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1971/03/21 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第8号
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1971/03/21 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第8号

#1
第068回国会 法務委員会 第8号
昭和四十七年三月二十一日(火曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君
   理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君
   理事 麻生 良方君
      石井  桂君    大竹 太郎君
      千葉 三郎君    松本 十郎君
      村上  勇君    中谷 鉄也君
      林  孝矩君    吉田 賢一君
      青柳 盛雄君
 出席政府委員
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        警察庁警備局長 富田 朝彦君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
 委員外の出席者
        議     員 高橋 英吉君
        議     員 羽田野忠文君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十一日
 辞任         補欠選任
  楯 兼次郎君     中谷 鉄也君
  丸山  勇君     林  孝矩君
  麻生 良方君     吉田 賢一君
同日
 辞任         補欠選任
  中谷 鉄也君     楯 兼次郎君
  林  孝矩君     丸山  勇君
  吉田 賢一君     麻生 良方君
    ―――――――――――――
三月十七日
 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第八六号)
同月十八日
 広島法務局海田出張所存続に関する請願(青柳
 盛雄君紹介)(第一六六九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案(高橋
 英吉君外七名提出、衆法第一号)
     ――――◇―――――
#2
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 高橋英吉君外七名提出の火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。高橋英吉君。
#3
○高橋(英)議員 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案について、その趣旨を説明いたします。
 この法律案は、最近における火炎びんを使用する不法事犯の実情等にかんがみ、火炎びんの使用、製造、所持等の行為について特別の処罰規定を新設しようとするものであります。
 ここ数年来、一部不法分子は、各地においてきわめて過激な集団的、組織的な不法事犯を繰り返しておりますが、その際、いわゆる火炎びんが主たる凶器としてしばしば使用され、その結果、これまでに、多数の警察官や一般人の死傷を見ているほか、各地において、官公署、民間の施設や車両の炎上等、多大の被害が発生し、社会一般にも大きな不安を惹起していることは、すでに御承知のとおりでございます。
 ところで、火炎びんは、ガソリン等引火しやすい物質をガラスびんその他の容器に入れ、これに発火装置または点火装置を施したもので、人の生命、身体または財産に害を加えるのに使用されるものをいうのでありまして、きわめて危険な凶器であるのみならず、正当な用途に使用される余地は全く存しないものであります。
 しかして、現行法制のもとにおいては、このような火炎びんは爆発物取り締まり罰則にいう爆発物に当たらないとされており、火炎びんの使用、製造または所持等を、直接処罰の対象とする刑事罰則は存在せず、また、その他既存の罰則をもってしても、火炎びんを使用する不法事犯を的確に処罰するには、種々の難点が見られるのであります。
 このような観点から、火炎びんの使用等について特別の処罰規定を設け、もってこの種不法事犯の防=に資するとともに、社会不安を一掃し、法秩序の維持に寄与するため、この法律案を提出することとした次第であります。
 この法律案の骨子は、次のとおりであります。
 第一点は、まず、火炎びんの定義を定めたことであります。
 現在、使用されている火炎びんは、性能、構造等多種にわたり、その内容は必ずしも一定しておりません。
 そこで、まず、この法律の適用範囲を明確にするため、火炎びんの定義規定を設けたものであり、この法律において火炎びんとは、単にガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れたものというだけでなく、その物質が流出または飛散した場合に、これを燃焼させる発火装置または点火装置を施したもので、人の生命、身体または財産に害を加えるのに使用されるものとしたのであります。
 第二点は、このような火炎びんの使用、製造、所持等を処罰することとした点であります。
 このような火炎びんは、さきに申し上げましたように、きわめて高度の危険性を有する凶器であるのみならず、正当な用途に使用される余地の全く存しないものであり、一たびそれが使用される場合には、不特定多数人の生命、身体または財産にも危険をもたらすものであります。そこで、このような火炎びんを使用して人の生命、身体または財産に危険を生じさせた者を十年以下の懲役に処することとするとともに、その未遂をも処罰し、また、使用に至らなくても、このような火炎びんを製造、所持した者について、三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処することとしたものであります。
 このほか、火炎びんを使用する不法事犯の実態にかんがみ、火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器に引火しやすい物質を入れたもので、まだ発火装置または点火装置を施していないものについても、火炎びんを所持した者と同様に処罰することとしたものであります。
 以上が、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
#4
○松澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#5
○松澤委員長 引き続き質疑に入ります。
 申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。
#6
○畑委員 私は、今回自民党から提案がございました火炎びんの使用等の処罰に関する法律案について質問をいたしたいと思います。
 そもそも、この火炎びんの使用等の処罰に関する法律案につきましては、前の国会の際に自民党のほうからわれわれ野党に非公式に話がございまして、この必要性、緊急性にかんがみて、ひとつ議員立法で与野党一緒になって提案しようではないか、そして議決をしようではないか、こういうようなお話がございましたけれども、その当時われわれ野党といたしましては、こうした重要法案、治安立法的なものに属する法案については、往々にしてもろ刃の剣になり得る可能性、危険性がある、したがって、そう早急に議員立法でやることはいかがか。なるほど、話し合えばさっそくにでも、すぐにでも、その日にでも審議しあるいは成立をさせることができるけれども、しかし、こうした法案についてはやはり慎重にやる必要があるのではないか。同時に、いままでの各種の治安立法等につきましていつも政府が提案をしてくるのが普通である、こういうような考えから、そしてまた政府が提案をするということになりますれば、当然にこれは政府の関係の審議会等で慎重に審議をして、この制度の可否について専門家のやはり十分なアドバイスが必要だというようなことから、われわれは、この段階においてはわれわれ議員提案の要はない、よろしく政府が検討の上、政府の責任をもって提案をしてくるべきだ、こういうような態度をとっておったわけであります。
 ところが、今度の通常国会になりまして自民党のほうでこれを提案してまいりましたので、われわれはこの法案を、これからさらに慎重に審議をしてこの処置をつけたい、かように考えておるわけです。
 最近、火炎びんの使用について、われわれといたしましても、これをそのまま放置すべきではないというような考え方は持っておるわけであります。と同時に、先ほども申しましたように、もろ刃の剣になる危険性もあるから、相当慎重にこれを検討しよう、そうして修正すべき点がありとすればこれは修正して、でき得る限り与野党の考え方を一致させるようにつとめようというようなことが、われわれ社会党をはじめとする野党の基本的な考え方であります。この点をまず冒頭に申し上げておきたいと思うのです。
 そこで、いま私が申し上げました点に関連をいたしますけれども、まずさしあたり自民党の提案者の考え方がいかがであるかという点について、法律案提出の必要性、それからまたその緊急性は何かということについて質問をいたしたいと思います。その点いかがですか。
#7
○高橋(英)議員 議員提案ということの根本的な理念について、これはお互いに共通したものを持っているはずですが、政府ばかりに立法を委任する、立法をまかすというふうなことは、議員の自主性を阻害するものではないか、明治憲法と現在の憲法は違うのですから、われわれに立法権があるんだからというようなことが基本的なものになっておりますが、さらにこの問題については、客観的情勢が緊急を要する点になっておりまするし、各党とも、いま畑さんの言われましたように、いわゆるこの立法に対するムードが盛り上がっておるというふうに自民党としては考えましたし、しかも、この法務委員会では、最もその各党の専門家といいますか、こういう立法に関するベテランが集中されておられるので、ここで審議するのが一番いいことではないかというふうなことで、議員立法に踏み切ったわけです、わが党といたしましては。
 私どもとしては、そういうふうなことでやったわけですが、お役人まかせにしておきますと、緊急性よりも慎重さといいますか、そういうふうなものが先立つようなそういう傾向がございまするし、その上に、われわれのほうがこういうふうな直接国政の根本といいますか、法秩序の根本問題に関する感触といいまするか、敏感さは、お役人よりももっと正しく強いのではないかというふうに考えまして、それで各党の空気、ムードというものも考え合わせて、私どもが提案すればそこで合意が成立するものであるというふうに考えて、議員提案に踏み切った次第です。
#8
○畑委員 私は、議員立法にした理由は何かということについて質問したつもりはないのですが、しかし、関連があるから議員立法にした理由まで申し述べられたのでありましょうから、これはそのままお聞きいたします。
 ところで、われわれ立法府でありますから、もちろん本来は、ほとんど立法の多くの部分を議員が提案をするということがむしろ本来であろうと思う。本来であろうけれども、実際にはそうでないというのが現状であるので、ほとんどの法案が政府提案でございまして、与野党ほんとうに一致をして、それで緊急に早く提案、議決をする必要があるというほんとうの一部限られたものに限って、従来は議員立法でやる場合が非常に多かったのでありますが、今回の場合だけ特に議員立法にしたということが、でき得れば全部の党で一致して提案したいということであったが、われわれが、先ほど申し上げましたような慎重なたてまえから、よろしくやはり普通の法案の例にならって、その必要ありとすれば、政府が責任を持って提案をし、それまでのちゃんとした経過を経てやるべきであるという態度をとっておったというようなことから、なかなかそれでは間に合わないということで、どうも議員立法でやろうといったこともあるし、いまさら政府提案ということになると時間も相当かかる。いろいろそれまでに至る、いままでの法案の提出までに至る経過があるわけです。法制審議会の議を経なくちゃならぬというような問題等もあるし、なかなかおいそれといかぬというようなことから、今度は自民党単独で提案に踏み切ってまいられたということが、私は事の真相だと思う。
 したがって、実際提案のほんとうの中身、法律的ないろんな表現のしかた、法案の作成といったようなことについては、私は実質的には、法務省あるいは警察庁、そうした当局側の考え方がほとんど圧倒的にこれを支配しているんだというふうに思うのです。したがって、提案者の方々にお聞きいたすと同時に、これから先、また法務省あるいは警察庁の方々にもあわせていろいろ質問いたしたい、かように思っておるわけです。
 そこで、次にお聞きいたしたいのは、御承知のように、刑法準備草案というのかございますね。まあなかなか日の目をすぐにおいそれとは見ないわけでありますけれども、いま刑法の全面改正の準備草案ができております。この準備草案の百八十六条を開いて見ていただきたいと思うのですが、ここの百八十六条には、「爆発物使用」ということについて、その破壊力等にかんがみて、死刑、無期等の処罰の規定が草案化されておりますけれども、その第二項に、その「爆発物に類する」というようなものについてのやはり処罰の規定がある。爆発物に至らぬ、しかもそれに非常に類似する破壊力のあるもの、そうしたものについて、十年以下の懲役に処するというような規定がこの草案にございますけれども、これとの関連は一体どうなるのか。まだこの刑法草案はこれからの問題ではありますけれども、これが制定される場合には、この火炎びんのほうが先になるわけでありまして、爆発物に類するものでそれを使用した場合に十年以下の懲役に処する、この火炎びんについても、火炎びん使用についてはやはり十年以下の懲役に処する、この罰則の刑期等について、ちょうど同じな期間になっておるわけであります。この辺等のにらみ合いで十年以下になったかとも思いますけれども、この辺はどうなるのか。火炎びん法が成立をし、いずれまた刑法の改正案が、そのままであるのかどうなるのかわからないが、その辺の関連性がちょっと聞きたいのでありますが、どういうふうにお考えになっておるか承りたい。まず提案者のほうからお聞かせ願いたい。
#9
○高橋(英)議員 提案に至る経過とか現実の問題については、畑委員の御質問の内容がほぼ当たっていると思うわけで、肯定いたしますが、とにかくあの法制審議会に刑法の改正案がかかってからたいへん長い月日を経ておるようですが、まだ結論が出ない、いつ結論が出るかわからないというふうなことですから、この中に取り入れるというふうなことになったらたいへんなことになるから、むろん単独立法でなければならぬという緊急性はお認めのようですが、その内容について、十年以下とかそのほかのいろいろな法律案の原案をこしらえますることについては、それぞれの専門家――私どもも専門家でございまするけれども、遺憾ながら時間に余裕がないから、一応そういうふうな材料をそれぞれの関係者から求めまして、そうしてそれを集大成したというようなことでございますので、そういう点についてのこまかいことは、それぞれの各政府機関といいますか、そういうふうなほうから聞いていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
#10
○畑委員 その経過等について、いま正直に高橋委員のほうから、提案者のほうから申されましたけれども、そのとおりでよろしいか。政府機関のほうはいまの答弁のとおりで、そういう経過でよろしいか。
#11
○辻政府委員 火炎びんの今回の立法につきましては、私どももかねがねこの必要性を感じておったわけでございますが、昨年末自由民主党のほうで提案をお考えになりましたので、その際に適当な考え方を示せということがございましたから、私どものほうでたたき台を自由民主党に提出したという経過になっております。
#12
○畑委員 そこで申しますが、そのたたき台はそのまま修正も何もなかったのですか。あなたのほうのたたき台はそのままですか。どこか自民党法務部会等によって修正をされてこの原案になったということですか、いかがですか。
#13
○辻政府委員 提案されましたものとたたき台と同じでございます。
#14
○畑委員 そうなれば、やはり自民党案というものは、そっくりそのまま法務省案であり警察庁案であったということが言えると思います。
 それからもう一つ、準備草案との関係をちょっと当局のほうから……。
#15
○辻政府委員 ただいま御指摘になりました改正刑法準備草案の百八十六条の第二項でございますが、いまあるいは正確を欠くかもしれませんけれども、この二項は、当時はやはり爆発物に類する破壊力を有するものということで火炎びんを考えておったやに思われるのでございます。しかしながら、その後法制審議会の刑事法特別部会でいろいろ刑法の改正を論議いたしております過程におきまして、この表現では、火炎びんをとらえることはやや困難であろうという議論が出てまいりまして、刑法の改正においては火炎びんは取り入れない、いわゆる現在ございます爆発物取締罰則にございます爆発物、これを刑法に取り入れるけれども、火炎びんのほうは取り入れないという方針が決定いたしまして、この二項は、現在ございます改正刑法草案のほうにはないはずでございます。火炎びんは、刑法の改正のほうには、現段階においては取り入れないというふうになったと理解をいたしておる次第でございます。
#16
○畑委員 そうすると、刑法改正のほうの準備に関係している方々のほうとしては、この火炎びん法案がこのまま成立をすれば、準備草案の百八十六条の第二項は削除をする、こういうことに承ってよろしゅうございますか。それはそのまま生きるんだということですか、どうですか。
#17
○辻政府委員 刑法の全面改正を審議いたしております法制審議会の刑事法特別部会におきましては、一応この改正刑法準備草案を参考として作業を進めてまいったわけでございまして、この改正刑法準備草案は全く刑法改正作業の参考案でございます。現在はすでに、この刑事法特別部会におきまして、特別部会案が昨年の十一月末に決定されました。これを現在は改正刑法草案という名前で呼んでおりますが、それにはこれを取り入れていないということになっております。
#18
○畑委員 そうなると、取り入れていないということは、火炎びん法案を予想して取り入れていないということか。火炎びん法案ができなければ、やはり何らかの形でそれに類するものをとる、火炎びん法案このままでもいいけれども、それをやはり規定する必要があったのだろうが、火炎びんが出そうだからというので、この刑法改正のほうにはそれを削除したということになるのではないかと思いますが……。
#19
○辻政府委員 昨年十一月末に一応この改正刑法草案が部会で採択されておりますが、この火炎びんの問題は、将来刑法に取り込むというような考え方ではこの部会におきましては審議されておりません。現在もそういうことでございますが、その後また松本楼事件をはじめ火炎びんの弊害といいますか、これがたいへん熾烈になってまいりました。そういう事情がございますので、刑法の部会における改正審議では、火炎びんを刑法に取り込むというその議論は出ていなかったわけでございますが、その後の事態として、との火炎びん処罰法の問題が出てきたというふうに理解をいたしております。
#20
○畑委員 そうなると、準備草案にはこうあるけれども、その後の作業によって、今度の草案にはこの準備草案の百八十六条の第二項の点は削るということになった。火炎びんを予想したわけではないが、その当時の状況としては第二項というのは一応削ろうということになった。火炎びんを予想したわけではない。したがって、それを取り入れるというようなことはしなかった。その後新たにこの火炎びん法案の必要が特に出てきたということに承ってよろしいか。
#21
○辻政府委員 大体そのとおりでございます。実はこの準備草案の、ただいま御指摘の百八十六条の二項を削ろう、刑法の今度の案では削ろうということを議論をいたしましたのは、たしか昭和四十三年ごろでございます。そういう状況で、その時点では火炎びんというものを刑法の改正のほうには入れないでおこう、これはこの二項のほうの字句もやや雑でございますし、そういう見解から落ちたわけでございますが、それが四十三年の事態でございます。
 ところで、先ほど申し上げましたように、火炎びんの必要性がまたとみに昨年の後半期ぐらいから出てまいった、こういう関係になっております。
#22
○畑委員 そうなると、この火炎びん法案が成立をすれば、おそらくは刑法の全面改正のほうの場合には、火炎びんに関する罰則は組み入れられないであろうというふうに承知していいんだろうと思うのです。それは答弁要りません。
 次に、逐条的にひとつ検討していきたいと思うのです。
 第一条によりますと、「この法律において、「火炎びん」とは、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物で、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」こういうふうに第一条で火炎びんの定義をいたしておりますが、この中に「ガラスびんその他の容器」と書いてあります、この「その他の容器」とはどのようなものをいうのかお聞きしたい。あなたのほうに聞いても無理だろうから、あっちが本来らしいから、政府のほうに聞きます。
#23
○辻政府委員 「ガラスびんその他の容器」と申しておりますのは、ガラスびんのほか、陶器製、磁器製、プラスチック製、ポリエチレン製等の容器を意味するものでございまして、破砕性の有無ということは問わないわけでございますが、「その物質が流出し、又は飛散した場合」という他の要件との関係から、内容物が流出または飛散し得るような形状、材質の容器であるというふうに私どもは理解をいたしております。
#24
○畑委員 その次ですね。「引火しやすい物質」という表現がございますが、これは一体液体に限るのか、それともそれ以外の気体や固体も入るのか、可燃性物質との違いは何か、この点を聞きたい。
#25
○辻政府委員 「引火しやすい物質」という点でございますが、これは私どもの理解では、揮発性を有しておる、容易に引火し、急激な燃焼を起こすというような物質というふうに考えておるのでございます。私は、理化学の知識が乏しゅうございますが、結局この引火というものは、燃焼のうちで、揮発性の液体または固体から発生する蒸気またはガスというものに口火が飛び込んでいって燃焼するというふうな観念を引火というものであろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、やはりそういう蒸気、ガスというようなものを発散し得る物質であろうというふうに考えております。
#26
○畑委員 そうなると、何も液体には限らないが、大体液体であろう。液体がすぐ気化しやすい、気体となったりするような可能性のあるものというようなことかと思いますが、それでよろしいかどうか。
 それから、先ほど言った可燃性物質というものとはちょっと違う。可燃性物質だったらもっと程度の低いというか、燃えやすさの程度が、あなた方の予想しているものよりももっと低いものまで可燃性物質というと思うけれども、したがって、俗にいう可燃性物質というよりももっと程度の強い、もっと燃えやすいもの、こういうような意味にとってよろしいかどうか、その点二つ聞きたい。
#27
○辻政府委員 燃焼という観念を考えてみますと、専門家のほうでは燃焼に三種類あるというふうにいわれております。これは表面燃焼、それから蒸発燃焼、分解燃焼というふうにいわれておるわけでございまして、この表面燃焼といいますのは、ただいま御指摘のような固体であって、木炭が燃えるように固体が燃焼するというような観念のようでございます。しかしながら、そういう固体の場合にはガスを発生しないので、そういうものについては引火というものは考えられないのでございます。
 そういう意味におきまして、可燃物というと固体その他全部入ってまいりますけれども、引火しやすい物質ということになりますと、表面燃焼をするような固体というものは入らないんじゃなかろうかというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。そういたしまして、そのうちでいま蒸気、ガスを発散しておってそれに引火するという場合に、この引火しやすいというのは、常温または常温よりも多少高くても引火してくるというような状態のもの、これが引火しやすい物質であろうというふうに理解をいたしておるわけでございます。
#28
○畑委員 次に、「発火装置」と「点火装置」との区別の表現がございますが、これは一体どういうのか説明願いたい。
#29
○辻政府委員 「発火装置」と申しておりますのは、引火しやすい物質に引火させて燃焼させるために必要な、口火をみずから発するしかけというふうに私どもは理解をいたしておりまして、これは先般実験がございましたけれども、あの場合にも、塩素酸カリをしましましたテープをビンに巻いてあるという場合に、この塩素酸カリとビンの中の硫酸とが化合して口火の役をするというようなものを、「発火装置」というふうに考えておるわけでございます。
 「点火装置」というほうは、引火しやすい物質に引火させて燃焼させるために必要な、口火をみずから発することなく、点火によって発するしかけというふうに理解をいたしておるわけでございまして、これもこの前の実験にございましたように、たとえば布とか紙を利用してせんにしておき、そうして人力によって点火して中の物質に引火させる、こういうものを「点火装置」というふうにされておるというふうに理解をいたしております。
#30
○畑委員 その次にお尋ねいたしたいのは、火炎びんというのは一つの凶器であると思うのですが、御案内のとおりその凶器の差異に、性質上の凶器と用法上の凶器とある。性質上のものに限るのかあるいは用法上の凶器をも含めるものか、その辺の見解をただしたい。
#31
○辻政府委員 この第一条の定義規定の最後の、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」という点に関連してくる御質問であろうと思います。この場合に私どもが理解をいたしておりますのは、社会通念上もっぱら人の生命、身体、財産に害を加えるために使用される認められるもの、そしてそのものの構造、形状、機能、利用状況等から、これは客観的に判断さるべきものであろうと考えておるわけでございます。
 ただいま御指摘の用法上のもの、性質上のものという観念からまいりますと、これは性質上の凶器である場合はもちろん含むわけでございます。そしてそれが大部分であろうと思いますけれども、用法上の凶器が全然当たらないかというと、当たる場合もあり得るのじゃなかろうかというふうに考えておりますが、これはきわめてまれな場合だけではなかろうか。かような用語例は、御案内のとおり軽犯罪法の一条二号にもこういうような用語例がございまして、大体性質上のものをいうので、用法上の場合も希有の例でございましょうが、まれにあり得る場合もあるのではなかろうかというふうに理解をいたしております。
#32
○畑委員 その次に聞きたいのは、一体本法の保護法益は何かということでございます。人の生命、身体または財産に危険を生じせしめる場合というようなこともありますし、また法秩序というか、安全というか、そういったものなのか、一体何が保護法益なのか聞きたい。
#33
○辻政府委員 公共の安全を保護法益といたしておりますが、同時に人の生命、身体、財産に対する危険を生じさせるということを要件といたしておりますので、この観点からすれば、火炎びんを使用する行為等の危険性から人の生命、身体または財産の安全をも保護しようというふうになっておると思いますが、本来的には、公共の安全保護を法益にしておるというように理解をいたしております。
#34
○畑委員 そうなると、本来は公共の安全であるが、同時にまたそれが具体的に人の生命、身体、財産ということにも危険を及ぼすおそれがあるから、それもまた保護法益である。そうすると、保護法益が二つあるというわけですか。そうじゃなくて、公共の安全の中に人の生命、身体、財産も含まれるということなんですか、別々だというのか両方だというのか、いかがですか。
#35
○辻政府委員 保護法益といえば、これは公共の安全を保護法益にしておると思います。結果的に人の生命、身体、財産も保護されるようになっている、かような理解でございます。
#36
○畑委員 続いて第二条、「火炎びんを使用して、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、十年以下の懲役に処する。」こうございます。また、「前項の未遂罪は、罰する。」ということになっておりますが、この「危険を生じさせた」というのは、一体抽象的危険でよいのか、あるいは具体的危険であることを要するのか、あるいは結果の発生を必要としないのかどうか、この辺をお聞きしたい。
#37
○辻政府委員 私どもは、いわゆる具体的危険犯というふうに理解をいたしておるわけでございまして、実害の発生を要しない。しかし、抽象的危険犯ではないというふうに理解をいたしております。
#38
○畑委員 抽象的危険犯ではない、したがって具体的危険犯であることを必要とする、ただし結果の発生は必要としない、こういうことですな。
 それからその次に、この第二条とほかの犯罪の、公務執行妨害罪、あるいは凶器準備集合罪、これとの罪数はどういうことになりますか。
#39
○辻政府委員 第二条の火炎びんの使用事犯と公務執行妨害との関係は、これはそういう火炎びんを使って公務の執行を妨害するということでございましょうから、これはいわゆる一所為数法の関係にあろうと思うわけでございます。
 それから、この使用事犯と凶器準備集合罪との関係、これは凶器準備集合罪は凶器を準備して集合すること、あるいは凶器の準備のあることを知って集合するということで、構成要件の内容が違いますので、この使用事犯と凶器準備集合罪との関係は、併合罪の関係になると考えております。
#40
○畑委員 続いて、先ほど読み上げました第二項の「前項の未遂罪は、罰する。」という未遂罪の場合ですが、火炎びんを一体、どういうときに既遂と未遂になるのか。御承知のように、実行未遂とそれから着手未遂とございますが、この場合の未遂罪ですけれども、具体的には、火炎びんに火をつけて持っておって投げる、その投げたときに着手になるのかという場合ですね。それから、火をつけなくて済む発火装置の場合、それは投げることによって具体的な危険が起きるわけだが、いずれにしろ投げること、投てきすること、これが着手なのか、あるいは点火装置の場合、火をつけてただ持っておる、まだ投げないというときには、どこから着手になるのか。そのときには、まだ火をつけただけで投げないときには着手でないのかどうか、この点を聞きたい。
#41
○辻政府委員 この使用事犯の着手の時期でございますが、これはいまの発火装置の場合には具体的に投げるという、投げるときが着手であろうと思いますし、点火装置の場合には、やはり点火をすればそれで着手になるのではなかろうかと私どもは理解をいたしております。
#42
○畑委員 そうすると、点火装置と発火装置で違うのだ、あなた方のほうでは、投てきということになっておるが、投てきだけでは承知できない、点火装置の場合は、もう点火をすれば投てきする前に着手になる、こういう見解だと思います。
 それから同時に、これは危険のほうとも関連があるのだけれども、それを投げた、投げたところがその場所は何ら危険も何にもない、要するにその付近には可燃物質もない、人間もいない、投げたけれども投げそこねて手前のほうに落ちてしまった、そこは道路で何にも危険なものはないといった場合にはどうなるのか、その点はどうですか。
#43
○辻政府委員 この使用事犯は、人の生命、身体または財産に具体的な危険を生じさせたときに既遂に達するわけでございますから、ただいま御指摘のような人の生命、身体または財産に対して具体的に危険が発生しなかったというような場合には、この犯罪は成立しなかったということになろうかと思います。それは未遂であろうと思います。
#44
○畑委員 実行未遂ですな。
#45
○辻政府委員 はい。
#46
○畑委員 次に第三条に移ります。この第三条というのはなかなかむずかしい、問題のところだと私は思うのです。特に第三条の二項が相当研究を要するところであろうかと思いますが、まあ読んでみます。「第三条 火炎びんを製造し、又は所持した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」となっております。第二項は、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者も、前項と同様とする。」こういうような規定になっておりますが、この点が、一体第三条の火炎ぴんというものと第一条の火炎ぴんというものとは同じなのだろうか、違うのだろうかという疑問が一応起こるわけです。なぜなれば、第三条の場合処罰の対象が相当広範囲にわたる可能性もありますので、その辺を詰めておかなければならぬと思って質問するのですが、この「ガラスびんその他の容器」というのは、第三条の場合と第一条の場合で同じなのか違うのか、その点を伺いたい。
#47
○辻政府委員 同じであると理解いたしております。
#48
○畑委員 次に、第一条では、「発火装置又は点火装置を施した物」という要件ですね、それと「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」こういう二つの要件がかぶさっておりますけれども、第三条についてはそれがない。ただ、火炎ぴんというのは第一条に定義をしてあるから、したがってそのままの第一条の火炎びんなんだ、したがって同じなんだということでありましょうけれども、わざわざかぶせはしていない。したがって、その必要はないということでかぶせていないのでしょうけれども、ことばは同じでも内容が違うのではないかということでございますが、やはり同じですか。
#49
○辻政府委員 第三条の一項に書いてございます火炎びん、二項に書いてございます火炎びん、この火炎びんというその用語でございますか。――この用語は、第一条の定義の規定にいう火炎びんということに理解をいたしております。
#50
○畑委員 では同じですね。
 そうすると、今度は三条二項の容器というのは最終容器、いわゆるビールびんとかあるいはその他のコカコーラのびんとか、そういった最終審器なのか、それだけに限るのか、あるいはその手前の、それに入れるために、持っていくのに必要とする、こまかく入れる前のドラムかんとかあるいはある程度詰めて持っていく入れものがありますね、それに入っているその入れものですね、ガソリンやなんか入っている入れもの、こういったものも入るのかどうか。最終容器に限られるか、あるいはその前の容器、それに入れるものを入れている容器、それも入るのかどうか、この点はどうですか。
#51
○辻政府委員 三条二項に関します限りは、この容器といいますのは、ただいま御指摘の、いわゆる最終容器には限らないというふうに理解をいたしております。私が先ほど申し上げましたのは、三条二項の火炎ぴんということばは、これは一条の定義規定の火炎びんであるというふうに理解をいたしますが、あとの二項の「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器」と、こうございますが、ここの「ガラスびんその他の容器」というのは、これは読んで字のごとくガラスびんその他の容器でございますので、必ずしもこの容器が火炎びんに使われるものというものには限らない。その意味で、いわゆる最終容器ではないというふうに考えております。
#52
○畑委員 また聞き漏らしたけれども、そうすると、第二項の容器というものは最終容器には限らないということですか。そうですね。ちょっと確かめておきます。
#53
○辻政府委員 私どもはさように、限らないと理解をいたしております。
#54
○畑委員 そうなりますと、この第三条第二項の「ガラスびんその他の容器に」というのと「入れた物を」という二句、二つのことばは必要ないんじゃないか。「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガソリン、燈油その他引火しやすい物質を所持した者も、前項と同様とする。」ということになるのではないかというふうに思います。最終容器ということであれば別だが、最終容器に限らぬということになれば、そんなものは表現は要らないんで、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器に」とは必要ないんで、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガソリン、燈油その他引火しやすい物質を所持した者も、前項と同様とする。」ということでよろしいことになるんではないか。要するにくくるという意味ではそれでいいんではないかと思うんだが、それはどうですか。
#55
○辻政府委員 結論的には、ただいまの御指摘のようになろうと思うのでございます。この「ガソリン、燈油その他引火しやすい物質」で容器に入らないものはないという意味におきましては、この「ガラスびんその他の容器に」という字句は要らないんじゃなかろうか。必ずこういうものは容器に入っておるということになれば、そのようになるわけでございます。
 したがいまして、その意味におきましては、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」そのガソリンを持っておったということになるのかもしれませんけれども、これはやはり私どもは、一条の定義規定のことばをそのまま持ってくることによりまして、この一条との結びつきといいますか、そのほうがむしろわかりやすいんじゃないかということで、この「ガラスびんその他の容器に」ということばが入れられておるんだというふうに考えておるわけでございまして、実質的には、この三条二項におきましては、必ずしもこの容器というものは、最終容器には限らないということに相なろうかと思います。
#56
○畑委員 そうなるからなかなかむずかしいんだと思うんです。われわれにも異論があるのはその辺であります。結局、あくまでも火炎びんそのものは、われわれだってこれを使うことは非常に困ると思います。これは取り締まらなくてはならないけれども、火炎びんそのもの、そういう形状と構造をした火炎びんを使うことはいけない、またこれを製造し所持することもいけない、これまではいいと思うのです。ところが、それを製造するために、製造の目的で、いま言ったようなものを所持した者も同じだということになると、しかも最終容器だけに限らぬということになりますと――最終容器に限るということならまた別だ。ところが最終容器に限らぬということになると、その準備段階の、それに充てんするための、その前の、もっと量の多いガソリンをどんな容器で持っていっても、それを持っておること自体が火炎びん製造の目的だということになるから差しつかえないとあなた方はおっしゃるけれども、そういう目的でということはどうにでも認定できるのです、目的というのは。あとになって調べたら、そういう目的はなかったということにもなるのでしょうが、少なくともそういう認定で逮捕すれば逮捕できるということになりますね。そうなるときわめて危険だというのがわれわれの主張なんです。そうなると非常に乱用のおそれがあるということで、私はこの第二項は非常に問題がある。
 それは取り締まり当局からすれば、すなわち警察庁あたりからすれば、これが一番いいに違いない。何でもかんでもやれるのですからね。未然に防ぐことはなるほどできよう。しかしながら、これによって一般のそうした目的のない人も目的ありというふうな嫌疑をもってにらまれれば、どうしてもそれはそれですぐ現行犯で逮捕できるということになると、あとで申し開きしたってなかなかむずかしいというようなこともありますし、その間警察にぶち込まれるというようなこともあり得るのであります。その辺は取り締まりの目的からすれば、これが一番いいのだと思いますけれども、その辺が問題だと思う。
 したがって、あなた方のねらい、警察関係のねらいとしては、第三条あるいは第三条の二項、この点がむしろねらいかもしれぬけれども、われわれの心配する一般の人のことを考えてみると、むしろ非常に第三条が気になる、こういうことでございますが、その点はいかがですか。今度は政府委員じゃなくて、自民党の提案者のほうにお聞きしたいのです。
#57
○高橋(英)議員 目的というふうなことで認定されて、迷惑をこうむることが生ずるというおそれはありますが、これは現代では考えられないのではないかと思うのです。やはりガソリンを運ぶというのはそれぞれの根拠があるはずなんで、それを不審尋問されたものに対して弁解ができないというふうなことは、実際上現実にはあり得ないのではないか。それよりも、もしそういうふうなことがあるのを逸したほうがより社会悪を増大するのではないかというふうな考え方もあると思う。現在でも、どうも警備当局のほうは憶病になったんじゃないか、あまり慎重過ぎるじゃないかと言われるぐらいですから、法律としては少し行き過ぎくらいな法律をこしらえたほうがという説もあるのです。そういう説もありますけれども、それは私は採用しませんが、この程度のことでは、そう人権じゅうりんとか権力の乱用とかいうふうなことにはならないと思って、私どももこの原案はりっぱなものであるというふうに思って提案した次第であります。
#58
○畑委員 どうも提案者がそういうことじゃ困りますね。だからこそほんとうの震源地は警察庁にあり、また法務省にあり政府にある。そしてあなたはそのちょうちん持ちをやっているんだというような感じが非常に強いのです。ますますそういう感じを強くせざるを得ない。われわれは広く人権を守ることがわれわれの一方の責務であろう、公安の秩序を守るということももちろん第一に必要でありますけれども、同時にまた反面、それによって取り締まられて無事の人がやられるというようなことを非常に心配をするのでありまして、その辺まで十分考えられてやったのかどうかという点については、どうも信用できないですね。その辺、非常にうっかりしていられたんじゃないか。その辺こそ自民党の法務部会あたりで検討して、もっと研究をして修正をして出すべきであった。ところがうのみに、おまえたちたたき台出せ、そうか、たたき台を出してもらったら、ああこれでよろしいというので提案されたのが実情だ。これは先ほど偽らざる告白があった。それは提案者のほうも認めて、また政府委員のほうも認めておるんだから間違いないと思う。
 そういう点で、高橋さんなどはそんなガソリンを運んだりなんかする、そういう程度の低いことをやらぬかもしらぬけれども、一般の人はこういうことは何度もありますよ。たとえば自動車のトランクの中にポリの例のガソリンの入ったものを運ぶときがある。そういう場合に、状況によっては、ひどいかっこうをしていたとか、学生風のかっこうをしていたとかということだと、すわ三派のやつらだ、ゲリラのやつらだというようなことで、そういったポリに入れたガソリンの運搬や所持までが取り締まられて、有無を言わせずつかまえられる、それで三日間ほうり込まれる、こういうようなことになる危険性が非常に多いと私は思う。この点を非常に心配をいたしております。あとでいずれまた各党のいろいろ研究の際にこまかくは検討するつもりでありますけれども、私はその点が非常に研究問題だと思います。その点、政府委員はどうお考えになるか。だいじょうぶだということですか。
#59
○辻政府委員 この第三条第二項でございますけれども、私どもたたき台をつくらしていただきました当時におきましては、必ずしも最終容器に限らず、やはり具体的な例としまして、いわゆる成田の闘争等におきまして、最後に投げるものでなしに、明らかに諸般の状況から見て火炎びんをつくるために、最終容器でないものにガソリンなんかを入れてそこで準備しておるというような事例があるということを承知いたしておりましたので、最終容器に必ずしも限る必要はないのじゃなかろうか。ただそれを限らないと、ただいま御指摘のように、歯どめがどこでできるかという問題があるわけでございますが、これは法律的には、「火炎びんの製造の用に供する目的」ということで、目的犯とするということによりまして、しかもこの目的というものは、もちろん主観的な要素ではございますけれども、この認定にあたっては、諸般の客観的状況というもので認定されるべきものであると考えておりましたので、やや広い感じはいたしますけれども、必ずしもこれでたいへん広い刑罰法規であろうとは考えなかった次第でございます。
#60
○羽田野議員 三条二項の問題は、一番問題のあるところだと思います。やはりこの「火炎びんの製造の用に供する目的」ということが認定されれば、最終容器だけでなくて相当広く取り締まりができるような状態にしておきませんと、実際に実効をあげ得ないのではないかということを考えます。
 それから、先日、私は現実にこの火炎びんの実験を見まして、実はこの三条二項はもうちょっと範囲を広げなければいけないのではないかという感じさえ受けております。これは「火炎びんの製造の用に供する目的」と、こういうふうになっておりますので、火炎びんの定義からいたしますと、燃焼性のものを入れたびんに発火装置または点火装置を施した場合に火炎びんになる。そうすると、燃焼性のガソリン等を入れても発火装置、点火装置をつける意思のない者は、「火炎びん製造の用に供する目的」というものはなくなってしまう。しかしながら、現実に火が燃えておるところにびんに入れたガソリン、燈油を投げれば、実際に火炎びんと同じ狂暴な威力を発揮するという事実を見まして、むしろこの「火炎びんの製造の用に供する目的」に、なお燃焼中の場所にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れたものを投てきする目的で持っておった場合というものまで含めなければ、取り締まりの目的を達しないのではないかという気持ちがいたしました。御質問の取り締まりの面で乱用されるというところは、歯どめをよほどよくしなければならないけれども、これはあまり制限をいたしますと、取り締まりの実効があげられないというところで、やはり相当広範囲に認める必要があるのではないかと考えております。
#61
○高橋(英)議員 各省庁の原案をたたき台にしただけで、素通りさしたのではないかというふうな御質問だったが、それどころじゃないですよ。法務部会でも、ここにおられる田中先生、小島先生、うるさいほうですから、羽田野君なんか、先ほどから畑君が質問しているようなこと以上に事こまかに、私はたいていに済ませればいいなと思うほどしつこく問答があって、この程度のところならいいだろうというふうな結論になったので、決して素通りしたのではないのです。ほんとうに真剣に、みな人権擁護のため、その他法律案の公正を期するために一生懸命研究したことは間違いないですよ。素通りしたのではない。その点は誤解ないように願いたい。
#62
○畑委員 いまの羽田野さんのおっしゃることは、これは場合が違うのですね。第三条第二項じゃありませんね。ほかの場合ですね。それならそれのように別にそういう条文を起こされたらいかがですか。要するに、それで火勢を助けた者とか、それも同様とするとかいうことで……。そういう燃えているものにガソリンを投げつけることは、第三条第二項とは全然別ですよ。それを第三条第二項の答弁のときに持ってくることは私はおかしいと思う。全然別ですよ。そういうことも確かにやはり取り締まらなければならないかもしれません。確かにこの間のように、火勢が猛烈になると、さらにどんどんガソリンを入れて、ガソリンを投げさえすれば火勢がますます大きくなるのだからね。われわれも、一本ぐらい投げただけでは、あるいは二本ぐらい投げただけではたいしたことはないと思った。ところが何本も投げて、最後にはガソリンだけでいい、そうすれば大きな火勢になって、人も殺傷することができるということではやはり問題だ、これは取り締まらなければならないというような実感を私も強くした一人です。ですけれども、それはそれで別にどこかの規定に入れるとかなんとかということならばいいんだけれども、第三条第二項の危険性を緩和させる、その言いのがれのためにこれを使うということは、私は場合が違うというふうに思うのですが、いかがですか。
#63
○羽田野議員 これは立法技術の問題で、別の条項に入れるがいいかあるいはこの三条の二項に加えるがいいかということは、お説のように論があると思います。ただ、この「製造の用に供する目的」ということが、第三条二項では容器のいかんにかかわらず非常に強く生きておりますので、最終容器ということを限定しなくても、この目的ということで十分歯どめはできるのではないかというふうに考えます。私は、いまこの発火装置、点火装置というものの中に全く関係のないものも入れなければならないのではないかということは、現実の効果の面で述べただけでございまして、結局において発火装置、点火装置のないものを持っておったその危険性は、製造の用に供する目的で持っておった場合でも、あるいは発火装置、点火装置をつけなくて持っておった場合でも、その危険性というものは非常に大きい、したがって、取り締まりの対象にしなければならないという意味で申し上げたわけでございます。
#64
○畑委員 そういう趣旨のようでありますかた、第三条第二項の答弁としては当たっていないと私は思います。第二項はあくまで「火炎びんの製造の用に供する目的で、」という大きなかぶさりがございます。それ以外の、いま言った火勢を助けるという場合は、この場合とは異なるというふうに思います。
 結局、一番問題なのは第三条第二項だと思います。第三条一項までは、第一条に定義の規定がございまして、その定義を引き受けて一項は、「火炎びんを製造し、又は所持した者」ということでございますから、これはこれで私は妥当だろうと思いますけれども、第二項はずっと飛躍しています。さらに前の段階でということがねらいだと思いますけれども、反面、一般の人の危険が伴なうというようなことで、これは検討を要するのではないかというのが私の意見でございます。
 これで大体私の質問は終わりますが、どうせいずれまたゆっくり質問いたしますけれども、中谷君が関連質問をやられるそうですから、ちょっと許していただきたい。
#65
○松澤委員長 関連質問として中谷君の質問を許します。中谷鉄也君。
#66
○中谷委員 三条二項についてお尋ねを、関連していたしたいと思いますが、そうすると最終容器に限らないということは、こういうことになるわけですね。たとえば、具体的な例で言いますけれども、ドラムかんというふうなものもこれへ入ってくるわけですね。そうすると、歯どめがないという点で一つ例を出しますけれども、脱法行為をしようと思って自動車のガソリンタンクの中にガソリンを満タンにしておく、これも最終容器に限らないということになれば、結局自動車のガソリンタンク自体が容器たり得るということにも相なるわけでしょうか。提案者、高橋先生……。
#67
○高橋(英)議員 それも御質問のとおりでござまして、目的がこれに該当するのであったならば、むろんどういう容器でも、いま言われたような自動車の中のものでも目的の中に入る、対象になるというふうなことです。
#68
○中谷委員 歯どめが全然ございませんね。そうすると、自動車の中にガソリンがなければ自動車は走らないが、ガソリンで走っている自動車のガソリンタンクも第三条二項に触れる場合がある、こういうことですね。そうすると、「火炎びんの製造の用に供する目的」というのは、先ほど刑事局長がお話しになったように非常に主観的な目的の認定でございますね。
 じゃ具体的に、三条二項について、現行犯逮捕をするという場合に、ドラムかんがあった――ドラムかんはないけれども、とにかくガソリンが満タンという状況が、外形的事実として客観的に認定ができる。そこまではわかる。そうすると、具体的に人を逮捕する場合、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」というのは、ガソリンをA地点からB地点に運ぼうとしておる人がおる、その場合に、現行犯として逮捕するときの要件として一体どんなことが考えられるか。これはお二人とも法律実務家だからお尋ねするのですけれども、乱用の危険性との関係でお答えいただきたいと思います。とにかくA地点からB地点に物を運ぶんだ、こういう場合、現行犯逮捕をする場合には、そのBの地点がたとえば遠いというような場合、なかなか調べるわけにいきません。たとえば本人が自白しないという場合、「火炎びんの製造の用に供する目的」だということを自供しない場合に、どういう場合にその目的を認定できるのでしょうか。たとえば、これは専門家のお二人にお聞きするのだけれども、こんなふうな場合にはとにかく現行犯逮捕をすることになるのでしょうかということを答えてください。
#69
○高橋(英)議員 これは御質問のとおり、現実においては、実際においてはほとんどあり得ないことと思います。対象になり得ることはないと思います。それでもあらゆることを想定するというと、共犯者が自供して、うしろから来るどういう自動車の中にはガソリンが満タンにしてある、そいつを使うためにやってくるんだというようなことがあれば――おそらくないのだけれども、そういうことがあれば、そういうことは対象として取り締まることができるが、普通の場合においては、いまの慎重な、われわれから見ると憶病と思われるほどの取り締まり当局としては、とてもそれは手が出せないから、実際においては人権じゅうりん、侵害をするというようなことはないと思います。理論上は、しかしやはりどういう容器でもその目的である以上は対象になる。ただ、目的を認定するのに人権侵害をしてはいけない、行き過ぎがあってはいけないというようなことでございますから、何べんも申すようですが、ほんとうに慎重な現在の取り締まり当局からいくと、行き過ぎは生じないのではないか、問題は起こらないのではないかと思っております。
#70
○中谷委員 質問に答えていただけませんね。提案者の羽田野さんのほうからもお答えいただきましょうか。
 私、質問しますが、一見全学連風、三派風、そうしてとにかくまたというふうなこと、そういうようなことで、「火炎びんの製造の用に供する目的」というようなことが認定されては、当然人権侵害が起こってまいりますよ。それは具体的なケースとして、本人が、とにかく私は違いますよと言った場合、逮捕するということは十分起こってくると思うのです。それで一体取り締まり当局としては、どんな徴候があった場合、全体的に判定すると言われればそれまでですけれども、羽田野さん、いわゆる現行犯逮捕をしなければならぬ立場に立った人間として、どんな徴候でそういう主観的なものを認定されますか。非常にこれは乱用の危険性があると思いますけれども……。
#71
○羽田野議員 客観的に見て、先ほど問題になっております最終容器にガソリンあるいは灯油、そういう燃焼性の物質を入れて現実に火炎びん戦術をしておるところに行っておるような場合には、これは製造の目的で持っておるという推定を受ける場合が相当たくさんあり得ると思います。しかしいま御設例の、たとえば自動車の燃料タンクに満タンをしておる、あるいはドラムかんにガソリンを入れたものを積んでおる、それが製造の目的のために持ってこられたかどうかという認定は、現実にその中からガソリンを抜き取って、びんに詰めて火炎びんを製造しておるというような具体的な事実が出てくるか、あるいは現実に行なっている者の中から、これは火炎びん製造の用に供するために持ってきたんだというような具体的な供述でも出てこない限り、私は客観的には認定することはむずかしいのではないかと思います。
#72
○中谷委員 要するに供述を待って逮捕をする、取り調べをするということなら、これは少なくともこの法の目的には沿わないわけなんですね。そうでしょう。逆に言うと、そういう供述がない、とにかくどこかの倉庫の片すみに置いておった場合も、この法律の取り締まりの対象になるわけですからね。そういう者は供述を待たずして逮捕するという場合が出てくる。非常に綱渡りの法律です。みすみす誤認逮捕が出てくることを予想している法律です。逆に言いますと、先ほど高橋先生のお話は、まさにユーモアで私はお聞きしておいて、このことを指摘しませんけれども、少しくらいの行き過ぎがあったほうがいいのじゃないか。これは片意地をはらせばたいへんな御発言だと私は思います。片意地をはらしてもいいんだけれども……。
 とにかくそんな、提案者御自身が行き過ぎを認めておられるような法律、またこの法律がひとり歩きした場合に、われわれは取り締まり当局を規制するわけにいきませんよ。というのは、通常逮捕というようなことが考えられるものじゃございませんから、この場合。またこれは最終容器と限らない。しかもそれが、私は非常に珍奇な例として出したわけですが、自動車の中のガソリンタンクだって最終容器に含まれるのですか、それも入るのですよとなれば、あぶなくて漁師は魚をとりにいけませんよ。マイカー族は自動車に乗って、犯行現場はとにかく回らなければいかぬ場合に、しかし迂回していっても近くを通らなければいかぬという場合、逮捕される人が出てまいりますよ。というふうなことは、どう考えたって私は不自然なもの、人権じゅうりんのおそれのあるもの、そうして行き過ぎそれ自体を内包しているものというふうに指摘せざるを得ないじゃありませんか。
 それで三派の人が、三派のヘルメットをかぶって、まさに火炎びんを投げているところヘドラムかんを持って突入してきたというふうな場合は、むしろ別の法によって規制できると私は思う。それよりも、二項というのは、むしろ所持ですから、所持の形態というのは各種各様、それについて、逮捕した人間のうちの何割かは誤認逮捕のおそれがある。逮捕しないとすれば、こういうふうなことを厳格に認定をするというなら、用は達せられないだろうということになれば、この二項というのは死んだ条文じゃないか。死んだ条文を生かすところに乱用のおそれが出てくるということだと私は思いますが、関連の質問ですから、もう一度御見解を承りたい。
#73
○高橋(英)議員 二つちょっと私に弁解的な説明をさせてもらいます。
 私は、行き過ぎがあってもいいとは申しません。そういう説もある。というのは、そういう人たちも何も行き過ぎがあってもいいというふうなことを言うのじゃないのです。ただ、取り締まり当局が、警備当局があまりに慎重過ぎる。ことばをかえて言えば憶病過ぎるではないか。憶病というのはどういう意味で言うのか、いろいろな問題がありましょう。中谷君みたいな人も盛んに国会で言われたり、マスコミでいろいろ針小棒大なことを報道したり――そういうふうなことはないと思います。マスコミのことだから正確な報道だと思いますが、そういうふうな憶病になって慎重過ぎるのではないかというふうなことに対して、多少行き過ぎをやるぐらい勇敢にやったらどうかというふうなことを言う人もあるので、私はその説はとらないということは、先ほどちゃんと、速記録を見てもらったらわかりますが、私はその説はとらない。やはり慎重で、いまの警備当局にはより一そうの慎重な行動を、警備態度を要求いたします。この点が一つ。
 それから、理論的にはいまの自動車の満タン問題も取り締まりの対象にならないことはないと言ってはおるのですが、この立法の動機から言いますると、そういうことはもうあり得ないということ、絶対にあり得ない、ただの一つも発生するような、そういうふうな危険性はないということを前提としての立法でございまして、いま質問されたから気がついて私も一つの事例を申し上げたのだけれども、いろいろの客観的な状況から、それも単なる推測ではない、的確な客観的な情況証拠から対象になり得る自動車の満タンがあるのだというふうな、そういうふうなことがはっきりわかった場合には対象にならぬこともないというふうなことですけれども、もうおそらくそういうことはあり得ない。すなわち、一般のそれぞれの国民の方々の生活に少しでも支障を来たすようなことは、絶対に予想することができないという前提のもとの法律だというふうなことでございます。
#74
○羽田野議員 いまの御質問のちょうど裏を返すようでございますが、実は現行犯逮捕で現実にこの三条二項で逮捕するような場合は、お説のように、最終容器に燃焼物質を入れてまさに投てきするような状態、あるいはこれに発火装置または点火装置を一つつけて投てきするような状態、こういう状態でなければおそらく現行犯逮捕ということはほとんどないのではないかと私も事実問題として考えております。ただしかし、現行犯逮捕でなくても、その後の取り調べで、火炎びんを製造する目的でドラムかんにガソリンを入れて持っていっている、あるいは自動車のタンクに満タンして、これでつくるつもりで行ったというようなことが明らかになった場合に、それはもう最終容器でないのだから処罰せないというて処罰からはずすということもいかがかと思うわけです。
 そういう意味では、やはり最終容器に限定せなくて、明らかである場合には、やはり「製造の用に供する目的」で所持したという場合には、処罰するということにしたほうが適正ではないかというふうに考えております。
#75
○中谷委員 関連質問でして、あと質問者の方がおられるということで、たいへん失礼いたしました。私の質問は留保をいたしますが、実務家のとにかく練達の士が二人おられまして、そうして「火炎びんの製造の用に供する目的」ということを自白をした、自白をして、そのことをとにかく認定できたから逮捕する、そういう場合しか考えられないのだというのは、これは法の運用面から見てあり得ないことです。ですから、それ自体この法律は慎重にやらなければいけないのです。取り締まり当局は慎重にやるのですということは、慎重にやらなければあぶないということは、逆に言うと、普通にやって人権侵害のおそれがないというのが法律、ことに刑法のあり方であって、この法律についてはあり得ないことですよ。慎重にやるのですよ。しかし、と言ったって、私は珍奇な例を出しましたが、自動車のガソリンタンクさえも容器のうちに入るのだということでは、これは何人かおられる警察官の中には、何をする人がおられるかもわからぬ。こういうようなことが、法律それ自体の構成がそういう人権侵害のおそれを含んでいるのではないか、これだけを私は指摘をしておきます。
 たいへん失礼しましたが、あとのいろいろな問題点については、後日詳細に質問をさしていただきたい、こういうことです。
#76
○畑委員 先ほど、中谷君の質問に対して羽田野さんから答弁がございました。まずそういった場合、あとでいろいろ捜査をやっていった経過において、そういう準備段階として某々がドラムかんなりあるいは容器なりに詰めて運んだ、あるいはどこかへ貯蔵しておいた目的は、火炎びん製造の目的だったということを自白し、あるいは自白しないまでも、ほかの者がそのことをしゃべって、それが証拠になるというようなことですね。あとになってということになれば、逮捕状をとってやるというような形であれば、私はもちろん問題はないと思いますけれども、ただ、これが取り締まり当局によって現行犯的に逮捕される場合のことを私は非常に心配をいたしておるわけです。それはそんなにないとおっしゃるけれども、やはり間々あることがあってはならぬ。その認定というものはだれにでもかってにできるものでありまして、三派風の学生のようなかっこうをした者が、その問題になっている現場の近くで、しかもそういう目的は全然ない人が運んでいったとかなんとかといった場合、警察官によって現行犯逮捕されるおそれがある、私はそれを心配しておる。捜査していったあと、先ほど言ったように、また羽田野さんが言われたようなことで、その準備段階で、実はこういうわけで製造の準備をしたのだということがわかって、それによって逮捕状をとってやる、あるいはほかの事件で調べているうちに出てきたということで、その罪名を加えるというようなことであれば、あなたの答弁は私はそのとおりだと思います。だけれども、私の問題にしているのは、先ほど言ったように、現行犯逮捕で、外形その他からだけ警察官が判断をして逮捕をするということは、あとで言い開きはおそらくできるでしょう。検事の段階でできるでしょうし、警察の段階でできるかもしれません。最終的には、それは裁判の法廷でそれが明らかになるということで、無実の罪が晴れることはあり得るかもしれぬ。しかしながら、とにかく無実の罪で逮捕されるということはあってはならぬということを私は心配いたしておるわけです。そういう私の議論を申し上げたわけでありますが、警察庁せっかくおいでになっておりますので、それに関連して、何か意見などありましたらひとつ承りたい。いまのもっぱらそういった危険の問題ですからお伺いしたい。
 それからさらにまた、最近の火炎びんの使用状況、それを年度別に明らかにしてもらいたい。実際に使用したものあるいは押収したもの、こちらの資料にもちょっとあるのはありますけれども、一応記録にとどめるという関係もございまするし、その辺と、それから先ほど言った関係のことについて何か考え方があったら述べてもらいたい。
  〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
#77
○高松政府委員 三条二項の問題につきましては、こういう文章の問題と、実際にこういう規定が必要かどうかという問題があろうかと思います。
 私どもといたしましては、こういう規定ができれば、より実態に沿うというふうに考えております。と申しますのは、やはり実体的に最近非常に発火装置なり点火装置なりというものと実際の燃料である灯油、ガソリンというものを分離して持っているということは、最近は非常に多くなってきておる。現に赤軍派が発行している「夜想曲」というのですが、これの中に火炎びんとか爆弾の製造の手引きみたいなものが書いてあるのですけれども、それには、燃料と発火薬とは分離して保管するというふうなことをはっきり書いてあります。
 それから、現実に完成したものを持って歩いた場合はかなり危険が伴う。現に昨年の十一月の十四日に、電車の中で火炎びんを取り落として、本人は死亡し、まわりの乗客もけがをしたというふうな事件が出ております。それから、あるいはガソリン、それから発火装置とか、その現場付近の草むらに遺留をされておった、そういうものが発見された、こういう事態もいろいろございます。そういうふうに見てまいりますと、やはり火炎びん製造所持だけではなしに、それまでの過程に至るものというものも同じような危険性を持っている。しかも、この前ごらんになりましたように、いとも簡単に両方をドッキングすることができる、そういう点で、こういうふうな規定というものはぜひとも必要ではないか、かように私どもは思います。
 乱用の危険の問題につきましては、やはり製造の目的を立証しなければこれは逮捕したりすることはできないものでありまして、この立証ということがむしろ非常にむずかしいであろう。そういう点で、いろいろな客観情勢なり客観的な状態なり、本人の説明なりというようなものによってももちろんできるわけでございますけれども、とにかくこれらの製造の目的というものはかなり重い制限になっておりまして、警察官がいろいろ取り締まりをやってまいります場合に、その点についてはこういう目的という限定がある以上、乱用のおそれはきわめて少ない、かように私は感じておる次第でございます。
 火炎びんの使用状況につきましては、警備局長から御説明を申し上げます。
#78
○富田(朝)政府委員 火炎びんの使用、押収の状況について、年ごとの数字を申し上げます。
 火炎びんが極左暴力集団によりまして最近初めて使われましたのは昭和四十三年十月十四日、福島県にございます日大工学部の校舎に放火をいたしましたのが最初でございます。その四十三年には使用が四十、押収いたしましたもの九。昭和四十四年、使用が七千二百八十一、押収いたしましたもの一万五十。昭和四十五年、使用いたしましたもの二百八十八、押収いたしましたもの六百二十一。昭和四十六年、使用いたしましたもの四千五百六十七、押収いたしましたもの六千七百八十三。本年に入りましてから、三月二十日までに使用いたしましたもの百五十六、押収をいたしましたもの二十。これを合計いたしますと、四十三年の当初から本年の三月二十日に至ります間、使用したと警察が確認をいたした数字でございますが一万二千三百三十二、押収をいたしましたもの一万七千四百八十三、以上でございます。
#79
○畑委員 いま数字を明らかにしてもらったわけですが、その数字を見ますと、昭和四十四年と四十六年が非常に多い。四十五年はその中間であって、がたっと少なくなっておる。これはやはり、いろいろ学生運動その他のそういった過激派の連中が、火炎びんを使用する機会が多かった少なかったということの消長に関係があると思います。四十四年は安保の関係、四十六年は成田闘争とそれから沖繩返還闘争、この二つだ。したがって、この間にはさまった四十五年は非常に少ない、こういうことになる。ことしはこれからどういう趨勢になるかわからぬけれども、大学の授業料値上げ反対等の問題がございますが、それもありますけれども、これがどうなるかちょっとわからない。授業料値上げは見送るという話もありまするし、それによってまた関係も出てくるかもしれぬというふうに思われる。とにかく相当そういった闘争が激しくなったときに、やはりこうした過激派がこの火炎びんを使う場合が非常に多いということがうかがわれるわけであります。最近はむしろそれより飛び越えて、特に連合赤軍などは爆弾を使うというような傾向が強い、あるいは銃器を使うような傾向が強くなっておるということになりますと、この火炎びんの使用の消長も、いろいろこれからも違ってくるだろうというようなことも考えられる。一応はやりものだということも一つは考えられるのであります。
  〔田中(伊)委員長代理退席、委員長着席〕
 その点、それは私の意見でありますけれども、先ほど警察庁の刑事局長から答弁がございました点でありますけれども、結局、火炎びんを製造する目的ということがかかっておるからこれは乱用のおそれがないのだ、こうおっしゃる。それで、しかもそれには相当の立証が必要であるということでございますけれども、しかし、これはやはり検挙する現行犯逮捕のときが――現行犯逮捕がなければ乱用は私もないと思います。ほとんどないと思います。現行犯逮捕をやるという場合になると、どうしても私は乱用のおそれがあると思う。幾ら警察庁の刑事局長がそうおっしゃって、乱用はないと言われましても、結局これは、火炎びん製造の目的で使用するのかどうかということを現行犯逮捕のときに聞くはずはないのであります。聞いているひまはないのであります。そういうことになりますれば、やはり外形その他から判断をして、とりあえずつかまえてしまうということで、そのあとになってようやくそれはぬれぎぬだったという機会が出てくるかもしれぬ。けれども出てこないかもしれない、そういう場合もある。そういう点から考えると、やはり相当私は乱用の危険があるのではないかと思いますが、いかがでございますか、重ねてお聞きしたい。
#80
○高松政府委員 いろいろ目的罪の立証につきましては、これは私ども非常にむずかしい点でございます。選挙の場合もそうでございますし、いろいろ目的罪がございます場合に、その立証については、私どもとしては常日ごろからたいへん慎重にこれをやっておるというつもりでございます。
 それで、いま御指摘のような点も確かにあろうかと思いますが、そういうその目的を持っておるかどうか不分明な場合、それからもう一つは非常に明らかにそういうことが認定される場合、その不分明な場合のほかに、明らかにそういうふうに認定される場合に、なおこれは放置して不可罰としてよろしいだろうかという問題がございます。そういう意味で、その立証その他については私どもは十分に慎重にやってまいるつもりでございますし、そういうふうに指導もしてまいります。
 ただ、いまおっしゃったようないろいろな御疑念の点につきましては、私どもの希望といたしましては、明らかな場合はやはり処罰できるような形でなければなるまい、その危険性においては、製造、所持とほとんど変わらないのではなかろうか、法文の字句の問題は別問題といたしまして、取り締まりの実際からいって、実効をあげるということからいってそういう点の必要はあるのではなかろうか、かように考え、もしこういう形で成立すれば、運用については私どもとしてはきわめて慎重にやってまいるということを申し上げておきたいと思います。
#81
○畑委員 終わります。
#82
○松澤委員長 吉田賢一君。
#83
○吉田(賢)委員 すでに他の議員諸君からだんだんと御質疑があった後でありまするし、それに私、参加しておりませんので内容をよく存じませんので、いまこれから質問せんとすることは、すでに質疑応答相済みの面があるかもわかりません。重複の失礼をお許しいただきまして、できるだけ要点をしぼりましてお尋ねしたいと存じます。
 まず、前提は、この法律をつくろうという趣旨、目的、理由でありますが、たとえば爆発物取締罰則その他の刑事法がすでにあるわけでありまするが、どういう必要性とかあるいはまた緊急性等々に基づくのであるか。何か社会的ないろいろな事態、現象がこのような立法措置へ急遽持っていくようになったのではなかろうか、こう思いますが、その点、前提といたしまして要点をひとつ御答弁願いたいと思います。
#84
○辻政府委員 この法律案の必要性及び緊要性の問題でございますが、御案内のとおり、いわゆる火炎びんは爆発物取締罰則にいう爆発物に当たらないというはっきりした最高裁の判例がございます。爆発物取締罰則をもってしては取り締まることが不可能でございます。従来はそのような事例に、火炎びん使用事犯につきましては、それぞれ凶器準備集合罪であるとか、あるいは放火の予備罪であるとか、あるいは放火罪とかそういうもので、そういうものが当たります限りは処罰をしていたわけでございますけれども、端的に火炎びんの使用、製造または所持を、直接に刑事罰則に当たるということを対象とする刑事罰則はなかったわけでございます。
 ところで、先ほども説明がございましたように、昭和四十三年以来いわゆる過激派集団による火炎びんの使用事犯がたいへんふえてまいりました。こういう状況のもとにおきましては、端的に火炎びんの製造、使用、所持を処罰する罰則が要るという状況に相なったと認定するわけでございます。
#85
○吉田(賢)委員 昭和四十三年からそのような異常な社会現象が続発するような状況にあるならば、やはり政府といたしましてはすみやかに立法措置を講ずる等々、すでに数年を――ことしは四十七年でありますから、すでに数年を経過しておるのですが、これは当然に法案として用意すべきでなかったかとも思うのですが、その辺はどうなんですか。
#86
○辻政府委員 火炎びんの使用状況は、先ほども御指摘がございましたように、四十三年に始まりまして、四十四年に多くなり、そして四十五年にまた少し減りまして、四十六年にたいへん多くなってまいったわけでございます。従来は、この立法の必要性を政府当局としても重々感じておったわけでございますけれども、一応はこの既存の罰則でまかない得る面もあったわけでございますけれども、昨年のいわゆる沖繩闘争におきまして日比谷の松本楼が焼けるとか、たいへん熾烈な事犯になってまいったわけでございます。そのような事態におきまして、これを既存の罰則だけでまかなうということは、やはり心もとない面があるんじゃなかろうか、かように考えておりましたところ、自由民主党におきましてはその緊要性及び必要性をお認めになりまして、私どもも必要性を感じておったわけでありますが、そういうことになりまして、私どもは自由民主党のほうにこの法案のたたき台を提出したような次第でございます。
#87
○吉田(賢)委員 一応そういう説明は通常できるのでしょうけれども、そういう常識的な、よそ行きのような説明ではなしに、資料に基づけば、四十三年はほとんどゼロ、四十四年には使用件数が七千二百八十一件、押収は一万をこえておるという使用状況の報告がすでになされておるのであります。一万以上の物件を押収し、使用が七千件以上であるというならば、やはり国会の答弁ですから、もっと具体的な、なぜ今日に至ったかということを、自民党さんにまかせるというのではなしに、何かありそうなものだと思うのです。そういうことについて政府といたしまして、こういう問題に対してき然として、もしくは周到な用意あるいはまた精密な調査検討というものを四十三年以来ずっと継続しておるけれども、かくかくの事情あり、客観性いかん、その他等々というような説明にならなければ、いまのお話ではあまり常識過ぎた答弁なんですが、どうですか。
#88
○辻政府委員 火炎びんの使用あるいは所持、製造を処罰するということにつきましては、これは実は最近の過激派集団による事犯のみならず、昭和二十年代にもこういう事犯があったわけでございますが、当時は、これは爆発物に当たるんじゃないかということでいろいろ検討してまいりまして、結局それは爆発物取締罰則にいう爆発物には当たらないということに判例が確定いたしました。その後、こういう事犯が四十三年まで一応なかったわけでございますが、四十三年、特に四十四年からたいへん多くなってまいりました。私どもは、これは爆発物取締罰則には当たらないということを前提にいたしまして実は検討をしてまいったわけでございます。
 ところが、何ぶん火炎ぴんというものとは一体何をいうのだ、法律的にどういうふうにこれを定義するかというような問題をはじめ、非常にむずかしい問題がたくさんあったわけでございます。あわせて、先ほど来申し上げておりますように、当初は不完全ながらも他の罰則にかかることが多かったわけでございますので、それで処罰をしてまいりました。しかしながら、火炎びんを単独で所持しておるという場合には、どうしてもこれを処罰する罰則がないということは明らかでございまして、事態の進展に応じまして、現行法規だけではやはり不十分であるという認識に到達いたしましたのが、昨年の下半期でございます。その当時から私どもはこの立案というものを、政府当局の立場におきましても鋭意考えておった次第でございます。
#89
○吉田(賢)委員 私も過日、火炎びんの実情、爆発の状況、あのすさまじいありさまは初めて見たのであります。何かの適切な取り締まりがあって、そのようなものが社会からあとを断つということであってほしいという念願は根本的に一致するのです。ただしかし、いま御説明になりましたのでは、何か常識的な理屈をつけているような感じがしてしょうがないのです。
 たとえば、例をおあげになりました最高裁の判例が確定している、こうおっしゃいましたね。資料によりますと、最高裁の二十八年の判例にいたしましても、爆発物とはこういうふうな概念で認定しようということがだんだんと書かれておりまして、帰するところは、本件の火炎びんは少量の塩素酸カリであって、したがって、爆発現象も局部的小爆発にすぎないというようなこと、こういうことで公共の平和を撹乱するというに至らない力である、だからこの火炎びんは爆発物取締罰則によるところの爆発物に該当しない。三十一年の大法廷も、同じ法律の爆発物に該当するやいなや、こういうことになるのですが、これとても、本件火炎びんはと書いて、これは四〇ページから四一ページですが、この資料によりますと、それに詳しく書いてあるから一々朗読はしません。朗読はしませんけれども、要するに、塩素酸カリウムの量が僅少である、ためにその爆発の作用そのものによる直接の破壊力は認められない。結局これを要しまするに、よって本件は、訴訟になりました火炎びんなるものは爆発の威力が弱かったということが、この上告を排斥した理由であるというような判断になっておるわけであります。
 といたしますると、これは力の大きさの問題であり、化学作用を起こすべき薬品の量の少なかった問題である、こういうふうになりますので、この点につきましては、すでに判例が確定しているというほど動かすべからざるものでは私はないと思うのです。もっともこれは事案そのもののこまかい一審の経過等がわかりませんので、この資料に基づく判断にすぎないのですけれども、どうもそう思われます。
 そういうことを思いまして、そこで、やはりこの種の取り締まり刑事法案でありまするので、よほど落ちのない、後日問題が生じないかまえをもちまして、周到な用意で臨むということにしなければなりません。そういう観点からいたしまして、それならば、今日現存する現行法規の改正等によって、これは目的を達し得るものではなかったのかということも考えられるが、なぜ独立の法案としてこれを出すということになるのか、もう少しその辺が明白な、客観的な経過なり理由なりが示されてしかるべきじゃなかったか、どうもそういう感じが私にはするのですが、高橋さんどうでしょう。私は反対のための質問という意味じゃなしに聞きますが、その辺についてのあなたの配慮、これはどういうものでしょうか。いろいろ専門家についてもそれぞれの意見の聴取をなさって、経過的には間違いはないと思いますけれども、そこらはどうでしょうか。
#90
○高橋(英)議員 これは私が申し上げるまでもなく、専門家の吉田先生のことだからおわかりでしょうが、いまの判例を待つまでもなく、同じような危険性があるもので、爆発物については爆発物取締罰則というものがある。ところが、これに当たらない銃砲刀剣類については銃砲刀剣類所持等取締法がある。火薬類については火薬類取締法、毒物及び劇物については毒物及び劇物取締法、高圧ガスについては高圧ガス取締法、そういう取り締まり法律があるにもかかわらず火炎びんだけがない。しかし、火炎びんの立法がなくても、社会公共の秩序が守られておる時代、こういうものが発明されない時代はこういうものの必要はなかったのでしょうが、いま申し上げたいろいろの取り締まり規則の対象になるようなものは、非常に危険なものではあるけれども、また社会のために必要欠くべからざるものがたくさんあるわけなんで、一面有用性を持っていると思うのですが、火炎びんは全然有用性がないというふうなところが特徴でございますし、御承知のように社会不安が火炎びんのためにだんだん激成されてくる、醸成されてくるというふうなことで、一日もすみやかにこれを取り締まる規則をこしらえなければいかぬという、そういう空気、ムードが全国の各界各層、全国民の声みたいなものになってきておるように思いますし、各党でも、それぞれこれから審議します、これを中心にして修正とか加除訂正というものがあるだろうと思いますけれども、基本的に何とか取り締まりをしなければいかぬというムードが急速に盛り上がってきております反面、先ほど言いましたように、火炎びんによる社会不安がますます醸成される、こういうふうなことでわれわれその緊急性を感じ、また各議員の間でも、そういうふうな意見がほうはいとして起こったように思います。
 そういうふうなことで、まず私どもの出しましたこの原案を、私どもは理想的だと思いますけれども、これをたたき台にして、先ほどからいろいろ畑さんや中谷さんからも意見がありましたように、行き過ぎがあってはならないというふうな点も考慮して、ここで合意をもたらすことができるというふうに信じ、お役人まかせに立法しておったんじゃいつのことになるかわからないという不安なんかもございまして、そうして私ども議員立法として提案した次第です。
#91
○吉田(賢)委員 やはりこの種の社会不安を背景といたしまして、その取り締まりの緊急性、現存する法規をもっていたしましては完全な取り締まりができないという御認識に立つ、これはよくわかるのでありますが、この種の社会不安というものは、単なる局部的もしくはある少数の特殊現象というのじゃなしに、やはり相当大きな社会的な背景があるということも考えるならば、この種の取り締まり法規というものにつきましては、やはり法務行政上の相当重要な課題として取り組んでいかなければならぬ問題であります。ある現象が起こってくる、ほうはいとして何かの社会現象が次から次へ起こってくる、それに追い回されまして法律をつくっていくということになりますと、それは現象が先に立って法律はあとにあとに、そしてまたしても法律をつくる。昔、満州で法匪ということばがあったのですが、法律多くして社会秩序かえって混乱するという危険なしとしないということになってもたいへんでありますので、やはりこの時代に対処するところの一つの大きな、高邁なある姿勢が背景となりまして、この種の立法なら立法に踏み切っていくべきである。それならば、よほど精緻、正確な根拠、事由、資料などが明確にされまして、そうして国会の全会一致を求めるというくらいな周密な用意があってしかるべきだと私は思いますが、その辺は、何か私の感じだけですけれども、多少心もとなく思いますので、いま、そんな点をお尋ねした次第であります。これは少し細部にわたりますので、やめておきます。
 さっきからだんだん問題になっております三条二項の問題ですけれども、こういうような事例のこともちょっと考えてみたいと思います。たとえば集団行動の場合、五十人なら五十人が集団して行く。そのときには目的を告げないで、集団中の特定人に必要な容器とか物資を所持せしめて、そしてある目的の場所に行動する、これが普通の状態でございます。そういうときに持たされた人は何だかわからない、何か知らぬけれどもこれを持っていけ、はいと言って持っていく、それが集団の一員になっておる。甲、乙、丙、丁何名かがそれぞれ分けて持っておる。こういうようなことがありますと、この目的ということを意識して、目的の認識がなければいけないようでありますし、そして所持するということが必要になっておりますが、どうもその目的というものは、ここに一つの穴がつかれてくるんじゃないか、そういうことを私ちらっと感ずるのですが、いま伺っておりましたら、その辺についてもだんだんと他の事例をもっての質問がありまして十分御答弁になったと思いますけれども、やはりいま私があげました事例、そういう辺からすると、また底が抜けてしまう点になるんじゃないだろうか、こう思うんですがね。そこは重ねて悪いですけれども、ひとつ端的にずばっと、どなたでもよろしゅうございますが、お答えしてください。
#92
○辻政府委員 第三条第二項でございますが、この所持事犯は、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を人れた物を所持」するということでございまして、所持する者が何を持っているかわからぬというような場合は、もちろんこの二項には当たらないわけでございます。持っておる者は、この「ガソリン、燈油その他引火しやすい物質」ということを十分認識して、かつ、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」これを持っているということでございます。これを認識していなければ二項の対象にはならないわけであります。
#93
○吉田(賢)委員 そこなんですね。五十人で行動をしますときに、指揮者は数名、あるいはまたこれを督励する者は数名等々、それぞれ手分けして役割りをきめていると思いますが、そういう雑役あるいは運び人的な仕事をする者には、何も言わないで持たしていくということは簡単になし得ることですから、みな抜けちゃうんじゃないだろうか。だからある地点に行って詰める、びんにガソリンを入れるなどしまして、いわゆる製造過程に入って初めて本件が適用し得る条件が熟してくる、こういうことになるんじゃないだろうか。そこは先刻来の御質問と少し違った角度からかもしれませんけれども、どうも私はそういうふうに思いますので、その点はどういうものでございましょうね。
#94
○辻政府委員 先ほど来御論議がございます三条二項の典型的な対象になる場合は、いわゆる現場でガソリンその他が入っておるびんとそれから点火装置または発火装置とをドッキングさせるという事例、その場合、引火しやすい物質を入れたものを所持した者を処罰するというのが、三条二項の典型的な場合でございます。全然何を持っているか知らぬ、何か持たされたという者は、これは終始この三条二項の対象にはならないわけでございまして、それはそれで処罰しちゃいけないわけで、やはりドッキングを処罰するというところがこれの典型的な場合であろうと考えております。
#95
○吉田(賢)委員 この件も済んだかわかりませんが、二条の一項の「人の生命、身体又は財産に危険」という個所がありますね。これは具体的な説明がございましたかね。これは何か危険のものさしというものがあるのですか。
#96
○辻政府委員 この法案の第二条の問題として申し上げますと、第二条は、「火炎びんを使用して、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、十年以下の懲役に処する」こういうことになっております。この場合の人の生命、身体、財産に危険を生じさせるということは、いわゆる具体的危険犯というふうに理解すべきものであろうと考えておるわけでございまして、必ずしもこの人の生命、身体、財産に実害を発生せしめる必要はございませんけれども、具体的にそういう実害の発生する危険性があるということを要件にしておるわけでございます。実害発生の一歩前でこれを処罰の対象にしようとしておるわけでございます。
#97
○吉田(賢)委員 一歩前か数歩前か、危険の上に形容詞があり、何が一体それでは危険か、概念の説明といたしましてはわかったようでわからぬので、危険はぐるぐる回りしてまた危険に終わる、こういうことになるんじゃないかと思うのですが、もうちょっと何かほかの表現のしかたでずばりとそれを規定するという手はないものでしょうか。
#98
○辻政府委員 火炎びんを使用いたしますれば、これは通常の場合には人の生命、身体、財産に具体的な危険が生じておると思います。そういう意味におきまして、火炎びんの使用事犯はほとんどの場合は、生命、身体、財産に対する具体的危険が発生するというふうに御理解願えるのではないかと思うのでございまして、特段、先ほども御指摘がございましたが、全然人もいない野っ原で一人で火炎びんを使用したというような場合、これはこの二条の少なくとも既遂犯にはならないということで、むしろ処罰の対象にならないほうが例外的な場合であろう、使用事犯に関する限りはそういうことが言えるのではないかと考えております。
#99
○吉田(賢)委員 ちょっといまの御説明の段、事例を出してまいりたい。野っ原で火炎びんを投げて燃やしていくというような場合、また、たとえばガソリンを散布して、今度はマッチで布に火をつけて捨てる、マッチをぼんと投げるというふうにして、そこでぱっと火が上がる、こういうような場合には、何か取り締まる法規があるんですかないんですか。こういうときには何でどう取り締まるか。やはり放置して放任すべき現象行為なんでしょうか。
#100
○辻政府委員 無人の野っ原で火炎びんを使用したという場合、これはその人の生命、身体、財産に具体的な危険を生じさせたということは言えないわけでございまして、その場合には、処罰の対象にならないというふうに考えております。
#101
○吉田(賢)委員 これは全然角度の違った別個の世界の問題ですけれども、所によりますと、外国の事例なんかでは、たとえばカナダあたりにおきましては、あれはモントリオールかなんか知らぬが、野っ原で日本でいうどんど焼きで火をどんどん燃やす、そういうときにも、これは公害で取り締まっておるようでございます。したがって、具体的にすぐ生命、身体、財産に、直接もしくは蓋然的な危険、影響は感じられないまでも、そういうようなときには何らか別に取り締まりがあってしかるべきではないであろうか、こういうことも考えるんですが、そうしますと、自己所有の原野におきまして、ガソリンをまいて、そしてどんどん燃やしていく、こういうことも可能で、これは放任、自由だ、こういうことになりましたらどうかと思うんですが、これはどうなんですか。
#102
○辻政府委員 先ほど来申し上げておりますのは、第二条の火炎びんの使用事犯との関係で申し上げておるわけでございます。第三条の火炎びんの製造、所持事犯、これは三条に別にございますから、火炎びんの所持ということで、「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する」というこの条項に該当することはもちろんでございます。
#103
○吉田(賢)委員 三月十七日の日刊各紙が、大阪で、もとのつとめ先の社長をさか恨みで、深夜乗り込んでいって社長の奥さん及び子をガソリンをかけて、そしてマッチを飛ばして奥さんを焼き殺した、一瞬火だるまになったという見出しで書かれておるのでございますが、こういう事犯がニュースに出るのでございます。そうしますと、こういうようなこともあれこれ思いますと、この立法につきましても、やはり次に展開するであろうところの科学的な進歩、発展の手法等々もいろいろと考えまして、がっしりとした姿勢をそこに持っていくのでないと、さきに私が一言しましたように、また何かあるものを開発したので追っかけていって法律をつくる、また改正する等々が起こるのではないだろうかということも思われますので、そのような事態が起こらないようなことも考えて立法する必要はないであろうか。
 そういたしますと、いま何の現象もないのだから、これはむだな法律だという反論もまたできますけれども、さような重要な法律をつくるときはそこまで考えておいて、さてこの枝は切ったほうがいいだろう、この葉は落としたほうがいいだろうというふうにしていくべきではないだろうか、こんなことを思うのです。私は、その記事のあまりにも虐殺の激しさを思いまして、最近の世相にもかんがみまして、そういうことを感じたのでお尋ねするのです。
#104
○辻政府委員 いまの三月十七日の事案というのを私、存じませんが、この法案の第二条の火炎びんの使用事犯でございますが、この「人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた」というこの「人」は、特定人も含むということでございますので、火炎びんを使用して特定の人を焼き殺したというならば、この火炎びんの使用事犯として当然処罰の対象になる。そのほかにもちろん殺人罪であるとか放火罪とか、そういうものも成立することももとより当然でございます。
#105
○吉田(賢)委員 高橋さん、質問外ですけれども、関西の新聞に出ておりましたから、御参考に差し上げておきます。
 それから事例といたしまして、四十三年から四十六年までの使用、押収、被害の統計が出ております。さっきの御説明にも出ておりましたが、これは一々全部説明を聞く必要はございませんが、この資料の四八ページから九ページの物品が被害対象のようでございます。要するにこの特徴ですね、共通した何か特徴がありそうな感じがするのです。あるいはこの物品は派出所があり、大学があり、飯場があり、車両があり、事務所、倉庫があり、何か一つの犯罪傾向が出ておるような感じがいたしますが、この被害の事例から見まして特徴をつかみ得ないかどうか。たとえばその原因、また一般的な傾向、それから使用状況、この使用状況を見ますると、さっきも一言いたしましたが、四十三年には使用が四十本、押収が九本、四十四年にはずっと膨大な数になって七千二百八十一、押収が一万五十、四十五年にはまたがたっと落ちて使用が二百八十八、押収が六百二十一、四十六年にはまた上がりまして、使用が四千五百六十七、押収が六千七百八十三、こういうふうになっておりますが、この四十四年から六年にかけて、爆発的に加速度的に大きく数字が上がってくるのであります。
 それからまた、人的被害を見ますると、警察官の受傷が一番多いのですね。四十四年には三百四名ですね。一般人の負傷が百十八です。四十六年には警察官の受傷が百六十八で、五年には少ない。一般人は出していません。こういうことになっておりますので、この年月と、それから対象物件の数字の上がり下がり、それから被害を受けた人、立場、こういうものから見ますると、原因とかあるいは何かについて共通した特徴のある案件のような感じがしてならぬのでありますが、こういう点について、ひとつ簡単でよろしゅうございますから、どなたからか御説明を願えますか。
#106
○富田(朝)政府委員 ただいま法律案関係資料の四七ページ、四八ページ以下の統計についてのお尋ねでございますが、まず第一に、年度別の火炎びんの使用、押収状況、これは四十四年が非常に多くて、次いで四十六年の数字が多くなっておりますのは、昭和四十四年には御案内のとおり、一方では街頭におきまする極左暴力集団の動きが活発化いたしました。と同時に、学園におきまして学園紛争という形で学園のバリ封鎖その他いろいろな形におきまする暴力行為を、極左暴力集団が敢行したわけでございますが、その過程において、火炎びんを大量に使用し始めたということの結果をあらわしております。
 昭和四十六年は、御案内のように、特に四十六年の後半期におきまして千葉県の成田の新国際空港反対阻止闘争という形態の行動に極左暴力学生等が多数に参加をいたしまして、警察官三名が死に至るという状態もこの時点であらわれておりますが、さらに沖繩復帰協定の問題をめぐりまする諸反対闘争等に、これら暴力学生集団が街頭において相当の暴力行為に出たことは御案内のとおりでございまして、十一月十四日のいわゆる渋谷爆動と称したような行為、あるいは十一月十九日の松本楼が炎上焼失いたしましたような暴力行為を繰り返したわけでありますが、四十六年の特徴は、街頭におきまする彼らの行動が非常に過激化したということと、同時に多量の火炎びんを一地点に集中して使ったということが特徴であろうかと考えられます。
 それから、第二の火炎びんによる被害状況でございますが、やはり被害を年度別に見ますと、昭和四十四年、昭和四十六年が物的被害が多いわけでございますが、特に昭和四十六年度に入りましてからは、いわゆる警察施設に対しまする攻撃というものが数量的にも一・五倍という数字を示しておりまするし、その他事務所あるいは民家、飯場、さらには警察以外の車両、これが昭和四十四年の七台に対しまして、昭和四十六年は八十二台を数えるというようなことは、やはり彼らの行動が無差別になってきておるということを、一面この統計は示すものではないか、かように考えられる次第でございます。
 それから、五〇ページの人身の被害でございますが、警察官の受傷が昭和四十四年が三百四、昭和四十六年が百六十八。一般人の負傷は、昭和四十四年が百十八、昭和四十六年が七十一。昭和四十六年がやや四十四年に比して数の上では減っておりますが、昭和四十四年は全国的に学園紛争といったものにからみまして、多地点におきまして彼らの暴力行為が見られたわけでございまして、その結果警察官が全国的に受傷する、あるいは警察以外の方の負傷が学園紛争の過程におきましてこうした数字を生じておる。昭和四十六年度におきましては、特に後半期に集中をいたしましたのでかような状況でありますが、警察官にいたしましても、いわゆる火傷死を含みます四名の殉職者を出しておるというような点におきまして、その行動は一段と凶悪化したもの、かように考えておる次第でございます。
#107
○吉田(賢)委員 私は、最後に伺いたいのでありますが、ただいまの四十三年から発しまして四十四年に相当大きな数になり、五年にやや落ちて六年にまたぐっと高まってまいりましたこの多数の火炎びん事件でありまするが、この傾向が、いま御説明になりましたところによりましても、ねらっておるところが警察の建物であり、それから教育施設としての大学及び高校、まあ小学校、中学校というのは出てまいりませんが、さらにまた人的被害者は警察官ということにもなる。また発展しまして、一般の車両と申しますれば、荷物は例外といたしまして、多くが人が乗ってこれを利用するものでありますが、こういうようなことになっておるわけです。
 これを一体どうわれわれは評価すればいいのであろうか、どういうふうにこれを理解したらいいのだろうかと思いますが、やはり全体として見ました一つの特徴は、これは政治性を持っておるということが言われます。もう一つは、取り締まり官憲、取り締まりの権力に対する一つの抵抗のような感じがいたします。さらにまた、炸裂するようにして一般民衆に被害を与えて、平然たるかどうか知りませんが、そういう傾向さえ見える。でありますから、これは思想的なものがかなりあるのではないであろうかという、言うならば反体制的な傾向が顕著にあらわれておるのじゃないだろうかというふうに見ました。あるいはまた若い学生が、ほんとうに生きる目的というものに対するはっきりとした認識がないのじゃないだろうか、ある種の正義感を求める、ある種の価値感を持つというようなことになりましても、その辺がどうも定着しないものがあるのではないだろうか、かなり大きな、激しい動揺の中にあるのではないだろうか、こういうような一つの社会的な背景が感じ取られるのでございます。
 そういうことになりましたら、究極の目的は社会の秩序を維持し、公安を保ち、民生の安定等々にあるのでしょうから、峻厳のほうの取り締まりをするだけでは究極の目的を達し得ないことはもちろんであります。私は、 そういう背景があって、そして若い世代がこのような一種の暴力に出ていくということが、この広い被害事件にあらわれたのではないだろうか、こういうふうにも思うのです。その辺につきまして、これは事務当局のお立場からでもよろしい、現場の重要な仕事をしておられます方でもいいと思いまするが、私はそういうふうに感じ取るのでございますが、そこらについての感じはいかがでございましょうか。
#108
○辻政府委員 ただいまの御意見のとおりであろうと考えております。
#109
○吉田(賢)委員 終わります。
#110
○松澤委員長 次回は、明二十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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