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1971/02/01 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第5号
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1971/02/01 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第5号

#1
第068回国会 本会議 第5号
昭和四十七年二月一日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和四十七年二月一日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)
 外務委員長田中榮一君辞任の件
 外務委員長の選挙
    午後二時四分開議
#2
○副議長(長谷川四郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)
#3
○副議長(長谷川四郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。春日一幸君。
  〔春日一幸君登壇〕
#4
○春日一幸君 私は、民社党を代表し、当面するわが国政の重要課題について、政府の方針をただしたいと存じます。(拍手)
 まず、質問の本論に入るに先立ち、この政局に対処される佐藤総理の御心境について質問いたします。
 ここに、あなたは、三十九年十一月の組閣以来本日まで、すでに七年有半にわたって首相の座にあられます。かくてあなたは、わが国内閣制度創始以来、首相として最長の記録を保持されるに至りました。いまや沖繩の施政権返還の日時も決定した現在、国民はあなたの退陣は、言うならばもはや秒読みの段階にあると思っております。また、貴党の有力者の多くが、異口同音に、佐藤首相の能事ことごとくここに終わったとして、すでに総理、総裁の後継者争いは荒々しく開始されております。
 総理は、年頭の記者会見で、常識の線をはずさない時期に引退するとの意向を表明されておりますが、その常識の線なるものは、依然としてなおあいまいであります。しかしながら、大筋として明らかなことは、佐藤総理はほどなく退陣される総理であり、したがって、この内閣はこれまた間もなく総辞職する内閣であるということであります。すなわち、ここに提出された予算案、法律案を実行する当事者は、しょせんは最終的には佐藤総理でもなく、居並ぶ閣僚各位でもありません。
 ここに、総理にお考え願いたいことは、このような事情のもとに、すでに浮き足立った内閣に対する国民の感情、わけても政府に対する国民の信頼と期待は一体どのようなものかという、このことであります。
 ここに、総理の退陣と総辞職を前提にした現内閣の存在は、わが国政の進路を混迷におとしいれ かつ行政機能を無気力なものにしております。いまや、わが国政は内外ともに重要課題が山積して、いっとき一瞬の渋滞も許されません。私は、あなたの長年にわたる御苦労に対しては別個の敬意を表するにやぶさかではありませんが、もはやわが政局は、総理の退陣を核にして、焦げくさいほどに煮詰まっております。この際、各界の揣摩憶測を一掃して政局の帰趨を明確にするために、総理は、みずから進んでその退陣の時期を明らかにするとともに、なおもその岡権力の座に立たれていることの意義と目的について、あらためて国民に向かって理解を求められるべきであると思うが、これに対する総理の御心境を率直にお述べ願いたいと存じます。(拍手)
 次は、経済政策の基本と財政金融のあり方について質問いたします。
 佐藤総理は、七年前、池田内閣の所得倍増政策を批判されて、そのアンチテーゼとして、人間尊重と社会開発並びに物価の安定をその政治スローガンに掲げて発足されました。しかしながら、過去七年間の佐藤政治の実績は、この公約に逆行し、一方において池田内閣を上回る超高度経済成長にみずからもおちいり、公害のたれ流しと物価の上昇を激発せしめ、他方、人間性の疎外と社会保障の立ちおくれを招来するなど、その公約は、いまにして見れば、政権獲得のための宣伝文句にすぎず、現に一片のから念仏に終わっておりますす。(拍手)まことに、わが国における経済管理の全機構は、現に政府と財界とが一体化して、まさにそれは日本経済高度成長株式会社と呼ぶにふさわしいそのような体制を備えております。
 かくて、佐藤政権のもと、経済の超高度成長は昭和元禄の風潮を呼び、国民は豊かな社会の虚像の前に、あすの破局も知らずに踊らされておりましたが、その終局は、あのようなドル・ショック、輸出規制ショックによる深刻な不況の到来でありました。われわれはこの現実に直面して、いまこそGNP至上主義に対し、真剣な反省を行なわなければなりません。私は、政府がここに国民の切実な要求を受け入れて、即刻、産業優先、生産第一、輸出中心の政策から、人間中心も福祉優先、生活重視の政策に大転換されることを強く要求いたします。
 そこで、その方針を実行するためには、第一に予算の仕組み、財政のあり方を根本的に刷新、改革する必要があると考えます。
 民社党は、かねてより現行の単年度予算主義の制度的欠陥を指摘し、国の予算は、財政投融資を含めて、経常経費予算、国民福祉予算及び公共事業費の予算の三つの部分に区分することを提唱してまいりました。すなわち、その国民福祉予算及び公共事業費予算については、およそ五カ年にわたる長期的展望に立って、その財政収支の規模と政策内容をあらかじめ明らかにするため、毎年度の予算とともに、向こう五年間にわたる長期計画を国会に提出することとするものであります。たとえ口に福祉国家の建設をどのように強調したとしても、そのビジョンはどのようなものか、また、そのビジョンをいかにして実現するか、すなわち、目標と手段を定めることなくしては、的確なる建設は行ない得るものではありません。
 今後の日本政治の進むべき方向は、それは人間中心主義、福祉優先主義、生活重視主義に立つものであることをここに再確認し、特に軍事大国への国際的疑惑を払拭するためにも、この際、予算制度の大改革と財政金融政策の質的大転換を断行すべきであると思うが、政府の見解はいかがでありますか。総理並びに大蔵大臣より御答弁を願います。(拍手)
 次は、物価政策並びに景気浮揚財政のあり方について質問いたします。
 物価問題は佐藤内閣のアキレス腱と目されてまいりましたが、それは日とともにいよいよ深刻の度を加えております。すなわち、本年度は、米の物価統制令の廃止のほか、郵便料金、電報料金、電話料金、ガス料金、国鉄運賃、地下鉄、バス、タクシー、授業料、医療費など、公共料金とそれに続く管理価格の値上げがメジロ押しにひしめいております。また、これら政府主導型の物価上昇は、生鮮食料品その他の物価上昇に拍車をかけようとしております。これでは、昨年の所得税やことしの住民税の減税などは、まるで焼け石の水にしかすぎません。
 政府は、さきに四十七年度の予算編成にあたって、「公共料金については、極力抑制的に取り扱うものとする。」して、物価抑制の公約を掲げられましたが、早くもこの公約はなだれを打ってくずれ去らんとしております。このようなことで政府は、国民に向かって何と申し開きができましょうか。
 また、円切り上げに伴い、輸入物資は一六・八八%安くなったはずであり、これによって物価上昇率は一%強抑制できるものといわれておりましたが、はたしてこのメリットはそのように物価に反映しておるか。特に輸入物資の値下げに対する政府の追跡調査はどのように行なわれておりますか。
 何はともあれ、物価の値上がりは断固として抑止すべきであり、そのためには、公共料金の引き上げは万難を排してこれを押しとどめるとともに、物品税、消費税の減免を行なうなど、政府はこの際、物価抑制のために有効なる施策を強力に実行すべきであると思うが、この局面における政府の物価対策は何か、佐藤首相より内閣の方針について、木村企画庁長官よりその具体策について、明確なる御答弁を求めます。
 なお、来年度予算案の特徴の一つである国債の大幅発行は、一面においてそれは不気味なインフレの危険をはらんでおります。現にこの種の国債は、市中消化の名目で引き受けられても、その後、短時日の間に、対日銀借り入れ担保として日銀に集約され、それによって日銀券が増発されているのが実態であります。このことは結局、財政資金を日銀券の増発によってまかなうことにほかならず、これはインフレへの直線コースともいえましょう。ここに、景気を浮揚させるためのてことして、財政がその役割りをになうことは理解できるとしても、その景気浮揚財政が一方においてインフレの悪作用を起こすことのないように、政府は同時に適切な歯どめの措置を並行させるべきであります。
 すでに、年々消費者物価の騰貴率は預金金利を上回り、かくて金から物への換物傾向が高まっております。また、これら一連の財政金融政策により民間に散布された財政資金が有効に使用されず、ときに投機化して、現に証券市場における株価の棒高にその悪性副作用の片りんをあらわすに至っております。いまや、政治不信の悪天候の中で、これに加えて、もしも通貨不信の乱気流を発生させるがごときことあらば、それこそ国民経済は、たちまち致命的な打撃をこうむることになりましょう。
 政府は、ここに一兆九千五百億という国債を大幅に発行するにあたり、インフレ防止のため、この際、市中引き受けの国債に対し、その保有期間を相当長期にわたって義務づけるよう特別の措置を講ずる必要があると思うが、これに対する政府の方針を総理並びに大蔵大臣よりお伺いをいたしたいと思います。(拍手)
 次は、国民福祉型税制への転換を要求し、これに対する二、三の具体策について質問いたします。
 これからの租税政策は、国民福祉を実現するために、現行制度は広範囲にまたがって刷新、改革されなければなりません。そのためには、今後の税制は、特に所得再配分機能にその重心を置きかえることが必要であります。
 戦後におけるわが国税制の特徴の一つは、資産所得に対する課税が優遇され、その反面、国民大衆の税負担が重課されて、ここに租税の所得再配分機能は著しく阻害されるに至っております。しかるに、政府が四十七年度の減税計画において所得税の一般減税を見送ったことは、きわめて遺憾とするところでありますが、今後の方針はいかがでありますか。
 さらにはまた、昨今政府が、高福祉高負担を唱えて、その手段として、低額所得者に逆進的負担増を来たす付加価値税の導入を考えておることは、これは国民福祉に全く逆行するものであると思うが、政府の方針はいかがでありますか。
 なお、この際、特に研究開発費と教育関係寄付金に対する税法上の特別措置について伺っておきます。
 わが国の企業は、交際費はきわめて巨額の支出をする反面、研究開発費の支出は比較的軽少であって、これは民族の将来にとって大きな問題であります。資源乏しきわが国が世界に向かって負するものは、実にわが民族のバイタリティーとそのすぐれた頭脳であります。したがって、今後は、技術の研究開発とともに、教育の振興について格段の施策を積み重ね、もってわが国経済の体質を強め、同時に国民の教養度を一段と高めなければなりません。
 よってこの際、交際費には節約を、研究開発費には増額をという企業のモラルと習性を育成するため、交際費課税の強化と研究開発費の経費算入を大幅に緩和することとし、また、一方において、教育国家の建設を目ざして、教育に充当する寄付行為は税制上の優遇措置を拡大するなど、この際、税制の面においても政策の基本の転換に即応して所要の新政策を取り入れるべきであると思うが、以上、私の提唱に対し総理並びに大蔵大臣から政府の方針をお示し願いたいと存じます。(拍手)
 次は、わが国農政上の重要課題について質問いたします。
 GNP世界三位を誇る経済成長の中で食糧自給度は急速に減少の傾向にあり、さらに、米の減反政策と農畜産物の輸入の増大によって、いまや日本農業は一そうに危機感を深めております。
 ここに、わが国は、幸いにも農林漁業資源にめぐまれた立地条件にありますので、その施策よろしきを得るならば、さらに食糧の自給度を高めることは可能であります。
 政府はこの際、従来のごとき場当たり的農政を清算し、長期計画に基づく総合農政を確立するとともに、特に当面、生産農民を脅かしている果実、果汁、牛肉等、農畜物の過大な輸入について再検討を行ない、これにかわって、国内増産対策を推進し、もって自営農家の育成に努力すべきであると考えるが、政府の方針はいかがでありますか、総理並びに農林大臣より御答弁を願います。(拍手)
 次は、沖繩問題について質問いたします。
 昨年の臨時国会における沖繩米軍基地の縮小に関する本会議決議に対し、政府はその後これが実現のためどのように取り組んでおられますか。
 なお、その覚え書きリストに区分されたものでも、復帰日以前に縮小され得るものについては、政府は施政権返環の以前においてもこれが返還を求めて、対米交渉を強力に推し進めるべきであると思うが、政府の対米折価の現状はどうか。
 次は、沖繩復帰に伴う政府の施策には、勤労者に対する配慮が博しく欠けております。特に重大へは問題点の一つとして、民間労働者の賃金のドル・円換算に対し、政府はこの際積極的な対策を講ずべきであります。すなわち、一ドル三百八円の新レートで賃金が切りかえられれば、労働者の実質賃金は二〇%近くベースダウンすることとなり、かくて沖繩同盟一万の労働者は、ここに三百六十円レートによる円・ドル切りかえを要求して、本日よりストライキに突入しために航空、電力、金融機関などは麻痺状態におちいっております。政府並びに自治体職員については、特に俸給表を適用することにより実質的に被害が及ばないように措置されるにもかかわらず、これに比べ、同じ立場にある民間労働者に対して何らの救済が行なわれないことは、これは法律の前に国民は平等たるの原則に照らし、当事者としてとうていがまんできるところではありません。(拍手)
 政府はこの際、これが解決をはかるため、民間企業に対する財政金融上の助成など、その他適切な措置を講ずべきであると思うが、政府の御方針はいかがでありますか、総理より御答弁を願います。(拍手)
 次は、政府のアジア政策について質問いたします。
 注目のニクソン訪中も眼前に迫り、アジア情勢は戦後二十七年にして、いまや新しい局面を迎え、緊張緩和の方向に向かって大きく動き始めております。このニクソン訪中は、これまでのアメリカの冷戦構造的アジア政策がすでに破綻したことを、米国がみずから告白したものにほかなりません。アジアの日本たるわが国は、いまこそアジア政策の基調を根本的に練り直し、想を改めて新しく出直さねばならぬものと考えます。要するに、言行一致のもとにその政策を平和共存に徹底させることであります。特に食糧自給度が低く、かつ資源の乏しいわが国は、他国と争っては国民の暮らしが成り立たないことはあまりに明白であり、それは破滅以外に何もないことは、さきの第二次大戦が冷厳に証明しておるところであります。かれこれ真剣に思いめぐらせば、これまでの冷戦構造の配置に従い、わが国がアメリカの極東戦略の片棒をいつまでもになうことは、明らかにこの基本理念にそむくものであります。
 この際、政府はその眼をアメリカからアジアに向け直して、その外交方針、経済政策ともどもに、アジア全域に対するこれまでの感度を根本的に洗い直し、立て直す必要があると思うが、この際、総理より、日米安保条約の再検討を中心に、わが国アジア政策の進路をどのように構想されておるか、御所信のほど、お示し願いたいと存じます。(拍手)
 次は、朝鮮問題について質問いたします。
 ここに、朝鮮における南北の分裂そのいきさつを同じくしている東西ドイツにおいては、このほど平和共存の原則が東西双方によって確認せられ、かくて、本年秋の国連総会では、この東西両ドイツの国連加盟が何時的に認められることは、もはや確実と見られております。すなわちこのことは、武力による統合も、話し合いによる統一も、現実の問題として当面それは実現不可能なことを、双方が諦観し合ったからにほかなりません。
 これら東西両ドイツの現実の動き直視するとき、わが国の対朝鮮政策が韓国にのみ重点を置くのあまり、北の存在をことさらに無視する体制にあることは、この際、情勢の変化に対応する立場から、ここに再検討を要するものと思もわれます。すなわち、わがアジア外交の基本は、まず近隣諸地域の平和と安全に寄与するものでなければならず、よって、その対策には、あらゆる対策から生ずるあらゆる緊張を、あとう限り緩和させるものでなければなりません。もとより、私どもも南北朝鮮がすみやかに民族国家として統一ざれることを希求してやみません。しかしながら、その過程においては、現実上なおさまざまな形態を保ちつつ、時の至るを待つことになりましょう。
 したがって、政府は流動する国際情勢の推移と、その将来への展望に立って、この際、対朝鮮政策の転換はかることとし、当面その具体的アプローチとして、このほど日朝議連の訪朝団と朝鮮対外文化連絡協会との間に締結されたあの日朝貿易協定に対しては、政府はこれを実行させるため全面的な協力を与えるべきであると思うが、これに対する政府の方針はいかがでありますか、佐藤総理より御答弁を願います。(拍手)
 次は、中国問題について質問日をいたします。
 質問の第一は、台湾の法的地位並びに政府の台湾政策についてであります。
 わが党は、この問題について「中国人民日を代表する唯一の政権は中華人民共和国政府であり、台湾は中国の不可分の領土であって、中国の内政問題である。したがって、日華平和条約は廃棄、解消せらるべきもの」と原則的に理解しておりまするが、これに対する佐藤総理の御見解はいかがでありますか。(拍手)
 政府は、従来、台湾の地位について、しばしば帰属未決定論をとってまいりました。しかしながら、わが国が台湾を放棄する以前に決定されていたカイロ覚書では、日本が清国人から盗取した満州、台湾等を中国に返還させると日を明定することによって台湾の帰属を明確にし、かつその後のポツダム宣言によってこのことが再確認されているのであります。したがって、これまで政府が述べてきたところの台湾帰属に関する国際会議がその後開かれていないことを理由とする、いわゆる帰属未決定論は、まさしくこれら二つの国際宣言を無視した詭弁にすぎません。現に中国政府を承認した世界の六十九カ国は、それぞれ明示的に、あるいは黙示的に、台湾が中国の領土であることを堂々と認めております。
 以上の歴史的経緯にかんがみ、政府は台湾を中国の領土と認めるか、それともなおも帰属未決定論に固執するか、この際、政府の見解をまず総理より明確に示されたいと存じます。(拍手)
 そこで問題は、今後の政府の台湾政策であります。
 稲田外相は、外務省発行の「世界の動き」一九七二年一月号に「新しい年日迎えて」と題し、次のように述べられております。すなわちそれは、「日本政府は、……国民政府をいわれなく一挙に追放することは国際信義の見地から妥当ではないとの立場をとった次第でありますが、ひとたび国連の審判が下された以上、これを厳粛かつ率直に受けいれる」云々というものであります。これの意味するものは、アルバニア決議案が採択された以上、台湾政府はもはや中国を代表する政府ではなくなったので、この事実を率直に受け入れて今後の対中国政策を推進するということに理解されるが、この解釈に御異議はありませんか。
 ならば、国連中心主義のわが外交路線上からは、台湾政府は今後は存在しなくなるのであるか、またそのことによってわが国と台湾政府との関係は今後どのように変化していくのであるか、それとも何ら変化はしないのであるか、変化しないとするならば、その理由は何であるか、外務大臣より明確なる御答弁を願います。
 次は、サンクレメンテにおける日米両首脳会談とその共同声明について質問いたします。
 問題の中心は、台湾の安全とわが国の安全との関連性についてであります。
 総理は、一月八日、首脳会談面後の記者会見においてこの問題に関する質問に答え、今回の共同声明には、さきの共同声明、すなわち、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にあったいわゆる台湾条項、すなわち、台湾の安全は甘木の安全にとってきわめて重要な要素なるもの、これがなくなっていることにかんがみ、この問題点は今後はなくなったものと理解されたいと言明せられました。しかるところ、その質問に続いて行なわれた両極の質問に対し総理は、しかしながら、朝鮮、台湾は日米安保条約の適用範囲であるから、その地域に紛争が起きて在日米軍が出動する場合は、そこには事前協議を経て日米安保条約が機能することになると述べて、これは実質上前の言明を打ち消す趣意の答弁をなさいました。国民は一体これを何と理解すべきでありましょうか。その場当たりの出まかせを聞かされておる感じで、これが一国の総理の弁かと、私は当時その宇宙中継のテレビの前であっけにとられる思いがいたしました。まさにその政策方針は首尾一貫せず、その言動は支離滅裂であります。
 この際、私は、この問題の実相を確認するために、ここにあらためて次の三点について質問いたします。
 その第一は、台湾と日米安保条約との関連についてであります。
 そこで、台湾が中国の領土であり、台湾問題は中国の内政問題であるとの前提に立つとき、ここに日米安保条約が台湾の防衛のために発動できるものとすることは、それはわが国が中国の内政に干渉することにはなりませんか。(拍手)この点、その現実性の有無にかかわらず、安保のたてまえはどうなるのか、まずこの点について総理の見解を伺います。
 第二は、日米安保条約という極東の範囲についてでありますが、これは従来の政府答弁によれば、日米安保条約の発動の対象となるいわゆる極東の範囲なるものは、この条約が日本及び極東の自由圏諸国の安全を守るための条約であることにかんがみ、それは共産圏諸国の地域をその対象にしないものであることを明確にいたし、ております。この前提を踏まえ、かつはこの台湾が中国の領土であるとの認識に立つとき、なおも台湾を日米安保の対象地域に据えておくことは、それは日米安保条約のワクをはみ出すことになると思うが、政府の見解はいかがでありますか。(拍手)これまた、総理より明確なる御答弁を求めます。
 第三は、在日米軍が台湾防衛のための出動について、協議による了解を求めた場合におけるわが国政府の態度、方針についてであります。
 このほど稲田外務大臣は、台湾の安全については米国は条約上の責務を負っておるが、日本はその点ノーコメントであるから、台湾問題についてはわが国は独自の方針をとる旨述べられておりますが、この趣旨は、在日米軍が台湾防衛のための出動について、協議による了解を求めたとしても、わが国政府は、それに対しては独自の立場を守って、拒否する方針であることを示すものと解すべきであるか、この点について外務大臣より御答弁を願います。
 以上、三点にわたる私の質問は、要するに、一九六九年十一月の日米共同声明にある台湾条項は今後も存続するのか、もしくは消滅したのであるかの、この疑義を明らかにするためのものにほかなりません。
 まことに、この台湾条項こそは、いまや日米安保条約の本質に関する重大問題であり、かつは日中国交回復を妨げる大いなるネックであると考えますので、この際、特にこの共同声明条項の存否について、総理より明確なる御答弁を願います。(拍手)
 次は、中国との国交回復に向かって、政府は今後どのように外交交渉を進められる御所存か、ここにいささか所見を添えて政府の方針を伺っておきたいと存じます。
 ここに、昨年十月二十五日、国連が中国招請、台湾追放を議決した上は、国連中心主義を外交政策の基本とするわが国としては、これをもって中国問題に関する国際社会における国際法上の処理はもはや完了したものと受けとめるべきであると思うが、総理の見解はいかがでありますか。
 次いで、国連に中国が復帰し、台湾が離脱したという、この国際社会における厳然たる現実を正しく受けとめるならば、わが国は、今後は心機一転して中国との国交回復に同かって一意精進する以外に、他に中国政策はあり得ないと思うが、政府の認識はいかがでありますか。
 だとすれば、この上は、あたかも法令が制定されたときには、その法律に即して政令、細則が施行されるのと同様の心がまえで、すなわちこの際、日中復交への条件を整えるために、まず可能なものから懸案の処理を推し進めるべきでありましょう。
 そこで、現時点において、日本政府による独自的な行為で、それが日中国交回復に向かって有益なりと思われる課題は、およそ次のごときものではないかと思われます。
 まずその第一は、中国との間の貿易量の増大をはかるため、このほど、それは田中通産大臣も発言されたところでもありますが、政府は、この際、輸銀資金の使用を全面的に対中国貿易に認めることであります。
 その第二は、日中備忘録貿易弁事処の人員とその機能の大幅拡大を容認することとし、あわせてその機関に外交特権を認めることであります。
 第三は、航空協定、郵便、気象など、可能な限り各種の業務協定を締結するとともに、文化交流、スポーツ交流など、人的交流の拡大を促進することであります。特に政府レベルの人的交流をあらゆる手段を尽くし、あらゆる場所において発展させるべきであります。
 そして第四には、今後、台湾に対する一切の政府借款の供与を取りやめるとともに、民間企業の台湾進出に対して、政府は何らの便宜供与を行なわないようにすることであります。
 第五として、特に必要なことは、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明における台湾条項は、台湾問題にわが国が介入させられるおそれのあることを示すものでありますから、あの共同声明からこの項目を取り消すとともに、この機会に日米安保条約の適用範囲から、さきに述べた私の所論にもかんがみ、台湾地域はこれを削除することであります。
 以上の具体的措置は、わが国政府にその意思があらば、いずれも実行に移し得る可能性のあるものであり、またこれ以外に、当面わが国政府として日中復交推進のきめ手となり得る手段は他にないものと思われます。総理は、これらの諸案件を、その決意のもとに実行される御意思はないか、この際、国民が愁眉を開き得る御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 なお、この際、特に総理の御見解を伺っておきたいことは、このほど自民党党紀委員会が行なわれた日中議連会長藤山愛一郎氏に対する党規違反事件の処分のあり方についてであります。
 総理は、去る二十九日、その所信表明の中で、日中国交正常化を特に強調されて、すなわち、わが国の真意について、中国側に誤解や不信感があらば、政府としてはあらゆる努力を払ってこれを解消したいと述べられておりますが、ここに日中国交回復のために身を尽くして努力されている日中議連会長藤山愛一郎氏に対するこのような処分は、わけてもその原因が日中国交回復を希求されての共同声明であることにかんがみ、これが中国側に与える悪影響がどのようなものかについて、さらには、この日中議連が超党派の全政党的構成にあることにかんがみ、その会長に対する兜焼違反処分は、この声明に共同参加した全他党に対し、非難、挑戦の意義を持つものであることについて、(拍手)総理はどのように判断されておりますか。
 ここに総理に御考慮願いたいことは、米国の対中国外交の進め方についてであります。すなわち、米国大統領補佐官キッシンジャー氏は、米国が年来最も敵対敵視した中国に対し、あのように天衣無縫の活動を行なったのでありまするが、これに対して、米国政府もまたその与党も、これをとがめるどころか、その労を多として、一斉にその方向に向かって外交の進路を転換しておるのであります。これぞ、政治は国家の安全、国民の福祉のためにあるもの、政策は国益のために策定されるもの、このことを示す好個の実例でありましす。
 総理は、日本国の運命をになう唯一の外交権者として、かつは、公党間における公的な共同行為には、各党ともにおのずから配慮すべき政党モラルの存することを留意されて、藤山愛一郎氏に対する党紀処分は貴党の党内問題とはいえ、それは党内問題にとどめ得ざる情勢にあることを重視されて、この際、総理、総裁として適切なる調整をなさるべきであると思うが、総理の御見解はいかがでありますか。(拍手)
 日中国交回復に向かう途上に、ことさらにここに新しき障害を造成されることのありませんよう、特に御善処方要望いたします。
 最後に、私は佐藤内閣の政治姿勢についていささか所感を述べて、総理の御所信のほどを伺っておきたいと存じます。
 私は、かつて後漢の碩学荀悦のことばとして、政道に当たる者には偽私放奢なる四つの戒律があると聞かされたことがあります。その第一のものは、うそ偽り、偽物の偽とし、第二は私利私欲の私、第三は放らつの放、それに第四として奢侈の奢をあげ、これが政治を毒する四悪なりと戒め、すなわち、その国の政治にうそ偽りが平然と行なわれ、私利私欲がはびこるならば、道義はすたれ、法秩序は破壊されて、その国政は紊乱するが、それでも為政者が反省せず、放らつを事としておごり高ぶっているならば、その国はやがて軌道をはずれて転覆し終わるであろうというものであります。
 佐藤内閣の政治姿勢とわが国政の現状を打ちながめて、私はしばしばこの偽私放奢の戒めを思い、考えるのであります。
 たとえば、政治資金規正法も、行政機構改革の問題も、それは結局有言不実行に終わりました。
 かつて総理は、政治資金規正法については大骨どころか小骨一本抜くことはないと揚言されましたが、その後この法案は大骨小骨ぐるみにまるっきり姿を消して、いまはただこの名せりふが残っておるだけであります。(拍手)また、行政機構改革の問題も、現にその行監委員の任期は昨年十月完了したまま、いまに至るまでその後任人事の選任も行なわれないほどのていたらくで、これは開店休業と申すべきか、いずれにしても、過去六カ年間の実績には何ら見るべきものがございません。
 加えて、物価、交通禍、公害対策、地価対策、さらには国鉄、健保、食管のマンモス的赤字に対する根本対策など、これまた行く雲、流るる水のごとくに、そのほとんどが自然の成り行きにまかされております。
 わけても、対中国政策では、中国を二つとってみたり、また昨年秋の国連で、その逆の複合二重代表制を提案してみたり、かくて論理の矛盾と撞着の中でみずから転倒して身動きもできないというのが、その現状であります。
 このような荒涼たる政局の中で、閣僚たちの乱暴無頼の放言が打ち続いております。そうしてそのつど大臣、長官の更迭がたんたんといとも手軽に行なわれ、そこには内閣責任の一体性も、任命権者の政治責任も、何ら感じられておる気配はありません。まことに政道をむしばむ偽私放奢なる四つの政治悪が、いまやからみ合って佐藤内閣に集中したといっても過言ではないと思います。
 もはや、自民党は、二十四年の超長期にまたがる政治権力におぼれ、三百議席のおごりになれて、ついにまともな政治感覚を失なわれてしまったのではないでしょうか。国民の政治不信は日とともにつのり、高まるばかりであります。(拍手)これでは、このほど新聞による佐藤内閣に対する世論調査が、支持する者二四%、支持しない者五八%と、まさに絶望的な指数をあらわしたことは、むしろ断然のことに思われます。佐藤総理の御心証はいかがでありますか。
 わが国政にはつらつとした活気をよみがえらすために、そしてその転機を輝かしきものにするために、ここに総理の良心に訴え、いさぎよき御決断を切に御期待して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、春日君の政局に対する御意見は、しかと承っておきます。たいへん言いにくい事柄もずばりとおっしゃって、その点では私も敬意を表しますが、私の進退問題は私におまかせ願いたいと思います。同時に、春日君の御意見並びに御叱正に対しましては、この機会にありがたくお礼を申し上げておきます。ありがとうございました。
 次に、政策についてのお尋ねにお答えをいたします。
 経済政策についての御質問にお答えをするのでありますが、最近における内外経済情勢及び国民意識の変化に伴い、現在、わが国として、従来の経済成長パターンを修正し、国民福祉充実に一そう重点的な資源配分を行なうよう政策の転換をはかる必要のあることは、御指摘のとおりであります。このような状況にかんがみ、政府としては、四十七年度において国民生活の質的充実を最大の課題とした新しい長期計画を策定し、住宅、生活環境の改善、公害の防止、社会保障の充実などの具体的な政策の方向を明らかにしたいと考えております。
 次にお尋ねの、経常的な経費、国民福祉的な経費、あるいは公共事業関係経費を区分して計上し執行していくことは、現在の予算制度で十分その機能を果たし狩るものと考えるので、現在の単年度予算制度を改める必要はないと思っております。
 ところで、国民福祉関係や公共事業関係の経費について五カ年計画を策定していくべきではないかという御意見でありますが、この点については、すでに御承知のように、社会福祉に密接な関係のある住宅、下水道、都市公園の整備などの事業についても一定の計画を定めて処理しており、今後もできるだけ計画的に処理していくようつとめていく考えであります。
 次に、公共料金の問題についてお答えいたします。
 政府は、公共料金の引き上げについては、従来から極力これを抑制的に取り扱うこととしておりますが、しかしながら、公共料金といえども、経済社会活動の中の価格体系の一部を構成するものでありまして、長期にわたる固定化によって国民経済全体の適正な資源配分に支障を来たしたり、公共サービスの量的不足と質的低下によって国民の福祉が阻害されることのないよう配慮していくことも必要であると考えます。したがって、このような考えに立って、物価動向を勘案しつつ必要最小限度の値上げを認めることもありますが、公共料金を極力抑制的に取り扱うという基本的方針は今後も堅持することは申すまでもありません。
 次に、大型予算あるいは多額の公債発行がインフレを招来しはしないかと、たいへん御心配のようでありますが、この点につきましては大蔵大臣から詳細にお答えをいたします。
 また、教育問題についても、教育国家として、技術開発あるいは研究開発、これに税制、財政、資金、あらゆる面でこれと取り組め、こういう御鞭撻でございますが、この点は施政方針演説で詳しく述べたとおりであります。
 次にまた、食糧の自給度、これを高めるために総合農政を展開しろ、こういうお話であります。この点については農林大臣からお答えをいたします。
 次に、復帰に伴う沖繩の民間産業の賃金の切りかえは、個々の産業、企業の実情に応じ、当事者の話し合いで処理されることが望ましいところであります。当事者間で特に取りきめがなされない場合は、一般の比率でドルから円へ換算されざるを得ないものと考えます。公務員につきましては、本土と同じ水準に切りかえ、下がるものにつきましては保障することになっております。
 次に、アジア情勢は、目下激しく流動しつつあり、いわゆる多極化の趨勢のもとで、緊張緩和に向かっての努力が各方両で進められております。そのときにあたり、わが外交が、固定観念にとらわれることなく、長期的、大局的展望に立って、平和の確保と国益の増進を目ざして大きく展開しなければならないことは言うまでもありません。硬直しては絶対にいけません。しかしながら、アジアの平和を維持し、アジアの発展と繁栄を達成する上において、日米関係が安保条約を基軸として相互の協力と信頼の関係を維持することは、必要不可欠であると考えます。多極化時代の要請にこたえ、わが外交の多元化を進め、国益の一そうの増進をはかることは、日米両国の協調と相互信頼の基盤の上に立って初めて可能になるものと信じます。
 かような観点から、私は、わが国の基本政策の一つとして、今後とも、日米安保条約に集約されている日米両国間の緊密な友好協力関係を維持、増進していく所存であります。
 今般の日朝貿易合意書は、政府として関知したものではありませんので、現在これについての公式見解を示し得る立場にはないことは、すでに申し述べたとおりであります。
 次に、台湾の法的地位についてのお尋ねについてお答えをいたしますが、御承知のとおり、わが国は、サンフランシスコ平和条約により、台湾に対するすべての権利、権原を放棄したわけでありますので、わが国としては、台湾がどこに帰属するかについての発言権は持っておりません。しかしながら、中華民国政府も中華人民共和国政府も、ともに、台湾は中国の領土であるとの立場をとっていることをわれわれは承知しており、また、このことは、日本政府としても理解し得るところであります。
 次に、台湾と安保条約の関連についてお尋ねがありました。政府としては、北京政府と国民政府との関係については、当事者間で、武力を行使することなく、平和的な話し合いによって解決されるべき問題であると考えております。現存のところ、そのような事態は幸いにして予測されませんが、この問題をめぐって、もし万一武力行使が行なわれるような事態となれば、わが国のみならず、周辺アジア諸国、あるいは米国をはじめ世界の諸国が、これに重大な関心を持つのは当然であります。特に、わが国はじめ周辺諸国としては、そのような事態を対岸の火災視するわけにはいかないと考えております。
 また、極東の範囲についてのお尋ねでありますが、政府として、現時点で、安保条約にいう極東の範囲についての従来からの見解を改める考えはありません。
 事前協議制の運用についても、その時点における情勢を踏まえ、わが国の国益を確保するという見地から、慎重に判断しイエス、ノーをきめるという従来からの立場に変わりはありません。
 一九六九年の日米共同声明におけるいわゆる台湾条項は、台湾をめぐる国際緊張がもしも激化すれば、わが国にとっては重大な胸心の対象とならざるを得ないという、わが国の一般的な考え方を表明したものであり、このような考え方自体は何ら変わっておりません。
 次に、国際社会における処理というお尋ねの趣旨が、国連における処理を意味するのであれば、完了したと言って差しつかえないと思います。しかしながら、二国間等、国連以外の場における問題は、国連の決定によって法的に影響されるものではないと考えております。
 日中国交正常化は、かねてより政府の念願するところでありますが、国交正常化をはかるためには、政府間交渉が当然の前提であると考えます。そのため、政府としては、国交正常化の問題のみならず、双方に関心のあるあらゆる問題について政府間の話し合いを行なう用意があり、北京政府がこれに応ずることを期待している次第であります。
 日中間には各種の問題があり、かつ、日中双方にはそれぞれの立場と主張がありますが、日中双方が善隣友好関係の樹立を標榜して、政府間の話し合いを積み重ねていくことができれば、相互理解と相互信頼がもたらされるであろうし、日中関係は大きく前進するものと考えております。
 次に、日中国交回復につきまして春日君から多岐にわたる御提案がありましたので、順を追ってお答えをいたします。
 まず、輸銀資金の使用につきましては、前向きの態度でケース・バイ・ケースで対処する方針であります。
 MT代表部の大幅拡大は、春日君年来の御主張でもあり、政府としてもできるだけ御趣旨に沿うよう努力する所存であります。ただし、この機関に外交特権を与える問題につきましては、覚書貿易事務所は元来政府機関でもなく、かつ、日中間に国交関係もない現状でありますので、現時点でこれに外交特権を与えることはできません。
 航空、郵便、気象等、実務的な諸問題を処理する取りきめにつきましては、今後日中関係が改善されていく過程で、必要に応じその解決がはかられていくものと考えております。
 また、政府は、かねてより、日中間の人的交流については、日中間の相互理解を深め、かつ、よき隣人としての関係をもたらすのに役立つという観点から、できるだけ広く門戸を開放してまいりましたが、今後ともこの方針に変わりはありません。
 台湾に対する借款供与につきましては、これまでに交換公文を締結したものにつきましてはそのとおり実施したいと考えております。ただし、新規円借款のコミットは、国際情勢を見きわめつつ慎重に対処する考えであります。
 なお、日米安保条約適用の問題につきましては、先ほど申し述べたとおりでありますから、重ねて申し上げません。
 次に、藤山君の問題につきましてるるお尋ねがありました。昨日来はっきり申し上げておりますように、これは純然たる自民党内の問題でありますので、それぞれの党の自主性を尊重されて、あまり干渉されないようお願いをいたします。(拍手)
 最後に、春日君は私の政治姿勢についてきびしい批判をされました。私はそののいずれについても謙虚に反省するにやぶさかではありません。しかしながら、一言意見を述べさせていただくならば、私は、みずからを省みてみずからにきびしく、いつも謙虚にふるまっておるつもりであります。ただ、御指摘の幾多の問題は、進歩する社会にあって政治が真正面から取り組まなければならない重要課題であります。政府は常に姿勢を正し、惰性に流れることなく、国民の政治に対する信頼を高めていかなければならないと考えております。
 重ねて私の心境についてお尋ねがありましたが、政治に終わりなしというのが私の信念でありますので、この信念のもとに全力を尽くす決意を申し述べてお答えといたします。ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#6
○国務大臣(水田三喜男君) 一番最初は、公債の発行とインフレとの関係についての御質問でございましたが、これはしばしば申し上げましたように、景気停滞を反映して国内に大きな供給余力があって、かつ、国際収支が黒字であって、そうして市中の金融が非常に緩和されておるという経済の現状では、今回の公債発行は、景気を過熱させてインフレにつながるというようなおそれは絶対にないと考えております。
 また、市中引き受けの公債を相当期間市中に保有させるような義務を課する特別の措置をする意思はないかということでございましたが、市中の金融機関が持っております国債の譲渡は、日本銀行の買いオペの場合以外はほとんど行なわれておりません。これが実情でございます。また、日銀の買いオペは、そのときどきの金融情勢に応じて、日銀の判断のもとに行なわれるものでありますので、インフレマネーの供給にはならないものと思っております。現に市中金融が緩和しておりますので、昨年の三月以来日本銀行は買いオペを行なっていない。したがって、公債は市中機関に保有されておるというような状態のときでございますので、今回程度の公債の発行におきましては、別に相当期間の保有義務を市中に負わせるというような必要は、いまの金融緩慢の状態から見たら、一切ないであろうというふうに考えます。
 そのほかは税制についてのいろいろ御質問でございましたが、まず、所得税の一般減税を見送ったことは不当であるということでございましたが、これはもうすでに皆さんが御承知のとおりでございまして、本年度実施すべき税制を昨年年内減税として実施いたしました関係で、今年度の減税を一切見送ったというわけではございません。さらに、今年度は引き続いて住民税、事業税の減税を一千億円以上やっておりますので、個人を中心とした減税は来年度においても相当進むというふうに私どもは考えております。
 また、大衆負担を来たす付加価値税導入を考えているようだがというお話でございましたが、付加価値税については、御承知のとおり、いま政府の税制調査会においてこの問題を取り上げて、長期の課題として検討しておる最中でございます。私どもも一昨年欧州諸国の付加価値税の研究に参りましたが、これは一定の国民所得の水準というものがないとむずかしい税金でございますが、ようやく先進諸国の水準に近づいてきておるときでございますので、日本におきましても、実施しようとすれば、できる条件を備えておると私は考えます。ただ、欧州式の付加価値税というようなものを日本で実施することはできませんので、一般消費税の一種として、日本式にこれをうまくやる方法があるかどうか、この付加価値税の実施によって直接税がもっと合理的にこれが減らされるということとからんでの研究が大事だろうと思います。これには二、三年の研究を要するということが常識になっておりますので、政府におきましても、あるいは税利調査会においてもこの問題をただいま検討中でございまして、まだ成案を得ていない状況でございます。
 さらに、技術研究開発と教育関係寄付金を優遇する税制をつくれということでございましたが、これは御承知のように、試験研究費については法人の税額から控除するというようなことをすでに税制でやっておりますし、また、教育につきましては、特別のワクを認めた寄付金の減税をやっておると同時に、今回四十七年の税制改正では、私学振興財団を通ずる寄付金のうちで経常費に充て得る範囲を拡充するというような、指定寄付金制度の拡充をはかっておる次第でございます。
 そのほか、予算の仕組みを根本的に変えるべきであるという御意見でございますが、これは現行の予算制度の改正につきましては、もう以前から検討が行なわれておりますが、まだ成案を得るに至っていない現状でございます。したがいまして、現在の単年度制度からくるいろいろな欠点を避けるために、道路、港湾、そのほかにおける公共事業費の部面においては、御承知のように五カ年計画を立てて処理しておりますし、また、社会福祉に密接な関係がある住宅、下水道、都市公園というようなものも、本年度から一定の計画を定めて処理することになっております。したがいまして、今後はさらに、昨日も社会党の成田さんから御質問がありましたように、社会保障給付の充実についても計画的な充実をはかるというようなことによって、単年度制度の欠陥はできるだけ補うようなことをやるべきであるというふうに考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#7
○国務大臣(福田赳夫君) 春日委員長から、台湾の防衛責任についてのお尋ねでございます。
 台湾防衛につきましてはアメリカが全責任を持っておる、これは御承知のとおりであります。しかし、それだからといって、日本のほうに責任がないかというと、そうじゃない。日本の安全に重大な関係がある、そういう事態が発生した場合におきまして、米軍の日本基地からの発進、こういうことがあり得るわけでありまして、この限度におきましてはわが国もまた台湾の防衛に関連がある、かように御理解願いたいのでありまえこのことは、私は理論上の見解を申し上げておるわけであります。
 しかしながら、実際問題といたしますと、このわが国の防衛責任というものの発動が一体起こり得るか、こういう問題であります。この点になりますると、いま米中関係が非常な雪解け状態にあります。また、アメリカの大統領の北京訪問というような事態もある。かようなことを考えますると、私は、台湾海峡をめぐるこの緊張情勢というものは、これはもう非常な変化をしてきておる、こういうふうに見ておるのであります。したがいまして、台湾海峡をめぐる紛争、武力紛争というような事態は予見できない、当分の間予見できない。そういう事態におきまして、私は、現実の問題とするとわが国の防衛責任という問題は起こらないんじゃないか、そういうふうに見ておるのであります。
 しかし、万一の場合ということがあるわけであります。万一の場合、その万一の場合におきましては、事前協議によりまして、米軍の日本国土の基地からの発進ということがあり穫るわけであります。その事前協議にあたりましては、わが国の答えといたしましては、イエスもあり、ノーもある。その時点におきまするところの紛争の状態、また、それがわが国に及ぼすところの安全性への影響いかん、かような国益を踏んまえましてこれにこたえる、かように考えておるわけであります。わが国の防衛責任という問題は、ただいまお答えしたところで非常に明瞭である、かように存じます。
  〔国務大臣木村俊夫君登壇〕
#8
○国務大臣(木村俊夫君) 物価対策についてのお尋ねでございますが、最近の消費者物価の動向を見ますと、昨年十一月以降、生鮮食料品、工業製品を中心にしまして、その騰勢は鈍化してきております。このまま推移いたしますと、昭和四十六年度内の消費者物価指数は政府改定見通しを下回ることが期待されますが、今後とも一そうの物価安定をはかるため、昭和四十七年度の物価対策の重点といたしまして、第一に、生鮮食料品、特に野菜価格の安定対策のための予算措置を倍増する等、画期的にこれを充実いたします。第二に、円切り上げの成果を消費者に還元させるため、輸入品の追跡調査、行政監視、指導体制の強化をはかります。第三に、輸入自由化、関税引き下げ等の輸入政策、流通機構の改善等をはかること等の施策を強力に推進してまいります。これらの政策努力によって、昭和四十七年度の消費者物価の押し下げ効果を一・一%程度見込みたいと思っております。
 なお、公共料金につきましては、すでに総理からお答えしたとおりでございますが、一般の物価動向を勘案いたしまして、必要最小限度の値上げを認めざるを得ないこともございますが、同時に、その値上げの幅、実施時期等につきましては、今後慎重にこれを取り扱っていりたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
#9
○国務大臣(赤城宗徳君) 農業問題の御質問に対してお答えいたします。
 わが国の農業は、アメリカなどと違いまして、アメリカのような輸出産業ではございません、自給農業であります。しかし、農産物の貿易等を通じまして日本農業も国際化の渦中に入ってきております。したがって、国内農業におきましては、生産性の向上につとめて、国際競争力に耐え得るよう体質改善につとめるとともに、国内の需要をまかなうことを基本としております。しかし、国内生産では需要を満たし得ないものにつきましては、国内農業に悪影響を与えないよう配慮しつつ、需要の動向に即しまして、輸入政策の弾力的運用によって対処していきたい、こう思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○副議長(長谷川四郎君) 大原亨君。
  〔大原亨君登壇〕
#11
○大原亨君 私は、成田委員長の質問を受けまして、日本社会党を代表して、総理以下各大臣に質問いたしたいと存じます。
 昨日来の佐藤総理の御質問に対する意見を聞いておりまして、福祉優先の方向で軌道修正するという施政方針演説の裏づけのある答弁が何らなかったことが非常に遺憾でございます。私は、国民生活に最も関心の深いこの問題に論点を集中しながら、多角的な御質問をいたしてまいりたいと思いますので、佐藤総理から、同じ問題でございましても、突き詰めたひとつ御答弁をいただくように、最初にお願いをいたしておきます。
 本論に入ります前に、一言、佐藤総理に聞きたい問題があります。
 それは、明日、横井さんがグアムから帰ってまいります。よくも二十八年の長きにわたって、みずからを孤独に追い詰めて、その孤独に耐えながら今日まで一日一日を送ってこられた横井さんの心境を私どもが思いますと、まことに感慨無量なものがあります。「生きて虜囚の辱を受けず」この戦陣訓が頭の中に二十八年間こびりついていたといわれております。アメリカにつかまったならば死ぬる、日本に帰ってきても生きていけない、こういう追い詰められた気持ちであります。人間の命は地球よりも重たい、こういうことばがありますが、横井さんを迎えるにあたって、佐藤総理はどのような御感想をお持ちであるか、率直にひとつお話しをいただきたいのでございます。(拍手)
 さて、いよいよ本国会で終幕を迎える総理の去る二十九日の施政方針演説は、いわば七年余にわたる佐藤内閣、長期政権の総決算ともいえるものでございました。
 総理、あなたは、景気回復のための政策の展開が超高度成長への復帰を意図するものではない、高度福祉国家建設への軌道を設定するものであると強調されて、最後に、いまこそ発想の転換を行動に移すときであると結んでおられるのであります。私は、この演説を聞きつつ、七年前あなたが池田総理に対決をいどまれ、私の考えは池田君の考えとは違う、高度成長のひずみを是正し、物価の安定、社会開発を柱とする人間尊重の政治を実行すると、自信満々強調されたときのことをまざまざと想起いたしたのであります。
 総理、くしくもあなたは、四十年不況のとき初めての予算をつくりました。いままた、ドル衝撃の中でより深刻な経済危機に取りつかれ、全く同じ演説を繰り返して退陣をされようといたしているのであります。もし、少なくとも、あなたが七年前の公約を額面どおり実施されていたならば、いまの日本は、物価は安定して、中期経済計画でいっておられた四十三年、二・五%以下に物価が安定しておるはずだ。今日のドル・ショックのもとになっておる社会資本や社会保障の水準も上がっておるはずだ。こういうことを考えてみまして、過去七年間の佐藤内閣の政治は、池田内閣を上回る大企業一辺倒、アメリカ一辺倒の、あなたまかせの政治であった。物価は上がりっぱなし、社会開発どころか、公害はたれ流し、社会保障の水準は依然としてヨーロッパの三分の一以下。歌の文句ではありませんが、こんな日本にだれがした、これが、総理、七年間の政治を通じて国民に残された贈りものであったのであります。(拍手)しかし、悪政の被害者はあなたではない、国民自身であるということをあなたは知らなければならぬと思うのであります。(拍手)
 この七年間、来る年も来る日も、総理の物価安定と社会開発の御託宣を聞きながらだまされ続けてきた国民は、命脈尽きた佐藤総理の福祉優先のことばにどれだけの信頼を寄せるでありましょうか。一人一人の国民が聞きたいのは、態度で示せということであり、発想転換の内容を具体的プログラムで明らかにせよということであるのであります。昨日の御答弁は全く納得できません。
 そこで、まず、この七年間を振り返って、総理の政治家としての、政権最後の関頭に立っての決意、反省をここに率直にお話しいただくことを要求いたすものでございます。(拍手)
 佐藤総理、あなたは、ドル・ショックで一ドル三百八円の大幅引き上げをのまされて一段落ついて間もなくのことでありますが、円切り上げは足らなかったようだと、国民を食った発言をされたのを私もこの耳で聞いたのであります。このことばは、はしなくも、貿易商社など専門家の情報といわれるものに完全に一致するものであります。すなわち、このまま貿易の黒字基調が続けば、日本は本年中に外貨二百億ドルを保有することになり、そうなれば、外圧で円の再切り上げは必至であるというものであります。この貿易の黒字基調は、従来からの財政、金融のメカニズムが変わらないで、大企業優先、輸出第一主義が依然として貫かれるであろうという、そういうことを前提といたしておるのであります。
 もう一つは、国民総支出の中での個人消費支出も、アメリカの三分の一の低い賃金ベース、ヨーロッパに比べて低い福祉の水準などに変化はないという事実の上に立った推測によるものであることは間違いないのであります。
 総理、あなたの発言は、何という国民を愚弄することばでありましょう。総理、あなたは、福祉優先に切りかえるという意思も確信もないのに、施政方針演説で国民の目をあざむこうとされたことになるのであります。もしそれ、近く円の再切り上げを行なわなければならないような羽目になるならば、投機と不信が渦巻き、国民の生活と健全な生産活動に重大な障害を与えることは必至といわなければなりません。
 佐藤総理、予算査定の最後の段階で、国民は、総理がみずから国防会議の議長であるという職責を放棄して第四次防の独走を許したり、福祉優先を説く口の下から、いまだかってない公共料金引き上げという食い逃げ予算をつくられたあなたの一挙一動を通じて、国民は、いまさら総理の福祉優先のそらぞらしいお題目を信用するほどお人よしではないということでございます。
 態度で示せという国民の声を代表して、私は、まず次の二点から質問を始めたいと思います。
 その一つは、昨日来論議されておる安定成長の上に立った国民福祉の指標、すなわち、GNPに対してNNWの指標を具体的にいつお示しになるのかということであります。
 GNP世界第二の自慢話は問題外といたしましても、世界十三位といわれる一人当たりの国民所得も、法人の所得を含む国民所得を人口で割ったものですから、福祉の目安にはならぬのであります。
 そこで、われわれは従来から、国民生活の中身と生活を取り巻く環境の一つ一つを総合的に引き上げることを政治の中心に置くべきことを主張してきたのであります。そうして、まず、工業国であり、国民福祉の先進国であるヨーロッパの主要国を目安といたしまして、これに追いつき追い越せという政治の目標を設定し、それを目標に政治をやるべきであると考えます。
 例をあげますと、生活の中身では、労働者の一時間当たりの賃金、一週間のうち労働時間、カロリーの摂取量、老齢年金などの社会保障水準の比較など、生活環境では、一人当たりの住宅の広さ、老人ホーム、保育所などの社会福祉施設、下水道の普及率、道路の舗装率、公園の広さから、幼稚園の入園率や老人の自殺率などなどでありますが、西ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデンなどと具体的に比較をいたしてみますと、日本はそれぞれ最低か最悪であるのであります。
 これらの、しあわせの指標ともいうべき政治目標を設定して、これを一つ一つ政治の中心に置いて解決するという考え方であります。
 木村経済企画庁長官が演説で述べられたところに、この指標の開発に取り組むということばがございました。しかし、何と回りくどくて弱々しい発言であるか。決断が何ら明らかにされていないのであります。経済計画の大ワクできめるだけでなく、具体的な一つ一つの問題について裏づけのある政策というものを設定しなければ、いままでのことを繰り返すことになるのであります。
 第二に、私は、いままでの質問を踏まえながら、国民福祉の指標をつくるため、次の二つの点についてさらに突っ込んでお尋ねをいたします。
 その一つは、いままで予算委員会でも主張いたしてまいりましたが、五兆六千三百五十億円という財政投融資計画を根本的に洗い直すということであります。そして、財政民主主義の原則に基づいて、本計画を国会審議と議決の対象とせよということであります。この財投の資金は、郵便貯金、厚生年金、国民年金、簡易保険などのように、庶民大衆の血の出るような貯金であるか年金の保険料が大部分であります。この第二の予算といわれる財政投融資の金も、開発銀行や輸出入銀行等を通じ、あるいは大企業の民間設備投資に向けられ、公共投資も、生活基盤よりも産業基盤に重点的に使われ、公害防止事業団への融資さえも、一番必要とする中小零細企業には向けられていないのが実態であります。この財投の金の流れを大きく変えて、年金の改善や住宅、下水道、公園、老人ホーム、保育所などの生活環境の基準を引き上げるために桑中的に使えば、福祉優先の政治転換の大きな力となることは、一点の疑問の余地のないところであると信じます。
 いま一つの点は、社会開発、人間尊重といいながら、なぜ、社会保障、社会福祉施設を改善する長期計画をつくらないのか。大砲のほうの自衛隊の増強は第四次防まで独走いたしておりますが、パンのほうはおざなりにされている。つくるという方針すらきめていないのでありますし、昨日、本日の答弁を聞きましても、非常に抽象的であるのでありまして、われわれの納得できないところであります。
 社会党は、従来から、三カ年計画で、国民所得に対する社会保障の給付費の比率をいまの五・八%の低い水準からヨーロッパ並みの一五%以上、いまの三倍の水準に引き上げ、特に一番おくれておる年金の大改正を主張してきたのであります。わが国におきましても、昭和三十六年に、総理大臣のもとに設けられました、大内兵衛氏が会長であった社会保障制度審議会で、ヨーロッパに追いつく十カ年計画がつくられました。総理大臣と国会に勧告されたのでありますが、十年をこえた今日、歴代自由民主党内閣はこれを無視し続け、握りつぶしてきたのであります。
 佐藤総理、一つの実例を申し上げましょう。原前労働大臣の暴言で有名となった老人ホームの収容人員は、現在八万七千名でございます。しかも、一人について二畳、一部屋に五人から十人の雑居部屋でございまして、からだを寄せ合って、私物も持ち込むことができないような、全くプライバシーのない、そういう実情にあるのであります。もちろん、ヨーロッパのような月々の年金の裏づけがあるわけではありません。まさに先進国中最低、最悪の老人ホームであるのであります。総理、あなたはこの実態を知っておられるのでありますか。
 養老院に行く者は感謝の念のない利己主義者であるという原発言は、実はその根底には、老人ホームをやっかい扱いにして、社会保障がよくなれば国民は横着者になるとか、あるいは、ヨーロッパのような老大国になるなとか、そういう歴代自民党内閣の政治的な体質と一致するものがあるのであります。(拍手)この老人ホームの実態が、このことを如実に示しておると思います。
 総理のことばの中でも、活力のある社会とか、自由を守るとかいうことばがありますが、しかし、このことばの中に、生かさず殺さず、百姓とゴマの油はしぼればしぼるほど取れるという、前近代的なにおいが感ぜられるのは、私だけでございましょうか。
 人口の老齢化と世帯の核家族化が進む中で、孤独の老人、寝たきり老人がどんどん増加をいたしております。これは、子供たちに親に対する孝行心がないから増加しているのではありません。あなたの大企業一辺倒の超高度成長政策の中で生まれた最大の社会問題なのであります。
 社会党は、これら先輩の老人や身体障害者、母子家庭の活生を保障することは、現在元気で働くわれわれの責任であり、いますぐ食える年金や、心配のない医療とともに、老人ホームも一人一部屋を計画的につくること。新しく美濃部東京都知事が提案されているように、公営住宅の一階、二階を老人住宅として確保するという政策を実施することを提案してきたところであります。
 昨日お話がありましたが、厚生省は、社会福祉施設整備五カ年計画を現在持っているのですが、貧弱なこの計画すら政府は認知いたしておりません。この私生児の中身を大幅に改善をして政府の計画とする意思が総理におありかどうか、私はこの点を重ねてお伺いをいたしたいと思います。
 第三の質問は、年金の問題であります。
 今度の予算で、老齢福祉年金が、七十歳より月二千三百円から三千三百円に引き上げられました。政府・自民党は、福祉予算の目玉であると宣伝をされております。しかし、これも一日に直せば百十円にすぎないのであります。たばこ一箱買えばなくなってしまいます。昭和三十四年に月一千円の福祉年金が発足したときに、世間ではあめ玉年金と言いました。その後十三年たった今日、このあめ玉年金がたばこ年金になったといって、何で福祉優先と言いふらすことができるでありましょうか。(拍手)
 いま、厚生年金の積み立て金は五兆四千五百八十七億円、国民年金の積み立て金は一兆円です。いまの日本の年金は、後進国型の積み立て方式であります。自分で保険料をかけて、二十年以上積み上げて、それ自分でもらうのであります。積み立て金だけがどんどんふえていきまして、政府の財政投融資に組み込まれて、大企業や予算のかわりに使われるというのがこの実態であるのであります。
 社会党は、昨日、成田委員長から一部申し上げましたように、この仕組みを改めなければならぬ。いま元気で働くわれわれが、先輩の老人や身体障害者や母子家庭の生活をいますぐ保障する、こういう、ヨーロッパで今日まで改善をいたしてまいりました賦課方式という先進国型にやり直すことを中心とした改正案を、この国会に提出する方針であります。(拍手)
 すなわち、第一段階といたしましては、老齢福祉年金は、六十五歳より月五千円、七十歳より月一万円を出す。各種の一般年金に、さしあたって月一万円の底上げをする。第二の段階としましては、昭和四十九年より、国民年金の最低保障額を六十五歳より月二万円、夫婦四万円とする。厚生年金等の最低保障額を六十歳より月三万円にする。平均五万円以上とする。これと同時に、年金は平均賃金の上昇に見合って、政策スライドではない、ときどきの思いつきではない、自動スライド制をとるという方針であります。
 このような賦課方式に切りかえて自動スライド制をとる結果、いまございます六兆円の年金積み立て金は年々減ってまいります。財政投融資の資金が大企業や産業基盤のために投資されることから、年金のために流れていくことになります。二十数年後には日本の老齢人口が倍増する、千四百万人に達することになりますが、いますぐヨーロッパ並みの年金を出すことによって、将来必要な年金の掛け金を国民が進んで負担をするという心がまえがいまからできるのではないでしょうか。
 日本の貯蓄率は、国民所得の二〇%に達して、世界一であります。このなぞの一つは、年金をはじめ社会保障の水準が低いからなのです。年金がよくなれば貯金の一部が消費に回りますから、国民福祉と景気浮揚が一致することになるではありませんか。(拍手)
 ヨーロッパでは、年金は人生の有給休暇であるということばがあります。年金をもらって、六十五歳の定年で職場を去る人は、祝福を受けて去っていきますが、日本では若い定年で、長い老後のことをどうして生きていくか、先行き不安が待ちかまえておるのであります。
 年金の仕組みを改めて、財政投融資の流れを変えて、いますぐ食える年金制度を確立すること、これは、総理の演説の締めくくりにあった、財政主導型による福祉優先という発想の転換を行動に移すときである、そういうくだりとぴったり一致するではありませんか。(拍手)
 総理、水田大蔵大臣は昨年末の予算委員会で、私のこの見解に対しまして初めて同意をいたしました。昨今の答弁で、保険に比して給付が少ないとか、改正を若干ずつされていますが、しかし、具体的に私が申し上げたような仕組みを変えていくこと、このことなくして日本の年金の水準を変えていくことはできないのでありまして、この点に対しまして、総理と大蔵大臣の見解をこの際国民の前に明確に示されたいのであります。(拍手)
 第四の質問は、これも新予算の目玉の一つといわれておる老人医療と懸案の医療改革について質問いたします。
 今回、政府は、七十歳以上の老人医療無料化を行ないました。よいことであります。しかし、振り返ってみると、老人医療の無料化も、昭和四十三年に横浜の市長の飛鳥田さんがその一部を実施したことが皮切りであります。今日全国の三十七の都道府県が実施をし、二百数十の市町村が手をつけておるといわれております。言うなれば、今回、政府は、この国民の切実な要求を実現した自治体に追い上げられて、おくればせながら実施したのにすぎないのであります。
 老人医療無料化の予算は九十六億円であります。内容的にも問題がたくさんあります。なぜこれに所得制限をつけたのか。私どもは、六十五歳より無料化といきたいところでありますが、しかし、せめて東京がやったように、六十五歳よりの寝たきり老人、これを無料化の対象にすることがなぜできなかったかと思うのであります。
 総理、いま過疎地帯にある三千に近い無医地区には、老人が多く取り残されて、保険料は取られるが医師はいない。その中で、いつ何の病気で死んだかもわからない老人のニュースがたくさん伝えられておるのであります。
 さて、いま全国民が、保険料、公費、窓口での自己負担、この三つの方法で支払っている総医療費は、年間三兆円に達しようといたしております。二月より医療費が実質十二%引き上げられますと、三千六百億円の負担増加になります。そのほかに約二〇%程度の医療費の異常な自然増が続いているのでありますから、総医療費は、実に、驚くなかれ、本年は四兆円に達しようといたしております。
 問題は、この四兆円に達する医療費の増大が、国民の納得するよい医療の給付の代償として支払おれているかどうかということが政治の問題であります。
 総医療費三兆円のうち、ヨーロッパの倍に相当する四〇%が、薬剤、注射代として使われております。医大の不正入学、にせ医師の問題、不当に低い技術料、放置された無医地区、このような医療の荒廃をそのままにしておいて、保険料だけがどんどんはね上がるという政治に対しまして、国民は絶対に納得しないでありましょう。(拍手)
 総理、あなたは、昭和四十二年、四十四年、四十六年と、健康保険法の改正といえば赤字対策一本、保険料値上げと患者負担に転嫁する政策をゴリ押しをしてきました。人間尊重を口にする佐藤内閣の粗末な医療行政がずっと行なわれたのであります。
 日本社会党は、今国会に医療保障基本法を出して、よい医療をいつでも、どこでも、だれでもが受けられるような総合的、抜本的な改革案を用意いたしております。その中でわれわれは、治療中心、薬中心の現行の医療制度を改めて、疾病の予防、健康管理、患者の社会復帰など、一貫した医療の供給体制を確立すること、医師や歯科医師や薬剤師などの技術を思い切って高く評価するとともに、薬を売ってもうけるという売薬医療の仕組みをなくして、良心的な医師のもとに国民の健康が守られるようにしていかなければならぬと考えておるのであります。(拍手)
 私は、この抜本改正の中でも、次の二点は、そういう腹がまえができたならば当面すぐできると考えておるのであります。
 その一つは、僻地医療の解決であります。そのためには、各県の中心的な国立、県立の病院を基幹病院といたします。独立採算制をはずします。僻地医療が担当できる定員を確保いたします。そうして巡回自動車や、僻地診療所の拡充と相まってやっていけば、僻地医療は解決できるのであります。(拍手)
 いま一つは、医薬分業の実施であります。医薬分業が行なわれていない国は、日本を除けば、日本の旧植民地の台湾と韓国くらいなものです。医薬分業は、技術を尊重する、売薬医療をなくするために必要なだけではなしに、薬剤師に医薬品管理の責任を持たせるという積極的な意義があるのであります。このことは、最近内部からの環境破壊、すなわち、医薬品の乱用、食品添加物、残留農薬など、化学的物質による直接の人間の健康破壊の問題が大きな社会問題としてクローズアップしていることからも、その具体化が急がれなければなりません。
 サリドマイド奇型児、キノホルムによるスモン病、コラルジルやキドラなど心臓薬による肝臓障害、最近小中学生の中には、ネフローゼとかベーチェット氏病とか、日本独得の難病奇病が拡大をいたしておるのであります。これを防ぐ根本にメスを入れないで、難病奇病対策費と称して、いままで皆無にひとしかった対策費、五億三千万円のわずかの金でこれができたと思うことは、とんでもない主客転倒の考え方であります。(拍手)
 佐藤総理、本国会に、昨年廃案となった赤字対策のための健康保険法の改正案をあなたはお出しになりますか。
 さらに、医療基本法を出すといわれておりますが、あなたのお考えはどうなのでありますか。厚生省の医療基本法は、その名の示すごとく、わが党の医療保障の基本法ではない、当たりさわりのない抽象的な作文であります。国会や関係審議会、国民の強い関心と要求の中から出されたとはいいながら、さらにさらに改善されなければならぬのであります。
 佐藤総理、赤字対策の健康保険法と基本法について、いままでのような強行突破など手荒なことをするつもりかどうか、この際、政府の今国会に臨む具体的な方針を明示していただきたいのであります。(拍手)
 第五の問題は、物価対策と公害対策の行き詰まりをどう打開するかという問題ですが、これは昨日以来の質疑、討論で各方面から検討されましたが、しかし、私は、別の観点から二つの点を取り上げて質問をいたしたいと思います。
 その第一は、物価、公害に対する認識の基本に関係する問題です。この認識の基本が間違っておるのではないかというのであります。物価や公害は、雨やあらし、地震や火事のような自然災害、天然災害ではないのであります。人間のやっていることであります。この物価と公害の問題は、政治がだれのために行なわれておるかということを示すバロメーターなのであります。(拍手)
 いまのように、たとえば通産省でありましたら重化学工業、電気、ガス、運輸省でありましたならば交通企業やあるいは造船、建設省でありましたならば大土建企業、こういう企業とそして官僚、与党が癒着をしている、日本国株式会社とアメリカはいいましたが、そういうことをどうして環境庁や経済企画庁が、物価を安定して国民生活を守る、環境保全を全うして国民の健康を守る、こういう観点から一元的にチェックすることができるか、こういう問題を解決しなければ、私は、絶対にこの問題の解決はあり得ぬと思います。(拍手)
 経済企画庁長官やあるいは環境庁長官、いままでいろいろやってこられて、私は同感だと思いますが、たとえば物統令を廃止する、これは予算にも何にも関係ない。これを廃止すれば、標準米の価格がどんどん上がるということは間違いない。国鉄、医療費その他ずっと公共料金を上げておいて、しかもこの問題も見通しをつけないで物統令を廃止するというようなことについて、待てといって、経済企画庁長官が言うことができないような、そういう経済企画庁長官であっては、役割りを果たしたとはいえぬのであります。(拍手)たとえば環境庁長官にいたしましてもそうであります。二場の立地の規制、開発についてストップ、そういうことについて明確な発言をする権限がなければ、環境保全ということはできないのであります。
 私は、このような観点に立って、行政の一元化について、佐藤総理はどのような最後のイニシアチブをとろうといたしておるか、お聞きをいたしたいのであります。
 第二の問題は土地問題でありますが、これはあらゆる観点から議論されました。しかし、この土地問題は、物価問題でも、公害問題でも、公共投資の問題でも、たとえば保育所をつくるのに国が三百万円しか予算措置をしない。しかし、大都会においては五千万円か一億円の予算がなければ一つの保育所ができぬというふうなことで、公共投資、福祉優先ができますか。この問題はあらゆる観点から議論があったが、やはり価格の問題が一つです。社会党が提案をいたしておりますように、法人が含み資産、中間資産、投機です。どんどん商社も百貨店もなにも全部不動産を、もうけて買いあさっている。一方では、新都市計画法でみなし課税をしておる。この含み資産、中間資産、投機のための投資、これに対しまして、適正な法人所得に対する税金をかけることは、これは絶対必要です。
 それからもう一つの問題は、何といっても土地の利用の規制ですが、自治体の先買い権だけでは足らぬでしょう。やはり公的な性格を持った機関を設けて、公団を設けて、土地の売買について、それを媒介としなければできないような思い切った政策をとらなければ、私は、先進国で解決をしておるこの問題について、私どもが国民に対して信頼の置ける政治、物価が上がる、公害が出てくる、こういう根本にメスを入れた政治に絶対にならぬと思うのです。(拍手)この点に関しまして、佐藤総理のおざなりな答弁でない明快な決意をお伺いいたします。
 最後に、私は政治の基本姿勢の問題についてお尋ねをいたします。
 総理大臣は、国務大臣の任命と罷免についての権利を憲法第六十八条によって持っていることは、私は承知をいたしております。しかし、それとともに憲法第九十九条は、天皇、摂政及び国務大臣は、この憲法を尊重して擁護する義務を持っていることを厳粛にきめておるのであります。このことは、任命権、罷免権も国民に対して政治責任を負うているということを明示するものであります。総理が恣意によってみずからの任命した国務大臣をかってに罷免する、そういうことを認める趣旨ではないのであります。
 佐藤首相は、倉石元農林大臣については、憲法を他力本願でだめだとか核を持たねばということを言いまして、第九条にかかる問題として追及を受けまして、罷免をいたしました。小林元法務大臣は、国会と野党を否認する発言をした。これは主権者である国民を否認する発言であります。主権市民の憲法に違反をする行動であります。(「かってなことを言うな」と呼ぶ者あり)かってなことではない。西村前防衛庁長官は、国連否認、中国誹瀞の発言がありました。憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」という、国際主義、国連中心主義の規定があるのでありまして、まさにこれも憲法違反であります。原前労働大臣について言うならば、養老院云々、こんなこともありませんが、全く前近代的な発言であって、内閣と自由民主党の奥深く巣くうておるところの体質であります。憲法二十五条、この中には、御承知のとおり、健康で文化的な生活を権利として保障する規定があるのでありまして、これも憲法違反であります。
 そのような大臣に対しましては、総理大臣は犬、ネコのように首を切ってまいりました。簡単に切ってまいりました。自分が任命したやつを切ってまいりました。そして自分はトカゲのように残っておるのであります。(拍手)
 もう一つの問題は、私は、政治姿勢の問題として憲法の関係で追及したいのは第四次防のやり方であります。
 国防会議の議を経るということは、議長であるあなたが一番よく知っておられる。その国防会議の議長としての職務を放棄している。
 それだけではない。予算査定の千百億円を分配するときに、テレビのどこでも出ておりますが、自由民主党主導型だと言っておる。自由民主党主導型の、選挙でやったということで全部きめたやつを復活させておる。これは明らかに、政党主導型といいましても、政党は国会でありまして、憲法七十三条には、内閣の予算編成権が規定をされておるのであります。国会と行政府との関係は、国会が最南の機関であっても、三権分立の原則に立つのが憲法の原則であります。(拍手)もしそれ、自民党の主張によって憲法七十三条が否定されるということになれば、これは憲法の職務を佐藤総理は忠実に果たしていないということであります。政党や民主団体は自分でいろいろな自由な意見を言うことができます。できますけれども、陳情を聞かなければなりません。なりませんが、それで全部食いちぎるならば、ばらばらの予算ができるではないか。そのことを防いでおるのが内閣の予算編成権に関する規定であります。
 国債一兆九千五百億円を政府は発行いたそうといたしておりますが、これが回り回って赤字公債、つまり軍事予算その他に独走しておる。沖繩に兵隊の派遣もやっておる。これが第四次防であります。T2も輸送機もあるいは偵察機もどんどんつくっておる。陸上自衛隊十八万、第四次防を先取りしておる。つまり、国防会議の議長の職務をあなたは放棄しておる。憲法七十三条の予算編成権についても、あなたは職務を放棄いたしておる。
 私は、そういう二つの観点から、憲法を守るという総理大臣の最高の責任から、第九十九条で規定いたしておるように、天皇、摂政、国務大臣は率先して憲法を守る義務があるのであります。そういう立場から考えてみて、佐藤内閣七年有余にわたるこの最後の場面とはいいながら、全くの百鬼夜行の政治であるといわなければならぬと思うのであります。(拍手)
 佐藤総理は、「政治に終わりなし」と言われました。しかし、初めあるものは終わりなかるべからずということばもあります。政治家というものは、初めを始めることは、開始はやさしいけれども、最後を全うすることはむずかしい。そういうことを私は佐藤総理が肝に銘じて、議会政治を擁護するという立場から、国民の前に出処進退を明確にされるように、そのことを最後に要求をいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず最初に、最近グアム島で発見されました横井庄一君、この問題に触れます。
 お尋ねがありましたように、二十八年間もよく孤独に耐えられたと、私はたいへんな御苦労があったことだろうと思います。この孤独に耐えて今日までこられた、その点に心から御同情を申し上げるものであります。今日、無事に帰国されるように、心から祈っております。ただいまマスコミの寵児として、いろんなことがいわれておりますが、私は横井さんの生活に激変が来ないように、また、横井さんを苦しめることのないように、直ちに世間の荒い風にあわさないようにすべきではないかと、かように実は思っております。したがって、横井さんの健康状態につきましては特に注意をする、こういう立場から、帰国後は国立病院に収容いたしまして、その健康管理に十分の注意を行なってまいりたいと思います。横井さんの体力の回復、精神的安定を待って、しかる上で本人の希望に沿った社会的また国家的活動をしていただきたい、かように願うものであります。(拍手)
 大原君の質問にお答えをいたします。大原君は、いわば内政全般について多岐にわたって質問されましたが、私は、そのうち主要な問題について政府の基本的な考えをお答えすることといたしたいと思います。足りない点につきましては関係大臣からお答えしますので、あらかじめ御了承願っておきます。
 まず、大原君から、これまでの反省と公約に対する決意を求められました。私は、政権担当以来、社会開発と人間尊重の政治を訴え続けてきたのでありますが、今日ようやくその真意について各位の御理解を得るようになったと思っております。(発言する者あり)今後とも人間性豊かな社会の実現に力を尽くしてまいる所存であります。
 物価問題は依然根本的な解決を見ておりませんが、最優先課題としてきめこまかく各般の措置を講じ、国民生活の安定をはかってまいる決意であります。
 昭和四十七年度予算は、当面する国内経済の停滞をすみやかに克服し、わが国経済を安定成長の軌道に乗せるとともに、社会資本の整備、社会保障の充実等、国民福祉の向上をはかることを基本的目標として編成したものであります。その予算の性格について疑問があれば、予算委員会の審議を通じ、さらに十分明らかにしたいと考えております。
 さきの私のテレビ対談での発言は、通貨の多国間調整後においてもまだドルの米国への還流が十分遊んでいないことや、米国の経済についても問題があることを言ったもので、私自身、円の再切り上げを行なう必要があるとは考えておりません。過去のレート切り上げの例を見ましても、国際収支が均衡に向かうまでにはある程度の時間が必要であります。しかし、今後、八項目の推進をはじめとする適切な経済政策の運用により、貿易収支の黒字幅は縮小の方向に向かい、他方、貿易外収支、長期資本収支等も次第に赤字幅を拡大し、国際収支は全体として均衡の方向に向かうものと予想しております。
 次に、いかにして国民福祉の向上をはかるかの問題であります。
 これまでの高度経済成長に伴い、わが国の所得水準は著しい向上を示し、今後国民福祉を充実するための基礎がたくわえられるに至っております。これからは、こうした経済成長の成果を踏まえ、国民生活の質的充実に最大の政策努力を払っていくことが必要であります。
 御質問の福祉指標については、このような政策を展開していくための指標として、現在基礎的研究に着手しており、今後、その研究成果をも考慮しつつ、国民福祉の向上に一そうの努力を傾注する所存であります。
 また、大原君から財政投融資についての御意見がありましたが、財政投融資の運営は、従来から国民生活の安定向上に資するよう十分配慮してきているところであり、電力、海運等の基幹産業向けのものは、四十七年度でわずかに全体の四・七%を占めるにすぎないのであります。したがって、財政投融資を洗い直す必要があるとは私は考えておりませんが、今後とも引き続き国民生活の安定向上に資するよう努力いたします。
 また、財政投融資を国会の議案として提出し議決の対象とする問題につきましては、御承知のとおり、四十六年度の予算審議の際に問題となり、政府としては、財政制度審議会にお願いして昨年七月以来検討を続けているところであります。同審議会の最終的報告は本年秋ごろに出される予定であり、その報告を待って結論を得たいと思っておりますが、とりあえず、四十七年度におきましては、昨年来同審議会から出された中間報告の趣旨に沿い、予算の参考書類等において従前のものに相当な改善を加えることとした次第であります。
 次に、大原君から、御意見をまじえて国民福祉の充実について幅広く質問がありましたが、私は、安定的な経済成長の中で国民福祉の一そうの充実を願うものであります。このため、四十七年度において策定を予定している新しい長期経済計画の中では、社会福祉の拡充の方向を明らかにし、その充実をはかりたいと考えております。
 また、大原君から、国民所得に対する社会保障の給付比率を直ちに欧州諸国並みに引き上げよとの御意見がありましたが、わが国の人口の老齢化がそれほど進んでいないことや、制度の相違などから、このような比較にはそれほど意味がないように思われます。いずれにせよ、今後引き続き実質的な社会保障制度の整備充実をはかっていくことが必要であり、今後その方向で努力したいと考えております。
 なお、厚生省の社会福祉施設五カ年計画につきましては、その趣旨を尊重して社会福祉施設の整備を著しく拡充してきたところであり、今後ともその方針に変わりはありません。
 次に、老齢福祉年金の額につきましては、逐年改善をはかり、特に今回の改正では、いままでにない大幅な引き上げを行なうことといたしました。政府は、今後とも、老後保障の充実を目ざし、年金制度の改善につとめる方針であります。
 また、社会党の年金改善要綱につきましては、費用負担等の関係で直ちに実現することは困難でありますが、老後保障における年金の役割りの重要性にかんがみ、さらに年金制度全般の改善充実をはかる方向で検討してまいりたいと思います。
 老人医療費の負担軽減につきましては、医療制度全般との関連もあって、これまで慎重に検討してまいりましたが、その重要性にかんがみ、明年度実施に踏み切ったのであります。こうしたかなりの地方負担を要する制度の実施にあたって、地方自治体の動向を勘案することは、むしろ当然のことと考えております。
 また、医療保険の抜本改正につきましては、近日中に関係審議会に具体案をもって諮問し、今国会に法案を提出する方針であります。
 現在、関係審議会で審議中の健康保険法の改正は、抜本改正への円滑な移行を確保するために、政府管掌健康保険の財政の安定をはかろうとするものでありまして、単なる赤字対策の繰り返しであるとは考えておりません。具体的には厚生大臣からお答えをいたします。
 次に、多面的な行政需要に応じて行政が複雑化することに伴い、各省間の行政を全般的な立場から総合調整する機能を整備強化し、いわゆる縦割り行政の弊を生じないようにすることは、重要なことであると考えております。経済企画庁、環境庁は、それぞれ国民福祉優先の立場から関係各省との事務の総合調整を行なっているのであって、当面、その意味での両庁設置法の改正は考えておりません。今後とも、これらの行政については、現在の総合調整機能を有効に活用し、国民福祉の立場に立ち、適切な運営をはかってまいりたいと考えております。
 次に、地価対策の質問のうち、法人所有の土地に対して再評価税を課することについて、土地の価値が上がっても、それが売却等によって実現しなければ課税しないというのが法人税の原則であり、お尋ねのような課税を行なうことは、所得理論の基本に触れる重要な問題であるので、軽々しくこれには賛成はできません。
 また、御指摘の利用権の制限及び自治体の先買い権については、これまでも政府が多くの法律の中でその活用をはかってきたところであります。今後さらにその強化について検討し、土地政策の総合的な推進につとめてまいりたいと考えております。
 また、土地の売買を公的機関を通じて行なうようにするという御意見は、今後検討に値するものと考えております。
 次に、国防関係予算の問題についてお答えをいたします。
 実質的に四次防の先取りをしているのに、国防会議を開いていないのはおかしいとの御指摘でありますが、四次防の取り扱いについては、国防会議の開催時期等を含めて目下慎重に検討中であります。ただいまその時期でまだありません。
 次に、政党内閣のたてまえから印して、党の政策が予算編成に反映されるのは当然であります。これをもって内閣の予算編成権の放棄という御指摘は、当たらないものだ、かように思いますので、御意見はそのまま返上しておきます。
 最後に、国務大臣の失言によって国民の皆さんに御迷惑をおかけしたことは、まことに遺憾であり、申しわけなく思っております。私も深くその責任を痛感している次第であります。今後一そう心を引き締め、再びこのようなことの起こらないよう、さらに厳に注意してまいるつもりでございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#13
○国務大臣(水田三喜男君) 総理からの御答弁で残された問題は、拠出制年金を現在の積み立て方式から賦課方式に改めるべきであるという御意見についてでございます。この問題につきましては、昨年の予算委員会におきまして、私は大原さんに検討をお約束いたしましたので、ただいま検討しておるところでございます。ただ、いまのところは、この問題については関係者に非常に反対論の多い現状でございます。すなわち、どういう反対かと申しますと、いますぐに賦課方式に移った場合には、受給君が現在非常に少ないから負担が軽くて済むのはいいことですが、人口の老齢化と年金制度の成熟化に伴って受給者が激増するにつれて保険料負担が急激にふえる、そうして高額、過重なものになるために、世帯によって負担に著しい不均衡が生ずる、これが大体反対論の意見でございます。したがって、将来にわたるいろいろな長期的な見通しから見て、いまの修正積み立て方式が実情に即しておるというのが大体の意見でございますが、しかし、私は、これは欧州諸国も一ぺん積み立て方式から賦課方式に変わった歴史がございますし、老齢人口の進み方が安定した、そうして年金制度が成熟したというときになって、さらにスライド制のような問題が問題になってきた場合には、やはり積み立て制度にはいろいろな矛盾が出てくるということは考えられますので、どういうときにこういう切りかえがなされたらいいかというような問題について、いますぐということではなくて、もう少し時間をおいてこれはゆっくり検討させてもらいたい問題であるというふうに考えております。
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#14
○国務大臣(斎藤昇君) 大原議員の、幅広い社会保障、社会福祉についての御意見、御質問の大部分は総理からお答えがありましたので、残された問題について二、三私から御答弁を申し上げます。
 その前に、年金制度の問題につきましては、私も、今日の人口の老齢化、国民生活水準の非常な向上、これは年金制度の始まった当時には予測もできなかったような変化でございます。これに対応いたしまして、今日、いわゆる年金というものが国民全体から非常に大きな意味をもって迎えられておりますので、大蔵大臣も検討するとおっしゃっておられますが、私のほうにおきましても、いまの積み立て方式から賦課方式、またスライド制というような点も加味いたしまして、少なくとも来年はある程度の、いわゆる国民の念願する年金制度の改正の行なえるように検討をいたしたい。わが党の中におきましてもそういう声が強いわけでありますので、御意見の点を十分なにいたしまして、この国会でそういった大幅な改正は不可能でございますが、医療保険、医療問題をひとつこの国会において御審議をいただき、次の国会では年金をと、かように考えておるわけでございますので、御了承をいただきたいと存じます。
 なお、医療対策につきましていろいろと御意見がございました。
 まず、老人医療の無料化の問題で、所得制限をつけるのはよろしくないのではないかということでございますが、老人医療の無料化の必要性は、老人が安心して医療にかかれるように、保険の自己負担が安心して払えるようにというのが主眼でございまするから、したがって、自己負担のできるお方には御遠慮をしていただく、こういう考え方で所得制限をつけたわけでございます。
 また、年齢七十歳は高過ぎるという御意見のようでございますが、周年齢者の健康の状態、また医療にかかる頻度等を勘案をいたしまして、まず七十歳から出発するのが適当であろう、かような観点に立ったわけでございます。
 また、診療報酬制度の適正化の問題や、医療分業、僻地医療、その他医療の供給体制、国民の健康管理体制あるいはまた予防、リハビリ等に触れたお話がございましたが、これらも近く関係審議会に諮問をいたし、また、この国会で御審議をいただきますために、医療基本法をいま急いで策定中でございます。近いうちに審議会に諮問をし、そして国会において御審議をいただきたい、そこで十分皆さま方の御意見も伺わしていただいて、御審議を確めていただきたい、かように思っている次第でございます。
 基本法の成立をいたすまでは、ただいま申し上げましたような事柄に無関心でおるわけではございません。僻地医療の対策にいたしましても、あるいはまた、医薬分業の推進の方法にいたしましても、いままでもやってまいりましたが、本年度もさらに精一ぱいやってまいりたい、かように思います。いずれ詳細はまた委員会において十分御意見を伺い、また意見も述べたいと、かように思っております。(拍手)
  〔国務大臣木村俊夫君登壇〕
#15
○国務大臣(木村俊夫君) 私に対する直接のお尋ねはなかったように考えますが、ただ一点、わが国経済をGNP第一主義から国民福祉優先のNNW第一主義に大きく転換すべきであるというお尋ねがございました。この御意見には全く同感でございます。その観点から、経済企画庁といたしましては、単なる経済活動の指標としてのGNPをこえて、国民福祉のものさしともいえる新しい指標、たとえば先ほど御指摘のありましたNNW、あるいはソシアルインジケーター、国民選好度等の開発に取り組むことといたしております。おおむね年内にはその作業の成果を得たいと考えておりますが、これらの福祉指標を十分活用することによりまして、今後の長期的政策を検討してまいりたいと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○副議長(長谷川四郎君) 米原昶君。
  〔米原昶君登壇〕
#17
○米原昶君 今日、激動する内外情勢のもとで、戦後四半世紀にわたる対米従属の自民党政治は、その矛盾と破綻を露呈しております。しかるに、佐藤総理は、サンクレメンテ会談において、ニクソン政策に全面的に追従し、施政方針演説でも、日米関係こそ最も重要だと強調いたしました。ここにこそ日本国民の今日の最大の不幸があります。(拍手)
 私は、このような観点に立ち、日本共産党を代表して、佐藤総理に質問いたします。
 第一は、沖繩問題であります。
 総理は、沖繩返還によってアジアの緊張緩和を促進すると自画自賛されましたが、沖繩の米軍基地とその機能がそのまま継続されるのに、何を根拠に緊張緩和といえるのか。核抜きを実現するというが、わが党が、米軍資料に基づいて指摘した一連の核攻撃部隊が実際に撤去されますか。国民が求めている核抜きとは、核弾頭の撤去だけでなく、核攻撃部隊、核運搬手段、核貯蔵庫など、すべての撤去であります。政府はこの撤去を要求しましたか。また、主権に基づき、基地に立ち入り、確認を行ないますか。明確かつ厳粛な答弁をいただきたい。(拍手)
 また、総理は、沖繩同胞の大きな犠牲に言及し、この苦悩を忘れてはならないと述べましたが、それならば、自衛隊の沖繩派遣に対する県民の根強い反対をどう見ているのか。あの沖繩戦で二十万の犠牲を出した沖繩県民が心から願う自衛隊派遣即時中止の要求を総理は踏みにじるつもりなのか、総理の所信を問うものであります。(拍手)
 第二は、本土の沖繩化についてであります。
 アメリカは、沖繩のKC130空中給油機中隊の岩国基地への移転、米空軍基地の横田基地への統合強化と基地拡張、横須賀基地のエンタープライズ空母機動部隊による母港化など、沖繩を含む日本全土を一体化し、東アジア全域への日本からの出撃体制を急速に整えようとしております。
 また、政府は、アメリカの肩がわり要請にこたえるため、今回の予算でも自衛隊の戦力を飛躍的に強めるとともに、日米共同作戦体制をさらに強めようとしております。これこそ、本土の沖繩化がサンクレメンテ会談以後一そう急速な足取りで進んでいることを明らかにするものであります。(拍手)
 ここで私は総理に端的に伺いたい。総理は、沖繩と本土を一体化した基地再編や米軍実戦部隊の本土ヘの配備変更は認めないと断言できますか。また、核兵器装備が全く明白な空母エンタープライズの横須賀入港も拒否する考えはないのか。
 さらに、米軍の基地再編と関連して、自衛隊の基地拡張が各地で問題になっているが、特に首都の立川基地では、市民の八二%の反対を押し切って自衛隊の移駐を強行しようとしております。わが党はこの中止を要求するものでありますが、総理はこれを取りやめる意思はないか、伺います。
 第三に、ベトナム、インドシナ問題であります。
 総理は、ニクソン大統領の最近の八項目提案を、緊張緩和への動きと高く評価しました。しかし、昨年来の一千機に及ぶ北爆のエスカレーション、千葉県の面積にひとしい五十万ヘクタールの村々をブルドーザーで押しつぶしている宿ベトナムの平定化計画など、アメリカはベトナム侵略戦争を依然として狂暴に推し進め、ニクソン訪中をもそのために利用しようとしております。佐藤内閣がこのような侵略政策への加担と協力を強化していることは、むしろアジアの緊張を激化することではないか。
 そこでお尋ねしたい。今度の予算で、アメリカの要請にこたえ、ロジャーズ国務長官のことばどおり、劇的に増大させた東南アジア援助、特にサイゴンはじめインドシナかいらい政権へのてこ入れをして、侵略戦争の永続化に協力する援助なるものをあくまで強行するつもりなのかどうか。
 さらに、八項目提案は、南ベトナム大統領選挙や停戦の国際管理、国際会議などに触れておりますが、これはインドシナ諸国民に対する不当な内政干渉であります。この提案を歓迎する政府は、アメリカに求められた場合、これらの国際管理や国際会議にもあえて参加しようとするのかどうか、答弁を求めます。(拍手)
 第四に、中国、朝鮮との関係についてであります。
 総理は、昨日の答弁で、日華条約廃棄は中国側の主張であると言って、この主張が自主性がないかのように非難し、臨時国会のときの発言から大きく後退しました。しかし、日華条約をどうするかは、中国の正統政府をどちらと考えるかというわが国の自主的な態度の問題であります。(拍手)
 あらためて聞きますが、政府は、日華条約を今後も堅持するというのでありますか。総理は、日中間の諸問題は正常化交渉の過程でおのずから解決されるかのように言っておりますが、これこそ自主性のない態度ではありませんか。おのずからとはどういう意味か、明確な答弁を求めます。
 次に、朝鮮問題について、総理は昨日の答弁で、中国、朝鮮を侵略者とした国連決議の撤回に応じないと述べました。しかし、中国が国連に正当な議席を回復した今日、依然として中国、朝鮮侵略者決議を残そうとすることは、国際的にも通用しません。これこそ朝鮮民主主義人民共和国を敵視する態度であります。総理が、もし緊張緩和を真剣に言うのであれば、いまこそ朝鮮敵視をやめ、国連での朝鮮敵視決議の撤回を求め、日朝両国間の往来の自由をはじめ各分野での交流を促進すべきであります。総理にその考えがあるかどうかお聞きします。(拍手)
 最後に、北方領土問題についてお聞きします。
 総理は演説で、北方問題を解決して日ソ平和条約を締結すると述べています。吉田内閣は、サンフランシスコ条約第二条(c)項で北方領土の領土権を放棄しました。サ条約のこの項をそのままにして、択捉、国後の返還を要求する法的根拠をお伺いしたい。
 まず、日ソ平和条約の締結によって、歯舞、色丹の即時返還を実現し、安保条約とサ条約第二条(c)項の廃棄によって千鳥問題解決の条件をつくるべきであると考えるが、これらの点について総理の答弁を求めます。(拍手)
 総理、あなたは施政方針演説で、緊張緩和の外交をしきりに言われたが、あなたの外交政策は、どの点をとってみても、サンフランシスコ平和条約、安保条約以来のアメリカへの従属と協力の外交であり、緊張激化を招くものであります。真に緊張緩和を実現するためには、日米安保条約を廃棄し、平和中立の立場を明らかにし、すべてのアジア、太平洋諸国との平和友好の関係を結ぶことであります。ここにこそ、日本国民がアジアと世界の平和に貢献する道があると考えます。(拍手)
 次に、財政経済政策、国民生活の問題について伺います。
 総理は、発想の転換を強調し、設備投資主導型の超高度成長への復帰ではなく、高度福祉国家建設への軌道を設定すると、いかにも政策の大転換を行なうかのように述べました。しかし、今日、財政経済政策の転換を判定する基準は、その政策が、第一に、物価を安定させるか、それとも上昇させるか、第二に、国民のための減税か、大企業だけの減税か、第三に、国民の生活環境の飛躍的改善か、大企業のための産業基盤整備か、第四に、社会福祉の充実か、軍事費の増大かという点にあります。これらの基準に照らしてみるならば、総理の言う転換とは、全くの欺瞞であり、大企業優先、国民生活じゅうりんの財政経済政策の継続であるばかりか、国民にとって一そう危険な方向にわが国の経済を推し進めようとするものであることは明らかであります。
 そこで、まず物価問題つにいて伺います。
 佐藤総理は、組閣以来七年間、物価対策として千編一律に、低生産部門の近代化、流通機構の合理化、競争条件の整備などを繰り返してきましたが、物価は上がるばかりで、今日、国民は心の底から政府の施策に憤激しております。
 第一に、二兆円になんなんとする公債の発行は、政府が何と説明しようとも、これが赤字補てんのための公債発行であることは明らかであり、インフレを画期的に進行させるものであり、近い将来、必ず付加価値税の創設などによって、国民の負担をいよいよ増大させることは明らかであります。
 今日必要なことは、このような赤字公債の発行をやめ、国家財政のために必要な財源は、二兆円をこえる租税特別措置など、大企業のための特権的な減免税を一切廃止して正当に取り立てることによって確保し、国民には大幅に減税するよう税制を根本的に転換することであります。その考えはないのか、総理の所信を伺います。(拍手)
 第二に、国鉄運賃、医療保険費、国立大学の授業料などなど、公共料金の引き上げをやめること、そのためには、何よりも独立採算制をやめることです。たとえば、国鉄の赤字を解消し、料金引き上げをやめるためには、国鉄が公共機関である以上、国が大幅な財政援助をするのが当然であり、累積債務の国による肩がわり、特別補給金制度などを実施すべきであります。また、国鉄の料金体系の上で、大企業の貨物輸送が不当に安くなっている包括運送契約などはやめさせ、正当に料金を取り立てることであります。そして、大企業のための建設計画を改め、国民の通勤や生活のための交通網を充実させる建設計画に転換すべきであると思うが、総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第三は、独占価格の規制であります。
 独占価格の規制は、行政上強力な規制措置をとる以外に適正にする道はないのであります。
 わが党は、このために、これまで独占価格を調査する権限を持った機関を国会に設置して規制すべきであると主張してきましたが、政府は、自由経済のたてまえを云々してこれを拒否してきました。しかも、最近では、不況を口実に、鉄鋼など大企業のカルテル行為を認め、価格のつり上げに手を貸し、自由経済のたてまえをみずからくずしております。円切り上げによる為替差益を調査し、消費者に還元する問題の解決のためにも、いまこそわが党の提案を実施すべきであります。総理はこの提案を実施する意思があるかどうかを伺います。(拍手)
 次に、いわゆる景気浮揚のための政策について伺います。
 総理は、高度福祉国家建設への軌道を設定すると述べていますが、高速道路、鉄道、港湾などの整備は、依然として大企業本位の成長政策の継続です。これで発想の転換などとどうして言えましょうか。真の転換とは、物価の安定、賃金の大幅引き上げ、大幅減税、生活環境改善のための公共投資や社会保障の画期的拡充、農業、中小企業への特別な援助、地方交付税の交付率の引き上げなど地方財政の充実、これらを中心とする国民生活の画期的改善をはかることであります。総理はこれを実行する用意があるか、伺いたい。(拍手)
 総理は、日米間の貿易、経済関係について大きな進展が見られたと述べています。しかし、円の大幅切り上げや繊維の不当な政府間協定など、ドル危機の根本原因であるアメリカの戦争と侵略の政策を全面的に支持し、ニクソン大統領の要求を卑屈なまでに受け入れ、国民生活を犠牲にしたのであります。サンクレメンテ会談以後も、牛場・エバリー会談で、自由化の推進と輪人の拡大に応じたのであります。
 このような自由化、輸入の拡大のために、日本機業は大打撃を受け、中小企業は倒産に追い込まれ、労働者の賃上げ抑制、首切り合理化など、耐えがたい犠牲が多数の国民に強要されているのであります。それが日米経済関係の進展の中身ではありませんか。これこそ、日米安保条約第二条のいう日米経済協力の実体であります。(拍手)いまや、政府・自民党の安保繁栄論は全く破綻し、日米安保条約の廃棄こそが、日本経済の自立と繁栄をもたらす唯一の道であることは明らかであります。(拍手)
 最後に、選挙制度について伺います。
 第七次選挙制度審議会は、選挙区制についての答申を急いでおりますが、この委員会が小選挙区制を基調とする選挙制度の制定に向かいつつあることは、歴史的に明らかであります。多くの国民はそれに非常な不安を感じております。小選挙区制を基調とする選挙制度は、たとえば自民党案では、前回総選挙の得票率四七・六%で自民党は八〇%以上の議席を占めるという不合理きわまるものであり、自民党の専制支配の長期維持と憲法改悪、軍国主義の全面復活を進める手段とされるものであります。
 政府に主権市民、議会制民主主義の発展を尊重する意思があるならば、このような民意を反映しない選挙制度は断じて許すべきではありません。総理の所見を求めます。
 いま緊急に必要なことは、現在の不合理な衆参岡院の選挙区議員定数を公選法の規定どおり是正することであり、政治資金規正法を制定することであります。総理は、昨日、政治資金規制のために努力すると言ましたが、これは、政治腐敗の根源である財界からの政治献金を一切禁止することを原則としたものでなければならない。緊急定数是正の問題とともに、この点について明確な答弁を求めます。(拍手)
 以上述べたように、佐藤内閣の内外政策は、国民の要求に逆行し、きわめて危険な道を進むものであります。
 政府閣僚、自民党幹部の相次ぐ暴言は、佐藤内閣と自民党の体質を暴露しました。この政府のもとで、わが国の進路の転換も、国民生活の向上もあり得ません。
 この際、佐藤内閣の早期退陣を強く要求しつつ、代表質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総環大臣佐藤榮作君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) できるだけ忠実に米原君のお尋ねに答えたいと思いますが、たいへん早口でありまして、私もなかなかついていけないことがございます。したがいまして、全部、できるだけ忠実にお答えするつもりでありますが、もしもそういう点で落ちている点がありましたら、他の機会でお尋ねを願います。
 政府といたしましては、米国との関係は、わが国にとって、他のいかなる国との関係にも増して重要であると考えております。かかる考え方は、みずからの自主的な判断として選択しているものであります。対米追随ではありません。
 サンクレメンテにおける私と大統領との会談においては、二国間関係の諸問題や国際情勢等について率直な意見交換を行ない、沖繩返還日についても決定を見た次第であります。会談の概要については、共同発表で御理解いただけるものと思います。
 核撤去の問題につきましては、共同発表に明記されているように、返還に際して、米国政府の確約が完全に履行された旨の確認を重ねて得ることになっております。したがって、それ以上に個々の施設、区域について点検を行なう必要はないと考えております。
 また、自衛隊の沖繩配備につきましては、一部県民の間に反対の声のあることは、政府も十分承知しております。しかしながら、復帰によって沖繩がわが国の一部となる以上、沖繩の防衛と民生協力の責務をわが国が負うのは当然でありますので、部隊の配備にあたっては、県民の理解と支持を縛るよう努力してまいります。
 次に、本土の沖繩化ではないか、こういうことばが使われましたが、これはたいへんな誤解であるように思います。米軍基地の整理縮小にあたりましては、沖繩の復帰後も依然として本土と沖繩を、区別して扱うことはどうかと考えます。政府としては、沖繩を含むわが国全体として米軍基地の整理縮小につとめるという考えをとってまいりたいと考えます。
 次に、政府としては、ベトナム和平のためにきわめて積極的な提案を行なった米国及びベトナム政府の勇断に敬意を表するものであります。これを契機として和平会談が軌道に乗り、一日も早く和平が達成されることを深く希望いたします。わが国としては、米国に対し、即時無条件全面撤退を要求する立場にはありませんし、ベトナム化政策について云々する立場にもないことを御理解いただきたいと思います。しかし、私どもは、平和的な立場から経済援助をすることについてはわが国の当然の責務だ、かように考えております。
 政府としては、北京政府がかねてより、日華平和条約を不法であり、破棄すべきものと主張していることは承知しておりますが、わが国としてはこの主張をそのまま受け入れられないことは、すでに繰り返し申し述べているとおりであります。いずれにしても、この問題は、今後日中国交正常化交渉の過程で取り上げる問題であると考えます。
 次に、朝鮮問題について。
 わが国は、韓国との友好協力関係を推し進めていくことを基本方針としておりますが、これをもって北朝鮮敵視政策をとっていると、言われるのは、当たらないと思います。わが国と北朝鮮との交流につきましては、具体的な問題ごとに、ケース・バイ・ケースに対処していく方針であります。なお、現在の情勢のもとにおいて、北朝鮮と国交を開くことは考えておりません。
 次に、北方領土問題についてお答えいたします。
 今般来日したグロムイコ外相との話し合いで、日ソ平和条約締結交渉を本年じゅうに行なう旨の合意を見たことは、北方領土問題が一歩前進したものとして評価するものであります。
 米原君は、まず平和条約を締結して、歯舞、色丹の返還を実現せよとのお説でありますが、政府としては、わがほうの基本的な立場を粘り強く説明し、わが国固有の領土たる歯舞群島、色丹、国後、択捉の諸島の祖国復帰を実現したいと考えております。(拍手)
 国後、択捉両島につきましては、一八五五年の日魯通好条約、一八七五年の樺太千島交換条約等から明らかなように、一貫してわが国の領土であることを確認されております。サンフランシスコ条約二条(c)項でその権利を放棄した千島列島には含まれていないのであります。この点を誤解ないように願っておきます。
 次に、米原君は、日米安保条約廃棄と平和中立化を要求されましたが、政府にはそのような考えは毛頭ございません。
 次に、経済問題についてお答えをいたします。
 わが国経済は、従来目ざましい高度成長を続け、第二次大戦の混乱と荒廃から、いまや西欧先進国に匹敵する所得水準に達するに至りました。このことは、このようにして蓄積された経済力を今後積極的に国民福祉に振り向けることができるという意味においても、高く評価されてしかるべきであると思います。
 しかし、反面、生活関連社会資本の不足、公害による環境の破壊など、多くの問題が発生するに至ったのは事実であり、いまや、これらの諸問題を解決するため、社会保障の充実、生活関連社会資本の拡充などが、全国民の求めるところとなってきております。
 従来から政府としては、公共投資により生活関連社会資本の充実につとめてまいりましたが、こうした国民的要望に十分こたえるため、近く策定を予定している新しい長期計画においては、国民福祉の充実を最大課題とし、これに基づいて今後成長から福祉へと、政策の根本的な転換をはかっていく考えであります。
 米原君の冒頭の質問にもお答えしたとおり、わが国にとって、米国との関係は、他のいかなる国との関係にも増して重要でありますので、米国との経済、貿易面での相互協力関係をやめたり、これを変えたりする考えはありません。
 次に、物価の問題でありますが、物価の安定は国民生活向上のための最重点課題であり、政府は全力をあげてこれに取り組んでいく決意であります。このため、当面の景気浮揚策の実施にあたっても、物価の高騰を招かぬよう十分配慮するとともに、各般の構造対策を二段と強化していきたいと考えております。
 以下、米原君から物価問題に関連して出された問題点についてお答えをいたします。
 まず、大企業の特権内減免税を廃止せよとの御意見がありましたが、もし、米原君が租税特別措置のことをさしておられるならば、特別措置は、各種の政策目的を達成するために租税の誘引的機能を利用しようとするもので、大企業だけに恩典を与えているものでないことを申し上げておきます。
 また、個人課税の軽減については、すでにたびたび説明しておりますので、省略をいたします。
 次に、国鉄については、国鉄自身による抜本的な経営合理化をはかるとともに、政府において画期的な財政援助をはかりつつ、必要最小限度の運賃適正化をはかることが、今後長期にわたって健全な国民の足の確保にとって不可欠かつ最適の方法と考える次第であります。今回の国鉄運賃の値上げを中止する考えはございません。
 独占価格についても触れられましたが、独占価格あるいは寡占価格というものの適正化については一そうの注意を払うつもりでございます。
 次に、御質問の選挙制度の改善策については、目下選挙制度審議会において御審議願っておりますが、その内容は、政党本位の、できるだけ金のかからない選挙のあり方についてであり、別に小選挙区制の実現を目標に諮問をしていやわけではありません。
 また、衆議院議員の選挙区別定数と人口の間の不均衡の問題は、総定数の問題、現行選挙区制の問題等、選挙制度の根本問題と切り離すことのできない性格のものと考え、選挙制度審議会に根本的な改善策にあわせて審議をお願いしているので、審議会の検討の結果を待ちたいと考えております。
 なお、政治資金規正法の改正についての私の考えは、昨日、社会党の成田君にお答えしたので、省略させていただきます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
#19
○副議長(長谷川四郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 外務委員長辞任の件
#20
○副議長(長谷川四郎君) おはかりいたします。
 外務委員長田中榮一君から、委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○副議長(長谷川四郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 外務委員長の選挙
#22
○副議長(長谷川四郎君) つきましては、これより外務委員長の選挙を行ないます。
#23
○藤波孝生君 外務委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#24
○副議長(長谷川四郎君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○副議長(長谷川四郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、外務委員長に櫻内義雄君を指名いたします。
  〔拍手〕
     ――――◇―――――
#26
○副議長(長谷川四郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 高見 三郎君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君
        労 働 大 臣 塚原 俊郎君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
        国 務 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 大石 武一君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 竹下  登君
        国 務 大 臣 中村 寅太君
        国 務 大 臣 中山 貞則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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