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1971/05/17 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第24号
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1971/05/17 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 法務委員会 第24号

#1
第068回国会 法務委員会 第24号
昭和四十七年五月十七日(水曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君
   理事 中谷 鉄也君 理事 沖本 泰幸君
   理事 麻生 良方君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      小沢 一郎君    大坪 保雄君
      鍛冶 良作君    佐藤 守良君
      松本 十郎君    青柳 盛雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
 出席政府委員
        防衛施設庁長官 島田  豊君
        防衛施設庁施設
        部長      薄田  浩君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省人権擁護
        局長      影山  勇君
 委員外の出席者
       厚生省環境衛生
       局乳肉衛生課長  神林 三男君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   長井  澄君
       法務委員会調査
       室長       松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  中村 梅吉君     江藤 隆美君
  中村庸一郎君     小沢 一郎君
  山手 滿男君     佐藤 守良君
同日
 辞任         補欠選任
  江藤 隆美君     中村 梅吉君
  小沢 一郎君     中村庸一郎君
  佐藤 守良君     山手 滿男君
    ―――――――――――――
五月十七日
 出入国法案(内閣提出第八七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政に関する件
 検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
 裁判所の司法行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所長井総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○松澤委員長 裁判所の司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島徹三君。
#5
○小島委員 けさの新聞に出ておった、明治乳業で規格外の脂肪分か何かを混入したというようなことで、社長以下責任をとって総辞職するとか、それからまたそれによって何十億からの金をもうけておるというようなことが書いてあるわけで、私は具体的にその事実を調べたわけではございませんし、けさの新聞を見ただけでございますから、詳しいことはわかりませんが、一応その点についての事実関係を承りたいと思います。本来、社会労働委員会で質問することかもしれませんが、私は委員ではございませんので、この場をかりまして御質問申し上げますが、具体的の事実はどういうことか、お教え願いたいと思います。
#6
○神林説明員 この事実関係につきましては、これは一昨年に起きた事件でございまして、そして私のほうが直接タッチしたわけではございませんが、公正取引委員会でもって市販牛乳につきまして収去検査をやりまして、そしてそれを衛生試験所の慶田という人に検査を依頼したわけでございます。その結果、これは数社がこのときに疑いがある、あるいはまた疑いがあるということでなくて、そのものずばりだというような試験結果が出てきたわけでございます。
 私のほうも、それにつきまして衛生試験所のある人が関係しておったものですから、そういう事実を聞いたわけでございますが、うちのほうにはメーカー名は一切わからなかったわけであります。その時点で、そういう事実が去年の六月の毎日新聞に出ておったと思いますが、それについて公取には私ども尋ねたのですが、どこの会社がどうしたということは、全然私たちにはわからなかりたわけでございます。
 ところが、十月から十一月時分にかけまして、この問題につきまして、どうも明治乳業がこれに関係しているらしいという風評が流れたわけでございます。私たちのほうにそういう風評が耳に入ってまいりましたものですから、私たちのほうといたしましては一応明治乳業の担当重役を呼びまして、一体そういう事実があったかどうかということを聞いたわけでございます。そうしましたら、向こうの担当重役が言うには、確かに私たちのほうは公取に呼ばれまして、そういう事実があったということを公取から注意をされたということを言ったわけでございます。
 そこで、私たちのほうは、そういうことならば、ひとつ、今後のこともございますから、はっきり顛末書みたいなもので、そのあった事実と、それから今後どうするかということを書いて出していただきたいということで、私のほうで昨年の十一月二十日に顛末書を担当重役の名前で、これは生産部長でございますけれども、その名前で出していただきまして、一応そういう事実があったということを認め、さらに今後どうするかということを一応書面でもっていただいたわけであります。
 それがいままでの経過でございます。
#7
○小島委員 そうすると、この添加されたという異種物は厚生省衛生局から禁止しておったものであって、これは一体人間のからだに害はあるのですか、ないのですか。
#8
○神林説明員 異種脂肪そのものは、これは植物油脂を使っておりますから、別に衛生上健康に有害とか、そういう毒物では全然ございません。
 ただ、私たちのほうでは、牛乳というようなものは従来から非常に天然食品に近いという考え方、これは明治以来の伝統的な考えでございますが、できるだけ純粋の形で残したい。したがって、食品衛生法の第七条に基づきまして、乳製品の省令をつくっておりますが、その中で、他物を混入してはいけないということを、牛乳にまず書いてございます。それから加工乳につきましても、これは牛乳に非常に似たものでございますけれども、加工乳につきましても、バターそれから脱脂粉乳あるいは微量栄養素、これはビタミンだとかミネラル、そういうもの以外はこれに添加してはいけないのだというようなことを一応省令で基準をきめてございます。これは結局、牛乳あるいは加工乳の純粋性を保持したいということでございまして、直接衛生上の危害事故というものではございません。
#9
○小島委員 牛乳といえば、子供であるとか老人であるとか病人であるとかいう、からだのあまり健康体でない者が飲用するものだ、大体においてそうだと思うのですが、そういうものに対して添加させてはいけないといっておる以上は、そういうものを添加した場合において、一体厚生省はどういう取り締まりをするのですか。話を聞いてみると、いま聞いたところでは、去年の十月ごろにすでにそういうことがわかっておるにかかわらず、その後何らかの処分をされたということはないようですが、一体どうされたのですか。
#10
○神林説明員 この事件につきましては、私、先ほど舌が足らなかったかもしれませんが、最初から厚生省がタッチした仕事でなくて、実は公正取引委員会がサンプリングをやって、しかも試験をやった結果ということでございまして、厚生省がこれにつきまして直接の行政処分とか、そういうことはやれないわけでございます。別途私たちのほうは、すでに四十四年六月に、都道府県に牛乳の取り締まりについて、異種脂肪を入れたものがあったらひとつ摘発して、十分処分をしていただきたいというような局長通達を流し、さらに昨年の六月の時点でございますが、私の通知で「牛乳等の指導取締の強化について」といろのを出しておりまして、そういう事実があったらば直ちに摘発し、厳重な処分をしてくれ、またその事実があったらば、厚生省に至急報告してくれというふうに私のほうは言ってあるわけでございますが、一応いまのところ私たちのほうに、都道府県からそういう事実があったという報告は来ておらないわけでございます。
#11
○小島委員 どうも私はそういう点が手ぬるいのじゃないかと思うのです。最近において大企業は、あまりにわがままな企業のやり方をしていることについては、私たちとしてはしんぼうできないものがたくさんあるのですよ。公害の問題にいたしましても、ほんとうに弱い者に対して思いやりがなさ過ぎると私は思うのですが、それをもうすでに半年以上も、何らの処分をされていないからといって、涼しい顔をしておられるということは私は納得できないのです。一体厚生省は都道府県から何か言ってくるまでほっておくのですか。
#12
○神林説明員 食品衛生法のたてまえといたしまして、大体輸出入食品の関係以外は全部私たちは都道府県知事に業務を委任をしておるわけでございまして、これは都道府県の仕事になっておるわけでございますから、厚生省が直接行政処分をするとかということは普通ないわけでございます。あとは都道府県が違反を発見した場合に、それに対しまして処分をするという形になっております。その意味で、先生方には通達行政だとおっしゃられるかもしれませんが、私たちは一応通達を流し、あるいは会議の席上等でこれに対する摘発、排除ということを強く呼びかけてきておるところでございます。
#13
○小島委員 どうも私、その辺がわからないのです。厚生省はそれだけのことがわかっておって都道府県に対して、どこでこしらえたのか知りませんけれども、東京都だろうと思いますが、東京都に対して、こういう事実があるからこれをどうせいとかこうせいということは、全然ノータッチなんですか。知らぬ顔をしているのですか。
#14
○神林説明員 私たちのほうといたしましては、これは埼玉県の戸田橋でございますから、埼玉県には、あとですぐ、こういう事実があったからなお調べてくれと言っておきましたが、これはすでに三年前に起きた事件でございまして、その後私たちは、会社からもこういうふうなことで、今後こういうふうにいたしますというようなものも取っておりますから、一応それに従い、その後異種脂肪を使っているというような事実は見つかっておりませんわけです。
#15
○小島委員 どうも私は納得できないのです。大企業であるがゆえに遠慮しているという事実じゃないですか、それは。
#16
○神林説明員 そういう事実は私どもございません。むしろその意味では、私たちのほうは一応こういった顛末書というようなものを取ったわけでございますし、実際からいうとこれはうちが直接タッチしていない仕事のために、都道府県知事なり何なりが自分で指導し自分で検査をして、その結果こうであったという場合には、当然食品衛生法の適用が行なわれておりますが、この場合には公正取引委員会が全部やった仕事でございまして、向こうの公正競争規約か何かの違反ということになっておるわけでございます。
#17
○小島委員 あなたのおっしゃるところでは、たまたま有害物じゃないということだからまあまあとしても、かりにこれが有害物であったということになれば、何カ月間とか半年もの長い間それを飲まされておる人間はどうなるのか。そういう点に対してもっと早く行政的な処分をするなり処置をするなり、あるいは刑法的な何かをやるなりしなかったら、その間において、もしも人間が健康を害したということになったら一体どうなるのでしょうか。あまりにものんき過ぎる話じゃないんでしょうか。ただ社長が辞表を出したから、それで済むというものの考え方でこれから先企業の経営をやられたら、一般人は一体どうなるのですか。私は、最近において、そういう考え方が大企業の間に多過ぎると思うのですよ。そういう意味において、私はこの問題について、厚生省がこれから、ほんの短い間にどう処置をとられるかを見ておきたいと思います。
 それから、私はこの際ついでに申し上げたいと思いますが、食品衛生法に関する罰則が少し軽過ぎるのじゃないか。人の命にかかわるようなことをしておきながら、それがわずかな懲役だとか罰金ぐらいで済むというものの考え方はよくない。いま罰金をふやす法案が出ていますけれども、私は罰金なんということよりも、もっともっと重い罰を科すべきではないか。この食品衛生法ができた当時の情勢と今日の情勢から考えてみて、もっと罰則も強化するということを早くやるということでなければ、人一人でもなくなったときにどうなるのだということです。私は、そういう点において厚生省が至急に手続をとられることをお願いしたいと思います。
 同時に、罰則につきましても、食品衛生法に関する罰則をもう一ぺん再検討する必要がある。昔のように切り捨てごめんのような考え方でこのごろの大企業がやっていることについて、私はもう納得ができないのです。幾ら自由主義経済だといっても、私はそこまで見のがしていくというようなやり方は手ぬる過ぎる、こういうふうに思うのでして、こういうものに対して、ただ単に食品衛生法だけでなしに、もっと刑罰的にも何か処置をするように考えなければいかぬのじゃないかと思うのです。刑事局長にお尋ねしたいけれども、こういうものに対して、法務省のほうでは全然ノータッチですか。
#18
○辻政府委員 ただいま御指摘の明治乳業事件の本件につきましては、検察庁は何ら具体的事件として相談を受けていないというふうに承知をいたしております。
 そこで、先ほど来の御意見あるいは政府当局の答弁によりますと、この事案は、一応はやはり食品衛生法の七条に違反するということで、同法の三十条の二におきまして、一年以下の懲役または三万円以下の罰金という罰則に触れる行為であるやに思われます。検察当局といたしましては、現在までこの事実を知らなかったわけでございますけれども、後ほど厚生当局とも連絡して十分の捜査をいたしまして、刑事的に問題がないかどうかを検討していきたいと考えております。
#19
○小島委員 至急にこういう問題の取り締まりに関して処置をとっていただきたいということを、厚生省と法務省にお願いしておいて、私の質問を終わります。
#20
○松澤委員長 関連として中谷鉄也君。
#21
○中谷委員 関連して。いまの厚生省の御答弁に私ちょっと納得しないというか、もう少し見解を述べていただきたい点があるのですが、公正取引委員会が明治乳業の事件について取り調べをしているということは、法律でいえば、公正取引委員会のどの法律に基づいているわけですか。
#22
○神林説明員 これは例の景表法というのですか、その法律の中で公正競争規約というのをつくっておりまして、その中のあれでやっております。
#23
○中谷委員 不当景品類及び不当表示防止法、景表法に基づく公正競争規約を定めることができますから、景表法に基づいて公正取引委員会が取り調べをいたしておる。私が納得しないのはその点なんです。すでに御所管の食品衛生法は、御専門ですから言うまでもないわけですけれども、景表法には景表法それ自体の法の目的と内容が規定されている。それで、公正取引委員会が景表法違反で調べをしておるから、私のほうはこの件について、先に着手した事件じゃないんだからというのが御答弁の論点の一つだったのですが、それならば景表法があれば食品衛生法は要らないのか、七条、十一条というものは存在しなくてもいいのかという問題がこれは生じてくるだろうと思うのです。だから、いまの答弁ははなはだ納得できないわけなんで、公正取引委員会が景表法に基づく公正競争規約によって調べておるから、厚生省は関知しないという趣旨にとれるような答弁は私は納得しない。やはりいまのその答弁を維持されますか。
#24
○神林説明員 この件につきましては、私どもに確かに食品衛生法という別個の法律がございます。しかも、これは特別法でございます。当然これは私どものほうでやるべき仕事であると私は考えておるわけでございます。
 ただ、この件につきましては、一応サンプリングとか試験ということが、私どものほうで全然ノータッチの仕事でありましたために、これにつきましては、いま私のほうはとやかく言うことはできないということでありまして、あらためてそのとき通達を出しまして、ひとつ違反を摘発してくれというふうに言っておるわけであります。
#25
○中谷委員 だから、公正取引委員会が景表法に基づく公正競争規約によって調査をし、事実の究明に当たっておるから、厚生省としてはノータッチだという点は、少なくとも舌足らずであるし、これは不正確な答弁だと思うのです。特別法としての食品衛生法には食品衛生法としての立法趣旨があり、規定の目的があるわけですから、それは訂正されたと私、伺います。
 次に、食品衛生法についての所管は都道府県にある、したがって厚生省としてはタッチをするたてまえになっていないという趣旨についても、私は第二点として納得しないわけなんです。と申しますのは、本件のいわゆる七条もしくは十一条違反の製品が販売されておった期間、量、本数、さらにその地域的な範囲、こういうふうなものが全体として食品衛生法違反の反社会性、それからいわゆるそれの責任の程度というものが、私は評定されなければならないと思う。そうすると、たとえば奈良県なら奈良県ということに限って問題を言うならば、奈良県はどの都道府県にというところまで現実問題として調査することは、はなはだ困難だろうと思うのです。
 そこで、厚生省にお尋ねしたいと思いまするけれども、この事案というのは一昨年のことですから、十分に調査期間はあったと思うのですけれども、どのくらいの期間にわたって、どの都道府県に対してそのようなものが販売されたんですか。
#26
○神林説明員 これは、私のほうではその調査はいたしておりませんが、戸田橋工場でございますから、大体関東一円というふうに思いますが……。
#27
○中谷委員 関東一円ということになれば、十県近くの都県がその対象になる。そういう場合に、現在一つの県、たとえば栃木県、茨城県というふうなものが、食品衛生法のたてまえが都道府県にその権限があるという場合に、逆に一つの県が、他の都道府県にわたって食品衛生法違反を調査をし、そして追及をする、あるいは告発をするというふうなことは、現実問題として考えられますか。
#28
○神林説明員 現実問題として、そういう事例はございます。たとえば生産地が北海道であって、その違反品が東京で見つかった場合、東京でもってそれを処分するというようなことは当然であります。
#29
○中谷委員 そうすると、厚生省としては、この事案が関東一円だという事実はわかっておる。そうしてその後調査はしていない。都道府県に対して、たとえば茨城県が栃木、群馬その他にまたがって調査をしなさいというふうなことを期待をしておられるという趣旨なんですか。
#30
○神林説明員 そういう意味で、私たち実は昨年の六月九日に、私の名前で全国の都道府県あるいは政令市の衛生部局長に、「牛乳等の指導取締の強化について」という通達をいたしまして、そして立ち入り検査を厳重にしろとか、あるいは収去検査を厳重にしろとか、それから違反者に対する措置としては、そういうものを発見した場合は、食品衛生法第七条違反で処分し告発するとともに、新聞紙上に発表し、不正行為の起こらないように配慮につとめてくれ、それから……。
#31
○中谷委員 そうではないんです。この本件の事案は食品衛生法の違反であることは間違いがないわけですね。この本件違反を全体として全貌を明らかにするためには、どういう調査方法があるのですか。そういうことは、一応顛末書をとったというふうなことで、その後調査はしておらないというふうなことで、都道府県が全貌を把握できる能力があるというふうなことをお考えになっておられるのですか。だとすると、実態とはなはだかけ離れていることになるのではないかということをお尋ねしているわけです。その点について私はお答えいただきたいわけです。
#32
○神林説明員 これにつきましては、なお私たちのほうとしましては、戸田橋工場のある埼玉県に調査を依頼しておったわけでございますが、その後そういう事実がないということで、一応この点について打ち切ったわけでございます。
#33
○中谷委員 そうすると、この事案というのは、事実があるんですか、ないんですか。
#34
○神林説明員 私たちのほうといたしましては、一応衛生試験所の慶田部長の検査結果というもので、確かに事実であったと考えております。
#35
○中谷委員 事実があって、それの出どころが明治乳業だという点も確認されておるわけですね。そうして工場調査をしたけれども事実がないというのは、どういうふうに理解すればいいのですか。
#36
○神林説明員 この事件の起こった時点と、調査した時点が食い違っておったという点が一つございますが……。
#37
○中谷委員 あたりまえのことじゃないですか。それを調査をして、事実がないなんて言うのは、とにかくどうかしておるのではないですか。たとえば人を殺したのが三月十日で、五月十日に調べて殺人の行為がなかったら、殺人罪にならないという話はないでしょう。四月一日に贈賄をした、五月十日に帳簿を調べて贈賄の事実がないから贈賄罪にならない、そんな調査ならばかでもできますよ。あなたのほうの調査というのは、調査した時点でこのような事実がないということだったら、過去にさかのぼって食品衛生法違反の事実を調査するのが調査でしょう。いわゆる景表法違反とか特別法の違反、こういうような違反は、将来にわたって違反が継続しておる場合があるけれども、すでに過去の事実について事実を究明し、認定するということが、いわゆる事実の調査なんでしょう。一体それで調査があったと言えるのですか。あなたのほうの調査というのは、ある時点にそういうことが継続して行なわれておらなかったということを推認できる調査はあったかもしれないけれども、過去にどのような事実が行なわれたかというようなことについての、いわゆる生産のプロセスの関係、そういうようなものを工場長、製造部長、そうして販売関係、そんなことを調査するということは、乳肉衛生課長でなくても、大体こういうふうな調査をすれば、事実の真相が明らかになるだろうということはわかりますよ。
 要するに、厚生省としてはこういう広域的な、非常に広い地域にわたったところの食品衛生法については、都道府県に権限を持たしておるというような点から、厚生省はノータッチだ、都道府県のほうはそれらの事案については、結局非常に矮小化されたものしか調べる能力がないということになってくると、国民としては、全体として大メーカー、大企業が大がかりなかっこうで食品衛生法違反をやった事実について、ついにその真相を究明されることがないということになるのではないですか。厚生省がこれについての積極的な調査をしていけないということは、食品衛生法の趣旨にはどこにもないと思うのです。その点はいかがですか。一体調査をするつもりがあるのですか、過去にさかのぼって。
#38
○神林説明員 これにつきましては、その後、昨年、公正取引委員会が調査をやりまして、その結果私たちのほうへ報告が参りまして、一応問題がなかった、帳簿その他を調べて異常がなかったということで、私のほうはそのときに打ち切ったわけでありますが、なお私どものほうで調査をしてみたいと思います。
#39
○中谷委員 私は関連質問しておるんだが、公正取引委員会もこの機会に呼んでいただきましょうか。(「それはいいよ」と呼ぶ者あり)だから公正取引委員会の報告を受けて、そうしてとにかくそういう事実がなかったということは、結局何ですか、一体あったのですか、なかったのですか、どうなんですか。
#40
○神林説明員 一応前の検査をした時点で、確かに異種脂肪が検出されたのは事実でございます。その後公正取引委員会が工場の立ち入り検査あるいはもう一回再検査をやった、その結果、立ち入り検査の結果でも帳簿等に異常がなかった、それから検査結果も白であったという報告を私たちは受けましたので、それで私のほうも一応調査を打ち切ったわけであります。
#41
○中谷委員 過去の事実はそういう事実があったわけですね、結局。公正取引委員会もその点は事実として景表法の公正競争規約違反、そういう事実は認めておるわけですから、その点について、要するにあなたの御答弁というのは、調査をした時点においてそういうことがなかった、要するにそういうことが是正されておるということで、過去にさかのぼって調べる価値はない、また調べるつもりはないとおっしゃるのですか。それとも調べたいとおっしゃるのですか。どうなんですか。
#42
○神林説明員 調べてみたいと思っております。
#43
○中谷委員 調べるのは、一体何が動機なんですか。この委員会で問題になったから調べるのですか。要するに一昨年のできごとなんです、その後調査を打ち切りました、そしてとにかくある時点において厚生省も調査をしました、その時点においては問題がありませんでしたということですが、過去の事実が問題でしょう。過去の問題を、とにかく事実認定をしなければならぬ。すでに違反があったときには継続して違反が行なわれても、その違反というのは今日の時点においては過去のことになるのでしょう。その点について調べなければいけないでしょう。こういうために調べるというのですか、要するに委員会、国会で問題になったから調べるという趣旨なんですか。
#44
○神林説明員 やはり事件の重大性にかんがみまして、私たち調べてみたいと思っております。
#45
○中谷委員 事件の重大性というのはいつ認識したのですか。とにかく私は社会労働委員会という委員会に行ったことはないけれども、事件の重大性というのは、何か客観情勢が変わったのですか。
#46
○神林説明員 変わってはおりません。
#47
○中谷委員 だから一体何なんですか。そうすると、事件の重大性を認識しなかったことについて、厚生省としては責任は認めるわけですね。
#48
○神林説明員 一応そういうことでございます。
#49
○中谷委員 乳肉衛生課長さんというのは、一応ということばがたいへんお好きですね。あなた、一応認めるということは、認めなかった場合もあるわけですか。はっきり認めなさいよ。
#50
○神林説明員 認めます。
#51
○中谷委員 そうして、結局あなたのほうは、特別にその点について、告発その他を当然事実があればせよということを、都道府県にあらためて指示をされる意思はありますか。
#52
○神林説明員 これは、私ども一応告発になるケースかどうか法務省とも相談いたしまして、告発すべきケースならわれわれは告発したいと思います。
#53
○中谷委員 とにかくあなたのほうのお話は、ぼくは非常にあいまいだと思うのですよ。厚生省は告発すべきケースかどうかを法務省と相談をするとおっしゃるのでしょう。そうしてとにかく独自の食品衛生法についての権限は都道府県が持っているんだ、こうおっしゃるのでしょう。だからあるときには、とにかく都道府県に責任があるのですから私のほうはノータッチです、こうおっしゃっている。またあるときには、とにかく法務省と私のほうは相談しますとおっしゃる。じゃ一体あなたのほうが法務省と相談するという趣旨は、それは都道府県に対する行政指導を誤りなからしめるためにという趣旨なんですか。
#54
○神林説明員 当然これは告発のケースといたしましては、やはり都道府県で告発すべきケースでございますが、これはこの事案が一応食品衛生法違反ではあるけれども、さらにその後改善措置がとられておるというようなケースでございますから、その点もう一度厚生省といたしまして法務省と、あるいは公正取引委員会も入りまして相談をしてみたいと思っております。
#55
○中谷委員 要するに、当然とにかく七条、十一条違反の事実があったということであれば、この種の事案について、しかもそれが社会的信用を誇る大メーカーの場合、私は大メーカーなるがゆえにむしろ告発の対象になってしかるべきだと思うのですよ。
 その点について、そうするとあなたのほうは、相談をするのは結局こういうことなんですか。食品衛生行政をおやりになっているあなたの立場とそしてお考えが、私はどうもよく納得できないのですし、また理解ができないのですけれども、そういうふうな違反は過去にあった、その後改善されたということを踏まえて、告発すべきかどうかということを相談するということは、都道府県に告発権限があることについて、そのようなものは告発するに当たらないのだ、告発することは妥当でないのだというふうな、むしろ都道府県の権限にブレーキをかけるような意味の相談をされるようにさえも私はきこえるのですけれども、この点はいかがでしょうか。
#56
○神林説明員 そういうつもりは毛頭ございません。食品衛生法の告発というのはいろいろのケースがございまして、そういう意味で、私たちももう一回法務省とも相談をしてみたいということであります。
#57
○中谷委員 相談される点は主としてどの点ですか。
#58
○神林説明員 こうした過去の、しかも三年前というような事件でございまして、その後改善が行なわれておるというようなケースで、告発が妥当かどうかというような点を、もう一度私どもは相談してみたいと思っております。
#59
○中谷委員 あなたのほうで確認をしておられる事実関係だけを、では最後に言ってください。地域はどの地域に及んでいるのか、その対象になった人間はどの程度予想されるか、その期間に生産された数量は一体どの程度なのか、それによって、食品衛生法の構成要件とは直接関係ありませんけれども、メーカーが得たところの利得はどの程度あると見ていいのか、もしかりに正当なもの、表示どおりのもの、そういうものであった場合との差額はどうなるのかという問題、そして会社には、これらの不当表示、表示違反についての消費者に対する財産上の被害を補償する意思はあるのかどうか、また厚生省としてはその点についてどういうふうに考えるのか、これら全体について、わかっていることだけ言ってください。
#60
○神林説明員 前段の牛乳の配付状況であるとか、それからどんなふうにそれを何日くらい使っておったというようなことは、今後私たちは一応調査をしてみたいと思っております。現在まで私たちはそういうものの調査は、はっきり申し上げてやっておりませんから、してみたいと思っております。
#61
○中谷委員 最後に、質問を終わりますけれども、あなた、一応というのが非常に好きなんだが、そのことばじりをとらえるわけではないですけれども、調査などというふうなものは時間がたてばたつほど調査が困難になるということは、私はわかっていただけると思うのです。それでどの程度の数量、要するに中小企業ではないのですから相当膨大な数量ですし、しかも相当な金額に及ぶそういうものについての調査は可能ですか。非常に困難ですか。いずれにしても努力をすれば調査は結果を見ることはできますか。そしていつまでにその調査はやりたいという意思を持っておられますか。
#62
○神林説明員 これはやはり帳簿等を調べるというようなことでございまして、かなり困難であり、かなり時間もかかると思います。私たち、いわゆる警察と違いまして、呼んできて一々調べるということももちろんとりますけれども、あまり強制的なことは、やはり人権尊重の上でできませんが、もちろん会社側を呼んで事情聴取ということも一つでございますから、過去の帳簿を調べてみるというふうな形でやってみたいと思っておりますが、かなり時間はかかるかと思っております。
#63
○中谷委員 いずれにいたしましても、私から提案をしておきますけれども、会社に対して書類の調査その他に対して積極的に協力をするようにという申し入れをして、過去の事例から、専門家ですけれども、いつごろまでに調査は完結する予定ですか。
#64
○神林説明員 これはでき得る限り早い時点でやってみたいと思っております。
#65
○中谷委員 でき得る限りというのは……。
#66
○神林説明員 一カ月くらいのうちに済ましてみたいと思っております。
#67
○松澤委員長 中谷鉄也君。
#68
○中谷委員 施設庁長官にお尋ねいたします。
 民法六百四条と土地の特別措置法の関係についてはまだ整理がいたしかねておりますので、長官が施設庁長官でおられる間に質問ができかねるのかもしれませんが、きょうは次の点についてお尋ねをしたいと思うのです。
 これは銅崎調停官に前回別の委員会で答弁をいただいた点なんですが、防衛施設庁は沖繩の軍用地の取得契約のために、四十七年三月「賃貸借契約のしおり」というものをおつくりになったわけです。そこで、この「賃貸借契約のしおり」というのはどの程度部数おつくりになって、どの程度配付されたのか、まず最初にお答えいただきたいと思います。
#69
○島田(豊)政府委員 これは地主会連合会をはじめといたしまして、市町村の地主会あるいは部落ごとの地主会に、いろいろこの土地の契約について御説明をし、交渉をいたすその便宜のためにこういう印刷物を作成いたしまして、これに基づいて御説明をしたものでございます。
 部数につきましては、ちょっといま私、存じませんが、かなり多数を印刷したのではないかと考えております。
#70
○中谷委員 「賃貸借契約のしおり」は、いわゆる沖繩軍用地法、公用地取得に関する法律による適用を受ける土地以外の、本来政府が期待をしておった、賃貸借契約を締結するためのPRの説明資料であるというふうに私は考えますが、それは、「1.お願い 2.契約などのすすめ方 3.契約の予約 4.賃貸借契約書の作成 5.代表者との契約 6.見舞金の支払い 7.借料額の計算」こういうことになっているわけであります。そうして「契約などのすすめ方」については、契約の説明会を開き、予約の申し込みを行ない、予約の承諾があった場合に使用通知をし、四十七年の五月の十五日が使用の開始である、その後借料の支払い請求が行なわれ、借料の支払いをなす、こういうふうな図等も入っているわけであります。
 そこで、「5.代表者との契約」ですが、いわゆる個々の施主が契約する場合に、代理人を選んで契約をするということはあり得ても、代表者との契約というのは本来おかしいのではないか、こういうふうなことを指摘をいたしたわけです。そして、なるほど民法の初歩的な常識から申しますと、代表者との契約ということは、賃貸借契約の予約なりあるいは賃貸借契約そのものが、代表者との間に、代理権限がないわけですから、結ばれるはずはないという点を指摘さしていただきましたが、それについては、表現上代表者というふうに書いたけれども、法律的にそういう指摘をされると、適切ではなかったと思うという趣旨の答弁が、沖繩の施設局長になって転出された銅崎調停官の答弁として、前回別の委員会でありました。
 そこで、施設庁長官にあらためてお伺いいたしたいと思いまするけれども、沖繩県民に対するPRの書面、「賃貸借契約のしおり」の中に、「代表者との契約」とある部分、これは正確には代理人による契約とかいうふうになされるべきじゃないかと私は思うのです。念のために読み上げてみますと、「当庁と」すなわち施設庁と、「皆様方との契約は、皆様方が選んだ代表者の方と結ぶこともできます。この方法は関係する方が大勢いるときには、時間や費用をはぶく意味で、一般によく用いられる方法であります。」とありますけれども、私は、代表者というものについて代理権限というものが与えられるはずのものでもないのだから、こういうものは一般的に用いられる方法ではあり得ないという点を指摘をいたしまして、前回表現上の不備を認められたわけですが、やはり施設庁としては、これは当然の御答弁だと思いますが、あらためて施設庁長官のこの点についての、表現不適切と私は思いますが、御見解を承りたいと思うのです。
#71
○島田(豊)政府委員 法律的に申し上げますと、確かに代表者といわゆる代理人とは性格を異にするものと思います。
 そこで、今回の契約の実際につきまして申し上げますと、個人個人がその代理人に委任状を出しまして、代理人による契約の予約取りつけということを実際上はやっておるわけでございまして、確かにこの「代表者の方」という表現は適切でない。要するに、厳密に法律的に申し上げますと、確かに正確ではないという感じがいたします。
 ただ、地元の話し合いの中で、よく代表、代表ということばが地元の中からは出てくるそうでございまして、要するに、法律上の正確な代理人との契約という表現よりも、むしろ代表者と言うほうが地元の方々にはなじみやすいのではないかというふうな配慮から、この代表者ということばを選んだわけでございまして、確かに厳密に法律的に申し上げますと、この代表者ということばは、実は適当ではなかったというふうに考えております。
#72
○中谷委員 話が逆でありまして、四十七年三月にこのしおりがつくられて配付をされたために、地元の人たちは、代理人による、代理権限を付与された代理人によって契約が締結されることはあるということの正確な、初歩的な民法の考え方を間違って、政府の防衛施設庁のつくられたしおりに代表者による契約、代表者との契約とあるからということで、地元の諸君が代表者というようなことばを使うようになった、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
#73
○島田(豊)政府委員 実際上の御説明なり、あるいは交渉の過程におきましては、もちろんこれは説明者側としましては、正確に代理人による契約ということを申し上げていると思います。現に委任状の中には代理人ということばを使っておりますので、そこのところは誤りはないと思いますけれども、これは代理人、代表者ということばの厳密な意味についての十分な認識のないままに、代表者に一任をするというあまり法律的でない考え方、いわゆる通俗的な考え方で土地の地主の方々が受け取っておられる向きがあるかどうか、その辺は私も十分確認をいたしておりませんけれども、少なくとも説明会の中あるいは委任状の中においては代理人、ことに文書の中に代理人ということばを使っておりますので、その点は、まず誤解がないのではないかというふうに考えております。
#74
○中谷委員 では質問を、私はそろそろ終わりたいと思いまするけれども、いずれにいたしましても、説明会では代理人ということばを使っておるとおっしゃるわけですね。地元からは代表者ということばが出ておる、それを別に訂正せずに使っておる、こういうことですけれども、私はテープにとってあるわけじゃないから、説明会のときに代理人ということばを使っているのですと言われる点については、必ずしも確言、あるいはまたそれを信用するわけにはいかないのですけれども、だといたしますと、この「賃貸借契約のしおり」は、地主連合会、地主会あるいはその他町村、あるいは区、部落会等にも配られたと思いますけれども、これはすでに前回にも指摘し、本日もお認めになったように不正確なものである。正しくない記載だ。
 そこで、今後も契約を進めていかれるということがあれば、まず第一点、今後このしおりは配付をしない、これは当然私は約束されてしかるべきだと思うのです。
 いま一つは、説明と違うとおっしゃっているなら、この書類は、いま全島民、全県民に配付をしたものではないらしいが、とにかくかなりの部数には及んでおるということであるが、回収は必ずしも不可能ではないと思う。それについては回収さるべきではないかと思う。回収をされないなら、五の「代表者との契約」の部分は間違いであるという点の私たちは指摘をしたわけですから、この点についての通牒あるいは同じしおり、そういうようなものを私は配付されなければ、問題が将来残るだろうと思うのです。いずれのような措置をおとりになりますか。
#75
○島田(豊)政府委員 今後引き続き契約交渉をいたします場合に、このしおりを用いることがあると思いますが、新しく配付をするという場合におきましては、この「代表者の方」というのは誤解を招くおそれがありますので、これは印刷物を訂正いたしまして、それを配付するということにいたしたいと思います。
 それから、もうすでに配っておるこのしおりを回収するかということについては、これは一応もう少し、これがどのくらい配られておるか、それを見て検討させていただきたいと思いますけれども、委任状を出していただきますについては、との委任状の中には、上記の者を代理人と定め、次の事項を委任しますということで、委任状におきましては明確に代理人とうたってありますので、その間には誤解はないと思いますけれども、一応そういう御提案がございますので、その点はひとつ検討さしていただきたいと思います。
#76
○中谷委員 要するに、回収については検討される。そうしてまた提案は、すでに配ったところへ訂正したものを配るという方法だってあるわけですね。いずれにしても軍用地の問題については、お互いの立場があって非常に緊張関係にあると私は思うのです。そういうような中で、私の考え方から言いますると、「賃貸借契約のしおり」の中に正確でない、法律的に見て正しくない記載があるということについては納得ができないわけです。これについての検討は、そうするといつまでに検討結果をお知らせいただけますか。
#77
○島田(豊)政府委員 これは、いつまでという具体的なことは申し上げられませんけれども、できるだけ早く、即時にといいますか、早くやりたいと思っております。
#78
○中谷委員 いずれにしてもこの間違った記載の、四十七年三月作成にかかるしおりというものは今後用いない、これについては配付、閲覧その他というようなことはしない、もしこういうしおりをつくる場合に、新しく配る場合には、五の「代表者との契約」という点については訂正したものを印刷をする、こういうことでございますね。そして回収については検討して、その検討の結果は、なるべく早くとおっしゃったと思いますが、お返事をいただけるわけですね。
#79
○島田(豊)政府委員 新しく配付いたします場合には、印刷物の残部がございますれば、ここの部分を訂正をいたしまして配付をする。それから、すでに配付されている分につきましても、この部分を訂正した、そういうものをさらに配付いたしまして、誤解のないようにするという方法も一つあろうかと思います。回収という方法でありませんで、この5のところをこのように訂正をするという文書と申しますか、そういう通知をやることも可能だと思いますので、いろいろその方法につきましては検討いたしたいと思いますし、できるだけすみやかにやりたいと思います。
#80
○中谷委員 最後ですが、事実関係だけ確かめておきたいと思います。
 内閣委員会でもすでに御答弁になったと思いますが、五月十五日現在で軍用地の、自衛隊使用の分を含む成約状況、契約が成立したものは全体の何%ということになるのでしょうか。そのうち、いま私が問題にしております、代表ということばが不正確だと指摘をいたしましたが、委任状による契約というものは何%に及ぶでしょうか、その事実関係だけお聞きして、質問を終わりたいと思います。
#81
○島田(豊)政府委員 軍用地に関係しております市町村が三十六市町村ございますが、そのうちに三十カ市町村が契約に応じてもらっておりまして、六市町村についてなお交渉中ということでございます。
 そこで、地主の数からいたしますれば、約九〇%が契約に応じていただいた、こういう状況でございます。なお、民有地の面積からいたしますれば、九四%という状況でございます。
 委任状による契約と、それから直接個人による契約との比率につきましては、まだ実は正確に把握いたしておりません。できるだけ早く把握したいと思います。
#82
○中谷委員 終わります。
#83
○松澤委員長 青柳盛雄君。
#84
○青柳委員 法務大臣に最初にお尋ねを申し上げたいと思います。
 去る四十七年四月二十六日の法務委員会で、私は以下述べるような問題について質問をいたしまして、影山政府委員からお答えをいただいたわけでありますが、その際、委員会には大臣も御出席であられましたが、私の質問のころにはもう退席をされておられましたので、御返事をいただくことができませんでした。
 そこで、どういうことを尋ねたかという点に簡単に触れますと、関西電力の職制の方々、労務担当の方々が、数名職員の中に共産党員がいるらしいということで特別な調査をやった。いろいろのことをおやりになったようでございますが、そのことが、そういう労務担当の方々の会合でそれぞれこまかい報告が行なわれまして、それは文書になって提出され、それがマル秘の文書として関西電力では保存しておったらしいのでありますが、たまたまどういう経路をたどりましたか、その差別的な扱いを受けていた、人権じゅうりんを受けていたと信ぜられる人々の知るところになりまして、事の重大さに驚いて、その問題を神戸地方法務局の人権擁護関係の機関に申告をしたわけでございます。
 そこで、いま申しました機関では慎重に調査、審理をされたようでございますが、ある程度の調査、審理が終わったので、法務省のほうに対して自分の意見を具して指示を仰いだ、こういう経過があるようでございます。
 ところが、たまたまこの人権被害を受けたといわれている方々が、この人権擁護局への申告と並行いたしまして裁判所のほうに被害救済の訴訟を提起したようでございます。そこで、指示を仰がれた法務省としましては、裁判も行なっていることだから、法務省の人権関係の機関としては、申告に基づく調査結論は一時中止すべきであるという決定をいたしまして、その旨指示したということでございます。
 ところで、法務省の人権擁護関係の機関が、人権侵犯事件というものを処理するについて、どういう基準あるいは手続規定があるかと申しますと、昭和三十六年三月十日法務省訓令第一号、人権侵犯事件処理規程というのがございます。これによりますと、いろいろ詳しいことがきめられておりますけれども、中止というのはどういうときにやるかということについて、十一条の規定がございます。少し長くなりますが読み上げます。第一項は、「法務局長又は地方法務局長は、事件について、関係者の所在不明その他調査を行なうについての著しい障害があって、調査を続行することが相当でないと認めるときは、中止の決定をするものとする。」第二項、「前項の障害がなくなったときは、すみやかに事件の調査を開始するものとする。」こうあります。
 私どもの理解するところでは、これはそう拡張解釈をして、裁判があるから、裁判の結果待ちということで中止してもよろしい、そういう規定ではない。あくまでも関係者が所在不明、その他調査を行なうことについて著しい妨げが発生したために、続行することが相当でないと認める、その「続行することが相当でないと認める」というのにはちゃんと条件がありまして、「関係者の所在不明その他調査を行なうについての著しい障害」ということですが、裁判所に提起されたということが著しい障害だ、続行することが相当でないと認める根拠にはなり得ないと思うのですね。
 したがって、先ほど申しましたようなこのような法務省の措置は、神戸地方法務局に対する指示は正しくないから、これを撤回して、そしてさらに神戸地方法務局が不十分な点があるならば、調査を続行すべきであるし、もう十分に調査したというのであるならば、その段階における一定の結論を出すべきではないか。その結論というのは、先ほど申しました処理規程第九条によりますといろいろございまして、告発、勧告、通告、説示、援助、排除措置等でございます。
  〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
 ちなみに、昭和四十七年四月二十日付読売新聞十四版によりますと、ことしの二月ごろに、神戸地方法務局は、説示など何らかの措置が必要との意見書を、大阪法務局を通じて法務省人権擁護局に出して指示を仰いだ、こういう報道がございます。ですから、先ほど申しました幾種類かの処置のうち、説示などとありますから、少なくともそういったようなものをする結論的な段階に達していたのではなかろうかと思う。そういうこと、それがいいか悪いか、正しいか正しくないかは、またこれは判断しなければならない問題でありますけれども、少なくとも裁判があるからという理由によって、せっかく調査をしたのにもかかわらず、結論をもよう出さずにやめてしまう、中止してしまうということは、どう考えても、人権擁護の任務を十分に尽くしているものとは考えられないと思うわけであります。だから、読売新聞などもこの見出しに、「宙に浮く人権侵害の訴え 法務省が「結論待った」 クロの報告無視」こういうふうに評価しているといいますか、見ておるわけであります。私どもも新聞のしり馬に乗って云々するというわけじゃありませんが、まさに宙に浮かされた形になっておるのではなかろうか。
 民事裁判などというものは、本人の処分権限のあるものでございますから、情勢いかんによっては取り下げるということもあり得るわけであります。だから、取り下げたらそれで人権擁護のほうは、もうおしまいなんだということではないと私は考えておりますので、この点について、前回お答えになりました影山政府委員の回答、説明はとうてい私どもの納得することのできない点でございますので、大臣からお考えを伺いたいと思います。
#85
○前尾国務大臣 もう私がいろいろなことを申し上げるまでもなしに、人権擁護局あるいは人権擁護機関というのは行政機関であります。したがって、裁判にいきます前に、いろいろなことがありましたら、これは当然人権擁護という立場から行政的ないろいろな処置をすべきであります。
 ただ、司法機関にその問題が移されておるということになれば、司法権にいろいろ行政機関が介入するということは、差し控えるべき問題だというふうに考えるわけであります。また人権擁護局としましては、その本務はあくまで人権尊重の思想高揚といいますか、それを鼓吹してみんなに浸透させていくというのが本務でありまして、裁判所にかわるようないろいろな判決をやるわけではありませんので、いろいろ行政行為は行ないますけれども、しかし、それはすべて最終的には司法裁判所がきめる問題であります。
 そういう意味合いからいたしますと、裁判に移されておるということになれば、行政的なものは当然中止するのが適当である、かように考える次第であります。
#86
○青柳委員 大体前回の影山政府委員のお答えも、大臣と同じようなことでございました。そのような御説明では、この制度を正しく運用していないのではないか。実質的に言ってもこれは怠慢であると思いますし、また法治国として一定の行政が行なわれる場合には、一定の規則、基準にのっとって行なわれるのが最も正しいやり方だと思います。そのためにこそ、先ほど申しましたような処理規程がつくられ、その処理規程にないことをやることは、処理規程をないがしろにすることにもなるというふうに思うわけです。
  ですから、影山政府委員も前回、裁判を行なった場合には中止するのは、この事件だけのことではないのだ、ほかにも例があるのだというようなお話でございましたが、たとえば人権侵犯事件というのは、最も極端な場合には刑事事件、犯罪事件にもなるわけでございまして、刑事事件が係属しておるということもあり得ようかと思います。だから、刑事事件で黒か白かが出るまでは、一つの国で二つの結論が出るのはおかしい、裁判所の結論と法務省の結論とが食い違うというのはおかしいということから、国の権威を保つためにといいましょうか、それぞれの運用のしかた、それから目的等は違うにせよ、事実認定において違ったりすること、あるいは評価において、価値判断において食い違ったりすることを、なるべく避けようというような趣旨はわからないではありませんけれども、そうだからといって、それぞれの機能は別でございますから、刑事裁判と民事裁判ではまた別な結論が出る場合もあり得る。また裁判でどうあろうと、行政的な処理としては別な結論も認定を含めてあり得ると思うのです。それは、裁判のほうが証拠をたくさん集めた結果として、もっと正確な事実認定ができた、しかるに行政のほうは、任意調査であるために証拠の収集が十分でなかった、したがって、事実が正確に認識できなかったというようなこともあるとは思いますけれども、そういう限界はそれぞれあるわけですから、それは前提として容認されているわけでございますから、そういうもとでのベストを尽くして一定の結論を出す。それが、よしんば人権侵犯なしという判定が下ったという場合に、裁判のほうでは人権侵犯ありという判定が下った、それでは行政機関は職務怠慢ではないかというふうに責められる場合に、おそらくその限界というものを主張されて、決して怠慢ではないという弁解が成り立つと思うのです。
 ですから、何か一方でより慎重な手続が進行している以上、こちらはそれに便乗してやめてしまえということでは、せっかく法務行政の中に、人権侵犯について一定の行政的な措置をとるという、そういう任務が課せられているにもかかわらず、これを司法裁判のほうに依存して、そして自分のほうはやめてしまうということでは、やはりせっかくこの制度を設けた趣旨が守られていないということになると思うんです。
 たとえば、裁判所のほうの審理というのは、非常に慎重であるために、長期にわたるわけなんですね。非常に連続的に審理が進まれるということがなくて、当事者の主張を整理するために半年、一年もかかるということすらあるわけです。それから証拠調べという段階に入っていく。したがって、結論が出るためには相当日時がかかります。しかるに、一方この法務省の人権侵犯処理の場合は、これよりもすみやかに調査も可能でございますし、また、審理も調査も進行するわけでございます。ですから、裁判所で時間をかけている間に、もっとフレッシュな状態で法務省のほうでは事実に関する情報を収集することもできるという便宜もあるわけですね。それは強制的なものではないといいましても、関係者を招致すれば、関係者もやはりこれに応ずるというのが大体の慣習的なものになっておりますし、義務があるかないかということはともかくといたしまして、任意調査に十分関係者は応ずるのがもう常識になっている。
 したがって、私は通り一ペんのお話で、これを中止のままでよろしいということはとうてい言えないと思いますので、大臣とされましてはこれをさらに再検討を願いたいと思います。どうも、前回もちょっと触れたんでございますけれども、関西電力と法務省の上部のほうには、何か変な関係があるんじゃないかというようなことすらうわさされているということも耳に入りますので、そういうことであってはこれは絶対にいけないことでございますから、そういううわさの出るようなことの絶対にないように、この問題については、中止決定をそのままに維持されるということでなしに、何らかの措置をすみやかにとっていただきたい、かように考えますが、いかがでございましょうか。
#87
○前尾国務大臣 いろいろその機関の、まあただいまお話しのとおり、同一事件でありましても、刑事事件になったりあるいは民事事件になったり、あるいは行政の、人権擁護局のいろんな行政行為ということがあるわけであります。いずれにしましても、刑事事件でありましたら、これは法務省は全然関係をしない。検察庁の系統においてやるわけであります。人権擁護局というのは、御承知のようにもう全くの行政機関であります。それが司法上の問題ということになっておりましたら、やはり司法機関にゆだねるべきで、それが最終的なものであるわけであります。
 ただいまいろいろお話しのように、簡易にやれるからというお話でありますが、やはり人権擁護局におきましても慎重にやるべきことは慎重で、必ずしも早いとは限りません。いわんや強制的な調査権を持たないのでありまするから、したがって、そういう司法機関の発動なりあるいは訴訟ということになっていないのでありましたら、当然行政行為として進めるべきでありますが、たとえ人権擁護局でいろいろなことをやりましても、それに不服であれば裁判所でやるということになるということになるわけであります。最終的には司法機関、もうその最終的な司法機関が発動されておる、またそれに訴訟が起こっておるということであれば、当然それはその間中止する、行政権が司法権に介入するというような形はあくまで避けるべきだ、私はそう考えております。
#88
○青柳委員 介入というおことばが出ましたけれども、私は絶対にこれは介入ではないと思います。裁判のほうでは損害賠償とか謝罪広告とかいろいろ、私、具体的にどういうことを請求しているか存じませんけれども、要するに被害を救済してくれ。この法務局の人権擁護のほうに申告したのは、このような事案について適切な措置、先ほど私が申しましたような措置の中のどれに該当するかしれませんけれども、それをやってくれということでありまして、決して同じ結論、認定においては同じであることが望ましいけれども、そのあとの結論ですね、処置は当然違うわけなのでありますから、片方だけで満足する、司法裁判で満足するということではないわけです。
 たとえば、この九条によりますと、勧告をするとか通告をするとかいうふうなのもあるわけなんですね。これは裁判所の判決では、勧告とか通告なんというものはございません。損害があった場合には損害を払え、不当な不法行為があった場合にはそれを謝罪せいというようなこととか、そういうことにとどまるわけでございまして、その社会的な制裁はどうなるかということは、それは判決でも社会的な制裁がもちろん期待されるわけでございますけれども、この法務省の人権擁護局が行なう行政措置によっても、やはり一定の権威をもって勧告なり通告なりというものが行なわれるわけですから、これはそれなりの大きな社会的制裁が加わるわけで、再びそういうことがまかり通るというようなことに対する阻止的作用、一般擁護の作用をも含むわけでございます。ですから、介入というようなことは絶対ありませんので、もう少しこの問題は検討していただきたいと思います。
 それに、人権侵犯事件処理規程というものが、先ほど申し上げましたが、この十一条などというものがある以上、裁判が起こった場合には中止するということが書かれていないとすれば、当事者はどうしても怠慢と考えます。
  〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
これを拡張解釈するということは、文言上からいいましてもちょっと不可能な、またそれの合理性がないわけだと私は思います。
 したがって、この処理規程を改正して、裁判が起こった場合には常に中止するという方針であるならば、その旨をこれに書き込むというような措置でもない限りは、どうしても納得できかねるのではないか。私はそういうふうに改正すべきだという意見を積極的に言っているわけじゃありませんが、少なくとも法治国である以上はきめたことは守る。それをむやみと拡張解釈をして、守らたいと同質のことをやるのはよくないのではないかということを考えるがゆえに、この点について改正する意思があるのかないのか、それもお尋ねしたいと思うのです。
#89
○前尾国務大臣 裁判所にいろいろ請求されております趣旨は、何も損害賠償だけではなしに、そういう行為をやめろというようなことも含まっておるわけでありまして、人権擁護局に要求されておることと全く同一のことではなかろうかと私は思います。
 したがって、司法権と行政権が互いに一つのことをやるということは、これはたてまえ上おかしい問題ではないか。したがって、司法権の発動があるときに行政権がそれを差し控えるということは、何も規定の問題じゃない、規定以前の大きなたてまえの問題であり、当然のことであります。別に規定にあるとかないとかいうことではなしに、当然これはそうあるべき問題で、規定にないからやったんだとかやらないんだとかいう問題ではないんじゃないか、まあかように考えておるわけであります。
#90
○青柳委員 もう時間がありませんから、これ以上同じ問題を繰り返しはいたしません。別な問題について簡単に、最高裁判所にお尋ねをいたしやいと思います。
 ことしの五月三日の憲法記念日の前日に、石田最高裁長官は談話を発表されました。石田長官は憲法記念日の際にはいつも談話を発表するようか慣習になっているようでございますが、一昨年は、極端な軍国主義者とかはっきりした共産主義者は裁判官には適さないというような、たいへんにショッキングな話をされましたし、それから昨年は、どうも裁判所への疑惑を起こさせるような中傷、誹謗を加える者があってよくないという趣旨の、挑戦的な談話もまた出されました。ことしは、談話の中身そのものはそれほど問題ではない。要するに、最近の風潮は実力行使をやったりしてよくないけれども、要するに法と秩序を確立することが大事なんで、それを保障するのは裁判所であり裁判官である、その任務に万全を期するようにという趣旨のものでございました。
 ところが、そのあとで新聞記者からの質問がありまして、それに答えたことでちょっと私どもは問題にしなければならないことがあります。たとえば、読売新聞の五月三日付の見出しに、「護憲の立場には立つな 裁判官の責務は「順守」 石田長官語る」こうありまして、「同長官は、この談話に関連して、裁判官として憲法を守る心構えについてどう考えるか、との質問に答えたが、「憲法を守るという意味には、順守することと、擁護することの二つがあるが、裁判官としては、順守することが責務で、擁護の立場に立つべきではない」」と言ったというのですね。また朝日新聞によりますと、「裁判官の憲法順守義務について「憲法を“守る”という意味には、順守と護持の二通りがあるが、裁判官の憲法を〃守る〃義務とは前者の意味、すなわち憲法に従うという立場だと思う。これは私の持論だ」」という趣旨でございます。そしてなぜこのようなことを言うかというと、どうもこの護憲とか擁護とかいうのは政治的な活動であって、裁判官は政治的には中立なんだから順守さえすればよろしいんで、護憲とか擁護とかいうのは行き過ぎになるという趣旨のように思える持論なるものが出ていたように思います。
 この新聞の報道が、はたして正確かどうかについてお尋ねをするわけですが、このような談話がなぜ行なわれたのか、まず事実関係、さらに、そういう趣旨の発言があったとするならば、なぜこのような順守と擁護というものをわざわざ分けて説明をされたのか、お答えいただきたいと思います。
#91
○長井最高裁判所長官代理者 五月三日は、申し上げるまでもなく憲法記念日でございまして、その機会に新聞社のほうから記者会見をしてほしいという申し出がございますので、それにこたえまして記者会見をするというのが例になっておるのでございます。今年もその例に従いまして、五月一日の午後二時半から最高裁判所において新聞記者と記者会見をいたしまして、「憲法記念日を迎えるにあたって」という談話をなさったあとで記者との一問一答と申しますか、記者会見が行なわれたわけでございます。
 それで、なぜこういう談話を発表するかというお尋ねでございますが、やはり最高裁判所の長官といたしましては、裁判所を代表いたしまして裁判所の立場、任務というものを、現状に即して国民の皆さん及び部内の職員に十分に説明し、理解をしてもらい、裁判所の使命を明らかにしてその立場を確固たるものにする、国民の司法に対する信頼を得るというための当然の努力で、最高裁判所の長官としての当然の任務である、このように考えてなさっているわけでございます。
 それで、御指摘のことばでございますけれども、新聞によりましては、護憲というようなことばあるいは擁護の立場に立つべきではないというような用語を使っておりますが、当日は録音も入れてございませんけれども、とりましたメモなどによりましても、擁護ということば、擁護の立場に立つべきではないという趣旨の表現をとったのは、私の見ました限り一つだけでございまして、あとは順守と護持の二つを、守るという意味の内容として表現しておられるようでございます。護憲ということばもお使いになっておられませんで、順守と護持、この二つにつきましては、順守は従うことであるということを説明されております。これは当用漢字の関係かと思いますけれども、憲法の九十八条にも、「誠實に遵守する」ということばがございまして、それは従順の「順」ではなく、尊敬の尊の字にしんにゅうをした「遵」の字で表現をされておりますが、公法といいますか、憲法の関係の学者も「順守」という場合には一般にその「遵守」という用語を用いておりますので、長官はどのようにお考えになったか、文字で示しておられませんけれども、そういう趣旨での従うという意味で、忠実に現行憲法を守るという意味で、裁判官は憲法を守るべきであるというふうに表現されたと思います。
 この順守に対しまして、護持というのは政治の分野に属する立場であるから、ここでは立ち入るべきではない、このような趣旨を述べられておりまして、憲法から先ばしってはいけないというようなことは言っておりますが、具体的にそれ以上内容を明らかにしてはおられないようでございます。
#92
○青柳委員 憲法九十九条の、「天皇又は摂政及び國務大臣、國會議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」というように尊重、擁護という文字が憲法九十九条にあるわけなんです。これをわざと、何か擁護というところを護持というふうにもじって、尊重はするけれども擁護はしないというふうにとれるような意見――いままで護持といえば、これは天皇制護持などといって、終戦後非常な政治運動になったわけでございますけれども、これは守るという概念の中にもちろん入るのでしょうけれども、記者の方々が、私、立ち会っておりませんからどういう趣旨でお尋ねになったか知りませんが、憲法記念日に憲法を擁護するという立場で、平和条項、民主条項を守っていくというような立場で行事が行なわれる、ところが、政府のほうはちっともしないで民間だけでやるというような状況、裁判所は一体この問題についてはどう考えるかという趣旨で尋ねられたと思うのです。それを、何か裁判所は政治問題はノータッチであるから護持はしない、しかし順守はするのだ、こういうふうなまぎらわしい議論で、憲法八十一条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」とあるように、積極的に憲法を擁護する責務を裁判所は負わされているわけですね。その積極性についてどうなんだというのに対して、この答えは全く消極的な、しかたがないから守るんだといったような感じになるわけなんですね。
 なぜ憲法八十一条というような規定があるかということについてすら、深い思いをいたすことなく、憲法というのは、絶えず権力者、時の政府その他等々によって、侵害されるのだ、もちろん国民の行為でも侵害するようなことはあるでしょうけれども、それは秩序破壊の形で憲法を侵害することもあるでしょうが、しかし、何よりもおそるべきものは、行政権なり立法権なりにおいてこの憲法の条章が侵されるということ、それを最高裁判所をはじめとする裁判所は絶えず監視して、そして決定を下さなければいけない、こういっていることから考えれば、この憲法護持の立場をとらないというような表現、それをことさらに、それは政治的だから政治行為には無関係だ、こういつた形で、いかにも裁判所はもう消極的に守るだけなんだというような印象を受ける発言というのは、時節柄非常に大きな疑惑を国民に与えるものだと思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
#93
○長井最高裁判所長官代理者 御指摘のように、擁護ということばは憲法九十九条にも使用されておりまして、長官も従前から憲法を擁護すべきであるということは、常々持論として申しておられますので、擁護の立場に立たないというような御発言は、万なかったものと私は信じておる次第でございます。
 単に消極的に守るだけで、護持の立場に立たないのは積極性を欠くではないかという御指摘でございますが、なかなかことばのニュアンスというものはむずかしいもので、これを法律的に厳密に論理づけるということはむずかしいのではないかと思いますが、ただいま御指摘がございましたように、八十一条には、「一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」この適合するかしないかということの判断が、裁判所の最も中心的な任務でございますので、この点を強調して順守という表現をとられたわけでございます。その点はおくみ取りいただきたい、このように考えるわけでございます。
#94
○青柳委員 時間がありませんから、一言で終わりにいたしますけれども、ここ数年来問題になっておりました青法協、これは憲法を守ることが大事だということが若い裁判官の間でテーマとして、青法協の主たる活動はそこに集中されていたと思うのです。その青法協が政治的色彩のある団体だ、そういうのに所属している裁判官は不適切だというようなことを言われる最高裁の長官であって、憲法についてこういう立場をとられると、いかにも憲法を守るということは、もう裁判官がそれにいくとつい政治活動になってしまうのだ、だから気をつけろと言わぬばかりの印象をわれわれに与える。こういう点、裁判官は公正を保つということが大事であり、そういう外形的にもらしさが大事だということを強調している最高裁の長官が、そのらしさと称するものすらかなぐり捨てて、新聞が誤報したとはとても思えない、憲法を守らぬでもいいのだと言わぬばかりの、順守さえすればいいので擁護すべきではないといったような誤解を受けるような発言は、今後慎んでもらわなければなるまい、かように考える次第でございます。
 終わります。
#95
○松澤委員長 次回は、来たる十九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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