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1971/06/06 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第14号
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1971/06/06 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 外務委員会 第14号

#1
第068回国会 外務委員会 第14号
昭和四十七年六月六日(火曜日)
   午前十時十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月三日
    辞任         補欠選任
     松本 英一君     西村 関一君
 六月五日
    辞任         補欠選任
     中村 正雄君     松下 正寿君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         八木 一郎君
    理 事
                佐藤 一郎君
                山本 利壽君
                森 元治郎君
    委 員
                杉原 荒太君
                塚田十一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                加藤シヅエ君
                田  英夫君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                渋谷 邦彦君
                松下 正寿君
                星野  力君
   国務大臣
       内閣総理大臣   佐藤 榮作君
       外 務 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       内閣法制局長官  高辻 正巳君
       外務大臣官房長  鹿取 泰衛君
       外務省アメリカ
       局長       吉野 文六君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    魚本藤吉郎君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     穂崎  巧君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (キッシンジャー米大統領特別補佐官の来日に
 関する件)
 (アジア・太平洋協議会閣僚会議に関する件)
 (日中国交回復に関する件)
 (ベトナム問題に関する件)
 (国連人間環境会議に関する件)
 (テレアビブ空港における乱射事件に関する件)
○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
 する外務公務員の給与に関する法律の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関す
 る協定の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出、衆議院送付)
○原子力の平和的利用における協力のための日本
 国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定
 の締結について承認を求めるの件(内閣提出、
 衆議院送付)
○原子力の平和的利用に関する協力のための日本
 国政府とフランス共和国政府との間の協定の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(八木一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず委員の異動について報告いたします。
 去る三日松本英一君が委員を辞任されその補欠として西村関一君が選任されました。
 また、昨五日、中村正雄君が委員を辞任され、その補欠として松下正寿君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(八木一郎君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○羽生三七君 間もなくキッシンジャー米大統領補佐官が来日して、総理、外相はじめ各界の人と会談をされるようですが、総理としてはどういう問題を重点に会談をなされようとされておるのか、まずその点からお聞かせいただきたいと思います。
#5
○国務大臣(佐藤榮作君) これはキッシンジャー補佐官、大体訪中後日本をぜひ訪問したいと、そして北京の模様を話したいと、こう言ってくれていたんですが、これができなかったと。で、今度訪ソいたしましたので、今度はあわしてそれらの点で話したい、かように実は申しております。したがって、キッシンジャー補佐官が日本に来た後にどういう話をされるか、これは私が聞き手に回るほうですから、主として最近の国際情勢、その多極化した国際情勢、それについての話し合いをすると、聞くと、こういうことが主眼になると、かように思います。
#6
○羽生三七君 そこで、いま総理からもお話がありましたように、この春の米中会談、それにさきの米ソ会談等について、まあ人それぞれの評価はあろうかと思いますが、とにかく長い間の東西の冷戦構造に重大な変革がもたらされたことは、これは間違いのない事実だと思います。私は、さきの機会にもこの問題に触れて、これで緊張緩和が直ちに実現したとは思わないが、しかし、たとえば現にベトナム戦争なんかが続いておるわけですから、緊張緩和が直ちに実現したとは思わないが、さらにこのような動きをアジアの、あるいはさらに世界全体の全面的な緊張緩和に発展させる努力こそが緊要だということを申し述べたことがございます。日本としては、この東西冷戦構造の変革の意義を認識しながら、今後どのような役割りを果たすべきかをあらためて問いただして、そしてそれにふさわしい外交政策を選択して、日本の新しい外交路線を明確にして、そういう立場からキッシンジャー補佐官と話し合いを私はするべきだと思います。だから、その中国やあるいはソ連との会談、米中会談、米ソ会談等における感触を探ることも大事でありましょうが、同時に、そういう問題を通じて、日本としてはこの東西冷戦構造の変革ということの意義を理解しながら、日本みずから何をやるかと、この問題に触れることが非常に重大ではないかと考えますが、総理はそういう問題に触れられるかどうか、お考えを承りたい。
#7
○国務大臣(佐藤榮作君) いま羽生さんの言われるように、私はキッシンジャー補佐官から事情も聞きますが、同時にサンクレメンテでことしの春、私自身が大統領と話した、その席にキッシンジャー補佐官もいましたから、私の、また日本の考え方、これについてはある程度理解を示しておるはずだし、キッシンジャー補佐官が北京に行って、それらについてどういう感触を持たれたか、その点もはっきりさしたいと実は思うのです。もっと具体的に申しますなら、私どもの隣国――日中間にただいまのような政府間交渉のない、まことにこれは残念である。これは何とか改善すると、そのしかたはアメリカ式のしかたとは違う、こういうことも当時はっきり申し上げておりますので、これはアメリカも、それは日本も独立国家だと、主権国家として当然のことだ。しかし、アメリカはアメリカとしての考え方がある、独自に行動するのだ、こういう話をしておりました。しかし、少なくともニクソン大統領の北京訪問によって、対話の形に米中間が新しい時代を迎えたと、これは見のがせないことですから、そういう意味で私ども隣国との話し合い、それを進める上においてこれは役立つと、かように実は思っております。
 もう一つは、やはり何と言っても多極化した今日、欧州の問題、これは同時にアジアに影響を持つ、その関係から見まして、ニクソン大統領の訪ソ、これは一体世界の平和にどういうような役割りを果たすか。またそういうことを考えながらわれわれはいかにすべきか。私は、しょっちゅう口にしておりますように、平和に徹するということを申しております。したがいまして、ソ連とも仲よくしていきたい、こういうようなことでございまするから、それらの点が必ず役立つことだ、かように実は思って、最近の国際的な動きを私は歓迎しておるところでございます。したがって、ただいまいろいろ批判されておりますけれども、平和の方向に、多極化はしたがその方向に動いておる、かように理解して差しつかえないんじゃないかと、かように思っております。
#8
○羽生三七君 いま総理のお話にもあったように、米中、米ソがそれぞれある意味では平和共存を確認をしておるときに、日本が古い冷戦構造の所産である安保だけに依存をしておる、これを唯一無二の守護神のようにしておる。これは政府のいつの答弁の中にも必ず出てくる問題ですが、これはあまりにも私は前時代的だと思う。私は、いま安保の法律論をこの短い時間でやろうとは思いません。そうして、たとえその本質に与党、野党間にどのような違いがあろうとも、日本の国益のために安保問題を含めて日米関係の将来について、ある意味では高い次元の話し合いをしてもらいたいと思います。つまり世界各国、中ソ二大国との接触の感触を聞くだけでなしに、いまお話があったように、そういうことから冷戦構造の解消というある意味での方向が出てきているのですから、それを踏まえて、日本としてもやはり安保が唯一無二の守護神と見るのでなしに、こういうものについてももう一度新しい角度で見直すという、私はそういう気がまえでの会談が必要ではないかと、そう思うのですが、いかがでございましょう。
#9
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの点、これから発展していくのはそういう方向かもわかりません。しかし、ただいまの現状においてはやはり東西一つの力の均衡という、そういうバランス・オブ・パワーの上に立っていることは、これは見のがせない事実じゃないかと思う。ただいまの東方における諸問題についてよりも、あるいは西方の問題についても、もっとはっきりするだろう。いわゆるNATOの条約が片一方にある、片一方にはワルシャワ平和機構がある、こういうことを考えると、やはりただいまのところは、いまは日本が安保のもとにおいてそういう考え方――平和を維持すると、こういう考え方を持つこと、これは当然じゃないだろうかと思います。私は、しかしただいまの対話の方向にものごとが進んでいると、これを大きく取り上げると、こういうことが必要だと、かように思いますから、それはもちろん私どももいつまでも安保体制だけを後生大事にすると、こういうわけのものではございませんけれども、ただいまの状況では直ちにそれを変更すると、こういうところまでは考えられないと、かように思っております。
#10
○羽生三七君 そこで、高い次元の話し合いも大事で、これはいま私が要求したとおりですが、同時に、日本に直接かかわりあいのある当面の問題についても十分話し合っていただきたい。それは特に私注文があるんですが、特に総理に聞いていただきたいことは、さきに安保の事前協議問題が国会で問題になった際に、安保の運用面を洗い直すと、総ざらいをすると、こう外相が答えられて、また総理もほぼ同様の趣旨の発言を国会でされております。ところで総理、この問題はどんなに論議してみても、何回もここで議論してみました。論議しても、結局米軍が発進時に戦闘作戦行動の命令を、つまり発進する米軍が戦闘作戦行動の命令を発進時に受けていなかったといえばすべて無にひとしい。いかなる場合でもイエスとなってノーは全く出てこないんです。このことはあまりにも明白になったわけであります。で、結局幾ら洗い直してみてもだめで、問題は運用の技術面ではなく、もっと本質的な問題にあることがあまりにも明白になったと思います。要するに、米軍の日本からの発進の際に、それが直接戦場へ向こうか、あるいはワンクッション置いて間接的に戦場へ行くかは問わず、客観的に見ても、いまで言えばベトナムですが、ベトナム攻撃に結びつく場合はすべてノーであることを明確にすべきであると思うんです。これはベトナムに限定しております。しからざる限り、どのように洗い直してみても実効は期待できないということが先般来の質疑を通じてあまりにも明確になったと思います。その意味で結局はこの安保の本質問題に触れざるを得ないわけですが、それはとにかくとして、当面事前協議の正当なあり方についていかにあるべきかを、これを私は、この問題もひとつ適当な時期に安保協議委員会を開くというのでなしに、今度の機会にやはりキッシンジャー補佐官にも一応触れておいていただきたいと思うがいかがでありますか。
#11
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろんキッシンジャー補佐官とは、先ほどのような次元の高い問題も話しますよ。同時に卑近な問題についても話し合たいと、かように思います。私はただいま羽生さんのお尋ねになる御意見、事前協議の問題、大体われわれは戦争のない、そういう努力をしておる、緊張緩和の努力をしておる、これが基本的な問題でございます。したがって、事前協議というような問題は起こらない、そういうことでありたいんです。起こった場合にどうするかと、こういうことだと思っております。私は安保自身がやはり戦争抑止力、抑止の方向である安保というものを大きく見るべきではないだろうか。戦争抑止力、そういう方向にものごと見ていかないと、ただいまのような問題に直ちになってくる。だから、そこらがちょっとやや重点の置き方の相違じゃないかと、かように思うんですが、いかがなものでしょう。私はそういう意味から、ただいまの、最近当面しておる事前協議の問題等についてもむろんキッシンジャーと話し合うつもりでおります。
#12
○羽生三七君 そこで、安保は抑止力ということを言われましたが、それに関連をして、これは外相になるかもしれませんが、極東の範囲に関する政府統一見解ですね。これ日米で合意したものですか、日本だけが一方的にこの統一見解を示しておるのか、これは日米合意したものなのか。
#13
○国務大臣(福田赳夫君) これは日米間で了解されておるものでございます。
#14
○羽生三七君 了解というのは、何か話し合いをされたことがあるんですか。
#15
○政府委員(高島益郎君) 昭和三十五年、安保条約が国会で審議された当時、極東の範囲についての統一見解を国会で論議いたしました。直後、直ちにアメリカのほうにおきましても、日本政府が発表しました極東の範囲につきましてアメリカの上院でその趣旨のことを政府は答えております。全く同じ表現でもって、極東の範囲について米国の国会でもって質疑されております。
#16
○羽生三七君 それでは、ベトナムをその周辺ということは、日米間で話し合ったことですか、日本だけの一方的解釈ですか。
#17
○政府委員(高島益郎君) 周辺ということばが出てきますのは、米軍が日本の施設区域を使用して行動する範囲につきまして、極東の周辺に及び得ることがあるということが統一見解の中に示されております。いま先生のおっしゃいましたベトナムを極東の周辺とするということにつきまして、特別に日米間で合意があるという問題ではございません。一般的に極東の範囲に限られず、その周辺にその行動が及ぶことがあり得るということが統一見解に書かれておるわけであります。
#18
○羽生三七君 だから、いまで明らかなように、安保が戦争抑止力と言われますけれども、私はいま台湾や朝鮮問題に触れません。ベトナムに問題を限定しておるわけですね。そういう場合に、わざわざ、アメリカの要求もなかったのに、日本が一方的にベトナムを極東の統一見解のその極東の範囲の周辺と理解をして、そしていまのような行動、日本からのアメリカ軍の発進を、直接戦闘作戦行動の命令が出ていなかったといえばすべてイエス、オーケーだと、これは私、どうかと思うんです。こういう問題も含めて私はほんとうに真剣にキッシンジャー補佐官に問題提起をしてもらいたいと思います。総理いかがですか。
#19
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は両国間で話し合う事柄、ずいぶんあると思います。ことに沖縄返還、祖国復帰、その実現した暁においてのその従前と今後の処置と、これはもう明らかに区別さるべきものである。どうもそこら辺はもっと正確さを欠いているのじゃないのか。日本国民から見たら、政府はいままで本土復帰、本土復帰といいながら、そして本土並みだと、こういっているのに、逆に従前同様に使っておるんじゃないか。そうすると、これは本土の沖縄化――これは野党の諸君が言われるようなそういう状態になるのじゃないか、こういう事柄もあると、そういう危険もあると、かように私も心配するのです。したがいまして、今回の祖国復帰、これが実現した今日でございますから、これらの点についてはもっと明確に話し合うことが必要だろう。あるいはまた台湾の地位自身も、これは北京にニクソン大統領が出かけて、そうしていろいろ北京で話し合ったそういう状態から見ると、これまた変わってきていると、そういうことを考えると、在来からの考え方どおりでもないように世の中が変わりつつあるんだ、そういうような事柄についても十分話し合う必要があると、かように実は私も思っております。まあこれはしかしキッシンジャー補佐官が参りましてどういうようになりますか、幸いにして一日だけ時間をとってくれるようですから、そういう際にゆっくり話をするつもりです。
#20
○羽生三七君 先ほど私、大局的な世界の現状についての高い次元の話もしてもらえと言いましたが、それとともに、いまのような問題も米中あるいは米ソの首脳と会って、それこそ世界的な大局問題だけをやっておるキッシンジャー補佐官のように見えますけれども、私は案外こまかいことも問題にして、それが日本に直接かかわり合いのある重大な問題である場合には、それが実は高い次元の問題にもつながると思うのですね。だからぜひ今度の場合、この問題が解決しないと、外務大臣、秋に日米安保委員会ですか、協議委員会か、あるいは単なる外交折衝か知りませんけれども、秋には安保を洗い直すと言われますけれども、これは秋までがむしろ問題でしょう、ベトナム戦争は。ですから、そんなゆうちょうなことでなしに、少なくとも今度問題提起をしておいてもらって、洗い直しをする材料、素材を提供して、アメリカ側の十分考え方を、準備ができるように、ぜひそういうことにも触れていただきたい。よろしゅうございますか。
#21
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろんキッシンジャー補佐官と話す、これは世界の大勢というか、そういうこともございますけれども、おそらくアメリカとして一番気にかかっているのは、現実の問題としてベトナム問題をいかに解決するか、そういう問題だろうと思います。私どももやはりベトナム、これが極東の問題である。かように考えますと、これが一日も早くそこに平和が招来されることを心から願っているものでございます。これは直接関係者ではございません。当事者ではございませんけれども、やはり何かと引き合いに出される。そういう危険がございますから、私どももこれについては非常な関心を持っておる。したがって、この問題をどういうように処理するつもりなのか。またいかなる考え方を持っているのか。これについては十分話し合うつもりでございます。これはよく私のほうも確かめたいし、また新聞その他の報道するところですからよくわかりませんけれども、北京においても、さらにまたソ連においてもそういうような問題も出たかのような記事も出ております。おそらくこういう事柄がアメリカ自身とすれば当面する一つの大きな問題だと、かように思っているに違いないと、かように思いますので、そこらはよく話し合ってみたいと、かように思っております。
#22
○羽生三七君 これは総理が近くおやめになろうと、あとの方がだれになろうと、私はそれにかかわりなく、日本の将来にとって、将来のみならず、当面ベトナム戦争が続いておる以上緊急を要する問題ですね。したがって、それを秋、適当な時期に外務大臣もかわり、後継首班もきまって、秋、適当な時期にまた相談してみましょうなんて、そんなゆうちょうなことでない、かなりスピーディーにやっていかんならぬ問題と思って問題を提起したわけです。だからこれはぜひお含みをいただきたい。
 それから続いて、外務省は新聞報道によると、十カ国蔵相会議の政治版ともいうような日本と欧州とアメリカとの定期首脳会議を今度キッシンジャー補佐官に提唱すると、問題提起をするというように新聞では伝えられておりますが、つまり経済面における十カ国蔵相会議の政治版というべきものを計画して、それを問題提起されるというんですが、そういうことあるんですか。これは外務大臣。
#23
○国務大臣(福田赳夫君) 今度のキッシンジャー補佐官の来日は、キッシンジャー補佐官が、どっちかといいますとアジア情勢にあまり知識がない。特にアジアの中において友人が少ない。わが日本はとにかくアジアにおいて重要な役割りを演じておる。その知識並びに友人そういうものを求める、こういうのが主たる目的でありまするから、ただいま総理がおっしゃったように、非常に大局的な話、これが中心になるだろうと思います。そういう間におきまして、世界的な規模の問題をどういうふうに話すか、これはいろいろいま総理もお考えになられておる、こういうふうに存じますが、そういうことは別といたしましても、冷戦構造だと、そういう世界の情勢も変わってきて多極化しておる。これはもうその中においてはどうしても脱イデオロギー外交という理念がこれから入ってくるだろう、こういうふうに思いますが、しかしそういう中においても、自由世界の、まあいわゆる三極といいますか、アメリカ、日本、ヨーロッパ、これらの国々が、これが十分話し合いながら、その冷戦体制にかわった多極化体制に臨むと、こういうことは、これはまた一面において必要なことじゃないか、そういうふうに思われます。また、キッシンジャー補佐官は、何も日本との間に正式な外交上の話をすると、こういうことで来るのじゃありませんから、提案だとかあるいはまあ協定だとか、そういうものは一切ありません。ありませんが、おのずから意見として両者の間ににじみ出てくるもの、そういうものはあろうかと思います。そういう中に、まあアメリカ、日本、EC、この関係をどうするかという問題もこれは話題になることであろうと、こういうふうに見ております。
#24
○羽生三七君 もちろんそういうことも今後のこの多極化した世界の中では必要かと思いますが、しかし、いま外相の発言の中にもおのずから出ておったように、キッシンジャー補佐官がアジアのことは案外知らぬという。そのアジアのためにもっと日本が積極的にやるべきで――もちろん私反対しませんよ、それはアメリカや欧州、日本話し合うことはもちろんけっこうですが、同時に、アジアのことにもっと熱心であるということを、日本のそういう姿勢が出てこないと、何か日本がアジアを忘れてあまりにも西欧的な一員になったような印象を与えるのじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
#25
○国務大臣(福田赳夫君) これはもとよりわが日本はアジアの日本であります。ですから、アジアの国々とまず交流をし、また理解をし合う、これはもう絶対必要なことだろうと思います。そういうようなことで、アジア開発閣僚会議というものがある。あるいはASPACという会議がある。アジア開発銀行という機構がある。そういう場を通じましてお互いに意見を交換し、そうして意見の一致点を見るように努力をする。これはもうもとより大事なことなんです。それが前提なのであります。その前提の上に立って、ほかの地域に対しましても配慮をめぐらしていかなきゃならぬ。こういう上のまあアメリカあるいはECとの間の相互理解、こういうことだというふうに御理解願います。
#26
○羽生三七君 時間がないようですからもう一問だけにしますが、いまお話の中にあったこのASPACへ出席されるわけですか、外務大臣。
#27
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま私はASPACへは通告をいたしまして、出席いたしますと、こういうふうにいたしておるのですが、まあいろいろ国会の状況、そういうようなこともありましょうから、最終的な結論はまだいたしておりません。
#28
○羽生三七君 もしASPACに行かれる場合には、場所も場所ですし、今度の開催地も開催地ですしね。それからASPACの従来の性格から見て、私は慎重な行動が必要だと思います。それは歴代の外務大臣に当参議院の外務委員会はずっと一貫して、この特定の政治的目標を持ったような集団となるべきではないという警告をして、これは歴代の外務大臣がみな実によく、参議院外務委員会の申し入れをよく聞いてこられたと思います。だから今度の場合も、私はASPACがせっかくここまできたいろいろな緩和ムードを逆転させるような方向に持っていくべきではない。韓国すらが何か中国を含めてというようなことを言っておるようですがね、将来は。それは別として、その意図のほどはわかりませんから別として、外相が帰朝演説をされる場合でも、まあ最後までおられるわけでもないでしょうが、私は日本代表の動きというものは非常に重要だと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えになっておるのか、承っておきたい。
#29
○国務大臣(福田赳夫君) かつて数年前ASPACは反共軍事同盟の機構であるというような一部の評価を受けたことがあるのです。それに対しまして、わが国は常にこれは平和の機構である。文化、科学技術、経済交流の場でなければならない、軍事的あるいはイデオロギー的な色彩というものは払拭する、そういう努力をいたしてまいったわけであります。そういう影響もありまして、今日ではASPACはほんとうに平和のつどいである、そういうことになってきておりますが、なおこの傾向をさらに定着させるというための努力を今回の会議において推進をいたしたい、そういうふうに考えております。
#30
○羽生三七君 終わります。
#31
○田英夫君 私は、日中問題を中心にして総理のお考えを伺いたいと思うのですが、すでに今度の国会でも、予算委員会その他で、しばしば佐藤総理は、日中関係改善の方向に前向きに進みたいという意味のことを繰り返し言っておられるわけですけれども、当委員会においてお伺いするのは初めてでありますので、あらためてその点から伺いたいのですが、いわゆる復交三原則を基本にして、総理はどういうふうにお考えになるか、原則をどういうふうにお考えになるかということを伺いたいと思います。
#32
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま日中関係について、先ほどもちょっと触れたのですが、隣同士の国がいまのような状態、これは不自然きわまると、かように思いますから、一日も早く両者の間に話し合いができる、それが国交回復する、国交が始まると、こういうことが望ましいことだと、これは申すまでもないことであります。私はそういう意味でしばしば申し上げておりますし、また外務大臣もそのとおり言っておる。そこで、ただいま三原則は一体どうかとか、あるいは五原則はどうかとか、いろいろ問題がございますけれども、私はそういう事柄をこえても、とにかくもっと両国の関係、歴史的な関係、それを考えて、もっと積極的に打開しなければならない問題だと、かように私は思っております。
#33
○田英夫君 いきなり具体的なことで伺うのですけれども、そういう大原則はまことにけっこうだと思うのですが、そこで障害になるのは台湾との関係ですね。従来、佐藤内閣がおとりになってきた方針というものは、やはり、これは吉田内閣以来の政策であるかもしれませんけれども、日台条約を結んで台湾との友好関係を維持してきた。こういう関係の中で、いま総理が言われた方向を進めようとすると、やはり具体的にはどうしても日台条約の問題を、日台条約をどう扱うのか、台湾との関係をどうするのか、これが明確にならないと、実際問題としては進まないと思うのですが、そこのところはどうでしょうか。
#34
○国務大臣(佐藤榮作君) これはもっとさかのぼってものを考えないと、現状における日華平和条約、これを云々しても始まらないと思いますね。われわれはサンフランシスコ条約を締結をして、そうして戦争はそれで終結さしたと。その際に、やっぱり中国との間に何ら話し合いができていない。中国の代表はきまらない。サンフランシスコにその代表者を迎えることができなかった。そのことが事の起こりだと思うのですね。そこで、サンフランシスコ条約が締結された後に、引き続いて日華平和条約を結んだ。その相手が国民政府であったと。その国民政府は、そのときすでに本国、本大陸、中国大陸には施政権は、施政は及んでおらない。そういう実情のもとにおいて、日華平和条約を結んだ、こういう関係ですね。しかもその当時は、やはり台湾にいる国民政府、これを国連もやはり中国の代表者として認めておる。したがって、安保の常任理事国も、その地位も与えるし、メンバーでもあった。こういう状態でずっと続いてきたのですから、私は、吉田内閣当時におけるこの中国の代表者の選び方が間違ったとか、間違わないとか、こういうよりも、やっぱりその事実はそれなりに評価してしかるべきではないか、かように私は考えるのです。ただ、昨年になりまして、国連においても、中国の代表者は台湾ではないんだと、これは北京における中華人民共和国だと、こういうことにはっきり国際的な取りきめというか、あるいは決議がなされた。そうしてそのもとで台湾が追放された、こういう状態。これはまた厳粛にその事実を認めざるを得ないと。私どもは最初から中国は二つだと、あるいは台湾の独立運動にも加担してはいない。また、別に敵視政策をとっているわけではございません。だからそういう意味において、いまのような国連における評価、これがきまり、そうして判断が決定されればそれを尊重する、これが日本のあり方ではないだろうかと私は思います。しかし、その中国と台湾との関係、これは私どもがとやかく言う間柄ではなくて、中国の問題として処理されるべき筋のものだと、かように私は考えております。
#35
○田英夫君 そういう中で、やはり国会でお答えになったように、日台条約をいまここで破棄するというようなことはないんだと。これはもう中国との話し合いの中で解決をしていくんだというようなこと。その態度はお変わりになりませんか。国連参加という事態が起こったという、新しいこの情勢の中でですね。
#36
○国務大臣(佐藤榮作君) 問題はそこだと思いますが、その一たん結んだ条約、これはやはり私どもはその条約に忠実でなければならない、そういう国際的な権利義務があると、かように思いますから、そういう問題が国内問題として、中国内の国内問題として処理される、こういうことが望ましいので、われわれがとやかく言う筋のものじゃないと、かように考えるのですがね。
#37
○田英夫君 まあ、そこで、より具体的な問題で、いま総理自身のお口から出たわけですけれども、台湾独立運勤ですね、これはいま総理の言われる日中関係を改善するという大きな大方針の中で、やはりきわめて具体的な、障害になる問題だと思います。それで、しかも、私も去年中国へ行きましたけれども、中国の要人、幹部の人は、必ずと言っていいくらいこの問題に触れて、それがしかも東京で、日本を中心にして行なわれているということを指摘して、非常に遺憾であると、こう警告をしているわけです。この点について、この台湾独立運動ということを、総理はどういうふうにお考えになりますか。
#38
○国務大臣(佐藤榮作君) 田君も御承知のように、私どもの条約を締結した相手国である国民政府の首席蒋総統に、また、中華人民共和国の首席、総統といいますか、あるいは毛沢東首席も、中国は一つだと、こう言ってるんですね。そうして他国がとやかく言う筋のものじゃないと言われる、私はそのとおりだと思う。ことに、私どもさきの戦争に破れて、台湾、澎湖両島、これを放棄した、そういう状態にございますから、いまさら中国、その独立運動、そういうものに加担する筋のものでもないし、また、それをしてはならないし、また、両国の代表――両国ということばは適当でありませんが、両政府の代表、それも中国は一つだと、こうはっきり言ってるんですから、第三者であるわれわれが、とやかく言う筋のものではない。問題は、やはり私どもが独立運動に加担しないこと、これが大事なことだと思います。で、幸いにして、私はその点では絶えず同じことを発言しておりますから、私自身が独立運動に加担しておるというような非難はどこからもないと思うのであります。
#39
○田英夫君 その点については、実は三月十六日のこの外務委員会で、福田外務大臣に私もお尋ねをいたしまして、福田さんからは、もし、そういう動きが日本国内であったら――現実にはあるけれどもどう思うかという私の質問に対して、福田さんは、「そういう運動をする人に対しましては、厳にそれをせざるようにこれを誘導する」、あるいは「厳にこれを戒めておる、」というようなことばも速記録に、ここに出ておりますけれども、そういう意味で、現実に運動が東京であることは、これはまあ公然の事実のようになっております。いま総理が言われましたことからすれば、政府として好まざることが一部で行なわれている、実際に行なわれているということに対して、総理は、どういう措置をとられるか、態度をとられるか、この点はいかがですか。
#40
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、先ほど外務大臣がそういうように答えたという、それよりももっと積極的にそういう運動についてわれわれが必要なる処置をとるべきじゃないかと、かように思いますが、現実にさような問題があれば、それは私どもの許さないところだ、このことをはっきり申し上げていいと思います。最近起きたイスラエルにおけるある暴徒学生、これと同様に私どもそれを憎むものでございますから、さようのことは厳に戒めるというだけではなしに、取り締まるべき筋のものだと、かように思います。
#41
○田英夫君 実はそういう動きが、しかもマスコミの幹部の手によって行なわれているという事実があるわけです。これは佐藤総理も御存じの人物ですけれども、ラジオ関東の社長の遠山景久という人が、きわめて公然と台湾独立運動を進めている。まあ、幾つかの報道がたくさんありますので、ほんの一例だけ言っても、昨年の八月三日にホテルオークラで在日台湾独立運動の諸派、いろいろな派ですね、その合同会議というのが開かれておりまして、これは主催はラジオ関東社長という形になっております。そして実際に司会役をつとめたのはアメリカのウィスコンシン大学のメンデルという政治学の教授だということです。これはマスコミでも伝えられて報道されていることですけれども、その報道によると、そこで議題になったのは、蒋介石をなきものにするというような、この点についてはそれはマスコミの報道で、私は確認しておりませんけれども、そういう報道さえあった。公然とそういう会議が行なわれている。しかもそれをマスコミの責任者である社長である人が主催をしている、こういう事実がありますし、あるいはたとえばことしの三月二十四日、二十五日、二日間にわたってニューヨークで台湾独立運動のアメリカ集会というのが開かれ、そこへこの遠山氏が出かけて行って出席をしております。もっとも、これにはライシャワー元駐日大使、こんな人も出ておりますので、この会議の性格というものはなかなか微妙でありますけれども、そういう報道もしている。こういう人物がいるのですが、しかも実は佐藤さん、昨年の十二月二十四日にこの遠山さんと総理官邸でお会いになって、四、五十分話をされているわけです。まあ、総理は終わってから、あの男は台湾独立運動をやっている男だ、こういうふうにいわゆる佐藤番の記者にも話されたということが一部の新聞に小さく報道されておりました。こういう問題が具体的にあるわけですけれども、総理は先ほどのお話に関連して、これをどうお思いになりますか。
#42
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、いま田君から言われるような、そんな具体的なことは承知しておりません。しかし、遠山景久はかねてから私も知っておる一人ですし、彼が昨年ですか、私のところへまいりまして、独立運動云々についての話をしていった。君がさような考え方を持っているなら君と対決せざるを得ない。おれはさようなことにくみするわけにはいかないが、どうだ、こう言ったら彼はすごすごと帰っていった、この事実だけを申し上げておきます。さような点から考えると、大したものではない、かように思いますので、そう気になさることはない。私はそういうものが具体的な動きとして、運動として展開される、こういうことがあればこれは厳に取り締まるべき筋のものだ、かように思っております。
#43
○田英夫君 遠山さん個人がそういうことをやっているということであれば、また総理に一喝されたと言いますか、そういうことはいかぬと言われてすごすご帰ったということからすれば、大したことはないかもしれませんけれども、しかし問題は、まあ私もマスコミにおりましたので、その点を重視するわけですけれども、放送局の責任者という立場、これは単なる普通の企業とは違うのじゃないか。電波という国民の財産を預かるいわゆる公共的な要素を持っている非常に強い会社であります。さらに、放送法を持ち出すまでもないのですけれども、放送法にははっきりと「不偏不党、真実及び自律を保障することによって、」表明の自由を確保するとか、これは第一条にあります。あるいは「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資する」こと、こういうことを放送法第一条でうたっているわけです。そういう精神から照らしても、佐藤さんが好ましくないと、まさにこれは佐藤さんが言われるまでもなく、いまのアジアの情勢、緊張緩和ということを願う国民の気持ちからすれば、そういう人がマスコミを握っているという、責任者になっているということは非常に問題があるのではないか。先ほどそういう台湾独立運動というようなことを穫るものが現実にあれば取り締まるというきびしいおことばがありましたけれども、私の調べた限りで、さっきはほんの一つ、二つの例を申し上げただけですけれども、現実にそういうことを放送局の責任者が言っている、こういうこの事実を政府としてはどういうふうに対処されるか、その点を伺っておきたい。
#44
○国務大臣(佐藤榮作君) 田君に別に反問するわけじゃございませんが、いまの、経営者の言動が全部を支配できるような人がいまいるのでしょうか。私はそこまで考えませんがね。だからしたがって、ただいまの遠山君がいまのような、もし、よし思想の持ち主といたしましても、その放送自身が非常な偏向した、かように私は考えておりません。これはおそらく田君も報道に携っておられた関係からよく御承知だと思います。私はやはり経営者、その意向というものはおのずから限度があるように思っております。したがって、私はただいまのところでは、ただ、いま個人的に注意するだけでそれは事は済む、かように思っております。いま言われるような、田君の言われるような非常な支配力があるかどうか、ちょっと疑問じゃないでしょうか。私はさようなものをどこにも見受けるわけにいかない。いまの新聞の報道等にしても、また各社の企画等にいたしましても、それは大体において自由、それは守られているように思っております。いかがなものでしょう。
#45
○田英夫君 私の調べた限りでも、幸いにして、社長だからといって台湾独立運動を推進するような報道をこの放送局で社長命令で流しているというような事実はもちろんありません。しかし、それは当然のことでありますけれども、ただ、たとえば先ほど私が申し上げた台湾独立運動についての会合、そんな大きな費用じゃないかもしれませんけれども、そういうものは明らかにラジオ関東の経理から出ている。私もここへ伝票を、写しを持っておりますけれども、そういう事実もあります。あるいはこれはラジオ関東の社員名簿にはなぜか載っておりませんけれども、これは嘱託員まで載っている名簿に出ておらないので、おそらく公然とした嘱託にするわけにはいかないのでしょうけれども、三人の人物が嘱託としてまあ嘱託料が払われているわけですけれども、およそ年間三百万円くらいのかなりの額の嘱託料を大池という人と天野という人と川上照彦という人に払っているということがあります。しかもこの三人は、先にできました台湾独立後援会というものの発起人に名前を連ねている人であります。遠山さん自身もこの代表の発起人になっているわけでございます。その三人が三人とも台湾独立運動の発起人になった。そういう人物を嘱託にして、しかもラジオ関東は必ずしも経営がよくない。六千三百万の赤字を計上しているという、そういう会社の中でかなりの額の嘱託料を払ってまで、会社の金で払ってまでそういう運動を進めているということは、私が先ほど申し上げたのは、そういうことを知っているから、社長はそんなに権限がないということではなしに会社ぐみるみで、ぐるみというのはつまり社長が会社のお金を使って、しかも報道機関という会社の金を使ってそういうことをやっているというところに非常に問題があるんじゃないか、こういう意味で申し上げたわけです。したがって、個人的に注意すれば済むという程度では私はないんじゃないか。先ほどの総理の非常にきびしい、厳重に取り締まるというおことばに照らしてみると、いささか私はそれは軽過ぎるのではないか、こう思いますけれども、いかがですか。
#46
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま田君の言われるような事態であれば、これはゆゆしい問題で、ほっておくわけにはいかぬと思います。本来報道に携わる者としては、どこまでも中立性を維持しなければならない、かように思います。私はこの報道の自由または表現の自由、これは尊重しますけれども、ただいまのような報道機関をかりて特殊な行動をする、そういうことは許されない、かように思いますので、よく実情を調べた上で善処することにしたいと思います。
#47
○田英夫君 これは言うまでもないことですけれども、私がきょうここでこのことを申し上げたのは、佐藤総理も冒頭言われましたように、いまの世界の情勢、アジアの情勢という中で、日中間の関係を改善をしてアジアの緊張を緩和する、そういう方向に進むということがきわめて大切であり、また、いま国民的なコンセンサスといっていい。佐藤さんがおやめになっても、次の総理大臣がまさに日中関係を改善する総理大臣でなければならないということがもうみんなの国民の気持ちであるという中で、その障害になる事実があるので申し上げたわけでありまして、そういう意味で私はもちろんある一会社、ある個人を一つの例に引かせていただきましたのは、御当人にとってはたいへん迷惑な話かもしれませんが、私は大きな国際的な緊張緩和という方向に進む日中国交回復を実現するという、そういう大方針の前に私は決して小さいことでないと思いましたのでお話をしたわけです。そういうことをひとつ御了解の上、善処をお願いして私の質問を終わります。
#48
○国務大臣(佐藤榮作君) これをもう誤解がないと思いますが、いわゆる最初に、冒頭に三原則ということを言われました。私どもももちろん敵視してはおらないんですよ。したがって、ただいま申し上げるように、中国との間の国交の正常化をはかろう、こういうことを言っておる。また台湾、二つの中国これに加担すると、こういうようなものではございません。どこまでも平和共存、これを願うからこそ、ただいまのように国交の回復をはかろうと言っている。かように思いますから、それらの点も十分御理解いただいて、そうしてやはりこの問題は一党一派の問題じゃないんです。どうか国民的な願望としてそれを達成するように、誤解のないようにこの問題を理解していただきたいと思います。政府の態度を理解していただきたいと思います。
#49
○西村関一君 総理は口を開かれると平和に徹するということをおっしゃいます。また、きょうのこの委員会におきましても、平和のためにはということをおっしゃいました。私はそういうおことばに対しまして、それをそのまますなおに受け取ってまいりたいと願うものであります。ただ具体的にいま総理がとっておられまする平和への営み、日本政府としての平和への努力、そういうことに対しましては、いま羽生さんからも田さんからも質疑がありましたように、われわれとしても、にわかに総理のおことばをそのまま受け取ることはできないという問題があることはお感じになっていらっしゃるところだと思うのであります。特に私は、ニクソン氏が北京に飛び、またモスクワに飛び、それぞれの中国及びソ連の指導者と協議をいたしております。その反面、ベトナムにおきましては、あのような悲惨な、非人道的な戦争を繰り返している。いつ果てるかわからないような戦争が続けられておる。こういう事柄に対しまして、総理といたしましては何らかかわり合いを持たない、これは他国のことであるというような態度でおられることはないと私は思います。心痛しておられることだと、一日も早くベトナムに平和がくるようにということを願っておられるというふうに考えるのでありますが、この点につきまして総理のお考えを初めに伺っておきたいと思います。
#50
○国務大臣(佐藤榮作君) いまお尋ねのように、ニクソン大統領が北京に飛びました。ニクソン大統領は御承知のように反共の闘士だといわれております。この人が北京に出かける、これは頭越しだろうが何だろうが、たいへんな日本国民にもショックを与えた、かようなできごとでございます。この北京に飛んだことによって、ベトナム問題もおそらくいい方向に進むのじゃないか、解決されるんじゃないか、かような期待を持ったのは私だけではないだろうと思います。しかし、どうも中国との間では対決から対話、こういう形には変わりましたけれども、べトナム問題はなかなか解決しない。そればかりではない、さらにベトナム問題は海上封鎖こういう方向にどんどん進んでいる、激化した。かような状態だと、これは沖縄の祖国復帰ははたして可能なのだろうかどうだろうか、これを非常に心配をいたしました。
 もう一つは、やはりはたしてニクソンはソ連に飛んでいけるかどうか、ソ連が迎えるだろうかどうか。私はあのベトナムの海上封鎖、これはたいへんな事態だと、かように実は非常に心配をいたしたのであります。しかし幸いに、五月十五日沖縄の祖国復帰は実現した。またその後引き続いてソ連に訪問もできた、訪ソが実現した。そうすると、案外われわれが心配したことが意外な方向に進んでいるんじゃないか。これはやっぱり戦争回避、そういう方向で世の中は動いている。われわれの見たことはあまりこれは杞憂にすぎなかった、かように実は思ったのであります。しかし、ソ連を訪問しても、どうもベトナム問題では意見の一致を見なかったというのが新聞のひとしく報道するところであります。私は今日この状況を見まして、実は非常に心配をした。また、一日も早くベトナム問題が終結するように心から願っております。
 先ほど問題は羽生君から提出されましたが、キッシンジャー補佐官が来てそういう点についてどういう説明をしてくれるだろうか、これが私の最も聞きたいことであります。また同時に、そのことを通じて、これからわれわれのなすべきことはどういうことが可能だろうか、かように思っております。
 西村君もたいへんベトナム問題については関心の深い方だし、私はやはり北ベトナムと日本との間において、海上封鎖はされても依然として通商関係を続けていこう、あるいはさらに進めようと、こういうような動きのあることも、これはこの際に指摘してしかるべきだと思っております。そういうことを考えながらも、ずいぶん世の中は複雑なものだ、世界は複雑なものだと、複雑な動き方をしていると、日本の考え方もどうも単細胞ではこれはとてもこの波を乗り切ることはできないんだと、かように実は思って、心配をしながらも、片一方でわれわれの努力すべき方向をいま見ようとしている。いま、御承知のように、日本として可能なことは、これは平和的な動きだけでございますから、そういう方向で、あるいは通商関係を深めるとか、あるいは人道的な処置を、処遇をやはりベトナムに対して南北の差別なく提供するとか、こういうような事柄がこれから行なわれるべき筋のものじゃないだろうか、かように思いながら、実はいろいろ皆さん方からもお知恵を拝借したい、かように実は考えておるような次第でございます。これはずいぶん世の中が複雑になっていると、どうも三極したとか多極化、三極じゃない五極だと、こういうような言い方もされておりますし、しかもそれが東西の対立であると、力のバランスであると、かようにも言われておる。そこらにも一つの問題があるように思いますので、これはまあ複雑な問題、だからそこに対処していくためには、誤りなきを期すためにもよく事態を認識していくことがまず大事であろう、かように思っております。
#51
○西村関一君 いま総理のおことばの中にも、日本はポストベトナム、ベトナム戦争が終わったあといろいろ通商貿易の面からも、その他の協力の面からも対処すべきであるというようなおことばがございまして、当面いま現在、あの苛烈な戦争の中に置かれておるベトナムの人たちに対して、日本政府としてはどうアメリカにアドバイスするかということについての積極的なかまえと申しますか、姿勢と申しますか、そういうものをうかがうことができなかったと私は思うんであります。私は、アメリカに対して。パートナーシップを持っているところの日本の総理大臣としては、ニクソン氏に率直にこのベトナム戦争は即時無条件やめるべきである。これはベトナム戦争の歴史的過程から見ましても、アメリカのつくり出した虚構の上に立っている戦争である。それは国防総省の秘密文書の中にも明らかにされておることでもあるし、おそらくアメリカは、ニクソン氏は、このベトナム戦争の泥沼の中からどのようにして手を引くことができるかということについて、しかも戦争は負けておるし、事実上負けているんであります。ラオス進攻もそうだし、いまの、現在行なわれておるところの南北ベトナムに対するところのアメリカが取り組んでおる戦争も、これは明らかに負けておるんでありますし、アメリカが名誉を保ちながらどのようにしてベトナムから撤退することができるかということについて模索している。力にばかりたよっておったんじゃ、これは解決がつかないということはわかり切っておる問題だと思うんであります。で、私は羽生さんが、キッシンジャーが来たときにぜひ総理からこれこれのことを聞くべきであるというお話がございましたが、私はそれも大事だと思うんであります。総理は間もなくおやめになるんでありますから、おやめになる前にキッシンジャー補佐官に会う。たまたま来たときに会うと、こちらから面会を申し込まれることはないと思いますが、そんなみっともないことはなさるはずはないと思いますけれども、向こうが会おうということならば、それはお会いになったらよろしいと思いますが、私はむしろ日本の総理大臣である佐藤さんがワシントンに乗り込んでいって、ニクソン氏にこの問題について、ベトナム問題だけについてじっくり話し合うというぐらいの姿勢を持ってもらいたい。何も北京に行かれる、モスコーに行かれるということだけが現在の重大な問題ではございません。ベトナム戦争をどのようにしてアメリカの立場にも立ちながら、しかもハノイが一体何を考えているか、ベトナムの人たちが何を目ざしておるかということについても総理はよくお考えになっていらっしゃると思うのでありますから、衆知を集めて、英和を集めて、この際、大政治家としての佐藤榮作さんがワシントンまで出かけていって、何らかの話し合いをすべきではないかと私は思うんであります。
 私は、先般ハノイへ参りました。ハノイに参りますときには、事のきっかけは、あなたの党の、自由民主党の千葉さんという代議士、この方とのかかわり合いにおいて私はハノイに行ったんであります。私は千葉代議士を深く知りません。ハト派であるか、タカ派であるか知りません。しかし、千葉さんがこの問題に対して非常に深い関心を持っている。自分はハノイへ行って、ハノイの指導者と直接会いたい。また、昨年の大水害に対して日本の米を船一そう送りたいと、政府を動かして送りたいからあっせんの労をとってくれ、こういうことを私に言われた。私は三度手紙を書きました。また、電報を打ちました。その結果、私はハノイへ行くことになったのであります。私はそのことができませんでしたけれども、千葉三郎代議士が、もう七十八歳のあの老政治家が、このために自分の命を捨ててもいいと、ハノイの立場をよく知りたい、それをアメリカに伝えたいのだ、そして和平に貢献したいのだというその至誠に実は感服したのであります。私は千葉さんとは何のそれ以上のかかわりはございません。党は違いますし、その他の団体のかかわりも何にもございません。しかしその至誠に私は打たれたのであります。ですから、いささか犬馬の労をとりました。そのことはハノイにおいても私は強く話してきたのであります。私はこの際、総理が御在任中にぜひワシントンを訪れられて、ニクソン氏にとくとひざを交えて、ベトナム和平の問題について話をしていただく、そういう姿勢を持っていただきたい。世界の、国際間の情勢は大きくゆれ動いておりますことはいまさら私が申すまでもございません。二つのドイツもやがて国連に入るでしょう。朝鮮半島もまた同時に二つの、朝鮮民主主義人民共和国と南の大韓民国、これがいま接近をしつつある。もともと朝鮮は一つだということなんでありますけれども、いま二つ現実にある、それが接近しつつある、こういう情勢下において、ニクソン氏が国内的にもベトナム戦争で非常に苦しんで、麻薬患者はふえるし、経済的にも破綻を来たすし、戦争は思わしくいかないし、そういうときにハノイは一体何を考えているか、 ハノイの考え方、ハノイの人たちがただ単に彼らが考えているようなベトコン、無法者、野蛮人、そういうのじゃないということをよく知らしてあげる必要があるのじゃないか、それは佐藤さんの大きな、私は総理としての最後のお役目ではないかと思います。
 それだけのことを伺って私は質問を終わりたいと思います。
#52
○国務大臣(佐藤榮作君) いま西村君からのいろいろの御意見を交えての、まあお尋ねもございましたが、私はいま、そのポストベトナム、それだけでいま申し上げておるわけじゃございません。皆さん方の努力も、やはりベトナム問題が進行中において、これを間違わない方向にしたいというその努力が先ほど言われるような北越へ西村さんがみずからお出かけになったと思っております。また、私自身ももちろんポストベトナムを考えないわけではありませんけれども、もっと大事なことは、現在の状態がどういうように改善されるか。間違った方向へいかないように、これを念願するのみであります。
 そこで、先ほども申しましたように、私は心配をしたが、意外にも世の中が、世界が平静であると、そういうことで私は杞憂に終わったのかと、かような安心感を得たという話をしたのであります。
 私はたいへん実は北越の海上封鎖を大きく見ておりました。これはたいへんな問題が起きたと、かように実は非常に心配したのでございます。しかし、そういうことにならないでただいま推移している。これはここにも平和への努力が払われつつあると、かように見ていいんじゃないのか。またモスコーに出かけたと、ニクソン大統領はモスコーでどういう話をされたか。これもまた別でございますが、おそらくベトナムの問題にも触れたのに違いないと思います。私はそれらのことを考えながら、やはり話は同一の線をたどることはできなかったにしても、やはりこの問題は両国の間にこれを大きくしないような努力は払われつつあるものだと、かように実は思っております。ただ、両国ともそれぞれの行きがかりがありますから、過去の行きがかりで古い友人を敵に回すとか、その期待にそむくとか、そういうことはしないつもりでアメリカもソ連もやっておるんだと、かように私は理解いたします。したがって、問題はやはり何といっても、うしろだてもさることながら、当事者自身がやはりその気持ちにならないと問題は解決しないんじゃないだろうか、かように思っております。
 いま中近東の問題、これが休戦状態でございますので、これもいつ火を吹くかわからないたいへん心配されるべき筋のものである。私はそれらのことを考えながら、極東の問題もベトナムの問題も中近東の問題も、これは区別しては考えられないように気がいたします。しかし世界が平和を望んでおる、ことに核兵器の発達した今日、戦争は避けるべきだといろあらゆる努力が払われておる。このことはそれなりにわれわれも認めて、そうしてその方向で努力すべきだと、かように考えますので、いま西村さんの言われるようにポストベトナムを考えているんだと、こういうことじゃなしに、現行の進行しておるその状態について多大の関心を持たざるを得ないというのが私のほんとうの心境であります。また、あなたや私のほうの千葉君などが、このベトナム問題を何とかして終息させようとしての民間の努力、これも私はそういう意味で高く評価さるべきものだと、かように私は思うのでございます。たいへんまあ御苦労を重ねていらっしゃることについて、あらためてこの席をかりて敬意を表し、ただいまのものが実を結ぶことを今後とも私は望んでやまないのであります。しかし、やっぱり何といっても戦争の当事国それ自身がそういうつもりにならないと戦争はやまないんじゃないかと、かように私は思います。アメリカがすでに発表しておるように、これは撤兵するでしょう。私はその点が、ただ単に、いやそのアメリカの捕虜を返せ、そうしたらすぐ撤兵するとか、戦争が休戦したらどうこうというようなことは、これは表現の問題でありまして、あるいは中間的な状況だろうと思います。私はやっぱり終戦の方向に事態は大きく動いているんだと、かように実は思います。
 そこで私自身にイニシアチブをとれと、こういうことを言われますが、私も世界の平和について関心なきを得ないのですから、そういう意味では、おっしゃるようなことも考えないわけではございませんけれども、しかし、私どもただいまは平和に徹する考え方のもとにおいてこの事情を十分理解してもらうことがこれが何よりも戦争への強い圧力になる、そういうように考えざるを得ないのであります。私は、キッシンジャー補佐官が見えましていろいろ話し合いをする、そういう方向に、やっぱり日本の考え方はここだと、こういってキッシンジャー補佐官が事態を十分認識して帰ってくだされば、そういうことがやはりベトナム戦争あるいは中東の平和、その方向に必ず役立つだろう、かように実は思っておるのであります。先ほど外務大臣から申されたように、キッシンジャー補佐官はただいままでに日本に来られたことがない。そういう事態で、日本の実情を十分知りたいというかねてからの希望であります。これは、この春、サンクレメンテで話した際もそういうことを申しております。だから、まあそういう点がみずから、やはり百聞は一見にしかずと、こういうふうな意味で日本に出てくる。あの多忙な人がそういう気持ちになったんだろうと、かように私は思いますので、そういう機会に十分われわれの考え方を率直に話しをすること、そして理解を深めること、これが何よりも大事なことではないだろうか、かように思う次第でございます。
#53
○加藤シヅエ君 委員長、ちょっと一言だけお願いします。
#54
○委員長(八木一郎君) 加藤君、関連で一問、答弁も時間が割り当てがありますからもうこれで……。
#55
○加藤シヅエ君 総理大臣、この間、テルアビブでたいへん不幸な事件が起こりましたときに、さっそく福永特使を御派遣なすったことは、まあ不幸の中で幾ぶん日本のためにたいへんないい敏速な措置をなさったと思います。
 そこで外交の問題は、いま皆さんがアジアの平和について非常に社会党も、委員たちがいろいろと心配な発言をされているんでございますが、私は、さらにそれを日本一般が受けている印象というものが、いつも世界の人たちから孤立しないで、理解されるようなほうに絶えず向けていかなければいけない。その意味で、ただいまストックホルムで開かれております人間環境会議は、これはたいへんにいい舞台でございまして、大石長官はまあ政府を代表して出席、大いにあすこで奮闘していらっしゃると思いますが、第二回の人間環境会議を東京で開いたらどうだろうかというような意見がたびたび報道に載っておりました。で、それに対しまして政府は、まだあんまりはっきりした、招待しようとかあるいはそれがいけないとか、あまりはっきりしたような御意見を吐いていらっしゃらないのでございますが、この際、公害の問題につきましてとかく批判の多い日本といたしましては、積極的に舞台を東京に持ってきて、世界の方々の協力を仰ぐ、日本の前向きの姿勢をも見てもらう、こういうような方向に持っていくことがやはり大きな意味の外交ではないだろうか、こう思いますので、総理はどういう方針を考えていらっしゃるか、この一問だけ伺います。
#56
○国務大臣(佐藤榮作君) いままでは、第二回目を東京で開けとか、日本で開けとか、こういうようなまあ誘致運動と申しますか、積極的な誘致運動はいたしておりません。しかし、ただいまのような御意見もございますから、まだ会議が開かれておる最中でもありますし、それらのことも含んで、外務当局と十分事態を対処すると、かように御理解をいただきたいと思います。
#57
○国務大臣(福田赳夫君) これは、まだ第二回の環境会議をやるかやらないか、これもきまっておりませんが、まあそれがきまった際に場所をどうするか。日本へよこせ、よこせとこう言うと、これはまあいかにも出過ぎたような感触にもなりかねない。そこで、日本へというような空気がありますれば、これを受けて立つ、こういうふうにいたしたいと、かように存じまして、そういう方向で大石長官は会議の現場において善処すると、こういうふうに心得ております。
#58
○国務大臣(佐藤榮作君) もう一つ、ただいまのテルアビブの問題について、ただいま政府のとった態度について、御賛同というか、あるいは御鞭撻を賜わりましてお礼を申し上げたい。やはり外交というものはチャンス、時期、これが大事な要素でございますので、同じことをするにいたしましても時期を失しますと意外な結果を生ずるものであります。幸いにして私ども早い決断を下したことがたぶんイスラエルに対しまして好感を与えたと、かように思っております。しかし、中東問題については在来の態度は変わるわけではございませんので、在来どおりの日本の態度である、ただ今回の事件については心から国民的なおわびをしておる、かように御了承をいただきます。
#59
○渋谷邦彦君 昨年の六月ごろから現在にかけてこの一年間、外交上の問題としてもいろいろ変化に富んだ激動の時期ではなかったかと、こう思います。おそらくこの間において政府自身もショックを受けたこともございましたでしょうし、のみならず、国民全体がいろいろな意味で戸惑いを生じたということもなきにしもあらずというふうに理解されるわけであります。どうしてそういうような、まあ極端な言い方をすれば、たいへん失礼かもしれませんけれども、日本の外交というのは継ぎはぎだらけの外交をやっているんじゃないかというような誤解――まあ誤解とあえて申し上げておきましょう――誤解すらも受けるような状態に置かれているんじゃないか。一体ほんとうに基本的な考え方というものは一貫しているんだろうかというような疑問すらもわれわれとしてはしょっちゅう持たされているわけであります。先ほど来御答弁を伺っておりましても、なるほど総理がいろいろないままでの委員会を通しましても、自主平和路線というものを貫くんだと、また戦争回避であるというようなこともしばしば伺っております。しかし、具体的にそのあらわれた事実関係というものを考えてみた場合、はたして日本としてとるべき姿勢というものは一体どこにあるのだろうかというようなことも考えさせられる場合がございます。そういったいろいろな問題がございます。先ほど来一つの問題点にもなっておりますように、特にことしに入りましてからは、米中、米ソ首脳会談が開かれて、言うならばいままでの冷戦構造から脱皮いたしまして、対話を通じての緊張緩和への方向へいま向かっていこうとしている段階を迎えている。ということになりますと、当然日本もそれに対応すべきもろもろの方針というものを考えていなければならない。したがいまして、この辺でもう一ぺん政府自身がいままでの外交路線というものを洗い直す必要がおありになるのではないだろうか、これが一点。
 それに伴って必要に応じ、たとえば外交白書と申しましょうか、あるいは総理白書とでもいいましょうか、あるいは佐藤白書でもいいと思う、そういうタイミングもよく心得た、そして国民にも十分不安を与えないという、日本の将来のそういう方向というものを明確にすべき責任と義務があるのではないだろうかというふうに私は感ずるわけです。
 それともう一つその問題に関連して、先年私が海外を回りましたときに出先の公館長、だれとは申しません、共通して意見を述べられたことは、日本政府の外交路線というものはわからない。たとえば中国問題一つにいたしましても、外国のその公館長は聞かれるというんです。一体どう考えているんだ。答えようがないというんですね。こんなばかな話はないわけです。やはり公館長といえば何も私がえらそうな口を開いて言う必要はない、総理の代理として言っているというような立場に置かれているわけでしょう。そうした人たちが日本外交の姿勢を聞かれた場合でも自信を持って話ができないというのはまことに貧困な姿ではないだろうかというふうに、やはり将来のことを踏まえてたいへん心配するわけでございまして、この二点について最初に総理の意のあるところをお伺いしておきたい、こう思います。
#60
○国務大臣(佐藤榮作君) 外交の基本的方針、これはもうあらゆる機会に申し上げておるので、重ねて申し上げるほどの必要はないだろうと思います。あらゆる国と仲よくする、平和に徹する、こういうことでございます。しかし、相手のあることですから相手の変わり方によってわれわれはそれに対応していく、そういうことが必要である。しかし、相手が基本ではなく問題はこちらが基本でございます。われわれの考え方、その基本に立って相手方の出方で変わっていく、かように御理解いただきたいと思います。どうもそれが本末を転倒して、日本の自主的外交ではなしに相手方の動きで目の玉がぐるぐる変わる、こういったことではこれはわれわれもいけない、かように思います。その点だけはもうはっきり申し上げておきます。
 私はサンクレメンテでことしニクソン大統領といろいろ話をいたしました、アメリカの違うところと日本の違うところ、ここには基本的にはっきりするものが一つあるのであります。その点を指摘いたしました。しかしそれはお互いにけっこうじゃないか、これは違ってもしかたがないじゃないか、それぞれが主権国家であり、独立国家だから当然だ、アメリカもさように考えるならけっこうだ、おれのほうはかく感ずる、君のほうは君のほうでやれ、こういうような考え方で実は別れたのであります。これが同じ中国に接近するにしても基本的な相違でございます。この点はおわかりだろうと思います。あえて私は申しません。これはそれほど日本の立つ立場というか、日本の主張これは明確にする必要がある、相手が変わるからそれに対応するんだ、こういうことを言えばいかにも本末転倒のきらいがある、かようなことでは私は外交はできない、このことを申し上げておきます。
 また、第二番目の佐藤白書、外交白書をつくれということ、これは御意見として伺っておきますが、私自身がもういままで本会議を通じて、施政方針演説ずいぶんいたしましたので、それで明確になっておりますので、いまさら一々書くことはないように思っております。
 また、出先の公館長、そのうちにただいまのようなお話をする人があったとしたらそれは公館長としての責めが果たせない人だ、かように私は思いますので、これははっきり申し上げておきます。
#61
○渋谷邦彦君 第二番目の問題でいまおっしゃった、それはいままで国会の答弁を通じて政府自身の方向というものは明確に話をしてこられたとおっしゃる、それはそれでけっこうでしょう。しかし、外交というのは将来の展望に立っていろいろな理想なりそれから政策なり方針というものを打ち出さなければならない場合だってございますので、それをやはり踏まえた上で出すこともひとつの国民に納得を得る、不安感を除去する方法ではないかと私は申し上げました。
 それから、そのあとに御答弁いただきました公館長云々の問題、これは公館長だけに責めを負わせるということはかわいそうだと思います。一人や二人の問題ではないんです、共通してそういうことを私たちはいままで聞いてきた。だがなかなか言う機会がなかった。そこにやはりその辺を冷静にお受け取りになっていただいて、そういう事実もあるということの認識に立って、そうして今後のやはり外交方針というものを明確にしていかなければならないのではないでしょうかと私は申し上げておるんです。あとのほうの答えはけっこうですが、白書というのはこれはたとえばの話で言ったんですよ。何もニクソン・ドクトリンとか、グアム・ドクトリンといいたくないから、せめてそういうような方向で日本の最高首脳者として示していくのが一つの方向でもあるのではないでしょうかと、こう申し上げておる、いかがでしょうか、もう一ぺん。
#62
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は日本の外交、これは将来の展望に立って現実の足をはっきり踏まえておると、かように思っております。したがって、ただいま言われるような点が、誤解がないのじゃないかと実は思ってるのです。なおしかし誤解があると、十分わからないと、かように言われるから重ねて申し上げますが、それはもう基本方針でしばしば申し上げました、それはもう徹底しておるはずだということを申し上げたいのです。
#63
○渋谷邦彦君 こういうところでこんなことを申し上げるのはどうかと思うのですが、佐藤さん、なかなかほんとうのことをおっしゃらないということを、一番身近な方がおっしゃっておることをある雑誌で私は拝見した。それを何もなぞらえて言うわけじゃございませんけれども、そういうところに、いろんなやはり御性格もございましょうし、(笑声)あらわれているのではないかと心配するわけです。先ほど佐藤さんおっしゃった、戦争回避だ、それはベトナムの海上封鎖についても心配したと、それは事実でございましょう。一国の総理としてそれは考えないわけにはいかない、いろんなことを御心配なさっていることは私は認めますよ。けれども、佐藤さんが御心配になったほどの一体反響はどうあらわれたのだという具体的な事実関係というのがさっぱりあらわれてこない。ここにもう一つのわれわれの不信感がやっぱりつきまとってしょうがないといろことになりはすまいかということをおそれるわけなんです。現実に佐藤さんが非常にいままでいろんな点を心配されてきたと思うのです。はたして、戦争も回避したい、海上封鎖についてもこれは好ましいことではない、あるいはさらにその考え方を広げて、中近東の問題にしても、いま戦争は起こってるじゃないか、こうおっしゃった。事実そのとおりですよ。だけど、どういう具体的な手が打たれていったか、そして各国に対してどういう理解を深めていったのか、そういう事実関係の累積というものが一体どうあらわれてきたのかというと、少しもないのです。少しもないと言うとたいへん申しわけない言い方ですけれども。だからそのあたりを一体、佐藤さんとしていままでどうお考えになって、そしてその心配の趣をその一つの実証としてこれから示されていこうとする御決意があるのか、その辺を率直にひとつこの機会に、もう私も伺っておくのは最後かもしれませんけれども、お聞かせいただければ……。
#64
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ最後、最後と言われると、(笑声)非常に答えにくいのですが、ただいまの問題ですが、いま私、沖縄が無事に返還された。この沖縄にベトナム条項があると言って、野党の諸君からずいぶん、これはどうなるのか、ベトナム条項で沖縄が返らないことがあるのじゃないか、こんな中途はんぱな約束をなぜしてきたのか、ずいぶん責められたものです。しかし私は、これはやむを得ないというか、いわゆる特別な事態を考えてこういう条項が入っているのだと、こういうことで皆さん方に特に説明をし、御理解を得ようといたしました。しかしなかなか御理解してもらえなかった。時たまたまベトナム問題が非常に事態が悪化する。これはいよいよベトナム条項が野党の諸君が心配されたような方向にも働くのじゃないかと、実は私、非常に心配したということを申しました。しかしさようなことはなかったと。幸いにしてアグニュー副大統領がニクソン大統領の代理として日本に来てくれた。まずまず皆さん方に約束したとおり、沖縄の祖国復帰は実現した。これはそれなりにやっぱり見ていただきたいし、またそれなりに評価していただきたいと私は思うのであります。やっぱりただいまのように、事態があと出てきて、あのときにはそうだったのかと、そういうむずかしい問題があったのかと、だがそれ、心配なしに済んだと。われわれもずいぶん政府を責めたけれども、あれはあとで、まあ無事でよかったなと、こういうように御理解をいただければたいへんけっこうだと思うのです。こういう席でさような打ち解けた話をすることはいかがかと思いますけれども。さらにまた、ベトナム問題にいたしましても、私は、政府は政府なりにただいま通商関係ではやはり交渉していると、そういう事柄も、やっぱり野党の皆さん方もそれなりに評価していただいたらどうだろうかと思う。先ほど西村君からは、ずいぶん苦しい思いをしながらも北越に出かけたと、これは野党の皆さんとして積極的にこの問題を心配するがゆえに努力したのだ、こういうお話であります。私はこれによって何が生まれた、かように申し上げるものは数字的にはございません。しかしながら、われわれの努力が平和への努力である、そういう方向でいろいろしておること、これはそれなりにお認めいただいたらいかがなものでしょうか、私はそれを申し上げたい。私は、ただいまイスラエルの問題が起きて、これはやっぱり特使を派遣した。しかしこれによってアラブ紛争、中近東紛争に従来からとっておる中立的な――中立ということは申しませんが、関与しない立場、その態度を変えるというような考えは毛頭ございません。同情はする、また悪いことは悪いこととして、しかしそういう方向でやはりわれわれが進むべき方向にはいまあやまちなきを期しておるのじゃないか。これだけはぜひとも理解していただきたいのであります。これはおそらくだれが次になられましても、この基本的な、自由を守り、平和に徹する基本方針は必ず変わらないと私は確信をいたします。どうかその辺よろしくひとつ評価をたまわりたいほどお願いします。
#65
○渋谷邦彦君 次に、先ほどちょっと問題として出ましたASPACの問題でありますが、先ほど福田さんの答弁等を振り返ってみますと、しかし性格的にはやはり反共体制の一環として仕組まれた一つの組織体ではないのかという印象をぬぐい切れません。もうすでに伝えられておりますように、韓国自体も、最近の中国の情勢、あるいは北朝鮮の問題等々、それらを考慮してのことであろうかとは思いますが、四項目の新たな提案をしようとする動きがある。その最終結果がどうなるかわかりませんけれども、政府として今後確かに平和的な、あるいは経済を軸にしたアジアの繁栄というものに根ざしたそういう方向でこれからもいくんだ、それはわからないわけではございません。けれども、諸般のいろいろな情勢を考えてみた場合に、あるいは中華民国あるいは韓国が最後までこれをとりでとして今後何らかの意味においての動きというものがやはり表面化してくるのではないだろうか。まあいろいろそういうことを考えてみた場合に、日本としてこれから中国との国交正常への足がかりをつくっていこう、また北朝鮮についても何かの手がかりをつかもう、現在模索されていらっしゃる。それでいま申し上げたように一般的に受け取られるのは反共体制ではないか。しかもこれからそれが維持されることによって、はたしてこの対中国関係、あるいは対北朝鮮関係というものがうまくいくのであろうかというような疑問がやはり出てまいります。まずその点について総理の総括的な、いままでの経過はけっこうでございますから、将来に向かっての考え方をお聞かせいただきたい。
#66
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも反共体制ということばが実は私にはひっかかるのです。いま現状、国際的な関係をひとつ分析すれば、共産主義体制の国もある、また民主主義の国もある、その二つがやっぱりいまの状態です。私どもは後者を選んで民主主義体制、この民主主義体制をとっていることが直ちに反共体制だと、こういうような言われ方は困るように思うのです。私はそれぞれの国民がそれぞれの政治形態を選んでおる、かように思いますから、それは自由だと思う。しかし、私が先ほど申すように、自由を守り平和に徹するということ、私どもは民主主義体制でこの国の安全を確保していこうと、こういうことでございます。これは別に反共体制というものじゃかい。だからその反共体制といういわゆる反対、対立の関係においてものごとを見ないで、共存の関係において、それぞれの国民が選んだ政治形態のもとにおいて共存ができるのだ、それがいわゆる対決ではなくて対話の方向だと、かように私は理解しておるので、そういう方向でものごとを考えていただきたい、これが私の基本的に申し上げたいことであります。
#67
○渋谷邦彦君 しかし、現状を考えた場合、この加盟している国々、これは言うなれば自由主義国家群と言われる国でございますね。まだまだやはりアジア地域において加盟しても当然しかるべきだという国々が相当残っているという一つの問題があります。そういう国々に対してもいままでどういう一体働きかけでその共存という、総理のいまおっしゃったアジア全体の繁栄を考えてみた場合の方向に立った場合、どういうふうにいままで手を打たれてきたのか。それから近い将来と申し上げましょう、中国と北朝鮮との間に国交が樹立された場合、あるいはASPAC自体がどういう一体形態になって変わるか別問題といたしまして、現状のままでこれから推移するとするならば当然中国も、あるいは北朝鮮も、この仲間入りをしてしかるべきであろう、またそれが望ましいことであろうと、こう思いますけれども、その辺の関係ですね、そうしてまた、どうあるべきかということについて御見解を伺っておきたいと思います。
#68
○国務大臣(佐藤榮作君) ASPACが政治的な色彩をなくしようと、こういう申し合わせをしてただいまは活動をしていると、かように思っておりますので、私は、そういうことが望ましいことだし、いまのような反共体制ということでないほうがいいと、まあとにかく世界の各国を見るといま二つの政治形態、そのもとにおいてそれぞれの国ができておると、かように私考えますから、やはり民主主義形態が望ましいと、かように日本は思うがゆえに、また日本国民がそれを選ぶがゆえに、日本が民主主義の体制のもとにこの国をなしておるのですね。だから、それはそれでいいじゃないですか。私は日本のあり方はそれでよろしいし、また各国は各国の国民がそれぞれの政体を選ぶのですから、それはそれなりにわれわれが干渉することじゃないんで、それはそれでいい。しかしそのものが、その二つが相対立するという形で競うというか争うと、こういう形になったらこれはたいへんだと思う。平和共存がそこで必要だ。お互いに内政には干渉しない、しかし共存しようということ、これは私どものかねての主張とちっとも選ぶところ、変わってはおらないと、かように思うのです。おそらくASPACにおいて政治的な色彩をなくする、それはただいま申し上げるような点ではないかと、かように私は思います。
#69
○渋谷邦彦君 なるほどそれは政治的色彩がない、これは非常に聞こえがいい表現だと私は思うのですね。けれども共存というもの、あるいはその他のいろいろな問題解決にあたって、経済が主体になるだろうと思います、あるいは文化が主体になるだろうと思うのです。しかし、やはりその政治的な考慮というものの背景がなくしては将来もやはり非常に困難ではないだろうか。全然その色彩がないというならば、何も民間同士の話し合いだってけっこうなわけでございますからね。やはり一国の外務大臣が代表として出るということになれば、いろいろその頭の中にえがいている問題というものは、絶えず政治的な配慮というものが考慮されて、そうして一つの会議というものが運営されていく、これはおそらく常識でございましょう。ですから、いま私はあえてそのことを申し上げたわけです。
 もう時間がありませんので、もう一つ。今度福田さんが決定されたやに聞いておりますけれども、先ほどのお答えではまだ検討中みたいなことになっているようでありますが、もし出席をされた場合に、日本から新たな提案をされる用意がございますかどうか。その提案される場合には、どういうことを内容としたものをお出しになる予定なのかですね。
#70
○国務大臣(福田赳夫君) まだASPACに臨む態度というものは検討中でございまして、ここでまだ御披露し得る段階ではございませんけれども、要するに根本といたしましては、アジアの連帯を強化する、そうしてその連帯の場としてのASPAC、これはいま総理がおっしゃるように、政治的なあるいは軍事的なあるいは反共的なと、そういう色彩はないようにしよう、そうして平和共存というか、そういう性格に基づいての相互協力、相互理解、これを増進する場にしよう、こういう考えでございます。
#71
○渋谷邦彦君 重ねてお伺いしておきますけれども、そういった際に、経済といえば聞こえがいいのですけれども、もちろんいまの御答弁でもそれは明らかなんですけれども、ゆめゆめ軍需物資等の、何といいますか、日本に要請された場合にそういう契約をするとかしないとか、そういうことも絶対にあり得ないとこう理解してよろしゅうございますね。
#72
○国務大臣(福田赳夫君) わが国はいずれの国に対しましても軍事的な財政経済上の援助、これはいたしませんから、この辺ははっきりひとつ御理解を願います。
#73
○松下正寿君 時間が非常に短いですから、私はイスラエルのテルアビブ空港におけるあの不幸な事件についての私の所見を述べて、総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
 あの事件に対して政府が謝罪使節を派遣されたということは非常に適切な処置であると私は考え、これを高く評価しておるものであります。しかしながら、これとは別に、あの事件というものは、むろん一つの事件としては単独でありますが、決して偶然に突発したものではなく、数年前から行なわれております大学紛争、ハイジャック、浅間山荘事件、それら一連の事件のいわばそういう事件に徴候をあらわしている日本社会の根本的な病理の一つのあらわれであるというふうに私は考えておるわけであります。したがって、その根源というものはきわめて深く、したがって、この種の事件というものは再発を防ぐということはこれは相当困難なことであると考えるわけであります。これに対しては、むろん政府においても治安対策その他十分に考慮されておると思いますが、病気の根源というものはこれは治安対策だけでは処理できない、さように非常に根源が深いのではないか。これはむしろ現代文明の構成しておるところの政治理念、経済理念、教育理念その他をもっと根本的に反省して、新しい時代の新しい理念がいかにあるべきかということを検討する必要があるのじゃないかと考えられるわけであります。この点について私の若干の考えもありますが、その前に佐藤総理はその根本問題、外交問題としてでなくて、こういう一連の問題についての根源についてどういうお考えを持っていらっしゃるか、最初お伺いをしたいと思います。
#74
○国務大臣(佐藤榮作君) テルアビブ事件、これは私もまことに遺憾に思います。この機会にこれはもう世界に対して私自身が遺憾に思っておるということをやはりおわびするというか、この気持ちをやはり伝えていただきたいように思います。しかして、こういう事件が不幸にして起きたこと、しかもそれが日本人の手によってなされたこと、これはただいま申し上げたようにまことに遺憾に思いますが、それはいま御指摘にありましたように、一朝にしてこんな事件が起きたわけではないと、私は最近の一連の世相、そういうものから出発して発展してこういう事件にまでなったと、かように見るべきだろう、かように思います。したがいまして、当面の対策は、もちろん空港における取り締まりその他各国間のお互いの協力、これはハイジャックの事件と同じような立場において各国とも十分連携を緊密にしなければならないと思いますが、しかしやはりもっと、ただいま御指摘になりましたように、元にさかのぼって、根源にさかのぼると、やはり非常なわれわれが物質文明にだけ最近追われてきた、そこらに非常な深い反省を必要とするのじゃないか。ただいまはもっと理念、そういうものを考うべきだと、こういうような簡単なことばで済まされておりますけれども、松下君の言われるのはただいま言うその根源にさかのぼってものを考えろと、こういう御忠告だと私もとったわけでありますが、そのとおりだと、かように思っております。
#75
○松下正寿君 こういう事件が起きますというと、必ずまあ政治の貧困であるとか、あるいは若い者の政治に対する不信であるとか、政府が無能であるとか、いろいろなことが言われるわけであります。しかしながら、これは幾らそういう悪口を言ってもそこで解決がつくかどうか、私はほとんどことばだけで終わるんじゃないかというふうに考えておるわけであります。私は実は考えておりますことは、この根本の問題というのは、むしろ総理大臣はじめわれわれのちょっと手に負えないほどの大きな問題じゃないだろうか。もっと率直に申しますというと、この国会を構成しておりますのは、まあしいて右、左ということばを使いますというと、右は自民党から左は共産党まで全部含んでいるわけであります。その思想的背景、政策等は、著しく違うといえば違いますが、また反面から見ますというと、やはりそこに共通の場がある、つまり一つの――決して現体制を全部支持しているわけじゃありませんが、少なくとも左右双方の暴力というものはこれは否定する立場に立って、最小限度の議会政治というものは多少の解釈の差があってもまあ認めておる、そういう集団であると考えられるわけであります。私はそれはけっこうであると思いますが、ただ現在この日本を支配――支配じゃございません。日本に非常に大きな病気になっており、また世界全体にも相当深い病気になっておると思われるものは、われわれのいわば常識を超越と言いましょうか、逸脱した一つの暴力的な動き、これが非常に大きな一つの力になって、いわば政治外の政治という形で大きくわれわれに圧力を加えておるんじゃないだろうか。そういう点において佐藤総理を非難するよりも、むしろわれわれ全体として一種の無力感みたいなものを感ずるわけなんであります。そういうような諸般の事情を考えますというと、私は現体制といいましょうか、この議会政治というものはむろんわれわれは認めていかなくちゃなりませんが、同時にわれわれと全く考えを異にするような極端なものを――それがつまり病気の根源になっておるわけでありますが、そういうものをもっとよく理解しないというと根本的な対策ができないのじゃないかと。そういう意味におきまして、私はちょっとした提案があるのでございますが、一種の国民会議――適切な名前がありませんが、新しい日本をつくる、創造するための国民会議というようなものを構成して、そこには、それを構成する者は――いままではいわば極端な左にもまた極端な右にも偏しない、多少の差があるとしてもいわば穏健中正な人がそれを構成しておったわけでありますが、私はむしろそういう穏健中正な人の考え方というものはこの国会で十分に表明されておるんじゃないかと、したがって、いま私が申しました国民会議におきましては、穏健中正な方もむろん必要でありますが、むしろ極端な右翼、極端ないわば新左翼――ニューレフト、ニューレストとニューライトを含んだ相当極端な人をも含んだものを入れた国民会議というものをひとつ考えられたらいかがか、というような考え方が浮かんできましたのは、実は私もこの極端なニューライトはまだはっきりした姿であらわれてきておりませんが、いずれあらわれるんじゃないかということを心配しておるわけですが、ニューレフトの考え方は実に理解が困難で、そこでいろいろ本を読んでみましたが、三島由起夫のあれと関連しまして高橋和巳という人の書いた本を――あの人はニューレフトのほうでその運動に入っておった人ですが、いろいろ読んでみますというと、むろん賛成はできませんが、なるほどこういう心理状態だなあということがよくわかったわけであります。少なくともその見当、幾らかそのにおいが感ぜられるわけであります。私はそういう意味で、この穏健中正なほうはこれは国会で十分でありますから、そういう非常な広い、右と左とを合わしたような人の十分な意見と感じ方を表明するような機関をつくることによって、一つの根本的な文明病に対する対処の方法があるのじゃないかと考えますが、総理大臣の御意見はいかがでございますか。
#76
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも限られた時間の間にこのことを論ずることはとかく誤解を招きやすいと私考えますので、ただいまの御提案をも含めて、ちょっと答弁は留保さしていただきたいと思います。まあしかし、今回の問題自身はこれはまことに困ったことであります。それが政治の貧困と言われようが、あるいは教育の貧困と言われようが何と言われようが、やはり現代に生きる者としてその責任はどこかにつながりがあるように思います。それだけを痛感しておるということだけ表現いたしまして、ただいまの具体的な対策、これはただいまのところはさしあたって各空港等における厳重な警戒をすると、それ以外にないと、かように思っております。どうも福永特使が帰ってくるにしてもたいへんに飛行機がおくれております。どういうわけでおくれたんだと、空港の検査に非常に時間をとられたと、かように実は申しております。私はかような事態が起こりつつあるということ、こういう事態について各国とも困ったことだと、かように思っておる――最近のコンコルドができて東京・ロンドン間を七時間で飛べるというものがあらわれてきている、ただいまのように一つの飛行機を飛ばす前に三時間も四時間も持ちものの検査をすると、こういうような事態、これはたいへんな事態でございますから、そういうことに対してもやっぱり一環の問題として考えなければならない、かように思っております。
 基本的な問題は、ただいま申し上げるように、これはもっと基本的にわれわれが反省もし、われわれが考え、創造もしていかなければならない、かように思いますので、ただいまの御提案もさることでございますが、国民会議を開けと、こういうことも一つの御提案かと思いますけれども、そういうことをもあわせてどうするか、ひとつ政府も、また皆さん方も、ともにこの問題を考える、こういうことにしていただきたいと思います。
#77
○松下正寿君 いま私は総理大臣によく言えば非常な高次元の質問をしたわけでありますが、これ以上御答弁を願うことは困難だろうと思いますので、逆に今度は非常な事務的な低次元のことを外務大臣にお伺いしたいと思います。
 ただいま総理大臣からも偶然、私が期待しておりませんでしたが、いろいろお話しになりましたように、今度の事件に関連しまして非常に困難な、旅行者その他通商関係等いろんな困難な問題がたくさんできてくると思います。これは実際上やむを得ないんじゃないかと思いますが、ただそういうようないろんな不便、困難ということを最小限度にとどめるために、危険な場所、それからその他どういうところに旅行することを控えたらいいかとかというようなことについて、外務省のほうからあらかじめできるだけの情報を流していただくということが、これからのわれわれが処置する場合の不便を最小限度にとどめるゆえんじゃないかと思いますが、それについて外務大臣、どういうお考えであり、また何か特殊な措置等お考えでございますか。
#78
○国務大臣(福田赳夫君) 本件は、先ほど御指摘の高次元というか、わが国はもとより、世界各国に内在する社会風潮というか、そういう問題もありましょうが、当面私どもは、これらの問題が再発しないような措置について国際的に助け合う必要があるんじゃないか、そういうふうに考えております。また、もとよりわが国においても、率先してこういう国際的な事件、こういうものが起きないように、わが国自体の努力をする必要もある。そういう国内においてとるべき措置、また国際協力の面においてとるべき措置、そういうものを含めまして、ひとつこの機会にできる限りのことをやってみたい。こういうことで、いま政府部内にそういうような検討をしてみる仕組みをつくろうとしておるわけなんです。そういう仕組みを通じまして、あらゆる面で可能な措置をとっていきたい、再びこういうことが国際的に起こらないように努力していきたい、そういうように考えます。
#79
○星野力君 時間が非常に短いので二、三点にしぼってお聞きしたいと思います。
 先般の米ソ会談で発表されました二つの共同立書、米ソ関係の基本的諸原則に関する文書と共同コミュニケを見ますと、ヨーロッパの安全保障問題での合意についてはかなりことばを費やしておりますが、アジアの安全と平和については具体的な合意はほとんどないわけであります。ベトナム問題は、米ソ会談の最大の焦点と見られていたにもかかわらず、両国首脳間の合意からは取り残されました。ベトナム人民の意思を無視して米ソ間でベトナム問題を解決すべきではないし、また解決できるはずのものでもありません。したがって、ニクソン大統領がこれまでのベトナム政策を大きく転換しない限り、米ソ会談でベトナム問題が合意に達することがないのは当然であります。先ほど総理は、海上封鎖問題などで心配したけわども、案外世界は平和の方向へ向いておる、こう申されましたけれども、ベトナム、インドシナでは現にきわめて苛烈な戦争が進行しておるわけであります。そうしてベトナム問題はアジアの局地問題ではない、アジア全体の平和、世界の平和の前に大きく立ちはだかっておる問題であります。
 そこでお聞きしますが、ベトナム問題の今後をどのように見通しておられるか、総理は。それにつきましては、ベトナム問題について総理はこれまで次々に見通しを私は誤まられたのではないかと思います。一九六九年日米共同声明を発表されたときには、一九七二年に予定される沖縄返還時までにベトナム戦争は終わるものと信じておられたようであります。その後もしばしばベトナム戦争の早期終結を予想するような発言をなされた。わずか数カ月前の沖縄国会では、アジアの平和にとって最も危険なのはもうベトナムではなくなっておる、それは台湾であり、あるいは韓国であろうと思う、などとも言われたわけでありますが、その後の情勢の推移を見ても、総理のこのような見解には当然改定が加えられておると思うのですが、そういうことも含めて、ベトナム戦争の今後の推移をどういうふうに見通しておられるか、まずお聞きしたいと思います。
#80
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、これは私の希望的な見解であると、かように星野君から言われるかわかりませんが、私は、数次にわたるアメリカの撤兵計画など、これは公表されたところを見ると、やはりもうすでにベトナム問題は――一張一弛はありますよ。ときに緊張もし、ときに激しい状態も現出はいたしますけれども、しかし総体としてはやはり終息の方向に向かいつつある、かように見るべきではないか、かように私は思います。またそういうようにしたいものだと、かように願っておるのでもございます。
 だから、ただいま申しましたように、それは私は希望的観測じゃないか、こういう御批判もあるかと思いますが、その点をつけ加えて申し上げておきます。
#81
○星野力君 ベトナム戦争はこれは終わります。その意味では一日一日ベトナム戦争は終わりに近づいておるには違いないわけであります。
 ところで、ベトナム戦争が激しさを加えておる情勢を反映しまして、在日米軍基地はきわめて活発に活動しております。アメリカの空軍、海軍、海兵隊が相次いで日本の基地から出動し、ベトナムに向かっての補給活動も活発に行なわれておる。国民はこの事態を非常に憂慮しております。アメリカのベトナム戦争のエスカレーションや、それに日本の基地が直接結合され、利用されておることに対して抗議の声も非常に高まってきております。全駐労、米軍で働いておる労働者の組合ですが、あの全駐労は五月末に佐世保で中央委員会を開いて、ベトナム戦争に直結する作業を拒否するという決議を行なっております。それから全自運、トラック輸送労働者の組合、ここの中央委員会では、アメリカのベトナム戦争と日本政府のそれに対する協力に反対して、六月二十三日に全国的なストライキをやるという決議もいたしております。
 ところで佐藤総理、あなたの政府は、米軍の日本基地からの行動はどれ一つとして戦闘作戦行動ではない、事前協議の対象にはならない。そもそも日本はアメリカと安保条約を結んでいる以上、アメリカのベトナム戦争を一括支持する。日本基地の自由使用を認めているんだと言わんばかりの態度をとっておられる。これではベトナム問題をめぐって、国民多数の認識や感情と政府のそれらとの間にギャップが大きくなるばかりだと思うのですが、その点について総理どういうふうにお考えになりますか。
#82
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの問題について、私はもうさっきも申し上げたとおりですよ、非常に心配をした沖縄が祖国に復帰ができた。このことが一部の、祖国に復帰できないのじゃないのかと、こういう心配を如実にそれが間違いであると、沖縄はちゃんと返ってくる、また返ったと、こういう現実がありますね、したがって、国民の大部分はその点でほっとしておる、これが事実じゃないかと思うのです。問題は、沖縄は復帰したが、沖縄が復帰する前と同じように沖縄の基地が使われておるんじゃないのか、この問題であります。それが沖縄だけではない、本土の基地まで沖縄復帰前の沖縄と同様に使われる、そういうことがあってはならぬぞと、こういう国民からのきびしいただいまの監視体制を受けておる、これが現実であります。したがって、わが政府、外務省といたしましても、国民にかような不安のないようにこれに対処する、こういうことでただいま取り組んでおる問題であります。私は、ただいままでのところ、いま星野君の御指摘になったその不安は解消しつつある、かように私は思っておりますが、ただそれぞれの党によって、片言隻句あるいはでき上がる事柄についてその取り上げ方がそれぞれ違う、かように思いますけれども、大勢としては、先ほど言われるように、ベトナム戦争はそのうちやむでしょうと言われる。これがやっぱり時期的な問題はありますけれども、おそらくこれは国民のコンセンサスとしてそのやむという方向でみんな見ているだろう。そういうことがあると、やはりこの基地の使い方にしても、ただいま防衛庁でいろいろ事前対策、調査をいま行ないつつありますけれども、やはり縮小される方向に向かいつつある。また、こういう事柄があると、どうも今度は新しい事前協議の問題、そういうようなことについてもさらにわれわれは国民から疑惑を受けないように、一そう話の中身を明らかにすべくただいま検討中でございます。これがいずれまとまってアメリカ側と十分話し合いがつけば、さらに発表の段階になれば、そういう点は一そう明確になって国民も安心するのではないかと思っております。私は、安全体制自身の一番大きな役割りは、何といっても先ほども申した戦争抑止、そういうところの効果にある。まあ極端な例ですが、万一日本が侵略されればそういう際に米軍の協力も得る、こういうことですけれども、これあるがゆえにやはり戦争抑止、その効果は十分あげておると、かように私は判断しておるのでございます。だから、そういう点を国民の皆さんにもよく理解していただく、こういうことが大事なことのように思います。
#83
○星野力君 戦争抑止のための安保条約といわれるその安保条約によって日本が戦争に巻き込まれる危険に置かれているんではないかということをわれわれ問題にしておる。この国会でもずいぶんこの問題論議されましたが、今後もこれは論議されていかなければならない問題だと思います。
 時間がございませんので別の問題もう一、二点お聞きいたしますが、米ソ関係の基本的諸原則に関する文書では、核時代にあっては米ソ相互の関係を平和共存の基礎の上に導く以外に道はないと言っております。また、両国は軍事対決を避け、両国間の核戦争の勃発を防ぐために全力を尽くすだろうとも言っております。しかし、核兵器を絶対に使わないことにしようとは言っておらない。第三国に対して核兵器を絶対に使わないことにしようとも言っておりません。まあ戦略核兵器制限交渉が一応妥結したといいましても、米ソともあり余るほどの戦略核兵器を保有しておる実情であります。戦術核兵器に至っては、米ソ間の話の種にもならない状態であります。で、端的な質問でございますが、核戦争というものの可能性について総理はどう考えておられるか、起こり得ないと思っておられるか、起こるかもしれないと思っておられるかお聞きしたい。
#84
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は日本が核兵器をつくらず、持たず、持ち込みも許さない、国会でその決議をした、そういう国柄でございますから、核戦争はない、かように心から希望しておるものです。また、いまそういう方向に動きつつあるのではないか、そういう芽ばえがあればそれをやはり育てる、こういうことでございます。したがって、最近も核の地下実験だろうが空中実験だろうが、いずれにいたしましても日本としてはそれに強く反対してきた、この一事でもおわかりだろうと思います。私はそういう事柄が、核兵器というものがこれはもう一つ踏み込んで米ソだけではなくて、核保有国全体がやはり核は一切なくしよう、そういうことを決議しておるならたいへん世の中は安心、明らかになる、そうしてまた、お互いに戦争はもう絶対にやめよう、こういうことと合わして核兵器を使おうが使うまいが戦争はやらぬ、そうして話し合いできめようじゃないかと、こういうような方向にいってくれることがもう理想の考え方だ、かように私は思いますので、われわれとして努力すべきはそこにある、かように思います。ただいま言われるような想像、予想をどういうようにみるか、直接の答えではございませんが、私のひとつの考え方、いまのこれから進むべき方向としてはただいま申し上げたとおりでございます。
#85
○星野力君 希望と現実必ずしも一致しないところに問題があるわけであります。
 これは最後の質問でございますが、戦略核兵器が使われる可能性というのは比較的少ないかもしれませんが、戦術核兵器となるとその可能性ははるかに大きいとみなければならないのではないかと思います。アメリカの陸、海、空、海兵、それらの部隊の多くが核装備をしている現実であります。あるいはソ連の軍隊もそうかもしれない、現実にベトナム戦争の最近の激しい局面と関連しまして、アメリカが現在とっているいわゆるニクソンの強硬措置、これもまた失敗した場合、私は失敗すると思うのですが、アメリカが最後の手段として戦術核兵器にたよりはしないか、使いはしないか、非武装地帯やベトナム、ラオス国境地帯のいわゆるホーチ・ミン・ルート、これらに対して使いはしないかということがアメリカやフランスなどの軍事専門家、ジャーナリストの問で論議されております。キッシンジャー氏が一九五七年に出しました核兵器と外交政策という論文、あの中で限定核戦争戦略論ですかを展開しております、限定核戦争理論を展開しております。総理御承知と思いますが、大陸間弾道弾などの戦略核兵器による全面的な核戦争、いわば米ソ、現在の段階では米中もありますが、それらの国の間の核戦争は避けながら、核兵器を持たない小さな社会主義国や民族解放闘争には小型核兵器を使ってよろしいという考え方、その考え方は私は今日もなおキッシンジャー氏の中に生きていると思うのであります。そういう考えの持ち主が現在アメリカの安全保障問題の事実上の最高責任者であるだけに非常な危険なものを感じます。南ベトナム臨時革命政府は、アメリカが全面的な撤兵の時期を約束すること、サイゴン政権からグェン・バン・チュー一人を除くこと、そうすればサイゴン政権と臨時革命政府それに中立の政治勢力、そういうものが話し合って民族和合政府をつくり、南ベトナムの題問を南ベトナムのあらゆる政治勢力の話し合いで処理をする。そういう条件で米軍の撤退の安全を保障し、捕虜も釈放する、こういっているわけであります。これは私は無理な条件ではないはずだと思います、アメリカが受け入れられない条件ではないと思う。世界の多くがそう感じているのではないかと思いますが、まあグエン・バン・チューの身柄が心配ならばアメリカ軍の撤退と一緒にグエン・バン・チュー一人だけアメリカに連れていけば、長年にわたるむざんな殺戮に終止符を打つことができるのであります。日本の国民の多数はそれを希望しておると思います。日本の総理大臣はニクソン大統領やキッシンジャー特別補佐官と話し合える立場にある、いま申しましたようなことを勧告できないことはないと思うんでありますが、どうでありますか。そして、大事なことでありますが、アメリカは核兵器を使ってはならない、戦術核兵器といえども断じて使ってはならないということを忠告すべき立場にあると思うが、いかがでございますか。これ、最後の質問でございます。
#86
○国務大臣(佐藤榮作君) いま、キッシンジャーが訪日する、そうして大体、私も会って話ができると、こういう立場でございますから、そういう機会に、ただいま言われたような点をさらに確かめること、これは私自身のためばかりではなく国際的な役割りでもあると、かように私思いますので、そういう際に、その話し合いができるその機会には十分仰せのような点を確かめたいと、かように思っております。しかし、なかなかこれが予定したような事柄に発展するかどうか、ただいままだ、キッシンジャー補佐官訪日ということがまだ一まつの不安なきを得ないのですから、私は、そういう点で直接話ができるかどうか、まだ私自身が疑問に思っております。もし会えれば、ただいまのようなことでありますし、また、われわれは政府間において何でも話ができるのだし、そのために大使間の交渉も、さらにまた、それぞれの会議等も持っておりますから、そういう際に、その会議を通じて意向を明らかにすることができる。ただいまの点は、たいへん国民も心配しておる事柄でございますので、そういう点、機会があれば明確にしたいものだと、かように思います。何とぞよろしく御声援のほどお願いしたいと思います。
#87
○委員長(八木一郎君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#88
○委員長(八木一郎君) 次に、
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の締結について承認を求めるの件
 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び
 原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上四案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。福田外務大臣。
#89
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま議題となりました法律案及び協定につきまして提案理由を御説明いたします。
 最初に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案におきましては、まず、ブータン、モンゴル、トンガ、ナウル、西サモア、フィジー、アラブ首長国連邦、オーマン、カタル、バハレーン及び赤道ギニアの諸国にそれぞれ兼轄の大使館を新たに設置するほか、在ダッカ総領事館の種類を変更して在バングラデシュ大使館とし、また、アラブ連合共和国及びコンゴー(キンシャサ)の両国が国名を変更いたしましたので、これに伴い、大使館名を在エジプト及び在ザイールと変更いたします。
 領事館につきましては、在ブリスベン及び在イスタンブルの各領事館をそれぞれ総領事館に昇格いたします。
 次に、これら新設の大使館及び昇格の総領事館につきましては、これらの公館に勤務する職員の在勤手当の額を定め、あわせて既設の公館につきましても、各在外公館の所在地における物価の上昇、為替相場の変動等を勘案し、在勤基本手当の額、住居手当の限度額及び研修員手当の額をそれぞれ改定することといたしております。
 なお、この際在勤手当額の表示を従来のアメリカ合衆国ドルの表示から邦貨による表示に改めることにいたしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
 次に、国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして。
 この協定は、その作成のための国際会議が、通信衛星による国際通信の拡充に関心を有する多数の国の参加を得て一九六九年二月以降数回にわたって開催されました結果、昨年四月から五月にかけてワシントンでわが国を含む七十八カ国が参加して開催されました会議において採択された本のであります。
 この協定の内容は、国際通信衛星組織を確定的な基礎の上に設定するため、インテルサットと略称されます国際電気通信衛星機構を設立すること、国際公衆電気通信業務に必要な通信衛星及び関連施設から成ります宇宙部分がインテルサットによって提供されること、インテルサットの構成及び財政原則等について規定するものであります。
 わが国といたしましては、インテルサットによって設定される国際通信衛星組織が国際通信において重要な役割りを果たすものであると考えておりますので、この協定を締結いたしますことは、わが国をめぐる国際通信を拡充する上に有益であると考えられます。
 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして。
 政府は、オーストラリアとの間の原子力の平和的利用における協力のための協定を締結するため、かねてより交渉を行なってまいりました結果、昭和四十七年二月二十一日にキャンベラにおいて、わがほう斉藤駐豪大使とオーストラリア側ボーウェン外務大臣との間で、この協定に署名を行なった次第であります。
 この協定は、本文十カ条からなり、原子力の平和的利用を促進し及び開発するための協力方法、協定に基づいて入手された資材、設備等が平和的目的にのみ使用されること並びにそれらの資材、設備等に保障措置が適用されること等について規定しております。
 この協定は、日豪両国が相互協力の基礎の上に立って協力することを可能ならしめるものであり、両国の原子力の平和的利用の促進及び開発に資するものと考える次第であります。
 最後に、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして。
 政府は、フランスとの間の原子力の平和的利用に関する協力のための協定を締結するため、かねてより交渉を行なってまいりました結果、昭和四十七年二月二十六日に東京において、わがほう本大臣とフランス側ド・ギランゴー駐日大使との間で、この協定に署名を行なった次第であります。
 この協定は、本文十カ条からなり、原子力の平和的利用を促進し及び開発するための協力方法、協定に基づいて受領された資材、設備等が平和的目的にのみ使用されること並びにそれらの資材、設備等に保障措置が適用されること等について規定しております。
 この協定は、日仏両国が相互協力の基礎の上に立って協力することを可能ならしめるものであり、両国の原子力の平和的利用の促進及び開発に資するものと考える次第であります。
 よって、ここに、これらの協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#90
○委員長(八木一郎君) 引き続き、補足説明を聴取いたします。鹿取官房長。
#91
○政府委員(鹿取泰衛君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について補足説明をさせていただきます。
 まず、在ブータン大使館の新設につきましては、ブータンは昨年九月国連に加盟し、わが国に対してはきわめて親日的であり、技術協力等を通じて彼我の交流が行なわれておりますが、今後は、同国との関係はますます緊密化すると思われますので、公館を設置することとしたものであります。
 在モンゴル大使館新設につきましては、わが国は昭和三十六年同国を承認し、本年二月二十四日大使館の相互設置について両国間で合意が行なわれたので、設置することとしたものであります。
 在トンガ、在ナウル、在西サモア及び在フィジーの各大使館につきましては、わが国にとっての西太平洋地域の今後の重要性にかんがみ、それぞれ設置を必要とするものであります。
 在バハレーン、在カタル、外アラブ首長国連邦及び在オーマンの各大使館につきましては、これらの諸国にわが国から石油開発企業の進出が相次ぎ、在留邦人がとみに増加し、彼我の友好関係の緊密化が望まれるので、大使館を設置することが必要であります。
 在バレグラデシュ大使館につきましては、わが国は、本年二月十日同国を承認しましたが、七千五百万人の人口を有する同国と友好親善関係を深めることは、わが国の対アジア政策上きわめて重要であり、在ダッカ総領事館を大使館に変更するものであります。
 在赤道ギニア大使館につきましては、将来の石油資源開発問題もあり、今後わが国にとっても重要な国となることが予想されますので、新設するものであります。
 以上の大使館は、バングラデシュを除き、当面いずれもそれぞれもよりの大使に兼任せしめるものであり、実館の設置は後日の検討にゆずるものであります。
 次に、在エジプト及び在ザイール両大使館につきましては、昨年九月アラブ連合共和国がエジプト。アラブ共和国と昨年十月コンゴー民主共和国がザイール共和国と国名を変更いたしましたので、これに伴いそれぞれ大使館名を変更するものであります。
 また、在ブリスベン及び在イスタンブル各総領事館につきましては、それぞれの所在地の通商関係その他の重要性と領事団におけるつり合いを考慮しそれぞれ従来の領事館から総領事館に昇格させるものであります。
 次に、この法律案は、また、各在外公館の手当ての額を全面的に改定することを目的といたしております。
 まず、在勤手当のうち衣食等の経費に充当するために支給される在勤基本手当につきましては、過去三年間据え置きとなっておりましたが、この間における各在外公館所在地の物価の上昇、為替相場の変動、勤務条件の変化等を勘案いたしまして、その額を新たに合理的かつ適正な水準に定めようとするものであり、改訂率は約一三・五%であります。
 次に、在勤手当のうち住宅費に充当するために支給される住居手当につきましては、全在外公館数百三十八館中、住居事情が悪化していると認められる八十一館につきその限度額を引き上げようとするものであります。これら八十一公館の限度額の平均引き上げ率は約一六%であります。
 また、外国で研修を命ぜられた者に支給される研修員手当につきましても、在勤基本手当の改定に準じて新たな額を定めるものであります。
 前述の在勤手当の額の改定の際にこれらの額の表示を現行の米ドル表示から邦貨表示に改めるものであります。従来在勤手当がいわゆる米ドル建てとなっておりましたのは、かつてわが国が厳格な為替管理を行なっており、また円貨への信認も必ずしも十分でなかった等の特殊事情によるものでありまして、今日では、このような事情も消滅しておりますので、今回の改定で本来の姿である円貨建てに改めようとするものであります。
 以上がこの法律案につきましての補足説明でありますが、御審議の上すみやかに採択いただきますようお願い申し上げます。
#92
○政府委員(穂崎巧君) 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定につきまして若干補足説明を申し上げます。
 衛星を利用する電気通信は、現在、インチルサット衛星によるものとソ連が開発しましたモルニア衛星によるものとが運用されておりますが、インテルサット衛星通信は、世界の八十三カ国の参加を得ておりまして、世界のすべての国々をカバーし得るものでございます。また、インテルサット衛星通信は、将来における世界衛星通信の拡充、技術的開発等の見地から見ましても、重要かつ支配的な役割りを果たすものであると考えらします。わが国といたしましては、インテルサット衛星通信の運用に当初から積極的に参加いたしておりまして、衛星の使用実績におきましては、アメリカ及びイギリスに次いで第三位を占めている実情でございます。
 今般、この協定によりまして、政府間国際機関としてインテルサットが設立されることとなるわけでございますが、わが国といたしましては、わが国の衛星通信をインテルサットを中心に行なうことによりまして、わが国をめぐります国際通信業務の拡充と円滑化をはかりますのが得策であると考えられます。また、わが国の衛星通信技術の開発の面におきましても、インテルサットが開発します技術及び発明に接しますととは、きわめて有意義であると考えられます。
 次に、オーストラリアとの原子力協定及びフランスとの原子力協定につきまして補足説明を申し上げます。
 わが国はすでに米国、英国及びカナダとの間に原子力協定を締結し、これら三ヵ国との間で原子力の平和的利用の分野における協力を行なってきておりますが、今回おはかりいたしております日豪・日仏の二つの原子力協定もその内容は大筋において、これまで締結いたしました協定と同様のものであります。すなわち、日豪協定及び日仏協定はそれぞれ、わが国とオーストラリア及びフランスとの間で核物質、原子力関係の施設、設備の移転を可能にすることとともに、役務の提供、情報の交換等について規定し、また、提案理由でも御説明がありましたように、核物質等についての平和的利用の義務及び必要な保障措置の適用を定めております。
 原子力の平和的利用のための研究及びその産業経済面等への応用は近年わが国におきましても活発に行なわれてきておりますが、特に電力産業の分野におけるエネルギー源としての原子力の利用量は今後とも急速に拡大していくことが見込まれています。
 そのため、わが国としては従来の米英加三国との協力関係に加え、新たにオーストラリア及びフランスの二カ国との間に協定を締結し、平和的利用のための協力関係の多角化をはかることが望ましいと考える次第であります。
 ことに、オーストラリアは世界有数のウラン資源国として知られておりますが、日豪協定の締結に伴い、ウラン資源の探鉱、開発等の分野における両国間の協力関係の進展が予想されるとともに、同国が将来わが国にとっての核物質の安定的な供給先となる可能性もあると考えられます。
 また、フランスにつきましては、同国が原子力の平和利用の分野において高度の水準にある国の一つとされていることにかんがみ、わが国との間において情報交換、研究協力及び核燃料の供給に関する協力の発展が期待されます。
 以上申し上げましたとおり、オーストラリア及びフランスとの間の原子力協定の締結は、原子力の平和的利用のための国際協力の基盤を拡大し、よって、わが国における原子力の開発、応用の進展に資するものと期待されます。
#93
○委員長(八木一郎君) 以上をもって四案件についての説明は終了いたしました。
 ただいまの四案件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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