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1971/03/17 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第13号
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1971/03/17 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第13号

#1
第068回国会 本会議 第13号
昭和四十七年三月十七日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  昭和四十七年三月十七日
    午後二時開議
 第一 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、
  承認を求めるの件
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日程第一 放送法第三十七条第二項の規定に基
  づき、承認を求めるの件
 工業再配置促進法案(内閣提出)の趣旨説明及
  び質疑
 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改
  正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質
  疑
    午後二時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(船田中君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。
 麻生良方君、内海清君、春日一幸君、小平忠君及び西田八郎君から、海外旅行のため、三月二十九日から四月七日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
#5
○議長(船田中君) 日程第一、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。
#6
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長高橋清一郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔高橋清一郎君登壇〕
#7
○高橋清一郎君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に関し、逓信委員会における審査の経過と結果とを御報告申し上げます。
 本件は、日本放送協会の昭和四十七年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めようとするものでありまして、これには沖繩の復帰に伴い、沖繩において放送を行なうための施策に必要な措置も含まれております。
 まず、その収支予算は、事業収支一千百十四億八千万円、資本収支三百五十七億八千万円の規模となっておりますが、資本支出には八億二千万円の事業収支への繰り入れが計上されております。
 また、事業計画は、難視聴の早期解消をはかるため、テレビ、ラジオ両放送網の建設、放送系統の性格の明確化、社会情勢の変化に即応した営業活動の推進及び放送番組の充実刷新等の諸施策を実施するとともに、沖繩地域においては、可及的すみやかに本土と同等の放送サービスを行なうための施策を講ずることとしております。
 逓信委員会におきましては、三月七日本件の付託を受け、数回の会議の後、三月十六日討論を省略して採決を行なった結果、全会一致をもって本件はこれを承認すべきものと議決した次第であります。
 なお、採決の後、委員会は、本件に対し、自民、社会、公明、民社の四党共同提案にかかる附帯決議を付することを全会一致をもって議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 工業再配置促進法案(内閣提出)の趣旨説明
#10
○議長(船田中君) 内閣提出、工業再配置促進法案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣田中角榮君。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#11
○国務大臣(田中角榮君) 工業再配置促進法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 わが国の経済社会は、工業化と都市化を基調として成長、発展を続けてまいり、その結果、国民の生活水準は著しく向上いたしたのでございます。
 しかしながら、成長、発展の過程において国土面積の二〇%にしかすぎないいわゆる太平洋ベルト地帯に工業生産の七〇%強、人口の五〇%が集中し、一方では人口の著しい減少と財政窮迫に悩む市町村が全市町村の約三〇%にも及ぶに至り、これにより、住宅難、交通渋滞、環境悪化等の過密問題と過疎問題とが、同時に発生いたしているのが現状であります。
 こうしたいわば国土資源の片寄った利用による諸弊害を是正し、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、国民生活の向上をはかっていくことが、われわれに課せられた重大な使命であると考えます。
 本法案は、かかる見地から工業生産の全国的な平準化の促進を柱として、国土利用の再編成を進めるため、工業が過度に集結している地域から工業の集積の程度が低い地域への工場の移転及びその地域における工場の新増設を、環境の保全と雇用の安定に配意しつつ推進しようとするものであります。
 次に、本法案の概要について御説明いたします。
 第一は、工業再配置の基本となる移転促進地域と工場の誘導をはかるべき誘導地域を定めることとしていることであります。移転促進地域は、大都市とその周辺の地域のうち、工業の集積の程度が著しく高い地域について、また、誘導地域は、工業の集積の程度が低く、かつ、人口増加率の低い地域について、政令で定めることとなしておるのであります。
 第二は、工業再配置計画を策定し、公表することとしておることであります。この計画は、目標年度における工業の業種別、地域別の配置目標、移転促進地域から誘導地域への工場の移転に関する事項、環境の保全に関する事項等について定めるもので、今後の工業再配置政策の基本となり、また民間企業の立地に関する指針としての役割果たすものであります。
 なお、計画の策定にあたっては、新全国総合開発計画その他各種の地域振興計画、農村地域工業導入基本方針等と調和のとれたものとなるよう十分調整をはかることといたしております。
 第三は、移転促進地域から誘導地域への工場の移転及び誘導地域における工場の新増設を促進するための税制上、財政上、金融上の措置を講ずることといたしておることであります。
 まず、移転促進地域から誘導地域へ移転する工場については、移転計画の認定制度を設け、この認定を受けた場合には、企業に対し償却の特例を認めるとともに、固定資産税の減免をした地方公共団体に対し減収分の補てん措置を講ずることとしておるのであります。
 また、財政上の措置といたしましては、誘導地域において企業が立地した場合に、主として市町村に交付される工業再配置促進補助金、地方公共団体等の造成する工業団地に対する工業団地造成利子補給金を昭和四十七年度予算において要求しております。そのほか、誘導地域における産業関連施設及び生活環境施設の整備の促進等に関し所要の規定を設けておるのであります。
 なお、本法に関連をいたしまして、工場の移転関連融資、工場用地の造成等工業再配置促進対策の重要な部分を実施させるため、現存の産炭地域振興事業団を改組拡充して工業再配置・産炭地域振興公団とすることとなし、別途、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を提案いたしておるのであります。よろしく御審議賜わりたいと存じます。
 以上が工業再配置促進法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 工業再配置促進法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#12
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。岡田利春君。
  〔岡田利春君登壇〕
#13
○岡田利春君 私は、ただいま趣旨説明のありました工業再配置促進法案について、日本社会党を代表し、総理並びに関係各大臣に質問を行なうものであります。
 わが国経済は、六〇年代において平均実質成長率一〇・九%の成長を示し、GNPにおいて自由世界第二位を占め、政府はわが国の経済大国を自画自賛いたしておるのであります。
 しかし、この間、工業は人口の集中している都市周辺に発達し、これがまた人口の都市集中を一そう促進するという悪循環を繰り返して、今日では総人口の七二・二%が都市部に集中し、東京、名古屋、大阪の三都市の半径五十キロ圏内の国土面積わずか一%に満たない地域に、総人口の三二%が集中する結果となったのであります。
 このような急激な都市化現象は、公害の多発、地価の高騰と住宅難、交通の渋滞と事故の発生、都市用水の不足、物価の上昇、社会資本の著しい立ちおくれとなって国民生活を圧迫し、他方では、地方町村の極端な過疎化を招いているのであります。町村人口はここ十年間に約五百万人が減り、人口減少の町村は全町村の三〇%、千四十九町村に及んでおり、広い土地と豊かな水がありながら、社会生活を維持するにも困難な状態に置かれ、今回のわが国経済が、一方的な国民の犠牲と企業優先の冷酷な安上がり政策の上に築き上げられてきたことを如実に物語っておるのであります。
 わが党は、今日の現状を予測して、第二次世界大戦後いち早く制定されたイギリスの地方雇用法、フランスの工場配置法の例にならい、工場の建設を許可制とし、工場の計画的な地方分散を進め、都市と地方の均衡ある発展を通じて、国民に対して快適な生活と生産の調和のとれた場を保障する政策の展開を要望し、また具体的な提案をしてまいったのであります。
 しかるに、政府は、工業拠点開発のみについて見ても、ここ十年間に、新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法、低開発地域工業開発促進法、農村地域工業導入促進法がばらばらに制定され、いままた工業再配置促進法が提案され、また大規模工業基地建設促進法の制定が検討されていると伝えられ、全く工業立地政策は首尾一貫性のない中途はんぱな場当たり政策に終始いたしておるのであります。その結果、新産法十五、工特法六、低工法九十四の地域が指定されているが、そのいずれもが整備はおくれ、いまだこの地域への工業誘致の実効をあげ得るまでには至っていないのであります。
 総理は、昨年の第六十五通常国会における施政方針において、国土利用の効率化、人間と自然、人間と環境の新しい調和ある発展をはかると述べ、国土総合開発に関して、胸を張って声高らかにうたい上げたのでありますが、国民にはただむなしい作文の朗読としか映らなかったことは、今日の国民の置かれておる現状からして当然といわなければならないのであります。
 私は、まず、佐藤総理に対し、第一に、無過失損害賠償責任法案の事実上の骨抜きをしないという確約を含めた開発政策と、工場立地政策のきびしい反省について、第二に、産業立地に関する法体系の整備と、その基本姿勢について、第三に、本法施行にあたって、過密地域から工場の分散のはたして実効があげ得るという確信があるのか、第四に、率先して、この際、政府系企業と研究施設等の地方分散、また地方転出企業に対する官公需優先発注の確約について、その明快な所信を承りたいのであります。
 工業再配置促進法案は、田中通産大臣がさきに都市対策の一環として打ち出した工場分散構想を具体化したものと受け取れるが、他方、昨年十二月の円平価切り上げ以来、軌を一にして高まりを見せている産業調整政策との連動性を持つ政策とも受け取れるのであります。いわゆる産業構造を高度化し、付加価値を高め、低能率部門を切り捨てるというものであり、産業調整といえば聞こえはよいが、切り捨てられる業種にとっては、一種の倒産誘導政策ともいえるのであります。検討中といわれる産業調整の方向は、産業調整のためにガイドポストを作成し、業種ごとに高度化、知識化についての年次計画や、望ましい輸出と望ましくない輸出を区分し、転換業者で新規企業をつくる者に対しては成功払いの特別融資制度を設け、また転業者の設備と土地を一体として買い上げる制度をつくり、その資金源として外貨準備の一・五%程度を産業調整資金として活用する構想ともいわれておるのであります。したがって本法案も、その発想と内容において似ている側面が多く、工場を地方へ分散させる過税で業種の内容も転換させることが当然期待されるもので、産業調整政策との連動の役割りを果たす法案といえるのであります。
 また、田中構想によれば、わが国経済は今後年率一〇%の成長が続くとし、昭和六十年のGNPは約三百兆円、工業出荷額は現在の四倍、約二百七十三兆円が見込まれ、そのために工場立地の面積は約三倍の三十万ヘクタール以上を必要とするとし、過密地域から工場を誘導地域に移転を促進させるのにとどまらず、地方に中核団地、すなわちニューコミュニティーづくりを進め、また臨海地帯に大規模工業基地を建設するというもので、したがって、本法案も、工業の再配置を含む新規工場の適正配置をもはかるというものであって、その内容からすれば、まさしく工業適正配置促進法というべきものであると思うのであります。
 また、本法案提出に至る当初の田中構想は、あめとむちの構想ともいわれ、過密地域の工場に対しては、今年度で打ち切りを予定されていた法人税付加税にリンクした特別の税を課し、これをむちとして、その財源を充当して工業立地特別会計制度をつくり、工業再配置公団を発足させ、移転工場あと地の買い上げ、中核団地の積極的な造成をはかり、移転企業に対しては加速償却のほか、二十五年間の固定資産税減免のあめを与えるというものであったが、本日提案された法案は、むちもあめも取り上げられた骨抜きとなっておるのであります。これではたして、太平洋ベルト地帯に集中している七三%の工業生産を昭和六十年度においてその比率を五〇%程度にするとともに、移転促進地域の工場面積を現在の半分程度にする目標を達成できると一体思うのかどうか、私は率直な見解を承りたいのであります。
 以上、指摘した諸点からすれば、本法案は生まれながらにして私生児であるとともに、また未熟児でもあると思うのであります。したがって、私は、この際、いさぎよく本法案は撤回されて、次期臨時国会にあらためて工業配置基本法もしくは工業配置適応化法として、さらに充実したものを提出されることが最も望ましいと思うが、以上の諸点について田中通産大臣の所信を承りたいのであります。
 私は、工場が大部市周辺に集中立地するのは、製品の市場性、原材料の人手、運輸交通の利便、下請、再下請の中小企業の徹底した活用等々の経済的、社会的な集積地域の利益を受けているのであると思うのであります。したがって、その企業がもっと適正な負担を求められるのは、国民に快適な生活を保障する産業の連帯性の上からも当然であると思うのであります。したがって、外形付加税などの新しい課税を付加し、その負担を原資として工場の再配置を促進する構想は、高く評価されなければならないと思うのであります。
 また、社会的に要請されて指定誘導地域に工場の転出する企業に限っては、従来の立法例に増して思い切った優遇措置を講じなければ、産炭地域への工業の誘導が今日思うような実効があがらない経験からしても容易に想定できると思うのであります。
 私は、この際、新しい国づくりを目ざす工業の適正配置に対処する大蔵大臣の見解を承りたいのであります。
 また、工場を分散させるといっても、これを受け入れる地域において道路、下水道、住宅、公園などの社会資本が整備されず、企業が公害防止を怠れば、それは単に公害を地方に分散させる結果に終わるおそれがあるのであります。地方自治体に対する工場立地床面積平方メートル当たり五千円の補助金では、工場立地に伴う環境の保全や福祉施設の整備は、逆に自治体財政の圧迫となることは明らかであります。
 私は、この機会に、誘導促進地域における社会資本の整備、充実について新しい特別優遇制度を講ずるとともに、政策に対応でき得る自治体財政の確立のため、まず政府は自治体の超過負担分の完全解消をはかり、補助金の引き上げを再検討すべきであると思うのであります。この際、自治大臣の見解をお伺いする次第です。
 本法案の目ざす、移転促進地域から誘導地域への工場の再配置は、単に工場のみ移転するのではなくして、その工場に働いておる労働者ぐるみの移転を意味するものであります。移転新設される工場は、高度に近代化されることは当然であり、そのために余剰人員が発生することは容易に想定されるのであります。また、移転企業が転業するとすれば相当の失業者の発生が考えられ、また、個々の労働者の事情から残留さぜるを得ないために職を失う労働者の発生も相当数にのぼることも当然予想されるのであります。
 残念ながら、本法案及び構想には、工場の移転及び企業に対する優遇措置は講じられているのでありますが、雇用に関しては具体性がなく、当該工場に働く人間無視の内容でもあります。ここにも企業優先、人間不在の政府のよろいがおくめんもなく顔をのぞかせ、政府のたてまえと本音の違いを遺憾なく暴露されていると、私は指摘せざるを得ないのであります。
 政府は、工業再配置の促進によって生ずる雇用問題について、これに対応する雇用政策を一体持ち合わしておるのかどうか、それとも産業の調整によって起きてくる雇用問題については別途特別立法する用意があるのかどうか、移転者用労務者住宅の制度の改正を含めて、労働大臣より確たる答弁をいただきたいのであります。
 政府は、国鉄経営の再建をはかるために、国鉄に対する財政の援助、運賃の値上げを今国会に提案いたしておりますが、他方では、赤字ローカル線の廃止を打ち出しておるのであります。本法案は、工業の誘導地域として北海道、東北六県、北陸四県、山陰二県、九州、四国及び沖繩の全地域を想定いたしておるのでありますが、いずれも赤字ローカル線の存存する地域であります。また、本法案が地域開発の起爆力とする中核工業団地の造成地域及び積極的に工業の誘導はかろうとしている優先地域は、産炭地域と農村工業導入地域であり、そのいずれもが内陸地帯であります。
 政府は、一方において、これらの地域に工業の誘導をはかると言い、他方においては、赤字線であるからローカル線を廃止するという政策を示しておるのであります。工業の誘導は、短期にその成果を期し得ないことは論をまたないところであり、全国的な工業生産の平準化を目ざし、地域開発を積極的に進めるということが本音であるならば、その政策か面らしても、ローカル線を、赤字線の名目のもとにこれを廃止することは避けなければならないと思うのであります。政府は、政策の失敗から極端な過疎過密の断層社会を生み出した責任からも、また、工場の地域分散に本腰を入れて取り組むためにも、赤字ローカル線の廃止を撤回し、過疎に悩む地域住民の民生の安定をはかる責任があると思うが、運輸大臣の所信を問いただす次第であります。
 私は、最後に、首都圏整備委員会が、首都圏工業等制限法による工業立地の規制を一そうきびしくする方針で改正案を作成し、工業立地制限区域を拡大する、新増設だけではなく改築も原則として禁止をする、制限基準面積をいまの千平方メートルから三百平方メートルに引き下げる、例外として工業立地を認める場合の基準に生活環境の改善という新たな条件を入れる四点を決定しながら、制限基準面積が三百平方メートルから五百平方メートルに、改築も原則として禁止する点の削除など、大きな後退をしいられている経過にかんがみ、生産の集中が大都市及びその周辺でこれ以上進めば、工業用地、用水、エネルギーの供給不足が生じ、経済の成長自体が困難になるおそれから工業の再配置を推進するという、いわば産業優先の路線からではなく、国民に快適な生活環境と福祉を保障するという人間優先の路線に立ち返って、整備された生活環境つき、公害抜きの青写真による工業分散政策を強力に進め、もって地域社会の発展をはかる明確な路線の転換を決意することがまず先決であると、強く主張いたすものであります。
 私は、この際、病める日本列島、醜い日本列島のイメージの総決算により、人間のしあわせをまっ正面から追及する政治への国民の信頼を回復する新たなる基点とすべきであることをここに訴えて、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 岡田君にお答えをいたします。
 まず、戦後の地域開発関係法は、いずれも地方の工業開発の推進、地域格差の是正、過密過疎問題の解消など、それぞれの時代と地域の要請に応じて制定されてきたものであり、それなりに今日の繁栄を確保するのに役立っており、また、その役割りを果たしてきたものと考えております。このような点につきましては、岡田君にも正当に評価していただきたいと思います。
 しかしながら、過密過疎の問題は依然として深刻であり、また、新たに環境問題等が生じていることも事実であります。政府といたしましては、今後とも地域開発制度の一そうの整備を進め、従来つちかわれてきた国力を活用して、今後のわが国の一そうの発展と、ただいま御指摘になりました公害対策等々の国民福祉の向上をはかってまいりたいと、かように考えております。
 次に、今後の産業配置あるいは地域開発に対する基本的な姿勢について申し上げます。
 私は、これまでの国土資源の片寄った利用による弊害を是正して、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、快適な生活環境のもとに国民生活の向上をはかっていくためには、わが国土の全体について、地域の構造の機能的な再編成を目ざすことが必要であると考えております。工業の再配置は、このような地域構造政策の見地に立つものであり、環境の保全、雇用の安定に十分配意しながら、過密地域からの工場の移転等を促進し、これにより国土の均衡ある発展と国民福祉の向上をはかろうとするものであります。
 以上、私から基本的な考え方をお答えをいたしますが、その他の点につきましては、それぞれ所管大臣からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#15
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
 ご質問の御趣旨には賛成でございます。政府は、全国的な企業立地政策に基づいて、過密過疎対策の面から地方移転をはかる企業については、従来からも土地の買いかえの特例等を設けておりますほか、今度四十七年度の税制改正では、特別償却による別途優遇措置を講ずることといたしまして、ただいま御提案しておるところでございます。
 また、明年度は、工場再配置の促進に資するために、産炭地振興事業団を改組して工業再配置産炭地振興公団を設けまして、積極的な措置をとることといまいたしている次第でございます。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#16
○国務大臣(田中角榮君) 工業再配置の必要は当然ではあるが、本法では不十分である、もっと抜本的な施策を行なうべきであるという御説でございまして、大体において御発言のような気持ちでおるわけでございます。しかし、この問題は、非常に長いこと懸案の問題でございました。同時に、焦眉の問題として解決を要する問題に対する具体的な第一弾ともいうべきものだと考えておるのでございます。いままでのように、新産業都市建設促進法とか、農村地域工業導入促進法とか、工業整備特別地域整備促進法とか、いろいろなものがございましたけれども、これらの法律、制度とあわせて緊急な問題を解決する処方せんの一つとして、本案を提案をいたしたのでございます。
 工業再配置促進法は、直接には工場立地に関する法律でございますが、しかし、問題は非常に多くのものを含んでおることは、ただいま御指摘のとおりでございます。東京、大阪、名古屋三カ所だけで、五十キロ半径で、その合計する地域は全国土のわずかに一%でございます。にもかかわらず、この一%の地域に三千二百万人、総人口の三二%が集中しておるところに、過度集中というのでございます。東京の例をとりますと、東京の法律でいう首都圏、半径百キロ圏には、驚くなかれ総人口の二八%、二千八百万に近い人が集中しておるのでございます。二千万台に及ぶ単を外国並みに運行せしむるためには、東京及び首都圏の道路面積を三倍にするか、道路を全部三階にしなければ、ニューヨーク並みの交通は確保できないというのが現状でございます。
 このような状態で年々大幅な公共投資を行なっておるわけでございますが、公共投資は、先進工業国十カ国の中の最大である西ドイツの一〇%をこす、約倍、二〇%の投資を行ないながら、社会資本の蓄積率はどんどんと減っておるのでございます。
 交通の渋滞、住宅の不足、社会環境の整備を必要といたす事実は、私が申し上げるまでもないのでございますが、しかし、昭和二十九年から三十九年まで十カ年間、平均一〇・四%の成長を続けたのであります。三十五年から四十五年までの十カ年を見ますと、一一・一%という高い成長を続けたのであります。だから、三十年度の一人当たり国民所得二百二十何ドルというのが、千六百ドル近くなったわけであります。その間に社会保障も拡充され、われわれの国民所得も増大をしたことは、私が申すまでもなく数字の上で明らかでございます。しかし、去年は四%台の低い成長率で非常に不況感を味わったわけでございますが、しかし、私が述べておりますとおり、これから六十年まで年率一〇%の成長を続けるとすれば、六十年度の国民総生産は三百兆円をこすのであります。七・五%成長としても二百二十兆円をこすわけでございます。
 このような数字を土台として現状を見ますときに、このままの自然発生を是認をする政策をとる限りにおいて、コストアップは避けがたいのであります。言うなれば、物価も公害も、特に過度集中から来る複合公害の問題を解決するとすれば、どんな政策よりも、工業の再配置を行なう以外には基本的な解決政策はないわけでございます。
 私は、この提案した法律をもって万全とはいたしておりません。全く初歩的なものだと考えますが、焦眉の問題を解決するための、どうしても必要とする法律の一つとして御審議をいただいておるのでございまして、皆さんの可及的すみやかなる御賛成をこいねがう次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣塚原俊郎君登壇〕
#17
○国務大臣(塚原俊郎君) 工業の再配置につきましては、労働力がきわめて大きなウエートを占めることは、これは言うをまちません。したがって、この法案の作成の過程においては、御指摘の雇用の面、あるいは失業の面、そういった面で十分通産者とも連絡をとっております。その一つとして、目的規定で、雇用の安定に配意しつつ対策を講ずることを明らかにするとともに、工場の移転等につき雇用面で摩擦の生ずることのないよう、地域の決定、工業再配置計画の策定等にあたり十分配慮することといたしております。
 できるだけ職を離れることのないよう努力いたしておりまするが、かりに職を失うような方があった場合には、雇用対策法あるいは職業安定法、昨年御審議をいただいた中高年齢者雇用促進特別措置法、こういうものによりまして、就職援護措置に対し総合的な、また機動的な対策を講じてまいる考えでございます。
 なお、工業再配置に伴う離職者、こういう者に対しては、職業の転換に必要な技能を習得させるために、産業間の労働移動を容易にするため、訓練校の新増設、機械設備の充実、訓練人員の拡大、委託訓練の機動的実施等により、職業訓練を積極的に推進してまいる所存であります。
 また、お尋ねの住宅の問題につきましては、離職者が他地域に移転就職することの円滑化に資するため、雇用促進事業団が移転就職者用宿舎の建設、雇用促進融資による住宅資金の触通を行なってまいったところでありまするが、今後ともこれら事業を積極的に推進することにより、離職者の移転就職の円滑化につとめてまいる考えでございます。
 今後の推移を見守ることは当然でありまするが、御質問にありました単独立法をこの問題について考えることは、いまのところはそういう考えは持っておりません。(拍手)
  〔国務大臣丹羽喬四郎君登壇〕
#18
○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま、国鉄のローカル赤字線について廃止計画を撤回したらどうかと、こういう御質問でございますが、御承知のとおり国鉄のローカル線の中には、道路整備の進捗、モータリゼーションの進展、人口の過疎化等の事情を背景といたしまして、地方輸送事情が急激に変化いたしまして、輸送量が激減し、鉄道としての使命を失ったものもかなりたくさんある次第でございまして、輸送量が極度に減少したローカル線につきましては、自動車輸送に切りかえることによりまして国民経済的にも適切と考えられるものがございますので、具体的には各線区につきまして道路の整備状況、工業再配置等を含めました当該地域の開発計画、将来にわたる輸送需要の動向等を総合的に勘案いたしまして、道路輸送に切りかえ得る諸条件が整っていると判断されるものにつきましては、利用者便益の確保の万全を期しまして道路輸送へ転換をはかってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣渡海元三郎君登壇〕
#19
○国務大臣(渡海元三郎君) 移転工場先の地域の関連施設整備のための経費の必要額は、それぞれの立地条件によりまして異なるものと考えますが、道路、通信、運輸、また厚生施設、教育施設、その他関連施設、これらの施設を十分に行なうためには、相当額の経費負担を伴うものと考えられます。工業再配置促進補助金等あわせまして、これらの地方財源の整備につきましては、工業再配置構想の具体化の過程におきまして、十分関係各省とも連絡をとり、遺憾なきを期してまいりたいと考えております。(拍手)
#20
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#21
○議長(船田中君) 内閣提出、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣斎藤昇君。
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#22
○国務大臣(斎藤昇君) 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 医療保険制度の抜本的改正につきましては、つとにその必要性が指摘されてきたところでございますが、政府といたしましては、この通常国会中にそのための所要の法案につき御審議を願い、昭和四十八年度からこれが実施をはかりたいと考えているところでございます。
 一方、かねてから問題とされてまいりました政府管掌健康保険の財政状況は、昨年提案をいたしました改正法案が成立を見なかったこともございまして、依然として悪化を続け、昭和四十六年度末の累計赤字は二千億円をこえる見通しでございます。さらに、本年二月から実施された一三・七%にも及ぶ医療費の引き上げの影響等を考慮いたしますと、このまま放置する限り、昭和四十七年度には約千三百億円の単年度赤字が見込まれるところでございます。
 この結果、昭和四十七年度中に、年間給付費の約二分の一にも及ぶ三千数百億円の巨額の累積赤字をかかえるという破局的状況を招き、借り入れ金にも限度があるところから、医療費の支払い遅延等の不測の事態さえも憂慮されるところでございます。
 わが国の被用者保険の中枢でございます政府管掌健康保険の財政が、このように安定を欠いたままでは、抜本改正の実現にも重大な支障を来たすところから、昭和四十七年度におきましては、何よりもまずこのような事態の解決をはかった上で、引き続き法案の提出を予定いたしております昭和四十八年度からの抜本改正への円滑な移行をはかりたいと考えております。
 政府といたしましては、このような観点に立って、次に述べますような内容の健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を提案をいたした次第でございます。
 以下、その内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法の改正について申し上げます。
 第一は、保険料及び傷病手当金等の基礎となる標準報酬の区分について、最近の賃金実態に即し、その上限を二十万円に、下限を一万二千円に改めるものでございます。
 第二は、政府管掌健康保険の保険料率を千分の七十から千分の七十三に改めるものであります。
 第三は、当面の措置として、現在保険料の算定の基礎とされていない賞与等について、支給のつどその千分の十を労使折半により特別保険料として徴収するものであります。なお、健康保険組合につきましては、その自主性を尊重し、特別保険料の徴収は任意といたしております。
 第四は、政府管掌健康保険に対するこれまでの定額国庫補助を根本的に改めまして、定率制の国庫補助を導入するものであります。
 第五は、政府管掌健康保険の保険料率について、社会保険庁長官は、社会保険審議会の意見を聞いて、千分の八十を限度としてこれを変更できることとし、同時に、この規定により保険料率を引き上げた場合は、さきに述べました定率国庫補助の割合を増加するための規定を設けることといたしております。
 次に、厚生保険特別会計法の改正について申し上げます。
 この改正は、政府管掌健康保険において保健の負担外にたな上げすることとなる昭和四十七年度末における累積損失を補てんするための一般会計からの繰り入れ権限について規定するとともに、昭和四十八年度以降の借り入れ権限について規定しようとするものであります。
 なお、この法律の実施時期につきましては、昭和四十七年四月一日からといたしております。
 以上が健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#23
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。川俣健二郎君。
  〔川俣健二郎君登壇〕
#24
○川俣健二郎君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案されました健康保険法等の一部改正法案に対し、国民の注目する重大なる課題として取り上げ、国民生活を全く無視したことに大きな怒りを込めながら、佐藤総理並びに関係大臣に質問いたしたいと思います。(拍手)
 この法案は、もっともらしい数々の理由づけはしてあるものの、しょせん政府の行政怠慢の所産であると、まずもって断定せざるを得ません。なぜならば、累積された膨大なる赤字は、もとをただせば政府の無為無策、放任政策の集積の結果であり、何らその対策を講ずることなく、ついに国民負担に転嫁して赤字解消をはかろうとするもの、はなはだ遺憾であり、とうてい承服しかねる悪法であります。(拍手)その証拠に、被保険者、労働者はむろんのこと、中小企業の事業主の願暴を踏みにじり、審議会の答申もどこへやら、いまやこの法案に対して国民すべて反対しておるこの実態が、何よりもそれを物語るものであります。
 まず、佐藤総理、率直にお伺いいたします。
 「人間尊重の政治実現」をスローガンに、「福祉なくして成長なし」と唱えはするが、はたして社会保障制度に対する理念は、一体那辺にあるのか。昨年、同じくこの法案で、わが党の田邊議員の質問に対し、総理は言われた。「私は、国民生活の安定と福祉の向上に直接寄与する社会保障の充実には、今後とも全力をあげてまいる決意であります。」――「今後とも全力をあげてまいる決意であります。」と、この壇上から公約された。はたしてあの答弁は、またもやその場しのぎの常套手段であったのかと、国民ひとしく疑念を持たざるを得ないのであります。それともあの公約が真意とあらば、今回この法案の改正にあたって、政府管掌健康保険に対する施策にそれがどのようにあらわれているのか。社会保障の充実に全力をあげると言った証左がどこにあるのか。あるとすれば、お示し願いたいと思うのであります。
 次の質問は、抜本改正と赤字対策とを今回は切り離して提出したことであります。すなわち、今日、社会保障制度の一端であるこの健康保険法の改正案を考えるとき、国民の生命につながるだけに、医療問題の基本にメスを入れなければと、いまや世をあげて叫ばれているのはいなめない国民の声であります。したがって、健保の抜本改正と財政対策は、本来同一線上で論じられなければならないはずのものであります。
 しかるに、政府は抜本改正に何ら手をつけず、保険料率の引き上げをはじめとするこの改正案は、賞与からの特別徴収、標準報酬の引き上げ等々、ただ単に財源あさりを目的とするだけに終わり、国民大衆を犠牲とする財政対策にすぎません。思うに、これは、四十七年度は健保財政の赤字解消をはかり、その上に立って四十八年度からぼつぼつ医療制度に手をつけようということを意図するものであるだろうと思います。
 今回、この国会において、与党の頭数をたよりに無理やりでも通したら、不平ながらも国民はついてくるものだという政府の腹の底がまざまざと見えてきた。かくて、この問題は、赤字対策を乗り切りさえすればとの意図のもとに、抜本改正から作為的に分離したものと判断せざるを得ないところでありますが、ここに政府の真意を明らかにしていただきたいいものであります。
 さらに、総理にお伺いしたいのは、社会保障制度審議会並びに社会保険審議会の答申を全く無視して、政府原案そのままを国会に提出したことについてであります。
 このような悪法を見るとき、われわれ野党はあげて国民の場に立ち、一歩も引き下がるわけにはまいりません。それにも増して許せないのは、国民総参加を主軸とすべき民主政治の今日の日本において、全く国民の声をないがしろにした独裁政治の原点に立ちこの法案を提出してきた政府の態度に対し、最高責任者たる佐藤総理の見解を披瀝していただきたいと思います。
 文民統制が危ぶまれ、右翼台頭、連合赤軍でりつ然等々、この本会議の場で論じられ始めた世相、一機何十億というジェット機にはぽんと金を出し、裏金すら出そうとする政治となってしまっただけに、あえてこの際、佐藤総理の民主政治に対する姿勢をただしておきたい次第でございます。(拍手)
 次に、厚生大臣への質問に入りたいと思います。
 まず第一に、今国会に提出された法案について、そもそも赤字の原因は何であるかを、大臣は就任以来深く考えられたことがあるでしょうか。あなたの辞書には「国民」という単語が一体入っていらっしゃいますか。ましてや、「社会保障」などということばはよもや入っていらっしゃるまい。そうでなければ、国民の福祉をつかさどる厚生大臣として、このような法案をおめおめ提案し、平然としていられるわけがない。
 と申しますのは、受診率、診療日数ともに横ばいであるのに、診療費のみがここ四カ年に五割以上増大している事実。一方、国民の負担が四十二年度に比べ、現在五〇%もふえているのに、国庫補助はここ四年間据え置かれてきたという事実。この法案によれば、国庫補助が五%定率とするとあるが、これは四十二年度の保険財政全体の中で占める六・三%に比べても及ばない、きわめて低いものであるという事実。また、標準報酬の上限を十万四千円から一挙に二十万円に、下限を現行三千円から一挙に一万二千円に引き上げ、赤字を余さず国民負担にしようとする事実。それにも増して驚かされるのは、低所得者に施されるはずの当健康保険に対し、あまりにもわずかな国庫補助で据え置きされてきた事実等々、これらの事実からして、私が最初に厚生大臣に吐いたことばが、決して言い過ぎではないことを物語っていると思います。(拍手)
 第二として、濃厚診療、薬剤の乱用の根本原因の一つとされている薬剤とリンクしたこの出来高払い方式を改めるため、政府は一体これまでどれだけの努力をされただろうかという点でございます。
 また、診療報酬適正化問題は、中医協の責任に転嫁すべきではなく、政府自身、いわゆる適正化メモといった及び腰の態度を改め、この診療報酬改正案を立案すべきであると考えますが、いかがなものでありましょうか。
 第三は、現在までに政府は何ら対策なく、また対策を立てようとしない。立てたところで、このような一時しのぎの怠慢な赤字対策、強く糾弾せざるを得ません。ここのところを、斎藤厚生大臣、いかに釈明してくださいますか。
 第四といたしまして、この法案で、皆さん、どう解しても納得のいかない健康保険法第七十一条ノ四の改正案についてただしたいのであります。
 すなわち、これからの保険料率の改正の場合は国会の議を要しないという問題であります。何がゆえに国会を無視し、社会保険庁の指先一つでなし得るようにする必要があるかということについてであります。
 すなわち、こうであります。保険料率、現行の千分の七十を千分の七十三に引き上げることについては、いまのこの法案として国会で審議されます。その後は、千分の七十三から千分の八十まで大きく引き上げるときは国会は不要、所管官庁がかってにできるという法律がこの法案でございます。
 おそらく、この質問に対し、厚生大臣は、それについては審議会の答申を経て云々と言われるだろう。ところが、審議会の答申を全く無視して今回提出するような政府になってしまったからこそ、私はこの撤回を求めるのでございます。(拍手)
 さらに、第五として究明します。
 賞与からも特別徴収しようとする斎藤厚生大臣の腹のうちは、いかなるものなのでしょうか。政管健保の怠慢から生じた赤字を、一時しのぎにいわゆるボーナスからまで取り上げるとは、まるで子供からあめ玉を取り上げるようなものであります。そして、このようなむざんな思想は、やがて、健保にとどまらず年金をはじめとするほかの社会保険制度にも波及することは、火を見るより明らかであり、その手は食わぬ、愚民政策と警鐘を乱打するものであります。
 以上の事柄につきまして、厚生大臣、いわゆる大臣答弁というものではなく、誠意ある釈明を要求すると同時に、わが社会党は、次のように改善すべきであると考えます。
 第一として、国民健康保険の国庫補助四五%の現状からして、当然、政管健保のこの国庫補助も引き上げてしかるべきであるということであります。ましてや、低所得者の多い政管健保なるがゆえに、国庫補助は年次計画をもって二〇%までに引き上げるべきではないだろうかということです。そうすることにより、中小及び零細企業の事業主負担も軽減され、その上弱い立場で苦しむ労使をこれ以上窮地に追い込まない効果をも期待できると思いますが、いかがでありましょうか。
 また、この予算化は十分に予測できるものであり、その用意が国にあるかどうか、水田大蔵大臣にもあわせてお尋ねしたいと思います。
 第二といたしまして、賞与にたよったり、労使負担金を型に押しつけることなく、保険料率を標準報酬によって格差を設定すれば、低所得者の負担は軽減でき、賃金の上昇とともに保険料の自然増収が見込まれるはずであります。たとえば、低所得者には保険料を免除し、三万円未満を千分の六十、十五万円以上を千分の八十、その間に段階制を設ければ、負担の公平がはかられると考えます。この点、どうお考えでございましょうか。
 以上の点について、斎藤厚生大臣の同意を求めながら、加えて、水田大蔵大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
 結論を急ぎます。
 そもそも、この政府管掌健康保険は、加入しておる労働者、その数一千二百万人余り、その賃金水準は、組合健保の労働者の約七割、そして職場の条件は、不健康、非衛生かつ過酷であります。したがって、他の健康保険よりも受診率が高く、保険支出のかさばること当然であり、支出をば保険料収入の範囲内に押えること自体が、土台、無理な構造となっていると私は思います。保険料収入に見合った医療給付という発想は、医療を採算制原理に閉じ込めることになり、必要かつ十分な給付を阻害するものであります。一般の家計でも、家族の健康回復、維持のためには、無理してでも支出すると同様に、国においても、国民の生命と健康のため財政優先確保の原則を樹立すべきであり、疾病や障害の発生は社会の責任という発想に大転換し、ひいては、今日わが国の保険制度をがんじがらめに束縛しておる三つの原則、すなわち、受益者負担の原則、相互扶助の原則、個人責任の原則、この三原則に大きなメスを入れる。これが経済優先から福祉優先への道であり、そこで初めて、佐藤総理の言う、福祉なくして成長なしの裏づけとなると私は思います。(拍手)
 わが党は、医療保険から医療保障へという理念を掲げながら、今次国会に近く医療保障基本法案を御提示いたす所存でございます。
 以上の観点に立ちまして、佐藤総理並びに関係大臣、このようなこそくな法案はひとまず撤回されて、たとえ内閣が症状末期の段階を迎えたとはいえ、有終の美を飾る意もあって、佐藤総理の勇気ある決意を求めながら、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 川俣君にお答えをいたします。
 まず、医療保険の抜本改正につきましては、これが国民生活に密接に関連する重要問題であるとの理解のもとに、これまで鋭意検討を進めてきたものでありますが、この問題は、川俣君も御承知のように、複雑多岐にわたり、関係者の利害も錯綜していることなどから、不本意ながら、その成案を得るに時日を要したものであります。この間の事情につきましては、ぜひとも御理解をいただきたいとお願いをいたします。
 現在、この抜本改正案は、関係審議会で御審議願っているところでありますが、近くその答申を得て、所要の法案を今国会に提出し、十分御審議いただきたいと考えております。
 なお、政府管掌健康保険の累積損失につきましては、今回の改正により、これを保険の負担外にたな上げし、被保険者の負担にならぬよう措置することといたしております。
 次に、人間尊重、福祉なくして成長なしというのは、私のこれは不動の政治理念であります。現在提案いたしております健康保険法の改正案は、近く提出を予定している医療保険の抜本改正のための法案、及び、医療の基本理念を明らかにする医療基本法案と一体をなすものであり、これら一連の法律によって、真に国民連帯意識を基調とし、皆保険の名に値する制度の改善をはかり、私の政治理念を医療保険制度の中に具体化してまいりたいと、かように考えております。
 次に、川俣君から、財政法案だけを切り離して提案したとして御批判がありましたが、政府管掌健康保険の財政状態は極度に悪化しており、このままこれを放置すれば、制度崩壊の危機さえあるので、政管健保の財政の健全化こそ当面の急務であることを御理解いただきたいと思います。また、抜本改正につきましては、関係者との調整に時日を要するものが多く、その実施を四十八年度からとせざるを得ませんが、抜本改正を円滑に実施するためにも、四十七年度において政管健保の財政の健全化を実現することがぜひとも必要であります。このような事情から、抜本改正と切り離し、まず今回は国会に提出したのは財政対策でありますが、政府といたしましては、先ほども申し上げたとおり、医療保険制度の抜本改正及び医療基本法の準備を急いでいることを、重ねて申し上げておきます。
 次に、関係審議会の答申につきましては、政府は慎重に検討いたしましたが、個々の措置について関係審議会の意見が必ずしも一致していない面もあるほか、四十七年度以降における政府管掌健康保険の収支均衡を確保するという観点から、種々の御意見があるとしても、現段階におきましては政府原案が適当であると判断したものであります。この点につきましては御了承をぜひともいただきたいとお願いいたします。
 最後に、川俣君は、医療保険制度をやめて、公費負担で医療費をまかなえ、こういう御意見であったように思いますが、私はこのような御意見には直ちに賛成はいたしません。私は、医療保険制度を中心とし、公費負担医療と相まって充実をはかっていくものであると考えます。(発言する者あり)公費負担医療と相まって充実をはかっていくべきものであると考えます。これは昨秋の抜本改正に関する関係審議会の答申にも述べられているところであり、今後におきましても、この考え方に立って、医療保険を中心に制度の改善をはかっていくべきものと考えております。
 さような意味からせっかく提案いたしたのでございますから、これを撤回しろという御意見には、私、賛成いたしません。どうか御審議の上、成立を期していただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#26
○国務大臣(水田三喜男君) 政管健保に対する国庫の補助が少ないということ、それから国民健康保険との比較についての御質問がございましたが、医療保険は、保険料をもって保険給付を行なうということをたてまえとする社会保険制度であります以上、その本旨に顧みまして、保険事業に対する国庫の補助を増すということにはおのずから限度がございますが、御承知のように、政管健保の財政状況はただいま極度に悪化しておりますので、この財政を再建するために国としてもより積極的に対処すべきであると考えまして、今回の財政対策の一環としまして、特に、従来の定額補助を、給付の定率補助に切りかえて、三百七十億円の負担をすることにいたしました。同時に、この国庫補助率というものは今後弾力的に調整されるということになっておりますし、さらに、従来の二千億円をこす累積赤字を、被保険者に負担させないで、一般会計から補てんする道を開くという法律も準備したことを考えますと、国として政管健保に対する財政援助としては、おそらく画期的なものであると私は考えております。
 それから、国民健康保険に対する国庫補助の率の問題がございましたが、これはもう御承知のとおり、国民健康保険には事業者負担というものがございません。したがって、これは国家がかわって負担するよりほかございませんし、また、被保険者の所得状況とか保険負担の能力というようなものを考えまして総合的にきめた率でございますので、この国保の補助率と政管健保の補助率を単純に比較してバランスを論ずるということは、これは私は当を得ていないものであろうと考えます。(拍手)
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#27
○国務大臣(斎藤昇君) お答えを申し上げます。
 政管健保の赤字の原因をどう考えるかというお尋ねでございますが、この点は、政管健保は、御承知のように、中小企業の被用者を対象にいたしておりますので、その保険料のもとになる給料が、大企業の被用者に比べて非常に低いということが一つ、それから、中小企業には中高年齢層の方が多い、疾病率が多いというのが一番の大きな原因である、かように考えております。
 なお、次に、薬剤の多用の問題につきましては、これは診療報酬制度の適正化の問題ともからみまして、診療報酬制度の改定のたびに、その乱用を防ぐように考えておるのでありますが、まだ十分とは申せません。毎年行ないまする薬価の実勢調査を基準にいたしまして薬価の基準価格を引き下げておりますことは、すでに御承知のとおりでありますが、今後もこれを続けてまいりたい、かように考えます。
 診療報酬制度の適正化、合理化の問題は、診療報酬改定のたびに中央医療協議会においても検討されているところでございますが、まだこれで十分とは申せません。中央医療協議会におきましても今後引き続いて検討することになっておりますが、政府といたしましても、中央医療協議会におまかせをするというのではなくて、今後一そう強くこの方針に沿うように中央医療協議会に対して善処をしてまいりたい、かように考えます。
 なお、弾力条項は国会無視ではないかという御意見でございますが、千分の八十を限度として、その間における財政状況を見て、単年度赤字を生じさせないために必要な所要の措置だと考えます。この弾力条項が発動いたしますると、それに応じて国庫補助も自然に増加をするという仕組みになっておりまするし、国会において授権をせられるならば、国会無視にはならない、かように考えておるわけでございます。
 賞与について特別保険料を徴収する理由はどうかということでございますが、これは普通の給与にのみ保険料をかけますると、低所得の方々に対しては少し重くなり過ぎる、それを避けたいために、賞与のうちの若干を特別保険料として徴収するならば、そういった弊が避けられるのではないであろうか、かような考え方から、さしあたって当分の間、賞与から若干の特別保険料を徴収いたしたい、かように考えた次第でございます。
 保険料を徴収するについて、税金のように累進課税的な考え方でやったらどうかという御主張でございますが、私は、これはやはり税金の取り方とは違って、こういった保険料は、そういった累進的な考え方というものは一つの御示唆ではあろうと思いますが、よほど慎重に考慮をする点があるのではなかろうか、かように考えまして、いま直ちに御賛成申し上げるわけにはまいらない、かように考えます。
 なお、医療保険を考える場合に、国民の健康の保持あるいは疾病の予防その他、ものによっては公費負担ということを十分に考える必要があるという御意見は、そのとおりに思います。さような方針によりまして、国民の健康の保持なり疾病の予防なり、あるいは公費負担の制度も逐次整備をいたしてまいっておるわけであります。今後一そうこの点を推進してまいりたい、かように考えます。
 ただいまお話しになりました医療保障基本法を社会党において御提案になるということでございますが、政府といたしましても、医療基本法を提案いたして御審議を願いたいと思っておりますので、その点は後刻十分御審議をいただきたい、かように考えます。
 国庫補助の点につきまして、五%の国庫補助が低過ぎるという御意見、国保に対しては四五%の補助があるではないかという御意見に対しましては、大蔵大臣からお答えがございました。私もそのとおりに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(船田中君) 古川雅司君。
  〔古川雅司君登壇〕
#29
○古川雅司君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣の所信をただすものであります。
 昭和三十七年度以降、政管健保は収支の均衡を失い、赤字が慢性化して、その当初からいわゆる医療保険の抜本的改正の必要が叫ばれて、すでに十数年を経過しております。しかるに、政府は、一方的な受益者の負担による小手先の対策のみに終始し、何ら医療保険の根本的な改善を講じようとせず、政府の無策が、今日に見る政管健保の財政を破綻に至らしめていることは、国民周知の事実であります。その間、日本医師会の保険医総辞退という忌まわしい不祥の事態を招来し、国民に重大な不安を与えてきたことは、きわめて遺憾であり、国民の健康と生命を守る健康保険制度の充実整備と円滑なる運営をはかることは、国民福祉の基本的な施策として最も重大な政府の責任であるというべきであります。
 いまや、健康保険制度の抜本改正にかける国民の期待は、まことに大きなものがあるといわなければなりません。しかるに、ただいま説明のありました健康保険法及び厚生保険特別会計法の改正案は、その内容において何ら政府の努力を認められるものがなく、前国会において廃案になった健康保険法改正案とほとんど同じ内容のものであります。しかも、一方的な国民の負担によって健康保険財政の赤字穴埋めの手段を講じようとしたものにすぎません。
 ひるがえって、佐藤内閣が誕生して以来、総理みずからが幾たびか医療保険の抜本改正を国民の前に公約されてきたのでありますが、いまだにその実現を見ることができなかったことは、総理の重大な政治責任であるというべきであります。そして、そのことは総理自身の指導力の欠如を物語るものであると思うのであります。その点について、総理の所信を伺いたいのであります。
 総理は、今国会冒頭の施政方針演説において、福祉社会建設への政治指導の機能を高めて、医療保険問題の解決につとめ、国民生活に安定した環境をつくりたいと考えると言明しておりますが、この改正法案について、総理自身の所信と照らし満足すべきものであると考えられるのか。さらに、この改正法案が過渡的なものであるとするなうば、抜本的改正にいかなる構想をお持ちか、その所信を国民の前に明らかに示していただきたいのであります。
 第二に、総理並びに厚生大臣にお尋ねをいたします。
 今回の改正案の提出にあたって、厚生大臣は、総理の重要な諮問機関である社会保障制度審議会の答申を無視し、あまつさえちぐはぐな発言を繰り返しておられることは、閣僚としての政治姿勢を疑われるものでありますが、その責任を明らかにしていただきたいのであります。すなわち、審議会がその答申で具申しているように、本改正案を抜本改正と切り離して答申を求めた政府の態度は、きわめて不合理であるといわざるを得ないのであります。
 さらに重要なことは、二月十六日、厚生大臣が答申を十分尊重すると言いながら、審議会の答申を無視した本法案を国会に提出したことは、明らかに矛盾であり、いわば審議会を隠れみのにしたものとしか言いようがないのであります。この財政対策は抜本改正と同時に審議されるべきものであり、切り離して提出したことは、まことに遺憾であります。直ちに抜本改正案を提出するか、さもなくば本法案を撤回すべきであります。総理並びに厚生大臣の所見を伺いたい。
 答申無視については、すでに各方面からもっともなる批判が寄せられているところでありますが、これに対し厚生大臣は、予算内容と異なる政府案は提出できないなどと述べ、その責任を回避されておりますが、とんでもないことであります。百歩譲っても、さらに矛盾を感じますことは、答申の中には直接予算事項とかかわりのない幾つかの事項があるわけでありますが、それまでをも全く無視しているということであります。たとえば弾力条項、すなわち千分の八十を限度とする保険料率の弾力的調整の規定については、答申にはむしろ抜本対策の成立後において、諸条件の変化を繰り込んだ上で十分検討を加え、しかるべき後に規定すべきであるとはっきり述べているように、本改正案から削除すべきであると主張しているではありませんか。なぜこの答申を無視したのか、御説明願いたいのであります。
 さらに答申には、これまでの累積赤字をたな上げすることは当然のこととして、かかる累積赤字の解消を将来保険料収入の一部で補てんされることのないよう法文的にこれを保障し、負担者側の不安を除くべきであると指摘しているにもかかわらず、この点もまた無視したのは何ゆえか。御説明願いたい。
 第三に、重ねて厚生大臣にお尋ねするものであります。
 本法案は、政管健保の長期的な財政の安定をはかると言いながら、もっぱら国民泣かせの収入の増加のみによってこれに対処しようとしておるのは、明らかに筋違いであります。医療問題の根幹である医療制度や医療保険の支出面に対して積極的にメスを入れようとせず、保険財政の帳じりのつじつまを合わせることだけに奔走するのは片手落ちであり、保険財政面の大きな矛盾であります。当然、政府の失政により生じた赤字財政を政府みずからの手で補てんすべきでありますが、厚生大臣の考えを明らかにしていただきたいのであります。
 第四に、大蔵大臣に伺いたい。
 今回、大蔵当局が、従来の定額補助二百二十五億円から定率補助五%に改正した理由は、政管健保の長期的安定と保険料負担の緩和をはかるためとしていますが、大蔵大臣、あなたは、五%の定率補助で、はたして政管健保の長期的安定がはかれるとお考えなのか。わが党は、少なくとも定率補助二〇%が妥当と考えるものであります。何ゆえに五%と決定したか、御説明願いたいと思うのであります。
 さらにお尋ねいたしますが、国鉄の赤字に対しては、四十七年度予算で千百八十四億円の国の助成措置をいたしております。もちろん、国鉄対策としてはきわめて少ないことは言うまでもありません。ところが、国民の生命と健康にかかわる最も国民生活の基本ともなるべき重大かつ緊急な医療に対しては、佐藤内閣七年間でわずかに千五百七十五億の補助にすぎないことは、国民の生命と健康維持に対する考え方の冷淡さを示すものであるといわざるを得ないのであります。
 そこで、この国民の生命と健康を守るという見地から、大蔵大臣の所信を伺いたいのであります。
 最後に、総理及び大蔵、厚生両大臣にお伺いいたします。
 現在わが国の医療は、保険あって医療なしと端的に指摘されているごとく、国民は重い保険料負担にあえぎながら、いついかなる場合でも安心してよい医療を受ける体制にはなっていないのであります。過疎地帯や僻地では医療機関もなく、また救急医療体制はきわめて貧弱であり、老人医療の充実といえども、東京都に老人専門病院がわが国でただ一つ初めて開設されるという現状であります。しかも、国民総死亡数の五四%も占めるガン、脳卒中、心臓病等の成人病対策については、予防のための法的措置もなく、かつ保健機構はまことに貧弱であり、関係予算も年間わずか昭和四十七年度予算で六十一億円にしかすぎません。ことにガン対策については、アメリカでは、大統領みずからが陣頭に立ち、総力をあげて対処しているのに比べ、わが国では、わずかに厚生省公衆衛生局の中の一係でこれに対処しているという現状であります。この姿勢を見ても、医療保険の前提条件ともいうべき医療供給体制の整備がおそきに失していることは一目瞭然であります。したがって、医師、看護婦並びにパラメディカル等の養成、さらに薬価問題を含めた医療供給体制の整備について、明確な打開策を示していただきたいのであります。これが具体的かつ明確に示されない限り、どんなに健康保険財政の安定をはかろうとしても、本来のあるべき医療の姿にはとうていなり得ないのであります。
 総理、この点について、あなたが七年間にわたる政権担当の間に、何らなすすべもなかったことは、後世に残るあなたの重大な失政であったとして、国民は決して忘れないでありましょう。しかもその上に、赤字財政対策を国民の負担に押しつけていくということはまことに遺憾であります。
 そのためにも、本改正案は直ちに撤回すべきことを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 古川君にお答えをいたします。
 まず、医療保険の抜本改正につきましては、先ほど社会党の川俣君にもお答えしたとおりの事情により、不本意ながらその成案を得るのに時日を要したものであり、御理解いただきたいと思います。現在、この抜本改正案は関係審議会で御審議願っているところであり、近くその答申を得て所要の法案を今国会に提出いたしますから、その際、十分御審議いただきたいと思います。
 なお、政府管掌健康保険の多額の累積損失につきましては、今回の改正により、これを保険の負担外にたな上げし、被保険者の負担とならぬよう措置することといたしております。御説のとおり、この抜本対策と今回の対策とを同時に提出しろ、かような御要望でございますが、ただいま申し上げたような経緯がございますので、これはやむを得ないと御了承いただきたいと思います。
 最後に、人口構造の老齢化、疾病構造の変化に伴い、成人病、特にガンは、保健の衛生対策の面におきましても、重大な問題となってきております。このため、政府といたしましても、集団検診の実施、研究の推進、医療施設の整備、専門技術者の養成、予防思想の普及啓蒙を五本の柱として、施策の推進に当たってきたところであり、今後におきましても、保健衛生対策における最も重要な課題の一つとして取り組んでまいりたい、かように考えております。
 以上、私からお答えをいたしました。その他の点につきましては、厚生大臣その他からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#31
○国務大臣(水田三喜男君) 政管健保の財政再建のために、四十六年の二月に、所要の法案を国会に提出したわけでございましたが、残念ながら、これは審議未了となって、不成立となりました。
 そこで、最近の財政を申しますと、このまま、この巨額の赤字を引き続きただ安易に借り入れ金にたよっていくというようなことをやっておりますと、これはもう財政的に破綻して、制度それ自身が崩壊するという危機に瀕しておりますので、今回、再び財政再建策を提出しているわけでございますが、その場合、前回と大体同じような構想で所要の再建策を立てますというと、今後国庫補助率を弾力的にするということと、それから、従来の蓄積赤字をここで一応たな上げして、別個に処理するということを前提にいたしますと、一応国の補助率はただいまのような定額ではなくて、定率補助に切りかえれば、実際において赤字を出さなくて何とかやっていけるという計算が現在出ております。四十七年も、この再建対策によって、必ず赤字を出さなくてやっていけるというのがいまの見通しでございますので、したがって、先ほど申しましたような保険制度の本旨に顧みまして、国の国庫の補助という率から見ましたら、国民健康保険とは性質が違いますので、これは決して過小ではないというふうに私は考えます。もし、これが少ないということでありましても、弾力的にこれが調整される法的な準備もできておりますので、それによっても将来、健康保険財政は必ず健全化していくというふうに私は信じます。
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#32
○国務大臣(斎藤昇君) 抜本改正のおくれました理由につきましては、総理からもお答えがございましたが、御承知のように、抜本改正はきわめて関係するところが広うございます。御承知のように、昭和四十四年の八月に、両審議会に抜本改正の諮問をいたしました。二カ年有余かかって昨年の九月にその答申をいただきましたが、答申の内容も相当抽象的でございました。それ以来、政府といたしましては、この答申の御意見も踏まえて具体的に内容を検討をいたし、ただいま両審議会にこれまた諮問中でございまして、ごく近いうちに国会に提案をいたしまして、御審議をいただきたいと存じます。
 抜本改正とこの財政対策とを切り離したのはけしからぬという御意見のようでございますが、私は、財政対策と抜本改正を一つにしてもそれはいい、かように思っておるのでありますが、しかしながら、抜本改正は政管健保の赤字対策のためにやるのではない、政管健保の財政対策というものと抜本改正とは理念的に割り切るほうがよろしい、かように考えて、二本の法律になったようなわけでございます。
 抜本改正は、今日、国民の皆保険という理念に従いまして、お互いに医療費を保険をし合うという国民総連帯の考えのもとに立って、保険料やあるいは保険給付の公平をはかると同時に、今日の医療保険では必ずしも長期、高額の医療の場合には役に立たない、この声を私も強く痛感をいたしております。これにたえるようなものにいたしたい。同時に、保険料の適正というようなことを考えれば、中小企業に従事する被保険者の方々の保険料も、いままでよりも低くて済むようになるであろうというような考え方、また今日いわれておりまする医薬分業も、この抜本改正の中において促進をする道を明瞭に開きたい。そうしてまた、保険の乱療乱診というようないろんな点もございますが、これらについてもあの手この手を考えて、抜本改正の中において考えたい。その一つは、領収証を患者が請求をしたら出さなければならぬという義務づけをはっきりするとか、そういうような諸般の条項を抜本改正の中において見たい、かように考えているわけでございます。
 諮問機関の答申を無視したという御意見でございますが、これも総理からお答えになりましたように、両審議会の御答申必ずしも一致をいたしておりません。また、一つの審議会の中におきましても、各条項によって、あるいは事業主側、あるいはまた保険者側の意見が違う、公益委員との意見が違うというようなものもございました。ただ、政府といたしましては、それらのいろいろな御意見を参酌をしながら、この国会に提案をいたしましたのが一番最善である、かように判断をいたしたからでございます。
 弾力条項は予算に関係がないじゃないかという御意見でございますが、弾力条項につきましても、制度審議会におきましては、これは一つの考え方である、その運用を慎重にやる必要がある、ただ、これを財政対策の中に入れないで抜本改正でやったらどうだという御意見でございましたが、この弾力条項は、四十七年度の単年度赤字も出させないというためには、そしていままでの累積赤字をたな上げをするというためには、四十七年度からこの弾力条項が法理論としては必要である、かように考えまして、財政対策の中に入れたわけでございます。
 また、政管健保の赤字の政治責任というお話がございました。これは、さきの川俣議員にお答えを申し上げましたように、中小企業の被用者を対象にいたします政府管掌は、その体質におきまして、大企業の健保組合とは違って、赤字を持つ自然の体質を持っているわけでございます。したがって、これに対処をいたしますために、国庫の定率補助も考えますと同時に保険料のアップも考える。そうして、抜本改正におきましてそういった不均衡をなくしてまいりたい、かように考えるわけでございます。
 政府補助金の五%の点につきましては、大蔵大臣からお答えがございましたから、私からは省略をいたします。
 保険あって医療なしというおことばでございますが、医療制度の整備につきましても、御承知のように毎年その充実をはかってまいっておるところでございますが、これをもっと系統的に、そしてもっと抜本的に供給体制を整える必要がある、かように考えまして、引き続いて医療供給体制を整えるための医療基本法を御審議いただくべく、ただいま準備中でございますので、近く提案をいたしたいと存じます。それによって十分御審議をいただきたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○議長(船田中君) 田畑金光君。
  〔田畑金光君登壇〕
#34
○田畑金光君 私は、民社党を代表し、ただいま趣旨説明のありました健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、佐藤総理ほか関係閣僚に対し、以下数点にわたり質問を行ないたいと思います。
 十一年前、すなわち政管健保が赤字傾向に転じた昭和三十六年から今日まで、政府の医療政策は一貫して財政対策のみでありました。すなわち、医療費がふえたので赤字になった。そこで保険料の増収をはかる。しかし、赤字を生じる根源を正さないから、一息つくころにはまた医療費が増大する。また赤字対策を立てる。このような繰り返しの連続でありました。四十二年の第一次健保特例法しかり、四十四年の第二次特例法またしかり、そして、昨年六十五国会で廃案になった法案も、また今回の法案も、もっぱら財政対策以外の何ものでもありません。
 団体であれ、企業であれ、個人であれ、赤字が出れば対策を立て、財政解決に当たることは理の当然でありましょう。その当然のことが、事医療となると多くの人々にすなおに受け入れられないのは何ゆえか、そこに多くの反省すべき点があると思います。
 財政収支をバランスさせるには、収入の増加をはかる前に支出の合理化をはかる必要があることは、単純簡明な世の常識であります。医療保険において支出の合理化をはかるためには、少なくとも現物給付、出来高払いの診療報酬体系そのものにメスを入れなければならないということは、つとに指摘されてきたところであります。しかるに、今回もそのメスを入れることなく、赤字がふえた、しかも医療費が実質一二%引き上げられたから、その負担はあげて被保険者にしわ寄せしようとする、このような安易な政府の対策の片手落ちが、人々の納得を妨げておる理由の最たるものであります。
 ことに、この法案は、関係審議会の存在と権威を無視し、その答申を全く軽視しているところに、幾ら責めても責め足りない点があるわけであります。
 医療保険制度は、保険の原理を軸にして、医療の需給を円滑に取り運ぶという公共的な機構であります。したがって、給付と保険料のバランスをはかるという保険財政の問題が絶えず表面に出てはまいりまするが、しかし、その根底には、医療とは何かという根源的な問題があり、それを踏まえた合理的な医療制度が築かれることが不可欠の前提であります。とりわけ国民皆保険下にあっては、医療制度と医療保険制度とはうらはらの関係であるわけであります。しかるに、これまでの経験によれば、赤字対策という先頭車はいつも先行のしっぱなしであるのに、並行すべき医療制度の改善は、はるか後方に取り残されたままであるというのが、わが国の医療の実情であります。そして、医療問題が経済問題にすりかえられ、生命と康康にかかわる本質の問題が、いつも算術の問題としての解決しか与えられなかったのが、今日までの政府の医療行政であります。
 今回もまた、健保の財政対策をとりあえずどうぞ、というのが政府の姿勢でありますが、こういう矛盾の積み重ねを繰り返していては、いつの日に国民のための医療が実現できるでありましょうか。医療制度の不合理是正と医療保険財政の健全化とは、いずれを欠いても国民のための医療の実現は望めないというこの国民の常識に対し、総理はどのようにおこたえなされようとするのか、まず、その決意のほどを承っておきたいと思います。(拍手)
 次に、法案の内容について、関係審議会に諮問中の抜本改正案についても触れながら、以下、数点にわたりお尋ねいたします。
 主として支出の合理化という側面から問題点をあげてみます。
 保険料率の引き上げと標準報酬における上下限の引き上げ、ボーナスに対する特別保険料の設定、さらに諮問案中の財政調整の創設と一部負担の引き上げといった重要な柱は、そのいずれもが利用者負担の原則で貫かれております。これはまた、例によって例のごとく、赤字の原因が利用者の過剰な医療需要にあるという認識の上に立ち、受益者負担の財源対策のみを優先させておりまするが、これは一面的なもののとらえ方であります。医療需要が多面化し高度化すれば、医療給付費がふえることは避けられないことでありましょうけれども、その中にむだがあればなくさねばならぬし、また、努力すればなくせるはずであります。現に、赤字を出さない組合健保は、そのために疾病の予防、健康管理を含めて医療費のむだの排除につとめ、よって支出の節減、合理化に大きな成果をあげております。
 ところで、政府は、政管健保の管理責任者として、それに見合うだけの努力を払ってきたでありましょうか。それはノーであります。政府の怠慢から生じた赤字まで利用者にしわ寄せしようとするとは、筋違いではありませんか。その分は、当然政府の責任でカバーすべきであります。また、もし、努力はしておるが、政管健保の規模が大き過ぎて、個々の構成員の把握ができないという制度上の欠陥に原因があるとするならば、制度の改革にまず手を染めるべきであって、自己の責任をたな上げして利用者に負担させるということは、木末転倒であります。(拍手)
 国庫補助を五%の定率にしたことをもって大きな前向き施策であるかのごとく、先ほど来宣伝しておりますが、四十二年度当時すでに二百二十五億の国庫補助が支出され、医療給付費の六・三%を占めていたのであります。しかるに、今次法案では五%の定率補助ということは、実質的には引き下げであり、国庫負担の大きな後退であり、政管健保における国の責任の放棄であります。
 政管健保の対象は、申すまでもなく中小企業であります。それだけに、今日の社会経済環境を考えてみますならば、国庫負担をもっと引き上げよというのが両審議会の答申でございまするが、この点について、重ねて、大蔵大臣、厚生大臣の答弁を求めます。
 次にお尋ねしたいことは、医療費は年率二〇%もの勢いでふえ続け、四十六年度は総額三兆円に達する勢いであります。そして、政管健保の四十七年度末累積赤字は、このままでいきますると三千億をこえるような趨勢であります。
 ざて、それでは、政府は、医療費の増大原因をどれだけ科学的に分析し、それに対する対策をどれだけ講じてきたでありましょうか。医療費の分析といえば、十年一日のごとく、一件当たり金額、受診率、一件当たり日数といった概念で現状を説明することに終始してまいっております。実態分析が足りないから、医療費の増大に対する具体策が実を結ばないままに今日にきております。きわめて抽象的に、疾病構造の変化、医療内容の高度化が原因として指摘されただけでは、問題の解決にならぬわけであります。医療費増大の原因をどのように分析し、また、どう対応されようとするのか、この際、厚生大臣の見解を承っておきます。
 次にお尋ねしたいことは、保険が個人の相互連帯による扶助組織であるとするならば、個人の努力ではどうにもならないもの、個人の責任に帰し得ないものまで保険で見るのは筋違いであると思います。公害による疾病も、医薬の研究開発への投資も、医療施設の整備費用も、医療スタッフの養成に要する費用までが、すべてこれ保険に依存しているところに保険財政の混乱が起きているのであります。
 本来、公的な投資にまつべきものは保険から整理すべきであり、公費負担によるべきものと保険にまつべきものの守備範囲を明確にすることが保険財政を健全化させる要件であり、医療のあるべき姿としては、社会、経済情勢の変化に対応しながら公費負担制を大幅に拡充、適用することがこれからの医療行政の趨勢であると私は考えますが、厚生大臣の見解を承ります。
 次にお尋ねすることは、わが国の診療報酬は低額で、良質、適正な医療サービスの供給を困難にしているという非難が、しばしば医療担当者側からいわれております。ところが、そのように低い診療報酬だといわれているのに、総医療費は、国民所得との比率が欧米先進国と同率にまで急増し、高額所得者に医者が名を連ねているのを見せつけられますると、何ゆえこうした現象が生ずるのか、首をかしげたくなるのは人情の常であります。今回の赤字対策の中には、過般改定された一二%アップの診療費が計算の基礎に入っておりますが、このまま推移すると、一体わが国の医療費はどこまでふえるのであろうかと、国民は不安にかられております。
 低額だといわれる単価が、なぜ総額において先進国並みの大きさになるのか、このなぞを解くことが、国民の医療に対する疑惑と不満を解きほぐす糸口であると思います。すなわち、それは現存の診療報酬体系の持つ矛盾、不合理を、どのような場所で、どういうスケジュールで解明するかという問題でございますが、この点について厚生大臣の所見を承ります。
 次は、薬の問題であります。
 医療の質と量は、もっぱら医師の判断と処置によって決定されるものであります。そして、現在の支払い体系は、その医師の決定に対しては無条件に支払いを保証しております。医師は、その良心に従い、よりよい医療を給付するにはどうするのがいいかという立場に立って、日夜心を砕いているものと私は信じております。それにもかかわらず、医者は薬でもうけ、薬物医療でかせいでいるとする非難をしばしば耳にいたします。もし、そのような非難が真実をうがっているとすれば、問題は、そのような誘惑を排除する措置を講ずることであります。薬価基準と実勢価格の開きをなくし、医師の収入源は、薬のマージンではなく、その技術の正当な評価によってまかなうべきことが、医のモラル確立のためにも大切な要件であります。われわれは医薬分業によってそのことを確保すべしと年来主張してまいりましたが、医薬分業の段取りがどこまで進んでおるのか、厚生大臣の説明を求めます。
 最後にお尋ねしたいことは、健康管理と行政機構についてであります。
 人の健康について、病気か病気でないかという分類基準の医学は、今世紀の前半で終わり、これからは、すべての国民をいつも健康な状態に貫くという、健康管理の時代に入ったといわれております。医療経済の上からも、事前予防につとめることが最も支出を合理化するゆえんでもあります。かつて厚生大臣も、保険医総辞退をおさめる際の会談で、保険と医療体系と健康管理の三つがそろっていないと完全なものにはならないと発言しておりました。そのためには、健康管理の領域で働く医療スタッフをもっと多く養成することが必要であると考えますが、どのような施策を準備しておられるのか、お示しをいただきたい。
 現在、疾病の修復医療を中心に組み立てられておる診療報酬体系の手直しは、さきに指摘いたしましたように当然必要でありまするが、しかし、同時に保険の前提問題、周辺問題について広く条件づくりにつとめなければならない時期に入っておると思います。したがって、もはや保険局が主導権を握る行政機構ではまかない切れない広がりを持つ時代に入り、保険、医務、公衆衛生の三局を包含する機構をつくるべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
 健康管理の条件づくりと行政機構の再編強化について、厚生大臣の所見と抱負を伺います。
 以上の諸点は、今回の財政対策法案がまたまた避けて通ろうとしておる基本的問題でありますが、もはや、これらの問題の解決なしには、わが国の医療が一歩も前進できない関頭に立たされております。いままで政府は、利害が対立した問題は、すべて抜本対策でということで逃げてきたことは、佐藤総理自身、とくと御承知のとおりであります。医療制度の改革、診療報酬体系の改善を抜きにして財政対策だけで当面を乗り切ろうとしても、もはや、それはできない相談であります。
 社会保障制度審議会、社会保険審議会は、過般、その答申において、政府の医療保険改革の基本姿勢は、支出面のむだの排除、合理化には何らの努力を払わず、またまた抜本対策と切り離した財政対策だけを先行させ、財政対策の食い逃げをはかろうとしておることに対し、きびしく批判を浴びせております。政府は、両審議会に目下医療保険制度の抜本改正案を諮問中でありますが、すみやかにその答申を得てこの国会に抜本改正法案を提出し、財政対策法案と並行審議に付するのでなければ、医療問題を論議し、発展させることは当を欠いておると私は思いますが、どうでありましょうか。
 佐藤政権の寿命も間もなく終わろうとしております。七年有半という、いまだ見ない長期政権であったにかかわらず、佐藤総理の公約でありました人間優先、福祉社会建設のかなめともいうべき物価、公害問題、なかんずく生命と健康にかかわる医療問題については、ついに有言不実行のままに終わろうとしております。佐藤総理がことばのあやでごまかしてきた医療問題を、一歩でも解決に向かって踏み出すことができるかどうかは、この国会が佐藤内閣に残された最後の唯一の機会であります。佐藤総理の決断と所信のほどを重ねてお尋ねを申し上げて、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#35
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 田畑君にお答えをいたします。
 まず最初に、政府のいままでの健康保険対策、これはいつも財政対策ばかりだ、赤字対策ばかりだ、しかし、それにもかかわらず十分の効果はあがっておらない、こういうような御指摘でございます。確かに、いままでいろいろ財政対策をやりましたけれども、十分の効果があがっておりませんから、ただいま、政府管掌健康保険は財政破綻の危機に瀕しております。これによる不測の事態を回避するために所要の財政対策を今回も講ずることが、当面何よりも急務であります。しかしながら、皆保険下の今日、医療保険各制度間にまたがる懸案の問題を抜本的に解決する必要のあることは言うまでもありません。田畑君からは、財政対策に終始しているとの御批判でありますが、むしろ、この抜本的な改正の前提として、医療保険の中核をなす政管健保の財政の健全化をはかることがぜひとも必要と考えるものであります。今回、健康保険法改正案を出したのもそのとおりであります。
 もちろん、御指摘にありましたように、保険制度では、その医療の量と質の問題、これは最も大事なことであります。しかしながら、ただいまのような状態でこの政府管掌健康保険をそのままに放置しておくわけにはまいりません。したがって、ただいまのような財政対策も緊急の必要として御提案し、御審議をお願いしておるような次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#36
○国務大臣(水田三喜男君) 国庫補助の問題でございますが、もし政管健保の財政が二千億円以上の累積赤字を持っておって、これを最後までかかえてこれを解決しようとしますなら、おそらく国庫の補助は五%や一〇%では済まないことであろうと思います。もっと高率のものになると思いますが、それはこういう異常な赤字をかかえた異常財政の場合でございますので、問題は、こういう異常な累積赤字から健保の財政を解放して、正常な運営の場合において今後収支を均衡させようということから考えられたのが今度の財政対策でございます。
 そういう意味から申しますと、たとえば本年度でいいますと三百七十三億円の国庫負担をすることによって、収支の見込みは、試算いたしますと十三億円ぐらいこれは不足するというような数字が出ますが、これはわずかな数字でございますので、運営の合理化によっていろいろ改善策はあろうと思いますが、大体においてこれは収支均衡するという状態でございますので、したがって、この恒常的な収支均衡策という立場から、国庫補助の五%というものは私は大体妥当な負担率であるというふうに考える次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#37
○国務大臣(斎藤昇君) 健康保険の改正は財政対策に終始しているというおしかりに対しましては、総理からもお答えがございましたとおりでございます。これは抜本改正とそれから保険の周辺の問題である医療の供給体制を整えるための医療基本法、この三本そろえて提案をいたしておりましたら、いまおっしゃいますような御批判は受けなくて済んだであろう、かように思うわけでありますが、しかしながら、いろいろ関係方面との調整の関係で若干日時がずれてまいっておりますために、いろいろ御批判を受けているわけでございますが、抜本改正は、来週中にはぜひ提案をいたしたいと考えております。また、基本法案も今月末か来月早々には必ず提案をいたしたい。決して食い逃げをするような悪い量見ではございませんので、その点はひとつ十分おくみ取りをいただきたいと存じます。
 赤字の原因の一つである現物給付にメスを加えないか、これを償還制にしたらという御意見もございましたが、この現物制を償還制に変えるという点は、一つの私は御意見だと思います。しかし、この点につきましては、被保険者側におきましてもなかなか合意が得られないという今日の現段階でございまして、ものによって償還制にできるものがあればというような考え方も持っておるわけでございまして、抜本改正におきまして、高額医療費は償還制にいたしたいというのはその点であるわけでございます。
 保険は利用者負担の原則ばかりに拘泥をしているのはいかがであるか、できるだけひとつ公費負担を推し進めていくべきではないか、こういう御意見のようでございますが、公費負担は、御承知のように社会防衛的に必要な疾病、あるいは社会的な事柄が原因になって起こってくる疾病、そういったようないろいろな観点から、どういうものを公費負担にすべきかということをきめてまいらなければならないと考えます。公費負担制度は逐次拡張をいたしてまいっておりますことは御承知のとおりでありまして、ことに公害に基づく疾病等につきましては、これは一種の公費負担という制度も確立をいたしてまいりました。今後も社会的原因に基づくような疾病に対しましては、公費負担の原則を拡充をいたしてまいりたい、かように考えます。
 国庫補助五%の点は、大蔵大臣からもたびたびお答えがございました。これで十分かどうかという点につきましては、御意見もおありでございましょうが、いままでの二百二十五億に比べますると、この五%が本年度約六〇%の増加になるわけでございまして、国庫補助はいままでよりも六〇%ふやしたということは、これは政府といたしましては相当のふんばりであると、かように考えていただきたいと思う次第でございます。
 医療費増大の原因は、これは種々あるわけでございますが、日本の今日の、いわゆる年齢が次第に老齢化をしてまいった。したがって、疾病率も多い。また、今日の社会、経済現象がいろいろと疾病を誘発をするという原因もつくってまいってきておるというようなこともあると考えます。同時に、よくいわれます乱療乱診という点もなきにしもあらずと、かように考えます。
 こういう点をためるためにも、このたびの抜本改正の中におきまして、それらの点をチェックをするような方策を考えているわけでございますので、それによって御了承をいただきたいと存じます。
 診療報酬制度につきましては、まだまだ改善をしてまいる点が多いと存じます。先ほども申し上げましたように、たびたびの診療報酬の改定の際に、合理化また公正化をはかってまいっておりますが、今後、さらにこれを進めてまいりたいと、かように考えます。
 薬価の実勢と薬価基準との開きにつきましては、毎年調査をいたしまして、そして薬価の実勢に即応するように薬価基準を引き下げてまいっております。毎年四%前後を引き下げておるわけでございますが、今後さらに、この薬価の実勢調査をもっと適正に、そして随時やることによって、その実態を十分把握をいたしまして、薬価基準をそれに即応をするようにやってまいりたいと、かように思っている次第でございます。
 診療に関係をいたします周辺の問題は、先ほど申し上げましたように、健康の管理体制、予防体制、これらを含めまして、医療基本法の中で近く御審議をいただきたいと考えておりますので、御了承をいただきたいと存じます。
 なお、政管が赤字が多くて、組合健保はそうでもない、この理由についてというお尋ね、また御意見でございますが、御承知のように、組合健保はその標準報酬におきましても、政管に比べて一人当たり一万円の開きがございます。政管健保はまた高年齢層が多い、疾病率の多いものもかかえているというような状況、もちろん政管健保におきましてもその健康の管理体制というものに留意をいたしておりますが、いま申し上げますような体質上の相違がありますために、政管健保のほうはいつも赤字が多く、また政管健保の被保険者の負担が重いというのが現状でございまして、これを是正をいたしたいというのが、抜本改正の一つの大きなねらいでございますので、よろしく御審議のほどをお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 医薬分業につきましては、これは抜本改正の中に特にその条文を入れまして、そうして医薬分業の可能な地域から、主として大都市の地域から政令をもって指定をし、一定の年限、二年あるいは三年の間には、その地域は医薬分業を実施をしなければならないというように促進をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#38
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
#39
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        厚 生 大 臣 佐藤  登君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君
        労 働 大 臣 塚原 俊郎君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
 出席政府委員
        通商産業省企業
        局長      本田 早苗君
        通商産業省企業
        局参事官    田中 芳秋君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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