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1947/08/09 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第7号
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1947/08/09 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第7号

#1
第001回国会 厚生委員会 第7号
  付託事件
○教育の恩給増額に関する請願(第六
 号)
○食肉統制價額撤廃に関する陳情(第
 二号)
○聖靈生命眞理療法保護法規の制定及
 び名誉恢復に関する陳情(第四号)
○兒童の福祉増進に関する法令制定の
 陳情(第七号)
○恩給法の改正に関する陳情(第十二
 号)
○都市官公廳職員の生活安定に関する
 陳情(第三十八号)
○戰死、戰災遺家族並びに傷病者の更
 生に関する陳情(第五十号)
○恩給法の改正に関する陳情(第六十
 四号)
○國民健康保險組合制度を改革するこ
 とに関する陳情(第六十六号)
○傳染病予防法等の一部を改正する法
 律案(内閣送付)
○保健所法を改正する法律案(内閣送
 付)
○國民健康保險金に対する國庫補助金
 の増額等に関する陳情(第九十八
 号)
○青少年禁酒法案(小杉イ子君発議)
○恩給増額に関する請願(第三十九
 号)
○大学等への死体交付に関する法律案
 (内閣提出)
○大正十二年勅令第五百二十八号司法
 警察官吏及び司法警察官吏の職務を
 行うべき者の指定等に関する勅令の
 一部を改正する法律案(内閣提出)
○災害救助法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月九日(土曜日)
   午前十時三十四分開議
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○大学等への死体交付に関する法律案
○大正十二年勅令第五百二十八号司法
 警察官吏及び司法警察官吏の職務を
 行うべき者の指定等に関する勅令の
 一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
   午前十時三十四分開会
#2
○委員長(塚本重藏君) これより委員会を開会いたします。本日は大臣は事故があつて出席が不可能のようでありまして、政府委員として東医務局長が出席され、それから大学等への死体を交付する方の案件につきましては係の医務課長さんが見えております。それから麻藥の取締に関しましては神谷薬務課長がそれぞれ出席されております。この両課長に発言を許すことに差支ございませんか。
#3
○委員長(塚本重藏君) では御異議ときものと認めます。
#4
○藤森眞治君 ちよつと速記を止めて下さい。
#5
○委員長(塚本重藏君) 速記を止めて
#6
○委員長(塚本重藏君) 速記を取つて。前囘金光政府次官から提案の説明は聽いたのでありまするが、尚両法案につきまして御説明を聽き、質疑を行いたいと思います。それでは大学等への死体交付に関する法律案と、それから大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案、この両案を提出するに至りました経過等につきまして説明を聽くことにいたします。久下医務課長。
#7
○説明員(久下勝次君) お許しを頂きまして、私から大学等への死体交付に関する法律案を提案いたしますまでの経偉を申し上げて、御参考に供したいと思います。
 お手許に資料を御配付申し上げておると存ずるのでございますが、この法律案は連合軍総司令部の指令に基きまして立案いたし提案いたす運びと相成つたものでございます。英文と日本文の訳文のものを或いはお手許に差上げてあると存ずるのでありまするが、その英文のもののすぐあとに訳文も附いております。昨年の十二月十一日に厚生省に対する覚書、監察医局の設置という主題で指令が出ておるのでございます。この指令が出ますまでの相当な経緯もございますりので、簡單に申し上げたいと存じます。実は昨年の春でございましたが、三月頃ごろでございましたが、食糧事情が相当逼迫をいたしまして、一時新聞紙上に上野の駅の地下道などに饑餓死が出てきたというような報道がせられたのであります。連合軍總司令部におきましてもこの問題を重視いたしまして、直接総司令部の方で饑餓死と称せられる者の死体を解剖いたしたようでございます。その結果そう報道せられました者が、饑餓の原因によらずに死亡しておるという事実も判明いたしたようでございます。これらのこういう問題が直接のきつかけと相成りまして、東京都の当局者が連合軍司令部の公衆衞生福祉部に呼ばれまして、日本に至急監察医の制度を設置しろ、東京都においては早急四月一日から実施する運びにしろというような嚴命が口答であつたのであります。それで取敢ず東京都におきましては準備を進めまして、四月一日から死因不明の死体、特に行旅死亡人、或いは中毒等による死亡と疑のあるもの変死人等につきまして、專門の監察医をおきまして、直接現場に参つて檢案をいたし、檢案だけで死因の判明いたしませんものは、東京大学及び慶厖大学の解剖室に持つて参りまして、そうして解剖をして死因をはつきりさせるという制度を事実上において出発させたのであります。尚これと前後いたしまして、厚生省の私共も司令部の方に呼ばれまして、これと同様の制度を他の重要都市にも実施するように、具体的にはいわゆる六大都市とそれから福岡市にこの制度を実施するようにとの話がございました。これも事実上仕事を始める運びといたしたのでございます。それと並行いたしまして、いろいろ法律の制度の問題、或いは予算の措置等をいたすようにとり進めておつたのでございますが、名古屋と福岡は事情によりまして若干実施が延びておりましたのでございます。さような経過を経まして、漸く十二月の十一日になりまして、只今申し上げました制度に対する公衆衞生福祉部からはつきりと指令がお手許に差上げたようなものが出たのでございます。これは本法律案と関聯のある事柄の御説明でございまするが、さような指令に基きまして、ポツダム宣言受諾に伴う緊急勅令に基きまして、お手許の指令の中にやはり付いておるのでございますが、本年十一月十一日に死因不明死体の死因調査に関する件という厚生省令を公布いたしまして、制度的にもこの仕事が始まつたのでございます。ところがこの指令を出しますために、総司令部でいろいろ審議をしておりましたようでございまするが、その途中で、我が國の医学教育のために是非とも必要な解剖用の死体が非常に少くて因つておる。更に又解剖をするということにつきましての法律上の積極的な根拠も薄弱であるというような事実がございまして、これが問題として取上げられ、こういう死因調査という制度を実施いたしますならば、死因調査済の死体で引取人のない者は、医学專門学校又は医科大学に引渡して解剖させて、そうして医学の教育或いは研究の捉進を図るようにしたらどうかというようなことから只今申し上げました指令の第四号に、ちよつと御覧を頂きたいと存じますが、「四十八時間以内引取人なく監察医の手許にある死体は医学上の知識又は医学の教授を捉進するために要求があれば公認の医学專門学校又は医科大学長に引渡して差支へない。」ということが指令の内容とし厚生省に示されたわけでございます。当時私共といたしましては、取敢ず、先程から申し上げましたように、死因調査のことにつきましては、すでに各都市において、事実上実施をいたしておりまする関係上、急速に厚生省令を公布いたしまして、その制度上の裏づけをいたしたのでございますが、只今申し上げました死体交付の問題につきましては、行旅病人、行旅死亡人取扱法との関係、或いは刑法、刑事訴訟法その他との関係等、いろいろ研究を要すべき点があると存じまして、連合軍総司令部の御了解のもとに、死因調査の問題と切り離して研究を進めて参りました次第でございます。関係方面とも、いろいろ各省とも相談をいたしまして、大体に案ができあがりましたので、実は本國会にこの法律案を提出するという、こういう運びに至りました次第でございます。法律案提案に至りますまでの、ごく概略の経過を御参考までに申上げました次第であります。
#8
○委員長(塚本重藏君) 今御説明になりました大学等へ死体交付に関する法律案について、質疑をお願いいたします。
#9
○小川友三君 四十八時間以内に引取人がないという場合のことですが、今は交通状態も非常に惡うございますし、又発表方法が、監察医のところえ、実際は親戚の者や引取人が、厄介になつておるということが分らなくておる場合があると思いますから、この法律を作られるにあたりましては、愼重を期して、四十八時間というのをこの二倍くらいに延ばして、引取人を探すというふうにしたいと思います。あとで引取人が現れまして、解剖に付したことを非常に落胆失望するというようなことがあると、國民に対して申訳ないですから、これを二倍くらいの時間に引き延ばして頂いて、愼重に期して頂きたいと、かように思いますが、当局の御意見を伺います。
#10
○説明員(久下勝次君) 小川委員から御質問の点でございまするが、先程指令の内容を読み上げましたように、連合軍総司令部の方の指令にも四十八時間という時間がございます。お話のような点につきましては、私共としても各方面から十分檢討をいたしてみたつもりでございます。その結果、やはり四十八時間が適当であろうという結論に到達いたしましたので、法律案にも四十八時間という時間を謳いました次第でございます。成る程お話のように、交通事情等を考えますときには、四十八時間という時間は短か過ぎるのではないかということも考えられるのでございますけれども、一方におきまして、お手許に御配付してあります資料でも御覧を頂けますように、今医学教育機関におきましては、どこにおきましても、非常に死体入手に困難を感じて、そのことは取りも直さず医学教育に非常な支障を來しておるという実情でございまして、成るべく早く死体を欲しいという希望が直接私共の方にも再三述べられておるのでございます。又事実現在行旅死亡人として取扱をいたしておりまする取扱の実際を申し上げますると、御承知のように、埋火葬は死後二十四時間経てば差支ないということに相成つておりまする関係上、監察医の手にかかりまして死因がはつきりいたしましたものは、大体その時間を経過いたしまするものが多うございます。直ぐに火葬場に運びまして、そして火葬に付して遺骨として埋葬をいたすのが実際の例でございます。從つて遺族が現れましてもこの遺骨を受取つて帰るという実例が多いようでございます。而もいわゆる引取のない行旅死亡人につきましては、実際問題として約半数ぐらいは三ケ月ぐらい経たなければ引取が現れて來ないようであります。長いものは一年半以上もかかつて漸く引取人が出て來るというものもあるそうでございますが、さような関係上四十八時間の時間を延ばすということを御趣旨のような点で考えるといたしますと相当長期に亙つていたさなければ意味をなさないようなふうにも考えられるのであります。これを四十八時間を七十二時間に延ばし或いは百時間に延ばすということでは、理論としては何ですが、実際問題としては五十歩百歩に考えるのであります。さような関係上一方におきまして教育上の便宜という点、一方におきまして実際の取扱等を考慮いたしまして、この法律案におきましては、後に申し上げまするように、必ず死体の一部は遺族なりその他の引取人が出た場合には、解剖したあとでも何でも必ず本人に引渡すような処置をいたしたいと思つておるのであります。そのことは先程御説明申し上げた実際の行旅死亡人の取扱い方の実際にも合致していると思うのでありまして、さような点から又大学の保存能力という点、いろいろな点を考慮いたしまして、四十八時間が一應適当ではないかと、かように考えました次第であります。
#11
○小川友三君 只今四十八時間案に対しまして政府委員からお話がございましたが、この四十八時間というのは、発表をラジオで発表するとか新聞で発表するという工合に懇切丁寧に全日本國民に分かるように発表して頂きますれば、四十八時間の中に電報を打つて、それは家の忰である、関係者であるという報告が來る。監察医が死んだのを放り放しで、今の隣組の掲示板に出すように軽く考えられておつては、実際問題として半年後に警察に捜査願をして、そうして死んでいるからこれぢやないかという程度にいたしますと、非常に新憲法によつて人の生命、名譽というものを重んじておるときに、あすこの家の息子は行旅死亡者として解剖されてしまつたということでは、誠に親としても子供に済まないし、又親族に済まないと思いますので、発表方法をここに入れて頂くようなことにして、ラジオで放送するとか、新聞に出すということにしますならば、或いは四十八時間でも差支ないのでありますが、その発表方法はどういうような方法を取つておられますか、政府の御意見を承りたいと思います。
#12
○政府委員(東龍太郎君) 只今の小川委員の御注意誠に御尤もだと存じます。私共もその点につきましては、法律と案文と、それから何と申しますか人情と申しますか、その板挾みでその中で非常に苦慮いたしておる次第でありまして、仮令一軒といえども、今のように折角現われた遺族が失望落胆するというふうなことがあることは決して望ましくないことと思います。只今はこの法律の中へ公示の廣告をしたらという意見がありましたが、これは行旅死亡人取扱規則というような関係がありまするので、この中へは実際は廣告の方法を入れるということは考えておりませんが、併しながら廣告の方法と、現在ありますようなラジオ、新聞等、最も速やかに、廣く行き渡る方法によつて廣告する。同時に法律の一應の規定でも、四十八時間となつておるが、死体を各大学に引渡す際に、特に何らかの事情で、この死体は引取人その他が現れる見込と申しますか、懸念のあるものだというものにつきましては、でき得る限り長く大学等において解剖に供しないで、保存して置いて、そうして十分なる時間を持たせるようにするというようなことを取扱方法として指示いたしたい。さようなことで方法に万全を期しまして、今のような御懸念の解消いたしますように十分の努力注意をいたす積りでございます。
#13
○安達良助君 私の質問は横道に入るようでございまするが、現在系統学校におきまして、死体の解剖の需要申込というものが全部集計いたしましてどのくらいな程度に上つておりましようか。その点を若しお示しできるようでしたら一つお願いいたしたいと思うのであります。
#14
○政府委員(東龍太郎君) 実は全國に亙りまして各医育機関に対しまして系統解剖用屍体の必要数と申しますか、それと実際に手に入れ得る数とについて調査をいたしております。その大部分は既に集つておりますので、お手許の資料の中にもあげておつたと思いますが、全部ではございませんで、只今集まりましたのはその程度でございます。その中に所要数と前年度の入手数と、而して今年度の所要数という二欄がございますので、これが大体需給の状況を示しておるのではないかと思われますが、但しこれは全國全部ではございません。まだ不備でございます。
#15
○小杉イ子君 死体を四十八時間以上置いて、腐るとか何とかに対して藥を用いておられましようが、若し何年も待たなければならないということがございましたならば、どういう方法で保存して置かれるのでありましようか。余り費用が掛ることは私も好みませんので、高い藥を使うということはどうかと思います。
#16
○政府委員(東龍太郎君) 死体の保存につきましては、今お話しの通り、費用さえ構いませんければ何年でも保存いたします。例へば東北帝大のごときところでは、二年、三年私学生の時分に保存したものを実習に使つたことを記憶しておるのであります。実際今日では保存の施設を持つておるところではやはり相当長期の保存に堪えます。というのは藥品は高價であり、入手難ではあるが、一体死体槽に入れました死体は相当の時間その侭保存いたされますので、可なり、何ケ月、或いは一年というふうな保存には十分堪えると思います。但しさような施設を持つておりません医育機関が相当数でございますそういうところでありますと、今のお話の通り、長くは保存できません。今申し上げました通り、相当長く保存する必要があると思われますので、死体を保存する場合にはそれを長く保存し得るような施設の完備した医育機関に死体を任すというようなことに、今のお話の点を処理したいと思います。
#17
○小杉イ子君 私はやはりおさかなの料理と一緒で、余り古くなるから腐るということは、研究上大変御損害である。そういう保存のための費用は國家的な大損害ではないかということで成るべく早く死体を解剖に使われることを希望いたします。
#18
○中山壽彦君 この法律案の第四條の所に「学校長は、特別の事情のない限り、」という文句が入つておりますが、これで分らんこともないと思いますが、却つて「特別の事情のない限り」ということを削除されました方が、四條の意思が間違いなく徹底するのではないかと、こういうふうに考えますので、これを削除なさいます御意思が政府御当局にありますかどうか。それをちよつとお尋ねしたいと思います。
#19
○政府委員(東龍太郎君) 第四條の「特別の事情のない限り」と申します「特別の事情」ということを、特にここに謳いました。その考えは、死体の或ものにつきましては、その死体の臓器又は一部分が、特に学術上有益な参考品になるとか或いは又貴重な研究の材料になるとかいうことがありますので、左樣なものがありました場合にはそのものが大学にまだありましても、引取人が來られましても、その部分だけは引取人にお渡ししないで、大学の方に学術参考品として残したいというふうなことが、特別の事情ということの主なることであります。
 又もう一つは仮りに傳染病の死体というふうなものを扱つた場合に、死体は或いは死体の部分は現存しておりますが、これを取引人に渡さない方が宜しいという判断がありましたような場合には、これはものがあつてもその危險のないような部分だけをお渡ししてつまりそこにそれだけあるから全部引渡せと仰せられましても、その部分は大学の方へというふうにして保存し得るようにという積りで入れたのでございますが併しこれを削除してはどうかというお話でありますが、成る程中山委員の仰せられます通りその死体の全部又は一部を、その引取者に引渡さなければならないということになつておりますので、只今のような場合には、その一部をということでこれを立案の趣旨の通り運営し得ると考えられますこの「特別の事情のない限り」と申します字句は、そういう意味におきましてこれがなくとも、この第四條の趣旨は徹底するという御意見に対しましては私共立案に当りました者といたしましては、別に異議は持つておりません。
#20
○小杉イ子君 普通民間から解剖を希望する数は、学術研究のための数はそう沢山はないのでございましようか、どんなものでございましようか。
#21
○政府委員(東龍太郎君) 只今のお話にございます民間からと申しますか、一般の方から特殊解剖、特に死体を解剖に付してくれというようなお話がありまして、遺族の方から申出られていたします解剖は、これはいわゆる病理解剖でございまして、割合新らしい時に解剖をいたしまして、病源なり病困なりを突止めるというふうなことに相成るわけであります。さような場合には必要なだけの解剖をいたしましたならば、あとは全部原形に復しまして、遺族がお持ち帰りになるというのが普通でございます。ここで学術、医学教育上の必要と申しますのは、その部分も勿論ございますが、それ以上にいわゆる系統解剖学、解剖学を学習いたします。学生がその実際の体の構造を死体について一々学習いたすための死体でございまして、從つてこれは全く新鮮でありませんでも、十分防腐が加えてあり、保存してありますれば、今の系統解剖の役には立つわけでございます。
#22
○小杉イ子君 私はこれは学術研究資料に当らんかも知れませんけれども、自分を思つておるのでございますが、私は六十四歳まで、栄養不良の時に七貫五百になつたことがございますけれども、その外に病氣という病氣をしたことはございません。咳も出たことございません。怪我以外に一遍も病氣したことございませんので、これを解剖に付さなければならんといつも申しておるのでございますが、これは何の役にも立たないものでございましようか。
#23
○政府委員(東龍太郎君) 只今のことは、私はこれは一医学者の立場といたしましては誠に感激に堪えない御言葉であります。決していかなる体でありましても、学術上役に立たないという体は絶対にございません。病氣のあるのを解剖することが、これが医学に貢献するというのではございませんで、いかなる身体といえども必ずそこにその個人の特質というものがあります。無病息災ということになつております方が案外開けて見ますというと、無病息災でなかつた場合もございます。又もう非常な自分は重病であると思つておられました方の体が、案外それほどでないということもございます。これはもういかなる身体といえども解剖に相成りますれば、それだけ医学の学問は進歩いたすものであります。事実現状におきましても、極めて数は少いのでありますが、死後今のように病理解剖のみならず、全身を学術のために大学その他へ寄附するというふうな遺言に基いて行われております解剖並びにその処置がございます。全身の骨格を大学等の標本室に立派に保存しておりますのでありまして、殊に私どもの恩師であります大澤岳太郎先生は、解剖学者でありましたが、その死後全身を大学の解剖学教室に御寄贈になりました。只今でも先生のそのままの骨格が保存せられております。かような例は極めて特殊中の特殊でありまして、稀な数でありますが、その学術上に貢献する点は至大でありますし、又それが刺戟となりまして、社会全般に対する解剖というもの、或は医学に対する貢献というものに対しての啓蒙は大きなものだと思います。
#24
○小杉イ子君 有難うございました。
#25
○草葉隆圓君 ちよつとお尋ねいたしますが、第二條の「監察医が檢察を開始した後」という、これはどういう意味でしようか、これだけの文句はない方が、間違いなしでいいんじやないかそれで、それは多分第一條によりますと、既に監察医が檢案又は解剖をした死体であつて、そうしてそれが許された死体を学校に交付する、交付してそれを受取つた学校が、更に「監察医が檢案を開始した後」とこういうことになるこの條文から申しますと……。それでこれはむしろない方がいい、受取つてから四十八時間以内と、こういう意味じやないですか。
#26
○説明員(久下勝次君) 私からお答えいたします。これは四十八時間という時間の起算点をどこに決めるかという問題で、特に書きました重要な文句だと考えておるのでございます。お話の通り受取りましてから四十八時間という決め方も可能だと考えております。それにも拘らず「監察医が檢案を開始した後」というふうにいたしましたのは、監察医の実際のやり方は、現場へ監察医が参りまして、死体の檢案をいたしまして、それで大体死因の明瞭になるものでございまするし、又死体によりましては檢案だけでは死因が判明をせずに、更にそこから解剖室へ運びまして、そうして解剖所でいわゆる病理解剖をいたしまして、そうして死因の明瞭になるものも相数あるのでございます。それらの間にいろいろ現場で済んだものとか、或いは解剖室に持つて來たものというようなことによつて、いろいろ時間的に差が出て参ります点が一つにございますのと、更にこのいわゆる行旅死亡人というようなものになりますと可なり死後時間を、もうすでに監察医が檢案を開始する時に、相当な時間を経過しておるものがございます。そういうようなものが更に又数時間或いは十数時間、解剖の済むまで時間が延ばされ、更に四十八時間ということになりますと、非常な長時間になりまして、実際問題として適当でない。それを解剖用の死体として使うのに適当でないというような場合も考えられるかと思つたのでございます。さような関係上、監察医が檢案を開始したい時と言いますのは、現場に到着いたしまして檢案を開始したこの時期は、その時には大抵東京で申しますれば区役所、その他の所におきましては市役所、町村役場の吏員がこれに立会うことになつております。時間的にこの時間を押えますることが割合にはつきりしておのでないか、こう思ひまして、起算点を檢案を開始した時というようにいたしたのであります。
#27
○草葉隆圓君 実際上はよく分りますが、條文としてむしろ監察医が檢案を開始してから、必要によつて解剖に処して、死因が分つて初めて学校へやるそうじやないと学校へやれないわけでしよう。だから学校へ行つた時にはすでに檢案をし、又必要の場合の解剖を済まして、その後でないと学校へ行けないというのが第一條の趣旨であります。そうすると学校へ行つてからどう取り扱うかということが問題になります。或いは監察医が学校に死体解剖を委託する場合もありましようけれども、これはまあ別として、そういう意味で私はお伺いするのであります。
#28
○説明員(久下勝次君) 重ねてのお尋でございますが、まだこの問題につきましては実際の取り扱いがどうなりますかということを御参考に申し上げましてから、更に質問の点にお答え申し上げたいと思います。
 実際にこの仕事を扱いまする実情は、現在の東京のやり方を御参考に申し上げると、どこでも同じでございますが、現場の警察官吏或いは警察署から行旅死亡の行倒れの死体がございますとか、或いは中毒死の疑のある死体がありますとか、溺死人轢死人等がございますると、警察官署から東京都廳の監察係に電話で、警察電話が特に引いてございまして、通知があるのでございます。この通知に基きまして晝夜そこに詰めておりますので、いつでも直ちに備え附けの自動車を用意いたしまして、東京大学、又は慶厖大学両方に監察医を委嘱いたしておりまするので、その專門の医師の所へ自動車を係員が乘つて差向けまして、そうして通知されました現場に駆けつけるのでございます。それから駆けつけまして檢案を、死亡原因を調査する。こういう段取になるのでございます。その時に監察医が死体を見まして、これは学校の系統解剖用の死体として適当であるという死体であり、而も引取人のないものにつきましては、予め学校当局からの申入れに應じまして、再び都廳を通じて学校の方へ通知をして、学校の方から引取りに來て貰うというような運びで、この仕事を運用するということになろうと考えておるのでございます。
 一方におきまして、学校におきまして系統解剖に付します死体、而も四十八時間保存しなければならない義務がございますので、そのときには学校は引取りましたが、直ちに通常の場合は血管の中にホルマリンその他の藥品を注射いたしまして、同時に藥液の中に漬けて置くというような処置を取らなければ、直ちに糜爛して参りますのでそういう処置が必要なのでございます。そういたしますると、実際問題といたしましては、多くの場合、系統解剖に適当な死体と申しますのは、監察医が現場で檢案をしただけで死因のはつきりしたもの、これが主な対象になると思うのでございます。腹部その他の部分を解剖室に持つて來て、そうして死因が判明したということになりますると、すでに血管が切れておりますと、防腐効力も十分にないというようなところから、一般用的には系統解剖用の死体として保存をすることは困難になるのでございます。尤も例外的には、死体が、專門学校等におきましては頭だけでもいいから欲しいとか、或はすぐに解剖に付し得る所では、多少開いておつてもいいというような場合もございますけれども、その際もこの法律によつて四十八時間は解剖の必要があつても手が着けられないという建前にいたしております関係上、実際問題として傷のない、檢案だけで死因の判明したものが主なる交付死体の対象になるものと考えておる次第でございます。さような関係上、檢案を開始した時という、この開始した時期を四十八時間の起算点にいたします点は、いろいろな点から申しまして合理的ではないか。かように考えまして、かようにいたしたいのてあります。
#29
○委員長(塚本重藏君) 外に御質疑はありますか。
#30
○中平常太郎君 私はちよつと遅れましたから、この分はすでに御質問があつて十分に御答弁があつたことかも存じませんが、第一條の二行目に「死因調査終了後も、なお引取者がないものについては」ということがありますが監察医が死因調査をするまでにその縁故者の申出の直ちにあり得るような機会は、私は割合に少いのじやないかと思うのでありますが、突発した出來事におきまして死体を檢案するようなことがありますときには、どこの何がしかということは殆ど分り得ないことが多いと思うのであります。ここに書いてある通りから考えますと、「死因調査終了後も、なお引取者がないものについては」とあるのでありますけれどもが、その捜査というものを、引取者を捜ねるというような期間が固より置いてありませんので、直ちに発見される場合もあるし、申込む場合もありましようけれどもが、なかなかそういうわけに行かないことが多いと思うのでありますから、この点は当事者におきましては引取者の捜査をするというような問題に対して、何らの予備的のことができていないように思うのでありますが、その点はどうなつておりますか知ら、お尋ねいたします。
#31
○説明員(久下勝次君) 御質問の点につきましては、先程小川委員からお尋ねがございまして、医務局長からお答を申し上げたのでありますが、私から若干敷衍をして申し上げたいと思います。この死体の法規につきましては、この法律と共に、後の方の第五條、第七條等にございます行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律が同時に併行して動いて行くものと考えておるのでございます。そこで行旅死亡人取扱法によりますると、死体がありまして引取者のないものはその死体のありました所在地の市区町村長が埋火葬をいたし、一方におきましてその本人の容貌或いは衣類その他の本人を識別し得るに足るような事項を掲示板に公告し、或いは官報、新聞紙に公告をする。そして死亡者に対しまする遺族その他の引取人を探す手段を講ずることに相成つておるのでございます。第五條に書いてあります「同法所定の手続を行ねなければならない。」とございますのは、主としてこの引取人を探しまする処置をこの行旅死亡人取扱法によつてやつて貰うという考えでございます。この法律には新聞紙、官報というようなことになつておりますけれども先程医務局からお答えを申し上げましたように、小川委員の御質問のように、ラジオ等も十分活用をいたしまして、そして急速に引取人の現れまするような処置を今後は採つて行きたいと、かように考えておる次第であります。
#32
○中平常太郎君 私も御質問申し上げたいと思いますが、行旅病人というふうに明らかに一般に概念的に入るような死体があつた場合は、誠にその通りの方法で以てやるに都合がよいのでありますが、併し死体はそういうわけにいかないので、いろいろなものがあると思いますが、行旅病人と認められないような者、つまり相当な服装をしたり、又その土地或いはその附近の者であつて、殊にこれは行旅病人とか、或いは行旅中の者でないこの附近の者だとか、或いは又近縣の者だとかいうような状態に一般民衆のごとく見られる者に対しては、早速行旅病人的の扱いができないはずでございますが、その場合どんどん引取者が出ないという場合には、どういう取扱になるのでありますか。その点をお伺いいたします。
#33
○説明員(久下勝次君) 御質問の点につきましては、行旅病人及行旅死亡人取扱法の規定によりますると、行旅中死亡して取引者のなの者を行旅死亡人と称しておりまして、お話のように常識的にはいわゆる行旅死亡人という者は、服装その他からこれに該当する者は限定されるような感じがいたすのでありますが、法律的に申しますと、要するにそこに轉がつておる死体でありまして、引取者がないというような者は、一應この法律によつて放つて置くわけには参りませんので、市町村長がこれを埋葬する一方において廣告をする、こういう処置を採られると思います。
#34
○中平常太郎君 同様でありますね。
#35
○説明員(久下勝次君) この場合におきましても、やはりこの行旅死亡人取扱法の規定と同様の取扱で対象を考えたいと思つております。ただ常識的に相当の身なりをしておるし、その他所持品等から考えましても、これは必ず取引者が出て來るものであるというふうに考えられる、死体は相当あると思います。さような者は引取者のない者というふうに断定をいたしまして、いきなり大学へ持つて行つて解剖してしまうというようなことは必ずしも穩当の処置ではないのであります。法律的には行旅死亡人になりましても、そういう処置を採ることは穩当でないと思いますから、十分その点につきましては運用上氣を付けて参りたいと思つております。
#36
○委員長(塚本重藏君) 他に御質問ありませんか。
#37
○中山壽彦君 この法律案につきまして私は別に異議はありませんが、これに関聯いたしましたところの私の希望を一つこの機会に御当局に述べて置きたいと思います。今日公立病院等において入院した患者で不幸にして死亡いたしました場合に、病院当局ではこれを解剖に付したいというような希望の起きまする場合が非常に多いらしいのでありますがなかなかその実行困難であるというようなことから、我々の所にも、なにかもう少したやすく解剖のでき得るような方法を考えて貰いたいというような希望が各方面から出ておるのであります。私共も適当な方法が今日まで見当つておりません。これは一つ御当局の方でもなにかいい方法をお考え下さらんことをこの機会に私の希望としてお願い申上げて置きます。
#38
○政府委員(東龍太郎君) 病理解剖が我が國におきましては非常に少いということは專門家が歎いておるところでありまして、医学の進歩は要するに、その國の病理解剖の数に比例するとすら言われておるのであります。この意味から申しまして、特に病理解剖の場合でありますが、その場合の解剖の数が殖えますような事柄は、これは誠に結構なことだと存ずるのであります。これにつきましては先ず第一がやはり教育と申しますが、考え方の根本でありまして、只今では解剖をするということが極めて例外であり、或いは特殊であるということになつておりますがこれが死んだ者は解剖して貰うのが当り前だというところまで参る必要があると存じます。殊に只今御審議願つております法案の中には死因不明の死体について云々という言葉があるのでありますが、そうして又行旅死亡人とかいうふうな極めて特殊な限定された人人に、而も死因不明の人々ばかりを取扱う法律になつておりますが、死因不明な者は必ずしもかような階級の死体ばかりではないのでありまして、一般の家庭におきましても、或いは又病院においてさえ死因が不明のままである場合が多々あると思うのであります。こういうふうな、つまり家庭でも或いは病院でも死因の不明の場合には、言葉は監察と言つては強くなり過ぎるかも知れませんが、いずれにしてもさような者の死因を突き留めるような解剖はこれは当然に行われて行くということを私共も考えておりまして、実はさような事柄が行われるような手段、方法がないものか、只今考えてもおりますことをこの際申し上げて置きます。
#39
○中平常太郎君 これも私遲れましたのでもう御説明があつたのかも知れませんが、第六條でありますが、「特に礼意を失わないことに注意しなければならない」とあるので、これは固より当然でございますが、この解剖後の処置につきましては、なにか御説明があつたのでありましようか。どういうふうなお取扱いになるのでありますか。段々重なつて、一ケ年になんぼかの死体を扱うということになりますと、そういうのはどこへどういうふうに埋葬するのか。それに対する慰靈の処置はどうなつておるか。まあ原簿には明らかになつておりましようが、なにかの方法でこれを慰靈するというような氣持を表示するような方法があるのかないのか。その点をちよつとお伺いいたします。
#40
○委員長(塚本重藏君) 私から先程一つ御質問申し上げたいと言いましたのもその点であります。
#41
○政府委員(東龍太郎君) 只今の御質問に対しましてその一例といたしまして、東京帝國大学の医学部で採つております方法を申し上げます。而もこれは一例でありますが、実は全國総ての医務機関においてこれと大同小異で殆ど同じ方法であると信じております。それは系統解剖に使用いたします死体は大体において相当細かく解剖をいたしていますので、その遺骸は全部これを集めまして、そうして今東京帝國大学の場合で申しますと、それを一括して火葬場に送ります。そうして荼毘に付しまして、それぞれの姓名を印されましたお墓を谷中の墓地に作つております。そうしてその解剖死体が一千体に相成りましたときに、その今の荼毘の付しました者全部一千体分を一緒に千人塚におさめます。すでに千人塚が三つできておると存じますがそういたしまして毎年一囘秋の頃と記憶いたしますが、年に一囘ずつその千人塚のあります谷中天王寺で慰靈のために供養をいたしております。そのときにその死体の関係者が分つております場合には、それらの方を囘向に御案内いたしまして、その慰靈祭に御出席願つております。この日は大学医学部におきまする大きな年中行事の一つでございまして、教授が交替で喪主役になりまして、そうして学生が全部午後の授業を休んで出席いたしまして、懇ろに供養をいたすことになつております。これは全國共通の習慣だと思います。
#42
○委員長(塚本重藏君) 外に御質問ありますか……、私からもう一つお尋ねいたしますが、この法律の執行に当つて予算は特別に要らないと考えておりますが、その点はいかがですか。
#43
○説明員(久下勝次君) この予算はこの法律の執行に当りましては、この法案の第七條に書いてございまするように、費用といたしましては、学校に運搬をし、ただその死体を受取りました学校が、只今医務局長から御説明申し上げましたように、これを荼毘に付し、埋葬するというような費用でございます。すべて学校の負担にいたしてございます。さような関係上、特別な費用は予算としては必要はないと思います。
#44
○委員長(塚本重藏君) 外に御質問あるますか。
#45
○小杉イ子君 最後に、その千人の靈を祭るために供養をなさるということは誠にありがたいと存じます。私共はただ自分の死体を解剖された場合にはその残つたものは、全部そのまま残らんように焼いて貰えるというようには思つておりませんでしたが、焼いて貰えるということでありますから、非常に皆のために感謝いたします。
#46
○草葉隆圓君 これと直接関係はしませんと思いますが、結果において幾分関係すると思いますからちよつとお尋ねいたします。実は空襲とか或いは水害等で多数死亡いたしました場合で不明な場合には、行旅死亡人として取扱う。で、いろいろ今まで困つた例があるようですが、これは別に何かの方法をお考えになる御意思がありますか。空襲は今後はあまりすまいが、災害等の場合です。それをお尋ねします。
#47
○政府委員(東龍太郎君) 只今の御質問は社會局の方の所管の事項に相成るそうでありまして、私の方から適切なお答えができませんことは、誠に残念でございます。
#48
○委員長(塚本重藏君) 本法案に對する御質問ありますか。
#49
○谷口弥三郎君 只今御説明を聴いておりますと、この法案が出まして施行される場所は、六大都市と福岡だけでありましようか。或いはそれとも全國的に早速行うことができるのでありましようか。そこをはつきりして置いて頂きたいと思います。
#50
○政府委員(東龍太郎君) この法律それ自身の適用範囲につきましては、地域的の差違はないわけでありますが、全國的なものでありますが、ただ現在監察医というものが置かれておりますのが六大都市と福岡ということになつておりますので、監察医が扱いません死体はかような目的に使われませんものですからして、実質上は只今のところこの六大都市及び福岡ということに相成るわけでございます。
#51
○委員長(塚本重藏君) 外に御質疑ありますか……。一應本案に対する質疑はこの程度で大体終了したものとして差支ありませんか。
#52
○委員長(塚本重藏君) それではさようにいたします。
 次に大正十二年勅令第五百二十八號司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案につきまして、神谷藥務課長から提案の理由に補足して、提案に至りまする経過その他をお聽きしたいと思います。内容も併せてお願いいたします。
#53
○説明員(神谷秀夫君) この法律案につきましては、前囘厚生次官から御説明がございましたが、私から掻い摘んで、どういう趣旨で、又どういう内容を持つたものであるかということをお話し申上げたいと存じます。
 麻藥につきましては、その消費の適正を期すると共に、不正な使用、適正ならざる使用を禁ずるために、終戰後いろいろ厚生省としまして研究しまして、昨年の六月十九日に麻藥取締規則を制定し、又この外大麻、ヘロイン等に関する規則がございます。この取締につきましては、犯罪の搜査は現在檢事、司法警察官によつて行われております。ところが麻藥に関する搜査は、特にこの麻藥についての高度の知識経驗が必要でございますので、取締の完璧を期する目的のために、從來の搜査機関でありますところの、只今申しました檢事、司法警察官とは別個に、麻藥に関しての取締の專門家でありまするところの都道府縣の麻藥統制主事の中で優秀な者を選びまして、麻藥に関する犯罪について司法警察官と同一な権限を持つた独立な搜査権を與えようというのが、この法律案の趣旨でございます。
 それで凡そ犯罪についての搜査権は刑事訴訟法の規定によりまして、檢事その他司法警察官が持つておりますが更にその外司法警察官吏の職務を行う者が勅令によつて指定されまして、指定せられた範囲の犯罪について司法警察権が持てるようになつております。即ち刑事訴訟法の規定によつて勅令に委任されておるわけでございます。この委任に基きまして、例えば皆樣方御承知の、鉄道の車内の警乗警察官といつたようなもの、或いは船長というようなものが司法警察権を持てるというように、この勅令で規定せられておるのでございます。只今の目的のために麻藥統制主事の中から優秀な者を選んで、これに司法警察権を持たせるために、只今の勅令をこの今提出しました法律案によりまして改正しようというのが目的でございます。
 そこで、只今勅令は政令の効力を持つておるのでございまして、政令でもこの勅令を改正することができるのでございますが、國民の権利に密接な関係を持つております新らしい搜査機関を設けることになるのでありますからして、事の重要性に鑑みまして、特に法律で以てこの勅令を改正しようというのでございます。それでこの案で御覧頂きますように、大体要点は三つになつております。麻藥統制主事の中で先ず都道府縣の知事と、それからその所主地を管轄しております檢事正とが協議しまして、そうして厚生大臣のところへ推薦して参ります。そうして厚生大臣が指名した者が麻藥に関する犯罪についての搜査を行うことができるのであります。それから第二は、この司法警察権を持ちましたところの麻藥統制主事は搜査については檢事正の指揮監督を受けずに、厚生大臣の指揮を受けて搜査に從事する、これがこの法案の第二の要点でございます。それから第三番目は、一度或る都道府縣において麻藥統制主事で厚生大臣から指名を受けました者は、都道府縣の区域以外においても搜査に從事できる、即ちこの仕事が國家的性質を持つておりますので、一度指名を受けましたならば内地全般に亙つて警察権を行使し得るこういうことに相成るのでございます。ただ只今申しますように、非常に廣汎な權限を持つことになりますのでやたらにその人数を沢山作るということは問題でございますが、最後に御覧になりますように、全國を通じて二百人以内という制限を設けられておるわけでございます。大体只今御説明申しましたのがこの法案の骨子でございます。
#54
○委員長(塚本重藏君) 以上の説明に対しまして御質問がありますれば……
#55
○井上なつゑ君 第七條でございますが、第七條の一番初に、麻藥に関する罪について搜査を行うと書いてございますが、どういう罪がございますのでしようか。麻藥は統制をして頂いて、麻藥の管理をして頂きまして、病院あたりでは非常に、どういうようにこれを監督して行つたらいいか困つておるようなところもございまして、実は病院で患者に使いますモルヒネとかコカインとか、その日の中に使わなくちやならんものがその翌日になつて使われる、麻藥の統制上その日の中には使われないで困つたというようなことがありまして、病院で主任をしております看護婦長が非常に困つて、麻藥を少しくらい手許におかして頂いたらいいのじやないかというような、細かしい実例がございますので、どういう点にこの罪について注意いたしたらよろしいのでございますか、そのことについて伺いたいと思います。
#56
○説明員(神谷秀夫君) 只今の井上委員からの御質問にお答えいたします。麻藥に関する罪というのは、法律的に申しますれば、麻藥を客体とするあらゆる犯罪について、ということになるわけでございます。先程申しました麻藥についての大体纏まつた法律は、麻藥取締規則、それから大麻取締規則、その他ヘロインについての取締規則或いは刑法の財産犯、こういうものについてが問題になるわけでございますが只今の御質問は、麻藥を使用する者がまだ新らしい規則に……先程申しましたように、新らしい規則が昨年の六月十九日に施行せられましてまだ一年そこそこでありまして、使用者が規則の目的としております内容を十分に知らないために、いろいろなお話のような手違いやら、或いは又そうまでしなくてもいいものが、曲つて解釋せられて非常に使用する者に不便を感じさしたり、いろいろな手違いを生じておるのでございましてその点については、これは取締と別個にむしろ麻藥を適正に消費する面においての指導が必要でございまして、この規則の施行後、私どもといたしましても、あくまでも不正な者は断平として排除して行くという方針で進んでおりますことは勿論でございまするが、消費者が正しい使い方をするという面において、いささかも不便があつてはならない、又規則の目的としておる所を熟知しないために、使い方に不便を感じておるということがあつてはならないというので、各都道府縣の麻藥についての仕事に、平素指導取締に当つております者に、只今私が申しました両方の面において遺憾のないように指導いたしておるのでございます。併しながら何分にも只今申しますように、日尚浅いのでございます。私も十分とは申し得ないと思いますが、かかることのないように十分に指導督励をいたして参りたい所存でおります。
#57
○三木治朗君 今度の法律で以て主事が警察権を行使することになるわけですが、これは同時に地方の警察権を動かすこともやはりできるのでありましようか。地方の警察の協力を得なければ無論できないことだろうと思いますが、同時に主に密輸出や何かのような場合に、船長がやはり司法権を或る程度持つことになるようなんでありますが、全部の船の船長がそうなつておるわけでもないと思いますが、仮りに船長がそうなつておつても、疑ある船にはどんどん入つて行つて捜索なり差押えなりする権利もこの主事が持つことになるのですか、ちよつとお伺いいたします。
#58
○説明員(神谷秀夫君) 只今の御質問御尤もでございまして、これは麻藥統制主事に警察権を與えたからと申しまして、只今申しました麻藥に関する罪についてこれだけで取締りが完璧かというと決してさようなことはございません。あらゆる他の警察権を持つておりますものと、独立ではありますが、相互協力の形に立つわけでございます。尚これはその点までははつきりお触れになりませんでしたが、或いはそういう御懸念がおありの御質問ではないかと思つたのでございますが、お互いに捜査上の角突き合いをするとか、そういうようなことが起りはしないかというような御氣持ではないかと私付度いたしたのでございますが、その点につきましては我々どもも現在といえども、又今後も、司法省、或いは檢察廳当局と十分に連絡を取りまして、相互に協力こそすれ、さようなことの起きませんようにやつて参りたいと思つております。
 それから尚これは先程御説明申しませんでしたが、私の方で大体この必要性を感じまして立案いたしますと共に問題が司法省に非常に関連がございます。尤も只今までも司法省と、事件のありましたような時には殆ど一緒になつてやつておりますが、司法省と私共更に法制局、この三者で協議を遂げた結果、連合軍総司令部の公衆衛生福祉部、それから政治部、この了解を得ましてここに提案に至つた次第でございます。
#59
○小杉イ子君 ちよつとお伺いいたしますが、ここに出ておりませんのを伺うことはいけませんけれども、アルコールというものは麻痺剤の中に入らないのでありますか。藥の中には毒藥としてございますが、米國の学者はコカインを禁じてアルコールを禁じないことは一大矛盾であると叫んでおりますが、それは入つていないのでしようか。アルコールは幼兒では五勺ばかりで死にますし、兒童では一合ばかりで死んだ例がある程強い藥ですが、これは入つていないのですか。それから取締につきましてもう一つ伺いますがこれは横浜で聞いた話でございます。夜中になると或る婦人が外へ出て行くどこへ行くかと思つて捜して見ましたら、阿片を吸いに行くということを聞きましたが、これらはどういうふうにして取締つていらつしやいますか。
#60
○説明員(神谷秀夫君) 只今の小杉委員の御質問にお答えいたします。アルコールは成る程習慣になるのでございますが、ここで麻藥と申しておりますのは、これは形式的に申しますと麻藥取締規則の第二條に凡そ麻藥というものの範囲を規定いたしております。阿片及びコカ葉、それから阿片又はコカ葉から抽出する一切のアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩類、それから只今私の申したような何か麻藥を檢出するものがありまして、その中からそれが檢出できるというもの、それからこの外に印度大麻草というのがございます。学名で申しますと、カンナビス、サテイヴア、エル及びこれから作られる樹脂その他の一切の製剤、これが凡そ麻藥ということになるのでございまして、アルコールは麻藥に入りません。
 それから第二の問題でありますが、これは麻藥取締上一つの大きな要点でございます。麻藥についての適正な消費をやつて参ります上に妨げとなるのが、今の麻藥中毒患者でございます。これが大体最近の例で申しますと、約一ケ年間ぐらいの統計を見てみますと大小取り混ぜて三百五、六十件ぐらいの違反件数がございます。これは麻藥中毒患者が麻藥欲しさに、この麻藥の取扱を非常に巖重に今いたしておりますから、麻藥は闇で手に入りませんので、それでお医樣様のところの藥局を数軒或いは十数軒脅かして、片つぱしから盗み去つて行くというような事件がございます。それで私共の方でも、麻薬中毒患者を全國的に調べまして台帳を作つております。それで只今ここに出ております麻薬統制主事は、この麻薬中毒患者の動靜をいつも見ております。これが意思の鞏固な者で麻藥への誘惑から断ち切つてしまわれるという者は結構でありますけれども、ともすれば又誘惑に陥つて間違いを起すという虞れがございますので、大体全國的に台帳を作つて、その動靜をいつも明らかにする。そうしてそういう間違いのないように、又一面においては、正当な使用者である病院や診療所に厄介がかからんようにということを期してやつております。
#61
○藤森眞治君 ちよつとお尋ね申し上げますが、この麻藥の取締を麻藥統制主事、これで罪を捜査しようというのと、又一方、司法警察の方との関係でございますね、これはどうなるのか、二本建になるのか、或いは一本建で参りますのでしようか。それから「麻薬統制主事捜査ヲ行ヒタルトキハ司法大臣ノ定ムル所ニ依リ速ニ事件ヲ檢察官ニ送致スヘシ」とありますが、この檢察官というのは何を意味しますか。一方、檢察官の指揮を受けずに厚生大臣の指揮を受ける、こういうことになつておりまして、厚生大臣の指揮の下に自由に犯罪の捜査をすることができるそうして置いてこれは又直ぐに、檢察官の方へ送致し檢察官の指揮を受けるこういう恰好になるのでございますが、その辺ちよつと分りにくいのですが、どうぞお願いいたします。
#62
○説明員(神谷秀夫君) 只今の御質問にお答えいたします。お説のように、從來の司法警察官による取締と別個に統制主事による取締の網ができるわけでございまして、それでこれが先程こちらからも御質問がございましたが、つまりこれを與えるために、司法警察官の麻藥に対する捜査権がなくなつたというのでございません。從來通りでございません。その上にこういう網ができるのであります。そこで先程も御説明申しましたように、相互協力してやらせる、現在でも司法警察部内に、大体大きなところでは、專門に麻藥の取締に当る警察官を私の方で指導いたしております。それから又今後も新らしく麻藥統制主事が司法警察権を持つて参るということになりますと、捜査でありますとか或いは逮捕、訊問といつたようなことについて、これが又適正に行われなければなりませんので、十分この点については司法省と協力したしまして、これらの教育を十分にいたして参りたいというように考えております。それから成る程この麻藥統制主事は捜査権を持ちますが、いよいよ事件として扱う場合には、公訴権け持つておりません。そのために、檢察官が公訴権を持つているわけでございますから、その意味において檢察官と緊がるわけでございます。ですから事件をこういう形において送致してくれ、そうでないと、我々は扱いにくいといつたような面においての指導は受けることになりますが、捜査上、こういう方面はこういう工合にして捜査しろといつたような指揮は受けないのでございます。それはむしろ厚生大臣の方がそういう意味においての專門的な知識を持つておりますので、そういう意味における指揮は厚生大臣が行う、こういうことになるわけでございます。
#63
○藤森眞治君 もう一点お伺いしたいのは、麻藥統制主事というものは、これは犯罪捜査ということにその目的があるのでございまして、麻藥の使用についての指導監督、この方面には関係しないというわけなんでございましようか。犯罪捜査というだけなんでございましようか。
#64
○説明員(神谷秀夫君) これは大体只今断えず異動がございますので、正確にはちよつと申し上げかねますが、大体三百五、六十名の者が全國的に專任者として麻藥の指導、それから取締のために動いております。それでこれがまあ只今の御質問の要点でございますが、一体どつちになるかというお話でございますが、これは非常に平素の指導と取締とは楯の両面と申しますか非常に密接な関係を持つておりまして取締の権限を持つと共に、平素から間違いのないように指導するというのが飽くまでも目的でございます。併し一朝間違いが起つた場合には、それを是正するという方に廻つて行くのでございまして、この他に尚兼務で麻藥の指導監督に当つておる者がございます。それで麻藥統制主事で今後指命を受けた者と、指命を受けない者が出て來るわけでございますが、これがお互いに協力し合いまして、平時の指導は勿論やります。それから一朝間違いが起つた場合には取締をする。こういう両方の活動分野を持つて、活動して行くことになるわけでございます。
#65
○小川友三君 この第七條問題につきまして、厚生省の神谷さんから懇切丁寧な御説明がありましたが、神谷さんは我々藥剤師と同じ系統の人で、非常にこの方面の権威者でありまして、御説明は逐一御尤もと存ずるのであります。ちよつとお伺い申し上げたいのは麻藥の使用量は現在非常に減つておる筈でありますが、いわゆる阿片から取つた誘導体及び塩類、そうしたものの数量は、昭和二十一年度、二十二年度はどのくらいであるか、ということを教えて頂きたい。それからコカインから取つたアルカロイドの数量、印度大麻から取つた麻藥の数量を教えて頂きたい。それからこれを製造しておる製藥所の数、麻藥を作る製藥所の生産能力、許されたる範囲内で生産能力を教えて頂きたいのであります。それから麻藥統制主事の方が政府の御方針では二百名以内ということですと、一名も二百名以内ですから、非常に数が少いのでありまして、五大都市だけでも二百名くらいは居なくては完全を期することができないと思います。國家が赤字だから遠慮して、二百名以内なんという非常に小さい案を示されましたことを、どうか訂正頂きまして、要る人ははつきり書いて貰いまして、神谷さんのお話では兼務省もその他におつて、指命者、非指命者というふうな二つの部下がおるように洩れ承つておりますが、これもこの法案の中にどんどん遠慮なく持迄んで貰いまして、完全な文化國家というものを作るために、政府当局は御盡力願いたいのであります。予算は幾らでも出しますから(笑声)遠慮しないで、二百名以内という数では、病院と医者の数だけでも何万という時ですし、製藥工場でも麻藥を密造するというようなことになりますから完全を期するために遠慮のない程度の予算を請求して頂きまして、やつて見たいと思つております。この麻藥主事の働く範囲は、製藥業者、医院、病院一般者という非常に廣い範囲でございますので、この点につきまして果して二百名以内で十分であるか、二百名で十分できなかつたということで、後で悲鳴を挙げられると困りますから、きちつと自信のあるところの政府御当局の御説明を願いたいのであります。
#66
○説明員(神谷秀夫君) 只今の御質問御意見に対してお答え申し上げます。麻藥の需給状況を掴むということは、これは我々の仕事の窮極の、最後の、もうなんと申しますか、重要な点であつて、突きつめて参りまして、ここを押えたいというのでございまして、実はここにもお手許に配付してございまするが、各月どのくらいの麻藥が使われたかという消費状況の調べも出してございます。併しながらこれが直ちに麻藥に関する需要を示すものであるというわけに参りませんのであります。相当にまだ手持はございます。或いは又或病院等では非常に手持がかすれており、いろいろできるだけ使用者の手持を平均的に均らして参る。こういう積りで今までやつて参つておりますがまだなんと申しましても、新らしい規則を施行しました後、手持の多い少いがあるのでございます。そのために使用状況が的確に出て参りません。そこでどれだけ年間需要があるかということを推測することは、今後この生産計画を立てます上に、又必要とあれば輸入計画を立てます上に、非常に我々としても掴まなければならない大事な点でございます。併し今申しますように何分にも、大体平均的に、そこに御覧になりますように出ておりますが、まだまだ的確なことを申し上げることはできないのでございまして、大体この消費量として各月、月別に出しておる表によつて御推察願いたいと存ずるのでございます。それから生産はと申しますと、生産の方は終戰後「けし」の栽培、勿論コカ葉の栽培、それから一切の製造を連合軍総司令官から禁止せられておつたのでございます。そこで消費者は一体なにを使つておつたかと申しますと、それぞれの配給業者の手許にありました麻藥、及び病院、診療所、取扱者の手許にありました麻藥、これを使つて今まで凌いで來ておるのでございます。ところがその後連合軍が旧陸海軍が持つておりました麻藥を全部押えまして、そうしてこれを一括して日本政府に返還して参つたのでございます。丁度昨年の今時分でございましたと思いますが、横浜及び神戸におきまして相当量の麻藥を、これもここに資料が出てございますが、資料の中で、軍麻藥と書いてあるのは、そのことを意味しております。それを日本に全部返して参りました。その他地方的の小さいものを押えましたものは、全國八ケ所に倉庫を設けまして、そこへ搬入いたさせまして、大体使用者の手許における麻藥が少くなつて來ましたので、この麻藥を連合軍総司令官の承認を得まして、必要な量だけこれを一般に廻しております。まだ多少ものによりましては、相当量手持があるのでございます。又ものによつては非常にすでに品がすれしておるものもございます。ところが、生産は只今まで一切許されておりません。マニュファクチャーということは許されておらないのであります。ところが先月の上旬にいたりまして、これも連合軍総司令官から、日本における大体麻藥の取締も理想的に行つたので、いよいよ生産しても宜しいという許可が参りました。それで実は先程申しました昨年連合軍から麻藥の返還を受けましたときにクルード・オピヤム等は返還がなかつたのでございます、これは未だに連合軍が持つておつたのでございますが、いよいよ生産が許されるということに相成りますると、必要なクルード・オピヤムを恐らく近い將來において政府に引渡しをされるのではないかというように考えております。大体その見込で以て生産ができますように、私の方としましても今その手順を進めつつあるのでございます。それから最後に統制官の人数がばかに少なくて、これで完璧を期し得るかという、非常に御同情のある御意見でございましたけれども、私共といたしましては、この國費の多端な折柄、できるだけ少い人数で、限られた費用で、而も万全の効果を挙げて行くというように考えて参りたいと思いまして、まあ一應只今のところで二百名以内でなんとかやつて行くという積りでおるのでございます。
#67
○小杉イ子君 ちよつとお伺いいたします。浮浪人のような者が、よく路傍で阿片のようなものを注射しておるのを見ます。これを指導者が指導所に收客なさいましたときに、それを今までした通りの量を注射することは、これは政府の負担でございましようか。私は政府になんでも負担させまい、させまい。小川さんと反対で、税金にかかつてきて國民が困ると思いますので、とても小川さんのようなことは言えませんので、なんでも節約するようなことを考えますが、こういう負担も亦大したものと考えるがどんなものでございましようか、
#68
○説明員(神谷秀夫君) 只今小杉委員からの御質問でございますが、これは從前の麻藥の行政と只今新らしい制度によります麻藥行政との大きな変つた点でございまして、從前はお医者さんの所へ中毒患者が駈け込んで行くと、苦しがつておるところのこの中毒症状を緩和してやるために、麻藥を注射してやるということが認められておつたのでございますけれども、新らしい規則におきましては、およそ中毒症状の緩和の目的を以ては麻藥を與えてはならんということになつております。大体こういう者は留置場等へまあ連れて行とくいう以外に方法はないのでございます。
#69
○三木治朗君 これは統計を見てちよつとお伺いするのですけれども、この中毒者の数の調査によると、東京あたりが今年の一月に十二であつたものが六月では百五十四という工合に、えらい殖え方をしておりますし、全体の、全國の統計の数字から見ても、去年の六月に千五百のものが、今年の六月には三千百八十九と、こういう工合に非常に数が殖えておるんですが、これはいわゆる潜在しておつたところの中毒患者が現れて來たのか、或いは又やはりどんどんと國民が阿片を吸うような傾向に行つておるのかどうか。これは非常に重要な問題なので一つお聽きしたいのです。
#70
○説明員(神谷秀夫君) これはまあいろいろな見方がございますと思いますが、私もまだ浅い経驗ではございますが、專門家等のお話によりまして、むしろ只今のあとのお話の、潜在的な者が、私の方で先程小杉さんも仰しやいましたように、この中毒患者の調べを徹底的にやつておりますので、それが又だんだんやはり潜在的な者が表面に出てきたというのでございまして、決して麻藥患者がどうも殖えて來たというようには、どこからもそういう報告は受けておりません。又そういう懸念はないかのように思います。
#71
○委員長(塚本重藏君) 一つ私からお尋ねしますが、この法律を改正することによつて、麻藥統制主事に犯罪捜査の権を與えることになりましたが、そのことのために特別な経費を要しますが、要するとすればどれだけくらいの経費が必要か、御説明を願いたい。
#72
○説明員(神谷秀夫君) 只今の御質問でございますが、すでに麻藥の取締につきましては、これも参考資料の中に出してございますが、各府縣における麻藥取締官の数が出ております。でこれは予算定員調というものがございまして、全國で三百五十二名、それから大麻の取締が二十名、即ち三百七十二名の者が予算上おるわけでございまして、これは予算定員というものはどういうことかと申しますと、これを置きます必要な経費について、國家が都道府縣に対して現在では二分の一の補助をいたしております。これ以外の経費は一切ないのでありまして、これはすでに前年度からこの補助をいたしておりますので、只今法律を施行することによつて直ちに費用がどれだけ要るという問題は、只今のところではないかのように考えております。
#73
○委員長(塚本重藏君) 他に尚御質疑が相当あるようでありますから、次囘に讓りまして、本日はこれを以て散会したいと思いますが……。
#74
○草葉隆圓君 ちよつとその前にお願いしたいのです。丁度医務局長お見えになつておりますから。昨日療養所を視察いたしまして、そうして所長にこの間からの有料、無料のことを伺いましたところが、まだ医務局長の御意思が、所長には十分傳わつていないように了承して参りましたから、できまするならば先般の御答弁の趣旨を、國内全部の所長に一つ御通達を願うと大変結構だと思います。それからもう一つ今日お見えになつておりませんが、委員長からでも一つ社会局長にでもお尋ね願いたいが、それは一昨日のラジオ放送で、和歌山縣の民生委員のシメノブオという人が発表いたしておりましたのによりますと、最近生活保護法による保護金が五月以降は來ておらない。從つて随分困つておる。こういうことがラジオで発表になつておりましたが、一体どういう状態になつておるか。誠に緊要なことと存じますから、お願いを申し上げます。
#75
○小杉イ子君 昨日病院へ参りまして一言……。私は肺結核には酒と煙草が大変惡いということを思いまして、惡いかと申し上げましたら、惡いそうでありまして、或る方法で止めてあるそうであります。それから今度幾らかを負担しなければならんというので、大変病院では患者が困つている。それについて近所の人で、社会党の議員じやないけれども、或る方が何か発明してそれを以てどうかして行きたいということで、私はいつも申すことですけれども、私は四十年來養豚を大いにやらなければならんといつて、それでしたら病人でもやればできる。私でも草を除つて、四反や五反やつて、賃金を取つて働いて、そうして病氣を治したから、あれくらいならば必ずできると思う。養鷄よりも馬を養うよりも、牛を養うよりも樂な仕事ですから、それで豚舎を一つ見まして、これではいけない。もう少し豚舎を変えなければならん。そうして肥料が又大変良いから、この肥料もいろいろ利用して、野菜物もできると申しましたが、今少し養つておるが、肥料だけでも一万円から上るそうです。そういう收入があつて、野菜物ができるし、自分たちも食べられるし、又收入にもなるというので、大いにそれを奬励して参つたわけであります。そうしてそれを療養費の負担に当てる。又收入として就職も大変困難になりましたので、そういう方法を採つたらどうか。それを非常に奬励して参りましたから、それを一つ。
#76
○委員長(塚本重藏君) では本日はこれを以て散会いたしまして、次囘は十八日の午後一時に開きたいと思います。これを以て散会いたします。
   午後零時十九分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           今泉 政喜君
           谷口弥三郎君
           宮城タマヨ君
   委員
           内村 清次君
           中平常太郎君
           三木 治朗君
           草葉 隆圓君
           中山 壽彦君
           安達 良助君
           藤森 眞治君
           井上なつゑ君
           小川 友三君
           小杉 イ子君
           波田野林一君
           姫井 伊介君
           穗積眞六郎君
           米倉 龍也君
  政府委員
   厚生政務次官  金光 義郎君
   厚 生 技 官
   (医務局長)  東 龍太郎君
  説明員
   厚 生 技 官
   (医務課長)  久下 勝次君
   厚 生 技 官
   (藥務課長)兼
   (麻藥課長)  神谷 秀夫君
ソース: 国立国会図書館
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