くにさくロゴ
1971/03/01 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 本会議 第6号
姉妹サイト
 
1971/03/01 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 本会議 第6号

#1
第068回国会 本会議 第6号
昭和四十七年三月一日(水曜日)
   午前十時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  昭和四十七年三月一日
   午前十時開議
 第一 緊急質問の件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 緊急質問の件
 石原慎太郎君から、米中首脳会談に関する緊急質問が、成瀬幡治君から、米中会談に関する緊急質問が、黒柳明君から、米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問が、田渕哲也君から、米中首脳会談に関する緊急質問が、星野力君から、米中首脳会談に関する緊急質問が、それぞれ提出されております。
 これらの緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。石原慎太郎君。
   〔石原慎太郎君登壇、拍手〕
#5
○石原慎太郎君 私は、自由民主党を代表し、さきに行なわれた米中首脳会談とその共同声明に関する諸問題について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 先年、中国において人民大会代表にあらかじめ配られた新憲法の草案の中で、前代未聞にも、毛沢東主席に次いでその後継者としてのナンバーツウの地位をうたわれていた林彪元帥以下十数人、いやあるいは数十人の将軍たちの粛清の代償において行なわれ得た米中会談という画期的な国際政治劇を、私もまた、世界の緊張緩和に大きな効果をもたらすべき試みとして注目してきました。しかし、会談後に発表された共同声明は、捕虜の釈放、凍結財産の解除、常駐代表の設置といった予測事項も含まれず、総括的に見て、予測を下回るものでしかなく、緊張緩和の具体的示唆にも乏しいものでしかありません。ですが、この会談の成果あるいはその及ぼすところをコミュニケのみをもってはかるのは愚かであり、むしろ、その下に隠された会談内容を冷静に分析推測することこそが、わが国の外交利益のために必要であると思います。その点まず、政府の共同声明に対する基本的評価と対処の姿勢について総理並びに外務大臣にお伺いいたします。あわせて、昨日総理と会見したグリーン国務次官補の報告の内容と、それに対する政府の評価も伺えたらと思います。
 今後の日中関係、日米関係の有利な発展のためにわれわれにとって必要なことは、今回の会談を実現せしめた国際情勢の諸条件の客観的構造を正確に把握することです。つまり、何がこの会談の実現の要因であったのか。それはすなわち、現在の国際情勢下における米中両国の共通した利害関係であります。その第一は米中両国の対ソビエト関係であり、第二は日本との関係でありましょう。実はベトナム問題も台湾問題も、その外交要因とのつながりにおいて、従来考えられていた以上に複雑で多様な、あるいは思いがけない解決の方法と時間性を持ってくるはずであります。この対応こそ、スタンリー・ホフマンが数年前、近い将来の国際問題解決の不可欠な要因としてあげた多中心主義あるいは多極主義の論理にまさしく適応するものです。
 第一の米中両国の対ソ関係の要因は、さきの印パ戦争、その結果によるバングラデシュの独立とその承認、そうして、ソビエトのインド洋への決定的な進出、あるいは日本の外蒙古承認、あるいは最近しきりに外電や海外情報で伝えられる台湾へのソビエトの介入、台湾海峡における澎湖島の基地租借の工作等々に明示されるソビエト提唱のアジア諸国共同防衛体制の推進、つまり、中国再封じ込めのいわゆるブレジネフ・ドクトリンであります。これは、中ソ国境に強い緊張をかかえ、その軍事能力の非機動性からして、南北の二方面作戦に対処不可能な、そうして、七五年に予想されるICBM展開配備までに軍事的な空白をかかえざるを得ない中国と、昨今明らかにその核軍事能力においてソビエトに優先されつつあるアメリカの、ともに好まざるところであります。このため、中国はアメリカ第七艦隊のインド洋進出を非公式に承認したと聞きます。
 また、対日関係においては、共同声明の日本に対するアメリカ側の言い分が何であれ、ニクソン政府の日本の経済進出を抑制することがアメリカの望むアジアの勢力均衡のために必要であるという対日政策は、中国が実は大いに評価し、同意するところに違いありません。両首脳会談の中で、あるいは余談として、さきにアメリカによって与えられたドルショックや通貨調整、繊維交渉の成果を中国側が大いに評価したところでありましょう。米中会談の必然性のこうした客観構造の分析を、総理並びに外務大臣はいかがお考えでしょうか、御異論があれば伺いたいと思います。
 いずれにしてもわれわれは、あの共同声明をいたずらな党利党略のために針小棒大的な解釈をすることなく、その下に隠されたものを推測する必要があります。あの会談で行なわれたものは、ニクソン大統領がみずから言っていたように、高度な理想、哲学であるよりも、まず共通な対ソ、対日姿勢を踏まえてのはなはだ直截で露骨な両国の利益関係についての会話であったでしょう。この会談ほど、かつてドゴールがいみじくも言った、「国家間の友好なぞ、その利益さえ一致すれば、一朝にしてでき上がり、利害が相反すれば、一夕にしてくずれる」という国際政治の公理を表象したものはないような気がいたします。米中両国によるこの外交の公理のいとも厳粛な証明は、米国を最も信頼すべきパートナーと信じ切っていた多くの日本人に強い衝撃を与え、また、米中接近や印パ戦争以来、米ソと同じ超大国としてのエゴイズムを露呈してきた中国に対する警戒心を、この会談に実は非常に戸惑っている北ベトナムや北朝鮮の大衆と同じように、多くの日本人にも与えました。その結果、われわれは、おそまきながら、われわれは米国でもなければ中国でもない、まさしく日本でしかないのだという自覚と認識を持ち直すことができました。これこそが、今後のわが国のすべての外交の基調に不可欠な認識だと思いますが、総理、いかがでしょう。
 米中両国のそうした共通の利害関係から発して、たぶん次期の大統領選挙に前後したころから、小出しにあるいは大出しに、両国間の政治的、経済的協調が具現化していくことでしょう。それがどのような形で、いつごろあらわれてくるかについて、政府はどのように見通しをお持ちでしょうか。外務大臣、通産大臣にお伺いいたします。
 また、そうした米中間の協調の中で、相対的に日本にとって失われる国益がありはしないか、それにどのように対処していくのか、その姿勢を伺いたいと思います。かれらの協調がわれわれの国益と相かかわるとき、そして、もし日本の国益がそこなわれる可能性があるならば、政府は強い警告をも発すべきでありましょう。言いかえれば、アジアにおけるソビエトの存在をさらに強く意識して、四極外交における日本の経済国家としての諸方策がいかなる基本路線の上に展開されるべきか、その基本路線について再確認したいと思います。すでに云々されているシベリアの共同開発、外蒙古の承認、あるいは中国とのより積極的な経済交流が、単に場当たりでなく、長期に日本の利益を維持する一貫した政略の上になくては意味をなしません。それに関連して、おそらく今回の米中会談の重要事項の一つであったと思われる、中近東にひとしい埋蔵量を持つといわれる中国の渤海湾の海底油田の開発に関して、日本は何らかの積極的な姿勢を単独で、あるいは他国との関連において持つのかを、通産大臣にお伺いしておきたいと思います。
 次に、従来、対中関係のネックとされてきた台湾問題について、いささか私見を述べながらただしたいと思います。
 さきに述べた客観的構造の上に持たれた米中会談が、その共同声明で、台湾に関し、両国それぞれの主張をあのような形で述べたことは、これを注意深く読めば読むほど、実はこの問題に関し、両国がすれ違いでなく、ある一致点を見出したことがわかります。つまり、台湾に関しての暫定的凍結を両国が認め合ったことです。つまり、この問題の解決にもっともっと時間がかかってもよいということであります。それをあかすように、キッシンジャー補佐官は上海で、共同声明による近い将来の台湾在留の米軍の削減があり得るかとの記者団の問いに答え、共同声明の補足の意味で答えて、私はそうは予想していないと言っております。つまり、これは米中両国のブレジネフ路線への軌を一にした対処であり、台湾問題こそ、実は本質的には中国の国内問題というよりも、はなはだ国際化された問題であり、言いかえれば、ブレジネフ・ドクトリン対ニクソン・ドクトリン及び中国の平和五原則の接点とも言うべきものでありましょう。それゆえに、この問題に対する日本の選択の可能性は、実はあの共同声明によって幅を持ち、多様化してきたのであり、従来の、台湾を捨てるか捨てないかといった、いたずらに単細胞的な論理、議論は強く反省されるべきであります。(拍手)先日の総理の、台湾は中華人民共和国の領土である、という発言の意味と合わせて、この点、総理、いかがお考えでしょうか。
 最後に、あの共同声明が含むいささかの矛盾性に関し、政府はこれをどうとらえているかをお聞きしたいと思います。総理大臣、外務大臣にお伺いしたいと思います。
 声明の中で中国は、すべての被抑圧人民、被抑圧民族の自由と解放を求める闘争を断固支持する、と言っておりますが、これはさきに述べられた平和五原則の不干渉の条項といささか矛盾の感がなきでもありません。被抑圧人民・民族の解釈が、あくまでも中国の政治的主観によるならば、日本と中国の関係においても、将来のある時期、平和五原則が空洞化されるおそれがありはしませんでしょうか。政府は、これをどのように解釈されるか、念のためにお伺いしたいと思います。
 中国問題は、歴史的にながめても、かつて、儒教、仏教、あるいは漢字といった今日の日本の文化の核とも言うべきものの多くを中国から受けたために、歴史的、精神的に中国に対して受動的なコンプレックスを持つ日本人にとっては、他の外国とのかかわり以上に、潜在的、本質的に強い影響力を持っております。多極化、複雑化する国際情勢の中で、対中国問題あるいは対米問題を通じて日本の国益を守り維持しながら、さらに、その究極にわれわれが守らなくてはならぬものは、すべての問題を冷静に現実的にながめる姿勢であり、換言すれば、自由な精神構造であります。精神の自由です。現況、この問題を論ずる日本人の中に、政治家、ジャーナリスト、学識者を含めて、なお、知らずにその自由な精神構造を失いつつある者が多いという事実を見のがすわけにいきません。中国との関係が日本人に与える潜在的、精神的影響が大きいだけに、われわれは他の問題において以上にそうした配慮を怠らず、政府は、率先して国際情勢下におけるわが国の外交の自立性を確保し、国民に対する精神的啓蒙につとめるべきでありましょう。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(佐藤榮作君) 石原君の最初のお尋ねは、ソ連との関係及び日本との関係について米中間には共通の利害があるのだから、米中共同声明にあらわれていない何らかの了解が達成されているかもしれない、その辺を十分見きわめて行動せよとの御指摘かと思います。もちろん米中首脳会談におきましてはさまざまの議題が取り上げられたことと思いますが、そのおもなねらいは、これまできびしい対決状態を続けてきた米中関係に対話の道を開き、もって国際緊張の緩和の促進をはかるところにあったと考えます。いずれにせよ、政府といたしましては、国際情勢が現在多極化の方向に向かって大きく流動しつつあることを深く認識しており、今後とも四囲の情勢に注意深く目を配るとともに、あらゆる変化に対して迅速かつ柔軟に対応するかまえを一そう整備し、もって国益の確保、増進をはかってまいる所存であります。
 対ソ関係につきましては、米中共同声明では直接表現されておりませんが、議題となったと見るべきでありましょう。米国を中心に考えた場合、来たる五月に予定されているニクソン大統領の訪ソの結果をも見きわめない限り、十分な評価は下しがたいと思いますから、いずれにせよ米・中・ソの三国の利害はきわめて複雑にからみ合っている上、単純な利害だけでは割り切れない政治理念や姿勢の相違があるので、かつてのヨーロッパにおける国際関係のように、簡単な勢力均衡の理論は必ずしも通用しないように考えます。
 次に、わが国の評価についてでありますが、米国としては、最近のニクソン大統領の外交教書にも示されているとおり、わが国のアジア諸国に対する経済協力は、この地域の平和と安定に資するものとしてこれを高く評価しております。わが国の経済進出を現在程度にとどめることがアジアの勢力均衡のため必要であるといった見解を米国政府が抱いていると考える理由はないと思います。したがって、わが国としては、米中会談の成果を率直に評価し、それによって生ずるアジアの緊張緩和を歓迎してしかるべきものと考えております。
 また、米中関係の進展に伴って、今後、米中間の貿易量は飛躍的に増大することが予想されますが、これによってわが国の経済的利益はいささかもそこなわれるとは考えておりません。むしろ世界貿易の拡大という効果がもたらされると見るべきで、また、その点を喜ぶべきではないでしょうか。
 政府としては、平和五原則を受け入れる用意のあることは、すでに繰り返し明らかにしてきたところであります。米中共同声明の中で、中国側が述べている被圧迫民族に対する種々の表明の問題は、他国の外交政策にかかわることでもあり、わが国としてとやかく言うべき筋合いのものではないと思います。
 次に、石原君は、一九六九年夏、ソ連が発表したアジア集団安全保障構想についてのわが国の見解を問われたものと思います。ソ連は米国と相並ぶ超大国として、アジアに対してもますます大きな関心を寄せており、右構想もそのあらわれと見ることができます。しかしながら、ソ連の真の意図が那辺にあるか、また、この構想の具体的内容及び輪郭についてはいまだ明らかにされておりませんので、わが国としても現在その立場を明らかにすることはできませんが、もしこの構想が真にアジアの平和と安全に貢献する性格のものであると判断されるならば、前向きな態度で検討していくべきものであると、かように考えます。
 わが国は、米ソに次ぐ経済力を持ち、国際政治の面でも相応の比重と責任を有しておりますが、同時に、平和に徹するという理想のもとに、軍事力なき大国として生き抜く決意を固めております。したがって、わが国は、いわゆる国際政治の中の極として米・中・ソと同列の立場に立って行動することには、おのずから限界があると考えます。わが国は、いたずらに国際間の権力政治に身をやつすことなく、今後とも諸外国との間に友好と信頼の関係を増進し、平和のうちに相互に繁栄を分かち合うよう努力するという独自の立場を貫くことが肝要であると思う次第であります。
 以上、私からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(福田赳夫君) すでに石原さんに対しましては総理から詳しくお答えを申し上げておりますので、つけ加えるものがあまりありませんが、私も総理同様、米中の共同声明は、これを冷静に批判すべきである。過大評価をしてもならぬし、過小評価をしてもならぬ。私は、この内容を見まして、これは平和五原則を承認しておる。また、文化、経済の交流をお互いに承認しておる。また、政府間接触のルートをつけようとしておる。これも合意しておる。そういう合意点はありまするけれども、また、多くの分野において不合意の点もあるのであります。で、これらを総合してみますると、私どもが大体想像しておったとおりのものが出ております。しかし、私は、ひとりこの共同声明だけを問題にすべきものじゃないと思う。この共同声明の出された経過、また北京会談、これ全体を踏んまえて評価しなければならぬと思うのです。そういうような見地からいいますると、これはとにかくこの会談、共同声明がかもし出しました緊張緩和の勢い、ムード、これは私は重大である。無視することのできない問題である。私は、これは非常に歓迎すべき傾向を打ち出したと、かように考えております。私どもといたしましては、このムードを踏んまえまして、わが国のできる方途を探る、これが今後のわが国の行くべき方向の基本ではあるまいか、さように考えます。
 次に、グリーン特使との会談、これ、何か報告せいと、こういう話でありますが、グリーン特使は共同声明を一々説明をいたしました。また、その共同声明ができるまでの過程におきまして、大統領、毛主席、周首相との間におきまして長時間の会談を行ないましたが、その会談の多くの時間が哲学的な論議に費やされたということを申しておるのであります。双方とも非常な見識を持って、歴史的諸問題、また哲学的思想諸問題を話し合ったということを言っておりますが、こまかい問題になりますると、私に残っておる印象といたしましては、裏取引はこの会談において一切ありませんということ、これが一つ。それから、同盟国に対する約束事は、これは完全にアメリカとしては守り抜きますということを彼が強調しておったという点。この二点が、特に私がここに御報告申し上げたいなと思った二点であるということを申し上げてお答えといたします。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中角榮君) 経済問題に関して三点ほどお答えをいたします。
 第一は、日中貿易の問題でございますが、一九六〇年にはわずかに二千三百万ドルの日中間の貿易でございましたが、約十年後には八億九千九百七十四万三千ドル、約九億ドルに伸びたわけでございます。これは七〇年ベースで見ますと、中国の総貿易量四十一億六千三百万ドルに対して、七〇年は八億二千二百万ドルでございますから、世界各国のうち日中貿易が一番大きなウエートを占めておることは数字的に明らかでございます。七一年度、約九億ドルが本年中には十億ドルをこす状態にあることも御承知のとおりでございます。
 なお、米国との問題を申し上げますと、米中との問題はほとんど見るべきものがありません。統計上の数字となってさえ発表せられておらないわけでございます。香港経由のものでございますが、大体七〇年度の米中貿易は五百万ドル程度と評価をされておるのでございます。米国における中国問題の権威であるR・ダンバーガー教授の予測によりましても、一九八〇年の米中貿易は、輸出入の均衡を前提として考えますと、大体五億ドルが限度だろうということが公表せられておるのでございます。まあ相当な努力をして大幅な輸出をする最大の限度は六億五千万ドルというのが限度であるということが言われております。これは、いまの中国が世界各国と行なっておる貿易の内容を見ますと、大体推定できる数字でございます。しかし、今度のニクソン大統領の訪中が行なわれた結果、いままで禁止品目でございました電子工業製品等も上海に置いてくるようなことで、いま各国と折衝を続けておるわけでございます。これらのことが実現をし、電子計算機や飛行機等がアメリカから輸入されるとすれば、この貿易量は大きくなると推定をせられるのが現状の認識でございます。
 なお、中国の渤海湾及び大陸だなの石油資源開発等についての御発言がございましたが、御指摘のとおり、東シナ海及び沖繩周辺の大陸だなにおいては、石油資源の存在することがすでに調査の結果明らかになっておるわけでございます。まあ非常に大規模なものであるといわれておるわけでございますし、日本の近海でもございますので、日中の国交正常化の進展によりましてこの開発が実現されることを期待する次第でございます。
 第三点は、日ソ経済関係についてでございますが、去る二月、日ソ経済合同委員会が東京において第六回の開会をせられたわけでございます。昨年、すなわち、七一年度の日ソ間の貿易量を申し上げますと、わが国のソ連に対する輸出は、総輸出額二百四十億ドルのうちの一・六%、三億七千七百万ドルでございます。なお、ソ連からの輸入は、総輸入額百九十七億ドルに対して二・五%、四億九千六百万ドル、この合計は八億七千三百万ドルでございます。まあ大体日ソ、日中、日本と台湾との貿易量が大体同じような数字でございまして、日韓が多少それよりも上回るということでございます。
 なお、いま日ソ間の問題としては、チュメニの石油開発と、イルクーツク−ナホトカ間四千キロに及ぶパイプラインの布設等が議題に供せられておるわけでございます。これは約五年ぐらいの開発をいたしました結果、日本に対して二千五百万トンないし四千万トンの原油を供給したいということでございます。大ざっぱにこの開発事業費は三十億ドル余でございまして、日本に十億ドル程度の負担を求めておるのが実情でございます。この石油は非常にロー・サルファでございまして、日本が輸入をしても、日本にこの石油が入ってくるときを予定いたしますと、日本の使用量の五%ないし一〇%以下でございます。なお、シベリアの粘結炭開発、沿海州の大陸だなの石油及びガス開発等がテーブルに載せられておるわけでございます。これらの問題について、民間が主体となり、五月には調査団が現地を視察をするようになっておるわけでございます。
 以上、日中、日ソ経済関係の現状及び将来に対して御報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(河野謙三君) 成瀬幡治君。
   〔成瀬幡治君登壇、拍手〕
#10
○成瀬幡治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、米中共同声明に関連をいたしまして質問をいたします。
 中国の国連加盟、ニクソンの訪中、そして共同声明の発表と、国際情勢、特にアジアの流れは大きく変わってまいりました。第二次世界大戦後の米ソの対立、主導権争いの中でのアメリカの世界政策は、当初ソ連を中心とする共産圏の封じ込め政策であり、敵視政策でありました。日本は米国陣営に組み込まれてきました。安保体制であります。すなわち、講和条約は、日本が戦争をしたすべての国とではなくて、片面講和条約の締結であり、アメリカ軍の駐留を認め、基地を提供し、そして人的資源提供のための自衛隊の増強を内容とする日米安保条約の締結でありました。しかし、戦後二十数年間の間に、米ソは冷戦から共存へ、そしていまや米中の共存の時代がやってまいりました。米中共同声明は、特にアジアでの緊張をやわらげ、冷戦構造から平和構造へと変革をもたらす原動力としてこれを高く評価すべきであります。アジアの平和構造推進の方途は何か。それは、まず第一に日中の国交を回復することであります。これをいかにしてなし遂げるかであります。そして、外交政策はいままでどおりでよいのか、日本の進路について再検討を加え、アジアでの基調の変化に備えて、安保条約をはじめとして、戦後日本がとり続けてまいりました政策の転換をはかる、流れを変えるべきであると思いますが、政府の所見をお伺いいたします。
 質問の第二は、平和構造推進の柱である日中国交回復についてであります。佐藤総理は、しばしば日中正常化を強く希望すると述べるとともに、断片的に行きつ戻りつの発言をされてきましたが、具体的にはいまだ何もしておられないのであります。ただ、あるのは口先だけです。ことばだけであります。日中国交回復については、前提、原則が二つあると思います。その一つは、日中両国のここ数十年間の歴史は、日本が常に侵略者であり、加害者でありました。佐藤総理は、日本の国民を代表して中国人民に陳謝をするとともに、再び侵略行為はやらないと宣言をすることができるでしょうか。いかがでしょうか、お伺いをいたします。
 その二は、中国側は、すでに御承知のように、日中政治三原則を発表いたしております。また、平和五原則を発表をいたしております。この際政府は、政治三原則、平和五原則を承認することであります。昨年十月、藤山さんを団長とする超党派の訪中団の一員として私も参加したのでありますが、周総理と会見の席上、周総理は、原則を曲げて妥協すれば、将来それを実行しないことにもなり、また新しい矛盾も生まれてきます。したがって、原則を曲げて妥協することはできません。中国側としては、日本側に、原則を認めそれを実行する内閣ができるまで待ちましょうという態度を表明されました。当時は、中国代表権については国連の議決前でありました。しかし、中国の国連加盟と日中国交回復は歴史の必然性として、強い自信に満ちておられました。日中国交回復の正常化は、口で百万べん唱えてみてもできるものではございません。それは念仏と違うからです。原則とか条件なしで、まず日中両国が国交回復の話し合いに入り、会談の中で原則、条件が出てくればとの論がございます。これは、日本が中国への侵略をした過去の罪悪に対して反省のない人の意見であります。中国の米国に対する態度と日本に対する態度との違いのよってくるものは何かを認識すべきであります。メンツにとらわれてはなりません。いまこそ基本的態度、指針を明確にすることが何より大切であります。ニクソン大統領も平和五原則を承認されました。また、ただいま石原君への答弁で佐藤総理は、これを受け入れるとの答弁もされましたが、平和五原則はそれでよろしいですが、政治三原則も承認をされますか、答弁をお願いいたします。この原則の承認が原点であり、出発点であり、大前提であり、交渉開始への糸口であります。国会の場を通じて国民に合意を求めるとともに、中国への呼びかけにしていただきたいと思います。
 第三は、日中国交回復を妨げている台湾に関連しての問題であります。台湾についての問題は二つあります。その一つは、台湾が中国の領土の一部であるということであります。台湾の独立運動には加担をしないということであります。これは政治三原則にも関係をしてまいります。五原則にも関係をしてまいりますが、前段については、佐藤総理も一昨日の衆議院の答弁で認められておりますから問題はないと存じますが、しかし、昨日の衆議院での総理と外務大臣との間の答弁に食い違いがございました。統一見解を出すということでございますが、いかがでございますか、答弁を伺います。
 問題のその二は、日華平和条約の破棄であります。佐藤総理は、国会の承認を経て締結をしたものであるからこれを破棄することはできないという態度であります。手続論であります。そもそも日華平和条約は不自然な経緯で結ばれました。サンフランシスコ対日講和条約の調印にあたって、中国代表は参加していないのであります。米英の意見の対立があって中国の代表は招待されなかったのであります。日本が侵略をし、最大の被害を与えた国、中国の代表が参加しない平和条約が調印されたことは、世界の七不思議以上の不可解なできごとと言わなければなりません。ところが、さらに驚くべきことは、一九五二年一月の米議会に、ダレス氏から、日本は、一、すみやかに国府との間で国交回復をする、二、中共とは条約関係を結ばない、三、ソ連圏とは通商をしない、の三点を内容とするいわゆる吉田書簡が発表され、続いて台北で日華平和条約が締結をされたのであります。当時日本はアメリカ軍の占領下にあり、朝鮮戦争の最中とはいえ、中国を代表しない政府をいかにも中国を代表するかの政府のようにみなして平和条約を結び、これで日中間の戦争状態は全面的に終結をしたというのであります。戦争状態は全面的であり、領土は台湾、澎湖島と、こういうふうに限定をするという、論理の合わない条約であります。これはフィクションであり虚構であります。ここがそもそも間違いでありました。この虚構を打ち破ったのがさきの国連の決議であります。日本に台湾を選択せよと迫ったアメリカは、ニクソンの訪中、米中共同声明で日本を置き去りにしてさっさと転身をいたしました。置き去りにされ、ばかを見たのは日本だけではありませんか。日中間の国交正常化は、日ソ間のように、平和宣言を先にやって、それから時間をかけてゆっくりというようなわけにはいかないでしょう。平和条約を締結して国交回復ということになりましょう。とすれば、一つの中国に、たとえ経過的、暫定的であるにせよ、二つの平和条約が存在するということになります。このことはできない相談であり、間違っていることは自明の理であります。したがって、日中国交の正常化を口にすることは、その裏返しに日台条約の破棄が前提であります。この認識が重大であります。佐藤総理は、そうした経緯はすべて承知の上で、苦しいので、手続論の逃げの一手で、破棄はしないと言うのでありましょうか。そこはそうはいきません。なぜなら、日本はかつて張作霖政府、満州国の溥儀皇帝の政府、北京の段祺瑞政府、南京の汪兆銘政府、河北の王克敏政府など、中国の地方政府を承認し、それを援助してきたのであります。内政干渉をしてきたのであります。あやまちをおかしてきたのが日本の歴史であります。中国の人たちはこのことを十分に承知しており、忘れておらないのであります。したがって、日台平和条約の破棄を明確にする必要があると存じます。日中国交正常化をいたしますと言いながら日華平和条約を破棄しないということは一体どういうことなのか、本気で日中正常化を願っておられるのか、疑いたくなります。また、台湾の独立に加担するという疑いも出てまいります。政府が中国との国交回復を真に望むなら、台湾との関係をきれいさっぱりと清算することによって、過去のあやまちを正し、国交回復への出発点とすべきではないでしょうか。破棄するとの基本的認識を政府はとられますか、御答弁をお願いをいたします。
 第四点は、平和構造への具体的方途としての日米の関係と日本の進路についてであります。日米安保体制は、最近は、中国敵視政策と封じ込め政策の一環でありましたが、米中首脳会談と共同声明の発表で、米中間は共存体制へと移行をしてきました。アジアでの新しい歴史の第一ページが始まろうとしております。
 そこで、具体的方途としてのその一は、日米共同声明の中の台湾・韓国条項の破棄訂正、その他何かの方途によって変更をせなければならないと思います。「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊急である。台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要である。」というのでありますが、アメリカの対中国姿勢は当時とは全く違ったものとなりました。再検討を加えるべきであります。また、米中共同声明で、中国側は、日本の軍国主義の復活と対外膨張政策に断固反対と指摘しています。日本の軍国主義の復活に反対しているのは何をさしておるのか。中国側の指摘しておるのは、日本は日米共同声明で、台湾や韓国の安全は日本の安全である。他国の領土を日本の安全の範囲に入れているのは、かつての、満州国は日本の生命線と呼んだのと同じである。これは自衛のためでなく、軍国主義の鼓吹であり、侵略主義の鼓吹であるというのであります。台湾・韓国条項がいかに中国を刺激しているかを考えるとき、失うもの多くして得るものはなしであります。害こそあれ益なしであります。佐藤総理には訪米の機会はもうないかもしれませんけれども、外交ルートを通じて、アジアの情勢の変化に応じて、この際、台湾・韓国条項の破棄訂正、その他何らかの方法によって変更を加えるよう日米交渉に努力するとともに、沖繩と日本の南東部の基地の縮小交渉に努力すべきであります。
 その二は、アメリカの肩がわりをしないということであります。アメリカはニクソン・ドクトリンに基づき、また、今回の米中共同声明で、アジアから撤退をするでしょう。その肩がわりを、日本が自衛隊の増強を、四次防からさらに五次防へと拡大をして、その穴埋めをしてくれると期待をしているようでもありますが、そのようなことは絶対にすべきではありません。落し穴に落ち込んでは断じてなりません。
 その三は、四次防のあり方についても、アジアの、世界の動きに対処するため、文民統制確立のために、時間をかけて十分議論をすべきであります。そのために、四次防の発足を延期する用意はありませんか。四次防の早急な発足よりも、文民統制の確立がより大切であります。問題の核心を見のがしてはなりません。四次防延期についてのお答えをお願いいたします。
 以上、私は、米中首脳会談、米中共同声明をアジアの平和のために高く評価し、日本の国益のため、世界平和のために、戦後とり続けてきた政策に再検討を加え、日本の新しい進路を見出すべきであり政策転換をやるべきであるとの認識に立って幾つかの質問をしてまいりました。佐藤総理、福田外務大臣の率直な所見を伺って私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(佐藤榮作君) 成瀬君にお答えいたします。
 米中共同声明につきましては、アジアの緊張緩和に資するものとして政府はこれを高く評価しております。二十数年の長きにわたってきびしい対立関係にあった米中両国が首脳会談を実現させ、平和共存の関係に入ることを確認し合ったことは、世界の平和維持、これにとりましても、きわめて好ましいことであると考える次第であります。
 米中共同声明にも見られるとおり、計算違いや誤解によって起こる対決の危険を減少させることが緊張緩和につながることは明らかであります。特にアジアの二大国であるわが国と中国は、できるだけすみやかに政府間の話し合いを開始し、相互信頼関係の確立に向かって努力し合うことがアジアの緊張緩和のために必要であると考えております。政府は、今後とも誠意を尽くして日中関係正常化に努力する所存であります。
 次に、成瀬君は、米中会談を契機として安保体制を含めた日本の進路を転換すべきだと述べられましたが、この点は基本的に見解を異にするものであります。最近における情勢の変化の中にあっても、わが国が安保条約を必要とする状況には何ら変わりはないのであります。政府は、安保条約を堅持しつつ国際情勢の変化に柔軟に対処してまいる考えでございます。
 次に、日中国交正常化に際して過去の行為を陳謝すべきだとの御意見を述べられました。日本国民として、中国国民に対し過去においていろいろ迷惑をかけたことは深く反省しなければならないと私も思います。政府としても、しかるべき機会に遺憾の意を表明したいと考えます。
 平和五原則につきましては、政府もこれを受け入れる用意があります。成瀬君は、日中交渉にあたっては、まず中国の対日三原則を認めるべきだとの御意見でありますが、交渉、これには双方の主張を述べ合うところから出発すべきものと私は考えます。わが国としては、国交正常化の交渉に際しては、中華人民共和国政府が中国を代表する政府であるとの認識に立って政府間交渉に臨むものであります。
 さらに、わが国としては、台湾の帰属の問題について発言する立場にはありませんが、カイロ、ポツダム両宣言の経緯から見まして、中華人民共和国の主張は十分理解し得るところであります。
 また、日華平和条約の問題は、日中国交正常化に関する政府間の話し合いの過程で取り上げ、妥当な解決策を見出したいと考えております。
 中国の、米国と日本に対する態度が違うのはなぜか、これを考えて対処すべきだとの御指摘につきましては、そこに国際政治の現実があることを認識しなければならないと考えるものであります。
 次に、しばしば申し述べますように、政府は、これまでも台湾の独立運動に加担したことはありませんし、今後もこれに加担するようなことは絶対にありません。日華平和条約の問題等につきましては、中国の対旦二原則の問題でただいまお答えしたとおりであります。
 次に、六九年の日米共同声明におけるいわゆる台湾条項、韓国条項の問題でありますが、これもしばしば述べておりますように、わが国に近接するこれらの地域をめぐる国際緊張がもしも激化するようなことがあればわが国にとっては重大な関心の対象とならざるを得ないという、一般的な考え方を表明したものでありまして、このような考え方自体は変わるものではありません。しかしながら、当時と今日では情勢にかなりの変化があり、アジア全体が緊張緩和の方向に動きつつあることは歓迎すべきことであります。
 わが国の軍国主義復活の問題については、われわれ自身厳に戒め、自由を守り平和に徹するわが国の基本理念については、さらに国際間の理解を得るようつとめなければならないと思います。
 次に、ニクソン・ドクトリンによって将来アジアから米軍が撤退するに際し、わが国が米軍の肩がわりをするようなことは絶対にありません。
 沖繩の米軍基地につきましては、復帰後安保条約の目的に沿いつつその整理縮小をはかることがすでに日米間で合意されております。また、本土についても全体としてその整理縮小をはかっており、年々基地は少なくなっているのでありますが、今後ともこの方向で努力を続ける決意でございます。
 最後に、四次防を延期せよとの御意見であったように思いますが、わが国の防衛力は、複雑な国際情勢の中でわが国の独立と平和を守るための最小限度のものを段階的に整備する過程にあります。したがって、政府としては、厳重なる文民統制のもと、すみやかに四次防計画を策定したいと考えております。
 以上、私から答弁をいたしまして、なお、外務大臣から補足すべきは補足をしてお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(福田赳夫君) 成瀬さんに対する総理答弁で大体尽きておりますが、私も総理同様、わが国は平和的文化国家としての外交政策を展開したいと、かように考えておるのであります。申し上げるまでもございませんけれども、成瀬さん御指摘のように、いわゆる冷戦構造というか、米ソ二大強国の支配体制が大きく転換いたしまして、いま多極化時代に入ろうとしておる。その一つのあらわれがニクソン大統領の訪中、訪ソ、そういうことであろうかと思います。この多極化という事態は、われわれとしてはよく踏んまえておかなければならぬ問題であると、かように考えるのであります。しかし、同時に、この多極化の構造の中に一筋の政治的な流れというものが動こうとしておる。これは世界の政治家全体が緊張緩和への動きを始めようと、こういうことかと思います。そういうこともまた十分にこれからの外交政策の展開におきましては踏んまえておかなければならぬだろうと、かように考えるのであります。つまり、私どもは、すでにモンゴリアと国交を回復するという挙に出ております。北ベトナムに対しましても政府官吏を派遣をするということもいたしております。また、アメリカ等に先がけてバングラデシュを承認するというようなこともやっております。また、ソビエト・ロシアとの間におきましても、定期会談を通じまして、これも親善と友好の諸施策を進めておるのでありますが、最も大事な問題は、やはりこれは中国との間の国交の正常化、これをこの際、思いを新たにして推進すべき時期に来ておると、こういうことでございます。そういうことを踏んまえながら、多極化外交の中の一環とし、また、その中の最も重大な課題として中国政策というものをとらえていきたい、かように考えておるのであります。そういう外交政策をとりながら、国として非常に大事なことは、これは私は、経済力においては経済大国といわれるような地位まで来ておる、強大な経済力をたくわえるようになってきておる、この経済力に対しまして、世界じゅうが関心を持ち始めておるという事実に着目しなければならぬと思うのであります。つまり、経済的に大きな国になった日本がこれからどこに行くんだろう、こういうことについて世界じゅうが関心を持っておる。世界の歴史におきましては、経済大国は軍事大国への道を歩んだ。その道をわが日本が歩むおそれはないかということが世界の共通の関心事項ではあるまいか、そういうふうに思うのであります。しかし、私は、外交演説でも申し上げましたが、経済的には強くなりましたけれども、決して軍事大国への道は選ばない。この点に迷いなくふん切りをつけ、また、これを定着させなければならぬと、こういうふうに考えておるのであります。私はこの道はほんとうに正しい道である。戦後、建国以来戦争に初めて負けた、戦争はいやだというのは私は国民的のコンセンサスだと思うのです。また、わが国の憲法第九条というものが、攻撃的武器の保持を禁じておる。そういうことを踏んまえまするときに、私どもは再び軍事大国への道を歩んではならぬと、そういうふうに思うのです。しかしながら、だからといって、わが国が侵略に対する抑止力を持たぬでいいというわけじゃないと、こう言う。私どもは、このあり得べき侵略に対しましては、これを完全に排除し得るところの抑止力を持たなければならぬ。そういう意味において、この第四次防というものも御理解願いたいし、日米安全保障条約、これも御理解願いたい。かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(河野謙三君) 黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
#14
○黒柳明君 私は、公明党を代表しまして、米中共同声明、また日中国交回復の問題につきまして、総理並びに関係大臣に質問したいと思います。
 いままでの総理また外務大臣の答弁を聞いておりますと、例の軽井沢の若い青年は、私、社会の非難を浴びる一種の精神錯乱状態ではなかったかと、こう思います。しかしながら、その精神錯乱状態は決してあの軽井沢だけではなくして、失礼ですが、高等精神錯乱みたいな、こういうような気がします。私は逐次質問をしていきますが、もっと冷静に、そしてきちっと、これからのアジア平和を確立する、そういう佐藤内閣の使命を感じて判断をし、そして答弁をしていただきたいと、こう思います。また、すでにこの問題は国会におきまして数日来たびたび答弁されておりますものですから、私はできるだけ重複を避けて質問したいと思います。そのために、こまかいことにまで質問が及ぶかと思いますが、明快なる答弁をお願いしたいと思います。
 今回の米中首脳会談の歴史的成果は、同時に、佐藤内閣の対中国無策ぶりをまざまざと国民の前に示したものであると思います。佐藤内閣が存在する限り日中国交回復は不可能である、こういうことは、中国側のこれまでの佐藤内閣相手にせずの発言からも明らかであります。日中国交回復の早期実現を口にしながら、この実現を妨害する政策をとっている責任はきわめて重大であると思うのであります。しかも、政府間交渉の用意があるが、中国側がこれに応じないかのごとき態度を示し、政府みずからの責任を中国側に転嫁しようとしていることは断じて許されないと思います。総理は、現実に佐藤内閣では日中国交回復が困難であるとするならば、その政治責任を国民の前に率直に明らかにしてもらいたいと思うのですが、この点、どのような御見解を持っているか、お伺いします。
 また、具体的問題について逐次お伺いします。いまも申しましたように、四次防においては二十日間という空転国会、佐藤内閣の無能ぶりを暴露し、また、国会再開とともに、世界、そして私たち日本の国民的課題である中国問題、なかんずく台湾の地位についてたびたび総理と外務大臣の見解が異なっております。ネコの目の変わるごとく、きょうとあした、一日のうちでも見解が変わる。私は総理のネクタイが毎日変わっているのを見るのは楽しい。しかしながら、この重要な中国問題、しかも、台湾の地位の問題についてこう総理大臣と外務大臣、また、総理自身の答弁が何回も変わるが、国民の皆さんがどうこれを判断し、非難しているか。ぜひともこの緊急重要な参議院の本会議の質問場で統一見解を明らかに示していただきたい。
 第二に、政府は、台湾が中国領土の一部であることを認めながら、一方では、日米安保の極東の範囲に含まれているとしている。これは明らかに矛盾であり、ごまかしであります。総理の見解をお伺いいたしたい。
 第三に、米中共同声明においては、米軍は台湾はじめアジアからの撤退を明記しておりますが、このことは、当然の帰結として日米安保の性格変更につながるものであります。この点をどう理解しているのか、明らかにしてほしいと思います。あるいは従来と変わらないと理解しているのか。また、このような流動的な国際情勢のもとにあって、これまでのように全面的の米側の支援を期待できる、こう信じているのかどうか、お伺いしたいと思います。
 第四に、政府は、いまも外務大臣がお答えになりましたように、最近モンゴルの承認、ハノイ、朝鮮民主主義人民共和国との接触等々、未承認の社会主義諸国への接近を行なっているようであります。これは中国からの何らかの反応を期待していわゆる迂回外交を行なっているのかどうか、教えていただきたいと思います。
 第五には、日中国交回復の早期実現をはかるための具体的な行動を政府みずからがとる用意があるかどうかお伺いします。すなわち、少なくとも台湾へのオーバー・コミットメントはすべてやめる、あるいは新規借款、民間投資などは見合わせるというような処置を行なうべきであると考えるのでありますが、見解をお伺いします。
 さらに私は、日中備忘録弁事処員に何らかの外交特権を与えるなどをもう検討してよいのではないか、こう思いますが、総理のお考えをお伺いします。
 第六に、政府は、昨日、対中国輸出に対する輸銀使用を、ケース・バイ・ケースということでなくすべて認めることに決定しましたが、対中国政府の前向きの姿勢として一応私は評価したいと思います。しかし一方、朝鮮民主主義人民共和国に対する輸銀使用は相変わらずケース・バイ・ケースである、こういう態度を保持すると言われておりますが、朝鮮民主主義人民共和国のみを差別する理由は、アジアの緊張緩和の潮流からいって、全く理由ないものと言わざるを得ません。この点、明らかにしていただきたいと思います。また、たとえ輸銀使用を認めたとしても、吉田書簡がある限り中国側の反応が期待できないのではなかろうか。吉田書簡について政府は、すでに死滅したものである、廃棄すべきであるとかないとかという性格のものではない、こうしております。しかし、台湾政府は明らかにこれに相反する態度を示しており、また、中国側もこの廃棄を要求しているのであります。このような種々の問題を提起している吉田書簡に対しまして、わが国政府が何らかの処置、公式声明を行なうべきであると思いますが、その考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
 第七には、中国との人的交流の拡大をはかるべきことは当然でありますが、伝えられております、陸連も中国招聘を意図していると、こういわれておりますが、政府はこれを認めるかどうか、教えていただきたいと思います。
 第八番目の問題は、わが国の軍事力増強政策についてであります。日本軍国主義復活とのわが国に対する非難は、アジア諸国だけではなく世界に広がりつつあることは、もう言うまでもありません。これはアジアの緊張緩和に逆行するものと言わざるを得ません。これを払拭するためにも、いわれなき非難などという政府の口先だけの弁解だけではなく、事実をもって行なうべきであります。すなわち、無制限な軍事力増強政策をやめ、自衛力の限界を明確にするとともに、絶対四次防の中止をすべきだ、私はこう思うものでありますが、所信を承りたいと思います。
 また、今回の米中接近は、これまで、核兵器は攻撃的兵器ではなくむしろ戦争抑止力になりつつあると言われておりましたが、このことを如実に示したものであると思います。核保有国は、その核保有によって経済的な負担を余儀なくされ、必ずしも核を保有するがゆえに大国であるとは言えなくなってきた、こういうことが専門家の間に言われておりますが、この点について総理は、わが国も核を持つのではなかろうかという、こういう危惧も世界から受けておりますが、どう考えているか、お伺いしたいと思います。
 ニクソン大統領は、今回の訪中に引き続いて、来たる五月にはソ連を訪問することになっております。そこで、総理はアメリカ政府に対しまして、米・中・ソ、さらには英仏を加えた核保有国の核軍縮会議を開くよう強く要請すべきであると思います。このことは、さきの国会における非核三原則をさらに一歩前進させるとともに、核軍縮への積極的な姿勢を示すことになると思うのでありますが、その考えがあるかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
 また政府は、日米安保体制のもとでこれまでアメリカの核のかさの論理を強調してまいりましたが、いずれの国の核の脅威に対しこの論理を展開してきたのでしょう。あるいはこれを展開していくのでしょう。中国か、ソ連か、イギリスか、フランスなのか、それとも他にあるのかどうか、説明していただきたいと思います。
 さらに、けさの朝刊――一部の新聞に報道されておりましたように、元米軍の空軍曹長が米本土から横田基地に核を運んだ、こう証言しております。そのときの状況証拠を具体的に述べた、これが列記されております。これは、私たちが、昨年末の沖繩国会におきまして、ちょうどこの米空軍曹長の証言と同じように、昭和三十五年から三十八年回時期に横田基地に核が持ち込まれた、こういう事実資料を入手しました。そしてさきの沖繩国会において政府の見解をただし、そのときの答弁は非常にあいまい、むしろ、否定をするようなものでありました。しかしながら、十二月二十九日私が指摘しましたように、絶対あってはいけない致死性の毒ガスすらすでに横須賀に持ち込まれ、佐世保に行っていることも、まだ政府の手では解明されておりません。しかも、いままた、核爆弾は横田ないし数カ所に持ち込まれた、こういう証言がなされようとする。しかも、私たちの資料においてこの事実関係がさらに裏づけされようとしている。総理は、このような状況をどう判断されているか。また、もしこの客観情勢というものが具体的に証拠資料として事実関係が明らかにされたときには、総理は政治責任をどうとるつもりか。この席で、まず、その判断、見解をきちっと表明して、やがては、私たちも、これから展開される委員会でこの問題を詰めていきたいと思います。
 さらに、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明におけるいわゆる台湾条項、韓国条項については、これまでいろいろ論議されてきましたが、何ら政府は明確な答弁を示しておりません。そこで現在も、さきの沖繩返還協定の前提となっているこれら共同声明の中の台湾、韓国に対する認識は変わっていないのかどうか。日米両政府はともにこの認識に現在も立っているのかどうか明らかにしていただきたいと思います。もし状況が現在は異なるというならば、いかなる認識を持っていられるかもお教えいただきたいと思います。
 最後に、今回のニクソン訪中によってアジアの緊張がすべて緩和されたわけではありません。今後の米国の姿勢によってこれはきまると言えます。しかるに、日本政府の海外援助の中には、アジアの平和のために大きな問題を投げかけているものが、いままでの国会においてしばしば指摘されております。たとえばラオスの問題であります。政府はビエンチャン市ワッタイ空港の整備に対して、昭和四十四年から現在に至るまで、三期に分けまして七億九千万円という多額の資金を使って空港整備をしております。すでに昭和四十四年の時点においてもここにはラオス空軍機T28が活躍しております。現在も活躍しております。完全に常識的には空軍基地になっております。しかし、政府がここに無償援助をした時点においてのラオスとの交換公文は、民間ジェット機の乗り入れのためと、こう書いてあります。現在民間のジェット機ではありません。プロペラ機は週一回しか就航しておりません。あとはこのビエンチャン飛行場を中心に、言うまでもなくホー・チミン・ルートの切断、あるいはジャール平原の爆撃、これが絶えず行なわれておるわけであります。政府は、こういうやり方の無償援助すなわち軍事援助そのものであるという援助に対して、四十四年の時点、さらに四十五年における国会での答弁では、それを是認するかのような態度でありますが、現時点においてさらにこの援助を続けていく必然性があるのか。私はそうではないと思います。ある意味においてはベトナム戦介入を日本政府が助けた、こういう疑惑を持たれ、アメリカ政府からの圧力によるのではなかろうかということも、私は一〇〇%肯定したくありません。そういう疑惑を持たれるこういう援助に対しては、すみやかに政府の賢明なる処置をとっていただきたいと思うとともに、今後は絶対海外に対する軍事援助的なものを一切排除し、そしてこの流動的な世界情勢に対処するため、佐藤内閣が自主外交を力強く展開していただくことを希望して私の質問にいたしたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(佐藤榮作君) まず、日中関係正常化についての熱意は、私も黒柳君に負けないようなものを持っておるということを申し上げます。しかし、御意見は御意見として十分謙虚に承っておきます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、台湾の地位についてお答えをいたします。わが国は台湾の法的帰属につきまして発言する立場にはありませんが、従来の経緯から見まして、中華人民共和国政府の主張は十分理解し得るところであります。将来政府間交渉を通じて日中関係の正常化が実現した暁においては、わが国としても台湾が中華人民共和国の領土と認めることになろうというのが私の基本的認識であります。この点につきましては、外務大臣との間に何ら意見の相違はございません。
 次に、最近における国際情勢の推移、特に米中関係の新たな進展等に照らして、台湾海峡において武力衝突が生ずる可能性は、現実にはほとんど考えられなくなっております。しかしながら、万一にせよ、かりに、台湾をめぐる緊張が極度に激化するようなことがあれば、近隣に位置するわが国は重大な影響を受けざるを得ないことは明らかであります。日米安保条約は、たとえ理論的可能性にとどまるとしても、このような万一の事態に備えて、わが国並びに極東の安全を確保するための規定を設けているのであります。ただし、将来、日中関係の正常化が実現し、台湾の地位が日中双方にとって明確になった場合、そのような新たな現実に適応するよう所要の調整を加えていく必要も、その場合には出てくるものと考えます。
 米中共同声明における、米軍の台湾からの撤退という最終目標の確認は、二段、三段の論理構成の上に組み立てられていることは御承知のとおりであります。幾つかの前提があるわけであります。また、米国は、インドシナ各国の自決という目標に合わせて、この地域から最終的にすべての軍隊を撤退することを想定していると述べております。これは、すでに明らかなニクソン・ドクトリンに基づくものでありますが、このこと自体が直ちに安保条約の性格を変えるものでないことは申すまでもありません。
 御承知のとおり、わが国は仮想敵国を持っておりません。したがって、日米安保条約において核の抑止力を構成しているものは、特定の国の核の脅威に対するものではないことを御理解いただきたいと思います。
 次に、入国や、再入国といった北朝鮮との人の往来の問題については、政府としては、従来より、外交上の配慮等、諸般の事情を考慮して対処してまいりましたが、今後とも国際情勢の推移を十分に勘案して、ケース・バイ・ケースに判断してゆきたいと考えております。
 なお、お尋ねの北朝鮮要人の入国については、現段階においては、諸般の情勢にかんがみ、これを認めることは困難であると思います。(「きのうのをそのまま読んだってだめだ」と呼ぶ者あり。)ただいまの点はお尋ねでなかったということでありますが、昨日、御忠告がありましたので、御指摘がありましたので、特に私のほうから申し上げました。
 黒柳君御指摘のように、核軍縮はわが国の悲願でありますが、現段階では、核拡散防止条約についてすら核保有各国の足並みがそろっていないことは遺憾であります。非核三原則を堅持するわが国として、核を持つようなことは絶対にございません。米・ソ・中・英・仏の五カ国が、国連の安保常任理事国である立場からも、熱意を持ってこの問題に取り組むことを強く期待するものであります。
 次に、自主平和外交の基本方針を示せとのことでありますが、申すまでもなく、たびたび申し上げておりまするように、自由を守り、平和に徹することがわが国外交の基本方針であります。国際情勢がいかに多極化し、かつ、流動しても、日米安保条約を堅持しつつ、先進工業国として国際的な責任を果たすことが眼目でなければなりません。そのような角度から、世界の緊張緩和と平和維持に貢献したいと念願しております。
 最後に、日本軍国主義の非難に対しては、積極的にその誤解を解いてまいらなければなりません。また、自衛力の限界については、防衛力策定にあたって十分検討すべき問題でありますが、わが国の防衛力は、必要最小限のものを整備する過程にあり、四次防を中止することは考えておりません。
 その他、海外援助、また、核について、核の持ち込みが過去においてあった等々の御指摘がございましたが、その他黒柳君の御質問はきわめて広範多岐にわたっておりますから、これらの点について一々は私はお答えをいたしませんで、ただいまのような点について私は触れたのでございます。また、他の部分につきましては、それぞれ関係大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 まず第一に、ハノイやモンゴル、北鮮等へのわが国の最近の接触ぶりは、これは中国包囲のための迂回作戦であるかと、このような趣旨のお尋ねであったかと思います。決してさような考えは持っておりませんです。私は、先ほども申し上げましたように、これからは多極化時代である、同時に、この多極化時代の中において緊張緩和施策を追求しなけりゃならぬ、こういうふうに考えておるのでありますが、その線をそのまま実行いたしておるというのが実情でありまして、決して中国に対するあれこれということを考えておりませんです。私は、そういう考え方の施策でありますので、おそらく中国もこれを歓迎してくださると、かように考えております。
 次に、台湾へのコミットは停止せよと、こういうお話でございますが、これは私どもも、いま日中国交打開、これが最大のわれわれの当面する問題であるということを踏んまえまするときに、台湾における国民政府との接触ぶりにつきましては慎重に配慮しなけりゃならぬと、こういう考え方をとっておるのであります。
 そこで、経済問題が当面問題になりますが、政府借款につきましては、これは十分慎重に対処していきたいと、そういう考えであります。ただ輸銀の使用を含めまして商業ベースの民間投融資、これにつきましては、これを抑制をするというのもいかがであろうか、さように考えまして、これは抑制をする考えを持っておりませんです。しかし、その投融資の対象が中国大陸に対しまして刺激的な問題を含んでおるという点につきましては、これはよく慎重な配慮を加えてみたいと、さような考えであります。
 それから日中間の人事交流の問題に触れられました。私は、日中間におきまするこの国交の正常化ということまでも考えて政府間接触を開きたい、こう言っておるのでありまするから、まだその政府間接触も始まらない、正常化はもとより実現はされない、そういう時期でありまするけれども、人事の交流につきましては、できるだけまあ手を広げていきたい、かように考えておる次第でございます。
 それから、けさの新聞で元米軍の曹長が、どうも核がわが国の基地に持ち込まれたようだというような記事を書かれておるということについてのお尋ねでございます。これは十年前の話のようでございますが、十年前といえども、わが国とアメリカとの間には事前協議の制度があるのであります。核持ち込みにつきましては事前協議の対象にするということにしております。しかし、その事前協議もありません。私は、アメリカ政府が厳粛に、わが国に対しましては、わが国の核政策には協力するということを宣言しておりまする今日におきまして――今日というか、この時期におきまして、アメリカ政府がわが国に対するその公約に違反するというようなことは万あり得ない、かような確信をいたしております。しかしながら、さような言動をなす者もあるということでありますので、これは念のために調査をいたしてみると、かように考えております。
 次に、ラオスのビエンチャンにおける飛行場建設の問題であります。これは確かに黒柳さんおっしゃるとおり、わが国はこれはラオスに対しまして援助を与えます。飛行場の建設をやったんです。御承知のように、ラオスは内陸面でありまして、どうしても飛行場を必要とする、そういう国柄でございますので、最高度の優先的な順位のもとにわが国にこの飛行場の建設の援助を要請をしてきたんです。わが国政府はそれを受け入れた。つまり、この飛行場はこれを拡大いたしまして、そしてジェット機の着陸を可能にするようにいたしたい。内陸国であるところのラオスとすると、私は当然な考え方じゃあるまいか。その要請をわが国にしてきた。それを受け入れる。これはまた当然なことじゃあるまいか、そういうふうに考えましてこれを援助することにいたしたわけでございますが、ラオスの国が中立政策をとろうといたしておるのであります。わが国は、もとよりインドシナ半島の戦乱に武力介入をするというがごときことは毛頭考えておりませんし、また、この戦乱に対しまして内政干渉になるがごときこともまた考えておらない。これははっきり申し上げます。今後といえども、ラオスの中立政策に対しましてはこれを尊重し、わが国といたしましては、その範囲内においてのできることはいたしてまいりたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(田中角榮君) 三点お答えいたします。
 第一は、日中貿易にあたり輸出入銀行使用の申し出がありますれば、これを認めてまいります。
 第二は、対北鮮貿易につきましては、情勢の変化に対応し、慎重にバイ・ケースで処理してまいりたい。
 第三点は吉田書簡の問題でございますが、従来から政府がお答えいたしておりますとおり、同書簡は私信でございまして、政府がこれを廃棄するとかしないとか言うべき筋合いのものでないことを御了承いただきたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(江崎真澄君) お答えを申し上げます。
 第一点は自衛隊についてでありまするが、自衛隊は、総理からもお答え申し上げましたように、一億の国民と主権の存在するわが国の平和と独立を確保してまいりまする最小限の武備でありまして、これはぜひお認めを願いとうございます。そうして、この武備は段階的に充実をしてまいろうというわけでありまするので、現在もその整備の段階であるわけであります。しからば、自衛力の限界をどこに置くか、この点でありまするが、私どもは、従来、国民総生産の一%程度というものを平和確保のためのこの武備の経費として認めていこう、こういうことで長期防衛計画を策定して今日に至っておるわけでございます。私は、この限界の一番大事な点は、やはり非核三原則を歴代政府の主張にしておって、これは国会の決議もございます。また、憲法上海外派兵は絶対しない、これは同様に日本のとっておりまする鉄則であります。
 それから自衛隊の徴募の方法といたしまして、徴兵制はとらない。この人員に徴兵制はとらないということで限界を置くということは、これはまさに大きな私は一つの限界である、こういうふうに考えております。
 日本で軍国主義の疑いを持たれておるではないかという御指摘でありまするが、かつて日本が侵略をいたしましたその当時被害を受けた国が、日本の将来というものを心配して、軍国主義化しないようにということを念願される、また、それを言われるとするのであるならば、これは私は謙虚に受けとめて反省をする必要があると思います。しかし、いま申し上げたように、非核三原則を堅持し、しかも海外派兵は絶対しない、徴兵制はとらないというこの日本の自衛隊のどこが軍国主義的なのか、これは私は世界に向かって十分説得できる可能性のある論拠だと、かように考えております。
 お答えいたします。(拍手)
#19
○副議長(森八三一君) 外務大臣から答弁の補足があります。福田外務大臣。
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(福田赳夫君) 答弁漏れがあるようでありますので、お答え申し上げます。
 覚書事務所の所員に外交特権を与えたらどうかと、こういうような御意見を交えてのお話しでございますが、これは純粋な民間機構でありまして、外交特権を与えるというのにそぐわない性格のものであります。また、中国側からも、さような要請は出ておりませんです。当面、このままにしておきたいと、かように考えております。
 次に、いわゆる一九六九年の台湾条項という問題であります。これは確かに台湾海峡をめぐる客観情勢は非常に変わってきておる。ことに今回の米中会談なんかを見ますると、まあ台湾海峡をめぐって大紛乱が起きる、かようなことは私も想像したくないし、まあできないような情勢になってきておる。しかしながら、万一という場合があるんです。その万一という場合に備えまして考えてみるときに、法的には、事実上は問題はないにいたしましても、法律的にわが国から米軍が基地発進を行なう、こういうケースが考えられないことはない。その考えられる場合におきまして、わが国はわが国の国益を踏んまえて判断するわけでございまするが、イエス・オア・ノーを言うということになるわけなんであります。そういう意味合いにおきまして、とにかくまあ客観的見通しとしてはそう私は心配することはないと思いまするけれども、理論上、法理的から申しますると、依然として、台湾海峡、台湾の問題はわが国の重大関心事項である、こういう趣旨を述べました一九六九年の共同声明の趣旨は変わっておらぬ、こういうふうに御理解を願いたいのであります。
 また、次に台湾の領土問題に関する御質問につきましては、総理から明瞭にお答えになりましたが、私もあのお答えのとおりに理解をいたしておりますので、さよう御了承願います。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○副議長(森八三一君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#22
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、今回の米中首脳会談を中心とする最近の国際情勢の変化に対して、一、情勢の変化に対する基本認識、二、日米関係の調整、三、日中国交回復の促進、四、わが国の経済進出、経済援助に対する基本態度の転換、五、ココムの廃止、以上五点について質問を行なうものであります。
 まず第一点は、国際政治構造の変革に対する基本認識の問題であります。われわれは、このたびの米中首脳会談によって戦後の東西対決の時代に終止符が打たれ、米中平和共存の基礎が築かれたことは、世界の緊張緩和への歴史的な前進として高く評価し歓迎するものであります。しかしながら、これは同時に、アジア・極東地域における戦後秩序の変革を意味するものであり、わが国にとって、米国の核とドルのかさのもとに安住してきたサンフランシスコ体制の終えんを告げるものにほかならないと思います。しかるに総理は、昨日の衆議院本会議のわが党和田春生議員の質問に対し、今度の会談によって国際政治構造が基本的な変革を遂げたとは言えないと答弁されておりますが、これは現状に対する的確な認識を欠くものと言わなければなりません。この際、このような国際情勢の変化を踏まえて、アジア冷戦構造の中での対米追随路線にしがみつき、かたくなにその変化を拒んできたわが国外交の再検討を行なうことが何より必要と思いますが、この点について総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 第二点は、日米関係の調整についてであります。今回の米中会談を契機とするアジアの国際関係のワク組みの変更は、近い将来における日米同盟関係のあり方の再検討と日中国交回復の推進について重大な課題を提起したものと言わねばなりません。総理は、現在の日米安保体制を堅持すると繰り返して述べておられますけれども、相手国のアメリカ自身、大統領外交報告書の中で、「時の流れと日本自身の驚くべき経済成長により」「日米関係は避けがたい変化の過程にある」と述べ、相互主義に基づく日米関係の調整の必要性を強調しております。また、今回の米中共同声明でうたわれた平和五原則の承認、究極的目標としての米軍の台湾からの撤収等は、アメリカの中国封じ込め作戦の基本的な転換を意味するものであり、東西冷戦、米中対立を前提とした日米安保条約は、根底から空洞化しつつあると言っても過言ではありません。
 以上のように、日米両国を取り巻く情勢が大きく変わりつつある今日、経済情勢、安全保障を含めて、日米関係は基本的に調整を行なうべき時期を迎えていると思うけれども、この点についてどう考えておられるか、総理の答弁をお願いいたします。
 さらに、政府は、日米安保条約は戦争抑止力として必要との答弁をされております。私は、日米友好関係は今後とも必要であり、安保体制も急激にではなく、段階的、漸進的に解消されるべきものと思います。わが党は、その第一段階としての当面の方策として、米軍の基地と駐留なき安保への改定を主張しておりますが、すでにこの実現に踏み切るべき時期に来たと思いますが、この点に関し外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。また、長期的な展望としては、すでに抑止力としてアメリカ一国の軍事力に依存することの是非を検討すべき時代に入ったと言えましょう。いまこそ、戦後の冷戦構造にかわる新しい平和秩序の創造が必要であり、米・中・ソ等との多角的安全保障体制も考えるべきときと思うけれども、この点についての総理並びに外務大臣の構想をお伺いしたいと思います。
 第三点は、日中の国交回復の促進についてであります。政府は、政府間の交渉を積極的に進めたいと繰り返しておられますけれども、決意の表明だけで、具体的にどう取り組むか全く明らかにされておりません。私が聞きたいのは、決意ではなく、具体的方策であります。政府は米中共同声明を見て、あの程度ならたいしたことはない、日本がアメリカに先を越されたとは言えぬとたかをくくっている節も見られますが、われわれは中国との国交回復にあたり、アメリカに比べ、わが国の場合は、よりきびしい条件にあるとの認識を持たねばなりません。それはわが国の対中侵略戦争の法的処理すらいまだ済んでいないからであります。日華平和条約が締結されたとはいえ、これは当時の、昭和二十六年十二月二十四日付、ダレス国務長官あて吉田書簡を見ましても明らかなとおり、中国との間に平和を回復するための全面的措置をとることを究極の希望としながらも、当時、国連で代表権を持っていたのが台湾政府であったという事情から、やむを得ず過渡的、限定的性格を持った日華平和条約を結んだものであります。それを佐藤内閣は、長年にわたり、中国を代表するのは台湾政府であるというフィクションに立って、日中の全面的な平和回復を妨げてきたのであり、その責任はまことに重大と言わねばなりません。国連において、中華人民共和国政府が中国の代表として迎え入れられた現在、わが国としては、原点に返って、中華人民共和国政府との間に戦争状態に法的なけりをつけ、復交に乗り出す以外にはないと思います。
 以上の見地に立って考えるとき、日中議連の復交三原則である、一、中華人民共和国政府を中国の唯一の正統政府と認める。二、台湾は中華人民共和国の領土の一部である。三、日華条約は廃棄せられるべきである。これを基本認識として受け入れ、具体的処理としては、台湾問題の円滑な解決をはかるために、日華条約は日中国交正常化の過程で解消されるという立場を明らかにすることが、日中国交回復促進の現実的方策と考えますが、この点について総理並びに外務大臣はどう考えておられるか、具体的にお答えいただきたいと思います。
 第四点は、わが国の経済進出、経済援助に対する基本姿勢についてであります。米中共同声明に、「中国は日本軍国主義の復活と対外膨張に断固反対し」とあるが、わが国が軍事大国に向かって進むことへのおそれは、中国のみならずアジア諸国間においても根強く存在しております。またそれは、単に軍事力の増大のみならず、わが国の経済進出が、資源確保と輸出拡大のみを目的としているところにあると言えましょう。また最近、中国がいわゆる援助大国として国際舞台に登場し、開発途上国に対する援助を積極化し、昨年における中国の供与した借款累計額は、日本の政府開発援助をわずかながら上回ったと見られております。また、その条件はわが国の場合に比しはるかにゆるやかであり、これとの比較から、商業ベースに立った日本の援助に対する発展途上国の批判は一段ときびしさを増しつつあります。このような中でOECDは、最近第三回国連貿易開発会議に臨む態度を協議し、後発の開発途上国に対する援助は大部分贈与にする方針を打ち出す模様でありますが、わが国のみは実行不可能を理由に反対を唱える意向と聞いております。これはまさに時代逆行もはなはだしいと言わざるを得ません。いまこそ、わが国の経済進出や経済援助についての基本態度の大転換をすべきときであり、わが国自体の経済発展の手段としてではなく、真に相手国のためになるという基本的配慮に立つことが肝要と考えますが、この点について外務大臣、通産大臣の見解をお尋ねいたします。
 最後に、ココムの廃止について質問いたします。アメリカはニクソン訪中に先立って二月二十四日、中国に対する禁輸措置を緩和し、ソ連・東欧並みにすることを発表いたしました。また、ニクソン大統領の訪中を宇宙中継したRCA社の地上局設備が中国に売却されようとしております。中継無線基地設備は、言うまでもなくココム・リストの目玉商品でありますが、いままでわが国にココム規制のきびしい運用を要求してきたアメリカ自身がこれを破ろうとしているのは問題であります。また、今回のニクソン訪中の結果、米中間の貿易も拡大の方向に向かう公算が大きいとするならば、ココムは急速に空洞化の方向に向かうのは必然的と言えましょう。考えてみれば、ココム規制自体冷戦時代の遺物であり、米ソ、米中の平和共存時代が到来した今日、すでに無用の長物であります。中国、ソ連等共産主義諸国の経済が発展してくれば、工業品リストの規制などは全く意味がなくなるばかりか、世界経済の発展、ひいては世界平和にマイナスの効果しかないと言えるでしょう。政府は規制品目の大幅緩和を主張しているといわれますが、すでに時代おくれになり、存在価値を失いつつあるココムの全廃を主張すべきときだと考えますが、通産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
 以上五点について政府の見解をただし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(佐藤榮作君) 田渕君にお答えいたします。
 私は、施政方針演説で述べましたとおり、日米の関係はわが国にとりまして、他のいかなる国との関係にも増して重要であり、今日、国際関係がいかに多極化したとはいえ、この事実にはいささかの変化もないという基本的認識を持っております。田渕君御指摘のとおり、国際関係の基調がかつての東西対立の時代から、いまや多極化へ向かって展開しつつあることは疑いのない事実でありますが、日米両国が、政治、経済、文化等、あらゆる面にわたって密接な協力関係を維持していくという基本的な関係を変えるような変化はありません。政府としては、いままでと同様に、日米の友好と信頼の関係を基軸として、多極化しつつ流動する国際情勢に弾力的に対処してまいる考えであります。
 また、経済関係の調整や日米安保の改定を含めて、日米関係を調整すべきだとの御意見を述べられました。国民総生産において世界の第一位と第三位と、こういう巨大な経済力を持つ日米間の経済交流が飛躍的な規模で拡大しているのでありますから、一部の分野で摩擦が生ずるのは、ある意味では避けがたいことであります。これに加えて、国際通貨問題など、世界経済も一つの大きな局面を迎えているときでもあり、今後も日米間に問題が起こることも十分予想されます。しかしながら、日米経済関係の安定は、世界経済の安定と発展にとりまして不可欠のことであり、十分に認識して、相互理解と互譲の精神に立って話し合いを行なえば解決できない問題はないと、私は考えるものであります。私は、日米関係が、わが国の外交にとって、他のいかなる国との関係にも増して重要であるとの認識に立っておりますので、必要な経済面での調整には果敢に取り組んでまいります。
 安保条約のあり方につきましては、私は、田渕君と若干意見を異にいたします。今回の米中共同声明によりましてアジアにおける緊張緩和に大きな前進があったことは高く評価いたしますが、これによりまして国際緊張が一挙に解消したわけでもなく、日米安保条約の基盤が空洞化しつつあるとは考えておりません。したがって、安保条約を改定する必要があるという御意見には、残念ながら同意できません。
 昨年十月、日中議連と中国側との間で調印されました共同声明につきましては、政府としても参考にすべき点は十分これを検討したいと考えております。
 政府としては、もちろん、中国は一つとの認識のもとに、中華人民共和国との間に、国交正常化のためにすみやかに交渉を始めるべく努力していることは御承知のとおりであります。わが国としては、北京政府との国交正常化交渉に際しては、中華人民共和国政府が中国を代表する政府であるとの認識に立って交渉に臨む考えであります。
 台湾の帰属につきましては、わが国は、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄しているので、台湾の法的帰属については云々する立場にはありません。
 中華人民共和国政府が、従来から、台湾が中華人民共和国の領土の一部であると主張していることは、カイロ宣言、ポツダム宣言の経緯から見て、わが国としても十分理解のできるところであります。
 また、日華平和条約の取り扱いにつきましては、わがほうにはわがほうの立場があり、先方には先方の立場がありますが、政府としては、日華平和条約の問題は、日中国交正常化に関する政府間交渉の過程で解決すべき問題であり、おのずから妥当な解決が得られるものと確信しております。
 なお、その他経済問題等につきましては、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 まず、有事駐留――民社党のかねての主張でございますが、私は、この考え方につきましては十分理解し得る立場をとっております。ただ、これを観念的といいますか、理論的だけに偏した考え方で実行する、これは私は不可能なことではあるまいか、そういうふうに考えます。つまり、有事に軍の行動が行なわれる、そのためには常日ごろ、それに対する準備態勢を必要とするわけであります。これは兵たん、特に兵たんの基地というようなものをわが国に保有しないという場合におきましては、有事駐留、有事出動という実があげ得ない、そういうことが考えられるのでありまするが、そういうことを含んでの意味の有事駐留論でありますれば、現にその方向に米軍の駐留自体が動いておる、こういうふうに私は理解しておるわけであります。
 それからさらに、アメリカだけに依存する安全保障体制というものは再検討を要するんではないかというお話でございます。これがもし、アメリカだけにたよっておるんじゃなくて、近隣諸国と平和友好の関係を結べ、こういうお話であるとしますれば、私は、そのとおりだというふうに考えております。しかし、そうじゃない、日米安保条約は廃止して、これにかわる多角的な何かを考えろ、こういうような御議論でありますれば、私は、抽象論、観念論としてはそういうことは考えられるかもしれない。しかし、現実的にははたしてそういうことができますか、私は、さようなことはできない、やはり日米安全保障体制というものは堅持しなければならない、これが現実論である、かように考えております。
 それから、日中の接触についての基本的態度について私からもお答えせよというお話でございますが、これはただいま総理から申し上げたとおりでありますので、私からは重ねて申し上げることはいたしません。
 それから次に、経済援助のあり方につきましての御意見でございますが、確かにいまわが国の経済援助は国民所得の一%にも接近し、これは驚くべき量的拡大が実現されているわけであります。しかしながら、私ども見ておりまして、このわが国の経済援助、経済協力が、これがわが国の対外輸出と密着をしている、そういうようなことから、ややもすると経済侵略ではないかとか、あるいは経済支配体制の設定じゃないかというような受け取られ方をされがちな傾向さえ見られるのであります。私はこの体制というものは一変しなければならぬと思います。つまり、量的拡大、援助の拡大ということ、これはさらにさらに考えていかなければなりません。しかし同時に、より重点を援助の質的側面に置かなければならない時期に来ている、こういうふうに考えているのでありまして、そういう側面から見ますときに、わが国の経済援助のあり方、これには多大の反省を要するものがある、こういうふうに考えるわけであります。しかし、そういう方向転換をいたすためには、これは国費を要するわけでございますので、国民各位の御理解、御協力を得なければならないわけで、住宅も、下水道も、上水道も、あるいは道路も不足している、そういう際に、海外に対してそういう財政上の支出をすることがはたしていいのかというようなことで議論を展開されてくる向きもあるのです。しかし私は、もう今日これだけの日本の経済の規模になってくると、その態度ではやっていけない、やはり世界とともにわが日本の経済もあり、われわれの暮らし自体も、世界の繁栄、安定した暮らしとともにあるという姿勢をとっていきませんと、わが国自体のあり方というものも壁に行き詰まることになるであろう、こういうふうに思うわけであります。この点は田渕さんと全く所見を同じくいたしますので、さようなことで気をつけてまいりたいと、かように考えます。
 それから、いまおことばにはございませんでしたが、書きものにありますのですが、日中航空問題でございますが、これはすみやかに私もこれを開設をいたしたい、いたすべきだというふうに考えますが、これは日中航空の開設、航路の開設ということは、これはどうしたって政府間の話し合いを要するものであります。ですから、この問題は早く政府間の接触を始めまして、その接触の過程でこの話し合いをつけたい、その日の一日も早からんことを念願をいたします。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(田中角榮君) 貿易立国とも言うべきわが国は、国際的要請があるなしにかかわらず、開発途上国に対する援助を拡大し、相手国の経済発展を実現することによりまして貿易の拡大基調を維持すべきであることは御指摘のとおりでございます。また、原材料供給国は原材料を供給するだけではなく、みずからの経済発展と開発を望んでおるわけでございますから、発展途上国への援助は、これは拡大すべきであることも当然でございます。結果的にはわが国の利益にもなることでございます。
 なお、開発途上国への援助につきましては、いま外務大臣が述べましたとおり、GNPに対する国際目標、七五年まで一%ということでございます。現在は〇・九三%でございまして、七〇年ベースで申し上げますと、アメリカが五十九億七千百万ドル、日本が十八億二千四百万ドルということでございます。DACの平均実績までどうしてもまいりたいと考えておるのでございますが、七〇年はDACの平均数字は〇・三四%であり、日本は〇・二三%でございますので、どうしてももう少し引き上げなければならないという問題があることは事実でございます。
 もう一つ、日本に対してアメリカ側などが強く要請いたしております国民総生産の一%に近づくことは、これはできると思いますが、この中に占める政府ベースの援助が少ない、民間ベースが非常に多過ぎる、アメリカのように、政府ベースのものを少なくともフィフティ・フィフティ――五〇%以上にすべきであるというような強い要請があることは事実でございまして、これらに対しましては、日本が貿易をやっておるということとワンセット開発等をやっておるということで、これから政府間援助がだんだんと大きくなる傾向にあるということで、先進工業国が求めておるような理想的な姿になってくると理解をしておるのでございます。
 第二点は、ココムの制限緩和の問題でございますが、ココムは、御指摘のとおり、確かに東西緊張の過程において設けられた制度でございます。四十一年の九月、四十二年の三月、四十四年の十一月と、世界情勢の変化に対応しながら徐々に緩和措置がとられてまいったのでございますが、その後、世界の情勢は大きく変わりつつございます。また、東西の緊張緩和も急速に行なわれておるような状況にかんがみまして、この二月からパリにおいて会議が進行中でございます。日本は、日中貿易の拡大等のためにも、リスト・レビューにおきましては、意欲的な緩和案を提案をいたして、現に折衝中でございます。なお、去る一月のサンクレメンテにおける会談におきましても、日本側の考え方を述べましてアメリカ側の支援を求めました結果、原則的には了解を取りつけてあるのでございます。ココム・リストが相当大幅に緩和をされてまいりましたが、アメリカ側には全廃をしたいのだという提案をいたしました。全廃が直ちに実現するかどうかは別でございますが、日本の提案に対して原則的にこれを了承するということで理解を得ておるわけでございます。御質問がございましたとおり、私も世界各国に向かっては全廃案を提案したいと、全廃をしたいというくらいな積極的な気持ちで交渉に臨んでおるということで御理解を得たいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○副議長(森八三一君) 星野力君。
   〔星野力君登壇、拍手〕
#27
○星野力君 私は、日本共産党を代表して、ニクソン大統領が中国を訪問し、米中共同声明が発表されたそれらの情勢のもとで、政府がどのように国際情勢を認識し、外交方針を進めようとしておられるかについて、佐藤総理、福田外務大臣にお尋ねいたしたい。
 今回、ニクソン大統領の訪中によって、米中両国間に一定の緊張緩和がもたらされたことは、事実であります。しかし、米中両国関係のこの調整が、そのままアジアの緊張緩和につながるものではなく、また、今回の米中共同声明によってアメリカの帝国主義的なアジア政策の基本が変化するものでないことも、はっきり見なければならないと思います。現にアメリカは、ベトナムをはじめインドシナ全域で侵略戦争を続けているばかりか、特にニクソン訪中時期を目ざして、北ベトナム、南ベトナム、ラオスへの爆撃を一そう激化させている状況でございます。
 また、ニクソン大統領は、ことしの外交教書の中で、訪中の決意を固めた理由として、共産圏の結束がくずれ、その結果、一部の共産主義国では世界革命の必要への従属よりも、むしろ国益の追求により大きな重点が置かれるようになったからだなどと述べております。このことは、ニクソン大統領が、社会主義陣営の不団結につけ込み、中ソ対立を拡大させ、社会主義大国とは個々に関係の調整をはかりながら、手痛い失敗を重ねているインドシナ侵略の情勢を有利に打開することをねらうなど、小さな社会主義国や民族解放運動に対して各個撃破の政策を遂行しやすくしようとしている意図を、はっきりと示しております。
 米中会談とインドシナにおけるアメリカの爆撃行動の激化、この関係を総理はどのように考えておられるのか。このような実際の状況にもかかわらず、米中会談の結果は、アジアの緊張緩和を進めるものと考えられるのかどうか、まずこの点からお聞きいたします。
 第二に、サンクレメンテ会談についてお聞きいたしたい。
 ニクソン大統領は外交教書の中で、サンクレメンテ会談は、北京会談に臨む私の準備の肝要な一部分であった、と述べておりますが、ニクソン政府が大統領訪中の準備を進める中で、日本に対して軍備強化を強く要求し続けたことは、世界周知の事実であります。レアード・アメリカ国防長官は二月十五日の国防報告で、サンクレメンテ会談では、多くの時間がアジア地域の安全保障問題の検討に費やされたと述べるとともに、それと関連して、日本はすでに第四次防衛五カ年計画に着手したとはっきり書いております。そのことは、サンクレメンテで四次防が話し合われたことを明らかに物語っております。
 日本の平和とアジアの安全にかかわる重大な内容を含むサンクレメンテ会談の内容について、総理は、当然国会と国民に報告する義務があると思いますが、それは行なわれておりません。それは何ゆえか、隠さなければならない問題があるのか、私はその内容のすべてを報告されるよう強く要求するものであります。
 また、四次防は是が非でも四十七年度に発足させようと、そういう考えをやめて、白紙に返すべきと思うのでありますが、総理のお考えはいかがでございますか。
 第三に、日本の安全、アジアの平和に重大な関係のある核の問題についてお聞きいたします。
 政府は、さきの沖繩国会で、たびたび、施政権返還後の沖繩から核は一切なくすると確約し、また、本土には核兵器は絶対にないと言明してまいりました。ところが、先ほど黒柳議員も触れられましたが、昨日、来日中の元米空軍航空機関士が、過去に何回となくアメリカ本土から横田、三沢、その他の日本の基地に核爆弾B43などの核兵器を運んだという重大な事実を記者会見で発表しました。元米空軍曹長アル・ハーバード氏は、一九六〇年から六三年にかけて、ワシントン州タコマにあるマッコード米空軍基地に本拠を置く空軍空輸司令部所属第七輸送飛行隊に配属され、C124グローブマスター輸送機の航空機関士として、ホノルル、ウェーク、グアムを経て横田基地や三沢、ジョンソン、千歳、沖繩の嘉手納基地などに二千ポンド核爆弾B43などを運搬したというものであります。このようなはっきりした証人があらわれたとなりますと、現在も本土に核が持ち込まれておるのではないか、総理が幾ら本土に核はないと言っても信用できないではありませんか。政府がこういう事実を知っておって国民をだましてきたのか、あるいはアメリカが日本政府をだましてきたのか、そのいずれかであろうと思います。この問題は、事前協議があるからそんなことはあるはずがないなどで済む問題ではございません。政府は直ちにこの事実をしっかりと調査して国会に報告するよう要求します。しますか。
 第四の問題であります。総理も外務大臣も平和五原則を受け入れる、支持すると言明しておられる。それならば、これを口頭だけでなく事実で示す必要があります。
 そこでお聞きしますが、一九六九年の日米共同声明でうたわれ、サンクレメンテ会談で沖繩返還の前提条件として再確認されたはずの韓国・台湾条項を破棄なさるおつもりはないか。すでに総理自身も、台湾は中華人民共和国に属する領土と認められる発言をしておられるのであります。それならば、台湾の安全が日本の安全にとって緊要だとして日米安保条約によって台湾の防衛に責任を負うことは中国に対する重大な内政干渉であり、敵視政策であります。政府は平和五原則支持を表明しながら、日華条約にどこまでも執着するというのも中国に対するまっこうからの内政干渉であります。総理は、一体、日華条約を廃棄することなしに中国との国交正常化を進め得るものと考えておられるのかどうか、もう一度お聞きいたしたいのであります。
 私は、日本政府はアメリカに先立って台湾との条約を廃棄し、中国との国交回復への道をみずからの力で切り開くべきだと考えますが、その決断がおありかどうか、お答え願いたい。
 また、政府が平和五原則を受け入れる、支持するというのであれば、朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム民主共和国に対しても平和五原則の立場で国交の樹立を実現すべきと思いますが、それがやれないとするなら、その理由をはっきりとお示し願いたいのであります。
 以上をもって私の質問を終わります、(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(佐藤榮作君) 星野君にお答えをいたします。
 いわゆるニクソン・ドクトリン、これは、その眼目とするところは、アジアへの過剰介入はできる限りやめるということであります。しかし、既存のコミットメントはあくまで順守するということだと思っております。もちろん、米国はアジア諸国の自助の努力に期待いたしておりますが、このことは米国として当然のことと考えるものであります。そこで、ニクソン・ドクトリンによって、従来米軍が果たしてきた軍事的な役割りを、やがて日本が肩がわりするのではないかというような御懸念もあろうかと思いますが、さようなことは絶対にございません。この点は特にはっきりと申し上げておきます。サンクレメンテにおきましても、かような話は全然なかったということを御了承願いたいと思います。
 ところで、サンクレメンテにおける私とニクソン米大統領との会談につきましては、特にいままで発表したことはございませんけれども、すでに御承知のように、共同発表という形で記者会見におきましても明らかにしたとおりであります。すなわち、沖繩返還の日取りをきめたことと、日米関係全般並びに新しい国際情勢について忌憚のない意見の交換を行なったのであります。
 また、米国の国防白書との関連につきまして触れられましたが、白書発表直後、米国当局が明らかにし、各新聞にも報道されましたとおり、サンクレメンテ会談で、いろいろの軍事的な、あるいは国防力の問題等の話をしたと、さようなことは全然ない。いわゆる関係はないということは、はっきりいたしております。わが国の防衛は、ただいま、必要最小限の自衛力を整備する過程にあります。したがって、政府といたしましては、すみやかに防衛力整備計画を策定し、四次防を発足させたいと、かように考えております。
 次に、星野君から、元米軍の兵隊の証言といわれるものにつきましては、政府は全然承知しておりません。先ほど黒柳君のお尋ねに対しまして、外務大臣からお答えしたとおりであります。私は、日米間の友好信頼関係並びに事前協議制のもとで、日本に何ら話をしないで米国が一方的に核を持ち込む、かようなことはないと、かように私は確信をいたしております。もちろん、こういうことについては、確信だけではなく、私どもがさらに調査することは、これはもう当然の独立国家としてやるべきことだと、かように思いますので、御注意を待つまでもなく、十分調査してみたいと思います。
 また、日中国交正常化の方策等についていろいろのお尋ねがありました。私は、これまた政府の所見は、いままでの質問者に対して詳細にお答えをいたしましたので、これは省略さしていただきます。
 また、日華平和条約、これを破棄しろと、こういうお話でありますが、これもいままで触れたところのように、私は、この問題は、日本は日本としての主張すべき点がございますし、相手側にもこれに主張するものがあろうと思いますから、それらの点は、話し合いの上で妥当な解決が得られると思っております。
 また、北ベトナム、北朝鮮等についてのいろいろの御注文が出ておりますが、これらの点は今後の問題でございますから、これも外務大臣からお答えすることにいたしたいと思います。
 以上、お尋ねの点にお答えいたしました。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(福田赳夫君) サンクレメンテ会談の内容につきましては、ただいま総理からお答えをいたしたとおりであります。私もその席には連なりましたが、アメリカから防衛力増強を押しつけられるとか、また四次防というような名前さえ一回も出ておりませんから、その点をはっきり申し上げます。
 それから、さっき黒柳さんからの御質問がありましたが、元米軍曹長の談話の問題であります。これは重ねて申し上げますが、これはもう事前協議条項でありますが、その協議を受けたことはありませんです。また、アメリカ政府は、わが国に対しまして、きわめて明快に、わが国の核政策に協力をする、こういうふうに申しておりますので、さような新聞記事に出ておるようなことは、もうあり得ざることであるという確信を持っておりますのですが、念のため、なお私どもも調査してみる所存でございます。
 それから一九六九年共同声明におけるいわゆる台湾条項、つまり台湾はわが国の安全上重大な地域であるという、この表現の問題でありますが、確かに、その後、台湾情勢は非常な緩和の状態になってきておる、そういうふうに見ておるのでありますが、しかし、台湾がわが国の安全にとって重大であるということは依然として変わりはない、こういうふうに考えますので、当時の状況下において書かれましたあの共同声明、これは当時の状況下を踏んまえての文言になっておりますが、今日そういう客観情勢が変わってきたからという事情のもとに、共同声明を取り消しますとか、そんなようなことはできるはずのものでもありませんし、これを取り消すというような手続はとりません。(拍手)
#30
○副議長(森八三一君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト