くにさくロゴ
1971/10/19 第67回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第3号
姉妹サイト
 
1971/10/19 第67回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第3号

#1
第067回国会 本会議 第3号
昭和四十六年十月十九日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和四十六年十月十九日
   午後一時開議
 第一 永年在職議員の表彰の件
    …………………………………
  一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 永年在職議員の表彰の件
 議員請暇の件
 佐藤内閣総理大臣の所信に関する演説
 福田外務大臣の外交に関する演説
 水田大蔵大臣の財政に関する演説
   午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(船田中君) 日程第一につきおはかりいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました南條徳男君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。
 議員南條徳男君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
  〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
 この際、南條徳男君から発言を求められております。これを許します。南條徳男君。
  〔南條徳男君登壇〕
#5
○南條徳男君 ただいま、私が本院在職二十五年になりましたことに対し、院議をもって丁重なる表彰の御決議を賜わりましたことは、身に余る光栄であります。まことに感謝にたえません。つつしんでお礼を申し上げます。(拍手)
 顧みますると、私は大正九年に大学を卒業し、弁護士となり、かたわら自由な立場から国家社会に貢献したいとの熱意を持っておりました。
 北海道に生まれ、祖先の歩んだ開拓魂によってはぐくまれた私は、その血を受けて、時の国論であった海外移住に挺身しようと決意し、当時最も日本人を歓迎していた南米、ことにブラジルに百万人の人口移動を試みたのであります。
 しかしながら、この計画は、当時数ある民間移住会社などの手では、とうてい目的の達成ができないことに気がつき、時の政友会総裁原敬氏に直接会って意見を求めたところ、それは政治の力によらねば不可能であるとさとされ、翻然私は政界に身を投ずる決意をし、政友会党員として加わり活躍することになったのであります。
 これが私の政界進出の始まりでありましたが、その後十数年間の院外活動を経て、昭和十一年二月の総選挙に北海道第四区から立候補して初当選し、本院議員として政治家の第一歩を踏んだのであります。(拍手)
 議員として初登院の日は、ちょうど二・二六事件のまつ最中でありました。自来、政界は幾多の変遷を重ねてまいりましたが、軍部の勢力が強まるとともに、日本の民主的な政党政治は次第に破壊されていき、ついに政党は軍の横暴を押え得ずに、第二次世界戦争に突入し、わが国有史以来初めての敗戦のうき目に導かれてしまったのでありまして、まことに慨嘆のきわみでありました。
 その後、わが国は、昭和二十年から占領軍の統治下に置かれ、私は追放の身となり、政界から遠ざかっていましたが、昭和二十七年再び本院に議席を得て、議会制民主主義のもと、祖国の復興と繁栄のために、新たなる覚悟を心に抱いたのであります。
 思えば、敗戦国の日本が戦後の混迷時代から脱却し、国民諸賢の英知と勤勉と努力とによって、今日世界に雄飛する経済大国になったことは、まことに喜ばしいことであります。
 私の議員生活二十五年の間には、国の内外に有為転変の世相が続き、ことに国際情勢は複雑怪奇をきわめ、政治家の心胆を寒からしめたことも多かったのでありましたが、一九七〇年代の現時点において、内外の情勢は一そう緊迫を加え、今日の政治家は初心に帰って、勇猛果敢に、この難関を打開しなければならないときに遭遇いたしておると思えてなりません。(拍手)
 私は、本日、はえある表彰を受けるにあたり、私の二十五年の政治生活を振り返りつつ、将来の日本の安否を考え、老骨にむち打って奮起せねばならぬという決意に燃えております。
 また同時に、本日の栄誉を得ましたことは、ひとえに先輩、同僚各位の御指導と郷党の変わらない御厚情のたまものと心から感謝し、責任の重かつ大であることを痛感しておる次第であります。(拍手)
 何とぞ今後とも一そうの御支援を賜わりますよう切にお願いをいたしまして、お礼のごあいさつにかえます。(拍手)
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#6
○議長(船田中君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。
 岸信介君から、海外旅行のため、十月二十日から二十九日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#8
○議長(船田中君) 内閣総理大臣から所信に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣佐藤榮作君。
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 第六十七回国会が開かれるにあたり、所信を申し述べます。
 天皇、皇后両陛下には、去る九月二十七日、ヨーロッパ御訪問の途につかれ、十月十四日、お元気で御帰国になりました。まことに慶賀にたえないところであります。(拍手)その間、アンカレッジでニクソン米国大統領のお出迎えを受けられ、ヨーロッパにおいてはベルギー、英国、ドイツ連邦共和国を公式に、デンマーク、フランス、オランダ、スイスを非公式に訪問されました。両陛下の外国御訪問は、わが国にとって有史以来初めてのことでありましたが、各国の王室、政府、国民によって心あたたまる歓迎を受けられ、わが国とこれら諸国との友好親善のため多大の成果をあけられました。(拍手)
 両陛下の御外遊によって、われわれ日本国民は国際社会における有数な一員であることの誇りと責任をあらためて痛感いたしました。(拍手)これを契機として、さらに民族の進歩と世界の平和のためになお一そうの努力を傾けなければならないと存じます。(拍手)
 さて、私は、この機会に、現在わが国が当面している重要課題、すなわち沖繩問題、中国をめぐる諸問題並びに国際経済問題の三点にしぼって、私の基本的認識を申し述べたいと存じます。沖繩問題は、日米間の友好と信頼のきずなのもとに、戦争で失った領土を平和裏に話し合いで回復するという、これまでの歴史にない最も好ましい解決を見ることとなったのでありますが、わが国と最も……わが国と最も関連の深い中国問題は、本年、大きな変化を示すに至り、通貨問題を中心とした国際経済の諸問題も、新しい展開を見せるに至っております。このことは、戦後二十数年間、平和のうちにひたすら経済的繁栄に努力してきた日本国民として、あらためてみずからの発展の過程に思いをいたすべきときが来たことを示すものであります。
 そこで、まず、沖繩問題について申し述べます。沖繩県民をはじめ全国民の多年の悲願であった沖繩の祖国復帰を実現するときがいよいよ目前に迫っていることを、国民の皆さんとともに心から喜びたいと思います。(拍手)ここまでこぎつけることができたのは、国民の総力を結集することができたたまものでありますが、同時に、私は、米国政府並びに米国民の歴史的な決断に対し、満腔の敬意を表するものであります。(拍手)沖繩が核抜き本土並みで返還されることは、アジアの緊張を緩和するのみならず、日米修好百年の歴史に、さらに輝かしい一ページを書き加えるものであります。(拍手)
 この際あらためて、私は、これまでことばに尽くしがたい辛酸をなめてこられた沖繩百万の県民に対し、全国民とともに、衷心よりその御労苦をねぎらうものであります。(拍手)さきの戦争においては、おとなも子供も、男も女も、全島あげて祖国防衛の第一線に殉じ、戦後は二十余年の長きにわたって外国の施政権下に置かれてきたこれら同胞の方々に対し、ほんとうに御苦労をおかけいたしました、と申し上げる以外のことばを知らないのであります。(拍手)この上は、その御労苦に報いるためにも、一日も早く円滑な復帰を実現し、明るく豊かでそして平和な沖繩県を建設することが、われわれに課せられた使命であると信ずるものであります。(拍手)
 政府は先般、いわゆる変動為替相場制への移行に伴い、沖繩県民の受ける経済的不安を除くため、実質的に基準外国為替相場による交換を保障する措置をとりました。また、政府が今国会に提出する復帰関連法案は、大きく分けて二つの分野からなっております。その一つは、復帰に伴う社会的、経済的な激変を緩和するための税制など各般にわたる暫定特別措置であり、他の一つは、行財政の基礎条件の改善と社会開発、経済発展のための積極的な措置であります。これらはいずれも沖繩現地の要望をほぼ全面的に取り入れたもので、財政、金融両面の十分な裏づけと相まって、沖繩振興に重要な役割りを果たすものと信じます。(拍手)一方、軍用地等の継続使用は、返還の前提ともなっていることを御理解いただき、政府としては十分な話し合いを行なって、できる限りの措置を講じたいと考えております。(拍手)私は、今国会における沖繩返還協定締結の承認と関連法案の成立によって、明年のなるべく早い時期に祖国復帰が実現することを念願してやみません。(拍手)
 次に、現在の国際秩序は、第二次大戦終結前後の国際情勢を反映したものでありますが、もはやこのような戦後体制のワクの中では処理しきれない国際間の諸問題が生じております。特に中国については、すでにサンフランシスコ講和会議において、いずれの政府を中国の代表として招請するかについて連合国側の合意を見ることができなかった経緯があります。その後同様の問題が国連の場において生じ、これが今日、中国代表権問題という形で国際社会の注目を集め、その解決が迫られております。このことは、いまや中華人民共和国が国際社会の枢要な一員であるとの認識が、国際世論の大勢となりつつあることを示すものであります。
 政府は、このような国際情勢の変化を率直に認め、本年の第二十六回国連総会における中国代表権問題については、中華人民共和国政府に対し国連代表権を確認するとともに、同政府が安全保障理事会常任理事国の議席を占めることを勧告し、経過的な措置として中華民国政府もまた国連において議席を維持できるように措置する方針をきめました。(拍手)この決定は、中華人民共和国政府の国連参加を求めるという、わが国の対中国政策に関する重大なる転換を意味するものであります。(拍手)しかしながら、国連創設以来の重要メンバーである中華民国政府が、いわゆるアルバニア決議案によって一方的に国連から追放されることは、国際情勢の現実にそぐわないばかりでなく、アジアにおける緊張激化の要因ともなるおそれがあります。(拍手)政府は、当面の国連対策として、二つの決議案について米国をはじめ関係諸国と協議の末、その実現を促進するため共同提案国となったのであります。この措置は、国連の普遍性の原則にかなうものであるとともに、わが国にとって、国際信義を尊重するゆえんでもあると信じます。(拍手)いずれにしても、政府は、あくまでも中国は一つであるとの基本的認識に立っております。中国問題が、当事者間の話し合いによって円満に解決されることを強く期待するものであります。(拍手)政府としては、今後とも国連と歩みをともにし、国際社会の協調をはかってまいる所存であります。
 一方、日中両国の深い歴史的関係からすれば、日中関係の正常化という課題は、国連での中国代表権問題以上の重要な問題であります。日中両国の間には地理的、文化的な親近感がある一方、政治体制やイデオロギーの違いのほかに、歴史的、経済的発展段階等の面で種々の相違があります。したがって、このような基本的問題を認識した上で相互理解を深め、両国関係をできる限り長期的に安定したものにしていくようつとめることが、われわれの課題であると信ずるものであります。(拍手)そのためには、日中両国の間で相互理解と相互尊重の立場に立った新しい原則を確立するとともに、主体的、かつ広範な国民的合意を形成することが必要であると思います。(拍手)私は、今後とも通信、気象、航空、漁業等の諸協定の取りきめなど当面する諸案件について積極的な働きかけを行なうとともに、機会あるごとに、政府間の公式接触の呼びかけを行なう決意であります。(拍手)
 戦後体制の行き詰まりは、経済面では、国際通貨制度の危機となってあらわれております。第二次大戦後世界経済が比較的順調に推移してきたのは、特に大きな経済力を持った米国の、国際経済の拡大と交流に対する積極的な姿勢にささえられたところが少なくなかったといえます。しかるに、最近米国の国際収支の逆調は著しく、このことが、これまでドルを中心にして打ち立てられてきた国際通貨体制をゆるがすに至っているのであります。
 私は、国内に失業とインフレという現代社会の苦悩をかかえつつ、自国経済再建に懸命な米国政府の努力を理解し、かつ、世界経済全体の繁栄の見地から、米国経済の健全な立ち直りを強く希望するものであります。しかしながら、世界経済はいまや国境を越えて著しく相互依存的となっており、今日の国際経済問題の解決をひとり米国政府にのみゆだねることはできないのであります。現在の国際経済で最も重要なことは、これまでのドルを中心にして動いていた国際通貨体制を、新しい時代に対応した国際協力体制として立て直すことでありますが、国際経済情勢は、なおしばらく流動的様相が続く可能性が強く、これに冷静かつ弾力的に対処する必要があります。このため、政府は当面の国際通貨情勢に対応して、いわゆる変動為替相場制に移行することといたしました。また、今後の国際経済の安定と拡大に寄与するための多角的な通貨調整を、各国間の負担の公平に配慮しつつ積極的に推進する方針で進んでおります。さらに保護主義への逆転を防ぐため、国際的な共同歩調のもとに貿易の自由化、関税引き下げにさらに努力してまいります。さきの日米貿易経済合同委員会の合意に基づいて、米国との間で経済的緊張緩和のための協議を続けるにあたっても、わが国の総合的国益伸長をはかるとともに、このような世界経済の新しい秩序づくりの観点に立ってこれを進める方針であります。
 このたび、米国との間に繊維輸出に関し協定を締結することといたしました。衆参両院における決議もありますので、特に慎重に考慮してまいりましたが、米国側よりの新たな提案もあり、長期的に見た国際協調によるわが国の国益の伸長のためには、まことにやむを得ないものであると考えます。政府は、当面困難な事態に直面するおそれのある繊維産業に対し、財政、金融、税制等各般にわたる援助措置を講ずることによって一部の不安感を除去し、その長期的な安定をはかってまいる所存であります。
 わが国の景気が十分立ち直る前に米国の新経済政策が発表され、それを機に国際通貨危機が生じたことはまことに遺憾であります。政府は、米国に対して輸入課徴金の撤廃を強く求めるとともに、景気の落ち込みを防ぎ、そのすみやかな回復をはかるため、財政金融面から積極的な景気浮揚策を展開し、あわせて社会資本、社会保障を充実するなど、国民福祉と経済成長の調和のとれた新たな繁栄への条件をつくり出していく所存であります。今後、公共投資の大幅な増加、財政投融資の拡大、公債の増発、年内大幅減税の実施等、広範な景気対策を推進することとしております。今回提出する補正予算は、その手始めとなるものであります。しかし、この景気対策は単なる高度成長への復帰を意図するものではなく、この政策展開の過程で、環境保全、公害防止など国民生活の質的充実を目ざした発展に重点を置く考えであります。すなわち、経済の成長のあり方を改めて、活力に満ちた福祉社会の建設に向かうことが、基本的な課題であります。(拍手)この切りかえを円滑に進めるためには、制度や心がまえの面でもそれに対応した改革が必要であります。
 第一に、社会資本の充実のため公共投資の重要性がますます増大するのに備え、行政運営の効率化をはからなければなりません。同時に、民間企業の創意とくふう、その活力を生かす方式を検討し、また、強力な地価対策並びに土地利用の合理化をはかる必要があります。
 第二に、産業構造の転換と調整を積極的に推進しなければなりません。特に輸出関連中小企業については、内外情勢の変化に適応できるよう、その体質の改善が迫られております。政府は、当面の金融対策に万全を期すると同時に、内外需要の動向を先取りした活路の開拓にあたっては協力を惜しまないものであります。
 第三は、物価安定への努力であります。本年春以来、幾ぶん落ちつきのきざしが見られていた消費者物価も、最近気象条件に恵まれないため生鮮食料品が値上がりしていることもあって、先行き必ずしも楽観を許しません。スタグフレーション、すなわち不況下の物価高に一たび落ち込むと、そこからの脱出がいかに困難なものであるかは、諸外国の経験が十分これを物語っております。政府は、このような考え方のもとに、低生産性部門の構造改善、流通機構の改革等所要の物価対策を強力に進める決意であります。また、これと並行して、減税、社会保障、住宅建設等により国民生活の安定、実質所得の向上に努力いたします。さらに、従来ややもすれば生産者を中心に考えられがちであった輸入政策をはじめ各種の産業政策を、消費者の利益をはかるという観点から見直す必要があると思うのであります。
 第四に、現行の諸制度についても、この際十分見直しを行なう必要があります。政府は、医療保険の問題につき抜本的な制度改正を準備するとともに、農林漁業の体質の強化をはかるほか、食糧管理制度や農地制度についても諸情勢の展開に即してその改善方策の検討を行なっているところであります。また、特に、今日急速に発展し変動する時代の転換期にあたり、人間形成の上で最も重要な教育制度の改善を行なわなければなりません。政府は、中央教育審議会の答申に基づき、総合的な教育改革を推進するため、諸般の施策を講ずる所存であります。長期的な展望に立った第三次教育改革が、今後国民各位の理解と協力によって着実に実現されるよう、強く期待するものであります。
 以上のように、現在は内外経済ともに困難な過渡期にありますが、これを切り抜けることによってこそ、日本経済は一段と充実し、国際的調和の中で豊かな福祉を実現することができると信ずるものであります。
 最後に、最近の暴力事件について一言申し述べます。さきに成田空港の代執行に際し、一部過激派暴力集団の手によって三人の警察官が殉職いたしましたが、さらに公明党の竹入委員長が暴漢に襲われ重傷を負われるなど、重ね重ねの不祥事件が発生しております。この機会に、殉職警察官に対し深甚なる弔意を表するとともに、竹入委員長に対し衷心よりお見舞いを申し述べるものであります。(拍手)自己の主張を通すために手段を選ばず、過激な暴力行為に訴えるごときは断じて許されないのであります。(拍手)暴力は、それが集団によるものであろうと、個人によるものであろうと、民主主義社会の基盤をゆるがすものとして徹底的に糾弾しなければなりません。(拍手)私は、たび重なる不法行為によって、暴力に対する批判精神が薄れることを憂慮するものであります。政府は、今後とも断固たる態度でこれに臨む方針でありますが、国民各位におかれても、暴力が芽ばえるような風潮を排するとともに、これをきびしく批判し、社会の健全化に御協力いただきたいと思います。(拍手)
 私は、国民各位の御協力のもとに、勇気と自信をもって現在の試練に取り組み、これを克服する決意であります。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(船田中君) 外務大臣福田赳夫君。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#11
○国務大臣(福田赳夫君) まず御報告申し上げたいことは、今回の天皇、皇后両陛下の御訪欧についてであります。両陛下には、九月二十七日から、ベルギー、英国、ドイツを公式に訪問され、デンマーク、フランス、オランダ、スイスを非公式に訪問され、また、往路アンカレッジにおきまして、米国のニクソン大統領御夫妻の出迎えを受け、御会見されるなど、これら諸国とわが国との友好親善のため多大の成果をあげられ、この間終始御健勝にわたらせられ、去る十月十四日、無事御帰国相なられたのであります。国民とともに深くお喜びいたしたいと存じます。(拍手)
 両陛下の外国御訪問は、わが国の歴史上初めてのことでもあり、御訪問先の各国において、各方面から心あたたまる歓迎を受けられました。私は、この際、各国並びにその国民から寄せられた御好誼に対しまして、国民とともに深甚の謝意を表したいと存じます。(拍手)このたびの御訪欧により、最近とみに高まってまいりました海外諸国のわが国に対する関心と理解を一段と高め得ましたことは、国際親善の立場から、まことに喜ばしい次第でございます。政府といたしましては、両陛下の御訪問の成果を今後に生かすように、各国との親善友好関係を一段と深めてまいる所存でございます。
 この国会の最大の案件は、申すまでもなく、去る六月十七日に署名されました沖繩返還協定及び沖繩復帰に関する諸法案の審議であります。
 顧みまするに、沖繩は平和条約によってその施政権が米国にゆだねられることになり、その後多年にわたって、政治、経済、社会のあらゆる分野において本土と切り離され、わが国の施政の外に置かれてまいりました。しかしながら、沖繩の同胞はもとよりのこと、わが国民ひとしく沖繩の祖国への復帰を待望し続け、そして、この民族的願望は年を追うて高まってまいったのであります。
 政府は、沖繩の置かれたこのような事態に常に心を痛め、歴代の政府首脳訪米の際の会談をはじめ、あらゆる機会をとらえまして、またあらゆるレベルでの政府間接触を通じまして、沖繩の本土への早期復帰を米側に申し入れてきたのであります。かかる努力にもかかわらず、わがほうの要望は容易に実現を見なかったのでありますが、昭和四十二年に至り、日米間において沖繩の施政権を日本に返還する方針のもとに、沖繩の地位について継続的に検討する旨の合意に達しました。続いて昭和四十四年、沖繩の「核抜き、本土並み、一九七二年中」返還という基本原則について、佐藤総理並びにニクソン米大統領の間において合意を見たのであります。その後、日米両国政府は友好裏に、しかも真剣に協議を続け、その結果、去る六月十七日東京及びワシントンの両地において、この原則を貫き、これを具体化する返還協定が両国政府により同時に署名の運びと相なったことは、御承知のとおりであります。
 沖繩が過去四半世紀以上の長きにわたりまして米国の施政権下に置かれていただけに、わが国といたしましては、一そうの努力を傾けて、円滑な施政権の返還を実現し、豊かな沖繩県の建設に邁進しなければならないと思います。復帰の実現を目前に控えた今日、われわれは新しい沖繩県の繁栄と発展のために、一段と努力を払うべく決意を新たにする次第でございます。
 この国会において、政府は返還協定の締結につき承認を求めるとともに、沖繩の復帰に関係する諸法案を提出いたしました。沖繩返還の意義並びにその重要性にかんがみ、この国会におきまして、これら案件がすみやかに承認され、国民の念願である沖繩返還が円滑に実現するよう、切にお願いを申し上げます。(拍手)
 戦争によって失われた領土が、平和的な話し合いによって返還されるということは、歴史上ほとんどその前例を見ないところであります。話し合いによる沖繩の施政権の返還、その本土復帰という歴史的できごとが可能となりましたことは、戦後一貫してつちかわれてきた日米間の相互理解と友好信頼関係のたまものにほかならないことをこの際あらためて銘記すべきであると思うのであります。(拍手)さらに、今後におきましても、わが国の平和と繁栄を確保していくためには、他のいかなる国との関係にも増しまして米国との関係に意を用い、友好信頼の基調を維持増進していかなければならないことは申すまでもありません。
 日米両国が、政治、経済、文化等のあらゆる面において、相互理解と信頼の関係に立つことは、単に日米両国おのおのの国益に資するのみならず、アジア、ひいては広く世界の平和と安定、人類の進歩と繁栄にとっても、大いに貢献するものであると思います。先般ワシントンで行なわれました白米貿易経済合同委員会においても、相互の閣僚の忌憚ない意見の交換を通じて、日米両国間の相互理解と友好信頼の関係を一そう深め得たものと信じます。政府といたしましては、今後とも、世界情勢の新たな展開の中におきまして、日米両国間の一そう強固な関係を促進してまいる所存であります。(拍手)
 日米間には、今日、主として経済面で若干の摩擦があることは事実であります。日米両国のごとき大きな規模の経済が、かくも緊密に大幅に交流し合うとき、相互の間に摩擦を生ずることはある程度やむを得ないことと存じます。しかし、それだからといって、摩擦をそのままに放置し、その結果両国の基本関係にいささかなりともひびが入るような事態になることは、あくまでもこれを回避しなければならないと存じます。(拍手)私は、このような摩擦を解決するためにも、日米双方が、世界において果たすべき役割りとそれに伴う責任とをあらためて自覚し、相互の立場を理解し合うことが肝要であると存じます。
 ニクソン大統領が八月十五日発表いたしました米国の新経済政策は、国際経済に大きな波紋を投じております。政府といたしましては、世界経済において比類なき大きな比重を占める米国経済の健全な発展が、世界経済全体の安定と繁栄のためのかなめであるとの観点から、米国経済が一日も早く安定を取り戻すことを深く期待しております。
 また、米国の金・ドル兌換停止措置に伴い、国際通貨情勢には大きな混乱が生じております。わが国といたしましては、これが一日も早く解決されるよう、関係主要国とともに努力を続けておるところであります。
 今回、米国政府のとった輸入課徴金制度につきましては、これがわが国産業に直接種々の影響を及ぼすことは申し上げるまでもございません。しかし、さらに重要なことは、課徴金の適用が長引きますれば、世界的に保護主義的な機運を助長し、自由貿易体制が崩壊するおそれなしとせず、世界経済全体に深刻な影響を及ぼすことが憂慮されるのであります。政府といたしましては、かかるゆゆしい事態を回避するため、今後ともあらゆる機会をとらえ、米国政府に対し課徴金の早期撤廃を強く要求してまいる所存であります。(拍手)
 戦後、各国が相協力して築き上げてきた、自由にして開放的な国際経済秩序は、このような米国の措置に象徴されるように、今日大きな試練に直面しておると申せましょう。このようなときにおいてこそ、各国は緊密な国際協力を通じて、一日も早く安定した国際経済秩序を回復するため、努力する必要があると考えます。わが国といたしましても、わが国の果たすべき責任の大きいことを十分に自覚し、国際経済の均衡のとれた発展のために、積極的にその役割りを果たすべきものと信じます。
 アジアにおきましては、緊張緩和に向かっての模索が開始されておるのであります。朝鮮半島においては、南北間の対話の端緒が開かれようとしております。ベトナム戦争は激しさを減じつつあるやに見られるのであります。わが国はこのような新しい動きに大きな関心を寄せております。政府といたしましては、このような傾向が、アジアにおける平和の達成という成果となって実ることを希望してやまないのであります。
 特に最近、中華人民共和国政府を承認し、これと外交関係を開く国が相次ぎ、また近くニクソン大統領の訪中も予定されるなど、中国問題をめぐる客観情勢は大きく動きつつあると見るのであります。
 わが国と中国大陸との間には、千年をはるかにこえる長い交流の歴史があります。戦後は種々の推移を経たものの、今日、日中間にはすでに貿易や人的交流が著しく進んでおり、わが国は中華人民共和国にとって最大の貿易相手国となっております。それにもかかわらず中華人民共和国とわが国との間に国交が開かれていないことは、不自然であり、かつ、極東や世界の平和という見地から見ましても、まことに遺憾なことと存ずるのであります。いまや、日中間の国交正常化をはかることは、歴史の流れとも申せましょう。(拍手)私は、中華人民共和国政府との関係を正常化するため、まつ正面からこれと取り組む決意であります。(拍手)
 しかし、これと同時に、私は、この中国問題という歴史的課題の解決にあたりまして、国際情勢の急激な変化をもたらし、アジアにおける緊張を高めることのないよう心しなければならないと考えます。またこの過程において、国際信義にそむくことがないよう、慎重な考慮を払うこともまた重要であると存じます。わが国がかりにも国際社会において、信頼しがたい国であるという印象を与えるようなことがあれば、それはわが国の将来のためにとらざるところであります。(拍手)問題解決の過程で国際信義を安易に傷つけるようなことがあれば、台湾にある千四百万の人々はもとよりのこと、中国本土の人々や、さらには広く世界の人々の信頼をもつなぎ得ないと思うのであります。(拍手)
 国連における中国代表権問題につきましては、政府は、このような考え方にのっとり、かつ国際情勢の推移と現実をあるがままに反映するとの観点に立ちまして、中華人民共和国政府の代表権を確認し、安全保障理事会の常任理事国として議席を占めることを勧告するとともに、中華民国政府が引き続き代表権を有することを確認する決議案、並びに中華民国政府の国連代表権の剥奪をもたらすごときいかなる提案も国連憲章第十八条に基づく重要問題であるとする決議案の双方を、共同提案国として提出した次第であります。(拍手)
 いずれにいたしましても、政府は、あくまでも中国は一つであるとの基本的認識を持っております。中国問題が、当事者間の話し合いによって、すみやかに解決されんことを期待するものであります。(拍手)
 わが国とソ連との関係は、貿易、経済、文化、人的交流等の諸分野において、引き続き前進しております。しかし、わが国あげての強い願望である北方領土の問題が、なお未解決のまま残されておりますることは、沖繩がいよいよ明年祖国に復帰することを考えまするときに、はなはだ遺憾に存ずる次第であります。(拍手)
 日ソ関係の真の安定的発展のためには、まずこの問題を解決することが不可欠であるのみならず、この問題の解決はアジアにおける平和と安定にも資するところ少なからぬところがあると考えます。政府といたしましては、今後とも各分野における日ソ関係の発展を促進すると同時に、国民各位の力強い支援のもとに、北方領土問題解決のため、一そうの努力を傾ける所存であります。(拍手)その間、北方水域の安全操業などの問題につきましても、何らかの具体的な解決の道を見出すべく、努力していく所存であります。
 以上、私は、このたびの国会において審議される沖繩返還協定に関連して、わが国をめぐる国際情勢とそれに対する政府の施策を申し述べました。さきにも触れましたとおり、沖繩返還は多年にわたる日本国民全体の願望であります。私は、この国会において沖繩返還協定が承認され、この国民的願望が一日も早く実現することを重ねて衷心から希望してやまないのであります。(拍手)
 顧みますると、日本国民が終戦の廃墟の中から立ち上がり、わが国を再建しようと決意してからすでに二十余年の歳月が流れたのであります。その間、われわれは、わが家の再建と祖国の復興とを至上の目標として営々と努力を傾けてまいったのであります。その努力がいかにみごとな成果を生んだかは、すでにわれわれ自身がまのあたりにしているところであります。
 この四半世紀の間に、わが国の経済力は著しく伸長し、わが国の国際的地位は飛躍的に高まってまいりました。しかし、その半面におきまして、国際社会においてわが国の果たすべき責任は増大し、諸外国のわが国に対する期待も高まってきておるのであります。これと同時に、わが国に対する世界各国の見方とわが国をめぐる国際環境は、最近とみにきびしさを増してきておるのであります。わが国としてはこのような現実をあらためて認識し、正視しなければならないと思います。そして国際社会の責任ある一員としてのわが国の立場を自覚し行動していかなければならないと存じます。
 申すまでもなく、国内社会におきましても、単にめいめいが自分の利益だけを求めるいわゆるマイホーム主義だけで社会は成立し得ないし、めいめいの真の幸福も実現できるものではありません。国際社会におきましても、自国のことのみに専念する偏狭なマイホーム主義はもはやわれわれには許されないのであります。(拍手)
 諸国民の公正と信義に信頼して、みずからの安全と生存を保持しようと決意し、平和国家として生きることを国是とするわが国、今日のような巨大な経済国に発展したわが国、国内にいうべき天然資源を持たず、海外にその供給を依存しなければならないわが国、このようなわが国にとりましては、世界の平和と繁栄こそが、とりもなおさずみずからの生存と発展の基本的条件であると信ずるのであります。(拍手)世界全体の繁栄の中でわが国の繁栄を実現するというアワホーム主義に、大きく目を開き転換すべき時期にわれわれは到達していると思うのであります。(拍手)日本の平和と繁栄は世界の平和と繁栄とともにあり、世界の発展の中にこそ日本の発展の可能性を探り求むべきだと信じます。
 私は、このような考え方を基本として、わが国の外交政策を推進していきたいと存じます。
 どうぞ、国民各位の御理解と御支援とをお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(船田中君) 大蔵大臣水田三喜男君。
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#13
○国務大臣(水田三喜男君) ここに、昭和四十六年度補正予算の御審議をお願いするにあたり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて、最近の内外経済情勢と今後の財政金融政策について所信の一端を申し述べたいと存じます。
 今回提出いたしました昭和四十六年度補正予算の大綱について御説明いたします。
 昭和四十六年度の財政運営にあたりましては、経済の動向に即応し、公共事業等の施行の促進、財政投融資の数次にわたる追加等の措置を講じてきたところでありますが、米国の輸入課徴金の賦課及び円の為替変動幅の制限の暫定的停止という新たな事態に対処するため、公共事業を中心とする公共投資の追加、中小企業対策の拡充強化等、緊要と認められる経費について措置するとともに、所得税減税を年内に実施するため、所要の予算補正を行なうことといたしました。
 公共投資につきましては、国内需要を喚起し、国民生活の向上と社会資本の整備を一そう推進するため、治山治水、道路、港湾、住宅、下水道、農業基盤の整備等の一般公共事業のほか、災害復旧、各種文教施設、社会福祉施設整備等をあわせ、事業費の規模で約五千億円を追加することといたし、このため、所要の歳出予算及び国庫債務負担行為の追加を行なうことといたしております。なお、このほか、日本国有鉄道及び日本電信電話公社につきましても、建設工事規模の拡大をはかることとし、所要の予算補正を行なうこととしております。
 次に、米国の輸入課徴金の賦課、円の為替変動幅の制限の暫定的停止などによって影響をこうむる輸出関連中小企業について、政府関係中小企業金融三機関による長期低利の融資、信用補完制度の拡充、設備近代化資金の償還期限の延長等の措置を講ずることといたし、このため、商工組合中央金庫及び中小企業信用保険公庫に対する出資の追加並びに中小企業設備近代化補助金の追加等を行なうことといたしております。
 以上のほかに、一般会計歳出予算につきましては、人事院勧告に基づく公務員の給与改善費、米の生産調整関係経費、対米繊維輸出規制に伴う特別措置に必要な経費、農業共済再保険特別会計への繰り入れ、義務教育費国庫負担金等の義務的経費の不足額の補てんを追加するとともに、既定経費の節減、予備費の減額等を予定いたしております。
 税制面につきましては、これまでの国民各位のたゆまざる御努力に報い、また、景気のすみやかな回復に資するため、所得税の減税を特に繰り上げて、年内減税に踏み切ることといたしました。減税の規模は千六百五十億円を予定しておりますが、給与所得者については年末調整の際に、事業所得者等については確定申告の際に減税の効果があらわれるように、目下、関係法律案の準備を急いでいるところでありまして、できるだけ早い機会に国会での御審議をお願いいたしたいと存じております。
 歳入につきましては、現下の経済情勢にかんがみ、国債七千九百億円を増額するとともに、所得税減税の年内実施、経済活動の停滞等による減収見込み等を考慮し、租税及び印紙収入並びに日本銀行納付金を減額するなど、所要の補正を行なうことといたしております。
 この結果、昭和四十六年度一般会計予算の総額は、歳入歳出とも二千四百四十七億円を増加して、九兆六千五百九十億円と相なるのであります。
 次に、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましては、ただいま申し述べました一般会計予算補正等に関連して、道路整備特別会計等の特別会計及び日本国有鉄道等の政府関係機関につき、それぞれ所要の予算補正を行なうことといたしております。
 なお、財政投融資につきましては、経済の動向にかんがみ、すでに昭和四十六年度一般会計予算総則に織り込まれた政府保証債の発行限度の弾力措置を活用したほか、資金運用部資金等を財源として、合計四千四百四十九億円の追加を行なったところでありますが、今回の補正予算に関連して、さらに二千六十四億円の追加を行なうことといたしております。
 最後に、地方財政対策について一言申し述べます。
 今回の補正予算において国税三税の収入見込み額を減額したことに伴い、地方交付税法に従い、地方交付税交付金を減額することといたしておりますが、地方財政の現状にかんがみ、このうち所得税の減税に伴う地方交付税交付金の減五百二十八億円については、特に一般会計が補てんし、その差額及び地方公務員の給与改定財源の不足額については、交付税及び譲与税配付金特別会計が資金運用部資金を借り入れ、これを財源として交付することといたしております。
 なお、公共投資の追加に伴う地方公共団体の負担、地方税の減収につきましても、それぞれ適切な措置を講ずることといたし、地方財政対策に遺憾のないよう配慮しております。
 以上、昭和四十六年度補正予算の大綱を御説明いたしました。
 何とぞ、補正予算及び関係法律案につきまして、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
 この機会に、最近の内外経済情勢と今後の財政金融政策について、一言申し述べたいと存じます。
 第二次大戦後、国際経済は国際通貨基金やガットなどの国際機関を中心に、各国が相協力して固定為替相場制を維持しながら、自由、無差別、互恵の精神のもとに順調な拡大を続けてまいりました。しかしながら、去る八月に米国がドル防衛のために輸入課徴金の賦課、ドルの金への交換の一時停止の措置を講じまして以来、主要国は何らかの形で変動為替相場制への移行を余儀なくされ、世界経済は貿易や通貨の問題をめぐって現在大きく動揺しております。
 このような国際経済情勢にかんがみ、私は、九月以降、二度にわたる十カ国蔵相会議や国際通貨基金の総会など、各種の国際会議に出席し、各国通貨当局の首脳と隔意のない会談を通じて真剣な協議を重ねてまいりました。各国とも、現状を打開するためには、平価調整を含む総合的な措置が必要であり、また、何らかの形で国際通貨制度を改革しなければならないという点で共通の認識が深まりつつあります。しかし、現段階におきましては、問題点が明らかになった程度であり、具体的な平価調整の内容、時期等につきましては、依然確たる見通しは立ちがたい状況にあります。
 現在の国際通貨不安の根本的な原因は、米国の国際収支が著しく悪化していることにあることは明らかであります。しかしながら、ドルが現行の国際通貨制度のもとで基軸通貨として果たしている役割りを考えますと、ドルの弱体化は、米国一国だけの問題ではなく、世界的な問題としてその解決を考えていかなければなりません。したがいまして、政府といたしましては、主要国に対して、現在の国際通貨問題の解決のために公平な負担を分かち合うことを主張してまいりましたが、今後、各国が多角的平価調整に応ずる場合には、わが国も進んでそれに参加するという立場をとり、長期にわたる国益と国際協調との調和をはかりながら、事態の早期解決に全力を尽くす所存であります。
 また、輸入課徴金は、自由な貿易を著しく阻害するものであり、ガットの精神に反するものであります。わが国としては、日米貿易経済合同委員会あるいはガット等国際会議の場を通じて、課徴金の撤廃を強く米国に働きかけているところであります。
 これと同時に、国際的に台頭しつつある保護貿易主義、地域主義を抑制し、自由な貿易体制を維持発展させていくためには、わが国自身としても経済の国際化を一段と推進する必要があります。先般、総合的対外経済政策を決定し、逐次その実施をはかってきたところでありますが、今後ともこの基本線に沿って、貿易・資本の自由化、関税の引き下げ、経済協力の拡充などを推進してまいる所存であります。
 次に、国内の経済動向に目を転じますと、昨年の秋以降、景気は急速に下降局面に入り、本年に入ってからもしばらくは沈滞の様相を呈しておりましたが、これまでとられてきた金融緩和措置、財政投融資の追加などの景気対策の効果の浸透とともに、六、七月にかけて、景気は回復のきざしを見せておりました。しかしながら、これから立ち上がろうとしたやさきに、国際通貨情勢の動揺に直面し、輸出環境の悪化、設備投資意欲の減退等、実体経済面に大きな影響を受け、このまま放置すれば、景気の回復はかなりおくれることが懸念されております。
 政府といたしましては、当面大きな影響をこうむることが懸念されている輸出関連中小企業に対して、緊急対策を閣議決定し、金融、財政、税制を通じてきめこまかい措置を講ずると同時に、中小企業製品の輸出成約の円滑化のために、外貨預託を活用するなど、その経営の安定のために格段の配慮を行なったところであります。
 さらに、景気のすみやかな回復をはかるため、財政面におきましては、本年度の補正予算の中に来年度への展望をも織り込み、公共事業等の事業規模を拡大するほか、所得税の年内減税を実行するなど積極的な措置を講ずると同時に、市中消化に十分配意しつつ公債政策の活用をはかることとし、相当量の国債の追加発行を行なうことといたしました。これらの施策は、単に景気対策としてだけではなく、むしろ産業活動に比し、これまで相対的に立ちおくれている社会資本の整備を促進し、国民生活の向上に資するものと期待しております。
 さらに、金融面におきましては、昨年十月以来、公定歩合は四回にわたり合計して一%の引き下げが行なわれ、これに伴い市中金利も次第に低下してまいりました。本年九月からは一連の長期金利引き下げも実施され、金融緩和基調は、国際収支の大幅黒字を背景に、実体経済に浸透してきておりますが、今後、季節的な金融緩慢期を迎え、この傾向は一そう促進されるものと思われます。また、今後、経済の国際化が進展するに伴い、内外資金の流出入は一そう増大することが予想されますが、金融政策面におきましては、金融調節手段の一そうの整備につとめていく所存であります。
 また、最近の金融環境の変化や国債発行の増額等の事態に対応し、公社債の円滑な発行、流通のため、金利機能が十分発揮できるような資本市場の整備育成をはかる方向で、一そうの努力をしてまいりたいと考えております。
 なお、沖繩の本土復帰に伴う対策といたしましては、県民の生活に急激な変化をもたらすことのないよう、租税、関税等について特別の措置を講ずるほか、通貨交換に関する地元の要望を考慮し、復帰に際し、特に県民に給付金を支給することとするなど、格別の配慮を払っております。
 戦後二十六年、わが国経済は目ざましい成長を続け、幾多の成果をおさめてまいりました。
 今後、われわれに課せられた目標は、これまでの経済成長の成果を国民生活の質的充実に結びつけることであり、それが国民各位の勤勉と努力にこたえるゆえんであると存じます。
 このような経済運営の転換期にあたり、わが国経済は、国際通貨体制の動揺という、きわめて困難な状況に直面することになりましたが、政府は、財政金融政策の総力をあげて、この試練を乗り越え、内外均衡を達成しつつ、真の国民福祉の向上に邁進する所在であります。
 政府の施策に対する国民各位の御理解と御協力を切望する次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#14
○藤波孝生君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明二十日午後一時より本会議を開きこれを行なうこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#15
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。本日は、これにて散会いたします。
  午後二時十八分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 高見 三郎君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君
        労 働 大 臣 原健 三郎君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 渡海元三郎君
        国 務 大 臣 大石 武一君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 竹下  登君
        国 務 大 臣 中村 寅太君
        国 務 大 臣 西村 直己君
        国 務 大 臣 平泉  渉君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト