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1971/06/08 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第26号
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1971/06/08 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第26号

#1
第068回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第26号
昭和四十七年六月八日(木曜日)
    午前十一時四十一分開議
 出席委員
   委員長 田中 武夫君
   理事 始関 伊平君 理事 林  義郎君
   理事 藤波 孝生君 理事 山本 幸雄君
   理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君
   理事 西田 八郎君
      大村 襄治君    梶山 静六君
      久保田円次君    佐藤 守良君
      中村 拓道君    羽田  孜君
      葉梨 信行君    橋本龍太郎君
      村田敬次郎君    森下 元晴君
      阿部未喜男君    加藤 清二君
      土井たか子君    古寺  宏君
      栗山 礼行君    青柳 盛雄君
      米原  昶君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)
        (環境庁長官事
        務代理)    木内 四郎君
 出席政府委員
        中央公害審査委
        員会事務局長  川村 皓章君
        環境政務次官  小澤 太郎君
        環境庁企画調整
        局長      船後 正道君
        食糧庁長官   亀長 友義君
        食糧庁次長   中村健次郎君
        通商産業省公害
        保安局長    久良知章悟君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      古館 清吾君
        大蔵省主計局主
        計官      宮下 創平君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月八日
 辞任         補欠選任
  伊東 正義君     森下 元晴君
  小島 徹三君     中村 拓道君
  中島源太郎君     大村 襄治君
  浜田 幸一君     佐藤 守良君
  松本 十郎君     羽田  孜君
  合沢  栄君     栗山 礼行君
  米原  昶君     青柳 盛雄君
同日
 辞任         補欠選任
  大村 襄治君     中島源太郎君
  佐藤 守良君     浜田 幸一君
  中村 拓道君     小島 徹三君
  羽田  孜君     松本 十郎君
  森下 元晴君     伊東 正義君
  栗山 礼行君     合沢  栄君
  青柳 盛雄君     米原  昶君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改
 正する法律案(内閣提出第九七号)
 公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関
 する法律案(島本虎三君外七名提出、衆法第一
 四号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案並びに島本虎三君外七名提出、公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸雄君。
#3
○山本(幸雄)委員 先般環境白書が公表されまして、最近におけるわが国の環境汚染の現状を取り上げております中で、日本のこの狭い国土の中で、国土資源というものを乱費し、経済成長が非常に早いテンポで来たけれども、日本ほど公害の蔓延の早かった国も珍しい、あるいはまた被害者、特に健康被害を声を大にして叫ばなければならないというそういう国も珍しい、こういうことであります。しかし、公害は何といっても起こらないようにするということが第一義であらなければならない。しかし、同時に、不幸にしてもし被害者が出たならば、その被害者救済を迅速適確にやるという必要が起こってまいる。わが国の現行制度では医療救済の問題を取り上げて現在実施をしておるわけでありますけれども、なお四大裁判といわれたような大きな公害裁判が提起をされておることも御承知のとおりです。そこで、こういう客観的な情勢を踏まえて、今回民法の原則である過失主義に対する例外として、無過失賠償責任に関する法制を、二つの法律案の一部改正としてお出しになった、また野党の対案も出てきた、こういうことであります。しかし、これは行政的な内容を持った法律というよりは、裁判の基準になるという、裁判の順序となるそういう法律であるだけに、いわゆる一般の法律よりはより慎重な態度でなければならぬ。また、ひとつりっぱな立法をして裁判所の基準としてもらう、そういう立法府の大きな責任が私はあると思うのです。こういういままでの日本の法制の中でも一つのたいへん画期的な新しい法制を、新しい情勢を踏まえてやるという段階であります。そこで、この法律案について、提案理由の説明が大石環境庁長官から述べられ、その後同僚委員の質問に答えて、今回のこの法律は非常に不完全な法律だ、こういうことを長官自身が認めておられる。非常に、ということばが入っておるというくらいに不完全な法律だ、こういうお話であります。そうしたら、ではどうしてそういう不完全な法律をお出しになったのか、こういうことを伺ってみますと、一つは法律案作成に非常に手間がかかった。自分は就任以来八カ月にしかなならい。また第二の理由としては、各省との話し合いに非常にひまがかかった。たとえば健康被害に限っておるけれども、財産被害を入れようとしたならば、各省との法律調整に一、二年は少なくもかかるであろう。だから土台をつくる意味でつくったのだ、こういうお答えであったわけでありますが、こういう重要な法律案を非常に不完全なままで出すについて、時間が足りなかった、時間がなかったから出したんだというだけでは少し説得力が足りないのではないか。それだけではなかなか納得がまいらないように私は思うのでありますが、きょうは長官がいま飛行機で帰国の途中でありましょうが、環境庁として政務次官、その点の御見解をひとつ伺いたい。
#4
○小澤(太)政府委員 長官にかわってお答えいたしますが、そのような御答弁を大石長官がいたしたということも私は伺っております。そういうのは一つの法案をつくる場合の政府部内の苦心があったということを言われる意味だ、こう思います。法案そのものは、現時点におきましては私は最も妥当なものだとして提案いたしたつもりでございます。もちろん、その過程においていろいろ困難な問題がございました。
 それからもう一つは、現在の公害の状況並びに被害者の状態、さらに裁判所の判断等の状況からいたしまして、一日も早く被害者救済というたてまえから無過失をある程度認めなければならないのではないか、こういう要請がございますので、いろいろ苦心の結果、現時点において最も妥当であるという形で提案をした次第でございます。
#5
○山本(幸雄)委員 いまの次官の御答弁、私はたしかにそういう立場でなければならないと思います。今回のこの立法について、朝野をあげてこの問題に各方面で取り組まれた中で、日本弁護士連合会で試案要綱を一つ出されておる。また学者グループによる公害研究会の一つの提案があります。しかしこれらの民間の方々の御提案の基本的な態度の中にも、たとえば公害研究会の提案の基本的なお考えとしては、政策的あるいは法技術的な見地に加えて、現在実現が必要かつ可能と思われる限度のものを提示して、確実にその実現を求めたい、こういう態度である。またそれを受けて日弁連の試案要綱でも、現実的な配慮を抜きにして理想のみを求めるということは必ずしも得策でない、こういう態度をとっておられると私は聞いております。私は法律が出る場合には、それぞれに社会的なあるいはものによっては経済的なあるいはものによっては文化的な背景というものがなければならぬ、そういうことを考えてくると、いまの政務次官のお話、現時点ではこれが適切妥当と申しますか、そういうものだというお考えだということでありますが、じゃ一体どういう認識に立ってそういうことをいわれておるのか、もう少しその内容について御見解を伺いたい。
#6
○小澤(太)政府委員 いまいろいろお述べになりましたそれぞれの民間その他あるいは法曹等の提案というものがございました。いずれも妥当な考え方を強調いたしております。しかしながら、その内容等についてみますと、いま先生の御指摘のとおり、理想ではあるけれども、直ちに実施し得ない。現実性が乏しいと申しますか、具体化することにいろいろな困難が伴うことがございます。困難は伴いましても、それはやらなければならない、これは当然のことでございます。しかしいま無過失ということで被害者救済の措置をしなければならぬという社会的な要請、また政治的なそういう要求、こういうものにこたえるためには、単に理想的なものだけをつくり上げるためにじんぜん日を費やすというよりも、やはり現時点においてなし得る最大のことをやるというたてまえに立たざるを得ないのでございます。たとえば健康被害から財産被害までということ、こういうことも考えるべき筋合いではございますけれども、さしあたりわれわれが最も重視しなければならぬ健康の問題を取り上げることから入っていくということが現時点においては妥当ではないか、こういうような考えに立っております。その他いろいろ憲法上の議論などもございますけれども、現在の憲法を踏まえた上で、私どもは理論上の問題からも実行し得るものということで、このような法案を用意した次第でございます。
#7
○山本(幸雄)委員 現在のきびしい日本の環境汚染の現状というものの認識の上に立って、社会的な安定あるいは法的な安定という観点、先般参考人として出席された我妻先生も、やはりそういう観点に立って、一つの将来へのステップとしてぜひひとつ成立を望みたい、こういうお話があったように記憶いたします。政府案もあるいは野党案も方向は同じ方向を目ざしておる。一方は西向いて行くし、一方は東向いて走っているんだということでは絶対にない。同じ方向にあり、これを現状の認識あるいはいま申し上げた法的な安定とか社会的な安定、あるいはもう一つ科学的な究明の進みぐあいというようなものも考えて、現状ではこの政府案は最も適当だ、こうお考えになってお出しになったものであろうと私は推察をするわけですけれども、その辺はいかがでしょう。
#8
○小澤(太)政府委員 全くそのとおりであります。
#9
○山本(幸雄)委員 そこで、無過失責任をとる以上、そう広い範囲内の無過失責任を認めるわけにはいかない。要するに、救済の必要性とかあるいは緊急性というものをひとつ土台にして考え方をきめるべきであろう。しかしその場合にある程度限定があることはやむを得ないといたしましても、限定は明確でなければならない。と同時に、もしそれそういう限定をする以上は、その限定を逐次解消していくという真摯な努力が政府側にもなくてはならないのではないか。そういう限定をだんだんとはずしていく、そういう努力というものが必要ではないだろうか。そういう努力を怠ってはならない、私はこう思うのであります。
 そこで、今回の政府案の内容については、もうすでにしばしば質疑で出ておりまするように、第一点は健康被害に限定をしておる。財産被害に及んでいないのは、つまり財産被害というものは明確ではない、なかなか明確にできない、こういうお答えのようであったのですが、しからば目ざす明確化というそういう階段、あるいはまたその明確にしていくという方策というもの、ことにいまいろいろな被害についての救済、物的被害の救済についての要請がある中で、だんだんに明確にしていくんだというそういう方策というものは、一体政府としてはどうお考えになっておるのか、その点を伺いたい。
#10
○船後政府委員 財産被害につきましても、今後これを無過失賠償責任の対象とすることにつきましては、検討を進めていかねばならぬものでございますが、そういった場合に問題点といたしましては、広く物的被害というものに広げるか、もしくは物的被害の中でもいわゆる漁業あるいは農業といったような生業被害に限るか、そういった生業被害というものの範囲をどのように考えるか、今後かなり検討すべき問題が残っておると思います。
 さらに物的な被害につきまして広範に考えてまいりますと、これは因果関係の問題かもしれませんが、原因と結果というものが、不特定多数の排出源があった場合には非常にむずかしいという問題が生ずるわけでございますので、やはりこういった問題につきましては一つの賠償制度といったものとの関連においてもさらに検討すべき問題も残っておるわけでございまして、私どもといたしましては今後の課題としてこういった点を総合的に引き続き検討を進めていく必要があるのではないか、かように考えております。
#11
○山本(幸雄)委員 特に農産物あるいは水産物の被害についての救済の必要であるということの要請が強いわけですが、たとえば赤潮といったようなものを例にとった場合に、じゃ赤潮について一体政府としてどういう御調査、御研究というものをなさっておるのか、またどの程度のところにいけば何とか物的被害のめどといいますか、そういうものがつくか。これはたいへんむずかしい問題かもしれませんが、もし政府内にそういうお考えがあるならそれをひとつ伺いたい。
#12
○船後政府委員 赤潮問題につきましては、これは古くからあった現象ではございますけれども、最近における海域の汚濁の進行に伴いまして非常に頻発いたしております。特に瀬戸内海でございますとかあるいは三河湾のように、半ば閉鎖的な、海流の循環を妨げられておりますようなそういう半閉鎖的な水域で頻発いたしておりますこれの問題につきましては、環境庁といたしましても瀬戸内海の水質汚濁対策等の一環といたしまして、現在その原因の究明ということに取り組んでおるところでございます。最近ようやくわかってまいりましたことは、やはり水質の汚濁、特に窒素、燐といったようなものがこれに関係しておる。さらにこれに種々の気象あるいは海流上の要件が加わってこのような現象を起こすのではないかということになっておりますけれども、なお、それが魚類に及ぼしますところの影響、あるいはそういった原因物質の流入、あるいはそれが海域の中における挙動等につきましては不明の点も残されております。したがいまして、環境庁といたしましては現在そのような発生機序の問題、原因物質の究明の問題、これらの点を水産庁その他の関係省庁とも密接な連絡をとりつつ調査研究を進めておるところでございます。
#13
○山本(幸雄)委員 これはたいへんむずかしい問題ですけれども、しかし取り組まなければならぬ問題であることは間違いないのであります。
 さらにもう一つ、健康被害物質という名前が出てきたわけですけれども、この健康被害物質を新しく追加しなければならないという事態がこれから起こるであろう。現在も列挙主義をとっておりますけれども、やはり追加をしていかなければならないという事態が起こる。現にたとえばPCBについてのなるべくすみやかな措置というものが要求をされておるわけでありますが、PCBについてはだいぶ調査も進んでいるように伺いますが、その他にも、科学技術庁その他とも御連絡の上で研究中のものもあるやに伺うのですけれども、それらについてはあまり詳しいことをきょう伺いません。島本委員に何か一覧表を出すというお話であります。私の言いたいのは、政府部内でそういう科学的な探求といいますか、研究の、ひとつ各省庁と連絡調整の上で、そうした研究体制の組織化ということをぜひやってもらわなければなるまい。これはどこが中心になるのか。科学技術庁が中心になる場合もありましょうし、ものによってはほかの役所が適切であるかもしれない。阿賀野川の水銀事件のときには、厚生省がまず中心になっていろいろ調査研究班をつくったり各省の連絡会議をつくったりして、科学技術庁が見解の取りまとめもやっておられるということであります。そういう組織化をぜひ私はこの際やっていただかなければなるまいと思う。
 同時にもう一つ、この調査研究費というものが現状では十分でないのではないだろうか。科学技術庁に特別研究促進調整費という名前の調査費があるように伺うのですけれども、そうした調査研究費の今後の組み方といいますか、取り組み方について、科学技術庁長官がちょうど兼ねておられるのを幸いに、政府部内での組織化と将来の調査研究費への取り組み方について、ひとつ長官の御見解を承りたい。
#14
○木内国務大臣 ただいまの御質問、まことにごもっともな御質問であります。諸般の研究費につきましては、各省庁によりまして、あるいは厚生省、あるいは環境庁、いろいろなところで必要な経費を予算に盛っておるわけですけれども、しかし急に研究を要するものが出てまいりました際に、各省庁の予算がないという場合におきましては、科学技術庁の特別研究促進調整費からその年は出す。それでその年で研究が終わらなければ、次の年は引き続いてやるという場合には所管の予算にこれを盛っていく。これがいまの予算の仕組みでありまして、いまお話がありましたような各種の研究は、どうしてもこれは進めていかなければなりませんので、各省庁において必要な経費を要求し、そして万一足りない場合、あるいは急に出てきた場合には研究調整費から出すこともやぶさかではありません。そういう仕組みになっております。
#15
○山本(幸雄)委員 科学技術庁というのは学者の研究をするばかりではない。そういうものではないので、科学研究というものが行政に反映をしていかなければならぬということだと思うのです。ついては、こういう非常に科学的な研究にまたなければならないという事態がこれからひんぱんに起こってくる、こう考えられる段階において、特に私は長官に、いま申し上げた点について政府部内の今後の推進をぜひひとつお願いをしておきたいと思います。いま船後局長からも御答弁がありましたし、いま長官からも御答弁がありましたが科学的な研究調査というものがある程度まとまらなければ行政的なふん切りがつかない場面というものがいままでにもありましたし、今後もいろいろ起きてくるだろう。しかし、原因者側が科学を一つのたてに自己防衛をしてはならないと私は思います。同時にまた、社会科学的な考え方が自然科学というものをねじ伏せてしまうというような、そういう事態も、これは今日の科学の進歩の上から見て好ましい状態ではない。しかしいま申し上げるような、一方においてこれをたてに自己を守るということであってもならない。今後公害における自然科学というものの立場は非常にむずかしい。純粋の学問的な研究ということばかりではいけないのではないだろうか。先日も、四十五年の日本学術会議の総会でこういうことを言っておるのを聞いたのです。専門領域における成果を追うのあまり、国民の健全な生活を守ることを最優先する立場を忘れたという反省の上に立つ、こういうことを言っており、公害防止に貢献する科学技術の向上につとめる決意である、こう総会で声明が出たと聞きますが、これは日本学術会議という学者の方々の集まりであります。しかし、そういう自然科学の上で完全な百点満点の結論が出なければふん切れないという、そういうふん切り、これは私はそういう科学的な調査研究を踏まえて行政の一つの判断である程度やってもらわなければならないという場合が起こるように思うのですが、たいへんむずかしいようなことを申し上げて恐縮ですが、公害の場合における科学というものの立場について、ひとつ科学技術庁長官の御見解を伺いたい。
#16
○木内国務大臣 ただいまのお考えも一つのお考えであると思うのですけれども、科学的根拠がないのに、その科学的の研究を基礎にしないで、当てずっぽうと言っちゃあれですが、政治的考慮によって被害とかその他の関係などを取り扱うということは、科学技術庁としてはどうも賛成いたしかねるのでありまして、それはまた諸般の政治的考慮から生ずる問題はいろいろあると思うのですが、その点はちょっと賛成いたしかねるのであります。
#17
○山本(幸雄)委員 私は科学を無視しろとかなんとか言っているのではない。たとえば疫学的な判断というものが、公害を解決していく上に一つ私は大きな役割りを今日演じているように思うのですが、何も科学を無視しろと言っているわけではありません。私は先ほど申し上げたように、社会科学的な考え方だげで、自然科学的な厳密さというのか、学問的な高さというのですか、学問的な物価というものを踏みにじるということについては深く戒めなければならぬと申し上げておるのでありますが、しかし百点満点をとらなければふん切れないといろのでは、なかなか私は公害と科学との関連においては解決できない問題があるのではないか、こう思うのであえてこういうことを申し上げたので、何も科学技術庁長官に自然科学を政治的な判断で云々してもらいたいとか、云々しなければならないということを申し上げておるのではありません。いまたいへん型どおりの御答弁で、ちょっと私も納得しかねるのですが、これは次回のことにいたしておきます。
 次に、公害で非常に問題なのは複合汚染でありますが、今回のこの法律案の中で政府案と野党案の複合汚染についてのお考え方を見てみますと、政府案は民法七百十九条による共同不法行為という観念が入っております。そういうのを一つの合理的なよりどころとしておる。野党案のほうはもう少し広く七百十九条ではなくて、新しい観念で打ち立てようというお考え方で若干の相違があるように思いますが、野党案と政府案の相違点というものについてひとつ法制的なお考えを伺いたい。
#18
○船後政府委員 簡単に申し上げますと、「共同ノ」という字句が政府案の場合には民法七百十九条によっておりますので、共同の不法行為、野党案によりますれば複数の事業者の事業活動、こういうことになっておるわけでございます。ところで「共同ノ」という点の解釈でございますが、これは先般来御説明申し上げておりますように、古くは主観的な要件、たとえば共謀あるいは共同の認識ということが必要であるというような解釈もございましたけれども、最近の判例、学説におきましてはそういう主観的な要件は必要でない、客観的に関連、共同性があれば足りるということでございますので、私ども結果といたしましてはやはりそういった客観的な関連性がある、そういう事業者、これが一つの損害に関与しておりますれば、当然連帯責任を問われるわけでございますので、実際の運用にあたりましては政府案、野党案とも大差ない結果になるのではないかと考えております。
#19
○山本(幸雄)委員 いまお答えがあって、政府案の場合、共同の不法行為という観念がある。しかしその共同の観念については共謀とかあるいは共同の認識、意思というものを必要としない、客観的関連共同性があればそれで十分である、こういうことになっておる。その点はわかりましたが、もう一つ伺いたいのは、しからばその複合の場合に、個々の行為に違法性が要るのか要らないのか、違法性がなくてもやはり共同という観念につながっていくのか、個々の一つ一つの行為については違法性を必要とするのかしないのか。これは速記で古館参事官の答弁を読むのだけれども、少し了解できないところがあるので、あらためてその点をひとつ伺っておきたい。
#20
○古館説明員 おっしゃるとおり個々の行為について違法性が必要でございます。
#21
○山本(幸雄)委員 そうすると一つ一つの行為については違法性がなければなりません。では非常に小さいものについて、大企業が経営している事業場が並んでおる中に中小企業が入っておる、しかしそれはひっくるめて一つのやはり関連共同があるというケースも私はしばしば起こると思いますが、やはり中小企業もそういう立場から考えたらこの違法性というものはたとえ小さくてもあるのかないのか、そこらのところをもう一つ伺いたい。
#22
○古館説明員 中小企業の場合でも排出量によって違ってこようかと思います。ですから、たとえば著しく排出量が小さいと認められる程度、それよりも少ないというような場合には違法性がないという問題も出てこようかと思います。
#23
○山本(幸雄)委員 中小企業の行為の中で著しく微量あるいは非常に小さいという場合は違法性がありませんというお答えであります。
 そこで個々の行為の違法性ということでありますが、たとえば排出基準というものがそれぞれいまきめられておるわけですけれども、排出基準がある以上これは守らなければならぬわけでありますが、その排出基準を守っておる。しかしそれを守らなかった場合には、たとえば大気汚染防止法なんかでもやはり規制の方法がきめられており、もしそれによって公害が起きれば一つの罰則にもひっかかるかと思うのですが、それは排出基準を守らないということと違法性との関連は一体どういうふうに考えたらいいかということについてお伺いしたい。
#24
○古館説明員 排出基準を守らない場合には、その行為に対する社会的非難性というのはやはり認められるんじゃないか。そういうことになりますと、やはり違法性というものが認められるんじゃないかと思います。しかし排出基準を守っている場合はどうなるかということでございますけれども、排出基準は賠償責任と直接結びつくものではございません。したがいまして、ある場合には違法性があるという場合もありますでしょうし、それがきわめて少ないという場合には違法性がないという場合もあろうかと思います。
#25
○山本(幸雄)委員 いま排出基準の問題が出たわけですけれども、排出基準を一つのよりどころとして一つの行政的取り締まりの基準といえばそうかもしれないですが、しかしこれはやはり企業をやっていく者にとっては、排出基準というものはどうしても守っていかなければならぬ。どっちかといえば、守っていれば違法という観念はなかなか出てきにくいという考え方が一般的ではないだろうかと思うのです。
  〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
しかし排出基準は守っておっても、場合によったならば、それは違法とまではいわないが、しかしさりとてそれは賠償しなければならぬ、賠償の対象になっていくのか、そこのところがどうも明確にならないのですが、その辺もう少し、あるいは環境庁でもいいですが、あるいは法務省でもいいですが、ひとつ排出基準と違法性あるいは賠償の対象になるかどうかということについての御説明をしてもらいたい。
#26
○船後政府委員 行政上の排出基準と民事の損害賠償責任との関係につきましては、先ほど古館参事官が御答弁したとおりでございます。しかし現実問題といたしまして、たとえばすべての事業者が排出基準を守っておる、にもかかわらずそこに一つの損害が発生したというようなケースが考えられるわけでございます。こういった場合には行政上の排出基準のレベルというものを当然行政的に再検討する必要がまず出てくるわけでございます。したがいまして、私どもとして言い得ることは、やはり排出基準というものはわれわれが目標とする一つの環境の質というものを確保するための手段でございますから、それとの関連において常に排出基準につきましては検討を加えていかなければならない。しかしその問題とやはり民事の責任の問題とは切り離して考えるべきである。理想的に申し上げますれば、排出基準を守っておれば損害も生じない、したがって賠償責任も生じない、こういう状態が一番理想的であろうと考えます。
#27
○山本(幸雄)委員 それではその程度にしておきましょう。
 今度の無過失賠償責任の法制と車の両輪といわれるのは、いやしくもその損害を生じた場合の賠償の確保の手段というものについての考え方であります。政府としては、おそらく責任者として無過失賠償をやる以上、一方において中小企業のような資力の乏しい者あるいは不特定多数の自動車の排気ガスによる被害のごときものについては、賠償を担保する何らかの方法を考えなければならないということでありましょうが、承るところによると、現在中央公害審議会に諮問をしておられるというのですが、その諮問をしておられる内容は、何か聞くところによると部会が二つあって、一つは賠償部会、一つは費用負担部会と聞いておりますが、この両部会に諮問をしておられる内容をちょっと御説明いただきたい。
#28
○船後政府委員 御指摘のように、中央公害審議会に費用負担に関する特別部会を設けておりまして、その中に二つの小委員会を設けております。一つは費用負担の専門委員会、一つは損害賠償制度の専門委員会でございます。この費用負担の専門委員会のほうにおきましては、先般OECDでPPP、汚染者負担の原則が採択されたわけでございますが、このような原則に照らしまして、現在わが国における公害防除、こういう費用の負担のあり方を広く再検討してみようということを課題といたしております。損害賠償制度に関する専門委員会は、問題を限定いたしまして、公害によって損害が発生いたしました場合に、これを被害者の迅速なる救済というような観点と、加害者側における危険負担の問題、あるいは合理的な費用の配分の問題負担の配分の問題、こういった見地から一つの制度を組み立てるという場合にどうすればよいかという問題の御検討をお願いしているところでございます。
#29
○山本(幸雄)委員 その場合に、いまこの無過失責任の場合は健康被害に限っておるのですけれども、この審議会では物的被害の問題はどうお取り扱いになるつもりであるのか。それから、いまPPPのことが出ましたが、これは先般のOECDで正式に採択になったと聞きます。その場合に、これは非常に厳密にやるということになれば、いろいろわが国の経済の上においても大きな影響を来たすと私は思いますが、この指針の中に、これはあくまでも原則でありますから、その例外というものについていろいろこれは各国の考え方もあるようですけれども、その例外についてわが国としては一体どういうふうに考えておられるのか、その二点についてちょっとお伺いをします。
#30
○船後政府委員 まず第一点でございますが、専門委員会におきましては、主として技術的な観点から、どのような制度が組み立てられるかということの検討をお願いいたしております。将来財産被害というものを無過失の体系にどう扱うか、これは立法政策の問題でございますから、この専門委員会で賠償制度を検討するに際しましては、健康被害を中心といたしますけれども、技術的な問題でございますので、あわせて物的な被害の場合にはどのような仕組みが考えられるか、問題点は何かといったような点につきましても、広く検討をお願いしたい、かように考えております。
 それから第二点でございますが、御承知のとおり今回OECDの閣僚理事会で採択されましたガイディングプリンシプルは、加盟各国が国内政策として環境管理政策を決定するに際して順守すべきガイディングプリンシプル、基本方針とでも訳しますか、こういう性質のものでございます。その内容は御承知のとおり環境汚染のコストというものはこれは経済に内部化されなければならない。財及びサービスのコストに反映されなければならないというような考え方でございますが、ただこの原則を実施していくにつきまして、どのような例外が認められるべきであるかという点につきましては、今回の閣僚理事会で決定になりましたガイディングプリンシプルでは、過渡期間中には国際貿易と投資に著しいゆがみを引き起こすに至らない限りにおいて、この原則の例外または特別の措置をとることが許されようというような、一般的な規定にとどめておりまして、しからば具体的にどのようなものがこの例外として国際的に認められるかという点につきましては、さらに引き続きOECDの環境委員会におきまして検討することになっておるのでございます。したがいまして、わが国におきましてもこのような今後のOECDの検討課題との関連におきまして、日本の考えというものを明らかにしてまいりたいと思うのでございますが、ただいままでOECDあるいは経済専門家の小委員会等で議論してまいりました過程を振り返ってみますと、原則としてPPPでなければならない。しかし過渡的な問題といたしましてはやはり補助金というような財政金融的手段、これが利用されてしかるべきではないかというような主張は、各国政府ともいたしておるわけでございまして、現にわが国におきましては補助金はございませんけれども、公害防止事業団あるいは開銀等による長期低利の政策金融の措置が講ぜられておりますし、またスウェーデン等におきましては一九六九年から五カ年間を限る臨時の措置でございますが、既存の全業が公害防除投資をする際には、国が二五%の補助金を出すといったようなこともとっておりますし、大体各国とも何らかの形で補助金あるいは税制上の優遇措置あるいは金融上の優遇措置をとっているわけでございますから、そういったようなものを過渡的な問題としてどのように処理していくか、これは今後の検討課題でございます。
#31
○山本(幸雄)委員 それに関連してちょっと通産省に伺うのですが、現在企業で公害防止のための資本投下は一体何%くらいになっているのか、またその現状から見て将来を考えてどれくらいになるのが望ましいのか、この辺のことをひとつお伺いします。
#32
○久良知政府委員 設備投資は、最近の景気の状況によりまして、四十五年、四十六年、四十七年というふうに最近の二、三年を見ました場合には、横ばいないし漸減という形になっておるわけでございますが、公害防止投資につきましては、これとは逆にかなりなピッチで増額を続けてまいっております。四十四年、四十五年、四十六年についてみますと、ほとんど例年倍額に近い増加を示しておるわけでございます。四十六年につきましては、約三千五百億前後に達したわけでございますが、四十七年、四十八年と見ました場合には、現在すでに一〇%近い高率になっておりまして、大体率でみますと横ばいということになるわけでございますが、金額でみますと、漸増というふうな形であろうかと思います。近い将来を考えました場合には一〇%前後で推移するであろうと見られますし、それがまた望ましい形ではあるまいかと考えておるわけでございます。
#33
○山本(幸雄)委員 いま両局長の御答弁で、これは将来日本の国際貿易上の観点あるいは国内的には中小企業対策ということから考えて対処していかなければならない問題でしょうが、いまの御答弁では例外というもので一つの時期的な猶余期間というものはあるように伺うので、現在の日本のあり方でもっておおよそそうPPPにかけ離れたものではない、こう理解していいかどうか、一言だけちょっとお伺いしたいと思います。
#34
○船後政府委員 先ほど申し上げましたように、各国政府が現在環境政策上とっております種々の助成策の詳細につきましては、私ども存じておりませんので、日本がとっておりますことが国際的に見てどの程度の水準になるかということにつきましては、断言いたしかねるのでございますけれども、われわれがいままでOECDにおける種々の論議を通じて得ました印象によりますれば、日本はどちらかといいますと、PPPの原則を明確に打ち出しておる国ではないか。特に法制的には、公共事業につきましては、事業者負担というふうな法律がございまして、汚染者がその強度に応じて負担するということが法律上明記されておるわけでございます。さらにまた、日本が現在とっております助成策は、税制上の優遇措置と先ほど申し上げましたような財投資金を用いました金融上の援助でございますが、各国政府ともこの程度の措置は過渡的な問題といたしましてとっておるようでございますので、まずPPPの原則に反するような国内政策は日本はとっていないのではないか。私はかように考えます。
#35
○山本(幸雄)委員 PPPの問題はまだいろいろな議論があると思いますが、前に進ましていただいて、因果関係の推定についてはこれはずいぶんいままでの質疑の中心にもなって、政府案にはこれがない関係上、どうして抜いたのか、あるいはまた環境庁でつくった原案ではどういうことであったのかといったような御質問がすでに始関委員からあって、答弁も行なわれておる。野党案には因果関係の推定の規定がございますが、この野党案の内容、書き方、表現のしかたについては、いろいろ表現のしかたがある中で「排出による損害が生じうる地域内に同種の物質により生じうる損害が生じているとき」こういうふうに表現がされております。この表現のやり方はいろいろあるようで、組み合わせを考えたらいろいろの考え方がある。そこでこの野党案で因果関係の推定をいろいろお考えになっているようなんですけれども、書き方がいろいろあって、一方においては具体的な公害のケースというものは非常に複雑だ、発生源が単一の場合もあればあるいは複数特定の場合もあるし、また多数不特定というような場合もあるということ、一方においてすでに蓋然性の理論で、具体的には判例、裁判所の自由心証による解釈で解決がついておるということで、政府案にはないけれども、それほど大きな欠陥ではないというふうに考えるわけです。我妻先生も、削除をされたというが大きな後退ということはない。トカゲのしっぽは切っても法案を通して将来のよりどころにせいというお話であったように思います。そういう考え方で、もうすでにこの問題はずいぶん論議を尽くされておりますので、ここであえてもうお尋ねはいたさないことにいたします。
 次にしんしゃく規定があるわけです。「被害者の責めに帰すべき事由」ということについて、これはいろいろ論議がありまして、法務省からは具体例が一つ出ておりますけれども、「被害者の責めに帰すべき事由」というものの内容については、実際問題としてそう起こるのかどうか、これは実際に当たってみなければわからない。そこでこの「被害者の責めに帰すべき事由」ということをかりに削ったといたしました場合、これは法律上一体どういうことになるのか、この辺の見解をひとつ法務省から御説明を願いたい。
#36
○古館説明員 この大気汚染防止法の二十五条の三の「被害者の責めに帰すべき事由」というのは、被害者に故意がある場合と過失がある場合と両方含んでいるわけでございます。これがなくなりますと、まず被害者の故意がある場合には、民法に戻りまして、結局加害者の行為には違法性がないという問題として処理されるのではないかというように思います。それから被害者に過失がある場合、これは民法の七百二十二条の二項の問題として処理されるべきだというふうに考えております。
#37
○山本(幸雄)委員 そうしますと、結局これは民法の原則というか民法の規定に戻って、七百二十二条の二項による。そうしますと、両方の被害、七百二十二条の二項の「被害者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ御酌スルコトヲ得」こう書いてあるのと、「被害者の責めに帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。」と書いてあるのとの相違点はどういうことになりますか。
#38
○古館説明員 ただいまお答えいたしましたように、「被害者の責めに帰すべき事由」という場合で、被害者の故意による場合、これは本来民法の原則によりますと、加害者に違法性がないということで賠償責任を負わないというふうに理解されるだろうと思います。
  〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
それをこの規定に織り込んだものですから、その効果を明らかにするために損害賠償の責任及び額を定めるについて、「これをしんしやくする」という文言になったわけでございます。
 それから、被害者に過失がある場合、この場合には結局加害者の責任というのは免れないわけでございます。したがって、その場合には公平の見地から責任はあるが、額について公平の見地からしんしゃくするという趣旨で、「損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしゃくすることができる。」、こう規定されたものと理解いたしております。
#39
○山本(幸雄)委員 これは具体的に法律解釈の場合はいろいろむずかしい解釈ができて、どっちが一体被害者にとって有利になるのかよくわからぬということが、場合によっては出てくるような気がするのであります。
 だんだん伺いたいことはたくさんまだ残っておりますけれども、委員長からの御注意もありますので、わがほうはこの程度でやめさせていただきます。
#40
○田中委員長 この際、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時四十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時二十九分開議
#41
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。島本虎三君。
#42
○島本委員 いま、いよいよ大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案、いわゆる無過失賠償責任制度に関する法律案の審議が一番最後の段階になったわけでありますが、私は、この修正、附帯決議その他、この公害に関する重大な法律案を審議する際に、本年の六月一日の新聞の切り抜き、これは囲みでありますが、これに異常なる一つの行政に対する不安を覚えたわけであります。それを読んでみますと、「知事の愛情」「十年ひと昔。地域開発という言葉が、明るい未来を意味すると、思い込まれていたころのこと。毎日新聞の開発取材グループは、故三木行治岡山県知事と、いざこざを起こした。三木さんが打込んでいた岡山・水島工業地帯づくりを批判したからである。鉄と石油のコンビナートが地元の人たちの働き口をふやす効果が小さいこと、急激な開発は自治体財政を破産させること、公害対策が十分といえないこと――の三つが私たちのおもな批判点だった。ある日、取材グループの何人かが、知事応接室で“対決”した。巨体をゆすりながら三木さんは約二時間“緑と太陽と空間の町づくり”をキャッチフレーズとする構想が、いかに県民のためのものかを、ぶちにぶった。そして最後に「働き口がないため県外へ出てゆく若者を親元に置いてやりたいんですよ。真冬のイ草田で苦労する農民に、もっとよい職を与えたいんですよ」――一生独身で、つつましい生活に甘んじた三木さん。その県民に対する愛情は“ごリッパ”なものだった。それから十年、岡山・水島工業地帯は、こと工業開発の面では“新産業都市の優等生”といわれるほどの成果をあげた。岡山県の一人当たり県民所得も全国平均に迫った。だが、残念ながら、私たちの批判は三つとも現実になった。三木さんにいわせると「いま(当時)考えられる最良の技術水準で公害防止を考えた」のだそうだが、現実に公害は発生した。地域開発と公害発生が二者択一の問題だとは思わない。しかし、現実の社会の仕組みのなかでは、両者の調整はかなり深刻な問題である。三木さんの“県民への愛情”が現段階で、これにどう答えるか聞いてみたい気がする。」こういうような一文があるのであります。こういうふうにして当時一つのりっぱなキャッチフレーズ、それと同時に、これ以上の方策がないといって十年、もうすでにそういうような方策では県民の幸福が保障されないような状態になってしまっているのであります。それが、所得が保障されたからもういい、所得が保障されて生命が不安にさらされる、こういう状態であります。行政は常にそういうような点をキャッチしていなければならない。少し先取りするくらい先取りしてこれは人後にも落ちないし、それをやってやり過ぎたことにはならないのであります。いまこの一文を見て、公害を論ずる者は十分この点に心しなければならないことを痛感したわけであります。おそらくは皆さんもこれは知っておられるのだろうと思うのでありますけれども、現実の面では、政府をはじめおそらく全部このような点では先取りの反対であります。法律が実施されても、行政そのものはおくれている状況であります。そういうような点からして、いま次の点を通産省にお聞きしたいと思います。
 先ほど山本委員からも若干質問がございましたが、推定規定、これが大きい問題になっておりますけれども、この法律案が何年間審議されたのか。いまの無過失賠償責任法案、これができるのに何年かかったのか。そして出てきたものがこのように不完全なものである。この原因は何だったのか、もう一回これを政務次官に聞いてみたい。
#43
○小澤(太)政府委員 通産省というお話であったものですからよく聞いておりませんでしたが、先ほどの三木さんの記事は、これはまさにそのとおりであります。私どもの先輩であり、当時一緒に知事をやっておりましたが、あのときの認識は、三木さんにしてしかり、まことに残念しごくでございます。私もずっとその後の経過を今日に至るまでよく承知いたしております。政治にあるいは行政に先見の明がなかったということ、まさにそのとおりでございまして、いまこの行政に当たる私どもの態度といたしましては、先生のお説のとおり、まさに先取りをやっていくという考えで進まなければならぬかと思います。それには、何といたしましても、人間環境保全ということを中軸といたしましてすべての計画、経済、産業、交通すべてそのメカニズムの中でやっていくという考えで進みたい、こう考えておる次第でございます。
 おくれた理由というのは、まず、御承知のように、民事法の原則であります過失主義に対して、無過失という、被害者保護のために新しい考え方を打ち出したわけでございます。したがいまして、この考え方を立法化するにあたりまして、民事法と正反対な考え方でございます――もちろん、これは裁判所の判断その他で逐次このような考え方は固定されつつある状態ではございますけれども、立法となりますと、これを単独立法でやるのか、あるいは原案のとおり水質と大気の二つの法律の改正でやるか、こういうような問題もございます。われわれしろうとではなかなかむずかしい問題もいろいろございましたので、民法の専門家の諸先生に特にお願いいたしましてこの問題についての考え方あるいは立法の仕組み等をいろいろ御研究いただきまして、ようやくその研究の結果をもちまして私どもの案をつくったわけであります。その後関係各省との間にいろいろ折衝いたしました過程におきましては、やはりいろいろ認識の差もございます、あるいはまた、具体的な問題についての見解の相違等もございまして、いろいろその間に時間がかかったわけでございますが、しかし、ともかくも、私どもの考えておりました無過失という新しい、いままでの過失主義と全然反対になりますような法理論を、この二つの法律の改正という中に織り込んで御提案申し上げるという階段になりました。先ほど御答弁申し上げましたように、現時点におきましては最も妥当な案であるという心証、確信を得るまで非常に時間もかかったわけでございますが、そのような次第で時間が経過したということを申し上げます。
#44
○島本委員 私の手元には、これがおくれた原因は、政務次官そういうふうにおっしゃいましたが、四十七年三月十五日――無過失賠償責任、この実体法の中に推定規定というものが入っている。環境庁はこれでひとつ通そうと思って一生懸命努力した。この推定規定に対して通産省が反発をした。そして、複合公害を対象にしているということ、それから因果関係の推定を置いたということで、植村経団連会長から総理のほうへ、企業の立場を無視することになる、公害防止のための企業努力を無意味にする、それから経営基盤を脅かすものである、こういうふうな理由によって直訴をした。それによって通産省のほうでは、推定規定を削除するということで政府案をつくることを了承したといわれているわけであります。これは四十七年三月十五日、この階段でできてきた。公害の先取りである、これが必要だと言いながら、十年一昔、前の岡山県知事のこういうような具体的な事例がある、これこそ先取りしないとだめなんだということを言いながらも、これは企業べったりである。そして必要な推定規定さえも削除してこれを出したというこの実態はうそなんですか、どうですか。これはひとつ通産省にお伺いしたい。
#45
○久良知政府委員 無過失賠償責任に関します今回の法律の立法化につきまして、環境庁の関係についてのお尋ねでございますが、通産省といたしましては、これはもうかねてから無過失責任法案につきましては前向きで取り組むべきであるということに方針をきめておったわけでございます。産業界にこの法律につきまして若干の不安の声がありましたのは確かに事実でございますが、産業所管官庁といたしましての責任上、産業界の公害防止に対する姿勢を正しくさせると同時に、無用の不安を抱かせないようにする必要もあるわけでございますので、環境庁と個々の条項につきまして法律的ないろいろ影響、効果というふうな点について説明を承り、問題点についての意見を交換してまいったわけでございますが、先生が先ほどおっしゃいましたように圧力を加えるというふうな点は、私どもといたしましてはなかったというふうに考えておるということでございます。
#46
○島本委員 圧力を加えたことがない。しかし、いま言ったような事実は圧力でなくて何ですか。植村経団連会長のほうから総理のほうへこれをはっきり言った。そしてその時点で、環境庁もがんばった、しかしながら、やはり推定規定を除いて三月十五日の段階で政府案をつくることを了承した。これは先取りじゃありませんよ。企業べったりの態度ですよ。こういうようなことであって、先ほどの山本委員の質問で、これは行政サイドでやれるんだやれるんだ、こう言っても、こういうような行政サイドでは、やれるということはやらないということにひとしいような、こういうようなことになりかねないじゃありませんか。因果関係で、いろいろな統計的な手法によるところの疫学的な立証、それで推定している例はまだあまりにも少ないでしょう。いまこれを唯一にして取り上げて、例証があるからというのは、下級審の判例なんである。蓋然性の理念を取り入れてそしてこれをやるからいいんだといっても、これは個々の裁判官一人一人が同じレベルまでいっているんじゃありません。考え方によってそれぞれ違う立場にあります。そういうような人たちが一様にりっぱな判決をするということ、それを望むならば、やはりここにはっきりと推定規定を置いてやって、それを推定しやすくしてやることが、被害者に対して最も忠実だというか、愛情のある措置です。そして裁判を早める一つの措置であります。そういうようなことをとらなかったということは、やはり私としては遺憾であると思います。
 それで、古館さんのほうへお聞きしますが、いままでどういうような判例がございまして、今後その判例によっておそらくは推定規定がなくても全然安心であるということをここに例証していただきたい。
#47
○古館説明員 因果関係の推定を置くということは、結局、因果関係についての立証が困難だ、したがって、それを容易ならしめることによって訴訟の促進をはかるという趣旨であろうかと思います。ところが、民事裁判におきましては、不法行為の場合の損害賠償、あるいはその中で、因果関係の問題等のみならず、すべての一般的な事件におきまして事実上の推定ということが行なわれております。この事実上の推定というのはどういうことかと申しますと、結局、権利の発生等のために直接必要な要件事実の立証が困難な場合に、裁判官が、自由心証あるいは経験則によりまして、間接事実から直接事実を推測認定するという手法でございます。そういった方法で裁判がなされているわけでございます。
 ところで、公害の場合の因果関係、この因果関係も非常に立証が困難かと思います。ですから、当然、一般の民事裁判におけると同じように、裁判では、因果関係の推定がございませんと、一般的には間接事実から因果関係を推測認定するということをせざるを得ないだろうと思います。そういうことからなされておりますのが、先般の富山のイタイイタイ病、それから新潟の水俣病判決などが少なくとも公害の場合の典型的な判例かと思います。
 こういった間接事実から直接事実を推測認定する、そして法律の規定によって因果関係の場合に立証を容易にするということでございますけれども、この間接事実としてどういうものを取り上げるか、定めるかということによりまして、ある場合には訴訟の促進がはかられ、ある場合には、規定は設けたけれども訴訟の促進がはかれないという場合もあるわけでございます。ところが、公害の場合の因果関係の場合には、この間接事実といいますのは、通常は企業者が有害物質を排出したこと、それから汚染経路、それから物質と健康との関係ということが間接事実というふうに大体いわれているわけでございますけれども、この間接事実について立証すれば、直接事実である加害者の行為と被害との間に因果関係があるという事実を推測認定されるわけでございますけれども、これを法律で規定したといたしましても、結局、この富山のイタイイタイ病あるいは新潟の水俣病の判決をごらんになりますと明らかなように、この間接事実の立証が非常にむずかしいわけでございます。これらの裁判で非常に時間を費やしたというのも、この間接事実の立証が非常にむずかしくて非常に時間を費やしたということでございます。ですから、こういった公害の場合の因果関係の推定を置きましても、間接事実から直接事実を推測認定してもよろしいという因果関係の推定の規定を設けたといたしましても、直ちに訴訟の促進に役立つかどうかは非常に疑問でございます。他面、そういった事実がございますと、先ほど申しましたように、裁判官は事実上の推定によりまして因果関係を認めていくということが先ほどの判例でも行なわれているわけでございます。そういう趣旨から、こういう因果関係の推定の規定がなくても、公害の裁判におきまして因果関係の判断におきましては、因果関係の推定の規定があった場合と同じように被害者の保護がはかられるであろうというふうに信じております。
#48
○島本委員 信じておるということでございますが、私は、いま最後になって、これが間違いなく行なわれるものであるということばがほしかったのです。ただあなただけ信じたって、全部の裁判官をその一線に統括することは、あなた、できますか。その考え方を一つにまとめて、これはやはり促進することなんだということについて、これは全部統括することができますか。おそらくできない。行政はいつでもおくれる。少しでもこの法務省の考え方が、現在、国民の考え方にマッチするように一歩先に出てほしいのです。いまから約五十年前に――これは田中委員長がよく口にし、われわれに言ったことばで、信玄旗掛の松、これが五十年前にもうすでに無過失賠償責任の判例が大審院にあるのです。五十年前ですよ。あなたまだ生まれないころですよ。新しく生まれて、そしてまだこの推定規定を削除したほうがいいなんという考え方は、五十年前の大審院の判例よりもっとおくれているじゃありませんか。それで公害を的確に把握し裁判を早める、こういうようなことを考えられるとするならば、私はもう少しこのものについて具体的にこれは早くなるのだということを教えてもらいたい。そうしたならば私は納得する。推定規定がないと裁判官の判断に左右される、おそらくそうでしょう。蓋然性がある、この規定によってやったらいい、一人一人の判断による。その場合には、昭和四十六年六月のイタイイタイ病に対する判決、四十六年九月の新潟の地裁の阿賀野川のあの判決、四十六年の三月ですか、これは前橋地裁の早川メッキ廃液流出事件に対する判決、あげてみれば、数少ない判例でしょう。これは下級審です。したがって、今後のことを考えたならば、おそらく推定規定がない場合に裁判官の判断に左右されるとすると、推定規定があると比較的スムーズに判決が進むのだけれども、なければ、第一審だけでも依然として三年くらいかかるのじゃないか。控訴するとまた十年くらいかかるのじゃないか。このことをおそれるのです。したがって、こういうようなことがないのだ、これを最後の詰めになって、推定規定がなくても、いままで一審だけでも三年もかかった、これをもっと早めて、そして控訴だけでも十年もかかった、こんなことは絶対にないようにできるのだ、この確信がほしいのです。おそらくこの問題については、やはり専門的に古館参事官の意見も必要ですけれども、これは船後企画調整局長もこの点はっきりしてもらいたい。あなた、やはり出した以上、この点に対して確信あって出したのだと思うのだ。
#49
○船後政府委員 因果関係の推定規定の法律的な説明につきましては、先ほど古館参事官が申し上げたとおりでございます。民事の裁判におきましては、結局、事実の認否というものが行なわれます場合に、やはり裁判官が直接経験した事実というものは少ないわけでございますから、何らかの意味におきまして事実上の推定が行なわれておるわけでございます。ところで、最近の公害にかかわる事案でございますけれども、確かに先生御指摘のとおり、現在のところ下級審におきます判例しかないのでございます。そういった裁判が最近の現象でございますので、おいおい上級審でそういったような判例も出てくることとは思いますが、少なくともただいま先生が御指摘になりました富山の神通川、新潟の阿賀野川あるいは早川メッキ廃液、こういった判例を通じまして一般的に言い得ますことは、因果関係の証明につきまして、被害者のほうに因果関係の環のすべてを厳密に科学的に立証させるということは、これはもう事実上不可能ということでございますので、したがいまして、いわゆる蓋然性の理論というものを引用しておるわけでございます。たとえば富山のイタイイタイ病の裁判におきましては、問題になりましたのは、カドミウムがはたしてイタイイタイ病の原因であるかどうかという病因論でございます。この点は、先ほど古館参事官が申しましたように、環境庁原案の因果関係の推定でも、病因論につきましては何ら推定をいたしていないのでございますが、この病因論につきまして、富山の神通川の判例では、疫学的な調査等の結果から大筋において一応説明可能な程度でよい、こういうことを申しておるわけでございます。疫学的な判断でございますから、いわゆる臨床的なあるいは基礎医学的な証明ということではなくして、統計的な手法を用いた一種の証明方法、これでもってもなおかつカドミウムとイタイイタイ病との間に因果関係がある、こういうことを申しておりますし、あるいは阿賀野川裁判におきまして最後に問題になりましたのは、はたして工場から有機水銀が排出されたのかどうかというような問題でございまして、この点もまた、環境庁の原案におきましては、いわゆる工場における有害物質の排出ということにつきましては何らの推定も設けていなかった点でございますが、これにつきましても、阿賀野川の裁判におきましては、損害のあったこと、それからその損害がある原因物質によって引き起こされたものであること、かつまた、いわゆる汚染の経路というような点につきまして、状況証拠の積み重ねによって関連諸科学との関連において矛盾なく説明できれば、一番最後に残った、はたして有機水銀が工場から排出されたという点につきましては、これはもうむしろ工場側が逆に排出しなかったことを証明しない限り、排出したものとする、このようなことも申しておるわけでございます。さらには、早川メッキ事件におきましては、侵害行為と損害との間に因果関係が存在する相当程度の可能性があることを立証すれば足りるのだというようなこともいっておるわけでございまして、判例は確かに少ないのでございますけれども、やはり一般的に最近の傾向といたしましては、公害事案の特殊性ということにかんがみまして、被害者に厳密な科学的な立証を要しない、こういった線で因果関係の証明が行なわれるという推移につきましては、私は裁判所の今後の判例動向というものに確信を持っておる次第でございます。
#50
○古館説明員 何か私が因果関係の推定の規定を削ったほうがいいというような発言をしたことがあるような御質問の趣旨でございましたけれども、私はいままでそういう発言をしたことはございません。私は、なくても被害者の保護ははかれるということは言ったことがありますけれども……。その点申し添えさせていただきます。
 先ほどお答えいたしましたように、民事裁判では、直接事実の立証が困難な場合に、間接事実の立証によって直接事実の存在、これを事実上推定するという手法が行なわれておる、それが一般であるということでございます。これは私の記憶でございますけれども、たとえば不法行為の場合の違法性の問題でも、これは大審院判例だと思いますけれども、違法性の問題につきましても事実上の認定をした判例があるように記憶しております。そういうことでございますから、先ほど、下級審判例によりまして初めて因果関係について事実上の推定が裁判上行なわれたというものではございません。むしろ一般に行なわれておる……
#51
○島本委員 五十年前に大審院判例にもあるんだよ。
#52
○古館説明員 違法性の推定ですか。
#53
○島本委員 そうじゃなく、旗掛の松に対する大審院の判例がある。
#54
○古館説明員 いまの笠掛の松事件と申しますのは、本来過失があるかどうかということが争われた事件なんです。そこで、それにつきまして結局十分な注意義務を果たしていないということで、権利乱用的な見地から賠償責任を認めたというふうな事件でございます。ですから、いまの因果関係の推定というのとちょっとダイメンションを異にしているということでございます。
 そういうことでございまして、事実上の推定という手法が行なわれておりまして、それがたまたま因果関係の問題で判例として出たのが、先ほどの下級審判例ということになるわけでございます。そういうことでございますから、判例の動向といたしましては、当然こういう判例はもう出てもよろしい、また、出るべきじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。そこで、環境庁が予定したような因果関係の推定の規定を置いたとしましても、これが直ちに訴訟の促進、つまり、従来三年かかっていたものが一年にあるいは二年に促進されるかといいますと、私といたしましては、先ほどの下級審判例からもおわかりのように、そういう規定を置いたから直ちに訴訟の促進という効果が出るというようには考えられないわけでございます。そういう趣旨から、結局こういう問題につきましては、そういう因果関係の推定の規定がなくても同じように被害者の保護ははかれるというふうに考えているところでございます。
#55
○田中委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
#56
○土井委員 古館参事官、先ほどからるる判例の中で因果関係が推定された事例についての御説明を承ったわけです。それはそれとしてやはり事実としてあるわけなんです。
 そこでお伺いしますが、公訴事実に対して法律と判例とでは拘束性がどのように違いますか。
#57
○古館説明員 いまちょっと御質問の趣旨が理解できなかったのでございますけれども、公訴事実と何でございましょうか。
#58
○土井委員 いま聞いていらっしゃいましたか。これは大学の一年生にでも聞くような質問なんですが、まことに失礼ですけれども、もう一度申しましょう。
 公訴事実に対して法律が持っている拘束性と判例が持っている拘束性が違うのですが、どういうふうに違うとお考えかというところをひとつお伺いしたいわけです。法律と判例の持つ拘束性ということでお聞きしております。
#59
○古館説明員 公訴事実となりますと、これは刑事事件関係かと思いますけれども、私その辺は十分検討しておりませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
#60
○土井委員 法務省の参事官にしていまのはお答えできませんか。
 それでは言い直しましょう。事実に対してと申しましょう。事実に対して法律が持つ拘束性と判例の持つ拘束性はどのように違いますか。
#61
○古館説明員 裁判にあたりまして法律と判例の拘束力の程度ということを御質問になっておられるのかと思いますけれども……。
#62
○土井委員 程度じゃないです。私は拘束性と聞いているのです。
#63
○古館説明員 裁判官は、憲法あるいは裁判所法の規定に基づきまして、法律に拘束されます。次は判例でございますけれども、判例は、裁判にあたりまして事実上裁判官がこれを尊重するという実際の扱いになっておりますので、そういう意味では、拘束の度合いといいますか、そういった点に差異があろうかと思います。
#64
○土井委員 そういう意味ではとか、こういう意味ではとか、そういうことじゃないと思うのです。少なくとも法務省でいろいろ日本の法秩序体系をお考えになる場合に、一番根本にあるのは憲法じゃないですか。最高法規としてある憲法の存在を無視して日本の法秩序というのは成り立ち得ないですよ。そういう点から考えますと、憲法の七十六条の三項にどう書いてあるか。これはいまの古館参事官のお答えからすれば、まことに憲法七十六条の三項が忘れられているということを如実に物語る規定でございます。七十六条の三項では「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」とあるのです。これはすべて裁判所において裁判を行なう場合の裁判官の職務規程でしょう。この七十六条の三項を忘れて日本の法秩序体系なんてあり得ないですよ。また、法に対する考え方というのはあり得ないと私は思うのです。
 もう一つ申しますと、この国会で問題にするのは何なんですか。国会でわれわれが審議する対象になるのは何なんですか。これは憲法の四十一条、「國會は、國權の最高機關であって 國の唯一の立法機關である。」と書いてある。ここで問題にするのは判例じゃないのです。ここで問題にするのは法律なんです。そういう点からしますと、この問題は判例でまかなっていってだいじょうぶ間違いないと思うとかどうとかいうふうな問題をことで主なる論議の中身とするのは、私は国会としてあるまじき態度だと思っております。やはり法律について徹底的に問題にしなければならない。具体的に保障するのは、法律の中身として保障するというのが国会のすべからくとるべき任務だと私は思うのです。そういう点から考えますと、私は先ほどの、裁判において法律と判例が持つ拘束性というのはどういうふうに違うかというふうなことに対するお答えを承っていて、まことに心さみしい思いがしたのですが、憲法七十六条の三項に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
 それからさらに、それも差異がない、判例によってまかなっていって間違いがなかろうと思っているとおっしゃいますが、憲法四十一条の「國會は、國權の最高機關であって、」という意味が一体どこからきているかということもひとつお考えいただきたいと思うのですね。裁判所の裁判官の判断にゆだねていってよいであろうと思うということで、そのあとの「國の唯一の立法機關である。」といっているところの最高機関であるという任務を果たしていると言い得るかどうか、これはしかとお考えをいただきたいと思います。
 憲法の四十一条、七十六条三項、その辺のお考えをひとつ披瀝してください。
#65
○古館説明員 確かにおっしゃるとおり、裁判官は裁判にあたりまして憲法及び法律に拘束されるというように考えております。それで、この法律は、国会で制定された法律ということになろうかと思います。そういう意味におきまして、法律は、民法の法源でいいますと成文法ということになろうかと思います。そういう意味で、その成文法に従って裁判官は裁判しなくてはならないということになろうかと思います。
 それで、判例でございますけれども、判例もこれは法源の一つというふうに数えている学者もあるわけでございます。判例は裁判所の具体的な事案についての判断でございます。それはもちろん国会で制定された法律とは質的に違います。しかし、具体的な事件についての判断になる判例は、その判断の合理性のゆえに、それと類似の事件につきまして裁判所が事実上尊重するということになっておりますので、そういう趣旨で法源の一種というふうにいわれておるわけであります。
 ですから、そういう意味では、法律は成文法、判例は不成文法ということになろうかと思います。そういうことで拘束力に法律的な拘束力と事実的な拘束力というふうな差があるだろうというように考えております。
#66
○土井委員 ある特定の学説についての見解をここで私はただしているわけじゃないのです。七十六条三項はだれが見たって目にあざやかに同じようにしか書いてないように映ります。憲法と法律にのみ拘束されるのでありまして、判例を尊重しようが、ある特定の学説を尊重しようが、そんなことは問題じゃないのです。裁判所が、また裁判官が何によって裁判をするかというはっきりとした原則がここに書いてあるわけですね。それを考えていった場合に、いまここで法律で問題にしている中身のその立法目的は一体どの辺にあるのですか。政府提案の今回の改正の対象になっているのは、水質汚濁防止法と大気汚染防止法の一部改正ということでありますけれども、しかし、中身は無過失責任を追及するということでありましょう。一体何のために無過失責任がいま問題になっているんですか。それは一にも二にも被害者救済ということを私は忘れてはならないと思うんです。そういう点からしますと、先ほど来参事官もお認めになっていらっしゃいますように、判例の上では、因果関係の推定というのはもはや既定の事実として存在しているわけです。しかし、裁判官が裁判所で裁判官としていろいろ判断する際に、法律がある場合と、ない場合とでは、やはりこの問題に対する取り扱いは私は違おうと思うのです。判例があるからそれを尊重するということはありましょう。しかし、必ずそれに拘束されるということは言えないです。法律があるなら、憲法の七十六条三項のいうとおり、それに拘束されて裁判をやらなきゃならない。そういう点から言うと、いまここで拘束性の問題を取り上げて問題にしたときに、法律と判例との差は、程度の問題じゃないです。次元の相違とはっきり認めるべきじゃないでしょうか。そしていまここで問題にすべきは、法律としてこの問題を一体どう取り扱うべきかという問題で、それを私たちは論ずべきだと私は思うのです。この改正案を審議し始めてから今日に至るまで、それに対するはっきりしたお答えがいまだにないのです。それに対する納得のできるお答えを私たちいただいていない。
 この問題については、判例がはたして法源の一つであるかどうかということを問題にした委員会での質問もあったわけですが、法源の一つかどうかというのは、法学論争の分野にかかわる問題でありましょうから、これは別問題です。法源であるかどうか、そんなことはいまは一向に問題じゃないです。いま問題にすべきは、因果関係の推定という問題がもはや判例の上では積み重ねられていって、参事官おっしゃるとおりに、いま裁判所にゆだねてもだいじょうぶその判例でまかなっていけるであろうと思う人たちが大半国民の中におるときに、なぜ改正案の中に法文化できなかったのかということを追及しているわけなんですよ。なぜこの国会審議の対象になっている改正案の中で問題にできなかったかという点をわれわれは問題にしているわけです。それに対してしかとした答えがいままであったでしょうか。私はまだ聞いてないように思います。参事官、お答えください。
#67
○古館説明員 いまの因果関係の推定の問題でございますけれども、先ほどもお話しいたしましたように、私は、裁判の実際の取り扱いからいいまして、なくても被害者の保護ははかられるというふうに考えたわけでございまして、削ってもいいというふうには言っていないわけでございます。
 そこで、まず事実上の推定ということが法律上許されるのかどうかということを一つ考えておかなくてはならないと思うのです。それで、裁判所がその事実上の推定をする根拠というのは、やはり民事訴訟法の百八十五条であろうと思います。そういった規定に乗っかって裁判所は審理し、判断しているということであろうかと思います。
 こういった前提でいまの因果関係の問題について考えてみますと、環境庁が要綱として作成された因果関係の推定の規定におきましては、私どもが環境庁から説明を受け、確認したところによりますと、因果関係の推定をするには三つの要件が必要である。その三つの要件といいますのは、第一番に、事業者が有害物質を相当量排出しなくてはならない。その相当量といいますのは、大体被害が発生するに足る程度の有害物質を排出しなければならないという要件が一つございます。それから第二の要件は、そういった排出がなされますと、その被害が発生する地域内といった場所的な範囲が第二の要件でございます。それから第三の要件は、そういった範囲内で同種の物質によって被害が発生しているという三つの前提事実を立証した場合に、加害行為と被害との間の因果関係の存在が立証されるという趣旨でございまして、そういう趣旨だといたしますると、こういう規定はなくても、私どもとしては、裁判所は、もう先ほど言いましたような事実上の推定で当然因果関係を認めるでありましょうし、また、むしろそういう場合には立証があったというふうにも考えられるのじゃなかろうかというように考えたわけでございますから、そういう因果関係の推定でございますれば、これはあってもなくても被害者の保護には変わりはないじゃないかというふうに考えたわけでございます。
#68
○土井委員 どうも先ほどから私が質問をさせていただいていることに対して、がっちりとそれに合った御答弁じゃないわけです。行き違いのような感じであります。たいへん失礼なものの言い方をいたしますが、やはり法律家でいらっしゃるだけに、間々形式主義、概念主義になりがちなんです。
 いま私がお尋ねしているのは、いま一生懸命にお答えを賜わったわけだけれども、そういう御答弁を要求している質問じゃないのです。どういうことかといいますと、先ほどから法律と判例との違いということを問題にして、法律によって拘束する場合と、判例を尊重して裁判官が裁判をやる場合とは意味が違うということを確認したわけですね。そうしてさらに、いまここで問題にすべきは法律なのだということを確認したわけですね。片や因果関係の推定という問題は、現に判例の上での積み重ねがあって、一般世間の常識化した問題になりつつあるということも確認したわけですよ。ところが、そういう状況でありながら、なおかつ、いまここで改正案の中身を見た場合に、因果関係の推定が初めは置かれていて、いま審議する中身としては抜けてしまっている。どこら辺にその理由があるかということを聞いているので、六法全書をわざわざ持ってきて、るるそれに対して懇切丁寧な御説明は必要ないのです。なぜ因果関係の推定が抜けたかということを聞いているので、抜けても別に差しつかえないと思うというような御答弁はすれ違い答弁です。判例の上での積み重ねがある問題を法律の上であとを追っかけるようなさまでありますけれども、規定を置いたほうがよりその立法趣旨にかなう場合は、これは置くにこしたことはないじゃありません。私たちは、そういう目で因果関係の推定の問題を見ているのですよ。被害者の救済ということを考えた場合に、被害者救済に対して、この際、これでもよいか、これでもよいかという意味で、できる限り法律を用意することが必要じゃなかろうか。そういう意味で、いまこの一部改正案についても、これでよいか、これでよいかという審議をすることが必要じゃなかろうかという意味で、私は尋ねているわけです。だから、因果関係の推定というこの規定があってもなくても同じだという答弁ではなくて、なぜ抜けたかということをひとつ聞かせていただきたい。それは六法全書を持っておでかけになる必要はないのです。なぜかということをひとつ言ってください。
#69
○古館説明員 私は因果関係の推定の規定が抜けた理由はわかりません。これは所管行政庁なり企画庁にお答えいただきたいと思います。
#70
○船後政府委員 因果関係の推定規定があってもなくてもよい規定ならば、今度はまあ逆に、それならあってもいいではないかというような問題も残るわけでございます。環境庁といたしましては、当初の原案で、先ほど申し上げましたような最近の判例動向にかんがみまして、そのような因果関係の推定規定を設けるのがよい、このような判断を持って原案を作成したのでございますが、その後、この問題につきまして種々関係方面との折衝過程を通じていろいろな疑問点が出てまいったわけでございます。
 一つには、事実上の推定という問題を法律上の推定にまで高めるわけでございますので、先ほどの議論に従いますれば、直接事実にかえるところの間接事実というものをこの因果関係の推定規定に設けるわけでございます。その場合、私どもは、一つの代表的なケースというものを考えて、先ほどの説明に従いますれば、いわゆる汚染経路につきまして、直接に事業活動によるその排出がその損害を引き起こしたというような直接的な証明は、これはもう事実上不可能に近いことでございますので、その汚染経路につきまして被害が生じ得る地域内に同種の被害がある場合は、そういう規定を設け、その間接事実を証明すれば直接事実の証明があったことにするというような構成をとったわけでございます。ところが、種々検討いたしましたところ、現実の裁判におきましてその因果関係が問題になっておりますのは、これは必ずしも汚染経路の問題だけではなくて、あるいは病因論の問題でございますとか、あるいは掛出行為自体の問題でございますとか、そういったことが問題になっておるわけでございます。したがいまして、代表的なケースとはいえ、汚染経路についてのみ一つの規定を設けることの可否はどうか、さらには、被害が生じ得る地域内というような表現を用いたわけでございますが、これに対しましてはやはり種々の御議論があるわけでございまして、たとえば日弁連の案のように、有害物質が到達し得る地域内といったような一つの書き方もあるわけでございます。さらには、被害が生じ得るというのは、私どもは蓋然性のつもりでございますが、これを可能性というように読む読み方も出てくるわけでございまして、掛出がごく微量であっても他の原因と合わさって一つの被害が生ずれば、その微量の排出者についても因果関係があるというような推定としてとられるおそれもある。
 種々の場合がございましたので、やはりこういった問題につきましてはまだ判例も数少ないところでございますし、現に判例動向というものは進歩と申しますか動きつつあるような現状でございますので、いましばらく判例動向を見守った上で、この事実上の推定問題をどのような構成でもって法律上の推定規定まで高めるかという点は、今後の検討事項にいたした次第でございます。
#71
○土井委員 ただいまの環境庁のほうからの御説明は、この因果関係の推定規定を置く必要がないという立場での御見解を賜わったわけです。それはただいまの御見解だと思うのですね。ところが、当初この改正案が用意されるまず初めに環境庁案として出たのには、あったのです。ただ、中身は私十分なものとは思いません。それこそあってもなくても同じような条文だったというふうに申し上げて間違ってないと私は思います。十分なものとは思いませんが、それでも姿形は一応あったのですね。それがさっぱりと消え失せて、いまどこをさがしてもそういう条文がない。したがって、そういう認識をただいまはお持ちになっていらっしゃる。だけれども、当初案としてお書きになった節に、その規定があった限りにおいては、別の認識をお持ちになったからこそその条文がそこに存在したのじゃなかろうかと私は思うのです。したがいまして、因果関係の推定規定を置くか置かないかということに対する御見解の変遷ですね。変節と言ってもいいと思いますけれども、その間、何が動機となって、かような変節をされたのであるか、そういう見解の変遷があったのであるか、その間の因果関係を少しここで明らかにしておいていただきたいと思います。
#72
○船後政府委員 環境庁が当初の原案を最後に政府案にまとめる段階では因果関係の推定規定を落としたわけでございますが、その点は、私先ほど申し上げましたように、当初の原案を固めましてから種々検討いましたした過程で、先ほど申し上げましたような種々の疑問点というものが出てまいりまして、要約いたしますれば、現に動きつつあるこの判例動向というものが定着する、そういう時期を待ってこの問題を検討するほうが妥当であるという結論に達したからであります。
#73
○土井委員 四十五年の九月というこの年月を私は忘れるわけにはいかぬのです。四十五年の九月に、佐藤内閣総理大臣が、宇都宮の一日内閣で、無過失責任を問題にすると約束されてから、一体どれくらい歳月がたっておりますか。その間十分に、それこそ慎重に検討なさる時期はあったはずであります。したがいまして、原案を用意される節にも、いま御説明なすったような点は、十分に御検討の積み重ねの上での原案であったろうと私は思うのです。したがいまして、いま、ただいまの御見解を陳述なさる中身というのは、むしろなくなったことに対するかこつけじゃないかと私は思うのです。したがいまして、原案があったときから消えてなくなった今日に至るまでの無過失賠償責任、その問題を追及する際のよりどころというのは因果関係の推定だったということに対する認識の変遵というものは、これは無視し得ない事実としてあると思います。初めからきょうここで御説明賜わったような御見解をお持ちになっていたら、原案からそもそも因果関係の推定規定は消えてなくなっていたはずです。当初原案にあったのです。したがいまして、きょうここでお聞かせをいただいた御見解はいまの見解であって、その間には、お持ちになっていたそれに対する認識は変わったに違いない、これはだれでもが考えることだと思います。したがいまして、何が動機でそういうふうに変わってこられたかという動機のほどを聞いているのです。初めから終始一貫同じ見解を持ち続けていたとおっしゃるのなら、それはおっしゃってください。そうなれば、原案をおつくりになる際に、それこそ十分慎重に検討いたしますと言いながら検討の中身が十分でなかったということを再確認させていただきまずから……。
#74
○船後政府委員 佐藤総理のいわゆる一日内閣の公約は、これは無過失損害賠償制度をつくるということでございましたので、私どもは、その線に沿いまして環境庁発足以来作業を進めてまいったわけでございます。
 因果関係の推定規定は、これと関連いたしまして被害者保護というような観点から検討いたしたのでございますが、最終的には、先ほど私が申し上げましたような種々の法律上の問題がございました。しかし、もちろん環境庁原案をつくりました際におきましては、そのような規定はぜひ設けたい、こう思っておったわけでございますが、先生のおしかりをこうむるかもしれませんが、私どもの考えが足りなかったとか、あるいは検討が不十分であったというような点もございまして、最終的には、先ほど申しましたような理由でもって、これを今後の検討課題に譲っておるわけでございます。
#75
○土井委員 どういう問題に対する検討が不十分だったわけでございますか。法律に対する解釈についての吟味が不十分だったのか、判例に対する吟味が不十分だったのか、あるいは被害の実態に対する認識が不十分だったのか、いまの公害の発生源に対する認識が不十分だったのか、そして何よりも財界に対する認識が不十分だったのか、どれでございますか。ひとつはっきりと何に対する認識が不十分とお考えになっていたかをいまここで言明していただきたいのです。
#76
○船後政府委員 私、事務当局として申し上げられますことは、先ほど来申しておりますように、事実上の推定という問題を法律上の推定に高めます場合には、因果関係のもろもろの輪の中のどれをつかまえて法律に規定するかという点、これは、私どもは汚染経路という点をとらまえたのでございますけれども、それでもって十分かどうかというような問題点があるわけでございます。
 さらには、汚染経路の問題を代表ケースとして取り上げるにいたしましても、その汚染経路の推定の構成要件をどのように定めるかということにつきましては、環境庁の原案では、あるいは拡張解釈を生むおそれがある、あるいはまた、これが反対解釈を生むおそれがあるといったような御批判もあったわけでございます。やはりそういった点は、法律問題として考えてみますと、いま少し練らなければならない。練るにつきましては、やはり判例動向というものを今後見きわめる必要があるというふうに考えたわけでございます。
#77
○田中委員長 小澤さん、ひとつ最終的に答弁どうですか。
#78
○小澤(太)政府委員 土井先生のような法律家でありませんから、私は法律的な議論はいたしません。その議論は、先ほどの法務省並びに私どものところの局長の説明で十分だと私は思っております。
 ただ、先生が聞きたいとおっしゃるのは、どういう経過で、最初原案にあったものが抜けたかということだろうと思うのです。それは法律の問題もあると思いますが、あるいは政治的な考慮があったのではないか、そのことをお聞きになろうとしてさっきからいろいろ議論をやっておられるのではないか、こう私は聞いておったわけです。
 そこでお答えしたいのは、まず法律論といたしましては、先生がおっしゃったとおり、ほんとうに私どもが出しました最初のあの因果関係の推定規定は、あってもなくても同じようなものだ、まさしく先生の言われたとおりだと思うのです。これは先ほど法務省ないし私の局から説明いたしましたように、あの因果関係の推定は直ちにそのものずばりと推定されるわけではないので、その前に発生したもの、あるいはまたさっき言った三つのように、病気とその発生したものとの因果関係があるか、それからその地域に住んでおるか、そういうことが立証された上で、その地域に住んでおって、そこに同じような病人があった場合に、ここにいまの推定規定が働くわけでございます。その前に三つのなお立証しなければならぬ問題があるわけです。ですから、そういう意味では、因果関係の推定といっても、実はまことに不完全きわまるものです。やはり被害者のほうでは、さっき言ったような三つのことの立証をしなければならぬ。ところが、現在の裁判は、これは先ほどから説明がありますように、その被害者の側から、原告から立証しなければならぬこの三つの推定をすでに裁判所は判断において乗り越えておられるのです。ですから、そういう時期に、もう効果の薄い推定規定だけで事足りるとは思わない。こういうことから、むしろ現在これを見送って、先ほど船後君が申し上げましたように、裁判の動向がだんだん固定しつつある、それは第一審の判例しかありませんけれども、これがほとんどもう裁判官の考え方の中にも、社会的の通念の中にも固定化しつつある、この動向を見きわめて、そして因果関係の推定の規定を置くならば、原案のようなものではなくて、先ほど御答弁申し上げたように、もっと因果関係の輪を、どの輪をつないで推定するか、こういうことを検討する必要があるということに一応達したわけです。
 なおかつ、これは私ども政治的に判断いたしますと、この因果関係の推定が、内容はまことに羊頭狗肉なんですよ。先生のおっしゃるとおり、それがいかにも一切の因果関係をこれでもって推定できるというような誤解を与えるということもあるのです。それから、そのために、それにたより過ぎて、被害者がかえって有利でないということにもなり得る、そういうような誤解が起こり得るというようなこともございます。そしてまた一面においては、これをどのように運用するかという問題もいろいろあると思います。
 裁判の実務は私は存じませんけれども、いまのような判断に立ちましてメリット、デメリットを考えまして、この程度のものならばむしろ見送って、さらにその因果関係の輪をどこにつなぐかということを、判例の動向とあわせながら、次の機会に持っていくのがむしろ実際的であり適当ではないか。そしていま申し上げた三つの因果関係の推定を、つまり立証することを判例はすでに乗り越えております。乗り越えておることをさらにわれわれは考えていくべきだろう、こういうような考えでおるのが私ども政治の立場です。ほかから圧力があったとは全然考えておりません。私どもの環境庁の立場としては、そのようなことでわれわれが右顧左べんして左右されるような、そういう姿勢ではございません。そのことは私がここで責任を持って申し上げます。どんな事実があったかということは私存じませんから、そういうことだけ申し上げます。
#79
○土井委員 私もちょっと急用がありますから、もうあと一問だけで……。
 いまるる御説明を賜わって、事実に対する認識が不足していたということや、法律解釈について少し詰めが足らなかったというふうな御趣旨の御発言と私は受け取ったわけですが、そうしますと、この問題は、まことに初歩的な因果関係の推定に対する認識が欠如していたということだと私は思うのです。しかし当初、あの環境庁の原案に入れる前に、長官は、きょうここにいらっしゃいませんから、大石長官にじきじきこれは質問申し上げなければならぬ事柄とは思いますが、因果関係の推定というこの規定に対してたいへん意欲を燃やしておられたのです。情熱を燃やしておられたわけですよ。そして外部からいろいろな人が長官に期待をかけておりますから、この無過失損害の問題についてもこうあってほしいという要求を持ってまいります。わけても、日弁連あたりで持ってきた中身は、因果関係の推定は大黒柱だから、これを原案の中に置いた以上は抜いてもらっては困るという切実な声を出したわけです。そのときの大石長官の御返答というのも、これは私はその現場にいて見聞きしておりませんから、ただ文書によって知るとか、そこに行った人からただ聞いて知るとかの限りでありますけれども、たいへんにこのことに対して熱意を持っていらしたという向きも承っております。しかもなおかつこうなったわけでしょう。今日ただいまは抜けて消え去ったわけです。
 そこで、この問題に対する初歩的な認識を欠如していたというのは、環境庁自身が自発的にお考えになったのか。何か外部からそれを知らしめる状況があって、なるほどこれは考え直してみなければならぬ問題であるということを認識なすったのか。いずれでありますか。
#80
○小澤(太)政府委員 大石さんが熱情を燃やしておられたということは、私もそのとおり受け取っております。私自身も、補佐者として熱情を持っておるわけです。ただ、熱情のこり固まったもののあらわれたものがあの程度のものであったのでは、これはほんとうの熱情を燃やし尽くすものではない、まだまだこれから熱情は燃やすんだ、そういうことで、あの程度の、先生のおっしゃった、あってもなくてもいいようなもので熱情は消えるものではございません。こういう意味で、妙な言い方をしますけれども、これからも熱情はどんどん燃やし続けて、先ほど申しました因果関係の推定をもっと完ぺきなものにしたい、これが長官の考えておられることだろうと思うのです。
 それから、最初できました案は、民法学者等にいろいろ相談して一項入れてもらった案です。ことに私どものように法律にうとい者は、民法学者につくってもらったのですから、こんなりっぱなものはない、こう思ったのが一つはあります。事実です。ところが、いろいろ折衝したり話し合って法律の意味を聞いてみますと、先ほど私が理解し、あなたに申し上げたように、こんなものはそうたいした、金科玉条にするようなものでないんじゃないかというように感ずるようになって、もっと強い、りっぱなものでなければならぬという気持ちが私もようやくわかってきたのです。(島本委員「長官を侮辱するものだ」と呼ぶ)侮辱しない。長官の熱情をこれからますます完ぺきならしめるために私どもは努力しておるということをいま申し上げたのであって、これで削りっぱなしで、それで済むというものではない、こういう意味でおるわけでございまして、決してほかのいろいろな雑音でもってやったということはございません。率直に申し上げますならば、私は政治家でございまして法律にはうといのですが、多少勉強しております。私も、先生とは違った昔の法科ですが、法科を出ておりますから。ですが、率直に言って、私は、あの因果関係の条文の意義を十分に理解していなかったということです。ですから、認識が不十分だったということです。
 それから先ほど申しましたいろいろな誤解とか、因果関係の飛躍的な誤解を受けるというようなことの社会的な認識、こういうものももちろん十分でありませんでした。いろいろ折衝を当局でやらしておりまして、その報告を聞くうちに、なるほどわかった、こういうことになったわけでございまして、現時点において考えておることがむしろ正しいので、前の時点において考えておったことはまだ思慮分別が不十分であったということをいま反省しておるような次第であります。
#81
○田中委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#82
○田中委員長 速記を始めてください。
#83
○土井委員 法律学的な観点からこの条文に対してどう思うかということは、法律学者にまかせればいいと思うのです。ここは政治の場でありますから、政治家としては先輩である次官に私がこんなことを申し上げるのはまことに不遜のきわみだとは思いますけれども、ここで問題にすべきは、こういうふうな因果関係の推定規定の中身が十分でなくとも、法律として置く意義は政治的にはどこにあるかということを考えるのが第一義じゃないかと思います。これに非常に期待を持たれたために、中身が不十分で、あとでがっかりする国民がある、それにたえ得ないような法文はつくる意味なしといって削り取ってしまって、はたしていいかどうか。この条文の存在自身に非常に期待をかけていた国民に対して、削り取ったときにどう説明するのですか。これ自身にたいへんがっかりいたしておりますよ。
#84
○小澤(太)政府委員 法律論をする気持ちは毛頭ございませんが、こういう法律をつくるのがいいか悪いかという判断は、政府も、提案者としてしなければならぬ。立法府として、先生方もそういう意味でしていただかなければならぬ。法律ができた以上は、裁判官がこれに拘束されるということは当然のことであります。一番強く憲法において拘束される。しかし、われわれは、その前の段階で、このような法律がいいのか悪いのか、はたして誤解なく適正に運用されて、実際に被害者を守り得るものであるのか、それに十分であるのか不完全なものであるのか、こういう判断をする、これは政治家の判断です。この立法府が政治家によって構成されておるゆえんもそこにあると私は思うのです。そういうことの判断をいま私どもやっておるのでありまして、法律論を言っておるわけではございません。
 私どもの判断に基づきますならば、先ほど申し上げましたようないろいろな欠陥があるものをいま今日において出すよりも、さらによりよきものとして出さなければならぬ。それには判例の動向等もよく観察し、社会の動向などももっとよく掘り下げて、そうして真に被害者の利益になるような立法はいかにすればいいかということの判断をする時期にいま至っておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#85
○土井委員 一問一問と言いながら、これでほんとうの最後の一問にしたいと思います。
 今回の改正案の中身を見ましたら、初めから終わりまで、とにかく立法趣旨の中にあるのは被害者救済でございましょう。これに次官も御異論はないと思うのです。そうしますと、被害者の立場に立って考えなければならぬ。いま、もっと十分な法律にする、これでよいか、これでよいかということを法律案を作成する段階からわれわれは政治家として考えなければならないという御趣旨の御発言であります。それからしますと、今回の水質汚濁防止法、大気汚染防止法の一部改正案という法律案として問題にする際と、無過失損害賠償責任を単独立法として問題にする際と、一体どちらが、被害者の立場に立って考えた場合に、被害者に対する救済、被害者に対する補償、裁判の迅速、適正な裁判ということになるか、これを一言お答えいただいて、私は終わりにします。
#86
○小澤(太)政府委員 これは、私がいまお答えせずとも、この委員会の審議の過程でたびたび御回答申し上げておる問題だと思います。無過失損害賠償法という単独法をつくるか、今回の私どもが提案いたしておりまするような二つの法律の改正案でいくか、こういう問題は実は真剣に考えなければならぬ問題でございます。被害者の救済ということから申しまするならば、これは民法の原則をひっくり返した単独法というものがよりよきことであることは私も推定できます。しかし、先ほど私が最初に山本議員の質問に答弁いたしましたように、現時点において最も妥当なものはどこであるか、こういうものを探索した結果が今回の案になったわけでございまして、理想から申しますると、将来そこまでいくのは当然なことだと私も考えております。ここが私どもの政治の限界にある、こういうことを御理解いただきたい。
#87
○島本委員 格調の高い法律論争の勝負はほぼあったようであります。それに対する判定は私がすべきであろうと思います。しかし、やはり無過失賠償責任を民法の特例法として出しておいたこの野党案と、いま政務次官がおっしゃいましたところの政府案と比べて、いずれのほうがいいのか、いずれのほうに軍配をあげるか、民法の大家でございます我妻榮さんは、野党案に明確なるこの被害者の補償、たとえば基金のようなものの制度があるならば野党案はまさにりっぱなものである、こういうようなことを言ったんです。
  〔委員長退席、始関委員長代理着席〕
いま次官は、現時点では、これは妥当だと言う。そうして限界があると言った。もう我妻榮先生でもはっきりこれを言っているし、向こうは民法の大家でございます。そういうような中で判定しているのに、現在の時点ではこれは妥当だ、限界がある、こういうふうにおっしゃっているんです。もう勝負はついているのです。しかし、限界があるというのは、では、その限界はどういう限界なんですか。
#88
○小澤(太)政府委員 我妻先生は私の恩師でありますし、私も民法を習いました。その先生が言われることでございますし、私は、野党で出しておられる案はりっぱなものである、これが決してつまらぬ案だとは申しておりません。りっぱなものである、こう申しておるわけであります。
 それで、現在私どもの政治の判断に基づいて出しておりまするのは、現時点においてこれが最も妥当であるという判断に立っておるということでございまして、決して野党案が悪いとは申しません。理想的なりっぱな案であると私は敬意を表しておるわけでございまして、いつの日にか、このような案に近づくことができればとしみじみ考えながらお説を伺っておるような次第でございます。
#89
○島本委員 限界に対する答弁がなかったのですがね。
#90
○小澤(太)政府委員 限界ということばは適当でありませんが、先ほど政治的な判断ということを申し上げましたが、そのことを言っているわけです。
#91
○島本委員 無過失賠償責任法案の最大の目標とすることは、公害によって被害を受けた場合の民法七百九条の過失の要件をはずして、そして被害者を厚く保護するというのが目的なんです。そしてこれは社会的な要請が現実化したものなんです。もうすでにそこまでいっているんです。いままでこの立証が被害者にずいぶん大きい負担になっておったということは、諸種の裁判で十分知っているとおりなんでありまして、こういうようなことが原因の一つであったことからして、迅速な救済もまたそれに一つ加えて必要なんだ、この二つの意味が十分これに盛られなければならないし、これが貫徹されないとだめなんです。しかし、いまのあなたの政治的判断によりますと、どうもその点は、判例にたよったり、憲法においてはっきり置くべきものを置かなかったり、あえて私の政治的推定によると、これができ上がってきた時点で、三月の十四、五日ごろの動きで、初めあった原案が、植村経団連会長が総理と会って、そうして企業の実態、経営基盤を脅かすものである、そうして企業努力を無意味にするものである、そうして企業の立場を無視するものである、こういうような点について言った以後、これは削られてしまったのです。
 これは推定の論拠によって言うと、まさに政治的圧力によって削られたということになる。それをいまいろいろこじつけて答弁するから、法務省でも船後局長でも、何かいろいろな苦しい答弁をせざるを得ないので、その責任は次官、あなたのほうにあるのです。ですから、こういうような点を考えて、一日も早くこれを復活させて、こういうような疑念がないようにすべきです。
 そしてこれはたいしたことはないというならば、逆にこれをつけることによって国民全体が一歩前進であり、安心であるというなら、なぜその安心するような方法をとらないんですか。たいしたことがないというなら、国民の安心するような方法をとってやってこそこれは政治というものであります。その辺を考えて、早くこの点について国民を納得させるような方法をとるべきだと思います。入れるのはあと一年後になりますか、二年後になりますか。
#92
○小澤(太)政府委員 先ほどおっしゃったような具体的な事実は私存じておりません。それは総理に言われたと言うなら、総理からお聞きにならないと、私は知りません。したがって、そういうことの政治的圧力に屈したわけじゃございません。その時点が偶然に一致したかどうか、私存じないくらい知らないんですからね。
 先ほど申しましたように、この推定規定は誤解を起こしやすいということがデメリットの一つです。誤解を起こしやすい。先ほどたびたび申し上げたように、これが誤解で、ただいたずらな期待を持たして、そうして被害者をがっかりさせるということになってはならない。ほんとうに期待が持てるような推定規定にしなければならないということと、もう一つは、法務省にいろいろ裁判の実務などを聞いてみますと、やはり必ずしも被害者の裁判が迅速になるとは限らない。あるいは現在の判例で乗り越えていっておりまする推定が、そのためにかえって足まといになるおそれもあるやにうかがわれる。
 こういうことから考えますと、われわれが期待しておったような被害者救済、しかも迅速な裁判、こういうことが必ずしもこれで期待できないのじゃないか。その上に、先ほど申しましたようないたずらなる期待を持たせる誤解ということもあり穫る。これはきわめて不完全じゃないか、こういうような観点に立った、純粋にそのような法律的な政治的な判断に立った処理でございます。いやしくも、外からの圧力とか、そういうものは絶対ございません。私は圧力に屈しない男でございますから、どうぞ……。
#93
○島本委員 これを聞いておきたいというのが先ほどからはっきり出ないんです。それで不安であるから取ったという。我妻栄民法学者、五十年の経験者に言わしめると、やはりあったほうがいい、しかし、なくともそれにかわるものがあるが、あるにこしたことはないと言う。議事録を見てください。そうまで言っているなら、何も遠慮することはないじゃありませんか。そうして私どもは、早く救済するという意味で、いままでも一審だけでも三年、控訴審になると十年もかかっていた。これを早める必要があるのだ、こういうことなんです。だから次官、これはやはりいまのようにやってもかかるなら、何も早めるということにならぬじゃありませんか。では、これを除いて下級審の判例に準拠してやると早めることになるということをこの際はっきりさせておいてもらわないと困ると思うのです。あってもなくても裁判が早くならないんだったら、これは何のための法案ですか。
#94
○小澤(太)政府委員 いま問題にいたしておりますのは、因果関係の推定の問題でございます。無過失の問題は早くなる。当然ですよ。因果関係の推定の問題は必ずしも早くならない、こういうことですから、被害者救済は、被害者に有利ないろいろな立証のあれもやらせないで済むようにしてやりたい、裁判を早くしてやりたい、こういうことなんですから、いまおっしゃるのが全体の法律について言われるなら、私はおっしゃることに不服であります。ただ、因果関係の推定のこの問題に限ってならば、裁判の実務を聞いてみても必ずしも早くならない。だから、先ほどから、私のほうの局長も申し上げ、法務省からも話しておりましたように、早くこのような問題の因果関係の輪をはっきりしたものにしていきたい、こういうことの努力を続けるということを申し上げておるわけでございます。
#95
○島本委員 少なくとも因果関係の推定その他無
 過失賠償責任法、これによって裁判を早め、被害者を早く救済するのだ、手厚く保護するのだ、こういうことなんです。一つ一つ分離して、総体的にもう一審だけでももっと早くなるのだ、控訴審をやってももっと早くなるのだ、こういう結果をもたらすような推定でなければならないし、無過失賠償責任法でなければならないのです。そんな何にもならないのなら、よくわかりました。
 ところがもう一つ、私としては重要なことを聞いておきますけれども、これは、先ほども通産省からのいわゆる反発によって削られたのだということが報道ではっきりされておりますけれども、最近また今度は大気汚染、それから水の汚濁、これが激しくなってきたので、今後通産省ではエコロジー、生態学、こういうようなことを考えて検討しておるのだ、そして望ましい経済政策や都市計画に役立てたい、こういうようなことを考えておられるようです。同じような目標で新全総、これが経済企画庁の手によって成立した。その中に不足をしていたのが公害対策で、そしてもう一回練り直して公害対策を入れたといいながらも、現在にあってみればなおそれでもさっぱり効果があがらないもので、環境庁の長官をして言わしめるならば、これは五月二十三日に奈良で発言したり、また五月三十日に閣議で問題になったり、こういうふうにして、この新全総そのものに対する意義さえ問われているのです。
 今度はまた、通産省のほうでいち早く、大気汚染、水質汚濁が激しくなる、廃棄物の量も大きくなったことからして、エコロジーも考えて、そして経済政策、都市計画に役立てたい、こういうような計画があるようです。これもまた公害の先取りであって、そしてまた、これは環境庁と十分相談しなすってやっているのか。また、これをやるためにまた一つの障害を来たすおそれがある。そしてこの無過失責任賠償の法律ができても、結局は苦しむのは国民であって、これの救済に役立たない。逆に公害に対する対策の先取りをやっているのが通産省ではないですか。こういうような考えではだめなんです。これは、この発想について環境庁では十分知っておるのですか。この点に対して協議に参加しているのですか。これは通産省だけの独走ですか。これははっきりしてください。
#96
○久良知政府委員 環境の問題につきまして、人間がやはり生物の一種であると申しますか、環境の一部であるという考えに立ちますと、生態学と申しますか、いまのことばでいう、先生のおっしゃるエコロジーでございますが、この考えを公害問題、特に工業立地の問題、それから新しい工業団地の計画の中に取り入れなければならないというふうな考えが自然に出てくるわけでございまして、通産省では、昨年エコロジーの研究委員会というべきものをつくりまして、研究を進めてきておるわけでございます。
 最近、一応中間的な結論が出まして、通産省で前々から産業連関表というものをつくってまいっておるわけでございますが、これに一昨年来だったかと思いますが、公害を加えまして、産業公害連関表というものに変えてすでに定期的に結果を出しておる、試験的に結果を出しておるわけでございます。これにさらに環境を加えまして、一つは産業環境連関表というものをつくろうということでただいま研究をし、その計画を練っておる段階でございます。
 それからもう一つは、試験的に関東地区という中規模の地域をとらえまして、この中でエコロジーを入れましたモデルをつくりましていろいろ手段をしてみようということで進めておるわけでございますが、たまたま本日の新聞に出ておるわけでございます。いわばこの研究段階でワンステップ進んだという状態でございます。四十八年度のいろいろな計画の中には、やはりこの研究会が出しました結論を織り込んで政策なり計画なりを立案していくべきであるというふうに考えておるわけでございます。ただいま来年の政策の立案の段階でございますので、関係の官庁ともそういう考えに基づきましていろいろ御相談を申し上げたいと思いますが、やはり現在ではまだ試験研究の段階でございますので、各省庁ともおのおの独自の立場で研究をしておられるのではないかと考えております。
#97
○島本委員 ことに大気の汚染や水質の汚濁並びに増大してきた廃棄物の処理等考えてエコロジー、この考え方を導入して都市計画や経済政策を考えるのだというならば、当然これは環境庁、この方面にも諮問してしかるべきだし、いまもう中間報告の階段になったとすると、当然その間には環境庁あたりに諮問してもしかるべきなんです。これはもう諮問を受けておりますか、局長。
#98
○船後政府委員 現在の環境問題、これを解決していかなければ企業の存立はおろか人間自体の生存さえもあぶないといったような認識は、これは私、政府各省を通じて広く行き渡っておるところと考えております。したがいまして、現在各省がそれぞれ所管いたしております種々の開発計画あるいは都市計画、立地計画、経済政策、こういったものを考えるにあたりましては、環境の保全ということが一番先に考慮されねばならない、こう思います。したがいまして、各省でも種々の審議会等々におきまして将来の基本方針をお定めになるにつきましてはすべてこの環境問題が登場してくるわけでございまして、環境庁といたしましても、これらの作業につきましてはそれぞれ事務的にも連絡を受けておりますし、また、それらが政府の一つの意見としてまとまる階段では十分協議に応じていくというようにいたしておるところでございます。
#99
○島本委員 受けておったということですか。それならば、どういうような諮問を受けていましたか。
#100
○船後政府委員 ただいま御指摘の通産省の作業は、まだ通産省の内部の作業でございまして、事実上の問題といたしましては連絡しておることと思いますが、まだ通産省のほうで結論の出たわけの問題ではございませんから、そういう意味では正式の協議というような運びにはなっておりません。
#101
○島本委員 だからだめだと言っているのです。中間報告をしている段階です。中間報告をしている段階で、これからおそらくするでしょう、でき上がってからこれをやる、こういうような環境保全策がありますか。政務次官、これだからだめなんです。これは経済政策の中にも都市計画の中にも環境保全を入れようとする一つの大きな計画なんです。当然これに参与していないとだめなはずですけれども、この点等においてはまた後手後手に回ってしまう、こういうようなことがあってはだめであると思います。これは十分注意すべきであると思います。いまからでもはっきりして意見を申し述べたほうがいいと思います。
#102
○小澤(太)政府委員 私は政務次官でありますから、政治的判断をして省内を指導するという立場にあります。したがって、正式に環境庁と通産省とが事務的な場において議論するという場合には、私も関与して政治的な判断を持つ、こういうことになるわけです。
 ただいまは、先ほどからお聞きのとおり、通産省の中での作業でございます。したがいまして、この作業がある程度進みますれば、環境庁あるいは経済企画庁その他関係省庁との協議があるはずでございます。その際に意見は十分申し述べますが、さらにもう一つ、環境庁は、御承知のとおり、環境庁設置法によりまして、各省大臣に対する勧告をすることができる。勧告に従わない場合には、総理大臣をして指示をせしむるということもできる。もちろん総合調整の力もございます。そういうような機能を持っておりますので、各省が各省の中で検討の過程にあるものまで一々私のほうで関与することは必要ありません。それよりも、ちゃんと関与することになっているその機能を発揮できるような機会があるわけでございますから、そのつもりで、決して御心配になるようなことのないように心がけておるわけでございます。
#103
○島本委員 どうも後手後手に回るのはその考えのようであります。あの新全総は、もう何回も言いましたとおり、初めからきまってしまったのです。しかし、公害に対する対策は持っておらないということで、一回その部分だけをまた盛り上げて入れたのです。入れても、基本がきまっているものですからどうにもならなくて、いまや大石環境庁長官をしてでも、やはりこういうような計画は公害のもとであり、これでは困ったものだと言わざるを得ないような状態にしてしまったでしょう。今度もまた、そういうような計画を新しい経済政策として、都市計画も含めて通産省では検討している。これが固まった段階では、同じ轍を踏むじゃありませんか。したがって、その中で環境保全、公害対策に関する分は、十分環境庁と打ち合わしてでも進めるべきだ。これでなければまた同じほぞをかみますよ、こういうようなことなんです。わからないようですから、船後さん、あなた答弁してください。政務次官、いいです。
#104
○小澤(太)政府委員 私は、あなたのお考えと同じです。後手になってはいけない。いま新全総のお話が出ましたが、これはいま洗い直してもらっております。私のほうも、船後君が答弁すると思いますが、環境容量とか、新しい一つのものさしをつくりまして、これによって日本列島はいかにあるべきかという指標を持ちたいと思っております。その中に新全総なども抱き込むような形でいきたい、こう思って、中公審に対しましても、この長期ビジョンに立った計画、そしてその出し方などについていま審議をお願いしておるような状態ですから、そして私どもの構想からいたしますと、日本列島を――いまストックホルムでやっておりますように、人間環境を主軸とした、そしてその中でありとあらゆるものが活動できる、こういうような形に持っていくという努力をいませいぜいやっておるわけでございます。決して後手には回らないという決心はいたしておる次第でございます。
#105
○船後政府委員 御指摘の現在通産省の内部作業に取りかかっておりますのは、先般関東臨海地域を対象といたしまして、主として硫黄酸化物というものを産業連関表を用いた分析がございますが、それをさらに拡大いたしまして、今後の産業政策を考える場合に、これが地域の環境にいかなる影響を及ぼすかといった点をそういった産業連関表といった手法あるいは電子計算機を取り入れたものといったようなことで御検討を進めるものでございます。
 企業活動が環境にどのような影響を及ぼすかということは、やはり通産省が一番データもお持ちでございますから、当然通産省が主となってやっていただく。もちろん環境庁といたしましても、この問題につきましてはきわめて深い関心を持っておるわけでございますから、その作業過程その他につきましては当然相談に乗ってまいりますし、結論が出まして、そういったモデルの作業を通じまして一つの政策というものが出てくる場合には、先ほど政務次官が申しておりますような、環境庁にはしかるべき権限もあるわけでございますから、そういったことで、環境保全を十分配意したいろいろな政府の施策が進められるような方向でやってまいりたいと考えております。
#106
○島本委員 通産省に一応伺っておきますが、いまの考え方でいいのですか。
#107
○久良知政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、生態学を二つのプロジェクトと申しますか、仕事に取り入れようとしておるわけでございます。一つは、関東をやはりモデルにとるわけでございますが、前回つくりました公害と産業の連関表の中に環境の考えを入れるということ、それからもう一つは、関東地区を中心にしまして、生態学の考えを入れたモデルをつくろう、これによっていろいろシミュレーションもやってみようということになるわけでございます。この作業自身が、通産省内部の作業でございまして、たまたま昨日――御承知のように、通産省では、定期的に月曜日に正式の省議というものをやっておりますし、それから水曜日に非公式に幹部の連絡会議であります事務連というものをやっておるわけでございますが、この水曜日の非公式の会議に、作業結果について中間報告があったということでございます。これは生態学を取り入れるというふうな方法論の問題でございます。結果が出ましたときには、これは環境庁なり経済企画庁とも御相談をし、将来の政策ないしはいろいろな計画の中に方法論として織り込んでいくということになるわけでございます。
#108
○島本委員 それは計画の段階から公害配慮、環境保全の点を十分考慮していかないと、それが通産サイドになった場合にはまた取り返しがつかないことにならないように今後は注意しなければならない。これはもう環境庁のほうの局長はじめ政務次官に、この点は十分注意して後手に回らないように強く要請しておきます。
 それと同時に、本法案によって無過失賠償責任と言いながらも、まだまだ抜けているところはたくさんあるわけです。一番抜けていて残念だと思うのは、これはやはり今後の一つの検討課題にもなりましょう。きのう光化学スモッグについての参考人の意見を聴取してみました。これはもう不特定多数であって、把握の対象がほんとうに困難である。そういうような事態の中で、被害だけはあるわけであります。原因が、列挙主義になっている政府の――しかしながら、現在のところは、その原因さえも明確な判定がなし得ないような状態になっているわけです。
 また、それによりますと、これは木内国務大臣にも伺いたいわけですが、きのうそういうようなこととあわせて、工場、自動車の排気ガスだけでなくて、風向きによる場合の南東の微風というものは、川崎方面から吹いてくる。そうすると、向こうから吹いてくる風と同時に、東京都内の工場やまた自動車の排気ガス、これがいろいろ光線とまじって、こういうような現象を起こすわけであります。そうなります場合には、これはこの把握を十分に考えて――いまのこの法律ができておっても、これにどうにも対処でき得ない、これこそ行政的にそういうようなものをあらかじめ予防するような対策をいまからはっきり立てるべきじゃないのか、こういうことを痛感したわけであります。この法律ができても、これは把握できない。野党案によっても、把握が困難である。しかしながら、行政をしてやるならば、いまのようにして、こういうのは、風向きなり排出している物質、これあたりもはっきりつかめる状態にありますから、今後はもう行政の面でこれは十分に監督、指導すれば効果が若干あがるのじゃないかと思うのです。この法律を実施するたてまえから、実施しても、こういうように把握できない立場をいまできるのは環境庁長官の立場じゃないか、こう思いますが、きのうの参考人の意見とあわせて、今後この問題に対しては身をもって対処してもらいたい、こう思うわけですが、御意見を伺います。
#109
○木内国務大臣 ただいまの御質問はごもっともであります。きのう私が御参考に申し上げたのは、科学技術庁のほうにあります資源調査会が、資源調査会というのは、土地の問題その他日本のあらゆる資源について調査しているのですが、今回科学技術庁の長官に対して勧告をしてまいりました。高密度地域におけるところの下層ですね、きのう申し上げましたように千五百メートルから上は上層といっておりますが、その下の下層地域における大気の汚染の状態と、その表層、土地の表にある表層生物、これは動物だけでなく植物も含めて、それの保全に対する勧告というのが出されておりますが、その中におきまして、きのう私、概略申し上げましたが、一年のうちに八十日くらいは非常に大気汚染の吹きだまりが出てくる。それも茨城のほうから吹いてくる風が、地図を広げると、大体大宮の近所を線にして東からこちらに吹く。それが一つの膜になりまして、そしてそれに向かって、きのう岩本参考人が言っていましたように、南から微風が吹いてくると、川崎、あの辺からすべての汚染物質がその地域に吹きだまりのようになってたまる、こういうことがいわれておりまして、そういうことの勧告を受けておる。私は、きのう岩本参考人から、南風が吹いているときに自分のほうにこうなってくるというお話を聞いて、ああそうかな、やはりそういう事実もあったのだな、こう思ったのであります。
 そこで、そういうことをいろいろあわせて考えてみますと、炭化水素と窒素酸化物、すなわち自動車の排気ガスだけでなく、いろいろな廃棄物がそこへたまってきているのではないか、単に光化学スモッグと一口に言われているけれども、非常に複雑なのではないか、私も勧告と意見と両方によってそう思ったのですが、勧告はこういうことをいっておるのです。こういう状態だから、地形と風の型が非常に大事なことであるから、今後風の観測、気象の観測について大いに力を入れていかなければならぬ、そして大気汚染が生物に及ぼす影響について大いに研究していかなければならないのではないか、その一歩として、このままにしておけば、五十年たてばこの地域の木が枯れてしまうような状態も生じかねないのではないか、こういうことでありましたので、そこで、これから先は大気汚染をこれ以上に悪くするようなことがあってはいかぬ、これはだんだん減らしていかなくてはいかぬが、さしあたり現状より悪くしないという規制をしなければならぬ、規制をしておいて、さらにこれから汚染を減らしていくような措置を講じなければならぬというような勧告が出ておりますので、関係各省、ことに環境庁のほうにこれを回しまして、ともに力を合わせてこの問題について対策を講じてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
#110
○島本委員 その点は私からも要望しておきます。強力に対処するように、その点強く要請しておきます。
 それと同時に、私は次に基金の問題にちょっと移らせてもらいます。
 政府のほうで、テルアビブ空港のあの犠牲者に対して今度見舞い金を出すように決定したそうであります。こういうような問題に対して、公害被害者、これこそ以前から十分に救済しておったならば、むしろ世界に範を示すようなことになったのではないか、こうも思ったわけですけれども、そんなことを言っていてもだめです。
 それと同時に、今度は私どものほうとして聞きたいことは、無過失責任の企業に対して公害保険制度、これを大蔵省が検討中である、「大蔵省は環境庁のまとめた無過失責任制度に呼応して「公害保険」制度の導入を検討しはじめた。無過失責任を問われた公害発生企業の賠償能力を補てんするのがねらいで、業種、企業別に保険料率に格差をつけ、積み立て保険料をもとに保険金を支払う仕組みである。大蔵省では財政資金の投入もある程度は必要とみており、近く損保業界の意向を打診する予定だが、具体化すれば政府による公害企業助成につながるだけに、「ソーシャル・ダンピング」といった批判が出ることも予想される。」、こういうようなことが三月初旬の段階でいわれておるわけであります。
 そうすると、いま私どものほうでは一番問題になるのは、行政的な面からすると、紛争処理に対して裁定の権限を持った国家行政組織法第三条機関、こういうものを何としても確立すること、もう一つは、裁判に勝っても、もし支払いができない場合には、被告がそのままばかを見ますから、そういうことがないようにするためには、この基金制度というか補償制度、これも両立させておかないと、まさに方法としては画龍点睛を欠く、こういうように考えておったわけであります。しかし、三月の段階でこれが考えておられるとすると、公害被害者に対する補償の問題は、この保険制度なのかどうか。これによると特別会計による再保険実施も考えておる、こういうようなことになりますと、公害保険再保険方式、これは環境問題であり、自賠責と異なるために、無過失責任制度がゆがめられるものではないか、こうさえいわれておるわけであります。大蔵省がいま考えられているのは、いわゆる公害保険なるものは、被害者を救済させるための基金の一端として考えられておったのですか、この点をこの際明確にしておいてもらいたいと思います。
#111
○宮下説明員 お答えいたします。
 先生御指摘の件は直接私担当でございませんので、ちょっと責任ある回答をいたしかねますけれども、私の聞いておる限りにおきましては、まだそのような検討をしておるということは承知しておりません。大蔵省といたしましては、環境庁のほうでよく検討された結果、御要求なり相談がありますれば、それに応じて、その制度の趣旨に沿いまして十分な検討をいたしたいと考えております。
#112
○島本委員 では、これは環境庁はどうなんですか。
#113
○船後政府委員 ただいま島本先生の御指摘のような新聞記事は、たしか三月の中ごろと私も承知いたしております。(島本委員「六日だよ」と呼ぶ)初めでございますか、その点非公式でございますが、大蔵省に聞きましたところ、それほどまで進んだものではないというように私は承知いたしております。
 環境庁といたしましては、ともかくこの無過失に対応いたしまして何らかの損害賠償制度というものは考えねばならない。これは過去におきましても、労働基準法に対応いたしまして労災保険がある。あるいは原子力につきましては原子力損害保険がある。あるいは自動車の損害保険がある。このような仕組みになっておりますので、そのような制度の必要は痛感しておるわけでございまして、今般中公審に特別部会を設けまして、その点の検討を開始いたしたところでございます。
 ただ、この制度をどのような仕組みでもって構成するかということにつきましては、前例もないだけに非常に問題点が多いようでございます。先生の御指摘のように、たとえば、裁判とかあるいは仲介、和解といったようなものを前提といたしまして、その債務の履行を担保するにとどめる、そういう制度にするか、もしくは、そうではなくして、原因不明と申されるような範囲の被害までも包合し得るような制度にするか、そういったところから始まるわけでございまして、そういった制度の目的に照らしまして、これを担保の供託といったような制度から保険、基金というようなものにつきまして、それぞれ具体的に検討を進めてまいりたいと思っております。
#114
○島本委員 そうすると、これは大蔵省のほうとは関係ないということに理解していいのですか。これは大蔵省が独走しているものである、こういうように考えられるのですか。それともやはりこれは何らか関係がある、こう考えていいのですか。
#115
○船後政府委員 私どもの考えております制度の中にも、保険制度として組み立てることができるのではないかというような考え方もあるわけでございます。保険制度として組み立てました場合には、自動車損害保険に類似するような制度にいたしますと、その新聞記事に近いような制度になりますし、あるいはこれをまた労災制度というものに近い保険にいたしますと、大体社会保険に近いような制度にもなり得るわけでございます。したがいまして、私どももそのような考え方が成り立ち得る可能性は否定し得ないのでございますが、環境庁は環境庁といたしまして、独自の立場から、この目的に照らし、どのような制度が最も妥当であるかという点の検討を進めてまいります。
#116
○島本委員 中公審では、これの意図を受けて、そして審議を進めているということですが、事務局長、これはどの点まで審議が進んでおり、そしてどういうような付託を受けておるのですか。その事務の進捗の状態並びにその付託の内容をはっきり答弁願いたいと思います。
#117
○川村政府委員 お答えをいたします。
 ただいま先生の御質問で、中央公害対策審議会において検討中という問題は、先生は中公審とおっしゃいましたが、これは中央公害対策審議会でございまして、私どもの役所とは違いまして、これは環境庁がやっているわけでございます。おそらく先生は、昭和四十三年十月に公害にかかる紛争の処理及び被害の救済制度に関する意見というのがございますが、この中で基金の問題が若干触れられておりますが、その後、それが具体的にどう進展しているのかという御質問であろうかと思います。したがいまして、それはむしろ環境庁のほうからお答えをいただくのが妥当であろうかと思います。
 ただ、先ほどの御質問の中で、たまたま公害紛争の処理制度は、先般ここで御審議をいただきまして、公害等調整委員会設置法という形で成立をいたしておりますが、その際の先生の御質問の中で、たしか四月十八日のとの席であったかと思いますが、山中大臣からその点の先生の御質問に関しまして、若干基金に関連をしてお答えを申し上げた個所がございます。
 念のために申し上げるならば、実際にある程度紛争が解決をいたしまして裁定があった、しかしながら、その相手方がたまたま賠償金を支払う能力がないというような場合に、実際に被害者の救済の立場からいっていいのかどうかというような、たしか御質問であったかと思います。その点につきましては、私どもが考えておりますのは、被害者が迅速かつ確実に賠償金の支払いを受けられるようにするために、何らかの基金制度等というようなものが設けられるならば、実際に被害者救済の観点並びに公害紛争処理法による裁定等の制度の実効性の面で非常に有益であろうというふうに考えておるものでございます。
#118
○船後政府委員 ただいま川村事務局長が御答弁いたしましたとおり、環境庁に置かれております中央公害対策審議会の中に特別部会を設けて、この問題を検討することといたしております。なお、このような制度につきましては、たしか昭和四十三年にも中央公害対策審議会から答申のあったところでございますが、当時と現在では、まず健康被害ということに関してではございますけれども、無過失責任ということが法律上明定化されようとしておる状況にありますこととか、あるいは国際的にはPPP、いわゆる汚染者負担の原則ということでもって、汚染のコストはすべて排出原因者が負担すべきであるというような点がございます。このような新しい状況も踏まえまして、制度の検討をいたしたいと考えております。
#119
○島本委員 われわれがこれを論議した際に、損害賠償の請求の実効を期するために、一定の損害担保の制度を創設して、これに加入しなければ事業活動を道義的にも行なってはならない、こう考えるべきでないか、こういう議論さえもあったわけであります。
  〔始関委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、これまで進むと相当行き過ぎになるけれども、少なくとも公害対策に対して被害者を救済する、こういうような立場を考えるならば、当然これくらいの事業活動を行なう者の道義的責任は考えなければならない、こういう主張が強かったわけです。いま損害賠償基金、こういうようなことについても、いずれの方法をとるか、まだはっきりしておらない、こういうようなことであります。そうすると、本法をもし実施するようなことになった場合には、当分の間これは実施できないようなことになるおそれがないかどうか。同時に、今後は積み立て金、保険、こういうような制度も当然考えられているようでありますけれども、事業者の納付金による公害基金制度が最も妥当じゃないか、こう思いますが、環境庁あたりの御意見を伺います。
#120
○船後政府委員 どのような制度が最も妥当であるかが、実は中公審におはかりしておる最大の問題点でございます。先ほども申しましたように、何らかの賠償債務、これは裁判で確定いたしますか、あるいは和解、仲裁等によりますかは別といたしまして、そういったものを前提として履行を確保するということならば、鉱業法の系統で考えておりますような担保の供託制度ということで事足りるわけでございますけれども、現在の公害の被害状況ということを考えますれば、やはりそれだけにとどまる機能では不十分である、このように考えられます。
 そういたしますと、広くこの環境の汚染に対する原因者というものから何らかの拠出を取りまして、それで被害をてん補するという制度として保険制度というものがはたしてなじむかどうか、そういった場合にはむしろ基金制度のほうが妥当ではないか、このような意見があるわけでございますが、私どもといたしましては審議会に御諮問いたしまして、ただいま第一回の会合を開いただけの段階でございますので、この段階では、特に環境庁としてはこうだというふうにきめてかかるわけにもまいりません。できるだけすみやかに審議会のほうでこの問題につきましての御結論を得ていただきますように、われわれも努力いたしたいと考えております。
#121
○島本委員 やはり公害の基金は原則として公害の寄与度に応じた事業者の納付金による、こういうようなものが妥当な考え方じゃなかろうか、そしてPPPの原則で、批判をいただくことがないように十分考えたほうがいいし、納付については強制徴収もできるように当然すべきじゃなかろうか、こういうように思います。それと同時に、この基金をいわゆる責任の擬制主体にしてはならない、すなわち免罪符にするような考え方を少しでも与えてはならないのだ、これだけは共通の理念として持って作業してもらわなければならないのじゃないか、こう思いますが、これに対する所見をまず伺っておきたいと思います。
#122
○船後政府委員 先生の御意見はわれわれも十分審議会のほうにもお伝えいたしまして、今度つくろうとする制度がほんとうに被害者の救済に役立つというような制度にいたしたいと考えております。
#123
○島本委員 わかりました。それはいつごろまでのめどですか。
#124
○船後政府委員 先ほども申し上げましたように、類似の制度といたしましては労災、自賠責、原子力等があるわけでございますが、やはり環境汚染との関連において何らかの拠出を求め、一定の給付をするということは、これは日本にも前例がございません。また、世界じゅうでも例はございません。そういう性質のものでございますので、先生方もなかなかむずかしい問題であるということで、何月ごろできるとか、そういった見当は目下のところ立ちにくい状況ではございますが、事の緊要性にかんがみまして、われわれとしてはできるだけの努力をしているつもりでございます。
#125
○島本委員 次に、この法の審議の過程から、ここではっきり確認しておきたい、こういうように思うことをお伺いしますが、政府案によりますと、法案の適用範囲は生命と身体、それからまた大気と水、この汚染被害に限定されている。また、原因物質についても、排出規制の有害物質に限定されている。原因行為も、法施行後の排出行為に限定している。いわゆる不遡及の原則でしょうか。こういう点を見ます場合には、これは重大な欠陥があるものである、こういわざるを得ないわけであります。これもやはりそういうような点からして、発生当時の規制の対象外の物質による被害こそ本法立法化の必要があると考えるべきじゃないかと思うのです。公害が現在のような多様化している現情勢からして、一定の物質だけをやっても、現在光化学スモッグをはじめとしてPCB、こういうような被害を考えても、だれもが公害だと認められるような事態に対しても、これはその物質が指定されてもおらないというような事態になっては困る。したがって、そういうようなことから、発生当時に規制の対象外の物質による被害、こういうようなものに対しても十分考慮する必要があるのじゃないかと思いますが、この点についての御意見を伺っておきます。
#126
○船後政府委員 御指摘のように新しい物質による被害の発生ということは大きな問題でございまして、この問題につきましては、まず何よりもそういった物質をすみやかに有害物質として指定をし、規制の対象とするということでございますが、さらに基本的には、PCBの例にございますように、新しい化学物質が環境を汚染することのないように、これが製品化される前の段階で十分なるチェックシステムをつくるということがまず肝要でないかと考えます。そういったことで、私どもといたしましては、すみやかな規制と、規制以前の環境への安全性のテストということに今後努力を続けてまいりたいのでございますが、この無過失法との関連について申し上げますと、やはり過失主義に対する例外をなすものでございますから、物質の範囲等につきましても明確なる限定というものが必要であろう、かように考えております。
#127
○島本委員 そこで、こういうような考え方に準拠してやってまいりますと、一つやはりぶつかるものがあります。それは本法によっても、行政上の規定を順守しておれば、事業者は民法上の責任を免れるか、または軽減される。こういうような考え方はもう現実無視であって、こういうようなことは許されないのだ、こういうようなところまでもういっているわけであります。しかし、先ほどからの論争におきましても、やはり企業そのものの違法性が必要である、そして行政機関の判断による、こういうようなことになりますと、少なくとも前回本委員会で古寺委員が質問されたように、山形県の日鉱吉野鉱山の例に見られるように、これは当然通産省では、行政機関の判断によって違法性はない、こういうふうにもう即断される。しかし、住民は、カドミウムをはじめとしていろいろな生活上の被害まで受けている。これに対してはっきり違法性がないのだということになると、だれが救うことになりますか。この点については、行政上の規制を順守しておるからとて、やはりこの事業者は当然この責任を考えなければならないし、負わなければならない。この点を明確に考えるべきである。こういうような段階にきている、ころ思うのですが、この辺の考え方をはっきりさせておいてもらいたい。
#128
○船後政府委員 行政上の規制と民事責任は原則的には無関係でございまして、かりに何らかの許容限度もしくは排出基準を守っているからといいまして、その排出行為によって生じた損害につきまして責めを免れるというものではないわけでございます。しかし、その排出行為がたとえばきわめて微量であって、それのみでは全く被害が生じ得ないといったような場合につきましては、これはやはり個々に具体的なケースといたしまして、はたして不法行為を形成するかどうかということは裁判所における判定の問題になろうと思います。
#129
○島本委員 じゃ、それに対して法務省の見解をひとつこの際伺っておきたいと思います。
#130
○古館説明員 違法性の問題は、加害行為と侵害される利益の性質、それとの相関関係によってきめられる法的評価の問題であろうかと思います。したがいまして、違法性があるかどうかということは、個々の事案に即しまして裁判所によって判断されるだろうと思います。しかし、ただいまも船後局長からお答えがありましたように、規制基準、これは行政規制の問題でございまして、民事の賠償責任とは直接結びつくものではございません。したがいまして、規制基準を守ったから違法性がないといって、すべての場合に賠償責任がないということになるものではなかろうというふうに考えております。
#131
○島本委員 複合汚染に対してしんしゃく規定を入れたこの問題に対しての危惧について、この際、明らかにしておきたいことを三点ばかり伺っておきます。
 その一つは、この困難な寄与度の認定を裁判所に与えるということは新たな争点をつくることになり、裁判を長期化させ、被害者の迅速な救済の目的に反するのじゃないかというおそれがありますが、この点についていかがですか。
#132
○船後政府委員 共同不法行為者の連帯責任につきましては、今回のしんしゃく規定は、そのうちのごく微量の寄与者につきましては、そのものについて賠償の額をしんしゃくし得る規定を設けたわけでございますから、その限りにおきましては、確かに御指摘のように裁判上一つの手続がふえるわけでございますが、しかし、この規定を設けましたのは、先般来も御説明いたしておりますとおり、今回無過失責任となることに伴いまして、やはり共同不法行為者の中にはごく微量の排出者、いわゆる中小企業者というものも含まれ得る可能性がございますから、そういったものについてまで全体の額について連帯債務を負わせるのは酷であるというような観点から設けた規定でございますので、その点は若干裁判上あるいは手続上おくれるようなことがありましてもこれはやむを得ない、かように考えております。
#133
○島本委員 これはやむを得ないという考え方ですか。少しでも早めなければならないという考え方に立たなければならないのじゃないですか。これはやむを得ないから、こういうような環境庁の考え方はどうも私は理解できない。やむを得なければ目的に反するじゃないですか。迅速にして手厚く被害者を取り扱うというのがこの無過失賠償の最も目的とするところでしょう。それをこの裁判がおくれてもやむを得ない、こういうような考え方では、法本来の制定の目的から反するじゃありませんか。遠ざかるじゃありませんか。やむを得ないという考え方、これじゃ私は納得しかねる。
#134
○船後政府委員 私が申し上げましたのは、やはり微量寄与者のしんしゃく規定というものが設けられました関係上、一つの手続がふえる。その限度におきましては裁判がそれだけ時間がかかるということを申しただけでございまして、公害事案につきましては、裁判所におかれましても、これの迅速なる処理ということにつとめておられるところでございますし、また、いろいろな判例が重なってきますれば、従来のように長期を要することなく迅速なる解決が可能であると思いますので、私どもといたしましては、これは裁判所がおやりになることでございますので、環境庁といたしましては、できる限りすみやかなる裁判をしていただきますように希望をしておるところでございます。
#135
○島本委員 これはやはり現在の係争中の公害訴訟事件に対して影響を及ぼすというような考え方、または意図、こういうようなものは全然ありませんかどうか、この辺の見解もはっきりさせておいていただきます。
#136
○船後政府委員 微量寄与者のしんしゃく規定は、民法七百十九条の例外として新たに設ける条文でございますから、現在係争中の裁判には何ら関係のないものであると考えています。
#137
○島本委員 そういうようにはっきり言ってくれればいいんですよ。この共同不法行為は、連帯責任の原則を後退させ、寄与度による減額の道をつけること、これは加害者に対する責任を不当に軽減させるという結果を招来いたしませんかどうか。
#138
○船後政府委員 今回のしんしゃく規定は、微量寄与者についてのみの規定でございますので、被害者といたしましては、それ以外の不法行為者に対しましては全体の賠償責任を求め得るわけでございますので、被害者にとって不利になるととはない。かつまた、共同不法行為者の中で、中小企業のように寄与度の微量なるものがあります場合には、そのものについては、その事情に従った額に減額され得る道を開いたわけでございますから、加害者相互間の公平の原則にもかなうのではないかと考えています。
#139
○島本委員 重要な欠陥、こう述べられておりますことについて、いろいろないままでの質疑を通じまして、どうも私納得しかねる点があったわけでありますが、この点もひとつはっきりしておいていただきます。
 これは、因果関係の推定の部分の削除、いまつけないということ、これによって、いろいろな判決を通じて定着の方向を示しているいろいろな因果関係推定の論理、こういうようなものを削除されたことによって、訴訟を今後は科学論争に巻き込み、長期化させる、こういうような可能性と、企業側に有利な体制自身がもたらされるのじゃないか、このことを危惧いたします。そうでないということをりっぱに言い切っていただきたい。
#140
○船後政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、先般の我妻先生の御意見にもありましたとおりでございまして、私どもは、民法のいままでの傾向ということから考えまして、過失責任に対する取り扱い方、あるいは因果関係の証明についての取り扱い方、こういったことにつきましては、たとえば因果関係の推定規定がないといったような問題、あるいは無過失を規定いたしておりますものが、健康被害を受けられておるといったことのために、そういった方向がゆがめられるということは絶対にないと信じております。
#141
○島本委員 これは除外規定にはなっているようでありますが、労働者の業務上受けた損害についてはどのように解釈すべきであるかということです。工場の従業員が地域内で公害の被害を受けた場合には、本法は除外されますか、適用されますか。
#142
○船後政府委員 ただいま御指摘の件は、工場内の労働者としての地位ではなくて、一般住民といたしまして、公害による被害を受けた場合には本法の適用がございます。
#143
○島本委員 工場の従業員が地域内での公害の被害を受けた場合ですから、これは当然本法の適用を受けるということになるのでしょう。これは工場内でやったのか、工場外でやったのか、また、これの判定のために、いずれにも属さないということがあっては困るから、この点は、やはり明確にしていただかないとだめな点です。やはり往々にして不明確な場合も多いと思いますが、厳密に地域内での公害の被害を受けた場合の対策、これもはっきりしておきたい点でありますが、これはいまの答弁そのままでいいですか。
#144
○船後政府委員 従業員の業務上の傷病等につきましては本法の適用がないわけでございますが、従業員が一般住民の立場でもって受けた公害被害につきましては本法の適用がある。ただ、実際問題といたしまして、どこまでを業務上と見、どこまでを業務外と見るかどいう事実認定の問題は残ると考えます。
#145
○島本委員 残ったらどうするのですか。
#146
○船後政府委員 そういった場合には、当然両者の競合の問題でございますから、労災法の適用ということで解決されなければ当然本法の適用がある、このように考えております。
#147
○島本委員 先を急いで申しわけございませんが、農業、漁業者等にかかる生業被害者等のいわゆる財産被害の面でございますけれども、いままの議論はよくわかりました。これも考えているという点はわかりました。これも可及的すみやかに取り入れるようにしようという方向もわかりましたが、大体の時期は政務次官、これは一年くらいですか、二年くらいですか。
#148
○小澤(太)政府委員 そういう方向で努力しているということは御理解いただいておると思いますが、さて一年でやれるかどうかということになりますと、いま的確にそれを回答することはどうも私もいたしかねるわけです。しかし、できるだけ早くこういうものも救済をしたいという気持ちでおることは間違いございません。
#149
○島本委員 できるだけ早くというのは、大体どの辺にめどを置いているのですか。われわれも協力する姿勢もございますからね。できるだけ早くといったって、十年というのじゃ困る。次期国会までというふうにわれわれは望みたいのですが、しかし、その中間とすればどの辺ですか。これはやはりはっきりしておいてもらわなければ、協力のしようがないじゃありませんか。
#150
○小澤(太)政府委員 できるだけ早いというのは、十年ということにはならぬと思います。でき得れば次期国会までということを一つのタイミングのめどとすることは当然だと思います。こういうような考えで進めてまいりたいと思います。
#151
○島本委員 りっぱな答弁ですから、そのように実現するように、この点は強く要請しておきます。
 次に、国や地方自治体や事業者が、排水等によって漁業者に損害を与えた場合には、いずれかという点がいつでも問題になりますが、この辺の考え方についてはっきりさせておいていただきます。
#152
○船後政府委員 国の経営いたしております事業場等が有害物質を排出いたしまして損害を生じたという場合には、当然事業者の事業活動ということでもって本法の適用がございます。
#153
○島本委員 赤潮などの原因者はもう必ず複数事業者、こういうふうな場合には当然複合汚染が連想されるわけですが、こういうような場合には、事業者は連帯してすべての賠償義務を負うというのが当然じゃありませんか。それはどのようにお考えですか。
#154
○船後政府委員 赤潮による漁業被害につきましては、赤潮を発生せしめておりますいろいろな原因につきましてはなお不明な点が多いのでございますが、しかし、少なくとも赤潮の発生、それからそれによる漁業被害、それと排出行為というものとの間に因果関係が認められ、その他不法行為成立の要件を満たしますれば、当然共同不法行為が成り立つものと考えております。
#155
○島本委員 時間が参りましたので、あとの点は全部岡本君に譲って、もし時間があるならばもう一回帰ってやりたいと思いますけれども、最後は、規制措置とそれから差し止請求の点で、ひとつこれははっきり伺っておきます。
 大気汚染防止法や水質汚濁防止法その他の法律で工場、事業所、こういうようなものの公害発生源に対する計画変更の命令、改善命令、操業の一時停止、こういうような規制がだんだんでき上がってきたというのはわかっておるわけです。これがあってもなお、また同時に、地方に権限が委譲されてもなお、その発動が鈍る場合には当然被害は国民が受けることになります。そうすると、関係法令の不備、欠陥というよりむしろ最小限度の規制すら容易に発動しないというような行政の怠慢ということが当然考えられるし、それがあるわけであります。その場合は、平和的に口頭をもってしてでも、これは当然差止命令または規制措置の請求というものは入れておいてもしかるべきものであり、こういうようなものが望ましいということは、これは環境庁長官の言明にもあるとおりであります。これについても今後十分考えておかなければならない問題じゃないかと思いますが、環境庁いかがお考えでしょうか。
#156
○小澤(太)政府委員 事環境の問題について行政の怠慢は許されないと私ども思っております。したがいまして、そのようなことのないように、常時これを指導し、監視してまいりたい、このように考えております。
#157
○島本委員 ないようにと言ったってあるんだから。住民運動によって指摘されて、それが世論の支持を受けて法律ができても、なお公害が発生しておるのは行政の怠慢なんだから、そういうような場合に、継続的に侵害されるこういうような公害はやめてくれということは当然住民から言ってもいい刀いまでも相談所がある。いまでも知事に言っていってもいいことになっているのですが言っても、やめない。したがって、企業に対する差止命令、措置請求、これはいまや当然の常識なんです。だからこれは今後考えるべきことだと言うのです。
#158
○小澤(太)政府委員 私のお答えがどうも答えになっていなかったらしいのですが、いまおっしゃったことは当然できることなんです。行政庁が権限に基づいてやれる、法律に基づいてやれますから、それをやらないのは怠っていることであります。これはやらせますから、どうぞ……。
 なお、住民の訴え、要望というものは、これをやらせるのに非常に有力な要素にもなるわけでございまして、そのように運営をやってまいりたい、こう考えております。
#159
○島本委員 行政機関に窓口がある、また何々課がある、係がある、ここを通してやれということになっていても、やっても企業がその言うことを聞かない。聞かないことがあっておる間にだんだん公害がふえてくる。被害者も出てくる。そして生活権も脅かされる。こういうようなことがあって、いまの公害対策というものは進んできたのです。怠慢によっておかされた、もたらされた、こういう公害、こういうものについて、いまストックホルムで世界各国から指摘されているんです。こういうようなことをなくするためにも、また公害対策そのものを国民監視の的にして、国民にもはっきり責任を持ってもらうためにも差止請求――これも平和裏に口頭をもって行なうのです。そして規制措置の請求、これも口頭をもってするんです。そのいずれかわからない場合には協議してきめるんです。そしてそれでもだめな場合は、それは裁判に移行してもいいのです。初めから裁判にいってもいいんです。このように自由な規定なんです。これさえもとらないということは、公害に対する前向きの姿勢じゃないのです。したがって、あなたの長である環境庁長官はこれを考えなきゃならないと言っているんですから、これは可及的すみやかに取り入れるべきである、こう思うのですが、その見解を聞きたいと言うのです。
#160
○小澤(太)政府委員 先生のおっしゃること、よくわかります。現在の制度のもとで政府は停止命令も出せますし、あらゆることができるんですから、これを厳重にやるということで尽きるわけであります。しかも、先ほども申しましたように、住民からの要望ということが非常に大きな要素にも相なるわけでございますから、行政の運営で十分やっていけるんじゃないか。直接請求を認めなくてもやっていける、またやっていかなきゃならぬ、こう考えておるような次第でございます。怠慢であるということを前提としてものを考えずに、怠慢は許されないということを前提として私どもは指導してまいりたい、こう思っておりますので……。
#161
○島本委員 それはあたりまえのことです。あたりまえのことができないでいままでとういうような事態を生じさせているんです。したがって、あたりまえのことだからいままでどおりやっていくということは、もうすでに現実とマッチしないのです。一歩出て、公害をなくするために環境庁は差止命令、規制措置請求でもちゃんと出すんだ、こういうふうにして、今度は公害そのものを発生させないだけの努力は十分すべきなんです。いま政務次官が言っているのは、いままでやってきたことなんです。やってきた結果が今日のこの公害の招来なんです。したがって、これじゃだめだから一歩進めて考えろということなんです。いままでと同じということなら答弁は要らぬのです。
#162
○小澤(太)政府委員 答弁は要らぬと言われましたが、おっしゃることがよくわからなかったのですが、おそらく住民の差止請求の問題とか、そういうものを法律的に少し考えろ、こういうことだと思います。(島本委員「そうです」と呼ぶ)それならば、私どもも、将来そういうことは考えていこう、こういうことはもちろん考えております。そういう意味でなら、初めからそうおっしゃれば私もよくお答えができたわけでございます。
#163
○島本委員 じゃあとは岡本君に譲ります。
#164
○田中委員長 島本君の質疑は終了いたしました。
 次に、岡本富夫君。
#165
○岡本委員 ただいま審議されているととろの無過失法案について、私も若干質問をいたします。
 因果関係の推定については先ほどからもだいぶ論議がございましたが、因果関係の推定の削除によるところの本法の解釈はすべて裁判官にゆだねる、こういうことでありますからその判例をもう少し聞いておきたい、こう思うんですが、これは法務省の古館参事官から聞きましょう。
#166
○古館説明員 下級裁の判例といたしましては、富山地裁のイタイイタイ病判決、それから新潟地裁の水俣病判決、それから前橋地裁の有害物質を排出しましてコイを殺したという事案の三件でございます。
#167
○岡本委員 そうしますと、人体被害、健康被害になりますと、その三つとも公害病に認定された、そういう人たちであろうと思うのですが、それはそれとして、まず富山県のイタイイタイ病の裁判が行なわれた。そして病因はカドミによるところの慢性中毒がイタイイタイ病の原因である、それからその排出したところの先は、自然界以外には神岡鉱業所以外は見当たらないというところの厚生省の見解が発表された。それによって、イタイイタイ病の裁判が成り立ったわけでず。したがって、それまではこの裁判ができなかった、こういうことを考えますと、因果関係の推定規定を除いたということは、被害者にとっては非常に不利である、こういうようにわれわれは考えるのですけれども、それについて船後局長からひとつ……。
#168
○船後政府委員 イタイイタイ病につきましては、確かに御指摘のように厚生省の見解が出ましたことが本件の解決に大きく寄与したものでございますが、ただ、富山地裁で行ないましたイタイイタイ病判決の因果関係に関する部分につきましては、そのような行政見解をも踏まえつつ、やはり裁判所といたしましては、因果関係の輪の一つ一つにつきまして立証を進めておるわけでございます。特に富山の裁判の場合は、問題になりましたのはいわゆる病因論でございまして、このイタイイタイ病とカドミウムの結びつきを疫学的方法によって立証したというところに非常に意義があるわけでございます。私どもが当初考えておりました推定規定は、この病因論につきましては何ら触れるところがないわけでございまして、汚染経路の問題でございますが、汚染経路につきましては、富山のイタイイタイ病判決ではさほど問題にならず、自然界に存するもの以外は被告会社から排出したものと考えられるという程度のことで、これは原告、被告ともさほど問題にならなかった点ではないかと考えております。
#169
○岡本委員 私、この富山県のイタイイタイ病につきましては、四十二年当初から手をかけているわけですが、この実態を確かに一つ一つ見ますと、厚生省からこういった見解、こうしたところの公害病に認定され、そしてカドミウムの慢性中毒が原因である、そして神岡鉱業所がその排出先であるというような、こういった厚生省見解が出なければ、これは裁判にはどうしようもなかった。したがって、それまでずっとほってあったわけです。ただ私は、時間をとりますから端的に言いますと、汚染経路というものが推定されるならば、それによって起こった病気であろうということも推定されるわけです。ですから、被害者には、これは非常に有利であったのです。それを抜いてしまったということは、私は非常に不服である。先ほどからもこの論議がありましたから、これについては私は多くは申しませんけれども、ここで私は一つだけ聞いておきたいことがあるのです。
 それは、今後こういった被害者、カドミによるところの病気、あるいはPCB、いろいろなこうしたところの公害病が出るであろうと思うのですが、それに対して、環境庁として、被害者の立場に立ってきちっと証明できるような研究をして、少なくとも富山県のあのイタイイタイ病の結果のような見解を出せる姿勢があるのかどうか、これをひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。
#170
○船後政府委員 環境庁といたしましては、汚染による被害の発生を未然に防止し、あるいはその拡大を妨ぐというのが最大の任務でございますから、今後新しく水俣あるいはイタイイタイ病に類似するようなケースが出てまいりました場合に、早急に行政的に手を打つ必要があるわけでございます。したがいまして、一方におきましては、やはり科学的な究明が必要ではございますけれども、行政的に手を打つ必要も他方においてあるわけでございますから、そういったことを勘案しながら、水俣あるいはイタイイタイ病に際しまして厚生省が行政的見解を示したというような前例は、今後とも続けてまいりたいと考えております。
#171
○岡本委員 それじゃ政務次官、ひとつはっきり答えてもらいたいのですが、少なくとも環境庁として、そういったイタイイタイ病やあるいはまた水俣病やあるいはこれからPCB、いろいろな問題のそういう被害者が出てくるであろうと思うのです。少なくとも富山県のイタイイタイ病の患者の皆さんを、厚生省見解を出したようなあのくらいの研究と、厚生省が直接――いいですか、都道府県にまかすのではありませんよ、厚生省が直接そういった見解をきちっと被害者の立場に立って出していかなければ、その裁判というものが迅速に進まない。ましてこの因果関係の推定を抜いてしまったわけですからね。それをきちっとおやりになる確信があるかどうか、またやるのかどうか、ひとつこの点を……。
#172
○小澤(太)政府委員 そういう人体被害の問題は厚生省がきっちりとやるというたてまえでございますので、地方の判断にまかせないということでありますし、それをやってもらわなければなりません。私どもは、それを期待し、それによって、いま局長から答弁いたしましたように、すみやかな行政上の措置を講じていく、こう考えておるわけでございます。
#173
○岡本委員 厚生省の話はしてないのですよ。いまは環境庁に移りましたから。これは間違ってもらったら困る。環境庁にその点が移ったわけですから、次官、環境庁に直接その権限が移ったわけですからね。その行政上の措置といいますけれども、地方自治体だけにそれを譲らずに、環境庁に直接の研究班をつくって、そして少なくとも富山県のイタイイタイ病ぐらいのこういうきちっとした見解あるいは結論というものを出していかなければ、裁判にはとうてい持ち込めない、持ち込んでも推定規定がないからどうしようもない。私は現実の立場から要求しておるわけですが、いかがですか。
#174
○小澤(太)政府委員 ものによって違いますが、人間の健康被害は厚生省がやってもらう、それからそのほかの問題で環境庁が所管しておるものはやります。こういうふうにやりまして、そしてそれに対する対策は厚生省としてすみやかにやる、こういうたてまえでございます。環境庁ができましたから一切のことを全部環境庁がやるわけではございませんで、環境庁は、総合調整の上に立ってそれぞれ各省の持つ機能を十分に発揮していただく、こういう考えに立っておりますから、それぞれのケースによって環境庁が直接やる、厚生省もやってもらうことと思います。
 いれずにいたしましても、政府は一体でございますから、政府がこの判断をし、その施策を地方でやらせるものはやらせ、直接やるものはやる、こういうたてまえを迅速にやる、こういう考えでございます。先生のおっしゃるのはよくわかるので、そのような趣旨だと私も考えておりますけれども、多少違いましたら、またよろしく……。
#175
○岡本委員 そうしますと、一つの事例をとりますと、イタイイタイ病の鑑別診断班、この所属しているのは厚生省でしょうか、どうでしょうか。
#176
○船後政府委員 御指摘の鑑別診断班は、環境庁が委託した機関でございます。ただ、ただいま政務次官が申し上げましたことは一般論でございまして、一般論といたしまして、たとえばある物質と病気との関係、こういうことになりますれば、これは当然厚生省が、そういった健康問題につきましては所管をいたし、かつ研究もいたしております。環境庁が関与いたしますのは、そういった物質が環境汚染ということを媒介としまして、それによって健康被害が生じたということでございますから、そういった限りにおきましては、環境庁の所管でございます。ですから、具体的なケースに基づきまして、場合によりましては厚生省と共同作業ということになることもございましょうけれども、あるいは物質と原因そのものについてはもはや問題がない、ただ、その物質がどういう経路でもって環境汚染をし、そして人体に達したかという点になりますれば、これは厚生省ではなくて、環境庁だけで判断し得る問題といったものもあろうと思います。そういうケース・バイ・ケースの問題としてやっていくということでございます。
#177
○岡本委員 政務次官に申し上げたいのですが、いま私一つの例をあげたのは、カドミウム汚染、このイタイイタイ病鑑別診断班は環境庁にあるんです。それを駆使してでも、ほんとうに被害を受けている人たちを鑑別していく。都道府県にまかすんじゃありませんよ、この場合は。そういう姿勢があるかどうかを聞いているのです。
#178
○小澤(太)政府委員 そのとおりの姿でございます。
#179
○岡本委員 そうしますと、局長に聞きますけれども、この因果関係の推定規定を削除されて、そのために非常に被害者に不利になっていくいままでの判例を見ていると、どうしても前は厚生省、いまは環境庁に移っている鑑別診断班の、カドミによる慢性中毒によるところのイタイイタイ病だ、しかも、その原因は神岡鉱業所だという四十三年の見解があったから、ここに裁判ができたわけです。しかるに生野鉱山は、あなたのほうは、この前の話では、兵庫県にまかして、どうしても環境庁が直接行かない。ここに委員長いらっしゃいますけれども、委員長から、環境庁直接の鑑別診断班をひとつ検討してもらいたい、こういう話があっても、兵庫県にまかす、こういう話です。そうすると、いま政務次官が言われたのは、環境庁の鑑別診断班が直接に診察をして、鑑別をして、見解を出す、こういうふうにするのか、この点ひとつはっきりしてもらいたい。
#180
○船後政府委員 政府の行政的見解と因果関係の推定規定とは直接関係はないと思うのでございますが、ただいま御指摘の生野鉱山の問題につきましては、これは兵庫県でもって調査を進めてまいり、それがある程度の段階に達した上で、現在は国の鑑別診断班におきましてその検討をいたしておるところでございます。先般もその点につきまして鑑別診断班で検討したのでございますが、先生も御承知のとおり、なお若干の資料の不足という点がございまして、その資料の整備を待ちまして鑑別診断班といたしましての結論を出していただくことになっております。
#181
○岡本委員 兵庫県のやり方について住民の皆さんが非常に不信を抱いておる、だから国から行ってもらいたい、この声がほうはいとして出ているわけです。富山県のイタイイタイ病は、時の園田さんが力を入れてやったわけです。だからこうして無過失賠償責任でもってうまく裁判ができているわけですが、いまどうしても兵庫県だけにまかそう、まだこういう考え方でしょう。それと、さいぜん政務次官が言うたところの国が直接やりますというのと相違があるじゃないですか。
#182
○船後政府委員 先ほども申しましたように、現段階では国の委託いたしております鑑別診断班において検討いたしておる段階でございまして、結論を出しますにはなお資料の不足がございますから、私どももすみやかに結論を出していただくように努力いたしておるところでございますが、なおしばらく時間が要る、かように考えております。しかし、これは鑑別診断班といたしましての結論でございますから、当然環境庁におきましても、その結論の結果に従いまして所要の措置はとることとなると考えております。
#183
○岡本委員 それでは被害者は救われませんよ。私の言いたいのは、国から直接の検査をやってもらいたいということです。兵庫県でやったものを国の鑑別診断班が見て判断するというだけでは、被害者の皆さんが納得しない。それでは環境庁において、要するに、鑑別診断班がどんな結論を出すか、そこに心配がある。それならば、先ほど政務次官が言うたように、国が直接検査をして、そうしてこうだということになれば住民の皆さんも納得するし――首を振るのはおかしいんだよ。どうしてもいま兵庫県でやっているだけをもとにして考えようとしている。少なくとも厚生省の場合は、富山県に乗り込んで、厚生省の直接の手でやっていますよ。環境庁になってから後退しているじゃないですか。そして無過失賠償責任のこれを出して前進したんだ、そんなばかなことありませんよ。これからでも、いままでの考え方を打ち破って、国で直接研究班をつくって――そうしなければ私は公害行政というものは進まないと思うのです。いま政務次官が直接国からやりますとおっしゃったそのことと矛盾するのです。いかがですか。
#184
○小澤(太)政府委員 私は先生が直接直接と言われるからそのとおりですと申し上げたのでありまして、鑑別診断班は、私どもが直接指揮しておるものでございます。したがって、直接やっているつもりでそう申し上げたわけです。環境庁の職員を連れていって、そして実際の調査をやれと言われることであろうかと思うのですが、そうですか。――そういう意味だとすれば、私はそのように申し上げたつもりではございません。しかし、それを環境庁が調査することを否定する意味ではもちろんございません。地方自治体が十分やったものを鑑別診断班でこれを鑑別する。それの判断にわれわれは従う。その鑑別診断班は、国が派遣して、国が判断する機関でございますから、これは国が直接やったもの、こう了解していいのじゃないか、こう思っておりました。ところが、あなたの言われるのは、環境庁の職員が直接行って実際の検査をされる、こういうことのように聞こえるのですが、そのとおりですか。もしそのとおりとしますと、これはやはり場合によるのだ、こう思います。
#185
○岡本委員 政務次官、富山県の場合はイタイイタイ病の診断班、研究班、こういうものをつくりまして、そうして厚生省で、国ですよ。そういう編成をしまして、何べんかつぶれていますけれども、われわれはやかましく言って、そして国で、名前は忘れましたが、金沢大学の先生を中心にしてそういう検査をちゃんとやりまして、それを持ってきて鑑別診断班で鑑別しているわけですね。そして診断しているわけです。そして結論を出しておられます。この兵庫県の場合は兵庫県にやらしておる。そこに相違があるのです。ここのところをもう一つ進んで前向きにやっていただかぬと、私は、こんな法案を通したって、やることがなってなかったら同じことだと思うのですが、いかがですか。
#186
○船後政府委員 国がやると言い、あるいは県がやると申しましても、いずれも国、県にはイタイイタイ病に関する権威がおるわけではございませんから、やはり大学あるいは民間その他の権威にお願いするわけでございます。兵庫県の生野鉱山の場合も、兵庫県におきまして、しかるべき大学あるいは民間の権威の方々に御依頼いたしまして、そしてカドミウムの健康調査につきましては、富山以来一定の様式が確立いたしておりますから、ほぼそれに従って実施いたしたわけでございます。
 そういったデータに基づきまして、最終的にどのように判断をするか、これは高度に科学的、専門的なる事項であろうと思います。そういう判断を現在国の委託いたしました鑑別診断班において行なっているわけでございますが、それも現在のところ若干の資料の不足がございまして、そういったものがまとまった段階で結論を下す、こういった鑑別診断班の方々が、兵庫県が行ないました検査というもの自体につきまして問題がありますれば、当然これをどうするかということもまた問題になるわけでございますが、そういったことも含めまして、私どもは現在鑑別診断班の結論を待っておる状況でございます。
#187
○岡本委員 どうもそれでは私は不服でありますけれども、時間があれですから次に進みます。
 そこで、因果関係の推定規定を削除されたわけですから、裁判所でそういった推定がちゃんとできるような被害者を救済するための措置として私申し上げたいのは、いまイタイイタイ病の診断をする鑑別診断班できめた一つの法則がありますけれども、それには骨軟化症が入っていなかったらだめだったのですが、そういったものを拡大するということを環境庁長官は過日神戸の六甲において発表しているわけです。新聞記事にたくさん出ておりますけれども、じゃいつごろその認定基準を拡大するのか、これをひとつ聞いておきたいと思います。
#188
○船後政府委員 イタイイタイ病の診断基準につきましては、鑑別診断班とは別個の研究班をお願いいたしまして、そこで結論が得られました。ただいまその結論を印刷中でございまして、できるだけすみやかにとわれわれは要望いたしておりますから、おそらくここ数日中にはその結論の報告が提出あるものと思いますが、それによりまして所要の措置をとるつもりでおります。
#189
○岡本委員 じゃそれを見せていただいて、そうしていまの生野のイタイイタイ病の人たちを救ってあげたい、そして裁判でも有利にしていきたい、こういうふうに考えるわけであります。
 そこで、私が、当委員会で環境庁長官に、推定規定を削除された、それに対してあなたはどう思いますかと言いますと、非常に残念だ、こうおっしゃったのです。いまの政務次官の答弁によりますと、あの程度ではかえってぐあいが悪いから、もっときちっとしたものを、こうおっしゃる。長官が、私は抜かれて非常に残念だ、こういうのとどうも意見がそごするように思うのですが、長官のほうがほんとうですか、それともあなたのほうがほんとうですか、どっちでしょう。
#190
○小澤(太)政府委員 長官が残念だと言われたその気持ちは、どこが残念なのかよくわかりませんが、私が申し上げたのは、私としては正しいと思っております。
#191
○岡本委員 そうすると、長官は何が残念だと言ったのでしょうね。当委員会の議事録にちゃんと出てますよ。これはひとつよく聞いてから法案を上げることにしましょう。
 それはそれとしまして、次に確かめておきたいことがあるのですが、複合汚染につきまして、民法七百十九条第一項の適用があった場合において、四日市あるいはその他の複合汚染で、この適用がない場合とはどういうことなんですか。
#192
○船後政府委員 ない場合とは、七百十九条の共同不法行為が成立しない場合でございます。したがいまして、民法七百九条もしくは今度の法律で申し上げますと、大気法の二十五条、これによりまして単独の不法行為があるというような場合が考えられるわけでございます。
#193
○岡本委員 単独の場合は、別に二十五条の二に入れるのはおかしいじゃないですか。二十五条の二は、「前条第一項に規定する損害が二以上の事業者の健康被害物質の大気中への排出により」でしょう。単独の場合だったら複合汚染とは言いませんよ。企業一つでしょう。そういう説明はぼくはちょっとおかしいと思うのです。七百十九条第一項の規定の適用、これは共同不法行為ですね。そうでない場合は、単独というのであれば別にここに入れる必要はないと私は思うのですよ。もう一ぺんその点を説明してください。
#194
○船後政府委員 第二十五条の二の規定は、民法七百十九条第一項の適用がある場合につきましての規定でございますので、ない場合につきましては、これには何ら触れていないというわけでございます。
#195
○岡本委員 そうしますと、たとえば四日市コンビナートあるいは川崎あるいは尼崎、こういったたくさんの企業があって複合汚染の場合は、全部七百十九条第一項の規定に該当すると見ていいですか。
#196
○船後政府委員 民法七百十九条は、数人の共同不法行為によって損害が生じた場合の規定でございます。したがいまして、ただいま具体的に御指摘になられましたような事案につきましての七百十九条の適用は、私が責任をもってお答えすべき範囲ではないかと思いますが、私どもの考え方によりますれば、この共同の要件と申しますのは、先般来もお答えいたしておりますとおり、現在の判例、学説によりますれば、主観的な要件は要せず、客観的に関連共同性があれば足りるということでございます。したがいまして、数人の複数の排出者がございまして、それが客観的に関連共同性を持っておって、一つの被害を引き起こしたという場合に七百十九条の適用があると考えております。
#197
○岡本委員 そうしますと、野党のように、複合汚染の場合はこういうようにはっきりしておいたほうが――民法七百十九条第一項というのは御承知のように共同不法行為です。こういったものの立証を被害者のほうがしなければならぬじゃないですか。それをしなくてもいいのかどうか、その点もひとつ……。
#198
○船後政府委員 七百十九条も結局単独ではなくして、数人の者の不法行為を規定したものでございます。したがいまして、この「共同」という字句があるかないかの差だけであって、実際問題といたしましては、野党案のような書き方をいたしましょうとも、実際の結果にはさほどの相違はない、かように考えております。
 ただ、複数の原因者と申しましても、それを常識的に一体どの程度まで範囲に含むべきか、先般来も問題になっておりましたが、東京の煙と大阪の煙が合して一つの被害を生ずるから、これはみんな共同の責任に問われるんだというような解釈というものは常識的に考えて成り立ち得ないわけでございますから、やはり数人の共同不法行為というものにつきましては常識的なる範囲というものがあると考えております。
#199
○岡本委員 そうしますと、念を押しておきますけれども、共同の意思がなくても、あるいは共同行為まではいきませんけれども、お互いに共通した関連、そういったもので出さなくても、要するにあなたがおっしゃったように大阪と東京、これは別でしょう。その地域その地域の複合汚染であれば七百十九条第一項の規定が適用されるということをはっきりひとつ言っておいていただきたいと思います。これは法務省の見解でもよろしいから……。これはなぜ私が言うかといいますと、共同不法行為の立証を被害者がしなければならぬということになれば、これはどうしようもないわけです。
#200
○古館説明員 七百十九条の、行為者間の行為の関連共同という関係では、行為が客観的に関連共同していればいいということで大体判例、学説も固まっておりますから、十分そういうことで解釈されるだろうというふうに思います。ただ、客観的に関連共同しているということは立証する必要があろうかと思います。たとえばどういうことかといいますと、各行為者間の行為が被害発生との関係で一体をなしているということを立証すれば足りるというふうに考えております。
#201
○岡本委員 そうしますと、その地域に一緒にあるということだけでいいわけですね。たとえば、四日市なら四日市の周辺にある地域、ここに所在しているんだという立証だけでいいんですね。ここのところは大事なところですから、その点をひとつ……。
#202
○古館説明員 その辺は事実認定で非常にむずかしい点かと思いますけれども、ここは野党案も同じだろうと思います。結局、各行為者間の行為が一体をなして被害を発生しておるという立証が必要かと思います。だからその点は同じかと思います。
#203
○岡本委員 野党案のは、要するに、その地域に二以上複合しておる場合は、複合汚染としてこれは訴訟ができるわけでず。私の言わんとするところは、民法七百十九条第一項を入れたために、数社なり数十社が共同で不法行為をしているのだという立証をしなければならぬのか、野党案と同じにしなくてもいいのか、これをひとつ聞きたいのですよ。
#204
○古館説明員 いま先生がおっしゃいましたように、野党案でも、複合しているということは主張、立証しなければならぬという御趣旨がございますね。この点は、複合しておるということが、まさに各行為者間の行為が被害の発生との関係で一体をなしているということでございます。ですから、野党案も政府案も、結局各行為者間の行為が被害の発生との関係で客観的に一体をなしておれば責任を負うということですから、一体をなしているということは、どちらの案にしろ立証しなくちゃならないという考え方でございます。
#205
○岡本委員 あなた、ごまかしたらいけません。
 それでは、野党案の「(複数原因者の賠償責任)」というところをちょっと読んでみます。「損害が二以上の事業者の事業活動によつて生じたときは、各事業者は、連帯してその損害を賠償する責めに任ずる。損害が二以上の事業者の事業活動のいずれによつて生じたかを知ることができないときも、同様とする。」こういうように野党案にあるのです。いいですか。そうすると、たとえば十社、二十社のどの煙突から出たかということを知ることができなくとも、何社か一緒にあったら、そこは訴訟を起こすことができるわけですよ。あなたのほうの政府案によると、共同不法行為というものは立証しなければならないのかどうか。しなくてもよろしい、ただ、二以上の複合汚染があるということが客観的にわかれば、それで訴えていいのかどうか。地域に数社、数十社があれば、それを全部訴訟していいのかということを聞いているわけです。それだけはっきりしてくれればいいのです。
#206
○古館説明員 少なくとも各行為者の行為が被害の発生との関係で因果関係がある、その行為が一体をなしておるということは立証しなければならないだろうと思います。その関係では野党案でも、結局「事業活動によって生じた」といいますから、その各事業者の行為と損害との間には因果関係というのを立証しなければならないだろうと思います。それが複数、二以上の場合に連帯責任を負うということでありますから、やはりその点は同じだろうと思います。
#207
○岡本委員 どうもあなた話をよくそらしてもらって困るのですが、野党案では、たとえば大気汚染によってぜんそくになったとか肺気腫になったとかこれははっきりしておることだ、病気になっていないのに訴訟するわけないのですが、二以上の事業者の事業活動によって生じたが、どれによって生じたか知ることができないときも同様とするというのですから、野党案と政府案は違うのです。それを同じだ同じだとあなたはさっきから言うているからおかしい。明らかに違う。政府案は民法七百十九条第一項の適用があった場合ですから明らかに相違する。相違することはわかっておるのだから、私はこの二十五条の二の七百十九条第一項の適用があるということを、要するにこういった事業者が共同不法行為をやったということを被害者が立証しなくても、そうした二以上、複数の原因によるのだということを訴訟していいのかということを聞いているのです。
#208
○古館説明員 いまの御質問の趣旨で加害者がだれかわからないという関係では、その点は野党案で後段で明記してございます。ですから、そういう意味では政府案と違うということはおっしゃるとおりでございます。
#209
○岡本委員 立証しなくてもいいのかということです。
#210
○古館説明員 結局ある一定の地域に事業者が多数事業活動をして煙を出している、その場合にだれによってこの被害が発生したとかいうことがわからない場合でも、そこで共同している事業者について賠償請求をすることができるということで、加害者の特定、これが有害物質を排出している、そのためにこれだけの損害が生じたのだということを言わないでも、そういう意味では責任を負わされるという点では容易だろうかと思います。しかし実際問題といたしまして、その一定地域で事業活動をして有害物質を排出している、それが結局被害者のところに当然常識上届く、たとえば煙がしょっちゅう天候、気象条件で当然その被害者のところに届くということになる場合が一般だろうと思うのです。そうしますと、結局そういう周囲のものとの関係でやはり加害者というのははっきりするのじゃないか。そういう意味では実際的にはそう被害者のほうとの関係では違いがないのではないかというように考えております。
#211
○岡本委員 考えておるだけじゃ困るのです。共同不法行為をしたという証明をしなくても、複合汚染の場合は、その地域であればそのまま損害賠償の責めを受けなければならないということだけをあなたはっきり答えておけばいいのだよ。考えていますとかあるいはまたどうでしょうとか、そんなあいまいな法律をつくったのじゃ、これは裁判所ではあとの判例が困るでしょう。船後局長、法務省でよう答えなかったら、あなた答えなさい。
#212
○古館説明員 先ほどの御質問との関係で補足いたしますけれども、政府案も七百十九条の一項を引用いたしておりますから、この後段で「共同行為者中ノ敦レカ其損害ヲ加ヘタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ」ということでこの適用があるわけでございますけれども、この場合には、民法の解釈といたしましては、おそらくある一人の事業者の排出だけで被害が発生するという場合に、その加害者がだれかわからぬという場合に七百十九条の後段が適用されるというふうに一般に理解されているように思われます。そういうことから、いまの七百十九条の一項を引用しているという場合に、結局その排出量で被害が発生しないというような場合にはこの適用はないということになろうかと思うのです。その関係で野党案の四条の一項の後段、これがいまの七百十九条の一項の後段と同じような趣旨だとしますと、それは政府案と同じで、それからそうでないということになりますと、つまり結局一事業者としては被害を生ずるに満たないような排出をした場合でもこれは適用するのだという御趣旨なら、その限度では政府案と違いがあろうかというふうに考えます。
#213
○岡本委員 ちょっとあなた、二項のほうにごまかしてしまったので、いいですか、そっちのほうをぼくは言うているのと違うのです。民法七百十七条の第一項の規定の適用があった場合、この適用というのは共同不法行為なんですから、共同不法行為をしているというような、そんな立証を被害者がしなくても、同じ地域に同じように煙を排出しているという場合ならば、このまま損害賠償の責めを受けるのかということ、それだけを答えてくれればいいのですよ。二項なんかの話をしていない。
#214
○船後政府委員 民法七百十九条によりますれば、「数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ」とございますから、数人の共同不法行為で他人に損害を加えるということは立証を要するわけでございます。同様に野党案の四条におきましても、「前条第一項に規定する損害が二以上の事業者の事業活動によつて生じたときは、」とございますので、こういう意味におきましては、野党案におきましても損害が二以上の事業者の事業活動によって生じたことは立証を要すると考えます。その立証の程度は両者とも同様であると考えております。
#215
○岡本委員 野党案のは、たとえば数社の企業から亜硫酸ガスを出しているという場合であれば、複合汚染の場合は全部賠償の責任があるわけです。いいですか。それで政府案について、七百十九条第一項の共同して不法行為をしたという立証を被害者のほうでしなくても、複合汚染の場合いいのかということを聞いているのですよ。いいというなら野党案と変わらない。「第七百十九条第一項の規定」ということが入っておるから、この立証を被害者のほうでしなければならぬのであれば、これは困るわけです。要するに、共同してやったということを立証しなければならぬとしたら、これは立証できないのですよ。このところだけをはっきりしてください。しなくていいというのだったらしなくていいというふうに。
#216
○船後政府委員 政府案におきましては七百十九条を引っぱっておりますので「共同ノ」いう点が加わるわけでございますが、これは先般来申し上げておりますとおり、客観的な関連共同性をもって足りるわけでございます。
 ところで、先生御指摘のように、ここに数本あるいは数十本の煙突が並んでおるという事実だけでその数本ないし数十本の煙突が直ちにその損害と因果関係ありやなしやという問題を抜きにいたしますれば、その点につきましては先生のおっしゃるとおりだと私は思うのであります。ただ煙突があるというだけで因果関係が立証できるかいなかにつきましては問題が残ると思います。やはり煙突があってその煙突から出ておる煙で被害を生じているということの立証は要すると考えております。
#217
○岡本委員 そうしますと、振り返って言うならば、共同してその煙を出したというような立証は必要ないわけでしょう。結局、各煙突から出ているということだけがはっきりすればいいわけですね。共同しているというようなことを一々証明しなくてもいいわけですね。その点だけひとつ……。
#218
○船後政府委員 その共同して出しておるというのがお互いに共謀して出しておるとか、あるいは共同の認識を持って出しておるとかいう意味ではなくて、客観的に関連共同しておれば足りるわけでございますから、先ほど来申しておりますとおり、結果的には野党案と同じではなかろうかと考えております。
#219
○岡本委員 わかりました。その立証はしなくてもいい。野党案では、二以上の事業者の事業活動によって生じたか、そのうちのいずれによって生じたか知ることができないときも同様なんですから、そこは政府案との違いなんです。共同行為をやっておるということを立証しなくてもいいというならばよろしい。これはおいおい判例によって変わってくると思いますからね。
#220
○田中委員長 もっと答弁をはっきりすればいい、主観的要件は必要でないのだ、客観的要件は立証しなくてはいけない。その客観的要件は何できまるかといえば社会的通念によってきまるのだ。それでいいじゃないですか。答弁がへたなんだ。同じことを繰り返しているのですよ。それだったらきょうじゅうに採決できぬよ。その点は政府案も野党案も一緒なんだ。
#221
○船後政府委員 共同の解釈につきましては、主観的な要件は要しない、客観的な共同性があれば足りるわけでございます。
#222
○岡本委員 それでは次に無過失賠償責任の場合、大気汚染の一部改正でありますが、これは固定発生源のみを追及しておりますが、先ほども島本委員からも話がありましたように、都市公害においては自動車の排気ガスの寄与度、こういうことが問題になってきょうかと思うのですが、この自動車によるところの排気ガスが工場によるものの上に上のせされた、そういう汚染の場合も、やはり工場側に賠償責任があるのかどうか、この点をひとつはっきりしてください。
#223
○古館説明員 相当因果関係があれば責任を負うべきであると思います。
#224
○岡本委員 相当因果関係があれば責任あり、自動車も責任があるということですな。
#225
○古館説明員 工場に責任があるということでございます。
#226
○岡本委員 相当というのがちょっとわかりにくいのですが、まあいいでしょう。それでこういう場合があるのです。静穏汚染、静穏汚染と申しまして、いま企業の工場の煙突から排出しているところのいろいろな煙の硫黄酸化物なんかはかるのはK値ではかっておりますね。これは大体風速六メートル、こういうものを考えて、そうしてK値を出しておるわけですが、たとえば全然風が動かなくなる、こういうときに非常に――これは過去に東京でありましたのですが、普通であればどんどん広範囲にそういった汚染物質が流れるわけですけれども、風がなくなりますとそこにたまるわけです。そうして大量の死者が出たあるいは健康被害者が出た。その原因が二重逆転層という場合があるわけです。こういうのを不可抗力というのかあるいは天災というのか、このしんしゃく規定のところにありますね。これをどういうふうに見るのか。
#227
○古館説明員 入らないと思います。
#228
○岡本委員 じゃ、天災及び不可抗力には入らないとはっきりしました。
 次に、もう一つ聞いておきたいことがあります。これはこの間東海道新幹線で三島−静岡間でパンタグラフがこわれたわけですが、この原因は、あの付近の富士方面の亜硫酸ガスが架線に影響している。そうしてその亜硫酸ガスも、あそこにたくさんの工場があるわけですから、この場合は集団不法行為、これによって新幹線のパンタグラフがとまって何人かがけがをした、こういう場合は本法案の無過失賠償責任に入るのかどうか、責めを受けなければならないのかどうか、これもひとつ聞きたい。
#229
○古館説明員 これはもう少し事実関係を正確に把握しませんと、正確なお答えはできかねるかと思いますけれども、共同不法行為の要件等を満たしますれば賠償責任はあるというふうに抽象的には言えようかと思いますけれども、具体的な確答といいますのは、具体的な事実関係をもう少しよく把握しませんと、お答えできかねると思います。
#230
○岡本委員 これは十七日に東海道新幹線が、先ほど私が言いましたように、富士方面の亜硫酸ガスが原因で、はっきりした原因ということがわからないのでしょうけれども、そのためにパンタグラフが腐食をして、そしてこわれて車がとまっているわけです。新幹線が九時間ぐらいとまっている。この場合、うまくとまってくれればいいけれども、もしもぱっととまったりしてけが人が出た、こういう場合は、この富士方面の数社――何社か知りませんが、亜硫酸ガスを出しているわけです。その場合には本法案が適用されるのかどうか。
#231
○古館説明員 非常にむずかしい御質問でございますけれども、まあ抽象的にお答えするよりお答えのしようがないのじゃないかと思うのですけれども、一番問題はやはり相当因果関係があるかどうかという問題なんじゃなかろうかというふうに考えております。ですから、裁判上でも相当因果関係の認定で非常に苦労されるというふうに考える次第でございます。
#232
○岡本委員 では、先ほどあなたが答えたんだから、そういう場合は事故が起こった場合にはあると思う――あると思うと言ったらおかしいけれども、あるんだということでこれは置いておきましょう。
 次に、二十五条の二項「一の物質が新たに健康被害物質となつた場合には、前項の規定は、その物質が健康被害物質となった日以後の当該物質の排出による損害について適用する。」大体いままでの公害の歴史ずっと見ておりますと、未規制物質が被害の原因になっているものが非常に多いわけです。たとえばイタイイタイ病でもそうです。ああいう病気が出てから規制物質になった。こういうことになりますと、規制物質、政令の中に入れた時分にはたくさんな被害が出ている。こういうことでは私はいけないと思うのです。
 そこでPCB。PCBはいつごろ――カネミ中毒、これは公害とはいえないかもわかりませんけれども、すでにこうした患者が発生しておる。あるいはまた、母乳からPCBが出ている。これによって起こった患者、こういうことを考えますと、一日も早くこの政令指定をしなければならぬと思うのですが、これはいつごろやるつもりにしておりますか。
  〔委員長退席、始関委員長代理着席〕
#233
○船後政府委員 PCBの規制につきましては、六月末を目途といたしまして、厚生省におきましては食品の安全基準に関する暫定的な基準、環境庁におきましては水質汚濁に関する暫定的な排出基準というものを策定を急いでおるところでございます。
#234
○岡本委員 そうすると、PCBというのは人体に影響があるということは認めるわけですね。これは過去もそうですが、これはまあいい。
 そこでこの場合はいかがですか、一つ申し上げますが、食糧庁長官来ておりますか。――これは過日、当委員会と建設委員会で琵琶湖の汚染対策について私が論議したときに、PCB汚染米、これが六百八十五トン、この処置はどうしましたか。
#235
○亀長政府委員 ただいまの数字、ちょっと私心当たりがございませんが、政府買い入れ量、この周辺の産米を含めまして六百十八トン政府買い入れをいたしました。このうち在庫量が四百二十二トンございます。この四百二十二トンのうち汚染地区のものは九十八トンでございまして、これにつきましては現在シールをして保管をしてございます。
 なお、このほかに自主流通米、農協の持っております米で汚染をされたと認められるものが約百四トンございますが、これも同様にシールをして保管するように滋賀県庁から農協のほうに指導をいたしております。
#236
○岡本委員 そうすると両方ともちゃんと、この前大臣が答えたように保管されているわけですね。
#237
○亀長政府委員 この両方の数量は、厳重に保管されておると私ども承知をいたしております。五月二十六日に問い合わした結果によりましても、シールをつけて保管をしておるという報告でございます。
#238
○岡本委員 私のほうの調査あるいはまた報道によりますと、PCB汚染の疑いで出荷停止されたはずの近江米、滋賀県の米ですね、二千六百俵、一俵が六十キロです、これが京阪神地方に出荷された、尼崎ではそれを見つけまして、そうして市の衛生局で――先月の十七日に尼崎市内の卸元であるところの丸三米穀会社に十五トンが入荷しておる、うち三・七トンは玄米のまま同市内に、また伊丹市の小売り店にもおろされておる、そうしてその中からもうすでに一般の配給というのですか、販売されておるという事実がはっきりしておるわけですが、どうも食糧庁の言うのと違うのですが、これはいかがですか。
  〔始関委員長代理退席、委員長着席〕
#239
○亀長政府委員 いまのは自主流通米の米であろうと私ども考えておりますが、自主流通米は、汚染地区周辺の産米を含めまして三百九十三トンございまして、そのうち問題の発生をいたしました時点では二百八十九トンがすでに、問題になる以前に、そういうことがわからないものでございますから、販売をされておったという状況でございます。この二百八十九トンがすでに滋賀県、京都、大阪、兵庫、愛知等に出回っておりまして、問題になりましたときに私どもとしては調査をいたしましたが、小売りの手元まで行っているものが相当ありまして、判明次第食糧庁においては何どきでも他の産米と交換するということを指導をいたした次第でございます。私どもとして、もしそういうものがあればいつでも交換をするという指示もしてございますので、いまの三十七トンということを私いま初めてお伺いしましたが、いつでも交換に応ずるという姿勢でおる次第でございます。
#240
○岡本委員 口に入ってしまったものは交換できませんよ。それでこの報道によると、滋賀県の農協幹部は、凍結の決定が下部にまで徹底していなかったため、また汚染米と知って出荷を急いだのではないかというような消費者の声さえもあるわけです。それについてどうですか。この前も富山県のカドミ米を兵庫県に送ってきた、そうして凍結米だったものが兵庫で食べちゃったという、どうも食糧庁の何といいますか、PCB汚染米についての凍結あるいはまたどうするかということについて、私は非常に疑いを持つわけですが、いかがですか。
#241
○亀長政府委員 滋賀県がこの問題を、土壌汚染があるということで判定をいたしました時期が三月でございまして、その後玄米の汚染というのを判定いたしました時期が四月十九日でございます。私ども滋賀県庁からは、この土壌汚染が認められると同時にその地区の米をとりあえず凍結をして、四月の十九日の時点で玄米汚染の認められたもののみを精査して、それをシールをして、残余のものは玄米汚染と関係がないということで販売をした、かように承知をいたしております。したがいまして、玄米汚染の認められた米につきましては百四トン、その後も全然出荷をいたさないし、厳重にシールをしてあるというふうに承知をいたしております。カドミウム米で農協の幹部等がそういうふうなことがあるということは、私も十分警戒をして、県の食糧事務所などを督励いたしておりますので、私ども今後も農協にも十分注意して、間違いのないようにやっていきたいと考えております。
#242
○岡本委員 そこで環境庁にお聞きをしたいのですが、私はいまのあなたの答弁をまるのみにできません。この報道を見まして、また私どものよく調べたところによると、こういったようなPCB汚染の米がすでに消費者に渡っている。それによって病気になった。これはどこに訴訟をしたらいいのか。これはそのPCBを出したところの会社にあるのかあるいはその米を出した農協にあるのか、小売店にあるのか、こういうことになるとこの訴訟をする相手はどこになるのですか。これをひとつお聞きしたい。
#243
○船後政府委員 PCBに汚染されました米がどの程度人体に影響を及ぼすかという問題がまずあるわけでございますが、ただいまの御質問は、それがかりに被害があるということを前提といたしまして、だれを訴えればいいかということに了承しておるわけでありますが、そういった場合に、たとえば出荷をする者が何らかの規制に違反をして出荷をした場合とそうでない場合とございましょうし、そういうPCBの汚染ということに対する責任者がだれになるかは、やはりケース・バイ・ケースに決定をしていくべき問題ではないかと思います。
#244
○岡本委員 ケース・バイ・ケース――時間がありませんから、まあいいでしょう。
 そこで、この水質汚濁防止法の、ここで一番最後の適用除外のところの二十三条、「この法律の規定は、放射性物質による公共用水域の水質の汚濁及びその防止については、適用しない。」、こういうことになっておったのが「公共用水域の」をはずしてしまった。これをはずしたわけと、はずしたらどうなるのか、これを一ぺんちょっと説明願いたいと思います。
#245
○船後政府委員 放射能物質の汚染による被害の問題につきましては、特別法といたしまして原子力の損害に関する法体系があるわけでございますから、そちらのほうに譲っているわけでございます。
#246
○岡本委員 現在までの水質汚濁防止法によりますと、公共用水域の水質汚濁及び防止については適用しないとあるのです。今度は公共用水域、これをとってしまっている。そこにどういう差があるのか。これをひとつ……。
#247
○船後政府委員 放射能物質による汚染の被害につきましては、公共水域であろうと公共水域以外の、私水でありますが、そういうものであろうと、これはすべて放射能の賠償に関する法律、この体系によるということを明らかにするために削除したものでございます。
#248
○岡本委員 そうしますと、原子力損害の賠償に関する法律の第三条、「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。」こういうふうになっておるわけですが、これは公共用水域以外のものも全部入っておるわけですか。その点ちょっと念を押しておきます。
#249
○船後政府委員 この大気汚染防止法あるいは水質汚濁防止法における無過失と原子力被害との関係につきましては、放射性物質による大気または水質の汚染に対する規制は原子力基本法をはじめとする各種の法律で一元的に対策が講じられておりますので、今回の法律におきましては放射性物質による被害はすべて原子力損害の賠償に関する法律とこの体系にゆだねるというたてまえでもって、先ほど申しましたように公共水域という字句も削り、すべてそういった被害は原子力の体系でやるということを認識したものでございます。
#250
○岡本委員 科学技術庁長官、あなたの所管ですから……。
#251
○木内国務大臣 お答えいたします。
 この放射性物質の管理は非常に厳重にやっておりまするので、公害基本法をつくる際におきましても、これは放射性の物質の管理のほうにまかせるということで公害基本法のほうからも除いております。したがいまして、環境庁の所掌からはずれておるような次第でございます。
#252
○岡本委員 そこで最後に念を押しておきたいことがあるのですが、この法案で、健康被害物質の大気中への排出により人の生命または身体を害したるとき、この害したるときというのは、たとえばばい煙を吸った、吸ったときか、吸ってからだの調子が悪くなったときか、死亡したときか、これには非常に個人差があると私は思うのです。症状も多様であると思うのですが、そのいずれであるかということをひとつはっきりしておいてもらいたいと思います。
#253
○船後政府委員 やはり損害が現実に生じておるということは必要であろうと思います。医療行為をしたかどうかというような点は問題とはならないと考えますけれども、少なくとも現実に被害者に損害が発生しておるということが必要であろうと思います。
#254
○岡本委員 そこで政務次官、要するにそういうようなおそれがある。身体に影響があるというおそれがある。たとえば規制基準、排出基準を守っておってもそういう病気になる場合もあるが、守ってない場合が非常に多いですよ。その場合、要するに取り締まり官庁というものはなかなかうまく動いてないのです。それを一番早く察知するのはやはり住民なのですね。一人か二人出て次いで何人か出てくる。その場合どうしても、先ほど島本委員からもお話がありましたように、ああいった差止請求あるいはその所管の役所に何とかしてくれといってもなかなか動かない。そのときには規制措置請求、これはどうしても公害を防ぐためには必要になろうと私は思うのです。先ほどあなたは将来考えるというようなお話でありましたけれども、ほんとうに真剣にそれを考えて公害を未然に防止しようという考えがあるのか、それをもう一ぺんひとつ……。
#255
○小澤(太)政府委員 先ほど島本委員にお答えしたことと同じ考えです。同じ質問でございますから同じ考えをさらに確認を申し上げる次第でございます。
#256
○岡本委員 それでは、被害者が裁判によって勝訴した、しかし、それだけの損害賠償ができないというために、そういうときを考えて基金あるいはまたそういった救済措置を講じようとしているという先ほどもお話がありましたけれども、いつごろ大体その構想がまとまるのか、いつから大体発足するのか、これをひとつ聞かしてもらいたいのです。
#257
○船後政府委員 御指摘の問題は先ほども島本委員の御質問にお答えしたのでございますが、この制度の目的をどこに置くかということによりまして、これは担保の供託という制度、あるいは保険という制度あるいは基金という制度、それぞれに分かれていくといったような問題の検討も必要でございますし、また拠出をどのような点に着目いたしまして求めるか、また給付をどのような要件に該当すれば行なうかといったような点につきましては、類似の制度がございますけれども、世界でも例のない制度を考えているわけでございますから、ただいま中公審でもって御検討願っておるところでございますが、現在のところ検討を開始したばかりの段階でございまして、私どもといたしましてはすみやかに結論を得たいと思っておりますが、いつごろというような見当がまだつきがたい段階でございます。
#258
○岡本委員 いつごろかわからないで、先ほども話があったように五年も十年もかかっても困るのですが、政務次官としては大体いつごろを目ざしているか、これが一つ。
 それからもう一つは先ほど私が言いましたように自動車の排気ガス公害、これがやはり相当複合汚染となって出ると思うのですが、自動車あたりから基金に少し金を出させようと、そういうようなことを考えているのかいないのか、この二点についてひとつ……。
#259
○小澤(太)政府委員 いつからか的確に言えと言われるとちょっと困りますが、可及的すみやかにという社会通念によって御判断いただきたい。十年も先なんというととは考えない。やはり私どもも中公審にお願いをして検討、研究を急いでいただいております関係もございますし、今回この法案を出すにあたりましても並行して当然考えられることだというので、法案を用意いたします段階におきましてもすでにこのことを考えて中公審にお願いしておるような状態でございます。いつに中公審の答申待ちでございます。できるだけ早くやりたい、こう思っておるような次第でございまして、それが何年何月何日までにやれと言われても、そこまでは言えませんからできるだけ早くやりたいと思います。
 それから後者の問題はちょっと私から言うよりもむしろ専門の局長あたりから答弁さしたほうがいいと思います。
#260
○船後政府委員 自動車排気ガスはいわゆる移動発生源で不特定多数の発生源の代表的なものでございます。このような不特定多数の発生源から出る被害につきましてはやはり私どもも民事の救済にはなじまないものであろうと思います。そういたしますれば、やはりどうしても制度的に救済を考えるべき分野ではないかと思いますので、自動車による被害というものに対してわれわれが今後検討いたします賠償措置制度でどのように対処し得るかは大きな課題として検討してまいりたいと考えております。
#261
○岡本委員 政務次官、いつまで、何月何日というわけにいきませんけれども、大体あなたのほうで中公審に対して答申を求めるときには、いつでもけっこうですよ、こういうわけじゃないと思うのです。大体めどはどのくらいかというような直近の期間、半年おくれるとか三月おくれるとか、それはありましょうが、大体どのくらいの期限であれしているのか、それだけひとつ……。
#262
○小澤(太)政府委員 実は、御承知のように、わが国でも、もちろん世界でもない新しいいろいろな要素を組み立ててつくらなければならぬ問題でございまして、したがって、中公審も専門家が非常に熱心にやってくれております。ところが、まだ一回やっただけでございまして、それほど非常にむずかしい問題だと思うのであります。私どもも、じんぜんいつまでも研究研究では困りますので、それはできるだけ早く答申を願いたいということはお願いをいたしておるような次第でございます。
#263
○岡本委員 それでそのまま引っぱられますと、結局裁判が勝訴したところで、たとえばチッソなんというのはつぶれてしまうかもしれぬ。こういうようなことで、非常に早くやってもらわなければいかぬわけです。
 そこでもう一つ、被害者の救済について川崎あるいは尼崎、こういったいま被害者の救済が適用されているところがあるのですが、居住制限で、たとえば川崎におって、その汚染地区内にいないと救われない。要するに、認定からはずされてしまう。汚染地区にいると、今度はもたない。この適用範囲というものについて、私は当委員会で何べんも要求したわけですけれども、そのときは厚生省だったのですが、この範囲、あるいはまた尼崎から川崎へ来た場合、同じ汚染地区から来ても、ここに居住制限というのがありましてだめなんですね。これについてどういうふうに考えておるのか。これは政令改正ですからじきにできると思うのですが、大体いつごろか、この点についてひとついかがですか。
#264
○船後政府委員 ただいま御指摘の問題は、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の運用の問題でございますが、大気系の疾患につきましては、やはり疾病そのものがぜんそくとか気管支炎といったような系統の疾病でございますので、公害との関連ということになりますと、どうしても居住歴という要件が加わってくる、あるいは地域の指定が加わってくる。これはやむを得ないところであると思いますが、居住歴につきましては、やはり三年もしくは五年といったような御意見がございましたのを、現在原則として三年ということにいたしております。こういった問題をどうするかは、医学的な問題もございますので、その方面からの検討を進めたいとは思っております。ただ、この制度は先生御承知のとおり、いわばつなぎの措置でございまして、ほんとうの原因者がよくわからない、あるいは因果関係の究明が困難であるという段階におけるつなぎの措置でございますので、先ほど来申しておりますこの基本的な賠償措置制度との関連において、本制度をどうするかという点も、あわせて考えてまいります。
#265
○岡本委員 これはつなぎの措置に違いないですよ。ところが、生きていればよろしい。死んでしまったら賠償ももえないですよ。公害で自殺した人、あるいはまたなくなった人。水質汚濁の場合であれば、居住するところが変わってもいいわけですけれども、大気汚染の場合は転地療養もできない。こういうことで、これでは私は非常に無慈悲ではないかと思うのです。したがって、その検討については、前に厚生省のときに公害部長だったか、検討してちゃんとしますという話があったのですが、いまだにこの処理ができていない。こういうことを考えると、基金あるいはこういう補償制度をつくれと言ってもなかなかできないのではないか。そこから見れば、この救済法の運用状態だけですから、これは簡単にいけるのじゃないか、こういうふうに私は思うのです。政務次官、政治的配慮の上からすぐ検討を進めてもらいたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
#266
○小澤(太)政府委員 要するに、根本的な問題は先ほどお話のあった基金ないし保険の問題として解決しなければなりません。それまでの、どっちかというと経過的な措置なんでございます。そこで、いま御指摘のとおり、私どももできるだけ被害者を救済するということについては全力をあげたいと思っておりますから、これは十分に検討してまいりたい。
 それから、先ほどことばを濁しましたけれども、私いろいろ考えてみますと、あの基金なり保険の問題は次の通常国会の重要な議題にしたい、こういうくらいに考えておるわけでございます。そういきますならばまことにしあわせだ、こう思って督励をしておるような次第であります。
#267
○岡本委員 次の通常国会に救済する担保になるところの制度を出していただく、これを了承しまして、きょうはここで一応中止しておきます。
#268
○田中委員長 岡本君の質疑は終了いたしました。
 次に、西田八郎君。
#269
○西田委員 私はきわめて簡単に五、六点について質問をしたいと思います。
 それは、前回の質問の積み残しと、さらにその後審議の過程で疑問になってきたそれらの点についてお伺いをするわけですが、最初に、これもこの間のときに聞いたわけですけれども、健康被害に限られております。財産被害については今後どのようにされるおつもりなのか。最近、先ほども新幹線の話が出ておりましたが、振動、騒音、それらは確かに健康被害と言われればどうかという問題があったとしても、難聴になる人もありますれば、振動のためにおちおち寝られないということから不眠症になる。そのことが原因してからだをこわしておる人も少なくないわけであります。そういう点について一体どういうふうにお考えになっておるのか。まずその点からお伺いしたい。
#270
○小澤(太)政府委員 たびたび政府側からも御答弁申し上げておりますように、財産被害は当然入れるべきだと私は思っておるのですが、現実にどのようにして入れるかという問題がございますので、今回は一番の生命と健康ということに限ったわけでございます。これは継続して財産被害をどの程度取り入れるかということはやるつもりにいたしておる次第でございます。
#271
○西田委員 ちょっと質問が変なところでずれてしまいまして、私の質問のほうが悪かったのでかえってわかりにくかったと思うのですが、いま私が申し上げました難聴であるとかあるいは不眠症というものは健康被害ということに該当すると思うのですが、それ以外にさらが割れた、おひつがこわれた、あるいはテレビが見られないというような財産被害が生じていることについてどうするか、こういう質問がしたかったわけです。その点についてはいまお答えになって、なるべく早い機会ということですが、どうもなるべく早い機会、可及的すみやかということばは便利のいいことばでございまして、なかなかはっきりしない。この無過失の損害責任についても、これはもう出す出すと言われてから、二年は完全に経過をしておる、こういうようなことでありますから、私どもとしてはそうした点について、一体どのような状況ができたときにその財産被害というものについて考えるのか。私どもはもうすでに被害が出ておると思うのです。政府のほうでは、その被害は生活環境においてまだ許容できる範囲内だというふうにお考えになっておるのだと思うのですが、一体どういう状況になったときに財産被害というものが取り入れられるかというようなことについてお伺いをしたいと思います。
#272
○小澤(太)政府委員 いま先生のおっしゃるように、どういうところで財産被害をつかまえるかという問題とか、いろいろむずかしい問題があるものですから、いまどういうところでということをはっきり言えるなら、もうこの法案に出しておるぐらいのつもりなんです。それが言えないものですから……。言える段階に検討が進んでおりません。
 可及的すみやかにということばは申しわけありませんが、引き続き継続してこの研究を進めます。同時に、やはりこれは実際上の社会上の具体的ないろいろな実例も積み重ねていかなければなりませんし、また、法律的ないろいろな構成の問題もありますので、法律家の専門家の意見も徴しながら、具体的な実態などもつかみながらということになりますので、すぐにはできませんけれども、できるだけ早く、まあ私ども普通政治家の判断といたしましては、せっかくこの国会で御審議いただき、先生方の強い御要望もございましたので、できれば一番近い機会の国会で御審議をいただけるようなところに持っていくのが、私ども常識でございます。一応そういうことをめどにしておるわけでございます。それがうまくいきますならばしあわせに存ずるというような次第でございます。
#273
○西田委員 あわせて、先ほどの質問の続きになるわけですが、水と大気だけに限定されたわけですけれども、もうすでに振動、騒音等で先ほど申し上げたような被害が出てきておる。典型公害、七公害といわれておるわけですが、それらのいま最もひどいものについて振動と騒音があると思います。これらについて、一体財産被害についてどうするかといういまの私の質問とあわせて、一体いつごろそうしたものまで包括するようにして対策するように考えておられるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
#274
○小澤(太)政府委員 先生がおっしゃるような振動、これが無過失に結びつくかどうかという問題かと思います。おそらく、そういうものは無過失よりも、故意、過失というものが非常に多いと思うのです。無過失ということに結びつくかどうかの問題もございまして、今回は水質と大気汚染に持っていったわけでございますが、これもわれわれの研究の範囲にはもちろん属するということを申し上げたいと思います。
#275
○西田委員 そこのところは非常にむずかしいところだと思うのです。無過失が少ないとおっしゃるのですが、騒音でも、ホンがきめられておって、一つ一つの車はそれぞれ規制のホンを守っておったとしても、それが集まれば大きな音になるというふうに考えられる。その場合、それじゃ無過失でない、やはり過失なんだ。あるいは振動の場合でも、建設省は道路をこしらえるわけです。地層の試験から全部やって、そしてこれならだいじょうぶということでやった、道路を敷いた、そして十トンなり十五トンの車を走らせてもだいじょうぶだということで、その車の走ることを許可した。そうした場合に、振動が起こったというような場合は、これはやはり過失なんですか。その辺のところをひとつ……。
#276
○小澤(太)政府委員 行政上の規制を守っておることと、民事上の損害を求める権利とは関係がないわけです。かりに行政上の規制を守っておりましても、実際上の損害を与えておれば、現在におきましても加害者に対する損害賠償を請求できる、こういうたてまえに現在の判例も法理論もなっておりますので、そういうことを申し上げておきます。
#277
○西田委員 それはなっていたとしても、かりに原因者がはっきりしない場合――この前の鉄道の新幹線みたいなものは、鉄道を走らせておるのだから、はっきりわかりますね。日本国有鉄道公社にその責任を追及することができるが、自動車というものになればどうなるのですか。
#278
○船後政府委員 まず一般論を申し上げますが、私どもが今後財産被害の問題を検討するにつきましては、大気、水以外に、加害の態様といたしまして他の公害も当然検討範囲に入ってくるわけでございます。またこれらの問題は、先ほど申しておりましたように、賠償措置制度を考えます場合に、はたしてそういう制度に乗り得るかどうかという検討ともあわせて考えていかねばならないと思っております。
 ところで、ただいま御指摘の騒音、振動の問題でございますが、たとえば騒音でいわゆる都市騒音、これは無数の発生源があるわけでございまして、しかも加害者が被害者になったり、被害者が加害者になったりというような面、それからまた、被害といたしましても、一応市民生活としての受忍限度といったような問題から、どの程度の損害を対象とすべきかというむずかしい問題もあるわけでございますので、そういったこともひっくるめて今後検討してまいりたいというように考えます。
#279
○西田委員 それと、重ねて確認をしておきたいのですが、そうしたものについてはなかなか認定する基準というようなものがむずかしいということなんですか。
#280
○船後政府委員 私どもといたしましては、やはり現実に発生した被害の救済ということが主たる関心になるわけでございますが、騒音による被害の中で、非常に特定の発生源から出てきた、それによってノイローゼになるといったような事案につきましては、これはすでに判例もあるわけでございます。しかし、私どもやはり一番頭を悩ましますのは、都市の中でとかく騒音が何十ホンあるといったような状態、これが市民生活としてはやむを得ない面かもしれませんが、そういった点を受忍限度の点からどう考えたらいいのかというのが非常にむずかしい問題であるということを申し上げたわけでございます。
#281
○西田委員 病人が出たり子供が病気になったりということは、これはもう健康被害ではっきりすると思うのです。ところが、牛の乳が出なくなったり鶏が卵を産まなくなったり、あるいは商店のたなのものが落ちてこわれたりする、こういうのが私は財産被害じゃないかと思うのですが、そういうことは当然起こり得ることだと私は推定できるのですが、いかがでしょう。
#282
○船後政府委員 確かに、ある特定の工事によりまして振動が起こって、それでもって財産被害も生じますし、また、それに関連いたしまして身体、生命まで失うというようなこともあり得るわけでございますが、そういったケースは、先ほど政務次官が申しておりますように、やはり因果関係が明白であり、また故意、過失も明らかでございますので、現在の民法のもとでも十分機能ずるのじゃないかと思っております。
#283
○西田委員 どうもかみ合わないのは、私の質問がへたで意が十分伝わらぬので答弁がおかしいんだろうと思うのですが、過失の場合はいいんですよ。だけれども、過失でないのを無過失というんでしょう。だから、そういう点のことを聞いているわけで、たとえば振動について、いま建築ということを言われた。確かに建設現場等については、制限といいますか、基準がありますけれども、一般的に振動についての基準というものはまだ設けられていないんじゃないですか。ですから、そういう点の基準も何もない、そうしてだれがやったのかわからぬのです。不特定多数の車がたくさん走っている場合、そういう場合に一体どうなるのかということを聞いているわけです。
#284
○船後政府委員 特に原因者が特定していないような騒音、振動が重なるところにつきまして、どの程度の財産被害なり健康被害が起こるかという事実関係が実は問題でございまして、私ども、たいていの場合には、騒音、振動等による被害は、故意、過失なり因果関係の立証は容易であると思っておるのでございますが、そういうような不特定多数の発生源で因果関係も追及できないような騒音、振動からなおかつ被害が出ておるということになりますと、先ほど来申しておりますように、民事の裁判にかけましても、訴える相手もいないということになるわけでございまして、またもとへ戻りまして、しからば損害賠償措置制度にそういったものが乗り得るかどうかという検討の際に、あわせて考慮するほかはないと思います。
#285
○西田委員 次に、いまの答弁で、私は、やはりそういう制度で補償するという形にしなければ実際はできないのじゃないかということでお伺いしておったわけですが、そこで、改正案第二十五条二項の、これはちょっと問題になると思うのは、一つの物質が新たに健康被害物質となった場合には、先ほど岡本議員も質問しておられたわけですが、「前項の規定は、その物質が健康被害物質となつた日以後の当該物質の排出による損害について適用する。」それ以前のものは免責されることになると解釈していいのかどうか。
#286
○船後政府委員 免責になるわけではございませんでして、有害物質となった日以後につきましては無過失が適用になる、それ以前につきましては過失主義である、こういうことになると思います。
#287
○西田委員 次にお伺いしておきたいのは、被害者の責任ということばが出てくるわけですね。公害の場合に一体被害者の責任ということがあり得るのかどうかですね。それをお伺いしたい。
#288
○船後政府委員 公害の場合には、被害者の責めに帰すべきような事由というのはなかなか考えつきにくいのではございますが、先般来、たとえばということでもってあげました例が、立ちのき料をもらって立ちのくべきになっておるにもかかわらず、それを他に費消してしまって損害が生じたといったようなケースがこれに該当するのではないか。特にこの場合は責めに帰すべきでございますから、単に被害者側に過失があった程度では問題にならない、かように考えております。なお、同様な規定は鉱業法にもございまして、鉱業法でも、現実にこの条項が適用になった例は私存じませんけれども、鉱業法の解説書等を見ますと、この場合には、たとえば陥没を予想いたしまして、わざわざ粗末な家を建て補償金を取るといったような場合がこれに該当するのではないかというように鉱業法ではいっておりますから、そのようなケースであろうかと考えております。
#289
○西田委員 それはおかしいです。それは被害者の責めじゃないのです。それは当事者間にある契約の不履行ということであって、この問題とはだいぶん違うように思う。いまおっしゃったようなケースなら、一たん立ちのけ、立ちのきますという契約です。そしてその補償金として五百万円なら五百万円もらった。ところが、その五百万円をほかに使ってしまった、それでよそに立ちのくことができなくなってしまったから、またそこに居すわっておったのが、今度は鉱害があるというようなことを言い出したという形で請求するということになれば、私は、そんなものは被害者の責めでも何でもなしに、それ以前の問題、契約不履行という形になるのではないかと思う。また、いま、陥没するというようなところへむやみに家を建てるという。そうすれば、陥没するということが予定されるなら、立ち入り禁止区域か何かに指定されるだろうから、そこへむちゃくちゃに入ってくるということ自体ができないわけで、これもこの問題と違うと思う。
 もう一つ私の考え。水がよごれてきたから町内で全部水道を引こうじゃないか、そして各人はたとえば一万円ずつ負担してくれということで簡易水道を引いた。しかし、その一万円を出すのはおれはばからしいから、井戸の水を従来どおり飲むのだと言って飲んでいた場合に起こったのも、それがはたしてここにいう被害者の責任になるかどうかということになると、これもならないと思うのです。ですから、被害者の責めに帰すべき事由というのは、この場合に一体どういうケースが、納得できるような理由がある場合があるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
#290
○船後政府委員 私どもの頭で考え出すどのようなケースを持ち出しても、なかなか御納得いただけないかとも思いますが、私ども、それほど、被害者の責めに帰すべき事由というものはレアケースであろうと思っております。しかし、公平の原則からいたしまして、加害者に対し無過失責任を課せられるならば、他方、被害者の側におきましてその損害の発生に関して責めに帰すべきようなことがあれば、裁判所がこれをしんしゃくし得るという規定は設けるべきである、かように考えております。
#291
○西田委員 そこで、私ども法律学者でも弁護士でも何でもないのですけれども、いま過失相殺というようなことばが出ましたけれども、それは民法による原則ではなかろうかと思うのですが、最近新しく出てまいりました労働法であるとか、あるいは自動車の賠償責任というような、いろいろの新しい時代に即応した新しい法律は、近代法ということで、現在の民法ではこれを律し切れないいろいろな問題を律するためにできておる法律ではなかろうかと思うのです。ですから、それを、古い法律がここにこういうものがあるからというワクの中でものごとを考えようとすると、私は、こういうような無過失損害賠償法というような問題は解決できないのではないか、だから、新しい市民生活の中に新しく要求されてくる問題を解決するにはどうしたらいいかという立法措置でなければならないと思うのですが、そういう点、私どもといささか発想が違うように思うのですが、いかがでしょう。
#292
○船後政府委員 これは私がお答えするよりは、あるいは法務省でお答え願ったほうがいいかとも思いますが、やはり民法の不法行為の問題は当事者間の公平ということが一つの原則であろうと思います。ただし、どういうのが公平であるかということにつきましては、これは確かに時代とともに変わっていくわけでございまして、かつては公平と思われましたことが、現在は不公平になるというようなことでございますから、無過失に対応するところの被害者の責めというものにつきましても、今後の判例動向あるいは解釈、そういったものがどうなるか、これにつきましては、そのような判例、学説の発展に期せねばならない面は、先生のお説どおり、私はあると思います。
#293
○西田委員 それで、先ほど岡本議員もだいぶ言っておられたのですが、共同不法行為の問題なんです。これは民法によって共同不法行為と認定されたもののみについて限定されるというふうになっておるわけです。だから議論がかみ合わない。われわれの言うところは、とにかく疑わしきはすべて罰する、そういう姿勢に立ち、どこから出ているかわからぬけれども、これが一応すべてわれわれの健康に害を与えておるのだ、しからば一体どいつとどいつだということで調べてみる、その調べた中で、小さいのもあれば大きいのもあった、その場合に、小さいのはひとつかんべんしてやろうというしんしゃく規定が生まれてくるのではなかろうか。だから、もののとらまえる時点の違いがあるように思うのですが、次官いかがですか。
#294
○小澤(太)政府委員 先ほどの岡本先生の御意見も長時間にわたって拝聴いたしました。また、先生もそういうお話でございますが、こちらの政府側から御答弁申し上げましたように、民法の七百十九条を持ってくる場合と、それから野党案のごとく二つ以上の云々、こういう場合とは、いずれも同じなんじゃないか。しかも民法の問題は主観説はありません。そういう具体的な事実が客観的に存すればいい。あるということだけは立証しなければならぬ。同時に、野党案も、二つ以上の工場でやっておるということだけは立証しなければならない。実際上の問題として同じことだと思うのです。こういう答弁をしておったわけですが、法律家は法律的な答弁をするものですから、私ども聞いておってよくわからぬが、法律家でない私が申し上げると、大体常識的におわかりになるんじゃないか、こう思って御答弁申し上げた次第でございます。
#295
○西田委員 そこのところが私は違うように思うのは、結果的には一緒だから同じ考え方だということになると、問題は違うわけです。富士山の頂上へ登るのに、東から登るのと西側から登るのと、西側は廃道になったのを登るのと新しい道をつけて登るのと、富士山の頂上に立つということは同じことだ、だけれども、そこへ行くプロセスは違う。だから、一たん裁判所でこれは共同不法行為だという認定、こういう認定があるということと、なくてもやれるということでは、これは被害者の心理状況から考えて、うんと違いますし、また、権利という面から考えても、非常に違いが生じてくるのではなかろうか。だから、ある一つのところを、段階を経なければできないということと、ストレートにやれる、やれるけれども、それがどうなっているかということをもう一回調べ直すということとは、私はわけが違うように思うのですがね。どうでしょう。
#296
○小澤(太)政府委員 御意見でありますけれども、私は同じじゃないかと思うのです。これは裁判所が認定する問題の前の問題でございまして、裁判所に持っていくときの問題であります。法廷において、客観的な共同不法行為があったと主張すればいいだけの問題でございますから、立証と言うと、非常にむずかしい挙証責任のように言われますけれども、客観説に徹しますと、こうだったと言えばそれで済む。野党案も同じであります。こうだったと言えば済むのですから、法律用語を用いて、挙証責任だ、立証だと言うと、非常にたいへんなもののように思いますけれども、われわれ常識的に社会的に考えて、そうさしたる努力もせぬで立証もできるような問題ですから、そういう意味では同じだ、こういうことを言っているのです。
#297
○西田委員 これは水かけ論になると思うのです。ものの発想の次元が違うわけですから、水かけ論になると思いますからやめますけれども、いま、まあ結果は一緒だ、客観的に推定できればいいということでありますから、そういうことであるとするならば、これはひとつ確認をしておいて、あと賠償補償制度の問題について、先ほど岡本さんからも尋ねておられた、世界に類のない制度だ――これはこんなものをつくらねばならぬこと自体に問題があるわけでございまして、それはあまり世界に類がないとか、世界一の公害対策だなんて言われないほうが私はいいのではないかと思うわけですが、この場合、保険とするのか基金とするのか、あるいは強制とするのか任意とするのか、非常にむずかしい問題が生じてくると思う。ということは、先ほど複合公害の話が出ていましたが、たとえば百ガロンの重油をたく工場と、それから五ガロンずつたく小さな工場とがある。ところが、その小さいほうが百以上あって、そして五百ガロン、片方は百ガロンというような場合に、これは非常にむずかしい問題が出てくると思うのです。しかもその百ガロンをたく工場があとから来た場合、これは非常に責任を持っておらなければならぬ原因者間では、かなりな論議の起こるところでもあろうかと思うのであります。そういう問題をどのようにして補完していくのか、あるいは担保するのか、その辺のところ、むずかしいと思うのですが、できればより具体的にひとつ考え方を聞かしておいていただきたい。
#298
○船後政府委員 無過失損害賠償に関連いたしまして何らかの賠償措置制度をつくろうということまでは、考え方がはっきりいたしておるのでございますが、この制度をどのように組み立てるかという点になってまいりますと、そもそも、制度の目的を、ただ単に債務の履行を担保するという機能だけにとどめておくのか、こういたしますと、やはり具体的な賠償債務の発生ということが前提になるわけでございますから、それからさらに進みまして、不特定多数の原因者から生ずるような被害に対してまでもこの制度で救済を考えるかということによりまして、保険にするか基金にするか、あるいは担保の供託という制度にするかというふうにも分かれてくるわけでございます。それからまた、どのような基準に着目いたしまして拠出を求めるか、それも強制にするか任意にするか、この場合にも保険的な考え方を取り入れる余地もございましょうし、あるいは保険的な考え方では律し切れないから、基金と申しますか、課徴金を基礎としたような制度というものもあり得るわけでございます。なおまた、給付の面につきましても、一定の保険金的なものを支払う制度にとどめるのか、あるいは労災保険のように、従業員がこうむりましたその傷病それ自体の医療ないしは損害賠償というような給付を考えるのか、こういったふうなことによりましてさまざまな組み合わせが考えられるわけでございます。
 現在、環境庁といたしましては、このような問題点を提起いたしまして、いかなる手段を用いるかという点についての具体的な検討を諸先生方にお願いしておる段階でございます。
#299
○西田委員 先生方にお願いされるのはいいけれども、やはり、こういうものを考えているというものを一つ持たなければいかぬのじゃないですか。それをただ、先生方にお願いしておるとか、御意見を聞いておりますとかということで、そして今度は、出てきませんでしたから、まだ答申がございませんのでということで逃げられる。そうすると、先ほど小澤政務次官は、次の国会にと、こうおっしゃったけれども、それじゃはたして次の国会にということになると、いや、答申が出てまいりませんでした、うまいこと隠れみのにされる。これはここで言うていいことか悪いことか知らぬけれども、健康保険の改正の場合は、答申を求めたけれども、答申が非常にけしからぬといってしかられた。しかられても、それは答申はいただきましたということで、それを全然しんしゃくしないで、全く無視して政府案をつくっていくというようなこともあるわけで、どうもそういう審議会制度というものが隠れみのになってしまっては困ると思うのです。私はやはりもっと前向きの姿勢で真剣に考えるべきだというふうに考えるわけですが、これは政務次官に念を押して私は質問をやめますけれども、必ず次の国会に出す、それくらいの自信があるわけですね。
#300
○小澤(太)政府委員 先ほど申し上げましたのは、私ども政治家としまして、国会に御審議をいただいております法案で議員の皆さん方から強い要望のあったものを、いつその要望を参考にしながら御審議を願えるか、こういうことになりますと、次の通常国会まではという努力目標を持つのが当然でございまして、そう申し上げておるような次第でございます。私は、やはりこういうものはタイムリミットをつくってやらないとなかなかむずかしい、しかも、いまおっしゃったようにただ審議会を隠れみのに使うのじゃなくて、これは保険数理その他非常にむずかしいものから割り出さなければならぬ、非常な専門家の知識を要するということがございますので、このような答弁をいたしておるようなわけで、この点はどうぞ御理解いただきたいと思います。
#301
○西田委員 いまおっしゃった点は、私、理解しないことはないわけです。だけど、政治家としてその責任でというようなことでものを言われて、実際に出てこないと、私はかえって国民の期待を裏切ることになろうと思うのです。特に、こうして会期末になってまいりますと、そういう答弁が非常に多くなってまいります。しかも今回の場合は佐藤さんの引退も表明されておるようでありますから、いずれにしても自民党が政権をこのまま担当していかれるでありましょうから、言いのがれということにはならないと思いますけれども、先ほどのなにも含めて、財産被害その他、水、大気以外の原因その他公害に対しても配慮するというお答えをいただきましたので、一応納得したわけでありますけれども、特にその点を強調しておきまして、私、質問を終わります。
#302
○田中委員長 西田君の質疑は終了いたしました。
 次に、青柳盛雄君。
#303
○青柳委員 これは無過失責任の新しい法律だということで審議が始まったわけでございますが、公害の被害の問題は、単一の企業から有害な物質が排出されて健康に害を及ぼすという事案よりも、二つ以上の事業者が行なう排出行為によって公害が出て、そして被害があらわれてくる、いわゆる複合公害だと思います。したがって、複合公害が行なわれた場合に、過失が必要であるということでは被害者を救済するのには非常に不十分であるから、無過失責任を新しく設けるんだという、社会的要請にこたえた法案だと思ってわれわれは取り組んでいるわけでございますが、どうも私には納得のいかない点があるのです。それは、不十分だとか、あるいは、これから先に直せば十分なものになるんだとかいうような問題以前のことだと思うわけです。もっぱら法律的な問題ですから、法律専門家からの正確なお答えをいただきませんと、これがかりに通過いたしまして実施された場合に、実務を担当する弁護士からはじまって裁判官が一番解釈に苦しむ。どうも、無過失損害賠償法ができ上がったというんだけれども、先ほど申しました複合公害については、無過失損害賠償制度というのはどこを見てもないじゃないか、あれはうそだったのか、一体国会では何を論議してこんなものをつくったんだといわれるようなことになった場合、われわれとすれば全く面目を失墜することになると思うんですね。政府のねらいがどこにあったかは知りませんけれども、国会がそのねらいを見抜くことができずにこの法案を原案のとおりに通してしまったということになれば、その責任は国会が負わなければならない。政府に責任を転嫁するわけにはいかないと思うのです、国民から選ばれた国会議員の責任というものは重大でございますから。
 たいへん大きなことを申し上げましたようですが、それについてお伺いいたしますけれども、大気汚染防止法の二十五条の二、それから水質汚濁防止法の二十条、この肩書きですね、見出しがないのです。どの法律をつくる場合でも、必ず条文の肩のところに、目的とか定義とかという、カッコづきで見出しのような肩書きがついております。ところが、ふしぎなことに、この原案を見ますと、いま申しましたように、二十五条の二の分についてだけは何にも書いてございません。この理由はどこにあるのか、原案をつくった当局の方にお尋ねいたします。
#304
○船後政府委員 大気汚染防止法で申し上げますと、第二十五条と第二十五条の二は、ともに無過失という共通見出しのもとにまとめたものでございます。
#305
○青柳委員 それではお尋ねをいたします。二十五条の二も二十条も同趣旨でございますから、二十五条の二のほうだけについてこれからはお尋ねいたしますが、二十五条の二、「前条第一項に規定する損害」という文字があります。これは、二以上の事業者の故意または過失によらない排出行為によって生じたものに限定しているのかどうか、お答え願います。
#306
○船後政府委員 第二十五条の二は、「前条第一項に規定する損害」と受けておりますので、これは無過失の排出による損害を受けておるわけでございます。
#307
○青柳委員 無過失の損害に対して、過失を前提とする民法七百十九条の規定が適用されるということは、論理的に不可能だと思います。したがって、「当該損害賠償の責任について」というこの当該損害賠償の責任の原因となる排出行為は、やはりいまあなたが言われたとおり故意、過失のないものをさすのか。とすれば、これは矛盾しませんか、七百十九条をそこへ持ってくるのは。その点いかがですか。
#308
○船後政府委員 民法七百十九条は「数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキ」の規定でございますので、この不法行為の要件の中で、第二十五条の二で運用をいたします場合には過失要件を要しない、かように解釈いたします。
#309
○青柳委員 それはあなたの解釈ですか、それとも、この文章からそういうことが読み取れるということですか。
#310
○船後政府委員 第二十五条の二は、先ほど申し上げましたように、その損害につきましては無過失でございますから、その無過失の損害につきまして民法七百十九条の共同不法行為の適用がある場合でございますから、当然無過失の七百十九条の適用ということになるわけでございます。
#311
○青柳委員 七百十九条の成立条件につきましては、これは判例も学説も全く一致しておると言ってもよろしいんで、いままで何べん聞いても、答弁は、二つのうちのあとのほうの側だけを言っております。すなわち、共同関係、共謀が必要であるとか、共同の認識が必要であるとか、あるいは客観的に関連性があればいいということだとか、これはいろいろ説はございますけれども、その方面について判例等の引用を盛んにやっておりますけれども、その前に、故意、過失、責任、能力、違法性、損害発生との因果関係というようなものも当然あるという、いわゆる独立した不法行為としての成立要件を備えなければならない、そういうものが合わさってそして共同不法行為というものが、そういう形態のものができ上がる。だから、一つ一つをとってみたら故意、過失がなかったんだというんだったら、共同不法行為の前提を失うじゃありませんか。その点、七百十九条を、この場合こういう文字を入れるから問題ですよ。野党原案のようになっておれば、全然問題はありません。七百十九条という文字が入った以上は七百十九条はとれによって改正されたんだというふうには、法律家は読みませんね、どう考えても。だからこれは、無過失責任というものは二つ以上の複合公害の場合については何ら触れていないんだ。ということは、そういう制度は設けていないんだということに帰着しませんか。
#312
○船後政府委員 先ほど来申しておりますように、二十五条の二は、まず「前条第一項に規定する損害が」でございますので、これは無過失の損害賠償の対象になる損害でございます。それが当該損害賠償の責任について民法第七百十九条の適用がある場合でございますから、民法第七百十九条の適用につきまして、共同の不法行為について個々の行為が不法行為要件を満たしておることが必要でございますが、その場合の個々の行為の不法行為要件の中で、故意、過失要件は必要としない、かように考えております。
#313
○青柳委員 そうしますと、五月の十二日の当委員会の会議録がございます。第十五号、ここで二見委員からの質疑に対し、古館説明員は「各共同行為者各人の行為が不法行為の要件を満たし、」ということが前提である、そして「個々の個々人が不法行為の要件を満たしている場合に限り共同不法行為が問題になります。」と言っておりますが、これは故意、過失は除外されているという意味なのかどうか。この点、古館説明員からの答弁を求めます。
#314
○古館説明員 故意、過失の要件は要しないという趣旨でございます。
#315
○青柳委員 最高裁判所の判例によりますと、「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法な加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべき」ものであるという趣旨の内容になっておりますが、「右違法な加害行為」という、各自が違法な性質を持っておらなければいかぬといっておるのですけれども、この「違法」というのは、故意、過失があるからこそ違法になるのではありませんか。
  〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
#316
○古館説明員 一般に、法学上、故意、過失と違法の要件は別に考えております。したがいまして、故意、過失がありましても違法性がない場合はあろうかと思います。
#317
○青柳委員 故意、過失がなくとも違法性があるという、その説明をもっと詳しくしていただきたいのです。
#318
○古館説明員 違法性といいますのは、加害行為と、それからそれによる被害の性質、それとの相関関係によってきまるのじゃなかろうかというふうに考えるわけです。そうしますと、たとえば七百九条の不法行為の場合に、その被害者の故意によって損害が発生したというような場合には、事案によりましては、そういう場合には、加害者の加害行為の態様と、それから被害の性質、この関係で違法性がないとされる場合もあろうかと思います。そういう趣旨でございます。
#319
○青柳委員 違法ということばは、やはり不法行為の不法というのと私どもは同義語であろうかと考えているわけです。だから、いままで民法の大原則といわれたものが、故意、過失というこの主観的な帰責原因があるところに初めて賠償責任というものが出てくる。だから、この帰責責任というのが出る原因には確かに故意、過失があり、したがってそれは違法なんだ、決して適法なものではないのだ。故意、過失がないところに違法性があるのだ、賠償責任のあるものはみんな違法なんだ、裏から言うならばそういう主張というのは、全く詭弁ではないかと思うのです。だから私は、おそらく、具体的なケースが起こってきたときに、被告側から故意、過失が立証されない限り、七百十九条が適用されないのだ。七百十九条を適用されるというのは、はっきり書いてある、すなわち、先ほどの説明でいうと、無過失な行為によって損害があらわれた、それに七百十九条が適用されるということは論理的にあり得ないのだから、結局はこの二十五条の二の「前条第一項に規定する損害」というものは無過失の行為だけによるものだということは、「前条第一項」とあるからというだけでは読めないのだというこの議論が生じてくる可能性があると思うのですよ。それは絶対にないのだということは、この「前条第一項」ということだけで言い切れるかどうかですね。この点を私は非常に疑問に思うので、これが国会で論議された過程で政府はそう主張したのだ、だからもうそれ以外裁判所は解釈のしようがないのだ、こういうふうにできるものかどうか、それを私は疑問に思うから、重ねてお尋ねいたします。
#320
○古館説明員 先ほどの違法の点でございますけれども、違法性の問題につきましては、七百九条の、他人の権利を侵害した場合というのが違法性の要件に高まった、他人の権利を侵害しない場合でも賠償責任を負うということで、これは現在では、違法性がある場合には賠償責任を負うということで、違法性が一つの要件と、法学上いわれておるということでございます。
 それから二十五条の二でございますけれども、二十五条の二では、結局二十五条、つまり、工場、事業場における事業活動に伴う健康被害物質の排出によって被害が発生した、損害が発生した場合、これは賠償責任を負うという趣旨でございます。そういうことから、この二十五条では故意、過失の要件が落ちております。そこで、二十五条の二で「前条第一項に規定する損害が」ということでございますから、この損害は、故意、過失がない場合でも賠償責任を負うという損害でございます。それを受けまして、「二以上の事業者」ということで、その損害が二以上の事業者によって生じた場合には、故意、過失以外の七百十九条一項の要件を満たす場合には、共同行為者は賠償責任を負う。
  〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
その場合に、寄与度が著しく小さいというふうに認められる場合には、賠償額をしんしゃくすることができるということなんでございますけれども、それで、結局その「前条第一項に規定する損害が」ということから、「損害が」というふうに規定した上で、七百十九条第一項の規定の適用ということから、結局、その七百十九条の故意、過失の要件は抜けているというふうに読むべきじゃないかと思います。なお、先ほど故意、過失がある場合には、では二十五条の二は適用があるのかというお話がございましたけれども、結局二十五条ではその故意、過失については要件とされていないわけでございます。したがいまして、理論的には故意、過失がある場合でも二十五条の二項は適用される可能性はあろうかというふうに解釈しております。
#321
○青柳委員 いまのような解釈を確定させるためには「第七百十九条第一項の規定の適用がある場合」というところに注釈を入れて、この場合には故意、過失を必要としないその他の構成要件に該当する場合、そういうふうに親切にしておかなければ、この前のほうの「前条第一項に規定する損害が」云々というところは決してこれは無過失というふうには読めない、そう限定しているとは思えないというふうな疑問を生じはしないか。少なくとも七百十九条などというものをここへ無限定的に持ってくることに、立法技術として何かさらに紛争をかもし出すような解釈論争を持ち出すようなものがありはしないか。だから私はずっと前からこれは鉱業法の百九条のようなものにしておかなければいけないのだ、野党案のようにしておかなければ必ず疑義が起こってくるということを強調したわけですが、あえてこれを直さないというところに、政府の考えがあるようでございます。あとでそれがどういう問題になったか。これは政府だけの責任ではないだけに慎重に扱わなければならないと考えます。
 次に、二十五条の三あるいは二十条の二、「被害者の責めに帰すべき」という文言がもし排除されるならば、民法七百二十二条二項がこれに適用されることになるというのですけれども、一体この法律の改正によって民法の不法行為の規定がそのまま適用されるんだ、これは特例という形で、ここに定めのない以外のことは民法の不法行為に関する、あるいはその他の規定がそのまま適用されるんだ、そういう解釈が成り立つかどうか。そういう条文は一つもありませんから……。その点いかがでしょうか。
#322
○古館説明員 民法の不法行為責任についての特則でございますから、これに規定がないものについては民法の一般原則に返るというふうに考えております。
#323
○青柳委員 どうもこの四章の二の中にそういう趣旨の文言があれば、これは疑義は生じないですけれども、これだけの簡単な文章の中から民法七百九条以下の規定で、この四章の二の規定で別な定めをしたもの以外はこれを適用するというような文章がない場合に、当然に適用がある、したがってこの二十五条の三の中から「被害者の責めに帰すべき」というのがなくなれば、当然に七百二十二条二項が適用される、そういう論拠がほんとうに成り立つかどうか。公平の観念からいって、それは使われてもいいという解釈論争はあるかもしれませんけれども、その点はどうですか。
#324
○船後政府委員 大気汚染防止法の第四章の二の規定は民法の特例でございますので、ここに規定のない部分につきましては、民法の原則に戻るわけでございます。この先例といたしましては鉱業法、水洗炭業法等におきましても民法の適用については何ら触れておりませんが、これらの鉱業法の損害賠償に関する規定は民法の特例をなすものでございますから、鉱業法に条文のないものにつきましては、民法の適用を受けるわけでございます。
#325
○青柳委員 それではかりに「被害者の責めに帰すべき事由が」云々という部分が削除されたという場合においては、政府の考えでは七百二十二条の二項が適用されて、やはり賠償についてしんしゃくを受けるということがいわれることになるわけですか。
#326
○船後政府委員 かりに「被害者の責めに帰すべき事由」というところが削除になりますと、民法七百二十二条の規定によることとなるわけでございます。
#327
○青柳委員 もう一点だけお尋ねしてしまいにいたしますが、大気汚染防止法の二十五条の二項、あるいは水質汚濁防止法十九条の二項で、先ほどから問題になっておりましたけれども、これが指定を受ける以前の時期に害を及ぼすことがあって、そして損害が指定後に生じたというときには、どうしてもこれは過失責任を問う以外に道がないということになるのかどうかですね。この分については経過規定というものが何にもないわけですから、読めばそのとおり、損害は指定した後でなければいけないので、それ以前にさかのぼることはできないというふうに読む以外にないようですけれども、はたしてそうだとすると非常に不合理なことになるのですが、これはほかに救いようがないわけかどうか。実は大石長官は、それはどうも不合理だということを何べんも審議の中で言っているような感じがするのです。大体予想されるような物質が排出されることによって健康が害されたという場合には、これはもう無過失ではなくて過失があるんだ。だから、わからないところに被害があらわれるんで、無過失責任というのが必要なんだ、こうまで言っておるわけです。まさにそうだと思うのです。規制のできるような状況になってきて、そしてこれは被害を生ずるであろうということが予想されるような状況になってきてからの救済というものを無過失でやってみたところで、これではもう過失責任を問うと同じようなものです。だからそれ以前に戻すというところに無過失責任の制度というものの妙味があるんだというようなことは、法律のしろうとである大臣が直観的にも感じて言っておられるのですよ。それを法律専門家のほうでは、何か法的安定性がどうのこうのというような理屈でもって、別に憲法違反でもあり得ないようなことを墨守する。罪刑法定主義ですから刑罰のないところに罪を問うのはいけませんけれども、民事の問題などではさかのぼっても少しも不合理はない。むしろ企業を実行する人たちにとってみると、いわゆる危険負担申しましょうか、わからないけれども、こういう企業をやっているからには被害が生ずるかもしれないということは、危険負担をしなければならないのであって、これは道義的にどうこう言うのじゃなくて、むしろ損害賠償などということばにこだわらずに、損害補償と申しましょうか、要するに損害を救済するのにだれが負担ずるか、被害者がみずから負担するのか、それとも加害者が負担するのか、これは加害者に負担させればいいんだという考え方からいえば、さかのぼらしても少しも不合理なことはないと思うのです。その点、もとに戻りますけれども二十五条の二項あるいは十九条の二項についてはさかのぼらす余地は全然解釈上ないのかあるのか、それをはっきりお答え願いたいと思う。
#328
○船後政府委員 今後の新しい有害物質につきましては、まず何よりもPCBのような物質の製造及び使用というものの厳重なるチェックが必要であり、かつまた有害であるということがわかりますれば、その時宜を失することなく規制を行なう、そして公害の未然防止を行なうというのが、まず行政としてなすべきことであろうと考えております。ただ民事の責任の問題になってまいりますと、やはり無害であるというふうに考えておりました物質が有害になるわけでございますので、どういたしましてもこの排出の時点というもので区切らざるを得ないのであります。
 ところで二十五条の二項につきましては、まず指定日以後の損害にのみしか適用がないのは当然でございますが、排出につきましては指定日以前に排出行為がとまっておったというものにはこれはいたし方がございませんけれども、排出行為が継続しておるというものにつきましては、これは指定日以後に発生する損害につきましては指定日以後の排出というものにつきましても相当因果関係があるわけでございますから、そういった面から指定日以後の排出による損害については無過失の適用があるということでもって法の運用が行なわれる、かように考えております。
#329
○青柳委員 一言だけ申します。
 この二項の規定はいずれも有害無益だと私は思う。わざわざこういうものを設けて、何か法的安定性を保障してやるんだ、経過規定の場合もそうでございますけれども、少なくともこういうものはなくて、そうしてあとは運用にまかせるということのほうがより公平ではないか、被害者救済にとって徹底しているのではないか。こうものがあると、とかく企業者のほうでは、これによって責任を回避しようとして非常に不合理なことが起こるというふうに私は考えます。大体、行政的に取り締まろう、予防しようという考えで――法律の名前が防止法ですから、予防しようという行政的な措置の問題から出発してまいりますものですから、被害を救済するという民法的な観点というものと、どうもしっくりいかないのですね。だから取り締まるのには、なるほど早目に早目に先手をとらなければいけないけれども、それでも人のやることですから、なかなか取り締まれない、十分なことはできない、しかし客観的には被害が出てくる、その被害をどうするか、これを救ってやらなければいけない、その道を封ずるようなこういう二項を設けることには、われわれはとうてい賛成するわけにはまいりません。そのことだけを申し上げて終わります。
#330
○田中委員長 青柳君の質疑は終了いたしました。
 これにて内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#331
○田中委員長 この際、委員各位と十分協議し、私の手元で起草いたしました内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。
    ―――――――――――――
#332
○田中委員長 その趣旨について御説明申し上げます。
 修正案はお手元に配付してありますので、案文の朗読はこの際省略させていただき、その要旨について御説明いたします。
 修正案の第一点は、損害賠償の責任及び額を定めるについての裁判所のしんしゃく規定中、被害者の責めに帰すべき事由があったときに関する部分を削り、天災その他不可抗力が競合した場合だけの規定とすることであります。被害者の責めに帰すべき事由の部分を削りましたのは、この種の問題は民法の一般原則によって処理すれば足りるという意味であります。
 修正の第二点は、附則第二項の経過措置に関するものであります。すなわち、原案が新法施行前の排出による損害についてはあげて従前の例によることとしているのを改め、新法は新法施行後に生ずる損害について適用する旨を明記するとともに、新たにただし書きを設け、新法施行後に生ずる損害であっても、事業者側においてそれが新法施行前の排出によるものであることを証明したときは、なお従前の例によることといたしました。
 この際、経過措置についてのこの修正点の意味を明確にしておくことが適当であると思います。まず、新法は新法施行後に生ずる損害について適用するという本文の意味は、公害の結果である損害についてはあくまで法律不遡及の原則を尊重するとともに、その原因である排出については新法施行前の排出たると新法施行後の排出たるとを問わず、新法の適用を受けるという意味であります。
 この新法施行前の排出である場合にも新法の適用を受けるということは、わざわざ条文に書くまでもなく、条文全体の仕組みからして解釈上当然の帰結であります。
 次に、ただし書の規定は、たとえば新法施行前に有害物質の排出を止めたような場合を想定したのでありまして、このような場合は、原因行為が新法施行前のものであることは立証可能でありますので、事業者側においてそのことを立証すれば従前の例すなわち民法の一般原則に帰るということを定めたものであります。
 修正の第三点は、政府は公害にかかる健康被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに必要な措置を講ずるものとする、旨の規定を附則に追加したことであります。
 以上が修正案を提出した趣旨と内容であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
    ―――――――――――――
#333
○田中委員長 修正案について御発言はありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
#334
○田中委員長 なければ、次に内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、本案に対する修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#335
○田中委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#336
○田中委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#337
○田中委員長 本案に対し、始関伊平君、島本虎三君、岡本富夫君、西田八郎君より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。島本虎三君。
#338
○島本委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。
 まず、案文を朗読いたします。
    大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一
    部を改正する法律案に対する附帯決議
  政府は、本法の施行にあたり、特に左の点に
 つき善処すべきである。
 一、無過失損害賠償責任の対象となる被害の範
  囲を、健康被害に限らず、農業、漁業等に係
  る生業被害等の財産被害にまで拡げるようす
  みやかに検討し、所要の措置を講ずること。
 二、無過失損害賠償責任の制度を、大気の汚染
  及び水質の汚濁に限らず、土壌の汚染、騒
  音、振動、悪臭、地盤の沈下等他の公害にも
  適用するようすみやかに検討を進めること。
 三、公害事案にあつては、因果関係の認定を行
  なうことがきわめて困難であるので、判例の
  動向をも見きわめつつ、因果関係の推定規定
  をおくことについて積極的に検討を進めるこ
  と。公害被害に係る複数原因者の賠償責任に
  関する規定についても同様とすること。
 四、公害は、その未然防止が最も肝要であるこ
  とにかんがみ、公害についての差止請求及び
  規制措置請求等の制度を含む公害防止対策の
  充実強化を検討すること。
 五、公害の原因となる物質として化学的に未解
  決な問題を残しているものについても、すみ
  やかに大気汚染防止法等による政令指定を行
  なうよう検討を進めること。
 六、公害被害者に対する訴訟上の救助その他そ
  の訴訟費用負担の軽減を図るための措置を検
  討すること。
 七、公害訴訟については、被害者の利益を正当
  に保護するため公害の発生原因、発生状況等
  に関する資料の提供等の措置を検討するこ
  と。
 以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上であります。(拍手)
#339
○田中委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#340
○田中委員長 起立総員。よって、さよう決定いたしました。
 この際、環境庁長官事務代理木内国務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。木内国務大臣。
#341
○木内国務大臣 ただいまの附帯決議に対しましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして、これから善処してまいりたい、かように思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#342
○田中委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#343
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#344
○田中委員長 この際、おはかりいたします。
 島本虎三君外七名提出、公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案について、議長に閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#345
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後七時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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