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1971/06/06 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 文教委員会 第8号
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1971/06/06 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 文教委員会 第8号

#1
第068回国会 文教委員会 第8号
昭和四十七年六月六日(火曜日)
   午前十時九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         大松 博文君
    理 事
                久保田藤麿君
                楠  正俊君
                宮之原貞光君
                安永 英雄君
    委 員
                金井 元彦君
                志村 愛子君
                内藤誉三郎君
                中村 登美君
                永野 鎮雄君
                濱田 幸雄君
                二木 謙吾君
                秋山 長造君
                片岡 勝治君
                鈴木美枝子君
                内田 善利君
                矢追 秀彦君
                萩原幽香子君
                加藤  進君
       発  議  者  片岡 勝治君
   衆議院議員
       文教委員長代理
       理事       西岡 武夫君
   国務大臣
       文 部 大 臣  高見 三郎君
   政府委員
       文部大臣官房長  井内慶次郎君
       文部省大学学術
       局長       木田  宏君
       文部省社会教育
       局長       今村 武俊君
       文部省管理局長  安嶋  彌君
       文化庁次長    安達 健二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        渡辺  猛君
   説明員
       警察庁刑事局保
       安部防犯少年課
       長        川崎 幸司君
       警察庁警備局参
       事官       丸山  メ君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理科教育振興法の一部を改正する法律案(衆議
 院提出)
○児童生徒急増地域等に係る小学校及び中学校の
 施設の整備に関する特別措置法案(片岡勝治君
 外一名発議)
○私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○教育、文化及び学術に関する調査
 (映画の振興対策に関する件)
 (埋蔵文化財の保護に関する件)
 (国学院大学の別科問題等に関する件)
 (大学の管理運営に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(大松博文君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 理科教育振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院文教委員長代理理事西岡武夫君。
#3
○衆議院議員(西岡武夫君) ただいま議題となりました理科教育振興法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 義務教育諸学校等における理科に関する教育は、去る昭和二十八年に本法が制定されて以来、一段と整備充実し、わが国の科学技術の進展に貢献いたしましたことは、まことに喜ぶべきことであります。しかしながら、今日の社会の著しい発展に対応するためには、従来の理科に関する教育の振興のみでは十分でなく、これにあわせて算数及び数学に関する教育の充実振興をはかることが緊要であると痛感するのであります。したがいまして、政府においても、このことの重要性にかんがみ、さきに、教育課程の改定を行ない、当該教育の内容の改善をはかり、かつ、設備の整備に意を用いているところであります。
 よって、本法により小学校、中学校及び高等学校等における算数及び数学に関する教育の振興をはかり、もって社会に貢献し得る有為な国民の育成に資するため、本法律案を提出いたしました次第であります。
 その内容の第一は、理科教育の定義に新たに算数及び数学に関する教育を加え、当該教育を本法の対象とすることであります。
 第二は、公立または私立の小学校、中学校及び高等学校等における算数及び数学に関する教育のための設備を、本法による国の補助対象にすること、ただし、公立義務教育諸学校における当該教育のための設備で本法による国の補助対象となるものは、義務教育費国庫負担法等により国がその経費を負担する教材以外のもので当該教育のため特に必要なものとすることであります。
 第三は、この法律は、公布の日から施行し、昭和四十七年度分の補助金から適用することであります。
 さて、本法律案は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党の議員諸君の長きにわたる努力の結果でありまして、衆議院文教委員会における起草にあたりましても、これら各党の意見を十分尊重し、慎重な態度で検討を加えました。また、衆議院規則第四十八条の二の規定に従い内閣の意見を徴しましたところ、文部大臣から、政府としては特に異議がない旨の答弁がありました。
 かくて、衆議院におきましては、慎重審議の結果、本法律案は六月二日に全会一致をもって可決いたしました。
 本法律案は各党共同提案による議員立法でありますので、何とぞ、優先的に取り上げて、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいお願い申し上げます。
#4
○委員長(大松博文君) 本法律案に対する質疑は、後日に譲りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(大松博文君) 次に、児童生徒急増地域等に係る小学校及び中学校の施設の整備に関する特別措置法案を議題とし、発議者から趣旨説明を聴取いたします。片岡勝治君。
#6
○片岡勝治君 児童生徒急増地域等に係る小学校及び中学校の施設の整備に関する特別措置法案の提案理由を申し上げます。
 ここ十数年間におけるわが国の高度経済成長政策に伴い、人口の都市集中化が非常な勢いで進んでおります。これを昭和四十五年及び三十五年の国勢調査の比較で見ますと、一平方キロ当たり人口五千人以上の入口集中地区の十年間の増加率は三一・七%に達し、いまや国土のわずか二%の地域に国民の過半数が集中するに至っております。
 また、これらの地区における人口増加数の七〇%は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏に集中するとともに、近年、そのドーナツ化現象の進展により、これら周辺の市町村の人口増加も急速に進んでおります。さらに、札幌、福岡、広島、仙台等の中核都市及び県庁所在地でも人口の増加が目立っております。また、人口急増市町村では、近い将来、社会増に加えて、さらに、第二次ベビーブームの波が押し寄せてくるので、児童生徒の増加の圧力は一段と強まってまいります。
 このような状況のもとで、児童生徒の急増市町村では、義務教育の施設整備に忙殺され、たいへんな努力にもかかわらず、なおかつ、プレハブによる仮校舎や特別教室の普通教室への転用、あるいは屋内運動場を仕切って教室に充てる等により、教室不足を補っているのであります。したがって、このような市町村では、屋内運動場やプール等の整備に困難をきわめる等、他地区に比べて義務教育水準の維持が非常に憂慮されているのであります。このことは、また、自治体財政を大きく圧迫し、一般行政水準を低下させ、住民福祉の上に大きな障害となっております。
 これらの実態を見ましても、現行の国の助成制度下におきまして、人口急増市町村の財政力をもってしては、正常な教育を行なうための施設を確保することは非常に困難な状況にあるといわねばなりません。
 特に、義務教育学校の整備にあたって最も隘路となっていますものは、学校用地の確保であります。幸い、四十六年度において、児童生徒急増市町村の義務教育施設整備に関する特別措置が行なわれることとなり、校地の取得を必要とする場合について国の定額補助制度が発足し、この制度は四十七年度においてやや強化されておりますものの、いまだ当該市町村の要望をとうてい充足するまでに至っておりません。
 以上、児童生徒の急増地域における小学校及び中学校の施設整備の実態にかんがみ、これらの施設整備を一そう充実するため、過疎地域におけるごとく、国が行財政上の特別措置をさらに拡大する法的措置をはかり、もって教育水準の維持向上をはかることが緊急の課題であると考え、ここに本法案を提案した次第であります。
 次に、本法案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一は、本法案は「児童生徒急増地域内にある児童又は生徒を就学させるための小学校及び中学校の施設を緊急に整備する必要があること等にかんがみ、児童生徒急増地域等に係る小学校及び中学校の校舎及び屋内運動場の建築、これらの学校の用に供する土地の取得等に関し必要な特別の措置を定め、もって義務教育の正常な実施を確保すること」を目的としているのであります。
 第二は、児童生徒急増地域の定義を規定したことでありまして、同地域とは「集団的な住宅の建設、宅地の造成に伴う住宅の建設等による児童又は生徒の増加が急激であり、かつ、著しい地域で、政令で指定するもの」といたしております。なお、政令で指定する場合におきましては、一定期間における過去及び将来の児童生徒の増加率等を考慮して行なうべきものと考えております。
 第三は、同地域にかかる小中学校の校舎の新築または増築に要する経費につきましては、現行の義務教育諸学校施設費国庫負担法による国庫負担率を、急増地域に限りこれを一律に三分の二に引き上げたことであります。また、屋内運動場の増築に要する経費につきましても、国庫負担率を三分の二といたしました。
 第四は、同地域の小中学校の校舎または屋内運動場の新増築に要する経費について国庫負担を行なう場合、いわゆる前向き整備の年限を五年に引き上げることとしたことであります。
 第五は、同地域の小中学校の学校用地の取得または整備に要する経費につきまして、政令で定めるところにより、その二分の一を国が補助することとしたことであります。
 第六は、同地域の小中学校の校舎または屋内運動場の新増築に要する経費及び学校用地の取得または整備に要する経費に充てるため、国が政府資金債の確保等必要な資金の貸し付けについて特別の配慮をすべきことを定めたことであります。
 第七は、日本住宅公団が一定規模以上の宅地を造成する場合に、当該地域の児童生徒のために、小中学校の校舎及び屋内運動場等の建設及びそれに必要な土地の整備を日本住宅公団に義務づけたことであります。これは、いわゆる五省協定と同趣旨のものを法定化したものでありますが、公団からの市町村に対する校舎等の建設及び当該用地の引き渡しに伴う費用の支払い期間につきましては、一律二十年以内といたしました。
 第八は、本法案の施行期日を公布の日からとしたことであります。
 第九は、本法案は昭和五十五年三月三十一日までの時限立法としたことであります。
 以上が、本法案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
#7
○委員長(大松博文君) 本法律案に対する質疑は、後日に譲りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(大松博文君) 次に、私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。高見文部大臣。
#9
○国務大臣(高見三郎君) このたび政府から提出いたしました私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 御承知のように、私立学校教職員共済組合は、昭和二十九年一月に、私立学校の教職員の福利厚生をはかる目的のもとに、私立学校教職員共済組合法により設立されたものでありますが、それ以後、本共済組合が行なう給付については、国公立学校の教職員に対する給付の水準と均衡を保つことをたてまえとし、逐次改善が進められ、現在に至っております。
 今回は、私立学校教職員共済組合の実情にかんがみ、長期給付に要する費用に対する国の補助率を引き上げるとともに、昭和四十六年度に引き続き、国公立学校の教職員の年金の額の改定に準じて、私立学校教職員共済組合法の規定による既裁定年金の額の改定等を行なうため、この法律案を提出することといたしたのであります。
 次に、この法律案の概要について申し上げます。
 第一に、私立学校教職員共済組合が行なう長期給付に要する費用に対する国の補助率を、従来の百分の十六から百分の十八に引き上げ、財政の安定に資することといたしております。
 第二に、給付等の算定の基礎となる標準給与の月額の下限を、私立学校の教職員の給与水準の上昇等を勘案して、現行の一万八千円から二万六千円に引き上げることといたしております。
 第三に、私立学校教職員共済組合法の規定に上る既裁定年金の額を、国公立学校の教職員の年金の額の改定に準じて、昭和四十七年十月分以後、さらに一〇・一パーセント増額することといたしております。また、これに伴い、旧私学恩給財団の年金についても、相応の引き上げを行なうこといたしております。
 第四に、これも国公立学校の教職員の場合に準じて、既裁定年金の最低保障額を退職年金及び廃疾年金については現行の九万六千円を十一万四百円に、遺族年金については現行の四万八千円を千万五千二百円にそれぞれ引き上げることといたしております。また、老齢者にかかる最低保障額の特例については、従来七十歳以上の者を対象としておりましたのを六十五歳以上の者を対象とするよう改めるとともに、その額を退職年金及び廃疾年金については現行の十二万円を十三万四千四円円に、遺族年金については現行の六万円を六万七千二百円に引き上げることといたしております。
 なお、この法律の施行日については、他の共済制度の例に準じて、昭和四十七年十月一日といたしておりますが、国の補助率の引き上げについては昭和四十七年四月一日からといたしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
 なお、この法律の施行期日の一部につきましては衆議院において修正が行なわれておりますることを便宜私から申し添えておきます。
#10
○委員長(大松博文君) 本法律案に対する質疑は、後日に譲りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#11
○委員長(大松博文君) 次いで、教育、文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は、順次御発言願います。
#12
○鈴木美枝子君 文部大臣にお伺いいたします。
 私が文教委員会でこの一年、教育文化の貢献を、国家に尽くすというようなこととしてよく聞くのでございますけれども、文化における国家への貢献とはどういうことなんでございましょうか。
#13
○国務大臣(高見三郎君) 私は、芸術、文化というようなものの貢献に国家が関与すべき性質のものではないと思うのでございます。しかし、一国の文化、一国の芸術というものは、その国の民族の歴史と伝統の上に立っておるということも、これはいなみがたい事実であります。日本国家というものが存立いたしておりまする限りは、日本国民として日本の文化というものを基調といたしまして、しかも、その歴史と伝統の上に立って外国の新しい文化も取り入れるでありましょう。そうして、われわれは次代の子供のために新しい文化を創造することが国民全体の責任である、かように考えておるわけであります。
#14
○鈴木美枝子君 最近その言われるところの文化をになう人々の自殺があるわけですけれども、私も存じ上げている川端先生の自殺、あるいは小説家の有馬さんの自殺――自殺未遂でございましたけれども、それから二年くらい前の黒澤さんの自殺未遂、これらの方たちは、いまおっしゃる国家への貢献度、それから未来の子供に対する貢献を持っていると思うのです。こういうすばらしい方たちの自殺についての考え方もひとつここで明らかにしておきたいと思うのですけれども、どう判断なさいますか。
#15
○国務大臣(高見三郎君) ここ一両年、相次ぐ非常に日本の偉大な文化人が自殺をせられ、あるいは自殺未遂をおやりになる、これは私は国家のために非常な大きな損失であると考えておりまするが、御本人の芸術に対するお考えというものがどの辺にあったかということは、これは私ども存じ上げる由のないことであります。川端先生にいたしましても、確かに私の見るところでは御自殺をなさるような気配は毛頭見えませんでした。おなくなりになられます二週間ばかり前に私のところへ手紙をよこされました。その手紙も、国際ペンクラブの問題について非常な意欲をお待ちになっておったのであります。意外と申し上げるよりほかはございません。けれども、なくなられました方でありまするから、どういう御心境でどういうあれを二週間の間にされたかということは、私にも理解がまいりません。ただ日本の文化のために惜しみても余りある尊い生命を失ったものだということを私も切実に感じておる一人であります。
#16
○鈴木美枝子君 自殺自体が私は文化的な行為だとは思わないわけです。文化というのは人間にかかわる問題ですし、また、人間のためにあるのだというふうに私は解釈しておりますので、そういうあり方がある日本の文化的な問題を日本政府の方たちもよくよく考えていただきたいというふうに思うのでございますけれども、いまおっしゃいました国際ペンクラブの大会について日本でやるということになっているわけだそうでございますけれども、これは国としてはお金をどのくらいお出しになるのですか。
#17
○国務大臣(高見三郎君) 実は、二億三千万円ぐらい要るという川端先生のお話でございましたが、予算が成立いたしました後に何とか文化庁から出してくれぬかというお話があったのであります。前でありまするというと何とか考える余地もあったのでございますけれども、実は予算が成立いたしましたあとで何とかしてくれぬかというお話で、私ども非常にやりくりをいたしまして五千万円だけ国が補助金を出すということにいたしまして、残る一億八千万円というのは川端先生が御自身先頭に立って財界から募集をいたしたいと。ついては、その財界から募集するについては、これを国際会議として閣議了解を得てもらって免税措置を講じていただきたいというのが川端先生の御希望でございました。私は、川端先生がなくなられましてからこの免税措置については処置をいたしました。いたしまして、いま阿川先生が中心になられましてこの金の募集にかかっておられるわけであります。実情はそういう実情であって、御承知をいただきたいと存じます。
#18
○鈴木美枝子君 川端先生がそのお金を集めるために、財界の方たちからお金をカンパといいますか、恵んでもらうといいますか、そういう形で歩き回ってということは、たいへんお疲れになったというふうにも私は受け取るのでございます。そして、そのお金を集め、また、五千万円という金を政府から受け取ることができたときに自殺をした、そういうふうにも私は受けとめられるのでございますけれども、まあ川端先生が死んでしまって取り戻すことはできませんけれども、これからの作家の方あるいは映画監督の方たちに、そういう経済的な負担をかけずに、その方でなければできない芸術をつくるといいますか、そういう形に持っていっていただきたいと思うのでございますけれども、それについて今後のことをお伺いしたいと思います。
#19
○国務大臣(高見三郎君) これは国際ペンクラブがおやりになることでありまして、御承知のとおり、文部省では、国際会議に出します補助金というものは大体五百万から六百万であります。今度は、川端先生が畢生の念願でおやりになっていることだからというので、実は通常出しております十倍の補助金を出すことにいたしました。かつてペンクラブをやったことがありますけれども、その場合も民間から金を集めましてやっておるのでありまして、今後は阿川先生を中心としてこの金は私は集まるものだと考えておりますし、まあ金の高でペンクラブの性質がどうなるこうなるという性質のものではございませんけれども、まず一応いける見通しを持っておるわけであります。
#20
○鈴木美枝子君 それでは、その世界ペン大会も日本で成功させるようにどうぞよろしくお願いいたします。
 それからこれは個人を言っておるようでございますけれども、個人の方をここにお出しして全体へ問いかけようとしていることなんですけれども、映画監督の黒沢さんが自殺未遂をなさいましたが、私も長い間映画の仕事をしておりましたのでこのことについてはちょっとわかるような気がするのです。それは、アメリカの作品の「トラトラトラ」という映画で話がつかなくなって自殺未遂をなさったと思われるわけでございますけれども、「トラトラトラ」という映画は、大体、日本に原爆を落とすのはあたりまえだというテーマなんです。宣戦布告なしにハワイを奇襲した、だから原爆を落とすのはあたりまえだという、そういう作品の監督として黒沢さんが参加した場合に、監督としては、編集の立場によって、どうにかして、原爆を落とすのはあたりまえだということではなくて、より友好的な立場をとろうとしたのだと思うのです。ところが、編集権というものを黒沢さんに与えられなかった。映画というのは、編集によって、その考え方や、いま申しましたように原爆を落としたのがあたりまえになるか、原爆を落としたのがあたりまえでなくなるかという、編集といいますとフィルムをつなぐ、そういうことで変わってくるわけです。そのことでアメリカの「トラトラトラ」の製作スタッフは黒沢さんに一言も語らせないで、そうしてやめる状況になった。そして、発表されたところによりますと、黒沢さんはノイローゼだという形で発表されておりました。そういう発表のしかたがほんとうに明らかにならないということは、どういうことなんでしょうか。
#21
○政府委員(安達健二君) 黒沢さんの問題につきましては、私どもも、新聞以外、あるいはその他の報道以外、知る由もございませんし、また、したがいまして、そういういまの先生のおっしゃるような理由がなぜ発表できなかったという理由についても、私ども答えるすべを知らないわけでございます。
#22
○鈴木美枝子君 そういう真実を発表することが私はそれは文化のジャンルだと思うのです。そうして、真実を知ることによって正しく生きていくということを青少年の人に与えるといろこと、また、勇気を持つように与えるということが私は大切なことなんじゃないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか、文部大臣にお伺いいたします。
#23
○国務大臣(高見三郎君) 芸術家の心境というものは、きわめて純粋なものであります。黒沢さんの自殺未遂というものを考えてみますというと、その「トラトラトラ」という映画の編集に対して自分の良心にぴたりこないものがあったという悩みが高じてそういう結果になったのじゃないかと私は推測をいたしております。これが芸術家の生き方としてほんとうの、まあ自殺されなくてまことにけっこうなことでありましたけれども、芸術家の突き詰めた心境というものはそういうものではないだろうかと御同情を申し上げておるわけでございます。少なくとも芸術家が自分の考えを表現いたします場合に、これは命がけの仕事であるという考えに立っておやりになったことであって、それが思うようにいかなかったということはまことに御同情にたえないところであります。しかし、人間としてはまことにりっぱなものの考え方をしておられるという感じがいたすのであります。
#24
○鈴木美枝子君 確かに、文部大臣のおっしゃったその純粋という点について、私もそう思っているわけでございますけれども、その純粋な人々が生きて行けないという状況が日本の映画の中にあるというふうに言い切ることができると思うのです。先ほど日本の国の伝統的な芸術とおっしゃいましたけれども、映画の場合は一つの世界観を持った文化だと思うのです。そして、歴史においても、まあ五十年といえば、歴史の中で新しい世界的な意味でも世界観を持った仕事だと思うわけでございます。それが、日本の場合には、簡単に経済的な面で比較してみましても、最近のフランス映画の「レッド・サン」、これはやはり独立プロの作品なんでございますけれども、ちょっと俳優の出演料で比較さしていただきます。製作費が十八億かかっております。これは、映画会社でなくて、独立プロでございます。そして、アラン・ドロンという俳優さんが一億二千万円、三船さんが一億円、チャールズ・ブロンソンが一億円の出演料です。この出演料が高いということではなくて、私が一番最初に申しましたように、世界の新しいジャンルとして五十年の歴史しかない映画産業でございますけれども、世界が市場になることにおいてアラン・ドロンが一億二千万円もらってもその数倍の見返りの金がその作品には戻ってくるという、そういうことが輸出という問題にかかわってくると思うのです。去年三月で打ち切られた輸出奨励資金でございますか、日本映画輸出融資、この融資はどういう目的をもってお出しになったのでしょうか。
#25
○政府委員(安達健二君) この仕事は、通産省のほうで、外貨獲得、輸出振興、こういうことで行なわれたものと伺っておるわけでございますが、その結果、数年行なわれたわけでございますけれども、その十分な成果といいますか、同時に優秀なものを製作しようというねらいもあったと思いますけれども、その効果がかえって十分出ないということ、また、日本の外貨事情等も変化をしてまいりましたので、そういう意味でこの制度が廃止になったと承っております。
#26
○鈴木美枝子君 外貨を獲得するには、いかなる作品でなければ獲得できないということを、御存じでしょうか。
#27
○政府委員(安達健二君) 結局は、その映画そのものが人間の心に訴え感動を与えるというものであることが必要であると思うわけでございます。
#28
○鈴木美枝子君 その四年間の作品系列を見てみますと、これでは外貨を獲得することができないのではないかという思い方がこの作品にあるわけでございます。外貨獲得という趣旨に反しているのではないかと思うのですけれども、その点について、一番最初に、多量な金、外貨獲得という意味から作品内容とのアンバランスなんですけれども、その点についてちょっとお伺いいたします。
#29
○政府委員(安達健二君) 私ども、詳細な報告その他を承っておりませんので、ただ私どものほうでいただきました資料等で見る限りでございますので、必ずしも私どもが何とも言いがたいわけでございますが、その中には、文部省で選定をいたしておりまする「華岡青洲の妻」とか、あるいは「智恵子抄」とか、そういうような映画も含まれておるわけでございます。
#30
○鈴木美枝子君 この全作品の中の三本ばかりは外貨が獲得できるかなと思えるのですけれども、あとのほとんどの四十本ばかりの作品はこれは世界の市場に出して恥ずかしい作品だと私は思うのですが、その点についてはいかがでございますか。
#31
○政府委員(安達健二君) 私ども、その映画の一々の内容等をつまびらかにいたしておりませんので十分なお答えもできませんけれども、この中には映画として優秀とは言いがたいものが相当数あるということは私は伺っておるわけでございまして、それ以上個々の映画につきましての知識等がございませんので、その程度でお許しを願いたいと思います。
#32
○鈴木美枝子君 これは、作品ができる前に、映画会社を目的として渡しているのでございますか。
#33
○政府委員(安達健二君) 私は文部省の文化庁でございまして、こちらの仕事は通産省でございますので、私どもの答えは必ずしも正確でございませんので、詳しいことはむしろ通産省のほうからお聞きいただきたいと思いますが、これは融資を受ける団体として社団法人日本映画輸出振興協会というものができまして、その団体を通じて融資が行なわれるというように伺っております。
#34
○鈴木美枝子君 外貨を獲得するという意味において、世界が市場でなくて、東南アジアが市場ではないかと思えるのですけれども、その辺のところは御存じと思いますので、御返事いただきたいと思います。
#35
○政府委員(安達健二君) 御指摘のように、この輸出映画振興協会等を通じて行なわれました映画のねらいが、どちらかといえば東南アジア等をねらいとしたということは私どもも伺っておりますし、その年にはかつての沖縄も入っておったというようなことも伺っております。
#36
○鈴木美枝子君 沖縄の映画もございまして、私はその作品を三年ばかり前に見たのでございますけれども、沖縄の人々がたいへん封建的な人のように扱われておりまして私はあ然としたのでございますけれども、しばらくその映画を見終わったあとで映画館の前に立ちつくしながら、あれを見た沖縄を知らない大ぜいの観客の人たちは沖縄の人々をどうとらえるだろうというふうに思った次第でございます。そういうふうなことは文化としてよろしいのでしょうか、どうでしょうか、お伺いいたします。
#37
○政府委員(安達健二君) 映画は、一面におきましては企業の製作作品でございますけれども、他面としては芸術作品でございます。その内容等についてこういうものがいけないとかというようなことを積極的に国が言うべき問題ではなくて、やはり映画製作者の良識に待つべきものである。国といたしましては、優秀な映画の製作を促進するように措置を講ずる、こういうことがこういう種の問題に対する基本的な態度ではないかと思います。
#38
○鈴木美枝子君 映画に対して国が口出しをしないというそういうふうな点において、最近の「戦争と人間」について、「自由新報」の中で、「戦争と人間」のような作品に輸出振興協会から金を出すことは問題だというふうに書かれているのでございますが、その点についていかがでございましょうか。
#39
○政府委員(安達健二君) 私は、いまの御指摘の事実を承知いたしておりません。
#40
○鈴木美枝子君 お読みになっていないとしたら、いま国が口出しをしないということについて、これは、口出しでない、一つの世論のあり方でございますけれども、そういうことが影響力を持っているということは御存じのはずだと私は思うのでございます。やはり、映画で仕事をしている全映画人が、さっき大臣がおっしゃったように、純粋に血みどろに二十七年間やってきたということの中で、最近の映画の不況の中で、こういういけないとは言わないけれども、「自由新報」の中でこう書かれるような発言は影響力を持つのだということを御存じおきいただきたいというふうに私は思います。その点について、大臣に一言お伺いいたします。
#41
○国務大臣(高見三郎君) 私どもは、輸出振興のために映画に対する特別の措置を講ずるよりは、いま一番大事な問題は、日本国内における映画人口というものがだんだん減っていっておる、この事実を重く見なければならないと思っております。ただいま減っておると申しましても、日本の映画人口は年間二億五千万人に上っております。が、いい映画を奨励してつくることによってまず日本の映画人口というものをふやしていくということを考えることが外貨獲得よりもはるかに大事な問題であると。映画が与えるところの芸術的な影響というものを真剣に考えます場合には、優秀な映画を積極的に推進をしていく、奨励をしていくという姿をつくることが何よりも大切なことではないかと、かように考えておるわけであります。
#42
○鈴木美枝子君 映画人口とおっしゃいましたけれど、激減しておるとおっしゃいましたけれども、洋画人口はふえているようでございまして、いま映画全体の人口といいまして、日本映画と洋画の人口をひっくるめましてもそれは映画人口ということができるのでございます。
 いま、アメリカ映画は、どのぐらい輸入されておりますのでしょうか。
#43
○政府委員(安達健二君) ちょっと承知いたしておりませんので、あとで調べましてお知らせをいたします。
#44
○鈴木美枝子君 アメリカ映画は八割輸入されているわけでございます。その八割の収入のうち、六割は収益がアメリカへ戻るわけでございます。そうすると、そういうふうな洋画で洋画人口が多いわけでございますけれども、日本映画の人口が減っているということが、日本映画に対するつくれない理由が大きくあるわけでございます。少なくとも日本が外国映画の市場になっている、これはどこの国でも輸出入の中で市場になっているのを、東南アジア向けへこの映画輸出振興協会が融資をして世界の市場に向けられるような作品へ融資するというお考えはないのですか。
#45
○政府委員(安達健二君) 輸出振興ということで映画に融資をするというような考え方は、一応現在ではないわけでございます。通産省におきましても、特にそういう意向はないと伺っておるわけでございます。
#46
○鈴木美枝子君 それでは、前の話とちょっと違うようでございますね。三月で打ち切られた作品内容がどうもそういう方向へ、東南アジア向けの作品が多いということに関連していまそう申し上げたのでございます。でも、これは過ぎたことでございますから、一度そういう過ぎたことを手がかりにしながら将来のことについて聞きたいのでございますけれども、日本映画輸出をこの三月で打ち切られた、その一つの例を検討しながら考えるのでございますけれども、七一年から優秀映画奨励金をお出しになってくださるそうでございますけれども、どのぐらいお出しになるのですか。
#47
○政府委員(安達健二君) 趣旨につきましては、先ほど大臣からお話しのとおりでございますが、予算といたしましては、映画一本について一千万円、十本の映画を年度間において交付をすると、こういう予定でございます。
#48
○鈴木美枝子君 日本映画は、世界の中で多量生産国でございます。一番多数につくっている国はインドでございまして、その次に日本は本数が世界で二番目に多い国でございますから、一九六〇年までは年間三百本つくっておりまして、最近では映画人口がないとはいいながら二百四十本製作しております。二百四十本の年間製作をしている中で、いま奨励金を十本の作品に出す。まだその作品ができ上がっていないのに、どういう作品の目的で十本お出しになろうとしているのですか。
#49
○政府委員(安達健二君) いまお話しのように、年間二百本ぐらいの映画が製作されるわけでございますが、優秀映画として世にすすめると同時にその製作を奨励するようなものといたしましてどの程度のものがいいかということは、必ずしも言いがたいのでございますけれども、一千万円といえども、予算を計上し、税金の中から出すわけでございますからして、それはやはり相当慎重なる配慮をもってやらなければならないと、そういう観点からいたしまして、従来社会教育局のほうで青少年映画ということで優秀映画一千万を一本というものが出されておりました経過等を考えまして、これを十倍にするというようなことであるならば、相当数の優秀映画が奨励金の対象になり得るのではないかと、こういうことでございまするし、また、年間出ておりますところの映画で、ベストテンとか、そういうようなものを見ておりますると、大体十本程度ならばこの奨励金の対象になり得るような映画も製作される見込みがあると、そういう両者の点から勘案いたしまして十本といたしたのでございます。
#50
○鈴木美枝子君 日本映画二百四十五本の平均の一本製作費は一千万から二千万ということになっているのでございますけれども、先ほど申しましたように、フランス映画の製作費は十八億、この経済的な大きな差の中で、監督や俳優は、世界の俳優、監督その他の人たちと伍して、そうしていい作品にしようという努力が長年の間やられてきたわけなんでございます。そして、いまおっしゃいましたように、十本の作品が、芸術家に渡るのでしょうか、映画会社に渡るのでしょうか。
#51
○政府委員(安達健二君) 映画の奨励金の交付先といたしましては、映画の製作に発意と責任を負う者に与える、こういう考え方でございまして、具体的に申しますればプロデュースをする人ということでございまして、会社がプロデュースの主体になる場合、あるいは個人が主体になられる場合もあろうかと思いますが、会社であろうと、あるいは個人であろうと、映画をプロデュースするという方でございまして、われわれとしては、その人が映画の製作に発意と責任を負うと、そういろ人に与えるべきものと考えておるわけでございます。
#52
○鈴木美枝子君 それは、すばらしい映画にということでございましょうか。
#53
○政府委員(安達健二君) まあ、すばらしいということばがちょっとむずかしいわけでございますが、私どもといたしましては、優秀映画というような概念はなかなかむずかしゅうございますけれども、考え方といたしましては、やはり、映画の企画、内容、表現、あるいは技法等が総合的にすぐれていると認められる映画であるか、あるいは、そういう全体というよりは、企画、内容、実現、または技法のいずれか一つでも非常に特色があって独創的であると、特にそういうすぐれていると認められる映画、そういうようなものを優秀映画というように言うことができるのではないだろうか。それは、結局、すばらしい映画であるとか、感動を得るとか、あるいは必ずしもいわゆる芸術作品でなくても、娯楽的な映画でございましても見る人に健全ないこいを与えると、そういうような映画もまた対象になり得るものと考えているわけでございます。
#54
○鈴木美枝子君 まだ作品ができていない前に優秀な映画というきめ方があるとしたら、でき上がった作品に奨励金をお出しになるのですか、でき上がる前ですか。
#55
○政府委員(安達健二君) でき上がったあとでございます。
#56
○鈴木美枝子君 わかりました。
 最近、ポルノ映画とか、そういう問題に警察の介入があったというようなことなんでございますけれども、経済との関連の中でこのことを言わないと成り立たないのでございますけれども、先ほどから申しましたように、日本映画は、フランス映画の十八億と比較しまして二千万円でつくっている。なおかつ、四年間の日本映画輸出振興融資資金が出ている間に、日活の映画がすでに撮影所が売り渡されるという状態が起きている。そして、撮影所はすでに六九年の三月に十三億五千万円で電電公社の電通共済会に売り渡されていて、そしてその中に働いているキャメラマン、監督、俳優は、まあ専属といいましても、契約の賃金をもらっている。作品がなければ契約の金ももらえない。私も、長年、自分で日雇いの人と同じだというふうに思いながら身を削るようにして仕事をしていたわけでございますけれども、この融資の出ている四年間の間に日活がそういう状態になっているということを前提状況にして、そこで働いている監督や助監督やキャメラマンの人たち、そういう働いている人たち、若い未来をになう映画人の人たちが、会社の命令で、撮影所も売り払っているから何とかしてみんなの給与を払うというたてまえでポルノ映画がとられたとしたときに、一体、その生活権はどうしたらいいでしょう、お伺いいたします。
#57
○政府委員(安達健二君) 映画の製作について企業として非常に苦しい状態になっているということは、私どももかねがね聞いておるところでございまして、したがって、映画に熱意をもって当たっておられる方々がその創意くふうを発揮できない、あるいはまた、それを放棄せざるを得ないような状況になるということは、はなはだ悲しむべき事態であろうと思うわけでございます。しかしながら、国としてあるいは文化庁という立場からいたしますると、これはやはりその個々の会社の企業の助成というわけではございませんので、あくまでも映画そのものを芸術文化的な作品としてそれがよりよいものがつくられるような情勢をつくり上げるということであろうかと思うわけでございます。そういう観点からも、先ほども申し上げました、大臣からお話がございましたような趣旨で、優秀映画の製作のためには奨励金の制度をもってまずこれに対処すべきである、こういう結論になっているわけでございます。
#58
○鈴木美枝子君 日活で働いている映画人も、決してポルノ映画をつくりたいと思っているのではないということを、私たち同じ仕事をしている人間はわかるのでございます。日活撮影所には、千人の労働者、芸術家、監督、製作者、脚本、撮影、キャメラ助手、映画助手の人々がいるとして、会社からそういう映画をつくれと言われたときに、自分たちの生活権をそういう形で守ってきたという一つの矛盾を持っていると思うのです。その矛盾の中で、最近、五月それから一月に、警察の調べといいますか、介入されたといいますか、そういうことがあった。五月の段階では、個人個人呼び出されて、しかも若い女優さんが呼び出されたという状況を想像するわけでございますけれども、一人ずつ呼び出されて、そうして映画を上映した中でこれがわいせつであるかどうかというような取り調べがなされているようでございますけれども、そういう調べ方はどうなんでございましょうか。
#59
○政府委員(安達健二君) 私のほうは、捜査当局でもございませんし、実態もわかりかねますので、何とも申し上げかねますけれども、要は、やはりそういうポルノ映画ができるような素地をなくして、映画というものの優秀なものを出そうという意欲を会社もまた監督の方も俳優の方も持たれるような状況をつくることにあるのではないかと思います。
#60
○鈴木美枝子君 つくれといった会社だけを警察は調べるということで終わることはできないのでしょうか。
#61
○政府委員(安達健二君) 映画のそういうわいせつ罪等の成立要件というようなことからいたしまして、映画の製作会社だけなのか、あるいは、それに出演した人、あるいは監督した人、その他の人もどういう関係があるか、私はつまびらかにいたしませんし、あるいはその当事者であるのか、あるいは参考人であるか、私が答えるすべはちょっと持っておりません。
#62
○鈴木美枝子君 十日ぐらい前に、警察の取り調べでは、監督、編集者、撮影、製作者、シナリオライター、プロデューサー、一人ずつ呼んでいるようでございます。日活の場合七十四人、そうして書類を送検したというのです。で、ここだけの問題ではなくて、撮影所も売り渡された。そうして、日活では、封切り館である新宿の映画館も丸井に売り渡された。そういう不況の中で会社がポルノ映画をつくれというそういう状態の中でのことなので、警察の介入は全体をとらえていない。そういう経済や、生きていくことや、未来の映画芸術を担当している若者が全部失望していくという状況へ追いやる形をもっているのじゃないかと、私たちから見るとすごく権力的な感じがするのですけれども、そのことについて御返事を願いたいと思います。
#63
○説明員(川崎幸司君) 警察が御指摘の日活ポルノ映画を取り締まっておりますのは、御案内のように、刑法百七十五条に該当する容疑ありという立場で取り締まっておるわけでございます。社会的なそういう事案につきましていろいろのむずかしい問題があろうかと思いまするけれども、警察といたしましては法律判例の示すところによりまして良識をもって取り締まるという態度で取り締まっておるわけでございまして、いろいろ多数の人を取り調べているじゃないかという御指摘でございますが、百七十五条につきましては、御案内のように、わいせつ物の頒布、販売罪、あるいは公然陳列罪というふうなものがございまして、そういうふうなものにつきまして共犯関係その他も法律的には当然出てくるわけでございます。そういう意味で、また、何といいますか、被疑者としての取り調べだけじゃなしに、そういう事実関係を固める上で参考人としてお越し願うという場合もあり得るわけでございまして、かような取り締まりにおきましては相当多数の人数にわたるということは、やむを得ない捜査の常道になっておるわけでございます。
#64
○鈴木美枝子君 十日前に、一月と五月に映倫も調べたということを伺ったわけでございますけれども、映倫というのはどういうものでございますか。
#65
○説明員(川崎幸司君) 映倫につきましては、新しい現在の憲法がつくられましてから、従来の検閲制度が廃止されたということとの関連においてできた機関であって、映画業界の自主規制機関であるというふうに承知いたしております。
#66
○鈴木美枝子君 民間のということがたいへん重要だと思うのです。民主主義の日本の国でございすすから、民間の自主的な倫理機関というそれをお認めになっているのは国家のことだと思います。そこがものすごく私は重要なことだと思うのです。その民間の倫理機関におまかせすることができないというのは、どういうことでございましょうか。
#67
○説明員(川崎幸司君) 私どもは、この種の問題につきましては、御指摘のように、自主規制によって問題が生じないような状態になるということが最も望ましいことであるというふうに思っております。しかしながら、自主規制の審査を通過したものでありましても、法律に抵触するものを警察としては黙認放置するということは法のたてまえ上できないというふうに考えておるわけでございます。
#68
○委員長(大松博文君) 鈴木君に申し上げます。予定の時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
#69
○鈴木美枝子君 その民間の倫理機関へ抜き打ち的に入っていくことは、どういうことなんでしょうか。
#70
○説明員(川崎幸司君) 映倫と警察の今回の関係につきましては、何といいますか、警察が映倫について警告その他の処置を十分に何らとってなくて捜査に入ったものじゃございませんでして、それは映画界のことに詳しい鈴木先生でございますのですでに御案内のことだと思うのでございまするけれども、警視庁から、二年ほど前であったかと記憶いたしておりますが、映倫についてこういう点について十分注意してもらいたいという警告をいたしておるわけでございます。そういう上で今回の日活ポルノ映画が百七十五条該当ということで捜査に相なったわけでございますが、捜査それ自身につきましては、これは捜査として当然に映倫につきまして共犯関係ということも考えられますので、そういう活動をいたしたのは捜査上の常道でございます。
#71
○鈴木美枝子君 時間が延びましたのでまとめさしていただきたいのですけれども、とにかく失業状態でいる千人の日活の人たちが会社の命令によってつくったポルノ映画、映倫の人々と警察の方たちと失業しかけている人々が総合的に話し合えることが文化的な国だというふうに私は思うのでございますけれども、警察がたびたびそういうふうにしますと、日本じゅうの人たちが警察をこわいというふうに見ていくと、まるで文化的なものが消えてしまうような感じがいたしますので、その作品内容について問題があるにしても、基本的に文化ということをたてまえにしながらやっていただきたいと思うのです。そして、映倫にまかせるというたてまえをおとりになっていただきたいのでございます。これを最後にいたしますけれども、どうぞ、まかせるということができるかできないか、もう一回お聞きしたいのです。
#72
○説明員(川崎幸司君) 先ほどのことばを繰り返すようで恐縮でございますが、私どもといたしましては、映倫の立場なり審査というもので問題が起こらないというふうになることが一番望ましいというふうに考えておるわけでございます。しかし、さればといいまして、審査を通過したものであってそうして刑法百七十五条に該当するというものを見のがしてほうっておけというふうな御趣旨であるといたしますならば、やはりそれにはちょっと応じ切れないのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
#73
○鈴木美枝子君 日活でも、会社の命令を押し切っていい作品をつくろうとしているわけです。ですから、警察の介入をやめていただきたいと思います。御返事願いたいと思います。
#74
○説明員(川崎幸司君) 刑罰法規に抵触しないものにつきましては、警察がいわゆる先生のおっしゃる介入するというふうなことは毛頭考えておりません。
#75
○鈴木美枝子君 書類を送検したというのは、犯罪を構成しているということでございますか。
#76
○説明員(川崎幸司君) 正確に申し上げますならば、犯罪を構成している容疑があるということでございます。
#77
○鈴木美枝子君 容疑だけなら、取りやめることはできませんか。
#78
○説明員(川崎幸司君) 犯罪かどうかは最終的には裁判所において決定されるものでございます。したがいまして、それ以前の段階の捜査段階におきましては容疑という段階になろうと思います。
#79
○鈴木美枝子君 警察では、日活の失業しかけている千人の人を責任を持っていただけますか。
#80
○説明員(川崎幸司君) そういう御質問には非常にお答えしにくくて、まあこういうことを言ったらおしかりを受けるかと思いまするが、刑罰法規に抵触する、こういう中にはいろいろの原因があろうかと思います。俗に言いましても、どろぼうが、どろぼう趣味でやっているという者も中にはおるかもわかりませんが、大半の人たちは食うに困ってやっておるのじゃないかというふうに思うわけでございます。どろぼうと日活映画を一緒にするのはおしかりを受けるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、生活権とかそういうようなものにつきましては、何といいますか、警察の分野じゃございませんでして、私どもといたしましては、やはり、法律の命ずるところ、判例の示すところによって仕事をいたしておるわけでございます。仕事をする上におきましては、これは社会的な良識をもってやるのは当然だというふうに考えておるわけでございますが、いろいろむずかしい憲法論議の問題もあろうかと思いますけれども、いろいろ憲法で保障いたしております基本的人権というものも、憲法の十二条、十三条の制約を当然に受けるのだという判例がすでに何回か示されているところでございますので、この辺で御了解をお願いいたしたいと思います。
#81
○鈴木美枝子君 時間がたいへん延びて申しわけございませんでした。
 それでは、大臣に最後に締めくくりをしていただきたいと思うのですけれども、そういう失業しかけている人々が、会社の命令によってつくらなければならない、そしてそこへ警察が入ってくるという矛盾の中で苦しんでいるわけでございますけれども、日本の映画は、映画人口があるにもかかわらず、洋画が盛んになって日本映画がだめになるという理由の中にも、いまのような一つの問題があると思うのです。その他について、ただ金を出せばいいというものではなくて、どういう作品にどういう内容にという――もっとも、イデオロギー問題ではなくて、哲学的な問題を持っている人間の問題にかかわる映画産業でございますから、その点について文部大臣の最後の希望を持てるようなことばをどうぞお願いいたします。
#82
○国務大臣(高見三郎君) 鈴木先生が希望が持てるようにとおっしゃいましたが、さて私のお答えが希望が持てる状態であるかどうかはわかりません。しかし、私どもが今度優秀映画について奨励金を出すというたてまえをとりましたのは、私はこれで十分だとは思っておりませんが、実は日本の映画を非常に高度な芸術性のあるものにするということが一番大事な問題である。映画が持っておりますところの芸術性、文化性というものを十二分に発揚させるという努力が映画人にとって一番大事な問題であろうと思います。
 いまポルノの問題が出ましたけれども、私は、食うためには、生活を擁護するためにも、やむを得ずやっているんだという議論は、少なくとも映画の持つ芸術性というものを軽視した議論だという感じすらいたすのであります。これに芸術性があり、これに文化性があるならば、それはそれでけっこうでありますけれども、問題は、日本映画に高い芸術性があり、高い文化性があるならば、これは外国にも出ていくであろう。だから、私は、まず日本の映画人口をふやすことを考えるためには、日本で優秀な映画をつくるという方向へ指導の重点を置いていきたいと、かように考えておるわけであります。一本一千万円という奨励費は、必ずしも私は多過ぎるとは思っておりません。場合によれば三十本ぐらいはそれを見る。しかも、それを、ただ修身の教科書の引き伸ばしのような映画を必ずしも優秀映画として認めるつもりは毛頭ございません。芸術性というものを中心に優秀映画というものの選定をやっていきたいというのがただいま私どもの考えておる考え方であります。要は、私は、外国映画が日本にはんらんしているということを御指摘になりましたけれども、日本映画は何をしているんだと私は言いたくなるのであります。日本映画がもっと真剣な態度でもっと芸術性の高い映画になってくれることを心から念願をいたしておりまするし、私自身もそういう方向に向かってひとつ援助の手を差し伸ばしていきたい、かように考えておるということか御理解いただきたいと存じます。
#83
○鈴木美枝子君 どうもありがとうございました。じゃ、どうぞ、映倫へ警察が介入することはやめていただきたいと思います。お願いいたします。
#84
○矢追秀彦君 私は、文化財保護の問題につきまして、特に埋蔵文化財を主体に二、三質問をしてみたいと思います。
 最近、埋蔵文化財の破壊ということが大きな問題になっております。一例をあげますと、奈良県におきましても、ことしに入りましてからかなりの破壊が行なわれております。具体的に申し上げますと、桜井市の粟原古墳、これは本年の四月に破壊が行なわれました。また、これは昨年の暮れになりますが、香芝町における石塚古墳というのも破壊が行なわれました。その他相当多くの古墳が破壊されておるわけでありますが、その中で一つだけ非常に残念な事態がございますのは、いま申し上げた桜井市の粟原の丘陵にありました古墳であります。これは小さな古墳でありますが、大体古墳時代後期のものと推定される古墳でありましたが、一応県の教育委員会のほうへは発掘の届を出したわけです。昨年の十二月に出しまして、三月の一日から工事を始めたいと。要するに、土取りをやるわけです。その土取りをやりたい、こういう届を出したのですが、教育委員会のほうでいろいろ検討して、四月の三日に、五日から調査をするから工事を待てと、そういうのでいま建設工事をやろうとしている会社に申し入れをしたわけですが、そのときにはもうすでに古墳はブルドーザーでこわされておりました。古墳は現在もうなくなっておりまして、いまなお土取り工事というものが行なわれております。名もない小規模な古墳でありますけれども、この近くには白鳳時代に建てられた粟原寺というのがありますので、やはりこの辺の地域は古墳群としてあるのではないかと、こう思われますが、こういうふうな非常に残念な事態が起こったのは、どういうところに問題があるのか、文化庁としてはこういうふうな事態をどうお考えになっておるのか、これを防ぐにはどうすべきなのか、その点をお伺いしたいと思います。
#85
○政府委員(安達健二君) いま、日本全国に埋蔵文化財包蔵地等の遺跡として考えられるものが、数年前では十四万カ所ぐらいであろうといっておったわけでございますけれども、最近は三十万カ所ぐらいあるのではないかというようなふうに、だんだんとその数もふえてまいっておるわけでございます。
 そこで、これらの問題に処するためには、まず、それらの遺跡の所在を明らかにするということが第一でございまして、そのために全国遺跡地図というのを先年つくりまして配付したのでございますが、その後それに載っていないもので遺跡というものがなお発見されてまいりましたので、これを昨年度と今年度と来年度で再調査をいたしましてそういうものの遺跡の分布状況をもう一度調べ直しておるというのが第一の問題点でございます。
 それから第二の問題点といたしましては、いろいろな開発工事が進んでまいりますので、その場合に文化庁なり出先の県の教育委員会等において適切なる処置をとるということでございます。現在は、文化財保護法によりまして、周知の遺跡について土木工事等を行なう場合においては、一カ月前に届け出をしなければならないという規定がございますけれども、ただいまお話にありましたようなことを私ども十分承知をいたしておりませんでしたけれども、そういう事例がないように十分開発当局と県の教育委員会当局等との間の連絡網を確立するということが第二の問題点でございます。第三の問題点といたしましては、そういうものについてなるべく早い時期に調査をいたしまして、これを将来とも永久に保存すべきものと、重要性も比較的低くまた他に類例等があるものにつきましてはこれを記録にとどめるということで保存をするというような形にとどまらざるを得ない例もあろうと思いますけれども、そういう点を適切に処理するということであろうかと思います。
 それから第四番目といたしましては、そういう建設工事等を中止いたしました地域につきましては、これは公共団体等で買い上げをいたしまして遺跡として文化財として将来とも保存し活用していくような体制をとるということであろうかと思います。
#86
○矢追秀彦君 いま四点についておあげになりましたが、要するに、いまの場合は、届け出をしても、結局、県の処理がおそくてこういうふうに破壊されてしまった。これはたいしたものでなかったのかどうかは私はよくわかりませんけれども、もし重要なものがこうなったとすれば非常に問題でありますが、この届け出と、いま言われた県の教育委員会と業者との間の密接な連絡網と言われますけれども、こういうことになると、ある程度許可制というふうなことに踏み切っていかないとならないのではないか。届け出制だけでは、いつまでも業者の良心とか良識などと言っていたのでは、いまこういう開発が非常に進んでおる。特に奈良県などは、最近、大阪のベッドタウンということで住宅がそこらじゅうにふえつつあるような状態で、知事さんのほうはこれを何とか食いとめようということで必死の努力をされておるのですが、いかんせんいまの文化財保護法の中ではこのままでは完全に防ぐことはできないのではないか。その許可制に変える問題については、どういうふうにお考えになっておりますか。
#87
○政府委員(安達健二君) 現在の文化財保護法の五十七条の二の規定によりますると、届け出をするその場合に発掘に関し必要な指示をすることができるという規定がございまして、その工事を中止停止をする権能が与えられております。その点が非常に大きな問題であるわけでございますが、この点については大いに検討を要する点があるということは御指摘のとおりでございますが、ただ、問題点といたしますると、一つは、その遺跡である地域が具体的にどこからどこまでということがはっきりと示しがたい点でございます。これは掘ってみなければわからないという問題がございますので、そこで地域を明確にしないままでその禁止停止というようなことを命ずるということについての問題点がございます。それからかりに工事を中止または停止をした場合に、建築工事等の停滞等に基づくところの損害の問題をどうするかという問題が一つございます。それからまた、調査をする場合におきまして、調査の陣容が現在におきましては必ずしも十分であるとば言いがたいという点がございますので、法律の問題の検討と同時に、これらの面につきましても思い切って措置をしないと、ただ法律改正だけでは十分な措置とはなりがたいとは思いますけれども、われわれとしては、法律の問題も十分検討すべく、せっかく内部で検討いたしておるところでございます。
#88
○矢追秀彦君 いま法改正についての検討と言われましたが・結局、現在の文化財保護法というのは、どちらかというと、いわゆる有形文化財というものが主体になっておりまして、遺跡、埋蔵文化財というものはこの法律自体にはそうなじまないのではないか。第四章に設けられてありますけれども、どちらかというと有形文化財に片寄っておる。したがって、遺跡、埋蔵文化財の保護という面については、単独立法をしてはどうかという意見が出ております。奈良県の教育委員会あたりではそういう希望を強く持っておりますが、これについてはどうお考えになっておりますか。
#89
○政府委員(安達健二君) この法律の改正の必要性につきましては、都道府県の教育長協議会でも指摘をされているところでございまするし、われわれとしても当然その検討に入るべき問題であると承知いたしておるわけでございますが、ただ、法律の体系ということになりますると、別個な法律をつくるか、あるいは現行の文化財保護法の中で必要な規定を整備すれば足るのではないかというようにも考えられますので、要はその改正の内容の問題にかかわるものと考えております。
#90
○矢追秀彦君 この改正についての作業の進め方でありますが、文化財保護審議会のほうに諮問されまして具体的に改正に対する答申を受けてそして法改正というルートをおとりになるのか、それとも、文部省ですぐつくって出されるのか、その点はどうですか。
#91
○政府委員(安達健二君) この保護法の改正の手続等につきましては、私ども、具体的な外部的な手続につきましてはまだ確たる結論を得ているわけではございませんので、現在ではその内容について事務的な検討をいたしております。具体的な作業になりますると、さらに外部的な面からいいますると、都道府県教育長協議会との協議とか、あるいはまた、この方面の関係者等によるところの研究協議会というようなものをつくるとかいうような手続も必要でございましょうし、最終的にはもとより文化財保護審議会にはかって内容を考えていくべきと思いますけれども、いろいろな手続方法があろうかと思いまして、目下その手続等についても検討いたしておるところでございます。
#92
○矢追秀彦君 大臣にお伺いします。いま、文化庁のほうから、改正については検討しておると。まだ具体的な問題として出てきておりませんが、もし改正をやるとすれば、おそらく総理がかわりますから臨時国会があるかと思いますが、そこへ出すか、これは短いのではないかと推察いたしますので、そうすると次の通常国会、少なくとも私は通常国会には出さなければいまのこういった文化財の破壊の状況から考えてちょっと大きな問題になるのではないかと思います。通常国会に出される用意があるのか、その点はどうですか。
#93
○国務大臣(高見三郎君) これは私は臨時国会にこの法律改正案を出すというところまではいかないだろうと思います。端的に申し上げまして、準備を整えまして法案の提出をいたしまするのは次の通常会になるだろうと、かように考えております。
#94
○矢追秀彦君 次の通常国会というと、結局一年たつわけですが、今年度の予算では、御承知のように、かなり公共事業に対する予算がつけられまして、不況脱却ということでいろいろな面での開発が相当行なわれます。特に住宅関係などは相当進むでありましょうし、また、特に現在金融が緩和した時点においては土地を買う人がふえた、こういうこともいわれておりますと、やはり開発が相当進む。そうなると、少なくも通常国会においてはきちんとしたものができなければ、それまでも私は待てないと思うのですけれども、それまでの暫定的なやり方としては、現在の法の中でいわゆる行政面できびしくやっていく以外にないと思いますけれども、通常国会に改正案を出す前の措置についてはどうお考えになりますか。
#95
○政府委員(安達健二君) 文化財保護法の現行の適用について万全を期するように地方教育委員会との連絡を密にし、また、教育委員会におきましても、開発の関係の部局との連絡を密にするということでございますし、また、本年度の予算といたしましては、埋蔵文化財関係の予算についていろいろ増額もいたしておりますが、特に土地の買い上げ等につきましては二十億円、市町村等の負担分を合わせますと四十億円の買い上げ費用が計上されておるわけでございます。同時に、この買い上げ費用の計上に伴いまして、都道府県・市町村等の公社と申しますか先行取得等につきましても指導いたしまして、的確にしかも時期を逸せずに土地の買い上げ等を行なうように指導をいたしてまいりたいと思う次第でございます。
#96
○矢追秀彦君 いま土地の買い上げの資金等をふやしていくとおっしゃいましたが、これはまた一つの例になりますが、奈良県の桜井市におきまして太田遺跡というのが出まして、これは小学校をつくろうとして用地を買ったところが、そこから遺跡が出てきたというので、昭和四十六年度で七百九十二万五千円、四十七年度で百三十二万円、計九百二十四万五千円というお金を桜井市が出しまして発掘を一応して、あと用地はそのままになっておるわけですが、こういうようなことで、桜井市というのは、そんなに財政的に豊かな市ではなくて非常に大きな負担になっておる。その中で一番多いのが人件費でありまして、六百四十二万九千円というのが人件費でございます。こういうようなことで、せっかくの学校も建てられなくなりました、現状では。非常に負担になっておりますが、こういう場合には、国としてはどういうふうなことができるわけですか。要するに、市が小学校の用地を買う、そして買ったところから遺跡が出て発掘した。事業者負担ということになれば市になってしまうわけですが、それに対して国庫の補助等は対象にならないわけですか。
#97
○政府委員(安達健二君) 開発工事等に伴いますところの発掘調査費用の負担の問題でございますが、現在私どものやっておるたてまえといたしましては、その工事主体が工事をすると。それによりまして一種の受益者負担のような考え方で、道路公団とか住宅公団とかそういうところが道路をつくりあるいは住宅を建てられるような場合におきましては、その土地に遺跡等があることに伴い調査を要する場合には、事業者負担、原因者負担というたてまえで、この発掘費用をそれぞれ事業者が負担をすると、こういうたてまえになっておるわけでございますが、しかしながら、個人が建てるとか、そういうような場合におきましては、個人に負担させることは適切でないということで、そういう場合には県とか市が調査をしていただく、その場合には国が補助をすると、こういうたてまえでやっておるわけでございます。
 地方公共団体がみずから工事をする場合についてどうかということでございますけれども、考え方といたしましては、国と地方公共団体はともにこういう遺跡を守る義務がむしろ文化財保護法でも課せられているところでございます。そういう観点からいたしまして、公共団体等がみずからの用に供せられる場合におきましては、それらの発掘費用につきましては、当該地方公共団体が負担をしていただくということが現在のところのたてまえにいたしておるところでございます。
#98
○矢追秀彦君 一応そういうことで現行ではやむを得ないかと思いますが、そういう遺跡がたくさんあるところがそのために市の財政が非常に曲がってくる、こういうことに対してはどういう措置をされますか。
#99
○政府委員(安達健二君) 将来の課題といたしましては、特にその市町村等が財政力が非常に弱いと、それに対して発掘の費用が非常に大きいと、そういう場合につきましては、その発掘調査費用につきましても補助の道を開いていくべきであると、かように考えておるわけでございます。
#100
○矢追秀彦君 それは将来の問題であって、今年度は無理ですか。
#101
○政府委員(安達健二君) 四十七年度の緊急発掘調査の予算は一億二千七百万円でございまして、非常に各方面から要望が強うございまして、むしろ特に要望が強くまた経済的に苦しいところにさかざるを得ないというような状況でございまして、いまの桜井市の今年度の調査費等はそれほど大きなものでもございませんので、市のほうで何とかやっていただきたいと、かように考えておるところでございます。
#102
○矢追秀彦君 それから埋蔵文化財の定義といいますか、法律の中における基準といいますか、それがもう一つ明解でないと思うわけですけれども、特に埋蔵文化財たとえば古噴がありまして、それを保存する場合、要するに、環境保全といいますか、まわりとの問題で、先ほども少しお触れになりましたけれども、この辺はどういうふうに考えていけばよろしいんですか。といいますのは、具体的に申し上げますと、これも桜井市でありますが、茶臼山古墳というのがありまして、これは個人の所有です。その横にボウリング場の建設が始まろうとしておるわけです。整地は終わっております。その道を隔てた向かい側に現在ゴルフの練習場がもうでき上がっております。こういうふうな場合も、その古墳の堀といいますか、昔の堀のところがもうすでに盛り土になっておりまして、そこヘボウリング場ができるわけですが、何階になるかわかりませんが、こういうふうな場合、この古墳だけが、たとえいじられなくても、かりにそのまま残されたとしても、まわりにゴルフの練習場があり、ボウリング場ができた場合、ただ古墳自体の価値としてはそのまま残ったとしても、この古墳を中心とした環境保全ということでは破壊になってしまう。この辺はどの辺で線を引くべきであるとお考えになりますか。
#103
○政府委員(安達健二君) まず一番目の基準は、その地域その土地が、古墳なら古墳の重要部分といいますか構成部分であるかどうかというところでございまして、構成部分については、当然指定の対象として保存すべき問題である。ただ、それじゃ、堀のすぐ横のところに大きな建物が建っておかしいではないか、こういう御指摘もあると思うのでございます。これは、いわばそういう環境の保全という問題になろうかと思うわけでございますが、現在のところは、いわゆる史跡の指定地について買い上げをしてこれを保護するというたてまえでございますので、周囲をさらに保存するということは、いま個々の史跡等には行なっておりません。たとえば、風土記の丘とか、そういう問題につきますると、その地域を広く取りまして全体として保存をするような方向になっておるわけでございます。したがいまして、史跡の重要部分はこれはやはり指定をして保存すると。その他の土地につきましては、まあできれば残したいけれども、現状ではなかなか無理であるということでございます。
 なお、茶臼山の古墳につきましては、国の指定の予定地につきまして奈良県と協議をいたしておるわけでございまして、現状で残っている堀の部分については、これはぜひ指定して残していきたい、こういうことでございますが、もうすでに堀としての原状を残していないようなものにつきましては、これは指定をするというのもなかなか困難ではないかというように考えておるところでございます。
#104
○矢追秀彦君 もう一つはっきりしないわけでありますけれども、いま言われた風土記の丘というような考え方もありますけれども、その辺のワクといいますか、線といいますか、もう少し明確にしていかないとだめなんではないか。特に古墳がたくさんある場合であれば、ある程度綱も広げられるのでしょうけれども、いわゆる一つある場合に、どこら辺まで保存をするか。大体、いま、天皇陵の場合であれば、わりあいきちんとされておるのですね、各地の古墳を見ましても。宮内庁が管轄しまして、鳥居もつくりまして、ちゃんとしている。ところが、天皇陵であるかもわからない場合もあるでしょうけれども、大体天皇陵でない場合が多いわけですけれども、そういうものは、いま言ったように、もうぎりぎりのところまで開発が進んできてしまう。こういうようなことではやはりまずいのではないか、私はこう思うわけですけれども、だからいまお伺いしたんですけれども、まず一つは、古墳そのものの価値をどう残すかということで、どの辺まで幅を取るか。もう一つは、環境保全という点からどうとらえていくか、二つあると思うのですが、その辺の調和といいますか、その辺をもう少し明確にしないとまずいのじゃないかと思うのですが、その辺はいかがですか。
#105
○政府委員(安達健二君) 古墳という場合には、もしその周壕――堀がございますれば、堀の部分も当然古墳の範囲に含めて指定をすべきものであるということが第一点でございます。
 それからその堀を越えた、堀以外の周囲の部分についてはどうかということになりますると、現状の文化財保護の立場だけでまいりますると、それを越えた部分については、直接保護の対象にしがたい事情にある。そこで、古墳等がたくさんございますようなところは、風土記の丘というような形で、広域的な保存方策を講じておる。それから第三の方法といたしましては、都市計画によるところの公園緑地というような形で、その都市計画等の土地利用の一環としてそういうものについてもなるべく緑地として公園用地として保存をしていただいて、両者協調いたしまして、史跡というものをぽつんと保存するのではなくて、周囲のよい環境の中で古墳等を守っていくという、そういうことを実際の行政面におきましては行なっておる、こういうことでございます。
#106
○矢追秀彦君 時間があまりありませんので、ちょっとまた話題が変わりますが、これは福井県の三方郡三方町鳥浜の貝塚でございますが、これが河川の改修工事との関係でいろいろと問題になりまして、どうしてもこれは保護してもらいたいという要請が若狭考古学研究会というところから出ております。ところが、実際に河川のことを頭に考えますと、どうもこれは破壊されてしまうような感じを受けるのですけれども、こういう非常にむずかしいところの保存はどういうふうにされてまいりますか。
#107
○政府委員(安達健二君) 御指摘になりました福井県の鳥浜貝塚というのは、縄文時代早期・前期の泥炭性貝塚ということで、東西約七十メートル、南北約六十メートルと推定されておるわけでございまして、これは一九六七年と六八年に学術発掘調査が一部で実施されてその性格が明らかにされてきたわけでございますが、この遺跡の中心部にははす川(はすがわ)が縦断しておりまして、その河川の改修工事が計画されておるわけでございます。
 四十七年、ことしの三月三日に、この河川改修工事着手のための発掘届が文化庁に提出されてまいりました。届によりますと、工事着手前に河床・州の部分で必要な個所について発掘調査を実施すると、こういうようなことになっておるわけでございまして、この発掘調査等につきましては、この工事が河川改修という目的でございまして、これはやむを得ないといろことで、事前に発掘調査を実施するように通知をしたというのが実態でございます。
#108
○矢追秀彦君 これは、調査をやったあと、どうされますか、そのまま保存するのは非常にむずかしいと思います。
#109
○政府委員(安達健二君) まあ貝塚というの全国にいろいろあるわけでございまして、その貝塚というものの日本全体の鳥瞰図の中におきまして、この貝塚を現状のままで保存するか、あるいはこれを河川工事のためにやむを得ないものと判断するかという問題にかかってくるわけでございますが、調査の結果も見なければなりませんけれども、どちらかといえば、河川工事のためにやむを得ないということで、記録保存にとどめるもやむを得ないのではないかと考えておるところでございます。
#110
○矢追秀彦君 この学者の先生方によりますと、何か五千五百年から六千年前の植物性遺物を出土する遺跡としては本遺跡以外には日本では発見されていない、日本唯一のものである、こういうふうに言われておりまして、そのためにどうしても保存してもらいたいと、こういうことでありますが、このために河川のほうを動かすということもなかなか現状ではむずかしいかと思いますが、いまのお話だと、記録調査だけで、あとは河川の改修によって破壊されてもやむを得ない、こういう立場でありますが、何とか技術的に保存する方法は見出せないものか、まあ河川のつけかえというのはちょっと無理かと思いますけれどもね。やむを得ず記録だけにとどめると、それでもこの学者の方たちが納得されるかどうか、その辺はいかがですか。
#111
○政府委員(安達健二君) 先ほど申し上げましたように、日本における貝塚そのものの中でこの貝塚がどのような地位を占めるかという問題でございますので、簡単には答えにくいと思いますけれども、御指摘のように、河川の改修という工事でございますので、どうしても河川改修をやめてこれを残せということはわれわれとしても非常に言いにくいところでございまして、現在の程度のような状況下であれば、やはり記録保存にとどめるもやむを得ないのではないかと思っておりますけれども、調査の結果等もよく見ました上でまた最終的な判断を下したいと思います。
#112
○矢追秀彦君 ついでにちょっと天然記念物のことになりますけれども、これは新宮市にある浮島という有名な天然記念物で、昭和二年に国で指定をされております。これが現在破壊されまして、このままいきますとおそらくこわれてしまうのではないか。島も分裂しましたし、端っこに寄ってしまいました、要するに汚水のために。また、まわりの住民は、この汚水のおかげで蚊がたくさん来て困るとか、よごれていてこんな天然記念物はなくてもいい、こわしてしまえという強硬論者までありまして、要するに、あれの原因は、一つは下水をちゃんとするのを怠ったことと、あの天然記念物があれだけ大事なものであるとすれば、あんなぎりぎりまで家を建てさせたところに問題がある、そのまわりにずっと建っているわけですから。その下水のために、石けんのような色や変な色になってまして、せっかくの浮島というのが浮島でなくなってしまう。そして、台風と両方でやられて壊滅状態と、こういうような状態ですが、要するにその記念物だけを幾らやってもだめです。やはりある程度幅を見て、まわりのことを考えなければ、何の意味もない。これは古墳も同じだと思うのですけれども、こういった点についても、私は、文化財を保護するという面で、環境保全とあわせましてもう少し広くとっていくという方向にしていかなければならぬと思うのですが、その点はいかがですか。
#113
○政府委員(安達健二君) 浮島の植物群落、これはミズゴケの湿原のなごりになっておるわけでございますが、当該指定地は、表面から見ますと海より二メートル高いのでございますが、十メートルにボーリングをいたしましてもなお底に達しないということで、いわば浮いておるわけでございます。したがって、海よりも結果的には低いというようなことで、周囲に住宅がございまして、その汚水がこの浮島の堀のほうに入ってきておると、こういうことでございます。
 この保存策といたしましては、従来、矢板の整備をするとか、堀のしゅんせつをするとか、いろいろやっておりましたけれども、効果があがらないままになっておるわけでございます。問題点は、やはり、その近所の住宅の汚水の排水設備を十分にするということが一番大事なことでございまして、これはまあ文化財というよりは都市計画なり下水の処理計画の問題でございまして、この点につきましては新宮市との間でいろいろ協議をいたしておるわけでございまして、また、新宮市におきましても調査団を組織してこの面についての調査をしたいというようなことでございますので、われわれとしても、できるだけこの調査に協力いたしますと同時に、この浮島をせめて何とか守るような方法――同時に住民の方々の下水処理等にも益するわけでございますので、そういう点につきまして市とも十分話し合いをしていくようにいたしたいと思う次第でございます。
#114
○矢追秀彦君 まだ私も相当そこらじゅうをほっつき歩きましていろいろなものも見てきておるのですが、時間がございませんからこれで終わりますが、最後に大臣にお伺いしたいのは、先日の委員会では教育という問題についての政府の取り組み方が非常に弱いという点をいろいろな指摘をいたしましたけれども、この文化財保護ということを非常に言われてはおりますけれども、現実問題としてはまあいまの河川のこれは非常に技術的にむずかしいから、それだからというわけには言いませんけれども、どうも、開発といいますか、経済成長といいますか、そっちのほうに片寄ってしまって、いまこのような高度な社会の中にあって一番大事な日本人の心のふるさとといいますか、そういった文化財が、一部は保護されておりますけれども、全体的に見ますと、いろいろな面で破壊をされ、大事なものが失われていく、こういう開発と保存といいますか、その辺をこれからどう考えていかれるのか。ただ文部大臣がわいわい言ったって、政府全体がその気になって進まなければ、何にもならないと思います。特に、文化財を保護する場合、かなり地域全体の上に立った計画というのが必要だと思うのです。その点をどうお考えになっておるか、これがまず第一点。
 それからこれは先日も大臣にお伺いいたしましたが、高松塚古墳のあの壁画について、朝鮮民主主義人民共和国との間にすでに交流をしていると、学者の招請について足がかりはあるんだと、こう言われましたが、法務大臣のほうから高松塚の学者等の交流については入国を許可すると、こういうふうな話であるということを伺いましたが、その辺は文部省と話がどうついているのか。この間は話だけでありましたが、具体的にどの辺まで進んでおるのか。実は、わが党の訪朝団がきょうちょうど共同声明が調印されますが、その項目の中には入っていないようでありますけれども、高松塚の問題については向こうとはコミュニケーションを持ってきておりまして、まだ委員長が帰ってきておりませんので詳しいことは聞いておりませんが、向こうのほうもそういった面ではかなり積極的であると聞いておりますが、その辺をもう少し具体的な線をお伺いして、その二点をお伺いして質問を終わりたいと思います。
#115
○国務大臣(高見三郎君) 私は、第一点につきましては、時代の変遷というものをしみじみ感じます。と申しますのは、名神高速道路ができますときに、文化財保護委員会が――当時文化財保護委員会であったのでありまするが――古墳群があるということで猛烈な反対をいたしまして、ずいぶん文化財はわからぬやつがそろっているというような評価をされておった時代から、今日文化財を保護しなければならぬということのほうが優先的に考えられるようになったというところに私は時代の移り変わりというものをしみじみ感じまするし、御指摘のように、これは政府全体として開発と保護とをどう調和させるかという問題に本格的に取り組まなければならないと、かように考えておるのであります。埋蔵されております文化財につきましては、すでに分布図をつくってみましたけれども、その分布図をつくったあとにおきましてさらに十何万カ所というものを追加しなければならないという状態になっておるのであります。おそらくもう一ぺん改定をいたしましても、さらに調査をいたしまするともっとふえてくる状態も起こり得ると思うのであります。ただ、問題は、開発と文化財の保護との調和をどの辺で話し合いをつけるかということは政府全体の問題であろうと考えまするし、私は日本民族の残しました文化財の保護につきましては全力をあげてこの保護に当たりたいと、かように考えております。
 第二点の高松塚の古墳の問題でありまするが、先ごろ私は北朝鮮との間の非公式の折衝はいたしておるということを矢追さんにお答えを申し上げました。私は、これは北朝鮮だけの問題じゃありません、イタリアからも保存学者を実は招請するつもりでおります。また、できることならば、国境、政治形態を越えまして、中国も参加してくれるならば、これにこしたことはないと思っております。非公式な話でありますけれども、けさの閣議後の記者会見におきまして、前尾法務大臣は、学術調査のために北鮮から来るということならば、これに対して自分は反体をする意思はないということを発言されておるようであります。これは、しかし、北朝鮮だけの問題じゃございません。韓国も同時に考えなければならぬ問題であるということが言えるわけであります。世界のあらゆを考古学者あるいは保存学者等を網羅いたしまして、実は、政府がやるのじゃなくて、民間の学術調査団というものをつくらせまして、その民間の学術調査団が招請をするということでないと、国交が回復していない国で政府が招請するというわけにはまいりませんので、その辺はひとつ御理解をいただいておきたいと思いますが、一応いまの段階ではそういうことで進んでおるというように御理解をいただきたいと思います。世界じゅうのおもな学者に来てもらって、それで学術調査団というようなものを組織いたしまして、補助金は政府が出しますけれども、民間の団体で招請する、それを政府は入国等の関係につきましてはバックアップしてあげるという形で実現を見たいものだと、かように考えておるわけであります。さよう御承知をいただきたいと思います。
#116
○矢追秀彦君 ちょっと、いまの民間の学術団体でありますが、現在もう既存のものの中でそういう動きがあるのか、あるいは政府としてこういう団体であればけっこうであろうという目安をおつけになっておるのか、それとも、新しく高松塚に限って何らかの学術調査団をつくってそれが朝鮮民主主義人民共和国あるいは未承認国である中華人民共和国からの招聘ということを考えているのか、どちらであるのか、その点をお伺いして、終わります。
#117
○政府委員(安達健二君) 今度の調査は、総合的な学術調査ということでございまして、考古学とか歴史学、それから美術史学というような各方面の学者の協力による総合的調査ということに重点を置く必要があろうかと思いますので、したがいまして、そういうものでございますると、やはり新しくそういう調査のための団体を組織されるということが望ましいのではないかと、かように考えておるわけでございます。
#118
○内田善利君 私も、同じく文化財で質問したいと思いますが、いま文部大臣並びに文化庁の次長の答弁をお聞きしましてその方向がわかるわけですが、私の場合は佐賀県の中原町の栗崎かめ棺遺跡についてお伺いしたいと思うのですけれども、私も最近見てまいったのですが、文化庁としてはこの遺跡をどのように評価されておるのか、まずお聞きしたいと思いま。
#119
○政府委員(安達健二君) 御指摘になりましたのは、佐賀県の三養基郡中原町所在の栗崎遺跡でございますが、これは大倉地所株式会社という会社が住宅地の造成のために事業に取りかかるその地域内に古墳が三基とそれからかめ棺の包蔵地がございまして、現在は雑木林になっておるところでございます。そこに二月の上旬に県の教育委員会と町とこの会社とが打ち合わせをいたしまして事前調査をしようということで、三月二十一日に文化庁に発掘届が出てまいりました。文化庁といたしましては、事前の調査と、重要な遺構は保存してほしいという指示をいたしたわけでございまして、三月の十二日から三月中一ぱいにかけまして、古墳が二基、石棺が九基、かめ棺が八基出てまいりたわけでございます。それから四月の七日八日ごろになりましてかめ棺の墓地が発見されてまいったわけでございます。四月の二十日ごろ、県の教育委員会から情報を入手いたしまして現地調査をいたしまして、遺跡部分の工事の中止をいたしておりました。現在は、その発掘調査が開始をいたしておるところでございます。
 問題点は、この古墳につきましては、実はたいへん残念なことでございますが、十分な調査がされないままに破壊されてしまったということが一つございます。これは私どもも知らなかったところでございますが、これは遺憾なことでございますが、ただ、かめ棺のほうの問題になりますると、かめ棺というものは一種の人骨等が入ったところの遺物でございまして、そのかめ棺を出してしまったあとの土地をどうやって保存するかという問題でございます。かめ棺というものは大事に保存しなければなりませんけれども、かめ棺がある土地というのは、いわば共同墓地であったということでございまして、その共同墓地であったということの土地を全部そのまま残さなければならないかどうかについては問題があるわけでございまして、かめ棺は大事にしなければなりませんけれども、そのかめ棺があったところを全部そのまま保存しなければならぬかどうかについては疑問があるわけでございまして、われわれといたしましては、十分な発掘調査をいたしまして、かめ棺の実態と、また、その中に含まれておる人体等の調査を完全にすることが第一の要件であろうと考えておるところでございます。
#120
○内田善利君 私は文化庁の評価をお聞きしたわけですが、現在わかっているところでは、かめ棺が約二百基、人骨が八十体発掘されたようです。そういうことで、西日本あるいは全国でも有数な古墳群であろうと、このように佐賀大学の先生も言っておられるわけですが、そういった重要な評価すべき遺跡であるならば、もう少し積極的にやっていただきたいと思うのです。
 もう一つは、知らなかったということですが、これは郷土史家の松尾禎作という方が膨大な本にこのことを言っておられるわけですね。そして、私も見ましたが、古墳は男塚、女塚ありまして、上のほうに大体一メーターか一メーター五十のところに石棺がある。その下三メーター、四メーターのところにかめ棺が約二百あるわけですね。最初は、県の教育委員会のほうの調査団は、わずか十八日間で調査を打ち切っている。ところが、佐賀大学の学生約二十名がブルドーザーに追われながら調査をしてかめ棺を二百発掘した、こういう状況ですが、私は前委員会でも山口県の綾羅木の実情を質問したことがありますが、あそこの場合も、高校生、大学生がブルドーザーの前に立ちはだかりながら一生懸命になって民族史料である古墳を発掘していた、そういうことなんですが、今度の場合も、県の教育委員会の調査団が中止した。まあ理由は業者との約束の期限が切れたということでやめておりますけれども、このような貴重な古墳であったからこそ、佐賀大学の学生も、ブルドーザーに追われながら発掘して、そうしてこの膨大な二百に及ぶようなかめ棺を発見している。かめ棺自体も、私の見たところでは、非常に優秀なかめ棺なんですね。二百もいったいだれがつくったんだろう。おそらくその近辺で野焼きでこのかめがつくられたに違いない。あのような大きなあのようなすばらしいかめができたということは、やはりそういう要素もあったのではないか。また、人体も、骨折のあとが見られたり、それを治療した医術的な当時の技術というようなものもわかる。あるいは、古墳群ですから、男女の比率とか、あるいは身長によって体格のぐあいとか、いろいろわかる非常に重要な古墳群である。私の見たところ、付属装飾のものがあんまり出ていないんですね。盗掘されたのかどうか知りませんけれども、幾分盗掘されたのでしょうということを言っておりましたが、付近にまだ小山があって、私の貧弱な頭で考えても、ああ、あそこにはまだありそうだ、あそこにはひょっとしたらその辺の豪族といいますか貴族といいますか、そういったものの古墳もあるんじゃないか。ほとんど庶民的な古墳群でありますから、そういうことを考えますと、これは相当大事な古墳群じゃないかと思うのですけれども、教育委員会が調査を打ち切った段階でまた学生が探究して発掘した。山口県の例もありますように、私は、こういった学生たちが一生懸命になって民族の尊い史料を発掘している、こういう状況を見まして、考えねばならないことじゃないか。いま文部大臣の保護か開発かという御答弁もありましたけれども、学生のこういった姿に対する文部大臣の考えをまずお聞きしたいと思います。
#121
○国務大臣(高見三郎君) 私は、現段階におきましては、こうした埋蔵文化財というものは、歴史的な民族の遺産でありますから、これを大事に保存し、われわれの次の世代の文化をつくり出すという意味においてはこの文化財の保護にはぜひ特段の力を入れたい。これはいま矢追さんにお答えを申し上げたとおりであります。御承知のように、狭い国土でやたらに開発が行なわれております。この競合が場合によれば日本を荒廃させる一つの原因にもなっておると思うのでありまして、そういう意味から申しまするというと、われわれがやらなければならぬ仕事は、こうした文化財というものに対する認識を変えなければならぬ。観点を変えて私どもは文化財の保護に当たっていきたい、かように考えておるわけであります。
#122
○内田善利君 先ほど答弁がありましたが、発掘についての原因者負担、受益者負担、こういう立場から開発公団は発掘調査並びに報告までやるわけですから、文化庁に対する報告までの人件費を開発公団、道路公団等で持つのじゃなくて、私は国民が受益者だと思うのです。そういった開発公団等がそういうふうに受益者負担、原因者負担ということで負担すること自体が大事な民族の遺産を破壊していくんじゃないか、こう思うので、国庫補助等をして調査すべきじゃないかと思うのです。いま申し上げましたように、松尾禎作氏のお話では、近くの森にはまだ遺跡があると。しかも、私は、それは先ほど申しましたような遺跡があるのじゃないかと、そのように思うわけですが、そういったものに対する事前調査、そういうことも国庫補助でなすべきだと思うのですが、この点はどうでしょう。
#123
○政府委員(安達健二君) 先ほどのことをちょっとだけ申し上げさしていただきたいのでございますが、このかめ棺の保護の問題と、かめ棺を掘り出したあとの土地の問題とは、一応区別して考えておるわけでございまして、かめ棺自体は、これは十二分に完全に確実に調査をする必要がある。そして、また、それを保存していかなければならないということを申し上げておるわけでございまして、したがいまして、そういうものについての十分な調査を終わった後でなければ工事に取りかからないように今後とも十分指導をしていきたいということでございます。
 それから第二の発掘調査の原因者負担の問題でございますが、この点につきましては、かねがねから先生の御指摘もあったところでございます。開発工事等に伴う発掘調査の費用の負担につきまして、国なり地方公共団体が全部負担するか、あるいはその原因者である工事担当者も負担するかという問題につきまして、これは世界的には両方の傾向がございます。原因者だけに負担さしているところと、全然負担さしていないところとございます。わが国はいわば両方の制度を採用しておるわけでございまして、考え方として全部国または地方公共団体において負担をすべきであるというお考えも十分わかりますけれども、また、現在の状況からいたしますと、逆に原因者が負担することによってこういうものについての意識を十分持ってもらうということもまたそれなりの意味もあろうかと思いまするし、その土地について付着しておるいろいろなものについて十分な費用負担した後においてその土地の所有者が使い得るようにするということも公平の原則からすればある程度十分うなずけるところもあろうかと思うわけでございまして、この点につきましての将来の課題といたしましては検討に値するわけでございますが、現在のところはやはり両建て主義をとっていくことが適切ではないかと思っておるわけでございます。
#124
○内田善利君 事前調査は……。
#125
○政府委員(安達健二君) それは、私どもとして現地とも打ち合わせいたしまして、そういうものの可能性があるならば、やはり十分調査した上で工事に取りかかるべきものと考えます。
#126
○内田善利君 五月二十七日から再び県は調査を始めているわけですが、これについての国庫補助ですね、これは出していただけますか。
#127
○政府委員(安達健二君) 現在、県とも話し合いをしておりますけれども、やはり相当大規模な住宅地造成をやっておるわけでございますから、それ相当の負担を会社がするというのが当然ではないかと思います。これは町が住宅地を誘致するということで非常に熱心になっておられることからして若干公共団体側の姿勢が弱いようでございますけれども、私どもとしては、事前調査は十分やり、それはやはり当該事業者が負担をしていくという体制をとっていくほうが望ましいのではないかと思っておるわけでございます。
#128
○内田善利君 時間がありませんので進めますが、盗掘が非常にあちこち起こっているわけですが、これに対する取り締まりというか、そういうのはないわけですか。非常に心ない盗掘等がなされておると思いますけれども、文化財だからいいだろうというような簡単な考え方で行なわれているのか、それはよくわかりませんが、ある教育委員会ではそういった盗掘に対する文化財保護のためのパトロールが必要ではないかというようなこともいわれているわけです。ところが、その教育委員会が、文化財保護関係は非常に貧弱といいますか、人員も少ない、そういう状況ですから、これはやはり埋蔵文化財の盗掘についても対策を講ずべきじゃないかと、このように思いますが、この点はいかがですか。
#129
○政府委員(安達健二君) いわゆる盗掘といわれますのは、保護法上のたてまえからいえば、学術のための調査という名目になるわけでございます。それ以外に、ただ、掘り出し物はないかと思って掘る人もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、そういうものについては十分注意をするようにということを先般の都道府県の関係課長会議でも申し上げたところでございます。
 なお、そういう問題になりますと、教育といいますか、文化行政のサイドだけじゃなくて、やはり警察といいますか、そういう問題等の取り締まりという問題にもなろうかと思いますので、その点につきましてはなお十分ひとつ検討いたしまして、そういうものがかりそめにも行なわれないように十分な体制をとっていきたいと思います。
#130
○内田善利君 最後に、九州の教育委員長協議会から要望が行っておると思いますけれども、九州は、古来、大陸文化の流入の拠点であったし、古いわが国の文化発達の時代の中心地域であったわけであります。したがって、遺跡も埋蔵文化財も価値の高い貴重な文化財が多いわけですが、先ほども申しましたように、国道のバイパス、あるいは高速自動車道路、あるいは新幹線の建設などのために、国営による開発が非常に進んでいるわけですね。したがいまして、九州地方の埋蔵文化財を保護する立場から、また、調査員が非常に少ないので、それを養成する立場から、あるいは緊急な場合に調査にすぐ行けるというような機動隊をつくるとか、そういうことから、九州地方に国立の埋蔵文化財の調査センター等をつくっていただきたいという要望が出ておりますが、これについてはどのようにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
#131
○政府委員(安達健二君) 現在の埋蔵文化財の問題でいろいろな工事が行なわれる場合の発掘調査の体制が非常に不十分であるというのがわれわれの一番の悩みの種でございまして、その充実につきましてはわれわれとしても非常に望むところでございますが、現在都道府県等では非常に努力をされておりまして、三年ほど前には百二十名くらいでございましたが、いまは二百名をこすくらいに発掘調査の担当職員がふえてまいりました。今後なおしかし需要の増大する場合にどういうふうにしていくかということにつきまして、やはり県で十分なそういう陣容を整えられるとともに、それらの今後の発掘について十分な指導体制といいますか、相談にあずかるようなそういう体制を、特に一地方だけということではなしに、全国的にそういう指導なり相談に応ずるようなしっかりした機関を考えるというようなことをまず考えるべきではないかということで、具体的な方策等についてはいろいろ検討いたしておるところでございます。
#132
○内田善利君 時間が来ましたので、最後に一言お聞きしたいと思いますが、この間鳥類のことで問題にしたわけですけれども、天然記念物あるいは埋蔵文化財等については、先ほどお話がありましたように、開発か保護かという問題だろうかと思いますが、これは行政の一元化ということを私たちは要望するわけですけれども、やはり何らかの方法で環境庁と連絡をとりながらやっていただきたい。そうでないと、行政が分かれておりますと、まあいい面もあるかもしれませんが、やはり文化財を保護するという立場からそういうふうにしていただきたいと、このように思うわけですが、この点については、文部大臣、どのようにお考えでしょうか。
#133
○国務大臣(高見三郎君) 私は、環境庁の仕事は、現実に環境破壊の現象を食いとめ、環境保全をするというところが環境庁の仕事であろうと思います。したがいまして、日本民族の文化というものを伝承するという意味においての文化財保護の仕事は、むしろ文化庁がやることのほうが正鵠を得たものになるのではないかという考え方に立っております。文化財保護の問題につきましては、文化庁が発足以来今日までいろいろとやってまいりました。そのいろいろとやってまいりましたことを予算的に見ましても、今長官が就任せられましてから文化庁の予算は約四倍にもなっておるのでありまして、文化財保護の問題につきましても相当の業績をあげてきておる。ただ、日本にはたくさんの埋蔵文化財の未確定のものがございます。この問題については、さらに文化庁で検討することのほうがより正しい行き方だと、かように考えております。
#134
○委員長(大松博文君) 午前の会議はこの程度とどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。
   午後零時二十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十二分開会
#135
○委員長(大松博文君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
 教育、文化及び学術に関する調査を議題とし、午前の会議に引き続き質疑を行ないます。
 質疑のある方は、順次御発言願います。
#136
○萩原幽香子君 時間が非常に限られておりますので、きょうは、私立大学の別科、特に国学院大学問題についてアウトラインだけお尋ねをしてまいりたいと思います。
 学校教育法の第五十七条に、「大学には、専攻科及び別科を置くことができる。」とうたわれております。
  〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
そこで、まずお伺いいたしますが、現在、別科を置いている大学名をお示しいただきたいと存じます。
#137
○政府委員(木田宏君) 現在、大学の中で別科を置いておりますのは、国立大学は十校ございます。私立の大学は十五校ございます。大学の名前ということでございますが、国立につきましては、帯広畜産大学、岩手大学、千葉大学、東京農工大学、東京芸術大学、東京教育大学、岐阜大学、三重大学、大阪外国語大学、宮崎大学の十校でございます。私立につきましては、亜細亜大学、大妻女子大学、国立音楽大学、国学院大学、上智大学、昭和女子大学、聖心女子大学、専修大学、東海大学、武蔵野音楽大学、武蔵野美術大学、早稲田大学、大阪樟蔭女子大学、近畿大学、高野山大学の十五校でございます。
#138
○萩原幽香子君 五十七条の三項では、別科について、「簡易な程度において、特別の技能教育を施すことを目的とし、」云々と、こう規定しておりますけれども、先ほどお示しになりました大学の特に私立の大学では、どのような教育内容を持っておりますのか、承りたいと存じます。
#139
○政府委員(木田宏君) 多くは、被服、家政、あるいは音楽、国文等でございますが、一番数が多くございますのは芸術関係と家政関係でございます。
#140
○萩原幽香子君 別科を卒業した者はその修業年限を通算して大学の学部に編入することは法的に認められないということになっておると思いますが、その点はいかがでございましょう、大臣から承りたいと存じます。
#141
○政府委員(木田宏君) 御指摘のように、別科は、学校教育法五十七条によりまして、大学に入学と同じ資格を持っておる者が入学をしてくる教育のコースということでございます。従来、この扱いにつきましては、コースの性格上、正規の課程とは異なった取り扱いをすることが適当であるという指導をいたしております。したがいまして、特別の事情等があればまた別かと思いますが、一般的に、私どもも、別科の履修生というのが正規の課程に入ります場合には、正規の課程の入学者としてあらためて入学を願い出るようにと、こういう指導をしてまいったと考えております。
#142
○萩原幽香子君 特別の事情のある限りということでございましたが、その特別の事情とはどういうことなんでございますか。
#143
○政府委員(木田宏君) 大学は、学校教育法にも書いてございますように、高等学校卒業以上の資格のある者が入学できるようになっております。また、大学の入学あるいは転入学等の扱いにつきまして、細部の事例は当該大学において取り扱いをそれぞれの大学の学則で定めることになっております。したがいまして、私どもといたしましては、従来、正規の課程のほかに別科等を設けておりますものにつきましては、別科の履修生に対して、あらためて正規の課程を受ける場合に、最初からの履修を適当とするという指導をいたしておりますけれども、現在の法令の規定上、別科の履修をいたした者でございましても大学がその扱いをするという余地はなおあり得るというふうに考えるわけでございます。しかし、従来、文部省といたしましては、別科と正規の課程とはおのずから別のものというふうに指導してまいっておりますから、現実にはそのような学校はないものと承知いたしております。
#144
○萩原幽香子君 文部省は、これまで教員免許行政で違法または法の趣旨に反する事案を調査検討されたことがございますでしょうか、そういうものがあれば、承りたいと存じます。
#145
○政府委員(木田宏君) にわかのお尋ねでございまして、従来、免許法の規定によりまして違法の事例があったかどうかということを一般的に調査したことがあるかどうかについては、いま私自身もちょっと明確に記憶いたしておりませんですが、本日お尋ねの予定されております国学院大学の件につきまして、昭和四十三年にも国会で免許状の授与に関して御指摘があり、当該国学院大学の関係者に事情を聴取したという経緯は聞いております。
#146
○萩原幽香子君 それでは、その国学院大学の問題についてお尋ねをしてまいります。
 お話のように、かつて、国学院大学の中に、神道研修部という、学部でも短大でもいずれの設置基準にも当てはまらない、しかも各種学校としての認可も取っていないという部門があって、いわゆる学内設置によるものがございまして、それが問題になったことは、文部省も御承知のとおりでございます。この問題につきまして、昭和四十三年五月二十四日、衆議院法務委員会でわが党の岡澤委員が取り上げまして、四十四年から募集をやめ、四十五年の三月末まででなくなったということを聞いておりますけれども、これがなくなるまで、つまり、昭和三十三年の設置以来、四十五年廃止に至るまで、どのような教育を施し、どのような扱いをしてきたか、承りたいと存じます。
#147
○政府委員(木田宏君) いま御指摘のございました国学院大学の神道研修部と申しますものは、昭和三十三年度から、中学校の二級普通免許状を取得できるコースとして文学部に二年課程を置きまして、神道研修科と称して学生を募集し、教育を行なってきた、そのことを御指摘のことと考えるのでございます。従来四年制の課程の中で二年で修了するというコースをつくって、それで二年修了の中退者の便宜をはかるという意味から神道研修科といろ科名を称していたというふうにその当時大学関係者から聴取をいたしております。その間におきましては、正規の四年課程の学校の中で二カ年で修了できる課程を設けて、そこに学生を受け入れ指導したということでございまして、これは先ほど御指摘がございました別科とはまた別のもの、本来の正規の課程の中の二カ年のコースであるというふうに承知をいたしております。
#148
○萩原幽香子君 私が聞いておりますこととはいまのお答えは非常に違うと思うのです。その研修部、いわゆる神道研修科に籍を置いたとおっしゃいますけれども、一年目は大体勉強をした、二年目は神社の実習をした、こういうことで、その部を終えた者は文学部三年に編入していた、こういうことを大学自身も認めているわけでございますね。こういうことについて文部省はどういうふうにお考えになりましたのか。先ほど局長さんがおっしゃておりますけれども、これは、昭和四十二年九月四日に国学院大学の役員会議室でもって会議が持たれました。それは責任者ばかりの会合でございますけれども、その九名の方が会合したときのテープレコーダーによる議事録がここにございます。その中に、これを読んでみますと、佐藤さんというのは第一文学部長でございますが、その人がこういうことを言っているわけなんですね。「そこでですネそこでその中学二級の国語の免許証を与える為事実短期大学なみの事をやったところで、短期大学としての申請じゃあなくて、どこまでも文学部の別科ですからネしたがって表むきになると、これは規則は通らないんです。それがまあいろいろの事件があってまあ二年生を終って卒業する時に国語の免状を従来与えておったと言う訳です。」と、こういうことを学部長さんが言っていらっしゃるわけなんですね。そういうことに対して、文部省はそれをほんとうに御存じだったのでしょうかなかったのでしょうか、まずそれを承りたいわけです。
#149
○政府委員(木田宏君) 四十三年でございましたか、国会でもこの点のお尋ねがございましたころ、当時の関係者が国学院の当時の関係者を招致いたしましてその文学部の神道研修科というものの実態につきまして調査をし、事情を聴取いたしましたところ、私どものほうに対しましては、いまお話がございましたけれども、四年の課程の中で二カ年で一応修了するような、そして二カ年で修了することによって神官としての一定の資格とそれからあわせて二カ年間で国語の免許状が授与できるような履修の指導をいたしておるという返事でございまして、私どもとしてはいまお読み上げになりましたような事情については聞かされておりません。
#150
○萩原幽香子君 これは前にも問題になったところでございますから、こういった学校の責任者が、これはいろいろ事件があって卒業するときに国語の免状を与えたのだけれども、これは規則では通らないことなんだということをはっきり言っているわけなんですね。そういうことについて御存じなかったということは、私は文部省としてはこれは通らない話というふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
#151
○政府委員(木田宏君) 当時の関係者のそれぞれのやりとりでございますし、また、つい最近も、このことについての御質問ということで国学院の関係者から私どもの担当者が聴取いたしましたところ、先ほどからお答え申し上げておりますように、四年課程の中の二年修了のコースであるという説明でございまして、そのように承知をいたしておるわけでございます。
#152
○萩原幽香子君 それじゃ、この神道研修部というものの性格はどのようでございますか、それをまず承っておきましょう。
#153
○政府委員(木田宏君) 神道研修科と申しますのは、文学部の中にございます四年制の正規の学科の神道学科、文学科、史学科のそうしたコースに一応並ぶものと言うとおかしゅうございますが、二年の課程で神道につきましての一定の単位を取りまとめて教えるコースというふうに理解をいたしております。
#154
○萩原幽香子君 それじゃ、その神道研修部というものが、ほかの学部と一緒に、そういうものはないはずなんだけれども、そういうものが学内に設置されていたという事実は、御存じなんでしょうか、いかがでしょう。
#155
○政府委員(木田宏君) 四年の学部の中の一つの履修のコースとして、二年であるまとまった履修内容を与え得るコースとして昭和三十三年から設置しておったということは、承知をいたしております。これも学内の学部の指導上の必要から設けたコースというふうに聞いておるわけでございます。
#156
○萩原幽香子君 そうしますと、この神道研修部というものは、実は、これは学内いわゆる国学院大学の学校で設置をした学内設置ということなんでございましょう。そういうもので二年を終えたときに、中学校の二級免許状の交付を学校が申請してこの交付を受けた事実があるということは、ちょっとおかしいじゃございませんか。いかがでございましょう。
#157
○政府委員(木田宏君) この神道研修科と申しますのが文学部に設けられましたコースであるということは承知をいたしておりますが、これは四年課程の中の二カ年の課程でございますから、その課程で所定の単位を修得いたしました者に免許状が授与できるということは、適法にあり得ることと考えております。
#158
○萩原幽香子君 それじゃ、そういうものであれば、なぜ四十四年にそれを廃止しようということに踏み切ったのでしょうか。
#159
○政府委員(木田宏君) 従来からこの国学院大学が一年課程の別科というものを神道研修の一類として設けておりまして、これが昼・夜、一部・二部とそれぞれにありたわけでございますが、その一年の別科と、この二年の正規の課程で履修を経てそこで別途の資格を取り得るコースということのまぎらわしさということにつきまして、私どもも、これを明確にするようにという当時の関係者に指導をいたしました。そうして、大学当局におきましても、正規の学科のほかにコースとしてこうした扱いを受けることはいろいろの誤解を引き起こすことにもなりかねないという意味において、昭和四十四年以降この入学募集を停止したというふうに承知をいたしております。
#160
○萩原幽香子君 これがもしすっきりしたものであって意味のはっきり通るものであれば、別に廃止をする必要がない。ところが、その廃止に踏み切ったというところには、いろいろまぎらわしい問題があったということは事実だと思うわけなんですね。さらに、この神道研修部を経て文学部三年に編入した、その後学部を卒業させて教員免許状を取得させた、こういうことを聞いているわけなんですけれども、この点についてはいかがでございますか。
#161
○政府委員(木田宏君) 当時、学内の措置として設けられておりました神道研修部というのは、一応二年であるまとまった資格を履修できるようなコースとして設けられたものでございまするから、多くの者は、その二年のところで、いわば二年修了という形で神官のある資格をとり、また免許状をもらったということもあるようでありますが、これは正規の二カ年の課程でございますから、引き続き在学を希望します者が三年次以降に在籍をいたしまして所定の勉強を行ない、学士としての卒業をするということは、当然予想できるところと考えます。
#162
○萩原幽香子君 この神道研修部といういわゆる廃止になりましたもので、四十五年の卒業生が、もうこれでやめになるというものが、文学部の三年に編入している、こういうことはあってよろしいことなんですか。
#163
○政府委員(木田宏君) 先ほども申し上げましたように、これは四年の課程におきます二カ年の履修コースでございまするから、それを終わった者がさらに引き続き学部の課程に在籍をいたしまして三年次以降の教育を受けるということは、あり得ることと考えます。
#164
○萩原幽香子君 局長さんのおっしゃることと、私のお尋ねしていることと、どうもかみ合っていないように思うのです。いわゆる神道研修部というものは、認められていない、学校の中の設置であったということなんでございましょう。そういったものを文学部の三年に編入するということは、認められてよろしいことなんですか、いかがでしょう。
#165
○政府委員(木田宏君) 先ほどからお答え申し上げておりますように、文学部の正規の課程の履修の一つのコースとして二カ年の課程を設けて学生の教育指導に当たってきたわけでございますから、そこを修了した者が引き続き三年次以降の教育を受けるということは、本人が希望いたします場合に、それは当然あり得る措置だというふうにお答え申し上げたわけでございます。
#166
○萩原幽香子君 どうもおかしいですね。その神道研修部というものは、学部でもなければ、短期大学でもないと。そうしてまた、各種学校としての認可もとっていないと。これは学校の中でかってに置いたものだ。学校の中でかってに置いたものなら、それは置いたということについては私は違法だとは申しませんけれども、それをちゃんとした学部に編入するということについては、やはり問題があると思うのですね。これはどうなんですか。
  〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
#167
○政府委員(木田宏君) 国学院の当局者の説明によりますと、この神道研修科と申しますものは、国学院の文学部の中に設けられました履修のコースと聞いておるわけでございます。ですから、正規の文学部の中の課程でございまして、そのいわば一部分でございまするから、四年間で卒業する学科のコースではなくて、二年間である所定の単位を取って卒業し得るコースであるということでございますから、その二カ年間は正規の四年の大学教育の中の一部であるというふうに考えておるわけでございます。
#168
○萩原幽香子君 そうしますと、先ほど私が申しました短期大学でもないし、学部でもないと。だから、二年間で出るときにこういうものを出すことは規則は通らないのだけれども、二年終わったときには国語の免状を与えているのだと、こういうことを自分で言っていることと、いま局長さんのお答えとの間には、非常に矛盾があると思うのですけれども、それはいかがでしょうか。あんまりまぎらわしいことをおっしゃっていただくと、私の頭が混乱するわけでございますけれども、これは明らかに大学の設置基準というものに当てはまっていないものなんですよ。その設置基準にないものを二年やったからといって、そのまま文学部の三年に編入するということは、私はこれは違法だと思うのですが、その点はいかがですか。
#169
○政府委員(木田宏君) 実態の認識にかかわることでもございましょうけれども、私どもも当時調査をし、また、昨日関係者から事情を私どもの担当者が聴取いたしましたところによりますると、この神道研修科というのは、文学部の中に設けました二年課程の履修コースであるということでございます。そういたしますならば、これは正規の文学部の中に設けられたコースでございまするから、その履修生が希望した場合に三年次に編入されていくということは当然あり得ることと考えます。
 また、なぜそういうことが起こり得るかと申しますと、免許法は、正規の四年の学部教育の中で二カ年以上在籍をいたしまして所定の単位を履修した者に免許状が授与できるという免許法の制度になっておりまするから、四年間在籍しないで二年間在籍して免許法に規定いたします所定の単位の履修が取れるような指導の教育のコースというものを設け得ることは、これはあり得ることでございますから、ですから、学内の措置といたしまして学部の中に二年間で免許法による所定の単位が履修できるコースとしてそういうものを設けて、修了した段階で免許状の授与も考えてやろうということは、教育上の措置としてあり得ることでございまするから、私ども、そのことにつきまして、法令の規定の上で取り扱い上に疑義があると、こうは考えておりません。
#170
○萩原幽香子君 それじゃお尋ねしますけれども、私の取得した資料によりますと、昭和四十三年の三月十四日に東京都の教育委員会が国学院大学へ立ち入り検査を行なったということを聞いておりますが、そのとき文部省は同行されましたか。
#171
○政府委員(木田宏君) その事実は、私は承知をいたしておりません。
#172
○萩原幽香子君 このときに文部省が同行されなかったということがこの「国学院大学の正常化問題」に出ているわけでございますね。これほど大切な問題でなぜその立ち入り検査に同行されなかったのかと私は考えます。そうして、いま私がお尋ねしますと、ちゃんと単位が取れるようになればその上へ編入されることは何らふしぎはないとおっしゃいますけれども、そのいわゆる神道研修部でやっておりますことは、神官の養成がおもでございますから、一年目は勉強するとしても、二年目は全然勉強はしない。神社へ行っていろいろ実習をしているんだと、こういうことなんです。そういう中で国語の免許状が与えられるような履修がされているかどうかというところに私は非常に疑問を感じるわけなんです。ところが、いかにもそれを局長さんは取れているんだから私たちの知ったことじゃないといったような、そういうふうにも聞こえるような御答弁でございますけれども、これは私は非常に問題だと思うのです。
 そこで、そのときは相当寛大な措置で済まされたというふうに聞いております。これはもちろん教員免許状を発行した当の教育委員会と、それを申請した学校との関係でございますから、寛大な措置がとられたということはわかるといたしましても、文部省はこれを監督する立場でございましょう。そうしますと、法に照らして厳正な措置を講ずべきだと思いますけれども、このときに文部省は都教委からどのような報告をお受けになりましたのか、承りたいと存じます。
#173
○政府委員(木田宏君) たいへん恐縮でございますが、ちょっといま当時の関係資料を持ち合わしておりませんし、関係者もかわっておりますので、いまのお尋ねの点につきましては、別途調べてお答えを申し上げたいと思います。
#174
○萩原幽香子君 でも、先ほど、局長さんは、大学に聞き合わせたところがこうだったああだったというお答えを盛んにしていらっしゃるにもかかわらず、このことについてはどんな報告を受けたかその当時のことはわからないとおっしゃるのは、少しおかしいのじゃございませんか。
#175
○政府委員(木田宏君) 先ほどから大学の関係者から私どもが聴取いたしましたことにつきまして私がお答えを申し上げておりますが、いまお尋ねのございましたのは、都の教育委員会が国学院大学の調査をして、文部省にどのような報告をしたかということでございますから、その報告の有無その他についていま恐縮でございますが私は承知をしておらないというお答えを申し上げたわけでございます。
#176
○萩原幽香子君 そもそも、教育委員会が国学院大学に立ち入り検査を行なったということそのこと自体が、文部省としてはよほど注意をされてよろしいところではないかと思うのです。そういうことをされておるのにもかかわりませず、そのときには同行もしておられませんし、そうしてまた、そのあとの報告も聞いてちゃんとしたものに残していらっしゃらないというのは、私がこうした質問をするということに対しての準備不足ということにならないでしょうか。
#177
○政府委員(木田宏君) 免許状の授与につきましては、教育職員免許法の規定によりまして都道府県の教育委員会が授与することになっております。授与につきましていろいろと疑義のありました点は、必要関係書類その他について、授与権者である教育委員会から、その資格を認定した、単位の認定その他を行なった大学その他の教育機関に照会もし、必要があるならば調査をするということはあり得ることだと考えます。
#178
○萩原幽香子君 こういうことがいままでにずいぶん長くあったと。それじゃ、お尋ねしますけれども、この神道研修部を出まして、そして二年課程でよろしゅうございます、とにかく国語の免許状をもらった人が、全国で大体どれくらいございますか。
#179
○政府委員(木田宏君) 東京都の教育委員会を通じましてその点につきましては数を知らされておるわけでございますが、昭和三十三年にこのコースができまして、三十五年から卒業生が出ております。三十五年の三月に免許状を取得いたしました者が三十名、一番たくさん取得者の出ましたのが昭和四十二年、四十三年でございまして、ともに五十七名でございます。大体三、四十名ずつ免許状が授与されております。
#180
○萩原幽香子君 そうしますと、いま現に中学の国語の教師として勤めている人はどれくらいございますか。
#181
○政府委員(木田宏君) これはその後のことにつきましてどこまで正確であるかどうかわかりませんけれども、教師に就職をいたしました者は、三十五年に一人、三十六年に二人、三十七年に一人、三十八年に三人、合わせまして七名ほど教師に就職をしているように聞いております。
#182
○萩原幽香子君 その先生方は国語の免許状でございますけれども、いま僻地の学校に参りますと、無免許運転というのもかなりあるわけでございますね。そういったようなことから考えますと、国語の先生としては七名ということかもしれませんけれども、ほかの教科を担当している場合も考えられると思うわけなんですね。そういうことについて調査をされたことがございますか。
#183
○政府委員(木田宏君) その点は、私ども、卒業生の動向でございますので――先ほど都の教育委員会からと申し上げたのは間違っておりまして、大学からの報告によりまして卒業生の動向として教師の就職者が七名ほどあるというふうに申し上げてお答えを変えたいと思いますが、それらが現実にいまどこの学校で何の教科を担当しているかということまでの調査は現在できておりません。
#184
○萩原幽香子君 そこで、局長さんは、免許状を渡したことに対しては別に違法ではないようなお話をずっとされてきているわけでございますけれども、これを見ますと、国語の先生の免状をもらうということは間違っているんだということをはっきり大学側が認めているわけなんでございますね。そういったような違法な免許状の与え方というものに対して、一体、どういうふうにお考えになっていらっしゃるのでございましょうか。
#185
○政府委員(木田宏君) 免許状の授与にあたりましては、履修した教育機関からの所定の書類等を審査いたしまして、各都道府県の授与権者が授与いたすわけでございます。その際に、大学側から提出されます必要書類が内容を十分証明し得るものであることでなければならぬことは、言うまでもございません。その実質的な内容について疑義が起こりました場合に、授与権者がいろいろとその実質について教育機関当局に照会をするということは願わしいことでございまするし、免許状の実質的な内容を充実するという意味において必要なことでございまするから、書類の上での処理が整っておりましても実質の伴わないようなそういう教育の内容というものは是正をしてもらわなければならぬことは、言うまでもございません。
#186
○萩原幽香子君 局長さんのお答えは、ずっと、とにもかくにも、文学部の中の二年課程のいわゆる神道研修科と、こういうようなことのお答えがおもだったわけでございますけれども、それじゃ、角度を変えまして、別科というものはどういうふうになっておりましょうか。この国学院大学の大学院の中の別科というところはどういうふうになっておりますか、この点をちょっと承りたいと思います。
#187
○政府委員(木田宏君) 国学院大学の神道専修の別科につきましては、神道専修の一類と二類と二種類がございます。一類につきましては、一部・二部、昼・夜でございますが、二つに分かれております。それぞれ入学定員は四十名ずつでございますが、神道専修一類は修業年限が一年でございまして、これは昭和二十六年から設置をされたものでございます。道神専修二類は修業年限二年でございまするが、これは夜間でございまして、昭和四十四年に設置をされたものでございます。
#188
○萩原幽香子君 別科の人たちもまたやはり大学のほうへいわゆる編入をされているという事実があるわけでございますが、これは、局長さん、御存じでございましょうか。
#189
○政府委員(木田宏君) 大学側からそのことにつきましてはまだ報告を聞いておりません。あるかどうかもそのことにつきましてちょっと聴取をいたしておりません。
#190
○萩原幽香子君 これはたいへん大事な問題でもございますし、私どもの党へもこういうことについてのいろいろな投書も来ているわけでございますから、十分調べていただきたいものだと思います。そうして、その結果というものは、もちろん全く別なものでございますから、それが大学の学部のほうへ編入されるということは違法であることは、十分御存じのとおりでございます。そういうことが平然となされているということについてまずお考えいただかなければ、この問題の解決はできないと私は考えます。
 それから先ほど申しました神道研修部というところの卒業生が国語の先生の免許状をもらっているということについてわが党でもいろいろ問題にしたことがございまして、当時の文部省の方にもいろいろその点については御心配をいただいた。そうして、これはまことに申しわけのないことだから、補習というようなこともやらせて考えてまいりたいという、そういったようなお話もあったやに私は聞いております。そういったような力不足の人に免許を与えてそうして現場に送り込んだということは、文部省としても、これは、存じませんでしたでは済まない問題でございましょうから、そういった人に対する補習をやるというようなお約束があったかと聞いておりますが、その後どういうふうな措置をおとりになりましたのか、承りたいと存じます。
#191
○政府委員(木田宏君) いろいろと先ほどからお答えを申し上げてまいりましたように、文学部の中に設けられましたコースとしての神道研修科が取り扱い上の疑義を起こすことがあってはならぬということで、この履修のコースの扱いを是正いたしまして、別途神官の資格をとるための二年課程の別科を別に設けるとともに、従来のやってまいりました教育のコースを正すという措置がとられたわけでございますが、しかし、その間、御説明も申し上げましたように、文学部の中に正規の課程としての二年の課程が置かれてきたわけでございますが、一応免許資格としてはその履修の単位そのものの認定が事実と間違っておるということでない限り、これは適法な免許状が授与されたものというふうに考えられるわけであります。また、免許状としては適法なものが授与されておりましても、実質的にその教師の指導力が十分でないではないかという問題は、これは任命後いろいろとそれぞれの教育委員会におきまして現職教育その他を通じて常時教職員の資質の向上ということをはかるべきものでございまして、当該教育委員会におきましてその必要が個々の職員について感じられる場合にはそのことがとられることになるはずだというふうに考えます。制度といたしましては、文部省がこれについて補習を行なうとか、そういうたてまえになっておりません。このことだけお答えをしておきます。
#192
○萩原幽香子君 そうです。文部省が補習をしてくださいということにはならないと思いますけれども、そういうことをやらなければならないというその指導助言はしていただかなければならない立場ではなかろうかというふうに考えるわけなんですね。そこで、いま非常にややこしく問題がなってまいりましたので、この問題はあとでお聞きをしてまいりたいと思いますが、いわゆる神道研修部としての二年課程を終えた者、それから別科としての二年課程を終えた者、あるいは文学部の中のいわゆる神道研修科としての二年の勉強をした人、それぞれにあると思います。それがいまお答えを聞いておりましても非常にこんがらかっておりますので、このことにつきましては後ほどまた随時詳しくお尋ねをしてまいりたいと思います。
 要するに、教職員の質の向上がやかましく言われております現在、このような自分のほうで認めておりますような不当な手段で免許状の交付を受け、実質的に教職員として修めるべき単位も取らないで学校教育の現場にあるということは、私はゆゆしい問題だと考えるところでございます。この点については文部大臣のはっきりしたお考えを承っておきたいと思うわけでございますが、文部省は、教育職員免許法第二十一条に照らしてこういったような問題をどのような措置をおとりになるおつもりなのか、承っておきたいと思います。これは文部大臣のほうからひとつお答えをちょうだいしたい。
#193
○政府委員(木田宏君) いま御指摘のございました教育職員免許法の二十一条は罰則規定でございまして、免許法の規定に違反して免許状を授与しまたは検定を行なった者に罰則があるという規定でございますが、しかし、本件につきましては、国学院の文学部神道研修科を二年のコースとして履修をいたしました者が、所定の単位を修得いたしまして東京都の教育委員会等から免許状の授与を受けておるわけでございまして、都の教育委員会に照会をいたしましても、その間の修得単位その他については正規のものに基づいて授与しておるわけでありますから、二十一条に関する違反の事案はないものというふうに考えております。
#194
○萩原幽香子君 それは違います。ですから、もう少しよく調査をしていただきたいと思います。これは私に対して答えていただくということではなくて、私学の振興という立場から国民全体が見守っている問題として考えていただかなければいけないのではないかと思います。いまあなたがお答えになりましたのは、国学院大学の文学部としての神道研修科、この問題についてのみのお答えでございます。私がお尋ねをしておりますのは、そういったことをお尋ねしたのではなくて、いわゆる学部でもない、短大でもない、そして各種学校でもない、こういうところを学内で設置してそこのところで卒業生を出し免状を出しているではないかということが、現実に自分たちとして反省がされているのにもかかわらず、いまのようなお答えは全くいただけないと私は思います。だから、こうした点については文部省としてももう少ししゃんとした姿勢でもって調査をしていただきたい。そのとき私たちは行きませんでした、そんなことについての報告はただいまのところ私たち受けたのか受けないのかはっきりしませんから、またあとで調べて御返事しますと、そんなようなお答えは私は全くいただけないと思うのですよ。だから、こういう点について、私は、もう時間がまいりましだから、後日このことについてはもう少し詳しくお尋ねをしてまいりますから、もう少ししゃんとしたお答えがいただきたいと思います。
 終わります。
#195
○加藤進君 文部大臣にお伺いいたします。
 文部大臣は、去る六月二日の衆議院文教委員会において、テルアビブ空港でのあのような殺人事件に関連して、現在の大学の管理体制を強める新しい立法が必要という意味の発言をされたと思います。これは大学管理法をつくるというお考えを示しておられるのかどうか、この点の真意を伺いたいと思います。
#196
○国務大臣(高見三郎君) 私が大学管理について新しい考え方を持たなければならぬという意味のことを申し上げましたのは、現在の大学の管理の状態でこのまま推移いたしまして、時限立法であります臨時措置法というものが二年のうちには失効いたします。その場合に、一体、いまの大学の管理能力で適切な管理ができるかどうか。大学が十分な反省と十分な努力をするならば、何も新しい大学管理法をつくる必要は毛頭ありません。私は、できることならば大学は大学の自治によってすべての問題を解決してもらいたいと考えておるのでありまするが、現状のままで推移するならば、やむを得ずそういう状態が起こらざるを得ないであろうということを申し上げたわけなんです。その点は誤解のないようにひとつお額いをいたしたいと思います。
#197
○加藤進君 すると、現在では特に立法するという具体的な意図はないと、こう理解していいですか。
#198
○国務大臣(高見三郎君) 現在、私どもは、大学管理法についての立法の準備も措置もいたしておりません。ただ、私は、大学当局の良識ある管理の体制というものが一日も早くでき上がることを心から期待をいたしております。
#199
○加藤進君 そこで、テルアビブのあのような殺人事件、あるいは浅間山荘における赤軍の事件、こういうものと、大学の管理運営をいま変えなくてはならぬ問題とは、一体、どういう関係があるのか、ちょっと御説明を願いたいと思います。
#200
○国務大臣(高見三郎君) 私は、浅間山荘事件のときに、固有名詞はあげませんが、大学の対応のしかたについては、はなはだ不満なものを感じております。いかにも手ぬるいという感じがいたしておるのであります。その意味において、大学当局に対しては、私は、十分反省を促すだけの警告もいたしましたし、通達もいたしたのであります。実は、一昨日も、次官名をもちまして、今度の事件を一連の事件として考えまする場合に、六年も七年も留年をしておる。しかも、その留年しておる学生を大学当局は把握しておらない。それから単位にいたしましても、単位は四年も五年もおりまして大体二十単位そこそこの連中がああいう事件に加わっておる。まあ、岡本という学生は別であります。あれは非常にたくさんの単位を取っておりましたが、あとはほとんど二十単位から三十単位です。その他、大学が、長期欠席をしており、しかも単位を取らないと、この学生を、教育者の立場から考えましても、学部長なり主任教授なりが、お前一体どうしているんだということを聞くのが私はあたりまえだろうと思う。それをやらないでおいて大学の自治だとか何とかいうことだけで済む話では私はないと、こういうふうに考えます。
#201
○加藤進君 先ほどの岡本という学生の問題について、鹿児島大学では、休学届が出されたが、しかし、これについて直ちに受理するのでなしに、家族両親に確かめた。確かめた上でこの休学届を受理しておるというようなきわめてきめのこまかい配慮をしてやっておられるように私は見受けます。こういうことは、決して鹿児島大学だけの問題ではなしに、どこの大学でも多かれ少なかれ努力は払われているのであります。しかし、にもかかわらず、そのような大学から暴力学生が盛んにあばれ回る、こういう事態について、文部省あるいは政府はどのような措置を現にとられておるのでしょうか。
#202
○政府委員(木田宏君) 文部省では、学生の日ごろの指導につきまして、学生部長会議等を通じまして、学内におきます学生の教育指導そのものが充実徹底するようにということを中心に日ごろから連絡を密にし、協力もいたしておるところでございます。しかしながら、遺憾ながら一部の学生で学外に飛び出してしまいまして非常に激しい活動に出る者があることはまことに遺憾でございますが、私どもといたしましては、大学のそういう関係者と協力をいたしまして、できるだけそうした学生の掌握につとめる、そして相互にできる連絡は緊密にしていく、こういう心がけで行なっております。一番基本となります点は、学内における教育指導の体制が充実し、学生に対して満足のいくような教育指導そのものが行なわれることでございまするから、教育内容の改善充実という点を中心にいたしますとともに、先ほど申し上げましたような矯正補導上の措置をとっておるわけでございます。
#203
○加藤進君 私がいま問題にしておるのは、もうわれわれが見のがすことのできない重大な犯罪者としての暴力学生の問題について言っているわけです。大学もそれなりの努力をしておることは皆さんも御承知のとおりです、いまおっしゃったように。しかし、文部省はどうですか、ほとんど何にもやっておらないじゃないですか。第一、東大にしろ、早稲田大学にしろ、法政大学にしろ、その中をいわば根城にして公然と活動しておる暴力学生、これはもう名前まで明確になっておるはずじゃありませんか。こういういわば犯罪的な学生に対して、学内に籍があるからといって学生のように見ている、これを指導する、これを善導する、こんなことで、はたしてこの問題が解決できると思いますか。彼らは、学校を破壊しています。学校を占拠しています。われわれ国民の財産まで彼らの手でじゅうりんされています。学生はリンチを受ける、先生も学校へ入れない、こんな学生がうようよいるこの現状に対して、一体、文部省は何をやっているか。善導でいいですか。彼らの指導だけでこれで解決できますか。私があえて言いたいのは、このようなはっきりしている学生に対して、文部省のなすべきことがある。それは大学当局を激励し指導して、このような学生諸君を学内から排除することじゃないですか。取り締まることじゃないですか。必要ならば警察の力を借りてもいいじゃないですか。このことを何一つやらないで、結果において、大学当局の責任だ、大学当局の指導が悪い、大学当局の処置が悪い、そのことで今日まで問題の所在を不明確にしてきたのが文部省であります。私はそのことについて重ねて所見をお聞きしたい。
#204
○政府委員(木田宏君) いま御指摘がございましたように、文部省としては、いろいろな諸会合その他を通じまして、大学当局に、学内における秩序の維持、学生の指導の徹底ということにつきまして、また、非違を犯した学生に対する処置の適正ということにつきましても、機会のあるごとに指示をいたしておるところでございます。しかしながら、処置をとるべきものは大学当局であり、また、犯罪に対してその是正を行ないますのは治安当局でございまして、文部省といたしましては、大学当局に対しまして、いま御指摘がございましたように、自覚を促し、その明確な大学当局としてとるべき措置をとるように要請をするというのが私どもの立場だと心得ております。
#205
○加藤進君 では、具体的に聞きます。去る四月三日、衆議院の予算委員会で、わが党の松本君が、東大、早大に起こっておる事態について文部大臣に質問をいたしました。このとき、文部大臣は、このような事態は知らなかった、直ちに調査して事態の解決に努力したいと答弁をされております。それでは、東大はいまどのような状況になっておるのでしょうか。特にここで問題になったような医学部精神科の病棟は、一体、現状はどんなようになっておるのでしょうか。
 それからもう一つ、早稲田大学のこういう暴力学生のばっこの状況、封鎖の状況は解除されておるのでしょうか。もうすでに時日は相当たっています。どのような処置をとられたのか、その点を具体的にお話し願いたいと思います。
#206
○政府委員(木田宏君) 前回、衆議院で、東大精神科の現状について是正を求めるような御指摘がございました。その前後におきまして、また、その後引き続き、私どもは、関係者に機会を得てその後の状況の是正について依頼をいたし、善処方を常に求めておるところでございますが、東大の精神科の実情から申しますと、精神科の病棟で御指摘になりました事態そのものは改善されておりません。その是正方につきましては、御指摘のありましたあと、大臣からの御指示もございまして、私ども、東大の医学部長、病院長にその旨も伝え、すみやかな是正措置をとるように重ねて依頼をいたしました。また、東大の学長に対しましても、東大の精神科の病棟の無秩序な状態の是正ということにつきましては、私からもその善処方を二度にわたりまして直接依頼を申しました。しかしながら、東大病院の中の体制が、いま御指摘がございましたようなことについてどう処置をすれば是正できるものかどうかという点についての見通しが立たない関係と思いまするけれども、関係者をできるだけ同じテーブルにすわらせて双方の合意点を見出すべく努力はいたしておりまするけれども、それ以上の事態の進展を見るに至っていないということは遺憾でございます。
 早稲田大学の件につきましては、一部の学生諸君が入校ができないというような御指摘があったかと記憶いたしておりますが、大学当局につきましては、学内に若干の混乱の状態があるということはなお承知はいたしておりますけれども、学生が安心して授業を受けられないというような事態にはなっていないはずだという返事をそのときに聞いたかと考えております。今日の状況につきましては、ただいまのところ正確にそれがどういう事態になっているか、恐縮でございますが、私は承知をいたしておりません。
#207
○加藤進君 それではお聞きしますけれども、東大精神科病棟のいわゆる赤レンガと称せられるところにはどういう連中が巣くっていますか、御存じですか。これは浅間山荘の連合赤軍の関係者が入っておるのですよ、連合赤軍の関係者が。そうして、その連中のために正規の教職員さえこれに近づけないのです。こういう事態を現に目の前にしておきながら、お互いに話し合いのテーブルにつかせるとは、どういうことですか。大学は被害者ですよ。被害者としての大学学生諸君に対して、加害者であり凶悪な犯人に対して、同じテーブルにつかせるというのは、一体どういうことを考えておるのですか。一体、文部省は、犯罪者と認めておらないのじゃないですか。殺人をあえて犯す、人を殺傷する、殺傷するばかりか、大学の器物を破壊する、こんなことがやられておっても、なおかつ学生という籍があるからということだけで一学生としての取り扱いしかできない、こういうところに文部省が今日の事態を引き起こしておる大きな原因があるんじゃないですか。
 早稲田大学ではどうか。早稲田大学では、この問題が国会で提起されてからなお暴力事件はあとを断っていません。すでに四件の暴力事件が起こっております。
 その一つは、こういう事件です。それは六月の三日に起こりました。早稲田大学の文学部の正門に入ろうとして行った学生が、いわゆる革マル一派の諸君によって中庭に拉致され、教室内で角材で乱打され、約三時間にわたって暴行を加えられました。自力ではうようにして正門にたどりついたときに出会った学生がやっと救って、救急車で病院に運んだのです。一カ月以上の重傷だという。これが、皆さんの管理しておられる、皆さんの指導しておられる大学ですか。この大学をまだまだ大学当局の善意ある処置にまかせて、あなたたちはぬけぬけとしておられるのですか。私は、この点について、重ねて、文部大臣、これでいいのかどうか、このような状態を放置して今後ともおかれるのかどうか、この点だけをまず確かめておきたいと思います。
#208
○国務大臣(高見三郎君) 御承知のように、文部大臣は大学に対して命令権を持っているわけじゃございません。大学の内部で起こりました問題は大学で処理するということが大学自治の基本的な原則であることは、加藤先生も御承知のとおりであります。警察官を導入すればいいじゃないかとあなたはおっしゃいますけれども、文部大臣が要請して大学に警察官を入れるわけにはまいりません。大学当局が警察官の導入を要請するならば、それは私はまことにけっこうなことだと思います。東大病院のごときは、進んで大学がやるべきであると私は考えております。それをやらないところに、私がさっきから申し上げる、大学の管理能力というものに私は現状のままではいけないということを申し上げておるわけなんであります。文部大臣が文部大臣の権限でもって大学に警察官を入れるというような状態が起こりましたら、それこそ教育に国家権力が介入するということになろうと思います。これは厳に慎まなければならぬ問題で、私もまことに遺憾千万と思いますけれども、その点はいかんともいたし方ないということを御承知いただきたいと思います。
#209
○加藤進君 私は、いま言われたような、直ちに警察権力を介入させろなどということを申しておるわけじゃない。問題は、このような暴力学生の諸君を文部省はどう見ておるのか、政府はどう見ておるのかということであります。犯罪者じゃないですか。犯罪を犯しておるのじゃないですか。社会的な犯罪者ですよ。社会的な犯罪者であるのに、大学の中にいるからといって彼らが思うままに活動できるような状態を今日まで許している、ここに問題があるのじゃないですか。この事態に対して、まず第一に文部大臣が責任を持って大学当局に対して積極的に協力してこのような事態を解決する、そして犯罪学生の諸君に対する処置をとり、場合によっては大学との話し合いによって警察によってある者は逮捕する、こういう処置を断固としてとるべきである。これより解決の方法はない。私はこういうことを言っているのでありまして、私が今日申し上げておるのは、何も大学の自治を破壊してまでかってに権力の介入をやれなどということを申し上げておるのでないということだけははっきりしておきます。
 そこで、もう一つ具体的に聞きます。これは警察庁も御存じのことだと思いますけれども、暴力集団の一つである反帝学評というのがあります。その拠点校は神奈川大学です。この神奈川大学では一体いまどういうことが起こっているのか、この点を私は文部省の管理局長からお聞きしたいと思います。
#210
○政府委員(安嶋彌君) 神奈川大学の最近の状況でございますが、大学からは特に正式な御連絡はございません。したがって、大学の現状がどういう形になっておるかということは詳細承知をいたしておりません。
#211
○加藤進君 御存じないというお話でございますから、まず御説明を申し上げなくてはならぬと思いますが、神奈川大学は反帝学評の暴力支配の拠点になっています。暴力を否定したからという理由だけで、大学の理事長、学長代行をはじめとする十四名の職員は学校にさえはいれない事態にあります。御存じでないでしょうか。もう一つ、この反帝学評は、大学の寮を占拠しています。寮は彼らの根城です。いわば出撃の基地になっているんですよ。(「ベトナム戦争だ」と呼ぶ者あり)全くそのとおりです。この前も、九名の学生が、なぐる、けるの暴行を受けました。
 そこで、私は、管理局長にお尋ねしたいけれども、あなたは少なくとも本年の一月末にこうした学内事情について大学当局から説明を受けられたはずですけれども、そういう事実はないでしょうか。
#212
○政府委員(安嶋彌君) 一月の二十四日でございますが、神奈川大学の理事長、学長の交代がございまして、新理事長の長倉保氏と学長事務取扱の宮川武雄氏が私のところにごあいさつに見えられまして、よろしくということでお帰りになったわけでございますが、そのときどういう話があったか、実は正確に記憶はいたしておりません。ただ単なるごあいさつではなかったかと私は記憶をいたしております。
#213
○加藤進君 それは少し納得できません。大学の理事会が本年一月末に現在の安嶋管理局長に会い、学内の暴力支配の実態を報告しているということを私は聞いています。また、学長代行から詳細な大学の実態報告書が提出されているはずです。これに対して、安嶋管理局長自身がこう言っています。こんな例は全国にはない、全く重大問題である、文部省としても検討して早く対処したい、こう言われておると私は聞いておりますけれども、これも事実無根なんでしょうか。
#214
○政府委員(安嶋彌君) 一月の二十四日に新理事長がごあいさつに見えたわけでございますが、その前に、前理事長の安井さんであったかと思いますが、その方が退任のごあいさつに見えまして、そのときに神奈川大学の状況について御報告がございました。学内に学生教職員等の間に各種の対立紛争があって正常な運営に難儀をしておるという御報告がございました。しかし、これは私立大学でもございますし、私も非常に憂慮すべき事態だとは思いましたけれども、具体的にこれに対して文部省がどうこうするという立場ではございません。前理事長には、非常に憂慮すべき事態であるけれども、大学自身として力を尽くしてその解決に当たっていただきたいということを申した記憶がございます。
#215
○加藤進君 話になりませんね、それでは。事態は大体文部省は御存じのはずです。存じておられながら、いま御答弁のあった程度の処置さえやっていない。これはどういうことでしょうか。無責任と言っていいのじゃないでしょうか。こんな事態で、いわばテルアビブの空港問題に端を発して大学当局を叱吃激励されるような文部省が、この問題について責任ある態度をとっておられると言えるのでしょうか。
 私は、ここで、いまこの大学がどんな事態になっているかということを若干申し上げます。これは特に警察当局の方にもお聞き願いたいと思いますけれども、神奈川大学で暴力支配を行なっている反帝学評の幹部の連中に対して、警察当局自身がすでにこういう態度をとっています。この幹部の連中にはちゃんとした逮捕歴がいろいろあります。ですから、警察はみんな知っています。
 たとえば、Tというのは、現在の自治会の委員長で三年生、これはかつて青山学院前で逮捕された、そしてすぐに出された。出されてまた逮捕される。こうして出されて、今日学内で暴力行動を続けています。
 Iというのは、寮委員で全共闘の議長です。そして反帝学評の幹部です。三度まで逮捕を受けているが、ほとんど三日間以内に出所している。去年の十一月、大学のロックアウト中に火炎びんを投げて逮捕されたが、そのときも一日で出所をした。その後も学内で暴力行為が続いているわけです。これは一体どういうことなんでしょうか。
 まだあります。Tという男、これは前自治会委員長です。そして、反帝学評の幹部です。早稲田事件のときに機動隊に石を投げつけて、そして未必の故意で指名手配中です。指名手配中のこの学生が、ちゃんと大学の中であばれ回っているのです。しかし、逮捕されておらぬ。
 もう一人のCという男、これは全共闘の幹部で、反帝学評の幹部です。数回逮捕を受けて、いつも一日か二日で保釈されている。四十四年の八月、火炎びんを投げて逮捕されたそのときは、その日のうちに出されています。
 こういう一連の具体的な事実があるのです。警察は、毎日このような暴行を働いておる学生を取り締まっておるのかどうか、これは警察庁のほうからお聞きをしたい。どうしているのですか。
#216
○説明員(丸山昴君) ただいま神奈川大学の関係でそれぞれ各個々人について具体的な事例をあげて御説明がございましたけれども、私ども、あいにく手元にその資料がございませんので、一般論としてお答えを申し上げたいと思います。
 ただいまの御説明の中で、幾日勾留をして釈放になっていると、こういうお話でございますが、釈放は、これは裁判官の権限でございます。要するに、勾留の必要性を認められない場合に保釈になっておるのでございまして、警察が故意に放置しておるということではございません。それから勾留の必要がない者については、もちろん警察が独自に保釈をすることもございます。
 それから指名手配されておる者がつかまっていないということでございますが、これは、もし指名手配でございましたら、これは当然逮捕すべきものでございまして、その辺の事実関係については、よく調査いたしませんと、はっきりしたことは申し上げられないと思います。
#217
○加藤進君 私たちでさえ、いま申し上げたような事態について事実をはっきり知っている。警察がこれくらいの事実を知らないはずはないし、また、知らなくて何らの処置もとっておらないとなれば、私はいよいよ重大だと思います。
 そこで、さらに事実をあげます。共産主義武装行動委員会、これに対する告発の取り下げということを神奈川県警が行ないました、その事実です。四十六年の九月、武装行動委員会は、教員をなぐる、けるという暴行を働いて重傷を負わせました。そこで、暴行を受けた教員三名が、神奈川署に告発をしたのです。四十七年の六月初め、つい最近です、大学側が告発を取り下げる手続をとりました。それは、神奈川署が、告発した三名の教員に対して、いままで調査したがなかなか調査が不可能であった。大学側が暴力を容認しておるいまの事態では、たとえ暴行の事実が明確になっても、むしろ被害者にもっと危害が加えられる心配があるから、これで告発は取り消しなさい、こういうことで警察の指示によって告発が取り消された。これは一体どういうことなんでしょうか。警察自体も、告発して堂々と戦おうとするなら、あなたたちのからだがあぶないですよ、あぶないからそんなことはやめなさいと言うことは、いわばこの大学はもはや無法地帯に化していると言っても過言ではないじゃないですか。警察さえ手を及ぼそうとすることのできないこんな事態にいま今日の神奈川大学はなっている。この点は警察の側はどうでしょうか。
#218
○説明員(丸山昴君) ただいまの御指摘の事件でございますけれども、これもいま初めお聞きをしておりますので、私は手元に資料がございませんので、はっきりしたことを申し上げられないと思いますが、ただいまの大学側が告訴をいたしましたのを大学側がまたその後告訴の取り下げをしておるということでございまして、その際に地元の警察署から告訴取り下げについてある程度の指示があったというような御指摘でございますが、これも事実関係をよく調査をいたしませんと、この場で私がはっきりしたお答えを申し上げられないと思います。
 ただ、一般論といたしまして、告訴を取り下げるか取り下げないかは、告訴をした方の主観的な自主的な判断でおやりになるわけでございまして、警察側がそういうことをかりに申し上げたといたしましても、その必要性があるのであれば、告訴はお取り下げにならないほうがほんとうの措置ではないかというふうに考えられます。
#219
○加藤進君 いまの答弁で警察の態度も明らかになりました。とにかく、こういう凶悪な犯罪者を野放しにしておって警察としても何ら手を加えない。中には、こういう点に対して告発しようとする善良な学生、教員諸君に対しても、まああまり手荒いことをやるとあなたたちがあぶないと。そんなことで警察としての任務がつとまると思うのでしょうか。
 そこで、ある教員は、こういうふうに訴えています。私たちは、大学の自治を守り、大学での暴力を排除するために、一生懸命にやってきている。しかし、警察が、暴力分子を逮捕することもあるけれども、すぐ出す。これが一番こわいんですと。必ず、学内に戻って来ると、お礼参りに来るというのです。御存じでしょう。告発した教員に、なぐる、けるの暴行が働かれる。授業はさせない。最後には、学校には入れない。こういうやくざ以上の暴力学生がこわくて、学校の先生たちはどうしていると思いますか。こういうことが容認されるのかどうか。このために、現在、十四名の教員は、いまだに学校に入れないのです。文部大臣、こういう事態について、大臣はどうされる気でしょうか、どうお考えでしょうか。
#220
○国務大臣(高見三郎君) 私は、あくまで、大学の大学人の良識ある行動を期待いたします。どうしてもできないという場合には、別個の立法措置もとらざるを得ないと考えますけれども、私は、大学のあるべき姿としては、大学人が勇気を持ち良識を持って行動するのが当然のことだと思います。そういう一、二の例をあげられまして、大学全体が暴力学生に占拠されているというような御意見でありまするならば、私にとっては心外なことであります。私は、文部大臣の権限というものの限界を承知いたしております。文部大臣としては、まず、教育の施設設備を整備することが一番大きな仕事の一つであると考えておりますし、大学自体につきましては、大学の健全な管理運営というものは大学人の良識によってやるべきものであって、それだけの大学に勇気を持ってもらわなければならぬと考えております。文部大臣が一々指図をしなければならないような大学ならば、それは大学というに値しない大学であります。かりに、暴力が犯罪を構成しておるというのなら、これは大学教育の問題じゃございません。少なくとも司法警察の問題であると、私はかように考えます。
#221
○加藤進君 大学立法も今後は考えざるを得ない、そんなところまで論理を飛躍さしてもらっては困ります。私は全国の大学のすべてがこんな状態にあると言っておりません。しかし、テルアビブのあのような事態が起こる根源がまさにこのような大学の状態に発している、こういう点について私は政府当局に対して問題を提起しているわけです。
 私は、最後に、大臣がおっしゃいましたように、この事件はもう大学とか教育の問題ではなしに、刑事問題だ、こういうふうに言われるなら、その気で問題を対処して解決してもらいたいということであります。もう、こういういま事例をあげたような学生は、単に学生などと言えるやからじゃない、社会的な犯罪者です。治安問題なんですよ。問題を治安問題としてはっきり踏まえて、こういう学生に対してかってな野放しの行動は許さぬ、こういうこと以外に問題の解決はない。私は、その点を強く大臣にも警告を発しておきたいと思います。その点は御了解いただけますか。
#222
○国務大臣(高見三郎君) 大学内に刑事上の犯罪者があるということでありまするならば、これは教育のらち外の問題であります。私は、当然治安問題として考えるべき事柄であるという理解の上に立っております。しかし、私は、少なくとも教育というものは、悪いから退学させるというのが教育のあるべき姿じゃないと思います。悪いからなお先生が努力していいほうへ善導していくというところに教育の本質的な意味があると考えております。そういう意味合いから申しまして、私は、軽々しく大学立法などというものはやるべきものじゃないという考え方に立っておりますけれども、なおかつ、どうにもならぬというときには覚悟をしなければならないということを先ほどから申し上げておるわけであります。
#223
○加藤進君 このような学生に対する態度をただしておるわけですけれども、これらの学生諸君は、武器から権力が生まれるということを思想信条として、もうすでに国内各地ばかりでなしに、外国までいわば殺人者としての助っ人に出ておるわけでしょう。驚くべきことですよ、これは。こういう事態が文部当局の指導管理を行なわなくてはならない大学の内部に起こっておる。だからこそ私たちはこの問題を重視しなくてはならぬと思う。治安問題ではありますけれども、同時に、これが教育問題と関係する。大学と直接関係がある。その意味では、私は、治安問題だから警察当局にまかしておいて私は知らぬなどというような態度は絶対に許しがたいと思います。
 なおいろいろ申し上げたい資料がたくさんありますけれども、問題の中心はどこにあるかというと、大学に籍は置いているけれども、その考え方と行動から見て大学の中における構成部分ではもはやないような一団の暴力集団が存在する。彼らは大学の施設をかってに占拠する、破壊も彼らの思うまま、大学の教職員さえ近づけない、そして大学を根城にしていわば大学の外における彼らの破壊活動や暴力行動を行なう、これが現状でございますから、この問題に対する断固とした態度をはっきりとさして、これに対する対処を文部省としても行なわなくてはならぬし、言うまでもなくそのことは大学当局との十分な話し合いを通じて大学当局みずからをも叱咤激励してそのような方向を示さなくてはならぬ、こういうことを私は強く要求しておるわけでありまして、本来、こういう問題について、これは大学の新しい立法をつくって大学の管理運営全体を変えなくてはならぬなどというような問題に飛躍させることは最も誤りである。問題は、目の前にある犯罪暴力学生に対してどのようにこれが蠢動するような事態に対処していくか、取り締まるか、こういう問題として私は提起しておるわけであります。もちろん、教育の部署にあるわれわれでございますから、一個一個の青少年に対して十分な指導も善導もしなくてはならぬことは、言うまでもありません。しかし、犯罪を犯し、しかもこれに何らの反省も加えることなく何度も何度も犯罪を繰り返しつつ今日に至っている凶悪な学生の集団でございますから、この問題については、いま一度文部省は認識を改めてこれに対する処置に対して誤りないような努力をしていただかなければならぬ、このことを私は強く要求いたしますが、その点はいかがでしょうか。
#224
○国務大臣(高見三郎君) お話しまでもなく、私どもは、大学に対しまして強い反省と強い態度を望んでおるのであります。先ほども申し上げましたように、長期留年なんというようなことはなるべく少なくしなければならぬ。今度の事件などを見ましても、留年八年というような学生がおります。その学生を一体大学は今日までどうしておったのかということになりますると、私は非常に問題があると思います、その点には。加藤先生おっしゃるとおり、私もその問題については非常な情熱をもって当たっておるつもりでおります。ただ、問題は、そういうことがあるから文部大臣の権限を国家権力をやたらに強いものにするということは極力避けなければならないということが私の基本的な考え方であるということだけは御承知をいただきたいと思います。
#225
○加藤進君 最後の点につきましては私も全く同感でございまして、その点についてはゆるぎない方針をもって進んでいただきたいと思います。
 私が最後に申し上げたいのは、もし教育とこれらの暴力学生との関係がどうであったかという点から言うなら、私は、社会的問題として、あるいは教育上の問題として、このような暴力学生が発生するような条件というものが今日の日本に存在するということを認めなくちゃならぬと思います。彼らは、あのような、もう人間性を失った殺人集団に化しておりますけれども、彼らをこのような状態に追い込んできたものは、さまざまな要因があると思います。今日の社会において、人間が人間らしい尊敬を受けていない、尊重されておらない、命まで破壊されているような現状をそのままにしておいて、学生だけがよくなれと言ったって、これはできない。また、教育自体においても重要な問題があるのじゃないですか。小学校からどんな教育が行なわれていますか。マル・バツ式の詰め込み教育です。半数の生徒たちはついていけぬと言っているじゃありませんか。ついていけないような子供たちが、どうして将来すくすくと自分の学力を伸ばし、情操を豊かにして、りっぱな日本人としての将来を保証できるのでしょうか。学校を出ると入学試験、こういう事態にわれわれが追い込んでいるということ、この教育の事態をわれわれは十分に反省しなくちゃならぬと思います。この前も、施設の問題を申し上げました。学校の施設、環境の充実を私たちの使命にすると文部大臣はりっぱにおっしゃいました。その学校の施設が、一体、今日どのような状態にあるのか。これは教育基本法の第十条が泣くような状態にあることは、今日明らかです。このような状態で子供たちの教育がやられている、ここに人間性を喪失して、破れかぶれになって殺人を自分たちの仕事にする、こんな集団が現に生まれつつあるということでありまして、この点については、われわれ教育に携わる者、政治に携わる者が真に心してこれを改善する努力をしなくてはならないととは当然だと思います。その上に立って、先ほど申し上げたような断固たる処置を犯罪者に対しては行なえ、このことを私は強く最後に要望して、質問を終わります。
#226
○委員長(大松博文君) 他に御発言がなければ、日本の調査はこの程度にとどめます。
 これにて散会いたします。
   午後二時五十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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