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1971/11/16 第67回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第14号
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1971/11/16 第67回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第067回国会 本会議 第14号

#1
第067回国会 本会議 第14号
昭和四十六年十一月十六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  昭和四十六年十一月十六日
   午後二時開議
 第一 法務省設置法の一部を改正する法律案
  (第六十五回国会、内閣提出)
 第二 天災による被害農林漁業者等に対する資
  金の融通に関する暫定措置法及び激甚(じ
  ん)災害に
  対処するための特別の財政援助等に関する法
  律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 川崎市のガケ崩れ実験に伴う惨事に関する緊急
  質問(石川次夫君提出)
 川崎市で起きたがけくずれ生埋め事故に関する
  緊急質問(松尾正吉君提出)
 国立防災科学技術センターなど四機関合同のが
  け崩れ実験現場の生埋め惨事に関する緊急質
  問(吉田之久君提出)
 日程第一 法務省設置法の一部を改正する法律
  案(第六十五回国会、内閣提出)
 日程第二 天災による被害農林漁業者等に対す
  る資金の融通に関する暫定措置法及び激甚
  (じん)災
  害に対処するための特別の財政援助等に関す
  る法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
   午後二時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 川崎市のガケ崩れ実験に伴う惨事に関する緊
  急質問(石川次夫君提出)
 川崎市で起きたがけくずれ生埋め事故に関す
  る緊急質問(松尾正吉君提出)
 国立防災科学技術センターなど四機関合同の
  がけ崩れ実験現場の生埋め惨事に関する緊
  急質問(吉田之久君提出)
#3
○藤波孝生君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、石川次夫君提出、川崎市のガケ崩れ実験に伴う惨事に関する緊急質問、松尾正吉君提出、川崎市で起きたがけくずれ生埋め事故に関する緊急質問、及び吉田之久君提出、国立防災科学技術センターなど四機関合同のがけ崩れ実験現場の生埋め惨事に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
#4
○議長(船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、石川次夫君提出、川崎市のガケ崩れ実験に伴う惨事に関する緊急質問を許可いたします。石川次夫君。
  〔石川次夫君登壇〕
#6
○石川次夫君 今回の川崎市に起こった災害によって失われたとうとい多くの人命、研究者、報道関係者、その他の犠牲者に対しまして、心から哀悼の意を表するものでございます。と同時に、心からなる憤りと、この犠牲を無にしてはならないという切なる気持ちを込めて、ここに社会党を代表し、緊急質問をするものであります。(拍手)
 だれしもがこの現場を見て直ちに痛感をしますことは、この事故はあまりにも起こり得べくして起こったということであります。周囲の三方ががけに包まれて、その中に関係者が追い込められたような形になって、しかも、うしろは池で、退避のしようがないという地形のまっただ中で実験が行なわれたわけであります。
 そもそも、ローム層のがけくずれのメカニズムというものは、力学的にはまだ十分に解明されていないというのが定説であるだけに、土砂の流出地帯には立ち入りを禁止をして、研究者や報道関係者には、安全地帯で観測をし、万一の場合の退避場所、退避方法というものを確立する必要があったのにかかわらず、単に警戒の笛を吹いたら逃げろというだけの指示で、しかも逃げ場がないという現場の地形から推して、あまりにも危険で、ずさんきわまる実験であったというほかはないのであります。
 予測では、土砂くずれに五、六秒要するはずのところが、一、二秒で大量に土砂が流出をしたという説明をされておるわけでございますけれども、最前線の一等先で死をもって撮影をされた報道陣の手によるとうといフィルムは、アイモの所要時間は、がけくずれが始まってから三・五秒を要しているということを示しておるわけでございまして、所要時間が予測どおりということにいたしましても、この犠牲は当然免れなかったのではないかと思わざるを得ないのであります。
 実験現場では、わずか三本のボーリングがわずか三メートルぐらいしか地質の調査をしておりません。時間、雨量、土砂量の関係を実験室のデータから安易に推定をいたしまして、いきなり大規模の現地実験に移ったということはまことに軽率で、新聞紙上で異常な専門家集団と断定されておりますけれども、弁駁の余地のないことは、現地を見れば一目りょう然であります。
 大体、生田遊園地の一角で、自然の景観を破壊するような実験がきわめて危険な場所で行なわれたわけでございますけれども、場所を選定をした責任もあいまいであります。
 しかし、問題は、個々の具体的事実に対する責任問題ではなくて、このような不用意な実験が、防災の目的をもって行なわれたものでありもしかもこれが、政府監督行政下の民間の事故、たとえば飛行機事故、鉄道事故というものとは異なりまして、政府みずからの手によって引き起こされた殺人行為であった点であります。(拍手)この政治責任をどのようにしてとるのでしょうか。
 前にも、自衛隊の猛訓練によりまして多数の犠牲が出た際も、現地の直接の責任者だけが罰せられた。そうして、防衛庁長官の進退伺いというものは握りつぶされたままに終わったわけであります。
 しかし、今回は、報道関係その他の部外者も犠牲に巻き込まれ、それも災害防止を目的とした政府の実験であっただけに、断じて責任の所在を現地にのみ転嫁して糊塗することはできませんし、あと始末の責任をとるのだというようなことを口実にして、事をあいまいにしてしまうということは許すことはできません。
 すでに平泉長官からは、責任を感じて進退伺いが出ているということでありますから、決断は総理の手にかかっておるわけであります。われわれは、科学技術庁長官の辞任を強く要求するものでありますけれども、総理の決意のほどを伺いたいと思うのであります。(拍手)このことがなければ、科学の先端をいき、人命尊重をうたい文句にしている科学技術庁及び内閣に対する国民の不信感は、ぬぐい切れないであろうということを警告せざるを得ません。
 しかし、私は、長官の辞任が行なわれたところで、内閣の責任が解消するものではございません。この事故の根は深く、政府の研究体制の不備から出ていると思われるからであります。すなわち、スケールの小さい実験をだんだんに大きくして大きな実験に移すという手順を踏んでおりません。予想外のことが起こるのだということを確かめるための研究であるのに、一定の成果をあらかじめ示そうとしておる政府研究機関の体制に問題があります。
 その対策としては、あまりにも少ない安全対策の研究予算を思い切って増額することが必要であります。たとえばローム層に限らず、シラスその他の特殊地域の予防研究、あるいは公害防止のための研究等の予算は、あまりにも軽視をされておるわけであります。安全対策の研究予算、また外部の人々も含めたその意見を十分に取り入れた研究体制でなければならないことでありますけれども、この貴重な実験を生かすために、今後この種の予算及び研究体制をどうするつもりかを、具体的に総理並びに大蔵大臣に伺いたいと思うのであります。
 この機会に、これに関連をいたしまして、科学技術行政について一、二伺いたいと存じます。
 先般の科学技術振興対策特別委員会におきまして、総理大臣は、予算が少なければ実験をやらなければよいという全くうしろ向きの答弁をされておるのであります。予算不足が当事者の弁明にならないことは当然でありますけれども、しかし、人命尊重の災害防止のための実験は十分な予算をとって、誤りなき用意のもとに積極的に行なわるべきであって、それこそが安全重視による人間尊重の政治というべきであります。かかる努力が今日まで全く不十分であったことこそ、総理として反省していただかなければならないことであります。総理大臣は先般の委員会における発言を撤回すべきであると思いますが、総理の所信を伺いたいと存じます。(拍手)
 最近の科学技術白書並びに科学技術会議の答申では、いずれも人間尊重を強調しておりますけれども、従来の科学の進歩が生産にのみ寄与して、人間疎外を強くしていっておる、このことは周知の事実であります。この反省から人間尊重をことさら打ち出しておると思われるのでありますけれども、これが単なる画餅にすぎないことは、以上述べた安全研究体制及び総理の委員会における発言を見ればよくわかるのであります。
 さらに、最近ドル・ショックによりまして、深刻な影響が日本の不況に拍車をかけておりますけれども、このときにあたって、日本が公共投資、福祉政策を怠り、労働者の低賃金、中小企業、農業の犠牲の上に立って、大企業本位の政策に終始をして、安い製品を世界じゅうに売りまくっていたという悪評は世界の世論になってきておりますことは、ことあらためて言うまでもないと思うのであります。この政治の転換をはからなければ、日本は世界の孤児になるでありましょう。
 しかし同時に、重要なことは、科学の分野で世界に対して日本は何らの貢献もせずに、いたずらに外国の技術を模倣して、改良開発にのみ力点を置いて、もうけ本位に徹しているということを世界の有識者、たとえば英国のロイアルソサエティー、アメリカの科学アカデミーなどが強調しておる事実を見のがすわけにはまいりません。技術導入が十に対しまして、技術の輸出がわずかに一というようなことも、このことを裏書きしておると思うのであります。
 ビッグサイエンスを促進すること自体、それが平和利用である限りにおきましては、その必要性をわれわれは否定するものではありませんけれども、同じ比重で、いやそれ以上の比重で、公害対策を含めての安全対策及び基礎研究に力を尽くしているとはとうてい言えないと思うのであります。
 たとえば、日本における研究費のわずか二八%しか政府は負担をしておりません。アメリカなどのように政府の負担が七〇%というところにまで及ばないにいたしましても、先進国、ヨーロッパなどのいずれもが、少なくとも五〇%が政府の負担になっておるわけであります。
 安全対策や基礎研究は当然政府の責任であります。なぜならば、資本主義社会では、民間の研究はどうしても製品化を急いで、利潤本位とならざるを得ないのでありますから、正しい意味での安全研究、基礎研究を民間にゆだねるわけにはまいらないのであります。どうしても政府みずからがこれを行なわなければなりませんけれども、この少ない研究予算ではその誠意を認めることはできません。
 正しい科学の発展があって初めて日本の繁栄と日本人のしあわせをもたらすことができるのであります。軍事第一主義から人間尊重の科学第一主義への政策の転換をはかり、世界の科学へ貢献することは、世界の孤児とならないための基本的な条件でもあると信ずるものであります。
 このために、GNPのわずか一・九%にすぎない研究費を少なくとも欧州並みの三%に早急に到達させるためには、政府の思い切った研究費、特に安全対策、基礎研究の増額を強く要求するものでありますけれども、この決意があるかどうか。あるとすれば、具体的な日程を示していただきたいと思うのであります。このことは、工業技術院を持っております通産大臣、予算を持っております大蔵大臣、そして総括責任者としての総理大臣に伺いたいと存じます。
 以上、申し述べたことの実現を通じて、初めて今度の実験によるとうとい犠牲者への手向けの回向がなされるものとかたく信じまして、政府の誠意ある答弁を強く期待をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、このたびの不測の事故によって、多数のとうとい人命を失ったことは、返す返すもまことに遺憾であります。なくなられた方々に対し、深甚なる弔意をささげると同時に、御遺族の皆さまに、国政の最高責任者として、心からおわび申し上げる次第であります。
 また、けがをされた方々に対し、この機会に心からお見舞いを申し上げます。
 わが国の国土の特質を解明し、国民を災害から守るための実験において、安全対策が十分でなかったばかりに、当事者ばかりでなく報道関係者にも犠牲者が出たことは、まことに申しわけのないことで、政府としては深くその責任を痛感しております。今後再びこのような事故を起こさないよう、一そう心を引き締めるとともに〜この種の実験研究等の実施にあたっては、その安全性を確保するよう万全の措置を講じ、科学技術の伸展に貢献し、国民福祉の達成をはかりたいと念願するものであります。
 次に、主管大臣の責任につきましてお尋ねがありましたが、私としては、各党並びに国民各界各層の御批判、御意見を謙虚に伺った上で、わが国の科学技術の進歩と国民生活の向上に資するという見地から判断し、すみやかに決定を下す考えでございます。
 次に、わが国の技術開発におきましては、基礎研究の分野が著しく立ちおくれているとの御意見でありますが、政府におきましては、これまで国民生活の向上、経済社会の発展のため、科学技術の振興に大いにつとめてきたところであり、私は、基礎研究の分野においてもそれなりの成果をあげているものと考えております。政府といたしましては、今後とも基礎部門、応用部門を通じ、科学技術の振興に一そう努力する方針であります。
 なお、研究開発を進めるにあたって、人間尊重、安全第一の立場を貫くことは言うまでもありません。
 また、御指摘の研究費の増額、研究体制の整備につきましては、政府として一そう前向きに取り組んでまいる考えであります。この点につきまして、過日の科学技術特別委員会における私の答弁が不十分だった、こういう御指摘でございますが、本日、この本会議で私の所信を明確にいたしておきます。
 なお、具体的な問題につきましては、それぞれの所管大臣からお答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#8
○国務大臣(水田三喜男君) 基礎研究費をもっと増額すべしという御意見でございますが、同感でございます。
 御承知のように、科学研究におきましては、基礎研究費と応用研究費と開発研究費のこの三つが調和をとって推進されることが肝要だと存じますが、日本の場合は、この二、三年、さっき総理が申されましたように、基礎研究費に非常に力を入れましたために、この三つの比重を見ますと、基礎研究費の比重が非常に高くなって、反対に、諸外国の現状に比べて、開発研究費の比重のほうが非常に下がっておるということが、あるいはこの科学研究費の中の構成上の欠陥ではないかと思いますが、いずれにしましても、問題は全体の研究費の額が多いか少ないかということであろうと思いますので、そういう点につきまして来年度の予算編成のときに十分考えたいと存じます。特に、御指摘の安全研究費につきましては、来年度予算編成過程において十分この問題は配慮したいと考える次第でございます。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#9
○国務大臣(田中角榮君) 研究開発は、国民福祉の向上と経済発展のため不可欠な要請でございまして、その振興は政府の重要な使命でございます。
 経済社会の要請に応じ、総合的で大規模な研究開発を、官民の能力を結集しまして推進をする大型プロジェクト制度の役割りは、ますます重要になると思われるのでございます。しかしながら、このような技術開発は、御指摘のとおり、基礎研究の積み上げによって初めて可能になるものと存ずるわけでございます。
 通商産業省といたしましても、工業技術院傘下の試験研究機関におきまして、基礎研究を鋭意推進をしてまいってきたわけでございますが、今後とも基礎研究費、安全対策費の増大をはかることによりまして、その責任を果たしてまいるつもりでございます。
    ―――――――――――――
#10
○議長(船田中君) 次に、松尾正吉君提出、川崎市で起きたがけくずれ生埋め事故に関する緊急質問を許可いたします。松尾正吉君。
  〔松尾正吉君登壇〕
#11
○松尾正吉君 私は、公明党を代表いたしまして、去る十一日、多数の犠牲者を出しました川崎市生田のがけくずれ実験による悲惨な事故について、佐藤総理に対し、重要な問題点をあげて質問を行ないたいと思います。
 まず、質問に先立ちまして、今回の事故で殉職をなされた方々、その御遺族の方々に対して、心から哀悼の意を表するとともに、負傷された方々に心からお見舞いを申し上げるものでございます。
 私は、事故直後現場に急行して、まのあたりにその惨状を見て、言いようのない恐怖と同時に、十五名の方々のとうとい生命が奪われたことに対する憤りを押えることができませんでした。二度と再びこのような悲惨事を繰り返してはならない、こういう気持ちで一ぱいでございます。そのためにも、総理の誠意ある答弁を期待するものであります。
 そこで、今回の大惨事を引き起こした総合研究について、その計画を見てみますと、この研究は昭和四十四年度から三カ年計画で実施しているものであり、特に今回の実験はその総仕上げ段階ともいうべき重大な野外総合実験であったわけであります。
 こうした重要な意義を持つ実験を行なうにあたっては、地質その他いろいろなことに通じている地元の市長や知事と緊密な連携をとる、そうして有益な助言、情報等を生かして行なわれれば、あるいは今回のような悲惨な大事故を防止することができたのではないか、その実験効果もより大きなものにすることができたのであろう、というのが遺族の方々並びに地元民をはじめとする国民の偽らない気持ちでございます。
 ところが、今回の実験にあたっては、幾つかの重大な誤りがあったということであります。今後のために、私は、一つ一つを究明して、誠意ある御答弁をお願いするものであります。
 まず、その一つは、この実験の規模、日程等について公には地元に何の通告もしないで行なった、こういうことであります。昭和四十四年九月十三日、国立防災科学センター所長から川崎市長にあてた研究協力に対する依頼文書によりますと、そのつど連絡をするということが明記して約束してあります。ところが、実験にあたっては何の連絡もなしに行なったのであります。これは政府が、地方公共団体を単に国の下部機構とする権力支配の姿である、私はこう断じたいのであります。国が地方公共団体を軽視し、押しつけ、住民無視の独善がなかったならば、今回の事故は避けられたのではないかというのが、国民の強い批判と激しい憤りであります。
 すなわち、川崎市では、昭和四十四年、国立防災科学センターから生田緑地内に実験場所の提供を求められたのでありますが、市当局としては、事故現場は生田緑地として市民の公園である、したがって、危険の伴う実験はやめてほしい、こう再考を求めたのであります。しかし、センターから再度の要求もありましたので、五項目にわたるきびしい条件をつけてこの実験を承認したものであります。その条件の一つに、「危害については、十分に注意し安全管理に万全の処置を講ずること」このように明記して許可を承認したものであります。
 このように、二年前に許可をとる段階では、そのつど緊密な連絡をとるといいながら、何の通告もなく試験を実施した。また、安全管理に万全を期せという市側の許可条件は完全に無視して行なった上の今回の大事故であります。
 また、今後もかかる実験は緊要でありますが、権力主義、独善主義、これらは断固改めて、どこまでも地域住民最優先のたてまえを堅持していかなければ、さらに次々と同様な惨事を避けることはできない、このように思うものであります。この点について総理、あなたの所信をこの際、国民の前にはっきりお示し願いたいと思います。
 次に、防災科学技術の研究を進めて、国民を災害から守ることは、政府の重要な使命であるはずであります。
 今回の川崎市における実験は、災害から国民を守るための予防実験であり、しかも研究の総仕上げであったという点からも、その意義はまことに重大なものがあった、このように思います。ところが、結果的には人災以外の何ものでもないというみじめな結果に終わったのでありました。その原因は無謀に近い計画上の欠陥にあります。
 すなわち、欠陥の第一は、実験計画書に保安に対する措置があいまいであり、内容を見ても、研究調査団の中に安全担当官が一人も配置されていなかったこと。さらに、数学の専門家を総責任者に任命をして総指揮をとらせたこと。第二に、二十メートルもあるがけの頂上からわずか七十メートルの地点に防護さくをつくったこと。その結果、取材に当たった報道班が、防護さくの下ならば安全だと考えるのは当然であったこと。第三に、がけから百メートルほど下の池のそばに観測小屋を設置したこと。第四に、がけ上から百メートルほどのところに人造池があり、周囲は斜面の雑木林で、緊急避難にきわめて不適当な場所であったこと等々、危険防止、保安面は完全に無視した無謀な計画であったことは明瞭であります。
 欠陥の第二は、現地の情報を一切無視して行なったことであります。すなわち、あの現場付近は、昭和三十三年の台風で六百カ所以上ががけくずれにあったのをはじめ、その後何回かの水害による山くずれで、土砂の堆積の著しい地点であったのであります。また、日大の地理学者籠瀬教授は、「われわれの実験でも、ローム層では土砂が水を含む限界に達すると、土砂はのり状になって新しい角度を求めてくずれるので、その広がる範囲は予想以上に広い。たとえば、高さ十メートル以上のがけだとすると、前方に向かって五十ないし百メートルの範囲、つまり高さの十倍程度に広がるものだ」と言っております。
 また、あの地形では、一たびがけくずれが起こればがけ下に崩壊土砂が襲ってくることは必然なことであり、実験小屋等をがけ下に置いてはならない場所であるということを、地質学者、評論家等は口をそろえて批判をしているのであります。
 そこで、総理、あなたにお伺いしたい点は、国民を守るための重要な実験であれば、最高責任者として、平泉長官が二年余りの試験結果の報告を求めるほかに、現地を視察して、計画に対する適切な指導、助言を行なうことはその責任上当然である、このように思うわけでありますけれども、この点について総理はどう考えられるか、お伺いをいたします。
 平泉長官が責任ある立場で現地を見、こうした声を聞いておれば、よもや、あの無謀な実験計画がそのまま実行されることはなかったであろう、こう思うのは私一人ではないと思います。あえて、避けることができた人災である、このように断ずるゆえんもここにあると思うのであります。事故が起きてから見舞うのではなく、なぜ事前に現地を見、現地のこうした声を聞かなかったのか、それさえ行なわれていたならば、あの惨事を避けることができたのではないか、こう思うと、まことに残念でなりません。
 今回の実験計画が準備段階において、すでに指摘いたしましたように多くの欠陥があったのに、その実験進行をすべて一部現場職員にまかせっぱなしであったことは、平泉長官が、いかに災害対策を軽視し、国民の災害に対する不安を無視し、科学技術庁長官という職責に対して怠慢であったかを物語る以外の何ものでもない、こう断ずるものであります。(拍手)したがって、私は、平泉長官の責任はまことに重大であり、総理は、すみやかに解任して国民に深謝すべきである、このように思うわけであります。(拍手)
 本日、社会、公明、民社三党は、三党国会対策委員長が連合して平泉長官の解任要求を竹下官房長官に申し入れましたが、総理の御見解を賜わりたいと思います。もし、このことについて弁明の余地がありましたら、ここで明らかにしていただきたいと思います。
 次に、今回の実験によって、土砂くずれに対して、この大失態、大惨事を招いたことは、国民に対して、単に防災だけでなく、科学技術の未熟さとともに、政府のたよりなさをまざまざと証明したものといわなければなりません。この原因については、佐藤総理、あなたが一番よく知っているはずであります。
 すなわち、防災に関する科学技術庁関係予算を四十四年度より本年度までの三カ年において見ますときに、予算要求額二十三億一千万円に対し予算決定額は二十一億五千万円であります。なかんずく、四十五年、四十六年度の二年間では、要求額十六億八千万円に対し決定額は十四億八千万円であり、要求額に対して二億円が削減されているのであります。このように、国民の生命、財産を守るための基本になる研究費が削減されているということは、国民に背を向けた姿勢であり、今回の悲惨な事故の本質的な原因となっていることを、私は指摘せざるを得ません。
 したがって、総理が、ほんとうに国民の生命を守っていこう、こういう心底からの念願があるのであれば、今回の事故を契機として、国民の生命、財産、国土を守るために、これら研究実験費を大幅に増額をして真の防災に取り組むことこそ、総理並びに国の責任であり、今回犠牲になられた方々にこたえるただ一つの道であろう、このように思うものであります。総理は、この重要な責任と課題に対して、どのように対処なされようとするのか、犠牲者の御遺族並びに国民の前に具体的に述べていただきたいと思います。
 次に、防災に対する今後の考え方をただしておきたいと思います。
 今回の実験が、その目的はきわめて重大な意義を持ったものであったにもかかわらず、実施にあたっての計画、最高責任者の怠慢等から、まことに遺憾な失敗に終わったことはすでに指摘したところでございますが、この種技術研究実験は、不測の災害事故が多発しておりますわが国の現状から見ても、一日も放置することのできない緊要事であると思います。したがって、現在相当広範に行なわれている地震対策実験等にも、すでに安全面での問題点が指摘されていることからも、今回の失敗の原因を究明した上で、あらためて実施していかなければならないと思うわけでありますが、この種の実験研究にあたっては、単に科学的データを求めるのにとどまることなく、地元代表、専門学識経験者等を含めた上で、さらに被害想定をした、被害の発生、救助、事後処理等、一貫した有機的、立体的実験研究に取り組んで、今回の事故による国民の不安を一日も早く解消していくことが必要であろうと思います。これに対する総理の考え方を明らかにしていただきたいと思います。
 以上、今回の事故は、あげて政府の独善、無責任、無謀な計画によるものでありまして、一般の災害とは本質的に異なることをこの際政府は強く銘記するとともに、反省を要求するものであります。
 したがって、以上の政治責任のたてまえから、今回殉職をされた方々並びに遺族に対する補償救済措置については十分に行なわなければならないことは当然であります。これらの見舞金、年金、補償金等についてはどうなるのか、また、あわせて、事故現場の復旧補償は、川崎市の許可条件に明記した五項目どおりすることは当然でありますが、この点についても総理から具体的に誠意のある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 松尾君にお答えをいたします。
 政府の行なった科学技術実験、特に国民を災害から守るための実験においてこのような事故を起こし、報道関係者をも含む多数のとうとい人命を失ったことは、まことに遺憾であり、御遺族の方々に対してはまことに申しわけないことであります。深甚なる弔意を表するとともに、重ねておわびを申し上げる次第であります。
 ローム台地におけるがけくずれに関する総合研究は、昭和四十四年度から継続して行なっておりますが、今回の実験を生田緑地で行なうこととしたことについては、川崎市当局の好意的な示唆があったようであります。しかし、事故を引き起こしたために住民の方々にも多大の御迷惑をおかけする結果となり、まことに遺憾であり、残念であります。現地におきましては、地元消防団等の御協力を得まして本格的な復旧作業に入っておりますが、復旧作業にあたっては、川崎市と十分な打わせを行ないつつ実施する方針であります。
 また、松尾君から、十分な事前対策を講じておれば、このような事故は避けられたのではないかとの御指摘がありました。政府としてもその点深く反省しているところであります。
 事故の原因につきましては、すでに専門家による本格的な調査が行なわれておりますが、状況から判断いたしまして、危険区域内における実験班以外の人たちの避難について徹底を欠いたことがあげられると思います。さらに、従来の土砂くずれの例から得ていた予測をはるかに上回る早さで土砂が流出したため、このような惨事に至ったものと考えられます。いずれにしましても、政府としてはその責任を痛感し、二度とこのような事故を起こさないよう厳に反省して対策を講じてまいる考えでございます。
 主管大臣の責任問題につきましては、先ほど社会党の石川君にもお答えいたしましたとおり、各界各層の御意見等を謙虚に伺った上で、わが国の科学技術の進歩と国民生活の向上に資するという観点から判断し、すみやかに決定を下す考えでございます。
 次に、科学技術振興に対する政府の熱意が十分でないことがこのような事故発生の原因であるとの御指摘でありますが、政府におきましては、これまで、国民生活の向上、経済社会の発展のため、科学技術の振興に大いにつとめてきたところであります。特に近年は、環境保全、都市問題など国民生活の向上をはかるという面における研究開発の推進に力を注いでおります。防災関係の研究につきましても、地震対策、雪害対策など、広範囲にわたり研究を進めておりますが、今後も、わが国が地形的、気象的に災害を受けやすい条件下にあるということを十分に考慮に入れて、一そう研究に力を入れていきたいと考えます。
 また、今回の実験は防災のため重要な意義のあるものであり、この失敗によって今後このような実験を放置してはならないとの御指摘がありましたが、私も同じように考えております。今回の実験は、近年土地開発に伴って増大しているがけくずれを防止するための研究の一環として行なわれたものであり、毎年多くの犠牲者を出している災害の根絶を目ざしたものであります。今回の実験により多数の死傷者を出したことは、まことに遺憾でありますが、今後はこのようなことがないよう安全確保に十分留意した上で、より一そう強力に各種防災対策のための研究を進めてまいりたいと考えております。また、これが今回の事故のとうとい犠牲者の御不幸を無にしない道でもあると考えます。
 なお、研究開発の推進にあたっての安全性の確保については、御指摘の関係各省庁、研究機関の協力関係の強化を含め、万全の措置を講じてまいりたいと考えております。もちろん、予算的措置も講じなければなりません。
 そこで、最後に松尾君は御指摘になりましたが、今回の事故は政府が全部責任を負うべき事故である。さような意味で、今回の事故に対する遺族補償につきましては、政府としてできる限りのことをする考えでございます。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(船田中君) 次に、吉田之久君提出、国立防災科学技術センターなど四機関合同のがけ崩れ実験現場の生埋め惨事に関する緊急質問を許可いたします。吉田之久君。
  〔吉田之久君登壇〕
#14
○吉田之久君 私は、民社党を代表して、過日、川崎市で発生いたしましたがけくずれ実験現場の生き埋め惨事に関し、主として総理並びに関係大臣に緊急質問を行なわんとするものであります。
 まず、質問に先立ち、一瞬にしてとうとい命を失われました十五柱のみたまとその御遺族に対し、衷心より哀悼の意を表し、また、負傷されました十名の方々の一刻も早き御全快をお祈り申し上げる次第であります。
 かく申し上げるわれわれ民社党もまた、今次災害とは無関係ではありませんでした。なぜなら、死線を越えて記録を写し続けられたNHKの受田カメラマンは、わが党の受田代議士の御子息であるからであります。
 私は、きのう、この受田勲君を渋谷病院に見舞ってまいりましたが、そのとき語られた同君の話は次のとおりであります。
 危険だなどとは毛頭思わなかった。もとより私たちはしろうとにすぎない。専門家の人たちが、幾らくずれてもここまでは来ないといって横に立っているのであるから、安心し切ってしきりにカメラをかまえていた。それにしても、なかなかくずれないので、雨降って地固まるとはこのことだよなどと冗談を言いかわしていたが、きょうじゅうには必ずくずしてみせると責任者の人たちが言うので、待機を続けた。生田遊園地の合掌づくりの家などを見に来ていた人たちも、水煙が見えるので何だろうと思ってやってきたと、報道陣の周辺を取り巻いていたが、少し暗くなってきたし、寒いから帰ろうと、その人たちが引き揚げていった直後、ピーピーという笛が鳴り響いて、地盤が異常な伸縮を見せてきた合い図だとの説明があった。しばらくして、大石室長が、地すべりが起こると叫んだので、ファインダーをのぞいてボタンを押した。そのとき、はっきりと土が開いてくるのを見た。やったと思いながらフォローを続ける。防護さくで必ずとまると信じて追い続けていたとたん、があんとからだを飛ばされた。たちまちどろの中に押しつぶされる。土が重い。早くとまってくれと念じた。息が詰まりそうになってもがいていると、第二波が来た。確かにこのほうがすごかった。右手で口のあたりのどろを払う。長ぐつのまま足が木の下にはさまって抜けない。同じくどろの中で隣の人がもがいているのに触れる。お互いに沈んでいく。右手だけがやっと地上に出たので、必死にその手を振ったとき、だれかに引き上げられた。そして、池の手前のほうまで歩いて、どたっと倒れて気絶した。
 右手以外の関節という関節に全部ギブスをはめられながら、受田君はこう語って、死んだ人たちがかわいそうだと泣いておられました。(拍手)
 総理、一体この事実を何とお聞きになりますか。いやしくもこれが防災と科学の名を冠した実験の結果といえるでありましょうか。このような無謀な、拙劣な実験が、かつて内外にあったでありましょうか。
 思えば、七月三十一日、盛岡上空で自衛隊機が全日空機と衝突して、罪なき百五十五人の人たちを地上にたたき落としたとき、国民は激怒いたしました。そして、その痛ましい犠牲者の遺族に対し、政府が一人当たり平均千百九十万円の補償額を提示したのは、この十一月十日であります。そして、その翌日、再び今回の惨事が川崎市で発生しているのであります。
 一体政府は何をしているのだ、どこまでたるみ切っているのかという非難と怨嗟の声は、まさにごうごうたるものがあります。(拍手)この国民的規模にまで高まっている怒りに対し、総理はどのような政治的責任をとろうとなさるのでありますか。あなたの人間尊重の一枚看板はいまや音を立ててくずれているこの現状に、どう決着をつけようとなさるのであるかをお聞きいたしたいのであります。(拍手)
 いまや世間では、科学技術庁と呼ばず、非科学技術庁と呼ぼうとのささやきまで出ている中で、政治責任を負うべきあなたの閣僚、平泉科学技術長官は、進退伺いというまことに自主性なき態度で対処しようとしておられることに、国民は強い不満を示しております。なぜ一国の大臣が、自分の出処進退を自分できめようとしないのかという憤りであります。すみやかに長官を解任されなければ、国民は今後、防災訓練や消防訓練にさえ完全にそっぽを向いてしまうでありましょう。事態はここまで深刻であることを承知されなければなりません。先ほどから総理は、各界各層、各党各派の意見を聞いて決断を下すと述べておられますけれども、すでに社会党、公明党、民社党の意見は明確に主張されております。直ちに御決断をいただきたいのであります。
 さらに、総理にお伺いいたします。
 あなたは、この事故に関連して、次のことを御承知でありましょうか。というのは、通産省の地質調査所が十四日に、神奈川県白山町で地震の実験を行なう予定でありましたが、今度の川崎の事故で地元の反対に会って中止しております。
 ところで、この実験予定地からわずか四百メートルの地下には横浜、川崎両市の水道トンネルがあることを、実験班は全く知っていなかったことがその後発覚したということであります。各省庁や自治体との連絡の不備も、ここまでくればまことにそらおそろしいものがあります。こうした官僚行政のセクト主義の上に組み立てられる寄り合い世帯の実験では、今後の事故は続発するばかりであります。
 一体、この宿命からどう抜け出せばよいのか。それは強力な、独立した国立防災研究所を樹立し、広く学者を糾合し、政府の専門家や技術者と一丸となって研究と実験に専念し、そこに積極的な予算が投入されて、成果の完ぺきを期す以外にないと思われるのでございますが、総理はどうお考えになりますか。予算が足りなければ、こんな実験はむしろしてくれないほうがよいという、捨てぜりふに似た科学技術委員会での先日の御答弁は、遺憾千万であります。
 次に、犠牲者の遺族に対してでありますが、国家は、万全の補償措置を講じて、遺族の将来の生活にいささかの影も生じないようにしなければならないと存じますが、この点、総理の御決意をお伺いいたします。
 次に、通産大臣にお尋ねいたします。
 通産省の地質調査所は、すでに地質図の作製等を終えられ、いわばこの実験ではすでに仕事は終わっていて、立ち会っているだけの立場におられました。にもかかわらず、最大の犠牲者を出しておられるのは、何が原因でありましょうか。あるいは実験そのものに対する第三者的な雰囲気が災いしたのではないかという疑問にお答えいただきたいと存じます。
 次に、建設大臣にお尋ねいたします。
 建設省土木研究所は、その実験の主体の一つでありましたが、幸い一名の犠牲者も出されませんでした。一説には、このメンバーは、いままでがけくずれのおそろしさを災害地でしばしば経験しているだけに、常に安全圏に位置していたのではないかということであります。もしそうだとするならば、そうした配慮をなぜ前もって他の関係者にも熟知させてくれなかったのであろうという恨みであります。この点、大臣はいかにお考えでございますか。
 最後に、総理、いまや、米ソの科学技術は火星に迫ろうとしているとき、顧みてわが国のこの現状を、私たちは悲しみます。しかし、これが現実である以上、われわれはもっと謙虚に自然と科学に対置し、国民の生活と生命に密着した地道な防災の究明に総力を傾け、より安全な、より完ぺきな研究を積み重ねて、災いのない福祉国家の建設に邁進することこそ、なき人たちにこたえるせめてもの償いであり、国民の不信を解きほぐすただ一つの方策であることを強く申し添えまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 吉田君にお答えいたします。
 まず、科学的な実験における災害につきまして触れられましたが、御承知のとおり、わが国におきましては、このような大規模な災害が発生した例はいまだありません。その点からも、返す返すも残念なできごとであり、政府として衷心から遺憾に存じている次第であります。
 海外では、御承知のように、米国のアポロ一号の火災事故、ソ連のソユーズ一号の地上回収の失敗、ソユーズ十号の地上復帰の帰還の失敗など、科学技術の発展の過程におけるとうとい事故が起こっておりますが、今後わが国におきましては、今回の教訓を生かし、安全対策に一そう配慮しつつ研究を進めてまいりたいと決意しております。
 国民を災害から守るための実験で、当事者ばかりでなく、報道関係者にも犠牲者が出たということは、まことに申しわけのないことであります。政府は、その責任を痛感し、今後再びこのような事故が起こらないよう一そう心を引き締めるとともに、この種の実験にあたっては、安全の確保を第一とするよう万全の措置をとる方針であります。
 また、科学技術庁長官の進退につきましては、先ほど来、私の考え方を質問者にお答えしておりますから、御了承いただきたいと思います。
 今回の事故は寄り合い世帯のセクト主義が災いしたのではないかとのお尋ねがありました。この点は、冒頭の説明にもあったとおり、四つの政府機関がそれぞれの専門に基づいて分担し、実験の指揮を防災科学技術センターの職員がとったもので、その間の連絡がうまくいかなかったということはございません。結局当初の予想を大幅に上回る急速な崩壊が発生し、これが大事故を引き起こしたものであることは御理解いただきたいと思います。
 具体的に防災研究所の設置の御提案がございます。これこそはわれわれが今後真剣に検討すべき事柄だ、かように考えますので、ただいまの具体的の設置御意見については十分検討してまいります。
 次に、先日の科学技術特別委員会における私の発言についてお尋ねがありましたので、重ねて御説明したいと思います。
 私は、事故の原因を予算が少ないことに帰するようなことがあってはならないと申しているのであります。予算の多少にかかわらず安全を第一にすべきであることを強調したいのであります。吉田君御指摘のように、今回のこのとうとい犠牲をむだにしてはならないと思います。政府としては、科学技術振興のための予算、特に国民の安全確保や災害防止のために、予算面においてもその充実に努力して、各種事故の絶滅を期したいと考えているところであります。
 今回の事故でなくなられた方々の遺族補償につきましては、政府としてできる限りのことをする考えでございます。
 最後に、吉田君から、この事故を深く反省し、科学技術の着実な進歩によって社会福祉国家の建設に邁進すべきであるとの御意見がありました。私も全く同感であります。今回の事故は、安全対策を十分に講じないままに実験を行なったことから発生したものでありますから、政府として深く反省しなければなりません。しかし、このことによってわが国の科学技術の進歩が阻害されるようなことがあってはならないと思うのであります。
 関東のローム斜面の問題についても、九州のシラス台地の問題にしても、その究明と対策はまだ必ずしも十分でありませんが、一方では、都市化の進展に伴って、土地造成はますます活発化しております。これに対処するためには、早急に新たな造成技術工事等の技術基準の確立が必要となっておりますので、政府としては、今後、安全対策を確保しながら、国民生活向上のために一そうの努力を重ねたいと念願している次第であります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣西村英一君登壇〕
#16
○国務大臣(西村英一君) 今回の事故によりましてなくなられた方々並びに御遺族の方々に、私も心から御弔慰を申し上げる次第でございます。
 このたびのローム台地のがけくずれに関する総合研究の一環として行なわれました人工降雨によるがけくずれの実験につきまして、建設省といたしましては、土木研究所から三名の職員と十五人の見学者が参加した次第でございます。
 御質問は、建設省の職員の方には一人も犠牲者が出ないではないか、また、日常の経験によって危険なことを知っておったのではないかというようなことの御質問でございますが、実は三名の職員の方は、二人の方はメモモーションカメラの観測に従事し、一人の方は山の上で計測の補助をいたしておったのでございます。それぞれ見学者の方々は建設省の担当の個所におりましたために、たまたま難をのがれたのでございます。その点、御了承をいただきたいと思います。
 今回のこの実験は、科学技術庁の国立防災センターが中心で行なわれたものでございまするが、このような大規模な、しかも危険を伴うであろうというような大規模な実験に対しまして、各それぞれの分野が安全対策、安全の措置を怠ってこのような事故が起こったということは、まことに遺憾千万でございます。建設省といたしましては、今後とも事業の実施並びに調査等につきましては十分この教訓を生かして、このようなことが再び起こらないようにするつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#17
○国務大臣(田中角榮君) 今回の生田試験地の実験で多くの犠牲者を出しましたことは、はなはだ遺憾なことでございまして、犠牲になられた方々に、心から哀悼の意を表する次第でございます。
 地質調査所といたしましては、地質特性に関する研究の一環といたしまして、地質構造と崩壊状況との関連を観察するために協力参加をいたしたわけでございます。そのために観察しやすい場所に位置をしておったわけでございまして、このことが多くの犠牲者を出す結果につながったわけでございます。
 このような事故を再び起こさないために、研究管理上、安全確保に一そうの努力を重ねてまいる所存でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 法務省設置法の一部を改正する法
  律案(第六十五回国会、内閣提出)
#18
○議長(船田中君) 日程第一、法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#19
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長伊能繁次郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔伊能繁次郎君登壇〕
#20
○伊能繁次郎君 ただいま議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、羽田入国管理事務所を廃止し、成田入国管理事務所を設置すること、苫小牧市ほか三カ所に入国管理事務所の出張所を設置すること等をその内容とするものであります。
 本案は、第六十五回国会に提出され、二月四日本委員会に付託、二月十六日提案理由の説明を聴取し、その後、今国会まで引き続き継続審査となってきたものであります。十一月十日質疑に入り、慎重審議を行ない、同月十二日質疑を終了いたしましたところ、塩谷委員より、施行期日のうち、「昭和四十六年四月一日」としている部分を「公布の日」に改める旨の修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、多数をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#22
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は、委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
#23
○議長(船田中君) 日程第二、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法及び激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
#24
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長中井徳次郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔中井徳次郎君登壇〕
#25
○中井徳次郎君 ただいま議題となりました天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法及び激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正する法律案について、災害対策特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近の災害における被害農林漁業者及び被害中小企業者の資金需要の増大に対処するため、資金の貸し付け限度額を引き上げるとともに、被害農林漁業者の負担の軽減をはかるため貸し付け利率の適用区分の改善を行なおうとするものであります。
 そのおもな内容は、次の通りであります。
 第一は、天災融資法における経営資金の貸し付け限度額につきまして、現行の二十万円を四十万円に、北海道におきましては現行の三十五万円を七十万円に、政令指定資金現行五十万円を百万円に、政令で定める法人に対する貸し付け資金現行二百五十万円を五百万円にそれぞれ引き上げ、また天災による損失額が平年度における総収入額の百分の三十以上である被害農林漁業者のうち、特別被害地域内における特別被害農林漁業者以外の者に対する経営資金の貸し付け利率を年五分五厘とすることであります。
 第二は、天災融資法における経営資金の引き上げに伴い、激甚災害法が適用された場合の被害農林漁業者に対する経営資金の貸し付け限度額を五十万円に、北海道におきましては八十万円に、政令指定資金を百二十万円に、政令で定める法人に対しては五百万円とすることであります。
 第三は、激甚災害法が適用されました場合の被害中小企業者に対する貸し付け金の貸し付け限度額につきまして、現行百万円を二百万円に、協業組合等の団体につきましては、現行三百万円を六百万円にそれぞれ引き上げること等であります。
 本年は、集中豪雨、台風、冷害等々災害が続発、本特別委員会におきましても、被災各地に委員を派遣する等、鋭意対策の樹立につとめ、今回改正されます諸点につきましても、その措置を強く主張してまいったところであります。
 本案は、去る九日内閣から提出され、同日本委員会に付託になり、十二日提案理由の説明を聴取し、同日質疑を終了、直ちに採決を行ない、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、災害対策特別委員会におきましては、本案に対して全会一致をもって附帯決議を行ない、今後さらに各種災害融資について金利負担の軽減措置等を講じ、被災者の救済に万全を期すべき旨、要請いたしましたことを申し添えておきます。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本案は、委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は、委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
#28
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 前尾繁三郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        通商産業大臣  田中 角榮君
        建 設 大 臣 西村 英一君
 出席政府委員
        科学技術庁研究
        調整局長    石川 晃夫君
        農林政務次官  伊藤宗一郎君
ソース: 国立国会図書館
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