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1971/03/10 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第5号
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1971/03/10 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第5号

#1
第068回国会 法務委員会 第5号
昭和四十七年三月十日(金曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
   理事 小島 徹三君 理事 羽田野忠文君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君
      石井  桂君    大竹 太郎君
      島村 一郎君    羽田  孜君
      松本 十郎君   三ツ林弥太郎君
      村上  勇君    河野  密君
      土井たか子君    青柳 盛雄君
 出席政府委員
        法務政務次官  村山 達雄君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
 委員外の出席者
        自治省行政局選
        挙部選挙課長  土屋 佳照君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  長井  澄君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  矢口 洪一君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十日
 辞任         補欠選任
  中村 梅吉君     羽田  孜君
  山手 滿男君    三ツ林弥太郎君
  楯 兼次郎君     土井たか子君
同日
 辞任         補欠選任
  羽田  孜君     中村 梅吉君
 三ツ林弥太郎君     山手 滿男君
  土井たか子君     楯 兼次郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一二号)
     ――――◇―――――
#2
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所長井総務局長、矢口人事局長、牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○松澤委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
#5
○土井委員 それでは、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、これにつきまして少々お尋ねしたいことがございますので、順を追いまして御質問させていただくことにいたします。
 検察審査会法という法律の立法趣旨について、まず検察審査会そのものの性格をからみ合わせてひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
#6
○牧最高裁判所長官代理者 検察審査会法は、昭和二十三年に成立いたしまして二十四年から発足いたしたものでございますが、検察官の公訴権の実行に関しまして民意を反映させることを目的としたものでございます。実際には、選挙権を有する者の中からくじで選ばれた十一人の検察審査員が、申し立てあるいは職権により検察官の不起訴処分について当否を審査するという形で行なっております。
#7
○土井委員 いまのは非常に形式論でございましたが、おっしゃるとおりその中身で考えていくと、やはり民意を反映するという点が非常に重要な問題ではなかろうかと私は思うのです。特に、憲法で保障されております裁判を受ける権利が国民にある。裁判の適正、迅速というふうな問題を考えていきます場合にも、やはり検察審査会制度そのものが民主的な制度であると高く評価されるというゆえんはこの辺にあると思うのですが、今度の改正を見ますと、これは検察審査会の職員が五十名切り落とされるということになるわけでございますね。なぜ五十名減員をしてよろしいということになったのでございますか、その間の事情をひとつお聞かせください。
#8
○牧最高裁判所長官代理者 検察審査会が民主的な制度としてきわめて大事な制度であるということにつきましては、私どももそのとおりに考えております。今回一部減員をいたすことになりましたのは、検察審査会制度が発足いたしまして約二十数年たちましたので、その間相当の実績もあげましたが、いろいろ事務も整備されてまいりましたし、あるいは事務の機械化等も行なわれまして、事務能率も向上してまいりました。そういうようなことから考えまして、多少余力が検察審査会の事務官のほうにはできたというふうに考えられます。
 一方、裁判所のほうは非常に事務量の負担が重くて、非常に苦労しておるところでございますので、若干の余力を生じました検察審査会の事務官のほうを割愛いたしまして、これを非常に負担の多い裁判部門のほうに振りかえて活用いたしたい、それで配置の適正をはかってまいりたいということから考えたことでございます。
#9
○土井委員 いまの御説明で、どうも実情についてどの程度考えていていただけるかという点に対して、疑問なしとしないのです。と申しますのは、今回この改正案について手元にいただきました関係資料、法務省からお出しいただいているのを見ますと、「事務の簡素化・能率化に伴う検察審査会に勤務する職員」云々とございますが、どうもここで考えていらっしゃるのは、行政機関から考える事務の簡素化、能率化の一点ばかりに尽きるわけでありまして、本来これは、検官審査会の一員として属して、審査そのものに対して、いろいろな機会に――検察官に対しての審査を行なうのは、法律に対するずぶのしろうとと考えなければならないわけでございますね。特に検察審査会そのものが設置されたゆえん、審査会法そのものが立法化された立法趣旨等々に基づいて考えていきますと、やはりそういう人たちが実は大事で、そういう人たちの持っていらっしゃる民意というものをできる限り検察そのもののあり方に対して反映していかなければいけないのだというところにこれは問題があるわけですから、事務の簡素化、能率化というものが進められることはけっこうでございますが、その点に対する配慮が十分に尽くされているかどうかという点が、実は第一義に考えられなければならない問題じゃないかと思うのです。
 そうしますと、実情を私が知り得る乏しい範囲内でもよく聞かされる問題は、どうも検察審査会の事務そのものは、単に形式的な事務そのものに流れてしまっている傾向が強い。一般の方がどういうふうにこの問題に対して考えていてくださるか、特に、法律に対してずぶのしろうとの方々に対して、十分にこの立法趣旨を徹底させて、制度そのものの本来のあり方というものに合致させていくための努力というものがどの程度果たされているかというと、どうも不十分のそしりを免れないという意見を、検察審査会の事務に携わっている方々の中から私は聞くわけです。そういう意味からすると、どうも事務の中身は行き届かない点だらけだ。なぜかというと、もう少し人数の点からこの辺配慮されて、その配慮は減員じゃない、むしろ増員ということを求めていらっしゃる気配すらあるわけです。
 このときに、どうも五十人というものを減員なさるということは、ほかに何らかのもっと積極的な理由がなければならないんじゃないかと思います。ここに書かれてある中身が、事務の簡素化、能率化とありますが、むしろ民間から考えてまいりましたら、国民の立場から考えてまいりましたら、それが粗末化ということに通ずるようであってはならないと私は考えるわけでありますから、ひとつその点について、特に五十人も削り取られるということを考えますと、積極的な他の理由というものが何らかなければならないのじゃないか。もっと説得のきく他の理由というものがなければならないのじゃないかと思っておるわけですが、この点どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#10
○牧最高裁判所長官代理者 今回の検察審査会事務官の定員の減によりまして、検察審査会の事務に支障を与えるというようなつもりは、私どももさらさらございません。検察審査会事務官の仕事は、いわゆる検察審査会の補助でございまして、検察審査会の仕事の内容としては、主体として開かれるのは、いわゆる検察審査員をもって構成されました検察審査会でございまして、検察審査会事務官はそれの補助をいたすということの職務でございます。
 今回の削減によりましても、先ほど来御説明申し上げましたとおり、事務の能率が向上されたので若干の余力を生じて、その分を裁判部門のほうに振り向けるというだけのことでございまして、検察審査会の事務自体について支障を与えるというようなことをいたさないつもりでございます。
#11
○土井委員 それは、ただいまの御説明のとおりにいけばまことにけっこうなんですが、このところ巷間には、検察審査会そのものの果たしている役割りというのが、当初から考えるとずいぶん国民の持っている考え方から離れていっているんじゃなかろうか。当初設置されたときの、民主的な運営というものがまず第一の問題でなければ、それは検察事務に対しましても民意を反映せしめるということが果たされないと思うわけですが、その点から考えていくと、やはり限られた人たちで限られたことをやって、限られた程度にとどめて終わってしまうという気配があってはならない。それからすると、どうもやはり、検察事務に対しての審査が国民の名においてあるのであるというふうな意味を、もっともっと徹底させていくということに対する配慮があってしかるべきだ。先ほど、これについては年々能率をあげて効果をあげているというふうないろいろ御説明もございましたが、検察審査会それ自体が取り上げてそして問題にして十分に効果をあげた事例というのは、実は年々ふえるどころの騒ぎじゃない、低下していっているというふうに、私は数字を見て思うわけです。また内容を見て思うわけです。ですから、そういう点から考えますと、一そうの御配慮というものがあってしかるべきだと思うのです。その点、そればかりを突っ込んでいって時間を費やすわけにまいりませんから、十分な御配慮ということをひとつ申し上げておいて、それでは先に進みたいと思うのです。またあとで関連する問題が少し出てくると思いますが……。
 裁判官の問題に移りますが、裁判官の志望者というのがこのところ年々減っていっているということを私たち聞くわけなんですが、今回の二十四期の裁判官志望状況というのはどういうぐあいになっておりますか、その数字がもうすでにはっきりおわかりになるなら、ひとつお知らせいただきたいと思います。
#12
○矢口最高裁判所長官代理者 大体この四月に、二十四期の修習生がいわゆる法曹資格を取得するわけでございます。一月の末をもちまして、そういう裁判官の希望の事務的な締め切りをいたしましたが、その段階で御説明を申し上げますと、判事補の志望が六十五名でございます。そういたしまして簡易判事の志望が二名で、結局裁判官志望は合計六十七名ということでございます。
#13
○土井委員 これは昨年度に比べてどういうぐあいでありますか。一昨年に比べてどういうぐあいでありますか。年々減っていっているというふうにはお考えになりませんか。その点お聞かせください。
#14
○矢口最高裁判所長官代理者 昨年度は実は二つに修習終了の時期が一部ずれたのがございましたが、それを合わせて考えますと、七十二名の希望がございまして、結局六十五名を採用したという状況でございます。一昨年は、トータルといたしまして六十四名を採用したという形でございます。
#15
○土井委員 私の質問はそれで終わっているわけじゃないのです。まだ御答弁を続けていただきたいと思うのです。
 それで昨年、一昨年に対してことしの志望状況を比較しました場合に、それはどういうふうな傾向があるということをお感じになっていらっしゃるかという点について……。
#16
○矢口最高裁判所長官代理者 いまの数字でおわかりいただけますように、必ずしも裁判官の志望状況が減ってきておるというふうには私どもは考えておりません。ただ、もう少し志望してくれる人たちが多くあってもいいのじゃないかという感じも持っておりますけれども、現在のところ、減ってきたというふうに申し上げるだけのものではない、むしろ横ばいであるというふうに考えております。
#17
○土井委員 毎年の比較を見ていくと、結果の数字からはそういうことがおっしゃられるかもしれませんが、それじゃ本年度、二十四期の志望者について言うと、当初から考えて、初の裁判官を志望していた人が後にやめていくという傾向が強いか、それとも、初め志望していなかったにもかかわらず裁判官になりたいという志望を持つ人がふえたか、いずれでございますか。
#18
○矢口最高裁判所長官代理者 当初、修習生になりますときに、一応将来どういうものになりたいかというような希望も聴取しております。そういう希望は、最高裁判所にございます研修所ということであるのかもしれませんけれども、裁判官というふうに書いてありますのが百数十名あるのでございます。これはもう昔からそうでございます。結局二年間の修習をやりまして、大体予備的な調査を十二月末――後期に入ってまいりますのが十一月の末ごろでございます。それで十二月の末までに一応予備的な調査をいたします。その段階では逆に、確定的な裁判官志望というのだけが裁判官志望で、あとの方は未定と書かれるというようなことで、四十名前後が裁判官志望、あと未定の方が相当、百名近くあるというような状況で十二月まで終わります。最後に一月の末ごろに裁判官、検察官の志望というものが確定的になってまいりますが、その段階でそれが大体倍近くの数字になりまして、七十名前後の希望の数字になるというのが、大体最近の傾向でございます。
#19
○土井委員 当初司法試験をパスして司法研修所に入ったときには、百数十名裁判官を志望なさる方がおありになるというお話ですが、これは、わけがわからずにただあこがれでもって裁判官、裁判官とおっしゃるわけじゃなかろうと思うのです。やはり司法試験を受験するための準備というのは、これは釈迦に説法でございますけれども、なみなみならぬ努力が要りまして、それにはかなりの意欲をもってかからないと、司法試験なんてパスできるものじゃないと私は思います。ですから、将来これだけのことを自分はやりたいんだという意欲は、すでに受験勉強の段階からある。そして意欲を燃やして幸いにして司法試験をパスして司法研修所に入って、行く行くはということを考えられている数字が私はそこに出ているんだと思います。行き当たりばったりの数字じゃないと思うのですね。それなりの確固とした、自分ではそうなりたいという意欲があってのことだと思いますが、それが後にがた落ちに減るということについて、なぜだろうとお考えになったことがございますか。
#20
○矢口最高裁判所長官代理者 いろいろの理由があろうかと思いますけれども、研修所に入りましていろいろ修習をし、また現地の修習を通じまして、裁判官、検察官、弁護士というものの実態に十分に触れていくということでございます。学校を出まして、一応単なるあこがれというだけではないと思いますが、司法修習生を志望するという場合と、二年間それぞれの実務を通じまして、その職業のきびしさというものを知っていった結果出てくるものとは、そこにかなりの開きがあるということは、私ども現実にこれを認めていかなければいけないのじゃないかと思っております。裁判官の仕事と申しますのは、これはむしろいまさらあらためて申し上げる必要もございませんが、非常にきびしい面を持っている。そういった面に耐えられるかどうかということは、それぞれの方がそれぞれに疑問を通して最終の志望というものをおきめになるのだろうと思います。
 私どもは優秀な、りっぱな方がどんどん裁判官になってくださるということは非常に希望しておるところでございますけれども、いろいろと考えたあげく、裁判官の志望はしないという方がございます。私ども、事務総局に参ります前には、地方裁判所等で修習生の指導ということを担当いたしてやってきた場合もございますが、いよいよ最終的な志望をきめるというころになりますと、皆さん相談に参りまして、自分でつとまるだろうかというようなことをおっしゃって見えるわけでございます。そういう際には、だいじょうぶだからやりなさい、判事補の期間が十年もあって十分そこで勉強ができるので、いま直ちに完全なものを求めないで、十分やっていけばやれるんだからということを申すわけでございますが、まあ修習生の方が現実に見ておられる裁判官の仕事ぶりというのは、やはりかなりきびしく映るようでございまして、とても自分には耐えられないということで断念されるというケースが、かなりの程度出てきておるのではないかと思っております。
 そんなようなことで、最終的な志望者というのが、ある程度入所当時のばく然たる志望というものと違いまして減少してきておる、これはある程度はやむを得ないのじゃないかと考えます。
#21
○松澤委員長 土井委員に申し上げます。村山政務次官並びに自治省の土屋選挙課長が出席いたしましたので……。
#22
○土井委員 いま、やむを得ないというふうな御発言でございますが、しかし、これは今度のこの改正案を見ましても、判事補の人数を九人増加するということに相なっていますね。ですから、これは人員が減少していくということの食いとめをやらないで、増員ばかりをお考えになっても無理だろうという事実が出てくると思うのです。その点を考えてまいりますと、自信を失うとおっしゃる。またそれは職務がたいへんきびしいということに触れて、自信をだんだん失っていかれる方が多いのだということをおっしゃる。その際のきびしいというのにも、私は中身はいろいろあると思うのですよ。最も自信を喪失されるきびしいと言われる根拠はどの辺にあるかという点を、ひとつ具体的におっしゃっていただきたいと思うのです。それは労働条件がきびしいとか、それから給料がたいへん低いのに仕事の中身がたいへんに多いきびしさがあるとか、それから管理統制がきびしいとか、いろいろきびしいとおっしゃる中身はあろうかと思うのです。最も自信を喪失されるということの原因になっているきびしさというのは、どの辺にあるとお考えですか、最高裁当局とされましては。
#23
○矢口最高裁判所長官代理者 非常にむずかしい御質問で、しかも裁判官の仕事の本質をついた御質問でございますが、私どもがむずかしいというふうに申しますのは、決して管理統制がきびしいとか、そういうことで申し上げておるつもりではございません。ただ、これは修習を一緒にやります仲間のうちでも当然のこととして受け取られておるのでございますけれども、私どもの口からそういうことを申し上げるのは非常に口幅ったいようでございますが、やはり裁判官になる人たちは、そのクラスの仲間の中でも上位のできの人でなければいけないのだということが自他ともに認められておるようございます。そうして、そういう人間に自分が当たるかどうかということを各人の方が謙虚に反省されて、そこで迷われるということがまず第一点でございます。このことは、まあそんなに気にしなくてもいいじゃないか、これからほんとうに仕事に身を入れてやれば、そこで、仕事そのものの中で鍛えていけばいいじゃないかということを、私どもはおりに触れて申すわけでございますけれども、やはりそれは皆さんが、この法曹三者の中の裁判官の仕事の職務と責任の重要性ということを自分自身でお感じになり、そしてそういったものに自分が適するかどうかということを厳格に自省される結果、一つの数字に出てきたものであると申し上げざるを得ないのではないかに思います。
 それからまたそのほかに一般論といたしましては、公務員というものになるよりも、自由な職業でございます弁護士等をやりたいというような考え方、これは何も法曹の卵に限ったものではございませんので、一般にそういう気持ちがあると思います。また裁判官の場合は、全国に非常に数多くの裁判所がございまして、御承知のように、そのどの裁判所にもそういった方に行っていただかなければいけないという面もございますので、かなり転勤というものが不可欠な要素として出てまいる。そういたしますと、大都会から小さな都会に移りたくないが、そういったことを裁判官になれば、どうしても三年に一度程度の割合で経験せざるを得ないというようなことも、これはまた裁判官の志望にブレーキをかける一つの原因になるのではないか。そういったものがまざりまして、大体落ちつくところ七十名前後の数字が出ておるということではなかろうかと思います。
#24
○土井委員 いまおっしゃいましたとおり、裁判官というのは有能で人格がすぐれていなければならない、自他ともにそれは許されるべき問題でなければならない、おっしゃるとおりだと思うのです。ところが、自分自身でその資格がないというふうに自信を喪失していかれるという理由、それは一様ではないでしょうけれども、聞くところによりますと、裁判官自身に対する魅力が乏しいということが最大の原因らしいです、これは私が聞いている範囲では。特にこれは現地の若い裁判官、特に司法修習生十期代以降の中には、特に有能だといわれた人、人格がすぐれているとうい点では自他ともに許してしかるべきであろうと思われる方々が、有能であることのために、弁護士になっても十分やっていけるということで、もはや裁判官より弁護士にというふうにかわっていかれる方が、このところふえている現象があるわけです。現役の裁判官の中にそういう現象があるということは、その他の問題もおありになると思いますけれども、これは司法研修所の中でいろいろ研修をお受けになっていらっしゃって、やはり先輩から受ける感化というのは非常に強いのじゃないでしょうか。初めは裁判官ということを志望していたけれども、私はもうやめようかという方がふえてきている現象、これは無視し得ない一つの傾向だと思うのです。その中身を探索していくと、それは一点理由を示せといわれれば、現在裁判官に魅力がないという一点に尽きるだろうと思うのです。
 なぜ魅力がないかといえば、本来裁判官の職務というものは、独立性が保障されていなければ全うできるものじゃありません。特に憲法七十六条の三項でいうとおり、その良心において独立して職権を行なわなければならない。それは職務責任として憲法が義務づけているところなんです。そして、この憲法と法律のみに拘束される、以外のものに拘束されてはならない、これは厳然たる憲法上の規範です。憲法上の規範にまず拘束されて、裁判所において裁判を実行するというのは裁判官としての職責だということになっておる。そこからすると、まず保たれてしかるべきは裁判官の独立性の問題だと思うのです。もちろん裁判官の独立性というのは、言うまでもございません、司法権そのものが独立していなければ、裁判官独自の独立性というのは保たれない。と同時に、司法部内における個々の裁判官においての独立性というものを最大限に保障していくという姿勢が保たれていなければ、実は裁判官一人一人が裁判を取り扱うにあたって、その職責を全うする基盤というものが十分に保障されているとは言えないと私は思うのです。そういう点がどうも最近はだんだんあやふやになってきている。そうして、どうも間々この独立性というものが侵されるような気配すら出てきている。
 特に最近の、もうこれはここでは再三再四繰り返し繰り返し問題にされる、そうしてまたかという問題になってまいりますけれども、再任の問題、再任の問題をめぐっての拒否、それから新任に対してはこれを認めないという一連の問題でございます。いかがでございますか、現職の判事補は再任願いというのをお出しになりますね。それから今度は、任官される方々は任官に対してのいろいろ希望を出されるわけでしょう。それぞれの中身は、これは請求権がその中身としてあるというふうに考えていいわけでございますか。再任せよという、あるいは新任しろというそういう請求権が、この願いを出す場合の中身として考えられてよいというふうにお考えになりますか。いかがでございますか。
#25
○矢口最高裁判所長官代理者 いわゆる十年たちまして判事になる、判事補十年いたしまして判事になる場合、あるいは判事を十年いたしましてさらに判事になる場合、いろいろございますが、そういうものをひっくるめて再任というふうにお述べになっておるようでございます。私もそういう意味で使わせていただきますが、そういう再任、それから修習生から判事補になる場合の新任、そのいずれの場合を含めまして請求権というものはない、これは昨年来申し上げておるところでございまして、そういうふうに考えております。
#26
○土井委員 そうすると、どういう意味になりますか。再任願いを出すというその行為自身はどういうふうに考えていいわけでございますか。法的な性格からしますとどういうことになりますか。
#27
○矢口最高裁判所長官代理者 一般の行政官の場合に、採用願いが出る場合と全く同様に考えております。
#28
○土井委員 そうすると、一応解任されたという前提に立って、再度再任を要求するという意味を持つわけでございますね。
#29
○矢口最高裁判所長官代理者 これは、新任の場合はちょっと横にのけさせていただきまして、十年の任期を終了して再度採用名簿に登載する場合について申し上げますれば、任期終了によって当然その官職を失うわけでございますので、解任というものではないと思っております。任期のある官職がいろいろございます。たとえば人事官でございますとか、会計検査院検査官でございますとか、公取の委員でございますとか、任期のある官職がほかにもございます。そういう官職の方も、その任期が終われば当然それでその職を去られるわけでございます。その場合に、もう一度任命されればこれを再任といっております。ちょうどそれと同様でございまして、解任という問題はその中に入ってくる余地はないと考えております。
#30
○土井委員 そうしますと、自動的にその身分を失うというふうに理解していいわけでございますね。自動的にその身分を失って、あらためてその職務につくということを要求する行為である、それがすなわち再任願いを出すという行為において表現されるというふうに考えていいわけでございますか。
#31
○矢口最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
#32
○土井委員 そうしますと、その際一応再任願いということを出す以前に、どのような場合には再任されるか、どのような場合には再任されないか、また新任については、どのような場合に新任されるか、どのような場合については新任されないかという、それについて明確な根拠というものがなければ、再任願いというものを出すということの前提を欠いていると私は思うのですよ。いかがでございましょう。
#33
○矢口最高裁判所長官代理者 おことばではございますが、官庁なり会社なりどこでも同じことでございますが、何名程度の人をほしいということはあるわけでございます。そういうことがありますと、そこで採用してほしいという方が採用願いをお出しになる。それはもちろん、いわゆる受け入れ側とこれに応ずる側との人的な問題があるかと思いますが、たとえば四月に常に判事が定期的に採用される。その機会に判事補からも希望が出るわけでございましょうが、この機会に弁護士をやめて判事になりたいというような方が相当数お出になりますれば、また現に常に一定の人数の方がそういう御希望のお申し出になりますけれども、そういった場合に、全部ひっくるめてどの方に来ていただこうということになるわけでございまして、これは一般の官庁、会社等の採用の場合と同様になるわけでございます。
#34
○土井委員 ちょっといまの御説明を聞いていてひっかかる点があるのですがね。一般の会社においても要員のワクがあって、どの方に来ていただくかということを取捨選択するというふうな趣旨の御説明がございましたが、事裁判官について一般の会社、企業についての要員の問題と同じように考えられたら、これはたいへんな問題ではなかろうかと思う。一般の会社、企業というものは営利企業体、営利組織である。やはり景気の変動に伴って要員の員数というものは、会社側が一方的にきめてしかるべき問題でしょう。しかし、裁判所における裁判官の員数がどの程度必要かということは、それは形式的な意味においては、結果的には最高裁判所が一方的に決するという問題になりましょうけれども、内容を決するのはやはり憲法で、それは国民の人権、国民の自由というものを保障するために、そういうことを保障するとりでとして裁判所があるということを忘れられては、これは困ると思うのですね。そういう点から考えますと、同じように取り扱って、員数について取捨選択の基盤を求められるということは、これはちょいと問題があると思うのです。ちょっと御説明について不穏当な点がありはしませんか。
#35
○矢口最高裁判所長官代理者 ことばが足りませんで恐縮でございますが、そういうふうに最高裁判所が恣意できめるべき性質のものでないことは申し上げるまでもありません。そこで定員法というのがございまして、判事の人数が何名、判事補の人数が何名、簡易裁判所の判事の人数が何名ということを、国会で御審議いただきましておきめいただいておるわけでございます。といたしますと、その定員に対する欠員という関係で、当然何名の範囲で判事を採用していいかということがきまってくるわけであります。私ども、定員をこえて判事を採用するというようなことは絶対できないわけでございます。ただ欠員がございますれば、これはその欠員をできるだけ埋めていくという形で、ことしは何名程度ということが出てまいるわけでございます。根本は、やはり国会で定員法で裁判官の人数を何名にするかということを御審議いただいております。今度お願いいたしております法案も、そういう趣旨の法案であるわけでございます。
#36
○土井委員 論点が、どうも再任の問題と採用の問題と混同しまして、いまの御説明は採用ということをおっしゃっているわけですから、新任の方々についての採用ということに終始している感がありますが、それならばちょっとお伺いしたいのです。
 予算定員というのがございますね。配置定員というのがございますね。現在員というのがございますね。それについては裁判官それぞれどういう内容になっているか、お示しいただきたいと思います。
#37
○矢口最高裁判所長官代理者 これは総務局長の所管でございますが、便宜私のほうからお答え申し上げますと、裁判官につきましては、最初増員の場合に、予算で、今回の場合でございますと判事補九名の増員でございますが、そういう予算を政府と折衝をいたします。そうして予算の概要要求を提出いたしますと同時に、それに合いますように予算関係法案として法律の改正をお願いいたすわけでございます。これは法務省が提案いたしまして法務委員会で御審議をいただくということでございます。したがいまして、予算的な増員が認められますれば、それに伴って当然法律を改正していただかなければいけないわけでございます。もし法律の改正ができません場合には、幾ら予算が認められても、それは絵にかいたモチになってしまうという状況で、基礎になりますのはあくまで法律定員でございます。
#38
○土井委員 その中身を、それぞれ昭和四十六年度についてひとつお知らせいただきます。
#39
○矢口最高裁判所長官代理者 最高裁判事及び高裁長官、これが合計二十三名でございます。それから判事が千二百六十八名でございます。それから判事補が五百五十九名、それから簡易裁判所判事が七百六十九名、合計いたしますと二千六百十九名というのが四十六年の法律定員でございます。
#40
○土井委員 法律定員とおっしゃるのは、すなわち予算定員ですね。
#41
○矢口最高裁判所長官代理者 予算に合っておりますので、そういうことに相なります。
#42
○土井委員 現在員もそれにぴったり合っておりますか。
#43
○矢口最高裁判所長官代理者 現在員は、残念ながらある程度の欠員がございまして、トータルで八十七名の欠員がございます。
#44
○土井委員 特にその現在員で減っている裁判所で、特徴的なのはどこだということが言えますか。最高裁ではない、高裁か、地裁か、家裁か、それとも簡裁かということですが……。
#45
○矢口最高裁判所長官代理者 これは御承知のように、裁判官の配置状況と申しますか、そういったものは、事件数に応じまして、全国の高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所に一定の基準をもちまして配置いたしておりますが、裁判官は六十五歳になりますと定年で退官いたします。それが四月の中ごろにくることもございますし、八月にくることもございまして、その日がまいりますれば退官ということでございます。それがどこで発生するかということにつきましては、私ども形式的には誕生日が来ることによってわかりますけれども、大体全国一律に七、八十名毎年減員がございますけれども、そういったものがばらまかれるように、ある個所に定年退官者が一度にかたまって出ないような配置を心がけておる次第でございます。
 率直に申し上げれば、四十九、五十近い裁判所、これは地・家裁は一本と考えました場合ですが、各府県に対応する裁判所がございますが、そういったところで、毎年一名出るところもあるし、二名出るところもある、場合によっては出ないところもございますが、平均いたしますと、一、二名の退官者が出るということでございます。したがいまして、御承知のように、大量補充の時期は四月でございますので、三月、いまごろを例にとりますと、一番欠員が多いときでございますが、各庁一名、二名の欠員を持っておるというような状況に相なっておるわけでございます。
#46
○土井委員 それだけの欠員があるからというのでしょうか、結果としてはことしは再任を全員に対してお認めになった。金野判事補の問題は残りますけれども、結果的には実際問題としてお認めになったわけですね。ただ、この節よく新聞なんかでも報じられておりますとおり、威嚇射撃をやって、効果をあげたから事足れりというふうにお考えになったら、これはだいぶ違うだろうと思うのです。やはり本来、現場の裁判官がだんだんおやめになるということで人数がそれだけ減るわけですから、減ったということに対するあと追いばかりをやっていては、これはどうにも追っつかない問題でございまして、やはり才能もあって人格も高潔な、そして優秀な人材を裁判所では裁判官として確保できるのだという基本問題というものががっちりしてないと、これは取りとめのない悪循環をたどるだろうと思うのです。むしろ最高裁のほうがお求めになる優秀で人格のすぐれた方というのに逃げられて、そして人数をそろえるのに一生懸命という、むしろ好ましくない現象すら私は出てくるということを予測しなければならないのではないかと思うのです。
 そういう点から考えますと、やはりこの節、もうここまでまいりましてはっきりさせなければならぬのは、裁判官としての独立性というものをこういうふうに保障しているのだ、こういうふうに保障していこうとしているのだというところをはっきりお示しになることだと思うのです。その点からしますと、毎年毎年これは繰り返し、大量補充の時期が来るたびごとに同じ問題として取り上げなければならない。再任、新任をめぐり、一体この再任拒否の基準はどこにあるのか、そして再任を拒否するという根拠を示せという問題だろうと思うのです。やはりこのあたりでひとつ態度決定をはっきりなさる必要があるのではないか、私は今回の判事補九名増員の問題を考えながらそれをしきりに考えるのですが、いかがでございましょう。
#47
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の充実ということに非常に御理解を示していただきまして、その点ありがたいことであると考えております。法務委員会でもしばしばそういう観点から、私どもに対する御質問なり御理解なりをお示しいただいておるということは、まことに恐縮でございますけれども、私どもそういった線で、優秀な、何人が見ても裁判官として、なるほどあれが裁判官なんだと見られるような人材が、一人でも多く裁判官を志望してくれるということを日夜念願しておるわけでございます。
 御承知のように裁判官というのは、当事者でございます検察官、弁護士と比べまして、ある一定の事柄につきまして決断を下し、そのことが直接国民の権利義務に連なることでございますので、ただ人数さえそろえればいいというわけにはいかないのでございます。もし人数さえそろえればいいということでございますれば、まだまだいろいろな方法があり得るかと思いますが、私どもは石にかじりついてもそういう安易なことをやってはいけないのであって、やはりだれから見られても、あれが裁判をしておるなら、もうあれがきめたことであるならしようがないというふうに、みんなが思うような方に来ていただきたい。そういう方でなければ、やはり裁判官としては困るというふうに考えております。そういう観点から、少しでも優秀な裁判官に来ていただけるならば、これは私どもは大歓迎でございます。そういうことのために、給与の問題とか実質的なもろもろの待遇の問題とか、そういった点を考慮させていただき、また当委員会等におきましても、以上のような意味で御理解を示しいただいておるわけでございます。
 それで、基準ということをおっしゃいますけれども、私どもは、毎年新たに修習生から採用されます裁判官につきましても、仲間うちの話を聞いておりますと、やはりあれが裁判官になるならだいじょうぶだ、あれはちょっとどうかなというような話があるようでございます。そして、あれが裁判官になるならだいじょうぶだというような方は、結果的には私ども喜んで採用させていただいておる。しかし、あれはどうかなというような方まで、ただ欠員があるということだけでとることは、いかがであろうかというふうに考えるわけでございます。
#48
○松澤委員長 土井委員に再度申し上げます。
 最高裁判所の吉田事務総長が御出席なさいましたが、時間については二、三十分ということでございます。同時にまた、出席説明の承認をまだ与えておりませんので、もしも御質問がありましたら、その前に皆さん方の御承認を得るようなことにしていただきたいと思いますので、あらかじめ御了承願います。
#49
○土井委員 いま、仲間同士の間でそういううわさがある、だからそれは、あの人がなるのならけっこうだと言われるのはけっこうだ、最高裁の事務担当の方からお考えいただいてもけっこうだと思われる、どうかと思うのはどうかとおっしゃいますが、それはどういう方々の意見というふうなものに基づいてそういうことをおっしゃるかという点が、まず第一に問題になってまいります。それから、何かにつけて私たち思いますのは、かつて東京高裁長官が一九七〇年の年頭のあいさつの中でおっしゃっておるとおりに、国民の信頼を離れて裁判の権威はないということばだったと思うのですが、これはまことに私はそのとおりだと思うのです。国民の信頼を離れて裁判の権威はないとおっしゃっている、国民の信頼を得るということは一体どういうふうにすればできることであるか、この点を私はないがしろにはとてもできないと思うのです。一連のうわさだとか、限られた仲間うちでの評価だけを取り上げて問題にされるというのは、ちょっといろいろな点で十分とは言えないように私は思うのです。
 一体、国民の信頼というふうなものを得るということを考えていった場合に、忘れられてならない問題があるのではないか。これはやはり憲法と法律にのみ拘束されて、訴訟に対する訴訟手続、訴訟事務、裁判に対する取り扱いというものがあるわけなんですから、そういう点から考えると、どの程度にこの憲法というものを大事に考えているか、どの程度に憲法に従って法律を解釈し、適用しようという態度があるか、この点だろうと私は思うのです。そういうことに対して、最高裁がいろいろ再任者とか新任者をお考えになる場合に、御配慮がどの程度あるかということを、実は国民の一人として私も常に関心を持っているわけですが、国民の信頼というものは、だんだん裁判官の再任の季節のたびごとに、どうもあやしげになってきたという意見が出て、失われていっているのではないかと憂慮される一連の傾向は、その辺にありはしないかと思うのです。憲法を大事に考え法律を順守する、しかしその法律についてもまず憲法なんだ、憲法と法律にのみ拘束されるということを忘れずに、それを基本に置いて裁判を取り扱う、その基本的な姿勢というものが、確固として裁判官にはあるのだというふうなことが確かめられることが、まず基本的な問題じゃなかろうかと私は思っているわけですが、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということを、ひとつ伺わせていただきたいのです。
#50
○矢口最高裁判所長官代理者 正当な御指摘でございまして、裁判官は憲法及びそれに基づく法律にのみ拘束され、良心に従って裁判をいたすわけでございます。裁判官の特質というものは、そのことばの中にすべてが言い尽くされておると私どもは考えております。また、現在やっております裁判官全員、そういう気持ちでやっておるということは、これは間違いのないところでございます。
#51
○土井委員 それならば、新任のときに、いろいろこれからこの方が裁判官として適当であるかどうかということをお考えになる資料としては、どういうものがございますか。これは再任の場合と私わけが違うだろうと思うのです。再任の場合には、すでに手がけてこられた判例というものがあるだろうと思うのです。ところが、新任の場合にはまだこれからということでございますからね。だから、これは手がけられることについてはこれから先の問題ですから、いわば判定の基準として、どういう裁判に臨んでどういう判決をどういう判決理由で出されたかということを問題にすべくもないわけでしょう。その点いかようにお考えでございますか。
#52
○矢口最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおりでありまして、新任の場合といわゆる再任の場合とはかなり事情が異なっております。新任の際の資料といたしましては、大学までがどうであったかというようなこともございますけれども、しかし、大学というのはいわば勉強の過程でございますので、司法試験に受かりまして、研修所に入って以降の、いわゆる実務家としての修練をいたす、その二年間におけるあらゆる評価というものがその人の成績ということで出てまいります。そういったものが勘案されて、採用すべきかいなかが決定されるということでございます。
#53
○土井委員 その節、私たちは最近のいろいろなあたりでのできごとを新聞を通じて知るに及んで、どうもこういう点について、最高裁当局はどういうふうにお考えになるのであろうかと思われる節がちょろちょろ出てくるわけですが、それはどういうことかというと、弁護士会の会合なんかに公安調査庁の方が中に入っていらっしゃったということがあとで明るみに出るとか、それからいろいろな事件について弁護を展開なさるのに、やはりその背後にそういう思想探偵、思想調査のような事例があるというふうなことがそろそろ出ております。弁護士は弁護士でありまして裁判官じゃありませんけれども、やはり裁判官活動についてもそういう一連の事件が出てくるということになりますと、これは裁判の公正とか、裁判の公明性というふうなことを期す上から考えますと、私はいかがわしい問題だと思うのです。こういうふうなことについて最高裁判所当局としてはどういうふうにお考えになっているか。むしろそういうふうな一連の事件を通じて、私たちの憶測にすぎないということになれば、これはまことにけっこうなんです。
 そこで、考えていくべき問題として次に出てくるのは、やはりだれでも同じことだと思いますが、新任の場合に、思想傾向だとかあるいはどういう主義、主張を持っているかとか、そういうふうな点がそれぞれ勘案されるのじゃなかろうか、そういうことによってむしろ新任が認められるとか認められないというふうなおもむきがありとするならば、これはまさしくゆゆしい問題でありまして、これは個人の持っているところの思想の自由だとか、あるいは持っているところの信条により差別を受けないという憲法上の保障からしましても、認めることができない事柄だと私は思うのですね。言うまでもございませんけれども、憲法で保障するところに違反するような事務取り扱いを最高裁自身がなさるということは、これはもとよりたいへんな大問題ということでございますから、その点は私は、他に誤解や憶測を生じないまでに十分の配慮があってしかるべき問題だと考えるわけですから、一言聞かせていただいているわけです。
#54
○矢口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げるまでもないことであろうかと思いますが、重ねて申し上げますならば、思想、信条等によりまして、そういった区別をこれまでもいたしたことはございません。現在もいたすつもりはございませんし、将来もそういうことをいたすつもりは毛頭ございません。そのことは、当委員会でおそれはないかというような御質問が出ること自体私どもの努力が不足だということにあるいはなるかも存じませんけれども、この機会に十分御理解をいただきたい、万々そういうことはないということを、重ねて申し上げたいと思います。
#55
○土井委員 最近、これは裁判の問題によりを戻して申し上げますが、地方裁判所、特に大、中都市では裁判官の人数というものが十分じゃない。そのことのために、証拠調べの期日というのが半年以上先へ延ばされるというふうなこともある。半年以上先に証拠調べなんかが指定されるというふうな例がだんだんふえているのですね。つまりこれは訴訟の遅延ということになると思うのですが、そういうふうなことを考えていって、最近京都の地裁に裁判官が増員されたということを聞いておりますけれども、そういう事実があるのでございますか。
#56
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判が遅延するということは、これはいかなる理由でありましょうとも、私どもが全責任を負って防止しなければいけないことでございます。実は京都の裁判所の、主として民事の事件でございますけれども、他の個所に比べまして事件がかなりたまっておるという事実がございます。配置定員というものは、法律で定められました定員を事件数に応じまして一定の割合で全国に配るものでございますから、特定の庁のみそういった現象が顕著に出てくるということは、理論的にはあり得ないことでございますけれども、現実の問題としてそういうことがございましたので、これは私どもの全責任において何らかの対策をとらなければいけないということを考えております。
 しかし、御承知のように、年の途中におきましては、どこかを減さない限りはそこをふやすということはできないわけでございますので、私ども実は裁判に直接関係のない部門、すなわち事務総局部門、それから研修所の直接研修を担当しておらない部門から裁判官三名をさきまして、そちらには欠員を補充することなく、京都に一応の応援体制をとったという事実がございます。
#57
○土井委員 その際、書記官についての増員はございましたでしょうか、ございませんでしょうか。
#58
○矢口最高裁判所長官代理者 書記官につきましても、三名の増員の措置をとりました。
#59
○土井委員 従来は、裁判官一名について書記官三名ずつ配置をさせるというふうなことが考えられてきたという、これは慣例だと私は思うのですけれども、実情があったようでございますね。ところがこの節、書記官三名というのは、どうも従来の慣例からすると、書記官の数が少ないというように単純素朴に考えても思うわけでございますけれども、いかがでございますか。
#60
○矢口最高裁判所長官代理者 この三名の増員をとりましたと申しますのは、京都に一部を増設しまして、一部は御承知のように三名でございますので、そこで三名をその増設した部に入れたということでございます。各部における書記官というものは三名でございます。その部に三名の書記官をつけた、こういうことで、決してよそよりも割合を悪くしてどうこうしたという問題ではございません。
#61
○土井委員 よそとの割合ということでなしに、つまり全体的な視野に立って考えて、裁判官に対して書記官の割合が、いまのままでよいかどうかという問題がまずあろうかと思うのです。裁判の遅延というのはゆゆしい問題とおっしゃいました。確かにこれは、裁判の公正ということとともに迅速性ということは、やはり中の要素として忘れられてはならない問題ですから、その点から考えて、できるだけ早くしかも公正な裁判をということは切実な要求です。それから考えて、現在の書記官の人数、それは裁判官と比べて、いまのままでよいとお考えになっていらっしゃるのか。
#62
○長井最高裁判所長官代理者 現在の書記官の人員は、裁判官の人員を基礎として、その執務の能力を勘案した上定めたもので、均衡がとれているものと考えております。
#63
○土井委員 書記官の増員についてのお考えは、お持ちになっていらっしゃらないということでございますね。
#64
○長井最高裁判所長官代理者 裁判官の増員に伴いまして、必要な書記官の増員はしなければならない。ただ現状と増員の必要の度合いと充員の可能性、この三者を調整して矛盾のない原案で御審議をいただかなければなりませんので、従前のような計算方法で、必ずしも原案がつくれるという状況にない場合がございます。
#65
○土井委員 論点が少し先に進んでしまって、あとで総合的に少し聞きたい問題がございますから、お許しいただきたいと思うのですが、指定管理職というのがございます。この管理職員というものは、現在全職員に対してどれくらいの割合であるか。これ、すぐに数字の上でお答えできますでしょうか、いかがでございますか。
#66
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判所の裁判官以外の職員に対する管理職員の割合は、現在一四%ということに相なっております。
#67
○土井委員 この管理職というのは、現在一四%、ところが、これは年々どうも数を見てえりますと、数字の上だけでもふえていっているというのが明らかに読めているんですが、これは何年ごろから特にふえ出したということが言えるのでしょうか、ちょっとお知らせいただきたいと思うのです。
#68
○矢口最高裁判所長官代理者 ちょっと年度別の詳細の数字を持っておりませんので、あるいはまた別途の機会に御説明申し上げさしていただいたほうがという感じがいたしますが、管理職というものが、はっきり規則等の上で出てまいりましたのが数年前でございますので、数年前からここずっと見てまいりますと、ある程度の人数が毎年管理職に組み込まれておりますので、その組み込まれる割合に応じて、やはり逐次管理職の全職員に占める割合というものも増加してきておるということは言えるかと思っております。
#69
○土井委員 本年度管理職は何人増員して、そしてそれに対する管理職手当は一体予算の上でどれぐらい必要とされているか、その点はいかがですか。
#70
○矢口最高裁判所長官代理者 ことし予算的に管理職の増加として認められた数は七十二名でございます。それに対応いたしますそれぞれの管理職手当というものが、予算上別途計上されております。詳細の数字はちょっと持ち合わせておりませんので、ごかんべんいただきたいと思います。
#71
○土井委員 これは詳細な数字、ぜひお知らせいただきたいのですが、概算約六億円ぐらいじゃなかろうかと思います。
#72
○矢口最高裁判所長官代理者 それは常識で考えましても、けたがかなり違っておるのではないかと思いますけれども、これまでの全体をひっくるめましたものは、ある程度の数字にのぼるかと思いますが、七十二名ということですとごくわずか……。
#73
○土井委員 それじゃその手当だけの数字を一回ぜひ調べていただいて、お知らせいただきたいと思います。
#74
○矢口最高裁判所長官代理者 早急に取り調べまして、お手元にお届けいたしたいと思います。
#75
○土井委員 その管理職の問題に私がこだわりますのは、これは他の省庁と比べまして、どうも管理職の数がたいへんに多いんですね。二・五倍から約三倍くらいと考えて差しつかえなかろうと思うんです。特にこういう管理職については、使用者であるという立場の最高裁判所が直接管理職の範囲をおきめになると思いますが、他の省庁については、御承知のとおりに人事院がその範囲については問題にするということになっておりますから、この点についての相違があるということを考えざるを得ません。この他の省庁に比べて特に管理職がこれだけふえることが必要だと思われる理由が、どうも私、考えてみて積極的な理由がよくわからないのです。もちろん、私は給料が十分なものになるということは望むところでありますし、どれだけ給料がふえてもこれに反対する理由はどこにもありません。ただ、しかし管理職というのはやはりそれとは違って、管理職という管理体系に組み入れられるという一つの行政組織上の問題があるわけですから、そういう点から考えていきますと、管理職手当というのは、先ほど数字を調べてお知らせ願いたいということを申しましたけれども、そういう問題も片や予算の問題としてあるかもしれませんが、大きな目で見た場合に行政組織上の問題として、他の各省庁と比べて管職理の人数がことさら多いということの理由を、ひとつはっきりお示し願いたいと思います。
  〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
#76
○矢口最高裁判所長官代理者 まず、最初にちょっとお断わりしなければいけないと思うのは、他の省庁に比べて管理職の占める割合が非常に多いという御指摘は、必ずしもそうではないというふうにお答えを申し上げたいと思うわけでございます。私どものところよりも管理職の割合が多い省庁が、ほかにもございます。それは、たとえば自治省でございますとか、法務省、人事院等は、私どもよりもその割合は多くなっております。決して私どものところだけが多いというわけではないわけでございますが、少ない庁もございます。
 では、どうして比較的私どもの裁判所の管理職の割合が多いかということでお答えを申し上げたいと思いますが、御承知のように各省庁でございますと、これはいわゆる行政官庁のシステムとして、当然ピラミッド型というものが想定されるわけでございます。下のほうは広がっておりますけれども、上のほうに行きますとどんどん狭まってまいりまして、最終的には大臣を頂点、次官一名、政務次官も入れますと二名の次官を置き、さらにその下に数名あるいはせいぜい十数名の局長、そして課長というような、きわめてピラミッド型をなしてまいっております。それがブロック機関になりましても同様でございますけれども、府県単位の官庁においても同様でございます。
 ところが、裁判所というのは非常にそのシステムが異なっております。御承知のように、東京地方裁判所、これをもし行政官庁で申しますならば、府県単位にある官庁でございまして、そういった規模は非常に小さい規模であるはずでございますが、東京地方裁判所におきましては民事部だけでも、それだけをとってみましても三十五という非常に多い数字になっておるわけでございます。それで各裁判体が、それぞれ先ほど御指摘もございましたように独立して仕事をいたしております。したがいまして、そのもとにあってこれを補佐いたしております書記官の群というものを考えてみましても、三十五の書記官群があるわけでございます。そうして三十五の書記官群の中に、それぞれの管理職員というものがいることになるわけでございます。調査官にいたしましても同様でございます。東京家裁におられる数十名の裁判官に対しましても、それぞれ調査官群というものがございます。調査官群の中にそれぞれ管理職員というものがいるわけでございます。そういうふうに裁判所におきましては、国民に接します裁判の段階においては、それぞれの裁判官が自己の責任において接しておる。ということは、言ってみれば各裁判官が管理職、行政官庁でいう管理職、地方官庁の長に当たるほどの職責を持っておるわけでございますので、そういったものが三十五、場合によっては、単独体ということで考えますと、民事部だけでも百人近くの直接責任を担当する裁判官がおる。その下に書記官が配置されておる。そしてその書記官が裁判官の命を受けて、その一群の書記官、事務官等々の者を管理しておるという体制をとっております。
 それから、もう一つ各官庁と違いますところは、裁判所の職責というものはそれぞれ法律で明定され、きわめて重要な職責を持っておる。裁判官は当然でございますが、書記官にいたしましても独自の権限を持っておる。調査官にいたしましても、それぞれは独立して仕事をいたしております。そういった者は各官庁の、少し比較がいかがかと思われるかもわかりませんが、参事官的な要素を持っておるわけでございます。御承知のように、各官庁の参事官というのはそれぞれ管理職でございますが、参事官と全く同じであると申し上げるのはいかがかと思いますけれども、そういった者が中央官庁だけでなくてブロック官庁たる高等裁判所、地方官庁たる地方裁判所、さらにその地方裁判所の支部等にもそれぞれあるわけでございます。
 そういったことから、裁判所は勢いいわば高次の官職というものの数が多いために、それを別途の観点からする、給与体系等の観点からする管理職、非管理職というふうに分けてみますと、管理職のカテゴリーに入るということで、数がある程度多くなるわけでございます。もちろん、先ほど御指摘ございました、管理職になるということはすなわち給与を高くするという面がございますが、これは別とさせていただきましても、いま申し上げましたような観点から、裁判所の職務の特殊性というものが管理職群の数を多くせざるを得ない、また当然そういう職責の人が多いのだということでございます。その結果、割合、パーセントというものが他の省庁に比して多くなっている。しかしそれでも、先ほど当初に指摘いたしましたように、裁判所がずば抜けてよそより多いということはないわけでございます。
#77
○土井委員 職務権限からするところの、いまおっしゃったとおり、管理職員というものがやはり必要であるというふうな御説明の趣旨はわからなくはないのですが、昭和四十二年から始まりまして四十三、四十四、それからこの四十七年までずっと見てまいりますと、管理職員数というのが予算上増加していっているわけですね。これだけ特に増加させなきゃならない、ふやさなきやならないという理由というのは、いまの職責上の問題以外に何かなければこうはならないのじゃないかと私は思うのです。いまの職責上の問題というのは本来の問題でございますから、特にそれをもってこれだけ年々ふえていかなければならないという理由にはならないと思います。だから、年々比較していった場合に相当ふえてきているという理由はどの辺にあるかという問題、それが一つ。
 それからその際に、やはりこれは裁判事務一切が、権威主義や官僚主義に流れてはならないという要求からしましても、管理職をむやみやたらとふやすということは、結局、国民の要求する裁判に対しての公正というふうなことからすると、どうも逆作用をもたらすのじゃなかろうかという心配もありますから、そういう点も含めてひとつ御答弁願います。
#78
○矢口最高裁判所長官代理者 四十二年にこの制度が確立されましてから、やはりこういった制度は一挙に完成するというものではございません。先ほど御指摘がございましたように、管理職というものはその実質面におきましては給与といったものと結びつきがございます。そういうこともございますので、私どもは年次的な計画をもって管理職の体制といいますか、そういったものを完成するようにいま努力しておる段階にあるわけでございまして、ごらんいただきましてもおわかりいただけるかと思いますが、この管理職の中の相当数を占めておるのは、主任書記官、主任家裁調査官でございます。この主任書記官、主任家裁調査官というのは、先ほど御説明しましたように、各裁判体における管理的職責を果たしておるという最も重要なものでございまして、これを年々の割合で整備いたしていっておる段階にある。これが四十二年以来今日まで、毎年一定の割合でもって管理職群がふえておる理由でございます。
 そこで、それでは何か同じ書記官、同じ家裁調査官の中に差別ができるのではないかというような御心配のようでございますが、もちろんその職務を行ないます上においては全く平等でございます。ただ、御承知のようにやはり一般的な執務の指導監督という面がございますので、人数がある程度集まるところには、当然中心になってその一般的な職務が円滑に行なわれるように指導調整していかなければならない。そういう人がいるということは当然のことでございますので、そのことから、逆に指導監督を受ける側が独立性を失っていくというようなこと、そんなことは裁判所ではもう万々考えられないことでございまして、御心配、御懸念は無用ではなかろうかというふうに考えます。
#79
○土井委員 管理職をふやすことによって事務の能率化とか、それからさらに事務内容をスムーズに行なわしめるという御発言の趣旨らしゅうございますが、管理職をふやすことに事務の能率化というものをたよるという一連の傾向というものが、どういうふうな効果を反面もたらすかという点もひとつ十分御配慮の上、この管理職に対しての増員なんというものは、小心翼々として取り扱っていただきたい問題だと私は思うのです。むやみやたらと管理職がふえることによって、むしろ民主的な運営を阻害する点が出てくるきらいが世上多々あるわけでございますから、裁判所内でもまずはいろいろな行政事務がスムーズに、しかも能率を上げて何よりも民主的に運営されるということは、裁判自身にこれはいろいろな影響を多大に及ぼすということにもはっきりなってまいります。したがいまして、この点は管理職を増員させる際に忘れられてはならない問題として、取り扱う場合、小心翼々としてやっていただきたいということを、再三再四繰り返して申し上げたいのです。
 実は、こういうことを先ほどから申し上げておりますのは、ことしの国家予算を見ますと、御承知のとおり国家予算の伸び率というのは二一・八%。ところが裁判所関係は一四・三%ということなんですね。数字の上だけで見てまいりますと、大体七・五%低い。ところが、さらに中身を見ていくと、沖繩復帰に伴う関係費、これが十億四千八百五十六万ですから、これを除きますと、実質的にこの裁判関係の予算として考えていっていいのは一二・六%くらいにしかならないのじゃないか。だから、国家全体の予算の伸び率からすると、これは九・二%下回るということになってしまう。だから、予算のほうの伸び率からすると、国家予算に比較して裁判所関係というものはずいぶん低いということに、まず一言で言えると思うのですね。
 そこで、さらに国家予算全体に占める割合を、四十六年度の〇・六二七%と比較すると〇・六一四%というわけで、いままで年々の比較をずっと見ていくと、史上最低だということらしゅうございますね。
 ところが半面、裁判所内で一体どういうふうにこれらの予算の取り扱いをなさっているかという点を見てまいりますと、実はきょうはそれで、最高裁の事務総長さんはじめ、いろいろお仕事がおありになって、そして要求をいたしましたけれども残念ながらここにお姿を、初めのうちは来ていただくわけにいかなかったという事例があるわけでございますけれども、この最高裁の新庁舎の建設費というのが、工期三年でことしは二年度、これが三十八億六千七百一万円、ほかに四十庁、こう見てくると、これは全予算の一一%ばかりが庁舎の建設費ということにかけられるということに数字の上でなっていっておりますね。私は、もちろん裁判所が増築されるとか新築されるとか、特にもう老朽化した裁判所の建物については、建て直す必要があると思われてそれに手を加えられるということ、これはもちろん大事なことだと思います。やっちゃいかぬとは言いません。しかし、やはり何よりも大事な問題は中身だと思うのですね。この国会でも国会の建物よりも、議事堂よりも中身が問題であることのために、しょっちゅう徹底的な慎重審議をやれという国民の声が高い。またそのためにこそ選挙というものがあるというふうに私は考えるわけですね。ですから、建物よりも中身という問題を終始追っかけて、このいま申し上げたような予算の中身についても触れて考えてみますと、裁判所の新築、増築というふうな建設費にかけられる費用がこれだけ多いということの半面、一体人件費に対する割合がどのくらいになっているかという点なんかも考えざるを得ないわけです。
 それで、冒頭申し上げたように、検察審査会の職員の方が五十名減員になる、それから片や管理職の方の増員というものが問題になるというふうなことを兼ね合いとして考えていった場合に、はたしてこれで裁判所の中におけるいろいろな、人員配置も込めて、十分に適正な迅速な、国民の要求にこたえるための裁判というものを確立していくことが約束されるかどうか。私はこの点に関しての配慮がもうちょっと十分にあってしかるべきじゃないかというふうな気持ちを持ちながら、実は前後左右を少し見させていただいたわけですが、こういうことについてどういうふうに感想を持っていらっしゃるか、一言感想を聞かせてください。
#80
○長井最高裁判所長官代理者 たいへん根本的な司法政策に対するお尋ねでございますので、私、事務的な面だけしか申し上げることができませんので、それを越えます分は、また別途答えることにさしていただきたいと思います。
 先ほど、前年度比伸び率について数字上の御指摘がございましたが、私のほうで計算いたしましたもの、これは昭和四十七年度の最終決定による予定経費要求額を計算いたしますと、昭和四十六年度予算額に比べまして一九・四%の増になっておるのでございますけれども……(土井委員「何がですか」と呼ぶ)予算総額の伸び率が、昭和四十六年度予算に比べまして、昭和四十七年度の予定経費要求額、いま御審議いただいております予算は一九・四%。これは、先ほど御指摘の国家予算の伸び率に比べますれば、確かに数字的に下回っております。ただ、また司法予算ということで特別の意味合いもございますけれども、裁判所はやはり適正、迅速な裁判の処理ということが重大な事業内容、と言うと卑俗な表現になりますけれども、それが任務であるとされておりまして、経済の発展成長というものに直接かかずらうような事業を持っておりませんので、事務的な予算を内容としながら組み上げた予算の比率として、他の省庁に比べますれば、その伸び率の割合はそれほど低いものではないと考えておりますが、なおこまかい数字の問題でございますから、御指摘の点十分勉強してお答えさせていただきたいと思います。数字的には一九・四%というのが最終的な伸び率になっております。
 数字をもう少し詳しく申し上げますと、昭和四十六年度の予算額五百八十九億九千七百七十七万円、昭和四十七年度最終決定額で、ただいま予定経費要求額として国会で御審議いただいております金額が、七百四億五千七百九十二万五千円、この比率を申し上げますと一一九・四%で、一九・四%の伸びということになっております。もちろん、この中には人件費、旅費、庁費、修繕費、裁判費というふうにこまかく分かれておりまして、そのおのおのについての伸び率は差異がございますし、人件費がその多くの部分を占めておりますことも御指摘のとおりでございますが、最高裁判所の庁舎新営の予算も膨大な金額にのぼっておりますけれども、下級裁判所の庁舎の建築費としての予算、これは従前の例から比べますと、伸び率においては決して劣っていない比率、このように考えておるわけでございまして、最高裁判所庁舎の新営費が下級裁判所の庁舎の営繕費を押えるというようなことはございませんように、しばしば当委員会でも当初から御注意がございまして、大いに努力したつもりでございます。
 その他各般の点におきまして、また書記官の負担の解消につきましても予算的な新たな配慮もいたしまして、決して負担の過重ということにいかないで、むしろ近代的な執務が確立できますように配慮をいたしたつもりでございます。
#81
○土井委員 いまおっしゃいました数字の資料というのは、また後ほど文書化していただければ幸いだと思います。
#82
○長井最高裁判所長官代理者 では、後刻資料としてお届けいたします。
#83
○土井委員 これは最後の問題にしてみたいと思うのですが、新庁舎が新営されるのに伴って考えられる行(二)職員の問題があると思うのですね。つまり運転手さん、汽かん士さん、電気工さん、それから庁務員さん等々ですね。
  〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
こういう方々については、このところ増加していっているのかどうか。また新庁舎に伴って、適当にその人員配置ということが割り振りが考えられているかどうかという点、いかがでございますか。
#84
○長井最高裁判所長官代理者 庁舎の維持管理に要するいわゆる行(二)職員につきましては、近年増加できておりません。昨年、一昨年と増員はできておりませんが、これは行(二)職員の職務内容を個々的に点検いたしますと、電話交換手、それから庁舎清掃、それからボイラー関係の担当者、いろいろそのような雑多な職務に分かれておりますが、清掃の関係は外部に清掃を委託して、必ずしも国家公務員である行(二)職員を必要としないというような、執務内容の近代化の方向が出ております。電話交換手につきましても、小規模な庁におきましては自動交換機を整備いたしてまいりまして交換手を必要としない。ボイラーにつきましても、大規模庁は別といたしまして小規模庁におきましては、高圧を使用するボイラーは設備をいたさないで、熱風炉という、簡単に申しますれば、扇風機に電熱機を取りつけたような、高圧の危険な作業を伴わない方式で暖房を供給できるというような設備内容の近代化に伴いまして、必ずしもいわゆる行(二)職員というものを増員しなくても、新しい庁舎の維持管理に遺憾なきを期することができるような体制になってまいりました。ことに大都会におきましては、ただいま申し上げましたような設備、清掃委託、エレベーターの運転というものは外部に委託できることになりました。したがいまして、そのような定員というものは、清掃会社のないような土地の定員に振りかえるというような操作が可能になりました。
 一方、政府といたしましても、いわゆる行(二)職員というものを増員することは極力抑制しておりますので、この壁を突き破るということはなかなか困難でありますし、それよりも、ただいま申し上げたような定員によらない作業の遂行ということが可能となりましたので、昭和四十三年に自動車運転手十名、電工二名の増員があっただけで、四十四年以降は増員がございません。電工につきましても、従来裁判所で行(二)職員を充てておりましたけれども、だんだん電力設備が大型化するに至りまして、電力会社に保守委託するということになっております。
 内容は以上のようなことで、増員いたしておりません。
#85
○松澤委員長 土井委員に申し上げます。
 せっかく事務総長が見えておりますけれども、もう出席してから三十七分ほど待っておりますので……。
#86
○土井委員 それではけっこうであります。事務総長には、問題をきょうは少しやりたいと思いましたけれども、時間の関係がありますので、また他日まとめてやらさしていただきます。
 それでは、いまおっしゃいました民間委託の問題なんですが、各職種別にどれくらいの方がいらっしゃるかということを、一回資料としていただければ幸いだと思います。
#87
○長井最高裁判所長官代理者 検討いたしますけれども、民間委託の関係は、人数というよりも賃金という形でまいりまして、それぞれの庁が契約いたしますし、必要な程度で、それも一週に一回というような形で参りますので、人数の関係がちょっと御指摘のようにむずかしい。パートで参りますからそういう関係にございますけれども、金額でなら申し上げられます。
#88
○土井委員 それで、そういう民間委託がだんだん入ってくるということに従って、この行(二)の方々の新規採用というものが見合わせられていく、また、必要がないというふうな向きがだんだんおありになるようで、それは事実そのとおりではなかろうかと思うのです。
 ところが、かつて行(二)の辞令で採用されて、実際は現在総務課とか会計課とかいうふうなところで事務をとっていらっしゃるという方が中にだんだんあるのじゃないかと思うのです。特に、それは行(二)という職種が主であって、そして時間があるからひとつ単純な事務を手伝おうというふうな、予備的な仕事として考えられている向きはこれは差しつかえなかろうと思うのですが、行(一)のむしろ事務職種というふうなものに携わるのが五一%をこえる場合、これは本来行(二)ということの辞令を受けての職員であるにもかかわらず、職務内容がそうなっていないのですから、こういうふうなことについては、御配慮し直すというふうな意味での御配慮をお持ちにならないかどうか。いかがですか。
#89
○長井最高裁判所長官代理者 実態を正確に把握いたしますことは、各庁ばらばらにやっておりますことでむずかしゅうございますが、基本的にはいま御指摘のような形であるべきでございます。
 ただ、ただいま申し上げましたように、合理化に伴いまして非常に手があいてまいりますので、手伝わしてくれ、そのうちに行(一)にかわりたいというような希望も持ち出してくるというような個人的な事情もございますので、資料で御説明するような正確な事情はなかなかつかみにくい現状にございますが、そのような違法と申しますか、正規でない状態は極力是正するように努力いたしております。
#90
○土井委員 それが公に認められるということになれば、おっしゃるとおりまさしく違法行為なんですね。ですから、その点はひとつ実情についてはっきりと調査をしていただいて、違法なきを期すということではっきりと善処していただきたいように思うのです。
 ただ、そういう場合に、行(一)にかわりたいというふうな要求についても、予算の関係で頭打ちとか、それが必要なんだけれども財政も裏づけから考えるとどうもそうはいかないなんというふうな事情がおありになる場合には、これはきょうお尋ねしました、たとえば管理職の問題、あるいは検察審査会の職員の問題、あるいは新規九名の判事補増員の問題等々をめぐって、やはり人件費についての充足ということを考えていく大事な問題だと思いますから、財政法十九条にあるとおりに、それに対しての十分な裏打ちがある限りは、要求を出されてしかるべきだと思うのです。まずはこれくらいのところで押えようじゃないかというようなことが庁内で、裁判所内である限りにおいては、こういう問題についても善処しがたいというふうな理由を、みずからつくってしまうというような向きもあると私は思います。
 財政法十九条にいうところは、「内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、国会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。」とあります。つまり、これは要求額というものはどしどし出せ、したがってそれに対して減額する場合もあるのだ、ただ、減額する場合にはこういうふうな事務手続をはっきりさせなければならないということをきめている財政法十九条というふうに私は思いますから、そういう点についてはやはり前後を考えて、いずれが先でいずれがあとかという順序というふうなものについての整理、順序立てということが私は非常に大事だと思いますので、今回の裁判所の予算の中身を見ておりまして、こういうことについてはもはや釈迦に説法であればたいへんに幸いでありますけれども、やはり一言触れておきたいような気がしました。(「二重予算の問題もある」と呼ぶ者あり)そうですね、さらにまた二重予算の問題もあるかもしれませんけれども、きょうはまた時間のかげんがありますから、私はさらにお伺いしたいこともありますけれども、ひとつ次回に譲りまして、次回はひとつ、きょうあとに譲った問題について御質問させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#91
○松澤委員長 次回は、来たる十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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