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1971/02/29 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第8号
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1971/02/29 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第8号

#1
第068回国会 本会議 第8号
昭和四十七年二月二十九日(火曜日)
    ―――――――――――――
  昭和四十七年二月二十九日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 米中首脳会談に関する緊急質問(野田武夫君提
  出)
 米中会談に関する緊急質問(勝間田清一君提
  出)
 米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急
  質問(正木良明君提出)
 米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急
  質問(和田春生君提出)
    午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 米中首脳会談に関する緊急質問(野田武夫君提出)
 米中会談に関する緊急質問(勝間田清一君提出)
 米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問(正木良明君提出)
 米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問(和田春生君提出)
#3
○藤波孝生君 緊急質問許可に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、野田武夫君提出、米中首脳会談に関する緊急質問、勝間田清一君提出、米中会談に関する緊急質問、正木良明君提出、米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問、及び和田春生君提出、米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
#4
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 まず、野田武夫君提出、米中首脳会談に関する緊急質問を許可いたします。野田武夫君。
  〔野田武夫君登壇〕
#6
○野田武夫君 私は、自由民主党を代表して、今般の米中首脳会談に関連する諸問題並びに今後のわが国のとるべき態度について、この際、総理大臣に対してお尋ねをいたします。
 今般のニクソン米大統領の中国訪問によって、二十数年にわたり断絶していた米中間の対話が実現し、その結果、米中関係の改善のみならず、双方が関心を持つ広範な問題について率直な意見の交換が行なわれ、共同声明の発表に至ったことは、流動し、多極化する国際社会において、歴史の一時期を画するきわめて大きな意義と重要性を持つものであると存じます。
 アメリカは周到な準備を積み重ねて今回の首脳会談実現にこぎつけたのでありますが、その結果、アジアの緊張緩和に寄与する相当の成果をあげたことは、われわれもこれを高く評価するものであります。私は、正式の国交を持たない中国に乗り込んで、中国首脳と長時間にわたる真剣かつ率直な意見をかわし、話し合いによる問題解決の熱意を示したニクソン大統領の勇気は、これを深く多とするものであります。(拍手)
 今回の米中共同声明を見ますると、米中双方が合意に達しなかった問題については、それぞれその主張を併記する形をとっており、これは当然なことながら、双方の主義主張の相違が依然として存在することを示すものであり、この点については、共同声明が両国の苦心の作と言えるかと思うのであります。すなわち、米中双方ともその原則的立場に立ち、譲れない点は互いに譲らず、かつ、双方の与国に対しての配慮も払いつつ、両者がぎりぎりのところでその合意並びに主張をまとめ上げて、しかも将来の前進を目ざしたという点をわれわれとしては注目し、評価すべきではないかと考えるのであります。
 共同声明発表直後の政府のこれに対する考え方を見ますると、全体として、米国の対中政策について必ずしも大きく前進したとは受けとめておられないように感じられる面があるのでありますが、しかし、私は、これによって米中間の諸問題解決の端緒が開かれ、同時に、究極における米中両国の国交正常化のための共通の基盤が築かれたものと言えると考えるのであります。同時に、これがわが国並びにアジア諸国に与える影響もまた重視せねばならないと思います。政府はこの共同声明が今後のアジアの平和に及ぼす影響をどのように考えられるか、承りたいのであります。
 たとえば台湾問題について見ますると、双方がいわゆる平和五原則について合意し、両国の相互関係にその諸原則を適用することを認めた一面、平和五原則中の内政不干渉と領土不可侵の項と米華相互援助条約が相矛盾するではないかと思われる点もあります。これらについて政府はどのように見られるか、お伺いいたしたいのであります。
 また、一面において、ニクソン大統領の訪中発表のとき以来、米国が表明し、過般のサンクレメンテにおける日米首脳会談においてもわが国に対して明らかにした、すなわち、古い友人は見捨てない、台湾の国民政府に対する従来の政策は変えない、また軍事約束は守るとの従来の態度を今回は大きく転換し、変更するものではないかと言い得ると思うのであります。また、米国の従来の政策と今回の共同声明によって示された方向をどうとらえるべきか、混乱と戸惑いが生じていることは否定できません。これらの点について政府はいかなるお考えを持っておられるか、総理の御見解を明らかにされたいのであります。
 次に、日米安全保障条約についてでありますが、わが国の平和と安全を守るための大きな柱として、政府は従来から、これを維持していくことを明らかにしており、また、われわれも全く同じ立場からこれを維持継続していくべきものと考えております。しかし、その適切な運用については、常に情勢の推移によってこれが万全を期すべきことは言うまでもありません。
 米中共同声明で中国側は日本のことについても触れ、日本軍国主義ときめつけております。これについては大国主義のあらわれではないかとの気持ちを持つ者も多いと思うのであります。日米安保条約の存在意義やその役割りについて、国民の間に素朴な疑問や再検討の声が起こりつつあることは否定できません。政府はこれらの点につきまして積極的に解明し、国民に語りかける努力をなすべきであると信じますが、総理、いかがでございましょうか。
 次に、わが国と中華人民共和国との国交正常化の問題について、政府の率直な見解をお伺いしたいと存じます。
 わが国は、米国よりも先んじて、国交正常化のための日中政府間接触を求めていたのでありますが、残念ながらいまだその実現を見るに至っていないのであります。政府間の交渉によって国交正常化を進めようとする以上、相互に相手方の主張を把握することがきわめて重要であります。
 中国側の態度は、従来しばしば公式の声明等によって明らかになっておりますように、次の三原則であります。すなわち、第一は、中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であるという点。第二は、台湾は中華人民共和国の、領土の一部である。第三点におきましては、日台条約は廃棄さるべきものである、という三点に集約されると思うのであります。わが国としては、政府間接触によって国交正常化の話し合いを進めようという以上、この中国側の基本的原則について具体的な対処策、具体的な腹案がなければならないと思うのであります。
 第一の点につきましては、政府は、昨年の国連総会において中華人民共和国が中国を代表する政府であると決定された以上、この事実を踏まえ、国交正常化に進むとの態度を明らかにされておりますが、この際、この基本的態度をさらに明確にされたいと思うのであります。
 第二は、政府は、かねてから、中国は一つであると述べておられます。これに関連して、わが国がいわゆる台湾独立運動に加担しているのではないかというような実に間違った憶測をする者がありますが、これらの批判や懸念が一部にあるやに聞くのであります。われわれはサンフランシスコ条約で台湾を放棄したのであります。そのようなことはごうまつも考えていないことを特に明らかにするとともに、この点について政府の明確な御答弁をお願いしたいと存じます。
 第三の日華条約の問題につきましては、日本政府は、この条約によって日中間の戦争状態は終了したとの態度をとっておりますが、しかし中国側はこれを認めていないのであります。日華条約の適用範囲につきましては、交換公文において明らかになっておりますように、中華民国の支配下に現にあり、または今後入るすべての領域に適用されるのであって、これはいわゆる限定条約というべきものでありましょう。現在台湾の国民政府の支配が現実に中国大陸に及んでいないことは明らかであります。また、日華条約締結の約三カ月前にダレス大使にあてた吉田書簡で、「究極において、日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望する」と述べておられます。将来における中国全体との関係樹立を展望していたことも、この際特に想起すべきではないかと存ずるのであります。このような事実と経緯を踏まえて、戦争終結問題の取り扱いその他に留意して、中国との国交正常化に積極的に取り組むべきではないかと信ずるものであります。かくて、日華平和条約の問題、言いかえれば台湾問題は、この交渉の過税においておのずから解決されると存じます。この点について政府はいかにお考えになるか、明確にお答えをいただきたいと思っております。
 なお、この際、米中共同声明に関連しまして、二、三の点についてお伺いしたいと存じます。
 まず、わが国が隣接する地域として大きな関心を持つ朝鮮半島の問題についてであります。共同声明におきましては、米国は、韓国と緊密な協力を保ち、朝鮮半島の緊張緩和と交流協力に努力する韓国を支持するということを明らかにし、また、中国は、北朝鮮の提案した平和的統一の八項目案と朝鮮統一復興国連委員会の廃止を求める立場を支持するとの態度を明らかにしております。朝鮮半島の緊張が緩和することは、わが国としましても大きな関心事であります。政府としてはこれをどう受けとめ、対処されんとするか、お答えをいただきたいと思います。
 次に、多極化する国際情勢の中において、アジアの平和に大きな責任を有する日中米ソの相互関係を踏まえたわが国の進路についてであります。
 わが国は、アジアの一国として、アジアの平和、ひいては世界の平和を希求する立場から、わが国自身が一段と努力することはもちろん、これらの国々や韓国、北鮮、さらにアジア太平洋諸国と相携え、その友好を増進するとともに、ともに協力して緊張緩和と平和の確保につとむべきものと信ずるのであります。この点につきまして、政府の御所見をお伺いしたいと存じます。
 終わりに、私は、進展する国際情勢の中で、日中両国が国交正常化に向かって努力し、これを実現することは、単に日中両国の利益にとどまらず、アジアの平和と安定、ひいては世界の平和のためにきわめて重要な課題であると信ずるのであります。政府は、すでにそのための政府間による交渉を強く要望しているのでありますが、今日までこれが実現を見ないことはきわめて遺憾であります。政府は、今後とも日中国交正常化のため最善の努力を傾け、もって、すみやかに日中間に安定した関係を樹立するよう強く期持し、要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 野田君にお答えいたします。
 御承知のとおり、今回の米中共同声明の中で、米国側は台湾からすべての米国軍事力と軍事施設を撤退させるという最終目標を確認し、当面、この地域の緊張が緩和するに従って台湾の米国軍事力と軍事施設を逐次減少させることを明らかにしております。しかし、現在の台湾につきましては、双方の見解が併記されていることも事実であります。サンクレメンテにおける私とニクソン大統領との会談におきまして、同大統領は、台湾に対するコミットメントは順守するとの意向を表明しております。いずれにいたしましても、米中間におけるこの問題は、ニクソン大統領がいみじくも申しておりますように、長い道程の第一歩を踏み出したといえるのではないだろうかと思うのであります。
 わが国としては、かねがね申しておりますように、中国は一つであるという認識のもとに、中華人民共和国との間に国交正常化のための政府間の話し合いを始めたいと念願しており、中国がこれに応ずることを期待しております。そして、日中間の諸問題は話し合いの過税で解決をはかってまいりたいと考えておるものであります。
 ニクソン・ドクトリンによって、米国がアジアにおいて新たなコミットメントはしないが既存のコミットメントを守るということは、すでに既宗の方針であり、発表したとおりであります。また、米中接近という新事態によっても、日米関係にはいささかの変化もないものと考えます。日米関係は今後ますます緊密化の度合いを深めていくことになりますが、政府としては、引き続き日米安保体制を堅持する方針であります。これは、コミュニケをよく読んでいただきたいと思います。
 次に、日中関係正常化につきましての中国側の考え方は、私も十分承知しております。政府の考え方は冒頭で申し述べたとおりでありますが、私としては、ともかく、近接する日中両国がすみやかに政府間の話し合いを始めることが肝要であると考えております。また、戦争終結についての相互の見解も異なっていることは御指摘のとおりであり、したがって、日中関係正常化の進め方につきましては、野田君の御提案も参考にしながら、今後とも積極的な打開の方法を講じてまいりたいと考えております。(拍手)
 次に、台湾は中国の一部と考えるかとのお尋ねでありますが、私はそうであると思っております。御承知のとおり、現在、中華人民共和国政府の施政権は台湾に及んでおらず、国民政府の施政権は大陸に及んでおりません。しかしながら、双方とも、中国は一つであると主張し、政府もまた、中国は一つであると認識しております。したがって、当然の帰結として、台湾は中国の一部であると考えるものであります。
 なお、政府としては、台湾の独立運動にこれまで加担したことはありませんが、今後ともこれに加担する考えのないことを、この機会にはっきりさしておきます。(拍手)
 野田君は、さらに、今後のわが国外交の進め方として、アジア・太平洋諸国や近隣諸国との連携協調をはかるべきであるとの御意見を述べられました。私も全く同感であります。国際関係の多極化時代ということは、とりもなおさず、大国、中小国を問わず、諾国間の関係を綿密にフォローすべき時代であると考えます。私は、この努力が世界の緊張緩和に役立つという認識のもとに、今後とも、あらゆる国との関係改善に一そう配慮してまいる所存であります。
 野川君御指摘のとおり、共同声明中には、米中両国の朝鮮問題に対する見解が併記されておりますが、これは、米国は韓国の立場を支持し、中国は北朝鮮の立場を支持するという、両国の従来の相異なる態度を繰り返し述べたもので、朝鮮問題が今回の会談における重要なテーマの一つであったことを示しているものと、かように考えます。
 私どもといたしましては、日中間の問題につきましては、この上とも、今後とも一そう、その正常化について最善を尽くしてまいりたいと思います。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(船田中君) 次に、勝間田清一君提出、米中会談に関する緊急質問を許可いたします。勝間田清一君。
  〔勝間田清一君登壇〕
#9
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、米中共同声明に関連して、今後の日本の外交について、佐藤総理並びに稲田外務大臣に対して若干の質問をいたしたいと思うのであります。
 まず最初に、このたびのニクソン大統領の中国訪問と米中共同声明を、佐藤内閣はどのようにこれを受けとめようとしているのか、佐藤内閣の基本的な姿勢をお尋ねいたしたいと思うのであります。
 福田外務大臣は、昨日の予算委員会におきまして、このたびの米中会談とその共同声明を、アジアの緊張緩和として一応歓迎する旨の答弁はありましたが、米中の間には、関係の正常化はあっても、国交の正常化は期待されないとの見解を述べております。また、台湾条項についても、あえてキッシンジャー補佐官の解説を引用いたしまして、サンクレメンテの日米会談におけるアメリカの約束のように、従来の米台関係をいささかも越えるものでなく、単なるニクソン・ドクトリンの適用にすぎないと答弁いたしておるのであります。
 もし、このことが米中会談に対する佐藤内閣の統一された認識でありといたしまするならば、全く米中会談とその共同声明の持つ歴史的意義を見失うものといわなければなりません。(拍手)さもなければ、佐藤内閣の重大な外交上の立ちおくれや失敗をことさら隠蔽しようとする、きわめて遺憾な態度といわなければなりません。(拍手)
 共同声明を正しく見るならば、そこに関係と書かれようと、あるいは国交としるされようと、基本的には、米中両方が平和五原則を承認し、両国間の正常化への進展がすべての国の利益であるとの認識に立って、人事、文化、経済の交流拡大をはかり、随時米高官を北京に派遣する等の積み重ねを政経一体の立場に立って実行していこうという約束を、両国政府の最高責任者が内外に表明した歴史的意義をこそ重要視すべきだと思うのであります。すなわち、米中両国はやがて国交正常化を実現するものであって、その第一歩をここに踏み出したものと見なければなりません。
 また、台湾条項につきましても、原則とプロセスを明確に区分し、かつ統一的に把握することが、中国との外交において最も重要であることに注目しなければならぬと思うのであります。
 共同声明で明らかなように、中国は一つであり、台湾は中国の一部であることを認め、さらに、米国政府は、中国人自身による台湾問題の平和的解決に関心を持つことを確認して、その展望を心にとめながら、米国は究極的に台湾からすべてのアメリカ軍隊と軍事施設を撤退させるという米国の目標を確認いたしたのであります。これがすなわち原則であります。この原則が基本的に確認されたので、次いで、当面は、台湾地域の緊張が緩和するに応じてその軍隊と軍事施設を積極的に縮小するという、いわゆる現実的処理方法がうたわれたのであります。
 したがって、福田外務大臣が、キッシンジャー補佐官の米台軍事援助条約が存続すると解説したことを根拠として、今後もアメリカと台湾との関係が変わらないかのごとくに宣伝するのは、全く本末転倒の議論といわなければなりません。(拍手)サンクレメンテにおける日米首脳会談での台湾に関するアメリカ側の約束なるものは、アメリカによってみごとに裏切られたと断定せざるを得ないのであります。(拍手)また、このことを真に受けて日中国交回復を怠った佐藤内閣の今日までの責任は、鋭く追及されなければならぬと思うのであります。(拍手)佐藤首相並びに福田外務大臣の答弁をここに求めるものであります。
 次に、このたびの米中共同声明を契機としての、日中国交回復に関する政府の新しい決意についてお伺いいたしたいと思います。
 政府は、今日まで、日中国交回復の意思あることを表明してまいりました。そのために、あらゆるルートを通じて中華人民共和国政府と接触しようと努力されたことも伝えられました。また、昨日の予算委員会においては、従来の認識を若干改めて、中国を代表するものは中華人民共和国政府である、あるいは、台湾は中華人民共和国の一部であるというようなことを認めはいたしましたが、しかしながら、佐藤内閣のそうした意図にもかかわらず、はたして佐藤内閣のもとで日中国交回復が可能であるかいなかについては、私は深く疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 その理由としては、佐藤内閣は近く退陣せざるを得ない不安定政権であるということは別にいたしましても、少なくとも二つの点をあげることができると思うのであります。
 その第一は、佐藤内閣が依然として日華条約にこだわりを示していることであります。昨日の予算委員会においてさえ、佐藤総理は、日華条約は日中国交回復の交渉の過程で解決すると言っております。さらにつけ加えて、日中国交回復には、新しく平和条約を締結する方法と日華条約を継承する方法の二つがあるとさえ彼は言明いたしております。何ゆえに佐藤総理が、今日に至ってもなおかつ日華条約にこだわりを示すのか、アメリカがすでに台湾について踏み切っているのに、何ゆえに日本のみがこのように強くこだわらざるを得ないのか、佐藤総理はその積極的理由を明らかにする責任があると思うのであります。(拍手)
 周知のように、一九四九年、中華人民共和国は協商会議におきまして、台湾政府との間の約束は、いかなる第三国に対しても責任を負わない旨の宣言をいたしておることに注目すべきであります。そして、たとえ日本が台湾に対して何らかの利害関係があるといたしましても、私がすでに申し述べたとおり、原則と現実処理とをはき違えてはならないのであります。
 私は、日華条約という、本来日本の責任に帰すべき問題の取り扱いを、中華人民共和国政府との交渉の過程で解決するといった筋の通らない態度ではなくて、まず日本が、日華条約は破棄するという基本的態度、すなわち原則をまず鮮明にした上で、何らかの台湾に対する日本の利害関係があるなら、事後処理の問題として友好的に解決を期待するという態度が正しい態度であると確信をいたすのであります。(拍手)問題は、日華条約を破棄するという日本政府の基本的態度をまず打ち出すことこそ、日中国交回復の第一歩であることと確信いたすのであります。(拍手)佐藤総理の決意をお伺いいたしたいのであります。
 佐藤内閣のもとで日中国交回復の困難な第二の理由は、佐藤・ニクソン共同声明以来の佐藤内閣の危険な内外政策にあることに注目をすべきであります。特に、中国に対して日本の軍国主義復活の危険として受け取られていることは、このたびの米中共同声明における中国の発言に明白にあらわれているのであります。
 日本の商品が急速度に東南アジアに進出して、総貿易額の三〇%に達し、資本の輸出も年々増大して、年々十数億ドルからやがて四、五十億ドルに達するであろうといわれている経済の海外進出の中で、韓国、台湾が日本の防衛線に組み込まれ、沖繩に自衛隊が進出し、第四次防がまさに五兆数千億の大規模で実現されようといたしている姿は、まさに軍国主義復活の危険として、中国をはじめアジア諸国家に重大な不安を呼び起こしつつあることは当然といわなければなりません。
 佐藤総理は、もしこのことが日本に対する誤解であるというならば、そしてまた、真実平和に徹し、アジア諸国家、なかんずく……
  〔発言する者あり〕
#10
○議長(船田中君) 静粛に願います。
#11
○勝間田清一君(続) 中国との平和共存を望むならば、いまこそ佐藤総理は、ことばではなく、事実をもって具体的に回答を与えるべきであります。(拍手)
 特に、佐藤総理が日米共同声明の際に明らかにいたした韓国、台湾に関する条項を、あれやこれやの弁解ではなく、この際、明確に取り消すべきだと思うのであります。
 また、第四次防衛計画を、米中会談と米中共同声明以後に起きた新しいアジアの情勢に見合って根本的に再検討し、日本の平和的態度をこの際明らかにすべきでありまして、佐藤総理の所見をお伺いいたしたいのであります。
 なお、この際、日米安保条約についてお伺いをいたしたいと思います。
 牛場駐米大使は、サンクレメンテ会談の直後、米中会談の結果いかんによっては、それは日米安保条約解消の始まりになるかもしれないと演説をいたしましたが、まさに今回の米中共同声明は、日米安保条約解消について、日本国民に対し重大な課題を投げかけたと思うのであります。
 それには二つの理由をあげることができると思うのであります。
 一つは、安保条約は、御案内のとおり、中国革命、朝鮮動乱等のアジア情勢の激動と緊張の中から冷戦構造の柱として生まれたものであり、明らかにソ連、中国等を仮想敵国とするアメリカを中軸とした反共軍事同盟であります。すでにソ連とは、キャンプ・デービッド会談以来、米ソの平和共存関係は打ち立てられ、日本もまた平和宣言を取りかわし、近く平和条約締結の交渉開始の状況さえ伝えられている状況であります。そして、中国とは、まさに今回、米中北京会談が行なわれ、平和五原則による米中正常化が約束され、武力によらず平和的に共存するとの双方の態度が全世界に表明されたのであります。長い間アメリカのアジア外交を指導してきた、そして日本がそれに追従してきた中国封じ込め政策は、明らかに放てきされたのであります。そして、アメリカはアジアから漸次軍隊や基地を撤退することも明らかにされたのであります。こうした緊張緩和と平和共存の新しい情勢の中で、日米安保条約は全くその存続の積極的理由を失ったものと断言せざるを得ないのであります。(拍手)
 もう一つの重大な理由は、安保条約は外国の軍隊を領土内に駐とんさせるという重大な主権の犠牲を伴っているからであります。日本がアメリカから完全な自由を確保し、真に対等平等の独立日本として、アメリカはもちろん、全世界の国々と友好平和を求めていくならば、いまこそ安保体制の桎梏から脱却して、日本の真の独立を達成するときが参ったと思うのであります。(拍手)佐藤総理大臣の見解をお伺いする次第であります。
 最後に思うことは、この重大な時局にあたっての佐藤内閣の責任についてであります。
 私は、一昨日の夜、テレビの座談会を聞いておりました。そのとき、ある外国人の新聞記者は、米中会談の感想について次のように語っておりました。
 残念なことは、こんなに世界が大きく変わっているのに、日本の政治が麻痺をしている、佐藤内閣は近く総辞職するといわれているが、いつやめるかもわからない、後継内閣の目鼻もついてはいない、しかも中国問題について自民党内部にさえ合意ができていない(拍手)、日本はもっと何かを早くやらなければならないのではないか、こう言うのであります。
 これが日本の現実であることを私も認めざるを得ないのであります。この混迷をいかにして打開するかが、今日、われわれが真剣に考えなければならぬ課題だと思うのであります。(拍手)そして、その道は、結局において、混迷した政局を一日も早く一新する以外に道はないと思うのであります。そして、その政局一新の道を切り開くのは、政局を担当している佐藤内閣が一日も早く退陣することだと思うのであります。(拍手)
 そして、日本は、新しい政治の道を確立しなければなりません。後継内閣を派閥やかけ引きで選ぶのではなく、七〇年代の新しい日本経済のあり方、平和共存の新しい国際情勢にふさわしい外交のあり方を国民自身によって選択させるという議会制民主主義の原則にのっとって、新たな政治を選ぶべきものだと思うのであります。そのために、国会は一日も早く解散をすべきであります。(拍手)
 日中国交回復問題の基本的解決は、そのときに初めて解決されるものと確信いたすものであります。
 佐藤総理大臣の所信をお伺いして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 勝間田君にお答えいたします。
 政府がニクソン訪中と米中共同声明の意義を過小評価しているとの御意見でありますが、そのようなことはありません。昨日来繰り返し申しておりますように、政府は、米中会談の意義を正しく認識し、かつ、これを高く評価するものであります。ニクソン大統領の中国訪問は、対決から対話の時代への移行を示すものであり、アジアの緊張緩和に資するところ大であるというのが政府の基本的見解であります。もちろん、今回のことによって米中問題のすべてが片づいたわけではありません。平和共存の確立に向かって、あらゆる面で相互の努力が今後積み重ねられなければならないことは申すまでもありません。政府としては、米中国交正常化がもたらされることを歓迎するものであります。
 今回の米中共同声明で、米国は台湾からその軍事力と軍事施設を撤退させるという最終目標を明らかにいたしましたが、このことはすでにニクソン・ドクトリンによってその構想は打ち出されてきたところであります。これをもって勝間田君は、サンクレメンテにおける私とニクソン大統領との会談を裏切られたと、その御指摘でありますが、そのようなことはありません。(拍手)日米間には長きにわたる友好信頼関係の基盤が確立されており、米国が世界の緊張緩和に努力することは、この日米関係を強めこそすれ、弱めるものではないからであります。私は、米中接近という歴史的事実を踏まえて、わが国なりに、じみちに平和維持への努力を重ねてまいりたいと考えております。
 次に、勝間田君は、日中間の国交正常化のために、まず日華条約を破棄し、かつ、政府の政策を大幅に変更せよと述べられました。政府が、中国は一つなりとの認識のもとに、中華人民共和国との間に国交正常化のためすみやかに政府間交渉を始めるための努力を重ねていることは、勝間田君も御承知のとおりであります。しかしながら、わが国は、日華平和条約において中国との間の戦争状態を終結させ、今日に及んでいるのであります。この歴史的事実を忘れるわけにはまいりません。中国は一つなりとする認識に基づく、その上からも、日中間の諸問題は、政府間の交渉の過程で解決すべき問題であり、おのずから妥当な解決がもたらされることを確信しております。(拍手)
 また、主権国家たるわが国が、独立を維持するため必要最小限の自衛力を維持することは当然であります。これは最も基本的な政策であることを正しく御理解いただきたい。ただし、それが他国に脅威を与えたり、軍国主義の復活につながると他から評価される、誤解されることは、慎まなければならないと思います。
 政府としては、国際情勢を正しく認識し、的確な判断のもと、正しい政策運営によって国運の伸展をはかるべく、今後とも一そう努力してまいる決意であります。(拍手)
 日米安保条約につきましては、今後ともこれを堅持する方針であることを、重ねてこの機会に明らかにいたします。(拍手)
 そもそも、世界が今日緊張緩和の方向に向かいつつあるのは、社会党の言われるように非武装中立の論理から生まれたものではなく、各国の安全保障に対する確固たる認識から生まれたものであり、(拍手)また、わが国の場合、安保条約を基盤として発展への基礎固めを行ない得たことは明らかな事実であると考えます。安保条約は純粋に防衛的なものであることは申すまでもありませんが、最近の国際情勢の変化の中にあっても、わが国が安保条約を必要とする状態には何ら変わりなく、かつ、その存在が緊張緩和の障害になることは全くないと考えるものであります。この点ははっきり申し上げて、社会党と私どもの行く道の相違を明らかにいたしておきます。(拍手)
 最後に、政局転換をはかれとの御意見でありました。本来から申せば、御意見は御意見として承っておきます、この一言で尽きるかと思いますが、一言申し述べるなら、国際関係に処するにあたっては広い視野と長期的展望に立たなければならないと思います。
 今日、国際情勢は大きな転換期にあり、わが外交に課せられた試練がことのほか重大なものであることは申すまでもありません。しかし、このような重要な局面であればこそ、一そうの沈着と勇気をもって事に対処していかなければならないと信じます。外界の変化にいたずらに動揺することなく、冷静に時代の流れと変化の方向を見きわめ、わが国益の一そうの増進を目ざして、確固たる決意と自信をもって前進しなければならないと思うものであります。
 以上、私の所信を披瀝してお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#13
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま総理大臣から、もうことごとくお答えになっておりますので、私からつけ加える何ものもないような感じもいたしますが、ただ勝間田さんがたいへん大事なことをお間違えになっておられる、その点を正しておきたいと思うのです。
 勝間田さんは、米中共同声明において、台湾は中国の一部である、こういうのにかかわらず、わが日本外交は対中政策においてたいへんな立ちおくれじゃないか、そういう御詰問でございます。しかし、米中共同声明はそういっておらないのです。正確に申し上げますと、アメリカは、台湾海峡をはさむ両岸の中国人は、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張しておることをアメリカは認める、米国政府はこの立場に異論を唱えない、かようにいっておるのでありまして、アメリカ自身が、中国は一つであり、台湾は中国の一部であるというような認め方をしておるものじゃないのでありまするから、その点ははっきり御理解を願いたいと思います。(発言する者あり)
 米中会談並びに米中共同声明の成果につきましては、私はこれを冷静に受けとめております。過小評価もいたしません。また、過大評価もいたしません。幾つかの具体的な問題について合意が見られましたことは、私はよかったというふうに考えておるのであります。しかし、幾つかの点において合意の見られなかったことも事実であります。しかし、私は、合意があった、合意がなかった、そんなようなことを言おうとは思いません。私が言おうとするのは、この米中両首脳の会談によりましてかもし出されたアジアにおける緊張の緩和という問題であります。これは見のがしてはならぬ大問題である、これは勝間田さんと私は全く見解は同じであります。この見解を踏んまえまして、わが国といたしましてはアジアの緊張緩和にますます努力をしなければならない。また、その中核といたしましての日中国交の回復、これは歴史の流れと私は常々言っておりますが、そういう感覚を持って、さらに思いを新たにして立ち向かわなければならぬ、かように確信をいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(船田中君) 次に、正木良明君提出、米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問を許可いたします。正木良明君。
  〔正木良明君登壇〕
#15
○正木良明君 政府のシビリアンコントロール、いわゆる文民統制の無視という重大な誤りによって国会が空転を続けている間に、中華人民共和国の首都北京においては、アジア情勢並びに世界情勢にきわめて大きな影響を及ぼす、いわゆる米中首脳会談が行なわれました。
 一方、世界の緊張緩和のため積極的な話し合いが行なわれ、一方では、佐藤内閣は文民統制無視の反省と責任を拒んで国会が空転を続けていた。ここに思いをいたすとき、政府の責任はまことに大きく、かつ、まことに遺憾といわねばならないと思うのであります。(拍手)
 そして一昨二十七日、その成果をまとめた米中共同声明が発表されたのであります。私は公明党を代表して、世界史に大きな足跡を残した今回の米中首脳会談並びに日中国交回復について、総理並びに防衛庁長官に対し質問をいたします。
 今回の米中首脳会談がもたらした結果について、政府は、予想していたとおりであると強弁いたしております。政府がいかに強弁しようとも、米中関係が敵視、対立の時代から平和的共存の時代へと大きな局面転換をした事実に目をつぶることはできないはずであり、佐藤内閣に対し、きわめて重大な選択を迫るものであるといわねばなりません。
 そこで、私は、まず第一に、今回の米中首脳会談によって、アジアの緊張は大幅に緩和の方向に向かっていると認識されているかどうかをお伺いいたしたいのであります。
 すなわち、アジアの冷戦構造は解消の方向に向かいつつあり、同時に、向かわせねばならないと思うが、どうか、総理の御見解を承りたいのであります。
 また、政府は、この国際政治に新時代を画する歴史的な新局面の展開にあたって、アジアの緊張緩和のためにいかなる役割りを果たそうと考えているのか、その方途を具体的にお聞かせ願いたいと思うのであります。
 私は、米中共同声明に示された両国の長年の敵対関係の終えんと、平和的共存への敷かれたレールは、すでに戦後の冷戦的二極構造が崩壊し、名実ともに多極化時代を迎えていることを象徴的に示すものであると思います。
 米中首脳会談の結果は、アメリカの対中国封じ込め政策の破綻と、対中国政策の大転換を意味するものであることは明らかでありますが、政府はこの事実を率直に認められるのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 私が、今日政府が重大な外交的選択を迫られていると述べましたことは、わが国の外交政策の基本となるものは、すべて従来の二極冷戦的発想に基づく対米追随外交であったからであります。その結果は、わが国は対外政策の上でフリーハンドを失い、変動する国際局面に対処できなくなっている現実が何よりもこの事実を証明しているのであります。
 アメリカのアジア政策、なかんずく対中国政策の大転換は、わが国の冷戦的外交の基礎を失わしめたと考えるべきであります。すでに従来のような追随的な単純選択は不可能となり、的確な見通しと総合的判断による自主平和外交への転換がいやおうなく求められていると思うのであります。
 その自主的平和外交の第一は、アジアにおける国交未回復国との国交回復ないしは国交正常化であり、特に日中国交回復こそ最もすみやかに実現されなければならないのであります。
 日中国交回復の早期実現は、すでに全国民的要求であります。佐藤内閣は、今回の米中首脳会談の成果を深刻に理解するとともに、この実現を口にしながら、現実には、交渉はもとより、話し合いの糸口さえもつかめていないという政治責任を国民の前に明らかにしなければならないと思うのであります。(拍手)この点について総理の明確な所信を伺っておきたいのであります。
 私は、日中国交回復の実現のための不可欠の条件は、政府が率直にこれまでの対中国政策の誤りを反省し、すみやかに公明党の日中復交五項目に基づく対中国政策の大転換をすることであると強く主張するものであります。そこで、私は、これに基づき具体的な問題について若干のお尋ねをいたします。
 佐藤総理は、昨日の衆議院予算委員会において、わが党矢野書記長の質問に答えて、わが国政府は、領土、主権の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存のいわゆる平和五原則を受け入れる用意があることを明言したのでありますが、あらためてこの場において確認をいたしておきたいと思うのであります。
 次に、中国はただ一つであり、中華人民共和国政府は中国を代表する唯一の合法政府であり、二つの中国あるいは一つの中国、一つの台湾論には反対するという立場をとるのかどうか、あらためて明らかにしていただきたいのであります。
 昨日の総理の答弁は、一国一政府論であり、国連の決定どおりであり、将来どちらを唯一正統政府とするかは議論すべき余地はないと述べられているのでありますから、当然このことは認められたと私は理解しているのでありますが、総理の御見解を承りたいのであります。
 次に、台湾問題は中国の内政問題であり、台湾は中国領土の一部であり、わが国は中国に放棄したとは言わないが、当然中華人民共和国のものであることは、昨日同委員会で総理が明確にしたところであります。しかも、帰属について文句の余地はないということは、従来の政府見解の一歩前進であると思うのであります。
 こうして考えてみますと、昨年七月わが公明党と中国との間に調印された共同声明にいう日中復交のための公明党五項目の第一項、すなわち「中国はただ一つであり、中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法政府である。二つの中国と一つの中国、一つの台湾をつくる陰謀に断固反対する」というくだりと、第二項、「台湾は中国の一つの省であり、中国領土の不可分の一部であって、台湾問題は中国の内政問題である。台湾帰属未定論に断固反対する」、すでにこの二つは昨日の答弁でほぼ総理は認められたと思うのでありますが、いかがでありましょう。
 また、第四項目の台湾からの米軍の撤退は、一昨日の米中共同声明で解決の見通しがついたと見るべきであり、第五項目目の中国の国連復帰問題は、すでに昨年秋の国連総会におきまして解決済みの問題であると思いますが、いかがでありますか。
 問題は、第三項目目の日台条約の破棄であります。
 佐藤総理は、日台条約は、ただいまの状況で直ちに無効に帰したものとか、無効宣言をするという立場にはなく、日中国交正常化をはかるその過程で取り上げられ、解決されるのが筋であると述べておられます。また、日台条約を締結した時点では許されるべきであるが、経過を踏まえつつ解消の方向でいると言い、条約の引き継ぎ論などの余地も残しているかのようであります。しかし、日台条約の交渉過程での解決という総理の考えは、きわめて論理的に矛盾していることは明らかであります。日台条約締結の歴史的な経緯を考えるならば、このことは自明の理であります。中華人民共和国の全く関知しない、正確に言うならば、一九四九年十月一日の中華人民共和国成立後二年半を経過した一九五二年四月、中華人民共和国の反対と抗議を無視して、日本と台湾との間で成立したのが日台条約であります。中華人民共和国政府は、憲法にかわる全国人民協商会議の共同綱領第五十五条で、同政府成立以後の蒋介石政権の締結するいかなる条約も無効であり、関知しない旨を明記いたしております。すなわち、中華人民共和国は一九四九年十月以降台湾政権を全く認めず、その蒋政権の結んだ対外条約一切を否定しているのであります。したがって、日台条約についてかりに政府の言うように手続上瑕疵がないとしても、日台条約の有効性についてわが国政府が中華人民共和国と交渉すべき余地のある問題ではないことは明らかであります。すなわち、日台条約は、日中間で交渉すべき性質のものではなく、日本自身がどうするのかを決定すべき問題なのであります。政府が対中国との交渉の過程で話し合うということは、一体何を意味するのか、承りたいのであります。
 この事実を政府が認識すると同時に、日中国交回復について中国はすでに原則を明らかにしているわけでありますから、日本政府みずからの日中国交回復の原則をいまこそ示さねばならないと思うのであります。(拍手)交渉の過程といっても、これを前提として踏まえなければ、交渉自体が始まらないことを十分に理解すべきであると思うのであります。
 そこで、総理は、日台条約をなくす方向で決断をし、その姿勢をもって交渉する用意があるかどうか、明確に伺いたいのであります。
 また、日台条約廃棄という前提に立っての政府間交渉は、どんなことがあっても応じられないとお考えになっているのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 次に、日米安保条約と台湾についての関係についてお伺いいたします。
 これまでの政府の見解によれば、日米安保条約でいう極東の範囲には共産圏ははずされ、台湾、韓国の地域を入れております。だからこそ、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明においても、台湾、韓国の安全をわが国の安全と一体視するというものがあったわけであります。しかし、総理が、昨日明らかにした立場は、平和五原則を受け入れる用意がある、台湾は中国領土の一部であるというものであります。台湾が中国大陸と一体のものであるというならば、台湾を極東の範囲に入れることは、明らかに二つの中国論を意味するものである、また、一つの中国論に立つときは、内政干渉の最たるものであります。台湾の領土権が中国にあるならば、もはや二つの中国論ないしは極東の範囲に台湾を含める論理的根拠はなくなったと考えるのが当然でありますが、総理はそのように理解しているのかどうか、承りたいのであります。
 政府は、佐藤・ニクソン共同声明について、共同声明はそのときどきの情勢によって変化するものであるという見解を示されておりますが、佐藤・ニクソン共同声明が沖繩返還の前提となるものである性格から、この共同声明は現在もなお重くのしかかっていることを当然と解すべきであります。
 そこで、少なくとも、この台湾条項を否定し、日米安保の極東の範囲に台湾が入らない旨をここに明確にしない限り、日中国交回復早期実現の大きな障害にたるものと思われるのであります。総理の御見解を承りたいのであります。
 米中首脳会談の結果は、戦後の冷戦的対立にピリオドを打ち、新たなる平和を目ざす国際秩序への開幕であると思うのであります。したがって、この冷戦構造是認の認識のもとにつくり出された日米安保は、これまでもわが国の外交的フリーハンドを妨げてきたばかりではなく、わが国の着々とした軍事力増強政策とともに、アジアの緊張緩和を阻害する重大な要因となっていることは明らかであります。
 今日、欺瞞的な沖繩返還協定、佐藤・ニクソン共同声明とこれによる日米安保の変質、第四次防、さらには、分裂国家の一方に対する敵視政策などが相まって、日本軍国主義復活の非難は、アジア諸国はもとより、世界の各国に広がりつつあるのであります。しかも、今回の米中首脳会談の結果からアジアの緊張緩和が促進されるでありましょうが、わが国がこの好機をのがさず独自の立場において緊張緩和に積極的努力を行なわず、あくまでもアジアの冷戦構造を肯定し、アジアにおける軍事的主役をアメリカにかわって引き受けることになれば、わが国の将来にとって、きわめて憂慮すべき事態に立ち至るものと考えるのであります。このことは、サンクレメンテ会談においてもすでに要求されたと思うのであります。
 したがって、わが国が、これら一連の政策、問題についていかに考えているのか、ひいては、日米安保はすみやかに解消すべき時期が到来したと思うのでありますが、総理の決意のほどをお伺いいたしたいのであります。
 また、政府がシビリアンコントロールを無視し、重大な国会の空白をもたらした第四次防を、なぜ昭和四十七年度から、国民の意思を無視してまでも発足させねばならないのか、それはいかなる脅威を予想し、その脅威に対応しようとしているのでありましょうか。第四次防を急がねばならない必然的な国際情勢があるのかどうか、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、私は、日中国交回復の早期実現を強く要求するとともに、これまでの外交政策を根本的に改め、対朝鮮、対ベトナムをはじめ、政府の新しいアジア平和外交政策をここに示すべきことを求めるものであります。もし従来のように拱手傍観、何の先見性もなく、何の決断もなし得ず、ただ漫然と時を過ごすのみであるならば、すなわち、今回のような日中国交回復の好機をとらえ得ず、日中国交回復に積極的に取り組めないならば、佐藤総理はすみやかに退陣することこそ国益にかなうものといわなければなりません。(拍手)御決意を国民の前に明らかにせられんことを望んで質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 正木君にお答えいたします。
 外交政策の基本的修正が必要になっているのではないかとの御指摘でありますが、私はさようには考えておりません。国際情勢は常に流動し続けるものでありますから、そのときどきにおいて柔軟に対応しなければならないのは当然でありますが、流れに押し流されて、自分の立っている場所を見失うようなことがあってはならないと思うのであります。(拍手)
 われわれは、武力を背景にしない新しい外交方針を持って戦後の国際社会に臨んでいるのでありますが、その理念は、今日ようやく国際社会の理解と認識を得つつあると考えております。政府としては今後ともこの方針を堅持していくことに変わりはありませんが、私は、国際関係が多極化するにつれ、わが国の役割りはますます増大するものであると考えております。
 政府は、今回の米中会談が世界の緊張緩和に大いに役立つものであると考え、これを高く評価しております。ニクソン大統領訪中の結果、戦後長い間続いたきびしい米中対立時代が終わったことは、日本として心からこれを歓迎すべきものと考えます。体制の相違、主義主張の相違があっても、平和への意欲があれば共存していけることがあらためて確認されたわけでありますから、アジアのみならず、全世界にとって明るいニュースであると思います。
 わが国はアジアの緊張緩和にどのような役割りを果たすべきかとのお尋ねでありますが、これは申すまでもなく、今後とも自由を守り平和に徹していくことであろうと思います。そうして、近隣諸国との関係改善、友好関係の維持に努力することであります。特に、一日も早く日中関係の正常化を実現し、ともに力を合わせてアジアの平和維持と発展につとめなければならないと考えます。
 戦後の米中関係は、最近まできわめてきびしい間柄にあったことは御承知のとおりであります。相互に強硬な態度で臨んでいた両国が、一転して親善訪問という変化を見せたのでありますから、これをもってどちらかの政策が破綻したという形で見ることは、必ずしも妥当であるとは考えません。むしろ対決の時代から対話の時代へ移ったのであって、これは自然な歴史の流れであると見るべきではないでしょうか。もちろん、正木君がこの点を、日米関係を軸にしたわが国の外交政策との関連でアピールしようとされていることはわかりますが、国際関係から申せば、米中関係の転換はその潮どきに来ていたと言うことができると思う次第であります。
 次に、日中関係のお尋ねでありますが、まず、平和五原則につきましては、これを受け入れる用意があります。また、わが国としては、国交正常化の交渉に際しては、中華人民共和国政府が中国を代表している政府であるとの認識に立って政府間交渉に臨むものであります。
 台湾問題につきましては、中華人民共和国政府は、従来から、台湾が中華人民共和国の領土の一部であると主張しているところ、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄したわが国としては、台湾の法的帰属を云々する立場にはありませんが、カイロ、ポツダム両宣言の経緯から見まして、かかる中華人民共和国政府の立場は十分理解し得るところであります。この問題は、日中正常化交渉の問題として取り上げられることと考えますが、この基本的な認識につきましては、昨日矢野君にお答えしたとおりであります。
 日華平和条約の取り扱いの問題につきましては、わがほうにはわがほうの立場があり、先方には先方の主張があることであり、いずれにせよ高度の政治問題でありますから、政府としては、日華平和条約の問題は、日中国交正常化に関する政府間の話し合いが行なわれる際取り上げられる問題であり、話し合いを通じておのずから妥当な解決の道が見出されるものと確信しております。
 次に、安保条約の極東の範囲につきましての政府の考え方には、何ら変わりはありません。
 次に、六九年の共同声明におけるいわゆる台湾条項の問題は、前国会でも再三申し述べたとおり、台湾をめぐる間際緊張のもしも激化があれば、わが国にとっては重大な関心の対象とならざるを得ないという一般的な考え方を率直に表明したものであります。このことと沖繩返還とは、面接の関連はありません。一方、今回のニクソン訪中に見られる諸般の動きから見ても、実際問題として、台湾海峡において現実に武力行使が行なわれる可能性はほとんどないものと考えております。
 次に、アジアにおける諸国の経済的自立への努力や、今回の米中首脳会談によって、アジアの趨勢が緊張緩和の方向に進みつつあることは非常に好ましいことであります。しかしながら、わが国の防衛力は、複雑な国際情勢の中で、わが国の独立と平和を守るため、国力、国情に応じて段階的に整備しつつある過程にあります。したがって、今後とも基本的な防衛努力は怠ってはならないと考えます。しかしながら、国際情勢の推移は、当然防衛計画の中に組み入れられなければならないことでありますから、四次防計画の策定にあたっては、このような情勢を十分配慮してまいりたいと考えております。
 正木君御指摘のとおり、国際関係の基調は、かつての東西対立の時代から、いまや多極化へ向かって展開しつつあり、このような多極化の趨勢の中にあって、緊張緩和の方向に向かっての努力が進められていることは事実であります。その間にあって、わが国は国力、国情に応じた自衛力を整備するとともに、米国との安保条約によって国の安全を確保することとしておりますが、最近における情勢の変化の中にあっても、わが国が安保条約を必要とする状況には何ら変わりないものと考えております。また、政府は、その存在が、緊張緩和の方向に進むにあたって障害となるとは、全く考えておりません。政府は今後とも日米安保体制を堅持する方針であります。この点は、正木君の御意見には賛成するわけにまいりません。
 今後アメリカから、アジアにおける軍事的肩がわりを求められるのではないかとの御意見でありましたが、そのようなことは絶対にありません。わが国の憲法及び自衛隊法のたてまえから、明々白々なことだと考えます。
 さらに、新しいアジア政策を示せとの御意見でありますが、わが国としては、自由を守り平和に徹し、いずれの国とも仲よくするという基本理念を貫きつつ、引き続きアジアの緊張緩和に努力してまいる決意であります。
 また、最後のお尋ねでありますが、政府としては、アジアにおける未承認国に対し、敵視政策といわれるような政策はとっておりません。客観情勢の許す限り未承認国との関係を改善すべきことは言うまでもありませんが、それぞれの未承認国について特殊な事情があるので、これらの事情を十分勘案し、アジア情勢の推移とわが国の国益を考慮しつつ、具体的な問題ごとに適切に措置を講じてまいる方針であります。
 以上、お答え申します。(拍手)
  〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
#17
○国務大臣(江崎真澄君) お答え申し上げます。
 御指摘のように、米中会談によりましてアジアの緊張が緩和するきざしが顕著になりましたことは、まことに御同慶にたえません。これが一日もすみやかにアジアの平和という形で定着することを期待いたしたいと思います。
 いま御指摘のわれわれのこの自衛隊でありまするが、これは、総理からもお話がありましたように、一億の国民と主権の存しまするところ、わが国の平和と独立を維持する、こういう目的で現在まだ整備されつつある段階であります。したがいまして、私どもは、こういう整備は継続的に、しかも計画的に遂行されることが望ましい。したがって、本年度をもって第三次防望計画が終末を告げますので、来年度から第四次防を発足させたい、こういう考えに立つわけであります。
 実は、この点について、緊張が緩和されつつあるのに、軍国主義のそしりを受けるのではないかという御指摘でありまするが、わが国はすでに、この国会においても決議をいたしましたように、また、しばしば歴代内閣が合意としてこの態度を堅持しておりまする非核三原則がございます。また、憲法の解釈上絶対海外派兵はしないという根本方針を持っております。また、自衛隊はあくまで志願制度、徴兵制はとらないということも、歴代内閣がしばしば声明をいたしておるとおりであります。マンパワーに限界があるということは、これは軍国主義などには絶対つながるものではないことは、申し上げるまでもないと思います。かつて日本が被害を与えた国が心配されるそのことばには、謙虚に耳を傾ける必要があると思いまするが、現存の自衛隊は絶対軍国主義的なものでないことは、はっきりお答えを申し上げておきたいと思います。(拍手)
 なお、四次防そのものを継続させたいという一つの例といたしましては、たとえば本年度の八千億予算の中には、第三次防で果たしてまいりました武器、これが二千億円も含まれておるわけであります。兵器というものは、元来そこにあるものを買ってまいるわけではございません。発注をいたしましてから二年なり三年なり、きわめて長期にわたるものでありまするので、これは空白なく継続的にしていきたい、これが私どもの態度でございます。(拍手)
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#18
○議長(船田中君) 次に、和田春生君提出、米中首脳会談並びに日中国交回復に関する緊急質問を許可いたします。和田春生君。
  〔和田春生君登壇〕
#19
○和田春生君 私は、民社党を代表いたしまして、これより佐藤総理並びに福田外務大臣に質問を行なわんとするものであります。
 すでに行なわれました質問者との重複をできるだけ避けながら、現在の政府の外交方針の基本にかかわる問題を、五点にわたって取り上げたいと思いますが、どうか総理並びに外務大臣、用意されたメモにとらわれることなく、私の質問内容を虚心たんかいにお聞き取り願いまして、抱負経綸をお述べいただきますならば、はなはだ幸いとする次第でございます。
 まず第一に、ニクソン大統領訪中の意義と冷戦的世界の変革に関する評価につきまして、佐藤総理の所見を伺いたいと存じます。
 アメリカとソ連をそれぞれ頂点とする二極構造の冷戦的世界は、六〇年代に入りましてから、双方ともにゆらぎ出してまいりました。いわゆる自由世界におきましては、アメリカの指導力は次第に後退し、脱アメリカの傾向が強まっているわけであります。共産世界におきましても、ソ連共産党と中国共産党の対立が激化いたしまして、各国共産党の独自路線も顕著となり、一枚岩の団結は、いまや伝説となっているわけであります。そして、対立する二極であった米ソ両極は、イデオロギーの面では依然相許さないものの、体制維持と核戦力を根幹とする軍事的影響力の保持のために、超大国としての利害をしばしば共通にいたしております。中ソ両国がとどまるところを知らぬ憎悪をぶつけ合っているのとまことに好対照を示しているわけであります。
 加えて、第三勢力や非同盟諸国の分解も進みまして、アジア、アラブなど発展途上国の争いも多様化をし、国際情勢は、もはや単純な図式や観念的な公式をもってしては解明できない複雑なものとなってきているわけでございます。
 六〇年代から七〇年代へかけて冷戦構造の分解が急ピッチで進み、世界は変化と流動化の新しい段階に移ったわけであります。
 この特徴的なあらわれが、まさに今度の米中会談でございますが、これより先、サンクレメンテでの日米首脳会談を終え帰国した当時、佐藤総理は、ニクソン訪中によってもたいした変化はあらわれまいとの意見を公表しておられました。しかし、不倶戴天の間柄と見られていた中華人民共和国の首都北京に米国大統領が面接乗り込んだということ、それ自体がすでに劇的な変化なのであります。だからこそ、昨年夏、わが国の頭越しにニクソン訪中が発表されたとき、佐藤総理はじめ政府・与党の首脳は、あからさまな対米不満をぶちまけざるを得なかったのではございませんか。いまなお政府は、驚くべき変化は生じていないと、負け惜しみや弁解の態度をとりつつあるようでございますが、世界の変化に対する基本認識におきまして大いに欠けるところがあったと思われてならないのであります。脱冷戦的世界の構造変化について、いかなる基本認識を持たれているのか、佐藤総理の率直な見解を示していただきたいと存じます。(拍手)
 第二に、米中新関係の発展とアメリカ外交の二面性につきまして、佐藤総理に御質問をいたしたいと存じます。
 沖繩の復帰にあたりまして、アメリカ政府は、冷戦構造の世界観を基礎とし、沖繩における膨大な米軍基地を無傷のまま残して、日本の主権下に戻る日本国の領土沖繩にそのまま持ち込む態度に固執をいたしました。そして、日本政府は、このアメリカ側の要求をほとんど受け入れたことは事実でございます。しかし、そのアメリカは、一方において北京政府との和解を日本政府の頭越しに進め、米中両国間の事実上の国交を開き、その極東戦略に対する重大な修正に踏み出したわけでございます。こうしたアメリカ外交のあり方は、緊張激化政策の延長線上にある米軍の海外駐留と基地の確保の面では、わが国にその危険負担の責任をしいつつ、同時に、緊張緩和と平和共存政策の果実はアメリカの手に先取りする、きわめて巧妙な権謀外交を進めていることが、いまや明らかであります。(拍手)
 数次にわたる日米首脳会談を重ね、かねて緊密な日米関係をうたい続けてきた日本政府が、このアメリカ外交の二面性を察知できなかったとすれば、まさに政府の怠慢といわなければなりません。(拍手)いまなお的確な対策を持たず、ショックを隠しながら弁解これつとめつつある政府の態度を見ますと、もしアメリカ外交の二面性を認識したとかりに仮定いたしましても、これまた重大な怠慢のそしりを免れないと考えるわけであります。いずれにせよ政府の外交責任は免れがたいものでありますが、総理のしかとした答弁を承りたいと思います。
 第三に、福田外務大臣、あなたにお伺いをいたしたいと思います。
 いま私が述べましたアメリカの二面外交は、当然に日米安保条約に深刻な影響をもたらすものでありますが、日米安保関係が米ソ及び日ソ関係の雪解け以来、今日では沖繩米軍基地の態様とともに、もっぱら中国の脅威に備えたものとなっていることは周知のところであると思います。この認識のもとに、極東の緊張に対する日米両国の共通の利害の存在ということが日米安保をささえている両政府の理解となっていたはずでございます。しかし、今度の米中共同コミュニケによって、日米間における表向けあるいは暗黙の理解に大きなひずみが生じたことはいなめません。日米安保条約は、いまや根本的に見面さるべき段階に来たと思いますが、福田外務大臣の見解をお伺いしたいわけでございます。
 なお、日米安保条約、単に日米間の軍事協力についてのみ定めたものではなく、その歴史的な経緯にかんがみ、これをいま直ちに、一方的に日本が廃棄することは、かえって日米関係の新たな緊張をもたらすおそれがあることは否定できません。しかし、いまや新しい事態にかんがみ、日本政府の外交方針として、その目標としては日米安保条約の解消にはっきり照準を合わせ、その条件を整える当面の対策として、米軍の駐留と基地の早期撤去の実現に取り組むべきではないかと考えるわけであります。
 すなわち、この際、基地と駐留なき安保への転換を、日米安保条約解消の第一の、かつ重要な段階として取り上げるということでございます。もし、この過程でアメリカ側の新たな反応により、安保条約の改廃が早い機会に日程にのぼるといたしますなら、緊張緩和へのイニシアチブをわが国政府がとったことになるでございましょう。次期総理の有力候補の一人と目されている福田外務大臣、あなたの抱負をぜひお聞かせ願いたいと考えるわけでございます。(拍手)
 第四に、米中新関係の発展に伴い、わが国としてもちゅうちょすることなく、日中国交関係の正常化に取り組まなければならない状況に直面しているわけでありますが、この点について、具体的に問題を整理して、総理と外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 まず、日中国交回復のネックとされている日華条約の処理について、いわゆる入り口論と出口論が議論の焦点の一つとなっていることは御案内のとおりでございます。しかし、日中関係の全体的かつ合理的な処理をはかるためには、そうした技術論的な認識にとらわれることなく、基本的認識に関する原則と、現実的なアプローチに分けて考えるべきだと思います。
 米中関係とは本質を異にいたしまして、かつて敵国関係にあり、日本の敗戦後いまだ平和処理の済んでいない中華人民共和国とわが国の国交関係を正常化するにあたりましては、まず最初に行なわなければならないのは、申すまでもなく、両国政府の正式代表が一つのテーブルに着く条件をつくることであると存じます。
 このことを行なうには、日中議連の決議案にも示された三つの原則、すなわち、一、中国を代表する唯一合法政府は中華人民共和国政府であること、一、台湾の領土帰属権が中華人民共和国にあること、一、日華条約は廃棄さるべきであること。日本政府としても、この三つの原則を受け入れる態度をまず明らかにする必要があると存ずるわけであります。(拍手)これを避けたままで日中両国政府の正式代表が同じテーブルに着くことは、おそらく不可能であると私どもには考えられるわけであります。
 しかし、一方、中華人民共和国の統治が現実に台湾に及んでいない間におきましては、北京政府との折衝だけでは処理できない事柄が台湾問題に付随していることも否定できません。その慎重な配慮はきわめて必要なことでございますけれども、これにとらわれるあまり、原則に対する基本認識をあいまいにしてきたところに日本政府の姿勢のゆがみがあったといわざるを得ないのであります。(拍手)したがいまして、まず、原則を明らかにするところから始めなければなりません。
 佐藤総理、私がいま述べた三つの原則をこの際こだわりなく受け入れる用意があるかどうか、その点を明確に確かめたいと思うのであります。
 さらに、福田外務大臣、それとともに、過去四分の一世紀にわたる旧台湾関係の清算と整理につきまして、現実的なアプローチを担当する外務当局の方針をお伺いしたいと考える次第でございます。
 そして最後に、第五といたしまして、この機会に、わが国の多角的安全保障の政策に関して、佐藤総理の所見を承りたいと存じます。
 今度の米中会談につきまして、ソ連政府の公式評価はまだ見ておりませんけれども、ノーボスチ通信のAPNプレスニュース最近号によりますと、政治解説記者の署名入り論評で、次のような見解が述べられているわけであります。
 われわれが北京に見るのは、力の均衡の新たなバリエーションをつくろうとする姿である。北京の政策が、もはや世界社会主義との連帯を求める立場から出ているものでないことは明白である、というのであります。
 しかし、この論評は、中国との間で憎悪と非難をエスカレートさせながら、アメリカとの密月を続け、いままた、急速な対日接近と融和政策を最近進めつつあるソ連の外交政策に対しても、そっくりそのまま当てはまるものであると私は考えるわけであります。
 いまや、脱イデオロギー世界における脱イデオロギー外交がわれわれのまわりにおいて展開されつつあるのであります。イデオロギーの相違を軸とした東西両陣営の対立による二極構造の世界はくずれ、世界は多極化しつつあるのであります。過去の冷戦構造の産物であるところのそれぞれのブロック内における集団安全保障政策は、すでにオールドファッションとなったといわざるを得ません。わが国においても、古い国際秩序への情緒的な郷愁から抜け出しまして、新しい世界の中にわが国の自主独立外交を進め、広く各国との互恵と協調を求め、平和な国際関係の発展に貢献しなければなりません。
 政府は、このときにあたりまして、日米安保条約の解消とともに、東西両陣営それぞれの圏内集団安全保障のからをぶち破り、それにかわって多極化の時代に対応する多角的な安全保障政策案を打ち出し、新たな平和の秩序を創造するため、イニシアチブをとる考えはないのでございましょうか。日米、日ソ、日中と、多極化時代の三つの大きな極とそれぞれ隣接しているわが国といたしましては、この新たな世界の平和秩序を創造するためにかっこうの地位にあると考える次第でございます。これからのわが国外交の特徴をそこに求めるべきであると思うわけでございますが、佐藤総理、あなたの率直かつ大胆な御答弁を心から期待をする次第でございます。
 以上、五点にわたりまして、私の所見を交えつつ、政府の外交基本政策をただし、質問を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#20
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 しばしば申し述べておりますとおり、今回のニクソン米大統領の中国訪問は、アジアの緊張緩和に資するところ大であるというのが政府の基本的見解であります。戦後の米中関係は、朝鮮戦争などに見られるとおり、しばしばむずかしい局面を迎えて、それがアジアの緊張につながる傾向にあったのでありますが、ニクソン訪中によりまして、平和共存関係が確認されたことはきわめて意義深いと考えております。中国の帰趨は、現在の国際政局におきまして各国から重大な関心の寄せられているところでありますが、さきに国連に参加し、また今回、米国大統領の訪問を受け入れたことは、中国の志向している方向を明らかにするものと考えるものであります。わが国としても、日中関係正常化にさらに努力し、アジアの緊張緩和につとめてまいる所存であります。
 米中会談が国際関係に及ぼす影響につきましてでありますが、和田君御指摘のとおり、これによりまして戦後の国際社会は一つの転機を迎えたということができるのではないかと考えます。しかしながら、米中会談の実現は、あくまでも平和確立への一つの出発点であることは十分に認識しなければなりません。国際政治が多極化すればするほど、大国同志の話し合いだけですべてが片づくというわけにはまいりません。これまで以上に各国間の利害が複雑にからみ合う結果、平和維持のためにはお互いが細心の注意を払わなければならないと思うのであります。米中関係にしても、これで直ちに国交が正常化されたわけではなく、今後、今回の会談の機運に乗って友好関係を深めていくということであろうと私は思うのであります。
 米中会談に対する主要国の反応も、基本的にはまだ出ておりません。したがって、端的に申せば、国際関係は確かに大きな転機を迎えたが、国際政治の構造そのものが基本的な変革を遂げたというところまでは言い切れないと考えるものであります。
 そこで、日中関係正常化についてのお尋ねにつきましてお答えをいたします。
 申すまでもなく、中国は一つであるというのが私の基本的認識であります。そこで議連の三つの問題をいかに考えるかというお話でありますが、私はこれには直接お答えはいたしませんけれども、中華人民共和国が昨年国連に参加し、国際社会の枢要な一員となった今日、わが国としては中華人民共和国との間に国交正常化のための政府間交渉を早急に開始したいと念願している次第であります。日中間に各種の問題があり、また、それぞれの立場と主張があります。しかし、日中双方が善隣友好関係の確立を目ざし、話し合いを重ねていくことによって、必ずや相互理解と相互信頼がもたらされるものと私は確信しております。
 最後に、米ソの平和共存関係はすでに確立されておりますが、ニクソン訪中によりまして米中間にもまた平和共存関係が確立されたことは、まことに喜ぶべきことであります。今日の世界において、体制の相違、主義主張の相違を越えて、平和的共存が可能なことはすでに実証済みでありますが、米中会談は世界に大きな明るさをもたらしたものと考えております。わが国は自由を守り、平和に徹するという基本理念のもと、いずれの国とも仲よくすることを信条としております。この行き方はいさきかも変更する必要はないものと考えております。今後とも国際情勢を的確に判断し、外交の展開にあたってはどこまでもその自主性に立って、そうしてあやまちなきを期したいと、かように念願しておるものであります。
 安全保障体制その他の点について、いろいろ御意見を交えてのお尋ねがありましたが、私は、これらの点は他の機会にも述べたところでありますので、御了承を得たいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#21
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対しましては、今回の米中共同声明と安保条約との関係、つまり安保条約を改定しまたは廃止すべきではないかというようなお話でございましたが、私は、国の最大の政治課題は何としても国の安全保障にある、かように考えるのであります。そのためには、何といたしましても最小限の抑止力を持つ必要がある。
 しかるに、わが国の現状はどうかといいますれば、とにかく戦後あの第二次大戦において、歴史以来初めて敗戦を喫しておる。国民の中にはもう戦争は再びしまい、もう戦争はいやだ。私はこれは一つのコンセンサスになっていると思うのです。同時に、憲法第九条というものがあります。これが自衛力以上の兵備を整えることを禁じておる。そういうことから、いま政府におきましては自衛力の増強、これを大いに考えておるわけでございまするけれども、これにはただいま申し上げました国民的コンセンサス、また憲法上の制約、こういうことがあるわけなんです。どうしても抑止力としては十分でない。その十分でないところの欠陥というものを、アメリカの防衛力に依存をする、こういう考え方をとっておる次第でございまして、これは世界じゅうが、ほんとうに約束はどこまでも守ります、聖人、君子の国ばかりであるという世の中でありますれば格別であります。現実はそうじゃない。そういう世界情勢の中におきまして、わが国が十分なる抑止力を持つということは、これは当然政治の責任として考えなければならぬところである、かように考えるのであります。
 私は、米中会談によりましてアジアに緊張緩和の勢いが出てきた、これは非常に喜んでおり、これを歓迎し、かつ、これを推進したいと思っておりまするけれども、さらばといって、わが国に万一の場合に備えての抑止力が必要なくなるのだと考えることは、あまりにも飛躍し過ぎた議論になるのではあるまいか、さように考えるのであります。(拍手)
 また、民社党が常に言われるように有事駐留論というものがあります。私は、これは一つの御見識として理解をいたしております。また、現に有事駐留論の実態に沿ってアメリカの駐留というものが漸減をいたしておる、こういうふうに見ておるのでありまするが、そのためにも、わが国といたしましては、その足らなくなるところの自衛力を増強しておく必要がある、こういうこともまた別途考えておる次第でございます。
 次に、日中国交回復への現実的なアプローチの方法はどういうふうなことを考えておるか、こういうお話でございます。
 これは、総理からも私からもしばしば申し上げておるのでございますが、中国は一つである、また、中華人民共和国は中国を代表する政府であるとの認識に立ちまして国交の正常化をはかりたい、これが政府の基本的な考え方でございます。この正常化をはかるという点、正常化を志向するという点、これが注目していただきたい一点でございます。つまり、われわれはもうどういう国に何を頼もうとかなんとか、そんなことは考えておりません。日中国交の正常化ということを、大きな旗を掲げまして、そして政府間において接触を行なおう、こういうことを言っておるわけなんです。これはアメリカの接触のしかたと非常に違う点だと思うのです。アメリカは大統領が北京に行った、これは偉大なる事実でありまするけれども、正常化というところまでいっておりません。つまり、積み上げ方式によって関係の改善をはかろうとしておる。わが国は正常化という旗を掲げて政府間の接触をはかろうといたしておるのであります。この政府間の接触、これを何とかして一日も早く実現をいたしたい、かように考えておるので、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)
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#22
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時六分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        国 務 大 臣 江崎 真澄君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
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ソース: 国立国会図書館
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