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1971/05/19 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第18号
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1971/05/19 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第18号

#1
第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第18号
昭和四十七年五月十九日(金曜日)
    午前十時四十七分開議
 出席委員
   委員長 田中 武夫君
   理事 始関 伊平君 理事 八田 貞義君
   理事 林  義郎君 理事 藤波 孝生君
   理事 山本 幸雄君 理事 島本 虎三君
   理事 岡本 富夫君
      久保田円次君    浜田 幸一君
      村田敬次郎君    阿部未喜男君
      土井たか子君    細谷 治嘉君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 大石 武一君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      角田礼次郎君
        環境庁長官官房
        長       城戸 謙次君
        環境庁企画調整
        局長      船後 正道君
        環境庁大気保全
        局長      山形 操六君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      古館 清吾君
        厚生省薬務局薬
        事課長     山高 章夫君
        海上保安庁警備
        救難監     貞廣  豊君
        衆議院法制局第
        一部長     川口 頼好君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十九日
 辞任         補欠選任
  加藤 清二君     細谷 治嘉君
同日
 辞任         補欠選任
  細谷 治嘉君     加藤 清二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改
 正する法律案(内閣提出第九七号)
 公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関
 する法律案(島本虎三君外七名提出、衆法第一
 四号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案並びに島本虎三君外七名提出、公害に係る事業者の無過失賠償責任等に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
#3
○細谷委員 内閣法制局、いらっしゃっていますか。――内閣法制局に、せんだっての私の質問の中で、政府提案の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案の中で、「第二十五条を削り、第二十四条の次に次の一章を加える。」、そして、今度は水質汚濁のほうでは、「「第四章削除」を「第四章損害賠償(第十九条−第二十条の五)」に改める。」、こういう法案が出されております。私はこれは間違いだとは申しておらないのでありますけれども、この大気汚染防止法の第二十五条というのは、すでに昭和四十五年の法律第百三十四号で削除されておるわけです。削除というのが一つの条文と解釈されておるようでございますけれども、すでに削除されて、ない条文でありますから、今回はたまたまこの無過失の関係の条文を入れるために、第二十五条が削除というのを、今度は削除じゃなくて削って、第二十五条から第二十五条の六まで入ったわけです。水質汚濁も同様であります。水質汚濁のほうは章が入ったわけです。第四章が削除というのが、第四章は損害賠償、こういうことで入ったわけです。こういう法律のやり方は間違いでないけれども、どうも官僚のための法律であって、国民のための親切な法律案のつくり方ではないのではないか。したがって、五百条とか六百条ということでありますと、その条文が一条ずれますとたいへんなことになりますけれども、このような法律ではそう条文は多いわけじゃないのでありますから、きちんと削除というのは条文だという形で今度はたまたまそこへうまく入った。しかし、入ったというより押し込んだわけですけれども、こういうやり方を改める必要があるのではないか、これが一点であります。
 もう一つは、同じ国会に二つの法律案が出てきた、たとえば具体的にいいますと、公有地の拡大推進法という法案が出ている、一方では新都市基盤整備法という法案が出ている。それが違った委員会で審議されておる。ところが、一方は成立しても、一方がもう少しで成立しますと、審議した直後に自動的に法律は改正されておるというような法律案のつくり方というのは問題があるのじゃないか、こう私は思うのであります。
 以上二点について、今後法制局としては検討をする意思があるかないか、これをお尋ねしたい、こういうことです。
#4
○角田政府委員 お答えいたします。
 第一の点でございますけれども、これは御承知のようにもともと立法技術の問題でございますから、絶対的にこうでなければならぬということはないと思います。要するに、長い間の前例の積み重ねを通じまして一つの方法が固定化する場合もございましょうし、また、二つ以上の方法が併用されて現在に至っているということもあるわけでございます。確かに御指摘のように、条文の多い法律の場合には、いわゆる第何条削除というような方式が、他の条文に対する影響というものを減らすという意味において、比較的多く用いられていることもそのとおりでございます。しかし、条文の比較的少ないものでも、このようないわゆる削除方式が用いられていないわけではございませんで、前例もかなりたくさんあります。いわばこの場合は、併用方式と申しますか、両方用いられているというのが今日までの例であろうかと思います。
 一、二の例を申し上げますと、大気汚染防止法では三十七条ばかりの法律でございますけれども、同じように証券投資信託法、これは三十八条ばかりの法律でございますが、十一条削除というような方式が用いられておりますし、また工業用水法というのはこれは三十条ばかりの法律でございますが、そのうち十五条から二十一条まで削除というような方式がとられております。
 それから、御質問にはございませんでしたけれども、第何条の二という加える方式もございます。この場合もいろいろ例があることは御承知のとおりだと思います。
 確かに御指摘のように、でき上がった形といいますか、そういうものからいいますと、第何条削除とか、あるいは第何条の二というような形はいかにも見ばえが悪いと申しますか、見ばえが悪いということにおいてはそのとおりだと思います。ただこれにも一長一短がございまして、それによって、せっかく固定化している条文がずっとずれるというようなことによって、いままでの一つの法意識というものが変わってくるという心配もございます。また、率直に申し上げますと、私どもが改正案を審査します段階におきまして、その影響を一々しさいに見れないというような、まことにこれは理由にはならないかもしれませんけれども、実際上の理由もございます。そういうわけで、その場その場でいろいろ判断してやっているわけでございます。ただ、御指摘の点は十分われわれとしてもそういう気持ちでやらなければならない、できるだけでき上がった形が国民のためにわかりやすい形にしなければならないというお説にはそのとおりだと思いますので、その点は十分検討さしていただきたいと思います。
 なお、昨日国会の法制局のほうからも御答弁があったようでございますが、その点は内閣の提案のもの、国会議員の提案にかかるものも同じような方式がとられているのじゃないかと思います。
 それから第二点でございますが、これは実は私、直接の担当でございませんし、また御質問の意味がちょっとわかりかねたのでございますけれども、附則で何か直すというか、あるいは時日を前提としてちぐはぐになるとおかしいということを御指摘になったのか、よくわからなかったのでございますが、もし私なりで理解いたしますと、政府といたしましては、ある時期にその国会に出す法律案を全部一時に出すということが一番望ましいわけでございます。ということはなぜかと申しますと、その国会に出す法律案でどう法秩序が変わるかということは、もう全部一度に見て、そうしてそれを最後まで見通して、Aの法律はこう変わるとか、あるいはBの法律が出ればAの法律はこう変えなければならぬというような判定を全部して、ある一時期に百何十の法律を出せば一番理想的だと思います。ところが実際問題としてはそれが不可能であるわけでございます。そこで、まあある時期によって、それぞれその瞬間においては多少ちぐはぐという形ができてくるということになろうかと思います。それから、たいへん申しわけない話でありますが、やはり国会においてまた御審議の早い、おそいもございますから、その辺のところまで全部、政府が法律を提案する段階で、どれが先になり、どれがあとになって、その間に矛盾がないようにという形は、提案の段階では技術的にはちょっと無理だろうと思います。いまの御質問、ちょっと私わかりかねたのであるいは見当違いかもわかりませんので、またお答えいたします。
#5
○細谷委員 あまりこれで時間とりたくないのですが、第二点は、私が例をあげました公有地の拡大促進法という法律が出ておる、これは建設省と自治省の共管の法律案、一方建設省の主管の法律案に新都市基盤整備法という法律案が出ておる。公有地はそのまま法案が成立いたしまして、新都市基盤整備法が成立いたしますと、同時に自動的に公有地の拡大法が修正されたことになるわけですよ。そうしますと、この前後の関係からいっても、国会の審議は、たとえば公有地の拡大法の中に新都市基盤法が成立いたしますとそれは取り入れられることになります。これが前後になりますと、いろいろどうも問題が起こるんじゃないか、その辺まで――国会の審議の速度の問題、各委員会の運営の問題もあります。むずかしい問題でありますけれども、この辺は整理されて出されたほうがよろしいんじゃないか。間違ったことだと言っているわけじゃないのですよ。やはり国会も審議しやすいように、官僚的なペースじゃなくて国民のペースでやっていただきたい、こういうことを私は言っているわけです。
 そこで今度は質問に入りますけれども、私はせんだっての質問で環境庁長官に問題を質問したままで、御答弁をいただかないままこの委員会が終わったわけです。ところがたまたま五月の十七日に「悪臭物質の指定および悪臭規制基準の範囲の設定等に関する基本的方針について」という中央公害対策審議会の環境庁長官に対する答申がおととい出されたわけです。それを見ますと、私が指摘したとおり、大気汚染防止法の特定物質として指定されておりますアンモニア、これがこの悪臭の答申の中できちんとあげられております。それから大気汚染防止法に同じような特定物質として指定されております硫化水素があげられております。それからさらに大気汚染防止法で指定されておりますメルカプタン、この答申では、メルカプタンのうちの代表的なものでありますメチルメルカプタンという化合物が指定されております。これはこの答申に基づいて悪臭防止法のそれぞれの政令が出されるわけであります。まだこのほかに悪臭物質に原因のあるものがあるわけでありまして、今度の五つの物質の中には指定されておりませんけれども、たとえばアクロレインあるいはピリジン、こういうものが悪臭物質の中に入ってくるんじゃないかと思うんです。そうなってまいりますと、私に対するせんだっての答弁で、健康被害物質として指定されるものは、大気汚染防止法あるいは水質汚濁防止法にあげられておる物質はそのまま入ってくる、こういうおことばでありますから、問題は無過失賠償責任制度というものを、大気と水質だけに限るということ自体が実質的におかしいじゃないか。自動的に悪臭防止法も入ってくるんじゃないか、こういうことになるわけですね。ですから、大気と水質だけに限ったところに問題があるというこの法案は、長官もおそらく認められておると思うのです。すでに実質的には指定物質を通じて悪臭防止法を取り込んでおるわけですよ。そういうことからいって、この法律案は問題があるんじゃないか、大気と水質だけに限ったところに問題があるんじゃないか、こういうことなんです。いかがですか。
#6
○大石国務大臣 大気と水質だけに限ったということではございませんで、本質は、人間の生命並びに健康の被害に対する問題を中心的に考えました結果、大体大気保全と水質汚濁防止法、このほうが一番身近なものであるということから、その法案を出したわけでございます。たとえばいまの悪臭のことでございますが、悪臭防止法の中に入ります五つの物質を取り上げておりますが、これは広い意味では人間の健康、むしろ精神の健康と申しますか、そういう意味では精神状態の問題についてはいろいろ及ぶかと思いますけれども、一応それは狭い意味の生活環境、つまりわれわれが気持よく生活できるかどうかとか、よく眠れるかとか、そういった狭い意味の生活環境を規制するというのが、今度の答申に出ておりました、われわれがこれからきめようとする悪臭防止についての考え方でございます。しかし、中にはしょっちゅう悪いにおいをかいでおれば、精神的にいろいろ影響を及ぼして悪い影響があるのではないかということは、確かに否定できないと思いますが、そこまでの議論は避けまして、悪臭が不快であるとか、そのようないわゆる狭い意味の生活環境を守るという意味を中心としました考え方で、おとといの答申に基づいて規制をすることになるわけでございます。その中の、たとえば硫化水素であるとかアンモニアとかメルカプタンというものが入っておりますが、これは健康被害物質に入っておりますのは、これがたとえばそのような製造工場におきまして事故が起こりまして、そういうものが大量に多数に急激に発生した場合には、悪臭だけではなくて、人間のいろいろな器官とか機能とか、そういうものに対する大きな実質的な健康被害を及ぼすという意味で、そのような場合を考慮して取り入れたものでありまして、つまり問題は、量の問題とか発生のしかたとかいうことに区別があるわけでございます。そういう考え方で悪臭防止法をいま見ておるわけでございます。
#7
○細谷委員 いまの大臣のことばは重大なことですよ。アンモニア等が何か爆発事故等を起こして大量に出た場合には、人間は死にますでしょう。硫化水素もそうでしょう。しかし、死ぬということ、健康被害、いまおっしゃったように人の生命または身体を害するということは、やはり精神的なものを含むわけですね。ですから、せんだっての参考人のことばの中に、健康被害物質という名において、生活環境のみにかかわる被害というものと、それから健康、人の生命または身体を害するという物質を区分すること自体がおかしいんだと、参考人すべてが言っておりましたね。大臣のいまのことばは、事故があった場合に、これは大気汚染防止法へ吸収されるのだ、悪臭の場合は精神的なものなんで、生命に影響ないのだ、こういうことになりますと、何のための大気汚染防止法か、何のための水質汚濁防止法か、こういうことになってまいりますね。大臣のいまの答弁は問題ですよ。事故ということばを入れたことはたいへんなことですよ。これはやはり取り消していただかなければいかぬ。公害というところから取らえているわけですからね。ですから私が言いたいことは、公害の中で、悪臭防止法の中で取り上げられる物質は、大気汚染防止法の中に取り上げられておる物質にほとんど含まれておって、そしてそれが健康被害物質だ、こういうことで指定するということなんでありますから、事実上は大気とか水質などに限らないで、いわゆる公害基本法に基づく典型公害、この場合にこれは問題が出てきますけれども、たとえば地盤沈下、振動は物理的でありますから別として、地盤沈下とかなんとか、これは生命ばかりじゃなくて大災害がある。そういう地盤沈下とかなんとかいう典型公害のうちのものについては、財産等がこれに入っていない重大な欠陥がありますけれども、少なくともあなたのほうでは、ここまでくると悪臭防止法を取り入れておらなかったことはおかしいじゃないか、悪臭防止法の中にも無過失の条項を入れておかなければおかしいじゃないか、こういうことになるわけです。ですから私が言いたいことは、大気と水質だけに無過失賠償責任の条文を入れるならば、悪臭防止法にも入れなければならぬ。各個別法に入れていくということになると問題があるから、少なくとも典型公害という七つの公害について無過失賠償責任制度というものを確立するのが筋じゃないか、こう私は思うのです。この点について大臣とあわせて衆議院の法制局の見解を伺っておきたいと思います。
#8
○大石国務大臣 たとえば事故時に大量に急激に発生してということを申し上げましたが、この事故時という発言が悪いということでありますればそれは取り消します。ただ何らかのことによりまして、どういう理由かわかりませんが、爆発事故であればこれは過失になりますから無過失ではないと思いますけれども、場合によっては大量に、急激に発生することはあり得るかもしれません。そのような場合においては確かに人間の健康なり生命なりに影響があるという場合を想定いたしまして、いまの物質は無過失の対象に取り入れたわけでございますが、悪臭そのものがどういうふうに人間の健康、肉体的な健康よりはことに精神的な面、神経的な面が多いと思いますが、そういうものに影響があるかというと、まだまだ実は非常に研究が足りないと思います。おならをした、それがくさいから悪臭だ、精神衛生に影響があるとかいうことになったら、これは議論の余地がなくなるわけであります。ですからやはりこういうものはとにかくある程度法律的に義務を課し、なにを課する以上は、そういうことに責任を持たせる以上は、それが明確なものでないとこれはなかなか判断しにくいと思います。そういう意味で、いずれ将来には悪臭防止法ももう少し医学的に研究が進みまして、それはこのような影響がある、こういうことであるという判断がつき得るような段階になりましたならば、当然これは取り入れなければなりませんけれども、いまの段階では、どの程度の影響があるかどうかということは、まだ実は医学的な研究が進んでおらないと思います。それで、たとえばいろいろな人間の健康に有害な物質でも、小量と大量では大きな違いがあるということは御存じのとおりだと思います。たいていのものはみな有害性と、それから薬としての有効性とを持っております。ですから、こういうものは、たとえばある量の場合にはきわめて人間の健康に有効に働くけれども、それがある限度以上にきた場合には逆に有害に働くというのが、大体の薬のいまあるあり方でございます。そういうことを考えますと、別に量とかそういうことを考えずに、すべてがこうであるという一律的な見方は、私はこれは医学的にはできないと思います。そういうことで、いまの悪臭そのものは、将来そのような医学的な判断なりがつき得るような時代が来れば、これはもちろん十分に考えなければなりませんけれども、いまのわれわれが考えております悪臭防止法というようなものは、必ずしも無過失の対象にいまなり得ない段階であると考えておる次第でございます。
 それから典型公害でございますが、なるほど財産の問題、いろいろ考えますと、当然地盤沈下、そういうものも入れなければなりません。私どもは現在は新しい法律をつくる時代でありますので、総合的なものはなかなかつくり得ないという理由で、二つの、生命とわれわれの健康の問題だけに限っておるわけでございますが、何回も私が申し上げましたように、この法律は決して完全なものではございません。ほんとうにまだ小さな、いわゆるこのようなものの考え方を土台づける橋頭塗として考えておるわけでございます。ごく近い将来には、できるだけ財産、ことにわれわれの生命を中心とした財産の保障も全部入れなければならないと考えて、そういうことを皆さまに申し上げておるわけでございます。そういう段階にまいりますと、いろいろなほかの公害もこれにつけ加わってまいりますので、そういうものと一緒に、次第次第にこれを総合的な、ほんとうに国民に広く役に立つものに変えていきたい、こう考えておる次第でございます。
#9
○川口法制局参事 きょうここにあがりまして、ちょっとどういうことになるか、一応弁明を申し上げておきたいと思うのでありますが、野党提案の法律案の説明をなさる提案者の補佐をするつもりであがりましたところが、先生がいらっしゃいませんので、私が事務的な面だけ、ただいま御質問の点について補佐を申し上げる意味で申し上げます。
 悪臭防止法と大気汚染防止法、そういった問題につきましては、これは政府案の内容の問題でございますから、私はその点には触れません。
 そこで、野党のほうは、ではその問題についてどういうふうに考えておるかということを法案の説明として申し上げますと、ごらんのように野党提出の第三条は、悪臭とか、それからいわゆる身体、生命に対する実害とかという区分をしませんで、一般的に、生命、身体及び財産まで含めまして、公害によって人に損害を及ぼしたら云々というふうにして、非常に広くつかまえております。
 ただ一言申し上げておきたいことは、たとえば簡単に申しまして、くさいということは神経を痛めることであって、そのために腹痛を起こすとか、頭が痛くなるというところまではいかないということがかりにあったとしますと、これはおのずから損害の実態がそれだけ軽うございますから、野党案の解釈にしましても、損害賠償の額といいますか、ある程度はおのずから限定されるであろうという結果にはなりましょう。御参考までに申し上げておきます。
#10
○細谷委員 大臣、あなたの爆発ということばがあったのですが、大体大臣に悪臭ということについての認識が薄いと思うのですよ。たとえば鶏の羽を焼いて鶏の飼料をつくっている、あるいは魚の臓物をやって鶏の飼料をつくっておる、その工場の悪臭たるや、これはもう四六時中、めしなど入るようなそんな状態じゃないわけですよ、その工場から半径一キロ半ぐらいのところは。これは山梨県でもたいへんな問題になりました。だからこそ悪臭防止法が生まれたわけですね。これは端的に言って、人の生命あるいは人体の健康に対してたいへんな影響を持っているのですよ。だからこそ健康被害物質というのは指定されたようなそういうものだ、こういうふうにいっているのだと思うのですよ。ですから、公害という以上は必ず健康なりに影響があるわけでありまして、今度の中央公害対策審議会の答申で、アンモニアは大体一PPMから五PPM、五PPMになりますとこれはものすごく強いにおいが出てくる、こう書いてある。日本産業衛生協会が示した工場等の許容濃度の勧告というのが一九六九年に出ておりますけれども、それと比べてみますと、職場の環境においてアンモニアが許容できる限度というのは五〇PPMなんです。硫化水素は〇・二PPM、こう出ておりますけれども、この職場のあれは大体一〇PPMなんですよ。でありますから、確かに悪臭というものと一般の大気なり水質にとられておる量は、オーダーが百分の一ぐらいですから、PPMじゃなくてPPHM、こういう表示で悪臭の問題は取り扱われておるわけで、そういうことはわかりますけれども、これはもう間違いなく健康に被害がある。大臣、一度くさいところに行って見ていただきたい。これはたいへんなことです。そういうことでありますから、爆発なんということじゃなくて、こういうことであるとするのならば、やはりこれからだんだん前進していくのだというけれども、大気あるいは水質だ庁に限ったのは誤りであって、物質自体が共通しておる無過失については、当然無過失条項を個別法で改めていくというならば入れるべきである、こう私は思います。それが科学的なんだ、こう思います。
 もう一つは、野党の案のように七つの典型公害基本法に基づくもので、これは財産を入れておりませんけれども、せんだっての始関さんの質問で、将来財産の問題も取り入れたいという大臣の答弁があったようでありますが、この財産を、たとえば漁業の問題についての被害、これは財産ですね、こういうものも取り入れていく、振動等も取り入れていく、騒音等も取り入れていく、これは健康に影響があるわけですから、こういうものは入れるべきだと思うのであります。この二点についてひとつ明確な答弁をいただきたい。
#11
○大石国務大臣 順序がごちゃごちゃになるかもしれませんが、答弁いたします。
 いま、いろいろなアンモニアとか硫化水素の工場の中のくさいこと、これは私も知りませんが、そういうものにつきましては、これは別に労働省なり通産省においてこういうものの規制は行なわれておると思います。また行なわれなければなりません。したがいまして、行なわれておると思います。
 われわれの悪臭防止法の判断は、工場内とかいう他の官庁において規制されておる場合のものではございませんで、たとえば、工場内は工場内の規制がありますから、その屋敷の境から外に出た場合のにおいであるとか、国民大衆がその悪臭に接触し得る範囲を考えまして、その場合を規制しておるわけでございますから、たとえば五〇PPMがそこの中では五PPMにきつくしてあるということでございまして、工場内とはおのずから別に考えたいと思います。そういうことで、工場内では、いまのアンモニアですか、五〇PPMまでが規制の対象になっておる。ところが、われわれのきびしいところは、普通大体五PPMということになっています。五PPMといえば十分の一です。そのくらいの非常にきびしい限度を置いているわけです。工場内のことは何PPMであるか、それは当然工場としてのあり方から規制されるべきでありまして、われわれは、工場の境目から漏れてくる、国民が接触し得る生活環境の中での規制をいたしておるわけでありますので、そうなっていると思います。鳥の羽根を焼いたのでくさい。これはけしからぬことであります。これは取り締まらなければなりません。そういうものを取り締まるためにわざわざ悪臭防止法を強化してまいりたい。詰めてまいるのがわれわれの仕事でございます。国民の実際生活にいろいろ迷惑をかけますから、そういうものを規制するためにわれわれはこの法律をつくったのでございます。この無過失賠償責任制度は、御承知のように行政の中のごく一部の面でございまして、いまの法律では、とにかくそのような公害によって健康や生命に被害を及ぼした場合には、原因発生者がその賠償の責めに応ずるということを規制するだけのことでありまして、われわれは無過失だけですべての公害が全部押えられるとか、公害行政のすべてだとは考えておりません。われわれはそのような被害者を守るための一つの手段としてこれを考えておるわけでございます。しかし、いずれ近い将来には、ある意味では公害を押える、つまり自覚を促すための原因発生者に対する一つの大きな警告にはなると考えておりますけれども、これがすべての行政を解決するとは考えておりません。ですから、鳥の羽根のような問題は、もちろんあたりにいろいろな迷惑をかけます。それは精神的ばかりでなく肉体的にも確かに悪影響もあるでしょう。そういうものに対しては、われわれは当然無過失にかける前に、これをさせないようにする。したら処罰するようなことで押えておくという方針でまいりたいということで、この悪臭防止法をつくったのでございますから、その点はひとつ御了承願いたいと思うのでございます。
 無過失にすべてのものを取り上げたらいいではないか。取り上げられればけっこうだと思います。ただ、いま申しましたように、鳥の羽根を焼いて一キロも離れたところでずいぶんくさい。くさいので私はきょう少し気分が悪い。気分が悪くていらいらしているのだということだけで、はたして無過失賠償責任制度の中にこれを取り入れて裁判の中に持ち込むことができるか。そのような判断は裁判官にはとうていできないと思うのです。それは証人を呼んで調べたって、いまの医学では、はっきりした明確な判断は出せないと思います。そういうことを考えますと、その他の振動とか騒音とかいろいろなことにしましても同じことだと思うのです。いまは健康被害の問題ですから、いま一挙にすべてのものを、無臭防止法であるとか振動公害、そういうものを取り入れることはなかなかむずかしくてできないと思いますので、二つの大きな問題の法案の改正に限ったのでございます。しかし、前から申しておりますように、これはどんどん拡大して改正してまいります。新しい問題をずっとつけ加えてまいる方針であります。したがいまして、いろいろな生業、財産そういうものも取り入れてまいりますから、そういう場合にはこれと関連するその他の公害につきましても、当然こういうものが入ってまいりますれば、はたしていまの二法律だけの改正では済みませんから、一つの単独法になるかどうかしりませんが、だんだん体系ができていく、こういうふうに考えておる次第でございます。
#12
○細谷委員 ちょっと大臣、私の言ったことについて誤解があるようであります。私が申し上げたのは製造工場等のいわゆる職場環境というのは、これは職場環境でありますから、濃度も規制された物質も一番ゆるいのですよ。濃度が一番低い。当然です。それから一般大衆がぶつかるところの、公害を起こすようなところの濃度というのは、これは一日二十四時間でありますから、しかも長年でありますから、職場環境濃度と比べますと、かなり強められた濃度で規制されておるわけです。悪臭というのは、そういう公害で規制されておる濃度よりも、大体百分の一くらいのオーダーのところで、もうすでに悪臭現象というのが起こって、人が耐えられないような状態になっているのだということが、この中央公害審議会の答申にもありますよ。でありますから、あなたが言っている爆発なんということでなくても、同じような物質が悪臭でも取り入れられ、そして大気汚染の場合でも取り上げられておるわけであります。必然的にこれはやはり人の生命あるいは健康に影響がある物質なんですから、当然取り入れらるべきであると思う、こういうような論理の筋道ではないか、こう私は申し上げておる。しかしこれ以上は時間がありませんから、私は、この法律は大気と水質に限ったことだけはきわめて不十分である、しかも財産あるいは物理的現象による公害について取り入れなかったことについてはきわめて不十分である、こういうことを指摘しておきたいと思うのであります。
 次に、私は質問したいことは二十五条の二項、それから水質のほうでありますと十九条の二項、「一の物質が新たに健康被害物質となった場合には、前項の規定は、その物質が健康被害物質となった日以後の当該物質の排出による損害について適用する。」これはこの法律全体についての経過措置、附則の二項で、「第一条の規定による」云々と書いて、「健康被害物質のこの法律の施行前の排出」または「この法律の施行前の排出による損害については、なお従前の例による。」念のためにお尋ねしておきたいのでありますが、これはその物質が健康被害物質となった日以後、たとえばカドミウムならばカドミウムというものがこれは健康被害物質だ、こういうことになった日、いわゆる環境庁が指定するでしょう、指定した日以後、当該物質の排出による損害なのか、日以後に損害が起こったことなのか、あるいは指定された日以後に排出した、そういうことなのか、これは重要でありますからはっきりお聞きしておきたいと思う。いかがですか。
#13
○船後政府委員 お答え申し上げます。大気のほうの二十五条の二項でございますが、この規定は物質の排出を押えた規定でございますので、「一の物質が新たに健康被害物質となった」日以後の排出、それによって生じた損害について無過失損害賠償責任を問うわけでありますから、その日以後の排出ということになります。
#14
○細谷委員 ということは、指定されたその日以後に排出した、それによって病気が起こった、こういうことなんですね。ですから物質が指定された以後に排出されておって、それによって病気が起こったということで損害が起こったということではないということですね。
#15
○船後政府委員 損害が起こらなければ賠償責任はないわけでありますが、この二十五条の二項でいっておりますのは、その損害が起きた原因を排出した、その排出の時点が新たに健康被害物質になった日以後の排出という規定であります。
#16
○細谷委員 そうすると念のためにお尋ねいたします。二十五条の二項、十九条の二項、それから経過措置の附則の二項、いずれも排出の起こった時点、こういう解釈ということですね。確認してよろしいですね。
#17
○船後政府委員 その時点以後の排出によって生じた損害ということになります。
#18
○細谷委員 そうしますと、大臣、いま四大公害裁判といわれている、あるいは五大裁判ともいわれている公判が進んでおる公害問題というものは、全部適用にならない、こういうことになりますね。そうでしょう。
#19
○船後政府委員 この法律施行前に生じた排出による損害、これは適用になりません。
#20
○細谷委員 いまたいへんな問題が起こっているものについても、しかも進行しておる問題については全部適用にならない、しかも物質というものは制限されておる、こういうことになりますとたいへん問題があるわけですね。これはもうただ法律だけつくって魂が入っておらぬ、こういうふうに申さなければならぬと思うのです。
 それではお尋ねいたしますが、一体水俣病というのはいつごろから発生したのですか、お尋ねいたします。
#21
○船後政府委員 正確な日時は忘れましたが、水俣湾における水俣病の発生は、日本窒素のアセトアルデヒド製造過程から発生する有機水銀の長年にわたる蓄積というものが、湾内の魚介類に蓄積され、それが経口摂取されてなったということでございますので、かなりの年月をかけて蓄積されたものでございます。
#22
○細谷委員 最近熊本大学の医学部の藤木講師が、過去のへその緒を集めて分析をしたわけですね。そのへその緒の分析からいきますと、一般に水俣病というのは二十八年から三十五年くらいの発生だという定説がありますけれども、大体二十二年六月に生まれた人のへその緒にかなりの濃度め有機水銀が検出されておるわけですね。これは最近発表されております。私はあの近くでありますから、二十三年の秋ごろと思うのでありますけれども、あの水俣のすぐ近くの日奈久という温泉に行ったのです。ところがその日奈久の宿で、水俣湾からとれた魚はあぶないぞ、狂い死にするそうだ、こういううわさが流れていたことを思い出します。そうなってまいりますと、いまのようなことになりますと、この法律は全く意味がない、しかも物質を制限しておるわけですから。大体無過失なんて起こるのは、予見しないところで起こってくるわけですよ。それをもう起こってしまってあわてて調べて、そして何年も過ぎてから指定して、指定した日の翌日から排出したもので損害が起こるなんということになりますと、これはとてもじゃないが話になりません。この法律の二十五条の四を見ますと、「被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行なわないときは、」野党案は七年であります。「時効によって消滅する。」あるいは「損害の発生の時から二十年を経過したときも、同様とする。」これではこの法律で救済されるなんという、現在の公害の実態じゃありませんよ。そうじゃないですか、大臣。ですから魂が一つも入っておらぬ、こう申さざるを得ないのでありますが、いかがですか。
#23
○大石国務大臣 いまのお話、私も非常にごもっともと思うところがございます。たとえばなるほどいま規制された物質はわかっておるものでありますが、今後われわれはそういうことがないように努力はいたしますけれども、どのような新しい健康被害を及ぼす物質が出てくるかわかりません。もしその場合に、いろいろな健康被害者が発生したという場合には、おっしゃるとおりその健康被害を及ぼす有害物質、はっきり有害原因と学問的にきめるには相当時間がかかります。私こう思います。三年も四年もかかるかもしれません。あるいは一年で済むかもしれません。そのような場合、三年も四年もかかってわかった場合に、そのわかった時点からこの法律を適用するのだということでは、これはやはり魂が入っていないと思うのです。ですから、当然そのような場合、やはりそのような物質をすでに発生しているときから、新しいものが発生しているときから、当然物質を流している時点からこの法律を適用しなければならぬとも、確かに考える次第でございます。その点につきましてはいずれ政府委員から具体的な話があるかと思いますが、もしその点が欠けておれば、われわれもこれについて十分心しなければならないと思います。
#24
○細谷委員 私は、二十五条の四の消滅時効というのを、賠償義務者を知ったときから三年間などということになりますと、いまのようなスローモーでは、これは全く意味がない。野党案は七年。それから、これはからだの中に蓄積していくわけでありますから、損害の発生したときから二十年といっても、指定されておりませんけれども、ものによっては発ガン性物質などというのは潜伏期間が十五年とか二十年とか医学的にいわれているわけです。そういうものもあるわけです。具体的に言いますと、有名なベンジンは、大体作業をしていてそれに触れたのが一つの要素になりまして、潜伏期間が十五年とか二十五年というのがいままでの医学上の結論になっております。そうなりますと、損害の発生のときから二十年――三年、二十年というのは民法のいままでの例を持ってきたにすぎないのであって、公害の場合には問題があると思う。問題があると同時に、いまのようなことではどうにもならぬ。せんだって私は申し上げたわけでありますけれども、いま問題のPCBですが、昭和二十四年の「労働科学」によると、このPCBというのは明らかに有害である、これは動物についての試験でありますけれども、かなりひどい健康被害が起こってくると推定される、二十四年にもうすでに、人体ではやっておりませんけれども、動物実験で科学的に明らかになっている。ところが、それよりも五年おくれた二十九年に鐘淵化学が生産を開始した。三十五年のアメリカの報道で初めて製造者である鐘淵なり三菱油化は有害だと知った。昭和四十三年に油症事件が起きた。そして製造業はどういっているかというと、これはカネクロール四〇〇というのが原因であったということでありますけれども、大体これは絶縁体としてつくったものだから、熱媒体として使ったことがおかしいのだと開き直っている。現に通産省は昭和三十二年に不燃性の絶縁油でありますよということで、JISを制定したわけですね。しかも、そのJISが四十五年に改定された、その改定する四十五年というと、もうすでにカネクロールの被害が起こっているのですよ。ところがJISを改定して依然として使う体制をとった、しかも、その委員の中には製造者である鐘淵化学の人と三菱の人が参加してこれをきめているというのです。事故がすでに起こっているのに、せんだっても申し上げましたが、まだPCBは指定もされておらない。指定して、その後に排出した場合に初めて救済されるなどということでありますから、なっておらぬですよ。すでにもう戦前あるいは二十四年にはもう科学者の結論が出ているのが、四十三年に大事故を起こした。いまだにそれが指定されておらない。それどころか、通産省はこのPCBを四十五年にJISを改定して、依然として使っていくという態勢をとったのですから、こういう政府の姿勢も含めて十九条の二項あるいは附則の改正ではまさしくこれはざる法だ、魂が全く入らない法律だ。せんだっての参考人も不遡及の問題についてかなりきびしく批判しておりましたけれども、私はこの法律はそういう意味においては意味ない。しかも無過失なんですよ。これが有害物質だとわかっておったら、無過失なんてほとんどないですよ。意識的にやる以上は故意か過失ですよ。わからない物質から問題が起こるから無過失というものが公害問題として必要なんです。そう思うのですよ。私は、この法案はそういう意味においては重大な欠陥がある、こういうふうに申し上げなければならぬと思う。
 そこで、時間がありませんから厚生省にお尋ねいたします。一体サリドマイド、キノホルム、これは無過失なんですか。故意または過失なんですか。どちらですか。キノホルムについては、すでに科学者の結論が出ております。門前まで達したどころじゃないのですよ。九五%くらいの確率でキノホルムとスモン病は結論が出ているのですよ。サリドマイドが催奇性の睡眠薬であったということは結論が出ているのですよ。一体これは無過失なんですか、過失なんですか。確かにサリドマイドについては、あるいはキノホルムについては、つくったときには十分な試験をした上やっていればいいわけですけれども、まさかと思ったでしょうし、現実にはそういう決着はついた。まだ依然として製造しているほうは、自分のほうに責任を負わされるものだから文句を言っているけれども、科学者の結論ははっきりしている。
 お尋ねします。無過失なんですか、これは故意または過失なんですか、はっきりしてください。
#25
○山高説明員 お答え申し上げます。
 キノホルムあるいはサリドマイドについて、これはそれの副作用が問題にされておるわけでございますが、それが過失か無過失かというお尋ねでございますが、先生のお話にございましたたとえばキノホルムについて九五%ほぼ確定しているという話でございますが、これはいわばキノホルムとスモンとの因果関係についての点でございまして、過失、無過失については、これはまだ現在裁判で争っている最中でございまして、ここで御答弁申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
 なお、現在まで私ども、一昨年の八月に実はキノホルムについてこういうスモンの発症の疑いがあるという、学会で新潟医科大学の椿教授の発表がございまして、その後直ちに措置をとって、九月にはすでに販売、製造の中止をし、また医師の先生方には使用を見合わせるように警告してございます。
#26
○細谷委員 これは目下係争中でありますから、過失か無過失か、厚生省は言いにくいからおっしゃらぬでしょうけれども、大体これは無過失とも言えると思うのですね。新しい薬ができた、十分な試験もしないで、疫学的な調査もしないで使ったのはあるいは過失かもれぬけれども、一応無過失とも考えられる。いずれにいたしましても、この法律によって――この法律は大気と水ですけれども、少なくともたいへんな被害が起こっているわけですから、これはやはり薬事法なり毒物及び劇物の法律なりあるいは食品衛生法等の中にも無過失の賠償責任制度というのを織り込まなければ、これは一般国民は救われない、こう私は思っております。
 大臣、あなたの所管外でありますけれども、食品公害あるいは薬品公害といわれる問題は、これは過失、無過失の裁判で争われるにしても、過失といえば過失、しかし無過失といえば無過失でありますから、せっかく無過失も救ってやらなければ公害の問題は片づかぬ、被害者は救われないということでありますから、そのためにできている以上は、無過失、過失を問わず、被害者が救われるように、因果関係が明確になったならば、救われるような法体系をつくらなければならぬと思うのであります。
 私の結論は、ですから始関さんが指摘されたように、財産も含めて公害基本法に対する無過失賠償責任制度という法律を確立すると同時に、食品なり薬物についての公害についても無過失責任制度の条項を確立すべきである、こういう考えを申し上げておきたいと思うのであります。
 時間がありませんから、若干延びるかと思うのでありますが、さらにもう一つ重要な点をお尋ねいたします。
 二十五条の二は「民法年七百十九条第一項の規定の適用がある場合において、」こういうことで適用されるわけですね。これはたいへん問題がある。一体民法七百十九条の第一項の規定というのは、どういう成立条件が必要かということについて一向書いてないのですよ。これは重大な欠陥ですね。私はいま問題の四日市の公害裁判、これを調べてみますと、原告と被告の争いは、共同不法行為の成立、不成立、むろん因果関係はありますけれども、これについてたいへんなことがあります。一々それぞれの被告、原告が主張しておる。これに詳細書いてありますけれども、ざっと言いますと、被告側の主張というのは、共同不法行為というのは民法七百九条というのが個々に適用されて、そうしてそれが企業集団となっている場合は七百十九条、個別的に加害者であるということが立証され、七百十九条が適用される共同という形にならなければ、共同不法行為というのは成立しないのだ、こういうことであります。言ってみますと一人のげんこつでなくて、みんなが一緒にげんこつでなぐったときに初めて共同不法行為だ。原告側は、そういう一つというものが全体としてコンビナートを形成しておる場合に、それが寄せ集まって初めて健康被害あるいは死亡、こういうことが起こったのでありますから、当然これは民法七百十九条の共同不法行為というのが成立しているのだ、個々の企業について七百九条が成立しようとしまいと、七百十九条というのは成立するのだ、こういうのが原告側の主張であります。いろいろな判例もあげてあります。こういう点で、これからの公害問題として、いま争われている四日市裁判からいきますと、私はこの共同不法行為の成立要件について何も書いてないということは意味ないと思う。この法律の二十五条の二というのは全く意味ない。これは学者もいろいろな雑誌で指摘しておりますよ。たとえばエコノミストあるいはジュリストあたりでも指摘しております。これはどうなんですか。一体環境庁長官としては、共同不法行為の成立要件というのはどういう場合に成立するということですか。適用ある場合ということでは困るのです。
#27
○大石国務大臣 共同不法行為のいろいろな解釈、この法案の内容につきましては、いま法務省から答弁させたいと思いますが、前段の食品中毒とか薬品の中毒による被害者の発生した場合の無過失、過失の問題でございますが、私は、食品はもちろんそうでありますが、薬品なんというものは、こういうものは決して無過失であってはならないと思う。私は全部過失でなければならぬと思うのです。こういうものは間違ってもどんなことがあっても、私は誤りで、無過失であるとはいえないと思うのです。そういうことははっきり明確にしなければならぬと思うのです。因果関係さえはっきりすればこれは全部過失である、当然それくらいの責任を負わなければ、私は国民に薬だと言って飲ませることは不可能だと思います。そのように基本的に考えております。そのような基本的な考えがまだ十分に通らないで、無過失の場合もあり得るというようないまの行政の行き方であれば、やはり薬品も無過失の公害として扱ってもいいと思いますけれども、本質からいえばこれは無過失であってはならないと私は思います。そういうことで、こういうものを一緒に考えまして、いまお話のありましたような財産被害、そういったようなもの、これに関連するその他の公害の問題も十分に考えてこれを取り入れてまいりますが、こうなりますと、おっしゃるとおり無過失賠償責任制度とかいうような一本の形の法律になることは当然だろうと考えております。
#28
○古館説明員 二十五条の二の前提での七百十九条の構成要件でございますけれども、これは七百十九条の一項によりますと、「数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ」というふうに規定しております。この不法行為と申しますのは七百九条の不法行為の要件でございます。で、七百十九条では七百九条の不法行為にさらに数人の共同行為ということが加わっているわけでございます。ですから、まず第一番に、各人の行為がそれぞれ不法行為の要件を満たしているということが必要かと思います。次に、さらにその各人の行為の間に関連共同があることという要件が加わってくるわけでございます。
 そこで、いまの第一番の各人の行為が不法行為の要件を充足しているという場合にどういう場合に不法行為になるかといいますと、加害者に故意、過失があること、次に被害者に損害が発生したこと、その次は加害者の行為と損害の発生との間に因果関係があること、その次は加害者の行為が違法であること、つまり違法性があること、この四つが必要でございます。この四つの要件を具備し、さらにその行為が関連共同しておりますと、七百十九条の共同不法行為が成立するわけでございます。その際に一番問題になりますのは、各人の行為が不法行為の要件を満たすことであるという場合でございますければも、この場合の要件の中で特に相当因果関係の問題でございます。たとえば数人の共同不法行為者の中で一人の排出量のみでは絶対損害は生じないという場合があり得るのです。この場合には、それならばそのものについていえば不法行為が成立しないから共同不法行為が成立しないじゃないかというような疑問も持たれるかと思います。しかし、このほかの行為者の関係で、そういうふうに、それのみでは被害が生じないような量の少量の物質を排出したという場合でも、その排出したことによって損害が生じたと認められ、かつそういうような状況でそういった物質をその量だけ排出しますと、通常その損害が生ずるというふうに認められる場合には相当因果関係があるということで、全損害について責任を負うということになっているわけでございます。したがいまして、その各人の行為が損害を発生するに足る十分な量を排出しているということは必ずしも必要でないわけでございます。そういう場合に七百十九条は成立するということになります。そこで、この二十五条の二ではそういうことを前提にしまして七百十九条を引いてきているわけでございます。しかし二十五条の二では結局二十五条を引きまして、事業者が有害物質を排出したその結果損害が生じたということで、事業者が有害物質を排出したという行為をとらえまして、加害行為を限定しております。そういう場合それが数人の、二以上の事業者によって損害が発生したという場合には、共同不法行為の先ほどの要件である故意、過失、これはなくても共同不法行為が成立する、しかもその際に、そのある事業者の排出量、つまり寄与度、これが著しく小さい場合には賠償についてしんしゃくするというようなことになっているわけでございます。その関係で全部と一部について不真正連帯の関係になるというふうに理解しております。
#29
○細谷委員 この四日市裁判というのは無過失の問題で争われているのじゃないのですよ。問題は故意、過失があったかないか、共同不法行為があったかないかということで争われているわけです。そのそれぞれの原告、被告の最終準備書等を見ますと共同不法行為についてはいまあなたがおっしゃった七百九条と七百十九条との連関についてきびしい論争がこの中であるわけですよ。私は具体的に一々あげて申したいのですけれども、時間がありませんから……。そうなってまいりますと、ただ単に七百十九条第一項の規定の適用がある場合において、いわゆる不法行為が成立した場合においてはこうだ、こういうなまはんかな、なま殺しの規定では、これはきわめて不十分だ、特にコンビナート等において。しかもそのあとに寄与度等で事情しんしゃくという条項もあるわけですから、私はいろいろと問題があって、これもまたこの法律の非常に重要な欠陥の一つではないか、こう思っております。
 そこでまあ四日市のような場合は、この立地性からいってあるいはその工場の連関からいって、きわめて局部的に限られておりますけれども、しかしそうでない、コンビナートでないような場合にはいろいろな問題が起こる。共同不法行為というものがあったかなかったか、いわゆる七百九条と七百十九条との連関というのが出てきて、いろいろな問題が起こると同時に、その七百九条も七百十九条のこともあやふやになって不特定多数という問題が出てくると思う。たとえば一番いい例が東京のような場合、工場がたくさんある、川崎のような場合もコンビナートが幾つもある、あるいはコンビナートの体をなしておらぬというような立地上のいろいろな問題、工場内部の連関性、こういういろいろな問題が出てくるといたしますと、この法律では救われない。あるいは端的にいいますと野党三党が出した法律でも救われない幾つかの問題がある。あるいは二次公害、いわゆる光化学スモッグ等もこれで救われない。困るのは国民であります、住民であります。一体それをどうするのかといいますと、その被害者を救済する、大臣が言うような基金制度というような問題もぜひ必要でありましょう。いま公害問題で大きな問題は、光化学スモッグとPCBの問題をどう対処するのかということが大きな問題だといわれております。むろん寄与の問題も大きな問題であります。こういうものは対処できないのですよ。PCBはともかくとして光化学スモッグは毎晩のように出てくるのですよ。しかも東京型。日本のガソリンの中には、最近ある大学の先生が調べたところによりますと、ベンゼンやトルエンなど入れておって、そしてたいへん有毒なものが大気の二次公害として起こってきている。ですから、単に目がしばしばするとかちょっと倒れるとかいう形じゃなくて、そういうもので死人が出るかもしれぬ。こういう直前に達していると私は思うのであります。こういう問題に一体どう対処するかというのをこの法律は直接こたえなくても、間接的にこの法律がこたえられるような体制を、内容を持っておらなければならぬと私は思うのであります。そういう点には全くこたえていない。そういう点で、私がいままで指摘した点で、この法律についてはもっと環境庁も国会も検討しなければならない内容がある、私はこう思っております。
 いろいろ申し上げたいのでありますけれども、時間がありませんから最後に環境庁長官の御答弁を聞いて私の質問を終わっておきます。
#30
○大石国務大臣 PCBにつきましては、近くこれは私は取り入れる考えでおります。
 ただ、昭和二十二年や二十三年からPCBの毒性についてはわかっておったわけでございますが、それほど毒性がわかっておりながらいまだにPCBそのものの実態をつかまえることができない。PCBそのものはありますが、それが使用されてどこかに散らばった場合に、その実態をつかまえないというようないままでの世界の科学というものを私は残念に思います。ですからこれは取り入れますが、やはりもっとそれがはっきりするように、その実態をできるだけ正確に測定できるあるいは分析する技術を一日も早くつくり上げることが前提と思いますので、そのような方向でこれを進めてまいりたいと思います。
 それから光化学スモッグもいろいろ問題がありますが、いまわれわれ一生懸命になって東京都やその他の地方自治体とも協力いたしまして一日も早くその実態をつかむことに協力しておりますが、まだわかりません。まだもやもやと、一体光化学スモッグというものは何であるか、はたしてその光化学スモッグでどのような医学的な反応を人体に及ぼすかということがまだきまっておらない。ですから早く実態をつかまえなければなりません。つかまえることによって初めて何らかのこれに対する措置が考えられるわけでございますが、それにつきましてもこの法律はいま申しましたように不完全であり、決してこれで十分だとは申しておりません。どの法律でもしょっちゅう改正が行なわれ追加が行なわれましてだんだんりっぱな体系になっていくものでございますので、われわれもそのような考えで、ぜひとも一日も早くこれが十分に国民の被害の救済に役立つような幅の広いものにいたしたいと考えておる次第でございます。
#31
○細谷委員 ちょっと一言。大臣、何か言うとすぐ、原因がわからぬとか人体への影響等がわからぬと言うけれども、いま一例の光化学スモッグあたりは、これは人体に影響がある、あるいはたくさんの植物にも影響があるということは、すでにロスアンゼルスでわかっているのですよ。原理原則もわかっているのですよ。ただ、日本型光化学スモッグといいますけれども、日本型のはもっと悪質ですよ。アメリカの光化学スモッグよりももっと悪質です。言ってみますと、アメリカではPAN程度しか出ないけれども、日本ではもっと、パーオキシベンジルナイトレートのものが出ている。こういうことです。それはやはり燃料が、いいかげんなもうけ主義で、エコノミックアニマルでやっているところに原因があるわけですから、原理原則がわかっているのですから、わからぬからどうのこうのということじゃなくて、今日解決しなければならぬ重要な問題なんです。原理原則はわかっているのですから、これから研究だなんということを申さないで、真剣に取り組んでいただかなければならない。そういう観点からいって、それに手がけるような糸口すらもこの法律には見えておらないじゃないか。まあ一つの具体的な例は基金制度でしょう、そういうことを私は指摘しておるわけです。しかし時間がありませんから、私の質問はきょうはこれで終わります。
#32
○大石国務大臣 一言申し上げます。
 基金制度の問題は、絶対に必要でございますので、われわれもその方針でいくように、中央公害対策審議会にその制度を早く明確に考え出すようにということをわれわれは諮問いたしております。そのような基金制度ももちろん取り急いでつくらなければなりませんが、その前提としてはその基金制度の基礎となる法律が必要でございます。この法律がなくてはとうていこの基金制度はつくれません。そういう意味でも、ひとつ恐縮でございますが、早く基金制度をつくり出し得るような基礎をつくっていただきたいということで、御判断をお願いする次第でございます。
#33
○田中委員長 細谷君の質疑は終わりました。
 次に、阿部未喜男君。
#34
○阿部(未)委員 質問に入ります前に、委員長にちょっと教えてもらいたいのですが、この委員会は特段、委員何名出席しなければ成立しないという、そういうものはないのでございますか。
#35
○田中委員長 お答えいたします。
 国会法の規定によって二分の一以上の出席が定足数になっております。しかし一斉に委員会が開かれた場合には往々にして定員を欠くことがあります。いままでも先例によってそういうような運営をしてまいっておりましたので、その例によっています。
 ただし、国会法第何条によると詰められたら、休憩せざるを得ません。
#36
○阿部(未)委員 私はその慣例もわからないわけではありませんけれども、やはり国会の委員会の権威を守る上からも――大体二つ以上の委員を兼務するという場合は少ないと思います。したがって半数に近い者が出席できるのではなかろうか、そういう気もいたしますが、委員長の御指示ですからこれから質問をさしてもらいますけれども、委員会の運営についてはお互いが配意する点ではないかということを感じましたのでお伺いいたしました。たいへん失礼いたしました。
#37
○田中委員長 ちょっと待ってください。
 常任委員会でなくて、特別委員会ですからね。――議事録等に残してもらってよろしい。――特別委員会ですから、やはり二委員会以上兼ねている者ばかりなんです、この委員は。したがって、そういうような運営が従来なされておりますのでやっておりますが、これはあらためて国会法何条により云々と動議を出されたならば休憩いたします。
#38
○阿部(未)委員 いま申し上げましたように、まあ委員長の御指示ですから……
#39
○田中委員長 それじゃ全部出てこいと言え、自民党も。そうなったら休憩するぞ。
 どうぞやってください。――先例によって、質問を始めてくださいと申し上げているのです。しかし、国会法に基づいてという動議が提出されたならば、それに従わざるを得ません、こう申し上げております。
#40
○阿部(未)委員 それでは先例に従いまして質問をさしてもらいますが、大臣、お伺いしますけれども、去る五月十七日に本委員会に参考人の出席を求めて、この法案についてのいろいろな御意見を伺ったところでございます。この委員会における参考人の意見の聴取というものについて、大臣はどうお考えになっておるか。また、その参考人の意見がこの法案の審議に作用することを望んでおるか、望んでいないか。まず第一に大臣のお考えを承りたいと思います。
    〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
#41
○大石国務大臣 私は、他の委員会に出席の都合もございまして、参考人の皆さまの発言を直接にお聞きすることができませんでしたけれども、役所から、大体の考え方、その発言の要点につきましては聞いております。
 これについては、いろいろな御意見があるようでございますが、私はこれは――まあそんなことを私から言っていいか言って悪いか、せっかくの御質問でございますから……。この委員会の決定は委員各位の御判断によってきまると思います。ですから、たとえば参考人がどのような意見であろうと、それは御判断の参考にされるよすがにはなりましょうけれども、そのことによって委員会の決定が左右されてはならないと私は考えます。
#42
○阿部(未)委員 もとよりこの委員会としては、参考人の意見も徴しながらそれぞれの判断があろうかと思います。しかし、いまの大臣の御答弁は、あくまでも政府の立場としては、提案をしたものの立場としては、提案をしたんだからあなた方が判断をしなさい、こういうような意味だと思うのですけれども、従来、政府と委員会あるいは国会との間の関係はそういうものだと思います。しかし、いま新しい時代に入ってきて、ほんとうに政府もそれから議員も一緒になって、もし悪いところがあるならば、それは直していこうではないか、よりりっぱな法律を国民のためにつくろうではないか、そういう新しい次元に立って判断をしなければならない時期ではないか。したがって、たとえば先般の第四次防衛予算の先取りの問題についても、政府みずからが撤回をして修正をしたという経過だってあるわけでございますから、従来の慣行に従って、政府は提案したんだから、いいか悪いかあなた方がきめなさいというものの判断では、これからの新しい世代に対しての国会としての責任あるいは政府としての責任は全うできないのではないか、もう少し歩み寄って一緒になって国民のための法律をつくるという姿勢がほしいものだと思いますが、どうでしょう。
#43
○大石国務大臣 私の先ほど申し上げましたことは、参考人の意見に左右されるかされないかという御質問でございましたので、それは当然委員会の権威としてこの委員会の判断をすべきだと申し上げたわけでございます。
 法律をわれわれが出しました以上は、これはいろいろな見方もございますが、すべての点を考慮いたしまして、現段階として出し得る最上のものということで努力して出しているわけでございますが、その法律がいつまでも最高のものであるとは決して考えておりません。いままで御答弁申し上げましたように、いろいろ直さなければならないことがたくさんございますし、いまここでいろいろな御質問をいただいておりますが、その御発言の内容に十分われわれは心して、その方向にいかなければならぬこともたくさんございます。ですから私どもはいまそういうことで、これが最高のものである、変えられぬものであると決して考えておりません。問題は、ただわれわれがいかにどのように希望いたしましても、この委員会なり委員の決議によってそれは決定することでございますから、その御判断におまかせするしかございませんで、われわれは自分の希望あるいは考え方、そういうものを十分にこの委員会を通じまして申し述べまして、そして御判断をお願いしているわけでございます。われわれは、修正せよという御意見があって、それをよろしいと思いましたら、喜んでそれに応ずる覚悟はございますが、問題は、政府といえどもやはり政党に規制されておりますので、お互い政党間においてもそのような修正を理解をしていただきたいということをお願いする次第でございます。
    〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
#44
○阿部(未)委員 大臣の、いわゆる修正をすべきであるという意見があるならば修正をするにやぶさかではないのだということばを聞きたかったわけでございますけれども、そこで参考人の方々はいわば専門的な立場からやはり国民の世論を代弁しておるという点で私は非常に深い関心を持ちますし、また持たざるを得ないと思うのです。先般参考人の方が五人おいでになりまして、その中で純然たる被害者の立場に立っておられるのが川崎市公害病友の会会長の斉藤さん、いわば加害者の立場ともいうべきところにあるのが日本商工会議所公害対策委員会小委員長の島津邦夫さん、したがって、このお二方はそれぞれの立場を代表されたと仮定をしましても、残る三人の先生方は、東大名誉教授の我妻榮先生あるいは東京都公害研究所所長の戒能通孝先生、日本弁護士連合会公害対策委員会委員長の関田政雄先生、この方々はいわば被害者の側、加害者の側ではなく、いかにして公害をなくし国民の健康に寄与するか、そういうような立場から意見を述べられたという点では、政府と同じ立場ではないか。政府といえども、加害者の側に片寄ったり被害者の側に片寄ったりするのではなくて、あくまでも国民の健康を守る、あるいは財産を守るという立場から立法されておる。そういう意味で、この参考人の方々は専門的な立場で、しかもその立場は片寄らない、政府と同じ中立的な立場から意見を述べられた、こう考えておるのですが、どうでしょう。
#45
○大石国務大臣 お三人の御発言の趣旨は、それぞれ三人ともみな違いますが、おっしゃるとおり、公平な判断のもとにいろいろ発言されたものと私考えております。私どもは、おっしゃるとおり、政府でございますから、私どもの考え方は、日本の正しい法律なり権利義務を守って公平なものでなければならないと考えておりますが、環境庁というのは元来被害者の味方をする役所でございますから、被害者を優先的に考えるというのがわれわれの心がまえでございます。ただ、法律とか何か行政にはっきりと具体的に出します場合には、いま申しましたような正しい日本の法律、法秩序、正しい権利義務を守った公平なものでありたいと願っているわけでございます。
#46
○阿部(未)委員 ところでこの三人の方々の御意見は、それぞれいまの法律が不満足なものであるという点では意見の一致を見ております。私からも御質問を申し上げて、お三方ともそうおっしゃっておられました。ニュアンスの若干の違いはあります。関田先生は、結論的に、こういうしり抜けの法律ではあったよりもむしろないほうがいいのだという御意見でございました。それから戒能先生は、この程度の法律ならば、あってもなくても同じだろうという御意見でございました。それから我妻先生は、不満足な法律だけれどもないよりはあったほうがいいのではないか、しかしきわめて不満足なものであるという御意見を述べられました。したがって、いま申しましたような立場にある三人の方々が、少なくともこの法律がぜひ必要であるという意見ではなかったのですけれども、これを大臣はどうお考えになりますか。
#47
○大石国務大臣 私が役所から聞きました限りでは、関田参考人は、これはあっては絶対にじゃまになるということではございませんが、むしろこの程度の不完全なものならば、そう有益ではない、へたをすればじゃまになる可能性もあるのではなかろうかという御発言で、絶対にだめだという御意見ではなかったと思います。戒能先生のお話は、私は戒能先生にはときどきお目にかかりますが、これはけっこうだ、これは意味はあるんだというお話を承っておりますので、その発言の内容の直接の話はわかりませんが、私が聞いたところでは、まああってもなくてもいい、あっても決して悪いことではないという御意見だと思います。我妻先生の御意見は、あったほうがいい、不宗全なものではあるが、あったほうがいい、これを基礎にしてやはり発展をさせていくという御意見だと聞いておりますが、私自身もこの法律は不完全なものでございます、はっきり申し上げて不完全で、決して満足なものではございませんが、いろいろな過程、いまの段階ではこれを出す以外にそれ以外の方法はちょっとなかったということで、その橋頭堡を築くという意味で出したのだということをはっきり申し上げる次第でございます。
#48
○阿部(未)委員 われわれが質問した印象では、役人が大臣に報告した内容とはやはりニュアンスが違います。関田先生は、明らかにこれはないほうがいいんだと言明されました。それから戒能先生は、すでに裁判の進行の中で、無過失については多くの実績が積み重ねられつつある、したがって、この程度のものならばあってもなくても同じだ、これはかなり政府の立場を認めた御発言でございますけれども、そういう内容であります。それから特に我妻先生は、おっしゃるように第一歩としてつくっておいたほうがいいだろう、しかしこれは決して十分なものではない。ですから三人の意見を要約すれば、我妻先生はあったほうがいいだろうと言われたとおっしゃいましたけれども、あとの二人の先生は、これはないほうがいいという結論になる。聞き方によって若干のニュアンスの違いはある。したがって、かりにあってもなくてもいいというまん中の意見をとるにしましても、これはあってもなくてもいいと思われるような法律では意味がないのではないか、どうでしょう。
#49
○大石国務大臣 それは参考人の御意見でありまして、私どもの考えでもございませんし、そのものが直接全部の委員の方々の御意見でもないかもしれませんから、問題はやはり私、皆さん、ここの委員の方々の御判断によることが一番大事だと考えます。
#50
○阿部(未)委員 質問をしておるのは、大臣、判断をするための質問でありますので、したがって、先に判断がありましてそれから質問するのじゃなくて、提案をされた政府の御答弁を聞きながらわれわれが判断をしなければなりませんので、若干の失礼があっても許していただきたいと思います。
 そこでこの三人の先生が一致した意見は、推定規定をのけたことがいけない、この点は一致しておりました。我妻先生は、もし修正を委員の皆さんがおやりになるなら、何はおいても推定規定だけは入れなければならないでしょうという御意見でございました。したがって、この意味においてはほとんどの方の御意見が一致しておるわけです。特に関田先生は、推定規定が抜けた経緯について、きわめて不明朗なものが感ぜられる、国民の声として大臣に率直に聞いていただきたいのですが、一応環境庁がつくった要綱では、推定規定があったのに、なぜ途中でなくなってしまったのかと国民が大きな疑惑を持っておる。この点、さっき政党というおことばもありましたが、若干苦しかろうと思いますが、委員会ですから大臣のお考え方を率直に話してもらいたいと思います。
#51
○大石国務大臣 お話にありましたように、われわれが環境庁においてこの法律案の原案をつくっております場合には、この因果関係の推定の規定も入れるようという考えがございました。しかしその後いろいろな……(阿部(未)委員「そのいろいろが問題ですよ」と呼ぶ)いろいろなというのはいろいろとたくさんありますからたくさん申し上げなければなりませんが、いろいろとわれわれの判断も変わりまして、いろいろな各方面の御意見もお聞きし、いろいろな知恵をおかりしてみました結果、いまの段階ではこれは削ったほうがよろしいという判断をいたしましたので、最終案としてはこれは取り入れておりませんでした。したがいまして、途中のいろいろな法律案の原案をつくる過程におきましては因果関係の推定のことも十分考えましたが、最終的には現段階ではこれが一番よろしいという判断に立ちましてこの原案を出した次第でございます。
#52
○阿部(未)委員 そこがわからない。削ったほうがよろしいとおっしゃる大臣のお考えが私はわからないのですよ。削らざるを得なかったということなのか、あなたは削ったほうがよろしいと思っておられるのか、どっちですか。
#53
○大石国務大臣 それはすべて考え方でございまして、たとえばいろいろな強制的に削らされても削らざるを得なかったと言えましょうし、いろいろなものを考えまして、いろいろなことを思想的に考えましても、この考えが間違っておると言えば自分の判断から削らざるを得なかったということも言えますから、いずれも削らざるを得なかったことは確かでございますが、それはいろいろな自分の考方から判断した次第でございます。
#54
○阿部(未)委員 聞きたいのはそこのところで、せっかく環境庁が国民のためにりっぱな――われわれは必ずしもりっぱとは思いませんけれども、少なくとも因果関係の推定規定まで入った要項を発表しておきながら、なぜそれを削らなければならなかったのだろうか。先ほど申し上げましたように先生方の意見を聞きましても、これだけはぜひ必要な規定であったという点では全く意見が一致しておるわけです。したがって、大臣は率直に国民の前に、私はこう考えたけれども、こういう事情でこうなったということは、やはり政党の外から言えませんか。
#55
○大石国務大臣 いままで申し上げたことでひとつ御判断を願いたいと思います。
#56
○阿部(未)委員 だんだん輝ける長官も光が薄れてくるような気がして心配になるのでございますけれども、ここのところがこの法律では一番大事ではなかったかという気がしますし、また他の意見も、一般の方の意見もそういう意見が強かったわけですから、だから、だれかのおことばですけれども、画竜点睛を欠いたというおことばがありますが、私もそういう気がしてなりません。
 それから、その次にお伺いしたいのですけれども、これはさっき細谷先生からもお話がございましたが、いわゆる健康被害だけに限られておるわけです。しかもこれは健康被害が生じたときになるわけでありますが、特に戒能先生も、公害というものは単に被害者が非常に苦しむだけでなくて、加害者にとっても公害は起こしてならないものだろう、工場そのもの、企業そのものがつぶれるという非常に大きい内容を持っておるんだ、人の健康を害するという状態になったときにはこれはどうしようもないことなんで、やはりその前の段階で公害というものはなくさなければならない。私もそのとおりだと考えますけれども、そうしますと、人の健康にかかわる問題を救済するということについてはもちろん賛成でございますけれども、もう一つその前に、これが起こらない時点で公害を食いとめるという観点から、事前にたとえば公害が発生しそうな場合にはそれを差しとめるとか規制をするとか、そういうものについての無過失の責任を問うことが必要ではなかったか。無過失であるから人の健康に被害が及ぶまではほうっておいてもいいという理屈になると私は思うのですけれども、その前の段階で、たとえ無過失であろうとも食いとめなければならぬ、それが私は環境庁の一番大きい仕事ではなかったか、この法案に盛られなければならない一番大事な点ではなかったかという気がするのですが、どうでしょう。
#57
○大石国務大臣 ただいまの阿部委員の御発言のように、無過失の賠償責任の法律の制度を発動する前に、当然そのような公害をとめるということは一番大事なことでございます。
    〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
まして、そのことがわれわれ環境庁の一番大きな責任だと考えております。ですから私どもはこの公害をできるだけ発生させないように――もちろん、いままでの公害の被害もできるだけりっぱに対処しなければなりませんが、一番大事なことは公害を防止することである。まして健康被害ももちろんそうでございますが、未然に防止することであるというのがわれわれの一番の根本的な方針でございます。そういう意味でわれわれは努力いたしております。ただ、どのような形で無過失賠償責任の法律案がつくられましても、それだけで決して公害を未然に防止することはできません。これは民法の裁判にかけるかかけないかだけの問題でございますから。根本は、私どもが行政をできるだけ強力に進めて公害を未然に防止するということにある。その点、あらゆる努力をするということをはっきり申し上げる次第であります。
#58
○阿部(未)委員 少し内容に触れさせてもらいたいと思いますけれども、先ほど細谷先生からもお話がありましたが、この法律は大気汚染防止法と水質汚濁防止法の一部改正として提案をされております。そこで先ほど細谷先生はいわゆる悪臭などについても適用すべきではなかったか、そういう一部改正を行なうべきではなかったかという御発言があったのですけれども、悪臭の場合にはどうだろうかというのが大臣の御答弁のようでございました。
 ここに「続公害関係法令・解説集」というのがございまして、大臣の御所管の環境庁の大気保全局の企画課長の竹内嘉己さんという方が「推薦のことば」を述べておられます、その本でありますが、その三九四ページの「法律の概要」の「公害の範囲」の中で、「「大気の汚染」と「水質の汚濁」によるものであり、「騒音」、「振動」及び「地盤の沈下」によるものは、それが本来人の健康を害する物質の排出を原因とするものではないため、適用される余地はない。しかし、「悪臭」や「土壌汚染」によるものは、事案によっては、この法律の適用対象となりうることもあろう。」。これは公害罪法でございます。公害罪法がつくられる時点においてすでに悪臭や土壌汚染については公害罪法の責めを負う、公害罪法はもともと人の健康にかかわるものでございますから、人の健康にかかわる公害罪法でその責めが出るのではないかというようなことは想定されておる。したがって、いま損害賠償の問題が提起されるには、ここで想定されておった悪臭や土壌汚染が当然細谷先生もおっしゃるように――人体健康障害あるいは健康の保全の対象にすべきだという細谷先生の御主張は、そのまま環境庁でもそう考えておられたのではないか、私たちはそういう気がするのですが、この辺はどうお考えでありますか。
#59
○大石国務大臣 私も細谷委員並びに阿部委員のお考えに反対でございません。われわれも悪臭は、ものによりましては当然、これはいずれ将来には無過失の制度の中に組み入られれることが必ず出てくると思います。そういうことで考え方は基本的には同じでございます。
#60
○阿部(未)委員 大臣のお考えを承れば、非常にいつも私も賛成になってしまうのですけれども、しかし現実にできた法律の中にはこれは入っていないのですよ。そうでしょう。なぜそういうふうに想定されるものを、しかもこの時点、公害罪法の時点から人体、被害の一つの要素として悪臭が想定をされておったのに、なぜお入れにならなかったのですかということをお伺いしたいのです。
#61
○大石国務大臣 私はいずれはおっしゃるとおりそういうものも入る段階にくるだろうと思いますけれども、いまのような現代の医学の進歩の状態とかその他いろいろなことから考えますと、まだこれを入れ得る段階ではないと考えます。たとえば今後近い将来には生業とか財産、いろいろなそういうものが入ってまいります。私は入れなければならないと思います。それによりまして、むしろそこで、その解説書の中にあまり――地盤沈下とかそういうものもきっと大きな役割りを演ずると私は考えておりますが、いまの医学の状態を考えますと、悪臭の問題をいますぐ二年、三年で取り入れることは、いまの医学の知識で、医学的に判断してまず困難ではなかろうか、そう考えております。しかし私の見通しに反しまして、研究が行なわれまして、悪臭というものに対しても、これほどの健康被害がある、これだという医学の研究が進んでまいればまことにけっこうなことでございますから、当然これは法律の範囲に取り入れたいと思いますけれども、いまの段階ではまだそのような見通しが多少遠いような気がしておるのでございます。
#62
○阿部(未)委員 どうも議論がかみ合わないような気がします。大臣は、理想としてはそうあるべきだけれども、いまはまだ医学的にあるいは科学的にそこまで行っていないんだ、こういうふうに答弁をされて、どうもかみ合わないのですけれども……
#63
○大石国務大臣 それは、因果関係がはっきり規定できないと私は思うのです。いまの状態では、規定どころか推定できない。たとえば極端な例で、あまりひどい例ですが、部屋の中でだれかおならをした。悪臭が出ることは間違いありません。その場合に、健康な人も不愉快な感じを起こしますが、そこで休んでおる人にどのような影響を与えたか、どのような損害を与えたかということは、いまの医学ではとうてい判断できません。悪臭の人間に対する影響は、精神的な影響並びにその精神的なものから肉体的にどのような変化を及ぼすかということによってそういうことが判断されなければなりません。そのような判断は、いまの医学ではとうていできません。医学で判断できないものを裁判が判定することは不可能であります。そういう意味でわれわれは、でき得るものからという考えでおるわけでございますから、決して意見がかみ合わないのではございません。ただ、わけのわからない状態において法律で規制することは、私はやはり慎むべきだと考えておるわけでございます。
#64
○阿部(未)委員 それでは、その次にお伺いしたいのですけれども、水質の汚濁と大気の汚染について一定の物質がきまりまして、それについては無過失の責任が問われるということになりますと、せっかくいま裁判では無過失の責任について明らかな判例が示されておりますのに、これ以外の物質では、被害者のほうが挙証責任を負わされるという心配がないかどうか。ここにきめられた一定の物質以外でかりに健康に対する被害があった場合には、ここにあるものは無過失だけれども、ここに列挙されていないものは今後は被害者のほうがそれを立証しなければならない、立証の責めを負わなければならない心配がないかどうか。この点はどうですか。
#65
○大石国務大臣 法律の形からいえばそうなると思います。しかしそのような物質があるかないか。われわれはそういうものをできるだけ漏れなく拾ってまいりたいと考えております。そこで、細谷委員の御提案にもありましたようなPCBもできるだけ入れなければならぬと思っておりますし、たとえば第二次公害の光化学スモッグのようなものについてもできるだけ早く全体の姿というものを把握して、それに対して裁判所が因果関係を判断できるような形において取り入れたいと思っております。そういうことで努力しておりますので、未知の物質といえどもこれはできるだけ早く判断して入れなければなりません。未知のわからないものはどうしても入れようがないと思うのです。ですから、そういう未知というか新しく出てきた公害物質、われわれが考えもしなかった新しい物質によって公害が、いわゆる健康被害なり物質被害が起こったならば、当然そのものは、その物質が使われた段階からでも、あるいは被害が発生した段階からでも、入れなければならないと私は思いますけれども、いまの段階では、そのようなわからないものを法律の中に取り込むことはできませんので、そのような姿勢で、それは必ず、漏れなくどのような物質もつかまえるという姿勢で進んでまいっておるのでございます。
    〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
#66
○阿部(未)委員 逆に、結果的にある種の物質が人の健康に被害を及ぼした場合に、いま大臣のおっしゃるような未知のある物質が公害として人の健康に被害を及ぼしたという場合に、いまあるものについては無過失の責任を問うことができるけれども、それが未知のものであるがためにその無過失の責任を問うことができなくて、被害者が挙証しなければならない。これによって私はこういう被害を受けましたという立証をしなければならない。ところがいままでの裁判の例から見ますと、無過失賠償などなくても、この挙証責任については大体挙証責任の転換が行なわれてきておる。それが、裁判に歯どめがかかって、これから先は、この一定物質については無過失責任が問われるけれども、新しく生まれた人の健康に被害を及ぼす公害については、被害者のほうに挙証責任が生まれてくるのではないか。せっかくできつつある裁判の慣例がこれによって歯どめを受けないかどうかということを心配するわけです。
#67
○大石国務大臣 その判断につきまして、いま法務省からお答えいたします。
#68
○古館説明員 理論的には、有害物質に取り込まれ、無過失責任とされない限り、それ以外の物質については過失責任であるということで、過失を立証しなければならないということになろうかと思います。しかし現在の裁判の趨勢といたしましては、この民法の制定当時の過失の内容というのは、非常に厳重な過失の立証を求めておるのではございませんでして、事実上無過失責任に非常に近くなっているというふうに言っていいんじゃないかと思います。そういうことを踏まえて考えてみますと、有害物質に取り込まれなかったからといって、裁判の実際におきましてきわめて不利益になるということはないんではないかと思っております。
#69
○阿部(未)委員 そこが私は問題だと思うのですけれども、いままでの裁判でせっかく積み上げられてきて、有害物質については挙証責任が大体加害者側に転換されつつあるのが、いまおっしゃるような今日の裁判の状況になっておる。私が心配するのは、この法律ができて、これこれのものについては挙証責任が転換されて、無過失賠償の責めを負わせますよ、こうなった。したがって、それ以外のものについては今度裁判のほうが歯どめを受けて、挙証責任が被害者側にあるというふうなことになるおそれはないか、いわゆるデメリットが出るのではないか、それを心配するのです。
#70
○古館説明員 私も実務家でございます。私の経験からいたしますと、そういうことはないと信じております。
#71
○阿部(未)委員 ただあなたの経験、一人の経験だけで、全国に何百人と裁判官もおいでになるわけですし、直ちにそれをそう信じて間違いないというわけにはまいらない。これは大臣か何かの明確な議事録なら別として、あなたの経験からして、なぜそういう心配がないのか。すでに申し上げたように、今日の裁判では、無過失損害賠償の法律がなくてもそういうものは積み重ねられておるのに、これができたために、ここに書かれたものは無過失責任を問うけれども、それ以外のものは今度挙証責任が被害者にあるぞという判例が出ないという保証が一体どこにあるのですか。
#72
○古館説明員 いまの判例の趨勢、裁判所の扱いの大勢が、先ほどお話ししましたように事実上無過失の方向に固まってきているというふうに言ってもいいんじゃなかろうかと思います。これはきのうの我妻先生のお話にもございました。こういうふうな情勢のもとで、たまたまある一部分の物質に限定しまして無過失責任にするという法律ができたからといいまして、それがそういった裁判の大勢をくつがえすことになるということは、私にはとうてい理解できないわけでございます。
#73
○阿部(未)委員 裏返していえば、たとえば民法の原則から考えても、無過失の者に責任を課するというようなことは、かつては想定されなかったと私は思うのです。それが今日の社会情勢の中で、判例は明らかに無過失の者にも責任を負わせるということが逐次積み重ねられつつある。これは想定し得なかった問題だろうと私は思います。したがっていまあなたがおっしゃるのも一つの想定であって、今日の裁判の趨勢の中ではそれはないだろうというふうにお考えになっておるかわからぬけれども、司法の問題が、今日御承知のようにいろいろ言われております。修習生の任免の問題とかいろいろ出ておるようでございますけれど、したがって、法律というものは、そういう想定だけで、ないだろうとかあるだろうとかいうことを判断するのは間違いで、明らかにしておくのが法律でなければならない。特に実務家として法をつかさどっているあなたですから、その点にただ私はそう想定しますというだけで法の運用が誤らないものかどうか。どうですか、その点。
#74
○大石国務大臣 私は、法律のむずかしい理屈はわかりませんが、世の中というものは進歩してまいります。法律の判例がいま申しましたように無過失の方向に進んでおる、固まりつつある。それは非常にけっこうなことだと思います。これからの世の中というものはヒューマニズムというものがますます基盤となりまして、やはり人間の権利を守っていく、人権を尊重してまいる方向にまいることは申すまでもありません。裁判といえども私はそうだと思うのです。ですから、いま申しましたように、いままでこの法律で規制してないから、これは逆に考えなければならぬのだという考え方は、少しいまの人間の進歩なり政治の方向から逆行ではないでしょうか。またことにこの法律は、規制してあるもの以外は全部無過失と認めないのだよとは言ってないのです。ですからこの定義は真である、しかし逆も真であるとか真ならずとかということは、私はそうだと思うのです。すぐ裏返しに考えないで、規定してないから今度は逆の方向にいくのだという考えではなくて、規定してなくてもいまの政治の方向なり人間の進歩の方向を考えれば当然同じような方向でいくだろうと私はすなおに考えまして、そういうふうにいきたいと考えておる次第でございます。
#75
○阿部(未)委員 私は大石長官のヒューマニズムについていささかも疑うものではありません。しかし、それは立場がかわった場合、いろいろな見方があると思うのです。たとえば先ほど申し上げました裁判官の再任問題等についても、かつては再任をされない例はなかった。ところが最近は再任をされない例さえ生まれてきております。ですから、やっぱり法というものは可能な限り完全なものにしておくべきではないかという観点からお伺いをしておるわけです。したがって、長官のような方がずっと行政に携わっておられるならば私どもも心配をすることはない。しかし長官がいつまで大臣をやっておられるか保証もないわけでございまして、次に出てくる内閣で環境庁の長官がどなたになるか私はわかりませんが、そのときにこの法律はそういう趣旨ではないぞという考え方が出ないという理屈は成り立たない。現に私は、ことばが過ぎてたいへん申しわけないのですが、長官がお考えになった因果関係の推定規定についても、長官のお考えどおりにはならなかったという経緯等を踏まえて、その場合にやっぱり法は明確に規定をしておかないとそういうおそれがあるのじゃないか、こういう気がするのですが、いかがでしょうか。
#76
○大石国務大臣 それは私の判断でなくて、私は裁判所の判断だと思います。ですから、裁判所がいわゆる任命するとかしないとかの問題とこれとは別だと思います。
 なお、私の次にかりにだれが環境庁長官になりましても、法律をつくったのは私の代でございまして、ここで立案者、提案者がそのような判断、このような解釈であると明確に速記に残してございますから、それを否定することはあとの大臣はできないと思います。そういう意味で私は、なるほど明確に規定しておけば一番いいのですが、いまのわれわれの考え方ではその明確な規定のしかたはなかなかむずかしい。未知のものに対して、出るかもしれないものに対してこうするのだということはなかなか法律で書きにくいものじゃないかと思うのです。そういうことでいまのような考え方を持っておるわけでございます。
#77
○阿部(未)委員 人の健康の問題についてはなかなかおっしゃるように書きにくい問題もあろうかと思います。しかし、たとえば書きいい問題だってあると思うのです。物質に対する損害の場合は無過失でも書かれるはずでございます。その物質に対して被害があった場合に無過失の責任を問わない。いまでの長官の御趣旨からすると、人の健康にかかわる問題の有害物質を列挙することはむずかしいかもしれません。しかし、財産に被害を与えた場合の無過失の責任を問うということは、これは法律としてもでき得る範囲のものだと思うのですが、これもないのです。どうも御趣旨からすると逆のような感じがするのですが、どうですか。
#78
○大石国務大臣 いまの物質につきましては、これは阿部委員のお考えのように、当然無過失の法律の範囲内に入るべきものだと考えております。われわれもそう考えております。ただ、何回もいままで申し上げましたように、この法律は半年余りでつくった法律でございます。したがって、公害のすべてのものを包含しますことは、とうてい一年や二年で実際でき上がりません。しかし、いまの段階では無過失賠償責任制度というものの考え方を取り入れることが大事な時期だ、こう考えておりますので、その基礎をつくるべく、われわれはいま申しましたような、とりあえずいまの範囲ででき得る、まとめ得る範囲内でいま健康被害等について限定したわけでございますが、もちろん来年、再来年と近い将来にはできるだけ財産なり物質なりを取り入れて、それに付随するほかの公害も取り入れなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
#79
○阿部(未)委員 次に関田参考人の意見の中でこういうことが述べられたのです。公害罪にさえ推定規定が入っておるではないか。人を罰する公害罪に推定規定があるのに、無過失損害賠償については推定規定がない。いわゆる懲役なら一年くらいできてもかまわぬけれども、銭は困るぞという精神じゃないか、こういう意見があったのです。いわゆる人を罰する公害罪にさえ推定規定が設けられたのに、無過失損害賠償のほうには推定規定がなくなった。これは大所高所から見ても少し判断を誤っておるではないかという気がするのですが、どうでしょうか。
#80
○大石国務大臣 私も以前日弁連にお招きを受けていろいろと懇談を申し上げたおり、あるいは関田参考人が私のところにお見えになったおりにもそのような御意見を承りました。これにつきまして、私は法律的にどう申し上げていいかわかりませんので、政府委員からお答え申し上げたいと思います。
#81
○古館説明員 刑法におきましては、犯罪の事実を立証する場合には、厳格な証明によらなくちゃならないというたてまえになっております。これは被告人の人権保障という見地からだろうと思います。そこで、厳格な証明によるといいますと、たとえば犯罪要件、事実、これを厳格な証明によって立証するわけでございますけれども、中にはこの犯罪要件、事実を立証することが不可能なことがございます。たとえば公害罪の場合でも、被害を生じさせたという場合には、ある企業が有害物質を川に流したという場合に、その有害物質が被害者に到達したということを立証しなければなりません。ところがよその企業が有害物質を排出して、それがまじったという場合には、その混在している物質の中からいまの被告人の企業の排出物質はこれでございますといって取り出すことは不可能でございます。こういう場合に、立証ができないからといってそのまま放置しておくというのは、これもまた実情に沿わないだろうと思います。そういうことになりますと、これは被告人に不利益にならない合理的な範囲内で、きびしい要件のもとに、そういった直接犯罪を立証しなくても、その前提をなす間接事実、これについて厳格な証明によって立証すればそれでいいじゃないかというふうな考え方も出るだろうと思います。しかし、これはいまの刑事訴訟法のたてまえからいいますとできません、何も規定がない場合に。そういう場合、この公害罪の場合では推定規定を置いたわけでございます。したがって、間接事実を立証することによって直接犯罪事実を推認し、認定していいという規定を置いたわけでございます。ところが民事裁判の場合でございますけれども、この民事裁判の場合につきましては、刑事裁判とたてまえを異にしております。どういうふうに異にしておるかと申しますと、民事訴訟法百八十五条などによりますと、裁判官は権利義務の存否に直接必要な要件、事実、これを認定するにあたりましては自由心証で認定してもよろしいというたてまえになっております。これは刑事と非常に異なっておる点でございます。そういうことから、結局裁判官は権利義務の発生、変更、消滅の要件につきましては、その直接事実については間接事実からそういった直接事実の存否、これを推認し、認定してもいいというふうなたてまえになっておるわけでございます。ですから、たてまえといたしまして、結局民事の裁判では刑事裁判と異なりましてそれほど厳格な証明は要らない、つまり法律の規定がなくても、自由心証あるいは経験法則によりまして裁判官は間接事実から直接事実を推認し、認定してもいいというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、一般論からいたしますと、民事の場合には刑事の場合と違いまして、結局事実上の推定によりまして直接事実を認定することができるということから、特に推定規定を置かなくても裁判の扱いとしては別段不都合は起こらないだろうと思うわけでございます。ところで、この間の関田先生のお話、そういう意味では私は非常に理解ができなかったわけでございます。
 さらに関田先生のお話によりますと、結局推定規定がございますと訴訟の迅速に役立つ、それを落としたのは非常に不十分であるという強い御指摘でございます。しかし関田先生の推定についての御理解のしかたは、結局被害者のほうで一応証拠を出せば、加害者のほうで反対の立証をしなければ、被害者の主張が認められるというふうな御理解のしかたなんですね。ところがこの法律上の推定、あるいは事実上の推定といいましても、被害者が証拠を出す、それで被害者の言い分が一応認められた場合に、今度は加害者のほうで反対の証拠を出すというたてまえではございません。被害者、加害者自由に、少なくとも時期におくれない限りは自由に証拠を出せます。証拠を出しまして、裁判官が最後にそういった権利義勢があるかどうかという判断をする際に、そのある要件事実について立証が不十分な場合に、だれに不利益を負わせるかということでいまの推定が問題になるわけでございます。したがいまして、私、関田さんが実務家といたしまして、推定規定がありますと訴訟の迅速に非常に役立つというふうに言われたのが私はどうも理解ができないわけでございます。ただこういう問題はございます。推定規定を置きますとその立証の対象である間接事実、これは特定されます。ですからそういう意味で、争点が特定されるという関係で訴訟の迅速に役立つという意味はあるかと思います。しかし事公害につきまして、これは特に問題は因果関係でございますけれども、この因果関係について、直接これを立証するのは非常に困難だろうと思います。この場合に、これは一般的に言いまして、やはり関接事実を立証することによって直接事実を立証しようとしているわけでございますけれども、その間接事実につきまして、一般的に企業が原因物質を排出した、その汚染経路、到達経路、それから物質と被害者との関係、こういった間接事実、前提事実を立証しようということを、これは法律家であるならばだれでも考えるかと思います。それの立証には努力するわけでございます。そうしますと、いまの因果関係の推定の場合も、推定の対象は大体同じでございます。こういうことになりますと、結局いまの関係では対象物質となる、立証の対象となる間接事実、これは推定規定がなくても、一般に法律家はそれを理解し、大体限定しておる、それについて立証しておるので、そういう場合には事実上の推定によりまして裁判官はその因果関係を認めていくというふうな形になっておりますものですから、推定規定があってもなくても裁判の扱いには変わりがないであろうというふうに私は考えておるわけでございます。
#82
○阿部(未)委員 いまのお話によると、民事の場合には裁判官の自由心証によって間接事実を直接事実に推定していくという経路をたどるから、したがって、推定規定があってもなくても大体同じではないか、そういうような御趣旨に承ったのでございますけれども、そうなれば、私は専門家ではありませんからあまりはっきりはわかりませんけれども、なぜ民法の大家である我妻先生をはじめとして三人の先生方が、もしできるものならば因果関係の推定規定だけは入れるべきであるということをあのように強く主張なさったのか、私は専門家ではありませんから古館さんに向かって法律の論争をしても勝ち目はありませんが、しかしわれわれしろうとから見て、もしいまあなたのおっしゃったようなことであれば、因果関係の推定規定をそれほど強く主張されなくともよかったのではないか、ところが三人のいわば法律の専門家の方々があれだけ強く因果関係の推定規定を入れるべきであると主張されたことに対して、私はその点非常に大きい関心を持ち、あなたのおっしゃったことに直ちに納得をしかねるのでありますが、これは、あのお三方がなぜあれほど因果関係の推定規定を挿入すべきであると強く御主張されたとあなたはお考えになりますか。
#83
○古館説明員 我妻先生につきましては、私は我妻先生は民法の専門家ではございますが、民事訴訟法の専門家ではございませんから、民事訴訟裁判については実務の御経験はないだろうと思います。そういうことで我妻先生はああいうふうな御意見をお述べになったのではなかろうかと思います。しかし、我妻先生にいたしましても、先日の発言の中には、裁判所にやってきた事実上の推定をサポートするにすぎないのだというふうなお話をしておりましたので、これはやはりあってもなくても実害はないということをお述べになったというように私は理解をしております。
#84
○阿部(未)委員 大臣、いま古館参事官とやりとりをしておったのでございますけれども、まあ向こうは専門家、私は専門家ではございませんが、ただ、申し上げましたように法律についての専門家の方々がそれぞれ推定規定があるべきだということをお述べになりましたし、また環境庁としても、長官は最初の要綱では推定規定が必要だというふうにお考えになって要綱を発表ざれたものと思うわけでありますけれども、このやりとりを聞いて長官としてはどうお考えになりますか。
#85
○大石国務大臣 先ほど申し上げましたように、おとといの参考人のお話を私は直接お聞きできませんでしたので、それについてとやかく申し上げる資格はないかと思いますけれども、私はこの法律をつくりますまでにはずっと我妻榮先生の御指導をいただいてまいりましたので、全部御相談をいたしてまいりました。その場合に我妻先生はあの規定はあってもなくてもよろしいということを何回もはっきり申しました。しかし私は、あってもなくてもいいものなら書くほうがいいというふうに思いましたので、これは入れたほうがいいと判断をしたわけであります。しかし、そう思ったのでありますが、その後最終案としてこの推定の規定をとりましたので、あとでまた我妻先生にこのことについて御意見を伺いましたら、ただ私が一番心配したことは、証人申請等によって裁判を長引かせられるおそれがあるのだ。ところが今度名古屋高裁の金沢支部ですか、イタイイタイ病の裁判で裁判長がはっきりと証人の申請を打ち切った、そういう先例をつくった、ああいうことを見ると、もう無制限に証人申請をすることによって裁判を遅延させられるおそれはなくなった、そういう判例がりっぱにできたのでありますから、もうそういう心配はなくなった、それでこれは私は何とも思わないという御意見をいままで聞いておりますので、我妻先生は、これは私が直接聞いたわけではありませんが、そんな必ずしも全面的になければならぬというお考えではなかろうかと私は思います。
 それから関田さんは同じく、確かに推定の規定はこれは置いてほしいということを、私に何べんも要望されました。戒能先生は、こんな法律はあってもなくてもいいんだということで、別に推定の規定についての御意向は、どうこうということはないだろうと思うのです。そういうことではないかと私は考えておる次第でございます。
#86
○阿部(未)委員 それではいまのような論争になってきますと、私はもう少し政治的な背景がありまして、事長官の志と違って、推定規定が削除をされたというふうに、率直に言って理解をしておったわけです。しかし、いまのお話によりますと、長官にしても、参事官にしても、そのお話は、あってもなくても同じことなんだ、こういうことになってくるわけです。私の認識と、だいぶ違ってくると思うのです。結論を急ぎますが、それでは後日法律の改正が行なわれる場合に、長官としては、できるならば推定規定を入れるべきだとお考えですか。いまのお話では、あってもなくてもいいという根拠に立って、もうその必要はないとお考えですか。
#87
○大石国務大臣 私は、前の、いつかの予算委員会におきまして、いま出ていかれました島本虎三委員の御質問がありまして、おまえはこの法律案に政治生命をかけるかという御質問がございました。私は、あまり政治家として公に、政治生命をかけるとかかけないとか、そんなことを言うのはきらいなんですけれども、私はそういう御質問でありましたので、ついそのとおりでございますと申しました。私は、いまでもそう思っております。この法律案を通し得ないならば、提案し得ないならば、私は当然やめるつもりでおります。それで、これを削ることにわれわれも方針をきめました。その場合に、削ったことによってこの法律案が意味のないものになったんだろうか、どうだろうか。そうなら私は当然、これは提案しない、私の責任において提案しない、私はやめるという考えを持っておりました。いろいろ判断いたしましたが、あの規定はなくとも、この法律は出す価値がある、一つの将来の環境保全の総合化を期する前提としての橋頭塗にはなり得ると判断いたしました。そう考えまして、私はやめませんで、削ったわけでございます。私はどういう意味であれを入れたかと申しますと、法律のことは、詳しいことはわかりませんですが、みな法律の専門家からお聞きしたわけでありますが、いまのようにあったほうがいい。第一、私は非常にかっこういいと思います。そういう意味では一般の世間に対して、法律というものは、これはいい法律だと尊重してもらうことが、政治的に意味があると思うのです。そういう意味で、かっこうがいいということもありますので、これを入れました。
 実はあとから、みんなからあれを入れたらどうかという相談があって、こういう二つの意見がありました。こういう入れるのと、入れないのとございますが、入れても入れなくても結果的にはそう大きな違いはありませんという報告を受けておりますので、私はそれでは入れなさいということを申したんですが、私はそういう意味で、取られても必ずしもこの法律に大きな欠点を残したとは思いません。しかし皆さまの御趣旨で、かようにかりに修正ができますならば、私は一応かっこういいと思いますし、喜んでそれを受けますけれども、これがないからといって、この法律案が価値のないものだとは絶対考えておりません。
#88
○阿部(未)委員 もう一言、言ってもらいたいと思うのです。将来この法律を改定するような場合があった場合には、長官は挿入をされる御意思がありますか、ありませんか、承りたい。
#89
○大石国務大臣 民法というものは、いろいろな判例とか判断がだんだん積み重なって、初めてそれがりっぱな法律の形になっていくということでございますから、こういう判例が大体方向が確定したと思いますけれども、さらに幾つかの判例が重なりまして、そういう方向になった場合には、この因果関係の推定の規定も当然入るということになっていくんじゃないでしょうかと、私は考えます。
#90
○阿部(未)委員 因果関係につきまして、もう一つだけお伺いいたしますが、長官はかっこうがいい、形がいいということなんですが、トカゲのしっぽというものは切れたときに、形だけが悪くなるものでしょうか、からだに若干の影響があるものでしょうか。
#91
○大石国務大臣 トカゲのしっぽとわれわれ人間の手足とは意味が違います。ですから、しっぽを切れば多少かっこうは悪くなりますが、しかし生命には関係ありません。直ちにあれは再生してまいります。
#92
○阿部(未)委員 それをいまお伺いしたのは、我妻先生がそれをおっしゃったんです。推定規定のところで、トカゲのしっぽぐらいは切られても本体は残すべきだというのがこの法律をつくった考え方じゃないか、我妻先生がそういう例をとられたので、私はトカゲのしっぽというのはかっこうだけのものだろうか、影響があるものだろうかとお伺いしたんですが、私どもはそうしますと、よく新聞で総理大臣が大臣の首を切ったときに、トカゲのしっぽを切ったということばを使いますが、あれはそういう形のものになりますか。
#93
○大石国務大臣 あまり政治の批判をしたくありませんが、いわゆる新聞で出ております政治上のトカゲを切った場合と我妻先生のトカゲを切った場合のたとえでは、我妻先生のたとえのほうがずっといわゆる生命とかそういうものに対する影響は少ない、そう考えます。
#94
○阿部(未)委員 それでは次ですが、同じく民法の我妻先生からお伺いしたんですけれども、刑法の場合には遡及して適用するということについては非常に厳格な規定があるし、なければならぬ。しかし民法の場合には、すでに遡及をして適用をするという事例はかなりある、幾つかの例をあげておられました。そういう意味合いから、先ほども細谷委員から御意見がありましたから、私はそのことに多くを触れようとは思いませんが、これが遡及をしないということになりますと、先ほどの例もございましたように、非常に多くの問題を残すような気がしますし、また今日まで積み上げられてきた裁判にも影響を与えるんじゃないかという気がします。これは専門家のどなたからでもけっこうですが、この法律が遡及しないということについて影響がないかどうか、ちょっとお伺いしたいと思うんです。
#95
○古館説明員 裁判に、遡及の規定があるのとないのとでは、影響するかという御質問でございますけれども、それはやはり非常に違うだろうと思います。ただ、この法案に遡及効を設けることがどうなのかという問題でございます。この問題につきましては、我妻先生も、民法の場合には刑法の場合とは違うということを発言されました。しかし我妻先生のその発言は、その法律によってまた刑その他いろいろなことを考えなくちゃならないということを前提に置いての発言だろうと思います。
 そこで、たとえば関田弁護士もこの間おっしゃっておられましたけれども、民法の領域には同じように遡及してもいいんだという御趣旨で借地法の例をお出しになりました。しかし私はあのお話を聞きまして、非常に奇異な感じを持ちました。といいますのは、関田弁護士は、例の民法の借地法の経過措置の六項の本文だけをお読みになりました。といいますのは、「この法律による改正後の規定は、各改正規定の施行前に生じた事項にも適用する。」これをお読みになりまして、借地法でも遡及効を認めておるじゃないかというお話をなすったわけでございます。ところが、ここにはただし書きがございます。「ただし、改正前の規定により生じた効力を妨げない。」という規定がございます。ですから、これは遡及しましても、既存の権利関係は従前どおりという趣旨でございます。したがいまして、相当限定はついてございます。
 それからさらに途中の問題がございます。たとえば民法のこの改正法の施行前に増額請求した場合にはどうなるんだという問題がございます。この場合にも、従前の例によるというのが七項でございます。こういうふうに相当の制限がされてございます。
 そうしますと、遡及する場合はどうかといいますと、たとえば従来の施行前の借地契約関係につきまして、それが周囲が従来は防火地域でなかったところが防火地域になったというようなところについて、八条の二という新しい規定が設けられたわけでございますね。こういったものについては、施行前の賃貸借契約についても適用するということでございます。したがいまして、民法の場合に刑法と違って、まあ、遡及させる例もございますけれども、少なくとも既存の権利関係はこれは保護しようということを非常に考慮しておるということに注意しなくちゃならないだろうと思います。その関係について、たとえばいまの政府案で遡及させなかった理由で、私の理解しているところによりますと、結局は民法は過失責任をとっております。つまり、民法の不法行為におきましては、加害者が他人に損害を与えたという場合には故意、過失がなければならない、いわゆる過失主義の考え方をとっております。これは言い直しますと、結局他人に損害が発生しても、加害者に故意、過失がない以上――故意、過失の内容が問題ですけれども、たてまえといたしまして故意、過失がない以上は損害賠償責任を負わない、その限度で自由に活動できるということで活動の自由を保障しているわけでございます。そういうことで社会秩序は維持されてきておるということでございます。それを、この法を遡及させるといいますと、そういった法的安定性をくつがえして社会秩序を混乱させるということはいかがなものであろうかということでございます。
 その関係で、これは被害者の関係でも、この法案が一番欠点なのは、すでに発生した被害者、死亡者あるいは病気になった人についてこれが適用されないのは非常に不満であるというふうな発言をこの間なさっておりました。なるほど、この法案によりますと、そういう場合は原則として救済されません。しかしこの関係は野党三党の法案でも同じ問題があり得ようと思います。といいますのは、野党三党の附則二項でも結局遡及して適用される場合はどういう場合かといいますと、損害がこの法律の施行後に発生した場合には、行為が過去にあっても、それについては適用するということでございます。しかしいまの川崎ですか、十何人なくなられたということですけれども、この方々はもうすでに損害が発生しているわけでございます。ですからここでもそういう問題は同じように起きるわけでございます。しかしこれも、結局いまの法秩序、法的安定性を維持しようということでこういう配慮がなされたのじゃないかというふうに理解しております。
#96
○阿部(未)委員 長官にお伺いしたいのです。いま法的な見解については承ったのですが、少なくともこの法律は従来の、無過失を問わない故意、過失の場合にのみその責めを負うというものを改めて、無過失であろうとも公害については責めを負わせますぞという法律であるわけです。これはあくまでも、特に人の健康に害を及ぼす場合について、これは重要だからという趣旨があるわけですが、その重要なものがいまの民法の法秩序ということのために、すでに病気になっておる方々について原則的には適用されないという形になってくることについては、この法律の価値が半減されるというふうに私は思うのですが、遡及適用ができないという点について長官はどうお考えですか。
#97
○大石国務大臣 いまの阿部委員のお話並びに古館説明員の話を聞きましても、確かにいままでの悲惨な目にあっておられる被害者の方々に対して適用しにくいということは、私もこれは非常にさびしいと思います。しかしいまのような法的なものの考え方からすると――遡及したほうがよろしいが、法秩序は守らなければならないということはやむを得ないと思います。ですから将来においてはこうことが起こらないようにする一つの大きな戒めにもなると思いますので決してむだではございませんし、また過去の被害者に対しては、この法とは直接関係ありませんけれども、今度はこの法律に関連のある大事な費用負担の問題が出てまいります。これをどのように補償するか、その場合に一緒に合わせ考えていって広い範囲にしまして、そうして前の方々に対してもそのようにできるように、直接の影響でありませんけれども、間接的には役立つものにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
#98
○阿部(未)委員 それからいまの不遡及の原則について、もう一つ関田さんはこういうことを言われましたね。特に、この要綱の五項で「本法は、昭和四十七年十月一日から施行し、施行前の有害な物質の排出による損害については、なお従前の例によることとすること。」と、要らぬことまで書いてあるから、これがあるためにまた、いま進行中の裁判に影響を与えるのではないかということをお述べになったのですが、これがあるために何か影響があるかないか。関田さんはそうおっしゃったのですが、どうですか。
#99
○古館説明員 その点につきまして、私、関田先生のお話、どうも理解できないわけでございます。ですから、これがあるからといいまして裁判に影響することではなかろうと思います。ただ、ないといいましても、結局これが――まあ、さかのぼると書いてありますとそれはさかのぼるということで適用される、これでさかのぼらないと書いてありますからさかのばらないと判断するということになると、違いはありますけれども、私、どういう趣旨か理解できませんでした。
#100
○阿部(未)委員 私もあまりはっきりしなかったのでいま伺ってみたのです。要らぬものがあるから進行中の裁判に影響があるのじゃないかというのが大体先生の御発言の趣旨だったのですけれども、いまの点については、参事官は、これは関係はない、早くいえばあってもなくても同じだ、トカゲのしっぽだということになるわけですね。――かっこうの問題でしょう。
#101
○古館説明員 これはいまの施行期日、この法律は四十七年十月一日から施行するというように書いてございます。そうしますと、一般的法律解釈といたしますると、この後に有害物質の排出で損害を生じたという場合には、まずこれに当たることは間違いないだろうと思います。この法律が適用されることは間違いないだろう。
 しかし次に、今度は損害は施行後、行為は施行前という場合どうなんだという点は、やはり一項では当然にその辺ははっきりしないわけでございます。ですから、そこを一応念のためにはっきりしょうということで、二項の規定が設けられたというように理解しております。
#102
○阿部(未)委員 それからもう一点お伺いしたいのですが、これはさっき細谷先生からもお話があって、私も非常に奇異に感じたのですけれども、二十五条の二項で、新たに健康被害物質となった場合は、健康被害物質となったときからしか無過失の責任は負わない。そうすると、PCBならPCBがあらためて有害の物質に指定をされたら、それまでにPCBがまき散らした害については無過失の責任はない、こういうことになるわけですか。この法にいう無過失責任はない……。
#103
○古館説明員 そのとおりと理解しております。
#104
○阿部(未)委員 いまのお話、さっき細谷先生からもあったのですが、そうなるとこれから新しく有害物質として認定をされていくものも、その前のものについては一切この無過失責任はないということになってきますと、PCBの被害はさっきおっしゃったように、法の施行後に生じた、原因はその前にあった、無過失責任はない、こうなって、これまたこの法律はずいぶんしり抜けになってくるおそれがあるんじゃないですか。
#105
○古館説明員 まあ、形式的に、抽象的にいいますとそういうふうに言えるかもしれませんけれども、しかしこれは先ほどお話しいたしましたように、いまの裁判の結局過失の認定のしかた、これから見ますと、そう特段に違った扱いはないだろうというように考えています。
#106
○阿部(未)委員 大体質問をしたい点については終わりましたけれども、先ほど来申し上げましたように、私どもは専門家ではありません。専門家ではありませんけれども、参考人の意見等を徴しながら、やはりまだこの法律については何か多くの不足した点があるように考えられます。したがって、できるならば政府与野党が一致をして、ほんとうに国民の期待に沿えるような法律にしていただくことを期待をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
#107
○田中委員長 阿部君の質疑は終わりました。
 次に岡本富夫君。
#108
○岡本委員 私がきょう出席要求をしておる海上保安庁長官、来ておりますか。
#109
○田中委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#110
○田中委員長 速記を始めて。
#111
○岡本委員 やはり重要な法案ですから、この法案に対してのいろんな角度から現実に立って審議をしなければ、ただ法律の上で論争してみても結局何にもならない、こういうようなことから、実は参考人にも来ていただいて、そしていろいろの意見を聞いたわけです。したがって、委員部のほうに、私はどうしても海上保安庁の責任者、長官、もしくは一歩譲って次長をすぐ呼んでいただかないと、質疑が非常にしにくいわけです。その点、委員長のほうでどうかひとつ御配慮をお願いいたします。したがって、それまで、時間が非常に制約されておりますので、あとは残すとしましても、一、二点ちょっと聞いておきたいことがございます。
 それは、まず最近の公害の被害者の姿を見ておりますと、相当次から次へと被害が出ておるにもかかわらず、四日市にしましても、あるいは川崎にしましても、あるいは長崎にしましても、やはり公害が出ておる。大気汚染が出ておる。ということは、ますます被害が甚大になっていくということで、私ども野党三党では、本法案を審議するにあたって、また本法案の対案として、差止請求、あるいはまた行政官庁が非常に怠慢であるというのか、あるいはまたどうであるのか、規制をしないという場合におけるところの規制措置、こういうものを行なわなければならないと思うのでありますが、本法案の提出された趣旨が、公害にかかる被害者の保護の重要性にかんがみ、そうした人たちを救うための法案であるということでありますので、この点についての御意見をまず長官からお聞きしたいと思います。
#112
○大石国務大臣 差止請求権につきましては、私どもはいま急に取り入れたいと考えておりません。それはすでにそれに近い、いろいろなそれを制約する制度もございますし、また、環境庁の仕事は公害を防止することに一番重点がございますので、そのような方向で努力してまいれば、その規制がなくても私は十分やり得ると考えます。
#113
○岡本委員 その点についてちょっと事実をあげてあとで説明しますので、これは海上保安庁に来ていただかぬとその事実がはっきりしないわけです。
 その前に、長官、実はこれはある新聞の報道を見たのですが、航空機のテレビ電波障害、こういうことに対して、その被害を受けている人たちは受信料を払う必要はないのだ、航空機の会社で払うのが普通なんだ、こういうような見解を発表されたように出ておるのですが、これはほんとうでしょうか。
#114
○大石国務大臣 大体それに近いことを申しております。私は、航空機のいろいろな障害によってテレビがろくに見られないとすれば、それは金を払う必要はないと思うのです。完全なものを供給して初めてその受信料を払えばいいのですから、それはだれが払うか、その被害者自身は受信料を払う必要はないと考えております。
#115
○田中委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#116
○田中委員長 では、速記を始めてください。
#117
○岡本委員 そうすると、あなたは長官にかわって答弁ができるかどうかは疑問でありますが、昨年十二月、兵庫県淡路島の南淡町福良において養殖ハマチが約五万尾一度に死んだ事件がございます。これにつきまして、実は本年の一月の初めに私は長官室へ参りまして、それから次長室に参りまして、この問題は非常に重大な事件であるから、調査を依頼いたしました。御返事いたしましょうということであったが、今日、五カ月たってもその返答がない。これはどうなったのか、ひとつその調査結果をお聞きしたいのですが、いかがですか。
#118
○貞廣説明員 御報告いたします。
 事件の概要はもうよろしゅうございましょうか。
#119
○岡本委員 全部報告してください。
#120
○貞廣説明員 事件を知りました海上保安庁では、次のようなことをいたしました。
 もともとこの福良港には、福良の漁業協同組合所属の十三の業者が、約二十万尾のハマチを養殖しております。たまたま昨年の十一月二十二日ごろから、この養殖ハマチのえつけが悪くなったというふうなきざしがございまして、二十六日から二十七日にかけて二、三万尾が死亡いたしました。業界のほうではこの養殖網を湾外に移動させて被害の防止につとめましたけれども、十二月九日までに約四万一千尾が死亡いたしました。死亡原因につきましては、三重県の大学の窪田教授は、アルカリ性物質の流入による中毒死である、このように判定しておりまするけれども、県側は原因が明らかでない、このように申しております。なお、現場付近の港内におきましては、高潮対策といたしまして防潮堤工事が行なわれております。これは従来から行なわれ今後も引き続き行なわれるものでございますが、この種の事件はいままで発生しておりませんので、関連性の究明ができなかったのであります。
 ちなみに海上保安庁といたしましては、この情報を入手いたしまして直ちにその付近海域の水質の調査、それからあるいは陸上から廃液が流れてくるかということで、臨海工場からの廃液の調査もいたしましたけれども、異常はございません。それから先ほど申し上げました高潮防潮堤工事との関連につきまして、県側それから漁業組合側からいろいろと事情を聴取いたしましたけれども、一カ月もたっておったあとでございましたので、この工事との関連性を究明することができないままになっております。
 以上、おくれましたけれども御報告申し上げます。
#121
○岡本委員 要するに海上保安庁では港則法に基づいていろいろと取り締まりを、あるいは調査をしようとしてもできない。どこに原因があるかという点を私調査いたしましたら、第五管区海上保安本部あるいは神戸海上保安部、これは先般大企業である神戸製鋼の重油のたれ流し、こういうことで非常に世間を騒がして調査をしたことがありますが、その公害をたれ流したことのある神戸製鋼にこともあろうに職員四所帯の宿舎を依頼しておるのです。公害をたれ流してそうして検挙したことのある神戸製鋼に対して職員の住宅をお願しておる。神戸製鋼のほうでは月二万円のマンションを借りまして、千二百円から千六百円の割りで海上保安庁に貸しておる。こういうことがあっては、これは取り締まりができないのでないか。岡村第五管区本部の次長の話が出ておりますけれども、取り締まりと住宅を借りるのは別だ、こういうことを言いますけれども、そうした取り締まり官が、取り締まらなければならない会社の住宅に入って、二万円からするようなところを千二百円から千六百円しか払わないで取り締まりができるかどうか。これはひとつ理事諸公も聞いておいていただきたいと思うのです。
 こういう例を考えますと、長官、先ほどお答えいただいたように、規制しあるいは取り締まるということが、いまの行政官庁においてできないんじゃないか。こういうときには、やはりどうしても住民として差止請求、あるいはまた規制措置請求、これをやらなければたまらない、こういうことになってくるのではないかと思うのでございますが、それについてひとつお聞きしたいと思います。
#122
○貞廣説明員 ただいまのお話は、いままで残念ながら承知しておりません。もしそういうことがあるならば、きわめて遺憾であると思いますので、私ども調査したいと思います。
#123
○大石国務大臣 いま聞いておりましたが、よく内容がわかりません。私はどういうことかよく実態も知りませんし、内容がわかりませんので、お答えしようがございませんので、ひとつこの辺で……。
#124
○岡本委員 内容がわからないというので、もう一度質問いたします。また実情をお話しいたしますから、長官聞いてくださいよ。
 実は海上保安庁の第五管区海上保安本部、これは神戸にある。そこの職員の住宅、取り締まらなければならぬ所長以下四名の住宅を取締まり対象の神戸製鋼、これはかって重油をたれ流して非常に問題になって調査したことがある会社です。ここに住宅を依頼しておるのです。会社のほうでは二万円の三DKのマンションを借りまして海上保安庁の職員に千二百円から千六百円の家賃で貸しておるということになりますと、取り締まり官がお世話になっておる会社の取締まりは、非常に人情的にいってもむずかしいのではないか、こういうふうにも考えられるのですが、この点についておわかりいただいたでしょうか。
#125
○大石国務大臣 私はよくわかりません。どういう意味があるか、そういうことはよくわかりません。借りていいか悪いか、実態もわかりません。どういう事情があるか、詳しい事情がわかりませんので、これがいいか悪いか判断がつきませんので、はなはだ恐縮ですが、質問にお答えすることもできません。何のことかよくわかりません。どのような事情があるか、どのような場合には人情と――だれでも人情はありますが、人情と行政のいろいろな責任問題は別でございますから、当然海上保安庁ではそういうことを感じておると思います。実態がわかりませんので、いま批判できません。
#126
○岡本委員 これは長官、実は海上保安庁の状態を調べますと、予算がないということであります。播磨港、加古川ですね、これは田中委員長のすぐ近所ですが、ここが重要港になっておりまして、そこへ派遣するところの海上保安庁の職員を所長以下何名か置かなければならぬ。ところがその住宅の予算がない。しかたがないので、かつて公害で、重油をたれ流してなにされたところの神戸製鋼に住宅を依頼した、こういうことです。事情というのはそういうことなんです。ですからお答えにくいかもわかりませんけれども、ぼくは海上保安庁が、いまそんなことは聞いておりませんということではどうも納得いかないし、もう一つ突っ込んでみたいことは、そういうことで、これはいつだったか、公害企業から政治献金を受けていかないじゃないかというような話があったくらい。しかも、今度は住宅をお世話願う。二万円するものを千二百円から千六百円の家賃で入らしてもらって、それで取り締まっておる。これでは職員の皆さんに過酷ではないかと私は思うのです。そういうことを考えますと、どうしてもこの公害の被害者の人たちを救うためには、またひどくならないためには、野党三党の出しているところの差止請求、あるいは行政規制、こういうものがどうしても必要ではないかということにきょうは言っておいて、実例を申し上げておるわけでありますが、この点についてどうもわからないから答弁できないと言われると困るのです。事実そうなんです。長官、そういうことがあったかわからないと言われるなら、もしあったとした場合、やはりこの公害企業を取り締まらなければならぬ人たちが、そこの公害企業のお世話によってマンションに入れてもらっているということになれば、これは取り締まれないのではないか。そこはおわかりになるでしょう。いかがでございますか。
#127
○大石国務大臣 私もお聞きするだけでは、そういう事実があるのかということはわかりますが、それ以外に判断しようもございません。かつて公害の企業であったといっても、それは改心して、りっぱな態度をとれば、いつまでもそのことは責める必要はないと私は思うのです。ですから、私はどういうことか、どういう御趣旨かよくわからないのですが、それが野党三党提出の無過失賠償責任法案とどのような関連があるのかわからないので、御答弁しようがありませんので、ひとつごかんべん願いたいと思う次第でございます。
#128
○岡本委員 私の言うているのは、まだまだ神戸製鋼にはいろいろ問題があるのですけれども、あなたは調査なさらずにりっぱといわれると困るのです。ずいぶんいろいろな問題があるのですけれども、それはさておきまして、そういった公害をたれ流した、要するに前科のある企業に取り締まり官が住宅をお世話になっては、要するにあるいはまだ問題が次に出てくるかもわからない、そのら長官、お答えいただけますか。
#129
○大石国務大臣 どうもわかりませんが、私は別に神戸製鋼がいまりっぱであるとかどうとか言ったことはありません。過去にどのような経歴があろうと、立ち直っておればけっこうだという話を申し上げたのであります。
 それからなるほど一般的に考えれば、取り締まるべき者が、取り締まらるべき者のお世話を受けておるということでは、これはなるほどちょっとぐあいが悪い面があるかもしれません。その点においてはそう思いますということだけであります。
#130
○田中委員長 速記をとめて。
    〔速記中止〕
#131
○田中委員長 速記を始めて。
#132
○岡本委員 委員長の配慮、たいへん感謝いたしております。そこで本会議が近づきましたので、本日はこの程度にしまして、あとそういった事実をはっきり報告いただいて、質問を続けたいと思います。ありがとうございました。
#133
○田中委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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