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1971/03/23 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第5号
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1971/03/23 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第5号

#1
第068回国会 法務委員会 第5号
昭和四十七年三月二十三日(木曜日)
   午前十時十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
    委 員
                岩本 政一君
                木島 義夫君
                林田悠紀夫君
                星野 重次君
                吉武 恵市君
                鶴園 哲夫君
                岩間 正男君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
   政府委員
       警察庁刑事局長  高松 敬治君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  貞家 克巳君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
       法務省人権擁護
       局長       影山  勇君
       公安調査庁長官  川口光太郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   長井  澄君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   西村 宏一君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   牧  圭次君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   裾分 一立君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       文部省初等中等
       教育局地方課長  鈴木  勲君
       文部省大学学術
       局学生課長    齋藤寛治郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (人権擁護に関する件)
 (石川地方公安調査局事件に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。前尾法務大臣。
#3
○国務大臣(前尾繁三郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件の適正迅速な処理をはかるため、及び交通関係の業務上過失致死傷事件の増加に対処するため、判事補の員数を九人増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。
 これは、地方裁判所及び家庭裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所書記官について九人、家庭裁判所調査官について十五人を増員するほか、裁判所事務官については、事務の簡素化・能率化に伴う検察審査会に勤務する職員五十人等の減員を差し引いてなお七人を増員し、以上これらの職員を通じてその員数を合計三十一人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
#4
○委員長(阿部憲一君) 以上で説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○原文兵衛君 ただいま御提案になりました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について二、三お尋ねしたいと思いますが、簡潔に御答弁願います。
 今回の判事補の増員は、地方裁判所における交通事件、特殊損害賠償事件の処理のためということになっておりますが、第一に、民事、刑事の交通事件の趨勢と、それに対する裁判所の処理体制はどうなっているのかという点。
 それから第二に、公害事件は今後さらに増加することと考えられますが、この程度の増員で、事件の迅速な処理の目的が達成されるのであるかどうか、また、公害事件などは非常に複雑化し、専門化してくると思われるわけですが、人員増加とあわせて公害裁判の迅速化について何か総合的な対策が立てられているかどうか、この二つの点についてまずお伺いいたします。最高裁当局にお願いいたします。
#6
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 今回の増員は、御指摘のように、交通事件のいわゆる業務上過失致死傷事件の増加に伴う増員、並びに特殊損害賠償公害事件を含むものでございますが、この関係の増員でございます。業務上過失傷害致死傷事件につきましては、ことに大都市における増加の傾向がはなはだしく、東京、大阪、名古屋等におきましては、それぞれ特殊専門の部をつくって処理に応じておりますが、数年前に比べ、事件数が二倍にも及んでおるというような状況でございます。
 なお、増加の傾向が非常に顕著に見られますので、大都会のみでなく、各地方の裁判所におきましても、刑事関係の業務上過失致死傷事件についての処理体制を、漸次専門化して処理していかなければならないだろうという見通しを持っているわけでございます。
 特殊損害賠償事件は、公害事件を含めまして、やはり最近事件数が非常に多くなってまいったものでございますが、何ぶんにもこれは科学的にきわめて複雑な因果関係をその事件の内容として持っておりまして、したがいまして、交通事件のように、一律な定型的な処理ということがきわめて困難な内容の事件となっております。それぞれについて専門科学的な鑑定を要するというような事件であるため、この関係は専門の科学者に鑑定を依頼するといたしまして、裁判所といたしましては、その争点とその争点に対する集中的な証拠調べを効果的に行なうために、裁判所の側におきまして、それらの証拠判断についての、基礎的な一般的な科学知識を十分に備えることが必要でございますので、公害事件の多数係属しております地方を中心にいたしまして、基礎的、科学的知識の研究蓄積を、裁判官及びその補助職員に期待できますような、各般の措置を講じて、これに対処していきたい、このように考えておる次第でございます。
#7
○原文兵衛君 次に、この改正案では、広報の充実強化のための要員として、裁判所の事務官を十名増員するというふうに聞いております。この事務官の職務内容、また、配置先等について具体的にお伺いしたいと思います。
#8
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 裁判所の広報の関係につきましては、一般におくれているという批判がございますので、特に増員の措置をお願いいたしましたわけでございます。裁判所の広報につきましては、一つは現在係属し、あるいは終局に至りました事件の内容を正確に報道いたしまして、その裁判の事件について、国民の方々の正確な理解と御認識を持っていただくという点、これに関連いたしまして、裁判所の制度、訴訟の手続、このようなものについての知識の普及に努力いたしたいという点、さらに裁判の公正という観点を中心といたしまして、裁判所の各般の組織、制度の運営について国民の御理解を得るように努力をいたすという、このような三点に広報の職務内容が集約されると考えられます。この観点から、今回の広報担当職員の十名は、うち二名を最高裁判所の広報課に配属いたしまして、ただいま申し上げましたような司法に関する知識の普及に努力させたいということでございます。もちろんこの中には新聞社、テレビ等の関係との密接な連絡ということも含まれておるわけでございます。なお、残りの八名は各高等裁判所に配属いたしまして、高等裁判所の総務課において広報関係の事務を担当させる予定でございます。
#9
○原文兵衛君 そうすると、最高裁と高等裁判所に配属するということですが、地方裁判所のほうは必要ないのですか。
#10
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 地方裁判所にも配属させたいのでございますけれども、政府の方針といたしまして、定員の効率的使用による削減という御方針もございますので、今回は地方裁判所におきましては増員を見合わせまして、地方裁判所総務課の広報係というところで、配置の職員をその関係で教育いたしまして、広報の事務を担当させたいと、このように考えておる次第でございます。
#11
○原文兵衛君 もう一つ、地方裁判所の執行官関係会計事務処理のために裁判所の事務官の定員を増加するということになっていますが、その理由、また執行官制度運用の改善策というようなものについてどういうふうにお考えになっているかお伺いしたいと思います。
#12
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 地方裁判所に配置されております執行官は、従来は執行吏あるいは執達吏という名称で呼ばれまして、社会的評価が必ずしも高くはなかったわけでございます。そのようになりますと、公務員としての執務の意欲にも欠けるところが出てまいりまして、社会の御批判を仰ぐというようなことになったかと思われます。昭和四十一年法律第百十一号の執行官法の御制定をいただきまして、執行官の取り扱い事件に関しまして、特に金銭の予納、保管の事務を執行官にまかせないで、地方裁判所自体が会計事務の一部として取り扱うことによりまして、事務の確実と明朗化をはかることになったわけでございます。このような事務処理の体制の変更に伴いまして、担当の職員の増員が必要となりまして、数次にわたりまして増員をしていただきまして、今年度、三十名の増員をお認めいただきまして、これらの職員をまた各庁に配置をいたしたわけでございます。
 なお執行官の職務の監督につきましては、ただいま申し上げましたような事情もございましたので、従前の執達吏、執行吏の時代は単に地方裁判所に監督をまかせるという体制になっておりましたが、執行官法の制定に伴いまして、地方裁判所の裁判官会議の監督に服し、裁判官会議が指名いたしました監督官、これは裁判官を充てます、また、監督補佐、これには、通常、事務職員もしくは民事首席書記官等を充てておりまして、直接監督の事務に当たらせることといたしまして、一般的に記録帳簿保管、金品の提出を命じ、あるいは調査し、現場で職務の執行を監察し、また、特定の事項を取り上げまして報告をさせる。また、事務の取り扱い状況について注意を与えるというような監督を行なっております。そのほか、年に二回、定期的に、事務取り扱い状況についての査察を行なうことになっております。ただ、全般的に、ただいま申し上げたような監督の体制が徹底いたさないような事情もございまして、最近も、秋田の裁判所での不祥事が報道されておりますが、このような事例が根絶できますように、この増員の成果を徹底させたいと考えておる次第でございます。
#13
○原文兵衛君 最後に、法務大臣、また、最高裁当局にお伺いしたいのですが、裁判が非常に長くかかるというのがもう常識のように言われています。困ったものだということはだれでもみんな言うのでございますが、当事者のために迅速な裁判を保障するというのが、いま非常に大事な問題じゃないかと思いますが、そのことについて、法務大臣はどういうようにお考えになっていらっしゃるか。また、その迅速な裁判を保障するために審理期間の短縮というようなことについて一つの目標を立てていらっしゃると思うのですが、また、そういう目標を立てて、それに基づいて増員計画をしていかれるのでなければ、これは何か、毎年毎年適当に増員をするというようなことでは、裁判の審理期間を短縮する目的は達成できないと思う。そういうような増員計画について具体的なものを、ひとつ、最高裁のほうからもお聞きしたいと思います。法務大臣、ひとつ、意見をお願いいたします。
#14
○国務大臣(前尾繁三郎君) 裁判の迅速化につきましては、私、就任当初にも申したことがあり、また、それ以後におきましても、そのよってきたる原因というものについて非常に苦慮いたしておるのであります。ただ、法務省の関係から申しますと、省務あるいは検察側の起訴なりその運行のやり方でありますが、これは私どもの管下にあるわけでありますので、極力急ぐようにということで、率直に申しまして、みんなできるだけ早く事件を片づけるようにということで努力はいたしておるようであります。
 ただ、問題は、卒直に申しまして、現在の裁判の運営のやり方という点になりますと、これは裁判所それからさらに弁護士会の諸君等の協力を得なければならぬわけであります。あるいはまた、現在の訴訟その他の関係からみますと、なかなか進行しにくいというような点がありますが、これはやはり三者が一体になって、できるだけ裁判の迅速化に協力をするという体制をつくっていく以外にないと、かように考えておるわけであります。そういうような意味合いから弁護士会あるいは裁判所の方々にも、その協力を常にあらゆる機会にお願いをしておるわけでありますが、まだ、そうしっくりしたところにもいっておりません。
 ただ、やはり何と申しましても裁判は人間がやるわけであります。したがって、定員の増加というものは当然やっていかなければならぬわけでありますが、国全般からいいますと、できるだけ人員の整理をやり、できるだけ縮小しようというおりからでありますが、とにもかくにも差し引き増員をしておるという点で、われわれとしましても満足していかなければならぬと、こういうふうな状態にありますが、極力今後増員なり、それから結局三者の協力体制というものをつくることに最善の努力をいたしていきたいと、かように考えておるわけであります。
#15
○最高裁判所官長代理者(長井澄君) 訴訟の促進の大方針につきましては、政府の立場から、法務大臣からただいま御説明いただきましたので、裁判所の関係いたします具体的な目標の点について御説明申し上げたいと思います。
 最近の審理期間のごく概要を申し上げますと、高等裁判所におきまして、民事の平均審理期間が十七カ月、刑事が約六カ月、地方裁判所におきましては、民事が十二カ月、刑事が約六カ月というような概数になっております。年度によりまして平均の多少の出入りはございますが、大体このようになっております。戦前に比べまして、審理期間が延びておることも事実でございます。最高裁判所といたしましては、この審理期間、当面の目標を半減したいということが願いでございます。事件によりまして、それぞれ審理期間がございまして、何カ月が理想であるかということを一概に申し上げることは困難でございますが、平均審理期間として、さしあたりの目標を、半減するということで、従来も増員をいたしまして、昭和二十九年以来、相当数の裁判官及び裁判官以外の職員の増員もお願いいたしたわけでございますが、残念ながらその給源に限りがございまして、この目標を到達するまでには、なかなか困難な実情にございます。給源の培養は裁判だけでできる問題ではございませんので、政府、法曹三者一体となってやらなければならない問題でございますので、その点は差しおきまして、裁判所といたしましては、やはり現在在職しております裁判官が、期待された職務を十分に果たし得るよう力量を練摩して、事件処理を十全ならしめるということが肝要と存じまして、近代的な執務の体制をつくり上げる、執務環境をよくし、最新の能率的な機械を採用するというようなことのほかに、裁判官が任官した当初から、十分に技量をみがくことのできますような、教育と、技量の練摩の機会をなるべく多くしてやりたいというようなことを考えまして、最近もいろいろ御批判はございますけれども、一任制の審理の特例に関する規則の案を各方面の御意見を承りながら、現在まとめつつある段階でございまして、十分に御意見と御批判とを取り入れました上で、裁判官会議で慎量に御検討いただきまして、いい案を得まして、若いうちから十分に能力が発揮できまして、審理促進の要望にこたえ得るような手続をつくり上げたいと、ただいま大いに努力しておる段階でございます。
#16
○原文兵衛君 裁判の適正、迅速な処理については、なお特段の御努力を要望いたしまして私の質問を終わります。
#17
○佐々木静子君 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について私からさらに質問いたします。
 まず、裁判官の員数が九名増員になるということでございますが、この九名の裁判官はどこの裁判所に、また、業務上過失致死傷事件、あるいは特別損害賠償事件を担当されるということでございますが、どこの裁判所で何を担当されるのかということを、九名でございますので、具体的にお答えいただきたいと思うわけであります。
#18
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 九名増員の内訳は、業務上過失致死傷害事件関係での増員が五名ございます。これは、事件の多い東京地方裁判所に三名、大阪地方裁判所に二名、また特殊損害賠償事件の関係につきまして、判事補四名の増員がございます。これはうち二名を東京、うち二名を大阪に配属いたしまして、それぞれのこの関係の事件の部で執務をしていただくように配慮いたしたいと思っております。
#19
○佐々木静子君 いま、先ほど来の御答弁にもございましたのですが、このわずか九名の判事補の増員で、そして現在停滞しているこの訴訟がまかなっていけるかどうか、私は非常に疑問に思うわけなんでございます。大阪高等裁判所管内におきましても、たとえば大阪地裁の岸和田支部におきましては、証人調べは、三月に公判があったといたしますと、次回期日が大体十月ないし十一月に入っているわけでございます。また、そのときにせっかく十月あるいは十一月に入ったが証人が病気で出て来られないとなれば、また、次の三月、四月に回るわけでございまして、これでは一年のうちに一回か二回しか裁判ができない。あっという間に二、三年はたってしまうというような状態でございまして、憲法三十二条に、裁判を受ける権利、そういうものは保障されております。これは公正で、しかも迅速な裁判を受ける権利という意味であること、これは憲法学者の通説でございますが、なかなかこれは五名や六名の裁判官の増員では追っつかないのではないか。同じようなことが大阪地裁の堺支部におきましても、合議事件の証人調べはちょうど六カ月以上次回期日はあいています。単独事件で五カ月、また、神戸地裁の尼崎支部では、合議事件では大体六カ月以上次の期日があくというわけでございます。そういうことで、はたしてこのくらいのわずかな増員で、そういうふうな事態が解消できるかどうか、焼け石に水ではないかと思うのでございますが、それについて最高裁の御見解をいただきたいと思います。
#20
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 御指摘のように、増加しつつある業務上過失致死傷事件の処理を、判事補五名程度の増員で、期待する迅速な処理ができるかという御質問については、必ずしも一〇〇%やれますというお答えができないのは残念でございますが、先ほども申し上げましたように、裁判官の給源の関係等もございまして、充員可能の限度でしか――増員の要求をすることは現実的でございませんので、あのような数字にとどまらざるを得ないことは残念なことでございます。
 なお、御指摘の岸和田支部、堺支部、尼崎支部等、いずれも事件増のございますところでは、この点につきまして、最高裁判所のほうにおきましても、事件数を計算いたしまして、昨年の暮れに定員的には増員の配慮をいたしたわけでございます。岸和田支部にも、現在、定員二名のところをさらに一名を増加いたしたわけでございますが、何分にも、年度の途中の人事異動ということは、身分保障等の関係もございまして、早急に実施できませんので、この四月以降には、その関係の充員ができることとなっておりますから、その点につきましての増員の御期待ないしは証拠調べがあまり先に入るというような事態は解消されるものとの見通しを立てているわけございます。
#21
○佐々木静子君 いま最高裁がいろいろと人員の増加に努力なさっているということはわかるわけでございますが、このように訴訟が非常に遅延する、一回の次回期日がたいへん先に延びるということは、これは当事者の裁判に対する不信感を当然に招来するものである。そしてその結果、国民の権利が守られない。そのために訴訟を起こしたくても時間がかかるからということで、泣き寝入りをしたり、あるいは手っとり早い解決方法として、暴力団に頼んだりするというようなことが起こっているわけでございまして、この裁判官を必要なだけ充足するということは、これは最高裁にとって最も必要とされる、また、国民からも、最も要望されている問題ではないかと思うわけです。また、先ほどありました裁判所では、この人員もさることながら、法廷の数が足りないということで、出張尋問や現場検証なら期日は入るが、裁判所における証人調べは入らないということもございますので、これは事務総局といたしましても、法廷の数をふやす、あるいは必要数だけ整備するということにさらに御尽力いただきたいと思うわけでございます。
 事件数が増加しているということでございますが、たとえば昭和三十年、そして昭和四十年、そして現在と比べまして、たとえばこれは全部ひっくるめたほうがお答えやすければひっくるめてもよし、あるいは民事事件のみをお答えいただくならば民事事件だけでもけっこうですから、この事件数が全国的に見てどのくらいの件数にふえているかということを数字の上でお示しいただきたいと思います。
#22
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 昭和三十年、四十年――最近の事件の計数というものが実は申しわけないんでございますが手元にはございませんので、正確な資料は後ほど、お届けさしていただきたいと思いますが、事件の概況から申し上げますと、これは指数を計算したものがございますので、これを後刻お届けしたいと思っておりますが、全事件、昭和三十年度には、これは訴訟事件のみでございません。いろいろ付随的な執行の事件等も含めまして八十二万七千件、これが昭和三十年でございます。それから昭和四十年には百二十五万五千件、昭和四十五年には百二十三万一千件というような数字になっておりますが、民事事件の大体のカーブを申し上げますと、大体昭和四十三年がピークになっておりまして、昭和三十年当時からは日本の景気が非常に上昇いたしましたために、これに応じて事件数が急増いたしておりますが、四十三年以降は、むしろ国民生活の安定期に入ったためか、事件数は、民事につきましていささか下がりぎみでございます。刑事のほうはカーブの関係はもう少し違っておりまして、むしろ昭和三十七年あたりが最も高いピーク――三十七、八年が高いピークになりまして、昨年あたりは約半分ぐらいに減っておる状況でございます。
 いかようにいたしましても裁判官の増員は、この事件の増勢に応じてはふえておらないという状況でございまして、これはいろいろ社会的な制約もある問題でございます。裁判所としてできる限りの方策を講ずるという一方、政府に対しましても、大きな司法政策の立場からの解決策を要望いたしておるという段階でございます。
#23
○佐々木静子君 これはいま承りますと、民事をとらえますと、三十年から四十年にかけて、あるいは現在においても大体一・五倍は事件数がふえているという勘定になりますが、裁判官の数はこれに比例してふえているのでしょうか。
 それからまた、今度、最高裁は大蔵省に裁判官の増員を何名要求されたのか、具体的な数字をあげてお答えいただきたいと思います。
#24
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 端的に申し上げますと、事件数の増勢に応じて裁判官数が必ずしもふえてはおらないと申し上げなければなりません。昭和三十年には裁判官、これは最高裁判所長官も含めまして二千三百二十七名でございましたのが、昭和四十六年には二千六百十九名、合計いたしまして判事、判事補。簡易裁判所判事の増員数は約二百二十名ということになるわけでございまして、先ほど御指摘のような事件数の五〇%の増ということには相応じておらないというのが現状でございます。
 それからちょっと表がございますが、簡単に文章に直したもので申し上げますと、今回の裁判官の増員要求は判事十七名、判事補四十九名、合計六十六名の増員の要求をいたしまして、その結果は、御説明申し上げたように、判事補九名にとどまったということでございます。
#25
○佐々木静子君 六十六名増員の要求をしておいて、その結果九名である。というのは、これははったりで要求したわけではございませんね。そうなると六十六名が必要である。もしこれが充足されない場合は、裁判官は労働強化になる。その結果、迷惑するのは国民である。それはもう自明の理であって明らかだと思うのですけれども、その点について、最高裁としては、いろいろ努力はなさったと思うのですけれども、今後何とかこの必要数だけの人員を確保するように、どういう方法で、どういう態度でこれから処していかれるおつもりなのか。
 私ども、これはある一流紙にある評論家の意見が載せてあったのでございますが、訴訟が非常に遅延しておる、最高裁当局は、このごろは、青法協対策のことばかりにうつつを抜かしておって、肝心の裁判官を充足させて定員を確保さすということを怠っているのではないか、というような意味のことが、一流紙に載っておったのでございますが、私どもここから見ても、非常に残念ながら、再任拒否の青法協がどうのというようなことばかりに最高裁が神経なり精力を使い過ぎて、一番肝心の裁判官を必要なだけ確保するということに努力していただかないと、これは事務総局とすると怠慢のそしりを免がれない。その事柄について今後どういう態度で臨んでいこうというのか、御見解をお示しいただきたい。
#26
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) これは裁判所といたしましても非常に心を痛めておる問題でございますが、何ぶんにも大きな観点から申し上げますれば、日本の法学教育が、裁判官の必要数を満たすに足るだけの人員の供給がまだ十分にでき上がっていないという問題が一つ。それからやはり、裁判官としての地位が非常に魅力があって、その方向に、率先して将来の志を見出していくというような、裁判所に対する魅力というものが、でき上がっていないという観点があろうかと存じます。
 ただ、それは大局的な観点からの考え方でございまして、当面の問題としてはやはり、任官してくる若い人たちの意欲を満たすものがあるかどうかというようなことが、さしあたり実現可能な対策かと存ぜられますので、裁判所に来て事件をやってやろうという意欲をもって入って来た人に、その意欲にこたえてやるだけの姿勢がどうしても必要であるというような観点から、現在、いわゆる未特例判事補という段階にある人は、ほとんど裁判所の中で、裁判官らしい魅力のある事件処理に取り組む姿勢ができ上がっておりませんので、そういう形をつくり出したいという努力が一つ。それからそのような姿勢をつくり出しますためには、やはり事件の取り組み方を先輩が親切に指導してやるという、いわゆる断絶をなくするというような方策をとることが大事であり、また、とかく裁判官は社会から孤立し、場合によっては化石化しているというような批判を受けますので、視野を広げるという観点から、海外に出かけて、広く世界を見て、世界の各国の司法の実情がどうなっているかというような点を、若いうちに見てもらうというような方策を講ずることも必要かと考えられます。そのような観点から、若い人に、事件と取り組む手続を考え、また、研修の期間を大幅に延長いたしまして、すぐれた先輩のそばで、事件の処理を見習うことのできるような機会をつくってやるということ、また、裁判所といたしましては、画期的な予算ということができると思いますが、任官してから五年までの間に毎年五人ずつ一年間外国に出かけまして、実際に、裁判所その他の司法機関において実務を見て、外国の司法の実情をつぶさに視察し、見学してくるという機会を与えるというような方策をただいま講じ、予算が成立いたしました暁には、このような方策を十分に活用いたしまして、若い人に対する魅力を少しでも大きくしていきたいと考えているわけでございます。
 決して、青法協対策に明け暮れているというような、消極的な立場でないことだけは特に申し上げさしていただきたいと思います。
#27
○佐々木静子君 いまの総務局長の御見解で、私、実はこれは親しく幾人かの裁判官に聞いている話ですが、いま最も裁判所を魅力ないものにしているというのは、これは再任が拒否されるかもわからないという、きわめて、身分の保障がされておらないということと、それから、今後一人制というものがしかれて、裁判官でありながら、裁判官としての取り扱いをしてもらえないという制度ができるかもわからないということ。そういうことが非常に職場の雰囲気を暗くして、裁判官を続けてやろうという意欲が失われているということを一、二聞いているわけでございますが、いまそのことについて、また、総務局長と論争しておりますと、そのことだけになってしまいますので、別の機会にこれは譲ることにいたしまして、次の問題に移りたいと思いますが、ただ、裁判官の必要な人員の確保ということだけは、これは何をさておいても最高裁としてはぜひ実現していただきたい。これは国民に対する最高裁の責任であると私は思いますので、必ず実現していただきたいということを強く要望するわけです。
 で、いま裁判官が足りないとどういうことが起こっているか、訴訟の審理期間が非常に民事事件でも先になるということを申しましたが、たとえば、民事訴訟法三百五十六条の訴提起前の和解についても、これは十年前でございますと、大体、和解特に即決和解を申し立てますと、その日のうちに裁判官の前に和解調書が送られるという状態で、これは当事者間の無益な紛争を解決し、そうして債権者の保護をはかるというような意味におきまして、非常に便利な制度であったわけでございますが、現在では、大体、即決和解の申し立てをしても、期日に入るまでに、大阪高裁管内の話ですが、大阪簡裁では三十日余り、吹田簡裁では四十日、岸和田簡裁が四十日以上、神戸簡裁は十四日以上、堺簡裁は三十日以上、枚方簡裁は三十日以上、豊中簡裁は、四十五日以上、東大阪簡裁に至っては、六十日以上かかるというありさまでございます。これではせっかく当事者同士が話し合いができても、その間に、調書をつくるまでに期日がかかるために、また要らないトラブルが起こったり、あるいは債権者が非常に不安定な立場に置かれるために、また別の手続を経なければならないということで、一そう訴訟をおくらしている。こういうような点でも、簡裁判事の充実ということもひとつ大いに留意していただきたいと思うわけでございますが、その点もお約束していただけますでしょうか。
#28
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 即決和解の事件が従来、申し立ててから和解の成立まで必要以上の時間がかかり過ぎるという傾向が、大阪高等裁判所管内で御指摘がございまして、その解消にはかなり努力いたし、実現もできたつもりでおったわけでございますけれども、なかなか思うにまかせず、また延びてきたということはたいへん残念でございまして、直ちに調査をさしていただきたいと思っておりますが、これは人手不足ということにももちろん原因があるかとも存じますが、やはり、事務処理が近代化されていないことからくる遅延というものも考えられますので、近代的な能率器具の導入というようなことによりまして、当事者の確定とその和解の意思の確定とを確認できる――相当な期間を経れば、即決和解がそういう当事者の意思に沿って成立できるような形には、ぜひ持っていかなければならないと考えますので、その点については十分調査をし、実現の方向で努力さしていただきたいと思います。
 簡易裁判所の裁判官の増員と申しますか、現在相当数欠員がございます。これにつきましては、在野法曹の御要望もございまして――やはり、有資格者の簡易裁判所判事をもって極力充員するようにというような御要望もございますが、いわゆる、独任の簡易裁判所の判事の採用ということがきわめてしぼられております関係から、充員がかなり制約されておりますか、最近やはり、法学教育の普及と申しますか、教育の一般的レベルが非常に高くなりまして、若い方々には非常に法学的な素養が高くなってまいりましたので、これならば十分ということが選考の結果確認されますれば、そのような形での充員にも努力いたしまして、簡易裁判所の判事についてまで、人員の不足というようなことで御迷惑をかけては申しわけございませんので、その点も大いに努力さしていただきまして、ただいま御指摘のような無意味な審理期間の遅延というようなものは、ぜひ解消するよう努力いたしたいことをお約束いたします。
#29
○佐々木静子君 時間があまりございませんので――実は裁判官以外の裁判所職員の三十一人の増員について、いろいろと詳しいことを伺いたいのでございますが、時間があまりございませんから、簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
 これは承るところによりますと、今度の大蔵省に対する裁判所の裁判官以外の増員要求というものは、これは五百三十四名であったというふうに聞いているわけです。これは事実ですか。
 そして、また、この人員増要求について、何か水増しのようなものでもあったのですかどうか。これは結論だけ、簡単にお答えいただきたいと思います。
#30
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 五百三十四名の増員要求は事実でございます。
 水増しがあったのかという御質問は、まことに御答弁申し上げるのにつらい点でございますけれども、概算要求の最終期日が前年の八月三十一日と財政法で定められておりまして、その段階であれもこれも実現したいという意欲にかられまして、ある意味で理想像を描きましで、この程度の増員ならできるだろうという見通しで盛り上げたものが五百三十四名という数字になったものでございます。当時としましては、真剣に増員の要求を出したつもりでございますが、いろいろ大蔵省と折衝いたしております間に、だんだん願いが現実的要求にならざるを得なくなりまして、三十一名ということに妥結いたしたわけでございまして、まあ水増しという気持ちもございませんが、結果から見れば、多少オーバーな要求ではなかったかというような御批判は常に受けるところでございまして、反省しなければならないところと考えております。
#31
○佐々木静子君 これは、実は、私、先日裁判所のほうから裁判所職員の定員と現在員、あるいは欠員についての四十六年十二月一日現在の一覧表をいただいたわけなんですが、これを見て、実は、私、びっくりしたわけなんですが、たとえばタイピストですね。タイピストは四名欠員となっているわけなんです。しかし、これは、私の感じでいいますと、たとえば東京とか大阪のような大きな裁判所であれば、一つの裁判所でもタイピスト四名くらい欠員しているのではないかと思うわけであります。といいますのは、民事の判決言い渡しが――言い渡し期日が変更されて、延びることが、これはいまでは常識のようになっております。ひどいときには四回も五回も延びる。そして、その延びる理由が、判事が判決の原稿が、判決書ができていないために延びることもむろんありますが、タイプが込んでいて、タイプができ上がってないからということで、ちょっと先に延ばしてほしいということがある。またタイピストが非常に労働過重である、そのために有能なタイピストであっても、ひどいときには当事者の名前を打ち間違えている、そのためにせっかく仮執行の宣言をもらっていても、今度は判決の更正などの手続をやっている間に十分にその目的を達せられなくなる。結局、この人員が不足しているということのしわ寄せは、国民の上にのしかかってきている。これは、タイピストで全国で四名欠員となっておりますが、ほんとうは、これは最高裁が遠慮して四名としていられるのじゃないんですか。現実に一々各地裁を御調査の上、その合計の不足人員をお出しになったのですか、どうですか。
#32
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) このタイピストの四名は、これは全く正直な数字でございまして、タイピストの人員は、裁判官の問題は別といたしまして、最優先的に充員しているというのが現状でございます。ただ、比較的ひまなところは、必ずしもタイプのみに専従しているというわけでもないところもございますが、タイピストは非常に重要視されておりまして、この四名という数字は私どもの立場から申し上げると、そう非常識な数字とは考えられないわけでございます。ただ、タイピストの不足で言い渡し期日が変更、延期されるということは申しわけないところでございまして、これも極力手当てをしなければならないと常に考えておりまして、実は東京地方裁判所でもそのような事例が出たことがございますが、非常に努力いたしまして解消いたしました。
 ただ非常にむずかしい問題は、裁判官が夏休み、あるいは正月休暇に判決が集中いたしまして、どっと出ますので、そのあとタイプが通常の人員でまかなえないために、言い渡し期日が九月あるいは一月に指定されたものについては遅延するという現象がどこでも出てまいります。さればといってその時期に対応するだけの十分な人員を備えて、平常は手をあかしておくということも、ただいまの定員管理の面からなかなかできがたいことでございまして、まあそういう面での支障はままあることで、場合によってはお許しいただきたいと思いますが、それ以上に数回の遅延があるということは、事務の管理の面で行き届かない点があるか、あるいは配置が適正でないかでございますので、そういうことがございましたら、私のほうでも十分調査して、適切な措置を講じなければならないと考えておる次第でございます。
#33
○佐々木静子君 実はこのあと書記官、調査官、家裁調査官、あるいは速記官などについても一々伺いたいことがたくさんあるのですが、もう時間が全然ございませんので、最後に一つ検察審査会の職員が今度五十名も減員されるということを伺って、実はびっくりしているわけなんでございます。といいますのは、検察審査会法というものは、戦後つくられました非常に民主主義的な法律の代表の一つとされているものでございまして、検察官が起訴権を独占していることに対する一つの牽制といいますか、起訴権に対する国民の参加というようなことで、国民主権主義の上からもぜひともこれは大切に育て上げなければならない制度であると思うわけなんでございますが、これがこのたび五十名も減員されている。これはどういう理由に基づくものか、これ察しますのに、法務省としましては、検察審査会というものが非常に幅をきかすということは、これは検察官にとっては好ましくないというようなお気持ちもあるのではないかと思うのですが、最高裁のほうで、この検察審査会の職員を五十名減らされたということは、これは検察庁は迎合している、検察庁にあやつられているというような感じが私どもするわけなんです。これにつきまして最高裁の刑事局長に御見解を伺いたいと思います。
#34
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 検察審査会制度につきましてたいへん御理解あるおことばをいただきまして、ありがたく思っておるわけでございますが、最高裁判所といたしましても、検察審査会制度の育成には、これまで非常に努力いたしてまいりましたし、現在もその気持ちには変わりはないわけでございます。ただ、今回の定員五十名の削減は、検察審査会制度が発足いたしましてすでに二十数年を経まして、その間、事務の簡素化なり、あるいは事務の能率化等によりまして、検察審査会事務官の手に若干の余力が生じました。それに対しまして裁判所のほうは、先ほどからの御質問にございますように、きわめて負担の重い状態が現在でもなお続いておりますので、この際配置の適正、事務負担の均衡をはかるということによりまして、また、政府の行政費節減の方針にも協力するということにした次第でございます。
#35
○佐々木静子君 せっかくのいい制度なんですから、裁判所内でいろいろ事情があると思うのですが、これはぜひとも前向きの姿勢で取り組んでいただきたい。あるいは終戦後一ときは、検察審査会制度ができたころには、盛んにあちこちポスターで、検察審査会制度が宣伝されるのを私どもは見たわけでございますが、現在では、PRが非常に不足しているために、国民が利用する方が少いのではないかとも思われますので、さらにこれは前向きの姿勢で取り組んでいただくべき問題ではないかと思うわけでございますが、もう時間がございませんから、最後に法務大臣に、検察審査会制度のあり方及び裁判所の裁判官及び裁判官以外の職員が非常に不足していて国民に迷惑をかけている、そういう事柄に対しまして法務大臣として、今後どのような方針で臨まれるのか、御見解を最後に伺わしていただきたいと思います。
#36
○政府委員(貞家克巳君) まず検察審査会の問題でございますが、これは、先ほど裁判所当局から御答弁がございました理由に基づくものと承知しておるわけでございまして、検察審査会の目的は、佐々木委員御指摘のとおり、公訴権の実行に関して民意を反映させて、その適正をはかるという大きな思想のもとにできました、世界に例のない制度だというふうに考えているわけでございます。これを法務当局がじゃまになるから、裁判所当局に対しまして何らかの注文をしたとか、そういうようなお尋ねでございましたけれども、法務当局といたしましては、裁判所当局が自主的に予算折衝になられるという点に対しまして、何ら干渉するという事実はございません。そういうことがあり得ようはずはございません。行政事務の簡素化、能率化に伴う原因の点に関しましては、必ずしもこれは法務省所管ではございませんが、昭和四十二年、四十三年、四十六年の閣議決定がございまして、そのつど内閣から裁判所当局に対しまして、政府の方針に御協力を御依頼するという趣旨で、そういった決定を参考送付いたしているだけでございまして、もちろんこれが裁判所当局に対しまして拘束力を持つというようなものではございません。裁判所当局におかれましては、自主的に御判断になりましてこの大方針に協力をされる。そして裁判部門、純粋の狭い意味の裁判部門の人員につきましては、なるべくそういった別扱いにするという御方針のように承知しているわけでございまして、法務当局といたしまして全くそういった事柄に干渉いたすというような事実はございません。
 なお、裁判所職員――裁判官も含めて裁判所職員の増員の点でございますが、司法の運営を適切にいたしますために、裁判官その他裁判職員の増員が必要であるということは御指摘のとおりでございます。ただ、裁判官につきましては、裁判所当局からも御答弁がございましたように、給源の問題がございます。また、質をできる限り高いものに確保するという要請もございますので、これを一挙に大規模な増員をいたしまして、事柄の解決をはかるということは、実際問題として非常に困難かと思われるのでございますが、政府といたしましては、そういった司法制度のすべての改善策につきまして、増員と並んで訴訟遅延の解消に資するための方策を講じてまいりたい。その他の一般の職員につきましても同様でございます。
#37
○佐々木静子君 よくわかりました。最後に大臣から一言御見解をおっしゃっていただきたいと思います。
#38
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま調査部長から御説明いたしましたとおりに、私はこの定員の増加につきまして――減員が五十名というのを初めて聞いて、実は驚いたわけであります。もちろん、われわれ、いまさようなことを考えておったわけでもありませんし、まあ裁判所独自で御判断願って、そして全体としておやりになったということだと思います。しかし、いまお話のありましたとおりに、新しい制度であり、将来育成して最もよき制度に持っていくという面から考えますと、今後の問題として十分検討し、さらに育成発展させるべきではなかろうかと、かように考えておるわけであります。
#39
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にいたします。
    ―――――――――――――
#40
○委員長(阿部憲一君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#41
○佐々木静子君 それでは私から質問をさしていただきます。
 実は一昨日法務大臣に質問をさしていただきまして、大臣が人権擁護という事柄については、言うまでもなく第一に考えているという、今後の法務行政を行なう上で最も重点を置いて考えているんだという御答弁をいただきまして、私非常に心強く思ったわけでございます。また、それと同時に、捜査権の行使というものが、これ私ども見ていますと、どうも一方に強く一方には控え目で、あるいは一部の者にはきわめて強くかけられるのに対して、他の者には寛大であるというふうなことが、どうもそのように受け取れることが多いわけでございます。その事柄につきましても、若干、一昨日の委員会で大臣にお考えを承ったわけでございますが、何ぶん時間がなかったものでございますから、本日あらためまして、大臣に、人権擁護と治安の維持を担当される責任者として、こうした捜査権の行使ということについての御見解を承らせていただきたいと思います。
#42
○国務大臣(前尾繁三郎君) 率直に申しまして、私、従来から捜査にあたって、特にどういう人だからどうこうというような、差別待遇をするというようなことは毛頭いたしておるはずもありませんし、そういうことは絶対ないと考えているものでありますし、私みずからも、そういうことについては、非常にむとんちゃくといいますか、むしろこういわゆる同和でみんなが一体になってやっていただきたい。差別待遇されるのじゃなかろうかという偏見も、できるだけ持たないような環境をつくり出すということが、一番大事じゃないかというふうに考えておりまして、今後につきましても当然それはやっていかなければならないことでありますし、また、従来からそうだと確信をしておるようなことであります。
#43
○佐々木静子君 先日も主として部落差別という事柄について大臣に伺ったのでございますが、さすが解放運動の盛んな京都の御選出の大臣だけありまして、非常に部落問題についても前向きの御答弁をいただいて、心強く思っておるわけでございますが、まあ大臣がそのようなお考えでいらっしゃいましても、現実に末端の法務省の職員の間、あるいはこの間もちょっと五つ六つ事例をあげさしていただたのでございますが、警察官などの言動などにおきまして、差別的な事柄がやはり絶え間なく起こっている。そういう事柄につきまして大臣どのようにお考えになりますか。また、どのようにして指導をしていこうとお考えになっていらっしゃるか、簡単でけっこうでございます。御見解を承りたいと思います。
#44
○国務大臣(前尾繁三郎君) もしそういう事態がありとすれば――いろいろの事件について私詳細を存じませんけれども、それはあくまで、もしそういうようなことがありとすれば、それを追及していかなければなりませんし、また結局平素の訓練の問題でありまするから、これは人権擁護局で盛んにやっております研修なり、あるいはまた、法務省におきまして他の研修のあらゆる機会に、捜査にあたってそういうような差別的な言動のないように注意をしていきたいと、かように考えておるわけであります。
#45
○佐々木静子君 一昨日の委員会で、人権擁護局長も非常に前向きな姿勢でこの差別撤廃のためにできるだけの努力をするというお話を伺いまして、私もたいへん心強く思っているわけでございますが、さらに具体的な方法として、人権擁護委員の指導あるいは講習会を再々行なうというようなこともおっしゃいましたが、現実にいろんな差別問題が全国各地に起こっている。そういうような事柄について積極的に部落差別を解消するということの努力をなさるおつもりがあるのかどうか、またあるとすれば、どのような方法で取り組んでいこうとされているのか、簡単でけっこうでございますからお述べいただきたい。
#46
○政府委員(影山勇君) その点については、一昨日のこの委員会で御指摘がありましたように、まず差別意識の払拭ということに、真剣に人権擁護機関として取り組んでまいりますためには、法務局の職員はもちろん、人権擁護委員のこの問題に対する理解を一そう深めていくということを極力推進してまいりたい。それから不幸にして付審判事件が起きました場合には、迅速適正にれを私どもの可能な方法で処理しいこうという決意を持っているわけでございます。
#47
○佐々木静子君 ありがとうございました。
 次に、警察のほうに――一昨日のこの委員会で申し上げたのでございますが、昨年におきましても、たとえば高知県の土佐署、あるいは大阪の八尾署、あるいは京都の田辺署をはじめとして、全国各地で、現場の一線の警察官による差別的な取り扱い、あるいは差別的なことばを吐かれているというようなことがいろいろ起こっている。これは警察の責任者といたしまして、今後どのような態度で臨んでいかれるおつもりなのか、簡単にお述べいただきたいと思います。
#48
○政府委員(高松敬治君) いまおあげはなりました事件の個々については、実は私あまりよく承知しておらないのでございますが、私自身大阪で二度勤務いたしましたので、この問題についてのいろんなトラブルのあることもよく承知しております。捜査にあたって、そういう点について細心の注意を払って捜査をやるというふうな指導も現実に過去においてもやってまいりました。全国的な問題といたしましたも、そういうふうな問題について十分に注意を払って捜査をやる。それがやはり刑事訴訟法に掲げる基本的人権の尊重ということだというふうに考えて指導しているつもりでございます。
#49
○佐々木静子君 いま一例をあげました八尾警察署の問題でも、これは八尾警察署長は非常に反省していただきまして、部下の署員に対する同和教育の徹底ということを約束していただいているわけでございますし、また、田辺署の件につきましても、むろん田辺署の署長もこのことは十分に承知しているわけでございますので、私ほんの一、二事例を申し上げただけでございますが、一度警察の責任者といたしまして、全国の――署長段階でおそらくそれが報告されずに逃げられていることが多いのじゃないかと思いますので、一応こういう問題について全国的な調査のようなものでもできましたら、ぜひともお調べいただきまして、そして警察庁としたしましても、警察職員の同和問題に対する関心、あるいは同和教育の徹底をはかっていただくように御努力いただきたいと思うのでございますが、そういうお約束をしていただけますでしょうか。
#50
○政府委員(高松敬治君) 全国的に調査をすることはそれは可能でございますし、そういうことをやるということもひとつ考えられると思います。ただ、私は、いままでの自分がやってきました経験からいいますと、そういうものがかえって逆に妙なことの効果にとられる印象、おそれもある。そういう意味では、その点の取り扱いについては慎重に考えて調査するなら調査をしなければならないというふうに思います。
 直ちにどういうふうにしてやるかというふうなことはちょっと申し上げかねると思うのですが、ただ、現地の本部長として――私どもが勤務しておりましたときも幾つか問題がございましたし、現地の本部長としては、各署長あるいは署員に対して、そういう問題については、たいへん真剣にこれを教育し、あるいはそれの処理のしかたについての心がまえというふうなものを私は相当に徹底さしてまいったつもりでございます。まあ、現実にいろいろな問題が起こってまいりまして、それらについて警察庁としてはどのようにやっていくか、この点は考えさしていただきたいと思います。
#51
○佐々木静子君 いろいろ方法はむずかしく、警察庁のほうにおまかせしなければならないことも多いと思いますので、ぜひとも前向きの姿勢で取り組んでいただきたい。そうして、上層部の方々ばかりでなしに、すみずみの警察職員にまで徹底底するように、ぜひともその教育をお願いしたいと思うわけでございます。
 で、話が変わりますが、これは埼玉県の国鉄の川越駅をおりたところに、川越の公民館があるわけでございますが、これが元国警の川越分室として使用されていたということを聞いておるわけでございます。正確に言いますと、川越市脇田本町一丁目二番地、いま川越南公民館となっているところでございますが、ここが元国警の川越分室として使われておったものであるということを御存じでございますか。
#52
○政府委員(高松敬治君) その場所かどうかちょっと承知しないのですが、昔の狭山事件のときに、ここで、川越分室という名前だったと思いますが、そういう場所で取り調べを行なったことは記憶しております。
#53
○佐々木静子君 いま御答弁のありましたように、この川越分室は狭山事件の捜査に使われたわけでございます。
 実は私、昨日この南公民館へ参ったわけでございますが、この南公民館の庭にちょうどライオンを入れるのにいいのじゃないかと思われるような動物園のおりのような非常にがんじょうなのがつくられておるわけであります。これはいま御答弁にありました狭山事件のためにおつくりになったものですか。
#54
○政府委員(高松敬治君) 当時と建物はおそらく変わっているのだろうと思います。私は当時の川越分室というものを見たことがありませんので、ちょっと確たるあれはできませんが、庭にライオンを入れるようなおりがあるというふうな状態では少なくともなかったと思います。
#55
○佐々木静子君 私もいままで職務柄あっちこっち警察の留置所に行く機会が多かったのでございますが、ライオンかトラを入れるようなああいうものすごいおり、ああいうのを見たのは初めてでございまして、何か動物園のような錯覚を起こしたのでございます。ちょうどその土地の留守番の方に伺いますと、「これは国警時代に使っていた、その後、狭山事件のあとはほとんど使っておらない、また狭山事件の前もこういうものはなかった。」というようなお話を、留守番の人、あるいはその土地の方々から伺ったのですが、これがいつつくられて、どのようなことに利用されたのか。これは刑事局長は御存じないんですか。
#56
○政府委員(高松敬治君) 川越分室というものは、いつつくられて、いつ廃止になったか私実はよく承知しておりません。ただ、当時の狭山警察署――いまの狭山警察署は新しくつくりかえて非常にりっぱになっておりますが、事件発生時の狭山警察署は非常にぼろで不備であった。それから、調べをしていて、まわりから、外側からも、ちょっとしのび込むような形になると、みんな外へ筒抜けになるというようなことで、調べには非常に不適当な場所である。それで、川越分室というものがあって、そこへ移して、そこで取り調べを中途から行なった、こういう状態であったと思います。正確には、これがいつできて、どういう構造になっていて、いつ廃止されたかということは、私は存じておりません。
#57
○佐々木静子君 これは私、昨日見てきたんですが、動物園の猛獣のおりのようなものが庭につくられてあるほかに、この別棟に、ちょうど徳川時代のいわゆる牢屋のような木製の、それもまた、普通珍しいんじゃないかと思われるような、がんじょうなおりが――そしてその中には、これは庭のおりもそうですが、有刺鉄線がずっと張りめぐらされているわけですが、これは、そうすると、狭山事件の捜査に途中から使ったというわけですが、狭山事件の取り調べのために、これをお使いになったわけですね。ほかの事件に、ここの設備を、いままでお使いになっているかどうか、それはわからないわけですか。
#58
○政府委員(高松敬治君) 狭山事件の前に、この施設をどれくらい使っていたかということは、私は実は承知しておりません。
#59
○佐々木静子君 実は私が調べているところでは、これは狭山事件の被疑者を収容するために大急ぎで夜通しかかって、こういうがんじょうなものを、これは新設したというか、あるいは補強したというか、改修したというか、そこのところはつまびらかにいたしませんが、まあがんじょうなものをつくり直した。そして、この狭山事件の被疑者であった石川さんだけをここで調べて、その後もあまり使っておらないというわけなんですが、この石川さんの取り調べ、そういうことだとすると、非常に――ほかの被疑者と比べまして、なぜこのような取り扱いをされたのかということを、非常に疑問に思ったものですからお伺いしたいと思ったわけですが、その点については刑事局長はつまびらかになさらないわけですか。
#60
○政府委員(高松敬治君) 補修を新たにしたという話も私は実は承知いたしておりません。ただ非常にあの当時騒がれた事件でございまして、それで新聞報道その他に調べの状況が漏れるというふうな状態もございました。そういうことで取り調べの場所を変更したというふうに聞いております。あるいは変更にあたって若干の留置施設の補修はやったかもしれませんが、ただ、庭にある、おりみたいなところに入れるというふうなことは、当時の状況からいっても、ちょっと考えられないことだと思います。
#61
○佐々木静子君 昭和三十八年――これはいわゆる善枝ちゃん殺しのあった年でございますが、六月二十五日付の一流紙に、当時の竹内狭山警察署長の談として、「初めから川越分室のような特設の調べ室で対決しておったならば、あっさり自供を引き出せたかもしれない。」という記事が書かれているわけですが、これは一人の被疑者を取り調べるのに、非常に、こういう話は、奇異な感じがするわけなんですが、そのことについても特に御存じありませんか。御存じないとすれば、さっそくにでも所轄の担当の警察署にお調べいただきたいと思うわけなんです。
#62
○政府委員(高松敬治君) 被疑者の取り調べ留置を行ないます場合に、逃走なり自殺なりという点については、留置施設の設備を完備すること、それから取り調べにあたっては、やはり取り調べの環境というものが非常に左右する。たとえば自動車がしょっちゅう通って、部屋の中が非常にやかましいというところでは、現実に取り調べがなかなかできないものでございます。そういう意味で、取り調べの環境を静かな環境において取り調べをするということは必要でございます。
 先ほど申し上げましたように、狭山警察署が、非常に――もとの警防派出所かたったと思いますが、それの一部改造を加えたような非常におんぼろの警察署であった、敷地も非常に狭いし、それで非常に困って、取り調べの場所を変えたというふうに私どもは承知いたしております。
#63
○佐々木静子君 これは実は、この石川さんが取り調べ中に場所を移された、あるいは署長の談話でも、初めからここで調べれば云々というような話がありますが、石川さんがこの問題の分室に移されたのは、これは三十八年の六月の十七日なんです。そしてこの善枝ちゃん殺しの逮捕状が出されているのが三十八年の六月十六日、その前日で、逮捕状が執行されたのが十七日なんです。その日からこの分室に収容されているわけなんです。ここら辺も、この当時の竹内警察署長のお話というのは、初めから云々というのは非常におかしな感じがするわけですけれども、実はこれは最初は六月の初めに、全くささいな事件で逮捕状が出されている、そして狭山警察で調べられた。ところが、全くささいな、友だちの作業衣をトラックの運転台から盗んだとか、あるいは接触事故があった相手をなぐったとかというふうな、まあそれも示談済みであるというような事件で逮捕されたわけなんですが、その目すでに善枝ちゃん殺しの被疑、善枝ちゃん殺しのことについてポリグラフにかけられている、これは明らかに別件逮捕の問題だと思うのです。この事柄についてこれは一昨日、法務大臣に、別件逮捕についてどういうふうにお考えになるかということを、御見解を伺ったわけなんでございますが、警察庁としては、こういうふうな逮捕のしかたは好ましいものであるかどうか、どういうふうにお考えになりますか。
#64
○政府委員(高松敬治君) 別件逮捕の問題の前に、記録によりますと、六月十七日は二回目の逮捕の日でございます。その前が五月の二十三日に脅迫状を行使しての恐喝未遂、それから窃盗暴行の容疑、この二つのもので逮捕をいたしております。この際の脅迫状というのは、善枝ちゃんのうちに投げ込まれた脅迫状の筆跡が、本人の筆跡と同じであるということで、脅迫状を行使しての恐喝未遂ということでこれは逮捕したわけでございます。したがいまして、別件といえば別件になりますが、本件に非常に近い関連のある別件という問題になろうかと思います。
 別件逮捕の問題につきましては、御承知のように、長い間非常にいろいろ議論が分かれております。私どもといたしましては、別件逮捕というのは、できるだけそれをやらない、合法的であっても、かつ妥当なものでなければならない、非常に軽い罪の別件というふうなことはやってはいけないという指導を続けております。実際問題として捜査上非常にいろいろむずかしい問題もございます。それからまた、別件逮捕を完全に否定した場合には、あるいは余罪のそれぞれについて逮捕勾留を繰り返すというふうな形にもなりかねない。それで別件逮捕についての判決その他を見ましても、余罪との関連における問題というのは、非常に流動的で、基準的なものが見られない。たとえば東京ベッドの放火事件の判決なんかを見ましても、非常に流動的な、区別のできないところがある。ただ、私は、捜査のやり方としては、そういうふうな別件というふうなことではなしに、それが合法的であるとか、非合法であるということは別にいたしまして、捜査のやり方としては、あくまでも別件ということを極力避けた逮捕でいくべきであるというふうに考えて、全国の都道府県警察を指導しているつもりでございます。
 ただ、実際的に、いま例にあげられましたような脅迫状、本件に非常に結びついた前段階の点についての容疑が非常にはっきりしているという場合には、それでいかざるを得ないというふうな場合も、捜査の現実の前には、確かにあるということは御了承いただきたいと思います。
#65
○佐々木静子君 この別件逮捕というものが好ましくないということは、これは警察庁のほうも認めていらっしゃるとおりでございまして、私も全くこれは――私は好ましくないだけではなくて、これは違法であり不当であるというふうに思っておるわけでございます。
 いま、この最初の逮捕状というのは、これ、私ちょっと聞き間違いかもしれませんが、五月の二十四日であったかと思うのでありますが……。
#66
○政府委員(高松敬治君) 二十三日。
#67
○佐々木静子君 執行されたのは、二十四日ですか、二十三日ですか。――これが執行されたのは二十四日ですね。逮捕状が出たのは二十三日でございますね。これが出たのは、どこの裁判所から出ておりますか。
#68
○政府委員(高松敬治君) 私の手元にあります記録では、ちょっとその裁判所――発行された裁判所は記載されておりません。
#69
○佐々木静子君 それでは、これはもう明らかなことですので申し上げますと、これは所轄の川越簡裁から出ているわけなんでございます。ところが、これは関連していることだから必ずしも不当でないという、次の逮捕状が必ずしも不当でないという、あるいはそのさきの逮捕状で善枝ちゃん殺しのことを調べたのは不当でないというふうな御発言がありましたが、この別件逮捕が不当でないのであるのならば、なぜまた、管轄の川越簡裁から逮捕状をもらわなかったのか。これは、私はなはだ疑問に思うわけです。このあとのいわゆる善枝ちゃん殺しの被疑事実の逮捕状、これはどこから出ておりますか。
#70
○政府委員(高松敬治君) その点は承知いたしておりません。
#71
○佐々木静子君 これは、私から申し上げますと、これはこの管轄地からはるかに離れました小川簡易裁判所から出ておるわけでございます。おそらくこれは、川越簡裁では不当逮捕であるということから、逮捕状がとれないために、わざわざ事情を知らない遠方の裁判所へ手を回して、逮捕状をおとりになったと思われるのでございます。こういうことを、これはこの事件だけに限らず、往々警察のほうはやるようにと、警察の上層部は部下の警察官に指導しておられるのですか、どうですか。これは、このように私いま申し上げましたのは、あとの逮捕状は管轄地から、また、事件発生地から遠く離れた小川簡易裁判所から出ておるわけなんです。これ、おそらく川越簡易裁判所は、保釈決定をしておる関係から、同じ裁判所のほうへ持っていくと、逮捕状が、請求は却下されるということから、わざわざこの遠方の小川簡裁のほうに、逮捕状の請求をされたのだと思うのですけれども、これは非常に法律の裏をかいた方法だと思うのですが、刑事局長としますと、部下の警察署員に、こういうふうなやり方で被疑者を逮捕するようにということを、平素御指導になっているのかどうか、伺いたいと思います。
#72
○政府委員(高松敬治君) 逮捕状の請求につきましては、大体もよりの裁判所に対して請求をするというのが普通の形でございます。で、こういう逮捕事件の二回目の場合に、どうしてこういうふうになったのか私ちょっと存じていないのでございますけれども、まあ、やや例外的な措置であるというふうに思います。私どもとしては、もよりの裁判所に対して請求をするということが普通に、まあ常識的にそうやっていると思います。
#73
○佐々木静子君 刑事局長はそのように部下の警察職員を指導しておられる。しかし現地の警察職員とすると、これは何とかして逮捕したいと思う一念で、何とか法の裏口はないかということで、この事件を知らない別の裁判所へ逮捕状を請求するということが往々にしてあると思うのですが、そういう往々というのが、この事件においては、行なわれているわけなんですが、そういう事柄について、警察の上層部としては、どのようにお考えになりますか。
#74
○政府委員(高松敬治君) 当時の事情については、私直接関係しておりませんでしたので、たいへんこれを詳しくは存じておりません。ただ、私自身で一、二扱ったものの中には、たとえば逮捕について報道関係が非常に注目をしている、そういう場合に、あるいは裁判所の場所を変えるという経験は一、二ございました。そういうふうなことは一、二ありますけれども、原則としてもよりの裁判所に請求するというふうにやっているのが大部分であろうと思います。ただ、特殊な何かの事情があった場合に、そういうことがあり得る、そういう事情が、本件の場合に何であったかということは、残念ながら私よく承知いたしておりません。
#75
○佐々木静子君 そうすると、あとの逮捕状の請求が特殊であったということはお認めになるわけですね。
 それでは、次の質問に移ります。なぜ私が、この何年もたった事実をこのように追及するかと申し上げますと、最近になって、当時、捜査本部の本部付警視であった将田政二さんという人が、この善枝ちゃん殺しの被疑者として――これは石田一義という人が営んでいる豚屋さんがある。狭山市にあるのですが、その豚屋さんに出入りする者について筆跡、血液型の採取、アリバイなどの捜査を五月の八日から二十三日、これはいま申し上げましたように、石川さんが逮捕される直前までですけれども、集中的に行なった。この石田一義さんというのは、これは部落民でございまして、そしてこの人がつき合っている人というのは、これはいずれも――いずれもというよりも、この人がつき合っている人の中に、部落の方が多いわけなんですが、先ほど言いました将田さんのお話によりますと、集中的に取り調べを行なった。二十数名全員が部落の方なんです。そういうことで、これは非常に差別的な取り扱いがされたのではないかということが、最近になってわかったのでございますので――そのことを最近になって私が知ったわけでございますので、いまそのことを伺っているわけなんです。ほかの人を調べずに、頭から部落の人ばかりを調べたということを、刑事局長は、当時は責任者でいらっしゃらなかったと思うのですが、御存じでしょうか。もし御存じであるとすれば、それはどういうことなのかお述べいただきたいと思います。
#76
○政府委員(高松敬治君) 私は全然そういう関係は存じておりませんでした。石川一雄が検挙になりました後においても、そういうことは聞きませんでした。それで、この問題について差別裁判であるというふうな議論が最近非常に強く出てまいりました。それで初めてそういう関係であったのかということを私自身知ったような状態でございます。
#77
○佐々木静子君 これは善枝ちゃんが殺されたのが五月一日、そしてその日殺されたということはあとでわかったのですが、五月一日に善枝ちゃんが学校から帰らなかった。同じ日の夕方に二十万円と引きかえに子供は帰すと脅迫状が入った。そして五月二日、指定の日に、二十万円を擬装した紙幣を持って善枝ちゃんの姉が、指定の場所にあらわれたところ、犯人が出てきて十分間話をした。当時、警察官は数十名周囲を取り囲んでおったのに、犯人をようつかまえなかった。ところが、五月四日の日に、善枝ちゃんが死体となって発見された。そういうふうな、非常に話題となった事件でございますが、この当時、篠田国家公安委員長は、善枝ちゃんが死体となって発見されたというときに、これは新聞報道によりますと、犯人は知能程度が低く、土地の事情にも詳しいものであり、犯人の逮捕はすぐできるというふうなことを、これは新聞の一流紙の記事ですが、発言しておられる。また、犯人は、二十万円は大金だと考える程度の生活をしているということも発言しておられる。これが善枝ちゃん殺しに対する責任者の最初の公式見解であったわけですが、この責任者の公式見解というものが、その後の捜査の方針というものに影響しているのではないか。私は影響している点が多いと思うわけなんです。篠田委員長が、当時、主観的にどのように考えられたかは別として、このように知能程度が低い、あるいは生活程度が低いというようなことから、すぐに、部落に対する捜査というふうなことを、現地の警察官が思いついた。また、そのことばかりに集中したとする、これはそれこそ警察官の同和問題に対する意識が足りないためではないか.という、非常な偏見から捜査が始まっているのではないかと私は思うのですが、刑事局長とすると、どういうふうにお考えになりますか。
#78
○政府委員(高松敬治君) 当時の篠田公安委員長からそういうふうな御発言があったということ、私よく記憶いたしておりません。ただ推察いたしますと――どういう点からそういうことをおっしゃったかわかりませんけれども、推察いたしますと、たとえば筆跡上の文字、それから筆跡、脅迫状の内容というふうなものは非常に稚拙である。そういう点ではあまり知能程度は高くないかもしれないということは、あの筆跡上からは一応推知される。土地の状況に非常に詳しいものである――土地カンが非常に強い、これはあの状況からこれも十分推知されるところであろう。二十万円を大金と考えるかどうかという点になりますと、私どもそれがどういう意味になるのかちょっと推知しかねるように思います。捜査としては、初めから普通の捜査方針に従って、そういう土地カンの強いものというふうなことから捜査は始まっていったようでございますが、それが部落に対して、ひとつ集中してやるというふうな、そういう意図はなかったと私は信じております。
#79
○佐々木静子君 長官は、この狭山市大字青柳三〇八番地で、奥富玄二という人が、変死をした事件を御存じですか。
#80
○政府委員(高松敬治君) 自殺した人があったという記憶はございます。
#81
○佐々木静子君 警察の御見解はあるいは自殺ということになっているのかわかりませんが、この奥富玄二という人は、これは奥富玄二さんの戸籍謄本ですけれども、五月六日の午前九時三十分になくなっているわけなんです。実はこの玄二さんは、その翌日の七日に結婚式をする予定で家も新築し、そして結婚式の準備万端整えてあったわけなんです。ところが、この六日の日に、突然井戸へはまってなくなっていた。農薬を飲んでおられたということなんですが、この奥富玄二という人は、これは中田善枝ちゃんのうちの作男を、長いことやって、中田善枝ちゃんとも昔からの顔なじみである。また、死体発見の現場からも非常に近い。そういうふうなことがあるんですが、当時の新聞報道によると、有力容疑者――あるいはこれは人権に関する問題ですが、半ば犯人が自殺したというふうな記事が当時載っているわけです。この点について、当然警察は捜査もされ、やったと思いますし、また、あるいはなくなったあとも、いろんなお調べをされたと思うのですが、これはされましたか。あるいは捜査をされたとすると、その当時の一件記録はどこに保管されているわけですか。
#82
○政府委員(高松敬治君) 当時そういう事件がありまして、それについての自殺の原因その他についてはかなり調査をしたはずでございます。ただ、記録がどこにあるのかどうか私はよく存じませんが、調査はかなり、この事件とは関係がないという結論を出していたように思います。
#83
○佐々木静子君 いま刑事局長はおわかりにならなくても、これは重大な記録でございますから、むろんどこかに保管されているわけですね。お調べになれば保管先はわかりますね。
#84
○政府委員(高松敬治君) 事件自身に関係がないという判断でやっておりますから、記録が残っておりますかどうか、もう十年前の事件になりますので、その点は私はちょっと自信がございません。
#85
○佐々木静子君 これは実際にだれがやったか、まだはっきりしていないものを、しっかり保管しておかないのですか。おそらくいろいろな人が捜査に協力して重大な資料を警察に渡していると思うのです。そういう無責任なことを言われるとすると、警察の証拠隠滅になるんじゃないか。すぐにお調べになって奥富玄二の捜査記録があれば、すぐに委員会にお出しいただきたいと思う。どこに保管しているかという、もし保管していないということになれば、これは重大な証拠隠滅じゃないですか。
#86
○政府委員(高松敬治君) 記録があるいは残っておらぬかもしれませんし、あるいは残っているかもしれない。書類の保存期間がいろいろございますし、そういうものがずっと残っているかどうかについては、私はちょっといま確信を持って確かにございますとか、そんなものはありませんとかいうことを申し上げることができないと、かように申し上げたわけでございます。
#87
○佐々木静子君 それでは早急にお調べになっていただいて、そして御連絡くださるように。
 それから奥富玄二さんが自殺するそのちょっと前に、国家公安委員会で、篠田公安委員長が、埼玉県警の捜査上のミスについて指摘して、そのあと、八日の参議院の本会議でこの事件のことを聞かれるから、そのときまでに、どうしても犯人をつかまえよ、という指令をしたということが、これも新聞報道になされているのですが、これはどうですか。
#88
○政府委員(高松敬治君) どういうふうにおっしゃったか私はわかりませんけれども、幾ら国家公安委員長でも、あしたまでとか、予算委員会の日まで犯人をつかまえろということは、これはたいへん御無理な話でございまして、そういう御趣旨ではなかったのではなかろうか、こう思います。
#89
○佐々木静子君 確かに無理な話だと思います。そしてその直後に、この奥富玄二が死んだという報道が入ると、今度は篠田委員長が、こんな悪質な犯人は何としても生きたままつかまえてやらねばならないと、歯ぎしりをしたということが、これは有力各紙に報ぜられているのですけれども、これは委員長とすると、何とか生きて犯人をつかまえたかったという気持が十分あるけれども、そういうふうな委員長の言動が、一線の警察官に影響を与えないとお考えになりますか、どうですか。
#90
○政府委員(高松敬治君) たいへんむずかしい御質問であれですが、捜査を実際にやっております者は、やはり捜査の過程からあらわれてきた事実というものは、一番頭に強く入っているはずでございます。影響はあるかもしれませんが、あるいはないかもしれない。そういう点は、現実の捜査というものはかなりきびしい態度でやっているものだというふうに私は承知しております。
#91
○佐々木静子君 時間がないので次を急ぎます。これも戸籍謄本でございますが、狭山市柏原一五八番地の田中昇という方、この方が昭和三十八年の五月十一日午後八時十分ですか、変死をしているのですが、そのことは御存じですか。
#92
○政府委員(高松敬治君) ちょっとその点については記憶があまりさだかではございません。
#93
○佐々木静子君 それでは、早急にお調べいただきたいと思うのですが、心臓にナイフが突きささったままの状態でなくなっておられる。医者がかけつけたけれども、結局、手当てをしたが、なくなってしまったということなんですが、この人がなくなる三、四日前に、狭山警察に、善枝ちゃん殺しの現場近くで三人の不審な男を見かけた。その男は自動車に乗っていた――この田中昇という人がこの付近を歩いていたところ、急に用を足したくなって、ちょっと木の茂ったところへ行ったところ、三人の男がびっくりしてこっちを向いた、自分もまさかこんなところに人がいると思わなかったので、びっくりした。しかし、そのときは、そういうことと思わずに帰ったけれども、あとで考えると……。それでちょうどその日のその場所に、不審な男を見かけたということを、警察に届け出た。ところが、その三日後に、これは自殺とも他殺ともわからない状態で、田中昇さんが心臓にナイフを突き刺さったままの非常に凄惨な状態で事切れた。しかも、田中さんは当時まだ新婚、間なしで、満二歳になる子供さんもあって、およそみずから命を絶たなくちゃならないというような事情は当時は何もなかった。そういうことから、この田中昇さんの変死について当然、狭山警察はお調べになっておればわかったはずで、また、ならなければならないと思うのでありますけれども、そうした記録はどうなっているのか。いま御存じなければ早急に問い合わせてでもしてお答えいただきたいと思います。
#94
○政府委員(高松敬治君) その点も私存じておりませんので、そういう記録があるかないかひとつ調べてみます。
#95
○佐々木静子君 これはあるかないかじゃなくて、こんなものなくされていたら、あるいは廃棄されていたらとんでもないことです。御存じのとおり、これは狭山事件の善枝ちゃん殺しの犯人であろうと思われる人は、一応犯人であろうと警察が思っておられる方はいたわけですけれども、犯罪は確定しているわけでも何でもない。そういう状態でこれに関係する、これにまつわる一件記録を廃棄しているとか、紛失しているというのは、これは無責任もはなはだしいのじゃないですか。この当時いろいろな人が、いろいろな証拠物を警察へ持ってきているわけですね。それを十年たったから何とかということで、どんどん処分したとすれば、これは明らかに証拠隠滅じゃないですか。あまりにも無責任じゃないですか。もうちょっと責任のある御答弁をいただきたいと思います。
#96
○政府委員(高松敬治君) 事件は御承知のとおり、裁判に係属中のものでございます。証拠隠滅とおっしゃいますけれども、証拠隠滅ということは私にはよくわかりませんけれども、警察としては、それにあるいは関連があるかもしれないし、あるいは関連がないかもしれない。いままでの判断としては関連がないという判断をしてきているわけでございますけれども、それについての書類が、あるいは年限がきて焼却処分にしたというようなことがあっても、別に証拠隠滅とか何とかということになり得ない、そういう気持ちでやっていることではないと、かように思います。
#97
○佐々木静子君 あと時間があまりありませんので、私、そのことばかりを論じているわけにいきませんので次に進みますが、二十万円を持って行くために、犯人と五月二日の日に、実際に十分間話をしたという善枝ちゃんのおねえさんの中田登美恵さん、この人がまた変死を遂げたことを御存じですか。
#98
○政府委員(高松敬治君) それは私も聞いております。
#99
○佐々木静子君 いつどういう理由でなくなったか知っておられますか。
#100
○政府委員(高松敬治君) 時日は明確に覚えておりません。それから自殺の理由は、動機というものは判明しないというふうに聞いております。
#101
○佐々木静子君 これは、自殺の理由というふうに頭から刑事局長言われましたけれども、なぜ頭から変死と言わず、自殺とおっしゃるのですか。この登美恵さんが非常に苦しんでいる。これは三十九年の七月十四日お昼過ぎですね。これは石川一雄さんが一審で死刑の判決を受けて、本来ならば被害者の家族としたならば、その願いがかなったことだと思わなければならない。それが普通の感情だと思うのですけれども、ところが、その死刑の判決後、もんもんとして家に閉じこもって非常に苦しんでいる。この日、苦しんでいるのを家人が発見して、もよりの鈴木医師に見てもらったところが、鈴木医師が急いでかけつけたけれども、もうそれは農薬を飲んで、もうなくなって、そして寝かされていた。そして、鈴木医師の診断ではこれは死因は不明であった。――これは私、ちょっと訂正をしたいと思います。鈴木医師が見たところでは、これは何でなくなったかわからない、死因が不明である、もちろん、自殺とも他殺ともこれはわからない。ところが、その後、警察には、これは農薬による自殺だと簡単に断定をした。これが非常にいまなお、担当されて一番先に見られたお医者さんが疑問視されているわけですけれども、中田登美恵さんの死亡について当時、警察は不審を抱いて捜査をされたようなことがありますか。あるとすれば――これは当然なされなければならないと思うのですけれども、その中田登美恵さんに関するいわゆる一件記録というものを、これもまた保存していないとおっしゃるのですか。
#102
○政府委員(高松敬治君) 当時、自殺、他殺という問題については、いろいろ家庭の事情その他聞いたわけでございます。で、いろいろ検討した結果、自殺であろうというふうに断定をしたというふうに私は聞いております。それについての記録の問題につきましては、先ほど申し上げたほかのケースと同じようなことでございます。
#103
○佐々木静子君 いろいろ検討をするにしても、やはり、いろいろな人に聞かなければならないし、それに関する参考資料とか証拠物とか、何もなければ何も検討のしょうがないと思うのですけれども、それに対する証拠が集まっている、資料があると思うのですが、それも保存されていないということですか。あるいは口ではいろいろ検討したと言っておられるが、何もないとすると、もう最初からこれは自殺にしておけということにきめておられて、何も調べておられなかったわけですか、どちらなんですか。
#104
○政府委員(高松敬治君) 最初から自殺にきめて、何もしないという、そういうことは絶対にいたしておりません。これにつきましては、私も、捜査一課長になりまして、やや疑問を持ちまして、当時、いろいろ捜査員に聞いたことがございます。ただ、これがたとえば関係人の供述調書という形になって残っておるのか、捜査報告書という形になっておるのか、あるいは口頭でいろいろ調べた結果を聞いて、その判断として総合的に判断したものか、その辺のところは私としては明確に存じておりません。記録があるかないかということについては、そういう意味でもはっきりここで、ありますとか、ありませんとかというふうな御答弁は、ちょっと申し上げられないというような状態でございます。最初から自殺だというように簡単にきめてやっているというようなことは、これは絶対にございません。
#105
○佐々木静子君 昭和四十一年の十月二十四日、先ほど申し上げた石田一義さんのお兄さんの石田登利造さん、この方が線路で変化体で発見されたということを知っておられますか。
#106
○政府委員(高松敬治君) それはちょっと聞いておりません。
#107
○佐々木静子君 普通は、国鉄とか、あるいは私鉄とかという、いわゆる線路で轢死体が発見されたときには、もよりの駅長がこれは陸運局に届けるのが普通なんですか。
#108
○政府委員(高松敬治君) 鉄道内部の関係は、どうするか知りませんが、警察のほうにも通報してまいります。
#109
○佐々木静子君 これは西武線の事故でひかれたわけなんで、轢死体として、変死体として上がってきたわけですが、この場合は陸運局に、もよりの駅長は届ける義務があるんですか、ないんですか。
#110
○政府委員(高松敬治君) 鉄道内部でどういうふうになっているのか、どういうふうな処置をとることにきまっているのか、私、ちょっと承知いたしておりません。
#111
○佐々木静子君 実は、昭和四十一年は、これはまだ――先ほど来十年以上十年以上というお話しがあったわけですが、これは十年にもなっていないんですけれども、この鉄道事故につきましては、ささいなすり傷のような物件事故のような場合でも、駅長のところにみな記録が残っているわけなんでございますが、これはもよりの入間川駅だと思いますが、四十一年の十月二十四日については、その日だけ記録がないんです。それはどういうわけですか。警察がそこだけ持っていかれたんじゃないんですか。
#112
○政府委員(高松敬治君) その点は全然よく存じません。ただ、警察はそういう鉄道自殺、鉄道で轢死があったというふうな場合には検視をいたしますし、それから警察がそれを特に持っていかなきゃならぬ理由というものも、これはどうもなさそうに思います。そういうものは警察としてはあまり必要ではないように思いますけれども、その点、しかしどういうことでそれがなくなったのか、私、いま全然その点は承知いたしておりません。
#113
○佐々木静子君 これは、実は、登利造さんの死亡時刻も全然はっきりしていないんです。発見されたのが十月二十五日の早朝なんですが、この戸籍謄本によりますと、二十四日の午後十一時二十五分ころとなっているわけでございます。また、家族の者などに聞きますと、登利造さんが自殺するということは考えられないということを言っているのですが、どういうわけか、これが捜査がどういうふうに進められたのか、私どもにはわからない。これは、十年の保存期間ということをかりにおっしゃるとおりだとしても、当然警察は捜査されているだろうと思いますし、捜査記録はお手元にあると思うんです。これは十年未満であれば、所轄の狭山警察が保存していることになるんですか。
#114
○政府委員(高松敬治君) おそらくその検視、その他の記録があるとすれば、狭山警察署にあると思います。
#115
○佐々木静子君 もう時間がございませんから法務省の刑事局長に伺いますが、これは、実は、つい最近になって、この善枝ちゃん殺しに関する捜査記録の一部をわれわれが見ることができたわけでございますが、手持ちの証拠のほとんどをまだ捜査官が握っておられて、公開されておらない。これは、石川一雄さんは一審は死刑の判決を受けている。しかも、これは時間の関係でごく一部を申し上げたのですが、いまも申し上げましたように非常に疑問の多い事件である。
 すでにこの事件を真剣になって調査している人がたくさんおって、八十万の人たちがこの事件はおかしいということ、公正な裁判をやってくれという要望書が出ているわけでございまして、八十万人の要望というものは、かつて松川事件で、非常に大きな国民運動となって国民の多くの人たちから、この裁判はおかしいという声があがったわけなんですが、しかし八十万という多くの人たちが要望書を差し出したというのは、これが日本の裁判史上初めてではないかと思うわけです。
 私、実は、昨日狭山に、現地に行ってみたわけでございますけれども、いろいろな熱心な方々が、弁護士さんもおられる、あるいは学生さんもおられる、あるいは法律学者もおられる、いろいろな方がこの事件はほんとうにおかしいということで、皆さんがいろいろ調査しておられる。また、おかしいという声がだんだんに広がっている。そういうときに警察官がひとり手持ちの証拠を国民の前に公開されない、あるいは被告の前に公開されないということは、これはたいへんに危険なことだと思います。人間の生命は全地球より重いというのは、これは最高裁の判決のとおりでございます。この狭山事件の真相を一日も早く国民に知らせてあげるために、ぜひとも手持ちの捜査記録の公開、手持ちの証拠を残らず国民の前に出していただきたい。被告の前に出していただきたい。この事柄について法務省の刑事局長の御意見を伺いたい。そしてそのようなお約束を何とかしていただきたいと思うわけでございます。
#116
○政府委員(辻辰三郎君) いわゆる狭山事件につきましては、御案内のとおり、現在東京高等裁判所におきまして第二審の公判が係属中でございます。現状におきまして、前回期日の本年の二月十五日に弁護側から新たに証人三十数名の申請も行なわれて、なお今後いろいろ慎重な公判が進められていくだろうと見ておるわけでございます。で、私ども検察の立場におきましては、あくまで真相を究明する、公正な裁判が実現するということに、もちろん検察官も協力すべきでありまして、従来ともそういう態度で臨んでおるわけでございます。しかしながらこのいろいろな証拠物、あるいは証拠書類の開示の問題につきましては、これまた御案内のとおり、刑事訴訟法、その他の法律がございます。この法律の規定に基づき、しかも裁判所の一つの訴訟指揮のもとにこれが行なわれていくという段階でございますので、その点は、現時点におきましては、裁判所の訴訟指揮に待つことになろうと思いますけれども、検察官といたしましては、あくまで事案の真相が究明されるよう、公正な裁判ができるよう、十分協力をしてまいるべきことは当然であろうと考えておる次第でございます。
#117
○佐々木静子君 時間がありませんので、最後に、それでは裁判所の訴訟指揮に待つことは当然でございますが、被告のほうから、あるいは弁護人のほうから要望があった場合には、この証拠の開示ということについて、当然に、検察官あるいは法務省は御協力いただけるという趣旨でございますね。そして公平な裁判、真実の追及のために御協力いただけるということをお約束していただけるわけでございますね。
#118
○政府委員(辻辰三郎君) 問題は、具体的な事件の訴訟の指揮という問題でございますので、これはあくまで裁判所のあるいは裁判長の権限の問題でございます。私ども法務省の立場におきましては、事件を離れまして一般的な一つの心がまえといたしまして、あくまで公正な裁判の実現に協力するというつもりでおるわけでございまして、具体的な案件の取り扱いにつきましては、これは裁判所の判断に待ちたいと考えておるわけでございます。
#119
○佐々木静子君 それじゃ最後に大臣に伺います。
 公正な裁判の実現、あるいは人権を守る、あるいは無実の人を罪におとしいれることがないようにするというのが、これが刑事訴訟法の理想であると思いますし、また、法務省としては第一義にお考えになっていらっしゃることと思います。こうした事柄について、また、いま問題になっている部落差別の問題について最終的に大臣の御決意を承って私の質問を終わりたいと思います。
#120
○国務大臣(前尾繁三郎君) 裁判はもとより、訴訟も公平でなければなりませんし、いわんや無実の人を罪するということは、絶対にこれは避けなければならぬことであります。したがって、ただいまいろいろお話しを伺いました善枝ちゃん殺しの事件につきましても、当然これは公正な裁判が行なわれることをこいねがっておるわけでありますし、また、それについて協力をすべきだと思います。さらに当然部落民に対する差別待遇というようなことは絶対にこれはやってはいけないことであります。その点は十分留意してわれわれは今後ともやっていくつもりであります。
#121
○岩間正男君 時間があまりありませんので、端的にお聞きをしたいと思います。端的にお答えを願いたいと思うんですが、犯罪史上前例のないといわれる連合赤軍の残忍きわまるこのたびの暴行、殺人、リンチ事件について法相はまずどういうお考えをお持ちになるか、先にお伺いしたいと思います。
#122
○国務大臣(前尾繁三郎君) 連合赤軍の事件が非常に残忍な事件であり、社会に大きな影響を与えておるということについては、これはもう申すまでもないことであります。したがって、これはあくまで徹底的に調査をし、また、その全貌を明らかにし、また彼らの考えておりました意図あるいは組織、そういうものを明らかにして、そして根絶をしていかなければならぬと思いますし、今後につきましても、できるだけ早期検挙をして、こういうような大きな被害が起こらないように最善の努力を進めるべきものだと、かように考えておるわけであります。
#123
○岩間正男君 このようなことについては、これはあくまで根絶する態度で臨まれると、こういうことでありますが、そのような対策を進めるについても、この集団暴行、リンチ、殺人というような事件の背景あるいは原因、こういうものを法務大臣はどうお考えになっていらっしゃるのか、これが今後の法務対策上、非常に重大な問題だと思うんですけれども。
#124
○国務大臣(前尾繁三郎君) その原因について申しますなら、われわれ率直に言って、通常の常識をもってしては理解できないわけであります。しかし、時代の波といいますか、教育全般の風潮もその遠因としては考えなければならぬと思いますし、また近因としましては、とにかく、何と申しますか、こういう過激なやり方をやらなければならぬという、まあこれもやはり最近における多少青年諸君の気持ちが、そういうところにもあるかとも思うんでありますが、いずれにしましても、あくまで合法的に、あらゆる政治運動はやっていかなきゃならぬものだということに対する考え方が、薄れてきておるわけであります。そういう点について、われわれはやはりこれは全般の風潮といいますか、教育その他のものの考え方について、十分深い反省を持って対処していかなければならぬと、かように考えておるわけです。
#125
○岩間正男君 法相のただいまの御説明の中に、これは過激なそういうことに落ちていく、そういう時代の風潮とか何とかというようなことで、まあこういうような連合赤軍に対する同情というものを、そういうものをちらっとのぞかしていると思うんですが、これは私は非常に問題だと思うんです。これはもう革命とか何とか、そういうことを言っておりますけれども、そういうものとは全く無縁な、まるでこれは架空なそういう幻想のもとに、しかもあのような残忍な行動をやっている。この点は非常に私は厳重に考えなければならぬだろうと思います。したがいまして、私たち、この原因究明というやつはもっと厳密にされなければ、この問題根絶とか何とか言ったって、これは禍根を除くことはできないのではないか、こういうふうに思うんですが、この点、あらためてお聞きいたします。
#126
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私は何も同情のことばを言ったわけではないのでありまして、あくまでこの事態を厳正に追及して、そして彼らの意図あるいはその組織、そういうものについての正しい追及をやっていかなきゃならぬと、かように考えておるわけであります。
#127
○岩間正男君 まあ具体的な原因の究明というものについてお述べにならなかった。非常に一般的なんでありますが、私はこれに二つあるのじゃないか。一つの問題は、中国の大国主義に、こういうものにかぶれる。つまり毛沢東の人民戦争万能論あるいは唯武器論、こういうようなものを盲目的、機械的にわが国に適用する、実践する、このような盲従主義者とトロツキスト暴力者たちの野合による、これは当然のいわばその結果としてこういうところに追い込まれているということを、この背景の原因の中にはっきり指摘することができる。これは私たちたくさんの具体的なそういう例をはっきりあげることができる。
 もう一つは、何といっても政府自民党が、さらに財界などもそうでありますが、この学生たちを甘やかしてきた。ある意味では泳がしてきた。そうしてそれを反共宣伝の目的に利用してきた。こういうやり方が今日のような事態を生んだ二つの原因だと思うわけでありますが、どうでしょう。
#128
○国務大臣(前尾繁三郎君) 第一点には、中国における革命思想というものが影響を与えておることは、私は認めます。確かにそういう面があると思います。
 また第二点につきましては、ただいま泳がしておるというお話でありますが、私はそうは考えていないのであります。ただ御承知のように、現在は、非常にいわゆる卒業しましても、ほとんど就職に困らぬというようなために、あるいは親たちが、非常に以前から見ますと裕福になったり、そういう点で甘やかしてきておる。そういうことについては、私も否定はいたしません。そういうこともあるかと思います。
#129
○岩間正男君 まあいま政府の政策について、あなたたちは終始一貫これを否定されてきました。われわれは大学問題その以前からこういう事態について当時警告を発し、そうしてこのようなやり方の不当さというものに対しては、はっきりしたもっと処置の方法をとるべきだ、その方針についてわれわれは政府の欺瞞的な態度について追及してきたわけです。ところが、あなたたち、いつでもそれを否定してきた。しかし、問題は事実がどうかということでしょう。たとえば政府自民党の幹部の中でどういう発言をしたか。そういう発言がどういう影響を与えているか。さらにまた、警察なんかとこの学生の行動がどう結んで、どのようにこれは扱われてきたか。ここを具体的に見なければ話になりません。
 たとえば、そういう例ではたくさん例があります。これは保利茂氏とか中曽根康弘氏とか、それから自民党の内部では、もうこのような甘やかし、泳がし、利用する、こういうような発言をした人がたくさんあります。また財界の中でもそういうことを言っていたんです。そういうことをいってきました。だから、いまの体制の中では、あの暴力学生たちを取り締まるよりも、むしろ民青を取り締まるんだとか、そういうようなことを盛んにこれは言ってきた。たくさんの例をあげることができます。
 そんなら、私は、そういう中でなぜ自民党がこのように甘やかし、泳がしの利用政策をとってきたか、そうして、これを政治的な目的に利用してきたか、ここのところが非常にこれは重大だと思うんですね。まあ自民党に対する国民の批判というのは今日非常に大きい。物価問題一つとってみたって、もうこれは話になりません。公約はほとんど守らない。さらには最近の四次防、こういうものから見ましても、防衛政策の点から考えても、もう多年の失政に対する国民の反撃が高まっている。その結果、国民のこれに対する反対運動、統一行動が下から起こっている。われわれ共産党は、こういうような立場で統一行動を通じて国民のこのような命と暮らしを守る、あるいは戦争反対、平和を守る、人権を守る、こういう戦いを国民とともにやってきた。結局そのような戦いの先頭に立っている共産党に対して何とか――いまの政策を続ける限りは維持しなければならぬ、弱体化しなければならぬ。これに対してほんとうに反動的な、反共的なデマを飛ばす。こういうことをやって、そのためにこのような反共暴力集団というものを、これを利用し育成してきたのじゃないですか。私はそういう例をあげれば無数にあるのですよ。あなたたち否定されておりますけれども。これは私は時間の関係から一々あげませんけれども、この点についていまのような御答弁だけでは、これはだれも国民は納得しない、問題の真相を明らかにすることにはならぬと思いますが、この点もう一度お伺いいたします。
#130
○国務大臣(前尾繁三郎君) あなたと私でこれは見解の相違でありまして、われわれは、自由民主党もあくまで人権を擁護し、また、国民の福祉を願って懸命にやっておるわけであります。あなた方からすれば、非常に無責任な態度に見えるわけでありますけれども、われわれとしましては、責任を持っておるから、なかなかそう言うとおりにはいかない点もありましょう。しかし、これがほんとうの国のためであるというので、みんな一生懸命になっておる事実については、これはあなたが、いろんなことをおっしゃっても、われわれは確信を持ってやっておるわけであります。いわんやこういう学生を甘やかしたり、あるいはそれに対して泳がしておるというようなことは、これはもう全く事実と相反するもので、これは率直に申しまして、顧みて他を言うというふうに私どもは考えるわけです。
#131
○岩間正男君 何ですか顧みて他を言うということは。具体的にどういうことですか。ことばのあやじゃ困りますよ。
#132
○国務大臣(前尾繁三郎君) あなたのほうからいえば、非常に攻撃的におやりになることが最大の防御ということになるんじゃないか、そういう意味で申し上げているわけです。
#133
○岩間正男君 何に書いてあるのですか。共産党の綱領か何かに書いてありますか。攻撃は最大の防御だと。そんなばかなこと、あなた根拠のないようなことを言ってはだめですよ。
 私はいろいろ聞きたいんですが、例をあげるとたとえば、安保闘争のときの、あのトロツキスト暴力学生がどういうことをやったか。実際はその背後で警察も糸を引いておったでしょう。鍋山貞親、そういうような人たちが指導者になってばく大な金を出しておる。そしていろいろな作戦までみな与えておった。これはほかでもない、当時の委員長の唐牛健太郎がちゃんとはっきりラジオで公表したことでしょう。これはまぎれもない事実だ。それから背反社事件があります。これは共産党の本部を襲撃する――しかし、これらに対して爆発物をつくるために金を大量に与えておる。こういうこともまぎれもない事実でしょう。さらに法政大学の問題なんかもそうでしょう。法政大学に機動隊が出動した。ところが彼らは機動隊出動の前に事前にちゃんとわかっていて逃げてしまった。そのあとからこれはもういろいろな証拠が出てきておる。たとえば警視庁第一方面隊、それから第七方面隊、第一機動隊、第五機動隊というところに電話帳がありますが、そこに赤鉛筆で書いてあります。そして黒板にはあすの予定、全共闘書記局より四機山田さんに連絡をとること、ガサ入れ情報を仕入れること、こういうものがちゃんと出てきておる。こういう事態についてわれわれは具体的な事実をあげたのです。ところが、実際はこういう問題について解明できないじゃないですか。
 こういう点、私は何ら政府はこれについての解明ができないで、そうしてそこのところはごまかして、結局は泳がした事実はございません、あるいは金を出した事実はございません、利用したことはございません、こういうことを言っているわけです。これじゃ話にならぬ。これは詳細に、時間があって一つ一つこれはわれわれもやる時間がほんとうに与えられればもっと明細にやることができる。
 そういう中で一つ私はお聞きしたいのです。前尾さんいいですか。これは一昨年の京都府知事選のときですね、「よど」号のハイジャック事件が起こった。この赤軍に対してとった自民党の態度は一体どうだったですか。あのとき、ちょうど四月の初めごろなのに、おりから自民党の田中前幹事長が京都入りをしている。そこで演説をしたでしょう。どういう演説をしたか。赤軍は共産党内の過激派だ、こういうことを演説したわけであります。これに対して直ちにあなたが深い関係を持っておられた柴田派のいわゆる三党連合の機関紙「若い京都」は、赤軍による日航機乗っ取り、これが共産主義者の正体だという大量の宣伝物を京都府全域に配布しました。まさに勝つためには手段を選ばないというやり方なんです。そして共産党、社会党の統一戦線、これによって守られてきたこの民主府政というものを、何とか反動の手に再び奪い返そうとやったことは、これはまぎれもない事実でしょう。私も京都の選挙には相当何回も参りましたから、これらの具体的な事実にはタッチしてきました。しかし、それがいかに事実に反する宣伝であるかということは、このデマ宣伝に対して、京都地裁の舞鶴支部に対しまして、共産党の地区委員会からこれを告訴した。まさにこれは事実に反するけしからぬ行為だ。こんなものをこのままに出させることはできない。これに対しまして舞鶴支部では即刻これを仮処分に付しました。そうしてビラの発行を差し押えた。こういうことでもこれは明らかだと思うのですが、こういうことからいいましても、法的にこのようなやり口に対してはすでに審判が下っている。明確な事実です。これはいかがにお考えになりますか。
#134
○国務大臣(前尾繁三郎君) 田中君が言ったのはたしか共産主義者と言ったんじゃなかったかと思うのです。その点は別に共産主義には違いないわけであります。その当時いろいろそれははっきりさせたはずだと思います。選挙等の結果については、何もそういう問題から、あの戦いが破れたというわけではないのでありまして、また、われわれは何らの警察に圧力をかけるとか、そういうことを何にもやっておるわけではなしに、また、あなた方もずいぶん事実無根のことを言いふらしたり、われわれは非常に迷惑しておるのです、ずいぶんでたらめな宣伝もおやりになるので。まあそれは選挙の際でありまするから、いろいろとお互いにやり合うことはあると思います。しかしわれわれはそんな違法なりあるいは不実の宣伝をやるというふうなことは考えていなかったわけです。
#135
○岩間正男君 あのときの総括責任者、自民党のあのとき最高責任者で、あの選挙を勝ち抜こうということは、あなたの政治責任をかけておられた問題だと思います。そういうことですから、そういう立場で、選挙の中で起こった事柄ということで、この問題をあやふやに御答弁になったんでありますけれども、私は何も法相をここで個人的に糾弾するとか、そういうことで言っているのではありませんよ。ただ、自民党が泳がせるとか、それを利用した政策をしないと言っているから、いまはっきり具体的な事実をあげて、現に「若い京都」は、赤軍による日航機乗っ取り、これが共産主義者の正体だ、こういうふうに言っていますから、言ったのであって、あなたたちは――共産党と言ったんじゃないとか何とかあなたたちは弁解するでありましょうが、これがあの中で戦かわれている選挙、はなはだしい、ほんとうにいままでも珍しいと言われたこの選挙戦ですから、しかも大量に、全都にこういうビラがばらまかれるということは、反対のために利用する、そういうことであったことはこれは明らかです。
 それから共産党――こちらの民主勢力側でもいろいろ出した、それもずいぶんデマだということを言われますが、あなたたちは、なぜそれなら、仮処分の措置をとったらよかったじゃないですか。ところが、実際は、政党に対するこれは非常に大きなデマですよ。そして、根こそぎ暴略的なくらい宣伝に持っていこうとした。あなたは、この結果負けたんじゃないと言うけれども、私は、佐藤さんと終わってから廊下で会った。どうして京都勝ったんだろうと言うから、こう言ったんです。それはあなたたちは、京都の人たちの気持ちを知らない、こういうきたない大量の宣伝をやって、そうして、どうして京都の人たちがこのようなきたない物量の中で、すなおに自分たちのこの気持ちが守られていると考えることができるか、結局、京都の人の気持ちというものをさかなでしたから負けたんじゃないですかと、佐藤さん、そういうものですかなと言っていましたが、こういうきたないやり方です。こういう結果起こっているんです。結局、あなたたちは京都市民の審判を受けているんです。私はこういう点から考えて、あなたは最高責任として、こういうものまでこれは当時利用した、そういうものに対して少なくともあなたはどのような態度で臨んでいるのか。しかもこのときのハイジャックの最高責任者、田宮というのは、これは連合赤軍の前身の指導者なんです。そういうことから考えますと、ああいうような使い方、ほんとうにこれは甘やかしている。そして、これを利用する、宣伝のためには、これは何でもやる、そういうようなやり方が、こういうものを生んでいる大きな根源だと言われても、これは弁解のしようがないじゃないですか。どうなんですか、この点もう一ぺんはっきり御答弁いただきたい。
#136
○国務大臣(前尾繁三郎君) 連合赤軍もやはり共産主義者には違いないと思います。
 それから、ただいまいろいろとそういうようなことを宣伝に使ったというお話でありますが、実際、御承知のように、あのときにはわれわれよりもあなた方のほうが十倍もビラをお配りになって、ずいぶんひどい宣伝をされたこともこれは事実であります。したがって、ここで、国会でその選挙の論戦を再び繰り返そうとは思いませんが、率直に申しまして、われわれは合法的にやったんで、別にここであなたから批判をされるあれではないというふうに考えておるわけで、これとそれとは私は全く別の問題だと思います。
#137
○岩間正男君 別の問題だといっても、私は具体的な事実をあげて、そしてあなたたちの陣営が大量にこれを使って、結局は、地裁がこれに対してストップをかけなければならない、そういうような違反のやり方をやったわけです。こういうやり方が、結局はこういうものを生んでいる――今回のような連合赤軍を生む大きなこれは根源になっているんだということを言っているんです。
 ついでに、これと関係しまして、これはいままでどういうことをやったか、連合赤軍とトロツキスト、暴力学生の大学における暴力支配の実態について、これは最近の、いままでの実情の二、三をあげて、法務大臣にこれに対する見解を聞いておきたいと思うんですが、現在、早稲田大学、法政大学、同志社大学など全国で四校、二十六学部がトロツキスト、暴力集団に封鎖されて授業もできず、登校もできない状態になっています。学園の暴力支配を大学当局や政府、警察などが事実上容認しておる、これが泳がせ政策であり、赤軍派を育てるこれは温床になったと思います。そういう中でこれは犠牲者が出ておるのでございます。早大第二部文学部の学生、山村政明君、彼は、一昨年こうした暴力支配に抗議して焼身自殺をしておる。あるいはまた、東北大学理学部一年の玉沢健二君、彼は三月十八日未明のことですが、学園の荒廃を救えという遺書を残して服毒自殺をしておる、こういうような犠牲者が数限りなくあるわけです。こういうことを起こしておる、これらに対して一体法を守る立場から政府としての責任はどういうふうに考えておるか、この大学のこういうような問題につきましても、これは法務大臣の見解を伺っておきたい。連合赤軍の問題が起こって今日これはちょっと鳴りをひそめているようなかっこうをしているかもしれないけれども、決してそういうものが根絶されているのではない、また機会を見れば、いつ何どき動き出すかわからない。だからこの点についてのはっきりした見解を承っておきたいと思います。
#138
○国務大臣(前尾繁三郎君) 大学紛争については、もうすでにいろいろ言われておりますように、第一次的には、大学の自治を認めるという立場にあるわけであります。第二段として、ただいまのようないろいろな不法行為がその中で行なわれるということであれば、国はやはり断固として接せざるを得ないという立場のもとに、従来から大学紛争の処理に当たったわけであります。最近だんだん鎮静はいたしておりますが、決して根絶するとかそういう問題ではないと思います。したがってわれわれは十分それに備えながら、あくまでそういう暴力行為、その他の破壊活動が行なわれないように最善の努力をすべきだと思っております。数多い大学でありまするから、いろいろなことがあることは私も事実承知をいたしております。また、大学当局ももっと率直に国との協力のもとにそういう遺憾なことのないように努力をしてもらいたい、協力をしてもらいたい、かように考えておるわけです。
#139
○岩間正男君 大学の自治を認める、この点はわれわれも多年主張してきたことであり、大学問題の中でもこのくらい、われわれ共産党くらいこの問題を主張してきたものはないと思う。しかし暴力学生というのは、実際ほんとうに、民主的な運営、そういうものを破壊し、そういう目的のために、この暴力集団があばれておる、こういうものとはこれははっきり峻別しなければならぬ。いかにもこれは大学の自治とか、そういうことを言っておるけれども――実際は、全体を統一して、ほんとうに民主的な、学生たちが自分たちの力を結集して、いまの大学問題に起こっているいろいろな矛盾、これを解決するために戦っていく、そういうような方法を実は非常に妨害している、破壊している、統一戦線を分裂させる目的をもってやっている。そういうものを全く同じに扱って、いまのようなやり方で自治だ、こういうことでありますけれども、私はそれじゃ話にならないと思います。この点は警察の態度についてもこれは言える、それから文部省の態度についても言える。文部省のこれは大学局長来ておりますか、まだ見えておりませんか――この点についてどう思うか簡単に言ってください、時間の関係で。
#140
○説明員(齋藤寛治郎君) ただいま大臣から申し上げられましたとおり、大学は自治でございますので、大学が主体的に自分の教育研究の場を確保するというような努力をされておるわけでございます。ただいま御指摘ございました学園封鎖等のこともございますけれども、その中にあっても、教育研究を放棄しておるのではなくて、大学に説得と働きかけの努力を重ねておるというのが実体かと思います。
#141
○岩間正男君 これは実は文部大臣の出席を求めたのでありますけれども、見えられなかったが、少し政治的な課題と関連するので、実はそういう機会をさらにつくりたいと思うのですが、どうもこの方針が明確だということは言えないと思う。
 そういう問題とも関連しまして、一昨日問題になりましたこの金沢大学の学生が、石川の公安局にしのび込んで思想調査の秘密文書を盗んだ、こういうのです。この問題について警察当局では調べておりますか。この経過を簡単に述べてもらいたい。
#142
○政府委員(高松敬治君) 三月の二十日に、石川地方公安調査局から金沢中警察署に被害の届け出がございました。事件は、本年、二月の二十二日の夜から二十三日の朝までの間において、石川地方公安調査局二階事務室のロッカーに格納中の調査資料等が盗まれたという事件でございます。それでいろいろ捜査を進めておりましたところ、三月の十八日に、同調査局調査第一課の公安調査官の村本宏之という者が、自分が知り合いの学生を使って盗ませたということで、金沢中警察署に出頭をしてまいりました。それで同人を窃盗罪により同日逮捕するとともに、共犯である鈴木俊一という学生を同夜逮捕して現在取り調べ中でございます。
#143
○岩間正男君 二人で忍び込んだんですか。それともう一つ。この学生のことを調べたと思うんですが、これは中核派の学生だと聞いておりますが、つまり、暴力学生の一味なんだと。その点はいかがですか。それは中署で発表しているはずですよ、当初。
#144
○政府委員(高松敬治君) 事件の当日は、村本のほうは名古屋のほうに出張しております。実際に犯行を行なったのは、鈴木俊一という学生でございます。それから本人につきましては、現在一応調べを進めている段階で、まだはっきりいたしませんが、現在はそういう活動をやってないようでございますが、かつては、そういう集団に属していたことがあるというふうなことを漏らしております。
#145
○岩間正男君 これは盗ましたんですね、村本が鈴木を使って。――それははっきり確認した。それからかって中核派、いまどうとかいうことは調べてみなければわからない。いまはしょっちゅう村本と月に二、三回ずつ会っている。そうしてこういういわば公安調査庁の手先になっているのだね、この点はどうなんですか。
#146
○政府委員(高松敬治君) ただいまいろいろな動機その他については捜査を進めている段階でございます。したがいまして、まだ全部捜査が終了いたしておりませんので、それらについての答弁は差し控えさしていただきたい、かように思います。
#147
○岩間正男君 公安調査庁長官の調べた経過を、概要を述べてください。
#148
○政府委員(川口光太郎君) お答えいたします。
 事実関係は、先ほど警察庁の高松刑事局長からお答えしたとおりでございます、大体において。
 そのほか若干私のほうから追加して申し上げますと、事件を発見したのは、二月の二十三日の午前八時ごろでございますが、便所の窓が開け放され、どろぐつのあとが洗面台に残り、ドアが半開きになっており、ロッカーも少しあいていた。これはかぎのかかってないロッカーでございます。電話線が二本、二階にありますがそれが二本切られていた、こういう状況がありました。それで、さっそく、これは外部から物取りが入ったんではないかということで、登庁してきた職員に、盗まれたものがあるかどうかと、一応ロッカーとか、机を点検させましたところ、別にとられたものはないようだということで、当日から二、三日間は、ほかの作業もしまして、そのまま届けをせずに電話だけ修理していたわけです。
 ところが、数日後になりまして、どうも書類がなくなっているらしいということを、一部の者が言い出しまして、それではいけないというので、全部の書類を総員で二月の末ごろから点検しだして、三月六日に至りまして、八十点ぐらいの書類がなくなっていると――書類は十ぐらいのロッカーに何万点とあるわけですが、一々台帳とこれを照合したんだそうでございます。で、被害届けを出す以上は、全部明らかにした上でないといけないと考えたと局長は言うのでありますが、そのために非常におくれまして、三月六日に書類が盗難に会っているということを確認いたしまして、中間監督機関である中部公安調査局へ局長が出張いたしまして報告する。その結果、翌日警察に届けを出して警察に捜査をおまかせしてこちらも協力する、と同時に、夜間わざわざ電話線を切るというのは、私たちも報告を受けて怪しんだのですが、どうもわざわざ外部から入ったということを見せるための偽装工作ではないかという疑いもありまして、しかも金の入っているロッカーは全然さわっていない、書類だけが盗まれているというのが怪しいということで、内部の者の犯行ではないかという疑いもありましたので、中部公安調査局から応援を派遣いたしまして、現地の中村良三地方公安調査局長でございますが、これが中心になりまして、内部の者に一々と当たっておりましたところ、かねて勤務成績が不良で目をつけて、進退のことまで考えたことがあるそうでありますが、村本という調査官の様子が非常におかしい。調査にも協力しない。問い詰めたところ、三月十七日の夜に、事件は実は自分がやったということを申し出たそうでございます。それで説得いたしまして翌十八日の朝警察へ同道して出頭させて自首させた、こういう経過でございます。
 それからその自首させる段階では、鈴木という学生を使ったということしかわかりませんでしたが、その後逮捕されて後、私のほうで調べましたところ、この鈴木俊一という学生は、昭和四十四年の四月、金沢大学の法文学部に入学したわけでございます。村本調査官は学生担度ということで入学式の当日と思いますが、大学前の喫茶店でその本人と知り合って、学内に配られる過激派集団のビラとかなどを自分のほうに渡してもらいたいということで、いわゆる協力者程度の、軽い協力者でございますが、この協力者に獲得した。ところが、二回ばかり何枚かのビラを持ってきたそうでございますが、六月、たしかASPAC闘争と思いますが、このときに本人が検挙されまして所在不明になってしまったわけです。その後、連絡をとろうとしても、所在もわからないということで、一応二回くらいで協力関係は切れております。その後正式に協力者であるということから削除といいますか、したという関係になっております。
 ところが今度の事件が発覚しまして、これは一昨日から勾留状が出まして、二人とも勾留されておりますので、検察庁のほうから聞いたのでございますが、そういう公的な協力関係は四十四年の六月以来切れておるが、その後また鈴木が大学へ戻り、個人的な友人として村本調査官とこれがしょっちゅう会っていた。そういうことが最近わかりました。その程度でございます。
#149
○岩間正男君 いま報告ありましたが、それを全幅的にわれわれは承認するわけにいかぬですね。そうなってしまうと、二カ月前から協力関係は切れておったとか、処分したとか、しかし友人関係では続いておって、友人としてやったのだ、こんなことを言っておりますが、とにかく三年来のそういうつながりですよ。そうしてとにかく調査官が使嗾するか頼むかどういうふうにしたのかわかりませんが、手先の学生を使って書類を盗ませる、公安調査官が物を盗ませる、こういうことですね。これは非常に重大な問題なんです。これについてはあなたたちはどういうふうに処分されるのか、前尾大臣にお聞きしたい。
 もう一つ、この内容は何か、これは思想調査、時間の関係からその内容については言いません。つまり共産党の党員、それから同調者、これが金沢市内の小学校のそういう先生、こういうことで、これはみな調べた。これは教育委員会にそういう要請をしたのか、強要をしたのかわかりませんけれども、そういう形でこれは出された。向こうもそれを調べておったということはわかったわけだ。教育委員会が調べていなければ、こういうことまで出てないから、このこと自身が大きな問題になった。今度はそういう形で頼んでとにかく思想調査をやれ、この二点、これはどういうことになりますか。公安調査庁はこのような思想調査をやっているのかどうか。これを方針としているのかどうか。これは一昨日は、法務大臣はそういうことを方針としていないと、こうおっしゃった。しかし実際は現実に起こっておる。どういうふうにこれは処理をするのか。
 もう一つ公安調査庁がこのような学生、いわゆるトロツキスト学生、こういうものとこのような関係を持っている。そうして行なわれておるというのは、単に金沢だけの問題とは私は考えられない。例をたくさんあげること、これもできます。こういう点について基本的にどう考えるのか。これは御両所から御答弁願いたい。
#150
○国務大臣(前尾繁三郎君) 石川県の今回の事件は、非常に不祥な事件であります。ただいま調査中でありまするから、徹底的に調査をいたしまして、それに応じて厳正な処分をしていかなければならぬと、かように考えておるわけであります。また、一般的な思想調査というような行き方はこれは私従来から言っておりますように、われわれはとっておる方針ではありません。具体性を持っていろんな破壊活動が行なわれておるという、関連性のある事項について調査をするということは考えておりますが、一般的に思想調査をやるというようなことはわれわれは考えていない、その点は明らかにしたいと思っております。
#151
○岩間正男君 この場合は具体的にどうなんです。これは共産党の員、あるいはその同調者だということでこれはやったわけですが、これは思想調査でないとこうおっしゃるんですか。
#152
○国務大臣(前尾繁三郎君) いまの場合には、確かに思想調査のように考えられます。
#153
○岩間正男君 だから、文部省では通達を出したわけですね。この前、衆議院でこれが追及されて、通達を出した。ちょっと通達を読んでみてください。
#154
○説明員(鈴木勲君) 三月の十七日付で、文部省の初等中等教育局長名で通知を出してございます。
#155
○岩間正男君 ちょっと通達の中身を読んでください。
#156
○説明員(鈴木勲君) お読みいたします。「最近、石川県において、金沢市教育委員会の一職員が公安調査官の求めに応じて教職員の住所、職歴等を答えたことに関して、教育委員会自身が教職員の思想調査を行なっているのではないかとして石川県議会で問題とされ、また、国会においてもこの問題が取り上げられました。いうまでもなく、教育委員会が教職員の思想調査を行なうことは、本来あり得ないことであり、貴教育委員会としてもじゅうぶん承知のことと思いますが、今後とも社会一般の疑惑を招く行為を行なうことのないよう格段の留意を願います。なお、貴管下の市町村教育委員会に対しても、このことの周知徹底について、遺憾のないようお願いします。」
#157
○岩間正男君 ただいまのこの通達が岩間文部省初中局長が出されたわけですね。これはまあ、非常に十分だとは言えない点もあります、むろん。ただ、ここでそういうことを、教育委員会自身が教職員の思想調査を行なって――やることですね、それは本来あり得ないことだということをこれは確認しておりますが、この点は、まさにその通りだと思うわけです。しかし先例は石川県だけではありません。北海道にもありました。調査の問題でわれわれはいままで見てまいりました。特に今度の長野の場合はどうですか。これは全く教育委員会がそういうような指令まで出してそれをやる、こういうものに対して具体的に――単に一片の通達だけでは私はこの問題はなかなか効を奏さないと思う。むろんこの通達そのものは守られなくちゃならないわけですけれども、そうなかなかいかぬのです。こういうものについてこれは課長さんだからちょっと無理かもしれませんが、どういう見解をあなたは持っていますか。簡単でいいですから。
#158
○説明員(鈴木勲君) 通達の趣旨を遂行するための主管課長会議等におきまして、その趣旨をさらに十分説明をして徹底をさしていきたい、かように考えております。
#159
○岩間正男君 北海道、それから長野には具体的にはどうします。これは福岡でも起こっている。具体的にそういうことがものすごく起こっている。どうします。
#160
○説明員(鈴木勲君) 北海道の問題、また長野県の問題、先生の御認識と若干違う点があるかもしれませんが、そういう疑いを招くような行為はやるべきではないということでございますので、そういうものも含めまして指導してまいりたい、かように考えております。
#161
○岩間正男君 いやしくも、これは憲法違反の重大な問題なんです。教育政策の基本に関することだからね。こういう思想の、言論の自由というようなものが守れないところからいろんな問題が発生しているのです。こういう点についてあいまいな態度は許されないと思う。
 そこで、法務大臣にお伺いします。これと同じような趣旨の思想調査をやるべきでないという通達は、少なくとも文部省が出している。文部省がそういう通達を出さなければならないような事態をあなたたちは招いた。そうして、しかもこれは単に金沢だけの問題と私は考えない。何ぼでも例をあげられる。全国的にこういうような事態が起こっている。そうして思想調査の問題について、公安調査庁の今後の運営のあり方について、どのような明確な方針を持って臨まれるか、ここで明らかにしてほしいと思うのであります。
#162
○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど来から申し上げておりますように、われわれはそういう方針をとっているわけではないので、その点十分周知徹底するように今後訓練をしていきたい、かように考えているわけであります。
#163
○岩間正男君 長官は。
#164
○政府委員(川口光太郎君) お答えいたします。
 石川県の事件は私どものほうでは、思想調査したとは考えておりません。私どもの調査対象団体である特定政党の活動、それの教組の中への浸透状況等を調査するために、その手がかりとなる情報を得たいというのが動機でございまして、担当の荒井調査官は奥主事とは前から個人的な知り合いであった。その知り合いの個人的な親しさから、金沢市の教組の中で、その特定政党の党員あるいはこれと同調者であるといううわさのある人物の名前を端緒として聞き出した。それを手がかりとしていろいろ調査した。その後、聞いた氏名の半数くらいはどうも党員または同調者でないらしい、あるいは一部に社会党員もいたというようなことがわかったということを聞いております。私どものほうでは思想調査ではないと――先ほどの大臣の御答弁と、ちょっとこれは事実関係違うのかもしれませんが、私どものほうでは正しい調査であると確信しております。
#165
○岩間正男君 大臣は思想調査だと答弁をした、あなたはその場にいて聞いていたでしょう。あなたはそうでない――そういうことあり得るのですか。
#166
○国務大臣(前尾繁三郎君) それは、もう少し具体的に調査をしなければわかりませんが、まあただいまあなたのお話のようなら、思想調査のように考えると、こう申し上げたので……。
#167
○岩間正男君 長官だって、調べたといったって、係争中だから十分調べられないといっているけれども、いまのような結論を出すことは不謹慎ですよ。そんなことが言えますか。法務大臣ははっきりそう言っている。しかも自分の何をかばうようなやり方で、実際に行なわれているところに問題がある。少なくともそのようなやり方で二つ問題があります。
 一つは思想調査の問題、そしてこれにはほかの調査官が二人タッチしているわけです、いままで。そうでしょう。そうして教育委員会にこれを押しつけて、そこから材料を出さして、それをさらにあんたたちの仕事にしている。このことはひとつ非常に重大な憲法違反の問題だ。それと、次の問題は、このような暴力学生、こういうものを使って、手先にして、これを盗まさしている。そこまで腐敗堕落している、この姿。しかも、そういうような方針でないと大臣はおっしゃった。そうすると、方針に全部違反している、その連中は。私はお聞きしますが、どのようにこれは今後処断されるのか。
 もう一つは、このような通達を、少なくとも文部省並みの通達が出されるのが、当然、法務大臣の立場ではないかと思いますが、いかがですか。この二点をお伺いします。
#168
○国務大臣(前尾繁三郎君) 通達を出すか出さぬかという――従来どういう通達を出しておるかわかりませんが、むしろもっと徹底するように、みんなに研修なりそういう面で徹底をさしたい、そういうふうに考えております。
#169
○岩間正男君 時間がございませんので簡単に――非常に不十分で、もっと具体的にやらなくちゃいけないんですが、今度の機会にいたします。
 最後に申し上げておきますが、このようなトロツキストを甘やかし、泳がして利用する政府自民党の政策が、彼らを増長させて、今日ついに連合赤軍というようなものを生み出す。革命とはおよそ縁もゆかりもない強盗、リンチ、殺人、そしてこういうことをやる反共殺人集団にまで至らせた、この一切の大きな根源は、少なくともここにある。この政治責任を私はまず明らかにすべきだと思います。さらにトロツキスト暴力集団というものは元来こうしたものなんだ。その発生当初から、彼らの本質を徹底的に私らは明らかにしてきた。そしてこれを糾弾してきた。終始一貫その排除をきびしく訴え続けてきたのは、これはわれわれ共産党ということは、まぎれもない事実であります。これは安保闘争時代も、あのような暴力学生の問題、そういうものをわれわれは指摘し、これが全体の国民の大きな統一、団結、そしてあくまで平和を守り、戦争に反対する命と暮らしを守る、そのような国民の大きな下からの民主的な運営によって日本の政治を変えなければならぬ。これが共産党の主張でありますから。そしてそのような統一に対して、まさにこれを破壊し妨害するこの目的のもとに行なわれてきた、こういうものに対して対決していかなければならない。しかし獅子身中の虫というものに対して、われわれはこれを指摘して排除することを主張してきた。いま問題はここまできた連合赤軍の問題、日本の国民だれ一人としてこういうやり方、これはもう文化人やそれから知識人、あいまいな中にこれを途中で擁護していた者もありますが、今日鳴りをひそめている。しかしその根源というのは、これは断たれたとは言えないのでありまして、しかしはっきりやはりこういうかっこうに現実になってきた。こうなれば、われわれは明確にこの政治の責任を指弾しなければならないと思う。
 ところが、実際はどうかというと、こういうことが最近行なわれている。あれは共産党と関係があるんだ。実際はいま共産党は非常にこれは柔軟な政策をとっている。しかしもともとこのような暴力を振るうんだ。それは長官のこの前の内閣委員会で答弁したのはまさにそれである。そうして連合赤軍と関係があるんだということを盛んに宣伝をしている者がある。現に衆議院の本会議でもそういうことを演説した者がある。これは自民党の元老の中でもこういう演説をしているのがある。それから暴力団体、こういうものは外部に盛んにこれをいまやっている。これは法務大臣にお聞きしますが、この政治責任をどうするかという問題、共産党は終始一貫この問題についてはっきりとこういうものを排除すべきだという態度をとってきたことについて、これはお認めになるのか、ならないのか。
 第三には、そういう立場ともあわせて、一体共産党と関係があるようなこういうデマ宣伝がなされたことについてどういうふうにお考えになるのか。この三点をお聞きしたいと思います。
#170
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私は何も共産党の方々が、この連合赤軍と現在において、いろいろ関係があるとは考えておりません。したがってそういうようなことは厳にわれわれ慎んできておるわけであります。また、それについてあなた方の言うように、われわれが泳がしておるというような考え方は、これはまた逆でありまして、そういうことについても、これはむしろあなた方も慎んでいただきたい。
 要するに、革命ということについては、あなた方も同じ考えでありましょうが、実際の実行方法としては、まるっきり違ったものである。また、いわんやリンチとか何とかいうのは、この集団の習性と考えるべきものか、個人的な性格のものであるか、そういう点についても、まだまだ追及していかなければならない問題でありますが、それとこれとみんな混同していろいろな言説がなされるということについては私は賛成いたしません。
#171
○岩間正男君 最後に一言だけ言いますが、そういうことを言われるけれども、とにかくいままでとってきた態度というものは、これはたくさんの証拠をあげることができるし、それから二、三の証拠をあげたのですよ。ところが、具体的にはそういうものについて実際ははっきり言わないのです。最後に何か抽象的にはぐらかされては困る。それで少なくともこれは利用しているでしょう。先ほどの京都の選挙を見ればわかる。選挙を勝とうとしなければ、ああいうばかげた、見えすいた反共攻撃宣伝はできないはずですよ。しかし京都の人はそういうことを信じなかった。大多数が信じなかった。十五万票の差で社会党、共産党の連合した統一戦線に票が投じられた。民主的なそのような知識階級というものが前進させられた。とにかく利用していることは事実でしょう、あの人たちはね。これは争うことができない。お答えになることができなければそれでけっこうでございます。そういうことで非常に苦しいから、いま何んぼされても殷鑑遠からず、あなた自身が最も深い関係をお持ちになった京都の選挙事件の中で、そういう事実があるのです。だから私は申し上げているのです。個人としての前尾大臣に対して、私はそれをどうこうというわけではないのですけれども、少なくとも法務大臣としてこの問題を明らかにしてほしいと思います。しかし時間の関係もありますから、御答弁がなければけっこうですが、私これで不十分ですが質問は終わらしていただきます。
#172
○国務大臣(前尾繁三郎君) 利用しているとおっしゃられると、われわれははなはだ心外に思うのです。決してそんなことを利用しているわけではない。選挙の結果といろいろ結びつけてお話しになる、それはまあ御自由でありますが、われわれはまたわれわれとして、あの選挙に負けた原因とかそのことについては、われわれの考えもあるのでありますから、利用したというようなこと、あるいは泳がしておったというようなことは、これは発言は慎しんでいただきたいと思います。
#173
○委員長(阿部憲一君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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