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1971/06/08 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第22号
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1971/06/08 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第22号

#1
第068回国会 法務委員会 第22号
昭和四十七年六月八日(木曜日)
   午前十一時二十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月七日
    辞任         補欠選任
     鶴園 哲夫君     阿具根 登君
 六月八日
    辞任         補欠選任
     吉武 恵市君     鈴木 省吾君
     阿具根 登君     鶴園 哲夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
    委 員
                岩本 政一君
                鈴木 省吾君
                林田悠紀夫君
                平泉  渉君
                星野 重次君
                加瀬  完君
                鶴園 哲夫君
                野々山一三君
                松下 正寿君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
   政府委員
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
       法務省矯正局長  羽山 忠弘君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   牧  圭次君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 一昨六日、中村正雄君が委員を辞任され、その補欠として松下正寿君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(阿部憲一君) 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○佐々木静子君 先日、この本法案についての質問をさしていただいたわけでございますが、引き続き質問さしていただきたいと思います。
 この五月三十日の本法案提案の理由を伺ったわけですが、そのときも申し上げたように、なぜこの罰金及び科料の額を四倍に改めなければならないのか。単に物価が上がったから、賃金が上がったからというようなことで罰金刑を上げるというのは、これは適当ではない。何かこれを御提案なさる以上はですね、これを改正することによってどのようにまあ国民に利益をもたらされるのか。法律的にはどのような刑事政策的な効果が発揮できるのかというようなことをお尋ねさしていただいて、一応まあ大臣からも御答弁をいただいたわけなのでございますが、やはりどうしても、この法案を改正しなければならない、だれもがこれはもっともだというところの合理的な科学的な根拠といいますか、裏づけというものがどうも私には乏しいように思うわけなんでございます。これは、実は私も先日からこの法案について法律実務家あるいは刑法学者の方などに意見を徴しているわけなんでございますけれども、これがまた非常に、これはいまの刑事罰のうち九十何%というのが罰金刑で占められており、しかもそれが上がるということですから、少なくともそれらの方々に関しては、たいへんにこの法律の改正がどうなるかということについて、多大の関心を寄せておられる。非常に関心を寄せておられるということをまず知ったことと、それから当然のこと、いまあらためて知ったわけではありませんけれども、さらにその事実を確認できたこととか、それから一部分、一部といいますか、かなりの数の刑法学者の方、あるいは主として在野の法律実務家の方が、こういう法案はみだりに改正するというようなことは、これは人権の面から見ても安易に考えてはいけない重大な問題である。しかも刑法改正草案がほぼまとまったと法務省で言っていらっしゃる現時点において、このような罰金の臨時措置法の改正案を提案される御趣旨がのみ込めないい。またなぜ四倍にしなければならないのかという合理的な根拠も見出しがたいという、かなりに強い意見が出ているわけでございます。もちろん、その意見が常に正しいと私は申しているわけではありませんで、一つの事柄についてはいろんな考え方が当然に生まれてきてしかるべきだと思うのでございますが、この法案もまあいろいろ反対の多くの実務家とかあるいは刑法学者の御意見があることはあるとしても、この法案はどうしてもこの際改正しなければならないのだという、法務省とするとまあ強い理由なり、あるいは根拠づけがあると思うのでございます。それについて大臣にもう少しだれもがなるほどと説得できるような、そういうふうな御説明をいただきたいと思うわけです。
#5
○国務大臣(前尾繁三郎君) 現実問題として、まあいろいろそれは学者の中にもいろんな説があるかもわかりません。法制審議会の方々は全員賛成だということで、まあ実務、実際の問題に携わり、あるいはまあ法制審議会の先生方が必ずしも代表的な方とは申しませんが、まあしかし代表的な刑法学者だと思いますが、その方が賛成しておられるところでありまして、率直に言って、また裁判所も非常に困っておるということは、結局上限に皆だんだん集中して、罰金刑がいわゆる悪平等になりつつあるということは、これは争われぬ事実だと思います。まただれが考えましても、罰金であるというからには、多少の苦痛がなけらにやならぬはずであります。昭和二十三年にきめました罰金刑が、その後、日本の私は物価と比較すべき問題ではないので、むしろこれは所得、まあ負担能力、苦痛の度合いというものを当然考えていくべき問題だと思っておりますが、その苦痛の度合いが、昭和二十三年にきめた金額で、現在において何ら変わりがない金額で、その苦痛の度合いが同じだというようなことは、私はあり得ないじゃないか。ただ、四倍にするか、五倍にするか、あるいは三倍にするか、こういう問題はあると思います。
 われわれが四倍をとりましたのは、しばしば御説明をいたしておりますように、いわゆる刑法草案の先取りであっては、これは新刑法草案は新しい体系のもとに行なわれておりますばかりではなしに、司法の連続性ということから考えましても、新刑法草案がもし行なわれるということになりますと、急激にまあ上がるばかりではなしに、場合によりましては、この臨時措置法のほうが高過ぎたというようなことがあってはこれはならぬ。したがって、まあ一般には大体新刑法草案というものが六倍というようなことが言われておりますが、司法の連続性という意味から考えていきますと、新刑法草案が通るのがおそいとしましても、それまでは四倍で何もこれは一律ではないわけでありまするから、幅を持っておるわけであります。したがって、やはり司法の連続性によって徐々に上がっていく。こういう速度を考えまするときには、まず四倍であれば支障がなしに、また非常に実情に合わないこっけいな罰金額ということもない。そういう意味から四倍にいたしたわけであります。
 これをこのまま放置しておくと、率直に申しまして、やはり経済状態の変化に応じて、常に即応して法というものも改正されるべきものではなかろうか。しかし、それでは法の安定性というものを害しますから、いままで放置されていたのであろうとは思いますが、しかし、いずれかの段階においては、やはりこういうふうにして金額を上げていかなければ、もう実情にすっかり沿わない。まあ、私個人からいたしましたら、もっと特に上げておかれるべきものではなかったろうかというような気がいたしておるのでありますが、その点は差し控えるといたしましても、刑法草案が必ずしも来年通るというようなことも想像できませんし、この際はやはり法の権威を保つゆえんから考えましても、また罰金がやはり経済的な犠牲によって苦痛を与えるという意味を一面において持っております限りにおいては、私は当然改正すべきものだと、かように考えておるわけでございます。
#6
○佐々木静子君 いまちょうど大臣のほうから、必ずしも刑法草案が来年通るとばかりは考えられないというようなお話があったのでございますけれども、これは前回にもちょっと刑法改正草案のことを伺ったわけで、大臣の見通しとしても、ここ数年以内に国会を通そうという御意見のように承ったわけなんでございますが、これは実はこの罰金の審議をするについても、私ども刑法草案がどうなっているかということがたいへんに問題になるわけなんです。もちろん法務省のほうからは、こういう刑法改正草案の説明書というものをいただいておりますが、これは大体もうどこの法律雑誌にも載っているといいますか、その程度でございまして、実はその法制審議会においてどのような経過を経てどういうふうになっているんだということを私どもこれを知らないことには、罰金の問題にいたしましても、これはほんとうは良心的に論ずるわけにはいかないと思うわけなんでございます。これは衆議院でも横路委員からちょっとそういうような資料の要望といいますか、ございましたようですけれども、実はこの刑法改正草案は、これは私の所属しております日本弁護士連合会には来ておるわけでございますが、国会には来ておらないわけで、私どもこれがどうなっているか、法制審議会の内容がどういうことで、どうなったかということを知ろうと思えば、御承知のとおり、一々弁護士会に出向いて見せてもらわなければならないような状態でございます。これはたいへん膨大でございますので、これは自費でもう一部作成すると申しましてもたいへんな負担でございますので、これは少なくとも衆、参法務委員会、できれば法務委員に、なるたけ早い時期に御配付いただきたいと思うわけです。
 実は私はこれは質疑を申し上げないつもりだったのですが、本案のこの法律案にしてみましても、これは私ども手元にいただくのは政府委員が提案理由を説明なさったときにこれをいただくわけでございまして、実のところ、それが終わるとすぐ質問をしなければならない。実際問題として、これにしても七十何ページかあるものを、事実上御答弁いただいている間に次のページを読まなければいけないというような、非常にややこしい状態で審議に臨まなければならない。ところが、この刑法草案は、これは相当の天才の方でも、いますぐではとても理解できないと思うのでございますけれども、ましてわれわれ凡人は早くに渡しておいていただかなければ、いよいよ近く国会へ出てくるということになりましたら、もう考えただけでも落ちつかない状態が起こってくるのではないかと思うわけですが、これは法務省のほうにお伺いしたいのですが、刑法改正草案についての法制審議会の議事録、これはどういう経過でこのいただいている草案の結論が出たのかという、これがわからないことにはどうにもならないわけでございますので、これは何とか近いうちに御提出といいますか、法務委員会にお出しいただけますでしょうか。いかがでしょうか。
#7
○政府委員(辻辰三郎君) 刑法の全面改正に関します法制審議会の議事内容の資料でございますが、これはこの刑法の全面改正につきましては、刑事法特別部会というのが設けられまして、三十回にわたって特別部会が開かれたわけでございます。そうしてその結果、この改正刑法草案というものができ上がったわけで、採択されたわけでございますが、この三十回のほかに実は刑事法特別部会というものを、また五つの小委員会に分けまして、それぞれ分担の区分をきめまして、各小委員会が平均百五十回開かれたわけでございます。で、それが五つございますので、小委員会の開催回数は約七百五十回というような回数に相なるわけでございます。ところでこの法制審議会の部会でございますが、これは全部実は議事はとっておるわけでございますけれども、それぞれ各委員さん方のなまのお名前が出ており、この委員さんがこういうことをおっしゃったという点が一般公開にふさわしくない面が多少はあるわけでございます。で、そこで部会のほうは、実は何かの形でその辺を修正して、一つのこういう意見があったというような形にして、御関心のある向きにお配りすべきものかと思うのでございます。それから小委員会のほうは、これは別段速記をとっているわけでございませんが、大体の要領筆記と申しますか、こういう意見が出たということで整理をいたしております。でこれは各小委員会全部、議事要領という形でつくっておるわけでございまして、この要録のほうは、そういう関係で、何々委員がどう言ったということが出ているわけでございませんので、これはいいだろうということでいままでこの作業に御協力いただきました学者、実務家、あるいは弁護士、そういう方面の御協力の結果こうなっておるということで、日本弁護士連合会のほうにも数部差し上げておるわけでございます。で、そういうことでこの小委員会の議事要領のほうは、御要望がございますので、このほうは私参議院の法務委員会なら法務委員会、あるいは調査室というような形で出さしていただいてけっこうだと思うのでございますが、部会のほうはそういう関係で、まだ実は外部に出していないわけでございます。その内容につきましては、もちろん小委員会のほうが実際に非常に詳しい内容になるわけでございますし、それから部会の大体の結論はすでにお配りいたしましたこの改正刑法草案の後半部分でございます説明部分に大体要約してできておるということで、部会のほうはむしろこれで御了解賜われば幸いというふうに考えておるわけでございます。
#8
○佐々木静子君 それございましたら、この小委員会のほうの議事録は、すぐにでもまた委員会のほうへお届けいただけるわけでございますね。
#9
○政府委員(辻辰三郎君) いままで個人々々という関係で配っておりませんので、私どもできましたら、この参議院法務委員会調査室なら調査室のほうに保管をしていただいて先生方の御利用に供したらばというふうに私は考えておりますが、そういう意味におきましては、調査室のほうに御必要ならばお届けすることができると思います。
#10
○佐々木静子君 それでは少なくとも調査室のほうへはぜひお届けいただきたいと思います。
 それからさらにいまも御発言のあるように、これは実際問題としていまも法務大臣言われるように、早ければ来年などというお話であるとすればこれは一々借りて読んでいるというのじゃ考えただけでも追っつくはずがないわけでございまして、これはやはり各法務委員の方にも急いで増し刷りをしていただきまして、お届けいただきたいと思うわけです。
 それから先ほどお話のございましたもう一つの議事録のほうでございますが、これはたいへんお気づかいになっている。各委員、どの委員がどう言ったこう言ったということで、主としてその委員の発言の人権を守るというような意味から公開されていらっしゃらないというお話のようでございますが、われわれが知りたいというところは、だれがどう言った、甲という人がどう言った、乙という人がこう言ったという興味から知りたいというのではなしに、どういう討論がなされて、どういうことでこうなったかということを知りたいわけでございますので、また事柄が各委員の、何といいますか、どういう発言をしたかというのを守ってやらなければならないということよりも、事はどういう改正刑法ができるかということのほうがウェートがはるかにこれは大きいわけございます。ですから、そういうことから考えましても、ぜひそれも、これは何も印刷してどの国民にもわかるように配るわけのものではございませんので、少なくとも法務委員会でおそかれ早かれ近く審議するということになるといたしますと、なるたけ早い時期に同じく少なくとも調査室のほうにお届けいただきたいと思うわけです。これは事柄の性質から見て、だれがどう言ったとか、かれがこう言ったということじゃなくって、どういう議論がなされたかということが問題なのですから、これは一般の新聞とか週刊誌に載せるために出してほしいと言っているわけじゃないのですから、そこら辺のところはよく踏んまえていただいて、まじめな議論の対象とするためにぜひともそれはお出しいただきたいと思うわけですが、いかがですか。
#11
○政府委員(辻辰三郎君) 御趣旨の点私よく理解できるわけでございます。非常に形式論を申して恐縮でございますが、法制審議会は各部会がたくさんございまして、いままでの法制審議会全体の取り扱いの問題もございます。それと実質的な御要望の点もございますので、その辺よく勘案いたしまして、上司と相談いたしまして善処させていただきたいと考えております。
#12
○佐々木静子君 それでは、なるたけそれも早急に私どもが拝見できる状態においていただけるようにお願いする次第です。
 それから今度は、先ほどの大臣のお話にもございましたが、やはり罰金刑の金額があまりにも軽い、苦痛の度合いが少ないというようなことで、裁判所のほうでも大体上限に達している判決が多くなっているという御趣旨のお話がございましたが、裁判所が立法に関与するということはこれはおできにならない、そういうお立場にないと思うのでございますが、最高裁の刑事局長に伺いたいのでございますが、これは個々の裁判官などから、どうも罰金の法定刑が軽いというような話が話題に出ておるのか出てないのか、あるいはまたそういうふうな要望が裁判所部内にあるのかないのか、ちょっとそのあたりお立場の許す範囲内でお答えいただきたいと思います。
#13
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判所は、御案内のように立法の問題に直接関与いたすわけではございませんので、事罰金を引き上げるべきかどうかというような点に関して裁判官の意見を徴したということはございません。ただ私がある程度日常接します裁判官の方々から意見を漏れ聞いておるところをまとめますと、罰金刑の引き上げを求めておられる裁判官も間々あるように記憶いたしております。
#14
○佐々木静子君 これ話がまたもとへ戻りますが、大臣の先ほどのお話で、いまの経済状態に合わなくなってきたというようなことで今度の改正に踏み切ったというお話でございますが、これはそもそも、罰金等臨時措置法がつくられましたところの昭和二十三年におきまして――これは矢山委員からも若干御質問があったわけでございますが、昭和二十三年の十二月十一日の参議院の法務委員会の議事録を拝見しますと、提案者が、「これは本来すべての法令につき、これを行うことが望ましいのでございますが、短時日の間に立案しなければならなかった関係上、取敢えず今回はその必要性の最も強いと思われる刑法及び外二法律についてだけ、その多額を五十倍に引上げることとし、他の法規については次の機会に譲ることといたしました。」というふうな、これは提案理由で述べていらっしゃるわけなんです。そして同月十四日の法務委員長の報告によりますと、「本案はその内容におきまして多少杜撰な点もあるが、目下の政治情勢から見て止むを得ず賛成するが、罰金全般について速かにその整備を行い、次期国会に提出するようにとの強い附帯意見の開陳があり、政府はこれに同意する旨の答弁がございました。」という報告がされているわけでございます。これなどから見ますと、本来ならばその昭和二十三年の第四回国会のその次の国会においてもっと整備した法案ができているはずだったのでございますが、それがそのまま放置されて、しかも二十三年たった今日刑法改正草案までがほぼでき上がったというときに至って突如として出された。まあ突如でもないかもしれませんが、いままでほうってあったものが出された。そこら辺で私ども非常にふに落ちないものを感ずるわけですが、そのあたりの経緯などを簡単に御説明いただきたいと思うわけです。大臣にお願いします。
#15
○政府委員(辻辰三郎君) 先に技術的なこまかい点について申し上げさしていただきたいと思います。
 現行の罰金等臨時措置法の国会における御審議に際しまして、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、経済関係罰則の整備に関する法律以外のいわゆるたくさんの特別法の罰金を整備するという点につきまして、ただいま御指摘のとおりもろもろの特別法につきまして罰金を早く整備しろという御趣旨に沿いまして、政府当局といたしましても近い将来に整備をするということを申し上げておるわけでございます。ところが、今日までそれが行なわれなかったという点につきましては、法務省事務当局といたしましてまことにその点は至らぬ点があったと考えるわけでございます。
 ただ、その経過を今日振り返ってまいりますと、これはまず、この当時、私どもが想像いたしますのに、刑事訴訟法の全面改正、これができ上がっておったわけでございますが、その施行を控えてのたくさんの準備作業があったという点がまず一番この点での理由であったかと思うのでございます。その他、占領下におきましてたくさんの法令が直されていったという作業に忙殺されたという面もあろうかと思います。そういうことで、一応罰金のほうが、ともかく特別法につきましても最高額を一様に二千円に上げていただいた、二千円未満のものは二千円に上げていただいたという点でしのげておったわけでございます。
 ところで、やはりこれは問題は、昭和三十年代になりまして事務当局の立場にいたしましても罰金の整備をこのままではいけないんじゃないかということを検討し始めたわけでございます。たまたま事務当局で刑法の全面改正を検討を始めましたのが昭和三十一年でございます。昭和三十一年から事務当局として刑法全面改正作業を検討いたしまして、三十八年に改正刑法準備草案ができまして、三十八年から正式に刑法全面改正の法制審議会の調査審議が行なわれたという経過になっておりまして、何といいましても、この特別法の罰金の整備は刑法というものが軸にならなければこれは事実上できないわけでございます。実は三十年代からやはり刑法の全面改正ということを先にやはりやっていって、それを軸にして特別法の罰金の整備をはかるというのが事の順序でございますので、ところが、刑法の改正作業が御承知のとおり今日に及んでいるということに相なりました関係で、罰金のほうの整備が今日に至ってきた。ところで、どういたしましても、この経済事情の進展に伴ないまして、昭和四十三年ごろから罰金刑の頭打ち現象というものが出てまいったわけでございます。それまでは少なくとも刑法等の三法律につきましては五十倍にしていただきました法定刑のワク内において、司法実務においてはまかなわれてきたわけでございます。そういう関係もあったんでございますが、四十三年以来頭打ち現象が顕著に出てきた。それと、刑法の全面改正の今後の推移というものを見通しました場合に、どうしても今回は、これはやはり頭打ち現象との関係、もちろんその前提には経済事情等の変遷によりまして罰金刑の機能そのものが現行のままではたいへん低下いたしてまいりますけれども、ともかく緊要な点は、この頭打ち現象ということに関係するようになったわけでございまして、そういう関係で今回この改正案を提案いたしたという関係になっております。
#16
○佐々木静子君 いまのお話で経過は大体わかりましたが、今回のこの御提案、実のところ、非常に大ざっぱに、頭打ちが出てきたから高くしようというだけで、罰金刑自体とすると全然整備されておらぬと思われることなんです。このうち刑法ほか二つの法律だけをこの対象にして、ほかの法律はほったらかしのような状態ですが、なぜこの三つの法律だけを臨時措置法の対象に昭和二十三年の時点にもし、また現在も刑法ほか二法だけをしぼってこの罰金刑の額を上げるようにしているのか、そのあたりのところも伺いたいわけなんです。
#17
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金等臨時措置法及び今回の改正法案におきまして、刑法と暴力行為と経済罰則、この三つは一緒にして法定刑を四倍、あるいは当時は五十倍ということにいたしまして、それ以外の法律につきましては、二十三年当時は、多額が二千円に満たないものは二千円と、今回は八千円に満たないものは八千円ということになっておるわけでございます。
 ところでこの刑法等三つの法律につきましては、暴力行為等処罰に関する法律と経済罰則整備に関する法律にございます犯罪は、刑法のいわば特別法的な性格で、刑法とたいへん密着した関係にございます。そういう関係で、これは三つ同じような法定刑でないと、その罪質にかんがみておかしいということに相なるわけでございます。ところで、その他の特別法でございますけれども、これはこの前も申し上げましたけれども、現在私どもの調査によりますと、現行法令のうちで罰則として罰金、科料の定めを持っております法令は六百六十三あるわけでございます。これは、そのうちで刑法等三つを引きますと六百六十になるわけでございます。
 これは御承知のとおり、制定時期がまちまちでございます。で、もとより戦前にできました法律につきましては、この罰金額の法定刑が非常に低いわけでございまして、そういうものが現行法では二千円まで引き上げられているのでありますが、今回は法定刑の上限が八千円未満のものを八千円にまで上限を上げていただくということになるわけでございますが、この罰金等臨時措置法ができました昭和二十三年以後にできましたこの特別法につきましては、それぞれの時点においてそれぞれ適正と思われる罰金刑が定められておるわけでございます。そういう関係で、六百幾つにのぼります特別法というものは、何よりもまず制定時期がまちまちであるという関係が非常に大きな原因になりまして、一律にこれこれというような適正なものを定める必要は、これはもとよりあるわけでございますけれども、この作業はやはり刑法の全面改正が実現いたしました場合に、刑法典を軸として個別的に関係各省庁と相談しながらその案を練っていくという作業が必要かと思うのでございます。とても現実的に必要性は感ずるのでございますけれども、なかなかそうはできないというのが実情でございます。
#18
○佐々木静子君 御答弁でよくわかりましたが、重ねてくどいようですけれども、いろいろなことが、国会で刑法改正についての審議がどのくらいに進められるかということにかかっていると思うのでございますので、こうしたもろもろの問題をほんとうに良心的に審議していくというためにぜひとも、私先ほどから申しましたように、すべての刑法改正に関する資料をできるだけ早くに国会に、法務委員会にお出しいただきたいということを、こういう御答弁を伺いながらも重ねてお願い申し上げる次第です。
 それからこの法律の第六条、罰金の執行猶予の制度、これは刑法二十五条の五万円が今度二十万円になるということになるわけでございますが、またこれは第七条一項でございますが、刑事訴訟法第六十条の第三項の件、あるいは刑訴法の百九十九条、あるいは刑訴法の二百十七条、あるいは刑訴法の四百九十五条の第三項の件などについては、これらはいずれも現行法の四十倍という線になっているわけでございます。私どもこれを拝見しますと、罰金の刑を科するほうの分については二百倍ということになっておるのに対し、六条及び七条の規定というものは、いずれも執行猶予をつけるところの条件となるところの罰金の額、あるいは勾留の要件や逮捕の要件あるいは現行犯逮捕の要件のような現行犯逮捕の場合の軽微事件というものをどの段階で軽微事件というか、あるいは勾留日数の未決通算についての規定というふうに、これはもっぱら被告の人たちの、あるいは被疑者の人たちの人権の保障のために、人権を守るために被疑者あるいは被告に有利なためにつくられた法律でございますが、罰金を科するほうは現行の二百倍になり、これらのものは四十倍にしかなっていない、そこら辺が何か一方的な感じがするわけでありますが、そこら辺のお答えをいただきたいと思うのでございます。
#19
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の罰金の執行猶予の限度額、あるいは第七条の逮捕・勾留、あるいは出頭義務の限界罰金額、あるいは法定通算の金額、こういうものにつきまして、今回のこの法律案は現行法のすべて一律四倍ということでこれを統一いたしておるわけでございます。まず、罰金の執行猶予について申し上げますと、現行法では五万円以下の罰金に処する場合に、罰金に執行猶予がつけられるという規定になっておるわけでございますが、これをやはり四倍ということで限度額を二十万円以下ということにいたしたわけでございます。それから次は、逮捕・勾留の制限される罪でございますが、これは御案内のとおり、現在現行法におきましては刑法等につきましては二万五千円以下の罰金となっておるわけでございますが、それを四倍にして今回は十万円ということにいたしております。それから刑法等の三つの法律以外の特別法につきましては、現行法は二千円以下の罰金となっておりますが、これをその四倍にして八千円以下の罰金ということにいたしているわけでございます。それから公判廷出頭義務の免除の問題も同様でございまして、現行法は、刑法等につきましては五万円以下でございますから、これをやはり四倍の二十万円以下ということにいたしております。この場合は、この刑法等以外の特別法につきましては現行法は何も特例が定めておりませんので、刑事訴訟法の規定によりまして五千円以下ということになるわけでございますが、今回はこの特別法の八千円に満たないものは八千円という措置が講ぜられる関係で、この関係も五千円の四倍にしようということで、二万円以下の罰金ということになっております。それから法定通算の額につきましても、現行の二百円を四倍にして八百円という、一律四倍の線でこの手当てをしたわけでございます。その結果、逮捕・勾留の制限でありますとか、あるいは出頭義務の免除を受けるものは特別法につきまして現行法よりもその範囲が広まるわけでございます。そういうことで、この被告人といいますか、犯人側にとりましてはよりゆるやかになると、現行法よりもゆるやかになるわけでございまして、ゆるやかになることが人権尊重に合致するということでございましたら、その面におきましては人権尊重は十分にはかられているということに相なるかと思います。
#20
○佐々木静子君 いまおっしゃるように、この罰金が重くなったばかりじゃなしに、また、そういうふうな刑事被告人あるいは被疑者の方々の人権というか、利益を守る面においてもこれは有利な面もあるんだということはわかった次第でございます。
 さらにこれ、もう一つ伺いたいんですが、条例との関係ですけ池ども、条例のうちで罰金四千円以下の罰則のものについて、この法律施行後一年たった場合ですね、一年たっても地方公共団体が条例を改正しなかった場合、すなわち条例の中に四千円以下の罰金刑があるのにこれを一年以内に改正しなかった場合、これはどういうふうな取り扱いになるわけでございますか。
#21
○政府委員(辻辰三郎君) 今回のこの法案は第二条におきまして、およそ罰金というものは四千円以上であるということで、もちろん減軽する場合には四千円以下と、まあ二千円にまでなるということがございます。これは国の法律の面におきまして、およそ罰金というものはこれは四千円以上であるということを宣言いたしておるわけでございますので、その関係で、条例の罰則で現に四千円に満たない罰金を定めております条例がございました場合には、これはこの附則の第二項におきまして一年間の猶予期間を設けまして、その間地方自治体がそれぞれのお立場でこの条例の罰則の御検討を願いたいという趣旨でございます。
 そこで、御検討の結果、なお地方自治体の立場におきまして四千円以下の罰金を定めるんだということで、あるいはそのままにしておかれたという場合には、四千円以下の罰金というものは国のこの法律の二条に抵触するということになりまして、その点だけはこれはその条例は本法施行後一年後は無効になるというふうに理解をいたしております。
#22
○佐々木静子君 それでは話が変わりますが、この罰金刑に関する換刑処分についてちょっと伺いたいのでございますけれども、まず裁判所に伺いたいんですが、罰金刑を言い渡される場合に、換刑処分について一日の換刑額というものをどのような基準でおきめになっておられるのが普通であるか、そして大体現在では一日幾らぐらいが平均基準になっているのか、そのあたりを御説明いただきたいと思います。
#23
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 罰金刑を言い渡す場合には換刑処分をあわせて言い渡さねばならないことになるわけでございますが、これについては法律上何らの制限がございません。したがいまして、各裁判所がいわゆる宣告すべき罰金額あるいは犯人の収入等を個々的に考慮いたしまして適当な換刑処分の額を定めるということになるわけでございます。別に基準というようなものはございませんが、従来非常に多く見られます換刑処分を見ておりますと、大体一日千円ぐらいのところで換刑処分が行なわれているのが多いように拝見しております。
#24
○佐々木静子君 それからまた換刑処分についてでございますが、今度は矯正局のほうに伺いたいのですが、この監獄法の施行規則の三十三条によって、これは労役場留置の言い渡しを受けた者は受刑者と同じ監房、あるいは同じ工場に雑居せしめることができないというふうにございますが、現実に換刑処分で労役場留置になっている者はどういうところに収容されて、現実にどういう作業に従事するのか、説明していただきたいと思います。
#25
○政府委員(羽山忠弘君) ただいまお尋ねの点でございますが、すでに前回平井総務課長からお答えいたしたと思いますが、換刑処分に処せられました人間は非常に少ないわけでございます。最近の統計におきましても約〇・四%、約四万九千人の受刑者のうちで百八十九人というような非常に少ないのでございまして、これが全国六十数ヵ所の刑事施設、場合によりまして刑務支所というようなところに入りまする者を加えますると百数十ヵ所にばらまかれる。したがいまして、一庁におきまして換刑処分で入ります者が多くても数名ということになっておりますので、これらの人々にただいま御指摘の原則がございますので、工場というようなところに出して作業をさせるということがきわめて困難でございまして、多くの場合は広い雑居房に数名この種の人々を入れまして、そこで簡単な手仕事と申しますか、たとえば安全ピンをつくるとか、紙細工とかいうようなものでございますが、その種類の仕事に従事させておるというのが現状でございます。
#26
○佐々木静子君 この監獄法の八条に、監置場は監獄に付設するとございます、監獄という、いまそういうことばは使っておらないわけでございますけれども。ところが、昭和五年の行政局長の通達によりますと、短期の労役場留置執行者に対しては刑事被告人とか被疑者のみを収容するところの刑務支所とか、あるいは拘置支所にも収容することができるというような規定が見られるわけでございますが、現実にそういうふうな処置を受けている人もいるわけでございますか、あるとすれば年間何人くらいあるわけでございますか。
#27
○政府委員(羽山忠弘君) 理論的にはあり得るわけでございますが、はたして現実に何人ぐらいおるか。その点につきましては統計をただいま持ち合わせておりませんので、いずれまた必要でございますれば後刻調べさしてお答えさせていただきたいと思います。
#28
○佐々木静子君 ぜひそれはわかりましたら、その資料も出していただきたいと思うわけでございます。
 それから、監獄法の規定によって一応一般の懲役に処せられていた者の処遇においてはそれが準用されるというふうな、特別の監獄法三十三条などの規定を除いては準用されるということがわかるわけでございますが、たとえば、監獄法の十九条ないし二十三条に規定されているような戒護の規定、あるいは罰則規定、あるいは接見及び信書についての規定も、そのまま労役場留置の人にも準用されるのでしょうか。
#29
○政府委員(羽山忠弘君) 準用されるのでございます。
#30
○佐々木静子君 これは準用されるといたしますと、たとえば罰金が払えなくて労役場に留置された人が、戒護の規定がそのまま準用されて、監獄法施行規則四十八条によって戒具を使用されるということが現実に起こり得ると思うわけでございます。これは別の委員会で矯正局長にお伺いしたのでございますが、刑務所内で戒具を用いているところの件数、防声具、これは年間三十九件でございますか、金属手錠などは相当数が多うございますね、七百何件。あるいは皮手錠などになると何千件という数になるわけでございますが、これは現実に換刑処分の人にもそのような戒具を使用していることがおありになるのか。あるとすれば、年間何人くらいの人がそういうふうな戒具が使用されているのか、それも御説明いただきたい。
#31
○政府委員(羽山忠弘君) 理論的には可能でございますが、換刑処分の者に戒具を使用したというような実例の報告に接したことはございません。
#32
○佐々木静子君 これは、そのような報告に接したことはないということを聞いて、非常に安心したのですが、理論的にこのようなことができるということは、やはりこの罰金刑というものに対するたてまえから見ると、たいへん穏当を欠くのではないかと思うわけです。
 で、私、いま刑法改正のことばかり伺いましたが、この間の委員会で、大臣から、監獄法の改正についても大体矯正局のほうでの案はまとまっているというふうに承ったのですけれども、そういうふうなところは今度の監獄法においてはどうなっているのか。特に改正刑法におきましても、労役場留置については、非常にいままでの刑法と違って、その表現が変わっておる。単に、刑法改正法の四一条の3項で、「滞納留置は、刑事施設に収容し、作業を行なわせる。」というような表現で、現行刑法よりもちょっと書き方が変わっているのではないかと思うのでございますが、これと、今度矯正局でまとめられた監獄法との関係。今度、御検討になっている草案がまとまったとおっしゃる監獄法の上ではどのようになっているのか、御答弁いただきたい。
#33
○政府委員(羽山忠弘君) 監獄法の改正につきましては、いま矯正局の案が、私が着任いたしましてから三回目の案がまとまりまして、先般、概況を上司に報告いたしまして、その場で若干の御指摘をいただきまして、さらに練り直すという部分もございますと同時に、一部につきましては、現場の意見を聞く必要もあるという部分がございますので、なお継続的な作業をいたしておる段階でございます。で、御指摘の、この刑法改正草案の四十一条にございます滞納留置というものがあることも、私どもは承知いたしておりまして、これにつきましても、作業をさせるというようなたてまえで事を考えていかなければいけないということで案をつくろうといたしております。
 そこで問題は、お尋ねの戒具の点でございますが、現行監獄法の十九条におきましても戒具ば、「在監者逃走、暴行若クハ自殺ノ虞アルトキ又ハ監外二在ルトキハ戒具ヲ使用スルコトヲ得」ということになっておるわけでございまして、まあ行刑施設は身柄の収容を確保するということが基本的な要請になっておるわけでございます。その収容確保の手段は、もとより極力人道的な配慮のもとになさるべきことは当然でございますが、しかし逃げられてしまっては話にならぬという基本的な要請があるわけでございまして、戒具は、たとえば手錠その他は逃走あるいは暴行というような事態が起きましたときに使用する。それからもう一つ監外――外と申しますか、施設外にありますときも同じような状態で、同じような考慮から、手錠その他の戒具を使うことが多いわけでございます。
 先般来問題になっておりまする鎮静衣とか、防声具とかいったような種類の戒具は、たとえば鎮静衣のごときは、これは精神錯乱状態というふうなことになりまして、尋常な方法におきましては取り押えることが非常にむずかしい、鎮静させることが非常にむずかしいというような事態になりまして、やむを得ず使用が認められておるというものでございますが、現在は、別の機会に申し上げたと思いますが、行刑施設におきましては逐次保護房というようなものが整備されてまいりまして、使用する回数が少なくなっておるわけでございます。
 罰金の場合、罰金刑になりまして換刑留置で入ります人々に戒具が使用されることが少ない理由は、おそらくこれは、それらの人々の中にそういう錯乱状態になるというような方々が少ないからではないか。それと、御承知だと思いますが、罰金刑になりまして労役場に一時留置いたしましても、かなりの数の人々があとで罰金を払いまして完納ということになりまして出てまいるわけでございまして、そういう関係もございまして、戒具の使用が少ないのではないかというふうに考える次第でございます。
#34
○佐々木静子君 これはやはり一般の自由刑によって刑務所にいる人を比べて事実上少ないというだけじゃなしに、制度上も、罰金刑の人に戒具を使用するという制度そのものが行き過ぎではないか。換刑処分の性格から見ても、わざわざ自由刑を避けて罰金に処した人にそういうことを行なうということは、私は行き過ぎではないかと思うわけです。特に懲罰についても、先ほど来の御説明では、おそらく同じように取り扱っておるということだと思うのでございますが、現実に換刑処分で懲罰に付されている人も年間あるわけですか。数字の問題だけじゃなしに、また同じように自由刑によって刑務所にいる者と換刑処分によっている者と同じような基準で懲罰に付しておられるのかどうか、そのあたりも伺いたいと思うわけです。
#35
○政府委員(羽山忠弘君) 戒具の使用とか、懲罰と申しますのは、主として事実上の制圧行為でございまして、ただいま申し上げましたような、たとえば精神錯乱状態というようなときに、事実上の鎮静をはかるために使用するわけでございます。したがいまして、御承知だ思いますが、精神病院というようなところには必ず戒具がございますし、刑務所以上にしっかりした保護房というようなものもあるわけでございまして、したがいまして、その事実上の状態が同じである場合には同じような措置をとらざるを得ないということでございまして、これは日本だけではなくて、アメリカ、その他の国におきましても同様なふうに私どもは承知いたしておるのでございます。ただ、もとより、執行すべき刑は軽いわけでございますから、その場合に、その地位に対してそれ相当の配慮はしなければならぬというふうには考えるわけでございますが、幸いいままでのところ、留置になりました者に対し非常にきびしい戒具を使用したとか、あるいは懲罰処分を行なったというような例はないように思うのでございます。
#36
○佐々木静子君 幸いそういう例はないようでございましたら、私の考え方といたしますと、ぜひ換刑処分の人に、この戒具とか懲罰についての規定まで準用するということは、これはどう見ても行き過ぎなように思うわけです、罰金刑の規定からいきましても。でございますので、これはぜひ今度の監獄法の改正の中ではこの問題を御検討いただいて、このようなことを起こさないように、ひとつ前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思います。
 それから監獄法の改正問題も、これもたいへん重要な問題で、刑法改正と大体同じ時期ぐらいに国会に出てくるように、先日法務大臣から伺っているんでございますが、そういうふうなことに関する資料も、ぜひとも法務委員会のほうにまとまり次第お寄せいただきたく要望するわけですが、いかがですか。
#37
○政府委員(羽山忠弘君) 御趣旨に沿ってできるだけのことをさしていただきたいと思いますが、実はいままでは矯正局内で議論をいたしておる段階でございまして、ほとんどそういう記録めいたもの、正確に記録したものがないわけでございます。これから法制審議会の段階になりましたら、そういう記録が出てまいるかと思うわけでございます。
#38
○佐々木静子君 それから話ば変わりますが、少年に対する科刑のことを伺いたいんです。これは裁判所から資料をいただきますと、少年の通常第一審事件中大体九七%が罰金刑の言い渡しを受けているようでございます。少年はこれは申すまでもなく、民法上の未成年者で、無能力者なわけでござますが、こうした少年に対しまして、罰金刑を科することの意義を裁判所に伺いたいわけです。
#39
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 少年に対しまして刑事政策的な考慮といたしまして、これの改過遷善をはかるという保護的な要素が中心になることは申すまでもないわけであります。したがいまして、大部分のものは、保護手続として処理されておるわけでございますが、個人の事情によりましては、保護処分に服することが相当でないと考えられて、検察官に送致され、検察官が起訴するというようなものも出てまいるわけでございます。しかしながら、少年に対しての刑事手続については、やはり先ほど申し上げましたような保護育成ということの精神が中心になるべきだというふうに考えますので、できるだけ長期の拘留的な処分である懲役、禁錮というようなものを避けて、できるだけ罰金刑にされる例が多いのではなかろうかと思います。
 ところで罰金刑の意義でございますが、これは私ども非常にむずかしい問題で、よくわかりかねるわけでございますが、一応現在の刑罰は教育刑ないし改善刑というようなものが中心になって考えられるべきだということが、一般の考え方のようでございます。罰金刑について、どういうふうにそれなら考えるのかということになりますと、やはり罰金刑は財産的な苦痛を与えることによって、本人に反省の機会を与えて、特別予防の目的を達する。あるいはある程度の財産的苦痛が与えられるということを一般的に知らしめることによって、あわせて一般予防の効果をあげようということになろうかと存じます。したがいまして、少年についても非常に軽いものについては、そういう罰金刑を与えることによりまして、改過遷善の機会を与えるということのほうが、長期間自由を剥奪すような懲役、禁錮ということに処するよりも適当な場合が多かろうと存じますが、その結果が自然と少年についての罰金刑の言い渡しが刑事手続において多くなるのじゃなかろうかというふうに考えておるのでございます。
#40
○佐々木静子君 これは同じ最高裁判所からいただいた資料によりますと、四十年より四十四年にわたって満十七歳未満の少年の罰金刑の言い渡しの数が四十年八・三%から四十四年では、五年の後には二・四%、それから十七歳から十八歳までの者の場合にも三四・八から一〇・七%と約三分の一に減っておるわけなんでございますが、それは十七、八歳の少年の犯罪が減ったからか、あるいは十八歳未満のものに罰金刑を科するのが適当でないという御配慮から減ったのか、そのあたりの御説明を伺います。
#41
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 実は非常に説明が足らないことになろうかと存じましたが、いま佐々木委員のお読み上げになりました表は、起訴時少年の通常第一審罰金刑言い渡し人員でございまして、これは公判請求を受けた者の中で、罰金刑の言い渡しを受けた者の表でございます。そのほかにいわゆる略式命令を申し立てられて、略式命令の裁判を受けておる者が相当あるわけでございまして、たとえば四十四年におきます少年の起訴人員は六万六千百三十五人ございましたが、そのうち略式命令あるいは即決裁判ということになりましたのが六万三千七百二十五人でございまして、ほとんどの数は略式命令を受けておるわけでございます。若干公判のほうに回ったものがございまして、その中で検察官の求刑は、公判請求でございますので、あるいは体刑等の求刑のあった者もあろうかと存じますが、その中で罰金刑を言い渡された人員が、先ほどお読み上げになられた数字になるわけでありまして、実態としては非常に少ない数でございますので、これがどういう傾向でこういうふうにあらわれているかということは、これだけの少ない数字では、ちょっと一般的に結論するのはちょっと早過ぎるのではなかろうかと存じますので、その点は留保させていただきたいと思います。
#42
○佐々木静子君 それから法務省のほうに伺いたいんですが、罰金の法定刑を上げた場合、検事の求刑あるいは略式命令を出される場合に、大体どのくらいに上がっていくとお考えになるか、またいままでの例から見て、あるいは法定刑を上げた場合に、現実にどのくらいの推移を経て、どういうふうになっていったか、例がありましたら例をあげてお述べいただきたいと思います。
#43
○政府委員(辻辰三郎君) 今回この法案が法律となりました場合を想定いたしましたときに、この罰金刑を求刑いたします額がどうなるかという点につきましては、この法律ができることを前提にいたしまして、検察庁においてもいろいろと研究をいたしておるようでございます。もちろんいわゆる頭打ち現象のはなはだしい犯罪につきましては、これは法律によって改定された適正な金額というものが罰金刑として求刑されると思うのでございます。ただ、私どもは司法のやはり連続性ということを、まず第一前提に考えております。この法律の施行の日の前日に犯した者と、施行日と一日違いでそこにたいへん違った金額の求刑ができるというようなことでは、これはきわめて理に反することでございます。検察庁におきましては、この法案ができました場合を想定いたしまして、十分検討はいたしておりますが、その場合にあくまでも司法の連続性ということにつきましては、慎重な配慮を払っているというふうに考えております。
 それから、どういう、あの刑が変わった場合に、現実に求刑や処理がどうなったかというような実例につきましては、これはなかなか適切な事例がないわけでございますけれども、さしあたって、この昭和四十三年に刑法の二百十一条の改正が行なわれまして、新たに法定刑として五年以下の懲役と、それから、三年以下の禁錮が五年以下というふうに変わったわけでございますが、このわずかな変わりによってどういうような処理が行なわれておるかということを見てまいりますと、やはりこの昭和四十三年、四十四年、四十五年、四十六年と、こういうふうに見てまいりますと、悪質な事犯については、この新しく継ぎ足していただいたものを適用いたしておると思うのでございますけれども、四十三年に懲役刑で言ってまいりますと、三年以上ということで新たにつけ加えられたこの範囲内の法定刑で処断されました者が六名でございますが、四十四年になりますと七名というような形になります。禁錮のほうも四十三年では三年以上という者は三名でございましたけれども、これは特段の変化がない、むしろ減っておるというような形になるわけでございまして、これはきわめて特殊な、法定刑の上限が一部上がったというような形でございますので、現象はこういう現象になっておりますが、顕著な何か傾向を見るということはできないようなわけでございます。
#44
○佐々木静子君 これと同じことについて、これ裁判所のほうで別に、最高裁が個々の裁判官に刑罰のことについてどうこう言われるわけじゃございませんから、全くこれは結果論からしかわからないと思うのでございますけれども、たとえばいま法務省の刑事局長のお述べになりました、刑法二百十一条の改正などの経過でかりにごらんになると、あるいはほかのケースでもけっこうでございます、刑罰が法定刑が上がった場合に、その結果、裁判所の統計などをごらんになって、言い渡し判決がどういうふうに、どの程度変化してくるものかわかりましたらお教えいただきたいと思います。
#45
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 量刑につきましては、各裁判官が犯罪行為の内容、あるいは犯人の性格、境遇等を勘案いたしまして、個別的な適正な量刑を盛るということになるわけでございます。しかしながら、その場合に、やはり公平の原則から、そういうような事情がひとしいようなものについてはできるだけひとしい量刑がなされるということが、やはり必要ではなかろうかと存じます。そういう意味で、先ほど法務省のほうからもお答えがございましたように、刑罰が、法定刑が非常に引き上げられたからといって、急に上げるということは、やはり公平の原則にもとるということになろうかと存じます。したがいまして、法定刑が引き上げられたことに伴い、刑罰のあるいは引き上げというようなことは、直ちに出てくるものではなくて、自然の経過に従って、ある程度の長期間を要した結果、大体おさまるところにおさまっていくというのが裁判の実情ではなかろうかと存じます。その点はっきり統計的に申し上げられる材料がございませんが、先ほども法務省から御説明がございました二百十一条の場合を見てみましても、先ほど法務省のほうから述べられましたように、特に引き上げられたことに伴って、科刑状況が上昇したというような状況は見られないようでございます。
 こまかい数字を申し上げまして非常に恐縮でございますけれども、たとえば昭和四十三年が法定刑の改正が行なわれた年でございますので、一応四十二年と四十四年とを比較いたしてみましても、四十二年の自由刑と罰金刑の比率を見てまいりますと、自由刑が二・七%で罰金刑が九七・三%でございましたのが、昭和四十四年度にはそれが自由刑二・四%で罰金刑が九七・六%という数字でございます。ほとんど差がないわけでございます。こういうふうに法定刑が引き上げられたことに従って急激に変化するということは、裁判運営の実情から申しますと考えられないように思うわけでございます。
#46
○佐々木静子君 ちょっとしろうと考えでは、この自由刑と罰金刑とが併科されている場合に、罰金刑の上限が低いと、これは罰金にしてもいいのだけれどもと言いながら、あまりにも低過ぎるから自由刑に回す、自由刑を選択するということがあり、罰金刑の上限が高くなると、これはこのくらいなら罰金刑でもいいだろうということで、ちょっとしろうと考えでは、この罰金刑の上限を上げると、自由刑に処せられる人の数が少なくなることも起こり得るのではないかというような感じがするのですけれども、そこら辺の見通し、いまちょっと若干伺ったわけですけれども、今後の罰金刑が四倍に上がることによって、これ、全く見通しの問題でございますけれども、このままだと短期自由刑に処せられたであろう人が幾ぶんなりとも罰金刑に回る可能性というようなものは、それは裁判所としてはどういうふうにお考えでございますか。
#47
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 将来の見通しでございますし、個々の裁判官がどのように考えられるかということによっても違ってまいろうかと存じますので、的確なことを申し上げるということはできないかと存じますが、先ほども申し上げましたように、法律が改正されることによりまして、直ちにいま佐々木委員御指摘のような事態が起こってくるとは考えにくいかと存じます。しかしながら明治以来のいわゆる刑罰運営の実情を見てまいりますと、長期的に見てまいりますと、刑の換刑化ということは、これは争えない問題ではなかろうかと存じます。そういたしますと、そういうことにのっとって、長い目で見ると、いま佐々木委員御指摘のように、従来であれば短期自由刑に処せられた者が罰金刑に処せられるということがふえてくるのではなかろうかと存じます。その際に、罰金額があまりにも少ないということになりますと、自由刑を罰金刑にしたいと思っても、なかなか踏み切れないというような場合に、罰金刑のほうにある程度適正な幅を持たせた法定刑が定められております場合にはその障害がなくなるわけでございますので、そういう運用がやりいいということにはなろうかと、そういう程度のことしか現在のところ予測いたしかねるわけで、非常に恐縮でございますが、御了承いただきたいと思います。
#48
○佐々木静子君 よくわかりました。刑の換刑化というような動向から考えると、この自由刑と罰金刑の対比においては、罰金刑の上限が上がる場合のほうが自由刑との関係においては刑の換刑化が一致するというふうにお考えのようで、私もそのように理解をさしていただいたわけでございます。
 それからこれは、あと少しだけなんでございますが、この前の衆議院の、これは村山政務次官の御答弁だったと思うのでございますが、これは罰金が高くなれば高くなるほど犯罪は減るだろうというような趣旨の御答弁がちょっと出てきておるのでございますが、これは私何か非常におかしい――おかしいと申しますか、適当でないおことばだと思うのでございます。と申しますのは、これはもう一般的にも言われておりますように、この罰金の額が上がったからといって、先日の法務省の刑事局長の御見解でも、一応一般予防、特別予防とも効果があるという御趣旨の御答弁だったわけでございますが、実際のところは、何かもう一つそこのところがはっきり私のほうは納得できないわけでございまして、特にこれは私が数十名の法律実務家にちょっと尋ねてみたのでございますが、まずそれは期待できないのではないかという答えが大体――これは内訳を言いますと、ほとんどが刑事事件を担当する弁護士で、一部が裁判官でございますが、まずこれは罰金刑の法定刑を上げても一般予防、特別予防の効果はちょっとないのではないかというふうな意見が実務家の中では非常に強いわけなんでございます。そういうことでほんとうに法定刑を上げると特別予防あるいはそれに伴う一般予防の効果もあるというのであれば、何かそこを納得いくだけの、こういうことがあるからこうこうなのだというふうな、非常に無理な話かもしれませんけれども、それに対するかなり強い反対説が実務家の中にあることは事実でございますので、実はこうこうなのだというような資料がもしありましたら、そのことについて法務省のほうから御説明いただきたい。
#49
○政府委員(辻辰三郎君) 刑罰と犯罪の発生との関係、特に罰金刑と犯罪の発生といいますか、犯罪の防遏との関係でございます。これは、結局は、罰金刑の一般予防の機能いかんという問題に帰着する問題であろうと思うのでございます。そこで、私どもは、この提案理由の中にもございますような、現下の罰金というものは経済事情の伸展に伴って非常に財産的な苦痛というものが少なくなってきておるという意味で、罰金刑そのものの本質からくる機能の低下というものがまず非常に顕著なわけでございます。その意味におきまして、これを放置しておきますと、刑罰の機能というものが低下し、あるいは非常に微弱なものになってしまうということがマイナスの面からはこれは十分いえると思うのでございます。この刑罰としての感銘力というものは非常に小さくなってしまう、その意味におきましてぜひともやはりそのときに応じた適正な罰金額というものが定められなければならないだろうという意味におきまして、消極的意味におきましてこれは適正な刑罰が科せられなければならないと思うのでございます。適正な刑罰が科せられました場合に、それでは犯罪の抑止力があるかということは、刑罰それぞれの機能の本質論に入るわけでございます。のみならず、今度はまた広く考えますと、犯罪の発生原因そのものがいろいろな複雑な社会的要因とかあるいは本人の要因とか、いろいろなものがからんでおるわけでございますから、一刑罰機能をもって直ちにその具体的な効果というものは出てこないと思うのでございます。そういう意味におきまして、具体的にこの今回の法律ができ上がった場合に罰金刑に処せられる犯罪が減るということは、なかなかこれは論断できないと思いますが、逆の面の消極的な面のほうは御理解を賜われるのじゃなかろうかと、かように考えております。
#50
○佐々木静子君 これは先日この罰金の対象になるのは業務上過失などが非常に多いというお話がございましたが、私が感じますところでは、業務上過失事件において最も抑止力になっているのは、これはまずいまの刑法二百十一条では、これは、事実、そういう事柄を起こした人間が一番心配するのは、自由刑に処せられる、体刑に処せられるのではないか、その次が、罰金が幾らになるだろうかという心配ではなくて、第二次的に心配になるのは、一体損害賠償は幾ら払わなければならないか、この二つが最も大きなウェートを占めているのだと思うんです。そういう意味において、この過失犯における罰金刑を高くしたことにおける犯罪の抑止力ということに、私はいささか疑問を感じているわけなんでございますが、この二百十一条を改正したことによって、交通事故の業務上過失事件の統計をちょっと見せていただいたのですが、やはり犯罪数は上昇してはいるけれども、改正する前と比べると、その上昇率は、日本における自動車の台数の上昇率と比べると少ないカーブになっている、そういうような説明もちょっとされておったわけでありますが、そのことについてはどういうふうにお考えになりますか。
#51
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の事例でございますが、これは昭和四十三年に刑法二百十一条が改正をされました。これを契機といたしまして昭和四十三年から四十六年までの期間について車の台数の伸びほど、業務上過失致死傷事件の検察庁受理人員がふえていないということは御指摘のとおりでございます。たとえばこれは数字の関係で、四十三年の基準はあれしてありませんけれども、昭和四十年の車両の台数を一〇〇といたしました場合に、四十六年は二六四でございます。ところが、四十年の業務上過失致死傷事件の受理件数を一〇〇として四十六年の受理件数を見てまいりますと二二八ということで、二六四対二二八、こういうことで、これはただいま御指摘のとおり、傾向としては業務上過失致死傷事件は自動車の増加台数を下回っておるということは言えるわけでございますが、これがはたしてこの刑法二百十一条の改正によるものかどうか、これは即断できないものだと思います。交通事情でございますとか、道路の事情でございますとかいろいろの要素でかなり変わっていると思いますので、形の上では減っておりますが、これをもって直ちに刑罰の機能ということは、なかなかむずかしいことではなかろうかと考えております。
#52
○佐々木静子君 実は私がいま伺いました数十名の方のうち、故意犯について犯罪の抑止力は法定形が高くなることによって犯罪が抑止できるかということは、これもほとんど期待できないではないか、これは四十数名のうちの非常に手近かな人の中からとったアンケートですから、これが平均的なアンケートとは言えないかもしれませんが、そうして、何が犯罪抑止力になるかというと、四十何人かの方のうち圧倒的に多いのは犯罪の検挙が適正に行なわれるということが犯罪の抑止力になる。故意犯については、たいていの人は自分はつかまらないだろう、自分はわからないだろうということでたいていのものがやっているんです。この法定刑が幾らかということはあまり念頭にないんです。そういう意味において、警察権が適正に行なわれるということが、これが一番の犯罪の抑止の力になるのではないか、という圧倒的意見が強く出ておったということを申し上げておきます。私は、この点について、最後に大臣に本件についての御見解を伺って質問を終わります。
#53
○国務大臣(前尾繁三郎君) 罰金の額を上げたら犯罪が減るという状態ならこれはおやすいことで、どんどん上げていったらいいわけです。また、これは自由刑についても私は言えると思うんです。しかし、軽いよりは重いほうが注意をするというようなことは効果はあるかもわかりません。私は一般の人が考えて、刑罰が科せられる、自由刑、体刑までいくのは気の毒だ、さりとて何もそれで刑罰も科せられなかったのだということでは一般の人がおさまらない、やはり経済的な苦痛も与えなければならないということで、やはりある程度公平感といいますか、正義感を満足させるということが私は大きな効果ではないか、こういうふうに考えておるのでありまして、常に刑というものは私は適正であるということがまず第一に要求されることであると、かように考えておるのであります。したがって、やはりあまりにもこう事実、経済状態に合わない刑を科するというのは、何だかこうばかにしておるような感じさえするものでありまするから、できるだけやっぱりそのときの実情に合っていくということが、法律のむしろ尊厳といいますか、そういうものを保つゆえんだと、かように考えておるわけであります。
#54
○政府委員(羽山忠弘君) 先ほど御必要があればあとで調べてお答え申し上げると申し上げました支所に収容されました労役場留置者の数が判明いたしましたので、お答え申し上げます。
 昭和四十五年度の統計でございますが、全国で行刑施設に入りました労役場留置者の一日平均収容人員は、先ほど申し上げましたように百八十九人でございます。そのうち支所に収容されました者の一日平均収容人員は九人でございます。
#55
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時五十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時十分開会
#56
○委員長(阿部憲一君) これより法務委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#57
○鶴園哲夫君 御承知のようにこの措置法が二十三年の末に成立しますときに、政府側の答弁としましても、また当時の記録を見ますと、参議院の法務委員長の本会議における報告なんかを見ますというと、これは政府の答弁は、何ぶん早々の間で準備が行き届かなかった、だからすみやかに検討して、完全なものにして、近い機会に改正案を提示したい、こういうことになっておりますし、それから委員長の報告を見ますというと、これは、すみやかに完全なものにして次期国会に提出するように強い付帯意見が出た、――次の国会に提出するように強い付帯意見が出た。そして、「政府はこれに同意する旨の答弁」を行なった、こうなっているわけですね。これは、だれしもこの法案を見ます場合に伺いたくなる点だと思います、また伺っておく必要があるというふうに思っております。
 で、大臣に伺いたいんですけれども、今回、この法案を出して二十三年になるわけですが、二十三年たって今日この法案を出すについての大臣の考え方を伺いたい。
 それからもう一つ。完備したものにして、完全なものにしてということになっておるのですが、この完全なものにしてという二十三年前のお約束、今回出されるについての完全なものにするということについての大臣の考え方。
 この二つを伺いたいと思います。
#58
○国務大臣(前尾繁三郎君) 二十三年当時の事情については、私、直接は知らないわけでありますが、聞きますところによると、この後、刑事訴訟法その他の法律の改正で非常に忙しかったのでここまで手が回らなかったであろうと、こういうことであります。さらに、特別法につきましては、その当時でありますと、いろいろと刑法に準じていろんな罰金刑が科せられたと思うのでありますが、それから御承知のように、三十年ころから新しい刑法の改正という問題が日程にのぼっていったわけでありまして、法務省内でいろいろと新しい刑法というので、それがやっと、ようやく三十八年に案を得て、そうして法制審議会に提出され、それが特別委員会で審議されまして、昨年ようやく成案ができ、現在、総会で討議をされている、こういうわけであります。
 今回におきましても、あるいは特別法まですべて整備するという考え方をとれないものであるかどうかという点は検討したわけでありますが、要するに問題は、率直に言いまして、新刑法が制定されて、それに準じて特別法の罰金刑についてもいろいろ整備していくということでありませんと、いま直ちに草案に準じていろいろ考えるというわけにはまいりません。それと、この特別法につきましては、事態の推移に応じて、時点が違うもんでありますから、罰金の額が非常にまちまちになってきたわけであります。やっぱりそのときそのときの情勢に応じて、罰金の額が上げられてきておる。これをいま一律に四倍ということにいたしますと、かえって非常に不公平なものに逆になるんではないか。でありまするから、この際は大体四倍の思想は、下限とか、そういう点については貫いてはおりますが、個々にわたってその不均衡を是正するというところまではまいりませんで、新しい刑法がきめられた時点において、その後にこれの、何百といってあるわけでありますから、その均衡をずっとはかっていくよりいまのところ方法がない、こういう結論に達したわけでありまして、そういう意味からいたしますと、結局またこの罰金等臨時措置法の改正というたてまえで、一律に四倍、従来よりも四倍上げる、こういうことでいかざるを得なかった、こういう事情にあるわけであります。
#59
○鶴園哲夫君 それじゃ二十三年前にすみやかにということになっているし、それから委員長の報告によりますというと次の国会ということになり、そに対して政府側が同意する旨の発言を行なったと、こう書いてある。それが二十三年たった。その若干の問題についていまお話がありましたけれども、どうも何といいましても、常識的な立場からいって理解がつきにくい。なお非常に罰金の不均衡について問題がたくさんあった。しかし間に合わないからということで一律に五十倍を掛ける。しかしこれはすみやかに完備したものにしてこれを出す。それを二十三年たって今回もまたその倍率を掛ける。不均衡はそのままというような感じを受けるわけなんですね。ですから、私は大臣に伺いたいのは、そういうようなことについて、法務省の内部というものはそう奇異な感じはいだいていないのかどうか、これはあたりまえだというふうなお考えなのかどうかということを伺いたいんです。
#60
○国務大臣(前尾繁三郎君) そのお約束をした時点において私はそういう処理ができたんではなかろうか。その年じゃなくとも、一応の刑事訴訟法その他の作業が済んだあとにおいてそういうことがあるいはできたのかもわかりませんが、ただいま申しましたように、もう昭和三十年ごろから、今度新しい刑法をつくろうと、こういう考え方をとってきたものでありますから、その刑法を標準において是正をはかろうという考えできたんじゃなかろうかと思います。
 ただ、その刑法改正がなかなか容易に進行せずに、ただいまやっと総会で草案をきめるというような段階にきておるわけであります。その間あまりにも時間的に経過があったものでありますから、その間の罰金の制定というのに時点が変わりますために、一定の標準でつくったのではなしに、これをある時点で切って考えますと、非常に不均衡なものになっておる。これを一率四倍という考え方ではかえって不均衡なものになるというような点で、今回はもう刑法草案につきましては、ただいま法制審議会の総会にかかっておる、こういう段階でありますから、もちろん来年通るという保障はありませんけれども、いずれにしても近いうちに行なわれるわけでありますから、それに従って均衡をとって考えていくということでありまして、一律にこれをすべて洗いざらいにするというわけにはいかなかった事情があるわけであります。
#61
○鶴園哲夫君 どうも私には何といいますか、私の気持ちに合うような答弁をいただいてないのですが、私だって奇妙な感じがするのですがね。罰金の問題について、二十三年あったのですが、その間に本格的に検討されたことはあるのかどうか。それから、罰金そのものについて、それをその後検討するという、そういうこともあるのかないのかなという感じがするのですけれども、やられたかどうか、その点をひとつ局長に伺いたいと思います。
#62
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金等臨時措置法の御審議に際しまして、直ちに本格的な改正作業を行なうというようなことでございまして、その点まことに今回、二十三年後にこういうことになりましたことについては、事務当局の立場としても遺憾に考えておる次第でございます。その間どういう作業をしておったかという問題でございますが、それは先ほど大臣が御答弁になりましたとおりの事情でございまして、それを詳しく具体的に申し上げますと、結局この二十三年当時刑事訴訟法が一応でき上がっておったわけでございますが、施行前でございまして、刑事訴訟法の施行ということが、たいへん司法実務にとっては大きな問題でございます。この刑事訴訟法の施行準備の作業、それも当時は占領中でございます関係で、いろいろ占領下の新しく法規をつくるとか、そういう小さいものでございますが、そういうものもあったわけでございます。そういうことで、私想像いたしますのに、たいへん忙しかったことと思います。
 しかしながら、罰金のほうの実務につきましては、臨時措置法におきまして、刑法犯等につきましては、ともかく法定刑を五十倍にしていただいておったわけでございますが、相当の法定刑のゆとりがあったということになります。五十倍の範囲におきまして、司法実務におきまして、弊害のない裁判が行なわれてきた、こういうことが一面あったものと思うのでございまして、そういう関係で、ついやはり日常のせっぱ詰まった必要性というものを感じなかったのではなかろうか、かような状態で検討しなければならぬということになっておらなかったわけでございますけれども、それは何といいましても、まず刑法の刑というものが軸にならなければならないということでございます。
 そういうことで、昭和三十一年にともかく現行刑法の改正作業というものが、やはり罰金の制度におきましても、基本的にまず検討されなければならないということに相なったわけでございます。そこで刑法の改正作業が三十一年から省内に行なわれてきた。その刑法の改正作業の実情は、先ほど大臣の御答弁のとおりでございます。そういう関係で、罰金の全面的整備というものがやはりおくれてしまった。片や、今回は経済事情がたいへん変動してまいりまして、一部の刑法犯等につきましては、昭和四十三年ごろから裁判実務が定法刑の上限に集中するというような犯罪が出てまいりました。そういたしますと、この法定刑の頭打ち現象は、これはもうとうてい忍びがたい状態になってまいりまして、この点はどうしても改めていただかなければならぬというような事情に相なったわけでございます。片や、やはり経済事情の進展に伴いまして、罰金額自体が非常に低いものになってまいりまして、罰金刑の効果自体がやはり低下してまいった、こういう事情になったわけでございまして、そういう現下の事情のもとにおきまして、片や刑法の全面作業のほうは、一応順調に進んでおりますので、刑法の全面改正の暁まで、ともかく罰金等臨時措置法を御改正願いまして、その結果罰金刑の適当な実現を期してまいりたい、そうして罰金刑全体の整備につきましては、やはり新しい刑法ができましたときに、その刑法というものを軸にして検討していかなければならない、かように考えておるわけでございます。
#63
○鶴園哲夫君 どうもそういうふうな説明をいただいても、そうかなという感じになれないんですけれども、前回は間に合わないということで五十倍になって、今度はとにかくその四倍だ、今度新しい刑法ができるんだから、それに合わせてやるんだというお話なんですけれども、どうも私はちょっといまおっしゃったようなことで、すんなりとそうかなというふうに受けとれない面が強いんですね。なぜそういうことになるんだろうかという感じなんですけれども、ですから、そこのところ、政治家として前尾法務大臣が入っておられるんだから、何か説明ができるんじゃないかなという期待があったんですけれども、どうもぴんとこない、私はそう考えるんです。
 それは別にいたしまして、そこで罰金の非常に重要な内容をなしております下限を四千円にしたことですね。四千円にしたことについて、三十六年の準備案では五千円以上、こういうことになっておりますね。それから昨年の十一月の案では一万円以上となっておりますね。それから法制審議会がことしの二月出したやつでは四千円以上、こうなっておりますね。この最低についてこういうふうにたいへん食い違いがあるということですね。これ正当な説明というものがあるんでしょうか。それともそういうものはないのか。たとえて言いますと、十年前の準備案では五千円以上となっておりますね、去年のやつでは一万円以上となって、ことしになって四千円と、こうなるわけですね。どうも正当な説明というものはあるのかなという感じがするんですけれども、それを説明してください。
#64
○政府委員(辻辰三郎君) 改正刑法準備草案におきましては、罰金は五千円以上、それから今回の改正刑法草案におきましては罰金は一万円以上、かように、御指摘のとおりなっております。この二つにつきましては、これは刑法というものを全部洗い直しまして、全く刑事法的な立場で――その時点における刑事法的な考え方、純粋な刑事法的な考え方に基づきまして、財産刑のうち罰金と科料とを区別いたしますにつきまして、罰金というような名前の刑罰は、これは五千円以上あるいは一万円以上でなければならない、それ以下は財産刑は科料刑でいこう、こういう純粋な、むしろ刑事法的な考え方が強く出ておるわけでございます。
 ところで、今回の改正案におきましては、御指摘のとおり罰金は四千円以上となっておりますが、これは現行刑法というものを前提にいたしております。現行刑法の刑事法的な考えと申しますか、現行刑法の考え方を前提にいたしまして、それを現行刑法が二十三年の経済事情によって法定刑は五十倍以上にしていただいておると、同じ現行刑法の考え方で、経済事情ということでこれを伸ばしてまいりますと、この時点におきましては、これは罰金の寡額というものは四千円であるのが至当であると、かような考え方に基づいておるのでございます。
#65
○鶴園哲夫君 いや、前提が違うから金額が違うという話じゃどうも説明にならぬように思うんですがね、そういうことで説明になるのかしら。それじゃそれについてはやめにしましよう。次にいきましよう。
 次に、措置法の第六条ですね。刑法の第二十五条、「三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金」、これが今度この罰金が二十万円になるわけですね。これは二十三年の改正のときに十倍上げた、で今回は四倍上げたということになるわけですが、五十倍上げるのに、十倍しか二十三年に上げなかった。それで今回四倍と、こういうことになっておるんですけれども、この点について考える必要があったのではないかという点が一点です。それからもう一つは、この罰金刑に執行猶予がある、その執行猶予についてどの程度の件数があるのか、罰金についての執行猶予ですね、その二つについてお尋ねいたします。
#66
○政府委員(辻辰三郎君) 罰金の執行猶予の場合の罰金の限度額の問題でございますが、今回の改正案におきましては、現行法が五万円以下とございますのを、その四倍の二十万円以下にしていただくということに相なっております。これは刑法等の法定刑が、この上限が四倍に上がるということと見合いまして、執行猶予を言い渡し得る罰金最高限を二十万円ということに、四倍にしたわけでございます。ところで、それでは現行法の罰金等臨時措置法のときには、これは五千円を五万円というふうに単に十倍にしておるにすぎないではないかという御指摘でございますが、これは刑法に罰金の執行猶予というものができるようになりましたのが、昭和二十二年の刑法の一部改正で初めて罰金にもこの執行猶予が科せられるというような改正ができたわけでございます。そのとき、昭和二十二年ではこれは五千円以下の罰金と、こう初めてそこで五千円以下の罰金については執行猶予ができるという改正ができたわけでございます。その一年後の罰金等臨時措置法の立案、制定でございますので、その時点におきまして、一年前の五千円というのを刑法の一般のこの法定刑の科刑との関係で考えまして、この際はこれを五万円にしておこうということに相なったものと考えられるわけでございます。
 それから、それでは罰金の執行猶予というものがどれくらい付せられておるかという実情でございますが、この関係で一番新しい統計は昭和四十四年でちょっと古くて恐縮なんでございますけれども、四十四年におきましては総件数の〇・〇一%という形で非常に少ないわけでございます。
 これを具体的に、もう少しこまかく申し上げますと、この略式命令あるいは交通関係の即決事件、この関係で処断されますものは、これは大部分が交通関係の事犯でございます。道路交通法あるいは業務上過失傷害というような事件でございますがこの略式及び即決手続で科せられます罰金刑の場合には、これは昭和四十四年でまいりますと〇・〇〇二%という非常に少ない数になっております。これに反しまして通常第一審といいますか、本来の公判手続が行なわれますものにつきましては四・三%というような数字になるわけでございまして、それをなべてまいりますと〇・〇一%の執行猶予率である、これが四十四年の現状でございます。
#67
○鶴園哲夫君 それならば罰金はどんな額でありましょうとも、懲役あるいは禁錮よりもこれは軽いことは間違いない。その軽い罰金が執行猶予ははなはだしく小さい、非常に小さい〇・〇一%という率ですね。これはいま局長からお話がありましたように、二十二年に罰金についての執行猶予ができるようになったと言われても、あるいはなじまない点があるのかもしれません。しかしあまりにもその〇・〇一%というのは、これはあってなきがごとき形だと思うのですけれどもね。ですから傾向としてはどうなんですか。この罰金の執行について傾向としてはどういうふうに動いているのか。
#68
○政府委員(辻辰三郎君) 刑法犯だけに限りまして罰金の執行猶予がどれぐらいになっておるかということでございます。これは裁判所統計によります通常第一審の公判手続で行なわれた事件について申し上げますが、これは言い渡しがあったものということで、必ずしも確定ではございません。これをずっと見てまいりますと、昭和四十四年は通常第一審公判手続によった刑法犯の罰金の執行猶予率は〇・一六%でございます。そうしてこの略式のほうは、これは〇・〇〇六%、これはやはり交通関係の業務上過失ということに相なるわけでございます。これを年代的に申し上げますと、刑法犯のこの公判手続によりますもの、これだけに限って申し上げますと、昭和二十五年が一〇・八二%、二十六年が二一丁五七%、二十八年が一六・八%、この一六・八%というのがこの二十五年から昭和四十四年までに至ります間の最も高い執行猶予率でございます。その後昭和三十年代になりますとこのもう一〇%を割り始めてきておるということで、漸次この率がおおむね減ってまいっております。これはやはり経済事情との関係で罰金にまで執行猶予をやる必要はないじゃないかというような考え方もやはり反映されておるのではなかろうかと推察いたしております。
#69
○鶴園哲夫君 まあ罰金刑についての執行猶予がある、しかしその運用が先ほどございましたようにたいへん少ない。その圧倒的部分はやはり交通事犯だというようなお話なんですが、しかし交通事犯にいたしましてもこれは罰金に変わりはないわけです。同じ罰金なんですが、したがって、交通事犯であろうと何であろうと、やはり執行猶予という――罰金についても執行猶予というものがやはり活用されるようなことを私は期待したいですね。あまりにも少ない、非常に小さいことになっているが、これは活用すべきじゃないかという考え方を持っているのですけれども、しかしこれは裁判所の話でもあるわけですね。そういう考え方を持っております。
 次に、新しい刑法の話がたびたび出たのですけれども、これはいつできるのか。まあ常識的に言うと、数年というのが常識のようにも思われるのですが、まあしかし来年という話もございましたけれども……。で、新しい刑法ができました場合に、この臨時措置法の中から刑法の分はなくなるということになるわけですか。そうしますと、どうなのか、なくなってしまうのか、そしてあと六百幾つありますところの罰条を持った法律の罰条関係は臨時措置法として残るのか、あるいは六百幾つの刑法以外のものを全部総洗いして改正されるのかどうか、そこら辺のことについて伺いたいと思います。
#70
○政府委員(辻辰三郎君) 技術的なことでございますのでお答え申し上げます。
 この刑法の全面改正作業でございますが、改正刑法草案、この関係で、この刑法に定められました罰金刑、新しい案で定められております罰金刑は、これが法律になりましたならば、当然それは刑法のほうに入っていくわけでございまして、その部分は罰金等臨時措置法からはずれていくということに相なるわけでございます。
 で、刑法以外のものについてはどうかという点でございますが、刑法典が新しくできましても、これはその刑法に関係のない特別法につきましては、これはまず形の上では臨時措置法が生きておるわけでございまして、臨時措置法がかぶってまいる。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、刑法典が新しくできましたら、それを基準にして各特別法を一々当たっていきまして、その罰金刑の整理をしなければならない。その整理をするまでの間はやはり臨時措置法というものの力によらなければならないと思います。
#71
○鶴園哲夫君 刑法ができるまでの間に相当の年限がかかるように思いますし、まあ常識で言えば数年――先ほどから言っておりますように、昭和二十三年以来の問題が論議になったわけですから、まあ数年というと、そうかなと、これはだれしもそう思うのじゃないかと思いますね。できた場合にこの臨時措置法の中から刑法に規定するものは抜ける、しかしその新しい刑法ができたら、それを一つ根拠にしてというか、あとの六百幾つの特別法の罰条は全部総洗いするのだ、総洗いできるまではこれは臨時措置法というものは残っていくのだと。そうしますと、今度は臨時措置法というのは相当長年の間、これから二十年ぐらい残るのじゃないでしょうか、どういうふうに見通しておられるのですか。
#72
○政府委員(辻辰三郎君) まず、このいわゆる罰金、科料がつけられております六百幾つにのぼります特別法でございますが、これは御承知のとおり、この一部改正でありますとかあるいは全面改正でありますとか、そういう作業がこれはしょっちゅう行なわれておるわけでございますから、そういうまず改正点をつかまえまして適正なものに直していくということは当然考えられるわけでございます。こういうことは現時点におきましても、非常に戦前の古い法律が改まります場合には、現価に見合った罰金額をもちろんつけていただいておるという関係になっております。そういう時点時点の各特別法の改正に際しまして検討されることはもちろんでございますが、そうでないものにつきましては、やはり新しい刑法ができました場合には、それを基準にして手当てを一々洗っていかなければならないということに相なろうかと思います。なお、そのほかに技術的な方法といたしましては、新しい刑法の施行法というものにおきまして手当てをすることも考えられるわけでございます。
#73
○鶴園哲夫君 それでどのくらいで終わるというふうなお感じを持っていらっしゃいますか。全部終わるまではどのくらいかかるか。
#74
○政府委員(辻辰三郎君) 新しい刑法ができましたという場合に、大体刑法の罪に似ておる、皆特別法の罰則を定めます場合には、これは刑法に定めておることが犯罪の原型でございますから、その関連におきまして一々特別法の罰則というものが定められているわけでございます。そういうことになりますと、これは全く事務的な作業の問題でございますけれども、特別法にあります罰則のうちで、たとえばある検査を拒否したものは幾ら幾らの罰金に処する、そういう規定は各特別法にたくさんございます。こういう特別法の罰金がつけられております犯罪につきまして幾つかの類型というものがおのずから出てくるわけでございますので、そういう点をまずとらえまして、それと新しい刑法の考え方というものを照合しながら作業を進めていくということに相なろうかと思います。そういうことにおきましてそれは非常に困難な問題がたくさんあろうと思いますけれども、技術的にはある程度の整理はつけていける問題であろうと考えております。
#75
○鶴園哲夫君 いや、それで二十三年以来の問題だから、ここでどのくらいかかるというふうに見ておられるか、それを答えてほしいのです。
#76
○政府委員(辻辰三郎君) これは私が答えることが適当かどうか存じませんが、とにかく特別法はそれぞれ行政事務に照らしてまいりますと各省所管の法律に相成るわけでございます。そのほかに御承知のとおり議員提案の法律ももちろんあるわけでございますが、だからこういう問題を全部罰則のある法令というものを整備するという場合には、政府の事務の立場においてもどういうような機構、段どりでやっていくかということはたいへんむずかしい問題であろうと思うのでございます。そういう問題があることだけを事務当局の立場でお答え申し上げまして、いつそれができるかということになりますと、とうてい、ちょっといまの段階で明言できない次第でございます。
#77
○鶴園哲夫君 いや、私は、新しい刑法ができて、そしていまのこの臨時措置法の中から刑法の分は抜けて、あとは現在の改正された措置法が適用されるのだ。しかもそれも刑法に準じて六百六十くらいの特別措置法というものを逐次整備して、そして罰金関係を直すのだというわけでしょう。そうしますと相当かかるのじゃないかという気がするものですから、これは十年や十五年の話じゃないのじゃないかという感じがするものですから、そうすると、この措置法というものはこれまた十年や十五年の間は生きるのじゃないか。そうすると、どうも早々の間に準備を整えないでぽうんとここへ出しましたという、二十三年前のことをまた言っているのじゃないか。こういう気がするものですから伺っているわけです。
#78
○国務大臣(前尾繁三郎君) これは各省がどれだけ痛痒を感ずるかとか、そういうような問題があるわけでありまして、いずれにしましても刑法の草案が通ればそれに準じてただいま刑事局長が申しましたように、類型であるこういう犯罪については、大体このくらいの考え方を標準にしていく考えであるということは各省に通知して、そうして各省が最近その法律の改正の機会があれば別でありますし、ある場合には率先して一括提案というわけではないでしょうが、そういうようなことも考えていけば、そう長いことかかることはなかろう、それで改正せずに間に合うような法律は、おそらくこの臨時措置法がなくなっても困らないような法案であればそれはほうって置かれるでありましょうが、これをやめるぞといえば、そこでみんな各省が直していく、こういうふうに考えます。
    ―――――――――――――
#79
○委員長(阿部憲一君) この際委員の異動について報告いたします。
 本日、吉武恵市君が委員を辞任され、その補欠として鈴木省吾君が選任されました。
    ―――――――――――――
#80
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#81
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#82
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#83
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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