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1971/04/21 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第11号
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1971/04/21 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第11号

#1
第068回国会 法務委員会 第11号
昭和四十七年四月二十一日(金曜日)
   午前十時五十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     平泉  渉君     高橋 邦雄君
     重宗 雄三君     長田 裕二君
     松井  誠君     鶴園 哲夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
    委 員
                岩本 政一君
                長田 裕二君
                木島 義夫君
                高橋 邦雄君
                林田悠紀夫君
                星野 重次君
                吉武 恵市君
                加瀬  完君
                鶴園 哲夫君
                野々山一三君
                松下 正寿君
   衆議院議員
       法務委員長代理
       理事       大竹 太郎君
       法務委員長代理
       理事       中谷 鉄也君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
   政府委員
       警察庁刑事局長  高松 敬治君
       法務省民事局長  川島 一郎君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       自治省行政局行
       政課長      遠藤 文夫君
   参考人
       京都大学教授   中山 研一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○火炎びんの使用等の処罰に関する法律案(衆議
 院提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 本日は参考人として京都大学教授中山研一君の御出席を願っております。
 この際、中山参考人に一言ごあいさつ申し上げます。
 中山参考人にはたいへん御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席いただきまして厚く御礼を申し上げます。本日は、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案につきまして忌憚のない御意見を賜わりたいと存じます。
 なお、議事の進め方につきましては、大体十五分程度で御意見をお述べ願い、その後委員からの質問にお答え願いたいと存じます。
 それでは中山参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(中山研一君) ただいま御紹介いただきました京都大学の中山でございます。
 急に御依頼を受けました関係もございまして、最初若干おことわり申し上げたいんですが、準備が不足でございますので、本格的な準備はできておりません。その点をおことわりいたします。それから、大学におります関係で、この種の法律案の必要性その他につきまして、実務的な立場からの経験はございませんので、その点もあらかじめお断わり申し上げておきます。で、与えられました資料を拝見いたしました範囲内でただいまから若干の時間私の考えていることを申し上げまして、審議の御参考にしていただければありがたいと思います。
 それでは、まず私の申します点をあらかじめ要約的に申し上げておきますと、まず第一の点は、火炎びん等の規制に関する従来までの立法経過と申しますか、簡単なコメントを少し申し上げたいと思います。それから第二番目は、現在提案されております火炎びん法がもし提案されなかった場合には、現在の立法、現行法の中でこの種の行為を取り締まる場合にどれだけの立法上の欠缺があるか、つまり今回の立法ができますことによりまして従来の立法の規制とどの程度違ってくるかという、まあ立法上の欠缺と申しますか――現行法上のですね、その点について少し申し上げたい。それから最後に、提案されております法案の内容上の若干の問題点を申し上げたいと、こういうふうに思っております。
 まず第一の点からでございますが、これはもう御案内と思いますが、火炎びんの規制に関しましては、昭和三十年の前後に生じました事件で最高裁判所の確定した判決がございます。これは火炎びんがはたして爆発物取締罰則のいわゆる爆発物に当たるかどうかという形で議論がありまして、これも御案内のように、最高裁判所の二十八年、それから三十一年の判決では、いわゆる火炎びんなるものは理化学上のいわゆる爆発現象を起こすものではない。で、爆発物というのは爆発作用そのものに直接の破壊力があるものをいうという立場から、火炎ぴんというのはこれに当たらないという判決でございます。したがって、この段階で火炎ぴんというものは少なくとも現行の爆発物法では処理できないということが明らかになっているわけであります。
 ところが、その後御承知の刑法改正作業との関連で再び火炎びんの取り締まりの問題が立法改正作業の中から出てまいりまして、これも御承知の昭和三十六年にできました刑法改正準備草案の中では百八十六条の二項、新しい規定が入りまして、一項は本来の爆発物に関する規定でありますが、二項は「爆発物に類する破壊力を有する物」、それの使用、未遂、予備というものを処罰しようという形で立法規定が草案として存在いたします。で、理由書を読みますと、ここに言われている「爆発物に類する破壊力を有する物」というのは明らかに火炎びんを考えていたということが理由書に明示されております。したがって、昭和三十六年段階では少なくとも草案の起草者は火炎びんというものを爆発物に類するものとして爆発物取締罰則の中、もしくは準備草案に新しく挿入されました爆発物に関する罪の中で処理をするという立場をとっておったことが明らかであります。ところが、これに対しましては学界などを中心にしまして反対論がございました。その理由は、「爆発物に類する破壊力を有する物」という規定のしかたがきわめてあいまいであるということ、構成要件が非常にあいまいであるということで罪刑法定主義の関係で問題だということが出ておったと思います。
 ところが、準備草案の作業が一段落しまして、新たに法制審議会の刑事法特別部会で本格的な刑法改正作業が再開されまして、ごく最近刑事法特別部会草案ができました。この中では実は火炎びんの問題がどう扱われたかと申しますと、結論的にはこの規定は削除するという形で落ちついておるのであります。その理由を見てみますと、これは、法務省から出しております第四小委員会の議事要録というのがございますが、この中から火炎びんの取り締まりをこの部会草案から削除した理由としまして、まず第一点は、使用例が少ないという点であります。これは後ほどまあ資料などで、統計上のことがありますので、御紹介もいたしたいと思いますが、使用例が少なくなってきているということと、それから将来火炎びん――将来と申しますのは、この段階では四十三年段階の議論でございますので、この点も御注意願いたいと思いますが、四十三年三月十一日の委員会段階での議論でありますが、使用数が少ないということと、それから将来火炎びんにかわるものが使用されるおそれがあるけれども、どういう形のものが出てくるのか予測できないというふうな形で、火炎ぴんという形での規定にはちゅうちょするという理由が第二点であります。それから第三点としましては、火炎びんが実際に使用された段階では放火、傷害その他の罪を、規定を適用することができるし、また持ち歩いている段階の取り締まりにつきましても、放火予備とかあるいは多数人による場合は凶器準備集合罪等の適用可能性があるということからして、それほどの法の欠缺は心配しなくてもよろしいと、こういう趣旨の理由が付されております。こういった理由から四十三年三月段階では、部会草案の中には火炎びんの取り締まりを目標としたような規定は設けないということに一応決定しておるわけであります。
 ところが、部会草案を形成する過程におきまして、最終の収束は昨年の十一月段階でありますけれども、その前の四十五年の九月段階でもう一度この小委員会てこの議論が出でおります。四十五年の九月二十八日の小委員会では、一応草案の素案なるものが、第一次案なるものが出た段階で、はたして火炎びんの取り締まりを含めてこの爆発物に関する規定の部分をどうすべきかということが再び問題になりまして、非常に簡単ではありますけれども、格別の異議はなかったということの指摘がございます。これは統計などとの関係で若干問題がありますのは、御承知のことと思いますけれども、四十四年が火炎びんの事件が一番のピークに達しました。四十四年がピークで四十五年が減って、また四十六年が増大していると、そういう状況がございますが、この四十五年の九月二十八日の委員会の議論はいわばその減少した時点であったということも注目されますけれども、少なくとも四十四年のピークを経過したあとの議論であるということは念頭に置いておく必要があるだろうというふうに思います。具体的に火炎びん法、今回の法案が提出の動きが出ますのは、新聞紙上等で拝見します限りでは、四十六年の十一月ごろからではないかというふうに考えられますので、この今回の法案の趣旨は主として四十六年における増大に対処するということであったんじゃないか。
 まあ以上がこれまでの立法作業とのかかわり合いでの火炎びんの取り締まりに関する取り扱いの経過であったと言えます。
 それから次には、それでは火炎びん規制のための現行法にどれだけの欠缺があり、今回の法案でどの程度のものが補充されるようになるかというような点を少し明らかにしておく必要があろうかと思いますので、その点を少し申し上げてみたいと思います。
 第一の点は、火炎びんが現に使用されたりもしくは使用されようとしたという場合でありますが、これにつきましては、先ほどもうすでに委員会の小委員会の議論の中に申しましたように、現に使用されたり使用されようとした場合には、たとえば放火罪であるとか殺人罪であるとか傷害罪――結果が出た場合でありますが、結果が出ない場合には放火未遂、殺人未遂等の条項の適用可能性がございます。
 ただ、この点で欠缺をあげますと、傷害未遂の場合は御承知のように現行法に規定がございません。したがって、火炎びんを用いて人を傷害する意図がたとえあったとしましても、それが未遂に終わったという掲合には、傷害未遂の現定がないから、これは処罰できない。ただしこれは御承知のように、暴行罪というのがありますので、傷害未遂は現行法では一応暴行罪で取り上げるということでありますから、全然ないというわけじゃありませんけれども、その点に若干問題があろう。
 それから放火未遂につきましては、これも御承知のように、非現住建造物の放火につきましては未遂の規定がございませんので、人の住んでいないたとえば倉庫に火炎びんを投げつけるというような場合には、倉庫が燃えればもちろん既遂に達すれば放火罪になりますけれども、達しない場合には、つまり単なる物件についての放火未遂というのは少なくとも現行法では処理できない問題が残るというわけであります。
 それから次に、具体的な使用や未遂に至らなくても、火炎びんを製造したり所持したり運搬したりするという推移類型がございますが、これについてはどういう処理があるか、可能か。現行法上の処理としましては、放火予備、まあもちろんこれはすべて目的が必要でありますが、放火予備もしくは殺人予備、それから二人以上の場合には凶器準備集合罪の問題がありましょうし、それから一人でも隠して持っているという場合は軽犯罪法一条二号の該当可能性があります。そうしますと、火炎びんの製造、所持、運搬等につきまして、現行法で欠けてくるものは、一人でかつ公然と所持している場合ということになるだろうと思います。で、この部分がしたがって使用または使用未遂、製造、所持、運搬すべてを含めまして、現行法での欠缺は傷害未遂、物件放火未遂、一人で公然と所持している場合というふうな類型が一応現行法の規定では、形ではまかなえないんじゃないかというようなものが出てまいります。
 そこで、今回の提案されております火炎びん法は、少なくともこの欠缺を埋める、そういう機能を果たすんではないかと思われます。逆に申しますと、これだけの欠缺を埋めるためにも立法が必要かということにもなってまいろうかと思います。で、そのほか、あとで法案の内容の中でも当然触れなきゃならないと思いますけれども、これ以外にも火炎びんの製造、所持、運搬だけではなくて、火炎びんの、まあいわば半製品と申しますか、非常に問題になってくる部分だと思いますが、そこにも所持の規定を広げようとするわけでございますから、その部分ではもう少し広がってくるだろうというふうに思います。
 いずれにしましても、いまの状況から判断できますのは、火炎びんが実際に使用されたりする場合には、もうすでに現行法でほとんど処理できるということがあるでしょう。そうしますと、火炎びん等の不法事犯の異常な増加ということももちろんでありますけれども、実際はこの規定がないためにどういう点に実際の不便があるのかということをもう少し確認してから議論を展開すべきではないかという感じがいたします。特に主体は製造、所持、運搬であると、しかもその半製品であるということになった場合には、当然その現行法の規定のしかたに対する埋め方ということがどこに重点がかかるのかということが明らかになってまいろうかと思うのであります。いまのはただし法定刑の部分は一応排除しておきます。処罰できるかどうかというだけで問題にしております。したがって軽犯罪法なんかの場合にはたして現行犯逮捕ができるかといった問題は残ろうかと思います。しかし、ただこれも御承知のところと思いますが、軽犯罪法でも住所不定その他の理由があれば現行犯逮捕はもちろん形としては可能でございますから、その点では不可能だというわけではございません。
 それから、まあ以上簡単に済ませまして、法案の内容上の問題点について若干の点を申し上げてみたいと思います。
 まず、非常に簡単な条文でございますので、各条項ごとに少しずつ問題を出してみたいと思いますが、まず第一条でございます。これは「「火炎びん」とは」ということで定義の規定でございますが、いわゆる火炎びんなるものの内容が法規定として規定すればこのようになるだろうということはおよそ認められてよろしいかと思います。ただし、問題は、火炎ぴんと火炎びんでないものとをどうして区別するのかという観点からこの規定をながめる必要があろうかと思うのであります。これは全体の構成要件すべてについてでありますけれども、刑罰法規でございますので、典型的なものを規定するということはもちろん必要なことでございますけれども、特にそうでないものとの限界がどこにあるかということを念頭に置いて規定すべきだろうというふうに思います。このことは衆議院でも議論になっております乱用防止というような観点からも重要なことじゃないかと思いますけれども、そういう観点からこの規定をながめてみますと、まず「ガラスびんその他の容器」の「容器」というところがどうしてもひっかかるのでありますが、このガラスびんに灯油その他のガソリンその他のものを入れるということについてはある程度明示されておりますから、もっともそのガラスびんの形状、大きさ等必ずしもどこまでをさすのかということについては問題がありますけれども、と申しますのは、はたして火炎ぴんとしての使用をティピカルに考えた場合には、投てき可能なようなものに限るかどうかというようなことも一つ問題になろうかと思います。火炎ぴんというのははたして投げられないような大きなぴんというようなものも含むのかというようなことになりますと若干問題があろうと思います。ただし、これは投げられなくても時限装置をつければ十分にその使用可能だということも同時に考えられますから、その点については立法者はどう判断するかということになろうかと思いますが、含めるか含めないかという判断になろうかと思いますけれども、ともかくもそういう、単に「ガラスびんその他の容器」ということだけで限定が可能かどうかということが一つの問題があろうかと思います。
 それから「その他の容器」と言われているものがはたしてどういうものかということであります。これは二条、三条にすべて火炎びんの定義規定がかかっていきますので、そこで三条の、特に三条二項の議論とのかかわり合いが当然一条でもすでに意識されなければならないと思うのでありますが、あとでも若干問題にしますけれども、最終容器に限るかという議論が衆議院段階でございました。つまり、そのもの自体が最終的な容器であって、そのものがつまり直接使われるのだと。使われるという意味は、先ほど申しましたように、使用可能な程度の形状、大きさ、類型を備えていなければならないかという問題としてこの「容器」の限定が一条の場合にも必要なのではないかというような感じがいたします。これはまたあとで三条との関係で若干問題にいたしたいと思いますが、一条にもその問題があるかもしれないというふうに思います。
 それから一条の定義では、よくいわれます、これは凶器の中に性質上の凶器と用法上の凶器があるということをよく法学上申しますけれども、提案説明なり提案理由などを読みますと、火炎ぴんというのは銃砲刀剣などと違いまして全然正当な用い方というのは本来ないんだということから出発しておられるように思われます。銃砲というのは本来正当な目的で使えば許可される。で、不法な所持になれば処罰されますけれども、火炎びんの場合には、火炎ぴんとして正当に利用する道というのがはたしてあるのだろうかということが問題になります。もしも、火炎ぴんというのはそういう「人の生命、身体又は財産に害を加える」ことだけにしか使用されないものだというふうに考えますと、これは本来性質上の凶器でありまして、用法上の凶器というものはなくなってしまいます。しかし、そうしますと、この第一条の一番最後に書いてあります、これこれの装置を施したものであって、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」というのは、あまり限定的な意味を持たないのではないかという感じがいたします。つまり、それ以外のものがあるのかということがまず問題にされなければならない。そうしますと、火炎びんではたして正当な用法というものはあるだろうかということが一つ問題点ではないかと思います。この点とのかかわり合いで一条の定義を考えてみる必要があろうかと思うわけであります。
 ただ私は、一条につきましては、どういう点がここから問題になるかといいますと、結局火炎ぴんというのは、したがって、どうしても爆発物に類したものとして考えざるを得ないという問題があろうかと思います。なぜかといいますと、爆発物というものの本来的な使用は――もっともこれは爆発物の実験その他で本来的な使用があり得るかもしれませんけれども、銃砲刀剣の取り締まりというような観点ではこの立法上の処理として火炎びんの処理はできないのであって、やはり爆発物に類したものとしての処理しかできないのではないかという問題が、性質上、用法上の凶器かどうかという問題の中から出てくるのじゃないかという感じがいたします、まあ、やや定義規定でありますので、抽象的な議論しかできませんけれども。
 次は、具体的な犯罪類型が出ております二の火炎びんの使用の罪、第二条でございますが、この第二条につきましては、一項、二項でございまして、一項は火炎びん使用罪の既遂罪、二項は火炎びん使用罪の未遂罪という形で規定がされておりまして、一項は具体的危険罪という形の規定だというふうにいわれております。火炎びんを使用して現に人の生命、身体、財産に危険を生ぜさせた者という規定がございます。
 ここで注意しなければならないと思いますのは、提案説明にもございますけれども、人の生命、身体、財産を侵害するという結果の発生は必要ではないと。したがって、この火炎びん使用罪は、生命、身体、財産に対する結果犯ではなくて、既遂罪そのものが危険犯だということであります。つまり、具体的危険が発生すれば本罪は既遂になる。そうしますと、注意しなければなりませんのは、既遂か未遂かをどこで、つまり一項になるのか二項で落ちるのかということが、どこでこの限界が置かれるかということでありますが、つまり抽象的危険の段階でとどまっておれば未遂だと。しかし、具体的危険が発生すれば既遂だと、こういう形になってこようかと思います。と申しますのは、未遂というのも危険犯でございますから、何らかの危険がなければ処罰されないと。既遂罪のほうは、ここでは具体的危険という形でこの論定がありますので、したがって、危険の程度によりまして、危険の程度が具体的の段階に達すれば既遂罪になるということになります。
 で、提案説明にも、一体本罪の法益は何かということは若干議論がありまして、何を守ろうとしているのか。これは公共の安全と人の生命、身体、財産の保護だというふうにいわれております。けれども、この条文をながめました範囲内では、少なくとも人の生命、身体、財産に対する危険という形で規定がありますので、公共の安全ということを法益の中に取り込むということは、この条文の解釈としては私は少し筋が違うのではないかという感じをしております。なぜかと申しますと、公共の安全というものを法益だと考えますと、抽象的危険か具体的危険かということの区別が非常につきにくくなってまいります。例を申しますと、たとえば現に人がおり、物件があるというところへ火炎びんを投げるというのは、具体的危険があるということで大部分拾えるだろうと思いますけれども、これは極端な場合、極端というか一番明らかな場合、それから例をあげますと、野原でともかくだれもいないところで物件も何もないところで火炎びんを投げたと、これは危険がないということが言えるだろうと。もっともこの場合にも公共の危険があるというふうに言えないことはない。そうしますと、後者の場合は一体未遂なのかということになりますと、公共の危険というものを公共の安全というものを法益にいたしますと、限界が非常につきにくくなる。したがって、公共の安全ということばそのものはかまいませんけれども、その内容は、人の生命、身体、財産に対する危険というふうにとらえるべきではないかと思います。そうしますと、先ほど申しましたように、現に人がおり、そして物件があるという場合には、火炎びんが投げられて、たとえば不発で終わったという場合には、具体的危険はなかった。しかし、抽象的危険が存在するから未遂だと、こういう形の議論が可能になってくるのじゃないかと思います。そして、最初ちょっと申しました野原での、何もないところで投げるというのは、実はこれは未遂でもない。そうすると、未遂と処罰のものとの限界もそういう形で明らかになってこようかと思うわけです。普通、不能犯と申しますけれども、結果は発生しないんですから、未遂ではありますけれども、しかし、はたして未遂に値するような危険もあるのかどうかということが、やはり問題にならなければならない。通常、殺人罪とかその他でございますと、結果が発生すれば既遂で、それから発生の危険があれば未遂ということですから非常にわかりやすいんでありますけれども、本来の既遂そのものが危険犯でございますから、その意味で、危険の段階の明確化ということが非常に困難になるということを明らかにしなければなりませんので、具体的にはどういうケースがどうなるかということは、ある程度議論しておく必要があろうかと思うのであります。
 それからついでに、もう一点だけ、爆発物取締罰則は、今回の法制審議会の刑事法特別部会の草案では爆発物に関する罪としてそれを編入するという態度をとっておりますが、その規定を見ますと、爆発物罪も草案の規定では、やっぱり人の生命、身体、それから財産に対する危険犯としてとらえております。したがって、そこには公共の安全ということばはございません。この点も念頭に置く必要があろうかと思います。
 もうすでに未遂のことを申し上げましたのですが、二項の未遂については、いま申しましたように、一方では既遂との限界をどう明らかにするかということと、他方では未遂にならないものとの限界はどこにあるかということを問題にしなければならないと思います。この点では、私が拝見した限りでは、政府の提案では、未遂と既遂の段階は比較的明らかである。つまり、それはたとえば点火装置の場合には火をつけたとき、それから発火装置のあるような火災びんでは投てきしたとき、投てきして不発になったという場合が典型的な未遂だというふうに言われておりますから、この点ではそうなろうかと思うのでありますけれども、しかし、実際に抽象的危険か具体的危険かということをどこで区別するのかということは、そう簡単にはきまらない問題があろう。たとえば そこねたと申しますけれども、当たらなくて近くまで飛んだという場合はまだいいかもしれませんけれども、中間、もう全然飛ばなくて中間よりも事前の地点に落ちてしまった、それは道路であったということになった場合は、一体未遂なのかどうかということについては問題があろうかと思います。つまり、既遂のほうはまだいいんですけれども、未遂のほうは非常に広がる可能性を持っているということを、一般的に申し上げておく必要があろうかと思います。
 二条のほうは非常に不十分でありますけれども以上にしまして、三条のほうに移りたいと思います。
 三条は非常に議論のあるところでございまして、一項、二項ございます。まず最初に一項のほうから問題にいたしますと、一項は「火炎びんを製造し、又は所持した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」という規定でございます。実はこれは提案説明によりますと、この火炎びんの製造は、所持というのは、火炎びん使用罪の予備罪的な性格を持つものだとなっております。火炎びんを使用する以前の段階、もう少し前の段階。先ほどの話につなげますと、火炎びんを現に使用すれば既遂である。具体的に発生すれば既遂である。使用したけれども、危険が抽象的にとどまれば未遂である。さらにそれ以前に、いわば予備の段階で、実際には火炎びんを使用するのだけれども、使用するいわば予備的な準備段階として、この製造、所持というものが位置づけられております。そういう製造、所持というものを、いわば本来使用罪の予備罪的な性格のものを、独立の構成要件に高めるということになっております。したがって、使用罪でも刑はもちろん軽くなっておるわけでありますが、若干私疑問だと思いましたのは、予備罪でございますと、普通、何何の目的をもってというのが入っております。本犯を犯す目的をもって予備をやるということで初めてその予備罪というものの性格が明らかになる。ところが、この条文には目的がないのであります。つまり、火炎びんを使用する目的をもって製造、所持したる者とはなっていないということであります。
 そうすると問題は、火炎びんを使用する目的でなくても、火炎びんを製造したり、あるいは所持したりすることがあるのかという、先ほど来の問題にまた返りますが、たしか提案説明の中に、特に所持、運搬等については目的のいかんを問わないというふうに書いてございます。この意味がどういう意味であるのかということをはっきりさせる必要があろうと思います。本来、予備罪として位置づけるためには、使用目的というものがあって初めて予備罪というものがありますので、その意味で、この使用する目的というのがないというのが一つの問題点かと思われます。それは当然だというふうに立法者は考えておられるのかもしれませんけれども、それならば、第一条に「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」というのも当然の規定ではないかというふうにも考えられます。その意味で、この目的規定――もっとも主観的な目的による構成要件の限定がどれだけ意味を持つかということははなはだ問題ではありますけれども、いわば立法の構成として問題を出しておるわけでございます。
 それから、次は実際上の問題でありますが、この場合の火炎ぴんといわれているものの範囲が問題になってくるわけであります。これはもちろん第一条の定義を受けておるわけでありますので、第一条の定義がここへかぶってまいります。「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物」、これが火炎びんの実体的な規定でございます。しかし、その場合にも製造過程、所持過程ですでに処罰をするわけでございますから、火炎びんであるものと火炎びんでないものとは、実は使用段階では非常に明確にあらわれますけれども、所持や製造の段階では火炎びんか火炎びんでないかということは、それほどはっきりしない場合も出てくるのではないかというように思われます。たとえばびんの大きさであるとか、あるいはかん――火炎かんというのがあるかどうか問題ですけれども、かんの場合はどうなるかということが問題だろうと思います。いずれにしましても、それは準備段階でございますので、準備段階ということは、まだそういう危険性がそれほど明確におもてにあらわれない段階ですでに規制をしようということでありますから、ある意味では火炎びんか火炎びんでないかということの実際上の限界が不明確になるおそれも出てくるのではないかと思います。
 具体的には、私も詳しくわかりませんけれども、たとえば発火装置をつけるということは相当手の込むようなことでございましょうから、ある程度それがついているかついていないかということはわかるかもしれませんけれども、点火装置というものは非常に簡略なものから、非常に――まで存在するし、それから点火装置というものを意識して点火装置ということをつけなくても、事実上点火すれば燃えるようなものになっていくような場合もないことはないんじゃないかというような感じもいたしますので、その意味ではここの火炎びんの範囲自体を、一条との関係でやはりもう少し明確にしていく必要があろうかというふうに感じます。しかし、これは少なくとも、火炎ぴんということが出ている限りは、最終容器であるということははっきりしているだろう、最終容器というか、つまり、それにもうすでに発火装置なり、点火装置がついているということを意味しておりますので、この点では比較的まだ明瞭であろうかと思います。
 問題は第二項でございますが、第二項の場合には、火炎びんそのものでなくても、火炎びんに至る、火炎びんの製造過程で問題になるいわば半製品を含めて規制しようというわけでありますから、――この点につきましては、衆議院段階で修正がございました。そして提案されています条文は、その意味では相当改善が施されているということは一般的に認められます。これは「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」、ここでは目的の限定がございます。一項ではなかったのですけれども、二項では「火炎びんの製造の用に供する目的」というものがなければ、半製品の所持や運搬その他は処罰しないということを立法者は明言することになります。ところで、この場合にはいわば部分品でありまして、まだ点火装置や発火装置の施されない前の段階のガラスびんやその他の容器にガソリンその他の入ったものということになっております。そうしますと、実は本罪は、三条一項が本来予備罪的なものと申しましたけれども、予備のもう一つ前の予備罪になります。予備罪を犯す前のさらに前の段階のものになっていきますので、その意味では、いよいよ――どう言いますか、はたして正当な目的の、正常使われているものかどうかということの限界が非常にきめにくくなってくるということが言えます。ガソリンその他は日常生活に使いますので、業務用にも使いますので、そういう正当な目的によるガソリンや燈油などの使用の中で起こってくる問題、行為形態と、ここで捕捉しようとしている行為形態との区別をどこでつけるかということが問題になってまいります。
 結局修正案は、未完成品の取り締まりをするけれども、その段階にある程度限界を置こう――歯どめがありませんと、先ほど来の乱用の危険にもかかわりますので、歯どめを置こうと。その歯どめは、これに発火装置または点火装置を施しさえすれば直ちに火炎びんになるような、そういう段階に達したものであればよろしいということになっております。
 これは、議論になりました最終容器にかえるかどうかということと関係がございます。つまり、火炎びんをつくる目的はもちろんあったとしても、その前の段階にすでに、大きな燈油かんなりに燈油を入れておいて、それを現に火炎びんに、最終容器として使用するものにつくる目的でそういうものを用意しておったという場合に、その用意の段階ですでに処罰できるのじゃないかということが問題になりまして、そうではなくて、むしろ直ちにそれに発火装置と点火装置さえつければ火炎びんになるようなものだということになりますと、当然その最終容器に限るということになってまいろうかと思います。しかし、はたして、そういう最終容器のみに限るということの確認が、この条文から可能だろうかということが問題になろうかと思います。
 それから、取り締まりの側の要請からしますと、できるだけ早い段階でこの種の不法事犯の取り締まりを明確にできれば捕捉したいということはもう当然だと思いますが、実際上の効果からしまして、もうでき上がった段階ではおそいということがもし言われるとすれば、これはもろ刃のやいばですけれども、どの段階でつかまえられるのかということが非常に問題。しかし、それは刑罰法規でございますので、明確にしなければならないというジレンマがございます。この条文で、つまり最終容器に限るということになるのかどうかということが一つの問題点。
 それから、その点との関連で、ドッキングということがよく言われますけれども、最終段階で部分品を合わせれば直ちに現物ができ上がる最終段階をむしろ捕捉しようとしているというふうに考えるのかどうかということがここで問題になると思います。御案内のように、爆発物取締罰則では、爆発物の製造、所持だけじゃなくて、その爆発物のいわば部分品、構成物の使用もこれは同時に処罰しております。したがって、爆発物の場合は、相当明らかに、そのものとその準備段階とを一緒にやっているけれども、火炎びんの場合、はたしてそのことがどの程度可能かということが問題だろうかと思います。
 だいぶ長くなりましたので、各条文ごとの一応の、私の与えられました資料から考えられます限りでの問題点と申しますか、主として刑罰法規の構成要件の内容をできるだけ明確にするという観点から、はたしてこの条文がどういうものを具体的に捕捉しようとしているのかということを明らかにする意味で申し上げたわけであります。で、趣旨は、いま申しましたように、この種の立法が今日の段階で必要かどうかという議論を最終的にいたさなきゃなりませんけれども、そのためにも、そういう具体的な問題のありかを検討した上で、その点についての審議が必要なのではないか。そして、いわゆる治安法といわれている分野でございますので、必要最小限度に限定をする――たしか衆議院段階でも時限立法にしてはどうかという御意見もあったそうでございますけれども、そういう点も含めまして、今後どういう火炎びん使用の予測があるかどうかということについてもわかりませんけれども、そういう点も含めまして慎重な御審議をなさるように私どもとしては希望したいわけでございます。
 一応私の話はこれで終わります。(拍手)
#4
○委員長(阿部憲一君) どうもありがとうございました。
 これより中山参考人に対する質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○佐々木静子君 それでは私ちょっと二、三お尋ねさしていただきたいと思います。まず法益の問題でございますが、実は先生もいまいろいろとお話しくださいましたように、私もこの法益は、火炎びん法、この法案自身から見ました感じで、この法益は個人的法益じゃないかということを感じたわけなのでございますが、この二条一項の「危険を生じさせた」というふうな、ちょっとばく然とした規定になっておりますことに多少疑問を持ちまして、実はこれは先日の当委員会における審議におきまして、法務省のほうはこの法益をどう考えているのかということをお尋ねしたわけなんです。そうしますと、法務省の立場としますと、公共の危険を守るというのが第一義的な法益であって、第二義的に個人的法益と考えているというようなお話で、私もこの条文の上から、ちょっとそのようにすなおには納得できなかったのでございますが、その点について先生のいまの御見解を承りまして、私が疑問に思っておりましたことを、非常に明確にお答えいただいたような感じがしたのでございますが、まずこの法益が、この条文から公共の危険ということに対する、公共の危険ということを法益とするというふうに第一義的に考えられるかどうかということをまず突っ込んでもう一度お教えいただきたいと思いますことと、第二点といたしまして、この製造の、これは法律的な解釈ですね、意義。それから所持の法律的な意義、ここをもう少し御説明いただければ幸いだと思うわけでございます。
#6
○参考人(中山研一君) それでは第一点のほうをまず申し上げますと、私先ほど申しましたように、法益につきましては、通常、公共の安全ということがいわれることは、これはもう一般的な事柄としては了解できるわけです。たとえば現在、現行の爆発物取締罰則を見ますと、その第一条は「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」というふうに、治安の妨害ということを第一条の筆頭に掲げた規定があるわけでございます。ところが、先ほどちょっと申しましたように、すでに今回部会草案が出ておりますが、この爆発物規定では、その点は削られておるわけであります。百九十一条の二という条文を見ますと「爆発物を爆発させて、人の生命、身体又は財産に対する危険を生ぜしめた者は、」と、ここでいま火災びん法で問題になっておりますのと同じような規定に変わっているわけであります。その意味で、少なくとも公共の安全というところから出発して人の生命、身体を考えるのではなくて、人の生命、身体の安全ということが集合して公共の安全が形成されると、こういうふうにむしろ考えるべきではないか。その集合体を公共の安全ということばで呼ぶならば、それはことばの問題としてはけっこうだと思いますけれども、少なくとも法律論として法益論を展開する場合には、個別の人間もしくは集団の人もしくは物件の保護をはかるというのが立法の趣旨ではないかというような感じがいたします。
 ついでに申しますと、凶器準備集合罪というのを、これはいわゆる治安取り締まり規定といわれておりますけれども、この規定の配置等につきましても、当時国会でだいぶ議論がありまして、傷害罪のあとに入っております。規定の配置は、これは傷害罪は個人の法益に対する犯罪でありますが、そのあとに凶器準備集合罪が入ったということでありますし、その意味では、むしろ個人の法益を守るということを念頭に置いた立法のほうが構成要件の明確性にも資するのではないかという感じがいたします。
 それから第二点でございますけれども、ちょっと御質問の趣旨がちょっと不明確なんでございますが、たとえばどういうことでございましょうか。
#7
○佐々木静子君 製造の定義ですね、それからその所持の定義を御説明いただきたいと思うわけなんでございます。
#8
○参考人(中山研一君) これは私もちょっとすぐにはあれでございますけれども、比較的、ここでいわれている製造とか所持というのは、一般の用語にもなっておりますから、その点で、法律上特段にどこまでを製造というかとかということについての議論は、少なくともこれまでの製造罪なり所持罪などを規定している法律ですね、特別法がございますけれども、などではそれほどの議論は現在までのところないんではないかと思われますけれども、ただし、これは製造、所持となっておりますから、はたして運搬その他のものが入るのかどうかということになりますけれども、しかしここで言われているのは所持の中におそらく含めて考える、非常に広い意味で所持というものを考えているのではないかと考えます、少なくともここでいわれている所持というのは。製造というのは、その製造行為そのものでありますけれども、所持というのは相当長い継続的な問題でありますから。ちょっと用意がございませんので、その程度で。
#9
○佐々木静子君 いまの所持の場合でございますが、事実上物理的に所持しているほかに、自己の占有下に置く、あるいは間接に占有せしめるとかいうようなことが今後問題になってくるんじゃないかと思いますので、この際、所持の概念というものははっきりしておく必要があるんじゃないかと思いますが。
#10
○参考人(中山研一君) 最後のおっしゃった点は、具体的に刑法上の所持というのは間接所持ではだめでございますので、この点ははっきりしておりますので、具体的に自分の管理下といいますか、支配下に保持していること、これが所持の定義でございます。この点は、基本的には明確ではないかと思います。間接ではここに入らないということ。
#11
○佐々木静子君 第一のいまのお答えをいただきまして、さらによくわかったように思うのでございますが、この個人的法益、私さっき公共の安全というところを間違えて危険と言いまして、非常に逆なことを申し上げたんでございますが、そこは公共の安全と撤回さしていただきたいと思うのでございますが、この個人的法益ということに、私もこの条文を素直に見るとそのように思うのでございますが、そういう場合、たとえばいまも野原のまん中で火炎びんを使用した場合はどういうことになるか、あるいは野原というのは非常にこれは不能犯になるのではないかというようなお話がございましたが、野原というのは非常に概念としてはっきりするわけでございますが、もう少し現実的な、たとえば建物の庭で火炎びんを使用した、あるいは道路――道路というと国が所有している、あるいは区が使用している、都が使用している形ということが多いかと思いますけれども、道路で火炎びんを使用した、全然、身体、生命、財産などに対する危険というものは個人的には考えられない、しかし火炎びんをそういうふうな場所で使用した場合は、これが個人的法益ということになりますと、道路の場合は個人的な道路がそれによって損傷したということになれば財産に対する侵害ということになるかもしれませんが、一般的にそういう場合に火炎びんを使用したことの既遂になるのかどうか、あるいはそれも不能犯の中に入るのかどうか、そのあたりを具体的にもう少しお教えいただきたいと思うわけでございます。
#12
○参考人(中山研一君) 非常にむずかしい限界上の問題になろうかと思いますが、御承知のように具体的危険犯ということでございますから、当然裁判所でもし問題があった場合は具体的危険が発生したかどうかについて立証を検察官側が負わなければならないと思います。その場合に、一体具体的危険といわれるものの立証の程度でございますけれども、どの程度までいけば具体的危険が発生したと見るのかということについては、これまさに危険というものは非常に程度問題でございますので、先ほどちょっと申しましたように非常に近くに、もしくはそのものが当たらなくても、人もしくは物に火炎びんそのものが接近して投げられると、その接近の程度もありますけれども、少なくとも接近している場合には具体的危険ありと言うことは比較的たやすいと思いますし、さきほどおっしゃいました全然人のいないところはそれがないということははっきりしておりますけれども、具体的にはどこまで接近すれば危険が発生するのかということは、立法者としては具体的危険ということばを書きますけれども、具体的にはそのケースごとに、たとえば夜間であるかとか、それから人の出入りの激しい道路にしても――同じく道路にしましても、昼間の非常に繁華な道路であるかどうか、たまたまそのときは人が通ってなかったけれども、絶えず人が出入りするような場所であったかどうか、そういう問題とのかかわり合いで全体的に判断しなければならない問題でありますので、そういう意味では率直に申しましてあまりきめ手はない。したがってそういう危険犯というのは、ことばではわかりやすく見えますけれども、具体的な判定の場合には非常に困難が生ずるだろうと。問題は、その困難が生じて穴があいたところを公共の安全ということで埋められると、いともたやすく具体的危険というものが認定される、そういうからくりになろうかと思います。その意味で、具的危険をできるだけ論証していくためにも、公共の安全というものを法律上の法益というものにたやすく編入しないようにする必要があろう、どちらかといいますと具体的危険というものは認定されやすくなるのではないかと思います。これはたとえば放火罪でおわかりのように、放火罪でございますと特に現住――人の現在するような建物に放火する場合、放火しただけで公共の危険が発生するというふうに法律は推定しておるわけでございます、これは抽象的危険犯と申しまして。ところが、非現住建造物、たとえば自分のものであるとか物置なんかでは、燃やしたことによって具体的に公共の危険が発生したことを論証しなければ処罰しないと、こうなっております。したがって、そこにはもうすでに法律上の段階がございますので、この火炎びん法の使用罪は後者にあたる、したがって火炎びんを使用したから常に犯罪が成立するというふうにはならないというふうにむしろこの条文をすなおに読むことができるのではないか、限定的な解釈がこの条文をもとにして先ほどちょっと荒っぽい例しか申し上げませんでしたので、典型的な例しか申し上げませんでしたけれども、限界設定をする場合にこの条文はいずれにしても問題をあとへ残すのではないかと思います、結果犯でない限りは。
 もっとももう一言だけ申し上げたいのは、それじゃ結果犯ならすべて既遂か未遂かということがそれほど明確になるのかということは必ずしもございませんで、はなはだはばかりますけれども、たとえばどんな犯罪でも犯罪が成立したかどうかということはそれほど明確にきまってしまうというものではございませんで、たとえば傷害罪といわれているものも、かすり傷も傷害でございますし、血が出なくても内出血も傷害でございます。下痢をさしても傷害だということでありますから、傷害か暴行かというようなことの具体的な線はそれほど明確には引けない問題があろうかと思います。しかしいずれにしましても明確にする努力を立法者も裁判所もしなければならないのじゃないかというふうに考えております。
#13
○佐々木静子君 たいへんによくだんだんとわかってきたわけなんでございますが、さらにもう一点。この第二条一項の実行の着手でございますけれども、いま点火装置と発火装置に分けて御説明いただいたわけでございますが、この発火装置については、これは火炎びんを投げたそのときが実行の着手であろうと思うわけでございます。そうしてこの点火装置につきまして私も最初、火をつけたときではないかというふうに思ったのでございますけれども、やはりよく考えてみると、火をつけただけではまだ実行の着手にはならないのであって、火をつけてそれから投げたことによって実行の着手があるのではないかと思うわけです。火をつけて投げる前に消火器で火を消してもうやめた場合は、これはまだ実行していないんじゃないかというふうに考えるわけなんですが、その点いかがでございましょうか。
#14
○参考人(中山研一君) 確かにおっしゃいますように、点火装置のある場合と発火装置のある場合とでは、先ほど私が申し上げ、もしくはこれまで議論された限りでは若干ずれるわけでございますね、実行の着手時点が。しかし、確かに点火装置のほうも投てきをもって実行の着手とするというのは一つの考え方かもしれません。しかし従来これは実は放火未遂、放火予備などとのかかわり合いでおわかりのように、火を扱う犯罪でございますので、放火罪等における実行の着手というものとある程度パラレルに議論をすべきものではないかと思われます。これは一般論としてでございます。
 そうしますといずれ学説としては分かれるかもしれませんけれども、まあオーソドックスな考え方としましては、点火装置のある場合は火をつけたときをもってこの犯罪の未遂とするという考え方がむしろ一般的に考えられる線ではないか。ただしそれを特段の理由をもって――そうであってはならないという特段の理由を特にこの発火装置とのかかわり合いで、少なくともこの条文についてはそういうふうに並べるということも解釈として私は十分あり得るだろうと思います。しかしやや困難ではないか、率直に申しまして。火をつけてなお未遂でないというのはやや困難な解釈かもしれませんが、その点の困難は認めなければならないと思います。しかしいずれにしましても、両者が着手時点が違うというのは非常に不均衡だということは一つの理由になろうかと思います。
#15
○佐々木静子君 いまもお話がございましたように、確かにこの発火装置の場合のほうがどちらかというと手の込んだ火炎びんであろうと思うわけです。その手の込んだ火炎びんの場合は実行の着手が投げなければ始まらない、点火の場合はいわばお粗末な火炎びんだと思うのですが、そういう場合は投げる以前の点火という装置でもう実行の着手があったということになると、そこに点火と発火に非常にバランスがくずれてくる。そういうことで私は、これはむろんいろいろと放火罪との関係などで御見解があろうと思うのでございますが、両者のバランスということから考えますと、これは点火のときに犯罪の実行の着手があったというのはちょっときつきに過ぎるのじゃないかというふうに考えるのでございますが、その点いかがでございましょうか。
#16
○参考人(中山研一君) いまおっしゃいました点は一つの法の全体のたてまえとしての公平性とそれから一律性というのは全体的な問題としてはどうしても考えなければならない問題でありますから、一方の行為形態と他方の行為形態が同じく公正に評価されておって、それが実行の着手、予備、未遂、既遂という段階でそごがあるということはこれは好ましくないことだと思います。その意味ではこれは立法者の有権解釈、裁判所の有権解釈が出るかもしれませんけれども、その場合に実行の着手時点というのは一つの問題点として当然争われるだろう。私いま即断はできませんけれども、ただ、火をつけてなお予備だ、まだ未遂にならぬというふうな解釈ができるかどうかですね。その辺のところは法理論としてもなお残された問題があるのじゃないか、むしろ今後考えてみたいというふうに思います。
#17
○原文兵衛君 ちょっと先生の御見解をお伺いしたいのでございますが、実は一昨日火炎びんの実験を見学したのでございますが、ガソリン等を入れたびんと発火装置とのいわゆるドッキングですね、三条の二項にあたるわけですが、ドッキングというものは非常に簡単にできて、瞬間にできてすぐ投げられる、それで火炎びんが発火するということをまのあたりに見てきたわけですが、もう一つは、最近伺いますと、いわゆる過激暴力集団などでむしろ火炎びんの完成品を持ち歩くのはやめて別々にして持って歩いて、そうしてドッキングしてやる、それを指令しているといいますか、いろいろやっているようにも伺っているわけです。そうしますと、もちろんこれは特に三条二項の場合、乱用とか拡張解釈ということについてきわめて厳重に戒めなければならぬと思いますけれども、三条の一項と三条の二項と――二項が何かないと、いま言った指令まで出ているということを聞いていますので、そうすると、一項、二項というのは違法性という点であまり差がないのじゃないかというようにも私は考えるのですが、先生の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
#18
○参考人(中山研一君) いまおっしゃる点は確かに存在するだろうと私思います。ただし、一項と二項に違法性の段階にはたして相違がないかという点についてだけ申しますと、ドッキングする直前は確かにさあっと行ってしまいますから、実際に火炎びんそのものの製造所持と火炎びんに至る直前の製造所持というのは変わらないのじゃないか、これは言えると思います。しかし、今度はその直前ではなくて、少し距離を置けばどうなるか、もう少し距離を置けばどうなるかということになってきますと、これは当然差が出てくるだろう。だから、その直前だけを三条二項で取り上げるならば、それは実際上の行為形態の捕捉という意味では、違法性にそれほどの差がないというふうに言われるのは事実に即しては言えると思います。
 ただ、実はその直前ではなくて、もう少し前から取り締まる必要があるのじゃないかということも最初いわれておったわけでございますね。特に、最近の過激派集団はいまおっしゃいましたように、取り締まりを免がれるためにそういう、一応擬装する、仮装するといいますか、普通の業務形態の燈油を運ぶのと同じな形態をとり、他方は発火装置だけを持って歩く、そして目的地でくっつけてやる、こういうことでございますね。そうすると、この部分品を持ち歩いている段階ですでに捕捉しないと効果がないではないか、本法案をつくるほんとうの効果はまさにそういう準備段階にあるのだというふうなことすらおっしゃっておられるわけですね。しかしそれは確かに取り締まり段階としてはそうだろうと思いますけれども、しかし仮装するということになりますと、仮装したものと仮装してないものをどうして区別するかという問題が起きる。つまり、一般の人間がやるのと同じような行動をやっているときに怪しげな人間だから処罰する、そうでないから処罰しないということの区別がはたして厳格につくだろうかという問題もあります。したがって、もう仮装も何もできなくなって、正真正銘、行為の形態が表にあらわれた段階でなければ区別がつかないというむずかしさがあると思います。その意味ではドッキングの直前といいますか、そこで初めて火炎ぴんというものが正真正銘姿をあらわすというふうにむしろ考えて、そこから以降しかやっぱり刑罰法規としては正確につかみ得ないのじゃないか、それ以前になりますと、先ほど言いました、そうでないものが混在してくる。そこにこの種の取り締まりの実効をあげるためとそれからその処罰を明確にするということのいわば接点がございまして、ある人は、いやそんなものは若干乱用の可能性があったって処罰するほうがいいのだという考え方がありましょうし、いや、やっぱり処罰、九十九人処罰されても一人の無実をつくってはいかぬという形から厳格にやれという考え方もあるでしょうし、そこにどこに接点を見つけたらいいかということになると思います。私も実験は見ておりませんので実感としてはわかりませんけれども、そういう行為形態が現に存在するということはおっしゃるとおりだと思います。
#19
○加瀬完君 いまのお話に関連があるわけでございますが、実際の取り締まりは、そういった火炎びんが投げられるというその直前のドッキングの状態だけを押えないで、警備の上からずっとその前から取り締まりをしていくということにならないか。そうすると先生のおっしゃるように、結局警備上は効力をあげるかもしれませんけれども基本的人権を侵すということでいろいろの支障を来たすというおそれも当然出てくる。そうなってまいりますと、先生のさっき御説明をいただきました三条二項の火炎ぴんとしての未完成品の取り締まりの歯どめとしては、点火装置、発火装置をつければすぐ火炎びんになるかならないかという最終容器の形態ということに限られる。最終容器に限られるということになりますと、それが火炎びんでないものにしても、最終容器の形態が点火などということになればマッチで火をつけても火炎ぴんという類推がされるわけでありますから、そうなりますと、火炎びん製造の目的を持っているか持っていないかという判定にかかってくるわけです。これはそういう火炎びんの目的を持っているか持っていないかということはなかなか個人の説明とかその場合の言いわけとかということによって取り締まり当局が一方的によろしいという形にはならないのじゃないか。
 昨日もこの問題がいろいろ質疑応答をされたわけでございますが、その中でも状況判断ということが主になりそうであります。状況判断ということになりますと、これは言いわけをするほうよりは取り締まるほうの権限が強くなるといいますか判断の力関係が取り締まり当局にウエートがかかるということになってくるのじゃないか。そういう取り締まりに対する歯どめというものはこの法案のどこを見ても一つもないです。それは危険ではないかということが蒸し返されたわけでございますが、最終容器に限ったところで、それが点火というような――発火装置というものだけに限定すればまだ容器の形態がはっきりしますけれども、点火装置だけでもよろしいということになりますと、これはもう非常に誤っていろいろ容疑をかけられたり、あるいは問題を惹起させられたりするという心配が非常にあるのではないかと私どもは思うわけでございます。
 そこで、こういう客観的には判断しにくいような三条二項というものがなぜ一体必要なのか。投げたというその段階で、あるいは投げる形態の火炎ぴんという完全な形態で取り締まっておくほうが、基本的人権を守るという意味においては、この法案の内容よりはベターではないかという疑問を持つわけでございますが、この点はいままで最近の警備関係の取り締まりのやり方を見ておりますと、もう事前に――いわゆる取り締まりの目的のために事前に取り締まりをするという傾向が強くなりますので、私どもはそれが心配でならないということで、私だけでありませんで、何人もの人から同様の質問が出たわけでございますが、三条二項というものでは非常にあいまいだという私どもは見解を持つわけでございますが、その点、先生の御指導を賜わりたいと存じます。
#20
○参考人(中山研一君) 確かにおっしゃるとおりで、三条二項というのは一項と比べますと、直前をとらえたということでは確かに量的な同じようなものじゃないか、行動形態としてはもうほんの直前だからいいじゃないかということでは、確かに直前だけを含むということが明確になれば、そのことはそうだろうと思いますけれども、はたしてその直前のものを明確にとらえられるかという観点からこの条文の三条二項を見た場合は、これではたして十分かというと、やはり問題は多少残るだろうと思います。その意味では「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」というそのしぼりが、どの程度具体的に限界づけに効果があるのかということがあるんだろうと思うんです。この場合にはもう目的だけしか限定がございませんので、あとは灯油が現にあり、そしてその横に――横というか、そこになくても、小さい、ともかくコーラのあきびんなんかに灯油がずうっと入っておればそれはもう最終容器なんだから、いつでも差し込めばすぐ使えるという状況にあるわけでありますから、その意味では先ほどちょっと申しましたコーラのあきびんなどで、すぐに投てき可能なもので、あたかも置いてある場所がそれらしいというようなことが、全体的な判断で、先ほどの状況判断ということをおっしゃったと思うんですけれども、しかし、それがもう少し大きいびんで、かんではどうなるかということになりますと、これは最終容器と言えるかどうかも問題ですけれども、しかし最終容器という場合でも、そのことだけで、点火装置も発火装置もないものを、なおかつとらえようというわけでありますから、はたしてそれがどの程度切迫した、つまり、それが火炎びんになって使用されるという危険が、その行為というか、その状況自体の中から判定できるかどうかということだろうと思うんです。それを立法者はここでは「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」という主観的な観点に書かれておりますから、その意味ではこの解釈はいわば取り締まり官の主観によって左右される可能性が十分ございますので、まあもっとも取り締まり官のほうも、いやそうじゃなくて、目的だけじゃなくて、その目的が推定されるような具体的な状況が発生しなければ発動しないというふうにおっしゃるでしょうけれども、それではそういう具体的な状況とは一体どういう状況なのかということを、むしろ実地にある程度類型化しておく必要があるんじゃないか。その点は審議の中でひとつ、はたしてそういう三条二項が発動されるような具体的な例というのはたとえばどういう場合であろうかというようなことを、むしろ取り締まりに当たっておられる方にお聞きくださいまして、たとえばこういう場合、たとえばこういう場合ということでしぼっていく以外にはないんじゃないか。そうしませんと、条文でいかに議論をしましても、条文には常に解釈が伴いますから、広い解釈もあり狭い解釈もあるということになりますので、その意味で三条二項、すべての条文そうでございますけれども、具体的にどういう場合がはたしてこれでやられるのかということをむしろ行為事情として類型化する、本人の主観でなくして、ということが非常に重要なんじゃないかと私は感じがしております。
#21
○加瀬完君 ありがとうございました。
 その間、当局との問答では、発火装置なり点火装置なりというものが存在しておらなくても、最終容器の形態そのものがどこからか点火装置をつければ、発火装置をつければ火炎ぴんとなるというものなら、一応当局も火炎びん製造の目的が大事だということをおっしゃっておりますけれども、一応火炎びんの目的いかんにかかわらず、それらを取り締まりの対象にするという原則的には考え方のようですね。いろいろ説明をするけれども、概括的に結論をすれば、最終容器の火炎びんの形態であれば、それはその次の条件であります点火装置、発火装置がなくてもそれは取り締まりの対象にすると、こういうことになりますと、おっしゃるように、これはよほどきびしい取り締まりの類型あるいは私どもは基準を示せときのうは申し上げたのですが、基準がないとどうにもしぼりがきかないということになろうかと思うわけです。
 そこでこの三条二項で最終容器が火炎びんの条件を備えておれば点火装置、発火装置がその所持していたガラスびんならガラスびん等所持している時期、あるいは所持していた者のおるその周囲に全然なくても、これは火炎びんになるであろうという推定で取り締まるということもこの三条二項で可能なのか、こういう疑問を持つわけですけれども、この点はいかがでしょう。
#22
○参考人(中山研一君) いまおっしゃったのは非常に重要だと思いますが、少なくともこの条文を形式に解釈する限りではいまおっしゃったようなことになるだろうと思います。と申しますのは、先ほどドッキングの話が出ましたけれども、ドッキングというのは時期的な問題がありまして、いま現に最終容器が存在しまして、そこに発火装置なり点火装置を持ってきて、まさにいまや必要としているという段階でありますと、そういう時期的な切迫性がございます。つまり、いつ火炎びんになるか、まさに火炎びんになろうとしている段階だというそういう問題がございますけれども、しかし点火装置、発火装置はなくてもよろしい、ともかくもそういういつでもそれさえ持ってくれば、はめれば火炎びんになるようなものが並んでおるということであれば、この要件がすでに成立するということであれば、たとえばきょうそれを並べた、しかし、一カ月あと、一年あとにそれを使うという場合でも、使う目的であっても、それはその段階でこの犯罪で既遂になる。こういうことでありますから、つまりドッキングといわれているその時期的な、つまり火炎びんにいつなるかというそういう時期的な切迫性はこの中には全然あらわれていない。そこはひとつ問題だろうと思う。だから最終容器だということだけがかろうじてこの前の修正でしぼられた。だからその意味では確かに重要なしぼりではありますけれども、今度は時期的な問題とか状況的な判断では実はこの条文からはしぼられていないのではないか。いまおっしゃるとおりの御意見だろうと思うのです、私も。
#23
○加瀬完君 そうすると、その状況判断なり時期的な判断なりというものは捜査当局のどうしても恣意が働くということに私はなりがちではないかと思いますが、こういう心配は一応考えてよろしいと私ども思うのですが、いかがでしょうか。
#24
○参考人(中山研一君) 捜査の実際についてはわかりませんけれども、しかし一般的な傾向としましては、法律をつくるからにはその実効性を確保する、つまり、どういう効果をこの法律に期待するのか、率直に申しますと。そうしますと、一条や二条ではなくて三条に期待するということになろうかと思うのであります。一条や二条は現行法でもある程度、先ほど申しましたように処理できる問題です、現にあらわれてしまえば。しかしあらわれない段階で処理しようというわけでありますから、三条一項、三条二項のほうにむしろ最大の効果がどう出るかということが争われるだろう。そうしますと、やはり効果を具体的にあげるためにはできるだけ早い段階でそれをはっきりさせることができるならばつかまえたい、こういう発想になるのは当然だろうと思うのです。その意味ではこの三条二項というのはいわば最終容器としてのしぼりもありますけれども、それ以外は、捜査当局のいわば慎重なといいますかね、配慮と方針といいますかね、そういうものにある程度依存せざるを得ないような、そういう条文になっておりますので、その意味で乱用防止規定なども含めて、むしろ三条二項を、繰り返しになりますけれども、はたしてどういう場合かと、どういう場合かということをある程度明らかにしておかないと、一人歩きするおそれはあるのじゃないかと思います。
#25
○加瀬完君 ありがとうございました。
#26
○後藤義隆君 それでは先生にお伺いしますが、この火炎びん使用等の処罰に関する法律、まあ三条でありますが、一条、二条のことを先に伺います。三条はまず一応ないものとしていまのところ思ってお伺いしますがね。第一条を見ると、火炎ぴんというものの定義の中にいろいろあって、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」と、この意味でありますが、この「生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」ということは、私のいままでの考えは、加える目的をもって使用するものということであって、加えることが可能である、いわゆる物理的に可能であるものをいうということでなしに、ここに目的があるんだというようなふうに私はいままでこれを解して、そういうぐあいに考えてきたわけですが、そこで、先生はその点をどういうようにお考えになっておられるかということを、お伺い申し上げたいと思います。
 それからこれに関連して、さっき先生からお話がありました、たとえば火炎びんをどこかに投げた、ところが、これは公園みたいな広いところでもよければ、あるいは町中でもかまわないけれども、その火炎びんを投げたすぐ付近には人がおらなくて、かなり遠い距離にしか人がおらなかった。まあことばでそれを言うならば、それに害を加えることは不可能な状態にあったというような場合に、これは公共の安全というものには、あるいは町中とかそういうところでやれば害が及ぶおそれがある、危険が多分にあると思います。しかし、第二条の、人の生命、身体あるいは財産に害を加えるという、いわゆるこのことには当たらないのだ。そこでもって第二条の既遂にならないことはもちろんで、これは未遂になるかどうかという問題があるけれども、私はある場合には、そういう場合には不能犯で、未遂というよりも犯罪にならないのじゃないかというふうに一応考えるのですが、そこはどう先生お考えはなっているかということですね。
 それからさらに広い野っ原に行って一人でもってそこでもって火炎びんを投げてそこで発火させたというような場合には、これは未遂にならないというお話があったが、もちろんそれはそうだと思います。そしてこれはさっきの理論からいうと、これは第二条の適用は、私は全然ないものだというふうに考えますが、不能犯になるかどうかというようなことは別として、未遂にはならない。したがって、私はこれは犯罪、第二条の適用はないのじゃないかというようなふうに考えますが、そこでもって、そういうようなふうなことを、今度は救済ではないけれども――、取り締まるために、必要のために、第三条というものが必要が起こるのじゃないか。これは製造した者も悪ければ、それからいま言うようなふうに所持した者も悪い、公園であるいは野っ原に持っていってほうっても、これは使用したということよりも、所持したという第三条の第一項の働きでもって、これをやはり私はまあ第三条があって初めて処罰することができるの、だというようなふうに、そういうぐあいに私は考える。したがって第三条がやはり必要であるというふうに私は私なりに考えるのですがね。
 それから第三条の二項ですね、二項が必要かどうかというふうに問題が考えられるわけですが、そこでもって、さっき第一条のこの火炎びんの定義について私が申し上げたように、「生命、身体又は財産に害を加える」ことが可能だということでなしに、その「目的をもって」ということでありますから、そこでもって私は、第三条にはガソリンとかあるいは燈油とか、そういうようなものがあれば、いわゆる第一条から受けておりますから、他人の生命、身体または財産に害を加える目的でもって、いわゆるその目的でこれを所持しておれば、私はやはり処罰することが至当じゃないか。したがって、第三条の二項というものはそこで働くし、またそれが必要じゃないか。全然処罰の必要はないのだというわけにはやはりいかないのじゃないか。こういうようなふうに、――目的がなければいいです、全然目的が違う場合ならば、もちろん第一条の定義に当たらないから火炎びんに当たらないわけで、処罰の対象じゃない。しかし、目的があるならば、そうしてそれを持っておれば、また完成品でなしに半製品でも、私はやはり処罰の必要があるのじゃないか、こういうふうに考えますが、その点について先生どうお考えでございましょうか。
#27
○参考人(中山研一君) 幾つかございましたので全部拾えるかどうかわかりませんが、まず最初に、一条の定義のところの「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」というのは、確かにこれは従来の立法形式とは少し違うと思うのですね。従来ですと、いま先生のおっしゃいましたように、人の生命、身体または財産に害を加える目的をもってということを、そういう主観的な――この部分は主観的な目的になりまして、そうして客観的にはガソリンとあれとが密着しておるものだと、それは目的としてこういう目的に使うものだ、こういうふうに通常考えられてきたと思うのですね。しかし、たしか政府委員だったかと思いますが、説明によりますと、火炎びんの定義についてはそういう主観的な目的という形で定義するのではなくて、客観的にその機能なり用法が、人の生命、身体または財産に害を加えるのに使用されるような、そういう実体を備えたものでなければならない、という形で一条の定義をしたのだというふうに解釈されているようです。
 したがって、その趣旨は、私一つわかると思いますのは、ちょっと先生の御趣旨と違うかもしりませんが、目的による限定というのは、確かに現にそういう目的でやっておれば処罰していいということは一つの考え方だと思いますけれども、しかし、はたしてそういう目的があったかなかったかということを、どうして、どういう状況の中で判定するのかということは、非常に困難な問題を惹起するわけでございますね。したがって、確かに本人が自白すれば別ですけれども、自分はこういう目的でやりますということを宣明してやれば別ですけれども、たいていの場合は目的を否認いたします。したがって、目的を否認されても、そういう目的であるぞと言わせるための客観的な事情がなければいけない。そういう意味で、この定義の第一条の後段は、目的として、主観的な要素ではなくて、客観的に内在しているいわば機能といいますか、そういうものとして理解しようとしているのではないか。これは私の理解でございますけれども、そういうふうに考えられます、この第一点につきましては。
 こういう立法方法は実は二条ともからみますけれども、これは具体的危険犯という形で規定していますから、この第一条と第二条とはしたがって私はつじつまが合っていると思うのです。先生おっしゃいますように、一条を目的犯的にしますと、二条も三条も全部目的犯になると思います。したがいまして、これは現行の爆発物取締罰則がそうなっているのでございます。たとえば第一条は「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者」は、――いまおっしゃるような趣旨にちゃんと規定があるわけです。こういう規定のしかたは、爆発物を使用したら一網打尽に取り締まれるということに実際はなっているのではないか、事実上。そういう目的はあとでいつでも追加できる。爆発物を使用するくらいだからそういう目的だっただろう、こういうふうに実はなっているのでありまして、そういう意味で、私は今回のここで出ている法律案の趣旨は、少なくともそういう、先ほど法益論が出ましたけれども、人の生命、身体または財産に害を加えることに、具体的に危険を発生させるようなものとして全体をとらえていこうと、こういう趣旨じゃないかと理解しております。
 それから未遂の点は、私おっしゃるとおりだと思います。野原での実験とか、それから全然人のいない公園などで使うという場合は未遂でもない、これは先ほど申し上げたとおりであります。ところが、それは処罰されないか、やはりそれはけしからぬ行為だ、処罰すべきだということになりますと、それから漏れたものは三条で拾える、これはおっしゃるとおりだと思います。だから三条があるがゆえに、そういう人たちは二条では処罰されないけれども、三条でもって処罰される。現に持っておったじゃないか、現に製造したじゃないか、こういう形で拾う、それは二条で落ちたものは三条で拾う、こういう構想を持っているんじゃないか。したがって三条一項――二項が要らないという立場になりますと、その部分は処罰されないということになります。それはおっしゃるとおりだと思います。
 それから三条二項は、いまもうすでに出ましたけれども、目的を持っておれば危険だと、やっぱりそういう目的がある人間はほうっとけば必ず目的を達成するんだから、現に容器にガソリンを入れたようなものを持っておるということであれば、そういう使用する目的があるなら必ずやり遂げるだろう、やり遂げるまで待っているぐらいならその段階でやはり処罰していいじゃないかということは確かにおっしゃるとおりだと思います、そういう意味では。しかし、先ほど来出ましたように、そういう目的があるから容器に入れたものだけでもいいということになりますと、容器に入れたものを持っているものは大体すべてそういう目的があると一応見られる。
 そうなりますと、目的があるものとないものとをどういう基準で分類するのかという新たな問題が発生します。そうしますと、先ほども御質問ございましたように、具体的にどういう状況ならば目的があると推定されるかということを具体的に論及していきませんと、ほんとうに処罰すべきものがのがれたり、処罰してはならぬものが拾われたりする。そういう意味で、三条二項は主観的な目的の限定だけではやはり不十分なんではないでしょうか、こういうことを申し上げたわけでございます。
#28
○後藤義隆君 いまの目的の点でありますが、もちろん目的を正確に把握することは、第一線の警察がやることが必要である、慎重に。それからまたそれが誤りのないように検察庁がやることももちろんこれは必要でありますが、目的があったかないかということは、被告というか、被疑者がそれを自分が自白するとかせぬとかいうこと以外に、あらゆる状況からやはり最終的には裁判所が、――たとえ本人は自白しておらぬでも、裁判所がそれを認定することもできるし、あるいは本人がかりに自白しておっても、裁判所がそんな目的はないはずだというようなふうでもって、そんな目的がないということで無罪にすることもできるんじゃないですかね。それを法律をつくる前に、目的の認定がむずかしいということでもって法律をつくるつくらぬということをきめることはどうか。
 それからもう一つは、これはくどいようですけれども、最終的には裁判所がきめることであってと、またきめるのにはこれはあらゆる周囲の状況から判断すべきもんだというようなふうに私は考えるんです。
 それから先ほどからこれはちょっとお話があったわけですが、最終の容器が直ちに使用されるかどうかというようなことについて、これはビールぴんとかたとえばサイダーびんとか、ラムネびんとかいうようなものは直ちにできるけれども、もっと大きいガラスの容器などは、最終的にされるかどうかというのが多少疑問だというお話もあったが、これは使用するかどうかということは、これはやはり私の考えでは、使用することが普通の状態で可能であるか不可能であるかということがきめ手になるんじゃないか。たとえばドラムかんですね、ドラムかんの中に一ぱいなにが詰めてあって、それはやればそれでも火をつけることもできるかもしれぬけれども、そういうふうなわれわれの通常の常識から考えてみて、それは火炎びんとして直ちにそのものを使うというふうになり得ない、普通の状態では。そこでもって、やはり私は普通の状態でもって可能であるかどうかというふうなことによって、われわれ一般人の常識で判断すべきものじゃないか。これは警察もあるいは検察庁も、最終的にはもちろん裁判所もそれをやるわけですけれども、やはり私はそこでいいのじゃないかというふうに、――この条文でそこを、何とビールびんはいい、それからサイダーびんはいい、なにはいいけれども、もうちょっと大きい一斗だるくらいなガラスびんはいけないとかいいとかいうふうなことをこの罰則の中に入れるということはほとんど不可能じゃないか、こういうふうに考えるのですが、これはどうでしょうか。
#29
○参考人(中山研一君) 確かにおっしゃるように、立法技術として、たとえばどういう場合を処罰いたしますということを具体的な例をあげて一一克明に書き出すことは不可能だと思います。これはおっしゃるとおりだと思います。しかし、法律の適用の画一性と法的安定と人権保障を全うするためには、この条文ではたしてどういう種類のものが処罰されるのかということを事前に立法者が念頭に置いておかないと、これは確かにおっしゃるように、最終的な裁判所の解釈で、判断できまりましょうし、それから立法者やそれから法の適用者や裁判所の判定というものがある程度常識的に固まっておる分野ならばけっこうだと思うのでございます。それは従来の判決が積み重ねがありまして、大体それに従っていくんだということであれば、たとえば私どもが従来言っておる殺人罪とか横領罪とか詐欺罪とか、大体この程度のことをすればこうだろうということがある程度常識的にしろわかるような部分ならまだいいと思いますけれども、新しい法律をつくる場合には、当然どの程度のことが予測されるかということは、立法に書く書かないは別といたしまして、ある程度ワクぎめを議論の中でしておくということが非常に必要なんじゃないかということを申し上げているわけです。私は別にここに全部場合を書けということを申し上げているわけでございませんから、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
 それから最初の、目的も結局裁判所が認定するのではないかということをおっしゃいました。全くそのとおりだと思います。ただし、裁判所の最終的な認定と第一線捜査官の認定とがはたして常識的に一致するだろうかということについても、この際考えておく必要があろうかということを申し上げているわけでございます。それがだれが見ても一見明白にこれだと、区別できるということでございましたら、これは目的規定でもけっこうだと思います。しかし、目的規定というものは往往にしてそうはならないのがこれまでの実務でもございますので、その点で目的による限定というものだけでは不十分だ、それも必要でございますけれども、それだけでは不十分じゃないかということを申し上げているわけです。
#30
○佐々木静子君 いま私、最後にお話になった点でございますが、いま先生がおっしゃいましたが、最終的に裁判所で無罪になっても、その間に取り締まり官によってとらえられ、しかも送検され、起訴されるというその時点において、もう重大な人権侵害が起こる。むしろ裁判所の判断がどっちであったところで、本人が非常な人権を侵害されるということに、もうそちらのほうが、捜査関係によってとらえられるとかということのほうがはるかに大きな人権問題であるというふうに現実的に考えますので、これは最終的に法解釈はどうだということよりも、やはり取り締まり当局にこの基準を明確にしておいていただくということが最も重要なことではないかと思うわけなんでございますが、先生のその点に対する御見解を伺いたいと思います。
 それからもう一つ、最初後藤先生が御質問なさいました、野原の中で火炎びんを使用した場合はこれは不能犯だと先生もお考えになるというお話でございましたが、私も先生の御見解に賛成するものなんでございますが、しかしその場合も、この三条で火炎びんを所持した者に当たるのではないかというお話でございますが、私考えますのに、この三条の火炎びんの定義そのものが、野原の中で一ぺん実験してみようかという目的で所持している場合は、これは火炎びんの定義自身はこの物理的条件のほかに、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」となっている限り、これはもうこの第三条に当たらないのではないか。これは火炎ぴんというと、目下のところ、害の多いことばかりが強調されておりますけれども、現実に植木屋さんなどが庭木の害虫を駆除するのに、これは普通のマッチの火で害虫を一々高いところで焼けないものですから、この火炎びんの原理を応用して害虫の駆除を行なっているというようなことも聞きますし、また現実に火炎びんの場合は非常に燃えやすい。そういうようなことから考えて、たとえば自分の家の庭で自分の家の木に虫がいろいろついた。この際この木を焼いてしまおうというような場合に、この火炎びんの原理を利用して、その人が自分の所有している木を焼く、とてもマッチじゃ焼けないと。そういうような場合にはこれは目的が全然違うのだから火炎びんに当たらない。したがってむろん火炎びんのこの製造、所持を処罰する第三条の規定に該当しないと思うのでございますが、そのあたりいかがでございますか。
#31
○参考人(中山研一君) それじゃまず、最初の点はもう繰り返し申しましたので簡単にいたしますけれども、裁判所で終局的な判断が下るということは確かにそのとおりでございますけれども、それ以前の段階ですでにどういう取り締まり方針が打ち出されるかによりまして、これは処罰というか、具体的な取り締まりの範囲が非常に広くなったり狭くなったりいたしますので、その点では裁判所で最終救われるかどうかということとは一応分けてその部分はお考え願いたい、これはおっしゃるとおりだと思います。
 それから第二点はちょっと私舌足らずでございましたけれども、二条でだめなものが全部三条で拾われるということではなくて、いまたとえば実験目的ということがありましたけれども、しかし実験目的であっても、確かにその実験目的でやった行為自体は不能犯になるかもしれません。この第二条の未遂にもならないということかもしれませんけれども、しかし同時に、それじゃさらに本来的に使う目的で、家に持っておるということがあれば、当然それとの関係で第三条の問題になる。つまり二条で落ちたものの中で第三条で拾い得るものがあるということを申し上げたので、それが直ちに第三条で全部いくのだということを申し上げたわけではございません。だからそれは目的の限定もありましょうし、やっぱり第三条に当たるかどうかについても、やはりその段階で、たとえば製造にはたして当たるのか、所持と言えるのかということをもちろん限定した上でそれで拾うということはありますから、その点は誤解のないように申し上げておきます。
#32
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 中山参考人に一言お礼を申し上げます。
 本日は非常に御多用のところ、長い時間にわたりまして御意見をお述べくださり、また質疑に対して御答弁をいただきましてほんとうにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)
 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時四十三分休憩
     ―――――・―――――
  午後一時四十一分開会
  〔理事原文兵衛君委員長席に着く〕
#33
○理事(原文兵衛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#34
○理事(原文兵衛君) この際、委員の異動について報告いたします。
 本日、松井誠君、平泉渉君及び重宗雄三君が委員を辞任され、その補欠として鶴園哲夫君、高橋邦雄君及び長田裕二君が選任されました。
    ―――――――――――――
#35
○理事(原文兵衛君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#36
○阿部憲一君 本案につきまして法務大臣に御質問したいんですが、このような刑罰法規を議員立法にしたということにつきまして、大臣のお考えを伺いたいと思いますが、私自身、議員立法をふやすということは議会政治、議会制民主主義の発展の上にも非常にけっこうなことだと思いまするけれども、しかし、刑罰法規を議員立法にするということにつきましてはあまり例がないようにも感じまするので、その辺の事情について大臣のお考えを承りたいと思います。
#37
○国務大臣(前尾繁三郎君) こういうような刑罰法規を最近において議員立法していただいたという例はほんとうにありません。今回のこういうことになりましたにつきましては、一つの原因はやはり、まあこれは法務省のつらいところでありますが、昭和四十四年でありまするか、非常に火炎びんが使われ始めて、相当な被害を出すということがわかりましたが、一時、四十五年でありまするか、多少それが下火になったというようなところから、そう火急に火炎びん法をつくらなくともいいんじゃないか。また、法制審議会でもいろいろちょっと議論があったようであります。と言いますのは、要するに刑法草案の中に入れるべきかどうかというので、これは特別立法すべきものだというようなことでありましたし、当時はまあ最近のような熾烈な火炎びんが使われるということも予想されなかったのでありまするが、それが昨年になりまして非常な被害を与える、また、人の殺傷が行なわれる、こういうことになりましたために、急激に火炎びんに対して何らかの処置を早くしろというような声が非常に強くなりました。そのことは法務当局としましても、また一般はもちろんのこと、議員なり党の皆さん方も早くしなければ間に合わないというような声が強くなりまして、実は党のほうでも沖繩国会のときに何とか出せないかというところまでの話がありました。とうてい沖繩国会ではこれはもう御承知のような関係でどうにもならないというので、私、何かテレビに出たことがありますが、十一月の終わりだったと思いますが、どうしても通常国会でということを実は申したのであります。ところが、通常国会まで待つのですかという声がかなり強かったわけであります。そういうようないきさつもありまして、一日も早くということになりますと、通常のあれでいきますと、なかなか通常国会もむずかしいんじゃないか。だから一日も早くということになりますと、これはやはり議員立法でやっていただく以外にないというようなことで、そのかわり議員立法に対しまして私どもももうあらゆる協力を惜しまないというような意味合いになりました。これは全く例外の例外だというふうにお考え願ったらけっこうだと思いますし、率直に申しまして一日も早くつくっていただきたいというのが私の精一ぱいの考えであります。このことははなはだ私みずからも責任を尽くしていないような感じがいたしますので、しかし、本来からそういう面では議員さんが一番痛切にお感じになっておるんじゃないかというふうに考えますので、今度のことはやむを得なかったと私みずから思っておる次第であります。
#38
○阿部憲一君 大臣のお考えではこれは非常に急ぐからということがおもな理由のように感じますのですが、一昨年の例のハイジャック取り締まりのことにおきましては、火炎ぴんとの比較において緊急度ということについてはハイジャックのほうが国民一般に緊迫度といいましょうか、恐怖感というようなものが深刻だったと思いまするけれども、しかし、あのハイジャック取り締まり法案はわりあいに迅速に成案できたと思いまするけれども、そういうことからいきますると、この火炎びんの取り締まりにつきましても、相当国民の間においてもこのような取り締まりを要望する声が強かったわけでございますので、普通に、政府の法務省のほうの立案でいっても、そうおそくなるというはずはないと私ども思いますのですけれども、何か、特にそれ以上に議員立法によられた理由がおありになるんじゃないかと私は思いますのですが、その辺いかがでございましょう。
#39
○国務大臣(前尾繁三郎君) つけ加えさせていただきますなら、私は、刑法草案が一日も早くこれも来年の通常国会に出したいということが一点、それからハイジャックの場合ですと非常に簡単な規定でありまして、これはそう法制審議会におきましても論議を呼ぶような内容を持っていないのであります。法制審議会になりますと非常に永久的な立法という考え方に立たれて火炎ぴんといっておるが、将来どういうものに発展していくかというような点についても非常な努力をして御研究になり、もうそれこそ永久不変の立法というような考え方に立って、おやりになるのはまた法制審議会の一つのやはり特色でもあるわけであります。そうなりますと、そう二回や三回で結論が得られるというわけにはいかない事情にあることだとわれわれは考えたのであります。そういう意味合いからすると、多少なことはありましても、この際は議員立法でまたおやりになるという非常な強い熱意もお持ちになっておるのでありますから、こちらもむしろこの際はという必要性に迫られたということでありまして、それ以外に他意はございません。
#40
○阿部憲一君 ほかの刑法の問題などと違って永久立法でないというお考え。そうするとなぜ時限立法的な扱いをしなかったのかということも感ずるわけですけれども、その辺いかがでございますか。
#41
○政府委員(辻辰三郎君) この火炎びん法案の刑罰法規としての性質でございますが、これはやはりいかなるときであってもこれは刑罰の対象にすべき行為であろうというふうにこれは理解されるわけでございます。一般に時限法といいますものは、やはり諸般の社会情勢によって、一番典型的なのは昔ありました経済統制法規のような一定のひとつの時期というものを前提にしたもの、こういうものが時限立法にふさわしいものであろうと思いますが、この火炎びん法案の内容はこれは行為の可罰性ということは私は変わらないものであろうという意味におきまして、この本法案は時限立法にはふさわしくないのであろうというふうに理解をいたしております。
#42
○阿部憲一君 提案者がまだお見えにならぬものですから繰り返し質問を申し上げているわけですけれども、この法案の内容について提案者に本来なら質問すべきですけれども、法務御当局にちょっとお伺いしたい点が二、三ございます。
 この衆議院の審議の過程におきまして第一号が第九号ですか、第十九号ですかにかわっていま提案されているわけなんですけれども、これで修正されたのに第二条の「十年以下の懲役」というのを「七年以下の懲役」というのに直しておりますね。これは当局のお考えはどうなんですか。十年を七年に直した根拠と申しましょうか、そういうことについて伺いたいと思います。
#43
○政府委員(辻辰三郎君) これは最初の案におきましては、御指摘のとおり二条の使用の既遂犯は「十年以下の懲役」ということでございました。この考え方は先日来申し上げておりますが、刑法の全面改正の際の参考案となりました改正刑法準備草案の百八十六条の二項でございますが、これは火炎ぴんというものを前提にした案でございますが、これでは「十年以下の懲役又は禁錮に処する。」と、こういう考え方でございました。こういうことでやはり十年というのが至当ではないかということを考えられたのではなかろうかと思うのでございます。これが七年になりましたというその理由でございますけれども、その点私は的確にそのお考えを理解しておるかどうかわかりませんけれども、おそらく十年というのは少し感じが重いというお考え方もあったかと思いますけれども、私ども法律の事務屋から見ました場合に、使用事犯の場合には通常は他の犯罪が伴うことが多いのではなかろうかと思うのでございます。これは放火であるとかあるいは傷害であるとか、そういう他の犯罪と同時に成立するという意味におきまして、しかも同時に通常成立すると思われます犯罪は相当重い犯罪もあるわけなんで、そういたしますと、この火炎びんの使用事犯だけについて特に十年というような刑を設ける必要性というものはさほど強くはないんじゃなかろうかという感じもいたすわけでございます。さようなところから単純な使用事犯だけであれば七年以下の懲役ということでも十分これは理屈としても考えられるんじゃなかろうかと、かように考えております。
#44
○阿部憲一君 そうすると五年でもいいということになりませんか、いかがでしょう。
#45
○政府委員(辻辰三郎君) この点は、実は十年といいます場合に、現行の刑法の、多少罪質は違いますけれども、傷害罪でございます、現行刑法の傷害罪は二百四条におきまして、「十年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若クハ科料」、この五百円は二万五千円でございますが、傷害罪は「十年以下ノ懲役」ということになっております。なお、これは、懲役刑だけ見ますと、十年ということであとは全部懲役刑としては最下限までいけるという規定になっているわけでございますが、これは犯罪の――傷害というのは瀕死の重傷を負わすのも傷害罪でございましょう。それからかすり傷という場合も傷害である。傷害罪というものは千変万化といいますか、いろいろな形の傷害罪がありますがゆえに、十年以下ということで懲役刑としてはわりあい幅を持たした法定刑があるわけであると、かように理解をいたしております。
 その場合に、この考え方をとってまいりますと、本来の本法案の二条の場合も十年以下ということでございましたから、そこにはいろいろな態様の犯罪があろう。それはそれぞれ裁判所の御認定に従って、むしろ自由刑の幅を大きくしたほうがいいだろうという考え方であったと思います。これが今回七年と、十年が七年になればたいして変わらぬのじゃなかろうかという御指摘であろうと思いますけれども、やはりこの使用事犯ということになりますと、これは午前中もいろいろその罪質について御議論もございましたけれども、これは公共の安全を害するというやはり私どもは相当重い罪質の犯罪であろうと、かように考えるわけでございまして、五年ということになりますと、やはりこの罪質にかんがみまして現行の刑法体系との均衡がくずれてくるのじゃなかろうか。やはり刑法上におきましても七年以上ということになりますと、執行猶予の場合に情状酌量なんかをして一回減刑をいたしましても、なお執行猶予にならない。二回情状と、たとえばそのほかに心神耗弱であるとかなんとかいう減刑事由が二回重なってはじめて執行猶予の対象になり得るということで、七年以上ということは刑法上の罪質としましては非常に重いということでございます。その点は十年の場合とは一向変わらないわけでございますが、やはり犯罪の性質は重いということでなければならないものであろうと思います。
 そういう意味におきまして、五年ということと七年ということとは刑法的に相当違った意味を持っておると、かように理解をいたしております。
#46
○阿部憲一君 例の三条の二項の問題ですけれども、これを表現をだいぶ変えまして、「ガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者も、前項と同様とする。」というのを変えまして、「発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるものを所持した者も、前項と同様とする。」、これをこういうふうに直してありますけれども、これはどういう事情から直したかおわかりでしたらお聞きしたいと思います。
#47
○政府委員(辻辰三郎君) 私が理解いたしておりますのは、原案の三条二項はこれは対象が広過ぎるという御議論から今回の修正の一項だ変わったと理解をいたしております。
#48
○阿部憲一君 昨日実は私、初めて火炎びんなるものを、またその実験を見せていただいたわけですが、あのうちで一番簡単なものを見ますると、例の一升びんですか、あれにガソリンを入れてそれに何というか、布ぎれを突きさして点火するというような、火炎びんではありましょうけれどもごく初歩的なものだと思いますが、これはごく日常に家庭においてもまた普通の私たちの行動の中においても使うような状態にある。というのはびんに入れたガソリンみたいなもの、自動車を使っている人につきましても何かちょっとバンカーショートした場合にもガソリン屋に行ってガソリンをびんに入れて買ってくるとか、まあ一般家庭においてもそういう容器に入れておくというケースは非常に多いわけですね。ところがそれだけでもすでに火炎ぴんとも見られるわけですね。したがって、そのびんを持っていただけでも一応容疑に値するということになるわけでございますけれども、その辺の御見解についてもう一度伺いたいと思います。
#49
○政府委員(辻辰三郎君) 現在の三条二項でございますが、これはしばしば申し上げておりますように、火炎びんの製造の用に供する目的を持っておると、そういう目的で所持をしておるという目的が一つの要件でございます。
 それから第二の要件は、発火装置または点火装置を施しさえすれば火炎びんとなるような、そういう容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れておるという要件と、この二つの要件からこの犯罪の構成要件ができておるわけでございます。その場合に、ただいま御指摘のように、家庭でもガソリンをビールびんに入れている場合があるかもしれぬということでございます。その場合には火炎びんの製造の用に供する目的というものが全然ないということでここでやはり歯どめをもってきておるということでございまして、この火炎びんの製造の用に供する目的と申しますのは、昨日も申しましたように、これは目的という場合には認識のみならず認容まで至っておるというのが大体確定した法律的な考え方でございます。相当、火炎びんの製造の用に供する目的といいますものはそういう意味におきまして法律的には大きなしぼりになっておると、かように理解をいたしておるわけでございまして、その点で家庭にビールびんにガソリンがあるというものは、とうていこの犯罪の対象になり得ないということが言えると思います。
#50
○阿部憲一君 お尋ねしているのはごく簡単なもの、要するに発火装置があるとか投げれば発火するというようなものではなくて、点火してすぐ火炎びんの働きをするというようなもの、そして一升びんのガソリンということを申し上げたわけですけれども、このようなものについてはその目的によって判断するというお話ですけれども、この目的なるものは所有者の意思であって、それを取り締まるほうの意思とは違うわけでございますね。そこでやはり往々にしてこのような犯罪を犯そうという意思のない人、ごく一般の人たちに対していまの嫌疑、容疑がかかる可能性というものがあるような感じがするのですけれども、したがいましてまた、そういうことからいいますると、三条の二項というのを変えたけれども、実質的には何にも変わってないのじゃないか、極端に言えば大したメリットもないのじゃないかというふうに感じますが、その辺いかがですか。
#51
○政府委員(辻辰三郎君) 議員提案されました修正前の三条二項と現在の三条二項の違いは、これは容器規制という点にしぼりがかかったという点でございます。先ほど来申し上げておりますように、現在のこの案は「発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなる」そういう容器でございますが、前の案はそのしぼりが全然ございません。昔の案でまいりますと、「火炎びんの製造の用に供する目的」というだけのしぼりでございますから、この場合には、この火炎びんを製造する目的でドラム管でガソリンを運んでいるという場合もこれは入り得るということでございます。ところが現在のこの案におきましては、さような事案は通常は対象になり得ないということで、この容器規制のしぼりというものはその意味において相当大きな意味を持っておると思うわけでございます。
#52
○阿部憲一君 この火炎びんを使用した不法事犯におきまして関係のない一般の市民が被害を受けるということでございますね、これに対する救済方法というものはどういうものか。これは法務省のどなたですか。
#53
○国務大臣(前尾繁三郎君) 詳細はまた局長から御説明いたしますとして、私の考え方を申し上げたいと思います。というのは衆議院ではこれに対する対策を考えろと、こういうことであります。ただいまの現行法でまいりましたら、公務員が何か故意あるいは過失あるいは不法行為というようなことによって起こった場合には国が賠償責任がありますが、そうでない場合には責任がない、と申しまして現在行なわれております態様を申しますと、もちろんこの不法事犯を犯しましたものがわかればそれに対して損害賠償の請求権があるわけであります。また不明でありましてもそのグループがはっきりしておれば共同責任があるということになるかと思います。しかし大体においてわからぬという場合が多いのであります。そういうものに対する救済ということは事実ないわけで法規上の権利としてはないわけになってまいります。現実を申しますとやはり東京都あたりで見舞い金を出す。額にしますとそうたいした被害――現在までの被害でいきますと百万円とか、それ以上の被害は、松本楼の場合を考えますと、これは保険金がついておるというようなことでありまして、額としてはそれほど大きい損害額になりません。そういう意味合いからいたしますと見舞い金ということが相当だと思いますが、私はもう少しいろいろ考えてまいりますといままでのような権利義務というだけではっきり明確でないが、やはり国が治安に対する責任を持っておるというある分野があって、従来の権利義務というのではなしに、何と申したらいいかわかりませんが、政治的な何らかの責任、したがって見舞い金というのだが、当然そういうものを法制化して考えていくべき時代ではなかろうか、というふうに私みずから考えておるのであります。ただほかの場合と均衡がとれませんといけないので、そういう意味からよほどこれは検討をようしていかなければならぬ問題でありますし、また法律学としては新しい分野の問題、まあ社会保障ではありますが、単なる福祉というんじゃなしに、国がある程度責任を持っておるという意味で、まあ義務というか、従来の義務ではないが責任を果たすという意味で、その半額とか、あるいは見舞い金になりましても恩恵的な見舞い金というんじゃなしに、まあ慰謝料といいますか、そういうような分野があるんじゃないか、こういうような考えを持っておりまして、今後いろいろと研究すべき大きな課題である。ことにいままでは率直に言って日本の国がそれほど豊かでありませんでしたが、この福祉国家というふうになりますと、もうそういう分野を考えていくべき時代になったんではなかろうか、こういうふうな考えを持っております。ただいまのところはそういうことで東京都が見舞い金を出しておるということでありますし、また先ほど申しました訴訟の場合には、NHKの場合には訴訟を個人に対してやりまして、そして何らかのやっぱり賠償を取ったというような例もあるのでありますが、そういうものはNHKでありまするから訴訟がやれますが、そうでない場合にはどういうふうな、まあ国がかわって訴訟をやるというか、あるいは何かそういうような道を開く必要があるのではないかと、いろんなことを考えておるわけであります。まあそれらのことは今後も大いに研究したいと、かように私個人は思っておるわけでございます。
#54
○阿部憲一君 大臣のお説のように、これは火炎びんの被害者だけじゃないと思います。一般にこのような爆発物等による被害の場合ですけれども、加害者がはっきりする場合はまあまあ救えますが、加害者が大ぜいあるいはそのためにまさにはっきりしない、またかりに加害者がはっきりしましても、おおむねその賠償能力がないというようなこともあります。したがって、たとえばいま例にお出しになった松本楼というような場合には幸いにも保険に入っていた。しかも保険会社のほうも何といいましょうか特別の計らいで支払いをしたというふうに聞いておりますので、そうでなければ、これもまたどのように補償したらいいか、これはおそらく私は松本楼は非常に財的な力もある会社であるからそのようなことができたと思いますが、一般の弱い被害者の場合にはそのようなこともできない、非常に泣き寝入り的な不幸な状態に落とすわけでございます。したがって、これの救済ということにつきましては、ぜひ国でもって何らかの救済措置というものを講ずるようにしていただきたいと思いますし、それからいま東京都の例をお出しになりましたけれども、これは見舞い金というんですけれども、これについても何か確たる根拠があって、基準があって出しておられるのやら、思いつきで、要するに相手次第で出すというようなことでは、これもまた問題でございますし、被害者にも不満があるわけでございます。
 自治省の方にお伺いしますけれども、いま東京都の例が出たわけですが、このような火炎びん等による被害者の救済措置として見舞い金という制度があるように聞いておりますけれども、これはやっぱり全国的にあるものでしょうか。それとも東京都だけとか、ある特定の都市だけであるものか。それからもう一つは、そのような制度というものが自治体の中にあるのかどうかというようなことについてお伺いしたいと思います。
#55
○説明員(遠藤文夫君) このことにつきまして、実は私どものほうで調べたというようなことございませんので、全国的にどうなっているのか存じませんが、東京都の場合は、特に何といいますか、制度といいますか、はっきりした法規があるというようには聞いておりません。
#56
○阿部憲一君 これはあれでしょうか。何か調べて実情を確かめるというような方法ございませんか。
#57
○説明員(遠藤文夫君) 事柄の中身の問題でございますけれども、まあ調べる必要があるとすればまたこの問題どちらが中心になって調べるのかということ、関係省とも相談した上できめることになろうかと思います。
#58
○阿部憲一君 法務大臣、お願いしますけれども、いまおっしゃったように、国としての救済措置あるいは救済制度というものは、ぜひ早目に確立していただきたいと思うわけでございますが、最後に法務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、一体、この法律を施行しまして、火炎びん犯罪の防止の上にどのくらい一体役に立つものか。ということは、こういった火炎びん事件というものが今後だんだんなくなってしまう、この法律の力でもってなるのか、それともそれほど効力はないというようなことについてのお考えをお伺いしたいと思います。
#59
○国務大臣(前尾繁三郎君) まあ絶無というようなことはございません。しかし、これによって未然防止ができるというのが一つ。それから、やはりこれだけの刑を科せられるんだということによって、まあ使用する者もよほど考えて使用するということになると思うんでありまして、そういうような意味合いからいたしますと、私は非常に有効なものである。しかし今後また彼らもどういう戦略を使うか、そういうことは、これはまあ警察当局も今後いろいろ研究をされて、そしてこれを活用するとともに、彼らの戦略に乗ぜられないような、ほかのいろんな技術なり検討をされる必要があると思っております。
#60
○阿部憲一君 私は、火炎びんがかりに非常に下火になるというようなことがありましても、結局はいまの社会状態といいましょうか、実情では、またほかの方法を考えてこのような火炎びんと同じような事件が起きるんじゃないかというふうにも考えられるわけでございますが、これにつきまして、結局このような反社会的と申しましょうか、行動をほんとになくするような措置、もっとはっきりいえば、政治が必要じゃないかと思うのですけれども、ですからこのような、いわゆる反社会的な事犯が起こらないようにする根本的な対策と申しますか、これをどのようにお考えになっていらっしゃるか、大臣の御所感を承りまして、私の質問を終わらしていただきます。
#61
○国務大臣(前尾繁三郎君) こういうふうな青年なり、青年に限りませんが、主として学生たちが、こういうような事犯をどんどん犯すようになってきたという原因につきましては、これはいろいろとあると思います。まあ社会的な風潮、ことに政治の問題もあります。それからまた教育の、大学のいまの教育組織といいますか、ことにマス教育でありまして、何ら先生との間には対話がないというような問題、それから家庭教育におきましても、まあ最近しつけが十分でないというような、これはもう社会全体のひずみというところに非常に原因をしておるわけであります。したがって、まあ政府としましては、政治はもとより、あるいは教育制度についてもいろいろ考えていかなければならぬと思いますし、家庭の教育についても考えていかなきゃならぬということでありますし、ことに情報化社会になりますと、非常に一方的でいわゆる対話がなくなるというようなことが青年たちに非常に影響しておるのじゃないかということを私ども憂うるのであります。
 そういう意味からいたしますと、もうこの法案は、要するにあと始末といいますか、遠因は、むしろそこに対して、われわれが最善の努力をまず第一に尽くすべきではありますが、何と申しましても、現在におきまして、結局爆発物とそれから銃砲刀剣との間の全く空間を、すき間をねらわれたということでありまするから、これに対する処置がないということでは世間一般が納得しないということは私、事実だと思います。そういうような意味合いからいたしますと、非常にこれは何をしているのだと私みずからおしかりをこうむっておるわけでありますし、法制審議会で審議をしていただいてりっぱなものをつくるべきではありますが、何としましても、議員立法でもやるべきだというので、皆さんが非常に御賛成くだすっておるのであります。そういう意味合いからいたしますと、何としてもこれを一日も早く通していただきたいというのが私の現在の心境であります。
#62
○野々山一三君 昨日もお伺いした続きで、大臣にまず根本の問題についてお伺いしたいんですけれども、火炎びんの使用等に関する法律をつくる趣旨を提案者の側から聞くと、緊急性、合理性、必要性、あなたもいまおっしゃられるように、何しておるのだ、早くつくれといわれる世論があるのだ、こういうことなんで、両者相共通している見方、気持ち、そういうものがあるということはわかりますが、しかし実際問題として、法制審がこの問題について議論をしていらっしゃる長い経過の中には、いろいろ紆余曲折がありますね、火炎びん問題について。
  〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
けれどもしかし、そこの状況を待っておったんじゃ立法がおくれちまうので世論にこたえられないからつくるのだ、こうおっしゃるわけですけれども、この紆余曲折があるという中身については、もういまさら私こまかいことを申し上げませんけれども、議員立法でやらぬばならぬという理屈も一つの理屈かと思うのですけれども、そういう紆余曲折があるだけに、これはあなたが委員長なんでしょう、あの法制審というのは。それは社会的、国家的必要性というか、緊急性という観点から、本件を特に法制審の審議過程の中で抽出して急速に答えを出して、そして手続をされるということがあってしかるべきだというのがごく常識的な私は考えなんですがね、その点が第一に伺いたいところなんです。
 なぜそういうことを申し上げるかというと、紆余曲折という中に、先ほども大臣いらっしゃらなかったのですけれども、衆議院のほうでも、ここでも参考人の説明の中にもありましたように、内容的にということばで全部かんべんしてもらいますけれども、その内容的にも非常に両論があったり、やめたり、つくったほうがいいとか、つくるとしたらこうした点に問題があるとかいうことがあるわけですから、議員立法でこれをつくるという気持ちは私もわからぬでもないですよ。そうしてまた、きのう申し上げたように、議員立法というものが数多くあっていいということは私はけっこうだと思いますけれども、事この問題については、あまりにも問題が残り過ぎているような感じがするので、そこのところをもう一回伺いたいわけですよ。
 なぜ緊急に、そうして法制審を飛び越えて――と言っては語弊があるかもしれませんけれども、飛び越えて、そうしていわゆる法制審自体が問題を持っているということで答えがまとまらない、そういう問題を議員立法でやるという、そういうことについて、大臣のお気持ちとは内容的に相当違いが必然的に出てくるような気がする。それをおのずから将来にわたって、衆議院のほうでも何か附帯決議で基本的人権の侵害に及ぼさないとか、取り扱い云々とかいう、こういう紙きれが出てきたのによると、警察庁から「火炎びんの使用等の処罰に関する法律の運用上の配意事項の徹底について」なんてやつがすでに出てきている。その中にもまあ触れられているわけですね。この点よく考えてみますと、やはり、よしきた、ここですぐスタートしようじゃないかという決断をするには、なおなお私は不十分なだけに――と言っては語弊があるかもしれませんが、ベストでないという意味において問題を感ずるので、いまのことについてもう一回お伺いいたしたい。
#63
○国務大臣(前尾繁三郎君) 実はこの問題につきましては、沖繩国会当時でありまして、あの沖繩国会に法案をつくるべきだという議論が当初は強かったわけです。でありまするから、沖繩国会では、まあわれわれも協力するというので、案ができましたのが十二月の初めです。それで、できたら、もう沖繩国会の、年内につくろうというところから出発したわけでありまして、そういう意味で、まあ今日まで延びましたが、実は一日も早く、あの当時の空気から考えますと、松本楼事件あるいは神山の硫酸の事件、ああいうときで、何をしておるのだというのがあの当時の空気でありました。そういうところから出発しておりますのが一点と、それから法制審議会でいろいろ以前に議論をされましたが、法制審議会では、現在の刑法の中には入れない、特別法でやれと、こういうことであったわけです。でありまするから、私は、また一面から基礎立法である刑法は一日も早く国会に出して御審議を願わなければ、正直なところ申しまして、もう七、八年審議会におかけになっておりますが、従来法制審議会にかけまして通りましたら、国会はまず修正なしに通るといわれておったわけでありますが、現在の法案の審議はまた立法府でありまするから、当然また相当長い期間を考えていかなければならない。そういうように考えますと、できるだけまた寄り道をして、来年できることなら通常国会において草案を出したい、かけたいという考えを持っておりましたし、これがまた刑法の、審議が進みませんと、現在の監獄法の全面的改正もできないというような事情もありますので、これでまた審議に非常に手間取るというようなこともいかがかと、やはりできるだけ、まあ二兎を追うと一兎も得られないということになりやしないかというような考えが非常にまあ私に支配しておったことは事実であります。そういうようないきさつであります。
#64
○野々山一三君 二兎を追うと一兎も得られないということじゃ困ると言われる、気持ちとしてはわかりますけれども、かりに――かりにと言ったほうがいいでしょう、法制審が特別立法でといわれるならばですね。私、よくわからないんだけれども、法制審が一月に一ぺんぐらいしかやらないで、七年も八年もかかっておるからできないと、こういわれてしまうと、これはあなたに文句言うことになっていやなんですけれども、あなた自身が法制審の責任者ですからね。そうでしょう。そうすると、何だか責任者が手間かかってしょうがないと言っておったんじゃ、責任者が何にもやっていないということになりますね。まさにこれは社会的、国家的必要性に関することだったら、だれだって、国会だって了解するとするならば、中身の問題は問題として、それだけを特別に審議するということができないなら法制審議会というのはおかしなものだと思うのです。私は法制審というものの中身はよく知りませんけれども、あらゆる政府関係機関の審議委員というものを一ぱいやってきました、私自身が、審議委員としても。大きな問題をやっている途中にぽっぽっと出てきましたよ、これは急ぐとか、これは何とかというので、一ぱい処理して答申してきたものもございますがね。そういうことが、何というか、おてんとうさんが地球の回りを回っているのか、地球がおてんとうさんの回りを回っているのか知りませんが、きまったようにぐるぐると行かなきゃどうにもならないという考え方は、それはどうも私、大臣に申しわけないけれども、私を納得させる何ものの理由にもならないし、迫力もないんですね。そこのところは、いま衆議院を通ってきているんで、あなたは、野々山がそんなこと言ったってしょうがないとおっしゃるかもしれませんけれども、いま衆議院側の提案者の方がいらっしゃったから一緒に聞きたいと思うのですよ。もしこの種のものを、必要なものはほおってやる、こういうものは審議会にかけるといって、ABC区分をするというなら、ああいう審議会なんか要らないでしょう。これがまず一点。要らないはずだと私は思う。関係当局の方一ぱいいらっしゃって、専門家の方が一ぱいいらっしゃるんだから、それをあなたが指示してやればいいんですからね、行政権者として。それができない、あるいはまともじゃないから、審議会におかけになる手段をも講じながら適正を期するというのがおそらく審議会を設けられている趣旨だと私は解するわけですね。ですから、くどいようですけれども、なお私はそこのところが納得できないので、あなたにも伺いたいし、それから提案者の代表であられる衆議院の先生いらっしゃったから、この法律がいいとか悪いとかいう問題は、私は中身は別として、火炎びんなどを使うことによって人の命を奪い、財産を破壊するとか何とかいう行為をやるという行動そのものはよくないことだと思いますから、取り締まらなきゃいけないと思いますけれども、こういう単独の立法で、しかも議員立法にまかせたという、言っちゃ悪いけれども、えたりかしこし、やる人がおったんでちょうどよかったわいと、ことばは悪いけれども、そんなふうに聞こえないでもないような感じのすることというのはどうもうまくないと思う。そこをずばりさらに聞きたいし、それから提案者の先生に、いま私が申し上げたことで大要私が言おうとしていることはおわかりいただけたと思いますが、きのうも申し上げたように、それは議員立法をする場合に、議員が全部法律をつくり上げ、書き上げるというわけにはいかないので、それぞれの機関があることはわかり切っておりますけれども、何で、どうしてその法務当局の諸君がつくってくれたやつをそのまま議員立法なすったのですか。法制審というものが存在していることはあなた方は十分御承知のはずです。そういうものも経ないで、何で事務当局、行政当局の諸君の書いたものをそのまま原案としておるというような、かっこうが悪いから一部修正なすったのじゃないでしょうか、非常にきたない言い方で相すまぬけれども、という受けとめ方をするのですよ。ですから、あなたに伺いたいのは、法制審ではいろいろないきさつがあって、紆余曲折があって、しかも火炎びん問題というものを処理をしなければいけないということの点については一致しているけれども、なおかつ法律の内容――内容ということばでこの際は全部包括しておきますけれども、ものをあなたがたが提案をされたのでしょうか。この点を大臣と提案者にひとつそれぞれあらためて伺いたいのです。
#65
○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど来申しておりますように、あのときの情勢から考えますと、とにかく臨時国会に通すべきだという空気が非常に強かったわけであります。それからまあ法制審議会のことにつきましては、これ率直に言いまして、非常にまあ大家がたくさんおそろいになっておりますが、小委員会ですと別でありますけれども、総会になりますと、刑法、商法、各法にわたった総会の方々で構成をされておりまするから、臨時招集というても一カ月前ぐらいからお知らせしませんとなかなか容易にお集まり願えない。で、その間に小委員会を何回かやり、それから総会もおそらく一回では済まない。何回かやらなければならない。その速度で考えていきますと、とうていもちろん臨時国会というようなわけにもいきませんし、通常国会でもなかなか通過するまでということになりますと、そう簡単ではない――といいますと、言いかえれば、またわれわれ法務省当局にしましては、別のいろいろな法案をこれは御審議願わなければなりません。罰金の法案とか、もうすでに提出を予定しております入国法の問題、そういうような問題がありますんで、それでそういうような意味合いからいたしますと、渡りに舟という考えでは決してありませんが、党で早くつくろうというのに、私どもが抵抗しておくらせて、はたしてそんなに責任をもって早急に通過させるということができるかどうかということになりますと、やはりこの際はわれわれも党に協力して、そうして一日も早く立法をお願いしたほうがいいんじゃないかと、こういう判断をいたしたわけであります。
#66
○衆議院議員(大竹太郎君) 前回も同じような御質問があったかとも思いますが、いまほど法務大臣のほうからもお話がございましたように、この火炎びんの事件というものは、御承知のように非常に最近の事態からいたしまして急速に立法化する必要があるだろうということで、御承知のように、最初は自民党単独で提案をしたわけでございますが、その間、事務当局の案をそのまま自民党の案にしたのじゃないかという御質問もあったわけでございますが、御承知のように、自民党の法務部会におきまして、もちろん役所のほうからも来ていただきまして、いろいろ御意見をお聞きしたわけでございますが、御承知のように自民党の主としてこの立法に当たられました高橋委員あるいは羽田野委員あるいは小島委員、田中委員、いずれもまあそうそうたる法律家でございまして、そういう方々と事務当局の間で種々御相談をし、協議をして一応原案をまとめたわけでございますが、御承知のように審議の過程においていろいろ御意見がございましたし、またお二人の参考人からいろいろ御意見を承りましてそれらを勘案いたしまして共同提案としての最後の案ができたわけでございまして、この点御了承を賜わりたいと思います。
#67
○野々山一三君 あらためて伺いますが、この間ですか、中谷君が佐々木委員の質問に、これはりっぱなのかどうなのかと言ったらいや完全じゃないけどベストですと言っていましたな――ベターですか。日本語でどういうんでしょうか、よくわかりませんが、ベターというのはべたぁーっとしていることなのかもしれませんが、よくわかりません。けどそれは大体まあこれでしょうがないだろうということなんでしょうな。けれども私ここでしょうがないと思いにくいものですから聞くんですけれどもね。先ほども質問しているように、法制審では単独立法がいいとか、やれ中身の点でこうだとかああだとか、時期的にどうだとか、いろいろないきさつがありましたね、二度、三度。そうでしょう。御承知でしょう。で、それをまああなた方が提案なさったわけですけれどもね。で、もう一ぺんあらためて開きますけれども、この法律は第一義的には何を期待しているか、直接的には何を求めておるか、端的に答えていただきたいと思います。その上で私は気持ちを沿いながらあなたと相談をする意味で聞きたいわけです。
#68
○衆議院議員(大竹太郎君) これはたしかこの前にも同じ御質問をいただいたかと思うわけでございますが、この法律には目的とするところが書いてないという御質問とあわせて御質問があったかと思いますが、その節も御答弁申し上げたように、刑法はもちろんのこと、こういうような犯罪処罰に関する特別法、なべていわゆる犯人に対する特別予防の問題と、また一般に対する一般予防の両面を持っていると思うわけでございまして、犯罪者に対しては処罰によって再び犯罪を起こさないように、また一般の人々に対しましてはこういう行為は重い犯罪になるんだということを知らしめていわゆる一般予防の資にしたいというのがこの法律の目的だろうと思っておるわけでございます。
#69
○野々山一三君 いまあなたがおっしゃったのは特別立法であること、特別予防をすること、一般に対して保護をすること、それから犯罪を起こさないこと、そうしてこういうことを犯すとたいへんな罪になるぞということを知らしめること、そうおっしゃいましたですね。そうですね。
#70
○衆議院議員(大竹太郎君) ええ。
#71
○野々山一三君 そのことが法律の中に書いてありますか。そのことの一つでもいいから書いてありますか。
#72
○衆議院議員(大竹太郎君) これはこの前たしか刑事局長のほうから私の答弁に補足をしてお答えを申し上げたと思いますが、これは刑罰法規一般にいわゆるこの特別予防と一般予防の面を持っておるわけでございまして、最近はこの刑罰関係以外の法律についてはそういう目的を記載した法律がだんだん多くなっておりますけれども、刑罰法規については、何といいますか、なべて法律がこの両面を持っているという意味におきまして、特にこの目的を書かないのが普通であると、先般特別法として制定されたハイジャック処罰に関する法律その他においても特にこの目的が記載されてないという御答弁を申し上げたと思うのでありますが、重ねてそうだということを御報告申し上げておきたいと思います。
#73
○野々山一三君 あなたにはたいへん申しわけないけれども、提案説明書の四行目の下のほうに、特別の罰則規定を新設する、これが提案の本旨ですね、そうでしょう。本旨でしょう。内容は別ですがね。提案の本旨は特別の罰則規定を新設する。ところがいま私が伺った限りで言うと、特別法であり、特別予防を目的とし、一般に対する保護を目的とし、犯罪を犯さないようにし、犯罪を犯すとこういう罰則を受けるんですよということを知らしめるということはこの説明書にも一つも書いてない。そうでしょう。一つも書いてないですね。あなたのことばと紙に書いてあるのとまるっきり違いますね。これは変なふうに聞いてもらいたくないのです。私はこのことをあなたにようく納得してもらわないと次の質問ができないから、大臣あるいは刑事局長ですか辻さんにも聞いてもらいたい。この法律を特別立法としてつくるんですね、第二番目の質問。そうですね。
 第三番目に聞きたいのは、特別立法だったらその特別立法の趣旨を設けたほうがいいんじゃないかということを、それをこの間から言っているわけです。最近処罰法規についてはそういう立法目的というものを付したものはない、慣例としてそういうものはない――慣例ということは法律的にどういうことなのか、私わかりませんから教えてもらいたいとも思うけれども、そんなことが本論じゃありませんから小学校へ行って勉強し直してきますけれどもね。そういうことばでとやかくおっしゃらないほうがいいと思うんです。「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」、昭和四十五年十二月二十五日法律第百四十二号というのがありますが、昭和四十五年というのはいまから何十年前ですか。何年前ですか。最近とどういう関係になりますか。こういう特別立法には明らかに目的が書いてある。これは明らかに特別立法ですね。書いてあるというだけじゃ悪いから読んでみましょう。(目的)第一条「この法律は、事業活動に伴って人の健康に係る公害を生じさせる行為等を処罰することにより、公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まって人の健康に係る公害の防止に資することを目的とする。」と書いてあります。しかも法律の命題は明らかに公害犯罪の処罰に関する法律という特別立法ですね。火炎びん法と言いましょう、通称、私は。火炎びん法という法律は、一言で言えば火炎びんなどを使って人の命を脅かしたりあるいは財産を侵したり公共の何々を侵しちゃいけない、そうするとかくかくしかじかの罪を負わせますよという法律ですわね、簡単に言えば。ところがその慣例によるとそういう法律目的なんというものは全然ないんだと言うけれども、先ほどの話に戻りますけれどもね、昭和四十五年十二月といったら何十年前でしょうか、いやらしい言い方ですけれどもね。ついこの間のことです。私の常識で言うならばついこの間のことです。そういうものをどんどんやっているのに、やらないというのはなぜか。やらない積極的な理由が何かある。
 私はこの際意見を述べておきたいと思うんですけれども、世の中にたとえば火炎びんなんかというものを、かくかくしかじかのものを使ってこういうことをするといけませんよ、それは世の中の正常な常識というものをこわすことになっていけませんよということを、たとえば警察当局がポスターをつくって国民に訴えるということがあったときに、訴えようにも何にもない。国会でだれかがしゃべったことを紙に書いて訴えるだけです、これは。予防的効果ということを先ほどおっしゃった、大臣もおっしゃられたですね、予防的効果。立法者も予防的効果ということを第一義的におっしゃったですね、あの提案者も。警察局長も同じことを言った。三人とも同じことを言いながら、予防的効果というのを何とも書いてない、これも。これは提案者にあらためて――もうこれ以上は大臣は、関係当局の人はこれは別なんで――あなた方が提案されたんですから、あなた方に聞きたいんだ、最後のところはね――というような意見を認めるかどうか。私のいま指摘したような意見を認めるかどうか。認めないならば、合法的にどこへ出しても恥ずかしくないような理由をあなた方自身が正式に文書でここへ示してもらいたい。それでないと、これはまた問題になりますからね、委員長。ことばで言うたって言わないたって、記録は十日ぐらい先でないとできぬそうですからね、速記録ができぬときに本会議できまっちまったんじゃこれ意味ない。それができなければちょっと困るのでね、私は賛成するかしないかわからぬ。社会党が賛成すると言ったかどうか知りません。言おうと言わまいと、そんなことは関係ない、私は。法律の効果をより高めたいという観点で、基本であるから、国会議員としての立場から、これから意思をきめるんですから、いま参議院の正副会長もいらっしゃる、理事もいらっしゃる。そんなことは関係ない。私は国会議員として、提案者たるあなた方の意思を聞きながら判断をしたいと思うわけです。きちんとお答えをいただきたい、以上四つの点について。
#74
○衆議院議員(大竹太郎君) ただいまの御質問でございますが、先ほど私のほうから御答弁を申し上げたことが多少舌足らずの点もあったかと思うわけでございますが、私の申し上げました趣旨は、一般にこの処罰法規というものが持っております性質全般について申し上げたわけでございまして、したがいまして、この法律もその例に漏れないという趣旨からいたしまして個別予防の面と一般予防の面を持っている、したがってまたこの処罰法規としてはそれは共通のものである、したがってここでは特に提案理由の中で申し上げなかったという趣旨を申したのでございまして、御尽力を賜りたいと思います。
 また、私ばかりじゃなく、自民党のこの法案作成にあたりまして、いま御指摘のような公害関係の法案について特に御意見のようなものが公文の上にあるということにつきましては、まあ実は私もいま御指摘をいただいて、なるほどついこの間そういう法律ができたなあということを思い出したわけでございまして、これはもちろん、たしか政府提案のものだったかと思うわけでございますので、その点につきましては刑事局長のほうから御答弁を……。
#75
○野々山一三君 いや、あなたでけっこうです。あんまり必要ないです。
#76
○衆議院議員(大竹太郎君) ただそのときのいきさつにつきまして刑事局長のほうで申し上げたいと思います。
#77
○野々山一三君 いや、いきさつは私が質問してから答えてください。ほかの四点もあります。まだ二点ある。
#78
○衆議院議員(大竹太郎君) いまの御質問、最後二点とおっしゃる点につきましては聞き漏らしまにしたので、簡単にもう一度要旨をおっしゃっていただきたいと思います。
#79
○野々山一三君 速記録を調べてもらおう。
#80
○委員長(阿部憲一君) 速記とめて。
  〔速記中止〕
#81
○委員長(阿部憲一君) 速記を起こしてください。
#82
○衆議院議員(大竹太郎君) さきのこの提案理由の説明の中でないというお話でございますが、この火炎びんの使用等の処罰に関する法律案関係資料の中の三、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案提案理由説明書、六ページでございますが、この中ほどに、「このような観点から、火炎びんの使用等について特別の処罰規定を設け、もってこの種不法事犯の防遇に資するとともに、社会不安を一掃し、法秩序の維持に寄与するため、」云云となっておるわけでございまして、先ほど申し上げたこともこの趣旨でございますので御了承賜わりたいと思います。
#83
○野々山一三君 こういうのは、この資料ですか。これ、どれだけの価値があるのかよくわかりませんから、私は聞いているんですよ。私は議員で六年半だかなんだかやってまいりましたけれども、いろいろなものをたくさんこんなにくれますけれども、くれたのか、もらったのか、とったのか、よくわからぬのです、それは。正式に資料要求したわけでもないしね。だから私はわざわざあなたに質問をする際に、あなたはこの間この委員会で正式に提案説明をなさったその火炎びんの使用等の処罰に関する提案理由説明書というものをお読みになったわけですね。その中には一つも書いてない。一つも書かれていない。一つも書いてないじゃありませんかと聞いているわけです。ところがあなたは、口頭でおっしゃったことと、いま述べられたことは違いますね。そうでしょう。たいへんこういやらしい言い方になりますけれどもね。
 もう一ぺん言いましょうか。特別法であること、特別予防云々であること、一般を保護すること、犯罪を犯してはならないこと、そういうことを国民に知らしめることということと、いまのおっしゃるこの資料と称せられるこの資料の六ページに書いてあることとは同じなんだとおっしゃるわけですけれども、違うわけですね。まあこれ以上、このことを言ったってしょうがないんで、あなたに違うことを言いましたということをまず言ってもらって、そうしてあらためてあなた提案者を代表していらっしゃるんで、私自身が判断をする上できめたいんですけれども、あなたもお認めになりましたように、いま言われてようやく思いつきましたと言われる、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律というものがあったということは初めて思いつきました、思い出しました、こういう思い出されたそのようなものをつけ加えることによって、初めて私は特別立法としての価値があなたの御指摘のような、提案者の御趣旨のような趣旨がより有効に生きるんじゃないかというふうに考えるから、あなたは、これは参議院は参議院できめるんだからというふうに棒で鼻をくくったような話はやめにして、この原案でなきゃいけない、こうおっしゃるんでしょうか。あるいはそういう、あなた自身が提案者として正式にいまおっしゃったことの趣旨を生かすように直すことのほうがよりいいことだというふうにお考えになるか、その点を提案者として聞きたいわけです。
#84
○衆議院議員(大竹太郎君) さっきこの読み上げました点は、この前も提案者としてもこのとおりに読んでおりますことをまず申し上げますとともに、この点は先ほど私が申し上げましたように、個別予防の面と一般予防の面とをあわせて説明している点だということを申し上げておきたいと思いますし、いまほどの、提案者として、衆議院を通った原案をどこまでも固守するのかどうかという点でございますが、この点につきましては、もちろん衆議院を通したわけでございますので、でき得べくんばこのままお通しいただきたいということを希望するわけでございますけれども、もちろん二院制度の趣旨からいたしましても慎重御審議の上しかるべきお取り扱いをいただきたいということをお願いを申し上げます。
#85
○野々山一三君 その点にしぼってあらためて聞きますけれども、この特別立法として、刑事局長が言われるように、慣例慣例ということばも、慣例ではないですね。慣例ということばは法律的にどういう価値があるのか知りません。私は法律的には大した価値はないだろうと思うのですね。そういう例が多いということ以外にないでしょう。いまの場合で言うならば、そういう例が多いということ以外に何ものもない。ですから、これは刑事局長もあまりこだわってもらっちゃ困るという気持ちがあるのですけれども、ここらについても見解を承りたいし、それから大竹先生にも、できるならばこのとおりとおっしゃる、だから裏はあるなというふうに受けとめたいと思う。大臣にも承りたいのですよ。
 私は大筋として、火炎びんで人の命を取ったり財産を犯したり、公共の利益を破壊したりというような行為をすることがあっていいということはよくない。またそういうことをやることに対して取り締まる規定が万全じゃないので、より精細にそういうことがなくなって、社会の正しい秩序を維持できていくようになることには大筋として賛成をするのですよ。そういう意味でなお私の言っておることがより有効にこの法律で――特別立法ですからね、有効に生きるようになっていくためにこの立法趣旨、目的というものを明らかにして、そうして今後のその問題、まだ二つ、三つありますけれども、適正な運用が期せられるようにということになることについて大臣はどんな、私の言っておることには反対ですか、賛成ですか。考慮する余地があるでしょうか、ちょっと聞きたいのです。
#86
○国務大臣(前尾繁三郎君) その点、法律の成文の書き方の技術の問題もありますので、ひとつ刑事局長から一応お答えいたさせたいと思います。
#87
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来、御指摘のいわゆる公害罪法、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律におきましては、御指摘のとおり第一条でこの目的規定がございます。私、昨日ですか、一昨日か申し上げました趣旨は、刑罰法規には通例この目的規定を書かないということを申し上げたわけでございますが、その場合の刑罰法規と私が言いました趣旨は、いわゆる特別法の場合でございますが、その内容がいわゆる刑事犯、それからあるいは言い方によりますと自然犯と申しておりますが、そういうものを処罰の対象としてずっと書いてある規定、これは純然たる刑事規定なのでございます。これを平たく申し上げますと、いわゆる法人処罰というようなものが全然入ってこない規定でございます。こういういわゆる刑罰法規については、この刑罰の機能からいってその目的というものを書く必要がないということであろうと思いますが、従来この目的規定を書いてないというのがその原則でございます。で、これに反しまして同じ罰則でございましてもいわゆる行政犯あるいは言い方を変えますと法定犯、これをまた具体的にかみ砕いてやや俗語で申しますと、法人処罰なんかのある法律、これは純然たる刑事犯と言わないわけでございまして、これは刑事犯と行政犯といえば行政犯のほうになるわけでございます。そこで、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律の御審議の場合におきましても、この法律は純然たる刑事犯とは言い切れないと、これは第四条におきまして法人処罰の規定もあるわけでございます。いわばこれは自然犯と法定犯の中間的性格を持っておる犯罪であり法律である、こういう理解のもとにこの第一条の目的規定が入れらいたのでございまして、私申し上げましたのは、純然たる自然犯的な刑罰法規についてはこれがないのが慣例であると、こういう趣旨で申し上げた次第でございます。
#88
○加瀬完君 ちょっと関連。
 いわゆる刑罰法規ということに限っていまのような慣習が成立しているという御説明でありましたが、治安立法に限って立法の趣旨や目的を不明確にするという傾向は、これは反省してもらわなければならない私は傾向だと思うわけです。少なくも今回の法案の内容についても、いままでるる質疑が取りかわされましたように、その運用に非常に問題がある。こういうことであれば、当然こういう治安立法に限っては立法の趣旨なり目的なりというものは明確にして、そして少なくも運用について目的にはずれることのないように規定することは当然じゃありませんか。それがだんだん、だんだん刑罰法規ということに限ってそういった目的というものを不明確にしていくことは、これは取り締まるほうからは非常に都合がいいかもしれぬ。しかし、取り締まられるほうからすれば、一つ一つ保護の条項というものをはずされていくということにもなりかねない。そういう慣習であったからというのなら、そういう慣習は私は改められるべきものだ。むしろ反省してもらわなければならないものだと私は判断をいたしますが、いかがでしょうか。
#89
○政府委員(辻辰三郎君) まことに御意見としては私どもそういう御意見も十分あろうと思うのでございます。私は、現在までのこの法律の書き方が、純然たる刑事犯の場合にはわかりきっておるからという意味で書いてないというふうに理解をいたしております。そういう意味で、自然犯の最も典型的なものを集めた法典は刑法典でございます。刑法典は第一条に目的も何も書いてない。これは当然一つのまあ道徳律そのものと、道徳をすなわち犯罪としたという意味のきわめて自然犯の典型的なものがこの刑法に集まっておるわけでございます。こういうものについては目的まで書く必要はないというのが従来の法律の書き方の考え方ではなかったか、かように考えておるわけでございます。
#90
○加瀬完君 火炎びんの防止対策も刑法の中に入れるというのならそういう御説明がつきますよね。しかし、特別立法としてやるということがあれば、――これは刑法ということになれば、そこでいろいろ先ほどから御指摘がありますように、法制審議会なりその他の世論もこれに対する批判もし、あるいは意見を具申をしてそこに一つの国民の大多数の世論というものが十二分に盛られる、そういう何といいますか、形式を備えていますね。ところが、特別立法ということで目的も立法の趣旨も不明確なままに慣例だからといってやられることは、非常に私どもは運用の上に危惧の念を残さざるを得ない、こういう感じ方をしているわけですよ。じゃ、どうしてこれをこんな特別立法なんという形をとらないで、ちゃんと手続によって刑法なら刑法の中に入れるような方法を政府は選ばなかったのか。議員立法ということですからね。議員立法ということは必ずしも専門家が立法するということではないわけですから、なおさら立法の趣旨なりあるいはその法の目的なりというものを明確にする必要があるんじゃないですか。常識的ですけれども、私はそう判断をいたします、意見になりますが。
#91
○衆議院議員(大竹太郎君) いまの御意見、もちろん衆議院においても、この法律は国民の基本的人権の侵犯につながるおそれがあるのじゃないかということが議論されまして、特にこの国民の基本的人権を不当に制限することのないように留意すべきであるという一条を入れたらどうだというような実は意見が出たわけでございますが、いろいろ研究しました結果、いま刑事局長のような意見もございまして、それなら特に条文に入れないで附帯決議をつけようということで――いや委員会決議という形で、失礼ですけれども読んでみますと……(「けっこうです」と呼ぶ者あり)けっこうですか、それでは読みませんが、附帯決議という決議によっていまの趣旨をあらわしまして法律を成立させたといういきさつがございますので、申し上げておきます。
#92
○野々山一三君 決議と附帯決議とはだいぶ性質が違いますね。一生懸命おっしゃっておられるけれども、性質が違うというのは、たとえば十に対して二とかというほうの二のほうに属する――まあ、たとえが悪いけれども属するようなものでして、それだけに公権的に決議の意思があるのか私はわかりません。附帯決議なら国会の意思として本会議で議決されるわけですから、それならそれもまた一つの価値がある。いま加瀬先生言われるように、根本の問題について法律手続の特別立法としての趣旨は全然紙に書いてあることとおっしゃることと、提案理由説明書に書いてあること、三つが三つとも違うんですよ。
 これは中谷君もおいでになったけれども、あなたいまおそく見えたからもう一ぺん申し上げるけれども、提案説明のときに読み上げられた文章は、四行目だか五行目に書いてあるものによれば、「火炎びんの使用、製造、所持等の行為について特別の処罰規定を新設」すると、こういうことです。それで、それは何だと、どういう目的を持っているんだといって聞いたんです。そうしたら特別法である、特別にこういう事件が起こらないように予防したい、それから一般の利益を守りたいということ、罪を犯させないようにすること、そういうことを国民に知らせたい、こういう罰が受けられるんですよということをよく知らせることを通して総称的にまたこの法律の価値を生かしたい、こういうふうにおことばではおっしゃった。そうしたら今度はこの資料ですね、この資料の六ページだかに書いてあるもの、これはもう読みませんけれども、これとはまた違いますね、などなど、基本的人権に及ぶかもしれない。かもしれないどころか、及ぶ可能性がたくさんありますよ、いままでの議論からいくと。そうでしょう。逮捕される、これは何だ。あとで無罪になった。だれも補償してくれないというようなことになる場合だってありますね。そういうときに、その人はかりにその人の生涯にまで及んでたいへんな損害を受ける場合もあり得るんですね。ということでしょうね、侵害という一つの事実として言えば。そういうことが起こる可能性は十分あるんです。しかもそれを特別立法として処理されるんですから、そういうことを予防するということを重視しながら行為に対して罰するというようにしていくことのほうが常識的じゃないか。だから、衆議院の提案者の方々は、確かに自分たちは通してきたんだから通してくれやと、まあ平たく言えばそういうことでしょうけれども、そういう点を補完する気持ちはないかということを聞いているんですよ。それが第一です。
 それに、いま慣例があるからだめだと。それで私が例に出したのは、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律というものの中には明らかに目的が書いてあるなどなど、慣例、慣例、慣例と言うけれども、慣例が全部そうじゃないわけですね。しかも、いま刑事局長の言われた答弁で補足しておきますけれども、私は、この火炎びん云々の法律でも、全く、行為をなした個人以外の集団がこういうものを集団として、組織として形成してやる場合だってあり得るかもしれないとさえ思うんです。組織として製造し、保管し、そして組織としてそれを所持し、行為を起こすという場合だってあり得るかもしれない。たとえばこのごろの過激派集団というものもあるし、集団ですね、組織ですね、暴力団が使う、これも集団ですよ。組織ですよ。法人格を持っているか持っていないかという議論はあるでしょうけれども、特定の限定された個人というものじゃない危険性さえあるわけですから、そう機械的に、野々山一三という人間しか、あるいは中谷鉄也先生という人しか問題の対象物としてとらえられるものじゃないと、こう考えるわけにはいけない点がまだあるんです。そこで、そういう慣例論――ゲバ凶器云々という議論だけで、慣例的、慣習的にと言ったほうがいいでしょう。私はそういうことばはきらいですけれども、慣例的、慣習的にということばでもって、どんどんどんどん、どんどんどんどん、法律立法目的も記さないような法律がどんどんできてくるということはいいことじゃない。加瀬先生も指摘をされたとおりだと思いますよ。そういう点からこれをながめてみますと、そういう立法趣旨というものが全然書かれてない、ただ罰するということ、端的に言えば。特別に罰する特別法だということだけで、提案者であるあなた方はがんばられるのでしょうか。その点が第二の問題なんです。
 それからこの際ついでに質問をいたしますが、第三に、時限立法ということばは先ほども委員長からも聞かれましたけれども、何年何月何日までというような、そういう意味の時限立法ということばで言うと、あるいはちょっと不適当かもしれません。私が言おうとするのは、この間から大臣にも答えてもらっておるところですけれども、法制審議会でいろんな紆余曲折があり、特別立法論もあり、あるいはこうしたほうがいい、落としたほうがいい、入れたほうがいいという議論があって、なおかつ審議の過程なんですね。そこで、加瀬先生から補足関連質問をしていただいた問題点でありますように、法制審議会が答えを出して、そして刑法なりそういう刑罰法が完成するというまでの間この法律は生かしておくというような意味における時限立法、そういうことを明記するということでないと、刑法はできちゃったわ、世の中は変わったわ、しかしこの火えんびん法はだれも廃案にすると言わなかったら永久に存続するんですよ。それは間違いないでしょう。私は法律は勉強してないからよくわからぬけれども、先生方は法律の専門家だから、いかがでしょうか、私の言っていること、間違いですか。間違いでないと思いますがね。そういうことではこの法律案はなお問題があり過ぎる。
 しかし、私は、繰り返し言っておくけれども、こういう火炎びんを使って人の命を取ったり財産をおかしたりというようなことをやることはいいことじゃない。そういうことは罰しなきゃいけないなあというそういう気持ち、そういう意味で質問に立っていることは間違いないんです。しかし、まだ、そういうような問題が残っていますから賛成するか反対するかわかりませんよ。社会党が賛成したからといったって私は賛成しないかもしれません、これほど重要な問題ですから。そういう点私の意思を込めて第三に質問したわけです。そういう、時限立法ということばが当たるかどうか知りませんが、根本的な法制審の答えが出て刑法が完成するというときまで、という規定を明らかにしておくということが必要じゃないか。
 もう一回言いましょう。第一は、立法目的を明らかにする。第二は、基本的人権ということについて、あなた方は「決議」というふうに言われたけれども、「決議」ということで、一体、基本的人権がどれだけ保障されるか。そういうことについて、やっぱり立法化することをも含めておかなければ、法制審でさえも問題があるような点のある問題であるだけに、その点を明らかにしておこう。第三は、時限、つまり刑罰法がはっきりする、りっぱなものができる――法務大臣の話によるとかたかなの法律というのはみっともない話なんでね。かたかなのがいま日本じゅうにあるのかどうかわかりませんがね、あるのは法律だけじゃないかと思うんですけれども、公けにはね。でもそんなことはどうでもいい。そういうものが直るという時期までこの法律をつくると、こういう趣旨、この三つの土台をまず明らかにもう一回聞きたい。その点について、提案者及び大臣、――刑事局長に答弁を譲られておる気持ちはわかりますが、大臣からも、ひとつ、あらためて、――あなたのよく言われる個人的見解でもよろしい。そんなことはほんとは許しませんけれどもね、きちっとした御答弁をしていただきたい。
#93
○衆議院議員(中谷鉄也君) 私のほうからお答えをさしていただきます。
 野々山先生御質問の第一点でありますが、この火炎びんの使用等の処罰に関する法律案に条を起こして目的規定を設けるべきだという点についての御指摘であります。衆議院におきまして衆議院の法務委員が中心になりましてこの法案の成案を得るまでに刑法その他特別法等について検討いたしました。前回も御答弁を申し上げましたけれども、この法案についての合理性、必要性、そうして緊急性等について特に検討したわけでありまするけれども、この点については、緊急性がありとして成案を得ましたところの法律の中には、航空機の強取等の処罰に関する法律という法律があることはすでに先生御承知のとおりであります。この法律も、いわゆる不法分子の行為がこの法律制定の動機になり原因になったことは明らかであります。この法律等もわれわれ参考にいたしました。この法律については、――航空機の強取等の処罰を目的とした法律でありまするけれども――特に目的規定については設けていないというような点をも勘案をいたしまして、法の持っておりますところの斉合性と申しまするか、そういう点について配慮いたしまして特に目的規定は設けなかった、こういうふうな提案者のほうの考慮に基づくものでございます。
 第二点の時限立法あるいはまた限時法にすべきではないかというところの御意見については、私は非常に鋭い御指摘であるというふうにお伺いをするわけであります。衆議院において特にこの点について問題にいたしましたのは、不法分子が火炎びん等を投てきし、使用し、人の生命、身体、財産に危険を生ぜしめる、こういうふうなことがいつまでもあっていいはずではないし、政治の世界、政治の力によってこういうものはすみやかに絶滅をしなければならない。だとするならば、この法律については限時法をもってというふうな意見もあったことは事実であります。われわれ成案をつくりますまでにそういうふうな意見があったことも事実でありますけれども、これも取り締まり法規にいわゆる時限的な規定を設けることは、さきほど申しましたように、法の斉合性と申しまするか、法の持っておりますところの体系の中の一つの法律として見るときには必ずしも適当ではないということであります。しかしながら、われわれ衆議院の法務委員といたしましては、法三章をもって足るという考え方を持っておるのでありまして、この法律が、先ほど先生御指摘のように、全くこの法が将来において適用されない、そういうふうな事態が一日も早く来ることを期待しておる、こういうことは言うまでもない次第であります。そういう点で、気持ちといたしましては、こういう法律が、何年か後もなおこの法律が運用、適用されるというふうなことの事態があるというふうなことをわれわれ決して望んでおるのじゃないし、そういうようなものについては、すみやかに、こういうふうな火炎びんが投てきされるというようなことについては、別の面の努力においてこういうものを一日も早く絶滅いたしたいと、こういうふうに考えておる点が第二点であります。
 第三点の基本的人権を擁護する――誤認逮捕、別件逮捕、その他過剰警備と、前回も加瀬先生のほうから適切な御質問をいただきましたけれども、これらの諸点につきましては、衆議院におきましても、特に三条二項の問題をめぐって、基本的人権の侵害のおそれなしやどうや、この点についてはかなり詳しく掘り下げて論議をいたした点であります。今後とも、特に決議をもってわれわれが要望いたしましたのは、法の運用、解釈、その他において基本的人権を侵害してはならないと、この点について申し上げたわけであります。法の持っておりますところの社会防衛、一般予防の観点と同時に、その法律の持っておりますところの刑罰法規、すべてそうであろうと思いますけれども両刃の刃であるという点を考えますと、特に野々山先生御指摘のように、基本的人権の侵害をしないという点については、十分に審議を尽くしていただいて、これらの点についてはあらゆる角度から論議をしていただく、そのことはむしろ提案者といたしましても心から望んでいる次第であります。
#94
○野々山一三君 第一の、これは議論になって済まぬですけれども、ハイジャックの問題は、私はこういう問題を審議をするときになかった時代にできた法律ですからとやかく言いません。ただあなたに一言だけ、せっかく答弁なさってくださって文句を言っては悪いんですけれども、刑事局長の話によると慣例と言う、刑罰法規の慣例というものは目的を設けないんだと、これが鉄則なんですよ。そういうことでは、あなたの第二に答えられた一日も早くこういう事態が起こらないような世の中にしたいということとは矛盾するでしょう。それからもし、先ほども大臣もおっしゃったかと思いますけれども、なくなってもらいたい、けれども、不幸にしてある場合があるかもしれない、だからこういう法律も問題があるけれどもつくりたいとおっしゃる気持ちもわかります。ですから私は、ある日からある日までの間、抜けちゃったというようなことがないようにしておけばいいんです。しておけばいい、と言っちゃ悪いけれども、しておくこともしょうがないと思いますよ。その意味で、次の刑法ができるまでの間をこの法律でやるということは、あなたのいまお答えいただいた趣旨と私は一致すると思うんです。違いますか。その点についてお答えをいただきたいと思います。
#95
○衆議院議員(中谷鉄也君) 私が出席いたしますまでに、刑事局長、慣例というようなことばで、私が出席いたしましてもそういうように御答弁申し上げておったようでありますが、第一点、いわゆるこの法に目的を設けなかった理由、第二点、時限立法にしなかった理由、これらの諸点につきましては、私たち衆議院の提案者といたしましては、慣例ということも考えましたが、それ以上に、法の持っておるところの斉合性、そういうようなものについて特に留意をしたつもりであります。斉合性がイコール慣例になるのかどうかという点については議論も分かれるでありましょうけれども、少なくとも法務委員会において特別立法をつくるということでありますならば、その法律が論理一貫をしている、斉合性を持っている、こういうような点について留意をいたしまして、いろんなだんだんの意見は出ましたけれども、目的について、それから時限立法の点について、これらについては特に規定を設けなかった、こういう点であります。
#96
○野々山一三君 あらためて聞きますが、いま私とあなたと質問の中で、あるいは加瀬委員からの関連質問の趣旨ないしは、あなたがお見えになる前に、委員長からも時限立法という趣旨について触れられたんですけれども、その点が問題だからこれほど問題になるわけですよ。だからそういうことが問題だから、問題になるんだから、その問題を解消するために、問題になる問題点を処理するために補うということについて、あなたの、そういうことはあかんというのか、絶対引けぬというのか、気持ちを聞きたいんです。直るなら、問題点が問題だから、問題にならないように問題点を解消するということに同意するというなら、そう答えていただきたい。
#97
○衆議院議員(中谷鉄也君) 重ねてお答えをいたしますが、時限立法の点については、成案を得るまで、衆議院の各委員の中で論議はした点であります。そうして時限立法の可否について、かなり長い時間をかけて論議をした点であります。そういう論議を経まして、法の斉合性の立場から見て時限立法の規定を加えなかった、こういうことでございます。したがいまして、野々山先生にお答えを申し上げておきたいと思いまするけれども、これはまさにそういうようなものとして成案を得まして審議をお願いをいたしておるわけでございまして、十分にこれは意見は意見としてお伺いをいたしますけれども、その点につきましては問題意識を持ちまして、衆議院においては論議をし尽した点でございますので、お答えといたしましては、法の斉合性の立場から時限立法の規定は設けなかったというふうにお答えとしては相なろうかと思うのであります。
#98
○野々山一三君 もう一ぺん、それでは聞きますけれども、あなたの法の斉合性というものからいって、時限立法ということばが適当であるかどうかわかりませんが、私は切れ目のないようにするための処置をして、できるなら一体化、あるいはそのときにやっぱりこれは特別立法というならば、法制審で特別立法というならば、その結果を見てまたこの法律を処理するということになる機会があっていいということを前提にして聞いているわけですからね。だからあなたと私とは、法の合理性なり正当性という観点からいって違うことを言っているつもりは毛頭ないのですが、違うことを言っているんでしょうか。違うことを言っていないならば、そういうことについて適当な処置をしてほしいならほしいとか、されることはけっこうですとか、こう答えてもらいたい。
#99
○衆議院議員(中谷鉄也君) 重ねてお答えをいたしますが、法の斉合性の問題として時限立法の規定を設けなかったということを申し上げているわけでございます。したがいまして、たとえば野々山先生御指摘のような手続を経まして、刑法の体系の中に組み入れられるということがかりにありといたしますならば、それはその際において私、これは刑事局のほうからお答えすべきことであろうかと思いますけれども、本法案については廃止の手続をとって、そうして刑法の中に新しい改正案が入れられるということに相なるのだろうと思います。そういたしますると、時限立法ということが刑法改正作業については、新聞で拝見をいたしましたけれども、野々山先生、法務大臣にたいへん適切な御質問をしておられるようでありまするけれども、時限立法にした場合に、はたしてかりに刑法の中に火炎びんのこの法律を入れるという場合に、うまくつながるのかどうかという問題もこれ半面あり得るのではないでございましょうか。この点は、決しておことばを返すわけではございませんけれども、そういう問題も出てくるのではないかと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、衆議院の意思といたしましては、気持ちといたしましては、火炎びんなどというものが投げられる、使用されるというふうなことが何年も続いていいはずがない、こんなものはわれわれの努力によってこういうものを絶滅をするんだ、そういう点で時限立法にすべきではなかろうかというふうなそういう気持ちの議論が先に出まして、この点について討議をいたしました。なお、先ほど先生御指摘のような法律上の手続の問題についても論議をいたしました。その結果、本法案については時限立法の規定を設けなかった、こういうことでございますので、重ねてお答え申し上げたいと思います。
#100
○野々山一三君 大臣に伺いたいんですけれども、何回も繰り返すようですけれども、法制審がたいへんおくれて、まあ、おくれていると言っちゃ悪いかもしらぬけれども、時間がかかると。そのために、こういう事案について早急にやらなきゃいけない、こういう社会的、国家的要望というか、そういうものに基づいてつくらにゃならぬので、つくることにはいいとおっしゃるわけですね。いま、私と提案者である中谷先生との間の議論を、質疑を聞いていただいたわけですけれども、私は、終始言っているように、刑法にしたって、あるいは商法にしたって、あなたが一番最初に言われたように、かたかなの法律はかっこうが悪くてしょうがねえ、早く直したいということをおっしゃられたわけですけれども、そういう趣旨からいって、そういうものを促進する一つの柱として、くいとして、こういうものを特別立法でつくるわけですから、そういうものを使って早く促進するということを考えるのは、大臣として、無理な言い分だとおっしゃるでしょうか。私は、そういう意味からいって、それは衆議院の諸君は時限立法ということばが悪いんで、この際は、ことばが適当じゃないだろうから――私も足を引っ張られているようなかっこうですけれども、要するに、一言で言えば、刑法全体が今日の時代に即応するような法律に変わるまで、この法律は生かすというような考え方をお持ちでないでしょうか。
 それから、前の人権問題、目的問題についてこれほど議論したんですから、ずっとお忙しいところ聞いておっていただいたんですから、この際、事務当局の答弁にゆだねるんでなくて、率直な大臣の決意なり意思なりを伺いたい。
#101
○国務大臣(前尾繁三郎君) これは議員立法でありまするから、われわれがとやかく言うべき問題じゃないと思いますが、時限立法の問題につきましても、法制審議会はいろいろな議論と申しますが、要するに、あの基本法には入らない、特別立法にすべきだというのが意見でありました。そういう意味からいたしますと、まあそういう特別立法としてやりなさいというような、実は態度なわけであります。私は議員の皆さんがそういうような御意見なら別でありますが、私はやっぱり現在の国会が立法者でありますから、法制審議会の条件にかけるというのは、むしろ逆じゃないかというような気もいたすのであります。
 それから、目的の問題につきましては、ただいま慣例ということばを用いて刑事局長が説明をいたしましたが、そうでなしに、自然犯については、当然、いま提案理由になっておるようなことは常にこの法律にはつきまとっておるんだと。したがって、それをかえって何か目的を明示するというんでなしに、もっと自然に当然取り締まるべき法律であろうかというような意味で目的を書いてないということには、やはり一理あるんではなかろうかと、かように、先ほど来いろいろな御意見を拝聴しながら、考えておったわけであります。
#102
○加瀬完君 ちょっと関連。
 自然犯といいましても、この成立するであろう法律の対象になるものが、どろぼうとか強盗とか人殺しとかいうものでないんですね、そうでしょう。それで火炎びんを使うかどうかという、警備のために不特定多数の者が、この前指摘したように、不法な検問をされるというおそれもあるわけですね。ハイジャックとこれは違うんですよ。ハイジャックは飛行機に乗るとか、乗ろうとするとか、もうその犯罪行為が明瞭なんですね。ところが、明瞭じゃない、犯意があるかないかわからないもの、しかも不特定多数のものを、犯意があるという客観的情勢からの判断ということで、犯罪対象にするかもしれないというおそれがあるわけです。そういう基本的人権が侵害されるおそれが非常にあることになりかねませんので、もっとワクをきちんとはめなければというのが野々山委員が先ほどから問題にしている点なんですよ。で、また、われわれが指摘をしてきた点なんですよ。
 議員立法で、議員だけが説明をして、これこれ、こういう社会的な必要がありますからやったんですというんならね、われわれは、さようでございますか、よくわかりましたと言う場合があるかもしれぬ。議員立法という形をとっているけれども、説明しているのは政府じゃないですか。政府が便宜的に議員立法のほうが都合がいいから議員立法にゆだねたと御説明なさっているじゃないですか。それでは無責任ではないか。
 しかも、立法した議員が取り締まるならばいろいろの配慮もあるでしょう、立法の経緯というものはわかっていますから。全然立法に関係していない者が取り締まりに当たるわけですから。そうなってくると、この法律案の中できめられただけの歯どめでは不明確だ、だから歯どめはもっときちんとしてくれなければ困ると。そうして、先ほどから出ておりますように、必要やむを得ないでやるということはわかるけれども、それならそれで最小限度にとどめるべきじゃないか。だから、期間なら期間を一応限定して、時限立法という形にして、その間に全力をあげて、こういうことのないようにしたらどうだと。そのときに、また、法律の必要があれば、時限立法を延ばせばいい。それを無制限に議員立法という形で、政府が責任を議員に転嫁して、で、いまのような御答弁をされておりましてはね、どう考えたって、ごもっともでございますと言うわけにはまいりませんよ。
 それから、これは国民を縛るもんですから、立法なさった方は当然のこと、これからこの問題を議決するわれわれも全部の責任を持って、少なくも、いろいろ指摘をされ、あるいは世間から問題にされているようなことのないように、これは相互責任があると思う。ましてや、直接取り締まりの衝に当たる政府は、これはもう法務大臣としても、あなた方が危惧するようなことは絶対ありません、私が保証いたします、ぐらいのことをはっきり言ってもらわないと、これはどうも結論が出ない。野々山委員がお伺いをしている点はそういうところなんです。
 あらためて私も、大臣に、少なくもおまえたちの問題にしているようなことは、絶対、政府としてはあり得ない、行なうことはありません、ということを明言してもらいたい。
#103
○国務大臣(前尾繁三郎君) 基本的人権の問題は、これはもう当然のことでありまして、法文に書くとか、書かないとかいう問題ではないと思います。率直に申しまして、衆議院でも申したわけでありますが、この法律には、生命、身体、財産に危険を及ぼすというような判断もしなければなりません。それから、「火炎びんの製造の用に供する目的」という主観的なものも判定をしなければならぬ。これはもうできるだけその客観的な基準を、実際にやります場合におきましては、設けて、そうして運用していかなければならぬことは当然でありますし、皆さんの心配をされておるような事態が起これば、私は全責任を持たなければなりません。それはもう当然法を運用するものとして当然のことだと私は思っております。
#104
○野々山一三君 内容について一つだけ聞いて、あと終わりますけれども、この間から問題になっておる、たとえばドラムかんというようなものが、「火炎びん」でいうところの「容器に」云々ということ、たとえば具体的な例として、広島県で昔の戦争中のガスをつくる材料を入れたドラムかんを引き取って、そして山ほどずっと置いてあって、近所の人は鼻も痛いわ、目も痛いわ、大騒ぎしておる。処理のしようがないんです。県は買わないと言う。その人は五百万円で買ってくれるというなら売りましょうと言う。これはガスの話です。しかし、そういうのに、たとえば点火器具を装置した、この法律でいう発火装置、点火装置を。これが何かガソリンだったとかりにいたしましょう。時限的にある日仕組んでおいて、何月何日何時何分にドカーンということになるという場合には一体どうなるかというような問題は、決定的なこれは問題ですね。あのガス材料の問題なんかは、あれでみんな、広島県の近辺の人たちは、鼻も痛いわ目も痛いわ逃げていってる。ただ持っている人は頑強に五百万円で買ってくれなきゃ処理する気持ちはない。ドラムかんはこわれかけちゃっているから漏れている。そういう状態を考えてみまして、これを火炎びん法にいう容器及びその他の条件を備えたものとして考えた場合に、ドラムかんだったら、だいじょうぶという話をこの間から刑事局長繰り返しおっしゃったけれども、あなたに悪いけれども、広島のガスのところへ行って、三日ほどガスの横っちょにすわっておっていただきましょう。中谷君も悪いけれども、そのガスの横っちょにすわっておってもらいましょう。そういうのまで「容器」というものの中では、抽象的で何だかわからないんです。そういうのまで、ドラムかんならいいでしょう、――つくったばっかりのドラムかんで、完成品ならいいでしょうという話ならわかりますよ。ドラムかんということばだけでは、これはだめですね、などなどこの法律について考えてみて非常に問題がありますね。ですから、その容器及び発火云々、点火云々、投げる、投げない云々という弁護士さんの先ほど質問があったけれども、そういうむずかしいことは私は避けますけれども、市民として国民として人間として、この問題についてこう考えてみたら、たいへんな不明確な法律だと言わざるを得ないんですね。この法三条と中谷君えらいことおっしゃるけれども、私もこの間言ったんだ、法三条というのはこのことですよと。三条半だ、最後に附則があるから。そんなえらそうなことを言ったってだめなんですよ、これ。私はだから、きょう採決するかしないか知りませんが、山ほどそういう点について、皆さん専門的に御質問なさったけれども、まだ質問が残っていますから、あとどうされるかお答えをいただいてから、私はなお質問は保留します。
#105
○衆議院議員(中谷鉄也君) 提案者でございますので、この法律の解釈等については、この参議院の御審議を通じまして明確にしておく責任があると思いますので、最後の野々山先生の御質問についてお答えをしておきたいと思います。第一条「「火炎びん」とは、ガラスびんその他」というふうなことで、「ガラスびんその他」ということのしぼりがすでにかかっておるわけでございまするから、どのような形にもせよ、先ほど先生がおっしゃったような、ドラムかんの中へ毒ガスが入っておると、私もこわい、先生もたいへんこわいと思いますが、そういうようなものが火炎ぴんというふうなものとして解釈されるというふうなことはあり得ないこと、そういうようなものが解釈されるとすればそれは拡張解釈であると、これはこの機会に提案者の気持ちとして明確に申し上げておきたいと思います。今後、ここでそういう答弁を申し上げるということが、この法案の内容についてしぼりをかけることにも相なろうかと思いますので、御答弁申し上げます。
#106
○野々山一三君 悪いけれども、あなたは提案者でしょう。いままで答弁しておったのは、あなた方はほとんど来やしない、この委員会に。先ほど言った大竹さんなんか、うちへ帰る、ぼくが質問まだあるから帰っちゃいけないと言っておいた。なぜかというと、きょう採決するかもしれぬという話をちょっとうわさで聞いておるから。そのために私はきょう質問することを許されて、時間の制限はなかったはずだ。ありましたか、委員長。
#107
○委員長(阿部憲一君) ありません。
#108
○野々山一三君 なのに提案者は、一人かってに帰るということがありますか。そうして答弁しておるのは何です。刑事局長であったり何とかだったり、お役人さんだけでしょう。あなた方は、まことに申しわけないが、この法律かかってからきょうで二回ですか、三回だか、ちょこちょこっとおいでになって――ちょこちょこと言っては何で、お忙しいところおいでいただいてすまぬけれども、そういうことでいまのようなお答えがあったわけですけれども、ドラムかんだったら「その他」というものに入らないということがどこに書いてありますか。「その他」というものについても私は山ほど質問があるんです。つまり先ほど大臣も言われたように、また私どもみんなが質問しているように、この容器なら容器そのものも、どういう形でどういうものが起こってくるのかもわからない。しかし、いま世の中に実在するものの中で、並べてこれは容器とは言わないとか、これは容器というとかということがはっきりしませんと、この法律の執行者は中谷君じゃないんです。中谷君は法律執行者ですか。執行者は警察当局である。警察当局であり、最終判断するのは裁判所。だから、信用しないわけじゃありませんけれども、あなた方が、まあ言っては悪いけれども、この質問のうちの何割か何%か知りませんが、程度で、こうしか言えません、こうです、とおっしゃっただけでは全く不完全ですわ。ですから答弁はもう一回聞いてもけっこうですけれども、こういう状態では私の質問は終われません。保留をいたします。
#109
○衆議院議員(中谷鉄也君) もう一度重ねて先ほどの答弁を繰り返させていただきたいと思います。「ガラスびんその他の容器」、「その他の容器」は当然「ガラスびん」によって制約をされるものに相なりまするから、ドラムかんなどというものはどのような形においても入らないというのが提案者の解釈であり、この解釈は提案者がこの委員会において申し上げていることですから、これはそういうふうな立法者の意思、提案者の意思というものは尊重されるべきだ、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
 なお、提案者においてはそれぞれ担当をきめまして出席をさせていただきますから、私が出席しておる限りにおきましては、いかような質問についても私が責任を持ってお答えいたしたいと、こういうふうに考える次第です。
#110
○野々山一三君 また議論になりますからあれですけれども、あなた、ガラスびん云々とおっしゃったけれども、あなたいらっしゃらないときにほかの方の質問に答えられた行政当局の皆さんは、たとえば投げられるようなもの、「ガラスびんその他」の「その他」には、投げられるようなものということが入っております。そうでしょう、佐々木さん、あなたの質問にもそういうお答えをしておる。ほかの方の質問にもそう答えておられる。だから提案者としていま君が言った答弁以外のものは、答弁されておっても全部これは存在しないものであるということを、ここではっきりしなさい。
#111
○衆議院議員(中谷鉄也君) 重ねてお答えいたします。三回目の御答弁であります。「ガラスびんその他の容器」とありまして、すでにお配りをいたしました法律案関係資料等にも書いておりまするけれども、「その他の容器」というのはガラスびんによってその他の容器は限定をされて解釈されるべきものでありまするから、野々山先生御心配のようなドラムかんなどというものが入るはずがない、そういうことは立法者といたしましては、提案者といたしましては全然考えておらない。ガラスぴんと類似のものというのは何か、それはビールびんであり、ジュースのびんであり、ポリの容器というふうなものは「ガラスびんその他の容器」の中に入るでしょう。それはガラスびんとの比較において入るのであり、またガラスびんの限定がありまするからドラムかんは入らないということを先ほどから何回もお答えをしている次第であります。
#112
○野々山一三君 まだあなた、私の最後のところを言わぬじゃないの。ほかの方からドラムかんの話でだいぶ時間かかって質問しているのですよ。入る、入らない。だからドラムかんが入るか入らないの話はけっこう。いま私が言っているのは、あなたがいま答弁したとおり以外のものはだれがどう答えたとしてもそれは存在しないのだということをはっきり提案者として言明してください。
#113
○衆議院議員(中谷鉄也君) 重ねて四回目のお答えを申し上げます。「ガラスびんその他の容器」でありまするから当然それは、「その他」という容器というのは、「ガラスびん」という例示規定は例示規定であると同時に「その他の容器」というものを制約する文言に相なるだろうと思うのであります。したがいまして、「その他の容器」というのはガラスぴんと類似、共通のものでなければならない、どこかにおいて。形、形状その他において――ということでドラムかんなどというものが入るはずがないし、先ほど申し上げましたが、私がビールびん、ジュースびん、ポリの容器というものは、「ガラスびん」との関係において「その他の容器」の中に入るでしょう。したがって、しかしそれはあくまで「その他」の例示の規定であって、そのようなもの、あるいはジュースびんに似たようなびん、何々ぴんというものがあった場合、それは火炎びんになることはあり得るでしょう。こういうことを重ねてお答え申し上げている次第であります。
#114
○野々山一三君 いや、だから何回でも聞きますよ。
#115
○衆議院議員(中谷鉄也君) どうぞ。
#116
○野々山一三君 あなたのおっしゃっていること、私わからぬと言っているわけじゃないのです。最後のところが抜けている。刑事局長や何かがいろいろ答弁していることは、あなたのいま言っていることと違うので、そういうことは言われておってもそういうものは私の言ったことだけ以外にありませんと、そういうことを言いなさいといっているのです。
#117
○後藤義隆君 関連して。
 いまちょっとあなたに申し上げておきますが、いま野々山先生の質問は、あなたの言っていることとほかの人の答えていることで違うところがあると思うが……。
#118
○衆議院議員(中谷鉄也君) 刑事局どう答えたの。
#119
○後藤義隆君 いや、ちょっと聞いてください。違うところがあると思うが、自分の言うことと違っておるほかの人の言うことは、それはこうじゃないというふうに受け取っていいかどうか。そこで私はこういうようなふうに思うのですが、あなたの言っていることと矛盾したことを他の人が答弁しておってもそれは効力がない、こういうふうなことでいいのですかと……。
#120
○衆議院議員(中谷鉄也君) 提案者は私たちであります。提案者の答弁が正確であります。
#121
○加瀬完君 よくわかりました。繰り返すわけではありませんが、文章から言えば「ガラスびんその他」ということになりますと、ガラスぴんともう一つはガラスびんのほかのものという解釈をせざるを得ないのですよ。だから、文言はどうであっても、中谷提案者の御説明のとおりと、このように解釈をしてよろしいわけですね。
 そこで私はそういうこまかいことに問題が当然生じてまいりますから、警察庁に、取り締まりについての一つの基準を示せというように依頼をいたしましたら、ここに「火炎びんの使用等の処罰に関する法律の運用上の配意事項の徹底について」というものが出されました。それからさらに「別紙」として、「火炎びんの製造の用に供する目的の認定基準」というものが出されました。しかしこれは、たとえば「予想される事態との関連において合理的に判断すること。」と、こういうことになっている。「合理的判断」とは一体どういうことかということは、直接取り締まりに当たる下級警察官が個々に判断する以外にこれでは基準が一つも出ておりません。そこでもっと具体例を示して、こういうようなことはやってはならぬとか、こういうようなことは取り締まれといったように明示してもらえば、個人によっての誤差というものは非常に少なくなるので、そういう点をもっと明瞭にひとつお願いをしたいのであります。
 それから、2、3につきましても同様のことが言われます。先ほど御説明にもありましたけれども、どうしても判断が個々になります。主観になります。そこで主観的な判断の限界というものをやはりきちんときめておいていただかないとどうにもなりませんので、これを明瞭にしていただきたいと思います。したがいまして、一枚目の紙のように「国会における審議内容」とか、「国会における決議の趣旨および内容」などというものを示達する必要はない。これはあなた方が十分そしゃくをして、それに基づいてきちんとした要項を示せばいいわけでありますから、もっと具体的にその二枚目の案をもっと明確なものにしていただきたいのであります。これはさらに要望をいたします。
 要らないことでありますが、最後は裁判所の認定だということに必ず、いろいろ詰めてまいりますと、話は落ちる。野々山委員が指摘したように、裁判所の認定まで持っていかれては大きに迷惑です。そこで、少なくも裁判所の認定を行なうまでもなく、行政担当者としては人権保護にそごを来たすような措置は絶対にしないという、そういう取り扱いの基準というものをつくらなければならない。昨日も例示をいたしましたけれども、ずいぶん人権侵害が多い。検問なんかで多い。そこで特に今度は、火炎びんみたいなものを持っているか持っていないかということをどうしても取り調べるようになりますから、いままでの検問がもっときびしくなるということが予想される。そこで人権保護にはどういう点から見ても絶対そごはございませんというひとつ措置をきちんときめて示達をしてもらいたい。これだけを希望をいたしておきます。できるでしょうね、それは。法務大臣はさっきなかなか明快な答弁をしてくださいましたが、国家公安委員長はおりませんけれども、だいじょうぶでしょうな、警察庁。
#122
○政府委員(高松敬治君) 御指摘の点につきましては、私どももこの点については厳重に第一線にも教養を徹底してまいりたいということを昨日来申し上げておる点でございます。ここに書いてありますことは確かにいま御指摘のとおり、やや抽象的な面もございます。そこできのう申し上げましたような、たとえば時間的、場所的関連というふうな問題についても、それを一括して書いて事前に予想される事態との関連において合理的に判断せよというふうな形になっておりますが、実際に第一線の現実にある場合には、現実のそこの状況というものが一つ固まったものができるわけですから、そういう場合についてどういうふうに判断していくかというふうなことについてはこれは十分にそれぞれの事態に関連して教養を実施して、取り締まりに誤りのないようにいたしたい。私どもはこの一番最後に書いてありますように、一般市民の方の迷惑になるようなことは絶対にそれはやるべきではないということについてはこれは申すまでもないところでございまして、それから裁判所にかかるまでもなくわれわれがそういうことについて誤った認定をやるべきではない、これはもう当然でございます。ただ裁判所の問題が出ますのは、場合によっては認定についての双方の主観、考え方の違う場合が出てくるかもしれない、そういう場合はあるいは裁判所まで行くということがあるかもしれませんけれども、私どもとしては、まず取り締まりのその段階において厳正な判断のもとにその認定をやるということが第一であるということは、これはもうそのように考えておるわけでございます。で、衆議院でこの法案が通りましたときにも、国家公安委員長からもその点については十分留意して誤りのないようにしてやっていきたいという趣旨の御答弁がございました。
#123
○加瀬完君 今度の法務大臣や現在の国家公安委員長の言明を信用しないわけじゃありませんが、いままではさっぱり言明が信用できるような状態ではなかった。だから、これもう一回ほんとうはこまかいこと出してもらって採決をきめるというのが筋ですけれども、まあ皆さん待っていますからそういうわけにもいかないでしょうから、一歩譲って、あなた方がただ言われたことをこうきめましたということじゃなくて、提案者の意思、それからまあ私の全部とは言いません、衆参両院のこの法案を審議した法務委員会の委員長、理事あたりには、こういう内容でいかがでしょうかという十分打ち合わせをして、この私の要求の提案をきめていただくということは御承知いただけますか。
#124
○政府委員(高松敬治君) まあ具体的に状態が千差万別であると。たいへん具体的――たとえば一例としてこういうもの、こういうものというのは可能だと思いますが、あらゆる場合を通じてのものというのは、これは実際問題としてはなかなか書きにくいことだろうと思います。ただ御趣旨はよくわかりますので検討はいたしてみますけれども、ちょっとここではお約束しかねる。
 それからもう一つ、先ほどお答えを漏らしましたが、たとえば国会における審議の内容と、こんなものは要らないというお話でございましたけれども、私は国会でこれだけ衆参両院でいろいろ御議論になったと、御心配になっている点はどういうことかと、そういう議論の内容というものはやはりこれは一線にも周知徹底をはかっていくということが私どもとしては当然の義務であろうかと、かように考えてここに書いてあるわけでございます。
#125
○加瀬完君 いや、それよりも何よりも、ここの論議の焦点なり趣旨なりというものをあなた方が理解することが先だよ。あなた方が理解しておらないからこれから検討の――いま私ここで案を出せということを言っているんじゃない。案をこれからあなた方がつくると約束した。それならばその案については衆参の委員長、理事あたりには、法務委員会のですよ、見せていろいろこちら側の要求なり注文なりも聞いてくれるかと、こう言っているんです。そんなことがわからなければやり直しだ、あげないぞ、きょうは。
#126
○政府委員(高松敬治君) 十分に御趣旨は大体わかりました。
#127
○加瀬完君 大体じゃ困るよ、よくわかってくれよ。
#128
○政府委員(高松敬治君) 御趣旨はよくわかりました。そういう点につきまして、また検討いたしまして御相談申し上げます。
#129
○加瀬完君 それじゃ本委員会においては委員長、理事にこれの万遺漏のないような案を警察庁のほうから御相談があるそうですから、便宜お取り計らいをいただきます。
 質問を終わります。
#130
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#131
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#132
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 原君から発言を求められておりますので、これを許します。原君。
#133
○原文兵衛君 私はただいま可決されました火炎びんの使用等の処罰に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四派共同による附帯決議案を提出いたしたいと思います。
 案文を朗読いたします。
   火炎びんの使用等の処罰に関する法律案に
   対する附帯決議(案)
 一、政府は、火炎びんの使用等の処罰に関する
  法律が、国民の基本的人権に重大な関係を有
  することにかんがみ、その運用に当っては、
  いやしくもこれを濫用又は拡張解釈して国民
  の権利を侵害することのないよう厳に留意す
  べきである。
 一、本法第三条第二項は、「火炎びん」となる、
  直前の未完成品の所持を取り締まろうという
  趣旨にかんがみ、捜査に際しては「火炎びん
  の製造の用に供する目的」の有無の認定を十
  分厳格に行なうべきである。
  右決議する。
 以上であります。
#134
○委員長(阿部憲一君) ただいま原君から提出されました自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四党共同による附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に対し賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#135
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、原君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、前尾法務大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。前尾法務大臣。
#136
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま全会一致でこの火炎びんの法案に対して御賛成いただきましたことを心から御礼を申し上げます。
 この審議を通じまして皆さん御心配になっておりますように、この法案を乱用し、あるいは拡張解釈して基本的人権を侵害するおそれが多分にあるといわれておりますことはまさにわれわれも痛感をいたしております。したがいまして、これが乱用とかあるいは拡張解釈して基本的な人権を侵害するというようなことはもう厳に戒めて間違いのないように、先ほども私、約束いたしましたように、全責任を持ってやりたいと、かように強く決心をいたしておる次第であります。
 また第二項につきましては、全くこの火炎びんにつきましては、第三条二項というものがありませんと、最近の火炎びんの使用の現状を見ますとどうも目的を達し得ないという実情にはありますが、何しろ非常に家庭で使用し、あるいは入手の非常に簡単なもので、簡易にできるものであります。したがって、それが判定についてはことに「火炎びんの製造の用に供する目的」というところでしぼっておるのでありまするから、この「火炎びんの製造の用に供する目的」をできるだけ客観的につかんで、そうして今度は一般の人に不安を持たせるというようなことのないように、これについては今後十分具体的に先ほどもお話がありましたようにいろいろな事例を考えまして、そうして第一線のこの法律を使うものが誤らぬように頭に十分たたみ込むようにいたしていきたい、かように考えておりますので、この附帯決議に対しましては私ども今後十分その意を体して執行してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
#137
○委員長(阿部憲一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#138
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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