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1971/06/12 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第23号
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1971/06/12 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第23号

#1
第068回国会 法務委員会 第23号
昭和四十七年六月十二日(月曜日)
   午前十時二十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月九日
    辞任         補欠選任
     鈴木 省吾君     吉武 恵市君
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     平井 太郎君     濱田 幸雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                岩本 政一君
                濱田 幸雄君
                林田悠紀夫君
                平泉  渉君
                星野 重次君
                吉武 恵市君
                鶴園 哲夫君
                野々山一三君
                松下 正寿君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
       国 務 大 臣  江崎 真澄君
       国 務 大 臣  竹下  登君
   政府委員
       警察庁刑事局長  高松 敬治君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  貞家 克巳君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
       外務政務次官   大西 正男君
       外務大臣官房長  鹿取 泰衛君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   牧  圭次君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (外務省の機密漏洩問題に関する件)
○刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○水戸地方法務局真壁出張所の下館出張所への整
 理統合反対に関する請願(第三五九号)(第一
 二五四号)
○佐賀少年刑務所の移転改築に関する請願(第一
 二七六号)
○出入国法案反対に関する請願(第一八九二号)
 (第一八九三号)(第一八九四号)(第一八九
 五号)(第一八九六号)(第一八九七号)(第
 一八九八号)(第一九二二号)(第一九四八
 号)(第二〇一六号)(第二〇一七号)(第二
 〇一八号)(第二〇一九号)(第二〇二〇号)
 (第二〇二一号)(第二〇二二号)(第二〇二
 三号)(第二〇二四号)(第二〇二五号)(第
 二〇六一号)(第二〇六二号)(第二〇六三
 号)(第二〇六四号)(第二〇六五号)(第二
 〇六六号)(第二二七一号)(第二二七二号)
 (第二二七三号)(第二二七四号)(第二二七
 五号)(第二二七六号)(第二二七七号)(第
 二三八〇号)(第二五四八号)(第二六〇八
 号)
○法務局・保護観察所・入国管理局職員の増員等
 に関する請願(第二一三三号)(第二一三四
 号)(第二一三五号)(第二一三六号)(第二
 一三七号)(第二二四四号)(第二二九八号)
 (第二二九九号)(第二三〇〇号)(第二三〇
 一号)
○継続審査要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る九日、鈴木省吾君が委員を辞任され、その補欠として吉武恵市君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(阿部憲一君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○野々山一三君 官房長官、最初に、この前の一番最後のときに、次の機会にというお約束であった、沖繩返還に伴う軍用基地補償費に関する密約事件というものについてうそがあった、つまり、だれがどういうことについてうそを言ったのかということを何回か聞きましたですね。この点については次の機会にお答えがあるということであったんで、私は保留を、次の機会に、つまりきょう見解を伺うことにして、質問を保留したわけですけれども、お答えをいただきたいと思います。
#5
○国務大臣(竹下登君) いま野々山委員の御質問で、私にも理解できるところでありますが、私が理解いたしておりましたのは、沖繩案件審議の沖繩特別委員会において、政府関係者が、総理の答弁をかりて申しますならば、そのことは言えませんと言うべきものであったと、それをありませんと言ったところに遺憾の意を表したと、まあこういう事態がございましたことをお答えをいたしたのであります。そこで、次の機会ということにつきまして、きょうその官氏名を申し上げるというふうに、実私はまことにこれは失礼でございますけれども、理解をしておらなかったもんでございますから、正確にその事件についてそのような総理の指摘を受けましたのは何の太郎兵衛でございましたということを用意いたしておりませんので、その点はそれでもって御了解を賜わりたいと思います。
#6
○野々山一三君 この秘密事件の基本問題について触れることであるので、あなたがそういう態度をとっておられる限り、私はここでこれ以上質問はできませんが、あなたは御存じじゃないでしょうか。あなたが言われたああいうことばを何回か使って相すみませんけれども、――あなたは内閣のスポークスマンであり、官房長官である、こう言われたわけです。そのあなたがこの間の質問の際には、かくかくしかじかとそれらしきことと推測されるかもしれないようなお答えをなさって、それで野々山君、君は了解してくれないだろうかと、こう言われたんですから、そんなことまで言えるあなたが、だれがどういうことについてどういううそを言っかということを知らないはずはない。もしそうなら、それはやっぱり秘密じゃないですか。それが国政調査権に反するんじゃありませんか。それが国会法に反するじゃありませんか。何のためにあなたはお忙しい時間を長時間にわたって私の質問に答えるためにお出になったのですか。この前の最後のことばはよく受け取れなかったかもしれない。それじゃ委員長、あらためて速記録を取り寄せてください。速記録でもう一回読み上げてけっこうです。取り寄せてください。
#7
○国務大臣(竹下登君) いまの野々山委員の御指摘を整理いたしましたので、私から申し上げます。
 総理がその際、言えませんと言うべきであった、それをありませんと言ったのは適切を欠いたと思うというその対象は、外務省吉野アメリカ局長の答弁であります。
#8
○野々山一三君 外務省吉野アメリカ局長の答弁がうそを言ったということですか。
#9
○国務大臣(竹下登君) 結果的に、まあうそを言った、言わないという表現につきましては、これは私どもといたしましては、総理大臣の答弁の中にもございますごとく、言えませんと言うべきものをありませんと言ったと、そのことばが適切を欠いておると、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#10
○野々山一三君 言えませんというべきことをありませんと言ったと、それは、そういう言い方でしょう。私はそういうことはうそじゃないか、うそを言ったではないかと、あなたがいつも尊敬なされておるイギリスの国会における虚偽の発言事件まで触れて申し上げておるんですから、うそということばは何回も出た。ほんとうのことがあるのに、ありませんと言うのは、日本語じゃこれ、うそって言わないのですか。通称であろうと、客観的であろうと、うそないしは虚偽ということじゃないですか。違いますか。あなた日本語を御存じですか、御存じでしょう。もちろん御存じだと思う。私の尊敬する竹下登長官ですから。その方が、そのことをずばり言えないというはずはないじゃないですか。あとわずかな時間ですから、ずばり答えてください。
#11
○国務大臣(竹下登君) これは客観的に見て虚偽の答弁を申し上げたと、こういうことは言えると思います。が、しかし私どもが整理して国会で今日まで統一して申し述べましたことばがいわゆる適切ではなかった、こういう表現で御理解をいただくようにしておりますので、その事実、野々山委員がそれはうそである、それは虚偽であるという御認定なさることに対して私ども決してさからう気持ちはございません。
#12
○野々山一三君 この際、野々山が、それをうそであるということを言ったとしてもそれにさからうつもりはないというお話でありますから、うそを言ったというふうに受けとめてよろしゅうございますね。その責任については、吉野アメリカ局長ですか、その処理については、重大な公務員としてなすべからざる行為をして、それは国会法に反し、憲法六十二条に反し、そして憲法十五条に反するという行為であると私は考えますので、あなたは官房長官として、外務省に関することでありますから、政務次官もお見えですから、協議をしてしかるべく、だれでもがああそういう悪いことをした、うそを言った、虚偽の事実をした、そうしたらこれは公務員法なり、憲法の規定にそむいたことをやったんだというふうに認められるような措置を講ぜられることを、この際あらためて求め、見解を承って、次に移りたいと思います。
#13
○国務大臣(竹下登君) これは直接各省のいわゆる人事権に属することでございますので、まことに失礼でございますが、外務当局からお答えさしていただきたいと思います。
#14
○政府委員(大西正男君) ただいま御指摘の吉野局長の処分につきましては、大臣におかれましても、いま十分検討いたしておるところでございます。
#15
○野々山一三君 検討をいたしますとあなたはおっしゃるけれども、そういうお答えなら、えらい悪いけれども、この間一日外務大臣おいでいただいたけれども、私と見解は違っても、答弁は非常にすっきりした答えです。あなた方は善処するとか、検討するとか、考慮するとか、そういうことばがあなた方の一番悪いことばですよ。あなたも近い将来きっと閣僚になられるお方だろうと私は信じますが、政務次官であるあなたみたいな方が、そういう答弁をするから、うしろの白いバッジをつけている諸君が、官僚独善といわれるような行為をするんですよ。あなた自身は私の質問に対して――よそのことを聞いていらっしゃいますな、私のことを聞いていらっしゃいよ。そういう態度をあなた方がとるから、間違いが起こるんです。検討しますなんという言い方は何ですか。検討をしてどうこうするとか、検討するというのは何ですか。あなたも日本語を勉強なさっていらっしゃったんでしょう。検討するというのは、それだけでストップする表現です。何々する、検討をしてどうするということが、将来を意味することばじゃないですか、私はそう理解しますが、そういう意味でもう一回……。
#16
○政府委員(大西正男君) これから検討すると申し上げたのではありませんで、目下検討中でございます。同時に本国会の審議におきまして、アメリカ局長の存在を、外務省としては必要といたしておりますので、国会が終了いたしましたならば、何らかの処置がとれることになろうかと思っております。そういう意味で御了承願います。
#17
○野々山一三君 ことばじりで相済みませんが、なろうかというのは、他人がすることを横っちょで見ている感じをなろうかと言うんじゃないですか。あなたは外務大臣を代理して、行政の長官を代理していらっしゃたんでしょう。なろうかとは何ですか。
 官房長官、こういうような答弁をなさっている限り相済みませんが、あなたが総理の意思を代表して、長官として、スポークスマンとして出られたんですから、いまの私と大西政務次官との間における質疑の内容では非常に不明確なんですが、長官として所見を――所見をって、処置のしかたについてあらためて見解を聞きたい。ああいう答弁でいいんですか。ああいう答弁ですと、いつまでもこの議論をしなければなりません。
#18
○国務大臣(竹下登君) これは野々山委員にも御了解いただきたいのでございますが、いま大西政務次官がお答え申し上げましたのは、この国会中、現にアメリカ局長があるいは政府委員として各委員会等における答弁に当たる者として必要な存在でございます。したがって、それらの問題につきましては、国会終了後において何らかの措置を行なうべくいま検討中である、あるいはこれは私の想像でございますが、それなりの結論といいますか、帰結するものがかりに外務当局において内定しておったといたしましても、この人事というものは、発令された段階において初めて公にするものでありますだけに、答弁といたしましては、目下検討中でございますということで御理解を賜わりたい、このように思います。
#19
○野々山一三君 あえて官房長官が吉野アメリカ局長の虚偽の発言問題について、この国会が終わった後にしかるべき処置がとられるものと考えている、こういうお話ですから、そういう結果が了知できるような結果をつくってもらうことを、この際要望し、強く要求して次の質問に入ります。よろしゅうございますね。
 次に、法制局長官ほお見えですか。――いま法制局長官いらっしゃらないようですけれども、これは官房長官、外務大臣及びあなたから国会法百四条の規定そのものについての解釈といいますか、そういうものについて間違っているではないかという指摘が、私及び関連として矢山君から述べられました。この際、もう一回それを読み上げましょう。昭和二十一年十二月十九日、第九十一帝国議会衆議院国会法案委員会における大池説明員の説明報告、これはつまり百四条、「本條は、新憲法第六十二條に對應る條文でありまして、「内閣、官公署その他」と申しますのは、これは會社及び個人も含んでおるわけであります。またたとえ祕密な書類といえどもその提出を求めることができるのでありまして、その祕密な書類を審査する場合には、祕密会を開けば足りることであります。祕密なるが故にこの提出を拒絶することはできないものと解しております。」そのものずばりです。つまりこれを読めば、これは私どもが、こう解すべきではないかというふうな言い方を、何かの文書に書いたというものとは違いまして、歴然と政府の説明員が、百四条というものについては、こういうものでございますと指摘したわけですね。そのとおりに、今日の議論が進められていないために、私との間に相当長時間な質問がなされ、あなた官房長官と外務大臣の見解を承ったところが、私どもは法律解釈を述べるのは不当かと思いますので、法制局長官をして見解を述べます、こう言われたわけです。きょう私は要求してきました。出てこない。出さないのですか、それが一つ。
 出さなくても自分が当然それに対して責任ある回答ができるという立場でおいででしたならば――でしたと考えます。あらためてこの百四条というものはこういうものであると言うかどうか、あなたの責任ある見解を求めたい。お答えをいただきたい。
#20
○国務大臣(竹下登君) これは手続上の問題といたしましては、本委員会から法制局長官の出席要求は正式にはございません。しかし、その問題よりも、私自身前回のあれを調査いたしてみますと、外務大臣から明らかに、これは法制局の問題であるのでそこからお答えさすべきであろうと、こういう御答弁があったことは私も記憶をいたしております。そこで、私なりに率直に言って、それぞれの見解を承ってみたのであります。いわゆる三権分立というたてまえにおきまして、最高裁判所というものは別として、国会において大池説明員――当時衆議院の事務総長であった大池説明員からの一つのこの問題に対する統一答弁に対して、三権分立のたてまえから内閣法制局がこれに対して見解を述べるということは元来差し控えるべきものであると、こういうことになっておるようであります。すなわち、そのことは、したがって本委員会等において御理解をいただくならば、それにいわば政府としての立場、純粋な内閣法制局としての立場を離れて私からお答え申し上げたほうが適切ではないか、こういう議論もいたしてみたのであります。そうなると、たとえばここで一つの見解を出します、あるいは今度は参議院の法制局、両方の見解を出してみると、そういうことになりましたとき、やはり院に対して三権分立というもののたてまえを貫いておる内閣法制局としては、その見解に対して論評は控えたいと、こういうのが通常であるようにやっと私も理解をいたしたのであります。
 そこで私は、それなりのこの答弁というのは当時の背景を踏まえて、そして国会法そのものを審議される場合、これは当然そうであったであろうというふうに理解をいたすのであります。ただ、そこに問題が、行政府としてのいろいろな立場とかというものがあったればこそ、その後、議院証言法というようなものができておるという趣旨からいっても、国会に提出できない秘密というものがやむを得ず存在するということがそれなりに肯定されておるんではなかろうか。
 そこで、毎回申しておりますように、そうしたものがないがいいにきまっておりますから、先ほど御活用いただきました秘密会とか秘密理事会とか秘密理事懇談会とかというようなものを活用することによって、できるだけの趣旨に沿っていくという、そうした姿勢を持つことによって、私はこれらの見解と、そしてその後議院証言法等ができたそういう立法府のある種の秘密というものがやむを得ず存在するという立場の調和というものをはかる努力をしなければならないではないかと。したがって、法制局が答弁をいたしますと、それについては、野々山さんの御指摘でございますが、国会の解釈について私のほうでとやかく批判を申すわけにはまいりませんというつれない答弁になりますので、私がそうした諸情勢を加味して毎度お答えいたしておることのあるいは繰り返しのようでありますが、御理解を賜わるほうが適切ではなかろうかと、こう思って、ただいまお答えしたような次第であります。
#21
○野々山一三君 それでは官房長官に確認をする意味であらためて伺いますし、委員長及びこれは理事諸君にもよく聞いて、この趣旨、私の指摘している趣旨が間違いでないようにしかるべき運営――国会の事務当局、つまりもっと延長してくれば国会というものの調査権が、尊厳が守られるということのための所要な措置を講じてもらいたいというんで、両者にその見解を求めたい。
 一言に言って、大池説明員が国会法審議委員会において、百四条とは先ほど読み上げたようなものであると述べたそのものは、当然憲法六十二条にいう調査権という尊厳を保障するたてまえで述べられたものであるというふうに解して、あなたのほうも行政当局も解しているんですね。つまり、行政権者たる政府もそういう趣旨を解して今後運用される――運用というか、それに対して臨まれるというふうに解してよろしゅうございますか。
 それから委員長に、いま申し上げた趣旨に従って国会法の尊厳というものは保障されるものでなければいけないということで、事務総長はもちろん次長あるいは法制局にもその見解を、尊厳ないしは厳然たる、よろめきのない解釈というもので運用されるようにすべきであるというふうに処置をしていただけますか、どうですか、念のために。当然委員長はいままで私の質問に対処してくださったことですから、念を押す必要もないことかもしれませんけれども、あらためて所見を伺って、次に進みたいと思うんですが、お答えをいただきたいと思います。
#22
○国務大臣(竹下登君) いま野々山委員御指摘の、この国会法審議の際の百四条に関する大池説明員、事務総長の御答弁というものの趣旨を体すべきものである、このように考えております。
#23
○委員長(阿部憲一君) いまの野々山委員のお申し出につきまして本日は法制局長が見えておりませんけれども――ですから、したがってその意見を聞いた上で正式に次会にお願いしたいと思います。
#24
○野々山一三君 意見を聞かれるというのは……。
#25
○委員長(阿部憲一君) 見解ですね。
#26
○野々山一三君 見解を聞かれるというのは、それもやむを得ないかもしれませんが、歴然と私は速記録を読み上げておりまして、その速記録が情勢やお天気の回りぐあいや、というようなぐあいで変化するわけはないんですから、そのことを的確に承知をしてそして必要な処置を議長及び事務総長及び法制局長に伝えてもらいたい、そのことをあらためて要望しておきます。
#27
○委員長(阿部憲一君) わかりました。
#28
○野々山一三君 よろしゅうございますね。
 次は、「国家機関における各種の秘密の基準」という問題についてあらためて伺いたいと思います。たしか五月二十日ごろでありますか、内閣委員会に、翁参事官がつくられたといわれている、官房長官から明示をされました「国家機関における各種の秘密の基準」という印刷物で、その内容が示されましたですね。これについて先般の質問の際に、なお数多くの問題がありますということを指摘したことは御承知のとおりであります。そして事実は各省庁との間に相当の違いがございます。にもかかわらず翁首席参事官から各省庁にこの基準という文章に基づいて各省庁の取り扱いをするようにと指示をされたと説明をされました。問題が山ほどあって、食い違いがあってここに書いてあるものとは相当違いがあるということを私は指摘をいたしました。にもかかわらずそのままで処理されるはずはないだろうということを指摘をいたしました。その後検討されておるはずだと私は了解をいたしたいと思います。その案なり実情についてあらためて伺いたい、どうなっているのかということです。
 それから第二に、五月二十六日に指示をされたというわけですけれども、それは一たん指示されてしまったわけなんですが、それでは先般来この委員会に案を示して御審議をいただき、誤りのないようにいたしたい、こういうように述べられたものともまた違うわけですが、あらためてその基本の扱いについてどういう御見解なのか、その所信を伺いたい。
#29
○国務大臣(竹下登君) まず私がお答えいたしまして、具体的な点については翁首席参事官がお答えすることをお許しいただきたいと思います。
 野々山委員御指摘の、確かに私どもが整理いたしましてまず提出いたしましたものは、いわばこれを取り扱われているものについての種類別という分類をいたしたものでありまして、野々山委員の御議論の中に、その漏洩に対して刑罰でもって保護されるものの基準、あるいは国家公務員法第百条の適用にあたるものの基準というようなものもやっぱり今後検討をすべきものではないか、こういう御指摘がまず一つあっております。これにつきましては、確かにあの分類というものは、これが刑罰によって保護される基準、あるいは行政罰の対象になる基準、あるいは国政調査権との関係でこれを拒否するための基準というような角度でつくったものでないことは事実でございます。したがいまして、この刑罰でもって保護されるもの、あるいは行政罰の対象になるものということになりますと、私は各省庁においてそれぞれいろいろな異なった点があろうかと思われます。外務大臣からもいろいろな御答弁がなされておりますし、また防衛長官からも、たとえば国会への提出というものについてはまず提出すべきものであり、そしてするかいなかを決定する際は大臣の決定にゆだねるべきものである、こういう御答弁があっておりますので、それのいわゆる分類の仕方について刑罰に保護される対象のもの、そしてまた行政罰の対象のものというものについての分類と申しますものは各省庁、また、ケース・バイ・ケース、いろいろな点が出てまいろうと思いますので、にわかにこれをきちっとした分類にしてお示しするだけの私ども今日まだ用意が整っておりません。したがって、一昨日来翁首席参次官とも協議をいたしておるのは、まず省庁にそれらのことは実際の権限があるんだからやらしてみて、それを報告を取りまとめて、その上でわれわれが国会論議を通じながら感ずることをさらにそれに注意を喚起するなりをいたしまして、そういう間で野々山委員のかねての御主張に沿えるようなものができる方向で今後努力をしていこうじゃないか、こういうことを申しておるのであります。
 それからまた、野々山委員御指摘の点につきまして整理した点を申し上げてみますと、おっしゃるとおり、国家公務員法上秘密という用語しか用いていない、次官会議申し合わせの極秘、秘を秘密に統一したらどうか、こういう御意見も出ております。これは確かに重要度に応じて二種類としたものでございますので、この点については法律上の秘密というものは秘密というものを総称したものでございますので、わずかな分類の形としては二種類にしたということは御了承を賜わりたいと思っております。
 それからまた法律上機密という用語は不適当である、これを秘密という用語に直すべきである、こういう御指摘もあっております。これは法律上秘密という用語のほかに、外務公務員法等に機密という用語を用いている例が一部に見られます。これは先生御指摘のとおりであります。この外交機密は外交上の秘密という意味で特別の秘密を意味するものではございませんので、したがって機会をみてこれを秘密という用語に改めていくということは差しつかえないんではないか。大いにそういう方向で整理して差しつかえない、御指摘に沿うべきではないか、こういうふうに考えております。
 それからさらに、指定権者の問題についての御議論もございましたが、確かに行政の最高責任者は、これは大臣であります。何を秘密にするかの最終責任者はもとより大臣でありますが、この大臣の権限を委任して事の重要度の高いものは局長、またそれに準ずるものを課長として運用しておりますし、今後課長に準ずる者とは、参事官等、課長と同等の者に限るということに、これは指導していきたいというふうにいま考えておりますし、また江崎国務大臣から二度にわたって御答弁がございましたように、国政調査権との関係につきましては、出すべきか、出さざるべきかという最終判断は大臣にこれを求める、こういうことにこれを定着化さしていきたいというふうに考えております。
 それからもう一つ、この野々山委員御指摘のいわゆる国鉄関係の入札価格等については秘密ではなくして秘密に準ずるものであって、言うなれば封印しておくべきものである。この考え方はそれなりに評価できると思います。そこでこれらは個々の場合にどうなるか、ひとつ洗ってみて、そういう方向は検討に値することではないかというふうに思っておりますので、他のおっしゃったようないろいろな法律によって悪いことをしたときには罰せられるという方法がございますだけに、これらの取り扱いは国鉄当局が行なっておることにやはりそれなりの意義を見出して、個々のケース、いろいろなケースがあるだろうと思いますけれども、検討していこうじゃないか。こういうことをおりおりこの間以来、重ねて申しますように数の少ない役所でございますだけに、話し合いをしておる、こういう段階であります。
 なお、全般的にいただきましたいわゆる野々山委員の国政調査権と秘密との関係についてのあらゆる角度から御議論をなされました何といいますか、レポートとでも申しますか、これにつきましては審議室、法制局加えまして、これを全部一読したと申しますか、全部が一ぺん朗読会をやりまして、これはちょっと表現が誤っても御叱正いただかないでいただきたいと思うのでありますが、確かにいわゆる完全な法学雑誌にこれが出て、そうしてそれが議論の対象になるべき価値があるんじゃないかというような形で勉強をさしていただいた、こういう実態であります。
#30
○野々山一三君 いまの点で二つだけこの際申し上げて、あとはあなたのお答えを了とするというよりは、お答えの気持ちを受けとめまして、当然私が指摘しているものを生かしていきたいということに尽きるようですから、それをぜひ具体的に実行してもらいたい、そうしてしかるべき機会に、こうしておりますということの経過を国会に知らしめることを通してこういう議論が再び起こらないように誠意を尽くしてもらいたいということとを希望しておきます。
 二つといいますのは、一つは、基準と申します、通称基準という「国家機関における各種の秘密の基準」に対する私の見解をレポートということばを使われましたが、文書にいたしました。本来ならば私は速記録に残したいわけですけれども、時間がありませんようですから、いま私が官房長官の手元へ提示いたしましたレポート、これを軸に十分な私の指摘している点を体してやっていただけるかどうか、もう一回聞きたいと思います。
 それから第二は、たとえば電電公社の問題をこの間指摘をいたしました。これは防衛庁長官に直接関係がございますが、MSA協定に伴う特別措置法の中に、アメリカ合衆国の機密文書ということがございます。そこで機密ということばが出てくる。あなたの所管に関することでしょう。これはアメリカ合衆国の機密文書であります。そこで、いま官房長官が述べられた、機密ということなどもこの際は整理してなくしていくようなものにしたい、こういうふうに述べられたわけですけれども、もともとそのMSA協定に伴う特別措置法はアメリカ合衆国の機密文書でありまして、日本国の機密文書というものではないのであります。したがって、防衛庁自身の所管するそういう取り扱い規則、これを官房長官の述べられた趣意に従って変えられる、改正されるというように私は解したいわけです。当然、官房長官が言われるのですから変えなければならぬと思うのです。あなたを激励する意味で申し上げて相済まぬのですけれども、第二番目に指摘をいたしましたのは外務公務員法による機密というものがございます。これは法律改正が必要なんでありますから、そういう立場で外務大臣とまた別な機会に私は議論をしたいと思います。あなたの庁には二つの訓令と規則がございます。いずれも機密というものがある。これは先ほど申し上げたようにあらためてやりたいと思います。
 電電公社は、けさこちらへ、まだ官房長官に届いていませんかもしれませんが、その各省庁及び国家機関で機密という文字がありますのは、MSA協定に関する特別措置法のアメリカ合衆国における機密、それから外務公務員法十九条による機密、電電公社が文書取り扱い規則による機密文書という、これ、お見せしてけっこうでありますけれども、総裁の決裁を得てああいう文書は全部取り消した規定に直します、こう言われたわけですが、あなたのほうはいかがでございますか、この際はっきり御答弁いただきたい。
#31
○国務大臣(江崎真澄君) 野々山さんの御指摘でありまするが、防衛の問題というのは、やはりどうしてもその性格上機密を全然なくするというわけにはこれはとうていまいりません。これは世界の共通の考え方だというふうに考えております。それは主義主張のいかんにかかわらずですね。したがって、日本は専守防衛であり、平和愛好国家ですから、同じ機密なりにその機密の範囲を狭めていく、これは私はわかります。その点はよくわかるのでありまするが、全然なくするということは、これはちょっと不可能に近い、いや不可能であります。まあそればかりか、たとえば乱数表といっておりますが暗号表とか、これもやはり世界共通の秘密としてどの国も持っておるわけですが、私ども防衛庁においてもこれは保持しておるわけでございます。この点はひとつぜひお認めを願いたいと思っております。
 それから御指摘のMSA協定、日米相互防衛援助協定に伴ういわゆる機密保護法、これも御指摘のとおり法律によってきめられておる。で、これはもともとアメリカ合衆国政府から供与をされました船舶であるとか航空機であるとか、武器弾薬、装備品の性能、製作技術、その使用の方法等でございます。要するにアメリカ側の秘密兵器を、まあ秘密兵器じゃありませんが、秘密的な機能を持った武器を供与するから、それはアメリカと同じ立場に立って日本側も守ってもらいたい、これは今後も当然日米安全保障条約を堅持していこうというのが私ども政府及び与党である自民党の考え方でありまして、したがってアメリカからも、今後こういった兵器の供与、技術の供与、指導というようなことを受けますので、これはやはりまた別な意味において当然守っていかなければならぬものというふうに考えておる次第でございます。
#32
○野々山一三君 江崎防衛庁長官、あなたこの間内閣委員会に行くということで、政務次官がいらっしゃって、政務次官には直接質問はしなかったんですけれども、政務次官から、私と外務大臣及び官房長官との間で質問をいたしました際に、官房長官及び外務大臣から述べられました開示等をよくお聞きになってらっしゃるんでしょうか。あなたの政務次官が、もしあなたにこのことを報告してないとするならば、あなたがきょう出てきていただいても、実はこのことについて聞きたいわけだったんですけれども、念を押したかったんですけれども、いまのようなお答えですと、全くこの間の外務大臣と私との間で質疑をいたしました内容に全然触れられていない回答だと、これは私の判断ですけれども、解せられるのです。どういうことかといいますと、たとえば暗号。暗号というようなものについては、それは暗号を管理するための別な規則をつくります、文書取り扱い規則については、いままでそれ自体が秘密であったので、と、指摘されたものについてはこれをオープンにいたします、こういうふうに改正の所信を述べられました。そして、いまここに配付されております外務省の文書がたくさんございますね。これはまだいまのところ改正の案のようでございますけれども、こういうように具体的にやってらっしゃるわけです。これならば私は、百点とか六十点とかということは別といたしまして、官房長官の言われるように、野々山君、君の言う考え方というものを受け入れて遺憾のないようにしたいと言われる気持ちが、これによって実証されていると私は解釈するんです。あらためてその点について聞きたいわけなんです。
 なぜか。もう少し補足をさしていただきます。あなたが先般の私の質問に対して、部外秘及び取り扱い注意というものはいわゆる秘密ではないことにする、こう述べられました。いま私が問題にしているのは、官房長官への先ほどの質疑でおわかりのように、公務員法上にいうところの法律では、秘密という文言しかないのであります。それを官房長官は、できるだけ縮減する、そして機密という文言はなくしたい、そういう立場で見解を各省庁から出さして統一したいと言われた。あなたはそれにさからうんですか。もし違う見解だったら、ひとつ統一見解をこの際つくっていただくことによって示していただきたい。
#33
○国務大臣(江崎真澄君) これは野々山さん、官房長官隣りあわせにおりまして、決してさからうつもりありません。防衛庁としては、しかし、ただ、これはいろいろ省庁によって職務の性格というものがございます。したがいまして、他の省庁に比して防衛庁というものが多少秘密が多い、これはどうもいたし方のない点だと思いますが、それにしても、先ごろから野々山さんの御指摘、予算委員会等の御指摘、いろいろ聞いておりまして、どうも防衛庁ちと秘密の文書が多過ぎるというので、私、再三にわたって部内に、秘密文書の決定等については慎重を期するようにということで十分注意をいたしておるわけです。これはすでに過般、事務次官をして防衛庁内に徹底をさせまして、もうすでに三十日以上になりましょうか、もっとになるかもしれません。秘密指定の乱用を厳重に戒めました。それから秘密文書の作成はいま御指摘のように、極力最小限にする。これはもう日本のたてまえからいって、そんなに無用のものまで、何となく旧軍時代のような考え方で秘密秘密というのはよくない。それから秘密の必要のなくなったもの、これも依然としてマル秘のままに文書として保存をするという必要はもうありませんので、これを総点検しろということで部内総点検というものを命じたわけであります。したがって、この秘密の基準等につきましても、今後各部局によってしっかりした基準に基づいて、それがかってになされないようにいたしたわけです。さっき官房長官から答弁のありましたように、国会が秘密的ないわゆる文書、資料等々を御要求になったときには、極力明らかにできるものは、やはり審議権を尊重する意味で明らかにしていく。どうしても出せないもの、これはございます。防衛の性格上、特にこれが防衛に徹するというたてまえであればあるほど、これだけは明らかにしたくないというものもこれはあります。その秘密自体が、これは戦争や平和を挑発するものではなくて、秘密を保持することによって、逆に紛争や、それこそ戦争といったものを抑止する、抑止力になる、こういうものも秘密の中には当然あるわけでありまして、したがって、ごく少数のものに限る。そういうものについては、国会について、私どももう出せるか出せぬかということは、政治家である大臣の判断を求めるべきだ、いたずらに事務当局だけの独断でこれは出せますとか出せないとかいうことはいけない。やはり官房長官の趣旨に沿って政治家が判断をして、そのためのシビルコントロールであり、そのために政治家である私どもが長官という最高の責任にあるわけですから、そういう形で国会には対処したいと思っておりますので、何もいたずらにこれ以上秘密を多くしようという態度でおるわけではありませんので、その点は野々山さんにもひとつ御理解を賜わりたいのであります。
#34
○野々山一三君 規則そのものの中に、外務省の場合を言えば、たとえば特殊暗号というようなものは、そういう管理規則、それだけはまあというわけです。これもいいか悪いか別ですよ。それも文書課長ですか、きのう、おとといですか、私の部屋にいらっしゃって、そういうものについても秘密会などを通して十分に国政調査権の趣旨を解して取り扱えるような説明をし、御納得をいただける方法をとりたいと思う、こう言われた。この考え方に基づいてあなたのほうだってやっぱり数多く、私はまたいやらしいことばのようですが、「等」というような竹冠に寺と書くあの「等」です。こういうのがいっぱいある。そういうようなものはどんどん直して、そして縮減した、あなたが言われる少なくするという精神が規則の上でも、運用上でも、実際的にも示されるということが必要だと思いますが、そういうことをおやりになりますか。
#35
○国務大臣(江崎真澄君) いま野々山さんが御指摘される意味は、これはもうきわめて必要なことで、今回の官房長官の統一見解といいまするか、官房長官からの統一的な指令、これに基づいて、もとよりそういった調整はすべきでありますし、先ほども申し上げましたように、すでに部内に対して私厳重に言うておるわけです。きょうも実は十一時半から幹部会を開いておりまするが、その幹部会でもこの問題についてはよくひとつ、なお野々山さんの御趣意の存するところを話しておきたいと思います。
#36
○野々山一三君 それでは、あなたも時間ないようですから、念のために、まだ私も外務省のものを読んでおりませんけれども、こういうものがすでに出てきているわけです。次の機会に、あなた、一カ月も前に指示したというのですから、それが一カ月もかかってもできないはずないのですね。幾ら官房長官がおれのところ役人の数が少ないからと言われても、私と競争しましょうか、私は一人です。できないはずはないのですから、次の委員会にはすぐ出してください。そうして官房長官が前々から約束されているように、この委員会に提出をして審議を求め、遺憾のないようにしたい、これを実行するようにしてください、いいですね。
#37
○国務大臣(江崎真澄君) 御趣旨の点については、十分官房長官指令によって対処するつもりでおります。ただ、冒頭に申し上げましたように、防衛庁ということの性格上、これは全然なくするとか、外務省と同じ形にするということは、これはちょっとむずかしいというふうに思っております。やはり国の命運をかけるもの、それだけの責任を防衛庁というものは持っておるわけです。したがって、それが受け身であればあるほど、業務計画とかいろいろそれに伴う対処のしかた等についての行き方、それから兵器等においてもアメリカから供与を受けたこの協定はこれはもう相互防衛協定にあるわけですから、こういったものについては、これは手の触れようがありません。法律によってきめられておるものです。また防衛庁内部におけるいろんな秘密文書についても不必要なもの、これはひとつ官房長官の指定せられるところに沿って十分ひとつ処理をしていきたい、これは私の念願でもありまするから、何らかのひとつ結論をしっかりしたものに出していきたいと思います。
#38
○野々山一三君 時間がないようですから、あなたに二つはっきりした答えを伺いたいのです。
 一つは、秘密に対するせめて件名ぐらいは明示したらどうかということを申し上げたら、あなたは、それはお断わりしなければならぬ、こうおっしゃいましたね、そうですね。これお持ちでしょう。外務省は実はまことに不十分ですけれども、件名はこれは示しましょう、そうして件数が多いので、一カ月に一回ぐらいはしかるべき機関を通して、委員会を通して、こういう秘密があります、こういう件名の秘密がありますということなどを通して、その内容を知ってもらい、それが国政調査権を侵さないというようにしたいと、実は土曜日に私のところに文書の責任者がいらっしゃって見解を述べられておる。あなたは件名さえも言えない、こういうふうに言ったわけですが、わざわざ防衛庁に関してはと付け加えられるところに、実はたいへんな力が入っているものだから、主客転倒した答弁になる。本質はやっぱり国政調査権というものの尊厳を守る、しかし、中にはと、特に国益に関するものもあったりなどするので、その扱いについてはたとえば私の意図を解して受けとめてください、しかし、私は誠心誠意公開をいたします、こう答えられるならば、いいのです。件名ぐらいは示しますか。
 それから第二に、MSA協定に基づく特別措置法ですね、あの中には歴然とアメリカ合衆国の秘密文書と書いてあります。その内容はきわめて限定された文言が中に入っております。つまり、基準でありましょう。第六条にこう書いてあります。「合衆国軍隊の機密」、つまりアメリカ合衆国軍隊の機密、「(合衆国軍隊についての別表に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画若しくは物件で、公になっていないものをいう。以下同じ。)」、つまりこれが基準とも解されるものであります。そしてその別表は、非常に長文でありますから読みませんが、いい悪いは別として、「等」などというようなもの、「例示」とかいうような文言は一切使っておりません。このことをひとつ重視されて規則を変えるということを考えてもらいたい。それが第二。
 第三は、アメリカ合衆国の機密、ひとの機密というものを日本へ持ってきて機密ということを言う、というようなことの考え方が、実は機密、秘密、極秘、部外秘、取り扱い注意まで刑罰によって保護されるというところにまで至る。そういうものです。これはいますぐの問題ではありません−とも解する。いまここでというわけにはいきませんという意味ですよ。法律を変える、せめてこれは日本らしいものに変えるということが当然ではないかということです。
 そうすれば、必然的な結果として、第四に、防衛秘密に関する訓令等々についても、あなたがつけ加えられるところに力を入れるような、へんてこな、主客転倒したような答弁というものはなくなって、あなたの答弁が非常にきれいになる。つまり、答弁じゃない、政治姿勢がきれいになるというふうに受けとめられると私は考えられる。
 以上四点についてはっきりした見解を述べてください。
#39
○国務大臣(江崎真澄君) 件名の点は、先ごろの法務委員会でも野々山さんにお答えいたしましたように、件名そのものが内容に触れるというものが、まあ防衛庁内にはないわけではありません。しかし、これは国政調査権の問題もありまするので、出せるものは出したいと思います。で、どうしても出せない件名のものについては、これはひとつ秘匿することは御了解を願いたい。それはなぜかということは、また私が、かりに野々山議員と対の場合でありまするならば――これは他の議員についても同様でありまするが、その事情等についてできるだけ了解――なるほどと、わかったというふうにおっしゃっていただけるような理由を付して、そのものをひとつ、というような態度で国会側には臨んでいく。これははっきり申し上げて差しつかえないと思います。ただ、諸外国が出し得る程度よりももう一つ出してもいいのではないかとおっしゃるような、そういう意味はよくわかります。ただ、諸外国が秘匿しておる、どうしても国益に関するものまで出せ――これはそこまでおっしゃっているのではないと私も解しておるわけでありまするが、十分そういった常識の線を踏まえまして対処をしてまいりたいと思います。
 それから先ほどお読みになりました、まあこれ件名が長いですから時間の節約上言いませんが、あの第六条でございますね、これは刑事特別法になるわけでございますが、これは私ども防衛庁は、いわゆる相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法については私どもが所管いたしておるわけでありまするが、いまお読み上げになった六条は、法務省が所管をするという事務的な色分けになっております。したがいまして、アメリカ側も、この協定によってそんなにむずかしい、何から何まで秘密、極秘ということをわれわれ日本に押しつけておるものではありません。アメリカも相当程度まあおもてにあらわしております。それから日本の自衛隊でも、装備等についても、装備年鑑であるとか国防年鑑であるというものにできる限りの点は明示しておりますが、そこで秘密になるものは、たとえば、防空レーダーのカバレージ――覆域がどの程度であるか、それから特殊信管の構造、それから弾薬でいいますると、その威力が具体的にどんなものかとか、魚雷の速力がどうであるか、これは船とのかね合いで、そういったようなものが兵器としての秘密事項ということになっておるわけでありまするが、おもてに出せるものは装備年鑑等々においてもあらわしておりまするが、今後もあらわせるものは極力あらわしていくという態度でまいりたいと思います。したがって、この二つの法案自体につきましては、これは日米安全保障条約というものを今後も堅持していく。今度の四次防大綱にも「日米安全保障体制を基調として」ということばを使っておりまするが、大きな政策転換がなされない限りは、これはどうも守らざるを得ないというふうに御了解おきを願いたいのであります。
 それから第三点は、日本らしく変えたらどうだということですが、それは、いま申し上げましたように、運用の面において十分国会を尊重するということで、日本の国会に対するいわゆる政府機関らしい形で運用面で考えていきたいと思います。法律の改正ということは現時点ではちょっと考えるわけにはまいらない。これは率直に私お答え申し上げることのほうがいいと思いまするので、率直に申し上げておきます。
 以上、お答えいたします。
#40
○野々山一三君 いまのことで二つだけ、小さいことですけれども、私が非公式な方法ならば説明をいたしますという「私が」というのは、江崎真澄代議士ですか、防衛庁長官という地位ですか。これは普遍的なものに将来わたりますから、「私が」という私的なことばではどうも困りますので、公式なことばに……。
#41
○国務大臣(江崎真澄君) わかります。さようです。
#42
○野々山一三君 それから第二は、法律は変えない、――先ほどの二つの法律ですね、秘密保護法及び刑事特別法、二つは変えないということをおっしゃられたわけですけれども、規則はやっぱり――あなた時間がないようですから、私はあとで官房長官なり外務政務次官等の見解をただしたいと思うんですけれども、規則についても非常に私なりの常識、その常識は、結果として外務大臣の見解と一致したわけですけれども、こんなものを規則に書いておかなくてもいいと思われるものが一ぱい書いてあって、それが乱用されて非常に秘密が広がり、指定権者が広がりというようなことがあったために、国政調査権を侵害するというような結果になったことは遺憾であるという趣旨のことが述べられた。あなたのところにも――私は、許されるならば、あなたと委員会で何時間でも議論するほどたくさんございますよ。お役人さんにおまかせになるほどお忙しいでしょうけれども、この際は、所信として規則の不備な点、過剰な点は改めるということをはっきり言明してください。
#43
○国務大臣(江崎真澄君) 第一点は、政治家たる長官、これは私個人じゃもちろんありません。したがって、国会に件名等で出せないものといろ場合は、この件名はこういうわけで出せませんと。たとえばという話などは、これはやはり政治家同士、仲間ですから、政党やものの考え方は違いましても、そういう意味で、当然、責任者である政治家、長官が国会側に御了解を得る、こういうことにすべきだということを率直に申し上げたわけで、これはひとつ後任者に対しても守っていただきたいことだ。これは他省庁においてもそういうようなことは同じようなことが一声えると思います。そういう意味を申し上げたわけであります。
 それから第二点は、私が申し上げたのは、この日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法であるとか法務省が所管をする刑事特別法であるとか、これをいま変える意思はありませんということを申し上げたので、省内における秘密基準等については、これは十分その基準をしっかり明確化して乱用されないようにしていきたい。これはもう申し上げておるとおりであります。
#44
○野々山一三君 防衛庁長官お忙しいようですから、その、いま二つのことに答えられたうち、特に後段の答弁について、外務省の例のごとくつくられたものを委員会に示されて、それを縮減し整理するということの実を明らかにされるというようにしていただきたい。よろしゅうございますか。
#45
○国務大臣(江崎真澄君) わかりました。
#46
○野々山一三君 次に官房長官に伺いたいのですけれども、各省庁の基準及び規則の改正をいま翁主席参事官の手元によってつくられたものに基づいて、五月の二十六日に指示された。そしてそれに基づいて各省庁が政府関係機関を含めて検討してつくってくるものを見た上で整理する、こういう趣旨でしたね、先ほどお答えは。また、いま防衛庁長官の時間的な制限もありましたので、もとへ戻りまして恐縮ですけれども、大前提として各省庁の文書取り扱い規則、及びその内容たる、わけても私が問題にしている秘密の取り扱いというのは非常に内容的にも取り扱い上も、規則における管理上の問題も非常に区々まちまちです。このことをあなたはもう一回、私が指摘している区々まちまちであるということをよく理解をしてもらいたい。そして、その規則そのもの及び、管理及び運用、その指定権者の取り扱いなどについて、少なくとも秘密というものがあるないのことはまた議論は別、十分でないにしても、縮減されるということに私はこの際は期待をして、今後追跡さしていただくとして、まずは各省庁まちまちであることを統一するということが必要だと思う。その点について官房長官及び主席参事官たる翁参事官は指示をされたというわけですけれども、そういう立場に立って、私の指摘している点をどう受けとめて処理をされるのか、その見解を承りたい。
#47
○国務大臣(竹下登君) 多少私の舌足らずの点があったと思いますが、確かに本委員会を通じまして御指摘いただいたことが、私も手元にいま受け取ったばかりでありますが、たとえば電電公社の規則の改正なり、そしてまた、外務省の問題は先般来の福田外務大臣の答弁以来、私ども関心を持っておったところでありますが、それなりに整理されつつある。そこで、そもそもの基準をお示しいたしましたものについて、多少野々山委員の考え方に合致していない点は、私はいわゆるこの基準というものが、野々山委員の御主張の立場というのは、これが刑事罰をもって保護されるべきもの、あるいは行政罰に値されるもの、こういうことになりますと、それは各省庁によって非常に問題が異なりますので、そこで整理されたものをまず見て、私どもがさらに注意を喚起するものがあれば喚起する、こういうことにせざるを得ないであろう。したがいまして、いわゆる完全統一と申しましょうか、それを内閣官房において完全に統一したもので各省全体を律していくということは、事実上私は困難ではなかろうかというふうに思います。しかしおおむねその精神においてそれを統一していくということは私は決して不可能なことではないだろう、こういうふうに思うわけであります。
 そこで、これらの、先般来申しましたように、いわゆる国政調査権と秘密との関係というもの、これらの、まあレポートということばを使いましたが、言うなれば論文というものは、これはまあことばの使い方等について、率直に言って、私ならこういうことばを使おうかなとか、あるいはいろいろなことばの使い方のニュアンスは違います。が、法制局、内閣審議室でも、これはちょっと表現のしかたが悪いかもしれませんが、言うなれば法律雑誌に論文として載せて、そして論評を仰ぐという価値に値するというようなことを、これはわれわれ私的にお話しておったことも事実であります。
 それから「国家機関における各種の秘密の基準」に対する疑問点、これは一つ一つ私どもが整理して、お示しした問題につきましての疑問点がこれもまさにきれいに整理されて出ている、こういうものが、結局私は各省がそれぞれの立場において整理していく、あるいは基準というものを定めていくための非常に重要な参考資料として使わしていただきたい、こういうふうに考えております。
#48
○野々山一三君 いま各省庁及び政府関係機関の管理規則及び運用についてできるだけ統一をしたい、その趣旨で実行したい、こういうふうにお答えがあったものと解してよろしゅうございますか。
#49
○国務大臣(竹下登君) よろしゅうございます。
#50
○野々山一三君 それではその趣旨に従ってぜひ進めていただきたいと思います。
 最後に辻刑事局長に伺いたいのでありますが、秘密に関する私と官房長官及び関係の大臣各位との間の質疑によって明らかにされたように、部外秘及び取り扱い注意はもちろん秘密じゃない。人秘についてはないしょにしておいたほうがいいという意味において秘、こういうような趣旨のお答えだったと思います。それから機密というものについても官房長官は、文言を整理したい、こういうふうに答えられた。
 あなたに、この際見解を承りたいのですが、いままでは私が何回も指摘をいたしましたように、法律に書いてある秘密という文言によって総称される秘密は、機密、極秘、秘密、部外秘、取り扱い注意、人秘、こうなっている。いま指摘をしましたように極秘及び部外秘ですね、それから取り扱い注意、それから人秘というものは、いわゆる第一の部分はこれは整理をしたい、文言として整理をしたい、こういう趣旨です。それから第四、第五、――第五のグループは、いわゆる私の受けとめ方によれば、国益を害する、国の安危に関するもの、国に損害を与えるというような性質のものではないと言えるわけであります。落とすというのですから言えるわけじゃない、もうそういうものなんです。
 そこで、あなたが初期の段階で、たとえば――と申しましょう、蓮見君及び西山君の問題に関連をして、この秘密というものは三つの態様――判例上ということでありますが、それは後ほどつけ加えられたことで、実際はその事実に――三種類に分けられておりますね。これは判例を引用されて解釈されたと私はわざわざそう受けとめたい。
 その第一はいわゆる形式的秘密で足りるとした判例というわけです。この形式的秘密で足りるという判例の中に、先ほど申し上げた秘密というのは六種類に及んでいるが、というわけなんです。その場合、かかるものとかからないものがあるとも言えますが、第一の分類から言うと、形式的秘密でありますから全部かかるということになり得る可能性がある。これは先ほど来の官房長官と私との間における質疑によって示されたとおり、また、私がいま補完いたしましたように、第一の分類、第四、第五、第六の分類に関するものはいわゆる形式的秘密という扱いをすること自体も問題で、そしてそれが法制上――法務執行上秘密として国家公務員法百条によって罰せられる、つまり刑罰によって保護されるという対象からは除外されるということになるわけです。そういう立場で今後法律の運用というものに対してあなたは指導、処置をされるかどうか。これはむしろ、もう官房長官及び各省庁大臣が見解を述べられたことをあなたがひつくり返すなんてほどのことはないはずです。あらためて伺います。
 そして、第二、第三は、いわゆる実質的秘密に限る場合、それから実質と形式とが付随する場合があるわけで、これは運用上、先ほど第一の問題で指摘をしたように、言うならば、刑罰によって保護されるということばで、つまり、刑罰条項によって訴追されるという分類に属する、用語をかえればそういうものだろうと私は思うんですけれども、いわゆる局限されるものと解すわけですけれども、あなたの見解を承りたい。――あなたはこの間このことについて私が承ったときに、判例としてこうなっておりますと言って答えただけなんであって、各大臣の答弁に直接関係はないのだと、こういう趣旨の御答弁をされた。その点で伺うわけです。
 それからもう一つ、相済みませんが、これはこの際時間を節約する意味で付随して申し上げておく。この間も指摘をいたしましたけれども、国家機関における秘密の基準、こういうものが先般の委員会で示された。で、これはもう官房長官といまの私との質疑の間で手直しをするということが明らかにされたわけですし、今後審議をするということでありますから、それに対して異議はないと思いますが、しかし、法を執行する行政機関の責任者としてあなたは、その先ほど指摘した官房長官の見解とあなたのほうの法務執行当局たる事務局としての見解が違うとたいへんな問題が起こる、これが結果としては、逮捕あるいは裁判そして有罪に、あるいは逆に言えば逮捕、起訴、裁判そして無罪、その結果として非常な人権を脅かすことになる非常な重要な分かれ道に立つので、私はあえてあなたの見解が最初述べられた――ずっと以前の段階で述べられた見解と五十何時間の討議を経て出てきた答えとは相当に違うものと、その点についてあらためて所見を聞きたいと思います。
#51
○政府委員(辻辰三郎君) 国家公務員法百条の職務上知ることのできた秘密、この秘密を漏らした場合におきます国家公務員法百九条第十二号にいう罰則の適用、この問題について申し上げますが、これの裁判例につきましてはただいま御指摘のとおり、過去におきましては三種類の裁判例がございます。これはあくまでも裁判例として申し上げたわけでございます。で、それに対して政府の行政部としてはどういう見解を持っておるかという問題が先にあると思うのでございます。それにつきましては、このいわゆる外務省事件が起きましたときに、私が答弁したかあるいは法制局から答弁したか存じませんが、一応政府の行政解釈といたしましては、この百条の秘密漏洩に関する罰則の適用に関するこの秘密でございますが、これはまず、単に指定秘というだけでは足らないんだと、実質的な秘密であるか、指定秘のうちで刑罰をもって保護しておるものと、こういうものがここにいう秘密であるということで、政府の行政解釈といたしましては、指定秘だけで足るという解釈をとっていないのでございます。そういうことで答弁を申し上げていたと存ずるのでございます。
 そこで、そういう政府の行政解釈のもとにおきまして、ただいま御指摘の問題を申し上げたいと思うのでございますが、そういたしますと、当委員会のこの御審議の結果、今回内閣官房におきましては、各省庁における秘密の指定というものについていろいろ整備をなさってくるわけでございます。そういたしました場合に、まず政府当局が、これは部外秘であるとか、あるいは取り扱い注意であるとか、そういう区分を設けられまして、その区分に当たるものは行政当局として国家公務員法にいう刑罰をもって保護するに足るものではないという判断でそういう指定をなされるということに相なるかと私どもは了解をいたしておりますが、そういうことになりますならば、この部外秘でありますとか、あるいは取り扱い注意というものにつきましては、まず第一次的には刑罰の対象にならないということが言えると思うのでございます。これは私どもの行政解釈の上においてさようなことに相なるかと思うのでございます。
 それから、問題は、そうでない――政府当局が初めからこれは秘密でないと、こういうことになっておれば、これは行政解釈としては対象になりませんけれども、今度は、政府機関のほうで刑罰の保護に値する秘密であるということの意味におきまして秘密の指定をした、極秘または秘と指定をされたものにつきまして、これが具体的な裁判になってくるという場合には、これは政府当局のその一応の指定という意味の見解は裁判上重要な意味を占めると思いましょうけれども、結局罰則が適用されるかどうかは、これは司法裁判所が諸般の状況によって判断することに相なろうと、かように考えておる次第でございます。
#52
○野々山一三君 外務政務次官に伺いますが、蓮見君及び西山君の事件は、先ほど官房長官から私が冒頭に伺いましたように、虚偽の事実が存在した、答弁の上に。つまり、事実が存在しているのにうそを言ったことのために起こったわけなんです。憲法第十五条にいう、公務員は公僕であって一定の者の利益を代表するものじゃないという趣旨のことが書いてありますが、どう書いてありますか、あなたにあらためて聞きます。それが第一。
 第二は、外務大臣は、蓮見君が自首するというような状況にあったので、訴追する、つまり刑事事件として訴追をするというような――告訴というようなことじゃなしに、つまり要請したということがあったけれども、それは公務員法百条にいうところの刑罰に値するとして告訴したわけじゃないが、刑事事件として訴追されるということになったのは結果として同じでしょう、こう答えられた。うそを言った人がおったということは事実でしょう、先ほど答えられた。それが原因なんです。それが原因なんです。そのうそを言った人がいて、そのためにその人は、考え方によれば、というよりは、当然の常識として、憲法十五条に書いている――あなたによく読んでもらいたい、ここで読んでもらいたい。ここであなたの見解を聞きたい。公務員は特定の者の利益を代表するものじゃないということ。言えかえるならば、国益に反するような行為が特定の人の虚偽な発言によって行なわれた、ないしは機密も国会法百四条によって議会の調査を受け、資料を提出しなければならない。そして、その趣旨がかりに秘密であっても、誠心誠意最大限に明らかにすることによって国政調査権を守るのであるということも、どの大臣も言われたわけです。お聞きになっていましたか。そのてととのかね合いにおいて、先ほど辻法務省刑事局長が言われた見解とどういうことになるのか、あなたにもう一回聞きたい。
 これは、もう少し補足いたしましょう。相当まわりがうるさくなってきた。つまり、秘密文書というものを一、二の三で、秘密会でこれが事実かどうかという存在を確認をする。こういうような国会調査権というものを、ないしは国会法百四条というものを否定するような――と言わなければならないような行為が行なわれる。そのために、国益を害するということが起こった。そこで、憲法十五条の精神に基づいてこれが明らかにされたということは非常に大きな分かれ道なんです。非常に大きな重大な人権に関する問題です。司法権の乱用ということにも値する問題です。憲法の無視ということにも値する。国会調査権の否定ということにも値する。あなたの率直な、責任ある見解を承りたい。
#53
○政府委員(大西正男君) お答えになるかどうかわかりませんが、問題は、吉野局長のいま御指摘のありました発言問題と、そうしていま訴追をされております二人の人の秘密漏洩の問題とは、これは本質的には違うと私は考えます。つまり、吉野局長の発言を端といたしまして、その後、国会におけるいろいろの経過を経て、そうして何といいますか、外務省における秘密文書の特定のあるものが、こういう文書が外部に漏れたということが経過として判明をしたわけでございます。しかし、この秘密漏洩は、それよりもすでにさかのぼる昨年の五月末から六月のできごとでございまして、そのこと自体が国家公務員法に違反をする、刑罰をもって臨まれる事犯なのでございます。そのことが国会におけるいろいろの経過において判明をしたというにすぎないのでございます。したがって、これが判明をいたしました以上、これまた刑事訴訟法によりまして、本来ならば、国家公務員はそういう事実を知ったならば告発をする義務があるわけであります。しかし、本件は蓮見事務官がみずから外務省の上司に対して、これを法律的に自首と言えるかどうかは私にはわかりませんけれども、みずからそういうことを申してまいったという経緯があるわけでございます。したがいまして、外務省としては、今日、野々山委員が御承知のとおり、告発という形式はとりませんでしたけれども、司直の手にこれをゆだねたということは刑事訴訟法のいうところと精神は一緒であろうと、このように思うのでございます。
#54
○野々山一三君 あなた、去年の六月にこういう密約が存在し、その当時からそういう傾向があった問題が、その後ことしの国会において指摘をされたので、結果として公務員法上の秘密漏洩ということになったんだと、こういう趣旨のお答えだと思いますが、もともと、去年の六月とかどうかということは関係ないのですよ。何年だってかまわないんだ、極端に言えば。存在しているのに、国政調査権を否定して、これを明らかにしなかった。そうして、中身の問題について言えば、たくさん私は意見があるのですが、ここは、きょうはもう時間がないので次の機会にあなたに、いまのような答弁ならばさらにあなたの見解を承りたい。大きな間違いですよ。重大な反省をしなさい。
 第二に、あなたはどういういままで経歴をとっていらっしゃいましたか、聞きたいのです。私がそれを聞くのは、ここにも公務員の諸君がたくさんいる。あるいは会社の経験のある人もいるでしょう。たとえばある重役なら重役に関する問題とか、会社でいえばね、あるいはある、公務員でいうならばその扱いが重大な問題である場合、ちょっと触れた、あるいは漏らしたということであってもいい、例ですから。それが問題になった。問題ということばを使いましょう。そして何々参事官とか、何々局長とかいうものと国会との間に、先ほど第一の質問で指摘をしたように、一、二の三でポケットから出して、これが本物だということになったら、さてだれが出したんだろうかということがずっと騒がれる。調査をされる。そのときに、一般的人間の欠点でしょう、これは。どうも自分がやったかもしれない、あるいはやったことが問題になるかもしれないというようなことになりますと、これはいうところの何となく責任を感ずるというような意識が作用するのは人間の通例ですよ。私の言っていることがわかりますか。それを、結果として自首するというような事態であったので、告発ということを避けて要請ということにしたが、結果的に公務員法上による刑罰によって訴追された、こういうようなことというものは、これはなかなか法律論、観念論では非常にむずかしい問題ですけれども、人間の世界では非常に重要な役割りを果たすものですよ。そうでしょう。あなたも政治家だ。私も政治家だ。私は政治屋かもしれませんがね。いろいろなことを頼まれる。いろいろなことを要求される。いろいろなことを言う。そして広く国民の皆さんとの間にコミュニケーションが存在する。義理もかかる。やれあのときはすまぬことしたというようなこともあるだろう。あれは何とかしてやらなければいけないというようなことが作用するでしょう。それが法律あるいは規則というものに照らしてみてぶつかることだってありますよ。抵触することだってありますよ。障害することだってありますよ。それをしも、やっぱり人間的感情としては、やはり何とかしてやらなきゃなあというふうに動くのは、これは人間の率直な、欠点といえば欠点かもしれないが、持ち味ですよ。話を戻しましょう。そういう環境のもとにおいて蓮見君が自首するというようなことであったので、結果として告発をしなくても、公務員法上の機密漏洩という行為をなしたとして刑事上の訴追を受けるだろう、これはあたりまえだ、こんなふうに考えるのは大きな問題を起こしますよ。裁判はどうなるかしれません。私はあえて言いましょう。この弁護士がどういう人であるかもよく知ってますよ。どういうところに生活をしているかもよく知ってますよ。どういう生活の態度をとっているかもよく知ってますよ。本宅ではない。市ケ谷の自衛隊の裏にあるマンションにりっぱな部屋を持って、そこで寝起きしているのだ、この弁護士は。重大な問題ですよ。というようなことまでここであえて触れねばならぬ。先ほどのあなたの答弁では私はどうしたって納得ができない。もう一回聞きましょう。
 事の原因は、存在している事実を否定し、うそを言った、それが公に国政調査権というものによって指摘をされた、その間に介在したのは蓮見君であり、西山君であった。その結果、蓮見君は、私は――私流に言うならば、憲法十五条にいう特定の者に奉仕するというものではない公務員の本質に触れてなした行為である。あなたのほうは、あらゆる合法手段を講じて蓮見君を追跡調査した、その結果自首した、ないしは自首するようなことになった、ということではないですか。違いますか。私は、これは法廷ではないので、別な意味でこの委員会の問題の本質に戻ります。とことんまで明らかにしなければならぬ。国政調査権と機密漏洩ということ、機密というもの、秘密というもの、そういう憲法上の問題、それとして問題にしているのだから、あらためてもう一回あなたの意見を聞きたい。
#55
○政府委員(大西正男君) これまたお答えになるかどうかわかりませんが、国会におけるいろいろのやりとりによりまして、問題の秘密電報が漏洩をしておったということが、その漏洩をした時期よりも相当時日がたった後に判明をしたということは、この起こった事案に対する捜査の端緒でありまして、事案と事態とは別の問題だと私は思うのでございます。そういうことを先ほど申し上げたわけでございます。そうしてこの官房長官からかねてお示しになりました「国家機関における各種の秘密の基準」、このお示しに従って外務省もきょうお手元へ規則の改正をしてそして差し上げたわけでありますが、この基準によりましても、例示されておるその例示の中にまさに沖繩交渉の際におけるそういう電報のやりとり、これはやはり秘密ではないかと私は思うのでございます。したがっていま裁判所において、問題はこれから裁判を受けることでございましょうが、その結果について私たちは何も申し上げる資格はございません。裁判所に一におまかせしなければならないところでございます。ですけれども、私どものいわゆる行政解釈としては、この問題はやはり秘密の漏洩ということがその後の経過によって消えるものではないのではないか、こういう行政的な立場における解釈を持つわけでございます。もちろんしかし裁判所は行政庁の解釈に縛られるものではございますまい。それは独立の司法権に基づいて裁判を断行されるものと存じております。そういうことでございまして、いまお尋ねになりました御趣旨に対して答弁になるかどうか私にはよくわかりませんけれども、以上をもって一応お答えといたしたいと思います。
#56
○野々山一三君 あなたは、そういうお答えをなさいますと、あなたにもう一回聞きますけれども、イギリスの議会でプリヒューム事件というのがございましたね。あれは政治的責任というよりはむしろ虚偽の発言をした、そういうことでしょう。あなたはいま答弁の際に、事実と事態とは別だ、こうおっしゃった。事実は何ですか。日本が負担すべきものでないものを日本が負担しているからそれを秘密ということにした。そしてそれがあるかないかと言ったら、ありませんと言った。虚偽の行為をなし、虚偽の発言をした。あなたがいまのような答弁をするならば、あなたの政治責任を私は追及しますよ。なぜかといえば、官房長官はいつもイギリスの何とか学者の何とか、外国の有名な学者なり学説を引用される。これは私は否定しないのです、官房長官の言われることを。言うならば、民主主義国家というものの国政権と――行政権と、国会における調査権というものとの関係がどうなっているかという意味で指摘をされる非常なぼくは善意な御苦労の結果だと思う。
 そこで、いま申し上げたように、たとえばこの沖繩返還協定に関するものが秘密であった。秘密であったということはだれがきめたんですか。だれがどういう間違いをしたんですか。どういう偽装をしたんですか。それならば、それが結果として犯罪者を構成するんですから、重大なこの委員会で調査すべき案件です。答えられないならばきょうはこれで質問を留保しますが、重大な問題ですからもう一回聞きます。
#57
○政府委員(大西正男君) あえて申し上げますけれども、外務省並びに政府は、沖繩協定に関して密約があったということは申しておりません。これは野党の方々の御見解と見解が違うかもしれませんが、政府は断じて密約がないということを申し上げておりますことも御承知のところと思うのでございます。しかし、その問題は別といたしまして、その間における交渉の過程におけるやりとりそのものを秘密電報として、わが国の大臣あるいは交渉に当たった外務省の当局から、やりとりをしておる電報そのものがこれまた秘密なのでございます。ですから、その電報における、やりとりの過程を記したその電報そのものが秘密であって、それが遺憾ながら漏れた、これがいま問題にされておるわけでございます。ですから私は、吉野局長が、そういう、あるいは電報――私はちょっと正確なことを記憶ではここで申し上げられませんから、その点については留保いたしますが、その内容については終始密約がないということを、外務大臣はじめ外務当局の政府委員はすべてそういう答弁をいたしておると思います。その点は何らうそはございません。これはまさに事実を事実として申し上げておるのでありまして、いまうそであるとかないとか、あるいは不適当な答弁をしたとか言われておりますのは、密約の有無に関してではないのでありまして、その過程におけるいろいろの交渉のやりとりそのものがあったかなかったかという、そういうことについて不適切な答弁をした、こういろふうに私は認識をいたしておりますから、問題は別であるというふうに考えます。
#58
○野々山一三君 あなた、私の質問の意味というものと全然別なことをお答えになっていらっしゃるね。もうあなたと議論したってしようがないですよ。密約があったなかったなんということを私は問題にしてないんです。もっと言うならば、先ほども言ったことですけれども、これはこんなことはここで言わぬでもいいことですけれども、日本が負うべきものでないものを日本が負った、経済的に。これは重大な国損ですよ。そのことを、国損という観点で、密約なんということは私は一つも言っていないんです。あなたは耳が悪いのですか。国損というんです。
 第二は、交渉過程におけるやりとりが電報でなされたこと、それが秘密である、あなたはそう言われる。その秘密が国会で議論になってもありませんと言ったんです。これは問題だ、第二に。日本語わかりますか。そこを私はうそだと言ってるんです。第二について答えなさい。
 第三。あなたは答弁のほうではえらそうにおっしゃるけれども読み上げましょうか。電文は総第二八一八一号五−二八の二一五〇、六月九日沖繩返還交渉総第〇九〇六六ジューン九の一五五〇号、これですよ。こういうことをあなたは御存じなくて、しかもあなたは私の質問に全然関係のないことを答弁しておることに重大な間違いがある。私はあなたの見解をもう聞く必要はない。委員長、こういう状態ですからね、あらためて私はこの問題の本質に戻ります。これは現に刑事事件として問題になっておる最中ですけれども、重大な国政調査権との関係において問題になっておる問題であり、秘密漏洩事件として刑事上の訴追を受けている問題です。相当長時間にわたって秘密というのは何であるかについて質疑をさせてもらった時間を与えてくれたことに私は非常に感謝をいたします。そうしてそれが国会の尊厳というものを発展させる上で何らかの役に立ったのではないかという自負心を持って喜んでおります。けれども、先ほど申し上げたように、問題の本質が正しく掌握されないで刑事事件になっておる。つまり国会を否定した、こういう行為が刑事事件になっていることについて、何にも知らない人に――といっては悪いけれども、重大なことについて御存じない方にこれから質問をしても、この問題は解決しません。そうしてこれが公務員法百条に関する刑事事件として問題になっておる。国政調査権として問題になっておる。憲法六十二条あるいは憲法十五条、六十五条というものに関して問題になっておるという性質のものであり、それは都合によっては刑事上の問題になるであろうし、人権に関する問題でもあります。あるいは運営上の問題、検察及び裁判に関する問題として堂々たるこれはりっぱな問題だと思うので引き続いて質問をしたい。そういう意味でああいう答弁では、ああいう方では私の言っておることもわかってもらえないような人にお聞きしてもしようがないので質問を保留いたしまして、次の機会に譲ります。
#59
○委員長(阿部憲一君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#60
○委員長(阿部憲一君) 刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず政府から趣旨説明を聴取いたします。前尾法務大臣。
#61
○国務大臣(前尾繁三郎君) 刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、刑事訴訟法第三十八条の規定によって弁護士の中から選任される弁護人、すなわち、いわゆる国選弁護人に支給すべき旅費のうち、船賃については、裁判所が相当と認める等級の運賃によって算定することとしようとするものであります。
 現行の刑事訴訟費用等に関する法律によりますと、運賃の等級を三階級に区分する船舶による旅行の場合に国選弁護人に支給される運賃は、中級以下の等級の運賃に限られることとされておりますが、国選弁護人の職責、社会的地位及び国家公務員等に支給される旅費額との権衡を考慮いたしまして、これを裁判所が相当と認める等級の運賃によって算定することとし、上級の運賃を支給することもできるように改めようとするものであります。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
#62
○委員長(阿部憲一君) 以上で説明は終了いたしました。
 午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十一分開会
#63
○委員長(阿部憲一君) これより法務委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#64
○佐々木静子君 それでは私から伺いますが、実は法務大臣がお越しでしたら大臣に先に御所見を承って、その後順を追って質問をさしていただきたいと考えておったわけでございますが、御出席の政府委員の方々の御都合もあろうと存じますので、ちょっと問題点だけを先に取り上げてお尋ねさしていただきたいと思います。
 弁護人を選任する権利というものは、これは憲法で明らかに規定されているところでございまして、この司法の近代化というものは弁護権の拡充の歴史と一致するというふうにいわれているゆえんでございます。
 本案においては問題になっているのは国選弁護についてでございますが、この国選弁護の問題を論ずるに当たっては、まずそもそも弁護人を選任する権利、あるいは弁護人が選任を受けて弁護活動をする権利というようなものから、これは問題の提起を進めていかなければならないと思うわけでございます。そういう関係で国選弁護に限らず私選弁護も含めまして、捜査段階における弁護人の選任について若干お尋ねさしていただきたいと思います。
 刑事訴訟法の三十条によりますと、「被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。」わけでございます。この身柄の拘束を受けておらない被疑者については、弁護人の依頼権というものはあまり問題として起こりにくいのではないかと思いますが、いま問題によくなるのは、拘束中の被疑者が弁護人を選任する場合の問題であろうと思います。
 それでまず警察庁のほうにお伺いさしていただきたいと思います。きわめて初歩的な質問で恐縮でございますが、警察に留置中の被疑者に弁護士が弁護人になろうとして面会を求めてきた場合、どのような取り扱いをするように御指示をなさっているか、ちょっと、きわめて一般的な問題ですが、お答えいただきたいと思います。
#65
○政府委員(高松敬治君) 弁護人になろうとする人が訪れた場合にどのような指示を、取り扱いをするか、こういうことでございますか。
#66
○佐々木静子君 さようでございます。
#67
○政府委員(高松敬治君) 被疑者自身が弁護人選任の意思を明らかにして、その弁護人が弁護人になる、こういうことで私はそこで選任届けが行なわれる、あるいはその他の独立して弁護人を選任することができる人がそういう弁護人を選任した場合に、そういう場合に被疑者の意向も一応聞くことは聞きますけれども、そういう独立して選任できる人があればそこで選任届けを出す、こういう形になると思います。
#68
○佐々木静子君 これは一般的にどの場合でもまず被疑者にお尋ねになるわけですか。どういう手続で司法警察職員が被疑者にお尋ねになっているのか。これ一般的な、いまおっしゃった弁護人になろうとする者というのは刑事訴訟法の第三十九条の接見、交通権の問題でございますが、単に一般的な事件で弁護士が弁護人になろうということで警察を訪れた場合、まず司法警察職員はどういうことをされるのかということを説明していただきたいわけなんです。
#69
○政府委員(高松敬治君) もちろん被疑者を逮捕した場合に弁護人を選任することができる旨は当然告げます。それに基づいて弁護人を選任する、こういう場合は、これはもうはっきりしていると思います。
 それから独立して弁護人を選任する者の依頼を受けて弁護人になろうとする場合、その場合には委任状なり、それから独立して弁護人を選任するほんとうの権利のある人かどうかという点を確かめる、そういうことに基づいて弁護人の選任をする、こういうことになります。
#70
○佐々木静子君 これ、いまおっしゃったように留置されている人間が、何々弁護士を頼みたいと言っている場合は、これも問題が現実には一ぱいあるんですけれども、比較的問題として少ないのじゃないかと思うのです。ただ、現実の問題として、自分が逮捕されるということは、普通一般の人間は考えておらないわけで、突如として逮捕される、留置される。そうなると弁護人を選任する権利があると告げられても、その当該被疑者は弁護人に知り合いが全然ない。頼みたいと思っても、何々弁護士というものに頼んだらいいのかさっぱりわからないというようなのが普通の状態だと思うのです。そこへ友人なり親戚の者が留置されたから面会にいってくれということで弁護人が行くわけですね、留置場へ、警察へ。その場合ですね、すぐにお取り次ぎになる場合もあれば、しからざる場合もあるわけなんです。現実の問題として、いま弁護人が当該被疑者が何々弁護人を頼みたいと言っている、知っている弁護士がいる、そういう人の場合は簡単なんです。その弁護士が行けばそこで問題ないわけですけれども、いまも申し上げているように、普通の一般の被疑者というものは、知っている弁護士というのはいないわけなんです。ところが弁護士が行く、いろんな人からの関係で頼まれて面会に行く。その場合に、警察ではどのような取り扱いをするように指示をされているのかということを伺っておるわけです。
#71
○政府委員(高松敬治君) 本被疑者に対してこういう弁護士の人が、こういうことでその弁護人になりたいと、こういうことで見えている。それをどう弁護人に依頼するのかどうかという程度のことは聞いておると思います。
#72
○佐々木静子君 なぜ私がそういうことを取り上げるかといいますと、現実の問題とすると、司法警察職員のほうは、まあ甲という弁護士がいく。ところが被疑者は甲という弁護士の申し出をしてないから、弁護士のほうが幾ら弁護人になろうと思っても、被疑者のほうはその弁護士を指定してないから会わすわけにいかぬというのが、これは現実に警察幾らでも起こることなんです。そういう事柄について何か警察庁のほうで、そういう事実がいろいろ起こっているということを御存じなのかどうなのか。御存じだとすればそういう事柄に対してどういう指導をしていらっしゃるのかということをお伺いしたい。
#73
○政府委員(高松敬治君) 弁護人を選任する権限のある者、つまり被疑者本人なり、あるいは法律で定められている、三十条で定められている独立して選任することができる者、その者の意思を確かめる。私どもいままでやった二、三経験いたしました事例では、被疑者のほうが弁護人を要らないと、こう言っているときに、その弁護人が見えてそういうことをやる。要らないと言っているのだけれども、それじゃもう一回聞いてみましょうということで被疑者に聞く。被疑者に聞いて「それじゃお願いします」という場合もありますし、「いや私はいいんです」と、こういうのもございます。そういうふうでこの点について、格別どうというふうな指導は別にいたしておりません。あくまでも法律に定められておる権限のある者による選任であるかどうかということで問題を考えてやっておると思います。
#74
○佐々木静子君 これは、格別な指導をしていらっしゃらないとすれば、これはぜひとも指導をしていただきたいと思うわけです。といいますのは、当該司法警察職員は、気に入った弁護士であればすぐに被疑者に会わせてくれる、これは現実の問題ですけれども。そうして、何かちょっと気に入らない、あるいは――気に入らないというとちょっと語弊があるかもしれませんが、あるいはまあ忙しいとか、いろんな原因があると思いますけれども、そこで現実に司法警察職員が会わす会わさないということで、まず選択権を持っているようなことが多いわけなんです。これは、弁護士の経験のある者であればもうだれでもいやというほど味わっていると思います。それから、ここは司法警察職員が弁護権というものに対する御認識がまだ十分に行き渡ってないからそういう問題が起こるのかもしれませんが、たとえば甲という弁護士が面会に行く。ところが、確かにいまおっしゃったように、甲という弁護士がいま面会に来ているが君会うかと被疑者に……。それと同時に、君はあの弁護士よりもこっち――あの弁護士はだめだからあれには会わないほうがいい、乙という弁護士のほうが君のためになると思うというようなことを言うということが現実にいろいろ起こっているわけなんです。
 それともう一つ、これは私もつい最近も何度か経験しましたから間違いのないことでございますが、何か、警察官が被疑者と弁護人の面会について交通整理の役でもしなければならないかのように思っているような人がいるわけです。たとえば乙という弁護士が面会に行く。そうすると、頭から、被疑者のほうが、あれは先生の系列じゃないとか、あれはほかのグループの顧問弁護士がいるとか、いやあれはセクトが違うとか、会われても先生のためにはならぬとか、いろいろそういう問題が起こって、現実には何日行ってもなかなか会えないことがあるわけなんです。そういう問題について、警察庁の刑事局長がもし、現実にそういう問題がいろいろ起こっているということを御存じでいらっしゃらないとすれば、これは大きな問題だと思うわけです。
#75
○政府委員(高松敬治君) 「犯罪捜査規範」という国家公安委員会規則がございますが、その百三十三条の第三項には、「弁護人の選任に当たっては、警察官から特定の弁護人を示唆し、または推薦してはならない。」、こういう規定を設けております。私どもは、いま御指摘になったようなのは、甲の系列だとか、系列が違うとか、あの弁護士さんはよくないからこっちのほうがいいんだ、こうだとかいうようなことは、そういうことはこういう捜査規範の精神からいっても、まさかそういうことは申してはおらないと思いますけれども、万一そういうことを申しておるとすれば、それはもう明らかに警察官としては間違いでございます。もしそういうことが――私はもうないように思いますけれども、そういうことを申しておるとすれば、この点については指導を高めていきたいと思います。
#76
○佐々木静子君 その御指導をいただくというようなお約束をいただきましたのでけっこうでございますが、重ねて念のために申し上げておきますと、たとえば先般の沖繩返還のデモなどに際しましても、たくさんの被疑者がつかまる。そこへ、いろんな弁護人がいろんな人からの依頼を受けて警察へ行く。そうすると、警察のほうは、あのグループはたとえば新左翼である、あのグループは総評系である、あるいはこれは共産党系であると、こういろいろ頭からもうきめてしまって、そしてここで交通整理をするわけで、こっちのに会いたいと言っても、いやこの弁護士さんはこっちの系列だというふうに頭から振り分けてしまって、あたかもそれが自分たちの仕事であるかのように思っている警察の方々がおられるわけなんです。これ、弁護人というものは何も被疑者とイデオロギーを同じにする必要も全くないんでございまして、これはどんな思想、信条の人であっても、これは、被疑者は弁護人を頼む権利があり、また、全然思想、信条が異なっていても、これは弁護人という立場で被疑者を弁護する権利がまた弁護人のほうにもあるんでございますから、そういう趣旨を十分に現場の司法警察職員に御徹底いただきたいと思うんです。
 それから、もう一つ重ねて申し上げますが、これ、指定書の問題をちょっと先言ったほうがいいかもしれません。ただ、ちょっとそのことを申し上げておきますと、刑訴三十九条の三項によって、接見禁止の場合に――一般的指定書を受けている場合に、また具体的指定によって面会をするというな場合、この具体的指定を受けるについて、これ、現場の司法警察職員にはよくそういうことがあるんです。その本人が自白をしない、あるいは黙秘を使っている、だから弁護人が出会って話を聞いて、聞いたことを警察へ知らしてくれるならば会わすということを、そういうことを非常に警察官がよく言われるわけなんです。これはそこで押し問答しているといつまでたっても話が進みませんけれども、この弁護人の弁護権というものと弁護人が秘密を守らなければならない刑法上の義務を、これはもうはっきりしていることなんですから、それを侵害するような条件を出して、そしてともかく会わす、そのかわり会わしたからには被疑者からいろんなことを聞きただして、それを警察へ教えてくれるならば会わすという条件を出す司法警察職員が非常に多いわけなんです。これは、それじゃそうしましょうと言うことは、これは弁護人としては絶対に言えないことでございますので、ですから、最低のところ、それじゃ真実を、ほんとうのことを申し上げるようにできるだけ弁護人としても努力しますからと言うこと以外は、これは弁護人も言えないわけでございますね。口が裂けても被疑者から聞いた秘密を捜査官憲にまた筒抜けた漏らすというようなことは、そういう破廉恥的な行為は、これは刑法に触れなくてもできないわけでございますが、そういうとこら辺についての理解が司法警察職員に非常に薄いわけなんです。そういう点についての御指導とか、御教育というものはどのようにやっておられるか、またそこら辺に徹底していないところがあれば今後どのように徹底していただくようにやっていただけるか、お述べいただきたい。
#77
○政府委員(高松敬治君) そういうような弁護人の接見が行なわれた場合に、その内容を聞かしてほしいというふうなことを言っている捜査員は、これは、私は、もう絶対ないと思います。そんな、今日の時代にそういうことを言ってやる、それからまた、それをまた問題にされない弁護士さんも――もしそういうことが事実あるとすれば、それは問題にされない弁護士さんもまずなかろうというふうな感じがいたします。そういう点で、私ども格別にそういう点ではどういう指導をしておるかと言われますと、たいへんそれはとっぴもない、思いがけないことでして、夢にもそういうことは考えてもおりませんし、またそういうことをやってもいまいというふうに思います。ただ、先生の具体的な事実があるということでございますれば、それはいろいろ御教示願えれば、われわれのほうで、そういうことがもし万一あれば、それは非常にたいへんなことだというふうに考えます。そういう点の指導を具体的にひとつやっていきたいというふうに思います。
 それから先ほどの交通整理云々というような問題も、これもまずないと思うのですが、ただ若干考えられるのは、人数の制限がございます、弁護人の選任について。それがいろんな系統からばっとこうきた場合に、被疑者本人に対してどの方とどの方をお願いするのかというふうなことの話の出ることはあろうかと思いますけれども、それ以外には、これもそういう系統が違うとかなんとかいう問題というのは、これはもう警察として口出しすべき問題でもないし、そういう点にもし誤りがあれば、私どもも十分にこれから指導してまいりたいと思います。
#78
○佐々木静子君 その問題、あとでもう少し伺おうと思います。
 いま、こういう問題が現場で起こっておるということは夢にも考えておらないと刑事局長さんがおっしゃいましたので、私は、実はそのようなことを、夢にも考えておらないということをおっしゃったこと自体を夢にも認識しておらなかったわけです。といいますのは、警察官の中に非常にごりっぱな、すぐれた方もたくさんいらっしゃいますけれども、しかし、いろいろと現場におきましては実にいろんな方がおられるわけでございまして、これは例をあげろと言われれば、私自身でもいますぐにでもどこの警察でどういう司法警察職員がこういうことがあったということも直ちにでもいろいろ申し上げることできるわけでございますが、これは実際はあまりにも例が多いわけでございますので、もし具体的に例をあげよとでもいうことでございましたら、弁護士会なりなんなりにはかりまして、そういうデータでも集めさせますれば、これは非常にたくさんの資料が集まってくるのではないかと思います。が、そういうことまでしないでも、今後そういうことが起こらないように、これは極力御指導のほどをお願い申し上げたいと思うわけです。
 それから、次、法務省のほうに、やはり同じような刑訴法三十九条の一般指定書及び具体的指定の問題についてちょっとお伺いさせていただきたいのでございますが、これは、この三十九条の一項と三十九条の三項というもの、この原則と例外が、このごろでは非常に例外が原則のようにだんだんと移り変わりつつあるというようなことで、在野法曹との間でいろいろともんちゃくがよく起こるわけでございまして、日弁連の人権擁護委員会などにおきましても、昭和二十九年以来ほとんど例年のごとくこの接見、交通権の保障ということについて、法務省に対して、あるいは警察庁に対して要望をしたり決議をしていることは御承知のとおりでございます。この一般指定書及び具体的指定書の根拠といたしまして、検察の場合は昭和三十七年九月一日、法務省刑事局(総)第一〇号の通達でございますが、それから警察の場合は、昭和二十四年九月二十四日付の検事総長指示の司法警察職員捜査書類様式例などが通達されているようでございますが、この内容及びその内部的な指示、あるいはそのほかいろんな訓令が出されているのかどうか、そういうことについてお伺いしたいと思います。
#79
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの刑事訴訟法第三十九条第三項の接見の指定の問題でございますが、これについての、いわゆるただいま御指摘の一般的指定と申しますか、指定の根拠ということでございますが、これは経過的にはいろいろございましたけれども、現在は法務大臣の訓令で事件事務規程というものが定められております。そこにこの根拠を置いているわけでございます。
#80
○佐々木静子君 その内容をちょっと御説明いただきたいと思うわけです。
#81
○政府委員(辻辰三郎君) 本文は直ちに取り寄せますが、事件事務規程の所定の様式というところで、接見等に関する指定書と、それから個別的指定の指定書、この二つを定めておるわけでございます。
#82
○佐々木静子君 これは警察庁のほうにもあとから伺うことにいたしまして、一般的指定がされている件について、また具体的に接見指定の日などが、あるいは条件がきめられるわけでございますが、現実の問題として、これは判例などから見ましても、接見指定の日が起訴の日と同一であるとか、あるいは逮捕後八日目であったとか、あるいは結局具体的指定をしなかったとか、あるいは勾留満期前日になって二分間だけ会わしたとか、あるいは検事が不在で結局事実上接見は拒否されたとか、そういうケースがいろいろ出ているわけでございますが、一般的――まあ事件によっていろいろケースはあると思いますけれども、一般的指定が出されている場合に対して、現実に接見日の指定ですね、検察庁のほうとしますと大体どのくらい、申し出があってから何時間ぐらいを標準に御指導なさっているわけでございますか。
#83
○政府委員(辻辰三郎君) 身柄の拘束をいたしました被疑者について接見厳守の決定があったと、そういう被疑者について、刑事訴訟法第三十九条によりまして弁護人が接見なさるという場合の取り扱いでございます。少なくともこれは、捜査に支障のない限りなるべく早い機会に接見を願うのが当然でございます。で、どういう実情になっておりますか、具体的な数字はなかなかはっきりしたものが出ませんけれども、大体現状は、東京地検のある部だけの一カ月間の実情を、まあ荒い調べでございますが一応してまいりましたけれども、大体接見回数が身柄の拘束期間中平均二回ぐらいされておるのじゃなかろうかと思います。そういたしまして、接見の一回の時間は大体十五分というようなのがこの実情であろうと思います。
#84
○佐々木静子君 この憲法の規定からいきますと、憲法三十四条で、「直ちに弁護人を依頼する権利を与へられなければ、」ならないというふうになっておることから考えますと、身柄拘束中に二回ということよりも、問題は、その第一回の接見でございますね。これはおそらくそのときに初めてこの弁護士を選任するかどうかということがきまると思いますので、第一回目の接見というものに対しましては、これは単に拘束期間中に何回会わせたかという問題ではなくて、直ちに会わせたかどうかということが問題になると思うのです。そういう点について法務当局としてどういうふうな御配慮をされるのであるか、おっしゃっていただきたいと思います。
#85
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほども警察庁の刑事局長から答弁がございましたが、最初の場合はおおむねこれは警察段階の問題になろうかと思うのでございます。で、たまたま最初から検事が逮捕したという場合に、検事が最初の段階であるといいます場合には、先ほど警察庁から答弁がございましたような、やはり最初のこの弁護人の選任の問題が起きるわけでございます。これにつきましては、ともかくすでに正規の選任を得ておられる弁護士さんであればこれは問題ございませんが、先ほど御指摘のございましたように、弁護士さんが見えまして、そしてこの選任のために面会をするという場合でございますが、その場合に検察庁におきましては、当該被疑者に、こういう弁護士さんが選任のために見えておるが選任する意思があるかどうかということをよく確かめまして、選任する意思があるということであればその選任手続をとっていただくと、かような考え方で事務を処理しておると思います。
 なお、ただいまこの指定書の根拠は何かという御質問に対しまして、ちょっと答弁を留保いたしましたが、これは事件事務規程の第二十八条というところに規定がございまして、検察官または検察事務官が刑訴第三十九条第三項の規定による接見等の指定を書面によってするときは、接見等に関する指定書を作成し、その謄本を被疑者及び被疑者の在監する監獄の長に送付し、指定書を同条第一項に規定するものに送付することということで、大臣訓令で定めておるわけでございます。
#86
○佐々木静子君 時間の都合がございますので、もうあと一点ぐらいにとどめたいと思いますが、これ、私というか、弁護人のほうから、あるいは被疑者の側から見るとよくわからないのですが、この一般的指定書を出す権限ですね、これは検察官あるいは検察事務官が出される場合と、司法警察職員が出される場合とあるのですが、その分担はどういうふうに内部的にきまっているわけですか。
#87
○政府委員(高松敬治君) 警察の身柄留置期間である四十八時間につきましては、警察官が必要があるときにはそういう指定をする場合がございます。それから勾留からあとの段階におきましてはこれは検察官のほうの問題でございます。
#88
○佐々木静子君 そうすると、勾留以前は全部司法警察職員にきまっていますか。
#89
○政府委員(高松敬治君) 四十八時間以内に捜査の必要があって、それの時間を指定する場合がこれ間々ございます。御承知のように、いま時間が非常に短いと、こちらの持ち時間が。それから非常に事件の被疑者が多数あるというふうな場合には、ちょうど取り調べの最中であって、いまはちょっとぐあいが悪い、だからもう少しあとにしてほしいというふうなことは、これはままある問題でございます。しかし、警察の持ち時間内にそれが選任が全然行なわれないということは、これは毛頭ないと思います。大体当日で、多少時間が何時間か、そのときから一時間後とか二時間後とか三時間後とかというふうなあとになることはあっても、その間には選任届は大体行なわれておる。まあきわめてまれには翌日、逮捕のした時間にもよりますけれども、そういうものがあるかもしれませんけれども、それはむしろ例外的であろう。むしろ問題は四十八時間という非常に短い時間の間の問題でそういうことが若干おくれる場合があるというふうに私ども理解しております。
#90
○佐々木静子君 これは実はもう少し問題をお尋ねしたいのでございますが、こればかりやっておりますと時間がかかると思いますので、少なくともこの一般的指定というものが乱用にならないように、特に司法警察職員のほうにおかれて警察庁のほうでの御指導をお願い申し上げますとともに、非常にこれが弁護人選任の問題についての一番現実的な大きな問題になってきておりますので、捜査当局におかれましても十分にこの乱用にわたらないようにお願い申し上げたいと思います。それで問題移りたいと思いますので、警察の方、けっこうでございます。
 さて、この本法案で議題となっております国選弁護につきましても、憲法三十七条に、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」と。この国選弁護というものがこれは憲法上の要請とされてからすでに四半世紀というものがたっておるわけでございますが、いまなお国選弁護におきましてこの制度自体さまざまな問題をかかえていると思うわけでございます。いま主として捜査段階におけるこれは私選の場合でございますが、選任のことをお尋ねしたわけでございますが、国選弁護の選任方法について具体的に裁判所のほうからお述べいただきたいと思います。
#91
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 被告人が起訴されますと、裁判所のほうは起訴状の謄本を被告人に送達するわけでございますが、その際にあわせて国選弁護人の選任についての照会という文書を被告人に出します。それによって必要弁護あるいは任意弁護の有無を問わず国選弁護人を請求するかどうかその意思を確かめて、もし被告人のほうから、国選弁護人を頼みたいという請求がございますれば、これは日本弁護士連合会と裁判所の間の協議の結果、一応推薦を各弁護士会に原則としておまかせする形をとっておりますので、こういう被告人について国選弁護人の選任の請求があった旨、その対応する弁護士会に通知をいたすわけでございます。そういたしますと、弁護士会のほうでは、あらかじめ国選弁護人の受任者名簿というものがつくられておるようでございまして、その順点で国選弁護人の候補者となるべき者を推薦していただく、その分を裁判所のほうとしては選任するというような手続が通常行なわれておるわけでございます。もちろん弁護士会に選任をお願いする分が原則でございまして、特定の分について裁判所が相当と認める場合には直接人を指名で選任の推薦方をお願いするという例もございます。
#92
○佐々木静子君 いま概括的に御答弁いただいたのでございますが、具体的に一つずつお伺いさしていただきたいと思いますが、これは昭和二十三年六月九日に、最高裁の刑事第三千四百五十五号の高裁長官あるいは地裁所長事務総長通達によって、一応各裁判所は、官選弁護人の人選については、弁護士会に一任することになったという旨の通達が出ているように承っておるわけでございます。その後も通達が出ていると思いますが、国選弁護人の選任ということについて、裁判所から弁護人の選任に限って通達が出されたことがあるかどうか、そのことを伺っておきたいと思います。
#93
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いま佐々木委員から御指摘のございました通達は、刑事訴訟法の適用になる前の段階の通達でございますが、その後刑事訴訟法が施行されまして、いまお述べになりました通達と同趣旨の内容の通達をあらためて出しております。それ以外には特段にはございません。
#94
○佐々木静子君 そうしますと、その後この国選弁護の、これは選任に限ってお尋ねするわけですが、選任方法について日弁連と最高裁との間で協議をなさったことがあるのか。あるとすれば何回ぐらい、どのような内容の協議をなさったか、お答えいただきたいと思います。
#95
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたとおり、この通達を改正するとか、そういうような趣旨での弁護士連合会との協議というものは行なわれてないと思います。
#96
○佐々木静子君 これは、実はもう少し日程的に余裕がありましたら、日弁連の国選弁護人会の方にもこの参考人で来ていただいてお尋ねしたいと考えておったのでございますが、それだけの余裕もございませんでしたので、これは日弁連にお尋ねするのが適当だと思うのでございますが、一応最高裁が日弁連に委託されているわけでございますから、最高裁のほうにお伺いいたしたいと思いますが、この国選弁護人選任について日弁連がどのような取り扱いをしているか、まあ具体的にいいますと、たとえば大阪弁護士会では国選弁護運営に関する規則というものを設けまして、昭和四十六年の四月十七日より施行しているわけでございますが、他の弁護士会にも同様なことが行なわれているかどうか。また日弁連は具体的にどのような運営をしているか、お答えいただきたいと思います。
#97
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いまお尋ねの大阪弁護士会の国選弁護運営規則というものは私どもも拝見いたしておるわけでございますが、そういうもので直接弁護士会と私どものほうで話し合いということはございませんので、そういう規則が他の弁護士会にどの程度行なわれているのかは、私どももよく承知いたしておりません。ただ札幌弁護士会につきましては、やはり同様に国選弁護に関する規則がつくられているように、たまたま承知しているだけでございます。内容を見ますと、いずれも受任する際の手続を定めておられるようでございますので、これは各弁護士会とも、中身としては共通であろうかと存じますので、大多数のところは、やはりそういう種類のものを、私どもは承知いたしておりませんけれども、おつくりになっておられるのではないかというふうに存じております。
#98
○佐々木静子君 いま特にはっきりした規則というものは、最高裁のほうでも大阪弁護士会あるいは札幌弁護士会のものを除いては、確定的におつかみになっていらっしゃらないようでございますので、まあその点についての質問はこのあたりにとどめます。
 次に、非常に基本的なことでございますが、この憲法の規定で「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」云々、この刑事被告人というのは、これはいつから刑事被告人になるのか。起訴状が裁判所に送達されたその時点に刑事被告人になるのかどうか。これは法務省のほうでも裁判所のほうでもけっこうでございます。
#99
○政府委員(貞家克巳君) 「被告人は、」とございますので、公訴が提起されたとき、つまり、公訴提起が効力を生じたときからというふうに考えております。
#100
○佐々木静子君 いえ、私もう少しこまかくお尋ねしているわけなんです。その公訴提起という、まあいつをもって公訴提起というか。たとえば起訴状が裁判所に送達された時点をもっていうのか、あるいは検察庁の手を離れた瞬間をいうのか、あるいはまた考え方によれば、起訴状自身が被告人に到達された時点というような解釈もないではないと思うのでございますが、そこのところの御見解を伺っているわけです。
#101
○政府委員(貞家克巳君) 検察官が公訴を提起したとき、つまり起訴状が裁判所に参ったときだというふうに考えております。
#102
○佐々木静子君 これは裁判所も御同様でございますか。
#103
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 同様に考えております。
#104
○佐々木静子君 この起訴状が裁判所に送達されてから、いま若干概括的に国選弁護人がきまるまでの手続をお伺いしたわけでございますが、じゃ、そのときの場合にもよると思いますが、大体起訴状の送達を受けてから当該被告人に国選弁護人がきまるまで、日数的に何日ぐらいできまっておりますか。
#105
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 起訴状が提出されますと、先ほども申し上げましたように、直ちに被告人に対して起訴状の謄本の送達をいたすわけでございますが、その際にあわせて弁護人選任に関する照会というものを出しております。それが、大体回答について期限を限っておるわけでございますが、通常まあいろいろ被告人のほうとしても考慮を要することもあろうかというふうに考えられますので、大体二週間ぐらいの日にち内に回答してもらいたいということで出しております。その二週間内にもちろん回答があれば直ちにそれから手続が始まるわけでございますが、二週間にもし返答がないと、またあらためて意思を確かめるというようなこともございますが、大体のところは二週間ぐらいのところで一応被告人のほうからの選任についての意思が返ってまいります。それから裁判所のほうが弁護士会のほうに通知をいたしまして、弁護士会から御推薦いただくのに大体約一週間ということが通常の実情ではなかろうかと思います。したがいまして、起訴されましてから国選弁護人が選任されるまでには約三週間ぐらいの日数がかかっておるのではなかろうかというのが、いま私どもが考えている時間でございます。
#106
○佐々木静子君 これは国選弁護人によって弁護してもらう被告人、特にまたそれを弁護する弁護人の立場に立ちますと、これは第一回の公判期日よりもできるだけ早い時点に、一日でも早い時点に選任をきめてほしいというのが、これはまあ準備の都合もあり、いろんな訴訟活動の都合もございますので、それが強い要望でございますが、そうすると何か大体公判期日の何日前までには必ずきめているというような一定の標準というようなものがあるかないか。また現実には何日前ぐらいに平均的にきまっているのか。これは、ちなみに申し上げますと、大阪弁護士会の場合は必ず一月前にというのを、これは規則でも、先ほど申し上げました運営規則で設けているわけでございますが、一般的にどのようになっているのか、そのことについてお伺いしたいと思います。
#107
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 弁護人が選任されるまでに約三週間ぐらいの日数がかかると、これは被告人の意思を確かめたり、あるいは弁護士会の事務的なことを考えますと、これをさらに短縮するということは非常に困難ではなかろうかと存じます。
 それからもう一つ、第一回公判の期日の指定までの間に、弁護人にどの程度準備の期間があるかということでございますが、これはまあその事件事件によって準備の内容が異なりましょうから、各裁判所が記述してされる際にいろいろ考慮されておられることと思いますが、大体弁護士会のほうからの御希望もございまして、準備のためには約一カ月ぐらいかかるので、受任してから第一回公判期日との間が約一カ月ぐらいおけるような形で選任してほしいという御要望が出ておりまして、大体それに沿って各裁判所は選任をされておられるのではなかろうかというふうに思っております。
#108
○佐々木静子君 これもいろいろ手続上のことがあると思うのでございますけれども、まあ現実に弁護を担当する弁護人の側からの要望とすると、一日でも早くということでございますので、何かその手続を簡略できる、あるいは最もスピーディーにやれるような具体的な方法でも御検討いただけましたら、ぜひとも少しでも早く、これは刑訴法の規定からいっても、刑事被告人という身分の者は弁護人がついているというのがたてまえでございますから、ぜひともそのようにお願い申し上げたいと思うわけです。そしてまた、公判にさえ間に合えば弁護活動が十分できるかというと、そうではないのでございまして、その間にあるいは勾留理由の開示の請求をやろうかとか、あるいは保釈の問題その他いろいろな問題も起こってくると思いますので、やはり一日でも早く国選弁護人が付せられますように、実際の運営上の御配慮をお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、これはいま、いつ刑事被告人になるかというようなことを申し上げましたので、それに関連しまして、そうすると国選弁護人がいつ国選弁護人でなくなるのか。まあいろいろな場合の解任とか辞任とかいう問題じゃなくて、通常に国選弁護を受任した場合は、いつ国選弁護人はその弁護人としての権利あるいは義務から免れるのか、そのことを御説明いただきたいと思います。
#109
○政府委員(貞家克巳君) 刑事訴訟法第三十二条二項によりまして、この弁護の選任の効力はその審級に限るということになっておりまして、国選弁護人の場合も同様に考えられるわけでございます。そこで、審級が終了するまでは国選弁護人の地位を失わないと考えられるわけでございますが、しからばいつ審級が終了するかということは、いろいろ議論がございますが、判決宣告によって終わるということではございませんで、上訴いたします場合には、上訴申し立てによって移審の効力を生ずる、つまり具体的に申しますと、訴訟記録が上訴審に送付された日というふうに考えられるわけでございますし、上訴いたしません場合には、上訴期間の満了によって裁判が確定したとき、このときまで国選弁護人の地位が残っていると申しますか、その効力があるというふうに考えられるわけでございます。
#110
○佐々木静子君 同じ問題について裁判所のほうからも御答弁いただきたいんですが……。
#111
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 原則はただいま貞家調査部長の申されたとおりだと存じます。ただ、移審の効力ということは学説上の若干争いもございまして、上訴の申し立てのときに移審の効力が生ずるという考え方もあるようでございますので、その点は先ほど上訴記録が上訴審に送付されたときというお話しもございましたが、そういう両方の考え方があろうかと存じます。
#112
○佐々木静子君 そうすると、上訴をしなかった場合には、上訴申し立て期間の満了あるいは上訴権の放棄をしたときというふうに理解していいわけでございますね。
 で、私はなぜそのことをお尋ねするかと申し上げますと、実は私も御答弁いただきました裁判所あるいは法務省と同じ考え方を持っているわけなんでございますが、現実的には完結期日までに国選弁護人は報酬請求書を出さされる、出すように事務手続上なっていると思います。これは私、どこの裁判所もそうなのかということをよくわかっておらないんでございまして、これは大阪高裁管内の司法事務協議会における裁判所より弁護士会に対する御要望によりますと、これは国選弁護人の報酬請求書は判決宣告期日までに提出されたいというような御要望があり、弁護士会もこれを了承しているわけなんです。各裁判所においてもそれと同じ取り扱いをしていられるかどうか。
#113
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) これは法令の規定上判決宣告までに請求を出さなければならないことになっておりますので、各裁判所の取り扱い全部そのようになっておろうかと存じます。
#114
○佐々木静子君 これは私実際問題として矛盾があると思うわけです。この判決宣告までに報酬請求書を出すわけですけれども、これは判決にその国選弁護人が立ち会うということも、これも弁護活動の中の一つであり、立ち会うか立ち会おないかによってこれは報酬額も変わってくるのではないかと思うわけです。
 それから、いまお話にございましたように、一審が確定するまで、あるいはいま御説明にありましたその国選弁護人の権利義務というものはこれは判決確定まで、あるいは上訴するまであるわけでございますから、その間においてまあ一番重大な問題といえば上訴するかどうかということの相談に乗らなければならないわけでございますし、そして上訴するとすれば、これは原審の弁護人がその権限に基づいて上訴の申し立てもしてあげなければならないことも起こり得ると思うのでございます。そういうふうな費用も当然これは弁護人の活動費用、報酬費用の中に入ってくるんじゃないかと思いますが、その点が、そういうことをやるかやらないかまだわからない時点において報酬請求書を出すというふうに事実上行なわれている。そこら辺に事務処理的な矛盾があるんじゃないか、ひいては報酬請求書だけ出してしまったらあとは何だか責任を免責されたようなかっこうになってしまうのではないかというふうに思うのでございますが、そのあたり何とかもう少し具体的な義務遂行と相マッチするような事務手続というものをお考えになる御予定はありませんですか。
#115
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一応判決宣告、裁判が終了するまでに請求をされなければならないということに法律の規定で定められているので、そういう請求書をお出しいただいておるわけでございますが、事実上その請求書は請求をするという形で、内容の明細等を御要求しておるわけではございませんので、実際上のところはもちろん判決言い渡し日の出頭日当とか、あるいはその後の上訴の相談に応ずる活動という分も含めて報酬は支給されているというふうに考えてよろしかろうかと存じます。
#116
○佐々木静子君 実際はそのように報酬が支給されているということを伺って、けっこうだと思うわけでございますが、私がなぜその問題を取り上げるかといいますと、これは数年前でございますが、これも大阪地裁であった事件でございますけれども、死刑事件のある国選弁護人が弁護をいたしまして、そしてそれは強盗殺人事件であったのでございますが、そして一審が死刑の判決が言い渡された。ところがその国選弁護人は非常に老齢な方、お年寄りでございまして、健康が非常にすぐれなくて、最後の弁論だけは力一ぱいやられたけれども、そのあと寝込んでしまわれた。したがって判決にも立ち会われなかったし、その後の処置についての相談に乗ってあげるチャンスがなく、そして死刑の判決を受けた本人はぼう然といたしまして、そのまま上訴の申し立てをせずに確定してしまった、そういうケースがございます。その当時大阪弁護士会の人権擁護委員会がその問題を取り上げまして、何とかこれを救済する方法はないかということで、大阪弁護士から弁護人を選任いたしまして、上訴権の回復の申し立てをいたしたのでございますが、結局上訴権の回復は認められずに確定し、死刑が執行されてしまったわけでございますが、こういうふうな具体的に、これは病気で倒れた国選弁護人自身の責任であることはむろんのことではありますけれども、ただ制度的に、弁論が終わったらもうそれで報酬請求書を出して形の上で裁判所と縁が切れてしまうというところに、何かそこで免責されるというふうな意議が弁護人のほうにもあるいは裁判所のほうにも、あるいはその国選弁護を受けた被告人自身も、もう国選だからそれ以上の相談には乗ってもらえないというふうな意識が内在しているんじゃないかと思うんです。ですから、そういう問題について、報酬請求書を出すというようないろいろ手続的な問題があろうと思いますが、実質においてあるいは二審で死刑が変更されたかもわからないというような、こういうふうな人間の非常に大きな運命を左右する問題を起こすことがあり得るわけでございますので、そのあたりの事務手続あるいは運営について何とか御検討いただきたいと思うわけなんですが、いかがでございますか。
#117
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 法律の規定によりますと、裁判のあるまでというような形になっておりますが、いま佐々木委員御指摘のような問題もございましょうが、実際問題としては、国選弁護人が選任されますと裁判所のほうから選任命令書をその担当の国選弁護人の方にお渡しするわけでございますが、その際にあわせて国選弁護の請求書もお出しいただいているというような状況でございまして、請求書を出せばもうそれで自分の仕事は終わりという感じが与えられることのないように事実上はいたしておるわけでございます。弁護人といたしましてはもちろんその審級が終わるまで弁護活動をなすべき義務があるというふうに考えられますので、ことに判決の言い渡しがなされましたならば、それについて控訴するのかどうかということは一番重要なやはり相談ごとでございましょうから、それらについては十分被告人と打ち合わせておられることが事実ではなかろうかと存じますし、また、先ほど佐々木委員が御指摘になりました具体的事実については私どもも必ずしも十分承知いたしておりませんが、一般的に死刑言い渡し事件というようなきわめて重い刑罰に処せられるような事件につきましては、判決宣告の際に弁護人が出頭する機会が得られるように弁護士のお差しつかえの有無を尋ねて言い渡し期日を指定しているのが各裁判所の取り扱いではなかろうか、かように考えております。
#118
○佐々木静子君 いま死刑事件と国選弁護人のことにはからずも問題が進んだわけなんでございますが、これは、かなりあの当時話題になりました昭和三十五年の最高裁における死刑事件の国選弁護人、あるいは東京高裁における同年の死刑事件の国選弁護人が、記録を読んでも死刑が相当であるという趣旨の国選弁護をしていろいろと問題になったことがございますが、その後の経過についてもあとで触れさしていただきたいと思いますが、死刑に該当するような重大事件について国選弁護人を複数につけるというようなことは、これは法律上可能なのかどうか。
#119
○政府委員(貞家克巳君) 刑事訴訟法上それを明文で禁止する規定はございません。したがいまして、二人つけることが違法であるかどうかという問題になりますと、これは一がいに違法であると申すことはできないかと思います。ただ、刑事訴訟規則その他の規定を見ますと、国選弁護人が複数であるということを予想される状況がございませんので、これは一種の水かけ論になるかもしれないと思いますが、その点は予想はしていないのではなかろうか。しかし法が明らかに禁止しているということはないのではないかということを考えております。
#120
○佐々木静子君 これは私思うんですけれども、刑事裁判には重要事件と軽微な事件と分かれておりまして、死刑に該当するような重大な事件はもちろん合議体で処理する、そして三人の裁判官、そのうち少なくとも一人は老練な裁判官が裁判に当たるというような法のたてまえから考えますと、この国選弁護人が重大な事件でただ番号順に順番にだれかが担当するというふうなことはあるいは適当でない場合も起こり得るのではないかと思うわけです。ただ、いまも御答弁いただきましたように、国選弁護人の選任というものが日弁連あるいは各単位弁護士会に自主的にゆだねられている。弁護士の場合は、これは判事と判事補の区別があるように弁護士の中にいろいろ区別があるというものでもございませんので、全く何十年もやっている人も弁護士登録したばかりの人もこれは同じように権利と義務とを持っているわけでございますから、そこを弁護士会が事案によって選択するということもこれは事実上非常な弊害が起こってくると思うわけでございますが、ただ現実の問題として、重大事件について適当でないと思われる弁護人がされるような場合もままあるのではないかと思うわけです。たとえば先ほど申し上げましたように、お年寄りであって、もうほとんど御病気である、健康が非常に悪いというような場合もどうしても十分な弁護活動ができないのではないかと思うわけでございまして、そういう場合に二人弁護人がついておれば、かりにどのような摘出方法によったにしてもその欠点をある程度カバーしていくことができるのではないかと思うのでございますが、これは裁判所のほうに伺いたいんですが、複数の国選弁護人を重大事件につける、死刑に該当する事件については複数の弁護人をつけるというようなことを御検討になったことがあるかないか、またそういうことについて、これは最高裁のお立場というよりも、刑事裁判の御経験深い刑事局長のお立場としてお答えいただきたいと思います。
#121
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一応現在の登録された弁護士の方々はそれぞれ資格ある弁護人ということの要件を満たされておられるのであろうと存じますので、特定の分についてこの人では適当でないというような形にするのはいかがかというふうに存じております。ただ、事件によりましてはきわめて特殊で、通常の方々ですとあるいは専門分野ではないというようなことから、必ずしも適当な弁護活動ができないというような事件がございました場合には、裁判所のほうとしてはその事件に適当な方を事件の内容を知らせましてお願いする、そのために弁護士会のほうも通常の順番ということに必ずしもこだわらないでその事件に適した人を選んでいただくということは実際上もございますし、またそういうことである程度この問題はカバーできていくのではないかと存じます。
 いまお話しの複数の問題につきましては、先ほど貞家調査部長から法解釈的なことが述べられましたけれども、一般的に申しまして、私どもは一応現在の法の規定はそういう複数の国選弁護人がつくことを予定しておらないように存じますし、法の規定自体が複数を予定していないのではないかというふうに考えておりますので、一応国選弁護制度全体をあらためて再検討するというような場合は別といたしまして、現行の刑事訴訟法のたてまえから考えますと、一応単数ということで考えるべきものではなかろうかというふうに考えておりますので、特にその点については全体としての問題として取り上げるべきじゃないか、それだけを切り離して考えるということもいかがかと考えられるのでございます。
#122
○佐々木静子君 それから実は本改正案の一番問題になっているのは交通料金のことでございますけれども、これは裁判所のほう、あるいは法務省のほうでも十分御承知いただいていることと思いますが、国選弁護人が最も強く要望しておりますことはこの旅費の増額ということもさることながら、一番必要としているのは記録の謄写費用でございます。これはいままでの判例などによりましては、訴訟記録の謄写費用も弁護士報酬の中に含むというような御見解のように承っておるわけでございますが、現実の問題としてこれは記録の謄写代というのは非常に高くついておるわけでございまして、おそらく良心的な弁護をするために受任した事件を普通の一般事件と同じく記録を謄写したならば、報酬額をオーバーするのではないかと思うわけです。足が出るくらいのところでは足らずにもっとたくさん出るのではないかと思うわけでございます。この記録謄写費用の実費弁償ということですね、これを弁護士会がかねてから強く要望しておるわけでございますが、そのあたりについて法務当局あるいは裁判所のほうではどのようにお考えになりますか。
#123
○政府委員(貞家克巳君) さきに御指摘のとおり弁護人の弁護活動に要する費用といたしましては純粋な精神的と申しますか、頭脳的労務のほかに記録の謄写でございますとかあるいは被告人、関係人と何回も面接するというようなことが当然起こってくるわけでございます。ただ、しかしながらそういったものをすべてこまかに計算いたしまして精算の手続をとるということになりますとこれまた実情に合わない点が出てくる面もございますし、また、そういったものにつきましては単に費用を弁償すれば足りるというものではありませんし、そういった費用を要する行為に結びつくところの活動そのものに対する報酬という点で考慮する必要が生ずる場合もございます。したがいまして、そういった費用の弁償と狭義の報酬というものは密接不可分の関係にあるのではないかと考えるわけでございます。
 そこで、現在の刑事訴訟法がそういった点を考慮いたしまして、国選弁護人の弁護活動全体としてとらえまして、その活動に必要な費用を含めたものを報酬として支給するというようなたてまえをとっているのではないかというふうに考えるわけでございます。ただ、謄写のために非常に多額の費用を要した。しかもその謄写は被告人の権利の擁護のためにどうしても必要であったというような場合におきましては、これは裁判所が報酬額を決定されるわけでございますが、そういった場合におきましてその費用の支出ということを十分考慮されて報酬額をおきめになるのが相当であるし、また現にそういった運用が行なわれておるのではないかというふうに私どもは考えておる次第でございます。
#124
○佐々木静子君 いま記録の謄写代だけ弁償すればそれで足りるというものではむろんないというお話でございましたが、むろん私も全くそのとおりなんでございますが、しかし、記録の謄写代だけも弁償されておらないというのが現実の状態でございまして、実際はそれよりもっと悪い状態にあるわけなんでございます。そういうふうな事柄などから考えますと、これは弁護人のほうでは国選弁護というのは弁護士の義務である、銭かねの問題ではない、これは弁護士の社会的、公共的立場からやらねばならないという立場から、正義感からやっているから、これで足が出ようと頭が出ようとやっているわけでございますけれども、やはりいま御答弁のような気持ちでお取り組みいただいておるといたしますとこれはやはり記録の謄写代を少なくともはるかにオーバーするところの報酬額をやはり支給されてしかるべきではないか、できればこれは別々の費用勘定、実費弁償というようなかっこうに持ってきていただくべき問題ではないかと思うわけなんでございます。
 これは足の出なかった事例でございますけれども、「自由と正義」の一九七一年五月号で四十二ページに「ある国選弁護人の日記」としてこれは大崎康博弁護士が書いておられますけれども、この方も強盗強姦、あるいは強盗殺人事件を担当されて、そして非常な努力をされて、結局十五回の公判を経て、そして無罪の判決を受けたわけなんでございますが、これは私大崎弁護士に謄写代が幾ら要ったかということをお尋ねしてみましたら、この件では九万円ほど、これは実際に謄写のための、謄写をしたそのものずばりの費用だけで九万円要ったということなんでございまして、このときは非常に担当の裁判官の方がたいへん好意的に取り計らってくださって最高裁の経理局ともいろいろとお話になっていただいたので、結局報酬金として十三万円をいただいたというお話なんでございますが、これは謄写代に払った実費が九万円でございますので、むろんこの活動のために要した費用というものは、これは謄写代は実際に要った費用のごく一部でございますから、報酬十三万円もらってもおそらく少なくてもその倍の活動費は要ったのではないかと思うわけでございます。これはそのように非常に好意的に裁判所がやってくださったというときであってもこういうことでございますので、国選弁護の費用というものがいかに低額であるかということ、これは法務省が御提案いただいておるのでございますから、法務省のほうもおわかりいただいているとは思いますが、また弁護士会が強く要望していること、これも当然のことでございますので、ひとつさらにさらに前向きの姿勢でお取り組みをぜひともお願い申し上げたいわけでございます。
 これに関連いたしまして弁護士会から、これは四十七年度の国選弁護予算として何とか十億円以上を計上していただきたい。そしてこれを裁判費から分離して独立の項として予算に計上していただきたいということを、これはもう毎年要望しているわけですが、四十七年度にはこのような強い要望がなされているわけでございます。そのことについて法務省としたらどのようなお考えでいらっしゃいますか。大臣お越しいただきましたので、大臣、法制調査部長さんのほうから、お二人からお答えいただきたいと思います。
#125
○政府委員(貞家克巳君) 日弁連からいろいろ国選弁護人の報酬増額等に関する要望書が提出されておりますことは承知いたしております。政府のほうといたしましてはこの報酬額につきまして、実は毎年少しずつではございます、決して十分満ち足りておるとは申し上げられませんけれども、年々予算の増額に努力をしてきておるわけでございまして、四十六年度に比べますと四十七年度の予算におきましては大体三〇%の増額ということになっておりますし、個々の単価につきましても、単価と申しますか、一応の基準額につきましても昭和四十年ごろからずっと一年ごとに比較をいたしますと毎年一〇%ずつぐらいは平均支出の基準額も増加しているというような状況でございまして、一挙にこれを倍増とかというようなことにはなっておりませんけれども、こういうふうにいたしまして毎年少しずつではございますが、増額の努力を続けてきているわけでございまして、今後もできる限りそういう方向で配慮をいたしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#126
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私実はそういう関係のことを知りませんでして、おそらく必要があれば、足りなければほんとうは予備費から出すべき問題である。毎年一割ずつ多くするというのが何か割り当てでもやるような感じを受けて非常に意外に思っておるのであります。よく調べまして必要なものは予算にははっきり何人といろことはわからぬわけでありますし、どういう事件があるかわからぬわけでありまするから、予算にしばられるというのであっては非常にどうも解せないわけでありまして、よく調べて今後の方針を考えます。
#127
○佐々木静子君 ぜひともこれは、弁護人制度――十分な弁護を受ける制度、これは憲法で保障された制度でございますので、これは刑事司法の前進につながる直接的な問題でございますので、ぜひ大臣におかれましても鋭意御努力いただきまして、何とか国選弁護のための費用というものを実質に合うように確保していただきたいということを特にお願い申し上げるわけであります。
 それからさらに問題を続けていきたいと思いますが、実はこれは最近国選弁護というようなことが大きくクローズアップされているのは主として公安事件との関係において国選弁護ということがいろいろと取り上げられていると思うのでございます。実は私、この国選弁護の問題に関して、七つ八つの弁護士会のほうにどういうことを会員が関心を持っておられるかということをちょっと照会してみたのでございますが、これは各地によって非常に違う回答が出てきている。といいますのは、この公安事件と国選弁護との関係というものは、これは東京三弁護士会に集中しておりまして、ほかの弁護士会ではほとんどこの問題はあまり問題としていま取り上げられておらない、起こっておらない。東京三弁護士会はもう国選弁護士といえばこの公安事件と国選弁護というふうに問題が集中しているわけでございまして、実はいろいろと最高裁当局にもお伺いしてほしいという強い要望も一部弁護士さんから受けているわけなのでございますが、私もこれはいろいろと考えてみましたが、これは裁判の独立というような問題と関連しますと、たいへんにお尋ねしにくい、あるいは最高裁の側からみるとお答えになりにくい問題ではないかというふうに思うわけなんでございます。でございますので、これはお立場の許す範囲で最高裁として支障のない範囲で裁判に対する干渉にならないというお考えになる範囲での御答弁で十分でございます。
 で一番問題になっておりますのは、さしあたりいわゆる東大事件における国選弁護の問題について、昭和四十四年の秋に東京地裁が、東京の三弁護士会に対して国選弁護人の推薦を求めてこられたというようなことがございますが、そのいきさつというようなものを裁判の独立に反しない限りで経過をお述べいただけたらたいへんけっこうだと思います。
#128
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 公安事件に関連いたしましてごく最近国選弁護の問題が非常にクローズアップされているということは御指摘のとおりだと思います。ただこれが出てまいりましたのは、むしろ四十四年の四月二十八日沖繩デーの事件、それから十月、十一月に行なわれました佐藤首相訪米阻止闘争の事件でございまして、東大事件につきましてはあるいは一部国選弁護人が付せられた分離組の被告というようなものがあるかもしれませんけれども、全体として国選弁護人の問題が特に取り上げられたことはなかったように私は記憶いたしております。十、十一月の事件あるいは四月二十八日の沖繩デー事件につきましては、当初私選弁護人が付されておったわけでございますが、いわゆる事件の審理方式に関しまして、弁護人のほうは強く全体の統一公判ということを御主張になり、裁判所のほうは、そういう点は物理的にも、あるいは法廷秩序維持の面からも、あるいは事案の審理の促進というような面からもきわめてむずかしい問題であるということで、審理方式について意見が必ずしも合致しなかったということで、裁判所のほうは、幾つかの適正な規模に分けたグループ別の審理ということが最も適当な審理ではないかというふうに考えて、それを実施すべく、期日を指定して進行をはかろうといたしたわけでございます。
 その際に、いろいろ弁護人との間の意見の相違というようなことから、弁護人が全部辞任されるという事態が起こったわけでございます。したがいまして、約六百名ぐらいの被告人になろうかと存じますが、その分について国選弁護人を選任せざるを得ないというような状況に立ち至りまして、約六百名ぐらいの被告人に対して二百人ぐらいの国選弁護人の選任方を東京三会の弁護士会に御依頼申し上げたわけでございます。
 それに対しまして、事件の内容というようなものが通常の訴訟形態と非常に異なっておりまして、いわゆる被告人が弁護方針を非常に強く主張し、あるいは国選弁護人の方と意見が合わないというような事態の生ずることをおそれてか、なかなかお引き受け手がございませんで、平均して約二カ月ぐらい、長いのになりますと約四カ月ぐらいかかって、ようやく東京三会の弁護士会から国選弁護人の推薦を受けることができたわけでございます。それによって進行をはかろうというところに立ち至りましたんですが、やはり、国選弁護人になりましても、被告人のほうは全体としての統一公判を主張するというようなことがございまして、間に国選弁護人が立たれて非常に御苦労なされたと思いますが、審理方式として弁護人側がいろいろお考えになった案を御提示になったものがございます。それがいわゆる代表者法廷案というようなものでございましたが、そういうものについて裁判所のほうにお申し入れがございましたけれども、訴訟法上裁判所としてなかなか受け入れがたい点がございましたので、その分についての御提案を裁判所のほうが拒否するというようなことになりました。そういたしますと、弁護人のほうとして、必ずしもその訴訟の進行に自分としては自信が持てないということで、辞任の届けをお出しになるという方が何名か相次いだわけでございます。
 それに対しまして、裁判所のほうとしては、その辞任の理由として掲げられたものについて、それが正当な理由と考えられる分については辞任を認めましたけれども、その他の分については、やはり踏みとどまって一緒に訴訟の進行に協力してほしい、国選弁護活動を続けてほしいということをお願いして、そこにいわゆる辞任問題というのが生じたわけでございます。
 これについての法律問題はいろいろあろうかと存じますが、それについて、裁判所としては、ほとんど一致して、正当な理由がない場合には裁判所としては解任しないし、解任命令がない限りは国選弁護人としての地位を保持するものであるから国選弁護活動を続けてほしいということのお願いをいたして、審理の進行に御協力願っておるというのが現在までのところの経緯でございます。
#129
○佐々木静子君 結局、大ざっぱに言いますと、国選弁護人が、自己の良心に従った国選弁護が非常にやりにくい状態に公安事件においては立ち至ることが多い。たとえば、被告人と国選弁護人との間に信頼関係がそもそもないところから弁護関係が生じているのが国選弁護の特徴でございますから、そこのところで、被告人の考え方どおりの訴訟活動を、あるいは被告人が期待するところに近い訴訟活動というものを、十分に弁護人とするといろいろな関係でなし得ないことも起こり得るということで、被告人と国選弁護人との関係という面で非常にむずかしい立場に立つこともあろうと思いますし、また一面、先ほどお話ございましたように、裁判所の訴訟指揮に関しまして、これは弁護人とするとその訴訟指揮に従うことはできないということで、また、そういう裁判所との関連において、弁護士として良心的に弁護人の責任を全うすることができないということで、また国選弁護人自身とすると、苦しい立場に立たざるを得ないというような、まあ三者、双方との関係において非常に国選弁護人が苦しい位置に置かれるというような問題が公安事件においていろいろと起こってきているというふうに承っているわけでございます。
 そうしますと、国選弁護人と被告人との法的関係というものを、裁判所及び法務省ではどのように意義づけていらっしゃいますか。
#130
○政府委員(貞家克巳君) 国選弁護人の場合におきましては、通常の私選の場合と異なりまして、被告人と弁護人との間の民法上の委任関係はございませんし、国と国選弁護人との関係も委任ではないと、これは最高裁の判例の示すとおりでございます。
 ただ、抽象的に申しますと、直接のそういった委任関係はございませんけれども、弁護人としての権利義務というものは、私選の場合と同様でございまして、いわゆる善良な管理者の注意義務をもって被告人の正当な利益のために弁護活動を行なうという義務を負っていることは否定できないと思うわけでございますが、ただ、具体的な問題といたしまして、いわゆる信頼関係と申しましても、通常の場合とはおのずから異なるところがあるということは当然考えなければなりませんし、またそうでなければ国選弁護人制度という制度自体が存立しなくなるということも考えられるわけでございますので、弁護人といたしましては、被告人の意思に従属して弁護活動を行なわなければならないということはございません。ただ法曹としての立場から独自の弁護活動を行なうべきでございますけれども、その本質といたしまして、やはり被告人の正当な利益のためにやるのであるということでございますので、被告人の主張にやはり十分耳を傾けて、しかしながら、それを必ずしもストレートの形で出すということは適当ではございません場合が多々あると思います。そういった被告人の主張を十分理解した上で、これを法律的に構成いたしまして、あくまでも裁判所の訴訟指揮のもとに、訴訟のルールに従って法廷で被告人の利益を主張する、かようなことが国選弁護人に要求されるのじゃないかというふうに、非常に抽象的ではございますが、さように考えております。
#131
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 国選弁護人の法的地位ということに関しましては、ただいま法務省のほうから御答弁があったとおりに私ども考えておりますが、一応、国選弁護人の法的義務の内容ということに関しましては、必ずしも判決例その他で言明されている例がございませんですが、きわめてまれな例として、大西事件の第一審民事訴訟の判決というものにそこの点が若干触れられておりますので、御紹介申し上げたいと思います。
 「刑事被告事件における国選弁護人は、憲法第三七条第三項後段、刑事訴訟法第三六条以下の規定により、貧困その他の事由により弁護人を選任ずることのできない被告人のために国が付する弁護人であって、被告人自身が選任するいわゆる私選弁護人のように被告人と直接の委任契約関係には立たないけれども、あたかも後者と同様善良な管理者の注意義務をもつて弁護活動を行なうべき法律上の義務を被告人に対する関係において負担するものであり、その弁護人として尽すべき義務の内容および範囲は国選であると私選であるとによつてなんら異なるものではない。」、そこで簡明に言い尽くされているように考えるものでございます。
#132
○佐々木静子君 最高裁あるいは法務省から判例その他を引用されて、抽象的な御意見を承ったわけでございますが、実際問題として、具体的な問題としては、これはなかなかそう簡単に、おそらく御答弁なさっていらっしゃる調査部長さんが、失礼ながら国選弁護にお立ちになったとしても、それは口でおっしゃるようには、とうてい現実の問題にはいきにくいのではないかと思います。善良なる管理者の注意義務といったところで、それがいかなる基準をもって、どういうことが善良たる管理者の注意義務であるか、あるいは被告人の考えている訴訟のやり方と、必ずしも合致しない訴訟行為をやったがために、場合によると被告人から損害賠償を請求されるというようなことも考えられないではない。また被告人の考える方法と、裁判所の訴訟指揮とが全く相反している場合には、これは被告人の考えている、またできるだけ趣旨に沿うような訴訟活動をした場合に、裁判所のほうからいろんな問題が起こる。在廷命令あるいは退廷命令、ひどいときには監置処分というような、法廷秩序維持に対する法律などのような対象にもならないとは限らない。そういうような非常に国選弁護人が、法が予定したときにはそういうことは考えておらなかったのじゃないかと思いますが、非常に苦しい立場に立たされているというケースが、たいへんに多いわけなんでございます。
 いま法的関係きわめて抽象的に伺ったわけでございますが、たとえば、先ほど申し上げました昭和三十五年の死刑事件における国選弁護人が、死刑相当であるという趣旨の訴訟活動をして、その当時日弁連の特別委員会というものを設けまして、そして日弁連特別委員会の統一見解として、記録を精査した上で上訴理由がないと思ったときには、上申書でその旨を明らかにし、国選弁護人がすみやかに国選弁護を辞任すべきであるという統一見解が日弁連から出されたわけでございますが、こういう日弁連の統一見解というものに対しまして、最高裁あるいは法務省はどのようにお考えになりますか。
#133
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 日弁連の統一見解に対しまして辞任すべきであるという御趣旨の点については、必ずしもそのとおりに受け取りがたいように思うのでございまして、この辺につきましては、もし弁護人が上告理由が見当たらないということで、辞任することを認めるならば、大体弁護人の方の考えられることはそれぞれ資格ある弁護人として一様のものであろうかと存じますので、かわりにつかれた弁護人も同じような状況に立ち至るということもあろうかと思います。そういうことになりますと、一体この事件の弁護というのは、最終的にどうなるのだろうかというような御批判が役所の中にもあるようでございますし、そういう御批判について、やはりもう一度考えた上で結論を出さなければならないんじゃなかろうかと存じます。むしろそれに対しましては、そういう中でも被告人の正当な利益を守るということで、国選弁護人として尽くすべきところを尽くされるというような必要があるのではなかろうかというのが、私どもの考えでございます。
 この点につきましては、先ほど申し述べました大西事件の判決でも触れられておりまして、それも非常に参考になる考え方ではなかろうと存ずるわけでございますが、「弁護人の調査活動の範囲も、場合によっては当然訴訟記録外に及ぶべきことが予想されるのである。殊に、訴訟記録について綿密な調査を行なってもなお適当な控訴理由を発見することができなかった場合には、弁護人としては当然上記のような例外的事実または事情の有無を考慮すべく、訴訟記録上かかる事実または事情発見の手がかりとなるようなものが全く存在しない場合には、少なくとも被告人自身につきこれらの点の調査を実施することが弁護人の義務として要求せられるものといわなければならない。そして以上の各場合における控訴理由の有無の判断にあっては、極力自己の主観的見解を避け、被告人にとって最も有利な観点から観察、判断すべきであることはいうまでもないところである。」、こういうふうに述べられまして、次に、被告人に対して適当な控訴理由を発見することができなかった場合には、「率直にその旨を告げ、被告人の言い分を十分に聴取し、その不服とするところがいかに被告人に有利に解しても全くなんらの控訴理由をも構成しえざるものである場合には、その旨を指摘し、被告人がなお不服を維持するというのであれば、弁護人としては、被告人の名においてする控訴趣意書の作成について必要な技術的援助を惜しまないが、それ以上被告人の期待するごとき協力をすることができないことを告げて被告人の善処を求むべき義務あるものと解するのが至当である。」というふうに述べられております。
 これらについては、いわゆる弁護人の本来のあり方というものがどういうことであるかということに関して、非常にむずかしい問題があろうかと思います。弁護士会においても、それぞれその後もなお検討を続けておられることでございましょうし、またこれは個々の弁護士の方のあり方の問題として、一人一人の弁護士さんが深刻に受けとめて、検討せられておるところではなかろうかというふうに存じておるわけでございます。
#134
○佐々木静子君 これはいまも御指摘ありましたように、個々の弁護士自身の問題であることはむろんでございまして、私も死刑事件を担当した弁護人が、記録を精査するも死刑が相当、上訴の理由が見当たらないということの弁護をしたということについて、それを何も全く支持するものではないわけなんでございますが、これは弁護人個々的な問題だという御答弁をいただきましたが、しかし、これはかりにそういう考え方の国選弁護人に当たった被告はどうなるのか。問題はこの被告の人権ということを、やはりまず前提に考えなければならないのじゃないかと思います。そしてしかも、これは被告は本件の事案などはまさに必要な弁護にあたるケースであり、憲法上の国選弁護に該当する事件ではないかと思うのでございます。しかも、弁護人を選任するこの国選弁護というものは、便宜的に弁護士会がやっておるわけでございますが、あくまでも、裁判所と当該弁護人との選任関係にあるわけでございますが、そういう場合に、この憲法上保障された被告人の権利が明らかに守れないというような事実を知りながら、なおこれは弁護人の問題であるということで、選任権者であるところの裁判所が全く責任がないと言えるかどうか、私はそこにたいへん疑問があると思います。またこれは個々の弁護士の問題だということで、また選任方法は弁護士会に一任してあると裁判所はおっしゃっているわけです。ところが日弁連では、これは統一的な見解として、こういう場合には、良心に従って記録を精査したけれども、良心的な弁護が行なわれないというのであれば、その理由を付して辞任すべきであるというのが統一的な見解なんです。選任については日弁連に一任してある、最高裁は関係ない、関係ないとはおっしゃらないけれども、全部おまかせしてあると言ってお逃げになり、この統一見解については、必ずしも日弁連はどういっているかしらないけれども、最高裁はそういう考え方をとらぬという、非常に私失礼ながら、最高裁のお立場というものが、自己かって過ぎると思うんです。そういう点についてもう少し最高裁としたら、要は、裁判所の機能というものは、適正な裁判をすると同時に、人権保障というようなことが非常に大きな司法の仕事なんでございますが、事実上憲法におけるこの国選弁護を頼む保障権というものが、そういう最高裁の御見解であればこれが確保されない、保障されないという結論に達せざるを得ないというふうに思うわけです。そこら辺について、その矛盾なりあるいはそれだったらこういう考え方のほうがいいのではないかというような御見解でもあれば、もう少し突っ込んでお話を伺いたいと思います。
#135
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 国選弁護人は国が付するという憲法の規定を受けまして、刑事訴訟法で、裁判所が弁護士の中からこれを選任するという制度になっておるわけでございまして、現在の国選弁護人制度は、いわゆる既存の弁護士制度をそのまま利用して、それをただ国がそれにかわって選任するというようなたてまえをとっておるわけでございます。しかも必要的弁護事件というものがございまして、弁護人がつかない場合には審理をすることができないというようなことも訴訟法ではございます。そういたしますと、国選弁護人が辞任をされてそのあとないというような場合には、やはり憲法の考えております国選弁護制度というのは崩壊せざるを得ないんじゃなかろうかというふうに思われます。そういう意味で、やはり弁護士の公共的な職務ということで、そういうことにある程度現在の国選弁護制度を前提として国選弁護人として御協力をいただくということが制度の中に含まれているんではなかろうかということから、先ほども申し上げたような内容の国選弁護人の義務というようなことを考えておるわけでございまして、個々の弁護人に非常に御迷惑をかけておるということは十分われわれも承知いたしておりますし、なお選任について弁護士会にすべて一任して裁判所は何ら責任を負わないということではございませんで、推薦を受けているだけでございまして、裁判所としてはあくまでもその推薦を尊重して選任をしているということでございますので、その点についての責任をのがれようという趣旨ではございません。
 ただ、現在の弁護士というものは、登録されている弁護士さんはすべて一様の試験を受け、一様の修習を受け、一定の資格基準に合致した者として登録されているわけでございまして、そのうちの一人一人を特に差別するというようなことではなく、そのすべてがやはり資格ある弁護人として取り扱うべきものというふうに考えておりますので、そういう趣旨で国選弁護人を推薦するということは、裁判所としては一応の責務を尽くしたことにはなるだろうということを申し上げているにすぎないわけでございまして、個々の具体的な訴訟活動の中において必ずしも適当でないというようなことがあります場合には、これは適当な措置をするということは、裁判所としてもなすべき事柄でもなかろうかと思います。
 で、国選弁護に関しては昔からいろいろ問題もございますので、裁判所といたしましては弁護士会との間に第一審強化方策協議会なり、あるいは国選弁護に関する委員会なり、あるいは司法協議会というような、いろいろの場を設けましてそれぞれ意見を交換し、裁判所のほうから御要望する点は御要望をし、弁護士会からのお話も十分聞いて運用に万全を期していきたいと、今後もそういう点で問題はできるだけ起こさないように運用の適正をはかってまいりたいと考えております。
#136
○佐々木静子君 いろいろと裁判所当局として御努力いただいているということはよくわかりました。が、この現在の、いま私お伺いいたしましたような国選弁護人が辞任するのに正当な理由というようなこと、あるいは辞任というのか、あるいは解任請求の申し立てと申しますか、解任請求というかっこうで出てくれば、裁判所が解任するについての正当な理由というようなことにもなるんじゃないかと思いますが、そこら辺についてもう少し御意見を伺っておきたいと思います。
#137
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 国選弁護人は裁判所が選任するということで、辞任とか解任についての規定は直接は訴訟法上はございません。しかしいわゆる弁護士法の二十四条に、正当な理由がなくして辞任等、拒むことができないという規定がございます。それとうらはらのような形になろうかと存じますが、そういう事情がある場合には国選弁護人のほうに対して解任をするということが裁判所として当然なすべきではないか。そういう事情がないときには、やはり裁判所としてはそれぞれの義務を尽くしていただきたいということをお願いするよりしかたがないんではなかろうかと考えております。
 ところで、その正当な理由ということについては、どんなものが正当の理由に当たるかということになろうかと存じますが、通常考えられますところでは、選任された国選弁護人が非常に長期の旅行に出られるとか、あるいは長期の疾病で弁護活動ができなくなった、あるいは一番変わった例でいきますと、最近でもございましたんですが、被告人から暴行を受けたというようなことで国選弁護人としてその職務を全うしていただくことを期待することが無理であるというような、そういう場合がやはり正当な理由に当たるということではなかろうかと考えておるわけでございます。
#138
○佐々木静子君 これから先もこの問題はいろいろと尾を引いていくのではないかと思いますし、また、今後こういう問題が頻発するということもある程度予測されるのではないかと思うのでございますが、これはやはり国選弁護人の人権ということも考えていただきたいと思うわけです。実は東大――先ほどおっしゃった一〇・一一事件でございますか、あれの国選弁護に当たられた弁護人の方々からお話を承わったのでございますが、これは一部のものは、もうとても言語に表現しがたいばかりに被告人からは侮べつされ、罵倒され、そしてまた一面、裁判官からはまた強いおしかりを受け、全くこれ以上人間として情ない思いを味わわなければならないというようなことはない、もうこれさえ済めば二度とこんりんざい国選弁護は引き受けないということを現に言っていられる方がたくさんいるわけです。たまたま費用の問題で出てきておりますが、かりにこの法案どおりになったところで、ちっとも国選弁護人は恵まれないわけでございまして、これが正直なところ五倍に上げていただいても弁護人はほとんど経済的に喜こぶ人はおらないと思うんです。これは弁護人というのは、やっぱり弁護しなければならない公共的な義務があるから、たとえどんなに苦しいことがあっても弁護しなければならないということでやっているんでございますが、それについて全く双方から、もうとてもことばに表現できがたいばかりの侮べつと罵詈雑言を浴びせられる、またへたをすれば退廷命令あるいはそれの反対の在廷命令、あるいはそれにそむけば監置処分にまでも付されるやもしれぬというような状態に置かれている国選弁護人もいるわけでございまして、いままあその問題が起こってくるわけでなくても、将来起こるやもしれぬということを憂えている国選弁護人もいるわけでございまして、これはその国選弁護人の立場立場は異なりますけれども、それ相応に非常に大きな悩みを持っているわけでございます。この法案を通して、この法案が法律になったからといって、そんなことでとうてい救われるような問題ではない最も基本的な重大な問題をはらんでいるわけでございますので、こういう国選弁護のあり方という問題が審議の対象になったときをとらえまして、ひとつぜひとも裁判所及び法務省のほうに対しまして、この善処方をお願い申し上げるとともに、この日弁連が統一見解を出しているというのも、これもただ思いつきで出しているのではない。日弁連というのは現実に弁護をやり、国選弁護をやってきている人たちが集まって統一的な見解として出しているわけでございますから、ぜひともこの日弁連の考え方というものも十分に尊重していただきたいと思うわけでございます。
 それからあと、この国選弁護の当面している問題に関連いたしまして、私さっきも申し上げましたが、複数の弁護人をつけるようなことも、事案においては今後とも御検討いただきたいと思いますとともに、少年事件において国選弁護をつけたほうがいいのではないかというようなことも、これは弁護士会から今後の立法として考えられているわけなんでございますが、そのあたりについての裁判所あるいは法務省の御見解を承りたい。
#139
○政府委員(貞家克巳君) 御承知のとおり、現在の少年法におきましては、「少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、附添人を選任することができる。但し、弁護士を附添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。」という規定がございます。現在の保護事件におきますつきそい人は、必ずしも数は多くはございませんが、その趣旨は、保護手続の目的の実現のために家庭裁判所に協力いたしますという、そういう地位を持っておりますと同時に、少年保護者にかわりまして、その利益の代表者として弁護人に近い立場を持っているというふうに言えようかと思います。そこで少年の権利を保障するという観点から、さきに申しました後の立場を強調いたしまして、たとえば一定の重い犯罪を犯した少年の保護事件の場合におきましては、弁護士でなければつきそい人となることができないとか、あるいは弁護士であるつきそい人がいない場合には、家庭裁判所が弁護士の中からつきそい人を国選のように選任するということも十分検討に値するわけでございまして、そういった主張もかねてから相当各方面からなされているわけでございます。現在、御承知のとおり法務省におきましては、法制審議会におきまして少年法の改正問題を審議いたしておりますが、その諮問いたしました要項の中にも、国選のつきそい人というようなことが掲げられておりまして、これによって審判手続等における少年の権利の保障の強化をしようというような構想が盛られているわけでございまして、まだ現在その審議は済んでおりませんが、早晩そういった問題につきましても審議されるということになろうかと思うわけでございます。この点は立法論として十分検討に値するというふうに考えております。
#140
○佐々木静子君 いま法務省の御見解を承ったのでございますが、いま申しました日弁連のこの少年事件に対する今後の見解としますと、これは法務省とはいささか考え方を異にしていることが多いと思うのでございますが、弁護人を――いまつきそい人というような制度が用いられておりますが、やはり重大な事件については、いまの家庭裁判所における審判というようなかっこうであっても、そこにある程度の人権保障あるいは権限の抑制とかというような意味から考えて、国選弁護を付すべきではないかという案がかなり強く出されているわけでございます。その件について最高裁ではどのように考えていらっしゃいますか。
#141
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 現在の少年の刑事事件につきましては、規制の二百七十九条で、「少年の被告人に弁護人がないときは、裁判所は、なるべく、職権で弁護人を附さなければならない。」という規定がございます。それと同様な趣旨で、いわゆる保護事件としての少年に対しましても国選つきそい人制度というものを拡充する、あるいは考慮するということはきわめて適当ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
#142
○佐々木静子君 それから、話はまた変わりますが、いまの憲法の規定から申しまして、国選弁護については、「刑事被告人は、」というふうに限定されているわけでございます。憲法三十四条の考え方からいきますと、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」というふうな、それからまた後段の、「正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」、こういう条文などから考えますと、憲法の規定からいっても、被告人になる前の段階でも弁護人がついているということが通常的なかっこうであるかのように、この条文を見ますと、予測が――普通、弁護人が捜査段階においてもついているのが当然考えられるというような条文になっているわけなんでございます。
 そういう点に関しましていまの刑訴法からいきますと、国選弁護は刑事被告人に限っていると思うわけでございますけれども、今後の考え方としてやはり重大な事件では被疑者の段階でも国選弁護をつけるべきではないかというふうに私ども考えるわけなんでございます。そしてこれはいろいろ裁判所で、戦後の日本の裁判で問題になりました菅生事件とか松川事件あるいは八海事件その他たいへんに問題になった事件のもうほとんどすべてといっていいぐらい捜査段階に弁護人がついておらなかったために、いろんな誤った捜査が行なわれた。そしてその誤った捜査に引き続いて誤った裁判が、誤判が行なわれた。そういうふうなことで、これは訴訟関係人すべての人がたいへんな苦労をし、かつ一番気の毒な目にあったのが当該被告人でございますが、そういうふうな事柄がいろいろ起こってくるというようなことなども考えますと、被疑者段階において重要な事件については国選弁護を付するというようなことも、今後の立法としてぜひ御検討いただきたいと思うわけなんです。その点について法務当局としてどのようにお考えでありますか。
#143
○政府委員(貞家克巳君) 御指摘のように憲法第三十四条によりますと、何人も「弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」というふうに規定しておりますので、「抑留又は拘禁」された被疑者についての弁護人というものを予定しております。弁護人依頼権というものを保障しているというふうにいえるかと思います。それに基づきまして、さらに刑事訴訟法が一歩進めまして、被疑者の段階で弁護人をみずから依頼することができる。これは旧法の当時は被告人に限られていたわけでございますが、被疑者についても弁護人の依頼権はこれを規定しております。さらにそれを実効あらしめる手段といたしまして、選任の機会を十分与えるという意味におきまして、一定の場合、つまり、身体を拘束された被告人、被疑者に対しましては弁護人の選任権の告知をするというような規定を設けておりますし、さらに勾引、勾留、あるいは逮捕された被疑者、被告人の弁護人選任の申し立て方法の便宜のための特別の規定を設けておりまして、弁護士または弁護士会を指定して裁判所あるいは監獄の長、これは検察官もそうなると思いますが、そういったものに選任を申し出るということによって選任が便宜になるというような規定を設けているのでございます。さらに被疑者の段階におきましても、弁護人選任権というものを被告人みずからのほかに、法定代理人、あるいは配偶者、直系親族、兄弟姉妹というようなものも被疑者のために弁護人選任権を持っているというような規定によりまして、実質的に被疑者の弁護人選任権を容易ならしめているわけでございますが、いまさきに御指摘の問題は、さらに立法論として身体の拘束を受けている被疑者あるいはそのうちの重罪人については国選弁護人制度を拡充して、そういうものについても認めるべきではないかという御趣旨だと思うのでございます。
 確かにその問題は、現行法はさておきまして、立法論といたしましてはこれは決して考慮の余地がないものであるとは私は考えておりません。しかしながら、一方いろんな事情を考えてみますのに、まず被疑者の勾留というものにつきましては、身体拘束の期間は法律によって非常に厳格に定められておりまして、比較的短期間でございます。そういたしますと、国選弁護の手続によってはたして円滑にいくかどうかという技術的な問題もございますし、さらに捜査の段階におきましては、被告人に比べますと非常に地位が流動的でございまして、公訴を提起されている被告人の場合とは異なりまして、合目的的な捜査の結果によりまして犯罪の嫌疑が消えて釈放される場合もございますし、あるいは犯罪の嫌疑がございましても、起訴猶予というようなことで起訴されない場合もございます。したがいまして、その段階で必ずしも国の手で積極的に弁護人というものをつけなくても、公判にまいりまして公平な裁判所の審判を受ける、その機会に国選弁護人の援助を受けて被告人としての権利を十分有効に防御することができるのではないかということも考え得られるわけでございまして、これらの非常に多数の被疑者につきまして、国で弁護人を選任するということまでいくのが適当であるかどうかということはなお相当慎重に考慮しなければならない問題ではないかと思うのでございます。
  〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕
 また、弁護士としての立場から考えましても、先ほど来いろいろ御議論がございますように、公的な義務を持っているといいましても、被疑者についての国選弁護人というようなことになりました場合に、はたして弁護士としての余裕があるのかどうか、あるいは払うことあるべき物質的、精神的な犠牲というものははたしてどうであろうか、それは耐え忍べることであろうかどうかというようなことも、これはやはり率直に考えてみなければならない問題ではないかと思うのでございます。さらに、刑事訴訟手続、捜査のあり方というような点とも総合的に考えてみませんと、一がいにその方向が正しいのであると断定することも、いまにわかに断定することはむずかしいような気がいたします。したがいまして、これは立法論として十分考慮の余地のある問題でございますが、いま直ちに具体策を掲げて検討するということはやや無理ではないか、将来、今後の研究課題としては十分考える余地のある問題ではないか、かように考えております。
#144
○佐々木静子君 おっしゃるとおりで、将来とも大いにこの問題を法務当局としても、あるいはまた裁判所のお立場においてもお取り組みいただきたいと思うわけです。
 それからいまの御答弁にもありましたように、捜査段階のどういうときに国選をつけるかというようなことも、その基準がたいへんにむずかしいと思いますが、捜査段階で国選がついて不起訴になった。それでは公判は一ぺんもないから意味がないというふうな趣旨にもちょっと受け取れるような御答弁にも聞いたわけでございますが、これは誤った人が被疑者になっている場合に、国選がついて、そして弁護活動をして、その被疑者が犯人でなかったことがわかれば、これは当然に一番目的が達せられたわけでございますから、必ずしも公判がなしにそれで終わったからといって、それでもう大いに国選の実を上げたということになるのではないか、あるいは御答弁の趣旨を思い違えておりましたらその点は御勘弁いただきたいと思いますが、あるいは大きい事件だと思って国選をつけたところが軽微な事件で不起訴になったということもあると思いますが、かりにそうであったところで、初めは重大な犯罪だと思っておったところが軽微な事件であった、あるいは誤認であったというようなことで、不起訴になるわけでございますから、その点においては、そのためにこそ弁護人の弁護活動があって、その当該被告が不起訴になるということも、まあそればかりではないにしても、あり得るわけでございますから、必ずしも不起訴になったから国選弁護をつけたことに意味がなかったということには結びつかないと思うわけです。
 それから、この費用請求の本案に返るにしましても、そのほか一般的な国選弁護の費用請求などを見ましても、一様に、公判が何回であるとか、公判に出廷するのに旅費が要ったとかいうことで、すべて公判が基準になっているわけで、これは標準のとり方として、公判一回幾らとか、あるいは公判廷への出廷あるいは現場検証のために旅費が要ったとかいうようなことを基準にせざるを得ないということはよくわかりますけれども、これは弁護人のほうの立場から見れば、これは公判に出るというのは弁護活動のうちの一部でございまして、実際はそれ以外のところに払われている活動、時間と労力と費用がはるかに多いというわけでございます。たとえば現場検証のためにあるところに出張する。この規定でいきますと、その一回の出張費だけが若干今度増額になるかというわけでございますけれども、現実の訴訟活動におきましては、おそらくそういう場合は、弁護人は最低そのほかに二回くらいは現地に行って、前もって調べておくとか、あるいはどういう人が事実をよく知っているから証人に出てもらわなければならないとか、いろいろな準備をしなければならないわけでございまして、これが増額になっても、その分の行動費というものは、もう報酬額の中に加味されるだけのことでございまして、おそらくこれは裁判官にもどういう活動をしたかということは、これはわからないままに報酬額がきめられるということが常ではないかと思います。でございますので、今度のこの訴訟費用の改正というもの、これは私はもちろん全面的に賛成さしていただいてけっこうだと思いますが、さらに、こういうようなこの一部の問題ではなくって、もっと大きな問題として、今後この問題をお取り上げていただきたいということを切望するわけです。
 最後に、法務大臣に御所信を承りたいと思いますが、この国選弁護というものが、ほんとうに実質的に国民の権利を守るために、保障された制度となるために、今後どのようなかっこうで法務当局としたら御努力いただけるか、御所信を承って質問を終わりたいと思います。
#145
○国務大臣(前尾繁三郎君) 国選弁護の使命といいますか、制度、これは申すまでもなく、被告人の人権擁護という意味から設けられておるわけでございます。しかし、先ほど来も公安事件でいろいろな問題が起きていることを考えましても、率直に言って、時代が非常に変わりつつある。また、訴訟費用につきましても、先ほど来のいろいろなお話を承っておりますと、必ずしも正当に当然払うべきものが払われておるかどうか、どうもやはり従来の惰性というと非常に弊害がありますが立法された当時の考え方そのものがそのまま惰性的に受け継がれておるのじゃないかということを、私も先ほど来のお話で十分承知したわけでありまして、そういう意味合いからいたしますと、やはり現時点においてもう一度十分考え直して、いろいろな点について相当考え方を改めていかなければならぬ点も多いのじゃないかというような感じがいたしておるわけでありまして、これはもちろんわれわれといたしましても、今後十分検討して、そうして実際に合う、また、この本来の趣旨であります人権擁護が十分満足されるような状態に置くべきだと、かように考えておりますが、今後十分検討いたしたいと思っております。
  〔理事白木義一郎君退席、理事原文兵衛君着席〕
#146
○白木義一郎君 先ほど大臣の提案理由の説明を伺いまして、その中に現行の刑事訴訟費用等に関する法律によると、運賃の等級を三階級に区分する船舶による旅行の場合に、国選弁護人に支給される運賃は、中級以下の等級の運賃に限られることとされておるが、国選弁護人の職責、社会的地位及び国家公務員等に支給される旅費額との権衡を考慮して、これを裁判所が相当と認める等級の運賃によって算定することとしたい。そして上級の運賃を支給できるように改めたいと、こういう趣旨でありますが、上級の運賃を支給することもできるようにしたいと、改めたいということは、すべての国選弁護人に上級の運賃を支給しようというのか、あるいは区分をしようというのか。もしそうであれば、その支給の対象範囲等について御説明を願いたいと思います。
#147
○政府委員(貞家克巳君) ただいまの刑事訴訟費用等に関する法律によりますと、国選弁護人の旅費につきましては、証人や鑑定人と同様に、船賃の階級が三階級に分かれております場合には、中級以下で個々の裁判所が、受訴裁判所が相当と認める等級、したがいまして中級あるいは下級ということになっているわけでございます。それを今回の改正案によりまして、上級も含めた全部につきまして、裁判所が個々に相当と認めるということでございますので、上級を支給することができる余地を認めるということでございまして、全部が必ず上級であるということになるわけではございません。その点につきましては、裁判所が個々の事件によりまして、経験年数その他いろんな事情を考慮されまして、等級を決定されるということになるかと思うのでございます。
#148
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 法の趣旨につきましては、ただいま法務省のほうから御答弁があったとおりでございます。これの運用にあたります裁判所といたしましては、従来はどんなに経験年数の長いベテランの弁護士さんを国選弁護人にお願いした場合であっても、船賃の場合に限りましては、これを中級以下にしか算定することができなかったわけでございます。それをやはり社会的な実情に合わせて、上級の運賃が支給できるようにしたいというのが、今度の改正についての裁判所のほうの常々考えておった点でございます。これが今度改正されることによりまして、裁判所としてはそれぞれの船舶の航路の実情、等級がどのように分かれているか、あるいは弁護士さんがどういう経歴の方々であるとか、そういうことをいろいろ勘案して裁判所がそれぞれきめるということになろうかと存じます。その場合に、ただいま法務省からもお話がございましたように、経験年数というようなことも一つの判断の要素になろうかというふうに考えております。
  〔理事原文兵衛君退席、理事佐々木静子君着席〕
#149
○白木義一郎君 そうしますと、この運賃は上中下に区分されて、その選任された弁護士さんの、何といいますか、格づけによって運賃の支給が違うと、こういうわけですか。
#150
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 格づけと申すわけではございませんけれども、やはり修習を終えられてたまたま弁護士の登録をされたばかりの方というような場合と、それから三十年の経歴を有せられたベテランの方が国選弁護人であられる場合と、やはり同じようにしにくい場合もあろうかと存じます。弁護士活動としては同様にやられることだと思いますが、やはり社会的地位ということになりますと、そういう点も全然度外視してしまうわけにはいかないのではなかろうか。そういう点は今後の個々的なケースにおいて考えていきたいということでございます。
#151
○白木義一郎君 そうしますと、できましたらその基準といいますか、何かそういう基準というもののはっきりしたものがありましたら、具体的にお聞かせいただきたい。
#152
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 法案が成立しました後に、予算の執行の適正をはかるためにいろいろそういう点については考慮をいたさなければならないと思っておりますが、現在、たとえば司法研修所に弁護の教官をお願いしておる方があるわけでございます。この方々に対する、いろいろ出張されるときの旅費の算定方法といたしましては、一応十年以上の経験を有せられる弁護士さんの方についてはたとえば上級であるとか、それ未満の場合は中級というような基準が定められておるようでございます。そういう分もあわせ考慮して、一つの目標として基準というものを検討していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
#153
○白木義一郎君 先ほど佐々木委員の弁護人としての専門的な立場からの質疑、答弁を伺いましてたいへん参考になったわけですが、今度は弁護されるほうの立場で、一、二伺っておきたいんですが、国選弁護人に対する現行制度上におけるその選任方法、また実際の選任手続等について、わかりやすくひとつ御説明を願いたいと思います。
#154
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほど佐々木委員に対して概括的に御説明申し上げましたが、裁判所といたしましては、検察官から起訴状が提出されますと、その起訴状を被告人に直ちに送達することになるわけでございます。その起訴状を送達いたしますときに、その被告人に対して、あわせて、あなたは弁護人の選任を請求しますかどうかということの照会をいたすわけでございます。その中に、もし私選弁護人を選任するというなら、その旨を記載させますし、国選弁護人の選任を請求するということでございましたら、そこにまるをつけるというようなことで、被告人の意思を確かめる方法を講じます。その回答によりまして、被告人が国選弁護人の選任を請求するという意思である場合には、直ちに弁護士会に対して、こういう被告人のこういう事件について被告人が国選弁護人の選任を請求しているので適当な候補者を推薦されたいという文書で依頼を弁護士会に出します。そういたしますと、それを受けて弁護士会は、あらかじめ国選弁護人を受任することの希望を出されておる弁護士の方々の名簿、これを国選受任者名簿と申しておるようでございますが、そういうものをあらかじめ作成されておりまして、それの順番に従って国選弁護人を推薦して、裁判所のほうに推薦してまいるわけでございます。その推薦に基づきまして裁判所のほうは国選弁護人を選任するというのが実際上の手続でございます。法律上は確かに裁判所が選任するということになっておりまして、裁判所が自由に選任し得るたてまえでございます。しかしながら、非常にたくさんの事件につきまして国選弁護人を選任するのを個々の裁判所にまかせますと、実際は非常に繁雑な手数になるということもございますし、なお、それが場合によっては特定の弁護士さんに集中するというような意味で、公平の上でも必ずしもおもしろくない場合があり得るということから、最高裁判所と日本弁護士連合会との間で協議をいたしまして、現在のように一応推薦を弁護士会に原則としておまかせするということにいたしたわけでございますが、あくまでも、法のたてまえは裁判所が選任するということでございますので、裁判所が相当と認むるときには、以上のような弁護士会に推薦を求めるというような方法ではなく、直接選任をする例ももちろんございますし、そういうこともできるようになっておるわけでございます。
#155
○白木義一郎君 そこで、まあ被告人のほうの立場にしますと、私選弁護人とそれから国選弁護人に対する何といいますか感じですね、まあ私選弁護人はこれは信頼性を持っておるんですけれども、選定された弁護人ですからこれは文句ないと思うんですが、国選弁護人の場合はそれがないというようなこと、それから国選であるがゆえに報酬等の問題も被告人の立場であるといろいろ気を使うわけです。まあ端的にいうと、国選弁護人の弁護費用あるいは報酬等はきわめて安いんじゃないかと。そうしますと、弁護のほうもどうしても手簿になるんじゃないかというような心配があるわけです。そこで、この国選と私選弁護人の報酬の実態、またその比較を御説明願いたいと思います。
  〔理事佐々木静子君退席、理事原文兵衛君着席〕
#156
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 私選弁護人の報酬の実態と申しますのは、私どもには必ずしも分明でないわけでございまして、それとの比較ということがちょっといたしにくいわけでございます。ただ、私どもが一応考えておりますのは、日本弁護士連合会で報酬等基準規程というのをお定めになっております。その報酬等基準規程を一応の基準といたしまして、できるだけそれに近づけた報酬を支給できるようにいたしたいということで私どもはせっかく努力いたしておるわけでございます。
#157
○白木義一郎君 できるだけその近づけたいという気持ちである、まあこういうお答えですが、実際はどうでしょうかね。先ほど大臣も、国選弁護人に対する費用あるいは予算、それが非常に限度があるんだと、足りなくなったら予備費から出せばいいじゃないかと思っていたところがなかなかそうはいかない、知らなかったと、これからよく検討し勉強するという、そういうようなお話でしたけれども、ずっと法務大臣を再任されればまことにけっこうですが、これからといわずに法務大臣とともに御説明を願いたいと思うんです。
#158
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 日本弁護士連合会の報酬等基準規程というのがございますが、それは一応緊急重要なことを考えてつくられているようでございまして、それによりますと、刑事事件に関しましては手数料と謝金という形に分かれております。手数料と申しますのは通常の弁護活動に対する報酬と一応考えられるところだろうと存じます。それから謝金と申しますのは、たとえば無罪とか免訴、控訴棄却、刑の免除、執行猶予の言い渡しがあった場合に、そういうようなものはこれは多少成功報酬ということのにおいが強いようなものだろうと思います。そういたしますと、裁判所のほうから国選弁護人に支給するという分につきましては、国選弁護に対しての成功報酬ということは観念的に考えにくいということで、やはり通常の日本弁護士連合会の基準規程でいきますと手数料ということに当たる部分を支給するというのが適当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。そういたしますと、現在の日本弁護士連合会の基準規程によりますと、手数料は簡易裁判所の事件で一万円以上、地方裁判所及び家庭裁判所事件で二万円以上、高等裁判所及び最高裁判所において三万円以上という形になっておりますが、これに対しまして、本年度の一応裁判所のほうが下級裁判所のほうに対して基準を流しております国選弁護人の報酬は、簡易裁判所の分につきましては一万七百円、家庭裁判所については一万四千六百円、地方裁判所には一万四千九百円、控訴裁判所におきましては一万六千百円、上告裁判所においては一万七千四百円というのが一つの基準額として下級裁判所に流しておりますので、これといまの日本弁護士連合会の報酬等基準規程と比較いたしますと、一審のところにおいてはほぼひとしい、上告あるいは控訴という面について、なお国選弁護人に対して支給する基準額のほうが下回っておるということが言えようかと思います。
#159
○白木義一郎君 たいへんむずかしいことだと思うのですがね。私選の場合にはこれはあくまでも被告人と依頼人との契約ということになると思うのですが、それでそれも含めて大ざっぱにいって私選の弁護人の報酬を、これはむずかしいと思うのですけれども、十として、国選弁護人の報酬は大体どのくらいでしょうか。
#160
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 個々的に比較するというわけにまいりませんので、どの程度に大ざっぱにしたらなるかということはちょっと口で申し上げるような材料を持ち合わせないわけでございまして、できるだけ私選弁護人の分が十といたしますれば十に近づけたいと考えているのですけれども、まだ現在のところは十まではいかないというふうに御理解いただくよりしかたがないのではないかと思います。
#161
○白木義一郎君 先ほど、国選弁護人が被告人あるいは裁判所長等から非常に弾劾された、あるいは平たくいうといじめられる、つらい立場にあると、そういう例が実に多いと、そういうお話があったわけですが、同じく被告人の立場にもそれがあると思うのです。そこで、国選弁護人に対する被告側から選任について異議の申し立てということができるのか、あるいはその拒絶が可能なのかどうなのか。
#162
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判所といたしましてはいわゆる憲法で定めております資格ある弁護人というものは弁護士の中から選任するということで一応の条件は満たされていると考えておりますので、それについて特段の事情なしに被告人のほうからそれの弁護を拒否するというようなことの請求権と申しますか、そういう申し立て権はないものというふうに考えております。しかし、弁護活動の実際の内容によっては被告人のほうからの申し出が裁判所のほうに対する解任の職権発動を促す申し立てというふうに考えて、実情を調査して、場合によっては、被告人に理のあるという場合には、弁護人に対して訴訟上あるいは弁護士会を通じて等、弁護活動についていろいろ促進なり充実をはかっていただくようにお話するということはあり得ることだと考えております。
#163
○白木義一郎君 最後に、先ほども質疑応答の中にあるいは答弁されたと思うのですが、被告人に弁護人を国がつける、被疑者の段階で弁護人を国がつけることが可能であるかどうか、あるいはまたもしそうでなければ十分な弁護をしようとすれば、被疑者の段階ですでに弁護活動に入るべきじゃないだろうか、こういうようにも思うのですが、現行と、それから当局のお考えを伺って、私の質疑を終わりたいと思います。
#164
○政府委員(貞家克巳君) 現行法のたてまえでございますが、現行の刑事訴訟法におきましては、「被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。」というふうに規定しているわけでございます。また、憲法も三十七条の第三項におきまして起訴後の被告人についてのみ国選弁護人の選任請求権を保障しているわけでございます。これを受けて刑事訴訟法三十六条がございますので、現行法の解釈論といたしましては、被疑者の段階で国選弁護人を付するということはできないことになるわけでございます。もちろん、私選弁護人を依頼する権利は、これは憲法上も保障されておりますので、被疑者の段階でも私選の弁護人をみずから付するということは可能でございます。被疑者の段階で国選弁護人を付するかどうかという点は、立法論の問題になるかと思いますが、先ほど佐々木委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、立法論としては考慮の余地がないというわけにはまいらないと思いますが、ただ、現在の状況におきまして、被疑者の地位が流動的であること、短期間の拘束期間を過ぎました場合に、直ちに起訴後の段階において国選弁護人の援助を受けるということが保障されているということ、その他弁護士会、弁護士の受け入れ体制、払うことあるべき犠牲の問題、あるいはその費用の負担の問題、さらには根本的には刑事訴訟の構造、捜査のあり方というような基本的な問題に関連いたしますので、いま直ちに具体的に実現の方向で検討するというお答えは申し上げかねるわけでございますが、十分考慮の余地のある問題として今後研究を続けたい、かように考えております。
  〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
    ―――――――――――――
#165
○委員長(阿部憲一君) この際、委員の異動について報告いたします。
 本日、平井太郎君が委員を辞任され、その補欠として濱田幸雄君が選任されました。
    ―――――――――――――
#166
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#167
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#168
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#169
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#170
○委員長(阿部憲一君) 速記を起こして。
    ―――――――――――――
#171
○委員長(阿部憲一君) お待たせしました。これより請願の審査を行ないます。
 第三五九号水戸地方法務局出島出張所の土浦支局への整理統合反対に関する請願ほか四十七件を議題といたします。
 まず専門員から説明を聴取いたします。
 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#172
○委員長(阿部憲一君) 速記を起こして。
 第三五九号水戸地方法務局出島出張所の土浦支局への整理統合反対に関する請願ほか十二件は議院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するを要するものとし、第一八九二号出入国法案反対に関する請願ほか三十四件は保留と決定することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#173
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#174
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#175
○委員長(阿部憲一君) 次に、継続審査要求に関する件についておはかりいたします。
 恩赦法の一部を改正する法律案につきましては閉会中もなお審査を継続することとし、本案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#176
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成及び提出の時期につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#177
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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