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1971/07/20 第66回国会 参議院 参議院会議録情報 第066回国会 本会議 第4号
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1971/07/20 第66回国会 参議院

参議院会議録情報 第066回国会 本会議 第4号

#1
第066回国会 本会議 第4号
昭和四十六年七月二十日(火曜日)
   午前十時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第五号
  昭和四十六年七月二十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 第二 常任委員の選任
 第三 常任委員長の選挙
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、故議員山本伊三郎君に対し弔詞贈呈の件
 一、故議員山本伊三郎君に対する追悼の辞
 一、日程第一より第三まで
 一、特別委員会設置の件
    ―――――――――――――
#3
○議長(河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(河野謙三君) これより本日の会議を開きます。
 議員山本伊三郎君は、去る七月八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。
 ここにその弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院は議院従四位勲二等山本伊三郎君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) 赤間文三君から発言を求められております。この際、発言を許します。赤間文三君。
   〔赤間文三君登壇、拍手〕
#6
○赤間文三君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、議員山本伊三郎君は、去る七月八日、急性白血病のため、こつ然と逝去せられました。私は、各位のお許しを得て、議員一同を代表し、従四位勲二等故山本伊三郎君の御生前をしのびつつ、哀悼のことばを申し上げるものでございます。
 山本伊三郎君は、明治三十九年一月、大阪市に生まれました。大正七年に小学校を卒業されると同時に実社会に出られ、大正十五年には大阪市役所に職を奉ぜられました。この周、少年工などとして働きながら、大阪キリスト教青年会英語学校、浪華商業学校、関西大学を御卒業になりました。
 年若くして労働運動に身を投じられたのは、第一次大戦後の不況による解雇が契機であったと承りまするが、大阪キリスト教青年会英語学校に勉学されたのも、社会主義理論を原典で理解したいという押えがたい希望からといわれ、当時からすでに非凡の志を抱かれていたのであります。また君が、働きながら苦節十年の勉学時代を過ごしたことをこの上ない誇りとしていたことも、君の面目の一端を物語るものであります。
 戦後いち早く大阪市職員組合の結成に奔走し、昭和二十三年には同職員組合の委員長に選任され、信頼を一身に集めて、実に九期にわたってその重責を果たし、昭和三十一年には全日本自治体労働組合中央執行委員長の要職につかれたのであります。戦後のわが国労働運動の揺籃期に処して、労働組合の健全なる発展のため、身を賭して東奔西走され、偉大なる御功績を残されたのであります。
 また、その間、昭和二十二年に日本社会党に入党せられるとともに、日中友好協会理事、大阪労組生協理事長、大阪労働金庫理事、日中・日ソ国交回復国民会議理事などを歴任され、幅広い分野にわたってその手腕力量を遺憾なく発揮せられたのであります。
 その後、昭和三十四年の第五回参議院議員通常選挙に全国区から当選され、以来二期にわたって議員としての職責を全うされ、今回の第九回参議院議員通常選挙においても、全国区から三度当選の栄をかちえられたのであります。しかしながら、第六十六回臨時国会への登院を目前にして、こつ然として幽明境を異にされるに至りましたことは、まことに痛恨のきわみであります。
 君は、議員として、社会労働委員長をはじめ、内閣、地方行政、大蔵、予算などの常任委員会の理事、委員として、また、ILOの特別委員などとしても、きわめて真摯に、かつ積極的に審議に当たられたほか、日本社会党内におかれましても、財務委員会事務局長、公務員等共済制度対策特別委員長、地方行政部会副部会長、政策審議会副会長などとして党務にも専念せられました。その卓越した識見、鋭い政治感覚、正義感の強い人柄は、同僚議員の厚い信望と深い尊敬を集めておられたのであります。
 また君は、公務員制度、公務員共済制度に精通し、とりわけ年金制度については権威であり、その論説は、与野党を問わず、傾聴に値するものが多くありました。政治家として社会保障制度のあり方を追及してやまなかった君の努力は高く評価されなければなりません。
 さらに、地方自治制度についても御造詣が深く、地方制度調査会の委員としても、日ごろのうんちくを傾けて活躍され、特に一九七〇年代の都市問題についての卓見は、大いに傾聴すべきものがございました。
 今日、国民福祉の充実が重要な政治課題となり、また、地域社会の著しい変動のもとで地方自治の発展が大きく問われようとしているとき、議員としての君の御活躍には多大の期待が寄せられていたのであります。この重要なときに君を失ったことは、本院にとっては申すに及ばず、またわが国にとってもまことにかけがえのない損失であると申さなければなりません。
 いま、君が永遠に帰らざることを思い、静かに生前の面影をしのべば、まことに悲痛の情こもごも胸に迫るを禁じ得ないものがあります。
 ここに山本伊三郎君の御長逝に対し、つつしんで哀悼の誠をささげ、衷心から御冥福をお祈り申し上げまして、私の追悼のことばといたす次第であります。(拍手)
     ―――――・―――――
#7
○議長(河野謙三君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 去る十七日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。加瀬完君。
   〔加瀬完君登壇、拍手〕
#8
○加瀬完君 私は、日本社会党を代表し、総理の所信表明に対しお伺いをいたします。
 佐藤総理は、今回の内閣改造は人心の一新をはかることだとたびたび御説明になりました。確かに、人心をうましめないことは政治の要諦でございましょう。しかし、さらに大切なことは、政治の責任ということではないでしょうか。国民の中には、おっしゃるとおり、人心一新の声はかまびすしいものがございます。しかし、いま国民が政治に求めております人心一新と申しますのは、都市では、物価や公害や税金や医療の苦しみ、農村では、米をつくってもめしの食えない農民無視の農政、果ては、日中復交に踏み切れない外交姿勢、こういう佐藤政治の硬直化した政策の一新を望んでいるのでございます。さらに言えば、佐藤内閣が六年間に掲げてきた人間尊重、社会開発、政治資金規正、物価の安定、食管堅持、総合農政等、数々の公約の不履行に対する不信感、これが解決のための佐藤内閣の交代を望む意味での人心一新を望んでいるのでございます。(拍手)総理みずからにしても人心の一新を主張せざるを得ないことは、国民の佐藤内閣に対しての飽きを意識するからではないですか。すると、責任は閣僚の交代で済まされるものでございますか。総理がとるべきものでございますか。人心一新を必要としてしまった過去六年の佐藤内閣の責任は、総理みずからとる以外、責任者はいないはずでございます。佐藤内閣の最大の欠陥は、閣僚が国民に飽きられていることではなく、総理が国民に飽きられておりますのを、みずから自分の責任として感じないところにございます。国民はいま、人心一新を唱えつつ佐藤さんがなぜ総理でいなければならないのか、その理由に納得しかねております。
 あらためて伺いますが、佐藤幕府とまで悪口を言われながら長期政権を続けておりますのは どういう理由でございましょう。それが民主政治のよき慣行となるのでございましょうか。われわれは、少しでも国民に不満があれば、いさぎよく挂冠をし、政治の責任を明らかにすべきであると考えるのでありますが、これは間違いでしょうか。
 しかし、総理としては、この際果たすべき政策があるとおっしゃるかも存じません。そこで、さらに、総理のこれからの政策について伺います。
 総理が長期政権に意欲を燃やす最大の理由は一体何でございますか。公害、物価、税金、社会保障など、国民の強く要望する諸問題を一日も早く解決しようということでありますか。それとも、沖繩、繊維、資本の自由化など、日米関係の再調整という課題の解決でありますか。いままでの総理の御説明では、この点は全く不明確でございます。率直なお答えをお願いいたします。
 以下、具体的問題について伺います。
 その第一は、沖繩問題であります。いままで、総理は、非核三原則は憲法の精神であると説明をされてまいりました。したがって、沖繩に対しても、核抜き・本土並みを約束してまいりました。しかし、沖繩交渉は、多くの国民に、核の存在、または核の持ち込み、日米秘密軍事協定の疑問を抱かしめております。論より証拠、現地紙の世論調査によれば、復帰について六四・八%が不安を訴えております。少しく内容をあげますれば、「核抜きを信じない」が四七・八%、これは昨年調査の一九%に対し二・五倍も不信感を増大をさせておることになります。VOA、特殊部隊については四八・六%が撤去を主張しております。現地のみではなく、多くの国民には、安保条約の無期限合意、極東でのアメリカ軍への基地の提供、沖繩アメリカ基地の自由使用、アメリカの軍事行動についての秘密協定等々の取りきめが前提となる限りは、アメリカの核の持ち込み、核兵器の沖繩貯蔵、沖繩の核基地の使用など、そうではない確認の方法はどこにもありません。こういう心配が尽きないのでございます。
 加えて、平和条約発効後の沖繩県民に対する米軍の行為に対する補償問題にも何ら法的措置は講じられておりません。このままでは、沖繩には、非核三原則も基本的人権すら保障されないことになりかねません。
 そうでないというなら、日本国民の手で、核の不在の調査が、沖繩県民の目でその確認が可能となる方法、手続が前もって明示さるべきであります。また、復帰後の保障立法の内容も十二分に説明をされてしかるべきでございます。それがされない限り、不信を持つのは当然ではございませんか。しかし総理は、そのこともあるが、今日最大の必要は、沖繩における日本の安全のための日米協力だとおっしゃるかもしれません。もちろん、われわれにしても、日本が危険でよいとは思いません。むしろ日本の安全を望むことに人後に落ちるものではございません。しかし、日本の平和安全のための最も必要な措置について、総理とはいささか見解を異にいたします。われわれは、日中国交の回復こそ、日本やアジアの平和のための最大の緊急事だと思うものであります。これは、われわれのみの声ではなく、国民の声でもあります。すなわち、昨年の世論調査によれば、七一%が、日中復交で平和の維持と答えているのであります。沖繩問題は中国を除いて考えられないはずであります。
 そこで伺いますが、沖繩問題について総理は中国をどう考えたのか。中国との国交回復を早めて国民世論にこたえる、そういう立場をおとりになって、沖繩についての日米関係の処理に当たったのか。いまアメリカの中国対策が大変化をするとき、日本の中国対策をこのままにして沖繩対策を進めて誤りがありませんか。この間の御説明を承わらなければなりません。さらに率直に言わしてもらえば、このことあるを予見せず、世論に反してまでかたくななアメリカ追随外交を行なってまいりました佐藤政府に、はたして沖繩交渉の資格があるか。また、このような国家の不利を大きく招いた、あるいは招くであろう外交見通しの不明をいかなる方法で国民に謝罪をするのか。職を辞しても足りない責任とわれわれは判断するのでありますが、総理の御所見を承ります。(拍手)
 第二点は、景気対策と国民生活の関係についてであります。
 今日、政府は景気対策を大きく取り上げておりますが、昨年秋、金融引き締めが解除されましてから十カ月、この間三回にわたっての公定歩合の引き下げ、大型予算の編成、予算執行にあたっての上期繰り上げ支出促進、さらに最近の閣議決定では、二千六百億の弾力条項の発動など、実に多くの手が打たれてきました。しかも、政府は通常国会当時、「景気は年度がわりからつま先上がりに上昇、政府見通しの一〇%成長は間違いない」とたびたび説明をしてもまいりました。今日、政府の見通しは完全に狂い、政府の打った手は全く無効果となりました。こういうことになるのでありますが、景気対策の前に、この責任にはどうこたえるのか聞きたいのであります。
 さらに景気浮動対策として、建設公債の増発、公共事業の拡大を計画しているようでありますが、公共事業の拡大は、地価の高騰、物価の上昇を招くことは必至となるわけでありますが、景気刺激に伴う国民生活へのマイナスのはね返りについては、どう対処をされるのか、この点の明示を願います。今日、わが国の国民生活を最も圧迫をし、生活不安を招いておりまする最大の原因は、持続的な物価の上昇でありましょう。そして、これは国民生活の安定を忘れた政府の成長促進型の経済政策の結果であります。そして、今回の不況対策もこの経済成長型を出ません。たとえば、昨年一年間で死者一万六千七百六十五人に及ぶ交通事故は、国民が政府に解決を求めている重要事項でありましょう。ところが、今回の不況対策のための公共事業は、産業重視の産業奉仕の道路等の建設が相も変わらず目的でありまして、交通安全、公害防止などの国民生活上の問題が重点とされてはおりません。景気対策はむしろ成長促進型から国民生活優先型へと経済政策を転換することが先でありまして、外貨減らしの手段などであってはなりませんのに、政府の政策はこういう的を射ておりません。まず景気対策のあり方をただしたいと存じます。
 次に、国民生活の側から二つの点を伺います。
 その一は物価であります。総理は、物価問題について、各省庁間の協力を指示したそうでありますが、ここで私は四十六年度の物価対策予算を見てみたいと思います。政府発表の物価対策予算は合算八千百七十五億円、新しく総理が物価対策を指示するならば、それは新たな強力な事項であるはずでありますので、新しく予算面での対策が立てられなければならないはずであります。しかし、その対策はありません。予算があっても効果があがりませんのに、予算なしの物価対策がはたして効果をあげ得るでしょうか。確かに、予算を伴わなくても解決のつく対策もありましょう。たとえば公共料金はその一つでしょう。しかし総理は、昨年末、公共料金の値上げは行なわないと閣議決定をしながら、郵便料金、今回は運輸料金の値上げを認可しております。郵便や運輸料金の値上げを認可したあとで指示を何回出しましても、国民はその効果を信ずるわけにはまいりません。総理は、この持続的物価上昇にどう取り組むのか。さしあたって、電力料金の値上げはどうするのか。また、秋から冬にかけて起こる生鮮食料品の値上がりにはどういう具体策を持っておるのか、お答えをいただきます。
 その二は、国民の命と健康にかかわる保険医総辞退について、総理はたびたび国民の納得のいく解決をはかると強調をいたしております。しかし、納得のいく解決策がどんなものかの説明は全然ございません。この際、その内容を御明示をいただきます。今日の事態を招来をさせました根本原因とその責任は、総理の抜本的改正の公約にもかかわらず、これを怠ってきた政府にあるはずでありますが、この点はどうお考えになりますか。また、今後事態がこのまま推移をすればゆゆしい社会問題であります。政府は、被保険者の不安と経済的実害をどう措置をするのか、その対策も御説明を願います。憲法を引き合いに出すまでもなく、国民の健康と生活を守ることは政府の責任のはずであります。しかるに、生活上最大の影響のある物価も、命と健康にかかわる保険問題も、総理の今回の人心一新の重点政策には取り上げられておりません。すなわち国民不在の政治でございます。この国民不在の政治にどう総理は弁明なさるのでございますか。
 質問の第三点は、中教審の答申についてであります。今回の中教審答申は、未来社会に向かっての教育改革と言いながら、内容は強力的な政府主導の教育政策にすぎません。国家主義的傾向のみ顕著で、国民がひとしく憂えておりまする日本の教育の大きなひずみに対しては目をおおっておる、こういう批判がございます。たとえば教育の政治的中立はどうなのか。多数派が国民を代表しているとの立場で、教育を政治の道具化することが許されるのか。自民党・政府、文部省、教育委員会、現場教師という形で教育内容に介入することを当然と考える政府の文教行政は、とがめられなくてもよいのか、こういう問題がございます。
 義務教育は均等性、平等性、公平性でなければならないといわれております。福澤諭吉は「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」と言いましたが、この民主主義の原則とは逆に、今日の教育は、五、三、一の評価点数の点が、人の上に人を、人の下に人をつくりつつあります。このような知育偏重、エリート教育、差別教育が人間をそこねていることは明白でありますのに、答申はむしろこれらを助長しております。また、現在の小・中教育は、家庭教師や塾教育など家庭教育費の膨張、かぎっ子、設備施設の不足、教師の質量の問題等、あまりにも不完全であります。特に各家庭、自治体の貧富によって義務教育に格差を生じつつあることは見のがせない問題であります。しかし答申は、これらに何らの解答を与えてはおりません。さらに、父母、教師は、都市化現象による運動場を埋めたプレハブ校舎の解消、公害のない位置への校舎移転を望んでおりますが、財政対策はゼロに近い状態であります。これに対しましても答申は何らの答えを出してはおりません。にもかかわらず、総理は、この答申を尊重、積極的に取り組むとのことでありますが、その理由は何でありましょうか。まず、現在の教育のひずみをそのままにしておいてよろしいのか。特に教育基本法の「教育行政は教育内容に介入してはならない。教育行政は教育環境や教育条件の整備にある」という教育の国民主権は御確認をいただけるのかいただけないのか、伺います。
 次に、答申内容でさらに御確認をいただきたいことがございます。
 その一は、六十九兆円の教育投資を確実にお引き受けなさるのか。二は、初中教員の初任給を、一般公務員に対して三〇%ないし四〇%アップするという点は責任を持つのか。持てるとするならば、いつから実施をするのか。その三は、大構想を実現をする前に、関係者は、現在の過密地区における学校投資を国の責任で解決してもらいたいとの願望が強いのでありますが、これを先にやっていただきたいのでございますが、どうお考えになりますか。
 第四点は、参議院のあり方についてであります。
 今回の参議院選挙にあたり、本院のあり方が各方面で大きく論議の焦点となりました。都民意識調査によれば、参議院はその役割りを果たしているか、こういう問いに対して、「果たしている」と答えたのは一・九%であります。「果たしていない」は五九%を占めました。いまや本院の信頼を取り戻し、院本来の使命を果たすためには、与野党を越えて協力しなければならない至上命令がございます。総理もこの点はお認めになられると存じますが、認めていただくとすれば、参議院の本来の使命の、「数の衆議院」の行き過ぎを理に従ってチェックする役割りも当然御確認をいただけると存じます。したがって、この目的を達するためには、次のことが留意をさるべきだと思いますが、御賛成はいただけませんか。
 その一つは、与党独裁を制限をし、衆議院の独走を防ぐためには、参議院の議長の権限で院の使命を守る必要が生じてまいります。この議長の権威を維持するためには、政党の束縛からの解放が先決であります。したがって、議長、副議長の党籍離脱は当然なことでありますのに、これが推進をなぜ与党はちゅうちょ逡巡をするのか、理解に苦しみます。総理の御見解を承ります。
 その二は、本院が良識の府、批判の機関としての役割りを果たすためには、議員個々が批判者の立場を守るべきが当然であります。参議院議員が大臣、政務次官に甘んじてこの目的が貫かれるはずはございません。参議院は、大臣、政務次官を出すべきではないと思いますが、どうですか。
 その三は、本院のいま一つの特質は、慎重審議、衆議院のごり押しを国民の良識に従って押えることでありましょう。この点、現在は重要法案が数日の会期を余すのみにて送付をされ、審議がされないまま強行採決が繰り返されております。少なくも重要法案は、十分な審議日程をおいて本院に送付さるべきではないか。こういう慣行を樹立すべきだと思いますが、いかがでしょうか。本院がミニ衆議院、二分の一議院など酷評を浴びておりますことは、もちろんわれわれ議員の自省自戒をすべきことではありますが、政党の運営にも責任のあることでございますので、その責任者でございます総理に以上の点を伺います。(拍手)
 参議院の質を高めるもう一つの問題は、本院の議員が国民の信頼を受け、これに対して正しくこたえることでありましょう。
 今回の参議院選挙は、元高級官僚の自民党公認候補の違反が社会問題となっておりますことは御承知のとおりでございます。報道によれば、黒住元自動車局長派は、乗用自動車、タクシー会社、自動車業界、村上元大蔵次官派は、商工会議所、税理士会等、梶木元農林省建設部長派は、土地改良事業関係者、桧垣元農林次官派は、グレープフルーツ業者組織など、いずれも認許可権、補助金など、地位利用の利益誘導を伴なう悪質違反であると伝えられております。元高級官僚の選挙違反は今回に始まったことではありません。国民の奉任者であった高級官僚の当選のためには手段を選ばずの違反行為に対し、かつての監督者であり、現在の責任者である総裁としての総理は、どういう処断をとられるおつもりでありますか。元高級官僚の地位利用の違反者に対しては、辞職勧告をなさるおつもりはありませんか。少なくも自民党を除名し、国民の前にえりを正すべきだと思いますが、それもできませんか。
 抜本的には、高級官僚の立候補制限法、たとえば退職後二年間は立候補を制限する等の立法措置を講ずべきだと思いますが、その点はどうですか。いずれにしても国民は総理の決断を待っております。しかし、一面、国民の間には、総理は選挙の公正化に対し全く熱意を欠く違反不感症だという批判もなくはありません。それは公職選挙法、政治資金規正法に熱意がなく、約束を履行していないという理由からであります。そこで、あらためて、政治資金規正法をどういう内容で、いつ成立させるのか、この際、明確にしていただきます。(拍手)
 さらに、沖繩返還に伴って恩赦があるとの風聞が流布されております。選挙違反をしても恩赦があるからパーになる、こういうことは許されることではございません。そこで、かりに恩赦がありましても、選挙違反に恩赦はしないと、ここで御確約ができますか、お答えをいただきます。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(佐藤榮作君) 加瀬君にお答えをいたします。
 まず、人心一新、同時に、その責任を一体どういうふうに考えているのかと、いろいろ御意見を交えてのお尋ねでございます。
 申すまでもなく、政治家は日々心を新たにして、国民のために政治に徹しなければならないのは当然であります。わが自由民主党は、国民に対し政局担当の重大責任を負っております。絶えず政治に新風を吹き込み、党内の力を結集して、国民のための政治に取り組むことは、その責任を果たすゆえんであると考えております。このことは、御指摘になりましたように、人心をうましめない、こういうことにもつながるのであります。私どもが人心一新、これを求めておるのもかような点でございます。
 また、私がかわらなければ人心一新にはならないというような御趣旨のことも述べられましたが、私は国民の負託を受け、国政の最高責任者として目下全力をあげてその任務に取り組んでいる最中であります。内外ともに困難な問題が山積しているおりから、国政の進路に誤まりなきを期するため、今後とも建設的な御鞭撻をいただきたいと思います。
 さらに、国民の政治に対する信頼を高めるため、一そう努力する決意でありますが、現在わが国が当面している内政上の多くの課題は、歴史的に見ましても全く初めてのものであります。そのため、政治の面においてもこれについての対応がおくれている点がありますが、一日も早くそのおくれを取り戻し、国民福祉の向上をはかりたいと念願しております。何とぞよろしくお願いいたします。
 そこで、今後の重点課題についてのお尋ねがありました。私は所信表明演説でも申し述べましたとおり、教育の改革、生活環境の改善、社会福祉の充実、物価の安定、総合農政の推進、交通、通信網の整備などは一九七〇年代の主要課題であります。これらの問題と真剣に取り組んでまいる決意であります。
 沖繩の返還にあたって、現地では各種の世論調査が行なわれているようであります。たとえば、中央調査社が行なった意識調査によりますと、復帰した場合、生活上何か不安を感じるかという問いに対して、感じると答えた者が五三%、感じないと答えた者が四七%、また、いまよりも生活がよくなると答えた者一三%、変わらないと答えた者が三〇%、悪くなると答えた者が二〇%あります。このように復帰を直前に控え、現地住民の感情は期待と不安が複雑に入りまじっていると思うのであります。私どもは、このような県民の不安を取り除くべく目下全力をあげてこれと取り組んでおりますが、国民各位におかれても一段の御協力をお願いする次第であります。
 核抜き・本土並みを貫いたかという御質問には、昨日衆議院でも繰り返しお答えしたとおりであります。すなわち、政府としては、一昨年十一月の日米共同声明発出以来、終始誠心誠意を尽くして沖繩返還協定作成交渉に当たり、今回、右共同声明にうたわれた核抜き・本土並みの原則を完全に貫いた協定を実現し得たものと確信しております。沖繩の核抜き返還は、一昨年十一月の私とニクソン大統領との共同声明第八項に明らかなとおり、日米最高首脳間の深い相互理解と信頼に基づく確約であり、その実施については何ら疑いの余地のないところでありますが、今回これをさらに明確にするため、協定第七条において、核に関するわが国の政策に背馳しない沖繩返還を条約文として明記した次第で、核抜き返還は明確に約束されております。また、本土並み、すなわち安保条約及び関連取りきめが変更なしに沖繩に適用されることについても、一九六九年の共同声明において意見の一致を見ていることは御承知のとおりでありますが、協定上の第二条において安保条約及び関連取りきめが協定の発効の日から沖繩に適用されることが確認されているのであります。今回の協定におきまして米国及び現地の法令により米国による処理が認められている請求権は第四条二項に基づき米国がその処理の責任を引き続き負うこととなっております。また、これ以外の種々の請求のうち実定法上の根拠はなくとも実体的に見て米国が処理すべきであると考えられた軍用地の講和前復元補償漏れ及び海没地の問題の解決は第四条三項及び交換公文で合意されているとおりであります。また、政府としては協定署名の際の私の談話においてすでに明らかにしたとおり、沖繩県民の米国に対する請求の問題については、復帰後国内的にも適切な処置を講ずる方針であります。いずれにいたしましても、沖繩返還協定については別に皆さま方の御審議を願う機会がございますので、その際においてさらに詳細に政府の考え方も、また皆さま方が御不審に思われる点等も明らかにしてまいりたいと思います。
 また、沖繩問題と日中問題との関連についての御意見でありますが、沖繩返還問題の本質は平和条約第三条によって米国に施政権をゆだねられたわが国固有の領土を本来あるべき姿、すなわちわが国の施政権下に復帰させるという問題でありまして、日中問題とは直接関連はありません。しかし、中国問題に私どもも多大の関心を持っておりますので、ただいまおあげになりました二、三の点につきましてニクソン訪中は日中間にも好影響を与えるものであると、かように私は考えますので、これは歓迎しておる、すでに政府の考え方を明確にしたとおりでございます。
 次に、経済問題についてのお尋ねにお答えいたします。
 最近の経済情勢は、当初政府が予期した線よりもやや下回っていることは事実でありますが、こうした状況に対処して、これまで三回の公定歩合引き下げと、公共投資繰り上げ支出や、財政投融資追加等の措置を講じてまいりました。もちろん私は責任を避けるものではありません。景気はやがて回復軌道に乗り、政府の予定する安定成長路線に乗るものと確信しております。
 次に、今後の景気対策のあり方として、国民生活重点の施策をとるべきだという御主張については、私も異論はありません。私は、と同時に、国際社会の中におけるわが国の責務をりっぱに遂行してまいりたいと考えるものであります。物価の安定が、国民生活の充実のために欠くべからざる前提であることはあらためて申すまでもありません。今後とも財政経済の運営にあたっては、物価の安定を最も重要な課題として取り組んでまいります。公共料金についても極力抑制の方針を堅持してまいります。その他生鮮食料品対策あるいは電力料金等については、それぞれ所管大臣からお答えいたします。
 保険医総辞退問題につきましては、政府は、国民の納得が得られる形で事態が収拾されるよう各方面の意見を聞きつつ最善の努力をいたしております。関係者におかれても、それぞれが医療を受ける国民の立場に立って、その解決に協力されることを強く期待するものであります。
 次に、教育問題についてお答えいたします。
 戦後の教育改革によってわが国に定着した現行六・三制は、教育の機会均等を促進し、国民の教育水準の向上に大いに寄与するところがあったと思います。しかしながら、たとえば高等学校や大学への進学率が上昇した反面、学歴偏重の傾向や入試の弊害が生じていることなど、教育の量的な拡大が、質の面において、さまざまな課題を生じてきていることも考えなければならない点であります。要は、人間一人一人を大切にし、その可能性を最大限に伸ばすという教育の本旨に立って、これまでの教育の成果を評価しつつ、これからの時代と、国民の要請にこたえ得る教育のあり方を開発していくことが大切だと思うのであります。
 中教審が行なった将来の教育規模や、所要投資の試算は、今後長期的な展望に立って教育改革を推進していく場合の予測計量の一つの方式を示すものとして重要な参考資料であります。
 また、教師の処遇改善についての提案も、教育の根幹をささえるのは教師であるという認識に立った傾聴すべき意見であると考えております。
 これらの問題は、答申自体に述べられているように、その実現にはさらに専門的検討を必要とするものでありますが、今後教育の改革を推進していく過程で十分尊重して、その趣旨の実現を期したいと考えております。
 さすがに加瀬君はその道の経験者でもありますから、具体的にいろいろ御指摘になりました。ことに過密都市に対する教育投資、その財政的裏づけ、あるいは私学振興、また父兄の教育費負担の軽減など、それぞれは御指摘のとおり最も大事なことだと思いますので、今後さらにこれらを具体化すべく最善の努力を尽くしてまいります。
 次に、参議院のあり方についていろいろ御意見を述べられました。この点は、院の問題であり、この際私の意見を述べることは差し控えたいと思います。しかしながら、審議は、民主主義の基本的ルールのもとに十分審議が尽くさるべきことは申すまでもありません。
 議長、副議長の党籍離脱問題は、選ばれた人の考え方の問題もあり、また、参議院から大臣や政務次官を出さないという御意見は、当面、自由民主党の党内問題にも関連することなので、御意見は御意見として承っておきたいと思います。慎重審議を重要法案についてお願いすること、これはもちろんでございます。従前、予備審査等の制度もあったようでございますが、これらも十分活用していただきたい、かように思います。
 最後に、選挙は民主政治の基盤であり、公正に行なわなければならないことは申すまでもありません。さきに行なわれた参議院通常選挙においても、なお相当数の選挙違反が見られたのは、まことに遺憾であります。政府としては、明るく正しい選挙の実現のために一そう啓発努力を続けるとともに、選挙制度についても、選挙制度審議会をはじめ各方面の御意見を承り、より公正な選挙が行なわれるよう、さらに改善のための検討を加える考えであります。この意味で、政治や選挙の浄化を願う国民の期待にこたえるためにも、政治資金規正法の改正を実現したいと考えるものであります。従来からの国会における論議の経緯等もあるので、これらを十分検討しながら、金のかからない政党本位の選挙の方策ともあわせて慎重に検討を加えてまいりたいと思います。
 高級官僚の立候補制限について簡単にお話しでございましたが、私は、いろいろ憲法上その他にも議論がある、立候補を制限することについての議論があると、かように思いますので、これらはよく検討しなければならないと思います。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(田中角榮君) 電力料金問題に関してお答えを申し上げます。
 石油の値上がり等で、コストアップの要因は幾つもございますが、これらは企業の合理化により対処する所存であり、当分値上げを認めるつもりはございません。
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(赤城宗徳君) 私から申し上げるまでもなく、生鮮食料品の価格安定につきましては、需要供給のバランスがとれるということでございますが、私どもといたしましては、需要の動向に即しまして生産の安定的拡大をはかる、こういうこととともに、効率的な流通を促進するよう、生産から流通にわたる一貫した対策を強力に推進することが肝要であると存じます。そのためには、生産、出荷面から見まするならば、安定的供給ということが大事だと思いますので、生産面における基盤の整備を一そう進めるとか、あるいは近代的施設の導入をするとか、あるいは生産出荷体制を整備するとか、こういうものを一そう進めていきたいと思います。
 なお、流通面につきましても、流通コストの低下ということが必要だと思いますので、この間、通りました卸売市場法に基づきまして、流通機構の整備を一そう進めますとともに、小売り業の近代化あるいは規格、包装の合理化及び流通情報網の整備、こういうふうにいろいろの方面から生産流通コストを下げ、需給の安定をはかっていきたい、こう考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(河野謙三君) 矢山有作君。
   〔矢山有作君登壇、拍手〕
#13
○矢山有作君 私は、日本社会党を代表し、総理の所信表明演説に対し、以下数点にわたって、総理並びに関係各大臣の見解をお尋ねいたします。
 先日のニクソン大統領の北京訪問に関する発表は、世界に大きな驚きをもって迎えられました。これはいかなる舞台回しがあったにせよ、米国がまず事実上中国を承認することを発表したものにほかならないと言うべきではないでしょうか。ついに米国は世界の大きな流れに船を乗り入れたのであります。まさに、戦後の歴史に新たな一ページを開く劇的なできごとであったと言えましょう。ニクソン訪中の実現によって、国際政治、特にアジアの政治には大きな影響があらわれると思います。まず、このニクソン大統領の北京訪問の意義について総理はどのような受けとめ方をされているか、お伺いしたいのであります。
 それにしても、いままでかたくなな中国政策に終始してきた佐藤内閣にとって、この発表は大きなショックであったことはわかり過ぎるほどわかりますが、総理は、この発表をどういう心境でお聞きになったか聞いてみたいものであります。発表直前に名ばかりの連絡がアメリカ政府からあったとはいえ、目ざめてみたら米国と中国が握手をしていたという事態が、ついに現実となったではありませんか。昨年十月、総理がワシントンでニクソン大統領と会談した際、今後、中国問題で緊密に協議すると約束したことはどうなってしまったのですか。政府は、キッシンジャー補佐官の北京訪問の事実すら知らされず、過日キッシンジャー補佐官の北京訪問と時を同じくして来日したレアード国防長官からも何らの感触も得ることができなかったわけでありますが、こうなると、総理の口癖に言われる日米信頼関係とは一体何でありますか。何でもよいから、文句を言わずに黙って米国を信じ、米国の言うままにせよというのが総理の言う日米信頼関係なのでありますか。であるとするならば、そのような自主性のない米国のしもべのような総理を国民は信頼して国政をゆだねることができないではありませんか。かつて三木外務大臣は、目がさめてみたら米国と中国が握手をしていたとしたらけっこうなことではないかと言ったことがありますが、わが国にとって、はたしてそれで済まされるでしょうか。米国と提携して台湾の国際的地位を保つという基本構想は米中接触によってくずれ、わが国は対中国関係で孤立することになったのであります。事態はきわめて深刻と言わなければなりません。総理は、この事態を乗り切るために最大の努力をすべきであります。そのためにまず第一に重要なことは、日中間にはいまだ戦争状態が終わっていないという認識に立つべきであります。日華平和条約によって日中間の戦争は片づいたとする虚構は、きれいにかなぐり捨てなければなりません。総理は勇断をもって日台条約を破棄し、台湾は中国の一部であり、中華人民共和国政府が中国全土を代表する唯一の正統政府であり、これとの間に戦争終結のための条約を結ぶ旨を宣明し、すみやかに中国を訪問し、国交回復をはかるべきであります。いまさら米国の思惑を気にする必要はないはずであります。もしそれができないというのであれば、今回の失態の責任を負って総理はすみやかに退陣すべきであると考えますが、見解を承りたいのであります。
 今回のニクソン大統領の訪中発表は、この秋の国連総会における中国代表権問題の行くえにも大きな影響を与えずにはおきません。ニクソン大統領が訪中することとなった米国としては、もはや中国の国連復帰に反対することができなくなったと考えるのが常識であります。いな、むしろこれを歓迎せざるを得ないのではないでしょうか。中国が祝福されて国連に迎え入れられる時期は急速に近づきつつあります。ひとり日本だけがこの歴史の大きな流れにさからうことはできません。この秋の総会で日本は、中国の国連復帰を妨害せずこれを歓迎するとの態度をこの際明らかにしてはどうか。そして台湾の議席確保にきゅうきゅうとする結果、国府の追放には三分の二の多数を要するといういわゆる逆重要事項方式提案のような小細工を弄することは断じてやめるべきでありますが、この点について総理の見解を伺いたいのであります。
 次に、沖繩返還についてお尋ねいたします。
 戦後の日本の外交が、朝鮮戦争以来、中国封じ込めを軸とした米国のアジア冷戦構造のワク組みの中で進められてきたことは明白な事実であります。昨年十一月の佐藤・ニクソン共同声明もこの冷戦構造を前提としたものであり、沖繩返還はとの共同声明の基礎の上に行なわれようとしているのであります。しかるに、今回のニクソン訪中発表により米中両国の最高首脳が両国関係の正常化について話し合うことは、この朝鮮戦争以来の米国のアジア政策を根本から変更するという、まさに百八十度の転換であります。今日まで進められてきた沖繩返還の前提条件は、全く変わってくるのであります。したがって、現地県民はもとより日本国民の大多数が強く反対をしてまいりました米軍基地の存続、VOA、特殊部隊の配備等を内容としている沖繩返還協定は、米国のアジア政策の大転換によって当然再検討され、米国と再協議するのはこれまた当然ではないでしょうか。
 中国封じ込めをはじめ、アジアに分裂国家をつくり出し、緊張を激化させ続けてきた米国が、そのアジア政策遂行のキーストーンとして沖繩を支配してきたのであります。今回調印された返還協定も、この米国のアジア政策を全面的に日本政府が認めた上にでき上がっているのでありますが、この際こそ返還協定を再検討し、真の核抜き・本土並み、基地縮小、撤廃の国民的要求をのめる米側の条件も整ったのでありますから、日本政府が日本国民を代表する政府でありますならば、私の質疑をまつまでもなく、当然考えておられることと存じますが、返還協定の根本的再検討について総理並びに外務大臣の答弁を求めます。
 次に、現在の返還協定についてお尋ねします。
 政府は、この沖繩返還が日米の友好と信頼の関係の中で話し合いによって実現することとなった意義を強調しておられます。しかし、これを実現するために政府がアメリカに払った代償が日本の将来の安全にとってゆゆしきものであることを考えるならば、沖繩の祖国復帰を手放しで喜ぶわけにはまいらぬのであります。そこでお伺いしたいのは、返還協定の前文で、沖繩の日本復帰が「日米共同声明の基礎の上に行なわれることを再確認した」とありますが、これを共同声明の内容から見て言いかえますならば、沖繩の祖国復帰は、安保条約のアジア安保、核安保への変質と沖繩の基地機能の維持を基礎として行なわれるということではないでしょうか。そして、一片の共同声明に盛られていた内容が、たとえ前文とはいえ「共同声明の基礎の上に」との文言によって返還協定に取り入れられたことは、共同声明の条約化であり、安保条約の実質的改定が返還協定の形をかりて行なわれたと言わざるを得ないと思いますが、総理はいかがお考えでありますか。
 次に、核抜き・本土並み返還ということについてお伺いいたします。
 政府は、核抜き・本土並みが貫かれたと自負しております。しかし、単に安保条約を、何らの特別取りきめなしにそのまま適用するというだけでは、もはや本土並みとは言えないことは、政府も重々承知しているはずであります。いわゆる基地の中の沖繩という実態が解消されない限り、真の本土並み返還とは言えないことは、あらためて申すまでもないことであります。それにもかかわらず、政府は、那覇空港等ごく一部のいわゆる目玉商品の返還にきゅうきゅうとして、基地におおわれた沖繩という実態の解消には目をおおってきたのであります。それは、今回の了解覚書において、現在沖繩全土に占める米軍用地の割合は一四・八%、米軍継続使用面積は一二・三%で、返還により減少するのはわずかに二・五%にすぎないという数字にはっきりとあらわれていると思います。
 本土並み返還とは言えないもう一つの実態は、いわゆる特殊部隊の居残りや、VOAの存置であります。どういう特殊部隊が居残ることになるのか一向に明らかにされておりません。去る五月の中間報告で、特殊部隊について、政府は、安保条約のワク内でその存続が認められるのは当然と言い切っておりますが、われわれは決してそうは考えません。今後この点について議論を進めるためにも、特殊部隊についてどういうものが残り、その活動任務は何かを明確にされたいのであります。
 VOAについて、国務省高官は、返還協定の説明にあたり、返還後五年間存続させることに合意しているが、五年たったら撤去するという約束はしていないと言明しております。VOAのような対共産圏謀略活動を主要任務とするものの存続を無期限に認めるような結果になったことは納得できません。実質的にこのような重大な約束をした合意議事録は、国会承認の対象とすべきであると考えますが、いかがお考えか。外務大臣にお答え願います。
 次に、核抜きについて伺います。
 政府は、返還協定に、沖繩の返還を「共同声明第八項にいう日本国政府の政策に背馳しないよう実施する」との表現が入ったことによって核抜きは明確になったと言っておりますが、第一に、核抜きという、沖繩返還にあたって最も重要な事項を、核撤去の費用負担にひっかけて、財政条項で処理するというこそくな手段をとったことは納得できません。第二に、このような表現では、核抜きは明記されたことにはならないのであります。共同声明第八項ですら、核抜きは明記されていなかったのであります。のみならず、第八項は「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」と、有事核持ち込みの危険すら感じさせる内容を含んだものであったのであります。したがって、このような表現では核抜きが明記されたことにはならず、核隠しではないかという国民の疑惑は一向に晴れないのであります。政府はそれでも核抜きは明記されたと強弁なさるのでしょうか。また総理は、核抜きを点検したいとの中曾根前防衛庁長官の構想にしぶしぶ同意して、去る五月の連合審査の際に、国民の納得のいく形でできるだけ努力したいと言われましたが、今回来日したレアード国防長官の意見に押されてすっかり後退し、去る十三日の記者会見では、点検する意思すらないことがはっきりいたしました。もし日本とアメリカがほんとうに信頼関係にあるのなら、むしろ点検を要求すべきであります。一体、政府は点検する意思があるのかないのか、この際、はっきりしていただきたいのであります。また増原防衛庁長官は、前長官の言ったことは無視されるおつもりでありますか、あわせてお伺いいたします。
 このほか、請求権、資産の引き継ぎ、その他まだまだ問題はありますが、これらについてはまた別の機会に取り上げてまいります。
 要は、沖繩返還交渉に臨んだ政府の基本姿勢に問題があったのであります。アメリカが沖繩を統治する根拠は平和条約第三条だと政府は言われるが、アメリカとしては信託統治にする意思は最初からなく、また、国連憲章上も許されない以上、第三条は死文化したものであり、したがって、アメリカが沖繩を統治する根拠は失われていたのであるから、わが国としては当然の権利として無条件返還を要求すべきであったにもかかわらず、政府は、友好と信頼の関係に基づく話し合いと称して、結局、アメリカの要求に押しまくられたのは遺憾と言うほかありません。最初に指摘したように、米中両国関係正常化の情勢の中で、沖繩返還交渉のやり直しを再度強く要求をいたします。
 次に、防衛問題について伺います。
 いまや、あの頑迷だった米国でも冷戦理論を捨て、米中話し合いの時代を迎えたのであります。世界平和を探求するために、従来の理論や筋書きでは全く予想もできないほど激しく速いテンポで変わりつつある今日の情勢は、世界の平和維持は、軍事力でも核でもなく、人間の英知に信頼するほかないことを教えております。社会党は、戦後一貫して、非武装中立こそが国の安全と防衛の基本であると主張し続けてまいりましたが、今回、ニクソン訪中の発表で、戦後の米中諸懸案を外交ルートによって解決しようとする、この想像を絶するできごとを見るとき、一国の安全と平和維持は軍事力の強大さを誇ることでは実現しないことがはっきりしたのであります。まさにわが党の非武装中立論こそ、あるべき平和と安全維持の姿だと思うのでありますが、まずこれに対する総理の見解を伺いたいのであります。
 政府は、国際緊張緩和の動きに目をそむけ、過去の力の均衡理論や核抑止論から脱却することができず、去る四月、四十七年度からの総額五兆八千億にのぼる膨大な四次防計画原案を発表し、八月中旬には国防会議で最終決定をしようとしています。この四次防は沖繩返還、アジアの米軍事力の肩がわりと無関係ではありません。五兆八千億という三次防の二倍を上回る新たな計画を実行するためには、毎年一八・八%ずつ防衛費を伸ばす必要があり、これは三次防の平均伸び率一四・五%を大幅に上回るものであって、こうした膨大な防衛力整備計画が軍事大国を指向する性格のものであることは、もはや疑いの余地のないところであります。しかも去る四月防衛庁が四次防原案を公開発表した手順を見るに、自衛隊発足以来初めてのやり方であり、これは国防会議がたとえ形式的、手続的なものではあっても、シビリアン・コントロールの最終、最高の決定機関として尊重されてきた過去の経緯に照らし、自衛隊が自己の主張を貫徹するためにはシビリアン・コントロールによる拘束をのがれたいと願い、計画決定の手順としての国防会議無視の行動に出たものと断ぜざるを得ません。このことは、わが国のシビリアン・コントロールがいよいよ有名無実化し、軍事大国、軍事優先の道を進むことの不安と危険の増大を意味していると思うのでありますが、総理、防衛庁長官の見解をただしておきたいのであります。
 さらに、四次防計画の危険性は、従来の水ぎわで迎撃の防衛基本構想が、わが国周辺の公海公空において必要な限度における制空制海権の確保をはかるとして攻撃型の防衛構想に変わり、それは、装備の面におけるF4Eファントム戦闘爆撃機の保有や艦対艦ミサイルの保有など、総じて、従来の上陸阻止型から攻撃型に装備構想を改めているところにも明白にあらわれております。
 このように、四次防にあっては、専守防衛は名ばかりで、むしろ、その名の陰に隠れて、その実体は、防衛というより完全に攻撃型に変わっていることを指摘しなければなりませんが、これについての防衛庁長官の所見を求めます。
 ところで、今回のレアード国防長官の来日は、キッシンジャー補佐官の北京訪問と時を同じくしているのであります。北京では極秘のうちに米中両国関係の正常化のためのニクソン大統領の訪中が話し合われておるとき、東京では、日本の防衛力の装備近代化、日本周辺の防衛の肩がわり、インドシナ三国への経済援助が話し合われていたのであります。一体、この間の関係を総理はどう理解し、今後の日本の外交防衛政策を展開されようというのか、伺いたいのであります。
 米国は、朝鮮戦争以来の中国封じ込め政策を軸としたアジア政策を解消し、両国関係の正常化をはかる一方、その役割りを日本に押しつけようとするのではないでしょうか。これは、いわば、「おれは中国と仲よくやっていく、けんかは、かわっておまえがやれ」というのにほかならないわけで、だとするならば、佐藤政府は、まさに、こけ扱いもいいところではありませんか。平和憲法を持つわが国は、いまこそ対米追随一辺倒のこれまでのあり方を清算し、自主性を回復し、平和外交に徹し、近隣諸国に不安を与える軍備増強計画をやめるべきでありましょう。総理の見解を求めます。
 次に、私は、最近特に目に余る警察権の行使について質問をいたします。
 安保自動延長、大学紛争、沖繩返還闘争、成田空港建設反対闘争などをはじめとして、その他の民主的大衆運動に対する警察の介入は最近目に余るものがあります。その中でも、機動隊の行動には、過剰警備や基本的人権侵害などの数々の世論の批判があり、ときには民衆に対する警察の暴力行為すら発生していることは、新聞等に報じられており、周知のとおりであります。警察による数多くの基本的人権侵害行為が行なわれている中で、検問一つを取り上げてみても、日本弁護士連合会の人権擁護委員会が半年間にわたり詳細な調査を行なった結果を、四十五年六月二十三日、警察官不当検問事件調査報告書にまとめて発表しております。その内容については、いまここで申し上げる時間がありませんが、この不当検問の事実は、警職法第二条第一、二項の規定に照らし、明らかに違法であり、かつ、警備目的を逸脱し、職種の乱用であり、さらに、そのことは、憲法が日本国民に保障している表現の自由、適正手続の保障、書類並びに所持品の不可侵性に関する基本的人権の侵害であると言わなければならないと結んでおります。
 調査に当たった日弁連の人権擁護委員会では、本調査の公正を期するため、調査の過程で再三にわたって警察当局に対し、近時、警察が実施している検問についての見解と検問の具体的な実施状況等に関する質問を書面をもって行なったにもかかわらず、理由不明のまま警察当局は回答を拒否しておるとのことでありますが、警察行政の責任者である国家公安委員長は何ゆえ回答を拒否しているのか伺いたいのと、さらに、本報告書を踏まえて、検問の具体的な実施状況と、検問などという基本的人権侵害の行為をいかなる根拠があって行なうのか。なおまた、百歩譲って検問が必要であるとしましても、憲法が保障しておる基本的人権の条章との関連、並びに、基本的人権保障の具体策をどのようにとろうとしているのか、責任を持った明確な答弁を要求いたします。
 同報告書の検問の具体例を見ますと、警察官の職権乱用、職務権限逸脱の実態は、近時、機動隊が重装備化されたことと、警職法のむちゃくちゃな拡大解釈とその運用によって、善良な国民に対する暴力行為的な妨害行為がますますエスカレートしていることがはっきり読み取れるのでありますが、こうした違法、逸脱の警察権の行使を即時中止させ、厳重な監視を行なわないと、警察権力によって国民が支配され、かつての軍国主義下での特高警察まがいの警察になりかねない危険性が非常に濃いのであります。同報告書の中でも、現に今日行なわれている検問状況は戦前の無産政党演説会の検問以上であると指摘しているのでありまして、まことにりつ然たるものがあるのであります。そもそも警察の任務は、何よりもまず国民個人の身体、生命、財産の安全をはかり、基本的人権を保障することであります。しかるに最近の警察権の行使の実態を見ると、現行憲法では完全に否定されたはずの超個人的な国家主義的治安の考え方が再び頭を持ち上げ、かつての治安維持法がそうであったように、政治的見解を異にし、時の支配体制に反対する者はすべて治安を乱す者ということで一掃した、そうした方向への逆行が顕著になっていると断言できると思うのであります。治安警察に名をかりた警察権の行使の乱用防止と治安警察のあり方、さらに治安の考え方について総理並びに国家公安委員長の答弁を要求いたします。
 次に、最近増加している警察官の暴力団まがいの暴力行為について質問をいたします。
 最近、警察官による国民に対する暴行事件が各地で発生していることは御承知のとおりであります。最低限国民大衆の生命、身体、財産の安全をはかり、基本的人権保障の役割りをになわなければならないはずの警察官が、逆に国民大衆の生命、身体、財産に危害を加え、加害者に成り下がり、裁判事件となっているなどはもってのほかだと言わなければなりません。こうした忌まわしい事件が起きるのは、個々の警察官の知識、教養の程度とも深いかかわりがあることはもちろんでありますが、いま私がここで問題にしたいのは、そうした個々の警察官の問題以上に、最近の警察当局の治安重視、ややオーバーに言えば、治安一辺倒の姿勢こそがその真の原因ではないかということであります。治安警察が支配体制に都合のいい現体制維持であり、結局は、国家権力の恣意的、政治的判断による民衆抑圧であるとの考え方、そうした警察当局の教育、指導方針によって、警察官の中には民衆抑圧を平気で、当然で、時によると、民衆抑圧こそ警察の本来の職務であるとの錯覚におちいらせる警察の今日の体質の中に原因がひそんでいると判断されるのであります。警察当局の考え方、教育、姿勢を根本的に再検討しない限り、警察官の暴力行為は解消できないばかりか、ますます増加することが憂慮されるのであります。国家公安委員長の見解を伺いたいのであります。
 以上で私の質問を終わります。総理並びに関係各大臣の誠意ある御答弁を期待をいたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) 矢山君にお答えいたします。
 まず、中国問題については、このほど明らかにされたニクソン米大統領の中国訪問について、政府はこれを歓迎するものであります。これによって米中関係が改善の方向に向かえば、アジアの緊張緩和に資するところは大であり、承認へもつながるものでありますので、ひいては日中関係の改善にも好ましい影響が出てくるものと考えております。政府としては、北京政府との間に、日中関係正常化の問題をも含め、双方に関心のある諸問題について話し合いを行なう用意がありますが、北京政府がこれに柔軟にこたえる姿勢を見せることを期待している次第であります。
 次に、ただいま申し述べましたとおり、日中関係の改善は政府としてももとより望むところでありますが、わが国にとっては、中国大陸との関係も、台湾との関係も、ともに重要であることは申すまでもありません。しかして、北京政府も、国民政府も、ともに中国は一つであると主張している事情にありますので、両当事者が平和的な話し合いによって解決されることが最も望ましいところであります。
 なお、わが国は、一九五二年、中国の正統政府たる中華民国政府との間に日華平和条約を結び、平和を回復しております。したがって、その限りでは戦争状態は終結しているのであります。ひとつ考えていただきたいのは、戦争状態は続いているという、こういうことを言われますが、昨年の日中貿易総額は八億二千万ドルにも達しております。また、皆さん方も自由に行き来をしていらっしゃいます。これを戦争状態だと言うだろうか。私は、それらの点について認識がやや私と違うことをはっきり申し上げておきます。
 また、国連における中国代表権の問題につきましては、今回のニクソン大統領の訪中の発表に伴う流動的な国際情勢を見守りながら、わが国の国益をはかり、極東の緊張緩和にも資するという観点から、米国をはじめとする友好国との協議を遂げつつ慎重に検討するという方針に今日も変わりはありません。
 次に、沖繩問題についてお答えをいたします。
 矢山君は、ニクソン大統領の訪中が実現する際だから、沖繩返還交渉をやり直すべきだとの御意見のようでありますが、政府は全くそのようなことは考えておりません。一昨年十一月の日米共同声明以来、政府は誠心誠意この交渉に取り組んでまいりました。その結果、念願の一九七二年・核抜き・本土並みの主張を貫き、沖繩県民はじめ全国民の期待にこたえ得たと確信しております。この交渉は、ニクソンの訪中とは全く別個の次元の問題であります。御了承願います。
 協定の前文を引き合いに出されて、これによって、在来の安保は改定されたのではないかというような御議論を展開されましたが、私は、一昨年の十一月の日米共同声明は、沖繩の一九七二年・核抜き・本土並み返還を定めたものであり、返還後の沖繩に安保条約及び関連取りきめが何ら変更なしに適用されることは、右の共同声明第七項が明記しているとおりであります。返還協定においても安保条約が適用さるべきことが確認されており、返還協定は安保条約を何ら変更するものでないことは言うまでもないところであります。
 核の点検についての御意見を述べられましたが、核の点検は米軍施設の中に入ってやることでありますので、米軍の同意を要することはこれは当然であります。それより以上申し上げる必要はないように思います。
 次に、矢山君は、社会党本来の主張である非武装中立論を展開されました。昨日、衆議院でも北山君から同じ御意見を伺いましたが、最近しばらくの間、社会党の各位もあまり非武装中立論は表面に出さないようにしておられたような気がいたします。別に皮肉で申し上げるわけではございません。ともあれ、現在の国際情勢下では、一国のみで国の安全を確保し得る国のないことは明らかであります。わが国は、国民の国を守る気概のもと、自衛力を整備し、その足らざるところを日米安保体制によって補っております。非武装中立は国民のとらないところであります。また、政府は社会党と遺憾ながら大きくこの点では所見を異にしております。
 次に、四次防原案の発表手順の問題については、防衛庁長官から答弁いたしますが、このことによって日本が軍国主義に返る、あるいは軍事国家になる、かようなことは全然御心配はございません。私どもさようなことをするつもりはありませんし、憲法を忠実に守っていく、その考えに変わりのないことを国民の皆さん方もよく御了承であると思いますので、この機会に、これはぜい言でありますが、一言つけ加えさしていただきます。
 また、ニクソンの中国訪問になったことで、これに関連してわが国の防衛計画を再検討する考えはないかと、こういうお話があったかと思いますが、わが国の防衛計画は、わが国民の生活、生存と安全を保持するための、いわゆる専守防衛の立場において立てるものであります。ニクソンの中国訪問というようなことによりまして再検討を迫られるとは私は考えておりません。これこそ、独自の私どもの行き方であります。
 次に、近隣諸国に対する経済援助の問題でありますが、韓国は、わが国に地理的に最も近い隣国であり、政治的、経済的、文化的に緊密な関係にあるので、わが国としても、同国の発展と国民福祉の向上に深い関心を持つものであります。同国が引き続き着実な経済建設を進めていることは、政府としても心強く感じており、今後とも同国の発展のため協力すべきものと考えております。わが国と台湾との経済関係は、地理的に近接している関係もあって、従来から密接なものとなっており、経済交流が行なわれるのは自然の流れであります。したがって、台湾地域の経済発展と民生の安定に直接寄与すると認められる良好なプロジェクトを個々に検討し、借款を供与するとの従来の方針を今後とも継続する考えであります。
 また、わが国は従来よりインドシナ地域に対しては、住民の民生の安定と向上のため、情勢が許す限り、できるだけの援助を行なう方針をとってきております。今後も引き続き、かかる方針に基づいて援助を行なうこととし、従来どおり人道的援助や、情勢の安定した地域に対する民生安定のための開発援助を行なっていきたいと考えておる次第であります。これは、別にレアード国防長官が来たからといって、いままでの考え方が変わったわけでもありませんし、レアード長官と話し合っても、こういう点は在来どおり変わりはありません。また、レアード長官が来た際に、ちょうどキッシンジャーが北京を訪問していたということと、ただいまの発展途上国に対する援助、これは全然関係のないことであります。それを一緒にしないで、ものごとを見ていただきたい、かように思います。
 次に、警察権の行使にあたっては、いやしくも、御質問のような、治安の維持に名をかってこれを乱用するようなことがあってはならないのでありまして、すべての警察活動は、あくまで憲法及び警察法などの諸法規に基づき、基本的人権を十分に尊重しつつ警察本来の使命を果たし、もって公共の安全と秩序の維持に当たらなければならないと、かように考えております。この点では矢山君と同一の見解でございます。
 以上で私の答弁を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(木村俊夫君) 私に対するお尋ねの第一点は、復帰の沖繩に残留する特殊部隊のことについてであります。沖繩が復帰いたしました後に沖繩に置かれる部隊につきましては、その活動が安保条約のワクをはずれることはあり得ないところでございます。この点について、たとえば第三国軍人の情報訓練を行なっております米太平洋陸軍情報学校は、復帰までに撤去されることに相なりました。また、SR71については、高空偵察等を任務とするものでございますが、政府は同機が領空侵犯を行なっているとの事実は承知しておりません。
 第二点は、VOAの問題でございますが、沖繩のVOA中継局は、今回の協定によりまして、五年間の期間を限って暫定的に存続することを認めることに相なりますが、返還後の日米間の協議の結果、この施設が日本以外の地へ移転されることに決定されました場合におきましては、予見されない事情、たとえば代替施設の完成上、回避し得ない自然災害といったようなものがもし発生した場合におきましては、その際、その遅延の事情や完成までの所要期間等について検討を加えた上、その必要性について十分考慮を払う用意がある旨を述べたものであります。この必要が生じた場合においては、本協定とは別個に、条約の締結等の新たな措置が必要になってまいります。また、お尋ねの合意議事録は、協定の附属文書として国会に御提出をいたします。
 第三点は、ニクソン大統領の訪中によりまして沖繩返還協定の交渉をやり直したらどうかというお尋ねがございました。先ほど総理からお答えいたしましたとおり、ニクソン訪中によって沖繩返還交渉をやり直す考えはございません。(拍手)
   〔国務大臣増原恵吉君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(増原恵吉君) 私に対する御質問は三点であったと思います。
 第一番の核抜きの点検の問題は、ただいま総理からお答えをしたとおりでございます。核抜きの確認の問題は、総理がたびたび衆参の国会において御答弁になっておりまするように、佐藤・ニクソン会談における共同声明あるいは沖繩返還協定の明文に照らしまして、核抜きの確保は十分にされるものと考えてしかるべきものと考えておるわけでございます。
 次に、四次防の策定にあたりまして、今度とりました防衛庁の措置がシビリアン・コントロールに反するものではないかという御質問でございます。このたびの防衛庁の四次防策定の手順は、従来のものとは少々変わっておりまして、防衛庁で慎重に案を練りました段階でこれを公表いたしまして、関係各省その他の批判を仰いで、改むべきものは改めるというたてまえをもって公表をいたしたのでございます。この策定の段階を経て、さらに国防会議にかかりまして決定を見るわけでございますので、シビリアン・コントロールという原則に反するものではないと存ずる次第でございます。
 次に、四次防においては従来の専守防衛という形が攻撃型に質的変化をしたのではないかという御質疑がございました。わが国の防衛は、四次防におきましても、もとより憲法の規定を順守いたしましてわが国の安全と平和を守るための専守防衛に徹すべきものでありまして、四次防の内容が攻撃型に変化をしたということはございません。御指摘になりました、たとえばファントムは要撃機としてのすぐれた性能をもちましてこれを採用しようというのであり、これはもとより短距離における爆撃効力を持っておりますが、わがほうで採用しまする場合のファントムは、爆撃照準装置を取りはずすことにいたしております。専守防衛のたてまえを逸脱しているものではございません。また、艦対艦のミサイル、これは二十マイル程度の射程距離を持っておるものでありまするが、これは相手艦のレーダーあるいは赤外線等をホーミングをしてまいる誘導弾でございます。いわゆる地対地の攻撃型ミサイルというものではございません。すべてを通じまして、装備においても、決して専守防衛という、いままでの憲法を順守した防衛計画を質的に変更したものではございません。御了承を願います。(拍手)
   〔国務大臣中村寅太君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(中村寅太君) お答えいたします。
 日弁連の検問についての質問に回答しない理由は何かということございますが、これは昨年の六月二十三日、日本弁護士連合会から警察官の検問についての警告が行なわれましたが、その中で、警視庁が日本弁護士連合会人権擁護委員会の事実調査を拒否した旨が述べられております。
 警視庁に対するその調査内容は、一昨年の九月五日の日比谷公園における全共闘結成大会の際の検問についての法的根拠などについてでありますが、調査依頼があった当時は、すでにその際の警備措置を違法として東京地裁に損害賠償請求の訴えが提起されていたため、警視庁では、調査内容が裁判における争点となる事項でありますので、裁判以前において明らかにするのは避けたい旨を申し上げておるものと承知いたしております。
 検問の具体的実施状況と、その根拠は何かということでございますが、いわゆる検問は、凶悪犯罪の発生等が予想される場合に、実施時間、場所等を限定して犯罪の予防、犯人の発見、逮捕等のために行なう警察活動であります。警察は、このような検問を実施するにあたりましては、事態に応じ、個別的、具体的に実情を慎重に検討した上で、警察法、警察官職務執行法等に基づいて行なっているものであります。
 一昨年の九月五日に日比谷公園等において検問を実施した当時の状況を見ますと、当日はいわゆる全国全共闘結成大会が日比谷公園で行なわれることになっており、この大会においては、派閥対立からの乱闘が予想され、また、全共闘議長ら約百名に近い者に逮捕状が出ており、これらの者がこの大会に出ることが予想されるなど、異常な事態でありましたものであり、警察としては、このような事態において必要最小限度の措置として検問を実施し、警察の責務を果たしたものであります。
 検問と憲法の保障する基本的人権の尊重との関連、基本的人権保障の具対策に対するお尋ねでございますが、犯罪の予防や犯人の逮捕等のために行なういわゆる検問は、憲法及びそのもとにおける警察官職務執行法などの法律に基づいて行なわれるものであり、法律によって警察に与えられた権限あるいは相手方の承諾を前提に、基本的人権を侵すことのないよう、十分に配意いたして実施しているものでございます。このような犯人の逮捕等のために行なう警察活動によって、憲法上保障されている基本的人権を侵すことのないよう、平素から警察官に対する指導、教養の徹底を期しているところでありますが、なお、今後とも教養の徹底をはかり、警察活動に遺憾のないようにする所存でございます。
 基本的人権を守る警察官の人権侵犯事件が最近発生しているが、これに対する大臣の所見、対策というお尋ねでございますが、この種事案の発生に際しましては、厳重な調査を行ない、刑事事件として送致すべきものにつきましては送致いたしますとともに、懲戒処分を行なうべきものについては処分するなど、厳正な措置を講じております。また、この種事案の防止をはかるため、職務の執行にあたりましては、法に従い、冷静かつ適正に行なうように、常に警察官の教養につとめてまいる所存でございます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
#18
○議長(河野謙三君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三分開議
#19
○議長(河野謙三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。田代富士男君。
   〔田代富士男君登壇、拍手〕
#20
○田代富士男君 私は、公明党を代表して、総理の所信表明に対して、内外の重要問題につき質問をいたすものであります。
 佐藤総理、あなたが総理に就任して以来はや六年八カ月を経過し、その間実に十九回の所信表明がなされているのであります。総理は演説のたびに人間尊重を繰り返し言明してまいりましたが、はたしてどれだけ人間尊重の政治が実現されてきたか、全く理解に苦しむものであります。
 公害、物価高、交通事故、住宅難など、抜本的対策は全くなく、その中で防衛力の増強のみが着々と行なわれているのが現在の姿であります。さらに漁船等の遭難に対する海上保安庁の救助体制の弱体は、一向に解決されておりません。また、山火事の消火体制も諸外国に比して十年以上もおくれ、なたやかまを持った人間の力が主力で、航空機による消火などの機械化は遅々として進んでおりません。安全性を無視し、生産第一を目ざす企業の姿勢は、歌志内における炭鉱災害など痛ましい労働災害を続発、あるいは静岡、兵庫、島根に見られるがけくずれ等々、連日のニュースはまさに人命視軽の姿を示しているのでございます。
 一方、外交政策においても対米追随に終始し、先見性に欠け、世界平和を求める国際世論の動向に大きく逆行していることは、今回の米中会談の発表を見ても明らかであります。
 戦後二十余年、政権の座にあぐらをかいてきた自民党に対する国民の批判はますます増大し、今回の参議院選挙の自民党の敗退となっているのであります。ことばのみあって実行力なく、世界の流れをつかみ得ない佐藤内閣は、いさぎよく退陣すべきではないでしょうか。私は総理の深い深い反省を求めながら質問に移るものであります。
 初めに、今回の参議院選挙を顧みるに、七〇年代を決するその重大な意義が説かれ、広範な国民参加が期待されたのであります。しかしながら、御承知のように、投票率はわずかの五九%に終わったのであります。しかも、連日報ぜられているとおり、いわゆる高級公務員の広域かつ悪質な大規模選挙違反が続出しており、官界と業界の癒着を如実に示す政治悪のきわみに対して、政府・自民党への批判は高まる一方であります。こうした政治不信のあらわれや批判について、総理はどう思われておるのでありますか。かりにも選挙違反に連座する疑いのある該当者には、総裁として辞任を勧告し、直ちに公党から何らかの措置をとり、国民の信頼にこたえるべき義務があると思うが、総裁としての総理の決意を明確にお示し願いたいのでございます。
 さらに高級官僚の立候補制限について、退職後二年間は参議院全国区に立候補できないようにせよという世論が高まっているが、総理はどう考えているのか、お尋ねしたいと思うものであります。午前中総理は、加瀬議員の質問に、これがあたかも憲法問題になるような答弁をなさったが、すでに昭和三十四年の第七次選挙制度調査会以来解決されている問題でありますから、そのような逃げ口上は無用であります。
 次に、議員定数の不均衡是正についてお伺いいたします。今回の参議院選挙においても、東京地方区では六十四万票で落選し、高知地方区においてはその五分の一の十二万票で当選しているのであります。また、人口五十七万の鳥取地方区の選挙定数が一名に対して、人口がその二十倍の一千百四十万人の東京地方区の選挙定数がたったの四名というのは、あまりにもアンバランスであります。正しい民意を反映しない五倍強の偏差をどう思うか。国勢調査の確定数が公表になったならば直ちに是正の措置をとるべきであるが、第七次選挙制度審議会より早期に答申を受けて、おそくとも次の通常国会で成立させようという決意があるかどうか、総理の明確な御答弁をお願いいたします。
 次に、沖繩問題についてお伺いいたします。
 まず、今回調印された沖繩返還協定の批准についてでありますが、総理は、去る十三日の記者会見において、米国の上院審議では、沖繩返還協定と繊維問題がからんでくるのではないか、との質問に対して、米側にはそういうことはなさそうだ。しかし、日本も、沖繩が片づいたから、経済は知らぬとは言えない。ここに気づかないと、問題は複雑になると答えているが、もしも経済問題において何らかの代償を日本に求められてもやむを得ないと判断しているのか、明らかにしていただきたい。
 次に、政府は、返還にあたって、県民の意思を十分に尊重することを約束しておりながらも、依然として県民の不安や不満が解消されていないのであります。特に、現地沖繩から出されている十項目からなる対米補償については、具体的にどのような考え方と方法によって解決をするつもりなのか。すでに、政府は十項目のうち、講和前の人身損害の補償漏れなど四項目の補償のみを決定しているといわれている。二十六年間、異民族の支配のもとに苦しんできた沖繩県民の切なる補償への要求を考えるとき、全十項目を完全に実施すべきであると思うが、この際、あらためて補償の対象及びその内容について納得のいくように示していただきたい。
 また、米国資産の引き継ぎについても、電力、水道開発、金融の三公社をはじめ、行政建造物などを有償として引き取る交渉が終わったと伝えられるがどうか。それ以外に有償として引き取る物件や金額は確定したのか、内容を示していただきたい。ガリオア・エロア資金をもとに建設された三公社などは、本土と異なり、米国の施政権下において行なわれたものであり、したがって、米国の義務的な統治費用であるとの解釈が成り立ち、買い取る理由は何もないと判断されるのであります。有償として引き継ぐ理由は何か。無償とする折衝は不可能なのか。明らかにしていただきたいと思うのでございます。
 政府は、第一次から第三次にわたって、返還に臨む対応策として、復帰要綱を策定しましたが、この中で特に問題となるのは、豊かな沖繩県づくりにどう寄与するかということであります。中でも策定がおくれた税金問題をどう扱うのか、お伺いしたいのでございます。暫定特例法が施行されても、復帰した時点から沖繩県民の負担する税金が、深刻な生活の圧迫になりかねないのであります。この点についてどう対処されるつもりかお伺いいたします。
 次に、中国問題についてお伺いいたします。
 ニクソン訪中決定に伴い、国際情勢は新たな転機を迎えたのであります。このまま推移すれば、近い将来日本は世界の孤児になりかねない立場に追い込まれようとしております。そこで、日中国交回復の足がかりとして、政府が積極的に中国に国交回復への話し合いを申し入れるのか、それとも、中国側が日本に申し出るまで国交回復の話し合いができないのか、具体的にどんな方途を考えられているのか明らかにしていただきたいのであります。
 昨日、わが党の竹入委員長が、日中国交回復のための五項目について政府の考え方をお伺いしましたが、政府の答弁は従来と全く変わらず、終始台湾との関係を強調しているのであります。すでに総理の最も信頼しているニクソン大統領でさえ、日本の頭上を飛び越えて訪中するというように、米国は中国関係の大転換を行なっているにもかかわらず、この国際情勢の急変にも対応できぬことは、時代感覚を無視した独善であると言わねばなりません。
 そこで、重ねてこの五項目のうち総理の答弁で納得のできない点についてお伺いします。
 第一に、総理は一つの中国論に立ってきたというならば、事実上中国大陸を支配している中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であることを認めるべきであると思うが、どうでしょうか。
 第二に、総理は「台湾と正式な手続によって平和条約を締結した」と答弁されましたが、虚構の上に置かれた日台条約を総理はいつまでも固執するつもりなのかどうか、直ちに廃棄すべきと思うがどうか。
 第三に、台湾の帰属は未定である旨総理は答弁されましたが、未定であるからには、この際勇断をもって、台湾は中華人民共和国の領土であるとはっきり表明すべきと思うがどうか。
 第四に、中華人民共和国政府が国連における中国の唯一の代表権を占める政府であり、安保理事会の中で常任理事国の地位はもちろん、国連のあらゆる機構にその正当な地位を回復することについてはどう思うか。昨日は「慎重に検討する」と答弁されたが、どの方向で慎重に検討するのか。
 次に、経済問題についてお伺いいたします。現在わが国が直面している経済問題の最大の焦点は、円切り上げ防止、景気回復、物価の三つであります。これらの問題について緊急対策を講じなければならない事態に立ち至ったのは、明らかに国民生活を無視した高度経済成長政策の失敗であると言わざるを得ないのであります。すでに円切り上げ防止対策について政府は輸入の自由化、関税の引き下げ等の八項目を決定しましたが、円対策を実施したあと日本の経済をどのような姿にさせようとしておられるのか、また景気が回復したあとも外貨が増加した場合円切り上げを避けられないのではないかどうか、総理の所見をお伺いいたします。
 また、輸入の自由化並びに関税の引き下げ等によって特に大きな打撃を受けるのは、中小企業、農林水産等の低生産部門であります。これらの部門に対していかなる対策を講ずるのか、総理及び通産大臣に具体的な答弁をお伺いしたい。
 さらに、見のがすことのできないのは、国民生活安定の基盤である物価対策が景気対策や円対策の陰に隠れておろそかになっていることであります。消費者物価指数は不況の今日でも依然として前年に対し六ないし七%という高い上昇率を示しており、このままでは、政府の見通しの五・五%はおろか、昨年度の七・三%を上回り、国民生活をさらに圧迫することは必然であります。景気対策が急務とされるいまこそ、物価対策もあわせて強力に実施する必要があると思うのであります。そうでなければ、全く国民生活、国民福祉を無視した産業第一主義の経済運営であると断ぜざるを得ないのでありますが、総理の物価対策の所見を伺いたいのであります。
 次に、公害問題についてお伺いいたします。総理は、所信表明の中で「公害関係諸法令の整備、環境庁の発足など、公害問題に取り組む基本的な体制は、一応整いました。」と言われておりますが、現実に公害被害者はあとを断たないのであります。そこで、私はまず、光化学スモッグについてお伺いしたいのであります。
 昨年夏、一万人以上もの被害者を出した光化学スモッグは、ことしに入って、つゆ明け前には発生しないという予想をくつがえして、五月十三日には早くも第一号が発生し、さらに曇天の日や日曜日あるいは夜間にまで発生するようにエスカレートしております。もはや事態は一刻の猶予も許されません。にもかかわらず、光化学スモッグの原因さえもいまだに何ら究明されていないのであります。まさに、政府の怠慢であります。
 そこで私は、次の三点について、総理及び環境庁長官にお伺いしたい。一つには、光化学スモッグが発生したときの行政処置はどうするのか。二つには、被害者の救済についてであります。具体的対策をお示しいただきたいのであります。三つには、光化学スモッグに対する研究体制はどうするのかお尋ねいたします。
 次に、三年にわたる悲惨なイタイイタイ病裁判は、富山地裁において、原告側である被害者の全面的勝利がなされたのであります。しかし、被告側の三井金属の姿勢は、この判決を不服として上訴し、このまま裁判を続ければ患者が全員死ぬまでかかるおそれさえあるのであります。このような企業のエゴイズム、反社会的な姿勢がはたして許されるものでありましょうか。総理の御所見をお伺いしたいのであります。
 次に、複合汚染対策についてお聞きしたい。現在発生している公害のほとんどは複合汚染、すなわち二つ以上の汚染原因が重なっているものであります。現在の公害罪法によってもまた、無過失賠償責任制度ができたとしても、この複合汚染に対しては何ら効果はないのであります。そのため鹿島臨海工業地帯、川崎、四日市、大阪、尼崎、倉敷市等の大気汚染によるぜんそく等、また、田子の浦、瀬戸内海、大阪湾、洞海湾等の海洋汚染による漁業等の被害については全く泣き寝入りの現状であります。総理は、これらの複合汚染による被害者の救済についてはどう考えているのか、具体的にお示し願いたいのであります。
 次に、医療問題であります。今回の日本医師会の保険医総辞退ははなはだ遺憾であるが、ここまで追い込んだ政府の責任は重大であります。総辞退の発端は十年前の昭和三十六年七月、政府並びに自民党と日本医師会及び歯科医師会の四者の間で医療保険制度の抜本改正をすみやかに実現する約束がなされました。しかし、十年たった今日、政府が約束を実行しなかった結果、最悪事態を招いたのであります。そこで、今日まで抜本改正をしなかった理由、並びにこの緊急事態をいつまでに、どういう方向で解決されるのか、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 国民医療全体の向上をはかるために、現在、ばらばらな状態にある医療保険の統合、調整が必要であり、また、診療報酬の適正化、特に内容に比較して点数の低い単価を合理化し、医療保障の充実をはかることが必要であると思うものであります。また、医薬分業の早期実現をどう考えていられるのか伺いたいのであります。
 次に、老人問題について長期総合計画を真剣に考えねばならぬときが来ていると思いますが、政府の具体策を示されたい。中でも一刻の猶予も許されないのが老人医療の問題であります。そこで老人が安心して十分な医療を受けられるよう老人の福祉法を改正し、六十歳以上の人の医療はすべて無料にすべきであると強く主張するものでありますが、総理大臣の所見を求めるものであります。
 また、心身障害者の方々に対する福祉政策は、わが国が最も立ちおくております。国立のコロニーの増設や物価にスライドした各種手当の増額など飛躍的な身障者福祉を進めていくべきであると思うが、具体的に総理はどう考えておられるかお尋ねしたい。
 次に、教育問題についてお伺いします。
 今日の急激な社会環境の変化は、教育の世界にも大きな影響を及ぼしており、新しい時代に即応した教育の改革を一刻も早く行なわなくてはなりません。先般、「第三の教育改革」と銘打った中央教育審議会の答申が発表になりましたが、残念ながら教育権の独立という時代の要請を無視した中央支配への路線がしかれている政府・自民党寄りの答申であります。新しい時代の教育は、人間性の開発と教育権の独立に基づき、一党一派に片寄ってはなりません。政府は、先導的試行の名のもとに、早くも国民に教育改革を押しつけようとし、なしくずし的に実施しようとしております。しかし、行政だけが先行しても教育改革は決して成功はしないのであります。教育改革は国民的合意を得た後に着手すべきであると思いますが、総理及び文部大臣の所信を伺いたい。また、新しい時代の教育は、教育権の独立を抜いては考えられないと思いますが、実施する考えはあるのかどうか、総理の所信を伺いたい。
 最後に、昨日夕方、日航機が雷とひょうの直撃を受けたために機首のレドームが吹っ飛び、一部を破損した事故に関連して質問をいたします。
 運輸大臣は、さきに、国内航空各社に対して厳重なる通達を出し、航空の安全について反省、点検の要を求められましたが、その直後、三たびこのような重大なミスをおかし、人命を危くする事故を繰り返した原因は何か、また、その責任をどう考え、反省されているのか、総理並びに運輸大臣にお伺いするものであります。
 また、さきの通達の周知徹底方については、その後各社より報告を求められたのか、また、その内容はどうだったのか、並びに、航空を含む交通全般に対する安全に関して、今後いかなる決意で臨まれるのか等、あわせて総理並びに運輸大臣にお尋ねするものであります。
 以上、国民の政治不信の念がますます強くなっている現在、総理はその責任を深刻に理解して、答弁にあたっては、全国民に答えるという立場で行なわれんことを希望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(佐藤榮作君) まず最初に、冒頭に、さきの選挙をいかに反省しているか、こういうことで、きびしい私に対する御批判もあり、同時にまた御鞭撻をいただいたと思っております。まことに感謝にたえません。私が所信表明で申し上げましたとおり、選挙の結果を正確に把握いたしました。これを深く反省し、わが国の行く道にあやまちなきを期したい、これが私の決意でございます。
 次に、具体的問題についてお尋ねがありましたので、お答えをいたします。
 申し上げるまでもなく、選挙は民主主義の基盤であり、公正に行なわれるべきことは、あらためて申すまでもありません。しかしながら、今回の参議院選挙におきましても、なお相当数の選挙違反が見られたことは、まことに残念であります。この際、関係者の自覚を促すとともに、事実の究明を待ちたいと思います。
 また、いわゆる高級公務員に限って立候補制限を行なうことは、法的にも問題が多いように思いますが、少なくとも、公務員がその地位を利用して選挙運動を行なうことは公職選挙法に違反する行為であり、いやしくも公務員たる者がそのような違反を行なうことのないよう、一そうの自覚を求めてまいる所存であります。
 次に、衆議院及び参議院の地方選挙区ごとの定数と人口との関係にかかる不均衡があることは、御指摘のとおりであり、私もその合理化をはかる必要があると考えます。ただ、どのように改めるべきかは、現行選挙区制や選挙制度をどうすべきかという根本問題と切り離すことのできない性格のものであり、目下、選挙制度審議会に審議をお願いしているところでありますので、その結論を待って検討を進める所存であります。
 現在、日米間に生じている若干の経済問題に関しては、互恵と互助の精神に基づき、一つ一つ、話し合いにより解決するよう努力しております。政府としては、かかる経済問題が沖繩返還問題とからんでくることは考えておりません。また、米政府としても、沖繩問題と経済問題をからませて取引を行なうというような立場をとったことはありませんから、御安心いただきたいと思います。
 沖繩県民の十項目からなる対米請求の問題につきましては、すでに社会党の加瀬君に詳しくお答えいたしましたので、省略いたします。
 なお、いずれ批准国会もそのうち開かれることでありますので、その際に、十分これらの問題を明らかにいたしてまいりたいと思います。
 次に、沖繩の米国資産の買い取りの問題でありますが、協定上、内訳はありませんが、総額三億二千万ドルで合意したのは、資産の引き継ぎで一億七千五百万ドル程度、退職金負担で七千五百万ドル程度、核の撤去費などで七千万ドル程度が適当と判断したからであります。
 次に、沖繩と本土との税制を比べると、その税負担は、沖繩のほうが低いものもあれば、高いものもあります。本土復帰に伴って、本土と沖繩との税制一本化の際に、このような税負担の状況、あるいは復帰後の沖繩の経済、民生等に及ぼす影響などを十分考慮し、実情に即した経過措置を講じていく考えでございます。
 次に、日中の接触をいかに佐藤内閣は考えておるかということであります。私は、しばしば申し上げましたように、わが政府の考え方は、国会等を通じましても明らかにいたしております。したがいまして、その他の諸国の大使級の会談等をもいまいろいろ検討いたしておりますが、あらゆる機会に接触の場を求めるということで、わがほうの考え方を十分理解していただく考えであります。
 わが国は、ただいまのような接触の道を考えておりますが、一貫して、国民政府を中国の正統政府であるという見解をとってまいりましたが、現在もこの考えに変わりはありません。このことだけ、はっきり申し上げておきます。
 そこで、公明党の考えられるような諸点についてどう政府は考えておるかとお尋ねでありますが、まず日華条約を破棄せよとの御意見でありますが、日華平和条約は一九五二年わが国が中国の正統政府として認めていた中華民国政府との間に締結したものであります。その締結にあたって国会の同意を得ていることは御承知のとおりであります。政府としては、北京政府が従来より同条約を不法であり破棄されるべきものと主張していることは承知しておりますが、わが国としては、このような主張をそのまま受け入れるわけにはまいりません。
 次に、台湾の帰属問題でありますが、わが国はサンフランシスコ条約第二条(b)に基づいて、台湾及び澎湖諸島に対する権利、権原及び請求権を放棄しております。さらに、右領土の放棄は日華平和条約第二条において確認されているのであります。しかしながら、両条約の関係規定は、わが国の台湾、澎湖諸島放棄を定め、あるいはこれを確認してはいても、だれのために放棄するかの点については何ら触れておらず、また、その後これらの諸島の帰属につき国際間で最終的処理がなされているとは承知いたしておりません。
 次に、中国の国連代表権問題に関する御質問の趣旨は、アルバニア決議案の中に盛られた考え方と同じものと理解いたしますが、わが国が従来アルバニア決議案に反対してきたことは御承知のとおりであります。今秋の国連総会における中国代表権問題に対するわが国の態度については、しばしば述べたとおり、今後、米国をはじめとする友好諸国と協議しながら慎重に検討する所存であります。この場合に、どの方向で慎重に検討するのかというお尋ねでありますが、ただいま申し上げますように、友好諸国と協議しながら――これで十分だと思っております。
 次に、経済関係でありますが、先般のいわゆる八項目は単に円対策という性格のものではなく、景気の回復と対外経済関係の調整を目ざしたものであることをまず御理解いただきたいと思います。目下はこの八項目の具体化、徹底化に鋭意当たっている段階であり、遠からずその効果はあらわれるものと確信いたします。田代君は、外貨の増加がとまらない場合の対策についてお尋ねでありましたが、円の切り上げを実施するつもりはないことをこの際明確に申し上げておきます。
 私は、国民生活の充実と、国際社会への応分の貢献をなし得る底力を持った日本経済、その安定的成長をはかることが今後の経済政策の課題であると考えます。また、自由化の促進あるいは輸入関税の引き下げは日本経済の国際社会に対する責務でもありますが、その影響を強く受ける部門への配慮が必要であることは御指摘のとおりであります。産業基盤そのものの合理化が急務であり、つとに構造政策の推進をはかっているところであります。景気対策が急務とされるいまこそ、物価対策を強力に実施する必要があるとの田代君の御意見は全く同感であります。物価の安定については、国民生活充実の課題のため、今後とも十分注意してまいる考えであります。
 次に、公害対策についてお答えをいたします。
 一般的に申しまして、いやしくも企業たるものは公害を防止するため万全の措置をとる社会的責任を負っていることは当然であります。また、その責任によって、被害が生じた場合には、その救済に全力を傾注すべきことも当然のことと考えます。昨年の数多くの公害関係法の整備に引き続き、去る七月一日より新しく環境庁も発足いたしました。ようやく公害防止の本格的姿勢が整いましたので、私は、光化学スモッグや複合汚染による被害の救済もさることながら、これら公害の発生を極力減少するよう最善の努力を払ってまいる決意であります。(「企業責任はどうするんだ」と呼ぶ者あり)
 その他の公害関連の御質問については、環境庁長官からお答えいたします。(「救済はどうするんだ」と呼ぶ者あり)
 質問された事項がたいへん多いので、不規則発言については一々お答えをいたしませんが、御了承願っておきます。
 次に、医療関係の御質問にお答えをいたします。
 医療関係制度の抜本改正については、かねてから努力を重ねてきたところであります。しかしながら、三十六年における関係者の了解のうち、制限診療の撤廃、診療報酬の地域差解消等はすでに実現を見たのでありますが、残された問題は利害関係がきわめて錯綜しており、関係者の御協力のない限り、その解決は容易ではありません。政府といたしましては、関係者のそれぞれが自己の主張にのみ走ることなく、医療を受ける国民の立場に立って、譲るべきはこれを譲り、進んでその解決に努力されることを期待し、抜本改正のため一そうの努力を続ける所存であります。
 なお、抜本改正を進めていくにあたりましては、御指摘のとおり、現在分立している医療保険制度の統合調整が必要であると考えております。また、診療報酬についても、従来から、中央社会保険医療協議会の建議を受け、その適正化をはかってきているところでありますが、今後も一そうの適正化をはかってまいります。
 また、当面の保険医辞退問題については、先ほど社会党の加瀬君にお答えしたとおり、その収拾のため最善の努力をいたします。
 医薬分業につきましては、その推進をはかるため、今後その実施のための条件の整備につとめてまいる考えであります。
 また、老人問題の重要性につきましては政府も十分認識しているところでありまして、今後も、年金、医療の分野を中心に、長期的な観点から配意してまいります。
 老齢者の医療の確保につきましては、医療保険制度の抜本改正の一環として関係審議会に御意見を伺っているところであります。最近、地方公共団体において老人医療費に対する特別措置を実施しつつあることをも勘案し、政府としても、老後を安心して過ごせるよう、これが対策について前向きに検討してまいります。
 次に、心身に障害を持つ人々が今日の繁栄する社会から取り残されることがあってはなりません。政府といたしましては、昨年成立した心身障害者対策基本法の精神を十分尊重し、施策の充実につとめているところであります。国立コロニーや障害年金等につきましても、必要に応じ十分配慮してまいります。――なかなか多いですから、いましばらくお待ちください。
 次に、教育問題についてお答えいたします。
 今回の教育改革は、社会的変革期に行なわれた明治初年と第二次大戦後の過去二回の教育改革とは異なり、平常時においてその推進をはかるという点において、非常な努力と熱意を要するものと考える次第であります。したがって、改革の実施について、広く国民の理解と支持とを得ることが必要であり、今後、答申の趣旨普及と、各層の意見聴取のため、万全の方途を講じたいと考えております。さらに、このたびの中教審の答申が提案している教育改革の基本的構想には、将来の教育のビジョンとしてまことに傾聴すべきものがあると思います。かねて申し上げているとおり、私は、人間尊重の本旨に立って、学校教育全般のあり方に改善を加え、わが国の物心両面にわたる繁栄の基礎を固めたいと考えております。
 なお、今後の時代における教育のあり方を考える場合には、中教審の答申も指摘しているとおり、学校、社会、家庭を通じ、有機的な関連のもとに、生涯を通じて人間の可能性を最大限に発揮できるようにするための教育体系をつくり上げることが大切であると考えているものであります。
 最後に、昨日の日航機の事故におきまして、乗客、乗員の全員が無事であったことは、まことに幸いでありました。しかし、政府といたしましては、このような事故が繰り返されないよう、早急に事故の原因を調査するとともに、航空交通の安全確保につきましては、一そうの努力をいたす所存であります。
 たいへん失礼いたしました。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(田中角榮君) 景気対策その他につきましては総理大臣からお答えがございましたが、補足して三点にわたり御答弁を申し上げます。
 第一は、景気の現状から推定をいたしますと、年率一〇・一%の予想成長率は、八%程度が予想せられる現状でありますので、景気浮揚を必要とする状態であると申し上げたいのでございます。なお、右の事情でございますので、輸出は依然好調を続けており、外貨も積み増しされておるわけでございます。政府は、八項目の実施によりまして景気浮揚等、輸入の増大をはかってまいっておるわけでございます。景気浮揚後、外貨が積み増しされた場合どうするかということでございますが、御承知のとおり、原材料を海外に仰いでおる日本でございますので、石油、鉱物資源等、長期開発のために外貨投資を行なう等によりまして、国際収支の均衡をはかってまいるつもりでございます。
 第二は、自由化及び関税引き下げに対する低生産性部門の対策についてでございますが、御承知のとおり、自由化を促進しなければならない。国際経済がその促進の状態にあることは事実でございますが、日本国内におきましては、中小企業、零細企業という特殊な状態がございまして、これらの状態が自由化に対応できないようなものも現に存在するわけでございます。でございますので、自由化を促進しなければならないということと、中小企業や零細企業に対して国際競争力の対応力を持たせる施策を急がなければならないということは同義語と考えておるのでございます。その意味におきまして、中小企業、零細企業が国際競争に耐え得るよう、中小企業の高度化事業の推進、構造改善、下請中小企業の振興、近代化等に対して格段の施策を行なってまいるつもりでございます。
 第三点は、光化学スモッグ対策等の問題について、通産省所管の問題について申し上げます。光化学スモッグの一つの原因が自動車による排気ガスと考えられておる現状に徴しまして、大気汚染防止のため官民一体となって取り組んでおるわけでございます。御承知のとおり、政府は、今年から電気自動車の開発、既存エンジンの改良及び新しいエンジンの開発等につきまして五カ年計画をつくり、積極的に指導助成を行ない、政府みずからもこれが改正に当たっておるわけでございます。
 また、大気汚染防止自動車開発につきましては、米国から技術情報交換の申し込みもございます。米国のみではなく、広く諸外国の技術情報を利用いたしまして、自動車の排気ガス公害防止のために遺憾なきを期してまいるつもりでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣大石武一君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(大石武一君) 最近、東京を中心とした地域に光化学スモッグが頻発いたしまして、国民に大きな不安を与えておりますことはまことに遺憾でございます。
 政府は、昨年の国会におきまして大気汚染防止法の一部を改正いたしまして、その緊急措置をきめたわけでございます。つまり、これは各地方自治体の長官に対しまして大きな権限を与えまして、これに対応するものでございます。この光化学スモッグの原因と考えられるオキシダントの濃度が非常に高まってまいりまして、ある一定の危険限度に達しますと、都道府県知事は、工場に対してその運転を休止する命令を出すことができることになっております。同時にまた、交通の規制を行なうために、とりあえず自主的な交通の規制を要請することができるのでございますが、さらにその危険度が高まってまいります場合には、都道府県の公安委員会に要請をいたしまして、交通規制を行なわせることができるわけでございます。このようにして、緊急のオキシダント増加に対する規制を地方自治体に権限を付与いたしておるわけでございます。
 しかし、御承知のようにこの光化学スモッグは、その本体がまだほとんどわかっておりません。どのような機構でそのような現象があらわれるのか、また、人体に対してどのような影響を与えているのか、人体がどのような反応を示しているかということはほとんどこれはわかっておらない現状でございます。したがいまして、まことに申しわけのないことでございますけれども、これらのオキシダント、光化学スモッグの被害に対しましては、十分な根本的な救済対策ができておりません。ただわずかに応急的な、対症的な手当てがあるのみでございまして、まことに申しわけない次第でございます。したがいまして、この本体を究明することが何よりもこの光化学スモッグに対する第一の仕事であると考えまして、一意研究を進めることにいたしておる次第でございます。その一つとしましては、昨年から科学技術庁の研究促進の費用を一部使いまして、昨年度は二千四百万円、本年度は約三千万円の費用をもちまして、それぞれ権威のある研究機関、たとえば公衆衛生院であるとか、国立衛生試験所、公害資源研究所であるとか、労働衛生研究所等に委託をいたしまして、その基本的な研究をお願いしておるわけでございます。同時に、一日も早く国立の公害研究所を、昭和四十八年の計画どおりこれを達成いたしまして、その本格的な研究に取り組みたいと考えております。しかし、当面は、まず何としても、これに対する応急の対策を考えなければなりませんので、この環境庁内におる技術者を集めましてチームをつくり、対策班をつくりまして、目下その対策に努力いたしておる現状でございます。
 このようなことで、今後とも一意努力を重ねまして、この光化学スモッグがわれわれに対して心配のないものになるように努力してまいる決意でございます。(拍手)
   〔国務大臣高見三郎君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(高見三郎君) 田代議員にお答えを申し上げます。
 先ほど総理からお答えがありましたが、私が補足して申し上げますと、まず、この問題に取り組みまする文部省の体制を整備するために、文部省内には教育改革推進本部を設けまして、改革の総合的推進をはかることといたしております。この改革本部の一番大きな仕事は、広報事業であると同時に、広く国民皆さま方の合意を得るために皆さま方の御意見を聞く広聴という方面にこの活動の重点を指向いたしていきたいと考えておるのであります。教育改革に取り組みまする文部省の姿勢を、体制をまずつくれという答申の御要望に一応こういう形で沿いまして、これに基づきまして教育改革に取り組む文部省の体制を整備するとともに、所要の施策を総合的に推進いたしまするために、長期的な計画をすみやかに立て、これはしかし十年にわたる問題でありますので、目標年次を定めて段階的、継続的に改革を進めてまいりたい、かように考えております。答申で提起されておりまする問題の中には、なお専門的な検討を要する問題がございまするし、慎重な準備をしなければならない問題があることは田代さん、先ほど御指摘のとおりでございますが、当面一番関心の深い問題は、幼児教育の普及、充実の問題であり、また、特殊教育の拡充整備につきましては、緊急の課題といたしまして、取り急いで関係各階層の御意見を聞きながら進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣丹羽喬四郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(丹羽喬四郎君) 去る七月三日の「ばんだい号」の事故によりまして、六十八名という多数の貴重な人命を失ないましたことにつきましては、運輸行政の担当者といたしまして、深く遺憾の意を表しまするとともに、犠牲者並びに御遺族の方々に対しましてつつしんで哀悼の意を表するものでございます。
 田代議員から御質問がございました昨日の日本航空所属DC8型機の落雷事故につきましては、皆さまに御心配をかけまして、まことに申しわけなく思っておる次第であります。現在、関係機関及び日本航空よりその原因について事情聴取を急ぎ行なっておるところであります。これら最近の連続して発生しておる航空機事故にかんがみまして、政府としては航空安全緊急対策を樹立いたしまして、直ちにこれを実行しつつあるところでございますが、これが一そうの促進をはかるとともに、関係者に対して、かかる事故を再び起こすことのないよう、さらに厳重に注意をする所存でございます。
 また、航空の安全性の確保につきましては、七月十日、運輸大臣より定期航空三社の社長に対しまして、安全第一主義を各部門の末端に至るまで徹底し、十分余裕を持った事業運営を行なうよう厳重に注意をするとともに、措置すべき事項につきまして通達を発したところでございます。各社におきましては、社長名をもって、同通達の周知徹底をはかっておりますが、東亜国内航空におきましては、すでに緊急安全対策委員会を設置いたしまして、予備機の増加及び余裕あるダイヤの編成、航空機の進入着陸方式のチェック、また、気象情報のより的確なる把握等の措置をすでに講じております。また、日本航空では、運航整備各部門における特別点検を実施中でございます。全日本空輸におきましては、ローカル空港における航務、整備関係の特別点検をすでに実施中であります。なお、東亜国内航空に対しましては、現在実施中の立ち入り検査に基づく改善事項について九月中旬までに報告を求めることにいたしております。
 最後に、交通安全の確保ということが運輸行政の基本であることは申すまでもないことでございます。私はこれをモットーとして今後全力をあげて取り組んでまいる所存でございます。特に重大事故の再発を防止するために、航空につきましては、運航整備の管理部門の強化充実、常設の事故調査機関の設置、航空保安施設の早期充実、人員の確保等をはかるほか、海運、陸運、航空各交通機関の事故防止、安全対策に全力を傾注する覚悟でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(河野謙三君) 松下正寿君。
   〔松下正寿君登壇、拍手〕
#27
○松下正寿君 私は民社党を代表いたしまして、去る十七日本院において行なわれました佐藤総理の所信表明に関し、若干の御質問をいたし、総理並びに関係大臣の御見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 第一点は、参議院のあり方でございます。参議院のあり方につきましては、国民の間に深い疑惑が漂っております。参議院は衆議院とともに国会を構成し、憲法上国権最高の機関とされているのでありますが、実情として、はたしてその任務を遂行しているか。参議院は第二衆議院、あるいはミニ衆議院というふうな酷評を受けておりますが、はたしてこの酷評に根拠がないと断言し得るかどうか。
 ところで、参議院の具体的な改革案として、次の三つが考えられております。
 第一は、議長、副議長の党籍離脱でありまするが、これは幸いにして実現されました。私はこれが確立された慣行になることを希望しております。
 第二は、何党が政権を担当いたしましても、参議院議員から大臣をとらないということであります。
 第三に、参議院議員に対する所属政党の拘束を大幅に緩和いたし、個々の議員の能力を最大限度に善用することであります。
 現在、参議院のあり方について国民が深い疑惑と不満とを持っておりますことにかんがみまして、その改善について政府が真剣に考慮されることをひたすら希望するものでありますが、去る六月行なわれました参議院議員の選挙に、また去る十七日未明本院におきまして行なわれました議長選挙等において、このような疑惑、疑問というものが相当はっきりと表明されておると思うのでございますが、佐藤総理はこの問題についてどういうお考えでございましょうか。佐藤総理は、こういうような問題は、これは立法府の問題、参議院の問題であって、三権分立の立場から政府の直接関係したことではないとおっしゃるかもわかりませんが、アメリカのように三権分立がはっきりと分かれておるところは別でございますけれども、日本のように議院内閣制度をとっておるところにおきましては、自民党の党首が直ちに総理大臣である。こういう点を考慮されますときに、これは関係がない、問題外であるといって片づけることはできないのじゃないか。世間には、佐藤総理は、参議院のあり方という重大な問題よりも、党内の派閥関係等に重点を置いて考えておるというふうに見ておる人も相当にあります。この点につきまして総理がどういうお考えを持っておられるか、明確なる御所信をお伺いいたしたいのでございます。
 第二の点は、沖繩返還協定の問題でございます。
 この問題はたくさんございますが、ただ二つだけに問題を要約いたしたいと思いますが、その第一は、八十八カ所にも及ぶ米軍の基地を、アメリカの欲するように半永久的にアメリカに提供するつもりであるか。それとも何カ年かの計画によって撤去するという方針をとっておられるのであるか。SR71など特殊部隊の行動を安保のワク内にとどめると言っておられますけれども、実際問題としてそれが可能なのであるかどうか。これらの点について、計画的な撤去方針というものをどういうように持っておられるか。持っておられるならばそれを明らかにしていただきたいのであります。また、VOA――ボイス・オブ・アメリカについては、五年後再び協議するということになっておりますが、それは五年後に撤去させるというお考えを持っておられるか、あるいは五年後も再度これを延長するというおつもりであるか、その点をはっきりとしていただきたいのであります。
 第二に、尖閣列島の領土権の問題について、総理並びに関係大臣の御所見を伺いたい。
 この地域につきましては、日米間にすでに合意が成立しておりますから、日米の間においては問題はないと思われます。しかしながら、台湾政府も、また中華人民共和国も、この尖閣列島が中国の領土であることを主張しております。尖閣列島の問題につきましては、いわゆる大陸だなの地下資源の問題が含まれておって、きわめて複雑な様相を呈しております。日本は、初め日本を中心とする国際的な協力によりまして尖閣列島周辺の海底地下資源開発の計画を進めておりましたが、この計画は、中華人民共和国政府の声明が出された直後放棄されました。これが偶然の一致であるか、あるいはその他何らか日中関係を考慮してなされたものであるか、その関係がはっきりわかりませんが、国民はその点について大きな疑いを持っております。尖閣列島の帰属に関して、総理はどういうようにこれをお考えであるか、どういうように処理されるおつもりであるか。私は、歴史的にまた法的に考えて、尖閣列島に対して日本が領土権を有すること、及びこの領土権は米国による施政権の中断によって絶対に影響を受けるものでないということは、これは私個人の意見というよりは、むしろ国際法学者の一致した意見でございます。台湾政府や中華人民共和国の主張に対して日米間に成立した沖繩返還協定を持ち出しましても、これはきめ手になりません。日本政府は、尖閣列島に対するわが国の領土権を、歴史的、法的に根拠を示して有効に主張する自信を持っておられるかどうか。これは沖繩県民だけではなく、国民が重大なる関心を持っているところでございますから、総理大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
 第三点は、災害問題であります。
 まず私は、最近続出しました災害のため多くのとうとい人命が犠牲になりましたことを、はなはだ遺憾に存じ、私は皆さまとともに犠牲者に弔意を表するとともに、御遺族の方々に、つつしんで同情の意を表したいのでございます。
 災害危険地域の点検はすでに終了しております。要は直ちに予算措置を講じて災害対策を具体的に実行することである。それのみが残されておると思われます。政府は、中央政府と地方自治体との協議というような、こういうような技術的なことに時間を空費することなく、直ちに予算措置を講じて災害対策を実行する気があるかどうか。GNPにおいて自由圏世界第二、しかも外貨がだぶついておりまして、外国からエコノミック・アニマルというような非難を受けておるほど、そういう経済大国日本において災害防止があと回しにされ、とうとい人命が失われるということは、何といっても政治の大きな責任であります。この点について総理の御所見を伺います。
 第四は、現在及び将来にわたる環境汚染の問題であります。
 昨年の公害国会以来、われわれといたしましては若干不満足ではありますけれども、一応法律の整備や環境庁の設置等が行なわれ、これは大きな成果であると思いますが、現在残されておるのは無過失損害賠償の法律の制定でございます。確かに法律、制度だけは相当なところに達しましたけれども、しかしながら、これを実行するところの予算というものがどうなっておるか。本年度の公害対策一般会計予算は下水道整備費を含めて八百七十七億一千万円、特別会計五十三億六千万円を合わせて、わずかに九百三十億七千万円にしかすぎない。予算の配分がこのように少ないのは、これは非常に疑問に思われるわけであります。もちろん法律整備とあわせての予算でありますから、何がしかは差し引いてみることはあるにいたしましても、明年度の予算編成にあたっては画期的な予算を組む必要があると思うのでありますが、その点について、総理は明年度予算編成に対処して公害対策関係費を大幅に増額し、徹底的な公害対策を講ずるおつもりなのかどうか、方針を明らかにしていただきたいのであります。
 第五点といたしまして、私は日中国交回復問題について総理大臣の御所見を伺います。
 総理は日中の国交回復は望ましいことであるということを認めておられますが、同時に、その実施は慎重にしなくてはいけないということを再三繰り返しておられます。ところで、私はこの慎重というのはどういう意味であるか、慎重というのはこれは現状を変えないという意味でございましょうか。あるいは、他に適当な打開策があるが、その打開策なるものはこれを慎重に行なわなくてはならないという意味でありましょうか。もし後者であるとするならば、その他に適当なる打開策というものはどういうものであるかということを具体的にお示しいただきたいのであります。総理大臣の御所見をお伺いいたします。
 最後に、私は教育問題について総理大臣並びに文部大臣の御所見を伺いたい。
 四年間という長い年月を経て、中央教育審議会の答申が発表されました。さすがにわが国における第一級の知識人から構成されている審議会委員の皆さんでありますから、こういう方々の心血を注いで作成されましたものだけあって、答申は実に理路整然、説明また丁寧懇切をきわめ、従来の中教審の答申のうち最もすぐれたものであると思います。しかしながら、私はこの答申は、現在進行しておりますところの深刻な精神革命の本質を十分に理解したものではなく、したがって、それに対処する教育理念を包蔵しているものとは思われません。ゆえに新しい時代の病根と対処する教育理念としてはきわめて価値の乏しいものであると思います。近世から現代を貫く時代精神は合理主義でありまして、したがって、教育の根幹は人間の理性を育成することに置かれておりまして、この時代が行き詰まって、現在は、いままで静かに抑制してきた人間の情念――パッションが爆発し、従来の合理主義的世界観では理解も説明もできないような事態が次から次と起きておる。これが現代の大きな悩みであります。日本を含む先進国におきまして、一見全く不可解と思われるような動きが次から次と行なわれておるのはそのためではないでしょうか。ヒッピー、ゲバ棒、ハイジャッキング、性生活の混乱、三島由紀夫割腹事件等、ことごとくが現代の病根の徴候であります。政府の教育理念というものはそのような事態の認識に基づくものでなくてはならないと思うのでありますが、総理大臣並びに文部大臣の御所見を伺いまして、私の代表質問演説を終える次第であります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(佐藤榮作君) 松下君から、参議院のあり方について、具体的な提案を交えてその信念を吐露されました。私はその多くの点について共感を覚えるものでありますが、中でも松下君が、幾多の矛盾と困難があっても、なお二院制をとるべきであると述べられた点は全く同感であります。今日、参議院のあり方についていろいろの議論は出ておりますが、それはあくまでも参議院の独自性を期待するところから発したものが主体であると考えます。かつての憲法調査会における議論も、二院制度を維持するという考え方のもとにその組織をいかにすべきかという点に論議がしぼられたと記憶しております。私は、二院制のもとで、参議院は参議院としての独自の持ち味を発揮され、衆議院と両々相まってわが国の議会民主主義が健全な発達を遂ぐることが最も望ましい姿ではないかと考えるものであります。
 そこで、具体的な議長、副議長の党籍離脱問題でありますが、このことは、院自体の問題で、さように言うであろうと言われましたが、そのとおりで、行政府の関与すべきところではありませんが、あえて私見を申し述べれば、それぞれ選ばれた方の考え方の問題ではないかと思います。要は、国会の運営が民主主義のルールのもとで円滑に行なわれるかどうかということが主眼であると思います。また、参議院から大臣を出すべきでないという御意見でありますが、広く人材を求めるという見地から申せば、選択の幅の広いほうがよいのでありまして、いずれにしても、これらのことは所属する政党の方針にも関連することであり、原則を確立しなければならない問題ではないと私は思います。ともあれ、同じ議会人として、国民の政治に対する信頼を高めるために、今後とも一そうの努力を重ねてまいりたいと思います。その意味で松下君の御自重をお祈りいたします。
 次に、沖繩問題につきましていろいろお尋ねがありました。最初予定した問題は尖閣列島の問題でありましたが、その他にも出てきたようであります。そこで、このいわゆる米軍基地をいかに今後減少さしていくか、こういう問題。これは返還後において沖繩に安全保障条約が適用され、そうして、安保の体制の中で米軍が行動すると、かように考えられますと、米軍のいままでの態様とは違った新しい拘束を受けることになります。したがいまして、米軍基地も必ず整理の方向に向かうべきものであり、ことに特殊部隊等については、私はその存在は不要だと、かように思いますので、これらの点からまず始まって、その個所も漸次減少していくと、かように期待するものであります。要は今後のわれわれの取り組み方だと思っております。
 また、VOAの問題、これは五カ年間は許すということで、それより以上にただいま延長するということは考えておりません。
 また、尖閣列島を含む平和条約第三条のすべてについて、沖繩返還協定では、わが国への施政権の返還が完了することが明確になっておるわけでありまして、この尖閣列島の領有権についてはいろいろの御懸念があるようでありますが、十分協定の中身をごらんになればその御懸念は解消すると思います。いずれにいたしましても、近く批准国会でこの問題は十分御審議をいただきたいと思います。しかし、尖閣列島といわゆる大陸だなの問題につきましては、これはまた別の問題であります。ただいま私どもも大陸だな条約に加盟しておりませんし、そういうことで、大陸だな開発については別途の関係国間の協議を必要とすると、かように考えておりますので、この点は誤解のないようにお願いをしておきます。
 次に、災害対策についていろいろお尋ねがありました。私も松下君同様、まず罹災者に対して心から弔意を表したいと思います。また、事故が再発しないように、それに対する応急処置はもちろんのこと、恒久的な処置をとれと、こういう点、あるいはまた予算的な措置を講じろというような点を特に御指摘になりましたが、いずれ詳細は建設大臣からお答えをすることにいたしまして、私は、ただいまこの問題の提起されたことについてのみお答えをしておきます。
 また、災害の原因が社会資本の欠除にあるとの御指摘でありましたが、残念ながら私もそれを否定しようとは思いません。近代国家としての立ちおくれから、わが国の社会資本の層が薄いことは事実であり、ただいま懸命にその充実につとめているところであります。今後とも最重点施策の一つとして取り組んでまいります。ただ、その財源として国際収支の黒字を回せとの御意見については、予算――まあここまで言われなかったと思いますが、予算、財政の仕組みからいって、しかく簡単な話ではありません。御要望のあった公害対策予算の充実とともに、社会資本の充実につきましても、予算編成にあたって十分配慮してまいる考えでございます。
 次に、中国問題で私が慎重に慎重にを繰り返しているので、どうもたいへん松下さんにも気に食わないようで、おしかりを受けたようでありますが、しかし、私は、問題が問題であるだけに、この点では、十分取り組む姿勢も慎重でなければならないし、結論を出すについても慎重であるのが当然ではないかと、かように思っております。国際情勢は刻々変化しております。政府はこれに柔軟に対処し、あやまちなきを期してまいる所存であります。あまり慎重に過ぎると中国問題で発言権を失うのではないかとの御注意も表明されたと思いますが、政府としては、わが国の外交にとって中国問題が最も重要な課題であるだけに、日中間の友好関係を長期的に安定したものにするためにも、諸般の情勢を十分に注視し慎重に配慮してまいりたいと思います。
 教育問題は松下君の御専門でありますが――その他も御専門かと思いますが、特に御熱心だと思いますし、今回の中教審の答申はまさしく時宜に適したものと私は考えます。
 教育理念についてはいろいろの角度から論ずることができると思います。この答申に盛られている点は、自主的、自律的に生きる力を持った国民の育成を目ざして、教育の質の改革に取り組むことが急務であるとしていることであると考えます。また答申は、このために関係者の一体となった研究、開発の努力を積み重ね、段階的に改革を推進することを施策の基調として提案しております。
 このような考え方は、一見じみではありますが、教育が真に新しい時代の要請にこたえる道であると考えますので、政府としては今後その具体化に全力をあげる方針であります。
 以上、私からのお答えは終わらしていただきます。(拍手)
   〔国務大臣西村英一君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(西村英一君) たびたび起こります災害についての御質問でございますが、去る七月五日の静岡県の大崩海岸の土砂くずれ、引き続きまして十七日から十九日にかけて兵庫県の相生を中心にした集中豪雨のための災害によりまして、多数の死者と負傷者が出ましたことは、まことに相済まないわけでありまして、私といたしましても、犠牲者の方並びに御遺族の方につつしんで御弔意を表する次第でございます。
 建設省といたしましては、従来、この種の事故を防止するために、昭和四十三年と四十五年の二回に分けまして全国的な総点検をいたしまして、集中豪雨がある場合の危険個所、集中豪雨がなくても落石等がある危険個所というふうに分けまして、国道、県道と分けまして調査を進めておるわけでございまして、一部分の個所につきましてはすでに着々としてやっておるのでございまするが、何さま非常に個所が多いわけでございまして、順次にこれを進めなければならぬのでございます。予算の点におきましても、調べてみますと、昭和四十年のこの落石事故等に使った予算は、道路関係予算のうちで防災工事として三十八億ぐらいでございましたが、今年度は百八十一億円になっておるのでございます。しかし、それは十分な予算ではございません。何さま危険個所が非常に多いのでございまするから、もっと予算の増額をしたいと、私はかように考えております。
 かように、まあたくさんの個所の復旧に相当な日時が費やされまするから、しかし、その間のこの危険防止のためには、危険個所につきましてパトロールをやる、あるいは道路の管理体制をよくする、情報網をよくして危険の防止をいたしておる次第でございまして、松下さんは復旧を急げと、もちろん急がなければなりません。しかしながら、こういう個所は主として非常な危険な個所、また、技術的にも非常にむずかしいところが多いのでございまして、先般の静岡の大崩海岸という、名それ自身が大崩海岸でございまして、非常に危険なところを道路が通っておるんです。静岡からその区間を様子を見ますと、洞門からトンネルと、もう長い間続いておるのでございまして、これに対してバイパスをつくるべくいま着手いたしておりますが、このバイパスは例の日本坂隧道、これをもう一本つくらないとバイパスができないような状況でございまして、このバイパスにつきましても、本年は三億の予算を計上してやっておる次第でございます。
 いずれにいたしましても、これから、道路のみならず、台風時期に向かいますので、災害の防除につきましては、工事を進めるとともに、体制の万全を期したいと、かように考えておる次第でございます。御了承をお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣高見三郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(高見三郎君) ただいま総理大臣からお答え申し上げたとおりでありまするが、御指名でございますので、少し補足して申し上げます。
 中教審の答申の中にも「今後の社会における人間形成の根本問題」について述べておりまするが、その中で、今後「人間の努力によって作り出された新しい環境を、人間の自由と責任においてどこまで正しく生かすことができるかは、人間自身の課題である。主体としての人間形成に問題があるときは、」、「望ましいと思われる環境」も逆の結果を来たすことすらあるという指摘をされておるのであります。ただいまの御指摘を伺いまして、これからの人間形成のあり方に、この中教審の答申も根本的な問題を提起しておると思うのであります。しかし、先生がいまおっしゃいました問題は、たとえば青年の逃避的傾向、暴力的傾向、性の乱れ、かような問題が現在の病根であるという御指摘は、まことに正鵠を得たものであると存じますし、私もこれには同感でございます。今後この問題につきましては、教育を考えまする場合に心して善処してまいりたいと存じております。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○議長(河野謙三君) 河田賢治君。
   〔河田賢治君登壇、拍手〕
#32
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、当面する内外政策の若干の重要問題について、総理の所見をただしたいと思います。
 第一に、ベトナム問題であります。総理は、昨日、衆議院でのわが党の松本議員の質問に対して、「米国のベトナムにおける軍事行動は、ベトナム政府の要請に基づく集団自衛権の行使であり、国連憲章第五十一条に基づくものだ」という考えは今日も変わりないと、重ねて答弁されました。そこで、まず最初に確かめておきたいのは、総理は、ベトナム戦争がアメリカの計画的侵略であることをみずから認めている米国国防総省秘密報告の発表された一部でも読まれたことがあるのかどうかという点であります。アメリカがベトナムに対して公然と軍事行動を開始するきっかけとなったのは、一九六四年八月トンキン湾でアメリカの駆逐艦がベトナム民主共和国の魚雷艇から攻撃されたことに対する報復だと、アメリカは発表してきましたが、これがまっかなうそであったことを国防総省報告書はみずから明らかにしています。すなわち、報告書は、「北ベトナムに対する精巧な隠密軍事作戦計画と呼ばれている計画は、一九六四年二月一日、三四A作戦計画という暗号名で開始された」と述べ、また、「この三四A作戦にはU2スパイ機による北ベトナム偵察飛行や情報収集のための北ベトナム市民の誘拐、北ベトナム領内への破壊、心理戦争班の降下、鉄道や橋を爆破するための海上からの奇襲上陸攻撃、魚雷艇による北ベトナム沿岸施設の砲撃などが含まれていた」と述べております。このように、アメリカの計画的侵略であったという事実がアメリカの国防総省自身の報告書で明らかにされている今日でも、なお総理は、このような行動が国連憲章第五十一条に基づく正当な自衛権の行使であったと言い張られるのかどうか、もう一度あらためて明確な答弁を要求するものであります。
 第二、沖繩協定に関連する問題であります。沖繩協定は、昨日わが党の松本議員も質問で明らかにしたように、危険で侵略的な米軍基地とその機能をほとんどそのまま残し、さらに強化さえしております。他方、本土においても、ベトナム戦争と深くかかわる岩国や富士などでも、米軍基地の機能や実戦に備えた演習などの強化が目立ち、第七艦隊旗艦の根拠地横須賀では、さんざん宣伝してきた基地縮小計画さえも変更して、在日米軍基地の維持がはかられております。今日、国民世論の多数は平和中立の日本を望んでおりますが、この国民の多数が、沖繩協定によって日米軍事同盟が事実上、一そう侵略的に強化され、沖繩と本土をあげてアメリカの自由出撃基地にされるのではないかと心配している根拠は十分にあるわけであります。将来、アジアでまたどんな犯罪的行為を引き起こすかもしれない米国軍隊を沖繩や本土に居すわりさせることは、わが国はもちろん、極東の平和と安全にも重大な脅威をもたらすものであります。一体総理は、今日に至っても、米軍の存在が極東の安全の保障だと本気でお考えになるのか、国防総省報告を踏まえた上で、いま一度明確にお答えをいただきたい。
 第三は、中国問題についてであります。総理は昨日、わが党の松下議員の「たれが中国人民を代表する正統政府であると思うか、台湾の蒋介石政権を中国の正統政府であるとしてきた従来の立場をなお固執するのか」との質問に対して、「台湾の中華民国政府を、中国を代表する唯一の正統政府とする立場は変わらない」と総理は明言されました。総理は、このような立場を固執しながら、所信表明では、中華人民共和国政府との間に関係改善の話し合いが発展することを期待すると述べています。
 そこでお尋ねするわけですが、まず台湾の蒋政権を中国を代表する唯一の正統政府とする総理は、それでは中華人民共和国政府はどこの国を代表する政府と考えているのか、お聞きいたします。
 次に、台湾の蒋政権が中国を代表する唯一の正統政府とする立場を固執し、日華条約を締結したことで日中関係は終了しているという総理の論理からすれば、日中関係については、もはやなすべきことは何も残っていないと言わざるを得ません。総理は、中華人民共和国との間にどのような関係を持とうと考えておられるのか、論理的にも明確なお答えをいただきたいのであります。
 第四に経済問題、特に、当面する円対策を中心とする日米経済関係と国民生活への影響の問題についてであります。
 アメリカは現在、アメリカ経済の直面する困難は日本のせいだとする不当な口実をつけて、わが国に貿易、資本の全面的自由化、非関税障壁の撤廃、さらには円切り上げなど、わが国農業、中小企業などに重大な打撃を与える措置を一方的に迫っているのであります。しかも、沖繩協定に返還の期日が明記されていない点を利用して、わが国の譲歩が不徹底な場合はその解決策が政治的分野に持ち込まれると、協定批准にからめて、佐藤政府の大幅な経済的譲歩を六月の日米財界人会議の共同声明などで要求していることはまことに重大と言わねばなりません。しかるに、総理は、こうした不当な圧力に屈し、大局的友好関係のためと称して、繊維自主規制に引き続き円対策八項目を打ち出し、協定批准までに早期断行をはかることをレアード長官に確約しました。このことは、度はずれの追随的な態度と断ぜざるを得ないのであります。このような姿勢では、八項目のあとに円切り上げ要求をのまされない保証は何もないと考えるが、総理は、円切り上げを絶対に行なわないと国民の前に明言する用意があるかどうか、まず伺いたいのであります。
 さらにアメリカ側は、自国の失業とインフレ、ドル危機などの経済困難の改善に、わが国も共同の責任を負うべきだと言わぬばかりの主張を行なっているのであるが、総理は、このような言い分を正当だと考えられるのかどうか。もし総理が、ドル危機が積年の犯罪的ベトナム侵略に根源があることを正直に認められるなら、理不尽な要求に追随することなく、破綻に瀕したベトナム侵略を即時停止し、アメリカみずからの責任でドル危機を解決する道に踏み出すよう、ニクソン大統領に迫るべきだと考えるが、どうか、明確な答弁を求めるものであります。
 次にお尋ねしたい問題は、いわゆる円対策八項目の及ぼす国民生活、とりわけ農業への影響の問題であります。総理は、参議院選挙が終わるやいなや、みずから裁断を下して、果樹農業に大打撃をもたらすグレープフルーツの自由化を断行し、続いて九月を目途に、豚肉をはじめ十二品目の農産物自由化を決定したのであります。さらに十月以降、牛肉、果汁、オレンジなど、年度内七品目の自由化が検討され、これらが実施されるに至っては、もはや、日本農業をまる裸にする暴挙と言わざるを得ないのであります。昨年来、米価据え置きと米作転換の強制で営農の展望を奪われ、二十数名の自殺者を出すまでに追い詰められている農民に、全面自由化にもひとしい追い打ちをかけることが許されるのであれば、それは、いま、財界を中心に台頭しつつある日本農業の安楽死論の方向に大きく道を開くものとならざるを得ないのであります。もし、そうでない、と言うのであれば、総理はどのような対策をもって自由化に対処されようとするのか、納得のいく答弁を求めるものであります。
 また、総理は所信表明において、一言半句も農民の不安にこたえようとされなかったが、総理の言う低生産性農業の克服はもとより、おもな農産物を安定的に供給できる農業を自主的に発展させようと本気で考えるならば、わが国農業の自主的発展を阻害する農産物の輸入を制限するとともに、必要な価格保障制度の整備を行なって、米以外の農産物も安心してつくれるようにすることがぜひとも必要だと考えますが、どうか、総理の所見を承りたいと思います。
 さらに、私は、こうした政府の円対策が、ほかならぬ日米共同声明にうたわれた対米ドル協力と、アメリカの肩がわりを名とする帝国主義的援助の強化をはかるものにすぎないことを指摘し、国民生活優先、農業、中小企業、社会保障の抜本的強化と、日本経済の自主的、平和的な発展の道に根本的な転換をはかるよう要求して、総理の見解をただすものであります。
 最後に、参議院地方区議員定数の不均衡の是正について、一言触れたいと思います。
 今回の参議院選挙でも、ただいまも指摘されたように、東京地方区で六十四万票を得た候補者が落選し、高知県では十二万八千票の候補が当選するなど、大都市の有権者は、選挙という重大な国民主権の行使を一部他県の場合の五分の一に制約されている問題であります。だれの目にも不合理なこの実態は、すでに選挙のたびごとに問題になり、議員定数の是正は広範な世論の強い要求となり、第六次選挙制度審議会からも答申が出され、一応、総理も公約せざるを得なかったものであります。ところが政府は、公約を実施しなかったのみか、参議院選挙後、定数是正とは全く次元の異なる全国区制度の検討という問題を抱き合わせにして持ち出し、定数是正をたな上げにしようとしております。これでは、党利党略のために議会制民主主義を踏みにじり、七千万有権者を愚弄するものであります。
 私は、政府が直ちに次の通常国会に法案を提出し、定数是正を実施することを要求するとともに、総理にその意思があるかどうかただして、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 いわゆる米国防総省の秘密報告というものを読んだかどうかということですが、私は新聞で読んだ程度であります。それより以上にはございません。おそらく皆さんも同様だろうと思います。しかし、新聞で読んだ程度で、昨日、共産党の松本議員に衆議院でお答えしたばかりであります。したがいまして、この際も、同じような答弁になることを御了承いただきます。もっとはっきり申しますと、ベトナムにおける米国の軍事行動は、ベトナム政府の要請に基づく集団自衛権の行使であり、国連憲章第五十一条に基づくものである旨米政府は説明しております。この点については、政府もそのように了解しております。御指摘になりました点については、新聞で読んだ程度でありますから、それは御了承いただきたいと思います。
 次に、米軍の存在が極東の安全保障に必要だと考えるかとの御質問でありますが、政府としては、安保条約に基づいて米軍がわが国において施設・区域の使用を認められて駐留していることが、現在の国際情勢下において同条約の目的とするわが国の安全確保のために必要な抑止力を構成していると考えるものであります。極東の安全なくしてわが国の安全を保ち得ないことは、いままでもたびたび申し上げたとおりであります。
 次に、中国問題については、しばしば申し述べているとおりに、国民政府、北京政府、ともに中国の正統政府であることを主張していることは御承知のとおりであります。しかも、この二つともいずれもが正統政府であり、同時に、中国は一つだ、このことを強く主張しておるわけであります。この問題は中国自身の問題であり、当事者間において円満な解決がはかられることが最も望ましいところであります。政府は、一九五二年台湾の国民政府との間に日華平和条約を締結し、正常な国交関係を結んでおります。しかして、国民政府の支配は大陸に及ばず、北京政府の支配は台湾に及んでいないことも政府は十分認識しているところであります。
 政府としては、日米間の経済関係が沖繩返還問題に悪影響を及ぼすとは考えておりません。現にロジャーズ国務長官も六月十五日の記者会見において、返還協定の上院承認を得るに際して経済問題が障害になるとは思わない旨述べていることは御承知のとおりであります。現在、日米経済関係には若干の摩擦が生じていることは事実でありますが、かかる摩擦については相互信頼と互恵互助の精神に基づいて解決するよう努力しております。
 御指摘の貿易自由化、関税引き下げ等の諸問題に関して申せば、政府は、内外の諸情勢を勘案しつつ自主的に政策を決定、実施している次第であります。
 アメリカのドル問題については、その原因として同国内外の諸要因があげられており、同国政府においてもこれが解決に努力していると承知しております。各国においても、ドルをはじめとする国際通貨の安定をはかることは国際経済の発展に不可欠であるとの見地から、この方向で努力しているところであります。
 御指摘の米国のドル危機とベトナム戦争の関連については、政府としての見解は差し控えたいと思います。(「なぜ差し控えるのか」と呼ぶ者あり)差し控えるのは、これは米国の問題だということであります。
 次に、農産物の自由化でありますが、これは決して河田君の言われるような円対策のために進めるものではありません。自由化は、いまや国際社会に対する日本経済の当然の責務であることをよく御理解いただきたいと思います。もちろん、日本農業が総合農政の展開期にあることを十分考慮し、その自由化にあたっては十分の対策を講じてまいる決意であり、農業の安定的成長は絶対に確保してまいります。また、輸入をきびしく制限するという河田君の主張も、およそ世界の大勢に逆行するものと言わざるを得ません。世界経済と孤立して日本経済の繁栄はあり得ないことを銘記していただきたいと思います。単に価格政策によるだけでなく、生産流通のすべての面にわたって日本農業の発展をはかってまいる決意であることを、重ねて申し上げておきます。
 次に、円対策が対米ドル協力と米国の肩がわり経済進出であるとの御意見も、ものの見方の立脚点を全く異にするとの感を禁じ得ません。私は国民生活の質的充実をはかる反面、開発途上国の発展のためには、二枚の着物を一枚にしてでも積極的な経済技術協力を進めていくのがわが国のとるべき態度であり、世界の平和にも大きく寄与するゆえんであると信じております。
 円切り上げにつきましては、先ほど公明党の田代君にお答えいたしましたとおり、円の切り上げを実施するつもりのないことを重ねて申し上げておきます。
 最後に、議員定数の不均衡是正の問題について、これまた公明党の田代君にお答えしたとおりでありますから、省略させていただきます。
 以上で答弁を終わります。(拍手)
#34
○議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#35
○議長(河野謙三君) 日程第二、常任委員の選任
 本日、議長は常任委員全員の辞任を許可いたしました。
 これより常任委員の選任を行ないます。
 常任委員の選任は、本院規則第三十条により、すべて議長の指名によることとなっております。
 議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり常任委員を指名いたします。
   〔常任委員の氏名は末尾に掲載〕
     ―――――・―――――
#36
○議長(河野謙三君) 日程第三、常任委員長の選挙。
 本日、常任委員全員の辞任を許可いたしましたため、常任委員長が全員欠員となりました。
 これより全常任委員長の選挙を行ないます。
#37
○藤田正明君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
#38
○瀬谷英行君 私は、ただいまの藤田君の動議に賛成いたします。
#39
○議長(河野謙三君) 藤田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、内閣委員長に田口長治郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 地方行政委員長に若林正武君を指名いたします。
   〔拍手〕
 法務委員長に阿部憲一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 外務委員長に松平勇雄君を指名いたします。
   〔拍手〕
 大蔵委員長に柴田栄君を指名いたします。
   〔拍手〕
 文教委員長に高橋文五郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 社会労働委員長に中村英男君を指名いたします。
   〔拍手〕
 農林水産委員長に河口陽一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 商工委員長に川上為治君を指名いたします。
   〔拍手〕
 運輸委員長に鬼丸勝之君を指名いたします。
   〔拍手〕
 逓信委員長に横川正市君を指名いたします。
   〔拍手〕
 建設委員長に小林武君を指名いたします。
   〔拍手〕
 予算委員長に古池信三君を指名いたします。
   〔拍手〕
 決算委員長に足鹿覺君を指名いたします。
   〔拍手〕
 議院運営委員長に鍋島直紹君を指名いたします。
   〔拍手〕
 懲罰委員長に山田徹一君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#41
○議長(河野謙三君) この際、特別委員会の設置につき、おはかりいたします。
 災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる災害対策特別委員会を、
 公害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる公害対策特別委員会を、
 交通安全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる交通安全対策特別委員会を、
 当面の物価等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる物価等対策特別委員会を、
 公職選挙法改正に関する調査のため、委員二十名からなる公職選挙法改正に関する特別委員会を、
 沖繩及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十五名からなる沖繩及び北方問題に関する特別委員会を、
 また、科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる科学技術振興対策特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 よって、災害対策特別委員会外六特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条により、議長は議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
   〔特別委員の氏名は末尾に掲載〕
     ―――――・―――――
#43
○議長(河野謙三君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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