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1971/01/31 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第4号
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1971/01/31 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第4号

#1
第068回国会 本会議 第4号
昭和四十七年一月三十一日(月曜日)
―――――――――――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和四十七年一月三十一日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 首都圏整備審議会委員の選挙
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 首都圏整備審議会委員の選挙
#3
○議長(船田中君) 首部圏整備審議会委員の選挙を行ないます。
#4
○藤波孝生君 首都圏整備審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#5
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、首都圏整備審議会委員に久保三郎君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#7
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
  〔成田知巳君登増〕
#8
○成田知巳君 私は、日本社会党を代表いたしまして、総理の施政方針演説について、わが党の立場を明らかにしながら、総理並びに関係閣僚に、内外政策の基本について質問いたしたいと存じます。(拍手)
 総理の施政方針演説には、日中国交回復、物価対策など、国民がいま一番知りたい問題について、具体的方針は何一つ上示されておりません。国民の心に訴える何ものもなく、またまた平板な作文の朗読に終始したと印象づけられたのは私一人ではないと思います。(拍手)
 もっとも、近く退陣される佐藤総理に多くのものを期待すること自体無理だともいえるでしょう。私自身、総理に一体何をお尋ねし何をただすべきかについて、一種の戸惑いを感じたことも事実であります。(拍手)しかし、いまの総理は、いろいろの条件に制約されずに、自由率直に政治信念を述べることのできる立場に置かれておるともいえますので、私は、総理に、過去の答弁に見られたような抽象的なことばではなく、今度こそ、ものごとの核心に触れた端的な答弁をされんことを冒頭に強く要望するものであります。(拍手)
 まず、国民の前に明らかにしていただきたいことは、サンクレメンテにおけるニクソン大統領との会談内容についてであります。
 言うまでもなく、終期に近づいた政権担当者は、国の将来を拘束するような重大な対外的約束は避けるべきであるという外交の常識からいっても、国民が総理に望んだことは、一つには、戦後二十数年、冷戦意識のとりことなって進められてきたゆがんだ外交路線に深入りし、みずからの手をみずから縛ることのないようにしてもらいたいということ、一つには、日中国交回復問題にこれ以上障害をつくらないようにしてもらいたいという、この二つであったと思います。だが、残念ながらこの国民の期待は完全に裏切られました。今回の会談で日中問題が重要な議題になったことは疑いないにもかかわらず、共同声明に一言半句も言及されていないということは全く不可解であり、これこそ秘密外交の典型だといわなければなりません。(拍手)総理は、日中国交回復について日本の立場と方針をどのように米国側に主張されたのか、近く訪中するニクソン大統領の対中国政策を会談を通してどのように読み取ってこられたのか、国民の前に明らかにする義務があると思います。(拍手)
 総理は記者会見で、六九年共同声明にある台湾条項は削除されたと考えてもいいと発言しておきながら、その後直ちに、それを政策変更ととることは間違いであると訂正されておられます。いやしくも一国の総理が、国の平和と安全にかかわる重大事項について全く矛盾した発言を相前後して行なうということは、軽率というよりも不見識もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 施政方針演説で総理は、日中間の諸問題は正常化交渉の過程でおのずから解決されると言っておられますが、総理は今後とも蒋介石のいわゆる国府を合法政権と認めて、日華条約は中国との交渉の過程で解決するという、いわゆる台湾問題出口論をとろうとしておられるのか、総理の見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 総理は、繰り返し、日本は中国問題について米国とは必ずしも一致しない、独立国家として日本には日本の行き方があると書ってこられました。この総理のことばはその限りでは正しい発言だと思います。問題はその内容いかんであります。
 言うまでもなく、米国は日本と異なり、中国と戦った国ではありません。日本は繰り返し中国を侵略し、中国国民に人的、物的にはかり知れない損害を与え、しかも中国の一部を長年植民地として支配してきた国であり、その戦争のあと始末はいまだに終わっていないのであります。だとすれば、日中国交回復を阻害する虚構の条約である日華条約をまず廃棄することを確認した上で日中平和条約締結の交渉に臨むことは、当然過ぎるほど当然であり、これこそ総理の言われる日本独自の行き方だと思います。(拍手)
 しかるに、伝えられるところでは、自民党は藤山愛一郎氏を日華条約廃棄を認めたことを理由にして統制処分に付したとのことでありますが、これほど中国政策の後退、時代逆行はありません。(拍手)まさに、小石が浮かび木の葉が沈むとはこのことだといわなければなりません。総理及び外務大臣から、日中国交回復についての原則的立場を明らかにしていただくとともに、総理は自民党総裁として藤山氏の統制処分をどのようにお考えになっておるか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 なお、この機会に、当面日中国交回復への重要なステップとして、輸出入銀行の延べ払い適用、ココムリストの撤廃、円元決済など、多くの通商しの懸案がありますが、その打開について田中通産大臣の御見解を承りたいと存じます。
 総理は五月十五日沖繩復帰が確定したことを大成功だと言っておられますが、会談結果が判明したとき、沖繩現地よりの報道が、県民の間に複雑な不安の表情が流れていたと伝えていたことを御承知でしょうか。この不安とは一体何でしょう。今回の共同声明で、沖繩県民が強く望んでいた米軍基地の縮小は、安保条約の目的に沿って処理されることになっただけでなく、県民がその歴史的体験から強く反対してきた自衛隊が大量に派遣されることになっております。核撤去についても具体的保証はどこにも見出すことはできません。核も基地も毒ガスもない平和な島として祖国復帰したいという県民の願いは、佐藤総理の手でむざんにも打ち砕かれてしまったのであります。(拍手)
 いま沖繩県民は、円の大幅切り上げによって実質所得は切り下げられ、日々高進する物価高のもとで苦しんでおります。県民はみずから好んでドル通貨圏に入ったのではありません。無理やりにドル通貨を押しつけられた県民に、一方的に円切り上げの犠牲をしいることは、差別もはなはだしいものだといわなければなりません。一ドル三百六十円レートによるドルと円の即時交換と給与の保証要求は、沖繩県民の権利の要求だというべきであります。
 施政権返還が五月十五日になったことを自賛される前に、沖繩県民の抱くこの深刻な不安にどのように対処しようとしておられるのかをまず明らかにすべきであり、総理、関係大臣の誠意ある御答弁をお願いしたいと存じます。(拍手)
 特に、今回の共同声明で、ことさらに安保条約の役割りを高く評価して、今後の日本の安全保障のあり方に危険な方向づけをしようとしていることはまことに重大であります。
 中国の国連における正当な地位の回復、ニクソン訪中など、日本を取り巻く国際環境が平和への前進の曙光を見せようとしておる今日、日本は相変わらず日米軍事同盟の拡大強化と自衛隊増強の道を選ぶのか、それとも冷戦の流れを大きく変えて、平和中止の道を選ぶのかという重大な岐路に立たされております。
 政府・自民党は、外からの脅威に対処するためには、安保条約と自衛隊の強化が必要だと主要してこられましたが、脅威とは一体何なのかという防衛問題の出発点について、いまこそ真剣に問い直してみなければなりません。(拍手)
 すなわち、脅威の第一は、侵略の意図があり、そのための軍事能力もある外国がわが国の周辺に存在するということであり、脅威の第二は、予見される将来において、侵略の意図があり、そのための軍事能力を持ち得る国が周辺に存在するということであります。そのような脅威、そのような国とは一体どこの国なのか、総理は具体的に国民に明らかにする義務があると思います。(拍手)
 明治以来、脅威に対処すると称して、国民生活を犠牲にし強行されてきた富国強兵政策は、アジアの人々と日本国民に一体何をもたらしたでしょう。われわれは、いまこそ歴史を正しく学ぶことにより、現在を正しく理解し、将来に誤りなく対処しなければなりません。
 特に、核兵器とその運搬手段の異常な発達は、現代の安全保障のあり方を根本から変化させております。膨大な核兵器を中心に武装された米国、ソ連も絶対に安全であり得ないことは、世界の軍事専門家の一致して認めるところであります。
 他方、スイス、スウェーデン、オーストリアが安全なのは、少しばかりの軍備を持っているためではなく、政府と国民が一体となって推し進めている平和中立の外交政策の成功によるものであることは、何人も否定することができないと思います。(拍手)
 もちろん、安全保障に一〇〇%確実な方法はありません。すべては相対的であります。だとすれば、より危険度の少ない、より安全度の高い道を選ぶべきであって、他国から敵視され、他国に脅威を与え、周辺諸国から孤立するような軍備は持たず、軍事同盟には参加せず、平和中立の外交を推し進めることこそ、われわれの選択すべき最も確実な安全保障の道であります。(拍手)これは平和憲法の精神であり、この原点に立って日本の安全保障の道として私は次のことを主張するものであります。
 第一に、安保条約を一日も早く廃棄して、中立日本をつくることであります。安保条約が日本を守る条約ではなく、アジア諸国に対する危険な侵略的軍事同盟であることは、ベトナム戦争で果たしているその役刷りを見れば明らかだと思います。(拍手)最近の各種世論調査によれば、安保条約を戦争抑止力としてとらえる惰性的な冷戦思想に、反対して、安保条約をなくし平和中立の路線に賛成する人々が国民の多数派になっておりますが、この事実は、中立政策こそ国民のコンセンサスを得る唯一の道であることを示すものというべきであります。(拍手)
 その第二は、日本の周辺における緊張を緩和し、さらに進んで平和的な国際環境をつくり上げるために、一日も早く中華人民共和国との平和条約の締結を実現すること、日ソ共同宣言の定めるとおり、歯舞、色丹両島の引き渡しで日ソ平和条約を締結し、その際、日本固有の領土である千島列島は、安保条約の廃棄と見合って日本に返還されることをお互いに確認するということであります。(拍手)朝鮮民主主義人民共和国、モンゴル人民共和国との友好関係を樹立し、その承認を行なうことであります。これらの平和外交の進展に応じて、中国、ソ連、朝鮮民主主義人民共和国等と不可侵を内容とする相互友好条約を締結すべきであります。
 ことしの国連総会では朝鮮問題が大きな焦点となると見られておりますが、政府は、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国を侵略者呼ばわりしたあの国連決議を取り消し、朝鮮への内政干捗の道具となっておる国連朝鮮統一復興委員会を廃止し、朝鮮民主主義人民共和国の国連招請に積極的に賛成する場を明らかにすべきであります。(拍手)特に、今回の日朝友好促進議員団が調印した共同声明に基づき、南北朝鮮の統一を妨害せず、内政に干渉せず、在日朝鮮人を差別しないとの原則を確認するとともに、貿易合意書の取りきめが完全に実施されるように、政府は必要な裏づけ措置を行なうべきであります。(拍手)
 第三に強調したいことは、福田外務大臣が、世界の平和なくしてわが国の平和はないと言われたように、アジアに平和なくして日本の安全はあり得ません。すなわち、アジアにおける国際緊張の緩和と平和環境の確立こそが、日本の安全を保障する最大の条件だということであります。この立場から、近隣諸国を刺激し、国際緊張を増幅し、軍国主義復活の道につながる自衛隊は、その増強を取りやめて、平和外交の推進によりわが国を取り巻く国際環境を平和なものにして、国民の支持と納得のもとに漸次自衛隊を縮小、廃止していくことを強く主張するものであります。(拍手)
 なお、この機会に、日本独自の核武装の危険性が国際的に取り上げられていることに関連し、総理の見解をただしたいと思います。
 政府の弁解にもかかわらず日本核武装論があとを断たない根本の理由は、いわゆる非核三原則を政府が政策としてとらえておるからであります。非核三原則が政府の政策であるならば、政府のかわることによりその変更もあり得ると考えられるのは当然のことであります。しかし、日本の非核武装は、単なる政府の政策ではなく、戦争放棄と陸海空軍その他一切の戦力を保有しないことを不動の国是としておる平和憲法の大原則に基づくものであります。(拍手)総理は、内外の疑惑を一掃するためにも、非核三原則は憲法の定めるところであることを国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 昭和四十七年度予算案には八千三十億円という、伸び率において、またその絶対額において自衛隊創設以来の最大の防衛費が組まれておりますが、これはまだ決定されてない第四次防計画そのものを予算化し、既成事実化しようとするものであります。国際情勢が緊張緩和の方向へ向かうことが期待されておる今日、国防の基本方針、防衛計画の大綱は国防会議にはからなければならないという法律規定に違反してまで、防衛関係費をなぜ独走させなければならないのでしょう。国民には全く理解のできないところであります。(拍手)あの戦時中の軍部独裁時代の臨時軍事費予算を思い出させるような防衛関係予算を認めることは、防衛政策に大きな禍根を残すだけでなく、議会制民主主義の将来にもかかわる重大問題であります。
 いま国民は、自衛隊機の全日空機との衝突事件をはじめ相次ぐ不祥事件で、自衛隊の存在理由そのものに深い疑問を抱き、きびしい批判を高めております。この際、政府は、第四次防衛計画を含めて、日本の安全保障政策全般にわたって、国会での突き詰めた論議を通して、安全保障についての国民のコンセンサスを得るために全力をあげるべきであります。少なくともそれまでの間、第四次防衛計画は延期することが当然だと思いますが、総理の御見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 この防衛関係費一つ取り上げてみても、昭和四十七年度予算案が、福祉よりも軍事優先に道を開いたものであることは多く説明を要しないと思います。
  さらに問題なのは、軍事を福祉より優先させたというだけではなくして、景気浮揚、不況克服の名において、福祉そのものが犠牲にされておるということであります。
 現在最も国民福祉につながるものは何かといえば、消費者物価の安定であることは、多くの世論調査の示すところであります。にもかかわらず、今次予算案は、物価対策にはおそろしいほど無神経であり、国鉄運賃、国立大学授業料、健康保険料などの大幅価上げはもちろん、十一兆四千七百四億円という超大型予算により、インフレを一そう刺激しようとしております。
 この超大型予算のおもな財源は、一兆九千五百億円にのぼる事実上の赤字公債であります。政府は、円切り上げにより深刻化してきた不況下で、有効需要の不足を埋めるために、この程度の公債発行はインフレ要因にはならないと強弁されておりますが、一体、政府は、デフレギャップを幾らと見て今次予算案を編成したのか、具体的数字をあげて、インフレにはならないという具体的かつ科学的根拠を国民の前に明らかにすべきであります。(拍手)特に最近、資本主義諸国における物価動向の特徴として、不況時においても消費者物価は上昇を続け、いわゆるスタグフレーションの傾向が日常化しておりますが、その主たる要因が、大企業による独占価格、管理価格の形成にあることは疑いの余地のないところであります。これを野放しにしておきながら、大量の国債発行で景気浮揚をはかるということは、大企業にはばく大な利益というパンを、国民には高物価という石を与える以外の何ものでもございません。(拍手)もし、しからずと言われるならば、水田大蔵大臣、その理由について、国民に説得力ある説明をお願いしたいと存じます。
 私は、この機会に、真の日本経済の安定的成長と国民福祉の向上のための政策はどうあるべきかについて、われわれの考え方を訴え、国民の皆さん方の御批判をいただきたいと存じます。
 政府も、今回の予算案を通して、不況の克服と国民福祉の向上をはかると言っておられますが、正しい対策を立てるためには、まず、なぜこのように不況が深刻化したのか、なぜ国民福祉が今日まで低水準に置かれてきたのかという、原因そのものを正しくとらえなければなりません。それは、一言にして言えば、政府・自民党が戦後一貫してとってきた、アメリカのドルと核のかさのもとでの年産第一主義、防衛力増強の政策、いわゆる安保繁栄論が大きな破綻を見せ、日本経済の矛盾が表面化し、拡大し、深刻化しつつあるということであります。だとすれば、今後の日本経済は、アメリカ依存の政策から脱却し、自主的な立場に立った外交、防衛、経済政策を推進すること、特に、生産第一主義の高度経済成長から、国民福祉第一主義の安定経済成長に百八十度政策転換し、経済体質の根本的な改革を行なわなければなりません。われわれ日本社会党は、国民福祉を優先するという正義と公平の立場に立ち、正しい意味での経済の合理的発展を目ざして、次の政策の実現をはかるものであります。
  〔発言する者あり〕
#9
○議長(船田中君) 静粛に願います。
#10
○成田知巳君(続) その第一は、福祉経済を実現するための財源措置であります。
 国民経済を麻薬のようにむしばむ赤字公債発行政策に寄りかかるのではなく、インフレの進行によってばく大な利益を得、担税能力を持っておる大法人を中心に、法人所有の土地価格を固定資産税評価額の水準にまで評価がえして課税することであります。これにより、少なくとも三兆円の税収を得ることは可能であります。大企業を優遇する租税特別措置を廃止し、社会的浪費の源泉である交際費、広告費に対し税を増徴すること、大企業に偏した円切り上げによる為替差損の補償措置を取りやめることはもちろんのこと、いながらにして数千億円の為替差益を手にした企業に思い切った為替差益税を課するということ、反共かいらい政権に対する巨額の海外援助を取りやめ、防衛費を削減し、公安関係費その他、反動経費の支出を取りやめることであります。
 以上の財源により、福祉政策の拡充を中心に、国内購買力を拡大して、不況の打開と経済の安定成長をはかることを主張いたします。
 大幅な円切り上げが、アメリカの理不尽な外圧によるものであることはもちろんですが、同時に、低賃金と低福祉、社会資本、社会保障の立ちおくれと公害の野放しなどを当然のこととしてきた日本資本主義の特典体質の必然的な結果でもあります。この経済体質を質的に転換しない限り、円平価の切り上げが二年、三年ごとに繰り返され、日本経済が混乱におちいることは疑う余地もありません。現に総理は、円の再切り上げを示唆され、田中通産大臣も、四十七年度末には外貨は二百億ドルに達すると、公然と言っておられるではありませんか。
 われわれは、貿易バランスをはかり、経済を安定し、国民福祉を向上させるために、労働者賃金の大幅引き上げ、週休二日・四十時間労働制の実施と、国と企業による雇用の安定保障制度をつくることを主張いたします。特に、今回の予算案に見込まれておる租税の自然増収五千五百二十二億円のうち、約四千億円が勤労所得税収入であるにもかかわらず、勤労者の所得税減税を見送っておることは、公平の見地からも絶対に許されることではありません。(拍手)少なくとも四人世帯百三十万円まで非課税とすべきであります。
 政府は、今次予算を福祉優先の予算だと自賛していますが、たとえば老人医療一つ取り上げてみましても、すでに革新地方自治体の中には、所得制限なしに老人医療無料化を実施しているところがあります。また東京都も、ことしの予算で扶養義務者の所得制限を撤廃することを美濃部都知事は決定しております。にもかかわらず、政府案には多くの所得制限がついているではありませんか。地方自治体よりおくれたこの程度の施策を手柄話に吹聴する政府の考え方の中には、原前労働大臣の老人問題に関する放言で露呈された、政府・自民党の社会保障に対する根本的な偏見、いや、無知があるといわなければなりません。(拍手)
 言うまでもなく、社会保障の拡充は、国の恩恵ではなく国民の権利の要求として実施されるべきであり、したがって、計画的に、長期的に行なわねばなりません。もし政府がほんとうに社会保障の前進を考えるならば、第四次防衛計画に血道を上げる前に、まず体系化され、斉合性を持った長期社会保障計画を樹立すべきではないでしょうか。(拍手)
 われわれは、三カ年計画で、先進国並みに国民所得の一五%を社会保障給付に充てることとして、賦課方式の採用によって老齢福祉年金が月一万円、拠出国民年金が最低月二万円、厚生年金は最低月三万円に引き上げ、六十五歳以上の高齢者と乳幼児の医療完全無料化と、主婦に対する無料健康診断制度を実施し、生活保護と児童手当の充実をはかることを強く主張するものであります。(拍手)
 今回の政府案の大きな欠陥の一つは、福祉予算を口にしながら、そのためには何をおいても措置しなければならない物価対策が、決定的に欠けておるということであります。一昨日の総理大臣、大蔵大臣、経済企画庁長官の演説には、奇妙なことに、四十七年度の消費者物価の上昇率について数字があげられておりませんが、一体公共料金の一斉値上げのもとで、幾らの消費者物価上昇を見込んでこの予算案を編成されたのか、まずこれを明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 政府・自民党は、来るか来ないかわからない外敵、いや、みずからの手ででっち上げたまぼろしの外敵に備えるためと称して、ばく大な国民の血税を自衛隊のために乱費しようとしておりますが、われわれが備えなければならない敵の第一は、台所を通して国民生活を破壊しておる物価高という敵であります。また、この瞬間にも国民の健康をむしばみ、生命を脅かし、日本列島をごみ列島にしようとしておる公害という敵であります。物価高という敵に備えるために、消費者米価を引き上げる物価統制令の撤廃、国立大学、公立高等学校授業料、医療費、健康保険料、タクシー、国鉄、地下鉄料金、電報電話料など、政府主導の公共料金一斉値上げに、私たちは強く反対するものであります。(拍手)
 そして大企業製品の独占価格、管理価格を規制するため、公取委員会の権限を強化して、原価調査の機能を強め、不当な価格を下げさせる権限を与えるべきであります。
 物価騰貴の元凶である土地投機をきびしく規制し、一定規模以上の土地取得を許可制にし、公共用地取得については、地方自治体に先買い権を認めることを主張いたします。
 国民の消費生活を担当する中小企業、農業に、毎年それぞれ国民総生産の一%に当たる資金を今後五カ年間投入し、真の構造改善を推進して、農業、中小企業の生産性を飛躍的に高めるべきであります。
 円切り上げによる輸入価格の低下を、必ず消費者に還元するための強力な行政措置を行なうべきであります。
 公害という敵に備えるために、ごみ処理問題に見られるように、地方自治体にのみその対策をゆだねるのではなく、政府みずからの責任として積極的に財政措置を講ずるとともに、環境保全基本法と無過失賠償責任制の立法化を行ない、公害発生源企業の公害防止義務を一段と法的に強化すべきであります。(拍手)
 今日、水俣病患者の補償問題が大きな社会問題となっておりますが、あの水俣の海を死の海と化し、多くの人々の生命と健康を奪った張本人が、被害者との話し合いを拒否するばかりか、暴力団さながらに被害者に暴行を加えているこの事実を見るにつけても、現行の健康被害者救済制度や中央公害審査委員会では、被害者救済に役立たないことは明らかであります。この際、準司法的権限を持った公害紛争処理機関を設置して、患者の提訴とその救済の場を制度的に保障することを強く主張するものであります。(拍手)
 以上の政策は、不況の克服と福祉の向上とを両立させ、日本経済の安定成長を実現する唯一の道であり、保守党政府のもとでも、国民のための政治を真剣に考えるならば、当然実施しなければならない政策であり、また、実施可能の政策でもあります。
 私は、以上の諸政策こそ、日本の政治の流れを変えるための必要最小限度の政策であることを確信し、その実現を強く主張するものでありますが、これに対する総理並びに関係大臣の率直な見解を承りたいと存じます。(拍手)
 最後に、総理に二つのことをお尋ねしたいと思います。
 その一つは、国民から有言不実行内閣という代名詞まで与えられた佐藤内閣の名誉回復のためにも、ぜひ実行に移していただきたい問題であります。
 総理は、今日まで何回となく政治資金規正法の改正を国民に約束されましたが、結果は、国民をだましだまして今日に至っております。総理自身、長年の政権担当を通じて、日本政治の浄化と民主主義政治を確立するためには、何にも増して政治資金規正法を一日も早く抜本改正しなければならないことをよく御承知のことと思います。あなたの政治化活の一ページに、せめて佐藤内閣の手で政治資金規正法が改正されたと書きしるされることを心から願うものの一人として、総理が勇断をもってこの国会に政治資金規正法改正案を提出し、その成立をはかることを強く要請するものであります。(拍手)
 お尋ねしたい最後の一つは、総理の政局に対する現在の御心境であります。
 総理も御承知のように、いま日本の内外情勢は大きく流動し、日本の政治は一刻の停滞も許されません。まさに総理の言われるように、政治に小休止はあり得ません。しかるに、終期に近づいた政権のもとで、当然のこととはいえ、政局はいま一種の混迷状態におちいっております。加うるに、原前労働大臣、荒舩前副議長の放言問題が相次いで起こり、国民の政治不信はいよいよ高まっております。かつて西村前防衛庁長官放言の際、総理は、私自身の政治責任については私自身十分考えています、私自身の責任は私が解決する決意であると言っておられるではありませんか。この政治の停滞と混迷を打開し、総理みずからの政治責任を明らかにするため、いまこそ総理は、退陣の決意を本議場を通して国民の前に明らかにし、解散、総選挙による政局一新をはかるべきであります。(拍手)それこそが、佐藤総理の国民に対する最後の御奉公だと思います。
 総理が率直に現在の心境を述べられることを心から願って、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 成田委員長にお答えをいたします。
 サンクレメンテにおける私とニクソン米人統領との会談につきましては、日米共同発表並びに記者会見におきましてすでに明らかにしたとおりであります。当然、中国問題につきましても率直な意見の交換を行ないました。米国が従来の態度を捨てて、ニクソン大統領みずからが北京を訪問することをきめたいきさつにつきましても、面接その間の事情を聞きました。現在わが国も米国もともに中華民国政府と外交関係を持っているわけでありますが、アジアの緊張緩和をはかるためには、中華人民共和国政府との関係を改善していくべきであるという点について意見の一致を見ました。
 しかし、その方法論については、お互いの立場が違いますから、必ずしも一致するというわけにはまいりません。日本政府の考え方は過日の施政方針演説のとおりでありますが、米国の考え方は、近く行なわれるニクソン大統領の中国訪問の結果によりまして、国際社会に明らかにされることと思います。このことを共同発表に盛り込まなかったからといって、秘密外交だと言われるのは、いささか的はずれではないかと思います。
 いわゆる台湾問題につきましても、政府としては、中国をめぐる国際情勢の推移を見きわめつつ、わが国の国益を十分勘案して、適切に対処してまいる決意であります。
 次に、日中復交のため、日華平和条約を破棄せよとの御意見でありますが、日中関係正常化のためには、日華平和条約のみならず、多くの問題を解決しなければならないことは、成田君も御承知のとおりであります。政府といたしましては、国交正常化交渉の過程で、日中間の諸問題の円満な解決をはかっていきたいと考えております。また、相互信頼回復のため、できる限りの努力をいたす所存であります。
 次に、藤山愛一郎君の問題に触れられましたが、この問題は純然たるわが党内の問題でありますから、わが党にまかしていただきたいと思います。
 次に、沖繩につきましては、今後とも沖繩の緑の島としての環境を保持しつつ、その開発と発展をはかり、県民の福祉の向上に最大の努力を傾ける所存であります。
 御質問の通貨の交換は、復帰の際の市場実勢レートによるのが最も混乱を少なくする方法であり、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律第四十九条も、この考え方に立って規定されたものであります。政府としてこれを変える考えはございません。
 なお、永年にわたる県民の労苦に報い、かつ、実質的に一ドル三百六十円の交換を行なったにひとしい措置として、先般、県民各人の通貨及び通貨性資産の価値を保証するために、復帰後給付金を支給することを決定したのは、御承知のとおりであります。このために必要な財源は明年度予算に計上しております。
 次に、給与の問題は、一般には労使間において決定されるべき問題でありますが、公務員については、復帰に際し本土と同じ水準に切りかえ、その際給与の下がる者がある場合は、これを保障することとしております。
 私は、政権担当以来、わが国の安全をいかに確保するかという問題については最大の努力を払ってまいりました。国民の国を守る気概のもと、国力、国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところを日米安保条約によって補うというのが、私の不動の信念であります。(拍手)この政策こそ、国民大多数の支持と理解を得ていると確信いたします。(拍手)しかるに、成田君はいまだに非武装中立の看板をおろしておられないのは、まことに残念であります。
 今日、国際間に緊張緩和のきざしが見え始めていることは、好ましいことでありますが、長期的に見て、これで世界の平和が定着すると断言することはできません。もとより、現在わが国を侵略しようとする国があるとは考えられませんが、国際間に恒久平和を確立するためにも、独立国として防衛力を整備することが必要であると考えるものであります。(拍手)わが国の防衛力は、憲法の規定に従い、国の独立と平和を守るための自衛力の限界にとどまるもので、決して他国に脅威を与えるものではないのであります。(拍手)
 次に、平和的国際環境をつくるための御提案がありました。その一つ、中国との国交正常化については、政府も同感であります。
 しかしながら、歯舞、色丹の両島の引き渡しで日ソ平和条約を締結するという御意見には、賛同するわけにはまいりません。(拍手)政府は、あくまでもわが国固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉の返還によってソ連との平和条約を締結する方針であります。(拍手)また、日ソ平和条約の見返りに日米安保条約を廃棄する考えはありません。(拍手)
 さらに、中国、ソ連、北朝鮮との不可侵条約を結べとの御意見を述べられました。この点は御意見として承っておきます。国際情勢の現実を見きわめつつ、国際間の緊張緩和と平和維持にできる限り努力いたす所存であります。
 なお、政府は現在韓国と正式な外交関係を樹立しており、北朝鮮を承認することは、ただいま考えておりません。
 次に、自衛隊を縮小、廃止せよとの御意見には、遺憾ながら賛同するわけにはまいりません。(拍手)先ほども申し述べましたとおり、国の安全を確保し、みずからの手で国民の生命、財産を守ることは、独立国家として、国民に対すると同時に、国際社会に対する最も基本的な責務でもあります。(拍手)社会の進展、科学技術の進歩に応じて、国の防衛力も逐次改善されるべきは当然であると考えます。
 私は、情報化時代の今日、わが国の社会環境から見て、軍国主義が復活する余地は全くないものと考えております。(拍手)この点については、さらにきびしい自己規制を行なって、国際間に無用の誤解を招かないよう、あらゆる努力を積み重ねなければならないと考えております。
 今般の日朝議連代表団の北朝鮮との共同声明及び貿易合意書については、政府として公式見解を示し得る立場にはありません。国際化時代の今日、民間貿易が増進されるのは当然の推移でもあろうかと思いますが、わが国は韓国と国交を樹立しており、いまのところ北朝鮮との政府間接触は考えておりません。はっきり申し上げます。(拍手)
 わが国の核武装の問題が国際間で取り上げられているとのお話でありますが、私が最近会いました外国の責任ある人、たとえばニクソン米大統領、グロムイコ・ソ連外相等は、いずれも、日本が非核三原則を堅持して、日本国民は将来ともに核武装をする意思のないことを明確に知っております。(拍手)現在の国連安保常任理事国のいずれもが核保有国であるところから、これらとの対比で、外から日本を見る人が日本の核武装の可能性の有無を論ずることはしかたがありませんが、非核三原則は、すでに政府の政策にとどまらず、国会の決議によって確認されたわが国の基本政策であることは、国民自身が最もよく知っております。(拍手)政府がこれを順守していくことは、いまさらあらためて言うまでもないところであります。また、わが国として、国際間の核軍縮についても、粘り強くわが国の主張を貫いてまいる所存であります。
 次に、四次防の取り扱いについては、現在政府部内におきまして慎重に検討を進めているところであります。四十七年度防衛予算は四次防決定前に編成されておりますので、三次防事業の継続的なもの、現有勢力の当面の維持に必要な措置を中心に経費が計上されており、原則として四次防の新規構想に基づく増強は差し控えております。
 なお、複雑な国際情勢のもとで、わが国の平和と独立を守るためには、防衛の整備に空白を生じないよう措置していくことが必要であり、政府として四次防を延期することは考えておりません。
 次に、経済問題についての御質問にお答えします。
 わが国経済は、これまで民間設備投資と輸出の増加を主軸とし目ざましい高度成長を遂げてまいりました。この反面、生活関連の社会資本の不足、過密過疎、公害による環境の破壊等、幾多の国民化活を脅かす諸問題が発生するに至ったのは事実であります。また、国民の社会的意識も、効率化の追求から生活重視へと方向を転換しつつあるように見受けられます。こうした状況にかんがみ、政府としては、施政方針演説でも述べたように、今後は、国民生活の質的充実を最大の課題として、豊かな福祉社会の建設に努力することが肝要であり、また、従来の高度成長を通じてつちかわれた日本経済の力は、こうした高次福祉社会の実現を十分可能にするものと考えております。四十七年度に策定する予定の新しい長期経済計画においては、こうした観点から長期的政策の方向を明らかにし、その実現をはかっていく所存であります。
 四十七年度防衛予算の伸びは、沖繩復帰という特殊事情があるため、一九・七%となっておりますが、これは一般会計の伸びよりも小さく、物価対策、公害対策予算の充実と比べていただければ、国の各般の施策と調和のとれたものであることは十分おわかりいただけると思います。
 なお、来年度予算の編成に際しては、各種社会資本の整備、社会保障施策の充実、物価対策、公害対策など、国民生活の充実向上のための諸施策に対して特に重点的な資金の配分を行っており、これを機会に高度福祉国家建設への軌道を設定したいと考えております。
 次に、物価の問題でありますが、政府は物価の安定を最重点課題の一つと考えております。御質問の来年度における消費者物価上昇率については、政府は五・三%と見込んでおりますが、最近の消費者物価の動向を見ると、その騰勢は鈍化を見せてきており、今後とも、円切り上げによる輸入価格低下の消費者への還元、生鮮食料品の価格安定、競争条件の整備等、各般の物価対策を強力に推進することにより、この見通しを達成することは十分可能であると考えております。
  〔発言する者多し〕
#12
○議長(船田中君) 齢粛に願います。
#13
○内閣総理大臣(佐藤榮作君)(続) 次に、成田君からわが国の政治の流れを変えるべきであるとの御意見がありました。成田君は御自身の構想を中心に意欲をお持ちのことと思いますが、私も、わが国の置かれた国際環境、経済的条件を勘案しながら、政策変更にあたっては、大胆にこれを打ち出していく方針であります。特にわが国の現状から見て、福祉優先政策を思い切って打ち出していく必要があると考えており、その実現には国民各界各層の御協力を得たいと願っております。この点では成田君とも御協力ができるかと、かように存じます。
 次に、政治資金規正法の改正につきましては、政治や選挙を浄化したいと願う国民の期待にこたえる上からも、これを実現したいという考えに変わりありません。ただ、過去三回改正案を国会に提案し、いずれも廃案になった経緯もあり、今度出すとすれば必ず成立するというようなものでなければならないので、これまでの国会における論議等も十分考慮して、慎重に検討を続けているところであります。幸い、現在、政党本位の、金のかからない選挙を実現するための方策について、選挙制度審議会に審議をお願いしているところでありますので、その審議の推移も十分注視しながら、各党間の合意が得られるような、実現可能な成案を得たいと考えており、その見通しの立ったところで提案をいたす考えでございます。
 最後に、現在の私の心境について意見を求められました。御指摘のように、閣僚の失言問題で国民の皆さまに御迷惑をおかけしたことは、まことに遺憾であり、私も責任を痛感しております。私自身はもとより、党、内閣を引き締め、国民の負託にこたえる決意であります。
 なお、私の進退問題にも触れられましたが、御意見として承っておきます。
 本国会は、国民生活に最も密接な関係のある四十七年度予算の審議をお願いしているところであり、国会の解散は考えておりません。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#14
○国務大臣(福田赳夫君) 成田さんにお答え申し上げます。
 成田さんは、日中打開の前提といたしまして、日華平和条約をまず廃棄すべきじゃないか、こういうお話でございますが、伝えられるところの中国側の御意見も全くそのとおりであるということをよく私は承知いたしております。私は、しかしながら、この御意見には賛成できません。わが国にはわが国の立場がある。わが国は、わが国の国益を踏まえて交渉しなければならぬわけであります。(拍手)私は、日中国交の回復は歴史の流れである、ここまで申し上げてあるわけであります。しかしながら、わが国が中国と交渉するいろいろな案件があるわけでありまして、これらは政府間接触を通じて話し合わなければならぬ。政府間接触を私どもは熱心に呼びかけておるわけであります。私どもは、主権の平等、内政の不干渉、紛争の平和的解決、武力の不行使、平和、進歩、繁栄のための相互協力、こういう国際憲章の諸原則にのっとってこそ日中間の話し合いを進めるべきである、かように考えておるのでありまして、私はいま成田さんのお話を伺いまして、私どもが熱心に日中間のことを考えておる、このことを中国側が深く理解していただきたいんだという感を深うしたわけであります。同時に、成田委員長におきましては、さような考えを持っておる政府、この佐藤内閣に御協力を願いたい、かように存ずる次第でございます。
 なお、日朝問題、また歯舞、色丹、国後、択捉の北方領土問題、これは詳しく総理からお答えがありましたので、省略をいたします。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#15
○国務大臣(田中角榮君) 私に対する御質問に対してお答えをいたします。
 第一は、中国向け輸出入銀行延べ払い適用等についてでございますが、前向きかつ積極的に対処することとなし、ケース・バイ・ケースで処理をいたすつもりでございます。
 第二京は、ココムリストの問題についてでございます。いかなる国とも貿易を拡大していくことを貿易政策の基本といたしております。ココムにつきましても、国際情勢の変化を見きわめながら、ココム加盟各国と協議をし、規制の大幅緩和についてさらに努力を継続していく考えでございます。
 第三点は、円元決済等についてでございますが、日中貿易の円滑な発展をはかってまいります見地から、関係者の間で納得する方式がまとまるならば、これを尊重の方向で検討を進めてまいるつもりでございます。
 第四点は、わが国経済運営の基本的態度についてでございますが、詳しくは総理大臣からお答えがございましたので、一言申し上げます。
 わが国は、GNPにおきまして西欧水準に近づき、戦後一貫して進めてまいりました目的はほぼ達成に近づきつつあると思うのでございます。その意味で、これからは社会資本の不足を補い、生活環境を整備、浄化し、かつ生活の安定性や快適性を確保する等、国民の高度化、多様化しておる欲求を満たすため、そのような方向で政策を推進すべきであると考えておるのであります。その意味で経済の安定成長をはかり、その成果を国民福祉、国際協力等に積極的に活用していくべきであると思います。
 最後にもう一点、四十七年度末外貨準備高二百億円という件について申し上げますが、これは、わが国経済が高度成長をしておることを謳歌した発言ではありません。今年度景気が浮揚せず、輸出が促進をされ、輸入が増大しないまま推移をしたならば、現在わが国が保有いたしております外貨百五十億ドルは二百億ドルに積み増しされるおそれがあります。そのような潜在経済力を意識しながら景気浮揚政策を推進することによって、対米輸出入がなるべく均衡するようになることが望ましい趣旨を強調したものでございます。念のため御答弁を申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#16
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
 まず第一に、今次の予算案はインフレ刺激予算であって、大量の国債を発行して景気の浮揚策をはかることは、大企業を利するだけで、国民に高物価を与えることにはならないかという御意見でございましたが、国民経済の停滞を克服することは当面の急務でありますために、昨年度に引き続きまして、昭和四十七年度は予算及び財政投融資を通じて積極的な規模の拡大をはかったのでありますが、公債政策の活用につきましても、建設公債の原則または市中消化の原則、この二つは堅持しておることでもございますし、また、需要供給のギャップが相当にある実態、経済の現状でもございますので、この程度の予算が直ちにインフレにつながるものとは現在考えておりません。
 物価の問題でございますが、これは、ただいま総理からお答えがありましたとおりでございまして、御承知のように、卸売り物価は軟調ぎみでございまして、現在落ちついておりますので、問題はございません。ことに、生産性の非常に向上した工業製品の部数はあまり心配はございませんが、問題は、消費者物価についてであろうと思います。
 消費者物価につきましては、これは原因が、やはり生産性の、低生産性部門に起こっている問題及び流通過程の問題、いろいろなところ、構造的なところに原因がございますので、したがって、金を多く出したら物価が上がるとか、予算が多ければ物価がどうなるという性質のものではございませんので、第一義的には、やはり低生産部門の生産性向上の予算を盛ること、それから流通過程の改善、それから、たとえば生鮮食料品のような生活必需品の安定供給についてのいろんな予算措置、そういう予算の措置は今回相当思い切って強化いたしました。
 一方、円切り上げ及び関税引き下げということによって、輸入物資が非常に下がるということは、物価の騰勢に対する相当の抑制力が期待されることでもございますし、また一方、大型予算によって景気を回復するということは、企業の設備の稼働率を高めることであり、そうすれば、コストが下がることによるまた物価高騰の抑制力というものも期待されることでございますので、したがって、私は、今回のこの大型予算が、一部を利して、そうして国民全体のためにはならぬ、物価抑制の予算になっていない、という批評は当たらないんじゃないかと考えます。(発言する者あり)
 その次は、福祉経済を実現するための財源措置について幾つかの御意見がございましたが、この問題についてお答え申し上げます。
 まず、大法人のいま持っておる土地の価格を固定資産評価額の水準に評価がえをして、そして課税したらという御意見でございましたが、もし、法人の持っておる土地の帳簿価格を引き上げて、その評価益に課税するということでございますというと、売買等によって現実に利益の出ないものにも課税していいということでございますので、そういたしますと、これは法人税の原則に対して、また同時に、税制における所得理論の根本に触れる大きい問題でございますので、この点につきましては、いま私がここでにわかに賛成とか反対とかという意見を述べられない問題でございます。
 その次は、大企業優先の租税の特別措置をやめて、交際費、広告税の増徴をしたらという御意見でございました。租税特別措置のおちいりがちなこの既得権化傾向とか、あるいは慢性化傾向ということは、これは絶えず見直さなければならぬ問題でございます。来年度の税制改正におきましては、まず貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を下げるということと、輸出振興税制の改廃をする、二つの特別措置の問題を整理いたしまして、これによりまして、平年度大体一千億円の整理をしたことになろうと思います。これによって中小企業の税対策を、この資金を半分ぐらいをこれに充てるというようなことで、他の部門のまた特別措置をはかっておる次第でございます。
 交際費の課税につきましては、これは御承知のとおり、本年度の税制改正で否認割合を六〇%から七〇%に引き上げました。引き上げたばかりでございますので、この結果どういう交際費の支出が行なわれているか、この結果あるいは動向というようなものを見てから次の措置を検討したいと考えます。
 それから広告費につきましては、これは市場の開拓とかいうようなことで事業遂行上必要であるという面は、これは交際費と同じことでございますが、しかし、交際費と違うところは、広告宣伝費のほうは、社用消費的な要素を持っていないということでございます。したがって、この広告宣伝費に大きい課税をするかどうかということには問題がございまして、これがいいか、悪いかという社会的な批判については、誇大広告であるか、虚偽の広告であるか、過当な広告であるかという点が問題になろうと思いますが、それを判定する権限を税務署に与えることが、はたして妥当であるかどうかというような問題で、この問題は、税制上の問題で解決すべきかどうかといういろいろな問題が、各方面から、専門家の中から提起されておりますので、この点については、もう少し慎重に検討したいと思います。(拍手)
 その次の問題は、為替差損についての補償をやめて、為替差益について税をかけたらという御意見でございました。今回私どもが考えておりますこの措置は、通貨調整に伴って、延べ払い輸出等の長期外貨債権について、巨額の為替損失をこうむる企業だけに対して、会社計算の上で一時に為替損失を計上しなくても済むようにするために、法人税の課税を一時繰り延べという措置をとろうとするものでございます。税額の控除をしてくれという要望が非常に諸方面から強うございましたが、税額の控除をすることは、これは為替差損の補償をすることになりますので、この方法は私ども避けることにして、税の繰り延べで対処するということにしましたので、今回の措置は決して為替差損の補償ではございませんので、この点は御了承を願いたいと存じます。(拍手)
 それでは差益のほうに課税することはどうかという問題でございますが、為替差益にはいろいろの形がございまして、外貨建ての債券の評価益という問題もございますし、輸入価額の低下による利益という問題もございます。しかも、輸入価額の低下による利益のように、国内における流通過程において還元されて、最終的な帰属が特定できないというようなものもございます。したがいまして、為替差益について特別課税をするということになりますと、どうしても業種をしぼったり、あるいは輸入額を基準として税金をかけるというようなことをしなければならなくなりますが、これは、実際に企業の実情と全く違ったものになるというようなものがありますので、なかなか差益に税をかけるということはむずかしいので、結局その企業の、全体の利益が出たものについて、税をかけるというよりほかしかたがないというのが、いままで検討したところでございますが、さらに検討を進めたいと思っております。
 その次には、一連の社会保障の充実に関する御意見でございました。特に、三カ年間で国民所得に対し一五%の社会保障給付をするように、計画的な措置を講じたらどうかという御意見でございます。これは、私ども異論はございませんが、いまのところ、三カ年で一五%にすることは、非常にむずかしい問題があると思っております。と申しますのは、御承知のように、日本は老齢人口の比率が非常に少ないということ、年金制度の発足がおくれて目下未成熟であって、掛け金をかける人は多くても、まだ受給者が非常に少ないという現状、それから、国が社会保障制度として分担すべきものを、すでにいままで民間が相当分担していろいろな社会保障制度をやっておった、こういうことの立ちおくれが災いしておりましたために、私どもは制度の整備を急ぐことを先にしまして、ようやく最後に児童手当という制度ができて、西欧並みの社会保障制度がここで全部制度としては整備しましたので、あとは内容を整える問題だと思いますが、現在、GNPに対して、大体ことしは六・五%程度の比率になっておると思いますが、これを一五%に引き上げるまでには、まだまだ、社会保障がおくれた制度でございますので、相当時間がかかる、三年ではむずかしいと思いますが、計画的にこれを充実させていくという御意見には全面的に賛成でございます。(拍手)
  〔国務大臣大石武一君登壇〕
#17
○国務大臣(大石武一君) 公害の防止は、国の最も大事な行政の一つでございますので、もちろん全面的にその責任を感じまして努力してまいります。
 明年度の予算につきましても、まだ十分とは申せませんが、本年度の五〇%増しをいま考えておるわけでございます。
 なお、この公害のいわゆる行政の分担がございまして、地方自治体においてもその一部を負担しておりますので、われわれは地方自治体とも十分に緊密な連絡調整を行ないまして、実効をあげるように、また公害の本質から、国民の一人一人にもその認識と協力とをお願いしなければなりませんので、そのような努力を続けてまいりたいと考えております。(拍手)
 次に、環境保全基本法を制定せいというお話でございますが、これはごもっともでございます。私どももそのように考えておりますが、もう少し先にいたしたいと思います。と申しますのは、まず公害の実態認識を国民に与えることが一番大事な問題でございますので、それにまっしぐらに進んでまいりたいと思います。もう一つは、あまり自然の破壊がひど過ぎますので、何とかして少しでも早くこの自然環境の保全に努力いたしたいと思います。そういう意味では、基本法では少しまだ手ぬるいと思いますので、まず直接に実効のある自然保護法から取っ組みまして、近い将来に自然保護基本法にも手を伸ばしまして、御意見のような環境保全基本法をまとめたいと考えておる次第でございます。
 もう一つは、無過失賠償責任制度の制定でございますが、これは総理大臣もたびたび言明せられておりますように、本国会に提案をいたす予定でございます。目下作業中でございますので、具体的な内容は申し上げられませんが、何としても公害の防止に、そして被害患者に十分に役に立つようなものにいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#18
○国務大臣(山中貞則君) ただいまの公害紛争処理法に基づく中央公害審査委員会の権限は、調停、仲裁等を行なうわけでありますが、いずれも当事者間の合意を前提といたしておりますために問題があり、あるいは限界があるということは、私も承知いたしております。したがって、今国会に中央公害審査委員会を、独立、そしてまた権限のあるものとして、国家行政組織法の第三条機関に移行せしめるとともに、責任裁定、原因裁定等を内容とする裁定の権限を与えるための法案を提出するつもりでございます。(拍手)
#19
○議長(船田中君) 中曽根康弘君。
  〔中曽根康弘君登壇〕
#20
○中曽根康弘君 私は、自由民主党を代表して、佐藤内閣総理大臣に質問をいたします。(拍手)
 私は、今日は、日本の当面する内外の根本的問題について、政府の見解をただすこととし、残余の事項は、他日同僚の質問にお譲りいたしたいと思います。
 まず、質問に入る前に、沖繩が来たる五月十五日わが国に返還されることになりましたことに対し、沖繩全県民の諸君に心からお祝いを申し上げ、また、全国民諸君とともにこの喜びを分かち合いたいと思います。(拍手)そして、この歴史的壮挙を断行されたアメリカ合衆国国民及びニクソン大統領に対し、はるかに謝意を表しますとともに、前後五回にわたって訪米し、その政治生命をかけて今日の成果をもたらされた佐藤総理の御努力に対し、心から敬意を表する次第であります。(拍手)
 顧みれば、沖繩返還は、複雑かつ困難な、四分の一世紀にわたる国際問題でありました。祖国日本への復帰は、昭和二十七年サンフランシスコ平和条約成立以来、沖繩全県民の血の叫びであり、また、本土全国民の悔悟と慟哭の込められた民族的悲願でありました。(拍手)
 われわれは、数年前、全国高校野球大会に甲子園に出場した沖繩県の選手たちが、その帰りに甲子園の土を祖国の土として持ち帰ったことを聞き、粛然として胸に迫るものを覚えたのであります。(拍手)
 昨年六月十七日、愛知外務大臣とロジャーズ国務長官の返還協定署名の瞬間、テレビに映った屋良主席の目には大粒の涙が光っておりました。私は、その涙に、日本国民たる沖繩県民諸君すべての姿を見る気持ちがしたのであります。それは、県民諸君の日本人としての隠せぬ喜びと、過ぎ去りし苦難の日々への感慨の、耐えきれぬ涙ではなかったでしょうか。(拍手)同胞愛や民族のきずなは、いかなる力をもってしても断ち切ることはできなかったのであります。
 復帰に際し、沖繩県民諸君には、なお心満たない思いや将来への不安が宿っているであろうことは、私もお察しいたします。この現実の上に立って、いままで復帰のあり方に賛成した人々も反対された方々も、過去の一切の行きがかりを捨て、われわれ全日本国民と肩を組んで、平和な、豊かな沖繩建設のために前進を開始しようではありませんか。(拍手)わが自由民三党は、このため一切の公約を厳粛かつ誠実に守らんとするものであります。
 その意味で、政府は、新生沖繩県建設のため、特に円・ドルの交換実施、核兵器撤去以下の諸政策をいかに進められるか、お伺いいたしたいと思います。
 なお、沖繩復帰に関連して、十九年前に本土に帰った奄美群島の開発振興、島民諸君の民生向上等についても、この際もう一度思いをいたし、欠くるところなきや検討すべきであると思いますが、御所信を承りたいと思います。
 さらに、この際、懸案の北方領土問題解決に関し、総理はいかなる決意をもってこれに当たられるか。総理は、先般グロムイコ・ソ連外相と会談され、両国首脳の相互訪問を約束されましたが、北方水域の安全操業確保も含めて、今後対ソ話し合いをいかに具体的に進められるか、お伺いいたします。(拍手)
 次に、国際情勢及び外交政策の問題についてお伺いいたします。
 まず、対米政策からお伺いいたします。
 総理は本年一月、サンクレメンテにおいてニクソン大統領と会談されました。この会談は、日米関係再調整の会談といわれておりますが、第一に、安保条約の従来の性格及び運用に関して、将来何らかの変化が起こり得るものでありましょうか。第二に、経済調整について、両国の経済的摩擦は、将来、何らかの方法によって円滑に解決する方途を見出されたのでありましょうか。第三に、中国問題処理に関する認識に一部相違があったやに伝えられていますが、もしあったとすれば、いかなる点にあったか、お尋ねいたします。
 昨年七月、日本の頭越しで行なわれたニクソン大統領訪中の報道に関し、ここに想起するのは、一九六二年四月、ベルリン問題に関し、西ドイツの頭越しで行なわれた米ソ接近のドイツ人に対するショックとその反応の歴史的経過であります。当時アデナウアー首相は、非常な不満を米国に表明いたしました。西ドイツは、その後、この新しい東西平和共存の世界の潮流に同調すべく努力を続け、今日ではヨーロッパの国境の現状凍結を是認して、周辺諸国及び全世界に安心感を与え、ことしの秋には、西独、東独同時の国連加入がうわさされるに至っております。
 この現状凍結の平和政策によるヨーロッパの平和への功績により、ブラント首相が昨年ノーベル平和賞を授与されたことに、私は心から祝意を表するものであります。
 これに対し、わが国は平和共存への世界の新しい流れを洞察し、すでに十七年前、鳩山内閣以来、ソ連をはじめ共産圏諸国と平和を回復し、着々と国際地位及び経済的実力を向上させ、目ざましい躍進を遂げました。これは、ひとえに国民の御協力と自由民主党及び歴代内閣の先見の明のしからしむるところであります。(拍手)
 しかし、日本と西ドイツの国際的条件を比べますと、同一の点は、両国とも、過去の軍国主義及びこれが将来への復活について、はかるべからざる警戒心と恐怖心を持たれていることであります。異なる点は、西ドイツは、パリ条約という多数国による条約の中で厳重な軍事的制約を受けているのに対し、わが国は、このような国際条約の制限はなく、憲法及び非核三原則等という国内政策によって自主規制を行なっているという点であります。したがって、このように経済的に強大になりつつある日本が、もし万一この自主規制をはずしたならいかなる事態が生ずるか、世界及び特に周辺諸国が異常な関心を持っていることに、われわれは深く思いをいたさなければなりません。
 日本が他国と安全保障上わずかにつながっているのは、安保条約で結ばれた米国でありますが、その米国が、いまやニクソン・ドクトリンによって軍事的後退を始めようとしつつあります。そこから日本が孤独感や危機感におちいり、極端な軍事強化や核武装へ走る可能性が生じるのではないかと危ぶむ議論も、最近散見されるのであります。もとより、日本の平和と独立を守ることは日本国民の責任であります。したがって、日本列島守備隊としての自衛隊は必要不可欠の存在であり、日本列島防衛に必要な最小限の自衛力は、他国に脅威を与えない範囲内で整備すべきであります。
 いままでわが国が、平和憲法の精神のもと、世界緊張緩和と平和共存の確立に一貫して努力してきたことは明白な事実でありますが、最近の国際情勢の大きな変化に即応し、わが国の平和への熱望が世界のどの国よりもかたく、どの国よりも強いものであることを、現実の政策を示して、あらためて確認し宣明することは、いまやきわめて重要なことと思いますが、政府の所信を伺いたいと思います。(拍手)
 具体的に申せば、第一に、日本の軍事的自主規制を文民統制の制度上からもさらに徹底し、たとえば、国会に安全保障に関する委員会をつくって監督する、また、非核三原則の超党派的合意をさらに権威あらしむる方途を講ずること。
 第二に、右の自覚に立って近隣平和外交をさらに積極化し、各方面へ実績を積み上げていく等であります。たとえば、中国との国交回復を促進すること、ベトナム平和後の南北ベトナム双方に対し復興援助を行なうこと、分裂した国家の平和的統一への努力を進め、それまでは過渡的に相互の平和共存体制を樹立し、国際関係を安定させること、発展途上国に対する経済、文化協力を思い切って推進すること、オーストラリア、ニュージーランド等との連帯を強化する等、アジア、太平洋全域に新しい平和の時代を招来する友好政策を掲げて働きかけることは、いかがでありましょうか。適時適切にアジア、太平洋の諸国に対し、イデオロギーを越えて、友愛と共存を訴えながら自由に接近し、いわゆるフリーアクセスの方法をもって、スケールの大きい積極的な平和外交を展開することは、いかがでありましょうか。(拍手)
 日本及びアジアの国際環境には、ノーベル平和賞を贈られるに値する意義ある平和と建設への歴史的課題が山積していると思いますが、総理は、この歴史的使命をいかに認識し、実行する決意がありますか、お伺いをいたします。
 次に、特に中国政策について質問をいたします。
 中国問題の処理について私が想起するのは、あの戦後の国際的波乱の中で、吉田元首相が、今日あるを予期し、当時すでに遠く深くおもんばかられた外交的御見識であります。昭和二十六年十二月二十四日、吉田元首相がダレス米大使にあてた書簡によれば、「日本政府は、究極において、日本の隣邦である中国との間に、全面的に政治的な平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります。」と述べ、吉田元首相は、将来中国との間に全面的に平和条約及び通商関係の樹立を意図されていたものと思われます。
 政府は、いまや、吉田元首相のこの洞察力に満ちた認識と政策の原点に立ち、中国との国交正常化への局面打開のため、新しい道を開拓すべきであります。そして、吉田内閣以来たどった経過は、国際関係上やむを得ぬものがあったかもしれませんが、中国の国連加入以来大きな事情変更が起こった今日、日華平和条約を含め、それらの関係は適切かつ実際的に処理されることが賢明であると思いますが、いかにお考えになられますか、お伺いをいたします。
 次に、内政の問題についてお伺いいたします。
 政府は、今回、十一兆四千七百億円に及ぶ大型予算を編成し、福祉国家の実現を最優先に取り上げましたが、きわめて適切であると思います。このことは、一九七〇年代に自由民主党が築こうとしている一大国家目標、福祉国家日本への着実なスタートを全国民の前にお約束するものでありまして、一九七〇年代のわが国の国家的性格を形づくっていくきわめて重大なこの時期に、外政の平和外交に相呼応し、内政においても平和福祉国家の理想に向かって力強く歩み出した勇断を高く評価するものであります。(拍手)
 特に、社会保障関係費は、昨年に比べ一挙に一兆六千億円に引き上げられ、中でも老人医療の無料化、老齢福祉年金、障害福祉年金、母子家庭、寡婦、身体障害者、遺族、傷痍軍人、スモン病や小児ガン等の対策を充実し、民生委員を一挙に三万五千人増員し、看護婦さんや社会福祉従事者の待遇を思い切って改善する等、きめのこまかい愛情の行き渡る予算編成を行なったことは、まさに画期的な成果であります。(拍手)
 その他、住宅建設、生活環境政策、自然保護、教育及び芸術文化政策、各方面にも思い切った経費増額を行ないました。この積極的姿勢も、まさに内閣の意欲を示すものと同感を禁じ得ません。
 また、時局の重点である物価対策については、関係予算総額は一挙に一千六百七十二億円、前年度に比べ三二・八%の大幅伸びを示しました。家庭の主婦の最大関心事である野菜の安定対策費にも、昨年の二倍強の経費が配当され、本年は政府が本腰を入れて生鮮食料品の物価対策に乗り出したことを大いに歓迎するものであります。(拍手)
 いまや、国民が求めているのは、今回の野菜対策のような台所に直結する実行力のある政治であります。いまや、全国民は、サービス料金に対しても、公共料金に対しても、今回の野菜対策のように、政府が本気で蛮勇をふるうかどうか、かたずをのんで見守っております。
 物価を抑える直接の責任者は、行政府のそこに並んでおられる閣僚諸君であります。ことしは少なくとも物価上昇が郵便貯金の利子率をこえないよう責任を果たしていただきたいのであります。これは声なき庶民大衆のこの国会議事堂に全国から押し寄せてきている悲痛な叫びであります。物価対策に関する内閣全体の御決心を承りたいと思います。
 しかし、反面、この大型予算を実行するについては幾つかの課題があります。
 その第一は、景気浮揚の結果から、一部の公共事業関係産業に効果が集中し、勤労者、農漁業者、老人、母子家庭等まじめに働く大衆やかよわい人々及び中小企業者に恩恵薄きことになりはしないかという心配であります。特に、農漁業者にあっては、食料自給を果たしつつある国民経済的位置と、自然環境の保全に果たしつつある新しい役割りをあらためて見直し、目標を失おうとしている農漁村に対し、新たな生活共同体としての建設目標を、特に若い後継者に対して生きがいを与える長期計画をいかに考えておられるか、所信を承りたいのであります。
 第二は、行政機構の問題であります。一言で言えば、従来の日本の行政機構は、九〇%まで生産のための行政機構であると言っても過言ではありません。それは、明治以来、殖産興業と軍事強化を目標とした政治の所産であります。今日、国家目標は国民福祉に大転換いたしました。行政機構も変わるべきであります。特に、今日の経済情勢下、政治の重点は流通と物価抑制にあります。すなわち、消費者保護にあります。政府中央官庁の中で、物価と流通政策のための役所は、わずか公正取引委員会と経済企画庁の一部が目につくのみではありますまいか。政府は、思い切ってこの見地から行政機構の大改革を断行すべきであります。今回、農林省が、農政局と農地局を統合して食品流通局をつくったことは、大英断であります。運輸省、通産省等、他の諸官庁においても、総理は指導力を発揮され、新しい国家目標に沿った行政機構の改革を断行されるべきであると思いますが、御所信をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 内政問題の最後に、私は、今後国策の中枢を占める国民福祉について、その中心理念を質問いたしたいと思います。
 国民の福祉推進は、いまや、わが国家の最優先の目標であり、断じて経済や景気調整の手段であってはなりません。このため、福祉優先政策は、七〇年代以降、毎年継続的に強化されるべきであります。かくて、この際、わが国は、所得倍増計画にかわる福祉倍増計画を閣議決定し、具体的に目標を明らかにすべきでありますが、いかがでありましょうか。(拍手)今回の円の大幅切り上げが、国民福祉水準の大幅切り上げに直結されてこそ、初めて三百八円選択の意義があると考えますが、総理はいかにお考えになりましょうか。
 日本的福祉国家建設の中心理念として、私は幸福追求の政治を訴えたいと思います。憲法第十三条は、われわれ政治家に対してこう命じております。「生命、自由及び幸福追求に對する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」実にすばらしい文章であります。生命、自由の権利は、いままでもよく理解され、努力も払われてきた権利で、それはいままでの社会、すなわち、工業化社会への発展を遂げる過程に確立された社会価値でありました。しかし、幸福追求の権利は、生命、自由の権利のさらに高いところに位置づけられている価値だと思うのであります。わが国は、工業化社会としての成熟を遂げた反面、すがすがしい生活環境を犠牲にする公害に対して、いまや、無過失責任が遡及されようという時代が来ているのであります。道路の建設よりも、美しい自然や祖先の残した史跡を守れと世論が傾く時代が来ているのであります。すでに国民は、物質的充足よりも、精神的満足をはっきりと求め始めていることをわれわれは認めなければなりません。物質的充足の上に立って、さらに積極的に人間としての生きがいを味わうこと、たとえば国民が芸術、文化、体育等の諸活動に参加し、精神的な満足を味わい、また、青年たちがそのエネルギーを鍛練や修養や社会奉仕や平和部隊による国際協力に注ぎ、人間としての使命感に喜びを感ずることも、幸福追求の権利として国民に保障されなければならない価値であります。憲法第十三条が命じているのも、まさに国政をその段階に到達させよということであると信ずるのであります。すなわち、これから始まろうとしている脱工業化社会の社会価値を指示しているものと思いますが、いかがでありましょうか。(拍手)
 思えば、わが国の政治の目標は、かつて一九六〇年代、国民総生産一千億ドル台のときは、生産第一、GNP中心で、所得倍増政策の時代でありました。一九七〇年代に入って、GNPが二千億ドルを突破した現在、政治の目標はGNW、グロス・ナショナル・ウェルフェア、国民総福祉、社会保障推進を中心とする時代であります。しかし、おそらく次の時代、すなわちGNP三千億ドル台のときはGNS、グロス・ナショナル・サティスファクション、国民総満足の時代ではありますまいか。憲法第十三条は、実にわが日本が今日以降国家目標として掲げるべき重要な政治社会的価値を、国民の幸福追求の権利という表現によって厳然と差し示していると思います。政府は、これからの正しい福祉社会の建設理念について、いかに検討されておられるか、お尋ねいたします。
 さて、国民の幸福について考えてまいりますとき、私は、常に一つの情景が脳裏に浮かんでくるのであります。それは、たくさんの家族が夕げの食卓に顔をそろえて、一家団らんしている情景であります。幸福ということばは抽象的でありますが、夕方、家族がそれぞれ家に帰り、一家団らんして夕げの食卓についたとき、人はほのぼのとした幸福惑を味わうのではないでしょうか。幸福追求の政治は、その家庭の夕げの一ときにあらゆる手を差し伸べる責任があります。そのために、完全雇用も、住む家も、水洗便所も、電話も、通勤地獄の解消も必要であります。
 いままでの政治は、その焦点を国家、組合、財界、県庁、市役所等の社会的組織に当て過ぎ、人間の幸福の集約単位である毎日の家庭を忘れてはいなかったでしょうか。核家族化の進行とともに、従来の家庭がくずれ、新しい家庭のサイクルが始まっている今日、夫婦共かせぎの新しい世代への配慮、若い人が姿を消した過疎地帯の老人家族への思いやり等を考えますと、人間尊重の政治は、いまや家庭に政治の光を当てることから始めるべきであると思いますが、政府はいかにお考えになりましょうか。
 また、それと並行して、ごみや廃棄物処理、暴力や犯罪の予防と排除、交通安全等、地域社会全体の幸福のため、家庭同士で助け合い、また、みずから社会に対する連帯と奉仕を分かち合う責任ある家庭を育てる必要もあると思いますが、御所見を承りたいと思います。
 最後に、七年有余の長い間政権を担当された総理の感慨をお伺いいたしたいと思います。
 総理は、昭和三十九年十一月九日、なき池田総理より政権を引き継がれて以来、ILO八十七号条約批准、日韓条約の締結、安保条約の自動延長、人間尊重及び社会開発の推進、小笠原、沖繩返還の実現等、、画期的業績を残されました。総理は、この長年月の間、自己にきびしく、誠心誠意国政に対し精進されてこられたと思います。(拍手)その中にあって、佐藤総理の政治哲学は、数少ないことばの中に鮮明に表現されているものがあります。いわく「自由を守り、平和に徹する」、いわく「沖繩が返らなければ戦後は終わらない」、いわく「国際信義を重んずる」、いわく「政治に小休止なし」等、これらの佐藤語録は、いずれもそれぞれの時期において、総理の御心境と日本のあり方を内外に示す指標であったと思います。
 総理は、最近、「政治に終わりなし」ということばを言われました。このことばは、従来のことばと違った、特別の重さと響きを持っております。日本の歴史と伝統、この国に未来に生まれてくる子孫に対する国の指導者としての使命と責任を込められた貴重なことばと考えます。極端に言えば、この一言は、佐藤政治のすべてをおおい尽くしていることばになったと言い得るかもしれません。個人の政権には限界があっても、国民の生活と日本の歴史は無限に発展すべきものであります。総理は、この心境に立って、現代日本の政治の現実と議会民主制の将来をいかにお考えになられますか。
 総理の恩師、吉田元首相が開かれたサンフランシスコ時代は佐藤総理の手によって幕が閉ざされ、次の時代に移行せんとしつつあります。総理は、沖繩が返還されない限り戦後は終わらないと言われましたが、われわれは、次の時代を見渡しつつ、中国との全面平和が正式に回復されなければいまだ戦後は終わらないとも考えます。(拍手)
 最近、日本には、対中国、対ソ連と二つの平和条約の問題が起こりつつあります。日本はいずれを先に選択すべきでありましょうか。サンクレメンテ以来、各国新聞の日本に対する取り扱いはきわめて大きく変わりつつあります。いずれにせよ、太平洋を差しはさむ日米両国が、安全保障、経済、文化等の提携を通じ平和に協力し合うことがわが国策の基本線であると確信しますが、アジア・太平洋を中心とする日米中ソの四極時代の開幕にあって、総理は世界史における日本の進路と役割りをいかに国民に訴えられるか、御所見を承って、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 中曽根君御指摘のとおり、四分の一世紀にわたる国際問題であった沖繩の祖国復帰は、目前に迫っております。政府は、沖繩が平和の島としての特性を維持しつつ発展するよう、社会資本の充実、水資源の開発、社会福祉の充実等に万全を期する決意であります。
 特に、復帰にあたって、ドル経済から円経済への切りかえを円滑に実施するため、細心の配慮を払ってまいる所存であります。円紙幣の輸送の問題等についても慎重に計画を練っておりますが、切りかえによって県民生活に混乱や不安が起こらないよう、残された期間内にさらに綿密な準備を進めてまいります。また、円・ドル交換を復帰前に繰り上げて実施してほしいとの沖繩県民の要望もありますので、この点、サンクレメンテ会談において米側に申し入れまして、目下両国間で検討を進めております。
 沖繩の核兵器の撤去につきましては、今般の訪米に際し、ニクソン大統領とも十分話し合いを行ないました。その結果、返還に際して核に関するこれまでの米政府の確約を確認するとの意向を示されたことは、すでに御承知のとおりであります。この問題は、中曽根君が従来から熱心に推進されてきた問題であり、沖繩県民の不安を一掃することができて、私としても喜びにたえないところであります。
 次に、中曽根君から、この際奄美群島の振興開発や島民の民生向上について再検討すべきではないかとの御指摘がありました。まことに時宜を得たものと思います。奄美の振興については、政府としてこれまでかなり力を入れてきたのでありますが、それでも現在、群島民一人当りの所得は、鹿児帰県本土の一人当たり所得の約八割強というのが実情であります。今後、港湾、空港、道路等の基幹施設や、地域産業の基盤施設の拡充整備をさらに推進して、奄美群島経済の自立的発展をはからなければならないと思います。これを機会に、現行の振興計画の再検討を行ないたいと思います。
 北方領土につきましては、今般の日ソ定期協議で、わずかながら解決への手がかりを得たものと考えております。御承知のとおり、ソ連政府はこれまで、領土問題は解決済みだという態度をとり続けてきたのでありますが、グロムイコ外相との話し合いで、本年中に日ソ間で平和条約締結のための交渉を開始することで合意に達しました。私としては、このような形で領土問題を話し合う場ができたことは、大きな前進であると評価しているのであります。(拍手)もちろん、このことが直ちに北方領土問題の解決を意味するものではありませんが、今後、交渉の場で粘り強くわが方の立場を説明し、全国民的願望を背景に、歯舞群島、色丹、国後、択捉の諸島の祖国復帰を実現する決意であります。(拍手)
 また、今回の話し合いを通じ、日ソ双方に両国関係の改善に努力しようという機運が強まっております。私としては、この雰囲気が、安全操業問題をはじめ、日ソ間の諸懸案の解決に役立つことを期待している次第であります。
 次に、日米安保体制の基盤が両国間の信頼と協力の関係であることは、申すまでもありません。サンクレメンテにおける私とニクソン大統領との会談の際、安保条約が両国の信頼関係の上で果たしている重要な役割りを双方が高く評価したことは、共同発表にも述べられているとおりであります。このような評価は、安保条約十二年の歴史を踏まえてなされたものであって、安保条約の性格ないしは運用について何らかの変化を加えようというようなことは、日米双方とも考えていないことを御理解いただきたいと思います。
 また、サンクレメンテでは、双方の担当者による経済問題の個別会談において、緊密な日米経済関係の増進が日米関係全般及び世界経済の発展のためにも重要であることが再確認されております。日米両当事者の忌憚のない意見の交換を通じ、相互理解が増進され、今後の両国関係の一そうの緊密化をはかることができたものと確信しております。
 次に、中国問題に関する日米間の意見交換についてでありますが、アジアの緊張緩和をはかるために、中華人民共和国政府との関係を改善していくべきであるという点については、日米とも基本的に一致しております。しかし、具体的にどのように進めていくかについては、日米それぞれ歴史的背景や置かれた立場の相違もありますから、必ずしも一致するとは限らないし、異なった方策をとるのは当然だろうと思います。米中関係の今後については、近く実現するニクソン大統領の訪中の結果を見守りたい、かように思います。
 次に、わが国が軍事大国とならず、平和国家に徹し続けることは、ひとりわが党、内閣の政策にとどまらず、いまや国民的合意に達しているものと私は確信しております。中曽根君の防衛問題に関する御所見も、まさにそこにあるものと理解いたします。しばしば申し述べるとおり、古来、経済大国となった国はすなわち軍事大国でありました。そこで、今日経済的大国となったわが国は、従来にも増して文民統制を徹底し、自主規制を強めていかなければならないという点、全く同感であります。
 国会に安全保障に関する委員会を設けることは、すでに各党からも提案されているところでもあり、政府として異論はありません。
 また、非核三原則は、国会の決議によって確認された国としての政策であり、私は今後ともこれを堅持する方針でありますが、その権威をさらに高めることについても賛成でありますから、今後その具体策について十分に検討してまいりたいと考えます。
 また、御指摘の近隣平和外交の積極化については、全く同感であり、その趣旨に沿って従来から努力していることを御理解いただきたいと思います。政府としては、経済面において交流だけでなく、文化、学術等の分野にもわたる幅の広い、血の通った交流を一そう深め、もってアジア・太平洋諸国に対する近隣平和外交を強化していきたいと考えております。
 日中関係打開に関する中曽根君の御意見は、きわめて示唆に富むものでありました。私の基本的考え方は施政演説で述べたとおりでありますが、日中双方が善隣友好関係の樹立を標榜して政府間の話し合いを積み重ねるときが来れば、相互理解と相互信頼がもたらされ、日中関係は大きく前進するものと確信いたします。御指摘の日華平和条約の問題を含め、日中間の諸問題については、国交正常化交渉の過程で円満な解決をはかりたいと考えております。
 次に、内政問題についてのお尋ねにお答えいたします。
 その第一は物価問題でありますが、施政方針演説においても強調したように、物価の安定は、福祉社会を目ざす政策においても最重点課題の一つであります。このため、政府は、当面の景気浮揚策の実施にあたっても、物価の高騰を招かぬように十分配慮するとともに、消費者物価安定のための構造的問題の解決について一そうの努力を傾けてまいる決意であります。
 来年度予算におきましても、御指摘のとおり、生鮮食料品の価格安定対策を格段に充実するなど、物価対策関係経費を大幅に増額したところでありますが、さらに、円切り上げによる輸入品価格の低下の利益を消費者に適正に還元するよう所要の対策を講じるとともに、低生産性部門に対する構造対策の拡充、競争条件の整備などを一段と推進して、より一そう物価の安定につとめてまいる所存であります。
 なお、公共料金については、従来どおり極力抑制する方針でありますが、同時に、国民経済全体から資源配分の適正化をはかり、かつ、公共サービスの不足によって福祉が阻害されることのないよう十分配慮することも必要であり、この際その一部を改定することといたしました。国民各位の御理解をいただきたいと思います。
 最近においては消費者物価の騰勢は次第に鈍化してきており、これらの施策を通じて、来年度においては消費者物価を政府見通しの水準にとどめることができるものと考えております。
 次に、来年度予算についての問題であります。
 中曽根君も御指摘のように、四十七年度予算は、景気の早期回復をはかるため近年にない大型予算でありますが、同時に、国民生活の質的改善をはかるため、その内容は国民福祉の向上に重点を置いたものとしております。
 すなわち、まず有効需要の積極的な喚起をはかり、国民生活の質的向上を期するため、公共事業関係費として、四十六年度当初予算に対し二九%増の二兆一千四百八十五億円を計上しておりますが、特に生活環境施設については、住宅千五百六億円、これは二九・九%増であります。公園百二十五億円、これは九七%の増であります。上下水道千百九十二億円、五四%増、廃棄物処理施設八十四億円、九二・六%増と、いずれも前年度を大幅に上回る予算を計上しております。同時に、経済の発展と調和のとれた国民福祉の向上をはかるため、四十七年度においては社会保障関係諸施策の充実に配意しており、社会保障関係費として、四十六年度当初予算に対し二二・一%増の一兆六千四百十五億円を計上しております。特に、今後予想される老齢人口の増大に対処し、老人福祉の一そうの向上をはかるため、老人医療の無料化、老齢福祉年金の大幅改善等の老人福祉対策を格段に充実しているほか、社会福祉施設の整備、障害福祉年金、母子福祉年金の改善、生活扶助基準の一四%引き上げ、身体障害者、児童、母子等の福祉対策、特殊疾患対策の充実など、各般の施策にきめこまかい配慮を加えております。
 さらに、税制面においても、最近における租税負担の状況にかんがみ、さきの年内減税における所得税の一般減税に引き続き、地方税において平年度千百二十二億円の減税を行なうほか、国税においては、老人扶養控除の創設、寡婦控除の適用範囲の拡大、配偶者及び心身障害者に対する相続税の軽減などを行なうとともに、住宅対策、公害対策、中小企業対策等のための諸施策の充実をはかり、国民福祉の向上に努力してまいります。
 次に、特に御指摘のあった農業につきましては、国際競争に耐え得る近代的な産業として確立されるよう、一段とその体質改善をはかってまいる所存であります。そのため、四十七年度予算においても、野菜をはじめ果樹、畜産等の振興、稲作転換対策の推進、構造改善の推進など、各般の施策を講ずることにしております。さらに、農家及び漁家の出席と生活の場である農漁村が豊かに発展し、近代的な社会として確立されることは、わが国社会全体の健全な発展にとっても、また、都市化が急送に進展を見つつある社会の環境保全の上からも、きわめて重要であると考えております。このため、農業及び漁業の振興をはかり、農漁業者が生きがいをもって業務に専念できるようにするとともに、あわせて農漁村の環境の整備を進め、明るく住みよい近代的な農漁村の建設につとめてまいる所存であります。
 次に、行政機構改革の問題について。社会経済全般の変化に対処して、簡素にして能率的な行政の体制を整えることが政府の基本的な方針であります。政府はこの方針に沿って従来から行政機構改革に取り組んでまいりましたが、食品の流通改善及び価格の安定等の問題に積極的に対処するため、今回、農林省の組織の再編成を行なうこととし、また、運輸省についても、省全体の組織の再編成を早急に検討することとしております。なお、今後ともこのような基本方針に基づき、その他の省庁においても、当面の重点に着目して、それぞれの組織について、その全体的規模の拡大を抑制しつつ、刷新強化をはかるよう、着実に努力してまいりたいと思います。
 次に、国民福祉についてのお尋ねにお答えいたします。
 最近における内外経済情勢及び国民意識の変化に伴い、現在、わが国としては、従来の経済成長パターンを修正し、国民福祉の充実に一そう重点的な資源配分を行なうよう政策を転換することが必要になっていることは、御指摘のとおりであります。
 このような状況にかんがみ、政府としては、四十七年度において、国民生活の質的充実を最大の課題として、新しい長期計画を策走し、住宅、生活環境の改善、公害の防止、社会保障の充実等、国民福祉の向上のための具体的な政策の方向を明らかにして、その推進を強力にはかってまいる所存であります。
 なお、円レートの引き上げは、国民の労働力成果の価値が国際的に高まることであり、国民生活の上から見れば、輸入品の直接的な価格引き下げをはじめとして、国民福祉の向上に寄与し得るものであります。円切り上げの最も大きな意義がこの面にあることは、御質問のとおりであり、このため、政府としては、これを契機に、国民福祉優先の原則をより確固たるものとし、環境保全、社会資本の充実、消費者物価の安定等に一そうの努力を払ってまいる所存であります。
 また、中曽根君から、幸福追求の政治をとの御意見がありましたが、私も、これからの政策運営の基本的なあり方は、いままでの成長により、より充実した経済力を活用して豊かな福祉社会を建設することであると考えております。そのため、生活環境施設を中心とした社会資本の整備を進めるほか、すべての階層に対して成長の成果が行き渡るよう、国民の連帯感にささえられた社会保障等を充実していくことが必要であります。政府は、このような基本的課題を念頭に置きつつ、国民的要請の把握につとめ、新しい長期計画の策定を通じて、わが国の実情に沿った豊かな経済社会建設の方途を明らかにしてまいる所存であります。
 さらに、中曽根君は、人間尊重の政治は、家庭に政治の光を当てることから始めなければならないと言っておられますが、私も全く同感であります。本来、家庭は、最も基本的な生活の単位であり、各個人にとっては、生活の本拠であるとともに、あすへの活力を養う、いわば人間性の回復の場となっております。したがって、政治は、この基本的単位である家庭を、豊かな安らぎの場とするということを忘れてはならないのであります。戦後二十数年、自立、安定、成長という路線をひたすら走ってきたわが国の場合、ともすればマクロ的な見方が優先し、こうした視点が不十分であったように思われます。私は、GNPで自由世界題二位という水準に達した現在、このような面により一そうの配慮を加えてまいりたいと考えております。このため、政府としては、今年度予算において、特に福祉政策に重点を置き、老人医療の無料化をはじめ、老齢福祉年金、母子家庭、身体障害者対策等の充実をはかっておりますが、今後、家庭における老人の精神的な充足、さまざまな社会的不安からの解放といった、よりきめのこまかい政策を実行していく所存であります。
 最後に、政治に対する私の感想を求められました。いまの時点で特にまとまった感想を申し述べる用意はありませんが、断片的に述べるなら、私は、政治においてことばがすべてではないと考えております。同時に、政治家のことばは責任を伴うものであることを自覚しております。また私は、民主主義の要諦は、国民のための国民の手による政治にあると確信しており、議会民主制というのはその理念の上にこそ成り立つものであると考えております。さらに、わが国の将来は、われわれが今後とも自由を守り平和に徹し続けることができるかどうか、この一点にかかっていると思います。私は、この点に関し国民各位の一そうの御理解を得るよう最大の努力をする決意であります。
 また、具体的な問題として、中国とソ連との平和条約について、いずれを先にやるべきかとのお尋ねがありましたが、この点はどちらが先でなければならないというものではないと思います。相手のあることでありますから、わが国の立場、わが国の主張について相手方の理解を求めつつ、その実現を期してまいらなければならないと考えます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(船田中君) 竹入義勝君。
  〔竹入義勝君登壇〕
#23
○竹入義勝君 私は、公明党を代表し、一昨日行なわれた政府四演説に関し、きわめて重点的に質問をいたします。
 質問に先だち、私ごとではなはだ恐縮でありますが、この場をおかりいたしまして一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 昨年九月、私が暴漢に襲われ負傷いたしましたことにつきまして、多数の皆さんにたいへん御心配をおかけいたしましたけれども、おかげをもちまして元気になることができました。まことにありがとうございました。(拍手)
 言うまでもなく、暴力や、目的のために手段を選ばないやり方は、民主主義の敵であります。今後、私は、先輩各位の御指導を賜わりつつ、暴力を絶滅し、わが国の平和と民主主義を守るため全力を尽くしてまいりたいと念願をいたしております。(拍手)皆さまの御厚情に重ねて深く御礼を申し上げる次第であります。(拍手)
 さて、佐藤総理に質問を申し上げます。
 現在わが国が遭遇している国際的、国内的困難は、戦後未曽有のものであろうと思うのであります。国際的には、自主性を失った外交のきわ立った行き詰まりは、あたかも羅針盤を失い、暴風雨に見舞われた船のごときものであろうかと思われるのであります。国内的には、政治不信をますます助長する相次ぐ国民侮辱の放言、歴代内閣でこれほど締まりのない内閣はなかろうかと私は思うのであります。(拍手)あるいは国民生活の不安と危機の高まりなど、政治に携わる者として真に反省と新しい決意が最も必要なときであるにもかかわらず、そのきざしが見えないのはまことに遺憾であり、許されないことであろうかと思います。私は、特に政府が重大な反省の上に立って、わが国の実りある将来を切り開いていくため、確固たる目標と方針を決定すべきことを、強く要求するものであります。
 一九四五年、有史以来の敗戦の荒廃の中に置かれたわが国は、以来四半世紀、国民の営々たる復興への汗によって、不死鳥のように再び国際社会によみがえることができました。
 しかしながら、歴代政府は、経済成長の前にはあえて国民福祉を犠牲にし、産業第一、輸出至上、大企業擁護の政策を一貫してとり続け、現在に至ったのであります。したがって、設備投資の拡大と反比例して、国民福祉のための社会保障施策や社会資本は著しいおくれを見せ、環境破壊、公害による命と健康への脅威、さらに、都市過密化による交通地獄、住宅難の中に国民を置き、加えて、天井知らずの物価高は、国民生活に絶え間ない不安を与えております。これら奇形的な経済発展は、国内産業の二重構造をますます深刻なものにし、農業、漁業、中小零細企業は常に倒産と壊滅の危機にさらされているのであります。
 これらの人間性無視の政策は、国内問題にとどまらず、国際経済の場においても、日本経済はきわめて窮地に立たされているのであります。これは、通貨調整における定見と見通しのない交渉、押しつけに屈服した過大な円の切り上げ、繊維の政府間協定に見られる過酷な貿易協定などに象徴的にあらわれているのであります。
 また、戦後わが国の外交は、一貫して対米一辺倒の外交方針をとり続けてまいりました。第二次大戦の敗戦という苦い教訓から、日本は、日本にとってのアジアという独善的発想を改め、アジアにとって存在価値のある日本、すなわち、アジアの一員として、アジアの平和と繁栄に最も大きな役割りを果たすことこそ国家目標であらねばならないと思うのであります。(拍手)
 しかるに、わが国がこのようにアメリカの軍事方針、外交方針に安易に追随し続けてきたことは、多くの平和のための重要な外交的課題を無為無策にたな上げにしてしまいました。特に、対中華人民共和国、対朝鮮民主主義人民共和国との関係はいまだに閉ざされたままであり、アジアの緊張緩和のために絶対必要である国交回復問題を放棄し続けてきたのであります。このように、外交、内政ともにあらゆる点にわたって破綻し、これを一方的に国民がしわ寄せを受けてその犠牲に供され続けることは、国民はもはや耐えがたい点にまできておると思われるのであります。(拍手)
 さらに将来を考えるならば、七〇年度わが国の国民総生産はほぼ二千億ドル、輸入総額は約一〇%のほぼ二百億ドル、その大半は資源の輸入であり、約一%の二十億ドルが海外援助、さらに防衛費は〇・八%の十六億ドルという構造になっていることは、すでに周知のとおりであります。七〇年代後半には国民総生産は五千億ドルに達すると予想されております。これは六〇年代のアメリカの国民総出産に匹敵するものであります。もしこの国民総出産五千億ドルを仮定した場合、現在の割合を当てはめてみますと、海外よりの資源輸入は一〇%のほぼ五百億ドルに近い額となり、海外援助費は五十億ドル、また防衛費も、約一%とすると約五十億ドルの巨額に達するものと考えなければなりません。
 しかも、現在の産業構造で推移するならば、アメリカの国土の約二十五分の一しかないわが国土において、しかも、そのうち可住地面積は約二〇%、農地面積を差し引けば全体の四%程度の面積にこのような高度工業国家の出現は、超過密と公害、環境破壊によって、まさに人間の住むべき国ではなくなるということを意味するものといわなければならないのであります。(拍手)さらに、その生産された商品は洪水のごとく世界の市場を席巻し、諸外国との摩擦を強烈に招くことは必至であります。ただでさえ世界のひんしゅくを買いつつある経済進出に対してわが国を非難する声の高いとき、この貿易量の驚異的増大はいやが上にも反日感情をあおり立て、わが国の孤立化と挫折はあまりにも確実であるといわざるを得ません。
 また、世界の開発途上国よりの資源の買い付けは、第一次産品としての輸入でとどまり、その加工によって生ずる付加価値をわが国が独占し、何らその発展途上国の産業発展や生活水準の向上につながらないとするならば、おそらく、援助を与えて反抗を買ったアメリカの二の舞いをそのままわが国が踏む結果を招くでありましょう。
 さらに、わが国は経済大国となっても決して軍事大国にはなることはないと佐藤総理がいかに説得しようとも、事実をもって証明しない限り、それを全世界に納得させ得ることは不可能ではないかと思われるのであります。(拍手)そのために、節度ある経済発展とともに、その持てる経済力を発展途上国の平和と繁栄のために使っていくことも不可欠の条件の一つでありましょう。しかも、その経済援助ないし協力は、その国を結果的に搾取するものではなく、その国の民生の安定と向上に大きく資するものでなければならないと思うのであります。
 さらに、現在行なわれている援助ないし協力は、朝鮮半島においては南にのみ、ベトナムもまた南だけ、中国についても台湾にのみ行なわれているという、冷戦外交の上に立ったものであり、これはアジアの対立を激化させても、決して平和への大きな寄与とはならないことを、深く考えねばならないときが来たと思うのであります。
 すでに産業調整が必然的に要求される国際経済社会にあって、国際的にも、国内にあっても、わが国の産業構造と需要構造の転換が迫られるでありましょう。のみならず、文化、教育を含め、国民福祉充実を優先する施策が実現されなければならないと思います。当然、そのための軌道修正は一挙に実現することは容易ではありません。長期計画のプロセスを描き、その中における中期ないしは暫定年次計画が考えられるのでありますけれども、現在政府はどのような考え方に立っておられるのか、その所信を国民の前に明らかにされたいのであります。
 したがって、まず第一点として、総理は、わが国の未来像の構想ないし国家目標をどのように決定し、この転換期の第一歩を踏み出そうとされておるのか、御明示をいただきたいのであります。
 第二点は、社会保障についてお尋ねをいたします。
 四十七年度予算案を見た場合、老人医療の無料化、老人福祉年金等において一部の前進はあるものの、一般会計予算総額に占める社会保障関係費の比率は、依然として前年当初と同じであり、しかも、池田内閣当時よりもむしろ低くなっております。一人当たりの国民所得がヨーロッパ水準に達したはずのわが国が、社会保障水準においてヨーロッパの二分の一ないし三分の一で低迷し、また、社会福祉の国際的な最低水準としてILOが定めた百二号条約も、老齢年令などの全九項目にわたって基準に達しないためまだ批准ができないわが国の現状を、総理はどのように理解し、どう解決しようとされているのでありましょうか。
 また、社会福祉施設整備についても、厚生省が四十六年度より計画した社会福祉施設緊急整備五カ年計画がありますけれども、これが全く絵にかいたもちになっているのであります。少なくとも福祉優先への発想転換をする場合、この計画を優先的に実行し、根本的には社会保障充実のための長期計画を立て、欧米主要国の水準に追いつき追い越すプランを国民の前に明示すべきであります。この点について総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 第三点は、公共投資について、政府の発想が景気浮揚、不況克服を先行させ、申しわけ程度にちょっぴり福祉に色を添えたといわれるゆえんは、生活関連投資よりも産業関連投資に重点を置いた公共投資の拡大において指摘されます。
 しかも、この政府のねらいが実現されるかどうかは、従来の発想を変えない限り、すでに事業費の三〇%を占める用地費、地価の高騰あるいは地方公共団体の財政負担能力等によって、きわめて疑問視されております。加えて、事業コストの上昇が、受益者負担の名において住民負担に転嫁されない保証はないというべきであります。この点についてどのような具体策をお持ちか、伺いたいのであります。
 来年度大型予算の特徴ともいえる公共投資の拡大が、政府の考えるように、景気浮揚と国民福祉の増大とを両立させ得るか、私たちは、そのような見通しはきわめて甘いと思っております。物価の値上げ、インフレの助長などを招き、高福祉高負担の論理に逃避する可能性が強いわけでありますけれども、政府はこれらの問題についてどのように考えておられるのか、伺いたいのであります。
 第四点は、国債についてであります。
 公共投資拡大のための国債発行は、一般会計歳入における公債依存度を一七%とし、政府保証債、地方債を含めると約三兆円の公共債が金融市場に持ち込まれることになります。一方、国債残高は、四十七年度予想のGNPの七・五%となります。政府の経済政策の失敗が原因である現在の不況を克服するため、次の世代の負担となる国債をかくも大幅に発行することが安易に許されるとはとうてい考えられません。また、公債多量発行が、インフレ促進の効果を強めていくことは明らかでありますが、しかも、国債の累積状況から見て、これ以上国債発行を次年度も続けることは困難であろうと思われます。政府は、巨大化した予算の収入面を補うため、今後も引き続き国債に依存した財源調達を行なう考えなのかどうか、その目標をどうするかを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 国債発行余力を残さない四十八年度以降の予算は、一般消費税としての付加価値税の導入すら危惧させるものがあります。これは明らかに大衆に高負担をさらに押しつけようとするものにほかならないと思いますが、これもあわせて御答弁を願いたいのであります。
 第五点は、税制についてであります。
 所得減税は、物価津波といわれる一連の公共料金値上げの中で、大衆を守るために必要な物価調整減税すら行なわないで、かつ、大企業に対する個別的な特別減税措置、法人税減収を大衆負担によってカバーする立場に立たされております。
 この際、何ゆえに、租税特別措置の合理化、輸出優遇税制の徹底的改正、交際費課税の適正化等、従来の産業優先、資産所得者優先の税制を洗い直さないのか、また、少なくとも物価調整減税を行なわないのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、第六点として、物価安定に対する問題であります。
 円切り上げの唯一のメリットとしての政府が宣伝した輸入品の値下がり期待は、すでにむざんに砕かれました。一方、二月一日より実施される診療料金値上げをはじめ、一斉にせきを切った公共料金の値上げは、それだけで庶民生活をかつてない窮地に追い込むだけではなく、政府主導型物価値上げとなり、消費者物価の騰勢を加速し、所得減税ゼロ、値上げ抑制の圧力の中で、国民生活、なかんずく低所得者層に生活の危機をもたらすことは必然であります。福祉優先の経済運営を公約する政府が、緊急の重要課題とすべき物価安定への努力を全くなさず、逆に一連の公共料金の値上げによって政府主導の物価上昇を強行しようとする態度は、国民を欺瞞するもはなはだしいと言うべきであります。(拍手)国債の大増発とともに、政府は、物価安定対策をすでに放棄して、インフレ政策をあえてしているとさえ言うべきでありましょう。物価の安定なくして国民の福祉はあり得ません。国民福祉優先の立場から、この一連の公共料金値上げについて、国民の納得のいく説明を求めるものであります。(拍手)
 同時に、物価安定と消費者保護の立場から、いかなる対処をされるのか。長期、短期の具体的な物価安定対策、四十七年度の面する対策を明確にお示しをいただきたいのであります。
 第七点は、土地対策についてであります。
 公共投資の増大と地価の上昇が比例していることは、三十九年以来すでに二・五倍の地価上昇を見ていることからも明らかであります。政府は、国民福祉を産業基盤整備重視の公共投資の拡大にすりかえ、また、宅地用地取得のために、新都市基盤整備事業法の制定をはかろうとしておりますが、これが地価抑制につながり得ないことは、すでに指摘されているところであります。土地利用問題の未解決、地価抑制の無策が、国民福祉の充実をはばむ根本であり、社会開発の立ちおくれの原因になっていることは言うまでもありません。さらに、土地問題の解決のためには、人口、産業、資本、文化、政治の過度集中を防止し、土地利用規制、地価対策の解決なくしてはあり得ないと考えるものであります。
 こうした総合的な観点から、政府は、土地利用対策、地価安定策を強力に実行に移すべきでありますけれども、いかなる対策を実施されようとしておられるのか、明確なるお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 あわせて、この際、国会に土地問題対策特別委員会(仮称)を設置し、国会の総力をあげて、国民福祉と社会開発のための土地利用と地価安定策を強力に推進することを提案するものであります。これに対する総理の御所見を伺いたいのであります。
 第八点として、国民福祉と平和国家への前進の上で最も内外に政府の真意を疑わしめるものは、防衛費の増大、特に四次防がいまだ計画決定を見ていない今日、予算の上でこれを先行きせていることであります。
 このような巨大な軍事予算は、ニクソン・ドクトリンによるアメリカの軍事力をわが国が肩がわりをなそうとするものではなかろうか。ますますアジアの緊張とわが国への警戒心を増大させることは、火を見るよりも明らかであります。防衛産業に対する積極的てこ入れを、企業優先の景気浮揚と結びつけて行なおうとするものでありまして、同時に、軍事力増強への傾斜を強めていることは明らかではなかろうかと思うのであります。国民福祉の充実、向上のためにも、平和国家としての姿勢を明らかにするためにも、歳入財源の硬直化する中で四次防を取りやめ、軍事予算の大幅な縮小を断行すべきと思いますけれども、総理の決意を承りたいのであります。(拍手)
 たとえば、国民の生命尊重のために必要な難病対策費の予算が軍用機一機の予算を下回る事実、あるいは政府が鳴りもの入りで善政を宣伝する老人の医療費完全無料化の費用が九十六億円、小児ガン対策費がたった二億円にすぎないことを考えるとき、防衛費八千億円は、あまりにも国民福祉がひど過ぎるといわざるを得ないと思うのであります。(拍手)このような政治の姿勢から、政治のあたたかさを何らくみ取ることができないではありませんか。
 人間性にあふれた政治の確立に関連してお伺いいたしますけれども、水俣病認定患者の対チッソ交渉は険悪な状態に立ち至り、ようやく環境庁長官があっせんに入ったとはいえ、ここまで放置した政府の責任をどう考えられるか。
 さらに、この水俣病をはじめ公害四大裁判を代表とする公害被害者の実情は、実に政治不在を雄弁に物語るものであろうかと思います。このような悲惨な公害被害者に対する援護、公害絶滅に対する努力こそ、政治の責任と自覚すべきであると思いますが、総理の見解をお聞かせいただきたいのであります。(拍手)
 次に、外交問題についてお伺いをいたします。
 今日の国際情勢の趨勢は、戦後体制の再検討を求めて大きく変貌しようとしておるのであります。すなわち、二重構造から多極化へ、さらに、力による冷戦構造から話し合いによる緊張緩和への道へと動こうといたしております。こうした中にあって、アジアの平和共存を考えるとき、いまや、社会体制を越えて同じアジア民族の真の話し合いと理解によってのみ解決されるべきであると思うのであります。いまや、わが国将来の重大な岐路に差しかかっていると見るべきでありましょう。佐藤総理は、依然として、力の対決ないしは力の均衡をもってする従来の対米追随政策をお続けになろうとするのか。あるいは、アジアにおける東西問題、南北問題を積極的に解決する基本姿勢のもとに、アジアの緊張緩和と平和への道を歩もうとしておられるのでありましょうか。もし総理が真に平和への道を選択しようとするならば、アジアの中の日本としての明確なビジョンと、これに基づく具体的な方針を示してしかるべきであろうかと思いますが、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)
 いまわが国に必要なことは、政府が従来とり続けてきた冷戦的外交をすみやかに改め、自主的な平和外交路線を確立することであります。すなわち、平和憲法を擁護して、いかなる軍事同盟にも加盟、加担しないという等距離完全中立政策を基調として、民族自決、内政不干渉、平等互恵、武力不行使、相互不可侵などの原則のもとに、アジアの平和やアジアの繁栄を目ざす日本の果たすべき役割りなど、基本的な政策を樹立しなければならないときだと思うのであります。アジアの緊張を強調し、これに対処するという考えではなくて、アジアの緊張緩和、平和実現のためにわが国はいかなる根本的方策をとるべきかという、わが国独自のアジア平和構想を策定すべきであります。これこそが、経済大国がさらに軍事大国へと必然的にたどった歴史的事実への初めての否定ではないかと私は思うのであります。(拍手)軍国主義復活への非難を払拭するまた唯一の道でもあろうかと思うのであります。
 したがって、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明における、韓国や台湾の安全がわが国の安全に密接不可分であるという、力による対決姿勢を露骨に示したいわゆる韓国、台湾条項や、米軍のアジアにおける存在がアジアの安定の大きなささえになっているなどの認識は、むしろアジアの緊張を高めていることを率直に認めなければならないと思うのであります。
 今年初頭に行なわれたサンクレメンテの日米首脳会談で、これらの認識が全面的に修正されるべきであったのでありますけれども、発表された共同声明からは、これをうかがうことはできなかったのであります。わが国がアジアの冷戦構造を積極的にくずして、アジアの緊張緩和、平和共存への努力を尽くそうとするならば、この韓国、台湾条項の修正こそ最も必要であったのであります。総理は、アジアの情勢に対し、いかなる判断を持っておられるのか、ぜひともお聞かせを願いたいのであります。(拍手)
 さて、日中国交回復問題は、すでに論議の段階は過ぎ、実行の段階であることは言うまでもないと思うのであります。
 総理が、年頭に述べられた「ことしは日中復交の年」が真実のものであるとするならば、今年は、佐藤内閣の対中政策の根本的転換の年でなければならないはずでありますけれども、所信表明においては、残念ながら何ら従来と変わってはおりません。特に台湾に対する考えが何ら示されていないのは、いかなる理由によるものでありましょうか。
 また、さらに重要なことは、自民党党紀委員会が、超党派の日中国交回復議員連盟代表団長藤山愛一郎氏が、中国を訪問して中国側と発表した共同声明について、同氏を党規違反として処分し、佐藤総理も、総裁としてこれを認めたということであります。これを対中政策の基本姿勢とするならば、総理の言う日中国交回復は、単なるゼスチュアにすぎないと言うべきであります。(拍手)
 もし総理が真に日中国交回復を行なう意思があるとするならば、それだけの政府の具体的な方針をここに示すべきであります。少なくとも、日中復交交渉に当たるための政府の基本的方針は何でありましょうか。すなわち、中国側がすでに復交に関する原則を明示しているのでありますから、政府の日中国交回復の基本的条件を明らかにすることが必要であろうかと思いますが、ここに政府の明確な見解を承りたいのであります。(拍手)
 また、この際、明確な答弁を求めたいのでありますが、中国を代表する唯一の正統政府は中華人民共和国であり、台湾は中国領土の一部であるということをお認めになるかどうか、日台条約廃棄という前提に立っての政府間交渉は全く考えておられないのかどうか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 総理は、所信表明におきまして、沖繩返還の実現を高らかにうたっておられます。しかし、さきの国会でわれわれが指摘した重要な問題が、何ら解明されてはおらないのであります。特に、国会の決議に基づいて、核兵器の撤去、基地の細小整理に対し、さきの日米首悩会談で明確な取りきめを行なうべきであったにもかからわらず、これを実現することができなかったのは、きわめて遺憾であります。政府は米政府と、国会決議に基づく取りきめをするため引き続き交渉すべきであろうと思いますが、その決意のほどを承りたいのであります。
 また、核兵器の撤去作業につきまして、沖繩県民の納得できる方法で行なうことをこの国会でお約束をいただきたいのでありますが、いかがでありましょうか。
 さらに、毒ガス、核の本土基地存在に対する国民の疑惑にどうおこたえしようとしておられるのか、この際あわせて明確にしていただきたいのであります。
 米側は、最近、米軍基地の再編成を行なおうといたしております。たとえば、P3偵察機の那覇空港から本土への移転などがそれであります。国民は、沖繩基地の縮小撤去はもちろん、本土の米軍基地の縮小撤去をも願っているのであります。本土の沖繩化による解決を願っているのでは決してございません。この米軍基地の再編成について政府はどのように考えておられるのか、承りたいのであります。
 さらに、沖繩県民の要求である、返還前にドルの円への切りかえ、差損の補償あるいは軍労務者の間接雇用制への移行、こういうものを実現する用意はおありなのかどうか、あわせて伺いたいのであります。
 かつて、沖繩決戦以前に軍隊が一人もいなかった沖繩にとって、自衛隊派遣は、県民のきわめて強い反対があります。この際、自衛隊の沖繩派遣を中止すべきであると思いますけれども、総理の所信を伺いたいのであります。
 次に、朝鮮問題について若干お伺いをいたします。
 ことしの国連総会において、朝鮮問題が大きな課題といわれております。政府・自民党は、朝鮮民主主義人民共和国敵視政策をとり続け、日朝交流を目ざす日朝議連の訪朝に対し不当な干渉を行なったことは、きわめて不満であります。今日の日中間の交流、貿易の拡大を考えてみましても、これは決して政府の手によって行なわれてきたものではありません。むしろ、政府・自民党の干渉の中でひたむきな努力が積み重ねられてきての今日の成果であることを、十分認識しなければなりません。この誤りを政府は再び繰り返そうとしていることは、断じて許されないことだと思うのであります。(拍手)総理は、日朝議連の成果をどのように考えておられるのか、貿易をはじめ今回の日朝議連の取りきめを支援する考えはおありなのかどうか、この際お聞かせを願いたいと思うのであります。
 これまで朝鮮問題について、国連におきましては、第三回総会の百九十五号決議をはじめ、朝鮮民主主義人民共和国に対する不当な決議が行なわれてまいりました。私は、これらは当然に撤回されるべき時期が来たと思うのでありますが、本年の国連総会におきましても、最大の問題となることは必至であります。これに対するわが国の明確な態度をお示しになるべきであろうかと思いますが、特に、この撤回決議が提出された場合のわが国の態度はどうなのか、この際、これもあわせてお聞かせを願いたいと思うのであります。(拍手)
 したがって、これに伴って、吉田・アチソン交換公文に関する交換公文、国連軍の地位に関する取りきめなど、こういうものを消滅せしめるべきであると思いますが、総理の所信を承りたいのであります。
 次に、日ソ関係についてお伺いをいたします。
 第二回日ソ定期協議会が先日開かれ、共同声明が発表せられましたが、日ソ間の懸案は、言うまでもなく北方領土問題であります。今年中に平和条約締結の交渉を開始するということになっておりますが、領土問題をたな上げにしての平和条約はあり得ないとわれわれは思いますけれども、この点、総理のお考えを確認をしておきたいのであります。(拍手)
 また、返還を求める北方領土の範囲はいかなるお考えに立っておられるか、中・北千島、いわゆるクーリール・アイランズに対してはいかなる考えを持っておられるのか、それぞれ明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 さらに、北洋漁業の安全操業は、政府の責任において解決をすべきであります。
 また、日ソ共同声明におきましては、貿易や経済協力をうたっておりますけれども、政府はいかなる基本的な考え方に基づいて、シベリア開発をはじめ日ソ協力を行なうつもりであるか、この基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 以上、きわめて重点的に内政、外交にわたって質問をいたしましたけれども、総理は、わが国の重大な転換期にあたって、信念に根ざす答弁をもって、その所信を国民の前に明らかにしていただきたいことを心からお願いをいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#24
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、竹入委員長の傷がいえて、お元気な姿をこの本会議の壇上に見ることができたことを、心から喜ぶものであります。お喜びを申し上げます。(拍手)
 政府といたしましては、暴力は、個人によるものであろうが集団によるものであろうが、きびしくこれを糾弾して、健全な民主主義の発達をはかる決意であります。
 さて、お尋ねの第一点にお答えをいたします。
 わが国の未来像もしくは新しい国家目標をどう考えるかということであります。
 すでに指摘されているとおり、戦後のわが国は経済発展に重点を置いた結果、ともすれば生産第一主義となり、国民福祉の面でやや不十分な面があったことは否定できません。しかしながら、今日国民所得はほぼ西欧の水準に追いつき、国民総生産も自由世界第二位となったのであります。過般の国際通貨調整に見られるとおり、円の価値も大幅に上昇しております。したがって、われわれはここで発想の大転換を行なって、国内的には高度福祉国家への軌道をしっかりと設定すべき時期が到来したものと考えます。わが国の新しい国家目標は、国民の一人一人が真に心豊かに暮らせる高度福祉国家の建設でなければならないものと考えます。来年度予算案は、その出発点となるものとして、政府の意欲の一端を示すものでありますが、私は、福祉なくして成長なしという理念のもとに、新しい目標を追求してまいりたいと考えております。各位の御理解を切望する次第であります。
 次に、竹入君から、わが国の社会保障は不十分であるとのおしかりがありましたが、政府は従来より社会保障充実につとめてまいり、今日においては国民皆保険、皆年金が実施され、また、昭和四十六年度からは懸案の児童手当制度が発足するなど、制度的、体系的には、わが国の社会保障制度はほぼ西欧水準に達したといえると思います。ただ、内容的にはなお一そうの整備を要する面も多く、竹入君御指摘のように、今後ともその充実につとめてまいることが必要であります。
 また、社会福祉施設については、昭和四十六年度以降は、厚生省において策定した社会福祉施設緊急整備五カ年計画構想の趣旨を尊重して、社会福祉施設整備費を大幅に増額し、従来立ちおくれを指摘されていた社会福祉施設の整備を著しく拡充してきたところであります。
 なお、今後の社会保障をどのように進めるかについては、今日のように社会経済の変化が激しいときには、将来にわたる計画を詳細にきめることは困難な面もありますが、政府としては、四十七年度において策定を予定している新しい長期計画において、社会保障の充実のための政策の方向を明らかにしたいと思います。
 次に、公共投資についてでありますが、まず、政府が来年度において、生活関連投資に重点を置いて公共投資の拡大をはかっていることを申し上げたいと思います。
 来年度の公共事業は、災害復旧等を除いて、全体として二六・四%の伸びでありますが、このうち下水道、環境衛生等の生活環境施設整備事業の伸びは、最大の五八・九%の伸びとなっているのであります。
 また、御指摘の地方の財政負担能力については、来年度総額約八千億円にのぼる一連の地方財政対策を講ずることを予定しており、地方公共団体の生活関連投資の整備促進も、ほぼ支障なく行なうことができると考えております。
 さらに、公共用地の取得については、公共用地先行取得債、水田買い上げ債等の制度を活用して、地方公共団体が所要の用地の確保をはかることを期待しております。
 なお、地価の問題については、地価公示制度を来年度一そう充実するほか、地方公共団体等による用地の先行取得制度の強化について鋭意検討中であり、公共事業の円滑な施行に遺憾ないようにする考えであります。
 次に、国債の問題については、政府は、四十七年度予算編成にあたって公債政策を積極的に活用することとし、国債の大幅な増額をはかっておりますが、景気停滞を反映して国内に大きな供給余力があり、国際収支が黒字を続けているわが国経済の現状では、このような公債政策の活用が、景気を過熱させ、インフレにつながるようなおそれはないものと考えております。
 なお、公債政策については、従来から経済動向等に即応した適切な運営をはかってきたところでありますが、今後におきましても、経済、金融情勢等を十分勘案し、これに即した弾力的な運用をはかってまいる所存であります。
 また、付加価値税の問題は、今後におけるわが国の税体系のあり方にも関連する大きな検討課題の一つであるとともに、物価の影響等の経済効果、執行上の問題点等、研究を要する点も少なくないので、広い角度から慎重な検討を行なっているところであります。
 次に、税制の問題でありますが、竹入君の、来年度所得税の減税が全く行なわれていないかのような御質問の筋道については、賛成いたしかねます。来年度においても、むしろ例年に劣らない所得税減税が行なわれたというべきであり、ただ、さきの沖繩国会において、景気浮揚策の一環として、その実施を繰り上げて年内減税としたのであって、その点は誤解のないように願いたいと思います。
 昨年秋に行なった千六百五十億円の年内減税は、昭和四十七年度には約二千五百三十億円の減税になるのであります。また、来年度においては、引き続き、地方税の個人住民税及び個人事業税について約一千億円に及ぶ減税を行なうこととしております。これらを合わせると所得減税の額は約三千五百億円に達し、相当な減税の額になっているのであります。
 他方、企業課税については、期限の到来する法人税の付加税率の適用期限を延長し、また、金融保険業の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率の引き下げを行なうほか、租税特別措置についても輸出振興税制の大幅縮減を行なうことと、これによって生じた財源を、老人、寡婦及び配偶者に対する配慮など、福祉対策や住宅対策、公害対策、中小企業対策などの税制措置に充てて、税制の公平化、合理化につとめているところであって、企業中心の税制ということは当たらないのであります。
 なお、今回の税制改正において課税最低限の引き上げは行なわれておりませんが、四十六年度において二度にわたって行なわれた税制改正を平年度化すれば、課税最低限は、夫婦、子供二人の給与所得者の場合では、四十六年度年内減税前に対して七・七%の上昇となり、この引き上げ率は、経済見通しにおける四十七年度の消費者物価の伸び率、五・三%を上回っているのであります。
 次は、物価の問題であります。物価の安定をはかり国民福祉の向上に資することは、政府の重要な政策課題であり、かねてより各般の努力を傾注してきたところであります。物価安定の長期的な環境を整備するためには、経済の安定成長路線を確保するとともに、低生産性部門の構造改善、流通機構の合理化、競争条件の整備等の諾施策を一そう推進していく必要があります。政府は、このような考え方のもとに、わが国経済をすみやかに安定成長の軌道に乗せるため、財政金融政策を機動的に運営するとともに、四十七年度予算において、物価対策関係経費を大幅に拡充することとしております。
 当面の物価対策の重点としては、円切り上げによる輸入品価格の低下を消費者物価の安定に結びつけるよう、所要の追跡調査と、指導の体制を強化するとともに、自由化、関税の引き下げ等を通じて輸入の拡大を進めることとするほか、野菜等生鮮食料品の価格安定対策を一段と充実してまいる所存であります。
 また、公共料金については、国民経済全体の均衡と公的サービスの円滑化をはかるという見地から、今回その一部を改定することといたしましたが、公共料金の引き上げを極力抑制的に取り扱うという基本方針は、今後ともこれを堅持する方針であります。
 なお、一般物価の騰勢も最近鎮静化しつつあるので、これらの政策努力ともあわせて、物価の安定は十分期し得るものと考えております。
 次に、土地対策についてでありますが、その重要性、緊急性は、竹入若御指摘のとおりであります。最近における地価の騰貴は、基本的には、人口、産業の都市集中による宅地需給の不均衡に基づくものでありますが、さらに、土地が投機的投資の対象となりやすく、売り控えの傾向を生じがちであることがこれに拍車をかけているものと思われます。したがって、地価を安定させるためには、投機的投資あるいは売り控えを抑制するための施策を実施するとともに、土地利用計画を策定し、これに基づく土地利用の促進をはかり、計画的かつ大量の宅地の供給を促進し、あわせて公的土地の保有の拡大等、その活用をはかるなどの施策を総合的に実施することが必要であります。
 政府としては、このような考えのもとに、従来から土地利用の計画化、税制対策、公共用地の先行取得の推進等、各般の施策を講じてきたところでありますが、今後さらにそれぞれの施策の強化について検討し、総合的な施策の推進につとめてまいる所存であります。
 なお、竹入君からの土地問題対策特別委員会設置の御提案につきましては、土地問題の重要性にかんがみ、その御趣旨には賛成でありますが、その実効性等についてさらに検討させていただきたいと思います。
 次に、防衛費の問題についてでありますが、社会党の成田君にもお答えしたとおり、国力、国情に応じて自衛力を整備し、国の安全を確保することは、政府の一貫した基本方針であります。四十七年度防衛予算の伸びは、沖繩復帰という特殊事情があるため、一九・七%となっておりますが、これは一般会計の伸びよりも小さく、また、社会保障、文教、科学振興の予算の伸び率と比較しても決して高いものではなく、国の各般の施策と調和のとれたものと考えます。
 なお、四十七年度予算は四次防決定前に編成されているので、三次防事業の継続的なもの、現有勢力の当面の維持に必要な措置を中心に経費が計上されており、原則として四次防の新規構想に基づく増強は差し控えております。
 また、竹入君は四次防を取りやめよとの御意見ですが、複雑な国際情勢のもとでわが国の平和と独立を守るためには、防衛力整備に空白を生じないよう措置していくことが必要であり、政府として四次防を取りやめることは考えておりません。
 次に、昨年の暮れ以来、一部水俣病患者が自主交渉を求め、これが難航した問題については、政府としても、このような不幸な事態を深く憂慮し、その円満な解決をはかるため努力を続けてまいりました。幸いにして、患者、会社双方の話し合いの糸口も見出され、事態の好転を見ていることを喜びたいと思います。政府としては、今後とも公害紛争の円滑な解決がはかられるようつとめてまいる所存でありますが、根本的には公害の未然防止に全力を傾注し、あわせて被害救済対策の充実をはかる方針であります。
 次に、外交問題についてお答えいたします。
 わが国は、流動するアジア情勢の発展に即応しつつ外交努力を多角化し、アジアにおける緊張緩和並びに平和と安定の確保に努力するとともに、アジア諸地域の経済発展に寄与する方針であることは、かねがね申し述べているとおりであります。
 国際関係は一そう多極化しつつありますが、その中で緊張緩和が見られるとはいえ、対立の要素がなくなったわけではありません。この客観的事実をすなおに認めることは依然必要であります。わが国が、国民の国を守る気概のもと、国力が、国情に応じて自衛力を整備し、日米安保体制と相まって国の安全を確保することを基本方針としているのは、このような考え方に基づくものであることを御理解いただきたいと思います。
 次に、竹入君も御承知のとおり、国際情勢は刻々と流動しております。その変化の実態を見きわめることが肝要であると思います。一九六九年当時の極東における国際情勢と現在とではかなりの変化があり、現在は、基本的には緊張緩和の方向に向かっていると判断されます。しかしながら、わが国に隣接している台湾、韓国をめぐる国際緊張が激化すれば、わが国にとって重大な関心の対象とならざるを得ないのは当然である、このような考え方自体には変わりはないのであります。共同声明は、そのときどきにおける相互の認識を述べ合うもので、今回は、現下の世界情勢において緊張緩和へ向かう動きが見られることを認め、永続的な平和と安定の増進のために一段の努力が必要であることを強調したのであります。
 なお、私は、現在のアジア情勢は全般的には定着、固定化したと言い得る段階には立ち至っていないと考えますので、情勢の推移を注意深く見守り、慎重に対処すべきであると考えております。
 政府の対中国政策が昨年の国連総会を契機にはっきり転換したことは、竹入君も御承知のとおりであります。日中間には各種の問題があり、かつ、日中双方にはそれぞれの立場と主張がありますが、双方が善隣友好関係の樹立を目ざして政府間の話し合いを積み重ねていくことができれば、相互理解と相互信頼がもたらされ、日中関係は大きく前進するものと考えます。政府としては、日中間に相互の立場尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決、武力不行使、平和、進歩及び繁栄のための相互協力という基本原則に基づく善隣友好関係が樹立されることを強く期待している次第であります。
 また、藤山愛一郎君についての自民党の処置についての御意見がございましたが、この席でその点に触れることはお許しを得たいと思います。
 また、政府が、昨年の国連総会において中華人民共和国政府が国連総会の議席並びに安全保障理事会の議席を占めることになったことにかんがみ、中国は一つであるという認識のもとに、今後中華人民共和国政府との関係の正常化のため、政府間の話し合いを始めることが急務であると考えております。日華平和条約の問題をはじめ日中間の諸問題は、国交正常化交渉の過程で必ずおのずから円満な解決の道が見出されるものと確信しております。
 次に、沖繩問題について種々お尋ねがございました。
 まず、沖繩の基地の整備縮小については、サンクレメンテ会談の成果を踏まえて、整理縮小されるべき具体的な施設、区域について、今後米国政府と協議を行なってまいります。
 また、核兵器撤去についても、共同発表に明記されているように、米国政府の確約が完全に履行された確認を返還の際に取りつけることになっております。これらの点は竹入君も十分御承知のことと思います。
 核の撤去作業に関しては、安全対策について万遺漏なきを期するよう、米国政府にかねがね要望しており、米側も万全の措置を講ずる旨確約しておることは、すでに繰り返しお答えしているとおりであります。
 また、わが国の本土に核兵器や毒ガス兵器がないことについても、前国会における政府の説明を通じてすでに御理解を得ているものと考えます。
 次に、沖繩基地の縮小が本土にしわ寄せされるのは本土の沖繩化だとの御意見がありましたが、米軍基地の縮小整理にあたって、沖繩の復帰後も依然として本土と沖繩を区別して扱うことはいかがかと考えます。政府としては、沖繩を含むわが国全体としての米軍基地の整理縮小につとめるとの立場から、本土と沖繩を区別することなく考えてまいりたいと思います。
 竹入君はまた、沖繩への自衛隊配備を中止せよとの御意見でありますが、政府としても、沖繩県民の一部に自衛隊配備に対する反対があることは承知しておりますし、反対される一部県民の心情も理解できぬわけではありません。しかしながら、沖繩がわが本土の一部となる以上、沖繩の防衛と民生協力の責務をわが国が負うのは当然のことでありますので、部隊の配備にあたっては、県民の理解と支持を得るよう努力してまいりたいと思います。
 次に、沖繩の円・ドル交換については、これを復帰前に繰り上げて実現してほしいとの沖繩県民の要望もあるので、さきにサンクレメンテでの日米会談で当方より米側に申し入れ、目下両国間で検討を進めているところであります。
 なお、復帰前に一ドル三百六十円で通貨を交換することにかわる次善の策として、先般、県民各人の通貨及び通貨性資産の価値を保証するために、復帰後給付金を支給することとしたのは御承知のとおりであり、このために必要な財源は明年度予算に計上しております。
 また、軍労務者の関係、間接雇用移行については、復帰と同時に本土並み間接雇用を実現すべく、目下諸般の準備を進めております。
 次に、日朝議連団の訪朝についてのお尋ねがありました。政府としては、竹入君の言われるように、代表団の訪朝について不当な干渉をしたことはございません。また、北朝鮮敵視の政策をとっているという事実もありません。今回の代表団は、御承知のとおり、政府派遣のものでなく、また、共同声明がどのような話し合いの結果作成されたのか、政府としては承知いたしておりませんので、現時点でこれについての公式見解を申し上げる立場にありません。
 また、お尋ねの貿易代表部の構想についても同様であります。
 次に、朝鮮問題に関する国連の関係決議は、国連の場において正当な手続を踏んで採択されたものでありますので、これを一方的に不当なものときめつけるのはいかがかと考えます。政府としては、この問題がことしの総会の議題となる場合には、朝鮮に関する国連の活動を支持するという従来からのわが国の基本的立場に立って対処してまいります。
 また、吉田・アチソン交換公文で国連軍地位協定等を失効せしめるべきではないかとの御意見でありますが、政府としてはそのようなことは考えておりません。
 最後に、日ソ関係の御質問にお答えをいたします。
 政府としては、これまでもあらゆる機会をとらえて、ソ連政府に対して、北方領土問題の解決と日ソ平和条約締結の必要性を説いてまいりましたが、先般来日したグロムイコ外相との話し合いで、平和条約締結交渉を本年中に行なう旨の正式な合意に達したのであります。この交渉では、もちろん領土問題の取り扱いが中心になりますが、政府としては、領土問題を話し合う場ができたこと自体、従来のソ連の領土問題は解決済みとの態度から見れば、大きな前進であると評価しております。今後の交渉においては、領土問題に関する日本側の立場を粘り強く主張し、日本の固有の領土たる歯舞、色丹、国後、択捉の諸島の祖国復帰を、国民各位の支持と、要望を背景に実現したいと考えております。
 また、安全操業の問題についても、政府は引き続きソ連側と話し合いを続け、解決に努力してまいります。
 日ソ経済協力についても、今後とも長期的展望に立って協力関係を一そう推進し、シベリア開発の諸プロジェクトについても、その具体的内容が固まり、かつ、それが国益に沿うものであれば、これに積極的に協力をしてまいる所存であります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#25
○藤波孝生君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二月一日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#26
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時四十三分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 高見 三郎君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君
        労 働 大 臣 塚原 俊郎君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
        国 務 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 大石 武一君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 竹下  登君
        国 務 大 臣 中村 寅太君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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