1971/07/24 第66回国会 参議院
参議院会議録情報 第066回国会 社会労働委員会 第2号
#1
第066回国会 社会労働委員会 第2号昭和四十六年七月二十四日(土曜日)
午前十時五十二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中村 英男君
理 事
高田 浩運君
大橋 和孝君
小平 芳平君
委 員
石本 茂君
上田 稔君
鹿島 俊雄君
梶木 又三君
川野辺 静君
橋本 繁蔵君
山下 春江君
須原 昭二君
杉山善太郎君
柏原 ヤス君
高山 恒雄君
小笠原貞子君
国務大臣
厚 生 大 臣 斎藤 昇君
労 働 大 臣 原 健三郎君
政府委員
厚生政務次官 登坂重次郎君
労働政務次官 中山 太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
説明員
厚生省公衆衛生
局長 滝沢 正君
厚生省医務局長 松尾 正雄君
厚生省社会局長 加藤 威二君
厚生省保険局長 戸澤 政方君
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本日の会議に付した案件
○理事選任の件
○社会保障制度等に関する調査
(保険医辞退の問題等に関する件)
○老人の福祉に関する請願(第三号)
○保険診療経理士法制定に関する請願(第四号)
(第五号)(第六号)(第七号)(第八号)(
第九号)(第一〇号)(第一一号)(第一二
号)(第一三号)(第一四号)(第一五号)(
第一六号)(第一七号)(第一八号)(第一九
号)(第二〇号)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣承認要求に関する件
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#2
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。まず、欠員中の理事の指名を行ないます。
前回の委員会で委員長に御一任願いました二人の理事の選任につきましては、上原正吉君、高田浩運君を指名いたします。
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#3
○委員長(中村英男君) この際、斎藤厚生大臣、登坂厚生政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣。#4
○国務大臣(斎藤昇君) 一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。先般の内閣改造によりまして、全くはからずも厚生大臣を拝命いたすことに相なりました。御承知のようにまことに不敏な者でございますが、皆さま方の御協力を切にお願いを申し上げまして、また、御指導をお願いを申し上げる次第でございます。私も、全力を注いで厚生行政に取り組む所存でございまするので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
まず、先般の選挙で御当選の栄をかちえられました委員各位に対しましても、心からお祝いのことばを申し上げたいと存じます。
七〇年代における課題は、国民の一人一人が生きがいに満ち、心身ともにすこやかな毎日を過ごされる社会を形成することであると考えます。このときにおきまして、国民の健康を守り、福祉を高めますことを直接の任務といたします厚生行政を担当することとなりましたことは、その責任のまことに重いことを痛感せざるを得ないのでございます。
当面する社会保険医の辞退問題につきましては、何をおいても火急に収拾をいたしたいと考えておるのでございます。後刻、御質問に応じましてできるだけ詳しく私の所存も申し上げたいと思いますが、国民の方々の御迷惑も考えまするときに、一日も早くこの異常な事態を収拾しなければならないと、かように思っておるような次第でございます。
医療保険の制度は、御承知のように国民の健康の維持、確保の面におきまして大きな役割りを果たしておりますが、それだけにこの事態がまた先ほど申しますように患者をはじめ国民各層に大きな影響を与えていると思うのでございまして、就任以来関係の団体とも話し合いを続けてきたのでございますが、引き続き全力を注ぎまして、皆さま方の御支援も得まして一日も早く解決いたしたいと、かように思うわけでございます。
厚生省が解決しなければならない問題が山積をいたしておる次第でございますが、できるだけ一件一件皆さんの御協力を得まして迅速に処理をしてまいりたい、かように思うわけでございまして、委員各位の格別な御指導と御支援をお願いをいたします。
#5
○委員長(中村英男君) 登坂厚生政務次官。#6
○政府委員(登坂重次郎君) このたび厚生政務次官を拝命いたしました登坂でございます。厚生行政の推進のために、皆さま方の御支援を賜わりつつ、大臣の補佐のつとめを果たしたいと思いますので、よろしく御指導、御協力のほどをお願い申し上げます。
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#7
○委員長(中村英男君) それでは、社会保障制度に関する調査を議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。#8
○大橋和孝君 それでは、いままで衆議院のほうにおきましてもいろいろ質疑をされておりますけれども、保険医の総辞退を含めて、問題について、きょうは二、三点について御質問したいと思います。今日いろいろ内政問題がございますけれども、特に当面まあ緊急で重大な問題は、言うまでもございませんが医療の混乱であります。私はきょうは少しこの問題につきまして突っ込んで政府の考え方について聞いてみたい。一日も早く解決を、私どもも一緒になって考えていきたいという観点から御質問を申し上げたいと思う次第であります。明快な答弁を大臣からいただきたい、こういうふうに思います。
参議院選挙直前の五月三十一日に、日医から保険医総辞退の届け出が各都道府県を通じて出されました。七月一日から突入したわけでありますが、この一カ月間、いかに選挙中とはいえ、政府は、また、厚生省は何ら有効な手も打たないで、辞退医の切りくずしというか、そんな方向に狂奔しておったと言っても過言ではないような状態が続けられただけであります。今日こうした事態を迎えたとき、政府のとった態度は、国民の目から見ますと、全く無為無策の一語に尽きるのではないかというふうに評価されていると思うのでございます。その時点は五月の末でありますが、この問題についてどのような見通しと解決策を持っていたのか。そうして、何をしてきたのかというのを、時間的な経過を追ってひとつ御説明を願いたいと思います。
#9
○国務大臣(斎藤昇君) 保険医総辞退に至りますまでの経過、見通し等につきましては、私から責任をもって申し上げるのは、まあはばかるわけでございます。したがいまして、当時の保険局長――いまも続いておりますが、戸澤保険局長からお答えをさしたいと思います。#10
○説明員(戸澤政方君) それでは私から、総辞退に入るまでの経過並びに政府のとった措置等について、簡単に御説明申し上げます。さかのぼりまして、この問題のきっかけになったのは本年二月十八日の中医協におけるいわゆる審議用メモでございますが、この問題からだんだんと医師会の要求は健保改正に対する反対、あるいはさらに三十六年の医師会と政府・与党との間にかわされました覚え書きの問題、いろいろ発展してきたわけでございますが、そういう経過にかんがみまして、厚生省としましては何とかこれを事態拡大に至らないで済むようにいろいろ努力してまいってきておるわけでございます。
中医協メモの問題につきましてはこれは舞台が中医協の問題でございますので、主として中医協の会長にその収拾についての御努力をお願いしてまいったわけでございますけれども、思うようにはかばかしくいかなかったわけでございます。それでだんだん事態が進みまして、一斉休診とか、ついに辞退届けの提出というような事態まで至ったわけでございますが、その後もちろんこの問題の解決につきましては、中央における責任者の話し合いがなければとうてい解決はむずかしいわけでございますが、一つには参議院の選挙というようなことがございまして、物理的にいろいろそういう解決の努力をする余裕がなかったというようなこと、それからまたいろいろの事情でもって、中央の話し合いがスムーズにいかなかったわけでございます。それで、厚生省としましては、全国的に地方の辞退届けを出されたお医者さんに対して慰留、説得につとめまして、思いとどまってもらうようにいろいろ努力したわけでございます。しかし、必ずしもその成果というものは十分期待できないおそれもございましたので、一方突入した場合の処置、国民――被保険者に対するいろいろな対策というものをあわせ考えまして、全国の保険課長会議等も招集していろいろの対策を処置したわけでございます。まあたとえば医療費の支払いにつきまして実質的に患者の負担にならないように、いわゆる代理請求というような方法をとることを指示したり、それからまた、患者の取り扱いにつきましても国公立病院をはじめとしまして保険診療を受けられるような医療機関の周知徹底とか、それからまた、どうしても患者が金を一時的にせよ負担する必要が起こる場合の措置、いろんな融資とか、社会施設からの金の貸し付け、そういったいろんな対策を考えまして、指示してまいったわけでございます。また、そういうような説得工作、突入後の対策というものを並行してやっておりましたために、なかなかやりにくい点もございまして、PRとかなんかが十分に行き届かずに突入後、トラブル、不都合等を生じたような例もございましたことは遺憾に思っておりますが、まあ政府としては説得と、それから突入後のいろいろな対策というものを並行して準備してきたような状況であります。
#11
○大橋和孝君 私は五月の末の時点から一カ月間の余裕期間があった。その間じゅうにはいま局長から話しのように、説得あるいは突入後の処置と言っておりますけれども、私の聞きたいのは、この時点でどういう見通しを持ったかということです。解決策が何であってどう見通しを持ったのか、私はこの突入する前に、この五月の末で、総辞退が起これば非常に患者に対してはたいへんなことが起こるということを私自身でも考えておった。それからその衝に当たっているいわゆる局長また厚生省の側では、この問題については真剣さがなかったのじゃないか。国民の側から見ましたら、こういうようなことが起こることは想像ができているし、そのようないま説明を聞いたような考え方で私は解決ができるものだとおそらく考えておられなかったということは、常識を持っている者は感ずるところですね。ですから、そういう点から考えまして、私はこの時点においてどういう解決の策を持ったか、あるいは見通しを持ったかということ自身は、それについてやはり厚生省としてはこういう時点で十分考えてみて、どこが足りなかった、どういうことがいけなかった、これの反省の上に立ってどうするということがなかったならば、いつまででもこれを繰り返すことになろうと思います。それからして私は、この見通しの問題についてもう少し詳しく話を聞きたい。同時に、これをやらなかったということは、これは厚生省の全責任であると私は思うわけです。その点はどうなんですか。#12
○説明員(戸澤政方君) 突入に対する厚生省の見方が甘かったのではないかといったような御批判、これは一部に突入する数はせいぜい二割くらいであろうとかいったような話も出たことでございまして、その点は厚生省としましても反省をいたしておるところでございますが、私どもは決して事態を甘く見るとかいうようなことではなくて、非常に深刻な事態になることを憂慮して、できるだけの交渉とか説得工作とか対策を練ってきたつもりでございますけれども、十分の効果をあらわさなかったことは非常に申しわけないと思っております。#13
○杉山善太郎君 ちょっと関連でありますけれども、大臣おられるのでお聞きするわけでありますけれども、昨夜のフジテレビにおける各権威者の討論会の中で、一つ気になることがあるのです。展望と推移と関連をして、武見さんがインスタント政治解決については応ずることはできないのだ、インスタント政治的解決。討論会で受けて、また、けさの新聞を見た範囲では、二十七日かに大臣と武見さんがお会いになるということもわかりますし、また、竹下官房長官のニュアンスでは、近い将来に総理ともお会いになるのだ。いずれにしても、インスタントな政治的な解決については絶対――私も解放運動の中で四十何年間、ところが責任ある発言としては絶対ということばはあまり使わない、使うこともありまするけれどもあまり使わないのだが、インスタント解決については絶対応ずることはできないのだということも言っておられますし、新聞にも書いてありますので、そこで私は厚生大臣にひとつお伺いをしておく必要があると思うのであります。関連でありますから多くを申し上げませんけれども、率直に言って、問題は、医療の抜本的な改正に対する一体、代々の厚生大臣もこの問題で苦悶しておられることも私なりにはだで感じておりますが、当面の問題を解決するためにはどうしても、斎藤厚生大臣、あなたがやはり当面の当事者である、しかも、医療行政の最高のスタッフでいらっしゃる、そういう立場に位置づけられているという観点で、この問題の解決に対するあなたの一つの何と申しましょうか、からだを張ってもとにかく誠心誠意この問題の解決に気骨気根をもって当たるのだというところのやはり気魄と決意を示していただかぬと総理大臣との会談ができても、それが、かりに武見さんの言われるインスタントな政治的解決には断じて絶対に応じないのだということになると非常に問題があるんだというような、関係の窓口である厚生大臣の決意いかんが今後の問題を左右する原点じゃないかというふうに考えますので、関連でありまするけれども、非常に重大なポイントだというふうに考えますので、ひとつ真意を承りたいというふうに考えます。#14
○国務大臣(斎藤昇君) 杉山先生にお答えする前に、大橋先生の先ほど来からの御質問にお答えをいたします。事務当局のとった措置、考え方は一応事務当局から述べましたが、保険医総辞退に至るまでの措置並びに立ち至ったということにつきましては、これは私はやはり厚生省の責任である、かように思わざるを得ません。前大臣も非常に心を砕いて、何とかしてこの総辞退に入らないようにという配慮でいろいろとやられたことは私も存じておりまするし、またさようであったと思いまするが、いかようであれ、とにかくこういう結果になったということは、これはやはり厚生省の責任が重大であるということを考えて、そして、この総辞退問題と取り組んでいかなければならぬと思います。医師会はけしからぬと言うだけではこの問題に対する心がまえではない、かように私は思っております。
なお、杉山先生からのお尋ねでございますが、いずれこれらについては、大橋先生からもまた意見があることと存じます。それに応じてお答えをいたしますが、私といたしましては、全く誠心誠意いままでのやり方について、一体何だらだらやっているんだというお感じもあるかもわかりませんが、とにかく総辞退という、保険制度が始まって以来五十年来にない事態が起こったについては相当深刻な理由もあることだと、かように思います。したがって、その理由を十分聞いた上で一日も早くこの問題の収拾をはかりたい、かように思って誠心誠意全力を込めて、ことばをかえていえば、私は政治生命をかけてこの問題と取り組みたい、かように思っておるわけでございます。
#15
○大橋和孝君 非常に大臣から前向きの答弁をいただいているわけでありますが、私はもう少し厚生省のいままでの態度に対して、もう一点ひとつ私は聞いておきたい。それはこの昭和三十六年の国民皆保険がしかれて、三十九年ごろから政府管掌をはじめ日雇いの健保、あるいはまた国保など軒並みに赤字に変化してきたことは御存じのとおりであります。そこで出されてきたのが保険料の値上げなど、いわゆる医療保険の、言うならば改悪であったわけであります。四十二年の特例法、四十四年の特例法延長、長期固定化、これも一連の私は改悪の法案だと考えるわけであります。その間、政府あるいは自民党のほうでは、口先ばかりでこの抜本改正をうたいながらも、出されてきましたところの厚生省事務局試案とか、あるいはまた「国民医療対策大綱」というものも、これみな赤字財政の対策にどうしても主点が置かれておる、抜本改正の名に値しないという点もあるわけであります。当然のことのように関係各団体からは反対をされ、ついにつぶれていくという形がいままで繰り返されたわけであります。そして、政府はとうとうさじを投げて、今度は社会保険の審議会あるいはまた制度審議会にげたを預ける形となって、まあ私どもから考えるならば、むしろ無責任な態度ということを言わなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。私は過去この問題のあるたびごとにいろいろ申し上げて、そうして提言をしてきたわけでありますけれども、佐藤内閣では、その就任にあたって、口ではやはり人間尊重とか、あるいは生活優先とか、健康を守るとか、命を大事にするとか、いろいろおっしゃいましたけれども、一体その厚生行政という最も重要な行政にあたっては、大臣はじめ、あるいはまた総理はじめ、これが十分になされていなかった。言うなれば、私はこれは大きな責任であろう、抜本改正をほんとうに大衆のものにしなかったという責任があると私は思うのでありますが、こういう点について、ひとつ真摯な気持ちで、この時点では十分に反省をして、今後は前向きの姿勢をしてもらいたい、こういうように私は思うわけであります。
その次に、前の内田厚生大臣のあとを受けられまして、斎藤厚生大臣が緊急時に再度御就任されたわけでありますから、先ほど御説明、決意をいただきましたように、政治生命をかけてまでこれをやろうという真摯な気持ちに対しては、私は非常に敬服するものでありますが、どうかひとつこの問題に対しては、特にいままでの経過を振り返って、そうして私は、むずかしいだけにひとつ思い切ったことをやってもらわない限り解決にはならないという観点から、特にこの問題について、大臣の意向を伺いたいと思います。
それからまた、七月十三日、二十日の二度にわたって武見日本医師会長と会談を重ねられまして、二十七日に三度目の会合をされるようでありますが、すでに今度の問題では、この十五日に宮城県で老女の自殺もありましたし、また事故もいろいろ発生しておる。昨今の新聞報道などを見ますと、政府・自民党は、二十二日の自民党の医療基本問題調査会と社会部会の合同会議で三項目にわたった方針を出しておられますが、この三項目でもってこの事態が収拾できると大臣はお考えになるのであるかどうか、この点もあわせてお伺いしたいと思います
#16
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま大橋先生のおっしゃるとおり、まだ、医師会からの総辞退に至る理由は聞き終わっておりませんが、しかし、私は、いまおっしゃるとおり、一番の問題は抜本改正をやる、やると言うて、そうして、今日まで過ごしてきた政府の姿勢にある、かように思います。私も二年前に、あの健保国会で、総理も一緒に二年後には必ず抜本改正をやりますと、こう言っておったわけでございますので、したがって、四十四年の八月には抜本改正についての考え方を制度審議会、保険審議会、医療審議会に諮問をいたしたわけでございまして、こういった考え方をもとにして抜本改正をぜひ次の国会には提出をいたしたい、かように思っております。しかし、抜本改正は何ぶんにも非常に大きな問題でございますから、与野党とも絶大なひとつ御支援をいただかなければならぬのじゃないか、かように思いますので、あらかじめ皆さん方のひとつ絶大な御支援をいただきたいと思いますし、また抜本改正についての基本的な考え方等も十分お聞かせをいただいて、そうして、与野党とも合意のもとにわれわれの理想とする抜本改正案を得たい、かよに念願をいたしておるわけでございます。なお、ただいまの述べられました三項目というのは、私、あるいは思い違いかもわかりませんが、必ずしもそれにこだわるわけではございません。要は医師会の意見を二十七日に大体聞き終わる予定でございます。そういたしますると、それに対する政府の態度というものもはっきり打ち出せるわけでありますから、その段階におきまして拾収をはかりたいと、かように考えております。
#17
○大橋和孝君 全く私もこの三項目にこだわっておってはなかなかできないという感じもありますので、大臣もそのようにお考えいただいて、特にこの問題については深く掘り下げていただきたいと思います。それから私は、ここでいままでの実態について厚生省が具体的に行なっている混乱収拾の施策について、大臣及び医務局長あるいはまた保険局長さんからひとつ伺ってみたいと思いますが、保険医の総辞退によって、全国の九十五の国立病院あるいは公的病院に以前に比べて二、三割とか五割だとかというような形で非常に外来患者がふえてまいって、夏休みに入りますとまた児童の患者も急増する状況にありますので、治療を受けるものは殺到して混乱の極をきわめておるというふうに聞いておりますし、入院希望の患者もなかなかこれが許されないという状態だと言われておるんでありますが、実態は一体どうなのか、少し具体的なことを知らせていただきたい。ついては、それに対する対策は一体どのようにお考えになっておるのか。こうした事態について医療労働者へのしわ寄せもありましょうし、またこのままでは、まだ表面化はいたしておりませんけれども、医療の事故なども心配されるわけでありまして、起きてからではおそいのでありますから、その対策を十分立てておられるのかどうなのか、それについてひとつ伺っておきたいと思います。
それから社会保険審議会、社会保障制度審議会また中央社会保険医療協議会というような重要な審議会が事実上開かれていない状態にあるのでありますけれども、この状況をすみやかに収拾して、そして、これがテーブルについて、問題の解決に一日も早く努力をするようにしなければならないと思うわけでありますけれども、大臣はどのようにしてひとつ審議会を正常化されるように考えておられるのか、この点についてもひとつ伺っておきたい。
それから、きのうの衆議院社労委員会で大臣は、八月初めまでに解決して収拾したいと、こういうような一つの目途をお示しになっておられるようでありますが、具体的にはどのような収拾をしていこうとおっしゃるのか。フジテレビで発表されましたような考え方であるのかどうなのか、これをひとつ大臣から伺っておきたい。
#18
○国務大臣(斎藤昇君) この辞退のために患者の方が非常に迷惑をされておるということはまことに残念なことで、あってはならぬことだと思うわけでございます。したがいまして、事務当局も事前からあらゆる手を講じておるわけでございますが、まず第一に、保険医辞退になっても診療は拒否していないんだということを国民の皆さんによく徹底をしていただくこと、それから、同じ保険と言っても、政府管掌保険はほとんど代理払いをしてくれている保険医が多いということ、それから組合健保にいたしましても、療養費払いであっても保険医によっては相当便宜をはかってくれているという点、また、一般に言われている非常に高い代金を請求されると、こういうふうに言っておりますが、医師会の示しておるのは基準であって、それぞれ地方の医師会によっても違いますし、医師によっても違いますが、患者によって現金を多く要求する医者もあると思いますが、そうでない医者もあるわけでありまするので、まず医者のところへ行って、そうしてよく聞いてもらえば、そう言われるほどのことなしに診療が受けられるというのが大勢だと私は思っておるわけでございます。できるだけ代理払い、あるいは健保側におきましてもあとでその療養費を保険あるいは会社の厚生施設から支払うというようなこともやっておるわけでありまするが、これは、その医者によって、また保険の種類によって非常に違いますので、患者とされては、自分は保険に入っておるけれどもどういう保険でどうなっておるのかということがわからぬ方が多いと思います。したがいまして、社会保険事務所におきましては、単に政府管掌の保険だけでなくて全般の保険についてこういう取り扱いになっておるということを敏速に答えられるようにするようにと、実情を把握しながらということを指示をいたしておるわけでありまして、また、このために、国公立あるいは私立の病院にいたしましても、辞退をしていない病院に非常に患者がたくさん来るということによって、患者にも迷惑をかける、また、医師、看護婦その他の人たちも非常に過労を来たすということもございまして、これらにつきましては、できるだけ間違いのないようにそれぞれの筋から指示をし、また、目をみはって、間違いのないようにという注意をいたさせておるつもりでございます。なお、審議会につきましては、社会保障制度審議会、それから社会保険審議会、二つともこれは非常に一生懸命開いて御研究を願っておるわけであります。いま審議会の開かれていないのは中央社会保険医療協議会、これが診療側の引き揚げによって中止をいたしております。私は、この保険医辞退が終息すると同時に、診療側も中医協に復帰をして、そして、診療を一日も早く進めてもらうように努力をいたしたいと、またいたしておるわけでございます。
なお、いつ終息させるか。まあ私が衆議院の社会労働委員会で申しましたのは、おそくとも八月の初旬までに、できるならば今月中にということでいま一生懸命努力をいたしておるわけでございます。
#19
○高山恒雄君 関連。いま大臣が答弁をされましたから、関連で一つ述べさせてもらいますが、医師会が基準をきめて、その基準が上下がある、こういう厚生大臣の答弁ですが、したがって、超過基準の最高基準で医療費をとっている場合ですね、立てかえ払いを組合保険がやり、保険組合がやっている。こういう場合の超過ですね。したがって、後日この支払いをする場合に保険以外の、料金以上の超過のあった場合、だれが責任を持つのかですね。患者に責任を持たすのか、それともそうした差額は政府が責任を負うのか。この点は非常に大事だと思うのです。今後に起こり得る大きな問題です。この点ひとつはっきりしておいてもらいたいと、こう思います。もう一つ、それから、この業務費の、七二%という控除がございますが、この七月等の辞退期間についてはこれは当然もう免除されないことになるんでしょうが、支払基金の手続き等による請求はいま六月分をやっているわけです。七月分は八月やるわけです。したがって一カ月おくれですが、少なくとも私の考えでは、この六月分に七月分の診療費の請求が出るのじゃないか。そうした場合ですね、この六月分は膨大な請求になるのではないか。また七月下旬あるいは八月に、最後の大臣の努力によってこれが決定したということになれば、今度は七月分の要求が八月分に繰り越される危険性がある。これは事後に大きな問題を残すのではないかという私は心配をしておるわけです。この点については、政府としてはどういう処置をしておられるか。いわゆる六月請求が多かったり、八月請求が多かったりして、七月はほとんどないというような状態で請求されておるというような事態が起こった場合たいへんではないかという心配を私はするわけですが、この点は何か手を打っておられるのかどうか、この点お聞きしたい。
#20
○説明員(戸澤政方君) 私から事務的にお答えいたしますが、初めの健保組合の組合員に対する差額支払いの問題ですけれども、これはいわゆる療養費払いということになりますと、その償還は現行の診療報酬点数によった診療についてだけしか払えないわけでございまして、その新しい基準によって取られた割り増し料金といいますか、そういうものにつきましては支払いできないわけでございます。したがいまして、それは患者の本人の負担ということにならざるを得ないわけでございます。ただ、こういう事態のために患者に余分の負担がかかるということにつきましては、いろいろ問題があると思いますが、これはその組合におきまして、労使の間において話し合いによって、その組合が、たとえば保険の付加給付としては支払いできないけれども、何か事業主が福利厚生費といったようなかっこうでもって支払うというようなことにつきましては、これは役所の容喙するところではございませんので、組合の自主的な解決におまかせしているわけでございます。それから、二番目の、税金の問題に関連して、基金の問題でございますが、これは確かに七月分の診療につきましては、来月初めぐらいにどっと請求がくることが考えられるわけでありまして、そうしますと、社会保険事務所あるいは組合の事務所、これもたいへんなことでございますし、それから、一方基金では、本来の診療費請求が来ませんと、その審査の件数が減るということでもって、基金の運営にも支障を来たすというような問題が起こり得るわけでございます。それで、それらの取り扱いにつきまして、今後の請求の出方、様子を見まして、事務所のほうと基金のほうでどんな事務の取り扱いをするか、いま寄り寄り協議中でございます。どんなことになりましても、基金の運営に支障を来たさないように、これは政府が責任をもって善処するつもりでございます。
#21
○高山恒雄君 もう一つ大事な点。前者の質問ですが、患者に負担を負わすということでは、私はけしからぬと思うんですね。少なくとも今度の問題はですよ、三年間の余裕期間を置いて、この時限立法であれだけ国会で問題にしながら、政府は一向に抜本的な改正ができなかった。そうして、今日に至って、医師会のこういう辞退という問題が起こってきた。これは政府の責任じゃありませんか。そういう政府の責任で、しかも、基本的には皆保険という法律のもとに保険に入れといっておきながら、一方医師会がその問題については何ら拘束はされないんですから、医師会も当然三年間待っても何の抜本的改正もなければ、こうせざるを得なかった。これは医師会の言い分も私は正しいと思うんですよ。そうしますなら、政府はもっとなぜこの三年の間にやらなかったのかということが政府の重大な責任だと思う。その責任に応じて、しかも、その責任の責めを国民の負担においてやるというようなことは、あるいはまた企業支払いによってこれをやらすということは、政府としては、これはやるべき態度でないと私は思うんですが、その点はひとつ大臣からはっきり答弁してください。#22
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの高山先生の御質問は、予算委員会で向井先生からも御質問がございました。私は、なるほどこの総辞退問題は政府の政治的責任が非常に重いということを反省をいたしております。そこで、それだからといって、この総辞退から起こった国民なり、あるいは組合、あるいは会社等がまあ損害を受けたといえば損害であるかもしれません。見方によりましては、損害といえるでありましょう。それを政府がしりぬぐいをしなければならぬかどうかという点は、私はまだ大いに考慮する余地があるんじゃなかろうか。また、損害がどの程度になるかということによっても判断しなければなるまいかと。例をあげてはなはだ申しわけありませんが、それとこれとは事情はあるいは違うかもわかりませんけれども、労働争議によって、あるいは自動車関係の労働者がストライキをやったと、非常にこれは一般の利用者がたくさんな損害といえば損害をみることも多いわけでありますが、そういう場合に、その争議がだれの責任によって起こったから、それで支払うべきだというような定着した考え方もないわけでありますので、これは事態によりまして考慮すべき問題だと、かように考えております。#23
○高山恒雄君 どうもありがとうございました。#24
○大橋和孝君 じゃ、続きまして、先ほどからお話も出ておりましたが、昨夜のテレビ録画どりで、医師会会長との会談で、厚生大臣は、この抜本改正を次の国会で実現する、こう言っておられるし、また、中医協が開かれない場合には、職権告示もあり得るというようなこともおっしゃっているわけでありますが、これについてのもう少し内容についてちょっと詳しく聞きたい、こういうふうに思います。それから、同時に、あわせてちょっとお伺いするわけでありますが、抜本改正を通常国会に提出するということも、この委員会におきましても、大臣はお約束されるのか、この点についても伺っておきたいと思います。
そうして、その内容は、私は、一部新聞報道によりますと、自民党の出されました「国民医療対策大綱」と申しますか、ああいうものに基調を置いたものだと、こういうふうに言われておるわけですが、何度も言うようですけれども、やはり赤字の財政対策に重点を置いておるようなふうなものでは、私は、国民の負担を強めるばかりでありまして、ほんとうの抜本対策というものに対しては名ばかりになると思うわけで、これはまた私がいつも繰り返して申しておるわけでございますが、もっと具体的に緊急な項目、たとえば保険の統合とか、老人医療の無料化とか、あるいはまた、公費負担を広めるとか、政府が医療について積極的な姿勢を示されなければ、私は解決しないと思うわけであります。適正な診療報酬体系の確立もそうでありましょうし、あるいはまた、医療職の給与の大幅なアップ、あるいはまた、労働環境、労働条件の思い切った改善、これはまた医学の教育とか、医療従事者の養成なんかにつきましても、国がもっと十分な措置をとることが入らない限りは、私は悔いを千載に残すのではないかと考えます。
この際、この混乱を一日も早く解決すると同時に、この災いを福にするという政府のその勇断を実行されることが大切だと思うわけでありますが、あわせて厚生大臣のこの発表と同時に、この委員会での大臣の決意をちょっと聞いておきたいと思います。
#25
○国務大臣(斎藤昇君) たくさんの御質問でございましたから、私落とすかもわかりませんが、まず、職権告示の点から申し上げます。中医協がいつまでも開かれなければ職権告示もあり得るということは私は絶対言っておりません。けさの某新聞にそういうような見出しと記事が出ておりますが、これは全くの誤りであります。私はどこまでも中医協が正常に開かれて、そして、中医協において審議をしていただきたい、かように念願をいたしております。
それから、保険の抜本改正は、これはもうかねてからの政府の約束でございます。先般の本会議においても、総理も次の通常国会には提案をしたいと、こう言っておられます。私もその決心で臨んでおりまするので、ぜひ御了承をいただきまして、そして、抜本改正を提案するまでにでも十分な御意見を聞かしていただければ非常にありがたいと、かように思っておるわけでございます。
なお、医療保険の制度の中には、診療報酬、いろんな畳み方等も入っているわけでございますが、いま診療報酬の点についてお述べになりました点は、これはまあ中医協において論ずるわけでありますが、基本的な考え方は、大橋先生のお述べになったとおりに私も了解をいたしております。また、保険制度が整っても、医療の供給体制ということばに尽きると思いますが、先ほどおっしゃったのは、――これを整備する必要があると、かように考えます。できたらそういった基本的な考え方も――きのうもテレビ討論会で申し上げましたが、もしできるならば、基本法的な考え方でそういった医療供給体制あるいは国民の健康保持の体制というようなものを基本法的なものにまとめて、そして、その一貫した精神によって整理をしていくのが適当ではなかろうかと、かようにただいまは考えておるわけでございます。
#26
○大橋和孝君 特に私はこの重大な時期に大臣としてのいま抱負を聞きましたが、特に社会保障の意味を十分に含めた根本的なものをもって進んでもらいたい。同時にまた――私はまだお尋ねしたり議論したい点はたくさんありますけれども、時間がありませんので省略いたしますけれども、やはりこの技術というものを相当高く評価をしながら、そして、物によってこれを補うことのないように、いろんな意味から改正されるべき点はたくさんあると思いますが、時間がありませんからここでは申し上げませんけれども、特にいま大臣が申されたような趣旨を徹底し、そして、社会保障を十分に盛り込んだ抜本改正をしてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。最後に、もう一つだけお尋ねしてこれで終わりたいと思いますが、当面する医療の問題に関連いたしまして、私は老人の医療とそれから沖繩の医療について現在厚生省としてどのようにこれを考えておられるのか、その方針について伺いたいのであります。老人医療の無料化は都道府県段階ですでに十以上、あるいは市町村の段階で四百五十あまりがやられているわけでありますが、これは国がいつまでたっても取り組まないので、こうした自治体でも財政基盤が弱いけれども、これを思い切ってやろうというのが現段階の状態だろうと思うのでありますが、二月二十二日、前内田厚生大臣が衆議院の予算委員会で、老人医療完全無料化を初めて打ち出されました。近い将来実現すると言っておられたのでありますが、特にそこでプロジェクトチームを組んで厚生省は取り組んでおるのだとおっしゃっておるわけでありますが、現在までどのようにこの実現に向かって作業をしておられるのか、そのいまの経過をひとつ伺っておきたい。
次に、いつの時点でこれが実施できるのか、またその中身はどんなものであるかという点についてひとつ伺っておきたいと思います。
それから、沖繩の医療の問題でありますけれども、私はこの沖繩の医療問題については、第五次の沖繩調査団の団員として現地の社会保障の実態をつぶさに見てまいりました。本土よりかなりおくれておるというのはもうお話のとおりでありますが、この四月の二十三日に厚生省も調査団を送っておられるし、その報告及び本土並みの医療制度、医療保険をどのように進めていかれるのか、この際沖繩を含めて真の医療保障を確立する好機だと思うのですけれども、厚生省のお考えを伺っておきたいと思うのであります。特に沖繩に行なわれておる医療は、いま混乱を起こしているような療養費払いになっておりまして、絶えずすべての医療行為に対して一部負担というものが患者にかかっているわけであります。そういうことで黒字になっているわけであります。こういうような問題で、いまここで総辞退の中でもそれが行なわれているわけであります。これをひとつ十分に反省をして、ほんとうにいい医療にするために沖繩も一緒に入れていかなければならんと私は思うのであります。そういう観点から厚生省のお考え方を伺っておきたいと思います。
#27
○国務大臣(斎藤昇君) 老人の医療問題は二年前に両審議会に諮問をいたしました中に、厚生省としましての、これは特別な保険制度でそして老人の何といいますか自己負担のないようにという案を出しております。いま地方で行なわれておりますのは、老人の自己負担の分を公費で負担をするということにやっているわけでありますが、この公費負担によるか、あるいは保険制度によるかということは検討の余地があると思いますが、いずれにいたしましても、次の国会には、老人の医療は自己負担がなくて済むような提案をいたしたい、かようにいま考えておるわけでございます。プロジェクトチームのお話がございましたが、これは医療だけでなしに、老人問題に対処する諸般の施策を総合的に検討いたしておるわけでありまして、これはまた案が整いましたら次の国会においてもできるだけ予算的な措置をとるものは予算を、特別な法律が要るならば特別な法律をと、かように考えていま作業をいたしております。
なお、沖繩の医療の供給体制もきわめて悪いことを承知いたしておりまするし、保険制度もお述べのようにこちらとは非常に違っております。これを一日も早く本邦といいますか、こちら並みの医療水準に、そしてまた、保険制度もこちらに合うような制度にいたすのが当然である、かように考えてこれも作業を進めておりますので、御了承をいただきたいと思います。
#28
○石本茂君 ただいま大橋委員がいろいろお聞きくださいました問題につきましては、私も聞きたいと思っていたのでございますが、今日までの非常な御苦労と、これからどうしようかということのお考えの一部をお知らせいただいたような気もいたすのでございますが、先刻からのお話の中で私は二つほどお願いといいますかお伺いといいますか、ぜひこのことだけを聞いておきたいと思うのですが、さっき保険局長さんが、当時保険課長会議を招集されまして、そして、このことの問題等につきまして周知徹底方をはかりましたと申されておりますけれども、それは辞退をされました医師、あるいはまた辞退することのできなかった、あるいはしておらないところに対するものでございまして、市民に対するものであったのかどうか。なぜそういうことを申しますかと申しますと、私はいま路地裏に住んでおります。周囲にはたくさん子供をかかえた人がおるわけでありますが、非常な不安感を持ちまして、子供が病気になりましたらどこへ行ったらいいんでしょうか、行ってみまして何か書いてありましたけれども、読んでもわかりませんでしたということで、すごく戸惑いをしております。なお、先ほど事故が起こらないように十分に注意をするようにしているというふうに申されましたけれども、ただ注意をして、ただ目をみはっておりましても、これは私は労働能力には限界がございますので、必ず、事故も起きているでしょうし、これからも起こる可能性は十分にあると思うんですが、そういう場面を通じまして私が知り得る限りの病院では、もうすでに朝の受け付け時間の短縮をいたしまして、十一時まで受け付けてもらえると思って行きましたら、もう外来患者超満員になりましたというので一時間前には打ち切られました。そのために私はきょう見てもらうことができませんでしたというので、それこそ命をかけた問題が所々に出てきておるわけでございますが、各都道府県の保険課長さんらの会議のあと各都道府県がどのような市民に対する措置をおとりになるように指示されましたのか、また現にどうされておりますのか、東京は広うございまして何も私どもわからぬわけでございますので、その一点と、それからさっきちょっと申しましたように国とか公立病院等に対しまして、いまの人員ではこれはとてもなし終えるわけがございません。しかも、さっき申しました受け付け時間短縮で一番困っているのは国民でございますが、それらに対します具体的な措置等についても御意見を承っておきたいと思います。この二つお願いいたします。
#29
○国務大臣(斎藤昇君) 周知徹底と申しましたのは、実際その保険医辞退だからお医者に行っても見てくれないのじゃないかというような感じを持っている人が非常に多いように私は思うんです。一例をあげますと、私もある人から、病院へ行きたいと思うが、いままで、開業医ですが、それはやっぱり保険医です、行きたいと思うんだけれどもどうだろうということでしたから、とにかく行ってみなさい。そして、どういう処置をするか私も一つの参考になるから行ってごらんなさい。そこで行ったところが何も言わずに診療してくれて、会社へ行って書類を持ってきてください、その書類で処理しますからというので、何の不安も何にもなかったということも聞いております。すべてがそうではないと思いますけれども、大体、私は医者はやはり患者をみるについて、自由診療になりましても、金を持ってこなければ見ないぞと、急病患者に対してですよ、そういう医者は私はほんとうに医者らしくない医者だと思うわけです。きょうは金がないといえばそれじゃあとでもよろしい、お金持ちの人にならそれは高い診療費を請求してもよろしいでしょう。そういう心がまえがあってしかるべきだと私は思うわけであります。私は医師会にもそういうように医者を指導してもらいたい。自由診療になったからといって、高い料金を必ず取らなければならぬというわけでもない。患者を見てあなたは無料でよろしい、あなたはお金持ちだから一万円払ってください、それはいいでしょう。とにかく医者に行って相談すること、それをひとつぜひ徹底するように私のほうもいたしたいと、かように考えております。いろんな事務的な措置は先ほど述べましたとおり、またさらに足らなければ政府委員から答弁をいたさせたいと、かように思いますので御了承いただきたいと思います。それから国立病院、公立病院の処置につきましては医務局長から答弁をいたさせます。#30
○説明員(松尾正雄君) 総辞退体制になりまして、特に国立病院をはじめとします公的な病院が、その使命から見まして、国民の医療のために相当の犠牲を払いましてでも、これは引き受けなければならぬという気持ちでございまして、それぞれ関係の団体をはじめ、すべてに指令を出してございます。現在までの状況を簡単に申し上げますと、辞退一週間前の状況と比べた国立病院の外来の状況は、大体第一週で六・四%増、それから第二週で一〇・三、三週目におきまして九%の増、大体一割程度の増加というのが全国を見たときの平均でございます。これは御承知のように場所等によりましてかなり差がある、かなり患者数がふえているということも実態としてはございます。なお、その中で非常に特色がございましたのは、新患が非常にふえておるということでございました。また、その中でも、いま先生御指摘のように、小児科系統の患者さんが非常に多いということが今回の特色かと考えてよさそうでございます。したがいまして、かような状況に対しまして、私どもはただいま診療時間短縮の話がございましたけれども、逆にやはり従来の習慣以上に、外来の受け付け時間等を延ばすということを指示しております。また、そうなりますと、院内におけるいろんな事務職員、看護婦さん、医者をはじめといたしまして、いろいろなやりくり、応援態勢ということが当然必要でございますので、そこらを十分に考慮してやるということ、なお、それでも足らざるところは、非常勤の職員等を利用いたしまして、それによってカバーする。また、先ほど来申し上げましたように病院によりましてかなり影響が違っておりますので、あまり大きな影響がないような病院のほうから、もよりのかなり患者の殺到しております病院のほうに応援を出すということも実施をいたしております。また、それに伴いまして、いろいろな費用その他のものが必要でございますが、これは十分にひとつめんどうを見たいということでいたしておるわけであります。なお、時間外あるいは夜間等のかけ込みということもふえておる状況でございますので、そういう方面の当直の強化ということも話し合っております。しかしながら、いずれにいたしましても、御指摘のように平常の診療態勢の実態から見ますれば、やや異常な患者数ということはこれは避けられない実態でございます。いまのような、いろいろ手当てをしておりますけれども、やはり要は細心の注意を払っていかなければならぬことは当然でございますが、基本的には、こういう事態の早い解決をするという必要性が、病院側から見ましても、ひとつ痛感されるところでございます。
#31
○石本茂君 よく御意見わかりましたが、私これだけお願いしておきたいと思いますのは、事が命にかかわる問題でございますので、締め切られましたから行かれませんでした、金を持っておりませんので、わかりませんので行くことできませんという多くの市民がありますことを十分に御勘考なさいまして、できますことならば、七月中にこの問題が解決するのでしたらともかく、なお、延びる可能性があるのでございましたら、告示なり公告なりをもちまして、多くの市民が安心して、医療は従来どおり受けられるのだと、ただ、しかし、手数等につきまして、やはり、われわれいままでのような気持ちではだめなんだという、何かよい意味の御指導、これをやはり市民に向かって、国民に向かってしていただけますことを心の底からお願いするわけでございます。医者に行ってみてどうも気にいらなかった、次にかわりますということとちょっと違いますので、物を買いに行って品物気にいりませんから次の店に行きますというわけにはまいりませんので、ひとつよろしくその点をもお考えくださいまして、ほんとうにいっときも早く、みんなが安心して病気になりましても、けがをいたしましても、従来どおりお医者さんには行っていいんだというような気持ちになれますように、政府と医師会との論争、抗争は根の深いものがありますから、簡単にまいりますかどうか存じませんけれども、そのために国民が非常な混乱をいたしておることを知っておりますものですから、特にお願いする次第でございます。次に、私はお聞きしたいのは、いよいよ昭和四十七年度の予算の御詮議も始まったようでございます。時期的に始まっておるのでございますが、そこで従来とも医療機関の中で一番問題になっております従事者の不足でございます。もちろんこれは医師の問題もございますが、厚生省所管の非常に大きなウエートを占めております看護婦学校、養成所に対して、特に民間への運営費の補助でございますが、これは一体、来年度、どのような考えをもっていま御詮議中でございますのか、この一点、ぜひお聞きしたいと思っています。
なおまた、医療の範囲といいますか、非常に深みと広さが出てまいりまして、作業療法士、理学療法士につきましても、非常に足りませんのが、これが現実でございます。それらにつきましても、従来のままの養成機関で、従来どおりにお進みになりますのか、さらに特段の御配慮を来年度に向かいましてお持ちになっておりますのか、この点を一点お聞きをしたいと思います。
#32
○説明員(松尾正雄君) 御指摘のとおり医療従事者の養成確保は一番基本的な問題でございまして、したがいまして、医者等につきましても、従来、いろんな論議がございましたが、厚生省としては、現在の患者数との対比から見まして、さらにこの医者の養成というものを急がなければならない、こういう態度で文部省とも具体的にいろいろ数字を詰めまして、文部省の計画を促進できますように援助しているつもりでございます。なお、一番問題が大きかった看護婦の問題につきましても、これはすでに御承知のとおりここ二、三年の間に予算的にもかなり増加をいたしました。四十四年度は約十八億でございましたものが翌年は三十六億、さらにことしは五十四億というように、従来のベースに比べますと大幅に増加をさせまして対策の充実をはかっております。
特にその中で、ただいま御指摘のような民間の看護婦養成施設に対しまして、従来はいわゆる病院の水揚げ、患者収入というものによって養成の経常費がまかなわれておったということに対しましては、これはやはり問題がございますので、今年度二億九千万の補助金を初めて支出することにいたしております。しかし、これは、ただいまの御指摘のようにこれをもって足りるものではございませんで、さらに内容を充実いたしまして、また、きめのこまかい配慮をいたしまして、民間における養成施設が質の高い看護婦さんたちを養成できますように、さらに来年度も努力していきたい、また目下努力中でございます。
#33
○石本茂君 その辺のお考えも一応わかりましたが、この際特に私、また将来いろいろお願いもし、ただしていきたいと思っておりますが、いま医療の抜本改正問題をめぐりまして大きく問題が出てきておりますが、ぜひそれとあわせまして、一昨年来非常に騒ぎました看護制度につきましても、できるだけ早い時期にやはり政府御当局のお考えの中で手を打つ段階を見つけ出していただくことを心の底からお願いしたいわけでございます。足りないだけの問題じゃございません。なぜやめていくのだろうか、その辺にも特段の御留意をちょうだいしたいというふうに考えております。いずれまた時間をいただきましたときに、このことにつきましても御詮議いただくように、ただしてまいりたいというふうに考えております。なお、次にやはり来年度予算との結びつきでございますが、いま毎日、新聞紙等を通じまして報道されておりますように、いわゆるえたいの知れない病気――奇病と申しますか、特殊疾患がどんどんふえてきております。あげましたらきりがございませんで、スモン病でございますとかあるいは筋ジストロフィーでございますとかいろいろ出ておりますが、こういうものに対しまして国家が、厚生省御当局が、どのように一体将来に向かいまして手を打とうとしていらっしゃるのか、これも非常に予算とのからみつきが大きいと思いますので、お伺いしておきたいと思います。
#34
○説明員(滝沢正君) ただいまお尋ねの難病あるいは奇病と言われまして、例示いたしますと、スモン病、ベーチェット病等が特に問題になっておりますが、この点につきましては、たとえばスモンにつきまして、今年度は従来の調査研究のほかに、治療研究費として特に重症な患者につきまして、患者の負担を軽減する目的も含めまして、治療の研究の予算を増額いたしまして対処いたしておるところでございます。いずれにいたしましても、原因が不明である、あるいは治療法の適切なものもまだ見出し得ない、あるいは必ずしも的確な診断基準が確立してないということは、その疾患であるということを確認することにもたいへんな問題がございますので、これをすぐに一般的な意味の公費負担、あるいは医療保険の関係を優先させた後に自己負担を肩がわりする意味におきましても、これを確立すること、原因その他の究明がまず重要でございまして、したがいまして、当面並びに来年度におきましても、かかる不明な疾患あるいは原因の究明を要するような疾患等につきましては、スモンの対策と同様、患者の立場も考慮しながら原因の究明等に全力を注ぐという方向で今後対処していきたいというふうに考えておる次第でございます。
#35
○石本茂君 よくわかりました。いずれにいたしましても、国民が非常にこういうことにつきまして、特に医療の問題につきましては大きな不安をいま持っておりますし、その場で働いております者も、そうした背景の中にありまして苦心惨たんしながら非常な苦労をしておるわけでございますので、どうか厚生御当局、たくさん問題はあると思うのでございますが、その辺にも特段の御配慮をくださいまして、一日も早くほんとうに安心してよい医療、同時にわからない病気がわかってなおれますような方法づけをしてくださることをお願いいたしまして、私質問を終わります。ありがとうございました。#36
○大橋和孝君 いまのに関連して、看護婦の問題が予算の中で質疑されましたけれども、私はこの抜本改正で一言だけお願いしておきたいと思うのは、こうした教育、先ほど私、少し触れましたけれども、教育の問題を医療の診療報酬の中でやるということに非常に大きな私は間違いがあると思います。ですから、医療の経済の中でやらないで、やはり教育というものはひとつ離してやってもらいたい。今後はひとつそういうふうな新しい観点からこの問題に取り組んでもらいたいと思うわけでございますが、それに対するお考えを承りたい。#37
○説明員(松尾正雄君) 先ほど石本委員の御質問にもお答え申し上げたのでございますけれども、特に代表例として出されました看護婦の養成というようなものが、特に民間機関におきましては、一般的な財源の裏づけなしに、御承知のとおり病院収入、すなわち患者の診療報酬というものを基調にいたしまして養成されておる。その点は、これは国家的な問題でございまして、その病院だけの看護婦を養成しているという意味でもございませんので、やはり公の費用を投じまして、社会全体のためになる看護婦さんを養成していただく、こういう形でなければならないということでございまして、特に現大臣が前におられましたときに強い御指示もいただきまして、先ほど申しましたように、民間の養成施設に対しましても初めて運営費の道を開いたわけでございます。御趣旨の線に沿いまして今後とも努力してまいりたいと思います。#38
○小平芳平君 保険医の総辞退の問題につきまして、いろいろいまお話がありましたが、厚生大臣が就任以来たいへん御苦労なさっていらっしゃるという点についてはよく私も存じているつもりでございますが、先ほどの大臣の御答弁ですと、ある方から病院についての相談を受けた。まあいいから行ってみなさいと言ったら、その人が病院へ行ったらこれを持って会社へ行けと言われたというようなこと、あるいはお医者さんというものは、金がないから断わる、ある人からはとれるから、一万でも二万でもとればいいのだという、そういう傾向に実態はならざるを得ないかもしれませんが、しかし、実際問題、国民がいまどれほど困っているかということが毎日の新聞に報道されております。これは読売新聞ですが、北海道根室市におきまして、午前三時から暁の行列が始まると、そうして、順番をとろうとする、公立病院へ行って診察の順番をとるために三時、四時から行列をして待っていなければいけないというような実態、あるいは同じくけさの新聞ですが、川崎市の若い母親が総理大臣に直訴状を出した。自分がかぜで倒れた。二人の子供さんが感染をして、あっという間に一万円かかってしまったというような、こういう毎日報道される実態は、あるいは厚生省じきじきに、この公立病院の受診者のふえ方は何%ということをいまおっしゃっておられましたが、実際問題そこで黒山のように待っている人たち、そうして、その人たちが一体朝何時から来て待っていらっしゃるかというような実態、あるいは近所のお医者さんで見てもらえたのが、たいへんな交通費を使い、時間のロスを、また時間をかけて通わなくてはならないという、そういうような実態を御存じの上でしょうね。その上に立ってこの問題と取り組んでいただかなければ、たいした問題はないのだ、新聞に出ているのは何か特別なものが出ているのであって、大体はたいした問題じゃないんだと、そういうことじゃとんでもない結果になるんじゃないかと思います。とにかく国民の、診療を受ける人、一番弱い立場の患者の身になって取り組んでいただきたいと思いますが、この点いかがでしょう。#39
○国務大臣(斎藤昇君) 私はおっしゃるとおり、ほんとうに患者の身になって一日も早くこういう事態は解消させなければならない、かように思って努力をいたしているわけでございます。ただいまお述べになりました国公立の病院に患者がたくさん押しかけてきておられるということも私は十分承知をいたしております。しかし、それらの方々はいままで保険医のところへ行ったらだめなんだと、こうきめ込んで行っておられる人も相当私はあるんじゃないかという感じがするわけであります。いままでのかかりつけのお医者さんとこへ行って、そして、保険診療はやりませんと、したがって、現金をこれだけ持ってこなければ見ませんよという医者が私はそんなにたくさんあるんかしらと思うわけであります。私は声を高くして申し上げたいのは、診療というものは医者と患者のほんとうに、何といいますか、人間関係であるわけでありますから、いままでの国民皆保険ができましてから、いかにもその間の、昔のことばでいえば医者は仁術といいますか、この人間関係というものが非常に薄れているんじゃないかと思いますけれども、しかし、患者がかけ込んで来た場合にお金がないからきょうは見ませんという医者が私はなきにしもあらずだと思いますよ。思いますが、すべてが一体そうであろうかと、またそうであっていいんであろうかと、この際にこそ自由診療になったのならば、それは国保は保険でみる、健保は自由診療だと、こうきめた場合に、自由診療だからというて、患者をそう拒むであろうかと、全部がそうであろうかと、こう思いますから、そういう点を徹底すれば遠いところから国公立の病院まで行かなくても済んだ人が相当あるんじゃないだろうかと、かように思うから、その点を十分PRをしたいと、こう申しておるんで、私は現状を認識しておらないわけではございません。また、この際に医者のあるべき道というものをはっきり医者に示してほしいということを私は言っているわけであります。#40
○小平芳平君 私も、知っているお医者さんで、それはもう何年も前から来ている人に対しまして、保険医を辞退したから、さあ現金払わなければ見てやらないから帰れ、そんなことが行なわれているとは思いません。また、全部が全部そんなことが行なわれていないのは事実だと思います。ただ、現実問題、確かに公立病院へ行かなくても、このお医者さんへ入ろう、病院へ入ろうといって高く請求されてびっくりしている人がいることは間違いないですよ、大臣。ですから、そういう点、金がないから帰れと言われたじゃなくて、実際見てもらったと、請求書が高くてびっくりしたということなんですよ。それから特に患者の負担について、先ほど関連質問で出ましたが、超過分ですね、超過分は福利厚生費などという名目で組合が負担することは差しつかえないというようなことがありましたが、そうしますと、結局、組合健保の人も実際は一時金を立てかえたりいろいろなことは起きますが、実際には組合健保の人も余分に金を払わないで済むということになるわけですか。#41
○説明員(戸澤政方君) 先ほども御説明いたしましたとおり、原則的には、超過分につきましては患者の負担になるわけでございます。つまり、保険の付加給付というようなかっこうでもって組合から補償するということは、いまの法のたてまえからできないわけでございます。ただ、あと、その組合内部の問題として、その償還について保険以外の方法をもって償還を受けるというようなことにつきましては、中の、組合内部の話し合いにおまかせしているというのが現状でございます。#42
○小平芳平君 結局、組合内部の話し合いによって負担することにきめれば、患者に負担はかからないということですね。それで次に厚生省から内簡が出ておりますが、これはどういうことになりますか、文書料ですね。文書料は付加給付または保険施設費で支出してよろしいという内簡が出ておりますが、そうなると、この文書料も患者の負担にならないで済むというように理解してよろしいですか。とともに、また組合健保のほうがそうだとすれば、政府管掌はどうなりますか。
#43
○説明員(戸澤政方君) 今度療養費払いというような方法になりまして、お医者さんから領収書あるいはそれにかわるレセプトを患者さんがもらって、それをもとにして医療費の償還を受けるという手続になりますので、お医者さんのほうとしましては、従来よりもややこしい手続が要るわけでございます。つまりレセプトを書いて患者に渡さなきゃならぬということで、その手数料として文書料というものを特に組合健保において要求されるということがございます。この点につきましては、文書料というのは保険給付をする上の手続上必要なものでありますから、それは付加給付あるいは保険施設費というようなことでもって支払ってよろしいという内簡を出したわけでございます。したがって、それは組合員本人の負担にならずに、あとから組合から補償を受けられるというわけでございます。#44
○小平芳平君 政府管掌は。#45
○説明員(戸澤政方君) 政管も趣旨は同様でございますけれども、政管につきましては、医師会のほうでも大体現行の診療報酬点数でもって行なうというのをたてまえにしておりますもので、そういう文書料を要求せられるという例はきわめて少ないというふうに聞いております。#46
○小平芳平君 そうしますと、文書料は組合が負担すると、政管も政府が負担すると、よろしいですか。――そうしますと、次に抜本改正についての御答弁は大臣から再三ありましたので、その点、繰り返しませんが、要は目先の、要するに抜本改正についてではどうするかという意見は、もう各方面で何年来の意見が出ていると思うのです。したがって、目先の、片方がこれを譲って片方がこっちを譲ってというようなことではなくて、国民の生命を守り、健康を守るという、そういう医療制度をつくるという趣旨においてはビジョン、目標をきめまして、あるべき方向、つまり私はさっきの三本の柱、政府の。これには非常に意見がありますが、しかし、支払い団体が一本化するということが目標であるならば、さしあたっては政府の各省ばらばらの共済組合などはまっ先に一本化してよろしいわけではないでしょうか。そういう目標をきめることが第一で、その目標に向かって、では健康保険はこういう姿にしていくのだ、医療制度全体はこういう目標で、五年がかり、あるいは十年がかりで実現していくのだ、それが第一だと思うのですが、いかがですか。#47
○国務大臣(斎藤昇君) 三本の柱というのは何をおさしになるのか私よくわかりませんが、地域保険と勤労者保険と老人保険、この三本の柱をおさしになるのですか。もしそうだといたしますると、そこには共済組合の制度とかあるいは健保の制度とかいうようなものはなくなってしまって、まさしくいくべき姿がはっきりしていると、かように思います。#48
○説明員(戸澤政方君) ちょっと答弁を補正さしていただきたいと思います。先ほど文書料の問題につきまして、政管健保につきましては付加給付といったような道がございませんので文書料を払うということはできないというたてまえになっておりますが、しかし、政管につきましては、先ほどお話ししましたとおり、ほとんど文書料を要求されるという例も希有でございますし、また要求される場合でもきわめて少額であるというようなことでもってそれほど問題はなかろうというふうに考えております。
#49
○小平芳平君 政管こそ文書料なんか患者に負担させるべきじゃないでしょう。時間がありませんので、それから抜本改正の目標を立てるべきだという点は、大臣、よろしゅうございますか。要するに、目先のことだけでなくて、日本の国の医療制度を三年先、五年先、十年先にどう持っていくかということがきまった上で、ではさしあたって何から手をつけるかということが必要だと思うのです。大臣、よろしゅうございますか。
#50
○国務大臣(斎藤昇君) 目先の方策では、これは抜本改正とはいえないと私は思うのです。抜本改正という以上は、とにかく国民の医療を社会保障的な見地から、そして、国民のお互いに助け合うという連帯的な考え方から、どういう保険が望ましいのかということが私は抜本改正であろうと、かように思うわけであります。ただ、いまこの点が困るから、あの点が困るからというのでは、これは抜本改正にならないと、私はかように考えております。私はまだ踏み切っておりませんけれども、いまの保険は、申し上げると被用者の保険と、それからそうでない農民その他の自営業者の保険と、この二つに大別すれば分かれております。この大別がはたしていいのかという点にも、私は大きな疑問を持って、皆さま方にも御意見を伺いたい、かようにいま思っておりますので、抜本という以上は、新しいところに、新たに国民皆保険という見地から、いま申し上げましたような見地に立って日本の保険はどうあるべきかというように考えていかなければなるまい、かように思っております。#51
○小平芳平君 ですから、抜本改正は、生命、健康を守るという医療のあるべき姿をまず写し出してということで、私はそれでいいと思うのであります。ですから、そのためには、先ほどおっしゃった職域、そういう考え方については私は賛成しているわけじゃありませんが、政府の各省の共済組合はすみやかに統合する。これもよろしいですね。#52
○国務大臣(斎藤昇君) 共済組合も保険の一種でございますから、これを一本に統合するというのではなくて、いまの共済組合的なそういう考え方、それから国民保険的な考え方、そういう考え方が存在していていいのかどうかということがまず抜本改正の基本的な理念をきめる問題だと、私はかように考えます。#53
○小平芳平君 ですから、ただまとめる、まとめると言っても、まとめることについての反対意見もあるわけですが、政府内の共済組合ならこれは政府がまとめればまとまるわけです。その一つすらできないで何もできないじゃないですか。まあその点はその点としまして、老人医療は無料にする、これはいずれにしても次の国会では、公費負担になるか、保険制度になるか、老人医療は次の国会に提案をするというふうにお述べになりましたので、これは来年度予算には老人医療は無料になるということで厚生省も予算措置もしていくというふうに理解してよろしいでしょうか。
#54
○国務大臣(斎藤昇君) さように御理解を願います。#55
○小平芳平君 それから次に、老人福祉について一、二お尋ねして終わりたいと思いますが、この老人福祉についても年次計画すらない。防衛計画のほうは第三次防、第四次防、大々的な計画をして国会でも論議をされ、そしてまた予算も五兆円、六兆円というような膨大な予算を組んで論議されておりますが、老人福祉については年次計画がない。かりに申しますと、福祉年金にしましても、二千円が二千三百円に上がる。しかし、こういう状態ではいつになって老人の福祉が充実したと言えるようになるか、見当つかないわけです。したがって、この際老人福祉についても目標をきめて、そして年次計画を立て、一歩一歩実現をしていく、これが一番大事じゃないでしょうか。特に福祉年金を中心にしてそういう目標を立てていかれるお考えがあるかどうか、お尋ねしたい。#56
○国務大臣(斎藤昇君) 老人の福祉年金につきましては、ただいま関係審議会でいろいろ御審議を願っておりますので、その御意見も伺いたいと思っております。福祉年金を年次計画を立ててどうするかという問題は一つの課題だと、かように思います。いまのところその程度で御了解いただきたいと思います。#57
○小平芳平君 その程度ではちょっと……、もう少し積極的に。老人福祉となりますと、初めのうちは再就職のこと、そしてまた、住宅のこと、そして、医療費について、そして、生活について、あるいは老人ホームについて、もうこの老人福祉は、老人と一口に言いましてもいろいろな階層が含まれておりますので、多方面にわたらなければならないわけですから、したがって、老人福祉に限らない社会保障制度自体の私は五カ年計画なら五カ年計画が最も必要なときだと思うのですが、老人福祉についても、そういう計画なしに行き当たりばったりに毎年毎年予算の割り振りによってきめられていくという状態じゃなく、もう少しはっきりした目標をきめてやってほしいと思いますが、いかがでしょう。#58
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほどは福祉年金についての年次計画と思って私はお答えいたしました。老人福祉だけをとって考えましても、年次計画の立つものと、なかなか立ちにくいものとあると、かように思います。たとえば老人の養護施設あるいは特別養護施設というようなものはどれだけの方を入れなければならないか、それについて何年計画でという目標が立つわけであります。しかしながら、老人のできるだけ生きがいのある生き方をやっていただきたいということについて、年次計画というのはこれはなかなか立てにくい、立ち得るものは立てますけれども、立ち得ないものが非常に多いと私は考えます。福祉全体について一体年次計画ということは、これまた非常にむずかしいと思います。一体国民の総所得とそれに見合わせて福祉はどれだけになるべきか、それについて年次計画、これは数字の上で立たぬではありませんが、やはり実態に応じて、日本の国情に応じて福祉計画、社会福祉をどう増進していくかと申しますと、これを年次計画を立てるということはきわめて私は困難と、かように考えているわけです。#59
○小平芳平君 国情に応じまして防衛のほうは立てているじゃないですか。防衛のほうがあれだけの計画を立てながら社会保障が計画なしというのはおかしいですよ。だから特に計画の立てやすいものと立てにくいものとおっしゃるのですが、この福祉年金などは計画が立てやすいものだと思うのです。立てようと思えば立てられないわけはないし、あるいは老人ホームにつきましてもそうです。建設計画を立てる、あるいは老人向けの住宅ですか、老人向けの住宅というものがごくわずかいまあるけれども、これなども、老人専用住宅というものが社会保障制度が進んだ国ではみんなあるわけですから、わが国でも老人専用住宅の目標を立て、建設をしていく、当然じゃないですか、それは。#60
○国務大臣(斎藤昇君) だから私は、立てられるものは立てる、立てにくいものは立てられない、かように申し上げておるのです。防衛計画は日本の国を防衛するのにどれだけのものが必要かということは、これは一応めどがつくと思うのです。それに向かって年次計画も立つでありましょう。またそれに、日本の国力に応じてどの程度の防衛が必要か、これは私は立つと思うのです。ところが国民の一体福祉を念願するこの気持ちというものは、これは無限大である。ここでよろしいというものはありません。したがって、そういう意味から非常に立てにくいものが多い。先ほど申しましたように、老人の保養施設あるいは養護施設とかいうものは立ちます。だから立てようとしている、かように申し上げているのです。社会福祉施設の五カ年計画というものをすでに立てております。それによってやっておるわけです#61
○小平芳平君 住宅はどうですか。大臣が福祉施設を立てるということは了解しましたので、私がもう二つつけ加えてお尋ねした一つは福祉年金、もう一つは住宅です。老人向けの住宅です。#62
○国務大臣(斎藤昇君) 福祉年金はいま関係の審議会に審議をしてもらっておりますから、その答申を待って検討をいたしたいと、かように申し上げております。老人の住宅、これはなかなか立てられそうで非常に立ちにくいと私は思います。老人の非常にこれはむずかしい要素がたくさんあるわけでありますので、年次計画を立てることは非常にむずかしい。しかし、大体目の子でいまさしあたってこのくらいは要るだろうということから、立てようとすれば立てられないことはございません。これはいま検討をいたしております。
#63
○小平芳平君 局長、何を検討しているか答弁してください。これで終わります。#64
○説明員(加藤威二君) 老人問題につきまして、ただいま大臣のほうから年次計画の立てられるものは立ててやっておるという御答弁を申し上げたわけでございますが、老人ホームにつきましては、老人ホームの緊急整備五カ年計画というものを立てまして、四十六年度を初年度といたしまして五十年までに老人ホームの整備をはかっていく。現在大体八万二千人ぐらいの収容能力がございますが、これを、老人ホームにつきましては昭和五十年までに五カ年かかりまして十八万人まで持っていくという整備計画を持っております。約三千五百億ぐらいの金を投じましてそういう老人ホームをつくっていこう、こういう計画を持っております。それから、同時に老人対策といたしましては、そういった収容施設の整備と同時に在宅の老人に対する処遇というものがまた重要であろうというぐあいに考えております。その在宅の老人につきましては、重点施策といたしましてホームヘルパーをできるだけ年次的に整備をしていこうという計画で、これも計画を具体化しておるわけでございます。寝たきり老人四十万といわれておりますが、そのうち三年以上寝たきり老人であって、そうして、こういったホームヘルパーの派遣を必要とする、要するに家族もだれもいない、あるいはいても働きに出るために寝たきり老人の世話ができないという老人が約十万おるということで、それに対してホームヘルパーというものは一体何人要るかということで、これは二年計画で、四十七年、八年をもちまして約一万七千のホームヘルパーをつくり出そう、こういう計画を持っておるわけであります。
その他老人の生きがいのための無料職業紹介所、こういうものの整備につきましても、二年計画で全国の県庁所在地及び人口二十万以上の市につきまして少なくとも一カ所の老人のための無料職業紹介所を設置しよう、こういう計画を持っておるわけでございます。
住宅につきましては、これもただいま大臣からお答え申し上げましたように、非常に、なかなか計画が立ちにくいわけでございますが、毎年千五百戸の老人住宅のワクをとっておりまするけれども、都道府県からの申請がなかなか出てこない。実績といたしましては四十五年度は八百三十五戸というような非常に低調でございます。これはいろんな理由があると思いますが、一つは、たとえばいまの老人住宅が単身者はだめだ、これは公営住宅法で、老人住宅だけではございませんけれども、公営住宅全般につきましてとにかく単身者は入れないというような制限がございますので、そういう点もありましょうし、あるいはこういう老人住宅というものについての地方公共団体の理解が若干不足しているというようなこともあろうと思いまするけれども、一応私どもといたしましては、毎年千五百戸のワク、これは建設省と話し合いまして申請が出てきた場合には千五百戸というワクにとらわれない、幾らでも可能な限り老人住宅については建設省は協力する、こういうことになっておりますので、毎年何年計画でどうするという計画はございませんけれども、当面千五百戸あるいはそれ以上のワクを持って必要な老人住宅は申請が出てくればどんどんつくろう、こういう体制になっておるわけでございます。
#65
○小笠原貞子君 総辞退問題に入ります前に、きのうちょっと私どうしてもお聞きしなければならないと思ったのでその問題に入りたいと思います。きのう参議院の科学技術委員会のほうでも問題になりましたが、十一月に学術会議の選挙がございます。それで沖繩の代表も当然選挙権を持つべきではないかというような問題が討論されているわけですけれども、そういう中身について、これは大臣にお伺いしますからお聞きいただきたいと思います。「朝日ジャーナル」の七月二日号というのを大臣まだごらんになっていないかもしれないと思いますけれども、これ、ちょうど沖繩の問題、特集をやっております。そして、その学術会議の問題をどうするかということが自民党の中で話されたということが西銘さんの談話で出ているわけなんです。この学術会議選挙云々はここには当然関係はないのですけれども、この中で学術会議の選挙権を当然持ってしかるべきだという意見に対して、いや、いままであなたの意見は聞いてきたけれども今度ばかりは聞かれないということを言われた。そして森山欽司さんに、助け船を出してくれた。しかし、そのときに――ここから問題なんですけれども、斎藤昇さん、三重県選出参議院議員、大臣の斎藤昇さんが、「国政参加でもまだ早いのに、君、なにいってるんだ。教職員会、あれダメじゃないか」、こうおっしゃったというのが出ているわけなんです。まあ自民党の国会議員ですから、まさかうそはおっしゃらないと思うんで、もしもこれが斎藤大臣がおっしゃったとすれば、一体国政参加でもまだ早いのに、君、何言ってるんだ、学術会議なんか問題じゃないと、こう続くわけですけれども、一体国政参加でもまだ早いというその意味ですね、一体何をさして早いと言っていらっしゃるのか。これは根本発言だとか、いろいろ発言が問題になっている中で、やっぱりこれはちょっと見のがせない問題、特に沖繩の問題については、先ほどもおっしゃったように、福祉面で非常におくれているし、これは時を改めて沖繩の医療問題についてお伺いするつもりだったんですけれども、斎藤大臣のこの発言ですね、沖繩国政参加はまだ早いのに、君、何言ってるんだということをおっしゃったということ。私は西銘さんはうそを言っていらっしゃらないと思いますし、また「朝日ジャーナル」の記者が全然意味を取り違えるということはベテランの記者だからないと思います。そうしますと、大臣、ここにいらして、一体どういう意味でおっしゃったのか、それを冒頭お聞きして本題に入りたいと思います。
#66
○国務大臣(斎藤昇君) 私は厚生大臣として申したことではありませんから、ここで答弁する限りではありませんと言えばそれまでなんですが、はっきり私は申し上げます。確かにそれは議論がございました。私は国政参加がまだ早いとは申しておりません。絶対に申しておりません。国政参加をきめるときに、これは憲法違反でないかという議論が相当あった、そこを政治的に乗り越えた。で、学術会議の選挙権は、これは日本に復帰してから与えていいのじゃないか。事前に――国政参加の問題ですらも憲法問題があったことであるが、それは大きな政治的な意味から乗り越えて、各党ともにやろうということでやったわけだけれども、学術会議の選挙権をまだ復帰する前から与えるという必要はないんではないかと、かように申しました。そのとおりでございます。国政参加はまだ早い、そういう言い方はいたしておりません。#67
○小笠原貞子君 そうしますと……。#68
○委員長(中村英男君) 小笠原さん、これは議題外だから、まあこの程度で……。#69
○小笠原貞子君 それじゃ、大臣のおっしゃった意味もわかりますけれども、私の非常に心配しますのは、沖繩の医療問題、これから大きな問題になると思うので、もしも、憲法上の問題であるにしろないにしろ、沖繩の国政参加ということすらまだ早い、学術会議もことしやれば三年間という期限がありますし、その間もう沖繩の代表を入れないというようなことで、それでいいんだというような沖繩に関しての大臣のお考えが根底にあれば、これからの沖繩の医療問題についても非常に私は不安に感じるわけなんです。そこで、ちょっと議題と違うようでしたけれどもお伺いしたわけなんで、時間をとりますからこれで終わりますけれども、ゆめゆめ沖繩の医療という問題、非常に深刻な状態になっておりますので、また時を改めてお伺いいたしますけれども、いま非常に苦しめられている中で、ほんとうに本土復帰という名ばかりの中で、今後どうするかということでございますので、厚生大臣としても医療の面から真剣に取り組んでいただきたいという要望をして、それではこれで終わっておきたいと思います。#70
○国務大臣(斎藤昇君) 重大なことでございますから、私から申し上げます。私は法律的なものの考え方と事実的なものの考え方とははっきりしなきゃならぬと、かように思っております。沖繩の援助は、沖繩の復帰と無関係でも、できるだけ日本が援助する金を惜しんではいけない、ことに近く復帰しようとしているわけでありますから、一日も早く日本の水準に達するように援助しなければならない。さよう私は従来から考え、いまも考えております。したがいまして、単に医療問題だけではなしに、沖繩の福祉施設その他にいたしましても援助の方法でやれる、金を出してやれるということについては惜しみなくやるべきだと、かように考えます。
#71
○小笠原貞子君 それでは本題に移らしていただきたいと思います。実は私、社労委に今度初めて入るようになりまして、いろいろ調べてみましたら、これはたいへんな問題がございます。先ほどから大臣は、むずかしい、むずかしいとおっしゃっていまして、そんなむずかしい問題が、よくまあこれだけほうって置かれたものだと、実は私は逆に感心してしまったわけなんです。そこで、今度の保険医総辞退の問題でも、先ほどから非常に心配していると口ではおっしゃっていますけれども、実際に私は大臣はそこまで感じていらっしゃらないというふうに見えるわけなんです。こういうような状態になって苦しめられている人たち、そうしてまたお医者さんもお医者さんなりに、この点、決して楽な、ほんとうの良心的な医師としての仕事はしていないというような事態になったのは、一体どこに責任があるんだということなんですね。一体どこがこの事態に対して一番責任があるというふうにお考えになっていらっしゃるのか。そのことを簡単にお答えいただきたい。
#72
○国務大臣(斎藤昇君) さきにも申し上げておりましたように、この責任は一番やはり政府にある。その反省のもとにこの事態の収拾もはからなければならないし、この事態中に起こる事柄も善処をしなければならないと、かように考えます。#73
○小笠原貞子君 そういたしますと、政府に責任ありとみずからお認めになったわけなんですけれども、それにしては非常に対策というのが手おくれになっておりますよね。最近でいえば、中医協の脱退というのがことしの二月のことだし、その前に何年かの期限もあったし、いまの医療の問題が必ずこういう事態が起きるということは当然予測されていたと思うんです。私ちょっと調べてみて、まことに驚いたんですけれども、医師会なんかが要求していらっしゃる診療報酬がいかに低いかという問題ですね。これなんかも私は見てびっくりしてしまいました。たとえば、胃の洗浄が幾らかといったら、百二十一円だというんです。いま車を洗う洗車料だって五百円かかるわけですね。それから今度、応急人工呼吸、これも先生、看護婦さんが一生懸命何時間かかってやったって、これが一体幾らなんだといったら、百五十一円です。これで見られるように診療報酬というのが非常に低く押えられていると思うんです。そうすると、当然病院というのは赤字になってくるということが、結果的には出てくるわけなんです。この診療報酬をどうしても引き上げるべきだということは当然の要求だと思うんですけれども、この診療報酬がまことに低いと、手術すればするだけ――ここに資料もございますけれども、盲腸手術すれば三千円ないし四千円は最低マイナスになるというような体系ですね、これはまことに低いと、これについてはどうしても何とかしなければならないとお考えになっていらっしゃるんだと思いますけれども、その辺はいかがでございますか。#74
○国務大臣(斎藤昇君) いまの診療報酬はそのままでいいとは考えておりません。ことにいま問題になっておりまする人件費、物件費、相当上がっているわけであります。それに追いついていけない、大体基礎が、必ずしも診療報酬制度は満足でないという議論もあるわけです。それらにメスを入れて、あるべき姿にしなければならないと、かように思っております。#75
○小笠原貞子君 そうしますと、診療報酬は非常に安い。またこれも聞いてきたんですけれども、犬ネコ病院なんかに比べても、ほんとうに人間さまのほうが全然安いんですけれども、検血が犬だったら五百円以上取られて、人間だと二百二十円だなんて、全く犬ネコ病院以下の診療報酬なんです、調べてみたら。これは非常に低いと大臣もお認めになったわけです。この低いのがずっといままで続いてきているわけですね。そうしますと、病院というのが一体どういう状態になるか、これを調べてみますと、日赤病院は九十三病院ございますけれども、これが四十年に黒字が八十四で赤字が九だったのが、年々黒字が減りまして、四十四年には九十三のうち三十一が黒字で六十二が赤字に転化していると、日赤病院で。こういうように非常に赤字の病院が倍ぐらいにふえている。私立病院のほうはどうだということで私立病院のほうを聞いてみましたら、私立病院協会のほうからも赤字は増大の見込みだというふうに言われております。都立病院を調べてみましても、これも赤字でございます。そうして、厚生白書、これを拝見させていたださましたら、これでも地方自治体系の病院のうちの赤字決算の病院は四十年度三〇・二%だったと、四十二年が四三・二%、四十三年五一・一%と、こうふえてきている。四十四年はさらに六三・一になっている。このあとに「このように悪化をつづけてきた収支状況も、四十五年二月に診療報酬が全医療機関では八・七七%、甲表病院では、一一・二七%、乙表病院では一〇・九八%引き上げられ、四十五年度は前年度に比べればやや好転すると思われる。」とこう書いてあるわけですね。これ四十五年の一番新しい厚生白書です。では四十五年度ほんとうに好転するのだろうか。ここには好転する見込みだと書いてあるわけです。そこで自治省の財政局公営企業第二課のほうからお話を伺いましたら、四十五年の赤字というのはここに書いてある好転どころではなくて、また前年度よりふえて七〇%ぐらいにはなるだろうとこういうふうにお答えいただいているわけなんです。そうしますと、この厚生省自身の見通しというのは非常に甘いわけなんですね。そうすると大臣は診療報酬が非常に安いということもお認めになった。そして、いまいろいろ私立病院も言いました。日赤も言いました。自治体病院、厚生白書も言いました。そうすると、これも赤字になってきていると、こういう状態が追い込まれていったら一体どういうことになるのか、この時点でどうすべきだというふうに政府としては考えられてきたか、その点をお伺いしたいと思います。#76
○国務大臣(斎藤昇君) お述べのように昭和四十四年の一月に……、これは私は厚生大臣でございまして、診療報酬の緊急是正をいたしました。これをするために約一年がかりで、私も数日間徹夜をいたしました。それほど中医協はむずかしいのであります。三者構成がむずかしいのであります。しかしそれをやっと緊急是正をいたしまして、まあ総平均一〇%前後のアップであったと思います。そのときに、まあこれで大体赤字は解消するであろう、いけるであろうという見当で、これは各委員も医師会側も不満足ながらこれでよかろうということでやったわけであります。ところがやってみますると、相当まだ赤字が出てきている。それ以後の物価の上昇や、ことに人件費の上昇が多いということであります。したがって、また引き続いて先ほどおっしゃいました診療報酬のいろいろなあり方、技術料をどう見るかといういろいろな問題がありますが、そういう根本的なものをおいても、さらに緊急的に是正をしなければならない状態にあるだろうとかように考えております。ところが御承知のように、二月以降から医師会側は中医協から離脱をしたという状況で停止をいたしております。しかし、一日も早くこの保険医の総辞退問題を解消すると同時に、中医協に戻って、そして、中医協において緊急是正をすべきものはする、また抜本的に考えるべきものは考えるということをしてもらいたいと念願をして、私はいま要望をしておるわけであります。#77
○小笠原貞子君 いまおっしゃいましたように、私も言いましたように、こういう診療報酬も低い、赤字がどんどんきちゃう、それじゃ結局どうして病院は経営していくかというと、結局医療労働者にしわ寄せをしていっているということと、差額徴収をやっているということと、薬をたくさん出して、そして、そこのところで何ぼかの経営費を生み出していくという、全く医療としては正しい方法ではなくて、邪道のほうに進めるというような状態にずっと置かれていたわけですね。だからこういうふうな観点からすればもうまさに厚生省として、政府として責任は非常に重大だと思うのです。そこで、今度の問題についてもやはりあっちが悪いこっちが悪いというのではなくて、政府の責任であるとお認めになれば、政府の責任でどういうふうに緊急是正をして解決をしようと考えていらっしゃるのか。きのう衆議院のほうの委員会を傍聴させていただきましたら、何か八月中には解決をする見通しだというふうに自信を持っていらっしゃいましたし、きょうの新聞を見ますと、フジテレビのビジョン討論会の中でも二十七日に収拾案厚相が約束と。そうしますと、七月二十七日までに収拾案を出すと言われるからには、相当具体的に自信のある緊急是正の緊急対策というものをお持ちでおっしゃったのだろうと思う。具体的にそれでは緊急にどういうふうな対策を持ち、そうすればいま対立している健保連と医師会、そして苦しんでいる患者、この三つをどうやって共通の立場で政府としては責任を持って動かしていくかという、その具体的ないま考えていらっしゃる点をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。#78
○国務大臣(斎藤昇君) まず保険医の総辞退問題を早期解決しなければならない、私は八月中にというよりは、少なくとも八月の初旬、おそくとも初旬にはと、こう申しております。そして、それができれば、医師会も中医協に戻って、そうして、そこで審議をしてほしい、中医協は中医協として一応の考え方がありますから、その審議のやり方、内容というものを見て、そしてそれでいいかどうかということを見守りながらまいりたいと、かように思っております。#79
○小笠原貞子君 大臣、それ答弁にならないですよ。総辞退をやめて、そして中医協に戻って、そこで、またいろいろの御意見を伺って見守っていきたいなんて、総辞退なぜやめないかといったら、具体的な案というものが出されないから総辞退というのは解かないと、こういうわけでございましょう。それで医師会のほうとしては、人件費や物価にスライドしてくれ、この安い診療報酬というものを引き上げるということを考えてくれと、具体的に問題を出してきているわけですよね。そういう具体的な問題がここに提起されているにもかかわらず具体的な案を政府として持たないで、総辞退とにかくやめてください。中医協に来たら、そこでまたいろいろな話をしましょう。それを見守っていきましょう。これでは全く事態解けないですよ。これでは政策と言えないと思います。具体的に総辞退をやめてくださいというためには、何を出してやめてくださいとおっしゃいますか。#80
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの総辞退の原因は診療報酬費が低過ぎるからということで総辞退をしているのではございません。#81
○小笠原貞子君 いろいろあるのはわかっております。#82
○国務大臣(斎藤昇君) いろいろじゃありません。根本的な問題は保険の抜本改正をなぜやらないかというのが理由であります。したがって、診療報酬を何ぼ上げるとか上げないとか、そんなことがこの保険医の総辞退の原因ではございません。したがって、こういう問題について話し合う必要はない。私はそう考えております。#83
○小笠原貞子君 それでは、抜本改正とおっしゃいますけれども、その抜本改正というものだともっとたいへんになるわけでしょう。いま診療報酬が低いから引き上げてくれというような問題ではないとおっしゃいましたけれども、事実、問題になっていますよ。これではやっていけないということは医師会の中からだって出てきているのですよ。スライド制にしてくれ、人件費もそうやってくれという、これはやっぱり大きな経営上の問題から出てくるわけです。そうしましたら、そういう緊急にいま出されているような一つずつ解決するというものを持たないで、抜本改正をするという要求だから抜本改正するためには、やめて中医協に戻ってくださいということでは、私は、ちょっとこれは見通しがないのですけれども、武見さんとその辺はもう腹を割ってのお約束があると、こう見てよろしいのでございますか。#84
○国務大臣(斎藤昇君) 中医協というものを取り違えておられるのじゃないかと私は思うのですが、中医協は診療報酬制度を審議する機関で、いまの総辞退の問題は診療報酬制度、それが問題じゃないのです。したがって、その点は十分お考えいただければ、診療報酬をどうするということを明示しなければ、この保険医総辞退の解決になるまいと、こうおっしゃいますけれども、それは見当違いでございますと、こう申し上げます。#85
○小笠原貞子君 それでは診療報酬の引き上げというような問題は、これは別問題だ――考えていませんと、こういうことですか。#86
○国務大臣(斎藤昇君) この保険医総辞退の原因としては考えておりません。#87
○小笠原貞子君 じゃ、その保険医総辞退の原因というものはどれどれがあります。#88
○国務大臣(斎藤昇君) その問題は突き詰めますと、先ほどから申しておりますように、保険の抜本改正をやるやると言ってちっともやらないじゃないか、どうするんだ、どういうやり方をするんだということが一番の根本問題であります。#89
○小笠原貞子君 その抜本改正という、非常にこれは大きな問題だと思いますけれども、その問題を案としてそれじゃお持ちになっていらっしゃるわけですか。#90
○国務大臣(斎藤昇君) これはいま医師会側といろいろ話し合っておるわけでありまして、その内容をここにいま申し上げるのはちょっと時期尚早だと思いまするし、どういう方法で解決するかということはしばらくおまかせをいただきたいと思います。#91
○小笠原貞子君 そういう内容はいま言えないと、しかし、医師会と話し合っている中で、早急に解決の見通しは立つと、それに確信をお持ちになっていらっしゃるわけですか。#92
○国務大臣(斎藤昇君) 確信を持ちながらやっております。#93
○小笠原貞子君 それでは確信を持ちながらやっていらっしゃる。もしうまくいかなかったら、一体またそれ延び延びになるということも考えられるわけですけれども、その辺の確信の度合いはどこらまできていますか。#94
○国務大臣(斎藤昇君) ちょっとこれははかるはかりがございませんので。#95
○小笠原貞子君 私らこういうしつこい聞き方をしますのも、やはり現実に非常に深刻になってきているから、だからその辺のところを私は佐藤さんの所信表明演説を見ても、関係団体でと、こういうふうな形で、自分は部外者としての立場での所信表明だったし、そしてまた、大臣のおことばを見ても、その腹の中ではどの程度話し合いをなすっていらっしゃるかわからないもんだから、なおさら一体ほんとうに解決というものが早急に行なわれるかどうかということが心配で、こういうふうにお聞きするわけなんです。それはそれとして抜きまして、診療報酬が先ほど私が安いと言ったことは、大臣もお認めいただけると思うんです。これは当然手をつけなければならないとお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
#96
○国務大臣(斎藤昇君) 当然問題になると思っております。これは先ほど申しますように、この総辞退問題と無関係とは申しません。しかし、総辞退問題の重点だと、かようには考えておりません。これは自然に道が開けていく、総辞退が解ければ。さように考えております。#97
○小笠原貞子君 それでは診療報酬の引き上げということも考えていただけるということが、私としてはこれは非常に緊急に必要だというふうに判断をしているわけなんです。それから、もう一つの問題は、薬価の問題でございますね。総医療費のうちの四〇%が薬価になっていると、こういうことなんで、この点にも私は、やはり問題は目を向けていただきたいと思うのですけれども、お医者さんのほうで薬をどんどんお出しになる。そこで太るのは一体どこなのかと言ったら、製薬独占資本が非常にふえているということなんです。調べてみましたら、これは四十三年度の東洋経済新報社の「会社四季報」というのがございます。そこから見てみたんですけれども、武田製薬、資本金百五十九億千五百万円、売り上げ高が千三百九十四億七千万円に対して、純益が百三億四千四百万円、利益率というのが六六・五%ございます。時間がないからみんな申し上げられませんけれども、非常に大きな製薬会社はもうけをしているわけなんです。この製薬会社が実は二千九百三十七社、厚生省の資料でもあるといわれている中で、わずかに〇・三%この大メーカーの十社が半分以上の薬をつくっている。しかも、その平均の利潤率というものが六八・五%、四十四年の上半期で、これが下半期になってまいりますと七六%というふうに、一〇%上がる、こういうわけなんですね。そうしますと、その製薬会社が、昔から薬九層倍といわれているけれども、ほかの産業と比較してみると、これまた、たいへん問題になってくるわけなんでございます。もう御承知かと思いますけれども、たとえば電機メーカーの大手十社を調べてみますと、平均で四〇%台なんです。製薬のほうは七六%に上がる傾向になってきておるわけです。電機メーカーのほうは四〇%、その電機メーカーの中でも、松下だとか、それから、ソニーだとかという大手を引きますと二四%、鉄鋼五社では一二%、電力では一一%という利潤率なんですね。それに比べて六八%から七六%にずっといま下半期で上がってきておるということになりますと、この薬価基準というものが非常に独占を太らしているということで、どうしてもこの医療問題というものを解決するためには、この独占薬価という問題にメスを入れなければ、これは解決できないと思うのですけれども、その点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。――大臣でいいですよ。薬の問題だって大臣の責任で考えていただきたい。
#98
○国務大臣(斎藤昇君) 私は、ただいまあげられました数字はそのとおりだと思いますが、私はまだ責任を持ってそこまで掘り下げて検討はいたしておりません。今日の診療報酬の中で薬価をどう見るか、これは薬価の何といいますか、毎年これは実態調査をいたしまして、そうして、それによって薬価基準をきめていくというようにいたしておりますが、この薬価のきめ方はどういうようになっておるかということを、私詳細存じておりませんので、関係の政府委員から御説明いたさせます。#99
○説明員(戸澤政方君) 保険に使います薬価につきましては、いま大臣の答弁しましたとおり、毎年、薬価実態調査をやりまして、実勢価格に合わせるように厳格に施行しております。毎年数%ずつくらい下がっておるようであります。したがって、個々の薬の値段につきましては、厳正に決定しているつもりですけれども、保険診療全体に占める薬の比率、これは確かに先生のおっしゃるとおり非常に多い、これがまた医療費全体に大きな影響を及ぼしておるということは事実でございます。それで、医療費の問題につきましては、これは医療費が低いという量の問題もございますけれども、同時に中身の問題、質の問題もたいへん大事でございます。つまりそういう薬でもって、非常に、何というか、もうけておるというようないき方を改めて、医師本来の技術料でもって経営できるようにしていかなければいかぬ。そういう質の問題を量の問題とあわせて中医協を無台として検討していこうという考えであります。#100
○小笠原貞子君 それじゃ薬価の問題についても、今後具体的な実態の中から、やはりこれは一つの大きな問題になっておりますね。医師会の中でも問題になっておりますし、これについて検討をもっと早急に具体的にメスを入れて、総医料費の四〇%というようなことで、薬を出さなければもうからないという経営というようなことは改善していくということで、これに対処していくということでやっていただけると、こういうわけでございますか。#101
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまおっしゃいます中に二つの問題があると思うのですよ。診療報酬のきめ方も、あるいはそういうことによって、どうも薬をよけい使い過ぎているという問題と、もう一つは、いまおっしゃる、これは独占価格で、高い、けしからぬ、これをどうするか。むしろ独占価格を言っておられたと私は思うのでありますが、これは自由経済のもとにおける価格構成でありますから、私は、薬は独占価格とは思っておりません。いろいろな薬が出回ってやっておるわけでありますから、これはもっと安くつくり得るものがあれば安くつくるし、国際的に薬というものは大体値段がきまっておるわけであります。はたして独占価格であるかどうか、これは公取委員会において、十分私は検討してもらいたいと考えております。医者が薬を使い過ぎるじゃないかという声はよくあります。これは私は、前から言われておりますように、やはりこれは医薬分業というものを早く進めていかないと、この風潮はなおらないのじゃないか。すべての医師が薬でかせいでいるとは私は申しませんが、そういう面もなきにしもあらずと、これを診療報酬の立場からどう改めていくか。一つは、いま申しまする医薬分業、これをやはり進めていく必要があるというので、この方針は確立をし、その準備を進めているのが現段階でございます。#102
○小笠原貞子君 独占価格でないかどうかということをいろいろ経済学的に専門的にいえば問題があると思いますけれども、大体〇・三%の会社が五〇%以上のお薬を出して、そして利潤率は六八%から七六%に上がっている。これは名前はどうあろうと薬メーカーがもうけているということは事実ですよね。これはお認めになると思う、数字が出ているんだから。そうしたらそれからですよ、問題は。自由経済でございますから、この価格については、もうけてももうけなくてもそんなことは知りませんと言えば、物価対策だってそうおっしゃるんですけれども、佐藤総理は、自由経済の日本でございますからと、そんなこと言ったらどうして物価下げられるんですか。独占価格だから、自由経済の日本の中だからこれにはメスを入れられませんといったら解決つかないじゃないですか。さっき向こうのほうでは解決に努力するとおっしゃいましたけれども、大臣は自由経済の中だからもうけのところまでメスは入れられないと言ったら、これには手をつけられないということになると思うんですけれども、どうですか。#103
○国務大臣(斎藤昇君) だから私は問題を取り違えておったわけです。先ほどこちらで答えましたのは、保険の中においてどういうふうに処理をするかと――こういう方向でやっていきますと。いまおっしゃるのは、独占価格をどうするかと、もうけがたくさんあるのをどうするかと、これはいま何といいますか、自由価格できまっておるので、これについて特に厚生省はいまどういうメスを入れたらいいかという案は持っておりません。独占価格は何しろこいつは私は公取委員会のほうで十分審査をしてもらいたいと、かように思います。#104
○小笠原貞子君 違っているって、私がしろうとだから、大臣ちょっとそういうふうにおっしゃっておどかしていらっしゃるんだと思いますけれども、違っていませんよ。だってお薬が高くて、総医療費の中で四〇%も占めているということが一つの問題になっているわけです。何でそんなに四〇%ものお薬代になるかと言ったら、お薬代が高いんじゃないと、こういうわけで、こっちはすると言っていらっしゃるのに大臣が違うというのはどういうわけですか。#105
○国務大臣(斎藤昇君) 労働大臣が言ってるんだから……。#106
○小笠原貞子君 そうですか、それは全然関係ないんですか。#107
○国務大臣(斎藤昇君) 薬をよけい使い過ぎるということと、薬の値段が高いということは別だと……。#108
○委員長(中村英男君) ちょっと速記とめてください。〔速記中止〕
#109
○委員長(中村英男君) 速記を起こして。#110
○小笠原貞子君 たいへん御親切な御教示をいただきましてありがとうございました。私もそこのところは混同はしておりませんけれども、薬代が高いということもやはり薬代の総予算の中に占める割合が大きくなるということで私のほうは言っているわけなんですから、そこのところは混同してない。それくらいは私の頭でもわかるんです。そこのところで、やはりさっき言いましたように、このお薬代の問題についてもまたこれはあらためてもっと勉強いたしまして、大臣と太刀打ちできるようにひとつやろうと思いますから、これはこれでやめますけれども、この問題も真剣に考えていただきたいと思います。そして最後にもう一問だけで終わりますが、先ほど抜本改正ということをおっしゃっていました。いろいろな面からおっしゃっているんだろうと思いますけれども、その抜本改正というものが具体的には保険料の値上げだとか、それから患者に対してのサービスがいまより落ちるとかいうように、いまよりも低いところで公平の負担というようなことになるということの絶対にないようにしていただきたい。まあこの自民党の「国民医療対策大綱」というものの中に見ましても、「一人一人が自分の健康は自分で守るという自己責任原理と、」こう書いてあるわけですね。これは確かにことばではそうだけれども、自己責任原理なんだといっても守れないんですよ。公害の問題しかりでしょう。低賃金――これは労働大臣にも関係してくるけれども、低賃金と合理化の中で病気になってしまう。自分で好きで病気になっている者はないんです。病気がこうふえてくるのは、高度成長政策の中で疾病の構造がずっと変わってきているという社会的背景も出てきているわけです。そういうような政治状態というものをつくり出してきている責任の上からいっても、やっぱり国の負担で相当出すべきものは出すと、予算というものをね。出すということを考えないで、どっかでつじつまを合わせて何とかしようと思えば、また混乱というものが起こるということを私は申し上げたいわけです。だから、やはりこの問題解決のためには、国としてもこれを早急に解決するために予算というものをつけるということにはっきり大蔵省に向かって、私もあと押ししますからがんばっていただきたいという、そういう措置も含めて、いまのいろいろな条件よりも、私たちまあ患者さんやそれからいろいろな方面に改悪になるようなやり方はしていただきたくないということを最後にお願いしたいと思います。
それから、老人問題、一つだけいろいろ出ましたからお伺いいたしますけれども、厚生省のプロジェクトチームでお出しになっておりますね。さっき予算のほうで、もう八月段階で予算考えていると大臣お答えになったわけですね、予算の段階。それでこの老人医療制度の具体案をプロジェクトチームの中でABCDと四つの案が出ているわけですね。この中で、一体いまどの案に――一つずつ違ってきますから、予算編成なさる場合にも違ってくると思うんですが、いま一体この四つのABCDのうちのどれを基礎にして予算というものを考えていらっしゃるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
#111
○国務大臣(斎藤昇君) それは八月末までに決定をいたしたいと、かように思ってそのABCDの分について検討をいたしております。これは保険制度でいくか、あるいは公費負担だけでいくかという点もあわせて八月末の予算要求するまでに決定をいたしたいと考えております。抜本改正は、国民の医療がいままでよりよく国民に提供されるようにということを念願といたしておるわけでございます。自民党の案に自己の責任においてどうとかとおっしゃいましたが、国民の健康なり、それから、医療というものは全部国がやってくれるのだと、国にまかしておけというのでは困る。やはり自分のからだは自分でよくしていこうという気持ちを持っていただいて、そして、国は最善のお手伝いをしようという考え方でございます。
#112
○小笠原貞子君 もう一問。大臣個人としてはこのABCDのうちのどれが好ましいと思っていらっしゃいますか。これで終わります。
#113
○国務大臣(斎藤昇君) いま検討中でございます。#114
○小笠原貞子君 大臣自身もですか。#115
○国務大臣(斎藤昇君) 私がこれが好ましいと思ったら、そこで思考いたします。#116
○委員長(中村英男君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。―――――――――――――
#117
○委員長(中村英男君) この際、原労働大臣、中山労働政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。原労働大臣。#118
○国務大臣(原健三郎君) このたび私は再び労働省を担当することになりましたので皆さん方ひとつよろしくお願い申し上げます。労働問題がますます重要性を加えている今日、誠心誠意、労働行政の推進につとめる所存でございます。
これからの労働行政は、世界的視野に立って再検討すべきときにきていると考えております。
働く人々が、職場はもちろん、家庭においても健康で快適な生活を過ごせるよう愛情のある労働行政を進めてまいる所存でございます。
次に、去る七月十七日に発生いたしました住友石炭株式会社歌志内礦の災害につきましては、まことに遺憾であり、労働省といたしましては、北川安全衛生部長を現地に派遣するとともに、緊急医療措置を講じてまいりましたが、不幸なくなられました方々に対しては、労災補償の早期支給等遺家族の援護に万全の措置を講じ、また、原因の徹底的な究明と相まって、かかる災害の再発防止に万全を期してまいる所存でございます。
委員各位の倍旧の御理解と御鞭撻を切にお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
#119
○委員長(中村英男君) 中山政務次官。#120
○政府委員(中山太郎君) 今回労働政務次官を命ぜられました中山でございます。大臣がただいま申しましたとおり、七〇年代、新しい時代の労働問題について、微力でございますが先生方の御指導のもとに仕事をさしていただきたいと考えております。よろしく御指導のほどをお願いいたします。
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#121
○委員長(中村英男君) 請願第三号老人の福祉に関する請願及び請願第四号外十六件保険診療経理士法制定に関する請願を議題といたします。これら請願は、一応調査室において整理し、理事間において協議の結果、いずれも議院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するものとすることに意見が一致いたしました。
右申し合わせどおり決定することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#122
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#123
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。―――――――――――――
#124
○委員長(中村英男君) 継続調査要求に関する件についておはかりいたします。社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、これら二件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#125
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#126
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。―――――――――――――
#127
○委員長(中村英男君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。ただいま決定されました二件の継続調査が承認されました場合には、これら二件の実情調査のため委員派遣を行なうこととし、これが取り扱いにつきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#128
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日は、これにて散会いたします。
午後一時三十分散会
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