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1947/09/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第18号
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1947/09/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第18号

#1
第001回国会 厚生委員会 第18号
  付託事件
○教員の恩給増額に関する請願(第六
 号)
○食肉統制價額撤廃に関する陳情(第
 二号)
○聖靈生命眞理療法保護法規の制定及
 び名誉恢復に関する陳情(第四号)
○兒童の福祉増進に関する法令制定の
 陳情(第七号)
○恩給法の改正に関する陳情(第十二
 号)
○都市官公廳職員の生活安定に関する
 陳情(第三十八号)
○戰死、戰災遺家族並びに傷病者の更
 生に関する陳情(第五十号)
○恩給法の改正に関する陳情(第六十
 四号)
○國民健康保險組合制度を改革するこ
 とに関する陳情(第六十六号)
○國民健康保險金に対する國庫補助金
 の増額等に関する陳情(第九十八
 号)
○青少年禁酒法案(小杉イ子君發議)
○恩給増額に関する請願(第三十九
 号)
○災害救助法案(内閣送付)
○兒童福祉法案(内閣送付)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第五十八号)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第七十一号)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第七十三号)
○恩給法の改正に関する陳情(第百五
 十三号)
○國民健康保險組合の振作促進に関す
 る陳情(第百五十五号)
○國民健康保險制度の更生に関する請
 願(第八十二号)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第八十七号)
○恩給増額に関する陳情(第百九十三
 号)
○最低生活の保証に関する陳情(第二
 百十八号)
○國際電氣通信株式会社等の社員で公
 務員となつた者の在職年の計算に関
 する恩給法の特例等に関する法律案
 (内閣送付)
○医師会、齒科医師会及び日本医療團
 の解散等に関する法律案(内閣提
 出)
○恩給増額に関する請願(第百十一
 号)
○戰死者遺族の更生対策に関する請願
 (第百十六号)
○生活協同組合法の制定に関する請願
 (第百四十三号)
○青少年禁酒法制定に関する請願(第
 百四十六号)
○青少年禁酒法制定に関する請願(第
 百五十一号)
○住宅営團経営の住宅を國営とするこ
 とに関する請願(第百六十九号)
○東京帝國大学演習林拂下げに関する
 請願(第百七十二号)
○教員恩給増額に関する請願(第百七
 十八号)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第百七十九号)
○生活協同組合法の制定に関する陳情
 (第二百七十五号)
○教員恩給増額に関する陳情(第二百
 九十八号)
○傷痍者更生援護に関する請願(第百
 九十九号)
○青少年禁酒法制定反対に関する請願
 (第二百一号)
○拂下げミシンに関する請願(第二百
 十号)
○結婚問題に関する請願(第二百二十
 号)
○恩給増額に関する請願(第二百二十
 三号)
○社会保險制度の一元化に関する陳情
 (第三百三号)
○教員恩給増額に関する陳情(第三百
 十二号)
○結核医療施設を市営に復元すること
 に関する陳情(第三百二十一号)
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月二十五日(木曜日)
   午前十時十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付して事件
○社会政策について総理大臣に対する
 質疑
  ―――――――――――――
#2
○委員長(塚本重藏君) それではこれより開会いたします。本日は、この委員会に付託せられております二つの法案と、それから予備審査の三つの法案を日程に上しておいた次第でありますが、皆さんの御要求によりまして片山総理が御出席になりましたから、片山総理に対する質疑をお願いいたします。通告がありますのでこれを許します。山下義信君。
#3
○山下義信君 私は二つばかり総理に伺いたいと思います。來る十月一日、二日、三日、御承知のごとく東京におきまして全國社会事業大会が開催せられることに相成りました。承わりますと両陛下もお出まし下さるということでございます。この今日の困難な状態下におきまして、國民救済の社会事業、聖なる仕事に挺身しております全國の関係者約二千名が、今や陸続と帝都に集りつつあるのでございます。又当委員会も只今委員長の申されましたように、殊に兒童福祉法案、これは我が國の四百万の兒童並びに幾百万の母性の福祉を念願いたしまする実に重大なる法案を審議いたしております。この機会に我々は特に首相の御出席を得まして、社会事業並びに厚生行政に関聯いたしまする政府の御所見を伺わんとする者でございます。
 第一は、厚生行政の改革ということでございます。私共片山総理が内閣を組織されました当初に、その施政方針を國会で御演説相成りましたるその内容を具さに拜聽いたしました時に、その中に國民の同胞救済、即ち社会事業、厚生行政という面に対しまする御政策の御被露がなかつたのでございます。固より当面の國政の重点が経済政策にありますることは言うまでもないことでございまするが、併しながら社会党を主軸とする而も片山総理が首班と相成りましたる内閣におきましてこそ、我が國の社会事業というものが飛躍的発展を遂げられることを國民一同が期待をいたしておりますのに、その内閣の重大なる政策としてお取上げ相成つたという印象が未だにないことを遺憾とするのでございます。今日の社会事業或いは厚生行政というものを、從來の單なる恩惠的或いは慈善的観念からでなくいたしまして、新憲法の第二十五條にありまするところの國民の最低生活を保障するという見地の行政に向いつちありますることは、言うまでもないことでございます。從いまして私共が考えまするに、今後の厚生行政というものは、こういう線に副いまする非常な強いものが展開せられて行かなれけばならんのではあるまいかということを思うのでございます。これらに関しまして政府はどういうお考をお持ちになつておられましようか。或いは又例えば國民の食生活の問題、或いは経済機構の面で考えますると、配給というような制度も、これも実際申しまするというと、大なる厚生行政ではあるまいかということを思うのでございます。或いは國民食堂を設置いたしまするとか、小さいことでございますが、國民浴場の新設でありまするとかいうような積極的な面の厚生行政の強化展開というものが必要なのではないかということを思うのでございます。かく考えまするというと、今日の厚生省が労働行政の全部が労働省に移管いたされまして、後が空家のようになつておりますることを考えますると、厚生省の改組というようなことにつきましても、何らかの新らしい構想の下にお考えなさりつつあるのではないかと思われるのでございます。即ち社会政策行政の中心でありまするこの厚生行政に対しまする首相の御所見を伺いたいと存じます。
 第二は、私共厚生委員会におきましては言うまでもなく、生活保護に関しまする問題を取扱つておりまする関係上我々本委員会におきましても現内閣のお持ちになつておられまする賃金政策というものに対しましても亦関心を持たざるを得ないのでございましてその点を簡單にこの機会に伺いたいと思います。賃金政策に関しまして傳えられますところによりますというと、平野農相は本年度産米の新米價から推しまして、賃金千八百円のベースの改定も亦止むを得ないだろうという御意見と聞えております。又米窪労働大臣は新物價の改定と賃金の改定との、あの実質賃金充実の時間の間のズレから押しまして、千八百円賃金ベースに彈力性を持たせることも又止むを得ないだろうと言われておるということであります。然るに和田安本長官か内閣の既定方針を堅持せられてありますることは言うまでもございません。それらに関しまして各閣僚の間に賃金政策に対するお考えが幾らか喰い違いのあるような印象を受けておりますことに対しましての、首相の御意見というものも未だ我々は確たる御方針を承わる機会を持たないのでございます。新聞紙の報道が区々でございまするので、私共この機会におきまして承わりたいと思うのであります。時間がございませんので簡單に省略させて頂きますが、実はこの内閣の賃金政策というものは大変國民に私は誤解されておると思います。それは賃金政策の説明の方法が非常にむずかしうございます。いわゆる千八百円の賃金水準というものは、言うまでもなくこの数字は物價体系を形成なさるところの統計の賃金、いわゆる解説用の賃金でありまして、世間に実際に行われておるところの賃金を言うのではない。これを堅持するということは必ずしも世間の賃金をストップさせるという意味ではないのであろうと思います。併しながら國民はいわゆる政府のこの物價体系を維持なさるという数字上の堅持というものにつきまして賃金をストップされておるというような考え方を持つております。尚十一月になりまするというと黒字が出るというこの説明これも亦國民が非常に誤解しておるのではないかと思う。いわゆる千八百円の生活で黒字が出るような誤解を持つております者が多々ある。実際はこれは四・二を掛けましたるその收入のものが理想的に物價が参りましたときに黒字が出るという数学的説明なのでございまするが、これが恰も現実面の上に直ぐにこうなるもののような印象を受けておりますることは、要するところ賃金政策の説明というものが、ただ單に物價体系を作りまする基本的政策の説明と現実面との混淆から來りまするところのものではないかと思いまするので、私共内閣の賃金政策の上におきまして、もつと國民に分り易いように、國民はこの内閣によりまして段々社会党に対しまする期待外れという淡い失望はございまするが併しながら総理大臣に対しまする信頼というものは非常に厚くなつております。これはあなたを目の前にいたしまして私がかくのごときことを申上げますることは、聊かお世辞のように聞えまするが、眞に今漸く総理の人格というものが國民の間に滲透して参りました。眞面目なる氣分が勃然として起きつつあります。働こう働こうという氣分が起きつつございます。時恰も新秋の好きシーズンになりまして、いわゆる勤労意欲というものが正に向上しつつあるように私は見受ける。こういう時に賃金に彈力性を持たせる。私共はこの生産の能率を上げるということと、賃金とがスライデイングしますことは決して弊害がない。物價と賃金とが惡循環しまする場合は弊害がございまするが、生産を非常に高めて、そうして賃金を幾パーセント上げて行くということは、これは当然のことであるということに考えておるのでありまするが、併しながら一方におきましては賃金が恰もストップしておるかのごとき感を持ちまして、生産サポに遺憾な点があるのでございます。内閣におかれましては新らしき生産増強、能率増進に伴いまするところの彈力ある賃金政策、而も國民に分りやすいところの賃金政策をお取りになりまするお考えがあるが否かどいう点を伺いたいと思います。以上の二点につきまして総理の御答弁を煩わしたいと存じます。
#4
○國務大臣(片山哲君) 只今山下君の御尤もなる御意見に基ずく御質問でありましたので、この機会に私が施政方針において述べましたる社会事業に関する根本的な考えを申上げて見たいと思います。
 御承知の通り施政方針の演説は大体総論的な問題のみを述べなければならない時間的制約もありまするし、細かい問題についてはこの後に來りまする政策の実施面において十分御了解を願い得るという段階において申上げることになつておるのであります。それで私の社会政策、或いは社会事業に関する考えをどこに進めておつたか、どこに包括しておつたかと申しますると、民主主義の徹底ということを強調いたしたわけであります。その民主主義は政治問題に限らず、産業経済の部面にも、又社会生活の部面にも滲透しなければならない。そういう意味で民主主義の徹底を高度民主主義という表現を以ちまして、できるだけ説明の便宜を図ろうと考えたのであります。即ち徹底せる民主主義が各方面に滲透いたしまする場合においては、その政策はおのずから國民の生活の向上となり、又産業の発展に役立つことともなり、社会生活の平均が來たり、富の偏在が打ち碎かれるということにもなるし、万般の上において偏頗なる生活状態というものがなくなつて來ると、こう考えておるのであります。從つて高度民主主義の徹底が社会生活及び産業経済方面に滲透することによつて、根本的なる社会政策、或いは社会事業、もう少し強めて申しまするならば、富の公平なる分配を画策いたしまするところの政策が滲透して來ると考えるのであります。例えて申しまするならば、農村において農民が非常に苦しい生活をしておる、これは地主の搾取もあつたのでありましよう、土地制度の不公平、不均分というような不合理性もあつたであろうと思うのであります。これを打破して、眞に生産に從事する農民の生活を向上せしめなければならない、こういう意味で、制度の改革によつて下の方に沈んでおつた農民の解放を図つて行かなければならないと考えておる意味において申上げておるのであります又労働者の生活もその地位の向上を図ることが産業の発展に役立つことになるのである、労働者の産業に対する或る地位を與えることによつて、労働意欲の昂場もできるのである。そうして地位の向上、制度の改正が産業の発展と関聯いたしまして、その生活態様の改善もおのずから現われて來るのである。社会生活に民主主義の滲透することによりまして社会生活が明るくなつて、そうして極く分り易い例を申して見まするならば、家庭生活においても男尊女卑、封建的なる家族制度が打破せられることによつて子供の地位も向上するし、婦人の地位も向上する。こういうふうになつて來ると考えておるのであります。從つて子供を尊重する観念であるとか、或いは力の弱い方方の保護政策というものも均分の観念に從いまして、おのずから透徹して來なければならない。こういう基本観念と申しまするか、根本的なる政治原理をそこに置いて各種の政策をそれから割り出して來なければならない。こういう氣持を多分に現わしたいと思つておつたのであります。その意味において民主主義の滲透が何よりも必要である。これは政治問題だけでは決してないということを強調したゆえんであります。私はそういう意味から社会政策は高度なる民主主義の滲透によつて十分に行われて來なければならないものであつて、そういう方針の下にこの内閣は政治の実際に当つて行こう、こういう根本的な心構えを申上げたような次第であります。そこでそれから割り出して何をなすかという実際問題になつて参りますると、仮すに時に與えて頂かなければならないし、又行うについての順序も見て頂かなければならないと思うのであります。特に考えるべきは、山下君も仰せになりました通り、今日は経済危機を突破するということが中心となつて、國家経済の建直しということが第一になつて來なければならない。國家経済を建直して、そうしてその確立を考えた後において始めてそこに透徹せる各種の政策が実現して來ると、かように考えておるのであります。何よりもなすべきことは、我が國の経済の破局を救わなければならない、こういう当面の重大なる仕事がかぶさつて來ておるものでありますから、それを中心といたしまして実際上の政策を現わして行かなければならない。こういうような建前で進んで行かなければならないと思つておるのであります。決して社会政策、社会事業を疎かにしておる筈もなければ、又これを忘れておることもないのでありまするが、何しろ当面の破局を救わなければならないという止むを得ざる事情のために、思う通りのことができないというような悩みに陷つておるということも御了承を願いたいと思います。そこでこの破局を救つた後においては、できるだけの社会事業方面に力を入れたいと考えております。今までは軍事費用が多分に要求されまして、予算の大部分というものが軍事費用でありましたのでありますが、今日においてはそれがなくなりましたが、併しまだ戰爭の後始末をしなければならないということによる多くの制約があることは御承知の通りと思います。それで段々それらに関する仕事が終りましたる後においては、御希望通りの方向に向つて十分進んで國民生活の向上眞に氣の毒なる人の救済は勿論のこと、不合理なる社会制度の改革に段々と進んで行きたいと考えておるのであります。從つて子供の問題であるとか、婦人の問題であるとか、或いはその他病人に関する問題でありまするとか、國家衞生に関する問題でありまするとか、進んでは子供の教育に関する問題、家庭の明朗化、そういう問題についてはできるだけ多くの費用を計上いたしまして、実際面における救済事業に進行いたしたいと考えておるのであります。どうか今暫く時を仮して頂きたいと思います。そうして皆さんの協力を得まして、十分なる施策に進んで行きたいと考えておる次第であります。
 第二の賃金の問題でありまするがこれも山下君御質問の中に御意見としてお述べになりましたる通りでありまして、この賃金は決して釘付けにしておるわけではないのであります。元來個個の経済生活をよくしようと思いまするならば國家経済をよくしなければなりません國家の産業の発展を図つて行かなければならないのであります。戰後の國民生活と國家経済との関係の順調なる進み方を図つて行かなければならないということが、今日程現実的に現われておる時はないと思います。その個人と國家経済、國家産業との関係は誠に有機的な密接な関係を持つておると考えるのであります。そこで國家経済をよくし、國家産業を発展せしむるということが何よりも先に來るのであります。これがよくなりますならば、自然に個人生活もよくなりまするし、職業も安定するし、國民全般に関する生活安定ということが実現して來ると考えるのであります。御承知の通り戰前と比較いたしまして、今日の勞働力の生産能率も減退いたしております。戰前においては一人でやり得たことを今日では三人掛りでやつて、漸く同じ結果を得られるというような窮屈な状態になつておるのであります。それは資材の不足であるとか、資金の関係でありまするとか、交通の不便でありまするとか、いろいろの條件が重なるものでありまするから、能率が低下いたしておりまするし、尚又全般的に考えまして、國家生産能率というものも戰前の半分或いは三分の一になつておるというようになることを考えて見ますると、全体として生産能率の低下せる現在におきましては、戰前のような割合をもつてそのまま臨むことができないのであります。特に土地が減りましたのにも拘わらず、人口が殖えておるというような現象でもあり、又消費生活の部面から考えましても、そう急激に生活態様を切下げるわけにも行きませんので、消費場面におきましては相当の消費状態でありまするから、これら全体を綜合いたしてみまする時において、賃金と物價との関係を同じ水準に置くというわけには行かないと思うのであります。物價が政府発表の計算によよりまして、物新價体系によつて五十倍或いは六十倍の高率を示しておるということをお示しいたしたのでありまするが、それと同じように賃金を上げるわけに行かないのであります。今申しましたような條件、今申しましたような制約によりまして、物價の方は高くなつておりまするが、賃金はその以下に水準を決めて、そうしてその釣合を取つて行かなければならないと思うのであります。即ち物價は高くなりましたけれども、賃金はこの程度に止めて置いて、その間の原因は何から來つておるかということを考えて行かなければならない。そこに我が國の経済の破局進行状態があり危機状態がある。これを加えて初めて物價問題と賃金問題との平衡率が保たれるこういうような状態になるのであります。これを取除かないことには、この破局進行状態を取除かないことには、賃金のペースを上げるわけには行かないと思うのであります。從つて賃金を上げますると、自然物價もずうつとこういう傾斜状態で上つて來る。こういうふうで何よりも必要なることは、賃金を仰えておりまするところの、この不健康経済状態を取除くということが必要と思うのであります。それに政府は極力奮闘いたしておるのであります。即ち闇の撲減でありまするとか、或いは生産拡充に関する國民の総力の集中でありまするとか、いろいろの経済健全対策を樹てまして、そうして平衡せる状態に進む健康状態の恢復をのみ念願しておるというような状態でありますから、今この賃金のペースをそのままに、物價が上つたからと言つて上げるわけには行きません。上げますと必ず物價が上つて來まして、生活は苦しくなつて参ります。それでありますから、いろいろ新聞に傳えられておるような説があるといたしましても、政府の目下の考えといたしましては、この千八百円のペースは守つて行きたいと考えておる次第であります。これは釘付けでは決してありません。ストツプでは決してありません。ペースでありまするから基準としてこれだけのものを守つて、新物價体系の壊れることを防いで行かなければならないという趣旨であります。お示しのように個々の産業、個々の経済で採算の取れる場合においては、適正なる賃金が考えられてよかろうと思うのであります。そういう意味でありまするから、七月五日発表いたしましたる新物價体系は堅持して行きたいと思つております。そうして國民が日本の政治を担当しておると同様に、日本の産業を國民全体が担当しておるのである。日本の産業を発展せしむるものは、國民全体の力である。国民の総力というものを、こういう場合に発揮して貰わなければならない。そういう意味から申しまして、労働運動が最も健全に産業発展政策の線に副うて労働運動が進まれなければならないと考えて、その健全なる発展を指導いたしたいと考えて労働省の発足をいたしておるような次第であります。特に労働組合運動が産業を発展せしむる中枢の担い手として、國家経済に大いに寄與して貰いたいと考えておるような次第でございます。こういう意味から國民運動の展開を政府は要望いたしておるのであります。國民運動と申したのは、決して政治運動ではなく、お説教ではなくして、國民全体が國家産業を背負つて、國定経済の発展に寄與して貰いたい、こういう意味でありまして、闇を抑えるのも、流通秩序の確立を実現して貰うのも、一に國民全体の運動に俟たなければならないと思うのであります。安本で申しました十一月になれば黒字が出るであろう、こういうことは勿論安本で考えておりまする体系が順調に進んで、國民全体の力によつて闇を撲滅して、いわゆる闇ブローカーを排除して、本当に國民が配給で生活し得るように、生産増強に國民全体が邁進するという建前が実現いたしまするならば、予定通りの進行によつて黒字か出る、こういう順序を示したことであります。遺憾ながら闇の撲滅を完全に行う段取りには行かなかつたのでありまして、この点甚だ残念に思います。從つて理想通りの黒字状態実現ということに行かなかつたということも、亦現実としては止むを得ないことであろうと思います。併しどうか國民全体が十分これらの問題を認識して頂いて、そうして黒字実現のためにこの体系を十分に守つて頂きまするならば、必らず物價も下つて参りまするし、希望は実現せられるというふうに考えておるのであります。これは我が國だけの特殊なる現象ではなしに、全世界に現われておりまするところの現象であろうと思いまするから、我々國民は眞に一体となつて、希望を持つて、そうして闇を排除いたしまして、働いて配給で生活をする、こういう建前で進んで行かなければならないと考え、政府は極力これを希望し、國民にこれを強く求めておるような次第であります。以上の点を十分に御了承を仰ぎたいと存ずる次第であります。
#5
○草葉隆圓君 敗戰後の困窮いたしました國民生活の打開のために、政府は経済の実相をよく國民に知らして、諸諸の経済緊急対策を実施しながら、一方に國民に耐乏生活を求めて進んでおられるのでありますが、只今総理大臣の御答弁を伺いますと、高度民主主義の徹底ということによつて、社会政策を十分浸透する、そうして当面のこの経済の破局を救つて行くということが、先ず何よりも急務であるから、それを救つた後で社会医療に全力を盡すというような御答弁のように私は拜承いたしましたが、その点につきまして、尚二、三の実例を挙げて御質問申上げ、総理の御所見を拜承いたしたいと存じます。
 現在の國民生活は誠に非痛な程苦しい状態であると存じます。一方におきまして、諸々の経済緊急対策を実施し、それと國民が力を合せる意味においての耐乏生活を求められておる。これだけでは私共はどうしても本当の起ち上りというものはできんのではないか、救つた後から、当面の破局を救つた後から社会政策、社会医療に手を付けるということは、これは無理なことではないか、むしろ本当に諸々の緊急経済対策というもの、或いは國民の耐乏生活というものは一方においてさような社会政策、社会施設の充実があつて初めてでき上るのではないか、この面の裏附けがなかつたら空念佛に終る虞れはないかということを私共は深く憂い、且つ信じておるのでありまするが、この点につきまして私は二つの関点から実例を以て一つ伺いたいと存じます。
 第一は兒童の問題であります。兒童の問題につきましては、大戰爭の後で諸々の兒童の問題が生じますことは、これはもうどこの國でも同じでありまして、曾てムツソリニーが政権を取つてナポリに参りました時に、孤兒が余りに多くてその処置を糺明された時、自分はこの孤兒の処置ができるまでは再びこの町を訪問しないと言つて、全力を盡して孤兒の処置に力をいたしたことは有名な話でありますが、最近も外入記者が日本に参りまして、町の孤兒を見ながら、日本には政治はないとさえ発表しておつたようであります。今囘の政府の社会立法の最たるものとして拜見いたしておりまする兒童福祉法案の問題につきましても、これは眞劍に現政府がこの敗戰後の日本の起ち上りの上に、明日將來を背負つて立つ兒童をあらゆる観点からお考えになつておる十分なる政策としてを御立法になつたかということを、我々は疑う程のさまざまな問題が尚残つておる状態であろうと思います。例えて申しますると、不良少年について從來から厚生行政の面と、司法行政の面から相当長い間の未解決な点があつたのであります。識香は何とかしてこれを解決しなければ、一つの不良少年の処置においてもこれは十分でないと言はれておつた状態でありまするが、現政府の唯一の社会立法である兒童福祉法案においてすら、尚現在解決せずに、そのまま出ておるというような状態でありまして、私共はこの一つの兒童の問題を取つて、殊に緊要なる兒童の問題を取つて考えて参りました場合に、もつと強い高度の社会政策の立場から兒童問題の解決にお当りになる御意思が、急いでお当りになる御意思があるがどうか、そういう点について一つ御所信、御意見を拜承いたしたいと存じます。我々はむしろ大きい立場から、日本の將來を背負つて立つ兒童の問題については、從來の分散的な取扱を止めて、新に総理大臣直属の兒童院というようなものを作つて、そうしてそれには調査研究の機関を置き、十分やつて行かないと將來悔いを千載に残すことになりはしないか、いろいろな具体的実例は割愛さして頂きまして、もう一つの問題に移りたいと存じます。
 もう一つは、戰爭犠牲者の処置の問題、いわゆる戰災、戰爭によつて傷痍を受け、両眼失明し、両手両足をなくしたさまざまな傷痍の者、恐らく百万を越しておると存じます。或いは子供を失つて年寄つた両親が農業もできず、或いは今囘の非戰災者の特別家屋税等によりまして、たつた一つの家屋等にも課税をさせられ、而もそれは戰爭の公平なる負担の分配という名の下に行われ自分の子供を失つた程大きなる犠牲はないではないかという声が欝勃といたしておりまするが、その中でも特に夫を失つて子供を持つ未亡人の問題、誠に窮迫しておる問題と存じます。一方日本の経済が建直つてから、それから手を打つというような問題ではないと思う。現に私共が最も期待をいたしておりました総理大臣が三月十五日に「民衆の幸福」という書物を出版されて、その中に戰爭犠牲のために多くの未亡人ができた氣の毒なことである。これら未亡人は生活問題、社会問題について新らしい話題を投ずることであろう、社会の人々はこれらの氣の毒な未亡人を保護することになるであろう、來るべき家庭法でも十分に保護するは勿論、実際的な社会施設によつても働けない未亡人のために、又子供を抱えて生活のために苦闘しておる母のために、できるだけの愛と同情を以て迎えねばならん。尚これらの戰爭犠牲者を含めて一般に夫を亡くした氣の毒な妻と子供のために、國家は現存の母子施護法に満足することなく、これを徹底的に拡張して、大胆に國家の費用を支出するの途を講じ、その生活、職業とその子供の將來のために希望を與えるようにしたい。これは総理大臣が三月に御発表になりましたものですが、この時には母子保護法はすでに解消いたしておりましたから何かの錯誤だと存じます。それはともかくといたしまして、多くの数十万の未亡人はいわゆる懐しい片山さんの言葉を聞きながら、総理大臣になられての方策を本当に一日千秋で持つておるものであります。まう賣るべき物もなく、誠に悲惨な状態にありますが、ここにありますように、大胆に國家の費用を支出するの途を講じて、そうして速かなる方策をお立てを願うということについて、総理大臣の率直なる御所信を拜承いたしたいと存じます。
#6
○國務大臣(片山哲君) 私の申上げましたのは、緊急対策が終つた後に社会事業に着手する。こういう意味ではなくして、今社会事業に着手する方は決めて置くのである、民主主義の高度なる徹底によつて氣の毒なる人を救い、婦人子供のために國家は特別の施設を持つて行かなければならない。金がないために教育を受けられない人々の教育施設の改善もやつて行かなければならない。いろいろやるべき方向は決めて置くのである。又準備もするのであるが、併しこれを実際に当嵌めて見ますれば、兒童保護の設備も要りますし、又教育問題につきましても六・三制の完全なる施設等に沢山の費用を要するということになるので、その費用支出を伴い、予算を伴う具体的な社会施設は、危機突破の後でなければ遺憾ながら実現の運びに至らない。こういう二段階に分けて申上げたつもりであります。即ち根本的な心構えはその方向に必ず向いておるのであるが、具体的費用を伴う施設は暫く待つて頂きたい。併し全然やらないのではなくて、許す範囲内においてできるだけの施設を小出しにしながらやつて行こう、こういうような実際の事情から來ておることを申上げたような次第であります。そういう意味から申しまして、今直ちに兒童局を設立するとか、或いは子供婦人のために何億円という費用を予算に計上いたしまして、これを支出するというようなる具体計画を立てるということは、予算の上からいつて非常に困難である。それよりもこういう予算を計上し得る財政を確立したい。こういう費用を捻出し得る経済状態に早く向わしめたい。その意味において先ず危機突破である。戰爭のために荒されて我々は燒野原に住んでおるのである、焦土の、燒けた煉瓦や割れた瓦の中にそのまま住んでおるのであるから、その燒跡を整理して行かないことには、前に進めない。前に進むためには國民全体の協力で跡片付けを取敢えずやつて、そうして跡にバラックでも建て、道路の整理もする、そういうふうにして着々やつて行こう。こういうことを考えておる次第であります。決して全然危機突破と社会事業とを切り離して別個の観念にしておるのではないのであります。その意味において施政方針の演説におきましても、危機突破に向うのであるが、平和國家建設のために、文化國家建設のために、國民に健康にして文化的なる生活を保障するために、これから向わなければならないということをお約束しておるような次第でありまして、來るべき文化國家の内容を五ケ目挙げまして、私が説明いたした趣旨はそこにあるのであります。そういうふうにやりたいことは山程ある、今お読み下さいました私の書物におきましても、氣の毒なる未亡人のためにできるだけのことをしたい、大胆に國家の費用を計上して、そうして施設の充実を図つて行きたいという心持は今も同じでありまするが、何しろ財源がない、財源を早く作るように地均し工作を先ずする必要がある。組閣後三、四ケ月はどうしても地均しに掛かるわけであります。かかる程戰爭の被害というものが現われて來ておるのでありまするから、その点を御了承願いたいと存じます。そうしてできるだけ早く兒童問題、婦人問題のために財源を捻出して、そうして社会施策の徹底に進んで行きたい。かように考えておるような次第でありまして、決してこれはこれ、あれはあれと分けて、今は何も手を付けないというような意味ではなのであります。必ずその方向に向つて進むべきことを明らかにいたしますし、又今後においてもできるだけそういう方面に國家の費用を投じて文化國家建設のために邁進したいということを重ねて申上げることができると存じておる次第であります
#7
○藤森眞治君 私は極く簡單にお伺いしたいのですが、実は私は今日まで政治を知らない田舎の一開業医者として、いろいろ政府の施設方面を実行して來た者であります。その間におきましていろいろ不便を感じたり、又不可解な点を体驗して参りました。と申しますのは同じ目的を以て作られておる施設、或いは法律というものが各方面から出て來る。そのために一つの目的がそういうことに煩いされて、十分貫徹されないという憾みを度々体驗したのでありますが、今囘この兒童福祉法案の審議に当りまして、その実例に当りましたので、この点について少しお伺いしたいと思います。
 勿論片山首相がこの法律の條文を一一御存じはないとお察しいたしまするが、これを掻い摘んで御質問申上げたい点を申上げますると、第九條におきましては、兒童を二つに分けて、つまり幼兒に対しては兒童局がこれの保健指導に当ろう。これから後は兒童局は先ず知らん顔をしておるような恰好になつております。そのために先達て質問いたしましたところが、幼兒までは兒童局のやれる範囲においてやる。それから後は学校衞生方面でやることだから、敢えてこれ以上は要しない。こういうお話でありました。これが先程申しました私の非常にこれまで不便と感じ、不審を持つておつた点であります。新らしくできます法律で、殊に大きな兒童を目標にいたしました。こういう立派な法律ができます場合に、何故これを一貫して十八歳に至る兒童という定義が下してありまする範囲の兒童全体について、一方は学校衞生においてやろう、一方は児童福祉法でやろう。こういう考え方が果して適当であるかどうか、片山首相はよく施政方針に病氣のことを例に取つてお話になつておりまするが、ここに一つの身体がありますると、頭の方はお前の方でやれ、こちらの方は全然よそでやつていい。これでは十分身体の診断はできなにわけであります。でき得べくんばこれを全体を通じて診断しましてこそ、立派な診断ができる。こういうことになります。そういうふうに考えまするので、一つの法律の目的が決まつておるにも拘わらず、一方に分れ、又一方においていわゆる行政上の都合によりまして、こういうふうに分離するということが、これが國民の福祉に、或る意味において反するのじやないか、こういうふうに考えます。尚最近におきましてこの災害保險、或いは船員保險、これが厚生省の管轄から離れました。我々從來まだいろいろ各種の社会保險ということの統合、これを一つにするということを相当希望して参りましたものでありまするが、それが却つて一つに纒めてありましたものを、又逆にこれを労働省の管轄に移し、或いは運輸省の管轄に移して複雑にするということは、これは官廳の方面の、いわゆる官廳行政の便利の都合かも知れませんが、併し実際にこれに当り、又これを受ける者の便宜から申しまするならば、成るべくこれが統合されている方がいいのじやないか、こういうふうに考えます。國民の福祉のためには、官廳行政の便宜ということのために、この福祉を犠牲にすることはできないと考えるのであります。こういうふうな点を見ます。殊にこの災害保險に例を取つて申上げますと、最近においてこの災害保險は厚生省の方のいわゆる都道府縣の保險課からは、災害保險、いわゆる業務上の疾病は取扱わなくなつたから、これらは自分らの方の管轄外であるという通知が各方面に参つております。併し業務者のいわゆる災害を受けた折はどうかということについては、何も言うでございません。又労働省の方からも言つておりません。いずれこれは何らかの方法ができると存じまするが、この空間にいろいろな又事故が起つて参りまするような状態であります。こういう点を見まして、いわゆる法律が行政大臣の便宜のため却つて実行、或いはこれを受ける者の幸福が犠牲にされるのではないか、こういうふうな点が考えられますので、その辺の立法上のお考え、或いは運用の点、こういう点につきまして首相の御答弁を頂ければそれで幸いと存じます。
#8
○國務大臣(片山哲君) いろいろ運営上に当りまして連絡が付かなかつたり、或いは別個の意見を出して、実際の局に当つておられる方々の御迷惑を起したというようなることは誠にまずいことでありまして、今後の運営に当りましては、十分これらの点は注意いたしまして、万遺憾なきを期さなければならないと思います。連絡及び事務上の問題については十分注意をいたすことにいたします。尚行政上の都合で、行政上本位に考えて、災害の救済の実が挙がらない場合があるのではないかという御意見でありまするが、誠に御尤ものことと存じます。できるだけそういうことのないようにしたいと思つて目下いろいろ檢討いたしておるのであります。從つて災害保險は厚生省に統一をすべきか、又は災害の種類によりましてそれぞれ分割すべきであるか、こういうことはいろいろの意見がありまして論議をいたしました結果、今のところにおいては厚生省に纒めないで分けよう、こういうことになりまして、労働省置設に伴い労働者の災害は労働省へ、それから船員の災害保險問題は運輸省へ、一般の災害問題は厚生省へ、こういうふうに三つに分けまして、それぞれ十分その任務に当ろう、こういう建前で進んでおるのであります。折角そうふうでやり掛けたものでありますから、一應そういうやり方で進まなければ労働者の発足にも支障を來すというふうに考えておりまするから、一應それで御協力を願いたいと思います。又いろいろの御意見が出まして更により良き案が出ましたる場合においては、尚諸君にもお諮りをいたしまして、十分檢討いたしたいと思つておりまするが、只今の方針といたしましては業者並びに関係の方々の御意見を徴した結果、それがよかろう、こういうことになつておるのでありまして、その間の連絡等につきましても遺漏なきを期したいと思つておるような次第であります。折角やり掛けたものでありまするから、そういう意味において一つ委員方の御協力を仰ぎたいと考えておる次第であります。
#9
○理事(今泉政喜君) 本日は幸い総理の時間の許される範囲において、外に質疑がありましたら各自お名前を……
#10
○山下義信君 私共先程からいろいろお尋ねしましたのでございますが、大変御懇切なる御了寧な答弁を頂きまして非常に恐縮いたしておるのでございますが、併し遠慮なく申上げますと、実は若干失望をいたしました。本日この厚生委員会にわざわざ御出席を願いましたので、恐らく総理におかせられましては、言うまでもなく委員会の性質、社会事業、社会政策を所管いたしまするこの委員会にお出まし下さいまするので、その方面の行政に対しまして、普通の総理大臣ならうともかく、長い間社会政策に御盡力遊ばされ、草葉委員の申されるがごとく、殊に母子問題については懐しい片山先生、この席にお出まし下さいまするにつきましては、恐らく力強いお土産が頂戴できるものと我々は予期いたしましたのでござりまするが、一應の御丁寧な綿密なる御答弁の中から逐に何物をも得ることがないのでありまして、失礼でございまするが、淡い失望を感じました。これは私共委員が失望するばかりでなく、恐らく全國の社会事業家、恐らくいわゆる要援護者の対象の國民が失望するのではないかと考えます。これは私共委員の方の質問の仕方がまずかつたのであろうと思います。実は冒頭に申上げましたように、十月一日、二日、三日に全國の社会事業家が相集まりまするので、恐らく総理にもお出まし下さると存じまするが、その席でもよろしゆうござりまするで、どうかこの社会事業の強化拡充、厚生行政の飛躍発展に関しまするこの内閣の御抱負、御決意、御盡力というものをお示し下さいまして、二千の者が全國からつどいまするそれらがそれぞれあなたのその言明を土産にして帰りまして、それらの事業に邁進することのできまするように御激励を下さいまするよう、まだ数日の間がござりまするので、偏にお願いを申上げて置きます。
 尚この機会にやはり皆様のお許しを得まして、私が一言総理に伺いたいと思うのでござりまするが、実は先般來からいろいろの噂には新党問題の結成云々というような話が飛んでおります或いは講和会議を目指して、誰がその講和会議全権として適当な、それが内閣を云々と申して世上の取沙汰がやかましい。然るに一面におきましては最近の新聞紙上には又、いや、この社会党の片山首相こそ講和会議の全権として最も適当なる人であるが故に、この講和会議はこの内閣が乘切るべきであるというような記事も現われております。それはいずれでもよろしゆうござりまするが、これは國民が承知いたしたいと思いますることは、來るべき講和ということは日本を交えての講和会議というものがあるものでございましようか、又日本からその全権大使というような者が出まするような性質の会議があるのでござりましようか、私共ではそういう誰が講和全権に行くというようなことはないのではないかと思われるのでござりまするが、この点國民がこの講和ということを繞りまして、我が國の只今の立場というものに誤解がありましては、奮闘努力いたします上に考え違いがあつてはいけないと存じますので、その点に関しまする総理大臣の御考えを御示し願いたいと思ふのでございます。
#11
○國務大臣(片山哲君) 只今の御質問の前に御希望の御発言がありましたが、別に質問がまずいとか、或いはそれに対して御期待に副うような答弁ができなかつたとかいうようなことを離れて、本当にこの率直なる心持を以て皆さんに申上げて、皆さんの御協力仰いで、一日も早く健康にして文化的なる生活ができるような社会を早く作りたいということを申上げたのが、私の切なる願いであつたのであります。ここであなた方が、その社会事業に関する予算を幾ら出ることになつたかとか、或いはその予算を計上しなければ社会事業に対する現政府の熱意というものがないじやないかと、こうきめつけになりましても、それは難事中の難事じやないかと思うのです。ない財布の中から何とか工面をしまして、そうして文化的な日本を早く作つて行こうということが今日の私共の切望するところでありまして、先ず金の要らない制度の改革、國民の心からなる要望、國民の耐乏生活、そうして途が開けるようにして、そこで勢いよく文化的な施設、社会的な施設を心地よく國民の協力によつて作つて行こうということが常識であり、これが順路であろうと思うのであります。いろいろ戰爭の後始末をしなければならない今日の経済状態を差置いて、その方はいいじやないか、それよりも子供のために、婦人のために、社会施設のために何億の金を優先的に出すことが、社会施設に関して忠実なるゆえんであるというわけでもないと思います。そういう御議論でも勿論ありませんが、やはり無理をしては國家経済というものが成り立たないのであります。やり繰りをいたしまして、できるだけのことをしたい。できるだけのことをするのである。方向も決つておるのである。方向も決つておるが、併し今ここで莫大な費用を社会事業に投ずるという御約束のできない事情は甚だ残念である。そういう財政になつておるのである。そういう経済になつておるのである。こういう衷情を訴えて、暫くの御猶予を願つて、そうして今は小出しにしておるが、必ずその小出しの線を活して、大出しにして社会施設の徹底を図つて行きたい。そうしてお待ちになつておりまする多くの方々の御協力を仰いで、希望達成に進んで行きたい。こういうことでありまして、決してこれを無視しておるわけでもなく、又反対の方向に進んておるわけでもない。不仕合せを受けております人々に諦めろというような無情なことをやつておるわけでもないのであります。氣の毒な方々に対しては手厚い施設を國家がしなければならない。氣の毒な方々の範囲を拡げて貧しい方々にも、教育を受ける機会のない方々にも教育の機会均等を與えたい。こういうことを切に考えておればこそ、財政面の余裕を早く作りたい。以前は戰爭のために莫大なる費用を投じておつたが、これからは文化のために、社会のためにこれを投ずる機会を得たことを喜んで、一日も早くその経済事情の來ることを念願して進んで行きたいのでありまするから、どうかこの点は皆さんも了解して下さることと思うのであります。そうして國民全体が國を仕上げて行く。こういうふうにならなければならないと思います。政府は國民の使いとして仕事を担当いたしておるのでありますから。土台でありまする國民全体が、台所についての御理解がなければならないと思います。どうかその点を十分にお知り願いたいと存ずるのであります。尚もう一つ、講和会議の問題がありましたが、敗戰國としての日本として講和会議に臨むためには、本当に日本を平和國として建直さなければならないのであります。又民主主義の徹底を図つて、日本を民主國としなければならないのであります。又新憲法を忠実に安つて、新憲法の精神により建直りたる日本國であるということを、如実に表わして行かなければならないのであります。それが政府の仕事として、目下そういう意味の新憲法の精神を具体化すること、民主主義平和國による建直りをしなければならないということが、私共に課せられたる心構えでありまして、それ以外の事柄はまだ何も申上げる時期にもなつておらず、政府の考えておりますることは、以上申上げたことのみであるということを以てお答に代えたいと思います。
#12
○小杉イ子君 私はこの度の救急措置といたしましては、どうしても食糧問題が根本であると思つております。そのために、私が当選いたしました時朝日新聞に参りましたところが、あなたは何故禁酒問題を提げて出なんだ、大変残念に思うと言われましたが、決して私が提げないわけではありません。提げておるのでございます。それがために新内閣が酒と食糧と風紀問題を含む高級料理屋に休業を命じたことは、徳川時代よりの一大英断で、北條時頼の識見に近いもので、大いに政府を親頼するものであるということを申しております。そうして内閣の成立当時、総理大臣はお酒を口に持つていらつしやつたけれども、召し上らなかつた。そうして同窓会でも酒を上らないで、サイダーを注いで呉れとお替えになつた。こういうことはどれくらい國民がその一挙一言の下に敬意を表し、謹聽したか、又食糧問題に対して酒という問題も考えてくれたということを私は深く感謝いたすのでございます。それでこの間、全國の労働組合の代表者たちが大勢見えました時に、酒ということに対して炭鉱ではどういうふうに考えるかと申しましたところ、今まで習慣のある人が飲んでおると申した人もございました。又一人は何でも政府は採炭能率を上げさすために酒々、酒さえあればこれが増産できると思つておる。我々はそういうふうに丸で魚を釣を餌のようにして貰うことを希望する者ばかりではない。こう申しまして、私は非常に嬉しうございました。
 それから九月十五日の新聞記事を私は讀みました。「早堀り芋と麥の早期供出には、五萬石の酒が報奬として特配された。縣によつて率はちがうが、麥一俵か芋百貫に対して一合の所もあり、二、三合の村もあり、供出量の多い農家では一斗を超えたものも相当ある。平均三升から五升ぐらいの農村はめずらしくない。それが舊盆の八月末にどつと一度に配給された所が多いらしい。このごろの酒は腐りやすくて残暑には十日ともたず、呑助の農家でも一日一升の酒はのみほせず、料飮禁止でヤミに流すはけ口も容易に見付からず、蚕卵紙を入れる冷藏庫に酒びんの林立している所もあるという。蚕といえば、どぶろく密造でコージカビが發生し、それが掃立稚蚕兒に付著して掃立三日ぐらいで死んでしまうどぶろく養蚕異も長野縣辺りにあるそうだ。まじめな精農にいわせると、農林省がとかく百姓を呑兵衛あつかいにするのは心外で、報奬酒は労をねぎろう程度にとどめるべきだ。まして丹精した米が酒になつて粗末に持込まれるのはむしろ腹が立つといつている。大体報奬制度そのものが、農民を合理的な経済人としてあつかわず、正規の價格の外におまけをつけてつらねば出さぬという惡い癖をつけてしまつたが、ことに報奬酒は、世界でも最も勤勉な我が農民に飮酒の弊風を公然と流行させ、ひいてはどぶろく密造を助長した罪は大きいと言える。」こういうことが書いてあります。これは朝日新聞でございます。こういうふうでございますので、酒のないところの方が七割も増産しております。私は石炭増産でも四十四、五年先のことを考えましても、いろいろ研究いたしましても、どうしても國管でなければならん、これには全面的に私は賛成いたしております。けれども増炭するのに酒をやるということは、各所で調べましたのでも、酒のある者と、ない者とによつて、二割六分増産しておるところもあるし、それから七割ほどアメリカあたりは上げた例もあります。酒が欲しいという者は一割五分しかないということも調べておりますのに、これは余り問題になさつて下さらないということは残念で、酒と禁酒問題を一緒にすると仰つしやいますけれども、決して離すことはできないのでありまして、そしてこの米さえあるならば、手のない人、足のない人がどれくらい喜ぶか、その点について大いに努力をして頂きたいという希望を私は総理大臣に申上げたいのでございます。
#13
○理事(今泉政喜君) ちよつとその前にお諮りいたします。総理は時間のお約束があつて、十一時三十分までこちらの方におられて長くお引取めをすることができないことを甚だ遺憾に思います。一つその点皆さんの御了承を仰ぎたいと思います。
#14
○服部教一君 ちよつと五分間……お忙しいところおいで下さいましてありがとうございます。私は申上げたいことが沢山ありますけれども、時間の制限がありますから、一つだけ申上げます。
 玄米食の問題でありますが、これは專門の研究家は、非常に衛生上有益であることは勿論、この現下の主食の不足を補う上において玄米食の奬励は最もいいということを言われておるのであります。それで國民全体に強制するということはむずかしいのであります。併しながらこれを大々的に奬励したならば必ず米の不足を大いに助けると思うのであります。どうか專門家の意見を………日の医学博士会あたりでも、これは衛生上いいということを決議になつておるのでありまするから、御承知だろうと思いますけれども、これを主食の不足の折柄一つ大いに奬励して頂きたい。又專門家のお方もあるのでありますから、そういう人の説を聽いて頂きたいと思います。ちよつとこれだけ申上げます。
#15
○國務大臣(片山哲君) ちよつと簡單にお二人にお答えしたいと思います。禁酒の問題でありまするが、これにつきまして、私の唱えておりまする耐乏生活なり精神運動なり國民運動なりは、無駄を省いて消費を節約して皆働いて生活をするようにして貰いたい、こういう意味を含んだ耐乏生活であります。その意味において、國民運動として、そういうものが國民の中から自発的に起ることが結構なことと思いまするが、やはり文化の施設、農民の娯樂、農民の慰安、勞働者の慰安というような文化施設を行わなければならないと思います。そうして酒に代つて勞を慰安する設備を皆さんによつて考えて頂きたいと思うのであります。そうしますれば、一杯の酒で勞を慰するということの代りに、他の方法で勞が慰せられるこいうことになると思いまするから、それと並んで運動を起して頂きたいと思うのであります。
 それから玄米食の問題は、随分長い間の御議論のように拜聽いたしておりまするが、いろいろ学者で意見も区々たるようにも承知しておりまするので、更に厚生省あたりで十分に研究さして、民間の意見或いは諸君の意見も十分に反映するようにして頂きたいと思つております、
#16
○小川友三君 お許しを頂きまして……大水害が関東地区にありまして、その水害地の埼玉選出の議員としまして、特に治山治水、社会事業方面において政府の一段の御協力をお願いしたいのであります。総理大臣は、日本の困つておる台所を國民は知つて貰いたいというお話がありましたが、こうした大水害或いは前議員の多々おつしやつた通り、社会事業を積極的にやつて貰いたいということは、國民は協力をいたすのでありまして、例えば財政上困ると総理大臣はおつしやいますけれども、電燈に税金を掛けても百億円くらいの税金は一ヶ年に上がります。農地に税金をかけましても、百億以上の税金は上がります。煙草を値上げしましても、数十億の増收を計ることができます。奢侈品に税金を掛けましても百億前後の税金は取れます。酒造税を上げれば百億の税金は取れます。合計五百億くらいの税金は國を救うために、社会事業を積堀的にやるとか治山治水事業を積極的にやらなければならんということを主張し、國民に納得さえ行けば、五百億くらいの増税は絶対に可能であります。その簡單な例を申上げますると、簡易裁判を政府は七万円前後を以て作るという計画でありましたが、あれでは二坪、三坪しかできませんが、簡易裁判所のできるところの町村では百万円、二百万円、三百万円近いところの金を集めまして、簡易裁判所をどしどし新設いたしておるような次第であります。又六・三制にしましても政府は金を出しませんが、土地によりましては百万円以上二百万円の金をどしどし國民は集めまして、心配をいたしておる現状でありまして、國民の台所は非常な收入の増大によりまして相当樂になつておる場面があるのでありまして、どうか國民の台所は無財産に近いものであるという総理大臣の御解釈を御訂正願いまして、積極的に社会事業に力を入れて頂くことを御願いする次第であります。
#17
○千田正君 お忙しいところ誠に恐縮ですが、一分間だけお願いいたします。只今私は東北の水害地から辛うじて身を以て帰つて参りましたが、東北は御承知の通り二囘打続く洪水によつて非常な打撃を蒙つて、実りの秋を前にして農民が茫然としておつたところが、この十五日以來の百七十七ミリ以上の降雨のために、再び決壞個所数十ケ所岩手縣の縣南の黒澤尻から宮城縣の縣北新田、瀬峯に至る蜿蜒数百キロは殆んど一物もなく流しつぶされた状況であります。不幸にして東京都のような近いところでないために、十分なる通信網もなければ連絡もない、正に湖底に沈まんとするところの状態に置かれておるのでありますので、特に厚生方面の関係といたしましては、衣料、藥品その他緊急対策を是非講じて頂きたい。この点は切実なる両縣の、第三囘目の洪水を受けて打ち沈んでおるところの縣民からの要望でありますので、総理大臣に是非この点を御考慮願いたいと思います。
#18
○國務大臣(片山哲君) 今囘の水害につきましては多くの罹災者諸君を出しまして、誠にお氣の毒に思い、深甚の御同情を申上げたいと存ずるのであります。天災とは言いながら政府はこの災害を最低限に止める努力を拂うべきでありまして、唐突の際でもあり、後で考えてこうすればよかつた、ああすればよかつたというようなことなども思いつきまして、誠に申訳なかつたことなどもあると思つているのであります。速急に應急救護対策を立てまして、内閣に委員会を作り、できるだけの処置を取つて活動をいたしております。又復旧対策もやらなくてはならないと考えまして、これも併行いたしまして内閣に委員会を作りまして、復旧対策を立てつつあるのであります。尚金融問題に関しましても、即時支拂の便やら、封鎖解除の便等も、大藏大臣を通じましてすでに発表いたしている通りであります。又農林大臣といたしましても、供出問題やら災害地に対する農村対策をも速急に発表すべく、それぞれの処置を取つているような次第でありまして、今囘のこの苦い経驗を生かしまして、今後においては万遺漏なきを期したいと懸命な努力を拂つている次第であります。どうか諸君は罹災地の氣の毒なる方々によく慰問下さいまして、政府が極力御同情を実際の上に現わしたい、今後の対策を十分に立てたいという考えを持つておりますことをお傳え願いたいと存ずると共に、今後においても諸君の十分なる御援助を仰ぎたいと存ずる次第であります。
 尚小川君より財政上の問題についていろいろの御進言がありまして、十分これは研究しつつあることでありまして、御意見のあるところを汲み取つて今後の施策の上にも檢討いたしたいと存じております。
#19
○理事(今泉政喜君) それではこれを以て総理大臣との間の質疑應答は打ち切りたいと思いますが、お差支ございませんか。
#20
○草葉隆圓君 本日の委員会はこれを以て閉会したいということの動議を提出いたします。
#21
○理事(今泉政喜君) それではこれを以て本日の委員会は散会いたします。
   午前十一時四十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           今泉 政喜君
           谷口弥三郎君
           宮城タマヨ君
   委員
           内村 清次君
           河崎 ナツ君
           中平常太郎君
           三木 治朗君
           草葉 隆圓君
           中山 壽彦君
           安達 良助君
           木内キヤウ君
           小林 勝馬君
           藤森 眞治君
           井上なつゑ君
           小川 友三君
           小杉 イ子君
           波田野林一君
           服部 教一君
           姫井 伊介君
           山下 義信君
           米倉 龍也君
           千田  正君
  國務大臣
   内閣総理大臣  片山  哲君
  政府委員
   厚生事務官
   (兒童局長)  米澤 常道君
   厚 生 技 官
   (医務局長)  東 龍太郎君
ソース: 国立国会図書館
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