くにさくロゴ
1971/05/23 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第31号
姉妹サイト
 
1971/05/23 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第31号

#1
第068回国会 本会議 第31号
昭和四十七年五月二十三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十七号
  昭和四十七年五月二十三日
   午後二時開議
 第一 国際民間航空条約の改正に関する千九百
  六十二年九月十五日にローマで署名された議
  定書の締結について承認を求めるの件(参議
  院送付)
 第二 国際民間航空条約の改正に関する千九百
  七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名
  された議定書の締結について承認を求めるの
  件(参議院送付)
 第三 国際民間航空条約第五十六条の改正に関
  する千九百七十一年七月七日にウィーンで署
  名された議定書の締結について承認を求める
  の件(参議院送付)
 第四 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とフィンラ
  ンド共和国との間の条約の締結について承認
  を求めるの件(参議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 大原亨君の故議員砂原格君に対する追悼演説
 日程第一 国際民間航空条約の改正に関する千
  九百六十二年九月十五日にローマで署名され
  た議定書の締結について承認を求めるの件
  (参議院送付)
 日程第二 国際民間航空条約の改正に関する千
  九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで
  署名された議定書の締結について承認を求め
  るの件(参議院送付)
 日程第三 国際民間航空条約第五十六条の改正
  に関する千九百七十一年七月七日にウィーン
  で署名された議定書の締結について承認を求
  めるの件(参議院送付)
 日程第四 所得に対する秘税に関する二重課税
  の回避及び脱税の防止のための日本国とフィ
  ンランド共和国との間の条約の締結について
  承認を求めるの件(参議院送付)
 渡海自治大臣の地方財政法第三十条の二の規定
  に基づく地方財政の状況報告についての発言
  及び質疑
   午後二時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(船田中君) 御報告いたすことがあります。
 議員砂原格君は、去る八日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る二十一日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
  〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力しさきに逓信委
 員長運輸委員長の要職にあたられた議員従三位
 勲二等砂原格君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞
 をささげます
    ―――――――――――――
 故議員砂原格君に対する追悼演説
#4
○議長(船田中君) この際、弔意を表するため、大原亨君から発言を求められております。これを許します。大原亨君。
  〔大原亨君登壇〕
#5
○大原亨君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員砂原格君は、去る五月八日逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。
 私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)
 顧みれば、昭和二十年八月六日午前八時十五分、広島市に史上最初の厚子爆弾が投下され、ただ一発のこの原爆によって全市は一瞬の閃光とともに灰じんに帰し、未曽有の惨状が現出いたしたのであります。このとき、砂原さんは爆心地にほど近い自宅において被爆され、建物の下敷きとなり、文字どおり九死に一生を得られたのであります。あなたは口にこそ出されなかったが、あなたのからだは、その後終生放射能の恐怖にさらされることになったのであります。
 砂原さんは、それに加えて宿痾の糖尿病が悪化して、本年初めから東京において入院加療し、さらに三月中旬からは被爆者治療の権威である郷里の広島赤十字病院に移って治療に専心しておられました。しかし、私が、去る三月、病院にお見舞いしたときには、奥さまと差し向かいでおいしそうに食事をしておられ、「もうだいじょうぶだよ」と言って、病人とも思えぬほど元気であり、かたい握手をして別れたのであります。また、最近は、再起を期して病院の廊下で歩行練習もされ、「六月になったら東京に行くんだ」と言われていたとのことであります。その御様子から、私はあなたが登院される日の近いことを信じ、心からお待ちしていたのでありますが、五月八日夜、だれもが思いもかけなかった病状の急変を来たし、奥さまの手を、しっかりと握ったまま、生けるがごとく大往生を遂げられました。主治医は、あなたの生命を断った要因に原爆症があったことを指摘されましたが、私は、原爆の悲惨さに思いをいたし、深い悲しみとともに強い憤りを抱かずにはおられません。
 私は、昭和三十三年本院に議席を得て以来十四年余になりますが、この間五回にわたる選挙を通じて砂原さんと相争ってまいりました。互いに党派を別にし、主義主張を異にしておりましたが、庶民的政治家としての砂原さんに対し、心からの尊敬の念を抱き、あなたを相手として戦うことを誇りとしていたのでありまして、いまここに砂原さんの急逝にあい、私は、いまさらのように人生の無常を感ずるとともに、心から痛惜の念を覚えるものであります。(拍手)
 砂原さんは、明治三十五年四月、広島県高田郡白木町の農家にお生まれになりました。高等小学校を卒業後一たん農業に従事されましたが、独立独行の志かたかったあなたは、広島市に出て、幾多の辛酸をなめつつ未来への模索を続けた末、二十二歳にして土木建築事業を興し、事業家としての第一歩を踏み出されました。その後事業は次第に拡大され、やがて砂原組をはじめ各種の分野で幅広く活躍されることになりました。その間、広島商工会議所副会頭にもあげられ、地方産業界の指導的役割りを果たされたのであります。
 砂原さんが地方政界に入られたのは昭和十七年でありました。あなたは、時のいわゆる翼賛選挙に憤慨をし、持ち前の反骨精神から、敢然として広島市会議員の選挙に非推薦で立候補し、初当選をされたのであります。以来、市会議員として、その庶民性と実行力をもって市政の推進にこん身の熱意を傾け、多くの業績をあげられたことは、広島市民周知の事実であります。
 そして、昭和二十年八月六日、突如としてあの原爆に襲われたのであります。戦後十六年間にわたって広島市長であった故濱井信三氏は、その著書「原爆市長」の中で、「焼け跡にもようやく秋の気配が動きはじめた。八月の終りから九月の初めにかけて身に傷を受けず、火傷もしなかった人たちが、次々に倒れていった。被爆直後から市役所に出て来て、さかんに活躍していた市会議員の砂原格氏も姿を見せなくなった」と書いていますが、砂原さんもついに原爆症のため病床に伏すのやむなきに至りました。原爆のため肉親を失い、みずからも脱毛や歯ぐきよりの出血などの重症におちいりましたが、不屈の砂原さんは、よくこれを乗り越えて再び不死鳥のように立ち上がり、地元町内会長、消防団長をはじめ市会議員として、混乱の極にあった市民の救済に挺身をされました。
 翌二十一年には市会議長の要職につかれ、焦土と化した広島市の復興に全力を傾注し、また、昭和二十二年からは県議会にも議席を占めて、戦後の復興と民生の福祉増進に尽くし、県民の信望を大いに集められたのであります。(拍手)
 そして、昭和二十七年十月、第二十五回衆議院議員総選挙が行なわれるや、あなたは、祖国の再建と郷土広島の復興のため努力したいとの決意を固め、激戦の広島県第一区から勇躍立候補し、みごと当選の栄を獲得されたのであります。(拍手)
 本院に議席を得られた砂原さんは、長年地方政界においてつちかわれた経験と、あくまでも庶民の生活に根ざした実際的感覚をもって国政に当たられ、その活躍ぶりは独自のものがありました。
 昭和三十五年には、第二次池田内閣の通商産業政務次官に就任をされ、中小企業の振興、特に零細企業について、商工会の制度創設に尽力をされました。昭和三十八年には、同じ池田内閣の厚生政務次官となり、みずからの貴重な体験に基づいて原爆被爆者対策に積極的に取り組み、また当時から、「街に緑を」と提唱するなど、公害問題に対して先駆的な考えを示されました。
 本院においては、運輸、商工、逓信、建設その他各委員会の委員あるいは理事となって、各方面にわたり幅広い活躍をされました。そして、逓信委員長あるいは運輸委員長の要職にもあげられ、よくその重責を果たされたのであります。
 しかしながら、砂原さんの本領は建設行政にありました。特に、通路問題については、実務を知悉した経験とその卓越した実行力をもって貴重な意見を吐き、欠くことのできない権威として、つとに同僚議員の認めるところでありました。「近代的な交通網の整備は、その国の発展の証左であり、国民の生活や生産を向上させる基本である。」これは、道路の重要性がなお実感として受け取られていない当時からの国土開発に対する砂原さんの政治信念であり、砂原さんが政治生命をかけて提唱してこられたところであります。
 昭和四十一年には、国土開発縦貫自動車道建設法の改正案が成立しましたが、砂原さんは、この法律の制定あるいはまた道路建設の実施にあたって、献身的な努力をいたされました。
 最近におきましても、本州四国連絡橋公団法案の制定あるいは道路整備五カ年計画の推進に、陰ともひなたともなって努力をされたのでありまして、この間の砂原さんの尽力は高く評価されなければなりません。(拍手)
 それにつけましても、砂原さんが執念を燃やしておられた地元の中国縦貫自動車道あるいは中国横断道が完成半ばにして急逝されたことは、砂原さんにとって大きな心残りであったでありましょう。
 自由民主党にあっても、道路調査会副会長として、また政務調査会審議委員として、党の政策の立案推進に大きな発言力を持っておられたのであります。
 かくして、砂原さんは本院議員に当選すること前後六回、在職十四年八カ月に及び、この間国政に残された功績はまことに偉大なものがあります。
 思うに、砂原さんは真の大衆政治家であり、きっすいの政党政治家でありました。「政治は、足と真心だ。これに尽きる。奉仕の気持ちで三百六十五日、足を使わなければだめだ」、あなたはこれを政治活動の基本姿勢とし、いたずらに理想に走らず、常に大衆に接し、大衆の心の中に政治の方向を求めてこられました。「困った人があったらまず救済の手を差し伸べ、理屈や法律はそのあとについてくればいいではないか」と言いつつ、はだで感じ取った真実を黙々として現実の政治の上に具現してこられたのであります。そして、時にその政治姿勢に向けられる批判も甘受し、断固としてわが道を歩み続けられたのでありますが、私は、そこにこそ大衆政治家砂原格君の真骨頂があったと信ずるものであります。(拍手)
 砂原さんは、裸一貫から身を起こし、あらゆる辛酸をなめながら、不撓不屈の信念を堅持して、独立独歩、よく今日を築かれました。世人は、そのあなたを立志伝中の人、あるいはまた、その風貌も加えて、今太閤と評しております。しかし、私は、砂原さんが、人生の試練に直面するごとに、それをみずからを高めみがくかてとし、大衆を愛する至情に転化し、政治家としての、また人間としての形成に昇華してこられたことにこそ、惜しみない敬意と拍手を送りたいと思うのであります。
 あなたの訃報に接し、広島のお宅には次々と弔問客が訪れたのでありますが、その中には、砂原さん直筆の手紙の束を両手にしっかりと握りしめ、ぼう然として涙にくれながら霊前にただずむ一市民の姿も見られたのであります。(拍手)それはまさに、みずからを顧みず寸暇をさいて世のため人のためをはかってこられた砂原さんをいたむにふさわしい情景でありました。
 御年七十歳。あなたの生命のともしびは静かに消えて、平和の象徴としてよみがえった広島の地において永遠の眠りにつかれたのでありますが、その全生涯をただ一筋に大衆にささげられたあなたのみたまは、多くの人たちの胸中に不滅の灯としていつまでもいつまでも燃え続けていくことでありましょう。
 現下、内外の情勢は激しい流動を続けております。このときにあたり、庶民の中から生まれ、常に庶民とともにある砂原さんのごとき政党政治家を失いましたことは、返す返すも残念なことであり、まことに大きな損失と申さなければなりません。
 人の値打ちは棺をおおうてきまる。いま私は、病床で最後の握手をかわしたときのあなたのがんじょうでしかもあたたかい手のぬくもりをしみじみと感じつつ、砂原さんの人となりをしのび、その功績をたたえ、心から御冥福をお祈りして、追悼のことばといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二年九月十五日にローマで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 日程第二 国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 日程第三 国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百七十一年七月七日にウィーンで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィンランド共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
#6
○議長(船田中君) 日程第一、国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二年九月十五日にローマで署名された議定書の締結について承認を求めるの件、日程第二、国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議定書の締結について承認を求めるの件、日程第三、国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百七十一年七月七日にウィーンで署名された議定書の締結について承認を求めるの件、日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィンランド共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、右四件を一括して議題といたします。
#7
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。外務委員長櫻内義雄君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔櫻内義雄君登壇〕
#8
○櫻内義雄君 ただいま議題となりました四件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、国際民間航空条約の改正に関する三議定書について申し上げます。
 わが国も加盟している国際民間航空機関は、一九六二年八月のローマにおける第十四回総会、一九七一年三月のニューヨークにおける臨時総会及び同年六月のウィーンにおける第十八回総会において、それぞれ国際民間航空条約の改正に関する議定書を採択いたしました。
 本三議定書の内容は、国際民間航空機関の臨時総会の開催を要請するために必要とされる最小限の締約国数を、現存の十から締約国総数の五分の一とすること、同機関の理事会の構成員の数を、二十七の締約国から三十の締約国とすること、及び同機関の航空委員会の委員の数を十二人から十五人とすることについて規定しております。
 次に、フィンランドとの間の租税条約について申し上げます。
 政府は、フィンランド共和国との間に租税条約締結のための交渉を行なってまいりましたところ、合意に達しましたので、本年二月二十九日ヘルシンキにおいて本条約に署名を行ないました。
 本条約のおもな内容は、条約の対象となる租税、不動産から生ずる所得に対する課税、企業利得に対する課税方式、船舶または航空機の運用によって取得する利得に対する相手国の租税の免除、配当、利子及び無体財産権の使用料に対する税率、政府職員、教授、学生等に対する課税の特例、わが国とフィンランドとの間の二重課税の排除方法等について規定しております。
 以上四件は、いずれも参議院において承認された後、三月二十四日本委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を開き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
 かくて、去る十九日質疑を終了し、直ちに採決を行いましたところ、国際民間航空条約の改正に関する議定書三件は全会一致、また、フィンランドとの租税条約は多数をもって、いずれも承認すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(船田中君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一ないし第三の三件を一括して採決いたします。
 三件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告のとおり承認するに決しました。
 次に、日程第四につき採決いたします。
 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#11
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 渡海自治大臣の地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政の状況報告についての発言
#12
○議長(船田中君) 自治大臣から、地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政の状況報告について発言を求められております。これを許します。自治大臣渡海元三郎君。
  〔国務大臣渡海元三郎君登壇〕
#13
○国務大臣(渡海元三郎君) 地方財政法第三十条の二の規定に基づき、地方財政の状況を御報告申し上げます。
 まず、昭和四十五年度の地方財政のうち、普通会計の決算について申し上げますと、決算規模は、歳入十兆千四十億円、歳出九兆八千百四十九億円でありまして、前年度に比べますと、歳入において一兆七千九百八十八億円、二一・七%、歳出において一兆七千八百十億円、二二・二%、それぞれ増加しております。
 収支の状況について見ますと、全体では、千三百五十四億円の黒字でありまして、前年度に比べますと、十九億円の黒字が増加しております。
 次に、地方公営企業会計について申し上げますと、総収益は九千七百八億円、総費用は九千八百八十二億円で、全体としていまだ収支の均衡を回復するまでには至らず、このうち、交通、病院の二事業の経営状況は深刻であり、特に、交通事業については、抜本的対策の確立が急務となっております。
 昭和四十五年度の地方財政は、歳出面におきましては、生活環境施設等の公共施設の整備に重点的な投資が行なわれ、地方公共団体が、地域の特性に応じて住みよい生活の場の整備を推進するため、積極的に事業の実施に取り組んでいることがうかがわれます。また、歳入面におきましては、年度後半からの景気鎮静化の影響も見られましたが、年度を通じてみますると、地方税、地方交付税等の一般財源も順調な伸びを示し、財政運営はおおむね健全なものであったと存じます。
 しかしながら、地方における行財政需要の動向を見ますると、立ちおくれた各種公共施設の整備充実をはじめとし、過密過疎対策、公害対策、交通安全対策等、緊急に実施することを要する事業が山積している状況であります。したがいまして、このような状況に対処するため、地方公共団体は地域社会の実態に即応して適切な施策を講じ、住民福祉の向上を積極的に推進していかなければなりませんが、内政充実の年代といわれる七〇年代において、地方公共団体の責務はますます重要なものとなっております。これに対し、最近における景気の鎮静化、米国の新経済政策を契機とする国際経済環境の著しい変化に伴う経済の動向から見ますると、今後は歳入の伸長について楽観が許されない情勢にあると思われます。
 したがいまして、地方公共団体が増大する行財政需要に十分に対処してまいるためには、従来にも増して地方財源の安定確保につとめるとともに、行政経費の合理化と効率化を推進し、財源配分の適正化をはかりつつ、長期的展望に立った計画的な財政運営について、一そう配意いたしていく必要があると存じます。
 以上、地方財政の状況につきまして、その要旨を御報告いたした次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政の状況報告についての発言に対する質疑
#14
○議長(船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中村弘海君。
  〔中村弘海君登壇〕
#15
○中村弘海君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま自治大臣から御報告のありました地方財政の状況に関連し、総理大臣をはじめ関係各大臣に対しまして御質問をいたしたいと存じます。
 「地方自治は民主政治の最良の学校である」という、イギリスの政治学者ジェームズ・ブライスの有名なことばがありますように、民主政治を育成し発展させるためには、地方住民がみずからの意思と責任で身近な問題を処理するという地方自治の本旨が尊重され、そして育てられることが肝要であります。このことは、すでに言い古されていることではありますけれども、現実には、この重要な基本精神がややもすれば忘られがちなのであります。私は、この際、あらためてこのことを銘記する必要があると存ずるのであります。
 しこうして、この地方自治を育てるためには、その基本的な前提として、地方団体が自主的、かつ、みずからの創意くふうにより豊かな地域社会の建設ができるように、自主財源が十分になければなりません。すなわち、地方財政の充実強化が何よりも必要であると考えるのであります。換言すれば、地方財政の充実強化こそ、究極的に民主政治の育成に寄与するものであるとかたく信ずるものであります。(拍手)
 私は、このような認識に立ちまして、地方財政の諸問題について質問いたしますので、関係各大臣におかれましても、民主政治の骨格ともいうべき地方自活に対する深い御認識と愛情を持って、客観的に実証的に、説得力のある御所見の披瀝をお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
 さて、地方財政は、昭和四十一年度後半以降、経済の高度成長にささえられて地方税、地方交付税等の一般財源が増加したため、おおむね順調に推移してまいりました。しかし、昭和四十五年度後半以降の景気後退に加え、昨年八月のドル・ショックによる景気の低迷傾向に伴い、最近の地方財政は新たな危機を迎えるに、至っておるのであります。このことは、昭和四十五年度の決算におきまして、単年度収支の悪化、赤字市町村の増加等、財政収支においていわゆるかげりが濃厚にうかがえるところを見ても明らかであります。
 さらに、昭和四十六年度及び四十七年度の地方財政は、歳入面で地方税及び地方交付税の伸び悩みが見られる反面、歳出面におきましては、景気の刺激及び社会資本の整備のために、公共事業の拡大をはかる必要があることなどによる巨頭の財源不足が見込まれるに至りました。
 このような地方財政の急速な悪化の現況を見ますと、いわゆる地方財政好転論は一時的な現象をとらえたものにすぎず、今日の地方財政の底がいかに浅いものであるかを如実に物語っているものと考えるところであります。地方財政の今日のような財源不足の状態が続く以上、地方団体は、増大する行財政需要に対処し、住民福祉の積極的な向上をはかっていくことが困難になり、大きな支障を生ずることが深く憂慮されるのであります。
 すでに日本経済には構造的な転換が見られており、このような状況のもとで社会資本の整備を強力に推進し、国民生活の充実向上をはかっていくためには、地方財政は、従来のような、もっぱら単年度収支の均衡を確保することに重点を置いた短期的視点のみの財政運営から脱却し、長期的な視点に立脚した、財政の運営に転換するとともに、このような観点に立って、地方財源の安定的確保とその充実をはかっていく必要があると考えるものであります。(拍手)
 このためには、地方交付税率の引き上げ、国、地方税源の再配分を含む地方税源の強化をはかる等、地方財源、なかんずく自主財源の充実強化をはかる必要があると考えるものであります。
 これらの基本的な問題に対する総理大臣及び自治大臣、大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
 次に、地方債の問題であります。
 昭和四十六年度及び四十七年度においては、景気対策、地方財政対策等、特別の要因により、地方債の大幅な増額がはかられております。もとより、社会資本の整備を推進していくためには、地方債の積極的な活用が望ましいのでありますが、しかし、地方債は申すまでもなく借金であります。その償還は、将来の地方財政を圧迫する要因ともなり得るものであります。したがって、このような相次ぐ地方債の大幅な増加が、将来の地方財政を圧迫することとならないか、このことを憂慮する者は、ひとり私のみではないと考えるのであります。この点についての自治大臣の見通しとその対策を承り、あわせて大蔵大臣からも御所見を承りたいと存じます。
 また、地方債の中に占める政府資金のウエートは逐年低下の傾向にありますが、政府資金が地域住民の零細な貯蓄の集積であることから考えますならば、この資金は、その性質上、当然に地域住民の福祉の向上に優先的に還元されるべきものと考えられるのであります。(拍手)他面、今後の財政投資は、社会福祉の向上、生活関連施設の充実に重点を置かなければならないことからも、このことは大いに強調されてしかるべきであると思うのであります。この点について、大蔵大臣の御所見はいかがでありましょうか、承りたいと思います。
 さらに、国庫補助負担事業にかかる地方団体のいわゆる超過負担についてであります。
 昭和四十三年度以降、関係者の努力によって、ある程度その解消がはかられているところでありますが、現在なお多額の超過負担がありますことも、これまた厳然たる事実であります。このような超過負担は、国と地方の間における財政秩序を乱すものであり、特に、公共事業の大幅な拡大が行なわれている現在、その是正をすみやかにはからなければ、地方財政に大きな重圧を与えることは多言を要しません。したがって、この超過負担を解消するため、補助単価、補助対象等について早急にその改善、適正化がはかられるべきであると思いますが、この点についての大蔵大臣及び自治大臣の御所見を承りたいと存じます。
 次に、地方公営企業についてお伺いいたします。
 地方公営企業は地域住民に不可欠なサービスを提供するものであり、その充実向上が強く要請されているところであります。しかしながら、その経営状況は極度に悪化しており、このことは、今回の地方財政白書でも明らかなように、昭和四十五年度では全企業の三分の一が赤字を出しており、その累積欠損金は二千三百六十三億円にも及んでいるのであります。特に、交通事業及び病院事業の経営状況はきわめて深刻であります。交通事業について見れば、昭和四十五年度の累積欠損金は一千六百七億円でありまして、年間料金収入の一・五倍にも達する状況であります。すなわち、都市交通は麻痺寸前の状態におちいっていると申しても決して過言ではありません。このような状況のもとにおいて、都市交通のあり方及び公営交通の位置づけをいかに考えておられるか、自治大臣の御所見を承りたいと思います。
 次に、現在までに累積している赤字の処理の問題についてであります。
 公営交通の赤字再建につきましては、すでに再建債が発行され、さらに国庫及び一般会計からの援助も行なわれるとともに、路面電車の撤去等の経常合理化も進められているところであります。しかしながら、現在すでに、再び再建当初を上回る赤字を生じておるのであります。私は、このような公営交通事業に対する抜本策を講ずるにあたっては、国鉄の財政再建対策に見られるように、国及び一般会計からのさらにより大幅な援助を講ずべきであり、これなくしては抜本的対策の実はあげ得ないと考えるのでありますが、この点について、今後どのような対策を講じようとしておられるのか、自治大臣及び大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
 また、公営企業の企業環境の改善につきましては、政府関係各省庁の一致協力がなければ、とうていその実現は、至難であると考えられますが、これらについての今後の御決意をあわせて承りたいと存じます。
 以上、私は、地方財政の基本的な問題について所信を申し述べ、若干の質問を試みましたが、私が結論的に考えますことは、地方財政の充実強化こそは、地方自治の健全な育成、確立につながるものであり、このことこそ民主主義の本旨を全うするゆえんであると再び強調しつつ、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 中村君にお答えをいたします。
 中村君からも御指摘のように、地方団体の社会資本の整備を強力に推進し、住みよい生活の場と豊かな地域社会を建設していくためには、それぞれの地域の将来像を描き、これに基づいて長期的視点に立って計画的な財政運営を進め、積極的に住民の要請にこたえていかなければならないと考えます。さらに、このような地方財政の計画的な運営に資するためには、地方財政全体についても適切な長期ビジョンを策定し、これに基づいて、地方財政の安定的確保とその充実をはかっていくことが重要であります。したがって、今後は国民経済全体の立場から、資源配分にあたり、公共部門の大幅な拡充をはかるとともに、国と地方の事務配分及び財源配分の適正化を一そう進めるという観点に立って、所要の地方財源を確保するよう検討して、まいりたいと考えております。
 なお、この場合に、地方自治の本行に即した地方財源のあり方という観点から、自主財源の強化について十分検討してみたいと考えております。
 以上、私からお答えをいたしまして、その他は大蔵、自治大臣等から補足いたします。(拍手)
  〔国務大臣渡海元三郎君登壇〕
#17
○国務大臣(渡海元三郎君) お答えいたします。
 地方財政の長期的な見地に立っての安定した財源の確保並びにその充実の基本的な考え方につきましては、ただいま総理から述べられたとおりでございます。現在の地方公共団体は、立ちおくれております道路、下水道、清掃施設、これらの生活関連施設の充実をはからなければなりません。さらに、社会経済の変貌に伴いまして起きてまいりました過密過疎対策、公害対策、交通対策、福祉対策、これらの要請にもこたえてまいらなければならないのでございます。このために、財源充実を今後ともはからなければならないことは当然でございますが、その際、特にいま中村君御指摘の地方自治の本旨にのっとった地方自主財源の確保につとめる、これこそ必然のことと存じます。このために、最も行政需要の増高が考えられますところの都市財源の充実、また、おくれております地方道の整備のための財源の確保をはかることを通じまして、交付税率を含めての地方財源の拡充に今後とも努力を重ねていく覚悟でございますので、よろしく御了承賜わりたいと存じます。
 次に、地方債の問題について御指摘がございましたが、昭和四十六年度あるいは四十七年度についての経済の停滞に伴いますところの地方税収入の落ち込み、また、積極的に取り組んでまいりますための社会資本の充実、これらのために積極的な地方財政の増強をはかってまいりました。このために、地方財政計画におきまして相当額の地方債の増高が生じたことは、ただいま御指摘になったとおりでございます。全歳入面に占めますその発行割合は八%となっておりますが、私は、現在の状況から考えまして、この程度であれば、将来に特にきびしい重圧を地方財政に与えるものでない、このように確信いたしております。しかしながら、その地方債は、政府資金の増高あるいは償還期限の延長等、積極的に条件改善を行なうことによりまして、将来にわたるところの地方財政に支障を来たさないようにはかるとともに、個々の地方団体の財政力、財政規模、これらに応じまして、交付税とともに、地方債の許可にあたりましてはきめこまかい配慮を行なうことによりまして、将来の財政運営に支障のないように努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 御指摘になりました超過負担の問題でございますが、昭和四十三年から四十六年に至るまで、四十二年の調査に基づきました計画的な解消がはかられたことは御高承のとおりでございます。しかしながら、その間におけるところの物価の上昇あるいは事業量の増大、これらに基因するところによりまして、現在いわゆる国庫補助制度に基づく事業の超過負担が相当生じておることは、御指摘のとおりであろうと思います。このため、予算編成当時、大蔵大臣とも協議いたしまして、特に調査費も予算に計上いたしておりますが、関係各省と、この際さらにあらためて調査を行ないまして、このような問題が起こらないよう、この調査の結果をまって抜本的対策を講じたい、このように考えておる次第でございます。
 次に、都市交通の問題でございますが、現存の都市構造の急激な変貌によりまして、交通需要が非常に膨大になっております。このためには、多額の資金を必要とする高速鉄道の整備等を通じましてこの交通難を緩和していくことが、何と申しましても急務であり、この公共的な施設の拡充こそ、都市交通に課せられた任務でございます。今後ともに、都市交通は、公営企業が中心となってその交通問題解決に当たらなければならない。これが都市公営企業の都市におけるところの地位である、私はこのように考えております。
 御承知の再建計画の点につきましては、昭和四十一年、国並びに一般会計からの繰り入れ等によりまして再建計画を行なってまいりましたが、その後におけるところの交通企業環境の、路面渋滞等による悪化が、経常の体質改善に及ばなかった、それよりも一そう進んでいった。さらに、人件費あるいは資本費の増高あるいは料金の適正化のおくれ、このような状況によりまして多額の赤字を生じております。今回、これらの問題を抜本的に解決をはからなければならない。これは単に財政的な見地からだけでなく、都市交通を取り巻くすべての環境、路面渋滞におけるところの公営交通の優先通行、あるいは料金のあり方の制度の適正化、これらを通じまして、関係各省とも十分協議し、抜本的対策をぜひ講じてまいりたい、かように考えておる次第で、目下検討を急いでおります。御了承をお願いいたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#18
○国務大臣(水田三喜男君) 中央、地方の税源再配分の問題で、地方の自在財源を強化せよということについては、これは賛成でございます。ただいま自治大臣からもお話がございましたが、ただ、いまの現状を申しますと、地方税の収人と国税の収人、これを比較しますと、大体六六対三四というぐらいの割合で、中央、地方の税源は、国のほうが倍ぐらいになっております。ところが、これに交付税を加え、譲与税を加え、それから各種の補助金を加えますと、これは逆転してしまって、地方が六七、国が、三三というふうに、この財源の配分は逆になってしまう。これが実情でございますので、そういたしますと、最近の地方はいろいろ開発に差があって、財源が偏在しておりますし、しかも住民は、負担が公平でない、ひとしくないということを非常にきらいますので、そういうことから見ますと、この偏在しているものを地方の地方税、自主財源によってこれを再配分しようとしますと、これは非常に限度がある。それではなかなか適正な財源配分はできない。やはり交付税、譲与税、補助金というようなものを入れた総合的な財源配分で調整しなければいけないのじゃないか。したがって、この自主財源の強化については非常に限度があるということで、いま私どもは、この配分計画において非常に苦しんで、研究しておるところでございます。
 その次の問題は、もう自治大臣からお答えのようでございますが、超過負担の解消の問題。これは、補助単価の問題、補助基準の問題につきましては、今年度実地調査をして対処するということになっておりますので、解決されると思います。さしあたり本年度においては、事業ベースによる解消策として、三百四十億円ぐらいの超過負担の解消をはかっておるところでございますが、実情によって、今後さらにこの解消にはつとめるつもりでございます。
 それから、地方債の発行についての御質問でございましたが、国が、こういう異常な経済情勢に対応して、国債を発行して公共事業をするというときには、これに対応して、地方も、一定の地方債を発行して、そして行政水準の維持をするということは、これはやはり当然な財政政策であろうと思います。その場合に、国と地方の依存度がどうなっておるかと申しますと、国の公債依存度は一七%、これに対して地方の地方債依存度はまだ八%ということで、この間には非常に格差がございますし、また、この三、四年間の地方財政のあり方を見ますと、規模も内容も非常によく改善されておりまして、短期的な変動によって――この変動には耐えられないというような条件ではございませんので、したがって、依存率八%程度の地方債を今年度発行するという限りにおいては、これが後年度の地方財政を圧迫するというようなことは、おそらくないだろうというふうに考えます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(船田中君) 山口鶴男君。
  〔山口鶴男君登壇〕
#20
○山口鶴男君 日本社会党を代表し、昭和四十五年度地方財政白書に関し、佐藤総理並びに関係大臣に対して質問を行ないます。
 昭和四十六、四十七年度の地方財政が戦後最大の危機に直面していることは、何人も否定し得ないでありましょう。今回、政府の発表された地方財政白書の最後の項、「最近の地方財政の傾向と課題」においてすら、「昭和四十五年後半以降の景気後退に加えて、四十六年八月に発表されたアメリカの新経済政策を契機とする国際経済環境の著しい変化に伴い、景気は再び低迷傾向を強めることとなり、地方財政も、従来と著しく異なる局面を迎えることとなった。」「四十六年度および四十七年度の地方財政においては、税収の伸び悩み等による歳入の伸びの鈍化と景気の刺激および社会資本の整備の促進を図るための建設事業の拡大等による歳出の増加とがあいまって、多額の財源不足が見込まれるにいたった」と告白しているではありませんか。
 戦後、地方財政は、三たび深刻な危機を経験いたしました。第一は、地方自治体が軒並み赤字団体に転落し、ついに地方財政債権促進特別措置法を制定せざるを得ない羽目に立ち至った昭和二十八年、二十九年度の時期であり、第二は、佐藤内閣成立面後の昭和四十年不況によって、政府が国の予算において初めて公債発行に踏み切った昭和四十年、四十一年度の時期であり、第三が昭和四十六年、四十七年度の今回であります。
 佐藤総理、ある雑誌によれば、財界の一部から貧乏神ではないかとうわさされているのを御存じですか。佐藤総理が登場した直後、深刻な不況が到来し、いま、七年有半、最長不倒距離といわれる長期政権を維持しながら、内外政策の完全な失敗から、世界最高の円切り上げを押しつけられ、戦後最大な経済危機を現出し、そのあまりに長かった政権の座を去らんといたしております。不況を伴って登場し、不況の最中に去る、まさに、財界のうわさむべなるかなと言べきかもしれません。(拍手)
 ところで、昭和四十六年度の地方財政は、国税三税の落ち込みによる地方交付税の減少、法人事業税を中心とする地方税の減収、国の景気浮揚対策のための公共事業の地方負担の増加など、三重の責め苦に呻吟いたしております。政府は一応五千三十一億円の地方財政対策を講じたものの、その対策はきわめて不十分なものであり、地方自治体の多くは、一千億円もの減収補てん債によって、からくも収支のつじつまを合わせる始末だったではありませんか。
 昭和四十七年度の地方財政は、当初一兆円の財源不足が見込まれたのでありますが、政府の講じた措置は、臨時地方特例交付金一千五十億円、交付税特別会計における借り入れ千六百億円、臨時沖繩特別交付金三百六十五億円、地方債の増額四千九百八億円など、八千億円の措置にとどまったばかりでなく、そのうち、一千六百億円と四千九百八億円の合計六千五百八億円は、名目はともかく、地方自治体の借金ではありませんか。
 政府は、国も昭和四十七年度は一兆九千五百億円の公債を発行している借金財政だというかもしれません。しかし、地方財政は、国が公債発行を行なう以前から、地方債という名の借金を押しつけられているのであります。現に、地方財政白書によれば、昭和四十五年度末の普通会計における地方債の現在高は二兆九千七百七十七億円の巨額に達しているのであります。その後、昭和四十六年度は元金返済を控除して七千億円の増加、昭和四十七年度は同じく七千二百億円の増加が見込まれ、本年度末の地方財政の現債高は、実に四兆五千億円となることは確実といわなければなりません。
 しかも、利子の安い政府資金の割合は年々低下をいたしております。昭和四十年度現債高のうち、政府資金の割合が七〇%であったのに、昭和四十五年度のそれは五七%に低下をいたしているのであります。そして、市中銀行からの借り入れなど質の悪い公募債、縁故債の割合が増大していることを注目しなければなりません。昭和四十七年度の財投計画五兆六千三百五十億円のうち、資金運用部資金が七五%を占めているにかかわらず、地方債計画では、その割合はわずか五六%にすぎないではありませんか。
 佐藤総理、あなたは、昭和三十九年総理に就任するにあたり、人間尊重と社会開発を国民に公約をされました。地方自治法第二条を引くまでもなく、地域住民の生命、健康、福祉を守る責務は地方自治体にあります。社会開発、すなわち公害対策、住宅、下水道、都市公園、ごみ処理などのための公共事業の遂行者は地方自治体であることは言うまでもないのであります。しかも、佐藤総理は、七〇年代は内政の年と言われました。国は法律を制定し、各種の予算を計上するけれども、実際に事業を執行するのは地方自治体であることは明らかではありませんか。
 現に、地方財政白書によれば、昭和四十五年度において租税として徴収された額十一兆五千二百六十一億円のうち、国税は七兆七千七百五十四億円であるのに対し、地方税は三兆七千五百七億円にすぎません。その比率は六八対三二という状況であります。一方、国と地方との純計歳出額は十四兆一千九百八十一億円であって、最終支出者としての国は四兆五千九十四億円、地方は九兆六千八百八十七億円であって、その比率は国が三二、地方が六八となっており、租税の徴収比率と最終支出者の比率とは、実にみごとに逆転をいたしておるのであります。
 さらにその内容を分析いたしますと、昭和四十五年度における国と地方の純計歳出規模目的別分類によれば、地方は、国土開発費の七九%、学校教育費の八七%、衛生費の九一%、住宅費の九九%、失業対策費の九九%、民生費の五六%、商工費の六七%、農林水産費の三二%を支出しており、国民生活に関係する事業の執行において、地方自治体の果たす役割りがきわめて大なるものがあることを明確に示しているのであります。
 佐藤総理、あなたが、人間尊重、社会開発、七〇年代は内政の年ということばを口にされた以上、それを着実に実行する地方自治体をして事業を執行し得る力、財政力を付与しなければならないではありませんか。
 具体的には、第一に、租税の徴収の比率と最終支出者との比率が完全に逆転しているという、わが国の誤った現状を是正すること、租税徴収の比率を六八対三二から、せめて、五〇対五〇にするために、国と地方との税源再配分を断行すべきであります。
 第二に、税源再配分を完全に実行に移すためには若干の時日を必要とするかもしれません。とするならば、昭和四十一年度以降六年間にわたって押えてきた地方交付税率三二%を、少なくとも三五%以上に引き上げるべきであります。(拍手)と同時に、建設公債とはいうものの、実質は歳入欠陥を補てんするための赤字公債について、その額に交付税率を乗じた額を特例交付金として一般会計より交付税特別会計に繰り入れる措置をとるべきであります。
 第三に、郵便貯金、厚生年金、国民年金など、庶民の貯蓄や積み立て金によって占められている資金運用部資金については、地方自治体の一般会計債、準公営企業債、公営企業債に対して優先的に振り向ける制度を確立すべきであります。
 以上三点について、佐藤総理の基本的な見解を求める次第です。同時に、大蔵、自治両大臣の見解を求めるものであります。
 次に、地方公営企業に関して、問題点を指摘をいたします。
 国の予算編成のたびに、三K赤字ということばが繰り返されてきました。国鉄会計、食管会計、健保会計の三つであります。現に、第六十八通常国会の現存の焦点は、国鉄運賃法改正、国鉄財政再建促進特別措置法改正であり、健康保険法改正であることは、衆目の一致するところであります。さらにまた、近く開かれる米価審議会の結論は、本年度の補正の大きな要因となることは必至でありましょう。これらはきわめて重大な政治課題であることはもちろんでありますが、忘れてならないのは、地方公営企業の危機であります。
 昭和四十一年、地方公営企業法改正によって、財政面からの再建措置を講じたものの、かえって赤字額は増加の一途をたどり、財政再建は完全に失敗をいたしたのであります。
 地方財政白書によれば、昭和四十五年度の上下水道事業、交通事業、病院事業など、地方公営企業の単年度純損失額は五百七十五億円であり、単年度欠損金比率は七%、累積欠損金は実に二千三百六十三億円の巨額に達しているのであります。
 特に交通事業においては、昭和四十五年度末、七十九事業のうち、純損失を生じた事業数は三分の二に当たる五十四、純損失額は三百四十九億円となっており、累積欠損金は千六百七億円に達しているのであります。全国をカバーする国鉄の累積欠損金が昭和四十五年度末五千六百億円であることから見て、公営交通の経常の危機は国鉄のそれを上回ると言っても過言ではないでありましょう。
 国鉄会計の赤字が、交通革命の進行、特にモータリゼーション、過疎、過密の激化などによってもたらされたと同様に、公営交通もその例外ではありません。
 すでに欧米各国においては、大都心に交通行政の権限を付与する、都市の高速鉄道に対して、大幅な助成を行なう、交通一元化を断行する、専用レーン、優先レーンを大幅に実施するなどの具体的措置を行なっているのであります。しかるに、わが国においては、総合交通閣僚会議において、「総合交通体系について」という作文ができた程度ではありませんか。
 地方公営企業、特に危機に立つ公営交通の再建にどのようにして取り組むか、佐藤総理並びに自治、大蔵両大臣の所信を求めるものであります。
 さて、七〇年代は内政の年といわれながら、佐藤内閣の地方行財政に対する施策は貧困をきわめてきました。その結果どうでしょう。全国四十七都道府県中、東京、大阪、京都、沖繩など、革新知事が続々と誕生し、六百有余の市のうち大阪、横浜、京都、川崎、仙台など、大都市の市長は人部分革新の勝利のうちに終わりました。ことしに入ってからの市長選挙において、保守対革新の勝負は三対十で圧倒的に革新の側が勝利をいたしているではありませんか。伊勢市、橿原市においても有史以来初めて革新の市長が出現するなど、いまや全国の革新市長は百二十名の多数を数えるに至ったのであります。
 佐藤総理の七年有半の長期政権の間、地方財政の危機は深まるばかりでありました。しかし、住民のための自治を求める住民運動、市民運動の力は、わずか一九%という史上最低の佐藤内閣の支持率の低下に反比例して高まるばかりであり、その結果、住民本位の自治体、革新自治体を増大させたのであります。佐藤総理長く居すわって革新自治体をふやすというべきでありましょう。佐藤総理の率直な感想をお伺いをいたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 山口君にお答えをいたします。
 山口君からは、意見を交えて多くの問題についてお尋ねがありましたが、私からは政府の抜本的な考え方をお答えし、足りない点につきましては、大蔵大臣並びに自治大臣から補足することといたしますから、あらかじめ御了承おき願いたいと思います。
 まず、国と地方との税源配分の問題でありますが、山口君と同じように、私も社会、経済情勢の急逝な進展に伴う地方団体の財政需要の増高に対処するため、地方税源、特に都市税源の充実をはかることが必要だと考えております。ただ、国、地方を通じての税源再配分の問題は、行政事務の配分や地方交付税、国庫補助制度等の問題とも関連する問題でありますので、政府といたしましては、地方制度調査会及び税制調査会における審議をまって、慎重に検討していきたいと考えております。山口君から御指摘の地方交付税率の引き上げの問題も、この基本的問題の一環として検討してまいります。
 次に、財投資金につきましては、かねてから、国民生活の安定、向上に役立つ住宅、生活環境整備等に重点的に振り向けるように配慮しているところであります。特に、地方公共団体の行なう事業につきましては、直接に地域住民の福祉向上につながるものが多いことにかんがみ、資金事情や地方公共団体の財政状況等を勘案しながら、できる限り政府資金を確保するよう努力しており、今後ともこの方針に変わりはなく、この方針を貫いていく考えでございます。
 次に、地方公営交通事業の多くが経営危機に直面していることは、山口君の御指摘のとおりであります。政府といたしましては、かねてから公営交通の財政再建のため、各般の措置を講じてきたところでありますが、路面渋滞等、企業環境の変化が予想以上に激しかったため、その効果が十分にあらわれなかったのが実情であります。今後は、財政対策のみでなく、企業環境の改善を含めた抜本対策を、総合交通体系の問題の、一環として積極的に検討していく考えであります。
 最後に、山口君から、最近の地方選挙の結果についての感想を求められましたが、選挙の結果は、国民の厳粛な審判が下ったものでありますから、私から何ら申し上げるべきことはありません。国会議員の選挙の場合と全く同じである、かように考えております。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#22
○国務大臣(水田三喜男君) 国税と地方税の徴収の比率をせめて五対五ぐらいに再配分できないかという御質問でございましたが、これは先ほど申しましたように、ただいまは六七対三三ということになっています。これに交付税と譲与税を加えますと、ちょうど国税が五一、地方税が四九と、約五対五になるわけでございますが、同じような比率にしようとしますと、ここで三兆円以上の調整を要する。これを地方税で調整することができるかと申しますと、さっきも申しましたように、なかなかむずかしい問題でございますので、やはり総合的な財源調整策をとらなければいけないだろうと存じます。
 その場合に、財源調整策として交付税率を引き上げたらどうかという問題でございますが、これはただいま総理からお答えになりましたように、他の補助金制度のあり方とか、あるいは中央、地方の事務配分のあり方というようなものと関連して決定さるべきものでございますので、これは総合的に研究さるべき問題であろうと思います。交付税は、御承知のように、法律において、これは短期的な事情で変更すべきじゃないときめてあるとおり、財源不足が非常に長期的に続くという場合に初めて変更すべきものだというふうに法律では書かれておりますが、しかし、これはやはり他の制度との関連において動かさるべきものというふうに私は考えます。
 その次は、歳入の欠陥を補てんするために国が公債を出したときには、それに交付税率をかけた額を交付税に入れたらどうかということでございましたが、ただいま国と地方の財政配分によって国の財政、地方の財政が一定の比率で落ちついているときでございまして、その範囲内においてお互いが責任を持つというようなときに、一般税収と公債の収入とを一緒にしてそういう財源配分をした場合には、これはもう非常に波乱を生ずるということははっきりいたします。実質的な配分関係を動かしてしまうことでございますので、これは適切ではないというふうに考えます。
 それから、政府資金をできるだけ自治体の一般会計債とか準公営企業債、公営企業債に優先的に充当しろというお話でございましたが、そのとおりいたしたいと存じます。今年度は財投の中で政府資金の伸びは三二%でございましたが、この政府資金を地方財政に、地方の公営事業に振り向けた率は四八%も増加したということで、国の財政資金のふえ方よりも、地方財政にこれを充当した率のほうがはるかに多いということでございますが、本年度からそういう充当のしかたをやった次第でございますので、今後もさらにその方向で強化したいと考えます。(拍手)
  〔国務大臣渡海元三郎君登壇〕
#23
○国務大臣(渡海元三郎君) 税源再配分の問題、交付税の問題、総理並びに大蔵大臣からお答えになりましたが、交付税は御承知のとおり四十一年の赤字対策のときに三二%に引き上げました。その結果、毎年経済の向上とも相まちまして二〇%程度の増高を来たし、このために著しく地方財源の充実、改善に役立ったことは御承知のとおりでございます。
 この間、地方交付税率を引き下げてはどうかという議論もございましたが、交付税率は軽々にいらうべきでない、このような議論で今日まで来たのがその推移でございます。昨年度からの景気停滞によりますものも、いま申しましたとおり、一時的な景気の停滞でございますので、とりあえずこのたびは交付税率の引き上げによらず、特例交付金あるいは交付税特別会計の借り入れ、あるいは地方債の増額、これらによって措置させていただいたような次第でございます。
 しかしながら、地方行財政の需要の増大ということを考えてまいりますと、今後ともに、交付税率のあり方あるいはいま山口君御指摘の公債発行下における地方財政のあり方、これらにつきましては、今後の経済推移等もながめまして、長期的な観点に立って検討を加えてまいらなければならない、このように考えておるような次第でございます。
 地方債の問題につきましては、庶民の貯蓄の積み立てであります政府資金でございますので、庶民の日常生活に関係ある各種施設に還元される、御指摘のとおりであろうと思います。
 本年度の起債につきましては、いま大蔵大臣からお述べになったとおりでございまして、国の財政投融資の計画の中に占める政府資金の伸び三三%に対しまして、地方債の中における政府資金の伸び四八%、相当上回っておりますが、地方債全体の比率におきましては、地方債が大きい関係上低下いたしましたことは、御指摘のとおりでございます。今後ともその増強について私たちは努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 なお、都市交通対策につきましては、先ほども中村議員に答えたとおりでございますが、予算編成当時、特に関係ある大蔵、運輸両大臣に自治大臣として申れ入れまして、四十八年度で抜本対策を立てることをお約束願っておる次第でございますので、ぜひとも推し進めてまいりたい、かように考えております。(拍手)
#24
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#25
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時二十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト