1971/07/23 第66回国会 参議院
参議院会議録情報 第066回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号
#1
第066回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号昭和四十六年七月二十三日(金曜日)
午前十時十三分開会
―――――――――――――
委員の異動
七月二十一日
辞任 補欠選任
野上 元君 大矢 正君
―――――――――――――
出席者は左のとおり。
委員長 鈴木 一弘君
理 事
長田 裕二君
平島 敏夫君
矢追 秀彦君
委 員
木内 四郎君
剱木 亨弘君
源田 実君
津島 文治君
西田 信一君
須原 昭二君
辻 一彦君
中村 利次君
星野 力君
国務大臣
国 務 大 臣 平泉 渉君
政府委員
科学技術政務次
官 粟山 ひで君
事務局側
常任委員会専門
員 菊地 拓君
説明員
原子力委員会委
員 山田太三郎君
日本学術会議事
務局長 高富味津雄君
科学技術庁原子
力局長 成田 寿治君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○科学技術振興対策樹立に関する調査
(原子力開発に関する件)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣承認要求に関する件
―――――――――――――
#2
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。委員の異動について御報告いたします。去る七月二十一日、野上元君が委員を辞任され、その補欠として大矢正君が選任されました。
―――――――――――――
#3
○委員長(鈴木一弘君) 理事の補欠選任を行ないたいと存じます。委員の異動に伴い、理事が一名欠員となっております。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。それでは、理事に、大矢正君を指名いたします。
―――――――――――――
#5
○委員長(鈴木一弘君) 平泉科学技術庁長官及び粟山政務次官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。平泉科学技術庁長官。
#6
○国務大臣(平泉渉君) このたび科学技術庁長官を拝命いたしました平泉渉でございます。科学技術行政につきましては、政務次官をつとめましたこともございまして、若干経験がございます。今回、長官としての任を果たしますためには、委員各位の格別な御鞭撻、御協力をいただきたいと、よろしくお願いいたす次第でございます。申すまでもなく、最近わが国の経済社会の発展は目ざましいものでございますが、科学技術の発展がその有力な原動力であったことは言うまでもないことでございます。その反面、科学技術は、複雑な経済社会の場において十全の配慮をもってその適用を行なわなければ、われわれ人類にマイナスの効果を与えるおそれもあるものであります。今日、われわれが直面しております経済の本格的国際化、環境悪化等の諸問題に対処して、わが国の繁栄を維持し、国民生活の一そうの充実をはかっていくためには、先端技術の分野を中心にすぐれた技術の開発を推進するとともに、さきに述べました現代社会における科学技術の意義を十分認識して、人間尊重の基本理念に沿って真に国民福祉の向上に役立つ科学政策を展開していくことが必要であります。
このような観点から、私は、長期的な資源・エネルギー問題の解決に資するため、原子力開発を一段と推進するほか、わが国の未来を開く鍵ともいうべき宇宙開発、海洋開発等を国の総力をあげて推進するとともに、また、公害防止、自然災害の防止等、生活に密着した問題について、科学技術の面から適切な解決策を見出してまいりたいと考えております。
また、ライフサイエンス等、新しい科学技術分野の振興、各分野の科学技術の総合的推進をはかるため、研究開発の計画化、研究投資の増大、人材の養成等につとめてまいる覚悟であります。
以上の諸施策を推進するにあたりまして、委員の皆さまの一そうの御協力を重ねてお願いいたしまして、はなはだ簡単でありますが、ごあいさつといたします。(拍手)
#7
○委員長(鈴木一弘君) 次に、粟山政務次官。#8
○政府委員(粟山ひで君) 私、このたび科学技術庁の政務次官に就任いたしました衆議院の粟山ひでと申します。政務次官としての任務を懸命に果たすつもりでございますので、どうぞ当委員会の皆さま方の御指導と御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつにさせていただきます。よろしくお願いいたします。(拍手)#9
○委員長(鈴木一弘君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○辻一彦君 私、福井から参りました辻一彦です。福井は、御存じのように、原子力発電がいま非常に集中化しておりますので、非常に問題をたくさん持っております。そういう点で、住民の側から、一、二長官並びに担当の方にお聞きをいたしたい、このように思っております。
いま長官のごあいさつがありましたが、ちょうど福井御出身でありますし、政務次官も福島御出身ということで、いずれも原電の集中基地から出ておられる、こういうことで、非常にそういう点に大きい力点を置いておられるということは敬意を表したいと思います。
そこで、原電問題は、一つ一つについても、あとで御質問いたしたいと思うのでありますが、それぞれいま重大な安全性の問題がありますが、福井県も、若狭湾一帯におきましては、これが現在、敦賀と美浜にすでに原電が稼働いたしておる。さらに、建設中、あるいは将来の計画として九つの原電の建設の計画が進められておって、これが全部計画どおりに設置をされたとすると、六百万キロワットをこえる状況になるわけでございます。そこで、そういう一つの原電基地といいますか、集中化した中には、一つ二つの原電の発電所では起こらない幾つかの問題があると思うのであります。そこらについて一、二お尋ねをいたしたいと思うわけであります。もちろん、私たちは、社会党といたしまして、エネルギーの方向は、石炭から石油、石油から原子力へ、こういう方向は、これは肯定するものでありますが、安全性確保という観点で考えていきたい、こういうように思っております。
で、いまの福井県の原電の誘致の状況を申しますと、地元の市町村のほうでは、地方行政が困窮しているという点から、固定資産税がふえるというような、そういうねらいで原電を設置したい、あるいはもっと下の段階、部落の段階でまいりますと、ここでは橋がつくとか、原電の道路ができる、こういう点から原電を誘致しようという動きが非常に強いわけでありますが、肝心の安全性確保という点で非常に私は問題があるように思うわけであります。
で、第一に、こういう形で集中的に、若狭湾一帯、福島もそうでありますが、原電がずっとつくられていく、このような方向というもの、しかも、安全性や立地条件が十分検討されずに、固定資産税やあるいは道がつくと、こういう受けとめで進めていく、こういう方向というものが、日本の原子力行政の方向として、どう考えられておるのか、ここらを、まず、日本の原子力エネルギー、これの開発の方向として、お尋ねをいたしたい、このように思うわけであります。
#11
○国務大臣(平泉渉君) おっしゃいますように、福井県におきまして非常にたくさんの、関西電力及び原子力発電会社、双方の発電所が集中しておるわけであります。しかし、集中しておりますが、これは、たとえ一つでありましても、安全という問題については徹底した注意を払わなければならぬ、こういうわけであります。集中しておるから特にそこに危険が起こると、こういうことは、それはもちろん、そういう御危惧を抱かれることはわかるのでありますが、われわれの考え方としましては、たとえ一基であっても、これはもう十分に安全でなければならない、そういうわけでありますから、たくさん集まったから特にそこに問題が起こるということはないのであって、もちろん、いろんな意味におきまして、われわれとしては――福井県の場合、特にこれだけ原子力発電所が集まるということは、現在日本においては、もちろん最大であります。そういう意味におきまして、これは地元の方々とも十分協議する態勢はつくっていかなければならない。それから、いまおっしゃいます地元のいろんな不安感、こういったものを除去するためにどういう手を打っていったらいいか、これにつきましては、庁内各担当者に十分指示をいたしまして、いやしくも県の皆さまに御迷惑をかけるということのないようにしなければならないということで、十分連絡をとるということを指示いたしておるのでございます。また、県知事のほうからもいろんなお申し出もございます。敦賀の市長さん、美浜の町長さん、いろいろな方からそういう連絡が来ております。そういう点で、私は、現在の状況が特に集中しておるから安全上の問題が起こるということよりも、現在のところ、むしろ、最先進県として、ほかの県に陸続とこれからわが国の原子力発電が各地にできてくるわけでありますその最先進県として、地元との関係をよくするモデルケースにしていかなければならない、こういう決意を持っているわけでございます。
#12
○辻一彦君 まあ、先進県であると言われるのはたいへんけっこうな表現でありますが、しかし、私たちは、現在は二つでありますが、建設中のを入れれば三つ、四つ、それから九つのこの方向というものは、過度に原電がやはり集中しているといいますか、過密状況になるのではないかと、こういうふうに考えるわけですが、若狭湾になぜこれだけ原電が非常に集中したのか、たとえば、通産省では四十カ所に及ぶ全国のそういう適地というか、立地条件等いろいろ調べておられるということも聞いておりますが、そこらのデータをいろいろ検討されて、若狭湾がそういう条件にたいへん適しているので、いまつくられているのかどうか、そこらの点をお聞きしたい。#13
○説明員(成田寿治君) 大臣の御答弁をちょっと補足して……。まあ、若狭湾では、現在、原電、関西電力の六基の発電所が出ております。それから現在許可申請中が関西電力二基、美浜が一基、計三基、御指摘のとおりございます。それでこういう設置の許可にあたりましては、原子炉安全専門審査会、これは日本の安全性の最高の権威の方々に集まっていただきまして審査をやっておりまして、その際、その一基の炉の審査にあたりましては、周辺に原子炉がいろいろある場合に、その影響を十分考慮に入れまして、そして周辺環境に対して安全であるかどうかという、そういうことを十分検討して、確認した上で許可を出しておりますので、許可を得たものにつきましてはわれわれは安全上何ら問題ないというふうに考えております。ただ、いろいろ、炉の運転とか、あるいはその他の事情で、最近多少事故も起きておりますが、そういう点は、安全規則なり何なりで十分並行してやっていくようにという指導をやっておりますので、その点も問題はないと思っております。
それから、福井県になぜこういうふうに集中したかというお話でありますが、私たちは、まあ将来原子力発電炉というのが日本のエネルギー供給の大宗を占めていく、これは世界的な趨勢であり、また、資源のない日本としては最も必要な方向でありますが、エネルギー調査会の検討によりますと、昭和六十年度六千万キロワットの原子力発電が必要であるという中間答申も出ておりまして、これをどうやってこの狭い日本の国土で立地していくかということは非常に大きな問題だろうと思います。そういう意味で、福井県とか、あるいは東北の福島県等、いろいろ原子力委員会の予算等をもって従来から適地の調査をやっておりますが、そういう結果、福井県とか福島県とか、地盤の関係あるいは周辺の環境等から、非常に適地であるという結果も出ておりまして、そこに当初集中していくのは立地的には当然といいますか、地元が許すならばそこに集中していくのが一つの傾向だろうと思います。ただ、その際、集中したから安全問題を起こすということは絶対ないように、安全審査会その他運転の面で十分注意しておりますが、しかし、だんだんこれから六千万キロワットを立地していくためには、その他の地域にもだんだん広がっていかざるを得ないというふうに考えております。
#14
○辻一彦君 新聞で御存じのように、福井の大飯という地方、これは関電の原電誘致町村でありましたが、リコール運動が起きまして、ついに町長がおやめになったと、こういう動きがありますので、やはり若狭湾一帯には、必ずしも先進県的なそういう感覚だけじゃなしに、かなり原電の安全性に対する不安というものが広範にみなぎっているということが率直に言えると思うわけです。そこで、私は、通産省のほうで全国四十カ所から御調査になったそういう調査の資料等があるならば、あとでひとつ委員会に出していただきたいと思います。
それからもう一つは、こういう原電が集中する地帯というのは、私の聞いている範囲では、あまりないように聞いておるのですが、やはりかなり狭い範囲に原電が集中している。そこに起こるいろいろな問題についてのデータ等を、もしお持ちであれば、そこらについても、ひとつお伺いをいたしたい。このように思うわけです。公害でも、複合汚染という複合の公害がありますが、放射能も、一つの原電では許容量以下でありましても、それがたくさん重なった場合に、まだわれわれの科学の力では未知の、あるいはまた、まだまだ問題のある点があろうと思いますが、そういう点について何かデータをお持ちであれば明らかにしていただきたい、このように思います。
#15
○説明員(成田寿治君) 確かに、原子力発電の集中しているのは、外国でも日本ほど集中している傾向はないと思います。ただまあ、アメリカ等は非常に国土が広いのですが、イギリスは多少日本に近い傾向がありますが、日本ほどではないと思います。それで、通産省の立地調査のデータ、あるいは外国でどのくらいそういう地点に集中しているか、特に英国等で集中しているかどうかのデータは、あとからお届けいたしたいと思います。#16
○辻一彦君 そうしますと、その資料はあとでお願いするとしまして、〔委員長退席、理事矢追秀彦君着席〕
これから若狭湾のほうに、このままでいけば、必ず集中が起こりますが、一体どのぐらいのワクといいますか、どこらぐらいまではやっても安全であると、こういうことをお考えになっているのか、幾らでもできればいいというものでもなかろうと思いますし、そこらをどうお考えか、伺っておきたいと思います。
#17
○説明員(成田寿治君) 安全の審査の面からどのくらい――二百万キロワットまではだいじょうぶか、三百万キロワットになったらあぶないのか、あるいは一千万キロワットになったら非常にあぶないとか、そういうデータはもちろん意味ないんで、われわれは、むしろ、六百万キロワットになる時点の最後に出てくる新しい一基につきまして、そういう周辺の原子炉との関連を考えて、環境上だいじょうぶであるかどうか、あるいは一千万キロワットになる、そのつど加わってくる炉を一件ごとに審査して、安全がだいじょうぶであるかどうかという検討をやっておりまして、いまから抽象的に、一千万キロになったらあぶないかどうかという点は、ちょっとお答えできないと思います。#18
○辻一彦君 一件ごとに審査して、それが大体安全だということをやっていけば、たくさんの数が出てきますね。そうすると、その一つの問題じゃなしに、たくさん集まった場合に起こる、複合汚染的な、そういう問題について、これは具体的な体験というものがなければなかなかわからない面が多いと思うんですが、そういう懸念といいますか、危険性というものについて、こういうことについてお考えになっていないんでしょうか。#19
○説明員(山田太三郎君) ただいまの御質問でございますが、原子炉につきましては、もちろん、全部わかっておるとは申し上げられませんけれども、相当わかっておる分が多い。すなわち、放射能についてのことはわかっておる分が多いわけでございますが、安全性の問題は、平常時の問題と事故時の問題と両方ございます。平常時の問題につきましては、この放射能が出るもとが多くなればそれだけ加算されることは明らかでございまして、ただいま先生のお話の複合汚染というふうになるかどうかわかりませんけれども、多重加された汚染になることは明らかでございます。したがいまして、その数全部について考える場合には、いままですべてあるものを全部考えに入れて、それで平常時にどういうような放射能が出るかということを調べるわけです。それから事故の問題につきましては、この事故の確率というのは、もちろん、多くなればなるほど多くなるという概念的なことは言えますけれども、事故の確率が非常に小さいものですから、それが一つであろうが十であろうが、一けたぐらい違いましても、その確率が実際問題としてふえるということは実は考えられませんし、それから二つ、三つ、四つというような発電所が一カ所にあります場合に、一つの発電所が事故を起こしますと、それが連鎖的に事故を起こすというような状況は、現在の設計においてはございません。
〔理事矢追秀彦君退席、委員長着席〕
#20
○辻一彦君 非常に専門的なことになれば、私たちもなかなかわからないところもありますから、先ほどのイギリス等における資料等もお出しをいただいて、検討さしていただいて、さらにお伺いを次回にいたしたいと思います。そこで、冒頭にちょっと申し上げたんですが、原電を誘致する市町村の側では、固定資産税が入るとか、あるいは道ができ、橋がかかると、こういうところで非常に受けとめているんですが、一番肝心の安全性確保という点については、非常にPRといいますか、理解をされずにやっている場合が、わりに私多いように思いますが、ここらは、原子力の行政といいますか、そういうものを監督される立場で、この市町村側のそういう受けとめ方について、どういうようにお考えになっておられるか、この点、お伺いいたします。
#21
○説明員(成田寿治君) 原子炉の安全につきましては、そういう慎重な審査をやって許可等をしておりますが、確かに地元に対するPRが不足であるということは最近特にいろいろ痛感している次第でございます。そういう意味で、国家予算におきましてもさらに多くとって、十分PRを普及していきたい。それから事業者の面から見ましても、どうもPRが不十分であるという事業者もあるように見ておりますので、事業者に対しても十分PRの徹底あるいは地元に対する理解を深めるいろいろなことをやるように指導しております。そういう意味で、われわれは、許可した以上は、非常に安全である、あるいは許可された炉は非常に安全なように運用、運転していくという指導をやっておりますが、その点、地元に対して十分PRなり普及が足りないと非常に遺憾に思っておりまして、今後特にもちろん安全性の追求というものは非常に科学技術開発の面で大事でありますが、それと並行しまして安全性のPR、普及の徹底をはかって、そして地元の御協力を十分得るようにしていきたい、こういうふうに考えております。#22
○辻一彦君 私は、単に役所ベースのPRをしていけという意味じゃなしに、市町村のほうでは、さっき言いましたような条件の受けとめが多いので、やっぱり原電を設置すれば安全の重大な問題があるということを広範に住民等が論議ができるようなことをやらないと、何か、そういうことが素通りされて、税金が入るとか、あるいは道がよくなるとか、こういうことで受けとめられている場合がかなり多いので、この点をひとつ徹底をしていただきたいというふうに思うわけです。それから、まあ詳しくは私はまだ勉強をしておりませんが、ほかの国を見た場合に、原子力の開発というのは、国有もしくは一国の公社制といいますか、かなり集中した努力をしていると思いますが、その場合には、どうしても営利よりか、安全性優先、こういう原則をとることができると思うのですが、わが国の場合には九つの電力会社に分かれておりますし、それに原発その他を加えれば、十一−二ですか、それぞれが各地で原電を開発している。こういう点を考えると、どうしても営利が優先して、安全性というものがあとになりやすい懸念が、あり方として非常に強いのじゃないかというように思いますが、将来の方向として、こういう原電等は、国有あるいは公社といいますか、そういうような方向を原子力局としてお考えになる点があるのかどうか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
#23
○国務大臣(平泉渉君) ただいまの点でございますが、わが国におきましては、電力事業というのは民営ということでやっておりますので、原子力の問題につきましても、発電という観点から言いますと、日本原子力発電株式会社という特殊な存在、これを除きますと、やはり将来も民営でできるだろう、こう私は見ておりますが、ただ、その安全の問題につきましては、これは原子炉規制法、そういう法律もございますし、原子力基本法という基本的な法律もございますし、その安全という問題については、これは国として厳重な監視、厳重な法律、こういうことで、そのもとで管理をしていく、この点につきましては全く今後ともそういう方針でやっていくつもりでございます。したがいまして、安全管理という点につきましての国の責任というものは、事業主体が民営であれ、あるいは特殊な団体であれ、これは全く違いなく厳重にやっていくというつもりであります。#24
○辻一彦君 持ち時間が四十分ということでございましたので、二、三あとの問題に触れたいと思いますけれども、この問題は、先ほどお願いした資料の提出を待って、さらにまた次回の委員会で聞きただしたい、このように思います。第二は、先ほどから問題になりました個々の原電の安全性の問題についてでありますが、これは、御存じのように、福井は二つの原電が、敦賀と美浜が稼働して、しかも、いろいろな事故といいますか、そういうことで、四回、五回実質的に操業停止をして、いろいろやっているわけであります。そこで、この間アメリカの実験のこの結果というのは非常な影響を福井県に及ぼしておりますが、まず、アメリカに調査団を派遣をされたわけでありますが、そういう調査団としてどういう点を特に確認をされてきたのか、あるいは、向こうに行ってどういう方々と会って十分検討されたのか、そういう結果を少し伺いたいと思うのです。新聞記者の皆さんからちょっと聞いたのでは、なかなか向こうへ行って忙しくて、おもな人に会えなかったというようなこともちょっと聞いたのでありますが、これはほかで聞いたのでありますから、そこらの内容をひとつお伺いをいたしたいと思います。
#25
○説明員(成田寿治君) 専門家からなります渡米の調査団は、六月の八日から二十日間にわたりまして、アメリカの原子力委員会事務局あるいはアイダホの研究所、その他米国の原子力委員会の研究所、あるいは原子炉をつくっておりますメーカーの工場、研究所等、必要なところは、二十日間にわたっていろいろ視察し、調査し、また、今度の問題に関連しまして、実際携わった専門家とも意見を交換して、いろいろな情報を集めてまいったのであります。それで、原子力委員会に対して調査結果の報告がありましたが、そのおもな内容は新聞でも出ておりますが、アイダホでの実験は非常に小型な模型でやっておりますから、そのままでは実用炉には当てはまりませんが、性能の一部に有効でないものがあるという懸念が生じましたので、アメリカでは、安全第一という考えから、その懸念を実験その他によって実際に解消するまでは、安全審査、安全評価上、その懸念された部分の性能がない、働かないという非常にきびしい仮定をして、そのもとで、その基準で安全であるかどうかと確認するという一つの暫定指針というものを六月の十九日にアメリカの原子力委員会が出しております。それで、その内容についても、こちらでは十分向こう側の意見なり実際の研究を聞いてまいっております。
それから二番目には、日本で設置されておりますところの炉が数種ありますが、その同じ型の炉についてはアメリカでも同型の炉がありますので、そういう同型の炉については、アメリカの原子力委員会ですでにそのきびしい暫定指針を使いまして検討が行なわれておりまして、その結果、日本の運転中の三つの炉と同型のアメリカの炉については炉の運転をとめるとか、あるいは出力制限をするとか、そういう必要はないという判断をしております。それで、この調査結果に基づきまして、原子力委員会が七月の一日に委員長談話を発表しまして、アメリカの非常にきつい暫定指針に照らしても日本と同じ型の炉はアメリカで検討の結果問題ないということがわかったし、また、従来、日本の規制法による安全審査におきましては非常に過酷な条件のもとで自己評価を行なっておりますので、これに適合しておりますものにつきましては炉の停止とか出力制限をする必要はないという委員長談話、委員会の見解を発表して、そして地元の関係市町村会議等にもわれわれが行っていろいろ説明をし、また、担当官を敦賀、福島両地区に派遣して、地元に対して十分な事情の説明をやって理解につとめております。
#26
○辻一彦君 いまの内容は、新聞等でも、あるいは原子力委員長の談話として敦賀市等に通達されておる内容でも、大体存じておるわけですが、しかし、たとえば軽水炉の敦賀における例でも、冷却水の欠陥問題はそれとして、敦賀の例でも、排水からコバルト六〇がムラサキイガイから検出されておる、蓄積されておるという問題がある。それから燃料棒からヨード一三一が出ていたという例がありますね。あるいはタービン部分のすき間から、グリス油漏れで放射能が漏れておること、あるいは液体の廃棄物を入れる部分が二つ故障を起こした、こういうふうにして、四回五回運転を中止した事実が、福井の敦賀の原電の例にあります。また、美浜の原電も、過去四回似たような条件で運転の中止をいたしております。これらを見ると、なかなか確信を持って安全と言いがたいものがあるんじゃないか。まして、アメリカの調査をされた、そういう、ただ向こうのデータだけでこれで安心だこういうことでなしに、やはり日本独自の実験等によって、安全性をやっぱりきちんと確認をしてやるということが必要じゃないか。少なくもそれまでは、敦賀、美浜等における原電の操業、運転というものは、敦賀市長あるいは美浜の町長、その他あの地元の市町村長全部連名で要請を前にいたしておりましたので、運転はやっぱり中止をして、日本でしっかりした実験のデータが出て、確信を持てるというまで待つべきじゃないか、このように私は思うんですが、それらについて、いかがでしょうか。#27
○説明員(成田寿治君) 確かに敦賀の原電の炉等におきまして、いろいろ、事故とは言えないのでありますが、放射能が正常よりも若干高い値が出たとか、あるいは炉の運転にちょっとした問題があったとか、初めてのことでもありまして、かなり出た点は御指摘のとおりでありますが、ただ、その際の放射能が測定されて、いずれも許容基準から見ると非常に少ないという値で、十分その点は測定等安全を期してかかっておりますが、許容基準から見ると非常に少ない。ただ、若干、会社側がそれを隠して、あとでわかって、地元に不安感を与えたという点も非常にあるようでありまして、この点は今後も厳重に、多少正常でない事態が起こった場合は、すぐ地元に、こういうことがあるということを報告をして、それはこの程度であって心配はないとか、そういう説明を十分にやるようにという指導をしていきたいと思っております。それから、そういう問題が片づくまでは炉の停止をして、十分検討して、そしてそれでだいじょうぶであるという結果が出るまでは炉の停止をすべきであるという御意見これは一時アイダホの実験に関連して、そういう意見も関係市町村等からも出ておりまして、われわれも、原子力委員会におきまして、その点は安全審査会あるいは調査団の検討等によって検討して、その結果、さっき申し上げましたように、出力制限あるいは炉の停止は必要ないという見解を出しておるのであります。それで、さっき言いましたように、厳重な許可基準で許可をやっておりまして、そして運転についても非常にきつい保安規定等によってやっておりますから、問題の解決までは停止する必要はむしろない、これが今度の調査団の結果に関連しての原子力委員会の決定でありまして、この点は、この前も関係市町村長会議で十分説明をして、われわれは、その会議では、その炉の停止は必要ないという考えを市町村会議ではおとりになったというふうに了解しております。
#28
○辻一彦君 時間が非常になくなりましたので簡潔にお問いいたしますが、一つは、アメリカにおけるこちらから派遣した調査団の資料を、いままで出されておればいいんでありますが、もし出されていなければ、委員会によくわかるように御提出をお願いをしたい。で、あと二、三分しかありませんので、この問題はいずれ資料の提出を待って、さらに検討さしていただく、このようにさしていただきたいと思います。そこで、最後でありますが、福井県のほうから――県議会において七月七日に意見書を決議をいたしておりますし、その前に、六月二十四日付をもって、地元知事はじめ市町村長の要望事項というものが、これは当然そちらのほうに出ておると思うんでありますが、一々私その内容を読み上げる時間がありませんので、そういうものが出ているということを前提にしまして、そういう福井から出ております地元のこの意見書、県議会の地方自治法九十九条の二項による意見書、あるいは六月二十四日の要望事項について、どういうような見解をお持ちであるか、このことを、わずかな時間でありますが、一つだけ伺っておきたいと思います。
それから、それにつけ加えて、まあ私は、非常に原電が過密化している、集中化しようとしておる、そこで、少なくとも国の出先の専門の機関をこういう地帯に配置して、国としても十分な安全確保のために一そうの努力をすべきじゃないか、このように思いますので、その点についてもひとつ御見解を賜わりたいと思います。
#29
○説明員(成田寿治君) 福井県中川知事から地元の要望書が大臣に出されておりまして、われわれも十分検討しております。で、一つは、原子炉等規制法による許可に際して地元の意見を十分反映するように、法的に地元の同意とかあるいは県の許可制度をとってもらいたいという御意見は、これは従来からいろいろ地元から出ている御意見で、われわれも検討してまいっておりますが、さっき言いましたように、科学技術庁の原子炉等規制法による許可というのは安全を主体に見ておりまして、安全審査というのはやはり最高の権威者を集めて中央で内閣総理大臣の責任のもとに一元的に処理するほうが適当であるという考え方に基づいて、この政府の一元的な許可制がとられておるのであります。それで、実際は、われわれは許可をするに際しまして地元府県あるいは関係市町村その他漁業組合等の意見は自主的に十分そのつど聞いてまいっております。それから、法律的には、電源開発促進法というのがありまして、これによって発電所の設置を計画にのせて決定する際は、これは法律的に知事の意見を聞くことになっております。この面で、法律的に地元の意向が反映される体制が、まあ現在とられておると思います。ただ、原子力発電所をつくるということは地元に対して非常に重要な問題でもありますし、また、地元の強い反対があっては実際はつくれないという事態もありますので、われわれも地方公共団体の体制整備を待ちまして、この問題は法律的にもいろいろ問題がありますが、前向きにいろいろ検討してまいりたい。これは、安全を見ている科学技術庁の問題でもあると同時に、それ以上に、電気事業法を持っておりますところの通産省の問題でもありますので、通産省とも十分検討して、地元の意見が制度的に反映する体制というのをどうやって考えていったらいいか、前向きに検討したいと思っております。
それから放射線の監視体制の整備という点も要望が出ております。これは、福井県の環境安全管理協議会が組織されておる等、かなり御要望のような体制ができておりますので、この点、十分それをうまく運用して、地元の不安の解消につとめてまいりたい。
それから安全性の確保、これは絶対必要であるから十分やれという意見、これは、御承知のように、原子力発電の安全性は非常に大事なことでありますので、基礎研究等は原研が中心に実施しておりまして、今後さらに安全性の予算もふやしまして、十分強化していきたい。
それから、PRにつきましても、先ほど御指摘のとおり、国として積極的に対処していきたいというふうに思っております。
それから、原子力センターをあの地区につくってくれという要望もありまして、これはいろいろ非常に金もかかることでありますが、事業者その他といま検討しておりまして、やはり安全性のPR、原子力発電に対する地元の理解を高めるという見地から、何か具体的な構想をつくれないか、いま事業者、県等とも検討を進めてまいりたいと思っております。
それから発電所所在の市町村に対する財政措置の特例の要請につきましては、これは原子力発電所の立地を円滑に進めていくためには非常に効果的なことであると思いますので、関係省庁と、いまいろいろ協力しまして、何らかの形で実現につとめたいと努力しておる次第でございます。
#30
○国務大臣(平泉渉君) いま原子力局長から担当局長として御説明を申し上げたわけでございますが、全般的に見まして、この御要望は相当昔から長期間にわたりまして出ておるわけであります。だんだん追加もございますし、いろいろ内容のこまかいこともございますが、大筋においては地元の一貫した御希望である、こういう点を、私といたしましては、担当局長以下関係者に、これはもう一貫して出ておる御意見であるから、十分前向きで建設的御意見として検討しなければいかぬという指示をいたしております。#31
○矢追秀彦君 まず最初に、最近続発をしております事故について報告を願いたいと思います。まず一つは、原研の火災と、それから原電の被曝事故、これについて御報告をお願いします。
#32
○説明員(成田寿治君) 原研の火災について概要説明をいたします。七月十三日の午前七時三十分ごろ、原研の廃棄物処理棟の南側の廃液処理設備近傍より発煙しているのを警備員が発見しまして、警備詰所へ通報いたしました。管理区域内の火災でありますので、非常事故措置規程に基づきまして、直ちに非常体制を設定しまして、防護隊による消火作業が行なわれたのでございます。この結果、処理のために搬入されました放射性廃液の入っておりました二十五リットルポリエチレン製のびん百六十本のうち約五十本が、また、一リットルポリエチレンびん四本、それから二十リットル陶製、せともののびんでございますが、五本、それから廃棄物処理棟の床の塗装の一部、それから交換用フィルター等を焼損したのでありまして、午前八時十分に鎮火いたしたのであります。
放射能汚染は、屋内空気で一CC当たり一〇マイナス一〇乗マイクロキュリー、床面積で一平米当たり一〇マイナス五乗マイクロキュリー以下と、ほとんどバックグラウンド程度、一般環境程度でありまして、屋外の汚染とか人身被曝も少なかったのであります。これが原研の廃棄物処理場の火災の経過でございます。
それから、原子力発電所の東海発電所の被曝事故が七月の十五日に起きたのが最近わかったのでありますが、その概況を申し上げます。
七月の十五日に、日本原子力発電株式会社東海発電所におきまして、制御棒の付属装置の保修作業中に三人の従事者、作業員が被曝しているという事故が発生したことがフィルムバッジの精密測定の結果、七月二十日に判明したのでございます。
作業員の被曝の程度は、三人でありますので、一人が九・四二レム、それから一人が七・八〇レム、それから一人が二・九八レムでありまして、これは法定の、法律による従業員の許容被曝線量である三カ月三レムという基準をこえておるのでありますが、この三人の被曝作業員がこれまで受けた合計値は、今度受けたこの九・四レム等を加えました集計におきまして、これは法令上の許容集積線量以下であるということであります。
被曝従事者につきましては、十九日に血液、尿等の医師による検査をやって、その結果、三人とも異常はないということに、いまのところ、なっておりますが、万全を期する意味で、その作業員は原子炉の運転業務から配置がえしております。また、今後当分健康診断を続けさせることにしております。それで、この事故は建屋内での作業中の事故でありますので、外部に対しては、放射能その他の影響は全くないということでございます。
#33
○矢追秀彦君 最初の原研の火災の原因と見られておる入れものの問題ですが、はたして、こういうポリエチレンのびんに入れておくことがいいのかどうか、その点はいかがですか。#34
○説明員(成田寿治君) 放射性廃棄物の容器は、その放射能の強さ、どの程度の放射能であるか、あるいは内容の、中身の性状等に適したものが使用されております。一般に高いレベルの廃棄物は放射線の遮蔽が必要であること、あるいは放射線劣化のおそれがあることから、ステンレスとか、コンクリートなどの容器が用いられておりますが、中レベルあるいは低レベルの廃棄物の場合は、ポリエチレンあるいはガラス等の容器が使用されております。ポリエチレンのびんは、熱には弱い点と、だんだん年月の経過とともに劣化するという点を除きますと、こわれにくい、あるいは取り扱いやすいという点から、ガラスびんや、せともののびんよりもすぐれているということになっております。こういう見地から、原研では、中レベルあるいは低レベルの廃液は、酸、塩基等の水溶液廃液と、ケロシン等の有機溶液廃液に区分しまして、化学反応、ポリエチレンびんの劣化等のおそれのないものは、ポリエチレンびんを使用することが放射線安全取扱手引で定められております。なお、ポリエチレンを劣化させるおそれのあるものについてはガラスびんを使用することになっております。そうして、放同協等、所外から委託されたものについても、これに準じた扱いになっておりますので、ポリエチレンの容器を使うということは、保安規定、手引上十分明記されておるところであります。
#35
○矢追秀彦君 発火の原因については、まだこれから調査されると思うのですけれども、もしポリエチレンがいろいろな条件で化学反応を起こして発熱をして、くすぶった、こういうふうに考えられるならば、この容器という問題もこれから検討をされると思うのですけれども、その点はいかがですか。#36
○説明員(成田寿治君) 事故の原因につきましては、事故収拾後、直ちに原研に原因調査委員会を設置しまして、所外研究所等の外部の専門家の協力を得まして原因究明につとめております。で、いままでのところ、まだ確定的な原因は不明でありますが、現場の検証をしました結果によりますと、事故発生までの経緯、あるいは現場にあった放射性の廃液等の内容、性状等から、いろいろな原因、たとえば漏電じゃないかとか、あるいは外部からのものの出火等じゃないかとか、そういう点をいろいろ検討した結果、そういうものではないという点が大体わかっております。そうしますと、その原因は、そこにあった三つの種類の入れもの、廃棄物の容器に原因があるのではないかということになりまして、この三つの種類のうちで、いま原研から出されました一リットルのポリエチレンびんに入っている炭化ウランをケロシン漬けにしておった水の混合液が何らかの原因で自然発火したのではないかという大体推定になっております。で、この炭化ウランの廃棄物につきましては、この取り扱いにあたってのいろいろな内部の配慮、あるいは受け渡し時の作業員の連絡等が、遺憾ながら必ずしも安全上十分でなかったのではないかというふうに考えて、この点、今後さらに厳重に調査をして、そうしてこれが確定したら、厳重な対策をとらせたいと思っております。
#37
○矢追秀彦君 その調査の結果を見なければわからぬと思いますが、前にも、ポリエチレンの何か破裂した事故が、四十四年四月ですか、あったと聞いておりますけれども、この際、いろいろな原因の点の解明は別として、やはりステンレスのタンクに入れるとか、コンクリートで遮蔽するとか、あるいは中レベル、低レベルのものであっても容器については検討すべきだと思うのですが、その点はいかがですか。#38
○説明員(成田寿治君) この程度の低レベル、中レベルのものは、ポリエチレンの容器で、保安規程の手引きどおり、十分安全上問題ないというふうに考えておりますが、ただ、さっき言いましたように、ケロシン漬けの廃棄物、炭化ウランに水を入れて、そして密閉したままで置いた。せんを抜いて自然に外に出るようなかっこうなら問題なかったと思いますが、密閉して水を入れて、それで内部の圧力が高くなりまして、それでポリエチレンが破裂して、そしてその際、摩擦エネルギーといいますか、そういう面から何か自然発火したんじゃないかというふうに考えられますので、ポリエチレンの容器が不適当であったというよりは、ポリエチレンに廃棄物を入れて、そこに従業員が水をまぜて、そしてせんをあけておくべきであったのに、密閉したままにしておいたというところに、廃棄物の処理上の手引どおりやらなかったという処理上のミスがあったのではないかというふうに考えられております。そういう意味で、作業員が手引どおりやらなかった、また、そういう保安上の規則を十分作業員に徹底させてない管理者の管理体制等に問題が、それが事実なら、あるということになりますので、今後厳重な対策、今後二度とそういうことのないような措置をとりたいと考えております。
#39
○矢追秀彦君 その作業員の方は、そういう化学反応のことが十分わかった人間がやっておるんですか。ただ運搬をしたり、いろいろなことをする人なんですか。その点いかがですか。#40
○説明員(成田寿治君) その取り扱い作業員は非常に従来から、なれておる人でありますが、ただ、そのびんを渡した相手の人が十分なれていない人で、その人に密閉しない状態に、あいておくようにということを、まあ言わなかったのじゃないか。そういう意味では、なれている人に手落ちがあったんじゃないかというふうに考えております。#41
○矢追秀彦君 結局、事故というのは、分析をすれば、たいてい、そういうふうなミスというか、やはり起こるべくして起こるということになっているわけです。いま言われたように、相手の人がそういうことを承知していないとなれば、そういう人であれば、そういう点をきちっと、渡した人は徹底をしなければいけないと思うんですが、そういう点、結局、その教育体制といいますか、管理というより、私は教育だと思いますが、そういう知識の乏しい人にそういうことをさせるという体制にも問題があると思いますが、次の原電の事故も同じことが言えると思いますが、結局、そういった放射性物質を扱う、そういう原研あるいは原電の内部の従業員に対する教育指導という面について抜本的に考え直してもらわなければ、そういった事故はあとを断たないと思うんですが、その点はどうですか。#42
○説明員(成田寿治君) 御指摘のとおりでありまして、まあ保安規程なり手引が安全上りっぱにできておっても、それを扱う人がそのとおりやっていないというところに、今度の問題の原因があると思います。そういう意味で、仕事が非常にルーティンワークになって、仕事になれてきますと、とかく規則どおりやらないということが、今度の事故におきましても、あるいは原電の事故についても言えることでありまして、そういう意味で、ことに放射能は目に見えないという点があって、とかく油断しがちである、そして、こういう事故になるということ、そういう意味で、保安規程を十分従業員に徹底させる教育体制にやはり一番の問題があったんじゃないか。今後は、原研、原電のみならず、その点は、発電所を含めまして、原子力事業者全般に対して保安規程を順守するような教育体制の徹底を厳重に要請してまいりたいと考えております。#43
○矢追秀彦君 いまの問題ですが、また容器の点に返りますけれども、そういうふうなことも含めた上で、この容器を考える必要はないか。一々あけなくても自然にあくような容器を考える必要ですね。圧力がかかるとか、そういう容器の構造を、ポリ容器はそのまま使うとして、そういう事故の起こらないような容器の開発は考えておられますか。#44
○説明員(成田寿治君) まあ、水を入れた場合には、そういう、せんをあけなくても、おのずから密封状態がなくなるような容器の開発が必要だろと思います。そういう意味で、原研等にも十分今後研究をさせたいと思います。#45
○矢追秀彦君 次に、原電の事故の件でございますが、私はここで三つ問題点を指摘したいのですけれども、一つは、作業場の線量計が低レベル用のものであったということ、これで非常に高レベルのものを扱っていた。それからもう一つは、制御棒ですね。結局、この取り扱いに大きな問題があった。それからもう一つは、発表の時期、この三つの点についてお伺いいたしますが、まず、この低レベルの放射線の線量計をどうして使っていたのか。この点はいかがですか。#46
○説明員(成田寿治君) 測定計が低レベルのものであって、高い放射能になったときに機能が働かない。それによってアラームがとまった。出なかった。その点に、今度の作業員が、アラームがとまったので、問題なく制御棒が穴に入っておさまったと勘違いして飛び出したというところに原因があるので、そういう低レベルの計測器だけをその作業場に設置しておったというところに確かに原因があると思います。したがいまして、高レベルのものが反映するような計測器というのは低レベルの感度が非常に悪いんだそうでありまして、そういう意味で、そういう作業場には、従来どおりの低レベルの測定器のほかに、高レベルのものと二つつける必要があるんじゃないか。それで、原電でも早急にそういう措置をとらしておりまして、この点は、各発電所を含めまして、原子力事業所全般に対してそういうガイガー測定器の総点検をやって、二度とこういう事故のないようにいたしたいというふうに考えております。#47
○矢追秀彦君 それから、その次の問題である制御棒が保管孔に引っかかって動かなくなった。これは、要するに、作業員の熟練度をかなり必要とするのか。非常に簡単なのか。あるいは、今度は非常に熟練を必要とするならば、原子炉の設計というものをもう一回考え直さなければならぬと思うんですが、その点はどういうふうに判断されておりますか。#48
○説明員(成田寿治君) 今度の原電は、御承知のように、コールダーホール型でありまして、こういう制御棒の作業がああいう形で行なわれるというのは、コールダーホール特有といいますか、その後の発電所は軽水型でありまして、もっと自動的になっていると聞いております。したがいまして、これは原電固有の構造であると考えられますが、ただ、そういう、引っかかっておった場合には、すぐ飛び出すんじゃなくて、やはり放管のセクションに連絡をして指示を仰ぐ、そうして防御服を着て、そうして高い放射能に対しても安全である装備をして作業に入るというのが規則でありますが、それが、アラームがとまったので、そういうことはないと思って飛び出して、それを見て、二人が何か棒のようなもので落とすように作業をやったというのは、これは作業としては、そういう意味ではかなり熟練を要するんでありますが、非常に幼稚な作業のミスをやったということでありまして、そういう意味では、非常に原電固有の作業構造でありますが、非常に簡単なミスから大きい事故になったということでございます。#49
○矢追秀彦君 そうすると、二つとも、さっきの問題と同じように、結局、作業員に対する監督、指導、教育の不徹底と、こう考えざるを得ないということになってくるわけですが、特にそういった古いタイプの原子炉については、こういう問題だけではなくて、これからもいろいろそういう事故が起こる可能性が含まれると思うのですが、新しいタイプのものは、そういう点が自動になって問題がないとすれば、よけい、そういった古いタイプのものについては、いろんな扱いについては相当厳重にしていかなければならぬと思う。その点に対してはどういうふうに指導されていくおつもりですか。#50
○説明員(成田寿治君) 御指摘のとおり、この原因も、全く作業員がなれからくる油断によって、規程どおりやらなかったということに原因がありまして、今後、管理体制、ことに作業員に対する安全管理の教育の徹底という点を厳重に、これは大臣からも社長に対して厳重に指示をいたしております。それから、今後もこういう古い型の作業があぶないという点でありますが、その点は、このコールダーホールの炉でありましても、規程どおりやっておったら全然問題がないのでありまして、たとえ、ひっかかった場合にも、遠くから制御できるような装置も持っておるのでありまして、やはり、古いからあぶないというよりも、なれから油断して規程どおり作業をやらなかった、また、そういう熟練した作業員が保安規程どおり作業をやらないような状態にしておく管理体制に問題があるということで、われわれ、厳重に今後注意していくつもりでございます。
#51
○矢追秀彦君 長官にお伺いしますけれども、事故がちょっと続いておりますし、放射性物質の問題は、これは前から私が委員会で取り上げている問題も含めまして、いろいろ問題点が出てきておる。で、これから原子力発電所もふえてまいりますし、米国でも大体そういう施設がふえるに従って事故がふえておる。こういう例から見まして、特に一番問題点は、結局、全部人災である、人に問題があるということが一つ言えると思います。で、だんだんたくさんできて、放射能というものに対して、まあ油断といいますか、なれというのが非常に大きな事故を招く。これに対して、徹底的な教育、監督体制、あるいはまた炉の構造と設計、そういった問題も含めて、これは相当真剣にやってもらわないと困ると思うんですが、その点についての長官の所信を聞かしていただきたい。#52
○国務大臣(平泉渉君) 本日、私、閣議におきましてこの東海村の事故につきましての報告をいたしまして、その際、総理からも、特にこの点に関しては、非常に初歩的なミスであるということで、直ちに管理体制を厳重にしなけりゃいかぬという指示もあったわけでございますが、矢追先生おっしゃるとおり、炉がふえるにつれて、何となく一種のなれのようなものが出てくる、気持ちのゆるみが出てくる、こういうことが現場当局にあってはならない。それからまた、管理側であります科学技術庁におきましても、安全ということをPRするということに非常に熱心である反面、やはりこの管理体制ということ、これは、安全であるのは管理されたから安全であるという点を、われわれ自身、大いに自粛自戒していかなきゃならぬ。この際、全国的に建設されております原子力発電所、また、その他の放射性物質を管理する場所におきまして、安全体制について総点検をしていかなきゃならぬ、こういう姿勢でおるわけでございます。#53
○矢追秀彦君 時間がございませんので今回は簡単にやりまして、またあらためてやろうと思いますが、放射性廃棄物の海洋投棄の問題でございますが、先日、放射性固体廃棄物処理処分検討会のほうから報告書が出て参ったわけでありますが、海洋投棄を一応やらざるを得ないというふうな結論になっておりますが、これはいつから始めるおつもりですか。#54
○説明員(成田寿治君) 海洋投棄に関連しまして、廃棄物処理処分検討会で報告書が出て参っておりますが、試験的な投棄を廃棄物についてやる必要があるということの方針が出ております。それで、ただ、投棄をやるにつきまして、事前の調査を、投棄の候補地域につきまして十分調査をやる必要がある。海洋調査を行なう必要がありますので、これを三年計画で、気象庁、水産庁、海上保安庁等に原子力予算をつけまして調査をやってまいりたい、そうして、調査の終わった時点――まあ四カ所を考えて、その事前の調査が終わりますと、あるいは調査三年目あたりから――まだきまっておりませんが、一応、その事前調査が十分行なわれた地点について試験的に海洋投棄を行なうという方針でありまして、まず来年度予算から、関係省庁の海洋事前調査の予算をとって、調査を十分やって、その上で試験的な投棄をやるという段取りでございます。#55
○矢追秀彦君 いま言われた三年計画の調査は、海洋調査だけでありますか。それとも、いわゆる処分の技術一切を含むわけですか。#56
○説明員(成田寿治君) 私が言いました三つの機関から見ますと海洋調査だけのようにおとりになったかもしれませんが、いろんな処理技術等、その他の機関を使いましての技術の開発研究も入っておりまして、全般的な研究調査でございます。#57
○矢追秀彦君 三年で、はたして……。特に私の一番心配します海洋調査のほうがどれだけの予算がつくかわかりませんけれども、できるのかどうか。現在の海洋科学技術の発達の度合いから考えて、非常にこれはむずかしいのじゃないかと思うのですけれども、その点の見通しはいかがですか。#58
○説明員(成田寿治君) 検討会の考えは、三年の海洋調査等の研究で安全性があるかどうかということが十分確認されると考えて、そういう考えになっていると思いますが、とにかく、事前調査によって慎重に研究開発を行なって、安全が確認されてから試験的な操業を行なうという方針でありますので、もしも安全性が確認されないならば、試験的な投棄も行なえないということは当然でございます。#59
○矢追秀彦君 どういうふうな御計画でやられるのかわかりませんけれども、かつて私がこの委員会で問題を持ち込みました、千葉県のあの海洋投棄実験、これは十五年かかっているわけですね。十五年間やられて何にも結論が出ていない。何にもと言っては失礼ですが、ほとんど、これは実験と称して捨てておったと指摘をしたわけでありますけれども、そういうことから考えまして、三年で可能なのかどうか。もう一つは、IAEA等もぼつぼつやっておりますけれども、その点との連携ですね。特にヨーロッパ諸国――特にソ連なんかは反対しておりますし、ヨーロッパ諸国でも、この海洋投棄はそう積極的でないような感じを受けるわけです。それを三年間でやろうという、その辺については、ちょっと私もずさんではないかと言いたいわけです。というのは、陸上において、いま、いろいろ保管をされておりますが、その点の保管体制をもう少し厳重にし、しかも、もし可能であれば、どっかよその国、アイスランドとか、そんなところでも借りられれば一番いいと思うのですけれども、それは不可能としても、いずれ、この放射性廃棄物は遠い将来では出なぐなる。新しい炉が開発されてくれば、核融合反応等が開発されれば、出なくなる。したがって、いわゆる無限のものではないわけですけれども、現在の、どんどんふえてくることはきますけれども、その点のかね合いを考えて、むしろ慎重な実験研究を、きちっとした上で投棄していいのじゃないか。あわててやる必要は――まあ早いほうがいいにきまっておりますけれども、陸上の管理体制さえきちっとしておけば、もう少し時間をかけてやる。予算がちゃんともらえればけっこうですけれども。まあそう考えるのですが、この点はいかがですか。
#60
○説明員(成田寿治君) 御指摘のとおり、安全性が確認されないならば、試験的な投棄もやらない、やれないということは当然でありますが、ただ、ヨーロッパのENEAあたりの評価によりましても、われわれのこの検討会の考え以上に、安全サイドはかなり安全の高い内容の報告も出ておりまして、アメリカのような国土の広いところでは海洋投棄問題はあまり具体的な方針に乗っておりませんが、ヨーロッパではその必要があって、ENEAの研究結果等を見ても、かなり安全性が確保された形の報告が出ております。それで、日本におきましても、そういう意味で、十分海洋調査をやった上で試験的な投棄をやるということで、三年間の調査をやったからすぐ大規模に廃棄するのでなくて、試験的にだんだんキュリー数をふやしていくという、そういう意味で、一挙にたくさんやるということではなくて、試験的に徐々にキュリー数をふやしたかっこうで投棄していくということの考えでございます。それから、陸上において当分置いてもいいのじゃないかというお話もありますが、陸上処分の問題も並行的に検討しておりますが、ただ、将来原子力の発展が大規模になりますと、廃棄物の問題は最も重要な問題になりますので、いまから十分調査をやり、また、試験的な投棄をやって、またいろいろ安全性を検討していくということ、相当早目に日本ではやっておく必要が、将来の安全性を確保していく意味でも必要なんじゃないかというふうに考えております。
#61
○矢追秀彦君 ENEAの実験で安全性が確認されておると言われますが、それは放射能の点だけであって、海洋生物等に対する安全性というものの確認はないのじゃないか。まだ私はちょっと詳しいことを知らないのですが、この点はいかがですか。#62
○説明員(成田等治君) ENEAの報告によりますと、海洋投棄、相当高いキュリーのものを処分した過程でいろいろ検討をやっておりますが、これは、放射能が直接に人体に影響する影響だけでなくて、魚等の海洋生物に摂取された、それが人体に影響するという面も検討した結果での内容になっております。#63
○矢追秀彦君 時間がありませんので、また次の機会に譲りますが、長官にお伺いしたいのは、この問題について、いま三年計画でやるというお話ですが、はたして各省庁からの協力体制、それから予算の確保、この点はどうなっておるか。それからもう一つは、これに対する今後の運営をしていく体制です。こういう検討会の報告ということで、いま終わっているわけですけれども、今後もっと強力な機関をつくってやられる御計画なのか、その点を伺って、本日はこの程度に終わりたいと思います。
#64
○国務大臣(平泉渉君) わが国の原子力発電は、エネルギー問題の関係もございまして、こういう廃棄物、これがますます今後重要なことになってくる、早期にこういう問題について研究を始めなければならぬ、こういうことでございまして、ただいま先生のおっしゃいますいろいろな問題点がございます。陸上についても、かなり問題がございます。そういう点で、陸上、海上全部の問題につきまして廃棄物の処理の問題というのはきわめて重要な問題である、こういうことでありまして、原子力委員会におきまして特に専門の部会を設けて十分にいま先生のおっしゃいましたもろもろの問題というものを考慮に入れて検討を進める、また、各省庁に対しましてもこの点につきまして十分協力を得るようにいたしたいと思っております。#65
○星野力君 共産党の星野力でございます。新しく全国区から出てきました。どうぞよろしく。私は、沖繩の学者がこの十一月に行なわれる日本学術会議の選挙に参加できるよう特例法を制定するということになっておった問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、所管の関係、それから沖繩に関係する問題ということで、山中総務長官の御出席をお願いしておりましたが、御出席できないということで、たいへん残念でございます。しかし、事は科学技術の振興にかかわる問題でもありますので、ひとつ、平泉科学技術庁長官のほうから肝心の点をお答え願いたいと思っております。ります。
四月二十二日の衆議院の沖繩及び北方問題に関する特別委員会におきまして、山中総務長官が、この特例法の提案の準備を終わっておるということ、あるいは今国会で成立させたい方針であるということをお述べになっておられますし、また、五月十二日の衆議院の科学技術振興対策特別委員会におきましては、当時の西田科学技術庁長官、現在この委員会に所属しておいでになるわけでありますが、西田長官も、「担当の山中長官が沖繩の科学者も参加できるような特例法の制定について御努力をなさっているわけでありますから、私は、たぶんそういう方向に進んで、御懸念のないような結果が出るのじゃないか、こういうふうに期待をいたします。」と、こういうふうに発言なさっておられます。ずっと前、国会を通じまして、成立できるのではないかということを政府の当局者はおっしゃっておられたのですが、とうとう日の目を見なかった。提案もされなかった。この問題がどうなっておるのか、それから、政府はどういうふうに扱われようとしておるのか、そのことからお聞きいたしたいと思います。
#66
○説明員(高富味津雄君) お答えいたします。ただいま星野先生から御指摘のありましたように、山中総務長官、前国会で法案を提出するように大いに御努力をお願いしたわけでございますが、その過程におきまして、この機会に日本学術会議について、一回、どういうものか、そのあり方について検討するチャンスがほしいというような御意見が出てまいり、慎重にその御検討をされておったわけでございますが、何ぶん、選挙等のことがございまして、時間的に検討が済まないうちに国会が終わりまして、法案を提出するということに至らないわけでございました。もちろん、この法案を出せませんと、第九期の選挙、十一月二十五日に予定しております第九期の選挙に沖繩の科学者の方に参加していただくわけにはまいりませんが、ただ、選挙をしなくても実質的に学術会議の活動に参加していただけるような方法を目下事務当局で検討しておるわけでございます。実質的に参加と申しますと、学術会議は各種の委員会がございまして、その委員会で学術的な研究、連絡、海外派遣というようなことをやっているわけでございますが、それに参加していただくというのが一点と、もう一つは、総会がございまして、それには学術会議の選挙された会員の方が出てやるわけでございますが、できたら、それにもオブザーバーとして出ていただきたいと。これは沖繩のほうの科学者の御意見も聞いてみないとわかりませんが、そのように考えておるわけでございます。
#67
○星野力君 その日本学術会議について検討する必要があるという、それは一体どこでの問題でしょうか。#68
○説明員(高富味津雄君) これは、法案を提出する前に、やはり関係諸方面の御了解を得なければなりませんものですから、そちらのほうにお話を持ってまいりましたところ、学術会議等について種々よくわかっておらぬから、ひとつお話を聞きたい、検討したいということでございました。#69
○星野力君 私、時間が非常に少ないんで、そうこまごまお聞きするのも困るんですけれども、この問題、ずいぶん長く、もんできた問題だと思うんですが、関係方面というのは、たとえばどこでございますか。#70
○説明員(高富味津雄君) たとえば、与党の方面でございます。#71
○星野力君 実質的に参加する方法も考えられるということをおっしゃいましたが、沖繩の学者は、本土との学問上の差別、学術研究の困難を負うておるわけでありまして、実際、たとえば沖繩の調査なんかを日本学術会議がやる場合においても、いろいろ権限もない、困難があるということも現地の学者は言っておられるのでありますが、明年かりに沖繩の施政権が返還されるとしましても、三年後の学術会議の選挙まで沖繩の学者は学術会議に参加できないわけであります。そういうことは早くから、これ、わかっておったことでありますが、本土並み返還を力説されてこられた佐藤内閣として、どうしてこんなことにしてしまったのか。学問の問題は急ぐに及ばないということでありましょうか。時間がないから、続けてやりますが、いま事務局長のほうからおっしゃったように、自民党の中に日本学術会議に対する批判があって、それでこういうふうに問題がなってしまったということも聞いておりますし、それから、この七月二日の週刊誌「朝日ジャーナル」に、自民党の西銘順治衆議院議員、沖繩県から選出されておられる西銘議員が、この問題について語っておられます。その中に、たとえば特例法の制定について、参議院議員で現在の厚生大臣の斎藤昇さんが、「国政参加でもまだ早いのに、君、なーにいっているんだ。教職員会、あれダメじゃないか」というようなことを言われて、問題がこじれてしまっておるということも載っている。同じ自民党の西銘氏が言っておられることでありますから、うそではないと思いますが、これは有名な根本発言にも通ずるような発言だと思います。重大な問題だと思いますが、それ以上に、こういう沖繩の教職員組合に対して自民党内部に批判がある。あるいは学術会議に対して自民党内に批判がある。だからといって、沖繩の学者の権利が結果として奪われるような、こういうことになっていくほうが一そうこれはゆゆしい問題だと思うんでありますが、その点について、長官、お考えはいかがですか。
#72
○国務大臣(平泉渉君) 本件につきましては、所管が、総理府の長たる内閣総理大臣と、こういうことでございますので、私の所管外でございます。したがいまして、十分な御返答をする立場にないわけでございますが、いまおっしゃった点につきましては、政党制でありますから、政党内にいろいろな意見はそれはある、それはあると思いますが、しかし、学術会議というものは、わが国の法制上厳として存在するものでありますから、特にそれに対して、政府として、政府がみずからの、いわば一種の機関であります、それに対して疑問を持つ、これはあり得ないことでありまして、そういう意味におきまして、本件は、所管大臣であります総理府の長たる総理大臣、また山中総務長官、こういう方々と十分また協議をいたしましてやっていきたいと思っておるわけであります。#73
○星野力君 長官、十分協議してやっていきたいと、こういうことなんですが、この問題を前進的に解決する、沖繩の学者が参加できる方向で早く検討する、長官としてのお考えは、そうだということですか。#74
○国務大臣(平泉渉君) 沖繩は、われわれの考えにおいては、日本の領土である、こういう考え方が基本的な考え方で、それについて当然日本人の方というもののいろいろな権利、それはわれわれとして可能な限り尊重していかなければならぬ、こういう考えであります。#75
○星野力君 実際問題として、これを解決する方法はないものでしょうか。日本学術会議の議員の選挙は十一月二十五日でございますね。その間には、たぶん臨時国会が開かれる、沖繩国会が開かれることになるのではないかと思いますが、そういうことを考えて――来年の一月二十五日でしたかね、新しい学術会議が発足しますのは。それまでに、実質的ということじゃなしに、正式に参加できるような、そういう方法はないものでしょうか。#76
○説明員(高富味津雄君) 少なくとも、五月の末ぐらいの段階で法案が成立しまして、それから発足しませんと、十一月二十五日の選挙に参加していただくわけには、事務的に、とても不可能でございまして、九期の会員選挙に参加することは、これは事務的にも、もはや不可能でございまして、先ほど申しましたように、実質的に各種の委員会に出ていただく、これは幾らでも――幾らでもと申しましても、これも予算、いろいろの面がございますが、そのほうで手当てしまして、大いに努力して参加していただきたいと思っております。#77
○星野力君 日本学術会議としては、この選挙に備えて準備もしておられるやにお聞きしております。たとえば、会の登録について見本登録か何かやっておられるということでありますが、その見本登録を正規の登録とみなすということ、また、選挙規則の特例に関する規則を制定することについても学術会議の内部においては全員の意見の一致を見ておる、その手はずも済んでおると、こういうふうに聞いておりますが、そうしますと、次の臨時国会に早期にこの特例法の制定をやるということになりますと、選挙に間に合わせることができるでしょうか。#78
○説明員(高富味津雄君) お答えいたします。確かに、沖繩の一部の科学者の方からの要望で、選挙の登録カードを見本としてお送りしました。これは、沖繩はずっと学術会議の会員の選挙に参加しておりませんものですから、どんなものか一応見本で書いてみたい、書いていただいたほうが、これから、もしやるとしたらスムーズにいくから、そうしたいと思いまして、その見本カードというのはございますが、これはあくまでも見本でございまして、学術会議の選挙というのは、会員先生が参加してない選挙管理会というのが法によって厳正に行なわれているわけでございます。それに間に合わせるために、私たちは五月の末までという最終の事務段階の期限でやってまいったわけでございまして、その全部を網羅しておらぬような、ただ見本としてのカードで、また選挙管理会が参加していないような審査の方法のもので正式の選挙と同じような効果をあげるということは、私たちはできないと思っております。
それから、次期の国会で、もし法案が通りましても、正式な選挙は不可能だと私たち考えておるわけでございます。
#79
○星野力君 この問題では、もっとお聞きしたいし、政府としても前進的に方法を講じていただきたいと、そういう意見を持っているんでありますが、もう十五分の時間が来てしまいました。私、新米で、初めから時間をオーバーしても悪いと思いますから、今回はこれで打ち切ることにいたします。#80
○委員長(鈴木一弘君) ほかに御発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめます。―――――――――――――
#81
○委員長(鈴木一弘君) 次に、継続調査要求に関する件についておはかりいたします。科学技術振興対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#82
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、要求書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#83
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。―――――――――――――
#84
○委員長(鈴木一弘君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。科学技術振興対策樹立に関する調査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#85
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#86
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十三分散会