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1971/03/21 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第5号
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1971/03/21 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第5号

#1
第068回国会 外務委員会 第5号
昭和四十七年三月二十一日(火曜日)
   午前十時十二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         八木 一郎君
    理 事
                石原慎太郎君
                佐藤 一郎君
                山本 利壽君
                森 元治郎君
    委 員
                杉原 荒太君
                塚田十一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                加藤シヅエ君
                田  英夫君
                羽生 三七君
                渋谷 邦彦君
                中村 正雄君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       外務政務次官   大西 正男君
       外務大臣官房長  佐藤 正二君
       外務省アジア局
       長        吉田 健三君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省経済協力
       局長       大和田 渉君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     穂崎  巧君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
   説明員
       外務省国際連合
       局外務参事官   黒田 瑞夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外務公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二
 年九月十五日にローマで署名された議定書の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出)
○国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一
 年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議
 定書の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出)
○国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千
 九百七十一年七月七日にウィーンで署名された
 議定書の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出)
○国際情勢等に関する調査
 (中国の核実験に関する件)
 (チュメニ油田開発協力に関する件)
 (尖閣列島の帰属問題に関する件)
 (日中国交回復に関する件)
 (朝鮮問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(八木一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 外務公務員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府より趣旨説明を聴取いたします。
 福田外務大臣。
#3
○国務大臣(福田赳夫君) 外務公務員法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 この法律案におきましては、まず、特命全権大使及び特命全権公使の待命制度に関する条文の整備を行なうとともに、待命の期限を特別な場合には延長することができるようにしております。すなわち、待命中の大使及び公使が、特派大使、政府代表等の特別の任務に従事している場合には、その待命の期間が一年をこえた場合でも、その任務の重要性及び対外関係を考慮して、その任務が終了するまでは、大使及び公使の職を免ぜられないようにするものであります。
 さらに、この法律においては、在外公館に勤務する外務公務員の休暇帰国制度を改正し、現在は、在外勤務期間が四年をこえる職員に対し、一在勤期間中一回限り許可することができることとなっているのを、今後は、三年をこえる職員に対し、三年につき一回許可することができるようにしております。休暇帰国の趣旨は、在外職員の健康保持、変化する国内情勢の把握、本省との事務打ち合せないし担当職務の変更に伴う研修などでありますが、このためには、在外勤務があまり長期間にならないうちに休暇帰国の機会を与えることが、その後の職務遂行にきわめて有意義であると認められるほか、諸外国においてはおおむね一ないし二年につき休暇帰国を実施しておりますので、わが国においても休暇帰国に必要な在外勤務年限を短縮することとした次第であります。
 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願い申し上げます。
#4
○委員長(八木一郎君) 引き続き補足説明を聴取をいたします。
 佐藤官房長。
#5
○政府委員(佐藤正二君) 本法案について補足説明をさせていただきます。
 大臣の提案理由の御説明でほとんど尽きておると思いますが、本改正案の改正点というのは二点ございまして、第一点が待命制度の問題でございます。大使、公使の待命制度の条文の整備といたしましては、現行法の第十二条第一項中の「又は臨時の用務を処理するために外国に派遣されるまで」という字句を削除することにあるわけでございますが、待命制度と申しますのは、御承知のとおり、大使、公使がある任務を終えて帰ってまいりましてその次の任務につくまでの間その身分を失わないように、待命という形をとりましてその間をつなぐわけでございますが、その待命中にたとえば国連総会に出るとか、あるいはどこかの交渉の全権委員になるとかというような形で臨時の用務を処理するために外国に派遣される場合がございます。その用務が済んだあとで、はたしてその次に待命になるのかならないのかという点に明文の規定がございませんために幾らか疑義がありましたもので、その点をこれで直そうということでございます。
 それから、そういうふうにして国際会議等に出ました待命中の大使が国際会議に出ている間に一年の期間――待命の期間というのは一年でございますが――が終了してしまったという場合にどうなるかという点も問題がございましたので、そういった国際会議全権委員等の職についている間は、一年の期間が来てもその用務を終了するまではこれを延長することができるということにいたしましたのが待命制度の改正でございます。
 それから第二点といたしまして、休暇帰国制度の改正でございますが、現行の休暇帰国制度と申しますのは、在外の勤務期間を四年をこえた人につきまして一回の在外期間について一度だけ休暇帰国ということができるということになっております。ところが、四年と申しますのは、不健康地の場合にはこれが半分になるわけでございますが、四年と申しますのは何としても長くて、大体四年になりますと、帰ってくる人のほうが多いわけで、ほとんど休暇帰国制度を利用する人が非常に少ないという形になりまして、また、かたがた、ときどきは国内情勢の把握、本省との事務打ち合わせ等もございますために、なるべくこの期間を短くしたらどうかという話がございまして、四年を三年にいたしまして、それから特に不健康地につきましてはそれの半分――一年半に一回、それからもう一つの点は、いままでは、たとえば最初にビルマに行きまして、その次にアメリカに行ったというようなときでも、通算しまして五年になっても六年になっても、たった一回ということになっておりましたのを、三年について一回ずつというふうに変えるわけでございます。これが今度の休暇帰国制度の改正の大要でございます。
 御審議の上御賛成くださいますようお願いいたします。
#6
○委員長(八木一郎君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
#7
○委員長(八木一郎君) 次に、国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二年九月十五日にローマで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 及び
 国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百七十一年七月七日にウィーンで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 以上三案件を便宜一括して議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#8
○森元治郎君 この前伺ったんだけれども、ちょっとはっきりしなかったので一点だけ伺います。
 この国際民間航空機関の理事会で中国の代表は中華人民共和国であるということがきめられて、事務局長が加盟国にその旨を通告したわけですね。ところで、中華民国は理事国ではないわけです、理事国では。総会の議席は持っていると思うんですが、どうなっておるのか。総会の議席は持っていると思うんです、総会の議席は。そうすれば、理事会では中華人民共和国が中国の代表ときまって、総会のほうの中華民国というのはどういう立場になるのか。もし理事国では中華人民共和国となれば、いわゆる総会でもう一。へん追放するということになれば、総会でも議題として取り上げなくちゃならぬと思うんですね。それをただ、理事会と総会は別のものにしておくのか、総会にかけて総会の議席までも拡大するのかしないのか、これはどうなんですか。昨年十一月に採択された決議によれば、理事会の権限の事項に関し、とただし書きがあるけれども、その点がはっきりしないんです。質問の趣旨がわかったら御答弁願います。
#9
○説明員(黒田瑞夫君) 御指摘のとおり昨年十一月十九日のICAOの理事会で採択されました決議は、理事会の権限内の事項に関しては中華人民共和国政府を唯一の合法的な中国代表と認め、事務局長をしてこの決定を即時ICAO全加盟国に通報せしめるという趣旨のものでございます。中国代表権の代表権の交代の問題につきましては、ICAOの国際民間条約にも、それからその他の国際民間条約機構関係の規則にも、一切規定がございませんです。それで、ただし中国代表権のような重要な問題はやはり総会の決定すべき事項であるとも解釈されますので、中華民国の代表権は法律的には理事会の権限外の事項については残っているようにも解釈されるのでございます。実は、代表権の問題については一切規定がございませんので、そういう解釈になるわけでございます。そこで、いま先生の御指摘のように、まだ総会の議題として残るじゃないか、総会のメンバーシップというものは中華民国に残るのではないかという点は確かに御指摘のとおりでございますけれども、実は総会は一九七四年、いまから二年先に開かれることでもございますし、実際上は総会の今度の次の決定は追認的なものになってしまいまして、実際上はもうメンバーではなくなったんではないかというぐあいに考えまして、この間あのように御返事申し上げたのでございますけれども、確かに法律的にはそういう疑問は残っているわけでございます。
 それでよろしゅうございますか。
#10
○森元治郎君 そうすると、七四年までは理事会は中華人民共和国、総会のメンバーは中華民国がそのまま、よその国から総会で理事会に要請されて追放といったような事態でもない限り、このままいくわけですね。
#11
○説明員(黒田瑞夫君) 中華人民共和国は実はまだ入るというぐあいに言っていないのでございますけれども、理事会は、理事会の権限内の範囲内では明らかに中華民国はメンバーではなくなったわけでございます。それから、あとの総会までは総会のメンバーとして中華民国が残るということははっきりとは言えない、そういう疑問は残る、あるいはそういう公算は大であるというようなことは言えるのでございますけれども、はっきりとはそうは言い切れないと思うのでございます。
#12
○森元治郎君 そうすると、当分もやもやの状態が続くわけですね。
#13
○説明員(黒田瑞夫君) そうでございます。
#14
○羽生三七君 ちょっといまのに関連して。
 その場合、理事会と総会の違いはあるけれども、中華人民共和国がそれでは加入することになった場合に、同席ではないにしても、総会と理事会の違いはあるにしても、同じ機構の中に入るのか入らぬのか。入った場合に中華民国のほうはやめるのか。つまり脱退するのか。同席するということはあり得ないと思うのですが、その辺はどうなんですか。
#15
○説明員(黒田瑞夫君) 同席するということは考えられませんで、先ほど申し上げておりますように、もう実際上中華民国はメンバーではなくなったと考えるのが現実的だというぐあいに考えます。それで多少法律的な疑義は残るのでございますけれども、それは現実には起こらないというぐあいに考えるのでございます。
#16
○委員長(八木一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより三案件について一括して討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二年九月十五日にローマで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#18
○委員長(八木一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#19
○委員長(八木一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百七十一年七月七日にウィーンで署名された議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#20
○委員長(八木一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、三案件についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
#22
○委員長(八木一郎君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#23
○加藤シヅエ君 外務大臣にお伺いいたします。
 最近、中共において核実験が行なわれたということをニュースで承知いたしております。気象関係のニュースによりますと、今日あたり日本本土の上空が核のちりをもっておおわれているかもしれないというようなことも聞いております。これにつきまして広島及び長崎の市長は、核の洗礼を受けた市長として、市民を代表して抗議の声明を発表しております。しかし、日本の国としては、これに対して何か声明の発表がございましたんでしょうか。私はまだ何にも聞いておらないのでございますが、それはどういうことになっているのか。また、もしなさっておらないといたしましたら、隣の国でこういう危険な実験が行なわれていても日本として何ら意思表示もしないというようなことでよろしいのでございましょうか。このことにつきまして外務大臣のお考えを伺いたいと存じます。
#24
○国務大臣(福田赳夫君) いかなる国でございましても、核の実験を行なうということについては、それが行なわれるつど、わが国においては厳重なる抗議の意思表示をいたしておるわけでございます。ところが、今回の中国の行なったと伝えられているところの核実験につきましては、どうも相手が国交を持たない国でありますので、直接中国に対して抗議を提出するとか、そういうことが不可能な状態であります。したがって、わが国はこの事実をとらえまして、これはまあ特定の中国に対する抗議ということはできませんけれども、これははなはだ遺憾なことであるという態度表明をいたしておるわけでございまして、今朝の閣議におきましても、さらにこれを明確に表示するという方法をどうするかということを官房長官と打ち合わせをいたした次第でございます。ただいま科学技術庁におきまして、この実態がわが国に対してどういう影響を及ぼすかということを調査をしております。その調査の次第を待ちまして、つまり、中国が核実験を事実行なったと確認をする事実、また、それがわが国に及ぼす影響、それをしさいに検討いたしまして、相手はおりませんけれども、まあ、厳重な抗議措置をとるということにいたした次第でございます。
#25
○加藤シヅエ君 今日の閣議でその問題を御討議なさったんでございますね。それで、国交のない国であるから抗議を申し込むことができない。これはわかりますけれども、国交のない国であれば抗議を申し込まなくても、その迷惑を受けることにおいては非常に甚大なものでございますし、具体的に核のちりの具体的な被害、また、精神的にもこれは非常な恐怖を日本国民に与えているものであると存じます。したがいまして、相手国に抗議をするという形式ができなくても、これは世界に向かって核といろものに対する強い反対態度を持っているという日本としては、これは世界に向かってでも、世界に向かっての抗議じゃなく、日本国の態度の声明というような形ででも、いち早くこれは行なわれるべきではないか。私はそれを非常に希望するものでございますが、どんなふうな形式でなさるのか、それを承りたいと存じます。
#26
○国務大臣(福田赳夫君) お話しのとおりでありまして、これは中国に直接伝える方法はありませんけれども、外務省情文局長名をもちまして、はなはだ遺憾な事態である、こういうことは差しとめてもらいたい、という意思表示をいたすことになるのであります。
#27
○加藤シヅエ君 そういうことはなるべく早くしていただいたほうがいいと思います。ちょっと少しおそかったかと思いますけれども、いまからでも強くはっきりした態度の表明をお願いいたします。
#28
○国務大臣(福田赳夫君) はい。
#29
○加藤シヅエ君 次に少しわき道にそれるかもしれないのでございますが、外務省から今日「わが国とフィンランドとの間の経済関係等の現況」という資料をいただいたのでございます。それでいまフィンランドとの二重課税の問題もこの委員会で審議中でございますので、それに関連いたしましてちょっと伺いたいのでございますが、フィンランドという国は非常に、何と申しますか、国論がよくまとまっている国のように私は理解しております。自分たちの国の歴史というものに誇りを感じ、また、自分たちの国の国防というようなことに対しても非常に強い関心を持っている国のように私は理解しております。ここに「わが国とフィンランドとの間の経済関係等の現況」、一九七〇年の貿易関係が出ております。それで、わが国といたしましては、フィンランドから製紙用パルプ、鉄鋼等を輸入しているというようにここに出ております。まあ、それは全体から見て大きい額とは思いませんです。私が理解しておりますところでは、このフィンランドという国が輸出できるものは、林産業によるものが非常に大きな部分を占めているように聞いているのでございますが、それはどのぐらいの部分を占めておりますのか、もしわかりましたら、ちょっと聞かしていただきたいと思います。
#30
○国務大臣(福田赳夫君) フィンランドに対する輸出が、一昨年の統計で見ますと、五千四百三十二万五千ドルでございます。輸入が千百二十一万七千ドルでございますが、その中で一番大きなものが製紙用の。パルプなんですが、ちょっとその額が千百二十一万七千ドルの中でどのくらいになっておりますか、いずれにしてもその製紙用のパルプが一番多いんでございますが、その他鉄鋼を幾らか輸入しておる、こういう程度でございます。
#31
○加藤シヅエ君 私がそれについて伺いたいことは、これは少し前の話でございますけれども、フィンランドとソ連という国は隣同士で、非常に国際的に、国防的に、貿易上密接な関係を持っておる国と理解しております。そのフィンランドが、自分の国から輸出できる物資というものはその種類が限られております。したがいまして、あるものを輸出できなくなるというようなことになれば、これは国の非常な危機にも直面するということではないかと思うわけでございます。そういうような状態にあるときに、お隣のソ連といろいろの政治的な関係があって、その面でソ連の希望をフィンランドの国内政治にあらわさなければならないような圧力がかけられたというような話も聞いております。そういうような場合に、もちろんそれは拒絶することができるわけでございますけれども、もしそれを拒絶した場合には、フィンランドの大事な輸出市場というものを、もっと大きな資源を持った力によってその輸出市場が撹乱されてしまうというようなことになれば、これは非常に大きな打撃を受ける。したがって、そういうような圧力によって、自分の国の国内政治にもある程度の要求をのまざるを得ないような事情があったというようなことを私は聞いているのでございます。それにつきまして私は、いま外務大臣あるいは通産大臣などが、チュメニの石油のパイプ・ラインをソ連とどういうふうにこの交渉をお進めになるかというような交渉をお始めになっていらっしゃるということもニュースで聞いておるわけでございます。それはどのように進んでいるのか。また、これは非常に大きな問題で、日本としてもそういうような石油資源を得られて日本に石油が入るならば、これは非常にけっこうなことでございますけれども、事が石油というような非常に日本にとってはもうなくてはならないものであり、また、その供給源が、もし何か政治上の問題によって左右されるようなことがあるようなおそれがあった場合には、これは非常に重大な問題に直面するわけでございます。で、外務大臣としてはそういうような問題も御考慮に入れて、いまのチュメニの石油パイプ・ラインの開発の交渉について考えていらっしゃるかどうか、その辺のお考えを承りたいのです。
#32
○国務大臣(福田赳夫君) チュメニ油田の開発という話が数年前からありまして、まあ正式には一月にグロムイコ外務大臣が来訪いたしました際に、チュメニに有望な油田の開発が可能になりそうだ、ついては、当方から積極的というわけではないけれども、日本のほうで希望するならば、この油田の開発に関連いたしまして、ナホトカヘのパイプ・ラインの建設に協力してくださることを歓迎するという、こういう意思表示があったわけでございます。その後二月になりましてから、ソビエト・ロシアの経済使節団が来訪いたしまして、日ソ経済合同委員会を東京で開催したわけであります。そのときにおきまして、まあ日ソ間の貿易の問題、貿易量を拡大しようという諸問題についての話し合いが行なわれる一方、シベリアにある資源、具体的には、第一がただいまお話しのチュメニの石油でございますが、それから第二がイルクーツクの――あれはどこになりましたか――燃料炭ですね。その燃料炭の開発の問題。それから第三は北樺太の大陸だなにおける石油並びにガスの開発の問題。これらについて日ソ間で協力の可能性について話し合いが行なわれた、こういうことになりまして、その中で、何と申しましてもチュメニというのはウラル山脈の東側のオビス川の流域に横たわる鉱脈でございますから、わが日本とすると、かなり遠いところに位する。そういうことで、まあ、そういう地理的な問題もありますが、いずれにしても非常に有望な油田である、こういうふうなソビエト側の話でありますので、わが日本が、ほとんど全部と言っていいくらいの油をアラブ近辺に依存をしているこの状態を改善する必要に迫られている、こういう事情を考えますると、この石油の開発、ソビエトの開発計画、しかも、パイプ・ラインにつきまして協力が得られるならば、開発されたるチュメニ石油を安定的にわが国に供給する、こういうことでありますので、したがって、わが国としても魅力を感ぜざるを得ない。そこで、五月になりますか、わが国のほうから経済視察団を出しまして、そうしてチュメニ油田の計画についてなお詳細なる話を伺ったりしてみたいと、こういうふうに考えておりますが、今日の状態は、フィージビリティといいますのですか、これがほんとうにいろいろな角度から見まして開発する価値のあるものであるかどうかという判断ですね、それがまだその緒についたという段階でございまして、これからそのフィージビリティの問題につきましてよく検討をし、もしこれが経済全体から見まして引き合うというような性格の価値判断ができまするならば、これを真剣に政府においても取り上げてみたい、こういうふうに考えておりますが、まだそういう中途の段階である、こういうことでございます。
#33
○加藤シヅエ君 まだ話が途中の段階であるという御説明は理解いたしました。また、他の大国もこれに意欲を燃やしているというようなニュースも聞いておりますので、その辺、いろいろと日本の政府としても勘案しながらお進めになることだと思いますが、私、最初に申し上げましたように、非常に経済的に大きな影響を日本の国に持つようなものであるだけに、それと政治との関係とどういうふうになっていくかというような、そんなことも常に御考慮に入れながら話をお進めになるというようなことを希望いたしまして質問を終わります。
#34
○森元治郎君 それでは一つだけ伺いますが、時間がないから時間に向くような質問をします。
 きのう私はいなかで、読売新聞だったと思うが、ほかの新聞は見ませんから、例の尖閣列島領有の問題について、何か外務省ではアメリカ政府に確認を求めるような措置をとるんだと、要するに、アメリカからもそれは日本だとはっきり言ってもらいたいという意味でしょうが、そんなふうに解釈したんですが、そういう措置をおとりになるんですか。
#35
○国務大臣(福田赳夫君) アメリカが尖閣列島に対する態度、これは一九七〇年――一昨年のときまでは非常にまぎれのない態度をとっておったのです。ところが、昨年の中ごろになりまして、これはまあ今度の沖繩返還協定で、まあ施政権を施行しておった地域に入る尖閣列島ではあるが、他の第三国から何かもんちゃくがあれば、それは日本国とその第三国との間の問題であると、こういうことを言いだしておりまして、私どもは、そのアメリカの態度に対しましては、はなはだこれは遺憾とするわけであります。しかし、考えてみますると、どこかの国で領土権について争いがある。その場合にわが日本がどういう立場をとるかというと、その領土権の争い、第三者同士の争い、それについてわが日本は、普通の状態ならばこれに介入をしないで、その二国の間できめてください、こういう立場をとるだろうと思うのですが、この間私どもは、台湾の帰属問題について、台湾の帰属については私どもは何ら発言をする立場にありませんと、「しかしながら」というところが入っているのですね。しかしながら、中華人民共和国が国連に参加した。また、ヤルタ宣言、ポツダム宣言、ああいういきさつもある。それらのことを考えてみますると、中華人民共和国が、台湾はわが国の領土であると主張するその主張については深い理解を示すことができる、こういうような統一見解を出しておりますが、アメリカはちょうどそういう立場をとるべきところにあると思うのですが、そこまでいかない、第一項にとどまっておるという点が私ども非常に不満なんです。私どもは尖閣列島の領有権につきましては一点の疑義を持っておりません。けれども、とにかくアメリカがあそこに施政権を保有してきた。しかも、その尖閣列島には基地まで持っておる。それをそのままわが日本に返すのだという事情を考えますれば、これはもう当然、あれはわが日本の領土であるという日本国の主張につきましては、私はうなずけるものがあるという立場をとるべきだ、こういうふうに思いますが、まあ、その辺をアメリカとの間にどういうふうにいたしますか。当然のことだからそれはそう言うほうがいいとも思うのです。ここでもってまたアメリカに対してものを言うことがはたしていいのか悪いのか、その辺、非常に機微な問題である、このように考えておる次第です。
#36
○森元治郎君 アメリカに何か措置をとることにきまったんですね。大臣、具体的なあとのほうの一番大事なときになると声が小さくなって聞こえなくなってしまう。状況説明のときにはいいのだけれども、一番最後はほとんど聞こえないのです。だめですよ、あとのほうが大きくならなくちゃ。申し入れるのかどうか。申し入れる内容は、どういう表現で確認をしようというのか。はっきりしろと言うのか、つれないじゃないか、不条理じゃないか、いろいろ言い方はありますが、抗議めいた意味もある、表現もあるだろうし、他人の領土を押えておいて、いまごろ何を言っているんだという言い方もあるだろうし、どういうふうに申し入れるんですか。
#37
○国務大臣(福田赳夫君) これは、アメリカに対して意思表示を求めるというにはあまりにも明瞭なるわが国の領土という状態である。そこへ第三国である、いまや第三国の立場になろうとして渋るアメリカに何か助言を求めるとか、そういうようなことがはたしていいものかどうかということについて、きわめて機微な問題である。こういうことで、まああまりはっきりしている問題をまたここでアメリカに対してとやかく言うのもどう州なあというようなただいま感触を持っておる、こういうことを申し上げたわけであります。
#38
○森元治郎君 そうすると、近く申し入れるというような新聞記事の表現の書き方は、いまのところはとらないわけですね。申し入れるということはないんですね。
#39
○国務大臣(福田赳夫君) そこはまあ大体――大体と申し上げます――大体、まあこれはただいま申し上げたような扱いがいいのじゃないか、こういうふうに考えております。あまりにも明瞭なことなんだ、こういうことが私の頭の中にあるわけであります。
#40
○森元治郎君 とにかくアメリカという国は、領土問題というのはあまりないようなんですね。ないものだから、他人の領土なんかへどんどん侵入してかき回して、あちこちできらわれているようだが、領土問題というのは、中ソ国境にしても、川のまん中がどっちにあるかみたいなことで大きな騒ぎになる。大問題なんですよ、ほかの国にとっては。自分の国を遠くに控えて、みずから外へ出ているアメリカにはわからないと思うんだが、アメリカは、私は日韓交渉以来ほんとうにけしからぬと思うのです。竹島の問題にしても、終戦後、日本が独立すると同時に、行政協定で竹島を日本のものとして、それを爆撃場として貸してくれということで借りておいて、さんざん爆撃演習をやり、日韓交渉で韓国のほうから文句が出たらとたんに演習はやめてしまって、あとは黙って今日まで来た。いま大臣がおっしゃるように、尖閣列島にしても、七〇年まではそんなことは、もういまさらないような態度で出てきたのに、今度は沖繩返還協定になると、あの辺について第三国から問題が出てくると、にわかに態度があやふやになってきて、この領有はわれわれだと日本政府が幾ら言ってもはっきり答えないで、ただ協定の中には、経緯度をもってあの島々を含むということで、まあ日本のもののような形はとる。ほんとうにアメリカは調子がいいというか、他人のことというか、これは厳重に抗議すべきだと思うんですね。ヤルタ協定にしても、あの当時はルーズベルトが病気であったこともあるけれども、千島――首飾りみたいな千島はソ連だと、かってにやっておきながら、もちろん当時の国務省当局は南千島、北千島といった地理的な判断もあったでしょうが、そういうことを耳にはしないでやってしまって、終わってしまってから、今度は日本の言うのは、もっともだというようなことをその後つべこべ言っておったようですが、私は厳重に抗議すべきだと思うんです。他人の領土でないところをどうして占領できるのか、どうしてそれに施政権が及ぶのか、どんな人が考えてもわかる。問題が起きたら、今度はそれは知らないから第三国と話し合ってみろ、われわれは主権の存在については関与しないんだというようなアメリカの態度は、実に不可解だと思うんですね。ほんとうにふんまんにたえないんですよ。どんぴしゃり明快でしょうよ。七〇年までは何もないのに、言われてきたら、今度はひとつそっちで相談してくれ。これは悪いくせですから、断固抗議すべきですよ。
 それから、日本の領土を他人に確認してもらうなんてばかげたことはないですね。私は、してもらいたくない。それ見ろ、アメリカさんが日本のものだと言った。よその国が、ああそうかと言う。そんな不見識なことは絶対やるべきでないと思う。そういう点、どうですか大臣。
#41
○国務大臣(福田赳夫君) 私も、わが国にもう寸分の疑いもなく帰属する領土につきまして第三国の確認を求める、こんな不見識なことはいたしたくない、こういうように思います。であればこそ、先ほど何かアメリカと話し合いがあるのか、こういうようなお話ですから、それはなかなかデリケートな問題である、こういうようなお答えを申し上げたわけなんです。しかし、抗議ですね、そういうようなことになりますれば、これは別の問題ですから、これはまた考えてみたい、かように存じます。
#42
○羽生三七君 ちょっと、いまの答弁でおかしいことが一つある。さっきの御答弁の中に、尖閣列島に基地もつくっておった、こういう御答弁があったんですが、そんなことができるんですか。帰属の明確でないところにアメリカがかってに基地をつくるなんということができるんですか。
#43
○国務大臣(福田赳夫君) これは現に基地が二つありまして、そして基地があるところの尖閣列島、その尖閣列島におけるその基地は、わが国がアメリカに提供すべきA表の中に入っておる基地になっておる、こういうことです。
#44
○羽生三七君 なおさらおかしい。
#45
○国務大臣(福田赳夫君) でありますから、非常にアメリカの態度というのはおかしい。百歩譲りまして、私は、先ほど申し上げましたとおり、他人の国の争いには介入はしません、こういう態度をとるにしても、これはこういう事情から日本の領土と解すべきものである、日本の主張にはこれは理解ができる、こういう態度はとるべき立場にある、こういうように思うのですが、これは非常にデリケートな問題でありますので、どうしてしないのか、そういう意思表示ができないのかという交渉事、これは非常にデリケートだと思うんですよ、寸分の疑いのないものを、わが国がみずから問題を持っていって起こす、こういうことは。そこで、言いっぱなしの抗議、これは私は考えられると思いますが、まあ、アメリカが裁判官じゃありませんから、これはアメリカの御意見はいかがですかということについては、これはよほど慎重にやらなければならぬじゃないか、かように思います。
#46
○渋谷邦彦君 昨日「中国政策めぐる内幕」というタイトルで田川議員の報告書が公表されました。この内容を一つ一つきょうここで確認をし御回答を求めるという時間はあまりに少のうございますので、一点だけその問題についてお伺いしたいことは、田川氏と保利幹事長との間に前後五回にわたって秘密会談なるものが設けられた。そうした話し合いの中で、特に最も問題とすべき事柄に触れておりますのがございます。それは北京政府の唯一合法性と台湾は中国領土の一部など、中国の求めている復交原則を明確に是認する発言を保利幹事長はしております。この点については、この秘密会談、漏れたから発表したというふうな、そういうニュアンスの受け取り方を私はしたのでございますけれども、ならば、当然福田さん御自身もこうした経過については御存じであったんではないだろうか、そういうことを最初にお伺いしたい。
#47
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、それに関連する、美濃部氏に託した保利書簡ですね、これについては、ちょっと聞かされたことはありますが、田川氏との接触につきましては、これは保利さんから、田川氏と接触しておるんだというような話は伺ったことはありますが、どういう内容でどういうことを田川氏との間に話し合っておるか、これは全然聞かされておりません。
#48
○渋谷邦彦君 あらためてここで明らかにしていただきたいと思いますことは、いまも触れましたけれども、台湾は中国領土の一部である。おそらくこうした話し合いがあったからこそ、かつて佐藤さんが衆議院の予算委員会でこれと全く同じような発言をなさって、福田さんの御発言とだいぶ食い違うという事態が起こった。いま思い起こしてみると、やはりそうしたことがすでにある一部のあるいは政府首脳部においてこうした話し合いが持たれていたんではないだろうかと理解してよろしいのか。それとも、今回の公表された報告書に基づいて、政府としては台湾は中国領土の一部であるんだという、もうすでにそういう確認をしながら復交へのいろいろな手はずを進めていらっしゃるのか、この点はどうなんでしょう。
#49
○国務大臣(福田赳夫君) ちょうど私が陛下の御旅行のお供から帰りました十月の十四日、その日に保利さんから至急会いたいという話がありまして、その直後、二、三日おいてだったと思いますが、保利さんにお目にかかったときに、実はこういう手紙を美濃部氏に託したいと、こういうことを聞かされたわけです。その手紙も見せてもらいましたが、ことばは正確であるかどうか、趣旨は間違いないと思いますが、私は台湾は中国国民の領土であるとの認識に立ってあなたと日中国交回復について話し合いをしたい、こういうような趣旨のことが書かれておったのでございます。「中国国民の領土である」「こういう認識に立って」、こういうふうなことでありまして、それからそのとき、これは総理は御承知なのかというお話をしたら、総理には何らの接触はいたしておりません、そういうことのお話がありました。政府・与党として相談をして、ということではなかったようであります。
#50
○渋谷邦彦君 そこで、まだこうすっきりしないものをいま感じるのですね。いまおっしゃられた「中国国民」というその表現をどのように受け取ったらいいのか。どっちにもかかるような――台湾にもかかるかもしれない、向こうにもかかるかもしれない、何を前提にして「中国国民」とおっしゃっているか。これは一つ一つ確認しておきませんと、あとの質問に支障が出てまいりますので、その辺はどうなんでしょうか。
#51
○国務大臣(福田赳夫君) 私がそのとき直観的に理解したのは、台湾海峡をはさむ両国民を含めての中国国民、こういうことだと思います。
#52
○渋谷邦彦君 その辺になりますと、どうも明確さを失うような感じがいたしますし、また、その点については後日に譲るといたしますので、ただいま申し上げたように、政府部内でも、あるいは自民党の執行部の中においても、一つの国の方向を明確に示そうという、しかも、中国問題という大事な政治課題を考えますときに、幹事長一人くらいでおきめになられるものなのか、われわれ率直に考えましても、そういう疑問が出てまいりますね。これは、こうした発言があったとするならば、当然、これはもう申すまでもなく、ある程度根回しが済んで、政府の統一見解とみなしてよろしい、保利幹事長の台湾に対する姿勢ではないか、そう受け取ってはまずいのでございましょうか。
#53
○国務大臣(福田赳夫君) この手紙は私が全責任を持って差し出すものである、おそらく自由民主党のわれわれの同志は、あとでこれがわかってもこれを了承してくれることを確信をしておる、しかし、その内容はどうかというと、大体これは自由民主党の総意を代表するものであるということを私は信じておる、こういう注釈があったことをお答えしておきます。
#54
○渋谷邦彦君 そうした前提があればこそ、おとといでございますか、政府筋が明らかにしたところによれば、という言い方で、外務大臣の密使なるものが一月に北京を訪問している。そして、ともあれ、中国政府当局者と非公式な接触を行なった、こう伝えられている。それがやはりきわめて将来に向かって可能性を含んでいる要素であるとするならば、おそらく福田さん御自身としても、いま触れておりますこの台湾問題という一番困難なこの解決というものを、当然もう一つの見通しをお持ちになった上で進められているのではなかろうか。まず密使そのものからここで確認をしておきたいのですが、それが事実であったのかどうなのか。あった場合に、じゃいまの台湾問題に関連してそういうことを十分踏まえた上でやったのかどうか、この点はいかがでございましょうか。
#55
○国務大臣(福田赳夫君) いまとにかくわが国から中国へ渡る人は昨年で七千人もおるのですよ。その中で私どもに特に理解を持ってくださる人に対しましては、私どもは日中国交正常化、これはもう歴史の流れという、そこまで考えております、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういう認識でとにかく諸懸案を話し合ってみたいという非常な熱意を持っておるのである、日中国交正常化が行なわれることは、これはひとり日中両国の利益であるのみならず、アジアの平和のためであり、また、これはひいては世界の平和のためである、こういう考え方を持っておることをるる話しておいてもらいたい、こういうことを依頼をいたしておるわけであります。そういうことが必要であるのは、とにかくアメリカと日本は中国に対する関係が非常に違う。アメリカは戦時中は同盟国です。わが日本は、とにかく満洲事変以来もう四十年にわたって不幸な歴史続きの間柄である。そういう状態でありますので、どうも中国側にわが国に対する不信感、それから多大の誤解というようなものがある。そういうことをまず払拭しておきませんと、これはもうなかなか政府間接触の基盤というものができないのじゃないか、そういうふうに考えまして、誤解、不信、そういうことを払拭するための努力をこれらの人々にお願いをしておる。これが率直なところであります。
#56
○渋谷邦彦君 そういたしますと、それは政府としての中国政府に対する正式な申し入れと理解してよろしいのですか。
#57
○国務大臣(福田赳夫君) 正式の申し入れと理解していただかぬほうがいいと思います。非公式な、さような日中国交正常化交渉に至る事前の工作といいますか、事前の措置といいますか、そういう種類のものである、こう御理解をいただいたらいいかと思います。
#58
○渋谷邦彦君 もちろん、政府を代表するという人が当たるわけではございませんので、公式ということは当たらないかもしれません。ただ、伝えられるところによると、外務省関係者、こうなってますが、これは現職ではないと。ただ、いま御答弁がありました中で、七千人一年間に行っているという非常に意味深長なお話でございます。その七千人の中には、政治家もおれば、財界人もおれば、あるいはもと外交官というような人もおりましょう。おそらく、そうした中の特定の人に依頼をされたのだろうと思いますけれども、いずれにせよ、そうして実際非公式に接触を開始されておる。その反応はいろいろ今日まであると思います。何回ぐらいにわたってそういう特定な人を通じての接触をされたのか。そしてまた、中国側としては近い将来において政府と正式な交渉の場を持ちたいという意向が示されたのかどうなのか。その辺の経過はどうなっておりましょうか。
#59
○国務大臣(福田赳夫君) だんだんと私はそういう努力の積み重ねというものが影響を持ちつつある、こういうふうに思います。まあ、非常に徐々にではありまするけれども、日本の姿勢に対する理解、こういうものが進みつつある、こういうふうに思いますが、まだ決定的な段階には来ておりません。
#60
○渋谷邦彦君 先回も積み重ねということをしきりにおっしゃっておりますし、私もあえてそれを否定しようとは思いません。けれども、やはり積み重ねの道程においてある程度成算がなければ、これからの接触ということについてもはたして期待できるような方向に進むのかということも、非常にその辺がぼやけてきてしまう。おそらく、いまのいろいろ含みを持った話の中で、きわめて成算があると、こう見ていいのかですね。しかも、その時期は、積み重ねというと、これから何年かかるものか。いろいろございましょう。しかし、現在の客観情勢というものを十分考えた上でこれをとらまえた場合に、福田さん御自身がいま進められている将来――おそらくその将来というものもごく近い将来においてということを想定されながら詰めておられるだろうと私は思いますけれども、そうした今後の見通しですね、相当長期間かかったのでは、これは非常に日本の将来に向かってもマイナス面だけが残るという感じしか残らないわけでございますけれども、その辺の感じとしてどういうふうにわれわれ理解したらよろしいものでございましょう。
#61
○国務大臣(福田赳夫君) とにかくわが国は中国に対しまして非常にはっきりした意思表示をしているのです。つまり、国交の正常化をやろう。いま、積み重ねというお話がありましたが、私は積み重ねなんという必要はない。これは一挙に解決する問題だ。アメリカはこれと違った行き方をしておるわけです。国交の正常化ということは一言も言いません。これは関係の正常化だと、こういうふうに言っております。そこで一つ一つ事実を積み重ねていこう、こういう方式をとっておるわけでありますが、私は日中国交正常化交渉といえものが政府間で始まるということになれば、そのあとはわりあいに早く決着点に到達するんじゃないかという見通しを持っております。しかし、政府間接触を始めるまでにはかなりの長い時間がかかる。いまはその時間のかかる事前の段階にあるわけであります。私は必ず日中国交正常化、政府間接触というものが始まる、こういう見通しを持っておるのです。で、始まれば決着が早いだろう、早かろう、そういう見通しを持っておるのです。そこでいまその前段階の努力をいたしておる、こういうふうに御理解願ったらいいのじゃないかと思います。
#62
○渋谷邦彦君 先般も福田さんが答弁された中で、いまと全く同じように最終合意までは時間がかからない、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、まあ、現在の日本の状態を見ると、ポスト佐藤というようなこともいわれておりますし、年内は非常にむずかしい、また、来年になるのかあるいはまたその先になるのかと、いろいろな憶測がございます。ただ憶測だけでは日本の国益というものを考えてみた場合でも決してこれはプラスにならない。やはりいまおっしゃられた非常に早い時期に政府としてもこの決着をつけたい。重ねて、早い時期にと、時間はかかるけれども早い時期に決着する、このように受け取ってよろしゅうございますか。
#63
○国務大臣(福田赳夫君) まあ、二つに分けてもらいたいんですね。つまり、政府間接触の始まる前の段階と、政府間接触が始まった後の段階と、この二つに分けて考えてほしい。政府間接触が始まるまでは時間がかかる、いまそのちょうど最中である、こういうふうに御理解願いたいのでありまするが、政府間接触という段階になった、その段階になりますると、日中国交正常化という最終の目標に到着するにはそう私は時間がかからない。こういうことを申し上げておきます。
#64
○渋谷邦彦君 あと時間がありませんので、二つだけ断片的に伺いますので簡単でけっこうですから、確認の意味で伺っておきます。
 一つは、先日衆議院の沖繩北方問題特別委員会においてわが党の斎藤委員の質問に対する福田さんの御答弁の中で、北方領土、いわゆる国後、択捉、色丹、歯舞等の領土が返還されれで、日米安全保障条約あるいはその体制というものは解消してもよろしいという、そういう含みのある御発言をなさったと承っておりますが、そのように受け取ってよろしいのかどうか、これが一点。
 それから第二点は、福田さんがサンクレメンテにいらっしゃったときに、米国のニクソン大統領に対して在韓米軍の撤退について反対なさったかどうか、この二点だけ確かめておきたい。
#65
○国務大臣(福田赳夫君) 第一点は、正確に言うと、そういうことじゃないんです。斎藤さんから御質問がありましてですね、それで安保条約の適用排除、そういうことで領土問題を処理する考えがあるかと、こういうようなお話であります。そこで私は、四つの島がかりに返ってくるということになりましても、アメリカがあの四つの島に新たに基地を設けたいというようなことはよもや考えまいし、また、かりにそういう話がありましても、私どもとしてはそういう考え方を受け入れるというようなことにはなりますまいと、こういうふうなお答えをいたしておるわけです。そういうふうに御理解を願いたいと思います。
 それから第二点、サンクレメンテ会談におきまして在韓米軍の撤退に反対をするという意思表示をしたかと、こういうお尋ねでございまするがですね、そういう端的な話し方はしておりません。ニクソン・ドクトリン、これが急激に行なわれる。たとえばニクソンの訪中声明が七月十五日に、きわめて急激に、何らの事前の下ごしらえなしに、しかも劇的に発表されておる。ああいうことがアジアの諸国、特にわが国の隣国である韓国等に及ぼす影響、そういうものについては深甚な配慮を要する問題である。これはひとり韓国だけの問題じゃない。わが日本にもあのような急激な劇的な発表のしかた、それについてはかなりの影響を与えておると、こういう点は、今後のアジア政策、アメリカがそれをやっていく上において深く留意してもらいたい点である、こういう話をしております。
#66
○星野力君 私、朝鮮問題についてお聞きしたいんですが、十分間じゃとても本論に入れませんので、今後質問をする上での材料的な問題を二、三点お聞きしたいと思います。
 第一は、韓国に対するこれまでの政府の借款、財政借款、商業借款及び民間投資の金額がどれぐらいになっているか。
 それから、今後の対韓経済援助の計画、韓国政府との約束の状況などについてお聞かせ願いたいと思います。
#67
○国務大臣(福田赳夫君) 昨年十二月末現在までのわが国からの対韓援助の現状は、政府ベースの財政借款コミット額が総額で三億三千八百四十万ドル、このうち貸し付け実行額は一億一千六百三万ドルでございます。そのほかに民間ベースの商業借款は、輸出承認ベースで百二十九件、合計五億五千百五万ドルであり、投資債権残高は五千三百九十九万ドルになっております。そういう状態であります。
#68
○星野力君 民間投資の金額は。
#69
○国務大臣(福田赳夫君) 民間ですか。民間投資は輸出承認ベースで百二十九件、合計五億五千百五万ドルであります。それから投資債権残高は五千三百九十九万ドル。
#70
○星野力君 今後の計画について。
#71
○国務大臣(福田赳夫君) 今後の計画は、この夏日韓経済閣僚委員会があります。その席で討議をするということになりますが、これはある程度の経済協力をしなければならぬだろう、こういう見通しを持っております。
#72
○星野力君 それでソウルの地下鉄建設への八千万ドル借款供与、あれの進捗状況とか、基礎建設や農業開発に対する海外経済協力基金からの借款供与の約束、これがどう進んでおるか。
#73
○国務大臣(福田赳夫君) これはまずソウルの地下鉄建設及び国鉄の電化計画というのがありますが、これはまだ正式には未調印でありますが、八千八百四十万ドルの借款を供与する考えでございます。
 それから農業ですね、農業につきましては二千万ドルのコミットをいたしまして、そうしてそのうち千七百四十万ドルを貸し付け実行いたしております。
#74
○星野力君 これは海外経済協力基金からですか。
#75
○国務大臣(福田赳夫君) 地下鉄建設及び国鉄の電化計画の分は基金であります。それから農水産業近代化借款、これは輸銀であります。
#76
○星野力君 一九六五年に合意されました経済援助のワクですね、無償三億、有償二億ドル、それを十年間平均でやる、あのワクを越えて、ことに海外経済協力基金からの借款供与なんかは進んでいるわけですね。
#77
○国務大臣(福田赳夫君) あれとかかわりなくやっております。
#78
○星野力君 あれと別ワクで。
#79
○国務大臣(福田赳夫君) 別ワクでやっております。
#80
○星野力君 韓国は、アメリカのベトナム特需の減少とか在韓米軍の縮減、それからドル・ショックに加えて円の切り上げによるショック、あるいはアメリカが繊維協定を押しつけた、いろいろな問題で貿易収支がますます悪化して原材料の買い付けも困難になっておる。インフレはひどくなるし、失業は増大しておる。経済危機というものが新たな段階、きわめて深刻な状況になってきておると思うのでありますが、韓国の経済事情についてどう見ておられるか、お話し願いたい。
#81
○国務大臣(福田赳夫君) 韓国はこの数年来、朴政権ができましてから長期経済再建計画を立てまして、かなり着実な経済発展を示してきたわけであります。ところが、ごく最近、つまり昨年から、ドルの切り下げの問題が起こる、反面におきましてわが国の円の切り上げの問題が起こる、そういうようなことで、かなりの打撃、影響を受けておる。こういう状態でございまして、その国際的通貨不安の状況をもろにかぶった韓国とすると、その影響を何とかして打開していかなければならぬという立場に立たされておるようであります。まあ、韓国にわが国としても調査団を派遣いたしましたりしてその実情につきましてはずいぶん慎重に調べもさしており、なお今後も調査団の派遣等をいたし、また先ほども申し上げましたが、日韓閣僚委員会の場等においても十分討議もし、私どもとしての調査もいたしますが、やはりこの一、二年というところがかなり経済的にはむずかしい時期に際会しておるんではないか。この一、二年の時期、つまり国際通貨不安の打撃をもろにかぶったその状態を切り抜けますと、私は韓国の状態というものはまた二年前の状態に復元をいたしていくんではないか、そういうふうな見方をいたしております。
#82
○星野力君 時間がありませんから端的にお聞きしますが、いま大臣がおっしゃったように、韓国の経済情勢、この一、二年が非常にむずかしいところだということでありますが、ということは、この一、二年日本はうんと韓国に対して肩入れをやる、こういうお考えじゃないかと思いますが、そうかどうかということと、それから、御承知のように韓国の経済というのは全くこれは対外依存の経済であります。アメリカ、日本その他からどんどん借金してきたわけでありますが、この借款は膨大な額にのぼっておる。この元利金を返済しなければならぬわけですが、返せる状況かどうか。大体対外元利の償還額は現在どのくらいになってきておるのか。日本に対して返済の延期を申し入れてきておるかどうか。その二、三点、これについてお答え願いたいと思います。最初の、肩を入るかどうか、これは大臣が言ってくれなければ……。
#83
○国務大臣(福田赳夫君) これは先ほども申し上げましたが、日韓閣僚委員会が開かれる。これは夏には開かれるわけでありますが、その結果等により判断しなければならぬと思いますが、判断の材料といたしましては、韓国の実情をどういうふうに把握するか。それから、韓国が、わが日本ばかりじゃない、いまお話がありましたが、アメリカそれからIMFその他世界機関との関係もあります。そういうものを総合いたしまして、わが国がどういう役割りをこのこれらの国の中で演ずべきかということを判断するということになろうかと思いますが、いずれにしても、ある程度のテコ入れとか援助はしなければならない、こういうふうに考えております。
#84
○政府委員(吉田健三君) 元利金の償還予定の見通しについて数字を申し上げます。
 一九六七年に元利金の返済予定金額は一億二百万ドルで、経常受け入れの金額に対する比率は八・九%であります。一九七〇年におきまして一億六千万ドル、負担率が約一一・六%、七一年は二億四百万ドル、負担率は一二・六%、七二年度は三億一千五百万ドル、負担率は一五・七%、七三年度は、見通しでございますが、三億五千百万ドルで負担率は一四・二%、以下予定額は一一%くらいまでに負担率が下がっていくようになっております。従来の外資導入の計画傾向を見ておりますと、借款、とりわけ民間借款の比率が圧倒的でございましたが、現在韓国政府は三年を越、える借款についての元利金の償還負担率を一五%以下に保つように方針をとり、またこれを努力いたしておりまして、債務負担の改善のために、今後は短期民間商業信用の受け入れを制限して、新規借款の受け入れば長期低利のものに限ることとし、外国企業の直接投資の誘致につとめ、投資水準を下げて輸入の激増を避け、輸出振興に片や全力を傾倒いたしまして、このバランスをとっていく。大体先ほどから話がありましたように、ここ一、二年は苦しいところでございますが、先行きの見通しといたしましては、第三次五カ年計画によりましては八・六%の年率の伸び率を見込みまして、自立経済仕上げ作業の前半がこれで終了する予定になっており、わが政府といたしましては、密接に韓国経済の状況と連絡をとりまた調査しながら進んでおりますので、元利償還の見通しはだいじょぶだと思います。
#85
○星野力君 まだ質問の答えが一点残っておるのですよ。日本に返済延期の申し入れが来ておるかどうか。それと、いまあげられた数字は三年以上の長期だけですね。
#86
○政府委員(吉田健三君) これは韓国側の発表によりますと、元利金の確定及び新規の合計額でございます。
 ただいま御指摘の最終質問につきましては、そういう申し入れば行なわれておりません。
#87
○委員長(八木一郎君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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