思いますが、いま申し上げましたような考え方の観点でひとつ理解していくべきじゃないか。そういうことで、どちらの選択をすべきかという問題として判断をいたすべきじゃないかと考えるのであります。そういうことで、保険財政についての健全化、これで健全化ができたとはおそらくどなたもお考えにならないと思いますが、一応の足がかりはつかめるんじゃないか、かような意味でこの法案の成立を希望いたすわけであります。
 最後に、希望を申し上げますならば、一つは、これで健全になったとは申しませんが、引き続いていわゆる抜本改正の問題とか、全般の問題を取り上げてやっていただきたいのでありまするが、その一つの前提として、さしあたりの措置ということにおそらく考えられるのであろうと思いますが、それにしましてもこのままでだいじょうぶかというと、やはり問題があるのであります。いわゆる保険料率の弾力条項の問題、あるいは政府管掌の累積赤字のたな上げ問題等もお考えを願わぬことには、これだけでは財政の健全化という観点からだけでも問題があると思います。それらの問題は、健康保険組合あたりでありますと、やはりこれはある程度弾力性を持って運営をいたしておりまするので、いまきめたからそれでやれというても、すぐいろいろの情勢に対応できないというような問題もございますので、そういう点をお考えを願いたいということが一つ。
 それからもう一つは、今回の改正はいわゆる収入対策でありまして、それと支出面の対策が並行いたしませんと、これまた財政の基礎をつくるという上から申しましても不十分であります。この点は先ほど肥後先生も明快にお話しになりましたので、私から内容を申し上げることは差し控えたいと思いまするが、支出対策も並行して考えるべきだということを希望として申し上げ――希望じゃない、健保としては当然伴っておやりになるべきだということを申し上げまして、私の意見を終わりたいと思います。
#14
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 最後に、加藤参考人にお願いいたします。
#15
○参考人(加藤俊郎君) 私は、まず第一に、この法案が関係審議会の答申を無視している点が多いのではないかということを申し上げたいと思います。
 関係審議会といたしましては、御承知のように、社会保険審議会、社会保障制度審議会の両審議会がございますが、この二つの審議会を通じまして出されました意見は、まず第一に、健康保険の財政対策というものは、ただ単に財政という観点からだけではなくて、健康保険制度に関連する諸問題、これを含めて抜本的な対策を行なうべきであり、財政対策のみを処置すべきではない、こういうことであったと思います。
 第二に、この中に含まれております被保険者の負担の増加の問題に関しましては、急激な負担の増加を避けよ。さらには被保険者の代表は被保険者の負担の増加に反対をすると、こういう考え方を述べておったと思います。急激な負担増加にならざるを得なくなったというのはいままで処置がなされなかったからである、こういう御意見もございましたけれども、それにいたしましても現実の施策といたしましては、やはりこの点は急激な負担の増加を避ける、被保険者の負担の増加は慎重に考慮すると、こういうような施策であってしかるべきではないかと思うのでありますが、さらに審議会におきましては、衆議院におきましてすでに削除になったことでありますが、弾力調整条項という問題につきましても慎重に考えよと、あるいは再検討すべし、使用者、被保険者側ではこのような処置に対して反対というような考え方を述べておるのであります。しかるに政府の原案は、これらの意見というものを無視して国会に提出されているということではないかと思うのでありまして、この点をまず第一に指摘いたしたいと思います。
 それでは一体、抜本的な対策とはどういうものであるかということにつきまして、さきに御意見もあったようでありますが、私も触れてみたいと思います。
 健康保険制度、これとその土台をなしておりますところのいろいろな関連事項というものがございます。私どもはそういうものを総合いたしまして、わが国の医療保障制度と、こういうふうに理解しておるわけでありますが、この医療保障制度を、単に財政という角度からだけではなくて、その他もろもろの問題となっているそういう問題点を含めまして、根本的に見直していくということが抜本的な対策ということのあり方ではないかと思うのであります。具体的には、そういう意味合いにおきまして、医療供給体制の問題がまず出てくるかと思います。わが国は国民皆保険と、こういう制度になっておるわけでございますけれども、御承知のとおりに、これに対応する医療供給体制というものはまだでき上がっていない。こういうものを早急に完備していく必要があります。無医村、あるいは無医地区、こういうものが残されておりまして、国民が医療を受ける機会というものは均等でないということは御承知のとおりであります。すみやかに医療機関の全国的なネットワークというものをつくり上げていく必要がある。
 第二に、国民の健康管理の制度というものを確立する必要があると思います。国家は胎児から老後まで、それぞれの地域におきまして住民の健康を管理する、健康の診査を行なう、特に母子保健、老人の保健というような当今の問題点につきまして十分の力をいたすという、そういう体制をつくり上げていく必要がある。
 三番目に、公費によるところの保健、医療サービスというものを充実させる必要があると考えます。公衆衛生、環境衛生というものを充実いたしまして、疾病の予防体制を完備する。さらには難病、公害病に対するところの医療サービスというものを行なうといったようなことがなければならないと思います。
 さらに、診療報酬体系の合理化の問題、あるいは薬価や薬品に関する政策を確立をするというようなことが、健康保険制度に関連する諸問題として存在することは御承知のとおりであると思うんであります。
 以上の関連する諸問題を根本的に洗い直して、これを含めまして財政対策というものを進めない限り、健康保険財政の根本的な立て直しというものはあり得ないと思うわけでありまして、今回のような処置を進めるといたしますならば、従来と同様に、関連する諸制度からくる健康保険財政の受けるしわ寄せというものは排除できないのではないかと考えるわけであります。このような意味合いにおきまして、まず第一に私は、本法案の審議にあたりましては、健康保険制度、その土台をなす諸問題、それを含めました総合的な、根本的な練り直しということをぜひ御検討願いたいというふうに申し上げたいと思います。
 これに対しまして政府が進めておる施策は、この根本的な対策というものを三つに分断して国会に提出してきている。
 その第一が、いまここで問題になっておりまするところの改正法案でありまして、これは健康保険の中の財政対策というものを抜き出して処理しようとしている。
 さらに第二には、健康保険等の一部改正法案でありますけれども、これは若干のその中で給付の改善ということが含まれておりますが、結論的にはこれによってまた被保険者の負担も増加すると、こういう内容になっておるわけでありまして、実はこの面にも財政対策が盛り込まれておると、こういう内容であります。決してこれを政府が言うような抜本的な対策をこれによって講ずるというような内容のものになっていない。
 さらに第三に、医療の関係につきましては医療基本法案が用意されておるようでありますが、これは端的に申し上げますならば、問題点を羅列すると、こういう形になっておるわけでありまして、以上を総合いたしてみました場合に、いかにもその内容は糊塗的であり、場当たり的な対策であるというふうに言わざるを得ないと思うのであります。
 以上のような結果、本法案は財政対策を先行させることとなっておるわけでありまして、その結果、被保険者の負担の増加ということが非常に強く出てきている。私どもはこれを被保険者不在の財政対策ではなかろうかと、こういうふうに感ずるわけであります。本年二月、実質一二%の医療費の引き上げが行なわれました。それに続きまして今回のこの法律案が成立いたしますならば、われわれはさらに負担の増加ということになってまいります。さらに先ほど申し上げましたもう一つの法律ができますならば、その面からも若干の給付の改善はあるかもしれませんけれども、負担の増加ということになってくる。健康保険の問題でありますが、このように次々に追い打ちをかけられますと、被保険者である私どもは、医療費の問題に関連いたしまして、自分自身がノイローゼにでもなるような感じがいたすわけであります。少なくともそのようなことがないような、そういう配慮のしかたというものが本法案の中に盛り込まれるべきである、被保険者の立場というものがもっと配慮さるべきであるということを申し上げたいと思うのであります。
 で、私どもは先ほど来申し上げておりますところの総合的な抜本対策というものに取り組む用意、考え方というものは持っておるわけであります。また健康保険財政の問題が決してこのままでいいというふうに考えておるわけのものではございません。健康保険制度、それは角度を変えて言いますならば、私ども自身の制度であるべきであります。そういう意味合いからいたしまして、問題の財政危機ということも自分たち自身の問題として考えなければならないと思うのでありますが、私どもがその解決のために御協力できるような、そういうような施策というものを打ち出していただきたいということを最後に強調いたしたいと思うのであります。したがいまして、いまここにございます法案につきましては、そのままでは私どもは反対であるというふうに申し上げざるを得ないのであります。
 以上をもって終わります。
#16
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 以上で、参考人の御意見の開陳は終わりました。
 それでは質疑のある方は順次御発言願います。
#17
○須原昭二君 貴重なお話をいただきましたわけですが、参考人の皆さんに、さらに理解を深めるために御質問いたしたいと存じます。
 まず、最初に陳述をされました日下部さんにお尋ねをいたします。
 非常に具体的な英国のお話を聞いてわれわれも参考になったわけでありますが、まあ人間の命や健康を非常に尊重しているという姿をまざまざといま浮き彫りにしていただいたわけです。とりわけナショナルヘルスサービスですか、国民保健サービス機関における、国が責任を持っているように感じますけれども、その負担の内容ですね、国の負担、こういうものがどういう実態になっているかということをまず、体験上でもけっこうでございますからひとつお話をいただきたい。
 それからもう一つは、やはり英国ということになりますと、私たち薬剤師として非常に関心を持つのは何といっても薬です。英国の薬の使用量がまあ近代国家として一番低いわけですね。一三%だとよくいわれております。わが国では大体保険医療の中における薬代が四四・八%、こんな高率を示しているわけです。日本の薬の生産率を見ますると、去年でしたか、一兆六千億ぐらい、その額はちょうど地球上の薬の生産の五分の一です。しかもGNPは世界第二番目ですから、輸出がたくさんあると思いますと、そうではなくて、輸入超過になっているわけであります。そういう点から見ますと、日本人は何か薬づけになっているような感じがするわけですね。そういう点から見ると、英国の一三%というのは非常に私たちは低いと思っているわけです。そういう点から見ますると、いま若干の薬のお話がございましたが、はたして英国では薬の使い方についてどのように国民が会得をしているのか、制度上にそれをいかにして制約をしているのか。とりわけいまお話がありました医薬分業、こうした問題が、日下部さんの体験上のお話でもいいですから、ありましたらひとつ御披露いただきたいと、かように存じます。
 さらにまた、渡辺さんに御質問をいたしますが、政府はこの修正後、これから、もしこれの修正案が通った場合を仮定をして、これからの医療需要がどうなっていくだろうかという試算が実は出ているわけです。これから四十八年、四十九年、五十年にわたって、収入についての伸び率を大体一〇%ぐらい、こういうふうに実は試算をいたしております、収入ですね。さらに支出については、過去五年間の伸び率の平均、たとえば医療給付費を一六・八%、そうして現金給付費を一七%と見込んでおるわけです。そういう点をいまお話を聞きながら対比をいたしてまいりますと、非常に私は低いような感じがするわけでありまして、この点、直接医療に従事されておる立場に立って今後の医療費の伸び、これを具体的にどういうふうに試算をされておるのか、その点をひとつお話をいただきたいと、かように存じます。
 それから肥後さんにお尋ねをいたしますが、私といたしましては、これからの新しい時代に向けて、保険から保障へと移行するのがもう時代の要請である、こういうようにわれわれは認識をいたしております。そういう点から立ちますと、今日の保険制度、とりわけ医療機関における自由診療の状態からいって、現物給付あるいは出来高払い方式、こうしたものをどうお考えになっておるのか。さらに国公立の医療機関におけるところの独立採算制というものをどういうふうにお感じになっておるのか、御意見がありましたら御披露いただきたいと、かように思います。
 川上さんにお尋ねをいたしますが、上限を取れというお話しがあった、そういうふうに私承りましたが、間違いないと思いますけれども、上限ですね、上限をはずしたほうがいいというようなふうに私承ったわけですが、特にボーナスによる特別保険料の設定について、これはまあ政府も時あるごとに言っておりますが、低所得者に軽く、そして高所得者からたくさん取ると、こういう点の負担の公平、こういう原則に立ってボーナスから特別保険料を取ったほうがいいんだ、こういう説明をいたしているわけです。したがって、私はその上限をはずせばボーナスによる、依拠をする特別保険料というものは取る必要がないのじゃないか、かように感じますけれども、川上さんはどのような御意見を持っておられますか。
 以上、数点にわたりましたけれども、まず最初にお尋ねをいたしておきたいと思います。
#18
○参考人(日下部禧代子君) まず最初のお尋ねの国庫負担ということでございますが、ナショナルヘルスサービスの中での国庫負担と申しますのは、これは私ちょっと時間がなかったもんですから、あれなんですが、これは六五年の場合でここに出ております数字で六八・五%がまずイクスチェッカー、――国庫負担です。それにプラスすることの、特にローカルガバメントの、地方自治体のほうに国庫から出て、医療費の場合に一時金じゃない――何と申しましょうか、日本語で。出ておりますあれも入れますと、結局八〇%が国庫負担になっております。それで個人のコントリビューションというものが、保険料の割合というものが一三%になっております。これはわが国の場合と比べますと、どういうことになりますか。これは私、わが国の場合はあれいたしませんけれども、大体、ですから、八〇%は国庫負担ということで第一番目の御質問に対するお答え、よろしゅうございますでしょうか。
 それから第二番目の薬品に関することなんでございますが、これは数字を述べますよりも私の経験を申し上げたほうがよろしいと思うんですけれども、私、一番最初に行きましたときに、おこられまして驚いたんですが、のどが痛いもんで、日本から持っていきましたペニシリンみたいなものを自分でかってに飲んだわけなんです。そうしまして、あまりよくならないもんでお医者に行きましたところ、たいへんにしかられまして、お医者さんの指示なしにどうしてこんな強い薬を飲むのかといってものすごくおこられちゃったんです。それで、日本だったら普通のことなのに、何でこんなにおこられるのかと、もうびっくりぎょうてんしたわけなんです。
 で、その次の私の体験といたしましては、ちょっとしたかぜなんかの場合に、お薬があるかと思いまして薬局に行きましたところ、かぜをちょっと引いたんですけれども、お薬はどんなのございますかって聞きましたところ、そちらから言われたのはアスピリンなんですね。それからのどが痛かったらトローチと、それもやはり日本のような強い抗生物質なんかは入っていないような、まあいささかドロップみたいな感じのものなんでしょうか。そういうふうなトローチのなめるようなもの、それからビタミン剤と、いわゆる薬と名のつくようなものは大体そういったものしか私たちがお医者さまの処方せんなしに買いにいくものにはないわけなんです。ですから、もうほとんどお医者さんから処方せんなしに、お薬と日本でいわれているようなお薬を買うことは、不可能な状態になっているわけです。ですから、そういう意味で、日本に帰ってまいりました場合に、日本で引いたかぜというのは、たいへんたちが悪くて、いろんなお薬飲んでも、なかなかなおらないのですけれども、イギリスにおりました場合に引きましたかぜというのは、ちょっと寝ていて、それこそあったかいミルクを飲んで、ハチみつでも入れて飲んでいればなおってしまいそうな、そんなかぜで、日本の場合はみんなが非常に強い薬飲んで、病源菌を絶えず培養しているみたいな、そんな感じが私の体験からしてあったわけなんですけれども、そういった意味で、お薬に対する考え方というものが、非常に日本とイギリスは違っているような、ですから、それが公害なんかの、食品公害みたいなもの、それに対する非常に感覚の違いというものが、その辺のあたりから出てくるのじゃないかと、私は自分の体験を通しまして感じたことでございます。それらのところでよろしゅうございますでしょうか。
#19
○参考人(渡辺素良君) 須原先生からの御質問でございますけれども、厚生省が試算をしている政管健保の支出の今後五年間の平均が医療給付で一六・八だ。これが正確には医療に従事している立場から見て、どのぐらい伸びるのか、こういう御質問なんですが、こまかい算出をする事務機構を持っておりませんので、ただ言えますことは、一六・八の伸びで、今後年間見ておられるということは、日本の医療を今後五年間にわたって改善をするという意思が、この中ではまるっきり見られない。むしろ一六・八%の相当部分が物価の引き上げと、人件費アップでとられて、なおかつ不足をするということが、大体見当がつきますので、その意味では、政管健保の財政から見ても、今後の支出の伸びというのは、日本の医療、すなわち、保険料を取って医療を給付するという医療保険の中においても、より薄めた医療しか考えられていないのではないか、こういう点を非常に感ずる次第でございます。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
 いま私たち医療機関の中では、十分な医療なり看護ができないという悩みを多くの者が持っている。非常に平たい話を申し上げて失礼ですけれども、看護婦の学校を出て、看護婦になったものが一番悩みますのは、学校では脈を一分見れと、こう言われるわけです。ところが実際に職場に入ってきますと、一分なんか見ていると、とうてい仕事が回わりませんから、大体十秒ぐらいしか見ません。十秒に六をかけて一分間の脈の数として出すわけですけれども、したがって、日本の医療機関では特殊な患者を除いて、ほとんど患者の脈が偶数の脈を打っている、こういう状態なんです。
 それから看護の本質というのは、患者に十分接して、患者の訴え、要望というのを言われなくても察して、そしてそのことをいろいろしてやるということが根底にあると思いますけれども、看護婦の悩みは、朝、検温なり様子を聞きに行ったときに、お変わりありませんか、という質問では聞かないわけですね。質問するといろいろ言われて時間がかかりますから、お変わりありませんね、と言って、くるっと、言ったか言わぬかのうちにうしろを向いてしまう。こういうふうなことが卑近なことでありますし、そしてほんとうに重症の患者さんで、たとえば、食事の介助をしてあげなければならぬ、その人にほんとうに食事の介助ができているか、こういうことを看護婦たちが集まってあれしてみますと、二、三十病院があるうちで、一カ所できておればいいほうだ、また患者の投薬についても、食後の投薬でしたら、一回一回ちゃんと薬を持っていってあげて、飲むか飲まぬか確認をするということが業務に入っていますが、それができているケースが、まあ若干ニッパチ闘争で増員になったところ以外はほとんどできていない、こういうふうな状態が現に存在をいたしております。そういう点は、先ほども意見を申し述べましたが、四対一という標準がずっととり続けられてきているということでわかることですけれども、私たちはそういう点を、ほんとうに患者のための医療というものが行なわれるように、先ほどもちょっと申しましたが、せめて国際水準に近い人数を置いていただいて、そして国際水準に近い医療というものを施してあげることをしたいというふうに念願をいたしておりますし、徐々ではございますが、そういう部分が伸びてきているというふうに、ニッパチ闘争その他の問題で言えるというふうに思います。ところがそういう伸びがこの中で見られていないということになると、一体政府管掌健康保険の中で保障すべき医療というものを、どの程度の医療をお考えになっているのかという点について、深い疑問を持たざるを得ない数字が、五年平均の一六・八%ということではないだろうかというふうに思います。
#20
○参考人(川上和吉君) 私の説明しましたことが説明不十分で誤解を与えたかもしれません。私、申し上げましたのは、標準報酬の上限を取れとは申しません。現状の十万四千円というのは、その当時十万四千円をきめたときから言えば、むしろ現在は二十万円程度が妥当だという意味で、十万円から二十万円に引き上げるのはやむを得ぬだろうと申しましたので、上限を取れという意味で申したんじゃありません、誤解を与えたかもしれませんが。よろしく。
#21
○参考人(肥後和夫君) いま社会保険から保障へということが、これからの課題ではないか、現物給付、出来高払い方式をどう考えるか、公的医療機関の独立採算制をどう考えるかという点についてお答え申し上げます。
 現在の医療保険が、病気をしたあとに医療費を保険でまかなうということでありまして、なるべく病気をしないような、国民の健康管理体制を考えていくということを合わせて考えませんと、結局あとから病人がふえて医療費がかさむ、それを保険で見るということでは、事後的な対策に終止するのではないか、そういう意味で健康管理体制を充実する場合、先ほども参考人の御意見として述べられましたが、老人医療、あるいは公害医療等、このような領域につきまして、やはり公費負担の医療を充実しまして、国民の医療のナショナルミニマムをやはり広げていくということは、これは必要でありまして、その点につきましては、やはり公費を投入すべきものではなかろうかと考えている次第でございます。ただ、あまりに、先ほども申しましたように、制限診療の撤廃以来、医療需要が伸びている。そしてそれを簡単に強権で切るわけにはいきませんので、やはり公費医療を拡張する一方で現在の医療保険の改善、質的な充実をはかっていく、二本立てでいくべきものかと考えている次第でございます。
 次に、現在の医療保険が現物給付、出来高払い方式で結局何時間も待たされて、そして見てもらうのはわずかに二、三分にすぎない。それから薬を多用するということで、結局医療担当者が適当でない報酬を得ているのではないかという批判が強いわけでございまして、技術水準の十分にあるお医者さんが、十分に患者をていねいに診断して、そしてそれで十分に医者として成り立っていくような体制が、診療報酬体系の改革が必要ではないか。そのような意味で、まあ技術を尊重する、あるいはむだな薬を使い過ぎないようにする、そのような制度の改善が必要であろうかと思っております。
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
 それから、公的医療機関の独立採算制につきましては、これは先ほどの公費負担の医療の充実とも関連いたしまして、やはり医療保険でこのような特に基礎的な研究を担当しなければならないような公的医療機関が、外来患者をたくさん見て、しかも薬を多用してやっと赤字を何とかしのいでいくような現状は改められるべきものであろうと、したがって、そのような公的医療機関については、もっと独立採算制ではなくて公費をもっと投入すべきものであろうかと考えております。
#22
○田中寿美子君 最初に日下部参考人に、英国の国民保健サービスはたいへん制度が簡素で簡単だと思うのです。日本の健康保険の制度は、健康保険だけでも八種類、それで被用者の中がさらに政管健保と組合健保に分かれていますから、九種類もあって、それぞれ非常に複雑でございます。それに比べて、制度的に英国のナショナルヘルスサービスの制度は、非常に簡単に思われますが、その制度の御説明を簡単にしていただきたいと思います。
 もう一点は、健康管理のことを私ども非常に、皆さんも口にしていらっしゃいますし、私たちも問題にしておりまして、医療という場合に、予防と治療とそれからリハビリテーションと、さらに健康増進その他含めて健康管理というものはなるべく公費でという考え方に立っていますが、健康管理というような観念が英国の医療制度にあるかどうか、あるならどれに当たっているのかということをお聞きしたいと思います。
 それから、次に渡辺参考人ですけれども、医療従事者の比率、たいへん日本は欧米諸国に比べて少ないと。百ベッドについて六十人というふうに言われました。欧米が百床について二百人から三百人。たいへん少ないということになっております。で、これは医療従事者が非常に無理をする。いまのお話にもありましたように無理をすることになるわけなんですが、そういう状況だと、医療従事者でいらっしゃる渡辺参考人は、医療に働いている人たちの労働条件に対して多くのまあ違反がありはしないかと思うのですが、そのような状況についてお話いただきたいし、それから、先ほど須原委員も触れられましたけれども、それでは医療従事者をふやそうとするならば、今後医療費というものはどんどんかさんでいくに違いないし、またその待遇も変えていかなければなりませんから、医費費は恒久的に上がっていかざるを得ないだろうと思うのですが、その辺をもう一度御説明いただきたいと思います。
 それから、古村参考人が、政管健保から各種の医療の審議会に代表者が出ていないことは遺憾であると言われました。私も全くそのとおりだと思います。そのことについては、ぜひ入れるように努力すべきだと思うのですが、先ほど健康管理、健康づくりの施設を今回の衆議院の修正によってかちとりたいというようなおことばがあったように思います。これは、この四十七年度、衆議院の修正を実行したとして、多少の黒字になるわけなんです。単年度は黒字になるわけなんですが、それでもって健康づくりの施設とか健康管理的な施設をつくりたいというふうにおっしゃったのかどうか。で、そうであるとして、四十八年度、四十九年度にわたっていまの制度でまいりますと黒字が続くとは思われないのでございますが、そういうところで組合健保のような施設ができると思われるのかどうか。この点は私、厚生省のほろに四十八年度、四十九年度の衆議院修正による見込みで、そういう施設をつくったりする余裕があると考えているのかもあわせて伺いたいと思います。
#23
○参考人(日下部禧代子君) まず最初の、イギリスにおけるナショナルヘルスサービスというもののシステム、制度ということについてなんでございますが、これは日本の場合と対照してどういうふうに、日本の場合がこうだからこうというふうに並べてできないほど単一化している、簡単になっている、一言で言いますと。
 で、いま私が述べました、私が一応イギリスで私自身が恩恵を受けましたところのナショナルヘルスサービスというのは、あらゆる国民全体、全部が受けられるということなんです。だからどこの会社に属しているとか、どういうふうな種類の人間であるとかいうふうなことは全然関係なしに、国民であるということ、ということを条件にして、それ全部カバーされているわけなんです。
 それと、もう一つ別にソシアルセキュリティー、社会保障ということの中に、ヘルスインシュアランスというものがあります。これが健康保険と申しますでしょうか。しかし、日本の場合のあれのように幾つかの形、業種別とか、そういうふうなことに分かれておりません。ですから、私たちが、一般に日本でいわれている健康保険というふうなものに該当するとしましたら、このナショナルヘルスサービスということが、これ一本でいわれるのじゃないかなと私はそういうふうに思うわけです。ですからどちらをどういうふうにというふうな形での、日本があまりに複雑化し過ぎていて、それはこの健康保険とか医療の問題だけではなくって、私の関係しております老人の問題の場合でも、日本の場合には老人ホームというのは無料だとか有料だとか軽費だとか何だとか、そういうふうな形で幾つかにこう分かれております。しかし、イギリスの場合には老人ホームは無料というものは全くないんです。これはどういった意味かといいますと、先ほど申し上げましたような年金でもってまかなえること、それで自分のお金として、年金は自分のお金ですからそれで払う、それ以外、それ以上のものは結局ないわけですから……。どういうふうに申し上げたらおわかりになるか、結局のところ、事実は無料なわけなんですよね、日本でいう無料なんでしょうけれども、しかし、それはイギリスでいう無料ではないということなんです。そういった意味での違いはございまして、またプライベートに自分自身が幾らでもお金をたくざん出したい人はどうぞごかってにという意味で、医療のほうでもナショナルヘルスサービスに入らない人が約二%ございます。それはやはり健康保険じゃないプライベートのお医者さんです。その場合、どのぐらいお金を払うかということは、全くこれは私調べたことはございませんけれども、非常に高いのだろうということは、一度、私お友だちについて健康保険医ではないところに行ったことがございますけれども、全く普通のお家と変わらない、すごく豪華な応接間みたいなところに通されて、これがお医者さんの家なの、と言って、びっくりぎょうてんしたような、そういったところですから、ものすごく高いお金を取られておるにきまっておるわけなんです。全然お医者さんという雰囲気はなくって、普通の豪華な個人の家の応接間という感じ以外の何ものでもなかったわけなんです。そういうところでたくさんお金を出して、そういう雰囲気の中にひたりたいという方は、どうぞごかってにという意味で、約二%の人がそういうことをやっております。しかし、それ以外は完全に一本化で、ナショナルヘルスサービスというものの中に、すべての国民が入っているわけなんです。ですから、そういった意味でも、私は老人ホームの場合も、それから医療の場合でも日本はあまりに複雑過ぎる、これはある意味での差別、国民に対する差別ではないかなと思うわけなんです。で、もっとそれをあれしますと、大きな企業に入った、大きな企業に属している人は、それだけいい保障があるというふうなこと、それはそういうふうなことの循環は、結局日本で、私はあらゆることの弊害になっています、学歴の偏重だとか。それで、それはどういうことにつながるかといいますと、もう幼いときから人をけ落とすことに専念しなければならないような、そういったことが全部悪循環につながってくるのじゃないかと、そういうふうな気持ち、――私、イギリスの制度と日本の医療制度というもののあまりにも違いをながめてみますと、そういうことを感じるわけなんです。
 それから、その次の御質問で、健康管理というふうなことば、これは私、日本語がまずいせいかどうか知りませんけれども、管理ということから受ける感じというのは非常に私何か上から押しつけられたような、何かコントロールされているような、いやな気持ちがするわけなんです。イギリスの場合に、この点ではすべてこのサービスということばが使われているわけなんです。あらゆる意味で健康保険から何からすべてをひっくるめまして、教育も含めまして、それは社会サービスということばで一言でいわれているわけなんです。ですからこの健康管理ということばを実際にイギリスの場合にどういうふうに使ったらいいのか、私自身がイギリスの場合と日本の場合と考えますと、非常に発想のしかたというものが根本から違うような気がいたします。何か下からイギリスの場合だったらこういうふうな考え方を、こういうニードがあるから、そして、それをどういうふうに行政に、政治に立法に生かしてほしいというような形、ところが日本の場合には管理ということばが象徴しますように、上からつくってしまって、それに国民が合わせていけというふうな形、ですから、日本では非常にニードの調査はたくさんされております。私拝見したところたいへんよくされております。それからまた施設の点でも欧米に劣らないというよりも、それ以上のすばらしい施設ができておるのを、私この間、見学いたしまして、そういうこと発見したわけなんですけれども、そういうことがありながら、どうして日本では一般の国民がそれほど自分でしあわせだと思えないのか、実際に思えないどころか、ほんとうに客観的に見てもしあわせじゃないというのはどういうことか、やはりこの管理ということばが示すようなそういった考え方というものを、私たちはもう一度根本的に考え直していかなきゃいけないんじゃないかと思います。その例で先ほど申しました補助年金の名称の変更などということも、一応の御参考になるのではないかなと思います。こういうことでよろしゅうございますでしょうか。
#24
○参考人(渡辺素良君) 医療従事者の比率が欧米水準に比べて三分の一ないし、はなはだしい場合には六分の一と、こういうふうな状態を改善をするという状態のもとでの現状なり改善後の状況について御質問がございました。現状ではよく国会等でも看護婦の労働条件についてお取り上げをいただいているわけでございますけれども、まあ数年前からいわゆるニッパチ闘争というのを私たちが起こしてまいりました。地方自治体立病院を中心にして相当数の看護婦の増員が現に行なわれました。国立病院におきましてもごく少数でございますが、まあ夜勤制限のための増員が行なわれてきています。そういう運動のもとになりました状態というものは、まず大体月の勤務日の約半分を夜勤でやらなければならない。医療機関で三交替をいたしておりますので、どうしても夜にかかる勤務を二組でやるということになってくる、二交替、そして昼が一組と、こういうことになりますので、どうしても夜に回る状態が多い。しかも全体の数が少なくて夜二組置きますために、一人で相当多数の患者を見させる、こういうふうないわゆる状態がありまして、二人以上の複数による勤務をさせろと、こういう要求と、そして夜勤回数をせめて月の勤務回数の四分の一ぐらいにしろと、こういうことで運動が出たわけでございますが、こういう状態というのは、その間における看護婦の、――なかなかじっとすわっているような勤務ではない、こういうふうな問題とからめまして、たとえば医療機関の中では、病院は本来病人をなおすところだけれども、その病院で病人がつくられている、こういうふうな言い方をいたしますし、また、実際には病人が病人を看護しているというふうなことばが日常ささやかれていますように、看護婦がほんとうに健康破壊を伴いながら労働をしている、こういうふうな状態が今日依然として日本の医療機関の中では支配的ではないだろうかというふうに思います。そういう過酷な労働条件、これは当然高度な専門職でございますから、一定の期間労働をしたら家庭に引っ込むということではなしに、一生を通じての職業にするということが、これは望ましいわけですけれども、そういう過酷な労働条件と他産業に比べて賃金が低い、こういうこととあわせまして、やはり離職者があとを断たない。今日、準看護婦合わせますと三万数千という看護婦が毎年送り出されてくるわけですけれども、大体充足率が五〇%というふうに厚生省も言っておられますように、相当の看護婦がやはり離職をしていってしまう、こういう状態が起きています。しかもこの病院の中では一番多数を占める職種は看護婦ですから、その看護婦を極力安上がりに養成をしようということで昭和二十六年、七年以来、中学卒二年教育という準看護婦の制度がとられてまいりました。この人たちのもう古い人たちは三十五、六歳になってくるわけですけれども、しかし以然として看護婦とは非常に大きい差別待遇を受けながら、しかも同一労働をさせられている。そういうことがからみまして、大量に養成される準看護婦の離職者がやはりあとを断たない。いろいろな労働条件の問題、賃金の問題、制度からくる差別の問題、こういう問題がからみまして、一つは非常に大きな看護婦不足というものを現実には招来をいたしまして、四対一、いわゆる厚生省が医療法施行規則で定めております数すら医療機関でなかなか確保できないでいる、こういうことで相当多くの病院ではあき病棟をかかえる、看護婦不足のためにあき病棟をかかえるというふうな状態も現実に生じております。こういう状態を私たちは打ち破っていこうということで運動を進めてまいっているわけですが、大体四対一の当時の基準というのは、看護婦は結婚したり、通勤したりということを予想しない全寮制で未婚の看護婦だけで勤務するんだ、こういう体制のもとにつくられた水準ですから、そういう当時の状態のままの四対一ですから、それを今日のような家庭生活と両立をさせようという場合、当然無理が生じていたわけですが、これをわずかながら打ち破って、ことしの二月の医療費改定では四対一のいわゆる一類の基準看護を上回る看護婦を置いている場合、三対一の看護婦を置いている場合にはこれに特類の基準看護として、基準看護料としては一日二百円高い診療報酬が認められました。この点は、まだ実施されている病棟数はまだ全般的ではありませんけれども、当然三対一を目指していくということは私たちの運動の側からも、また経営者の側からもこれは進んでいくと思いますし、そうすると、この点も直ちにまた医療費のほうにはね返ってくるのではないかというふうに思いますし、また実際には四対一の一類基準看護と三対一の特類基準看護料を取りましても、それだけでは若年看護婦ですとペイいたしますけれども、一定の年数がたってくるとやはり二百円の差では病院が運営できない、こういうふうな問題も出てきますし、そういう問題はまた別のところで、よく医は算術といわれていますように、患者さんを見れば何とか増収になるような検査なり治療はないものかというのがいま日本の医療を支配いたしておりますから、そういう点で制度的には目に見えない病院の増収政策、そのことがまた社会保険の医療費にはね返ってくる、こういうふうな循環が行なわれるだろうというふうに思います。また先ほど申しました中卒二年の準看護婦教育というものが、非常に高校進学率が高まったということもあって、年間三万人から養成をするという状態の中で、現実には高卒者が相当入学をしているという状態に変わってきつつあります。そういうことから、厚生省自体も早晩中卒二年教育というのは取りやめて、高卒を基盤とする看護婦教育に切りかえざるを得ない社会的な状態が生まれていくというふうに思いますし、私たちの要求というものもありますので、看護婦教育について早晩一本化が行なわれてくるのではないだろうかというふうに推察をしておるところですが、そういうことになりますと、また中卒二年教育を基準とした準看護婦の初任給というものが一つ高められてくる、こういうものなどがからみ合いまして、大幅な増員を将来行なっていかなければ、日本の医療が救えない、患者が救えないという問題等もからみながら、日本の医療費というのはどうしても相当急ピッチで上がらざるを得ないであろうし、また上げなければ、本来の医療を給付をしていくという社会保険なり、また広くは日本の国民の健康を維持していく、こういうことにも問題があるのではないだろうか、こういうふうに思っているところでございます。
#25
○参考人(古村敏章君) 成人病予防とか、あるいは公害予防等について早期発見とか、早期治療とかいうようなことについては、疾病予防のための費用というのが非常に予算が少ないわけでございます。聞くところによると、政府管掌健康保険では被保険者一人について七円くらいに聞いております。また、健康保険組合連合会のほうの御計算では千七百円ぐらいですか、非常にたくさんの費用を使っているようでございます。したがいまして、私どもそういうようなことから比べて見ると、そのための設備というのは非常な金がかかると思います。しかし全く治療の面から申しますと、そういう設備は投資してもこれはペイできるんじゃないかというように考えておるわけでございます。しかし、いまの国の財政からいってなかなかそういうようなことが急速に実現するとは思えないわけでございますが、ここに厚生省の健康保険病院というものが全国に五十五ございます。したがいまして、そういうところを中心として健康管理活動を行なわせるような方法を講ずることができるのではないかと思います。たとえば、その病院において定期的に一日とか二日の人間ドックをやるとか、何か一つの方法を設けて、そうして政府のほうからその一件について幾らとかというような補助をして、せっかくある病院を活用することによって、これが目的がまあ理想的なものができればけっこうでございますけれども、既存のものを利用しても効果が上がる、まあベターの方法がとれるのではないかと思うわけでございます。また、被保険者の病後の保養とかレジャーのために保養所というものが各県にできておるわけでございます。しかし、これも委託料が安いというようなことのためになかなか人間が得られないというようなことのために、人間がなくて開店休業しているような保養所もあるわけでございます。あるいは老朽して、いまの時代ではちょっと使いにくいようなところもあるわけでございます。せっかく、こういう制度もできておるわけでございまするから、こういうようなものをさらに補強することによって、そして医療の仕上げをするようなこともできるのではないかと思うわけでございます。また社会保険協会といたしましても、制度として保険委員というものがございますので、その委員を活用して、そして早期発見とか、早期治療に会社、工場の従業員を指導するようなことに努力はしておりまして、ある程度の効果をあげておりましたけれども、まあ多少でございますけれども、健康管理を専門とするようなひとつセンターというような制度を設けて、そういうようなことを政府の指導によって、あるいはそれを組織化してそういうものを使うことによっても効果があがっていくと思います。以上、私は理想は理想であるけれども、ベターな方法としていま持っているものをさらに活用することによって、ある程度の目的が達せられるのではないかということを申し上げた次第でございます。
#26
○田中寿美子君 ちょっとポイントがね、一〇%の国庫補助がついて幾らか黒字が出る。その黒字でそういう健康づくりの施設をしたいというふうに言われたのかというふうに私は思ったんですけれども、そうではないんですね。
#27
○参考人(古村敏章君) いや、違います。
#28
○田中寿美子君 そうではない、それならば……。
#29
○小平芳平君 それでは、時間も長くなりますので簡単に御質問いたしますので、要点だけお答えいただければたいへん幸いだと思います。
 初めに、肥後参考人にお尋ねいたしたいと思いますことは、この肥後参考人の御意見といたしまして、現在における法改正には賛成であるということ。
 それから、最後に、しかし、政府の反省を求めるような趣旨のことをちょっとつけ加えておられましたが、要は制度審議会あるいは保険審議会等の答申におきましても、公負担の一時の赤字対策ばかり繰り返していたのではだめだ。もっと基本的な保険の欠陥、保険制度の欠陥、医療制度の欠陥、これを直すことがきわめて急務の問題だということが答申されているわけであります、御承知のとおり。
 そこで、今度、政府は確かに財政対策が現在参議院にかかっておりますが、ともに抜本改正、基本法というようなものも提出しておりますが、その中身についてはともかくといたしまして、こうしたやり方についてもう一つ具体的な御答弁を、お考えをお述べいただけたら幸いだと思います。政府のこうした抜本改正あるいは基本法に対する御意見はまた別の機会に伺うといたしまして、こうした政府の前回も、前々回も絶えず財政対策ではだめじゃないか、そういう制度の欠陥を早くなおそう、早くなおすことが先決だということが強く制度審議会においても国会においても、野党からもそういう意見が出ているわけです。そういう点についてのお考えをお述べいただけたら幸いだと思います。
 それから川上参考人と古村参考人にお尋ねいたしますが、お立場の上から考えまして、現在、大企業の組合健保にいる人は大多数が黒字の組合だと思うのです。しかし現在、そういう大企業におられる方もやがては定年退職する。定年退職すれば政管健保に移されるか国民健保に入っていくか、いずれかに、いつまでも現在の制度ではそのところにいるわけにいかないわけですが、そういう点についてのお考えがありましたら、現在の制度そのままではいかにも不公平ではないかというようなことを私たちは感ずるわけですが、それに対するお考えをお述べいただけたら幸いだと思います。
 それから、石川参考人に伺いたいことは、公害あるいは農薬の公害、毒物による健康被害、こういうような点についてお述べをいただきましたが、こうした有機水銀とか有機塩素剤、有機燐等のこういう健康被害者を、私も直接訴えられまして、一体どこへ紹介していいか、どこで研究していただいているのか、ほとんど見当がつかなくて困る場合が多いわけですが、そうした点の現在の日本の研究の状態はどんな状態か、あるいはまた石川参考人御自身としまして、そういう研究に対する政府の補助等はどのような状態にあるかというような点についてお述べいただけたら幸いだと思います。以上です。
#30
○参考人(肥後和夫君) 非常に大きな御質問をいただきまして、どのようにお答えしてよろしいか、ちょっと私の能力に及ばないのではないかと心配しておりますが、第一番目に、この四十七年度の財政対策ではたしてほんとうに財政基盤が確立するかどうかという点については疑問に思っている次第でございます。四十八年度にあるいは国庫補助率が五%から一〇%になるといったようなこともありまして、まあ黒字になるのではないかというようなこともありますが、一方でいろいろ診療報酬等の引き上げが予想されるといったようなことも考えますと、なかなかやはりむずかしいのではないか。そういう点につきましては、今回赤字たな上げが一応見送られることになったわけでございますが、やはりこのような赤字をいつまでもかかえているということは、利払い――まあ保険料を払う国民の負担が利払いのほうに食われていって、実際の診療の医療給付の引き上げにならないという点でやはり問題ではないか。したがいまして、まあこれは弾力条項とワンセットになっておりますので、非常にむずかしい問題ではございますが、やはりこの赤字たな上げ問題についてできるだけ早い時期に結論を出されるべきではなかろうか、このようなうしろ向きの経費は早くやはり適切な始末をされてしかるべきではなかろうかと思います。
 それからあとの問題でございますが、一体、先ほども、補助金の問題というのは、自由診療制を基盤に現在の制度はしているという点からいうと、なかなか問題があるということを申し上げましたけれども、一体国の税金というのは社会保険の機構を通じてどういうふうに使うか、それから公費負担で、公費医療で直接社会保険負担以外のところでどういうふうに使うか、そのような問題が一つあろうかと思っているのでございます。すべて国の税金は国庫補助金を引き上げるという形で社会保険機構を通じて供給するのだというふうにも言えないのじゃないか。まあその辺の問題が一つあります。それからもう一つは、先ほど申しましたように、取るほうのことばかり一生懸命になって、それが効率的に使われているかどうかについて十分なその対策を講じていないのではないかという不満があるわけでございまして、これにつきましては、たとえば先ほども御質問がありまして触れましたけれども、現在薬を使うとか患者をたくさん見るとか、あるいはその診療を引き延ばすとか、そのような形で医療の供給がなされている点は、これはまあ直さなくちゃならないし、特にいまの病院医療と、病院と診療所の役割りのあり方等についても相当問題があろうかと、そういうふうに思っているわけでございます。それで公費で、やはりナショナルミニマムとして公費で社会が保障をどうしてもしなくちゃならないものは公費でやるとして、社会保険料を通じて供給されるものについては、一応まあ財源を十分に確保するという観点からいきますと、やはり社会保険料方式をとらざるを得ないのではないか。ただし、負担能力のない部分については、これはやはり国庫補助を入れなくちゃならない。そういう面で政管が中小企業の従業員を対象にしているという意味で健保組合に比べて国庫補助率を高めなければならないのは当然だと思いますが、国民健康保険、それから政管健保、日雇い健保、あるいは船員保険、それから組合健保あるいは共済との間の国庫補助率を比較しました場合に、一体どういうようなその辺にバランスがとられるほうが望ましいかという点は、やはりいろいろ慎重な検討を要するのではなかろうかと思っております。
 大きい問題を御提起になられましたので、十分にお答えできませんが、思いつくままに以上のようなことを申し上げたわけでございます。
#31
○参考人(川上和吉君) ただいま健康保険組合のあり方に関連をして御質問がございました。私、実は健康保険組合の連合会の役員もいたしておりませんし、本日は健康保険組合を代表してという意見にはなりませんので、ただ健康保険組合を扱っている私個人としての意見になります。はなはだ無責任かもしれませんが、私個人の責任においてお答えをいたしたいと思います。
 そこで、健保組合、ことに大規模の企業の組合は相当黒字を出しておるんじゃないかということ、それはそのとおりかもしれませんが、少々ことばじりをつかまえて恐縮でありまするが、お尋ねの機会に健康保険組合の実情についてちょっと申し上げておきまするが、健康保険組合にもかなりいろいろございます。千何百もございまするからいろいろあります。最近だいぶ健保組合は余裕があるのじゃないかという声が非常に強いのでありまするが、そういうふうに非常にいろいろあります。現に私どもの組合はまだごく新設でありまして、体質的にかなり政府管掌に近いものを持っております。そういうところから、私ども以上に、もっといわゆる総合組合――、中小企業の集まりました健康保険組合がございますから、これはもう非常に政府管掌に体質的にも近いものから、かなりまあゆとりがあるというわけではありませんが、いろいろございます。そういう点もありますので、いまお話の点を一つにしてお考えにならぬようにお願いして、というのはどの組合がどうということではございませんが、健康保険組合についてそういう点をお考えを願いたいということと、それから、そうは申しましても、健保組合全体を通じていえば、むろん政府管掌健康保険のように赤字を出していないというか、赤字を出さない努力をいたしてまっておりまするが、私に言わせれば、その政府管掌健康保険と健康保険組合全般との差は、お考えになるほど開きがあるものではございません。ことに先ほど来渡辺さんのお話を伺いまして私どもも非常に得るところがあったのでありまするが、今後の医療需要等を考えていきまする場合に、まあむろんそういう非常に長期を見通したいろいろの対策をこれから講ぜられていかなければならぬと思いまするが、そういう実情を考えますると、健康保険組合のうちの多少赤字のある部面についても、一体これはいつまで続くものかという点も非常に考えていかなければならぬと存じます。そういうことを前提に、必ずしも全部余裕があるのだからどうだということではなしにお考えを願いたいということが一つ。しかし、そういうことを前提にいたしまして、御指摘のありました、比較的いわゆる定年までは健保組合にある方が多い、それから定年が過ぎれば中小企業あるいは政府管掌健康保険に移っていく者が多いんじゃないかという点、これはおそらく、数字はわかりませんが、全般的に御指摘のとおりだと思います。そういう点は、私の先ほど申しましたような点を前提にいたしまして、これは健康保険組合もそういうことはおれの知ったことじゃないのだということを申すべきでないのはむろんであります。ただその点はよくわかるのでありまするが、さて、それを具体的にするかというと、これはなかなか問題でございます。私ども、まあこれは健保組合の代表ではございませんが、健康保険組合全般として、以前に出ておりました役所のいわゆる政府管掌と、がらがら計算にしてという考え方、これには反対せざるを得ないんで、基本的にはお話しのような点も考えなければいけませんが、その理由はくどくなりますからやめまするが、いわゆるがらがら計算は反対せざるを得ない。たとえば、先ほども御指摘のありましたように、政府管掌の補助率を多くする。それから健康保険組合の中でも、おそらく今後健康保険組合の中で、むろん健康保険組合としてはできるだけ国庫の補助等にたよらないで、いわゆる自主的にやっていきたいという気分はございますが、以上、さっき申しましたような意味から今後はおそらく健康保険組合自身もそう安閑としておれない。健康保険組合の中にも国庫補助を、現に若干もう国庫補助をもらっておりまするが、国庫補助も一応当てにしなければならない。ただ、その場合でも、おそらく政府管掌の補助率が多くなる、それから健康保険組合で援助を要するものの補助率は少し少なく、それから補助の要らぬもの、自前でやれるものが幾らかになると、そういうことでやっていくのが、私どもがやっぱり、それがいわゆる財政状況である、いわゆるがらがら計算でなしに。ちょっと御質問に対してよけいなことまで申し上げたかもしれませんが、私どもの気持ちはそういうことでございます。御了解を願います。
#32
○高田浩運君 肥後さん、お急ぎのようでございますから簡単に。
 先ほど保険財政に対する国庫補助については、その理由づけと、それから慎重な判断が必要である、こういうお話でございますが、この点についてもう少しコメントをしていただきたいと思います。と申しますのは、これは、先生は財政学者でございますので財政運営の立場からのお考えであるか、まあ社会保険を守っていくといいますか、それの健全な運営をはかっていくという立場からのお考えであるか。さらにさかのぼれば、要するに医療サービスに対する負担の形として保険料でいくか、あるいは税金、すなわち財政支出でいくか、それぞれにこれはメリットとデメリットがあるだろうと思いますが、まあその複雑な問題を短時間にはとてもお述べになられない問題だと思いますけれども、ただ、私ども考えるのに、やはり財政支出というのは非常に弾力性が乏しい面を非常に持っているんじゃないか、実際問題として。ところが、この医療という面はやはりえらく医療も進歩をいたします。変化をいたします。それに対して、その客観情勢の変化に対して適応する方式というものはやはり常に念頭に置いていかなくちゃならぬのじゃないか。そういうことを基本にして考えれば、やはりその根本というのはしっかり立てて、あと、どういうふうにそれをモディファイしていくか、まあこういうような基本的な考え方で対処するのがいいんじゃないだろうかなと、こういう感じがいたしますので、その観点からいまの点をももう少しコメントしていただければと、こう思いますのが一つ。
 それからもう一つは、累積赤字の問題について何らかの解決をしなければならないと、こういうお話がございました。確かに、それはそのとおりでございますが、どういう解決の方法が念頭におありであるか。もしおありであればお示しをいただきたい。
#33
○参考人(肥後和夫君) 私、初め知らなかったものでございますから、大体三時前後で解放していただけるものかと思いまして、四時以降にちょっとのっぴきならない約束をしたものでございますから、どうもいろいろ御質問を制約するようなことになりまして、失礼いたします。
 それで、補助金のあり方というようなものについてどう考えるかということと、累積赤字の問題をどういうふうに処理したらいいと考えるかという点、二点について申し上げたいと思います。
 現在の問題としましては、一つは、先ほども申しましたように、各種の社会保険、医療保険の間の補助金のバランスの問題をどうするかという、まあバランス論が一つあると思います。そういう点で具体的に申し上げられることは、これは負担能力のない被保険者のたくさんいるところにたくさん補助を出すということであろうかと思いますが、具体的に何%がいいかということにつきましては、これはなかなかにわかに申し上げられないかと思います。まあ国保のように非常に高いのがある。日雇健保が高いのもまたわかるわけでございます。まあその次に政管ということになっておりますが、船保等の問題も、ああいう補助率でいいかどうか、まあその辺の、要するに政管の補助率が上がった場合に船保はあのままでいいか、いろいろな問題がありまして、私自身これからもっと研究してみたいと思っている次第でございます。
 それから、補助金というものは一体どうあるべきかということなんでございますけれども、たとえば医療保険の場合にできるだけ公費負担でやるべきもの、ナショナルミニマムと見なすべきものは公費負担でやるとして、これはできるだけ社会保険の領域から排除していく。そうすれば、社会保険、医療保険、これは純粋になって、保険料率もしたがって少なくて済むんじゃないかというような一つの考え方もあろうかと思いますが、もう一つは、やはり医療需要というものが非常な勢いで伸びている。この医療需要に対してどのように対処したらいいかという問題がありまして、まあ確かにイギリスのような場合には全部税金で医療サービスはまかなうというたてまえになっておりますが、私、日本のその現在の健康保険料が、医療保険が、いわゆる本来の意味の医療保険なのかどうかということは、財政をやっている者から見ると疑問がありまして、と申しますのは、被用者の負担しております保険料は、あれは一種の比例所得税と見なせるものでありますし、それから事業主が負担しているものは一種のペイロールタックスである、まあそういうものをひっくるめて、それから国庫補助を加えまして、あの財源がまかなわれている。医療保険というものが原則として受益者負担のたてまえをとって、その個々の医療サービスの利益度に応じて保険料を払うというべバリッジ型のもし考え方をとるとすれば、日本の医療保険というのは決してそういう形にはなっていない。むしろある意味で応能負担原則というものがずいぶん入っているわけでございます。私はむしろそのほうがいいと思っているものでございますから、標準報酬の上限の引き上げとか、特別保険料について賛成するものであるわけでございますが、まあ税金というのはなるべくやはりそのナショナルミニマムの保障、そういったような社会的な見地あるいは非常に社会的に見て必要な老人医療であるとか、あるいは特殊な公害病に対する対策でありますとか、とにかくそういう、あるいは医療の基礎的な研究に属するものとか、そういうようなものに充当しまして、やはり個々に受益のはっきりするものは、やはり受益者負担でいくというのが、一つの税金とそれから公共料金の使い分けの基準かと思うわけでございます。日本の医療保険は、保険であるかどうかは問題がありますけれども、当面いろいろな財政需要がある、社会保障についても、これは医療保障だけじゃなくて、年金の充実あるいは環境衛生の充実等いろいろ問題をかかえて、あるいは社会福祉面でもかかえておりますので、当面やはり効率的に財源を充当していくという観点からいきまして、私は伸びのいい財源として、やはり現在の社会保険料方式というものを、やはり根幹にすべきじゃないか。将来もっと状態が整理改善された暁には、またその時期にもっとあるいは別の考え方が出てくるかもしれない、ただ当面は、やはりいわゆる社会保険方式というものを根幹にするよりはかなかろうと、そういうふうに思っておる次第でございます。
#34
○高田浩運君 累積赤字について……。
#35
○参考人(肥後和夫君) 失礼いたしました。
 累積赤字につきましては、これは食管のときにも非常に問題になった問題でございますが、これをかかえておくということは、これは非常にうしろ向きの支出を医療保険に負担させることになりますから、できるだけやはりしかるべき機会にたな上げにされるよう、適当な措置を講じられるほうが望ましいのではないかと思っているわけでございます。
 そうしますと、現在四十七年度の対策では、たな上げにできなかったわけでございますので、これについては、しかしながら、どうにもならないわけでございますので、累積赤字はやはり一応塩づけにしまして、これについての金利負担は適当にやはり借りかえで処理していくというふうにすべきじゃなかろうか。それから万一、これは私は四十八年度に黒字が出るとは必ずしも思っていないわけでございますけれども、万一出た場合には、これは要するに四十七年度以降の努力によって生じたものでありますので、むしろ赤字をその分だけ減らして、減らしたものをたな上げにするということでなくて、そういうけちなことは考えないで、その努力に免じて、それはむしろ負担の軽減とか、あるいは給付の改善とかにやるというふうにするほうが、その努力に、応分な一応評価をするという意味で励みになるのではなかろうか、そう考えております。
#36
○小笠原貞子君 いろいろ御意見肥後先生から伺いましたが、先ほどおっしゃいました中で、三十七年から三十八年に制限医療が撤廃されて、そうして医療費が非常に増大された、そのころから政管の費用というものが、大きくなって赤字になったというような御趣旨、そのとおりだと思いますけれども、それは一体どうしてそんなに診療受ける患者がふえたのか、その原因は何なのか。それは先ほどもちょっとおっしゃっていましたけれども、乱診乱療によるというふうにごらんになっているのかという点が一つでございます。
 それからもう一つは、政管健保の対象になっておりますのが中小企業でございます。そういうような対象を、実際にいろいろ先生も御専門の立場から御研究になったり御調査なすったり、なすってからのきょうの御発言だったと思いますけれども、そういうような対象の方たちの健康状態というのが、非常に赤字を出すくらいに医者にかからなければならなくなった、これは一体その原因はどこにあるのだというふうにお考えになっていらっしゃるかという点でございます。
 それからもう一つは、先生財政学のほうの御専門のように、先ほどからちょっと伺っていたわけなんですけれども、それはその立場からの発言なさった内容として、私などしろうとから考えますと、財政学の専門でいらっしゃれば、国家全体の財政というものを見通して、そうしてまた、この健康保険の問題も、その財政の立場からお考えいただけたものと思うんですけれども、この問題につきましては賛成している団体というのが、私の聞いたところでは、ほとんどございませんで、組織された労働者、総評・中立・同盟きょうもおいでになっておりますが、ほとんどの労働者は反対をしておりますし、また医師会からも連日たいへん大量の反対のはがきがきております、東京・大阪・愛知・京都はじめといたしまして。また、健保連、保団連というようなところからも反対だというようなことで、私は反対のところばっかり多いような中で、いまのところ今度の法案には賛成だとおっしゃった中には、財政的な立場での御専門の見地からそういう結論をお出しになったんだと思うんですけれども、反対している者の言い分としては、いままで一〇%の国庫補助を出していれば、赤字分というものは出すことはしないで済んだんだと、そうすれば今度は健康を守るという政府の立場においては、二〇%の補助というのは当然出すべきではないか。健康保険料率を上げたり、ボーナスから取るというようなことは必要ないと、すべて主権者である国民の立場から考えるならば、あまりにもいまの財政というものが、国民の立場に立っていない、健康守る立場に立っていないというような意見がたくさんのように私には考えられるわけなんです。そういたしますと、先生は全体の国の予算などから考えられてみても、いまそういうような要求が出ておりますような二〇%の国庫補助にふやすとか赤字のたな上げということは、結局国が保障しなければならない問題でございますし、そういうような点が、いまの財政の中から無理だとお考えになって、一応この法案はいまのところは賛成だと、こういうような御意見だったんでしょうか、そのところをお答えをいただきたい、教えていただきたいと思います。
#37
○参考人(肥後和夫君) どうも皆さんが御反対になっていられるので、何か賛成のような意見を述べるということは、あれでございますが、やっぱりこういう赤字をどんどんふえるような形で、ほうっておくというのは、やはりこれは望ましくないと思います。ですから、やはり国民の税金を効率的に使う、そしてもっと福祉を充実する、いろいろな面に効率的に金を使うという面で、ちょっとむだ使いになるのではないかと思う次第でございます。そのような意味で、制限診療の撤廃以来赤字が出た、赤字が増大して、その間に何らかの関係が認められるのではないかという点については、私はそのように思っておるわけでございますが、一方では国民皆保険以来、国民が病気をしたときに、大事に至らない前に見てもらえるようになったという面では、非常に評価できる面もありますけれども、しかし、一方ではほんとうに自分の手に負えないような高額の医療負担が必要な病気は、全く野放しになっているという面がありますので、やはり方向としましては、軽い病気は自己責任でやっていく、そうして重いどうしても個人では手の届かない病気については国費、公費をうんとつぎ込んで、十分に見ていくという方向で考えるべきじゃなかろうか。ただ、それが受診抑制ということにならないかという点は、やはり慎重に考えなくちゃなりませんので、そのような意味では、やはり前にも申し上げましたように、健康管理体制といったようなものの充実というようなことを、別にやはり講じなければならないというふうに思っております。まあ、やはりむだなものはやめてその金を有効に使いたいという見地から申し上げているわけでございます。
#38
○高山恒雄君 加藤参考人にお聞きしたいんですが、審議会においても今回は答申的に非常に反対だと、その意見も十分に考慮されてないと、したがって、今後の行政の問題としては、単に被保険者だけに無理がいくというような値上げをしないで、総合的な、抜本的な改正というものがまず出てこなくてはいかぬではないか、そのためには母子保健とか老人保健とかというような問題点の、いわゆる保健のサービス点を強化してやるべきでないかと、こういう御意見であったんですが、そこで、この財政の問題について、いろいろ先ほども御意見がありましたが、つまり、政府としては抜本改正をやって、そうしてやっぱり公費を必要とするところは公費でまかなう姿勢をとるべきだと、こういうふうな御意見かと思いましたが、その点をひとつもっと詳しくお聞かせ願いたいと思います。
 次に、石川参考人にお聞きをしたいんですが、先ほど、直接患者にお当たりになっておる参考人の立場からの御意見であったと思って非常に尊重しておるわけですが、最近、非常に、無診患者と申しますか、そういう人がふえて、今日流行しておるスモン病とか、あるいは原因不明の病気が非常に多発しておる、そういうものに真に手を施すことすらできない。したがって、こういうものはひとつ公費によって抜本的な道を開くべきではないかと、こういうふうな御説明かと私は承ったんですが、この無診患者がふえて全く時間的にも余裕もない、医師としては患者に振り回されておるといいますか、そういうふうな今日の情勢だというような点で、もう少し詳しくお聞きしたいと思うんです。
 なお、川上参考人にお聞きしたいんですが、先ほど川上参考人は、今日の政府管掌保険の財政は、一般の報酬からの引き上げをやるか、特別保険料を設けるか、二つに一つだと、こういうふうにおっしゃったわけです。それで、二つに一つのどちらを選ぶかというと、いずれにしても同じことではないかと、こういうふうに私は聞こえたわけですが、私たちが考えますのには、非常に浮動な景気に左右されるようなボーナスというものからそうした保険料を徴収するといろことは非常に至難な問題ではないか、二つに一つというような選び方では簡単に片づけられないのではないか。いずれを選んでも財政さえよくなればいいんだというようなふうに聞こえたんですが、そういう点は川上参考人はどうお考えになっているのか、お答え願いたいと思います。
#39
○参考人(加藤俊郎君) 私は、わが国の公的な医療サービス、保健サービスというものがたいへんおくれている、そのおくれている面を健康保険の財政がしわ寄せを受けて財政上の危機を生じている、こういうような意味合いで、抜本的にその両方にわたってこの際対策を講ずべきではないか。今回のように健康保険の財政問題だけを抜き出しまして処置をいたしましても、それはまさに、生活のしまりのない人間が赤字を出している、その生活をきちんとさせるということはしないまま、赤字に対して金をつぎ込んでやっていくというような形になるのではないか。こういうことも含めて申し上げたわけでありまして、そういう意味合いで、被保険者の負担増になるという今回の改正法案には反対であるとするわけであります。
 ところで、お尋ねの公的保障の面でございますが、たくさんございますけれども、私どもが考えております第一は、公的に推進すべき保健サービスというものがあります。それは、検疫あるいは伝染病の問題、結核やハンセン氏病、スモン病、精神病、こういったものの予防の問題、それから分娩に関する給付の問題、妊産婦、乳幼児の健康診査、栄養指導の問題、さらに児童の健康診査、成人病予防とその早期発見のための健康診査、高齢者の健康診査、さらに各種のリハビリテーションといったようなものが保健サービスとして確立されなければならないと思います。次に、社会的な疾病と考えられるものにつきましては公費をもって治療を保障するという体制が必要であります。それは、先ほど幾つかの病名をあげましたけれども、そういったものに対する治療、さらに、今日難病といわれておりますところのベーチェット病その他がございます。あるいは治療法がまだ確立されていない各種の病気がありますが、こういうものの治療、ガンや心臓病、脳障害といったものの治療、さらには予防接種による事故であるとか、食品添加物による事故の治療といったようなものにつきましては、これは社会的な疾病といたしまして公費をもってこれを保障するという体制が必要であると考えます。さらに、少し観点を変えまして、社会的に救済を必要とするもの、そういうものの医療について国がこれを保障する体制をとる必要がある。すなわち、戦傷病者、原爆の被爆者、心身障害者、未熟児等々であります。また、生活困窮者あるいは母子、失業者、低所得者、高齢者あるいは公害認定以前におきまして地域的に発生をいたしました疾病、罹病者の医療あるいは交通災害の後遺症による者の医療、さらに公害、交通災害以外の災害にかかった者の治療、こういったものが社会的に救済を必要とする者の医療といたしまして公的な負担において保障されるべきである、こういう考え方を持っておるわけであります。これらの問題がたいへんおくれていると。これが健康保険の財政に非常に大きな影響を与えているということはお察しがつく問題ではないかと考えておる次第でございます。
#40
○参考人(石川哲君) 先ほどの小平先生の御質問もかねてお答えいたしますと、まず、健康の被害者になっているような毒物にはどんなものがあるか、現在、問題になっておりますのは、薬害と農薬と工場排出物と有害ガス、それに食品添加物、大体このぐらいに整理されてくるんじゃないかと思います。そういたしまして、こういうものをじゃあそういう中毒にあたっている場合に一体どこへ行って見てもらったらいいんだろうか。そういう場合に町の先生がその患者を送る場合に非常に困ります。たとえば水銀中毒ですと東京大学の保健学科でも毛髪の水銀をはかってくれる。そして新潟大学と東京歯科大学で水銀をはかってくれます。それから有機塩素ですと佐久総合病院と私のところ、有機燐剤ですと佐久総合病院と私のところ、PCBですと九大の薬理学教室のところ、そういうふうに非常に患者は遠いところを歩いて回らなければこの検出というものが不可能でございます。私自身の考えといたしましては、国立の衛生試験所というものがございますから、そういうところを早急に整備していただいて、そういう患者さんをすみやかに医師側から回されたデータを分析していただく、しかも異常に高いデータがありましても、堂々とそれを公開していただくというたてまえをとっていただかないと、これらの病気はふえる一方じゃないかと私は考えております。
 それから第二点で、政府の補助はいかがだろうかという御質問がございましたが、現在このベーチェット研究班のお金が大体四千万ことしたしか内定したというお話を伺っております。そういたしますと、これを十カ所の大学で割りますと四百万になりまして、大学の中でさらにそれを四カ所で割ると百万円になります。この百万円を患者さんの分析に使う一万円にしていきますと、わずか百人の患者の微量分析しかできないということになって終わってしまうということになります。そういたしますと、このような病気がわかったといたしましても、患者を治療する費用というものが、大体例をあげますと、燐中毒の場合に一日千六百円、それからベーチェット病の場合平均一日千円かかりておりますから、大体月々四、五万円の給付というものが、やはりこの保険で非常に出にくいんじゃないか。またわれわれがこれを出しましても削られてしまうことが種々ございます。そういうことから、やはりこういうような新しい疾病がこれからたくさん出てまいります。いま外国で問題になり始めましたのは、弗素と臭素と砒素とマンガンと鉛というのが非常にいま騒がれ始めてきておりますが、やがて日本にもこういうものが出てくる可能性があるものに対しても、非常に弾力的にこの医療費の支出というものをやっていただきたいと私は考えております。
 それから、毎日この無診患者というものがどのぐらいいるかという御質問がございましたが、大体、大病院におきましては十分の一ぐらいがそうじゃないかと思います。それから、一般の町で、まあ私も開業医のむすこなものですから、町におりますと、大体五分の一ぐらいはそういうような患者が含まれる可能性がございます。こういう者に対してじゃ、どういう態度をとったらよいかということでございますが、外国、たとえばスウェーデンの例では、必ず患者が前のお医者さんの紹介状を持参してまいります。それがないと次の医者は絶対に見ない。しかも窓口がございまして、予診をとる段階でこれをチェックいたしまして、問診料を取られて返すということを先ほど申し上げましたが、そういうふうにいたしまして、だんだん国民の自覚を上げていくということしか方法がないのではないかと私現在考えております。
 それから、じゃあ、こういうような病気をどうやって発見するかということでございますが、やはりこれは地区検診というものを非常に高いレベルで行なう必要があると思います。従来の地区検診といいますとおもに公衆衛生サイドの先生方が中心になってやられている検診が多うございますが、実際にすぐれた臨床医家がそれに携わっている例がきわめて少ない。そういたしますと臨床で実際に患者を見ている医師があまり参加がなくそういうことが行なわれる場合には得てして誤りもおかしやすいということを追加させていただきたいと思います。
 以上でございます。
#41
○参考人(川上和吉君) 短い時間で説明をいたしましたので、どうも説明不十分で、御指摘を受けたようでありますが、保険料の引き上げか、特別保険料かどっちか一つをとるべきだということのように、確かにそのとおり申し上げました。それは結局その言い方はあまり財政対策中心じゃないかということ、これもそのとおりだと思います。大体議論しておるのは財政対策なんでございますから、とにかく負担を上げることを私も含めて皆さん方どなたも喜ばれる人はないと思います。ないと思いますが、しかし制度全体を救うために、またそれじゃ制度のほうが大事か、被保険者より制度が大事かという議論になるかもしれませんが、これは制度の崩壊することは被保険者のためにも迷惑になりますから、一体としての意味で制度の崩壊を救うためにはある程度の負担もしようがない、そうすると、ある程度の負担ということはこれは判断の問題になるかもしれませんが、ある程度の負担がやむを得ぬとすればその中でどちらをおとりになるかということを申し上げたので、その意味で御理解を願いたいと思います。そのうちでどちらかということになりますればこれは見解の相違かもしれません。むしろ皆さん方の政治的判断の問題になるかもしれません。かりに政治的判断――ただ私の申し上げたのは、両方あるうちで特別保険料にもこういう一つの考えられる点があるということを申し上げただけで、判断はむしろ先生方の問題になると思います。先生方は判断の際の問題になると思いますが、しかし特別保険料をやめて、それで保険料の引き上げもその範囲だけでやめておくならけっこうなんですが、特別保険料をやめてそれだけまた保険料の引き上げをやらなければならぬということになると、これはやっぱり選択の問題になるという意味で申し上げたつもりであります。御了解いただきたいと思います。
#42
○委員長(中村英男君) 小平委員の先ほどの質問に対する古村参考人からまず御答弁を願います。
#43
○参考人(古村敏章君) 御質問の要旨は特別保険料は健康保険組合においては任意であるが、政府管掌のほうは一〇%かかる、それに対する問題ではないかと思いますが、さように考えてよろしゅうございますか。
#44
○小平芳平君 そうじゃないんですがね。
#45
○参考人(古村敏章君) もう一度ひとつ……。
#46
○委員長(中村英男君) 速記とめて。
  〔速記中止〕
#47
○委員長(中村英男君) 速記を起こして。
#48
○参考人(古村敏章君) それは十人未満の従業員を持っている工場と、それから、それに従業している従業員というものが五二%くらいあると思います。したがって、この政府管掌の健康保険というものからこれが抜け出ていって組合を組織するということはほとんどできないことだと思います。したがって、いま申されるような退職された方が健康保険を政府管掌のほうへお移りになるということもこれもあり得ると思いますが、両審議会が答申されたような組合方式を推奨するというような場合でも、これはなかなか政治問題としてむずかしい問題でございまして、私のごときいなかの者としてはなかなか判断がしにくいと思いますので、非常に御質問が無理だと思います。(笑声)
#49
○高田浩運君 川上さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど来特別保険料でいくか、料率の引き上げでいくか選択の問題である、こういう話があったわけでございますが、実際の数字をある程度考えてみますと、特別保険料の基礎となるボーナスというものを考えてみた場合に、月給五万円程度の者のボーナスの支給率というのは大体三カ月程度が中心になるし、月給十万、あるいは二十万、すなわち高い給与をもらっている人のボーナスの支給率は四カ月、あるいは五カ月、上になるほどいわば高くなっているわけでございます。したがって、ボーナスを中心とする特別保険料を取るということは高額というか、わりあいに高い給与をもらっている方に対しては負担が相当重にくなる、低い給与の人についてはそう負担がかさばらない、こういうような内容になるんじゃないだろうかと一応考えられます。一方、保険料率は、これはべたに何%アップということになるわけですから、べたに高い者にも低い者にもかかってくるわけでございます。そういたしますというと、数字はべたでございますけれども、負担感からすると給与の低い者にやはり負担感が非常に高くなる、こういうようなことがあるんじゃないだろうか。そういたしますというと、やはり保険料率の一本やりでそれを高く上げていくよりも、ボーナスを中心とした特別保険料を加味していくほうがやはり給与の低い者に有利で、高い者に負担が多くなっているという意味において負担の合理化と申しますか、そういったことが期せられるんじゃないだろうかと、こういうふうに思います。それらの点を踏まえて実際に健康保険組合の理事長として健康保険組合の運営に当たっておられる立場で、その辺の問題をどう考えられるか、もう一ぺんひとつ伺わしていただきたいと思います。
 それから先ほど肥後さんへの質問に関連をして伺いたいと思っておりましたが、渡辺さんにちょっと伺わしていただきたいと思いますが、先ほど医学、医術の進歩に伴いまして医療費がだんだん高くなる。そうすると保険中心主義ではまかなえないのではないか、こういうようなお話があったように記憶しておりますが、これはさらに突っ込んで考えれば、先ほどおあげになりました老人とか、幼児とか、こういう特殊な者に対しては公費の負担をもっとふやすべきじゃないか、公費でまかなうべきじゃないか、その範囲をもっと広げるべきじゃないか、こういう趣旨なのか、そういう趣旨にとってよろしいのか、それとも、現在社会保険という形で運営をしておりますが、その社会保険という形で運営しておる、そのことについて消極的、あるいは否定する方向でのお考えに基づくものであるか、それをひとつ聞かしていただきたい。
#50
○参考人(川上和吉君) 高田さんから保険料と特別保険料の問題に関連をしての御質問でありますが、特別保険料の一つの考え方というのが高田先生お述べになりましたように、賞与率は大体において高額の所得者のほうが賞与率も多い。したがって特別保険料によって高い所得者に高い負担をという何が生かされるのじゃないかということ、私もそういう点に触れて申し上げたつもりであったのでありまするが、そういう一方において、保険料であればべただということ、お話、そういう考え方はできると思います。そこで、ただそれをどう判断するかは皆さん方の問題で、私ども原案者ではありませんので、そこまで立ち入って申し上げるのはと思って、私としてはその程度に申し上げたわけであります。それじゃ健保組合を運営している一健康保険組合の理事長としてどう考えるかという御質問でありますが、健康保険組合はその点、政府管掌と立ち方が違いまして、現在の制度でも保険料の負担割合、事業主との負担割合にしましても、それから保険料率にいたしましても、これは健保組合が自主的にきめるたてまえになっております。自主的に政府管掌の現在の千分の七十よりも高いところで千分の八十でやっておる組合もございます。そういうふうに保険料については、そういう負担については健保組合は自主的にきめるというたてまえでございますので、今回の特別保険料についても現在出ておりまする案は自主的にきめさしていただけるような仕組みになっております。それは当然であり、いままでの理屈から申しましても当然であり、さようなことにわれわれ理解をいたしております。したがいまして健保理事長としてどう考えるかということになれば、自主的の範囲内においてちょうど皆さん方が政府管掌健康保険について高度の判断をされるように、私ども健康保健組合については高度とは申しませんが、健康保険組合なりの判断をしてやっていくべきである、かように考えております。
#51
○参考人(渡辺素良君) 先ほど冒頭の私の意見は、現状の医療の立場から見て、いわゆる政管健保の財政対策ということだけでは真の財政対策にはならない、こういう批判点を中心に申し上げまして、ではどうすべきかという点は非常に省略をいたしましたので、いまのような御質問を受けたというふうに思います。いま御質問いただきました、要するに、医学医療の進歩等に伴う医療費の高騰を一体どこが受け持つのか、こういう問題でございますが、私はその医学医療の進歩に伴ういわゆる設備器械等の問題と、それから医療従事者の大幅な増員、待遇改善、こういうふうな部分については、私的医療機関を含めて大幅なやはり公費の負担を行なっていくべきではないかというふうに考えております。
 そこで、保険中心主義といいますが、すべてを保険に帰して、そうして、その保険に政府管掌健保なら政府管掌健保に対して一定率の補助をする、それで足りなければさらに上げていくということも一つの考え方だと思いますし、その方向もとらなければいけないと思いますが、同時に、医療自体に対する公費負担という考えを行なわないと社会保険の診療報酬だけですべての医療機関がまかなっていけるという制度をとりましても、自由競争のいまの日本の医療機関の中ではどうしても偏在という問題も起きてくるし、そうして僻地の、赤字経営であろうともどうしても医療を保障しなければならないというところには医療機関がなくなってしまう。
 それから国公立の医療機関も、そういうところは赤字を理由にだんだん縮小していくといういまの傾向から思いますと、やはり医療そのものに対する公費負担といいますか、そういうことが必要になってくるのではないだろうか。そのことは医療従事者の公費による養成の問題を含めて、人件費、設備費の補助も含めて私的医療機関に対する補助が考えられる必要があるんじゃないか。その意味で保険主義を、保険の制度を否定するものではないという点をお答えいたしておきたいと思います。
#52
○小笠原貞子君 委員長、ちょっと……
#53
○委員長(中村英男君) まだありますか、――もう時間だから……
#54
○小笠原貞子君 日下部さんにちょっと……
#55
○委員長(中村英男君) 日下部さんに質問したいのですか。
#56
○小笠原貞子君 ええ、――お手間をかけるからそれじゃいいです。あとで、また……私がいなかったときだったので、私聞いていなかったのです、肥後さんだけは時間の御都合を聞いていたんですが……。
#57
○委員長(中村英男君) 五分か十分……
#58
○参考人(日下部禧代子君) けっこうです。
#59
○委員長(中村英男君) それじゃ、どうぞ。小笠原君。
#60
○小笠原貞子君 私、そのことをちょうど中座していて伺わなかったものですから失礼いたしました。
 先ほどから伺いまして、日本でもいま総理府の調査でも六人に一人いらいらというような状態が出ているというのがございまして、それで日下部さんも先ほどのお話でさぞかしいらいらなさっていらっしゃるだろうと思ってたいへん共感いたしました。時間がございませんから、端的にお伺いしたいのですけれども、お年寄りのほうは先ほどちょっと伺いましたけれども、乳幼児に対してのサービスだとかそれから妊産婦でございますね。妊産婦なんかは私たち婦人の立場で非常にいまこの委員会でも問題にしておりますので、そういう面に対してもどういうようなサービスがされているかということをちょっと伺わせていただきたいと、そう思ったわけなんでございます。
#61
○参考人(日下部禧代子君) いま私、こまかいあれを持ってきておりませんけれども、乳幼児の場合、まず一応ソーシャル・セキュリティー、社会保障の点から申しますと、まず妊産婦の場合にはマターニティー・アローアンスというものがありますが、その前にマターニティー・グラントという一時金がございます。それが現在では二十五ポンドだったと思います。それはまだ日本にないと思いますが、それが一律に全部妊産婦に与えられるお金でございます。それからその次に、マターニティー・アローアンスというのがあって、私はいま、こまかい妊産婦のあれを持ってきていないのですけれども、ちょっとお待ちください。
 その前にもっと数字であれなんですけれども、ウエルフェアミルクというのがありまして、福祉ミルクというんでしょうか、それは妊産婦とそれから子供、学齢期に入るまでの子供は全部、それからまた学齢期に達してもそれは無料という意味です。全部無料で、その上に学齢期に達した者の場合に、やはりそれはちょっと収入のあれでいろいろこまかい段階がございますけれども、無料のものとそれから一応有料――それは非常にウィルソン内閣のころから問題になっておりました給食のミルクのことで、いまもって解決がついておりませんけれども――原則としては妊産婦とそれから幼児には無料です。ミルクというのはドライと牛乳と両方でございます。それからもう一つ、妊産婦とそれから乳幼児に原則的に無料で給付されているものがビタミン剤、それから肝油といったもの、どういう形のものか私実際に見ませんでしたけれども、そういったものは全く原則として無料。どういう場所でそれが配付されておりますかといいますと、先ほど申しましたようなセンターというものがありまして、そこは老人だけのセンターではなくて、すべて乳幼児から若いおかあさまたち、そして父親、母親また老人そしておじいさん、おばあさんと、人間一生にわたってのセンター、一生の全部を含めました人たちが出かけることのできるセンターというものが各地区に、プライベートなものとそれから公的なものというふうなものがありまして、そのプライベートなほうでもやはりお金というものは、ほとんど経費というものは地方自治体から参ります。しかし経営内容に関しては絶対に口を出さないということが原則でございまして、お金だけは出してくれるのですけれども、あとの経営というものは全くそこの自主的なものに、プライベートなものにまかされております。そういった形で現物給付というものは大体妊産婦と乳幼児というものはそういうもので、そのほかに現金給付というものが、先ほど申しましたようなマターニティー・グラントとかマターニティー・アローアンスというようなもの、それからもっと子供になりますと、ファミリー・アローアンス、日本では児童手当と申しますか、それが第二子からございます。今度その第二子からではたいへんに不十分だということで、第一子を含めた家族手当みたいなもの、児童手当みたいなものが必要だということになりまして、昨年の八月からFISというふうな形でやられて、新しい社会保障制度というものがまた発足いたしました。その場合に第一子も全部含めるわけでございます。そして給付額というものも相当に上がってまいりました。ですから、いままで第二子からしがなかった児童手当というものが第一子も含めてすべて子供に与えられるというふうな形で、非常に適用範囲が広くなったということで注目されている制度でございます。一応それは非常に私さっと表面的に申し上げましたが、額を申し上げる資料をいまちょっとさがしておりまして、不正確なことを申し上げてもあれだと思いますけれども、一応アウトラインといたしましてはそういうふうなことが各地域で、あちらこちらにうろうろしなくてもいいように非常に身近なところにそういった相談に行けるところがございまして、必ず週一回とか一カ月に何べんというふうな形で、その地区にありますセンターにお医者さんが出張していらっしゃいまして、看護婦さんと一緒に来てくれて、そこにおかあさまは若い母親の会というのがセンターの中にはございまして、乳幼児を持ったおかあさまたちが連れてくるわけです。そこではやはりボランティアのおかあさまたちが子供たちを見てあげるといったそういうようなものがすべていろいろと重なり合って、一つだけではない形でもって、おかあさまたちと乳幼児というふうな両方の面、おじいさん、おばあさんが見る場合もありますし、そういう場合にはシニアクラブ、老人クラブというものが同じ日に開かれたりなんかいたします。そういった場合の組み合わせというものは非常によくできていると思いました。もちろん不足分というものはございますけれども、一応日本のいろいろな保育所とかそれから乳幼児に関する、それから妊産婦に関する社会保障というものを伺いまして比較した場合には、やはりそこは相当な差があるような気がいたしました。
 何かたいへんに超特急列車でしゃべってしまいましてすみませんでした。
#62
○委員長(中村英男君) 日下部参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
 ほかの参考人に対する御質問のほうはどうですか。
#63
○小笠原貞子君 それでは渡辺参考人とそれからあと川上参考人にもお伺いしたいと思うわけなんですけれども、たいへん先ほどからいろいろお話を伺っておりまして日本の医療制度というのがおくれておりますし、それからまた保険料がちょっと上がったからたいしたことはないじゃないかというふうな考え方もあるいはできるかと思います。しかし、実際病気になって、そして入院をするということになりますと、先ほど渡辺参考人の言われたように、日赤でさえも差額ベッドが大きな部分を占めているというように私なども経験いたしました。安いところで一日五千円でございます。高いところへ行きますと一日二万五千円という差額ベッドでございます。いろいろ看護婦さんの数も足りません。どうしても基準看護だといっても付き添いの人を頼まなければならなくなってしまいます。東京で資格のない方で一日二千七百五十円でございます。資格のある方だと三千五百五十円でございます。そういたしますと一人の病人をかかえますとちょっとした額では済まなくなってくるわけなんですね。そうしますと、老人医療が無料になったとか、まあ保険で本人がただだというようなことになっても、それはもうたいへんな額になって、難病、奇病というのではないけれども、金の切れ目が命の切れ目につながるというようなのがいまの日本の現状なわけでございます。そういうことから考えて、根本的な医療対策、こういうような非常に直接の医療以外にかかる費用というようなものも考えられて一体こういう問題をどう考えていったらいいのかという点について、渡辺参考人、そうして川上参考人から御意見を伺いたいと思います。
#64
○参考人(渡辺素良君) 小笠原先生から御質問のありました、まあ付き添いを一つの例にしながら御質問もありましたし、お答えをいたしますと、いまの日本の医療従事者の数を規定をしています医療法施行規則が非常に古い時代につくられたものであることが一つ。その後、医学・医療の進歩に伴って、当然変化をしていなければならない。それからもう一つ。つくられたとき自体が、算出根拠が非常にあやふやである。当時の実働看護婦数と全国のベッド数を一応念頭に置いて割り算をしてほぼ算出をした。これも、国会で厚生省から答弁を、十年くらい前ですか、なさっているというふうに記憶をいたしております。そういう根拠のない数字でつくられ、そうしてその後の医学医療の進歩に即応していないわけですから、これに対応してどうするかということになりますと、やはり必要な医療従事者の各職種別の行なうべき医療の中身、これは質と量を含めまして、その中身を考える。そうして一定の医療労働者についての労働条件をそこの上に考えて、そうして算出をし直していく。そうして医療についての全職種についてそういう作業が行なわれる必要があるのではないかと思っています。しかし、そういう作業は――作業といいますか、そういうことによってはじき出されたこの医療従事者の数というのは、おそらく国際水準ぐらいにはなると思うのでありますが、とうていいまの社会保険の医療費ではまかなっていけない。こういうことは自明の理ではないかと思うのでありますし、よく言われておりますように、保険財政に従属したこの医療内容、こういうものを根本的に改めるという発想の転換が必要ではないだろうかというふうに思っているところでございます。
 なお、この付き添い問題については、保険局のほうではちゃんとした通牒を出しておられまして、基準看護料を取るところでは付き添いの方が看護らしい看護という行為をしてもらっておってはいかぬのだ、家族が心配だからつくのはよろしい、こういうたてまえになっておるわけでございますが、その家族がなかなかつけないからということで、実質的にはいま御指摘の職業的な付き添いの方々がどこの病院でもたくさんいる。年に一ぺん都道府県のほうから監査が見えることになりますと、あわててその人たちの荷物も含めて隠してしまう。そういうことで監査を通るというのが、これはもう医療従事者は全部知りきっている事実の問題でございます。ついせんだっても、九州のある国立病院で付き添い料の負担がたいへんだということで、総理大臣に手紙が行きまして、厚生省がとられましたのは、こういう手紙が来た、したがって何とか付き添いなしで済ませるような看護をやれ、こういう指令が来たわけですけれども、それはとうていできる相談でないわけでして、そこで現地でのいろいろな問題も起きまして、結局、臨時職員を二人だけその病棟に配置をするということで、とりあえずこれは切り抜けたというようなことがございましたけれども、総理大臣に手紙を出せばそういうことができるということではやはりおかしいと思いますし、全部のやっぱり国公立の医療機関なり、また、私的医療機関についての付き添い料――有料付き添い、職業付き添いを置いている問題については、これははっきりけじめをつけなければならぬ問題であるというふうに考えております。
#65
○参考人(川上和吉君) ただいま御質問のありました医療機関で、現在の医療のあり方のうちで、ことにいわゆる差額ベッドの問題、それから付き添い看護料の問題、これは確かに現在の医療あるいは健康保険医療の一つの問題点と申しますか、むしろ、欠陥とも申してもよろしい点だと存じます。私ども、あまり古いことも知りませんが、沿革的に言えば、一つの整理のしかたとして、沿革的にはわからないこともありません。ありませんが、しかし、現在のように、だんだん差額ベッドの範囲が広まってきたり、それからいわゆる付き添い――そのいわゆる基準看護じゃ足りなくなってくるということになりますれば、御指摘の点はまさに一つの欠陥だろうと思います。だから、そういう点も、先ほど来、いろいろ皆さん方からお述べになったように、保険制度、医療制度全般として考えなければなりませんが、その前提として、やはり、政管健保の赤字問題を片づけておかぬと、まず大きい問題を考える基礎ができないじゃないか。そういう意味で現在、今度の法律案が先決じゃないかと私どもは申し上げるので、決して御指摘の点を問うものじゃありませんが、御指摘の点を私どもも大事な問題、それに入る前提をつくられる必要があるのじゃないか、かように考えます。
 それからちょっとついでに、先ほど高田先生の御質問にお答えしましたのがちょっと不十分だったので、むろん高田先生十分御承知のことと思いますが、特別保険料に先生の言われた妙味のほかに、例の五万円以下のものは特別保険料を掛けないということとか、これも一つの妙味だろうと思いますし、その辺ずいぶん考えたもんだなあという感じもいたします。それから健保組合としては、これはある意味で弾力性をそれだけつけ加えていただいたんですから、あとは自動的にやりなさい。弾力性をつけ加えていただいた意味でこれは歓迎してもよろしい問題だと思います。ちょっとつけ加えておきます。
#66
○大橋和孝君 私、ごく簡単に一問だけ聞かしていただきたい。
 先ほど来渡辺参考人のお話で、いろいろ医療の供給の面で、あるいはまた医療機関なり、あるいはそうした体制の中に非常に矛盾があって、やはり有病率やなんかでいろいろな点を指摘されましたが、その中でも、私は特に医療従事者、従業員の待遇の問題なんというのは非常にあるわけで、特にこの間うちから公的病院といわれるところで、非常な過重のために、何と申しますか、従業員の人たちが非常にその矛盾を指摘をして、それでトラブルが起きておるわけでありますが、これは非常にあちらこちらに多発をいたしております。日赤やなんかでも、非常に過重なために、あるいはまた非常に何と申しますか、一方では特類の看護の基準を受けながら付き添いをつけたり、あるいはまたそういう関係上非常に看護婦さんの業務がオーバーになっておる。当直、深夜勤務なんかも非常に多いということで、非常にトラブルが多いわけでありますが、私はまた一面からいえば、私的医療機関ではこのごろ病院の経営ができないので、病院を閉鎖しなければならぬというものが非常に出てきておるわけです。これは当然公的病院が赤字で、独立採算制に追い込まれて非常な問題があるのと同じように、私的の医療機関でもそういうことはあり得ると思うのです。一部にはもうけているといわれるところもあるでありましょうが、全面的にそういうのが非常に最近ふえてきて、私の陳情を受けておるところでは、非常に何と申しますか、十分な賃金も払えないで、なかなかいまのような状態では経営困難だ、やめようじゃないかということも相談を受けておるわけですが、そういうことから考えまして、やはり先ほどからのお話を聞いて、こういうような従業員の待遇あるいは養成、こういうことを含めまして、もっと国でやらなければいけない。こういうような話を聞いたのですが、特に私もそういう点では同感をいたしておるところでございまして、特に先ほどお話がありまして、それならこれを一体どういうふうにするかということに対しては従業員の増員から、あるいはまたそういうような医学医療の進歩から、こういったものを含めながら、あるいはまた医療の中身を充実していくためにも、やはり公費の負担を入れるべきだという御意見を聞いたのでありますが、私もこれは非常に興味深いことだと思っております。そういう点から考えられまして、やはりたくさんの公的な医療機関を見ておられる、またそういう従業員のたくさん相談を受けておられる立場では、やはり私はここらでひとつあなた方の立場からこれをどういうふうにしていけば一番いいのか、やはりこれは公費の負担といっておりますけれども、もう少しどの程度とどの程度のものは公費でやってもらいたいというものがもっとたくさんあるんじゃないかというふうに思います。たとえば公的病院でいろんな最終的な重い病気を負担する場合には、まだまだいまでは何といいますか、独算制のために入れるべき器具も十分に入れられないというものもあるだろうと思うんです。最近、何と申しますか、エレクトロニクスとかいろいろこう考えられて、医療の面にそういうものがたくさん、外国では、アメリカあたりでは入れられているわけでありますが、これも早晩日本にはどんどん入ってくるわけだと思います。これも一つの大きな赤字にはつながることだと将来思いますけれども、そういうことをやる上において私は一番信頼を得て、最後の健康なり病気なりというものに対して責任を持つ公的病院にとってはまだまだ私はいろんなものが入れられなければならぬと思うんです。そういうことはやはり独算制のためにかなり押えられているわけですから、そういうことを配慮する意味においては私はまだいろんな場面でこの公費負担というものを入れなきゃならぬのじゃないかというふうに思いますが、その医療をやっておられる、ことにそういう責任を持つ医療従業員の立場から、もっとこれはそういうようなものに対してどんなふうな御意見があるかを伺っておきたいと思います。
 それから川上参考人なり、あるいはまた古村さんにちょっと聞きたいと思いますが、やはり組合健保の中でも、私はいまわりあい黒字だとか、行政努力がされているとか言われますけれども、私は真にそういうふうなことのあり方を考えてみますと、もっともっとやるべきことはたくさんあるだろうと思うんですね、いま言ういわゆる医学技術の進歩を入れるためには。なかなかそれがうまくまだ十分できていない面もたくさんあるだろうと思う。あるいはまた、そこに従事している人たちの待遇も、私はいまの場合だけで安心はできないような状態じゃないかと思う。いろいろな意味から申しますと、私はこの今度の赤字対策でこれをやってもらったことは非常にいいという御意見もありますけれども、私はもっともっとこういう問題では赤字対策は解決をしていない。次々にその医療費というものは当然上がってくるんじゃないかと。そういうふうないまの医学の進歩、あるいはまた機械の進歩、そういうものを入れていかなきゃならぬという立場。あるいはまた従業員なんかの立場を考えていきますと、私は組合健保といえども、政管健保といえども多少の差はありますけれども、終局的な目的は私はやっぱりこれは経済的にもそういうことになってくるんじゃないかと思うんですね。そういうことの点については、いまのところの状態では非常に不満な、十分に解明できない点ができてくるとするならば、将来はどうすると、お考えになっているのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
 それから石川さんにちょっとお話を聞きたいと思いますが、先ほどからお話を承っておりますと、いろいろ制度審議会やなんかの問題から、あるいはまたそういうふうな面で非常にいまの医療の問題を、ただ単にその経済とか、赤字対策というふうな面だけじゃなしに、もっといろんな高いところからやっていかないと解決にならぬじゃないかというような御意見を伺ったわけです。私もそういうふうに思うわけなんですが、そういうことに対してもう少し具体的に、こういうふうにしたらどうだという御意見が御開陳願えるならばもう一つ御意見を承りたいと、こういうふうに思うわけです。よろしくひとつ。
#67
○参考人(渡辺素良君) 公的医療機関と私的医療機関と分けてお答えをいたしたいと思いますが、日本の医療機関の中で診療収入を取らないで無料の医療を行なっていますのが国立の十三のライ療養所ですか、これは診療収入がないわけですし、もう社会保障のそのものだと言えるわけですが、
  〔委員長退席、理事高田浩運君着席〕
しかし、その中でも非常に不十分な医療が行なわれているというところで、私たちは全額無料の医療保障をしてもやはり医療内容をひとつ十分考えていかないことにはやはりほんとうの医療と言えないのではないかという立場で、まあハンセン氏病療養所の諸問題――非常にたくさんありますけれども、時間の関係でごく抽象的にひとつ申し上げておきたいと思います。
 それから、残る国立病院、療養所が二百数十カ所ございますけれども、これはいわゆる一般会計からはずされて特別会計のもとでの運営が行なわれています。特別会計でまあ将来は独立採算を目ざすということであると思いますけれども、まあそれはいままでの一定の慣例もあり、抵抗もあったりしますので、独立採算的運営ということは言えると思いますけれども、現実には国立病院、療養所合わせますと、昭和四十七年度のこの予算の中でも、まあ当初予算の中で診療収入に対して三一%程度の繰り入れが予算化をされている。これはもちろん設備費を含んだ、整備費を含んだ金額ですけれども、そういうところでやはり一定の社会保障的な役割りを果たしていると思いますし、それから地方自治体立病院が約一千病院近くあるのだと思いますが、その病院についても診療収入の一九%程度の繰り入れがいままでの決算の中では行なわれているということで、まあ相当の繰り入れを結果としては行なっているという、そういう病院が日本の百五十病院ぐらいは、大学の付属病院を含めてあるということは言えると思います。ただ、それらの病院で、その無料のハンセン氏病院でも医療が不十分だと申し上げましたと同じように、極力やはり増収をし、支出を減していくという、国からの繰り入れを極力圧縮をしようという方針がとられていますし、そこへ国立病院、療養所の場合には、国家公務員の総定員法というものとの関連で年にこの定数を減さなければならない、こういう一方で夜勤制限その他医療充実のための増員を行ないながら一方では相当数の職員を減員をしていくというこういう矛盾が起き、そういうことから、この現場関係の下請に移行していくという、医療のすべての問題について直接責任を持たないという運営がその中でまかり通ろうとしているというふうな問題があると思います。しかし、まあそういう部分があるにせよ、相当の看護婦等についても二千数百名の夜勤制限のための増員が行なわれまして、まあ二万人をこえる看護婦ということになりましたけれども、しかし、まだ夜勤制限のための増員の効果というのが非常に少ない。で、これは厚生省の調査と私たちの調査と食い違うのでございますけれども、やはり年間、月に十日以上の夜勤というのは相当数にあがっている。それと労働条件が過酷なことがあって国立病院、療養所の労働組合の調査では、大体妊娠を三人いたしますと一人は流産をする。そうして残る二人のうち一人が異常産である。こういうことが通例的にありまして、
  〔理事高田浩運君退席、委員長着席〕
特に忙しい総合病院等では、あの病棟でも流産をした、この病棟でも流産をした、流産競争のようなことが現に起きていたりしますし、そういう労働条件というのは当然患者さんの医療というものにはね返っていく。で、まあ表に出ない医療事故というのが頻発をしているということを申し上げざるを得ない状態ではないかというふうに思っております。ただ問題は、そういういろいろの問題を含みながらこの国公立医療機関というのがあるわけですが、これが全体の医療機関が伸びる中であまり伸ばされないという、公約医療機関のベッド規制を受けて相対的に比率が縮めさせられている。したがって、私的医療機関が施設数で日本では八割を占めるに至っているわけですね。私的医療機関になりますと、これはもう全く独立採算制でございますので、もうここの中の運営はやはりかせげかせげと、極力支出を押えるということに非常にこの重点が置かれている。ですから、その働く者の立場で、たとえば最近の検査は非常に膨大になってくるわけですが、これはそれぞれの病院の経営方針が、いままでは投薬にだいぶ妙味があったけれども、今回、特に、この二月以降は妙味が薄くなってきた。これで、これからまあ妙味といいますか利潤があがるのは検査であるということで、多くの医療機関では医者の診察を行なう前に看護婦が検査伝票にマルをつけて一連の検査は全部してしまう。本来医療のあり方からいいますと、医師が診察をして一定の疾病についての疑いを持って、その疑いを晴らすなり否定をしていくということで検査を行なっていくのだと思いますけれども、初めからもう健康診断的にといいますか、もう一連の検査を全部やるということがいま日本の医療機関の中では、公的な医療機関も含めて通例化いたしていますし、レントゲンの撮影にしても、本来なら一枚で済むのではないかというのをやはり数枚とるというふうなこともこれは否定できない事実の問題としてあると思います。この辺が乱診乱療といわれる部分だと思いますが、それを増員なしで背負わされている医療従事者が、あらゆるパートにたくさんいるわけでございまして、その辺では、検査関係部門のオーバータイムの時間等を見ていきますと、びっくりするぐらいの時間になっている。そういうふうなことなどが職場の中に充満をしている。こまかく申し上げれば切りがありませんのではしょりますけれども、したがって、こういうものに対して一体どういうふうにやっていけばいいのかという点につきましては、やはりいまの日本の医療機関の中における公的医療機関の比率は絶対的に少ないというふうに思います。したがって、公的医療機関をもっと増設をしてその比率を高める。それから、同時に公的医療機関については夜間診療、休日診療、救急医療、こういうものについてはぜひ義務化をして、もちろんこれについては増員が必要だと思いますけれども、国民のいわゆる公的な医療、まあ医療要求というものはすべて公的だと思いますけれども、公的医療機関は、せめて公的医療機関はそういうものに絶対に応ずる体制をとる必要があるのじゃないか。また、どこの医療機関でもいわれますが、大体八時間半か九時間の間に患者さんに三食たべさせるわけで、夏の日でも大体四時半ごろには晩めしを出してしまう。そして、働いている本人は帰って、まだ暑いなあというようなことを言って二、三時間して晩めしを食うと、こういうふうな状態でありますが、やはりこういう点もちゃんと普通の生活で、涼しくならなければめしが食えぬ人には、そういうことが可能なようなやはり体制というものも必要だと思いますし、そういうことをまず公的医療機関を中心にして、独立採算的な運営をやめて、まあそれは十分な、と口では言いますけれども、とにかくそういうことができるような予算を国及び地方自治体が組んでもらいたい。これが第一点でございます。
 そして、引き続き私的医療機関の問題になりますけれども、私的医療機関といえども医療というのは公的な性格を持っていますので、たとえば私学に補助が出されているということを考えてみましても、医療について補助が出されるのは当然であろうというふうに思いますし、その補助はまず建築とか設備とか人件費とかそういう部分にひとつ集中をして、まあそれ、全額を補助してもらえば、そうすると社会保険の医療費にかかってくる部分はぐっと薄くなると思いますけれども、そのかね合いをどこに置くかは別として、やはり設備、人件費等のいわゆる設備費と運営費について一定の補助が必要であろうというふうに思います。
 そして、その場合に、医療機関だけは楽になったけれども、ということではいけませんので、先ほどから御指摘なり御質問もありました差額徴収の禁止、それから付き添いの廃止と、こういうことはやはり条件にして私的医療機関等についてもそういう補助も行なっていく、こういうことが今後の運営について医療機関側として必要だというふうに思いますし、そのことがまたいわゆる医療保険の財政についての問題の解明になるのではないだろうか。
 なお、御質問の中にありましたように、医療従事者の公費による養成、いま看護婦というのはほとんどまあ病院の収入によって養成をされている。若干の国の補助が出るようになりましたけれども、そういう状態ですし、やはり各種の医療従事者について、公費による養成、十分な養成ということもあわせて必要ではないかというふうに思っております。
#68
○参考人(川上和吉君) 大橋先生から、大きいお立場から政府管掌健保だけの問題じゃないのじゃないか、組合健保もぼやぼやしておってはいかぬという意味の御指摘と伺いました、そのとおりであります。医療保険全体についてお話のような大問題を控えております。したがいまして、健保組合としても、むろんお話のような点を十分考えていかなければならぬと思います。それに対して、一体、将来どう考えるのかというお尋ねでありますが、これははなはだ大きい問題で、ここで私個人の意見を述べてもしかたのないことかもしれませんし、大体個人意見や、――そう言って私の意見を述べるのは恐縮ですが、個人意見や団体の意見が多過ぎるので、もう少しみんな何かまとめるように持っていくべきだというような感じがいたしますが、そういう意味で、あまり個人意見をここで述べてもしかたがないことだと思います。ただ、御指摘の点は賛成でありますし、まあ、またよけいなことを言かもしれませんが、そういう点を考える意味からも、当面の問題をまず片づけていただく。それから次に進むような土台、土台までいかぬかもしれませんが、足がかりをつくっていただきたいということが私どもの気持ちであります。
#69
○参考人(石川哲君) 先ほど高いレベルでの診療が必要ではないかということを御質問ございましたのですが、事実、これからの病気の発見には高いレベルが非常に必要だと思います。特に御指摘のようにメディカル・エレクトロニクスが高度に進歩しておりますし、また、ビディオ分析装置も高度に進歩してきております。同時に治療法も非常に進んできております。そういうことをやはり考えてまいりますと、どうしても難病、奇病というものを無料にするということは、これはもう基本的な問題だと。そうして、そういう奇病、難病が出た場合には、すぐ手を打たないといけないのじゃないかと、大体そういうものが騒がれてみんなが研究するようになるころは、大体悲惨な形になって病気の発生というのはとまるのが普通でございますので、そういう点、早くやらなければいけない。そのためには医師及び行政官吏の教育というものが、私は非常に必要ではないかと思います。さらにそういう奇病、難病がふえてくるということは、やはりGNP問題も関係すると思いますので、やはりタックス――税金からとって国費を増すという方法しか私は手がないと思います。こういう状態になってきますと、先ほどイギリスのお話が盛んに出ておりましたですが、イギリスとかスウェーデンのお医者さんの一つの欠点は、やはり非常にサラリーマン化するものですから、患者に対して外見上は丁寧ですが、私は日本人のお医者さんのほうがはるかに丁寧だと思うんです。そういうような点は、私自身の気持ちとしては、外国の非常にうわべだけの問題よりももっと深いものがあるんじゃないかと、そういうことで、この健保法案の問題も非常に大きな問題が控えておりますので、現在の非常に流動的な社会に対応して、ぜひやってきていただきたいと思います。
 さらに最後に、米国式のことについて若干触れますと、米国は御存じのとおり、市立病院に行けばただでございます。そして私的病院に行きますとばく大なお金を取られます。たいがいの患者さんが私的病院にまず入りまして、病気が長引くと必ず市立病院のほうに移っている。パブリックのホスピタルに移っている。そして、悲惨な死に方をするというのが非常に多うございます。そうならないような状態、日本では少なくともそういう状態がないような気がいたしまして、まあ、この際、床屋さんに行く場合にも床屋さんを選ぶということもできますし、レストランに行くのもいいレストランへ入るということもできるわけですから、やはり病院のいい悪いを選ぶという場合に、ある程度個人の負担もやむを得ない場合もあるのじゃないかと思います。
#70
○委員長(中村英男君) これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。どうも御苦労さまでした。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト