くにさくロゴ
1971/07/23 第66回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第066回国会 物価問題等に関する特別委員会 第2号
姉妹サイト
 
1971/07/23 第66回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第066回国会 物価問題等に関する特別委員会 第2号

#1
第066回国会 物価問題等に関する特別委員会 第2号
昭和四十六年七月二十三日(金曜日)
    午前十時九分開議
 出席委員
   委員長 小林  進君
   理事 青木 正久君 理事 竹内 黎一君
   理事 武藤 嘉文君 理事 山口シヅエ君
   理事 武部  文君 理事 有島 重武君
   理事 和田 耕作君
      江藤 隆美君    笹山茂太郎君
      向山 一人君    田中 恒利君
      渡部 通子君    栗山 礼行君
      谷口善太郎君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      木村 俊夫君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     谷村  裕君
        経済企画政務次
        官       木部 佳昭君
 委員外の出席者
        経済企画庁国民
        生活局長    宮崎  仁君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 物価問題等に関する件
     ――――◇―――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 この際、閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。
 本委員会といたしましては、閉会中もなお審査を行なうため、物価問題等に関する件につきまして、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、おはかりいたします。
 ただいま申し出ることに決しました閉会中審査案件が付託になり、現地調査の必要が生じました場合には、議長に対し委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、派遣委員の氏名、員数、派遣地、期間その他所要の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。
     ――――◇―――――
#6
○小林委員長 物価問題等に関する件について調査を進めます。
 この際、木村経済企画庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。経済企画庁長官木村俊夫君。
#7
○木村国務大臣 物価問題等に関する特別委員会が開かれるにあたりまして、物価対策及び国民生活行政の基本姿勢についての所信の一端を申し述べまして、本委員会委員各位の御理解と御協力を得たいと思います。
 わが国経済は、昨年後半以降景気の後退局面に入りまして、いまだにこれを脱し切っておりません。
 このような景気情勢を反映いたしまして、最近の卸売り物価は、ほぼ安定的に推移いたしておりますが、消費者物価は、依然として根強い上昇基調にあります。
 すなわち、本年に入りまして、季節商品が全体としてやや落ちつきを示しているものの、サービス料金、中小企業製品等の値上がりはなお顕著でございまして、消費者物価の先行きは必ずしも楽観を許さない情勢でございます。
 申すまでもなく、物価の安定は国民の最大の関心事でありますので、私は、物価の安定を経済運営の最重点課題の一つとして、格段の努力を傾注してまいる決意でございます。
 長期的に物価を安定させる基盤を形成するためには、総需要の適正な管理を通じまして、わが国経済を安定成長の路線に定着させることが基本でございます。同時に、最近における物価の上昇が、経済の急激な発展に伴う経済各部門の生産性上昇格差に起因する面がきわめて大きいことにかんがみまして、農業、中小企業、流通サービス部門の低生産性分野につきましては、構造改善を積極的に推進してまいらなければならないと考えます。
 特に、国民の日常生活に大きな影響のある生鮮食料品につきましては、長期安定的な生産体制の確立と流通機構の改善を通じまして、その価格の長期的安定のための諸施策を一段と強化してまいる所存でございます。
 また、輸入の自由化、関税率の引き下げ等の輸入対策は、これまでも物価対策の重要な柱の一つでありましたが、特に今日のわが国の国際収支の状況は、これらの施策を一そう意欲的にかつ積極的に展開していくことを可能ならしめているのでございます。したがいまして、政府といたしましては、物価対策の観点からも、過般決定を見ました八項目にわたる対外経済政策中の輸入政策を思い切って推進していく考えでございます。
 さらに、公共料金につきましては、今後ともその引き上げを極力抑制することを原則としつつ、企業等の合理化を進めるとともに、合理的な公共料金体系のあり方につきましても十分検討を加え、物価安定の確保のために最大限の努力を払ってまいる所存でございます。
 また、価格が競争機能を通じ適正に形成されることは、物価安定上きわめて有効でありますので、独占禁止法の厳格な運用、事業許認可制の再検討等の施策を引き続き充実させていく考えでございます。
 このほか、わが国物価の長期的安定を確保していくためには、工業製品の寡占的価格形成の問題や賃金問題等につきまして検討を進めていくことが必要と思われますので、各種審議会等の場も活用しつつ、これらの問題にかかる実態の究明とわが国経済社会に適合する有効な施策の樹立につとめてまいる所存でございます。
 物価政策と並びまして国民生活にとって重要な消費者行政につきましては、消費者保護基本法の精神に従いまして、各般の施策を鋭意進めてきておりますが、有害食品、虚偽表示等の事例はあとを断たない状況にあります。したがいまして、今後とも有害食品の防止、規格及び表示の適正化、あるいは消費生活にとりまして必要な情報の提供等各般の施策を強力に推進してまいりたいと思います。
 また、国民の日常生活上の諸問題につきまして、円滑な情報、意見の交流をはかりますため、昨年十月に国民生活センターを発足させましたが、一応準備期間も終わりまして、その活動も徐々に本格化してまいっております。政府といたしましても、今後その充実をはかりまして、国民との対話の場を確保していく考えであります。
 以上、私は、物価対策や生活行政について所信の一端を申し述べた次第でありますが、それらの諸施策を総合的立場から着実に実行することが何よりも肝要と考えております。本委員会及び委員各位におかれましても、御支援と御鞭撻を賜わりますようさらにお願いいたす次第でございます。
#8
○小林委員長 次に、経済企画政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。木部経済企画政務次官。
#9
○木部政府委員 このたび経済企画政務次官を拝命いたしました木部佳昭であります。
 諸先生、委員の方々の旧に倍します御支援、御鞭撻を切にお願い申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきます。(拍手)
  〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕
    ―――――――――――――
#10
○竹内委員長代理 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。武部文君。
#11
○武部委員 ただいま企画庁長官から物価政策についての御見解を承ったわけでありますが、この機会に、限られた時間でありますが、長官から物価政策の基本的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 まず第一は、去年の物価の上昇が、政府の見通しとたいへん狂った。別に去年ばかりじゃありませんが、ほとんど見通しが食い違っておるのであります。去年は四・八%の消費者物価の上昇という予定でありましたが、結果的には七・三%になりました。本年度は、かつてない五・五%という数字を目標といたしておりますが、今日の段階で私どもは、なまはんかなことで五・五というような数字が保てるというふうには考えておりません。特に、この四月、五月、六月の消費者物価の上昇率を見ますと、昨年と比べますと数字は若干下がっておるかのように見えますが、決してそうではない。総理府の発表によりますと、この四月は六・二%、五月が六・七%であります。六月はまだ出ておりませんが、東京都の六月の上昇率は八・一%であります。ただいまごあいさつがございました中に、季節商品がやや落ちつきを示しておる、このように言われておりますが、確かに四月、五月では、季節商品が前年に比べましてマイナスを示しておりましたが、東京都では、八月に急に今度は五%も上がっておるのであります。
 こういうことを考えると、はたして佐藤内閣が示した五・五%というようなものが政府の思惑どおりいくのかということについて、たいへん大きな疑問を持つのであります。一体長官は、この五・五%の問題についてどのようにお考えになっておるか、これを最初にお伺いいたします。
#12
○木村国務大臣 いま武部委員の御指摘のとおり、昨年の上昇率に対する政府の見通しが非常に狂いましたことは事実でございます。ただいまのところ、季節商品については、野菜その他を中心としてやや落ちつきを見せておりますが、四月に教育関係費とかあるいは新聞代等の値上がりがございましたために、かなり高くなっております。ただ、私どもがおそれますのは、この季節商品のいまの落ちつきが、秋口にかけてどういうようなことになるのか、その点がいまのところ最も気がかりでございます。御承知のとおり、農林省におきまして、今度野菜対策について非常な決意をもって取り組んでおることでもございます。また、今回政府で決定いたしました八項目の実施についての、輸入の自由化あるいは関税の引き下げ等の実施を通じまして、季節商品に対する影響も含めて、極力実効的な手を打っていきたい、こう考えております。
 結論的に申し上げれば、御指摘のとおり、現在の五・五%の物価の見通しについては、たいへんいろいろな困難な条件がございますけれども、いま申し上げたようなことで、政府といたしましては、あらゆる政策努力を通じまして極力この線に近づけるように、この点に押えたい、こういう決意でございます。
#13
○武部委員 これはいずれまた、時間をかけてゆっくり討議をいたさなければならぬと思っております。なぜならば、いままで政府の目標は全部狂っておるわけであります。そういう点から、私どもは五・五%というような異常な目標であるけれども、それ以上にたいへんな事態になるのではないか、こういう心配をするがゆえに、そのようなことを申し上げたわけであります。
 そこで、いま長官の御発言の中に、またあいさつの中にございました八項目の問題であります。
 この八項目の問題については、一つ一つ項目について申し上げませんが、要するところ、この八項目の対外経済政策というのは、消費を盛んにして輸入をふやす、財政支出を大幅にふやして景気を押し上げる、そういう政策だといって間違いないと思うのです。そうなれば当然これはインフレを促進する、そういうふうに私ども思うわけです。そうなった場合、当然物価への影響というものがあると思うのでありますが、この八項目の対外経済政策というものは物価にどのような影響を与えるのか、このことについてどのようにお考えでしょうか。
#14
○木村国務大臣 いま申されましたとおり、八項目の内容、いろいろ相対立する要素を含んでおります。したがいまして、私ども、物価安定の長期的な確保という面に立ちますと、やはりいまの経済景況は非常に不安定な様相を呈しておりますので、そういう意味におきまして、やはり経済の長期安定ということが必要である、こういう観点で、この八項目の実施も行なわなければならぬと思います。ただ、その反面、景気対策のゆえに、これが必要以上に刺激的な要素となりまして、これが物価に悪影響をもたらすということは、これは厳に戒めなければなりませんので、そういう相対立要素を経済運営の中でどういうふうに調整していくか、これが最大眼目であろうと思います。したがいまして、八項目の中の輸入自由化あるいは関税引き下げあるいは非関税障壁の撤廃等、これが物価に及ぼす積極的要素をできるだけひとつこれは延ばしまして、反面、景気浮揚対策から生ずる物価への刺激、こういうものを厳重にひとつ私どもは戒心しながら経済運営をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
#15
○武部委員 いまお考えを聞いたわけでありますが、私どもは、この八項目の対外経済政策というものは、インフレを促進して物価に影響を与えるというふうに見ておるわけであります。しかし、現実にはそのようなことのないようにしたいという政府側の答弁でありますが、一応答弁だけ了として、いずれまた論議をいたしたいと思います。
 次に、当面、一体この物価上昇をどうしたら食いとめることができるのか、こういう点についてお伺いをするわけでありますが、いままで何回か、このことについてやりとりをいたしました。総理は蛮勇をふるうとか、物価問題は実行あるのみだとか、いろいろなことを言われておりますが、現実には成果があがっていない。たいへんな物価上昇が続いておるわけであります。そこで、一体いま政府に何ができるのか、こういう点について論議をいたしたいわけであります。
 去年もこの問題についてやり合ったときに、さしむき政府の手でいま直ちにやれるものは公共料金の抑制ではないか、こういうことが論議をされたわけであります。去年の暮れ、佐藤内閣は公共料金の一年間ストップということを表明されました。しかし、この一年間ストップという政策も、その後、一年間公共料金を極力抑制するというふうに変わってまいったのであります。変わってきたとたんに、郵便料金の値上げの法律が出、さらには電話の設備料の値上げ、電報料の大幅な値上げ、こういうものがメジロ押しに出てまいりました。加えて今度は、参議院選挙の終わりました六月二十九日、すでに新聞でも報じられておりますように、運輸省は四つの値上げ申請を認めたわけであります。これは御承知のような定期便以外の区域トラック運賃、それから港湾運送料金、航空料の往復割引の廃止、それから大阪の無線タクシーの割り増し料の引き上げ、この四つを認可いたしたのであります。
 少なくともこの公共料金問題は、去年あれだけ一年間ストップの問題が出、あるいはそれがまた抑制に変わり、そうして今度は参議院選挙が済むと同時に、直ちに運輸省はこのように四つの問題を認可する、こういうふうになってきておるのであります。したがって私どもは、この公共料金の問題は、先ほど申し上げるように、政府がやろうと思えばできることだ、こういうことを指摘してきたところでありますが、長官は新しく就任をされて、私どもが指摘をするようにいま直ちにできる公共料金のストップの問題について、一体どのようにお考えになるか、これをひとつ伺いたい。
#16
○木村国務大臣 昨年十二月でしたか、物価対策閣僚協議会で、公共料金をきびしく抑制するという方針を決定いたしました。その後、いま御指摘のような調整というような形における公共料金の改定が行なわれておることは事実でございます。
 しかしながら、私が考えますのに、一年間ストップするというような形における公共料金の抑制が、企業そのものの合理的な採算からしてはたして長期的に有効なものかどうかということについては、また別の面から考えなければならぬ点があると思います。したがいまして、私の考え方といたしましては、公共料金の抑制につきましては、ただ単に一年間ストップというようなことでなしに、その企業体の合理化を極力いたしまして、その上に立って合理的に判断をいたしました上で、もしやむを得ない部分があれば、よくこの点を国民に納得していただいて、また、あわせてこの際、現在の国力等から申しまして資源の配分等も十分財政的措置の中に考えた上で、合理的な公共料金の抑制をやるべきだ、こういう基本的な考えを持っております。
#17
○武部委員 この公共料金の一年間ストップの問題は、かつてここでも論議をいたしたことがございます。確かに一年間ストップをしても、その間に何ら具体的な政策を施さなければ、解除したとたんにまたはね上がる。それは三十九年の一年間ストップの実績が明確にこれを物語っておるのでありまして、そういう点は私どもも承知をいたしております。ただ、いま長官のお話のように、企業体の合理化を進めるということをおっしゃるわけですが、これは言うべくしてなかなかむずかしい。あとで申し上げますが、この公共企業体の合理化というのは非常にむずかしいのであります。そういうものに手をつけて、一体この問題が公共料金とどういう関係を持つのか。これは私は、非常に短い時間で解決できる問題ではないと思うのです。
 そこで申し上げたいのは、そういうような長期的なものではなしに、いまさしむきできる公共料金のストップを政府はここで決断をし、その反面、いまおっしゃったようなことに全精力をあげて取り組むという態度でなければ、物価の上昇を食いとめることができないのじゃないか、こういう点を私どもは指摘をするわけです。
 端的に例をいえば、運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会、これが何回かの会合を続けておるようでありますが、今月中に答申を出す、その答申の試案ともいうべきものが発表されておりますが、これはもう明らかに、料金の抑制策は再検討すべきだということをいっておるのであります。もう運輸大臣の諮問機関はそのように、料金の抑制策はだめだ、こういうことをいって、おそらく今月中にそのような態度を表明するかもしれません。あるいは、昨年この国会を通過をいたしました国鉄財政再建法、これはご承知のとおり、十年間に三回の値上げを認めておるのであります。そして、いま国鉄当局は値上げについていろいろと検討しておるということがいわれております。おそらく一〇%をこすのではないか。こういうようなことがすでにやられておる。
 こういう段階で、いま言われるような非常にまちまちな各企業体の合理化というものが、言うべくしてできるだろうか、こういうふうに私どもは考えるわけでありまして、少なくとも佐藤さんがあれだけのことを大みえを切って言われるならば、公共料金は、佐藤内閣の手でいまできることでありますから、それをやって、その反面、いま申し上げたような具体的な政策を並行してやるならば、物価の上昇にある程度の歯どめを加えることができるのではないだろうかということを私は考えるわけでありまして、この点についてさらにお伺いをいたしたいのであります。
 同時に、そうした公共料金の決定のあり方についても、たいへん大きな問題が残っております。たとえば運輸審議会、前回の国鉄運賃の値上げのときの運輸審議会の決定ぶり等を見ましても、全部きめてしまってから公聴会を開くとか、そういう決定の経過というものが、国民にはまことに不可解であります。こういう公共料金の決定等の問題についてもどのようにお考えになっておるのか。
 また、時間の関係で先を急ぎますが、今回就任をされました長官が、新聞やテレビで消費者の代表と対談をされておるようでありますが、その内容を聞いておりますと、経済企画庁は調整役だ。したがって、なかなかどんずばりと、ほかの役所のように禁止をしたりというようなことができにくい。――確かにそういう面はあろうと思います。しかし、少なくとも国民は、経済企画庁長官に対して大きな期待を持っておるわけであります。こういう点で、先ほども申し上げましたような公共料金の問題について、もう一回ひとつ御見解を承りたいと思います。
#18
○木村国務大臣 いま申されましたとおり、公共料金、これは最も政府がみずからでき得る物価対策でございます。そういう意味におきまして、先ほど申し上げました基本的原理には立ちますけれども、それが一般の消費者物価に及ぼす影響はきわめて大きいと思います。いま申されましたような決意でもって公共料金の抑制については取り組む所存でございますが、私は、先ほど申し上げました中の企業の合理化努力、これは当然やらなければなりませんが、従来とやや違った行政と申しますのは、私は、企業努力に対する、あるいは公共料金抑制の段階における財政的関与といいますか、そういう面も相当考えられると思いますし、また、今後の公共料金の抑制段階におきまして、いまご指摘のありましたとおり、もうすでに主管省でほとんど決定に近い段階で調整に入るということでなしに、もっと前広に、ある意味において、ことばは当たらないかもしれませんが、ある意味で介入というようなこともしなければならぬと思います。そういう意味におきまして、もうすでに公共料金がほとんど主管省においてきまる前に、経済企画庁といたしましても前広に調整権限を発動したい、こういうような決意でおります。
#19
○竹内委員長代理 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#20
○竹内委員長代理 速記を起こして。
 有島重武君。
#21
○有島委員 ただいま話題になっておりました公共料金の問題でございますが、特にこの点だけご質問さしていただきたいと思います。
 ここで長官おっしゃいましたのは、今後ともその引き上げを極力抑制する、あるいは合理的な公共料金のあり方について検討を加えるとおっしゃいますけれども、こういったことは、私どもたびたび伺っておることなので、特に六十五国会におきましては、佐藤総理の施政方針の演説の中でもって「主要な公共料金を据え置く」「きめのこまかい消費者行政を行なって、一段と国民生活の安定、向上に努力いたします。」こんなふうにたびたび述べていらっしゃるわけですね。
 いま武部先生からもお話がありましたように、この前の参議院選挙が六月二十七日に終わりまして以来、もう運輸関係、港湾運送あるいは無線タクシーの問題、あるいは区域トラックですか、定期航空往復割引の廃止ですか、そうした問題、そのほかに郵便料金が上がっておるわけでございます。そのほかに保険医の辞退、こうしたことでもって国民生活に相当の影響を与える。こういったことについて、国民として一体どこに訴えて、どうしていいか、そういう状態であるわけであります。それをいつまでもまた同じようなことを言っておられることについては、いま武部委員からもご指摘ございましたけれども、私ども全く同感でございまして、ことにこの郵便料金につきまして、今度三種、四種について――これはお時間がないようですから、郵政省のほうからもひとつお話を聞こうと思っておりましたけれども、それは省略いたします。特に三種、百グラム三円というのが五十グラム六円になった。これは百グラム三円が百グラム六円になっても、一〇〇%の値上がりでございます。それで、五十グラムが六円になったということは、普通の新聞なんかですと、大体百五十グラムより少し上にいくわけでございます。あるいは一二ページ建てであっても七十五グラムだ。これは三円のものが七円になっていくわけです。これも昭和四十六年一月二十七日の参議院の本会議のときに、田代富士男議員の質問に対して総理が、若干の料金の値上げは不可避である、こう言われたのです。若干というのです。それから、公共料金抑制の大方針といたしまして、三種、四種の料金についてもできる限り小幅にとどめる、そう言われました。
 大臣に伺いたいのでございますが、そうした一〇〇%以上値上げ、これを小幅と御判断になるのかどうか、そういった点をお伺いしておきたいわけであります。
#22
○木村国務大臣 私は、まだなれませんので、非常に具体的なことはお答えしかねますが、しかしながら、その郵便料金の問題につきましては、その当時の、昨年十二月の物価対策閣僚協議会で、もうすでに大体の方針、計画を決定いたしました。第三種、第四種は引き上げは避けられないが、国民生活に最も関係のある第一種は来年までとにかく据え置こうということに決定した上での実施だと考えております。
 いま御指摘の小幅かどうか。これは、おそらく総理の気持ちといたしましては、郵政審議会からの答申の幅に比べると相当抑制し得たという考えからそういう答弁がなされておる、こう私は考えております。
#23
○有島委員 きめのこまかいとか小幅とか、そういうことを言われながら、さらに四種のほうは一五〇%ぐらいのことになっております。この物価にほんとうに取り組んでいかれるという姿勢に、もう国民は非常に疑惑というか、ほとんど絶望的になっているわけです。特に今度は、大臣は外務のほうも担当していらっしゃるようでございますが、外政のほうはかなりゆさぶられている状態でございますが、せめて内政についてはがっちりとやっていただきたい、このことを要望申し上げたいと思うわけでございます。時間がないようなので、これだけ先にさせていただきたいと思います。
#24
○木村国務大臣 全くおことばのとおりでございまして、私といたしましては、この経済企画庁に在任中にできるだけの誠意をもって国民にこたえたい、こういう決意でおります。
#25
○有島委員 物価の問題と関連いたしまして国民生活の経済的側面、これはたいへんな問題でございますが、いま非常に騒がれております医療費の問題でございます。これは健保の抜本改正ということと関連があるので、この値上げの困果関係ということについては、この物価特別委員会でもって扱うというのは少し不適当かと思いますので、物価の一側面に限って、いまここでもって厚生省とそれから公正取引委員会に質問をさしてもらいたいと思います。
 健康保険組合その他から、今回日本医師会のとりました辞退の指示、初診料、文書料等の措置は独占禁止法の違反ではないか、そういったような訴えがなされた。これらにつきまして公正取引委員会では、独占禁止法の第二条にいうその他の事業者ということに医師が該当するかしないかということについて御検討なさるように伺っておりましたけれども、その大体の検討結果について、すでに七月中旬でございましたか発表なさったようでございました。このことについて詳しくお伺いしたいと思います。
#26
○谷村政府委員 最初に申し上げておきますが、七月の中旬に記者会見が定例でございまして、その際、ただいまお尋ねのような質問が記者団から出たわけでございますけれでも、私どもといたしましては、委員会の正式な考え方を、その際、こうであるというふうにして発表したという形では実はございません。その際、記者団の質問に答えて、問題がどこにあるかという、そういう意味での説明をいたしたという事実はございます。したがって、当委員会といたしましては、委員会としての一つの結論なり何なりを、今回の各方面からの、たとえば独禁法違反ではないかというような申告がございますが、そういう申告に対しての扱い方をきめたという事実はまずございません。それを最初に申し上げておきます。
 それから第二に、いままでの公正取引委員会としての医師についての扱いというものがどうであったかということは、過去、たとえば昭和二十二年ごろの事業者団体法というものができたときにおける医師の扱いについてどういう議論が行なわれたかという事実、これはございます。その過去の委員会においてとった考え方というものは、自由業は、たとえば医師のようなものは、独禁法において、その法域として取り締まるべき対象としての事業者には直ちには該当しない、そういう考え方が過去においてはとられております。
 そして第三番目に、私どもは、現在の時点において、医師その他一般的にいう自由職業の方々の扱いを独禁法の目的に照らしてどう考えるべきかということは、まだ検討をしておる、そういう段階でございます。
#27
○有島委員 検討中であるというお話でございますが、「公正取引」というこの雑誌なんですけれども、昭和四十五年の三月号でございます。当然委員長は御承知だと思いますけれども、慶応の法学部の金子先生という方の記事を私は見ましたが、一般に自由業といわれるものの中に医師を入れるかどうか、それでもって、この中では「医師、弁護士、会計士、税理士など一般消費者に対して役務の提供を行なうものは、経済的利益の取引を行なうものであり、それをめぐって競争が行なわれているとみることができよう。したがってこれらの者は本法にいう事業者とみてよいと思われる。」こうしたようなことがございますね。
 私、医療というものは、本来はそうした経済ペースのものであってはならない。むしろほんとうに人と人とのつながりといいますか、医学の倫理的側面と申しますか、こうしたものが一番の根本になるべきものである。これは常識であろうかと思いますけれども、現実にいま騒がれておりますこと、あるいは私どもが実際日常経験しておりますところは、経済的側面が非常に大きくなっておる。ここで医療ということを経済問題として取り扱ってしまうということ、これは行き過ぎでちるとは思いますけれども、医療の中の経済的側面、特に国民生活に密着した医療費の側面を、やはり公正取引委員会として今後これを取り扱っていかれる御用意があるかどうか、その作業がどの程度いま進んでいらっしゃるか、そういった点について伺っておきたいと思うわけであります。
#28
○谷村政府委員 いまおっしゃいました意味での、本来独禁法が考えております、競争によってよりよき経済の発展あるいは資源の最適配分が行なわれるというふうなことが、いわゆる自由業の中で、本来その技術とかあるいは良心とか、あるいはまた、いまおっしゃいましたような意味での人と人との信頼関係とか、そういうことが非常に強い分野では、独禁法において考えているような競争による一つの利益というものをそれほどに一体期待していいのかどうかという問題があることは、もう御指摘のとおりでございます。と同時に、それだけでなくて、また別の面からいって光を照らしてみたらどうかという議論が学説でもあり、また、私どもの内部でもそういう議論があることも事実でございます。そういう意味で、御指摘のような面から、事業者としての医師あるいはその他の自由職業の方々のあり方というものを考え得るということも、事実でございます。考えられると思います。ただ、それは、たとえばどういう行動をとったときにはそういうことに該当するか、常に必ずしも一般的にいえるのではなくて、どういうことをした場合に、それが独禁法で考えている法益を失うことになるかならぬか、そういうことのいわばケースケースのような感じになるのではないかというふうに思っております。
 そこで、医療費という対価の問題でございますね、取引の対価の問題、それ自身は本来自由であるはずでございます。自分のサービスに対してどれだけの対価をとるかということは、これは営業の自由でございまして、本来は自由であるはずであります。それをいまは、たとえば保険という制度の中では、それをちゃんときめているわけでございますからね。本来自由であるべきものが何らかの形で。――法律によってでなくて、お互いの話し合いできめてしまっているというふうなことがあったら、それは一体独禁法でどうなのかとか、本来自由な活動をしてよろしいはずの人たちを、たとえばある団体がその活動の自由を拘束してしまったら、それは独禁法から見てどうなのかとか、そういうケースケースによって私どもは見なければならないのだろうと思っております。私どもは、そういう意味で問題を検討の対象にはいたしておりますけれども、いま医療費そのものをつかまえて、いまの段階で直ちにそれを独禁法の問題として問擬し得るかどうかということについては、まだ私どもとしてはそこまで至っていない、そういうふうに考えております。
#29
○有島委員 いま、そうした事業者として扱う、これは場合場合によるのだ、そういうようなお話であったのであります。そうして、事業者として扱い得る場合も起こり得るであろうというようなことでございましたけれども、その事業者として扱われなければならないような場合という事態に現在遭遇しておるわけなんですね。総医療費の四二%はすでに薬剤のお金で、医療というか薬療であるというようなこともいわれておりますし、でありますから、当然、どのように薬を安く仕入れるかなどというようなことが、お医者さんの中でたいへん問題になるわけです。それからまた、お薬をたくさん使うことによって、利潤といってはおかしいけれども、そういった、もうけておるというようなことが伝えられておるし、私たちも実際調査した結果はそういうところがございました。こうしたことがすでに起こっておるときに――場合場合じゃなくて、すでにそうした場合は起こっておるのだと私たちは断定しなければならないと思うのですね。そうした経済的な面として取り扱わなければならない場合が起こっているのに、なお、これは独禁法の問題としては扱いかねるのではないかと思われるような幾つかの要素があると思うのですね。その要素というものは――さっき、医療そのものは確かにもう経済をもととすべきものではないということは、一番最初に了解なさいましたね。しておるわけですね。それでもって、しかもその経済的な側面があり得る。それで現実に、これはあり得るじゃなくて、あるわけなんですね。いま御検討なさっておる問題として、ぼくが伺いたいのは、その起こっておるにもかかわらず、まだ独占禁止法という問題になるかならないかというような限られた問題点、どういったことが問題点になっておるのか、そのことを伺っておきたい。
#30
○谷村政府委員 たとえば、あるお医者さんたちが何人か集まって、ある地域で、ある他の一人のお医者さんを非常に営業妨害するという不公正な取引方法に該当するような場合が、かりにあったとします。そういう場合には、まさにそういう面において医療行為の問題じゃなくて、ある人の営業活動を他の連中がぐるになって妨害したというふうな場合になりますと、これは医者としての問題よりは、むしろそういう営業活動の妨害という意味においてとらえ得るという問題もあり得るのではないかと私は思うのです。
 しかし、御指摘のような、いまの段階で、医者がたとえば薬を売ることによってもうけているじゃないかとか、いいかげんなやり方をしておるじゃないかとか、もっぱら医療行為よりは経済行為になっているじゃないかという、そういうお話も受けるに値するような方々が、それはおいでになるかもしれません。しかし、そうではなくて、やはり自己の良心と自分の技術とによって、そうして患者の信頼を得て、ほんとうに一生懸命になってやっていらっしゃるお医者さんも、たくさんいらっしゃると思います。そのお医者さんというものをひっくるめて、一括してどうという話にはなかなかなりがたいと私は思うわけでございます。個別個別にもしそういう事態が何かあって、それがもし独禁法から見て問題になるようなことであれば、それはそうなると思いますけれども、ひっくるめてお医者さんというものはという式には、なかなか言い得ない。やはりそこにはほんとうにお医者さんらしく、ほんとうにお医者さんとして一生懸命やっていらっしゃる方々も、たくさんいらっしゃるというふうに思います。その辺がなかなか事案としてはひっくるめて、一括してどうというふうに言い得ない問題ではないかと思います。
#31
○有島委員 そうしますと、今度日本医師会のほうから一つの点数表が示された。これによりますと、一番代表的な例といたしまして盲腸の手術、これが従来六千八百円であったが、ここに示されておりますのは一万七千円、二・四倍。これはFといって、へんとう腺なんかも同じだということです。それから帝王切開の場合なんかは、いままで九千五百三十円だったのが五万三千円である。こうなってまいりますと、これは一つの基準を示されているわけですけれども、純然たる値段の問題になってまいりますね。こうした問題はいかがですか。
#32
○谷村政府委員 独占禁止法の問題というよりは、むしろお医者さんというものがどういう活動のしかたをするのか、医療制度と申しますか何と申しますか、そういうほうの立場から適当であるかという、そういう問題にこれはなっていくのではないかと思うのであります。
 私どものほうから申しますと、本来自分の提供します役務に対してどういう料金を取るかということは、これは本来医者の自由であります。非常に一生懸命やって、たいへんな手数をかけて手術をして、それに対してこれだけの料金を取りたいということは、それぞれの医者が本来その立場において、自分の良心に従ってきめても差しつかえないはずのものでございます。
 しかし、いまの医療制度は、そういう自由診療の場合とは別に保険制度という形のものがあること、これもいまの日本の制度としては事実でございます。いまおっしゃいましたような意味で、医師会のほうから一つの新しい考え方といいますか、この程度は取ったらどうかというのを参考までにというふうにして配っておりますものが、お医者さんによっては受け取り方がいろいろであるというふうに聞いております。これでいこうと言っている方もいれば、こんなに自分は取らないでもいいというふうに考えている方もいれば、もっとよけいに取りたいと言っていらっしゃる方もいるようでございます。同じ一つの盲腸の手術にしましても、手軽に済む手術もあれば、たいへん手数のかかったそういう手術もあるということでございます。いまお示しになりました、日本医師会のほうから参考として示されているもの自体も、いまの段階で、直ちにお医者さんがそれをすべて、自分たちの請求する金額として妥当だというふうにきめてかかっていると言い切れるかどうか、その辺もまだ問題があるように思います。
#33
○有島委員 一つの値段の基準が示されますと、これだけのものは取るほうがあたりまえなんだ。そうでない場合は非常に恩恵的なことになるでしょう。そうでない場合というのはどのくらいあるか、そちらでもっておつかみになっていらっしゃらないようでございますけれども、これはお調べになるほうがいいと思うのです。
 それからもう一つは、これはまだ実施ということにはなっておりませんけれども、万が一実施になったときには、これは一種のカルテル行為のような扱いを受けざるを得ない、そういうふうにご判断になりますか。
#34
○谷村政府委員 そこは二つ問題があると思います。一つは、それがどの程度の実体的な拘束力を持つことになっているか、みんながそれで足並みがそろうような形に実体的になるのかならないのかという問題と、それからもう一つの問題点は、先ほど冒頭に有島委員からご質問がございました、およそそういう実体に対応して、医師なりあるいは医師会なりというものを事業者または事業者団体としてとらえ得るかどうか、この二点が問題になると思います。
#35
○有島委員 最後に企画庁のほうに、国民生活の立場からお伺いしておきます。
 こういったことが実施されるように、いまその方向に進みつつあるのじゃないかと思いますけれども、これはお医者さんのほうからいえば、手術のむずかしさの度合いである。それに照らし合わせた一つの基準である。これは大部分のお医者さんが、しごくもっともだと賛同を示しているようであります。ところが、これは国民生活の立場から見ますと、こうした、盲腸の手術が一躍一万七千円になる、あるいは帝王切開が五万円をオーバーするということになると、これはどうにも払い切れない。そのうちに、母子ともに助かるべきものが助からなかったというようなことも、これは重々起こり得ることでございまして、医師のほうにはこれが非常に合理的であるならば、医師のほうにはこうした要求というものを通しながら、しかも国民生活を守っていく、そういう方向をどうしてもくふうして国民生活を守ってやらなければならない、私はそういうふうに思いますけれども、そういった点の、国民生活を守るというお立場からの御意を承っておきたいと思います。
#36
○宮崎説明員 ただいま御指摘の保険医総辞退にかかわる医療の問題というものは、私ども国民生活上の観点から見ましても、非常に重大な問題であると考えておるわけでございます。特に、医療費というものの家計に占める負担の割合というものも、近年だんだんふえております。そういった面から見ましても、家計の圧迫というような面からも非常に大事でございます。何といいましても国民の生命にかかわる問題でございますので、そういった経済的問題を除いても非常に大きな問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、ただいまの事態に対して、私どものほうといたしましては、いま政府管掌健康保険、組合健保といわれるものについての辞退が行なわれているわけでございますが、こういう事態を早く正常に戻して、そして本来の保険医療の形に戻っていただきたい。厚生省のほうでいろいろ御努力を願っておることは承知をいたしておりますけれども、そういう本来の筋に戻していただくことが最も大事である、こういうふうに考えております。
 今回の医師会によるいわゆる新しい点数表という、参考の表だそうでありますけれども、これについて、これが高いかどうかということは、私ども、どうもそういった専門的な知識もございませんので、一がいにどうだということはいえないわけでございますが、ただ、ここにあがっている点数表等を見ますと、もしこのような形で、ほんとうに保険の点数としてこれがとられるということになりますと、相当大きな家計の負担になります。一方では、薬剤等について非常に使い過ぎておるのじゃないかとか、あるいは薬剤の単価を適正に直すということは厚生省のほうでも御努力を願っておりますが、そういう全体の合理化という問題はあるといたしましても、ともかく医療に伴うところの家計負担というものが非常に急速にふえるということは、絶対われわれとしては、簡単に賛成はできないわけであります。医療費の内容についていろいろ合理化が考えられておることは、ある程度承知をいたしておりますが、そういう意味からいいまして、このような形の点数表というものが、いま直ちに本来の保険の点数表になるということでございますれば、非常に重大なことであると考えております。いまここで出されております表は、医師会としてのいわば参考の資料として配っておられるということでございまして、これがどの程度の実効性を持ち得るか。いま公正取引委員長のほうからもいろいろお話がございましたが、そういった点も見守りながら、簡単なこととはいえませんけれども、私どもとしては、ただいま申しましたような観点で、この問題について関心を払ってまいりたいと思っておる次第でございます。
#37
○有島委員 いま大臣いらっしゃいませんので、ほんとうは大臣から所信を表明していただきたいと思ったのですけれども、重大な関心を払ってまいるというような、やや消極的なお話だけではなしに、さらに進んで、この健保問題についてそちら側の、経済企画庁のサイドからもこれを推進していく、そういう一つの強い姿勢を持っていただきたい。
 それから、公正取引委員会は――別に私は、これを必ずしも独占禁止法の適用をすることが、医療問題解決のために最上の問題であるとは考えません。けれども、やはりそうした姿勢を示すことによって、それで健保の抜本改正という方向に――これは国民だれもが望んでおりますし、政府もこれを望んでいるはずであります。また、医師会もこれを望んでいるはずであります。こうしたことについての大きな推進をしていっていただきたい。以上、御要望いたすわけであります。
 終わります。
#38
○竹内委員長代理 和田耕作君。
#39
○和田(耕)委員 公取委員長に、いまの御質問の関連で一言お聞きをしておきたいと思います。
 公取委員長、たとえばお米屋さんが、お米屋さんの組合で話し合って、そして大企業の従業員にはお米を普通の値段よりも高く売る、高く買えということをきめた場合に、これは独禁法違反の形にはなりませんか。
#40
○谷村政府委員 お米屋さんの組合みたいなものが――私どもから見れば事業者団体ということになる。それで、その事業者団体であるところが不公正な取引方法に該当するようなことを、その構成員である組合員、すなわちお米屋さんたちにさせるように組合として決議し、かつ、それを実施させているとすれば、それはおっしゃる意味で独禁法違反の問題に該当いたすと思います。
#41
○和田(耕)委員 つまり、いま有島君が問題にしているのは、それと同じような性格のものではないかと思うのです。お米というのは、お互いの生活にとって命にかかわる主食の問題ですけれども、医療というのは、問題は違いますけれども、それとまさるとも劣らない重要な、われわれの生活にとって一つの大事なことですね。この問題について、お医者さんがいま保険医を辞退して、たとえば国民健康保険だとかその他の健康保険に加盟している人にはいままでどおりの点数表でいくけれども、組合健保に属しておる人たちに対しては別の料金で診療するということは、つまり組合健保の人たち、国民の労働者の中の大体中から上のほとんど圧倒的な数を持っておる人たちに対して、制度の問題を飛び越えて、お医者さんがかってな話し合いで、彼ら独自の料金でもって診療するということは、これは明らかに一つの独禁法違反の事項として検討に値する問題じゃないでしょうか。
#42
○谷村政府委員 いまの事態について、一つの見方が、いわゆるカルテル的な行為の問題として取り上げられ、もう一つの側面からは、いま和田委員が御指摘になったように、いわゆる差別対価、不公正取引の問題として取り上げられておるという意味において、まさに御指摘の点の問題があると思います。しかしながら、先ほど御答弁申し上げましたように、医者の行動、行為というようなものが、本来独禁法で見る立場における事業者としての行動であるかどうか。そして、それはまたいまの、独禁法で考えている自由な営業活動ということ、それとはまた別な一つの医療制度というワクの中における問題として見たときに、はたしてそれを独禁法の問題として取り上げるのはどうか。自由診療というものが全くないという姿ではない。自由診療という姿があることも前提になっているわけでございますが、その自由診療という姿になるということ自体、それから、なった場合にそこに差が出てくるという問題、それは一体独禁法の問題であるのか、独禁法ではない別の法域の問題であるのか、そういうことがやはり議論の問題になると思います。
 したがって、お米というものが――これはいまでもまだ一種の統制はございますが、別にお米という例をあげずに、別の品物についてお考えいただければ、そこはそれなりの一つの自由な経済という体系があって、その自由経済、市場経済というもの、市場メカニズムを前提とした場合に独禁法をどう考えるかということでありますけれども、お医者さんの場合には市場メカニズムとか価格機構とか、そういうものでない一つの医療体系とか医療制度とかいうものがあって、それのいわばもつれとしてある問題でございますだけに、直ちに、一般市場経済を前提として考えておる独禁法の問題としてそれを取り上げられるかどうかということが、私どもとしては、必ずしも直ちにそういう問題としていかないという意味で慎重に見ている、そういうわけでございます。
#43
○和田(耕)委員 それは常識的に考えて、わからぬではありません。ありませんけれども、いま委員長が申されたように、お医者さんが、保険制度から離れて自由診療を宣言するというのであれば、これは現在でも、たてまえからいけば自由です。自由な判断で国民を差別せず、お医者さんのいいと思われる新しい値段でやるのはいいのですけれども、区別するということはどういうことですか。
  〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
かってに区別をして、とにかく組合健保の人たちに対しては新しい料金を適用する、その他の人に対しては従来どおりだ。これはどういうことですか。つまりこの問題は不当な取引――やはりサービスの提供ですから、理髪屋さんが散髪をする、パーマ屋さんがパーマをする。取引とすれば同じ性格のものですね。内容はもっともっと大きなウエートを持ちますが、取引としては同じようなものです。この問題について、いま申し上げたとおり、自分たちは保険制度は認めない、全く自由診療に入るのだ。これはお医者さんの自由です。だけれども、かってな判断で国民を区分けをして、この人にはこの値段でやる、この人にはこういう保険の値段だ。これは明らかに不当な扱いじゃないですか。この問題だけをとりますと、やはり不当な取引という問題に当たるのではないですか。それは委員長のおっしゃるように、医療制度という問題があって、従来からいろいろこんがらかったいろいろな対立があり、利害のあれがあるということはわかります。わかりますけれども、取引という原点に返って考えてみる場合に、いまの医師会のとっている態度は、明らかにこれは不当な取引というようなことに当たるのではないですか。私はそういうふうに思われてならないのですけれども、どうですか。
#44
○谷村政府委員 全く該当しないとか考えられない話であるというふうな断定的な御答弁を申し上げるつもりはございません。しかしながら、逆に、直ちに該当するとかそういうふうに思われるというふうに、また結論的に申し上げるわけにもいかない。そういういわば思考がさまよっているような、そういう問題であろうかと思います。これでは答弁にはなりませんが、私も実はそういう意味で、全然検討していない問題だとは申し上げません。しかし、いま和田委員がおっしゃるように、そうだろうとおっしゃられれば、そうだというふうにお答えし得る問題ではない、まあさまよっている問題である、そうお答えせざるを得ないのであります。
#45
○和田(耕)委員 佐藤総理の日中問題についてのお答えと非常によく似通っているのですが、やはりこれは公取委員長、医療体系全体の問題について公取が発言することは、これは当を得たことじゃありません。しかし、医師会がかってに国民を区別をして、そしてさらに違った値段でサービスをするという問題については、公正取引委員会の責任者としては、その範囲において意思表示をすべきだと思うのですが、これはどうでしょうか。
#46
○谷村政府委員 その意思表示はなかなかむずかしい段階にあると思います。
#47
○和田(耕)委員 それはどうしてむずかしいのですか。いまのいろいろお話はわかりますけれども、どうしてそれはむずかしいのでしょう。つまり私がいま申し上げた、非常に限定した範囲でこういう取引はいけませんぞ、もし医師会がおやりになるならば、自由診療を宣言して全国民を相手にしなさい、そうでなければ、話し合いの場に帰って問題を解決しなさいというようなことが、どうしていけないか。公正な取引を監視する責任を持っておられる公取委員長として、この問題についての意思決定もできないのか。もう一度それをひとつ……。
#48
○谷村政府委員 そこは要するに、そういう問題を独禁法の問題として、独禁法において考えるという、その対象としていま考えるべき問題かどうかという点が、実は、やはりわれわれは法律の立場に立たなければならない、法律の立場からいえるのかどうかという点について、私ども、必ずしもしっかりした考え方をいま導き出していない段階だからでございます。
 なぜそれができないかというのは、さっきからのお話のように、そもそも医者とは何であるかというような話、あるいは弁護士とは何であるかというような話、自由職業の方々のあり方、制度、それをどう考えるかということがやはり前提になり、自由な市場価格の働く市場というようなものを前提とした独禁法のその法理の前にあるものであるというふうにし得るかどうか。やはりできない。しかし、だからといって全く耳をおおっているということではなしに、私どもから見ましても、やはり望ましいとか、好ましくないとか、そういう問題としての気持ちはあり得ると思います。しかし、それはあくまで気持ちというか感情の問題でありまして、法律の問題として、おまえはどう考えるかと詰められますと、そこは法律の執行者としての私どもの立場としては、まだはっきりとした態度を示し得ない、そういうことだと思います。
#49
○和田(耕)委員 ちょうど長官もお見えになったので、実は私の時間じゃありませんけれども、関連がありますので、ちょっとお伺いしたいと思いますけれども、長官、いま公取委員長にお伺いしている点は、いまの医師会の問題なんですけれども、つまり、お医者さんが医師会の決議に従って保険医を辞退をする、そして自由診療に移っていく。――お医者さんが、もうおれは保険医はいやだ、自由診療にしたいという宣言は、これは何とも言えません。法律的には文句を言う筋合いではありません。その場合に、国民全部に対してそういうことをするならば、まだそれは法律的な意味はあると思います。ある特定の目的を掲げてそういうこともあり得ると思います。しかし、今度の場合は、組合健保に加入しておる人には新しい料金を適用する、その他の者に対しては従来の保険制度のまま、これは明らかに不当な取引、不当なサービスの提供のやり方じゃないか。そういう意味において、公正取引委員会が厳重な一つの違反の事項として取り締まる問題があるのではないかということをお聞きしておるわけですけれども、その点、長官はどういうふうにお考えになりますか。
#50
○木村国務大臣 どうも私、それを法律的にどう解していいかということをお答えする自信はございませんが、おそらく公取委員長から、それについて独禁法の関係等法律的に御説明をしたと思います。したがいまして、この問題は、そういう法律的問題もさることながら、それが国民医療――それは家計上あるいはむしろ心理的な影響、これはたいへん大きいと思いますので、政府といたしましては、その総辞退問題は、極力早くこれを収拾するということが政治的最大の眼目であると思いますが、いまお話のありました、自由業である医師業、医業と申しますか、それを独占禁止法との関係でどうとらえるかということは、まだ法律的には熟していないような気が私はいたします。
#51
○和田(耕)委員 これ以上続けませんけれども、公取委員長、その問題は、ぜひともひとつ深い関心を持って御検討いただきたいと思います。それは私、そういうふうな範囲においては明らかに不当なサービスの提供のしかたである、国民をばかにした一つの面がある、かってに選ぶのですから。この人には新しい診療料金だ、この人には普通の保険だ。――ふとどきなことだと私は思うのです、この問題だけを限って見れば。他の医療のいろいろな制度の改革の問題は別ですよ。これは一つの高度の政治問題としてありますけれども、国民をかってに二つに分けて、そうしてかってな診療料金を求めるというこのやり方は、私はどう考えてもふとどきしごくなことだと考えます。ぜひともひとつ独禁法の立場からも検討していただきたい、こういうふうにお願いしまして、関連質問を終わります。
#52
○小林委員長 武部君。
#53
○武部委員 先ほど、公共料金の問題での質疑で中断をいたしましたが、いろいろお聞きをいたしておりますと、当面をする物価問題と公共料金のあり方について、長官と私の間には考え方に相違がございます。これはいずれあらためて論議をすることにいたしまして、一つお伺いをいたしますが、本日の衆議院の公報によりますと、東京都並びに横浜市のタクシー運賃料金即時改定を求める大量の請願が、与党である自民党の各議員の皆さんの手によって国会に提出をされております。非常にたくさんな内容であります。このタクシー料金の問題は、前回改定の際に、たいへん大きな論議を呼んだところであります。また、先般東京都内で、この料金の改定をめぐってデモンストレーションも行なわれておる。また、このことが報道されるや、国民の中からは、タクシー運賃の値上げについて大きな不安と反響が起きておることは、御存じのとおりであります。
 そこで、公共料金のあり方についてはいろいろ論議をいたしましたが、このような当面をするタクシーの運賃の値上げについて、一体、長官はどのようにお考えになっておるのか、これをひとつ伺いたい。
#54
○宮崎説明員 先に私から若干経過的なことを申し上げまして、大臣から御答弁をいただきたいと思います。
 タクシーの基本料金の引き上げの問題につきましては、御承知のように四十五年の一月、非常な議論のあった末に改定がなされたわけでございます。この際において二二%余の値上げが行なわれましたが、二年間はこの料金で据え置いていこうということが政府の方針として一応きめられて、あの実施が行なわれたわけでございます。
 ところが、本年に入りまして、予定したごとく収入がなかなか上がらないとか、あるいは交通混雑が著しくなったために走行キロが落ちるとか、いろいろの事情がございまして、タクシー会社の経理が非常に苦しくなった。同時に、減車等の問題も起こり倒産も起こる、こういった事情が出てまいりまして、本年の春から六大都市についての、特に東京、横浜地区、大阪地区、名古屋地区というようなところについて、タクシーの基本料金の引き上げの申請が運輸省のほうに出てまいったわけでございます。で、運輸省のほうにおきましては、従来の経緯もございますので、この問題については厳重な態度で臨むという方針のようにわれわれは伺っております。
 私どもといたしましても、国民生活上非常に重要な問題でございますので、その経緯また内容等については、そのつど勉強いたしてまいっております。
 現在までのところ、運輸省といたしましても、この問題については、現在問題になっております総合交通体系のあり方というような観点からタクシーの位置づけをどうするか、こういう基本的な問題がございまして、運輸政策審議会の大都市交通部会において、この検討が行なわれておるというふうに承っております。私どもといたしましても、今度の問題につきましては、そういった長期的な観点、また大都市交通の各機関での中におけるタクシーのあり方というようなことも含めまして、これは十分検討しなければならぬということで、いま勉強いたしておるところでございます。
 現在までのところ、運輸省から、まだこの問題について正式のお話は何もございませんので、企画庁がこれについてどうこうということを言う段階ではございませんけれども、そういったことで検討しておる最中であるという状況でございます。
#55
○木村国務大臣 タクシー料金の値上げ申請についての経過は、いま局長からご説明したとおりであります。運輸省からは、事務的にまだ何ら、これについての申し入れあるいは協議等がございませんが、いま申し上げました今後の――これは政府自身の料金ではございませんけれども、政府が許認可する点でやはり公共料金でございます。そういう意味におきまして、私の立場といたしまして、事前に運輸省とも調整をいたしまして、こういうことができるだけ行なわれないように努力をいたしたい、こう考えております。
#56
○武部委員 前回の値上げのときにいろいろ条件がつけられたことは、いまお話しになったとおりであります。それならば一体、約束をされた乗車拒否がなくなったかというと、決してそうではない。また、値上げによって高騰する人件費をカバーしなければならぬ、こういうことを、あのときにも、しばしば言明されておったわけでありますが、私ども、タクシーに何回か乗って運転手の皆さんにお聞きいたしましても、決して待遇もよくなっていない、そういうことをはっきり聞くのであります。そういう段階で今日、与党である自民党の皆さんが、請願を大量に国会に提出されるということについては、私はたいへん疑問に思うのです。もちろんこの取扱いは、付託をされた委員会で論議されるでありましょうが、現実にそのような動きが国会の内外を通して行なわれておる。そういう事実は、これは否定できないと思う。
 このタクシー料金の値上がりというものがどういうような波及効果を与えるかということは、いまここで申し上げませんが、これはいままで何回も論議をしたところであります。さらに国鉄の運賃も、先ほど申し上げるとおり、すでに国鉄内部において調整が進んでおる、こういうことも聞いておるのであります。したがって、私は、いまの段階において、少なくともこういう公共料金、特にまた――まあ国鉄運賃は、これは国会の論議でありますが、タクシー運賃あたりは、言われるように許認可の対象になっておりますが、こういうことに少なくとも経済企画庁長官として、しっかりとした態度で、物価の上昇をもたらすようなそういうものについては認めるわけにはいかない、こういうき然たる態度をひとつお示しいただかなければならぬ、このように思いますが、いかがでしょうか。
#57
○木村国務大臣 公共企業体は別といたしまして、タクシー業のごとく非常に零細な中小企業の企業形態、その企業努力あるいは合理化をどの程度進められるかという点、これはもちろん運輸省自体の行政の段階でございますが、ただ、そういう企業努力、合理化が、ある整備の方針とつながってどういう時点で効果があがり、それがこういう料金の抑制につながるか、たいへん困難な点は、私も認めざるを得ません。しかしながら、こういう料金が何らかのサービスの向上と切り離して行なわれるということは、これは国民の、あるいは国民世論が許さないと思っております。そういう面もあわせ考えまして、いまお話のように、経済企画庁としてはき然たる態度でこの問題に臨みたいと思います。
#58
○武部委員 いろいろ値上げを申請する側において、それぞれの理由をつけて値上げを申請するでありましょうけれども、現実に国民の側としては多くの不満を持っておるわけであります。それはお乗りになってみればよくわかるとおりであります。さらに、タクシー協会が、表面にあらわれただけでも多額の政治献金をしているということは、厳然たる事実であります。そういうようなことにもやはりメスを入れて、当面をするこのタクシー料金の値上げ問題について、いまおっしゃったようにき然たる態度でひとつ臨んでいただきたいと思います。
 さらに、この際長官にお願いしなければなりませんが、先ほど申し上げるように、確かに調整役だということもわからぬではない。わからぬではありませんが、少なくとも新聞代の値上げあるいはビールの値上げ問題、さらには牛乳、こういうように、当委員会で何回か取り上げて、参考人としてもお呼びをし、いろいろ意見を聞きました。これは経済企画庁も、いろいろこの問題について提言をされ、各官庁にこの申し入れをされております。しかし、結果的には何らの効果をあげていないのであります。すべてこれは上がってしまったわけであります。そういう結果になっております。ですから、確かに調整というような役割りであることを否定いたしませんが、少なくとも内閣全体の問題としてこの問題を取り上げるべきだ。少なくともいまの佐藤内閣には、こういう物価問題の閣僚協議会もあるわけでありますから、その指導的な役割りを果たすものはやはり企画庁長官でなければならぬ。そういう意味で、私ども大いに期待をいたしておるところであります。
 時間がありませんから、このごあいさつの中の二つだけ、あとお尋ねいたしますが、 この中に「独占禁止法の厳格な運用」なりあるいは「事業許認可制の再検討」、こういうようなものが述べられておりますが、あの物価安定政策会議が提言をいたしました「行政介入と物価」ということ、この中には、許認可問題が大半を占めております。これはやろうと思えばすぐにでもできることだ、こういうことがこの中にいわれておるのであります。政府がやろうと思えばできることだ、そういう具体的な、この「行政介入と物価」という提言をいたしております。ところが、今日まで、この約二十の提言の内容を調べてみましても、ほとんど実行されていない。これは薬局の配置基準の問題からふろ代の問題、あるいは砂糖の関税の問題から、たくさんあります。こういうものは、確かにやろうと思えばできることであります。こういう物価問題がやかましいおりに、この「行政介入と物価」という提言を、長官としては今後どのように取り上げて解決されるおつもりか、これを一つと、それから、この中に賃金問題が触れてあります。これは言うまでもなく、所得政策との関係を私どもは指摘してきたわけでありますが、長官は、この所得政策についてどういうお考えを持っておられるか。
 最後に、この米の物統令撤廃の問題であります。これはいろいろと論議をされておるところでありますが、現実にいま配給米は十キロ千五百二十円、特選米が千七百円から千八百円程度で、自主流通米は二千円から二千百円程度、いま相場がいたしております。このように、現実に千五百二十円の米が特選米となり自主流通米となって、最高二千百円くらいで取引をされている。これはもう厳然たる事実であります。こういう中で物統令をはずせば消費者米価が上がるのではないか、こういう不安を消費者は持っております。そこで、消費者団体を中心にして、この物統令撤廃について強く反対の意思表示がなされております。農林省は、この出来秋の十一月ごろまではこれをやらないと言っておりますが、十一月ごろには考えたい。しかし、そのことは、少なくとも私どもがいま想定するところでは、自主流通米の金額にまではね上がるのではないか。米が余っておるからそんな心配はないとおっしゃるけれども、現実に加工に使用される米の量、そういうものをずっと計算をしてみると、決していまの生産量と消費量との間にそう大きな差はない。そうなってくると、必ずこれは投機的に利用されて、物統令撤廃の結果値上がりするだろうという予測を持ち、現にそういう動きがあるのであります。一々申し上げませんが、こういう問題について長官はどのようにお考えになっておるか、これをひとつお伺いしたい。
#59
○木村国務大臣 まず、お尋ねの第一点でございますが、政府の物価安定政策会議、非常に幅広い活動をしていただいております。ただ、その提言の中で、政府がこれを実行に移して実効をあげておる面は、まだまだきわめて足らない点、不十分な点があることは認めざるを得ません。しかしながら、いま御指摘の行政介入の面につきましては、その提言を実行に移すべく努力をいたしております。その中で、たとえば酒の販売業の免許制、あるいはタクシー免許制度において個人免許促進、あるいは百貨店の売り場の面積を増加する、あるいは再販カルテル問題についてはこれはまだ関係省庁において基準等について検討を進めております段階でございますが、以上のように、政府におきましても、このきわめて適切な提言の御趣旨を極力生かすという意味において、今後さらに一そう努力をしてまいりたい、こう考えております。
 第二のお尋ねの所得政策の面でございますが、いろいろ所得政策については議論もございます。政府部内でも議論をいたしたこともございます。しかし、ただいまのところ、この所得政策なるものが現在の日本の賃金、価格の決定に、いろいろな意味におきまして、何と申しますか、はなはだこれになじみがたいものがあるという点もございますし、また、すでに所得政策なるものを実行しました先進諸国の結果から見ましても、まだまだ所得政策をわが国が政府の方針としてとるには時期尚早であり、まだこれは十分検討の段階である、こういうような考えを持っておりますので、結論的に申し上げますと、所得政策を現在とる考えはございません。
 最後の物統令の問題は、これからの出来秋の米の価格、数量その他を総合判断した上で、自信のある段階においてこれを実行するということになっておりますが、いま御指摘のとおり、これにはいろいろ物統令廃止を実行する前提条件がございます。すなわち流通段階における問題、そういう問題が相当満足に整いまして、物統令廃止によって消費米価が上がらないという確信のもとにこれは行なわれるべきだと思いますので、そういう面において、われわれとしては慎重にこの問題を片づけていきたいと考えております。
#60
○武部委員 申し合わせの時間が来ましたから私はこれで終わりますが、いずれにいたしましても、この委員会は、ずっと連続して物価問題を真剣に論議をいたしております。また私ども、先般、当委員会から派遣をされて生産地等を見てまいりましたが、特に野菜それから魚、この値が生産地においても非常に高い、こういうたいへんな苦情を聞いたのであります。野菜の指定産地制度も効果をあげていない。なぜ漁港でとれた魚がその町でこんなに高いのかというような、いろいろな苦情を聞きました。物価問題、非常に根が深いのでありますが、ぜひひとつ――新しく就任された長官でありまして、私ども大いに期待をいたしております。いま申し上げましたようないろいろな点で私どもと意見の違いもございますが、いずれあらためて詳細に論議をすることにいたしまして、私の質問を、きょうはこれで終わります。
#61
○小林委員長 和田耕作君。
#62
○和田(耕)委員 先ほど関連質問で時間をとりましたので、その分だけ簡単にすることにいたします。
 長官のきょうのごあいさつの中で「総需要の適正な管理」ということばがあります。この意味はどういう意味でありますか。
#63
○木村国務大臣 今回、景気浮揚対策を政府としてはとっておりますが、これは単に景気を上げればいいというのではございません。それで済むような問題ではございません。ただ、この経済成長を安定路線に定着させるということがその眼目でなければならない。そういう意味におきまして、この経済運営の姿勢といたしまして、当面、経済浮揚政策をとっておるわけでございますが、これは同時にもろ刃の剣と申しますか、それによって需要を喚起するという、それによってまた物価上昇の一つの刺激的要素になるという面も、これは争われない事実でございます。そういう意味におきまして、総需要の管理という非常に抽象的なことばではございますが、経済運営上心がけるべき一つの眼目といたしまして、あくまで私どもは経済の安定成長の路線を堅持すると同時に、また、それによって生ずる国民生活の需要増大によるマイナスの面というものを、ぜひそういう総合的立場から管理をしていきたい、こういうような意味を含めて申し上げたわけであります。
#64
○和田(耕)委員 それで、このことばは、いま政府がおとりになろうとしておる景気浮揚政策ですね、これによって相当のインフレ的な一つの懸念もあるので、そういう意味、そうなった場合にはこの総需要の適切なコントロールを行なっていくということでありますが、そこで一つお伺いしたいのですけれども、いまの日本の景気の落ち込みというのは相当深刻なものなんで、政府がいろいろな対策を講じたことが、ほとんど効果をあらわしていない。政府が初めに予想した、五月、六月ごろになれば相当よくなるだろうという所期の目的が、ほとんど達成されていない。現在では九月もあやしい。今年一ぱいかかるかもわからないというような観測も具体的に行なわれておるという段階において、相当真剣に景気の浮揚策をお考えになっておるようですけれども、公債の発行という問題は、きのうも経団連のほうからそういうご意向があったと新聞に書かれておりますけれども、これは考えておられますか。
#65
○木村国務大臣 いま御指摘がありましたとおり、政府の相次ぐいろいろな財政措置にかかわらず、なかなか景気が浮揚してまいりません。私どもとしましては、本年度の経済成長率一〇・一というものがどの程度落ち込むか、まだ確たる見通しは持っておりませんが、相当、年度末において年率ダウンをすることになるのではないか、こう思います。しかしながら、そのためにいろいろ今後重ねて打ち出します財政措置、これをどういうタイミングで、どういうような内容を持って行なうべきかということについては、政府内でもいろいろいま検討中でございますが、この景気浮揚のために、そう小刻みに措置を重ねていくことがはたして効果的であるかどうかについては、いろいろ従来の実績に照らして疑問がございますので、ある時期に、あるタイミングをもって、重ねてそういう財政その他の措置をとることは、大体政府部内における一致した見方でございます。しかしながら、いまお触れになりました国債の問題につきましては、非常にこれはまたデリケートな問題でもございますので、大蔵省を中心にして、その必要性を含めて、まだ検討中の段階でございます。
#66
○和田(耕)委員 いまのおことばは非常によくわからないおことばなんですけれども、大体公債を発行せざるを得ないという方向で今後の審議をいろいろ考える場合に、政府としては、その問題をやらざるを得ないなというような感じでこの国債の問題をお考えになっているかどうか、もう一度……。
#67
○木村国務大臣 政府全体といたしましては、まだそういう段階に至っておりませんが、私の個人的感触では、おそらくそういう必要性も出てくるのではないかというような感触を持っております。
#68
○和田(耕)委員 私もそういうふうに思うのですけれども、そうであるならば、なおさらいまの総需要の適正な管理ということばが、ことばだけでなくて、実際にいろいろな処置を考えなければならぬと思うのですけれども、その前のほうに、経済政策の最重点課題として物価の問題を取り上げるというようなこともある。いままでの佐藤内閣、この六年間の実績を見ましても、こういうことばの繰り返しであって、実際実のあることができていない。かりに景気が非常にいいときでも、なかなかそういうようなことが現実に行なわれていなかったということがあると思うのですけれども、そういう問題について今後いろいろ御質疑を重ねていきたいと思いますが、そういう問題を含めまして、いまの公共料金の問題、その以下にあります問題についても、長官としてはかなり真剣な取り組み方が必要だと思うのです。
 前の佐藤長官のときも、経済企画庁という役所は、いいことは言うけれども、なかなか力が弱くて実行できないといううらみがあるわけですけれども、今後そういうふうな景気の見通しに立てば、なおさら、大事な局面において長官の発言というものが影響力を持つような処置を考える必要があると思うのですけれども、この問題について長官は何かお考えの点がありますか。いままでよりはもっと、大事な局面では効果のあるような発言をするんだ、その発言がもっと効果のあるように浸透していくんだという、一つの経済企画庁の立場を強化するような意味で何かの腹案をお持ちではないですか。
#69
○木村国務大臣 私、非常に微力でございます。また、経済企画庁の権限を逸脱することもできることではございませんが、ただ、政策調整という意味で、まだ運用上やるべきことが残っておるのではないか、そういう意味におきまして、単に、主管省がある程度進行した上で相談にあずかるという従来の形を少し前進させて、行政介入と言ってはことばが過ぎますが、事前の段階において相当これに関与するということは、これはやりたいと思います。また、そういうことが、とにかく国民世論ということを背景にして行なわれるべきだと思います。国会等で十分それを審議に取り上げていただいて、その背景において政府の場で私が強く発言するということが、この問題の解決に役立つのではないか、こう考えております。
#70
○和田(耕)委員 今後必要な問題として、輸入の自由化という問題があるのですけれども、こういう問題を通じましても、いままでの国内民族産業のフリクションの問題が表面的に出てくるというようなことがあるわけですが、こういう問題については、たとえば電算機の問題についておとりになっているように、政府が国際世論に押されて、しようがないから輸入はどんどんやっていくというような問題については、政府としては補助金その他の方法で、国内産業についてはできるだけカバーしていくという態度をおとりになると了解していいですか。
#71
○木村国務大臣 その問題、私も同感でございまして、単に企業の合理化努力、これは限度があると思います。最近のわが国の財政状態、これは景気の落ち込みによって税収その他はむしろ減少の状態でございますが、社会資本の充実という面における資源再配分という面で、この問題をその中に解決する余地が相当今度は大きかろうと思います。そういう意味合いで、そっちのほうに努力を傾けていきたいと思います。
#72
○和田(耕)委員 それともう一つ、輸入の自由化という問題ですけれども、これは物価安定、引き下げのために効果のあることはよくわかります。物価安定政策会議でも、たびたびこの問題について提言をしておりますけれども、いままでの実績から見て――この前、経済企画庁から実績の調査がございましたね。あの調査によると、いろいろの品目によって違いますけれども、一時は下がっても、またすぐ高含みの動きが始まるとか、あるいは国際的な寡占体制の中で、ある程度下げた段階でまた引き上げてくるとか、あるいはものによってはまるきり下がらないというような問題があると思うのですけれども、要するにこの問題は、輸入を自由化したから下がるんだということで政府の責任が終わるのではなくて、その後の下がらせるような措置が必要である。その下がらせるような措置というのは、つまり輸入業者に対する政府の相当適切な指導というような問題もあるし、寡占体制に対するメスの入れ方という問題があるし、このフォローがなければ、輸入しても輸入業者をもうけさすだけで、ある時期下がったように見えてもすぐ上がっていくということになると思うのですけれども、この問題について、これは長官でなくても、企画庁の係のほうで、この問題についてのいままでの実積とこれに対する今後の対処のしかた、これについてお答えいただきたい。
#73
○木村国務大臣 実績につきましては、あとで局長のほうからお答えを申し上げたいと思いますが、いま御意見のとおり、せっかく輸入の増大によって物価の安定に資しようというのでございますが、それを受け入れる国内体制が、それをまた減殺するような体制があってはならない、原因があってはならない、こう思います。いま私も、まだ具体的に確信もございませんが、その問題にまでメスを入れて行なわないと、せっかくの輸入の効果が皆無になると考えまして、そのほうに力を入れたい、こう考えます。
#74
○宮崎説明員 御承知のように、実績的には数はそう多くないわけでございますが、たとえばレモンとかバナナの自由化が行なわれた後の価格の推移をフォローしてみますと、相当程度下がっております。そういう意味におきましては、この効果は相当あったというふうに言ってよろしいと思いますが、たとえば本年一月に自由化いたしましたウイスキーなんかの場合でございますと、思うように下がっておらない。実態の調査は、四月に発表いたしたものでおわかり願っておると思いますが、やはりソールエージェントの問題などもございまして、なかなか思うような効果が発揮できないというものもございます。したがいまして、こういった面につきましては、やはり公正取引委員会のほうの仕事として、しっかりこうしたものについての監視なり調査をしていただくということが必要になると思います。
 あるいは、ちょっと話の筋は違いますが、関税の引き下げなどを行なった場合におきましても、カラーフィルム等について積極的にそういう効果があらわれたものもございますが、今後問題になるものについては、必ずしも楽観ができないものもあるようでございます。こういうことについて、すでに物価担当官会議において関係各省に注意を促しまして、効果が出るようにということでそれぞれ努力をいたすことにはなっておりますが、今回の八項目に基づきまして、またさらに大幅な問題が取り上げられるわけでございますので、私どもとしましては、個々に十分な対策を講じていくということで取り組んでまいりたいと思っております。
#75
○和田(耕)委員 この問題は、特に輸入業者あるいはそれの親分になるような寡占体制の取り締まりということになると思うのですけれども、いままで私どもは、よく寡占体制の問題を問題にして、寡占価格を制限するためのいろいろな具体的な建設的な提案をしてきたわけですけれども、これについて政府はどうしても消極的なんですね。いまの物価値上げの構造ということになると、やはり一番大きな、横綱の一つは寡占体制の問題、寡占価格の問題だと思うのですね。この寡占体制というのは、単に大きなメーカーが話し合うということだけではなくて、たとえば、大きなメーカーが系列で商取引を独占しておる。これはいろんな重要な業界にその状態が見られます。お酒でもそうだし、牛乳でもそうだし、それから食料品関係。輸入と関係あるいろいろな問題については、みんなそういうような形になっておる。特に牛乳の問題等については、私はしばしば取り上げたのですけれども、牛乳販売店のほとんど八〇%、九〇%は大きなメーカーの系列。こういうことで寡占体制というのは、単に大きなメーカーの話し合い、生産その他の価格の話し合いよりも、それをかかえておる流通構造にずっと入っていっておる寡占体制というものが、もっと問題になるわけです。したがって、いまの輸入の問題でも、直接にこの問題と関連してくるということがありますので、寡占構造に対する適切な規制という問題をもっと真剣に考えていただきたい。これは今後この委員会で、いろいろと問題を提起してみたいと思うのですけれども、この問題を特に要望しておきたいと思います。
 最後に、いま長官からいろいろお答えがありましたとおり、政府が現在やろうとしている経済政策は、一番中心は落ち込んだ景気を浮揚させていくというところにあるわけですね。そして、いろいろな、円切り上げ問題なんかを背景にして、輸入を大いにはかっていくという問題がある。
  〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
そして、価格はできるだけ安定させて、低目にいきたいという問題がある。それぞれいろいろな政策はありますけれども、ほとんどみんなの問題が行き当たるような関係になってくる問題ばかりなんですね。
 こういうような意味で、木村長官という有力な閣僚が物価担当の責任者になったわけですけれども、この問題については、ひとつ、物価の安定ということをかなめに置いて、真剣な御努力をお願いいたしたいと思います。
 このことを要望いたしまして、御質問を終わります。
#76
○武部委員長代理 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト