くにさくロゴ
1971/03/07 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第3号
姉妹サイト
 
1971/03/07 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第3号

#1
第068回国会 法務委員会 第3号
昭和四十七年三月七日(火曜日)
    午前十時三十三分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
   理事 小島 徹三君 理事 羽田野忠文君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君 理事 麻生 良方君
      石井  桂君    大竹 太郎君
      島村 一郎君    松本 十郎君
      豊  永光君    河野  密君
      中谷 鉄也君    林  孝矩君
      青柳 盛雄君
 委員外の出席者
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  長井  澄君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  矢口 洪一君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月七日
 辞任         補欠選任
  山手 滿男君     豊  永光君
  石橋 政嗣君     中谷 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  豊  永光君     山手 滿男君
  中谷 鉄也君     石橋 政嗣君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一二号)
     ――――◇―――――
#2
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所長井総務局長、矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○松澤委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。
#5
○畑委員 私は、本日議題となっております裁判所職員定員法の一部改正の法案の質疑をいたすわけでありますけれども、そのこまかい質疑をいたします前に、どうしても前提として触れておかなければならぬ、質問しておかなければならぬという問題がございます。というのは、いま再び非常に問題になっております判事補の再任の問題でございます。この問題に対する最高裁の考え方を聞きただすことでなければ、裁判所職員定員法一部改正法案について十分な審議ができない、かように考えておるわけです。
 最初にお伺いいたしたいのでありますけれども、最近の裁判官の定員並びにそれに対する充足の実員の問題、その点について簡単に私、聞きたいと思うのです。
 最近の傾向は、一体どのくらいずつ新しく判事補を新任しておるのか、それでそれが裁判所として定員とも見合い、またそれが実際にどんな充足率になっておるのか、もっと裁判官希望者がほしいのか、もう足りているのか、あるいは定員上本来もっとほしいのである、ところが定員も足りない、さらにまた実員が一体どうなっているのか、その点について最近の傾向を承りたい。この点は、結局私があとで質問する問題に相当関係するものですから、冒頭その点を伺いたいと思います。
#6
○矢口最高裁判所長官代理者 定員の充足状況でございますが、現在、判事、判事補、簡易判事、全部をひっくるめまして約八十七名の欠員がございます。御承知のように四月の最初にはかなりの充足率を示しますが、その後は退官される方だけでございまして、だんだんとそのつど補充するということが、実際問題として不可能でございます。百名前後の欠員というものを、結局において持たざるを得ないという状況になっておるわけでございます。
 それで裁判官の供給源は、畑委員も御承知のように判事補でございまして、判事補の毎年の採用は大体七十名前後ということで採用いたしております。非常に厳格に申しますと八十名、もう少しくらいまでは採用する余地があるんではないか。さらに希望者が多くございますれば、また予算上増員というような措置もそれの関係においてすることができるわけでございます。現在の状況といたしましては、特定の事件関係、たとえば公害事件でございますとか、交通関係事件でございますとか、そういったような関係で毎年数名あるいは十数名の増員を得て、順次定員としてはふえてきておりますけれども、それに伴う充足状況ということになりますと、いまも申し上げましたように、結局において百名前後の欠員というものをかかえるというような状況でございます。
#7
○畑委員 そこで私、意見があるのですけれども、そうした状態で、いま大体裁判官として百名くらい定員よりも足りない、こういう状態である。またこれから先定員も、いろんな公害裁判その他でふやさなければならぬというような要請下にある。ところが、なかなか実際に充足できないでおるというような事情があるわけです。
 反面、また例の再任問題が去年以来特にやかましくなってきております。しかも判事補が十年たって再任をされるということが必ずしもさだかでない。拒否される可能性も相当あるというようなことが、特に去年あたりから問題になってき始めている。その前にももちろん再任を拒否された人もございますけれども、特に一昨年あたりからずっと問題になっておる例の偏向裁判というような議論もありまして、それに関連して青法協問題が前面に出てきて、そしていろいろ再任の問題が世論で非常にうるさく議論されるようになった。また最高裁の姿勢というものがそれによって明らかにされるに従って、裁判官希望者というものがそれによって少なくなる可能性も相当あると私は思っておるわけです。非常に窮屈な、しかも身分の保障があるとはいいながら、十年たったら再任期にはどうなるかわからぬ。その再任するか再任しないかということは、もっぱら最高裁の自由裁量の専権に属するというようなことが、あなたの口からもこの前答弁されておりまするし、そういう状態では、裁判官の身分保障があるとはいっても十年間だけである。そのあとはもうわからないというような非常に希望の持てない、裁判の独立、司法の独立ということと一見反するよう印象を受けていることは、私は避け得られないと思っておるのです。
 したがって、裁判官希望者の中からも、そうした不安というものが非常に多く出ておるのではないか。そのことが裁判官の充足問題とも大いに関連があるというふうに思う。喜び勇んで、ともかく司法の独立の一翼をになう裁判官として意欲的にそこへ入っていくということが、少なくともそれによって妨げられるということは、私はあってはならぬと思っておるのです。そういう意味で、私は一昨年くらいから非常に問題になってきておる再任拒否問題について、非常な関心を払っておる一人であります。立法府の一員といたしましても、大きな関心を持たざるを得ないというふうに思っておるわけであります。
 そこで、私、当局にお伺いいたしたいのは、いつも問題になっておるのは再任、不再任の基準の問題だと思います。しかもその基準がはっきりしない。そして問い詰められると、最高裁当局はいつも、とにかくそれは最高裁の自由裁量である、新任の場合と変わりないんだ、こういうのがあなたの御答弁だったと思うのです。事務総長も大体そういう答弁をされてきておる。これでは私は非常な不安がある、身分保障に非常に反するんじゃないか、こう思うのであります。
 憲法の七十八条に、明らかに身分保障の明記をいたしております。この新しい憲法の精神というのは、旧憲法時代よりも裁判官の身分がもっともっと保障された憲法だと私は思っておった。旧憲法時代には、十年とかなんとかという制限はないのであります。ところが今度はそれが十年の任期ということで、憲法八十条に任期がきめられておる。このことは明らかに、最初憲法が制定された当時には、アメリカ式の法曹一元化の理想のもとにつくられた憲法である。それを予想して、十年を区切りとして、弁護士から入ってきた者も、十年でひとつまた弁護士に戻るというようなことも大いにあり得るというようなこともある。そこで適格かどうかというチェックをする機会をというようなこともあって、おそらく十年の任期ということがきめられたと思う。ところが、その後法曹一元化は一向に進まない。そしてやはり戦争前の、旧憲法時代の裁判官キャリアシステムが依然として踏襲をされておる。同時にまた、踏襲されざるを得ないというような現実になっておるのだ。そこに私は、法規の規定と解釈についていろいろ議論があるんだと思う。再任がむしろ権利であるというような考え方も非常に多いんだと思うのであります。
 そこで、この前のときからも、宮本判事補のときからも、そのことが大きに問題になった。一体適否の基準は何なのかということについて明確な規定がないから、したがって混乱が起きるんだと思う。その点、私は憲法の精神は、あくまで徹底して身分保障をするというのが憲法の規定だと思う。ところが、十年ごとに身分が保障されないという現実が起こってくるということでは、結局裁判官はうかうか裁判官でやってられないというようなことになるのでありまして、その点、私はやはり基準をきめる必要があると思います。いまのところあなた方のほうでは、一体どういうことを、裁判官を不再任か、再任拒否かの基準にいたしておるのか伺いたいのです。
 憲法の規定によりましても、まず心身の故障によって職務をとることができないということが裁判によって決定された場合、これは罷免できる。同時にまた、裁判官弾劾法に定められた二項目がございますね。その裁判官弾劾法の第二条、「弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。」「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき。」二として、「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき。」この二つの場合には、裁判官弾劾法によって訴追をされ、その上罷免の弾劾裁判を受けることがあり得る、こういうことになっておる。心身の故障によって、裁判によっての決定の場合とこの弾劾法第二条によるものと、この二色あるわけだ。これは、現職の裁判官が期間中にこういうことがあった場合には罷免されるというような規定でございます。私は、やはりこれはまず基準でなければならぬと思う。再任のときにもこれを基準とすることは、私は一向差しつかえないと思う。当然だと思うが、そのほかに、どうもあなた方のほうはこれ以上にいろいろ基準を広げておる。これならば、私は裁判官の身分保障としていいと思うのですけれども、これ以上に広げると、基準が一体どこにあるのかはっきりしないということで混迷を来たすのだと私は思う。
 そういう意味で、私はむしろ裁判所法の四十条、憲法八十条を受けて同じような規定が裁判所法の四十条にございます。その四十条によって、任期は十年とする、ただし再任されることはできる、こういう規定になっておるのでありますが、今度は再任をされるという場合には、再任を拒否する理由としてはいまあげた三つをあげる、それ以外には拒否できないというようなことにする、あるいはそれ以上にどうしても重要な項目があるとすれば、そこにその項目をつけ加えるというようなことによって、基準を明確にするということを裁判所法できめるということが、私はこの混迷を救う道だと思っておるわけですが、その点について裁判所はどう考えておるか。これは立法府じゃないからという見解もあるかもしらぬけれども、立法府でそうした規定をした場合に、私はその規定に従って――あなた方は自己規制をいまやっておる。あなた方がやろうとしておるのは自己規制です。この前の宮本判事補の場合も自己規制であります。裁判官の任命は内閣がやるわけだが、内閣がやる前に、御承知のように名簿を提出する。名簿を提出するのがあなた方最高裁であるけれども、名簿を提出する前に、その名簿に登載しないということによってあなた方が自己規制をしたことが問題になっておるのだ。それで最高裁がやり玉に上がっておる、内閣は涼しい顔をしておる、こういうかっこうだと私は思うのです。
 いずれにいたしましても、そういう規定がございますれば、再任を拒否するにはそれだけの理由がなければならぬというふうに法律で明定をすれば、ただそれに触れるか触れないか、その条文に触れるか触れないかという議論はもちろんありましょうが、またそれに対する救済の方法、不服申し立ての方法、そういったものも法律で明定をするというような形になれば、毎年毎年繰り返されるような、まことにどうも不明朗な、あるいは青法協が理由ではないか、こう言いますと、いや、青法協だけを理由にはしない。そうすると青法協プラスアルファか、すると一体アルファは何か、こういったような問題などが出てくる。それで非常に混迷を来たしておるのだと私は思う。
 そこで、そろそろこういうところに決着をつけなければならぬというふうに、われわれ立法府の立場の一人として思っております。それで、内々そういった案等も頭の中で構想いたしておる一人なんでありますけれども、そういうように私はする必要があるのではないかと思うのであります。そういう点で最高裁当局としての見解は、私のいまの見解に対する反論はどういうふうなことであるか、ひとつ承っておきたいと思う。
#8
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官のいわゆる職務の重要性ということを十分に御認識いただきました上での身分保障、それと不可欠の関係にある身分保障の問題ということで、畑委員のお考えもきわめてごもっともだというふうに存ぜられます。現に戦前の裁判所構成法におきましては、終身官ということで裁判官の身分が保障されておったわけでございます。その点から見てまいりますと、確かに現在の裁判所法は終身官でないという点におきまして、身分保障がある意味で後退をいたしておるというふうに私どもも率直に考えております。
 ただ、裁判官の職務内容、職務権限ということから見てまいりますと、これは戦前の構成法時代の裁判官とは比較にならないわけでございます。最高裁の中に規則制定権が与えられておりますと同時に、違憲立法審査権が全裁判官に与えられておるという、きわめて重要なる職責をになっておるわけでございます。
 それで、制度と申しますものは、やはりいろいろな観点からバランスのとれたものでなければいけないわけでございまして、裁判官だけがあまりに強力な権限を持ち、また強力な身分保障を持つということになりますと、まあ少数寡頭的な権限の集中ということにもなるということが、現在の憲法でもって裁判官に任期が定められた理由であるというふうに私ども承知をいたしております。そういう憲法の精神というものは、その裁判官が職務を行ないます上におきまして、違憲立法もあえて辞さないという矜持と誇りをもって職務を遂行しなければいけないという面にあらわれておりますと同時に、裁判官は謙虚に仕事をして、そして十年の任期終了によって、場合によってはそれで任期が終了したままでいわゆる再任されない場合もあり得るということは、これを率直に認めていかなければいけないのではないかというふうに考えておるわけでございます。それが憲法の精神に最も忠実なるゆえんではなかろうかと考えております。
 しかし、それにいたしましても、実際の運用ということになってまいりますと、あるいは憲法が制定されました当時に考えられておりましたようないわゆる法曹一元的な運用方法といったものが現在そのままとられておるかどうかということについては、いろいろの問題点があろうかと思います。率直に申しまして、この子飼いの裁判官制度と申しますか、キャリアシステムと申しますか、そういったものがその実態を占めておるものであるということは、私どももそのとおり率直に認めていかなければいけない問題であるというふうに考えております。
 しかし、そうであるといたしましても、十年判事補をやりまして、そうして判事の資格ができて、そこで判事に任命されるかどうかというこの問題に一応限局して申し上げますと、そこにはやはり判事補と判事という大きな職責の相違と申しますか、身分の相違というものがあるわけでございまして、その十年間の仕事というものをあらゆる観点から振り返って、そしてまた十年間判事補をつとめて判事たる資格は抽象的には取得したけれども、現実にその方が判事としてふさわしい方であるかどうかといったような観点は、そこであらためて全人格的評価において考え直していくということも、これは必要なことでもございますし、またそれが日本国憲法の精神でもあるというふうに考えられるわけでございます。
 そういう観点に立ちまして、任期制というものの長所も十分にこれを生かし、なおかつ現実に行なわれておりますいわゆるキャリア的な運用というものにも十分意を用いまして、そこに、十年たった者を判事にするかどうかということを考えます場合の、一つの基準というものができてくるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。
 それで、これがいまのお尋ねの、いわゆる判事に任用するための基準ということになるわけでございますが、しからば、それが具体的にどういうものであるかということになりますと、これは先ほど来申し上げておりますところでもおわかりいただけるかと存じますけれども、結局におきまして、憲法及び裁判所法が判事たるにふさわしい人間ということを、その法律の全精神において予測いたしておりますところの、いわゆる判事たるにふさわしいという、きわめて抽象的な基準でもってお答えするよりほかに方法がないのではないかというふうに思うわけでございます。そういうふうに抽象的にお答えするより方法がないということは、繰り返し申し上げておりますように、決していいかげんにきめるということではございませんので、これは最高裁の裁判官会議が、あらゆる角度からその対象となります人格を御検討いただきまして、それでふさわしいというふうに御決定になった方が、いわゆる裁判官としてふさわしい方であるということになると申し上げるよりほかに方法がないのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
 畑委員のおっしゃいますところは、きわめてその精神、その運用について、私ども十分にお聞きしなければいけない点が含まれておると思いますし、また、現に私どももそのような精神で運用いたしておるつもりでございます。しかし、法律のたてまえそのものといたしましては、いま申し上げたような十五人の裁判官の慎重なる御決定にまつ、そのことが基準であると申し上げるほかしようがないのではないかというふうに考えております。
#9
○畑委員 最高裁の考え方は大体わかりました。結局、私がいま意見を申し上げましたが、具体的に、少なくとも立法によってその再任の基準を明らかにすべきである、そうでなければ、私は、最高裁の自由裁量という名のもとに、いわゆる全人格的な評価とかなんとかいって、非常に抽象的な形で、青法協問題等も頭に入れてやられる可能性が非常に強いということを心配しておる。また世論もそういうところにある。しかも、この前の宮木判事補の場合に、最高裁が人事の秘密ということで一切その理由を公表しない。本人が明らかにしてもらいたいと言ってもそれを明らかにしない。本人にも通告もしない。それで任期が切れたから、名簿に載ってないからこれであなた終わりだ、こういうようなことであったことは間違いないのです。したがって釈明、弁明の機会も与えられない。こういう秘密主義というか、これも私は、その運用の一つとしてあるいはいい点かもしれぬけれども、一般の目には、民主的な裁判所とは思えないというふうな批判が強く出ることは、私はそこにあるのだと思うのであります。なるほど運用の妙を得ればこういう問題はない。ところが、そうした基準が明確に明定をされてない以上、どうしてもその運用ということが、場合によると最高裁の事務総局の独断になる、独善になる。最高裁の最近の機構は私は大体そうだと思う。最高裁の裁判官に任命される人は、事務総局長経験者が非常に多くを占めておる。エリートコースの人たちが最高裁の判事に相当登用されておる。そうしてまた事務総局がみんなおぜん立てをするというようなことから、第一線の裁判のことについては案外、考えないとは思いませんけれども、目が届かぬで、逆に司法行政的な管理の面からの考え方が強いのではないか。そこでともすれば独善といわれる、あるいは場合によったら行政権への屈従、従属ということもいわれる可能性が出てくる。それだけ権限が大きく、しかも抽象的で、自由裁量だ、全人格的な評価だ、こういうことになってくると、どうしてもそういうところに突き当たらざるを得ないと思うのですね。
 そこで私は、具体的にそうした理由をある程度限度をはっきりさせる、それが理由に当てはまらなければ再任を拒否されることはないのである、それによって十年間といわず、その継ぎ目におきましても身分が相当程度保障されるということをきめておく必要があるのではないか。そうでなければ、国民の最高裁に対する信頼というものはだんだん低下をしてくるんだ。あなた方が幾ら自分たちではそうでないというふうに考えても−ほんとうにそれは考えておられるでしょう。おられるでしょうけれども、それでも一般の国民はそれを信頼しないということになる。それをひとつ十分に考えてもらいたいと思う。したがって、その運用面について問題があると見られるから、私は、そういう点を裁判所法の一部改正等によってあなた方はかってにできない――かってと言っちゃ失礼かもしらぬ。あなたらはかってにやっているんじゃない、とにかく、日本の裁判所を管理する立場にあるというような使命感に基づいて、全人格的な評価でやっているんだというふうに言われるだろうけれども、それだと、やはり身分保障につながる点に問題が出てくる、こういうふうに思うのでありまして、その点は、私が提案した問題については明確には触れられませんでしたが、結局は、やはりノーというような大体考え方だと思います。その考えは、要するに、いまの制度で実際の運用の妙を得ればよろしいのである、われわれを信頼してくれ、結局はこういうことだと私は思う。そういう答弁だというふうに思うのでありますが、私は私なりにまた別のことを考えて、やろうと思えばまたやりますから、ひとつ十分にその点も考えておいてもらいたいと思う。
 そこで、基準の問題は以上にとどめまして、次は、実際の現実の問題であります。
 ちょうど一年前に、宮本判事補が再任を拒否され、理由も告げず、先ほど言ったように、本人の再任願いもあっけなく拒否をされた。とにかく、裁高裁判所はすべてのことを裁判するもとでありますから、それがノーということになるんだから、なかなか救済の方法がないというようなことだと思う。それだけにまた問題が重大だ。これは普通の公務員であれば、ちゃんと公務員に対する不服の救済の手段がいろいろございますが、それがいまそういったきめがない。しかも、公務員の場合だって最後には最高裁が裁判するんですから、その最高裁がそういう意見なんだから、これはしかたがない、こういうことになるが、そこにまたいろいろ問題があるのであります。
 そこで、今後も同じようなことがされるのではないかというふうに危惧の念を持たれております。それで、四月八日か何かが再任の時期だそうであります。その前に、三月中にでもおそらく、最高裁が十四期生の判事補の名簿をそろえ、あるいは二十四期生の新任者の名簿をそろえて内閣に提出するでありましょう。その前に、もうすでに一回、あしたで二回目の裁判官会議をやられるというふうに新聞に報道されている。それで、新聞の報道によりますと、今回も去年に引き続いて再任拒否者を出すのではないかというふうにうわさをされておる。中には、毎日新聞のごときは安倍裁判官、それと、きのう再任の願いを撤回した金野裁判官、いずれも判事補、この両名が爼上にのぼっておるというふうに報道いたしておるわけであります。それでとうとう、そのうちの一人と目されておりました金野裁判官はきのう、先ほど申し上げましたようなことで突然再任願いを撤回された。これは最高裁の手元に入ったかどうかしりませんけれども、そういうことがきのう午後の報道あるいはきょうの新聞でいろいろ書かれてあるわけであります。これは一つの再任問題をめぐってのことでありまして、これがなければ、金野さんがそういうことをやるはずがない。
 それで、いろいろ問題にされておるけれども、正式には何ら最高裁から釈明の機会もいまのところ与えられておらぬ、こういうことを金野判事補は言うております。事実だろうと思う。ただ、高裁の長官と何回か会ったというようなことも出ておりますけれども、ともかくこの二名のうちの一人がもうすでに、再任拒否問題についての最後的な決着がつけられる前に、みずから再任の願いを撤回をしたということは、私は、一つの大きなショックであったと思うのであります。これによって、あなたのほうではその対象からはずされるわけになることだと思うのでありますが、この問題も含めて、第一回の会議をされ、第二回の会議をあしたに控えておるということでありますけれども、その点について、どういう基準によってあなたのほうではこの再任問題に臨もうとしておられるか、それを承りたいと思うのであります。
 伝え聞くところによると、青法協加盟の裁判官は、十四期生はこの金野さんを含めて五名だというふうに聞いておりますが、おそらく最高裁のほうでもそのことはお調べはついておるんだろうと思うのだが、青法協の会員であるということだけで再任の拒否をすることはないということは、この前の事件の前のときからもうすでに表明はされておりますが、しかしそれが相当根底をなしておるだろうということは、この金野さんも記者会見で述べられておられる。そういう問題もからまっている問題でありますけれども、一体どういう基準で臨もうとされておるのか。この前と同じだという御答弁かもしれませんが、そしてまた今度の具体的な問題について、人事の秘密であるというようなことで明らかにしにくいということを言われることだと思うのであるけれども、ある程度、差しつかえない限り、ひとつ国民の疑惑というか、そういうことばで言っては悪いかもしらぬが、疑問ですか、疑問にこたえるというような意味で、この十四期の再任の問題についてあなた方の見解を、どうやっておられるのか、どうしようとされるのか、この見解を承りたい。私はもうこの問題について、よほどのことでなければ再任拒否すべきでないというふうに思っておるわけです。その点ひとつ承りたい。
#10
○矢口最高裁判所長官代理者 どのような心がまえでどのような審理をいただいておるかというようなことにつきましては、昨年の問題が起こりました際にもいろいろとお尋ねがございまして申し上げたところ、そういうところと全く変わりはないわけでございまして、先ほど申し上げました、十年の判事補を経て判事に任命される資格を取得する人が、いわゆる判事としてふさわしいかどうかという観点からいたしまして、あらゆる角度から慎重に御検討をいただいて、ふさわしいという御決定を得た方を判事任用の名簿に登載することになるということでございます。
 いろいろと新聞紙上等で報道がなされておりますが、私どもといたしましては、三月一日の会議でそういった観点から御検討をいただきますに十分と思われる資料を準備いたしまして、御質問があれば、その資料に関する限り御質問にお答えし、次回の裁判官会議等におきまして十五人の裁判官に、それぞれのお立場から、それぞれのお考えから十分に討議を尽くしていただきまして、結論をお出しいただくというふうに考えておるわけでございます。そういった場合における、慎重な上にも慎重であるべきであるという心がまえは、各裁判官も十分お持ちいただいて、その責めを果たしていただけるものと確信いたしておるわけでございます。
#11
○畑委員 そうしますと、あしたの裁判官会議がこの問題をめぐっての第二回目のようで、そこで、大体あしたの裁判官会議によって最終結論が出せる見通しであるのかどうか、あるいはその次に回るという見通しが強いのか、その辺を承りたい。
#12
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官会議の御進行の問題でございますので、私どもとしてどうこう申し上げることもいかがであろうかとは思いますけれども、通常の問題でございますれば、格段の事情なき限り、明日御結論をいただけるのではなかろうかというふうに、事務的には考えておるわけでございます。
#13
○畑委員 そうなりますと、この前に例があるのだから今度もあり得るかもしれない。金野さんは自分でやめられたが、おそらくこれも対象の一人になっておったに違いないと私、思いますが、それはもうやめられた。その決定を待つ前にやめられたということは、ちょっと私たちとしてはある意味で問題が残る。はっきり受けて立つということであれば別ですが、とにかくみずからやめられたということについては問題が残ると思うけれども、しかし、まだほかにあるというふうに想像される。それで、そうやるべきでないと私は強く要請しますけれども、ただ、万一そういうことがある場合に、これこれこういうことだから君は不適格だ、こういうことだと思うのでありますが、それをやはりあくまで本人に釈明、弁明の機会を与えることが、まず第一に必要だと思う。これが世論から強くあなた方が非難されているもとですから、青法協だろうとか何とかという、いろいろそればかり疑われるということになるかもしれない。そうじゃなくて、こうなんだ、これでは明らかに適格を欠くじゃありませんか、こういうふうに明らかにあなた方が天下に公表できるような理由でやられるのがあたりまえだ。それである以上は、変な想像をされないように、やはり公表する必要もあるし、またその前に、先ほども申し上げましたように、釈明、弁明の機会を本人に与える。そうして、これはこうだと思うがどうだ、そうじゃありません、こうです、というような答えが出るかもしれない。あなた方の一方的な調査だけではいけませんよ。
 われわれ党にいますけれども、統制処分なんかなります場合にも、最後にどんな処分になるといたしましても、本人に聞かなければいかぬ。自民党の藤山さんがこの間党規違反だとかいわれたけれども、これは内々にやられた、当人も知らないうちにやられたというようなことで問題になっている。あれどころじゃないです。これは裁判官の身分の問題です。自由裁量とはいっても、そうとは理解してないですな、世の中が。十年間そのためにやってきたのです。だから、そうだとすれば、本人も、もちろん世の中も信頼しない。そのためには、最終的には納得させられないまでも、本人が、これだけの弁明を聞いてくれた、釈明を聞いてくれたというととであれば、もって瞑すべしという考えになるかもしれぬ。また世間のほうも、本人の弁明も聞きました、釈明も聞きました、そして最後に本人に通告をいたしましたというようなことで、しかも、これこれこういう理由であります、これでは、再任を拒否するのはあたりまえだと世論も思いますよ。
 こういうことで、あなた方はそのことを公表することが民主的なやり方だと私は思う、それをやらぬで、かえって変なことをあなた方から言われれば、あるいはぬれぎぬかもしれない、そういったことで疑われる。そういういわゆる疑惑を晴らすためにも、明朗な裁判所として国民から信頼を受けるためにも、そうした手続が今度は絶対に必要だ。この前の経験にこりて、私は当然そうすべきだと思うが、その釈明、弁明あるいは本人に対する通告のこと、それとその再任拒否の理由、これを国民に公表するということについては、どう考えておるか承りたい。これは非常に重要だと思うのです。これが非常に混迷を来たしておる。いかがですか。
#14
○矢口最高裁判所長官代理者 その人間を評価いたします場合におきましても、当然単なるうわさでございますとか、そういったことで評価すべき問題ではございません。あくまで十分に確信の持てる資料というものが前提になるわけでございます。そういった点で、万全の措置を講じておるということは申し上げられるかと思います。
 また、本人に通知をいたしますにつきましても、私ども許される範囲内で通知をすることは当然であろうと思いますが、しかし、事は人事の問題でございますので、それがきわめて抽象的になり、慎重に裁判官会議で検討いただいた結果、やはり判事としてはふさわしくないという御結論に到達したということを申し上げるにとどまる場合があるということは、これはやむを得ないことではなかろうかというふうに思うわけでございます。宮本裁判官の場合にも、そういった趣旨の通知を申し上げたと記憶いたしております。
 公表するかどうかという問題でございますが、個々の裁判官の人事の問題を外部に公表するということは、いま畑委員がおっしゃいましたような、公表することによる利点というものも十分考えられるわけではございますけれども、やはりいかがなものであろうかというふうに考えられるわけでございますし、よって来たるマイナスというものも十分考えてみなければいけない問題でございます。私ども、公表という問題につきましては、いろいろの御意見がございましたけれども、やはり人事の問題というものは、結果だけで処理すべきものであって、公表するということは差し控えるべきものであるというふうに、現在でも考えておるわけでございます。
#15
○畑委員 いままでは弁明の機会を与えてない、そういうことで、この前と同じように押し通そうというお考えだと思う。
 それからまた、公表の点につきましては、この前も当事者の宮本判事補が、公表してくれ、こう言っておるのだけれども、それに対して公表しない。普通たいてい人事の秘密というのは、本人のことなども考えてというのが大きな部分を占めると思うのでありますが、この問題は国内の大きな問題になっている。普通の場合と違って大きな問題になっておるだけに、私は公表する必要があると思う。これはいろいろ場合によって、普通発表しないものも、これは重大事件であるからということで、各当局が普通の慣例を破って発表することがあり得るということを、われわれたくさん経験しております。それと同じように、私は、世をあげての問題であるがゆえに、あなた方のためにも、この問題については、もしそういう場合に、本人の希望があればやはり公表すべきである、こういうふうに思っておるわけです。
 それからもう一つ、金野判事補のことでありますが、もう再任の願いを撤回されたようでありますから、多くは申しませんけれども、いまだに一度も釈明、弁明の機会を与えられておらぬということは、先ほど私が申し上げましたように、本人が申しております。それと同時にまた、高裁の長官と何回か会っているという新聞の報道がございます。これは、もちろん両方とも任意です。毎回任意でしょうけれども、本人の申し出の場合もある、それからまた高裁長官の内藤さんからの希望もあるというようなことで、五、六回会っているように新聞で見ております。これは金野さんだけじゃなくて、ほかの方々も会っている。それほどの回数じゃないでしょうけれども、会っておられる模様であります。これはどういうことでお会いになったのか。まあその辺の圧力等はないというふうに本人も言うております。人格者である内藤さんのことであるから、私もその点信頼したいのですが、何となくそういう点で圧力ということも考えられぬではない。内藤さん、いろいろ心配をされて、御本人と会って、そうした上で御本人も、これ以上いろいろ疑われるのでは、みずからとどまっているわけにいかぬということで、本人も、必ずしも自分があくまでも最適任者であるというふうには――十分な人間だとは思ってないという点もみずから言うております。人間でありますから、そう言うておりますけれども、そういう点で、いろいろ上から何となく圧力があったのではないかというふうにも想像されないでもない。その点については、最高裁としては、高裁の内藤高裁長官から連絡か何かあったのかどうか、その点をひとつ御答弁願いたい。
#16
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官のそういった評価の問題等につきましては、その所属の所長、長官の御意見を十分に承って、これも一つの重要な資料になるということは当然のことでございますので、そういった御意見をお出しいただく上において、内藤長官はあるいはお会いになったのかというふうに思います。しかし私ども、どういうふうにどういうつもりで会ったかというようなことについては、一切御報告はいただいていないわけであります。また、お会いいただきたいということを申し上げてはおりませんけれども、これは全く内藤長官が自由におやりいただいたことである。しかも、いま畑委員がおっしゃいましたように、内藤長官のお人柄からいたしましても、圧力というようなことは万が一にもあり得ないことであるというふうに、私どもは確信いたしております。
#17
○畑委員 そうすると、あなた方はいろいろ資料を集められた、その資料の一つとして内藤さんからの報告はある。ただ、その報告がどういう形によって得られたものかどうかわからぬけれども、報告はあることはあるのですね。それをお聞きしたい。
#18
○矢口最高裁判所長官代理者 所属の所長、長官から御意見をいただくことは、当然のことでございます。
#19
○畑委員 それから、もう一つ聞いておきたい。それは、この前の宮本判事補の場合は本務が簡裁の判事である、それで兼務が地・家裁の判事補である、こういうことである。したがって、再任をしないという決定については兼務についてのものであるから、簡判としてはそのまま残るというようなことになって、いままだ簡易裁判所で残っておられるわけでありますが、今度の金野さんの場合、それから安倍さんの場合、これは新聞にいわれておりますからわかっておりますが、そのほか大体青法協加盟の者が四、五人おるという話だが、そういう点で、これらの人たちについて、いつ本務は地・家裁になったのか。かつては、おそらく簡判がやはり本務であったと思います。それを宮本さんの例にこりて、あなた方はあらかじめ、その後になって、去年のその宮本判事の問題のあとで任務がえをした可能性はあるのじゃないかというふうに私は思うのだけれども、その辺の日時の関係はどうなっているか承りたい。
#20
○矢口最高裁判所長官代理者 金野判事補に限って申し上げますと、簡易裁判所判事兼判事補になりましたのが四十四年の四月でございます。今度判事補兼簡易裁判所判事になりましたのが四十六年、昨年の四月ということになっております。
#21
○畑委員 四月何日ですか。
#22
○矢口最高裁判所長官代理者 四月十四日でございます。
#23
○畑委員 ほかの人については言えませんか。一般的に大体どうなっているのですか。十四期生のころの人たちは本務がどうなっているのか、その点、大体大勢を承りたい。
#24
○矢口最高裁判所長官代理者 一般的に申し上げますと、三年たちますと簡易判事の資格ができますので、一斉に簡易判事の兼官をつけるわけでございます。それでその後は、実は定員上の非常に事務的な操作でございますが、必要に応じまして簡易判事を本官にし判事補を兼官にするというような手続をとっておる。また同じく定員上の操作――あまり定員上の操作と申し上げることはいかがかという感じもいたしますけれども、実際問題としましては、定員の操作の関係で、一たん簡易判事を本官にした人もまた逆に判事補を本官にするというような手続をとることがございます。これは一般論でございます。
#25
○畑委員 そうすると、今度はもし再任の拒否をされるということになると、そこでもうあらゆる裁判官としての職務を失うわけだ。そういうことになってすぐ路頭に迷うということもあり得るわけであります。この前の宮本さんの場合はそうでなくて、いま簡判をやっておりますからいいですけれども、そういう場合があり得る。またそういうことを考えて、それら目標とされるような何名かの人たちについては、要するに去年の宮本判事補にこりて、その直後そういうことで任命がえをしたというふうに想像される。そうだとすれば、ますますどうも、あまり意図的だと私は思うのでありますが、この辺は、あなたのほうからも、名前を一々さすというわけにはいかぬということから言わぬだろうと思いますが、全部の名簿について、私は、資料を求めれば、それができないこともないと思いますが、ここではそれはやめて、以上だけでとどめたいと思います。
 中谷君が何か関連があるそうですから、私の時間がありますから、ちょっと中谷君に関連を……。
#26
○松澤委員長 関連質問を許します。中谷鉄也君。
#27
○中谷委員 私は、一言だけ質問をいたしたいと思います。
 結局、再任、不再任の基準が非常に不明確だということ、それから人事の秘密だということで、その内容が全く公表されないということ、救済方法がないということ、釈明の機会が与えられないということ、いろいろな点で、十三期以来本年にかけて再任問題については、先ほど先輩の畑委員のほうから発言がありましたとおり、司法の危機をわれわれは感ずるわけであります。そこで、私は率直にひとつ最高裁判所事務当局にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 この再任問題、十四期の諸君の問題をめぐりまして、私は三期の修習生でありまするけれども、昨年から、そしてまた再び憂うつな法の季節が来た、また再び最高裁判所自身が、国民の信頼を失うような問題として問題の渦中に立たざるを得ない、このことを、私はやはり法律家の一人として憂えるものであります。そこで、私は率直な最高裁判所事務当局の感想、所見を承りたいと思うのでありまするけれども、宮本君の問題、そして金野君などの問題、要するに再任問題をめぐって最高裁判所に対する、裁判所に対するところの国民の信頼というものがないところに、民主主義というものは成り立たないと私は思う。そこで、この再任問題というのが、率直に言って、一体最高裁判所に対する、司法に対する国民の信頼というものを、アップさせているのかそれともダウンさせているのか。多くの法律家、特に現職の裁判官が再任要望を提出している。司法の中がまさに分裂をしているとさえも言える。このことは、最高裁判所は国民から信頼されなければならないという大前提に立つと、それで一体現実の問題としてのこの再任の問題をめぐって、ことに昨年からことしにかけて、最高裁判所が国民の信頼を失うような事態に立ち至っているのではないのか。私はひとつそういう点について、最高裁判所の姿勢を問いたいと思う。私は別の機会にまたあらためて事務総長にもこのことを聞きたいと思いますけれども、本日御出席しておられるところの局長のほうから、この点について、最高裁判所裁判官あるいはまた裁判所は国民の信頼を失ったら困るんですというふうな答弁ではなしに、この問題をめぐって、国民の信頼を低下させたのではないかというふうに私は思う。その点についての御見解を承りたいというのが一点であります。
 一言の質問でありますので、続けて申し上げたいと思いまするけれども、第二の質問は、全人格的な評価をするために、うわさなどではない資料を収集をし、裁判官の求めに応じてその資料を提出する準備はいたしておりますということであります。その資料というのは、これは裁判所内部の手によって作成されたものでありましょうか。それとも、裁判所外部からも入手された資料を含むのでありましょうか。それとも、これ以上私は裁判所の権威のために言いたくはありませんけれども、他の行政官庁から協力によって提出された資料というふうなものは、その全人格的評価の中の資料の中には含んでおりませんか。その点についてお答えを願いたい。資料の内容、一体それは内部、外部いずれを含むのか。ことに外部を含むとするならば、外部の他の役所からの提出の資料も、あるいは入手した資料も含むのか、その点についてお答えをいただきたい。そうしてその資料の取り扱いというものは、一体最高裁判所の取り扱いの中においてどういう秘区分に相なっておるのか。しかし、資料の取り扱いの秘区分と、入手が内部、外部にわたるのか、内部にとどまるのかということとはおのずから別個の問題。ことに私が聞きたいというのは、外部のしかも他の役所、そんなところからの資料というものを含んでいるのかどうか。この点について、私はどの役所ということは、ここまで出てきておるけれども私は言いたくない。あまりにもそこまで言うことは、法律家の一人として残念だから言いたくない。しかし、他の役所からのものを含んでいるのかどうか、この点について私はお答えをいただきたい。
 第三点の質問は、阪口君の救済の方法については考えていないのか。
 以上であります。
#28
○矢口最高裁判所長官代理者 昨年の宮本裁判官のいわゆる再任されなかったという問題を契機といたしまして、裁判官の身分保障と任期の問題、そういった問題が大きくクローズアップされたことは事実でございます。私どもは、任期制というものが採用され、それの運用をいたしまする当初より、任期制という制度というもののどこにその理由があるかということを慎重に検討いたしまして、それの具体的な運用方針を定め、その方針に従いまして今日までこの問題を運用いたしてきておるというのは事実でございまして、昨年、特にそういった問題について新たな解釈を加えますとか、あるいは新たな取り扱いをするとかというふうにあらためた点はないわけでございます。
 しかし、一般国民の方々の中には、そういった裁判所の一面強力なる身分保障、一面他に類例を見ない任期制といったような制度というものを、十分御理解いただいていないということもございまして、これに関しますいろいろの議論が巻き起こされたということも事実でございます。
 そういうふうに見てまいりますと、私ども裁判官の問題を問題にいたします際に、そういった観点からの十分なる御説明、御理解をいただくという努力において、これまで欠けるところがあったのではなかろうかということを非常に反省いたしております。そうして、私どものなすべきことは、私どもがこの裁判官制度というものをどのように考えておるか、また裁判官制度というものは、こういったこの違憲立法審査権、規則制定権、任期制というようなものとの関連におきまして、どのように重要なものとして理解されておるかといったようなことにつきまして、なおあらゆる機会を通じて私どもの考えを申し上げて、そうして御理解と御支援をいただくという方向に、今後も引き続き努力していかなければいけないものであるというふうに考えております。一部の方々の中で私どもの考え、必ずしも御理解いただけないという点がございますことは、非常に残念でございますが、これは司法制度の重要な問題でございますので、今後もそういった観点から、私どもの心がまえというようなことも十分御説明申し上げて、御理解をいただくように最善の努力をしていかなければいけないというふうに考えております。
 第二点の資料の問題でございますが、これは前にも申し上げた機会があったかと思いますけれども、私どもが資料として使用いたしまして裁判官会議に提出申し上げておりますものは、すべて私どもの部内で、しかも公式につくられたものでございまして、それ以外のものは一切使用いたしておりません。これははっきりと申し上げられるかと思います。
 それから第三点でございますが、阪口元修習生の扱いをどのようにするかというお尋ねでございますが、現在阪口修習生から、そういったことに関しますお申し出等もございませんし、いろいろの書物あるいはパンフレット等で拝見いたします阪口修習生の現在における、私どもの承知しております限りの言動等からは、そういった問題を考えるという時期ではないというふうに現在のところ考えております。
#29
○中谷委員 沖本君の質問がありますから、もう一点だけ聞いておきます。
 どうも答えが納得できません。一部の国民がというふうに言われましたけれども、私がことに重大視するのは、現職の裁判官諸君がこの問題について、再任問題についての多くの疑義と要望を最高裁に出して、そうして論議をしているという事実、それから、局長は地方裁判所へはしょっちゅうお行きになるわけでしょう。最近若い裁判官諸君、要するにものを言わなくなったということが言われているじゃありませんか。そんなことがはたしていいのかどうか。あまりにも再任問題の傷あとというものは深いじゃありませんか。そのことについて国民の御理解をいただきたいと言っても、まず裁判官自身の相当部分がこの問題について納得をしない。先ほど違憲立法審査権があるんだ、だから云々とおっしゃったけれども、あまりにも最高裁判所に権限が集中し過ぎている。そういうところにこの問題がある。そういう点について、一年前にも同じことをおっしゃった。理解と協力を求めたいとおっしゃった。十三期の諸君のときにおいてもそうですが、今度の場合は一そう問題が、ますます火の手、あらしが大きいじゃありませんか。まさにこの問題については、国民のみならず裁判官自身が、法律家自身が納得をしておらないという点を、私は指摘をしておきたいと思うのです。
 それから、資料の点ですけれども、そういたしますると、部内で作成したその資料というのは、重ねてお尋ねをいたしまするけれども、その部内で作成した資料というのは、部内の基礎資料に基づいて作成した資料、外部の情報その他によって作成されたものではないというふうにお伺いしてよろしいのでしょうか。重ねてお尋ねしますけれども、要するに内部でつくったんだ、その内部でつくったものの前提になる情報、資料は外部から来ておったということになれば、内部だけの資料ではございませんね。そうでございますね。その点は一体どういうことなのでしょうか。私は気にかかるから重ねてお尋ねをしておきたい。
#30
○矢口最高裁判所長官代理者 その間接的な基礎になっております資料がかりにあるといたしましても、そういったものは決して外部からのものではございません。純粋に内部で作成した資料のみでございます。
#31
○中谷委員 ちょっとおかしいけれども、一問と言ったからこれでやめておきます。
#32
○松澤委員長 沖本泰幸君。
#33
○沖本委員 畑先生並びに中谷先生でほとんど聞き尽くされたように思うわけでございますけれども、重複するところもあると存じます。私は同じような観点からお伺いしたいわけですが、あくまでも国民の立場に立って公正な裁判を行なってもらいたい、こういう気持ちの上からお伺いしたいわけです。
 それで、それにつきましてある法律学者の方に伺いますと、最高裁は最近だんだん旧憲法時代に返りつつあるんじゃないか、こういうふうな御意見がございました。それで、いまも中谷先生がお触れになりましたけれども、昨年の最高裁長官の憲法記念日の談話の中に、「近時、遺憾ながら、その真意を正しくくもうとせず、ことさら中傷、ひぼうを加え、裁判所に対する国民の疑惑をかきたてる論議なしとしない」こういう内容があるわけですね。
  〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
ところが、ほぼ一年近くたってきたわけです。で、再び同じことがいまこの場所で繰り返されてきておるということにつきまして、これは裁判所のほうもお考えになっていただかなければならないわけですね。解決しないということは、疑問点が話されないというところにもあるわけです。そこでその中に、「遺憾ながら、その真意を正しくくもうとせず、」先ほどお答えもありましたけれども、「ことさら中傷、ひぼう」ということになりますけれども、まあ中谷先生もおっしゃいましたけれども、最近は、法律をいろいろ解釈なさったり、法律に携わっていらっしゃる多数の方々の意見が、ここのところに論議が来ておるということになるわけです。ですから、何もわからないのがあれこれ言っているわけではなくて、やはりそこのところに公正なものを得ようとして論議をしているんだということになり、そこで外部から中に向かっていろいろな発言をしておるということになるわけですけれども、それで依然としてやはり同じお答えが返ってくるということは、一つの考え方として、司法の独立というまあ一つのことばですけれども、司法の独立とは、結局外部からの中傷に、かたくなに最高裁が何にも聞かない、われわれのやることはすべて正しいんだ――正しい裁判所でなかったら困るわけですけれども、正しいんだ、一切耳を傾けない、こういう御立場でものごとを進めていらっしゃるような形にわれわれには見えてくる。また、新聞にいろいろ問題が取り上げられてくると、だんだんと裁判所に対して信頼を失ってくる、こういうことになっていくわけでもあるわけです。
 そこで、結局憲法の上では裁判官は最高の身命保障がある、こういうふうに私たちはとらえておるわけです。身分の保障があればこそ公正な裁判もできる。ところが、その身分にゆらぎが起きてくるときには公正な裁判が得られない。それを国民として憂えるわけです。十年目ごとに最高裁の考えとか最高裁のやり方とかそういうものをいろいろしんしゃくしながら、自分の身分の保全を考えながら裁判を続けていかなければならないということになると、判決にまで影響してくる。そこに今度の、きのう、きょうの新聞に出ておるような問題も出てきたんだろう、こういうふうにも考えられるわけですが、そういうものについて最高裁のほうでは現在どういう考えであるか。このまま同じ状態をお続けになっていくと、また再び問題も起き、来年もまた論じなければならない、裁判所に対する国民の不信がだんだん重なっていくということになります。そういう観点から最高裁のお考えを伺いたいわけです。
#34
○矢口最高裁判所長官代理者 司法の独立というものは、これは私どもあくまで死守しなければいけないものだと考えております。しかし、司法の独立を死守しなければいけないということと、人の言うことは一切聞かない、人の言には耳をかさないということとは別問題でございまして、私ども、ことに昨年来いろいろと各界で御批判のあるようなことにつきましては、聞くべきものはこれを十分に承り、常に反省を加えておるわけでございます。そういうところにこそ真の独立はあろうかというふうに考えております。しかし現在のところ、私どもといたしましても慎重に考えてきめたことにつきまして、先ほど来申し上げておりますような現在の心境であるということにつきましては、これはまたそのとおりであるわけでございまして、そのことから、人の言うことには少しも耳をかさない、だれが何を言おうとそんなことは意に介さないという態度でないということだけは、ひとつ御了解をいただきたいというふうに考えております。
 それから、裁判の独立という観点からいきまして、裁判官の身分保障ということが不可欠の制度として重要なものであることは、私どももよく承知をいたしております。で、この身分保障という問題と任期という問題は、確かに相反する面を持っております。しかしこれは、いわばその職務が重要であるがあまりに憲法によって明白に定められた制度ということでございまして、私どもは、そういう制度下の裁判官として十分に職責を果たし得るような自覚というものを持って、その覚悟を持って仕事をしていかなければいけないというふうに、日ごろ考えておるわけでございます。
 それで、任期制というようなものの運用は、いま申しました裁判官の勇気と申しますか、その信念に従って行動するという点に、いささかも悪い影響を及ぼすというようなことがあるとしますれば、これは非常に遺憾なことでございますので、そういった点、そこまでの影響を受けるような裁判官というものは、一人もいないというふうに申し上げてもいいんじゃないか。それだけの覚悟はできてみんなが仕事を行なっておるというふうに、私どもは考えておるわけでございます。
#35
○沖本委員 影響を及ぼさないようにあくまでも勇気を持ってと、こういうふうなお答えがあるんですが、ところが新聞紙上に出ているのを見ますと、元裁判官でいらっしゃった弁護士さんの方々、あるいはその他の裁判官出身の方々が、これは非常な問題だということで取り上げていらっしゃるわけですね。それからまた青年の裁判官の方々が寄って、この問題を取り上げて非常に心配しておる、こういうふうな内容の記事も新聞に出ておるわけです。ということは結局動揺している。どうなるんだろうという心配が出ているわけです。その心配とは、身分保障についての心配なんです。ですから、いま人事局長がおっしゃっているのとは逆の方向に向かっていっているということになるわけです。そういうことのないように十分に気をつけているとおっしゃるけれども、現実はこうなっているわけです。そういうことはないとおっしゃるなら、これは各記事を否定していらっしゃるということになるわけですね。世間でもやはりこの点についていろいろ心配しているし、国民もその方向に目を向けてきておるから、最高裁としては、その問題に対して、こういうふうな形を変えた改革もしていくし、安心のできるような、国民の納得のいくような制度に向かって、あるいは方向に向かって、具体的なことをこうするとかああするとかというようなことになっていってこそほんとうだと私は考えるわけです。
 しかし、何があろうとかにがあろうと、こちらのやることはすべてこうなんだというふうに私たちには聞こえるわけなんです。その点、私が心配するのも国民の皆さんが心配していることも同じだ。だから騒ぐということになるわけです。その根本はどうかということになると、やはり先ほどからの繰り返しと同じように、自分の身分を保障されない、最高裁の顔色を見なければならない裁判官が出てくると判決に影響が出てくる、そうすると公正な裁判が得られない、こういうことになってまいります。大きく言いますと、私たち自体が、国のやることに対して違憲であるというような問題を裁判所に提訴した場合に、最高裁のほうの顔色を見て、違憲の判決をしたら再任のときにいろいろと手かげんされるのではないかということになると、合憲ということになってくると、国の制度自体そのものがいろいろな形で変えられてしまう、こういうことになると、われわれ自体も将来に対して心配しなければならない、こういうことになるわけです。
 こういうことから、最高裁に向かっていろいろと申し上げておるということになるわけですが、それが一年たっても何ら変わりはないし、これから将来に向かって、こうするとかああするとか納得のいくような方法も打ち出されない。疑問のまままた再びおそらくどなたかが再任を拒否されるのじゃないか。その内容も明らかにされていかない。そしてその理由を明らかにしていただきたい、こういうふうなことでお伺いすれば、これは人事上の秘密であって、本人の身分にも将来にも影響するから、そういうことは明らかにすることはできない、こういうことになりますと、全然われわれにはわからないことで、疑問のまま日にちを送っていく以外にない、こういうことになるわけですけれども、同じことを蒸し返すようでございますが、こういう点について、何らかの形として最高裁はとる道はないのでしょうか。
#36
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の身分の保障というものが、戦前のように終身官であるというふうにもし思うとすれば、それはやはり憲法の規定に明白に違反することになるのではないかというふうに考えます。やはり憲法が八十条ではっきりと任期というものをきめております趣旨のものは、そこで一応身分の保障は切れるんだということを、明白に規定しておるものだと言わざるを得ないのではないかと私どもは考えております。私どもはそういう前提に立ちまして、なおかつ身分保障というものは任期中は存在する。そうして任期終了まぎわには、俗にいう上を見て判決をするというような、そういう方が裁判官であっていただいては困るということで、そういうことのないようなりっぱな方に裁判官として来ていただく、またその心がまえで裁判をしていただきたいというふうに念願をいたしておるわけでございます。現在おります裁判官の中で、そういう観点から、上を見て裁判をするというような方は皆無であると申し上げても差しつかえないのではないか、そういうふうな自信は持っておるわけでございます。
 ただ、いまも申し上げましたように、その裁判官の身分保障というものは終身官であるというふうに考えるということは、これはあまりにも憲法の明文に反しますので、そういう考えでおったけれどもよく考えてみるとそうではなかったのかということは、これは、かりにそういうふうにお考えになっておる方があるとしますならば、そうではないというふうに、この際十分にそこを自覚していただきたい。そういう観点からのものの考え方、見方というものは、これはやはり今後もはっきりとしていかなければいけないのではないかと考えております。しかしそのことは、その身分保障が切れる前後において、意に反する裁判をするということと決して結びつくものではないということは、私は確信を持って申し上げられるのではないかというふうに考えております。
#37
○沖本委員 十年の任期制について、これはいろいろの本を読んでみますと、専門家の方々の中にも両論があってはっきりしないという点もあるわけです。昨年、現に委員長席におすわりの羽田野先生も、十年の任期制についてはいろいろな点からお話をなさっていらっしゃったという記憶がございます。ですからまずその十年の任期制、こういうものにもやはり国民の納得のいくような中身をはっきりしていただいて、それできちっとしたものに整えてもらう必要があるのじゃないか、こういうことになってきます。一番突端からいきますと、これはアメリカから持ってきたものだというお話もあるわけです。これでいいんだというお考えの方もいらっしゃるわけですし、いま人事局長のおっしゃっているようなお考えをしていらっしゃる方もいらっしゃる。そうなると、昔の終身の身分保障されておった内容もそのまままだ残っているんだというお考えを述べていらっしゃる方もいらっしゃるし、そのほうが裁判の公正は得られるというようなお考えもあるわけです。
 そういうふうにばらばらの御意見がいろいろある問題ですから、そういう問題に対して、やはり最高裁としてちゃんとしたものを出していただいて、国民の納得できるような方向に向けていただかなければならないわけなんですが、この議論も去年といまと何ら変わりはない、同じ議論が繰り返されておるということになるわけです。そうなってくると、結局同じ論点に立ってまた再任問題が起きてくるということになれば、同じ疑問がまた生じてきておるということになっていき、そしてその疑問を重ねていくものは、ますます疑惑を深めていくという結果を生じてくるということになると私は考えるわけです。そういうことですから、そういうものは皆無であろうというふうにいま人事局長はおっしゃいましたけれども、事のよしあしは別といたしまして、きょうの新聞でも、一人はもうすでにそういうことを憂えて、そしてみずからやめるという方が出てきておるということは、確かに上の方を向いてやめたということになるわけです。この点はやはりお考えになっていただかないと私は困ると思うのですね。
 それでその内容に触れますけれども、三月二日の毎日新聞によりますと、金野さんの判決について最高裁から釈明を求めた、こういうことがございますが、それは事実でございますか。
#38
○矢口最高裁判所長官代理者 私どものほうから、新聞に出ておりますような釈明を求めたという事実はございません。(「私どもというのはどういうことだ」と呼び、その他発言する者あり)最高裁事務総局から、それにつきまして釈明を求めた事実はございません。
#39
○沖本委員 聞くことを中谷先生がおっしゃってくれたのですが……。
#40
○矢口最高裁判所長官代理者 名古屋の高裁に対しまして、金野裁判官のことにつきまして、裁判の問題でございますとかその他の問題に関連いたしまして、最高裁の事務総局から、この点を釈明してほしいとかあの点を釈明してほしいというふうにお願いをしたことは、何もございません。
#41
○沖本委員 そうすると、この新聞記事に出ておりますその釈明を求めたというのは、どこから釈明を求められたのでしょうか。
#42
○矢口最高裁判所長官代理者 これは新聞でお書きになったことでございますから、私どもどういうふうなことでお書きになりましたかつまびらかにはいたしておりません。
#43
○沖本委員 だけれども、その辺にまだ論議があるのですがね。新聞に出ておって、かってに書いたんだから関知しないということをおっしゃるかわかりませんが、結局、裁判所に関する問題が新聞に大きく取り上げられたわけですから、裁判所としてはその問題をお取り上げになって、真相はどうなんだということをお求めになるというととが、私は本来の問題ではないかと考えるわけですが、その点は全然ないわけでございますか。
#44
○矢口最高裁判所長官代理者 まあ私ども、これが私どもと関係のない第三者の間の行為でございますと、そういうことがありましたのかと言ってお尋ねをすることもできるわけでございますが、私どもがやったということになっております部分につきましては、私どもはそういうことをいたしておりませんので、これははっきりいたしております。ただ、どういうことでそういう記事になりましたか、これは各社がそれぞれお考えがおありになってお書きになっておることだと思いますので、それ以上には、特に私どもとしては触れる必要を認めていないということでございます。
#45
○沖本委員 そうすると、私たちは最高裁の中のこういう問題については、新聞紙上で事情を知る以外に方法はないわけです。私たちは、もろにこれを信ずる以外に方法がないのですが、われわれがこの記事を否定することはできないわけです、否定材料は全然ないわけですから。そうしますと、こういうふうな裁判官が判決したものに対して、判決内容に釈明を求めたというようなことは過去にありませんでしたか。
#46
○矢口最高裁判所長官代理者 そのようなことはございません。
 なお、先ほどお尋ねの点でございますが、本日付の毎日新聞の記事の中で、「また内藤長官は六日の記者会見で、両判事補らからの事情聴取の内容と長官としての意見書は二月末までに最高裁に提出したことを明らかにした。この経過について、関係者は最高裁が事前に本人に対し再任拒否の理由にふれる問題点を告知し、本人の弁明を聞いたものではない――ということで一致している。」というような記事が出ておりますので、二日の毎日新聞の記事とあわせてお読みをいただければ、その辺の事情も一応御納得いただけるのではないかというふうに考えております。
#47
○沖本委員 そうすると、論議の余地がなくなってくるわけです、私、一生懸命この記事で勉強してきたんですが。人事局長おっしゃったのは、再任拒否とかなんとかということではなくて、判決に対して釈明を求めたということについてなんです。ですからそういうものは結局なかった、最高裁からは全然ない、過去にもそういうものはない、こういうことでございますね。
#48
○矢口最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
#49
○沖本委員 そうしますと、この問題は、またもう一つ勉強してお伺いしたいと思います。
 これは前にもいろいろ論議をいたしましたが、一般の勤労者の立場から考えますと、これは一般国民の大多数は勤労者だから、そういう立場から考えますと、いわゆる理由も明らかにされないで会社を首になったということであれば、自分の首になった理由というものを、それぞれの機関に向かって問い合わせすることもできるし、不当であれば不当な首切り行為であるということで、いろいろとやっていくというふうになっておって、そういう立場から、労働者の身分を守る、勤労者の身分を守るというちゃんとした法律があるわけです。
  〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
ところが、結局憲法では、人事局長もおっしゃったとおりに、最高に身分が保障されているということをおっしゃるわけですが、それを一人の勤労者の立場から考えてみると、最低の労働条件ということになっていくわけです。自分がやめさせられたことに対して、一言半句も言う場所も何もない。ただきめられたことについて従わなければならないということになれば、同じ人間として、国民として、人権という立場に立ってみても大きな食い違いができてくるということになるわけです。むしろ裁判官の人権というものは、そこになくなってしまうということの理論が出てくる。私はそう考えるわけでございますが、そういう点については、むしろそういう点をカバーし、国民の前に公正を期していくというのがやはり最高裁のおやりになる立場であり、最高裁がお持ちになるべき制度ではないか、私はそう考えるわけですけれども、そういう立場に立って最高裁はどういうふうな道をお考えになっているわけですか。
#50
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官というものに対しまして、非常に御理解のあるお考えでございまして、私ども非常にありがたく思っております。
 ただ、裁判官というのは、重要な仕事でございますだけに一面きびしい面があるわけでございまして、正当な事由がその解任等には要求されるというのが一般の場合の考え方でありますけれども、裁判官の場合には憲法で任期が定められて、いやおうなしにそこで任期が終了してしまう。再任はされることはできるけれども、そのままでは一応任期は終わってしまうという実にきびしい制度であるわけでございます。私ども、その職責の重要性という観点から見ていきますと、そのきびしい制度であるということも甘んじて受けて、なおかつその職責にふさわしいだけの覚悟を持って仕事をしていかなければならない、そういう覚悟で仕事をしております。下級裁判所の裁判官、これは私もそういう意味では一員でございますが、そういった裁判官が仕事をしやすいようにしていくことが私どもの任務であるわけでございます。その点についての覚悟は、全くいま御指摘いただきましたのと同様の覚悟でやってはおりますけれども、ただ、憲法が厳然と任期制というものをきめておる、そこのところだけはどうにも越えがたい確立された制度である、それを前提にしてものごとを考えていくというふうに考えざるを得ないのではないかと思っているわけでございます。
#51
○沖本委員 憲法できびしい面をきめておる。ことばじりをつかまえてどうこう言うつもりはありませんけれども、そうなってきますと、裁判をやる上について裁判官は良心に従って、あるいは憲法に従い法律に従って公正な判決をしなければならないお立場にあるから、憲法によってきびしくそういう点をきめられておる、こういうことになるわけです。そうであれば、その方々が自分の良心なり憲法や法律に従うだけの高い精神力を発揮できるだけの誇りとか、あるいはそれに足るだけの内容の精神力なり何なりを維持するだけの豊かなものを持たなければ、これは締めつけだけでそういうことができるはずはないということになってくるわけです。そうなってきますと、去年からいろいろ起きている事柄は、平易な一般的なことばで言えば、締めつけがだんだんきびしくなってきて、それに報いてもらえる材料は何もないということになってくれば、裁判官になり手がなくなってくる、こういう結論も出てくるということになります。片方では裁判官が足りなくて困るという一面が起きておるわけです。片方ではそういうところにごまかしがあってはいけないわけですから、そこに高度な精神力を持ってもらうだけの豊かな制度がなければならない。きびしい反面に豊かな制度があってこそ公正な裁判をすることができる、こういうことになるのじゃないかと思うのです。
 あしたいろいろ論議されることになると思いますけれども、判事補の二人合議制の問題、これは専門家の考えではございません、私のしろうと考えですが、一般的なことばで言えば、いま国鉄で、マル生運動が不当労働行為だということで起きていますし、全逓のほうではブラザー制度というのがあるわけです。一人にマンツーマン式でくっついていろいろ不当労働行為をやっていって、本人を労働組織から落としていくという行き方があるわけです。そうすると、片方では再任される人をチェックして落としていく、片方では、悪くとれば、あした論議されるから中身についてはまだあれですけれども、そのまま受け取ってみれば、入って間のない方は、マンツーマン式で最高裁の言うことを聞きなさいよ聞きなさいよというふうにやられて精神注入されていく、そういうふうなかっこうのいい裁判所のマル生運動ではないか、角度によってはそういうとり方もできるわけです。そういうふうにとられる面もあるということなんです。私がしろうとで考えてそう受け取れる面がありますということになる。そういう面を残すということは、裁判所のほうにもそういう角度がうかがわれるものを出してきているということになるわけです、疑いを起こす内容を。そういう点は、やはりすべてのことに正しくものごとをきめていかなければならない最高裁としては、まだまだもっとずっと考えていただいて、中身を充実したものにしていただかなければならない、こういうふうに私は考えるわけでございます。
 そういうことですから、私の申し上げたいことは、一年たって再び同じことを繰り返しながら世論をいろいろと沸騰させていっている。あるいは元裁判官であった方々の大ぜいの方々も、これに対して危惧を持っていろいろなことをおっしゃっていらっしゃる。現職の裁判官の方々もこの内容を憂えて、自分の将来についていろいろ心配して、集まっていろんな発言をしていらっしゃる。弁護士会の方も、この問題を取り上げていろいろ言っている。国民を代表する国会でも、この問題を問題にしている。これは大きな国家の問題であるというふうに、裁判所としてはお取り上げいただかなければならない問題だと私は考えるわけです。ところが、それに対してただ裁判所を信じてください、あくまでも正しくやっていきますからと、こういうことだけで中身が明らかにされないということは、やはり一方的ではありませんか、こう言わざるを得ないわけです。これはもう議論のやりとりにしかすぎませんから、あとは申し上げませんけれども、その点を考えて今後に対処していただいて、すみやかにいろんな点について改善をはかっていただいて、国民が納得のいくような具体的な制度に変えていただかなければならない。それには法律も変えていただかなければならないだろう、こう考えるわけです。まあ畑先生がおっしゃるはずでございましょうけれども、私たちのほうもこの問題について、いろいろ法律も変えなければならないであろうかということで、野党間で協議をして改正案を出そう、こう考えていま準備中でございます。
 そういうことでございますから、どうぞ裁判所側のほうも国民の立場からの心配を退けて、安心して公平な裁判を求められるような制度にしていただきたいことをお願いして、質問を終わります。
#52
○松澤委員長 青柳盛雄君。
#53
○青柳委員 私は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質疑を行なうわけでありますが、長井総務局長は参議院のほうに呼ばれて行ったそうでございますので、これに関連する、先ほどからの質疑と同趣旨の裁判所職員、特に裁判官の任免についてお尋ねいたしたいと思います。
 最近の新聞などを見ますと、「司法に再び試練の春」がやってきたというような表現で、まさに私どもの考えでも司法が行政面において反動化しつつあり、それが三月、四月、任期の切れる時分、あるいは新しく修習生から裁判官に採用するこの春は、まさに重要な時期だと考えます。
 そこで、まず最初に、任期の来た方に対して再任希望を断わるということが、昨年来大きな問題となっております。任期という制度が憲法にあるのだから、これはきびしいかもしれませんけれども、憲法を守る観点からいえば、十年たったら切れるのだ、終身官ではないのだ、そのことを裁判官は肝に銘じていなければならないし、また国民もそれは理解してもらわなければ困る、とこまでは一応理屈として間違ってはいないと思うのです。しかし、問題はそういう形式的な法律論ではなくて、現実が重要なんです。いままでの戦後任官した裁判官も戦前の裁判官とほとんど同じように、定年になるまでは首にはならぬだろう、これで一生自分はかけるのだ、そういう考え方で就職していると思います。これに生きがいを感じていると思うのです。これは憲法で保障されている。二十二条第一項の職業選択の自由に基づいているわけでございますから、何人もこの選択の自由をむげに奪うことはできないわけです。しかし、それは錯覚があるのだ、終身官だと思うことに錯覚があるのだから、そういう錯覚はまず捨てて、任官する際に、十年たったら任期が切れて再採用されないかもしれないということを考えておけと言って済む問題ではないと思うのです。
 なぜならば、最高裁の裁判官は十年目に国民審査にかけられまして、これは多数で否とする者があれば罷免されるわけですね。理由はわかりません、これも要するに多数決ですから。だけれども、これは国民が多数で罷免を可とするわけですから、いわゆるリコールされるわけですから、これに文句をつけるわけにはいかないのですね。民主主義の世の中で公正に行なわれた投票の結果排除されるわけですから。しかし、下級審の裁判官は、一体だれが任期が切れたときにあとを再任をするしないをきめるのだといったら、たった十五人の国民の中の一部の者が、これは最高裁の裁判官という地位を与えられている人たち、この十五人の人たちが、これはだめだと言えばもうそれでおしまい。しかも、昨年来の議論を聞いていると、その理由は言わない、苦情も受け付けない、これはもう行政処分、司法行政処分ではないから異議の対象にもならない、こういう理論でいくと、おそらく行政訴訟を起こしても、それはもう不適当な訴訟であって却下を免れない、あるいは請求棄却以外の何ものでもない、こういう全く専制政治の時代における切り捨てごめんのやり方、暗殺以上に陰険なやり方がまかり通るという、この法制をわれわれはどう考えるか。これを考えると、私は最高裁の人たちが基準もなしに、また公表もしない、また異議も受け付けない、事前に弁明も求めない、それできびしいことを覚悟してくれ、そんなことで通るものかどうか、この点を私は非常に疑問に思うし、最高裁判所の態度は改められなければならないと思うわけです。その手続の前に基準ですが、私は基準も結局何が行なわれているのか、それが国民の審判にたえられるような行為が十五人の最高裁判所の裁判官によって行なわれだのだという、それが明らかになるようなものであればいいと思うのです。
 そこで、一番基本的なことは、思想、信条、特定の社会団体に所属するという理由によって排除されないという憲法十四条の公平の原則ですね、これが再任を認めるか拒否するかの最大の基準であろうと思う。しかし、それは決して思想、信条で差別はいたしておりませんと言って逃げると思うのですね。しかし、青法協が政治的色彩のある団体だ、これに加入していることは司法倫理の上において好ましくない、そういう者は裁判官として適格性が、法的にはあるとかないとか言えないけれども、好ましくない。これは、その適格性の人格を考える上において重要な要素になっているということは言っているわけですね。だからやはり思想、信条による不公平な差別というものがもうすでに顔をのぞかせているわけです。いま問題になっている安倍裁判官、それから昨日再任希望を撤回されましたけれども金野裁判官、そのほか津の裁判所に泉山さんという裁判官がおられる。これは阿賀野川の水俣病裁判で原告勝訴の判決を言い渡した方だといわれますが、そういう方とか、その他岐阜にも青法協の裁判官がおられるそうです。したがって、五人ほどいる青法協の裁判官は、宮本裁判官同様に、今度もまたやみ討ち的に再任を拒否される運命にあるわけですね、昨年の例によれば。それがあしたきまるという非常にこれは残酷なことがいまや進行中であるというわけですから、われわれは絶対に無関心ではいられない。金野さんはすでに撤回されましたから、あしたの問題からは除外されると思います。しかしそれで問題は済まないと思うのです。青法協退治の大方針にのっとって、最高裁裁判官会議がいわゆる魔女狩りをやって、司法反動をますます強化するための暴挙が行なわれているという際だけに、あえて言うならば、金野さんはそれを憂えて、抗議する意味も含めてみずから辞表を出した。任期満了までおられるでしょうけれども、辞表を出した。これはマッカーシー旋風や魔女狩りなどに対する強力な抵抗の姿勢でもあろうと思うし、またその犠牲でもあろうかと思うわけです。
 そこで、私は質問に入ります。最高裁は憲法十四条を守るということを断言できますか、この再任拒否あるいは新任拒否にあたって。
#54
○矢口最高裁判所長官代理者 憲法十四条は、法のもとの平等、貴族の廃止、栄典の制度といったことについて定められたものでございますが、どの条文でございましょうとも、憲法の条文というものは、裁判所はこれを十分に正しく適用していくという決意であることに変わりはございません。
#55
○青柳委員 くどく申し上げませんが、十九条は思想、信条、良心の自由を保障しております。二十一条は集会、結社、表現の自由を保障しております。この二つからいいますと、青法協であるがゆえに、それだけではないけれども、裁判官にふさわしいかどうかを全人格的、総合的な判断をする上でこのことは大きな意味を持っている。大きいということばを抜いても、要するに一つの要素になっているということは、あなた方は従来も言っておられましたが、それは間違いありませんか。
#56
○矢口最高裁判所長官代理者 恐縮でございますが、ちょっと正確に把握できかねましたので、もう一度御質問をお願い申し上げたいと思います。
#57
○青柳委員 思想、信条の自由というようなものや、結社の自由というものは保障されているんだけれども、青法協に加入していることは、裁判官として好ましくないということを、従来からずっと最高裁当局は主張してこられ、そして再任あるいは新任の場合に、青法協の会員であるという事実がわかっている場合には、それは再任あるいは新任をする基準の一つですね。要するに、いろいろの要素を総合して、全人格的に裁判官にふさわしいかどうかということを判定するときの要素になると言っているが、そのとおりかと言うのです。
#58
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官を採用する場合、あるいは再任の場合も同様でございますが、その採用される地位の裁判官としてふさわしいかどうかということを、全人格的に評価して採用するということについては、これまでも申し上げておったところと変わりはないわけでございます。そしてその場合に、青法協の会員であるということだけの理由で採用しないというようなことはないということも、これまで事務総長あるいは私どもが当委員会等において申し上げたところは、変わりはないわけでございます。要は、全人格的な評価として、裁判官たるにふさわしいかどうかという観点からきめられるものであるということでございます。
#59
○青柳委員 それだけでは、すなわち青法協の会員であるということだけではという表現を一貫して続けておられる。そこで、それではそれを一つの要素になるのかと言えば、それについては明確な答えをしないわけですね。ここに欺瞞があると思うのです。確かに幾つかの要素の中にその一つがありますと言えば、もういわゆる不利益自白にひとしいものは出てくるわけですね、直接の犯行自白にはなりませんけれども。その程度のことは、論理の必然として言えなければならぬはずである。だから、それは要素になっておりませんと言うならまた別です。この点いかがですか。
#60
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官たるにふさわしいということが最終的な任用の基準でございまして、それによって御了解をいただくよりほかしようがないのではないかというふうに考えます。
#61
○青柳委員 国会答弁というものはこのようなものかという見本を示しているようでありますけれども、賢明なる国民は、私の質問していることがどこであるかということは、もう十分わかっていただいていると思いますから、これ以上押し問答いたしません。
 そこで、三月二日付の毎日新聞の報道によると、安倍裁判官が問題になっている、爼上に上げられているということでございます。この方はあしたの裁判官会議でパスするのか、あるいは没にされてしまうのかきまることらしいのですが、さてここで、また昨年の宮本事件と同じことが繰り返されるというような危険があってはならないと思います。どうもこの方が青法協の会員であるということは公知の事実のようでございます。おそらくそれが問題にされた基本であろうと思うのですね。しかし、先ほどからいろいろの要素を勘案して全人格的に判定するんだというような話でありますので、裁判のやり方といいますか、どういう裁判をしたというようなことも、資料として十五人の裁判官は調べられるだろうと思うのです。これは非常に重要なことだと思うのですね。憲法違反のような裁判、明白に法律違反と見えるような裁判、もちろん上の裁判所へ持っていって是正されるような裁判ばかり絶えずやっているというような方であれば、これは裁判官にふさわしくないということにもなりましょうからそういうことをやるわけですが、たとえば安倍さんがやった裁判の中で、私きょう資料を持ってきておりませんから正確なことはわかりませんが、和歌山か何かで、社会党系の方の選挙違反事件で戸別訪問罪を無罪にした、あれは憲法違反だ、こういうことが資料として提供されているのかどうかという点を、事務当局として最高裁の会議に出したわけですからお答えできると思いますので、お尋ねいたします。
#62
○矢口最高裁判所長官代理者 どのような資料を提出したかということになりますと、これは人事の問題でもございますし、また裁判官会議の問題でもございますので、お答えをいたしかねるわけでございます。
 ただ、一般的な問題といたしましては、裁判そのものが問題になる場合がないわけではないと私ども考えておりますが、しかし、裁判官が独立して裁判を行なうという観点を重視いたしました場合に、判決の内容等の問題は、その訴訟手続における上訴審でもって是正されていくのが第一義の問題でございますので、私どもは、この点についてあまり重きを置くべきものではないというふうに考えております。
#63
○青柳委員 それから、三月二日の毎日新聞の記事によりますと、何か司法行政について裁判官会議で裁判所長と激論をしたというようなことがあります。これは岐阜の地方裁判所で、ヘルメットをつけて法廷にあらわれようとした岐阜大学の二人の被告とその他傍聴人を、所長は職員をして排除させた。たまたま現場を見た安倍裁判官が、これは不当な弾圧ではないかということを言い、裁判官会議でも激しい論争を繰り広げたというようなことがあるのですが、こういう司法行政について自分の率直な意見を述べるというようなこともまた、再任を拒否するかいなかをきめる上で人格を判定する基準になっているのかどうか、この点もお尋ねいたします。
#64
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官として適当であるかどうかというのは、全人格的評価でございまして、抽象的にはそういうものもすべて含まれてくると考えております。
#65
○青柳委員 いずれにいたしましても、あしたで結論が出ますから……。あるいはさらに論争が内部で行なわれて、あるいは不十分な点があって、さらに延びるかもしれませんけれども、ことしは早々とこのような会議が持たれる。そしてあとは、司法修習生の新任が控えている。私は、根強くこの青法協裁判官をなくしようという方針を貫いていかれることに対して、非常な反対の考え方を持っているわけでございまして、最高裁がこのような魔女狩り的傾向を改めない限り、ついにはみずからが憲法を踏みにじるもの、要するに、先ほどから私が何べんも言っておりますけれども、思想、信条、あるいは集会、結社の自由の侵害というものを、憲法を守るべき最高の立場にあると言ってもいい最高裁判所がみずからの職場においてやっているということをあらわすわけでありますから、絶対にこういうことがあってはならない。国民はいろいろな方法でこれを批判すると思いますけれども、やはり国会もこれについてはいつまでも黙っているというわけにはいくまいと思う。何らかの方法で、このような司法行政のあり方に対しては、プッシュするとか、あるいはこれを是正するという措置がとられていいと思うのです。そういうことも頭に入れて、あしたの裁判官会議できまる場合には、よく最高裁の長官からその点を注意するようにしていただきたいと思います。本日矢口人事局長は、最高裁判所長官の代理者として来ているわけですから、ぜひそれをするように期待をいたしまして、私の質問を終わります。
#66
○松澤委員長 次回は、明八日水曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト