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1971/10/26 第67回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第6号
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1971/10/26 第67回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第6号

#1
第067回国会 本会議 第6号
昭和四十六年十月二十六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 昭和四十六年十月二十六日
  午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国連におけるアルバニア決議案の採択に関する
  緊急質問(川崎寛治君提出)
 国連総会でアルバニア決議案の成立に関する緊
  急質問(大久保直彦君提出)
 国連における中国代表権問題に関する緊急質問
  (河村勝君提出)
   午後五時二十三分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国連におけるアルバニア決議案の採択に関す
  る緊急質問(川崎寛治君提出)
 国連総会でアルバニア決議案の成立に関する
  緊急質問(大久保直彦君提出)
 国連における中国代表権問題に関する緊急質
  問(河村勝君提出)
#3
○藤波孝生君 緊急質問許可に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、川崎寛治君提出、国連におけるアルバニア決議案の採択に関する緊急質問、大久保直彦君提出、国連総会でアルバニア決議案の成立に関する緊急質問、及び河村勝君提出、国連における中国代表権問題に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
#4
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 まず、川崎寛治君提出、国連におけるアルバニア決議案の採択に関する緊急質問を許可いたします。川崎寛治君。
  〔川崎寛治君登壇〕
#6
○川崎寛治君 賛成七十六、反対三十五、棄権十七という圧倒的多数をもって、国連におけるアルバニア決議案が採択された歴史的な瞬間は、六時間前でありました。
 私は、日本社会党を代表して、歴史の歯車を逆回ししようとした佐藤内閣の責任を追及し、破産をした日本外交の転換、なかんずく対中国政策について、佐藤内閣の責任を徹底的に追及いたしたいと思うものであります。(拍手)
 国連で採択されたアルバニア決議案は、次のとおりであります。
 「総会は、国際連合憲章の原則を想起し、中華人民共和国の合法的権利の回復は、国際連合憲章を守り、かつ国際連合を憲章に従って活動させるためにも肝要であることを考慮し、中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的代表であり、かつ中華人民共和国は安全保障理事会の五常任理事国の中の一理事国であることを認識し、中華人民共和国にそのすべての権利を回復させ、その政府の代表を国連における中国の唯一の合法的代表と認め、かつ蒋介石の代表を国連及びそのすべての関連機関において非合法に占める議席から即時追放することを決定する。」きわめて明快であります。(拍手)
 日本社会党は、このアルバニア決議案が国連加盟国の圧倒的多数の支持を得て採択されたことを心から歓迎するものであります。(拍手)
 今回の採択は、まず第一に、中華人民共和国の歴史的な勝利であり、また、世界における社会主義、民族解放、平和と民主勢力の共通の勝利であります。(拍手)そして、米国及び日本が戦後二十余年間にわたって一貫してとってきた、台湾政権が全中国を代表する唯一の正統政府だとする虚構は完全にくずれ去り、その対米追随、中国封じ込めを中心にした戦後の日本外交は破産したのであります。(拍手)
 日本の外交は、一九五一年のサンフランシスコ片面講和以来、日米安全保障条約を基軸として展開されてきました。国内においては、平和条約第三条によって、アメリカに生かすも殺すも自由自在の施政権を与え、百万の同胞を、戦後四分の一世紀、異民族の支配のもとに置いてまいったのであります。
 外においては、中国に対しては、蒋介石政権は全中国を代表する唯一の合法政権であるとの立場に立って、日台平和条約を締結し、一貫して中国の内政に干渉し、中華人民共和国を敵視する政策を進めてまいったのであります。
 朝鮮に対しては、終始、武力北進、滅共統一を叫ぶ韓国のファッショ・かいらい政権を支持し、不法にも、それが全朝鮮を代表する合法政権であるとの立場に立って、日韓条約を結び、朝鮮民主主義人民共和国に敵対、封じ込めの政策をとってまいったのであります。
 また、ベトナムに対しては、米国の公然たる介入と歩調を合わせて、不法な南ベトナム賠償を強行するとともに、その侵略戦争が本格化するや、日米安保条約の当然の義務として、全面的にそれに協力してきたではありませんか。日本は明らかにベトナム侵略戦争の共犯者だったのであります。(拍手)そして、シアヌーク政権追放の軍事クーデターが起こるや、直ちにカンボジアに関するアジア会議のイニシアチブをとり、軍事ファッショ政権の政治的、経済的てこ入れに狂奔してまいりました。
 これらのことからも明らかなように、日本のアジア外交は、一貫して日米安保の上に進められ、緊張緩和ではなく、緊張激化の方向を推し進め、共存外交ではなく、対米追随の反共外交を展開してまいったのであります。しかしながら、米国のインドシナ侵略戦争における敗北、朝鮮における南北交流の進展、ニクソン訪中に見られる中国封じ込め政策の破綻、そして本日の国連におけるアルバニア決議案の採択は、世界の、なかんずくアジアの歴史の中での大きな転機を迎えたのであります。(拍手)
 佐藤総理は、戦後体制は行き詰まったということを、本国会において繰り返し述べているのでありますが、なぜ行き詰まったのか、そして、どのように打開しようとしていくのか、この歴史的な瞬間において、国民にわかるようにまず明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、国連における中国代表権論議をめぐる具体的な問題を追及いたしたいと思います。
 日本社会党は、野党各党とともに、日本政府が逆重要事項指定決議案、複合二重代表制決議案の共同提案国にならないこと、また、なったあとにおいても、共同提案国からおりることを、一致して要求してまいりましたが、このことに応じませんでした。応じなかったどころか、多数国工作はやらないと、前国会において明らかに答弁をしておきながら、日米ゴリ押し代表団だの、弱小国の腕をねじ上げる作戦だのと批評され、ニューヨークの国連各国代表部では、「オー・モーレツ」の、たいへんな日本語がはやり始めたと報道されています。これをもってしても、多数派工作をしなかったとしらを切るのでありますか。各国代表部は、これまで国連外交で低姿勢であった日本の、今回の目の色を変えた狂奔ぶりを指摘いたしております。多数派工作の事実を認め、なぜ狂奔をしたのか、その責任を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 昨日の予算委員会で、わが党の安井代議士に対し、佐藤総理は、国連でアルバニア決議案が通ったときには国連の多数の意見を尊重することを答弁いたしております。そのことは間違いありませんですね。私は、この点をまず確かめておきたいと思います。そして、その答弁どおりであるならば、アルバニア決議案をもとにする対中国政策を展開することを明らかにしていただきたいのであります。中国を代表する唯一の合法政府は中華人民共和国政府であると明らかになっております。そのことをまず明確にすることを要求いたします。
 台湾の帰属夫決定論はもはや許されません。台湾は明らかに中華人民共和国の領土であることを認めるかどうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)もはや、佐藤内閣は、今日の段階においては、二つの中国論、一つの中国・二つの政府、一つの中国・一つの台湾、そのようなごまかしの考え方は許されません。その点を明快にお答えいただきたいのであります。
 国府が国連の原加盟国であり、中国を代表する合法政府という虚構は、根底からくずれました。不法、無効な日台条約を廃棄するのが当然であります。佐藤政府の態度を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 また、一昨年、佐藤総理は、ニクソン大統領と日米共同声明を発表しました。この声明が、世界の情勢、アジアの情勢に逆行し、対中国の攻撃、沖繩基地の強化、日米安保体制のアジア安保、核安保への変質をはかるものであることは、言うまでもありません。特に、対中国との関係で申しますならば、韓国や台湾の安全は日本の安全と一体であるなどという約束は、まさに中国敵視政策に基づく中国への内政干渉といわざるを得ません。(拍手)日米共同声明を結んだときの背景は明らかにくずれたのであります。沖繩返還協定の結び直しは当然であります。佐藤内閣が沖繩返還協定を結び直すことを要求いたします。(拍手)
 アメリカは日本とともに共同提案国になり、逆重要事項指定方式の多数化のために全力を尽くしました。しかし、一方において、第七艦隊の台湾海峡の常時パトロールをやめ、荷物をアジアからおろしながら、米中関係改善をはかっておるのであります。しかるに、日本には逃げ道はありません。今日、日本が置かれております情勢は、まさに深刻であります。
 この今日のアルバニア決議案が可決をされた情勢の中で、いまこそ日本が日中国交回復への正しい道筋を進めなければなりません。そのためには、日中国交回復の決議について、日中議連の提案をいたしておる日中国交回復決議案を本国会において可決成立をさせ、(拍手)この決議案を土台に、日中国交回復への転換をはかってまいらなければなりません。
 歴史的なアルバニア決議案の国連採択を迎え、破綻をした日本外交を、緊張緩和、アジアの諸国との共存と互恵の外交へ転換をはかるべきときであります。私は、佐藤内閣がこれまでとってきた中国敵視政策の責任を明らかにするとともに対中国政策の正しい転換ができない限りにおいて、佐藤内閣はその責任をとって退陣すべきことを要求し、私の緊急質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 戦後体制が行き詰まっているとの認識については、所信表明演説で述べたとおりでありますが、これがどうしてそうなったかということにつきましては、いろいろの見解があると思います。
 私は、第一に、現在の国際秩序は、主として、さきの大戦後、戦勝国側だけの話し合いによったものだけに、戦後二十余年たって、いろいろな点で無理が生じてきたと思います。
 中国に二つの政権が存在することは、戦争の結果他から押しつけられたものではありませんが、ドイツやベトナム、朝鮮半島における二つの政権の存在は、戦後体制を象徴するものと言えます。
 経済問題につきましても、基軸通貨たるドル危機という形であらわれております。その行き詰まりをどう打開させるかは、もとより一国だけの問題ではありません。米ソをはじめ世界の枢要な国々があらためて話し合うべき問題であると存じます。
 中華人民共和国の国際社会参加によって、世界は三極構造になったと見る向きもありますが、私は、軍事力は弱小でも経済力を持ったわが国や欧州共同体等の諸国が中心になった多様化構造の世界になったと見るものであります。その意味から、わが国としても、このような戦後体制の行き詰まり打開にも貢献することができるものと考えておる次第であります。
 次に、いわゆる国連においての多数派工作をしたではないかと、こういうお尋ねでありますが、御承知のように、私は、日本やアメリカなどその他の国々と共同提案をいたしまして、いわゆる共同提案国になりまして、中華人民共和国を国連に招請することと同時に、安保理の常任理事国の議席を与えることを勧告した。そうして、同時に、いままで国連憲章を守っていた中華民国を追放するというアルバニア案には、私は反対の態度をとってきたのであります。したがいまして、さような提案をする以上、その提案が正しく国際社会において認識され、評価されること、これが当然のことだと思います。(拍手)したがって、かようなことを多数派工作と言われるなら、甘んじてその批判を受けますが、私は、提案した以上、その提案国が責任を負っておる、そういう立場においてこれの説明の衝に当たること、これは当然の責任だと、かように思っております。(拍手)
 次に、すでにアルバニア案は、川崎君が説明されたごとく、また、すでにテレビ、ラジオ等でも伝えているごとく、国連で決定を見ました今日、われわれは国際社会においても多数の意見を尊重すること、これが私どもの当然の責務だ、かように思っておりますから、国連のこの決議はそのまま私どもも尊重していくつもりであります。したがいまして、中華人民共和国が国連に議席を持ち、同時に安保理の常任理事国になるということについて、これまた私は大いに歓迎するものであります。
 そこで、台湾の領土の帰属は一体どうなっているか、こういうお尋ねでありますが、この問題は、すでに説明いたしましたとおり、私どもは、さきの日華平和条約締結の際、台湾、澎湖島に対する権利、権原、請求権、一切を放棄したのであります。そうして、その地域を占拠しているのが国民政府であります。そうして国民政府は、これまた、北京における中華人民共和国と同様に、中国は一つだ、かように主張しておりますから、いまさら領土の帰属について疑問の余地があろうとは私は思いません。これを疑問として提供される方の考え方を私は逆にお伺いしたいような気がするのであります。(拍手)
 次に、川崎君は、日台条約を破棄しろ、かように言われますが、日台条約というものではございません。日華でございます。その点ははっきり御了承いただきまして、私どもはこの条約のもとにおいて、さきの大戦にわれわれは戦敗国として戦争を終結したはずであります。大事な両国間の関係を規律した条約、それを破棄しろ、かように言われることについては、私は異議を唱えざるを得ない。簡単に破棄はできません。(拍手)
 さらにまた、日米共同声明を取り消せ、こういうことでございますが、かねがね申しているように、共同声明は、その時点における双方の認識を述べ合ったもので、取り消すとか取り消さないとかいう性質のものではありません。
 また、沖繩返還にあたっては、安保条約及び関連取りきめのそのままを本土と同様に適用されることは、すでに申し述べたとおりであります。政府といたしましては、沖繩返還協定をやり直せと言われても、私はやり直す考えはございません。はっきり申し上げておきます。(拍手)
 最後に、日中の国交回復決議を今国会で決議することについては、政府も賛成でございます。自民党でも目下党議を決定すべき案を練っており、各党間の意見が一致することを私は心から期待しておるものであります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
#8
○議長(船田中君) 外務大臣福田赳夫君。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#9
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま議長からお呼び出しでございまするけれども、私に対する質問はございませんでしたから、省略さしていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(船田中君) 次に、大久保直彦君提出、国連総会でアルバニア決議案の成立に関する緊急質問を許可いたします。大久保直彦君。
  〔大久保直彦君登壇〕
#11
○大久保直彦君 本日は、歴代政府・自民党の中国政策が根底から瓦解した記念すべき日でございます。(拍手)
 私は、公明党を代表いたしまして、中華人民共和国の国連における正当な権利を回復し、台湾追放を求めるアルバニア決議案が圧倒的多数をもって採択されるというまさに歴史的な事態に対し、佐藤総理に対し、その所信と政治責任について若干の質問をいたしたいと思います。(拍手)
 言うまでもなく、戦後二十数年の間、中華人民共和国の国連における正当な権利を回復させることに対し、アメリカ並びに自民党政府は共謀し、虚構の上に虚構を重ね、中華人民共和国政府を唯一の正統政府とする中国の国連復帰を積極的に妨害し続けてきたことは、まぎれもない事実なのであります。
 しかしながら、国際政治の良識はこの虚構を許すことを認めず、昨年の国連総会は、もはや欺瞞的な日米両政府の妨害工作が全く国際政治の現実にそぐわないものであり、その破綻を示したのであります。
 しかるに、政府は、本年の国連総会において、この現実にあえて目をふさぎ、わが党の警告並びに国民の大多数の世論を無視して、二つの中国、または二つの政府をつくり出すという陰謀を持ち込み、中華人民共和国の国連復帰を妨害するという新たなる策謀をめぐらしたのであります。
 すなわち、逆重要事項指定並びに複合二重代表制の決議案の提案国となったことがそれであります。このことは、外務大臣があわてて否定したことでありますが、実際に実務を担当する外務省当局が、去る十八日に記者会見で、複合二重代表制は逆重要を成立させるための材料にすぎない、逆重要が成立すれば中華人民共和国は国連に入ってこない、逆重要決議の成立は間違いなし、などという、いわゆる佐藤内閣の今次国連総会に対する意図を忠実に述べたことにも如実に示されているのであります。(拍手)
 佐藤総理は、今国会における所信表明演説において、今回の中国政策は重大なる転換であると述べ、政府の対中国政策を、国民の目からごまかそうとしたのであります。中国代表権の意味を歪曲して、さらに加えて、中国に二つの政府をつくろうという陰謀であって、明らかにうしろ向きの大転換であり、中国の国連復帰妨害そのものであります。
 さらに、この欺瞞的な態度に対するわが党並びに各野党の追及に対し、苦しまぎれの言いのがれとして、もし中国の国連復帰を妨害する二つの決議案が否決され、アルバニア決議案が採択されるならば、国連の意思に従うと明言したのであります。
 問題は、この二つの決議案の提案国になることにきめたのは一体だれかということであります。佐藤総理自身の裁断によって決定したということであります。これをやめるべきであるという国民の声を代表した三党党首会談においてさえも拒否した事実を、いま総理はどのように考えておられるか。もし佐藤総理が政治家として民主政治の原理をわきまえるとするならば、佐藤内閣の誤りと敗北を率直に認めることは当然のこととして、すみやかにその政治責任を国民の前に明らかにすべきであると思うのであります。(拍手)総理の明確なる所信を承りたいと存じます。
 先日の本会議において、それは単なる国連における表決結果であって、これに対しては責任なしというのは、まことに言語道断であって、そのような責任回避論では済まされない重大な問題であることを自覚すべきであります。なぜかなら、佐藤内閣の国連政策が重大な誤りであったし、また、中国政策が世界における少数派であったこと、このことは政府が常に言う国連中心主義の政策に反し、国際政治の現実にそぐわないということが、今回の歴史的表決結果に何よりも示されているからであります。
 世界の大勢にあえてさからい、台湾の議席維持に狂奔して、中華人民共和国政府の正当性を無視し続け、その結果、みずからの不明を暴露し、国民を愚弄し、さらに中国とのみぞを深めたその政治責任は、いまこそいさぎよく具体的に負うべきことが、残された短い佐藤内閣の掉尾でなければならないと思うのであります。しかと御答弁を願いたいと思うのであります。
 佐藤総理が政治責任なしとするならば、一体、いかなる場合において政治責任はとられるべき性格のものであるか、その総理の見解を伺いたいと思います。総理の民主政治に対する所信をあらためて問い直さなければならないのであります。
 さらに加えて、さきの国会において、総理は、わが党議員の質問に答えて、政府は、台湾議席維持について他の国にこれを働きかけることはしないと明確に約束しながら、これをほごにし、今回の国連総会におけるわが国代表のいわゆる多数派工作は、まさにその狂奔ぶりは周知の事実となっているのであります。国会における言明をほごにしたその行為は、議会制民主主義の政治の原理を忘却した、きわめて危険なことであると思いますが、総理はいかがお考えであるか、明らかにしていただきたいのであります。
 私は、今回の総会決議が正しかったことを全面的に認めるとともに、いままでの中国封じ込め政策の破綻が新しい国際連合の幕あけを象徴するものであると思っております。
 この新しい局面に当面する問題は、中華人民共和国政府を中国を代表する唯一の正統政府であることを認めることではないでありましょうか。また、早急に日中両国間の戦争状態を終結するための外交に着手することではないか、総理の見解をこの際明らかにしていただきたいのであります。
 また、総理は、国連の意思に従うとは、中華人民共和国政府の黙示的承認につながると言ったが、はたしてそうなのかどうかもあわせてお伺いいたしたいと思います。
 また、佐藤総理は、その所信表明において、現在の国際秩序は第二次世界大戦終結前後の国際情勢を反映したものだが、もはやこのような戦後体制のワクの中では処理し切れない国際間の問題が生じていると述べております。この処理の認識は、私は正しかったと思うのであります。
 しかし、現実に総理が推し進めている内容は、依然として戦後の冷戦構造を認め、平和は力関係の均衡によって維持されるというものであります。もし真に総理が所信表明で述べた戦後認識を持っているとするならば、戦後のサンフランシスコ体制、日米安保、日台条約など、一連のわが国戦後体制を根本的に改める意欲と展望がなければならないことは当然であります。総理の明確なる所信を承りたいのであります。
 少なくとも今回の国連総会の表決結果は、単に中国の代表権問題のみでなく、誤った力による大国のつくり出しした戦後体制の崩壊であると認識すべきであると考えなければならないと思いますが、総理の率直な見解をお伺いしたいのであります。(拍手)
 わが国が、今回のアルバニア決議案の圧倒的多数による採択によりまして、対中国政策をどうするのか、明らかにしていただきたいと思うのであります。
 少なくとも、台湾が中国を代表する唯一の正統政府であるという立場は、総理は放棄されたものと思いますが、明らかにしていただきたいと思います。
 今日、日中問題の解決を妨げているのは、あげて佐藤内閣の責任であることは、まぎれもない事実であります。特に、今回二つの決議案の提案国となったことは、ますます日中国交回復を困難にせしめる結果をもたらしたのであり、もはや、中国側のことばを引くまでもなく、佐藤内閣の体制下においては不可能と思うのであります。いまだに総理が口先だけで日中問題解決を言っても、国民はもはやあなたのことばを信用いたしません。国民が真に佐藤総理に望んでいることは、日中国交回復、その問題以前に、佐藤総理のすみやかなる退陣であることを、総理はいまこそ十分に認識をしなければならないと思うのであります。(拍手)もし総理がみずからの非を認め、これに反省を加えようとするならば、すみやかに中華人民共和国を中国を代表する唯一の正統政府として認め、日中両国の戦争状態を終結せしめ、台湾は中国の不可分の領土であることを認め、さらに、日台条約を廃棄するという国会決議を成立せしめ、このもとに日中国交回復を実現することこそ、ここに明言をすべきであります。総理の所信をお伺いしたいと思います。
 以上、簡単ではございますが、私の緊急質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 大久保君にお答えをいたします。
 第一問、アルバニア決議案が可決されたことについての私の政治責任、これはどうか、こういうお尋ねであったように思います。
 御承知のように、多数の国が集まって国連ができ上がっておるのであります。この国連では、幾多の決議案を取り扱っております。それが多数であれば可決されるし、少数であれば否決される、これははっきりしたことであります。これが合議体の当然のことではないでしょうか。合議体というものはそうしたものなのだ。その少数派が力でどうしても押し通すといえば、そこに無理がくるのです。私は、さようなことをよく御理解いただいて、決議があったら、そうして成立したら、それに従うことこそ、国際民主主義じゃないかと思います。(拍手)私は、そのことをはっきり申し上げる。私は、案ができ上がるまでに、その過程においていろいろな案が出てくることは、これは当然だと思います。
 私どもの提案した案とアルバニア案とどこが違うのか、かように申しますと、中華人民共和国を国連に迎えることは同様であります。安保理の常任理事国に勧告することも、これまた同様であります。ただ違うのは、国府を追放するかしないか、その一点にあるのであります。私は、いままでの経過から、歴史的な経過を考えた際に、台湾を簡単に追放すべきではない、かように思うからこそ、さきの国連に対しても提案をしたのであります。(拍手)これが破れたからといって、私が政治責任をとるべきではない、かように私は思っております。
 また、多数派工作をしないと言いながら現にしたではないか、かような批判がありました。時間の節約上、この点では川崎君に詳細にお答えいたしましたから、御了承いただきます。
 第三のお尋ねは、国連の可決は、中華人民共和国の黙示的の承認につながるかどうか、こういう具体的なお尋ねであります。
 私は、国連において中華人民共和国が迎えられた、こういうことは、それなりに私は評価しておりますが、日本としての二国間の関係においては、やはり正常化する、そういう手続を経ること、その際に承認の問題が当然あるのだ、かように御了承をいただきたいと思います。
 また、国際認識は、これまた先ほど来川崎君に詳細にお答えをいたしましたので、これまた御了承いただきます。
 次に、中国政策として、中華民国政府との間の条約を破棄しろ、こういうような御意見であったと思いますが、私は、簡単に破棄される筋のものではない。これまた先ほど川崎君にもお答えしたとおりであります。私どもは、サンフランシスコ条約に引き続いて日華条約を結んで、戦争は終結したと確認をしたのであります。そういう状況のもとにあるのでございますから、今日破棄するとかいうような問題は起こらない。その条約のもとで、もうすでに二十数年経過しておる。いまさら破棄するというような問題はない。
 最後に、中華人民共和国政府を唯一の正統政府と認めよ、こういうような御意見でございます。これは、いままでの国連に迎えるというアルバニア案においてこれが決議されておるのでありますから、私どもも、さような線でこの中華人民共和国政府を認めざるを得ない、また、認めることが当然だ、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(船田中君) 次に、河村勝君提出、国連における中国代表権問題に関する緊急質問を許可いたします。河村勝君。
  〔河村勝君登壇〕
#14
○河村勝君 私は、民社党を代表して、本日、国連総会においてアルバニア決議案の採択が行なわれたことに関連をして、政府の政治責任並びに今後日中問題についてとるべき施策について、総理並びに外務大臣に対してお尋ねをいたします。(拍手)
 私は、まず、中華人民共和国が国連の大多数の意思によって国連に参加し、安保理事会の常任理事国の議席を得たことを、国際社会の将来のために祝福したいと思います。(拍手)
 それと同時に、われわれの反対にもかかわらず、あえて中国の国連参加阻止のための逆重要事項指定方式の提案国となることによって、日中正常化の道に新たな障害をつくったことをきわめて残念に思います。この際、政府は、みずからの政治責任を明らかにするとともに、従来の行きがかりを一切捨て去って、中国政策の大転換をなすべきことを強く要求するものであります。
 第一に、佐藤総理にお伺いいたします。
 われわれにとって、今回、政府が内外の世論に反し何ゆえにこの決議の提案国になったのか、その真意が全く不可解といわざるを得ないのであります。「現在の国際秩序は、第二次大戦終結前後の国際情勢を反映したものでありますが、もはやこのような戦後体制のワクの中では処理しきれない国際間の諸問題が生じております。」これは、本国会における佐藤総理の所信表明演説の一節であります。まことに同感であります。
 さらに続いて、「今日、中国代表権問題という形で国際社会の注目を集め、その解決が迫られております。このことは、いまや中華人民共和国が国際社会の枢要な一員であるとの認識が、国際世論の大勢となりつつあることを示すものであります。」と述べられております。
 逆重要事項指定方式の目的が、複合二重代表制によって国府の議席を残すためだというのは、申しわけにすぎません。国連内に両国が存立し得ないということは自明のことであります。しからば、これだけりっぱな認識をお持ちであるならば、何ゆえに中国の国連参加阻止の方策に加担をせられたのか。それは、総理みずから言われたただいまの国際世論の大勢に明らかに逆行するのではないのか、まず総理の所信を承りたいと思います。
 また、かりに、逆重要事項指定方式が可決されたとしても、それは、単に、当然来たるべきものを一年延ばすだけのことにしかすぎないことは、よく御承知のことであろうと思います。
 総理は、同じく所信表明演説の中で、「日中関係の正常化という課題は、国連での中国代表権問題以上の重要な問題であります。」と述べておられます。それならば、国連代表権問題を一年延ばしにすることによって、日中国交回復への道を打開することに役立つ何らかの情勢の変化を予想されたのであるかどうか、その点をお伺いをいたします。
 総理は、日中正常化の方策として「日中両国の間で相互理解と相互尊重の立場に立った新しい原則を確立するとともに、主体的、かつ広範な国民的合意を形成する」と言われました。それはそれで一つの見識であります。ところが、そのあとで述べられたことがどうかと申しますと、「今後とも通信、気象、航空、漁業等の諸協定の取りきめなど当面する諸案件について積極的な働きかけを行ない」と、とたんに全く次元の低いところに落ちてしまうのであります。一体、総理の言う新しい原則とはそもそも何であるか、それを国民の前に明らかにされたいと思います。
 日中国交回復の唯一最大のかぎは台湾問題であります。総理自身のことばをかりれば、避けて通ることのできない関門であります。それをお認めになりながら、総理が自民党の小坂氏の質問にお答えになったのは、「中国人同士の争いの結果の産物であるから、中国人同士の話し合いによって一つになってもらうことを望むほかはありません。」そういうことだけであります。それならば、避けて通ることはできない、だが、それを克服する方法は見当たらないから、手をつかねて自然に問題が解決するのを待とうということになるでありましょう。それでは、日中国交回復を願う大多数の国民の期待に反するものだといわざるを得ないと考えるが、所信をお伺いいたしたい。
 避けて通ることのできない関門をいかにして通り抜けるかと、その方策を策定するのが政治の役割りであります。総理は、新しい原則を確立するということを言われた。いま、日中国交回復交渉を進めようとするならば、政府が確立しなければならない原則は、それは、中華人民共和国は中国を代表する政府であり、台湾は中華人民共和国の領土の一部であるという基本認識を確立することであります。
 総理は、今回の国会で初めて台湾の帰属、戦争終結の問題に触れて、従来の見解を一歩進めたかに見えます。しかしながら、それもきわめてあいまいであります。総理の言によれば、両国政府とも「台湾は中国の領土であるといっており、カイロ宣言、ポツダム宣言の経緯からも、両政府がこのような立場をとることは、日本政府としても理解できるところであります。」また、「政府としては日華条約の締結をもって日中間の戦争状態を終結させたことは、周知のとおりであります。しかし、一方、政府としては、中華人民共和国政府が同条約を不法なものとして指摘していることも承知しております」。なぜ、いまごろまだこのようなあいまいな表現をとっておられるのか。すでに日華条約成立当時、国会における条約審議にあたっての政府見解として、カイロ宣言の解釈として、台湾は中国に返されたものだということ、それから、戦争終結の効果は、実際問題として中華民国政府の実権が大陸に及んでいないから、実効は本土には及んでいないということが明らかにされていることを、総理は御承知であるかどうか、お伺いをしたい。
 日華平和条約が、中華人民共和国が大陸を平定した後に、アメリカの強制によって締結されたことは、周知の事実であります。それが今日まで日中問題解決の障害となっていることは、きわめて残念であります。しかしながら、当時の吉田首相は、日中問題の将来を考えて、日華条約の適用地域を台湾、澎湖島に限定しただけでなくて、戦争終結の効果あるいは領土の帰属についても、及ぶ限りの弾力的な解釈を下していることは、いま申し上げたとおりであります。
 当時の情勢下においてしかり。世界の情勢は大きく変化をして、中国の領土と人民の大部分を支配する大陸中国が、国際社会に大きな役割りを果たすに至った今日、日華条約が存在する状態においてもなお、全中国の代表政府が中華人民共和国政府であり、台湾は中華人民共和国領土の一部であるとの認識に立つことは少しも妨げないと考えるが、総理の所見をお伺いいたしたいと思います。
 今回の国連における日本政府の敗北は、政府の重大な責任であると同時に、見方を変えれば、日中正常化のための政策転換の絶対の好機であります。国連中心の平和外交を取り来たった佐藤内閣としては、いままでの経緯にとらわれず、国連の大勢、世界の趨勢に従って、以上の原則に立って日中国交回復に邁進すべきではないか。もし佐藤内閣においてそれが実行不可能であるというならば、総理はいさぎよく退陣すべきであると考えるが、(拍手)最後に所信をお尋ねいたして、質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 政府の国連代表権問題に関する基本的な考え方は、しばしば申し述べるとおりでありまして、もうすでに御承知のことだと思いますが、中華人民共和国の国連代表権を確認し、かつ、同政府が安保理議席を占めることを勧告するとともに、経過的な措置として中華民国政府の議席を維持できるように措置することにありました。この措置は、国際情勢の現実をそのまま認めようとする考え方に立つものであります。そうして、この基本方針を推進するため、米国はじめ関係諸国と協議して、その共同提案国となったものであります。しかしながら、本日、アルバニア決議案の成立によりまして、中華民国政府は国連から脱退することとなったのでありますが、政府としては、このことによってアジアにおける緊張が激化することのないよう強く希望するものであります。
 政府は、中華人民共和国の国連加盟によって、日中正常化問題につき、さらに積極的に前向きに取り組む決意であります。その際、広く国民的合意に基づく原則を確立する必要があると思います。このような新しい原則は、申すまでもなく、主体的で、かつ広範な国民的合意の基礎の上に成り立ち、日中双方にとって受諾され得るものでなければならないと思います。政府としては、中国の平和五原則や日中議連訪中団の四原則等をも十分に参考にしたいと考えております。
 次に、日中正常化問題を進めるにあたって、台湾問題が大きな関門であることは申すまでもありません。国連を脱退した国府が、今後国際社会においてどのような動きをするかわかりませんが、わが国としては、同政府との歴史的関係をも踏まえて、かつ、日中関係正常化という基本線に立って、慎重に対処してまいる考えでございます。
 わが国が中華民国政府を中国の代表政府としてきたのは、それを合理的とする歴史的経緯があったからで、その歴史的経緯を踏まえ、国会の承認を得て日華平和条約を締結したのであります。政府としては、中国とわが国の間の戦争状態は、一九五二年の日華平和条約によって終結したという見解を一貫してとってまいりました。また、わが国は、サンフランシスコ条約において、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、また、日華平和条約においてこれを確認しております。
 政府は、あくまでも中国は一つであるとの認識に立っておりますが、この点に関する限り、中華人民共和国政府も中華民国政府も、同じ主張をしております。したがって、御指摘のように、日華条約があっても、わが国として一つの中国論を打ち出すことは、何ら差しつかえないと考えるものであります。(拍手)いな、積極的に、中国は一つであると、今日でも私は確信をしておるものであります。
 中華人民共和国政府との間の問題は、今後の国交正常化の過程で処理していくつもりであります。
 最後に、政府は、国連の決定を尊重し、中華人民共和国の国連参加を歓迎するものであります。政府のとった処置は国連で否決されましたが、結果的に見て、わが国の長期的な国益に沿うものであることを確信するものであります。御指摘のように、政府としては、国連での決定を踏まえ、これを契機に、中国との間の国交正常化交渉をさらに積極的に推進する考えであります。(拍手)
 なお、私の政治的責任についての御注意は、謙虚に承っておきます。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) ただいまの総理のお答えで尽きておるのでありますが、せっかくのお名ざしでありますので、一言申し上げさせていただきます。
 私は、今回、政府が提案いたしました両決議案が敗れ去ったことは、非常に残念である、また同時に、これを支持してくださった皆さんにまことに申しわけないと存じます。(拍手)しかし、私は、日中国交の正常化は、これは歴史の流れである、私はこれと真正面から取り組む、こういうことを申し上げておるのであります。
 今回、かような国連の決議がありました以上、さらに思いを新たにし、この決議を踏んまえまして正常化の道に邁進をいたしたい、かように存じます。(拍手)
 いろいろの御批判もありましょう。また、この決議案には敗れました、しかし、敗れたりといえども、私は、わが日本国は国際社会において信義を守り通した、(拍手)また、筋を通し抜いた、このことにつきましては、国民各位にぜひとも誇りを持っていただきたいのだということを申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
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#17
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後六時二十六分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        外 務 大 臣 福田 赳夫君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        外務省国際連合
        局長      西堀 正弘君
ソース: 国立国会図書館
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