くにさくロゴ
1971/06/01 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第20号
姉妹サイト
 
1971/06/01 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第20号

#1
第068回国会 法務委員会 第20号
昭和四十七年六月一日(木曜日)
   午前十時十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月三十一日
    辞任         補欠選任
     藤田  進君     矢山 有作君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                林田悠紀夫君
                星野 重次君
                鶴園 哲夫君
                野々山一三君
                矢山 有作君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
       国 務 大 臣  江崎 真澄君
   政府委員
       防衛庁人事教育
       局長       江藤 淳雄君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   長井  澄君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   裾分 一立君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (検察の運営に関する件)
 (婦人裁判官の任用等に関する件)
 (調停委員に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 五月三十一日、藤田進君が辞任され、その補欠として矢山有作君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(阿部憲一君) 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○原文兵衛君 この改正案とは直接関係ございませんが、最初に一言お伺いしたいのですが、昨日イスラエルのテルアビブでもってたいへんな事件が起きまして、新聞の報道によりますと、日本人三人が犯人であると、その名前はナンバ・ダイスケ、スギザキ・ジロウ、トリオ・ケンといわれていますが、いずれも名前も偽名であるし、旅券も偽造であるというふうに報じられておりますが、まだ事件の真相はなかなかよくおわかりにならないと思いますが、この旅券が国内で偽造されて、この旅券でもって出国したものであるかというような点、また、旅券の偽造というのは相当あるのかどうかということ、これは入国審査官が一応出国者に対して審査するわけですが、そういうような点につきまして、きょうは関係の方はおいでになっておらないと思いますが、御答弁できる範囲で答弁いただき、またそれらについて、旅券の偽造というような問題についてきょうわからない点は、後ほど何かの機会にお調べの上お聞かせ願いたいと思います。
#5
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の、今回のテルアビブにおける事件につきましては、私どものほうでは何らまだ正式の報告とかあるいは資料を持たないわけでございまして、新聞報道、テレビ、ラジオ、そういうものでしか知り得ない状況でございます。
 そこでただいまの御質問にございました旅券の偽造であるとかそういうものはどうなっておるかという点でございますが、これは、旅券の偽造の事件が過去どれぐらいあるか、いま正確な資料を持っておりませんので、確たる件数をお答えすることはできないわけでございますが、私の記憶ではそんなに旅券の偽造というようなものは数多くは過去においてはなかったと思います。御承知のとおり、旅券を偽造いたしまし 場合には、刑法の百五十七条の公正証書原本不実記載罪にあたる場合がございますし、そのほかに旅券法自体におきましても、旅券法の二十三条におきまして、旅券の「申請又は請求に関する書類に虚偽の記載をすることその他不正の行為によって当該申請又は請求に係る旅券又は渡航書の交付を受けた者」は「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」というような罰則もございますから、それから出入国管理令にも、旅券を持たずにといいますか、出国の承認を受けずに出ていったということにつきまして軽い罰則がございます。かようなものがこの旅券関係、あるいは出国関係の罰則でございます。そういうことでございますが、これについて、いままでは密入国という形の犯罪は相当あるわけでございますけれども、正規の旅券と申しますか、あるいは旅券を偽造してそして出ていったというケースはあまり聞かないわけでございます。具体的件数につきましては、後ほどよく調べてみたいと考えております。
#6
○原文兵衛君 それでは罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案について二、三お伺いしたいと思います。
 大臣の先日の提案理由の説明の中では、罰金及び科料の額等を現行のままにとどめておくことは、これらの財産刑の刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、刑事司法の適正な運営を阻害するおそれも少なくないと考えられる、といっておられますけれども、その刑事司法の適正な運営を阻害するという面について、現実にはどのように阻害されるのかという点、これが一点。また、刑事司法の運営における罰金刑の占める位置と罰金の刑罰としての機能について、どのように考えておられるかという点について、大臣からお伺いしたいと思います。
#7
○政府委員(辻辰三郎君) 最初に、技術的な点もございますので、私から答えさしていただきたいと存じます。
 まず、現行のままに罰金の関係を放置、とどめておきます場合に、罰金の「財産刑の刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、刑事司法の適正な運営を阻害するおそれも少なくない」という提案理由の点でございますが、これはたとえば手元に提出いたしてございますこの法案の「関係資料」の「科刑関係統計」というのがございますが、その一五ページをごらんいただきますと、住居侵入罪というのが刑法にあるわけでございますが、この住居侵入罪は法定刑といたしまして、現行刑法も非常に低いわけでございますが、罰金刑は現在は二千五百円以下の罰金ということに相なっておるわけでございます。この十五ページには住居侵入罪の罰金につきまして、略式事件が大部分でございますが、どういうふうな科刑の状況になっておるかと申しますと、十五ページにございますように、法定刑が二千五百円以下というときに、一千円以上の罰金というものが大半である、こういうことに相なっておるわけでございます。もう一千円未満の罰金というものはほとんど科せられていないということでございます。この一例を見ましても、住居侵入罪につきましては、法定刑ももともと低いわけでございますけれども、その低いという点におきまして、まず、罰金刑としての機能が低下しておるという点がございますし、また、いわゆる頭打ちの現象ということで、法定刑一千五百円以下で大部分が二千円以上ということになりますと、住居侵入罪で罰金刑を科するという場合には、個々の事案の軽重というようなものか全く捨象されてしまいまして、機械的に二千円以上の罰金というような形になっておるということで、刑事司法の適正な運営を阻害するという点の二つの具体的な例証になろうかと思うのでございます。
 さらに、罰金刑というものが、全体の刑罰の実際においてどういうウエートを占めておるかという点の御質疑でございますが、これは罰金刑というものは、現実の裁判の運営において、全事件の九五・五%というくらいの数字になるわけでございます。具体的に一番最近の昭和四十五年の裁判結果別確定裁判というものを見てまいりますと、昭和四十五年に確定をいたしました全人員は百六十六万五千三百八人でございます。そのうちで懲役刑になりましたものは五万六千七百五十五人、禁錮刑が九千五十四人、罰金刑は百五十九万八百二十六名ということで、確定裁判を受けました者の九五・五%がこの罰金刑ということに相なっておるわけでございます。この圧倒的な数は、これはもう御案内のとおり、道路交通関係の事犯、特に道路交通法違反事件というものがほとんど全部罰金で処理されておるということが、この大きな数字の原因になっておるわけでございますが、刑法犯におきましても、現在はこの刑法犯のうちの六三%くらいと思いますが、交通の人身事故、いわば刑法の二百十一条の業務上過失致死傷になっております。この場合に、この業務上過失致死傷のまた大半が罰金刑において処理されておるということになりまして、件数的には現在の刑事裁判の上におきまして、罰金刑というものは非常に大きな数を占めておるわけでございまして、罰金刑の現実における重要性ということが指摘できるわけでございます。
 次に、もう一つ、罰金刑の機能というものをどう考えておるかという御指摘でございます。罰金刑というものは、申すまでもなく、その本質は、犯人から金銭を得て、利益といいますか、金銭を剥脱することによりまして財産的苦痛を与え、その財産的苦痛によりまして本人の戒めにして、本人の特別予防、将来再犯を犯さないという意味の特別予防に資しますとともに、一般の第三者に対しまして、一定の犯罪を犯せば幾らの罰金に処されるという意味の一般予防の機能も果たしておると思うのでございます。
 しかしながら、申すまでもなくこの一般予防、特別予防の機能は、いずれも懲役刑や禁錮刑の自由刑に比べますと、これはその機能が弱いということは否定できないわけでございますけれども、そういう反面、また不当に心身の拘束を伴わないというような利点も罰金刑にはあるわけでございます。かような罰金刑の得失から見まして、一定の軽い犯罪でありますとかあるいは過失犯でありますとか、そういうものにつきまして罰金刑の果たす機能はたいへん大きいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#8
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま刑事局長が説明いたしましたとおりでありますが、先般も佐々木委員にお答えいたしたことは、一般予防を考えます場合にももちろん罰金というものの性質は、私は罰金だけですべての犯罪が押えられるとは思っておりませんし、いわゆる罰金の不名誉さというものが大きな働きをしておるということについては当然――もちろんのことと思っておるわけでありますが、いずれにしましても、一般予防の立場から考えましてもいまの罰金の額というのは、財産的な苦痛といいましてもあまりにも時代離れしておりまして、昭和二十三年の当時からこれだけあらゆる所得もふえ、また国民総生産もふえ、またいろいろの物の値段も上がっておるというときに、いわゆる経済的な苦痛というような面をもうすでにいまの額では失っておるのではないかと。ことに私常々感じますことは、罰金を払いに行く往復のタクシー代よりも罰金の額が少ないというようなことは、何だかばかばかしいというような感じさえ与えるのではなかろうか、こういうことが一点であります。
 それから、ただいま申しましたように、いわゆる幅がなくなって最高限のところに科刑が集中する。そうなると、結局、いわゆる罰金の中においても軽重ということがつけにくくなっておるということは、いかにも公平の原則から見ましてどうもおもしろくないというような感じがいたしますのと、何と申しましてもやはり法は常に時代に適応する、あまりにも時代離れというようなことは、私、刑事政策上もとるべきでないと、かように考えたわけであります。
#9
○原文兵衛君 ただいまの大臣の御答弁にもありましたような趣旨で、私も今度の改正案は全体としてはもちろん改正しなくてはならない、当然のことだと思っております。
 そこで、そういうことを前提としてお伺いしたいのですが、これは罰金、科料の額をいずれも四倍に改めるということにしていますが、その四倍を妥当とする根拠はどういうところにあるのかということ。この間の佐々木委員の質問に対して大臣は、最近における科刑の実情等を見ると、法定刑の上限ないしこれに接近した額の罰金が言い渡される事例が増大し、いわゆる頭打ちの現象を呈しているが、この改正案が施行されると少なくとも五年くらいはそのような傾向がなくなるんではないかというようにお答えされたと記憶しているのですが、どうも私は、五年くらいでまた頭打ちの現象が出てくるという心配があるのでは、どうも四倍というのが必ずしも妥当ではないんじゃないか、あるいはもっと倍率を高くしなければいけないのじゃないかという感じがするんですが、その辺のところについてお聞かせをいただきたい。
#10
○国務大臣(前尾繁三郎君) 御承知のように、現在刑法草案というものがすでに法制審議会総会で審議されておるわけで、それと比較いたしますと、一応、六倍とか何とか刑法草案でいわれておりますが、私はまあ刑法草案よりも行き過ぎると、あるいは刑法草案そのままをとりましても、刑法草案がはたして妥当であるかどうかということになりますと、これは修正を受けるかもわかりませんし、そういうととを考えますと、刑法草案までいくのは行き過ぎではなかろうか。五年と言いましたのは、かりにまあ五年以内にそういうような問題は起こらぬだろうというふうに申しましたのは、まあ五年内には私も刑法草案は通過するというふうに考えておりますのと、要するに刑法草案よりも行き過ぎになって、刑法草案で下げなければならぬといいますと、やはり司法の連続性といいますか、そういう点で、かえって先に刑罰を受けたために不公平になる。こういうようなことが起こってもいけませんので、四倍というところで押えておきましたら、まあ上限と下限との間にやはりいろんなあれがあるものでありますから、四倍ぐらいのところであれば、将来を考えましても差しつかえありませんし、現状から考えましてもそう差しつかえない。そこらが一番穏当ではなかろうかというふうに考えたわけでありまして、これが昭和三十年から考えまして、所得の上昇が四倍であるという――二十三年から比べますと非常に上がっておりますが、昭和三十年というやや安定した時期を考えてみると四倍になっている。そういうような点から考えましても、ここらが妥当ではなかろうか、こういう考え方に基づくわけであります。
#11
○原文兵衛君 その点はよくわかりました。
 それではもう一つお伺いしたいのですが、これは刑事局長にお答えいただいてけっこうですが、改正案の第三条の第一項は、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、経済関係罰則の整備に関する法律について、それらの法律の罪の罰金の多額を四倍としているのでございますけれども、第四条第一項は、その他の法律に定められた罪の罰金につき、その多額が八千円に満たないときはこれは八千円にするということでございます。まあこれは確かに臨時措置法の四条のその他の法律の多額は二千円にしているので、それの四倍で八千円にしたというように一応解釈されるんですけれども、どうも私、臨時措置法をつくったのは昭和二十三年、このときの多額を当時で五十倍に、当時二千円としたわけですが、その当時に施行された法律の多額は、非常に低い何十円とかいうようなものが非常に多かったろうと思うのですね。ところが戦後できた法律では、まあ多額が五千円より少ないというのがほとんどないわけですし、また、たとえば道路交通法なんかでは一番低い罰金でも、その多額は一万円なんですね。そうしますと、その多額を機械的に罰金のほうが、三条のほうが四倍だからというので、これを二千円を八千円にしただけでは、たとえば戦後の多くの法律、それも二十年代の初めのころの法律では、多額が五千円であったものが三千円上がるわけなんですね。あと三十年代の法律になると、いまの道交法みたいに寡額の、一番低いものでも一万円というようなことがあって、どうも三条の四倍にするのと四条の八千円で押えるのと均衡を失しているんじゃないかという感じを受けるんですが、この辺についてお尋ねをしたいと思います。
#12
○政府委員(辻辰三郎君) この第四条の改正につきましては、確かにただいま御指摘のような点があるわけでございます。いわゆる特別法でございます、これは。前回も申し上げましたように、現在罰金、科料のある罰則のついております法令は私どもの調べによりますと六百六十三あるわけでございますが、そのうちの三つはここの第三条関係の刑法、暴力行為及び経済罰則でございますから、これ以外のいわゆる特別法は六百六十、罰金、科料のある罰則のついておるのが六百六十あるわけでございます。ところで、このいわゆる特別法は制定時期が御案内のとおりまちまちでございます。で、もちろんただいま御指摘のように、昭和三十年以後の法律になりますと、あるいはまた極端に言いますと、正確に申しますと、この罰金等臨時措置法ができました後の法律につきましては、それぞれの時点に応じて適当な罰金額が定められておるわけでございますけれども、それにいたしましても、制定時期がまちまちでございまして、その間法定刑の多寡に多少問題があろうと思うのでございます。もとよりこの罰金等臨時措置法の前の特別法につきましては、これはたいへん低い罰則があるということで、一応この措置法におきましては二千円に満たないものは二千円にするという手当てが打たれてきたわけでございます。そういう事実を背景にいたしまして、この特別法関係の法定刑の上限をどうするかという問題を考えてまいりますと、結局基本的にはやはりこれは、刑法の全面改正の暁に、改正刑法というものを基準にいたしましてこの特別法の罰則というものを正確に洗い直していって、そこで正確な法定刑というものをきめるというのが本来の筋であろうと思うのでございます。ところで、現在はこの刑法全面改正作業というのが現在進捗中の状況であるということで、とうてい根本的にこの六百六十にのぼる特別法の罰則を整備することは不可能でございます。そういうことで、おおむね昭和三十年以後の法律につきましては、大体まあ先ほど御指摘のような相当額の法定刑が定められております。そこで、そういうことも前提にいたしまして、この際はやはりいままで二千円未満のものを二千円にしていただいた。これもやはり刑法等の関係で四倍にして、今度は八千円未満のものを八千円にしていただくということで、ともかく古い法律のほうにつきまして応急的な措置をしていただきたいというのがこの趣旨でございます。ちなみに、この四条の改正によりまして影響を受けます法令でございますが、この罰金等臨時措置法の現行法の四条によりまして、当時二千円未満の法定刑がありまして、二千円ということになりました法令の数は四十二でございまして、四十二の法令がこの四条によって修正されたわけでございますが、今回これを八千円ということに改められますと、この四十二を含めまして百二十七の法令が影響を受けるということで、おおむねこの百二十七という法律は戦前の法律でございますとか、あるいはせいぜい昭和二十五年ごろまでに制定されました法令でございます。そういう意味におきまして、今回は一応の応急的な手当てというふうに御理解を願いたいと存じます。
#13
○原文兵衛君 それでは最後に、要望を兼ねて申し上げたいと思いますが、いまの刑事局長の御説明でもって刑法の改正という問題のときに特別法の洗い直しをするということでございましたが、たとえば道交法の百二十一条でもって運転免許証の不携帯、それからまた警察官が提示しろと言ったときの提示の義務違反については一万円以下の罰金ということになっておりますね。ところが、食品衛生法、これは昭和二十二年にできた法律ですが、これではいろんな義務を課している。たとえば食品についての、いろんな標示をしなければいけないという義務だとか、あるいは規格や基準を設定してそれを守らなければならないという義務だとか、そういうようなものの違反についてはこれは五千円以下の罰金ということになっております。食品衛生法の三十一条。それから毒物及び劇物取締法、これは昭和二十五年にできていますが、これでも届け出義務違反というようなものが大体五千円以下の罰金ということになっているわけです。そうしますと、無免許運転、これは別のことでございますけれども、免許証を携帯していなかったというようなもの、これは過失の場合でも一万円以下になっているわけです。そういうものと、こういう届け出義務違反あるいは標示の義務違反というようなものとは、その罪質から言って私はあまり変わらないのじゃないかと思うのですが、一方は一万円以下ということになっておりますが、他方はいままで五千円以下であったのが今度の臨時措置法の改正で八千円以下ということになるわけだと思いますが、そういうようなことで、やはりもう一回洗い直さないと刑罰の公平という点から問題がやはり残るのじゃないかと思いますので、刑法の改正というときに洗い直すというようなことでしたが、そういう点について十分御検討願って、刑罰の公平というような面におきましても遺憾のないようにしていただきたいということを要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
#14
○白木義一郎君 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案の内容に入る前に、法務大臣にちょっとお考えをただしておきたいと思いますが、結論的に申し上げますと、一口に言えば罰金の値上げ、こういうことが現時点においてふさわしいかどうか、こういう問題です。
 もう御承知のとおり、国民は政府の無為無策によって日々値上げの恐怖にさらされている最中であります。内容はともかくといたしましても、大衆としてはまた罰金まで値上げかと、こういうような感じを特に持つんじゃないか。ということは、昨年あたりまでは、いままで御答弁あるいは質問等にありましたように、内容を改定するというようなことが当然のこととされてい わけですが、つい先ごろ国民の大半が納得できないような恩赦を断行された。その直後にこのような措置法の改正を国民の前に示すという、これは当委員会あるいはこの法案だけについてはまた別の考えがありますけれども、国民全体の立場、また政府に対する考え方、受け取り方等々さまざまな取り方、受け取り方があると思いますが、値上げにさらに罰金で値上げかと、こういうような受け取り方をするのが大衆ではなかろうかと、このように心配をするものであります。したがいまして、特にこういう時期を選んで改正をしなければならない特別な理由は私としてはちょっと考えられない法律案――というよりも政治的判断をしてもいいんじゃないかと、まあこのように思います。一方では、沖繩返還に便乗して多量の選挙違反者の恩赦をする、一方では、罰金の値上げをして強化をすると、こういう矛盾した感じを持たないわけにはいかないと思いますが、その点、法務大臣のお考えをまず最初に伺っておきたいと思います。
#15
○国務大臣(前尾繁三郎君) 今度の措置法がちょうどこういう時期にさしかかったというのは偶然のことでありまして、私就任以来、やはり時代の変化とともに法も常に時代に即応したものでいかなければならぬということでありましたが、従来からやはりこの罰金が従来の金額ではもう天井がつかえて、いわゆる処罰の適正なりあるいは公平か期せられないという問題があったわけであります。ただいまお話のように、罰金の値上げというのではなしに、要するに――まあ大衆はそういうふうに受け取るかもわかりませんが、罰金はいわゆる財産的な苦痛であります。したがって、常に所得と比較して考えていくべき問題でありまして、その人が所得なり財産に応じてある程度の苦痛を感じるものでなければならない。ところが従来は、それを――そういう意味でありますともっと早く訂正すればよかったではないかと、こういう御意見もあると思います。しかし、いわゆる上限と下限と、罰金には幅があるわけであります。その幅をどうにか活用していままできたのでありますが、この数年来その幅がみな上限のほうにいってしまいましたために、ほとんどいわゆるまあ法として先ほど申しましたような適正を期せられないというような問題に直面しておるわけであります。
 そういう意味からいたしますと、また刑法の改正というものを考えましても、必ず来年改正ができるというわけのものでもありません。したがって、この際としてはやはり法の権威を保つためには、先ほど来申しておりますように、まあ罰金の不名誉さはさることながら、やはり罰金もいわゆる罰金らしいといいますか、そういう金額でありませんとかえって法の権威を失墜すると、こういうふうに考えて、すでに、これは何も恩赦とは関係なしに御審議を願い、また法制審議会もこれはかけました。そして将来の、旧刑法との関係もありまするから法制審議会でも討議をしていただいて、そしてこれはよかろうということでやったのであります。
 ただいまは恩赦の関係についてもいろいろ御意見がありますが、私は、今回の恩赦は選挙違反をはずすと逆に、すべての要するに罰金刑であります者については法の前に平等であるという考えのもとにやったのでありまして、特に選挙違反だけは恩赦から除くという逆の理由は私はないものと考えておりますし、その意味では私は大衆も理解してくれておるものだと、かように考えておるわけであります。
 いずれにいたしましても恩赦というものと今回の臨時措置法とは関係もありませんし、さらにまた、物価の値上げというようなものと関連があるわけではなしに、要するに苦痛として、適正な苦痛を与えるという意味で、いわゆる所得なり財産の増加した、それに応じまして今回の値上げを考えたわけでありまして、そういう点は十分今後理解を求めるために宣伝をするつもりではありますが、委員の皆さん方におかせられても十分その点は御理解願いたいと思います。
#16
○白木義一郎君 大臣は何だか恩赦の件についてたいへん気にしていられるような御答弁ですが、私がお伺いしたのはそういうことではなくて、一般情勢として、日々値上げの状態の中で、大衆は、また政府は罰金まで値上げかというような感じを持つのが大衆であります。上限がどうの、下限がどうのというようなことは、国民は詳しくはわからないわけです。一連の政府の政策の中に織り込まれてまた値上げかという受け取り方をするということもあると。格式ばった法務大臣というような立場で言えばただいまお話しのあったようなことになるだろうと思いますけれども、大衆の動向、生活ということを主体に考えていきますと、はたしてあえてここでこの措置法の改正をしなければならないというような理由はあまり明確じゃないんじゃないかと、このように思いましたので、一応大政治家であり、大先輩である法務大臣のお考えを伺ったまでであります。もし総理大臣であったならば、やはりそういうような点もしんしゃくをして政治を取り扱わなければならない、このように感ずるわけであります。
 それはそれといたしまして、内容につきまして、この罰金刑の意図するものは、ただいまも御答弁がありましたように、不名誉感を与える、苦痛を与える、そして法秩序を保つとおっしゃっておりますが、これは新聞の世論調査でありますが、罰金の引き上げによって犯罪を減らす効果が期待できるか、こういう質問に対して、犯人のこうしめになるから効果が期待できるというのが一七%、引き上げにより効果があるので、期待ができるというのが三三・二%、効果を疑問視するものが四五・三%というふうに結論が出ております。これによりますと、大臣が考えているようには効果は期待できないように考えるのでありますが、これは一年前の五月のサンケイ新聞の調査による内容ですが、この値上げによって、罰金を値上げすれば犯罪を減らすことができるというような効果があるかどうかはなはだ疑問であるというのが四五・三%という数に出てきております。で、これについて大臣がお考えになっている犯罪防止の効果、また平等ということについてもいろいろ議論がありますけれども、効果の面ではどういうようにお考えになっているでしょうか。
#17
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私は先ほど来から申しておりますように、罰金の額が上がったからそれで犯罪が減るというもの、そこまで効果があるかどうかということになりますと、それは非常に有効な手段であるとは考えておりません。と申しますのは、なぜ犯罪がふえるかという原因もあるわけでありまして、早い話が、現在の犯罪の大多数といってもいいくらい交通犯罪であります。これはやっぱり交通が盛んになり、それに相応している道路ができていないというところに犯罪の起こる要因があるわけでありまして、したがって罰金あるいは体刑も、もちろん業務上過失の場合にはどんどんかけられておりますが、業務上過失ばかりではなしに、交通事犯についても行なわれておりますが、それだからといって、そんなに起こらない――犯罪はまあふえても減らないと、こういうことだと思います。しかしそれが全く同じ条件で罰金がかけられるとかけられない、あるいは適正な金額でかけられるとかけられない、そういうことを考えてまいりますと、私はやっぱり罰金をかけると、また適正な罰金をかけるということに効果がある。確かに効果はある、かように考えるわけであります。やはり財産的な苦痛があるというほうがより一般的な予防にもなります。ただ最近は非常に所得がふえておりますから、その所得に応じた金額でありませんと、少々上げたからどうであるというようなことはないかと思うのであります。率直に言って、この法律を通していただいたから、来年度交通事犯が少なくなったというようなことは、これは言い得ないのじゃないか。そのときになってお前は効果があると言ったが、実際には減らぬじゃないか、ふえたじゃないか、こういっておしかりをこうむると思いますので、私、正直なところを申し上げておるわけで、しかしそういうような点からいいますと、やはり適正なその時代に即応した刑罰ということが、法の権威を保つという意味からして、私はやはり肝心なことではなかろうか、かように考えておるわけでありまして、どうも初めからあの罰金ではかけられてもタクシー代のほうがよけいいったなんていう、こういう非難もよくいわれているのでありまして、そういう非難は少なくともないようにしたいというふうに考えておるわけであります。あまりに率直なお答えをして、あるいは事務当局が困るかもわかりませんが、私の答弁としてはそういうことを、実際に考えていることを申し上げたわけです。
#18
○白木義一郎君 あまり法の権威なんて答弁されますと、はたしてこういうことで物価にスライドしていけば、法の権威が保てるのだということになりますと、ひっかからざるを得ないわけですか、次に四十七年度の罰金及び科料の歳入予算額はどのくらいでしょうか。
#19
○政府委員(辻辰三郎君) 昭和四十七年度予算の罰科金の収入見積り、ここに資料を持ってまいりませんでしたので、ちょっとすぐにお答えできません。すぐに取り寄せますけれども、四十五年の罰金の既済額が二百四十五億三千百四十七万八千円ということになっておりますので、これよりも多少上回るというところであろうと思います。ただ、この法案が法律となりました場合におきまして、直ちにその罰金の額が、収入額が上がるかといいますと、それは必ずしも上がらないというふうに考えておるわけでございます。その理由といたしましては、まずこの法案が法律となりました場合には、この法律施行後の犯罪について、新しい罰金額が定められるということがむしろ当然でございますし、また第二は、この法案は法定刑のワクが広まるということでございますから、実際の裁判においてそのとおりの四倍にいきなりなるということはとうてい考えられない。やはりそこに徐々に裁判の上におきましても、罰金額が上がっていくということであろうと思います。かような理由からいいまして、四十七年度の罰科金の歳入見積りはそんなにふえないという見通しでございます。
#20
○白木義一郎君 私のほうにありますこの歳入予算額の一覧表によりますと、四十六年は歳入予算は出ておりますけれども、まだ収納済み歳入額が資料として出ておりませんが、四十五年を見ますと二百十四億四千百六十三万一千円、この予算に対して二百三十六億五千二百七十三万六千円と、歳入額がふえております。それで四十六年の予算は二百二十四億六千四百七十七万六千円の歳入予算を立てておりますが、ことし、四十七年度は、さらにそれを上回る二百五十六億二千八百二十四万二千円という歳入の予算額を計上しております。予算よりも罰金の歳入が多い、あるいは年々歳入の予算額をふやしていく。当局の考え方は、これはもう当然罰金の値上げによって歳入の予算をふやしていかなければならない、まあ改正になったんだから相当罰金も入るぞというような、むしろ罰金を取ることに喜びを感じているのじゃないか。罰金刑そのものの内容はあくまでも犯罪の防止ということが根本の趣旨ではなかろうかと思います。これでこういう予算を立てて、そして予算に見合う歳入をはからなければならないということになりますと、相当力を入れて摘発しなければならないというようなことも心配するわけですが、そういう点はどういうようなお考えでしょうか。もともとこれは犯罪をゼロにするのが本来のあり方であって、そういうたてまえで私たち考えているわけですが……。
#21
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまこの四十七年度の法務省の歳入予算の科目別が出ましたので、正確な四十七年度の懲罰及び没収金の収入予算を申し上げますと、総額で二百六十一億八千八百五十七万三千円と、これは沖繩分を含むという数字でございます。私、先ほど二百四十五億よりも上回る数字であろうと申し上げたのでございますが、二百六十一億でございます。そういたしまして、この今回の改正はあくまでも、先ほど来大臣がお答えになっておりますように、適正な罰金というものを刑事司法の立場から実現していくというのが趣旨でございまして、この罰金収入を上げるとか、そういう観点からの改正では毛頭ございません。で、従来からもこの罰科金の歳入予算というものにつきまして、財政当局の立場あるいは収入という面から罰科金を上げようと、収入を上げていこうというような観点からの考え方はございません。あくまでもこれは刑事司法の適正な運営の結果、大体こういうだけの収入の見積もりができるという趣旨でございまして、今回の改正もあくまでも適正な刑事司法の実現という点にあるのでございます。
#22
○白木義一郎君 この罰金刑はどこまでも人間生活の経済生活及び社会的地位を完全に崩壊するような結果をもたらすことがあってはならない、このように思います。その観点から罰金を払えない、貧しくて罰金が払えないという人たちに対する処遇について最近の状況を簡単に御説明願いたいと思います。
#23
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金が払えない、罰金を完納できない場合につきましては、刑法の十八条におきまして、一定の期間労役場に留置するということが行なわれるように規定されておるわけでございます。この現行法のもとにおきまして、罰金が完納できなくて労役場留置の執行を受けたという者がどのくらいあるかということに相なるわけでございます。これにつきまして昭和四十五年に確定いたしました罰金を徴収いたしました四十六年の状況を見てまいりますと、先ほど来申し上げましたように、四十五年におきまして全国の検察庁が罰金を納まったということで処理いたしました金額が二百四十五億三千百四十七万八千円でございますが、そのうちで労役場留置という処分で納まったという処理をいたしました金額が、一応金額にいたしますと四千二百六万七千円でございます。そういたしまして、これは金額はそういうことでございますが、件数でまいりますと、罰金額の既済という全件数は百七十万五千三百九十五件でございますが、労役場留置のほうの件数は三千二百二十件という数字になっております。全体に占めます労役場留置処分の割合というものを見てまいりますと、これは件数の〇・二%に当たっておるということでございます。千人のうちに二人が労役場留置の処分を受けておるという状況でございます。で、これは四十三年におきましても同じような〇・二%、四十年も〇・二%ということで、四十年代におきましては大体このくらいの数字でございますけれども、昭和三十二年におきましてはこれが〇・六というような数字になっておるわけでございまして、やはり四十年代におきましてはこの労役場留置を受ける者が少なくなってきておるということは一つの顕著な傾向であろうと考えておるわけでございます。
#24
○白木義一郎君 非常に法の権威を守れないという程度の罰金すら払えない、そのために労役場に留置されるという、そういう人たちはどのような人なのか。それからまたどういう内容で罰金と、それから何といいますか、労役につく計算といいますか、それをちょっと御説明願いたいと思います。
#25
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金額が実際の裁判できまります場合には、もとよりその犯しました犯罪、その犯罪に対する法定刑というワクがあるわけでございますけれども、裁判の実際におきましては、これは数多い道路交通法とかそういうものは一応別にいたしまして、通常の刑事犯におきましては、裁判所におきまして罰金刑の額を定めます場合には、被告人の財産状態というものを十分考慮いたしておるわけでございます。で、財産状態の多い人につきましては、それに見合うやはり罰金額がおのずから法定刑の範囲内できまってまいりますし、逆に乏しい人に対しましては安い罰金額が法定刑の範囲内できめられるということに相なっておるわけでございます。したがいまして、この労役場留置の処分を受けるという方々は、これはやはり納まらないという意味におきまして、あるいは貧しい方になろうかと思うのでございますが、しかしながら、裁判の実際におきましては、量刑におきまして被告人の財産状態ということも十分に考慮されておるということでございます。
#26
○白木義一郎君 それで、そういう人たちが労役場留置をされて罰金に見合う労役を果たして、その後再犯の傾向はどういう状態でしょうか。つまり、それなりの効果をあげているかどうかという点からお伺いしたいと思います。
#27
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金刑の効果とその実際の執行との関係においてどういう再犯防止の機能を果たしておるかという点でございますが、これにつきましては、的確な資料がございません。わずかに私どものほうの法務総合研究所におきまして数年前に一定の小さい限られた範囲におきましてこの追跡調査をしてみたことがございます。これはもう罰金の執行状況であとどうなっておるかということを追跡していかなければなかなか的確な数字が出ないわけでございますが、それのごく全く一定の範囲におきまして一度数年前にこの試験をしたことがございます。その場合には、労役場留置になった者とかあるいは罰金を納めて、ならない者という、労役場留置を受けたかいなかによってこの罰金刑の再犯の状況は顕著には異なっておりません。ただ、私どもがその結果から見ましたのは、やはりもとの犯罪によってこの再犯の率が差があるということが言えると思うのでございます。
 で、罰金刑の場合には過失犯というものについて罰金刑が科せられるのが刑法犯の場合には通例でございますが、過失犯的なものについては相当再犯の防止に役立っておるというような数字が出てまいりますけれども、これに反しまして、一定の売春事犯でございますとかあるいは暴力事犯でございますとか、そういうものにつきましては、この過失犯の場合に比べまして再犯の率が高いという数字が出ておりますが、これは一つの試験的な、試験をいたしました結果でございまして、必ずしも罰金刑そのものに特有なものかどうか、これすらわからないと。懲役刑の場合でも同じようなことが出てくるかもしれませんけれども、そういう結果に相なっておりまして、労役場留置の有無によって再犯が違てくるということは、必ずしも私は出てこないんじゃなかろうかと考えております。
#28
○白木義一郎君 この罰金刑の重要性については、いわゆる刑務所へなるべく入らないで済ましたいというような考え方から設けられているように思いますが、その根本精神を中心にしていけば、千人にわずか二人というような社会のひずみの中で暮らしている人たちに対して、あえてその労役を科してまで罰金を支払わせなければならないかどうか。もう少し何か考えがあっていいんじゃないか。ほんのわずかな数字ですわね、千人に一人とか二人とか、まあこういうことですから、その点、罰金刑を設けた考え方からいえば、貧しいがゆえに罰金が払えないというような人たちに対して、そのまま逆に、おそらくまあ同じ労役といっても一般の受刑者と違うような取り扱いをされているとは思いますけれども、いずれにしても刑務所へ行って働くということについては変わりがないじゃないかと、このように思います。それで、千人のうちの一人、二人の人たちに対して、たとえば月賦払いとかあるいは保護司のほうへ毎月その罰金を分割払いをしてそして済ましていくというような配慮がなされないかどうかと、こういうことを心配するわけです。
#29
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のとおり、この罰金刑の意味の一つといたしまして、短期自由刑にかえて罰金刑を科するという一つの意味がございます。そういう意味から申しますと、罰金が納められずに労役場留置になるということは、この罰金のこの意味には背馳することになって、まことによくない結果であろうと思うのでございます。そこで現実に労役場留置処分をいたしておりますのは、きわめてこれは最後の手段として検察庁が行なっておるのでございまして、先ほど御指摘のように、罰金を徴収いたしますにつきまして、検察庁における実務は、経済状態に応じまして分納も実際上は認めております。それから延納も一定の限度まで認めておるということで、極力被告人といいますか、罪金納付者の経済的状態を侵害しないという配慮は十分にいたしておるわけでございます。分納、延納を認めまして、その結果どうにもならないというものにつきまして、労役場留置の処分をいたしておると、こういう実情でございます。
#30
○白木義一郎君 ただいまの御説明でよくわかりましたけれども、いずれにいたしましても、この罰金刑の取り扱いについては、それぞれ立場立場によって、ずいぶん打撃とか影響が異なるわけであります。財産のある人はどう罰金を科しても、いささかも痛痒を感じない。あるいはまた法務大臣の口ぐせの、罰金を納めるのにタクシー代のほうが多かった、これはたまらないというようなことも、これは一つの反省を求め、あるいは罰金刑を設けた一つの目的を果たすように思うのであります。したがって、この複雑な社会で、法の平等を期するということにつきましては、なかなか至難な問題があると思います。したがいまして、この運用あるいは適用の面において、当局の方々が十分その点を配慮して、それこそ法の平等あるいは権威を守っていただきたいと、最後に付け加えまして、私の質問を終わります。
#31
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#32
○委員長(阿部憲一君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。佐々木君。
#33
○佐々木静子君 きょうは私、法務大臣に、最近かなり数多く行なわれているのではないかと思われる公務員の犯罪について、ひとつお伺いをさしていただきたいと思うわけでございます。
 実はきょうは、防衛庁長官もお越しいただいて、自衛官の不正違法事件についてお尋ねしたいと思っておるわけでございますが、まだお見えでございませんので、先に法務大臣のほうに、この公務員の犯罪、特に公務員の犯罪の場合は一般的に検察あるいは警察のほうと、どうしても官庁同士で公務員犯罪については、どうもわれわれ一般の目から見るとうやむやになることが多いのではないか。何かもう少し突っ込んだ捜査ができるのではないかと思うのに対して、中途はんぱに終わっているというケースが多々あるように感ずるわけなんでございます。しかし、公務員がその職務を全うしていくためには、その公務員が厳正な規律に従って国家公務員あるいは地方公務員を問わず、その職責を全うしていくことが非常に重大なことではないかと思いますので、そういう事柄に対して、公務員犯罪の捜査ということに対して法務大臣の御見解をお述べいただきたいと思います。
#34
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま公務員の犯罪についての御意見がありましたが、私、みずからの考えは多少違いまして、全く検察庁というものと一般の行政官庁とは非常に違った感じを持っておるんではないかと思います。そして公務員の犯罪といいますと、あるいは収賄とか、そういうような問題でありまするから、私はこれ一般の民間のそういう問題から考えますと、公務員は非常に厳格に調べられておるんではなかろうか、したがいまして、ただいまのお話のように、私は公務員だから、また同じ公務員だからというような感じで検察庁が捜査をゆるがせにしたりなんかしておるようには考えておりませんし、またそうあるべき問題ではない、かように思う次第であります。
#35
○佐々木静子君 いまそういうふうに大臣のほうから厳正に、これ一般の行政官庁ではないので、全く厳正中立な意味において捜査をするという姿勢であるということを伺いまして、私どものふだんから考えておりますことをお聞かせいただいたような、私ども理想として考えておりますことをお聞かせいただいたわけで、非常に心強く思っているわけでございます。
 これちょっと実は防衛庁の長官と御一緒にお伺いしたいと思っていたんでございますが、まだお見えになりませんし、また法務大臣のほうはお時間の御都合があるようでございますので、法務省関係のことに関しまして先にお伺いを進めていきたいと思うのでございますが、実はこれは全く氷山の一角であると思うのでございますが、現職の自衛官が民間の会社の重役をしておったということが、これは最近防衛庁の大阪地方連絡部に所属しているところの二佐でございますが、定年を控えて現職の自衛官の身分でありながら別の民間会社の常務取締役という肩書きを用いていた、あるいは新たに新会社を設立して本人は取締役として商業登記までしておったという件があるわけなのでございます。これはたまたまこの件を取り上げて、これは大阪の総評が中心となって摘発したわけでございますけれども、実際のところはもっともっとたくさん自衛官に、これ一例をあげると自衛官に――ほかの官庁でもあるかもしれませんけれども、特に目につくのが自衛官でございますが、自衛官の不正の問題がある。そういう場合に、たとえばこれは自衛隊の内部で、実は自分が仕えている上官が民間会社とどうも癒着をしておって民間会社のほうからいろんな不正なお金を受け取ったり、あるいは受け取るべきでない給与を現職自衛官が民間会社からまた月給をもらっているというようなことを実は自衛官からそういう申告があるわけなんでございます。そういうことに対しまして、これ実は私、総評から私個人的に、もしこういうことを表に出した場合に、摘発――自衛官が自分の上司が不正な行為をしているということを訴えて出た場合に、あるいは総評の幹部に知らす、あるいは議員に知らすというような場合に、これは何も犯罪に触れないであろうかどうであろうかということを非常に聞かれるわけなんでございます。これは個々の国家公務員法の解釈指針として、この国家公務員法をどう解釈するかというような問題ではなしに、むしろこれは検察の責任者である検察当局から正式な御見解を聞いておきたいと思うわけです。
 たとえば、いま一例をあげました現職の自衛官が民間会社から受け取るべきでない給与をもらっている、それをその自衛官のもとで働いているところの現職自衛官が職務上知っている、そのことを表に出した場合に、それを申告したほうの自衛官が何らかの罪に問われるのかどうか、もし問われるとすれば、これはうっかり出せないわけでございますので、その点の検察当局の公式な御意見をまず伺いたいと思うわけです。
#36
○政府委員(辻辰三郎君) これは抽象論として申し上げたいと思うのでございます。しかも突然の御質問でございますので、私現在考えておることを申し上げたいと思いますが、一般に、他人の犯罪を捜査機関に申し出るという場合でございますが、これは何人もまず告発ができるわけでございます。その意味におきまして、告発ができますから、それより程度の低い犯罪の申告ということを、一般の方々が第三者の犯罪について捜査機関に申告するということは、もとよりこれは何の犯罪になるわけではございません。ただその場合に、いまも御質問がございましたように、公務員の場合に職務上知り得た他人の秘密ということを漏らすというようなことが結果的に同時に生じておるというような場合も考えられないわけではないと思うのでございます。そういう場合におきまして、これは抽象論といたしまして、私は一般的には犯罪の申告ということは一つの正当な行為であるということで、その知り得た秘密を漏らしたといたしましても、違法性がなくなってくるというのが一般の抽象論として言えると思うのでございます。しかしあくまでこれは具体的事例の場合について当てはめることは非常に危険でございますが、私は一般の抽象論として理論として申し上げるわけでございます。
#37
○佐々木静子君 いまの刑事局長の抽象的な御意見というものは私よくわかったわけでございます。ただこれは現実の問題とすると、抽象論でありながらきわめて具体的な問題なんでございます。現実に起こっている問題は、また将来起こるであろう問題は、というより、いま現に起こっている問題なんでありますが、たとえば上司であるところの自衛官がある民間会社からわいろを受け取っている。あるいはいまも言いましたように、もらうべきでない給与を毎月支払いを受けている。そういう場合に、そのわいろを受けるか受けないかについて一々手紙で連絡する人も少ないのではないかと思いますけれども、しかし私の聞いているところでは、そういうことを文書で交換するほどいわば自衛隊の中では公然の秘密のようになっているそうでございますけれども、これはたとえば――たとえばというよりもきわめて現実的な話なんですが、それをその部下である自衛官が、その不当なお金の授受が民間会社と現職自衛官の間で行なわれているという事実を部下が入手した。かりにそれをいまおっしゃったようにすぐ告発するというようなことも可能なんでございますが、現実の問題として、口でこういうことが行なわれているというだけで、現実の問題としてはなかなか捜査関係は動かない。ある程度の疎明資料というものが一応必要になってくる。そういう場合に、その民間会社と現職の自衛官の間でやりとりされている手紙を、たまたま部下の自衛官が持っている。そういう場合に、その自衛官がそのコピーをとって、たとえば外部の者に、こういう不正が行なわれているということを知らした場合に、これは犯罪になるのかどうか。それを承らないと、いろいろな問題についてどういうふうにして現職の公務員あるいは自衛官の不正ということを国民は糾弾することができるのかということが非常な問題にいま具体的になっているわけなんでございますので、たいへん恐縮でございますが、もう少し具体的にお答えいただきたいと思うわけでございます。
#38
○政府委員(辻辰三郎君) 具体的事件の犯罪の成否の問題につきましては、それぞれ捜査機関、その捜査機関の立場において認定し、最終的には裁判所がその刑事責任があるかどうかを認定するわけでございますから、この法務省の刑事局長という立場、行政官の立場におきまして、具体的事案についての犯罪の成否についての見解はこれは述べることができないだろうと思うのでございます。ただ、この捜査機関の場合には、一つの犯罪の申告がございました場合には、それを捜査機関の立場におきまして、その立場において、一つの捜査機関の立場からいけば、犯罪の端緒を見出したということでございますから、そこは捜査機関の一つの職権の行使ということで、この捜査の必要の場合には捜査に移っていくわけでございます。これは一般論でございますが、必ずしも一定の資料がなければ警察や検察庁が動かないというわけではございません。これはその警察や検察庁の立場において一つの犯罪ありという、一つの確信を持つならば、それがどういう資料からでありましても、その立場においてその確信に基づいて具体的な捜査を開始していくと、これが従来の行き方でございます。
#39
○佐々木静子君 この問題続けて伺いたいんでございますが、防衛庁長官もお越しでございますので、先に防衛庁のほうを、長官のほうにお伺いさしていただくことにいたします。
 これは長官も御承知でいらっしゃいますように、自衛隊の内部でいろいろと現職の自衛官とそれから民間企業の癒着というような問題が、これは非常に残念なことでございますが、またしばしば起こっているということを、私ども国民としても遺憾ながら認めざるを得ないというような問題が起こっておりますけれども、特にこれは全く氷山の一角なんでございまして、もうきわめて形式的な資料のそのものだけ、しかもこの資料の提供者に何ら迷惑をかけないで済むと思うただ一つの件だけを、実は私この間防衛庁のほうに中部――防衛庁の大阪地方連絡部のほうでございますけれども、申告さしていただいたのでございますけれども、この事件でも、私昨日防衛庁のほうから御報告をいただきまして、本人を呼んで調べたところ、私の申しておったことは事実であったということで、御連絡をいただいたのでございますけれども、このように退職まぎわの自衛官が、現職の自衛官でありながら、民間会社の常務取締役という名称を使って、しかも民間会社の仕事をしている。あるいは自分が取締役となって新会社を設立してその準備をしている。あるいは営業している。そういうことが起こっているというようなことにつきまして、これはまあ非常に残念に思うわけでございますけれども、長官としてもこういう事態について、どのようにお考えになるか、お述べいただきたいと思言います。
#40
○国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の問題は、田中利夫二等空佐に関する件というふうに了解いたしておりまするが、まことに遺憾なことをしてくれたもんだと思います。特に二等空佐と言えば上級幹部でありまして、退職を前にしてやはり不用意なそういうことをやるということは、何となくやはり防衛庁全体の一つの傾向というふうにとられる面もありますので、私どもこれは厳重に戒めていかなければならぬということで、深くこのことを戒めておる次第でございます。事の経緯、真相につきましてですね、ちょうどここに人事教育局長きておりますので、率直にひとつ事の次第を申し上げまして、処分等もいたしましたが、今後こういうことを繰り返すことになりませんように、十分責任をもって対処するつもりでございます。
#41
○政府委員(江藤淳雄君) 御指摘の件につきまして、私のほうでこの上級司令部であります陸上自衛隊の中部方面総監部から詳細に事情を聴取しておりますので、現在のところわれわれが承知しております件につきまして御報告いたします。
 この田中二佐は、昭和四十四年から自衛隊の大阪地方連絡部に勤務いたしております。それから阿倍野の出張所長をいたしておりました。本人は六月二十二日停年になりますので、その前の三月十六日の定期異動におきまして、地方連絡部の付配置にしまして、正規の責任あるポストの業務からはずしております。
 その後、その本人が一応この就職予定先の大阪府柏原市の宮原工業株式会社、これは電気工事を施工しておりますが、これに就職準備をいたしておりましたところ、たまたま社長と――三年ぐらい前にこの田中二佐が親戚の者を同社に就職の世話をしております、そういうことから非常に懇意になっておりましたので、本年一月ごろから、停年後同社に就職するように要請されたものであります。本人が付発令後、残っておる休暇を利用しましてその会社におもむき、社長に随行しまして関係企業を訪問し、業務の研修を行なっていたのでございますが、その際、同社の営業経歴書及び本人の名刺に同社の常務取締役田中利夫という名義を使用した事実があります。それから営業経歴書にもまた、本人が常務取締役として、本年四月に印刷された新しい経歴書にはそのように載っております。
 この名刺を使用するということは、明らかにこれは違反でございますし、また会社側でそのような印刷物に取締役の名前を入れるということも、これもたいへんまずいことでございまして、よく調べてみましたけれども、まだ役員としての法人登記はいたしておりませんし、また常務でありまするので当然役員会にはからなければなりませんが、その役員会にもはかっておりません。したがって、本人並びに会社のほうに聞きましたところ、役員としてはまだ就任いたしていない。ただ四月から経歴書を新しく刷りますので、どうせ六月末から来てもらうのだから、だから経歴書についでに名前を入れておきたいということを会社側から申し出がありまして、本人が一応承諾、その承諾行為もほんとうはいけないことでございます。
 それから新たに宮原社長が中心となりまして、信中商事株式会社というものを新たにつくり、その中に常務取締役の名前が入っております。ただこの会社は、まだ大蔵省の認可を得ておりませんので、したがって営業の開始はいたしておらない。ただ、法務局の商業登記はしておるというように承知いたしております。このような点につきまして――事実は以上のようなことでございまして、一応この本人は現実に役員にはなっていないようでございます。表見行為としてはそのようなふうにはっきり見える。またそのような名刺も使用したということは、明らかに自衛隊法の服務規律違反であるというふうに考えますので、停職六日の処分をいたしまして、本日付をもって免職ということにいたしております。
#42
○佐々木静子君 いま最後の部分、懲戒免職ですか、どういうことになっておりますか。
#43
○政府委員(江藤淳雄君) 諭旨免職でございます。
#44
○佐々木静子君 停職六日で免職というようなことはですね、あとでまたいままでの御説明について伺いますけれども、これは私どもの想像を絶するゆるい処分じゃないか。実はこれを新聞で知った総評の人たちから、きょうは朝からずいぶん電話をもらっているわけです。これは一体何ということだ、そういうことであれば、防衛庁自体がそういうことを黙認しているということと同じじゃないですか。もう本人は停年でやめるまぎわの人なんですから、その人を六日間停職にしてみたところで、これはほんとうに痛くもかゆくもないわけなんですね。
 この間実は防衛庁の中でも、やはり隊員として、隊員たるにふさわしくない行為があった場合というようなことで、これは全然事案が違いますが、五人の自衛隊員、これは下位の全く下の兵隊ですけれども、やはりすぐに懲戒免職になっているわけですね。私、聞いているところでは同じ理由だそうですけれども、同じようなことであれば、これは、下の兵には軽くても上層部になると責任が重いのがあたりまえのことです。また、不正なことをやった場合でもそれだけ刑が重いのはきまりきったことだと思うのですけれども、一体、どういうわけでそういう軽い処分をなさったのですか。これでは、全く、防衛庁が自衛隊員の犯罪をそのまま黙認しているというふうに国民が思ってもやむを得ないんじゃないですか。どういうわけでそういう処分をなさるのか、その理由をお聞かせいただきたい。長官にお伺いいたします。
#45
○国務大臣(江崎真澄君) 先にこちらから。
#46
○政府委員(江藤淳雄君) 私のほうは、付発令になった隊員がその後つとめるべき勤務義務と申しますか、あるいはいろんなことにつきまして詳細な指導要項を出しておる。三十二年の十一月に出しておりますが、その中に、とにかく付配置でありましても停年でやめるまでは明らかに自衛官であるということを絶対に忘れてはいけない。したがって職務専念の義務はもちろんあるんだと。ただし、残っている休暇の範囲内で会社に行っていろいろ会社の状況を聞く……(「とんでもない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)というようなことを言っているわけでありまして、また同時に、相手から会社の辞令の交付を受けてはいけない。あるいはまた、そういうような名刺を使ってはいけないとか、あるいはそのほか、公の会合へ出席してはいけないというような通達を出しておりますが、この通達に本人が違反した事実があるということで、服務規律違反と考えて懲戒処分をいたしたわけでありまして、特に、相手から常務取締役としての報酬をもらっておるということになりますと、これはもう明らかに自衛隊法六十二条の違反になりますけれども、そのような法令違反にまでは至っていない。ただ、明らかに服務規律違反で、たいへん不見識であったということで懲戒処分にしたということであります。
#47
○佐々木静子君 いま、順番に事実経過についてお伺いしたいと思うんですが、まず大ざっぱに言いまして、防衛庁のほうは、これは名刺を使ったけれどもお金ももらっていないし営業も何だとかいろふうな話をなさいますけれども、現実に、現職の自衛官で、しかもこの場合は二佐という地位の人です。その人が、民間社会の常務取締役ということになって、しかもやめてないんですよ、現職の自衛官ですよ。その名刺を使って、その民間会社の取引先、その他あるいは――この民間会社の第一の大口の取引先は、ここのパンフレット会社の経歴書に書いてあるんですが、「主たる得意先」として「1防衛施設庁」、「2自衛隊各駐屯地」。現職の自衛官、だれだって知ってますよ。防衛庁へ行けば。この人が現職の二佐であるということを。それが、民間会社の常務取締役の名刺を持ってそこへ来れば、どういう事柄が起こるかぐらいは小学生でもわかるじゃないですか。一体そういうことをどう考えておられるんですか。いまも、何も名刺を使っただけだとかなんとかおっしゃるけれども、それがたいへんな問題じゃないんですか。そういうことについて、あまりにも認識がなさ過ぎるじゃないですか。いかがですか。
#48
○国務大臣(江崎真澄君) 全くこれは私不謹慎なことだと思っております。全く、こういうことが平然と行なわれるということは。これもしかし、一面から言いますと、同情すべき点もないわけじゃないと思うんです。このことについて同情と言っているんじゃないんです。それは、三佐とか二佐とかいいますと、停年が五十歳です。そして、自衛隊でおおむね勉強することというものは、すぐ世の中で右から左に通用しない訓練、任務を遂行しているわけですね。したがって、余裕期間を持つ、これはひとつお認めを願いたいと思うんです、特殊事情ということで。しかし、名刺を使ったり、経歴書に入れたり、だからこれは、本人も不謹慎ですが、第一、防衛施設庁公認――何ですか、公認されているというか、そういうようなことをかまえる社長というか、そのモラルもこれはなっちゃおらぬ。ましてやその自衛官そのものが自衛官としての本務に反することはこれはもとよりですが、そういうなれ合いということが、それは施設庁出入りに値しないですわ、これは。だから、そういう会社は、これは電気工事会社だそうですが、私は人事局長によく言うたんですが、本人もけしからぬが、そういうものをあらかじめ刷ってそれを誘導するような、会社の社長の、何というか道義心の低さという点においても、施設庁出入りを許すべきものかどうか、そっちのほうも考えなければいかぬと。そういうものを認可してそのままにしておいていいのかどうか、そのあたりも実は検討しておるというもののようです。ですから、これはまあ諭旨免職にいたしたわけでありまするが、会社全体としましても、これは、私ども今後、こういう会社を防衛庁出入りにしていいかどうか。これはやはり、本人はもとよりですが、そういう社長の、何となく、自衛隊の者を採用したら、右から左に、まだ任官中であるにもかかわらず利用しようといったような、それは本人が一番悪いでしょう、一番悪いけれども、そういう会社の雰囲気も私は見過ごすわけにはいかぬと、こういうふうに言っておるわけでありまして、十分ひとつ今後努力をして、こういうことが再発しませんようにいたしてまいりたいと思います。
#49
○佐々木静子君 いま長官から、本人はもちろんいけないけれども、そのようなことをした会社もいけない、会社の経営者もいけないという話がありました。私は、むろん会社もいけないし、この会社の経営者もいけないと思うのです。しかし、問題は、民間会社というものはこれは営利を目的としている会社でございまして、少々のモラル違反、それは少々のことはやっても金もうけをしたいというのがこれは民間会社の通弊なんでございまして、それに対して、国家公務員たる者が、そのようなものに利用されないように厳正な立場をとるということが、これは公務員としての当然の責任じゃないかと思うのです。国民の税金で給料の支払いを受けているのですから。これが一民間会社の手先になって利用されるような、そんなつもりで国民は税金を払っていないわけなんですね。ですから、その民間会社のことは私はむろんけしからぬと思っておりますけれども、おっしゃることの次元が違うと思うのです。国家公務員というものは、こういうふうに、営利を目的としている民間会社とか私人とかに利用されないように厳正な立場をとらなければならない。これが、公務員たる者の義務じゃないか。そういう意味におきましては、非常に残念でございますが、いま長官のおっしゃったことは私は問題のすりかえじゃないか。もう少し国家公務員自身の、自衛官自身の自覚というものが問題になるのじゃないか。また、そういう面において厳正な監督をしていただかなければ、これは、いつまでたっても自衛官というものが民間会社に利用される、そうして、利用されることによって不利益を受けるのはだれかと言えば、これはもう言うまでもなく国民なんです。そういうことについて、もう一度長官の所信を伺いたい。
#50
○国務大臣(江崎真澄君) 問題を決してすりかえたわけじゃありません。本人が悪いことはもとよりでありますと強調した上で、それは経営者側にも不義があるということを申したわけで、すりかえたわけじゃありません。それは、もとより本人が公務員としての、また自衛官としての職務を自覚しなかったということを遺憾に思っております。
#51
○佐々木静子君 それで、いまのお話で、本人が自覚が足らない、自衛官としての自覚が足らない、けしからぬというお話でございました。そうしますと、いまの行政処分はどういうことなんでございますか。
#52
○政府委員(江藤淳雄君) 田中二佐の行為は明らかに服務規律違反でございます。その意味におきまして、十分調査しました結果、懲戒処分としまして、相当重い停職六日が適当であろうという判断のもとに行なったのでございます。
#53
○矢山有作君 私は、いまの江崎防衛庁長官の答弁を聞いておって、非常にけしからぬと思う点があるのですがね。あなた、「官僚天国日本」ということばが通用しておるのを御存じですね。「官僚天国日本」をあなたが推奨しおるようなことになるんですよ、いまの答弁でいくと。二佐、三佐は五十歳ぐらいで退職するんだ、したがって気の毒だ、その点をどうしてくれるとおっしゃるけれども、少なくとも役人になられる、自衛官になられる、警察官になられる方は、役人として、自衛官として、警察官としてどういう立場になければならぬかということを十分自覚していられるわけですからね。その自衛官になったこと、警察官になったこと、役人になったことを就職の道具にされては困るわけです。ところが、実際問題として日本の状態を見ると、なるほど一般の役人にしたところで一定の規制はありますけれども、その規制がしり抜けになって、毎年毎年国会でも議論の対象になっておるように、役人の天下りということが公々然と行なわれておるという欠陥が指摘されているわけでしょう。そういう点を十分にあなたが踏まえてものごとを考えていただきませんと、あなたの論法でいけば、これは自衛官になった、五十で停年退職じゃ気の毒だ、したがって自衛官の肩書きのままどこかに就職してもいいんだと、就職の準備をしてもいいんだと、こういうことになっちゃうわけですよ。このことが、就職をしてもいいんだ、就職の準備をしてもいいんだということが、今度の問題に発展したわけでしょう。ここのところは十分にあなたに反省をしてもらいたい。
 それからもう一つは、宮原工業というのはいまも防衛施設庁と防衛庁と密接な関連がある企業だと、――私は、この間の予算委員会の分科会でも、この防衛庁と民間産業の癒着の問題について議論したわけです。あなたは、自衛官は気の毒だと、だからやめた後のめんどうは見なければならぬというような意味のことをおっしゃっておられました、私は、それをやられるとすれば、防衛庁、防衛施設庁に関連のない企業でお考えなさい、防衛庁や防衛施設庁の仕事を請け負ってもうけているところへあっせんをしていけば、これはますます癒着が強まるんだということを申し上げたはずです。あなたは、じゃ今後考えて、防衛庁、防衛施設庁に関連のある企業に就職させないということを検討しましょうと、こう言っておるわけです、はっきり。だから、そういった点もこれは今後の問題として検討しなければならない、そういう点もあわせてお考えを伺いたい。あなたの答弁は全体としてすりかえだというお話がありましたけれども、まさにすりかえですよ。問題の本質を的確にとらえて判断をしていただかなければいけないと思います。それが一つ。
 それからもう一つは、三十二年の十一月に、何か就職関係の指導要領を出されておるということですが、いま内容については概括的な説明しかありません。それを一ぺん読んでみてください。私はそういうような就職指導をやっておるところに問題があると思います。これはやはり現職の自衛官がいかに自衛官として突然の就職が民間ではむずかしいにしても、それを事前に予定をしていろいろとやっておるというようなやり方というものは、私は基本的には間違っておるんじゃないか、その就職指導要領自体が。一ぺんそこで、その就職指導要領というものを説明してみてください。もちろんこれはきょう説明していただくと同時に、あとで資料として全員に配付してください。
#54
○佐々木静子君 矢山委員の質問に関連して――私も実は防衛庁に行きましたときに、いま矢山委員のおっしゃった就職指導要領についての説明を幕僚長から聞いたわけです。で、大体こういう指導要領を出される法的根拠はどこなのかということをお尋ねしたんですけれども、それに対する明快なお答えを防衛庁からいただいておらぬわけです。ですから、法的根拠があるとすれば、それもあわせて、ないならないで、それはかってに防衛庁でそういう指導をしておるなら指導をしておるということを、それをひとつあわせてお答えいただきたい。
#55
○国務大臣(江崎真澄君) 矢山さんの前段の御質問にお答えしますが、これは、本人けしからぬということは、もう私は、これがいいはずのものじゃありませんから、それは口をきわめて何も繰り返しはいたしませんが、はなはだ不謹慎、自衛官らしからざるふるまいということを認めた上で、企業者のほうもこういうことは注意してもらわなきゃならぬということを強調したつもりなんであります。ただ五十歳の停年云々は、若年の停年といいますか、そういうまあ特殊な状況にあるわけです。これは警官などでは、普通巡査などですと、定年が御承知のとおりきめられていないように私聞いておりますが、防衛庁の場合はそういう点、非常に停年が早い。そこで、その本人の休暇の範囲内において、まあ部付になった場合に、再就職の面で多少の勉強をさせていただくということを私言いたかったわけで、そのことをまあいまの服務規程やいろいろなことで話も出ましょうが、これは自衛官の特質といいますか、右から左に世の中に間に合わない点もありましょうが、そうかといって五十歳ではたしてめしが食っていけるかどうかということになりますと問題も多かろうというふうに思いまして、まあこのことを申したわけであります。もとよりこういうことは重ねてあってならぬことでありまするから、今後十分戒めてまいりたいと思っております。
 いまの就職指導要領については、政府委員からお答えいたさせますが、まあ私も、いまのそういうような実情等、矢山委員が指摘されるように、全然関係のないところへ行けと、まあそういうことで、今国会におきましても、上級幹部の就職口については、審議会を設けてですな、そしてそれにはかっていこうという前向きの一つの、これも解決策として法案改正をお願いしておるというようなわけであります。したがいまして、こんなことは二度と起こしていいわけのものじゃありませんから、十分ひとつ注意をするということで、私責任を持って対処いたしますので、御了解を願いたいと思っております。
#56
○矢山有作君 あなたの答弁、あとでよろしい。
 大体ね、五十歳では停年が早過ぎると、まだ十分働き盛りだから、したがって休暇の範囲内で就職準備のためにいろいろとやることを認めるのだ、会社に出ていくことを認めるのだと、こうおっしゃる。その思想そのものが私は間違いだと言うのです。自衛官になる者は、自分が二佐、三佐であるならば、五十歳で停年でやめなければならぬということを承知してなっているのですから、それに対していまのような考え方でいかれるならば、これが発展すれば今度のような問題が起こるのです、これは、必ず。だから、そこまで、現職のときに関連企業へ就職をあっせんして、休暇の範囲内でそこに行って見習いをやらせるといろ、そういう思想が間違いだと言うのだ。そういう就職のあっせんのやり方を、あなた自身が容認されるというならば、自衛隊というところは、五十歳でやめるときには就職あっせん所になってしまう。自衛隊は就職あっせん所じゃないでしょうから、その辺をけじめをつけてもらいたい。そういう考え方でいくならば、いまおそらく次官でやめるのは五十四、五でしょう。いま女は平均寿命が七十一歳、男は六十九歳何カ月、こういう世の中です。そうしてこういう五十五歳で次官をやめる人は、まだまだ使い道はあるんじゃないか、どっかへ就職あっせんしようか。通産省は通産省で、自分の業務に関係のある会社を選んで、そこの常務取締役ないしはどの次官は専務取締役でいく、こういう例がたくさんあるでしょう。そういうことがのさばるというのは、あなた、大体そういう考え方をしておることが――あなたの考え方というのは、あなた個人じゃ私はないと思う。あなたは内閣の一員なんですから、日本政府全体の考え方でしょう。そういうことでやっているから、官僚天国というような問題が起こるのですよ。私はそのこと自体を改めてもらいたい。
#57
○国務大臣(江崎真澄君) 私、別にそのことにこだわるわけではありませんが、やはり自衛官として、まあこの者の議論とは、これは別であります。田中何がしとはですね。一般論としまして、自衛官としてやはり本務に忠実であったということであれば、その奉職しておる役所があとう限り就職を世話してやる、またそれが休暇というようなことで、ある程度全然関係のないものであるなら、その勉強をすることに、まあ便宜供与といいまするか、黙認をすると、これは休暇ですから。というような線は、これはどうでしょう。他にあることじゃないでしょうか。私、まあそんなふうに思うわけです。
#58
○矢山有作君 長官ね、あなたが、そういう考え方を持っているなら、じゃあ自衛隊に志願をして、そして行った、まあいまはどういう名称を使うのですか、陸士だとか、海士というのですかね。何かそういう一般の者はどうするのですか。これも私は、志願をして行くくらいですからね、これはあなた方の言われる自衛隊のために忠実にやろうと思って行くのですね。これは年限が長いか短いかの相違はあるでしょう。五年でやめるか、十年でやめるか、三年でやめるか、二年でやめるか。しかし、忠実に二年間なら二年間、六年間なら六年間自衛隊で一生懸命働いた者は一々世話するのですか、そんなことはできないでしょう。だから、あなたの論法でいくと、じゃあ自衛官として、いわゆる俗なことばで言うならば、出世をした者は防衛庁、あるいは防衛施設庁自体が一生懸命就職のあっせんをして食うに困らぬようにしてくれる。ところが一番食うに困る、そういう者が六年なり二年なり何カ年か自衛隊で忠実に働いてやめていくときには、知らぬ顔して、どこかへ行って働け、こういうことになる。そんなばかな話はないでしょう。そうすると、約二十何万の自衛官を、全部防衛庁なり防衛施設庁が就職のあっせんをやるんですね。
#59
○国務大臣(江崎真澄君) やるんです。
#60
○矢山有作君 そうすると、これは就職あっせん所ですね。そんなばかな話がありますか。
#61
○国務大臣(江崎真澄君) どうも矢山さんにおしかりを受けて恐縮なんですが、私は一般論を申したつもりなんです。士の位の者、要するに昔で言う兵隊ですね。これの就職等についても、当然親心といいますか、そういうことで、それぞれの部隊では指導しておるものです。これは引く手あまたで、おかげでいまのところ士は就職口に不自由はしないのです。これはほんとうです。資料をお出してもいいのですが、いまのところ引く手あまたということです。むしろ曹の位から三佐、二佐とかこのかいわいの者が困るということを言うておるわけです。どうぞあんまりお気をぴりぴりされんでください。そうかといって私がそれらの就職を一切世話はいたしません、防衛庁はもとより本務は本務、次の段階は次の段階ですと言うことは簡単ですが、これは私世の中の一つの習慣から言いましても、非情な気がするんです。だから常識の範囲を逸脱して事件をやろうといっておるわけじゃありませんから、おっしゃる意味はよくわかりますから、この程度でひとつ御了解を願いたいと思います。
#62
○佐々木静子君 いまのお話ですけれども、私はその大ぜいの自衛官が再就職のことで、いろいろ防衛庁が世話なさるということ、それも非常に奇異な感じを受け、とんでもないことだと思うわけでございますが、一番の問題は、その兵の場合じゃなくて、上層部において問題があると思うんです。ところがこれは自衛隊の中の通達を見ましても、退職予定者の中に、特にこの幹部以上の者を非常に優遇しているわけなんです。問題はそこにあるんじゃないかと思うんです。兵に該当する者の就職の世話をなさるということもおかしな話でございますけれども、問題の中心はやはり上層部にある。ところが、この幹部といわれる人たちにおいては、退職予定隊員としての扱いが非常にあついわけなんです。そのあたりに自衛隊の姿勢というもの、またこういうふうにいろんな汚職が起こってくるということが、この通達自身から常識的に見たってはっきりわかるのです。
 それから、いまの自衛隊の主として兵のことだと思いますが、非常に就職率がいいということでお話しになっておられましたが、実際のところは、私もこの間防衛庁に聞いてきたんですけれども、これは主として自動車運転免許証、あるいは自動車の整備工としての資格を持っているので、自動車関係会社に対する就職が過半数を占めているというお話です。というのは、これは民間会社で人を雇って、運転免許をとらせる、あるいは整備工としての技術を熟達させるとすると、その間民間会社が自分の金を使わなければいけない。ところが防衛庁が国のお金で免許証をとり、そして整備の資格、技術を持ったものを横すべりして雇えば、結局民間会社はそれだけの支出なしに技術のある人間を雇えるというので、それで申し込みが殺到している。実は私、いま長官がこられる前に法務省のほうにもちょっと御見解を伺ってましたが、実はこれははっきり申しまして、そのように殺到しているのは、技術を持った兵に対する求人ですね。殺到している。それをまた自衛隊の幹部が特別の会社に世話することによって、これははっきり申しますが、一人について幾らというお金が動いておるわけなんです。うそだとお思いになるならば、私はその資料をここへぶちあけたいと思う。実は長官にこういう資料がありますと、私はその資料をお持ちしたいんですが、それを提供した公務員が、そのことによって国家公務員法に触れると思いますので、いまそのことを法務省に伺っているわけなんです。
#63
○野々山一三君 いまの話に関連するからちょっとついでに答えてもらいたい。長官に聞きたいんですけれども、あなた就職について考えてやるのは、社会上の通念的なものではないかと言われたんですね。頭を縦に振っていらっしゃるからそうだと思います。
 そこで聞きますが、田中何がしの問題についてはっきりしてから、私は次の問題に移ったほうがいいと思います。九仭の功を一簣に欠くというのはどういうことばですか。あなたの御答弁によれば、田中君というのはまじめにやってきたから、だから五十歳になったときに行くんだから、まあめんどうみてやるのはいいじゃないか――九仭の功を一簣に欠くということばおわかりでしょう。最後に間違いをやったものをどうするんですか。どうするんですか。明らかに注意をする、懲戒すべきです、これは。私があなたにちょっと注意する、そんなものじゃないですよ、あなたに私が注意することは、また別なことで注意する。明らかにこういうことをやった、かくかくしかじかであると罰する、罰するということばは悪いですけれども、懲戒処分、懲戒解雇だ、明らかに公務員法による職務専念の義務に反する。かてて加えて、私とあなたとは見解が違いますけれども、あなたが防衛問題について一生懸命やっていらっしゃるようですが、あなたの顔をつぶす、ほんとうに国民の気持ちに反する行為をなしたわけです。それがなぜ停職六日で許されたんですか。諭旨退職ですね、こういうことでは世の中通りませんよ、それが一つ。九仭の功を一簣に欠くということと、田中君の行為について、あなたが最後まで努力されてきたんだからということと、やった行為はどうですか。
 それから私の言っているなぜ懲戒解雇にしないのかということ。
 それから今度は人事教育局長です。いまの答弁、あなた最初に答えた答弁は、人事教育局長として、善良なる公務員として、国会に対して誠意をもって答えているという印象をお持ちですか。(笑声)皆さんがお笑いになったよ。なぜか。名刺をつくったことはよくありません、重役としての登記はしておりますが、何々はしておりません――何です、それは。あなたのところの法律によっても、あるいは行政指導の方針としても、高級の役人さんが何々につくときにはかくかくしかじかという制限をつけておる方針をとってきたでしょう。そういうことをちっともあなた方として申しわけないという気持ちで答えられないで、名刺をつくったのはよくない、登記はしてあるが、どうのこうの、何です。そういう何というの、人事教育局長、君自身善良な公務員としての職務専念の義務を果たしていると君は思っているんですかね。大臣にも聞きたいんだ。そういうことばを繰り返しているから、私は結果として大臣は事故があるごとに防衛庁長官としての、行政の長官としての地位を脅かすようなあなたの耳の痛いようなことを言われるようなことになっておる。こういうものにけじめをつける標本をつくるということが最後の結論になると思う。「注意をします」なんていうことばではなしに、行政処分としては最高の、今後にこういうことが起こらないための最高の処置を講ずるということを、この際明快にして、そして事実を調査するなら調査するということはあとの問題。こういうことにお答えになったほうが正直ですよ。私はあなたみたいにりっぱな学校出てないですから、日本人として世の中に通用することばしか知りません。答えなければ、これ何べんでもまたやりますよ。こんなばかげたことを許しておけないですよ。お答えください。
#64
○国務大臣(江崎真澄君) 田中のやりました行為そのものは、これはもう弁護の余地はないと思っております。なるほど、さっきからこれが混同されて、何となく私どもが田中の行為そのものを合法化するために一般論を述べておるというような印象であったとしたら、これはどうも舌足らずだったと思います。そういうつもりはございません。田中そのものはけしからぬことだと思いますし、二度とこういうことがあってはならぬと思っております。
 それから就職のあっせんとかなんとかということについては、これは私、一般論として、温情をもってできるだけのことをしてやる、これはもう私、各省庁とも一般的な一つの通念があると思います。特に人員の多い防衛庁などにおいては、非常にこれはもうむずかしい。特に幹部においては、御指摘のあるような産軍癒着のそしりを受けるようなことがあってはならぬと。そういうふうなことで、今度も就職のための審議会をつくったり、一歩でも二歩でも前進しよう、こういう努力はこの人事教育局も一生懸命になってやっておるわけでございまするから、ひとつ、その点はぜひ御理解を願いたいと思います。十分ひとつ、今後こういうことの繰り返しのないように、これは全く、九仭の功を一簣に欠くとおっしゃるが、そのとおりだと思います。こういうことを繰り返さぬようにいたしたいと思います。
#65
○政府委員(江藤淳雄君) 先ほど矢山委員から資料提出の御要求がございましたが、つきましては、提出いたしたいと思います。この内容はかなりありますが、先ほど申し上げましたように、これは「停年退職予定自衛官の服務指導について」という題でございまして、この骨子は――大体、自衛官というのは停年は生年月日でいっておりますので、誕生日をもって停年になるわけです。そこで、年間ばらばらやめられては、幹部のような場合特にたいへん困りますので、やはり少なくとも停年退職になる前の三カ月以内のときの定期異動日に一斉に定期異動して、そして停年が余っている人間については付配置にするというかっこうで進めております。それがいいかどうか議論はあると思いますが、現在はそういう方法をとっております。これは、いわゆる各局でやっております待命制度でございますが、これは幹部は三カ月以内、それから曹は六カ月以内ということで、曹の場合はできるだけ少しめんどうを見まして、六カ月以内になるべく自分の就職したいという希望地の部隊へ転属さしてあげるということでやっております。それから曹のほうにつきましても、やはりかなり職業関係の再就職がしやすいように努力はいたしております。幹部だけでございませんで、特に曹の場合におきましては、退職前一年前から夜間通修等を認めておりまして、それに対して若干国のほうも補助をいたしております。
 なお、士のクラスを自動車会社等にあっせんした場合に、一人当たり幾らの金を幹部が取っておるというようなことは、私としましては初耳でございまして、そのようなことは絶対にあってはなりませんし、ないと思いますけれども、その点につきましては十分今後注意してまいりたいと思います。
#66
○野々山一三君 まだぼくの聞いたこと答えてないじゃないか。
#67
○政府委員(江藤淳雄君) これは私のほうでもその後詳細に調査いたした結果、本人のやった行為は、私のほうのいろいろの基準がございますが、基準に照らし、懲戒処分として停職六日が適当であろうというふうに考えたわけでございます。
#68
○野々山一三君 そういうばかげた答弁しておって、君自身、職務専念の義務を果たしておるかどうかと聞いているんだ。それ答えないじゃないか。大臣にも聞いているんだ。
#69
○国務大臣(江崎真澄君) 実は、野々山さんも御承知のとおり、これは発令しちゃったものですから、それで彼も答弁に苦しんでおると思うわけです。これは十分部内でも検討させまして――やはりそれだけの疑義を差しはさんでおっしゃる意味はよくわかりまするので、これの処分の最終的な結論については、ひとつ私におまかせ願うように、この際お願いしたいと思います。
#70
○野々山一三君 第二の質問はどうなんだ。職務専念の義務を果たしておるかどうかということを聞いているんだよ。あんなばかげた答弁で職務専念の義務を果たしておるかどうか、大臣の認定を聞いているんだ。他人ごとみたいに言っているから大臣に聞いているんだよ。
#71
○国務大臣(江崎真澄君) ただ、彼も長い間人事局長であると同時に、防衛庁に奉職していろいろな場面に突き当たっております。したがいまして、この問題は、御趣意を体しまして十分検討いたしますから、これは私に預からせていただきたいと思います。彼の勤務態度等につきましては、いま、おことばがありましたので、彼も御趣旨を体して今後本務に専念してくれるものと思います。十分、おことばは承ります。
#72
○佐々木静子君 それでは、その後、長官がどのような結論を出されたか、当委員会に必ず報告していただくということをお約束いただけますね。
#73
○国務大臣(江崎真澄君) わかりました。
#74
○佐々木静子君 それでは質問を続けますが、いまお話にもあったように、現職の自衛官が退職の前に民間会社で、研修という名前だけれども、一定期間つとめることを防衛庁が許しておられる。これは非常に私は問題だと思うのでございますけれども、ほかの行政官庁で現職の公務員が民間会社に現職のままで勤務すると――勤務と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、少なくとも、そこで研修をするということを許しておられる行政官庁がほかにありますか。どうなんですか。なぜ自衛隊だけ特別なんですか。
#75
○政府委員(江藤淳雄君) 先ほど申し上げましたように、幹部は定期異動でやっておりますが、三カ月以内ぐらいの「付」になることが多いわけでございますが、その場合に職務専念の義務はもちろんございますけれども、本人が持っておる休暇日数の範囲内で自分が就職したいところをさがして回るとか、あるいは大体就職が予定されたというところにつきましては、会社に行ってその会社の事業場の見学とかあるいはその会社から実際の実情を聞くとか、あるいはその後の就職に関する勤務状況についても打ち合わせをするとかいうことで、これは休暇の範囲内でやってよろしいということになっておりますが、そこに就職、勤務してもよろしいということは絶対にやっておりません。
#76
○佐々木静子君 それは何でよろしいんですか。そういうようなことは、休暇があるなら休暇の間休暇をとって休んだらいいわけですよ。しかも、休暇が二カ月余っておるならその間早く退職して、そっちの会社に行きたいなら何も停年を待たないで退職してその会社に行けばいいんですよ。現職の公務員がその身分のままで、給料は国家からもらいながら民間会社につとめる――つとめるというのは、給料もらってないからつとめるじゃないとおっしゃると思うわけですけれども――実際上は民間会社の仕事をする。そういうふうなことは常識で考えたってとてつもない制度だということをあなたおわかりにならないのか。いま防衛庁のことを言いましたけれども、たとえば、通産省の役人が定年になる身分のままでどこかへつとめるとなれば――これは防衛庁もそうでしょうが――引く手あまたですよ。だれだって、とにかく来てくれということで、何か、許可をとりたい会社、通産省と利便のある会社――いま法務省の方がたくさんいらっしゃるから、たとえば現職の検事が、もう自分は退職する、その半年前にどこへでも民間会社へ現職検事のままでつとめてもいいということをかりに許すとすれば、検事のほうにその気がなくても、犯罪の嫌疑を受けている人は、さあ来てくれということでこれはたいへんなことになると思うんです。そんなことぐらい防衛庁は何でおわかりにならぬのですか。
#77
○国務大臣(江崎真澄君) どうぞそれはそういうわけじゃございませんので、まあ私もひとつこれはよく調べることにいたしますが、下のほうは引く手あまた、上のほうは防衛庁ぐらい就職率の悪いところございません。制服の上級幹部というのは全くこれは就職口がないんです。あったとしてももう全く薄給に甘んじてつとめておる。きょうこういう審議を通じて、幹部の就職が引く手あまた、昔流に言う兵隊、すなわち士の位の連中が少ない。それは逆ですから、士のほうは引く手あまた、これはやはり規律の厳正なところで二年なりしかるべき修業を経てきたということで、これは工場などでも非常に集団で申し込みがあるわけです、ところが、佐官クラス以上になりますと、何ともこれは困っておるというのが実情です。これは私二度のつとめですからわりあいそういうぐちをよく部内で聞きますが、ほんとうにこの就職ということにはほとほと頭を病ましておるという実情であります。しかし、そのことと服務規律をなおざりにしていいという問題とはこれはおのずと別ですから、これはやはりさっきおっしゃられるように九仭の功を一簣に欠くようなことになってはまいりませんし、これは本人自体もふしあわせですが、それよりも自衛隊自身の面目にも関しまするので、この佐々木委員の注意喚起を契機にして部内を引き締めてまいりたいと思いまするから、この点はひとつよろしく御了解を願いたいと思います。
#78
○佐々木静子君 いま大臣から部内を引き締めていきたいというお話を伺って、私もそれはぜひ引き締めていただかないと困ると思うんですが、これは田中という人はけしからぬことは言うまでもないですが、制度的にいま申しましたように非常に欠陥がある。これは上層部の人がいまあぶれているとおっしゃったけれども、民間会社というものはそういう人を利用してもうけたいのが民間会社なんですから、そういうところへ現職の自衛官を野放しにするという制度ですね、そういう制度を防衛庁が認めていられるところに私は根本的な問題があると思うんです。これは私、兵の場合はさほど問題はないと思うんですよ。上層部になればなるほど、裁量権が多ければ多いほど問題になると思うんですが、この一定の上層部以上の退職予定者の民間会社への在職中の研修というものはせひ禁止なさらなければ、これはもう防衛産業との癒着というものは全然避けられない。その点について防衛庁長官はどういうふうにお考えになりますか。できるようになっておるそういう制度は上層部においておやめになるお考えはありませんか。
#79
○国務大臣(江崎真澄君) これは十分ひとつ検討させてください。いろいろな経緯を経てこういうことになっておるわけですから、私自身がいまにわかにここでどうしますという結論を申し上げるには至りませんが、時間をおかりいたしまして十分検討いたしたいと思います。
#80
○佐々木静子君 これはぜひとも前向きの姿勢で……。私はこれはその当該問題になっている人もむろんなんですけれども、何度も言いますけれども、制度自体にたいへんな問題があると思うんです。ぜひとも裁量権の多い上層部については、これはもう退職になるまでは現職の自衛官は自衛官としての仕事に専念する、再就職の問題はそれからあと考えれば当然いいのではないか、そういう制度をぜひ大臣のお力で必ず実現していただかなければ、この防衛産業との癒着というものは根絶しないと思うわけです。
 それから先ほどから法務省にお伺いしているのでございますが、これは防衛庁長官にも聞いておいていただきたいのですけれども、この問題をおもてに出したのは全くだれにも迷惑がかからない資料だけを出しまして、田中二佐にこういう問題があるということを申し上げたわけでございます。田中二佐についてほかに問題がないかというと、実はこれはとんでもないことなんです。それから田中二佐以外の人に問題がないかというと、これもとんでもないことなんです。それ自身私どもも把握しているし、しかもこれは氷山の一角だと思うんです。それだけでもいろいろな問題があるんです。たとえばいま言いましたように、受け取ってはならないお金を民間会社から受け取っている。そういうことの資料も来ているし、現にあるわけです。また、民間会社から防衛庁の幹部に毎月給料を送っているところの経理の帳簿も実は私は見ているわけです。ただ、私は国会でいま言ったとおり防衛庁長官にそれらのものを突きつけて、こういう不正があるのではないかということを申し上げたいと思うんです。そのことによってあるいは現職の自衛官が国家公務員法違反に問われるとか、あるいはそのほかこの間の密約の問題ほどの問題ではないかもしれませんけれども、リコピーをとったのが窃盗罪とか、そういうことになるとどうかと思って、長官のほうに持っていったということになるといけませんし、また、それを提供した人たちの人権も考えなければならないと思うので、法務当局にぜひお願いしたいと思うんですが、そういう場合の捜査当局の御見解ですね、どういう場合にそういう問題を摘発したところの、いまも言いましたように、自分の上司が受けとってはならないお金を受け取っている。この資料もたまたまその仕事に関してその下にいるところの公務員が把握している、その問題をおもてに出した場合、その公務員は国家公務員法に触れるか触れないかということは解釈の問題だと思いますけれども、そういう場合に警察当局はこれを犯罪捜査の対象となさるか、なさらないか、これは公的な事件だからおっしゃれないとおっしゃるかもしれないけれども、ある程度の基準を示していただかないと、公務員犯罪というものはほんとうに目の前にありながらわれわれは指を食わえてどうすることもできないという実情なわけです。その一定の基準というものを法務省の正式の見解として示していただきたいわけです。
#81
○政府委員(辻辰三郎君) この点につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。何人も告発することはできるわけでございます。のみならず、公務員の場合には、公務員が公務を行なうにつき犯罪ありと認める場合には告発の義務すらあるわけでございます。ただ問題は、先ほど申し上げましたように、公務員がその公務を行なうにつき犯罪ありと認めた場合、これはむしろ告発義務があるわけでございますけれども、先ほど来御指摘の点は、その当該公務員につきましてその公務員の公務を行なうにつき知り得た犯罪というものになるかどうかが一つの問題点になろうかと思うのでございます。そうでない場合におきましては、自分の当該公務を遂行するに当たらないけれども、公務員として知り得たその秘密という場合には、これは国家公務員法でありますとかあるいは同様趣旨の自衛隊法の秘密保護漏洩という問題が一応構成要件的にはかぶる場合があるかもしれない。しかしながら、これは、具体的事案によってそれを捜査機関に申告することによりました場合に、そのことはしかし、違法性を阻却する場合が多うございましょうということを、これはその面から私は申し上げたわけでございます。当面、捜査機関のほうはこれは申すまでもなく警察官につきましては、犯罪がありと思料するならば犯人及び証拠を捜査するものとするという刑事訴訟法の規定がございますし、検察官につきましては、検察官は必要と認めるときはみずから犯罪捜査することができるという規定がございます。犯罪の端緒を把握いたした場合には捜査機関はその立場において当然本来の任務の遂行にあたるということでございますので、捜査機関の側から見ました場合においてその犯罪の認知というものはいかなる形で認知されようと、これは自由でございますから、そういう面におきましては必ずしも告発とか、あるいは申告の場合でも一定の資料がなければ取り上げないというわけではございませんで、あくまで捜査機関の立場におきまして犯罪ありと思料するならば、捜査を開始するのが当然である、かように私は考えておるわけでございます。
#82
○佐々木静子君 本件に関しましては御承知のとおりと思いますが、これは大阪総評が、議長が代表者となって昨日大阪地方検察庁に告発しているわけなんでございます。これはやはり大ぜいの働く人たちが願いを込めて、総評の代表者が代表となってこれは検察庁に告発した。しかもこれは、警察ではどうしてもいろいろな点で十分な捜査ができないであろう、官庁間の取り調べだから。ぜひ厳正中立な立場で、しかも一日も早く捜査をしていただきたいという大ぜいの人たちの国民の願いを込めて告発しているわけでございまして、そういうふうな国民の要望にぜひ検察庁としてはおこたえいただきたい。そして、いまおっしゃったように、まあいろいろ合法的に犯罪を摘発する方法があるけれども、しかし実際問題としては、これは公職にある者とすると、場合によっては職を賭さなければ上司の不正というものは訴えられない。また、これは民間産業のほうにおいても、その会社が防衛庁幹部に毎月給料を払っているというような資料を提供した場合には、そこの民間会社を首を切られるおそれは十分にある、そういうふうなことから、そういうもろもろの資料があるということを申し上げますので、司直の手において即時それらの証拠を、これは強制権を持たれる捜査官憲においてぜひとも早急にお取り調べいただいて、国民の要望におこたえいただきたいし、また検察官に対する国民が寄せる期待にも十分におこたえいただきたいと思うわけでございます。それについての御見解を……。
#83
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来御論議のございます田中二等空佐に対する自衛隊法違反の告発が昨日大阪の総評議長さんほか一名から大阪地方検察庁に対して告発がなされております。そういう報告を受けております。検察庁におきましては、もとよりこの事案の重要性にかんがみまして、厳正な捜査を遂げ、迅速かつ適正な処理を行なうものと確信をいたしております。
#84
○後藤義隆君 ちょっと刑事局長にお伺いしますが、佐々木さんが先ほどからいろいろお聞きしておるのは、秘密漏洩罪になるのじゃないかという点を非常に御心配なさっておるわけです。ところがぼくはこれをちょっと考えてみるのに、現職の自衛官が就任あっせん料を受け取ることや、それからまた民間会社から給料を受け取っておることや、それからまたわいろを受け取ったというようなふうなことは、ありとすればそれは秘密にはならないのじゃないか。そういうことを公にしてもらっては本人自身は困るかもしらないけれども、しかしそれは職務上の秘密には属さないのじゃないか。そこでもって他人がそれを言ったからといって、そういう事実があれば秘密漏洩の云々というふうな犯罪に問われることは全くないのじゃないかというふうにまで考えるのですが、その点はどうですか。
#85
○政府委員(辻辰三郎君) 御指摘のとおりだと思います。ただ、私がたいへん慎重な、といいますか、歯切れの悪いことを申しておりますのは、一般の場合には抽象論といたしまして、これはそういうものを捜査機関に申告いたしましても、それは違法性がないということで、秘密漏洩というものにはかからないという場合が一般論としては大多数であろうと思うのでございます。しかしながら、国家公務員法またそれと同じ自衛隊法の秘密の漏洩の問題は、「職務上知ることのできた秘密」、こういうふうになっておりまして、この「職務上の知ることのできた秘密」というものの中には、職務上の当然の秘密と、それから自分の職務を行なうにあたって知り得た他人の秘密というものとが二つ入っているわけでございます。その問題は、他人の秘密というほうでも、事、犯罪行為ということになりますならば、これは一般的に申しまして秘密漏洩というものに字句上かかってみてもそこは違法性がないということで犯罪にはならないということは大多数の場合は当然そうだと思うのでございます。しかしながら、それをこの際私が絶対にならないという一つの法律論をすることについては、なお慎重な検討を要するものがあろうかと思いまして、そこは一歩まあ下がって申し上げているわけでございます。
#86
○佐々木静子君 それでは最後に防衛庁長官に、本件を契機といたしまして、防衛庁長官としてこの自衛官に対する公務の、職務に専念してもらうどのような監督をしていかれるおつもりであるかということを、最終的に御所信を述べていただきたいと思うわけです。
#87
○国務大臣(江崎真澄君) もとより、こういう問題は自衛隊の信頼感にも関係することでありまするから、十分部内を引き締めまして、特に今回のこういう問題を二度と引き起こさないような適切な処置をとるということで、御了解を願いたいと思います。
 なお、就職の便宜供与、これは世間にないわけではありませんが、こういうことが御指摘のように誤解を生む、そしてまた間違いのもとになるということであるとすれば、これはやはりたいへんなことですから、その限界等についても再検討をいたしたいと思います。
#88
○佐々木静子君 それではこの自衛隊に対する問題についての私の質問は、本日は一応終わりたいと思いますが、ぜひともいま要望いたしましたように、私どもの期待にこたえていただくだけの、また大臣が御表明なさいましたようなお立場で、もう一度防衛産業との癒着を絶滅するという姿勢で、積極的な取り組みをお願い申し上げたいということを要望いたしておきたいと思います。
 次は裁判所に対して、ちょっと時間がもうたいへんに少なくなりましたので、少しだけお伺いさしていただきたいと思います。
 きょうは最高裁の局長、三局長がお見えのようでございますので、実はこの機会にちょっとお尋ねしておきたいことがございますので、御見解をお述べいただきたいと思いますことは、私先日来法務委員会の記録を読み返して見ますと、「最高裁長官代理者」という立場で御答弁いただいている事柄の中に、どうも長官代理者というお立場が私のほうがどうも十分にわかりにくいといいますか、あるいは御答弁なさる局長の側において非常に何といいますか、広範な代理権をお持ちのような御答弁もあれば、非常に使者のような御答弁の個所もあり、そこら辺のことがよくわからないのでございますが、「最高裁長官代理者」ということば、これは国会法の七十二条に出てきていることばでございますが、この代理者という意味、非常に理屈ぽいことをお伺いしますが、相手が裁判所だからかまわないと思うのですが、この代理者という意味はどういうふうになっているのか、代理人であるのか。民法的にいえば、ことばとすれば代理人と使者と、上と下とひっつけたようなことなんですけれども、どういう権限をお持ちなのかということをちょっと前提でお伺いしておきたいと思うのです。
#89
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 十分な検討を経ておりませんので、御納得のいくお答えになるかどうか、申しわけないことでございますけれども、やはり代理者とあります以上、一定の代理権限に基づいて申し上げるということになります。内部的にはそれぞれ所管が分かれておりますので、一応代理権限の範囲はその所管の事項に限られるわけでございますが、所管外のことはお答えできないということは対外的にはやはり通らないことになりますので、常に内部的のことは意思を疎通し合っておりますから、その責任の持てる限度ではお答え申し上げる。したがいまして非常に広範な権限を持っているというようにお取りになられる場合が出てくるかと存じます。ただ、単なる使者の立場でお答えしているわけではございません。原則は、所管の事項を代理権限としてお答え申し上げるというのが基本的な立場になろうかと存じておる次第でございます。
#90
○佐々木静子君 御答弁を伺ってよくわかりました。そうすると、基本的に最高裁長官の代理人というお立場で御答弁いただいていると承ってよろしいわけでございますね。
 それでは質問に入りたいと思うわけでございますが、実はこの五月十二日の衆議院の法務委員会における議事録を私この間拝見いたしまして、これは土井たか子先生が矢口人事局長に、婦人の裁判官の任官問題について質問をしておられるのでございますが、その説明について矢口最高裁長官代理者が、毎年婦人の裁判官の希望者を集めてお話をしておられること、そして現場の裁判所長が女性の裁判官の配属を歓迎しないということをお述べになっていらっしゃるというふうな趣旨の御答弁が出ているわけでございますが、これはそのとおりでございますね。おっしゃったこと自身はそのとおりでございますね。
#91
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 速記録のとおりでございます。
#92
○佐々木静子君 これは私非常におかしいのじゃないかと思うわけなんでございますけれども、実はこれは、現場の裁判所長が女性裁判官を歓迎しないというのは、これはどういう資料に基づいておっしゃっておるわけなんでございますか。
#93
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一つお断わりを申し上げておかなければいけないわけでございますが、ただいま御指摘の土井委員の御質問がございまして、速記録にございますような御返事を申し上げておりますが、実はこのとき具体的に御指摘になりました昨年の十二月十七日でございましたか、私が司法研修所に参りまして、任官の説明をいたしましたその中のことばとしては、そういう説明はいたしていないのでございます。じゃどういうことかというお尋ねだろうと思いますが、私個人の説明としてはそういう説明はいたしておりませんが、さらにさかのぼりますと、四十五年の三月二十日でございますか、やはり衆議院の法務委員会で、当時の、私の先任の人事局長が、その趣旨のことを、松本善明委員がお尋ねになりました際に申し述べております。また私、引き継ぎで聞いておりますところでは、やはり任官説明の際に、女性の裁判官が任官されるということについては十分しっかりやってください、というような意味でもってそういった趣旨のことを言っておられるのでございまして、まあ人事局全体の立場といたしますと、だれが言った、だれが言わないということではございませんので、私、あの速記録にありますような御返事を申し上げたわけでございますが、私個人が言ったかどうかという特定の説明会のお尋ねでございますれば、むしろ正確にはそういうことは申し上げてないというふうにお答えすべきであったろうかと思います。
#94
○佐々木静子君 それでは、その現場の裁判所長が、婦人裁判官は歓迎しないと言っておられるということ、これは全国にもずいぶん裁判所長――私正確に何名いらっしゃるか知りませんが、いらっしゃると思うのですが、そういう事実はあるのですか、ないのですか。どういうことなんですか。
#95
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは、たとえば現地の所長方がいろいろな人事異動の際に、自分のところの管内には少し年輩の方が多過ぎるとか、あるいは若い方が多過ぎるとか、女性の方が多過ぎるとかという、いろいろな御意見なり御希望がいろいろの機会に常にあるわけでございまして、まあそういったような際に、女性裁判官というのはなかなか配置がむずかしいというようなお話、これは特定のだれというのではもちろんございませんけれども、そういうお話がこれまであったことがあるというふうに私どもは承知をいたしております。
#96
○佐々木静子君 それでは、説明会のときにわざわざその女性のことだけをおっしゃって――いまのお話だと年寄りが多過ぎるとか若い者が多過ぎるとか、いろいろたくさんの話が出ているのに、なぜ婦人の裁判官を歓迎しないという話だけを――これは前任者かもしれませんが、いずれにしろ、いま申し上げました長官代理者でいらっしゃると思いますからまあ同一人とこちらは考えまして、わざわざ婦人のことだけを説明会でなぜおっしゃったわけなんですか。
#97
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように説明会は、裁判官に、どうぞいい方にできるだけ多くおいでください、裁判所というのはこういうところですということを御説明申し上げるわけでございます。その際には、たとえば裁判官、修習生から判事補になられます際の年齢等の問題に関しましても、いままではできるだけ若い方、三十五才くらいまでのところが目安ではないでしょうかというようなことを申し上げてきております。しかし近時、ことに私がこの前に参りましたときには、四十前後でも一向差しつかえない、ただあまり年をといっておられますと、判事補から判事になるといったような関係で、ちょっとそれは御本人にもお気の毒なようなことになる場合があるかもしれないというような趣旨で年齢のことを申し上げました。それからまた女性の希望者というような問題につきましても、これは習習生の方は非常に関心を持っておるところでございます。私、むしろ全然差別はしない、一切そういう差別はしない、いい方ならばどんどん来てくださいということを、もちろん骨子として申し上げておるわけでございます。ただ、女性の方については、転勤の問題とか、それから夫婦で裁判官をなさるという例が実際は非常に多くあるわけでございますから、そういった方がいかなる場合でも常に一緒に住んで勤務ができるというようなことにならない場合があり得るということは考えておいてくださいというような意味で、裁判官を御希望になる際の決意といいますか、こういうようなことで、そんなことを知らなかった、そんなことなら希望するのじゃなかったとあとで言われても困りますので、まあ実情を詳細に御紹介する。それからまたそのほかにも、身体の障害のある方、やはりこれは気にしておられます。足がちょっと不自由だとか手が不自由だとか、目とか耳が不自由だというような方で希望しておられる方があります。で、そういう方のこともありますので、どの程度の方ならば差しつかえない、そんなことは気にしなくてもいい、それはちょっとどうでしょうかというようなことのわかりますように、そういったことにも触れて御説明をする。何も女性のそのことだけをとりたててどうこう説明をしておるわけではございません。
#98
○佐々木静子君 そうしますと、いま人事局長おっしゃったように、女性がどんどん裁判官になっていい仕事をしてくれというのが一番基本的なお考えなんですね。そのことを説明会でおっしゃったわけだとしますと、そのことがみんなの印象に残るようにしっかりおっしゃっていただけたらいいと思うのです。いまここの御答弁では、女性もどんどん裁判官になってくれて、そしてどんどん一生懸命仕事をしてほしいというのが一番の骨子だということをはからずも局長おっしゃったのですから、それであれば、説明会のときも最もそれが印象に残るように、大いに婦人の修習生に強調なさっていただきたい。どうも局長のおっしゃっているここでのお話を伺うと、そうなんですが、その説明会に出た人たちのお話を伺うと、そのただし書きのほうにウエートがかかっているようにわれわれの耳には入るものですから、それが誤解だとすれば、どんどんと婦人は裁判官になってほしい、そしてどんどんいい仕事をしてほしいということを、私どもぜひ、それが基本的な御姿勢であるなら毎年強調してお進めいただきたいと、私のほうから要望するわけでございます。それと、これは昨年の七月二十四日の参議院の法務委員会で、これは長井局長にやはり長官代理者としての御答弁をいただいておるわけでございまして、これは、任官について男女差別をするというようなことは全然ない、またそのようなことを裁判所がやろうはずがないという趣旨の御答弁をいただいておりまして、これは、婦人の修習生の人たちがこの御答弁を伺って非常に意を強くしている、たいへん喜んでいるやさきにこういう問題が起こったものですから、重ねて人事局長に、あるいはこれは誤った御答弁ではないかと思いましたので、その点の御答弁を、釈明と申しますか、求めたわけでございまして、そうすると人事局長は、全く差別はしていない、優秀な婦人の裁判官がどんどん出てくることを歓迎している、そういうことを説明していらっしゃる。また今後もそういうことを説明していきたいという御趣旨でございますね。
#99
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございまして、任官の説明に参りますのは、もともと優秀な方に数多く来ていただきたいということであがるわけです。その間男であるか女であるかというようなことで差別は一切いたしておりません。ただ、もちろん、女性であればどんな方でもいいと、そういう意味ではございませんで、その点は全く男女平等に扱っておる、こういうことでございます。
#100
○佐々木静子君 なぜこういうことを重ねてくどいように私申し上げますかと申しますと、これはもう最高裁のほうでも十分おわかりだと思うのでございますけれども、これ、たとえて言いますと、これは日本婦人法律家協会というのがございますが、これは世界婦人法律家協会がございます、ウーマン・バー・アソシエーションの日本支部ということで、会員は弁護士の資格を有する婦人。したがって裁判官、検事、弁護士、それに準ずる者として司法試験に合格した婦人というもので構成されているわけでございます。これはもう思想、信条、あるいは職種を問わずそれに該当する婦人は全員会員になっているわけでございますが、これが毎年定期的に、二月に一度とか、東京と大阪とで開かれているわけなんでございます、実は私もこの婦人法律家協会の会員になってちょうどいまで二十年になるわけでございますが、どうもこれが、もう話題といえば、あるいはもうほかの問題を取り上げて議題にしたいと思いましても、ともかく集まってこられた方々は、裁判所の女性差別という話ばかりに終始するわけでございまして、人はかわれど――新しい修習生がどんどん入ってこられて、人はある程度かわれど話題変わらずというところで一実は何百回という会合の間にどうして同じ話題ばかり、こういう問題ばかりになるのかということ、非常に私も情けなくも思い、ふしぎにも思うわけなんです。
 それともう一つは、これはいろいろ問題もあろうかと思うのでございますけれども、非常に奇異に感じますことは、その中には数からいえば圧倒的に婦人の弁護士が多いわけなんです。それから婦人の検察官もこのごろはかなりおられます。ところが、検察官が検察庁における婦人差別ということで悲憤慷慨する話は一度も聞いたことがない。また婦人の弁護士が、弁護士会あるいは自分のつとめている弁護士会事務所で婦人差別されたという話も聞いたことがない。ともかく裁判所においてこんな目にあったという話ばかりが持ち込まれるわけでございまして、これはやはりいろいろと原因はあろうと思うのです。また、これ一面裁判所というものに対する期待がほかの官庁に対する期待よりもずっと大きいから、そういうかっこうであらわれてくるのではないかとも解釈もできるのですが、それにしたところであまりにもみんながみんな裁判所における男女差別というものを訴えてこられる。それからいま申し上げますとおり、その弁護士のほか現職検事、あるいは検事をやめて弁護士になられた、あるいは何もいま仕事をしておられない方などが検察庁の不平をあまり、差別問題は少なくとも不平として取り上げられない。ところが裁判所の場合は現職、あるいは退官した裁判官までも裁判所において婦人差別を受けたということを、これはやはり皆さんが強調なさる。そこら辺において裁判所というところがやはり男女同権という考え方において非常に何か問題があるのではないかとこれは考えざるを得ないわけです、人が次々にかわってくるのにみな同じことを言うのですから。ですからその点において人事局長、何かこういう問題、これは裁判所の名誉のためにも打開をなさる方法をひとつお考えになりませんか、いかがですか。
#101
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむずかしいお尋ねでございますが、御承知のように、裁判所では現在四十六名の女性法曹がおられます。これはまあ裁判官の数は検察官等の数に比べて多うございますから何でございますが、私承知しておりますのでは、検察庁では十数名の女性しかおらないというふうに承知いたしております。割合からいきましても裁判所はずっと多くの女性法曹の方に来ていただいている。ことにまた年齢的または経験年数的な考察等からいたしましても、枢要な大都市の総括裁判官というような方に女性の方がなっておられる。また比較的若い層の方でも、優秀な方は高等裁判所の陪席として女性の方が質問をしておられるという状況にあるわけであります。
 そういった観点から見てまいりますと、私ども女性裁判官を差別をしておるというようなことは実は考えられないところでございます。もちろん人間でございます以上、能力に応じた処遇というものは当然だろうかと思います。それ以外にいわゆる性別によるそういった処遇というものは、これはどこにもそういうことは考えたこともございませんし、また現実の問題としてあり得ないのではなかろうかというふうに思います。そういうお話がそうたびたび出るということでございますと、一体これはどういうことかというふうに私も当惑の念を禁じ得ないのでございますが、まあ私どもの心がまえとしましては、いまも申し上げておりますように全く平等に扱っておりまして、できる方はどんどん枢要のポストにもついていただいている、今後もそういうふうな方針に変わりはない、こういうふうにやっていきたいと考えているわけであります。
#102
○佐々木静子君 まあそういうことはあり得ないとおっしゃっても、現実に、しかも責任観念の全くない人間ではなくて、社会的には相当信頼ができると思われる方々が、現実に皆さんがそうおっしゃるということは、これは人事局長、あり得ないのだということで、私は、済まされない問題だと思います。もう、ひとつ、いままでの御姿勢を実は根本的に変えていただかなければ、これは裁判所というものに対する認識を非常にそこなうことではないかということで、私残念に思うわけなんです。
 それからこれは私直接聞いたわけではございません。間接に聞いた話でございますが、この裁判官の、おそらくこれは若い裁判官あるいは新任の裁判官でないかと思うのでございますが、職業婦人を妻に持っているような人はなるたけ裁判官はやめてもらいたいというようなことを人事局長がお話になったというようなことを聞いているわけなんです。実は、私、局長の御家庭のことは何も知りませんけれども、きょうお越しいただいている裾分局長にしても、職業婦人として非常に有能な婦人を奥さんに持っていらっしゃるということはかねてから伺っているわけなんです。これは一体どうなんですか。そういうようなことを訓辞なさったことがあるのですか、ないのですか。
#103
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 要するに裁判官というのは非常にたいへんな仕事でございますので、できるだけ専念する態勢というものをとっていただきたいと、これは皆さんにお願いしておるわけでございます。しかしそのことは、何も奥さんが他に職業をお持ちになるということがいけないという趣旨で申し上げるのではなくて、それならそれで、他に奥さんが仕事を持たれていわゆる夫婦で共かせぎをするということであれば、普通の人以上の努力といいますか、そういったものが当然あってしかるべきである、その覚悟はひとつしてくださいという趣旨で申し上げているわけでございます。奥さんがどういう仕事をお持ちになるか、そのこと自体一つも問題にしておる趣旨のものではございません。
#104
○佐々木静子君 御趣旨はわかりましたが、それはやはり誤解されている。あるいは誤解というか、一般的にそうでないように受けとられているきらいがあると思うわけでございます。これは裁判官がいかに職務に専念しなければいけないからといって、これは何も配偶者まで一緒に専念させなければならない権利もそして義務もないことは言うまでもないことでございまして、その配偶者が職員関係であろうがなかろうが、これは全く関係ないことだと思うのです。これは実はやはり婦人法律家協会で問題になっているわけです。婦人法律家協会の配偶者というものは非常に裁判官が多いわけなんでございまして、何か自分の亭主だけが普通の人の半人前しか仕事ができないという言い方をされるのはけしからぬということで実は問題になっているわけでございまして、私ども拝見したところでも、非常に有能なお方がまた有能な職業婦人を配偶者に持っている方たくさんいらしてあるわけでございまして、もしもそのような趣旨に誤解されるようなことを局長が若い裁判官におっしゃったとすると、これはかりに誤解であってもそれは訂正していただいて、また誤解を招くようなことはおっしゃらないでいただきたい。そのことはどうですか。お約束していただけますか。
#105
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほど佐々木委員のお尋ねに対しましてその真意をここで申し述べたわけでございます。それ以上には出ておるわけではございませんので、十分おわかりいただける、また機会がございましたら佐々木委員等からも、そういう趣旨のことを言っておったから、そのとおり受けとっていいんではないかということをお口添えいただければ、非常にありがたいことだと思います。
#106
○佐々木静子君 ぜひ公の場、あるいは個人的にもけっこうですが、そういう誤解のあるような発言は、これは局長としては、はなはだ僭越な言い方ですが、ぜひおつつしみいただきたいとお願いするわけです。
 それからもう一つ一これは実は裁判所の職員の方々はこれは事務総局の方、その一部の裁判官の方から最近特にお聞きしていることなんでございますが、いままでは最高裁の中に課長補佐の御婦人もあった。しかし、現在ではなくなっている。係長の数も少なくなっている。しかし、聞くところによると最高裁の中ではどんな有能な婦人であっても係長以上にはしないようなことで、どうもいまの人事行政が進められているようだ。課長補佐に、かりに能力があっても女の人にはつけないような、何かそのような人事行政が行なわれているのではないか。これは非常におかしいのではないかということを、いま申し上げましたように、一部の裁判官とかあるいは事務総局の職員の方々からそういうことについて、まあ、要望といいますか、訴えを伺っているわけなんですが、そうした何か最高裁がそういう基準でもとっているんじゃないか。そういう姿勢、人事行政を行なっておられるのか。あるいは内規でそういうことがあるのかないのか、その点を述べていただきたい。
#107
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まあ、課長、課長補佐、係長というふうな組織の系列があるわけでございますが、それぞれはそれぞれの職務と責任が定められているわけでございます。それにふさわしい方があるならば、その方が男性であろうが、女性であろうが一向かまわないわけでございまして、むしろ最も適任である方を常に選んでそこに登用していくというのが人事行政の要諦でございます。私どももそういう観点からすべて事を処理しておるわけでございます。これまで課長補佐がかつてはあったというお話でございますけれども、実際問題としてはこれまではまだ最高裁の課長補佐というのはございません、女性で。それは女性をしないということではございません。適任者があれば今後とももちろんふさわしい方は任用していくつもりでございます。
#108
○佐々木静子君 まあ、そういうことで非常に部内でも疑惑を持っている。それで優秀であるとか、優秀でないとかということはむろん人事局長が人事の責任者として御判断なさることになろうと思うのでございます。またおのずから部内でもだれが優秀であるとかというような評価というようなものもわかってくるのではないか、そういうことにおきましてぜひ全く女性差別ということのないようにこの事務総局の中の人事もぜひともお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
 それから、それに関連して前にちょっと質問が出た件ですけれども、最高裁においては婦人職員に対する宿舎の割り当てが男性のそれと比べると非常にあと回しになっている、そういうことも全く、男女同権ということをおっしゃっていたわけですが、現実においてやはり差別されている。外形的に見ても、宿舎も男性に優先して割り当てられる、そういうようなことで抜本的に人事局長、思い切って男女同権に持っていくような方法はおとりになれないものでしょうか、どうなんでしょうか。
#109
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむずかしいお尋ねでございまして、根本的に男女同権にいたしておるわけでございますが、そこのところがまだ不十分だ、こういう御指摘のようでございますが、重ねて申し上げますけれども、私ども女性ということのゆえに当然その人が能力、識見において上のポストになり得るにかかわらず女性であるということのゆえにそういう立場につけないということは絶対にいたしてないわけでございます。先ほど人事局で評価されるだろうというようなお話でございましたが、もちろん私どもは担当でございますが、しかしかってに評価するわけではございません。その所属の長の意見等も十分にしんしゃくいたしまして評価そのものの公正さというもの、客観性というものを十分考えてやっているわけでございます。まあ、今後ごらんいただくよりほかしようがないと思いますけれども、いままでどおりやっていくということが、すなわち、男女の平等ということを実現していく当然の道であると、私は固く信じているわけでございます。
#110
○佐々木静子君 じゃ、ぜひそういうことを地で実現していただきたいと私思います。社会の中でどこの社会でもまだ日本では遺憾ながら男女同権というものが徹底していないと思うのでございますけれども、特に裁判所においておくれている。裁判所に無能な女の人ばかり集まっているわけじゃ私はないと思いますので、ほんとうに男女同権にしていただくのであれば、やはり思い切って人事をほんとうにおっしゃっていることを実際の上であらわしていただきたい、そのようにぜひお願いするわけでございます。
 それから時間があまりありませんので、また一部あとに残さなければならないと思うのでございますが、この家庭裁判所の、また家庭裁判所に限らず調停委員の問題についてちょっと質問に入りたいと思います。
 これはこの間、昨年の六月一日から最高裁の裁判所規則の施行に伴って臨時調停制度の審議会が発足しているわけでございまして、調停制度というものが根本的にいま再検討を加えられていると思うわけでございますが、このいま一般的な民事事件についても社会の変化に伴っていろいろな問題が激増しているということは否定できないと思いますが、特に家庭裁判所で、昭和二十四年に創立されて以来、まあ主として弱い立場の者の人権を守るという意味において非常に大きな働きを果たしてこられ、特に家事調停事件は非常に増加していると思うわけでございますが、この家事調停を、これは十分にその機能を発揮するためにはどうしても調停委員会が十分な人的構成によって構成されなければなかなかうまくいかないのではないかと思うわけでございます。私も時間もありませんので、問題点を少ししぼってお伺いしたいと思いますが、まず第一に、家事審判法の第二十二条によりますと、この調停委員会の組織は、家事審判官が一人と、調停委員が二人以上ということになっておりますけれども、現実に行なわれている家事調停は、これはもう御承知のとおり、特に大都会において調停委員会の構成メンバーとしての家事審判官は名前だけであって、実際は調停委員によって運営されているわけでございますね。そういう意味において、そういうことになってくると、この調停委員がその能力において家事審判官が持っている能力をまあ補うというとたいそうでございますけれども、ある程度それに近い能力を持っている人が少なくとも一名以上入っていないことには非常に事件処理がおくれる、また適切な事件処理が行なわれないというのが現実ではないかと思うんでございます。そういう意味において、この家事調停委員の選任ということがたいへんに大事だと思うんでございますが、その点家庭局とするとどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
#111
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいま御指摘のように、家庭裁判所における家事調停が非常に重要な役割りを、家庭の平和とか、あるいは健全な親族共同生活の維持といったような観点から果たしておるということで、調停委員会が充実されたものでなければならないということは御指摘のとおりでありまして、ただ家庭裁判所におきましても、家事審判官が終始家事調停に立ち会うということがなかなかむずかしい事情にありまして、大かたは把握しておりましても、有能な調停委員さんのお力を期待するという面がないわけでもございません。したがいまして、家庭裁判所における調停委員会の運営というものにつきましては、たとえて申しますと、在野の法曹の方に調停委員候補者になっていただいております方がたくさんありますが、そういう方を必ず調停委員の一人に加えるという配慮をしてはどうかと、あるいは調停委員会の構成としまして、婦人の調停委員の方を男子の調停委員の方と取り合わせて調停委員会を構成するというふうな、具体的事件に応じてその事件を適切に処理していくための委員会の構成というものに意を注いでやると、こういうことでまかなってきておるわけでございます。
 で、問題は、これはどうも調停委員の方の年齢が少し高くなり過ぎるとか、ちょっと時代おくれに、感覚的に時代おくれになっておるんじゃないかと言われる方が出ますと、これはゆゆしい問題でありますので、なるべく年齢も若返らせるような方向で持っていきたいというようなことでここのところずっと努力してまいったのでありますが、なかなか一どきにそういうふうなこちらの念頭に置いているような状態に行きにくい面がございまして、たとえば調停委員の給源といったような問題一つを考えてみましても、ちょうど家庭裁判所で欲しておるような四十歳、五十歳といったような働き盛りの、そして能力のあるそういった方がほしいのでありますけれども、そういった方はやはりまた一方では社会的な地位がちょうどその社会の活躍にふさわしいような方でありまして、なかなか家庭裁判所の調停委員の候補者になっていただけないというふうな悩みなどもございまして、こういう点を何とか解決しなければならないというようなところから、まあそういったさまざまな問題がありまして、御承知のように最高裁判所には現在臨時調停制度審議会という審議会を設けまして、そこで調停制度一般についていま申し上げたような悩みなどを抜本的に解決するような方法が考えられないものかということでせっかく努力しておりますので、御了承願いたいと思います。
#112
○佐々木静子君 いろいろと裁判所当局が御努力なさっているということはよくわかるのでございますが、特に私、家事調停委員について申し上げておりますのは、これはこの調停前置主義というために、好むと好まざるとにかかわらず、調停に持ってこなければいけない。それから民事調停のように当事者主義が優先しているのではなくて、ある程度職権的なことが家事調停には強いものでございますから、そういう意味において、特に家事調停委員の資質とか条件というものが重大ではないかと思うわけなんでございます。
 これは私も現実によく――よくというほどでもございませんが、たまたま見聞きすることですけれども、現実に調停事件の最中に、あんたたちは若いからいまの民法でいいかしらないけれども――調停委員がですよ――自分は明治生まれだから明治民法でいくんだとか、そういうことを言われる調停委員がやはりあるわけなんです。幾ら調停というものが法律じゃなくて、常識を優先させるといっても、基本的には現行民法を基準にして、その基準の中で多少しんしゃくするということでなければ、現行民法、たとえば相続にしても現行の相続制度自身を頭から否定してかかったのでは、これは問題ではないかと思うわけです。
 で、御承知のとおり、裁判官は法律に従って処理しなければならない義務がありますけれども、調停委員にはそういう特に拘束されるものがない。しかも裁判官の場合であれば忌避をすることができますけれども、調停委員にはこれは忌避の制度がないわけでございまして、実際のところ、変わった思想、信条を持っている調停委員に当たった場合には、これは現実にどうにもならないというのが常態でございます。しかも調停というものは、おそらく強制力はないから、そんな忌避の規定も設けていないのだと思いますけれども、一般の調停を受けるほうの国民の側においては、これが調停委員であるか裁判官であるかわからない。ただ裁判所の偉い人が明治民法でいくのだという、いまの民法はよくないというような話を聞いたというふうに受けとるわけでございまして、そのあたり、やはり調停委員の選任というものは十分に考えていただきたいと思うわけなんでございます。
 それから、いままあ年齢の問題その他ございますが、この一年の任期ということになっておりまして、現実の調停委員は。そうして原則として死ぬか何かしない限り、同じ人がまた任官されているようでございますけれども、これは何か私思いますのに、五回なら五回選任したらもうその人は選任しないとか何とか、そういうふうな基準を裁判所の中で設けられるということにでもなれば、その選任された間一生懸命調停委員をやるというふうなことも生まれてくるのではないかと思うのでございますが、そうしたあたりについて御検討なすったことありませんですか。
#113
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) いまの御指摘の点は、これは現在調停委員は一年ということになっております、任期が。ですから、一年たったところで翌年度の調停委員候補者を選ぶ場合に、それは新しい視点からふさわしい方、徳望、良識のあって、そうしていまおっしゃいましたような明治民法でいくというような、そういう方でない方を選ぶべきものだと思います。ところが、現実にはなかなかいい人が求められなくて、ついそういう方もあるいは見落としで入っておられるかもしれませんけれども、これは私どものほうでプロフェッショナルな色彩を帯びるような調停委員の方が生まれますと、それは家庭裁判所の調停において民意を反映したいい調停を期待しようという趣旨にも沿いませんから、それは適当な時期にやはりふさわしい人とかわるというふうなことがなければならないであろうと、ただ、それに対する具体的な方策はどうかという点を考えます場合に、任期がいまのところ一年というほんとうに短い期間でございますから、それが、裏返せば、再任を何度もして十年も二十年もつとめるということになるわけでして、これを二年とか三年とかという任期にしまして、そのかわり、二年なり三年なりの任期がきたときには、そこで新しい観点からまたいい人を選ぶということの実効をあげるような方法を講じたらいいかというような議論もありまして、これは真剣に検討されなければならない問題で、先ほど申し上げました臨時調停制度審議会でもその問題が議論されてきております。どういうふうな結論に到達するか、いまのところまだ審議中でございますので結論は出ておりませんけれども、いい結果をもたらすような方策が得られることを期待しておるわけでございます。
#114
○佐々木静子君 ぜひとも、そういうふうな点において、調停がマンネリ化しない、しかも、その調停委員の肩書きを利用する、あるいは職業化した調停委員というものを、これは裁判所のほうでぜひチェックしていただきたい。その点を特に今度の調停制度の改革にあたって要望しておきたい。ほかにもいろいろと要望したいことがあるわけでございますが、その件も要望したいことの一つでございます。
 特に、私は、調停委員の職業別の区別を拝見いたしますと無職の方が多いわけでございまして、この無職の方でも、非常によく勉強していらして、また調停委員としてたいへんすぐれていらっしゃる方が大ぜいいらっしゃることも、私も何年か調停委員をしておりましたのでよく存じ上げているわけでございますが、また、一面、問題があるのも一般には無職の方が多いんじゃないかと思うわけです。と申しますのは、これはどういう観点から選任されるのか知りませんけれども、まあ、事件処理能力、その他、特に複雑な事件になりますと、それを十分に理解して争点を把握する、あるいはそれを処理するというような点において、いささか委員としての能力の点において欠けるのではないかと思われる方も中にはないではない。そういう点において、無職の方の調停委員の選任には特に御配慮いただきたいと思うわけです。
 それから私、これ、かねて思うんですが、調停委員、調停委員と、まるで調停委員という職業があってその職業についているように、これは大方の調停委員の方が言われるわけでございますけれども、これは調停委員となるべき者になったわけであって、これは職業でも何でもないし、また常時調停委員であるわけでもないと思うんですが、よく「何々家庭裁判所調停委員」という名刺をあたかも職業のごとく使用し、あるいは職業欄に家裁調停委員というようなことを書いて、そして信用を博するといいますか、そういうことがこれは普通かなり広く行なわれていると思うのでございますが、この調停委員という肩書きを常時用いる、あるいはそういう名刺を使用することなどについて、何か家庭局として、特別、監督とか指導とか、あるいはそういうことを禁止するとか、何かそういうふうなお考えでもございますか。
#115
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) いま仰せの、名刺なんかの肩書きに調停委員と書いてそれを振り回すということは、私も何度か聞いたことがございます。それで、それは正確に申せば、調停委員となるべき者――佐々木先生がおっしゃいました、まあ俗に言えば調停委員候補者とでも申しましょうか、そう書くのがほんとうは正しい書き方だろうと思います。けれども、現実には調停委員という名刺を持ってそれを使用しておるという方があるというふうに伺っておりますが、家庭裁判所では、調停委員の方を、候補者を選任しました場合に、初任の方には初任の講習会というのをやっております。それから一方では、調停運営協議会というのを高等裁判所単位に開催しております。なおそのほかに、各家庭裁判所におきまして家事調停委員の協議会というのをそれぞれ各地でやっております。そういう席では、裁判官あるいは所長といった方々からそういう好ましくないことはやるべきでないというようなことを注意を与えたり指導していくように心がけておるというのが実情でございます。
#116
○佐々木静子君 これは、特にそういうことを申し上げますのは、司法部内では、調停委員といっても強制力はないんだからということであまり尊重してない、と言うとたいへん語弊のある言い方でございますけれども、特に調停委員というものについて検討される機会は少ないんじゃないかと思うのでございますが、一般国民のほうから見ると、この家庭裁判所の調停委員というものはたいへん信用される、信頼される肩書きであるというわけでございまして、これはちょっとびっくりするほど、想像も及ばないほど家庭裁判所の調停委員というものは一部の人からは信用のできる名称のようになっているわけでございます。もう九九%までの方がその信用を利用して云々、というようなことはないであろうと思いますけれども、ちょうど――これは裁判所も御存じだと思いますが、本年の三月に、元東京家庭裁判所の調停委員のFという人に対して、調停委員の肩書きを利用して、しかも、ある程度舞台を家庭裁判所に置いた大がかりな詐欺事件として有罪判決が出ておるわけでございます。これは、実は、たまたま一番大口の詐欺に引っかかった被害者が、これは数年前のことでございますが、私もその人からその当時話を聞いたわけでございまして、何といいますか、かなりな有識者であっても家庭裁判所の調停委員と言われるともう頭から信用してかかるということが多いようでございます。そういう点において、特に家庭裁判所では調停委員の選任というものを十分御検討いただきたいと思うわけです。
 それから実はそのときも、――Fさんの場合も非常に多くの被害者がございまして、警察の捜査もかなり進められて、これは単なる債務不履行の問題じゃなくて刑事事件として起訴はどうにも免がれがたいというような事案でございましたので、実はこのときも、私は被害者の代理人のほうではございましたけれども、当該家庭裁判所の事務局のほうにも、実は、こうこうこういう不正事件が起こっているんだということを申し上げておいたわけなんです。これは、裁判所の中の規則――ちょっとはっきりとは条文はわかりかねますが、調停委員規則によりますと、「調停委員となるべき者に調停委員たるにふさわしくない行為があったときは、その選任を取り消さなければならない。」という規定も規則にあるわけでございますが、このような事件の場合に――これは具体的なことで恐縮でございますが――被害者たちが何回も債権者会議を開くとかなんとかいうことで本人を呼びましても、きょうは、私はこうこういう調停事件があって調停委員だからこれに出なくてはならない、というようなことでずっときたわけでございます。実際、家庭裁判所の調停というものに対する評価というものが、そういうことで、ごく一部の人の不正行為によってでもたいへんそこなわれるのではないか。この場合は被害者の人たちが非常に憤慨したわけでございます。ところが、こういう規定がありますけれども、家庭裁判所のほうでなかなか取り消しというものはなさらないような模様でございまして、実は私、立場は逆でございますが、困ったわけなんでございまして、結局、いろいろお話を、その御主人が外務省のかなり高い地位におられる方で、その御主人とお会いしまして、これは調停の権威にもかかわることではないかということで、調停委員となるべきものを辞任していただくようにおすすめし、結局御本人のほうがそれを了承されて、起訴になるまでに辞任されたわけなんでございますけれども、こういうふうなことは、これは以前のことでございますが、監督される家庭裁判所のほうにおきましても、別に身分保障のない調停委員の場合でございますので、適当でない人の場合は、これはやはり選任した以上は責任を持って監督なさる。そして適当でない場合はこれは取り消すなり何なりして、国民の調停制度に対する希望、寄せる信頼に報いるように努力していただきたいと特にお願い申し上げるわけなんでございます。
 そういうことにおいて今後、時間もありませんので私もう質問を終わりたいと思うわけでございますが、いま審議会で進められておりますが、家庭局として特に調停委員の選任について、最終的にどういう姿勢で今後進めていただくかということをちょっとお述べいただきたいと思います。
#117
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) 先ほどから家庭裁判所の調停が実りある内容の充実した、そして国民の役に立つような調停でなくてはならない。それには調停委員として仕事に携わる方が、りっぱな方でなくてはならないというような御趣旨のお話があったと思いますが、それに沿うように家庭裁判所の調停が充実した運営をみることができるような制度に持っていきたいというふうに考えまして、調停委員の選任とか任期、それからその他のあらゆる事々、たとえていえば権限でありますとか効力でありますとか、といったようなことをも含めまして、いまの制度をより一そうりっぱなものにしたいということを念じてやっていきたいと思っております。
#118
○佐々木静子君 それから、最後にちょっと技術的な質問になるわけでございますが、この家事審判法、家事審判規則にもこれはいろいろ問題点がございまして、今後いろいろとお取り組みいただくことになると思うのでございますが、もう問題点二つだけ申し上げますと、審判前の仮処分についての強制力でございますが、それについて最高裁の家庭局長の御回答が昭和二十五年の十月五日の時点においては積極説をとっておられ、そして二十八年の三月十六日の御回答では消極のほうに変わっているわけでございますけれども、現時点における最高裁の御見解はどういうものでございますか。
#119
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) 御指摘のように、審判前の仮の措置というものの効力につきましては、これの強制力につきましては積極に解する説と消極に解する説がございまして、昭和二十五年当時には積極に解してまいったのでございますけれども、これは積極に解しましてもなかなか執行という面を考えますと、理論的にそうだというだけで、実際に執行できなければ何にもなりませんので、それで後にその意見を消極に変身たわけでございます。それで、それは争いがあります以上はやはり立法的な方法で、何人も納得するような効力を法文で明らかにするという方向で解決するのがいいのではなかろうかということから発しているわけでございまして、たまたま現存法務省の法制審議会におきまして、強制執行関係でこの仮の措置の効力の問題を取り上げてみようというふうな動きがございまして、その場におきましてわれわれはこの問題を解決するようにいろいろ努力を払って措置したいということで、現にやっております。
#120
○佐々木静子君 最後に伺いたいのは、いまの御見解はわかりましたが、いま、さしあたり問題に往々なっていると思われる家事審判規則の百六条第一項あるいは百七条などの問題について、これは上訴権というものが、救済手段が全くないわけなんでございます。全くでもございませんが、普通考えられるところの救済手段がない、こういうふうな規定について、とりあえず規則を改めるというようなことを家庭局としてお考えになっておられるかどうか。
#121
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) いま御指摘の家事審判規則の百六条とか百七条関係は、これは一応仮の措置として規定してあると思うのです。それで争う救済の手段がないということですが、なるほど救済の申し立て権というものは与えられておりませんけれども、これは取り消し変更し得るように二項で規定してありますので、もし、一項による裁判が適正でないという結果をあらわすというようなことになれば、家庭裁判所はいつでも取り消し、変更することができるというたてまえになっておりますので、事実上この救済されないままの状態でほうっておかれるということはちょっと考えられないのでございます。大体、家事審判法そのものが非訟事件手続法を準用しておりまして、広い意味では非訟事件の中に入るのだろうと思いますが、この非訟事件手続法十九条も、取り消し、変更を規定しておりますので、大体合目的的に考えまして目的に即した措置をとったけれども、しかしその後の状態でそれが適正でないような事態があらわれたということになれば、いつでもそれを取り消したり、変更したりできるようになっておりまして、現在までさして不都合があるという話を私はあまり聞いておりませんけれども。
#122
○佐々木静子君 それでは、私の質問はこれで終わりたいと思います。また、この家事審判制度の問題、家事調停の問題、非常に重大でございますので、また次の機会に質問を保留したいと思います。
#123
○委員長(阿部憲一君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日は、これにて散会いたします。
  午後一時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト