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1971/11/11 第67回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第13号
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1971/11/11 第67回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第13号

#1
第067回国会 本会議 第13号
昭和四十六年十一月十一日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和四十六年十一月十一日
   午後二時開議
 第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員戸叶里子君逝去につき院議をもつて弔詞を
  贈呈することとし、その文案は議長に一任す
  るの件(議長発議)
 小平久雄君の故議員戸叶里子君に対する追悼演
  説
 日程第一 所得税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 農業共済再保険特別会計における農作物共済に
  係る再保険金の支払財源の不足に充てるため
  の一般会計からする繰入金等に関する法律案
  (内閣提出)
   午後二時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 弔詞贈呈の件
#3
○議長(船田中君) 御報告いたすことがあります。
 議員戸叶里子君は、去る七日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 つきましては、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈いたしたいと存じます。なお、この文案は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 つきましては、議長の手元において起草いたしました文案を朗読いたします。
  〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力し特に院議をもつてその功労を表彰されさきに物価問題等に関する特別委員長の要職にあたられた議員正三位勲一等戸叶里子君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
 この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
 故議員戸叶里子君に対する追悼演説
#5
○議長(船田中君) この際、弔意を表するため、小平久雄君から発言を求められております。これを許します。小平久雄君。
  〔小平久雄君登壇〕
#6
○小平久雄君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員戸叶里子君は、去る七日逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。
 ここに、私は、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)
 戸叶さんは、本年三月二日、この議場において婦人議員として初のはえある永年在職の表彰を受けられました。清楚、端麗なお姿で、あなたが議席に立たれたとき、いつまでも鳴りやまなかった祝福の拍手と、喜びにあふれたあなたの笑顔がいまもなおわれわれの耳目にはっきりと残っております。(拍手)
 しかるに、いまその人はなく、この議場で再びそのお姿を見ることはできません。まことに痛恨のきわみであります。
 戸叶さんは、明治四十一年、長野県松本市にお生まれになり、教育家として令名高い御両親の薫陶を受けて少女時代を過ごされました。
 昭和四年、同志社女子専門学校英文科を卒業後、朝日新聞の記者であった現参議院議員戸叶武先生と結婚し、家庭を守るかたわら、英語塾や女学校で教鞭をとっておられましたが、昭和十五年、夫君とともに大陸新報社の記者として上海に渡られました。この新聞記者としての大陸における御経験によって、戸叶さんは国際的視野を一段と広げ、後年外交問題で活躍する素地をつちかわれたことと存じます。
 昭和十七年、中国から帰国された戸叶さんは、東京で戦災にあい、苦難の数日を防空壕で過ごした後、夫君の郷里である栃木県に疎開されました。
 やがて戦争が終わり、惨たんたる戦禍にあえぐ不幸な婦人や子供たちを見るにつけ、戸叶さんは、これは何とかしなければという気持ちにかり立てられていたやさき、昭和二十一年四月、戦後初めての衆議院議員総選挙が行なわれることになりました。この選挙に、戸叶さんは周囲の人々から強く推され、ついに意を決して立候補されたのでありますが、選挙民の絶大な支持により、みごと最高点で当選し、わが国議会史上初めての婦人代議士の一人として政治の道へ第一歩を踏み出されたのであります。(拍手)
 かつて外交官になろうとの夢を抱いていたあなたは、議員活動の中心を外交問題に置き、終始、外務委員会の委員あるいは理事として活躍されました。そして、わが国の生きる道は平和外交と経済外交にあるとの信念に基づき、今日までの二十数年間、終始この道を歩み通されたのでありまして、特に、平和条約から日ソ共同宣言、安保改定を経て最近の沖繩、中国問題に至るまで、戦後のわが国外交史上の大きな問題の審議にあたっては、、本会議に、また委員会に、日本社会党を代表して論陣の第一線に立ってこられました。ときには、緻密な理論を展開して、じゅんじゅんと問題点を説き明かし、また、ときには、女性らしいことばづかいの中にも鋭い気魄をもって問題の核心をついて政府を追及し、その本領を遺憾なく発揮されたのであります。
 あなたの御活躍は、議員外交の面においても目ざましいものがあり、外国訪問は十数次に及びました。ことに、昭和三十四年、ワルシャワで行なわれた列国議会同盟会議においては、得意の英語を駆使して、世界唯一の被爆国の婦人の立場から、原爆を受けた若い母親が子供を産むべきかどうか深刻に悩んでいる事実を訴え、原爆反対を呼びかけられました。その胸迫る演説にしーんとしていた会場は、演説が終わった瞬間、割れるような拍手で埋まり、各国の代表に大きな感動と共鳴の渦を巻き起こしたのであります。(拍手)
 戸叶さんが心の底深く叫び続けていたことは、原爆の悲劇の中から立ち上がった日本民族は再び戦争をしてはならない、平和だけは命にかけても守らねばならないという一点であり、私は、ここに戸叶さんの無限の人間愛を見る思いがするのであります。(拍手)
 第五十五回特別国会の昭和四十二年二月には、本院の物価問題に関する特別委員長の重職にあげられました。委員長としてのあなたは、物価問題と消費者の保護に真剣に取り組み、早朝の魚河岸や青果市場、あるいは、深夜産地から直送されてくる現場をたずねるなど、流通機構の実情を視察し、各方面の意見を聞き、また諸外国の例を研究して、消費者保護基本法案要綱の委員長私案を作成し、これを委員会に提示されました。この案をもとに種々検討が加えられた結果、第五十八回国会に至り、自民、社会、民社、公明四党共同提案になる消費者保護基本法が成立する運びとなりましたが、その陰には、終始心魂を傾注された戸叶さんの力に負うところはかり知れないものがあったのであります。(拍手)
 戸叶さんは、日本社会党にあっても、中央執行委員あるいは政策審議会外務部会長につかれ、党務の処理に、政策の立案とその実現に、大いに精進努力され、また、昨年十二月以来、代議士会長の要職にあって、党内融和のかなめとして、かけがえのない存在となっておられました。(拍手)
 あなたは、去る三月、永年在職のゆえをもって、院議により、はえある表彰を受けられました。思えば、昭和二十一年の初当選以来今日まで、連続十一回の選挙戦を勝ち抜いて、ひたすら政治の道を直進された政治家戸叶代議士にとって、至上の栄誉であったでありましょう。(拍手)表彰に対するあいさつの中で、「私は、ひたすら誠実と努力をモットーに今日までまっしぐらに歩いてまいりました政治の道でありますので、今後もこの道を精一ぱい歩み、国民の負託におこたえしてまいりたいと思います。」と述べておられますが、ここに四分の一世紀の風雪に耐え抜いてこられたあなたの国政に対するひたむきな気持ちをはっきりとうかがい知ることができるのでありまして、あらためて私ども国会議員の責務の重さをひしひしと感じさせるものがあります。(拍手)
 かくて、本院議員として在職すること実に二十五年八カ月、この間、外交問題、物価問題あるいは婦人の地位向上等、わが国政と民主政治の進展に尽くされた功績はまことに偉大なるものがあります。
 戸叶さんは、新鮮な政治感覚と内外の政局に対する的確な洞察力を持つとともに、誠実と愛情にあふれ、しかも、いささかも功を誇ることのない、真に国民の代表者たるにふさわしい政治家でありました。
 大衆とともに歩んだ政治家戸叶さんは、いつどこへでも気軽に出かけ、だれとでも語り、そこから直接に大衆の要求するところを察知し、これを直ちに政治の場に取り上げられました。「政治は、男であれ女であれ命がけ、二十五年間女と思わずやってきた」と語っておられ、文字どおり人一倍に骨も折り、人一倍に働き通されたのであります。
 このように政治使命に徹し、夫君とともにオシドリ議員として同じ理想に向かって邁進してこられた戸叶さんも、家庭にあってはよき妻であり、よき母でありました。「意思のあるところ必ず道あり」を信念として、政治家としては、波乱に富んだ戦後政治史に大きな足跡をしるし、また、家庭人としても、夫君を助け、一男一女のよき母として、世の女性の模範でありました。
 戸叶さんの歩まれた道は、戸叶さんの卓抜な資質を物語るとともに、人間の努力のとうとさを教えているものと申せましょう。
 戸叶さんの胸中に最後まで去来していたのは、アジアの平和、進んで世界の平和実現への悲願でありました。なくなられる前日、「国連へ行って旧知のウ・タント国連事務総長と会い、死ぬならニューヨークで死にたい」と語り、また、武先生と「来年は二人で中国へ行こう、そして日中解決のため働こう」と約束をかわされたとのことであります。
 しかし、非情にも天はそのいとまを与えず、まくらべには、武先生のつくられた
 われ北京妻は国連相共に
 平和のために命捧げん
との詩が、いまやむなしく別れを告げるばかりでありました。
 あなたは、六十二歳の生涯をいまここに閉じていかれましたが、日光の連山は早くも雪化粧して、あなたのみたまを静かに迎えようとしております。冬を迎えて一段と美しさときびしさを増していくこれら山なみは、私にはあたかもあなたの生涯を象徴するかのように思われてなりません。
 内外の情勢が激しく流動する今日、とりわけ外交問題、物価問題等が喫緊の課題として政治日程の中心にのぼっているとき、あなたのような有為の政治家を失いましたことは、ただに日本社会党のみならず、国家のため、国民のため、まことに大きな損失であると申さねばなりません。(拍手)
 ここに、つつしんで戸叶さんの生前の功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼のことばといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#7
○藤波孝生君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、日程第一とともに、内閣提出、農業共済再保険特別会計における農作物共済に係る再保険金の支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案を追加して、両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#8
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案、農業共済再保険特別会計における農作物共済に係る再保険金の支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
#10
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長齋藤邦吉君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔齋藤邦吉君登壇〕
#11
○齋藤邦吉君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、最近における経済情勢にかんがみ、景気振興策の一環として、昭和四十六年分所得税について千六百五十億円の年内減税を行なおうとするものでありまして、そのおもな内容は次のとおりであります。
 まず、基礎控除、配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ平年分で一万円、四十六年分で七千五百円引き上げることといたしております。この結果、たとえば夫婦と子供二人の給与所得者の課税最低限は、四十六年ベースにおきまして、現行の九十六万円から百万円に引き上げられることとなります。
 また、障害者控除等のその他の人的控除につきましても、同様に平年分一万円の引き上げを行なうことといたしております。
 次に、税率につきましては、五〇%以下の適用所得階層について緩和をはかることとし、一〇%の税率が適用される所得階層を三十万円以下から四十万円以下に引き上げ、以下順次三分の一程度引き上げて、五〇%適用の所得階層を一千万円以下から一千二百万円以下といたしております。
 本案につきましては、審査の結果、去る九日質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して広瀬秀吉君、公明党を代表して貝沼次郎君、民社党を代表して竹本孫一君、日本共産党を代表して小林政子君は、それぞれ反対の旨を述べられました。
 次いで、採決いたしましたるところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、農業共済再保険特別会計における農作物共済に係る再保険金の支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、昭和四十六年度におきまして、北海道を中心とする冷害及び全国各地における集中豪雨、台風等により水陸稲の被害が異常に発生したことに伴い、農業共済再保険特別会計の農業勘定における再保険金の支払い財源に不足が生ずる見込みでありますので、一般会計から四十九億四千二百十二万円を限り、同勘定に繰り入れることができることとするとともに、農業勘定の積み立て金を同勘定の歳入に繰り入れることができることとしようとするものであります。
 なお、この一般会計からの繰り入れ金につきましては、将来、農業共済再保険特別会計の農業勘定におきまして、決算上の剰余が生じた場合には、再保険金支払い基金勘定に繰り入れるべき金額を控除した残額を一般会計に繰り戻さなければならないことといたしております。
 本案につきましては、審査の結果、昨十日質疑を終了し、本日採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(船田中君) 両案中、日程第一につき討論の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  〔広瀬秀吉君登壇〕
#13
○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。
 まず第一の反対理由は、今回の減税規模千六百五十億円が少なきに失したという点であります。
 いまや、日本経済は、昨年九月以降続いた不況段階が、今年六、七月にようやく回復のきざしを見せ始めたところに、八月十五日のニクソンのドル防衛政策、いわゆるドル・ショックの打撃によって不況は一そう深刻の度を増し、戦後その比を見ない不況状態におちいっているのであります。
 生産活動は減産強化など低迷を続け、企業の設備投資意欲は依然として後退を続け、景気の下ざさえをしてきた輸出は、課徴金、変動相場制移行などの影響を受け、ドル・ショック以後の輸出成約激減などにより大幅減退が予想されるに至り、ついには新規雇用の抑制、明年採用予定の取り消し、企業倒産、人員整理の段階に突入するに至ったのであります。まさに、四十年不況を上回る深刻な様相を呈しておるのであります。
 このような不況を回復する道は、ドル防衛、円切り上げ問題の発生した事情にかんがみ、民間設備主導型にたよることは許されず、財政主導型とならざるを得ないし、その一つは、社会資本の充実、公共投資の拡大であり、もう一つの方法は、大幅な大衆減税による個人消費支出の増大をはかって、需要を喚起する以外に道はないのであります。しかも、減税政策は、景気回復にとってきわめて即効力を持ち、そのゆえに景気浮揚効果も大なるものがあるのであります。
 したがって、政府が今日の不況の量的、質的深刻さを真に正しく認識したとするならば、本法案のごとき千六百五十億円程度ではなく、少なくともこの倍以上、年度当初の千六百六十六億減税と合わせて五千億規模の減税策を打ち出すべきであったのであります。四十年不況克服、景気回復のためにとられた四十一年度における減税規模は、自然増収に対して六九・七%であったのでありますが、今回のそれは、所得税自然増収見込み約七千八百億円に対し、年度当初の千六百六十六億を含めましても、わずかに四二・五%にすぎないのであります。
 経済企画庁の今月初めにおける月例経済報告作成の際、同庁参与中山伊知郎博士は、今回の経済不況はかつて経験したことのない、えたいの知れない化けものみたいな不況であり、長期化は避けられないから、政府もその覚悟で政策のかじとりをしなければならない、こう言って経企庁の認識の甘さを指摘し、大ハッパをかけたと伝えられるのでありますが、政府の今回の減税額千六百五十億は、このような認識の欠如からくる、まことに中途はんぱなお義理程度のけちけち減税といわなければなりません。(拍手)
 第二の反対理由は、本法案の内容についてであります。
 今回の改正案は、総理の指示に基づき、大蔵大臣のことばをかりれば、勤勉な国民に対するボーナスであり、景気浮揚対策の目玉商品ともいうべきものであります。したがって、真に景気対策としてその論理を貫徹するとすれば、減税による個人消費の増大、需要刺激拡大に焦点がしぼられるべきであったのであります。すなわち、最も消費性向の高い、そして納税者数の九四%を占める広範な低所得層への減税に重点を集中して減税を行なうとするならば、その減税効果も大きく実現されたでありましょう。そればかりか、同時に租税公平の原則をも実現するという一石二鳥の賢明な税制になったはずであります。
 しかるに、政府は、基礎控除、給与所得定額控除、配偶者控除、扶養控除の引き上げに最重点を置くことを怠り、高額所得層に最も減税効果の及ぶ税率改正に八百十五億を割り当て、低所得層に減税効果の大なる所得控除分に八百三十五億しか配分しないという誤りをおかしておるのであります。これは、まさに低所得層に薄く、高額所得層、局長・重役減税のそしりを免れ得ないところであります。(拍手)税の実質公平の原則をそこなうものであり、政策効果をみずから半減させるという、まさに精神分裂症的減税となっておるのであります。
 ちなみに、若干数字をあげてこれを見ますと、独身者で、給与収入五十万円のところで対四十五年度平年分減税額は四千四百円、一千万円のところでは三十一万九千円と、驚くべき上厚下薄を示し、夫婦、子二人の標準家族の場合、同じく給与収入百万円のところで七千五百四十円、一千万円では三十三万六千円、八千万円では四十七万一千円の減税額となっているのであります。さらに、四十三年度との対比で見ると、夫婦、子二人で百万円の給与所得者は、わずかに二万一千三百十円しか減税をされていないのに対して、五百万円で五十七万六千三百四十五円、一千万円で百一万一千百円、八千万円では実に三百四十二万八千円の大減税額となっておるのであります。かかる高額所得者への大幅減税分は、消費拡大には向かわないで、証券投資あるいは貯蓄に向かうのでありまして、景気回復効果は期待されないのであります。
 このようにして、納税者数の九四%を占める約二千五百万人を数える二百万円以下の所得者に約七百億円の減税、わずかに納税者の六%弱にしか当たらない二百万円超の所得者百五十六万名に対して約九百五十億円減税というような、まさに金持ちにはあたたかく、貧しい者には冷たい、さか立ち不公平減税の姿となっておるのでありまして、何としても、国民大衆の名において賛成できないのであります。
 第三の反対理由は、今回、減税を行なうことによって、四十七年度所得減税を行なわないという点についてであります。
 第二において述べたごとく、税の実質公平を無視した減税が来年一年間据え置かれることは、その矛盾と不合理を一そう拡大することになるばかりでなく、明年一ぱい引き続くであろう不況を回復するためにも、所得税減税は当然に行なわるべきものであります。特に低所得層中心の大幅減税を、課税最低減の引き上げ、低所得層のための最低税率の引き下げなどを通じて、税の公平を実現する緊急の必要があると考えるのでありまして、明年度所得税減税をほおかぶりをして見送る政府の態度に対し、猛省を促したいと思うのであります。(拍手)
 先刻も申し述べたように、今回の異常な景気落ち込みが本格的なスタグフレーションにならないように、需給ギャップの拡大を防ぎ、国際収支の黒字不均衡を解消し、日本経済を安定成長の軌道に乗せ、経済成長一点ばり、生産第一主義から、国民生活優先、福祉向上の政治実現のためにも、来年度も引き続き所得減税を行なうべきことを強く要求するものであります。
 最後の反対理由は、政府が、財源難を理由に、小幅減税、はんぱ減税の口実といたしておることについてであります。
 政府が、真に、税における公平の実現、所得再配分による国民総福祉実現に対する熱意と努力があるならば、高額所得者優遇と大企業、大資本擁護のために設けられた、悪名高き租税特別措置法の思い切った大幅改廃を断行すべきであったのであります。国税だけでも、四十六年度四千三百八十億円にのぼる特別措置法の半分に大なたをふるっただけでも、新たに二千億円をこえる所得減税財源は得られるのであります。
 たとえば、すでに役割りを終わった輸出振興税制、利子・配当所得の分離課税、社会保険診療報酬の特例、航空機用ガソリン税免税などの廃止、交際費課税の強化、金融機関の貸し倒れ引当金の積み立て率の半減等々をすみやかに行なうべきであり、これらの措置を断行することによって、所得税減税財源は余りあるものが得られるのであります。
 もちろん、一方において国際情勢の急転回、特に中国と米国との接近、国連の中国加盟実現、南北朝鮮赤十字間の友好を目ざす話し合いの前進などの情勢を踏まえての軍事予算の削減、第四次防の大幅削減による財政支出の縮減などを行なえば、超大型国債発行を行なわずとも減税財源にこと欠かないことを付言したいと思います。
 最後に、今回住民税減税が行なわれなかったことにより、所得税課税最低限との格差が一そう拡大したことは政府の公約違反であることを指摘し、明年度はこれを是正すべきことを求めるとともに、四十七年度における所得税減税は必ず実施すべきことを強く要求いたしまして、私の反対討論を終わる次第であります。(拍手)
#14
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず、日程第一につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#15
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、農業共済再保険特別会計における農作物共済に係る再保険金の支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
#17
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時三十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
ソース: 国立国会図書館
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