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1971/03/14 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第6号
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1971/03/14 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第6号

#1
第068回国会 法務委員会 第6号
昭和四十七年三月十四日(火曜日)
    午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
   理事 小島 徹三君 理事 高橋 英吉君
   理事 羽田野忠文君 理事 福永 健司君
   理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君
   理事 麻生 良方君
      石井  桂君    小沢 一郎君
      大竹 太郎君    奥田 敬和君
      千葉 三郎君    河野  密君
      林  孝矩君    青柳 盛雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      真田 秀夫君
        法務政務次官  村山 達雄君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省入国管理
        局長      吉岡  章君
        公安調査庁長官 川口光太郎君
        自治省行政局選
        挙部長     山本  悟君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部保安課長  関沢 正夫君
        警察庁警備局参
        事官      丸山  昂君
        外務省アジア局
        外務参事官   前田 利一君
        文部省初等中等
        教育局地方課長 鈴木  勲君
        通商産業省公害
        保安局工業保安
        課長      箕輪  哲君
        通商産業省重工
        業局航空機武器
        課長      山野 正登君
        郵政省人事局管
        理課長     仲松 次郎君
        会計検査院事務
        総局第二局長  柴崎 敏郎君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        日本電信電話公
        社総務理事   山本 正司君
        日本電信電話公
        社職員局次長  窪田  貫君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十三日
 辞任         補欠選任
  石橋 政嗣君     安宅 常彦君
同日
 辞任         補欠選任
  安宅 常彦君     石橋 政嗣君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  松本 十郎君     小沢 一郎君
  山手 滿男君     奥田 敬和君
同日
 辞任         補欠選任
  小沢 一郎君     松本 十郎君
  奥田 敬和君     山手 滿男君
    ―――――――――――――
三月十一日
 山形地方法務局谷地出張所の存続に関する陳情
 書外四件(山形県西村山郡河北町谷地甲二二一
 山形信用金庫谷地支店長渡辺英彦外三百七十六
 名)(第一六号)
 行政事件訴訟法第二十七条の改正に関する陳情
 書(東京都千代田区霞が関一の一の一日本弁護
 士連合会長渡部喜十郎)(第一〇九号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○松澤委員長 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。羽田野忠文君。
#5
○羽田野委員 浅間山荘の事件をはじめとして、その後全貌がはっきりしてまいりましたあの連合赤軍の一連の事件、これを見まして、いわゆる治安維持に携わる者、最も大事な治安を預かっているわれわれといたしましては、非常なショックを受けたわけでございます。わが国の、少年を含めまして、二十歳代の、しかも、最高教育までほとんど受けておる青年がこれほど人間性を喪失しておるという、このことについては、ほんとうにその原因を追及し、排除するべきものは排除して、秩序の保てる日本をつくり上げなければならぬということを痛切に感じたわけでございます。
 この点で、私きょう非常に感銘を受けたのは、あの連合赤軍で、長男がリンチで殺され、次男、三男がいま被疑者として調べられております加藤三兄弟のおとうさん、これは小学校の先生をずっとしておった教育者でありますが、この人がきょうの朝日新聞に、自分の子供を育ててきたことに対する、しかも、その誤っておったことに対する反省を出しておりますが、教育者であり、実際の子供三人がいまのような状態になった非常な深刻な中で、われわれが大いに味わなければならない点を述べております。この老教師の述べておるところは非常に参考になると思いますが、自分は自分の父親から生きる道というものを教わった。そうして、努力とか、根性とかいうことばが教育の最高のことばであるというふうに思っておった。しかしながら、それは自分の間違いであった。今度の三人の子供の結果から見て、自分の教員として、また父として誤りがあった。ではどういうふうにすればよかったかということについて、このおとうさんはこう述べております。「自分で判断する能力は、幼少のうちから育てるべきだ。」そして、「その教育の方法は明るい性格に育てることから始まる。つまり、のびのびと、父親にも文句がいえる子にすればよかった」ということを述べております。私は、これは非常に傾聴すべきことばだと思います。そしてこのことは、今度の連合赤軍の問題を契機としてえぐり出された日本の教育の行き方、教育というものをほんとうに考え直さなければならないということを痛感したわけでございますが、この点は文教委員会で御検討いただくといたしまして、当治安維持を使命とするわが委員会におきましては、それでは治安維持の面からどういうことを考えなければならないか、どういうことを反省せなければならないか、こういうことについて、いまから質疑を進めてまいりたいと思います。
  〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕
 まず、警察庁のほうにお伺いをいたしますが、私が経験をしたいろんな事件にこういうものがございました。あの学生運動に入って、そうして過激な行動をしておる者が、どうしてさような過激な行動にいくようになったかという動機を聞かれた場合に、こう述べている者が比較的多い。高校まで両親のもとで育ってきた、そして大学に入る、大学でいろいろな不満にぶつかる、この不満を意思表示するためにデモに参加する。
  〔高橋(英)委員長代理退席、委員長着席〕
そのときにデモに参加するその学生の気持ちは、自分の不満をより多くの人に聞いてもらいたいという単純な、すなおな気持ちで参加をした。ところが、そのデモの途中で警察官に規制をされて相当ひどい仕打ちを受けた。そのために、自分は別に思想を持っているわけではない、しかし、いまのこんなひどいことをする警察という体制に対して非常に反抗心を持って、その後だんだん過激な方向に入ってきた、こういうふうに述べておる者が比較的多いわけであります。
 私が考えるのに、最近のデモ等の規制、取り締まりというものが不必要に強力であるために、そういう純粋な、しかも思想的背景のないようなデモ参加者をして、過激な方向に走らせるという結果が相当起こっておるのではないかと思いますが、現実にそういうことを担当している警察庁の方の御意見、御答弁を承りたいと思います。
#6
○丸山説明員 デモの取り締まりが、こういう若い連中を過激な行動に走らせる原因をつくったのではないかという御指摘でございますが、私どもの第一線に対します大衆運動の取り締まりについての基本方針は、たびたび繰り返して申し上げておりますように、いわゆる違法行為があればそれを取り締まるということでございまして、デモの本来の趣旨である表現の自由を侵害するという考え方は一切持っておらないのでございます。
 したがいまして、現実の問題としてそういうことがあったかどうかということにつきましては、少なくとも私どものいままで承知しております範囲においては、取り締まりは、いま申し上げましたような基本方針に基づきまして、適正に行なわれておるというふうに考えております。
#7
○羽田野委員 いまのお考え方は、私は非常に共鳴をするのであります。しかし、実際に私が目撃をしておっても、ちょっとひどいのではないかと思う場合がある。これはデモをする者それ自体に大いに反省をせなければならぬ点も多いし、デモそのものの自殺行為と思われるようなものがあります。少なくともデモによって何かを訴えたいとする、あるいは大衆の共鳴を受けようとするならば、それ相当の秩序もあり、大衆に迷惑をかけないようなデモをせなければならぬ。しかし、私が目撃をするデモの中にも、わざとぞろぞろと行って交通を妨害する。交通妨害を受けた者は、この人がどういうりっぱなことを言っていたって、決して共鳴はいたしません。また夜中に、人が寝静まっているときに大きな声で人の睡眠を妨げるような訴えをする、こういう者に対しては、内容がいかによくても、大衆は共鳴はいたしません。ましてや、このデモが秩序あるデモの範囲を越えて、ジグザグデモやその他の暴力行為的なことまで立ち至ったならば、これはデモ自体の自殺であり、そういうものは大衆は決して共鳴もし、同調もし、支援もすることはないはずであります。
 しかしながら、こういうものを扱うこの警察庁のほうといたしましては、私どもが目撃をしているところでも、デモがあるということになると、何か違法なデモで、それが暴力行為までエスカレートするということを前提としたような、初めから敵対的な意思を持って待ちかまえておるような、行き過ぎたと思われるような、規制というよりも取り締まり行為、取り締まりの準備というようなものがうかがえるときがどきどきあります。私は、このことは、やはり秩序を守り、違法行為をなるべく未然に妨ぐという警察庁の御苦心のところであると思いますけれども、要は、程度の問題であります。それが行き過ぎますと、初めからデモをする者が警察官に対して敵対意識を持ち、反抗意識を持ち、その中には若い学生、特に、先ほど言う理解力、判断力の薄い、しかも暴走しやすい若い連中は、そういう敵対意識、反抗意識を露骨にむき出して、大衆行動として暴走をするというようなことがありますと、初めから規制をしようと待ちかまえている、そのこと自体が暴走を誘発するというような結果にもなるのではないか。ここまでいったら、私は、何のために取り締まりをするか、まるで暴走させるために取り締まりの準備をしたというようなことまで立ち至るのではないかと思う。
 だから、この程度ということが非常にむずかしい問題であって、なるべく規制、取り締まりというものは万やむを得ないとき以外にはやらない、それからまたいざというときの準備も、なるべくそういう自由なる意思表現をしようというようなものを刺激せないように、敵対意識を持たせないよに、そういう細心の注意のもとにやることが望ましいし、私はやらなければならないと思うのであります。その点、最近少し程度を過ぎておるのではないかという気がいたします。もう一ぺんこの点について御答弁願いたい。
#8
○丸山説明員 私ども、デモの取り締まりにつきましては、そのデモの主体が持っております、本来違法行為をやるかどうかという過去の実績その他を勘案いたしまして、取り締まりについては、できるだけ柔軟な姿勢でまいるという方針でまいっております。
 たとえば、過激派学生のデモでございますと、御承知のように、もうすでに昨年の暮れあたりの状況に見られましたように、機動隊せん滅、あるいは渋谷地帯の占拠、霞が関の占領、国会突入、当初からそういうスローガンを掲げてデモをやるわけでございます。これはもう明らかにデモそれ自体の中に違法行為をそそのかす、あえて敢行する思図が十分にうかがえるわけでございまして、こういった場合につきましては、私どもといたしましては万全の警備体制をしき、準備をしておるわけでございます。
 その他の一般のデモにつきましては、できるだけ主催者側の自主的な統制によりまして、平穏な本来のデモの目的が達せられるように考えておるわけでございまして、ただ、たまたま全体の中に一部過激な分子が入り込むとか、いろいろな情勢がございまして、必ずしも主催者側の意図のとおりに実現できないというような事態も予想されますので、万一の場合に備えて、それだけの体制は私どもとしては準備をせざるを得ないわけでございます。
 ただいま先生御指摘のように、現場におきましては何ぶんにも一部隊として行動いたします関係で、現実の問題として多少の行き過ぎがあるかとも思います。これは絶対ないということを、ここで保証するだけの私ども自信はございませんが、できるだけそういう事態の発生を防止するように努力をいたしたいと思いますし、それから、できるだけ現場には幹部が出まして、幹部がよくその情勢を勘案して、柔軟な措置をとり得るような体制を考えたいというふうに思っております。
#9
○羽田野委員 ぜひさように御配慮いただきたいと思います。
 私はよく思いますのに、高校までは一緒に卒業した連中が、一方は警察官になり、一方は大学生なって、この者がそう思想的に違った面も持っていない。ただ、一方は警察官になった、一方は大学生であるということから、真正面からぶつかり合っているというふうな悲劇がわが国に起こってきている、これは実に悲しいことであります。先ほどの加藤さんのおとうさんも言うように、ものごとを理解すること、それからお互いにもの言い合える伸び伸びとした教育をするということ、こういう面は、デモをする者、それを取り締まる者の間でも意思の疎通というものがあれば、私はもっとスムーズにいくんじゃないかと思う。過激派学生のデモの場合でも、規制をするあるいは取り締まる前に、その者がデモをする場合に、取り締まるほうの側が対話をも一つてできるだけ検挙を出さぬような、あるいは暴発行為をせないような話し合いをすることによって、そしてまた相手方の言わんとすることを聞いてやることによって、不幸なる事故を未然に防ぐというような配慮も、ぜひやっていただきたいと思います。これは答弁は要りません。
 その次に、もう一つ警察庁にお伺いいたしたいのでありますが、これも私がいつも経験をし、そして痛感をしておることでありますので質問をいたしたいと思いますが、やはりあまり思想的な背景もない、そしてそういう粗暴な性格もない者が、今度のような連合赤軍に入っていくということは非常に不幸なことであります。そしてまた、これは本人が不幸であるだけでなくして、その家族や社会がたいへん不幸であります。だからそういう方向に行かせないように、われわれは常に配慮をせなければならないと思いますが、私が経験したところですとこういうことがある。
 過激派学生のデモが暴走いたしましてたくさんの検挙者を出した、この中にはほんとうに筋金入りの、説得してもやはり暴力革命的な行動をする者が何人かおる。しかしながら、そのほかの大多数の付和随行者というものは、単に自分が何か訴えたいこと、何か叫びたいこと、そういういわゆるあり余った力というものをそういうところで発散したいというふうな、簡単な気持ちで行っている場合が多い。ところが一網打尽にこれが逮捕される、勾留される、こういうようなことが起こった場合に、非常に活躍しておるのに救援対策本部というのがあります。これは警察庁はもうとっくに一番よく御承知のはずです。救援対策本部、これがたいへんな活躍をする。その逮捕された人に対する差し入れやあらゆるめんどう、出てきたときの出迎えやその後の生活まで見るというような、至れり尽くせりの世話をしております。これを契機として、いままでは思想的背景もなければ、暴力的な傾向もなかった者が、その救援対策本部に義理ができ恩義ができたために、過激な組織の中にずるずるずるずると引き入れられて、ついに何ともならなくなっておるという者を見るわけであります。今度のあの連合赤軍の中にも、あの新聞記事を見ますと、一応は逮捕されて自分の家に帰ってき、親元に帰ってきているけれども、救対本部の人がときどき出入りしておると、そのうちに家出をしてどうしたかわからなくなったという者が何名かあります。これなどは明らかにそういうケースで深入りしたものだと思います。これは表にあらわれたものでなくして、そのほかにたくさん私はそういうケースで過激組織の中にずるずると引きずり込まれたというか、ずるずると入り込んだ者があると思うのであります。これはその人自身の不幸のみならず、秩序維持の面から非常に重要視せなければならないことだと思いますが、その点について警察庁のほうで、取り締まりのほうでどういうふうな配慮をなさり、どういうふうな注意をなさっておるか、この点ちょっとお伺いいたしたい。
#10
○丸山説明員 確かに先生の御指摘のように、街頭の大衆運動、特に若い学生たちの運動の際の検挙者の中に、初めてそういう場所に出てきてたまたまつかまったというような者が多数おりますことは事実でございます。こういった初めてこういう活動に入った者の中には、大半はこれによって、そういう過激な違法活動というものに見切りをつけて、おとなしい活動のほうに転換をしていくのが多いのでございますけれども、間々その中から本格的な過激活動の方向に走っていく者があることも、これも事実でございます。
 私どもの取り締まりは、若い青年の中から数多く犯罪者を出すということが私どもの目的でないことはもちろんでございます。したがいまして、現場におきます検挙活動ももちろんでございますが、その後におきます捜査活動につきましても、私どもの重点は、悪質な実行行為者、指導的な役割りを演じておる者、こういったところに重点をしぼりまして捜査を進めておるわけでございまして、したがいまして、比較的軽微な事犯であり、かつ本人の将来のために家族あるい親友その他の方々により、はっきり将来が保障される可能性のある者につきましては、できるだけ穏便な措置をとるということによって、その青年の将来を台なしにしないように配慮をしてやっておるわけでございます。
#11
○羽田野委員 よくわかりました。これはよほど気をつけていただきたいと思います。
 総理府の青少年意識調査によると、大体いまの日本の青少年で、何らかの理由で社会に不満を持つ青少年というのは六七%というようなことになっております。こういう連中がこの不満というものを何らかの形で出そうとする。おとなはやはりこれを十分聞いてやらなければいかぬ。これを抑圧するというような形でいきますと、かえってその結果は意図せない悪い方向に行くということが考えられます。特にこの青少年の初犯逮捕者などの取り扱いについては、細心の注意をもってやっていただきたいと思います。
 それから次に、この点は法務省のほうにお伺いしたいのですが、これは警察からおおむね検察庁にみな送られるわけですが、検察庁のこの学生運動の事件で送致をされた者の取り扱いでありますが、ほんとうに悪い者とそれからそうではなくして、たまたま付和随行でまぎれ込んだ者というものの区別がはっきりできておるかどうかということです。それはほんとうに悪い者は、相当きびしくやらなければいけない。一つの伝染病の保菌者的性格を持っている場合が非常に強いから、だから相当きびしくやらなければならぬが、たまたま付和随行でまぎれ込んだという者については、深入りをせないように、これを契機として親元との対話ができるような状態にしてやらなければいけないということ、この点の配慮がどうも不十分ではないかと思うきらいがあるわけなんです。ということは、きわめて過激な、何ともならないような連中に対する処分がややもすると軽きに過ぎる。普通の人あるいは暴力事犯関係の連中がやった場合には相当厳重にやっておるのに、学生であるという理由のために、過激なる破壊行為をしている者に対して甘きに失する場合がある。それとまたうらはらに、何か付和随行したような者までも一蓮托生、犯罪者のように扱って、ついにはほんとうの犯罪者にしてしまうという傾向があるように見受けられるのですが、検察庁のほうから、刑事局長、この点についての御見解をひとつ承りたい。
#12
○辻政府委員 この過激派集団のいわゆる集団暴力事件でございますが、この点について適切な検察処理が、重き者は重く、軽き者は軽くという適切な検察処理が行なわれているかどうか、それを配慮しているかどうかという御指摘でございますが、この点につきまして、ちょっとこの数字の点を申し上げてみたいと思うのでございます。
 昭和四十三年から昨年の昭和四十六年の年末までのこの四年間に、全国の検察庁がいわゆる集団暴力事件として受理いたしましたものの総計は三万一千四百三十六名でございます。この三万一千四百三十六名のうちで起訴いたしましたのが六千百二十二名でございます。約五分の一が起訴されておる。また別途に、検察庁が受理いたしました三万一千四百三十六人のうちで家庭裁判所に送っております者が六千七百十六人でございまして、やはり五分の一弱が犯行時少年であったということがいえるわけでございます。この数字から見ますと、約五分の一が少年である。それからまた終局的に起訴された者が五分の一であるという数字が出てまいるわけでございまして、この起訴が約五分の一といいますことは、この数字からおわかりになりますように、やはり重い者を選別して、重い者に対しては刑事処分で臨んでおる、軽い者については不起訴にしておるという形が、この数字からもおわかりになれるだろうと思うのでございます。
 なお、不起訴にいたしました者につきましても、かねてから事実上の保護観察と申しますか、あるいは少年で家庭裁判所で保護観察になったというような者については、何らか事後のアフターケアといいますか、そういうものについて法律的な権限がない場合もございますけれども、そういう点、やはり不起訴の場合も重々に配慮していかなければならないということは、検察庁自身がよく意識しておるところであると思います。
#13
○羽田野委員 大体未熟なる思考、判断力が十分でない学生諸君あるいは若者が、こういう過激派集団のほうにできるだけ入らないようにということを、まず秩序維持の面からも考えなければならないと思いますが、その点についていままでお伺いしたわけでございます。
 次にお伺いしたいと思いますのは、こういう一つの集団ができた場合に、こういう過激派集団というものは、多かれ少なかれやはり秩序破壊行為をする一つの暴力革命を意図するものでありますから、破壊行為ということが一応前提になっているので秩序破壊行為はいたしますが、その秩序破壊行為の狂暴さの大小ということが非常に問題になってくると思います。その点で、先般浅間山荘の状況を私テレビで見ておりましたが、武器を持った集団が行なうことのすさまじさ、これは身にしみて感じたのであります。若者が武器を持つということは、特にそういう暴力革命を意図するような過激派学生が武器を持つということは、その武器を持つことによって若者がスリルを感じて、むしろ凶器にさえなったと思われるような状況でございました。私は、側面からこういうものに武器を与えないということが、また秩序維持の面では非常に重要であると思います。
 わが国は銃砲刀剣類所持等取締法がありまして、銃砲刀剣の所持をきびしく禁止、規制をいたしております。このことがわが国の秩序維持のために非常に効果をあげておると私は思います。ところが、にもかかわらず今度でもこの連合赤軍があれだけ大量な武器を持った。その中には銃砲刀剣類所持等取締法の禁止しておる拳銃も一丁ございましたが、あとのものはほとんど銃砲刀剣類所持等取締法で必ずしも禁止していない、いわゆる公式の許可を得れば持たれる狩猟関係の猟銃であったということは、これは非常に重要なことであると思います。その中でも、あの浅間山荘で特に威力を発揮いたしましたのはライフル銃であります。あのライフル銃があるために、あの犯人を逮捕しあるいは人質を救出するために向かった警察官がどれだけ苦慮したか、どれだけそのために行動が慎重になり鈍ったかということは、もうあのテレビでもって見ておれば一目りょう然であったわけであります。
 そこで、この武器取り締まり関係で、まず通産省の関係に属しております武器等製造法、それから火薬類取締法です。現在の武器等製造法あるいは火薬類取締法で、こういう将来うっかりすると凶器になり得るというようなものについてはどの程度規制がなされておるのか、またこういう一連の爆発物あるいは武器による犯行があったことを契機として、今後この取締法をいかに秩序維持の面で改正をしようと考えておられるか、通産省の方に御答弁をいただきます。
#14
○箕輪説明員 最近の世相にかんがみまして、先生御指摘のような武器あるいは火薬類が不正に使われることを防がなければならないということは御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、盗難を防ぐとかあるいは不正に使われることを未然に防ぐという措置を強化していきたいというふうに考えております。私は担当が火薬でございますので、火薬の現状とそれから将来の方向をお答えしたいと思います。武器につきましては、航空機武器課長のほうからお答えしていただきたいと思います。
 火薬類の取り締まりにつきましては、製造、販売、それから、たとえば土木現場などで使います消費につきまして一々許可にかかっておりまして、火薬類の使用につきましては、生産から消費に至るまで非常にきびしい規制がかかっておるのが現状でございます。ただ、最近のようないわゆる過激派学生などが使いました火薬類と申しますのは、ほとんどすべてが盗まれるかあるいは不正に流出したというものが使われている場合が大部分でございまして、この点では、先生御指摘の秩序維持のための方策と申しますのは、私どもの考えでは、盗まれることを防ぐことをがっちりやるということであろうと考えております。したがいまして、昨年末以来警察庁と種々協議を続けましてた結果、火薬類につきましてはほぼ意見の一致を見た線でもって、現在法制局と法律改正の手続を進めておる現状であります。
 主要な改正点につきまして簡単に申し上げますと、火薬類の盗難を防ぐことを特にはからなければならない施設につきましては、守らなければならない盗難防止基準をつくる、これが第一点でございます。
 第二点は、都道府県公安委員会が、いま申し上げました盗難防止基準に違反しているものに対しまして、その施設の欠陥のある場所を改善しなさいという改善命令が出せるようにいたします。その改善命令が聞かれない場合あるいはその他の特殊の場合には、施設の使用停止命令を出すことができるようにしたい、これが第二点でございます。
 第三点は、これは猟銃を所持しておられる方が、狩猟免許期間が終わりましたあと残っている火薬を持っております場合には、それを迅速に廃棄をするというふうに改めたいということでございます。
 以上でございます。
#15
○山野説明員 猟銃につきましての規制及び盗難防止の観点からの規制につきましては、武器等製造法によりまして行なっておるわけでございますが、現在のところは、販売事業を行なうにつきましては都道府県知事の許可を要する。またこの許可の要件といたしましては、保管のための設備が一定の基準以上でなければならない、かつまたこの事業を遂行いたします上で、猟銃は常に一定の要件を備えた保管の方法によって保管をしなければならないといったふうな規制が現在行なわれておるわけでございますか、さらにこれを盗難防止の観点から規制を強化していくということで、ただいま火薬のほうで御説明のございましたように、今後警察との協力関係を飛躍的に緊密化するという方向で、現在改正を検討しておるところでございます。
 現在考えております基本方向といたしましては、まず第一点は、猟銃の運搬について新しく規制を行なうようにする。第二点といたしましでは、都道府県公安委員会が猟銃店の保管の状況あるいは店舗の状況に問題がございます場合には、猟銃店に対しまして改善命令あるいは施設の使用停止命令というものが出せるようにするということ。第三点としましては、都道府県公安委員会が、必要があります場合には通産大臣あるいは都道府県知事に必要な措置要請を行なうことができるということ。さらに第四点といたしましては、都道府県知事の許可の取り消しあるいは事業の停止を命じ得る場合を拡大するということでございまして、以上申し上げましたような方向で、現在法の改正につきまして検討している段階でございます。
#16
○羽田野委員 いまの御説明で銃砲並びに火薬の製造、運搬、保管、こういうことについては十分な注意が払われるような法改正が考えられておるようであります。これによりまして、そういう銃砲や火薬が盗難にあってそうしてこれが凶器として使用されるということを防ぐには大いに役立つと思いますが、今度の具体的な事件を見ますと、たとえば今回使用された猟銃の多くは、猟銃十一丁が昨年栃木県の真岡市でこの京浜安保共闘によって盗まれておる。それから今回浅間山荘で使用されたライフルは、正式に許可を受けておった者が所持しておったそのライフルと実包を、その妹が盗み出してそして連合赤軍にこれは渡ったというような経緯、それから拳銃も密輸入されたものが連合赤軍に渡ったというようなことであります。この密輸入等は、これは犯罪でありますからほかに取り締まる方法を考えなければいかないが、正式に許可されたライフルがこういう過激派集団に渡っていく、あるいは銃砲店に保管されておる銃砲が強奪されるということは、この武器等製造法をもってしても火薬類取締法をもってしてもこれは防ぐことができないというと、事銃砲に関して考えるならば、必要のない者には持たせないような方法を考える以外にないということになる。それには銃砲刀剣類所持等取締法をもっと厳格に改正をして、不必要な銃器を持たせないことを考える以外にはないと思います。
 そこで警察庁にお伺いいたしますが、日本にいま正式に許可を受けているライフルが三万六千九百九十三丁ということになっておるようでありますが、わが国で狩猟するのにライフルを必要とする鳥獣がいるかどうか。これはおそらく、いるとするならばクマである。クマ以外のものはライフルを必要とするということにはならないと思うのだが、このクマを狩猟するだけの必要性から、三万七千丁に近いライフルを日本国内で所持することが適当であるかどうか。もしクマが有害獣であり、これを所持せなければならないとするならば、農林省の中に有害獣の駆除をする係官がおって、その人が厳重なる管理のもとにライフルを持って有害獣を駆除することによっても十分足りる。あまり必要性のないことのために三万七千丁ものライフルを国内に保有させるということが、私は非常な危険な背景を持っておるものだと思う。
 もう一つは、この間押収されたあの散弾銃を私は写真で見たのですが、あの散弾銃の中には、二連銃、縦二連、それから五連発。いま日本の鳥獣がだんだん減ってしまって、大石環境庁長官の構想などでは、日本全国を禁猟区にして、特定のところだけ猟銃を許すようにしようという意見があるような現在において、二連銃、三連銃、四連銃、五連銃まで持たせる必要がどこにあるか。少なくとも散弾銃によって猟をしようとするならば、単発銃で十分ではないか。一歩譲歩しても二連銃で十分ではないか。それ以上の不必要な、いざ凶器になったらたいへんな威力を発揮するような銃を、狩猟という名前で持たせることがいいか悪いか。これは私は早急に検討し、改めるものは改めなければならない問題だと思います。警察庁にこの点についての御意見を伺いたいと思います。
#17
○関沢説明員 お答えいたします。
 先生お尋ねのまず第一点のライフル銃の規制についてでございますが、お答えする前に、昨年の第六十五国会におきまして、御承知のとおり広島に起きましたシージャック事件を契機といたしまして、ライフル銃の規制強化という声も起こりまして、その世論に従いまして銃刀法の一部が改正されまして、散弾銃の許可要件に比較いたしましてライフル銃の許可要件は非常にきびしく制限され、昨年五月二十日から施行になっておるわけでございます。現にここ数年、ライフル銃の許可は大体二千ないし三千丁ずつ毎年ふえてきたわけでございますが、昨年の四十六年について見ますと、一年間でふえました件数がわずか九十一丁ということで、国会で成立させていただきました銃刀法のライフル銃の規制の強化が、現にこういう形で目に見えてきております。
 それから、昨年林野庁におきまして、例の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の施行規則が一部改正になりました。いわゆる小口径のライフル銃を猟具として使用することは禁止されました。これは全面的な適用は四十八年の二月十六日からになっておりますけれども、そういう関係もございまして、先生御指摘の点につきましては、一応昨年政府といたしましてはかなりのきびしい規制をしてまいったわけでございます。
 ただ、御指摘のように、現在三万七千丁ほどのライフル銃があるわけでございますが、これがいま申しましたように猟具として二十二口径も使えなくなりますし、それから許可要件がきびしくなった関係もございまして、これは相当将来減ってまいるのではないか、こう思っております。
 ただ、これは直接警察の所管ではございませんので、的確なお答えをしかねるわけでございますが、ライフル銃はクマ、ヒグマあるいはイノシシないしはトドのような、ああいう大きな獣類を的確に駆除するためには、やはり必要だという強い要望がある関係もございまして、どうしても警察限りでこれを銃刀法で全国的に禁止するということには必ずしもまいらぬかと思いますけれども、御指摘のように、最近自然環境保護という面から狩猟制度に抜本的に検討が加えられる、こういう声もございます。御承知のように、銃刀法では用途別の規制ということで、用のない者には持たせないということで、いわゆる眠り銃というものは持たせないということになっておりますので、もし狩猟制度の改革が行なわれまして、そういう社会的な必要性というものがなくなりました場合には、これは当然銃刀法のほうできびしく規制しなければならぬと思います。そういうことでございます。
 それから、第二点の猟銃一般の点についてでございますが、これもいろいろ意見があるようでございまして、単発では非常に危険だという声も狩猟家ないしは、現在では環境庁でございましょうか、そういう方面にございます。ただ、昨年たしか五連発以上は禁止されまして、弾倉にたまを入れた状態で四発までということで、これも鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の規則関係で改正が加えられております。逐次そういう方向に進んでおりますことを御了承いただきたいと思います。
#18
○羽田野委員 あなたのおっしゃることもわかりますが、現実に警察官がライフルや散弾銃のために死に、傷を受けているのです。三万七千丁ものライフルを保有させるということ、それ自体私は感覚的に非常に鈍いんじゃないかと思う。われわれが言うよりももう少しく真剣にこれは考えてほしいと思います。
 それから最後に、時間がなくなりましたので、最高裁にちょっとお伺いしますが、今度の連合赤軍の一連の殺人行為、これもほんとうに人間を虫けら以上にむぞうさに殺していっております。しかも、これはきわめて残虐な殺し方で、その前にやはり同じ榛名山系で行なわれた大久保清の殺人行為そのほかを見ましても、最近は人を殺すということ、これがかくもむぞうさに行なわれるということに、われわれは非常な不安と何とかしなければならないという気持ちが強いのでありますが、最高裁判所は、人の命は地球より重い、人の命の重大さということを判示されておりますが、その地球より重い人を殺した者に対して最高裁はどういうふうな刑を科しておるのか、この点をちょっとお伺いしておきます。
#19
○牧最高裁判所長官代理者 人の生命の貴重なことについては、ただいま羽田野委員御指摘のとおりとわれわれも考えているわけでございます。
  〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕
ただ、現実の殺人事件等の内容を見てまいりますと、いまおっしゃられましたような悪虐、残虐な事件から、片や嬰児殺あるいは無理心中というような多少同情を要するようなものまで広く含んでおるわけでございまして、やはり裁判といたしましては、先ほど羽田野委員の御指摘のことばの中にもありましたように、重かるべきものは重く、軽かるべきものは軽くということにならざるを得ないと思いますので、具体的な事情を十分調査いたしまして、それの責任に応じた量刑をしていくということが必要であろうかというふうに考えておるわけでございます。
#20
○羽田野委員 御趣旨はよくわかります。私自身が、いろいろないまの刑罰ということについては、応報刑でなくて教育刑がいいという考え方に立っている人間であります。歯には歯をという考えはないし、殺したから死刑だなんというようなことは考えておりません。またいかなる重大犯であっても、人が人を殺すということについては相当の抵抗を感じております。しかしながら、最高裁の言う地球より重い人間の生命を奪った者に対する刑ということは、いまの刑法に死刑がある以上、あるいは無期がある以上、悪い者に対しては相当きびしく臨まなければならないとぼくは思います。妙な倫理論や、あるいはいまの刑法改正の際にいろいろ論議されておる死刑廃止論というようなものに引きずられて、刑がはなはだしく軽いというようなことになると、その面から人間の生命に対する尊厳さ、命を奪うことに対する反省が薄れてくるという面もあると思います。
 私が最高裁からいただいた調査表を見ましてびっくりしたのですが、これは残念ながら四十二年、四十三年、四十四年しか統計がない。科刑の総元締めの最高裁が、統計をくれという場合に、四十四年しか統計がないということは、最高裁としてはちょっとだらけているのじゃないかとぼくは思っている。しかしその統計を見ても、四十二年に千九十九人の殺人犯がおった際に、これに対して科刑は、死刑はたった一人、一番多いのは懲役三年の二百九十七人。四十三年が、千百二十人の判決を受けた人に対して、死刑が四人、一番多いのが三百十二人の懲役三年。四十四年も大体同じような傾向になっております。懲役三年というのは、殺人犯に対する最低の刑です。「死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役」の場合に一番多いのが懲役三年であって、死刑や無期がきわめて少ないというのは、私は内容を一々について言うわけではないけれども、人の命が地球より重いものに対して、それを奪った者に対する裁判所の価値判断というものは、少し寛大に過ぎているのではないか。そういうことから人命軽視の傾向が出ておるのではないか。これは十分考えなければならない問題だと思いますので、ひとつ検討をしていただきたいと思います。
 時間が参りましたから、これで終わります。
#21
○高橋(英)委員長代理 ちょっと通産省の方に聞きますが、火薬類取締法の規定を強化した場合に、それを実行されておるかおらないかということを調査するというか監督するというか、そういうふうなものの手はあるのですか。
#22
○箕輪説明員 現在、立ち入り検査制度がございまして、都道府県の職員と、それから警察官にも大幅に立ち入り検査権を与えてございますので、その面から実効の担保というものははかられるというような事情でございます。
#23
○高橋(英)委員長代理 警察を利用しておるのですか。
#24
○箕輪説明員 警察を利用しております。
#25
○高橋(英)委員長代理 現在、警察を利用しないというと、通産省のお役人だけではやれないのじゃないかね、始終監督に行けないから。
#26
○箕輪説明員 おっしゃるとおりでございます。
#27
○高橋(英)委員長代理 畑和君。
#28
○畑委員 私は本日は、最高裁判所長官の任命後に最初に行なわれます衆議院議員の選挙の際にあわせて行なう国民審査、この問題について、その点だけに大体しぼりまして質問をいたしたいと思っております。
 いままで最高裁判所長官に任命された方は、初代が三渕さん、二代目が田中耕太郎さん、三代目が横田喜三郎さん、四代目が横田正俊さんで、五代目が現在の石田和外さんでございます。
 そこで、最初の三人の最高裁の長官につきましては、これは最高裁長官に直接任命をされ、内閣の指名に基づいて天皇が任命したものであります。そして、その直後に行なわれた衆議院の選挙でおのおの国民審査を経ておるわけでございます。
  〔高橋(英)委員長代理退席、委員長着席〕
ところが、その後四代目の横田正俊さん、五代目のいまの石田最高裁長官、このお二人につきましては、いずれもこのお二人が最初最高裁の裁判官、長官にあらざるそのほかの十四名の裁判官の一員として内閣から任命をされたわけです。それでその後その官をやめて、そして最高裁の長官に新たに天皇によって任命されたということであるわけであります。そういうことになっておりますけれども、ところがこの横田正俊前最高裁長官と現の石田和外最高裁長官については、長官任命後当然私は国民審査を新たに経なければならなかったはずだと思うのです、憲法解釈上。ところが、それがされないままに今日まで来てしまった、こういう事実であります。それは憲法解釈上そうでないというようなことでか、今日までそれがなしに済まされておったように思います。
 ところで、最近になって実はこの点がいろいろ議論の対象になってまいりました。法曹の扇異をになう弁護士会、大阪弁護士会がまず最初に一石投じまして、それからさらに日弁連で機関の決議をもって、これが正しい、最高裁長官に新たに横すべりというか、任命された場合には、国民審査を新たに受けることが憲法の解釈として正しいのである、これ以外は間違いだ、こういうような意見を発表されたのであります。この点は私は非常に重大だと思う。いままでそうした重大なことが見過ごされてきた、あるいはそうでないという解釈に基づいてわざとその国民審査がされなかったのか、あるいは見過ごされたのか、いずれかだと思います。
 この問題につきましては、いままで実は学者等もほとんどこれについて解説等をいたしておりませんが、ただ唯一、私の知っている限りにおきましては、田上穣治博士がその著書におきまして簡単に触れておるのが一つある。それは昭和三十八年の田上穣治博士の「憲法撮要」の二二ページにほんとうに簡単に触れられております。「最高裁判所判事が最高裁判所長官に任命された場合にも、その任命の直後の総選挙の期日に国民審査を行うのは、いうまでもない。」こうなっておりまして、その前ですが、順序が逆になりましたが、昭和三十六年に同じく田上穣治博士があらわしました「全訂憲法概説」の二六四ページにも同じ文句で、そういう際にはあらためて国民審査が要るんだ、こういう説を述べておられる。その以外にはどうも見当たらないのであります。そのほかに、その後に、あとで申しますけれども、最高裁の「裁判所法逐条解説」というものがございますが、これに幾らか書いてある。ところが、これもどうもはっきりしないのです。しかもそれは、あとで述べますけれども、「時の法令」という政府関係で発行している雑誌に書いてあるものをそのまま引用しておる。その「時の法令」のその部分についてはだれも署名をしてない、無署名のものでありまして、それをそのまま最高裁の憲法の逐条解説で述べておるだけであります。それがどうもはっきりしないが、その必要はないといったようなニュアンスの書き方をしておる、こういうことなんでありまして、その点について、実は私の意見も述べまして、そして当局の見解をひとつ聞いておきたい、こう思うのであります。
 この点については、この間予算委員会で中谷鉄也君が質問をしたように思っております。そのときには、当局のどなたが答弁されたかわからぬけれども、否定的な考え方が述べられたというふうに聞いておりますが、私はそれじゃとうてい満足できないということで、予算委員会の時間は非常に少ないですから、たいした詰めもできなかったと思いますので、私ここで重ねて少し詳しく法律論を展開してひとつ議論をしてみたい、かように思います。
 御承知のように、憲法の七十九条の第二項に、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選擧の際國民の審査に付し、」こういうことになっております。この際の表現は、「最高裁判所の裁判官」と、こう書いてある。これが議論の分かれ目だと思います。ところで、同じ憲法七十九条の第一項のほうを見ますると、御承知のように、「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成」をするというふうなことが書かれております。したがって、ここに書いてありまするのは、最高裁判所の裁判官には、明確に区分されるべき長たる裁判官とその他の裁判官という相異なる二種類の官というか、身分というものが存在するのだ、こういうふうに考えられる。
 それで、それを受けて裁判所法では、第五条第一項に、「最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。」こういうふうに明記をいたしております。さらに五条の三項には、憲法七十九条第一項の「法律の定める員数」というものについて、「最高裁判所判事の員数は、十四人とし、」こういうふうにして明文化いたしておるのであります。
 このように、最高裁の長官と判事とが憲法上、同時にまたそれを受けてつくられた裁判所法におきましても、全く別個の官である。このことについてはもう争いはないと思うのであります。それだけではなくて、この二つの官に対する任命のやり方も違っております。憲法、裁判所法の根拠法上、任命権者を異にする全く別個の行政行為であるということは明らかだと思うのであります。そのように官が大体別なんだ、それから任命の形式も違うのだというようなことです。最高裁判所の長たる裁判官、最高裁判所長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命する、これは憲法六条の二項、裁判所法三十九条の一項、これに明文で書いてあります。長たる裁判官以外の裁判官、最高裁判所判事は内閣でこれを任命する、憲法七十九条一項、裁判所法三十九条の二項、こういうふうになっておるわけであります。
 そして、次に重要なのは、国民の審査に付されるというのは、最高裁判所の裁判官の任命なんです。任命されたことなんです。だれだれが内閣あるいは天皇によって任命されたという、任命ということの行政行為ですね。この行政行為について、国民が、その直後に行なわれる衆議院議員の選挙で審査をして、いけなければいけない、罷免なら罷免、罷免でなけりゃ罷免でないというようなことの審査をする、これでチェック・アンド・バランスが成立をする、こういうことになっておるのだと思うのです。したがって、裁判所法三十九条の四項にも、「最高裁判所長官及び最高裁判所判事の任命は、国民の審査に関する法律の定めるところにより国民の審査に付される。」こういうふうに明確に書いてある。
 こういうことでありまするから、繰り返して申し上げますが、憲法上、裁判所法上の明文規定は、最高裁判所長官の任命と最高裁判所判事の任命とは、それぞれ別個の官に対する別個の任命行為、そして各別個に国民審査の対象とされるものであるということは、私は議論の余地がないと思うのです。
 この点に関して、最高裁の判示の中にもそれに関連することばが載っております。これは大法廷の判決の昭和二十四年(オ)の三三二号、この判示の中にも、「最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度」ということばと、「最高裁判所裁判官は天皇又は内閣が任命することは憲法第六条及び第七十九条の明定するところ」である、こういうことばもありますし、「最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名により天皇が、他の裁判官は内閣が任命するのであって、その任命行為によって任命は完了するのである。このことは憲法第六条及び第七十九条に明に規定する処であり、此等の規定は単純明瞭で何等の制限も条件もない。」こういう判示もいたしておるのであります。また次に、「裁判官は内閣が全責任を以て適当の人物を選任して、指名又は任命すべきものであるが、若し内閣が不適当な人物を選任した場合には、国民がその審査権によって罷免をするのである。……国民が裁判官の任命を審査するということは右の如き意味でいうのである。」こういうふうに明快に判示をいたしておるところがございます。そういう関係でありまするから、私の見解、先ほどから申しておりますることは、あくまで憲法解釈上正しいと私は思います。
 石田現最高裁長官は、昭和三十八年の六月六日内閣によって、憲法七十九条第一項による最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官、その他の裁判官ということで任命を受けたのです。そしてその任命については、同年の十一月二十一日の総選挙の際に国民の審査に付された。これは間違いない、これは正しいことである。しかるに、その後石田最高裁長官は、昭和四十四年一月の十一日天皇によって、憲法六条二項による最高裁の長たる裁判官の任命を新たに受けたのです。したがって、石田最高裁長官は、一般の並びに大名みたいな裁判官の地位を失った、官を失ったということができる。この官を失ったということについては、ことばがほかにあんまりありませんけれども、最高裁判所裁判官国民審査法の第十一条にこのことばが使われている。「官を失い」ということばが使われておる。なくなった場合とか官を失った場合には、国民審査は要らないというくだりであります。そういうことで、官を失って新たに別個の最高裁の長たる官を取得したことになるのではないか。それで、この欠員補充として、七日後、同月十七日に関根小郷さんが新たに最高裁判所判事に任命されておることは事実であります。
 そういうことでありまするから、どうしてもそうした憲法上の明文規定、裁判所法上の明文規定、及びいま申しました任命の事実経過にかんがみるならば、昭和四十四年の一月十一日に石田最高裁長官に対して行なわれた憲法六条二項に基づく天皇の任命が、その任命後初めて行なわれた衆議院議員選挙の際国民の審査に付されなければならないということはもう自明の理であるというふうに思う。
 ところが、これをこの間の、昭和四十四年の十二月二十七日ですか、行なわれました総選挙の際には、とうとう国民審査に付されずじまいに終わってしまったのです。中央選管は、こうした国民審査に付することを怠ったのではないか、その理由は一体どうなんだということ、これをひとつ承りたい。まず選管の関係を担当される山本選挙部長、お出になっていますね。――山本選挙部長にひとつその点をお聞きいたしたいのと同時に、あわせてどういうわけでやらなかったのか、怠ったのか、過誤なのか、憲法上はどう考えておるのかというような点について、まず承りたいのであります。
#29
○山本(悟)政府委員 ただいまの御質問でございますが、最高裁の裁判官から長官に任命されました際に国民審査を行ないませんでしたことは、四十一年の横田長官のときから同様でございます。したがいまして、中央選管といたしましては、四十一年に横田長官の事案が起きました際に、いろいろと政府部内におきましても協議をいたしたわけでございます。
 その結果の考え方といたしましては、憲法第七十九条第二項に規定いたしますところの国民審査の措置というのは、最高裁判所が、言うまでもなく最終裁判所といたしまして、合憲性の審査も含めますところの非常に重要な機能を果たすものであり、そういう意味から、その職責にありますところの裁判官が、その職責にふさわしい者であるかいなかを審査する権能を特に国民、いわゆる主権者でありますところの国民に保障をしよう、こういう趣旨のものであると考えた次第でございます。その意味におきましては、最高裁の長たる裁判官におきましてもその他の裁判官におきましても、最高裁判所裁判官といたしましての権能ないし職責につきましては、その意味におきましては何ら異なるところがない、かようなものでございまして、長たる裁判官もその他の裁判官と同様に、裁判官としての適否につきまして審査に付されるものと考えた次第でございます。最高裁判所裁判官の国民審査法の規定もこのような趣旨から定められておると存ずるわけでございまして、憲法制定直後に制定されました審査法におきましても、何ら長たる裁判官とその他の裁判官との間に区別を設けないで、一括いたしまして、最高裁判所の裁判官の任命に関する審査とそれからその他の手続におきまして、投票におきましてもすべての面におきまして、その間の区別を設けていない、かような実定法の規定というものをあわせ考えまして、ただいま申し上げましたような趣旨から、その他の裁判官から長官に任命されましても、特にそのために新たに審査をもう一度やる必要はない、かような判断をいたしまして、四十一年の横田長官の際にさような取り扱いをいたしました。したがいまして、その後の四十四年におきます石田長官の際には、四十一年のそういった考え方を踏襲をいたしまして、そのままの取り扱いにいたしたような次第でございます。
 さようなわけでございまして、単に中央選管といたしまして忘れていたというようなものではなく、憲法の趣旨から申しまして、必要がないのではないかという考え方に基づきまして措置をいたしたような次第でございます。
#30
○畑委員 ところであなたは、新聞の報道によりますと、この問題に関して、横田前長官、石田長官のいずれの場合も審査しなかったことについては特に詰めた議論はなく、公文書も残っていない、意見書が出れば内閣法制局と検討しなければならない、こう言っておるのですね。この意見書というのは、先ほど私が申し上げました日弁連の意見書です。大体私が言うたとおり、むしろその意見書に大体のっとって、私、同意見ですから申し上げたにすぎないのでありますが、こういうふうに言っているところから見るとさっぱり詰めていない。ただ前にもそうだった、今度もそうだから、今度もそのとおりやったというのが実際ではないか。あなたのおっしゃるところによると、国民審査法にも一別に区別はしていない。したがって、国民審査法が違憲ではない限り、憲法違反ではない限り、それにも一別に区別されていないから、最高裁の平の裁判官に任命されたとき国民審査を受ければ、長官に新たに任命された場合は必要ないのだ、職責は同じだ、こういうようなことでそういうふうに解釈をしておる。あなた方のほうは積極的にこの措置が合憲である、こういう御意見のようにいま承りました。
 しからばお尋ねします。最高裁の長官と最高裁のほかの平の裁判官、この両方でどれだけ職責が違うかというようなことについて御検討になったことがあると思うのですが、これはだいぶ違うのですね。ひとしく最高裁の裁判官として裁判の合議に加わるということについては確かに同じであります。同じでありますが、最高裁の長官というのは司法行政事務を行なう裁判官会議を総括をする、こういう一つの大きな任務がある。これは裁判所法の十二条にあります。それから大法廷の裁判長とされる、これは最高裁判所裁判事務処理規則八条の第一項、これにあります。ついで裁判官について訴追委員会に対する罷免訴追請求の義務と権限を有する。裁判官弾劾法十五条三項です。こういうことで法的にも特別な地位と職責を有するほかに、三権分立のもとにおきまして、衆参両院議長、内閣総理大臣と対等の地位において司法を代表するという立場にあるんですよ。その言動の影響するところはきわめて大きいのです。裁判所内外にわたって大きな影響があるわけです。こういう重要な地位と職責を有する最高裁判所の長官の任命の適否が、最高裁判所のほかの裁判官の任命ととうてい同一には私は考えられない。しかも、先ほど言ったように明らかに区別をされた憲法の規定がある。一緒になっているところもありますよ。ただ最高裁判所の裁判官と書いてあるところもありますよ。ありますけれども、やはりポイント、ポイントはちゃんときめてあります。やっぱり憲法ですから、高橋さんがつくられたんだから、さすがにやっぱりちゃんときめてある。最高裁判所の長たる裁判官、それからそれ以外の裁判官、こう明確に書いてある。任命の方式も違う。先ほど私が言ったとおりだ。内閣の任命と片っ方は天皇の任命ですよ。重大ですよ。こういう違いが明らかにあると私は思うのです。
 だから、ぼくは日弁連の見解は、やはりさすがに弁護士の中央機構であると思う。要するに法曹三者の一つとしてちゃんとやっている。やはりさすがに日弁連だ。われわれは実際いままでその点をはっきりしてなかった不明を恥じております。もしそれが間違いであったならば、あなた方官僚の常として、旧来の慣例を墨守して、いままでやっていたことは正しい正しいときゅうきゅうとするのではなくて、いさぎよく間違いなら間違いということで今度新たにやり直すべきだ。今度近く行なわれることが予想される総選挙の際に、石田和外最高裁長官を国民審査に付することを私は要求します。そうすべきであるというふうに考えますが、いかがですか。
#31
○真田政府委員 御説明を申し上げます。
 現に最高裁判所の裁判官である方が、在官のまま最高裁判所長官に任命された場合に、あらためて国民審査に付さなければならないかどうかという問題でございますが、御説明する前に、一言釈明をさせていただきます。
 昭和四十一年に前長官の横田さんが、ちょうどいま申し上げたような事例に該当されまして、そのときにあらためて国民審査に付するということはしなかった。それが、何か政府のほうで漫然と見過ごしたのではないかというようなおことばでございましたけれども、実はそうではございませんで、当時、自治省のほうから私の役所のほうへ照会がございまして、私の役所でいろいろ検討いたしました。この問題は、お気づきだろうと思いますけれども憲法上のシステムでございまして、しかも、裁判官の身分保障とうらはらになっておる関係でございますので、憲法上国民審査に付さなければならない事案についてこれを国民審査に付さないということがあれば、もちろん憲法違反でございますけれども、また逆に、憲法上国民審査に付さないとされている事案についてこれを国民審査に付するということも、また逆の意味で憲法違反になるという関係に相なっておりますので、私たちは、昭和四十一年に照会を受けましたときに非常に慎重な態度で検討いたしました。それが事実でございます。
 それで、もちろんその際両論ありましたけれども、私たちのほうで慎重に検討いたしました結果、ただいま申し上げましたような事案については、あらためて国民審査に付することを憲法は予想しているはずがないという結論に達しまして、その旨自治省のほうへ意見を申し上げたという経緯がございます。これは事実でございます。
 それで本論に入りまして、憲法の解釈ということでございますけれども、いろいろな点から問題になりまして、第一は、もともと憲法が最高裁判所裁判官の任命についての国民審査制度を設けている趣旨は、どこにあるのかというのが根本になろうかと思います。それから、現に最高裁判所裁判官にあられる方が在官のまま最高裁判所長官に任命されたということを、国民審査制度との関係でいかに評価するかというのが第二点。それから、憲法は最高裁判所裁判官の任命は云々と、それから国民審査に付するとありますけれども、国民審査の対象といいますか、審査事項といいますか、それは一体何か、任命行為そのものを見るのか、あるいは当該官にあられる最高裁判所裁判官が最高裁判所裁判官としてふさわしい人であるかどうかということを見ることに主眼があるのかという点が第三点で、そういうような、大きく分けまして三つくらいの角度から検討したことがあります。
 逐一申し上げますとかなり長くなるかと思いますけれども、第一点の、憲法が最高裁判所裁判官国民審査という制度を設けた趣旨は、先ほど自治省の方がお答えになりましたように、やはり憲法が期待している最高裁判所の職責、それが憲法を守る上において非常に重要な職責を期待しておりますので、具体的に申しますならば、違憲審査権を含む司法の最高機関であって、それを構成するメンバーであるということで、そういう最高裁判所裁判官に負託しておる憲法の期待、これが重要な事由であろうかと思います。
 ところで、先ほども御答弁がありましたけれども、憲法上最高裁判所を構成する裁判官、つまり長たる裁判官とその他の裁判官とは、憲法上の職責はほとんど違いはありません。片方は「長たる」ということが書いてあるだけでありまして、それは最高裁判所を代表するぞという、何といいましか、司法部全体を権威あらしめるために最高裁判所の長たる裁判官の任命は天皇がするぞというふうになったのがいきさつでございまして、それは日本国憲法が帝国議会に出されました当初の案では、実は任命権の所在につきましても同じであったわけでございます。それが三権分立というたてまえから、司法部全体を三権の一として内閣及び国会に対応いたしまして、そのヘッドといいますか、長は天皇の任命ということにしたほうがよかろうということで、帝国議会で憲法論議の際に修正になった部分でございます。そういうことでございまして、いまの憲法が最高裁判所の裁判官に期待している職責は全く同じでございまして、差異がございません。先ほど畑委員がお触れになりましたいろいろな、最高裁判所裁判官のうちの長と、それから長でない、以外の裁判官との職責の違いというものはございます。それは裁判所法なりあるいは最高裁判所規則なり弾劾法なり、そういう下位法令でつくった差異でございまして、それを理由にして憲法上のシステムである国民審査に付する必要性の有無の基準に用いるのはいかがかというのが、私たちの基本的な考えでございます。
 それから、現に最高裁判所の裁判官であられる方が在官のまま最高裁判所長官に任命されたことをどう評価するかということでございますけれども、ただいま申し上げましたように、最高裁判所裁判官としての職責には変わりがない、しかも、国民審査というのは最高裁判所裁判官という職責の重要さにかんがみまして設けられた制度であるということからいたしますと、現に最高裁判所の裁判官である方が在官のまま最高裁判所長官に任命されたという場合は、それは最高裁判所の裁判官という資格は変更がございませんので、つまり憲法上期待している職責にどうも違いがございませんので、それは最高裁判所裁判官としての身分を継続しながら新たに長という役割りをつけ加えたもので、したがって国民審査制度との関連においては、別にそこに新たな審査に付さなければならないという必要性が憲法上出てくるというものではなかろうというのが、第二点についてのわれわれの考え方でございます。
 それから、第三点の任命ということに関連してでございますけれども、なるほど憲法の七十九条二項は、先ほど畑委員がお読みになりましたように、「最高裁判所の裁判官の任命は、」云々と書いてございますけれども、この点につきましてはこういうことが問題になりました。昭和四十一年よりもずっと前に、昭和二十七年に、これも先ほどお触れになりました最高裁判所の大法廷の判決がございまして、その中で、この国民審査の制度というのは、それは国民が裁判官を罷免すべきかどうかを決定する趣旨であって、その性質は解職の制度である、裁判官の任命行為を完成させるかどうかを審査するものでないということが書いてございます。つまり、任命がよかったか悪かったかというようなことを取り上げて審査をするのでなくして、その審査の時点において、現に裁判官であられる方が最高裁判所の裁判官としてふさわしいものであるかどうかということを見るのだよということが判示されております。これは最高裁判所大法廷の判決でございます。私たちといたしましては、そういう大法廷の判決があります以上、これを間違いであるということが言えるような立場でございませんし、のみならず、私たちも一この判決は妥当なものであるというように考えております。
  〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
 そういうような趣旨から、昭和四十一年に自治省から照会がありました際に、あらためて国民審査に付する必要はないということを確信をもってお答え申し上げた次第でございまして、その考え方はいまでも変わっておりません。
 以上でございます。
#32
○畑委員 だいぶ、正反対に違う。見解が違うのだからしかたがないけれども、いまのお話によりますと、三つあげられましたが、そのうちの一つをとってみると、審査の対象は任命行為じゃないということでございますが、国民審査法の第一条には、「最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査については、」とはっきり書いてあります。これは一つの、やはりだれだれを任命したということの任命行為、行政行為、つまりあくまでその行政行為に対する審査であると私は思う。その点はあなたと考えが違う。なるほど人が関連しないことはもちろんないけれども、こういう人を任命したことはいけないのだということ、結局その人ということになるかもしらぬけれども、同時にやはり意図されたものは任命行為という行政行為に対する国民審査、文字上から解釈してもそういうふうになる。結局、間接的にはもちろん個人がどうであるかこうであるかということに当然なります。なりますけれども、法的な形といたしましては、やはりそういうことで任命行為に対する国民審査というふうに思います。憲法にも「任命」と書いてある。その任命についての国民審査という条項もありますし、また国民審査法の第一条にもそれがある。こういう点からしても、私は任命行為に対する国民審査だと思う。
 同時にまた、もう一つの点ですね。職責は同じだ、同じだとあなた方はおっしゃいます。同じだと言われるけれども、裁判をやることについては同じでしょう、最後のときにはみな合議できめるのですから。だけれども、同時にまた、私が先ほど申し上げましたような特別な地位があるのだ。憲法の第六条に、総理大臣とそれから最高裁判所の長たる裁判官の任命ということが、天皇の任命行為ということで別に書いてあるくらいに、私は最高裁の長官はほかの裁判官とは違うと思う。またそういうふうに憲法の七十九条にも別に書いてある。「長たる裁判官」と別に書いてある。明らかに官は別だ。官は別ですか同じですか、職責がただ同じだというのですか、その点聞きたい。
#33
○真田政府委員 まず国民審査の対象は何か。任命行為そのものが行政行為だというふうにお話しになりましたけれども、その任命行為がよかったかどうかということを直接の目的として、審査の対象として行なわれるものではないというふうに私たちは考えておりますし、最高裁判所の、先ほど申し上げました大法廷判決もそう言い切っておるわけでございまして、そのことは、一度国民審査に付されて、俗なことばで言えば合格して、さらに十年たったときにもう一回付することになるのではないかというようなことがその判決にも書いてありますけれども、まさしくそのとおりでございまして、もし任命行為を、それがよかったあるいはよくなかったということを国民審査の対象にするならば、一度合格すれば、一度行なわれた行政行為である任命行為はりっぱであったということが、国民の総意によって判定されたということになるわけでございますから、十年後の二度目の審査なんというのは要らぬじゃないかということになろうかと思います。それはそれといたしまして、どうも意見の相違でございますので、何も私は畑委員をここで説き伏せるなんという大それたことを思っているわけではございません。ただ政府の考え方を御説明申し上げるだけでございます。
 官が同じかどうかとおっしゃいますけれども、それは憲法は確かに任命権の所在を別にいたしております。別にいたしております関係上、天皇の任命にかかる最高裁判所の「長たる裁判官」と名づけております。したがいまして、ほかのその他の方々……。
#34
○羽田野委員長代理 簡単に要領よく説明してください。
#35
○真田政府委員 「その他の裁判官」という名称を用いておりまして、これを受けて裁判所法で、長たる裁判官では最高裁判所長官、その他の裁判官では最高裁判所判事という官名を用いております。したがって、実定法上官が違うことは申すまでもありません。
#36
○羽田野委員長代理 関連質問を許します。高橋英吉君。
#37
○高橋(英)委員 関連質問をお許し願いたい。
 任命を審査しないという解釈は初めてだが、現にちゃんと任命についてとなっているのだから、そういうふうな解釈はおかしいことではないでしょうかな。あまりこじつけ解釈になっては法の威信、それからあなた方の威信に関することになる。それよりも、再審査に付する必要があるかないかということは、長官になった場合には、さらに長官は再審査をしなければいかぬという憲法の条項があるならば別だけれども、その点については、私は畑君と意見は多少違うかもしれないが、任命を審査するのではなしに、人の問題、適格者であるかどうかの問題ではあるけれども、任命は任命でいいのではないですか。その中に、むろん適格性があるかないかということが含まれることは当然なことなんですからね。読んで字のごとく解釈してもらったほうがいいのじゃないか。
#38
○真田政府委員 先ほど申し上げましたように、国民審査制度の本来の趣旨は何かということから実は問題が発したわけでございますけれども、やはり現在最高裁判所裁判官の位置にある人が、憲法が期待している最高裁判所裁判官としての職責にふさわしいかどうかということを国民が審査するのだ、それが基本だろうと思います。
 そこで、憲法七十九条第二項では、「最高裁判所の裁判官の任命は、」でございますので、それでは、最高裁判所裁判官という本質においては変わりがないのに、任命行為が変わったからまた新たにやらなければいかぬじゃないかというような御議論が出てまいりますので、それでそれについてはそう考えるべきものじゃないんだ、現に最高裁判所の大法廷の判決でも、それが過去に行なわれた任命の適否をいうのではなくて、やはり主眼は現在官にある方、最高裁判所の裁判官にある方の適否を見るのであるよということを最高裁判所判決がいっておりますので、私もそれに賛成である、こういうふうな趣旨で申し述べただけでございます。
#39
○羽田野委員長代理 ちょっと畑君に申し上げます。
 前尾法務大臣が出席されておりますが、時間が午後一時までです。それで畑委員の要請が前尾法務大臣、それからその次の麻生良方委員も法務大臣を要求されておりますので、一時までの時間内でお二人で法務大臣に対する質問時間を配分していただきたいと思います。
#40
○畑委員 職責は同じだと簡単に片づけられますけれども、私はそう簡単にはあなた方の意見に同調しない。あくまで最高裁判所長官は、普通の平のあれとはえらい違う。最初の三回は全然別の、学者畑の人とか、あるいは第一線の裁判官をやってきた三渕さんとか、そういうことで、直接最高裁の長官としてこの人はふさわしいということで内閣が指名し、天皇が任命をした、そういう重要な地位の人です。三人目までは最高裁の長官に直接任命された。だからそれはそのままずばりでいい。ところがあとの二人の人は、普通の裁判官として任命されて、それから横すべりみたいな形で、横すべりと思うからあなた方は同じだ、こう言うかしらぬが、単なる横すべりじゃないのです。重要な職責です。長官の職責と普通の平の裁判官の職責は同じだなんていうことはもってのほかだと私は思う。非常に重要ですよ。前にはそういうことでやってきたからいいようなものが、今度は横すべりみたいになったから、そこでその際もっと慎重に憲法を研究すべきだったと思う。それを簡単に、いままで一度やったからいいということがおそらくあなた方のあれで、あとはこじつけ論だと私は思います。こじつけの書生っぽ論だと私は思う。私は全然違うと思うのです。
 最近は、キャリアシステムというような式のものがずっと最高裁まで押し寄せてきて、それで最高裁の裁判官をした人が最高裁の長官になるような慣例みたいなものが二度できてしまったけれども、これは私はむしろ悲しむべきことだと思う。人格高潔な、全然別の立場から直接最高裁の長官に任命されるというようなことこそ、私は慣例としてはいいのだと思うけれども、最近はそういったわけでずっとずり上がりに上がるというような形は、まことに私はその点残念だと思うけれども、そういうことになったから、それで便宜主義的に、前に普通の裁判官として国民審査を受けたからもういいのだというようなことは、私は許されないと思う。別々の官であるし、任命も別々なんだし、しかも任命についての、高橋さんの言うように行政行為についての、形としてはあくまでも国民審査なんだから、おのおのみんな別なんだから、別個の審査が必要である、こういうふうに思う。どうですか。そう言ったってもう返事は同じだと思うが……。
 そこで、時間も迫ってくるからもう詳しいことは言わぬけれども、このいきさつもおかしいですよ。いま言った田上穣治博士だけが一人特別に必要だと言っている。必要でないというような説を言う人は一人も憲法学者にいない。田上さんだけはさすがに、体制内の人だといわれるぐらいの人が、はっきり明確に別個に必要なんだ、こう憲法の解説書でいっている。ほかの人は見過ごしていると思うのです。むしろそうだと思うのだ。必要ないからということなんじゃなくて、見過ごしたのだと私は思っている。
 そこで、別のほうの立場としては、「時の法令」で二度にわたって、これは横田さんのときと今度の石田さんのときと書いてありますね。その書いてあるものを最高裁が、まことに権威がない話だけれども、それをそのまま引用している。その「時の法令」の内容もここで言うと長くなるからあれだけれども、何だかそういうふうに推量されるとか、そういうふうに憶測されるとか、そういうようなことでもう一つに見てしまったのだろう。裁判官というのだから、一つにまとめてそういうふうにしたのだろうと思われる。議論がある問題だということを投げかけておいて、最後は、そういうことで裁判官と書いてあるからまとめてしまって、必要ないというようなことにしたんだろうというような書き方ですね。それを受けて、最高裁の「裁判所法逐条解説」もそれをそのままただ引用しているのだ。まことに権威のない話なんだ。それを私は文献で見たのでありますけれども、そういう点で議論をしていてもしかたがない。
 時間が来ますから、最後に、やはりそういう関係で、ちょうど大臣がおられるので……。これは一番的確なのは総理大臣だと思うのだけれども、しかし、こうした法務関係全般のことを主宰しておられるのは法務大臣です。法案となれば法務大臣として出される場合が多いと思うし、裁判所法は法務大臣の管轄だと思う。国民審査法のほうはあるいは自治省かもしれませんけれども、これは関連がある。そうしたことで、ほんとうは、憲法にそれが規定されたところはそういうことであるということであれば、私の言うことが正しいのだということになりますれば、相当これは問題だと私は思う。いままで過ごしてきてしまったものだから、それを何とかしてそのままで維持したいということが皆さん方お役人の考え方だと思うけれども、しかし、どうも私はそうじゃないと思うのだが、その点、政府の法務関係の最高の立場であられる前尾法務大臣に、その辺の考え方をひとつ聞いてみたい。専門家でないから無理かもしれませんが、極端なことは要求しませんけれども、大体どんな感じを持っていますか。私の議論を最初から聞いておられないで無理かもしれませんが、これは日弁連の統一した機関で統一しての憲法解釈に基づくもので、私も全然同感なんですが、そういうことを考えてもらい、いま言った官が二つで別である、最高裁の長官は大きな職責を持っているのだ、それに関連して、国民審査法においてははっきりは書いてないけれども、これはやはり別にやるべきだというふうな考えなんですが、その辺に対する大臣の考え方を聞きたいと思います。
#41
○前尾国務大臣 全く私は憲法のしろうとで、解釈論はよくわかりません。
 ただ、なぜ国民審査が行なわれるかという点では、やはり裁判をするという裁判官ということが非常な特殊性を持っておるという意味から国民審査が行なわれるのだと思います。そういう点からいたしますと、長官とその他の判事が違う点は、人事権とかなんとか行政行為であって、裁判行為においては全く何ら変わるところがない。そういう意味からいたしますと、やはり先ほど来法制局から説明しておるのが実質的に正しいのじゃないか。形式論から言いますとおっしゃるような点はあると思います。しかし、実質的に考えて、国民審査制度というものの本質から考えると、やはり法制局の言っておるようなことが正しいのじゃないか、そういうことを考えておるわけであります。
#42
○畑委員 そこで一つだけ、ちょっと国民審査のいまの現行法のあれに関連して選挙部長に聞きたいのですが、いまの最高裁判所の裁判官の国民審査のやり方、これは国民審査法そのものがそうなっていますけれども、若干立法論的なものになると思うが、いまのやり方というのは、裁判官として罷免を必要とする者はバッテンじるしだ、そうでなくて罷免を必要としないという者については白紙ということになっていますね。
 ところが、これはほとんど国民の人たちはなかなかよくわからないのです。どの裁判官の任命がいいのか悪いのかよくわからぬで、それでするから、いわゆる白紙というのが多いですね。要するに、あえて罷免を必要とせずというようなことかどうかわからぬで、俗にいうイエスかノーかわからない、こういういろいろな態度がありますね。あのときイエスかノーかわからないという人が大部分だと思うのです。相当多いのです。それがわからないが白紙で、結局任命よろしいということにみなされているのがいまの現行法ですね。私はこれだから非常に低調だと思うのです。国民審査はほんとうに形だけだ。紙が損なだけだ。実際に実質的に一つも一役割りを占めていない。
 そこで、私はこれは改正すべきだと思っている。私はそういう案をいま頭で考えて準備していますが、要するにマルとバッテンというふうにしよう。罷免を必要とせずはマル、罷免を必要とするのはバッテン、それ以外の白紙は無効、こういうふうにすれば裁判官も一生懸命やるし、それから国民もわかりやすい。わからないというのは無効だということにするのが適当だ。それのほうがほんとうに憲法の精神を生かすゆえんだ。いまのは形式過ぎている。形式を助長しているようなものだ。紙がもったいない。こういうようなことだと私は思う。そういうことじゃないはずだ。非常に重要な問題を含んでいる。最近みたいなああした再任拒否の問題が起きたり、毎年毎年そういうことを繰り返す。そういうようなことでいま最高裁に対する不信が相当あるのです。それを払拭するためにも、一生懸命になって裁判をし人事行政もする、こういうことにつながるためにも、また国民が大いに関心を持つためにも、私は、マルとバッテンの制度で、白紙は無効にするということが適当だと思うのだけれども、これは立法論ですけれども、その辺についてどうお考えになっておるか、自治省のほうにひとつ見解を承りたい。これはいま現行法だから、それをどうするというのはあなた方の権限じゃないかもしれぬけれども、一応考え方としてそういう考え方はどうか、こう思うのです。大いに世論をかき立てるためにもそのほうがいいのではないか、いまの法はそれにそぐわないのじゃないか、こう思っているが、これは立法はこちらでやるのだからいいけれども、あなたの見解を聞きたい。
#43
○山本(悟)政府委員 ただいま御指摘の点、現行法では、おっしゃいましたような白紙はそのまま、バツのある者だけが罷免可というかっこうになっております。この投票の方法は当初からさようになっておるわけでございますが、先般の最高裁の判決の場合にもこれが争点になっていたようでございます。
 その大法廷の判決によりますと、裁判官の任命をするのは内閣が全責任を持って行なう。もちろん任命は天皇の場合も内閣の場合もあるわけでございますが、その区別は別にいたしまして、内閣が選定するものであって「国民は只或る裁判官が罷免されなければならないと思う場合にその裁判官に罷免の投票をするだけで、その他については内閣の選定に任かす建前であるから、」云々というような考え方をとにかく最高裁大法廷はとったわけでございまして、これは立法が当初からそういうように、バツだけが罷免可ということで、積極的にある特定の裁判官につきまして罷免を可とするというものを取り上げているというような立法になっておるかと存じます。これはこれなりに非常に意味があるんじゃないか、かように存じております。
#44
○畑委員 よろしゅうございます。終わります。
#45
○羽田野委員長代理 関連質問を許します。高橋英吉君。
#46
○高橋(英)委員 ちょっと関連して法務大臣に、いまの憲法問題について伺いますが、私は、ああいう憲法をこしらえてから後にしまったなと思ったのは、九条といまの最高裁判所判事の審査制度、これほど、畑君が言うように紙代から手数から何から、いろいろなものがむだなことはないというような感じを従来持っておったんですが、今度は司法の危機とかなんとかで、これは多少あってもよかったのかなという気もしますけれども、しかし、こういうものは九条とともに無用の制度だと思うのですよ。これはアメリカのアイデアでこうなったのですけれども、それをどうお考えになっているのか、実力者の法務大臣からひとつお聞きしたいと思う。
#47
○前尾国務大臣 おっしゃるとおりに、現在国民審査というものは全く形ばかりのような感じがするのでありますが、ただ率直に言って、そう利害関係がある人がたくさんあるわけじゃない。ことに、その人がどういう人であるかわからぬというのが実態でありますし、またこれを宣伝して、こういう人だというようなパンフレットを全部まくとか、そういうことはできないわけであります。したがって、残念ながら非常に形式に流れておるが、これ以外に方法はないんじゃないかというような感じがしておるわけであります。
#48
○羽田野委員長代理 麻生良方君。
#49
○麻生委員 大臣、時間がありませんから問題点だけ御質問します。
 きょう新聞で報道するところによると、北ベトナムの経済視察団、これの入国を法務省が許可したということでありますが、これは事実ですか。
#50
○前尾国務大臣 そういう事実はないと思います。
#51
○麻生委員 きょうの毎日新聞の朝刊に、「北ベトナム経済視察団 法務省が入国許可」とありますが……・。
#52
○前尾国務大臣 北ベトナムについては許可しています。
#53
○麻生委員 それと関連するのですけれども、法務大臣、東京都知事が先般、これは正式に言えば朝鮮民主主義人民共和国ですか、略称北鮮と呼ばしていただきますが、北鮮においでになったときに、東京都知事として北鮮側の文化協会の会長と平壌の市長さんに当たる方を招待したいという旨が日本に帰ってきて報道されておるわけですが、その事実は法務大臣、御存じですか。
#54
○前尾国務大臣 そういうことは新聞では伺っておりますが、実際にそういう話をされたか、あるいはまた政府側にそういう話を持ってこられたということは全然ありませんので、私としましては具体的には知らないわけです。
#55
○麻生委員 実は美濃部都知事から事情をお伺いしましたところ、公式的にはまだ先方から日本に来たいという正式文書が来ていないけれども、非公式には政府筋にもお話をしてある、こういうことを美濃部都知事は私に言っております。
#56
○前尾国務大臣 少なくとも法務省にはありません。あるいは外務省に話があったもしれません。
#57
○麻生委員 外務省、ちょっとこの間のいきさつを説明してほしい。
#58
○前田説明員 外務省といたしましても、美濃部知事のほうからそういうお話は伺っておりません。
#59
○麻生委員 それじゃ新聞をにぎわした、法務大臣が場合によればそういうことは許可できないとかできるとか言ったとか、それから外務大臣がそれはいいじゃないかと言ったとかいうことは、全然事実無根ですか。
#60
○前尾国務大臣 仮定の問題として新聞記者諸君から聞かれまして、現段階ではそれは無理だという答えをしたことはあります。
#61
○麻生委員 先ほどの冒頭の質問の北ベトナムの経済視察団を入れること、今回でたしか北ベトナムからも六回か七回目かに当たるわけですが、この入国を許可した政治的見解はどういう見解ですか。
#62
○前尾国務大臣 率直に言って、何ら他の国との外交関係で支障がありませんし、国内の問題としましても支障がない、こういうことで認めたのであります。
#63
○麻生委員 そうすると、かりに北朝鮮から美濃部都知事の橋渡しとはいえ、先方の国の正式な希望として対外文化協会の会長なりあるいは市長さんなりがおいでになりたいという意向を日本政府に表明されてきた場合、やはり政治的に支障がないということと同じように判断されますか。
#64
○前尾国務大臣 これは、いわゆる対韓外交の面から言いますとかなり支障がある、こう考えざるを得ないと思います。
#65
○麻生委員 対韓外交の面から支障があるというのを、もう少し具体的に御説明願いたい。
#66
○前尾国務大臣 御承知のように、分裂国家といいますか、双方が朝鮮は一つであるという考え方に立ち、また現段階におきましてはわれわれは韓国を承認しておるのでありますが、北朝鮮は未承認国です。そういう点からいたしますと、現在いろいろな外交上支障があるという場合に、これは従来からいろいろと韓国の外交問題として、いわゆる韓国に対して非常に刺激的である、あるいは韓国からいろいろな要請があり、そういうような面から、外交上支障があるというふうに考えたわけです。
#67
○麻生委員 外交上支障があると言われるけれども、北鮮の希望として伝えられているのは文化協会の会長、これは文化交流ですね、それから市長さんだということになれば、これはある意味における儀礼的訪問とも受け取れるし、そう政治的な配慮を神経質にする必要はないと思いますが、もしそういうものが韓国に対して支障があるという見解に基づくなら、美濃部都知事が北鮮を訪問することはもっと――美濃部都知事は東京の都長官ですから、それの訪問をなぜ許可されたんですか。
#68
○前尾国務大臣 日本人で北朝鮮へ行くということについては、別にわれわれ日本国内の問題として支障があるとは思いません。また外交上もそれだからどうこうということはない、こういう判断に立っておるわけです。
#69
○麻生委員 日本から向こうに行くことは支障がなくて、向こうから日本へ来るのは支障があるというのは、われわれ一般人には全然理解できないですな。交流というものは相互でやってしかるべきであって、日本側で、しかも東京都長官というある意味において行政を代表する人が向こうに行くことに支障がない、それなら向こうからその立場にある人が日本へ来るのも支障がない、これがやはり相互関係じゃないですかね。それが当然のことだと思うけれども、前尾大臣ほどの良識ある人が、それが御理解できないというのは全然私には解せない。もう一度見解をお伺いしたい。
#70
○前尾国務大臣 国内的な問題よりも、ただいま言ったように対韓国との関係においてわれわれは非常に困るのだということでございます。
#71
○麻生委員 対韓国の関係は、日本から北鮮を訪問する場合にも言われることであるし、向こうから日本に来る場合も言われることであって、それは同じ比率だと思うのです。それでは、韓国側が日本の都長官が北鮮に行くことを歓迎した事実がありますか。
#72
○前尾国務大臣 まあしかし政治的なそう大きな意味を持っておるわけではありませんし、そういう意味合いからしますと、韓国が、自分の国として非常に支障があるというふうには積極的に考えておると私は思わなかったのであります。
#73
○麻生委員 それでは、同じように北鮮の文化協会の会長さんなり市長さんが日本に来ることも、それほど韓国側が神経をとがらせているような事実は突きとめることはできません。あるいはそうではなく、公式、非公式に韓国側から、それは絶対にやってはいけないという事実があればお示し願いたい。
#74
○前尾国務大臣 これは抽象的でありますが、いろいろ申し入れもいたします。またこれは個別審査で考えていかなければなりませんので、おっしゃるように、ほんとうの純粋な文化交流であるかどうか。現在におきましては、文化交流では大体において学術会議、そういうものだけを認めておる。これは将来はだんだん緩和していかなければならぬのでありましょうが、われわれ期待しておりましたように、北と南が人事交流なりいろいろなことがもう少し進むかと思っておりましたが、そうではなしに逆のようなかっこうになっておる。だから、現段階においては勢い慎重にならざるを得ないというのが現状であります。
#75
○麻生委員 御慎重はけっこうですけれども、日本の姿勢としては、むしろ北朝鮮と韓国との間に相互交流をはかるようなそういう施策を積極的に講ずることが、いま日本の置かれている立場から見て妥当だと思いますね。私はそういう見解をとりますけれども、そういう点で言うならば、先方から来る人が特に政治的な目的を持って来るのではない、儀礼的な、少なくとも文化協会の代表者あるいは市長さんという人が訪日希望を持つということであれば、むしろ積極的にそれを受け入れることによって、逆に韓国に対しても、韓国と北鮮との間の交流を側面から促進するという方向に向かわすべき時期に来ている。現に北ベトナムには、外務省、この間課長さんが行ったでしょう。
#76
○前田説明員 先般北ベトナムの商業会議所の招待によりまして、三宅南東アジア第一課長が非公式に行ってまいりました。
#77
○麻生委員 その場合に、特に南ベトナム政府から苦情なり抗議なり外務省のほうに来ましたか。
#78
○前田説明員 南ベトナム側からは、北ベトナムとの間の外交関係の設定とか、あるいはさらに貿易代表部の常駐、こういうような形にならないように留意してもらえれば、これに賛成も、歓迎もしなければまた反対もしない、こういう意向が示されたように私は伺っております。
#79
○麻生委員 現に戦争状態にある北ベトナムと南ベトナムの間でさえ、いまそういう情勢になりつつある。北鮮と韓国の場合、これは韓国側から特に厳重に抗議が日本に対して来ている事実があれば、それを明らかにしてもらいたい。ないというならば、むしろ日本側から韓国側に対して事前に受け入れたいという通告をして、そうして韓国側からも、いま南ベトナム政府が外務省筋に伝えたような、了承を取りつけて受け入れるという努力をされたほうが賢明じゃないでしょうか。
#80
○前尾国務大臣 先ほど申しましたように、申請書が出ればこれは具体的の問題として取り扱えるわけでありますし、出入国の問題につきましては、未承認国においては要するに個別的な審査をするというのがたてまえです。そういう意味合いからいたしますと、具体的に出ればいろいろ考えてみたいと思います。
#81
○麻生委員 そうすると、いま法務大臣の言われるのは、要するに向こうからの申請が具体的に日本政府にもたらされれば、その時点において個別審査等も含めて、決して拒否というかたくなな態度はなしに検討したい、こういうふうに受けとめていいのですか。
#82
○前尾国務大臣 まあそういうわけでありますが、率直に言いますと、いままでのいきさつから言いますと、かなり韓国が神経質であるということについては、これは言えると思います。
#83
○麻生委員 そうすると、問題の焦点は、要するに一つは韓国側への政治的配慮ということに大部分の焦点があるようですが、その点の支障が緩和されてくれば、日本政府としては前向きでこれに取り組んでいきたいというお考えと受けとめていいですか。もう一度念を押しておきます。
#84
○前尾国務大臣 これは全般的に言える問題でして、私自身はできるだけ緩和していきたいというふうに考えておるわけであります。ただ、現在の段階におきましては、かなり刺激的なものだというふうに考えられることを、率直に申しておるわけであります。
#85
○麻生委員 大臣、それは韓国への配慮も非常に重要でしょうが、問題は、日本の国内にも非常に私は懸念を持つのですよ。それは美濃部都知事、いろいろなことはあるでしょうけれども、ともあれ日本の首都を代表する行政府の長官ですね、その長官が行って正式に、おいでをいただけないかと言うたものを、今度は同じ日本国の政府によって拒否されたという事態は、これは外交上決して好ましいことではないと思いますね。外務省、そういう事態が起こったときに、外務省としても外交上どうですか。好ましいですか好ましくないですか、どっちか、外務省。
#86
○前田説明員 ただいままで前尾大臣の御答弁になられたところが、また外務省の判断でもあると考えまして、現在の状況でいたしますと、韓国側に刺激的になる、こう判断せざるを得ないと思います。
#87
○麻生委員 現在の段階で韓国に刺激的になるだろうが、その刺激要因を除去していくことと、もう一つは都長官がおいでをいただきたいと言うたことを日本の政府が今度は逆に拒否することによって起こる日本の信用度というものをどういうふうに考えますか、外務省としては。
#88
○前田説明員 繰り返しになると存じますが、わが国はやはり大韓民国と国交を結び、北朝鮮を承認していない、こういう状況でございますので、そのラインで本件に対処するしかない、このように考えます。
#89
○麻生委員 北ベトナムはどうなんです。日本はどういう関係にあるのですか。
#90
○前田説明員 北ベトナムと南ベトナムとの関係と、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国との関係は、やはり同じレベルでは考えられない、そのような状態である、このように解しております。
#91
○麻生委員 同じレベルというのはどういう意味ですか。
#92
○前田説明員 大韓民国と北朝鮮との関係は、南ベトナムと北ベトナムとの関係に比して、よりきびしい関係にあるように考えます。
#93
○麻生委員 あなたのおっしゃること、それはわかるけれども、要するに北ベトナムと日本との国交回復はどうなっているかということを聞いておるのですよ。国交状況です。
#94
○前田説明員 いまだに国交の関係はございません。
#95
○麻生委員 そこに外務省は責任ある担当課長を派遣しているでしょう。その政治的意図はどこにあったのですか。
#96
○前田説明員 私がこのような外交方針を述べますのもいかがかと存じますが、現在の日本の外交方針は、その政治的体制とかイデオロギーとかいう問題にかかわらず、できるだけ緊張緩和の情勢に沿っていずれの国とも関係を広げ、かつ外交の幅を広げていこう、こういう配慮に立ちまして、先般の三宅課長は商業会議所の招請によりまして非公式に個人の資格で参る、こういうことで出かけますことは支障ない、こういうことで出かけたように考えております。
#97
○麻生委員 外務省の課長が非公式で個人の資格でなんてだれも受け取れませんよ。それは私は歓迎しますよ。いまあなたが言われたような姿勢で派遣をされたのでしょう。同じことが北朝鮮に対してもいえるかどうかということですよ。それは確かに韓国と南ベトナムとを比べた場合、韓国のほうに日本が必要以上に神経質になるのはわかります。しかし基本姿勢としては、やはり国交を回復していない未承認国といえども、人的交流を深めることによって緊張緩和の方向に努力したいというのが趣旨で派遣されたのでしょう。外務大臣は許可したのでしょう。
#98
○前田説明員 麻生先生の御指摘のとおりだと思います。
#99
○麻生委員 それじゃひとつ前尾法務大臣、そういう観点に立ってこれは御善処を願いたい。私は、ここで大臣から、受け入れるとか受け入れないとか答弁を求めようとは思っておりません、まだ先方から正式に来てないのですから。そういう観点に立ってひとつ慎重に善処をしていただきたい。
 それからもう一つ、このことに関連して、何か法務大臣が美濃部さんと公開論争するとかせぬとかうわさがありますが、聞いておりますか、大臣。
#100
○前尾国務大臣 率直に言いまして、新聞記者の諸君からそういう話がありましたから、私は何も公開討論を回避するようなことはしないということを言ったわけであります。
#101
○麻生委員 別に受けて立つというような気負ったことではない、こういうことですね。十分話し合いをするということですね。
 それに関連をして、私はちょっと希望条件を申し上げておきますが、いずれ北鮮のほうからあるいは正式に日本政府に対して訪問の要請が来るかもしれないが、取り次ぎの役は美濃部都知事がやられたわけですから、私はその段階が来たときに、法務大臣と美濃部都知事との間で話し合いは十分にしてもらいたい。もしその話し合いの決着がつかない場合には、美濃部都知事を参考人としてこの法務委員会においでをいただいて――われわれとしても国の問題ですから、これはかってに公開論争などでおもしろおかしくやられることは不本意ですから、そういう段階が来て、いま言ったように話がこじれるようなことになれば、美濃部都知事を参考人として法務委員会にお招きをしたいという見解があることを、この際委員長のほうで記憶にとどめておいていただきたい。あとで理事会におはかりをしたいと思います。
 いま前尾法務大臣が言われましたように、まだその段階で、十分に慎重に対処したいという御答弁でございますから、これはこれで打ち切りたいと思います。
 それから、もう一つ北鮮の問題でお伺いしたいのだが、いままで日本から北鮮に参りたいという希望があった場合、許可している実例がありますか、一般人で。
#102
○前尾国務大臣 在留の朝鮮人につきまして、これは率直に言いまして、人道上の問題という線に筋を通しながら許可しておるわけです。
#103
○麻生委員 墓参か何かのときに十名か二十名許可して、向こうに行ってもらっていることはありますか。
#104
○前尾国務大臣 そういうふうにはからっておりますし、私としましては、できるだけ希望をかなえてあげたいというので広げてまいったわけです。
#105
○麻生委員 最近、金日成首相の誕生日で、何か何人かの人が向こうにお祝いに行きたいというような希望を伝えているやに聞いておりますが、そういう事実がありますか。
#106
○前尾国務大臣 申請が出ております。
#107
○麻生委員 これは同じように許可される御方針ですか。
#108
○前尾国務大臣 率直に言いますと、韓国の人、南鮮に以前は住所があった人が申請を出されておりますし、その点は非常に韓国に刺激的でありますから、ちょっといまの段階においては非常な政治的な意味を持っておるという点で、私どもはそれには許可しがたい、こういうふうに考えておるわけであります。
#109
○麻生委員 韓国に対して刺激的になると言われるけれども、要するに朝鮮というのは二つに分割されておるわけですよね。もとはといえば韓国に籍があろうと北朝鮮に国籍があろうと、同じ民族同士であることには間違いないのであって、かりにいまの本籍、国籍が韓国にあろうと、北鮮に、しかもお祝いに行きたいという者があれば、国籍、本籍が韓国側にあるからという理由だけで拒否するというのは、いかにも韓国と北鮮と、日本側がしいて分けて考えることに結果的には加担するようなことになると思いますが、どうですかね。
#110
○前尾国務大臣 以前から墓参りに北鮮の人を認めておる、その場合に南鮮の人がまじっておりますことについては、非常に韓国側としては反対のあれを表明しておるわけなんです。そういう点から考えますと、北鮮の首相を認めるということが政治的な問題で、それから、南鮮からそういう人が行くということについても非常な問題があるわけです。
#111
○麻生委員 そういう問題点はわかりますけれども、やはり本来韓国と北朝鮮というのは同じ国ですからね。親族同士が北と南に分かれざるを得ない、これは本人の意思で分かれたのではなくて、終戦後のやむを得ざる結果においてそれぞれ国籍が違えられているという事情から、そういう点、人道的に考慮すれば、韓国側に国籍がある、北朝鮮に国籍があるということで差別するということは本来好ましくない。むしろ積極的にその国境を取り除いていくような方向で努力したほうが私は賢明だと思いますけれども、なおこの点についても一段と法務省のほうで御検討をしていただいて、不必要なトラブル、不必要な非難、そしてまた、どうせこれは北鮮との間にも早晩国交回復せざるを得ない、またすべき状態がくるわけなんですから、ひとつ前向きで取り組んで御検討をいただきたいと思います。こういう点を特に御要望を申し上げたいと思います。
 いずれにしてもとの種の問題、法務大臣うわさされるように、日本側の都長官とかそれから政府とか、政治的な問題にからめて処理するということはあまり好ましくありませんから、ひとつ先ほど申し上げたような方向で、フランクに前向きの姿勢でぜひ実現させるような方向で、そのために支障のある問題はむしろ進んで説得に当たる、こういうような態度でひとつ取り組んでいただきたいことを最後に申し添えて、一言大臣からもう一度所感をお伺いして、私の質問を終わります。
#112
○前尾国務大臣 私、従来からそういうような考え方のもとにやってきたわけでありますが、あの人事交流が成功すると、私はそういう問題はほとんどなくなると思っておったんですが、それがなかなか進行しないということで、私みずからも非常に苦しんでいるわけです。
#113
○高橋(英)委員 関連して、ちょっと。いまのことは美濃部都知事の人気取りに利用されても困りますけれども、いろいろな意味で極東の緩和、朝鮮の緩和、緩慢であってもだんだん緩和しつつあると思いますから、北鮮の問題についても、あらゆる点について少しでも前向きにひとつ考慮してあげるというふうな態度にしていっていただきたいと私、思うのですが、自民党の大勢かどうかわからぬけれども、私としてはそういうふうに希望しております。
#114
○羽田野委員長代理 青柳盛雄君。
#115
○青柳委員 私は、公安調査庁の長官にお尋ねをしたいと思います。
 実はもう相当古いことになるのですが、昭和四十二年の六月ごろに、甲府電報電話局第一線路課というところの職員で磯野茂という、現在二十五歳くらいの人ですが、友人の山梨大学の学生だった者が公安調査庁、正確に言いますと山梨地方公安調査局と接触があったらしくて、その人の紹介で同調査局第一係長の水上淳という人と接触を持つようになったようでございます。
 その磯野君が水上さんのすすめで、民主的な団体といろいろと関係をつけて、そしてそのほうから情報を提供するようにということで、これを承諾したようでございます。そしてその夏に青年学生平和友好祭というのが山梨県下の山中湖畔ですか、そこで持たれたんですが、それにも参加し、そういう中で友だちもできてくるというので、その年の夏過ぎには、この水上淳さんが強いすすめをいたしまして、民主青年同盟というのがありますが、それに入るということに成功したわけですね。そして同時に、労働者教育協会とか山梨原水協平和委員会、労音というような民主的な諸団体にも参加する、いずれもこれは水上さんの指導のもとです。そして翌年の十二月には、目ざす日本共産党にも参加するということになりまして、民青同盟に入るときと同様、日本共産党に入るときには水上さんが申し込み書を書いてくれたそうです。これは、入党申し込み書にはいろいろの事項を書き込まなければなりませんので、そうするとやはりその道の専門家がまことしやかに書かないというと、潜入することは困難だと思われたんでしょう、手とり足とりの指導をして、共産党へ加入申し込みが承認されるという結果になり、それから昨年の暮れごろまで、民青同盟、日本共産党あるいはその他の民主団体の情報を逐一水上さんを通じて山梨地方公安調査局へ提供した。もちろん、これに対する相当の対価をもらっていることは事実でございます。
 この方がこういう事実を自白するといいますか、こういう事実がわれわれの耳に入るようになった動機は、民青同盟で知り合った女性と恋愛関係におちいって、結婚を要請したんだけれども、非常に暗い感じがする、何かよからぬことをやっているんではないかというふうに純真な婦人から指摘されて、やはり自分が公安調査局の子飼いのスパイになって隠密の間に情報を提供しているということが、いかに非人道的なものであり、また恋愛の相手方にも暗い影を与えたということで、いままでを清算する意味でこの問題が明らかになったわけでございます。
 そこで長官にお尋ねしますけれども、破防法によるいわゆる容疑団体と称する概念があるようでありますが、そういうものを調査する権限があるんだということで、いままでもいろいろの手段をとってこられておりますけれども、これはきわ立って特色があると思います。すでに一定の民主的な政党あるいは団体に所属している人に近づいて、そしてその情報を得ようとするというのであれば、いままでも無数の例がございますが、しかし、自分のほうでまだそういう団体と何のつながりもない者を手がけて、そして申し込み書までつくってやり、手とり足とりで養成をしてもぐり込ませる、そこでりっぱなスパイに仕立て上げていくというような、こういう調査方法というものが許されると考えているのかどうか、この点です。
#116
○川口政府委員 お答えいたします。
 ただいま青柳先生が御指摘のような事実は大体においてございました。ただ一点、いま公安調査局のほうで養成して党の中にスパイを送り込んだのではないか、いわゆる送り込みというふうに言われておりますが、こういう事実は本件では全然該当いたしません。私どもの調査では、本人磯野君が自発的に友人から勧誘されて、最初労音の組織の中で働き、次いでその中の友人の紹介で民青同に加入し、さらにその活動を通じて入党を勧告されたので入党した。入党にあたって、その調査官に相談したという事実はあるようでございますが、あくまで自発的に民青同に加入し、あるいは共産党に入党したんだ、こういうように聞いております。その点だけが相違いたします。
#117
○青柳委員 接触を持っていた人が相談はするかもしれないけれども、自発的な意思で、目ざすいわゆる容疑団体ですか、あるいはその周辺の団体に参加して情報を得るということであるならば、これは別に違法ではないという趣旨の御答弁ではないかと思うのですね。事実がちょっと違うと言われる。もちろん私は、強制とかそういうものがあって、いやいやながらいけにえのように送り込まれた犠牲者であるというふうにはとらないわけでございますけれども、それにいたしましても、入党についていろいろの援助を与えるというようなところでやってよろしいのか、いわゆる送り込みもやむを得ないんだというふうな考えなのかどうか、その点だけお尋ねしたい。
#118
○川口政府委員 養成して積極的に党組織の中へスパイを送り込むというような、送り込み工作は好ましくないと考えております。本件はそれに該当いたしません。
#119
○青柳委員 山梨の場合でも、あるいは全国的どこでもでございましょうが、公安調査庁は、国のいろいろの出先の役所とか地方自治体あるいは公団、公社等の人たち、さらには民間の会社もでしょうけれども、そういう人たちとの定期的なあるいは不定期な接触を持っていると思います。何か私どもの調べたところでは、山梨地方公安調査局では一水会、二水会、三水会というようなものに関係しておられて、それは第一水曜日、第二水曜日、第三水曜日にそれぞれのグループの人たちとの定期的な連携を持つ会のようにも思えるのでございます。そういうことで情報の相互交換をやるというようなことがあったようですけれども、その点はいかがでしょうか。
#120
○川口政府委員 お答えいたします。
 山梨県下の甲府市ですが、ここでは一水会、二水会、三水会といって、水曜ごとに昼御飯を食べる会が三つあるそうでございます。第一水曜日には、中央の国家機関の出先、地元自治体の責任者、公社の責任者、一部の地元の企業の代表者、こういう人々が商工会議所の主催のもとに集まりまして、昼食をともにしたあと時事問題について話し合う、そして相互に親睦あるいは知識の啓発をはかる、こういう目的で集まっているそうでございます。第二水曜日の二水会と申しますのは、国家機関の出先機関だけの集まりでございまして、これもやはり昼食会で食事をともにして雑談する程度である。それから三水会と申しますのは、これは法務省関係、裁判所も含むのでございますが、法務省関係、検察庁、刑務所、保護観察所、いろいろございますが、そういう法務省関係と裁判所との会合、これは昼食もしないで、昼食後集まってお互いに雑談する、意思交換する、これもやはり親睦が目的である、こういうように聞いております。
#121
○青柳委員 その過程で破防法二十七条の調査も行なわれる可能性も出てくるし、まあそれがきっかけで、そういう相手方といいますか、国家公務員、あるいは地方公務員、あるいは公団、公社の職員、こういう人たちと接触が深まるわけでございますけれども、そういう人たちから職務上知り得た情報を、いわゆる容疑団体に関連するものをとるというようなことが行なわれているのかどうか、その点はいかがでしょう。いまのお話ではただ親睦だけだというお話でございましたが……。
#122
○川口政府委員 お答えいたします。
 御指摘のように、大体食事をともにして懇親を目的にする会合でございますので、そういう立ち入ったこまかい話というのはないのが普通でございます。私も地方にいるときにそういう経験がございますが、そういう話は出なかったと記憶しております。
#123
○青柳委員 ところで、この磯野茂という先ほど申した青年は、電報電話局の職員でございますので、これは電電公社に関係があるわけですが、電電公社の労務関係をやっている方々も、日ごろ職場の中に、労働組合だけでなしに、それ以外の、先ほどもあげましたような民主的な団体に関係のある者、さらには民青同盟とか共産党とかに関係のある者をあらかじめ調査するといいますか、そういうことが行なわれているようでございまして、たまたまこの磯野茂という者に対して、おまえは何か共産党に関係しているんじゃないかというような疑いといいますか、事実関係しておったわけでございますが、調査らしいものが行なわれたので、磯野君は、自分はいわば公認のスパイなんだ、横から文句をつけられることはないというような自負心もあったんでしょう、公認されてやっているのに職場の長のほうからは、それはいかぬのだと言われるようなことでは困るので、この調整をつけてもらわなければならぬということで、石和の町の花月という旅館で本人を交えて、公安一課長、あるいは先ほどの第一係長の水上さん、それから電電公社のほうでは鈴木という局長さん、宮田、森田というような次長さんや労厚課長さんなども参加して調整のための会合が持たれた。そして双方の情報交換というものが今後定期的に行なわれるということがきめられた。さらに四十六年、昨年の九月には、今度は甲府の川田町の甲運亭という旅館で、やはり水上さんや電電公社の岡本次長、栗原課長というような人たちが本人を交えて会合して、さらにこの方針を確認しておるのだ、こういうことが本人の供述の中から出てくるわけでございますけれども、こういう事実は公安調査庁のほうでは調べておりますか。
#124
○川口政府委員 私どものほうでは、そういう事実は聞いておりません。
#125
○青柳委員 それでは電電公社の山本さんでも窪田さんでもよろしいんですが、いまの点はお調べになったことありますか。
#126
○山本説明員 ただいま御指摘の点についてお答えいたしますが、公社といたしましてはそういった事実はございませんし、また、従来から思想、信条等によって差別をするといったような扱いはいたしておりません。
#127
○青柳委員 私どものところには本人の供述がありまして、それに非常に具体的にこまかに書かれておりまして、作文のようにはとうてい思えないわけなんでございます。その点で、公安調査庁もまた電電公社も口を合わせたように事実無根であると言っておられるので、これはもっと厳重な調査をこれからも続けなければなるまいと思っておりますが、もしこのようなことが行なわれたと仮定いたしまして、電電公社のほうでは、これはかまわないことなんだ、公安調査庁のやる仕事に協力したりこれと情報の交換をやることは、労務政策上も好ましいことであるというような考えを持っておられるのかどうか、この点をまず電電公社のほうにお尋ねしたいと思います。
#128
○山本説明員 ただいま御指摘のような磯野茂の行ないました行動は、磯野個人の問題でございまして、公社そのものが関係はいたしておりませんし、何ら関知いたしておるところでございません。
 以上、御答弁申し上げます。
#129
○青柳委員 この磯野という労働者は、その後依然としてそこにおつとめになっておりますか。
#130
○山本説明員 現在も甲府電報電話局につとめております。
#131
○青柳委員 時間もございませんので、次の問題に移りますけれども、実は東京都内のある郵便局の主事をやっている職員、同時に全逓という労働組合の支部長をやり、あるいはその前に書記長というような、わりに重要な地位を占めている労働者がございますけれども、その方に対して、かつて教習所のようなところの先生であった中島という方が橋渡しをして、公安調査庁の関東関係ですか、ちょっとその所属ははっきりいたしませんけれども、鈴木とかあるいは布川という人が接触を持って情報の収集をはかった。その間に使いました方法は、料亭などに数回連れていっていろいろともてなす、あるいは交通費と称して金を渡すというようなことであると同時に、もっといい地位に上げてやる、いまの郵便局の主事よりももっと上の係長とかなんとか、そういう地位に上げてやるというような誘惑がなされた。これは結局失敗に帰したわけでございますけれども、そのようなことがもとの郵政省の職員の橋渡しによりまして行なわれたというところに、私は大きな問題があると思うのです。役所同士がお互いに思想的な調査をやり、協力し合うというような点が問題になっているのですが、この点、公安調査庁のほうでは何か思い当たることがございますか。
 その接触を受けた、働きかけられた人の話では、実は鈴木とか布川とか先ほど申し上げた人は、どこにどういうことをやっている人かわからないけれども、ただ話の中で、実は公安であり、全逓内の日共担当だ、これから後の連絡は、先ほど申しました郵政省の役人だった中島という人を通じてではなくて、電話の二六二−二五八六というところに電話をかけて連絡をとれ、こういうことであったようであります。また本人も、自分の自宅の電話を教えておいたというのが本人のたいへんな失敗だったと言っておるけれども、それで呼び出されたり、連絡をとったりということになっておったのでしょうが、この二六二−二五八六というのは、私の秘書の鈴木君が電話をかけてみましたら、やはり先方にも鈴木という人が出てきて、そしてこの問題についていろいろ尋ねたんですけれども、答える限りではないということだった。もちろん、こちらの身分をあかして電話をかけたわけです、共産党の青柳議員の秘書であるという。そういうようなこともあるので、全然事実無根のことではないというふうな感じがするのですが、この点いかがでしょうか。
#132
○川口政府委員 お答えいたします。
 ただいま先生御指摘のとおり、昨年の十一月から十二月ごろにかけまして、関東公安調査局の職員が、全逓東京地本本郷支部の書記長である櫻庭某という、党員と見ておられる者に対し、接触をはかったという事実はございます。
#133
○青柳委員 郵政省の方にお尋ねいたしますけれども、こういう事実はお調べになったことはございますか。
#134
○仲松説明員 先生がいま御指摘になりました中島という人ですが、この人は六年前に退職しておりまして、したがって、私ども郵政省としては関係ないと思っておりますので、調査いたしておりません。
#135
○青柳委員 この中島さんは、郵政省とはいま関係はないのでしょうけれども、郵政省とすれば、いわゆる郵政省内のマル生運動といって問題にされたりする事実も全然ないわけでもないようでございますが、いずれにしてもこういう公安調査庁の思想調査、いわゆる容疑団体事前調査というか、そういったものに協力するような立場にあるのでしょうか。
#136
○仲松説明員 先生御指摘になりました本件についてまず申し上げますけれども、六年前退職しておりますし、また在官中の官職等から見ましても、主として部内研修機関の教官をやっております。したがって、公安調査庁からの依頼で全逓の組織介入と思わしきものがあるといういまの御指摘でございますけれども、私どもは組合の組織介入ということはやっておりませんし、また、いま御指摘のマル生郵政版とおっしゃいますけれども、私どものほうは確かに労使の問題で非常に対立する場面もありますけれども、そこでお互いに出過ぎ、行き過ぎはやめようじゃないかということになっているのが現状でございます。また、思想、信条、こういったことで職員を差別するつもりは毛頭ございません。
#137
○青柳委員 もう時間が来ましたので、せっかくお越しになっておりますから、あと一、二点会計検査院の方にお尋ねし、それから文部省の方にもお尋ねいたします。
 会計検査院のほうでは、公安調査庁の謝礼金の支払いについて検査をおやりになると思いますけれども、これはいわゆる簡易証明によって大体処理されているというような状況でしょうか。
#138
○柴崎会計検査院説明員 先生のおっしゃいましたとおり、簡易証明という形で検査をいたしております。
#139
○青柳委員 そういたしますと、これは金銭を受領した相手方の領収書があるので、結局は支払った公安調査庁の公務員の申告を大体のむということにならざるを得ないと思いますけれども、それが違法なものであるかどうかということについての検査は、できるのでしょうかできないのでしょうか。
#140
○柴崎会計検査院説明員 簡易証明と申しましても、これは私どものほうの検査方法は、書面を役所に徴してやる書面検査と実地に臨んで行ないます実地検査の二通りありまして、その書面検査の段階での簡易証明でございます。で、実地に参りましたときには、領収証書等正規のものについて当たって検査を行なう、こういうことでございますので、その内容等につきましては、違法のものであるかどうかというようなことにまで及んで検査をいたす、こういうことになります。
#141
○青柳委員 これは一般的な御回答のようでございますけれども、先ほどお尋ねしましたように、公安調査庁の場合には、協力者のほうは情報源を秘匿してくれなければならぬということもあって、とても領収書などを徴するわけにいかないというようなことで、一般的にこれはもう簡易証明で済ますということのようでございますので、違法であるかどうか、たとえばそれが、本来公務員が受け取ってはいけないような金がある公務員に渡っているというようなことについてまで深入りするということが、できないのが実情ではないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
#142
○柴崎会計検査院説明員 いまの点につきましては、先ほども申し上げましたように、実地に臨んだ場合に、領収証書等はございますので、それについてその内容等の説明を受けまして判断をいたすということでございますので、その使途については、それが違法のものであるかどうかということについてまでわたって検査をいたす、そういうことになっております。
#143
○青柳委員 だから公安調査庁の場合、実地に臨んでおやりになることもときにはあるのでございますか。
#144
○柴崎会計検査院説明員 公安調査庁の部局はたくさんございまして、地方の都道府県ごとにそれぞれ地方公安調査局があるというようなことで数が多うございますので、悉皆的に全部の局を検査するというわけにはまいりませんけれども、毎年幾つかの局を選びまして、実地に検査をいたしております。
#145
○青柳委員 それでは文部省の鈴木地方課長さんにお尋ねいたしますが、八日の日に予算委員会で、金沢の市の教育委員会が公安調査局に協力したという問題が究明されまして、その際高見文部大臣は、教育委員会には協力する義務もない、だから通達を出すのだというような御答弁があったようですが、その通達はもうすでに出されたのでしょうかどうでしょうか、その点一点だけ……。
#146
○鈴木説明員 現在のところまだ出しておりません。
#147
○青柳委員 それはせっかく大臣がそうおっしゃったのだけれども、こういう通達を出すとまずいというのでそのままになっておるのか。これはやはり大臣のおっしゃったとおり、指示どおりにやられる御予定なのか、それだけお尋ねいたします。
#148
○鈴木説明員 現在、石川県の教育委員会から正式な報告を求めております。それを待ちまして措置をいたしたいというふうに考えております。
#149
○青柳委員 それは全国的に出される御予定なんですか、それとも一報告をしてきた石川県に対してだけでございますか。
#150
○鈴木説明員 この報告の内容を検討いたしまして、全国的に徹底する必要があれば、それも含めて検討したいと考えております。
#151
○青柳委員 終わります。
#152
○羽田野委員長代理 次回は、来たる十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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