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1971/05/18 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第27号
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1971/05/18 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第27号

#1
第068回国会 社会労働委員会 第27号
昭和四十七年五月十八日(木曜日)
   午後三時四十二分開議
 出席委員
   委員長 森山 欽司君
   理事 小沢 辰男君 理事 橋本龍太郎君
   理事 増田 博之君 理事 山下 徳夫君
   理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君
   理事 田畑 金光君
      秋田 大助君    有馬 元治君
      伊東 正義君    大橋 武夫君
      梶山 静六君    藏内 修治君
      小金 義照君    澁谷 直藏君
      田中 正巳君    高鳥  修君
      竹内 黎一君    中島源太郎君
      中村 拓道君    別川悠紀夫君
      向山 一人君    渡部 恒三君
      大原  亨君    川俣健二郎君
      島本 虎三君    八木  昇君
      山本 政弘君    浅井 美幸君
      二見 伸明君    古川 雅司君
      西田 八郎君    寺前  巖君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
 出席政府委員
        環境庁水質保全
        局長      岡安  誠君
        厚生政務次官  登坂重次郎君
        厚生省公衆衛生
        局長      滝沢  正君
        厚生省医務局長 松尾 正雄君
        厚生省保険局長 戸澤 政方君
        社会保険庁医療
        保険部長    穴山 徳夫君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      渡部 周治君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  寺前  巖君     津川 武一君
同   日
 辞任         補欠選任
  津川 武一君     寺前  巖君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 派遣委員からの報告聴取
     ――――◇―――――
#2
○森山委員長 これより会議を開きます。
 健康保健法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案審査のため、愛知県に委員を派遣いたしましたので、この際、派遣委員より報告を聴取いたします。橋本龍太郎君。
#3
○橋本(龍)委員 私どもは、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案の審査に資するため、昨日より愛知県へ行き、現地にて各界の代表者から意見を聴取いたしてまいりましたので、この際、便宜私から御報告申し上げます。
 派遣委員は、団長であります私のほか、別川悠紀夫君、後藤俊男君、古川雅司君、西田八郎君の一行五名であります。
 現地における会議は、本日の午前九時から午後零時三十分まで、愛知県庁西庁舎第一会議室において開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めて、あいさつを行なった後、愛知県社会保険協会会長浅井政彦君、中京大学法学部教授橋詰洋三君、中部電力株式会社取締役労務部長柴田寅彦君、名古屋大学講師久徳重盛君、愛知県信用保証協会理事長岩瀬繁一君、愛知同盟副書記長星野銀治君の六名の方から参考意見を聴取いたしました。
 陳述者の意見は、浅井君、柴田君、岩瀬君よりは賛成、橋詰君、久徳君、星野君よりは反対の意見が述べられました。
 改正案に対し賛成の三君よりは、政府は医療保険制度について英断をもって対処すべきであり、また保険財政を安定させるためには、国庫補助の定率化が必要で、たいへんありがたいことだが、五%では低いので、今後もっと高率なものとし、被保険者の負担の軽減をはかってもらいたい。
 保険料率については、保険料収入で保険給付費をまかなうたてまえと、保険財政の現状から見てやむを得ない。
 標準報酬の改定については、上限は昭和四十一年より、下限は昭和二十八年より据え置かれており、その間の賃金上昇から見て妥当である。
 保険料の弾力的調整については、千分の八十という上限も設けられており、赤字を出さないためには、やむを得ない措置である。
 賞与に関する特別保険料の設定については、この制度は賃金のあと払いという考え方をすればやむを得ないものであり、また、現在労働保険においては、すでに行なっているので、方向としてはやむを得ない。しかし、一定限度の上限を設ける必要があると思われる。
 要望として、(一)社会保険審議会等の審議会の委員にも、中小企業の代表者を選考してもらいたい。
 (二)収入面のみでなく、支出面の適正化をはかってもらいたい。
 なお、累積赤字のたな上げについては感謝しているが、今後は赤字を出さないようにしてもらいたい旨の意見が述べられました。
 改正案に対し反対の三君よりは、改正案は、関係審議会の答申を無視したものであり、また保険財政の赤字を理由に中小企業労働者等、低所得者の多い政管健保加入者に、一方的に多額の負担を押しつけるものである。
 医療保険は、単に治療のみではなく、予防からリハビリテーションまでを含む包括的な医療を行なうべきである。
 赤字の原因といわれる薬剤費問題等を、まず徹底的に究明すべきである。
 現在の診療報酬体系は検査、投薬、入院などを多くしなければ医師の収入がふえない仕組みになっている。
 現在の保険制度は、保険によって被扶養者の負担はまちまちであるが、この格差を是正すべきである。
 保険料率の引き上げ、賞与に関する特別保険料の設定は、理論的な根拠がなく、単なる財政対策にすぎない。
 保険料率の弾力調整は、国会の本来の任務を放棄するものであり、憲法その他の法律にも違反の疑いが濃厚である。
 国庫補助については、社会保障的観点に立って、大幅な補助を行なうべきである旨の意見が述べられました。
 以上のような意見が述べられた後、各委員から改正案に対する要望、被保険者の立場、医療制度の今後のあり方、国庫補助の引き上げ、予防、臨床医学、医療制度の確立、保険料率の弾力的調整、公費負担のあり方、政管健保の企業努力、診療報酬体系のあり方、標準報酬の上下限等の問題について、きわめて真剣かつ熱心な質疑が行なわれた次第であります。
 以上をもって報告を終わりたいと思いますが、本日の現地会議の開催につきましては、愛知県庁その他地元関係者多数の御協力により、きわめて円滑に行なうことができた次第であります。
 なお、会議の内容を速記により記録いたしましたので、会議の記録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
    ―――――――――――――
#4
○森山委員長 おはかりいたします。
 愛知県の会議の記録が後ほどでき次第、その記録を本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔派遣委員の会議の記録は本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
#6
○森山委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。島本虎三君。
#7
○島本委員 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案、これを細部にわたりまして、それぞれ質問してまいりたい、こういうように思いますが、それに入る前に、直接関係あると思いますけれども、計数には入っておりませんけれども、この十三日に大阪の千日ビルの火災がありました。あれはもう驚いたわけなんでありまするけれども、それと同時に、また考えなければならない点が厚生大臣にもあるのじゃないか。七分間に一件、一日平均二百十九件の火災があって五・五人の焼死者、三一・三人の負傷者、そして二億六千九百万円が灰になっておる、こういうような計数も出ておるそうであります。
 それはそれといたしまして、まず大臣にお聞きしておきたいことが一つございます。それは避難困難な患者のいる病院、それから火災が起きた場合には必ず対処できる準備と方法、こういうようなものがなければならないはずでありますが、病院、特に公的な病院の火災対策については十全の備えがございますかどうか、これをまず先に伺っておきたい、こう思います。
#8
○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、大きな火災のあるたびに、われわれの病院の火災に対する応急対策は万全であろうかという気持ちをいつもいたしておるわけであります。私のほうの関係におきましても、よく精神病院その他においても火災がございます。そういうようなことに備えまして、常時避難訓練それから防火の施設その他につきまして、消防庁と連絡をとりながら万全を期しつつあるわけでありますが、しかし幾らこれは気をつけてもつけ足った、足り過ぎたということがないわけでございますから、今後一そう注意をさせまして、ただいま申し上げるように、不時の場合にそういった不祥のことの起こらないようにいたしたいと考えております。
#9
○島本委員 ただいまのその準備に対する心がまえは私も承っておきます。
 ただ、私の手元には国立病院の防災対策については、なかなかこれはお寒い状態にあるというような一つのデータがあるわけであります。これも従来法令に基づく行政指導が完全にこれら公立病院、ことに国立病院の防災対策に、はたして行なわれておったかどうか。法令があっても行政指導はない、こういうようなことじゃいけないと思うのでありますけれども、この点については完全でありますか。この避難器具、防災器具、こういうふうな点もあらかじめ点検しておかなければなりませんし、それらの使用方法等についても十全の備えがなければならないはずでありますが、この点については万遺憾なきを期してありますか。
#10
○斎藤国務大臣 万遺憾なきを期しているはずが、はずでないこともよくあるわけでございますので、十全の気をつけてやっておるつもりでございます。しかし、それがそうでないというようなことも、なきにしもあらずではないかというので、十分気をつけさしてまいりたい、かように思います。
#11
○島本委員 はっきりした日本語で――では事務当局から答えてください。これは消防法によってはっきりした設備をしなければならないことになっている。そういうふうな設備と、それから器具、そういうふうな備えつけがもう十分かということなんだ。
#12
○松尾政府委員 国立病院の防火体制につきましては、ただいま御指摘のような、一つは消火関係のいろいろな設備という問題がございます。これも消防法の政令等が改正になりまして、新たにいろいろな器具、たとえばベルでございますとか、誘導灯でございますとか、いろいろなものが事こまかに改正されましてきめられておりますが、私どももこの改正が行なわれましてから直ちに、やはりそのための特別予算を要求いたしまして、たしか昨年までの三カ年間で、国立病院等におけるそういう設備は整えたつもりでございます。
 それからなお、しかし設備があっただけで、すべて万全だというわけにはまいりません。したがいまして、私どもといたしましても、さらに各病院の内部におけるいろいろな防災体制というものには特別の注意を払わせておりまして、あるいは先生も御承知のように、それぞれの病院におきましても、かなり詳細な規定をとり、万一の場合のいろいろな手段というものをはかり、また同時に訓練をよくし、周知徹底させることが必要でございます。そういう訓練についても各病院において十分に実施をする、こういう体制を進めている、こういうはずでございます。
#13
○島本委員 そうすると、これはあらかじめ伺っておきますが、病院の場合には避難具、こういうふうなものは、各階とも部屋の大きさに応じて、それぞれ収容人員と合わして備えつけの基準があるはずであります。少なくとも各階に二本。小さい部屋の場合には、こういうような避難具の備えつけが必要になっております。屋上にも二本。どの病院も一応点検し、間違いなく、なっていますか。
#14
○松尾政府委員 病院自体が、御承知のように避難階段等の設備ということにつきましては、医療法で特別の規制がございますが、そのほかいまの御指摘のような避難の用具というものも、それぞれ定められた部分については、私どもも全部整備するように努力したつもりでございます。
 なお、一つ一つの病院で、はたして、それがあるかどうか、いまの御質問に対しては、いま直ちにその結果をここに持っておりませんが、私どもとしては常々そういう法令に従いました設備というものは十分にするようにという手だてを打ったつもりでございます。
#15
○島本委員 よくわかりました。やはりああいうような火災があっても、まだ点検していないんですね。それはやはり消防法によってやらなければならなくなっておりますから、やっているはずであります。はずなのに行なわれないから、事故が起きるんだ。
 では念のために聞きますが、札幌の白石区菊水西町十四番地に国立病院があります。この国立病院は札幌国立病院。これは八、九、十階という高層建築でありますけれども、ほとんど避難設備がない状態になっております。消防法できまっただけ設備をされておらない。これはあるというなら、どういうふうなことになっているか、これもはっきりさしてください。きのう現在で調べて、ないのです。答えだけで、そういうようにいいことを言っても、だめなんです。ああいうのがあったならば、すぐ全部点検さしたら、どうですか。まして八、九、十階もあるような高いところ、これだったら、もう避難、救助、これは困難なんです。まして病院ですから、病院の場合なんかだったら一人で出れない。十全を期しておかなければならないはずなんです。千日デパート、あれば、ほんとうにからだのじょうぶな人でも、ああいうふうな被害があったのです。まして、からだをなおすために病院へ入院して、入院したがためにまた死ぬ、こういうようなことは、まさに残酷でありますから、そういうようなことが絶対あってはならないのです。
 現在のところ、札幌国立病院の防災対策は不十分である、消防法にきめられただけ備えつけがない、こういうようなことになっておりますが、これはどうしたわけですか。
#16
○松尾政府委員 私ども、先ほど申し上げましたように、少なくとも特別の予算をとりまして、そういう消火設備の万全を計画してやったわけでございまして、私自身はそういうつもりで、大体この問題が行き渡ったというように考えておりまして、またことしの二月には、私の名前をもちまして、特に国立病院関係につきましても、火災予防対策の徹底ということで、いろんな点検も命じておるわけでございます。いま御指摘のような点を私が掌握していないといたしましたら、これは私もたいへん怠慢であると存じます。さっそく実態を調べまして、そういう方法の遺憾のないように私も努力いたします。
#17
○島本委員 ことに北海道の釧路では、これは二十六年の十二月二日、日曜日ですけれども、十七名死亡し、重軽傷者合わせて数十名、こういうようなデータさえもあるわけでありますから、こういうようなことがないように、そしてまた、大臣、この点は、私は特に要望というか、こんなことがないようにしなければならないと思うことです。
 というのは、予算はちゃんとつけてやった。こういうような避難器具、またいろんな設備、こういうようなのはあっても、すぐに役立つ場合と役立たない場合がある。目に見えない設備。したがって、そういう場合にはほかのほうへ流用したり――避難器具をつけなくて、それでほかのほうへ流用するような、こういうような傾向さえ過去にあったそうであります。これはあったなら、たいへんです。
 こういうようなことがないように、もう一回再点検して、後ほど私に資料として、この点等についても出してもらいたい。札幌のこの件については、どういうような器具が備えつけてあるか、消防法によっての指導に合致しているかどうか、こういう点等についてもすぐ私のほうへ資料として、これを要求しておきたいと思います。
#18
○松尾政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、よく実態を調べまして御報告を申し上げます。
#19
○島本委員 では、次に移ります。
 午前中いろいろ公聴会がございまして、なかなか今回の場合には、私どももそれを聞いていろいろと益するところも多かったわけであります。
 その公述の中に、政管健保そのものの体質の改善のための経営努力がない。したがって、体質改善のためには経営委員会を設けるべきではないか、こういうような提案が、ある公述人から述べられました。私どもそれについてはもっともだと思いましたし、経営努力はそういうような委員会を通じて、NHK、電電公社その他公社関係では、それぞれやられておるようであります。国のほうでは、こういう提言に対して、大臣としてどのようなお考えを持っているのか。この際ですから、ひとつはっきりお知らせ願いたい、こういうように思います。
#20
○斎藤国務大臣 本来、政管健保の経営の万全を期するために、社会保険審議会というものがそういった役割りを果たすようにつくられたのではなかろうか、かように私は思うのでございますが、実際は、そういう働きをいたしておりませんので、したがって、やはり常時経営の状態を見、そして経営の実務に当たっている者を指導し、鞭撻をするというものが必要ではないかと私も考えております。
 そこで、抜本改正の中において、将来、そういうものを考えてみたら、どうだということで、ただいま事務当局で、その実施の案を検討中でございます。これは中央に置くだけでなしに、各府県にもそういうものを置いて、中小企業の事業主また中小企業の労働者というような方々の意見を聞くといいますか、場合によったら、そういった方々の参加もしてもらう。のみならず、経営について専門的な知識を持ったような人たちに、常時見てもらうことが必要ではないであろうか。さらに、財政調整を考えました際に、ただに政管健保だけではなしに、組合健保の経営についても見てもらう。そして、組合健保のいいところはとって、政管健保の足らぬところは補うというようにやっていく必要があるんではないであろうかという感じが、私はいたしておりますので、そういった具体案について検討中でございます。
#21
○島本委員 今回、特に大臣は、社会保障制度審議会または保険審議会――これは大臣の諮問機関でありますが、それらの審議会の意見を十分に取り入れて、法案を提出する、こういうように私ども、了解しておったわけです。しかし、きょうの公述人の意見を聞いてみましても、財政調整という名において、賞与を対象として保険料を徴収するということに対しては、まことに批判的だった。それと同時に、両審議会でも、この点に対しては批判的であった。今回、あえて賞与を対象にしてやるということは、審議会無視ではないか。公述人の意見の中には、あるいは賛成する人もありました。それはありましたが、私どもが、ほんとうに聞きたい意見だ、こういうように思った意見、これはこの問題に対しては、まことに批判的であります。賛否半々ということもありますが、あれはそういうようなメンバーですからそういうふうになった、あるいは心の中では批判的なんだけれども言わざるを得なかったのでしょう。おそらくそういうことなんですが、そのような批判的なもの、また両審議会においては、この問題に対しては、きわめて批判的だったものを、なぜ強引に取り入れるようにしたんですか。
#22
○斎藤国務大臣 制度審議会のほうの御意見は、総報酬制をとるというようなことについては、これは将来考慮すべきである。しかしながら、他の保険にも関係することでもあるから十分検討の上やるべきであって、少し時期は早過ぎるのじゃないか。もうちょっと検討してからやったらどうだ。しかし、その方向は将来、検討すべき価値があるということになっております。(島本委員「それはひとりよがりだ」と呼ぶ)ひとりよがりでなしに、これは意見書の中にあります。
 それから、保険審議会のほうは、事業主側でしたが、これは認められるけれども、上限を設けるべきではないかというようなことでございまして、もう一つは、前にも申し上げましたように、これは予算を編成した後に出したものでございますので、政府といたしましては、そういうような関係もあり、かねがねの考え方もあって、このほうが適当ではないか。いわゆる実収賃金に近いもののほうが適当ではないだろうか。ことに、保険料率を上げる場合に、賞与を組み込むほうが、いわゆる低所得の人たちにはむしろ軽くなって、所得の多い人には重くなる、そのほうが実情に合うのではないであろうか、かような考え方で賞与から一部特別保険料を取るということを提案いたしたわけでございます。これは前の国会に提案をいたしました際にも、その趣旨で提案をいたしておったわけでございます。
#23
○島本委員 当然これは特別保険料、総報酬制につながるものである。したがって、これは制度としても十分検討した上でやりなさい。全部の制度をやってしまった上で、これを考えなさいということなんです。それを先にやってしまって、制度のほうはあと回した。だから、主客転倒じゃないかと言っているのです。
 あなたのほうは、これをやって、あとから検討するという考え方だ。これはどうも主客転倒なんだ。総報酬制と特別保険料の関係、これは四次防みたいに事実上先に取ってしまって、そしてやったあとで制度を考えたら、やってしまったあとは、そのとおりいきますよ。先に考えなさいと言っているのに、先に取ってしまう。これをもって先取りというのです。四次防にあらず、これは特別保険料の先取りですよ。そういうようなものは、国民のためにもあんまり先取りしないほうがいい。まして、全部検討した上でやりなさいと言うのに、検討しないでやるというのは何事ですか。どうもその点、私は理解に苦しみます。
#24
○斎藤国務大臣 そこで政管のほうでは、当分の間ということにいたしますし、また組合健保のほうでは、この制度を取り入れるか入れないかは組合の自治にまかそうということで、ある意味において急激に負担がふえるという場合に、やはりいまの標準報酬制というだけでは、下のほうにかえって重くなるんじゃないだろうか、かように考えて、制度といたしましては当分の間ということにいたしたわけでございます。
#25
○島本委員 どうもそれは納得できません。先にやってしまって、あとからまた考える、これは考えてからやりなさいというのと反対なんだ。あなたの権限でやる先取りですから、いまのところ罪にならないけれども、それをほかのほうの例でやったら、あなた犯罪者になるおそれもある。きめられたのに、とんでもないほうに手を出してやってごらんなさい。それと同じだ。だめです、こんなことは。
 それだけじゃないですね。保険料率の変更、これは社会保険庁長官にやらせるという、この弾力条項、こういうようなものを政府がかってにきめてやるということは、財政法第三条に完全に違反するんじゃありませんか。こういうようなことをあなたが提案するということが問題です。「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金」は「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」こうあるのですが、それを保険庁の長官にちゃんともうやらしてしまう。こういうようなことについても、これはちょっとおかしいじゃありませんか。どういう含みでこれをやったんですか。こういうようなものから完全な収益をあげ、そしてあるものから取れば、それでいいんだというような安易な考え、こういうようなことは私は大問題だと思います。これは何も根本的な解決にならぬです。ただ、いま赤字だから、あるところからみんな取って、あとからそれを基礎にして、ゆっくり考えよう、医療基本法をその上に乗せて運営しましょう。国民のほうから取るだけ取って、その上に医療体系を組み立てようとする、あなたの魂胆なんでしょう。そうでなければ、こういうようなむちゃをするわけがない。ボーナスに手をつけたり、またこういう財政法の第三条に触れるようなおそれのあることをやっていることは、私はどうしても納得できない。
#26
○斎藤国務大臣 この制度は前にも御説明申し上げておりますように、とにかく過年度の累積赤字はたな上げをする。そして今度は単年度赤字をつくらせないということを主にして考えますると、わずかばかりの保険料の上下についても一々国会にはかる。それは手数という意味ではなくて、いわゆる短期保険のあり方といたしましては、ある一定限度内で、その保険集団において保険料率を上下をするということが許されてしかるべきではないであろうか。
 このことは御承知のように、たしか昭和四十年ですか、その前までは、この制度があったわけでありまして、国会の議決との関係は、国会でそういうことを承認をして法律で委任をしてもらえば、法律違反でも憲法違反でもない。そういう解釈でかつてやっていた制度でもありますので、今度単年度赤字をつくらないという仕組みでやりますのには、この方法がぜひ必要である、かように考えたからでございます。
#27
○島本委員 当然課徴金は「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」わけですから、必要だったら、一回一回国会で議決を求めてしかるべきです。一回にまとめてお世話申し上げてもよろしいという意味じゃないですよ。
 沖繩以来、えてして最近の政府の傾向は、そういう傾向がある。同じような法律を三つぐらいやって一つの法律にして、一回にして出す傾向がある。どうもあなたもそのくせがついた。こういうようなことで一回でそれを承認してもらえば、あとは承認したのだから、形式だけは整うからいい、これは違反じゃないのだ、こういうような大それた考えを持っている。これは国権の最高機関である国会の無視です。こういうようなことは断じて認められない。こんなことを平気でやろうとするあなたは、まことに魂胆としては腹黒いやり方です。こんなものを平気で出して、あなたはにやにや笑いながら通そうなんというのは、全く国民を侮辱するもはなはだしいです。大蔵省、一体これで黙っているんですかね。どうもこれは私としては納得できない。
#28
○戸澤政府委員 財政法三条との関係で御質問ございましたので、法律的な解釈をふえんして申し上げますと、財政法三条の趣旨は、国の独占事業に関する専売価格あるいは事業料金については「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」とされておりますが、この法律に対しまして、財政法第三条の特例に関する法律というのができておりまして、実際には鉄道、たばこ、郵便料金のほかは、特例法によって適用されておらないというようなことになっておるわけであります。
 財政法第三条の特例に関する法律という法律がその後にできておりまして……。(島本委員「いつですか」と呼ぶ)いまちょっと調べてみます。それで、この財政法第三条が適用されるのは、鉄道、たばこ、郵便料金ということになっておりまして、それ以外のものについては、適用がないというふうに措置されております。
#29
○島本委員 それは私は、ちょっと理解しかねます。財政法第三条の特例に関する法律、それはいつ出たものですか。内容をもう少し具体的に発表してみてください。
#30
○戸澤政府委員 いま法令集を取り寄せておりますので、この特例法の制定の時期、その条文は、後刻御報告いたします。
#31
○島本委員 あなた、いま言ったのは間違いございませんね。ただ鉄道料金、たばこ、郵便料、これだけは国会の議決を要する、あとは全然要らないのだ、かってにやってもいいのだ、こういうことになっておるというのですね。
#32
○戸澤政府委員 かってにやってもいいということではございませんけれども、財政法第三条の適用除外になっておるということは、間違いございません。条文は後ほどお読みいたします。
#33
○島本委員 私のほうは不勉強にして、その内容をよくわからぬし、はたしてそういうようなことになっておるのか――衆議院の法制局いないか……。
#34
○森山委員長 その問題は、法律を持ってきますから、ちょっとお待ちください。
#35
○大原委員 関連。
 三つしか書いてないのは、独占的な排他的に決定できる価格、料金について、つまり税金と同じようにやれる、こういうように書いてある。ただし、保険料は最初は健康保険からずっと発生してきたのです。それで皆保険になったのです。だから国民はどこかに入っていなければならないわけです。国民健康保険では保険税、こういうのです。政管健保、組合健保等と含めてですが、源泉徴収するのです。だから税金と同じなんです。皆保険になったから、税金と同じようになった。昭和三十六年からなっておる。当時の時間的な関係から、財政法には列挙してなかった。だから特例法でどういうことをきめてあるかということは、私はわからない。答弁を聞かなければわからぬけれども、しかし、これは考えてみたら、税金と同じような排他的な、あるいは一方的に取る金額なんです。保険料ということになっておるけれども、源泉徴収するか、税金として強制執行するかということになっておる。国民健康保険で払わなかったら、強制執行するのですから。
 ですから、そういうものは第三条については、そのものずばりというふうに決定してないけれども、第三条の精神は国会の議決できめるということです。だから、これを包括的に委任をして、保険庁長官が一方的にきめるということはないわけです。というのは、保険審議会というのが三者構成であるから、そこへかけます、こういうだろうが、保険審議会は、たとえば尊重したといったって、百分の一尊重しておいて、百分の九十九を無視しておるということもあるでしょう、いまだって、そういうことを一ぱいやっておるから。
 ですから、利害関係者の参加なしに政府が一方的に税金のように取り上げるということは、少なくとも第三条の精神をじゅうりんするものである。ましてや弾力条項というのは上がったり下がったりするのです。上がる一方のことが予想されておるような、そんな弾力条項などというものはありはしない。いままであったものは上がったり下がったりしていたのです。それがやめになったということは、国会の議決を要することになったということは、その経過は私が説明するまでもないことです。ですから、第三条ぴたりではないけれども――厚生大臣、わからぬ人とやってもだめなんだ。局長はわかっていないのだから、わからぬ人と幾ら相談してもだめなんです。少なくとも第三条の精神には違反をしておるという見解に対して、はっきり答弁しなさい。
#36
○斎藤国務大臣 これは法制局でも十分審議の上でございますから、したがって、財政法とか、あるいは憲法に違反することはない、私はかように信じているわけであります。法制局もあやまちなしということはないと思いますが、先ほど申しましたように、四十年までは、やはりこの条文があったわけでありまするし、それから国保は保険料で取っているところと保険税で取っているところと両方ございます。それから組合健保は上限と下限をきめて、その中においては組合で自由にきめて取ることができるということになっておって、実質的に私はそう変わりがない、かように思うわけであります。
#37
○大原委員 一言、関連質問ですから。
 厚生大臣、あなたはいまの議論の中で非常に権威のない答弁をされております。法制局が何のかんのと言うて、法制局がこういう見解でというのならいいですよ。まるで法制局にまかしたというようなことを言うのは、私は大臣としては、答弁としてはおかしいと思うのですよ。第三条で、そのものずばりというふうに決定していないのですよ、経過から見て。ないからといっても、申し上げているように、第三条の精神に違反をしていると私どもはだから指摘をしたのです。それなら特例法で社会保険の保険料というものは除外をしてもよろしいというふうにはっきり書いてあれば別ですよ。しかし、これは皆保険になって、いまのところでは一方的に強制執行できるのですよ。いままでは――ある程度の幅ならいいですよ。上がったり下がったりする見通しがあるならいいですよ。ですけれども、今度のものは千分の七十三から八十までぽんと上がるわけですよ。いままでの経過から見たって、千分の二か三を上げたり下げたりするのに、昭和四十二年以来、国会で非常に問題になったわけでしょう。それを七十三からぽんと八十まで上げていく。これは全く国会を無視しておるだけでなしに、第三条の精神に違反をしておる、こう言うのです。
 だから、中身の議論をしましょうよ。法制局が間違いでないと言いました、そういうようなことは、あなただって長い間厚生大臣をしておられたのですから……。
#38
○斎藤国務大臣 しかも、これはただ保険料を上げるだけでなしに、弾力条項で上げる場合には、国庫補助もそれに応じて上げるということになっておって、私は実質的には、そうむちゃなことではない、かように思っておるわけであります。これが違法かどうかという点は、すでにもう前にもこの条項が法律の中にあったわけでありますから、私は保険料の性質から、しかも単年度赤字を出さないという仕組みから考えますと、ある一定限度の中においては、上げ下げを自由にさしてもらう。自由といっても、それはもちろん審議会を経なければなりませんが、そういう仕組みをやってもらって単年度赤字は出さない仕組みをつくり、累績赤字はたな上げをし、一般会計から支払うという、こういう行き方はきわめて妥当なものだ、私はかように思っているわけでございます。
#39
○大原委員 もう一問。
 国庫負担をやるから、悪いことをしても免罪だ、こういう法律論なんかないですよ、全然関係のないことを持ってきて。
 ですから、私どもは、法律自体にも違反をしておると思うけれども、しかし少なくとも明定していないという意味においてはできるかもしれない。しかし、それは経過があるじゃないか。税金と同じじゃないか。排他的な、独占的な価格ではないか。そうすれば、少なくとも精神に反するじゃないか、あるいは議会を軽視しておるじゃないか、こういう政治論は成り立つではないか、こういうことですよ。
#40
○斎藤国務大臣 議会を軽視しているという点は、これは議会でこれでよろしいというように法律をつくってくだされば、私は議会で御承認をいただいたことでありますから、軽視をしたことにはならない、かように思っております。
#41
○大原委員 あなたはひどいことを言っているね。あなたはファッショだね。多数だったら何でもきめられる。憲法とか法律の精神に違反しておったって、きめられるのですか。そんなことはないでしょう。そうするとファッショですよ、あなた。ひどいものですよ、あなた。あなたのああいう答弁などというのは、あなたの政治責任を追及する問題になるですよ。あなたの答弁はひどい。全然納得できません。
#42
○斎藤国務大臣 議会で多数できめたことがファッショであるとおっしゃることには、私は賛成ができません。議会で御審議を願って、そして議会で決議になれば、多数であっても、満場一致であっても、そのきめ方はファッショだとおっしゃることには、私は承服はできません。
#43
○大原委員 委員長もう一つ、もうやりませんが、あとでまたやりますけれども。
 いいですか。あなたは、多数だったら何でもきめられる。あなたの議論はそうですよ。やはり憲法というのは主権在民、主権者を中心に動いているんだから、憲法を基礎に動いているんだから、多数であるからといって、それは形式論であるから、自主的に決定しておる憲法と、憲法に基づく法律で決定しておることに、多数であるから、それに違反をした、そういうことを決定しても、これはこの法律違反ではない。そういう考えは拡大していったらファッショですよ、それは。
#44
○斎藤国務大臣 何が主権在民の趣旨に沿うか沿わないか、これは国会で御審議を願って、そして国会でおきめになる。それに反対する人は、おれは反対だ、多数できめたのだからファッショだ、これは議会政治の上からどうであろうかと考えます。
#45
○島本委員 それはきめるその範囲もあるじゃありませんか。何でもそれを議会が多数であってきめたのならば、これはやれるのだ、その考え方はファッショに通ずるというのです。もっともじゃありませんか。したがって、やってはならないものを、少数であっても、正しいものは、やはり憲法によって守らなければならない。それも多数で否決したらファッショだ。あたりまえじゃありませんか。まして、いま大臣が言ったこの考え方の中で、千分の七十三から八十までの間、これを上げるのに、ただ上げるのじゃないのだ、国庫負担金がつくからいいじゃないか。国庫負担は免罪符ですか。国庫負担をやったならば、何ぼ上げてもいい、こういう考えですか。こういうのは、国庫負担は免罪符だというようなその考え方は、厚生大臣の考え方としてはおかしい。おかしいよ、それは。
#46
○斎藤国務大臣 私はそういう意味で免罪符と申したのではございませんので、このやり方が適当ではなかろうかというので提案をいたしましたと言っているわけでございます。適当であるかないかという問題でありますから、このやり方は一番適当なやり方だと思うて提案をいたしたと言っているわけでございます。
#47
○島本委員 これはやっぱり私は納得できません。これは弾力条項といって、のぼる一方の弾力。これは脳溢血でしょう、こんなのは。血圧も上がる。上がる一方だ。弾力というのは上がったり下がったりするから弾力でしょう。これは上がる一方に対して、それも国庫負担をつけてやるからいいんだ。いかにも免罪符のように国庫負担を使っている。こういうような考え方が大臣にあるとすれば、これはおかしいというのです。まして憲法によって主権在民、そしてそれが、はっきりきめられるものときめられないものがある。それなのに多数できめたからいいじゃないか、こういうような考え方があるとすると、私は納得できない。
 委員長、この考え方には私はどうも納得できませんから、この大臣の答弁は、私は納得できないということをはっきり申し上げておいて、これは保留さしてもらいます。いいですか。
 では、次に移ります。
#48
○戸澤政府委員 先ほどの財政法第三条の特例に関する法律のことで、この制度の日付並びに内容を申し上げます。
 昭和二十三年四月十四日、法律第二十七号によって、この特例法ができておりまして、それでもって「政府は、現在の経済緊急事態の在続する間に限り、財政法第三条に規定する価格、料金等は、左に掲げるものを除き、法律の定又は国会の議決を経なくても、これを決定し、又は改定することができる。」となっておりまして「一 製造煙草 二 郵便、電信、電話、郵便貯金、郵便為替及び郵便振替に関する料金 三 国有鉄道における旅客及び貨物の運賃の基本賃率」というふうになっております。ですから、財政法三条との関係におきます法律的な問題は、問題がないと思います。
#49
○島本委員 では大臣、これは、それによってやることは違法じゃないんだ、こういうふうに言うわけですね。しかしながら、何をやってもいいんだ、その根底は国庫負担がついているから、これをやってもよろしいんだということ、これはどうも、国庫負担をつけてやるから料金は何ぼ上げてもいいんだと、国庫負担をつけてやるのは恩恵的に、これを免罪符にしている。そういう考え方は全然おかしい。
 大臣、また同じような答弁なら、何回したって私は理解できない。あなたの権限で、ちょびっとでもいいから、大蔵省から予算をつけてやると、多数によってきめて、千分の七もぐっと上げて、これによって、もうすでにこれは国庫負担をつければ免罪符なんだ、何ぼ上げてもいいんだ、こういうような考え方は、私はどうしても納得できないのです。
#50
○斎藤国務大臣 私は、国庫負担があるから違法にならぬとかなんとか、そんなことを言っているのではございません。国庫負担も同時にそれに応じて上げていくというやり方であるから適当ではないか、こう思って提案をいたしております、こういうことであります。
#51
○島本委員 私はこれは納得できませんから、この点だけはもう一回議論し、決着をつけます。――いまここで徹底的にやってもいいんですが、やりますか。(「ゆっくりやりなさい」と呼ぶ者あり)それでは、法制局も全部呼んできて、ゆっくりやりましょう。
#52
○山本(政)委員 関連して。
 この財政法第三条の特例に関する法律は、いまの説明で私はわかったのですが、それじゃ保険庁長官がなぜ料率をきめられるのか、その理由をひとつ聞かしてもらいたい。
#53
○戸澤政府委員 政府管掌健康保険の保険者は、保険庁の責任者である保険庁長官ということになるわけでして、ほかの共済組合、労災、失業保険、そういったものについては、共済組合などについては、保険者の代表者が運営審議会にかけるとかなんとかというような一定の手続を経てきめるということになっておると同義でございます。
#54
○山本(政)委員 政府管掌健康保険でしょう。政府の管掌するものだったら、それじゃなぜ厚生大臣がおきめにならないのです。保険庁長官ということでなくて、厚生大臣がおきめになるのが至当じゃないですか。
#55
○戸澤政府委員 これは健康保険の規定によりまして、社会保険庁長官が、この政府管掌健康保険の責任者ということになっておりまして、厚生大臣は、その政府管掌健康保険に対する監督者という立場に区別しているわけでございます。
#56
○山本(政)委員 それじゃ、保険庁長官がきめられるという、その健康保険法の条文を見せてください。――重ねて申し上げますよ。健康保険法に、保険庁長官が料率をきめられるという規定があるのかどうか、それを見せてくれというのです。
#57
○戸澤政府委員 健康保険法の二十四条、政府管掌健康保険についての規定でありますが、その二項に「前項ノ規定ニ依リ政府ノ管掌スル健康保険ノ保険者ノ事務ハ社会保険庁長官之ヲ行フ」とあります。
#58
○山本(政)委員 だから、あなたは事務とは言わなかったのだ、保険料はきめられる、こうおっしゃった。だから健康保険法のどこにそれが書いてあるのかと聞いたのです。どこに書いてありますか。それは事務上のことはわかる。しかし保険料をきめるということは健康保険法のどこにあるか、それを知らしてもらいたい。
  〔発言する者あり〕
#59
○森山委員長 十分間休憩をいたします。
   午後四時四十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後五時十二分開議
#60
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 戸澤保険局長。
#61
○戸澤政府委員 お答えいたします。
 健康保険法第二十四条第一項の規定によりまして、政府が政府管掌健康保険の保険者というふうにきめられておりまして、その同条第二項の規定によりまして、その保険者の事務を行なうものは社会保険庁長官というふうにきめられております。したがいまして、社会保険庁長官が、ちょうど共済組合の理事長などと同様に、その政管健保の運営、財政等について責任をもって運営するというような義務があるわけでございます。
 それで次に、第七十一条の規定によりまして、これは「保険者ハ健康保険事業ニ要スル費用ニ充ツル為保険料ヲ徴収ス」ということになっております。したがいまして、政管健保においては、その事務をつかさどる保険庁長官に保険料徴収の権限が与えられているものでございます。これはちょうど共済組合とか、健保組合の保険料についても、運営審議会あるいは組合会の議を経て、その代表者である理事長が、これを執行するということとなっているのと同様の趣旨でございます。
 ただ、その保険料の決定等については、これは保険庁長官が独断でできるということは適当でないというところで、今回の改正法案におきまして、社会保険審議会にはかって、しかもその上限をしぼって、その決定を待って運営するというふうにお願いしているわけでございます。
 それでちなみに昭和二十三年から四十一年まで実施されておりました旧条文を読み上げてみますと、次のように書いてございます。「社会保険庁長官ハ保険料ヲ以テ保険給付費及保健施設ニ充ツル費用ニ不足又ハ剰余ヲ生ジタルトキハ社会保険審議会ノ意見ヲ聴キ千分ノ五十五乃至千分ノ六十五ノ範囲内ニ於テ保険料率ヲ変更スルコトヲ得」というように書いてございまして、この昔の条文の趣旨をそのまま今回踏襲したというようなことでございます。
#62
○島本委員 きわめて事務的に、まさに事務的に、これは有利に解釈してただいまのような答弁がなされた。私はそれには納得することはできない。ことにいまのような行き方、千分の七十から、七十三までにする、いわば千分の三、これは国会承認事項にして議決を要するとしながら、それ以上千分の八十までのうち、この千分の七という高い料率、これを保険庁長官の事務だ、こういうようにして心得るという行き方、まさにこれは本末転倒であろうと思います。またこういうような意味からしても、私は財政法第三条の精神に違反し、議会を軽視するような行為である、無視するような行為である。
 こういうようなことから申して、大臣、あなたは、はっきりこの点はここへ来て、いわば国権の最高機関である議会の中で、国民に向かって、国会議員に向かって意思表示できる。しかしながら保険庁長官の場合は、政府委員ではない、いわば要請によって来ることができる説明員、こういうような人たちに、国会できめる千分の三以上に、千分の七のこの権限まで与える。これもいわば事務的に扱っていいのだという考え方は、私はまことに理解に苦しむところです。まして料率が事務だ、こういうような考え方に至っては言語道断だ。私はこれは納得することはできません。これは留保しておきたいと思います。
#63
○山本(政)委員 関連。
 いま局長の答弁がありまして、二十四条と七十一条を根拠にされた。それで私はお伺いいたしますけれども、四十三条ノ九に「保険医療機関又ハ保険薬局ガ療養ノ給付ニ関シ保険者ニ請求スルコトヲ得ル費用ノ額ハ療養ニ要スル費用ノ額ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額」と書いて、二項に「前項ノ療養ニ要スル費用ノ額ハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ算定スルモノトス」つまり療養に要する費用支払い分については大臣がきめる、これはきめてもよろしい。保険者が取り上げる分は保険庁長官がきめるのはかってである、これは私論理が合わぬと思うのですね。払うのはかってに大臣がきめていく、取り上げる分は保険庁長官で取り上げる、主務者が違うわけですね。そういうことはぼくは筋が通っておらぬと思うんですよ。その点は一体どうなんでしょう。
#64
○戸澤政府委員 ただいまお読みになった条文は、いわゆる点数表に関する診療報酬のことですが、これはつまり診療に要する費用、保険者がかってにきめるものではなくて、健康保険だけでなくて、ほかの各種の医療保険に全部共用されるものでございます。そういうものにつきましては、ひとつ国の立場で適正な医療費を、診療報酬をきめるというのが適当であるという趣旨で、国の代表者である厚生大臣という名になっておるわけでございます。
#65
○山本(政)委員 よく年代を覚えておりませんが、昭和四十年か四十一年に、保険庁長官が料率をきめたのが、これが国会に変わりましたね。国会の議を経ることになりましたね。それはなぜそういうふうになったのか。私は当時のいきさつを詳しく知りませんけれども、それはやはり国会の議を経るに足るほど重要であるから国会の議を経るんだ、こういう観点だったと私は思うわけですよ、弾力条項やめたときにですね。今度はそれをもとに戻すわけですね。(「逆コースだ」と呼ぶ者あり)そうなんです。それはいま言ったように、まさに逆コースだと思うのですよ。保険庁長官が料率を上げてきたときに変更して、そして国会の議を経るようにした、その論拠は何でしょう。
#66
○戸澤政府委員 前の条文が廃止されましたのは、四十一年のいわゆる第一次特例法のときでございます。この特例法というのは、あくまでも暫定的な財政対策として、期間を区切って適用されたものでございまして、その当時の議事録等によりますと、これを廃止したのは、保険庁長官にそういう授権をするのが適当でないという趣旨ではなくて、暫定的な財政対策として、二年間は千分の七十でいけると思うという、それを二年の間に変更する必要はないであろうという見通しのもとに七十に固定されたものでございます。この弾力的規定の問題につきましては、その当時の議事録によりますと、抜本改正の際にそういう制度の規定については再検討しようというようなことになっておるようでございます。
 それで今回抜本改正と一緒にこの財政の長期安定をはかろうという趣旨の法案を出しているわけでございますので、この際に、こういう規定が財政の長期安定を期するためには必要であるという趣旨から、ここに提案したものでございます。
#67
○山本(政)委員 前に、保険庁長官の専決事項として、弾力条項というものを当分の間は、要するに財政上心配ないからやめたんた、こうおっしゃっている。そうすると、いま一部改正案が審議にかかっていますけれども、はっきりと、そういう意味では赤字が出ないという見通しがありますか、国庫補助率五%で。
#68
○戸澤政府委員 今回御審議願っております財政対策法案のとおりに成立さしていただければ、抜本改正の実施にも支障なく運営できるものというふうに考えておるわけでございます。
#69
○山本(政)委員 同じような答弁を前のときになさっているんですよ。つまり弾力条項が長官の専決事項であることをやめたときに、同じ答弁があるわけだ。この法案さえ通していけば、赤字というものは克服できると言っているのができなかったわけです。将来に対して保証があるか。あなたは局長がおかわりになったから、今度またそういうことをおっしゃっているのかもわからぬけれども、そういう保証というものは現実にはないわけです。だから私どもは一二%に上げなさいと言っているのですよ。それならば、ここ当分は、あるいはだいじょうぶかもわからぬ。
#70
○戸澤政府委員 前の特例法のときは千分の七十に一応固定いたしまして、それでいろいろな努力をすることによって赤字の克服をすることができるであろうという見通しのもとに、七十に固定したわけでありますけれども、しかしその後、やはり医療費の増高等の傾向にかんがみまして赤字はますますひどくなったわけでございます。それで今回の財政対策法案は非常に総合的ないろいろな対策を考えているわけでございまして、保険料の料率の改定だけでなくて、国庫補助も定率化し、あるいは特別保険料を設定するとか、あるいはさらに国庫補助の連動規定を設けるとか、標準報酬の上限を上げるとか、いろいろな対策を総合的に考えているわけでございますので、この対策がもし全面的に成立さしていただければ、今度は抜本改正の運営にも支障なくやっていけるものというふうに見込んでいるわけでございます。
#71
○山本(政)委員 最後の質問です。私は言うまいと思ったけれども、あなたがそうおっしゃるのだったら、あえて言わなければならぬわけです。
 昭和四十一年に保険庁長官の専決事項というものをやめたということは、当分これによって赤字が生じないであろうということから、国会のほうの議を経ることにした。ということは、まさに国会軽視ですよ。そうじゃありませんか。当分出ないから国会にまかせておけばいい、そんなばかな考えは私には通らないです。考え方の基本は、むしろあの当時あれだけ大きな議論になったから、国会の議を経るということが本旨だったと私は思うのですよ。しかし、当分赤字が出ないだろうから、これは国会に預けておったって問題にならぬから、専決事項でなくたっていいんだということは、きわめて国会無視の考え方じゃありませんか。そうなりませんか。もう一ぺん統一見解を出してください。私は見解がどうあろうと、私の質問はこれで終わります。
 私の言う意味がおわかりにならないようですから、もう一ぺん申し上げます。
 局長の御答弁は、長官の弾力条項の専決事項というものをやめた理由として、あの当時法改正によって当面は赤字が出ない、つまり固定をしたというおことばをお使いになったと思いますけれども、弾力条項を保険庁長官の専決条項にすることをおやめになった、こういう答弁なんですよ。だから赤字が続く間はつまり保険庁長官でやります、赤字が出なくなって予算上の心配がなくなったから、国会のほうへかけて、そして国会のほうに、言い方は悪いかもわかりませんけれども、投げておけば当面は心配ないということだったらば、国会軽視の議論になりはしませんか。おわかりですか。議論からいえば、そういうことになるはずですよ。
#72
○戸澤政府委員 私の答弁が少しく舌足らずであったかもしれませんが、赤字の心配がないから料率を固定した、それから心配があるから弾力的運用をする、そういうようなことではございませんで、この弾力規定の問題は保険料運用の制度論でございます。それで、当時の四十一年のときの法案は二年間の時限立法という暫定法でございましたので、この二年の間においてそういう弾力的な運用をするということは適当でない、将来抜本改正のときに、そういう制度的な問題はもちろん再検討をすべきであるという趣旨でもって一応廃止されたということでございます。
#73
○山本(政)委員 そうすると、もっと危険なんですよ。臨時立法だから国会の議を得ることにしてけっこうだ。恒久ということばは妥当じゃないけれども、しかし臨時立法でないから、保険庁長官が専決すべきだという考えというものは、まさしく国会軽視になるじゃないかと私は言うのです。そうでしょう。
 臨時立法のときには、二年の臨時立法だから、これは国会のほうにかけておったらいいだろう、特に赤字の見通しもないし、こういうことで国会にかけるのだったら、これは国会軽視になるじゃありませんかというのが私の言い分なんです。臨時立法でなくて、いわゆる法律であれば、臨時でない法律であるなら、その条文について国会の議を得るということにする、国会の議を得るということにするほうが、考え方としては最も常識であるのではないかというのが私の言い分なんですよ。つまり、あなたの頭の中には国会を軽視するというお考えというのがあるのではないだろうか。私どもが主張したのは、あれだけ騒がれた料率の問題だから、国会の議を得なさいとこう言って主張したはずですと、こう言っているのです。
#74
○戸澤政府委員 これは決して国会軽視というような趣旨できめられたものではございませんで、弾力的運用というのは、ある程度政管健保の長期的な運営見通しを立てて、ある程度長期間にわたって収支の均衡を得られるように、弾力的な運営によって収支の安定が得られるようにという趣旨でもって、この制度はつくられているわけでございます。したがいまして、その二年間というような短期間において、そういう弾力的運営が必要であるということは、あまり考えられないわけでありまして、長期的な運営を考える場合に、この規定の必要性が生まれるわけでございます。
 したがいまして、将来抜本的な改正を考えるときに、その弾力的運営についても、どの程度の幅を認めたらいいか、またそのやり方については、どういうチェックをしたらいいかというようなことなどを、もう一度検討する必要があるということでもって先に見送られたものであろうと思います。
#75
○山本(政)委員 留保しまして、私の質問を終わります。
#76
○川俣委員 関連して。
 もう少し理解を深めたいと思うのですが、これが、私の本会議の質問で厚生大臣の答弁が理解できなかったところです。そこで、これは決して追及というよりも、ほんとうに質問なんですが、弾力条項ということがぐっと出てきたものだから……。
 二十四条によれば、事務は一切長官にあるということだから、国会ではまず一応千分の八十なら千分の八十まできめて、その千分の七十から千分の八十までの間を上下させる権限が長官にあるのだというのなら、私はわかるというのですよ。これが弾力条項というのです。弾力というのは、上げたり下げたりするから弾力なんですよ。ところが千分の七十三という、いわゆる千分の三は国会議員に検討してもらって、審議してもらってきめてもらうというのだ。あとの大幅の千分の七は事務を取り扱う長官がきめられるのだという権限はどこからきたのだ、こういうことですよ。
 だから局長、それはほんとうにその作業を進めるときに――私はこういうように推察するわけだ。二百九十八億というものを出すためには、千分の三だ。だから二百九十八億、まず毎年度で出さなければならないから千分の三にする。しかしその後、これじゃまだ赤字が来年あたりから出るだろうから、千分の八十まで、一々国会にまたやると問題になるから、一挙に千分の八十までの権限をとっておこうという考え方になったのか。私は弾力条項というから、千分の八十までの間を上げ下げするということなのか、上げっばなしだかということをもう一ぺん聞きたいのです。
#77
○戸澤政府委員 それはちょっと趣旨が違うわけでございまして、この法律の実施は一応四十七年の四月一日を予定しておったわけでございますけれども、四十七年度の予算の編成並びにその運営につきましては、その四十七年度単年度において収支が償うようなたてまえにしておかなければならないわけでございます。すなわち単年度ほうっておけば、千三百億ほどの赤字が出るわけですので、これを国庫補助と保険料でもってまかなえるというたてまえにしておかなければならないわけでございます。四十七年度の運営において、その弾力条項が発動されるということを前提にして予算を組むということは、おかしいわけであります。
 したがって、四十七年度の収支のバランスをとるためには、どうしても千分の三だけは保険料を上げなければならぬということになってくるわけでございまして、千分の三だけは、どうしてもまず上げておく、そのあとの運営については、必要に応じて弾力条項が発動できるようなたてまえにいたしたいというのが、この趣旨でございます。
#78
○川俣委員 それでは局長、いま千分の七十でしょう。千分の七十から千分の八十まで保険庁の長官できめられるという条項がなぜ出なかったのですか。千分の七十三ということを、なぜ今回国会に出したの。じゃ千分の十という振幅を長官がやれるという法案を出してみたらどうだったのですか。
#79
○戸澤政府委員 いまそれを御説明したつもりですが、千分の七十から八十までの間弾力的運営ができるというようなことにしておきますと、四十七年度の運営をするためには、すぐにもう四十七年度中において弾力条項を発動して三だけ上げなければ収支が合わないということになってくるわけでして、それはやはりおかしいわけでして、四十七年度の健保の収支見通しをつけ、その予算を組むにあたっては、これはもう具体的に保険料を何ぼ上げる、国庫補助をどれだけふやすというようなことを、きちっとした計算の上に立たなければ予算は組めないわけでありまして、そういう幾ら弾力条項が発動されるかわからないという不確定な前提のもとに、四十七年度の予算を組むということは不可能なわけでございます。
#80
○川俣委員 いよいよおかしいわけです。それは私は、そういうことは想像して質問したのです。それはやはり法理論的に言うと、二十四条で保険庁長官が事務を行なえるという考え方から、保険料率を上げるという権限が保険庁長官にあっておかしくないんだということを局長が一番先に言ったのですよ、島本委員の質問の答弁として。それがおかしいと言ったら、いや、この議決を経れば、そういう権限があるんだ、そうしたら財政法を取り上げて、ほかにこういうような類似したものがあるんだということの拡張解釈をしたわけですが、何としても理解できないのは、保険料率を上げるなんていう権限は、もう一ぺん伺いますが、どういう考え方から長官にあるという法解釈ですか。いいですか。長官の権限というのは、二十四条でぴしゃっと事務だということにうたっている。そうすると健康保険法というのは、大改正にならなければだめなんですよ。保険庁長官の権限が全然変わるわけだよ、保険料率をいじれるというのだから。しかも千分の七という大幅のほうをいじれるわけだからね。
 だから、もう一度さらに伺いますけれども、ただいまの財政法の話も出た。それから二十四条の事務から料率を変えられるという権限を与えようという話も出た。それでは最終的に保険庁長官にこの権限を与えたっておかしくない、こういう考え方は、どういうところから出てきたのですか、もう一ぺん……。
#81
○戸澤政府委員 それは医療保険というような短期保険の特質からくるわけでありまして、年金のような長期保険になれば、これは五年に一回とかいう定期的に再計算をして、その長期見通しをつけて、その上に立って保険料率を変更するということでもって運営できるわけでございますけれども、短期保険におきましては、毎年その医療費の変動というのは非常に激しいものでございますし、もし年度途中でもって保険料の収入が足りないというような事態になりますと、これは医療費の支払いも不能になるというような事態にもなりかねないわけでございます。そういう短期的な変動の激しい医療保険等におきましては、ある程度の許された範囲内において、その保険者が流動的に運営できる権限を与えてもらいませんと、円滑な運営ができないというふうに思うわけでございます。それで各種の短期保険におきましては、共済組合でも健保組合でも、失業保険なんかもそうですが、同様の趣旨の運営が認められているわけでございます。
 ただ、その保険料の変更を長官の独断にゆだねるということは、これはやはり社会保険の性格上適当でないというところで、厳格な縛りのもとに、つまり上限も押え、それから審議会にはかって、その意見によって初めて発動ができるというふうにしているわけでございまして、この程度の弾力的な運営は認められませんと、こういう短期保険の円滑な運営はできないという事情を御理解願いたいと思います。
#82
○川俣委員 どうも端的でいいんですけれども、質問のあれが、だいぶそれたんですけれども、関連ですから、これでやめますが、私はこう思うのですよ。いわゆる弾力条項というのは、保険庁長官という事務取り扱いの最高責任者は、ある程度国会の中で最高幅をきめてもらって、あとの赤字だ黒字だという中で上下できる、動かせるというのが弾力条項というのだと思います。弾力とはそうだからね。これは上げっぱなしでしょう。それが一つ。
 もう一つは、保険庁の長官の権限というのは、おのずから常識的にあると思いますよ。各官庁の長官に匹敵する権限があるわけですよ。保険庁の長官に保険料の料率を上げるという権限はないと思います。私はそれだけは言っておきます。
#83
○斎藤国務大臣 先ほどから伺っています中で一つ、この弾力条項は上げるだけだという誤解があるようでございますが、これは上げ下げをするわけでありまして、これによりますと、「保険給付費及保健施設費ニ充ツル費用ニ不足若ハ剰余ヲ生ジ又ハ生ズルコト明トナリタルトキハ」保険料率を変更することができる。剰余を生じた場合に保険料率を変更するというのは、下げるわけであります。ただ、どこまで下げられるかという下限が今度は書いてない。昭和四十一年までの法律は、基本の法定料率が千分の六十、社会保険庁長官は同じ条文で、千分の五十五ないし千分の六十五の範囲において保険料率を変更することができる、下限が書いてあったわけです。今度は下限がないわけであります。どこまでも下げられる。下限はここに書かなくても、幾ら下げてもかまわないじゃないかというので下限は書いてない。どこまでも下げられるということなんです。
 そこで、これは上げるだけじゃないかとおっしゃるのは、これは剰余を生じた場合に変更する場合には、下げる以外に方法はないので、不足の場合は上げる。しかし上げ幅は八十までだぞ、下げ幅は書いてないから、どこまでもやりなさい。下は許すということなんです。下限は書いてございません。それは下限を書く必要はないであろうということで書かなかったわけであって、その意味は、ただ上げるだけではないということだけは御了承をいただきたいと存じます。
#84
○川俣委員 それじゃ、だいぶ理解が今度は混乱してきましたけれども、そういうような考え方でやったとなれば、これはたいへんですよ。いいですか。保険庁長官の事務という権限に対しては、国会はある程度幅をきめてある。千分の七十から八十までこれは国会審議できめてあげるのです。この間は長官でできるんだという解釈でなければおかしいですよ。
 大臣の言うように、下はゼロまでできる、上だけを押えているんだなんという考え方、私らはそういうことを言っているのではないのです。保険庁の長官は千分の七十から下げることもできないというんだ。そういう権限はないですよ。
#85
○戸澤政府委員 これは、法制局と法律的なことを十分に審議をした上で提案したわけでございますので、趣旨は、いま大臣が御説明いたしたとおりでございまして、昔の法案の条文のように下限を書くことも可能でございますけれども、しかし下げるほうは国民の利益になることでございますし、それは限度を設けずに、収支運営上差しつかえないだけは幾ら下げてもよろしいという趣旨で、法律的にも問題はないということで、こうなったわけでございます。
 それで、下げる場合でも社会保険審議会にかけるわけでございます。審議会では、あるいはその下げ方が少ない、もっと下げるべきであるという意見が出るかもしれません。下げるほうも保険庁の独断でするわけではございません。審議会にはかってするというわけでございます。
#86
○森山委員長 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#87
○森山委員長 速記を始めてください。
 斎藤厚生大臣。
#88
○斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この弾力条項の下限はございませんが、しかしながら、これは保険財政に剰余を生じた場合には変更することができる。不足を生じた場合にも変更することができる。不足の場合は上げるわけでありますから、上げるのは八十まで。剰余を生じた場合には下げるわけでありますから、その剰余分だけ、これは下限は、どこまで下げてもよろしいということであります。ゼロになることがあり得るかということでございますけれども、そういうことは事実上あり得ない。それほど剰余を生じるということもないし、現実にまかなうに足る保険料率を算定をして、そこまで下げるということでございます。
 なお、よけいでございますが、この弾力条項によって千分の七十三をこえて上げました場合には、その千分の一を上げた場合に、総額の千分の四を補助する。これは、こえて上げる場合には補助をするわけであります。
 そこで、弾力条項で千分の七十三よりも下げた場合に、さらに弾力条項で補助率を下げるかというと、これは基本としては、百分の五の定率補助は、いかなる場合によっても割ることができない。したがって、千分の七十三よりも下げた場合においても、定率の五%というものは、いつも確保される、こういうように御理解をいただきたいと思います。
#89
○島本委員 ただいま大臣から答弁がありましたが、二つの点で私は納得できません。
 せっかく、いまいろいろと審議されておるこの法律案の中で、料率千分の七十から七十三まで上げるという、そしてまた、弾力条項を七十三から八十までとして提案している。にもかかわらず、一番下まで、ゼロまであり得るんだというような答弁をし、実際上そういうようなことは全然あり得ないと、またあとから答弁し直す。そういうようなことにおいては、私どもは、これは単なる答弁技術であって、内容としては、まことに理解に苦しむから、この問題に対して私は納得できません。これが一つ。
 もう一つは、大臣は先ほどいろいろ申されまして、審議会の意向は十分尊重するというようなことでありますが、社会保障制度審議会の答申、この中に「千分の八十を限度とする保険料率の弾力的調整の規定は、保険財政の長期的安定を図るためには必要なものと説明されてはいるが、少なくとも昭和四十七年度においては、すでに収支は均衡され、発動の必要はない。何故この際規定しようとするのであろうか。むしろ、抜本的対策の成立後において諸条件の変化をおりこんだうえ、長期的財政見通しにつき十分検討を加え、しかる後規定すべきである。」こういうようにはっきり言ってあるのが社会保障制度審議会の答申、同時に保険審議会のほうでも、「抜本改正の審議との関連もあり、さらに検討すべきであるとし、事業主代表委員および被保険者代表委員は抜本改正の審議の際に検討されるべきものとの意見であった。」こういうように、はっきりついているにもかかわらず、この意見を無視して、そして現在提案された。こういうようなことに対して、私は、もう審議会の無視であり、納得できない。
 以上の二つの理由によって、私はいまこの答弁に対して納得できませんから、これは留保いたします。したがって、次に移らしてもらいます。
 だいぶ間があいてしまいました。午前中からの公述人の意見聴取によりまして、私どもも、やはりいろいろと感ずるところもあったわけであります。その中には、昭和六十年で日本の総医療費は二十四兆円になる、こういうような一つの積算、こういうようなことも発表されておるわけであります。
 それは賃金が上がり、インフレ促進の傾向にある現在の情勢から、そうなるのであろう、こういうように言っておりまして、よく聞きました。それと同時に、大臣、赤字解消のための努力をいろいろとされておるようであるけれども、これは病気になったあとの対策、こういうようなことで、あとを追いかけて歩いていっても、これはいまにして、それを抜本的にやりたとしても、もう二、三年後には、また赤字になってしまうのである。したがって、赤字にしないための対策は、病気にならないための対策を優先的に講じなければならないものである。厚生省は、これに対してほんとうに耳を十分澄まして聞くべきである、こう思っておったわけです。
 いま出た赤字を追って歩いている。料率をまたそのために上げ、弾力条項までつけた。これを解消したあと、また抜本改正をやろうとする。その上また医療基本法も考えよう、こういうようなお考えのようである。しかしながら、赤字そのものをほんとうに検討するならば、病気にならないための対策を優先的に講じて、そういうような上に立ってこそ赤字対策が可能になってくるし、実を結ぶものなんです。いまのように政管健保は赤字が多い、また国民健康保険のほうも赤字が多い、こういうようなことにしておいて、何らそれの対策を打たないで、あとから幾ら赤字対策ばかりやってもふえる一方である。
  〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
 したがって、厚生省はこの対策を講ずるために十分考えておかなければならぬはずだったのではないかと思うのです。いまにして考えれば、少しおそきに過ぎますが、こういうような対策をどのように考えておられますか。
#90
○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、国民の健康を守るということは、まず疾病にかからないようにするということが第一でございます。何も保険財政の赤字をつくらないためというよりは、その前の次元において、まず国民が病気にかからないようにする、健康を保持する、あるいは疾病の予防をするということが何よりも肝心でございますので、厚生省といたしましては、かねてからそういう考え方のもとに、あるいは予防注射もやったり、また国民の健康診査をやったり、たとえば高齢者の診査をやる、あるいは乳幼児、三歳児未満の無料健診をやる、またガンの無料検診もやるというように、必要と考える予防対策を実施してまいっております。本年度予算からさらに県に、一応モデル的にではありますが、国民の健康管理センターというものをつくって、そうして国民の健康の増進、病気にかからないようにする策というものを講じておるわけであります。
 これからの日本の経済の状況等を見ますると、ますますこれが必要になってくるであろう、かように考えて、そのほうには最善の努力を尽くしたい、かように考えております。医療基本法の中におきましても、疾病の予防、国民の健康管理の大事であるということも入れまして、その方策をさらに推進をいたしたいと考えております。
#91
○島本委員 それを推進する過程において、いろいろ実施上のメリットもあるでしょう。またそれも成果となってあらわれるでしょう。私がいまここで指摘して聞きたいことは、医療事故、これに伴う医療紛争、こういうようなことが最近は意外に多いということを聞いておりますが、その実態はどうなんですか。また厚生省は、これに対してどのような対策を講じておりますか。これを少し解明してもらいたい。
  〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
#92
○松尾政府委員 医療紛争と申しますものも、非常にいろんなタイプのものがあろうかと思います。したがいまして、私どもが現段階で全国の医療紛争が幾らあるのかという実態は、実は正確にはつかみ得ていないのでございます。一部、たとえば医師会等で四十五年に調査したのがございますが、これもすべてを網羅しておるとは私ども思いませんが、昭和四十四年段階で約四百件、三百九十六件の医事紛争がある、かように報告をされておるのでございます。ただ、私どもが直接担当いたしております国立病院関係で見ますれば、昭和三十五年以来昭和四十七年までの段階で、七十七件のそういう紛争が起こっておりまして、そのうち約半分近い三十二件がいわば裁判という形で、訴訟になっておる、こういう実態は、私どもはよく存じております。
 問題は、そういう紛争というものをどういうふうに解決していくかということでございまして、私どもまだ最終的な案を持つに至っておりませんが、まあこういう紛争というものは、いろいろなタイプがございますので、それをどういう範囲のものまで広げるべきなのか、あるいはそれを解決するといたしましても、どういう仕組み、制度でやればいいのか。特にこういう問題が起こりますと、御承知のとおり非常に長期間結論がかかる。そのために被害者も、訴えられたほうも、非常に長期間にわたっていろいろ困難をするという事例がございます。こういったことも考え合わせれば、そういう時間を短縮するためのやり方は、どういうふうにあるだろうか。また従来のいろいろな訴訟といったような関係、賠償といったようなものとの関係というもの、これは整理しなければならない。かようなことで、私どもはまだ成案を得ておりませんけれども、最もいまのような点に眼目を置いて検討を続けてまいらなければならぬ、こういうことで内部的には検討いたしておる次第でございます。
#93
○島本委員 日本医師会の法制委員会があるようであります。その法制委員会で――業界紙によって伝えられた記事を見て、はっとしたのですが、これには「個別的紛争増加の現象は現行医療制度の欠陥の集中的表現にほかならない。」こういうふうにある。
 そうすると、結局医療紛争が起きておるということ自身も、これも医療制度の欠陥の集中的な表現にほかならないのだ。こうだとすると、これはまことに重大なことなんです。医療事故、紛争、これは医師の明確な過失による場合も当然あり得る。しかし根本的な要因は、健保法をはじめとした医療制度の矛盾が原因なんだ、こういうふうに言っておるのですが、これに対して、厚生省はどのような見解をお持ちですか。これは言わせっばなしでいいのですか。ほんとうに制度の欠陥だとするならば、この責任は厚生省にある。こういうようなことになってしまいますが、見解を伺います。
#94
○松尾政府委員 私どもも医師会のそういう報告は承知いたしておりますが、こういう医事紛争が起こること自体が、健保法等の制度の欠陥に基本があるという認識、これはどういう観点でそういうふうに述べているか、つぶさに聞いているわけではございません。おそらく私の推測いたしますところでは、こういうことを言う以上は、できるだけその医療の本体というものが健保法によって曲げられないというような意識のもとに、こういうことを言ったのじゃなかろうかと存じます。そういった点は、すでにいろいろと御指摘されておる、いろいろなこまかい問題にもあろうかと存じますが、そういう意識でおそらくこれは言っておるに違いないと存じます。われわれもやはりこういうものが運営されるにあたりましては、事故の問題のみならず、医療自体の基本的な姿というものがまっすぐ伸ばされていくというような制度であってほしいと考えておるわけでございます。
#95
○島本委員 今後紛争の原因については、いろいろ究明しなければならないと思います。中には国民の一般的な権利意識が高まって、医療の面でも一種の義務が追求されるようになったことにも原因があるだろうと思います。同時に、衛生思想の普及、国民一般が医療内容の知識を十分に把握するようになってきている、こういうような点でも十分理由たり得ると思います。また、経済発展の結果、物質的な面が充足されて、相対的に健康の価値が高まっていく、一般に医療の質に関心を持つようになった、こういうような点も十分理解されるだろうと思います。
 しかし、やはり患者と医師の間の対話、あるいはまた、こういう関係が薄くなって信頼が薄れている、こういうようなことにも十分原因があるということも考えられるわけであります。この医療の荒廃ということ、同時に保険制度の欠陥ということ、これはともに抜本改正を含めて、いままで考えなかったということは、ちょっと大臣、おかしいのです。もうこの問題に対しては、措置は十分考えていなければならないはずだと思っています。しかし依然として、こういうふうになっています。
 それで、私大臣にももう少し、一つ一つ聞いていけばいいのですけれども、わかっていますから、先のほうへ進ましてもらいますが、やっぱり医療そのもの、患者が受けた診療について疑問や不安なんか抱いた場合、これを処置する機関というものがあって、しかるべきじゃないか。そうして、裁判でも故意、過失の立証が因果関係と一緒に困難になってきますから、そうなりますと、因果関係の究明が困難になる、結審まで長期間を要する、こういうようなことになるわけであります。こういうことが、いまはっきりいって三十五年から四十七年まで七十七件にすぎなかった。半分近くの三十二件は裁判のほうへ移行された、司法裁判にゆだねた。こういうようなことをいま報告がありましたが、これによってもちょっと理解できると思います。
 そういうことから、紛争処理に対する解決の方法は、厚生省としては何かいま考えておりますか。やはり裁判に移行させることをもってベストとしておりますか。この辺の見解をお示し願いたい。
#96
○松尾政府委員 先ほど申し上げましたように、最終結論はまだ出すに至っておりません。ただ、いま御指摘のように裁判という形をとりました場合、あるいはそれに類似の形をとりました場合に、原因究明ということが非常にこれはむずかしい問題が多うございますので、勢い非常に長期化してしまう。ここにやはりいまのいろいろな解決方法、現行の問題というものが一つの欠陥と指摘されるのではなかろうかと存じます。
 したがいまして、問題はそういう事故自体の本質というものをきわめる場合のきわめ方というものもございましょうし、また、それによって受けた損害自身が、すみやかに何らかの形で賠償されるということに主眼を置くべきだという見方もあると存じます。したがいまして、私は、先ほどから申し上げておりますように、こういう問題を考えるとすれば、特に後者のような賠償なり、損害を補償することの期間ができるだけ短く、とにかく救済されるような方法、これを一つの眼目に置いて検討したい、いまさように思っております。
 そういう特別の判定機関を設けるのがよろしいか、あるいはもう少し思い切って考えた場合には、一種の保険のような、損害保険のような形でいくのが、そういう当事者間の解決に一番早道なのか、それはまだ一つの例にすぎませんので、どちらだといま申し上げる段階ではございません。
#97
○島本委員 私は、それをちょっと、いまおそれるのは、都道府県医師会が紛争処理委員会を持っておって、そこで解決されるのが三分の二ほどだというのであります。また四十六都道府県のうちで四十三の医師会に紛争処理機関があるのだという。国家的な規模で裁判手続にかわる医療紛争処理機構、こういうものは当然あってしかるべきで、公害に対してはある。医療に対してはない、これから考える――対策が一つ一つ後手じゃないですか。厚生省の国民健康調査によって、十人に一人の病人やけが人がいる、そういうようにちゃんと報告されている。
 そのほかに、四十六年の十一月四日の朝日新聞社のアンケートによる調査、無作為にやった結果として、これを私はちょっと記憶していますが、三千人の医師に対して行なって、回答が八百三十七人、そのうち百三人、一二・四%に当たる部分に事故があるというようなデータが集まってきている。そうなると、一二・四%医者に事故があって、これが都道府県医師会の手による紛争処理委員会の手によって三分の二だけ解決されている。こういうようなのは、やはり機関として、この時点からもうはっきり考えなければならないのじゃありませんか。なぜこういう点に対して手を抜いているのですか。
 これも、先ほどの集計もいろいろあったようでありますけれども、私のほうの資料ともだいぶ違うようなんであります。それで訴訟の実態等を見ましても、日本医師会の集計によると、紛争千六百四十件。昭和四十五年五月三十日、年間のもの、これは七十七件。日本医師会の集計では千六百四十件、調停したものが二十一件、裁判十二件、和解したもの六件、こういうようになって、それぞれデータにおいても、まちまちなようです。
 こういうような点からして、患者泣き寝入り、こういうようなことだけはできるだけ避けなければなりません。人命のあり方に対する償いをどうすべきか、こういう点も十分考えなくちゃいけませんが、いままで、係争期間一年以内で解決したのは地裁で二件、二年以内で解決したのが地裁で九件、高裁で五件、最高裁三件、三年以内の期間で解決したのが地裁十七件、高裁二件、最高裁二件、四年のものが、これまた地裁十件、高裁二件、最高裁一件、五年もかかったものが地裁五件、高裁一件、最高裁一件、それから七年が地裁一件、八年が地裁四件、十年になっても、まだ地裁一件、十二年かかっているものが地裁二件というふうな数字が出ております。これだけ医療関係の紛争に対する長期化した現象というものは、これはやはりもう十分知っておかないとだめなんじゃないか。ですから、これから手段を考える、これからその方法を考えるなんというのは、おそ過ぎるのです。大臣、これはもうほったらかしにしておかれる問題じゃなかろうと思うのです。これだけ医療に対する不満が国民の中にある。しかし、裁判というのはめんどうくさいです、費用もかかるのです。したがって、そこへいくのは、いま言ったようなほんの一部分。一部分でも、せっかくいって十年もかかっているのもあるし、高裁、最高裁までいっているものもあるほどです。私は、こういうような点からしても適切な機関を早急につくるべきであって、つくらなかったのは、まさに怠慢だった、こういうふうに思うのです。方法だっていろいろあるんじゃないですか。これに対してその方法を含めて、これから考えるじゃ済みませんが、いままで公害なんかの対策はちゃんと進んでいるのです。なぜ医療の関係に対して、これから考えなければならないのか、それと、公害の部分にそれをつけて、やはりこの医療関係も公害の一部として、それを救済するための方法として取り入れるのかどうか、別個にまた考えるのかどうか、この機会ですから、これもはっきりさせておいて、将来万遺憾なきを期さなければならないと思うのです。
 この問題については、局長のあと大臣のひとつ決意も聞かせてもらいたい。
#98
○松尾政府委員 一つの方法としては、公害の機関のようなものが考えられる、われわれもそう考えております。ただ、先生ただいま御指摘のように、その判定というものがそれであっても、きわめて長期になったという結果に終わりますれば、これは現在の裁判の持っております、御指摘になった欠陥とあまり変わりがない、こういうことになるわけでございます。したがいまして、私も先ほど申し上げましたように、ポイントをやはり早期の補償なり解決なりということに置くという観点に立ちますれば、やはりそういう裁判所方式以外の何か方式というものが一つあっていいんじゃないか。
 それと、また原因自体をはっきりさせていくものとは、必ずしも一致する必要があるかどうか、そこらはやはりこの制度を考える上の一つのメリットと申しますか、そういうもののポイントの置き方になるんじゃないかと私は考えております。
 したがいまして、いまいずれをとるか、あるいは両者を並列すべきかということまでは、まだ申し上げる段階ではありません、残念でございますけれども。観点は、やはりそういうところにいろいろしぼって整理をしてまいりたいと存じております。
#99
○斎藤国務大臣 私も、医療事故が相当ある、これに対して紛争がある、これはどうもそのまま捨てておけないのじゃないだろうかという感じは、島本委員の御意見と同様でございます。ただ、これをどういうようにやっていけばいいかというと、これはまあ非常にむずかしい問題だと考えます。公害であれば、この原因と結果、因果関係というものは、比較的究明しやすいわけでありますが、医療事故は非常にむずかしい点があるわけであります。
 そこで、こういった医療事故、これに対する紛争は、わが国でなく諸外国にも相当多いことと存じますので、いまおっしゃいます各都道府県の医師会でも、そういうなにをやっているということも私も聞いておりますが、そういう実態もよく検討をいたしますとともに、先進諸国においてどんな方法で簡易に解決しているか、そういう方法があるか、やっているかいないかという点もよく調べまして、そしてこのむずかしい問題も、しかし何とか処理できるようにすべきだという島本委員のお考えのもとに、さらに調査をし、検討をいたしたい、かように考えます。
#100
○島本委員 あわせて、これは十分考えておかなければなりませんけれども、被害者の救済ということをまず先に考える場合には、民事裁判制度に、すぐ司法救済を受けるような、こういうような方法も考えられるであろうし、私的機関による調停、あっせん、こういうようなのも考えられると思うのです。
 ただ、いままでは、裁判の場合には多額の費用がかかるし、長期の日数がかかる。それで、やはり都道府県の医師会、こういうものの、いわゆる紛争処理機関にゆだねるようになれば、これは私的機関であり、当事者の代理というふうな、こういうような感なきにしもあらず、こういうことになります。まあ医師そのものは損害保険があるのですから、自力の解決は可能でございましょう。しかしながら、公的な機関によって処理するのが一そう望ましいのじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。
 そして、もう医事裁判所、こういうようなものの構想も、学者――医学者や法律の専門家を入れて、そして簡易にかつ敏速に調停、裁決をする、こういうような方法もあるようです。しかし、もう一つ、国が、公害裁判の場合は特に国家行政組織法第三条機関として、いま法律で、参議院で審議中の公害等調整委員会設置法、内容は公害紛争処理法の改正案です。これをやって三条機関にして裁定まで入れて、その中に当然研究機関を持って、準司法的な、こういうような権限の発動もできるし、同時に調査権も発動できる、こういうような一つの機関がいま参議院のほうに回っているわけです。公害の場合はそれをやれるけれども、医事の場合はできない。PCBやそのほか、もちろん有機水銀であるとかカドミウムであるとか、初めはやはりこれは医学的な系統をたどっての病気だったはずですから、これはやはり国家機関が現在ある、それにゆだねる方法が一つ。もう一つが、医事裁判所というようなものを新たに皆さんの力によってこれをつくるというのが一つ。こういうようなことによって被害者の救済を早期に解決する方法を確立すべきである。こういうようなことなんです。
 いままで全然、抜本改正をやったり、これだけ高い料率のほうを上げたり、いろいろ弾力条項も考えられながら、被害者のこういうような泣き寝入りに対して一つも手を打たれていなかったというのは、これはまさに厚生省の怠慢であります。これからでもおそくないとするならば、このいずれを選ぶのか。またいままでのとおりにしてやっていくのか。方法は三つあげられると思います。これを十分検討を願わなければならない問題じゃないかと思いますが、この点は大臣、やはり聞く価値ありますよ、これくらい。また、やらないとだめですよ、これは。これだけ強く私からひとつその意向をお聞きして、次へ移りたいと思いますが、この三つです。いずれを指向いたしますか。
#101
○斎藤国務大臣 大体まあ考えられるのは、いま島本委員のおっしゃる三つの方法であろうと思います。いずれも非常にむずかしい問題だと存じますので、先ほど申しますように、十分ひとつ前向きに検討をいたしてみたいと思います。
#102
○島本委員 前向きに検討する。その中で、今度は保険料率、料金の問題にちょっと入らしてもらいますが、医療の過誤の法的性格、これは、患者が医師にかかるということは、患者は疾病の診断、治療を医師に依頼するということになるのじゃないか。そうすると、医師は、その依頼に対して応諾するということになる。そこで医療契約が成立する、こういうようなことになるのじゃありませんか。そして、もしこれに医師の過失や、被害を与えたということになれば、これは当然債務不履行ということになるのじゃないか。そうなると、不法に患者の利益を損した、こういうことになる。そうなると、不法行為による損害賠償請求、こういうようなことも可能だということ。これが一般の解釈になっているのじゃなかろうか、こう思うのです。
 それと同時に、被害者にしてみれば、手術を受けたことは、これは請負契約をお医者さんと結んだことになり、薬をもらってくる場合には、投薬は売買契約をこれに締結し、実行したことになる、こういうように思うわけであります。
 そうすると、この場合、いろいろなケースがあると思うのですけれども、政府管掌の健康保険の場合に、もし医師のほうが敗訴になった場合に、これはもう支払われた保険料に対しては、どういうような措置をいままでとっておったかということは、ちょっと私自身もこの際はっきりさしておきたい。
 すなわち、これはもうこれまでの裁判でも、医師の債務不履行ということで判決が出ております。そしてそれは当然被害者の側も、訴訟するときにもこの論拠でこれをやっておるし、いま私が言ったのは、日弁連の相当の人たちも、これは当然の行き方である、こういうように言っております。そうすると、ほんのわずかの金額であるかもしれません。しかしながら貴重な金を集めたのでありますから、厳正な措置だけはまたすべきじゃなかろうか。支払われた医療給付費といえども、当然そういうような場合には取り返すべきだ、こう思うのですが、いままではこういうようなことがありましたか、ありませんか。
#103
○穴山政府委員 健康保険法の上では、第三者行為の問題に該当するかどうかということにつながってくるんじゃないかと思いますけれども、いままでの場合にどうしたかということは、その事例をまだ聞いておりません。
#104
○島本委員 それによると、これはなかなかおかしいじゃありませんか。前に私がいろいろ言った医療過誤訴訟の係属期間、これを一年、二年、三年、四年、五年、六年、七年、八年、十年、十二年と分けて係争中の数まで出した。地裁で解決したのは五十四件、高裁では十四件、最高裁では八件、こういうようになっているわけです。これは全部医師が勝ったということでもなかろうと思うのです。その中には、やはり相当変化に富んだ判決もあったんじゃなかろうかと思っております。そうなりますと、保険の人はいなかったともし言うならば、これも少しおかしい。当然、もし医師が敗訴しておったということになると、これはもう医師の過失被害ということになり、この債務不履行ということになった場合は、債務不履行となった人に、債務を履行しないのに保険の金をほんの少しといえども、それをやりっぱなしにしておくということになってしまう。そうでしょう。そんなの全然なかったということになると――これは少しないかあるか調べてもらわなければいけない。これはもうはっきり――この問題は少ないかもしれない、ほんのわずかの金額かもしれない。しかし、これをそのままにしておくということは、私どもとしては認められない。疾病の診断、治療を依頼して、応諾して、その間にちゃんと医療契約が成立して、医療契約の成立した時点において完全に債務を履行したものだとして、皆さんのほうでも、この医療給付を行なっているわけであります。そうなると、これは結局のところは債務不履行の人にも、やりっぱなしだということになったら、これは少しおかしいのじゃないですか。こんなの全然知らなかったというなればまだしも、今後十分考えないといけませんし、この点についても厳正な態度でもって今後臨まないといけない問題であります。全然知らなかったというような答弁では、大臣、困りますね。
#105
○穴山政府委員 いま御指摘のように、その件数の中には政府管掌の被保険者の事例であった例もおそらくあるだろうと思います。ただ、いまのところ、私どもも具体的に調査その他で把握しておりませんでしたので、さっそくその点につきましては調べて、厳正な態度で処理をしたいと思います。
#106
○島本委員 難病対策について厚生省はいろいろ対策を考えていると聞いておりますが、その対策の内容はどういうようなことでございますか。
#107
○滝沢政府委員 難病対策につきましては、四十七年度新たに厚生省に難病対策室を設けまして、従来窓口あるいは研究の分担等の関係で局が分かれておりましたが、これの一元化をはかってまいるつもりでございます。
 当面難病問題の専門家による懇談会を設置することといたしまして、近く発足できるものとして人選その他お願いの準備がほぼ終わっております。難病対策の主として対象として考えるものの中には、社会一般にもたいへん重視されておる問題のほかにもいろいろございますが、当面ベーチェットあるいは筋無力症、それから各方面に膠原病といわれる疾患が、例示的に申しますと、リューマチ性疾患あるいは全身性エリテマトーデス等の、いわゆる非常に治療困難な病気がございますが、これらの内容あるいは取り上げるべき方向、研究のしかた、実態調査の方法論等につきましても、この懇談会におはかりの上至急決定して、各府県の御協力を得て対策を実施してまいりたい。
 予算につきましては、調査研究費が二億二千万、患者の治療のために患者負担を一部軽減し、治療に御協力を願う治療研究費というのが三億一千万、その他約九百万の対策室の実態調査事務費等が入っておりまして、これをもちまして四十七年の難病対策を実施したいという計画でございます。
#108
○島本委員 この難病対策というようなのは、これはことばでは予算を組んで、それで今後一年間いろいろ作業をするわけでございましょうけれども、原因が全然わからない、いわゆる難病、奇病、こういうようなものは確認されたもので、どれほどあるんですか。それから今後ふえる傾向にあるんですか、もうこのまま横すべりのような状態になっているんですか、その点についても、ひとつお伺いしておきたい。
#109
○滝沢政府委員 当面先生がおっしゃるような原因不明ということを厳密にいいますと、かなりの人間の病気の原因を必ずしも的確につかめていないというようなことになりますので、非常に広範な意味では、かなりの疾患があると思うのでございますが、われわれとしましては、原因がまだ解明できていない上に、治療方法等についても必ずしも十分な見解が確立しておらない。その上やはり社会的に、長期の慢性疾患の性格を持っておる――急性疾患の場合は治癒しましても、からだに障害を原則として残さないのでございますが、一般的に難病というのは長期慢性化の傾向を持っておる。そうして機能の障害を残すというような社会的な疾病の様相を呈する、こういうようなものを総合して、当面所要の研究費をもちまして、これの解明に当たりたいと思うわけでございますが、その例といたしましてスモン病がこの方向で検討されまして、三年の研究の結果、ある程度の一つの原因のめどがつき、また患者の治療方法についても、まだ若干問題は残していますので、スモンの治療面については、この難病対策の一部の研究費を使いまして、さらに治療法の確立に努力いたしたい、こういうふうに考えております。
#110
○島本委員 せっかくいま料率を上げ、抜本改正を行なわんとする際に、難病対策についても、まだまだ手抜かりがあるということは、私としても、これまたざんきにたえない。この患者数や治療の状況、生活の状態、それから実態調査、こういうようなものを十分しておりますか。調査の方法はどういうふうにしていますか。
 おそらくは、この問題について全身性エリマトーデス、それから第二番目は進行性強皮症、多発生筋炎、皮膚筋炎、多発性結節性動脈炎、高安動脈炎、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィー、多発性硬化症、それからサルコイドージス、ベーチェット、スモン、これに加えて今度はっきりした薬害だ、こうわかっているものにストレプトマイシンの副作用による被害、これは野放し。それからコラルジル、クセナラミン、クロロキン、こういうようなものに対しても、いま全然放置されたままになっている。せっかく保険法の抜本的改正や財政対策も、いまもう考えられているのに、片やこれらのいわゆる難病、こういうようなものに対しての実態調査も追跡調査も、あえて行なっていないということになると、これは国民に対して、まことにゆゆしい問題だ。実態調査をやったのはスモンだけでしょう。ほかのほうに対して、手ほどのように触れていますか。触れていたとしたならば、ここではっきり言ってみてください。
#111
○滝沢政府委員 先生があげられましたような疾患で、確かに実態が把握できておるといえるものはスモンでございます。これは三年間にわたりまして一億八千万の研究費を投入いたしまして、その研究費の中で、専門家がまずスモンと診断するには、一つの診断基準を定める必要がございます。それを全国の医療機関等に、あるいは研究者等にお示しいたしまして、その結果の基準に基づきました診断の結果、スモンと思われる者、または疑いの者ということで約九千三百名の患者数の実態がつかめておるわけでございます。
 今後四十七年度の予算によりまして、これらのうち、どの疾患について診断基準というものを明示することができ、なおかつ実態調査に値する調査ができるかということで、懇談会等で御意見を伺いましてきめました上、実態の把握をいたしたいということでございまして、それぞれの疾患ごとに実態の把握をいたしませんと、いわゆるスモンに近い実態の把握というものはできませんので、そういうことで今後の対策に待つわけでございます。
#112
○島本委員 この点等については、社会党を中心にした野党のあの基本法の中にきめのこまかさをよく見ておいてほしいのです。現在、こうまで名前をあげるほどのいわゆる難病、あるいは副作用によって放置されたままになっているような状態は、もうすでにわかっているのです。スモンだけはよくやったのは私も認めておる。ただし、いま予算は二億二千万円つけたという。しかし、まだ残されているこういうような、いわゆる難病、奇病というものに対しては全然手も触れていないし、追跡調査をやるような意向もまだない。それでこの料率だけ上げたり、財政対策だけこうやっていっても、ほんとうに何にもならぬじゃないですか、こういうような場合は。
 実態調査をどのように進めるのか、もう一回聞きますけれども、未確認疾病に対しては医療機関または医師、保健所などの行政機関に通告する義務を一応負わせるようにしてみたらどうですか、把握がわりあいに早くいくのじゃないか。現在これをやっておりますか、やっておりませんか。
#113
○滝沢政府委員 スモンの場合あれだけの実態把握ができましたのも、研究者の全国的にわたる大きなプロジェクト的な研究組織によるものでございますので、この点については先生おっしゃるように、われわれといたしましては病院に、いわゆるモニター制度と申しますか、地方、県ごとに、あるいはブロックごとにこれをお求めいただく研究班組織をつくりまして、それによって、先生のおっしゃったように、従来問題にされている疾患以外の今後新たに発生する、あるいは新しい見解が出されるというような、いわゆる医療情報、患者情報につきまして、全国の国立病院等をはじめ、教育病院、主たる公立病院等を中心にして、御協力いただけるところには、いわゆるモニター制度をつくりまして、この情報をとりたいという考え方でございます。
 ただ、報告の義務というような、義務という先生のお気持ちは、決して何か法制的にやれというお気持ちでなくて、医療機関のもっと積極的な協力が得られるように努力すべきだというふうに理解いたしまして、われわれは各医療機関、あるいは医師会等の御協力によって、このような実態調査ももちろん御協力いただけなければできませんし、さらに新しい情報についても、今後積極的に把握できるようにいたしたいということで、モニター制度あるいは研究組織を通じての実態把握、こういう考え方に立っております。
#114
○島本委員 どうも健康保険のほうは真剣に、頭へくるほど熱を上げているのですが、どうもこっちのほうの難病は、それ以上に熱を上げなければならない、対策に頭を悩まさなければならないのですが、何か抜けたような感じがする。義務を負わせるのがなぜ悪いのですか。それほどまでに一生懸命やるのを、何を遠慮するのですか。あなたの手では、これはやれないのではないか。いま言った十六の難病、またはっきりわかっている副作用だけれども手につかないような、こういうような状態の救済、これはほんとうに大事なんです。一番日の当たらない状況なんですよ。どうもその方面に対しては、スモン以外にはさっぱりやっていない。追跡調査するのですか、しないのですか。いまあげた十六、そのうち十二だけはいわゆる難病といわれるものです。スモンはわかりました。ただ把握するだけだ。どうもたより切れないな。
#115
○斎藤国務大臣 島本委員のおっしゃいますように、そういった難病、奇病、あるいはいままでもあったけれども、治療法が十分確立しない、最近新しいものは次から次へと出てくる。その状態に対して、厚生省はいかにも怠慢であったじゃないかという、まずおしかりであろうと思います。これは私は率直にお受けをいたします。
 そういった情勢から、本年度予算でやっと難病、奇病対策という一つの項目で予算をとり、厚生省の中にも一つの難病、奇病の対策室というものを設けまして、関係のお医者さんその他も委員になっていただいて、これから大いに取り組んでいこうというわけでございます。したがいまして、その取り組み方の中において、ただいまおっしゃいますようなことなんかも逐次これはやってまいるようになると思いますし、またそうしてまいらなければならないと思いますので、やっとその緒につきかけて、これから大いにやろうとしているところでございますから、ひとつ今後一そう御鞭撻をいただいて、また御指導をいただきたいと存じます。
#116
○島本委員 一そう鞭撻をしたいと思います。したがって、この原因が全くわからないような、治療方法も見当たらないような、こういうような疾病については、保険から切り離して全額公費負担医療ということにして、高度の研究機関を持ったところの公共医療の機関で供給するというシステムは当然考えていいんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。
 それは理由としては、いろいろあるわけですけれども、これはおわかりのとおりなんだ。たとえば保険の治療なんかばかりやっていても、これはどうしても自己負担分が過重になる。それと同時に、保険がきいてもそれはもう高過ぎる。たとえば心臓の手術なんかでも、これは相当、百万円以上もかかる、こういうような点。または原因不明の風土病というようなものに対しては、スモンがいろいろやっている間に薬害であるということがわかった、こういうようなたとえのように、発生そのものには社会的な原因だとか社会的責任がうんとあるわけです。そういうようなことになると、受療方法もこれは十分探求、究明していかなければならないわけですけれども、これは診察診療要員だけでは間に合わない、研究要員の併置も必要だ。しかし、このようなことをしたならば、民間の一般の治療機関を採算ベースに乗せてやらせるということは、百年河清を待つようなものであって、いわゆる難病、奇病に一度おかされた場合には、これはもうどうにもならなくなる。念仏を待つよりしようがないんじゃないか、こういうようなことになったらほんとうにかわいそうだ。
 したがって、原因のつかめないような、治療方法のわからないような疾病に対しては、保険から切り離して公費負担治療をこの際確立すべきじゃないか。そうして、これによってあらゆる医療機能を発揮させるようにして、治療に専念すべきじゃなかろうか。せっかくいま抜本体制も考えられるようですが、こういうような抜本体制こそ国民が望んでやまないような対策じゃありませんか。ひとつ大臣、この際ですから、はっきりした勇断を期待したい。
#117
○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、大体社会的な原因というようなものから起こってきた疾病、それからいまおっしゃるような難病、奇病というようなものは、公費負担という方向が正しい、私はかように思います。
 しかしながら、まず第一に、公費負担にする場合に、まだ診断方法もわからない、診断基準もきまらぬというものが非常に多いわけであります。スモンなんかは、やっときまりかけてきたというわけで、これがきまれば私は、スモンなんかの治療費は公費負担といいますか、公害に準ずるような扶助のしかたをする必要があるであろうと、ただいま検討いたしております。
 そこで、診断基準もきまらぬものを公費負担にしろといっても、なかなか方法において非常に困る。だから今日では、まずその治療研究費というものである程度その補いをしてまいりたい。同時に、そういうものがきまるまでは今度の抜本改正で、高額医療はまず保険で見る。しかし、それが社会的原因だ、そして治療、診断法もわかるというようになれば、これは公費負担に移すべきだ、かように考えております。
#118
○島本委員 やはり私がそれを心配して言うのは、わからないから、治療方法を探求、究明しなければならないから――普通の場合では診察、診療要員とか、また研究要員だとか、またそれに対するいろいろな、年齢によって必要な措置があるわけなんです。ですから、そういうようなもので採算ベースに乗せるような行き方をしたならば、これはとても患者負担がたいへんだというだけじゃありません。そういうようなことをしてもわからない。わからないけれども、放置しておけない、こういうものは。
 したがって、研究要員と、診察要員と、それに付随する諸条件をあわせて、その原因の究明できるような措置をしなければならないが、そのためには保険だけでやっていいと、こういうようにもう考えるよりも、やはりそういうように認定された場合には全額公費負担ということにしたほうが、そうして高度の研究機能を持った公共の医療機関で、供給体制の整った施設の中で、これを治療することができるようになったならば、一番いいではないか。なぜ保険にこだわるか。これは保険の委員会ですけれども、この際保険と切り離してやる方法だってあるんじゃありませんか。それが、いまのような方法だ。こういうようなことをいま私は言っているわけであります。
 もし保険でやっても、いまのようにして、これは診察、診療要員だとか研究要員、これとあわせていろいろな諸条件を満たすような方法がとられましょうか、満たされましょうか。満たされるならいい。満たされないなら一歩進めてはどうか、こう思います。
#119
○斎藤国務大臣 そこで申し上げておりますように、そういった難病、奇病とこれから取り組んでまいる。取り組み方につきましては、研究要員あるいは研究している人たちの知識を結集して、そして治療方法または発生原因をきわめてまいる。そこで診断基準等がきまってまいれば、社会的原因によるというようなものは公費負担に将来移していくべきである。まだ診断基準もきまらない、何かわからないというだけで、それは公費負担とすぐまいるわけにもいきますまいから、その間はまあ研究費というもので見てまいりたい、かように考えておりますので、基本的には島本委員のおっしゃるのと同じことでございます。そういった行き方で進めてまいりたい、かように思います。
#120
○島本委員 その場合に、やはり共通している点の多いのは公害病です。公害病の場合も初めの間はなかなかわからない、わからないうちに、それぞれの因果関係が追求されたりして、それに間違いないということがわかった。中には数年かかって発病するのもある。こういうようなことになる。
 そうなりますと、当然今度は、本人の治療費の問題も問題になってまいりますけれども、生活費の問題も問題になってまいります。しかし、これは生活保護の適用を受けるまで落ちなければ救済しないのだというのが、いまの行き方であります。
 こういうようにして、公害の場合は自分の責めに帰せられるべき事由なんか一つもなくて病気にされるのが公害病でありますので、難病、奇病の場合にしても、これはほとんど治療法さえわからないままに、恵まれない状態の中で生まれてきているのですから、初めから苦難を背負ってきているのです。こういうような場合には、その家の中の貧困さを考えたら、おそらく医療関係の費用は出すことはできても、生活費やそれに付随するところの医療手当だとか、こういうようなものも万全を期してやるようにしなければならないわけです。それで私はここではっきり、もうやるつもりがあるかないか、やるかやらないか、これだけでけっこうです。
#121
○斎藤国務大臣 ただいまおっしゃいますような方向でやってまいりたいと思います。
#122
○島本委員 わかりました。
 ありがとうございました。
#123
○森山委員長 次に、二見伸明君。
#124
○二見委員 時間もだいぶおそくなってまいりましたので、私も先ほど問題となりました弾力条項に関して、きょうは質疑をさせていただきたいと思います。残余の分については、明日にあらためてやらせていただきたいと思います。
 先ほど弾力条項について、これが財政法違反ではないかという島本委員の質疑に対しまして、厚生省側は、財政法第三条の特例に関する法律があるんだから財政法上違反ではないんだ、こういうふうに御答弁されたように記憶しておりますけれども、この点について厚生省の基本的な考え方はいかがでしょうか。
#125
○戸澤政府委員 法律上の解釈としては、別に問題はないというふうに考えております。
#126
○二見委員 あなたが法律的に問題がないというのは、第三条の特例に関する法律にのっとって問題がない、こうおっしゃるわけですね。財政法第三条の特例に関する法律の基本となる法律は、財政法の第何条でしょうか、その条文を読み上げてください。
#127
○戸澤政府委員 もとになる法律は財政法第三条でございまして「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」となっています。
#128
○二見委員 わかり切ったことをお尋ねしたわけでありますけれども、財政法できめられた原則というのは「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」これが財政法上の原則ですね。いま問題となっております健康保険料金というのは、この原則から考えた場合には、これに当てはまるものだというふうにお考えになりますか。特例法は一応別に伏せておきますよ。
#129
○戸澤政府委員 法律上の解釈は、いま述べました財政法三条の中の課徴金に、保険料は該当するものであろうと思います。したがいまして、財政法三条の特例法に抵触はしていないということは申し上げましたけれども、趣旨として、これが財政法第三条の立法趣旨に抵触するかどうか、財政法第三条の精神から照らして抵触するかどうかということは別問題でございますが、それは先ほど来御答弁申し上げているとおりに、無制限に、保険者に保険料を決定する権限が委任されておるということなれば、これは行き過ぎかと思いますけれども、一定の範囲内において、しかも保険者の独断にわたる決定を防止するために審議会にはかって、これをきめるというようなことにいたしておるわけでございますし、また他の短期保険におきましても、同様の趣旨が立法上認められておるというような点から見まして、趣旨におきましても、財政法第三条の精神にもとるものではないというふうに考えておるわけでございます。
 これは再三述べましたように、四十年まではこういう規定がございましたわけですし、法制局等におきましても、そういう法律上の見解、また財政法第三条の立法趣旨等いろいろな点から検討した結果、それが認められておったということでございますので、今回ただその復活ということを考えておるわけでございます。
#130
○二見委員 あなたの答弁は少し矛盾していると思いますよ。というのは、今回この弾力条項を設けた財政法上の根拠は、あなたは財政法第三条の特例に関する法律であるとおっしゃいましたね。第三条の特例に関する法律でもって、弾力条項は財政法上問題がないのだと、あなたはおっしゃった。今度は、じゃ財政法、本則のほうです、この第三条それ自体にも問題がないのだ、こういうふうになるわけですか。財政法第三条では非常に問題があるけれども、特例法でもって今回の弾力条項はやっていくのだ、こういう認識をされているのか。あなたは両方どちらでもだいじょうぶなんだというふうに認識をしているように感ずるのですがね。最初はそうじゃなかった。最初から財政法第三条に問題がないということがわかっていれば、あなたは最初にそういう答弁をしているはずなんです。第三条違反じゃないかといわれたときに、いやこれは第三条の特例に関する法律に基づいてやりましたと答弁された以上は、第三条ではまずいという認識があるわけでしょう。そういう認識があるから、特例法でもってやったという答弁が出ているわけでしょう。
#131
○戸澤政府委員 それは財政法第三条を形式的に解釈いたしますと、その課徴金の中に含まれるということでもって三条違反のおそれがあるわけでございますけれども、それは特例法によって免責されておる。それから今度はそういう形式解釈を離れて第三条の立法趣旨、精神からいって抵触しないかという問題に対しましては、いま御説明いたしましたような趣旨で、これまた抵触するものではないというふうに私どもは解釈しておるわけでございます。したがいまして、財政法三条にも、それから特例法にも、どちらにも抵触することはないであろうというふうに考えております。
#132
○二見委員 じゃ、第三条の特例に関する法律でもって免責になっているということですから、これに関連してお尋ねいたしますけれども、この法律が出てきた理由は、この法律を読むと、「現在の経済緊急事態の存続する間に限り、」こうありますね。これはたしか法律ができたのは昭和二十三年ですね。すると、あなたは「現在の経済緊急事態の存続する間に限り、」ということについては、二十三年当時からずっとこの状況にあるというふうに御認識なさっていますか。
#133
○戸澤政府委員 この特例法の制定されましたときには、お話しのとおり、当時の経済的な事情から設定されたものでございますけれども、この附則に、「この法律は、物価統制令の廃止とともに、その効力を失う。」というふうに書いてございまして、物価統制令の必要性といいますか、存続している限りは、この特例法が生きているということから見まして、やはりこれが改正されない以上は、一応この特例法の精神、趣旨が生きているのであろう。この趣旨から見まして、財政法三条に抵触することはないというふうに解釈しておるわけでございます。
#134
○二見委員 附則の二でもって、物統令が廃止されるまでの間は効力を有するという規定があることは、私も承知しております。したがって、形式論的には生きているということになります。
 お尋ねしますけれども、物統令の中身というのは、物統令がきめられてから今日に至るまで、ほとんど中身は変わりませんか。どうですか。物統令が適用されている範囲は、ほとんど変わらないのか、あの当時といまとでは大幅に変わっているのか、どっちですか。
#135
○戸澤政府委員 物統令並びにその改正の経過等につきましては、まだいまのところ、つまびらかにしておりません。
#136
○二見委員 ことしの四月から、お米の物統令が適用除外になっているのですよ。お米という重要な物資が物統令の適用の除外になっているのです。これは国会でさんざっぱら論議されたから、あなたも御記憶だろうと思います。重要な米が物統令から適用除外されているのですよ。物統令が適用されていたのは、当時といまとでは、ものすごく違うのです。確かに物統令は現実に生きております。物統令というものは、まだ廃止されておりません、そのものは。だから、形式論理的にいえば、物統令が廃止されてないんだから、第三条の特例に関する法律、これは生きているんだと、私は形式的には言えると思うのです。あなたのおっしゃるとおり言えると思います。
 しかし「この法律は、物価統制令の廃止とともに、その効力を失う。」というのがあります。物統令というのは、まだ廃止されていないけれども、その中身というのは、へずられてきておるわけでしょう。ことしは米がへずられたのですから。そうなった場合には、そういう客観情勢を考えてきた場合には、もう財政法第三条の特例に関する法律でもって、こういうことはあまりやるべき事態に来ているのではない、そういうものを形式論理的な解釈でやってもいいという事態ではないのだ、こういうふうに実態的には認識すべきじゃないのですか。厚生大臣いかがですか。
#137
○斎藤国務大臣 この財政法第三条の特例は、これは法律の規定に、あるいは定めによらなくても、政府がかってにきめることができるというものを書いているわけであります。ところが、ただいま問題になっておりますのは、これは法律の定むるところによってきめるわけでありますから、そういう意味で、私は財政法第三条違反ではないと思います。したがって、先ほど局長が申しておりました、この特例によっていいのだというのは、これは私は間違いではなかろうか、かように思いますが、なお法制局にもよく確かめまして、後刻政府の見解をはっきりいたします。
#138
○二見委員 もう一点、この件に関して伺いますけれども、弾力条項を設けようというのは、今回が初めてですか、前に例がありますか。
#139
○斎藤国務大臣 この弾力条項は、昭和二十三年から四十一年まで、この健保法の中にございました。ただいまと同じ書き方できめております。
#140
○二見委員 死んだはずのものが生き返ってきたわけであります。まず、これを財政法第三条の特例に関する法律からいうと、厚生大臣は、要するに千分の八十というところをきめておるのだから、それがすでに法律できめたのだから問題ないのだ、こういう見解でしたね。だから問題ないのだ。
#141
○斎藤国務大臣 法律によって授権されたもの、かように解します。
#142
○二見委員 先ほど問題になったのは、その千分の八十の範囲内で授権されたのはだれか、健康保険の第二十四条でしたか、政管健保の事務取り扱いは社会保険庁長官が行なう。だから保険庁長官にそれがあるのだ、こういうことですね。いいですか。ところが、私はここで一つ質問したいのですけれども、財政法第三条の特例に関する法律は、どういうことを言っているのかというと、「政府は、」とこういう表現ですね。「政府は、」これこれのものを除いて「法律の定又は国会の議決を経なくても、これを決定し、又は改定することができる。」「政府は、」とありますね。具体的に「政府は、」というのは何か、それは法律に基づくわけです。あなたは、だから「政府は、」社会保険庁長官だ、こう言いたいわけでしょうね。その点いかがですか。
#143
○斎藤国務大臣 私は第三条の特例でやっておるのではございませんと思います、こう言っているわけです。財政法第三条そのもので授権をされている。法律に基づいてきめるということで、法律に基づかないで、政府がかってにきめるというのは、三条の特例によって、これこれでなければならぬ。そのほかは全部法律に基づいてやれ。したがって、弾力条項も法律に基づいて行なわれるものだ、これを社会保険庁長官にまかせるのがいいのか、厚生大臣にまかせるのがいいのか、それは立法次第だと私は思います。
 先ほどから説明をいたしておりますように、政管健保は一つの保険集団でもって、その責任を保険庁の長官に持たしてやっている、厚生大臣はこれを監督しているという立場にある。そこで、これを保険集団の責任者である保険庁長官に法律によってまかせることは、筋としては通った話ではないか、厚生大臣にまかせるという立法もあるであろうと思いますが、先例によりますと、長官にまかしておりまするし、やはり政管健保の責任者は長官ということを法律できめておりますから、その長官にまかせるのが、これまた筋であろう、かように申し上げているわけでございます。
#144
○二見委員 社会保険庁長官に、これが裁量がまかされることになりますね、改正案によりますと。そうしますと、いままでの答弁を通していけば、社会保障制度審議会ですか、ここへ一応意見を聞いて、そうした上で保険庁長官がきめる。そうすると、たとえば弾力条項を適用する。千分の七十三を七十五にする、七十六にするという、その決定は保険庁長官にある。その決定がよかったか悪かったかの責任は、全面的に保険庁長官がかぶる、こういうことですか。
#145
○斎藤国務大臣 法律上はさようでございます。しかし行政上は、厚生大臣が監督をいたしておりますから、あやまちのないように監督していく責任もある、かように思います。
#146
○二見委員 保険料率を改定するということは、被保険者にとってみれば非常に重要な問題ですね。私は、この問題は大臣が乗り出すべきだと思うんですよ。これは保険庁長官という一事務官に担当させるべきではない。長官の立場というのは、政府管掌健保の事務を取り扱う責任者でしょう。事務を取り扱う責任者だ。料率を上げるかどうかということは、財政上の問題ではありますけれども、大きにこれは政治的な問題ではありませんか。政治的な問題であれば、厚生大臣の立場は、ただ単に監督するということじゃなくて、むしろ自分が、決定のしかたがまずかった場合には、自分が責任をとるんだという法律上の立場を明らかにするためにも、厚生大臣の決定事項にすべきではありませんか。厚生大臣は、これはどちらにするかということは法律で自由にきめられるんだとおっしゃったんだ。長官でもいい、厚生大臣でもいい、それは法律できめるところだ、こうおっしゃったんだ。じゃ保険庁長官がきめた場合にはどうなるかといえば、法律的には長官に責任があるとあなたはおっしゃった。ただし、政治的には、行政責任としては、監督する厚生大臣にもあるけれども、法律的には保険庁長官にあるとおっしゃったんだ。料率の問題がからんでくるのです。むしろ法律的にも、行政的にも、政治的にも、私は厚生大臣が責任を負うのが筋じゃないか、弾力条項に関しては。
#147
○斎藤国務大臣 私も、この法律の改正をいたします際に、これは厚生大臣のほうがいいのじゃないか、かように考えて一応検討いたしました。ところが、先ほどから御説明を申し上げておりますような次第であり、かつて、まだ保険庁ができる前は、やはり厚生大臣がやっておりまして、厚生大臣が決定をすることになっておったわけです。保険庁という一つの役所ができて、そして保険庁を厚生大臣が監督するということになったときに、この厚生大臣というのを保険庁長官というように改めたといういきさつもありますので、まあ筋からいえば、やはり保険集団の責任者である保険庁長官が法律上は筋だな、こう思って、この原案に決定をいたしたようなわけであります。
 私も一応、政治責任、いろいろな点から、いまおっしゃるように考えてみました。ところが、保険理論からいうと、保険庁という一つのこれは独立の役所でありますから、それができたわけだから、それに変えるというように、かつて厚生大臣であったのを、保険庁長官にわざわざ変更しておるという点を見ますと、これが筋であろうというので、原案として提案をいたしたわけでございます。
#148
○二見委員 たとえば政管健保を今後どういうふうにするかというような問題は、保険庁長官が考えるのですか。厚生大臣が、最終的にはお考えになって結論を下すのですか。
#149
○斎藤国務大臣 法律や規則で定める範囲内において行なうのが保険庁長官であります。これをどういうようにやっていくか、どういうようにすべきか、これは政策でありますから、あるいは法律を変更し、あるいは訓令をきめたりするのは、これは大臣の責任でございます。
#150
○二見委員 政策的な決定、判断は、長官ではなくて大臣である、そのとおりだろうと思います。それじゃ料金引き上げということは、政策的な判断は全然入らないのですか。
#151
○斎藤国務大臣 これは法律にありますように、余剰が生じたとき、また不足が生じたとき、これは計数上明らかになってくるわけでありますから、したがって、その計数をはじいて、そうして収支償うように保険料を上下するというのは、ある意味において事務的であります。しかしながら私は、やはり政治的な判断も加わると思いますから、必ず、これは保険庁長官の権限であっても、やはり厚生大臣も同じ責任を、監督の責任を負うべきであって、知らぬ顔をしているわけにはまいらない問題だと、かように考えております。
#152
○二見委員 よろしいですか。たとえば百億円の赤字が出た。単年度は、この調子でいけば百億円の赤字になる。そのためには何%か、河ポイントか上げなければならぬ。これは事務的に計数計算で出るわけです。そうでしょう。これはだれでもできるのです。その穴埋めのためには、八十の間まで保険庁長官が自由にできる。これはだれでもできる。これは事務屋さんでできるのです。政治の判断というのは、そこじゃないでしょう。たとえば百億円の赤字が出た、ここで二ポイント料率を上げるべきか、あるいは一ポイントに押えて、足りない分は、たとえば国庫補助率、これを一%引き上げるとか、そういう方法でもって料率を引き上げないようにするんだとかいう、そうした政治的な判断、政策というのは、これは大臣でなければできないでしょう。赤字になったから、保険庁長官に料率をいじりなさいというのでは、政治的判断は、政策判断は何も加わらないわけでしょう、これは。赤字が出た段階に、ただ単に料率を引き上げればいいという発想じゃなくて、この赤字をいかにして解消するか、いかにして埋め合わせをするかというところにまず判断がいかなければならないんでしょう。それがほんとうなんじゃないですか。それはあくまでも私は厚生大臣の権限だろうと思うんですよ。考えだろうと思うんです。あるいはその考え方が大蔵省に認められないで、涙をのんで帰る場合もあるかもしれないけれども、それは厚生大臣がやるべきじゃありませんか。事務じゃありませんよ、これは。
#153
○斎藤国務大臣 この法律をお認めいただければ、これは保険庁長官が自動的に計算をやって、赤字を生じたのが、保険庁長官の運営のしかたがまずいというような場合は、これは保険庁長官を解職をしたり、赤字を出させないように指導したり監督する責任はもちろん持っております。それは別にいたしまして、出てきた場合に保険料率を上下する。そしてそれに連動して国庫補助を増す、これは法律どおりでありますから、したがって、この場合にさらに法律以外に国庫補助を増さなければならぬというときには、これは法律を改正をいたしまして、御審議を願ってやるわけであります。そういう政治判断は、これは厚生大臣がいたすと思いますが、それをいたさない場合には、保険庁長官がやる。そしてやるについて、厚生大臣が監督をしているということでございます。
#154
○二見委員 ですから、私が言いたいのは、赤字が出て弾力条項を適用したいというときに、単純に適用するのか、あるいは法律を改正して国庫補助率を、たとえばいまの数字でいきますよ、五%を七%にするんだとか、そうすることによって弾力条項を適用しないようにするんだとかいう判断は、厚生大臣がやるわけですね。そのためにも、その判断をやるためにも、弾力条項をきめる場合の決定権を厚生大臣が握っていれば、それはできるわけでしょう。自分が矢面に立つわけだから、自分が責任を持つ以上は、そこでできなければならぬだろうと思います。保険庁長官にやらしておけば、この法律どおりいきなさいということで……。
#155
○斎藤国務大臣 これは厚生大臣が監督をしているわけでございますから、したがって厚生大臣は、いろんな社会経済情勢によって弾力条項を――いまの法律のままではいけない、この法律を改正する必要がある、こう考えれば法律の改正案を出すわけであります。改正をする必要がないと考えておれば、そのまま保険庁長官にやらせるということでございます。したがって、法律を改正をするかしないかということは政治問題ですから、厚生大臣が判断をいたします。
#156
○二見委員 この問題、料率というのは単純な問題じゃないから、厚生大臣がきめるべきじゃないかということを私は言いたかったわけです。大臣も最初は、私もそのように考えていたけれども、保険庁というものができたから向こうにやらせたんだ、それがいままでの筋だろうと思う、法律論はそうなるから、そういうふうにしたんだ、こう言われましたですね。だから私は、大臣が一番最初に、これは厚生大臣が責任を持つべきだとお考えになった時点が正しい見解だと思うのです。弾力条項そのものにわれわれは反対ですよ。反対だけれども、それに対して厚生大臣がこれを発動するんだ、適用するかどうかは厚生大臣の権限でやるんだという、その一番最初の発想を私は正しいと思う。
 もう一点、お尋ねいたしますけれども、保険庁長官が料率を引き上げる場合には社会保険審議会にかけるわけですね。ノーと言われた場合には料率は引き上げしません、こういうことでしたね。それはそのとおりでよろしいですか。
#157
○斎藤国務大臣 そのとおりに御理解いただきたいと存じます。
#158
○二見委員 じゃ大臣、もう一点お尋ねします。料率を引き上げなければならないというときに、長官は大臣に相談をいたしますか。
#159
○斎藤国務大臣 重大な問題でございますから、これは必ず相談すると思います。また相談をするように、必要があれば訓令を発します。しなくても口頭で十分だと思いますが……。
#160
○二見委員 その場合に、厚生大臣はノーとおっしゃいますかイエスとおっしゃいますか。
#161
○斎藤国務大臣 事態をよく勘案をいたしまして、法律に適合しているし、また事態も政治的に適当であると考えればイエスと言います。しかし審議会に諮問をいたさせます。審議会がノーと言えばやらせません。
#162
○二見委員 よろしいですか。審議会にかけることは、私はわかっておるのですけれども、保険庁長官が、実は単年度収支で見ると百億円の赤字が出る。したがって料率を引き上げなければなりません。そのためには三ポイント上げたい。こういうふうに三ポイント上げると、いま法案ですと定率五%ですね。それに対して連動するようになっていますね。こうちゃんと収支が合うんですと計算して持ってくる。これは法律どおりですね。その場合、大臣は、ああこれはこの法律どおりだからオーケーだ、イエスだ。一応審議会のほうの意見は聞きなさいよ。審議会の意見がイエスであればけっこうですよ、こう言うのか。審議会がイエスと言おうと、私はいまの情勢から見て、これは反対である。料率は引き上げるな。むしろこれは法改正でいくべきだ。法改正を認めなければ赤字もやむを得ない、こういう強い判断を下すのですか。
#163
○斎藤国務大臣 私は異常な場合を想定をいたしますと、法律上はやれても、異常なこの社会情勢のもとにおいてはやるべきではない。そのためには、法律を改正する必要があるということであればいたします。一つは、赤字ができた場合に、特別会計で借り入れる限度をこの法律できめられております。したがって法律改正もしない、また料率のあれもしないという場合には、支払い停止をしなければならないという事態を生じますから、支払い停止をしないで済ませるのにはどうやるか。しかも料率を上げるのは、いまの時世としては適当でない、たとえば非常に不況になってきた。賃金も、むしろ上昇よりも下落をしてくるというような場合に、そういうことは私はほとんどないと思いますけれども、もししいて想定をすればなきにしもあらず、そういう非常事態の場合には、やはり非常事態に対処するように法律も改正しなければなるまいと、かように思います。
#164
○二見委員 大臣は非常に特異な例をお出しになりました。不況になる。それから賃金が下落する。賃金が下落するということは、いまの経済情勢では考えられませんですね。ということは、いつでも赤字を埋めるためには弾力条項を適用しなければならぬ、料率を上げなければならぬという長官からの申し出があれば、いつでもオーケーしますよということですね、逆に解せば。そういうことですね。
#165
○斎藤国務大臣 通常の状態であり、そして保険庁長官の計算なり内容が適正であれば、イエスと言うのが当然であろうと思います。
#166
○二見委員 どうもことばがおかしくなるのですけれども、内容が適正であるということは、どういうことですか。
#167
○斎藤国務大臣 財政収支を償うより以上に黒字の出るような上げ方であれば、これはいけない。また余剰が生じたという場合に、下げ方をあまりちびっておっては、これはいけない。そこはやはり適当なところを判断をしなければなるまいと、かように思います。
#168
○二見委員 それは私もわかる。そのとおりならば私はわかるのです。たとえば、いやこれは料率をそこまで上げるんじゃなくて、三上げたいといってきたときに二にしなさい、一の分は行政努力でもって解消しなさい、こういう指示をお出しになるのですか。そこが私は政治判断だと思いますよ。それをやるためにも、私は大臣が責任者になるべきだったと思っているのですが、いかがですか。
#169
○斎藤国務大臣 支払い停止をしなくても、行政努力で解消できるという見通しがあれば、それは当然そういうようにいたします。
#170
○二見委員 この議論をあまり詰めてもしょうがありませんけれども、ただ、いまのおことばの中で私一言だけ申し上げておきたいのだけれども、行政努力をすれば赤字が埋められるという見通しがあれぱという、見通しがあればということですけれども、その見通しがあるという判断があれば、それっきりやってこないと思うのですよ。むしろ政管健保の実態からいうと、ある程度きびしくやらないと行政努力というものはやらぬものなんです。政管健保の実態というものは、そうなっておるのです。
 ところで弾力条項は、われわれは今回のこの改正案には反対でございますし、何とかして廃案にしたいというのが、われわれの念願であります。ところが不幸にして、それこそほんとうに不幸にして通った場合、弾力条項をことしどうしますか。ことしは発動しませんか。
#171
○斎藤国務大臣 ことしでございますか。
#172
○二見委員 四十七年度です。
#173
○斎藤国務大臣 四十七年度では、これは弾力条項を使う必要がないと、かように考えます。
#174
○二見委員 四月実施で満年度で三億円の黒字ですね。そうでない場合十三億円の赤ですね、四月実施で。四月実施はだめです。五月実施も不可能であります。そうすると、これは完全に収支は赤字になりますね。それでもあなたは、いまおっしゃったように弾力条項は適用しない、こういうことですね。こう理解してよろしいですか。赤字が、たとえば四十億出ても五十億出ても、弾力条項は適用しないということですね。
#175
○斎藤国務大臣 本年度はこれは使いません。
#176
○二見委員 長官がそういう意向を持ってきても、大臣は、がんとしてはねつけますね。
#177
○斎藤国務大臣 これはやらないで、財政措置を講じてまいりたいと思います。
#178
○二見委員 そうすると、弾力条項というのは、いつごろやられそうなんですか。四十八年度はどうですか。
#179
○斎藤国務大臣 これは来年はどうだ、再来年はどうだという見通しは、ちょっとつきがとうございます。
#180
○二見委員 私は、これは永遠に発動されないことを心から願うわけであります。それは大臣も同じお気持ちだろうと思います。不幸にして、これが通っても、あなたは、ことしはいろんな行政努力でもってやらないというふうに決意を明らかにされたわけでありますけれども、私は時間が参りましたので、この質問はこれで終わりたいと思います。
 ただ、あしたの質問の関係もありますので、一つ申し上げておきたいことは、今回の政管健保の赤字に対して、支出面の検討もなされないのに赤字対策をするのがけしからぬという、これは支出面です。ちょっと大臣首をかしげていらっしゃいますので――社会保障制度審議会の答申では「財政の収支を適合させようとすれば、支出面にも検討を加えねばならないのは当然過ぎるくらいのことであるが、」こうありますね。支出面の検討も加えるのはあたりまえだ、これは社会保障制度審議会の答申であります。ここら辺の検討もなされないままに、弾力条項を設けたということは、私は政治的にも大きな問題があると思いますよ。その点について大臣は、どういうふうに現在御認識になっていらっしゃるのか、支出面についての検討がなされていないのですから。にもかかわらず、一方においては、弾力条項を設けておる。これについては重大な政治問題が起こると思いますよ。この点について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
#181
○斎藤国務大臣 支出につきましては、これは弾力条項が設けられるといなとにかかわらず、国民の保険料を預かってやっているわけでありますから、これは十分配慮を加えてまいらなければなりません。いままでも加えておりましたけれども、今後さらに一そう支出面については詳細な配慮を加えてまいりたい、かように考えております。
#182
○二見委員 大臣、よろしいですか。それは弾力条項があろうとなかろうと、支出面の検討をするのだとおっしゃるのは私わかりますけれども、そうはいかないのですよ。やっぱりワクがきめられていませんと、支出の検討というものはやらないものなんです。これは大臣もお若いころは、あるいは経験されているだろうと思います。いまは大臣ですから、そういう御経験はないと思いますけれども、一家の家計でも、一定の収入がきちんときまって初めて支出面の合理化というものが行なわれるのです。これは削ろうとか、これは節約しようとかいうことになる。ところが、困れば実家から金を持ってこられるという気持ちがあると、支出面を合理化しよう合理化しようという気持ちはあっても、困ったら実家へ行って金を持ってきたらいいんだということになれば、うまくいかないはずなんです。弾力条項を設けたということは、一面からいえば支出面の検討が、これからなおざりになる、こうとしか私には考えられない。そういう観点からも、弾力条項というものは設けるべきではないというのです。そういうふうに大臣お考えになりませんか。
#183
○斎藤国務大臣 これはそうおっしゃいますけれども、弾力条項を発動するためには、社会保険審議会の議を経なければなりません。そう容易にパスはいたさぬだろうと思います。またそれは、国会においても法律案としての審議じゃありますまいが、ただやっぱり政治問題となるであろうと思いますので、そうおやじから金が来るからいいというような安易な考え方では、これはやっていけないと思いまするし、また、ことに先ほど申し上げましたように、これをやるについては、やはり国庫負担も増しますから、大蔵省からもふだんの監視、監督もきびしい、かように考えまするし、いろんな制約がございますから、その御心配はないと思いますが、しかし、そういう御心配があるということも考慮に入れまして、支出の検討、またはこのやり方については、十分配慮を加えてまいりたいと思います。
#184
○二見委員 きょうはこの程度にさしていただいて、また明日この点について、別の観点から若干お尋ねするようになると思いますけれども、本日は、終わりたいと思います。
#185
○森山委員長 次回は、明十九日金曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後七時五十七分散会
     ――――◇―――――
  〔本号(その一)参照〕
    ―――――――――――――
   派遣委員の名古屋における意見聴取
   に関する記録
一、期日
   昭和四十七年五月十八日(木)
二、場所
   愛知県庁西庁舎第一会議室
三、意見を聴取した問題
   健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部
   を改正する法律案について
四、出席者
 (1) 派遣委員
   座長 橋本龍太郎君    別川悠紀夫君
      後藤 俊男君    古川 雅司君
      西田 八郎君
 (2) 意見陳述者
        愛知県社会保険
        協会会長    浅井 政彦君
        中京大学法学部
        教授      橋詰 洋三君
        中部電力株式会
        社取締役労務部
        長       柴田 寅彦君
        名古屋大学講師 久徳 重盛君
        愛知県信用保証
        協会理事長   岩瀬 繁一君
        愛知同盟副書記
        長       星野 銀治君
     ――――◇―――――
   午前九時十分開会
#186
○橋本座長 これより会議を開催いたします。
 私は、衆議院社会労働委員会派遣委員団団長の橋本龍太郎でございます。
 まず派遣委員を御紹介いたします。自由民主党の別川悠紀夫君、日本社会党の後藤俊男君、公明党の古川雅司君、民社党の西田八郎君、以上でございます。
 私が、この会議の座長をつとめますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、私から派遣委員団を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 皆さま御承知のとおり、ただいま衆議院社会労働委員会におきましては、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、審査を行なっているところであります。
 御承知のとおり本案は、わが国の医療保険制度にとって重要なる法案であります。したがいまして、去る二月十八日に政府から提案をされまして以来、三月十七日衆議院本会議において趣旨説明、質疑が行なわれ、その後委員会においては、各党委員から種々なる問題について真剣な質疑がなされております。また、四月二十七日には各界から参考人の御出席を願い、その御意見をお聞きし、今月十六日には、大蔵委員会、物価問題等特別委員会との連合審査会を開催するなど鋭意本案の審査が行なわれ、なお本日は、衆議院におきましても公聴会が開催をされておる次第でございますが、当委員会といたしましては、でき得る限り国民各層からの御意見を聴取すべく、本日、御当地におきまして、この会議を催し、各界の代表者から忌憚のない御意見をお伺いしようとするものであります。
 御意見をお述べいただく方々には、本日は御多忙中のところ、この会議に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
 まず、この会議の運営につきまして申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会運営についての議事規則及び手続に準拠して行ない、議事の整理、秩序の保持は、座長であります私が行なうことといたします。発言をなさる方は、必ず座長の許可を得て発言をしていただきたいと存じます。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、派遣委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知をお願いをいたしておきます。
 次に、会議の順序につきまして申し上げます。
 最初に意見陳述者各位から御意見を、それぞれ十分ないし十五分順次お述べをいただきました後に、派遣委員から質疑が行なわれることになっております。
 それでは、本日各界を代表をして御意見をお述べいただく方々を御紹介申し上げます。愛知県社会保険協会会長浅井政彦君、中京大学法学部教授橋詰洋三君、中部電力株式会社取締役労務部長柴田寅彦君、名古屋大学講師久徳重盛君、愛知県信用保証協会理事長岩瀬繁一君、愛知同盟副書記長星野銀治君、以上の方々であります。
 それでは、まず、浅井政彦君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
#187
○浅井政彦君 私は、御紹介にあずかりました愛知県社会保険協会の会長の浅井政彦でございます。
 ちょっとつけ加えたいのは、愛知県社会保険協会の性質でございますが、この協会は、主として政府管掌の組合をもって組織をされ、組会管掌も入っておりますが、大部分は、いわゆる中小企業が加盟団体になっている、そういう性質を持っておる協会であります。
 したがいまして、主としてその見地から意見を申し上げたいと存ずる次第でございます。
 当協会のそういった政府管掌の被保険者というものは、家族を合わせまして百六十七万余ということになっておりまして、したがいまして、私のほうの協会は、こういった人数の人々の健康と生活を守るというのでありまして、その制度である健康保険は、どうも最近財政が悪化してきている、どうも調子が悪い、そこで何とかこれを建て直しをしていただきたいということを熱望しておる次第でございます。
 さて、その現状を考えますと、どうも政府の施策と申しますか、政策のやり方が、どうもわれわれには少しもの足らないような感じがすると思っておりましたところが、今回改正案も発表されまして、私たちはたいへん喜んでおる次第でございます。もっともこういうふうな事情に追い込んだということは、政府のやり方に多少もの足らないところがある、はっきり言うならば優柔不断と申しますか、その間にいろいろ策を立ててはいただいておりますけれども、それがうまくまとまっていかないという点に今日の結果が生まれたというふうに考える次第でございます。そこで、それならば、そういうふうなものを英断をもってこの新改正に臨んでいただくと私たちは信じておりますので、無条件というわけではございませんが、私は、全面的にこの改正案というものに賛成をいたす次第でございます。
 この保険制度というものは、単に病気を直すというわけじゃないんでございまして、福祉ということに非常に深くつながっておるので、そういう意味で今回の改正は、それらの人々、被保険者並びに家族等の不安も解消するということに大いにあずかって力があると思うので、われわれも及ばずながら側面的にこの達成には努力をいたすことが必要であろうと思っております。
 このたびの政府の提案されました健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部改正に関する法案、これは、ただいま申し上げたような理由で賛成はいたしますが、無条件ではなくて、これをやることによって今後は赤字を出さないんだというふうなことをぜひ条件としたい、こういうふうに考えております。なおあとにちょっと述べますが、その運営に当たっては、やはり大いに慎重にやっていただきたいというふうなことをまず前提といたしまして、各項目につきまして、御意見を申し上げたいと思います。
 その、まず第一点といたしまして、国庫補助の問題でございますが、これは基盤の弱いわれわれ中小企業にとりましては、たいへんありがたいことであると思っております。ただ五%ということ、これはわれわれも決して満足だというわけじゃないんでございますからして、今後は、これは次第に事情の許す限りにおいて、大いにその率を伸ばしていただきたいというふうに考えるわけでございます。従来の定額ということできまっておりました点から比べますと、今後は定率ということは、私は、大飛躍だと思っております。ありがたいと思っております。むろん、今後はこの線に沿いまして、われわれ被保険者の負担軽減をはかっていただくようにお願いをしたいと、こう思うわけでございます。しからば、それじゃどれだけになったらお前、満足するかとおっしゃられますと、そのはっきりとした数字というものは、私は、現在申し上げられませんが、少なくとも今後は、さらに向上させていただきたいということを希望として申し添えるわけでございます。
 第二点としましては、保険料の料率、それから国庫補助の弾力調整、料率の弾力調整、そういった線でございますが、これは非常に立場、立場によりまして、いろいろご意見があると存じますけれども、少なくともわれわれは、今後赤字を生ぜしめないということを前提としてけっこうだというふうに考えております。したがって、この定率の、一定率の国庫補助と相まって今後赤字がないように何とかお取り計らいを願いたい。この取り扱いでございますが、この点についても、いろいろ各方面から議論もされて、難点があるようなことに伺っておりますが、現在の出された値上げ率と申しますか、それとその許容範囲と申しますか、ことばは悪いかもしれませんが、どこまで上げられるかということの問題でありまして、それをひとつまかしていただきたいというようなことらしいのでございますが、これは無制限にその弾力性を発揮させるのではなくて、最高限度がきまっておるというわけでございまして、そういう点から申しますれば、私は、賛成をしていいんだというふうに考えております。
 その弾力性ということにつきまして、ちょっと申し添えさせていただきたいんですが、弾力性というのは、なるべく広く意見を聴取をして一部の人々なり機関によってのみこれが専行をされることのないようにという意味でございます、私の弾力性と申しましたのは。
 もっと具体的に申しますと、実は、われわれのほうの社会保険協会と申しますのは、ただいま申し上げましたような中小企業の団体なんでございます。ところが、中央の情勢を見ますと、中小企業を代表するものが審議機関に代表者を送っておらないのでございまして、そういう意味におきまして、今後はこういうふうな中小企業の代表者もやはり社会保険審議会なり、そういう中央の場で意見を述べるなり、お取り計らいが願えれば、一そうけっこうだというふうに思っております。現に本日、私が代表として選ばれて、この席に連なることができましたのも、実は昨年秋に厚生大臣に、私のほうの全国連合体の全国社会保険連合会というものがございまして、その連合会を通じまして大臣にお願いをしたことがございます。きょうは、私を御指名をいただいたというのも、あるいはそのあらわれかとも自負しておるのでございますが、たいへんわれわわとしては、その点を喜んでおりますので、今後は一そうこういう線をはっきり打ち出していただきたいということを、この機会にお願いをいたしておきたいのであります。
 それから標準報酬の改正でございますが、これはもう賃金も上がってきてまいりますので、上がった率から申しますれば、そう不当ではない、むしろ妥当だというふうに考えております。料率については、ただいま申し上げましたように千分の三でございますから、上がるということは、賛成をいたします。
 それから、賞与についての課税、課税というのはことばが悪いんですが、料率の中に入れるということでございますが、これもまたやむを得ないことであるというふうに考えております。と申しますのは、労働関係などの保険においては、すでにもうこの賞与というものは算入されておるわけでございまして、そういう意味でこれはけっこうだと思っております。
 それから累積赤字を一般会計から補てんをしていただくということ、事ここに至らしめたのは、やはり政府の取り回しというふうにもなるわけでございますけれども、結局この結果というのは、そういうふうな経過が生んだんでございまして、いわば政府に肩がわりをしていただくということが当然だろうと思うのです。ただ前に述べましたように、今後はそういう赤字を出さないということを条件にして、たいへんけっこうだと感謝を、むしろ感謝をいたします。なお、その赤字につきましては、単に収支のつじつまを合わせるというふうな何と言いますか、事務的のこと以外にもっと積極的に経費を節減する、具体的に申しますと、健康管理というふうなものをもっとしっかりやっていただいて、病気になったから治療するというんじゃなくて、その以前において、つまり水ぎわで病気を食い止めるというふうなこと、もしくはよりりっぱな肉体をつくり上げる保健施設、そういったものを今後盛んにやっていただいて、積極的にやっていただいて、そういう赤字を削減ということに御努力を願ったほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
 なお、当面の問題ではございませんが、抜本改正のことについて、一言申し上げさせていただきたいんですが、財政調整というのが抜本改正の中にございます。これは、やむを得ないと言えばやむを得ないのでございますが、現在組合保険、保険組合が好調であるということは、過去にいろいろ苦労をして、そのあげくに積み上げた現在の好調なんでございますからして、いまいいからと言うて、すぐに融通をしろというふうなことになるということについては、これまた慎重にお考えをいただきたいということを一言申し添えまして、私の意見を終わりにいたしたいと思います。
 以上でございます。
#188
○橋本座長 次に、橋詰洋三君。
#189
○橋詰洋三君 本改正法案に断固反対をいたします。
 今日までの政府の医療政策及び医療保険政策は、笑止にたえないところであります。国の負担分を減じ、受益者負担を押しつけ、一言で言えば、それは高負担、低福祉の政策にほかならなかったからです。広く知られていますように、政府は、生産性向上、合理化の産業政策を一方で強行し、その結果、未曾有の公害病が蔓延し、職業病、交通災害の激発が見られ、国民の命と暮らしが脅かされています。いわゆる外部環境、内部環境の荒廃が次第に加速度を増しつつ進行しているのです。他方まずこれに対応して立てられるべき予防的健康管理は著しく立ちおくれ、製薬企業と厚生行政との癒着に起因する投薬、注射を中心とした治療が、医療の主流をなしております。その治療面においてさえ、次のような弊害が顕著です。
 まず、救急医療体制は完備されておらず、無医村が増加し、都会においてさえ、たとえば当地近郊の高蔵寺、知立等の大規模団地ですら医者不在が叫ばれている現状です。
 医師、看護婦の不足の結果、大病院では、三時間待たされて三分間の診察という状況が常態化しています。
 一日数千にも及ぶ差額ベッド、長期疾病、難病の医療費負担、過徴、看護婦その他医療労働者の低賃金、労働強化などによって国民が良心的で高度の治療を受けられる基盤自体が欠落しているから、疾病の社会的原因は、飛躍的にふえ続ける中で、予防、治療、社会復帰という本来あるべき医療保障は、等閑に付されたまま医療の矛盾は激化しております。政府は、こうした事態の中で何よりもまず公共医療機関を整備し、患者負担を軽減し、難病医療、適地医療、救急医療の体制を整備し、医療担当者養成システムに大幅な変革を試み、国民総薬づけの弊害を一掃するために薬効再評価、医薬分業を進め、かつ民主的医療の実現のために住民、職場の労働者の参加により、医療の公共的整備をはかるべきだと思われます。しかるに政府は、これまで現実に行なってきたことといえば、昭和四十年以降に限ってこれを見ても、四十年の保険料率の引き上げ、四十二年の臨時特例法に基づく保険料率の再引き上げ並びにその他の患者負担引き上げ、四十四年の特例法の本法化です。
 つまり保険財政の赤字を理由に患者負担を増大させることだけで、真に必要な料率の施策は、ことごとくこれを放置してきました。そして昨年もまた保険料率の引き上げを内容とする健保法改悪を試み、国民の憤りのうちに、これが廃案となるや、再び国会に上程したのが、本法案並びに一昨日、衆議院上程の医療保険各法改正案、いわゆる抜本改正案です。
 本日の公聴会で、私が意見陳述を求められていますのは、健保法及び厚生保険特別会計法の一部改正案についてでありますが、衆知のごとく、これらは抜本改正案と相まって今日の政府の医療政策、医療保険政策を示すものであります。
 厚生省事務局試案にすぎませんが、公表されました医療基本法案とともに、この抜本改正案についても必要な限り言及して、法案の不当であること、許しがたいことを明らかにしたいと思います。
 私が、本法案に反対する理由は、以下の三点に要約できます。
 第一に、本法案のねらいが政府管掌健康保険の財政建て直しにあることは、広く知られております。すなわち、本法案は、標準報酬等級の改定、保険料率の引き上げ、特別保険料の新規徴収及び五%の国庫補助によって、今後一年間に見込まれる赤字一千三百三十三億円に匹敵する千三百三十六億円の増収をもくろむものでありますが、これはきわめて安易、不当な措置というほかありません。なぜならば、政管健保の加入者は、中小企業労働者が多く、一般論として、いわば低賃金、過酷労働を押しつけられ、公害その他の社会的罪悪の被害を一番多く受けている人々であります。保険料の収入と支出のバランスがくずれる理由の一つは、まさにここにあるのであります。政府が社会保障的観点に立って赤字を負担すべきものなのであります。しかも赤字の解消は、収入の増加によってのみではなく、支出の抑制によってもはかられるべきことであること。この方面での究明は、全く見られません。一方、本年二月一日からの一三・七%に及ぶ医療費の大幅引き上げによって家族医療の自己負担分の引き上げに加えて、労働者は保険料値上げで一そう家計が逼迫することになります。経済企画庁長官は、家計に対する値上げの影響を〇・三%と試算し、その軽微さを主張したと伝えられますが、試算の根拠もあいまいであり、承認しがたいものであります。
 ところで、抜本改正案は、組合健保から約七百億円を持ち出して、政府健保とほぼ同額を繰り込む財政調整を行なうこと、初診料負担を引き上げること、入院時一部負担金を引き上げること、薬代一部負担金制度を新設すること等、労働者全般の負担率の増加、本人十割給付の実質的切り下げを行なうことを内容としております。高額医療の保険給付、医薬分業の試みなど部分的前進も見られますが、予防衛生、予防医療、その他冒頭に述べた緊要の抜本策は、何もとられておらず、名ばかりの抜本法案であって、わざわざつけた、そのただし書きとはうらはらに財政措置法案としての性格のみが濃厚となっていると思います。
 また、厚生省事務局試案、医療基本法案要綱も受益者負担主義及び医療の国家統制のためと思われる医療の一元化が強調されている感があります。これを要するに、これらの付随する資料とともに本法案を考えるならば、患者負担増大による財政調整をはかるものといたしまして、その基本原因に対する分析、対応を全く捨象した赤字解消のためのびほう策にすぎず、医療政策の不足を出費増で肩がわりされることを国民は決して認めないと言えるのであります。
 以上の点を法律の内容に即して言えば、
 一、標準報酬の変動幅、特別保険料の制度化は、理論的な根拠を欠き、財源あさりにすぎないと評されても、やむを得ないと思います。
 二、国庫補助の定率化は望ましいけれども、これを五%に押えたことについても理論的根拠を欠き、社会保障的制度的変革を期して二〇%に増加してしかるべきものだと考えます。
 第二に、本法案は、抜本改正案とともに国会上程のプロセスその他において、きわめて強権的色彩が濃厚で、四次防予算先取り、外務省機密漏洩事件等に見られる国民の基本権を無視する現内閣と自民党の国民不在の政治の一端をになうものであります。
 まず、本法案につきましては、社会保険審議会、社会保障制度審議会が、いずれも強い調子で諮問のあり方、法案の内容を非難しています。ことに諮問に先立って内容同一の議員立法を国会に上程するという非民主的な戦術さえ試みられ、また、本法案の通過のための会期延長の可能性の高さを新聞は報道しております。これらは、いずれも違法ではないにしても、政治のモラルとしていかがなものでありましょうか。
 抜本改正案についても、社会保障制度、社会保険、両審議会が反対意見を表明していることとあわせ、やみくもに多数の力で法案を通すことよりも、政府は再度審議し直すことを考えるべきではないかと思うのであります。
 他方で国鉄運賃の大幅値上げ法案が野党一致しての反対にもかかわらず、衆議院を通過し、郵便料金値上げに次ぐ公共料金の値上げ旋風接近に国民はおののいております。本法案に関する国民の怨憎の声は次第に高まりつつあります。
 第三に、法律家の立場から見て、たいへん問題であると思われますのは、政管健保の保険料率の弾力的調整にかかわる部分です。社会保険審議会の意見を聞いて千分の八十まで社会保険庁長官が保険料率の変更を決定し得るというこの部分は、本来この国会の審議にゆだねるべき事項を行政官にゆだねることによって、国会のあり方、国民の利益に対する配慮を欠き、政策自体としても失当であるばかりか、憲法、法律違反の疑いが濃厚であります。そもそも保険料は、その徴収事務の現状から見て公租、公課と同一の性格のものであることは間違いありません。憲法のこの八十三条で財政法律主義の原則を定め、また財政法三条の「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」とうたっております。租税法律主義を定める憲法八十四条とともに、これらは国民に犠牲をしいる課徴金等については、その変更に最大限民意を反映すべく、つまり国会の審議に付すべきことを明らかにしているものであります。
 したがって、保険料率について、いわゆる弾力的調整制度を導入することは、これらの条項に違反する疑いが濃厚であります。しかるに反面、こうした制度を採用すべき積極的理由はほとんど見出しがたいのであります。また結局は、国会の審議権放棄であることは否定できませんから、憲法第四十一条の精神にも抵触すると思います。ひっきょう官僚の権限強化であり、行政が次第に立法府を従属せしめる最近の傾向の一端を形成するものとして、まことに憂慮にたえないのであります。
 わが国では、すでに先年郵便法の一部改正法律案において、三種以下の郵便料金の省令委任が実現しました。この法案の審議過程においても参議院逓信委員会の公聴会において、私は、以上の点を指摘し、反対意見を申し述べたのでありますが、自民党のみの賛成で法案可決を強行いたしました。自民党及び現政権、ことに現政権による一連の行政権力増大、つまりは国民から政治を遊離せしめる方針は、いまや黙視すべからざるものがあります。
 以上を要約いたします。
 今日の医療の危機的状況は、単に健保赤字を財政問題にすり変えられていい性質のものではありません。根本的には、保険制度を社会保障制度に切りかえる政策、すなわち公費負担、医療の拡大、治療中心の医療から予防、治療、リハビリテーションを総合した医療に改める政策が必要と思われます。すでに労災補償の分野でも年金制度の大幅な導入、特別加入制度を含む適用拡大化、リハビリテーションなど保健施設の充実等社会保障的性格が次第に労災保険法上濃くなっていることが指摘されております。この分野でコンペンセーションからソシアルセキュリティーへの移行が、不完全ながら実現しつつあることに照らし、インシュアランスからソシアルセキュリティーへの体系的移行が望まれます。
 抜本法案、本法案とも、しかし右の方向を目ざすものでないことは、以上るる述べてきたとおりであります。
 本法案に反対するゆえんであります。
#190
○橋本座長 次に、柴田寅彦君。
#191
○柴田寅彦君 私は、中部電力の柴田でございます。
 今回の健保法改正案について、御意見を述べさせていただきます。
 今回の改正案は、細部の点は別といたしまして、全体として賛成であります。私ども保険者といたしましては、保険業務を円滑に運営するためには、保険財政の健全化をはかるのは当然であります。このためには、支出面の対策、収入面の対策の二つが考えられますが、基本的り考え方といたしまして、まず支出面の適正化がはかられた上で、なお赤字が生ずる場合に収入面を考慮することが、公式でございまして、この点に最大の努力を払うことが先決であります。
 そこで、この改正案のうち、健保組合に関係する事項について申し述べますと、標準報酬の引き上げにつきましては、現行の標準報酬の上限十万四千円は、昭和四十一年四月に定められまして、その後六年間据え置きとなっております。この間賃金は、大幅に上昇しております。すなわち労働省の統計では、四十年度の月平均給与は、男女平均で三万七千三十五円でありましたが、四十六年では、八万六千三十四円、約二・三倍となっております。現在健保組合では、組合員四名に一名が最高限度の頭打ちとなっております。
 一方、この間の医療費は、大幅に上がりまして、このままでは組合の財政も苦しくなりまして、円滑な運営ができない組合がふえてきております。したがいまして、賃金の上昇に見合った標準報酬上限の引き上げは、やむを得ないものと考えられます。このたびの提案されます二十万円という限度額は、必ずしも高過ぎるとは思われません。
 なお、下限を三千円から一万二千円に引き上げることは、労働省の統計を見ますと、最低賃金は、四十六年十月で二万五百円程度と相なっております。下限引き上げによる影響はほとんどないものと思われます。
 次に、賞与から一%の特別保険料を取る件につきましては、賞与の性質から見まして、いろいろ論議があるところでございますが、賞与は、賃金のあと払いであると考えれば、賞与も保険料の対象としても問題はないものと考えられます。また、賞与を含めた総賃金で保険料の負担割合を見ますと、高額所得者ほど割り安になるという不合理がございますので、これを是正し、賞与から別個に特別保険料を徴収することにしたものと思われます。しかし、社会保険料という性格から見まして、賞与についても標準報酬と同様に一定の限度額を設けることが妥当かと思われます。
 さらに、政管健保の赤字対策と考えられることについて、意見を申し述べますと、政管健保の保険料率については、財政上どうしても必要であればやむを得ないと考えます。
 弾力条項につきましては、短期保険としての収支バランスを保つ必要から考えてみまして、健保組合の場合も組合会で千分の八十までの範囲で保険料率を必要に応じてきめられることになっており、たてまえとしては、賛成するものであります。しかし、その運用につきましては、特に慎重を期すべきでございまして、赤字が出たからといってすぐ発動するといったことは、考えるべきではなく、赤字の原因を十分究明いたしまして、対策を講じ、最大限の努力をした上で、なおかつどうにもならないときに初めて弾力条項を発動すべきでございまして、その運用につきましては、十分に慎重に取り扱うべきだと考えます。
 国庫による定率五%の補助については、一歩前進と考えますが、政管健保の体質から見て、その率は、さしあたり少なくとも一〇%程度に引き上げるべきであると考えます。
 累積赤字のたな上げは、実質的には政管健保に対し国庫負担がそれだけ導入されたこととなり、高く評価すべきだと思います。
 以上、今回の健保法改正案につきまして、意見を申し上げましたが、いずれにいたしましても改正法案の内容には、なお多くの問題点が見られます。
 診療報酬対支払い制度、医療機関に対する指導監督の強化など支出面への対策を十分とること、及び国庫補助率への配慮を前提といたしまして、この法案に賛成をいたします。
 以上でございます。
#192
○橋本座長 次に、久徳重盛君。
#193
○久徳重盛君 私は、名古屋大学の講師をしております久徳重盛でございます。
 私は、実は専攻が小児科でございますから、きょうの意見の陳述の中にも小児科的な立場があることをお許しをいただきます。
 なお、健康保険法のこの今回の改正案について、私の考えを述べさせていただきますが、結論から申しますと、現在の健康保険法を根本的に改正せずに保険料を値上げをするということには反対いたします。
 以下、その理由を申し上げさせていただきます。
 一番最初に私が申し述べたいのは、本来の医療、または医というものと保険制度との関係でございます。本来の医学、あるいは医療というものは、医師がおのおのの医学的な知識を向上しまして、あるいは技術を向上しまして、最小限度の薬剤を用い、あるいは最小限度の検査をし、あるいは最小限度の入院をすることで一日も早く患者を直し、それで医者もそこに喜びを感じ、患者も喜ぶというのが原則であるはずであります。この原則がない限り、本来の医療というものはあり得ないと思います。しかしながら、実際現在行なわれております健康保険制度は、どうかと申しますと、現在の健康保険制度ですと、これはもう検査を最大限にし、あるいは投薬を最大限にし、入院を最大限にする。そうしなければ収入がふえないという仕組みになっております。それで、この制度は、きわめて極端な言い方をいたしますと、われわれ医者に名医になってはいけないんだと、勉強もなるべくするな、研究もなるべくするな、名医になって早く患者を直せるようになると収入が減って生活があぶなくなるんだというのが根本の理念になっておるのではないかと。そういたしますと、たとえばこれは医療だけの問題でございませんで、医学部の学生が医学部に入りまして、卒業する。そのころは非常に若い理念に燃えているわけですけれども、いざ、それでは実際の診療に当たりますと、いかに多くの検査をするかということが身についてしまうわけです。そういう形で実際には医療だけの問題ではなくて、医師をそういう一つのパターンに持っていく。それの基本にその健康保険制度はなっております。これは、現実にたとえば外来ですとか、いろんなところで数でもごらんになればよくわかると思いますが、現在の医師は、いかに多くの検査をするか、いかに多くの投薬をするかということに追い立てられているような現状ということも言えると思います。そのような制度の上に医療を行なおうとしますと、われわれ医師というのは、常に矛盾を感じながら現在の制度の趣旨に沿って診療をするよりやむを得ないと、このような根本的に誤った健康保険制度を変えません限り、医師というのは、ほんとうに一番最初に申しましたような生きがいを持って、本来の医師の道にはげむということは、おそらく不可能ではないでしょうか。
 一つ例を上げさせていただきますと、私たち名古屋大学でアレルギーを中心にやっておりますけれども、たとえば気管支ぜんそくという病気は、非常に直りにくいと言われております。しかし、実際専門的に気管支ぜんそくの治療をいたしますと、最近では一、二年、おそらく三年もしますと、ほとんど直る段階まできております。ところが、そういう非常にオーソドックスな理想的な治療を行ないますと、健康保険の点数で申しますと、大体一カ月三百五十点になります。ところが、一般の――一般と申しますか、現在まだ一般に行なわれております医療を行ないますと、約月に五百点ぐらいになるわけです。ですから、非常にオーソドックスな治療をするということだけでも約三〇%近く点数は下がります。それだけではなくて、理想的な治療をいたしますと、先ほどもお話しいたしましたように早く全治いたしますから、それまで加えますと、約半数ぐらいの収入減になる。そういうような仕組みに健康保険というのはなっているのだと思います。そういうことからいきまして、いつまでもこのような抜本改正がない現在の健康保険の制度が続いておりますと、医療はいつまでも停滞してしまう危険が多いのじゃないかと思います。
 それから、次に強調したいことは、時代ということと疾病、あるいは健康保険の制度ということであります。病気というものは、時代の環境によって非常に大きな影響を受けます。戦後しばらくの間は、わが国は御存じのように、非常に非衛生的で、乳幼児の死亡率も高く、そのために非文明国だとも言われた、そのような時代の診療としますと、現在のような制度の健康保険制度もある程度一定の役割りは果たしてきております。その理由は、何かと申しますと、そのころは受診率は非常に低いわけですから、とにかく医療というものもなるべく多くの患者に受診させる、なるべく多くの薬を与え、治療を受けなかった人に治療を受けさせるということで一つの目的を達したわけです。ですから、そのころには、むしろ医師の技術がどうであれ、技術がいい、悪いということよりも、ともかく多くの医師が多くの患者を見るということで現在健康保険制度は、ある意味では生かされております。そういうことから言いますと、現在のこの健康保険制度をもしも行なっていくといたしますと、非常に未開な国であるとか、あるいは原始的な国であれば、この健康保険制度で一人でも多くの患者に薬を与え、早く発見するということから、いまこの保険制度のままである程度の役割りが立つと思いますけれども、わが国は、実はここ十数年、あるいは二十年の間に非常に社会環境が変わってまいりました。先ほどもお話しいたしましたように、社会環境の変わり方によりまして、子供の病気ばかりではなくて、一般の大人、あるいは老人病の問題にしましても、時代の影響というのは非常に受けてくるわけなんです。それを簡単に申しますと、時代の古い時代には、身体的な疾患であり、あるいは器質的な疾患、そういう疾患が多かったわけです。ですけれども、時代がだんだん文明国になってきますと、いわゆる文明病と言われておりますように、身体的な疾患であるとか、あるいは器質的な疾患、たとえば胃が悪いとか、腸が悪いところがあるとか、そこにきずがついているというのは、疾病のわけなんです。そういうものはだんだん減ってまいります。それとともに文明病と言われている病気が多くなってくる。それは、何かと申しますと、心の面の不安定さであるとか、あるいは身体的な面の不安定さ、これは文明環境のためにふえてくるわけです。そういう病気をいわゆる全体医学的な疾患と申します。環境が人間にどういう影響を与えるか、これは心にも影響も与えますが、体にも与えます。まあよく言われております自律神経失調症ですとか、あるいは心神症、ノイローゼなどという病気は、そういう病気ですけれども、ただこれを取り上げて、この病気を言うまでもなく、たとえば私たちが幼稚園、あるいは小学校の子供を見ております。こういう疾患になる予備軍と申しますか、前段階の子供というのは三〇%ないし六〇%おります。非常におそろしいことだと思います。こういうまあ文明病と言われるような病気、これは治療の方法につきましても、検査の方法につきましても、身体疾患とは全く違った疾病感をもってしなければならない。ところが、そういう文明病に対する治療だとか、あるいは検査、あるいは指導、先ほどの話にありましたリハビリテーションの問題、そういうことは現在健保ではほとんど収入の対象になっておりません。そんなようなことで現在のこの健康保険制度というのは、いままでは一定の役割りを果たしましたけれども、もう過去の古い時代の制度になってしまっている。新しいものの取り入れがきわめて欠けているということが言えると思います。強く言いますならば、健保制度がこのままでありますと、前時代のものと言っていいのではないかと思います。
 たとえば例を話させていただきます。最近どこの病院へ行きましても、かぜを引きやすいという子供が非常にたくさん参っております。そういう子供たちで小児科の外来はほとんど満員である。ところが昔のような時代ですと、鼻水が出たり、くしゃみが出たりしますと、これはウイルスが感染したとか、あるいは細菌が感染したとか、非衛生的な時代でしたら、ほとんどそれが原因で鼻水やくしゃみが出たわけであります。ところが、御存じのようにこのごろはウイルスが感染したり、細菌が感染するはずはございませんけれども、鼻水やくしゃみを出す患者が非常に多い。もう一つの特徴は、繰り返し繰り返しそういう症状が出るわけです。ところが、そういう患者が病院へ参りました場合に、昔の考え方と同じようにかぜだといって抗生剤なり、サルファ剤なり投薬する。それでそういうふうの形にしませんと、現在まあ何ですか、健康保険での収入のあれにも、対象にもならない。ところが、実際にはこういうかぜを引きやすい、鼻水やくしゃみを出しやすい子供というのは、どうしたらいいかと申しますと、皆さん方も御存じかと思いますが、テレビなどでも薄着にさすとか、あるいは裸で生活させている幼稚園などが、そういうのがよく出ます。そういう場合に、家族にそれでどうなりましたかというふうに聞きますと、かぜを引かなくなったと言います。あれは感染性のかぜではなくて、自律神経の調子が狂いやすいときには、鼻水やくしゃみがいくらでも出るわけなんです。要するに体の弱い子供になってくる。そうしますと、そういう子供を直そうとしますと、われわれは薬を飲ませなさいということではなくって、お母さんにこの子は、決してかぜを引きやすい子供ではないんだ、もっと薄着にさせて活発に遊ばせなさい。あるいは友だちももっとつくってやりなさいということを言わなければいけないんだ。そういたしますと、薬を飲ませたり、注射をするよりも何倍も早く直ります。ところが、もしもそれを健康保険の制度を適用いたしまして点数で計算いたしますと、初診料だけです。そんなようなことから考えましても、これは一例にすぎませんけれども、非常にいろいろな矛盾した点、あるいは現在の時代に即さない点をこの健康保険制度というのは持っていると思います。
 以上述べましたように、本来の医療のあり方と申しますか、医者が生きがいを持って患者を見て早く直して喜びを感じる、そういうことからしますと、この制度がある限り、どういう立場も医者は取り得ないと思います。そういう問題。
 第二に、いまお話しいたしました現代病というものに対する配慮がない。そういう意味では少し時代おくれな点がある。それから、そういうことから申しますと、実は、このように世の中が進んでくると、従来のように医者は、患者が発病するのを待ちまして、それを対象にして病気を直すという時代はすでに過ぎてきているのではないか。むしろそうではなくて、発病しないように予防をする。要するに予防臨床医学というような立場が、これからの本来の国民の健康保持の方向だと思います。ところが、予防臨床医学というような概念で健康保険制度を利用することがほとんどできないというのが現状だと思います。そんなようなことから言いまして、基本的な点で、ずいぶんわれわれ医師の立場から理想としているものと現在の健康保険制度というものは矛盾があると思います。
 現在の制度そのものについて、次に述べさせていただきますと、現在の制度の中で最もわれわれが痛感いたしますのは、被扶養者の問題です。もともと国民は、平等に健康というものを保障されなければならないというのが原則だと思いますが、この中で被扶養者の問題が大きくクローズアップされます。そのまま普通表面的に考えられます第一の問題は、経済的な問題、これも実は非常に大きな問題です。子供の場合ですと、もう経済的に家族が負担にたえない。そういたしますと、たとえば慢性疾患などですと、最初は、親は子供のことを心配してきますけれども、その次は、敵意に変わってまいります。敵意と申しますと、何かと申しますと、金が非常にかかると、この子さえいなければ自分の家庭は幸せだという気持ちになってくる家庭は非常に多いわけです。そんなような不幸な家庭がないように被扶養者も同一的に保障していただけるようにしていただきたいと思います。
 第二の問題は、これは直接医療にかかわる問題ではございませんが、子供ですとか、あるいは老人を大事にしない国はだめになるということも言われております。そのことから言いますと、この健康保険の制度は、老人や子供は大事にしなくてもいいんだと、ある程度の犠牲をしいてもいいのだという基本的な理念に貫かれているとも言えると思うのであります。これは、直接的な健康ということではないんですけれども、これは国民に与える、一般の国民に与える潜在的な気持ちというのは非常におそろしいと思います。特に文明が進んでまいりますと、そういうことがなくっても人間の間には阻害が起こります。家庭の中にも阻害があります。社会にも阻害があります。そういうようなことがないような、しっかりした基盤のある国であれば別ですけれども、いまのように文明が進んでまいりますと、そういう傾向が強くなる、そういう傾向が強くなる人が多い社会で、こういう形の健康保険があるということは、むしろ健康保険だけの問題ではなくて、精神衛生と申しますか、社会の連帯感、あるいは家庭の連帯感、精神衛生ということから言いましても、非常に悪い教育をしているということができると思います。そのようなことで健康保険では本人も家族も給付は、同一にすべきであると思います。先ほども少し述べましたけれども、被扶養者が慢性疾患、あるいは重症疾患になりました場合には実に悲惨な場合がございます。これは、先ほども少し述べましたから、ここでは説明は省かせていただきます。
 それから、現在の健康保険制度は、先ほどから少し触れました技術というものが全く無視されております。この技術の無視されているというシステムは、実はどこの世の中にもあり得ないことではないか、技術を無視して存在するということはあり得ないのではないか、そういうことから言いますと、技術を無視する形のシステムというのは、おそらくわが国では健康保険法だけではないでしょうか。ですから、この技術を無視するというような精神がある限り、医療の向上ということは、なかなか末梢的なテクニックを使いましても、なかなかむずかしいものではないかと思います。
 それから、次には健康保険制度の一本化ということです。これはもう衆知のように、いろんな形の健康保険制度がございまして、そこの保障のシステムもいろいろです。ただ、ここで大きな問題は、政府管掌の健康保険と組全の健康保険を比べてみました場合に、政府管掌のほうに非常に内容の乏しさと申しますか、保障の乏しさがございます。むしろそのことに大きな問題があると私は思います。と申しますのは、もともと国が行なっている一つの事業と申しますか、それは、そこの国の標準であり、一つの努力目標であり、理想に近いものであるというサンプルでなければいけないと思います。ところが、現実はそうではなくって政府管ケンの保険に入っている人は、組合保険をうらやましがる、逆に申しますと、政府の保険だから自分は不幸せだという気持ちを持っているわけです。そんなことから申しましても政府管掌の健康保険をまあそれよりはすぐれている組合の健康保険のレベルまで上げる、これはぜひやっていただきたいと思います。そのためには、やはり国の一つの事業として改善のために十分な予算を取っていただきたいと思います。
 そのほかにもいろいろな問題がございます。
 たとえば医療施設の問題ですとか、無医村の問題、あるいは専門医とホームドクターとのシステムの問題、これは直接に保険にかかわるというよりも国民の健康を守る医療の問題でございますが、非常に多くの問題が山積いたしております。医学の進歩というのは、非常に目ざましくて、医療の向上にいたしましても日進月歩の勢いです。わが国だけではなくて、これは世界のレベルとの共存ということになるわけですけれども、そういうことから考えてみますと、いまのように低迷いたしておりますと、あるいは世界の医療、あるいは医学の水準について行けない。その基盤にこの健康保険の制度がならないように、心から私は願うものです。
 日本の医学の向上をこれはもうここ五年、十年という長い目で、いまのようなシステムでやっておりますと、おそらく世界のレベルからいまよりもさらに後退してしまうと思います。たしかに一部の研究者が、ピラミッドの頂点のようにすぐれた研究をいたしますけれども、私は、そのことを言っているのではなく一般医療のことを述べているわけですが、そのことから言うと、きわめて暗い状態であるということを考えていいのではないかと思います。
 以上述べましたように、健康保険制度、特に政管健保にはきわめて問題が多いと思います。このままに放置しておきますと、国民の健康のためから言いましても、あるいは医学の進歩向上のためから言いましても、相当の危険を覚悟しなければならないと思います。
 今回の法の改正、それについて私は経済的な問題にはあえて触れませんでしたけれども、この健保のもともとの基本的な問題を抜本的に改正いたしませんと、幾ら赤字を埋めるからといって、全く末梢的な対象療法的な値上げをいたしましても、大きな目で見ますと、国民の健康の増進ということにはならないと思います。
 以上で終わります。
#194
○橋本座長 次に、岩瀬繁一君。
#195
○岩瀬繁一君 御指名をいただきました県の信用保証協会の岩瀬でございます。
 問題になっております健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部改正法律案につきまして、意見を述べたいと思います。
 健康保険を中心としております医療保険制度が国民の健康保持、したがって、また生活の向上に大きな役割りを果しておりますこと、したがって、この存在意義がきわめて大きいことは、いまさら申し述べる必要もないと思います。しかしながら、この医療保険制度の中核ともなっております政府管掌健康保険制度の現状を見ますると、まことに残念なことながら、数年前からこの財政状態が悪化の一途をたどっておりまして、その対策に政府はじめ関係者が各種の努力を払ってきておりますにもかかわりませず、昨年度末におきましては、二千億円をこえる赤字をかかえております。このままの状態でもしも推移するならば、昭和四十七年度、本年度末には、その赤字の累積が三千数百億円ともなって、やりくりもきわめてむずかしい状態となるやに聞き及んでおります。このような事情のもとで政府がこの危機を回避するため、財政立て直しとして提案をされましたこの法律案につきましては、それらの立場からの批判はあろうといたしましても、私はこの措置はやむを得ない措置であると、かように思慮いたしておる次第であります。こまかい点につきまして、希望的な意見はございますけれども、基本的には賛成。こういう考え方でございます。
 以下改正のおも立った諸点につきまして、御意見を申し上げたいと思います。
 まず、標準報酬の上下限の改定の点でありますが、現在の標準報酬の最高等級十万四千円であります。これは、昭和四十一年四月に設定をされましたが、その当時この最高等級に概当いたします被保険者の分布率は、政管健保におきましては約一・七%、きわめて低率であったと承知をいたしております。その後六カ年間の賃金水準の上昇は、私が申し上げるまでもなく著しいものがございまして、昨年十月現在では、この分布率が比較的高率、約一〇%に達しておると、かように聞いております。このように相当多数の所得の高い被保険者が等級の頭打ちという制度、十万四千円という最高額によりまして、総体的に言えば低い保険料しか負担をしていない。裏から言いますれば、低額所得者にそのしわ寄せがされて低額所得者は割り高の保険料を納めておる。こういうことを言わざるを得ない、いわば不公平が生じておる現状でもあります。保険料負担をなるべく公平に、なるべく合理的なものにしようと、こういう立場から標準報酬の上限を引き上げるという措置は、やむを得ない措置だと、こういうふうに言わなければならぬと思います。ただその引き上げが一挙に二倍の二十万円となる、こういうことは現在の十万四千円の該当率が一〇%程度であるという状況からあわせ考えましても、どうも少し上げ過ぎではなかろうか。現状と原案のまあ中間を取るのが常識的、良識的な措置ではないかと、かように思います。下限は現在の三千円ときめられておりまするが、これは昭和二十八年十一月以降据え置かれておることでもございますし、今回原案の一万二千円まで引き上げるということは、まずまず妥当な線ではないかと、かように考えております。
 次に、保険料率の引き上げの点でありますが、健康保険制度におきましては、支出でありまする保険給付費を賄う収入の大宗が何であるかといえば、これは保険料収入であります。そういったたてまえから言いますれば、政管健保が近い将来における医療保険制度の抜本的改正におきまして、収入と支出とを軸といたしました財政上のバランスの保持という点もその抜本的改正の重要な一項目でなければならぬということ、これは言うまでもない当然のことでありますけれども、現状におきましてその財政収支の状況から判断いたしまして、収入を確保して全体制度の運営をルールに乗せる、レールに乗せる、こういう意味から言うて、その保険料率の引き上げということも、まあやむを得ない措置ではないかと、かように思います。
 それから、次に賞与に対する特別保険料の徴収の点でありますが、もともと賞与額というのが標準報酬の高い人ほど高額であるのは当然だろうと思います。したがって、賞与を含めた総収入額、総所得額に対する保険料負担の割合をできるだけ公平なものにするという意味合いから、もし現状どおり賞与などは、これは保険料算定の基礎にはしないんだというたてまえを続けて持つならば、どうも低額所得者の保険料負担の割合が比較的割り高になるのではないかということもございまするし、それを避ける意味合いから賞与等を算定基準に入れるということも、これまた収入を確保する、こういう面とも合わせましてやむを得ない措置ではなかろうかと、かように考えます。ただこれは新しい制度でもございまするし、その実施にあたりましては、標準報酬額の上限額引き上げの際と同じような気持ちもございますし、できれば良識的な措置をとってほしいし、一定の限度額を設けることが、必要ではないかと、かように思います。
 それから、次に国庫補助の定率化の問題でありますが、従来の定額補助こういうたてまえから、今後定率補助に切りかえていこうということは、保険財政上収入を確保できるという見地からきわめて望ましい措置ではないかと、かように思います。ただ問題は、その補助率でありまして、原案五%というのはちょっと低額に過ぎるのではないかと、かように思います。健康保険につきましては、申すまでもなく事業主が保険料の半額を負担するという原則があるとは申しますものの、一方国民健康保険に対する国庫補助率が現在四五%という高率である点と比較をいたしてみましても、原案五%の国庫補助というのはどうも低過ぎる、バランスがとれていないんではないか、少なくとも一〇%以上の国庫補助率にすべきではないかと、こういうふうに考えます。
 それから、次に保険料率及び国庫補助の弾力的調整の問題であります。健康保険が短期保険であります以上毎年毎年、一年一年収入支出のバランスをできるだけはからなければならぬ制度でありますこと、言うまでもないわけであります。すなわち、収入確保のあるべき姿、こういう姿で収入を確保しておかなければならない。一面また支出の面におきましても、できるだけこれを適正化すると、こういう点を常に配慮しながら、しかも単年度ごと、一年一年収支の均衡をはかることが、これは健康保険の本質、原則であるといわなければならないと思います。収入のあるべき姿においての確保を年々はかることを目的とするための、いわゆる弾力調整は、これは以上述べましたような原則実現の目的から、ある意味では当然の措置といわなければならぬと思います。昭和四十一年の法改正期までその制度が存在しておったという経緯もあると承知をいたしております。ただその実施の現実の問題でありますが、ただ単に安易な気分で保険料率が引き上げられるというような結果に堕するということでは、いわばたいへんであります。被保険者の負担が増大するという結果になったんでは、たいへんといわなければならぬと思います。
 審議会の意見を聞くということは当然なことながら、常に収入と対立するというては、ちょっと語弊がありますが、これと対比し、向かい合っております支出面の十分な検討という対策の実施等の後の問題、いわば天下の公道というような気持ちで慎重に取り扱われることを要望いたしたいと思います。
 保険料率の引き上げと関連いたしまして、国庫補助率の増率、こういう点につきましては、原案に全く賛成でございます。
 それから、次に累積赤字のたな上げの問題でありますが、中小企業を主として対象としており、またしたがって、低賃金なり、あるいは高齢の被保険者を多くかかえておりまして、制度的にはその財政基盤が弱いといわなければならぬ保険集団であります政管健保の財政再建をはかる意味合いから言いまして、妥当な当を得た配慮と考える次第であります。
 以上、私見を申し上げましたが、いま申し上げましたように、主として中小企業に働く被保険者の健康を保障する政管健保のすみやかな健全財政の確立を期待いたしまして、来たるべき抜本改正の早期実現によりまして、支出面の適正化、また収入の確保、財政の長期安定がはかられますよう御努力を切にお願いをいたしたいと思うわけであります。
 以上で終わります。
#196
○橋本座長 次に、星野銀治君。
#197
○星野銀治君 星野でございます。
 まず、本案であるところの健康保険法一部改正に対しましては、絶対反対であることを表明いたします。すでに反対意見の前お二方がそれぞれ専門家の立場で意見を開陳いたしておりますので、私は労働組合の関係でもございますので、ごく一般的なことを述べさせていただきたいと思うわけです。
 そこで、私の反対だという理由でございますが、いままでお話がありましたように、今回の法案が出された趣旨というものが赤字対策に終始しておる、赤字対策に終わっておるという観点からでございます。そこで、私たちが常日ごろ考え、また行動、運動を展開しておるようなことを申し上げ、最後に若干本案について御意見を問いたいと、このように思っております。
 たびたび御意見が出ておりますように、現在の社会情勢、非常に国家の経済も進んできております。この進んだこの社会に対する医療制度、もしくは保険制度、この重要さというものは、それぞれおわかりのとおり非常に重要であるわけです。その完備、これが現代社会においては不可欠である――公害――健康管理一切を含めてでございますが、その完備というのが不可欠の条件である。これが人間生活を豊かにし、未来に希望が持てる、このような形になるのではないかと思うわけです。で、国民はそれぞれ健康管理については努力をしておるはずです。また国民皆保険ということで年間一カ月以上の給料に匹敵するものをそれぞれ将来の保障のために、もしくは病気になったときにその治療費ということで、それぞれの保険を支払うというような努力をしておりますが、やはりこの努力に対して国が一体どこまで手を差し伸べておるかということが、一番の問題点ではないかと思うわけです。やはり医療保障制度というものにつきましては、本来国の責任においてやるべきものである。また任務であるというふうに判断しております。したがって、単に治療のみに重点を置くものじゃなしに、ただいまも反対意見者が述べましたように、予防からリハビリテーションまで一切がっさい含めたものの総括的な医療の保障を内容としたものをたてまえとしておるということでございます。
 そこで、私たちは、今回赤字対策で出された内容のみならず広くこの医療制度についての抜本改正というものにつきまして、運動を展開しておったようなわけです。先ほど本会の団長である橋本さんのほうからお話もありましたが、すでに給付の一部手直しというふうなことで、これを抜本改正という形で非常にうたっておるようでございますが、私はこういった内容については、全然抜本ではない、ほんの手直しである。今回の財政立て直しのためのすり変えであると、このように判断いたしておるようなわけで、またそれぞれ資料もいただいておりますが、このそれぞれの審議会の答申案をながめてみましても、非常に政府の態度に不満を持った答申案が出されておる。このような内容であるわけで、こういった点についての政府の考え方というものを、もっともっと国民本位に考えてもらうようにぜひお願いをしておきたいと、このようにも思うわけです。
 そこで、この赤字の問題でございますが、とにかく口を開けば健康保険の赤字財政を取り上げておられますが、二千億、もしくは本年度据え置きで三千億になったといたしましても、国鉄が十年間の長期財政計画を立て、一兆数千億の方針を掲げておる。食管においてもそれ相当の赤字をかかえておる。いまここで赤字の財政立て直しのためにこういった法案を出す必要は、私は全然ないと思います。それよりかやはり前者が申し述べておりますように、総合的なやはり医療保障制度こういったものを打ち立てるために努力をし、それに要する費用、またそれぞれ医療者に対する費用の分担、こういったものが出てまいりまして、初めて私は率直な意見が述べられるのではないか、このようにも判断しております。
 受益者負担ということを盛んに言われておりますが、やはり国庫負担にいたしましても、まだまだ少ない、こういったことについて大いにひとつ考えていただきたいと、このようにも思うわけです。
 そこで、この赤字の原因なんですが、私たちは常に言っております。医療費が実質一二%上がったということなんで、ますます赤字がふえる、こういうようなことなんですが、医療費の中に占める薬品価格、主要薬品価格、これがべらぼうな数字になっておる。これは聞いております。また資料にも出ておるようでございますが、赤字の原因は、やはり私は薬価問題、これが最重点ではないだろうかと、さらには、出来高払いの診療報酬制度、こういったものが私は原因だと思うんです。
 いま一つは、国庫補助が、先ほど少ないと言いましたが、資料によりましても四十二年から四十六年見込みとしてありますが、二百二十五億、一銭も多くなっておりません。予算は、大幅にふえておるはずです。にもかかわらず、この政管健保というものの赤字が見込まれておるにもかかわらず全然増額がない。してみるならば、政府は一体この健康保険についてどのような考え方を持たれておるのか。また、姿勢があるのか。ほんとうに国民の健康というものを考えておるのだろうかというようなことに私たちは疑問を持っておるわけです。やはり政府の努力というものが、私は足らなかったと、これが大きな赤字の原因ではなかったかと、このように判断いたしております。
 福祉国家ということで本年度予算の中でも、大幅な増額であるというようなことで宣伝もしておりましたが、前年度の予算を対比いたしましても社会福祉に要する費用というものは、率で言って一四・二で一つも変わっておらない。予算は、二十数%ワクが広がっておりますから、ある程度の金額は伸びたと思いますが、社会保障費、これについての率というものは変わっておらない。予算が大きくなれば、当然率が同じならばふえることは当然のことですから、やはりこの面からももっともっと社会保障費、この全体についての考え方というものを前面に打ち出してもらいたいと、このように考えております。
 次に、まあこの赤字の関係で今回の法案が出されたわけですが、私たちは、いつも経営者との団体交渉で申し上げております。原資がない。なければどうするんだという話になります。で、この今回出された法案というものは、私が交渉の戦略、戦術の中でやる――まず抜本改正ということであれば、おおよそこの財政問題以外のほうが大きなウエートを占めておることと思うんですが、まず一つ小出しにすると、労働組合がやる手なんです。経営者に対して。全体をひっくるめて福利厚生から、賃上げから、なにから一切がっさい含めて要求を突きつけておる。原資がないというようなことで結局会社の答えが返ってこない。私たちは、それを出したんでは、どうも私たちは損だということで、まず当面一つの問題をすぱっと出して、この問題だけ解決しようということで食い下がり交渉する。経営者は、一つにおいてはですね、ほかのものは隠されておるわけですから、なかなかその原資がないないとがんばっておりましても、最終的には一つの妥協点を見出して解決をする。この法案につきましては、もろもろの問題があるが、さしあたりこの問題だというふうに解釈できるわけですが、そうしますと、政府の考え方というのは、まことに私たちがとっている戦略、戦術とは別な考え方で、こそくではないかと、このようにも考えております。したがいまして、先ほど申しましたように、予防も大事であるというような考え方も述べておりますが、数字を見てみましても、四十五年度の資料で保険衛生に要した費用が千四百六億であると、この費用は医療保険規模の九%程度、非常にこの予防に対する費用も少なかったということなんです。そうしてみますと、久徳先生がお話ししましたように、前段の病気になったからかかる。これはあたりまえのことだと、これは直してもらわなければ困る。ところが、なるべく病気にならないようにする方策が欠けておると、そこに今度は治療費が高くなったから上げよ、上げよ。出せ、出せと、こういういまの考え方である。
 私の言いたいことは、やはりこの財政問題だけをこの俎上に上げ、意見を聞くということじゃなしに、やはりこれを出すまでには、まだまだ時間がかかると思いますが、この医療制度全体の問題を表面に出して国民の合意を得る、こういう姿勢がほしいということも言いたかったわけです。したがって、当面の赤字を糊塗する、このような考え方の法案であるがために私は絶対に反対の立場を通したいと思いますが、新聞紙上を見ますと、すでにこの社労委の懇談会あたりで国庫補助率をふやすことにおいて、また野党側といたしましては、本日の新聞に載っておりますが、また被保険者、また中小企業、政府の恩恵を浴する度合いが一番少ない中小企業の方々の負担を増すのはしのびないということで、撤廃を申し入れておるようでございますが、この新聞記事そのままのことを私は申し上げておきたいと思います。
 時間の関係もございますし、専門家でもございませんので話が飛び飛びになったわけでございますが、何といたしましても、現代社会にマッチするような医療体制というものを、医療保障体制というものをそれぞれの機関において、また国民の参加を求める中でひとつ打ち出してもらいたい。これが私の希望であるわけです。したがいまして、この真の医療保障体制というものを早期に確立されることをこの席上をお借りいたしまして、最後に要請をして、取りとめのない意見となりましたが、私の意見といたしたいと思います。
#198
○橋本座長 以上で御意見を伺う方々の御意見の開陳が終わりました。
 引き続き派遣委員の質疑を行ないます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。別川悠紀夫君。
#199
○別川委員 本日は参考人の皆さん方におかれましては、非常に多忙な折にもかかわらず、わざわざ御出席をいただきまして、先ほど来からたいへん貴重な御意見をお聞かせいただきましたことにつきまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。
 そこで、六人の皆さん方それぞれの御意見、まあ絶対反対という御意見もございました。さらにまた基本的には賛成である。しかしいろいろと希望的な条件を付されての賛成というふうな御意見も承ったわけでございますが、なお、いままでの御陳述の中で今後の赤字対策の解決ということだけでなしに、この際ですね、現在当面をいたしております、わが国の健康保険制度全般にわたるひとつ抜本的な改正というようなこともあわせてひとつ考えねばならないし、さらにわが国の政府の医療というものに対する基本的な考え方など、そういった医療制度につきまして、基本施策の立場というふうなものも、この際明確にしておかなければいけないのではないかというふうな、いろいろと広範にわたる御意見があったわけでございます。
 ただいま目下の情勢を申し上げますと、いわゆる財政対策というふうな形で見られております、本日の議題の中心でございます健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案というふうなもののほかに、いわゆる抜本改正というふうな形での政府の提案が、国会に提案をいたされました。
 なお、仄聞するところによりますと、近いうちに医療基本法というふうな問題についても、政府のほうから提案をなされる準備が整っておるというふうにも聞いておるわけでございまして、いずれわれわれ社労の委員といたしましては、こういった問題につきましても、これから引き続いて審議に入る予定でおるわけでございますが、まあしかし本日は、ただいま議題になっておりますこの法律の内容についてのひとつ皆さん方の御意見をお伺いいたしたいと思ったわけでございますが、いろいろ賛成、反対のお考え、御意向が出されてございますが、ひとつそのものずばりわれわれ頭が悪いものでございますから、非常に幅広い御意見を伺ったわけでございますが、それを整理をするという立場から、今度の法律に対する皆さん方の御要望でございますね、基本的には賛成だというふうな御意見もあったわけでございますが、すべてが無条件賛成というかっこうではなかったわけでございます。そのものずばり今度の法律に対する皆さん方の要望、基本的には賛成だけれども、ひとつこの点とこの点は考え直してほしい、直してもらいたいというふうな御意見をひとつ整理をしていただきまして、一応三点ぐらいにしぼっていただきまして、それに順位をつけて、第一、第二、第三というぐあいにですね、順位をつけていただいて、簡潔に参考人の皆さん方からあらためてお聞かせをいただけたらと思います。
#200
○橋本座長 全員から……。
#201
○別川委員 ええ、全員から。
#202
○橋本座長 おそれ入りますが、浅井先生より順次別川委員の御質問いたしました点について、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
#203
○後藤委員 絶対反対という人は、どういう意見でしょうか。
#204
○別川委員 それは、参考人の皆さん方の何といいますか、立場は絶対反対であってもですね、しかし、それでも今度の法律を、絶対にこれをやるということであれば、この点とこの点というふうにひとつ御整理をいただけるならば、まことに幸いだと思います。
#205
○橋本座長 別川君の御質問を整理をさせていただきまして、特に反対のお立場で御意見をお述べいただきましたお三方に、もしこの法律に追加すべき事項としてお取り上げになるとしたら、この優先順位としてどんなものをつけるか、そんなふうなお立場でもけっこうですから、お答えをいただきたいと思います。
 浅井先生から順にお願いいたします。
#206
○浅井政彦君 まず第一に、私は赤字は出してもらいたくない。その条件としては、弾力条項が妥当だと。もう一つ、願うことなれば国庫補助をもう少し上げてほしい。この三つですが。
#207
○橋本座長 橋詰洋三君。
#208
○橋詰洋三君 私は、医療保障に対するビジョンが全く欠落している点に、この法案を廃案にすべきであるという意見を申し上げたわけですから、条件的といいますか、引き下って、もしこの法案が妥協の産物として国会で通過されるということがあってはならないと考えるわけですけれども、もしあった場合のしいて順序を上げよと言われれば、それは、私がずっと一貫して先ほど申し上げました私なりの理念に抵触しないように、この法律が現実的に是正されれば、それでいいということになるのかもしれませんが、しかしあくまでもこれは何といいますか、御質問にお答えする苦しいお答えにほかなりません。
 まず一番問題なのは、赤字の肩がわり料率引き上げですから、この点についてはわずかな金額です。つまり、二〇%という線を申し上げましたけれども、これで赤字が補てんされ、若干の供与で――しかし将来における社会保障としての各種保険の編成がここにあるわけですから、まず国庫補助二〇%引き上げる。そのことによって保険料率を上げるということ、特別保険料率を設けるということをやめるということ。
 二番目には、弾力的調整保険料金の弾力調整ということを法律家として非常に疑義があるということを申し上げておきました。この点は、削除していただきたい。
 三番目には、標準報酬の変動幅について、御再考を願いたい。
 あえて三点あげれば、そういうことになると思いますが、この三点がすべて実現されるということは、この法案が通らぬということであります。
 以上であります。(笑声)
#209
○橋本座長 柴田寅彦君。
#210
○柴田寅彦君 それでは、申し上げます。先ほど申し上げましたように、私といたしましては、細部の点は別といたしまして、全体としては賛成の意を表したわけでございます。あえて希望をというお尋ねでございますが、それに対してお答えといたしましては、保険業務を円滑に運営するために保険財政の健全化をはかるのは当然でございまして、そのために三つばかり希望を申し上げておきたいと思います。
 それは、現在の診療報酬体系の合理化をお願いしたい。こういうことが一点でございます。
 それから、二点といたしましては、支払い方式の改善、合理化をお願いしたいというのが第二点。
 なお、第三点といたしましては、医療機関に対する指導をぜひお願いしたいということが三でございまして、まあこのほか、なおつけ加えて申し上げさせていただくならば、被保険者への教育、そういったPRといったことも今後行なっていただいたらいいじゃないかと、こういうふうに実は考えております。
 以上でございます。
#211
○橋本座長 久徳先生。
#212
○久徳重盛君 私、非常に先ほど原則的な話をいたしましたけれども、この財政案ということにしぼって考えさせていただきますと、いずれも原則としては、赤字を出すということは好ましくないということは、これははっきりした問題だと思います。そのことからいいまして、定率化の問題、弾力性のある定率化の問題、これは精神としては非常にいままでの方法よりはいいと思います。ただ率の問題をもう少し考えていただきたい。
 それから、先ほどもお話しいたしましたように、有効な、ほんとうの医療として有効な抜本改正ということができましたら、実際には保険料というのは、私こまかくはまだ検討をいたしておりませんけれども、現在よりもある程度上がっても、それは国民も納得するであろうし、それを保障できると思うんですけれども、いまの段階ですと、どこをどうなぶりましても、きわめて目先だけの全く対象療法、へたをいたしますと、そのためによけいまた患者の皆さんが検査が多くなり、薬が多くなるという形になるわけですから、国庫補助でできることならやって、どうしてもやはり理想的なものが――理想といいますか、いまよりも相当いいシステムがない限りは、どうやっても健康というのはいまのレベルよりよくならない。
 しいて賛成するといたしますと、国庫補助の定率化の問題だけでございます。
#213
○橋本座長 岩瀬さん。
#214
○岩瀬繁一君 問題になっております改正法律案が、主として財政健全化と健全財政を打ち立てようと、こういう意味でやりましたので、私も抜本改正、医療のあり方なり、あるいは医療以前の問題のあり方なり、そういったことを、ぜひいわゆる抜本改正の際には十分あれしていただきたいということを若干申し述べたわけでありますが、改正法律案は、これは健全財政へいくかという点でもありますし、その意味で意見を先ほども申しましたが、三つぐらいと、こういうことでございます。
 私は、まず第一に申し上げたいのは、国庫補助を定率化したということは、非常に大きい進歩だと思います。各年度、年度に予想をした支出額と、それから合わせる意味で収入をはからなければならぬと、こういう意味で国庫補助が一定の率で期待できます。こういうたてまえになったことは、非常に好ましい、非常に大きな進歩だと思いますので、これはぜひ実現をしていただきたい。ただ、先ほどからも申し上げましたように、その率はちょっと低すぎるのじゃないか、もう少し高率にしてほしいものだ、こういう希望を持っております。
 それから、第二点は、保険料率の引き上げ等をも含めて、いわゆる弾力的調整項目の設定でありますが、私はさっき申し上げましたように、健康保険の本質から言うて、これは当然あってしかるべき制度ではないかとも思います。ただ、これがさっき申しましたように、きわめて軽い気分で、安易な気分で被保険者の負担増という結果を来たすであろう保険料の率の向上のみに利用されてしまうということになったんでは、これはもうたいへんな危険を帯びた、趣旨にも反する結果にもなりますので、これは置くと同時に、きわめて慎重な態度で、すなわち収入と支出をそれぞれあるべき姿に持っていった上で行なう。場合によれば、これは収入が多過ぎました。来年度は、保険料率を一%引き下げますと、いうことも当然予想される規定でもあり、制度でもあるわけでありますので、その実施については、ぜひひとつ慎重な態度をとってほしいと、こういう気持ちであります。
 それから、第三点は、標準報酬の最高等級の額の引き上げでありますとか、あるいは賞与等を保険料算定の基礎として取り上げるという問題、いずれも現在の事実とあまりかけ離れたような線に持っていかずに何といいますか、常識とでもいいますか、良識とでもいいますか、常識的な範囲にとどめて漸次その年、その年の健全財政化への状況と照らし合わせて向上をしていく、こういう意味で常識的な線をとってほしい。こういう点でございます。
 以上三点でございます。
#215
○橋本座長 星野銀治君、おそれ入ります。
#216
○星野銀治君 私は、絶対反対の立場でございます。そこで何といってもはっきりしていただかなければいかぬ問題で、赤字の原因がどこにあるのか、これははっきりしてもらう必要があると思います。中で評価できるものとしては、国庫補助の定率化、これは額は別問題です。定率化、これがもっともっと率を上げるならば、一つの評価として私は判断できると思うんですけれども、今度は特別保険料ですか、これは、まあよく私たちは言っているんです。賃金あと払いは、経営者の主張です。労働者は賃金あと払いは、絶対これは言わぬわけです。これをいまさらここで賃金あと払いというのは、そもそもおかしいわけなんです。これは絶対だめなんです。
 それから、料率の引き上げですね、これだって企業努力が一つもないと、私はいつも言うんです。企業努力ですね。どこだって企業努力はいたしますよ。企業努力は全然見ない。見ないというものは何かというと、赤字の原因をだれも追及しようとしない。だから私は国庫の補助定率化ということだけについては、これは、はっきりと、しかし額、率――額は別であるということですね。
 そのほかについては、原因をとことん追及する。ここあと一年、二年おくれたっていいじゃないですか。私は、先ほども申しましたんですが、これは全体的に出てきた場合には、私たちも同盟の立場ですが、別にこれは同盟でも全部一緒です。やはり健康に関しては、ほんとうに真剣に考えておるのです。それは国民の参加も得て一つの案を出す、これについてですね、適正負担であるというような考え方が出てきた場合には、労働組合はこれはもろ手を上げて賛成をいたします、はっきり言って。それほど真剣にこの問題を考えておるわけです。だから私たちは、言うなと言っても私は、抜本改正を早急にやってもらいたい。これを早急に作業にかかって――第一、保険というものが八本あり、国保あり、一本化が本来の姿と思います。ただそこまでには、それぞれの歴史があるということですね。それぞれ自分の分野を守っておるわけです。政府は、どんどん補助をし、低いところの条件なり、何なりというものを高めて、ある程度のところで合わせると、一本化になるわけですよ。財政調整をしてうまくいくわけです。一方はある程度豊かだ、片方は貧乏人なんだ、たれがそんなもの吸収合併をやるものですか。会社だってそうでしょう、対等合併もろもろのあれがあると思うんですよ。私は、それと一緒だと思うんです。だから、もっと政府が国民の健康というものに力を入れて国庫補助というものを、補助金というものをどんどん出してある程度水準を引き上げる、ある程度見合う中で、やはりそれぞれの組合の方々と話し合うなり、これが私はほしいんです。まあちょっと意見になったかどうかわかりませんが……。
#217
○橋本座長 いいですか。
 次に、後藤委員。
#218
○後藤委員 先ほどからいろいろと話を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。
 時間の関係もございますので、端的に御質問したいと思いますが、まず第一番に浅井会長さんですが、先ほどこの政府管掌健康保険につきましては、非常に財政が悪化しておるから立て直しをしてもらいたい。さらにまた、いろいろなお話がございましたが、無条件ではないけれども、全面的に賛成と、こういうまあ話だったと、私は承っておるわけですが、そこで私感じましたことは、あなたは、この政府管掌健康保険組合の責任者ということで第一番にくるのは、赤字の問題が頭にくると思います。そういう立場からの意見ではないか、被保険者の意見というのは、浅井参考人が考えていらっしゃることと、いわゆる保険料を出す側に立ちますと、ちいと考え方が違うんではないかというような気がしますけれども、その点簡潔でけっこうでございますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
 それから、次の橋詰参考人でございますけれども、これは絶対反対という立場で、いまやまさに国会におきましては、ここ四、五日というのは最終段階にきておる。これは、先ほど新聞の記事の話もございましたように、実にそういう情勢にきておるわけなんです。自民党・政府のほうといたしましては、何とかひとつこれを通したいと、ところがわれわれのほうといたしましては、断固通さぬぞというようなかっこうの中で日一日と最終盤を迎えつつあることは言うまでもないことであります。まあしかし、絶対反対、絶対反対と言っておることだけでは医療制度というのは前進しないと思うんです。一体医療制度問題を、この政管健保には反対をし、どういうふうに今後進めていくべきか。抜本改正等も目の前にきておるのではないかというような意見もいろいろありましたが、これからどう進めるかということが、非常に国民にとりましても重大な問題だと思うんです。お気づきの点がありましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
 それから、その次が柴田参考人でございますけれども、先ほど全体としては、これは賛成だとこういうお話がございまして、今回の政府提案につきましては、補助率が五%、いままで二百二十五億のものが一定率になったということは前進であると、これはわれわれもそう感じておるわけなんです。この五%というのがやはり一つの問題の中心点だと思うんです。先ほど柴田参考人が言われましたのは、せめて一〇%程度にと、こういう話があったんですが、その一〇%という根拠は何を根拠に一〇%程度ということをお考えになっておるのか、その点お尋ねいたしたいと思います。
 それから、その次が久徳参考人でございますけれども、先ほどいろいろとお話を聞きまして、まあ大体忠告するところは、橋詰参考人とですね。大して中味としては、変わらぬじゃないかという感じを受けながら聞いておったんですけれども、いまの保険制度というのは、予防臨床医学に沿わないと、これは先ほどはっきり御説明にあったわけですけれども、これまた簡単でけっこうですから、具体的に一例をあげてお聞かせいただければ幸いだと思います。
 それから、次は岩瀬さんでございますけれども、これも先ほどいろいろお話がございました。できるならば、ひとつ国庫補助率をもうちっと上げてもらいたいと、こういうお話もございましたし、いま国民健康保険というのは総計しますと、四五%出ておるのでございます。組合管掌健康保険としては三五%、政府管掌健康保険がようやく政府が思い切ったというのはどれだけかというと、五%なんです。この辺にもやはり不均衡を感じられると、私は思うわけなんですが、先ほどもいろいろ話が出ておりましたように、これを二〇%に引き上げるということになればですね、これは別にほかのほうは一切なぶらずに現在よりは中味がよくなる。予算上計算いたしましても、そういうふうなかっこうになるわけでございますが、国民健康保険なり組合管掌健康保険と比較して、政府管掌健康保険が国庫補助五%ということが一つの問題だと思いますけれども、たとえばいま提案されておる五%そのものについて、あなたとしては、やむを得ぬわ、まあ政府が言うんだからというような気持ちなのかですね、五%のままでは絶対にこれは承服するわけにまいらぬ。こういうふうな気持ちなのか、その点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
 それから、最後の星野さんでございますけれども、これもやはり絶対反対という立場でいろいろ具体的な話を聞かせていただいて、非常に意を強くしておるようなわけでございますけれども、これからのこの医療制度の問題ですね。リハビリテーションの問題からいろいろ多くの問題を聞かせていただきましたけれども、これまた先ほどの話のように絶対反対、絶対反対だけでは日本の医療制度はよくなりませんので、今後どういうふうな方向でこれらの問題を進めていくべきかという点が、これは非常に大事な点だと思うのです。その点につきまして、お気づきの点がございましたら、簡潔でけっこうですので、お答えいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
#219
○橋本座長 では、浅井さんからお願いいたします。
#220
○浅井政彦君 私のことばの至らないところが多少誤解を受けておるようですが、決してむしょうに君たち上げたものをのんでくれというふうなわけじゃないのでございまして、収支を考えますと、そこまでは泣いてしんぼうしてもらうよりしようがないというふうに計算をしていただいたものでございまして、まあその程度ならば承服いたしましょうというのが私の考え方でございまして、単に経営面だけから見て、とにかく赤字が埋まりゃいいんだという、そういうふうな単純な考え方ではないので、その辺をお含みおき願いたいと思います。
#221
○橋本座長 橋詰洋三君。
#222
○橋詰洋三君 私は、私の陳述の中でこの法案に反対をいたしましたけれども、その反面将来の医療行政、医療保険行政がどうあるべきかについて意見を述べなかったという記憶がございません。したがって、御質問は同じことをもう一ぺん述べろということに帰着するかと思いますが、私は、その点については、憲法の二十五条の精神に沿って、医療保障とは何かという基本的理念を確立するということ、それは個人責任の原理を排除して、病気になったものが負担するという受益者負担の原理から脱却して、国の責任で十分な健康管理、健康保障ができるという法律がつくられるべきであるということを申し上げてきたと思うんです。
 結局緊急の赤字措置につきましては、これは立法化が必要なわけですから、私は単年度一千億円、二〇%、それから赤字を入れても百九十八億円ばかりあります。それらを定率的に国庫負担で当面負担し、それから緊急に赤字が出ない、これは収入の増大でなく、支出の減少という形でもいろいろな方策がありますが、そういう点をもくろんだ法案が提出されるべきだと考えております。その点につきましては、これは野党の中で社会党が十年計画を立てられまして、そして法案をおつくりになっているということを伺っておりますが、私はそういう運動が野党各党の協力を得て、そして国民の各層の要求を背景にあらためて国会に上程され、そして法案化される。その中では、各保険とも本人だけじゃなくて家族も十割を確定し、各保険料につきましても、労働者負担ではなくて事業主負担ということを考え、その他リハビリテーションの問題だとか、あるいは医者その他の医療労働者の教育関係についての抜本的制度も入ったそういう法案として取り扱われるべきである。あまりにもびほう的なその法案については、かえって悔いを千載に残すという結果になる。したがって当面は、反対をしなければならないという考え方です。
#223
○橋本座長 柴田さん。
#224
○柴田寅彦君 御質問がございましたが、私は、先ほど国庫補助が一〇%ぐらいが妥当ではないか、それはどういう理由だと、こういうふうな御質問でございましたが、実は、これは私大体二つぐらいの理由で申しておるわけでございます。
 現在国民健康保険については、四五%程度の補助をしておる、それから事業主の組合健保については、五〇%以上の負担をそれぞれやっているのです。いまの保険行政というものを健全化をはかっている。こういうふうな実態から見て、いま五%ということを非常に前進した私は姿勢だと思うんですが、そういった点から考えて、両者から考えて一〇%ぐらいまでこれは国でやっても、決して高い負担ではなかろうと、実はこういうふうに考えるわけでございます。
 これが一点でございまして、もう一つは、今度の改正案によりますと、大体財政の額としては、千三百三十六億円をこれで浮かすというようなことであるわけですが、標準報酬額で四百六億とか、あるいは保険料率が上がって二百九十八億円、特別保険料で二百四十三億円、国庫補助で三百八十九億円ということで、千三百三十六億円のあれを出す、それでまあ大体収支とんとんという数字が出ておるわけですが、千三百三十六億の中で大体いま一〇%にすると、大体七百億ぐらいの数字になるわけですから、大体半分はこの国庫補助で見れるんじゃないかというふうな考え方ですれば、多少負担が、一般の方の負担が少なくなるのではないかということも実は考えられるわけでございますし、いまここでとんとんの数字でやっても、またいろんな諸雑費の上昇や、まあ医療費の値上がりということも将来考えた場合を想定しましても、やはり五%ではちょっとそれが赤字になる可能性が十分考えられるということから、一〇%程度まで私は国家でこれを考えられてもいいじゃないかと、こういうふうな二つの点から、私、いま御意見を申し上げておるわけです。
#225
○橋本座長 次に、久徳先生。
#226
○久徳重盛君 予防にどう役立つかということだったですね、もともといまの医療の基本が、発病したら発病した患者が、初めて来院するということですが、そういうふうの形でしか診療ということができないし、出来高払いがその基礎になっているということに非常に大きな問題があると思う。たとえば外来にその患者が来ましても、その患者が来なくなることがあります。まだ直らないし、ひょっとするとひどくなるかもしれないという患者が来なくなってしまいます。われわれは非常に心配するわけですけれども、それから先へ行けないわけです。そうすると、何カ月かたって非常に悪くなってまた来る。今度はそういう失敗をしてはだめだよといっても、またちょっとよくなると来なくなってしまうということもあるわけです。そんなような場合にとにかくいまの形ですと、発病したら、あるいは患者の意思によって来るということであって、医者のほうがそのワクよりも先へ積極的に方法を講じていくというシステムがないわけです。ですから、たとえばかぜかなんかの場合に極端な言い方をすると、かぜが流行したら、今月はもうかるかもしれないというのは、これは本来の医じゃないわけです。昔の医というものは、やはり医者と患者のコミュニケーションということがあって、あ、かぜが流行しているよ、こういうふうに気をつけなさいということも一つの予防になるわけです。実際にはそういうものがなくって、システムだけでやっているものですから、ですから、一番のもとは、やはり医の基本ということは何かということであって、それがほんとうになされる形になりませんと、相手は生きものであり、人間だものですから、物のようにはいかぬわけです。そこをこの健康保険の精神の中へどうしても組み入れていただきたい。
#227
○橋本座長 次に、岩瀬さん。
#228
○岩瀬繁一君 岩瀬ですが、従来の何といいますか、健康保険に対する国庫補助が毎年毎年、幾ら幾らと、これは支出ということとは関係なしに一定額だ、こういう線から支出と見合ったその国庫補助を出しましょう、こういう考え方に変わったことは、これは健康保険が財政の面で言うならば、各年度ごとに支出と収入とを結びつけて、したがってまた健全化をはかり得る、こういう立場に変わってきておる、こういう面で定率化に変わったというのは、非常に大きな一歩前進、二歩前進ではないか、こういう意味で原案についてその御努力に非常に敬意を払う、賛成をいたしますと、こういうことであります。
 ただ先ほど柴田さんに対するお尋ね、またお答えにもありましたように、一歩前進ではあるけれども、さてその額ということになると、定率化になったその率が低ければ低いほどいただける額が、国庫補助額がそれだけ少ない額だということになりますので、被保険者の何といいますか、保険料負担の何といいますか、保険料負担分なり、また他の何なりとあわせ考え、また他の保険制度、たとえばいまもお話が出ましたように、国民健康保険に対する国庫補助の率が相当高率である、四五%という高率であるということから考えると、政管健保に対するだけは、一応一歩前進、いままでどうなるかわかったことではないというあれから一定率になったという点は、一歩の進歩である、こういう意味で大いにその御労苦を多とするわけでございますが、もう少し高率にしていただきたい。また健保財政の面からいえば、国庫からの収入も多額が期待できる、こういう形にしていただきたい。こういうわけでございます。
 五%ならどうなんだ。絶対反対かとこうおっしゃられると、これはまあものごとをオール・オア・ナッシングで答えろと、意見いかんとこう聞かれるわけで、ちょっとお答えがむずかしいわけでありますが、オール・オア・ナッシングというよりも、不満足ながら一歩前進と、こういうことであるならば、これをまず進めて、今後これをさらに高率にしていく。いま原案については、これは国会で御審議中でもございまするし、たいへん失礼なお願いになりますけれども、皆さん方にも私なり、ほかの方々の意見が定率になったのはいいけれども、もっと高率にすべきだと、こういう意見をお含みを願って御努力が願えれば、まことにありがたいと、お願いを申し上げるわけであります。
#229
○橋本座長 星野さん。
#230
○星野銀治君 私は、何回も申し上げていますけれども、大前提というものは、この医療というものについて公費負担というものが前提である、こういうことで申し上げてきたわけです。そこで先ほども言われたように、憲法二十五条の国民の権利と国家の責務といいますか、責務です。条文も控えてきたわけですが、「健康で文化的な最低限度の生活」これが国民の権利ですね。それから二項に「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」国の責任を明示してあるわけです。そうした場合ですね、いまもちょっと話が出ましたが、バランスというものが非常に保たれておらぬ、アンバランスである、補助に対しまして。こういうことから見まして、いま問題になっておるまず医療機関の整備の問題、お医者さんの養成、看護婦さんの養成の問題、もろもろの問題が多々出ておると思うんですが、ただそれを抜きにして若干の給付率を上げてやるというのは、私は抜本ではないと思うんですね。そういうことを私は言っているわけではなく、私たちの姿勢というものは、はっきり言ってもうそういった全体的な、医療制度全体的な問題が、公費保障制度というものをそこに流した場合に、いま現在でも完備しています、そういうところに生命保険でも何でも保険料を高く払って入っておるわけです。自分のためなら、やっぱり自分の命を一番大切にしなければいかぬわけですから、そういう意味合いで、ある程度の額が出てきても、全体としてできる方法、あらゆるというところまでいかぬとしても、見通しがつくならば大いに参画をして、また出そうじゃないか、これは基本的にあるわけです。ただしかし、いまの内容にちょっとストップをかけて、もう一、二年赤字補てんをどっかでちょっとやってくれと、私は簡単に申し上げたい。これは、理屈はこねればいくらでも理屈はこねられますから、実際問題私はそういう気持ちなんです。
 だから、一応赤字は赤字として、累積赤字が出ても、将来の方法というものが、ここ二、三年ではっきり立てられるということならば、薬価基準の問題から一切がっさいひっくるめて、ぜひお願いしたいという考え方ですね。とりわけこの点については、どうこうあって財政裏づけがどうなるということは、これは専門家でもないし、全部資料を持ってきたわけではございませんし、発言できませんが、ものの見方、考え方というのは、いま申し上げたとおりでございます。
#231
○橋本座長 古川雅司君。
#232
○古川(雅)委員 それぞれのお立場から貴重なる御意見をお述べをいただきまして、まことにありがとうございました。
 私も時間の関係上順次お伺いしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 最初に愛知県社会保険協会の浅井会長にお伺いしておきますけれども、まず第一に、保険料率の弾力調整条項でございますが、この点につきましては、わが党も非常に重視をしておりまして、国会対策上も弾力調整条項を撤回しない限り、他の改正部分についてもその修正の話し合いに乗らない、応じないという態度をとっているほどであります。お隣にいらっしゃいます橋詰先生から法律専門家の立場で、特にこれは憲法違反というようなおそれも十分にあるし、国会軽視ということも十分にあるし、国会軽視ということも十分に考えられるという、そういう御意見の陳述がございました。それにしても、なおかつ今後赤字を出さないという前提のために、この弾力条項の発動をお認めになるのか。それをまずお伺いいたしたいと思います。
 もう一つは、先ほど来お話がございました国庫補助の定率の五%ということでございますが、これは期せずして各野党が二〇%に引き上げるべきであるという基本的な考え方を持っております。また、いまの国会の審議の段階では、新聞で御承知のとおり一応妥協して一二%というぎりぎりの線を私たち示しているわけでございますが、浅井先生は、一歩前進であると一応評価なさって、それを少なくとも一〇%というふうにお示しをくださったわけでありますが、何としてもこの五%というのは、あまりにも根拠がないということを私たちは強く感じておりますので、社会保障制度審議会の近藤臨時会長代行が、私的な御意見として少なくとも一四%程度が妥当ではないかというような御意見も出ておりますが、その辺も踏まえてもう一度御見解、御意見を承っておきたいと思います。
 次に、中京大学の橋詰先生にお尋ねをいたします。先ほど来お話がありましたように、いわゆる医療保険制度の抜本改正が出たわけです。これは、いわゆる私たちは抜本改正案とは見ておりません。非常に不完全なものであるし、一昨日の大蔵委員会等との連合審査におきましても、出席いたしました大蔵大臣、それから斎藤厚生大臣から、確かにこれはもう一時的なものである。抜本はこれから繰り返していくんだというような意味の見解が表明されているほどでございます。したがいまして、これはあくまでも今回の財政対策法案を通すための小道具にすぎない。むしろこれまで政府が繰り返し抜本改正を出すと国民に公約しながら、それを踏みにじってきたわけです。ここに追い詰められて、やむなく出してきた非常にまやかしものである。むしろその内容を見ると、この健保改正案と合わせて患者、被保険者に対して二重の負担を迫っているものであるという私たち考え方を持っております。先生の御意見をひとつお伺いしたいと思います。
 あわせて七〇年代の医療、これは先ほど来の御意見にも多々ございましたとおり、健康管理体制の確立が最も大切であるといわれておりますけれども、少なくとも現在政府が提案をし、あるいは提案を準備しているこの健保法等の改正案、それから国会提出をいたしました抜本改正案、それからさらに準備をいたしております医療基本法、この三法によって七〇年代の医療、なかんずく健康管理体制の確立なんというのはできるのか。私たちは全くできないと考えております。専門家の立場から、また御意見をお伺いしたいと思います。
 次に、中部電力の柴田取締役にお伺いいたします。同じく保険料の弾力調整条項についてでございます。たてまえとして賛成をなさいました。なおかつ条件としてその運用を慎重にという御意見を付された。私は、この運用に非常に疑問があるわけです。
 まず第一に、審議会答申では、今回の健保法改正を行なう以上、少なくとも昭和四十七年度に赤字の発生ということは予測されないのである。したがって、何も今回の法改正にその弾力条項を入れなくても、抜本改正が確立したあとで検討してもいいではないかという、そういう審議会が答申を出しております。その答申を無視して、今回この保険料率の弾力条項というものを盛り込んだわけでありまして、このように頭から審議会の答申を無視している当局の立場でですね、これを社会保険庁長官が、社会保険審議会の意見を聞いて、その上で運用するんだから問題はないんだというような言い分では通らないんです。この間の衆議院の委員会の中で、審議の中でも、もし社会保険審議会が、ノーと言ったらどうするんだ、半分以上が反対したらどうするんだ、少数であろうと反対意見が出た場合はどうするんだと。厚生大臣は、そのときにはおそらくその弾力条項の発動はできないと思うと言っておりました。現在の社会保険審議会のあり方等から考えて、それがはっきり約束されたとすれば、その弾力条項は無意味であるし、また無意味になってくるわけです。そういう意味で弾力調整条項については、疑問が多いわけですが、先生の御意見を改めて伺わせていただきたいと思います。
 久徳先生からは、非常に医療と健康保険制度との関係について端的な矛盾をあげて、問題点を御指摘をいただいたわけでございますが、特に予防臨床医学については、今後の医療を考える上で非常に重要な問題になるし、これが現在の健康保険体制の中では、それに対する対策を講ずることができないという御指摘でございました。実際に医療に従事していらっしゃるお立場からお伺いしておきたいことは、一つは、いわゆる患者負担の公費負担というこの考え方について、先生の御意見、また特に厚生省当局に、特に斎藤厚生大臣は、最近非常に高額医療の――高額医療については、それは公費で負担していく方法をとるんだということを口先で言っておりますけれども、これに対して特に小児ガンとか、先生は小児ガンの専門でいらっしゃるけれども、先ほどお話がございましたとおり、被扶養者のこうした高額医療、あるいは長期慢性医療については、非常にその悲惨な実態をお上げになって問題点をお示しくださったわけでございますが、その辺についての御意見を聞かせていただきたいと思います。
 それから、次に信用保証協会の岩瀬理事長にお尋ねをいたしますが、原則的には賛成のお立場でございますけれども、では、政管健保の赤字の要因がいろいろと先ほどから御意見がございましたけれども、中小企業という特殊な一つの条件を政管健保の中にかかえ込んでいるわけです。その賃金体系、あるいは労働条件、その労働者の置かれた職場環境の問題、そうしたおくれに起因するいわゆる疾病増、あるいは当然公費で負担をしなければならない医療、こういったものが年々拡大してくる。そういった国庫補助の増加というのは当然だと思います。理事長もその点については、五%では低過ぎるんであって、一〇%以上にすべきであるというような御意見でございましたけれども、ただいまも後藤委員からお尋ねを申し上げましたが、そういう前提に立つならばですね、今回のこの健保法等の改正案が患者負担を非常に迫っているという大前提でありますから、原則的に、基本的に賛成をなさるのは、何かちぐはぐな感じを持たれるんじゃないか、大幅な国庫補助率、私たちの主張している二〇%まではいかなくても、理事長のおっしゃっている一〇%、あるいはそれ以上の一四%、一五%というものが示されて、初めてこの法案に対する基本的な賛成の姿勢というものがお述べいただけるんではないかと、私は、そのように考えるんであります、その点をひとつ御説明をいただきたいと思います。
 最後に、愛知同盟の星野副書記長にお尋ねをいたします。いろいろ問題点をお示しいただきましたが、七〇年代の今後の医療につきましては、いわゆる保険主義から保障主義への方向を示していくのではないかという意見が非常に高まっているのではないかと思います。
 再び抜本改正の問題に触れてまいりますけれども、副書記長のお立場から現在までのそうした抜本改正をめぐる経緯を通してごらんになって、一体抜本改正が可能であるかどうかという非常に極論になってしまうかもしれませんが、これについてのお考え方をお示しいただきたいと思います。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
#233
○橋本座長 浅井さんから順次お願いいたします。
#234
○浅井政彦君 浅井でございます。
 弾力調整の条項というのは、私は、法律、健保のこともよくわかりませんが、常識的に考えまして、一応この際上限というか、上の押えをきめて、その範囲内でやってよろしいというのが弾力調整でありまして、そう解釈しております。そういたしますというと、一応最高限度を国会においてやっていただいて、法律的手続、健康保険の手続が済んでおるものの範囲内でやるんだ。どこまでも入っていくということはなく、そういうふうなことから、私はこれはよろしいんじゃないかというふうに理解をしておるわけでございます。
 ただ問い詰められて引き下がるわけじゃないんでございますが、千分の八十というものが、はたして妥当かどうかということになれば、これは私は、数字的な根拠を持っておりません。しかしながら、いまの弾力条項ということのお示しになった条件のもとにおいては、私は賛成をいたします。こういうわけでございます。
 それから、なお国庫補助の五%でございますが、一〇%ということは、ちょっと申したんでございますが、まあお国の財政もあることですし、そうむちゃに望んでもだめなんで、多ければ多いのがそれはけっこうでございまして、どうしてもいけなければ七%に妥協ということも考えておりますが、そういう程度の意味でございますので、そうお考え願いたいと思います。
#235
○橋本座長 どうぞ、橋詰さん。
#236
○橋詰洋三君 私が御質問賜わった二点につきましては、古川委員の御発言と全く私は同じ見解を持っております。政府は、四十年来数度にわたって保険料率を値上げするときに、制度の抜本的改革に手をつけるんだと国民に公約してまいりました。しかしながら、今回一昨日衆議院に上程されました法案を熟読いたしましても、やはりこれは財政措置を中心とした抜本的改革とはほど遠いびほう的な政策にすぎなかったというふうに思うわけでございます。一方では、保険料の大幅な値上げを強行し、その他の公共料金の値上げを放任、もしくは助成しながら、他方ではこういうような国民の負担の増大にまっ先に取り組むという姿勢そのものが問題であるし、しかもこういった姿勢そのものは、七〇年代に入って特に出てきたんではなくて、六〇年代の政府の政策がそのまま続行されているというところに特徴性があるように思います。そのことは、私に質問はいただきませんけれども、弾力条項の問題ともからんでまいります。今回わずか〇・三%の、わずかとはいえません。〇・三%の値上げにつきまして、かように国民から非難、反論が出ていますので、〇・七%に及ぶ大幅な引き上げの権限を行政官庁に与えてしまうということは、そのことの中に法律論を離れて、すでに問題を国民に転嫁していって、これまでの体制を維持していこうという政府の姿勢が明らかになっています。それからそのことに関連して言いますと、この弾力条項については、法律家として非常に憤激いたしますし、それからどちらの政党がたいへん御熱心に扱っていらっしゃるかも存じております。法律家として敬意を評したいと思います。
 それから、二番目の七〇年代医療の問題につきましては、これももうすでにたくさんの方から御発言がございましたように、現在の医療そのものに対する国民の信頼感が失われているという実態がありますし、そのことは、端的に言って治療中心の製薬企業のみ利益を与える医療体制になっているわけです。そして今回出てきました二つの法案をどのように読みましても、そこのところを改革しようという線がほとんど出ていないということが特徴的であろうと思います。したがいまして、二番目の御質問に端的にお答えいたしますと、今日出ております政府提案の二法案によっては、われわれ国民が熱望しております七〇年代の医療のあり方が現実化される可能性は、全くないんだというふうに思っております。
#237
○橋本座長 どうぞ、柴田さん。
#238
○柴田寅彦君 いまの御質問でございますが、弾力調整の問題について先生から御質問がありましたが、この四十七年度は、黒字だから別に考える必要はないんじゃないか、あるいは抜本改正のときにこれをやったらいいんじゃないかというふうな御質問だと思うんです。私、陳述の中で申し上げましたように、赤字だからすぐやるというふうには私は申し上げておらないんです。赤字の原因を十分究明をして対策を講じて、どうしてもならないといった場合にやるべきだということを申し上げたつもりでございます。そういったことです。御理解願いたいと思います。それで、赤字対策のそのつど、まあ国庫補助なり、調達をスムーズに国会で審議していただいて、上げていただけるならばけっこうです。いままでの赤字にしても、四十一年に料率を上げてから六、七年になりますけれども、その間赤字になっても、ちょっとも国会では取り上げてやっていただけなかったということに問題があるわけです。そういうことから非常に国会はお忙しいので、先生方忙しいのでなかなか取り上げていただけないというそういうような事情もございまして、こういう条項を盛っていただいて、どうしてもいろんな検討をしたけれどもやむを得ないという場合には、いま申し上げたように弾力条項を設けておくことは、これは健全財政をやることに必要であるというふうに考えておるわけでございます。早急に国会で審議してやっていただけるならば、何も申し上げる必要はないわけです。いままでの経過から見て、先生方お忙しいので、なかなかできないんじゃないかということを心配して申し上げておるわけです。それから、まあ弾力条項でも無制限にこれは許しておるわけではございませんで、大体千分の八十まででございまして、その間の事情もありますので、決して私は、そういった意味から無制限にやるという意味ではございませんので、そういう点あわせて御理解をいただきたいと思います。
#239
○橋本座長 久徳先生。
#240
○久徳重盛君 医療費が非常に高額になるというケースがそんなにめずらしくない、まあきわめてしばしばあると考えていいと思います。ですけれども、それを考えてみますと、非常に医療費がかさむような疾患というのは以前と違いまして、いわゆる伝染性疾患とかそういうのが多かった時代とは違いまして、医療がどちらかといえば比重が多くかかっているのは、個人のレベルの責任で発病した疾患であるのが非常に多いわけなんです。それは、一つの社会の近代化のあの状況と一緒だと思うんですけれども、そういうことから言いますと、そういう重症化した、あるいは非常に慢性であるそういう疾患の場合を考えてみると、社会環境によって引き起こされている病気というのは、とても考えられるわけです。それはたとえばガンなんかにおきましても、公害ですとか、スモンですとか、いろんな問題が出ておりますけれども、たとえば私がやっております気管支ぜんそくにつきましても、これははっきり文明が進むと多くなる、死亡率も多くなるということも出ているわけなんです。そんなような場合に保険の本人ですと、これはまあ比較的治療ということもできるんですけれども、公費の全額負担がないような被扶養者、私小児科なんですけれども、そうしますと、たとえば入院しておりましても退院する理由というのは、一つは直ったから退院、これはまあわれわれも喜べるわけですけれども、毎月毎月見ておりますと、もうあと何カ月しか家計が続かないという人が幾らでもあるわけです。そうしますと、そこでもう家計が続かないから退院するという申し出がきわめて多いわけです。その場合にわれわれ医師としては、何もなすすべがない。もうそうすれば、家へ連れて帰って殺すんだということになるわけなんですけれども、そういう場合にもわれわれは、切歯扼腕するだけしかないわけなんです。実際は、もうぜんそくで東京から来ている患者さんがあるんですけれども、発作がなかなか直らない。病院にいると比較的いいんですけれども、ぜんそくというのは皆さん御存じだと思いますけれども、あるところにいるといいんだけれども、帰るとひどくなるということが幾らでもあるわけです。どうしても家に連れて帰りたい。だけれども家計から言うと一月、二月たつと家庭の生活のほうも預金もみんな引きおろしてしまった。そうしますと、そこで家へ帰すということは、すぐでないにしたって、おそらく一年か、二年の間には死ぬであろうということをわれわれは覚悟をして、それではしかたがないから帰りなさいということを言わなければならない。そういうようなことが、要するに被扶養者に非常にしわ寄せになっている。ですから、まあ比較的家庭の経済からいって苦痛にならない、あるいは相応のものを、相応の料金を払って病気を直すというレベルまでの者はいいんですけれども、家庭まで破壊してしまうという非常に大きな要素が含まれているものですから、そういうような疾患だけは、これはぜひ公費で負担していただきたい。そういう疾患というのは、これはもうお調べになっていただけば、きわめて簡単にわかるわけですので、最低、最悪、悲惨と言えるような状態ですね、そういうものだけは、医療ではなくて人道の問題になるのではないかというような気がします。われわれ第一線でやっておってもするわけです。
#241
○橋本座長 どうぞ、岩瀬さん。
#242
○岩瀬繁一君 お尋ねは、何といいますか、被保険者の負担がふえるんじゃないか、原案によるなら、たとえば千分の七十を七十三にするとか、いや賞与に特別保険料をつけるとか、端的に言うて負担増になるのが原案の内容であって、中小企業等に働く被保険者が、おしなべて言えば多いであろうと予想される政管健保に対して、その負担の内容を持つ原案に賛成はちいとおかしいではないかという直截簡明なお尋ねのように承知いたしたわけで、どうもなかなかお答えがしにくいことだと実は思います。
 ただ、私はこう思うんです。これは、政管健保のみに限らずどのような団体であろうと、あるいは個人であろうと、こと財政、お金のやりくりを正常な形に持っていくというそのことのみに限定をして議論をするならば、収入と支出、これを常にバランスを保たねばいけない。収入がふえればそれだけ支出もふえることができるということになるであろうし、逆に支出がふえた場合には収入を増さないとそれについていけない、こういうふうになります。もし、支出が言うなれば、まあいわばむだ使いであると、改善の余地ありと、こういうふうに認められるような支出である場合には、これは当然支出をそれだけ削減する、こういうことを考えなければならぬことは、まあ当然でもありますが、しかしその逆に支出がやむを得ぬという場合には、それをまかなうに足るだけの収入を何とか考えなければならぬということになること、これは保険集団のみに限らず、ことお金のやり取りに関して議論するならば、それ以外に方法はないと思います。
 再々ほかの先生方からも議論がございましたし、あれいたしましたが、来たるべき健康保険制度の抜本的改正のこれは大きな眼目であろうと思います。支出をできるだけ、たとえば医療給付にいたしましても、現在の医学の進歩した現状、あるいは薬を使うにいたしましても、その方面の学問の進歩した状況、疾病になる前の予防医学の点等をも含め、あるいは被保険者の必要な厚生的な活動をするということに対する給付なり、全部を含めて、これをなるほどそういう状態としては支出はやむを得ないし、また望ましい支出だ、こういう形になると同時に、それに見合う収入をはかっていくということが、将来における抜本改正のいわば眼目の一番大きい、あるいは極言すれば、それ以外にはないというてもいいあれではないかと思います。
 現状にこの目を限定をして考えますと、どうも赤字、赤字で困りますという場合には、収入をはかっていくということがやむを得ぬ状況だという立場に立つならば、その収入の一般的である保険料がふえます、こういうことはやむを得ぬことだと思います。
 しかし、また政府管掌の健康保険、これは政府がもちろん責任者でもあるわけであります。その責任者がほかの健康保険に対しては相当高率の補助金を出しております。政府管掌、自分が責任者である政府管掌の健康保険には、どうも国庫補助率がちびっておる、どうもわが子かわいいで、ほかのあれよりもずっと高率的な、比較的逆に高率的なあれを与えておるということでは、これは方々からいろんな議論が出て、それにしないということになろうかと思いますが、逆にわが子には無理な何といいますか、苦労をさせるにしかずというような、悪く言えば国庫補助率が少な過ぎるという点は、定率にしたということは、私は、一歩も二歩も前進したと思います。大賛成であります。ぜひこれを実現したいと思います。
 もう一つ、収入を増大をするということは、逆に言えば、支出と合わせて、その支出に備えるわけですから、国庫補助収入がそれだけふえれば、それだけ他の収入が削減されてしかるべきだと思いまするし、弾力条項等がもし実現するならば、国庫補助率がどんどん上がって一〇%になり、一五%になるということであるならば、保険料収入のほうも、これは弾力条項の好ましい適用のあり方として千分の七十三を七十二にするということもできるわけです。しかしながら、全部赤字が出たから国庫におぶさってしまうというのも、これは責任ある財政の運営とは言えないのではないか、こういう見地から私は、やっぱり支出というものを一応前提にして考える場合に、収入の増大をはかる、その収入の一端をになう保険料負担を若干そのときの現状に合わせて、納得できる範囲でこれが増大するということは、やむを得ないこととして承服せざるを得ぬのではないか、こういうどうも、ちいとつらい御返事になるかもしれませんが、こういう考え方です。
#243
○橋本座長 星野さん。
#244
○星野銀治君 先ほどの私の発言で抜本改正、これはできやせんだろうと、発言をそういうふうにちょっと聞いたんですが、先生そのようにおっしゃられたわけですか。
#245
○古川(雅)委員 できますかというような問いかけになったわけです。
#246
○星野銀治君 先生がお尋ねする際に、できないんだというような発言を私聞いてしまったものですから。
#247
○古川(雅)委員 ほんとうの意味の抜本改正が……。
#248
○星野銀治君 できないんだということで、できますかという質問になりますと、私も答えにくいんですが、実際問題やりにくいと思うのです。各団体全部セクトがあるわけです、はっきり言って。まずお医者さん、医師会なら医師会、これは全部ございます。それから、それぞれの健保の団体、被保険者ですね、おまけに付属する薬業界、全部それぞれの考え方を持っておるわけですから。ただ問題は、国の責任において、やはりこれはめんどうを見るんだということが基本的に流れておるんですから、やる考え方、やるんだということで取り組んでいただかなければ私たちが幾ら何と言ったってできないと思うんです。私は、やればできると思うんです、はっきり言って。
 これは議事録にとどめていただかなくてもけっこうなんですが、よく私たち労働組合の安全運転の関係で県の基準局の方とお話しするわけですが、もっと予算をくれたらなあと、これは中小企業をさしているわけです。その対策はゼロです、安全運転の対策は。けがをする、やはり労災でやられたら、また監督署のほうからやられるということで、結局これは堂々めぐりで健康保険でしょう。結局それで食われているわけです。実際問題として、国民の健康、命というものをどのように考えるかということで予防の大切なことは、先ほどから何回も言っているわけです。予防の問題から最後の病後の職場復帰、こういうところまでの考え方、これは幾らでも皆さんお持ちのはずですよ。各政党、労働組合も全部持っている。それを総合的に突き合わせて自分たちのセクトだけ守るのではなしに、ほんとうに国として健康管理をどうするんだということを強く打ち出して協力を求めるならば、話はできると思いますよ。はっきり言って、去年あたりだいぶ騒ぎがありました、忙しいさ中にあったんですよ。まああえて言いませんけれども。そういったものを中心になられる方は、やるんだというつもりでそれぞれやっぱり政策を掲げられておるわけですから、そのつもりでひとつお願いしたいと思うんです。
 私は、ほんとうに文句を言ったような形になりましたけれども、やればできるということです。どの政党も全部持っているその中の最大公約数を求めてもらいたいと思います。
#249
○橋本座長 あなたの時間がだいぶ過ぎておりますから。
#250
○古川(雅)委員 できないという前提ではなくて、今回のやはりこの改正案の出し方を見ても非常にむずかしいという意味合いで私はお伺いしたと思います。あんな政府の姿勢でほんとうの抜本改正ができるとお考えでしょうかという御質問だったんですが。
#251
○橋本座長 西田委員。
#252
○西田委員 本日の陳述人の方々はたいへんお忙しい中をありがとうございました。
 時間の関係等もございますので、簡単にお伺いをいたしたいと思いますが、私は、やはりここにいらっしゃる三者、皆さん方と全く意を同じくする立場でございますが、やはり国民の健康というものは国の責任において、これを行なうというような基本姿勢でなければならない。したがって、健康保険の制度というものは、それを補完する程度のものでいいのではないか。したがって、公平な負担、平等な給付というのが原則的に行なわれなければならぬというふうに考えておりますが、そういった点から今回の改正案は大いに審議がおくれておりますし、白熱化しておるというような状況にあるわけでございます。ここで皆さんの御意見を承りながら、御意見を十分しんしゃくしながら、そういった御意見を今後の審議の参考にいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
 そこで、意見を同じくする方に意見をお伺いしても時間の関係もございますので、四点にわたってお伺いしたいと思いますが、まず浅井さんにお伺いしたいのは、よく言われることですが、組合健保と政管健保では、もちろんそのよって立つ環境の相違があるということ、あるいは組織の構成の違い等もありますけれども、企業努力が不足しておるのではないかということがよく言われているわけです。その企業努力が何かといえば、保険管理についてそれを十分やはり厳正に管理するという努力に欠けておるというのも星野陳述人のほうから、とにかく労災にかかるべきものを健保に回しておる点があるのではないかという御指摘がありました。こういう点は、私はやはり注意すべきことだと思うのですけれども、何といいましても、政管健保を構成されるのは中小企業ということになりますので、中小企業の場合は、何かとむずかしい点もたくさんありますし、また人数等も少ないので集団で健康管理することも、きわめて困難だろうと思うんですけれども、そういった面について一体どういう努力を今日までなされてきたのか。また、できないと目されるような部分について県等からどういう指導がなされてきたか。そして、これからどういうふうに指導していくかという三つについて、ひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。
 それから次に、柴田陳述人でありますが、先ほどからいろいろと伺っています中で、やはり被用者、同じように産業に従事してきて、同じ経済に貢献していきながら、その所属する職場によって負担が公平でないし、給付も不平等であるしというような形になっておるわけですが、せめて被用者だけでも保険を一本化して、財政の立て直しもさることながら、もっと平等な給付、あるいは公平な負担をするというような説が強くなってきておるわけなんですが、こういう点について、全保連に御加盟であろうと思いますけれども、そうした大手の立場から、一体一本化というものについてどうお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
 なお、先ほど弾力条項のことについて、古川委員の御質問に対して、国会で審議してくれればと、こういうことでありますけれども、それは私も国会議員の一人として多少お答えをしておかなければなりませんが、私も国会議員の経験は短いんですけれども、毎年一回必ず健康保険の改正が出てくるわけであります。しかし、それは政府の姿勢がただ被保険者に負担をさせるということが重点にされてくるのです。しかし、各委員の強い反対があって成立がしないということであって、保険料率等につきましても十分審議をする機会を持っておるわけでありますから、そういう点は誤解のないようにしていただきたいと思うわけであります。だから弾力条項ができればいいんだというふうに解釈されると、私どもの国会審議がきわめて怠慢であるというふうにとられましても困りますので、その点一言苦言を呈させていただきます。
 次に、久徳陳述人にお伺いしたいわけでございますが、まあ現行の健康保険制度そのものが、むしろ国民の健康を害しておるという、極言すればそういうふうにおっしゃいましたが、私もそれによく似た考え方を持っておるわけですけれども、だからといって現在の保険制度をいかにしていけばいいかといえば、私は、そうではないと思うんです。やはり、そのためには国の施策もさることながら、現在行なわれておる診療報酬体系そのものも、もっと先生のおっしゃるような方向へ転換していく必要があるんじゃないかというふうに考えますが、その診療報酬体系をかりに変更いたしますれば、具体的にどういう方向にいくのが望ましいか。そうした点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、岩瀬氏にお伺いをいたしますが、標準報酬月額が今日の賃金の実勢に合わない。したがって、これは実勢に合わすべきだという御意見でありましたが、十万四千円が最高であるところを二十万円を最高に持っていくところに、はたしていいかどうかという問題があるわけでありますが、特に今回は賞与等についても特別の保険料を取るという形になってきたわけでありますが、もともと戦後にできましたこの社会保険、特に労働省の管轄いたしますものには、総収入制度というものがとられておるわけです。しかし、健康保険だけは、こういう形で長年やってきたものですから、いま急に変える必要がないというようなことから、報酬月額についても制度の据え置きが続けられてきた。特に三千円という最下限につきましては、これは事業主のきつい要求があって変更ができなかった家内労働者等の関係もあったようでありますけれども、こういった家内労働者のそういう情勢もあったようであります。したがって、下限を上げなければ上限もということで据え置きになってきた。そこで議論をしようと考えておるわけではありませんが、標準報酬月額の最高を、それでは一体どれくらいに押えることを妥当とお考えになっておるのか。あなたの立場でひとつお答えを願いたい。
 以上、四氏の方に御質問をいたしたいと思います。
#253
○橋本座長 それでは、浅井さんから順にどうぞ。
#254
○浅井政彦君 ただいまのお話は、結局集約すると一つになりまして、中小企業という企業体の本質的な問題でございまして、御承知のようにどこでも言われておるんですけれども、中小企業というものは非常に恵まれない状況で人を採用しておって、条件の悪い人をまあ押しつけられるというと語弊がありますが、どうしても採用をせざるを得ないような状況に置かれております。若い者においても優秀な者は大企業にとられてしまう、その残りのかすとか、それから停年過ぎた者がこちらに回ってくる。それから婦人にしても妙齢のものはなかなか来てくれませんで、やはりおばあさんということになりまして、自然に保健上の状況の悪い者だけが集まってきておる。したがいまして、努力とおっしゃいましたが、努力はしております。御想像以上に努力をしております。県からの指導もそのつど、事故があったときでございますが、よくしていただいておりますけれども、なおかつ努力に報いられるだけの効果が上がらないという点は遺憾と存じます。遺憾と存じますが、ただいま申し上げたような状況でありますから、残念ながらできないということで尽きると思うんです。
#255
○西田委員 それで、してほしいところは、どこでしょうか。
#256
○浅井政彦君 したがいまして、やっぱりそうふうな恵まれない状況においては、お金をよけいいただいたほうがいいという結論になるわけでございます。
#257
○橋本座長 次いで、柴田さん。
#258
○柴田寅彦君 いまの御質問は、職場により不公平があるので一本化にしたらどうか、要約すればそういう御質問でございますね、これは、あなたの御質問は、抜本改正に関する御質問だと思うんです。きょうの公聴会というものは、抜本改正に対する公聴会ではないので、これはあまり討論、そういった問題で言っていいのかどうか、実はあれでございます。どうなんでしょうか。
 私は、実は改正の問題についての御意見の陳述にきたわけですが、抜本改正については、別の私、意見を持っております。ただし、言えることは、いまいろいろ先ほど申し上げたようなことでございますが、やはりその医療、政管保険は、政府がしております。健保は、事業主がやっておるので、そこの指導性が問題になる。それで企業側は非常に自分の企業の中を――自分に関することだから非常に気を使ってやっておるわけです。そういう面から健康は非常によくなっておる。こういうことから健保財政がうまくいっております。そういう点から政府管掌の組合については、政府自身がもう少し力を入れてレベルアップした上で、その問題を同時に考えるならばいいんだけれども、そういった点、私どもは簡単に申し上げれば、そういうことです。
 そのほかには、診療報酬制度の改定の問題であるとか、支払い制度の問題とか、いろいろあるわけですが、要約すればそういうことが言えるわけです。
 以上です。
#259
○橋本座長 久徳先生。
#260
○久徳重盛君 健康保険制度、先ほどお話ししましたのは、もちろんいまの健康保険制度で一応の効果もあるし、国民の健康というのは、ある一定の線で保たれておる。ただし、あるシステムにしても時代が変わってきておると、それはそれなりに有害な面が出ているという点と、もう一つは、新しい時代に対応しきれないということに問題があるので、それじゃどうしたらいいかということになりますと、これはやはり医療のシステムの問題が一番基本でなければならないと思います。
 それは、私は再三お話ししていますように、医というものの基本が、ともかく患者を楽に早く直すことに医者が喜びを感ずるようなシステムでなければいけないと存じますが、それじゃ具体的にどういうふうにしたらいいかということになりますと、これも全く私個人の考えなんですけれども、システムとしましては、まず第一線のいまの医療のシステムというのは、決してシステムに合っていないわけです。開業している医者も病院も、見る患者の種類というのは同じであって、そこには何らかの一つのシステムもない。患者の意思だけでかかっているわけですけれども、それはもうシステムそのものが、いわば前時代的なものである。まず第一線の医師ということを考えなければいけないと思います。それで、実はこのごろ住民に非常にやかましく言われておりますように、ホームドクターという立場、治療も治療ですけれども、やはり予防が第一にならなければいけない、ホームドクターという立場をはっきりさせるためには、それじゃ一体予防にどういう形で給付したらいいかという形が出てきますけれども、これはきわめて極端な言い方をいたしますと、たとえばある医師に患者さんが登録する形もいいと思うのです。登録する形にしまして、その受け持ちによってある程度の給付がされる。そうすればその受け持ちのグループから、なるべく患者さんを出さないようにすることが、その医師の第一のつとめになってくると思います。患者さんが多く出れば出るほどその医師は負担がかかります。そこで出てくる負担について、技術は別ですけれども、たとえば薬品を投与するとか、注射をするとか、そういうことに対する裏づけというのは、むしろ軽くしていく、むしろ発病しないようにすることに給付するということから言いましたら、極端な言い方をすれば、登録の人数に応じて給付するというような形がいいのです。そういう第一線の医師は、第一線の医師としての機能には限界がありますから、当然そこではそれよりもレベルの高いシステムが必要だと思います。それがいまの中心になっている病院、そういうことからいいますと、いまの病院と診療所に――診療所にもベッドがあり、病院にもベッドがありという全く中途半ばなシステム、そういうことも問題だと思いますが、そういうことで中心になるような病院をつくるとしましたら、これはもう入院であるとか、あるいは高度な検査技術、それを中心にする病院ということで、外来ということは、軽く考えなければいけない。特殊な外来だけは限定して見るにしましても、やはり外来ということよりは、入院、あるいは高度な検査をする。それと、いわゆるジェネラルな一般の必要性ということではなくて、もう一つ必要なことは、特殊な疾患のセンターをどういう形でそこへ組み入れていくか、これだけでは、よほど力を入れませんと、結局会計面での損になって出てくると思います。専門家がいて特殊な疾患のセンターがありますと、これはもう医療費から見ましても非常に効率的に利用することができると思いますから、それをどういう形でそういう中央的な意味での病院のシステムとのバランスをとるか、それは中へ入れてもいいしし、別の存在であってもいいと思います。そういうきわめて特殊なセンターというものが、またいまの考え方で少し問題ではないかと思いますが、何でもいいからセンターという名前をつければそれでいいんではなくって、ほんとうに機能するセンターというのは、これはたとえばアメリカでも気管支ぜんそくのほんとうの中心というのは、二つか三つしかないわけです。二カ月も三カ月も入院するんですから、北海道の方が東京まで来て入院してもいいわけなんです。そういういわゆる高度なセンターをつくっていただきたいということです。
 それともう一つ注意しなければいけませんのは、いわゆる地方、医療の過疎という地方の問題です。これは、いまお話ししましたのが、大体中央の要するに医療をどうするかということですけれども、地方の低医療地域といいますか、あるいは無医村地域の医療をどうするか、これは実は現行のいき方ですと、まことに自然発生的で、赴任する希望のある者があれば赴任する、あるいは開業するということになりましても非常に条件が悪い。たとえば地方の病院ですと、中央の病院に比べますと、二倍、三倍の給料でなければ行かないということですから、むしろシステムをしっかりしまして、中央と直結できるような、どちらかといえば緊急医療ですね、緊急医療のシステムを地方医療の中へ取り入れる。あるレベルまではその地域でするにしても、あるレベル以上になれば、その緊急医療のシステムが発動できる。極端な言い方をすれば、愛知県に一台ヘリコプターがあってですね、これはもう地方ではできないということになれば、飛んで行って市内の病院に入院させる形にすれば、いなかに大きな病院をつくる必要はそんなにないんじゃないか、そういうようなシステムをはっきりしていただきますと、システムをはっきりすることによって、私は、健康保険の財政というのは、相当浮いてくるのじゃないか、そういうふうなことは、確かにむずかしいように見えますけれども、医の本分が何かということにのっとって対策を立てていきますと、いろいろむずかしい問題はあると思いますけれども、実際には、理論的にはそうむずかしいことはないですから、それをじょうずに解決していただくのは政治だと思いますし、そういう意味で何が理想であるかということを、いつも考えてやっていただきたいと思います。
#261
○橋本座長 次に、岩瀬さん。
#262
○岩瀬繁一君 標準報酬額の最高基準額を幾らにするのがいいかという端的なお尋ねのようでございますが、私先ほど御意見を申し上げましたのは、六年前に十万四千円を最高報酬額に設定したのは、当時それに概当する人が全体のうちの二%弱、百人のうち二人ぐらいしか、十万四千円はもらっていなかった、こういう意味で十万四千円にきめたものではないかと思うわけです。その後六年間もたって、だんだん賃金上昇の結果、去年の十月でありますか、十万四千円の最高額をこえる方がだいぶふえて約一〇%、百人のうち二人だけであったのが五倍の十人程度になりました。してみれば支出に見合う収入を確保する意味で、あるいはまた保険集団の中における構成員の負担を、できればなるべく公平にすることが望ましいという意味で最高級額を上げるという案が出てきたのではないかと思うのです。ただ私は、先ほどちょっとお話がありましたように、たとえば労働省でやっている失業保険であるとか、あるいは厚生省自身での年金保険とか、これは各被保険者が負担をした保険料と将来受けるであろう保険給付が見合うわけですね。失業したら、だれでも幾ら保険料を負担しようと失業手当は同額だ、あるいは年金も、どんな保険料を負担しようと年金保険となったらみんな一率、同額だと、そういうわけでもないものですから、これは保険料算定の基礎に、できるならば現在の実収入の額をそのまま持っていくことも何というか、大いに理由が立つと思うんです。それに比べれば健康保険は、若干性格が違うんであって、幾ら保険料を負担する公平があるにせよ、いざという場合に受ける保険給付は、多くの場合大部分が医療給付であって、同じ給付を受けるわけです。言うならば、健康保険に基づく保険料の負担というものには、ある程度何というか、社会政策的な便宜のもとにきめられていくのではないかと思うんです。そういう意味で十万四千円が、現在では百人のうち十人ぐらいだとして、一ぺんに二十万円までいったらですね、おそらくそれに該当する人はりょうりょうたるものですね。おそらく百人のうち一人もないのではなかろうか。遠い将来のことを考えて、あらかじめやっておくんだということなら、これは別として、私は一挙に二十万円まであれしてしまうというのは、ある意味では鬼面人を驚かせて相手がびっくりして腰を抜かすような案ではないかとさえ感ずるし、全く理屈抜きの感じとして、その中をとるのが常識的ではないか、ある意味ではですね。前に十万四千円をきめたときには、約二%が該当しました。今度それじゃ二%の頭打ちされる方々の収入を平均化しましたら、どれぐらいになるだろう、十三万円になるだろうか、十五万円になるだろうか。それを、資料をもとに算定するというのも一つの方法だろうと思いますが、まあそういう資料を持ち合わせておるわけではございませんし、まあ全くぽっと受けた感じとして現在の十万四千円、十万円でひっかかると――ひっかかるというと語弊がありますが、該当するのが十人に一人ということであるなら、もう少しこの標準報酬額を高めて、そしてこの前は二%だったという理屈を言いはじめると、これから計算をしなければなりませんが、まあせいぜいその半ば十三万円か、十四万円か、十五万円というとこら辺じゃなかろうかなあという、こういう感じがしたもんだから、先ほどその中をとったらいいんじゃないかという御意見を申し述べたわけでございます。
#263
○橋本座長 これにて、質疑は終わりました。
 以上で会議を終わります。
 最後に、一言お礼を申し上げます。本日意見の陳述をいただきました方々におかれましては、それぞれのお立場から、たいへん貴重な御意見をお述べをいただきまして、まことにありがとうございました。
 拝聴いたしました御意見は、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案の審査に資するところは、非常に大きかったと思います。これをお礼を申し上げますと同時に、本日この会議を開催するために格段の御協力をいただきました関係の方々に対しましても、深甚の謝意を表する次第であります。
 これにて散会をいたします。
   午後零時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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