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1971/06/15 第68回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第39号
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1971/06/15 第68回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第068回国会 本会議 第39号

#1
第068回国会 本会議 第39号
昭和四十七年六月十五日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三十三号
  昭和四十七年六月十五日
   午後二時開議
 第一 学校教育法等の一部を改正する法律案
  (文教委員長提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 佐藤内閣不信任決議案(成田知巳君外十一名提
  出)
   午後二時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 佐藤内閣不信任決議案(成田知巳君外十一名提出)
         (委員会審査省略要求案件)
#3
○藤波孝生君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、成田知巳君外十一名提出、佐藤内閣不信任決議案は、提出者の要求のとおり委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#4
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 佐藤内閣不信任決議案を議題といたします。
#6
○議長(船田中君) 提出者の趣旨弁明を許します。日野吉夫君。
  〔日野吉夫君登壇〕
#7
○日野吉夫君 私は、日本社会党、公明党、民社党を代表し、ただいま議題となりました佐藤内閣不信任決議案につきまして、その提案理由の説明を行ない、議員各位の御賛同を得たいと思うものであります。(拍手)
 まず、その理由を申し上げます。
#8
○議長(船田中君) 討論の通告があります。順次これを許します。松野頼二君。
  〔松野頼三君登壇〕
#9
○松野頼三君 私は、ただいま議題になりました内閣不信任決議案に対し、自由民主党を代表して、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
 佐藤内閣成立以来すでに七年数カ月、この間、大多数の国民の輿望をにない、着実に施策を遂行してまいりました。佐藤内閣は流動する国際情勢のもと、内政、外交、各方面にわたって適切な政治を展開してまいったのであります。しかし、国民の目から見れば多くの不満、またより一そうの努力をと、期待したこともあると思います。もとより、至らざる点は常に率直に反省し、今後の前進の貴重なかてとすべきものであります。
 記憶に新しいことではありますが、すでに昨年十二月、佐藤内閣に対し四回目の内閣不信任決議案が提出されましたが、これは圧倒的多数をもって否決されたのであります。(拍手)その後わずか五カ月余り、この間に佐藤内閣存立の是非を問わなければならないような重大な政治的変化が発生したとは考えられないのであります。
 百歩譲って、野党側から見て不信任案提出の不可欠の要素があったとしても、少なくともこの時期に当てはまるとは考えられないのであります。(拍手)確かにさきに第四次防衛力整備計画案の策定にあたって、その手続をめぐって与野党の見解が対立し、貴重な国会審議をいたずらに空費したこともありました。だがその際は、政府は大局的見地から事態の収拾のため国会の意見をいれ計画案の一部を修正し、甘んじて世論の批判にたえたのであります。それは議会制民主主義の精神にのっとり、多数の力におもねることなく、少数の考えをいれ、十分尊重した、その行為にほかなりません。
 その政府の姿勢を非難することは、とりもなおさず議会制民主主義を誹謗し、まさに天につばを吐くものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 したがって、今回の不信任案は、国会終盤にあって、ただ与野党対決の緊張感を盛り上げようとする党利党略に立った作為的な年中行事としか映らないに違いありません。(拍手)この際、野党の諸君は、国民が真に望んでいることは、形式的なものではなく、最後まで具体的に充実した国会の運営と審議を望んでいることを銘記すべきものだと存じます。(拍手)
 およそ内閣不信任案は、みずから次期政権を担当する能力を持った野党によって提出されてこそ、初めて意義を有し、効果あるものだと信じます。(拍手)
 民主政治を生んだイギリスに目を向ければ、よくわかることであります。イギリスの政治は、政府と与党だけで政治が行なわれているのではないといわれております。国民の考えが変われば、いつでも政権をスムーズに交代できる実力を持った野党が、陰の内閣を用意して、建設的な批判を常に行ないます。政府案に対しては、野党も代案を国民に示して、政府と対等に批判を受けるのであります。だからこそ、外交、防衛はもちろん、多くの問題で具体的政策の違いはあっても、政治の方向に決定的相違はないのであります。イギリスの民主政治が与野党の共同統治といわれるゆえんは、ここにあります。
 これと比べてみて、わが国の現状を考えたとき、寒心にたえません。世界の大勢を無視して、安保体制の即時廃棄あるいは非武装中立論など、非現実的な政策を十年一日のごとく掲げる政党に対して、国民が共同統治を許すでありましょうか。(拍手)
 わが保守党内閣の歴史は、戦後にさかのぼること二十数年、一党の政治がこのように長期間にわたって存在したことは、世界にも例を見ません。これは、何より、わが党の政策が適切であったことが第一の理由であります。(拍手)
 反面、野党は、常に対立、党内分裂を繰り返し、攻撃のための攻撃しかしない非現実的な姿勢が、野党をして万年野党たらしめているのであります。つまり、国民が野党の政権担当能力を認めなかったからであります。今日でもこの事情はいささかも変化はないと私は思います。(拍手)
 それにもかかわらず、依然として、確たる政権構想もないまま、ただ党略の具として不信任案をもてあそぶことは、国権の最高機関たる国会の権威をみずから冒涜するだけでなく、国民を侮辱するものであると思います。(拍手)すなわち、これこそ、私が内閣不信任決議案に反対する理由の最たるものであります。
 佐藤内閣は、昭和三十九年十一月、惜しくも病を得て倒れた池田内閣に引き続き、国政の衝に当たりました。この間、七年数カ月という長い年月を重ねてまいりましたが、これは、桂内閣に次いで、憲政史上の大記録であります。
 言うまでもなく、山は高きがゆえにたっとからず、政治もまた、長きをもってたっとしとせずともいわれます。しかし、安定長期政権は、善政を生み出すことも真理であります。民主政治を育てたイギリスでかつて名宰相といわれたボールドウィンは、政治家というものにとって一番大事なものは勇気である。政治家はあらゆる批評と非難のうちに生きるのである。特に首相の地位は最も孤独で、だれとも責任を分かつことができない。ある時期にはばかげたことだと批評されたことが、二、三年たてば、やはり賢明だったといわれることがある。
 また、同様に、ピットは、過去百五十年の間、一番長く首相をいたしましたが、首相の持つべき美徳の第一はしんぼうだ。短いしんぼうはだれでもできます。しかし、長いしんぼうができることは、名宰相の一つの条件だというものであります。(拍手)よりよき政治も短命では効果はあがりません。政局安定の上に立って初めて懸案の解決がされ、善政ももたらせます。佐藤内閣にこの名宰相ボールドウィンのことばを贈りたいと思います。(拍手)
 佐藤内閣は、発足当初から大きな試練に直面いたしました。そのあともいわば忍耐としんぼうの連続でありました。いわゆるなべ底景気といわれる大不況のさなかにありましたが、これも景気浮揚のため思い切った財政金融政策を断行して、五カ年にわたる好景気を持続し、わが国が経済大国として飛躍する足固めに成功し、同時に、国民生活の向上に大きな貢献をしたことは特筆されるべきことであります。
 昨年、突如として襲ったドル・ショック、それに続く円切り上げなど、史上初めての経験に、わが国は再び未曽有の不景気の到来も予想され、国民各層の不安は一段と高まりました。だが、その懸念も、佐藤内閣の施策が功を奏し、このほど発表されたGNPによりますと、四十六年度の実質成長は五・七%となり、政府見通しを上回る様相を呈し、国民総生産は初めて八十兆の台に乗せようとしております。設備投資、在庫投資も改善されました。明らかに不景気は底入れから回復に転じたのであります。
 もちろん、これは、国民のたゆまぬ勤労意欲、合理的な企業努力、それとともに適切な金融緩和、公共投資の増大の措置が、事態好転の大きな柱となったからであります。病める経済大国日本は、ようやく立ち直り始めました。
 とはいえ、世界各国共通の物価問題の悩みはあります。しかしながら、現状の消費者物価の値上がり問題は、賃金と密接不可分の関係にあることをあらためて指摘しないわけにはまいりません。特に、大企業に働く労働者諸君の春闘による大幅なベースアップと物価との悪循環がそれであります。野党の諸君が物価で政府を攻撃する前に、何より企業の合理化と生産性の向上に見合う合理的な貸金引き上げを認め、生産性の向上の成果を消費者に還元するよう、指導力を発揮されることを切に希望いたします。(拍手)これなくして、賃金、物価の悪循環は永久に断ち切れないと思います。
 急激な経済の高度成長のもたらしたひずみの一つとして、公害の問題があります。確かに、いま公害は全世界の緊急な問題であります。かけがえのない地球は、瀕死の重体であり、日を追ってむしばまれているといっても過言ではないかもしれません。しかし、この中で、公害に悩む日本が、また一番真剣に公害防止に全力を傾けているのも事実であります。(拍手)政府は、日本国民はもとより、全世界の未来のために、さきに国連人間環境会議で、環境基金の一〇%という多額な負担金を敢然こして申し出たのも、すべて公害防止への積極的な姿勢のあらわれにほかなりません。だが、人間の進歩の歩みはとどめることはできません。とすれば、どのようにしても生産向上と公害防止を両立させなければなりません。問題が微妙なバランスを前提として成り立っているだけに、政府はもちろん、全国民が合意に努力をし、そうしてこれを解決するのは断然であります。
 わが国のすぐれた、国力を背景として、ようやく国際社会へ羽ばたく平和日本としての、ニュー日本の評価が高まりつつあります。これは戦乱の打ち続く世界にあって、わが国が他国の干渉を受けることなく、佐藤内閣が自主独立、平和共存外交を展開し、あわせてアジアの安定と経済の復興に力を注いだ結果にほかなりません。(拍手)
 また、わが国が平和に徹し、国民の安全をはかるため、自衛力を充実させていくのは当然であります。同時に、日本の独立と安全保障の根幹をなす日米安全保障条約を堅持していることも忘れることはできません。これこそ、戦争に巻き込まれず、平和を守り抜く最大の理由であります。一部にあっては、これをもって日本が軍国主義化しつつあると断ずることは、事実を歪曲し、国見を惑わせ、さらに国際社会の信用を傷つけ、平和日本の国益を害する論といわなければなりません。(拍手)
 全国民の悲願であった沖繩は、ようやく復帰いたしました。首相は、就任後間もなく沖繩に飛び、沖繩全県民に対し、政治生命をかけて祖国復帰を誓い、沖繩の上を持ち帰り、日本国民の誓いのしるしとされました。異民族に四半世紀にわたって支配されたときの涙は、もはや喜びの涙となっております。
 いまこそ、国民の誓いのしるしとして本土に持ち帰った土にかえて、われわれの誠意を、われわれの力を、そしてわれわれの償いを沖繩県の人々に返すときであります。小笠原諸島の返還に続き、平和的な話し合いによって返還された沖繩は、まさに全国民の宝であります。ときとしては、アジアにおける緊張の種ともなりかねなかった沖繩が復帰したことは、アジアの緊張の緩和を促進し、安定した秩序を築く支柱にしなければなりません。(拍手)
 確かに、今後の沖繩には幾多の問題が山積しております。しかし、沖繩県がわれわれと同じ憲法のもとに平和で豊かな沖繩県づくりに邁進できるのも、何より返還が実現されたからであります。(拍手)ともに憂い、ともに喜ぶことができるのも、われわれと同じ立場に立ってはじめてできるのであります。われわれは、この歴史に残る成果を率直に認めるのは当然であろうと信じます。(拍手)
 中国問題については、いろいろの意見があります。拙速をとるかあるいは巧遅をもって政策を展開するか、そのどちらをとるかは、時の政府の姿勢にかかっております。ともかく、戦後二十数年、現実的な国際関係から、佐藤内閣としては友好国との信義の重みに耐えなければなりません。この事実を否定することはできないと思います。日中問題の正常化は、いまだ機が熟さず、大きな進展は見られませんでしたが、筋を通した佐藤内閣の姿勢は、今後わが国が国際社会に貢献していくとき、はかり知れない飛躍台になることは疑いのないことであります。(拍手)
 こうした多くの内外にわたる業績を、野党側はことさら目をおおい、部分的な問題を極端に誇張して国民の目を欺いております。あまつさえ、党略内見地から内閣不信任案が提出されたのであります。
 内外の情勢は、ますます流動化し、複雑な様相を見せております。一部偏向した若者の過激な行動は、いまや国際的な批判まで浴び、日本の行く手を危ぶむ声も少なくありません。それだけに、安定した政局を維持し、着実な指導力を発揮するわが内閣・自民党に対する国民の期待と信頼は絶大なものがあります。(拍手)
 われわれは、この声なき大衆の真の願いにこたえなければなりません。政府は、ますます、最後の一瞬まで強い決意をもって、民生の向上と平和の維持のため、全力を傾けられんことを心から希望いたします。
 あらためて、何らの理由もない、無意味な、野党各派による内閣不信任決議案に断固反対の意を表明して、私の討論を終わりたいと思います。(拍手)
#10
○議長(船田中君) 佐野憲治君。
  〔佐野憲治君登壇〕
#11
○佐野憲治君 私は、ただいま提案説明のありました佐藤内閣不信任決議案に対しまして、日本社会党を代表し、賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 佐藤内閣退陣の要求と自民党政治を弾劾する声は、天の声、地の声、いまや人の声となって、ちまたに満ち満ちているのであります。
 このことは、新聞の世論調査にもよく表明されておるのであります。昨年の十二月二十三日、朝日新聞の世論調査、その報道によれば、佐藤内閣の支持率は二四%、急速なる低下を示しておるのであります。しかも、政府は国民の意思を反映しているか、この問いに対しまして、六四%が、反映していないという表明をなしておるのであります。また、本年の四月二十一日毎日新聞の報道によりますならば、佐藤内閣の支持率一九%、岸内閣の末期、あの歴史に汚点を残しましたあの末期におきましてさえも、二八%の支持率が占められていたのであります。
 国民の圧倒的多数が、もはや佐藤内閣に完全な訣別を宣言いたしたのであります。これはひとり、いましかばねをさらしている佐藤内閣に対する糾弾だけではなく、自民党の多数にあぐらをかき、金力と権力を背景として国民の意思に挑戦してまいろうとしている自民党内閣そのものに対するところの告発でもあります。(拍手)佐藤内閣がもはやこれ以上政権の座にとどまることができ得ないことは、自明のことであります。国民もよくこのことを承知しているのであります。
 しかしながら、国民の告発しているのは、金力と権力を背景として政治を乱用し、またしても角福戦争などと権力のたらい回しを行なおうとしていることであり、佐藤総理みずからがそのどろ沼に足を突っ込んでもがいていることに対する告発でもあるわけであります。(拍手)
 政治家の名声はその去りぎわにあることは、歴史の教訓がこれを示しております。古来より、政治家の最も心すべきは、国民の信を失わないことであります。論語にいう、信なくんば民立たず、このことばをきびしく思い返していただきたいのであります。
 佐藤総理、在職七年数カ月、その間、あなたは、栄ちゃんと呼びかけられる大衆政治家たらんとして心がけ、あるいはまた、近代的感覚を持つ民衆政治家たらんといたしまして、服装につきましても、ときにはネクタイの色彩に対しましても、こまかい神経を使ってこられたということをお聞きいたしたのであります。しかしながら、あなたの信条に反しまして、日本の民衆はあなたの政治に対して絶望を感じておるのであります。政治不信が日増しに増大してまいっておるのであります。
 あなたは、人間尊重、社会開発、公害の追放、物価の安定、土地問題の解決、住宅難の解消、食管の堅持、政治資金規正等、数えきれない公約を掲げてまいりましたが、その言やよし、それらは何一つ実行されたことはなく、その場限りの言いのがれにすぎなかったのであります。
 たとえば、佐藤・ニクソン共同声明路線を基調とする沖繩返還協定は、すでに本院の審議で明らかなとおり、本土並み返還、核抜き返還と、佐藤総理、いかに声を大にして叫ばれても、その欺瞞性が暴露されておるのであります。アメリカの軍事戦略に組み込まれた協定の本質は、明らかに日米安保条約のアジア安保、核安保への拡大強化であり、韓国、台湾の防衛までも引き受けるという、危険きわまりないものであるのであります。
 しかも、沖繩の返還に伴って、自衛隊を配備し、沖繩基地を強化するだけでなく、基地を永久にくぎづけにしようとねらっていることは、疑う余地のないところであります。これでは本土並み返還どころか、まさに琉球処分を再び繰り返す、差別と圧制の道を進むものであり、戦後は終わったのではなく、戦後はこれから新しく出発点となろうとしているのであります。沖繩県民自身がこぞって政府のやり方に怒りを燃やしている事実が、このことを率直に裏書きしているのであります。
 すでに、対米請求権の肩がわり、VOA放送の存続など、沖繩密約電報の暴露によって、沖繩県民をはじめとする日本国民に対する裏切り行為が白日のもとにさらされ、国会と国民に対しうそと偽りの等外を繰り返してきたことが決定的に露呈し、国会と国民の渦巻く怒りと、知る権利を要求する激しい抗議行動となって呼び起こされてまいったのであります。
 さらに、最近の本院でも追及されましたベトナム侵略戦争への協力の問題であります。アメリカのベトナムに対する北爆強化、国際法に違反した機雷封鎖の中で、沖繩の基地から衆海兵隊の出動、米軍機の発着、空中給油が行なわれ、沖繩は再び戦争の島に逆戻りしているのであります。本土の基地においても次々に重大な事実が明らかになってきております。しかるに政府は、補給作戦だと思う、したがって事前協議の対象にはならないなどと、事前協議そのものを骨抜きにし、ベトナム戦争の加害者としての役割りを果たそうといたしておるのであります。
 日中国交回復に対する取り組みにおいても同様であります。口先だけでは、中国の国連復帰を歓迎すると、そらぞらしいことを言っていますが、昨年秋の国連総会において逆重要事項指定決議の提案国となり、アメリカが日本の頭越しに米中会談を行なっているのに、佐藤自民党内閣は、中国との戦争状態を終わらせるための努力さえもしていないではありませんか。
 世界情勢は、平和共在と冷戦緩和の方向に大きく変わってきています。この世界の新しい潮流に逆行して、なおも日米共同声明路線、中国敵視政策、朴政権支持、米日韓台共同防衛体制を強化する政策を続けるならば、軍国主義日本の非難を一身に受け、世界の孤児となり、侮いを千載に残すことになることを深く銘記すべきであります。
 第二の雄大なる失政は、ドルのかさのもとに進められてきた対米依存の経済政策の行き詰まりについてであります。
 金・ドル交換停止を含むニクソンの新経済政策によって、基軸通貨としての米ドルの地位は低下し、IMF・ガット体制は崩壊の危機に立たされているのであります。これは、アメリカの圧倒的な経済力、軍事力を中心とした戦後の世界資本主義体制が深刻な危機に直面していることを物語っているのであります。その原因は、ベトナム戦争に象徴されるように、膨大な軍事費の支出と、それによる経済の地盤沈下にあることは申すまでもありません。それゆえにこそ、アメリカは各国に通貨の切り上げ、貿易の自由化、軍事支出の肩がわりを要求してきたのであります。
 日米協調とか安保繁栄論の神話とその幻想は、いま音を立ててくずれ去ろうといたしておるのであります。(拍手)日米の対立激化というきびしい局面に立たされ、これまでのアメリカ一辺倒の経済政策の転換が求められているのであります。
 しかるに、佐藤内閣及び良民党は、世界経済の見通しを大きく誤り、対米依存の政策を続けた結果、繊維協定を押しつけられ、円の大幅切り上げを余儀なくされたのであります。現在、百数十億ドルという、値打ちの下がったドルをかかえ込んだ上に、円の再切り上げも時間の問題だというような事態を招いているではありませんか。いま中小企業は、一ドル三百八円のレート改定によってきびしい状態に立たされ、不況の谷間にあえいでいるのであります。
 佐藤内閣がこうした世界経済の見通しを誤り、ドル依存のもとで無計画な高度経済成長政策を突っ走ってきたその報いが、いま日本経済に大きな打撃を与えていることを、きびしく反省すべきであります。(拍手)
 第三の重大な失政は、大企業中心の経済成長政策が完全に行き詰まり、GNP第一主義の成長政策が、日本国民はもとより、世界世論の痛烈なる反撃にさらされていることであります。
 物価、公害、過疎、過密、社会保障、医療、農業、中小企業、各面においてその矛盾と荒廃が表面化し、政治不信と社会不安はますます拡大し、深刻の度を加えているのであります。このまま放置すれば、わが国の自然と生活環境が破壊され、健康がむしばまれ、生命が脅かされるとともに、まさに荒廃と不安と断絶の様相を呈してくるであろうことは、火を見るよりも明らかであります。
 このような日本経済社会の矛盾の爆発は、何よりも、労働者には低賃金と長時間労働、農業を踏み台にし、公害を野放しにし、社会保障を怠り、国民生活の犠牲の上に、輸出第一主義、輸出重点の経済政策をとってきたからであります。その結果が、国内では、個人消費の伸び悩みから需給のアンバランス、供給過剰の不況を招き、対外的には、輸出の激増によって円切り上げの外圧と、エコノミックアニマル、ソシアルダンピングと、世界世論の非難を浴びるに至ったのであります。
 佐藤内閣は国民に対し少しの謝罪の色も見せることなく、またしても、不況対策に名をかりて、麻薬のようにむしばむ赤字公債の発行、公共料金の引き上げ、防衛予算の増強等、大企業、高額所得者の利益擁護の政策を推し進め、一そう勤労大衆の生活を圧迫しようとしているだけではなく、四次防の先取り、海外経済進出等、新たな経済侵略へのきばをみがいているのであります。われわれは、このような国民無視のやり方をこれ以上放置しておくわけにはまいりません。
 佐藤内閣七年数カ月の施政は、何ごとも言行不一致、公約不実行の歴史そのものであります。これ以上、無責任なる官僚政治、国会軽視、議会主義の空洞化、金力と権力万能の腐敗政治を横行させるならば、国民の間には政治不信の風潮を強めるばかりであります。それだけではなく、司法、教育の反動化をはじめ、一連の民主主義破壊の権力政治を進める中で、危険な軍国主義への道と平和憲法改悪の意図が秘められているのであります。自由民主党のこの悪政をこれ以上積み重ねることは、国を危うくする以外の何ものでもありません。
 佐藤総理並びに自民党が民族の将来と国民生活をおもんばかり、国民の信を大切にする道をとろうとするならば、三百議席の虚構に寄りかかった国民無視のやり方を根本的に改めるべきであります。
 マスコミは、自民党内における後継内閣の話題や派閥のかけ引きを報じていますが、国民の大多数は、三角大福もち、どのもちも食えねえと、拒否反応を示しておるではありませんか。(拍手)それは、内政、外交両面で佐藤内閣及び自民党が行き詰まっており、その誤った政策を計画し実行してきたのがこれら話題の政治家だったことを、国民ははだをもって感じ取っているからであります。(拍手)
 佐藤総理、あなたは直ちにいさぎよくその席を辞し、七〇年代の新しい日本経済のあり方、国民生活の安定と向上を保障する新しい政策、そして平和共存の新しい国際情勢にふさわしい外交のあり方を国民自身によって選択させるという議会制民主主義の原則に従うべきであります。真に国民の意思が反映される新しい議会と、そのもとでの政治変革を願っている国民の要求に応ずべきであります。そのための管理内閣は、野党が担当することが憲政の常道であります。(拍手)
 わが党はその用意あることを申し上げるとともに、佐藤総理に残された最後の決断を期待いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#12
○議長(船田中君) 鈴切康雄君。
  〔鈴切康雄君登壇〕
#13
○鈴切康雄君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました佐藤内閣不信任決議案について、賛成の討論を行ないます。(拍手)
 佐藤内閣が七年有余の命運を終わろうとしている現在に至って、皮肉にも不信任決議案が提出されたということは、いかに多くの国民が佐藤内閣に対してきびしい怒りの眼を向けているかという事実を、佐藤総理、あなたは率直かつ深刻に受けとめるべきであります。
 このことは、つい最近行なわれました新聞社の世論調査において示された内閣支持率によっても明確であります。
 調査資料は、佐藤内閣を支持するという者はわずか一九%と、史上最低の記録を示し、反面、支持をしないというのが四六%という過半数に近い数字が示すとおり、国民世論がかつてないきびしい批判をしているということを、佐藤総理、あなたはよくよく知らなければなりません。
 佐藤内閣が誕生して以来今日まで七年有余の間に、国際情勢は大きく変わりました。それは戦後体制の崩壊を意味するものであると同時に、新しい時代の幕あけが始まろうとする大きな歴史の流れでもあります。
 この間、政権の座にすわり続けてきた佐藤内閣の施政のあとを振り遮ってみるならば、わが国が平和な国際環境をつくり吊すため積極的な役割りを果たそうとするのではなく、むしろ何もしないということに徹したというべきであり、さらには、対米追随外交によって、ベトナム侵略戦争の是認、そして間接的な加担といい、日中国交回復への熱意のなさといい、平和への逆行という結果から見て、政府の外交の基本政策の平和に徹するということばが、何とそらぞらしいものであって、この歴史の流れに逆行し続けてきた事実は、どう宛ても否定することはできないのであります。
 特に、わが国の進路に重大な関係のある外交問題に対しては、あえて国民世論を無視し、議会制民主主義を踏みにじった強行採決という手段に訴えて、権力主義的な態度を押し通してまいりました。それは日韓条約においてもしかり、沖繩協定また同じでありました。この結果は、必然的に米中、米ソ首脳会談をはじめとする新しい国際情勢に対処できず、硬直した外交姿勢となって、いたずらに国民不在の政治を招き、国会軽視というパターンを繰り速して、その罪を積み重ねてまいりました。
 それはまた、アジアの緊張緩和に欠かすことのできない日中国交回復問題に対しても同じであります。すでに国民的合意ができ上がっている現在もなお台湾に固執した政策を改めず、日中政府間交渉の手がかりもつかんでいないばかりか、一貫した対中国政策がないために、総理みずから重大な食言問題を引き起こし、政府の統一見解を出すに及んで大幅に後退し、ますますこれを困難にする態度をとっているということによってもすでに明らかであります。
 中国の国連代表権問題、国際通貨問題等における政府の失態は、まさに佐藤内閣に将来を予測し洞察する能力が欠如していたことを何よりも示すものでありました。
 さらに加えて、冷戦体制の維持に積極的役割りを買い、軍事力による力の対決を重視することを優先して、国民の意思を踏みにじった沖繩返還協定、しかも、その返還をめぐる日米交渉は、外務省機密電報が国民の前に明らかにされ、その欺瞞的な実態は国民を愚弄するものとして、世論のきびしい指弾を受けたところであります。
 また、佐藤内閣は、日米安保体制に対する盲目的な過信と対米追随外交のもとで、自衛の名のもとに相次ぐ長期的な軍備増強政策をとり続け、今日では、アジア諸国はもとより、諸外国から日本軍国主義復活の非難を受け、国際緊張を高める結果をもたらしているのであります。しかも、アメリカのベトナム戦争を支持し、事前協議の形骸化を露骨にあらわしています。これは、まさに日本の国が戦争へ巻き込まれる危険を放置するにひとしいことを意味しているのであります。
 特に、今国会における第四次防衛力整備計画の先取り問題については、シビリアンコントロールという国政の基本を無視し、その最高責任者である佐藤総理みずからがこれをじゅうりんするという、わが国議会政治史上に重大な汚点を残したのであります。この結果、みずから予算削減をせざるを得ないという未曽有の失態に追い込まれながらも、その政治責任を回避し続け、国民の不信と反撃を受けたことは、いまだに記憶に新しいところであります。
 これら佐藤内閣の一連の施策は、閉鎖的な、保守独善的な体質のもたらしたものであり、世界情勢への展望の欠如と平和憲法の精神を無視した冷戦型論理によるものであり、平和にとって重大な障害となるばかりか、将来を誤らす重大な結果を招来しようとしているのであります。
 一方、内政面においても、佐藤総理は、池田内閣の高度経済成長政策を批判して政権をとり、人間尊重をスローガンとして出発したものの、今日まで、そのスローガンとはうらはらに、日本経済は人間無視の無秩序な膨張を続け、過疎過密問題は深刻化し、国民福祉を無視して、社会資本、特に国民の生活基盤の充実をないがしろにした結果が環境破壊をもたらし、その上、物価の上昇はとどまるところを知らず、日ごろに悪化し続けております。さらにまた、社会環境の悪化の中で人心の荒廃の進行をつくり出していることは、まことに憂慮にたえないところであります。
 佐藤内閣は、今日まで、口を開けば物価安定を繰り返してきましたが、実際は、つい最近にも見られるように、受益者負担、独立採算制の名のもとに、郵便料金、電報電信料の値上げ、タクシー料金の値上げ、国鉄運賃値上げ、医療費個人負担等、数限りなく公共料金の引き上げを行ない、また行なおうとして、大衆にその負担の増大を押しつけようとしているのであります。物価の安定こそ、国の経済政策はもちろん、国民生活安定の基本であることから見れば、みずから口にしながらも、このことをなし得なかった佐藤内閣は、国民に対しての公約違反であり、それだけで政権担当者として失格なのであります。
 しかも、円切り上げに追い込まれた佐藤内閣は、経済成長優先から国民生活優先の政策への転換を迫られ、その実行をあなたは公言したにもかかわらず、その実、国民生活優先はかけ声ばかりで、依然として大企業優先の経済成長政策のパターンをそのままにし、社会保障政策も減税も何ら見るべき対策を打っておりません。国民生活の窮乏の中で、佐藤内閣に対する国民の政治不信はその極に達しているといわざるを得ないのであります。(拍手)
 さらに、日本ほど大企業を優先し、公害のたれ流しを野放しにしている国はないと言うべきでありましょう。佐藤内閣がうたい上げた経済成長の成果は、その裏側で多様な公審を拡大し、すでにわれわれの生命と健康をむしばみ、国民は日々の生活の危険におびえ切っております。しかるに佐藤内閣は、その対策を抜本的に改めようとしないまま、いままた景気浮揚の名において、公害を激化させる道を歩もうとさえしているのであります。このままでは日本列島の人間環境はことごとく破壊され、日本民族の存続を崩壊させてしまうといわなければなりません。(拍手)
 事実、最近起こっている社会事象のゲバ活動、母性愛の欠如、殺人、汚職、ギャンブル化等々、これほどの人心の荒廃は空前のことであると言うべきであります。これらの原因が政治とは無縁かのごとく言いのがれする政治責任の欠如にこそ、人心の荒廃をもたらす原因があることを私は指摘をしなければならないと思うのであります。(拍手)
 以上、あなたが政権を批難して今日までを総括するに、いかなる観点からしても、佐藤内閣は、もはや国民の負託によって政権を担当する資格を有しない無能内閣、いや有害内閣としか言いようがないのであります。(拍手)佐藤内閣ほど巧言をもてあそび、国民の期待をくつがえし、国民をだました内閣は歴史にその例を見ないと言っても過言ではありません。(拍手)日本の再出発が迫られている中で、重大な反省を佐藤政権に求めることの無意味さとむなしさは、国民が肝に銘じてひとしく考えているところでありましょう。
 佐藤内閣の最後にあたり、あえて不信任の理由を明らかにし、全国民の名において佐藤内閣を告発せずにはおられないことは、佐藤内閣の一日の存続は、わが国の大きなマイナスであり、そのまま国民の苦しみを増大させるものであるからであります。(拍手)
 佐藤内閣のとる道はただ一つ、直ちにみずから総辞職をし、国民のため、平和のため、新しい政治をつくるために出処進退を明らかにすべきであります。
 このことを強く訴えて、佐藤内閣不信任決議案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
#14
○議長(船田中君) 塚本三郎君。
  〔塚本三郎君登壇〕
#15
○塚本三郎君 ただいま提案されました佐藤内閣不信任案に対し、私は、民社党を代表して、賛成の討論をいたします。(拍手)
 日本古来から伝えられることばに、死者にむちを当てるなとか、武士の情けということばがあります。およそ指導者たる者は、それほどの配慮が必要なことを私も心得ております。しかるになお、あと日ならずして消え去らんとする佐藤内閣の背後にあえて不信のやいばを当てなければなりません。
 その第一の理由は、佐藤内閣は、ことばだけの政治でむなしく七年を過ごして、いたずらに政治不信をつのらせたことであります。
 思えば昭和三十九年、第一次佐藤内閣が発足して以来、あなたは機敏に時流をとらえて、新しい構想と耳新しいことばをもって国民に呼びかけられたのであります。しかるに、それは全く実行されない、から題目に終わってしまいました。
 まず第一に、池田内閣の高度成長政策を批判し、安定成長を主張して新内閣を発足させながら、結果は、財界の言うがままとなり、池田内閣をはるかに上回る超高度成長と輸出第一主義によってついに円の切り上げを招き、国際経済の慣行を無視して、いまや世界経済から批判の的にさらされておるのであります。そして、かかえ込んだ外貨百六十億ドルは、いまや金価格の暴騰によって国の財産は半減されつつあります。それでなお、何ら打つ手すら持ち合わせていないではありませんか。
 また、内政においては、寛容と忍耐ということばを好んで用いられながら、その実、法案審議にあたっては強行採決すること数知れず、三百議席にあぐらをかく多数横暴は本院の常套手段と化しているではありませんか。(拍手)
 また、外に向かっては進歩と調和を旗じるしに高々と掲げながら、その実、国際政治の舞台では反動と孤立の道をむなしく歩き続けて、いまや国際政局の孤児となりつつあることは、自民党議員各位も認めておられるところであります。
 最近に至っては、人間尊重の政治を口ずさんでおられますが、事態は全く反対の方向に進みつつあります。公害による環境破壊は目に余るものがあり、大都会はもはや耐えがたき交通地獄、公害日本となってしまいました。
 かくして、われら国民はこの十年間無心に働き続けてGNP世界第二位を誇る産業日本をつくり上げたのに、皮肉にもその産業発展の結果は、公害列島日本と化し、産業発展の功労者たる国民に対し公害病をもって報い、物価高をもって仕返してきているではありませんか。これを佐藤内閣の政治公害と言わずして何と言うべきでございましょうか。(拍手)
 かくして、佐藤内閣の看板であった遊歩と調和の政治、人間尊重の政治は一片の空文と化し、国民は佐藤内閣の政治公害のヘドロの中に呻吟しつつあります。それでもなお、佐藤内閣は逆に国民に向かってのみ寛容と忍耐のことばを強要されるのでありましょうか。
 政治家が評論家や芸能人と異なる点は、その言動に責任を持ち、政策を実現させるところにあることは言をまちません。(拍手)大衆を喜ばせ、期待をかけさせるだけで消え去らんとする佐藤内閣は、ことばだけの政治だと非難されるゆえんもここにあるのであります。
 不信任の第二の理由は、人間性破壊の政治を深めたことであります。
 環境を無視した生産第一主義の経済政策は、すなわち人間性喪失を招き、マスプロの世界に投げ出された若者は、その個性と能力を無視され、単なる生産機構の一部品としてしか扱われず、先行きに対する不安と、既存の壁にはばまれた若者は、一方においては無気力な人間をつくり、他方ではやけぎみな無法者の暴徒をふやす結果となりつつあります。人間尊重の佐藤政治とは全く逆に、教育の殿堂たる学園は暴力思想の温床となり、残忍愚劣な人間性荒廃の墓場と化しつつあるのであります。(拍手)
 連合赤軍事件に見る一連の残忍非道な姿は、はたして今日の政治と無関係だと言い切れるでありましょうか。私は、彼ら連合赤軍事件に見る学生諸君の行動を弁護する何ものも持ち合わせておりません。だが、われら政治家は、とりわけ佐藤内閣は、人間尊重の政治を唱えながら、彼ら若者に何を与え、何をなさんとしたでございましょうか。
 学問の自由の名のもとに、学園を政治と法律の圏外に見放して、ただ単なる産業予備軍としての労働力以外には求めなかったではありませんか。経済大国日本の若者は、精神的に飢えたオオカミと化し、その一部がアウトローの暴徒と化していることは、御存じないはずはないのであります。ことしこそは内政の年と主張された総理の心中には、このことへの反省があったはずであります。それにもかかわらず、やはりことばだけの政治に終わったことへの怒りが、私どもの心を大きく支配しておるのであります。
 不信任の第三は、日本の政治を腐敗、堕落せしめたことであります。
 私ども政治家にとって最も大切なことは、その政治姿勢であります。政治に金がかかることが政治悪の根源であることは、つとに叫ばれてまいりました。吹原事件、共和製糖事件、日通事件等々を通じて、その根本が政治資金規正法の抜本的改正にあることが指摘され、政治家がえりを正すことを申し合わせたはずであります。その際、佐藤総理は小骨一本抜かないという名せりふを残されたのであります。佐藤さん、いまあなたが総理の席を去られんとするにあたって、その理由はいかがあれ、その御答弁がいかにそらぞらしいものであったか、御自身が身にしみておられることでありましょう。大企業と自民党と政治資金と料亭とが、一木の動かすことのできない糸でもって政治を徐々に腐らせていきつつあります。
 そして、目下佐藤内閣の後継者争いの醜さを隠そうとしない今日の三角大福劇を、総理御自身は何と見ておられるのでありましょうか。新聞や雑誌、テレビ等では、もはや批判や怒りを越えた落語、漫談の材料とされてしまっているではありませんか。
 思えば、昨年の暮れ、沖繩国会が終わったとき、あなたを支持する人もしない人も、佐藤内閣の使命はこれにて終わりと受け取りました。おそらく総理御自身もそう決意しておられたことと私どもは受け取ったのであります。その時点では、佐藤内閣には数え切れないほどの罪過があるにもかかわらず、長い間御苦労さんということばをもって退陣を拍手でお送りできたと信じました。佐藤さんは何と恵まれた星のもとの政治家かと当時は思ったのであります。人間は引きぎわが大切ということばがしみじみと思い出されるのであります。その後の星は、佐藤さんにとってまことに悪い、黒星の連続でありました。いわく四次防の先取り、いわく沖繩の自衛隊物資輸送、いわく立川基地の抜き打ち移駐、いわく沖繩返還の秘密文書等々、外交問題を別にしても、内政のことごとくが皮肉な結果となり、ついに、野党の要求によって、本院で引責の表明を余儀なくされたのであります。そして、いまでは、あなたの政治のひのき舞台の華麗な引退劇の幕は政治のヘドロでむざんに汚され、幕の引き手すらあらわれなくなったではありませんか。(拍手)
 いまや佐藤内閣は満身創痍であり、野たれ死にを待つのみでありながら、だれ一人退陣をすすめる人もなく、ずる賢い自称後継者は、佐藤内閣と責任を分かち合おうといたしておりません。(拍手)みずからが閣僚の席に名を連ねながら、悪いのはひとり佐藤榮作なのだと言わんばかりに、そして、おれは佐藤の亜流ではないのだと、言いわけじみた新政策を無責任に発表して、しかも、なお、佐藤内閣の遺産のみは受け継がんものとするずうずうしさのみが目立つではありませんか。(拍手)
 われらが追及せんとする佐藤内閣の不信の声は、総理個人はもちろんのこと、内閣に連なる十数名の全閣僚の共同責任であり、与党たる自民党への不信と批判の叫びにほかなりません。昨今では、毒食わば皿までという風潮が高じて、いやなことはついでにみな佐藤総理に背負わせろとの自嘲的空気から、もはや政治生命の尽きた佐藤内閣をして会期延長というカンフル注射、いな、酸素吸入までさせて、国鉄、健保の値上げを押し通さんとしているではありませんか。
 一人の総理大臣で五度にわたって不信任案を突きつけられた佐藤内閣、物価高と公共料金値上げの佐藤内閣、産業公害と環境破壊の佐藤内閣、人間疎外と教育荒廃の佐藤内閣、それはあくまでも、佐藤榮作内閣総理大臣一人の責任に帰せしめんとする自民党の無責任与党への激しい非難をもつけ加えて、佐藤内閣不信任案に対する賛成の討論といたします。(拍手)
#16
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
  〔議場閉鎖〕
#17
○議長(船田中君) 氏名点呼を命じます。
  〔参事氏名を点呼〕
  〔各員投票〕
#18
○議長(船田中君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――開鎖。
  〔議場開鎖〕
#19
○議長(船田中君) 投票を計算いたさせます。
  〔参事投票を計算〕
#20
○議長(船田中君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
  〔事務総長報告〕
 投票総数 四百二十六
  可とする者(白票)      百五十九
  〔拍手〕
  否とする者(青票)      二百六十七
  〔拍手〕
#21
○議長(船田中君) 右の結果、佐藤内閣不信任決議案は否決されました。(拍手)
    ―――――――――――――
  〔参照〕
 成田知巳君外十一名提出佐藤内閣不信任決議案を可とする議員の氏名
      安宅 常彦君    阿部 昭吾君
      阿部 助哉君    阿部未喜男君
      赤松  勇君    井岡 大治君
      井野 正揮君    井上 普方君
      石川 次夫君    石橋 政嗣君
      卜部 政巳君    江田 三郎君
      大出  俊君    大原  亨君
      岡田 利春君    加藤 清二君
      勝澤 芳雄君    勝間田清一君
      角屋堅次郎君    金丸 徳重君
      川崎 寛治君    川俣健二郎君
      川村 継義君    木島喜兵衞君
      木原  実君    北山 愛郎君
      久保 三郎君    黒田 寿男君
      小林 信一君    後藤 俊男君
      河野  密君    佐々木更三君
      佐藤 観樹君    佐野 憲治君
      斉藤 正男君    阪上安太郎君
      島本 虎三君    下平 正一君
      田中 武夫君    田中 恒利君
      田邊  誠君    高田 富之君
      武部  文君    楯 兼次郎君
      千葉 七郎君    辻原 弘市君
      土井たか子君    内藤 良平君
      中澤 茂一君    中嶋 英夫君
      中谷 鉄也君    中村 重光君
      楢崎弥之助君    成田 知巳君
      西宮  弘君    芳賀  貢君
      日野 吉夫君    平林  剛君
      広瀬 秀吉君    藤田 高敏君
      古川 喜一君    細谷 治嘉君
      堀  昌雄君    松浦 利尚君
      松沢 俊昭君    松本 七郎君
      美濃 政市君    八百板 正君
      八木  昇君    安井 吉典君
      柳田 秀一君    山口 鶴男君
      山中 吾郎君    山本 幸一君
      山本 政弘君    山本弥之助君
      横路 孝弘君    横山 利秋君
      米田 東吾君    相沢 武彦君
      浅井 美幸君    新井 彬之君
      有島 重武君    伊藤惣助丸君
      小川新一郎君    大久保直彦君
      大野  潔君    大橋 敏雄君
      近江巳記夫君    岡本 富夫君
      沖本 泰幸君    鬼木 勝利君
      貝沼 次郎君    北側 義一君
      桑名 義治君    小濱 新次君
      古寺  宏君    斎藤  実君
      坂井 弘一君    鈴切 康雄君
      瀬野栄次郎君    田中 昭二君
      多田 時子君    竹入 義勝君
      鶴岡  洋君    鳥居 一雄君
      中川 嘉美君    中野  明君
      西中  清君    林  孝矩君
      樋上 新一君    広沢 直樹君
      伏木 和雄君    二見 伸明君
      古川 雅司君    正木 良明君
      松尾 信人君    松尾 正吉君
      松本 忠助君    宮井 泰良君
      矢野 絢也君    山田 太郎君
      和田 一郎君    渡部 一郎君
      合沢  栄君    麻生 良方君
      伊藤卯四郎君    池田 禎治君
      今澄  勇君    受田 新吉君
      内海  清君    春日 一幸君
      河村  勝君    小平  忠君
      小宮 武喜君    鈴木  一君
      曾禰  益君    田畑 金光君
      竹本 孫一君    塚本 三郎君
      西尾 末廣君    西田 八郎君
      門司  亮君    吉田 賢一君
      吉田 泰造君    吉田 之久君
      和田 耕作君    和田 春生君
      渡辺 武三君    青柳 盛雄君
      浦井  洋君    小林 政子君
      田代 文久君    谷口善太郎君
      土橋 一吉君    林  百郎君
      東中 光雄君    松本 善明君
      米原  昶君
 否とする議員の氏名
      安倍晋太郎君    足立 篤郎君
      阿部 文男君    相川 勝六君
      青木 正久君    赤城 宗徳君
      赤澤 正道君    秋田 大助君
      天野 公義君    天野 光晴君
      荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君
      有田 喜一君    有馬 元治君
      井出一太郎君    伊東 正義君
      伊藤宗一郎君    伊能繁次郎君
      池田 清志君    石井  桂君
      石井  一君    石井光次郎君
      石田 博英君    稻葉  修君
      稻村佐近四郎君    宇田 國榮君
      宇野 宗佑君    上村千一郎君
      植木庚子郎君    内田 常雄君
      内海 英男君    浦野 幸男君
      江崎 真澄君    江藤 隆美君
      小川 半次君    小川 平二君
      小此木彦三郎君    小沢 一郎君
      小澤 太郎君    小沢 辰男君
      小渕 恵三君    大石 八治君
      大石 武一君    大久保武雄君
      大竹 太郎君    大坪 保雄君
      大西 正男君    大野  明君
      大野 市郎君    大橋 武夫君
      大平 正芳君    大村 襄治君
      岡崎 英城君    奥田 敬和君
      奥野 誠亮君    加藤常太郎君
      加藤 六月君    加藤 陽三君
      鹿野 彦吉君    賀屋 興宣君
      鍛冶 良作君    海部 俊樹君
      笠岡  喬君    梶山 静六君
      金丸  信君    金子 一平君
      金子 岩三君    亀岡 高夫君
      亀山 孝一君    鴨田 宗一君
      唐沢俊二郎君    仮谷 忠男君
      神田  博君    菅  太郎君
      菅野和太郎君    木野 晴夫君
      木部 佳昭君    木村 武雄君
      木村 俊夫君    菊池 義郎君
      岸  信介君    北澤 直吉君
      久野 忠治君    草野一郎平君
      熊谷 義雄君    倉石 忠雄君
      倉成  正君    藏内 修治君
      小金 義照君    小坂善太郎君
      小坂徳三郎君    小島 徹三君
      小平 久雄君    小宮山重四郎君
      小山 長規君    小山 省二君
      河野 洋平君    河本 敏夫君
      左藤  恵君    佐々木秀世君
      佐々木義武君    佐藤 榮作君
      佐藤 孝行君    佐藤 文生君
      佐藤 守良君    斉藤滋与史君
      齋藤 邦吉君    坂田 道太君
      坂村 吉正君    坂元 親男君
      坂本三十次君    櫻内 義雄君
      笹山茂太郎君    始関 伊平君
      椎名悦三郎君    塩川正十郎君
      塩崎  潤君    塩谷 一夫君
      篠田 弘作君    澁谷 直藏君
      島村 一郎君    正示啓次郎君
      白浜 仁吉君    菅波  茂君
      鈴木 善幸君    砂田 重民君
      瀬戸山三男君    關谷 勝利君
      園田  直君    田澤 吉郎君
      田中伊三次君    田中 榮一君
      田中 角榮君    田中 龍夫君
      田中 正巳君    田中 六助君
      田村 良平君    高鳥  修君
      高橋 英吉君    高橋清一郎君
      高見 三郎君    竹内 黎一君
      竹下  登君    谷川 和穗君
      千葉 三郎君    地崎宇三郎君
      中馬 辰猪君    塚原 俊郎君
      辻  寛一君    坪川 信三君
      渡海元三郎君    登坂重次郎君
      徳安 實藏君    床次 徳二君
      中尾 栄一君    中垣 國男君
      中川 一郎君    中島源太郎君
      中島 茂喜君    中曽根康弘君
      中野 四郎君    中村 梅吉君
      中村 弘海君    中村 拓道君
      中村 寅太君    中山 利生君
      中山 正暉君    永田 亮一君
      灘尾 弘吉君    南條 徳男君
      二階堂 進君    丹羽 久章君
      丹羽喬四郎君    丹羽 兵助君
      西岡 武夫君    西村 英一君
      西村 直己君    根本龍太郎君
      野田 卯一君    野中 英二君
      野原 正勝君    野呂 恭一君
      羽田  孜君    羽田野忠文君
      橋口  隆君    橋本登美三郎君
      橋本龍太郎君    長谷川四郎君
      長谷川 峻君    八田 貞義君
      服部 安司君    浜田 幸一君
      濱野 清吾君    林  義郎君
      原 健三郎君    原田  憲君
      廣瀬 正雄君    福井  勇君
      福田 繁芳君    福田 赳夫君
      福田 篤泰君    福永 一臣君
      福永 健司君    藤井 勝志君
      藤尾 正行君    藤田 義光君
      藤波 孝生君    藤本 孝雄君
      古井 喜實君    古内 広雄君
      古屋  亨君    別川悠紀夫君
      保利  茂君    坊  秀男君
      細田 吉藏君    本名  武君
      前尾繁三郎君    前田 正男君
      増岡 博之君    増田甲子七君
      松浦周太郎君    松澤 雄藏君
      松田竹千代君    松永  光君
      松野 幸泰君    松野 頼三君
      松本 十郎君    松山千惠子君
      三池  信君    三木 武夫君
      三ツ林弥太郎君    三原 朝雄君
      水田三喜男君    水野  清君
      湊  徹郎君    宮澤 喜一君
      武藤 嘉文君    向山 一人君
      村上  勇君    村田敬次郎君
      村山 達雄君    毛利 松平君
      粟山 ひで君    森  美秀君
      森  喜朗君    森下 國雄君
      森田重次郎君    森山 欽司君
      安田 貴六君    山口シヅエ君
      山口 敏夫君    山崎平八郎君
      山下 元利君    山下 徳夫君
      山田 久就君    山中 貞則君
      山村新治郎君    山本 幸雄君
      豊  永光君    吉田 重延君
      吉田  実君    早稻田柳右エ門君
      綿貫 民輔君    渡部 恒三君
      渡辺 栄一君    渡辺  肇君
      渡辺美智雄君
    ―――――――――――――

#22
○藤波孝生君 議事日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#23
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 高見 三郎君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君
        労 働 大 臣 塚原 俊郎君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
        国 務 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 大石 武一君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 竹下  登君
        国 務 大 臣 中村 寅太君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
ソース: 国立国会図書館
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