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1971/05/30 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第12号
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1971/05/30 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第12号

#1
第068回国会 外務委員会 第12号
昭和四十七年五月三十日(火曜日)
   午前十時十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十九日
    辞任         補欠選任
     西村 関一君     松本 英一君
  出席者は左のとおり。
    委員長         八木 一郎君
    理 事
                佐藤 一郎君
                山本 利壽君
                森 元治郎君
    委 員
                佐藤  隆君
                杉原 荒太君
                塚田十一郎君
                増原 恵吉君
                加藤シヅエ君
                田  英夫君
                羽生 三七君
                松本 英一君
                渋谷 邦彦君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       環境庁自然保護
       局長       首尾木 一君
       外務省アメリカ
       局長       吉野 文六君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     穂崎  巧君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
   説明員
       運輸大臣官房安
       全公害課長    鈴木  登君
       海上保安庁警備
       救難部海上公害
       課長       林  淳司君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその
 環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆
 国政府との間の条約の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (米ソ首脳会談に関する件)
 (ベトナム問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(八木一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 昨二十九日、西村関一君が委員を辞任され、その補欠として松本英一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(八木一郎君) 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。前回に引き続き、これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○加藤シヅエ君 前回に引き続きまして、この渡り鳥条約につきまして、もう少し質問を続けさせていただきます。
 前回質問が残っておりましたところは、第六条の海洋汚染に関する件でございます。この(a)項に、「これらの鳥類及びその環境に係る被害(特に海洋の汚染から生ずる被害を含む。)を防止するための方法を探求し、」ということがあるわけでございますが、どうもこのことにつきましては、わが国は非常に立ちおくれておりまして、こういう問題のとらえ方の認識そのものが非常におくれておりましたために、条約の締結も非常におくれ、それからそれに基づきます国内法の整備及びその施設をいろいろつくること、こうしたことがすべでおくれている。今度は、いよいよ条約でこういうようなことがきめられました以上は、ただおくれたままでいるというわけにはまいらないと思います。忠実に条約を守って、日本とアメリカとのたえずいろいろの情報の交換等もございますでしょうから、そういうような場合に、十分にこの条約を忠実に順守しているところをこちらも見せなければならないと思っております。そこで、日本がどんなふうにおくれていたかということ、この海洋の油濁につきましては、こんなようなことを外国で言われている。これをちょっと御参考に申し上げたいと思います。これは一九七〇年の八月二日付の朝日新聞の記事でございますが、「「世界の海を原油でよごす元凶は日本だ」と、全英海運会議所のカービー副会頭がわが国を非難したという。何も日本だけが海をよごしているわけでもあるまいが、公害対策本部を発足させ本格的な対策に取組もうというわが国としては、謙虚に反省すべき点が多い。」これは、ロンドンで調印されました条約の批准が非常におくれていたというようなことも、外国に対しては非常によくない印象を与えていたのでこういうようなことを言われていると思います。この記事はさらに、「ことに、英米諸国に十年も遅れているという海の油濁対策に、いまこそ本腰を入れなければ、四面海に囲まれたわが国の生活環境を守れないだけでなく、水によってつながる諸外国にまで被害を及ぼしかねないのである。」、これは非常に国際性の強い問題であるということがここで言われております。さらにこのカービーさんという人は、こういうことを言っております。その趣旨は、「世界の主要海運国、石油需要国である日本に、油を海に流さないというモラルを確立させるべきだ、」、この点でございます。「そのために、油を捨てないでもすむような廃油管理、原油の取引体制への切替え、現行の海水油濁防止条約を一段ときびしくした改正条項の批准と、それに基づく国内法の整備などを早急に実行せよ、」と、この人は言っている。そしてこの人が言っているところは、「たとえば日本の精油所は、精製コストを低く押えガソリンなどよく売れる石油の歩留りを高めるため、国際的な商慣習に従わず、タンカーの底に残される「石油かす」がまざった原油の引取りを拒否している。このような経済優先の取引体制に固執している結果、日本のタンカーは年間六十万トンものかす入り原油を世界の海に投捨てているという。たしかに、指摘されたようなやり方の石油精製会社が少なくない。」――こういうようなことがずっと書かれているわけであります。そして外国では、こういうような問題を非常に重要視している。また、世論も非常にやかましいために、石油の精製会社などがこういう施設の整備及びその取り締まりを厳重にするために助成金のようなものさえも出して一緒にやっていく、政府と協力してやっていくというようなことをやって、いるというような話もここに出ておりますが、日本の場合には全然、業者側は、もう少しもそろばんに合わぬようなことはてんとして振り向かない。こういうような態度はこの条約の締結に際しては厳重に外務大臣としても警告していただかなければならない点だと思っておりますが、いかがでございましょうか。
#5
○国務大臣(福田赳夫君) まことにごもっともな御意見と存じます。こういう条約を締結いたします以上は、わが国はこの条約の精神に沿った諸施策をとらなければならぬと、こういうふうに考えているわけであります。何せ、わが国では、この公害対策がたいへん経済成長に比べまして立ちおくれを来たしておりますので容易なことではございません。まあ環境庁を設置し、これを中心に環境の整備問題を進めていくということにいたしておりますので、まあとにかく全力を尽くしてこの条約の実践につとめるということにいたしたい、かように考えます。
#6
○加藤シヅエ君 外務大臣は、この時勢にかんがみて、またいま人間環境会議が開かれて、世界的な問題に、日本もその注視の的で、大石長官が出席なさると、こういうときを踏まえて、まあこの条約の締結を契機として、十分に積極的にいろいろと指摘されたと私は理解しておりますので、どうぞそのおことばどおりにお願いいたしたいと思います。
 さらに私が申し上げたいことは、いままでおくれていたということがまあどんなにひどかったか、そしてこのおくれを具体的にどういうふうに取り戻したらいいか、これはまあたいへんなことだと思うのでございますが、この問題を担当しております役所は港湾に関係した運輸省と、それからその取り締まりの海上保安庁、この二つの役所がやっていてくださるわけでございます。でこれに対しまして、いまこの廃油処理施設がどのくらい整備されていて、今後どのくらいのスピードでどのくらい積極的にまた充足してこういう問題と取り組んでいくか、その状況について説明していただきたいと思います。
#7
○説明員(鈴木登君) 御説明申し上げます。
 海洋汚染防止法に基づきまして、本年六月二十五日から海洋汚染防止法が施行になります関係上、それ以後は一定の条件のもとで船舶からの廃油の投棄ということができなくなります。したがいまして、現在各港湾に廃油処理施設を建設中でございます。その廃油処理施設といいますものは、国内船向けの廃油処理施設と、外国、国際航路船向けの廃油処理施設、すなわち大型の原油タンカーの廃油処理施設と二種類ございます。国内のB重油あるいはC重油向けの廃油処理施設といたしましては、最終的には本年度末をもちまして四十四港、六十七カ所の廃油処理施設を設置すべく計画をいたしております。そしてすでにそのうち二十四港、四十一カ所が完成いたしまして稼働しておる最中でございます。それから外航船の原油を積み込んでまいります大型タンカーの廃油処理施設といたしましては、東京湾、瀬戸内海それから長崎に各一基ずつ大規模なものの建設を終わりまして、そこで現在廃油の処理をすでにもう実施中でございます。
#8
○加藤シヅエ君 その設備につきまして、たいへんまだ少ないと思いますが、この動いている船にそういう設備をして――小さい船がいろいろそういう油かすなんかを捨てるということに対して、港湾だけに設備するのじゃなくて、船にするというようなことはどうなっていますか。
#9
○説明員(鈴木登君) 失礼いたしました。
 実は、外航の大型タンカーにつきましては、すでに船舶内で第一次処理をしております。それを私どもロード・オン・トップ方式といいまして、日本からペルシャ湾までの長距離の間に船舶内のロード・オン・トップ方式によりまして第一次的な処理をいたしまして、その第一次的な処理をしたものを、さらに陸上のほうに揚げる、そこで第二次処理をするという方式をとっております。内航船につきましては、一切投棄を禁止いたしまして、船内で発生した油をすべて先ほど申し上げました六十七カ所の廃油処理施設で処理をする、こういう方式をとっております。したがいまして、重ねて申し上げますと、内航船の中には廃油処理施設を設けておりません。外航船についてのみ船舶内に一次的なロード・オン・トップ・システムという廃油処理施設を設けて、そこで第一次処理をされたものをさらに陸上に揚げるというシステムをとっております。
#10
○加藤シヅエ君 先ほど外国から日本のやり方がどういうものであるかということについて、あまり名誉ある批判ではないものを受けているということを申し上げたわけなんでありますが、その中にこういうことがあるわけなんです。日本だけがこういうふうに油で方々よごして歩いているのではなくて、外国の船もけっこう日本へ来ていろいろよごしているのだということを言われるのでございますが、それは、日本がもうモラルが低くてやたらにそこいらに捨ててもだれもてんとして恥じない、またそれに対して十分な取り締まりもしていない、だから日本の近海に来たらまことに気やすく自分たちも捨てるのだというような言い分までも言われている。これはたいへん迷惑なことであり、残念なことだと思うので、こういうことに対しての取り締まりというものが、一つのことが、規則がきまりましても、それをチェックするということが非常に手薄であっては何にもならないので、そういうような問題をチェックするのは海上保安庁の役かと思うのでございますが、それはどういうふうにやっていらっしゃるのか、十分であるのか、不十分であるのか、その点もあわせて聞かせていただきたいと思います。
#11
○説明員(林淳司君) お答え申し上げます。
 海上保安庁におきましては、現在巡視船を約三百隻、それから航空機を二十八機持っておりまして、これによりまして海空両面から油その他の海洋汚染の監視と取り締まりに当たっております。現在、特に昨年の四月以降は東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、これを超重点海域としまして、あと汚染の多発する状況に応じまして全国の海域をブロック別に分けまして、特に重点海域におきましては、巡視船艇とそれから航空機との連携によりまして、上空から不法廃棄の船を見つけましたら直ちにポラロイドのカメラで写真をとりまして、それでその写真を下の巡視艇に落としてやる、その巡視艇が現場に急行いたしまして、その動かぬ証拠である写真を見せて違反船を検挙すると、こういうようなシステムで、昨年四月以来は特に監視体制を強化して厳重な監視を行なっております。
#12
○加藤シヅエ君 たいへんに一生懸命いまやっていらっしゃるようなお話でございますけれども、今日はすべて証拠がなければというような問題で、カメラで写すというのも一つの方法だろうと思いますけれども、この間千葉県で起こりましたたいへんな――あのときも油でよごされて漁業関係は非常に迷惑をしたわけでございますが、あれはたしか夜起こったことかと思います。そうしてそういうような不都合なことをして逃げて行ってしまって、あとで非常にあれは追跡して十分に調べられましても、もう写真は夜でとれなくて証拠が何にもないというようなことで逃げてしまうというような報告を受けているのでございますが、そういうことに対してはどういうふうにおやりになるわけでございますか。
#13
○説明員(林淳司君) 特にいまの御指摘にございましたように、昼間の監視を強化いたしますと、たとえば不法排出であればどうしても夜のほうに移行するということが傾向としては確かにございます。そこで私どもとしましては、やはり夜間の監視体制というものも科学的な手段を使って強化していかなければならぬというふうに考えております。ことしの予算で赤外線を利用しての夜間監視装置というものが成立いたしました。これを航空機に装備いたしまして夜間も監視できるという体制をとっていきたい。それはとりあえず東京湾についてまずそういう体制をとりまして、あと年次的に全国のそういう汚染の多発する海域にそういう装備をした航空機を配置して夜間の監視体制を強化していきたい、かように考えております。
#14
○加藤シヅエ君 海上保安庁が非常に熱心におやりになっていらっしゃることは、私も認めたいと思います。問題は、たいへん熱心にやろうとお思いになっても予算の面で十分でない。いろいろの船あるいは人員等についてもっともっと十分でなければならないはずだと思います。そこでこの条約締結を機会といたしまして、これは運輸省の予算ということになるかと思いますが、運輸省ではこの条約締結の機会にこれをもっと十分にしなくちゃならないというような意味で、次の機会にもっと予算を要求なさろうということを考えていらっしゃいますか。
#15
○説明員(鈴木登君) お答え申し上げます。
 実は、まだ予算編成時期に入っておりませんので、現在いろいろと海洋汚染防止法の実施状況の点につきまして海上保安庁のほうと内々の打ち合わせの段階でございますので、ただいまの段階で予算要求の内容を申し上げることはできませんけれども、本条約の実施のために私どもがしなければいけないのは、やはり油濁事故が発生いたしました場合の野鳥の第一次的保護がやはり一番必要ではなかろうかというふうに考えております。したがいまして、油濁事故が発生した場合に、まずいろいろと爆発防止の対策とか、あるいはそのためのガス検知とか、いろいろ実施しておりますけれども、それと同時に、野鳥を保護するための一つの手段というものをやっぱりとるべきではなかろうかというふうに考えまして、何らかそのための対策費をひとつ計上してみたいなというふうな考え方を持っております。
#16
○加藤シヅエ君 野鳥のことまで考えるようになってくだすったことはたいへんな進歩だと思います。それは、いままで全く鳥のことなんかは考えられなかったのが日本のお役所の姿でございます。
 それで、いままでも油が流れて、ことに日本海のほうではずいぶんこの油濁のために鳥が死んでいるわけでございます。ところが、鳥が死んだといっても、新聞記者もこれをごユースにしてくれないそうです。そうして、その鳥は油でもう固まって、まるでコールタールの固まりみたいになって打ち上げられている。そうすると、子供もこれが鳥かどうかといってふしぎがるほどひどい死に方をしている。新聞記者にこれを見せても、これが鳥ですかといって、ちっともニュースにしてくれないというような状況でございましたから、まあお役所でもそんなニュースにもならないことに何にも手をお打ちになるということもなかったわけだと思います。しかし、今度は環境庁というお役所ができまして、鳥獣保護課というものが今度できましたし、この条約もできましたから、いままでのように鳥、だからといってほうっておくということはできないはずでございます。それは、鳥というものと人間の生活環境というものが非常に密接な関係があるために、鳥がこういうような死ぬ状態は人間にとっても非常におそろしいことだという、そういう認識から起こることだと思います。いままでは魚が死んだということになれば、食べものに関係するから、すぐに補償しなくちゃいけないとか大騒ぎをする。鳥の場合には、非常にそういうことに対して見のがされがちであった。そうして、もう一つ驚くことは、いままでそういうような問題につきまして、日本海の海のよごれの状況などを調査する取り締まり官庁が会議を開かれましたときなんかには、たいへんなたくさんの廃油が捨てられているというような事実で、そこに鳥が死んだというようなことが発表されましても、たかが鳥のためにそんなに騒ぐことはない。マスコミに対してよけいなことをしゃべることはないというようなことを、会議を開かれたときの一番のトップの方の発言として、そういうことがあったそうでございます。で、それは、後日、非常に新聞で発表されて問題になりまして、そういうような発言に対しては、これは反省するということで結着したそうでございますが、これは一昨年の話で、一昨年あたりまではそういう態度であった。こういうわけでございますから、これはもうほんとに、急速にこのおくれを取り戻していただかなくちゃならない。ことに、今度環境庁長官がストックホルムの会議においでになる途中、モスクワに寄って、日本とソ連との渡り鳥の協定についても下話を進めようという意図があるというようなお話でございましたが、ソ連との条約ができるということになると、日本海のほうの汚染の問題が非常に影響してくるわけでございます。で、新潟港と富山県の伏木港、これはもう非常によごれているという状態でございますが、そのよごれの状態はいまのところどういうふうになっておりますか。その一番のよごれの原因はどういうところからくるんでございますか。もしわかっていらっしゃいましたら、御説明いただきたいと思います。
#17
○説明員(林淳司君) 私ども、昨年一年間の海洋汚染の発生件数、これは海上保安庁で把握した件数でございますが、これは全国で千六百二十一件ございまして、そのうちでやはり大部分、ほとんどが油でございまして、油が千三百件というふうになっております。そのうち、地域別に分けますと、日本海沿岸におきましては、千六百二十一件のうち百十件が日本海では発生しておる。そのうち、やはり、大きなものは油でございまして、このうち油が五十六件、その他が五十四件ということで、まあ過半教、半数をちょっとこえた程度が油というふうになっております。その油が、日本海側のどの地域で多く発生しているかということでございますけれども、特に集中して発生しているという海域はございませんで、大体西のほうは仙崎沖、それから浜田、舞鶴、伏木、七尾、それから新潟、酒田、あの辺の港付近で多く発生しておるという状況でございます。
#18
○加藤シヅエ君 相当状態は悪いらしゅうございまして、油のために死んだ鳥を解剖した結果が報告されておりますけれども、死んだ鳥の腸をしぼると廃油が流れ出てくる。からだの目方の五〇%は油を飲み込んでおるというような、非常に悪い状態で死んでいるというようなことで、しかもそういうようなことに対して何にも、だれかが出ていって鳥を一生懸命助けたというような話は聞かないわけでございます。これに対しまして、英国や米国では、タンカーが事故を起こして油がたいへんに海上に流れた、鳥がたいへんな危険状態になったということになりますと、民間の鳥に関心のある人たちがすぐにかけつけて来て、取り締まり当局なんかと協力して保護センターをつくって、鳥の処置をするということがあちらこちらで非常にこまかく報告されているわけでございます。これはほんとうに人間としてうるわしい行動だと思います。日本でも、いまにそういうふうになるのだろうと思いまして、これは環境庁鳥獣保護課のほうにも民間の方との協力を十分にやっていただかなくちゃならないと思うのでございますが、いろんなところでもって事故が起こったといって救済する保護センターというものをつくるといっても、ただ騒ぐだけではいけないので、処置する、そこに資材が必要であるし、何か必要なものがなくちゃならない。こういうようなものは、そういう危険のあるところにふだんから分布して配っておいていただく、こういうようなところで事故が起こったときには、緊急処置としては、まず鳥のためにはこういうことをするというようなことぐらいは、ふだんからきめておいていただきたいと思うのでございますが、そういうことを考えていらっしゃるかどうか、それも聞かしていただきたい。
#19
○説明員(鈴木登君) 実は全国四十三カ所に、大型タンカー事故対策連絡協議会というのがございます。これは海上保安庁が中心になりまして、警察あるいは地方公共団体、あるいは港湾の関係事業者というもので編成されておりまして、大型タンカーの事故が発生した場合の災害防止対策、あるいは救難対策というものをやるためのふだんから連絡をとっている団体でございます。その団体を、やはり油濁事故が発生した場合の鳥類の保護のために使うべきではなかろうかというふうに考えまして、いろいろと考えております。ところが非常にお恥ずかしいながら、まだ私ども鳥類が油の被害をこうむった場合にどういう症状を呈するのか、それに対してどういうふうな対策を、どういうふうな保護をすればいいのかというような点について、お恥ずかしいながらまだ詳しくございません。したがいまして、山階鳥類研究所のほうに、現在どういう第一次対策をとっていいのかという点につきまして教えてもらっておる最中でございます。それによりまして、鳥の第一次救済策をコンパクトにまとめまして、それをただいま申し上げました大型タンカー事故対策連絡協議会のほうにパンフレットでもつくって回しまして、いざ事故があったときに、そのパンフレットに基づいてやってもらうというふうな対策を考え、現在推進中でございます。
#20
○加藤シヅエ君 環境庁の鳥獣保護課からどなたか来ていらっしゃいますか。――こういう問題は、運輸省の港湾局それから海上保安庁がそういうような設備をいろいろと考えてくださると同時に、環境庁の鳥獣保護課のほうでもこれは十分に考えていただかなくちゃなりませんし、この前も私が申しましたように、いま非常に手の足りないお役所で何もかもしていただけるとは思いませんです。できることは、こういうようなことはどこの地域で突発的に起こるかわからないことでございますから、日ごろからこういうことに対する教育を盛んにして、一般の人、地域の方々、子供たちも、こういうようなことに深い関心を持つような教育、それからいろいろ民間の有力な団体がございますので、民間の団体との密接な連絡をおとりになって、民間の団体に十分に働いてもらうように絶えず連絡をなさることがたいへん大切だと思います。国民こぞってこういう問題に取り組むという姿勢が正しいのではないかと私は思っておりますが、いかがでございますか。
#21
○政府委員(首尾木一君) ただいま先生の仰せられた点はごもっともな点でございまして、私ども、従来十分に役所自体としましては組織、人員というものが整備されておりませんで、やはり現段階において少なくとも鳥獣保護に関心の深い方々の御協力をいただくということがぜひ必要な問題であるというふうに考えておりますし、さらに小中学校、あるいはそういった学生といったような時期において愛鳥思想の普及、あるいは鳥に関するいろんな常識といったようなもの、これを教育を通じまして普及をしていくということが日本の鳥類の保護という面において重要な点であるというふうに考えておりますので、そういう方向で今後十分やってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#22
○加藤シヅエ君 最後に一言申し上げたいのでございますが、いま私が申し上げました海水油濁の鳥への影響につきまして有名な事件としては、一九六八年三月英国の南端で起きましたトリー・キャニヨン号事件、これはたいへんな事件だったと思います。十万トンといわれる原油が流れ出した。このときも英国自然保護協会と王立野鳥保護協会の会員たちがいち早く現場に続々と集まってきて、油まみれの鳥の救出作業に当たった。すぐに鳥の洗浄センターがつくられて、そこに弱った鳥が集められて、センターに運ばれた海鳥は七千八百四十九羽、これが手当てを受けたわけでございますが、二カ月後まで生き長らえたのはその中でわずかに四百五十羽であった。けれどもこのとき死体が見つかったものは実に二万五千羽以上に及んだというたいへんな、おそろしいことでございますが、まあ民間、国、そろってこういうようなことをやった。
 その次に有名なのは、あのアメリカのカリフォルニアのサンタバーバラ沖の海底油田で、海底から油が噴出した事件、三百キロにわたって海水が汚染されて、このときも動物を含めて海鳥が四千五百羽以上死んだ。このときにも地元の保護者たちが救出センターをつくって千六百五十三羽かつぎ込んだけれども、生き残ったのは百九十八羽だけしがなかったということでございますから、これは相当早くにいろいろやってもなかなかこの救出ということがむずかしいということの報告だろうと思います。ただこれは、今後大いに鳥獣保護課を中心にして運輸省、海上保安庁が御協力なさって、直ちにいまよりももっと進んだ対策というものができるように努力していただきたいというふうに思うわけでございます。
 一つおもしろい報告がございますが、これは環境庁の参事官の方がアメリカのケープ・ハトラス国立公園で目撃した光景です。海ぎわで油にまみれてもがいている鳥を公園の職員が見つけた。それをすぐに救い上げてドラムかんの中に入れた。そうして雑貨屋に行ってネコのえさとメリケン粉を買ってきた。ドラムかんの底にメリケン粉を敷いて、さらにこの鳥のからだにそのメリケン粉を振りかけて、そしてネコのえさを入れてドラムかんのふたをした。翌日の朝になると油はメリケン粉に吸い取られて、ネコのえさで栄養をとってこの鳥は元気を取り戻した。いろんなくふうがあるものだという報告でございますが、最後に日本の国民、野鳥に関心を持っている人、それから役所が、もしあなたが、事故で鳥がこういうふうに油づけになったら、すぐにかけつけて救出センターをつくって救うというようなことをやるだろうかどうだろうかということを言ってこの報告は終わっているのでございますが、これは非常に私たちに考えさせられる問題で、私たちのモラルの水準をもっと明るく高いものに引き上げる、そして国際性を持たす、こういう意味にも非常に意義があると思いますので、私はこの協定を批准するに際して、こういうような多くの問題を含んでいるという、こういうことを特に強調いたしまして私の質問を終わり、外務大臣にも大いに御努力をお願いする次第でございます。
#23
○政府委員(首尾木一君) 油で汚染された鳥類の救助法についてお話がありましたが、これは私専門家ではございませんが、専門家といいますか――普通の救助方法は、油まみれの鳥類を救い上げて収容しまして、まず中性洗剤あるいはサラダ油で油を完全に洗い落としまして、次いでメリケン粉を全身に振りかけて、鳥のからだに付着している油を吸着させてから電熱保温装置の容器の中に収容して保温につとめ、元気を取り戻したならばえさを与えるようにするというのがこれまでの鳥の、油にまみれた鳥の救出方法でございます。
 こういったような常識というのは、これは先ほど申し上げましたように、子供のときからそういうようなことを教えるというような方法によりまして、簡単にこういうふうなことを習得することができますので、私ども従来鳥の問題といいますと、鳥類及び狩猟に関する法律の実施ということで、むしろ狩猟に対する規制といったような面での鳥類保護というのか、いわば規制による鳥類の保護というのか、それに傾いていたようなきらいがあろうかと考えるわけでございますが、今後はやはり環境全体の問題といたしまして鳥の保護、積極的なそういったような問題、種の保存も考え、鳥類の豊富な自然環境というものを現出をしていくというようなことが重要と考えておりますので、今後そういったような積極的な保護面、そういうようなものに対して、また自然に対するモラルも心得たそういう環境というものが、一般の人の考え方というものができますように、そういう面に鳥獣保護の重点を指向していくように行政を進めたい、かように考えているわけでございます。
#24
○森元治郎君 一問伺います。まとめて伺いますが、中共、北朝鮮関係、この隣の国からの渡り鳥、この関係をどうするのか。未承認国でありますから条約ができないまでも、学術団体あたりで連絡をして、こういうような方向に措置をとっていくのか、全然やっていないのか。それから渡り鳥というのは中共あたりからでも二百種類くらいがくるといっています。朝鮮からもたくさんくるんでしょう。これには赤い色がついたりなんかしてないんですよ。鳥には区別がない。日米でもって今度一生懸命条約順守して環境を保護しよう、向こうからくる鳥はおまえはだめだからこれは殺してもいいということになれば区別つかないので、あるいは二百種類は全然別個の鳥だ、見るからにわかるんだというならこれはわかります。これは打っても殺しても何してもいい、片方で一生懸命大事にしましょうと、こうやって厳重なこまかいことをきめたってこの条約下に入らないでこの辺からくる鳥は一体どうやって保護するのか、すみやかに措置しなければいけないんじゃないか、この条約で。これが一つ。
 それからソ連との関係はどうなるのか。条約でもつくってすぐサインでもするようになるのか、この見通し、それだけ伺います。
#25
○国務大臣(福田赳夫君) まずソビエトのほうですが、ストックホルムで開かれます人間環境会議、これに大石環境庁長官がわが国の首席代表として出席するわけでありますが、明日出発するわけです。途中、行きがけにモスクワに寄りまして、ソビエト政府との間で、アメリカとの間で今回締結いたしましたこの種のものが日ソ間でできないかということについて話し合いをいたす、こういうことになります。何らかの前進が見られるであろうし、また何とかこれは推進をいたしたい。日ソ間、非常に渡り鳥が多いわけでございますから、ぜひこれは実を結ばせたいものだと、さように考えております。
 それから未承認国の問題でありますが、この種の協定は、これは政府を拘束する要素がかなり多いわけであります。そういうようなことで国交が樹立されませんとこれは完全なことはできませんが、しかし、これが不完全にせよ何にせよ、未承認国との間にこういう人道上――人道上じゃありませんな、環境上大事な問題が何らか取りきめができるというようなことになりますれば、民間ベースといえども私は歓迎すべきことである、そういうふうに考えるわけであります。しかし、政府を拘束するような内容のもの、これになりまするとなかなかむずかしかろう。したがって、同時に私どもは日中間、特に日中間の問題になりますると、その国交の打開、これが一日も早く到来するようにということを念願をいたしておるわけであります。
#26
○政府委員(首尾木一君) 鳥の、そういうアメリカとの間において締結をいたします渡り鳥、あるいは絶滅の危険のある鳥類以外のもので、たとえばソビエト、あるいは中国からの渡り鳥等についての保護の問題でございますけれども、これは今回の条約を締結をいたしまして、国内措置といたしましては、このたび特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律というものをつくりまして、特に現行法における鳥獣保護及び狩猟に関する法律の足らざる面といたしまして、譲渡についての規制、それから輸出入についての規制措置というものも、特に絶滅のおそれのある鳥についてのみそういった新しい規制の法律をつくったわけでございますが、その他の条約面での問題というのは、現行法によりまして十分対処ができるという考え方であります。したがいまして、そういったようなアメリカからの鳥以外のものにつきましても、これもいまの今度の新しい法律で規制される問題外の問題につきましては、保護につきまして、全くの差はないわけでございます。ただ問題になりますのは、先ほど言いましたように、そういう今回の法律によりまして絶滅のおそれのある鳥類の指定という問題、それがアメリカとの間で、今回わが国の場合は二十八種類、アメリカ側のほうは四十六種類というものが指定をされることになるわけでありまして、これは国内におけるそういう譲渡についての特別の許可制度を設けるということ、それから輸出入につきましての規制措置を設けるということでございますから、その点はこれは今後それぞれの国との条約のできました際には、それぞれの外国におけるそういう鳥類というものを新たに指定をするということについて、その面での取り締まりをやっていくということになるわけでございます。しかし、鳥類一般の保護という問題というのは、これは別に国籍云々ということではございませんので、わが国に飛来する鳥類の問題につきましては、同じようにやはり保護を加えていくということは変わりない点でございます。
#27
○渋谷邦彦君 最初に環境庁にお伺いしておきたいと思うのですが、渡り鳥白書、これによると昭和十八年、例をガン類にとってみた場合でも、当時百四十八カ所ですか、六万二千三百、こういう数字が明確に記されたのが出ております。ところが昨年の統計によりますと二十七カ所、五千六十羽、えらい激減しているわけですね。いまも公害問題を通して鳥獣類の被害ということについて質疑があったわけですけれども、いまガン類を一例にとって見てもこういう状況、これは一体どういう理由によるのか、非常に激減している。そこらあたりから説明して下さい。
#28
○政府委員(首尾木一君) 鳥類全体、たとえば渡り鳥全体につきましての数の問題というのがどのようになっておるかということにつきましては、これは全数を調査するということはなかなか困難でございまして、そういう調査はございませんが、先生おっしゃいましたように、ガンにつきましてはそういったようなことで、約十年間で半減をしておる。飛来時にいたしましても、また渡来する数にいたしましても、半減をしているという状態でございます。これは原因等についてはいろいろ考えられますけれども、やはりそういったようなわが国の開発といいますか、そういったようなものに対応いたしまして、生息環境というものが一般的に悪化をしているということが基本的な原因ではなかろうかというふうに考えられるわけであります。
#29
○渋谷邦彦君 一般論からおっしゃったのだろうと思いますがね、これは具体的な理由があるんじゃないかと感じられるわけですよ。いまそうした具体的な理由についてお述べになりませんでしたけれども、それなりの今日の結果について一体環境庁としては把握をされているのか。
#30
○政府委員(首尾木一君) ただいま生息環境の悪化ということを抽象的に申し上げましたが、たとえば都市化等に伴いましていろいろ営巣の場所の問題でありますとか、あるいはまた千がたの埋め立て等による周囲の環境というものの悪化、狭隘化したといったような問題等が一般的に考えられるわけであります。
#31
○渋谷邦彦君 営巣の問題だとか、それももちろんございましょうけれども、しかもいま私がおたくでいろいろ集められた資料を整理されて出された白書自体に激減でございましょう。この数字、激減ということは、何らかの理由がなければ激減できないというふうに考えるのが当然でしょう。一体どういう公害によってこういうことが起こったのか。営巣だとかそういう問題だけが激減の理由になっているのか、そうじゃないだろうと僕は思うんですけれども、どうなんですか。
#32
○政府委員(首尾木一君) まあ正確に激減といいますか、十年間で半減をした理由というものを追跡的に調査をいたしまして、また分析的にやっておる研究はございませんので、一般的な理由ということにとどまるわけでございますが、先ほど申し上げましたような千がたが減少をしておると、重要な渡来地でありますところの千がたの減少の問題でありますとか、あるいはまた湖沼地帯が干拓をされたということによりまして、従来から鳥が干がたあるいは湖沼地帯をその生息場所、あるいは繁殖の場所として集まっておりました。そういう渡り鳥というものが、そういう生息環境の悪化のために渡りが少なくなってきたというのが一般的な現象から見られます、想像されます激減の理由と一応考えておるわけでございます。
#33
○渋谷邦彦君 農薬による被害という問題についてはどうなんでしょうか。
#34
○政府委員(首尾木一君) 農薬あるいは各種の公害物質によりまして、鳥類全体がやはり影響を受けておるということは、これは否定のできない事実であろうというふうに考えられるわけでございますが、まあ鳥は飛しょう力というものもございますし、農薬による影響といいますと、えさの問題でありますとか、農薬自身がかかる問題とか、いろいろあると思いますが、そういうことで、全体としまして鳥類にいい影響を与えておらないということは確実であります。いまこういったようなものにつきましては、遺憾ながらその渡来、飛来数の激減ということと、それから農薬との関係がどうかといったような問題につきましては、十分私どもそういう調査というものが、研究というものは進んでおらない現状でございますが、農薬の問題につきましては、ようやくまあ鳥類におけるそういう各種の公害物質の残留毒性に対する調査研究費といったようなものも、今年度の予算に計上をされましたので、そういうものを通じまして、今後そういう点をひとつ積極的に取り組んで解明していきたい、かように考えておるような現状でございます。
#35
○渋谷邦彦君 それで現在の環境庁における鳥獣保護行政というものが機能的に十分発揮し得る状態に置かれているのかどうなのか、せっかくこういう条約を締結しようというときに、それに対応できるだけの背景というものがきちんとなければ、これはただ結んだということだけでもって、実効が期せられない。そういう問題が出ますわね、そういう点はどうなんですか。
#36
○政府委員(首尾木一君) 国の鳥獣行政の現状は、環境庁の自然保護局に鳥獣保護課がございまして、そこは課長以下十一人でございます。国の関係ではそういったような行政の機構になっております。さらに県におきましては、これも現在のところ、たとえば環境部でありますとか、あるいは衛生部でありますとか、あるいは林務部でありますとか、そういったようなところの中に課がございまして、その課の鳥獣保護係りといったようなことで鳥獣保護の問題をやっておる。そこは、これらでやっておりますものは、非常に多くの部分を占めておりますのは、現在の鳥獣保護及び狩猟に関する法律の施行ということでございまして、この中には鳥獣の保護と同時に、やはり狩猟の適正化という問題、これは狩猟の適正化を通じまして、鳥獣の保護ということをはかるというのが、その法律の趣旨でございますが、そういうものを実施をいたしておるわけでありまして、まあ蛇足ですが、地方ではそういったような県の職員というものが、出先は農林事務所でやっておるという状況でございますが、それらを全部合わせまして千百八十名程度の、現在司法警察職員の身分をもってこの鳥獣の保護、管理に当たっておる。
 それからさらに鳥獣保護区につきましては、民間の二千三百人の鳥獣保護員を委託をいたしております。そのほかに直接の鳥獣保護区につきましては、百八十名の管理員を委託をいたしておる。こういう状況でございまして、もちろんこの鳥獣保護行政の実施に当たりましては、鳥類の生息環境の保護でありますとか、鳥獣に対する給餌あるいは給水の施設の整備といったような仕事を、これをやることになっておるわけでございまして、現実問題といたしまして、現在その主力が狩猟の規制というようなこと、それを通ずるその面での鳥獣の保護ということに多くの仕事の手を取られておるというのが現状でございまして、今後私どもは積極的にひとつ鳥の保護と鳥類に対する環境の保全を含めまして、鳥の積極的な保護という面に今後の行政を伸ばしていく。そういう中でこの条約上の実質的な義務というものを十分履行していきたい。かように考えているわけでございます。
#37
○渋谷邦彦君 いま伺っておりますとね、非常に監視体制というか、鳥獣保護に当たる職員の数が決して多いとは言えない。はたして現在の陣容とあるいは設備で十分できるのかどうなのか、私、しろうとですからわかりませんけれども、そういう問題が端的に浮かび上がってきますが、はたしてその約三千名近くの職員の中で、その人たちが全部エキスパートなのかどうなのかですね、その辺はどういうふうになっているのか、あわせてひとつお聞かせいただきたいと思います。
#38
○政府委員(首尾木一君) これらの方々が全部これに関するエキスパートとは必ずしも言えないと思いますが、民間のそういう委託する鳥獣保護員等につきましては、鳥獣の保護について関心の大きいという方々にお願いをいたしておるわけでございます。で、総体的に鳥の問題につきましては、これはなかなか鳥の問題を専門的にライフワークとしまして研究をし、この問題に進んでまいるという人が、なかなかこれまでの状態において得がたいというのが実情であったというのが考えられるわけでございますが、しかし鳥の問題につきましては、必ずしも全部がエキスパートになる必要はないわけでございまして、いろいろそういう鳥に関する各種の常識といったようなものを、特に教育課程を通じて普及をするということで、私どももちろん担当の行政の職員に対しましては、研修等を通じまして十分な知識、技能等を与えていくということをはかる一方で、民間のそういうような鳥につきましてのいろいろな常識というものを普及をさせる。愛鳥思想というものを普及をさせまして、相まって鳥獣保護行政というものを強力なものにしていきたい、かように考えているわけでございます。
#39
○渋谷邦彦君 今回の条約の精神から言ってもですね、はたしてその期待し得る行政的な措置というものの効果があがるかということは、これは伺っている範囲でもほとんど不可能じゃないかという気がしてならないわけです。おそらくまあ完ぺきを期するということは、これはできないにしても、ならば一応理想的な形態まで鳥獣保護というものについてこれからの対応策を考えるとするならば、どういう点を現在整備してまた予算的な措置もどうしなければならないのかという問題が次に必ず起こってくると思いますね。これはどんなふうに考えておりますか。
#40
○政府委員(首尾木一君) 私は現在のいままでの行政機構なりあるいは予算のみでこの条約あるいは鳥獣保護の問題を完ぺきにやるということについてはなかなか困難な問題が多かろうと考えておるわけでございまして、今後やはりそういう点については強化をしていくということによってこの問題を解決していきたいと思っておる次第でございます。
 本年の予算でございますが、これは環境庁が始まりまして昨年までの予算に比べまして、総額から申しますと一億二千万でございますが、倍率から申しますと昨年度の七・数倍というようなことで、一気にまあ拡充をしたというような実績があるわけでございます。これはしかし一億二千万円で内容といたしましては条約の実施に関連して、たとえば観測ステーションの設置でありますとか、そういったようなものが入っておりますけれども、これは観測ステーションの設置というようなことも、これも十分なものではない、こう考えておりまして、これにつきましては年次計画でこれを観測ステーションをふやしまして、鳥のいろいろ標識のそのセンターをつくっていくとか、そういうものを具体的にやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。それから予算的な面におきまして、鳥の保護という面では、ことし新たに保護思想の普及ということを含めまして、野鳥の森というようなものが予算として新たに四カ所ことしつくるということが設けられたわけでございますが、さらに今後国といたしましては、この野鳥の森というものを各県に広く普及をしていくように努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。その他、従来の予算におきましては事務費等が主たるものでございましたが、実質的にやはり補助金等通じまして、まあ各種の鳥に対する積極的な保護の予算というものを拡充をしていく必要があろうというふうに考えております。また、行政機構の面におきましては、これはやはり先ほども申しましたように、各県の実情が、たとえば環境部に係を置いたり、あるいは環境医務部、衛生部といったようなところで、いろいろなところでもって、また鳥獣保護係といったようなことにとどまっておるというような状況でございますので、こういう機構の問題につきましては、十分な機構の整備をはかりまして、中央と同時に地方でのそういう体制を確立することを通じまして、鳥獣保護行政というものを軌道に乗せていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。まあ、現状から申しますと率直に申しまして十分な機構でないということは、機構あるいは予算の現状ではないということは遺憾ながら事実でございますが、今後これを拡充をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#41
○渋谷邦彦君 福田さんにお尋ねするんですけれども、いま首尾木さんが言われたように、環境庁の鳥獣保護課の職員十一名、予算が一億二千万。ところが米国の場合は全然けたが違うんですね。野生生物局と言うんですか、渡り鳥関係を扱っている局があって職員が三千人、予算が約四百億、その四百億の中で約百五十億が渡り鳥関係の費用として使われておる。あまりにもけたが違い過ぎるんで、一体せっかく条約を結んでも、先ほど申し上げましたように、条約の効果というものは期せられるであろうかという疑問が出てきますね。これはアメリカとすぐ対等にというわけにいかないかもしれませんが、人的交流の面あるいは予算の面、そういうようなことは申し上げませんけれども、それにしてもあまり違い過ぎるのじゃないか、この辺を福田さんとしてはどう考えて十分これからも条約の精神を生かして、その効果をあげる行き方ができるのか、こうお考えになっているか、その辺をちょっと伺っておきたい。
#42
○国務大臣(福田赳夫君) 環境庁自体としますと、まあ環境庁の性質上これらの問題の連絡調整、そういうことが主になるだろうから、したがって、陣容も少のうございますが、実施面につきまして、農林省がこれは大きな関係を持つわけです。特に林野庁ですね。そういう方面にはかなりの人がいるわけでございます。そういうことも合わせごらん願いたい、こういうふうに思います。何せ、わが日本ではこういう考え方自体が非常に立ちおくれており、アメリカあたりは前から内務省、そういうところでこういう行政がかなり早くから進んでおる、こういう状態でありますが、立ちおくれたわが日本がいよいよそういう問題に真剣に取り組む段階とすると、まずこの程度でスタートしてみる。それでもし足らないというような面がありますれば、またこれが是正するということを考える、これは当然かと思います。
#43
○渋谷邦彦君 先ほども首尾木さんの答弁をそばでお聞きになっておわかりになったと思うのですが、私も新たな認識を持ったわけですけれども、やはり将来の課題として今後の鳥獣保護というものがかくあるべきだというその考え方をお述べになったような気がするのですね。そうすると、当面はどうするのだという問題が必ず出てくる。もう条約が締結されれば当然いろいろな問題が起こってくる。はたして日本がこの条約に基づいてきちんと鳥獣保護について励行しているのかどうなのか、その確認の方法だってこれはあいまいかもしれないし、そこらあたりが何せわれわれとしては確認の方法がないだけに、はたしてその効果というものが期せられるのかということですね。
#44
○政府委員(首尾木一君) 先ほどもお答え申し上げましたが、この条約の実施のために特に今年度新たに予算を計上いたしまして、渡り鳥についての観測ステーション、これをことしは一級三カ所、二級十五カ所を考えておりまして、これは年次計画でさらにやっていくわけでございますが、そういう観測ステーションの設置ということは、これは条約上のいろいろの情報の交換とか、そういったようなことのためにぜひ必要ということで、この観測ステーションを設けたわけでございます。さらに渡り鳥につきましては、特に生息環境として干がたが非常に重要でございますので、干がたについては本年度十カ所やり、さらに引き続きまして来年度もこの干がたの調査をやり、それから特に鳥類につきましてやはりこの島嶼の特定鳥類の調査を島嶼九カ所やるというようなことでございます。条約上の義務というのは、御案内のように、渡り鳥につきまして狩猟期間以外における狩猟の禁止を義務づけており、捕獲の禁止を義務づけて、また違法捕獲につきまして、そういうものの取り締まりを厳重にするということをやっているわけでございますが、これらは従前の鳥獣保護及び狩猟に関する法律の実施においてこれが可能であるということでございますし、また絶滅のおそれのある鳥につきましては、そういうものについての規制の措置、あるいは輸出入の規制をとりましたので、条約上の義務を果たすということは、そういう体制は一応現体制のもとでやっていけるというふうに考えておるわけでございまして、さらに環境の保全というようなものにつきましては、不十分ではありますけれども、現行法の中でこれを拡充をしていくということがまあ条約の精神であろうというふうに考えておるわけでございますので、条約上の義務を果たせないという現状ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
#45
○渋谷邦彦君 いずれにしても、鳥獣保護条約をめぐって、いま日本の環境というものがまたはしなくも浮き彫りになってきている、むしろ焦点がそこにあるんじゃないかという感じすらいたしますね。ただ問題は、この委員会においてそれをとやかく言う筋合いのものでないと私思いますので、ともかくこの鳥獣の保護条約をめぐって、外務省もまた環境庁も、あるいは農林省等も当然その所轄に入るだろうと思うんですけれども、従来とかく言われておりますように、これはどこの管轄だ、これはどこだということで、きわめて極端なセクショナリズムというものが頭をもたげる傾向があるわけですよ。だからそうした点についてもやはり根本的に政府として考えていかなければならないし、まあこうした条約が締結される機会に、やはり対外的に見ても信用という問題もからんでくるでしょうし、この機会にやはり本格的にこの種の問題を通した環境問題の整備というものを考えていく必要があるんじゃないだろうかと――まあ別に答弁は要りません。とにかく外務省も人ごとではない。当然こういう問題をめぐって政府部内において環境問題真剣に考えなきゃならぬと、こういう問題を特に指摘して私の質問を終わります。
#46
○委員長(八木一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの・件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#48
○委員長(八木一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#50
○委員長(八木一郎君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
#51
○森元治郎君 時間がないようなので、具体的なものを聞くほかありませんが、まあ大臣もつとめてやはり委員会には長い時間をさいていただきたいと思います。
 きのうで米ソの話し合いが終わって、コミュニケ――米ソ関係に関する基本的原則というものを発表して終わりました。これをへたに質問していくと、もう収拾つかないぐらい広く深くいってしまうので、まず日本に直接関係あるのは、去る一月サンクレメンテで佐藤総理からニクソン大統領に対して、モスクワに行かれた際は、北方領土問題についてよろしく話してもらいたい――どういうふうに話したかはあとで伺いますが、そういう意味のことが言われたとわれわれは承知しております。もう会談は終わりました。頼まれたほうは真剣に頼まれてやったならば、すみやかに待っているはずの日本に報告が来てもしかるべきだと思います。大臣、モスクワからどういうふうに、大使からどういう連絡があったか、それを伺います。
#52
○国務大臣(福田赳夫君) 米ソ会談の結果につきましては、昨晩九時に発表があったわけです。その発表に先立ちまして、アメリカ大使から米ソ会談の結果を取りまとめたそれらの発表内容についての事前の連絡がありました。私も、その連絡を受けましていろいろ聞いてみましたが、この米ソ会談におきましては、日本については何ら触れるところがなかった、こういうふうに言われております。
 まあいま北方領土のお話でございますが、サンクレメンテ会談で、そういう話をアメリカの大統領にしてみようかなあというような話が出たことは、これは事実であります。その後いろいろいきさつがありまして、そういう話を持ち出しにくいような環境も出てきておったんです。そういうようなこともあろうかと思いますが、まだその北方領土の問題につきまして米ソ間で話があったという情報は得ておりませんです。
#53
○森元治郎君 サンクレメンテの話はどうなんですか。もう過去のことですから、お話し願いたいのは、どういうニクソン大統領に頼み方をされたのか。大臣も同席されている場所だと思うんですが、あるいはこっそりやったか、その間の事情を一どういう意味のことを頼んだのか。
#54
○国務大臣(福田赳夫君) サンクレメンテにおきましては、正式の議題についての討議というような形ではなくて、非公式なまあ話し合いというような雰囲気の中で、ニクソン大統領から、まあグロムイコ外務大臣が近く来るという話ですねと、こういうような話があり、そのとおりだと、こういうような当方から返事がありまして、いま、まあ日ソ間には何か問題がありますかと、こういうようなことで、いや大いにある、それは北方領土の問題であるというようなことを話しましたところ、ニクソン大統領が、まあソビエトというものは大きな領域を持っておる、あの四つの島ですから、そうその小さな島なんか問題とするのはどうでしょうか、その島の問題が片づけば日ソ平和条約ができるというようなことであれば、私ならまあその島なんかにはこだわりませんねと、こういうような話がありまして、そこで佐藤総理から、まあそういう考えならばひとつモスクワに行かれるその際に、あなたのそういう感じをお伝え願いたい、そういうやりとりがあった。ところが、あとでそういうやりとりがあった旨が世間に知られるようになりまして、どうも世間にあの話が知られるようになったとなると、どうもモスクワに行ってあの話はしにくくなったなあと、こういうような事情が出てきたんです。そのことを私はあとで話しにくい環境が出てきたというふうに先ほど申し上げたわけです。まあ率直、ざっくばらんに申し上げてですね。
#55
○森元治郎君 そうすると、外務大臣、アメリカの日本にいる大使から外務省の大臣のところにコミュニケその他が発表になる前に連絡があって、日本に関係のある話は出なかったと、こういうことだけで、領土問題を切り出すような雰囲気がないので出し得なかったというあやまりみたいな意味も入っているわけですね。
#56
○国務大臣(福田赳夫君) さような意味は入っておりませんです。とにかく日ソ間の問題については全然話は出なかったと、こういうことでございます。
#57
○森元治郎君 佐藤総理とニクソン大統領の話を伺っていて、やはりいかにも総理から頼まれたな、こういうふうに私は理解するのですがね。持ち出してもしかるべきだと思うが、自分のことが先になっちゃって、日本から頼まれたことは、サンクレメンテでその場限りの調子のいいことを言ったと。はなはだどうも大統領と総理大臣の話にしては少し軽過ぎると思うのですがね。どうでしょう。
#58
○国務大臣(福田赳夫君) これはまあ大事な話ですから、誤解のないように願いたいのですが、先ほども申し上げましたように、サンクレメンテで両首脳の間でただいまのようなやりとりがあったことは、これはもう事実なんです。で、まあ大統領がそういう御見解であると。それがソビエトに伝えられるということはたいへんありがたいというわが佐藤首相からの発言、それはそのとおりなんですが、ところがそのやりとりのあった旨が世間に周知されるようになってきたと。そこで、もうその時点からアメリカといたしますと、ソビエトに島の話を発言をすると、そういうようなことが非常に困難になってきたと、こういうことなんです。その当時から私どもは、もうアメリカは島の問題について話を持ち出すということは非常にむずかしくなったと、こういうふうに思っておったわけです。アメリカもなかなかむずかしいという立場に追い込まれておったということなんでありまして、何か両首脳の間で約束があったがそれを履行しなかったというような関係には全然ないということを御了知願いたいと思います。
#59
○森元治郎君 漏れるというのは、だれが漏らしたのか、意識的に漏らしたのか、どんなふうですか。私はサンクレメンテにいないからわからないけれども、サンクレメンテから流れてきたのですからね。だから、総理と大統領の話にはそう数多い人はいないわけで、だれが漏らしたのか。佐藤さん、うれしくてつい漏らしたのか、どういうことでしょうね。
#60
○国務大臣(福田赳夫君) その辺はあれですね、ひとつごかんべん願います。まあとにかく漏れたと、そういうことだけは申し上げられるわけです。
#61
○森元治郎君 総理もちょっといい気持ちになって、ついうっかりというのが真相でしょう。まあ外務大臣、そうは言えないだろうが、うまくニクソンが乗ってくれたものだから、それじゃ頼むと、こうやった。言っといたよと、そういうようなものでね、つい。よくある人間の弱さですよ。そんなことがぶっこわしちゃったんだね、これは。
 そこで私は、米ソ関係に関する基本原則ですね、あの四条がちょっと気にかかるのですが、米ソが関係する両国間、多国間の条約、協定を忠実に履行するというのがあるのですが、これは何をさしたのか。ちょっと想像がいろいろむずかしい点もありますが、私はこれを読んで一番ぴんときたのは、やはりヤルタ協定というのが非常に強く私には受け取れたのです。向こうが領土問題で話してくるときには、ヤルタ協定というのを鬼の首取ったようにいつも持ち出してくる。このことを意図してつくられている条項ではないかと思うが、一般的な書き方ですから、わかりません。この意図についてどういうふうに理解しておられますか。
#62
○国務大臣(福田赳夫君) これは米国とソ連は、その相互関係の法的基盤を拡大し、かつ、両国が締結した双務協定及び両国がともに合意者である多国間条約及び協定が忠実に履行されるように必要な努力を行なうことを意図すると、こういうことで、これがヤルタ協定だとか、ああいうものを意識しての文書とは、私どもは読んでおりませんが、要するに、二国間で締結し協定したようないろんな権利義務、これは忠実に履行しましょう、そういうあたりまえなことを、あたりまえな口調でいっている、こういうふうに受け取っております。
#63
○森元治郎君 あたりまえのように思うんではだめなんで、これはソビエトの外交交渉というのは、てにをはまでも意味が十二分に入っておる国ですから、専門家に伺いますが、条約局長おられるようだが、これはジュネーブ協定だのいろいろ現在ひっかかっておるものを頭に置きつつ、抽象的に一本入れたと思うんですが、専門家はどういうふうに判断しますか。
#64
○政府委員(有田圭輔君) お答え申し上げます。これはやはり大臣から申し上げましたように、米ソの間の協力関係、平和共存関係というものを今後ますます拡大していこうという意図の一つの柱であると思います。先ほどヤルタ協定の問題が出ましたですが、これは米側もヤルタ協定というものの性格についてはその後の機会においてしばしば説明しておりまして、これが今日米ソ間に生きておる、あるいはお互いに尊重するというような意図があるということは、全く考えられないと思います。
#65
○森元治郎君 それはアメリ側の解釈であって、ソ連は米ソ多国間の協定というふうに理解して、この条項で突っぱねてくることは当然あるだろうと思うのです。大臣、ちょっと日本の問題出なかった、北方領土の問題が持ち出されなかったということは残念にお感じになっておりますか、どうですか。
#66
○国務大臣(福田赳夫君) 日本問題というのは、島の問題のことですか。
#67
○森元治郎君 北方領土問題。
#68
○国務大臣(福田赳夫君) それは出てくれればよかったとは思いますが、これはもう出ることは、私どもは期待いたしておりませんでしたから、やむを得ないことである、こういうふうに思っております。
#69
○森元治郎君 新聞なんかの記事を見ても、外務省は大いに期待しておるところの問題のように報道しておるのですね。だからプレスのほうの人もそういうふうに期待しておったのですが、いま大臣のお話を聞くと、サンクレメンテでもってすでにそういう話し合いがあったことが世間に流れていたために、もうだめになってしまったのだというふうに大臣もお考えになり、多くを期待していないのだ、こういうことですね。あの当時、すでに北方領土の問題をニクソンの訪ソにひっかけて期待することは無理なんだというふうに、あの当時理解しておったんですね。
#70
○国務大臣(福田赳夫君) そのとおりです。
#71
○森元治郎君 そうすると世論の指導が思わせぶりで、少し間違ったように、何か頼んでやると、色よい返事がきそうなことをにおわしていたから、鋭敏なる新聞記者諸君も――新聞記者諸君は鋭敏ですよ、やっぱり書いているところを見ると。そこらのところは困ったということは、私はあまり聞いたことはないので、はなはだ残念だと思うのです。
 そこで大臣、それじゃもうその問題はそれとして、まず軍縮その他の問題が大きな主題に――軍縮委員会、両国の攻撃兵器の制限とか、その他議題になりましたが、国連の軍縮委員会、国連の総会から頼まれて、十八カ国だったか二十カ国だっだかで構成して、大いに激励して、活発な議論をやって、米ソをして、−中国が入っておりませんでしたから、米ソをして軍縮行動に進ませるように努力をし、期待していたのです。しかし、国連そのもの及び軍縮委員会というものがどこかへ行っちゃって、さっぱり活動していないんです。軍縮委員会、国際の平和と安全に関しては安保理事会がただ一つの大事な目標として任務づけられておるんだが、米国、中国、ソ連など主たる三大常任理事国の間がうまくいかないために、ベトナム問題がどうあろうとも国連の場で世界の平和と安全について論議する、こういうことが一向にない。よその国も、どこの国もだまっておる。国連がどこにあるかという感じがするんですね、強く。米ソ間の話し合い、これは全般の新聞を見ても、外電を見ても、両大国の自分の側が主だというだけで、世界的にという面が、口では言っておりまするが関係が薄い。この際、こういう、幸い米ソあるいは米中が緊張緩和への方向に進んでいるときに、国連はこの機会を逸せず大きな軍縮、すなわち米ソの結着しただけではいけないんで、これを縮小していく、地下核実験もやめることとか、あるいは非核武装地帯の設置などたくさんの問題をこの際持ち出して、国連の大きな中に米ソを引きずり込んで、そして軍縮の方向に持っていかせるように国連がイニシアチブをとるべきだと思うんだが、最近は眠ったきりなんですがね。これをどういうふうに判断されるか、大臣の見解を伺います。
#72
○国務大臣(福田赳夫君) 私は世界の軍備、これは国々それぞれみんな競争に悩んでおると思うんです。今度の米ソ会談が、これらのベトナム戦争の激化のこの際にもかかわらず、それを乗り越えて行なわれた、こういうゆえんのものは、米ソ両国が核競争、これに疲れ果てておる、何とかお互いに自制したい、こういう気分のあらわれである、こういうふうに見ておるわけなんですが、したがって、今度の米ソの到達した結論、つまりABM基地、これをおのおの二つずつに制限しよう、あるいは攻撃ミサイル、その凍結をいたしましょう、こういうことです。これはたいへん私は貴重な結論が出た、こういうふうに思うんです。もとよりこれは量的にとどまり、質的な面における競争という面が残りまするけれども、しかし、これが世界じゅうが望んでおる軍縮、特に核軍縮というものに大きく突破口を開いた、こういうふうな見方をしておるのであります。これは足がかりとして第二次SALTというようなことが展望されまするし、欧州安全保障全体会議、これも道が開かれる、たいへんけっこうなことだろうと思いますが、そういうことで高く米ソ会談を評価しておるんです。この成果を踏まえて、私はなお国際的にも規制を盛り上げたらどうだろう、森さんもそういう御意見のようですが、私はそういう考え方には賛成です。国連なんかの軍縮についての努力、これもやりよくなった、こういうふうに思いますので、わが国といたしましても国連、ニューヨークにおきましても、あるいはジュネーブにおきましても、そういう方向で機会をとらえながら軍縮ムードを進めたい、かように考えております。
#73
○森元治郎君 これは国際の平和と安全について安保理事会がうまくワークしないときには総会を使うということも過去にはあったのですが、さっぱりベトナムでどんなことがあろうと、機雷を敷設しようと、戦争の危機が迫ったような感じを持ったときもあったのに、国連というものが動こうとしない理由はどういうところにあるのだか、国連局長、アメリカ局長、だれでもいいが、国連がさっぱりこのごろ開店休業なのはどういうことですか。
#74
○政府委員(高島益郎君) 森先生の御質問は、特にベトナム問題につきましては国連が、特に安保理事会が国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を果たしていないということだと思いますが、これは若干理由がございまして、一九六四年にトンキン湾事件が起きましたときに、初めて安保理事会が招集されました。その際ソ連は、北越、南越の代表が参加すべきことを提案いたしまして、理事会議長の名前をもちまして両国代表の招請をいたしました。ところがソ連の意に反しまして北越が出席しない。北越の言い分といたしましては、国連はベトナム問題を審議する場ではないということでございます。それ以来、ソ連は特にその立場を堅持いたしまして、安保理事会において、特に国連においてベトナム問題を審議するととは不当であるという立場を一貫しております。したがいまして、今回も特に新任の事務総長が一生懸命アメリカの報告をもとにしまして何とか戦争を収拾したいということでいろいろ関係理事国に協議いたしまして努力いたしましたけれども、特に中国、ソ連の強硬な反対に会いまして安保理事会の招集に至らないという状況であります。いずれにいたしましても、安保理事会が国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を果たしていないといいますのは、国連自体が五大国の協調ということを前提にいたしまして構成されております。その五大国の協調ということがワークしないということが根本原因だろうと思います。すべての問題について五大国が協調し得るということは私は期待し得ないと思いますけれども、いずれにいたしましても国連ができたもともとの根本原則は、五大国が国際問題について十分に協議をするということを大前提として、いまそういうことが基本になっておりますのが安保理事会でございます。
#75
○森元治郎君 五大国の協調というのは、これはできたときから一貫してよきにつけあしきにつけ今日まできてしまったのだ。ワークしないときはやはり総会を利用してやるべきだと思うし、クルト・ワルトハイム事務総長もなりたてでいろいろ苦労したようだが、どこの国も知らぬふりして気の毒な事務総長だと見ていたのですが、もうベトナム情勢もトンキン湾事件からすでに七、八年を過ぎております。そうしてアメリカはもうすでに撤退するのだ、条件はあります、撤退するのだというまでになっている。パリでは北とアメリカとはけんかしながらもとにかく話をしているが、その間にいたずらにたくさんの人が死んでいく、これは私は見捨てておけないじゃないかと思うので、六四年のときに北越がノウといってソ連がこれに参加して、あとイニシアチブをとらないというけれども、ここらはわが国も非常任理事国であるならば、声を大にして呼びかけていくべきだと思う。それにはもちろん日本が南ベトナム及びアメリカ軍に沖縄などを使って応援をするような姿勢は厳重に慎しんだ上でのことでありますが、そういうことを総会の場で動けるように持っていかなければいけないと思うのです。七、八年前のいたずらに歴史的事実に固執することなく、事態が相当変わっておりますから、中国も入りましたし、こういう動きをこの秋の国連あたりから、国連の存在を示す上でも日本はイニシアチブをとるべきだと思うんです。もう一回大臣の決意を伺いたい。
#76
○国務大臣(福田赳夫君) これは国連というものがこういう紛争解決のまさに正当なる機関だ、そういうようなことを考えると、ベトナム戦争に国連が動かないとこれはもう正当な役割りをになっておらぬといってもいいと思うんですが、現実では、先ほど条約局長がお話申し上げましたように、なかなか五大国体制というものがあるものですから動きにくい。昨年の秋のインド・パキスタン戦争、これにつきましても常に安保理事会が難航する。それは五大国のリードというものが根底にあったと、こういうことなんですが、とにかくベトナム問題につきましては機雷の敷設、あれにつきまして、最近アメリカから、国連憲章五十一条に基づく行動であるという通報が理事会に対してなされたわけなんです。ですから理事会は当然これを契機としてベトナム問題討議に移るべきである、こういうふうに考えますが、なかなか五大国の間でそういう空気が起こらない。そこで新事務総長、たいへん苦慮しておったようでありますが、わが国はそういう五大国がきわめてこの問題に消極的であるというさなかにおいて、ひとりというわけじゃございませんが、数少ない国の理事国のひとりといたしまして、事務総長に何とかこの紛争の解決のために動けるように、こういうのでそういう立場をとるということでございます。今後ともそういう同じ姿勢でこの問題、国連におきましては対処していきたいと、こういう考えでございます。
#77
○森元治郎君 小国アルバニアでさえ中国の国連加盟についてはあばれ回って、大勢もそちらへ向いてはおりましたが、向かない前からああいう小さな国が法律論あるいは政治運動を通じて中国の国連加盟の先兵になった例もありまするから、まして日本のように大きくもなり、みんなに期待もされている日本が動くということは、必ずや大きな影響を国連に与え得ると思うんです。ところが日米安保条約でアメリカさんのかさをかぶっていればまず安全なんだといったようなところで、とっぷりとぬるま湯につかったようなかっこうをして、商売ばっかりやっているものですから、世界の大勢などには無関心のような感じを与えていることは非常に外交上まずいと思う。
 ところで、今度のモスクワ会議では、新聞の報道ではベトナム問題、中国問題、アジア安全保障などの問題は確かに出たはずだが、内容はわからないというのが一致した報道のようでありますが、そういうことから考え、何をやられたか時間がたってみなければわかりませんが、ただ感ずることは、日本の安全というのは結局日本が考えなければだめなんで、日本みずからそういうことを感じたり、米ソおのおの商売上、戦略上、財政上の問題、あるいは欧州関係、あるいはソビエトから見れば中国関係という、その関係からアメリカとみずからの道をこうやってきめておる。米中もおのずからみずからの道をきめておる。日本だけは何か平和といいますか、おっとりとかまえておりますが、やはり日中の国交回復といい、アジアの安全保障といい、ソビエトとの国交回復といい、平和条約の締結といい、日本がみずから考えて行動しない限り日本の運命というものは開けてこないと思うんです。私は今度の会談を見て一番感じたことは、日本は北京の会談がどうの、モスクワ会談がどうこうという前に、自分がどうして安全を確保し、平和を守っていくんだという道を考えなければならないと思う。そういう慎重な検討というものが政府部内にも、与党内にも、どこにもこれは起こらないで、じんぜんと平和な生涯で日を送っているような感じがするので、みずからの運命を開拓する。すなわち、日中国交回復の方向に向かうことであり、北朝鮮との関係にも国交回復の方向、南北流動の方向というもの、そういうものをみずからのやはりイニシアチブで考えて行動していく、積極的に行動していく時期だと思うのですが、どうでしょう。いまのところはアメリカにだけおんぶして、アメリカの世界政策、世界の半分の政策に乗っかって動いていたのでは、日本の安定した国の防衛も平和も来ないと思うのですがね。
#78
○国務大臣(福田赳夫君) せっかくの森さんの御所見ですが、政府では、これは日本の安全、これは最大の政府の責任の問題だというので、取り組んでおるのです。その取り組む態度もこれはもう自主的です。どこの国の立場から考えるということではないので、日本の立場から日本の国益を守る、こういうことなんです。決して右顧左べんをして他国に追随する、こういうような立場では絶対にありませんから、その辺は誤解がないようにひとつお願いしたいと思います。結局わが日本は、これは日本の安全をはからんとすれば十分な抑止力を持っておらぬ、わが日本として。世界が平和でなければ日本には平和はない、世界じゅうが繁栄しなければ日本の繁栄というものもまたはかりにくい、こういうふうに考えています。もうほんとうに世界に類をみない経済大国であるが、十分な武力は持たない、そういう姿においてこの平和外交を進めていく、こういうことなんです。私は日本のそこの立場というものは、世界ではほんとうに独特の立場でございまするけれども、この独特の立場、これは今後の世界の平和の上に非常に大きく寄与するであろう。持たんとすれば強大な軍備も持てる、核までも持てる。そういう力があり得ても、それをあえて持たないという立場、これはもう非常に世界の平和のために貴重な存在である。わが国はその姿勢で邁進していけばそれでいい。そういうふうにかたく信じております。
#79
○森元治郎君 最後に一問ですが、ベトナムの戦争が早く終わってくれることが何といってもアジアの当面の一番の大事なことだと思うのです。アメリカもどうしていいか、ソ連の色よい返事はもらえないし、中国からはもちろんもらえない。ソ連も動きようがない。何か大きな常任理事国でも動きようがない。いまやはり日本がベトナム問題を解決してアジアから戦火をなくすという大きな野心的な行動に出るいい立場にあるんじゃないかと思うのです。アメリカ側だけについていないで、アメリカにも犠牲を求める、北側にも戦火終息の方向に向かって協力を願う。そういうことをやるのは日本しかないと思う。米ソ交渉から米中交渉を見てぽかんとあいている。日本がそういうことに断固として出るべきだと思うのですが、いかがでしょう。
#80
○国務大臣(福田赳夫君) 私も基本的には森さんと全く同じでありまして、アジアの隣邦といたしまして、隣の国にああいう悲惨な状態があること、これは何とか早く結末をつけなければならぬ問題である、そういうこと、これはもう全く同感です。ただその面における日本の働ける分野、これはアメリカやソビエトと違って、つまり戦闘の背後勢力という、あるいは当事者であるという立場とは違いますから、そこで、それほど大きな立場にはありませんけれども、何か機会がありますればそれをとらえてそういう方向での貢献をしたいという気持ちなんです。私は北のほうにも南のほうにも、何か機会があったら日本にもそういう役割りをになってもらいたいという気分がある、こういうふうに見ておりますが、何か、とにかく機会さえありますればそれをとらえてそういう役割りを尽したいという考えです。ただとにかくいまは灼熱状態のベトナム半島です。ですからちょっと手も足も出ないような状態でありますが、とにかくそういう考え方に立ってベトナム半島には対処していきたい、これが私の基本的な考え方です。
#81
○森元治郎君 ちょっと補足しますが、そういう答弁はもう歴代、大平さんから椎名さんから愛知さん、みんな総理大臣はじめ、機会があったらば戦争の終結に向かって応分の協力をしたいと、戦争が終わったら金を貸してベトナムが復活するよう協力しようという話はもう前からあるので、最近燃え盛ったのではなくて、初めから機会があれば機会があればというのは国会答弁なんですよね。機会があってやったなんということは聞いたことがない。やはり動くことが大事ですよね。動くことが大事であって、行動をとるといういま絶好のチャンスだと思うのですが、それだけを希望して終わります。
#82
○羽生三七君 関連して。
 質問というわけではないのですけれども、機会があれば何かやると、これはもちろん大事なことです。ですから大きなことをやらなくても、とりあえず日本からベトナムヘ、直接発進であろうとなかろうと、いろいろな形でのアメリカの出撃ですね、ワンクッション置こうと何をしようと、そういうことに日本がもっとき然たる態度をとるところからまず始めるべきである、こういう注文だけつけておきます。答弁は要りません。
#83
○渋谷邦彦君 先ほどちょっと触れられたようでありますけれども、今回の米ソ首脳によるモスクワ会談、これを政府としてどういうふうに分析をされ評価をされているのか、基本的にまずその点を伺っておきたいと思います。
#84
○国務大臣(福田赳夫君) まあとにかく世界情勢の中で、米ソの対立、これがきわ立っておった現象でございます。その対立下における米ソ両国の首脳が会談をいたしまして、そして平和共存を誓い合ったと、こういうこと、またその一環といたしましてSALTの交渉に成功したと、こういうこと、これは今後の世界情勢に大きな響きを持つと思うのです。米ソ両国が平和共存を誓い合ったこと、これはやはり世界の緊張緩和に大きく寄与するであろう、そういうふうに見ております。またSALTの交渉に成功したということ、これは世界の軍縮に一つのエポックをつくったといっても私はいいと、こういうふうに高くいま評価をしているわけであります。わが日本といたしましては、この世界の緊張の緩和、また軍縮への動きの画期的前進、こういうことを踏まえまして、ひとつそういう平和的な方向を推進するべきである、こういうふうに考えております。
#85
○渋谷邦彦君 まあそのとおりであれば何も異論はございませんけれども、平和共存を確認し合ったと、しかし現実的にはベトナム戦争の終結というものは全然話し合いの対象にならなかったということを考えますと、これは超大国間のエゴイズムではないかという、そういう極端な見方が出てこないとも限らない。一体、今度の会談が、アジア平和に向かっての前進に役立ち得ると高く評価してよろしいという政府の考え方、現在の時点に立ったこのベトナム戦争という問題を踏まえて、一体将来どういう展望に立って今回のモスクワ会談というものは具体的に進行していくのか、その辺はどういうふうにお感じになっていらっしゃるのでしょうか。
#86
○国務大臣(福田赳夫君) 私は米ソ会談につきましてはベトナム問題がありますが、この問題は、北ベトナム側において、大国によってこれが処理されるということについて強いアレルギーがある。そういうような状況下において、米ソ両国がこの問題を米ソにおいて話し合うということ自体に非常に困難があったのじゃないか、初めから私はそういうふうに見、なかなかこのベトナム問題についての米ソ間における討議、また米ソ間における意見の一致、そういうものはこれはむずかしい状態だというふうに見ておったのです。はたせるかな、そういうような状態です。しかし一部には、表にはお互いに主張し合ったということにとどまっておるが、かなりの気分的な意見の一致というか、そういうものもあったであろうというような見方をする人もありますが、まあそれはこれからの両国並びにベトナムの推移を見なければわからぬことでありますが、ともかくベトナム、特に北ベトナムが非常に自主的なこの問題の解決を望んでおるという情勢下において、米ソ両国でこの問題について処理を行なうということは、常識的にみまして非常に困難な問題である、こういうふうに考えております。
#87
○渋谷邦彦君 これは福田さん御自身もお記憶もあるとおり、ベトナム戦争勃発以来、あの当時も言われておりましたように、これは両大国間の代理戦争、それで今日までそれがずっと延引しているという、そういう形があるわけですね。そうすると、やはり両大国間においてこうしたことが具体的に話し合いができなかったということは、今回のモスクワ会談というものがはたしていまおっしゃられた高く評価すべきものかどうなのかという疑問を抱かざるを得ない。疑問が出たならば、一体今度は日本としても、先ほども質問がありましたように、それをさらに明確にきせるためには、やはり両大国間が手を引くなり、そうした手を引いた時点において、北あるいは南が自主的に解決を望むいろいろな方法が考えられると思うのですね。そういうようなおぜん立てをすることもこれから必要であろうと思うし、次の国連総会に臨むにあたっていろいろな課題が私はあると思うのです。そうした事情を通して今回のモスクワ会談に対する評価とともに、一体日本政府としていま申し上げた相矛盾する、一方において平和というものを主張し、一方においては戦争をやらせている、こういう二律背反する状態をどう一体世界の人たちは受けとめているのか。しかも、アジア地域に位置するわれわれ日本人といたしましては、これは何回も何回も言われておりますように、拱手傍観するわけにはいかないのではないか。やはりお互いの英知を振りしぼってそうして一刻も早くそういう戦争終結についての足がかり手がかりというものをつくっていく、その促進の役割りを果たすということが非常に大事じゃないか、こうなるのじゃないかと私は思うのですが、その代理戦争というものについて考え方が違えばこれはもう水かけ論になってしまってどうにもならないと思いますけれども、その点はいかがですか。
#88
○国務大臣(福田赳夫君) まあいま世界の関心を集めておりますものは、これはまあやはり中東とベトナム半島、こういうふうに見ておりますが、この二つの問題とも解決に向かっての両国の具体的な意見の一致というものはない。抽象的に中東問題はまあ国連の決定を尊重しようというようなことでありますし、ベトナム問題につきましてはおのおのその意見を言い合ったと、こういうことでございます。しかし、この話をし合ったということに、これは私はかなり意味があると思うんです。ただ、置かれておる両国の立場はどうかといえば、北ベトナムは、この二大強国の頭越しの処理、これは歓迎しない、こういうような気運がある。あるというよりは、強い。そういうことを踏まえまして、私はこの両大国はこの問題については慎重な扱いをしておる、こういうふうにも思いますが、とにかく私はまあケース・バイ・ケースというか、その当該ケースにつきましてはいろいろの困難をまだ残しつつも、基本的な考え方として両国が平和共存ということを誓い合ったということは、これは私は高く評価していいし、そのあらわれとして、もう非常に大きな問題SALTの問題が解決をされた、これはもう画期的なことである、こういうふうに見ておるんです。
#89
○渋谷邦彦君 まあSALTもさることながら、しかしどう考えてもこれは戦争が終わりそうもな、いじゃないか。なるほど両首脳の中には、できれば早く戦争を終わらせるような方向へ何らかの形でまた話し合いを続けたいという、そういう方向に、あるいはその表面に出ない話し合いの中で取りかわされたと、少なくともその辺が明確にならない限り、これからも継続的にベトナム戦争はあるんだと、こう判断せざるを得ないのじゃないでしょうか。実際は、われわれとしての願望は、この今回の交渉を通じて、あるいは日本からもアメリカ側に対して、ぜひともこのべトナム戦争終結への道を開くための話し合いに積極的に発言をしてもらえないかというようなことも必要であったのではないかと、こんな感じすら持つわけですね。しかし、先ほどの北方領土の問題といい、おそらく日本政府からはあらためてそういう点についてのアメリカ側への要請というものはなされなかったのじゃないかという感じもするわけです。まあいずれにせよ、そうした問題を考えると、何かこうすっきりしないという、しこりが残るような気がしてなりません。そこで、もう時間もありませんので何ですが、そういう点については日本政府から何か話をされたか、正式に要請をされたということはございましたか。
#90
○国務大臣(福田赳夫君) 米ソ会談につきましては、何らの要請をしておりません。
#91
○渋谷邦彦君 それでは次に、SALTの問題ですけれども、これがはたして具体的にどういうふうに一体これから段階的に制限されていくのか、規制されていくのか、これも非常にまだ疑問とせざるを得ない。これは何かアメリカ国内において、ABMの現在建設中の基地が作業を中止したというふうなことが報道をされておるようであります。しかし、まあ全般的に考えた場合に、現在の、米国にいたしましても、ソ連にいたしましても、もう相当、想像をはるかに越えるような戦略兵器というものを保有していることは事実でございますね。こうしたことが絶えず戦争への起爆剤といいますか、あるいは誘発を起こすようなその背景になっておることも事実でございましょう。ですから、はたしてそれは信用していいのかどうなのか。いま福田さんの御答弁を伺っておりますと、これはもう確かに画期的な平和へ向かっての軍縮の一つの手がかりをつかんだようなものだと、こうおっしゃった。そうであれば、これは望ましいことに違いありませんけれども、実際はどうなるかということは確認できないでしょう。確認できましょうか、いかがでしょうか。
#92
○国務大臣(福田赳夫君) 私もそのこまかい技術的なことは存じませんが、とにかくABM、これはおのおの二百基ずつに制限しよう、しかもその場所までお互いに、一つはお互いの首都に限るんだというようなことを、まあ協定をいたしておるわけです。これなんかはかなり実効があがるんじゃないか、そういうふうに思います。それからICBMのような攻撃的ミサイルですね。こういうことにつきましては、これはまあ数量制限、数量凍結でありますから、質的な競争が今後も起こり得る、そういうことはまあ容易に想像できますが、しかしともかく量的な制限をしたと、これでまあ取りきめをしたと、こういうことでありまするから、これも大きなできごとであり、かつまた、これをさらに前進しようということで、第二SALT交渉というものも行なわれるようでありまするから、私は大きく期待していいと思うのです。その査察というようなことにつきましては、これは米ソ両国でおのおのいろいろ話し合いがあったと思いますし、何かそういう手段がないで単に書いたものだけだ、こういうことじゃないと思うのです。ただ、その技術的なこまかい点につきましては、まだ情報も得ておりませんし、またこれは両国間の問題であると、こういうふうに思います。
#93
○渋谷邦彦君 なるほど量的に制限されたど、まあ兵器も時代とともに科学の進歩に伴って発達をしてまいりますね。質的に向上という一方があれば、量的に制限しても結果は同じじゃないかという考え方が当然、これはしろうとの考え方かもしれませんけれども。結局SALTをやってみても、はたしてその効果があり得るんだろうかという、この素朴な疑問が出てくるんですがね。その点についてはどのように判断されておるのでしょうか。
#94
○国務大臣(福田赳夫君) ですから、量的なとにかく制限ができたが、質的な競争、そういうものは残るだろう、こういうふうに見るのです。しかし今度は第二次SALT交渉、そういうような問題、あるいは第三次があるかもしれません。そういうような過程で今度は質の問題とか、そういう問題に入っていくその基盤というものができた、それを高く評価していると、こういうことであります。
#95
○渋谷邦彦君 じゃあ最後に、まあことしは言うまでもなく米中首脳会談あるいは米ソ首脳会談というものが行なわれ、世界の新しい潮流というものがとうとうとして流れ始まった。したがって、いろいろと世界情勢の変化というものがそれに伴って起こりつつあることも現実でございましょう。したがって、次の国連総会にしても、もういろいろな構想をすでに立てられて、日本として言うべき点、また側面的なアドバイスをしていかなければならない問題等々お考えになっていらっしゃるでしょう。これはもう時期的には決して早くはないと思う。もう手がけられて、いろいろな構想というもの、次の国連総会にいかにして日本として臨むべきか、この新しい潮流に対してどう対応していくかということを発言する絶好の機会じゃないかと思うのです。したがって、現在政府としてはどういう姿勢で臨むのか。これはこまかいことまで要りません。これから煮詰まる問題もいろいろございますでしょう。それが一点。
 それから先ほども森さん、ちょっと触れられておったようでありますけれども、やはりこのトップクラスの会談というものは、ものごとをきわめてスピーディーに処理し得るという結果があるようです。まあ米中にいたしましても、米ソ会談にいたしましても、具体的にものごとが進む、こういうその事実関係が今回も明確になっていると私もとらまえておるわけでございますけれども、そこで、日本の果たさなければならない役割りというものがしきりにいわれております。そうしたさなかに、これはやはりこの日本の総理大臣は積極的に、機会あることを待つのじゃなくて、こちらが機会をつくってモスクワに飛ぶこともけっこうでしょう。まあいま総裁選挙だ何だかんだと言っているから、それはむずかしいかもしれませんけれども、ともあれそういう基本的な方向というものを絶えず考えられて、時にはあるいは気軽にアメリカに飛ぶということもございましょう。いまそういうふうな時代に入ってきているのではないかということを私ども強く感ずるわけです。
 この二点について御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
#96
○国務大臣(福田赳夫君) 国連に臨むわが国の基本的な考え方は、国連が世界の平和維持機構としての役割りを尽くせるというような形になるようにということは、これは基本的な課題であります。そういう機運もまた熟しつつある、こういうふうに見ております。特に国連の機構、いま、常任理事会というものがあって平和維持の中心的な役割りを負っているのですが、そこに常任理事国というものがある。この常任理事国はヴィトーを持っております。しかもこの常任理事国全部が核武装国家である、こういうような姿で、はたして平和維持というようなことが機構的に満足すべきものであるかどうか、そういうところに私ども非常に疑問を持っておるわけです。ただ、国連を改革する、これは容易なことじゃありませんけれども、やはり日本のような平和国家というものがこれに参加する、こういうようなことはもう考えられてしかるべき時期にきておるんじゃないか、そういうような考え方をいたしておるのであります。まあそういう国連の平和維持機構推進ということを中心とし、その具体的な考え方をどういうふうにするかということで国連には対処していきたい、かように考えております。
 それから第二の首脳外交、これにつきましてはいろいろ議論があります。利害得失というようなものですね。やはり首脳外交は、航空機の発達とかそういうものを考えまするときに、これはもう当然考えてしかるべきである、こういうふうに考えますが、これをやっていく上におきましては、国内の世論とかそういうものを置き去りにしてはならない。首脳だけで問題を解決するとかあるいは問題を提起をするとか、そういうようなことになって、あるいは国内世論と乖離を生ずるというようなこともなしとしない。そういうようなこともありまするから、その辺よほど気をつけなければならぬと思います。わが国の国際社会における地位は非常にいま拡大、向上しておるわけです。軍備は持ちませんけれども、かなりの発言権を持った日本国でありますから、そういうたてまえに立ちまするときに、わが国が機動的な外交を展開しなければならぬ、こういうふうに思います。そういう意味合いにおきましてわが国の首脳が世界じゅう飛ぶ、これも大きな意義があるものだ、そういうふうな考え方をいたしております。
#97
○委員長(八木一郎君) 本調査に対する質疑は、本日のところこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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