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1971/02/01 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 本会議 第3号
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1971/02/01 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 本会議 第3号

#1
第068回国会 本会議 第3号
昭和四十七年二月一日(火曜日)
   午前十時八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和四十七年二月一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、日程第一
 一、永年在職議員表彰の件
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 浅井亨君から病気のため二十九日間請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 去る一月二十九日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#6
○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、佐藤総理の施政方針演説に対し質問をいたしたいと思います。
 昨年は、日本政府の頭越しにニクソン大統領の訪中計画が発表され、続いて国連総会では、中国が国連代表権を回復し、国民政府を追放するアルバニア決議案が圧倒的多数で可決成立し、国際情勢が大きく変化した年であります。この間、明らかになったことは、米国の中国封じ込め政策に追従して中国敵視を続け、中国の国連代表権回復を最後まで妨害しようとした佐藤内閣の中国政策が完全に行き詰まり、世界の大勢から取り残されようとしているということであります。また、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明は、日中関係の打開を困難にした上、沖繩返還協定は、この日米共同声明を基礎にするとうたっておりますが、特殊部隊まで含めた膨大な米軍基地をほとんどそのまま存続させ、さらに、本土よりも強力な自衛隊を配備するという沖繩返還方式が、いまやアジアと極東の緊張緩和にそぐわないものであることも明らかであります。総理は、新春早々、サンクレメンテにおいて二日間にわたってニクソン大統領と会談されたが、総理がこの会談でなすべきことは、最小限一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明での韓国及び台湾条項を削除して、極東の緊張緩和に努力することを明らかにすること、また、沖繩の核基地の即時撤去はもちろんのこと、沖繩米軍基地の全面撤去を目ざした基地縮小計画の実現に努力することであったと思います。そして佐藤内閣の最後の仕事として、国民のために、佐藤内閣が外交政策上の見通しを誤った点を修正して、引退の道を考えるべきであったと思うのであります。だが、サンクレメンテ会談後の共同声明からは、新たな国際情勢に対応した日本外交の自主性は見出されず、旧態依然たる対米追随の姿勢しか感じられません。私は、まず総理に対して、世界が緊張緩和の方向へ大きく歩み出し、多極化しているこのときに、一体、日本外交は米国追随の従来の外交路線をどう修正されようとするのか、これからの外交の基本姿勢をただしたいのであります。
 次に、去る一月二十七日発表された日ソ共同声明による双方の友好関係の増進がアジア・世界の平和強化に貢献し、一歩前進であることは認めますが、何よりも北方領土問題を根本的に解決する条件を早急に整えるべきであり、そのためにも、日米安保体制強化の態度を改めるべきであると思います。
 さらに、総理はサンクレメンテにおいて北方領土問題の解決をニクソン大統領に依頼したともいわれておりますが、あまりにも自主性のない対米追随の態度には、ソ連からも非難を受けているではありませんか。これについて総理の考え方をお伺いいたします。
 第二に、総理は、「沖繩が返らなければ戦後は終わらない」と言っていたが、今度は、「北方領土が返って初めて戦後は終わるのだ」と言い始めております。が、総理自身、最も大切なことを忘れておられるのではないかと思います。それは日中関係であります。日本と中国との間の戦争状態は正式には終わっておりません。これが終わらない限り、戦後は終わったなどとは言えないはずであります。わが国は、戦後二十六年間も放置してきた中国との戦争状態をまず終結させるべきであります。そして中国が国連代表権を回復し、台湾政府が国連から追放された以上、すみやかに中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府であることを認め、日華条約を廃棄して、日中国交回復を実現すべきであります。
 さらに、今度の藤山処分につきまして、衆議院のきのうの答弁によれば、それは党内の問題だと答えられております。総理の考えは一体どうなのか。もしもそれが正しいとすれば、口で日中国交回復を叫びながら超党派の日中国交回復促進議員連盟の会長を処分することは、片手で握手を求めて足げにするようなものだと思いますが、佐藤内閣は真剣に日中国交の回復を実現しようとする意思があるのかどうか。おそらく佐藤内閣ではこれはできないことでありましょう。できないならば、佐藤総理はすみやかに退陣すべきであります。なぜならば、佐藤総理が退陣することこそ、日本国民の大多数が熱望しておる日中国交回復の実現に道を開くことにつながるからであります。(拍手)
 第三は、沖繩の核兵器撤去の問題であります。
 今回の日米共同声明では、「沖繩における核兵器に関する米国政府の確約が完全に履行された旨の確認を返還の際行なうとの米国政府の意向を大統領が明らかにした」と言いますが、その確認の方法は具体的にはどういう方法なのは、お伺いをいたします。
 われわれは、日本政府の調査、点検によって核兵器がないということを確認せよと主張してきましたが、そのようにするのかどうか。核兵器はない、しかし調査、点検はさせないというのでは、やはり、あるのではないか、隠しているのではないかという疑問が起こるのは当然であります。調査、点検もせずに、政府の言うことを信頼しろと言っても、それは無理であります。戦争中、日本国民は大本営発表でだまされ続けてきました。かつて悲惨な戦争に敗れたとき日本国民は、二度と再び大本営発表にはだまされないぞと思ったはずであります。この国民の気持ちこそが平和を守る基礎であります。特に核兵器については、さきの臨時国会でわが党議員が明らかにしたように、沖繩だけでなく本土の岩国基地にも持ち込まれた疑いが濃厚であります。沖繩をはじめ本土の米軍基地を含めて、政府の責任において核兵器の調査、点検を実施すべきであります。総理の明快な御答弁をお願いいたします。
 第四に、今回のサンクレメンテ会談で、一九六九年の日米共同声明にある、韓国及び台湾の安全がわが国の安全にとっても重要だという認識ははっきり消滅したのかどうかを、この際明らかにしてほしいのであります。この条項は、さきにも触れたように、日中関係打開の障害となり、アジアと極東の緊張緩和に逆行することは明らかであります。今回の日米共同声明は、一応「流動しつつある現下の世界情勢において、緊張緩和へ向かう動きがみられることを認める」と述べており、総理は記者会見で、台湾条項は事実上なくなっていると言っていいと答えておりますが、なおあいまいであります。特に総理の記者会見後、福田外務大臣が、この総理の記者会見での答弁を訂正するがごとき発言をしておられるのであります。いやしくも一国の総理の公式の記者会見での発言が、外務大臣にあとから訂正されるというのは不見識であります。しかも、これはきわめて重要な発言であると思います。総理が間違ったのか、外務大臣が間違っておるのか、この際明らかにしてほしいのであります。総理は「現下の世界情勢において緊張緩和へ向かう動きがみられる」と言うが、この緊張緩和への動きを促進しようとするのか、それとも、これに逆行しようとするのか。緊張緩和を促進しようとするのであれば、いかなる努力をしようとするのか、それを明らかにすべきであります。
 さらにまた、朝鮮人民との平和友好関係が確立されない限り戦前からの朝鮮人民圧迫の悲しい歴史は終わらないということも、この際はっきりと認識しなければなりません。そのためには、朝鮮人民の自主的統一を阻害する一切の政治的、経済的行動を中止すべきであります。朝鮮民主主義人民共和国との経済、文化の交流を促進するとともに、在日朝鮮人に対する一切の差別政策をやめ、その民族的、民主的権利を守るべきであります。
 また、先般の超党派議員団の朝鮮民主主義人民共和国への渡航に際しては、自民党が幹事長名で自民党議員を阻止したことなどは、まさに逆行であると思うがいかがでしょうか。
 なお、一月十八日、通産大臣は、中国への輸銀使用については申請があれば認可すると表明されましたが、これは従来のうしろ向きの態度を改めたものと解釈していいかどうか。さらに、総理も通産大臣と同じ考えかどうか、それを承りたい。
 しかし、問題は、輸銀資金の使用をなしくずしに認めればよいというものではないという点にあります。中国は吉田書簡の廃棄を求めております。これなくしては輸銀資金使用の問題は実際のところ解決できないのではないでしょうか。政府としては、これまでのようにその法的性格を云々して逃げるのでなく、政治的発言としてその無効を声明すべきであります。総理は、先般の私の緊急質問に対して、吉田書簡は個人的のものであり廃棄はできないと言われたが、この書簡のため、池田内閣の中国との前向きの姿勢にストップがかけられ、それより七年余、現実に吉田書簡は生きているのであります。もし総理が日華条約を廃棄できないというのであれば、せめて在任中に吉田書簡を廃棄して、日中国交回復への意欲のあかしとすべきであると思いますが、いかがお考えですか。この問題につきましては、福田外務大臣、田中通産大臣にもお尋ねいたします。
 次に、内政問題についてお尋ねいたします。
 第一は福祉政策についてであります。政府は、昭和四十七年度予算は福祉優先の予算であると宣伝し、予算編成の過程では、四次防計画の延期あるいは大幅削減の必要性も伝えられました。ところが、最終的にまとまった政府原案はどうか。防衛費は自衛隊発足以来最高の伸びとなり、第四次防衛力整備計画は閣議の正式決定さえも行なわれないまま実質的に予算に組み込まれ、四次防の目玉兵器がずらりと頭を並べております。防衛予算の伸び率がこのまま続けば、五兆八千億円の四次防計画は、削減どころか、逆に一千億円程度の超過をするという軍事優先予算であります。その陰で福祉予算は一体どのように扱われているか。昭和四十年代における予算額に対する社会保障費の構成比を見ますと、常に一四%台で推移しております。さらに、社会保障関係の平均の伸び率で見ましても、三十年代の池田内閣が二〇%をこえていたのに、四十年代の佐藤内閣のもとでは一七%に落ち込んでいることを見るならば、国民の福祉を軽視したのは佐藤内閣自身だと言えるのではないでしょうか。
 さらに、福祉の概念を広く考え、社会資本整備による暮らしよい社会の建設というふうに考えた場合、公共投資の伸び率は池田内閣より佐藤内閣のほうがこれまた落ちております。口では社会開発や社会資本整備を唱えられても、実行が伴っておりません。福祉優先を言わなければならないほど貧しい社会をつくった大きな原因は、実に佐藤内閣の政治姿勢そのものにあったと断言できるかと思います。そこで、四十七年度予算を見ますと、福祉優先予算というキャッチフレーズを掲げておるにもかかわらず、その社会保障費の構成比は依然として一四・三%であります。何ら前進は見られないのであります。これがはたして福祉優先の名に値するものでありましょうか。世に「大砲かバターか」ということばがありますが、私の見るところ、大砲の砲身の上にわずか半ポンドのバターがそっと置かれているくらいにしか見えないのであります。そもそも福祉とは何か。佐藤総理にはそれが全くおわかりになっていないと思われるのであります。これを福祉優先予算と強弁されるのであるならば、かつて「福祉なくして成長なし」という名言を吐かれた当の佐藤総理並びに大蔵大臣の見解をお伺いしたいのであります。
 政府が福祉対策の目玉だと宣伝しておる七十歳以上の老人医療無料の政策は、すでに全国で三十にも及ぶ地方自治体で実施しておるものをようやく政府が取り上げたものであって、むしろおそきに失するものであります。しかも、わずか九十六億二千九百万円の予算しか組まず、実施は四十八年一月からとされており、きわめて消極的であります。これでは、定年から七十歳までの医療はだれが見るのか、それが問題であります。日本人の平均寿命は男子六十九歳であります。また、老人の健康診査は六十五歳からとなっておるではありませんか。七十歳からだとする根拠を厚生大臣並びに大蔵大臣に示していただきたい。
 そして、一方では医療費値上げを行なって国民の負担を増大させようとしております。政府がほんとうに国民大衆の立場に立った福祉政策をとるのであれば、人間の最も大切な命と健康にかかわる医療については、本来無償でかかれるようにすべきであります。しかるに政府は、初診料や入院料の値上げによって、病気になっても医者にもかかれないような条件をつくり出しております。これが政府の言う福祉優先のほんとうの中身であり、金持ちと有産階級には福祉が金で買えても、国民大衆には買えないという、まことにひどい性格の福祉政策と言わざるを得ません。
 また、軍人恩給を例にとりますと、物価上昇率を考慮して恩給を一〇・一%引き上げたと言われるが、軍人恩給だけはそのベースを上回り、総理府の要求を二十三億も上回る優遇措置をしております。軍人恩給は毎年使い残りになっているということを総理、大蔵大臣は御存じでしょうか。何ゆえに軍人恩給だけを特別に優遇するのか。軍人恩給関係費は総額約三千億円に達し、軍関係者には数十万円の恩給を出しながら、一方で老齢福祉年金は、老人の心からなる願いをはるかに下回る月額たった三千三百円であります。これでも福祉重点予算と言えるものでありましょうか。医療費引き上げなど、安易な国民への負担転嫁を避けるべきであると思いますが、総理並びに厚生大臣の答弁をお聞きしたいのであります。
 次に、社会保障計画でありますが、政府はいまだかつて社会保障計画を公表したことがありません。このことは全く政府の怠慢と言わざるを得ないのであります。経済審議会は、昭和四十二年二月、経済社会発展計画の中で、わが国の経済社会の実態とその将来の進路に即した適切な社会保障長期計画を策定し、これに基づく体系的整備を行なうことが不可欠であると述べておるのでありますが、その後においても依然として社会保障計画は提出されておりません。思いつきやびほう策ではとうてい社会保障の発展はなく、計画なきところに充実整備はないのであります。人間尊重の上に立って福祉国家の繁栄と発展を遂げるためにも、当然、長期展望を示すことが重要課題であります。政府はこの際、社会保障長期計画を策定される意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。
 さらに、社会保障の国際的見地に立って見るとき、ILO第百二号条約、すなわち、社会保障制度の最低基準の条約は、すでに一九五二年に採択され、わが国はすでに批准のできる条件を備えておると思いますが、いまだに批准しておりません。さらにその他第百二十一号及び第百二十八号、第百三十号等、社会保障関係条約が相次いでILO総会で採択されておるのであります。わが国の社会保障水準が先進国に比較して今日十数年おくれておる現状を見るときに、国際水準に近づけるためにも、早急にこれらの条約を批准し、社会保障制度の前進に対する政府の決意を示すべきであると思いますが、総理大臣及び大蔵、厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
 内政問題の第二は、経済政策の基本姿勢についてであります。
 佐藤内閣のもとにおける高度成長政策は、内においては全国各地に公害及び自然と人間の破壊を引き起こし、外においては、なりふりかまわぬ輸出第一主義がエコノミック・アニマルの非難を浴び、円の切り上げと不況の長期化を招いたのであります。この際重要なことは、経済政策の基本を、大企業本位の生産第一主義政策から国民の生活と福祉優先の政策に切りかえることであります。低賃金と低福祉、公害たれ流しのままで輸出第一主義を続けるならば、たとえ今度のように予想以上の大幅な円切り上げを行なっても、やがて再切り上げに追い込まれることは明らかであります。しかるに、政府の来年度予算案を見れば、依然として福祉優先は単なる看板で、実は国民生活軽視の姿勢が明らかなのであります。
 その第一は税の面についてであります。政府の高度成長政策のもとで優遇され、多くの利潤をあげてきた大企業に対して、さらに円切り上げに伴う為替差損を補償しようという態度であり、また、大企業中心の景気刺激政策をとるために実質的な赤字国債を大量に発行してインフレのおそれを増大させ、国民生活を圧迫しようとする態度であります。円切り上げによって発生した企業の長期外貨建て債権の為替差損は四千億円と見積もられておりますが、そのうち二千八十億円は税金面で優遇し、さらに金融面でも救済措置をとり、全体の三分の二を救済するというのであります。それなら、一方で外貨建て債務の為替差益のほうはどうなるのですか。昨年九月の衆議院大蔵委員会で通産大臣は、企業の外貨建て債務は約一兆一千億円あることを明らかにし、水田大蔵大臣は、かりに将来為替差益の出る企業があれば課税を強化すると答えているのでありますが、こちらのほうは一体どうしたのか。一兆一千億円の債務ならば、一六・八八%の円切り上げによる差益は一千八百億円をこえるはずであり、決して少ない額ではないのであります。いままで高度成長政策で大きな利潤をあげ続けてきた大企業に対しては、為替差損だけは大幅に救済し、多額の差益については放置するというのでは、国民は納得することができないのであります。このような大企業の圧力に屈したやり方は改めるべきだと思いますが、総理及び大蔵、通産大臣の答弁を求めます。
 そうした大企業優遇の租税政策と対照的なのは、四十七年度所得税減税なしという勤労者重税の佐藤内閣の姿勢であります。所得倍増計画以来、政府のインフレ政策の罪滅ぼしの意味もあって、過去十七年間物価調整減税を行なってまいりましたが、四十七年度はやらないというのでは、国民は納得いたしません。さらに、昨年十一月のドルショック脱出をねらった四十六年度補正予算の提出にあたっては、公共事業の拡大より減税のほうが景気浮揚効果が大きいとの佐藤総理のお声がかりで所得税減税が行なわれたと伝えられております。四十七年度予算が景気回復を最大目標として編成されたという政府の説明とこの減税ゼロの政策は、景気対策の面でも支離滅裂ということになると思うのですが、総理並びに大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
 さらに、今日国民の間に高まっておる、税が重過ぎるとの声は、実は税そのものが重いということもありましょうが、より重大なことは、課税の不公平と納める税のわりに国からのサービスの提供が少な過ぎるというのが国民の重税感の真の原因ではないかと思うのであります。したがって、税の不公平を是正し、法人税の適正化、租税特別措置の改廃などを通じて、取るべき税金を取ることによって租税構造そのものの硬直化を打開するとともに、それらの税の増収分を、物価高の中で実質増税に苦しむ勤労者の所得の大幅減税に充てるべきであります。このことによって、本来の意味での景気浮揚効果も期待し得ると思います。また、土地の大幅値上げによって、労せずしてばく大な所得を得ておる大土地所有者からは土地増価税を取ること、さらに、土地を投機の対象として大量買い占めを行なっておる大企業に課税すること、また、年間一兆円をこえる企業の交際費に対する課税を強化すること等も行なうべきであると思います。
 そして、その第二は、福祉優先にとって喫緊の課題である物価安定がなおざりにされておることであります。政府みずから公共料金を一斉に引き上げて物価上昇に拍車をかけようとしておるのであります。国鉄運賃は四十七年度に旅客二三・四%の引き上げを行なうだけでなく、今後も三年ごとに三回の値上げを行なうこともきめており、なお、郵便料金もきめており、医療費一三・七%の引き上げを本日から行ない、国立大学の授業料は三倍の引き上げを行なおうとするほか、電話料金は三月から値上げ、さらに消費者米価の物価統制令適用を廃止しようとするなど、不景気の中での物価値上げの大パレードであります。一体総理は、これだけ公共料金を引き上げて、来年度の消費者物価上昇率が、政府経済見通しでいう五・三%のワク内にとどまるものと本気で考えておられるのかどうか、お答えを願いたいのであります。
 さらに、大規模な公債発行による公共事業の拡大によって地価の加速度的な高騰は必至であるといわれております。しかるに、地価抑制に対して政府は何ら積極的かつ効果的な対策を講じようとしておりません七地価高騰と公共料金の一斉引き上げが物価上昇に拍車をかけ、国民生活を圧迫するであろうことは火を見るよりも明らかであります。政府は、物価抑制のために率先して公共料金の値上げを押えるとともに、不況カルテルなどによる大企業の独占価格を規制すべきであると思いますが、総理並びに大蔵大臣の御答弁を願います。
 なお、最近大蔵大臣はデノミネーションの実施を示唆しておるが、円切り上げが明確でなかった時点においてはデノミの実施の可能性を打ち消しておきながら、円切り上げを実施した今日、急にまたデノミの必要性をうたい上げているその真意はどこにあるのか。これに対する総理及び大蔵大臣の見解をお伺いしたいのであります。
 次に、佐藤内閣の政治姿勢についてお尋ねしたいのであります。いまアジア諸国の間に、日本が経済大国から軍事大国になるのではないかという疑問が起こり、日本の軍国主義化に対する非難の声が高まりつつあります。これに対し政府は口先だけで軍国主義化を否定しておりますが、これは口先だけでなく具体的な事実をもって答えなければならない問題であります。
 まず第一に、八千億円をこえる大型防衛予算を組んで四次防計画を実質的に発足させた姿勢が問題であります。
 第二は、その中身であります。四次防の目玉といわれるRF−4E偵察機は、渡洋能力を持つ遠距離偵察機であり、このほか、超音速練習機や、一機三十億円もする大型輸送機をはじめ、戦車、装甲車、潜水艦など、その功撃力は質的にも大きく高められようとしております。すでに、戦前の帝国陸海軍よりもはるかに強力となり、世界で六、七番目の戦闘能力を持つといわれる自衛隊がさらに攻撃力を強化して、一体どこへどうやってその戦闘力を使おうとしておるのか、それを明らかにしてほしいのであります。専守防衛を強調する政府が、かくも強力な攻撃的兵器を装備しなければならない必要性を国民は全く納得できないのであります。さらに、日本の軍国主義化の危険に対するアジア諸国民の非難を解消することも不可能であります。われわれは、アジアと世界の緊張を緩和し、平和を目ざすためには、かかる軍備の増強は不必要であるのみならず有害であるとさえ考えるのであります。アジアの緊張緩和の動きを促進するためには、平和的外交手段による努力を積み重ねるべきであり、四次防を中止し、防衛費を削減し、非核武装宣言と沖繩の非軍事化決議を行なって、アジア諸国民からの日本軍国主義化の非難を解消させ、平和・中立の外交政策を積極的に展開すべきであると思います。
 日本国憲法は、日本国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した、と述べております。軍事力にたよって安全を維持しようとはいっていないのであります。総理が真に世界情勢に緊張緩和の動きが見られると考えるならば、そしてその動きを促進しようと思うならば、いまこそ日本国憲法の精神に立ち返るべきだと思うのであります。さらに、軍国主義化の非難は、単に軍事力の増強に対してだけいわれておるのではないということを指摘したいのであります。
 また、昨年の国会において、沖繩返還協定の成立をはかるために政府・自民党が衆議院で行なった問答無用の強行採決は、まさに議会制民主主義を破壊する暴挙であり、このような憲法に基づく民主主義の制度を骨抜きにしようとする政治姿勢が、軍国主義化の危険性を指摘されるゆえんでもあります。佐藤内閣ぐらい、総理自身の任命した閣僚が憲法の精神に違反する発言をしたり、国連を誹謗する発言をしたりして問題を引き起こした内閣はないでしょう。これらは佐藤内閣に憲法を守ろうとする気持ちが欠けているために起こるのだと言わざるを得ません。(拍手)
 また、議会制民主主義を守り、国権の最高機関である国会の権威を高めるために、強行採決のごとき暴挙は二度と繰り返さないことを約束すると同時に、国会の審議権を尊重して、いやしくも行政権が国会の立法権を狭め、これを侵すようなことは厳に慎むことを明らかにすべきであります。
 特に、昨年、参議院においては、議長、副議長の党籍離脱が実現し、強行採決を行なわず、慎重審議を尽くすという方向を一歩進めております。これを前進させるために、参議院からは大臣、政務次官等を出さず、参議院の権威を高めていくべきだと考えますが、いかがでございますか、御答弁を願います。
 最後に、佐藤総理の施政方針演説とそれに対する代表質問は、おそらくこの国会が最後になるだろうといわれております。佐藤総理が掲げた公約は、人間尊重にせよ、ひずみの是正にせよ、いずれも公約倒れに終わっておりますが、せめて一つだけでも今国会で実現させてほしいと思うのは、政治資金規正法の改正であります。
 かつて総理は、審議会答申については、小骨一本抜かないと大みえを切ったはずでありますが、その公約も不履行のまま、沖繩恩赦と称して、悪質な選挙違反者を大量に免罪して、政治に対する国民の不信感を一そう強めて退陣しようとするのか、それとも国民の政治に対する信頼を回復させ、わが国の民主政治を守る道を選ぶか、総理の決意をお伺いして私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(佐藤榮作君) 阿具根君から、まず政府の外交政策に対する御意見がありました。私は、日米間の友好信頼関係の維持増進こそ、わが国外交の最重要課題であると心得ております。国益追求という点からも、また、わが国の置かれている国際的環境から見ても、日米協調を推進することは当然であると考えます。これをもって対米追従外交とする御批判は当たらないのみならず、国際情勢の現実に立脚しない御議論ではないかと私は思います。もとより、一国の外交はあくまで自主的なものであるべきことは当然であって、政府としては、近隣諸国との善隣友好関係の発展に努力するとともに、アジアの緊張緩和につとめ、平和の維持に最善を尽くす所存であります。
 日ソ関係については、昨日衆議院で社会党の成田委員長にお答えしたとおり、わが国固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉の返還によって日ソ平和条約を締結するというのが政府の方針であります。阿具根君は、この問題をニクソン米大統領に委任したのは不見識だと言われますが、私はそうは思いません。と申しますのは、いわゆる今日の国際間の戦後体制について最も大きな影響力を及ぼしたのは米ソ両国であると考えております。今日の国際情勢は、当時とは大きな変化がありますが、複雑な国際関係の中にあって、主要な先進国間の相互関係が円満に推移することはあらゆる面で好ましいものであることは、議論の余地のないところと考えます。この意味で、米ソ首脳会談で緊張緩和問題の一環として、未解決の北方領土問題が取り上げられてもふしぎではないと思います。私は今後とも、北方領土の返還によって日ソ平和条約を締結し、日ソ関係の長期的発展のためあらゆる努力を払う所存であります。
 次に、日中関係正常化についての政府の考え方は、施政方針演説で申し述べたとおりであります。政府としては、国交正常化の問題のみならず、双方に関心のあるあらゆる問題について政府間の話し合いを行なう用意があり、中華人民共和国政府がこれに応ずることを期待しております。中国の国連における意欲的な活躍ぶりは、国際間の平和維持という観点から望ましいことと考えますが、わが国としても、一そうじみちな努力を積み重ねなければならないと考えます。特に発展途上国の経済発展と民生の向上は、わが国が積極的に取り組むべき課題であり、今後とも国連その他の場を通じて誠実に推進してまいる所存であります。
 藤山君の問題につきましていろいろお尋ねがありました。超党派的な行動でありましても、わが党の党員であることに間違いはございません。この問題は、この席でとやかく議論することは避けたいと思います。
 また、中国との間の戦争がいまなお続いておると、こういうお話でございますが、さような事実はございません。中華人民共和国も、すでに中国大陸からわが国の軍隊を無事に返してくれた。そのことを考えてもさような事実はないと、これはずいぶんおかしな御議論だと、かように思いますので、この点は修正していただきたいと思います。
 次に、沖繩の核抜き返還については、すでに再三にわたって述べたとおり、一九六九年の日米共同声明並びに沖繩返還条約において明らかであります。また、先般のサンクレメンテ会談において、ニクソン米大統領は、沖繩における核兵器に関する米国政府の確約が完全に履行された旨の確認を返還の際に行なうという意向を明らかにしたのであります。このことによって、核抜き返還はもはや一点の疑問もなくなったのでありまして、私は、沖繩県民の皆さんにほんとうに安心していただけることを喜んでおります。
 次に、共同声明というのはそのときの相互の認識を述べ合うものであることは御承知のとおりであります。一九六九年の日米共同声明と今回のサンクレメンテにおける共同発表とではややニュアンスが違いますが、これは国際情勢の変化を示すものと申せましょう。すなわち、今回は、現下の世界情勢において緊張緩和に向かう動きが見られることを認め、永続的な平和と安定の増進のために一段と努力が必要であることを強調したのであります。しかしながら、わが国に隣接している台湾、韓国をめぐる国際緊張が激化すれば、わが国にとって重大な関心の対象とならざるを得ないのは当然であって、このような考え方自体には変わりはないのであります。したがって、政府としては、アジアの緊張緩和を第一義としてあらゆる努力をいたす決意であります。政府としては、国連が朝鮮半島の平和統一の促進をはかることが最も望ましいと考えておりますが、いずれにせよ、極東における緊張緩和の傾向が朝鮮半島にも反映し、朝鮮半島に緊張緩和がもたらされ、ひいては南北の平和統一の機運が生まれてくることを強く希望している次第であります。
 なお、日朝議連代表団の訪朝について、圧力をかけた事実はありません。
 輸銀資金使用についてのいわゆる吉田書簡は、これまでも繰り返し述べたとおり、元来が私信であって、廃棄するとかいう性質のものではありません。日中間の貿易総額は、年間すでに九億ドルに達し、前年比九・四%の伸びとなっておりますが、政府としては、日中関係の増進をはかるという見地から、輸銀資金の使用についても前向きに対処する方針であります。具体的な点については所管大臣からお答えをいたします。
 次に、阿具根君から、来年度予算は四次防に重点を置いた軍国主義予算であるとの御指摘がありましたが、そのようなものでは絶対にありません。四十七年度予算は、当面の景気停滞を克服し、わが国経済を安定成長の軌道に乗せることと、公共投資の拡充、社会保障の充実と国民福祉の向上をはかることを目ざして編成されたものであります。四十七年度の防衛関係予算は、沖繩の本土復帰という特殊事情があるため一九・七%の伸びになっておりますが、沖繩関係経費を除いたところでは一五・六%であります。これらの伸び率は、いずれも一般会計の伸び率を下回っており、また、公共事業関係費、社会保障費などの主要経費の伸び率をも下回っており、国の各般の施策と調和のとれたものであります。
 また、四十七年度予算は、四次防が未決定の段階で編成されたので、沖繩への配備に必要なものは別にして、三次防の継続事業、従来装備の更新、人件費などの当然必要な経費に限り計上するとの原則に立って編成されております。
 このように、四十七年度予算は、国民福祉の充実を最優先に編成されたものであって、御質問の軍国主義化予算というのは全く当たらないのであります。
 なお、国民福祉の向上のための予算として、老人医療の無料化と、老齢福祉年金の大幅改善を二本の柱に、老人対策の大幅な拡充、充実をはかるほか、障害年金及び母子福祉年金の年金額の引き上げなど、福祉対策の向上にできる限りの配慮を加え、総額約一兆六千億円を計上しております。これは二二・一%の伸び率で、四十年代に入って最高のものであります。
 社会保障の充実につきましては、昭和四十六年度に、懸案の児童手当制度を創設し、来年度からは老人医療の無料化をはかるなど、政府としてはかねてから努力してきたところでありますが、今後とも、社会的需要の変化に対応しつつ、さらに拡充強化していく方針であります。今後の社会保障をどのように進めるかについては、四十七年度において策定を予定している新しい長期計画において、国民福祉の充実を最大の課題として、社会保障の充実のための政策の方向を明らかにする考えであります。
 また、御指摘のILOの百二号条約などは、部門別あるいは包括的に社会保障制度に関する基準を定めたものであり、内容的に見ると批准可能なものもありますが、全体について将来の見通しを立てた上で態度をきめることが妥当であると考えております。
 また、私の福祉優先の意味についてお尋ねがありましたが、私は、従来の経済成長のあり方を改め、公害のない豊かな生活環境をつくり出すとともに、経済成長の恩恵がすべての人々に十分に行き渡るようにすることが肝要であると考えております。このような福祉社会の建設は、私のみならず全国民の願いであると確信し、その実現のためにあらゆる努力を払ってまいる決意であります。
 次に、阿具根君から、今回の円切り上げによる企業の差益金に対する課税をどうするかとのお尋ねがありました。阿具根君も御存じのように、通貨調整によって生ずる利益としては、外貨建て債務の換算差益、輸入価格の低下による利益など種々の形態のものがあります。これらは、一たんはこれらの債務を有する輸入業者に属しますが、やがては最終消費者まで還元をはかっていくことが通貨調整の本来のねらいとするところであります。したがって、為替差益について特別の課税をすることは適当ではないと、かように考えております。
 次に、来年度に所得税減税が全く行なわれていないかのような御意見がありましたが、その考えには賛成いたしかねます。来年度においても、むしろ例年に劣らない所得税減税が行なわれたが、所要の法律改正手続がさきの沖繩国会においてとられ、景気浮揚策の一環としてその実施を繰り上げ、年内減税をしたものと御理解いただきたいと思います。他方、企業課税については、期限の到来する法人税の付加税率の適用期限を延長するほか、租税特別措置についても輸出振興税制の大幅縮減を行なうこととし、これによって生じた財源を老人、寡婦などの福祉政策や住宅政策、公害対策、中小企業対策などに充て、その流動的改廃につとめておるところであります。
 次に、阿具根君から公共料金の値上げを行ないながら物価上昇率を五・三%に押えることが可能と考えているかとの御質問がありましたが、そのとおりであります。最近の消費者物価の動向を見ると、その騰勢は鈍化を見せており、今後とも円切り上げによる輸入価格低下の消費者への還元、生鮮食料品の価格安定、競争条件の整備など、各般の物価対策を強力に推進すれば、この見通しを達成することは十分可能であると考えております。
 次に、阿具根君は、公債を発行し公共事業を拡大することにより景気浮揚をはかろうとしても、地価の高騰が隘路となって実効があがらないだろうとの御意見のようでありますが、政府は公共用地先行取得債などの制度の活用により、必要な公共用地の確保は可能であると見ております。なお、地価の問題については、地価公示制度を一そう充実するほか、用地の先行取得制度の強化について鋭意検討中であり、公共事業の円滑な施行を行ない得るようにする考えであります。
 デノミネーションについてのお尋ねがありましたが、これは大蔵大臣からお答えいたします。
 次に、軍備増強に対する国民の疑問に答えよというお話がありましたが、この政治姿勢についていろいろのお尋ねがありましたので、それぞれについて簡潔にお答えをいたします。
 まず、国力、国情に応じて自衛力を整備することは政府の一貫した基本方針であり、国民に対する義務であります。社会の進展、科学技術の進歩に伴って自衛隊の装備等の改善をはかるとともに、隊員の士気の向上につとめてまいる所存であります。わが国の自衛力は専守防衛、他国に脅威を与えるものではないことを御理解いただきたいと思います。また、わが国はいかなる仮想敵国をも持っていない、このことをはっきり申し上げておきます。
 沖繩につきましては、復帰後局地防衛に必要な最小限の自衛隊を配備する方針であります。このため県民の御理解とあたたかい御支援を得るようつとめてまいります。
 沖繩の非軍事化決議を行なう意思はありません。憲法を順守することはもとより当然であります。
 最後に、私は今後とも国の安全確保と国民生活の向上にこん身の努力をいたす所存でありますが、政府の政策を一つ一つ実行に移し、もって国民の政治に対する信頼を高めてまいる決意であります。
 また、この際に参議院特殊の議長、副議長の党籍離脱、さらにまた、内閣に閣僚や政務次官を送るな、こういうことをお話しでございますが、私は、前者についてはただいま十分の成績をあげておることを認めます。後者につきましては、これは御意見として承っておきます。
 以上、私からの御答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対し阿具根さんから、サンクレメンテでの総理大臣の記者会見を私があとで訂正をしたのではないか、こういうことに関してのお尋ねであります。
 私は、佐藤内閣の忠実なる閣僚であります。したがいまして、総理大臣の見解を私が訂正するというような、そういう大それたことはいたしませんです。すなわち、いわゆる台湾条項に関する総理大臣の見解と私の見解は全く同じでございます。台湾海峡をめぐる四囲の情勢は非常な変化を来たしております。つまり、米中間に緊張緩和の動きは、その象徴としてアメリカの大統領の北京訪問が行なわれる、こういうような状態です。ですから、台湾海峡をめぐるところの情勢の変化はあるのであるけれども、台湾海峡の動静がわが国の安全に至大の関係があるとするところのいわゆる台湾条項、これの意味におきましては、いささかも変わるところがない、かように信じておる次第でございます。
 次に、吉田書簡のことでお尋ねでございますが、これはただいま総理からもお答えがありましたが、これは吉田元首相個人の手紙であります。この個人の手紙を廃棄せい――どういう行為を私どもに要求するのでありましょうか。私は、こういう問題に対しまして、廃棄とか廃棄しないとか、そういうようなことはこれはあり得ないのであって、問題はその実体であろうと思います。その実体についてどういうふうな考え方をしておるかと、こういうと、私は、いわゆる一個人の出した吉田書簡、これに拘束を受けるという立場にはない、かように考えております。したがいまして、輸銀の使用につきましてはケース・バイ・ケース、しかも、前向きでこれに対処する、こういうふうにはっきり申し上げてお答えといたしたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(田中角榮君) 私から三点についてお答えをいたします。
 第一点は、中国貿易に対する輸銀の使用等についてでございます。政府は中国大陸向け延べ払い輸出に対する輸銀資金の使用につきましては、従来からケース・バイ・ケースで処理をしてまいりましたが、このケース・バイ・ケースということばが、とかく否定的な意味でとられがちでございましたので、前向きかつ積極的な姿勢を明確にするために述べたわけでございます。ですから、輸銀の使用等につきましては、いま申し上げましたような積極的な姿勢で対処いたすつもりでございます。吉田書簡の破棄等については、総理大臣及び外務大臣から申し述べられたとおりでございます。
 第三点は、為替の差損及び差益についてでございます。為替差損対策といたしましては、長期外貨建て債権の保有により差損をこうむるものについて、税制上の措置及び輸銀に対する返済猶予等、また中小企業につきましては、先国会で立法による措置などをお願いをいたした次第でございます。為替差益につきましては、総理大臣から述べられたとおりでございますが、円切り上げによってもたらされる輸入品価格の低下につきましては、その効果が流通段階で吸収されることなく消費者段階まで反映させることが重要であることは申すまでもないことでございます。その対策といたしまして、十二月の二十四日付をもちまして、輸入団体、流通団体、延べ四十七団体に対しこの旨強く要請する等の措置をとっておるのでございます。しかし、これらの問題につきましては、通商産業省といたしましては、引き続き効果がもたらされ国民に理解を得られるように措置してまいるつもりでございます。
 以上、申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(水田三喜男君) 私に対する御質問は総理と共通でございましたが、総理からすでに御答弁ございましたので、御答弁から漏れた問題についてお答えすることにいたします。
 一つは、計画的に社会保障の推進をはかれということでございますが、これは昨日も衆議院で成田委員長から御質問があり、三年間で国民所得の一五%程度社会保障給付を厚くするということを計画的に実行すべきだという御意見でございましたが、これは御承知のとおり、日本の社会保障制度のうちで、特に年金制度を見ましても、老齢人口の比率が非常に少ないということと、それから年金制度は未成熟でございまして、掛け金をかける人はたくさんあっても、これを受領する人は非常に少ないという現状でございますので、国民所得から見た給付の比率というものは現在非常に少ない。特に、政府がやるべき社会保障制度の一部を、いままでは民間企業が分担しておったというようなことでございますので、社会保障制度を強化するためには制度そのものを整備する必要があるということでございまして、そこで、あらゆる社会保障制度を整備して、最後に西欧諸国並みに劣る問題はいわゆる児童手当の問題でございましたが、これも制度化しましたので、制度そのものは西欧諸国の水準に全部達しておる。問題は中身が足らぬということでございますので、今後はこの中身を充実する問題でございますが、これはやはり財源の問題ともからみますし、今後これは計画的にこれを充実するということについてはむろん必要であると考えて賛成いたしますが、計算しますと、何しろおくれた制度でございますので、三年間で一五%、ちょうど西欧並みの数字でございますが、そこまでいくということはとうてい困難だと思います。ただいまはちょうど六・五%程度の給付率というととろまできておりますが、あと相当時間がかかると思いますが、これは計画的にやる必要が十分あるというふうに考えます。
 その次はデノミについてのお話でございましたが、これは一応経済が落ちついたところでデノミを実施することはいいことだということはもう識者の一つの世論となっておるところでございますが、御承知のように、デノミというものは貨幣価値を変えるものではないのだということをずいぶん政府は事前に宣伝をいままでやっておりました。ところが、今度円の切り上げという措置をとりましたが、これは貨幣価値を変えることでございますので、こういう問題と混同するということは問題がございますので、したがって、いいことであってもこのデノミとこの通貨調整は一緒にしないで、時期を離さなければならぬというのが政府の考えでございまして、また、かりに実施するとしましても、コインを全部準備するには十年間かかるということでございますので、相当長い準備期間を置いて、そうしてその間に国民の理解を十分に得て実施するのでないと、やはりいろいろむずかしい問題があるということを、過日、私は大阪の記者クラブの懇談会でその話をしたということが記事になったことでございますが、いますぐ実施する意向であるということを述べたわけではございませんで、デノミというものはそういうむずかしい問題であり、相当の準備期間を置かなければならぬというようなことを述べたことでございますので、一部新聞に誤り伝えられたようなところがございましたので、そのことは、この機会に真相を申し上げておきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(斎藤昇君) 特に私に御質問になられました二点をお答えいたしたいと思います。
 高齢者の医療無料化の年齢につきまして、七十歳以上になぜしたのか、六十五歳が適当ではないかという御意見でございましたが、御承知のように、高齢者の健康状態と、それから医療にかかられるその頻度等を検討いたしますると、七十歳以上の方に無料給付をするということが最も適当である、こういう結論に達したわけでございます。御指摘のように三十数県市で実施をいたしておりますのも、大部分は七十五歳以上でございまして、六十五歳というのは一市でございます。したがいまして、そういった状態を勘案をいたしまして、七十歳ときめるのが最も適当である、かように考えたわけでございます。
 なお、ILO条約の批准についてのお尋ねは、総理からもお答えがございましたが、すでに御承知のように、これらの条約の二つはすでに批准できる最低基準は満たしておるのでございますけれども、これらにつきましても、もう少し日本の国情に合った保障制度を全体的に考えまして、それらの水準を高めた上で、全体として批准するのが適当ではなかろうかと、かように考えております。できるだけ社会保障の水準を日本の実情に合うように、今後早急に促進、充実をいたしまして、その上で批准をいたしたい、かように思っておりますので、御了承いただきたいと存じます。(拍手)
#12
○議長(河野謙三君) 阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#13
○阿具根登君 私の質問が舌足らずであったのか、あるいは総理は承知の上にお答えになったのか、再質問をしたいと思います。
 私が、日中関係が公式に戦争状態は終わっておらないということを発言しましたのに対して、中国からは軍隊は引き揚げてしまって、いまは戦争はあっておらない、こういうような答弁でございます。私は十分御承知の上にお答えになったと思うんですが、かりに私がそういう質問をしたというようにお考えになっておるならば大きな誤りでありますし、私の舌足らずだったかもしれませんので、はっきり申し上げますが、日華条約を結んだときには、その一年前にすでに中国大陸で毛沢東の政府はできておったのであります。だから、当然、中国との国交回復を行なう場合には、その前に戦争状態の終結宣言をしなければなりません。それが行なわれるまでは、国際法的に見ても、中国との戦争状態は終わっておらないと私は申し上げたわけなんです。だから、総理のように、もう中国には軍隊はおりませんぞと、戦争は終わっておりますと、そういう質問ではございませんので、もしも承知の上でそういう御答弁をされたとするならば、私は侮辱されたと感じます。もしそうでなかったとするならば、総理が勘違いして答弁されたか、それをはっきりお伺いしたいわけです。
 それからもう一つ、日朝議員連盟の渡航に対しまして、私は自民党から圧力がかかったということを申し上げましたが、総理は圧力なんかかけておらないとおっしゃったけれども、私どもが新聞やその他で知る範囲内におきましては、保利幹事長名によって、自民党の議員に対して、渡航することまかりならぬということが、きびしく申し渡されて、久野さんは涙ながらに一般渡航者として行ったことがテレビでも大きくクローズアップされておるわけです。それを、これは一幹事長がやったことであって、総裁、総理のおれは責任がないんだ、圧力をかけておらないんだ、こういうように振り切られるならば、それもまたいいでしょう。私はそうは考えない。この二点について、もう少しはっきりと御答弁をお伺いしたい次第であります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの、再質問と申しますか、重ねてのお尋ねでございますから、お答えをいたします。
 ただいま言われるとおり、毛沢東政権は日華平和条約が締結される以前に成立していたことは御指摘のとおりであります。また、戦争状態が終わってはいるけれども、戦争の終結宣言も行なわれておらないことも、これも事実であります。
 その当時のことを思い起こしていただくならば、サンフランシスコ平和条約、この条約に中国の代表をわれわれは招請することができなかった、問題はそこから起こるわけであります。そうして、過ぐる大東亜戦争は、申すまでもなく、日華、日支の関係、その戦争が基本であります。日本から申せば、その他の各国と講和条約が締結されても、その大東亜戦争のもとである日華の両国の間に講和条約ができることを心から願ったのは、これはもう、さきの吉田総理、当時のサンフランシスコに行かれた全権が最も痛感されたところであります。そうして、サンフランシスコ条約にはいろいろ連合国側の意見が一致しなかったから、中国の代表をそこに呼ぶことができなかった。そこで、この講和条約成立後において、日本は国民政府との間に日華平和条約を結んだわけであります。そうして、これは当時の状況のもとにおいては、国連においても中国の代表者として待遇をされ、国連の議席を持ち、同時にまた、安保の常任理事国でもあった。それらの経緯を考えていただくならば、私は、それはそれなりに評価されてしかるべきではないかと思っております。そのことを先ほどは申し上げたつもりでございますが、私自身も舌足らずで、十分私の意思を伝えることができなかったことを遺憾に思います。これが第一段の問題でございます。しかし、このことは、申し上げるまでもなく、昨年以来、国連において中華人民共和国が正式に議席を持ち、同時にまた、安保の常任理事国にもなったこと、中国の代表として迎えられたこと、そのことを考えると、われわれは、その見地に立って日中の関係を正常化しなければならないと、これがこの前の施政方針演説でも明らかにしたところであります。その点を御了承いただきたいと思います。
 また、第二の問題の北鮮――北朝鮮との問題でありますが、この問題につきましては、いわゆる事柄は、この国会のいわゆる超党派の会合と、もう一つは、やっぱり何と申しましても、自民党員としてのワクがあるわけであります。いわゆる超党派としてのいろいろの主張もございましょう。同時にまた、一方では自民党員としての一つの限度があるわけであります。それらの点でいろいろ苦心をされておるのが幹事長の立場ではないかと私は思っております。したがって、先ほどの藤山愛一郎君の立場についても、事柄は党内の問題でございますから、この席でとやかく申すことは遠慮さしていただきたい。申し上げかねますが、やはり自民党の問題は自民党で処理するように、他党からとやかく言われないようにお願いいたします。他党に干渉しないという、そういう立場でぜひお願いをしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(河野謙三君) 江藤智君。
   〔議長退席、副議長着席〕
   〔江藤智君登壇、拍手〕
#16
○江藤智君 私は、自由民主党を代表して、政府の施政方針に対し、わが国が当面する重要問題について政府の所信をただしたいと存じます。
 一九七二年のわが国の外交は、サンクレメンテの佐藤・ニクソン会談によって幕があけられたと申すべきであります。
 まず、わが国一億の同胞が多年悲願といたしておりました沖繩の祖国復帰が、両首脳の合意によって、来たる五月十五日と決定されましたことは、まことに喜びにたえません。(拍手)これは多年にわたる佐藤総理の政治生命をかけた御努力と、これにこたえるアメリカ政府の理解と協力のたまものでありますが、これはまた、わが党が沖繩百万同胞の念願と一億国民の正しい世論を背景として、力強く推進してまいった努力の成果であると存じます。(拍手)
 かくて返還日も決定いたしましたが、長い間米国の支配下にあった施政権を譲り受けることでありますから、その処理は、通貨問題公用地問題をはじめ、きわめて複雑多岐にわたっております。この際、政府は、これらの処理を円滑に行ない、沖繩県民にいささかの不安も与えることなく、復帰の実現をはかるよう強く要望いたします。沖繩百万の同胞は、戦中、戦後を通じて大きな犠牲を払われました。われわれはこれに報ゆるの道を講じなければなりません。そのためには、将来にわたり、本土との格差、基地による変則的な経済構造などを是正し、平和で豊かな島づくりの実をあげるため万全を期さなければなりません。以上に関し、総理の御決意を伺います。
 サンクレメンテ会談における両首脳の隔意なき会談によって、日米両国間の緊密かつ友好的な関係について再確認され、特にアジア政策については、今後とも緊密に協議することについて確認ができたことは大きな収穫であります。しかし、率直に申しまして、昨年七月発表されたニクソン大統領訪中のいわゆる頭越し外交と、これに引き続き発表されたアメリカの新経済政策とはわが国民に大きなショックを与え、繊維問題ともからんで、一時的にもせよ、わが国世論に対米不信感を呼び起こしたことは事実であります。このような感情が尾を引くことは両国間のためにきわめて遺憾であって、再び繰り返されてはならないと思うのであります。この点に関し、総理はいかなる話し合いをされ、将来に対していかなる確信を得られたかを明らかにされたいのであります。
 次に、この会談において先方は、貿易自由化と関税引き下げを強く要望し、具体的折衝は、牛場・エバリー会談にゆだねられ、これも最近合意に達したと伝えられますが、会談における先方の基本的態度はいかなるものでありましたか、総理並びに通産大臣のお答えを願います。
 国際政局の上において、近時日本の地位はきわめて重要なものとなりつつあります。そのことは、最近行なわれた日米首脳会談及び日ソ定期協議が世界の注目を集めたことをもってしても明らかであります。いまや多極化した国際情勢下において、自由世界第二の経済力を持つ日本を無視することはきわめて困難になったと思います。世上、多極化した世界外交のかなめとなるものは、米、ソ、中三国による三極外交であるとの説をなす者もありますが、私は、これに日本並びに拡大ECを加えて、五極外交と称すべきであると思います。それは、アジア太平洋地域に位置する豪州、ニュージーランドを含む十数カ国の国民総生産の総合計のうち、日本の占める割合は実に三分の二以上であって、まさにアジア太平洋地域の経済に及ぼす影響は絶対であることを見ても明らかであります。わが国は、そのような自覚と自信を持って今後五極外交を推進すべきであると思いますが、総理の御所見を承ります。
 この多極化した国際社会の中でのわが国の今後の外交を考えてみますと、第一に、わが国は紛争解決に武力を行使しない平和国家であります。したがって、外交の背景として力となるものは、わが国の経済力と国際世論の支援しかありません。
 第二に、わが国は国際貿易を拡大していかなければ繁栄することのできない国であります。したがって、世界が平和で自由に貿易ができる状態と盛衰をともにするものであります。
 以上のことから、わが国外交の基本は、国際社会において、第一には、平和維持に最大の努力を払うこと、第二には、国際信義を守って諸外国の信頼を得ること、第三には、経済協力や経済援助などによって、いわゆる南北問題の解決に協力し、世界の緊張緩和に貢献すること、第四には、貿易にあたっては、一方的に利益を追求し、エコノミック・アニマルなどといわれないように、自制の精神を忘れず、相手国にも応分の利益を分かつように配慮すること、第五には、特に情報文化活動を盛んにし、関係諸国との間に相互理解と信頼を深め合うことにあると思います。世界がいかに多極化し、外交が複雑微妙になりましょうとも、この外交上の倫理は絶対に守らなければなりません。
 そこで、若干質問をいたします。
 わが国が専守防衛の立場を守り、平和外交の実をあげますためには、相互の国民が相手国の事情を十分理解し、知り合うということが必要であります。しかるに、現実には、世界の多数の国々は、まだわが国の平和国家たるをも知らず、あるいは戦前のイメージが残存し、はなはだしきはわが国に軍国主義復活のきざしありとする国すらあるのであります。また、軍事力によらずとも、わが国の経済進出があまりにも急速かつ強力なため、経済的侵略者として警戒を強めている国々もあります。
 私が驚きましたことは、この正月放送されたNHKの番組「七〇年代われらの世界」におきまして、アメリカ、イギリス、ソ連、タイ、ガーナの五カ国において、平均的市民おのおの五十人を選んで各種の質問をいたしましたが、その答えの中で、日本は核兵器を持っているかという問いに対する回答では、ソ連を除き他の四カ国はいずれも、持っていると答えた人が過半数を占めていたことであります。これは全く意外のことでありましたが、同時に、わが国だけが平和主義に徹していると思い込んでいても、相手の国々は必ずしもそうは思わないものであるということを深く反省させられたのであります。日本人はもともと宣伝べたといわれています。その上、外務省などの関係予算や定員を見ましても、諸外国に比して著しく貧弱であります。来年度から外務省において国際交流基金を設立されることはまことに時宜に適したものと思いますが、この際政府は、国の内外における文化活動、情報宣伝活動を飛躍的に強化し、平和主義と国際協調を基本とするわが国の立場を諸外国に十分理解せしめることにつとめると同時に、国内においても、この点について国民の理解と協力を得るよう一そう努力することが必要であると思います。外務大臣の御意見を伺います。
 また、わが国の貿易の姿勢にいたしましても、相手国に広く門戸を開放してもらわなくてはならない立場にある以上、わが国といたしましても、極力自由化を推進するとともに、食糧、原材料等の輸入にあたっても、国内産業に対する対策を講じつつ、一次産品のみならず、ある程度現地で加工したものをも買い付けるなど、輸出国側の産業育成にも心を配り、加工の利益に均てんし得るよう配慮するなど、きめこまかい考慮が必要であると思います。政府の御意見を伺います。
 中華人民共和国との国交正常化については、近時各種の交流も盛んになり、政府においても、日中両国政府間の直接の話し合いを望むという前向きの姿勢を示していることは全面的に賛成であります。ただ、その進め方については、国際情勢が多極化して複雑にからみ合っておる状態でありますから、よくその動向をも見きわめながら慎重に行なうべきであると思いますが、総理の御所見を伺います。
 最近、ソ連外相の訪日により、従来全く壁にぶち当たった感のあった日ソ平和条約締結のための会談について合意ができ上がったことは、沖繩返還とともに、多年にわたる国民の悲願である北方領土返還について一脈の光明を見出したここちがいたします。しかし、この問題も忍耐強い交渉が必要であると思われます。そこで、この際、最も緊要なことは、返還の具体策についてまず国論を統一することであると思います。現在のところ、遺憾ながら各党の間において必ずしも意見の一致を見ていないのであります。われわれは、すでにたびたびその根拠を明らかにして、平和条約締結の絶対条件として、歯舞、色丹、国後、択捉の四つの島の同時返還を強く主張し続けてまいりました。私はこの際、すみやかに各党の意見を一致させることに努力し、全国民的支持をバックとして交渉に当たるべきだと思いますが、総理の御意見を伺います。
 また、シベリア開発について、チユメニ油田の開発とパイプライン布設の問題が話題になっております。ただいまの段階では、深く立ち入るわけにもまいりませんが、私見として一言申し上げたいと存じます。まず、経済的には、将来の激増する原油の供給及び輸送問題からいっても、また、チユメニの油が、わが国の最も必要としている低硫黄原油であるという点からいっても、わが国として関心を持つべきプロジェクトであると思います。また、政治的には、日ソの経済協力を通じて相互協力体制ができること、また、海上輸送と陸上輸送の二系統が得られることは、わが国の安全保障の面からいっても意義深いものと思います。できれば外務、通産両大臣の御所見を伺いたいと思います。
 来年度予算原案の編成にあたり、自由民主党は福祉最優先の党議を決定し、その旨を強く政府に申し入れたのであります。このことは、従来の経済中心の考え方から、思い切って人間中心の社会づくりに軌道修正をはかろうとするわが党の政治姿勢を強く国民に示したものであります。すなわち、来年度予算案の特徴は、「日の当たらぬ人に光を」という一語に尽きます。予算案には、党の要望した老人対策費をはじめ社会保障関係費はほとんどことごとく計上されたのであります。さらに住宅、上下水道、公園、廃棄物処理施設等の生活環境施設に対しても画期的に予算が盛り込まれております。わが国は自由世界第二の経済大国となり、個人所得も英国を上回るに至りました。いまや先進諸外国に対し著しく立ちおくれた社会資本を充実し、社会福祉と相まって真の福祉国家建設に立ち上がるときであります。
 そもそも政治の目的は、すべての国民が物心ともに豊かで、しかも生きがいを感じる社会をつくることにあります。ひるがえって現在の国民生活を見ますと、総体的にいえば、物質面においては確かに豊かになりましたが、公害や環境破壊あるいは交通戦争などがあり、精神面においては、よき環境の破壊と価値観の変化とによって、いら立ちと混迷を感じているのではないでしょうか。いまこそ原点に立ち返り、真に人間としての幸福な社会を建設しながら、しかも、安定的経済成長をなし得る方策を強力に推進しなければならないと思います。これについて総理の御所見を伺います。
 「居は気を移す」ということばがあります。この観点に立ってわれわれが住んでいる国土を考えますと、まず注目すべきことは、わが国は世界に類例のない高密度社会を形成しているということであります。経済企画庁昭和四十五年度年次経済報告によりますと、人間の住める土地、いわゆる可住地面積当たりのわが国の国民総生産はイギリスの四倍、アメリカの十倍、エネルギー消費量はイギリスの二・五倍、アメリカの八倍、自動車保有台数はイギリスの二・四倍、アメリカの八倍という驚くべき高密度社会を形成しております。しかも、この高密度社会の中において、さらに著しい産業及び人口の偏在を来たし、過密過疎現象を起こしているのが現在の日本の姿であります。いまこそ、限りなく押し寄せてくる集中の圧力を排除して、住みよい大都市を建設するとともに、人口流出に悩む地方都市を魅力ある産業・文化の中心地とし、農山漁村をこれと結びつけることによって、豊かで均衡ある国土を建設すること、すなわち、都市政策、全国総合開発を強力に実施しなければなりません。新全国総合開発計画、いわゆる新全総は、この目的をもって策定されたものでありますが、その後の経過を見ますと、過密過疎の現象は依然として絶えておりません。私はこの際、この計画を見直しながら、いかにしてこれを実行するかという観点に立って質問をいたしたいと存じます。
 まず、総理にお伺いいたしたいことは、御決意のほどであります。この仕事は、何ぶん国土の大改造でありますから、総理の強い御決意がなければとうていできません。また、その行政は各省にわたりますから、これを同じ目標に向かって推進させるような行政機構がぜひとも必要になります。しかし、とりあえずは、関係の深い閣僚をもって国土開発本部――仮称ですが――をつくり、総理が直接これを指揮されたらいかがかと思います。あわせて総理の御所見を伺います。
 次に、新全総の内容でありますが、これは次の理由により再検討の必要があると思います。
 以下、その項目に従って質問いたします。
 その第一点は、公害、交通戦争を解消し、自然環境保全について、より強い関心を持って計画を遂行すべきことであります。たとえば、大都市周辺において、住宅建設のため、緑の山野を破壊して大団地を建設するというようなことは再検討する必要があると思います。都市改造の一環として、職住近接の原則に従って都市高層化を強力に進めるべきではありますまいか。道路、鉄道などの建設についても、いずれが公害や自然の破壊が少ないか、選択的配慮が必要であります。先般党議決定をいたしました自民党の総合交通政策には、そのような考え方が取り入れてあります。すなわち、海陸空にわたる各種交通機関がそれぞれの機能を十分に発揮し、公正な競争を行ないながらも、原則としては長短相補って最大の効率をあげ、もって過密過疎を解消することを目的といたしております。しこうして、その建設運営にあたっては、極力自然環境の破壊と公害の防止につとめるとともに、人間優先の思想を強く取り入れております。以上につき政府の御所見を伺います。
 第二点は、過密都市を再開発して住みよい都市とするため、産業、人口の流入を抑制し、地方都市への分散誘導策をさらに強力に実行しなければならないということであります。そのためには、先行的に地方の中心都市、たとえば県庁所在地、あるいはこれに準ずる都市に大学、研究所、病院、文化施設等を整備拡充して魅力あるものとし、都市、農村を通じて文化的生活ができるよう強力な施策を講ずるべきだと思いますが、政府の所見を伺います。
 第三点は、わが国のような狭小な国土において長く安定成長をはかるためには、産業構造の改革について政府が積極的な誘導策を講ずる必要があるということであります。まず、現在のように、原材料を輸入して、製品まで全工程をわが国で行なうことは、将来、土地、公害、輸送の面からもとうてい不可能に近いと思います。したがって、半製品までは現地において処理すべきであると思います。かくすれば輸送量は半減し、公害も少なく、これはまた原材料提供国にも利益を与え、一挙両得であると思いますが、いかがですか。
 次に、わが国のように世界一の高密度社会における産業は、付加価値の高い産業で、しかも常に他国に一歩も先んじた技術を持つことが必要であると思います。たとえば、スイスのように資源も土地も労働力も少なく、しかも風光明媚な環境の中で高い生活水準を保ち得るのは、時計をはじめ、世界に一歩先んじた技術の高い機械工業を、しかも農工一体の姿で持っているからであります。わが国の産業も、将来、このように誘導し、農工一体の実をあげるよう強力な施策が必要であると思います。通産大臣の御所見を伺います。
 第四点は、土地政策についてであります。現在、しばしば見受けられるように、計画のうわさが立てばたちまち土地は暴騰し、一部ブローカーや地主に開発利益を独占されるのみならず、計画実施をもきわめて困難ならしめ、公共事業の遂行は土地政策にかかっているとさえいわれております。土地は生産できず、移動もできません。この限られた土地の上に、すべての国民の生活と生産活動がかかっていることを考えれば、開発利益の還元、社会的不公平の解消のため、私権より公共福祉を優先させることは当然と考えられますが、御所見を承ります。
 第五点として、今日各種の社会的困難は、多年にわたる社会資本投資と民間設備投資とのアンバランスに基因することは明らかであります。新全総などにはこの適正比率が示されています。そこで、この比率について昭和四十年度からの実績を調べてみますと、昭和四十五年度に至るまでは好景気の影響を受けて社会資本投下の比率ははなはだしく低下し、四十六年度補正予算によってやや改善され、来年度はさらに改善される予想でありますが、まだ計画の数値には達していないのであります。この計画からの落ち込み額を累計いたしますと、昭和四十年度からわずか六カ年間で約二兆円と推定されるのであります。ただいまの公害、交通問題などもここに基因するところが大であると思われます。そこで政府にお尋ねいたしますが、将来にわたって社会資本投資と民間設備投資との適正比率は維持されるかどうか。もし、従来のように民間の景気が上がれば社会資本投資が相対的に下がるような政策をとれば、社会資本の充実は立ちおくれて住民の生活環境は悪化するばかりであります。生産優先から福祉優先への政策転換の実証は、この適正比率を維持するかいなかにあるとも思われますが、いかがでございますか。
 第六点は、新全総は社会資本を先行的、先導的に投下するための基礎計画であり、あわせて民間の投資活動に対しても指導的、誘導的役割りを持つものであるとしております。しかし、実際にはこれがなかなか行なわれておりません。公共投資の実態を見まするに、ほとんど目前に対応する施策であって、いわゆるあと追い的に投資をしております。その結果は産業及び人口の集中地帯に投資が片寄り、かえって過密過疎現象を助長する結果ともなっております。先行投資は国土の価値を高め、やがて還元されるものでありますから、国民全体の資金と蓄積を活用して先行的投資を重点的に行なうべきであると思いますが、政府の御意見を伺います。
 以上、豊かで住みよい国づくりについて重要な諸点をあげて質問をいたしましたが、政府は、これらについて十分検討の上、適切な処置をとられるよう要望をいたします。これについて政府の御意見を伺います。
 次に、物価問題は国民生活に直接関係する重大な問題であります。ことに、このたびは国鉄、郵便、タクシーなどなど、数多くの公共料金が一斉に値上がりする予想でありますから、世論も相当きびしいものがあります。この際、政府は、できるだけ詳細にその値上げ要因の内容を国民に説明し、真にやむを得ない事情を納得してもらうよう努力すべきであると思います。また、値上げ時期が一斉に重なることは避けるべきであります。したがって、公共料金値上げは一斉に何年間ストップというようなことは避けるべきだと思いますが、御所見を伺います。
 次に、物価問題に対する政府の姿勢について総理にお伺いいたします。
 明治以来の殖産奨励政策のなごりのためか、各省の機構はそれぞれの産業の保護育成のほうに強く目が向いていることは事実であります。現在経済企画庁や公正取引委員会などはありますが、世論に耳を傾け、消費者側に立って行政を行なう機構がいかにも弱体であるように思われます。今回、農林省に食品流通局が新設されることは、まことに時宜に適したものであります。しかし、今後とも中央、地方を通じ、一貫してきめこまかい消費者行政の実をあげるためには、行政全般にわたる機構をいかに整備すべきか、さらに検討を進める必要があると思いますが、御所見を伺います。
 最後に、人づくりの基盤である教育問題についてお尋ねいたします。
 近年、大学紛争を契機として、教育制度の再検討が強く叫ばれ、教育改革に寄せる国民の期待はきわめて大なるものがあります。佐藤総理はこれまで再三にわたり、教育改革は中央教育審議会の答申を待って着手することを国民に約束されました。ところが、昨年六月、「第三の教育改革」といわれる中教審の答申が出され、すでに六カ月、今日なお政府は教育改革に取り組む基本的姿勢を明確に示されておりません。四十七年度予算案においても、育英奨学資金の大幅拡大や、私学補助金の増額など質的な改善は行なわれておりますが、第三の教育改革の第一号とも言うべきものは、何の方針も、思想もあらわれていないように思われます。教育の改革は、国の将来をきめるきわめて重大な課題でありますから、世論の支持と総理大臣の強い御決意があって初めて可能であると考えます。
 そこで総理にお尋ねをいたします。
 第一は、中教審の答申をどのように評価されておられるかということであります。
 第二は、答申を尊重され、実行されるのであれば、大学改革、幼児教育、六三制の改善、教職員問題などの中で、何から取り上げ、どのような手順、方法で実施されようとするのか、その青写真をお示し願えれば幸いであります。
 第三は、答申について教育関係者の一部に強い反対の動きが見られますが、これをどうお考えになりますか、お伺いいたします。
 最後に、教育界の現状は、日教組などの教育権論争に見られるごとく、反文部省、反政府的運動が顕著であることは御承知のとおりであります。このことはきわめて遺憾なことでありますが、このような中で、真の教育改革はきわめて困難と思われます。私は、このような状態を正すことこそ第三の教育改革の大前提と考えますが、総理の御所見を承りたいと思います。
 以上、わが党の基本政策である「物心ともに豊かな国づくり」に焦点を当てて質問をいたしました。政府においてもわが党の趣旨を十分取り入れて国民の要望にこたえられるよう強く希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(佐藤榮作君) 江藤君にお答えいたします。
 沖繩県民をはじめ全国民の悲願であった沖繩の祖国復帰は、いよいよ来たる五月十五日実現する運びになりました。戦中、戦後を通じて多大の犠牲をこうむり、筆舌に尽くしがたい苦難の道を歩んでこられた沖繩県民の御労苦にこたえるため、政府としてはかねてより、平和で豊かな沖繩県づくりを目ざして努力を重ねてまいりました。復帰後はさらに意を新たにして、沖繩の緑の島としての環境を保ちつつ、その振興開発を積極的に推進し、県民生活の安定と福祉の向上に全力を尽くしてまいる決意であります。
 サンクレメンテにおけるニクソン大統領との会談におきまして、中国問題についてもきわめて率直な意見の交換を行ない、私から、わが国の立場を十分に説明するとともに、大統領から、米国の考え方について突っ込んだ説明を聴取いたしました。この会談を通じて、米国政府が米中関係の改善を真剣に考えていることがよくわかりましたが、同時に、米中関係より以上に日米関係を重視していることがはっきり看取できたのであります。したがいまして、私としては、今後は江藤君御指摘のような、いわゆる頭越しの問題は起こらないものと考えております。
 サンクレメンテにおいては、私と大統領の会談と並行して、外務、大蔵、通産各大臣の個別会談が持たれましたので、お尋ねの、自由化に対する米側の基本的態度については、通産大臣、関係大臣より説明をいたさせます。
 国際関係の基調は、かつての超大国米ソの対立の時代から、いまや多極化の時代に展開しつつあり、この多極化する世界の中で、米、ソ、中、ECと並んで、わが国もその一つの柱となりつつあるという江藤君の御意見には、私も同感であります。われわれは、わが国が置かれている国際的な立場と責任に思いをいたし、世界平和の維持と人類福祉の増進のため、わが国の国際的責任を果たしていかなければならないと考えるものであります。
 戦後の日本経済の繁栄と発展は、世界貿易が拡大と自由化を続けたという恵まれた環境の中で達成されたものであります。今後のわが国経済の長期的、安定的な発展をはかるためにも貿易の拡大は不可欠であり、政府としては今後とも、ガット、OECDの場における国際的協力など、経済外交を積極的に展開してまいります。また、発展途上国との関係につきましては、経済協力の推進、開発輸入の拡大、海外投資の促進など、発展途上国の経済発展に貢献しつつ貿易の拡大をはかってまいる所存であります。
 日中国交正常化は、演説でも申し述べたとおり、かねてより政府の念願しているところであります。政府としては、昨年秋の国連総会の決定を踏まえ、かつ、中国をめぐる国際情勢や、わが国における世論の動向を十分考慮しながら、この問題の解決に取り組んでまいります。日中間には、もちろん各種の問題があり、かつ、日中双方にはそれぞれの立場と主張がありますが、双方が善隣友好関係の樹立を目ざして政府間の話し合いを積み重ねていくことができれば、日中関係の改善は大きく前進するものと考えております。
 次に、政府としては、これまでもあらゆる機会をとらえてソ連政府に対して、北方領土問題の解決と日ソ平和条約締結の必要性を主張してまいりましたが、先般来日したグロムイコ外相との話し合いで平和条約締結交渉を本年中に開始する旨の正式な合意に達したのであります。従来、ソ連が領土問題は解決済みとの態度をとってきたことは御承知のとおりであり、今回のこの合意は大きな前進であると評価しております。今後の交渉においては、領土問題に関する日本側の立場を粘り強く主張し、日本の固有の領土たる歯舞、色丹、国後、択捉の諸島の祖国復帰を全国民的願望を背景に実現したいと考えております。政府としては世論のより一そうの盛り上がりによって北方領土返還が促進されることを期待しております。
 次に、内政の問題についてお答えいたします。
 わが国経済は、これまで国民の努力の結果著しい経済成長を遂げてまいりました。しかしながら、国民生活の各面に幾多の問題が発生する一方、国民の社会的意識も、効率性の追求から生活重視へと大きな転換を見せております。このような状況にかんがみ、国民福祉の質的充実を最大の課題として政策転換をはかっていくことが必要なことは御指摘のとおりであります。このため政府は、四十七年度において、豊かな福祉社会の建設を目標とする新しい長期計画を策定し、住宅、生活環境の改善、公害の防止、社会保障の充実など、国民福祉の向上のための具体的な政策の方向を明らかにしており、今後その推進を強力にはかっていく所存であります。
 次に、国土総合開発計画の強力な実行による過密過疎の解消や将来にわたる経済成長を維持するための基本的方策、さらに土地政策等につきまして、江藤君からいろいろ御意見を述べられ、そうして、豊かな社会をつくるようにという御希望が述べられました。これは、他の機会にゆっくりと意見の交換をいたしたいと思います。
 行政機構の問題につきましては、農林省の組織の再編にも見られるように、政府は、今後とも社会経済状態の変化に対処して、簡素にして能率的な行政の体制を整えていく方針であります。江藤君の御意見についても十分参考にしてまいりたいと思います。
 中教審の答申が提案している教育改革の基本的構想は、人間尊重の本旨に立って、学校教育全般のあり方に抜本的改善を加えようとするものであります。教育改革は、今日、世界各国の共通の課題でありますが、政府といたしましては、今後、この答申の趣旨に沿い、学校教育、家庭教育、社会教育の有機的関連のもとに、生涯を通じて人間の可能性を最大限に発揮できるようにするための諸施策を進めてまいりたいと考えます。また、中教審答申の提案は、教育の制度、内容の両面にわたる広範な課題を対象としており、政府としては、長期的展望のもとに順序を立てて改革の実現を期する方針であります。このため、教育改革の基本的施策の策定については、鋭意、その準備、調査を進めることとし、幼児教育の普及、特殊教育の振興など、直ちにその実現を期すべきものについては、具体的な改善策を講ずることとしております。中教審の答申について、一部に反対があることは私も存じております。よりよい教育を目ざして改革に取り組むべきことについては、どこにも、だれにも異存はないと思います。政府としては、問題点について解決の道をともに考えるという姿勢で、国民の期待にこたえ得る改革の実現をはかる方針であります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(田中角榮君) 五点に対してお答えをいたします。
 まず、サンクレメンテにおける米側の経済に関する基本的な問題について申し上げます。
 日米両国間の正常な経済関係の増進が世界経済の発展のためにも重要であることが再確認をせられました。また、昨年九月の日米貿易経済合同委員会以来、日米間の貿易条件及び経済関係が大きく改善、進展が見られつつあることに満足の意が表明をせられました。また、引き続いて行なわれております日米両国間の協議の終了を待ちまして、少なくとも一カ年間は個別案件の交渉等はしないで済むよう、日米友好の維持の点などで合意ができたのでございます。よって、このサンクレメンテ会談は両国のためにも有意義であったと思うわけでございます。
 第二は、貿易の拡大と対外政策の基本についてでございます。わが国経済の長期的、安定的発展をはかりますには、貿易の拡大に可能な限り努力することが必要であることは申すまでもないのであります。なお、内容的には量的拡大から質的向上へ、そして輸入の拡大、市場の多角化等、自由と調和を基調とした対外経済政策を積極的に展開していくべきと考えるのであります。特に発展途上国との関係では、経済協力の推進、開発輸入の拡大、海外投資の促進など、その国の経済開発に貢献しながら貿易を拡大するという方向でなければならないと思います。
 第三点は、シベリア開発等についてでございます。日ソ経済協力では、従来より互恵平等の原則に基づき商業ベースをもととして進めてまいったわけでございます。今般の共同コミュニケにもありますとおり、今後とも長期的展望に立って一そうの努力をしてまいりたいということでございます。
 シベリア開発のプロジェクトにつきましては、チュメニの石油開発とパイプライン、また沿海州大陸だなの資源開発並びに天然ガス、原料炭、鉄鉱石等数点の具体的なものもありますし、交渉もされており、検討もされておるのでございます。何ぶんにも大型でございますので、具体的数字を検討して、かつ、国益に沿うものであればこれに協力をしていく所存でございます。
 また、現在行なわれております森林資源開発や、港湾建設協力等に加え、最近広葉樹パルプ長材、チップの開発輸入プロジェクトの基本的契約が行なわれておることを申し上げておきます。
 第四点は、産業の地方分散等についてでございますが、お説全くそのとおりでございます。わが国の総生産も、国民所得も、都市集中の歴史の中で増強、拡大をしてまいったわけであります。それは明治から百年の歴史もそのとおりであり、戦後四半世紀の経済発展の歴史もまたそのとおりでございます。しかし、人口、産業、文化等が大都市へ過度に集中をすることによりまして、物価、公害、交通、住宅、地価の値上がり等、生活環境は日に日に悪化をいたしておるわけでございます。すなわち、都市集中のメリットよりもデメリットが大きくなりつつあるということもまた事実なのであります。これからのわが国の経済は、現在より確実に増大するのであります。私が一つの例を引いて申し上げたとおり、一昨年の国民総生産七十二兆円に年率一〇%ずつをかけてまいりますと、十五年後の昭和六十年には、驚くなかれ、国民総生産は三百四兆円を記録するのであります。このように大きくなるかならないかということは、一つの試算でしかありませんけれども、いずれにしても、日本の経済が拡大基調にあることは事実でございます。この拡大基調にある日本の経済的基盤、産業の基盤を過去のように大都市に求めることが可能であるかどうかということは、もう申すまでもないのであります。はるかに限界を越しておると言うべきでありましょう。水、土地、空気等のことを考え、かつ、成長のメリットを国民生活の向上へ還元せしめるためには、工業再配置計画を強力に推進する必要があります。その具体的政策としましては、国土の総合開発等、全国二次産業比率の平準化政策を推進する以外にはないわけでございます。このような観点から、昭和六十年度を目標として太平洋ベルト地帯とその他地域との工業生産の均衡化をはかるべく、密集地帯からの工場の移転促進と、一次産業比率の高い地域から産炭地域等への工場の定着を推進するため、税制、財政、金融上の優遇等を行なう立法を今国会に提案、御審議を願う予定でございます。
 なお、本件の促進のために、四十七年一般会計及び財政投融資で合計百五十億円の予算を計上いたしておるわけでございます。なお、本件促進のために公団の設立等を提案、御審議を得る予定でございます。
 第五点、日本の産業の方向についての御指摘でございますが、日本は従来重化学工業中心でありましたので、海外から搬入する原材料の量はいよいよ増大をしてまいっておることも事実でございます。なお、生産過程におきまして、公害も逐年増大しつつあることもまた事実であります。御指摘のとおり、これからの日本の産業は、知識集約型産業構造の実現を推進すべきであることは言うをまちません。原材料輸入と製品輸入との調和も考慮することによって、原材料提供国との友好もはかってまいるべきだと考えるのでございます。日本の産業の方向、産業の地方分散等に対しては、御提案の御意見と政府は全く同一であることをつけ加えて終わります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(福田赳夫君) 江藤さんから、情報文化活動を強化せよという御激励を交えての御質問でございますが、わが国は、江藤さんの御指摘になりましたように、多極化時代におけるその一つの極であるといわれるまでに拡大発展をしてきておるわけでございます。そういう立場になりますると、どうしても諸外国から目につく、当たりも強くなります。そこで、ゆえなき批判、また誤れる警戒心、そういうものが出てくる。私どもは、憲法でもそういっておるわけでありますが、この間の外交演説におきましても申し上げたのでありますが、諸国民の公正と信義に信頼してわが国の生存と安全を確保する、これを国是としておる、こういうことを申し上げたわけでございますが、そういう日本の立国のたてまえ、こういうものを諸国民に周知徹底してほんとうに理解してもらうということが、私は、わが国がこれから生きていく、そういう上において喫緊の最大要務である、こういうふうに考えております。
 そういうことで、わが国のあり方につきまして諸外国の誤解がないように、また、わが国は諸外国の立場というものをよく理解するように、そうして、世界の中で日本が重要な尊敬さるべき役割りを果たしておるということについて、諸外国から統一した認識を得られるようにということを念願いたしまして、情報文化活動の強化には一そう努力してまいりたいと、かように存じます。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(水田三喜男君) 私への御質問がもしございますとしませば、社会資本のおくれを取り戻すために今後資金の配分において妥当な比率を維持しろという御意見についてではないかと思います。
 この問題は、四十二年から四十六年までの五カ年間の数字を平均してみますと、GNPにおける政府固定資本の形成と民間設備投資との割合を見ますというと、民間設備投資は五年間平均GNPに対して一九・二%、これに対して政府の社会資本の投資は平均八・七%ということですから、半分にもならないという比率でございまして、これが今日社会資本のおくれを非常に著しいものにしているということであろうと思います。そこで、本年度はようやくこの比率が調整されまして、一六・五対一〇・一と、初めてこの比率が直ってまいりましたが、はたしてこの比率が妥当であるかどうかということは非常にむずかしい問題でございますが、要するに、社会資本のおくれを取り戻す必要があるのでございますから、今後不況が克服されて、また景気が出てきて、民間設備投資が旺盛になってくるようなときがございましても、これを逆転させることはできませんので、そういう意味で、この差を縮める妥当な比率というものはあくまで今後資金の配分において維持すべきものであるというふうに考えます。(拍手)
   〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(木村俊夫君) 私に対するお尋ねは二点あると思います。第一点の、新全総を見直す必要はないかというお尋ねに対してお答えいたします。
 昭和四十四年に策定されました新全総は、長期的視点に立って、人間のための豊かな環境を創造することを基本的目標としたものでございます。しかしながら、計画策定後の諸情勢を見ますと、経済の成長率等において計画の想定とやや食い違いが見られます。しかしながら、これらに対しましては、むしろ、計画の実施面で対応していくべきであると考えております。また、計画策定後大きな問題となっております環境問題に対しましては、まず、経済発展のパターンのあり方等を含めた総合的な政策目標の設定がこれに先行すべきものであると、こう考えます。政府は、本年中に新しい長期経済計画を策定することといたしておりますが、この作業と並行いたしまして、その中で国土開発政策をいかに位置づけるかということを明確にするためにも、この際、新全総計画の総点検をいたしたいと考えます。
 第二点は、消費者の立場に立った行政機構を強化する必要はないかというお尋ねでございます。この問題は、特に最近における物価問題の処理について最も重要なことでございます。政府部内におきましては、現在、関係各省庁において、それぞれ所管の施策を推進しておりますが、これらの諸施策を総合的かつ効果的に実施するため、内閣に物価関係閣僚協議会を置いております。今後は、これらの政府部内の機構の総合調整機能をさらに一そう強化してまいる必要があると考えます。
 また、今回の、農林省に食品流通局を新設したことに見られますように、関係各省庁の行政機構を消費者行政重点に改めてまいることもきわめて緊要であると考えます。
 以上。(拍手)
#22
○副議長(森八三一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。
 これにて休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時七分開議
#24
○議長(河野謙三君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、永年在職議員表彰の件についておはかりいたします。
 議員重宗雄三君、木内四郎君、植竹春彦君、新谷寅三郎君、羽生三七君は、国会議員として在職すること二十五年に達せられました。
 つきましては、院議をもって五君の永年の功労を表彰することとし、その表彰文は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 議長において起草いたしました五君に対する表彰文を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 議員重宗雄三君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもつて表彰します
   〔拍手〕
 議員木内四郎君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもつて表彰します
   〔拍手〕
 議員植竹春彦君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもつて表彰します
   〔拍手〕
 議員新谷寅三郎君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもつて表彰します
   〔拍手〕
 議員羽生三七君 君は国会議員としてその職にあること二十五年に及び常に憲政のために力を尽くされました参議院は君の永年の功労に対しここに院議をもつて表彰します
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
 表彰状の贈呈方は、議長において取り計らいます。
     ―――――・―――――
#26
○議長(河野謙三君) 平井太郎君から発言を求められております。発言を許します。平井太郎君。
   〔平井太郎君登壇、拍手〕
#27
○平井太郎君 私は、議員一同を代表いたしまして、ただいま永年在職のゆえをもちまして表彰を受けられました重宗雄三君、木内四郎君、植竹春彦君、新谷寅三郎君並びに羽生三七君に対しまして、一言お祝いのことばを申し上げます。(拍手)
 五君は、ともに、昭和二十二年、新憲法下初の参議院議員通常選挙に当選をされ、自来今日まで二十五年の長きにわたり本院議員として御活躍になり、文字どおり本院の歴史とともに歩んでこられた方々でございます。その間、五君は、議院や会派の役員あるいは国務大臣の要職を歴任され、そのすぐれた御人格と御識見によりまして、参議院発足当初の困難な時代から、議会制民主主義の確立と本院の使命達成のために指導的役割りを果たしてこられたのでございます。今日の本院の発展は、かかる五君の御努力に負うところが多いのであります。
 ここに、われわれ一同、その御功績に対しまして深甚なる敬意を表しますとともに、本日、はえある表彰を受けられましたことにつきまして、心からなる祝意を表する次第でございます。
 現下、わが国内外の諸情勢はまことに多事多端でございます。本院に対する国民の期待も、ますます高まっておるのでございます。どうか、五君におかれましては、健康に御留意の上、今後とも、われわれを御指導くだされ、本院の権威高揚と議会民主政治の発展のために一そうの御尽力を賜わりますよう、切にお願い申し上げて、はなはだ簡単ではございまするが、お祝いのことばといたします。(拍手)
 本日はおめでとうございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(河野謙三君) ただいま表彰を受けられました五君から、それぞれ発言を求められております。順次発言を許します。重宗雄三君。
   〔重宗雄三君登壇、拍手〕
#29
○重宗雄三君 ただいまは、私のために、永年在職のゆえをもちまして、特に院議により、御丁重なる表彰を賜わりましたことは、身に余る光栄でありまして、ここにつつしんでお礼を申し上げる次第でございます。
 顧みますれば、私は、貴族院議員に勅選され、昭和二十二年、新憲法下初の参議院議員通常選挙に全国区に当選、自来引き続き国会議員として、民主議会政治の歴史とあわせて参議院の歴史とともに歩むことができましたことは、私の無上の喜びでございます。
 その間、何ら誇るべき功績もなく、いたずらに二十五年の歳月を重ねたような次第でございまするが、それにもかかわらず、ただいまは、この栄誉ある表彰にあずからせていただきましたことも、ひとえに皆さま方の御懇情と選挙民各位の終始変わらざる御支援のたまものと深く感謝いたす次第であります。
 今後とも、本院議員として、その職責を果たすことの努力を惜しまないものでございます。
 何とぞこの上とも皆さま方の御指導、御鞭撻を賜わりまするようお願い申し上げ、簡単でございまするが、本日の御好意に対し深甚なる謝意を表し、ごあいさつにかえる次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○議長(河野謙三君) 木内四郎君。
   〔木内四郎君登壇、拍手〕
#31
○木内四郎君 お許しを得まして、一言お礼のことばを申し述べさしていただきたいと思います。
 このたび、私は、永年在勤のゆえをもちまして、院議をもって、ただいま御丁重なる表彰を賜わりました。また、平井先生から御懇篤なるおことばをちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。この光栄に対しまして、つつしんで厚くお礼を申し上げる次第でございます。
 顧みますれば、はなはだ恐縮でございますが、少し自分のことに触れさしていただきたいと思うのですが、昭和二十一年に、幣原内閣のお手伝いをしておりました当時、新憲法の草案がGHQから示された際におきまして、その案においては、敗戦国であり小さい国であるから、もう衆議院だけでいいということで、一院制の案でありました。これに対して、幣原総理から命を帯びまして、私はホイットニー将軍のところに参りまして交渉いたしました結果、二院制に改められたのでありまして、その当時のことをいまから回想いたしますというと、ほんとうに感慨の深いものがあるのでございます。
 それから、私は貴族院議員として新憲法の審議に当たりました。また、新憲法が施行されるに及びまして、二十二年から、長野から参議院のほうに出していただきまして、参議院のごやっかいになって今日に至っているのでありますが、これひとえに選挙民の変わらざる御支援と、皆さま方の御指導、御鞭撻のたまものでございまして、この点につきまして私は深くお礼を申し上げたいと思うのでございます。
 ところで、私は、はなはだ失礼でございますけれども、自分の気持ちを申し上げまするならばいま申し上げましたような次第でございまするので、私の人生の後半はほとんど参議院の歴史とともに歩いてきたといってもいいのではないかというふうに自分は思っておるのでありますが、しかし、はなはだ微力でございまして、ことさら取り立てて申し上げるようなことは何もいたしておりません。ろくろくとしてよわいを重ねてきたにすぎないのでありまして、この点は深くざんきいたしておる次第であります。しかし、幸いにいまなお健康にも恵まれておりまするので、今回の表彰を契機といたしまして、心を新たにいたしまして一そうの努力を傾けてまいりたいと思いまするので、どうか皆さま方の格別の、従来にも変わらない御支援、御鞭撻を賜わりまするようひとえにお願い申し上げたいと思うのでございます。
 はなはだ簡単で、十分に意を尽くしておりませんけれども、これをもちまして私のお礼のことばとさせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#32
○議長(河野謙三君) 植竹春彦君。
   〔植竹春彦君登壇、拍手〕
#33
○植竹春彦君 ただいまは、私もまた永年勤続議員として、院議をもって御丁重な御表彰を賜わりましたことは、まことに感激にたえません。
 昭和二十二年、新しい憲法施行のもとに第一回の参議院通常選挙に当選いたしまして以来二十五年、引き続いてこの議席を占めさせていただいておりますることは、先輩各位の御指導と、同僚議員の皆さま方の御協力と、さらに選挙区の変わらざる一貫した支援のもとに、今日この栄誉をちょうだいいたしました。この間、ずいぶん国は多事多難の経過を経てきておりますが、この戦後に、あの昭和二十年、戦火が終えましたあとには、新しい民主政治がたくましくもここに誕生いたしまして今日に及んでおり、私たちはその民主政治の進展のために今日まで参加することができましたことは、私たちのまことに光栄に存ずる次第でございまして、今後とも皆さまの御協力により、さらに私は心血を注いで民主政治発展のために尽くす覚悟でございます。
 本日はほんとうにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○議長(河野謙三君) 新谷寅三郎君。
   〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#35
○新谷寅三郎君 ただいまは、私のために、永年勤続のゆえをもちまして、特に院議により御懇篤な表彰を賜わり、また、平井議員から御丁重な御祝辞をいただきましたことは、まことに光栄の至りでございます。つつしんでお礼を申し上げます。
 私も、昭和二十二年、新憲法により制定せられました新しい二院制度のもとにおける初めての参議院議員選挙に当選いたしまして以来、引き続き今日まで本院議員として国政に参画し、戦後の荒廃と混乱の中から全国民がひたすらに願っておりましたわが国の復興、発展と、議会制民主政治の確立を目ざし、幾多の難局を乗り越えて今日に至りました本院の意義深い歴史とともに歩んでくることができたのでございますが、今日、この二十五年間を顧みまして、まことに感慨無量なものがございます。
 その間、私といたしましては、微力のために何らの功績も残し得なかったにもかかわりませず、本日この栄誉ある表彰を賜わりましたことは、ひとえに同僚各位の温情に満ちた御指導と、郷党の方々の終始変わらぬ御支援のたまものでございまして、この機会に衷心から感謝の意を表する次第でございます。
 申すまでもなく、現在国の内外を通じまして、いわゆる激動期に当面し、私どもは実に重大な試練の場に立たされております。加うるに、近年良識の府と言われまする本院のあり方につきましても、国民各層から種々の批判を寄せられております。私は、今後これらの問題と真正面から真剣に取り組む心がまえを持ちまして、あくまでも初心を忘れることなく、国民の期待にこたえて、憲法の所期する本院本来の使命の達成に、最も忠実に最善の努力を尽くしたいと念願をいたしております。
 どうかこの上とも各位の一そうの御指導と御鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。
 まことにありがとうございました。(拍手)
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#36
○議長(河野謙三君) 羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
#37
○羽生三七君 ただいまは、院議をもって私に対し永年勤続のゆえにより表彰を賜わり、また平井議員からもおことばを賜わりまして、まことに名誉に存ずるとともに、心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 今日あるは、議員皆さまの御理解ある御交誼とともに、党や知友の方々はもとより、私の郷里の県民大衆の支援にささえられてきた結果であることを考えまして、感銘を新たにしておる次第でございます。
 顧みますればこの二十五年間、さまざまな思い出がございます。たとえば初めて出てきました当時、占領軍、いわゆるGHQの意向が国政審議に大きく影響した時代がございました。続いて全面講和か単独講和かの岐路に立って、日本の政治が大きくゆれた、サンフランシスコ講和条約と日米安保条約の当時もございます。
 また、いわゆる海外派兵禁止の決議案の成立したことも思い出の一つでございます。これは本会議の会議録には過半数となっておりますが、実はある一人の方が、たまたま何かの事情で起立されなかったので、慣例により過半数となっておりますが、実際はこれは満場一致と同じでございます。そのときには改進党鶴見祐輔さんに提案理由をやっていただき、私が賛成討論をいたしましたが、文字どおり全党、各会派の一致でこういう案が成立した次第でございます。
 続いて日本の国連加盟、さらに日ソ国交回復問題でのわれわれの激励に、鳩山総理が声涙ともに下るような場面のあったことも思い出されます。
 このようなさまざまな国際問題とともに、参議院が大きくゆれました教育二法のような各種の国内法など、実に多くのことを経験してまいりました。
 また、それとともに私の思い出の一つに、私が農林委員長であった当時でありますけれども、衆議院の与野党の絶対多数が賛成可決して本院に回付してまいりましたいわゆるドッグレース法案を、ギャンブル法案をこれ以上ふやす必要はないという立場から審議未了、廃案にしたことも記憶の中にございます。
 また、参議院が衆議院から回付された法案を修正した場合に、皆さま御承知の三階の常任委員長室で両院協議会が開かれ、衆議院側と協議をするなどのこともありましたが、このような両院協議会は昭和二十八年で終わっております。
 このような過去を回想すれば思い出は尽きることがございません。二十五年の表彰をいただきましたが、任期はなお五年有余カ月残されております。この残された期間、皆さまとともに日本の平和と民主主義を守り、国民福祉の向上、発展と参議院の本来の使命達成のためになお一そうの努力をしなければならぬと決意をいたしております。
 今日の表彰に対しまして、重ねて感謝を申し上げるとともに、今後とも議員皆さまの一そうの御交誼をお願い申し上げまして、御礼のごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)
#38
○議長(河野謙三君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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