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1971/04/18 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第17号
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1971/04/18 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第17号

#1
第068回国会 社会労働委員会 第17号
昭和四十七年四月十八日(火曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 森山 欽司君
   理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君
   理事 橋本龍太郎君 理事 山下 徳夫君
   理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君
   理事 田畑 金光君
      有馬 元治君    井出一太郎君
      大橋 武夫君    梶山 静六君
      藏内 修治君    小金 義照君
      澁谷 直藏君    高鳥  修君
      竹内 黎一君    中島源太郎君
      中村 拓道君    野中 英二君
      別川悠紀夫君    川俣健二郎君
      後藤 俊男君    山本 政弘君
      古寺  宏君    古川 雅司君
      渡部 通子君    西田 八郎君
      寺前  巖君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 塚原 俊郎君
 出席政府委員
        大蔵省主計局次
        長       吉瀬 維哉君
        労働政務次官  中山 太郎君
        労働省労政局長 石黒 拓爾君
        労働省労働基準
        局長      渡邊 健二君
        労働省労働基準
        局安全衛生部長 北川 俊夫君
        労働省職業安定
        局長      道正 邦彦君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局給
        与課長     岡島 和男君
        労働省労働基準
        局補償課長   松尾 弘一君
        日本国有鉄道副
        総裁      山田 明吉君
        日本国有鉄道常
        務理事     山口 欽一君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働安全衛生法案(内閣提出第四一号)
 労働関係の基本施策に関する件(政府関係特殊
 法人における春季賃金引上げ要求に関する問題
 等)
     ――――◇―――――
#2
○森山委員長 これより会議を開きます。
 労働安全衛生法案を議題といたします。
 質疑を行ないます。質疑の申し出があります。順次これを許します。後藤俊男君。
#3
○後藤委員 時間が十分ございませんから、余分なことを言わずに、中心点だけお願いいたします。
 第一番に、第二条の三の「事業者」とは、どういうことをさしておるか。
#4
○渡邊(健)政府委員 事業者と申しますのは、労働基準法では従来使用者ということばを使っておったわけでございまして、使用者と申しますのは基準法では、事業主だけではなしに、事業主に雇われている者であって、労働関係につきまして使用者のために行為する者も含んでおる趣旨でございます。しかしながら、そういうふうに使用者ということでとらえまして、事業主のみならず、いわば事業主側に立つその従業員も含めて規制の対象にいたしますと、やはり事業主そのものの責任というものがややぼける感じがございますので、今回の労働安全衛生法案では、事業主そのものを規制の対象としてつかまえまして、事業主そのものが災害防止については責任の帰属者なんだということを明確にいたしましたわけでございます。
#5
○後藤委員 そうしますと、これは一例でございますけれども、フジタ工業株式会社がある。あそこは全国に幾つか支店があると思うのです。そこの支店の支店長あたりはどういうことになるのでしょうか。
#6
○渡邊(健)政府委員 たくさんの支店を持ちました会社のようなものでございますと、事業主と申しますのは会社そのもの、人間的に申しますと代表者が事業主になるわけでございまして、支店長といったような人は事業主そのものではないわけでございます。ただし、それが労働安全衛生法の十条で規定いたしました総括安全衛生管理者を置く事業場であるような場合は、支店長というのはその支店における総括管理者でございますので、同十条によりますと、通常の場合であればそれは事業主から総括安全衛生管理者に選ばれる。したがって、その支店における第十条に基づく総括安全衛生管理者としての職務につきましては、権限を行使し、責任を負うことに相なるわけでございます。
#7
○後藤委員 そうしますと、第二条の事業者というのは、その企業の支店がいかにたくさんあろうとも、企業においては一つしかないということになるわけですね、一つというと語弊があるかもしれませんけれども。たとえば法人の会社で申しますと、社長なり、さらに役員、これらがここでいうところの事業者になるのだ、それ以外に支店が百あろうとも二百あろうとも、支店長は事業者でない、こういう解釈でいいわけですね。
 それからその次は、いま言われました第十条なり第十五条の関係です。総括安全衛生管理者なり統括安全衛生責任者、これらの関係が、各条ごとにかかわっておるけれども、不明確な点があるのじゃないか、もう少し明確にすべきじゃないか。任務は一体どうなっておるのか。抽象的には書いてあるが、そこをもっと明確にしなければいけないというふうに思うのですが、その点、いかがですか。
#8
○渡邊(健)政府委員 総括安全衛生管理者と申しますのは、十条で書いてございますとおり、一定の規模の事業場ごとに、省令で定めるところによってその選任の義務があるわけでございますが、総括安全衛生管理者を置くべく定められました事業場におきましての総括安全衛生管理者の責任と申しますものは、十条の一号から五号までに明確に規定がされておるわけでございまして、その職務権限というのは明らかであると思います。十条で、事業者は「総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者又は衛生管理者を指揮させるとともに、次の業務を総括管理させなければならない。」と書いてございますが、事業者は総括安全衛生管理者を選ぶだけでなしに、その仕事をさせなければならないということは、その総括安全衛生管理者が十条で定められました職務を行なえるだけの権限を与えなければ、事業者は、そこでいうところの、次の業務を総括管理させたことにはならないわけでございます。そういう意味から、総括安全衛生管理者は、十条の一号から五号までに掲げます職務を行なうべき責任を有し、当然それに伴う権限を事業者から与えられているものだ、かように考えるわけでございます。
 それから十五条のほうの総括安全衛生責任者のほうは、これは、一つの事業場で元請と下請が混在して仕事をしておる、建設現場のような場合ですね。そういうところは、企業といたしましては、元請と下請は別個の企業でございます。しかし、それがばらばらに安全衛生対策を講じておりますと、そこの事業現場における統一的な安全衛生体制がとれない、そのためにそごが生じて災害が起きやすいということで、その現場における統一的な安全衛生対策のために設けられたものでございます。
 したがいまして、それは、元方事業者が定めるものでございますが、元方事業だけでなくて、企業としては別企業であるところの下請までもひっくるめて、統括的な安全衛生管理体制の衝に当たるということでございまして、その行なうべき職務は、十五条に書いてございますように、三十条の一項各号の事項をやれということで、これまた、その行なうべき職務は法律的には明確になっておるわけでございます。
#9
○後藤委員 いま御説明がございましたが、建設産業の現状から考えてみるときに、現場主任がおるわけです。この現場主任は、いわゆる下級管理者ですね。労働組合があれば労働組合の組合員が多いと思います。労働安全衛生については、それらの人には何ら権限が与えられていないわけなんですね。そうなった場合に、いまあなたが説明されましたような条文の運用いかんによっては、万一災害があった場合に、企業の責任者は免れて、下級管理者が責任を追及される、こういうような場合も想定されるわけなんですね。その点はひとつ明確にすべきであるというのが一つです。
 さらにもう一つは、第五条の四項につきましても、この企業責任を、いま申し上げましたような意味で、もっと明確にすべきではないかというふうに申し上げるのですが、簡潔でけっこうですけれども、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
#10
○渡邊(健)政府委員 下級管理者がどの程度の権限を持っているかということは、これはそれぞれの企業なり、現場なりによって一様でございませんので、一がいには申せないわけでございますが、新法におきましては、災害防止の責任は、第一には事業者といたしておることは、先ほど申し上げましたとおりでございます。したがいまして、下級管理者に対して権限が明確に委任されていない限りは、下級管理者の責任は追及されることはない、下級管理者に責任がしわ寄せされることはないわけでございます。
 それから、下級管理者に権限が委任されておって、それでその責任が問われる場合でございましても、労働安全衛生法の百二十二条という規定がございまして、そこでは「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」という、その事業者そのものであります法人、あるいは個人経営でございますれば事業主その人、それに対しては当然責任追及がなされるわけでございまして、事業主が責任を免れて、下級者だけが責任をしわ寄せされるということはないわけでございます。
#11
○後藤委員 その次には、労働災害の定義なんですが、これは今度の新法では、労働災害については書いてあるわけですけれども、局長も十分御承知だと思いますが、労働者の通勤途上における災害も、やがて労働災害の範疇に入れようという方向へ機運は熟しておると思うのです。そういうような点を考えた場合には、労働災害の定義を、労働者がその業務に起因してというふうに改めるべきではないのかと考えるのですが、これはいかがでしょう。
#12
○渡邊(健)政府委員 現在におきましては、通勤途上災害と申しますのは、確かに業務に密接な関連はあるわけでございますが、いわゆる使用者の管理下においてその業務に起因して起こるものではない。使用者の管理下に入る前、前段階に生ずるものでございますために、一応業務に起因した災害というふうには見ておらないわけでございますが、最近におきます交通事情、それに基づく通勤途上災害の多発等々からいたしまして、いまのようなままでいいのかということが問題になっていることも、私ども承知をいたしております。
 そこで、一昨年来、通勤途上災害調査会というものを設けまして、通勤途上災害をどう取り扱うべきかということで、ただいま御検討を願っておるわけでございます。同調査会は、いま真剣な審議を続けているわけでございますが、いままでの大体の審議状況を申し上げますと、現在の通勤途上災害に対する保護、これは労災としての労災保険法等の適用がございませんので、健康保険法等によって保護されているわけでございますが、それだけでは最近の交通事情等から見て必ずしも十分でない、現在以上の保護をする必要があるということにつきましては、労・使・公益の意見が大体一致をいたしておるわけでございますが、その保護の水準あるいは経費負担等々の問題につきまして、なお労使の間に意見の一致を見るに至っておりませんので、現在公益委員がその間の調整等をはかりまして、逐次意見の一致をはかるべく努力をいたしておるところでございます。
 したがいまして、通勤途上災害がどういうことになるかということはまだわからない、最終的にはっきり申し上げる段階には至っておらないのでございますが、もしそれが考え方として、業務に起因するというような考え方になるといたしますと、これは二条にいう(定義)というところの――通勤という行動は一種の「作業行動」の一環だというふうに考えられることになると思いますので、この二項一条の定義に入ってくるものと思います。ただそういう業務起因というような理解でされるのか、あるいはもっと別個の観点で保護を実質的に確保するという観点に立って出されるのか、その点が先ほど申しましたように、まだ最終的な結論に至っておりませんので、現在の段階におきましては、それが二条にいうところの労働災害の定義に入るということは、まだ申し上げる段階に至っておらないわけでございます。
  〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕
#13
○後藤委員 それで、いま説明されたような条件にありますから、第二条の一項を修正したらどうですか、こう言っているわけなんです。修正の内容としてはいろいろありましょうけれども、労働者がその業務に起因して負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合と、こういうふうに改正すべきであるということを強く主張をいたしておきます。
 それから、その次はコンサルタントの話ですが、コンサルタントというのは、どういう性格のものであるか。これはこの間も川俣委員がいろいろ言っておりまして、私も聞いておったわけなんですけれども、端的な言い方をすると、監督官などの天下り先となる危険がある。災防協会には、すでにそういう危険性が十分あらわれておることがうかがえるというようなことも、この間話になっておったと思うのです。それで問題は、監督官の飛躍的増大ということが今日一番必要だと思うのですね。ことしの予算で改正されると、全国でどのくらいになるかわかりませんが、大体私は二千七、八百人ではないか、こう思っておるわけなんですけれども、いずれにしても、監督官をもっとふやさなければいけないということ、それからさらに、その監督官の中でも専門的な知識が非常に少ない、これは特に建設関係でいえると思うのです。ですから、監督官の専門的知識の高揚をはかる。私が言うまでもなく、労働災害の一番多いところは建設部門だと思うのです。でありますから、監督官の知識高揚をもっとやってもらわなければ困るということもあるわけですし、さらにあわせて申し上げるのは、労災防止指導員というのがあるわけですね。これは労働省の訓令であるのだろうと思うのですが、これらを法制化しまして資格を持たして、企業に立ち入りするところの権限をも与えたらどうだ。やはりこう申しますのは、監督官が非常に不足をしておる、こういう点から私は強く申し上げるわけなんです。
 いま申し上げたところのコンサルタント、さらに監督官の専門的な知識の高揚、さらに監督官の飛躍的増大、さらに労災防止指導員の法制化をして権限を持たす、この関連と申しましょうか、この辺の考え方につきまして新法ではどういうふうに考えておられるか、御説明いただきたいと思います。
#14
○渡邊(健)政府委員 監督官は四十七年度で認められました増員を加えますと、二千九百人余りになるわけでございます。数につきましては、私どもこれで十分だとは決して思っておりませんので、今後極力増員をはかってまいりたいと思っておるわけでございますが、この監督官に対して専門的知識を付与すべきではないかという御意見は、全く私同感でございまして、まあ監督官の職務、これが所掌します法令等も非常に多数にのぼっておるばかりでなく、産業界におきましては近時技術革新の結果、新材料だとか新工法などの道入が非常に著しく進んでおりまして、この災害防止を適確に行なうためには、技術的な知識経験も当然必要でございます。
 そこで、今後におきましては、そういう特定の産業等につきまして、その分野の技術に精通いたしました監督官の育成をするために、人事配置や研修等について十分配慮をしていかなければならぬと考えておるわけでございます。と同時に、やはり何といっても非常に知識が高度化いたしてまいりましたので、監督官がすべてそういう技術的な点についてまで一〇〇%の専門的知識を持つということが必ずしも十分に、容易に実現しがたい点もございますので、その点につきましては、新法におきましては安全衛生専門官というものを規定をいたしておりまして、工学あるいは医学関係等々の高度の、高等の学歴を持ちました者につきましての専門的知識をさらに付与いたしまして、専門職員の養成、確保をはかって、そういう技術革新等の高度の専門知識の要請にこたえてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
 それからコンサルタントのほうにつきましては、今度の新法の七十八条というところで「都道府県労働基準局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるときは、労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該事業場の安全又は衛生に関する改善計画を作成すべきことを指示することができる。」ことに相なっておるわけでございます。こういう場合に、そういう事業場ごとの安全衛生に関する改善計画等につきましても、監督官なり、あるいは安全衛生専門官が一々相談、指導に乗ってやるということは望ましいことではございますが、これは非常に膨大な事業所の数からいたしますと、どうしても限度があるわけでございます。そこで、コンサルタント制度と申しますのは、民間における専門家の英知をそういう労働災害防止の面に活用することをねらって創設いたしたものでございまして、監督官の増員はもう当然やらなければいかぬことでございますが、それと相まちまして、そういう民間の専門的な知識を災害防止に大いに活用しそいくという意味で、両々相まって労働災害防止をはかってまいりたい、こういう趣旨でございます。
 それからもう一つお尋ねのございました労災防止指導員と申しますのは、これは労働省訓令に基づきまして、しかるべきそれぞれの知識等をお持ちの方々を委嘱いたしまして、そうして事業場を回りまして、指導計画に基づいて民間企業の安全衛生管理体制の確立などを指導いたしておる者でございまして、安全衛生専門官とか、あるいはコンサルタントといったような、そういう必ずしもそれほどの高度の技術的知識を持っているという者ではなしに、もっと一般的な安全についての指導、助言ということをやっていただきまして、そういう面から安全管理体制の確立、安全意欲と申しますか、安全意識の高揚等々をはかっていただく、こういう方々であるわけでありまして、その方々は現在、先ほども先生おっしゃいましたように、訓令に基づいて設けられておるわけでございますが、一応いま申しましたような面におきまして、現在その効果を発揮しているものと考えておりますので、現在の制度を今後も活用していくということで十分なのではないかと考えているわけでございます。
#15
○後藤委員 現在のままで十分だと思うと言われますけれども、御承知のように昭和四十七年度で監督官が二千九百人でございますか。日本の全国に事業場は一体どれくらいの数があるか私はわかりません。想像もつきませんが、監督官が非常に少ない、不足しておる、この点は十分お認めになると思うのです。その足らないところをコンサルタントであるとか何であるとかというところで、ある程度補っていくのだという気持ちも、全然ないとは言えぬと思うのです。
 そういうようなことを考えていくならば、労災防止指導員は労働省の訓令でいま置かれておる。これは、いまあなたの説明を聞くと、たいして安全衛生にはたんのうではない。たんのうということばはおかしいかもわかりませんけれども、こういう説明もありましたけれども、こういう時期だから、特に私は建設産業関係のことも考えるならば、いま申し上げましたところの労災防止指導員を法律できめて権限を持たす、立ち入り検査もできる、それくらいな権限を持たしてやるべきではないかと私は思うのです。現在のところ立ち入りは全然できないわけなんです。聞くところによると、年間六回くらいの立ち入りが何か話し合いの中で出ておるということを私聞いておりますけれども、総評関係では二百七十七人でございますか、これはきめられておるそうですけれども、それとあわせてもう一つ考えられることは、労働基準審議会委員というのがおりますね。これらの人に対しましても、この監察権を持たせたらどうかということも考えるわけなんです。ですから、ここであなたにどうこうという御説明を伺おうとは思いませんけれども、いずれにしても監督官の不足ということははっきりしておりますし、こういう新しい法律ができましても、それならば徹底してやれるかといいますと、やれない部分がたくさんあると思うのです。そういう点から考えるならば、労災防止指導員を法制化して権限を持たせる、労働基準審議会委員につきましても監察権を持たす、それくらいなところまで大きく踏み切る必要があるし、踏み切ってしかるべきだと私は考えておるわけなんです。この法律はいつ上がるかわかりませんけれども、最終的にはいま申し上げました点もひとつ十分腹に置いていただきたい、こう思うわけです。
 それからその次は、安全に疑義ある場合の一時的な就労拒否権の問題です。これもこの間川俣委員のほうからいろいろ話がありまして、労働大臣でございますか、局長でございますか、あぶないときには何もつくらぬでも逃げよるわい、そういうような話で、ごもっともな話でございますと終わったらしいですけれども、そう簡単なものじゃないと思います。だから、緊急避難の問題についても、今度の新法の中でぜひひとつこれは明確にしていただく。先ほど言いましたところの、事業者のほうで安全だ安全だといっておりましても、そこで働いておる労働者が危険だ、やはり意見が相対立する場合があると思うのです。そういうような場合を考えるときには、やはり自分の命が大事でありますから、働いておる者としては緊急に避難するだけの権利があるのだ、その間につきましても賃金カット等は行なわないんだ、これは働いておる労働者としての権利である、こういう点を明確にすべきであると私は思うわけなんです。炭鉱災害等を考えてみますと、十分うかがえる点だと私は思うのですが、この点いかがですか。
#16
○渡邊(健)政府委員 災害が発生する危険があります場合に、まず使用者として労働者を退避させるべきことは当然でございまして、その点につきましては各いろいろな安全衛生関係の諸規則におきまして、個々の場合にそういう規定が設けられておるわけでございます。
 たとえて申しますと、安全衛生規則の中では、トンネル工事などで崩落の危険がある場合には直ちに退避させろ、あるいは有機溶剤の中毒予防規則におきましては、有機溶剤による中毒の危険がある場合には作業を中止して退避させろ、あるいは酸欠防止規則におきましては、酸欠危険業務におきまして酸素欠乏が発生するおそれがあるときには、作業を中止して退避させろというように、個々の規則にそれぞれそういう場合の義務が使用者に課せられておるわけでございます。
 ただ緊急の場合につきまして、使用者かそういう措置をとるひまがなく災害発生のおそれが緊迫しておるというような場合には、これはただいま先生もおっしゃいましたように、労働者が自己の生命身体を守るために、その現場から緊急避難的に退避できるということは当然のことでございまして、法律に一々明文の規定を置くまでもなく、当然のことであると私ども考えておるわけでございます。
#17
○後藤委員 この間と同じようにあたりまえのことだという説明ですけれども、これはもう少し論議をしなければわからぬ点もあるかと思いますが、冒頭申し上げましたように、安全に疑義ある場合の一時的な就労拒否権というものを労働者に与える、これはぜひひとつこの新法の中で特に考えていただかなければいけない問題である、そのことだけ申し上げておきます。
 それからその次は、労働安全衛生法が今度独立立法になりまして、労働災害補償の規定、労災保険法は当然改正すべきじゃないかと思うのです。たとえば労働災害にかかった、不幸にしておなくなりになった。そうしますと、賃金の千日分でこれは終わりということですが、これがはたして今日の情勢から考えた場合に適当であるかどうか。こういう新法をおつくりになるならば、当然これにふさわしいところの災害保険をつくるべきである。そうなるならば、現在の労働災害保険を改正すべきである、これを強く感じるわけです。この点いかがですか。
#18
○渡邊(健)政府委員 災害防止と、それから災害が起きた場合の自後の補償措置が関連がございますことは、先生御説のとおりでございまして、新法ができました暁におきましても、安全衛生と補償との関係は従来と全く同様でございまして、両者の共同関係に変化があるものでないわけでございまして、今後とも両者の運用については十分密接な連絡をとって、労働者の保護の万全を期してまいる所存でございます。
 なお、これだけ災害防止に努力するならば、災害が起きた場合の労働者に対する補償措置をさらに手厚くすべきであるという先生の御指摘でございますが、趣旨は私どももまことに賛成でございまして、私どもも、業務に起因して負傷、疾病にかかられたような方々にできるだけ手厚い保護をして差し上げたいということで、労災保険法につきましては、三十年以来数次にわたりまして改正をいたしておりまして、ごく最近でも四十五年に労災保険法の改正をし、その保険給付の内容の改善をはかったところであるわけでございます。
 先生がただいま例にあげられました、災害によりまして労働者がなくなられたような場合につきましても、四十年の改正以来、現在は年金制度になっておりまして、遺族の方が必要な期間、終身でも生活の安定をはかるようにということで、原則としては年金に相なっておるわけでございます。ただ、たとえば奥さんはおられない方で、子供さんたちはおるけれども、それはもう十八歳以上の独立生計者であるというようなことで、年金受給の対象になる遺族がいないというような場合には、これは千日分という一時金に相なっております。基準法の災害補償の遺族補償が千日分となっておりますのに対応いたしまして、さようなことになっておるわけでございます。
 一応現在のこの年金を含めました労災補償の水準と申しますのは、ILOの百二十一号条約等々の内容にも適合いたしておりまして、私ども一応国際水準に到達いたしておるものと考えておるわけでございますが、先ほども申しましたように、不幸にして業務によって負傷、疾病にかかられ、あるいはなくなられたというような場合には、できますことならば、できるだけ手厚い保護措置をして差し上げたい。これは当然そのような方向で考えるべきものだとわれわれも思っているわけでございます。それに関連いたしましては、労働基準法と労災保険法というのは給付の内容に相互の関連を持っておるわけでございます。
 そこで現在、労働基準法につきましては労働基準法研究会ということで基準法全般の見直し、問題点の検討等がされております。今度の安全衛生法などもその研究会からの昨年の初めの報告等に基づいて立法いたしたものでございますが、同研究会はその後も検討を続けておりまして、この業務上の災害に対する補償の問題等も含めて、ただいま検討いたしておりますので、その基準法研究会等から災害補償についての御意見が出ればそれを十分尊重し、基準法と労災保険法との両者の関連というものを十分考慮しながら、さらに今後の給付の改善等についても検討することにいたしたい、かように考えておるところでございます。
#19
○後藤委員 いま御説明がございましたが、ぜひひとつ。この労災保険、いわゆる災害にかかった遺族等の補償につきましても十分でないわけなんです。このごろ交通災害でおなくなりになったお方でも、一千数百万というのが相場というと語弊があるかもわかりませんが、それくらいになっておるのですね。ところがいまおっしゃったように、五万円の給料ならば大体五百万ぐらいだと思うのです。そこで改正によって年金が二万か三万程度入るのじゃないかと思いますけれども、それで十分だとは私は思わないわけなんですね。だから労働災害を防止するんだという理屈は、これはあろうと思いますけれども、なかなかいまこれだけの労働災害を全然なくするということにつきましては、むずかしい問題だと思うのです。そうだとするなら、災害保険の中身を早急に改正をして、いまあなたが言われましたように、できるだけ手厚く補償の面で進めていく、これだけはぜひひとつ強く進めていただきたい、こう思うわけなんです。
 それからその次には、この第三条の二項と第三十八条に、これはかかわっておるわけなんですが、機械そのものの安全性の確認と同時に標準工法などを設定しまして、またその機械等の使用方法ともあわせてつくって、安全性の確認を行なうべきではないか。これは特に建設関係の労働者の人から強い意見が出ておるわけなんですが、これはいかがでしょう。
#20
○渡邊(健)政府委員 労働災害を防止しますために、標準工法の設定や危険機械の標準使用方法の決定等を行なうことが、きわめて重要であることは先生御指摘のとおりであると考えておるわけでございます。従来も関係業界や専門家の意見を聞きまして、たとえていいますと、建設の場合に潜函工法などにつきまして安全施工の指針などをきめましたり、あるいは特定の機械につきまして取り扱い基準などをつくりまして、関係業界や発注者に周知をはかっているところでございますが、今度の労働安全衛生法におきましては二十八条におきまして、労働大臣は必要な業種または作業ごとに技術上の指針を作成して公表することができるというような規定を設けておりますのも、そういう趣旨でございまして、今後この法律が制定いたされましたならば、この規定に基づきまして、危険度の高い工法であるとか機械などから順次技術指針の作成等を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
#21
○後藤委員 ぜひひとつ、いまの問題もおろそかにできない問題だと思いますので。
 その次には第五十九条ですが、安全衛生教育の問題なんです。私が言いますのは開放労働市場の問題です。入れかわり立ちかわり人夫の人が来まして仕事をする市場ですね。こういうところの労働者に対しては、一体どういうふうにして安全衛生教育をやるのか。ですから、それらの人に対しましては確認するために手帳を交付したらどうだ。そうすればおのずからこれははっきりすると思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#22
○渡邊(健)政府委員 労働者に対する安全衛生教育につきましては、従来も基準法に規定があったわけでございますが、今度の労働安全衛生法では、先生おっしゃいましたように五十九条で「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なうこと」、かように相なっておるわけでございまして、日雇い労働者等々につきましては、確かに先生おっしゃいますように、従来は必ずしも明確でなかった点がございます。新法におきましては、そういう点につきましても実効のあがるように、教育内容等についても具体的に示すことによって、有効な雇い入れ時の安全衛生教育が行なわれるようにいたしたいと考えております。
 その他問題がございますのは、出かせぎの労働者などもございます。これにつきましても、仕事になれない、未熟練なためにいろいろ災害にかかりやすい点がございますので、労働省といたしましては送出地元におきまして技能講習や安全衛生講習などを実施いたしておるところでございまして、本年度におきましても、こういう体制をさらに強化するよう所要の援助の処置を予算的にもとることといたしておるわけでございます。これらのものにつきまして、いままでも一部講習の修了証なども発行いたしておりましたが、一般に安全衛生教育修了者に対して修了証または手帳を交付したらどうかという先生の御意見、まことに傾聴に値する御意見であると考えておりますので、今後新法の具体的実施につきまして、そのような点も十分検討してまいりたい、かように考えます。
#23
○後藤委員 開放労働者というのは、毎日毎日入れかわり立ちかわり日雇い人夫で職場で人が入れかわって仕事をする市場ですね。しかも第二次、第三次、第四次、第五次と下請がずうっとあるわけなんです。そういうところで働いておる労働者をいかにして労働安全教育をやるか。これはやれないと思うのです、現実の問題として。それ、やれますか。そのやれないところに労働災害が私は多いと思うのです。また労働組合のないような職場が労働災害が多いわけなんですね。私はそういうところが、この盲点になっておるような気がするわけなんです。いま局長が説明されましたように、今度の新法では徹底して労働安全教育をやるんだ。それは、そのことを聞けばなるほどそうかという気持ちになりますが、それなら現実の面で第四次だ、第五次だと、どんどん下請にいきまして、きのうあの人は来たが、きょうは来ない、また別の人が来る。入れかわり立ちかわりやっておるところのこの開放労働市場におきまして安全衛生教育がこれできめられたとおり実行できるかというと、実行不可能といっても言い過ぎじゃないと思うのですよ。さらにまた、そういうところこそ労働災害が非常に多い。また私も東京におけるあちらこちらの職場の関係をいろいろと調べてみたのですが、現在労働災害が多いのは建設労働者であり、その次は造船関係、その次には潜水関係ですね。これはもう私が申し上げるまでもないと思います。
 それから一九五六年の第五回のILOにおける五十三号決議で、労働災害の防止については、雇用の不安定、長時間労働、環境の悪さ、この三つが、労働災害防止の考えなければいけない根源である。これはいま申し上げました一九五六年のILOの五十二号決議、建設委員会で審議されました結論として出ておるわけです。さらにまた、業者の名前は差し控えますけれども、江東区におけるいろいろな業者の実態等を調べてみますると、もう労働協約もなければ、超過勤務はやりたいほうだい、月に百時間以上。さらにまたフジタ工業等のりっぱな――私はりっぱな大企業だと思っておりますけれども、ああいうところにおきましても、臨時工ではなしに社員の皆さんですら、週一日の休暇が与えられておらない。月に二回ぐらい程度しか休暇が与えられておらない。超勤にいたしましても、かなり長時間にわたる超勤が行なわれておる。たま、防水関係ですけれども、日本綜合防水という会社があるわけですね。これは地下鉄工事なんです。こういうところも社員なり準社員なり、かなりの人間がおられるわけなんです。あるいは臨時人夫もおられるわけなんですが、徹夜の回数にいたしましても、月に十五回から二十回は連続深夜作業が続いておるわけなんです。勤務時間につきましても非常に長い勤務時間、超勤等は百時間以上である。これは先ほど申し上げましたように、竹中なりフジタ、こういうところの社員でさえももう週休がない。これが実態なんです。しかもいま申し上げました企業の下請、下請がずっとありまして、その下請のほうでは一体どうなっておるかといえば、五十人なら五十人の人夫を毎日集めまして――この人方に対しては賃金体系は請負制になっておるわけです。ですから、よけい無理をして作業を促進するわけなんですね。こういう点を考えてみまするときには、労働基準法の実施すら今日完全に行なわれておらない。まず労働基準法を完全に実施することが労働災害防止で一番大切なことじゃないか。さらに先ほど言いましたように、ILOの建設関係の専門委員会でも、一九五六年の決議、作業環境の悪さ、長時間労働、さらに雇用の不安定、これらが労働災害の根因であるというようなことも、はっきり話が行なわれておるわけです。そういうような点から考えてみるときには、今度のこの新法におきまして労働基準法と切り離し、さらに勤務時間とは切り離してこれだけで労働災害を防止しようということにつきましては、いろいろな疑問の意見が出ておることは局長あたりも十分御承知だと思うわけなんです。
 さらにあわせて私が言いたいのは、安全衛生教育にいたしましても、いま申し上げましたように第三次、第四次の下請のほうになりますと、きょう来た人はあした来ない、また新しい人が出てくる。出たり入ったりの事業場において、どうしてそんな安全衛生教育が行なわれるか。しかもそこが一番労働災害の多い職場だ。これがどうして安全衛生教育が行なわれるんだ。これは、いま申し上げましたような職場が全国で非常にわずかな数だということなら、やろうと思えばやれないこともないと思いますが、全国的にかなり多くの職場があると思うのです。こういう点については、どういうふうにお考えになっていますか。
#24
○渡邊(健)政府委員 安全衛生教育、特に零細職場の建設現場等においてこれをどういうふうにやるかという第一点の御質問でございますが、これにつきましては先ほども申しましたように、そういう建設現場などには出かせぎ労働者などが非常に多いわけでございます。そこで、そういう人たちにつきましては、まず送出地元におきまして、建設現場等における安全衛生の基礎的な知識を教育講習等によってできるだけ付与するようにいたしたいと考えて、すでにそういうような講習等についての援助処置等もとっておるところでございますが、さらに出かせぎ労働者に限らす、そういう毎日現場を変わるような日雇いの人たち等々について具体的にどうするのかという点でございます。これらにつきましては確かに非常に困難な面もございまして、私どもも具体的な安全衛生教育のやり方についていろいろ考えております。
 たとえて申しますと、その日現場に就労させる人を就労前に集めて、安全衛生についての一番ポイントになるような点を注意をして短時間わかりやすく説明するとか、あるいはその現場についての安全衛生についての一番基本的な注意事項等を簡単なパンフレットにしてつくっておいて、労働者に就業前に渡しておくとか、そういったような簡便な方法等もそういう零細現場、特に日雇いの人たち等々については考慮してみたい、かように考えておるところでございます。
 それから、そういう現場に労働災害が多発しているのは、長時間労働だとか、あるいはその他の労働条件が悪いということが原因の一半をなしておるのではないか、そしてその点については、今度基準法と労働安全衛生法を別個のものにしたけれども、その辺をどう考えているのかという二番目の御質問の点でございますが、確かに建設業等におきまして災害が多発しておる理由といたしましては、新しい技術や新しい工法等が続々導入されているというようなことのほかに、建設業等においては季節移動労働者等のような雇用期間の短い未熟練労働者が多い、そういうものに依存する度合いが高いということ、あるいは重層下請関係等がありまして、その末端事業場におきましては労務管理体制が必ずしも確立していない、そしてそのために労働条件等も必ずしも適正でないものがあるといったようなことが原因の一端をなしていることは、私も否定できないことだと考えます。
 そこで労働省といたしましては、そういうような雇用の不安定な人に対しましては、職業安定機関におきまして雇用の安定をはかりますとともに、入職経路の明確化や就労前の技能講習に対する援助、雇い入れ時のさっき申しましたような安全衛生教育の徹底などのほかに、今度の新法でも、建設現場を一体としてとらえた元方事業場を中心とした総合的な安全衛生管理体制の確立といったようなことをはかるべく考えて企図しておるところでございますけれども、やはり労働条件を含めまして監督指導を厳格にやりまして、そういう最低労働基準の順守を確保させるということは基本的なことであると考えておるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、こういう建設現場等を最重点業種といたしまして重点的に、これまでも監督指導を行なっておるところでございますが、今後におきましても、一斉監督あるいはその他機動的な監督方法等の採用によりまして、できる限り効率的な監督を実施してまいるようにしたい。そして、それによって労働者が安心して働ける職場をつくるようにいたしたい、かように考えておるところでございます。
 基準法と労働安全衛生法との関係につきましては、今度は労働安全衛生法が基準法から抜け出しまして単独の立法になりましたけれども、残りました基準法の四十二条には、労働者の安全衛生については「労働安全衛生法の定めるところによる。」ということで、労働安全衛生法にいういろいろな労働安全衛生についての基準、これは基準法にいうところの労働条件である。したがって、基準法のいろいろな原則というものは当然それに及ぶんだということを、そういう連結の規定を設けることによって明らかにいたしておりますとともに、新法におきまして、第一条で、労働者の災害防止をはかるんだということで、労働基準法と両々相まって一体的な運営によって、そういう最低労働条件の確保、それから安全衛生法に基づくいろいろな安全衛生防止措置、そういうものを総合的に一体的に運用することによって災害防止をはかっていく、こういうことを法規的にも明確にいたしておりまして、決して安全衛生法が独立の立法になったから、基準法のそれら労働条件に関するものと全く別個のものになる、別個の取り扱いがされるのだということではない、かように規定上もいたしておるわけでございます。
#25
○後藤委員 筋書きとしては、いま言われたようなことを考えながら提案されておると思うのですがね。ただしかし、特に建設関係の産業におきましては、現在の労働基準法すら完全実施というところはまことに少ない。しかも先ほど言いましたような、第何次、第何次下請産業につきましては、まことにひどいものである。ですから、特にわれわれ主張いたしたいのは、現在の労働基準法を完全に実施させる方向で政府が行政指導に力を入れたほうが、建設関係の労働災害の多い点から考えてみると、そのほうが労災防止になるのじゃないか、こういう気持ちが強くあるわけでございます。これはあなた方も否定されないと思うのです。私も二つ、三つの東京における会社の下請実情も十分調べてみましたけれども、先ほど言いましたように、賃金の面といい、勤務時間の面といい、徹夜回数の面といい、あるいは下請制度そのものを根本的に検討する必要がある。その人に対する賃金体系も請負制度ではなしに、これまた考える必要がある。労働省としても、そういうところまではもう手がつかぬというような気持ちがあるのじゃないかと私は思うわけです。ですから、労働基準法から切り離して、独立立法として提案されました気持ちはわからぬわけではないけれども、それよりも大切なことは、現在の労働基準法を完全に実施させる、そういう方向へ強く行政指導をしていく、このほうが私は労災防止の面から考えると大切だということをはっきり申し上げておきたいと思うのです。
 それから最後に、労働安全衛生法が独立立法になるに伴いまして、労働安全衛生審議会を設置したらどうだ、これは私が言うまでもなく、十分御承知だと思うのです。大体どなたが賛成されまして、どなたが反対されましたかということも書いてあります、それは一々申し上げませんけれども。だから当面の経過措置といたしまして、中央労働審議会に建設部会を設けたらどうか、そういうことを早急に考えていただく必要があると思うのです。しかもまた、机上の空論では、特に建設産業関係の労働災害防止ということはむずかしいと思うのです。そこで働いておる労働者みずからの経験の中から、いろいろな体験を通じていかにして労働災害を防止するか、このことを十分聞く機関を設置すべきであると私は考えるわけなんです。ですからぜひひとついま申し上げました点につきましても検討をしていただいて、この法律が通ってしまえばそれで終わりということではなしに、十分考えていただくことをぜひお願いしたいわけなんです。
 浪曲じゃないが、ちょうど時間になりましたので、やめなければならぬ。まだまだたくさんあるのですが、またあとから大臣が来られたときに時間をいただけるそうでございますから……。
 いま申し上げました点でほとんどのところは、この労働安全衛生法をさっき言った趣旨で改正してもらわなければ、この法案は通すだけの価値はない、通してみたところでだめだ、こういうような気持ちもあるわけでございますから、先ほどからいろいろ申し上げました点を最終段階においてもう一ぺん十分検討をしていただく、このことだけお願いいたしまして終わりたいと思います。
#26
○谷垣委員長代理 古寺宏君。
#27
○古寺委員 最初にお伺いしたいのは、この第三次労働災害防止五カ年計画は昭和四十七年度で終わるわけでございますが、当初の災害減少目標とその実績について御報告願いたいと思うのです。
#28
○渡邊(健)政府委員 現在の労働災害防止基本計画は、四十三年度から始まりまして四十七年度までの五カ年計画として進めておるわけであります。この基本計画では、五カ年内に災害の発生率を三割減らす、それから死亡者数を半減させることを目標にいたしておるわけでございまして、さらにこの基本計画の推進につきましては、年次ごとに労働災害防止実施計画をつくって、具体的な災害防止を進めているところでございます。
 これまでの災害の発生状況を見ますと、まだ最終年度まであと一年あるわけでございますが、四十六年までの実績で申しますと、災害の発生率は、四十三年度計画スタートの時期から見て二三%減となっておりまして、計画の三割減というような目標に対しまして、わりあいに順調に進んでおるのではないかと考えております。死亡者につきましては、四十三年度と比べまして約三百人程度の減少にとどまっておるわけでございまして、基本計画の目標達成にはほど遠い状況にあるわけでございます。
#29
○古寺委員 労働災害防止基本計画で立てました労働災害発生率の三割減少あるいは死亡者数の半減という目標から見ますと、昭和四十六年までの実績ではいまの御報告にございましたように、発生率では大体二割、死亡者数においては横ばい、こういうような実績から見ますと、この当初計画というものが完全に失敗した、こういうふうに考えられるわけでございますが、四十七年度においてはこの当初の目標のどこまで達成する考え方に立って実施計画をつくっておられるか、その点について伺いたいと思います。
#30
○渡邊(健)政府委員 四十七年度につきましての実施計画につきましては、四十三年度から始まっております五カ年計画の中でございますので、その目標は一応変えておらないわけでございます。その目標達成のためにできる限りの努力をいたすよう、関係機関全部をあげまして督励をいたしておるところでございますが、災害発生率につきましては、努力いかんによりましては当初の三割減という目標というものは達成可能なのではないかということで、その実現につとめております。ただ死亡数等につきましては、確かに現在の状況から申しますと、なかなか目標の完全達成は困難ではないかという感じを率直に言って持っているわけでございまして、しかしそれにいたしましてもできる限り目標に近い実績をあげ得るよう最後の一年の努力を傾注しておるところでございます。
#31
○古寺委員 労働災害の発生状況を見ますと、提案理由の説明にもございましたように、年間百七十万人もの方々が労働災害を受けていらっしゃるわけです。こういうような事故を毎年繰り返している、いわゆる原因というものがどこにあるのか、その点についてお伺いします。
#32
○渡邊(健)政府委員 労働災害の発生状況につきましては、ただいま先生御指摘のように毎年多数の被災者を出しておりますことは、まことに私どもも残念に存じておるところでございますが、こういう多数の災害の発生の原因につきましては、いろいろあろうかと存じます。それらの原因を幾つかあげてみますと、この高度成長の中で経済規模が非常な急速な勢いで拡大しております。しかもそれに対します労働者のほうで見ますと、労働力の不足というものがだんだん深刻化しておりまして、それに伴って中高年齢者だとか、その他従来そういう危険作業についていなかったような未熟練労働者が増加しておるというようなことも原因の一半をなしていると思いますが、さらに最近では産業界におきます新技術や新物質の採用あるいは機械設備や建設工事などの新しいやり方による大型化等々が急増化しておるなどから、大型災害や職業病が多発しているといったようなことも起きていると考えるわけでございます。
#33
○古寺委員 そういうふうに新しい時代に対応したいわゆる対策というものがなければ、いかに法律をつくっても、この百七十万人をこえる労働災害、あるいは六千人をこえる不幸な犠牲者というものを救済することはできないわけです。こういうような新しい時代に対応した労働災害を防止する基本的な対策、この問題については労働省としては、どういうふうに取り組まれるお考えですか。
#34
○渡邊(健)政府委員 確かに先ほども申し上げましたように、いろいろ新しい産業の動向あるいは社会の動き等がありますわけで、それに対応した対策をとらなければ効果的な災害防止は実現しがたい、かように考えておるわけでございますが、そのような対策として、従来の労働基準法を中心といたしました災害防止体制で、やはり問題であると考えられます点は、従来の基準法を中心とした法制のごとく直接の雇用関係の規制のみを前提としたやり方では、最近のいろいろな企業形態における労働者の安全衛生の確保に十分対処し得ないのではないか。また最近の技術の進展等々から考えますと、最低基準の順守はもとより重要であり、基本ではございますが、それだけでは安全衛生の確保に限界があるのではないか、こういうようなことが従来の災害防止体制については考えられるわけでございます。
 そこで、今回労働安全衛生法を制定いたしまして、最近の産業社会の実態に即応いたしました総合的な対策を講ずることとしたわけでございまして、その中心的なポイントを申し上げますと、総括安全衛生管理者制度の導入や安全衛生委員会の活用等々によりまして事業場におきます安全衛生管理体制を確立するという点。それから変化する職場の実態に即応いたしまして、労働災害防止基準を従来より一そう具体化、明確化するという点。それから第三番目といたしまして、危険機械などについての安全性の事前規制や特定有害物について製造禁止、あるいは製造許可制度、あるいは有害性の表示制度などを確立していくという点。第四番目といたしまして入職時のみならず転職時等も含めました安全衛生教育の徹底。それから五番目といたしまして職場環境の測定や健康診断の徹底あるいは健康管理手帳の発行などによります健康管理の充実。それから六番目といたしまして危険有害な事業につきまして事前に届け出をさせまして、それを専門家に審査させるという事前届け出制及び審査制の創設、それから自主的な労働災害防止活動を高揚するための安全衛生改善計画の作成、それからさらに重層下請関係やジョイントベンチャーなどの特殊な労働関係下におきます災害防止体制の確立、それから事業主特に中小企業の労働災害の防止をはかるために安全衛生融資等国による金融上の処置や技術上の援助の強力な実施等々を柱として、今回の労働安全立法を御提案申し上げたところでございます。
#35
○古寺委員 それではいま問題になっておりますところのPCBでございますね。このPCBが、新しい法律ができた場合にはどういうふうな取り扱いを受けるのか。これは当然通産省から使用禁止、あるいは製造禁止等の措置がとられているようでございますけれども、昭和三十年ごろからすでにメーカーではPCBが非常に有害な物質であるということを知っておりながら、今日まで製造を続けてきているわけです。こういうような場合には、どういうような措置をとるわけですか。
#36
○渡邊(健)政府委員 PCB等につきましては、労働省といたしましても、職場におけるそういう中毒等々の防止をはかる必要を痛感いたしておるところでございまして、こういう考え方に基づきまして、昨年の五月、特定化学物質等障害予防規則というものを制定いたしまして、その特定化学物質の一つといたしまして、PCB等もそれに指定をいたしております。それに基づきまして、同規則を中心に局所排気装置あるいは除じん装置、等々の設置、それから環境測定あるいは健康診断、それから保護具やあるいは休憩室、洗浄設備等々の設置義務等を使用者に課しまして、これを使用者に順守させることによりまして、PCBによる職場における疾病発生の防止に極力つとめておるところでございます。
#37
○古寺委員 それでは、この法律によりまして、いままでの鐘淵化学あるいは三菱モンサントの環境の測定あるいは従業員に対する健康診断の結果はどういうふうになっておりますか。
#38
○北川(俊)政府委員 現在製造しておりますのは、先生御指摘のように鐘淵化学とモンサントございますが、三菱モンサントにつきましては、この三月に製造中止をいたし、それから鐘淵化学につきましては、六月に中止を予定いたしております。
 先ほど局長が答弁をいたしておりますように、PCBにつきましては昨年の五月、特定化学物質等障害予防規則によりまして一応の規制をいたしておりますけれども、健康診断につきましても、昨年の十一月以降その実施を強制いたしております。
 現在までの健康診断の実施状況でございますが、三菱モンサントにつきましては、昨年の七月に、作業員のうち二名にPCBによる皮膚変化と見られるような事例があったようでございますが、九月には治癒をいたしております。
 なお、皮膚炎のみならず内臓の検査、たとえば肝機能等の検査をその二名につきまして特に精密にいたしておるようでございますけれども、それにつきましては異状が認められない、こういうふうに聞いております。
 なお、それ以外に鐘淵化学につきましては、現在まだ報告が到達いたしておりませんけれども、従来までの一斉総点検等によりますと、いまのところ異常所見者は特に認められない、こういうふうに聞いております。
 ただ従来、五月の特化則によります規制以外に企業が自主的に特殊健康診断を実施しておりますけれども、PCBの製造のみならず、取り扱っております六十の実施事業場につきまして、昨年の九月に健康診断の実施状況を調査いたしたものがございますけれども、それによりますと有所見者は一・二%、こういうふうに報告を受けております。
#39
○古寺委員 これは先日の連合審査の際に、会社側がお答えになった答弁なんですが、昭和三十年にウサギによって実験をした結果、これは有害物質であるということがわかったので、そういう点については十二分に会社側としては配慮をしてきた、こういうお話があったわけですね。ところが、いまの労働省のお話を聞きますと、PCBを取り扱っている事業場については徹底した環境調査、あるいは健康診断というもの、か全然行なわれていなかったわけです。そういたしますと、今後このPCBの、いわゆる慢性中毒者というものが将来多発するというようなことも心配になるわけです。そういう点について、労働省は一体どういうふうな対策をお考えですか。
#40
○渡邊(健)政府委員 先ほど申しましたように、現在PCBを取り扱っておるものにつきましては、特定化学物質等障害予防規則によりまして、その障害の防止あるいは健康診断等厳密に行なってまいっておるところでございますが、すでに現在は取り扱いをやめましたところにつきましては、現在の特定化学物質等障害予防規則の適用はございませんけれども、過去にそういうものを取り扱ったところについては、それらの取り扱いに従事した従業員について健康診断を行なうよう行政指導をいたしておるところでございます。
#41
○古寺委員 いわゆる行政指導をしているということですが、健康診断の内容は、具体的にどういうようなものでございますか。
#42
○北川(俊)政府委員 PCB、塩素化ビフェニールについての第一次健診につきましては、第一は職歴の調査、第二は過去における塩化ビフェニールによる急性皮膚炎症状の有無、第三は食欲不振、脱力感等他覚症状または自覚症状の有無、第四が皮膚の黒皮等、皮膚所見の有無、第五が尿中のウロビリノーゲンの検査、これが第一次健診の項目でございます。
 第二次健診の項目は、第一は作業条件の調査、第二が全血比重、赤血球数等赤血球系の血液検査、第三が白血球数の測定、第四が肝機能の検査、こういうものでございます。
#43
○古寺委員 そういういわゆる第一次、第二次の健康診断によりましてPCBの慢性中毒というものを診断できる、こういうふうに労働省はお考えですか。
#44
○北川(俊)政府委員 この健診項目につきましては、産業衛生学界の権威のある先生方によっておきめいただきましたもので、急性のみならず慢性につきましても、発見ができると考えております。
#45
○古寺委員 どうやって発見できるのですか。
#46
○北川(俊)政府委員 第二次健診では、肝機能の検査をいたすことにしております。慢性につきましては肝臓障害、そういうようなものが出てくるというようなことで、慢性中毒につきましても発見ができると考えております。
#47
○古寺委員 そういうことではPCBの慢性中毒の労働者を救済することはできない、そういうふうに考えられるのです。現在PCBのはっきりした診断法もまだ確立されていない、そういう現状の医学的な水準の中で、こういうありきたりの健康診断だけではPCBの中毒患者を救済することはできないと思うわけです。
 そこで、今後このPCBの職業病を早期に発見できるような診断方法の確立というものをやはり労働省が積極的に進めていくことが必要である、こういうふうに考えるのですが、そういう態勢はお持ちでございますか。
#48
○渡邊(健)政府委員 一応われわれ、診断基準等は学界の専門家の先生方の御意見等を伺ってつくっておるわけでございますが、学問の進歩等に即応いたしまして、有効な診断基準等を絶えず改善してまいりますように、今後とも学界の専門家の先生等の御意見を十分承りながら進めていきたいと考えておりますし、また将来産業医学総合研究所等を設置いたしましたならば、そういうところでも、こういう職業性疾患等々の診断基準等につきましては、その研究所の最重点の問題として研究していくようにいたしたい、かように考えます。
#49
○古寺委員 大分県の佐賀関製錬所、ここでは過去にこの工場で働いておった方々の中に二十七名の肺ガンの死亡者があって、労働省の調査によって昨年の暮れに一応職業病としてこれが診断されたわけでございますが、そのほかに肝臓ガンあるいは胃ガンその他のガンで死亡された方々もたくさんいらっしゃるわけですね。そういう人は職業病としての認定を受けていないわけでございますが、それらの方々に対しては、どういうふうにお考えでしょうか。
#50
○渡邊(健)政府委員 佐賀関の砒素による中毒の問題につきましては、先ほど先生がおっしゃいましたように、昨年二十七名の方々につきまして、これを砒素による職業起因疾患として補償を行なったわけでございますが、それ以外のほかの従業員の方々につきましても、現在調査すべくいろいろ健康診断等を進めておるところでございます。非常に古い従業員の方もおられまして、居所等が必ずしも把握できませんために、まだ全部済んでおらないわけでございますが、そういう方々もできるだけ調査、把握をいたしまして、健康診断等を行なうべく現在計らっておるところでございます。
#51
○古寺委員 それはいつごろからお始めになられますか。
#52
○北川(俊)政府委員 先日当委員会で御説明をいたしましたように、すでに退職をいたしました者二千九百七十四名につきまして、現在住所あるいは生死の確認、こういうものを行なっておりますが、非常に住居の確認に手間どっておりますので、本年中ということを申し上げて、その方向で努力をいたしたいと思います。
#53
○古寺委員 いままでの労働基準法があっても、こういうようなケースがたくさんあるわけでございます。したがいまして、労災防止のいわゆる基本的な問題としましては、何としても生命の尊重、人命の尊重という観点に立った基本的な精神の浸透ということが労使、特に使用者側になければ、こういうような労働災害の防止というものはできないと思うわけでございますが、そういうような生命の尊重という精神の浸透について、労働省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
#54
○渡邊(健)政府委員 労働災害を的確かつ効果的に防止いたしますためには、事業に最終的な責任を有しております企業経営者が十分な自覚と関心を持ちまして、率先してその対策に当たる必要があることは申すまでもないところでございます。このような観点から、今度の労働安全衛生法案におきましても、三条で事業者の労働災害防止の責務を明らかに規定いたしましたほか、法の義務主体を従来の使用者から事業者に改めまして、事業者が災害防止についての責任者であるという趣旨を一そう明確にいたしております。
 また、一定規模以上の事業場につきましては、その事業を統括管理する者を総括安全衛生管理者として選任させることといたしまして、そのための選任、監督を経営者の義務といたしておりますし、なお重層下請関係にある建設業等につきましては、元方事業主について同様の責任の明確化をはかっておる等々の規定によりまして、経営者の責任を明確にいたしますとともに、個々の条文におきまして危害予防措置等につきましての経営者の義務というものを明確にいたしまして、経営者のそういう災害防止意識、これの振起をはかっておるところでございます。
#55
○古寺委員 働く人たちの安全衛生をはかるためには、法律で規制するだけでは十分ではないのであって、やはりこれを監督する、あるいは指導する立場にある労働省の行政能力、安全衛生を実行するための体制ですとか、あるいは監督指導体制、こういうものが非常に重要であると考えるわけでございますが、この点について大臣はどういうふうにお考えになっているでしょうか、承りたいと思います。
#56
○塚原国務大臣 人命の尊重を中心にすることは、これは言うまでもありません。したがって、その対策といたしまして、労働省がとるべき処置としては、労働基準監督官あるいは安全衛生専門官あるいは指導医と申しまするか医者、それから学識経験者、こういう方々の増員その他について、制約はあるといたしましても、これをフルに活用いたしまして、その安全をはかるための万全の措置を講じなければならないと考えております。
#57
○古寺委員 私は、この労働者の安全と衛生について政府が取り組まれるということについては反対するものではありませんが、労働安全衛生法案が労働基準法とは別個に単独法になっている点について、非常に心配をしておるものでございますが、この点については、労働省はどのようにお考えでしょうか。
#58
○渡邊(健)政府委員 今回労働安全衛生に関しましては、労働基準法と別個に労働安全衛生法として単独法を制定することにいたしました理由は、最近の産業経済情勢の著しい変化に即応いたしまして、労働者の安全衛生を確保してまいりますためには、従来の直接の使用関係を前提とした基準法に基づく規制だけでは十分でなくなってきておるという面が見られますことと、それから労働災害の防止の上では最低基準の確保ということはもちろん重要ではございますけれども、それだけで済む問題ではなくて、やはり技術指針とか作業環境の標準の作成とか、あるいは安全衛生教育といったような幅広い行政対策が必要であります。
 それからさらに中小企業等につきましては、単に基準の設定及びその順守、確保だけではなしに、さらに金融上や技術上の援助等々も配慮いたしまして、中小企業が安全衛生のための実際の改善措置がとれるようにしてやりたいといった必要があることなどから、労働基準法とは別に総合的な法制を制定する必要があると考えて、単独立法といたしましたわけでございます。
#59
○古寺委員 労働基準法は労働条件の最低基準を定めて、これを使用者に完全に実施するように義務づけているわけです。ところが、いままでの監督状況を見てみますと、その事業場の七〇%が労働基準法に違反をしている。そういうような問題を先に解決することが重要なんであって、こういうような問題を残したままで、こういうふうに単独立法にするということは非常に危険があるんじゃないかと考えるわけなんですが、その点についてはいかがですか。
#60
○渡邊(健)政府委員 現行の労働基準法が、最低基準の設定と、これが順守、確保ということを中心としておりますことは先生の御指摘のとおりでございますが、労働災害防止の実をあげますためにも、今後とも最低基準の確立とその順守、確保のための監督が根幹となることはもとよりでございます。しかし、それだけでは先ほど申しましたように災害を撲滅することは困難なのが最近の実情でございますので、そこでこの法律におきましては、最低基準の設定とその履行確保とあわせまして、技術指針や望ましい作業環境の標準の作成をはかる。あるいは都道府県労働基準局長が安全衛生改善計画を作成するように指示するとか、あるいは最低基準の順守を容易ならしめるために中小企業に対しまして、金融財政上の援助や技術的な指導を行なうといったようなことを規定いたしておるわけでございましてこれらに基づきまして、最低基準の順守確保とあわせまして、事業主の自主的な努力による改善を進め、両々相まちまして安全衛生の確保をはかろうということでございまして、決して従来の最低基準の設定、順守、確保、こういうものが今回の立法によって弱まるということはないわけでございます。
#61
○古寺委員 労働基準法の最低基準というものは絶対に後退してはならぬわけでございますけれども、現在のこの監督官の数からいきましても、あるいは監督した結果の七〇%という違反の実態から見ましても、今後この最低基準というものが後退をするんじゃないか、こういうこと、か非常に心配になるわけなんですが、この点について後退しないという確信があるのかどうか、大臣から承りたいと思います。
#62
○塚原国務大臣 これは、後退させては絶対ならないわけであります。
 それからまた事業場と監督官の数を比べますと、よく例に出されますけれども、一巡するのに十何年というのがありまして、そのいわゆるアンバランスについてわれわれも頭を悩ましているわけであります。したがって、その定員というものはある程度で押えられてはおりますけれども、できるだけ数をふやす。しかし数をふやすだけでは――最近いろいろな機械その他も日進月歩でありますから、それに対応する知識と技術、そういうものを身につけていなければならない、そういう面の教育もこれまた必要であります。
 それから、私、この間もちょっと御答弁いたしたと思うのですが、いわゆるなれ合いといわれることのないように、ときには抜き打ち的なものもやる必要があるのではなかろうかというような、今日の現実の体制からいま言う後退は絶対させない、むしろ前進させるという意味における処置をとらなければならないと考えております。
#63
○古寺委員 現在の監督官の数からいって、全事業場を監督するということはとうてい不可能ですね。もうほんの一部分しか指導監督ができない。こういう新しい法律ができて、しからば現状の体制でもってそういうことを十分に行なえるのか、監督官は一体何名ぐらいふやすのか、その点についてお伺いしたいと思います。
#64
○渡邊(健)政府委員 基準法適用事業場が大体二百七十万くらいあるわけでございまして、監督官の現在の人員二千九百余りによりましては、確かにおっしゃるとおり全事業場を短時日の間に監督するということは無理な状況にあるわけでございます。しかしながら、事業場二百七十万と申しましても、その中にはいろいろな業種がございまして、たとえば安全衛生などにはあまり問題がなく、災害などのほとんど起きないような業種もあるわけでございます。また業種によりましては、災害が非常に多発しておる、あるいは労働条件等にも問題があるといったような業種等々、いろいろな状況に違いがございますので、われわれといたしましては現有監督官を有効に活用いたしまして、でき得る限り有効な監督を実施いたしますために、全事業場の中で問題となるようなものを特に重点的に選びまして、監督を重点的に機動的に実施してまいる。たとえば建設業といったようなものにつきましては、たとえば一斉監督その他機動的な監督の方法等も活用いたしまして、監督を重点的に実施いたしておるところでございまして、したがいまして一そういう業種につきましては、他の一般の事業場全体に対する平均的な監督率よりははるかに高い監督実施率等を現実にあげているところでございます。今後におきましても、そういうような点を考えまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、監督官の増員、それからその専門的な知識、資質の向上等々とあわせまして、この法律の施行の確保に遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。
#65
○古寺委員 第一条に労働基準法との関連性については「労働基準法と相まって」とうたわれておりますけれども、「相まって」というのはお互いに助け合ってということになりますので、それよりも一歩進んだ「基づいて」というふうに表現を改めるべきではないか、こういうふうに考えるのですが、その点についてはいかがですか。
#66
○渡邊(健)政府委員 今度の法律に伴いまして、基準法の中の安全衛生に関する規定は新法に移るわけでございますが、両方の法律の接続点といたしまして、基準法の四十二条に「労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法の定めるところによる。」という規定を設けまして、両方の連結をはかっております。それによりまして労働安全衛生法のいろいろな労働条件の基準は、基準法でいうところの労働条件に当然含まれるものということで、そういう意味におきましては、基準法の労働条件の基本原則等は、当然安全衛生法の労働条件規制に及んでくるわけでございます。
 それからもう一つ、一条で「相まって」といたしましたのは、たとえば直接の安全衛生ではないけれども、いろいろな労働時間であるとか、休日、休暇であるとかその他の一般の労働条件、これも労働者の安全衛生に密接な関連があるわけでございまして、これは両方が相まって安全衛生の確保がはかられる性質のものであるわけでございます。それらの点を含めて両方の法律関係をあらわすものといたしましては、そういう意味におきまして「相まって」という表現が適切であると考えておるのでありまして、決して「相まって」と書いてあるから、その両者の結びつきが弱いということはない、かように私ども考えておるわけでございます。
#67
○古寺委員 次に、第二条の第三項に「事業者」というのがございますが、労働基準法ではこれが「使用者」となっておるわけでございまして、災防法でも「使用者」になっておりますが、なぜ「事業者」としたのか、御説明願いたいと思います。
#68
○渡邊(健)政府委員 基準法では先生おっしゃいましたとおり規制の対象といたしましては「使用者」上なっております。基準法の「使用者」というのは、基準法の十条に規定しておりますように、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」ということで、事業主だけではなしに、事業主に雇われている従業員であって、労働関係について事業主のために行為する者が含まれるわけでございます。その結果、使用者といいますと、事業主本人だけではなしに、そういう従業員の一部までも広く含むんだということから、ややもいたしますと、こういう安全衛生について、その責任の帰属者というものが、事業主そのものが基本であるという点がぼやけるきらいもございますので、そういう事業主が、安全衛生については労働者を雇っておる者として、その生命身体の安全を確保していくという、そういう責任を持っていただきたい、その責任を明確にするという意味におきまして、この労働安全衛生法の規制の対象を事業主といたしまして、その責任の所在を明確にいたしたわけでございます。しかしながら、この労働安全衛生法の百二十二条におきまして「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」ということで、違反がありますと、その法人あるいは個人経営であれば、その事業主本人、そういうものに対して罰則がかけられますとともに、もし権限あるその使用人が、違反行為があれば行為者も罰せられるということで、その面につきましては、両罰規定によって行為者についても責任がないんだというようなことでないように規定をしておるわけでございます。
#69
○古寺委員 労働基準法や安全衛生法案を見ますと、「使用者」「事業主」「事業者」あるいは「行為者」こういうようなことばを使っておるわけですが、この定義はどういうふうになっておりますか。
#70
○渡邊(健)政府委員 事業者等々につきましては、あるいは使用者につきましては、それぞれ労働基準法なりあるいは今度の労働安全衛生法の第二条の(定義)の規定で、それぞれの法律によって定義がされておるわけでございますが、ごく概括的に申しますと、事業者、事業主という場合には、その事業の経営の最高責任の帰属者、こういうことになるわけでございます。使用者という場合は、そういう経営についての最高責任の帰属者のみならず、その事業主に雇われている者であって、労働関係に関しまして使用者の側に立って使用者のために権限を行使し、行為を行なう者が含まれる。すなわち使用者側に立つ従業員が含まれるわけでございます。行為者と申しますと、そういう労働基準法あるいは労働安全衛生法といったような法規の規制を受ける事項につきまして、実際に権限を持って、そういう対労働者についての労務管理上の行為をした本人をいうわけでございます。
#71
○古寺委員 労働基準法の研究会の報告にもございますように、やはり事業者の責任というものを明確に盛り込むべきじゃないか、こういうふうに考えますが、その点はいかがですか。
#72
○渡邊(健)政府委員 事業者の責任を明確にすべきであるという御指摘は私どもも全く同感でございまして、そういう考え方に基づきまして労働安全衛生法におきましても、第三条で事業者の責務ということを規定を設けまして明らかにいたしておるところでございますし、さらに事業者に対しまして、第十条におきましては総括安全衛生管理者の選任及びそれに対する指揮監督の義務も課しておるわけでございます。さらに個々の条文におきまして事業主が守るべき義務ということを明確に規定をいたしまして、使用者の責任を明確にするようこの法律では規定をいたしておるところでございます。
#73
○古寺委員 次に、国鉄の新幹線の建設工事についてお伺いをしたいと思いますが、昨年、国鉄新幹線の建設工事過程における殉職者の数等をお伺いいたしましたが、その際には二百十一名、こういうふうに伺ったように思いますが、その後の調査によりますと、建設の請負工事で二百九名、電気関係で十六名、さらに国鉄職員二名の計二百二十七名ということになっておりますが、間違いございませんでしょうか。
#74
○山田説明員 たしか昨年の委員会で御質疑がございまして、私、上百十一名という数字を申し上げました。これは東海道新幹線建設の途中の、完成までの数字でございまして、先生がいま御指摘になりましたように、請負関係で二百九名、それから国鉄職員が二名、それから電気関係で十六名という数字でございます。
#75
○古寺委員 前回お尋ねした際に、労災死亡者の原因別の内訳をお聞きいたしました。そのときは御答弁がなかったわけでございますが、その内訳がおわかりでございましたら、お願いいたしたいと思います。
#76
○山田説明員 東海道新幹線につきましては、工事着手以来、相当時日も経過しておりますので正確な資料も持ち合わせておりませんが、職員の山陽新幹線の数字につきましては、トンネル工事ではまだ死亡者は出ておりませんで、その他関連工事で出ている状況でございます。
#77
○古寺委員 それでは、新幹線工事に伴って発生した負傷者の数は一体どのくらいございますか。
#78
○山田説明員 これも前回申し上げましたが、東海道新幹線の請負業者にかかわる工事についての資料は正確な資料を持ち合わせておりませんが、山陽新幹線について調べましたところ、大阪府関係で十四名、兵庫県関係で千二百四十九名、岡山県関係で三百九十二名、広島県関係で二百二十四名、山口県関係で七十名、福岡県関係で五十五名、計二千四名の負傷者の数字を一応調べてございます。
#79
○古寺委員 この新幹線以外にも国鉄では建設工事をたくさん進めていらっしゃるわけでございますが、そのすべての建設工事における、いわゆる労災による負傷者あるいは死亡者の数というのは、どのくらいございますか。
#80
○山田説明員 全国的に現在線の改良工事、その他御指摘のように非常に広範囲にやっております。ただいまその正確な数字を用意してまいりませんでしたけれども、先生のおっしゃいます死亡者は、新幹線が残念ながらその数を出しております。これはそれほどの数は出ておりませんが、負傷者につきましては残念ながら相当数出ている模様でございます。
#81
○古寺委員 新幹線は非常にスピードが速いということではなやかに宣伝されているわけでございますが、国鉄はこの工事を発注してあとは完成すれば、そういうような労働災害については全部これは業者の責任である、こういうふうな考え方に立っているように思われるのでございますが、やはり公共的な事業を営む立場として、当然そういうふうな新幹線はもちろんのこと、建設工事を一生懸命にやってくださる方々に対して、もっと関心を持たなければいけないのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
#82
○山田説明員 新幹線は、運転スピードは非常に画期的に速い線でございますけれども、そのために工事を無理しているのではないというような御趣旨の御質問かと思いますが、いままで東海道新幹線の開業にいたしましても、それからそれに引き続く山陽新幹線の岡山までの部分開業にいたしましても、いわゆる普通いわれますような突貫工事的な無理な工事はしておりませんで、特にこういうような性質の新しい線路でございますので、きょうレールがつながったから、あすからすぐ営業開始というようなわけのものではございませんで、むしろ現在、従来線以上にそのでき上がったあとの線路の、私ども踏み固めと申しておりますが、それがはっきり固まるのに相当長期間を見ております。それからそれが、線路その他の設備がもう完全になりましても、それに運転をする従事員、ことに運転士が線路の状態をよく知悉して、そして運転上の安全を期するということが絶対必要でございますので、相当、半年なりあるいは四カ月程度かけたそのような仕事もございますので、その点では慎重を期しておるわけでございます。現在線についても同じような考え方でございます。従来とて決して無理をいたしておりませんし、将来とも決して無理をするつもりは毛頭ございません。先生の御指摘を意に体しまして、今後さらに十分気をつけてまいりたいと考えております。
 それから、実際の仕事は請負に付するというのがほとんど全部でございます。その点につきましては、従来から設計書に基づきます工事示方書の中におきまして、いろいろな技術的な点ももちろん入りますが、それ以外に災害、それから作業の安全についての項目も入れまして、業者の指導をいたしております。またその示方書の内容につきましても、監督官庁のほうに御説明をいたしまして、直すべき点は御指示を受けて直すような用意もいたしております。これからさらにその点を十分気をつけてまいりたいと思います。
#83
○古寺委員 国鉄は当然工事の発注元でございますので、工事に関係した方々の事故については、きちんとしたデータなり統計というものをお持ちになっていなければならないのは当然でございます。そういうような資料についても全然完全に掌握しておらない。
 さらに私が申し上げたいのは、そういうようないろいろな資料と同時に、やはり安全対策というものをもっと国鉄側が検討しなければいけないんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますが、国鉄の建設工事に対する安全対策、こういうものに対する今後の御決意というものを承りたいと思います。
#84
○山田説明員 その点につきましては、前回も非常に強い御指摘がございまして、従来とてなおざりにしていたわけではございませんが、その後いま申しましたような設計書に基づきます工事示方書の中に詳細な項目を設けまして、たとえば現場の安全確認とか業者相互間の連絡、それから具体的な問題として安全帽、腕章等の着用の規定、まあこれは申すまでもないことでございますが、火気の使用の際の注意、火薬作業をする場合の危険防止の問題等々、詳細に織り込んで、これから一々そういう具体的な問題につきましては、前回もお答え申し上げましたように、監督官庁とも常時打ち合わせ会をやりますとか、あるいは業者と私ども発注者と申しますか、これとで共同でパトロールをやるとか、そういう点で、単に文章上のきめだけではなくて、それが実際行なわれているかどうかのチェックもいたしたいと思っております。
 また、ただいま四十七年度に入りまして、いろいろな新しい計画を掲げて実施いたしておりますが、その中の重点項目の一つといたしまして、四十七年度の傷害事故防止対策という項目を掲げて、これはうちの職員にももちろんでございますが、請負工事に従事する諸君の安全につきましても、十分な配慮をいたすように進めているところでございます。
#85
○古寺委員 そこで労働省にお伺いしたいのですが、いまのような事例については、本法案ではどういうふうに定められておりますか。
#86
○渡邊(健)政府委員 建設工事におきまする災害防止の責任は、直接的には施工に当たる請負企業主がその責任を負うわけでございますが、発注者が定めます施工方法や工期等が労働災害の発生に深い関係を持つこともいろいろございますので、新法におきましては、その第三条の三項におきまして「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」といたしまして、発注者の責任を明確にいたしておるところでございます。
 なお、このほか大規模の発注者につきましては、災害の防止をはかる上から、発注者の技術的、組織的な協力を得ることがきわめて効果的である面もございますので、ただいま先生が例示であげられております国鉄の新幹線工事等の大規模な工事につきましては、特にこれを重点の工事と指定いたしまして、監督指導等も力を入れますとともに、発注者であります国鉄本社、あるいは地方建設局が行なう工事の安全対策などにつきまして、強力な安全対策を行なうように要請してまいっておるところでございます。
#87
○古寺委員 第三条は努力規定になっているわけですね。いまこの新幹線の例等で申し上げましたように、やはり発注者がこういう労働災害を防止しよう、そういう人命尊重の基本的な立場に立っていませんと、いかに法律をつくっても、これはしり抜けになってしまいます。ですから、こういう基本的な問題について、やはりきちっとした規制をはめておきませんと、今後労働災害の防止、あるいは先ほどお話がございました、いわゆる労災の事故の減少ということは、これはとうてい不可能になるわけです。なぜこういうものをきちっと規制して、そしてワクをはめなかったのか、その点について、もう一回承りたいと思います。
#88
○渡邊(健)政府委員 第三条三項にございますように、発注者も、施工者が安全で衛生的な作業の遂行ができるように協力すべきことは人命尊重の見地から当然のことでございますが、ただそういう施工方法、工期等々が直接的にどの程度災害というものに結びつくかということになりますと、非常に具体的な場合には、発注者がどこまでしたならば、その責務に違反しているかといったようなことは、なかなか明確にしがたい場合が少なくないわけでございます。そこで、直接的な罰則をもって強制するような規制ということは、実際問題としてなかなか困難であるわけでございますが、三条の三項は努力義務とは申しますけれども、このような規定を置くことによりまして、発注者にそういう問題についての意識、関心というものを喚起する効果は大きかろうと思います。
 また、われわれこういう監督に当たる行政機関といたしましても、直接の使用者でない発注者等に対しましても、こういう規定がありますれば、それを根拠にいたしまして、発注者が無理だと思われたようないろいろな発注方法を行なっている場合に、それに対して指導をいたします有力な足がかりにもなりますので、この三条三項の規定、今後の運用につきまして、それなりの実効があげ得るもの、かように私は考えておるところでございます。
#89
○古寺委員 発注者が努力すると申しましても、先ほど国鉄側の答弁にもありましたように、あまり関心を持っていないわけですね。ですから、やはりそういう事故については交渉をするような義務を課すとか、あるいはまた少なくとも公共機関の発注についてはそういうような規制をつくるとか、何か歯どめをしておきませんと、建設工事に伴う災害というものは防止できないと思うのですね。そういう点については、どういうふうにお考えですか。
#90
○渡邊(健)政府委員 似たような災害が次々に起こりますことを防止する趣旨から申しまして、重大災害等につきましては、現在もそのつど、われわれ労働省で新聞発表等を行ないまして、発生状況や原因等を明らかにいたしておるところでございまして、これは、同種の工事、事業を行なっております事業主等に対しましては、戒めといたしまして、こういう発表が非常に効果があるものと考えております。今後におきましても、そういう意味におきまして、事故の発表については十分配意してまいりたい、かように考えております。
#91
○古寺委員 いま、国鉄さんとか、こういう公共機関で発注する場合については特別の規制を定めてはどうか、こういうふうにお伺いしたのですが、その点についてはどうですか。
#92
○北川(俊)政府委員 先生御指摘のように、たとえば建設省あるいは国鉄、その他公共機関の発注というのは、規模が大きいだけでなくて、建設業界に対する影響も非常に強いわけでございます。発注者の努力義務につきましては、先ほど局長も申しましたように、第三条できめておりますが、それと並行いたしまして、この法律策定の際に、たとえば発注者としての発注条件あるいは経費の組み方、そういうものにつきまして災害防止上十分配慮をしていただくように、建設省等とも十分協議をいたしまして、その辺の御協力を約束していただいておりますので、国鉄につきましても今後そういう方向で、山陽新幹線その他の事故の防止のために十分協議を尽くしてまいりたいと思います。
#93
○古寺委員 次に、労働災害防止計画についてでございますが、第六条の規定は、従来の五年ごとの基本計画と若年度ごとの実施計画が一本化されて、抽象的になるおそれがありますが、この点はどうでしょうか。
#94
○渡邊(健)政府委員 新法におきましては、労働大臣は、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項等を定めた労働災害防止計画を策定することに第六条で規定をいたしておるわけでございますが、これは、従来の労働災害防止基本計画と実施計画、これは、いままでのところ災害防止団体等に関する法律で規定されておりますが、この内容をあわせて含めることにしておるわけでございます。
 すなわち、新しい労働災害防止計画の内容といたしましては、労働災害の動向等を考えまして、労働災害の減少目標、それから労働災害の防止上重点を置くべき業種及び災害の種類、それから国、事業者等の講ずべき労働災害の防止対策など、基本的な事項のみならず、具体的対策についても定めることといたしておりまして、これは従来の基本計画と実施計画の内容を含めたものと一致するものとする予定でございます。
#95
○古寺委員 この法案によりますと、一度きめた計画がずっと十年ぐらい同じような計画でいくという点も考えられるのですが、この点はいかがですか。
#96
○渡邊(健)政府委員 その点につきましては、この法案の七条におきまして「労働大臣は、労働災害の発生状況、労働災害の防止に関する対策の効果等を考慮して必要があると認めるときは、中央労働基準審議会の意見をきいて、労働災害防止計画を変更しなければならない。」という規定があるわけでございまして、一度きめますと、情勢の変化等にかかわらず、いつまでも固定的になっておるということではなしに、運用といたしましても、その後の情勢の変化等に適応した実効ある計画を今後つくってまいりたい、かように考えております。
#97
○古寺委員 そこで、毎年中央基準審議会について意見を聞くというようなお考えをお持ちですか。必要があればというのは、何年ぐらいをお考えですか。
#98
○北川(俊)政府委員 新法によります災防計画につきましては、一応五年を単位に策定をいたしたいと考えておりますが、その年々の災防の計画、施策の重点というようなものにつきましては、毎年基準審議会にこちらから御報告を申し上げて御意見を伺うということにいたしたいと思います。
#99
○古寺委員 災害の減少目標は、これははっきり明示するお考えですか。
#100
○渡邊(健)政府委員 中に明確に規定する予定にいたしております。
#101
○古寺委員 総括安全衛生管理者は、政令で定める規模のものとなっておりますが、その中身については、どういうものを予定していらっしゃいますか。
#102
○渡邊(健)政府委員 総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場の規模は、建設業など屋外労働業種におきましては百人以上、それから製造業などにおきましては三百人以上、その他の非工業的業種におきましては千人以上を考えておるところでございます。
#103
○古寺委員 事業規模百人未満の事業所における安全管理者、衛生管理者の選任状況は約半分ぐらいであると思いますけれども、この法案では、政令で現行三十人以上となっているのを五十人以上に改めるというふうに考えられるのですが、これはどういう理由でございましょうか。
#104
○渡邊(健)政府委員 安全管理者、衛生管理者につきましては、衛生管理者のほうは、業種のいかんを問わないで、五十人以上の規模を考えておりますし、安全管理者につきましては、林業、土石採取業、建設業、運送業、製造業等の工業的業種に属する企業につきまして、五十人以上の事業場に選任を義務づけたいと考えておるわけでございます。
 なお、もっと小さな規模の事業場が問題ではないかという御趣旨であろうと考えるのでございますが、そういう小規模の事業場におきましては、事業者が直接職場の実態や労働者の意向を掌握できるものと考えますので、そういうことにより、事業主がみずから安全衛生管理を行なうことができるわけでございまして、そういうところにわざわざ安全管理者、衛生管理者を特に法定するまでのことはないのではないかと考えております。しかしながら、これは決して零細規模におきます災害の多発ということを軽視いたしておるわけではございませんで、確かに零細規模におきましては、災害の多いことは事実でございますので、われわれといたしましては、こういうような零細中小規模の事業場に対しましては、重点的な監督、指導を実施いたしまして、災害防止のための強力な行政指導も行なうつもりでおるわけでございます。
#105
○古寺委員 労働災害の実態を見ますと、事業規模百人未満のところが大体八割、それからさらに、製造業の事業所規模で見ますと、三十人から九十九人では、千名以上の場合の六倍もの災害が起きているわけです。労災防止に力を入れなければならないのは、当然こういうような中小業者になってくるわけでございますけれども、それを後退させるようなことを今度の法案では考えているわけですね。ですから、むしろ前進的な対策というものを考えなければいけないのじゃないか。いままでだって事業主はいるわけです。そういう点から考えて、非常にそういう点を疑問に思われるのですが、心配ないというふうに確信をしていらっしゃるわけでございますか。
#106
○渡邊(健)政府委員 ただいまも申しましたように、そういう小規模の事業場におきましては、事業主がみずから労働者を掌握し、あるいはその意向も把握できると考えられるのでございまして、そこにわざわざ中間的なものを置きますと、先ほども申しました事業主のいわゆる責任というものは、むしろぼやけるおそれもあるのではないか。そういう事業主みずから安全衛生管理ができるところにおきましては、事業主そのものがみずから責任を持ってそういうことに当たらせることが効果的ではないか、こういうような考え方もできると思われるのでございまして、私どもこの法案で事業主の災害防止責任を強調いたしておりますことと相まちまして、十分これで安全衛生管理について心配がないものと考えておるわけでございます。
#107
○古寺委員 心配がない心配がないとおっしゃいますけれども、実際これを施行した場合に、非常にそういうような危険性があると思うのです。
 次に、第二十七条は労働基準法の四十五条に該当すると思われますが、労働基準法では使用者が「講ずべき措置の基準」となっているところを、この法案では「基準」という語句を落としているわけです。これは労働基準法よりも後退しているというふうにしか受け取れないのですが、その点についてはどうでしょう。
#108
○北川(俊)政府委員 先生御指摘のように、現行法では「措置の基準」とこう書いてございますけれども、「措置の基準」というのを法律的に解釈いたしますと、非常に抽象的なものになる心配がございます。むしろ今回の場合には、災害防止について具体的内容を省令で定めることが望ましい、こういう意味でより具体的な内容を定める意味で「措置」ということにしたのでございまして、後退するようなものでは決してございません。
#109
○古寺委員 二十八条の技術指針でございますが、これは一応よいといたしましても、最低基準がすりかえられたり、安全衛生というものが事業主まかせになるというおそれがございますが、この点についてはいかがですか。
#110
○渡邊(健)政府委員 最低基準につきましては、新法の二十条以下にそれぞれ危害防止のための講ずべき措置を規定してございまして、これに基づきまして、さらに命令等で具体的詳細な規定が設けられることになるわけでございます。
 それから危害防止基準以外のいろいろな使用者が守るべき最低基準につきましても、この法律の各条項で明確に規定され、それに罰則をもってその履行が担保されておるわけでございまして、この法律によりまして、そういう点があいまいになるということは毛頭ないと存じております。二十八条はむしろ別に、そういう最低基準をあいまいにするというようなことではなくて、最低基準を守るべきことは当然のことであるが、さらにより望ましい作業環境等を実現するために、快適な作業環境の標準を公表したり、あるいはさらに最低基準以上に安全性を確保するために技術上の指針を公表していこう、こういう趣旨であるわけでございます。
#111
○古寺委員 安全衛生コンサルタントや検査、検定の代行機関の設定は行政の下請化になることになるわけでございますが、政府の責任はどういうふうになるのか、それを明確にすべきであると考えますが、その点についてはいかがでございますか。
#112
○渡邊(健)政府委員 政府といたしましては、当然法律の施行、順守を確保するために、法律に規定されました事項につきまして、監督官によりまして監督、指導を行ないますとともに、いろいろな今回の法律によって定められております技術的な指導等を行ないますためには、安全衛生専門官等々をこの法律で設けまして、そういう職員が、そういう法律に基づきます指導等にも当たってまいるわけでございます。
 コンサルタントと申しますのは、決してそういう行政官の仕事の下請という趣旨ではございませんで、この法律におきましては、都道府県基準局長は安全衛生改善のため必要があると認める企業につきましては、安全衛生改善計画を作成すべきことを指示できることに新しい制度が設けられておりますけれども、中小企業などにおきましては、そういう災害防止に関する改善基準をつくりますにつきまして、専門的、技術的な事項について十分検討する能力を有しない点もあると思われますので、そういう点につきましては民間の専門、家の方々の能力を活用いたしまして、コンサルタントといたしまして、そういう方々の診断、指導を受けさせることがより効果的であろうということで、そういう制度を設けておることでございまして、民間有識者の方々を災害防止対策上有効に活用するという趣旨でありまして、決して行政官庁がなすべきことをしないで、そういう人にさせるという趣旨ではないわけでございます。
#113
○古寺委員 こういう代行機関にやらした場合に非常に心配なのは、なれ合いという危険があるわけですね。そういう問題についてはどういうようなチェックをするわけですか。
#114
○渡邊(健)政府委員 検査、検定等につきましては、代行機関に行なわせることを認めておるわけでございますが、この法律におきましても、それら代行機関につきましてはいろいろな監督規定を設けておるわけでございまして、そういう代行機関がなれ合い等々のために実際に効果的な検査あるいは検定を行なわないようなことがあってはなりませんので、それにつきましては法律に基づきます監督機能を十分に発揮いたしまして、監督してまいる。そういう意味におきまして、新法におきましては、むしろそういう代行機関等に対する監督権限を強化いたしておるわけでございまして、業務規程の認可制、指定取り消し等に関する規定の新設等も考慮しているところでございます。
#115
○古寺委員 問題がまだだいぶ残っておりますが、本会議の時間になったそうでございますので、次回にまた質問申し上げたいと思います。
#116
○森山委員長 この際、休憩いたしまして、本会議散会後、直ちに再開いたします。
   午後零時五十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時九分開議
#117
○谷垣委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 労働安全衛生法案の審議を続けます。後藤俊男君。
#118
○後藤委員 午前中に項目的にいろいろお尋ねしたのですけれども、ちょうど大臣も来られましたので、時間は十五分ほどしかございませんので、別に大臣の心境をどうこうということにはならぬと思いますけれども、おもな点だけを列挙いたしまして、ぜひひとつ大臣にも肝に銘じていただいて、各党間のいろいろな意見の調整、そういうところへ持っていっていただくようにお願いしたいと思うわけです。
 まず第一番には、御承知のように、労働災害そのものが建設産業に非常に多い、これをいかに防止するかということも、この新法の一つのかなめになっておると思うのです。そこで労働安全衛生審議会を設置してもらいたい、ただし経過措置としまして中央労働基準審議会の中に建設部会を設けたらどうか、こういうことなんですけれども、このことにつきましては事務局なりその他におきましていろいろ御論議なさって賛成の意向と仄聞しておるわけですけれども、まだ大臣なりその他上部のほうではっきりした気持ちがきまっておらぬように聞いておるのですが、ぜひひとつ労働安全衛生審議会を設置する、経過措置としまして中央労働基準審議会の中に建設部会を設ける、この問題だけひとつ大臣からお気持ちをお聞きしたいと思うのです。
#119
○塚原国務大臣 肝に銘じて質問を聞けということでありますので、十分拝聴いたしておりまするが、ただいまの問題、ただいま事務当局で検討中でありまするし、私もそういう報告をいただいておりまするが、これは文字どおりその御趣旨に沿うような前向きな検討は私としてはいたす考えでありますし、事務当局にも命じてあります。
#120
○後藤委員 次の問題は、第六十八条の問題です。これは午前中は時間がなかったから抜けたと思いますけれども、第六十八条におきましては、これを見ていただければすぐわかると思うのですが、「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、」という、この条文ですね。この中には当然職業病等も含めるべきだ、こういうふうに考えるわけなんですけれども、伝染病で就業を禁止された場合、さらにまたここでいう「その他の疾病」とは何をさしておるのか私わかりませんけれども、いま申し上げましたところの職業病の問題ですね、これらの問題で就業を禁止された場合、そのときにおける賃金関係は一体どういうふうなことになるんだろうか。これは簡潔にひとつお答えいただきたいと思うのです。
#121
○渡邊(健)政府委員 業務上の疾病で休業することになりました場合には、当然これは災害補償といたしまして基準法または労災保険法に基づきましてその間の休業補償の支給があるわけでございます。業務上の疾病以外の病気、すなわち業務外の疾病によって就業が禁止されたような場合には、これは労災補償はありませんで、一般には健康保険によりまして傷病手当金の支給等があるわけでございますが、その他こういう手当以外に、就業禁止を受けた場合の賃金その他をどうするかという点につきましては、これは労使当事者間で話し合ってきめることになるわけございます。しかしながら、就業禁止を労働者が受けますと、就業の機会を奪われるだけでなくて、他面では賃金その他の所得の面でもいろいろな問題に当面する問題が考えられますので、この六十八条の病者の就業禁止につきましては、取り扱い及び運用につきまして慎重を期す必要があると考えておるわけでございます。
#122
○後藤委員 その次は、大臣、緊急避難の問題ですけれども、これは午前中申し上げたわけなんです。いわば安全に疑義がある場合の一時的な就労拒否権これを労働者に与えるべきである。これは局長から一応説明は聞いたのですけれども、これはぜひひとつ慎重に扱っていただいて、この際いま申し上げましたところの安全に疑義のある場合の一時的な就労拒否権を働く労働者に与えるべきだ、そういう方向で修正をしていただくように大臣にも格段のお願いをいたしたいと思うわけです。お答えはけっこうでございます。
 それからその次はコンサルタントにからみまして、これも午前中いろいろ申し上げたのですが、労災防止指導員の関係です。今度の昭和四十七年度の予算の結果、労働基準監督官というのは二千九百人に、ある程度増加すると思うのです。しかしながら、今日の労働災害防止のためにはまだまだ監督官の不足ということは私が言うまでもないと思うのです。しかも建設産業関係に労働災害が非常に多い、こういうような点も考えていただいて、監督官の専門的な知識の高揚ということは特に建設産業については当然である。それとあわせていま申し上げました労災防止指導員、これはいま労働省の訓令に基づきまして千数百人となっておるわけですが、これを法的に認めて、しかも権限を持たせる、立ち入り検査もできるようにする、そういう方向でこの際、いま申し上げましたところの労災防止指導員につきましては制定すべきである。これはぜひ実現をはかっていただくようにお願いしたいと思うのです。
 それとあわせて労働基準審議員の問題です。これにつきましても現在のところ別に何も権限がないわけですけれども、監察権を与えたらどうか、そうしてやはり災害防止の仕事ができるような方向へ持っていくべきであるというふうに考えるわけでございます。だから私の言いますのは、あえてコンサルタントがどうこうということよりかは、いま申し上げましたような労災防止指導員を法制化しまして、権限を与える、労働基準審議員に対しましても監察権を与える、そうして労災防止の体制をつくるべきだ、こういうように思うわけなんです。これは大臣、いかがでしょうか。
#123
○塚原国務大臣 労災防止の重要性は言うまでもありませんが、いまおあげになりました点につきましてはもう少し検討させていただきたいと思います。御趣旨はよくわかりますが、いまここで直ちにどうこうという御返事は、もう少し勉強させていただきたい。もちろんこの法案の審議が終わるまでには十分考えたいと思います。
#124
○後藤委員 ぜひひとつ審議の終わるまでには考えていただきたいと思うのです。
 それからさらに、その他にも四、五点重要な点があるわけでございますけれども、午前中局長なりその他の皆さんにも質問がしてありますので、その点も後ほど十分打ち合わせをしていただいて、ぜひ改正すべき点は改正をする、そういう方向で格別大臣のお力添えをお願いしたい、こう思うのです。
 終わります。
#125
○谷垣委員長代理 田畑金光君。
#126
○田畑委員 この法律を見ますと、第一条に目的が書いてあります。労災防止に関する総合的計画的な対策を推進することを目的として明示しておりますが、しかし中身を見ますと、総合的あるいは計画的であるのか疑問です。中身は労働基準法から分離をして単独法にしたというだけであって、基本的には労働基準法の規定をそのまま引き写して整理をしただけにすぎない。総合的であり計画的であるとするならば当然、鉱山保安法あるいは船員法あるいは労災防止団体法、こういうような法律なども含めて、どうあるべきか、このように立法するのがいわゆる総合的であり計画的である、このように考えるわけでありますが、そうなっていない。したがって、第一条の(目的)に明らかに述べた看板に反しておる、このように私は見るわけでありますが、ひとつこの辺について説明を願いたいと思います。
#127
○塚原国務大臣 労働者の生命、身体を守る労働災害防止行政は、鉱山労働者それから船員などを含めまして労働省が一元的に所管するのが本来の筋であろうと考えております。御承知のように、なかなか長年の経緯もありますし、また労働の特殊性というものがからんでおる問題でありますので、早急に結論を出すことは私は困難と思っております。しかし、御質問の趣旨をよく体しまして、この問題に対処していきたいと考えております。
#128
○田畑委員 鉱山保安法との関係ではしばしば生産行政と保安行政を一つの通産省の中で見るのが適当かどうか、むしろ生産とそしてまた生産に伴ういろいろな事故、災害を考えたならば、保安の面については別個の行政系統にするのが正しいやり方ではなかろうか、こういうことがしばしばいわれて今日まできておるわけであります。当然鉱山保安についても労働大臣が見るべきである、こういう積極的な意見を述べた方もかつてあったわけでありますが、今回労働安全衛生法というような安全に関する法律案が、新しくこのように一個の法体系として提案された以上は、その中において相当この問題等についても深刻な議論なり、通産当局との話し合いなどもあったであろうと私は想像するわけでありますが、この点どのような経過をたどって、従前と同じように鉱山保安法を適用除外にする、あるいは船員法についてもこれを特例のまま残しておく、どういうような議論、やりとりがその間にあったのか、この辺の事情を説明順うと同時に、そういうことを私はかれこれ考えてみますと、いま労働大臣のお答えがございましたが、第一条の総合的とか計画的とか、こういうようなことはことばと現実とが少しふさわしくない、こう考えるわけでありますが、この辺の経過をひとつ御説明願いたいと思うのです。
#129
○渡邊(健)政府委員 田畑先生御指摘のように、鉱山保安あるいは船員につきましての安全衛生問題も、一元的に取り扱うことが総合性の見地からよいのではないかという御意見、まことに傾聴に値する御意見でございまして、私どももこの労働安全衛生法を立案する過程におきましては、そういう点につきましても内部でも十分に議論をし検討をいたしたわけでございますが、先生も御承知のとおり、この問題につきましてはもう二十何年来、政府部内でそれぞれの省との間で繰り返し議論がなされ結論を得ていない問題でございますので、いままたこの問題に決着をつけようと思いましても早急にはとうてい結論が出ない問題である、かように考えまして、そういう所管の問題は一応今回はそのままにいたしまして、この労働安全衛生法を立案することにいたしたわけでございます。
 そういう意味では、鉱山や船員の安全衛生の問題はこの法律の外ワクになっておるではないかという点はごもっともでございますが、ただ、それ以外のいわゆる大部分の労働者の安全衛生につきましては、今回この法律をつくることによりまして、基準法に基づく最低基準の設定、確保ばかりでなくて、さらにいろいろなより好ましい作業環境の樹立のための指導あるいは金融財政等の援助等々含めましてそれらを総合的に一つの法律の中に体系化した、かような意味で総合的と申しておるわけでございますし、計画的と申しておりますのは、この中に災害防止のための計画の策定や、あるいは民間の企業対して必要に応じては安全衛生改善計画を作成するよう、都道府県労働基準局長が指示する権限等も規定をいたしております。そういう意味で、政府全体といたしましても、それからまた個々の企業におきましても、災害防止を計画的に進めるという体制をこの法律の中に規定をいたしておるので、そういう意味において一条の(目的)で「総合的計画的な対策を推進する」ということをうたったわけでございます。
#130
○田畑委員 局長の答えをずっと聞いておると、質問者の質問に対しては傾聴に値する質問という答弁をしばしばなさるわけだが、傾聴に値する質問ならば、私の質問に対して傾聴に値するにふさわしいような答え方をしてもらわないと、大事なことは避けて、ほかのほうを答えておる。
 私がお聞きしたいことは、二十年来の鉱山の保安行政については、なわ張り争いというか、管轄の問題でお互い争ってきておるが、今回の法律改正に関連して、公害保安局長と労働基準局長との間には、もっと私はこういうような問題等については専門的な立場から、労働者の安全という面から見てどうすべきか、どういうあり方が望ましいかということ等について、もっと詰めた話がなされたのではなかろうかと常識的に推察されるので、そのあたりはどういう話でございましたかということを私は聞いておるわけなんです。傾聴に価するなら、ひとつ傾聴に値する答弁をしてもらわなければ困ります。
#131
○渡邊(健)政府委員 われわれといたしましては、できるならばそういう形になることが安全衛生行政の一元化ということで望ましいと考えておるわけでございまして、そういう点につきましては、今回の立案の過程におきましても、通産省あるいは運輸省にそういうことで持ちかけて話をいたし、折衝をいたしてまいったわけでございますが、通産省等におきましては、かねてから主張いたしておりますように、鉱山行政の特殊性というようなことから、こういう業種については産業行政と保安というものが一体不可分であるという考え方、並びに歴史的な経過等々の主張がございまして、長年来のそれぞれの行政機関の考え方というものに新しい角度からの話がつくというところまでは至らなかったわけでございまして、こういう議論を続けましても、短時日の間にはなかなかこれに対してわれわれの企図するような結論が出ることが予期されませんでしたので、先ほど申しましたように、今回は所管の問題には触れないでこの法案の立案に当たることにいたしたわけでございます。
#132
○田畑委員 いまの労災防止団体法によれば、労災防止計画は、五年ごとに基本計画を定め、毎年実施計画を定める、こういうことになっておるわけです。ところで、今度の法律を見ますと、労働災害防止団体等に関する法律の一部を新法に移しておるわけでありますが、基本計画、実施計画の区別であるとか、あるいは策定時期をどうするか、災害の減少目標をどこに置くか、こういうようなことはこの法文の中にうたわれていない。その意味では、現行の労災団体法というものがそういう面で計画的であり、具体的であり、そしてまた年次目標を定めて災害防止を進めていくということになっておるわけで、今回の法案はそういう面から見るとむしろ後退しているじゃないか、こういう疑問が起きるわけですが、この点はどういうように説明されるわけですか。
#133
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘のように、労働災害防止団体等に関する法律におきましては、五年ごとに基本計画をつくり、さらに毎年基本計画の実施をはかるための実施計画をつくることになっておるわけでございます。しかしながら、労働災害の防止計画をつくるにあたりましては、それぞれその時期におきますいろいろな客観情勢によって、現実に妥当するような計画をつくる必要があるわけでございまして、その場合に、一律に法律で五年ごとの計画がいいのかどうか。いろいろな情勢の変化が予想される場合には、もっと短い基本計画のほうが適当な場合もございますし、あるいは場合によりますと、もう少し長い計画が必要な場合等、いろいろな場合が考えられるのでございます。また、基本計画を五年といたしまして、毎年実施計画をつくると申しましても、特にその間にあまり具体的な事態の動きがない場合には、毎年の計画というものが一種の機械的なものになってしまうというおそれもあるわけでございまして、それらこれら考えまして、防止計画を実態に即応した、現実に効果的なものにするには、必ずしもそう法律で縛らないで、もう少し実態に即応した、実情に応じた計画をつくり得るようにしたほうがいいのではないか、かように考えまして、新法の六条におきましては、労働災害防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を定めた計画をつくれ、そして七条では、そういう災害防止計画をつくりましたあとにおきましても、労働災害の発生状況、災害の防止に関する対策の効果等を考慮して必要があると認めたときには変更する、そういうやり方のほうが実態に即応した計画ができる、かように考えまして、労災防止団体法の基本計画、実施計画という差をやめまして、五年ごとという規定もやめまして、それを一体化したような防止計画の策定方法を今回はとったわけでございます。
 なお、労災防止団体法の中で、実施計画につきましては、労働災害の減少目標、労働災害の防止に関し重点を置くべき業種及び労働災害の種類、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項、その他労働災害の防止に関し重要な事項を実施計画の中に規定することにいたしておりますが、今度の法律では、単に労働災害の防止のための主要な対策に関する事項、その他労働災害の防止に関し重要な事項と書いてございますが、その中身は、やはり労働災害防止団体法の四条に規定しておるような減少目標以下の各項目は、今度の法律に基づく計画の中におきましても、内容として盛るつもりであるわけでございまして、そういう意味におきましては、内容的にも、今度の新法に基づきます計画が労災防止団体法に基づく計画よりも後退するものになるというようなことはないわけでございます。
#134
○田畑委員 そこは意見の分かれるところですが、新法の六条、七条のようなやり方で災害対策に対処するというよりも、むしろ現在の労災団体法の三条なり四条によって進めることが実際的であるし、また効果的であるし、一つの行政目標を立てて具体的な成果をあげるためには、やっぱり現行法のような姿でいく以外にはないと私は思うし、また、結果的にはそうせざるを得ないと私は見ておるわけで、この点はそれ以上のことは議論する必要はないと思うのです。
 それから、新法では、「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」をその目的に明らかにしております。しかし、労働者の危害や健康障害を防止するための事業者の講ずべき措置、これは二十七条にございますが、具体的な措置はすべて労働省令で定めることとなっておりますね。したがって、危害防止基準の具体的な内容というものは、この法律を読みますと、何一つ明らかでない。そこで、いかなる基準に基づいて、要するにその基準をどういうように確立するのか、これが問題だと思うのです。労働省令で定めるとなっておりますが、しょせん、詰めてみると、現在の労働安全衛生規則等々に、こまかくいろいろな分野にわたって規則を制定しておりますが、結局そういう結果になるのであろう、こう見ておるのですが、その点はどうでしょうか。
#135
○渡邊(健)政府委員 個々の災害防止の措置の基準につきましては、これはそれぞれの業種、それぞれの作業によりまして非常に多岐にわたらなければ具体的な措置を規制し得ないわけでございます。現在ございます諸規則でもその条項を全部合計いたしますと千数百条になるような内容でございますし、またそれらの災害防止のための措置は、いろいろ技術の進展等々によりまして随時改正をしていく必要がありますので、これを一々法律に規定することはむしろ適当でないということで省令に譲ったわけではございますが、しかし今回の法律ではむしろ、二十条から二十五条までに、それぞれの災害の原因別にそれを規制すべき処置の方向等を各条ごとに明確にいたしまして、そういう措置を省令で定める基準を明確にいたしておるわけでございまして、その点従来の労働基準法におきましてはわずか二、三条でそれを包括的に書いて、すべて規則に譲っておりましたものからいたしますと、規則を制定すべき基本的な方向というものは法律の中で相当明確になっておるわけでございますので、今後規則の中で相当具体的な個々の措置を規制していく上に今度の新法は大いにプラスになるものと私ども考えておるわけでございます。
#136
○田畑委員 私がお尋ねしているのは、いままでの労働基準法では労働安全衛生に関する条文はわずかであるけれども、今度の法律は、お話しのように二十条から二十五条にわたって基準をつくる根拠法というものが条文的にはたくさんふえておりますが、しかし突き詰めてみますと、いま、現行の労働基準法に基づく労働安全関係の規則というものが相当な数にのぼっておりますね。幾つあるのか知らぬが、十二くらいあるのでしょう。幾つあるのかそれもお答え願いたいが、たとえば昭和四十六年の四月労働省がつくった特定化学物質等障害予防規則、これを見ても、あるいは昭和四十六年九月の酸素欠乏症防止規則、このように新しい化学物質等に伴ういろいろな人体に対する影響、あるいは職業病の発生等々、それに応じて規則をだんだんふやしてきておりますね。現行労働省関係は労働基準法に伴う安全衛生規則というものを十二もつくっておるとすれば、結局この本法においては条文を幾つかふやしておるけれども、具体的にやはり労働省令で大まかな基準の確立をしていくならば、現行においては現在の諸規則をやはり集大成する以外にないのじゃないのか、それに結局落ちつくのじゃないのか、そのことをお尋ねしているわけで、そのお答えを願いたいのであります。
#137
○渡邊(健)政府委員 現在基準法に基づきます安全衛生関係の規則は十六あるわけでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、業種あるいは個々の作業によりまして危害防止のために必要な措置は非常に広範多岐にわたりますので、それにつきましては先生御指摘のように、これはそれぞれの危害の特殊性に応じたそれぞれの規則を整備拡充していくということによるほかはないと考えております。
#138
○田畑委員 また新法は、その第一条で労災防止のための責任体制の明確化、このことを明示しております。そうして新法の十条では、事業主の労災防止責任を明確にするために、工場長クラスの総括安全衛生管理者、これを置いて責任体制を明確にしておる、これは一歩前進だと思います。むしろこのような職制上の責任を明確化するということが、いままでおくれていた。もう鉱山保安法等においてはとっくに統括保安管理者等々を置いて、職制の責任体制などをはっきりさせて保安行政を進めてきたことは御承知のとおりですね。しかし私はこの法律を読みますと、せっかくそのように責任体制の明確化をうたったということは一歩前進であるけれども、その業務の執行ということを見ますと、都道府県の労働基準局長が単に勧告できるという勧告権を与えているだけである、指示権すらない、こういうことですね。一体この程度の、権限というものはほとんどないわけだが、勧告程度の行政運営でもって、いままでと違ったような実効性を確保できるかどうかという問題それはどう考えておりますか。
#139
○渡邊(健)政府委員 第十条では「事業者は、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者又は衛生管理者を指揮させるとともに、次の業務を統括管理させなければならない」ということで、一号から五号までの総括安全衛生管理者の所掌すべき職務を明記をいたしておるわけでございます。したがいまして、事業主がこの十条の規定を守るためには、安全衛生管理者を選任するだけじゃなくて、安全衛生管理者がその職務として課せられております一号から五号までの職務を遂行できるように、これはその総括安全衛生管理者に権限を与えなければならないわけでありまして、選任だけいたしましても権限を与えてなければ、これは事業主はその総括安全衛生管理者にそれらの業務を統括管理させるという義務を果たしたことにならないわけでございます。したがいまして、総括安全衛生管理者がそういう使用者から選任され、権限を与えられたということになりますと、十条の一号から五号までの職務を実施すべき責任と権限があるわけでございまして、もしそれらに違反をいたしまして、そのために災害が起きたということになりますと、その違反について総括安全衛生管理者はこの法律上の責任を問われることになる。これはこの法律の百二十二条で、そういう違反があった場合には、事業主たる法人または人に対するほか、行為者も罰するということになっておりますのは、そういう意味において、総括安全衛生管理者が自分の責務を果たさなかったために違反があって事故が起きたという場合には、その行為者に当たるということになりますので、総括安全衛生管理者はやはりこの法律のこういう規定を設けられることによりまして、それだけの法律上の責任を負わされることになるわけでございます。したがいまして、都道府県基準局長がその必要な場合について、総括安全衛生管理者の業務につきまして勧告することができる規定はございますけれども、それのみでとどまるものでなくて、総括安全衛生管理者はその十条に掲げられました職務については、そういうこの法律上の責任を負わされているという意味におきまして、やはり事業主の責任明確化という意味では大きな意義を有するのではないかとわれわれは考えております。
#140
○田畑委員 それは、安全衛生の責任者を中級の社員であるとかあるいは下級の社員にやらしては、これは会社の内部におけるライン系統から見ても、事実上効果がないわけで、したがって工場長であるとかあるいは鉱業所長であるとか、そういう人方を責任者たらしめるということは、これは当然なことなんです。問題は、あなたがいろいろおあげになったように、条文にはこまかく載っておるが、やはりそのような場合は労働基準局長が、その任にあらず、あるいはその権限を正しく行使しないような場合について、単なる勧告だけでいいのかどうか。私はこの点をお尋ねしているわけです。御承知のように公害立法を見ますると、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律、この法律によれば、この一条には、「公害防止統括者等の制度を設けることにより、特定工場における公害防止組織の整備を図り、もって公害の防止に資することを目的とする。」こうなっております。第十条によりますと、公害防止統括者が、「法律に基づく命令の規定その他政令で定める法令の規定に違反したときは、特定事業者に対し、公害防止統括者、公害防止管理者若しくは公害防止主任管理者又はこれらの代理者の解任を」都道府県知事は「命ずることができる。」このようになっております。私は今回のこの総括安全衛生管理者というのは、この公害関係の法律における公害防止統括者と同じような思想に出ておる、こう思うので、そういう意味からして労働基準局長の勧告云々だけでは弱過ぎはしないのか。実効の確保がむずかしいのではないか。事業者に責任を明確にとらしめるためには行政面からしてもそのようなことは必要ではないのか、このようなことをお聞きしているわけです。
#141
○渡邊(健)政府委員 安全管理者、衛生管理者等につきましては、この法律の十一条、十二条で基準監督署長に増員または解任の権限を与えておるわけでございます。それなのになぜこの総括安全衛生管理者についてそういう行政官庁の解任権等を与えなかったかというお尋ねであろうと思うのでございますが、この総括安全衛生管理者と申しますのは、先ほど先生もおっしゃいましたように、その事業場における工場長あるいは鉱業所長だとか、そういうトップグループの人に同時に安全衛生についても統括管理の責任を持たせよう、こういうことでございます。したがってその事業所には複数おるわけではございませんで、トップの一人、こういうことに相なるわけでございます。その場合にもし行政官庁がそういう者についてまで解任権を持つということになりますと、あまりにその事業の経営の内部に対する干渉になるのではないか、こういう懸念もあるわけでございまして、そこまでいかなくても、もしその人たちが法律で定められた権限を適正に行使しなくて違反があり、事故が起きるということになると、先ほど申しましたような責任を問われるという立場にあるわけでございますから、そういうトップの人は当然にそういう責任を負わされているということからいたしまして、その総括安全衛生管理者としての責任の適正な行使に当たられるものと思う。ただその場合に執行方法について外から見ておって必ずしも適正でない場合があるので、それについて都道府県労働基準局長が必要な勧告をして妥当な執行方法をとるように指導するということで十分効果が期待できるのではないか、さようなことで解任権までは規定をいたしておらないわけでございます。
#142
○田畑委員 私は一口に言って、この法律は非常に条文ばかり多くて内容はたいしたこともない、また読みにくい、理解しにくい、効果もあまり期待できない、この法律全体から私はそんな感じを受けるわけです。労働災害防止についてはもちろん法律だけで実現できるものではないこと、これは言うまでもないわけです。人間尊重の理念に立脚して労働者の積極的な参加あるいは労働組合の代表の積極的な参加によって、労働者と使用者が一体となって取り組むという姿勢、それがやっぱり私は労働災害の防止の前提条件であるし、それがまた一番大事な問題だ、こう思うのです。
 その意味において安全衛生委員会、こういうものをつくって労働者がそれに参加するという制度をここで採用されたということは、その意味においては一歩前進である、こう評価しますが、特に私はこの法律を見て、労働安全衛生委員会の設置というものが一定規模以上の企業でなければ置かない、置けない。むしろ労働災害が多発し、労使が一体になって災害防止に取り組むべきものは、この法律で除いておる一定規模以下の中小零細企業、こういうところに一番大事な問題があるのじゃなかろうか、私はこう考えるのです。そういう点から見ると、せっかく労働安全衛生委員会をつくられて労働組合の代表も参加する、こういうことになっておりますが、なぜ一定規模以下についてこれを除外する措置を講じたのか。そういう企業をどうして労働安全の確保という点から見て守っていくのか、これをお尋ねします。
#143
○渡邊(健)政府委員 労働安全衛生を確保してまいります上につきましては十分労働者の意向が反映されることが必要であることは先生御指摘のとおりだ、かように思うわけでございます。ところでその場合にある程度以下の小さな零細中小規模でございますと、事業主がみずから全体の従業員を掌握いたしまして、十分個々の労働者の作業の実態あるいはその意向等も掌握しながら業務を行なっていくことが困難でなく、一般にそういうことが可能だと期待されるわけでございますので、安全衛生委員会といったような機構、小人数のところでそこまでしなくとも十分安全衛生の最終責任を持っております事業主が労働者の意向をくみ上げながら処置することが可能であろう、かように考えたわけでございます。
#144
○田畑委員 一定規模というと幾らですか。一定規模以上については、労働者が参加することによって安全衛生がより確保される、一定規模以下については事業主の責任でやれば十分だ、これは理屈にならぬのじゃないですか。
#145
○渡邊(健)政府委員 安全衛生委員会は百人以上の事業場において設けることを考えておるわけでございまして、先ほども申しましたように、それ以下のような零細ないしは中小の規模の事業場であれば、使用者が労働者の意向をみずから十分把握いたしまして、その意向をくみながら安全衛生にみずから責任をもって当たるということが可能であろう。したがいまして別にそういう機構を設け、あるいは使用者から半数、労働者から半数というような形で安全衛生の問題について意見を聞き、それでやるというようなことまでしなくとも、最終責任者である事業主みずからが直接的にこの意向を把握して、安全衛生対策を講ずることができるのではないか、かように考えているわけでございます。
#146
○田畑委員 いまの点、私は局長のお答えを聞いていても納得できない。答えになっていないと思うのです。労働安全衛生に対する労働者の監視、あるいはそういう問題について労働者の代表があくまでも参加していく、これは絶対に欠かしてはならぬ。それは企業の規模の大きいとか小さいとかの問題じゃないと思うのです。
 あなた方の考えはわかりましたが、この新法の第九十七条によりますと、労働者の申告ということで、労働者に対して一つの行動の保障がなされております。すなわち、「労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働基準局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告することができる。」第二項は「事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。」この第九十七条、これは基準法にもございますが、こういう立法によって、法律のこの根拠規定によって、労働者が具体的に自分の職場について、あるいは安全について、衛生について、危険業務等について積極的に関係機関に意見を述べて、これに基づいて監督機関が行動を起こした、こういう実例等はあるのかないのか、あるとすればどの程度、どういうケースなのか、これをあげてもらいたいと思う。
#147
○渡邊(健)政府委員 労働者から申告がありました件数はたくさんあるわけでございまして、昭和四十五年中に労働基準監督機関が取り扱いました申告件数は、前年度からの繰り越し分も含めますと約二万七千件あるわけでございまして、そういう申告を受けまして監督機関は監督を実施し、違反を認めたものに対してはその是正をさせているところでございます。
#148
○田畑委員 私は、こういう条文を置くとすれば、たとえば労働安全衛生委員会等は、その構成は労使が半分ずつ、そしてその議長はそれぞれ交代する、こういうような仕組みなどもこの労働安全衛生委員会の今後の運用については当然採用されるべきであると考えるが、その点はどうなるのか。また、委員会の開催等についても、たとえば毎月一回開催する、一方の側の委員から申し出があれば随時委員会を開催する、こういうような運営等が当然保障されておると思うが、そのように運営されるのかどうか。また、安全衛生に関する事項というのは、すべてこの労働安全衛生委員会の議を必ず経なければならぬ、このような運用になるものと思うが、その点はどうなのか。あるいはまた安全衛生に関する事項についての点検、調査、予防措置、こういうような点等についてもこの委員会にそのような権限を独自に付与すべきであると思うが、運用等についてはそのように運用なさるのかどうか、この点質問した問題についてお答え願いたい。
#149
○渡邊(健)政府委員 安全衛生委員会の任務はそれぞれ十七条及び十八条に規定をされておるわけでございまして、その任務のみならず構成等についても規定があるわけでございます。先生御指摘のように、半数の委員は労働者の推薦に基づきまして、残りの半数は事業主が指名をいたした者であるわけでございます。ただ、この安全衛生委員会というのは労使の安全衛生についての協力関係の形成の場、私どもさような性格のものと考え、そしてそういうところの意見を徴して安全衛生を推進する責任は事業主、こういう関係にあると思うのでございます。そういう意味で安全衛生そのものの実施責任は使用者にある、こういう意味からいたしまして、議長は、法律によりまして一応使用者側の委員かなることになっておるわけでございます。
 それからこの安全衛生委員会は、その任務といたしまして、安全や衛生の基本となるべき対策あるいは労働災害の原因及び再発防止対策等々につきまして所掌し、そういう安全衛生に関する重要事項を審議することになっておるわけでございますので、そういう審議に必要な限度においては使用者側から必要な事情を聴取し、あるいは災害等が起きました場合にその原因の調査等を行なうことは、当然にできるものと考えておるわけでございますが、その詳細な運営につきましては、それぞれの事業場におきまして労使が話し合って円滑に運営することが、こういう協力関係形成の場という意味において適当であろう、こういうことで法律で直接、ちょうど法律上の審議会のようなこまかい運営についての一々の規定はいたしておりませんので、それらにつきましては当該労使が話し合って円滑な運営をしていただくことを期待いたしておるわけでございます。
 なお法律におきましては、その安全衛生委員会のいろいろな構成等につきましても、「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。」というような規定も設けておるわけでございまして、これはやはり協力関係形成の場ということからいたしまして、労使の自主性というものを尊重し円滑な運営を期待いたしておる、こういう考え方に立っておるわけでございます。
#150
○田畑委員 私は幾つかの点をあげてあなたの答弁を求めたわけですが、その点には触れないままに、この条文を中心にして説明された。労働安全衛生委員会の運営についてはこの条文のような中身で取り扱うかもしれないが、いろいろ委員会を必要な場合を開く、そしてその事業場における労働安全衛生等について、すべて委員会の議を経てやっていくんだ、それはあくまでも労使の話し合いでやる、こういうような姿勢で行くんだと思うが、そういう問題については、今度この法律に基づいてできる安全衛生委員会の運用等については、私はもっと具体的な基準というものが当然示されると思うんだが、それは労働省のほうでなさるのかどうか、その点はどうですか。
#151
○北川(俊)政府委員 先生指摘の点幾つかございましたが、安全委員会で労働災害の防止に関する基本的事項その他云々と書いてございますので、安全及び衛生に関する事項はすべてこの委員会にかかるとわれわれは期待いたしております。
 それから安全委員会、衛生委員会の開催でございますけれども、私たちは、月一回程度は少なくとも開くべきである、あるいは労働側委員の要求があれば当然開くべきである、こういう点につきましては、行政指導といたしまして指導基準でそういう基準をはっきりと示したい、こう考えております。
 なお議長の件に対しましては、局長が答えましたように、当該労使の間で、組合からも議長を交互に出すというような取りきめがある場合には、当然そうなさる、こう考えます。
#152
○田畑委員 部長の答弁どおり、運営にあたっては、あくまでも労使の自主的な運営協力体制、これが前提でありますが、やはり職場の労働安全に関する事項は必ずこの委員会を通じてやるような指導を今後進められることを希望しておきます。
 それから「第四章 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」、こういうことで、法律二十条から二十五条の間に、先ほどの答弁の中にもございましたが、事業者の講ずべき措置等が述べられております。きょう実は国鉄の関係者に来ていただいておりますが、国鉄の線路の保守作業というような屋外労働等における作業に適用するのはこの条文のどれに当たるのか。それからまた、国鉄だけではもちろんございませんが、屋外労働となってきますると、夏の暑いときに、あるいは冬の寒いときにこういうことが当然出てくるわけであります。いま申し上げた国鉄の保線作業等を見ますと、夏は摂氏五十五度とか、冬の寒いときは氷点下十度とか、こういうようなきびしい暑さ寒さの中で屋外作業がなされるわけでございますが、こういう屋外作業等については、この法律のどの条文で規制されていくのか、この点明確にひとつ説明願いたいと思うのです。
#153
○北川(俊)政府委員 国鉄で行なわれます保線業作その他屋外労働につきまして、この法律の防止基準でございますが、いま先生御指摘の高温あるいは非常に低い温度というような屋外作業場につきましては、二十三条の二号に、高温、低温、あるいはまくら木等を敷きます場合の敷石等の固めの際の振動というような問題も、この条項でやりたいと考えております。それからそれ以外の、たとえば建設も含めて屋外労働というのは災害が多いわけでございますが、それは二十一条及び二十二条、こういう関係で関連の規則を整備いたしたい、こう考えます。
#154
○田畑委員 この法律が労働基準法と異なっておる点は、積極的に快適な作業環境の形成を促進する、これだと思いますね。いわば目玉商品、こう言えると思うのです。ところが、新法では、労災防止についてのたとえば技術指針とか望ましい作業環境の標準、これを公表する旨の規定が置かれておるが、内容については全く触れていない。まことに抽象的である。新法の二十八条第二項にいわゆる「望ましい作業環境の標準」、一体これは何なのか、こういうことを実はその観点からお尋ねするわけでありまするが、国鉄のあの列車の汚物ですね、それは国鉄の特に屋外で働く職員にとってもたいへんな問題だし、国民にとってもたいへん迷惑なことだ、こう思うのですね。国鉄における列車便所の構造は、新幹線を除いたほとんどが開放されてたれ流しだ。これの改善措置は緊急の課題だと、私はこう思うのです。国鉄の例の安全衛生についても、これは労働省が見ることになっているのだが、こういう点についてはどう見ておるのか、現状についていいとお考えで見ていらっしゃるのか、これが一つです。これはこの委員会でもかって問題になったわけでありますが、国鉄のほうから、この国鉄の汚物のたれ流しについて一体どういう計画を持ってこの安全衛生についてきちんとした始末をつけるおつもりなのか、計画等がもちろんあると思いますが、それについてこの際簡単に触れていただきたいと思うのです。
#155
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘の国鉄の列車による汚物のたれ流し等につきましては、私どもまことに望ましくない事態であると考えておるわけでございます。国鉄当局に対しましても、ふん尿が飛散いたしませんよう車両の改善と、ふん尿の処理基地の整備並びに保線業務などふん尿による汚染が考えられる労働者の除染や健康管理の措置などを推進するように指導をいたしておるところでございます。
 なお、車両やふん尿処理基地の改善整備につきましては、国鉄のほうで計画的に進められている、かようにわれわれ承知いたしておりますが、さらに推進していただくよう今後とも指導してまいりたい、かように考えております。
#156
○山口説明員 汚物の処理につきましては、新幹線は従来のような形で全部ついておりますが、在来線につきましては新幹線と同じような循環式のタンクで処理をする計画でございます。第一次の計画といたしましては、品川、田町、向町、宮原、南福岡、幕張というようなところから順次つくりたいと思います。いろいろ思うようにいきませんで、たいへん手間どっておりますけれども、これはやはり地元との折衝がなかなかうまくいかないということと、基地の中の線路構造の変化でございますので、工事がなかなか手間どるということでございますが、鋭意進めました結果、向町を除きましては大体着工の見通しがついてまいりましたので、逐次鋭意これを進めてまいりたい、かように思っております。
 この五基地で要する地上施設の金が約二十億、それから車両の関係が三十八億、トータルで約五十数億でございます。
#157
○田畑委員 国鉄の常務理事さんにいろいろお尋ねしたいのですけれども、それをしますと時間がかかり過ぎるようだから、これはやめます。私もここに列車汚物処理の改善について国鉄が今後の計画を具体的に明らかにしておる資料なども持っておりますが、これは一々に触れません。
 ただ、私、労働省にお尋ねすることは、国鉄の汚物処理の計画等を見ますると、たれ流しというのはまだ相当先にわたるのじゃないかと思うのですね。今度安全についてこの法律ができればとても安全衛生は確保されるといって、あなた、先ほどから聞いていると、もうこの法律が通れば何でも労働者の職場における安全あるいは衛生関係は確保されるように――ましてやこの法律の目玉商品は快適な作業環境でしょう。この快適な作業環境と国鉄の汚物のたれ流し、そしてまた国鉄の屋外の職員の作業の状況を考えるならば、この法律の快適な環境づくりとはおよそ似ても似つかぬ問題だと思うのですね。これはやはり大臣、国鉄は新しい十年計画を立てて、国鉄の運賃その他値上げをやって施設の整備等々をやるわけでありますが、国鉄の中の問題として、安全衛生の面から見るとこのような問題があるわけですから、こういうような点等については閣議の中等でひとつ運輸大臣等にも労働大臣の立場から苦情を述べて、問題の解決を急ぐべきであると思うのだが、大臣ひとつ御見解を承りたい。
#158
○塚原国務大臣 いまの御質問の一番先に石炭の問題が出ましたが、私もそれについては非常に研究いたしたこともありまするが、今度の段階においては先ほど局長が答弁いたしましたように、ずいぶん関係省と想は練りましたけれども、従来のいきさつからこうなったのでありまして、決してなわ張りだけではない。しかしこれはやはり将来考えなければならぬ問題だと考えております。
 それからいまの国鉄の問題まくら木の問題あるいは寒いところ暑いところ、そしてまた汚物等、かなりの金を国鉄としてもかけておるようでありますが、しかしまだそれはごく散発したものにすぎないと私は考えております。事実そういうものに当たる方々の御苦労を察しますと、これは並みたいていのものではないと考えております。
 それから、これで何もかもということにはこれはなかなかまいりません。提案者としてそういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、しかし私はベストではないベターであるということをこの前も申し上げましたように、これによってさらにまた前進を続けていく体制をとることが今日は望ましい姿である。
 なお、閣議等において関係閣僚に対して申し入れろということ、これは承知いたしました。
#159
○田畑委員 もう一つだけ国鉄の問題についてお尋ねをしたいのですが、これは北川部長でけっこうですが、これまた国鉄の保線作業などを見ますと、施設関係の屋外作業というものは非常に危険なんですね。トンネルあり、トンネルの中であるいは橋梁で、高架橋で、踏切で作業をやっておる。こういう狭い場所での作業ですから、列車が来ると待避しなくちゃならぬ。照明が不足である。高いところでいろいろ交換作業をする。また、踏切のような交通のひんぱんなところで仕事をやらねばならぬ。まことにこれはたいへんだと思うのです。夜間作業等についても、いろいろ労使の協定の中にありますが、たとえば保線区の職員などは夜間の勤務、夜は十回まで、こういう協定を結んで夜間勤務に服しているわけです。実は国鉄の施設関係の屋外作業における車両に触れる死亡事故を見ますと、特に保線区関係、こういう職場の死亡事故等が非常に大きいのですね。今度の新法等においてはこういう問題についてはどこで解決されるのか。こういう問題等について労働省は国鉄に安全の確保等について、従前もなさったであろうと思いますが、勧告なりあるいは助言なりどのようになさっておるのか、また今後なされようとするのか、これを明らかにしていただきたい。
#160
○北川(俊)政府委員 私も先般施設関係の労働組合の代表の方から、保線工事の実務に携わっておられる方々の御苦労あるいはその危険というものをつぶさに承りました。また来週月曜日、二十四日にも組合の方々が多数おいでになりまして実情を訴えたいということで、その際にも詳細伺うつもりでおりますけれども、この法律によりまして、先ほど大臣が申しましたように、すぐに万全とはまいりませんけれども、少なくとも安全衛生につきましてこれだけの法律をやります以上、一歩こういう屋外労働で恵まれない条件あるいは危険な作業場所で働いている方に恩恵が及ぶようにということを心がけたいと思っております。先ほど先生御指摘のように、二十条から二十五条までに一応の危害防止基準が書いてございますけれども、これによって新しい危害防止のそれぞれの省令をつくります際に、いままで欠けておりましたところのたとえば清掃とかあるいは保線関係、そういう関係の規定をぜひ新たに入れて、従来の足りない点を補いたいと思います。また法律だけではございませんで、今回の法律が働きやすい職場あるいは非常に望ましい環境ということをも目ざしておりますので、そういう点につきまして、たとえば洗身、からだの洗い方、その設備の利用のしかた、そういうようなことは規則でなくて、実情に合わせて国鉄の当局にお願いをする、あるいは助言を申し上げるというようなことは、実情を十分踏まえた上でやりたいと思っております。
#161
○田畑委員 これは大臣からお答えをいただきたいと思うのですが、安全衛生行政を確保する、このための新法であるわけでありますが、この法律の条文をあちこち見ますと、安全衛生専門官であるとか安全衛生コンサルタント、さらには産業医、労働衛生指導医などの制度を設ける、こうなっておりますね。労働災実防止のため国が金融上の措置を講ずる、融資の措置を講ずる、あるいは技術上の援助を与える、こういう規定も各所に出ておるわけです。しかし私は一番大事なことは、このように自然環境が破壊されて公害が起きて、人間の健康保持というものが一番大事な問題となり、いわば価値観の転換すらも行なわれようとするいまの世の中です。環境が日に日に変わっていく。作業環境もそうです。新しい化学物質、これがまた登場してしばらくたつと、意外にこれが職業病発生の原因になっておる。こういうのが繰り返され繰り返され今日にきておるわけですね。私は、やはり衛生管理というものを効果的に達成するのには、単に制度や体制だけをあれこれ並べてもこれは何ともしようがないのじゃないかという感じもするわけです。たまたまこの法律に見ますと、第十三条には産業医を置いてかくかくする、こうなっておりますね。それでまた法律九十五条によれば衛生指導医を置く、こうなっておりますね。しかし法九十五条の衛生指導医というのは、これは非常勤だ、こうなっておる。一体非常勤で大事なことができるのかということですね。先ほど来労働基準監督官の数の問題についていろいろ議論されておりますが、あるいは私も後ほど触れるかもしれませんが、この衛生関係の仕事、安全関係の仕事を確保するためにはどうしても産業医の確保、医者の確保、この問題が一番大事な問題だ、こう思うんだが、しかし一体この産業医であるとか労働衛生専門医というのはどう確保するかという問題ですね。一体いま労働省関係で、基準局などにどれくらいの医者がいらっしゃるのか。一体定員に対してどれだけ実在するのか。こういう医者の面から見た場合、せっかくこのようないい法律――いい法律というとまたほめたようなことになりますが、法律はつくっても大事なお医者さんがいないんじゃ、これは何ともしようがないのじゃないかということを私は痛感するのです。一体労働医とか産業労働医、労働医学、こういう分野などを考えてみますと、これはまだまだ安心のできる状況ではない、こう思うんだが、この点について一体労働省としてはどう考えていらっしゃるのか。この法律ができたら、私がいま申し上げたような医者の確保等について準備があるのかないのか、この点を局長並びに大臣からひとつお答えをいただきたい、こう思うのです。
#162
○渡邊(健)政府委員 現在基準局関係で、医師である労働基準監督官は六名、その他の労働衛生関係の職員を含めましても、常勤である医師である職員は九名でございます。もちろんこれではわれわれが企図いたしております労働衛生の行政の推進に十分ではございませんので、大学等に勤務されている医師の方々の御協力を得る体制を順次つくってきたところでございまして、現在そういう意味で非常勤の医師の方々が合計で百十一名おられるわけでございます。さらに四十七年度におきましては、労働衛生指導医、これは非常勤の方でございますが、これは全都道府県に四十六名設置するということで、現在は十一名でございますから、三十五名分がふえるわけでございまして、そういう経費が計上をされておるところでございます。今後におきましても、健康問題に関する行政需要は増大すると考えられますので、行政部内の常勤の医師等職員の確保に極力努力いたしますとともに、それで足りない点につきましては、大学等に勤務される医師に委嘱をいたしまして、労働衛生行政を進める上で必要な医学的な問題について御意見を伺ったり、あるいは御指導を願ったり、あるいは御援助を受ける、こういうようなことによりまして、労働衛生行政に支障のないようにしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#163
○田畑委員 一体それで、常勤の医師が九名、非常勤の医師が百十一名でしたか、私のお尋ねすることはこの新法ができて、今後労働安全衛生行政を全うするためには、産業医であるとか、あるいは先ほど申し上げた府県に置く衛生指導医ですか、これを確保しなければ、これは法律をつくっただけにすぎないのじゃないか。この程度では、医師確保が困難なときに、大臣、労働関係の必要とするお医者さんを、産業上のお医者さんをどう確保するかということが私は一番大きな問題じゃないかと思うのです。
 そこで、私が大臣にお尋ねするのは、自治省が僻地医療ということで自治医大構想というものを秋田自治大臣のとき打ち出して、それがもうすでに具体的になったわけですよ。いま労働福祉事業団というのがいろいろ労災病院を経営なさって、医療を担当なさっておるが、医師の養成というのはもちろんこれは畑が違いますから、そこまではもちろん踏み込んでいないのだが、やっぱり私は、労災保険特別会計というのはあれだけの金を持ち、あの中の福祉施設というような問題も考えるならば、産業医をどう養成するか、どう確保するかという立場から、私は労働大臣としても、成るか成らぬかは別として、ひとつアドバルーンを上げたほうが、塚原労相のためにも私は大いにプラスじゃないか。また一それを必要としておるんじゃないか。この法律を考えてみますと、だんだん検討してみますと、産業医だとか衛生専門官とかいろいろいっておりますけれども、これは医者がなければとても安全衛生というのは進められませんよ。私はそういう意味において、この際ひとつ労働医学の今後の形成、あるいは産業労働に必要な医者をどう確保するかという問題等について、もっと労働省としても積極的に検討してみられたらどうであろうか、こういう構想を申し上げたいのでありますが、大臣、ひとつ御所見を承っておきたいと思うのです。
#164
○塚原国務大臣 労働基準監督官それから安全衛生専門官、それと並んで今度この医師という問題が大きくクローズアップされてまいったわけであります。田畑委員御指摘のように、医師というものは一般においてもいま非常に問題も多い、また人数もきわめて少ない、これは一つの大きな社会問題であり、政治問題になっておると私は考えております。しかも一方において、労働災害の起きる裏側にはいろいろな機械類の非常に大型化したものや、日進月歩新しいもの、その他これに対応性がないため事故を起こすというような悲惨な状況もこれは防がなければなりませんし、また一方においては、これから激増するであろう職業病というものに対応していかなければならない。いま局長があげた数字は、なるほどこれではとうていその要望を満たすことができないと私は考えております。しかし、それぞれの学識経験者並びに医者の方の御協力をいただきまして、まずここのところは新しく起きる職業病、それからまた労働災害によるいろいろな疾病というものに対して、まずそれぞれの対応策を練っておくことが必要でありまするが、究極においては、いま田畑さんの御指摘のように、労働産業医と申しまするか、この法律の中では衛生指導医とか労働指導医ということばを使っておりまするが、労働関係を専門になさる医者の養成をどうするかということを、これは一労働省の問題ではなく、政治として大きく取り上げなければならない問題であると私は考えておりまするので、いま二、三のお話も出ましたけれども、今後どういう形でこれをやりますか、これはほんとうに真剣に取り組まなければならない問題であると思っております。仏つくって魂入れずというようなことがあったらたいへんでございまするので、いまの非常によき御意見を私も身にしみて感じておりまするので、これに対処いたす考えであります。
#165
○田畑委員 ぜひひとつそれは御検討いただきたいと思います。また、私はできると思うのです。御努力を願いたいと思います。
 時間も間もなく来ますので、今度はまとめて最低賃金の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、最低賃金推進計画によって、昨年来ほとんどの地方が最低賃金審議会で地域別最低賃金の審議が進められております。その結果、今年の三月末までに九県の地域別最低賃金が決定され、それぞれの県の労働者が最低賃金の適用を受けるようになったのは一つの前進であるわけですが、その他の県でも早急に地域別最低賃金が決定されるのが望ましいわけでありますが、いつごろまでにその他の府県について最低賃金の決定がなされるのか、その見通しいかん、これが一つ。
 第二にお尋ねしたいことは、ところで、この地域別最低賃金の審議のため、昨年地方労働基準局で賃金水準の低いと思われる業種及び職種の賃金水準の特別な調査を実施したようでありますが、その資料によると、これらの賃金の中で、その地方でその職種や業種について最低賃金がすでに決定されておるのに、その最低賃金に満たない賃金しか払っていない使用者がかなりおることが判明したわけです。これはどこの県とどこの県というようなことは、時間がないので申し上げません。そこで、私は局長にお尋ねしたいのですが、先般最低賃金法の改正で、いわゆる業者間協定方式がなくなり廃止されて、最低賃金決定が十一条方式、「労働協約に基く地域的最低賃金」と、十六条方式、「最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金」、これに移ったわけです。この法律改正によって、低賃金の労働者にとっては実質的なより高い賃金が保障されたということで、これは明るい法律の改正であったと、こう思うのでございますが、現実を調べてみると、賃金の支給が最低賃金を下回っておる業種があるわけですね。これもあれもいろいろ考えてみますと、やはり労働基準監督官というのが、最近は、これは当然のことであるが、労働の安全衛生の面に重点を置いて、結局この最低賃金の面等における指導監督行政が手抜きになっておる、そういう一面も否定できない。私はこの法律ができればますますそういうような傾向が強まってきやせぬかなあという感じがするわけです。この点については、どう労働省としては事態を把握しておるのか。こっちに重点を置くとこっちがおろそかになって問題が出てくる、こういうようなことをなくするためには一体どうすればよろしいのか、そこに労働基準監督官の充実などという問題が当然出てくるわけでありますが、この問題についていかに対処されようとするのか、この点ひとつお答えを願いたいと思います。
#166
○渡邊(健)政府委員 最低賃金法に基づく最低賃金の適用を受けておる労働者は、四十六年度末現在で一千五百八十万おるわけでございます。雇用労働者が全部で約三千三百万でございますので、まだ五割弱ではございますが、われわれといたしましては、昭和四十五年から五カ年計画によりまして、全労働者に最低賃金が適用されるように、最低賃金の設定を計画的に進めてまいりたい、こういうことで現在進んでおりますので、現在の計画で申しますと、昭和五十年には全労働者に最低賃金が設定、適用される、こういうことになるよう目標を定めていま進めておるところでございます。四十六年度末で千五百八十万という数字は、大体この五カ年計画の年次計画、おおむね順調にそれに沿って進んでおるわけでございまして、また、適用労働者の数がそういうようにふえておるだけでなくて、設定されます金額につきましても、昔の業者間協定時代から見ますると、非常に効果的に、実際の実勢賃金に、ある程度効果を持った額で決定されておるところでございまして、昭和四十六年度に決定されたものについて見ますると、中位数は日額で千百七十九円になっておるわけでございます。また、一ぺん設定されたものも、そのまま放置するということでなくて、最低賃金決定後も、その実効性を確保するために逐次改定をいたします。大体二年ぐらいのうちにはそれを改定するということで進んでおるわけでございまして、われわれ安全衛生に力を入れているから最低賃金がおろそかになっておるのではないかという御意見でございますが、昔の業者間協定時代から見れば、適用労働者の数におきましても、あるいは賃金の水準におきましても、はるかに当時よりは強力に推進をしておる、われわれはさように考えておるわけでございます。
 なお、このような最低賃金の設定、引き上げが行なわれておる反面、確かに先生御指摘のごとく、なおこの最低賃金に違反するものがあるということは、われわれはなはだ遺憾でございますが、昭和四十五年、六年の状況で申しますと、約八百件くらいの違反を発見をいたしておるわけでございますが、監督によりましてそういう違反を発見いたしましたときには、すみやかにその是正をさせておるところでございますし、今後とも最低賃金を設定いたしますと同時に、それが実際に守られるように強力に指導監督を進めてまいりたい、かように考えております。
#167
○田畑委員 私の時間が参りましたので、まだ質問ありますけれども、これで終わりたいんですが、また最後に私が労働大臣に希望することは、この法律によって労働安全衛生の確保、労働災害の防止、これをさらに徹底しよう、このことはよく理解されるわけでありますが、そのためには労働条件の最低基準の引き上げ、いま私が質問いたしました、せっかく最低賃金が設定されたのにそれが守られていない、こういうような問題などを改めること、また、しばしば予算委員会その他で質問がなされ、労働大臣も前向きの答弁をなされておりましたが、労働時間の短縮の問題、休日増加の問題等々、またやはりこの委員会でもしばしば質問がありましたように、関係のILO条約を批准する体制をすみやかに整備することが必要であろう、こういうような問題、また、これは実は質問しようと思っておりましたが、労災補償の充実、この問題などがやはりきめこまかく進められてこそ初めて、一体となって労働安全行政の充実ははかられるものだ、こう思うのです。今回この単独法を制定なさるだけで、これで終わったという気持ちではなくして、いま私が申し上げたような諸点について、今後ひとつ積極的に取り組んで、真に安心して働ける職場、安全衛生の確保の充実を期していただきたい。このことだけを大臣に強く要望申し上げて、私の質問を終わります。
#168
○谷垣委員長代理 寺前巖君。
#169
○寺前委員 参議院の御都合があるようですから、大臣に最初に……。私は、最後に、条文を幾つか検討した内容の結果として大臣にお答えをいただきたいというふうに思っておったのですが、時間の関係があるようなので、大臣に基本的な姿勢を一、二ちょっと聞いてみたいと思うのです。
 それは、労働安全衛生法案が出されたことをめぐって、労働者の中で、労働基準法という総合的な立法、それは他の法案に見られる基本法と違って、罰則規定までもったところの、労働者の最低基準をきめて、それ以上に向かって前進させるという、総合立法があったのである、これがこういうふうに、最賃法という形で賃金の一部分が別法になっていく、あの基準法が一つずつ抜き取られていって、そして総合立法としての、労働者の単なる基本法ではなくして罰則までもったところの重要な基準を、くずされていくのではないかという懸念が多くの労働者の中で意見として出ているわけです。
 そこで、この宣言的規定である第一章の総則の第一条(目的)のところで、「労働基準法と相まって、」これこれのことを目的としてやっていくんだというふうにこの法律でうたっているわけですが、この「相まって」ということ自身が、どのように解釈したらいいものだろうかということでまた疑問をみな持っているわけです。
 そこで私は、法案上の話はあとで局長さんからお話を願うということにして、まず、大臣が、労働基準法の総合立法を、こういう法案をつくったからといって、くずさないのだ、これらの法案を含めて基準法というのは保障されていくのだという、ふうな立場をとられるのかどうか、この基本的なお考えを第一点としてお聞きしたいというふうに思います。
 第二番目に、この間の社会労働委員会で、橋本委員のほうから、健康管理手帳といいましたか、質問が出ました。橋本委員がそのときに提起しておられたのは、いま労働者の中で、ベンジジンというものを製造しておった、ところがベンジジンを製造しておった労働者は、これがガンになるということがだんだん明らかになってきた。しかし潜伏期間というのが十数年、二十年もかかっているから、あとからこの問題が問題になる。これは非常に危険なものだということで、もうすでに製造は中止されてしまっている。こういう過去の歴史的な事態から、もうすでに前の社会労働委員会で局長から明らかにされたことですが、これらの問題について、後日労災保険の適用をするようにしたいということは当委員会ですでに明らかになってきておったものですけれども、五十五条で、こういう発ガン性の物質をきめて、これをきちっと製造禁止するという指定をやってしまっている。ところが危険なものは、発ガン性物質についても他にもある、それらは対策を施すことができるから五十六条という形で違う形の規制をすることにしている。そこで橋本委員が提起しておった問題というのは、製造禁止してしまったものについて健康管理手帳をつくって後日の対象にしていくというのはおかしな話じゃないか、規制をしたところの分野について、後日これが問題になってきた場合に、当然その当時の健康管理手帳を渡しておったことによってそれに対する対策を組んでいかれるべきではないのかという質問が主要な内容だと私は思うのです。六十七条ですか、健康管理手帳の問題が出されておりました。常識的に考えて、ほんとうに後日問題になる性格の有害物質に対して手を打っておくということに、健康管理手帳の重要な使命があるのではないかと思うのですが、労働大臣はこの橋本委員の発言を聞いておられてどういうふうにお考えになっているのか、労働大臣の見解を聞きたいと思うのです。
 二点です。細部についてはあとからまた局長とやります。
#170
○塚原国務大臣 第一の質問でございます労働基準法との関係でございますが、これが形骸化するというか、何か骨抜きにするという意味の御発言でございましたが、そういうことは全然ございません。これは杞憂でございます。「相まって」ということば、これは日本語はなかなか微妙なものがありますが、文字どおり「相まって」でありまして、こういうふうな規定をいたし、両者の付帯の関係を明らかにいたしております。労働基準法の基本原則は完全に新法にも適用があるということになっておりまして、その行政の運用についてはこれを十分配慮してまいりますから、それは杞憂でございます。
 それから第二の、橋本龍太郎君の御質問のときは、私ちょっと予算委員会の関係でここにおりませんで、あとから橋本君から部屋でそのお話を伺いましたので、そのやりとりをよく存じませんから、これは局長からひとつ答弁させまして、何か私が申し上げることがございましたらまた申し上げたいと思います。
#171
○寺前委員 それでは、それでけっこうです。
 それでは、私はいまの第二の問題についてお聞きをしたいというふうに思います。
 この五十五条で「重度の健康障害を生ずる物」とということを規定しております。「黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。」これは政令できめられるようですが、一体何をさしておられるのか、何種類のものか、私はこれは教えてほしいと思うのですが、ちょっと全体について触れてみたいと思うのです。
 私の理解に誤りがなければ、健康障害を防止するという立場について、二十三条ですか、書かれていると思うのです。二十三条に「事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」健康障害全体についてはこういう措置をしなければならない。その中で、五十六条で「労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物」というワクをその次に設けていると思うのです。そして五十五条で「健康障害を生ずる物」ということでワクをしぼっておる。ですから、この三つの段階というのが全体として取り締まりの分類になっているのだろうというふうに私は理解する。
 そこで、一番大ワクの有害物質というのは一体どういう種類の数を選定しようとしておられるのか。その次に、「おそれのある物」というのはどのくらいの数を集約しようとしておられるのか。それから明確に禁止するものにはどれだけの数を対象にしておられるのか。この全貌について最初に説明していただきたいと思うのです。
#172
○北川(俊)政府委員 まず先生のおっしゃいました、一番外円の広いものにつきましては、現在特定化学物質等障害予防規則の四十三、それからそれ以外に有機溶剤の五十、あるいは四アルキル鉛、あるいは鉛中毒の鉛、そういうものを含めまして約百二十程度あるのではないかと思います。
 それから次におっしゃいました五十六条の製造許可の対象になる物質につきましては、法律にあげておりますジクロルベンジジンのほか、アルファナフチルアミン、ジアニシジン、オルソトリジン、この四種類を一応予定をいたしております。
 一番規制のきつい製造禁止につきましては、法律に書いてございます黄燐マッチ、ベンジジンのほかに、ベータナフチルアミン、四アミノジフェニール、四ニトロジフェニール及びベンゼンを含有するゴムのり、これだけのものを考えております。
#173
○寺前委員 そこで私は、二十三条に基づくところの有害物質百二十の問題ですが、これは全体として危険物の取り扱いの問題の場合ですが、それが船の荷役のときには対象として六百余りのものがあるでしょう。六百くらいあるのではないですか。船の荷役の場合には有害物質として非常にたくさんの名前をあげていますよ。荷役のほうはこれだけ従来重視してきているのにもかかわらず、なぜ全体の労働者の予防対策として――健康にやはり障害を及ぼす将来性のものを考えればこそ、たくさんの対象を明確にしておると思うのです。なぜそれをずっと狭めた百二十にしてきているのかということについて聞きたいと思うのです。
#174
○北川(俊)政府委員 私、先生のいま御指摘の船舶の危険物というものがどういう観点で、どういう法規に基づいて指摘されておるものか存じませんので、それとの比較という点ではちょっといまできませんけれども、私が申しました百二十程度の、現行の労働基準法及びそれに基づく規則によりまして規定をいたしておりますものにつきましては、いままでの障害事例あるいはその毒性等で職場で起こる可能性があるというものにつきましてはわれわれは網羅をしておる、こういうふうに考えているわけであります。
#175
○寺前委員 私はこのものはもっと対象を広げる必要があると思いますね。従来労働省が指導しておられた法律によっても三百か四百か、何か対象にしておられたものもありましたね。そういうことから見ても百二十くらいにしぼってきているというのは、私は労働安全の健康に関する予防から見るならば、これは政令の範囲になる問題ですから、もっときびしい態度をとってもらう必要があるというふうに思うわけです。
 それからその次の四種類ですか、五十六条の対象を四種類とおっしゃっていましたね。
  〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
私はちょっと聞きたいのですが、これは五十五条と五十六条と一体にして見なければならない問題だと思うのですが、発ガン性の物質というのはたくさんあると思うのですね。大体発ガン性の物質というのは人間にとって、こういうものを曝露されたら、それはどうにもならないという性格のものだと思うのです。そこで、一九七一年のアメリカの産業衛生監督官会議の有害物許容濃度表という表を見たら、その中に、発ガン性に注意し、人体との接触を避けよとされて、許容濃度を全然示すことのできないという物質が、それを見ると九つ書いてあるのですよ。そうすると、少なくともこの九つというのは許容濃度の全然ないものだから、これは全体として五十五条の適用に入れてしまわなければならないんじゃないだろうか。その問題について一体どういうようにお考えになっているか聞きたいと思います。
#176
○北川(俊)政府委員 いま先生の御指摘は、アメリカのACGIHの数値をおっしゃったんだろうと思いますが、先生御承知のように、日本でもACGIHの数字を一応の抑制濃度といたしまして、これで環境の条件の整備をするように昭和三十年代から指導をいたしておるところでございます。したがいまして、先ほど先生御指摘のように、現在百二十ぐらい程度しか規制しておりませんが、これにつきましては、日本で生産をされておる、あるいはその障害が起こる可能性がある、こういうものにつきましては広く採用したつもりでございますが、なお御指摘のように、今後その範囲の拡大等につきましては、これから新しい化学物質等がどんどん採用されるわけでございますから、積極的に取り組みたいと考えております。ただ、いま御指摘の五十六条の(製造の許可)でございますが、日本でいま生産をされているガン原性物質の中で、規制をする必要があると思っているのがその四種類でございます。先生がおっしゃいましたようにACGIH、アメリカの監督官会議で指定をしておりますそれ以外の物質につきましては、私たちが調べたところ、日本では生産をされておらない、こういうような実態でございますのでいま対象からはずしておる、こういうことでございます。
#177
○寺前委員 私は、さっきの大臣の答弁ではありませんけれども、危険物について製造を禁止するということを大胆にやらなかったら、危険物ですから、そういう許容濃度のないものをばんとやってしまわなかったら、たとえば曝露しない対策を組んだといっても、それが爆発したときにはひどい目にあうのですから、こういうものについてはほんとうに慎重に取り扱わなければならない。動物実験で結果が出ているものは、人体実験で出ていないからどうのこうのでは、この前ちょっとそんな話があったけれども、それはちょっとひど過ぎる話だと私は思うのです。ですから、明らかに対策を組むことのできないものというのは製造すべきでない。だからそういうものは、これこれの種類があると明確になっている以上は、これは政令の範囲には違いないけれども、政令できびしく処置していくということは、後日問題になってから云々しても始まらないということで、これは積極的に手を打ってもらう必要があるということと、この問題との関連性で健康管理手帳の問題ですよ。健康管理手帳というのは、先ほども言ったように、過去にあったベンジジンの事実から、後日やはり考えなければならなくなってきた。ところがあのときでも論議なったように、その当時働いておった人がその後かわってしまった、わからなくなっているという事実も出てくるわけです。
 そこで、われわれはいろいろな実例から、皆さんもお考えになっていることとは思うのですけれども、やはり重要なことは、危険なものを取り扱っておるところ、それは被曝を避けるといういろいろな処置をしたとしても、それでもなおかついろいろな形であらわれてくる。たとえば、私の住んでいる京都では染色があります。それでベンジジンというのは、いま染色では禁止してしまっているし、またベンジジンが色素になって、染色になっている段階ではそれはもう危険物ではなくなっているのだ、こう言うけれども、実際上結果的にはいまだにまだ出てくるのですよ、西陣、染色地域においては。友禅の地域ですね。それは何かというと、トルエンとかキシレンとか、そういうものになったとしても、その過程でまだ残っているという結果もいろいろあるわけなんですね。だから単純でないわけですよ。そうすると、あれは製造が禁止されているはずだからということだけでは、合有物としては違う形で相当残っておるという場合もあるわけですね。そういう問題もあるし、あるいはまた単にこういうものじゃなくて、この前も、昭和四十四年ですか、名古屋の東亜合成でニッケルカルボニルの大爆発事故というのが起こっておる。そうすると、そういう爆発の結果、その当時労働者が五十八名ですか、他の会社の労働者が二十七名、市の消防団員が六十九名、この消火作業に加わった人たちが、全体としてこれが入院しなければならないという、発病するという事態が発生しているわけですね。だから事態の発生というのは、製造過程の一番基本のところで規制をしたからということだけでは済まない現象というのが結果的に出てくるわけです。あるいはまた、エックス線の仕事をしている人たちが何年かやっている間に被曝をしておって影響が出てくる、こういう問題があるわけです。そうすると、私はあの六十七条の(健康管理手帳)というのは、そういう歴史的な諸条件を考えた場合に、有害物質を取り扱っているとか、あるいはそういうような結果を残すようなもの、労働者全体に対して将来被害を受けるという結果を予想するならば、その退職時において健康診断をきちっとやって、健康管理手帳を渡しておいて、そして何年か後にそのことが発生した場合に、根拠を明確にするということで、将来救済するというものを考えなかったならば、製造禁止をしている五十五条だけ対象にしているということでは筋が通らない話になるのではないか、実態にも合わないのではないだろうかというふうに思うのですが、その辺の見解について聞きたいと思うのです。
#178
○北川(俊)政府委員 発ガン性物質については、先生御指摘のようにいろいろございます。たとえば、すす、コールタール、クレオソートの油、こういうものも発ガン性でありまして、それ以外にもILOでガン原性物質あるいは発ガン性物質としてあげられておるものは、あるいは五十を上回るのではないか。ただ今回製造を禁止いたしました物質、これはイギリスでもこれだけに限って製造禁止をいたしておりますけれども、それは労働災害として発生事例があまたあったということと、それからいかに密閉式装置をいたしましても防御しきれない、すなわち、非常に希薄な状態での汚染であっても、それがガン発生、しかも発生率が非常に高い、そういう事実から限定をしておるわけであります。すすとかコールタール等につきましては、われわれ日常生活でも触れるわけでありますけれども、それが非常に濃厚に汚染した場合にガンが発生するというようなものもございますので、この際、われわれとしては、将来そういう物質につきまして、加えるべきものについて検討するにやぶさかではございませんけれども、今回の場合はこれで十分ではないか、こう考えております。
#179
○寺前委員 いや、健康管理手帳の問題を言うわけですよ。いまそういうように片方で許しているわけでしょう、非常に危険なものが一ぱいあるけれども、それは製造を許している。一定の規制をするけれども。その規制をしてもはみ出していろいろな事故が起こっているというのが、現在労働者が災害を受けている実態でしょう。しかもそれが長期にわたって隠されて、そして十五年とか二十年とかたった後においてその結果があらわれてくるということを考えたら、労働者の職務に起因して、労務に起因して起こった事故に対して、将来を予想してその手を打ってやるということに健康管理手帳の重要な内容があるというふうに考えたら、当然のことながら五十五条を対象にするだけというのはおかしいではないか、それはもっともっと範囲を広げるべきではないか、しかもそれも単に有害物質というだけではなくて、たとえばこの間もあった話ですが、チェーンソーを使うところの労働者、炭鉱の労働者がチェーンソーを使っている、この労働者がやめて、何年がたって、ほかの仕事をしておって、そうして病気になってきて手のしびれがいろいろある。調べてみたらもとの職場におけるところの結果がそういう結果になっているのだということが、白ろう病問題として、たとえば昭和四十三年七月に愛知県の豊橋労働基準監督署で取り扱った事例の中からも明らかに出てくるわけです。その人は長崎県の炭鉱で、常時気温三十二度のところで働いておって、二十七年から三十八年までコールピックハンマーを使っていた。その人が昭和三十九年に豊橋にやってきて、そしてグラインダーの作業をやった。そして二年間仕事をしているけれども、手のしびれが出てきた。白ろう病という診断になってきた。そうしてずっと追跡していろいろ調べてみたら、もとはその仕事であった。これはガンの云々という問題ではなくて、過去の仕事の状況がそういう結果をつくった、こういう問題があるわけでしょう。だから私は有害物質についてもほんの限って、しぼってしまって、それも製造禁止するというしぼり方のところだけを問題にする。製造禁止にならないところのもので危険物というものは一ぱいある。五十六条の対象というのがそれだ。五十六条だけじゃなくて、あの二十三条の対象のものはみな危険性を含んでいるわけでしょう。そういう危険性のもの、さらにまた、いまも言ったように、そういう有害物質だけではなくして、仕事の内容そのものが将来にわたって危険を含んでくるもの、こういうものを全体として、やめるときに健康管理手帳としてきっちり持たして、将来それを基礎にして労働災害の判断をしていくというのは、常識的に考えてあたりまえじゃないか。それをなぜ五十五条という、しかもそれはほんにしぼったもので、製造禁止ということを明らかにしたものだけをなぜ対象にするのかということになったら、一体何を考えているのかわけがわからぬということはあたりまえと違いますかと私は言っておる。私はこの前の橋本さんの意見というのは当然だと思う。それでやってこそ初めて労働者の災害補償に対する国家的な、事業主に対する責務を果たしたというのがあたりまえだと思うのです。もう一度この問題について聞きたいと思うのです。
#180
○北川(俊)政府委員 先ほども申し上げましたし、また橋本先生のときも申し上げましたけれども、私たちが製造禁止の物質を一応の対象としまして健康管理手帳を発給いたしますゆえんのものは、職業の場で発生し、またそれが重篤な疾病であり、橋本先生御指摘のように遅発性である、潜伏期間があるということのほかに、防御策としてそれ以外はあり得ない、たとえ密閉式にやっても、あるいはバイエルのような、ドイツのような進んだ技術をしても、ガンの発生することを防止し得ない、そういう物質に限定してこの際手帳を発給する。それ以外のものにつきましては、むしろ二十条から二十五条までにきめておりますところの災害防止の対策というものを重点にやる、使用者がそれを重点にやることによって当然防ぎ得る、そういう考えでございます。
#181
○寺前委員 何ぼ言ったって、これは私はそんな考えだったら、ほんとうに、一体何のためにこういう法律をつくっているのかわけがわからぬと思うのです。一歩前進させる、ベターにするというのだったら、ベターにするからには筋を通したらいいと思うのです。あなた歴史的な事実で、ベンジジンの経験をもって、そこから遡及しなければならぬなという話になった。しかしそれはベンジジンだけじゃなくして、他の物質ついても同じことが言えるのじゃないか。現にそういう方向に向かっている。この労働者の災害状況に対して、筋を通して対策を組むのだというものとしてなぜ検討できないのだ。いま大臣は、この間橋本さんから直接ここで聞かなかったので、あとでちょっと聞いたということで、詳しいことを知らぬようなお話だったが、政務次官はこの前聞いておられたので、あなたこの問題についてほんとうにどういうふうに思われましたか。私は率直に聞かしてほしいと思います。
#182
○中山政府委員 北川安全衛生部長が先般来御答弁申し上げているとおり、労働省といたしましてはやはり労働災害、労働衛生の問題の管理につきましては、できる限りの手段をとりたいという考えでございます。
#183
○寺前委員 言ってる話がわからない。あなた、管理はやるのはあたりまえだというのだよ。手帳というのは、管理をやるといったっていろいろな事故が後日出てきているという結果の話でしょう。だから、後日出てきたときに、あの当時どういう健康状態であったかということをきちんと記録にとどめておいたら、それを基礎にしてその人の治療にも当たれるし、また労働災害補償としてそのめんどうも見ていくという、その対策になるのじゃないか、だから、その当時有害物質とか、あるいは危険な仕事についておった人たちの健康状態を全体として把握をして、そういう個別の手帳を本人たちに渡しておいたら、いい対策になるではないか、私は労働省はいいことを考えたといえると思う。それを、しぼったところの発ガン性物質の、またその中のほんの一部分、しかも製造禁止するものに限ってだけそういうやり方をするというのは、一体何を考えておるのかようわからぬというのが私は常識だと思う。政務次官もそれをふしぎに思わぬのかというのだ。そこだけですよ。まじめに考えたら、健康管理手帳というのはそういうものと違いますかと言うのです。どうです、もう一度聞きたいと思うのです。
#184
○中山政府委員 いまおっしゃる御趣旨の点は、十分そのとおりだと思います。ただ、発ガン性物質という問題が動物実験あるいは、人体実験はできませんから、動物実験で体重の差でいろいろと発病の差が出てくるということは、これはもう病理学的にもはっきり証明されているのは御案内のとおりであります。そういうことから考えていくと、やはりこういう問題の取り扱いについては、間違いなくそれが働く人たちの健康管理の上で有害であるという確実なデータに基づいてこういう問題を処理をしていく、そしてその問題が逐次あらわれてきた場合には、やはりこれも同様の扱いでその適用範囲を広げていくということは、私は当然考えるべきことであると思います。
#185
○寺前委員 何べん言ったって私はわからぬのだよ。危険物を製造禁止してしまうという問題でしょう。それから、それ以外の危険物はまだたくさんある、それについては規制をしていこうということでしょう。その規制にも五十六条による規制と二十三条による規制がある。私は、規制はいいと思うのだ。もっと積極的に規制を強化せよということを一つは提起しているのです。しかし、同時に、規制をしたってその結果被害を受けるという問題は別問題として生まれる。その当時これでいいと思っておったけれども、あとであれが悪かったという結果もいろいろの形で生まれてくるということもあるし、あるいは予測しない爆発によって被曝するという問題もあるし、いろいろな事態が生まれる。したがってその当時の労働者の健康状態をきちっと記録にとどめて、健康管理手帳を本人が持っておって、後日潜伏しておったものが出てきたりしたときに、その当時のことをずっと調べたら、本人の治療上もいいし、また労災の結果が、予測の結果がこういうことになったということの根拠にもなるし、いずれにしても将来その手帳というのは非常に有効な役割りをするじゃないか、だからそういう手帳を五十五条にしぼる必要はないじゃないか。もっと広げたらどうなのだ。こんなもの、あなた、思想とか信条の問題とちょっと違いますよ。筋の話を言っておるのです。だから、せっかくいい手帳をつくるのだったら、そういうふうにやられたらどうなんだということ、あなたもそう思うでしょう。思いませんか。私は、これがわからぬというのがふしぎでかなわぬ。私も質問したいことは一ぱいあるけれども、筋が全く通らぬ、わけがわからぬことを言われると、これだけはとことんはっきりしておかなかったら、ほんまにまじめにいいものをつくろうという気持ちになっておられること自身がわからぬようになるから、粘って同じことを何回も言っておる。政務次官、どう思います。
#186
○渡邊(健)政府委員 業務上の疾病につきましての健康管理は、原則的な立場は、使用者が、労働者を雇用していた者としてその健康管理をするのが原則であるわけでございます。したがいまして、この六十七条の二項で、健康管理手帳を交付いたしまして、離職後も、単に手帳を交付したというだけではなしに、その人たちについては、政府が健康管理手帳を所持している者に対して健康診断し、必要な措置を行なうということにいたしておりますが、これは、特別の措置を特定の人に対してはその実情にかんがみてとろう、こういう趣旨であるわけでございます。そこで、先生御指摘のとおり、労働者の健康にいろいろ障害を生ずるおそれがある物質は非常にたくさんあるわけでございまして、それらの物質の中には、その危険度の非常に重いもの、軽いものの差もございますし、それから将来、離職後そういういろいろな障害を発生する可能性の非常に高いもの、あるいは発生することが絶無とはいえないけれども、そういうものは非常にレアだ、そういうものもあるわけでございまして、政府が、先ほど申しましたように、離職後についてまで、使用者の責任でなくてみずから特別の措置をしようというのは、そういう特別の事態から、特別にそういうことを生ずるおそれが非常にあるものをまず取り上げていこうというのが、今回の趣旨であるわけでございます。
 そこで、発ガン物質の中でも五十五条に掲げましたようなものは、特に発生率が高くて、しかも事前に防止措置を講じようと思っても、現在の工業水準では非常に防止が困難そういう理由から禁止までする。しかもそれは一ぺんもし禁止前にそういう障害に曝露しておるとすれば、非常にそういう率が高い。したがってそういうものについては、特別の措置として政府がそういう手帳を与えて、自後政府の責任において健康診断等々をやろうということでございまして、そこまで至らないものにつきましては、現段階ではそこまでの措置をいまとるよりは、あるいは二十三条等の規制によって、今後そういうものについては実際に障害を生ずるおそれがないような事前の予防措置を講じていこう、あるいは同じガン原性のものでございましても、製造許可制度等によりまして、そういうものに対する密閉構造における製造等によりまして労働者に対する危害が防止できるものについては、まずそういう面で労働者がそういう障害にあうことをできるだけ予防していこう、そういうことでございまして、五十五条のそういう措置を幾ら努力いたしましても不可能な、しかも非常に発生率が高い、そういうものについて特別の措置をとろうというのが六十七条の健康管理手帳の考え方だ、こういうことであるわけでございます。
#187
○寺前委員 これは、このために時間がなくなってしまって、私は、この問題についてはこのままではどう考えたって筋が通らぬと思いますよ。この問題、私は保留です。橋本さんが問題提起したところから研究して、もう一度出てきてもらわなければふまじめだと思いますよ。危険物のほんの一部分、発ガン性物質のほんの一部分を政令できめますと言っておるんでしょう。それは、製造禁止させますと言っているんでしょう。私は、製造をどのように規制して、守るかという問題が一つの問題にしてあると言うんです。しかし同時に、労働者のからだの問題というのは、いろいろ措置をやったけれども、結果として出てくる問題があるから、それに対応する措置を六十七条の問題として見る。これは一体のようで、しかも違った性格も持っているわけです。予防であって、あとは疾病に対する対策上の問題ですから、それはそれとして、もっと現状から出発した場合には製造禁止物に限って健康手帳を渡すということになってくると、わけのわからぬことになるじゃないか。だからほんとうに労働者の災害を将来にわたって予防しようということだったら、もっと範囲を広げるべきではないかということに対して謙虚に検討してもらう。私は、謙虚に検討してもらえないのだったら、この問題について何ぼ聞いたってわからぬですよ、実際。この話は保留です。
 委員長、私はこの問題で、ほかに法律全般についてもう一点ほど聞きたかったのですけれども、きょうはお約束の時間がなくなりましたので、これでやめますけれども、再度質問の機会をお許しいただきたいということを私は要望して、終わりたいと思います。
#188
○森山委員長 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#189
○森山委員長 それでは、速記を始めてください。
     ――――◇―――――
#190
○森山委員長 次に、労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出があります。順次これを許します。山本政弘君。
#191
○山本(政)委員 昭和三十八年に三井鉱山の三川鉱が爆発いたしまして、四百五十八名が死に、八百三十六名がCO患者になって、四十一年十月に七百三十八名に労災の打ち切りが強行された。そうして極度に重症の六十四名については労災の補償があった。ところがそのうちに、四十七年の三月一日に二十三名について労災の打ち切りをする、こういう話が出てきておる。これは荒尾の職能訓練所で訓練をするという話でありますけれども、その中に三池労組が十九人いる。
 私が労働次官にお伺いしたいのは、三井鉱山のこの事故の責任というのは一体だれにあるとお思いになるのか。これが一つ。
 それから、政府がこの被害者について十分な補償を考えるべきであると思うが、この点についてどうお思いになるか、まずこの二つを次官のほうからお伺いしたい。
#192
○中山政府委員 この三井三池のガス爆発の責任はどこにあるかというお尋ねでありますが、その件につきましては使用者側にあるというふうに私は考えております。
 なお、事故にあわれた方々に対する補償の問題につきましては、労働者災害補償保険法に基づいて、これに対して十分な措置を講ずる、こういうように考えております。
#193
○山本(政)委員 いま次官から、使用者側にその責任がある、補償については政府も十分お考えになる、こういう話がありました。私はこの鉱山の爆発というのは、要するに保安を無視した合理化の強行というようなことで、保安を無視した結果というのがこの事故の原因を生んだ、こう思うのですよ。ところが、その人たちに労災打ち切りをする。そして荒尾の職能訓練所で訓練を受けさせ、政府がそれに対して交通費あるいは教材費として一日五百五十円を支払う、こういう話を実は聞いたわけであります。そして三井鉱山が一日三百円を支給するという話を聞いた。
 それでお伺いしたいわけですけれども、この被災者は家族もおられるのですよ。一家の支柱だと思うのですけれども、一日八百五十円で一体その人たちが生活できるとお思いになるのかどうか。この点は一体どうなんでしょうか。八百五十円ですよ。
#194
○渡邊(健)政府委員 三井の荒尾の訓練所に入っておられます方は、一酸化炭素中毒症になられましたあと一応治癒されまして、その認定がされた方々であるわけでございますが、そういう方々の中には、にわかに社会に復帰するということにつきまして、長年の療養生活等々からいたされまして困難な方があられるということで、そういう方々に対して、社会復帰を円滑ならしめるために、労災保険施設としての荒尾の職能回復訓練施設におきまして、一定期間訓練を実施することにいたしておるわけでございます。
 そういう意味で、この方々に差し上げております五百五十円というのは、その訓練に要する交通費、訓練教材費ということで差し上げておるわけでございまして、病気中の方々の生活を確保するためのいわゆる休業補償費というものと、支給申し上げておる趣旨が違っておるわけでございます。そういう意味で、金額的には、御指摘のように、生活費という観点からごらんになりますと、きわめて低いではないか、こういうお感じをお受けになることは、ある程度ごもっともと思うのでございますが、私どもといたしましては、これは休業補償という意味でなくて、訓練期間中の交通費、教材費として差し上げておる、こういう趣旨でございます。これにいたしましても、従来たしか四百四十円でありましたものを、幾らかでも楽に訓練が受けられますようにということで、今回金額の引き上げをはかったところでございます。
#195
○山本(政)委員 それでは、確認をいたしますけれども、交通費と教材費ということで五百五十円。そうすると会社の支給する三百円というのが生活費になるわけですか。
#196
○渡邊(健)政府委員 交通費、訓練教材費として支給いたしておりますほかに、会社と当該労働者の方々が現在いろいろ交渉されておるということは聞いておるわけでございます。その交渉がどういうことで進んでおるかは私、まだ詳細に承知いたしておりませんが、なお現在交渉中だというふうに理解をいたしておるわけでございます。
#197
○山本(政)委員 ここにその交渉の経過の書類がある。これによりますと、会社は三百円しか支給しないと言っているのです。そうしたら、あなたのおっしゃるような言い方になれば、三百円がまさに生活費になる。
 次官にお伺いしたいのですけれども、三百円で平均家族が生活をやっていけるかどうか。その点はひとつ率直にお伺いしたいのです。三百円ですよ。
#198
○中山政府委員 三百円と、金額はおしかりを受けるかわかりませんが、現地の物価の状態と社会の環境等も私は熟知いたしておりませんので、明確に御満足のいくような答えができないかもわかりませんけれども、今日の経済状況では、決して高額であるというふうには私は考えられません。
#199
○山本(政)委員 炭鉱の離職をした人が訓練手当を受けますね。これは労働省の所管ですよ。その月額の平均が二万八千二百二十円。そうしますと、この訓練に行かれる人が、三月十七日から訓練が始まって、四月十五日に三月分の賃金が支払われるわけですけれども、そうしますと、三月分の給料としては、十三日分、六千百五十円しか払われておらぬというわけです。私は、そういう飢餓賃金というものをあえて支給をしていくということは、生活を破壊して、一家四散せよということになりやしないだろうかと思うのです。先ほど訓練手当の月額平均二万八千二百二十円と申し上げたですけれども、これは基本手当が平均では六百四十一円ですよ。扶養手当が六十円、そして技能習得手当というのが二百九十二円ですよ。そうすると、炭鉱離職者に対しては二百九十二円、あなた方が教材費と交通費でやられているのが五百五十円、これ自体不均衡ですよ。五百五十円の中には、私の推測でありますけれども、おそらく上げたについては、生活費が若干含まれておりますという意味が私はあるだろうと思うのです。しかし、それにしても、一日八百五十円で生活がやっていけるのか。ましてや三月から働いた人たちが六千百五十円で平均家族四人が生活していけますか。いけると思われるのだったら、どなたか生きていけるということを話していただきたい。同時に、どうやって生きていけるか、教えていただきたいと思う。三百円引かれたら、もっと少ない計算になるわけでしょう。一体そういうことに対して、どういう処置を労働省としてはおとりになっているのか、私はふしぎでならぬわけですよ。しかも、被災者は好きで災害を受けたわけではないのですよ。まさしく会社の、資本の、三井鉱山の責任じゃありませんか。それに対して労働省が何もアクションをおとりになっておらぬというのだったら、そんな不見識なことはないと私は思うのです。どうなさるおつもりです。御返事を聞かしていただきたいと思います。これは基準局長でも政務次官でも、どちらでもけっこうでございます。
#200
○渡邊(健)政府委員 三井の爆発で被災されました方々につきましては、われわれ、おなおりになるまで、労災保険におきまして鋭意治療に御努力申し上げておるわけでございますが、それだけではなしに、それらの労働者の方々の就業、雇用あるいはそういうものの確保をはかるために、会社に対して解雇制限等につきましていろいろ指導もいたして、それらの方々の生活について配慮いたしておるわけでございます。ただ、この方々は、先ほども申し上げましたように、一応治癒されたわけでございますので、労災保険からは休業補償という形では補償費を支給することができませんので、職場に復帰されますまでの間、復帰を円滑ならしめるための訓練をお受けいただいておる期間、保険施設からといたしまして交通費あるいは訓練教材費ということで、先ほど申し上げましたような金額を御支給いたしておるわけでございます。それ以外の職場に復帰されますまでの間の生活費についてどうするかといったような問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、会社といま交渉中であるというふうに私ども聞いておりますので、その交渉によりまして、何らかの合理的な結果に到達することを御期待いたしておるところでございます。
#201
○山本(政)委員 すでに訓練に入ったから、以前出しておったものを出すことができないと、こう言う。訓練期間が十日なり一週間ならまだがまんできるでしょうけれども、かなり長期間私は訓練期間があるだろうと思う。それは前に訓練所に入った人たちもかなり長期間だったわけでしょう。半年くらいですね。一体その間に、訓練を受けるといいながら、訓練が受けられぬでしょう、現実に生活できなかったら。いいですか。大牟田の生活保護費を調べたのです。男四十二歳、女三十八歳、子供十七歳と十四歳の二人おるとして、生活保護費は大牟田ですら四万七千円前後ですよ。会社の労使の交渉だから、私どもはあずかり知らぬということにはならぬでしょう。ましてや何百人という人たちを殺しておって、てんとして恥じない経営者じゃありませんか。治癒認定をしたというけれども、ここには現に治癒してなくて病院に入っておる人たちを治癒認定にしているのですよ。その前に、四十九人のCO患者の人たちが万田の作業所で朝の八時から正午まで訓練を受けている。そして今度は、その人たちは二十三人の人たちと入れかわりに終日労働をして、訓練ということで農耕を主にした仕事をやらせる。しかも今後一切CO患者として認めないで、すべて就業規則を適用しますと、こう言っているのですよ。その四十九人のうちの二人が労災補償の打ち切りで異議の申請をなしておる。そして、あなた方が治癒したと言われている人の中に、現在病院に入院している人が五人おるのですよ。そして再認定の申請を出しているじゃありませんか。どこに認定をしているということが言えるのですか。しかもそういう被災者というのが後遺症というものを持っておることがはっきりわかっていると思うのですよ。使用者側の医師もおるだろう、しかし、被使用者側の医師もおる。こういう場合は被使用者側の医師の意見も十分にそんたくしたと言っているけれども、実態はそうじゃない。しかし、かりにそれを捨象しても、一歩退いても、現在五人の人が治癒認定を受けて入院しているという事実はどうなるのです。あまりにもぼくはそういう意味ではふしぎ過ぎるのです、あなたたちが治癒認定したからということがですね。そうして作業するのに、一体めしも食わないで作業をやれるのかということです。十分な食事もやれないで訓練を受けなさいということが言えるのかということを私はお伺いしているのですよ。
#202
○渡邊(健)政府委員 治癒の認定につきまして、先生御指摘のような、いろいろ異議があることは私ども承知いたしております。ただ私どもが治癒の認定をいたしますにつきましては、その認定に当たられた医師団の一致した御見解がございましたので、私どもはそれに従いまして治癒の認定をいたしたわけでございます。
 それから、なお、それらの方々がいま私どもから差し上げている金額あるいは会社がいま申し出ている金額等におきましては、現地における生活保護の費用等よりも低いものだ、それでは生活ができるかどうかという点につきましては、先生のおっしゃるとおり、この金額で実際の生活ということになると、私は現地におきましても容易ではない問題である、かように感じておるわけでございます。
 会社側とされまして、私どもも詳しくは存じませんが、先生がおっしゃるように、就業規則の適用云々というようなことになると、会社側の管理下にあるというようなこともございますので、会社側がそれらの事情を十分に配慮いたしまして、妥当な話し合いがつくような努力をするよう、私どもといたしましても会社に対しまして勧告してまいる、かように考えるわけでございます。
#203
○山本(政)委員 再三の交渉によっても、なおそういう事態が改まらないから、実は私のところにこの資料を持ってお見えになったのです。ですから、いま局長がお話しになったけれども、よほどきちんと会社側に対して勧告なり指導をやらぬと、この実態は改まらぬと私は思うのです。CO立法の第四条に「使用者は、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかった労働者の労働条件について、その者が当該一酸化炭素中毒症にかかった者であることを理由として一切の差別的取扱いをしてはならない。」こういっている。そして六条には、作業の転換等の措置についても規定がある。それから診療の措置については第九条に規定がある。しかしいまの実態の中では、これはことごとく破られておるといっていいのです。治療中の患者に対して私傷扱いするというのです。一体そういうことがCO立法の中にどこにあるのですか。第九条の診療の措置は、「政府は、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症について労働者災害補償保険法の規定による療養補償給付又は長期傷病補償給付を受けていた被災労働者であって、当該一酸化炭素中毒症がなおったものに対し、必要があると認めるときは、労働省令で定めるところにより、診察その他労働省令で定める措置を行なう。」こう書いてある。ところがその人たちが、原因が一酸化炭素の中毒でこういう後遺症を持っておる。その後遺症を持っておる人たちが再発をしたのではないかということで診療あるいは治療を受けるときに、これは私傷として取り扱う、こういうふうに会社は四月以降言ってきているのですよ。四十九名の人たちにはそういうことを言ってきている。一体CO立法そのものに私は不満があるのだけれども、しかしその中にうたわれている四条、六条、九条、こういう条章をどこに会社が適用しているかということです。もう少し私は労働省が監督をちゃんとしてもらいたいと思うのです。
 会社が言ってきていることは、治療中の患者に対しては私傷扱いをいたします、これが第一点。第二点は、今後六カ月休業、次の二カ年はもしそれを休めば休職にいたします。こんなばかなことが、要するに、災害を起こした責任者の側からこんなものを出されるなんて、もってのほかだと思うのですよ、私は。いまの生活保障だけではないけれども、このことに対して、それじゃどういうふうにおとりになるか、これもあわせて御返事をお伺いしたいと思います。
#204
○渡邊(健)政府委員 一酸化炭素中毒症特別措置法の規定の九条の適用につきましては、労働省といたしましては、これらの方々に健康管理手帳を交付いたしまして、毎月一回診察、保健のための薬剤の支給、健康診断等のアフターケアをこの法律に基づいて適正に実施をいたしておるところでございます。そういう方々に対しまして会社が、いま先生が御指摘になりましたようないろいろな態度をとっておるという点につきましては、私どもも必ずしも十分に承知いたしておりませんので、今後十分に調査してしかるべき処置をとりたい、かように考えるわけでございます。
#205
○山本(政)委員 私は、会社が少なくともほんとうに責任というものを感じているならば、六条の時間短縮あるいは賃金の差し引きをしないというようなことに対して、ほんとうは配慮するのがあたりまえだと思うのですよ。しかし今度は、治療に行ったら、その時間の間は賃金をカットします、こう言うのですよ。そういう考え方というのは、ぼくは基準法を正規に解釈しても誤りだろうと思うのですね。そして特にCO中毒患者に対して特別立法ができたのですから、それはつまり基準法に書いてあることをなおさらそういう被災者に対しては補強した立法だと思うのですね。にもかかわらず、現実にはこういうことが行なわれている。ぼくが非常に憤慨するのは、むごいというよりか、一体人間としての感情を持ち合わせておるのかと思うのですね。生活保護費が先ほど四万七千と申し上げました。しかしそれは別としても、訓練手当の月額平均というのは労働省は二万八千二百二十円ですよ。そうすると、いま訓練しているわけでしょう。そして炭鉱離職者の人たちよりか、もう一つ条件的には悪い人たちです。後遺症を残し、要するに肉体の内部には傷痕を残している人たちなんですよ。そしたら最低二万八千円に近いものをあなた方としては、職訓手当がそうであるならば、この人たちも同じく、傷痕をからだに残しながら、特に頭の中に神経的に残しているわけですから、四百四十円を五百五十円にしたというのではなくて、もう少し上げることを考えていいのじゃありませんか。そうじゃないですか。元気な人の職業訓練手当というものはこういうものです。そしたら、からだの悪い人に対する職業訓練手当というものは、もっとふやすべきではないかと思うのですが、どうなんです。それを努力していただけますか。
#206
○中山政府委員 山本議員御指摘の点につきましては、労働省といたしましても御趣旨を尊重して十分検討の上、向上するように努力したい、かように考えます。
#207
○山本(政)委員 私お願いしたいことは、先々じゃないのです。きわめて短い期間の中に、そういう要するに方法というものを考慮してもらいたいというのです。局長頭をかしげないで、きわめて短い期間のうちにそういうことを考えてひとつ手続していただきたいと思うのです。おそらくここにおられる人も、その話に対しては異存はないと思うのです。もう一回重ねてお答えをください。
#208
○渡邊(健)政府委員 その点につきましては、十分検討さしていただきたいと思います。
#209
○山本(政)委員 万田で訓練作業をしておる。これは半日労働していた人たちを今度は終日労働をさせる。そのときに会社の約束というのは、医者の診断の結果にまかせる、こう言っておったのです。またCO患者の病状の変化に応じて治療保障を行なう。医師を通して、こう双方で確認しておる。これは労使双方から出された医師団の一致した見解である、こう思うのです。それにもかかわらず、今度は治療は一週間に一回に限る、こう言っておるのですよ。他は賃金をカットする。労働省から出された金、会社から出された金八百八十円。その中で、治療に行ったら、一週間に一回はよろしいけれども、そのあとは賃金をカットする。平均八百八十円にならぬはずです、そんなことをしたら。私は、そういうやり方は、会社の無責任な保安軽視のやり方で人を傷つけておきながら、もう一ぺん生活と肉体と精神というものを傷つけるやり方だと思うのです。一ぺん傷つけているのですよ。生活の破壊された人もあるだろうと思うのです。そうしてまた今度は復帰にあたって、もう一ぺんそれに追い打ちをかけて生活をぶちこわそうとしているし、肉体や神経というものをさかなでするようなやり方をやっておる。こんな非人間的なやり方はないと思うのです。この点についても私は、ちゃんと調査をしてやらなければ、会社に対して何らかの処置をしてほしいと思うのです。そういうことに対しても、きちんと私のところに、一ぺん会社に対してあなた方のなすべきことをなすったあとで報告していただけますか。
#210
○中山政府委員 労働省といたしましては、さっそく会社に対して実情の報告を求めますとともに、問題点に対しては、その再訓練を受けておる方々に対する生活上の問題について十分改善をなすように検討を命じたいと考えます。
#211
○山本(政)委員 私は事故の責任というものは、年月が経過したからなくなるとか、あるいは軽減されるものではないと思うのですよ。ましてや自分たちが起こした事故によって犠牲を受けた人々に対して責任なしとして、そういう治療の必要ある労働者の解雇をねらいとしてそういうやり方をするということは、ほんとうにけしからぬと思うのです。そうして就業を強制していく。それがほんとうに事実なら、私はほんとうに許せないという気持ちなんですよ。どうかひとつぜひ十分な調査をして、その調査の結果を知らせてほしいと思うのです。
 そうしていま私が申し上げた生活に値する――私は名目は何でもいいと思うのです。訓練費という名目をつけようが、それはひとつ政府でぜひ考えてもらいたい、会社が出さぬのなら。そうしていま言った治療あるいはその他の労働条件に対して四条、六条、九条にちゃんと書いてあるのですから、それをひとつ的確に実施させるように指導してほしい、監督してほしいと思います。終わります。
#212
○森山委員長 次に、後藤俊男君。
#213
○後藤委員 これは労政局長十分御承知の政労協関係の闘争でございますけれども、大体春闘も二十日、二十七、八日、この辺が山場になりまして、二十七、八日ごろには大詰めになるだろう、これは私が申し上げるまでもなく、その情勢は握っておいでになると思うのです。いままで三年くらい連続してこの問題も取り上げたわけでございますけれども、政労協関係の春闘の関係ですけれども、私が言うまでもなく、政労協関係労働組合は労働組合法の適用の組合である。だとするならば、賃金等につきましても自主的に団体交渉できめる。これは労組法できめられた法律なんですよ。ところが、いままでこの三、四年間やられておりますのは、大体八月に出ます人事院勧告が出ない限りにおきましては、経営者のほうとしまして団体交渉を進めない。人事院勧告が出て初めてそれをめどにすると申しましょうか、それを基礎にして、しかも内示に伴って政労協関係の交渉が始まって最終決定をする。ですから、昨年の年末から始めておる春闘そのものがまかり間違うと、ことしの年末一ぱいまでかかる。こういうような法律的に見ても、非常に矛盾をしたことをやられておるわけなんです。そこで一歩入って考えてみますと、このことはやはり大蔵省あたりが中心に行政指導をしておられるのだと私は聞いておりますけれども、それはそれで、そこの理事者あたりが民間の大体春闘における相場も出た、そういう時点におきまして解決しようと思えば解決のできる問題だと私は考えておるわけなんです。腹さえきめれば、これはやれる問題なんです。自主交渉をやって金額を出してくる、そこで煮詰めていく、そこで最終的に決定をする、これは労働法でそうやりなさいということを決定されておるのですからね。政労協闘争に対してはみずからつくった法律をみずから無視したような形の扱いがなされておる、こう申し上げましても、間違いないと思うわけなんです。これは毎年毎年のことでありますから同じようなことを私繰り返すわけでございますけれども、この問題について第一番に労政局長として、どういうふうに今次春闘を政労協関係についてはお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
#214
○石黒政府委員 政労協関係については御指摘のように労働組合法、労働関係調整法の適用がございます。他面におき産して各公社、公団、事業団等の設置法がございまして、その法律上予算あるいは給与準則等につきましては、主務大臣あるいは大蔵大臣の承認にかからしめられているということから事実上の制約が加わるという事態になっております。この間の調整というのは、たびたび当委員会でも御質問をわずらわしておりますが、私どもとしても非常に苦慮しておるところでございます。
 私どもといたしましては当面の方策といたしましては、人事院勧告に基づく内示制度というものをできるだけ早期にし、そして弾力的にするということに一そう努力するということを当面のやり方として考えております。
#215
○後藤委員 それで、いま労政局長が言われましたことは全然去年と比べて進歩がないわけなんです。それじゃ、あなたが言われましたように、労組法の適用の組合であるなら、なぜ一体人事院勧告が出るまで待たなければ、この春闘は解決できないのか、その点なんです、私聞きたいのは。それは公務員関係につきましては、制度上そうなっておるからということで筋は通るわけなんです。ところが、政労協関係につきましては、そうじゃないわけなんです。別に、公務員じゃないわけなんです。予算の面で国が心配しておるという企業はたくさんあろうと思いますが、それが春闘になりましてストライキをやる、この計画によりますと、二十日から二十七、八日にまたストライキに入るわけなんです。これは明らかに労組法に認められた争議行為をやるわけなんです。ところが中身の問題になると、人事院勧告が出なければこれは解決しない、八月にならなければ解決できない、こういう矛盾があるわけなんです。だから、そんなことをやらずに、春闘においてベースアップの問題が大詰めにくれば、七二年度の民間相場は大体全部出るわけなんです。その出た時点において各理事者が腹さえきめれば、やれる問題だと私は思うのです。やれる問題じゃない、やらなければいけないと私は思うのです。労使の間で自主的に団体交渉をやって話を煮詰めてしかるべきだと私は思うのです。それをやらずに、毎年毎年年末まで引っぱってしまう。これは労働組合のほうも、さらに理事者のほうといたしましても、要らぬエネルギーをたくさん使うことになると私は思うのです。だから、ことしあたりは腹をきめて、いま言いましたような方向へ行政指導と申しましょうか――特にことしは理事者側は口がかたいそうです。ことしはおそらく大蔵省あたりが、あるいは労働省としても、適当なことをやっちゃいかぬぞ、とにかく人事院勧告が出るまでは待ちなさい、こういうふうに強くくつわがはめられておるように私は感じておるわけなんですが、そうではなしに、やはり労組法適用の組合なら組合らしくやったらどうです。こんなことを、毎年毎年同じことを繰り返して組合も要らぬエネルギーを使う、理事者側も要らぬことをやる、しかも一年間にわたって、これをやっておるわけです。もう来年あたりは、ひとつ腹をきめてやってくださいということを、去年のここの委員会におきまして労政局長にも大臣にも私は強く訴えたはずなんであります。来年はひとつ前向きで考えましょう、こういうふうな話は聞きますけれども、その時期になりますと、結局相変わらず去年と同じコース、まかり間違うと、去年よりも退歩したようなやり方が行なわれようといたしておる。これは私も聞いておるわけなんです。これは主計局次長さん、いかがでしょうか。
#216
○吉瀬政府委員 先ほど労政局長からお答え申し上げましたとおり、私どもといたしましても政府関係機関のいわゆる内示と称するもの、またそれに伴う各理事者と組合側との交渉の結果できまる額、これにつきましては、できるだけ早い機会にやりたいということは常々考えておるわけです。
 御承知のとおり、おととしは十月でございましたが、それほど早くなったという御評価は受けないかもしれませんが、去年は九月の下旬というぐあいで、その点では若干早くしたつもりでございます。ただ、これでは問題があるので、春闘の時期という御質問であろうかと思いますが、多数の政府関係機関給与につきましては、主務大臣の承認を受けまして、主務大臣から大蔵大臣に協議をいたす、こういうシステムになっております。しかもこの政府関係機関の総体について見ますと、自主的努力で経営的収益をあげるという種類のものよりも、むしろ政府の行政機関的な公益的、公共的な立場をとっておる政府機関が多い。こういうような段階で、各理事者が給与水準を交渉する場合に、判断基準というものがなかなか困難な点があるのではなかろうか。そういう点、各理事者が組合との交渉を円滑に行ない得るように私ども事前に相談を受けておるわけでございますので、御指摘の趣旨もございますし、私どもといたしましては、公務員の給与にのっとってこの水準がきまることが公益的な目的から見て望ましいとは考えておりますが、なお将来にわたってできるだけ早くできるように検討はいたしたいと思っております。
#217
○後藤委員 労政局長、これはあなたも十分お読みになっておると思いますけれども、埼玉県の地方労働委員会に、昨年でございますが、不当労働行為問題で提訴といえばおかしいが、こういうものの審議が行なわれておるわけです。その中身としましても、こういうことが書いてあるわけです。「昭和四十三年度給与改定については、昭和四十四年三月十日の団体交渉においてみずから提示した第二次回答に基づき改定するように申立人と誠意をもってすみやかに団体交渉を行なわなければならない。」これは結局人事院勧告まで待たなくても、誠意をもって団体交渉をやりなさいというようなことで、これは却下されておるわけです。去年ですから、この地方労働委員会における却下のいきさつも十分御承知だと思いますけれども、そうしますと、ことしもおそらく中央労働委員会へこの話は持ち込まれると私は思うわけです。じゃ、そうなった場合に中央労働委員会として受託すべき問題であるかどうか。私は、労組法からいけば当然受託すべき問題だと思うわけですが、この点いかがでしょうか。
#218
○石黒政府委員 ただいま御指摘の文章は埼玉地労委の命令であり、現在中労委に再審査の申し立て中の事案である、そして本年におきまして政労協関係の団体交渉が中労委に申し立てられるかどうか私存じておりませんけれども、中労委がそれをいかに扱うかは私ども予断をすることもできませんので、せっかくの御質問でございますが、ちょっとお答えいたしにくいのでございます。
#219
○後藤委員 それじゃ今度は大蔵省の次長さんにお尋ねしますが、先ほどからも繰り返しておるわけですけれども、なるほど政労協の組合は国の予算にも関係がないとはいえないと思うのです。そのことをよりどころにして人事院勧告云々まで待たして、勧告が出なければ解決しない。これは過去毎年毎年同じことを繰り返しておるわけです。これは公務員関係ならそれでしかりだと私は思いますけれども、先ほども言いますように、労組法の適用の組合でありながら賃金の問題については団体交渉をやりましても理事者側のほうはがんとして答えない、あくまでもゼロ回答、これは何かといえば、その背面にある大蔵省がそういう行政指導をしておる、これは間違いないと思うのです。二水会であるとか何とか会とかいろいろできておるそうですけれども、そうしますと昨年あたりは、こんな問題をいつまでも引っぱっておるよりかは、やはり春闘において解決すべきじゃないか、こういう意見もかなり理事者側から出たと私は聞いておるわけなんです。ところがことしはそうではなしに、団体交渉をやりましても、やはり相変わらずのゼロ回答、また八月の人事院勧告を待たなければ解決できない。それじゃ一体公務員法の適用かというと、そうではない、労組法の適用だという。労組法の適用なら、労組法の適用らしく国が行政指導をするのがあたりまえだと私は思うのです。しかも春闘というのは政労協だけがやるわけではなしに、組織労働者八百何十万がやるんですから、大体めどが出て相場が出るわけなんです。それならそれで春闘において解決するように行政指導するのが大蔵省としても当然の義務だと私は思うのです。労働省としても当然だと思うのです。これがどうとかこうとか人事院の勧告が出て、内示が出て、それを中心にしてすったもんだして話がきまりますのが年末、こんな芸のないことを三年も四年も五年も同じことを繰り返しておるわけなんです。どれだけこういうやり方に対して要らぬ力を費やしているかということは、私が申し上げるまでもないと思うのです。公労協関係の闘争につきましても二十七、八日ごろが最終段階の山場だと私は見ておるわけなんですけれども、それならその辺と歩調を合わせて、この政労協関係の春闘につきましても当然解決すべきだと思うのです。解決できない根拠は一体何ですか。法律的にどこかひっかかるところがあるんですか。あればその点を明快にひとつお答えをいただきたいと思うのです。
#220
○吉瀬政府委員 法律的にいついつまでにきめなきゃいかぬとか、どういう基準じゃなければいかぬということは私の記憶ではないと思います。ただ、私、先ほど先生に御説明申し上げましたとおり、政府関係機関の性格が、非常に勤務の状況その他業務の目的等が政府そのものの機能に類似している、そういうような関係から一番基準とすべきものは公務員給与水準ではなかろうか、こういうようなことで、公務員給与の決定を待ちまして、ひとつ自主交渉に移ってもらうという形を考えているわけでございます。人事院勧告におきましても春闘の結果を勘案いたしまして、公務員給与を決定するまでには相当な時期がかかるわけでございますが、そういう点、私どもはその決定された結果をできるだけすみやかに政府関係機関に反映したい、こう考えております。
#221
○後藤委員 いま次長が言われましたように、別に私も法律的にひっかかる点はないと思うのです。ただ、あなた方がこの問題をどう指導していくか、その点にひっかかっておると思うのです。予算、予算と言われますけれども、予算も大体もうきまったのも同然だと私は見ておるわけなんです。かつまた、いま言いました政労協関係の企業につきましても、大まかな予算というものはもうはっきりしておると思うのです。それなら別に人事院勧告の出るまで引っぱる必要はないじゃないですか。引っぱること自体が私は間違いだと思うのです。自主的に団体交渉をやらして、そこで金額を出させてやっていけばいいじゃないですか、それがやれないところが私はおかしいと思うのです。また労働省としても、それをやるように指導するのがあなた方の任務だと私は思っておるわけなんです。それを毎年毎年、口をすっぱく同じことを繰り返し繰り返しやりましても、全然前進しない。もうこの辺で、これらの政労協関係の問題につきましては大蔵省といい、労働省といい、腹をきめて、各企業の理事者を指導したらどうです。そうすれば何も人事院勧告で、またことしの年末一ぱいまでああでもない、こうでもない、やる必要ないと思うのです。闘争というのは、そう好きこのんでやっておる者はおらぬと思うのです。要求さえ解決するなら、いつでもすっきりした気持ちで各職場における作業能率は私はあがると思うのです。そういう面から考えたって、当然、春闘の時期において賃金問題は解決する、労使の間で団体交渉できめる、きめたことについては国も責任を持つ、これくらいなことはあってしかるべきだと私は思うのですが、これは政務次官どうですか。
#222
○中山政府委員 御質問の問題点で私が感じますことは、先生、例年この問題については絶えずわれわれに対して発想の転換をお求めになっていることは、私も会議録で十分存じ上げております。
 いま石黒労政局長がお答え申し上げました答弁によりますと、結局人事院勧告というものを基準にして、いわゆる作業が準公務員的なものであるという感覚から、各種団体に対する政府の助成等の関係で、人事院勧告が出てからすみやかにこの金額を、有額回答をやるというのが例年の一つの経過だったろうと思います。ただ石黒労政局長がお答え申し上げました点を私のほうから少し補足いたしますれば、従来のやり方であれば人事院の勧告が出ましてから大蔵省の内示日まで、昭和三十八年は九月に人事院勧告が出まして十二月の二十日が大蔵省の内示日である。昨年は八月の二十四日に人事院勧告が行なわれまして九月二十五日、約一カ月後に大蔵省の内示が行なわれているということで、その従来の形式をとってきたというたてまえからは、相当、いわゆる人事院勧告から大蔵省内示の日数が減少していることは、この計数でよく御理解いただけると思いますが、いま先生御指摘のような点につきましては、基本的に発想の転換ということが必要であろうと思います。そういう点につきましては、ひとつ十分大蔵省とも相談の上で今後の新しいあり方について検討いたしたいと思います。
#223
○後藤委員 いま政務次官が言われました、いままでのルール内におきまして、われわれがいろいろと質問いたしまして十分配慮をいただいて、いままでのルールの範囲でできるだけ早くということをやっていただいたことはおっしゃるとおりで、私もそのとおりだと思うのです。
 ところが、いままで何回となく究明もいたしております根本的な考え方というのは、いま次官が言われたところにあるわけなのです。いまも政務次官が言われましたように、ことしはいままでのようなやり方ではなしに、直ちにひとつ大蔵省のその関係の人とも十分相談をしていただいて、今月の月末に向かって春闘も最終的な段階に入りますもので、そこで政労協関係としても自主的な団体交渉で金額を出していく、そして今次春闘が解決をする、そういう方向へ持っていっていただくようにぜひこれはひとつお願いしたいわけなんです。それもことし初めてこういうことを言い出したんならともかくも、長い間いまおっしゃいましたように同じ問題を繰り返しておるわけなんですから、ぜひこの点はことし思い切ってひとつ腹をきめてやっていただく。できたら政労協関係の各理事者を集めてそこでひとつ話をしてもらって、それでいま申し上げましたような内容に基づいて行政指導をしてもらう、大蔵省は大蔵省で腹をきめてもらう、その相談さえきちっとできるのなら、今次春闘で、労組法の適用の組合として最終的には私はベースアップの結論も出る、そうなれば一年じゅう闘争をやる必要もございませんし、作業能率の面から考えてもいいと私は思うのですが、その点政務次官約束していただけますか、いま申し上げましたような方向で……。
#224
○中山政府委員 御指摘の点につきましては慎重に検討いたしたい。ただ御案内のように、春闘のいわゆる結末が一応先生の御指摘のような四月の末近くのきわめて差し迫った時点でございます。その時点までに従来の、いままでとってまいりました経過を一挙に転換をして、直ちに四月末にそれをペースを合わせてすべてのことを処理ができるというお約束をいたすということにつきましては、私の立場ではここではお約束を申し上げかねますけれども、御趣旨を体して努力をさせていただきたい、かようにお答え申し上げたいと思います。
#225
○後藤委員 政務次官からそういう話があったんですが、大蔵省はいかがですか。
#226
○吉瀬政府委員 私ども毎年内示制度を繰り返しておりますが、まあ事務的にいろいろ検討いたしてみまして、この制度がやはり現実的に一番円滑ならしめるのじゃないかという感想も持っております。ただ先生の御指摘になるような御批判も確かにあることを聞いておりますので、労働省ともよく相談いたしまして検討いたしたいと思います。
#227
○後藤委員 いまあなたが言われました、内示制度が一番理想的だ、だけれども、おまえそう言うから、一ぺん労働省と相談してみましょうと、えらいあなたは水くさい返事ですね。そういう話ならそういう話で、もう少し私も時間をかけて話をしなければいけませんけれども、そういうふうなやり方では、いままで長い問いろいろ話をいたしましたけれども、国としても私はプラスじゃないと思うのです。いわば国益に反すると思うのです。ですから、私はいま政務次官が言われました方向で――おまえの言った方向に必ず実行するということは約束できぬけれども、政務次官という立場で、大蔵省とも十分相談をして、その方向へ持っていくように全力を尽くそう、これだけの決意を政務次官としては披瀝されたわけです。これは政務次官としても、それ以上のことは言えないと思うのです。ところが大蔵省としては、いままでの内示制度がやはり理想的でいいと思うが、労働省と相談してみましょう、そんな軽い気持ちじゃ、私は承知できないのですよ。それならあなた、労組法適用の組合として、いまあなた方がやっておられることが正しいと思っておられるのですか。労働組合法には何と書いてあるのですか。あなたがいま言っておる内示制度に、人事院勧告まで引っぱって、年内一ぱい賃金をきめない、これは労組法の違反にはなりませんか。次長。いかがですか。
#228
○吉瀬政府委員 いまの私の答弁に理想的ということばがございましたら、訂正さしていただきたいと思います。それが理想だと私、思っておりませんが、現実の制度下では、ある程度これがやむを得ない制度かと考えておる次第でございまして、いま御指摘のような点を踏まえまして、労働省とも十分相談いたしたいと思います。
#229
○後藤委員 いまあなたが言われましたように、いま行なわれておる制度そのものが問題になっておるのですから、くどいことは申しませんけれども、ぜひ先ほど政務次官が言われました方向で、大蔵省としても、ことしの春闘の問題につきましては腹をきめて、しかも具体的に動いてもらわないと、こういう話は進まないと思うのです。政府関係の各企業の理事者等も集めて、そこで十分話をしていくというような具体的ないろいろな面を考えていただかないと、この話はなかなか前進することがむずかしいと思いますから、重ねて私申し上げますけれども、長い間毎年毎年同じことを繰り返すというようなことはやめて――あなた方の相談いかんによっては、この問題は解決すると思うのです。団体交渉で労使の間で話が長引くのはやむを得ぬと思いますけれども、とにかくゼロ回答で、八月十六日の勧告が出ない限りは全然口を開けませんよ、ゼロですよ。これは大蔵省がうしろから大きなロープをつけて、それやれそれやれとけしかけておるわけです。だから、そういうことはこの辺で御破算にしてもらって、労働省とも十分相談をして、脱皮した方向で腹を据えて、ことしは政労協の問題は解決する方向でやっていただく、こういうことをお願いをしたいと思うわけなんです。最後に、もう一ぺん政務次官の御決意のほどを聞かしていただいて終わりたいと思うのです。
#230
○中山政府委員 御指摘の点は、御趣旨を十分踏まえまして、慎重に検討させていただきたいと思います。
#231
○後藤委員 終わります。
#232
○森山委員長 次回は、明後二十日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後五時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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