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1971/05/30 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第19号
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1971/05/30 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第19号

#1
第068回国会 法務委員会 第19号
昭和四十七年五月三十日(火曜日)
   午前十時十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     中村 禎二君     吉武 恵市君
 五月二十六日
    辞任         補欠選任
     矢山 有作君     藤田  進君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                岩本 政一君
                林田悠紀夫君
                加瀬  完君
                野々山一三君
                松下 正寿君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
   政府委員
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る二十五日、中村禎二君が委員を辞任され、その補欠として吉武恵市君が選任されました。
 また、去る二十六日、矢山有作君が委員を辞任され、その補欠として藤田進君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(阿部憲一君) 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。前尾法務大臣。
#4
○国務大臣(前尾繁三郎君) 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
 刑法その他の刑罰法規に定められた罰金及び科料の額等につきましては、第二次大戦後における経済事情の急激な変動を考慮して昭和二十三年に制定されました罰金等臨時措置法によることとされているのでありますが、同法制定後現在に至るまで二十数年間における経済事情の変動には著しいものがあり、物価は約三倍、賃金は十倍以上に上昇しております。また、経済事情が比較的安定したと見られる昭和三十年を基準といたしましても、賃金は約四倍、一人当たりの国民所得は約六倍となっているのであります。このような状況のもとで刑法その他の刑罰法規に定められた罰金及び科料の額等を現行のままにとどめておきますことは、これらの財産刑の刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、刑事司法の適正な運営を阻害するおそれも少なくないと考えられるのであります。
 特に、罰金は、全刑事事件の九五%以上に対して適用され、刑事政策上きわめて重要な役割を果たしているのでありますが、最近における科刑の実情を見ますと、傷害、暴行、業務上過失致死傷、脅迫、住居侵入等の罪につきまして、法定刑の上限ないしこれに近接した額の罰金が言い渡される事例が増大し、いわゆる頭打ちの現象を呈しているのであります。したがいまして、現行の罰金等臨時措置法に定められた罰金及び科料の額等を改定し、これを現在の経済事情等に適合したものとすることは、刑事司法の適正な運営という観点から見て、回避することのできない緊急の課題となるに至っているのであります。
 この法律案は、以上のような事情を考慮いたしまして、罰金等臨時措置法に定める罰金及び科料の額等をいずれもその四倍に改めようとするものであります。すなわち、罰金の寡額は四千円、科料の額は二十円以上四千円未満とすること、刑法、暴力行為等処罰ニ関スル法律及び経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律の罪について定める罰金の多額をその二百倍に相当する額とすること、これらの罪以外の罪について定める罰金の多額が八千円に満たないときはこれを八千円とすること、刑の執行を猶予することのできる罰金の最高額を二十万円とすること、略式命令または即決裁判によって科することのできる罰金の最高額を二十万円とすること、以上に関連して、逮捕、勾留、公判廷への出頭義務及び未決勾留日数の法定通算の基準となる罰金額等を改定することなどをその内容としております。
 なお、条例に定める罰金及び科料の額につきましては、地方自治の本旨に照らし、法律で直接これを改定することは適当でないと考えられますので、施行後一年間はなお従前どおりとすることとし、各地方公共団体においてその改正をはかるための猶予期間を設けております。
 以上が罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
#5
○委員長(阿部憲一君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○佐々木静子君 それでは、いま御提案になりました罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案に関しまして、若干質問さしていただきます。
 これは、いまこの本法案の提案の御趣旨を伺ったのでございますが、昭和二十三年に罰金等臨時措置法が制定されまして、その後二十数年間における著しい経済事情の変動に即応するために罰金及び科料の額を四倍に改めるという御趣旨に承ったのでございます。そしてその資料といたしまして、経済関係の統計など、まあいろいろとたくさんの参考資料をいただき、種々科学的に御説明なさっていることはよくわかるのでございますが、この罰金刑というものを、単に経済的な問題として、物価が上がったから罰金も上げる、あるいはこの量刑がだんだん高くなっているから罰金の法定刑を上げていかなければならないというふうな御趣旨のように私感ずるのでございますが、しかしこれは、罰金というものは、この刑罰の一つとしての罰金刑の持っている意味、この刑事政策的な意味でも、この御提案にありましたように、現在九五%というものが罰金刑によって処断されているというふうな意味の御説明もございましたけれども、しからば罰金刑の額を四倍にすることによってどのような刑事政策的な効果が達せられるというふうなお考えなのか、そのあたりの御説明をいただきたいと思います。大臣にお願いしたいと思います。
#7
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま御質問の第一点、罰金刑によって金額を上げるだけで犯罪を少なくすることができるかという御質問につきましては、罰金刑は何も金額だけの問題ではないことは当然であります。いわゆる罰金刑を科せられるという不名誉さというものがあるわけでありまして、そういう点について非常に罰金が刑罰の意味をなしておることについては私は何ら異存はないのであります。ただ、この提案理由にも書いておりますように、昭和二十三年、経済的な観念がすっかり変わる。これはやはり罰金刑を科すというのは、その人にある程度の苦痛を与えるという意味合いがあるわけであります。その苦痛からいいますと、所得がどんどんふえていっておる。要するにその人が払います犠牲の度合い、苦痛の度合いというものははるかに軽いものになっておるわけであります。また、法というものは、もちろんそう朝令暮改では困りますが、そのときの実情に合いませんと、たとえば罰金を払いに行ったが、払いに行った往復のタクシー代よりも払った罰金額が少ないんだというようなことは、むしろ逆に法の権威あるいは罰金の権威というものを失うのではなかろうか。
 そういうことを考えますと、まあ重過ぎてはもちろんいけませんが、そのときそのときの経済事情にやはり合ったものでなければならないということは、実際におきましてだんだん、現在二十三年でありますが、最近はことに著しくなってきたのは罰金の上限を使うことが非常に多くなった。やっぱり裁判官も、そういうようなあまりにも軽い罰金額ではいけないという気持ちから上限のほうを使うようになる。そうなりますと、結局上のほうに悪平等になる。したがって、もっと弾力性を持って科していかなければ罰金としての意味がない、こういうふうな感じを持っておられることはもう現実でありますので、そういうような意味合いからいたしますと、何としてもこの際は、四倍がいいか悪いかは別といたしまして、まあ六、七倍に上げるべきでありましょうが、四倍ということでいっておきますから、いろいろ弾力性を持っておるわけであります。少なくともここ四、五年に、まあ現在のような上限だけを使うというような状態から、そういうことはなくなるであろうというような意味合いから、こうして四倍の引き上げということを考えたわけでありまして、ただいま申し上げたような趣旨で、今度の本法案を提出しているわけであります。
#8
○佐々木静子君 いま大臣の御見解を承りまして、これは、この上限を引き上げて四倍にするということに必ずしも全面的に反対しているわけでもないわけでございますけれども、ただ、いまおっしゃったように、罰金刑というものの刑罰的な意味というと、いま大臣もおっしゃったように、罰金刑を科せられることによる不名誉さというものが非常に大きなウエートを占めているんじゃないかと思うんでございます。そして、この、たとえば二千円のものが八千円になったということで、それによって刑罰の目的がかなり達せられるかというと、必ずしも――必ずしもというよりも、あまりその刑罰の目的の達成という点においては、あまり効果がないんではないかと、私思うわけなんでございます。罰金刑の効果というものは、いまもおっしゃったように、財産権を侵奪することによって本人に苦痛を与えて、それによって特別予防の目的を達するというふうに考えるわけでございますけれども、これが四倍になったからといって、特にこの財産権が侵奪されて、そのために苦痛を与えられ、それによって犯罪の予防が期せられるということは、私はきわめてそういう効果は乏しいのではないか。むしろ大臣が最初に言われた罰金刑というものを科せられたという不名誉さによってある程度の特別予防の効果があるのではないかというふうに考えるんでございますが、そのあたり、どうしても四倍に上げなければならないというこの意味ということにつきまして、私はあまり刑罰の効果というものは期待されないと思うんでございますが、法務省としては、今度の法案の改正によって一番主眼としておられるところは、いま申し上げた特別予防の効果を考えておられるのか、あるいは一般予防に重点を置いて考えておられるのか、その点の御見解をお述べいただきたいと思います。
#9
○政府委員(辻辰三郎君) 今回の法案におきますこの罰金の法定額の引き上げでございますが、御承知のとおり、この法案は、刑法、それから暴力行為等処罰ニ関スル法律、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律、この三つの罪につきましては法定刑の上限を四倍にいたしておるわけでございます。で、これ以外の法律でこの罰金、科料を定めておりますものにつきましては、その法定刑が八千円未満のものは八千円に、八千円まで上げていくという内容でございます。八千円未満のものは八千円にするという内容でございます。
 そこで、刑法等の場合と特別法の場合とは、多少この効果があるいは違った面があろうかと思うのでございます。まず、刑法等の罪につきましては、法定刑の上限を四倍にするということによりまして、先ほど来大臣の御答弁がございましたが、一般的な経済の変遷ということとの関連におきまして、罰金刑がきわめて低く、相対的に低くなりまして、刑罰としての効果を失ってきておるという大前提がございますが、そのほかに、この刑法犯等につきましては、一般の科刑の実情が法定刑の上限に漸次移ってまいっておるわけでございます。そうなりますと、そこに一つの適正な科刑という点から遺憾な点が出てくると、個々にそれぞれの具体的な案件に応じた適正な罰金刑の言い渡しをしていただくという点において大きな意味があろうと思うのでございます。そういうことによりまして、一般予防はもちろん、特別予防についても現在よりもはるかに理想的な姿になってくるということが十分期待されると思うのでございます。
 特別法犯の場合につきましては、これはいろいろ問題があろうと思うのでございます。しかしながら、この法案におきまして、今回は罰金は四千円以上という一つの区分をいたしております関係で、このもろもろの特別法につきまして、少なくとも八千円未満の罰金のものは、これは八千円以下ということにいたしませんと、一般の刑罰体系というものの均衡が保たれないということでございます。そこで、この特別法につきましては、現在刑法を含めまして、罰金、科料の罰則がついております法律は六百六十三あるわけでございます。で、このうち三つの法律につきましては、先ほど来申した法定刑が四倍になるわけでございますが、残りの六百六十につきましては、法定刑が八千円未満のものは、これは八千円以下にしていただくということでございます。で、この関係は特別法、たくさんございますけれども、この措置の影響を受けます法令の数はさほど多くはございません。これは非常に制定が古い特別法がこの影響を受けるわけでございまして、そうでない新しい特別法につきましては、それぞれの制定の時点におきまして適正な罰金額が定められておりますので、それはそれとして、なお十分な効果を持っていると。で、まことに古い法律で、非常に低い罰金刑しか定められていない特別法につきましては、この際この刑法等との関連におきまして、法定刑を八千円まで上げていただくということによりまして、十分なとは言えなくても、刑法との関係におきまして適正な刑罰の機能を果たさしていただきたいと、かように考えておるわけでございます。
#10
○佐々木静子君 この罰金の上限を上げて適正な刑罰機能を発揮するという御趣旨はよくわかりましたが、きょうは裁判所がお見えになっていらっしゃらないんでございますけれども、この罰金の上限を上げることによって、しばしば非常にその効果が問題にされているところの短期自由刑というものでございますね、短期自由刑に処せられてきた人が、この上限の上がることによって罰金刑に処せられるようなケースがこれからふえてくるというふうに法務省としたらお考えになるかどうか、そのあたりをお述べいただきたい。
#11
○政府委員(辻辰三郎君) この刑法犯につきまして、先ほど来申し上げております罰金刑の頭打ちの現象でございますが、この顕著な犯罪は、傷害それから業務上過失傷害、業務上過失致死、住居侵入というような犯罪が典型的な頭打ち現象を呈しておる犯罪であろうと思うのでございます。これらにつきましては近年の科刑の実情を見てまいりますと、業務上過失致死罪につきましては有罪の言い渡しを受けました者のうち、罰金と短期の自由刑との科刑の比率でございますが、これが顕著に変わってきております。業務上、すなわち業務上過失致死罪につきましては、昭和四十四年には有罪の言い渡しを受けました者のうちで罰金刑の言い渡しを受けておりますのが五四・四%でございます。ところが、昭和三十年には九〇・二%が罪金刑の言い渡しを受けておるということで、この業務上過失致死罪につきましては、一番罰金刑の頭打ちの現象が強いわけでございまして、その関係であろうと思いますが、自由刑に処せられる者の割合が近年漸増してまいっておるわけでございます。で、そのほかの傷害でございますとか、業務上過失傷害でございますとか、住居侵入等につきましては、罰金刑としての言い言い渡しが頭打ちの状態に達しておりますけれども、さらばといって選択刑として定められております懲役刑の件数が罰金刑との関係において相対的にふえているかといいますと、その点は顕著な変化が見られないわけでございます。
 かような現象を見てまいりますと、やはり裁判の場合におきまして、事案に応じまして罰金刑相当のものは罰金刑、短期自由刑相当のものは短期自由刑という形でそれぞれの裁判が行なわれているというふうに一応見られるわけでございます。そういう関係からまいりますと、業務上過失致死罪は別でございますが、そのほかのものにつきましては、やはり短期自由刑との関係の転換というものは、この法案が法律として成立いたしましても、そう顕著にはあらわれてこないのではなかろうかと、やはり罰金刑相当の事案は罰金刑相当として、そして適正な罰金刑が新たな法定刑の範囲で言い渡されるというようなことに相なるのではなかろうかと、私はかように考えておるわけでございます。
#12
○佐々木静子君 大臣のお時間の関係もあるようでございますので、大臣に対しまして先に質問さしていただきますが、今度のこの罰金の刑が法案の改正によりまして四千円以上となるということでございますけれども、また、科料が二十円以上四千円未満となるということに御提案でございますけれども、そうなりました場合、改正刑法との関係でございますね、それはどのようにお考えになるわけでございますか。
#13
○国務大臣(前尾繁三郎君) 改正刑法というのは、現在草案でありますが、草案はまあ六倍とかなんとか、そういうことがいわれております。しかし、各犯罪の種類によっていろいろと必ずしも一律ではないわけであります。率直に申し上げますと、この罰金等臨時措置法の場合でも改正刑法の罰金刑をとったらという意見もなきにしもあらずでありますが、ただ、やはり刑の量刑というものはバランスがとってあるわけでございます。したがって、将来の、あるいは改定されるでありましょう現在の草案は、率直に言って、まだ草案であり、また法制審議会で検討されておるものでありまして、それの御審議を来年受けられるか、あるいは再来年になるか、また、それが成立しますのは何年になるかというようなことでありまするから、そのうちでわれわれがそれをかってにより食いするということは、私はこの際はとるべき策ではない。また、改正刑法というものは、ただいま申し上げたように、いつきまるかわからない。それをその間のつなぎだという考え方でいくことも、私、どうかと思いますが、ただ、現在の刑法そのもので考えますと、率直に言って先ほど来申しておりますように、あまりにも現実離れがしており、さらにまた、弊害が起こっておる。そういう弊害をなくして、そしてまあ五年間ぐらいは、私はもし刑法が通りませんにいたしましても、今度お願いする四倍の引き上げによって十分まかなえるというふうに考えておるわけでありまして、そういう意味合いからいたしますと、むしろ将来つくられるべき刑法との関連ということをあまり強く考えないほうがいいんではなかろうかという考えに基づいて、一律に四倍というようなことをお願いしているわけであります。
#14
○佐々木静子君 いま、今度の改正せられる刑法との関連というものはあまり重視せず、今度の独自のお立場でこの一部改正をなさるという御趣旨のように承ったんでございますが、いまちょっと御答弁の中にもございましたが、関連して伺いたいでございますが、この改正刑法、大体法務省のめどといたしましていつごろ国会に上程される御予定でございますか。
#15
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私は、実は先般の総会の最初にあたりまして、できるならとにかく来年の国会に提出できるように御審議を願いたいと。これはまあ異例のことでありまして、そういうような期限でお願いしたことはないようでありますが、また最近のいろいろ審議の状況から考えますと、提出されたからといってすぐ通過するものでもありませんので、また現実から考えますと、できるだけこれは早く提出していくべきものだと思いますので、まあ来年の通常国会には提出できるようにひとつ御審議願いたいと、こういうことを特に申し上げたような次第であります。と申しまして、熟さないものを提出するわけにはいかないと思っております。
#16
○佐々木静子君 それから、この法案と直接関係なくて、恐縮なんでございますが、昨年の七月に大臣に監獄法の改正のことも承ったのでございます。そして、そのときには来年の秋早々にかかりたいというお話でございまして――来年じゃございません、いまから見れば昨年の秋でございますね、そして昨年の秋にまたお伺いいたしましたときも、いま早急に準備しているというお話だったのでございます。むろんこの刑法の改正ということも重大な問題でございますけれども、私ども見ますところ、監獄法の改正のほうがよけい緊急を要するのではないかと考えるわけでございますが、法務省とすると、この監獄法の改正問題はどうなったのか、ちょっとその時期的な問題を御説明いただきたいと思うわけです。
#17
○国務大臣(前尾繁三郎君) 監獄法の改正草案、これを矯正施設法という名前を、現在かりの名前を使っておるようでありますが、二月の早々実は局として矯正局の手を離れまして現場で実際に実務に当たっておる人の意見を聞いて慎重に考えていこうというので、いま現場の諸君の意見を徴しておる段階でございます。
#18
○佐々木静子君 そうすると、方針とすると大体いつをめどにしていらっしゃるわけなんでございますか。
#19
○国務大臣(前尾繁三郎君) これは率直に申し上げますと、刑法と引き続き今度は監獄法の審議を法制審議会に願いたいと、こういうような考え方のもとにやっておるわけでございます。
#20
○佐々木静子君 これは、私はぜひいまの大臣がいらっしゃる間にこの監獄法の改正問題を御提案いただきたいと、非常に心待ちしておったわけなのでございますけれども、ともかくできるだけ早く御提案いただきたいということを特に要望しておくわけでございます。――それではまた質問、もとに戻りたいと思います。
 この法案に関しましてでございますが、いまこの一部改正案の刑事政策的な意味ということを、先ほど来申し上げておったわけでございますが、これは刑事政策の最近の書物などによりますと、犯罪の趨勢、現在の犯罪の趨勢として三つの特徴を、一つは窃盗罪が増加しておるという傾向にある、その第二が、交通事故を中心とする過失犯罪が激増しておるということ、第三に、精神障害者の犯罪が増加しているというふうなことを、三つの特徴として書かれている学者が多いわけでございます。この法案の改正と関連して考えてみますと、この一の窃盗罪の増加というものにつきましては、これは罰金刑とは特別関係がないように考えるわけでございますが、この第二の交通事故の激増、交通事故を中心とする過失犯罪の激増というようなことを考えますと、これは罰金の額をいまの四倍に上げたからといって、これを少なくするという、過失犯罪を少なくするということは、これは直ちに結びつかないのではないか。三の精神障害者の犯罪ということについて考えますと、これまた罰金の額を高くしたからといっても、その増加を押えるということとは無関係に行なわれるのではないかというふうに考えるわけなんでございますが、現在の犯罪の特徴とか、趨勢とかいうようなこととの比較において、この法案改正において特に意義があるのかないのか、そのあたりをお答えいただきたい。
#21
○政府委員(辻辰三郎君) 現在の犯罪情勢、特に刑事政策との関係においてのただいまの御指摘でございますが、現在の犯罪情勢は窃盗罪は必ずしも増加の傾向を示しておりません。それから第二点の、交通関係の犯罪、これは御指摘のようにごく最近、急激に増加いたしまして、むしろ昨年来からいたしますと、この増勢も多少にぶってきだ。三、四年前にたいへん大きな増加の趨勢があったわけでございます。それから第三点の、精神障害者の犯罪、これは数の上で、必ずしも大きな変動はないと思うのでございますが、これは数の点は別にいたしまして、刑事政策的にたいへん重要な問題を含んでおるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 そういたしますと、今度の罰金のこの法案と刑事政策との関係は、主として一番大きい意味を持ちますのは、この交通犯罪との関係であろうと思うのでございます。刑法犯にこれをとってまいりますと、業務上過失傷害罪あるいは業務上過失致死罪、これは刑法犯のうちの六三%ぐらいに及んでおるわけでございまして、たいへん大きな数になっております。この業務上過失傷害罪につきましては、先ほど来申し上げておりますように、法定刑の罰金刑につきましては、法定刑の頭打ちの現象が顕著になっておるわけでございまして、これを今回、この法案によりまして、上限を四倍にしていただくということになりますと、事案事案に応じた適正な罰金刑か科せられることと思うのでございます。そういたしますと、これは特別予防、一般予防、双方の面において、非常に大きな効果をあげるというふうに、私どもは考えておるわけでございます。
#22
○佐々木静子君 いま業務上過失致死傷罪にかなり効果を発揮するのではないかという御見解を承ったのでありますが、これはさきに、昭和四十三年にこの刑法の過失傷害の罪についての刑罰の改正が行なわれたと思うのでございますが、この改正によって、何か犯罪の数その他において影響があらわれたかどうか、そのあたりについての御説明をいただきたいと思います。
#23
○政府委員(辻辰三郎君) この昭和四十三年の刑法第二百十一条の改正でございますが、これは御承知のとおり、従来は、三年以下の禁錮または五万円以下の罰金という法定刑でございましたが、それを、五年以下の懲役もしくは禁錮または五万円以下の罰金というふうに改正せられたわけでございます。これは当時といたしましては非常に悪質な交通事犯、人身事故でございますが、悪質なものにつきまして禁錮刑というものが、御承知のようにこれはある意味では名誉的な刑でございますが、政治犯とか過失犯と、こういうものに科せられるという意味の禁錮刑でございますが、その当時におきまして酒酔いであるとか、無免許であるとか、そういうことを伴って人身事故を起こすというような犯罪については、これは実質、懲役刑をもって臨む犯罪ではないかという観点から、この禁錮刑のほかに懲役刑というものもつけ加えられたわけでございます。
 そういうのがこの改正の大きな一つの理由であったと思うのでございますが、そういうふうにいたしますと、これは全体の交通の人身事故事犯との関係において、これが五年以下の懲役というものが加わりましても、犯罪の趨勢という面においては大きな変動は生じてこないのが当初から予定されておったことかもしれないと思うのでございます。そのかわり悪質事犯については、重い刑をもって、特に懲役刑をもって臨み得るというふうにしていただいたわけでございます。こういうことでございますので、この改正が行なわれたからといいまして、この交通の人身事故事犯についての数の上での大きな変動は見られないわけでございます。
#24
○佐々木静子君 これは、この改正が行なわれても、一般のドライバーあるいは一般の国民が、禁錮刑だったところが懲役刑もできたというようなことはあまり知られておらないというのが事実ではないかと思うのでございます。今度、罰金が、特別予防はもちろん一般予防の効果も大いにあるということでございますけれども、これも罰金がどういうふうになったかということを一般の人が知るということは、これは現実の問題とすると、具体的事件が起こって、ああこのぐらいの罰金だなということで知る場合が多いのではないかというふうに思うわけでございますけれども、そういうことになると、その刑罰の効果というものが、先ほどもこの交通事犯の人身事故において一般の趨勢のほうが強く出て、数字の上ではあまり刑罰の効果というものが形の上ではあらわれてこなかったという御趣旨でございますが、今度も、これが改正になったところで、あまり形の上ではあらわれてこないんじゃないかということを危惧するわけでございますが、そのあたり法務省とするとどういう対策を考えておられるわけでございますか。
#25
○政府委員(辻辰三郎君) この法案が法律になりました場合、これは当然法務省、検察庁はもとより、関係の警察その他におきまして、この法定刑が上がったということにつきましては十分周知徹底という点を期するように考えております。なお、この法定刑が上がりました場合には、検察庁におきましてもこの交通の人身事故事犯でございますが、これにつきましては御案内のとおり、現在全国的に大体大まかな処理基準というものがつくられておるわけでございます。そういう点につきましても、検察庁全体といたしましてこの新しい法定刑に見合う処理基準というものを十分検討して策定してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#26
○佐々木静子君 それからこのあと、少年に対する罰金刑についてお伺いいたしたいと思っているわけでございますが、この犯罪白書によりますと、少年に対する第一審の有罪判決の人員のうちに九七%ないし九八%が罰金刑に処せられているように、言い渡しを受けているという資料が出ているわけでございます。この少年に対する罰金刑という問題についてあと伺いたいと思うわけでございますが、その前に資料をちょっとお願いいたしたいと思うわけでございます。
 これは法務省にお願いするのがいいのか、あるいはこの間のように裁判所のほうに資料があるのかちょっと私のほうでは判断いたしかねますけれども、適宜、もし裁判所にあるとすればお取り寄せいただきたいと思うのですが、一審のいま申し上げました有罪判決を受けた少年のうちの罰金刑に処せられた者の年齢別の割合、それからその処せられた罰金の額がどのくらいの額が多いのか、その額による人員の割合、それからこれは少年法の五十四条の規定によりまして換刑処分が少年には認められておりませんけれども、少年に対する罰金刑の徴収状況、これ、成人とだいぶ異った結果が出てくるのではないかと考えますので、そうした資料を次回までに御提出いただきたいと思うわけなんでございます。
#27
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御指摘の資料でございますが、私ども十分御要望に沿うように検討さしていただきたいと思います。これは大体そのほとんどが裁判所関係になろうかと思いますが、裁判所に連絡いたしまして取りそろえたいと思いますが、現在私が裁判所関係から取り寄せて持っております資料によりますと、なかなか御要望に沿うだけのものが出てこないのではなかろうかということでございます。特に少年で罰金刑の言い渡しを受けましたものの、これは一般の公判で受けましたものにつきましては、これは資料が私承知している限り裁判所の資料がございます。しかし大部分は略式命令で――やはり交通事犯でございますが――処せられておると想像されるのでございまして、略式命令のうちで少年が占めておる割合、これは統計そのものでは出てこないのじゃなかろうかという感じがいたしますけれども、少年関係のあらゆる既存の資料を十分検討いたしまして、できるだけ御要望に沿うように努力さしていただきたいと思います。
#28
○佐々木静子君 それではお手数ですが、できるだけ資料の提出をしていただきたいと思うわけでございます。
 それで少年に対する質問は次回に譲ることといたしまして、これは一般の成人に対する罰金刑の徴収についての資料も実はいただきたいと思うわけでございます。この罰金刑の完納率がどのくらいであるのか、また換刑処分に処せられている人の割合、あるいは刑事訴訟法の四百九十条によって強制執行を、罰金刑が強制的に執行されている者の割合、それから罰金刑が完納されるのは普通、平均、判決確定後どのくらいの期間を経て完納されるのであるかというようなこと、こういうことわかりますでしょうか。
#29
○政府委員(辻辰三郎君) そのこまかい点は私出てこないと思うのでございますが、まず概括的なものは現在ここにございますので一応御報告いたしまして、なおまた書面として提出いたしますが、罰金刑につきましてその徴収状況でございますが、これは成人も少年も全部含んでおりますけれども、昭和四十五年一年間に全国の検察庁が罰金の徴収済みといたしました金額、このうちには労役場留置によって徴収済みになったというものも含むわけでございますが、徴収済みになりました金額は二百四十五億三千百四十七万八千円でございます。そうしてそのうちで労役場留置という処分によって完納したと見られる金額が、これが四千二百六万七千円でございます。そういうことになりますと、結局この労役場留置、罰金が完納できなくて労役場留置の処分を受けたものは全件数の〇・二%になっておる、千件に二件というような数字になっておるわけでございます。これは概括的な数字でございますが、これまたその詳細の点につきましてはできる限り資料を検討させていただきたいと思っております。
#30
○佐々木静子君 それから、いま労役場留置のお話がございましたが、これまた罰金刑の本質とも関連すると思うのでございますけれども、資産を持っている者については、これは実にポケットの中から小づかいを払うような調子で罰金刑が支払われる。しかし、無資力者については、これは自分の自由を犠牲にして、労役場で働いて罰金刑を完納しなければならないというようなことで、まあ制度として非常に不公平な制度ではないか。これは罰金刑そのもの自体がそうなのですけれども、それが端的にあらわれるのが労役場留置ではないかと思うのでございますけれども、先日の所得税違反のある高額な罰金刑に処せられた場合などでは、この換刑処分の場合の一日の換刑額というものが非常に高額である。そしてまた、普通の場合は一日の換刑額というものがたいへんに低額に計算されている。そういうことも、どういうふうに大体統計上なっているのかということも一応知りたいと思いますので、これは裁判所にある資料ではないかと思うのでございますけれども、最も低額に換刑処分の一日の計算がなされた例、それから最も最高の額に換刑処分に処せられた例、及び平均すると大体一日幾らくらいの額で換刑処分が行なわれているかということも、これもわかりましたら資料の御提出をいただきたいと思うのでございます。資料をいただきましたあとで換刑処分についてまた質問をさせていただきたいと思いますので、その点、資料のほうはお出しいただけますでしょうか。
#31
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の資料も、これは裁判所関係の統計にあるかどうかという問題でございますが、これはおそらくないと思います。先ほど例におあげになりました最近の某所得税法違反被告事件換刑額は一日二十万円、この方は罰金一億円というふうに処せられまして、そして一日換算が二十万円ということになっております。これなんかは非常に顕著な例でございますが、この換刑額というものを何円のものが幾らあったかというのはおそらくないと思いますが、できるだけ努力はしてみたいと思います。
#32
○佐々木静子君 それでは、換刑処分、特に現行法とそれから改正刑法などについて換刑処分についての規定が若干変わってきておるようにも見受けられますので、できましたらその資料を御提出いただいたあとに、またその件について質問させていただきたいと思います。で、私の質問は保留させていただきます。
#33
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四分散会
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ソース: 国立国会図書館
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