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1971/10/11 第66回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第066回国会 社会労働委員会 第6号
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1971/10/11 第66回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第066回国会 社会労働委員会 第6号

#1
第066回国会 社会労働委員会 第6号
昭和四十六年十月十一日(月曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 森山 欽司君
   理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君
   理事 増岡 博之君 理事 田邊  誠君
   理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君
      秋田 大助君    有馬 元治君
      井出一太郎君    梶山 静六君
      小金 義照君    橋本龍太郎君
      川俣健二郎君    久保 三郎君
      後藤 俊男君    島本 虎三君
      内藤 良平君    山本 政弘君
      古寺  宏君    古川 雅司君
      渡部 通子君    西田 八郎君
      和田 春生君    寺前  巖君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
        労 働 大 臣 原 健三郎君
 委員外の出席者
        科学技術庁原子
        力局放射線安全
        課長      児崎 宣夫君
        運輸省鉄道監督
        局長      山口 真弘君
        労働大臣官房長 道正 邦彦君
        労働省労政局長 石黒 拓爾君
        労働省労働基準
        局長      岡部 實夫君
        日本国有鉄道総
        裁       磯崎  叡君
        日本国有鉄道常
        務理事     真鍋  洋君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十一日
 辞任         補欠選任
  小林  進君     内藤 良平君
  八木  昇君     久保 三郎君
  寒川 喜一君     和田 春生君
同日
 辞任         補欠選任
  久保 三郎君     八木  昇君
  内藤 良平君     小林  進君
  和田 春生君     寒川 喜一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働関係の基本施策に関する件(日本国有鉄道
 における労働問題等)
     ――――◇―――――
#2
○森山委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有馬元治君。
#3
○有馬委員 私は、最初に労働大臣にお尋ねいたしたいと思います。
 国鉄の労使の関係をずっと戦後見ておりますと、若干の時期比較的良好なときもございましたけれども、必ずしもいいとはいえない。むしろ悪い期間が相当続いておったように思います。特に昨今、国鉄当局が生産性運動を取り入れましてからは国鉄の労使関係が荒れに荒れているといいますか荒廃をしておる、あるいはこじれ切っておるという感じが実は強いのでございます。国民の皆さんの立場からいたしましても、何か事故が起こらなければいいがな、あるいは足が奪われなければいいがなという感じは率直にいってあるのでございます。私は、この事態はたいへん憂慮すべき事態ではないかと感じておりますので、これから労働大臣にお尋ねするわけでございますが、労働大臣が今回の国鉄労使の紛争につきまして仲介役を買って出られる、政治的工作に乗り出された、こういうことを聞いておるのでございますが、労働大臣が労使関係の紛争に乗り出すという事例は全く異例なことだと思います。私の記憶でも三池争議以来の異例な措置だと思いまするが、今回の工作に乗り出した労働大臣の真意はどういうところにあるのだろうか。この点について、まず労働大臣にお尋ねいたしたいと思います。
#4
○原国務大臣 有馬委員にお答え申し上げます。
 このたび、私が国鉄労使関係に関連して仲介に乗り出しておる最中であります。なぜ仲介に乗り出したかと申しますと、一つは、国鉄当局と労働組合との間に非常な不信感が高まっておる。しかも、言うならば感情的に先鋭化しておる。労使の関係がこういう常軌を逸してしまうということは、国鉄再建のためにも憂うべきことでもあるし、いま有馬君が質問された中にも不測の事態が起こることも心配されるということもありましたが、そういうことも考えまして、私としては、これはもうすでに労使の、いわゆる労働問題に変わってきておる、であるから、労働大臣としてこれを放置することはできないし、労働関係担当者として何らかの仲介の労をとって正常化に向かわしめたい、こう思って乗り出したような次第でございます。
 重ねて申し上げますが、私は、まず労使間の不信感を払拭したいというので、先週においては国鉄当局並びに国鉄の三つの団体等について個別に会談して、その事情を聴取し、その意向、真意をただしてきたところでございます。そういう理由でいまスタートいたしておるところでございます。
#5
○有馬委員 労使の紛争というものはあくまで当事者の自主的解決にまつというのが鉄則であり、これは今度の場合においてもそのとおりだと思います。労働大臣が労使双方の事情を聴取されて、双方の納得のいく線で解決をはかられるということは、この際は非常に大事なことだと思いますが、われわれはあくまで労使の自主解決をバックアップするという立場で、この国会においてもこれから当事者並びに政府関係者にいろいろと事情をお尋ねしたいと思うわけでございます。あくまで労使の自主解決を鉄則として、これを側面から援助する、バックアップするという立場で御質問を続けたいと思うわけでございます。
 そこで、まず国鉄当局に、総裁にお尋ねをいたしたいと思いますが、去る十月六日に公労委から救済命令が出たことを私、新聞ニュースで承知しておるのでございます。当局側は不当労働行為はしない、またさせないということをしばしば言明しておったのでございますが、それにもかかわらず現場では若干の行き過ぎがある。今回のような事例が現実に出てきております。聞くところによりますと、まだほかにも事例がある。いわば氷山の一角であるというような見方もございます。
 それで私は、こういう事態に立ち至った背景が一体何なんだろうかということが非常に気になるわけでございます。かてて加えて昨日の新聞によりますと、水戸の管理局管内で録音テープがとられておる、こういうことも新聞のニュースとして伝えられております。隠しマイクで録音をとるということは、それ自体あまりほめたことではございませんけれども、こういった録音テープが公開されておるということになりますと、やはり国鉄当局の考え方をこの際はっきり聞いておかなければならないという気持ちが強いのでございます。
 そこで第一点は、今度出ました救済命令についてどういう受けとめ方をしておられるのか、またこの救済命令につきまして今後どうなさるおつもりなのか、この点が第一点。
 第二点は、組合側が要求しております不当労働行為を行なった者に対する懲戒処分について、この命令は却下いたしておるようでございますが、この懲戒処分について総裁はどういうお考えをお持ちになっておられるのか、これが第二点。
 それから第三点は録音テープについてのことでございますが、この録音テープについてどういう御感想をお持ちであるのか、この三点についてまずお答えいただきたいと思います。
#6
○磯崎説明員 最近私のほうの労使問題につきまして、いろいろ世間に御迷惑、御心配をかけていることを責任者としてたいへんおわび申し上げます。
 ただいまの有馬先生の御質問でございますが、第一点の、去る十月八日に公労委から発せられました命令につきまして、その後慎重に考慮いたしまして、私はいま国鉄の当面している事態を次のように考えております。
 国鉄は百年という歳月を迎えまして前途に輝かしい未来がありながらも、現実は実は御承知のとおり有史以来の難局に直面いたしております。私はその経営の責任者といたしまして、従来とも微力を尽くしてまいりましたが、最近の状況にかんがみまして、あらためて国鉄法第一条並びに公労法第一条、すなわち、企業を健全に発展させ、もって公共の福祉を増進、擁護するという原点に立ち返りまして職員各自の信念と自覚を喚起して、ここに国鉄再建をはかる所存を新たにいたした次第でございます。
 そういう立場に立ちまして、けさ午前九時半、去る八日の公労委から発せられました命令を受諾いたしました。かつ、これを実行することといたしました。今後の問題につきましては、私どもといたしましては、いわゆる不当労働行為というものが純粋な生産性運動を歪曲して伝えられているということに対しては非常に遺憾に思っており、まして生産性運動に名をかりて不当労働行為を行なうということは許されないことであるというふうに考えます。
 第二点の御質問の、いわゆる関係者の処分等の問題でございます。これはいろいろケースもございますし、また今回の公労委の、ただいま受諾いたしました命令にも若干触れておられますので、ケース・バイ・ケースによりまして適切な処置をとってまいりたいというふうに考えております。
 それから第三の問題につきましては、今後私のほうといたしましては、本来の国鉄における生産性運動は、かねがね私は申しておりますが、国民への、すなわち利用者への誠意と国鉄への愛情、この二つを基調とするものでなければならないというふうに思っておりまして、これは職員各自の信念と自覚によってのみ発展し得るという考え方でございます。
#7
○有馬委員 ただいまのお答えでちょっとはっきりしないところがございますが、第二点の、組合側がこの救済措置にも要求してありますように、不当労働行為を行なった末端の管理者、これに対する懲戒処分をどういうふうに考えておるかという点でございますが、この点、私がちょっと聞きそこなったのかもしれませんが、もう一度はっきりお答え願いたいと思います。
#8
○磯崎説明員 不当労働行為を行ないました末端の管理者につきましては、ただいまお示しの公労委の命令にも出ておりますとおり、いろいろな考え方があると存じます。私はその点をもうしばらく慎重に考えまして、そのケースごとに適切な総合的な措置をとってまいりたいというふうに思っております。
#9
○有馬委員 次に、問題になっておりまする生産性運動、マル生運動と不当労働行為との関係についてお尋ねをいたしたいと思います。
 国労の七一年度の運動方針によりますと、「マル生運動が不当労働行為であるという事由のもとに、マル生運動そのものをやめさせる戦いを起こしていく準備をします。」こういうふうにいっておりますので、国労並びに動労の考え方は、マル生運動が即不当労働行為である、こういう受けとめ方をしておるのだと思います。また、新聞その他の報道も、当局のマル生運動は労働組合に対する不当労働行為であるというふうな感じでいろいろと報道をされておりまするが、この生産性運動と不当労働行為とは全く別のしろものでございますので、この辺はどういうふうに考えておるのか、まずこの点を総裁にお尋ねをいたす次第でございます。
#10
○磯崎説明員 ただいまも申し上げましたとおり、私は不当労働行為と生産性運動とは全然別なものであるということをはっきり申し上げます。いままで純粋な、私は特に純粋なと申し上げさせていただきますが、純粋な生産性運動が、先般のようないわゆる不当労働行為によりまして歪曲して理解された事例があったことは、たいへん遺憾に存じております。私は元来申し上げておりますとおり、国鉄の現在の再建には、先般の再建整備臨時措置法を国会で御承認願いましたときにも、まず国鉄自体の姿勢の問題、次に国民の協力、国民の援助、政府の援助というふうな三つの柱でもって国鉄の再建をやっていくということはすでに臨時措置法できまっておるわけでございまして、私はその第一の、国鉄内部の姿勢を正す、その正し方につきましては、あくまでも職員が自分の全力をあげて職務に専念する、その専念のしかた、専念の理念といたしまして、先ほど申しましたとおり国鉄に対する愛情を持つこと、それから国鉄を利用してくださる国民の各位に対して誠意を持つこと、これが国鉄職員として、私を含めまして全体の姿勢の基調であるべきであるというふうに私は思っております。
 その基調のあらわれが純粋な生産性運動でございまして、今後とも生産性運動は、国鉄再建のために、職員の各自の信念と自覚に基づいて当然進められていくべきであるというふうに私は考える次第でございまして、不当労働行為とは全然別個な問題だ、もし不当労働行為によって歪曲して理解されていたという事例があったとすれば、これは非常に私としては遺憾な点であると率直に申し上げます。
#11
○有馬委員 生産性運動と不当労働行為は全く別のものであるというのは当然のことでございますが、この別ものであるべき二つの問題が、末端の現場においてはこれが一連のつながりがあるかのごとく受け取られておる、また新聞その他の報道もそういうふうに伝えておる向きが相当あるわけでございます。それだけに、この生産性運動の進め方は、これは非常に慎重にやらなければいかぬ。ただいまも総裁が純粋な生産性運動――本来の生産性運動という意味だと思いますが、純粋な生産性運動は不当労働行為に結びつくはずはないと思うのでございます。この辺がたてまえと現実がどうも食い違っておるといいますか、本来の生産性運動からはそういうけんかにならないはずでございますが、そういう点をひとつよく注意して、慎重にこの運動を進める必要があるのではないかと思います。
 この運動自体については後ほどまた御質問申し上げたいと思いますから、一応この辺にいたしまして、次に、不当労働行為が最近非常に問題になっておりますが、この不当労働行為の制度は、ここでいまさら論ずるつもりもございませんけれども、私も長年不当労働行為事案の審査をやってみた経験から申し上げまして、不当労働行為制度にきめられておる不利益取り扱いの問題、あるいは支配介入の問題、これらの問題は非常にむずかしいのでございます。判定が非常にむずかしい、実際上はつかみにくい困難な問題でございます。
 そこで、これは真鍋常務理事さんからお答えいただいてけっこうでございますが、現在当局と組合との間で不当労働行為問題をめぐってどういうことが現実に問題になっておるのか、これは非常にデリケートな問題でございますから、こういう問題が、一方では組合はこういうふうに言う、われわれはこう考えているのだという場面がたくさんあると思います。いろいろありましょうけれども、不当労働行為制度の中では不利益取り扱いと支配介入の問題が一番問題になっておると思いますので、この二つに分けまして、最も典型的な事例を簡単に、当局側の見解を述べながら御説明願いたいと思います。
#12
○真鍋説明員 ただいま不当労働行為として組合から公労委に救済の申し立てをしております件数は十三件ございます。その中で、いろいろの事例があるわけでございますけれども、ただいまお話しございましたような形で、簡単に申し上げますと一つは不利益な扱い、つまり組合別に差別をしておるではないかというのが一つでございます。たとえば抜てき昇給あるいは昇職、昇格等におきましてA組合は不利益な扱いをされて落とされておる、B組合はこれに多数の者が上がっておる、これは明らかに当局側が差別支配をする意図があるのではないかというような形の不当労働行為の申し立てが多いわけでございます。この点につきましてはすべて争点を明らかにしまして争っておるわけでございますけれども、当局側の見解は昇職、昇格、あるいは抜てき昇給もそうでございますけれども、すべて勤務成績を見ておるという見解でございます。もちろん勤続年数、在職経過年数等も見るわけでございますけれども、勤務成績を十分に検討いたしまして、その中で適格な者を上げる、あるいは勤務成績が非常に良好な者は抜てきをする、逆に勤務成績の悪い者はその資格がないというふうな判定をいたしておるわけでございまして、組合別に差別をするという意図は全くないということでございます。
 それからもう一つの事例でございますけれども、これは組合員に管理者が個々に組合脱退を徒心思しておる、A組合から脱退しB組合に入れということを管理者が慫慂しておるというようなことでの一連の不当労働行為の疑いがありとしての申し立てがございます。これにつきましては非常に微妙なやりとりまであると思いますけれども、私は背景には、ほとんどの不当労働行為事件は四十五年あるいは四十四年という春闘を控えましての非常にストライキが多発した前後におきます管理者の、違法なストライキにはぜひ参加しないようにしなさい、違法な闘争はこれは国鉄の再建と反対のものであるということをあらゆる機会に、あらゆる場所において説得しておったのでございますけれども、そういったような管理者の、不当な、違法な行動は慎むようにということの言動が相手側に、それはA組合からB組合に移ることを示唆したというふうにとられておる見解が多いかと思うわけでございます。
 この点につきましても管理者におきましては、組合批判、そういった運動方針なり闘争方針なりということにつきましての管理者の見解を十分に申し述べ、労使間でそういった問題をやはり議論するということが国鉄の今後の労使関係の将来のためにもいいことなんだということで私どもは指導してまいっておるわけでございますけれども、そういった議論の中で不当労働行為に当たる、これが該当するのだというふうに見られた件数は多いかと思います。この点につきましても、すべての点で争っておるわけでございます。
#13
○有馬委員 当局側の組合批判の問題についてお尋ねいたしたいのですが、国労なり動労なり、あるいは鉄労なり三つの組合がございますが、組合の運動方針について、考え方について、たとえばある組合が階級闘争至上主義をとっておるというような場合に、管理者側がこれを批判をするというようなことは当然許されるし、不当労働行為とは関係のないことだと思いますが、こういう点について、どういう見解をお持ちかお尋ねいたします。
#14
○真鍋説明員 国労、動労は、たとえば階級闘争路線を敷いておる組合ということが言えるかと思いますけれども、これにつきましての、いわゆる闘争主義ということにつきましては、私どもは、やはり国鉄の労使は協調していかなければならないんだ、闘争主義では国鉄はよくならないんだということは事ごとに主張をいたしておるわけでございます。そういう中で生産性運動も行なっておるということでございまして、私どもは、あくまで国鉄の労使関係は、労使の協調の中に将来があるというふうに思っております。
  〔発言する者多し〕
#15
○森山委員長 静粛に願います。
#16
○有馬委員 不当労働行為問題はなかなかデリケートな問題でございますから、その辺の限界、考え方をきちっとしてかかったほうがいいと思います。いずれにしても、労働組合に都合の悪いことを言って悪いということは全然ございませんので、主として組合内部に干渉を行なうという場合に、支配介入という問題が出てくるんだろうと思います。これは批判すべきところは、やはり当局も批判し、国民も批判するということは、労働組合が大きな社会勢力として成長した今日においては当然あるべきことだと思うわけであります。
 そこで先ほどの問題に返りまして、生産性運動について総裁の考え方をお尋ねしたいと思うのですが、総裁は、先ほど純粋な生産性運動を国鉄再建のために展開をしていくんだ、あるいはまた別の機会の発言を見ておりますと、経営哲学として、この運動を展開していく、こういうふうにおっしゃっておるようでございます。
 そもそも生産性運動というのは、私も初期のころタッチしたのでございますが、昭和三十年に生産性本部ができまして、自来今日までこの運動は展開され、最初は総評その他組合側の非常に強い抵抗もございましたけれども、今日では各企業、日本経済の中にほぼ定着した一つの運動形態をとっておるものと思っておるのでございますが、この生産性運動を、国鉄が左前になった最近におきまして当局が取り上げた経緯をお尋ねしたいのでございます。
 私はもっと早くこの運動を取り入れるべきではなかったか、すなわち国鉄の業績が上昇する、成長するような時期にこそ、この運動をもっと着実に取り入れておったほうがよかったんではないか、この経緯をひとつお尋ねいたしたい。と同時に、先ほどから問題になっておりますこの運動と不当労働行為との関連が具体的に問題になっております。総裁も救済命令は受け入れる、すなわち不当労働行為のあったことは認めて、これを改めるということが基本的な態度だと思いますが、そういう事態に立ち至った今日におきまして、総裁の考えておられる生産性運動というものは当初の考えよりも多少軌道修正を要するんではないか。これはいろいろ表現のしかたはあろうかと思いますが、私はやはり率直に言って、改めるべきことは改め、反省すべきところは反省して差しつかえない。基本において間違いないならば、生産性運動を積極的に推進されてけっこうだと思いまするが、やはり具体的な場面においていろいろと誤解も生じ、また不当労働行為の事実も出ておりますので、ある程度の軌道修正は必要ではないか、こういうふうな感じもいたしておりますので、この生産性運動を国鉄当局が昨年来強く推し進めるようになってきた経緯と、今日の時点においてこれを多少の軌道修正をする必要があるんではないか、この二点についてお答えいただきたいと思います。
#17
○磯崎説明員 国鉄がいわゆる左前と申しますか赤字に転落いたしましたのは昭和三十九年でございまして、それ以後毎年膨大な赤字を累積いたして今日に至っておるわけでございます。こういうふうになりましたのは、いろいろな原因がございまして、とれを除去すべく昭和四十四年に国会の御承認をいただきまして、国鉄再建の臨時措置法をおつくりいただいたわけでございまして、その臨時措置法は先ほど申し上げましたとおり、まず国鉄自体の努力、それから国民の御協力と政府の援助、この三本を柱といたしまして再建に取りかかったわけでございます。ちょうどそれと前後いたしまして、これは全く自然発生的に各地でもって国鉄を愛する運動、あるいは国鉄をよくする運動、あるいは国鉄再建運動と、さまざまな名称ではございましたが、そういう運動が全国に起こってまいりました。それが昭和四十四年から四十五年にかけまして非常に盛んになってまいりました。たまたまそのころは御承知のとおり、機関車乗務員の一人乗務の問題で年間に十数回ストライキ類似の行為があったというふうなことで、非常に世論のひんしゅくを買い、また世論から非常にしかられたわけでございまして、それらに対しまして国鉄を再建しなければならないという運動が起きてきたわけでございます。その後それをやはり組織的にする必要があるということで、本来ならば先生のおっしゃったとおり、もっと民間企業のように国鉄が隆盛だった時分に、まだまだ上り情勢だった時分に取り入れるべきものであったと存じますけれども、おそまきながら昭和四十四年から四十五年にかけましてその生産性運動を中に入れたわけでございます。したがいまして現在やっております生産性運動は、大多数は国鉄をよくしたいという従業員の純粋な気持ちから起こっている運動でございまして、先ほど申しますとおり国鉄に対する愛情と利用者に対する誠意、この二つを軸といたしまして種々な具体的な運動が展開されているわけでございます。それがいままでの経過でございます。
 さらに、いまの第二の御質問で、今後生産性運動の軌道を修正する必要があるんではないかというふうな御質問でございました。私は、その点は多少ことばの問題もございますので、この際、明確に申し上げておきますと、先ほど申し上げましたとおり純粋な生産性運動がいわゆる不当労働行為によって歪曲されて理解された事例があった、曲がって理解された事例があったということは、はなはだ遺憾でございます。もっと具体的に申しますれば、生産性運動にくっつくべからざるものがついて、そのために何か生産性運動というものが非常に曲がったものであるというふうにとられたことは、たいへん遺憾な点でございます。私は、この際生産性運動を純粋なものに戻すと申しますか、本来の軌道に戻すという意味の軌道修正はいたしたいと思っております。しかしながら、いままでやってきた本来のものを曲げるという意味でなしに、歪曲された部分があり、歪曲された事例があれば、その事例は当然修正しなければいけませんが、本来の生産性運動の純粋なルートというものは、私はそのまま持っていっていい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#18
○有馬委員 国鉄当局が展開しておりまする生産性運動については、こういうパンフレットをいただいてよく読ませていただいたわけでございますが、生産性運動そのものについては私も異存がございません。この運動の理念に従い、またこの運動が大きな柱としておりまする三つの原則が世界共通に言われておるのでございまするが、一つは完全雇用、一つは労使の協議制、一つは成果配分、こういう三つの原則がありますことは御承知のとおりでございます。これを国鉄企業に当てはめました場合に、どういうふうにより具体的に展開をしていくのか、こういう点が問題になると思いますが、その中でも私は一番重要なことは、労使の協議制度をこの際確立することではないかと思うのでございます。当局が出されたこのパンフレットによりましても、その二十九ページに、「私たちは、国鉄の労使が信頼関係の上に立った強い協力のもとに、一日も早く労使協議制を行なえるようにと希望しているしだいであります。」こういうふうに言い切っておるところを見ますと、総裁は、この労使協議制を必ず制度として実施をしたいという希望を強く持っておられるのだと思います。また、組合の一つでございます鉄労の運動方針を見てみますと、とこにも「労使関係のあり方であり、そのためには、どうしても労使協議制の確立が必要であります。」というふうに、鉄労も労使協議制を積極的に提唱しておるように私は受け取っておるのでございます。
 そこで、この労使協議制を確立するにあたって、二、三お尋ねをいたしたいのでございますが、総裁がお考えになっておりまするこの労使協議制は、どういう性質のものであるかという点でございます。と申しますのは、こういった協議制については、御承知のようにイギリス型、ドイツ型いろいろな型があります。結局ドイツ型のように経営協議会という考え方で、経営参加の色彩を強く持った協議会に将来はしていこうというふうに考えておられるのか、あるいはイギリス型の単なる諮問、協議の体制としての労使協議制を考えておられるのか、その点をお聞きしたいのでございます。このパンフレットによりますと、総裁のお考え方としては、産業民主化の見地から官僚制の打破と職員の経営参加を必要とする。経営参加制度はぜひ産業民主化の見地から打ち立てていきたいということを別の場面で述べております。そこで私は、これから確立しようとする労使協議制の考え方が、この経営参加という問題をめぐってどの程度まで経営参加の色彩の濃い制度として考えられておるのか、その点をまず総裁にお尋ねいたしたいと思います。
#19
○磯崎説明員 ただいまの労使協議制でございますが、実は昭和二十二年から三年にかけてだったと思いますが、国鉄労働組合がまだ連合体であった時分だったと思います。そのころに私ども経営協議会を持ったことがございます。いろいろ問題もございまして二、三年やりましたけれども、結局何か非常に形式だけになってしまったということでやめたことがございます。そのときは中立と申しますか、第三者の方に三人入っていただきまして労使協議、主として名称は経営協議会という名称でやった経験がございます。その後ずっとそういう形式的なものはとだえておりますけれども、実質的にいろいろやっておりますので、現状につきまして真鍋常務から少し御説明させていただきます。
#20
○真鍋説明員 ただいま組合と当局が労使関係で基本的な問題につきまして話し合う場所は、それぞれ持っております。たとえば予算が通りましたような時点でのその年度内の当局の考えます諸計画あるいは基本方針がきまりましたときの場所での当局の考え方を申し述べて、組合の意見を聞くというような形あるいは監査報告書が出ましたような場合に、それにつきましてこういうことであるということで持ちます場所がございます。それぞれ労使懇談会というような形でございますけれども、名前がついておりませんが、そういう形で現在は非公式な形が多いわけでございますけれども、慣例的に労使で話し合っておるというのが現状でございます。
#21
○有馬委員 せっかくいい制度を提唱されて実現せんといたしておるようでございますが、要は、鉄労のほうは当局の考え方に乗ってくると思いまするけれども、国労、動労これは基本的な姿勢が現在のところは食い違っておりますので、せっかくりっぱな制度にどうやってこれを乗せてくるのか。国労、動労の現実的な協力がなければ、この制度は打ち立てにくいと思うのです。その辺の見通しがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
#22
○真鍋説明員 確かに鉄道労働組合は労使協議制を志向しておる運動方針を持っております。この中では経営懇談会という形で諸種の問題を労使で話し合う正式の場所があるわけでございます。国労、動労は労使協調という路線をとっておりませんので、その中で労使で話し合う場所を持とうではないかということを実はよりより話はしておるわけでございますが、現在の段階では、先ほど申しましたような非公式な形で当局の考え方を説明しておるというにとどまっておるわけでございますけれども、今後十分に話し合いをいたしまして、そういった形での協議制を持つということを志向する中で、労使の信頼関係を回復したいというふうに考えておるわけでございます。
#23
○有馬委員 次に、国鉄の財政再建に関する基本的な問題について総裁にお尋ねいたしたいと思います。
 四十四年の九月十二日に、基本方針はすでに閣議の決定を見ておりますが、これに基づいて昨年の二月に経営の基本的な計画というものを国鉄当局がおきめになっておる。これによりますと、当時は要員規模の削減を約六万人、こういうふうに見込んでおるようでございますが、今日の時点におきまして、この経営計画はどういうふうに変わってきておるのか、変更されておるのか、その点を、これは真鍋常務でもけっこうでございますが、まずお答え願いたいと思います。
#24
○真鍋説明員 要員計画でございますが、当初は、お話がございましたように約六万人の削減ということで出発をいたしたわけでございます。その後、人件費のアップが、当初見込みましたよりも大幅に上がってくるという状況の中で、さらにこの問題を練り直す必要があるということになりまして、先般の諮問委員会の答申におきましては、約十年間で十一万人、要員規模を現在の四十六万人から三十五万人にすべきであるというのがその骨子の計画になっておるわけでございます。現在この計画に基づきまして、私どものほうは年々の退職者を埋めないということを原則にいたしまして、十年間で十一万人、最終の五十四年の年度当初には三十五万人の要員規模で国鉄を再建させるということを基調に、各種の合理化事案あるいは近代化事案を実施中であるわけでございます。
#25
○有馬委員 そこで、国鉄の再建ということが当面一番重要な問題でございますが、この閣議決定の基本方針によりますと、総合的な交通体系を確立していくんだ、またおたくの基本方針、経営計画によりましても、国鉄に対する国民の評価といいますか、国鉄の役割りについて、最近さらに評価が高まってきておる、こういう事態にも直面いたしておりますので、私は再建計画が、要員を削減し、営業キロ数を半減することによって、すなわち縮小再生産によって再建をはかっていくという基本的な考えで、これはまあある程度やむを得ないところもございますけれども、こういう再建計画では、労使関係は暗くならざるを得ないのでございます。要員規模の縮小に伴って首切りはいたしません、配置転換で何とかしのぎます、こういうことのようでございますけれども、どうしても人減らしをするという再建計画は、これは民間の企業においても非常に暗い労使関係が、ややもするとそれだけでも荒れてくる、こういう事態でもございますので、私はやはり先ほどの労使協議体制というものをしっかりと固めて、国鉄職員四十六万のエネルギーを総結集して国鉄の再建に当たらなければいけないんじゃないか、そのためにはいままでの縮小再生産的な再建方式をもう一度再検討する必要があるんではないか。今日の道路事情、自動車の状況を見ますと、鉄道が再度見直されてきつつある時代でございます。ぜひ国鉄の総裁といたしましては、四十六万従業員のためにも新たな総合的な交通体系を打ち立てて、その中に占める国鉄の地位というものをもう一度再検討する必要があるのではないか、この新たな活路を見出していく努力をしないと、いつまでたっても暗い労使関係だけが残ってくる。これは完全に理想的なものはできないにしても、やはり新たな活路を切り開いていくという総裁の努力がなければ、方針がなければ、四十六万の多くの職員はついていけないと思うのでございます。その辺に対する総裁の御見解をお尋ねしたいと思います。
#26
○磯崎説明員 冒頭に申し上げましたとおり、百年の歴史のたちました国鉄の中には、将来とも非常に国民のお役に立つ部分と、すでに過去の遺物になった部分と二つあると思います。と同時に私どもは次の来たるべき世紀を目標といたしまして新しい形の鉄道の建設に邁進しているわけでございまして、御案内のとおり大阪−岡山間の新幹線は来年の三月十五日に開業いたします。また岡山からさらに博多まで約五百キロ、これは昭和五十年の春には全通させる見込みでございます。また東京から盛岡五百キロ、東京−新潟三百キロ、これは近日中に政府の御認可を得ていよいよ具体的な工事に着工いたし、また東京−成田間の新幹線も現在工事の内容を検討中でございます。さらに御承知のとおり青函トンネルはすでに着工線に入っておりまして、その青函トンネルの完成とほぼ時期を同じゅういたしまして盛岡−札幌間約五百キロが完成いたしますように建設に着手する予定でございますし、さらに東京から北陸を回りました北陸の新幹線、あるいは博多から鹿児島までの九州の新幹線、これらはすべていま具体的な工事の段階に入らんとしつつあるわけでございまして、私どもは最小限新幹線を四千キロ、おおむね昭和五十三年から五十四年までに新幹線を四千キロつくっていく、そうして日本の大動脈となって、新しい二十一世紀の国民の負託にこたえるということを念願としつつ、現在大きな体質の改善をやっている最中でございます。もちろん先生のおっしゃいましたとおり、そういった新幹線と、高速道路あるいは飛行場、いろいろ総合的に検討されなければならないと思っておりますけれども、おおむね現在の方針といたしまして、今後の公害その他の事情から申しまして、やはりここで鉄道を見直さなければいけないという全般的な世論の支持のもとに新幹線の建設に着手し、すでに着々とその実績をあげておるわけでございます。と同時に私どもはやはりすでに十九世紀的なものになって、ほとんど利用者もないといったような山間の鉄道あるいは地方交通に携わる鉄道につきましては、これは地域の市町村道の改善あるいは地域の過疎バス等との関連からいたしまして、一体どっちが必要なのか、バスが必要なのか、鉄道が必要なのか、道路がいいのか、マイカーがいいのかといったような種々の、これも総合的な見地から検討していただいて、そして道路でいいものは道路にする、あくまでも鉄道でやらなければならないものは、――どうしても企業としては成り立たない、しかし成り立たなくてもソシアルミニマムとして鉄道を維持しなければならないとすれば、それから出てくるいわゆる経営上の赤字は、これは国鉄といいますか、国鉄の利用者がしょうわけにいかない。大部分は当然政府なり地方自治体からめんどうを見ていただいて、そして私どもとしては運営をやるという形にしていただきたいということを現在政府にお願い中でございます。そういう意味で私どもは、スクラップ・アンド・ビルドということばがございますけれども、ビルドのほうはまあおかげさまで非常に順調に進んでおりますけれども、十九世紀的なもののスクラップ化につきましては、なかなか地方の総合交通体系との問題がございまして、どれが一番いいか、鉄道がいいのか、自動車がいいのかということについて、必ずしも地域的にいろいろ意見が一致しておりません。いま、それにつきましては、各地域ごとに地方の方々と御相談いたしておるわけでございますけれども、ただいま先生がおっしゃいましたとおり、やはり私といたしましては、四十数万の職員をかかえ、この職員がほんとうに意欲を持って前進できるようにするためには、将来の国鉄のあり方、すなわちいま考えております新幹線網を中心とした新しい鉄道の体系というものを常に念頭に置きつつ、新しい施策をやっていきたい。これは私の鉄道人としてのほんとうの決意であり、またほんとうの希望であるということを申し上げます。
#27
○有馬委員 鉄道を見直すいい時期に際会いたしておりますので、ぜひ総裁のいま述べられました固い決意のもとに、ひとつ国鉄の地位というものをもう一度検討願いたいと思うのでございます。
 最後に、私は先ほどからいろいろ当局側と御質問をかわしたのでございますが、いろいろな問題がございますけれども、結局国鉄を再建するのは国鉄の当局と労働組合と従業員でございます。そこで、二年前に決定を見ましたこの国鉄の再建ブランを見ますと、どうも財政再建というふうな表題がついておるとおり、そろばんのつじつまを合わせる、収支の均衡をはかる、これは企業経営ですから当然重要なことではございますけれども、財政再建ということにのみ目を奪われて、人間のことを忘れておるという感じが強いのでございます。これから労使双方の間において、何をやるにおいても信頼感の回復をやらなければいかぬ、人間性の回復をやらなければいかぬ、相互の信頼ということが土台になるわけでございますので、二年前にせっかくつくった再建計画ではございますけれども、財政再建じゃなくて、人間関係の再建というつもりでひとつ取り組んでいただきたいと思うのでございます。この点について、最後に総裁の御決意をお伺いさしていただくとともに、いままでじっくりお聞き取りいただいた労働大臣には、今後国鉄の労使双方に対してどういうふうにこの事態を収拾していくのか、この辺についての心がまえがございましたならば、お聞かせ願いたいと思うわけでございます。
#28
○磯崎説明員 ただいま先生のお話のとおり、国鉄の財政再建ということばを使っておりますけれども、これはとりもなおさず国鉄自体の全面的な再建というふうに私ども解釈いたしておりまして、単に収支のバランスをとるという意味の再建でなしに、国鉄全体がどうやったら二十一世紀の国民の負託にこたえ得るかということを念頭に置いて、この再建をやっていかなければならない。それには四十数万という職員のマンパワーを使う、総力をあげて当たるということが一番大事なことであり、これが一番国民に協力を得る道であるというふうに私常々思っておりますけれども、私微力にしてなかなかその域に達しておりませんが、何とかここ近い将来においてそういった形でもって国鉄が再建できるように、全力をあげて全職員とともに検討していきたいというふうに思っております。
#29
○原国務大臣 いま有馬さんの御質問がございましたが、私も、国鉄再建の基礎は両者の人間性の回復、まことにいいことばでございまして、賛成でございます。物だけでは解決しない、人間関係、わけても双方の、労使間の信頼感を回復することが大事である、こう考え、せっかくその仲介に乗り出しておるところでございますが、まだ事情を聞いただけでございます。これをそのまま放任しておきますと、両者間の感情はますます悪化し、悪循環が続くと思いますので、すみやかにこの両者の信頼を回復して、労使関係が正常なものに返るように、そして、いわゆる正常な形において話し合いをして進んでいくように仲介の労をとりたい。どういうことをもって仲介するか。ようやく先週労使双方から事情を聴取したばかりで、いまその具体案について鋭意検討を重ねておりますので、私どもは心から労使関係が正常化することに誠心誠意手助けもするし、仲介の労もいたしたい。これは単なる小さい企業や民間企業と違いまして、一億国民に重大な関係のある国鉄でございますので、一そう政府としても放任できませんし、全力を傾けて正常化に向かって検討する考えであります。
#30
○有馬委員 どうもありがとうございました。
#31
○森山委員長 次に、田邊誠君。
#32
○田邊委員 今日国鉄が置かれておる現状はまことに憂慮すべきものがあることは、いまの質問、答弁でも明らかなとおりです。国鉄が現在かかえている構造的な赤字、それを一つの起点として起こっておるところのいろいろな内部的な問題、あるいはまた事故の多発化、特にわれわれが心配をいたしておりまするのは、ぬぐうことのできない労使の間の不信感、こういう状態というものがそのまま続きまするならば、国鉄が目ざすところの再建も、あるいはまた国民の足を守るところの安全輸送も、私はとうてい達成できないと思うのです。そういった点から見て、この現状が何らかの形で打開をされなければ、そのことの持つ意味は、国民の不幸であると同時に、また国鉄自身の不幸でもあると思うのです。しかも、総裁はいろいろと弁明をされ、あるいは強弁をされてきておりまするけれども、これらの、いわばいま問題になっておるその根底にあるものが、国鉄が進めてまいりましたマル生運動であることは明らかなとおりです。いま、いかに総裁のことばをかりましても、この生産性向上運動という国鉄が進めておるところの現在のマル生運動自身を変えなければ、問題の解決にはならないと私は思っておるのであります。そういった立場で私は具体的な問題について総裁にお伺いいたしまするので、あなたはひとつ、抽象的な言い回しや、私ども野党の立場からの質問というかまえの中で、あるいはまた数多くの傍聴者やマスコミの人たちがおるという、そういった気ばった気持ちでなくて、いまこそ国鉄の今後のために、謙虚な気持ちで、振り出しに戻るという立場の上から御答弁をいただくことを私は心からお願いをしたいと思うのです。
 さきに公労委から、御案内のとおり、国鉄労働組合から申請のありました不当労働行為についての救済命令が出されました。これに対して、当初、慎重に対処し、三十日間の余裕があるから、この間にいろいろな事実関係を調査いたしたいと、きわめて挑戦的なことばを吐いておりました国鉄当局が一転いたしまして、今朝公労委の救済命令に従うという、こういう決定をしたやに聞いておるのでありますけれども、私はもちろんこれは第三者機関が調査をいたしました結果に基づく公正な判断について、これに服することは当然なことだと思います。したがって、私がお聞きをいたしますのは、この公労委の命令に服したということは、すなわち公労委が具体的に記述をいたしておりますところの不当労働行為について、これはあなた方が率直に認めたというふうに解してよろしゅうございますね。
#33
○磯崎説明員 ただいまの先生のお話でございますが、まず根本的な立場といたしまして、私も何とかやはり国鉄の再建をしなければならぬ。それには一体何が重要かということにつきましても、ずいぶん考えてまいりました。やはり先生のおっしゃったとおり国鉄の持っておる構造的な赤字、これが一つの大きな原因であることも確かでございます。またそれに伴って、今後の労使関係が非常に重大であるということも、私も全く賛成でございます。
 で、先般公労委から救済命令が出ましたとき、私はすぐ記者会見いたしましたが、たぶん御案内と存じますけれども、ちょうど労働大臣に招致いたされておりまして、私は、実は救済命令を熟読玩味するひまなしに、時間的余裕なく、それまで国会の委員会に出席しておりましたので、委員会からすぐ大臣のところへ伺い、大臣との会見が済みましてすぐ記者会見ということで、救済命令を十分読むひまなしにああいうふうな話になったわけでございまして、その時点におきましては私はやむを得なかったと思っております。私は土曜、日曜二日間かかりまして、夜も寝ずに考えました。どういうふうにしたら、この全般がよくなるかという非常に高い、違う立場で、単に一つ一つの事象をどうするこうするという立場でなしに、やはり原点に立ち戻ってこの問題を解決しなければいけないというふうな帰結に私はなりました。したがって昨晩いろいろ文章を書きまして、けさ九時半に新聞発表した次第でございます。したがって、私はその公労委の内容の一つ一つがどうこうというふうな時点でなしに、やはりこの労使間のお互いの不信を払拭するためにどういう立場に立ったらいいかということ、並びに職員全部が自分の信念と自分の自覚で、ここで新しい国鉄再建に踏み切るにはどうしたらいいかという一つの起動力、原動力としてお受けするという気持ちになったわけでございまして、一々の問題について詳しく検討し、云々するだけの余裕なしに、私は全体的な立場でこれを受けたわけでございます。
#34
○田邊委員 あなたが公労委命令を受けたことについての気持ちは、私は察するにやぶさかではありません。しかし、公労委がいっておるのは、抽象的に国鉄労働組合あるいは動力車労働組合等に対して不当労働行為をしてはならないということではなくて、過去の一つの具体的な事実の上に立ってそういった不当労働行為はしてはならぬのだ、したがってそういった面については陳謝をしなさいという、こういういわば一つ一つの現象の積み重ねの上に立っているということ、このこともあなたは御承知のとおりでございます。したがって、一つ一つの精密な検討がないと言われますけれども、しかし全体的に見まして、過去におけるこの種の不当労働行為についてはこれは誤りである。したがってこの際、われわれとしては公労委の命令に服する。これが私は当然の成り行きであろうと思いますけれども、そのような立場で命令に服したということでございますね。
#35
○磯崎説明員 もちろん公労委が過般出されました命令は、いま先生のおっしゃった具体的な一件一件についてでございますけれども、私はその精神は全般的な問題だというふうに解釈し、また国鉄総裁としては、全般的な立場からそれを受けるとか受けないとかというふうな感覚で処理すべきものだというふうに思っております。
#36
○田邊委員 事実は否定いたしませんね。
#37
○磯崎説明員 公労委の命令にかかりました事実はそのとおりであるから、受けるということでございます。
#38
○田邊委員 そういうあなたの認識の上に立って、今後ぜひ正しく対処してもらいたいと私は思うんです。したがって、この公労委命令に服したという現在の国鉄の立場からいえば、私は二つあると思うんですね。一つは、この不当労働行為を下部の管理者がなしている原因は一体どこにあるのか、こういったことが全国随所に起こっているというこの事実は、一体どこに原因があるのか、これを究明することが、私は国鉄当局の責任であると思うのです。
 もう一つは、やはり泣いて馬謖を切るということばがありますけれども、あなたのかわいい部下であり、あなたの忠実な、いわば運動の推進者だったかもしれないけれども、具体的にこういった不当労働行為をやったというこの責任者、この当事者については、やはり信賞必罰の態度をとることが、私は今後国鉄が姿勢を正す第一歩であると思うのでありますが、この二つの問題についていかがですか。
#39
○磯崎説明員 第一の、こういう不当労働行為のよって来たる原因は何かということを究明しろとおっしゃる、私はその点は確かに究明しなければいけないというふうに存じております。もちろん、現象的にいろいろ違ったことはございますけれども、新聞等によりますと、全国相当あるというふうにいわれております。ですから、これらにつきまして私どもといたしましては、それが先ほどお話の出た生産性運動と関連して、生産性運動が不当労働行為によって歪曲されてしまったということを非常に遺憾に思っておる次第でございます。したがって、今後の不当労働行為につきましては、十分今後こういった運動と混同され、そして純粋な生産性運動が曲解されることのないようにしなければいけないという角度でもって考えてまいりたいというふうに思っております。
 また、各具体的案件の管理者の処遇につきましては、私といたしましては、いまいろいろ考えております。もちろん、いろいろ今後ともケースが出てくるかとも存じますけれども、私はケース・・バイ・ケースによりまして、一件一件具体的、総合的な措置を講じてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
#40
○田邊委員 あなたは国鉄の組合に対しても、国労なり動労についても、違法行為はしてはならないとよく言っております。これに対しては、かなり厳重な処分をしておるではありませんか。そうすれば、違法行為をしたという事実の上に立って公労委命令が出ておる以上、これをやったところの当事者の責任に対して、あなたがやはり厳正な処分をすることは、理の当然だろうと思うんです。いままであなたがやってきた方針と、私はその点では合致すると思うんです。したがってケース・バイ・ケースといいますけれども、少なくとも今回の公労委の救済命令にのっとるところのこの当事者については、あなたは厳正な処分をいたしますね。
#41
○磯崎説明員 ただいま申し上げましたとおり、具体的事例に従いまして、具体的な適切な措置を講じてまいりたいというふうに思っております。
#42
○田邊委員 持って回ったような言い方を私はぜひやめてもらいたいと思っているんです。あなたがいかに抽象的なことを言い、そしてまた、そういう何かばく然たることによって包括的な答弁をされても、こういう具体的な事象というものに対して一つ一つ正しく対処されることなしに、あなたがいかにそういう抽象的な答弁をされても、私は今後のいわば利益にならない、こういうふうに思っておるのであります。いわば不当労働行為の根源をなすものは一体何かという質問に対して、あなたはいみじくもマル生の運動が曲解されていると言いました。私は、この点に対してまた質問をいたしたいと思いますけれども、もう一つ、公労委の命令が出されました以前に、九月十四日に札幌地裁において仮処分の決定がなされたことは御案内のとおりであります。この国労苗穂支部の組合に対する不当労働行為の事実に対して、仮処分の決定がなされたことは御案内のとおりであります。したがって、私は公労委の命令が第三者の機関の一つの公正な判断であると同時に、札幌地裁のこの仮処分の決定についても、第三者のいわば一つの公正な判断として国鉄当局はこれに服することは当然の成り行きだろうと思うのであります。したがって、総裁、あなたはこの仮処分の申請をいたしました趣旨と、この仮処分の申請をいたしましたところの事由について適当と認められますか。
#43
○真鍋説明員 九月十四日の札幌地裁で出しました仮処分につきましては、その中身が不当労働行為を行なってはならないという仮処分でございます。これにつきましては、当然のこととしまして私どもは当然服することでございますが、ただ事実関係につきましては争ってきたところでございまして、最終的にこれをどのように考えるかということは現在検討中でございます。
#44
○田邊委員 そういう返答があるかと思っておったのです。この仮処分の決定というのは、いわゆる不当労働行為をしてはならないという主文だけで成り立っておるのではありません。その前文において、この申請の趣旨、申請の事由を相当と認める上に立って不当労働行為はしてはならないという、こういう主文が成り立っておることは事実でありまして、主文とその事由とを切り離して考えることは当然できないのであります。したがって、この仮処分の決定については、国鉄当局は当然の成り行きとしてこれに服する気持ちはありますか。
#45
○真鍋説明員 これにつきましては現在検討中でございます。
#46
○田邊委員 そういうあなたの態度がどのくらい国鉄を誤らしめてきたか。公労委の決定についても、当初は総裁にしても真鍋理事にいたしましても、きわめて高姿勢、きわめて挑戦的な言動を吐いておったけれども、いわば政治的な情勢、国会におけるところの追及等をにらんで、今朝服することに態度を決定された。あなた方はこの中身については争うというけれども、裁判所は、いわば抽象的に不当労働行為をしてはならぬぞという、こういう訓示をしたのではないのですよ。相当な理由があって申請をした。その趣旨を相当と認めて、不当労働行為をしてはならぬというこういう緊急的な短時間におけるところの決定をしたことはあなたも御承知のとおりであります。とすれば、この仮処分の決定に対して、公労委の命令と同じ第三者の公正な判断という立場に立てば、早急の機会にこれに服する態度を表明すべきであると私は考えておるのですが、そういった態度をおとりになる用意はありますか。
#47
○真鍋説明員 仮処分に至ります経緯につきましては十分承知しておるわけでございますけれども、私どもの主張してまいりました事実と、仮処分で事実関係につきましてどのような法律的な判断になるかということを私どもは慎重に検討しておるわけでございます。その結果、これにつきまして服するか、あるいはさらに争うかということをきめたいということは、事実関係において私どもは考えておるところでございます。
#48
○田邊委員 しかし、仮処分の決定は現在生きておる。あなたのほうであらためて争いを起こさない限りにおいて仮処分の決定は生きておる。したがって、この仮処分の決定を尊重して下部に対して不当労働行為はしてはならないという措置をすることは、当然国鉄の任務である。そういう措置をしましたか。
#49
○真鍋説明員 繰り返しになりますけれども、仮処分の中では、事実関係につきまして争ってまいりました事実につきましての理由が明らかにされていないということでございますので、私どもは、その事実関係につきまして私どもが主張してまいりました点と、組合が主張してまいりました点との違い、あるいは法律的にどういうふうにこれを今後考えるべきかというような点につきまして検討しておるというわけでございます。
#50
○田邊委員 委員長から――実は答弁を簡潔に、しかも私の質問に対して的を射た答弁をしてもらいたい。仮処分の決定は現在生きておる。したがって、あなた方は当然この決定に対して下部に、仮処分の決定に基づいて不当労働行為をしてはならないぞという、そういう趣旨の徹底をすべき義務がある。それをしたかどうか、こういう質問であります。
#51
○真鍋説明員 この点につきましては、北海道総局を通じまして、そういう趣旨の徹底をしております。
#52
○田邊委員 下部の管理者はそれを聞いておらない。仮処分決定後において、あらためてそういう不当労働行為はしてはならないという趣旨の徹底をされたということを下部の職場長等は聞いておらぬと言っておるのであります。いつ具体的にどういう方法でもってこの趣旨の徹底をいたしましたか。あらためてひとつ答弁してもらいたい。いま答弁できなければ委員長を通じて委員会に提出してもらいたい。
#53
○真鍋説明員 総務部長会議の席でも申しましたし、その前に電話で連絡しておりましたけれども、具体的に何日にどういうことということは、追って具体的に資料として提出いたします。
#54
○田邊委員 あらためてひとつ文書で出していただくと同時に、あなたが今月の一日ですか総務部長会議を開いて趣旨の徹底をしたそうだけれども、それに対しても、どういう趣旨の徹底をされたのか正確にお答えをいただきたいと思います。いま新聞等を通じて、真鍋常務理事が不当労働行為と疑われるようなことはしてはならぬぞと言ったということは、すなわち巧妙に不当労働行為をやれという、従前にも増して陰険な不当労働行為をやれというふうに、すべていわれておるのです。これはマスコミが言ったりわれわれが感ずるだけではない。事実そこに続々としてさらに陰険な、悪らつな、悪質な不当労働行為が行なわれている。この現実の事実をもってすれば、あなたがこの処分決定を受けて不当労働行為をしてはならぬぞということは、実は裏に重大なものがあるということは世間一般にすでに定説であります。あなたはどう考えますか。
#55
○真鍋説明員 総務部長会議の席におきましては、不当労働行為に当たる行為は従来もしないようにということを指導してきたわけでありますけれども、特に細心の注意をもって不当労働行為に当たる行為を起こさないように指導してもらいたいという趣旨で話したわけでございますが、従来善意で行ないました発言でありましても、受け取る者が、たとえばこれはA組合からB組合に移れというふうに受け取る場合もございます。それをそういった注意なしに発言をいたしておりますと、これは不当労働行為に当たるということの申請をされる危険もあるわけでございます。本人がたとえこれはそういう意図がないと言いましても、相手によっていろいろな受け取り方があるんだということを十分に注意しなければいけないということも含めまして細心の注意をいたしなさいということを申した一わけでございます。特に不当労働行為につきましては、これは本年の初めから、春闘の前から不当労働行為事件については十分に徹底するようにと注意してきたわけでございますけれども、特に総務部長会議を開きましてやりました中心議題は、そういったことについて末端に十分徹底するようにということであったわけでございます。
#56
○田邊委員 さきに総裁は、このマル生運動と不当労働行為は全く異質のものである、こういう答弁をされました。しかし残念なことに、あなたがいかにこの場所でもってそういう答弁をされても、具体的な事象の中では、この生産性運動というものと不当労働行為、その中における、さっきの質問にありましたけれども、一番基本であるべきところの組合に対する支配介入事件が続出している、こういうことは疑いない事実であります。いま常務理事は受け取り方によっては不当労働行為になる、私はそういう受け取り方によって不当労働行為になるようなものを申し上げない。あなたのほうで、そのものずばり不当労働行為になる具体的な事実を申し上げる。しかも総裁、この際私は一言だけ、あなたの意図と相反してマル生運動と不当労働行為を結びつけておるというこの現実の事実については、あなたは残念だけれども、認めますね。
#57
○磯崎説明員 その点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、もう一ぺん繰り返させていただきますと、これまで純粋な生産性運動がいわゆる不当労働行為によって歪曲して理解された事例があったことははなはだ遺憾であります。先ほど申し上げましたとおりであります。
#58
○田邊委員 それはあなたのほうとしては誤りでありますね。誤りでありまするから、当然改めなくちゃいけません。あなたは具体的な事実を知っておいででしょうか。私はここでひとつきわめて問題をしぼって、具体的な事象を申し上げたい。
 札幌の電力区でもって、電力区長の名前による「札幌電力区重点管理目標」というのを七月の十六日に決定をして、下部の管理者に流しております。この札幌電力区の区長名によるところの管理目標は、いまあなたが生産性運動と不当労働行為は全く別個のものだと言いましたけれども、残念ながら全く同一のものであり一心同体のものであるということを、具体的に文書で明らかにしております。
 この管理目標の中の目標、一、生産性運動の拡大、実施期、四十六年四月から四十七年三月、実施の方法、文書でもって「現在一般職員の意志の盛り上りから、生産性運動の核組織として「あすなろ会」(現会員五十四名)が生まれ各自が今日より明日がより良い様に、自分の仕事を進歩させ、その中に誇りと生きがいを見い出すとともに、職員一同が「国鉄は、われわれの手で再建するのだ」という、運動の輪を広げ意欲に燃えた職場の樹立をはかっている。今後の運動の進め方として、今まで管理者が影武者的存在で、会の指導、核の増大をはかってきたが、会の組織も確立されたので管理者総ぐるみで表面に出て生産性運動を展開して行く、目標は、国労が企業を無視した行為、許されない違法行為等が続けられている現在、それを批判しながら「あすなろ会」の会員の増大をはかり、会員が一般職員(現在員百五十四名)の半数を占める時点で、電力区として問題の山をつくり国労脱会、鉄労加入を実施する計画である。」
 明確であります。生産性運動という目標の実施の方法は、具体的に自主的なあすなろ会をつくりその過半数を、いわば当局を先頭に立てた活動の中でもって、管理者が先頭に立ってこれを行なう、これが過半数を占める段階でもって問題の山場をつくって国労脱会、鉄労加入を実施する計画であると言っておるのです。残念ながらマル生運動といわゆる組織介入、不当労働行為が全く表裏一体なものであるという、こういう事実がこの電力区長のマル秘文書によって明らかなのです。これに対して総裁はどう考えますか。
#59
○磯崎説明員 私はその文書を見ておりませんけれども、いま先生のおっしゃったことを拝聴しておりますと、私のかねがねの信念はいわゆる生産性運動、これは先ほども申しましたとおり国鉄を愛し国民に誠意を尽くす、その理念を基調とした精神運動であることはかねがね申しております。その精神運動を体得し、精神運動に完全に賛成した者がどの組合に入るか、あるいはどの組合から出るかということは公労法四条によりまして、職員は組合を結成し、結成せず、加入し、加入しないというあらゆる自由を持っておることが明らかになっていることは御承知のとおりでございます。したがってその生産性運動自体に管理者が入ることは一つも差しつかえないことだと思いますが、管理者がその生産性運動の名をかりて組織に介入することは間違いだと思います。しかし、あくまでも本人たちの自主的な判断でもって、公労法第四条によって、自分はどこの組合に行くのだ、あるいは出るのだということは自由だというふうに存じます。いまのその文書は、私は後ほどうちのほうでもさがして、とってみますけれども、その管理者自身が、いまの、割合をおっしゃったようでございますが、それを目標として管理者自身がやるのだというふうに解釈できるとすれば、これは間違いだと私は思います。しかし、その本人、職員自身にそういった自覚を与えて結果的にそうなるのだということを考えておるのかどうか、その点はもう少し書面を拝見させていただきたいというふうに存じます。
#60
○田邊委員 総裁、こっちへ来なさい。どうぞお持ちなさい。
  〔田邊委員、書類を示す〕
#61
○田邊委員 その文書は北海道総局のほうからあなたのほうに今朝あたり届くように送ってあるはずであります。けさ私のところへ北海道総局の労働課長から、国鉄本社あてに速達で送った、こういう電話がありました。これは隠れもない事実であります。
#62
○森山委員長 傍聴人、静粛にしてください。審議に影響のあるような向きがありますと、適当な処置をとります。
#63
○田邊委員 総裁、いまあなたがお読みになっておわかりのとおり、これは下部の管理者に対する管理目標であります。これが流れておるのはいわゆる職場長、助役等の、現場でもって具体的に業務を指導する立場の非組合員であります。あなたが長々と私に対して公労法の説明をいたしましたけれども、そういう説明は必要ありません。いまあなた方の下部の管理者の生産性運動の目標の具体的な実施の方法の重点は、明らかに国労脱会を実施する計画であって、この一言でもって明確に結論づけられておると思うのです。こういったことが事実行なわれておるという現実の状態の中でもって、総裁あなたは一体どういう処置をとられますか。
#64
○磯崎説明員 北海道とちょっとやりとりがございますから、その事務的なことを申し上げてから私御答弁申し上げます。
#65
○真鍋説明員 現在北海道に対しまして、これらについての資料について調査しておるところでありますけれども、現在調査しておるところによりますと、ただいまお話しの件は七月十七日の、電力区の管理者用に書いた資料だということでございますけれども、これはその後北海道総局で指導いたしまして、そのような不当労働行為にわたるような計画につきましては改めておりまして、それは二日後の時点でそういうものを出しておるというふうに聞いております。中ではあすなろ会というものにつきましての拡大をはかるということは書いておりますけれども、その後の、国労の組合を脱会させて鉄労に移らせるという、そういういわゆる組織介入の件につきましては改めておるというふうに聞いております。
#66
○田邊委員 これは、七月の十六日の電力区長のいわゆる指示文書というのは、具体的に下部に流れておるのです。電力区長が私どもに示した文書じゃない。下部の職場長、助役が現実にこれを受け取って実施しておる中でもって私どもが入手した文書である。いいですか、電力区長の案じゃありませんよ。これは電力区長も具体的に私どもに対して認めておる。しかも北海道総局の電気部長あてにこれに対しての報告を出している、こういう答弁をしておるのです。ところが、総裁――これは労働大臣にも聞いてもらいたい。私が、北海道総局でもって調査をいたしましたことに対して、この文書を提出してもらいたいと要望いたしましたところが、北海道総局から私に対して別の文書を持ってまいりました。何と言いましたか。前の文書は案でありまして、これは破棄いたしました。なぜ破棄したものが現実に職場の中にあるのですか。私は因縁をつけたくないけれども、憶測をしますならば、この十六日の文書は、そのものずばり生産性向上運動といわゆる不当労働行為が文書の上で明らかになった。抜き差しならぬ事態であります。したがって、この文書を何とかやみに葬らなければならぬ、そういう中でもって文書を改ざんして新しくこの文書をつくったとしか思えないような節がある。現実に前の文書が職場に行き渡っている事態の中で、何が案ですか。何が案でもって次の文書が正しいものですか。いまあなたも、これは改めたと言っていらっしゃる。それならば、前の文書は明らかに誤りでしたね。明らかに誤りであり、こういったことをやったところの、この生産性運動と不当労働行為が表裏一体のものとして国労脱会を目標に掲げて実施しておったところの、この責任はどうしますか。ケース・バイ・ケースじゃありませんよ。総合判断じゃありませんよ。そのものずばりマル生運動と不当労働行為は一体という立場に立ってやってきたこの事実に対して、断じて私は許すことはできないと思うのですけれども、総裁、一体どうしますか。
#67
○磯崎説明員 私も初めてこの文書を見ました。いま聞きますと、これは間違いである、誤っていたということで、先生のお手元に再度差し出した。別にそれは改ざんしたものでもなければ、あわててつくったものでもない。確かにこの点だけは間違っているということで直したわけでございまして、その点多少間に日にちがございますけれども、これはこれでもって計画するということで考え方を述べた。この考え方はもちろん間違っております。しかし、これによってどういうふうな実際があらわれたか、現実においてどういうふうな不当労働行為がなされたかということにつきましては、私はまだ聞いておりません。したがってそれを調査いたしました上で考えたいというふうに思っております。
#68
○田邊委員 私どもが十月に行って電力区長に会ったときに、この事実を認めているのです。総局に対して報告をしていると認めているのです。現実に国労脱会を指示しているところの文書は生きているじゃありませんか。一体この事実をどうしますか。しかも総裁はいまこれに対して、非常に遺憾であるという表明をされた。しかし具体的にそのことによってあすなろ会の会員が増大をして、いまやフィフティ・フィフティという状態になってきているというこの現実の姿の中で、との指示文書に基づいて具体的な運動が展開されたことも、これまた疑いない事実であります。指示文書だけでは不当労働行為にならぬ、そういう言いのがれをしては私は困るのです。この際、あなたのほうでもって、この種の文書を出したことに対してはまさに誤りである、これに対しては厳正な処置をすべきである、こういう表明があって私はしかるべきだと思いますが、もう一度お聞きいたします。
#69
○磯崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、いま拝見いたしました文書は誤りであります。少なくともしまいの二行は間違っております。ですから、私といたしましては、それによってどういうふうな実際の影響が出たか、またそれによって現場の第一線の管理者がいかなることをしたかということを十分調査いたします。
#70
○田邊委員 では、この電力区長のやった行動はこれは明らかに不当労働行為であり、支配介入であり、しかも生産性向上運動といわば一体の中でもって進めてきたことに対して、あなたは誤りであると認められた。当然措置をされますね。
#71
○磯崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、生産性向上運動は、これは先ほどからるる申し上げましたように私のほうの経営の理念でございます。それが間違って歪曲され、あるいはそれに名をかりて不当労働行為をするということは、これは私さっきから何べんも申し上げましたとおり、間違いでございます。
#72
○田邊委員 質問に対して答弁しなさいよ。いかなる処分をするのかということを言っているんだ、だめだよ。
#73
○真鍋説明員 私、電力区につきましては……
  〔「だめだ、総裁、答弁しなさい」と呼び、その他発言する者あり〕
#74
○森山委員長 真鍋理事に答弁してもらってから、総裁に答弁してもらいます。
#75
○真鍋説明員 電力区につきましては、これは管理者がどういうことをするかということにつきまして、十七日段階でこれを相談しましたが、しかし、二日後の段階ではこれを改めておりまして、これについて十七日のものが実行されたということにつきましては聞いておりません。
#76
○磯崎説明員 たいへん私の答弁がおくれて申しわけございません。私は、先ほど申し上げましたとおり、不当労働行為と生産性運動は明らかに別なものである、生産性向上に名をかりた不当労働行為は許すわけにいかぬということは冒頭申し上げたわけでございます。したがいまして、もしその書類が公になり、またその取り消しも一切なしでそのまま行なわれておるとすればこれは遺憾なことでございますが、その後当事者が非を改めて、そして直したとすれば、それが一体どのくらいの間があるのか、またどういう影響を及ぼしたかということを十分検討いたします。私におまかせ願いたいと思います。
#77
○田邊委員 私は、そういった形でもって一つ一つあなたが問題をそらしていこうとすることによって、実は今後の問題の解決はおくれるばかりであるということを強く指摘しておきたいと思うのです。
 まだございます。同じ札幌の運転区長が、九月十四日に運転二科出身の父兄を集めて懇談会を開く、そういう通知を出しております。この懇談会には無賃乗車証も必要ならば郵送すると書いてあります。この議題は何かといいまするならば、一、国鉄の現状について、二、運転二科生の将来の昇進について、これは問題ですね。さらに三、思想問題について、こういうことでもって父兄を集めて懇談をすることは国鉄当局の方針ですか、許されますか。思想問題について父兄を呼んで懇談をしなければならぬそういう立場というものは、一体どういうものですか。まさに人権問題ですよ。思想問題まで含めて父兄を封じ込め、父兄を強圧し、そういう中でもって、よりいい思想というあなた方の思うつぼに入らなければ将来の昇進に差しさわりがあるぞという、いわばこういう趣旨じゃありませんか。これは北海道総局が私に提出をいたしました文書ですから、間違いない文書であります。こういう家族ぐるみでもっていわばあなた方は思想を変え、あなた方の思うような職員をつくり上げるということをやっていることに対して、あなたは一体天に向かって恥じませんか、どうです。
#78
○磯崎説明員 札幌のいまのお話は初めて伺いました。いろいろ問題はあると思います。ただ、いまのを拝聴いたしまして、確かに表現は非常に不穏当であり、また思想ということばの持つ意味、内容等について十分当事者が知悉した上で出したものかどうかわかりませんけれども、そういう表現は、憲法にも書いてありますとおり、非常に不適当と思います。また、それは本人はどういう意味で思想という字を使ったか、いろいろそう深く考え、そう深く学問的な意味で書いたものではないというふうに思います。しかし表現としては、そうやってごらんになればきわめて不穏当でございます。その点をそういうことで家族の者を呼ぶということは間違っておることでございますけれども、たとえば国鉄の現状の説明とか、あるいは今後の昇進のルートとか、これは家族を集めて説明するのは別におかしいことではない。ただ、最後の、三番目の思想という字の問題、どういうふうな考え方をもってそういう字を使ったかわかりませんが、それは不穏当だというふうに思います。
#79
○田邊委員 あなたはそう言い回しをされなくてもよろしい。三十九人にこの通知を出して、そのうち出席の返事があったのは二十二名、無賃乗車証を渡したのは十八人、特にこの小林運転区長は、そのうちの五、六名に対しては、はがきの一番末尾に、特にお話ししたいことがありますので、ぜひ御出席くださいと自筆で書いてある。だれに出したか。当局に言わせれば、これは成績不良の者について特に添え書きをした、こう言っておるのですね。事実は、いわゆる組合の活動家に対して、その家族に対しては、特に要注意であるぞという添え書きをしておるのであります。まさに言語道断であります。あなたはいろいろと言い回しをされたけれども、残念ながら私どもが札幌でもってこの問題を北海道総局の副局長に指摘をしました。その結果、これは誤りでありましたというので、十月九日のこの懇談会は七日に中止をすることにいたしました、こう言ってきております。あなたはいろいろと答弁されたけれども、残念ながら、これは誤りだったというので、重大なミスだったというので、これはやらないことに、私どもといわば折衝の中でせざるを得なかったのであります。そのものずばり誤りであることを認めた。認めたらいいんじゃありませんよ。懇談会が開かれなかったからそれで相済むという問題じゃありませんね。この出された家族は一体どういう心理的な影響を受けましたか。どういう立場に立ちましたか。おれの子供はいま当局からにらまれている、昇進があぶないぞ、思想問題を問われておる、ぜひ出席してもらいたいと添え書きしてある、これは何とかしなければならぬぞという、こういう気持ちになったことは事実でしょう。懇談会は中止されたけれども、その家族に対して与えたところの影響は、これは取り去ることができない事実であります。これに対してどういう措置をとられましたか。誤りでありました、したがってこの種の懇談会は中止をいたしますという文書をあらためて家族に出されると同時に、陳謝をされる文書を出されるととが私は第一。したがって第二には、先ほどから言っているように、こういった問題を提起いたしましたこの責任者に対しては、あなた方は一体どういう処分を、どういう措置をとられようとするのか。これに対してもお答えはないのですか。明確なお答えはないのですか。どうなんです。
#80
○磯崎説明員 私はその懇談会があることも、また中止されたことも存じません。ただいま伺ったばかりでございます。しかしそういう御指摘を受けて、やめたことは正しかったと私は思っております。そのあと始末としてどういうふうにするか。これは現地の局長にまかせてございますけれども、考え方としては、もしそういうことが誤って内容が伝えられる、妙に曲解されるとすれば、その点ははっきり理由を付して説明してやればいい、こういうふうに私は考えます。
#81
○田邊委員 そういう、労働組合のいろいろな運動に対しては、まさに厳重な処分をやっておいて、あなた方の意図したものが、いわば歪曲をされてやられているという、こういう事象に対しては、何ら具体的な措置をするということに対する明確な答弁がない。これから推してみても、このマル生運動と組織介入、不当労働行為というものは一体であるという――こういうことに対する推進をしておった者は一体だれなんですか。これはあなたがいまここでもって、これは全く異質なものであり、別なものであると言っても、実際にこれを推進しておったのは国鉄当局ですね。国鉄本社当局じゃないか。このことを私どもは非常に残念に思う。私は、きょうあなたが抽象的な答弁をしたけれども、これに対して具体的なお答えをいただくことを私はあらためて要求しておきます。きょうそのものずばりお答えがない部面については、あらためて当委員会を通じてお答えがあるもの、こういうふうに承知してよろしゅうございますね。
#82
○磯崎説明員 各地でいろいろなことが起こっておりますので……(田邊委員「いろいろなことじゃない、いま私が指摘したことだ」と呼ぶ)ですから、それをいま初めてここで伺ったわけでございますから、いますぐどうこうということはこれはできませんでございます。しかし私としましては、先ほど冒頭に申しましたとおり、今後いわゆる不当労働行為を生産性運動の名をかりて行なうということは、これは絶対させないということははっきり申し上げておきます。
#83
○田邊委員 そういう抽象的な答弁では、いまや世間はあなたを信用していません。あなたがそれに対するところの具体的な態度を、実行を示さなければ、あなたがいかに通り一ぺんな答弁をしても、それでもって世論はあなたに対してくみすることはないのであります。
 私はもう一つだけ非常に重大な人権問題について、事実を申し上げて、当局のこれに対するところの判断を求めたいと思います。
 群馬県の安中の保線支区において、四月二十八日、レールボンドが抜き取られるという事件がありました。当時の作業員十三名がその後、施設部の原田補佐を中心として取り調べを受けました。十三名はいずれも、知らないと答えました。その後において、六月三十日から二十日間にわたって公安職員がさらに取り調べをいたしました。ところがこの事件が起こってから二カ月を経過した後において、公安が取り調べを始めました。その公安官の取り調べというのは全く一方的でありまして、公安自身が一つの前提条件を持っておる。事業を知っておって、それに基づいて取り調べをするという誘導尋問をいたしました。その間にいろいろな実は証言がありますけれども、その後七月の二十五日になりまして、この作業員のうち五人について、これは共同謀議でレールボンドを抜き取った、こういう認定のもとに、この五人の家族をあるいは当局に呼び出し、あるいは五人の家を家庭訪問いたしまして、それぞれ辞職を強要いたしました。ところが八月の十九日になりまして、国鉄労働組合との団体交渉の中で、このレールボンドの抜き取りは一人の男がやったと言っている、これでピリオドをつけたと考える、こういう答弁が当局からありまして、八月十九日に一人の職員が免職処分を受けておるのであります。ところがその以外の四人のこの共同謀議説を唱えられた諸君に対して、その後について実は何ら措置をしてない、こういう事象があります。この家族が私どもに対して証言をしているところの具体的な事実によりますならば、まさにこの共同謀議は当局がでっち上げた架空のいわば謀議説である、第二の松川事件であるということが明確になっておるのであります。しかも一人一人その家族が呼ばれ、家庭訪問を受けておりまするけれども、なぜ辞職願いを持ってこなかったか、この一人の萩原という人のにいさんは、私が辞職願いを持ってこなかったのは、弟はボンドを取った事件には関係ないと言っているので、無理に辞職願いを書かせるわけにはいかなかったのであります。土屋さんという列車課長に呼ばれているわけですけれども、辞職願いを出さなければ懲戒免職になると言っていました。懲戒免職になれば再就職に影響する、まだ若いのだから円満退職したほうがいいと言いました。それでは鉄道は確かな証拠があって懲戒免職にするならしかたがないと言うと、土屋さんは、それでは自分が困る、自分も進退伺いを出しているんだと言いました。そこへ原田という取り調べをしたととろの課長補佐が参りまして、原田さんが言うには、今度の事件でだれも証言しなければ、当日の作業員十二人を全員懲戒免職にしてもいいと言いました。また、共同謀議をした五人はふだんから態度が悪いのでまわりの者がこわがって証言をしてくれなかったが、常識のある人がいて証言をしてくれたと言いました。この時点で懲戒免職にできると言いました。実はこういう辞職の強要をされておるのであります。これは私は、よって来たるところの原因が、あなたはこのマル生運動と関係ないとおっしゃるかもしれないけれども、実はこれらの証言の一つ一つを読みますると、そのいずれもが、当局のマル生運動といわば組織介入と一体の中でもって考えた結果、どうしても共同謀議にしなければならぬように当局が仕組んだ芝居であることは明らかなのであります。ここまでして善良な職員を罪におとしいれる、こういう策動をしているこの事実に対して、私は、これはもういわゆる労使問題あるいは不当労働行為以前の基本的人権の侵害であるといわざるを得ない。あなた、こんな根も葉もない事象の中でもって共同謀議説をつくり上げるととろのあなた方の考え方は、一体どうですか。この共同謀議は事実無根であるというこの事態の中でもって、あなた方は一体どういうこれに対するところの措置をされるのですか。五人の共同謀議だと思ったところが、一人の男が自白をした、それを懲戒免職にした、それで終わりである、そんなことが許されますか。総裁、どうです。
#84
○磯崎説明員 私もその話いま初めて伺ったわけであります。そういうことはなかなかすぐ耳にも入らぬわけです。大きな事故でもありませんと、いろいろな問題をかかえておりますので、それぞれの係のところで聞いているというふうに思います。ただ、伺ってみますと、私のほうでたぶん調査していると思いますけれども、先生のいまのお話のごとく、全部一方的に押しつけて、全部そういうことをするというようなことはあり得ないと私は思っておりますけれども、先生がそうおっしゃるのですから、私のほうでも十分調査いたして、そして、もし人権問題ならばもちろん人権問題として考えなければいけないというふうに思っております。しかし、あるいは真鍋君のほうに何か来ているかとも思いますので、お許しを得れば、真鍋君にわかっている限度で御答弁させます。
#85
○真鍋説明員 高崎局の安中保線支区の盗難事件でございますが、これは、四月二十八日に突き固め作業をやっておりまして、その終わりました時点で、レールボンドが盗難にあったということを発見したわけでございます。作業員はお話のごとく十三名おったわけでございますけれども、その後、これは公安等で盗難事件についての調査に入ったわけでございます。その時点で、十三名のうちの一人の者から、これは五人の者が共同謀議でやったという話がございました。これに基づきまして公安の調査に入ったわけでございますけれども、この時点で、五人の謀議でやったというふうに信じたわけでございます。そういう意味で、懲戒免職になるよりもこれは依願免になったほうが本人の将来のためにもいいのだということで、そういう話をしてまわった時期がございます。その後供述をひるがえしまして、実は単独犯であったということになりまして、これはその共同謀議の説がくつがえりまして、単独犯の一人だけが懲戒免になったという事件でございます。
#86
○田邊委員 裁判所でも疑わしきは罰せずです。あなたのほうは、一人の人が証言をしたということを信じておったと言いましたね。ある時期において信じておった。信じておって、それでもって辞職を強要した。こんなことが許されるのですか。事実を正確に調査もしないで、一人の人が証言をした、それを信じて、おまえは共同謀議であるから、懲戒免になるよりも、やめなさい、こんなことをあなたらは簡単にやるのですか。そんなことが許されるのですか。しかも、その証言をした人が、あとで自分の班長あてに切々たる手紙を出しているのですよ。私は原田補佐なり公安職員にいわば一方的なペースでもって取り調べを受けた結果、そういったことに対していわば返答をしたけれども、それはまことに申しわけなかったという、切々たる手紙を出している。いわばたいへんな取り調べをしていることがこの過程の中で明らかになっている。こういう自白を強要し、しかも一人の証言のみに基づいて、その事象の中で共同謀議を信じて、そして辞職を強要した。そして、いま真鍋常務理事の言われたことはまた真実であるとすれば、総裁、たいへんな問題じゃありませんか。あなたの答弁についても、たいへんな問題じゃありませんか。ある時期に一人の証言を信じて辞職を強要した。それがそうでなかった時点の中でもって、一体どうするんですか。一人の男がレールボンドをとったという、そういうことが最終的に決着をつけられたこの時点の中で、あとの強要された四人は一体どうなるのですか。その家族は一体どうなるのですか。たいへんなことじゃありませんか、あなた。そういったことを一つ一つやっておって少しも恥じない態度というものを示しておる限りにおいて、あなたがいかにうまいことを言ってみても、それでもって問題の解決にはならない。ひとつこれに対して早急に調査をして、委員会を通じてその調査の結果を報告をいただくと同時に、これに対する厳重な処置をとっていただくことを私は強く要求するけれども、いかがですか。
#87
○磯崎説明員 一人の証言をもとにしてほかの人を全部疑って云々ということで、私は実は事情を知りません。しかし、ほかの人を疑うに足るほかの事情があったかもしれません。十分取り調べまして御報告申し上げます。
#88
○田邊委員 そういう、ほかの理由があったかもしれないなんという、あなた、そういう一言も二言もよげいなことを言っておるから、国鉄はなかなか再建ならぬのですよ。これはひとつ厳重に調べて、調査の結果を報告してもらうことを強く要求します。
 私の持ち時間があと三分ばかりですから、最後に労働大臣、いまあなたは、このとげとげしい国鉄の労使関係を何とか正常に戻すということで調停の役を買って出た。私は、この労を多としたいと思う。しかし問題は、労働大臣のこれに対する態度は、足して二で割る的な方式をとるべきでないことは、これはおわかりのとおりです。あくまでも事実は事実として、その上に立って理非を明らかにする、こういうことでなければ私は真の調停にも仲介にもならないと思うのです。その意味合いからも、私は次のことをひとつ労働大臣に要請をしたいと思う。
 第一は、いま数々あがっておるところの不当労働行為の事実に対しては、厳重に当局に対して注意を喚起して、直ちにこれをやめさせる。
 第二番目に、公労委の命令に対してはこれに従いましたけれども、同じような立場でもって出されておるところの札幌地裁の仮処分決定に対しても、これに直ちに服す。そして、これに対するところの実効をあげるよう、国鉄当局に勧告する。
 第三番目に、不当労働行為を行なった者に対しては、当然の成り行きとして、その当事者と責任者を厳重に処分をするよう、国鉄当局に対して申し入れをする。
 第四番目には、この不当労働行為のもとになっておるところのマル生運動をやめさせる。そして労使関係の正常化について労使の間で自主的に協議をできるような、そういう場所を設けるように労働大臣が勧告をする、以上要点四つばかりの趣旨を申し上げましたけれども、この趣旨にのっとってあなたが早急の機会にこの労使関係の正常化のための労を尽くしてもらうことを、私は強く要望するわけでありまするけれども、大臣のこれに対するところの明確な態度をお答えいただきたいと思うのです。
#89
○原国務大臣 田邊さんにお答えします。
 御趣旨の点は、大体そういう線に沿うて私はいま国鉄当局と労働組合との仲介に入ろうといたしております。そして過般両者からいろいろ事情を聴取いたしまして、きょうは本委員会において不当労働行為を中心としていろいろ御質問なり当局の答弁を聞きまして、事情はもっと明らかになってまいりました。非常に参考になりました。
 第一には、国鉄にいわゆる不当労働行為をやめさせる、これはもう当然のことでございます。やめるように適当に助言し、勧告する考えであります。
 第二点について、これはもう取り消しはやることはきまりました。――二点、三点につきまして、御指摘の趣旨は十分意見を尊重いたしたいと思います。
 私は、さいぜんからるる申し上げておりますように、国鉄当局と労働組合との関係が非常に紛争いたしておりますことをはなはだ遺憾とし、これを放任することは悪循環し、国鉄の再建その他すべて不可能になるし、一億国民にも非常に申しわけないことになると考えますので、この悪循環をこの機会に断ち切りたい、そうして信頼感を獲得したい、これが大事であります。信頼感なくして労使の話し合いもできませんので、まず第一に、どういう条件でどういう話し合いをするかということはいま検討中でありますが、誠意をもってこの大問題の解決に乗り出して、そしてまず信頼感を回復するようにいたしたい。第二は、これに従って労使の正常な姿で話し合いに自主的に入っていただきたい、そういう考えで進める考えでありますから、せいぜいよろしく御声援のほどをお願いいたします。
#90
○田邊委員 あとの人に譲ります。
#91
○森山委員長 食事のために三十分間休憩いたします。
   午後零時四十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時二十七分開議
#92
○谷垣委員長代理 休憩前に引き話き会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について質疑を続けます。島本虎三君。
#93
○島本委員 午前中に引き続いて、国鉄当局と各労働組合に対しましてのいわゆるマル生運動によるところの不当労働行為、この問題について、私は手元にある資料によってこれを具体的に解明し、そして今後国鉄再建の一つの示唆と資料にしてもらいたい、こういうように思って、以下私は質問を展開してみたいと思います。
 まず、マル生運動と不当労働行為、これはもう次元においても方法においても異なるものである、こういうようなことを午前中総裁から逐次これはもう解明がありました。私は、公労委の決定を受ける段階でそういうように総裁がお考えになったのか、初めからそれを、以前からそう思って各下部を指導しておったのか、その考え方の一貫性についてまず伺っておきたいと、こう思います。総裁に答弁を願います。
#94
○磯崎説明員 いわゆる生産性運動と不当労働行為との関係につきましては、けさほど新聞にも発表いたしました私の意見でございますが、その意見は前からの私の意見でございます。もちろん不当労働行為があるなしは、一応次元の問題は別といたしまして、生産性運動あるいは国鉄内部における生産性運動の始まる以前からの国鉄を愛する運動あるいは国鉄再建運動という運動が、方々に四十三年の暮れごろからあったわけでございますが、それと労働問題とは発生的にも全然別の発生をいたしております。
#95
○島本委員 私奇怪に思いますのは、この答弁によってじゃないのであります。以前からこの問題で、総裁は十分知っておられるとおり、この数日の間にも不可解千万なことが国鉄当局によって行なわれております。それは一日、六日、これは真鍋常務理事から不当労働行為をしないようにという異例の指示があったかのように承っておる。八日には公労委の命令書が出た。そして磯崎総裁も、国鉄に不当労働行為はない、こういうふうに大みえを切った。私はそう受け取りました。そうであればよろしいという願望を込めてそう受け取った。ところが同じ八日に、早川武士ですか、水戸の鉄道管理局の能力開発課長という人が、知恵をしぼった不当労働行為をやっていくのだ、こういうようなことをまた出され、こういうことがテープにまでとられてある。これは隠れもない事実である。そうすると、不当労働行為をしないと総裁は言い、それを受けて下部の指導者は、能力開発課長なる者が、知恵をしぼった不当労働行為をやっていくのだ。一体、知恵をしぼった不当労働行為と、不当労働行為をしてはいけないということと、これはどういうふうな関連を持つのか。また、総裁が、これはやっていない、今後もやっていかない、違うんだ、こういうふうに言っていながら、逆に、それではだめなんだ、法に引っかからないように知恵をしぼった不当労働行為をやっていけばいいんだ、こういうようなことは管理一体の原則にも反するし、これは今後、総裁がいかに抗弁しようとも、抜き差しならないような不当労働行為につながる元凶です。これに対して総裁、どうお思いですか。
#96
○磯崎説明員 去る八日の水戸におきます問題につきましては、私は新聞紙上をもって知り、また直接水戸管理局のほうからも、連絡をとって聞いております。これはいろいろ用語の問題その他は別といたしまして、私は総裁としての見地から申し上げます。こまかい問題でなくて申し上げますと、その能力開発課長の発言は非常に不穏当である、私は衷心から遺憾に思っております。
#97
○島本委員 この問題については衷心から遺憾に思っておる。これは総裁の意に反した行動をした者である。そういうような者に対しては処分を考えてしかるべきだ、こういうのが私は当然だと思うのです。
 この問題については後ほど資料に基づいてゆっくりと行なうことにして、私は、そういうふうなことが随所に行なわれておるということが遺憾なんであります。すなわち、不当労働行為ではない、そういうようなことを平気で示唆していく。総裁はいま、残念だと言った。しかし、こういうような残念なことが方々で行なわれておる。これに対して、管理一体の原則が正しければ、総裁以下全部責任を負うべきだ。しかしながら、総裁の意に反してこういうようなことを平気でやっているというならば、今後これに対して厳重な態度をもって臨まなければならない。その例証を一つあげます。
 これは山形ですが、昭和四十六年の四月二十四日に総務部長のほうから各現場局長に、「正常な労使慣行の確立について」という指示がちゃんと流されています。そして五月六日にも同様に、「労働組合に対する管理者の心構えについて」という通達を流しております。そのあとで秋田鉄道管理局総務部労働課長と国鉄労働組合秋田地方本部組織部長の間に議事録確認まで行なわれ、そういうような事態を起こさないようにはっきり署名、捺印までしております。そして五月八日には、「労使慣行正常化に伴う覚書」、これも秋田鉄道管理局の総務部長と国鉄労働組合秋田地方本部書記長との間にはっきり結ばれてあるのです。少なくともこの労働協約また確認事項、こういうようなことについては私は法律に準ずるものであり、かってにこういうようなものを変更させることはいけない、こう思っているのであります。しかし労働大臣、今度は労働大臣にお伺いしたいのですが、この労働協約またいろいろな慣行、確認、こういうような労使双方で責任ある立場を代表して署名、捺印したものは法律に準ずるものであって、これをかってに変更する行為は許されないものである、こういうふうに思いますが、労働省の大方の所見をまず承っておきたいのであります。
#98
○原国務大臣 お説のとおりでございます。話がまとまって文書にしたものをかってに変えることはできないことになっております。
#99
○島本委員 総裁、いま聞いたとおりなんです。下のほうでは、こういうふうにして正常化の努力を秋田地方本部ではやっておった。それから秋田鉄道管理局の段階でもやっておった。ところが突如として七月の二十九日にマル秘文書で「各長殿横手運輸長」、こういうようなことで通達が流されております。それによってまた態度ががっくり変わっているのであります。こういうようなことが認められるとするならば、これは重大であります。その中にこういうようなことがあります。「体質改善について」「従来どうり続けること、今まであの書面である程度おさえた感があったが、現在はその必要がなくなった。職員がああしたい、こうしたいという動きは、自然のままでやらせること、要は流れを止めることはしないで、やりたいままにやらせることである。」いろいろこういうようなことが続いてございます。そうしてその中で、「体質改善の出来た箇所で、鉄労に対する管理者の態度がよくないところがある。職場委員会を建設的な方向に持って行くようにしなければならない。形としては、国労、動労、鉄労という姿だが、鉄労については、積極的に再建に寄与させる方向に持って行くべきであり、そのためには、国労、動労と同じような職場委員会のあり方では、いけないということである。」「人種別反対運動について」、これも若干書いてあります。そのほかにもあるのであります。いま読んだのはほんの一部分、(4)なんであります。法律に準ずると労働大臣がおっしゃったように、労使慣行によってちゃんと確立させてやろうとするときに、突如として七月二十九日にこういうのが下部に流され、それもマル秘文書で流されたわけであります。こういうようなことのためにまた職場が混乱している。こういうようなことは総裁、ちゃんとお認め願ってやったのですか。それでもしやったとするならば、これは重大であります。これはかってにやったのですか、いずれですか。
#100
○真鍋説明員 いまのマル秘文書でございますが、これは私のほうは承知しておりませんけれども、いまお読みいただきましたので判断いたしますと、従来職場で組合別に何らかの差別をしているとすれば、そういったことをやってはいけないというふうに私どもは拝聴したわけでございますけれども、実態につきまして私どももよく調べまして、後刻御報告申し上げたいと思います。
#101
○島本委員 協定並びに確認は法律に準ずるものであり、尊重しなければならないと大臣もいまはっきり言っているのです。尊重させる事項がちゃんと具体的に積み重なっているのです。ところがこういうように横から、この横手運輸長なる者がこういうようなマル秘文書を各長あてに出している。このためにまたがっくり変わっている。一体これはどういうことなんですか。能力開発課というのは、総裁の命令に反して何でもやっていい権能を与えられているのですか。この能力開発課というのは一体何です。これは能力を開発し、総裁の能力やいろいろな識見にまで影響を与える権限があるものですか、総裁。
#102
○磯崎説明員 能力開発課は昨年、一昨年になりますか、非常に国鉄の中で職員の配置転換その他異動が多くなっておる。そうすると、新しい職場にいく、あるいは新しい教育を受けるという際に、いままでなかった新しい仕事をやらせなくちゃいかぬ。そういう際の能力をどう開発するかという意味で、いままで養成課といっておったものを名前を改称したわけでございまして、職員局の中の一課でございまして、もちろん私の掌握下にあることは申すまでもございません。
#103
○島本委員 あなたの掌握下にある者があなたの命令に反することを簡単にやってのけたのが、いま言う不当労働行為はしていない――それなのに、今度は知恵をしぼった不当労働行為をやっていけというようなことを、はっきり同じ日に言っているじゃありませんか。これは無礼千万でしょう。それと同時に、こういう悪い慣行――いい慣行を悪化さしておるのも、やはりこれは同じじゃありませんか。もしそうだとすると、能力開発課なるものはゲー・ペー・ウーみたいなものですか。徳川時代の目付役みたいなものなんですか。こういうような権能を与えていないとすると、これは行き過ぎである。こういうようなものは当然廃止してもしかるべきじゃないのか、こうさえ思うのであります。このために組織が紊乱している。これは許されないと思う。総裁、このままの状態でやったならば、いかに総裁がいま言っても、またすぐ次の日には別な指令、別なマル秘文書でこれは全部パーになってしまう。こういうようなことはこのままでは許されない。これは総裁どうですか。
#104
○磯崎説明員 もちろん私の掌握下にあり、私の指揮命令に従うべき部局が私の指揮命令に従わない場合には、これは非常にけしからぬことであります。いまの能力開発課が私は私の指揮命令に従ってないとは思いませんけれども、過般の水戸の事実は、これは明らかに私の意思に反していることでございます。したがいまして、十分事情を聴取した上で私は総合的な判断をして、(島本委員「処分しますね。」と呼ぶ)処置するつもりでございます。処分ということは――処置するつもりでございます。
#105
○島本委員 とにかく、総裁はにやにや笑っているようでありますけれども、同じような事態の中で、私としては重大な点を指摘しなければならないのです。というのは、あなたは、マル生運動の中に不当労働行為はないのである、次元が違うし、そういうようなこととは問題が違うんだ、こういうふうに言っております。しかし私の手元にあるこの資料によりますと、これは現にはっきり管理責任のある人も認めておりますから、これはもう言いのがれすることはできません。それは助役登用試験であります。助役登用試験で、筆記と面接両方で合格することになっておる。しかしながら、鉄労のほうへ動力車または国労の組合員を十名以上連れていった者は予備合格と認める、そして次回は面接試験だけでよろしい、こういうような一つの不当労働行為というか、利益誘導というか、まことにこれは容赦できないようなことをやっておるじゃありませんか。そして、その後はっきり、ここにある資料によると、ほとんどの人が鉄労のほうへ移っておる。総計二十一名、これは不当労働行為じゃないですか。予備合格、こういうような制度があるのですか、そしてこれを下部末端にやらしてまでも国労、動労を分裂させ、脱退させ、鉄労のほうへ持っていかせる運動、これは不当介入でなくて何ですか。こういうようなことを許していいものですか。これは総裁、あなたはっきり答弁してください。現にここに資料があります。
#106
○磯崎説明員 助役の試験にどういうことをやっておりますか、私は詳細には承知いたしません。しかし利益誘導は組合法第七条で認められないところでございます。
#107
○島本委員 それをやった者に対する処分はどうしますか。
#108
○磯崎説明員 午前中から申し上げておりますように総合的に判断いたしまして措置いたします。
#109
○島本委員 総合的に判断して措置するということは、これはやはり措置というと幅が広い、処分というとある程度限界がある。これは処分ですか、措置ですか。処分も含む措置ですか。
#110
○磯崎説明員 いわゆる通俗的なことばにおける措置でございます。
#111
○島本委員 通俗的なことばにおける措置というようなのは、これは処分であると解してよろしゅうございますか。
#112
○磯崎説明員 ことばの使い方でございまして、これは私限りの判断は措置でございます。
#113
○島本委員 こういうようにはっきり利益誘導して、合格しない者に対して、鉄労のほうへ十名持っていけばこれは試験を免除して、面接試験だけで合格させますと、次回を約束してまでも組織の切りくずしをやっているのは、不当労働行為じゃありませんか。あなた、そういうようなことはないと午前中からはっきり言っていたところじゃありませんか。これはちゃんとやっているじゃありませんか。それに対して、広い立場から措置するとは何ですか。処分の対象に当然なっていますよ。
 こういうようなことは不当労働行為に当たるか当たらないか、労働省労政局長。
#114
○石黒説明員 お答え申し上げます。
 特定の組合に組合員を獲得することを当局側の者、使用者側の者が指令し、あるいはそれをもって利益誘導いたせば、不当労働行為に当たります。
#115
○島本委員 当然不当労働行為だとなっているじゃありませんか。広い意味からこれを措置するというが、これは処分の対象に当然なっているのだ。総裁、一体あなたは公労委のこの決定を受けて、こういったことばにまだ徹していないじゃありませんか。ほんとうに徹しているならば、すべてをかなぐり捨てて、その者に対して、国鉄のためにあなたははっきりと方針を出して徹底的にやることですよ。前のは間違いである、そして私はそんな指令はしてないというが、具体的にはこういうふうにされておる。公労委は厳然たる不当労働行為であるといっておる。こういう者に対してもやはりあたたかく見守ってやるのですか。
#116
○磯崎説明員 いまの先生のお示しの事案、具体的にどういうふうな段階でどういうふうに検討されているかは存じませんが、いずれそういう事案は両当事者の話をいろいろ聞いた上で決定されることと思います。一方的にただあったということだけではならないので、その点私がけさほど公労委の命令を受けましたのは、そういう第三者機関が両者の言い分を聞いて判断したことであるからそれに服従したわけでございまして、一方的なことだけでは、現段階ではまだまだ両方からの言い分を聞かなければわからない、こういうことであると存じます。
#117
○島本委員 それは一方的でありません。秋田の鉄道管理局へ行って、この事件について、私一人ではありません、ここにおります内藤良平議員、それから参議院の戸田菊雄議員、この三名でこの問題に対してはっきり解明をさしてきてあるのです。そしてここに資料までとってきてあるのです。総裁、私は資料に基づかないあいまいな質問をしているんじゃないのですよ。この場さえのがれればあとはいいようにあなた考えているのですか。はっきり資料を出している。その人の名前まで出している。こういうようなことも平気であなたが庇護してやろうという考えがある限りは、国鉄再建の資格はありません。こういうような者をはっきりなぜぶち切ってしまわないのですか。そしてあなたに全部の協力を求めて、その先頭に立ってあなたはなぜおやりにならないのですか。第二組合のほうを育成して、そっちのほうへ行った者にだけ国鉄再建の資格があるかのごとき幻想を与えながら、そして切りくずしをやっている。ことばではいいことを言う。そんなことは一切やっていないと言うのか、あなた。これではだめなんです。私はこの点に対してもはっきりした資料をよこせと言わない。あるのですから。あなたにこれははっきり厳罰に処することを私は要請したい。当然そうでしょう。労働省当局だって、これはそういうようなことに該当すると言っているのですから。あなた、こんなことを言われて恥ずかしくないのですか。
 それだけじゃないですよ。言えばまだまだたくさんあるけれども、まあまあこれは見るに見かねていますよ。これは多過ぎて、わけがわからなくなるのだ。ここにこんな文書さえ公然と出ているのです。「総務部長との懇談会開催につき」皆さま待望の総務部長との懇談会が開催されることになりました。現在わが鉄労組織拡大とともにわれわれに課せられております生産性運動、合理化その他諸案件につき、皆さまもそろって意見の交換をお願いいたしたい、お知らせいたします、こういうようなことが堂々と張られているのですよ。何ですか、これは。待望の総務部長との懇談会、そして生産性向上、そして組織拡大をやる。全然違うとさっきから言っていたのですが、これが違うとさっきから言っていたのですが、これが違うのですか、あなた。聞いたらあなたはまた、そんなのは知らないと言うでしょう。これは知っていますか、あなた。そんなことを下部でやっているとしたら、これも何かこれに対する一つの処分の対象と考えませんかね、総裁。
#118
○磯崎説明員 いろいろお話がございましたけれども、たとえば私どもは、管理局長が現場の諸君となるべく意思疎通をしろということを申しております。それをどういう単位で、どういう方法でやるか、これは各地によって違いますけれども、組合ごとにやることも考えられると思います。したがって、総務部長を組合側が呼んで、そして話をするということは、私は違法なことではないと考えます。
#119
○島本委員 組織拡大についてというようなことばもあって、そのために総務部長が呼ばれているのです。これがあたりまえなんですか。あなたの考えはそういうことですか。組織の拡大についてですよ。こういうようなことに総務部長がのこのこと出かけていってやるというその魂胆、一体どんなことなんですか、国鉄の考え方は。こういうようなことに対しては、たくさんあるから、答弁要らないわ。あることだけ、はっきり議事録にとどめておいて、これもよく調べて処分しなさい。
 それからなお、あります、あります。あり過ぎてちょっと困りますが、やはりマル生教育というものは強制的に行なわせることになっているのですか、それとも自発的に組合の協力を求める形でこれを行なうことになっているのですか。総裁、このやり方についてひとつ見解を述べてもらいたい。
#120
○磯崎説明員 先ほど申し上げましたように、生産性の向上は私のほうの経営の理念でございます。したがって、この理念を、職員としての身分を持っている国鉄の従業員に対して徹底的に理解してもらい、その理念の上に立って国鉄の仕事をしてもらおうというのは、当然私どもの仕事でございます。
#121
○島本委員 そしてそれは国労の札幌地方本部とそれから北海道総局との間に、そのマル生教育についてもこれは強制はしないのだ、こういうような一つの申し合わせがある。それについてもやはり、それを無視して強制していくという総裁の考えですか。
#122
○真鍋説明員 生産性教育につきましては、学園の教育の中の一環としてやっております。教育につきましては、大要を組合にどういう内容の教育をするかということを説明をいたしております。これは協議交渉事項というふうには考えておりませんけれども、概要の説明をいたすことにしております。それで教育につきましては、それぞれの職員のそれぞれのポストで必要な教育ということをやっておる形でございますが、お話ございましたように、強制という形で教育を行なうということは好ましくないということでございます。したがいまして、できる限り理解をしてもらって、それで教育に入るということをたてまえにいたしております。これは転換教育等、必要なその教育を経ませんと次の職に移れないというような教育でございますと、これはそういうものが条件になりますけれども、そういうものでない研修関係のものはそういう形でやっております。
#123
○島本委員 これもまたまことに奇々怪々なんです。あなたのほうでそういうように言っている。しかし、この能力開発課なるものがどういうふうなことを言っているかわからない。下部では九月の十五日に、作業の前時間で十四時から駅長がマル生教育を行なう、こういうふうに言って、出席しなかった国労の組合員工藤芳男という人に始末書を強要して出させておる。前時間を利用して、前時間にやるこのマル生教育に出席しないということで始末書までとる。これが強要でないですか。そして、はっきりこの問題に対しては強要しないという協定まで結んである。それに対して始末書までとっている。これはどういうことでしょう。これは行き過ぎですか、当然ですか、総裁。
#124
○磯崎説明員 その始末書をとったということも存じません。しかしどういう理由でとったのか、そこだけちょっとおっしゃっても私はよくわかりませんが、ただ私が先ほどから申し上げておりますとおり、生産性運動というものは、やり方の教育はいたしますけれども、実際本人がほんとうにその気になって国鉄を何とかしょうという気持ちになってくれなければ意味がないものでございます。したがって、おれはいやだというふうな人にやってみたところでしょうがないものでございます。本質的におれはどうしてもぜひやりたいのだという人にやっていく。これは組合のいかんを問いません。現に国労の職員も動労の人でも、生産性運動をやっている人がおります。そういう意味で私は、組合のいかんを問わず、国鉄の再建に自分の全力をあげたい、あげる方法をどうするのだという職員に対して必要な教育を与える、こういう趣旨でございまして、そういう気持ちのない人に幾ら言ってみてもだめでございます。したがって強制する気はございません。
#125
○島本委員 協定まで結んである。総裁まで、そういうふうに強制してはいけないということを言っている。それに始末書まで書かしてやったというこの行き過ぎ、これも当然処分の対象になる。あなたの命令を聞かない機関長なんですから。そこまで当然考えないとだめだと思う。当然これはもう処分の対象になりますね。行き過ぎですね。協定無視ですよ。協約無視ですよ。そうしてあなたの意にも反していますよ。こういうようなことが平気で下部に行なわれている。労働大臣を前にして、総裁、一体恥ずかしくないですか、こういうようなことは。私は一つ一つあげるにも汗をかくんだ。こういうようなものはほんとうに困るんだ。
 そのほかに、あなたは全然それは違う、こう言いながらも、私どもが調査した時点で発覚したこの中に、マル生運動即第二組合育成、こういうようなことが方々に行なわれておるのです。それもまた、局長ではありません。駅長が堂々とそれを示唆している。この九月の十三日、場所小樽駅、小荷物掛全員を参加させるために当日の勤務を変更さして、そして高野小樽駅長は小荷物の休憩室で一時間二十分にわたっていろいろマル生運動なるものの話をした。その内容は、国労が全国大会でマル生粉砕のストを打つときめた。駅長としては、ストは絶対いけない、これを厳重に申し渡しておく。まあここまではいいでしょう。そのあと、これは何ですか。全員国労の組合員であるのに、国鉄の組合はオープンショップ制であるので、いかなる組合に入っても入らなくてもよいということだけは十分記憶しておけ、こういうようなことを言ってこの演説を結んである。これは意味はちゃんとわかるでしょう。国労をやめたほうがいいぞ、こういうふうな意味をはっきり言っておるのです。これは九月の十三日の段階。七月の三十日の段階では、同じく助役試験、これで国労にいると不利になる、鉄労に入らないか、こういうふうに利益誘導した助役があったので、その問題を確かめたところが、猪飼という首席助役いわく、そのように言った助役がおったとすれば親切心からであろうというのです。親切心ですか、これ。不当労働行為もいいところでしょう。そういうようなことが親切心だと下部へ流してある。こんなのはあげたら、たくさんの数にのぼるでしょう。総裁、あなたははっきり公労委の裁定を受けたのを機会にして、もう一回足元から全部洗い直して、そして組合に協力を求めながら国鉄の再建を今度身を挺して行なうようにならなければならない。いままでと同じ考え方がまだ残っているようであります。私はまことに遺憾であります。こういうようなことのないように、今後はっきり決意を新たにしてやってもらいたいと思うのだけれども、あなたどうですか。
#126
○磯崎説明員 私に対する御忠告、ありがたくちょうだいいたします。それは、私も決してふまじめに問題を取り上げたり、不謹慎な態度でこの問題を扱っている気は毛頭ございません。ただ、いろいろ派生的な現象もあることは事実でございます。ただ、けさの私の談話をお読みくだすっても、五十万に近い大世帯でございまして、浸透をはかるには多少の時間をかしていただきたい。手のひらを返すようになかなか右から左にはいかない、これは御了承願いたいと思います。全力をあげてやりますけれども、巨体でございます、大きなからだをしております。したがって、ある程度浸透するまでに時間がかかることは、これはお許し願いたいと思います。少なくとも、私は、明日以降管理局長をまず集め、関係部長を集め、もう一回すっかり精神を考え直す。そのかわり組合を批判する、組合のストライキは違法だ、こう言うことは決して差しつかえない。はっきりした態度をとって、私は部下職員を監督しなければいかぬ。ただ、なあなあで仕事をするということは私は絶対よくないと思います。悪いものは悪い、違うものは違う、いいことはいい、こういう方針でもって新しい国鉄づくりを私ども自身の手でやってまいります。
#127
○島本委員 その場合に、いままでいろいろあったようなこの能力開発グループなるもの、こういうようなものは、あなたの命令や、あなたの指示を中間において変更させておるような形跡が多々あるのです。こういうようなものに対してのお考えはいままでどおりですか。それともこんなやり方に対しても、厳重にこれを変えて今後あなたやるつもりですか。
#128
○磯崎説明員 私が掌握している部下である限り、私の公の意見が徹底するように全力を注ぐつもりでございます。
#129
○島本委員 では、途中からこういうような能力開発課なるものが出てきて、そうして総裁やそのほかの指示または指令、こういうようなものに対して、一切別な意味で容喙はしないし、それは変えないのだ。実際公労委の裁定を受けているあなたの気持ちに即応して今後やっていくのだ。だから、こういうようなゲー・ペー・ウー的な存在は認めないのだ。こういうようなことですな。
#130
○磯崎説明員 私といたしましては、けさの談話にございますとおり、それが私の率直な気持ちでございます。したがって、私の気持ちに沿って、四十数万の職員が一致団結して国鉄の再建に当たってくれるということを確信いたしております。また、私といたしましては、全職員をその方向に引っぱっていくという気持ちでございます。
#131
○島本委員 いままでの反省、今後の行き方、それはやはり新しい時点に立つ、こういうようなことを前提にして、いままでのマル生運動に要したいわば費用と申しますか、それらをどれだけ見込んでおったのか。と申しますのは、昭和四十六年十月七日――午前中田邊委員もいろいろ電力区の問題を取り上げ、皆さんに対してその真意を確かめました。この北海道総局の副総局長の曽根茂氏が、マル生運動に要する費用については十分に用意されており、不足はないのだ、こういうように発言しておられるのです。これは総額幾らくらい準備され、どれほど使っておられたのですか。
#132
○真鍋説明員 生産性教育につきましての経費というものは、どの程度の経費を学園費の中で支弁しておったかということでございますけれども、これは地方のものにつきましては、なかなか掌握しかねるわけでございますけれども、たとえば日本生産性本部に委託をいたしました委託教育の費用におきましては、四十五年度は――全部年間でございますけれども、千七百五十万円でございます。それから四十六年度は二千八百八十八万円を見込んでおります。これは年間の経費でございます。それから中央学園でございますが、四十五年度――これは推定になります。これは中央学園で二泊三日等の教育をいたしましたものの食費等の経費を含んでおりますけれども、約九百万円。四十六年度、これは推定でございますが、三千二百万円程度のものを推定として見込んでおるわけでございます。
#133
○島本委員 これだけの金を見込んで、国鉄再建、財政赤字である、こういうような中で、一生懸命これは結果的に組合の分裂につながるようなことをしておった。まことに私としては残念でしょうがない。しかし、それで私がいま聞きたいと思いますのは、このマル生運動といういままでやった行き方、これは下部段階においては、あすなろグループであるとか、ポプラグループであるとか、職場開発研究会グループであるとか、いろいろな名前でこれが行なわれておるようですが、この費用のほうはいかようにして支弁してございますか。
#134
○真鍋説明員 生産性教育を受けました者がいろいろの名前で生産性運動を実施をいたしております。これらの生産性運動は、自主的に行なっておるものでございまして、それらはそれぞれの費用を負担してやっておるという形でございますが、この生産性運動につきましても、当局としましては、けっこうな運動であるということで、これを支援しておることも事実でございます。これにつきましては、経費につきましては特にとりたてて調べるほどのものもないと思いますけれども、支援をするという形の中で幾らかの経費支弁もあり得るかと思いますけれども、基本的には自主的な運動でございますので、自主的に経費分担をしてやっておるというのがたてまえでございます。
#135
○島本委員 こういう下部の末端の行き方をあなたは全部掌握しておりますか。また、これは基本的にそうだけれども、下部はばらばらだというのでは困るのです。あなた、いま言ったことは全部下部に浸透しておりますね。
#136
○真鍋説明員 生産性グループにつきましては、これは私どものほうで掌握できないほどたくさんのグループがございます。これらのグループが一々どのような形でどういうことをやっておるかということは、実は掌握しかねております。したがいまして、私が先ほど申し上げましたのは基本の考えでございますけれども、そういう形でやっておるというふうに私どもは信じておりますし、それに対しての問題はわれわれのほうでは掌握をしていない段階でございます。
#137
○島本委員 そういう行き方を奨励していなさるのですね。念のために聞きます。
#138
○真鍋説明員 そういう形の運動というものが、基本の形であるということを私どもは承知しております。
#139
○島本委員 この研究グループ、いわゆるマル生グループといわれるこういうような人たちの行き方、これに対して、あなたたちはもうそういうふうにして下部末端まで奨励をし、野放しにしてある。その結果、私が調査したところによりますと、いろいろな事態がこれによってできてきているのです。
 労働省、この時間外及び休日の労働についての割り増し賃金の支払い、こういうようなものに対する条件並びに方法等、はっきりしていると思いますが、基準法によってどういうふうな場合にいわゆる超過勤務手当を支給するようになっておりますか。
#140
○岡部説明員 お答えを申し上げます。
 労働基準法では超過勤務をし得る場合を規定いたしまして、その場合には、その時間を行なった場合に超過勤務の支払いを行なうことになっておりまして、それは条文でございますと、三十七条に「時間外、休日及び深夜の割増賃金」、ここで具体的な規定をいたしておりまして、これは労使間できめる最低基準を示したものでございます。
#141
○島本委員 最低基準だということはわかりましたが、ではどういうようなことになりましょうか。超過勤務をしないのにこういうようなものが支払われた事実がある場合には、これはどういうふうなことになりますか。
#142
○岡部説明員 基準法はただいま申しましたように、超過勤務を行なう場合及び超過勤務を行なった場合に支払われるべき割り増し賃金の最低基準だけをきめておるわけでございます。したがいまして、いまお話しの超過勤務をしない場合についてどういう措置をとるかということは、基準法といたしましては何ら規定をいたしておりませんので、基準法の面からは特別の、たとえば何条の違反というようなことは起こってまいらないたてまえになっております。
#143
○島本委員 では国鉄当局、皆さんのほうではやはりいろいろと多額の資金を導入して、そしてこの生産性運動を四十五年度、四十六年度、それぞれ、中央学園を含めて相当の金額を計上し、これを行なっておる。下部末端のほうへいくと、もうそれぞれにまたいろいろなマル生グループの行き方を是認し、これを大いに慫慂していなさる。おそらくその結果がどういうふうなことになっているか、十分に下部末端まで目を届かしておらない。やれ、やれと言うだけである。こういうような国鉄当局の考え方ではまことに遺憾千万。
 昭和四十六年四月二十七日午後四時から五時までの間に、こういうような事態がはっきりいたしました。それは職場開発研究グループ、いわゆるマル生グループ、この人たちの呼びかけで、いわば苫小牧王子製紙、この工場の見学――まあ公害でいろいろな問題のある製紙関係の企業の一つ。こういうようなことについて、局のほうから四十人の資金、これが流れてきて、やれと言ってきた。しかし集まったのは百六十人である。四倍に達した。一人二百五十円の弁当代が不足した。その結果、区長の許可をもらって、そして事実やっていない超過勤務をやったことにして、これらの弁当代を支出したという事実がある。そしてそれも二十四時間勤務じゃない。おそらく、車両検査掛、それから車両検修掛がある。その検修掛のほうには国労、動労の組合員が多い。その方面がいろいろやっているのをそのままにしておいて、わりあいに第二組合の多いと思われる検査掛、その方面に六十人にわたってこれを支出命令を出してある。そして、四十名が百六十名になった、一人二百五十円ずつの不足額、それを超過勤務として、全然行なっていない者が行なったことにして、検査掛六十名、この手当を支給されておる。千五百円程度の者が二、三人、そして三千円以上の者、最高九千円まで、こういうような者がほとんど、全員六十名、そしてこれがマル生グループの活動の資金になった。これを区長が認め、総務助役がこの支出をしておる。そして全然超過勤務をしていない。当然、そういう人は何のために六千円もらったかわからない。ああ、ありがたやありがたや、こういうようなことで、まあ喜んでおられる。片や、同じような職場で検修のほうは一銭も出ておらない。そして出された者に対しては、取りやすいように五百円、千円、千五百円と、こういうように差をつけながら、その差額を全部補てんした。超過勤務をしていない者がしているようにして、そしてそれをマル生運動の中につぎ込んでおる。こういうようなことは許されていいですか。一体、下部末端にこういうようなことをちゃんと慫慂していると言っているあなた、真鍋さん。そして下部末端では、慫慂され、原資がない。四十名分しかこないのが百六十名になった。したがって四倍になったから、不足額は超過勤務をやっていない者をやったことにして支出している、特定の人にだけ。おそらくは、もう基準法違反である。しかし基準法はそういうようなところまではいかないと言ったから、これは基準法違反にならぬでしょう。ならぬければなおさら悪い。これは当然背任じゃないか、横領じゃないか。一体、こういうようなことをマル生運動として、綱紀紊乱さしてまでやっていいのですか。下部末端ではこういうような無理をしてやっているのです。こうまで無理さしてもマル生運動をやらせなければならなかったのですか。総裁、えりを正して聞いてください。あなたの結果は末端にこういうような影響力を与えているのです。
 労働大臣、労働基準法の所管はあなたでありまして、こういうようなことが基準法に基づいた超過勤務というようなかっこうで行なわれた。これもマル生運動の一環として行なわれた。まことに遺憾だと思うのです。許されない問題だと思っているのです。一体、労働サービス最高の責任者である大臣としては、こういうようなことを――あったということははっきりしていますから、あなたはどういうようにお考えですか。
#144
○原国務大臣 お答え申します。
 これはさいぜん労働基準局長がお答えいたしましたとおり、労働基準法の問題になってまいりましたので、これは労使間でよく解決していただくのが適当であろうと思います。
#145
○島本委員 労使間で解決をすべきだ、大臣、あなたはそういうふうに言って、にやにやして逃げておられる。しかし、これは労使間で解決できない問題で、一方的なマル生運動強行のためにとられた手段なんです。これは詐欺でありませんか、これは背任じゃありませんか、こういうことは。こういうようなことを許しておいていいのですか。
#146
○原国務大臣 さいぜんちょっとことばが足りませんでしたが、これは労働基準法では規定ございませんので、労使間の問題になっておりますから、労使間でよくこの辺は話し合いを願いたい、こういうことでございます。
#147
○島本委員 これは労働基準法に基づく超過勤務というかっこうを使っての支出をした。これが妥当なのか妥当でないのか、正しいのか正しくないのか、これは不正でないのか正当なのか、これを聞いているんですよ。
#148
○原国務大臣 なかなかこまかい問題で、ひとつ専門家の労働基準局長をして答弁させます。
#149
○岡部説明員 先ほどお答え申し上げましたように、労働基準法は労使間できめまするたとえば超過勤務の問題について申しますれば、それの支給条件その他をきめる場合の最低基準を明示しただけでございますので、いまお話しの超過勤務手当を支給するしかた等については、労使の間できめられた規則あるいは協約等によって支給されるということになりますので、基準法自体何らその点については直接の関係を持たない、こういうふうに申し上げているわけでございます。
#150
○島本委員 これは当然労働組合が反対したんです。反対したにもかかわらず、これを支給してしまった。だから問題になっているのです。
#151
○岡部説明員 ただいまのお話、私の申し上げているのも、先生のお話の点と別に反発しているわけでもございませんので、制度的に基準法は労使間できめる労働条件の最低基準をきめておる。したがいまして、それに違反した場合には基準法上の問題が出てくる。したがいまして、いまのお話の点は、基準法としては直接関係がないということを申し上げただけでございます。
#152
○島本委員 したがって、総裁、そういうようなことをやってまでも、マル生運動を下部に強要されておるのです。こういうようなことを行なった最高の責任者は総裁でありませんか。総裁、どう考えますか。これは正しいですか、正しくないですか。やれといって慫慂はしておるのです。真鍋さんの発言ではっきりしておる。下部ではこういうふうにして不正なる支出をしている。マル生運動のためには不正なる支出をしても認めることになるのですか。これは正当なのか不正なのか、はっきりさしてもらいたい。また、それに対しての総裁の決意を聞いておきたい。
#153
○磯崎説明員 具体的事象につきまして、もし御質問があれば、常務理事から御答弁させますが、先ほど申しましたとおり、いわゆる生産性運動は国鉄職員として国鉄再建のためにぜひ必要だというふうに私ども思っております。したがって、それに対してその指導者を養成するために、たとえば国鉄職員の人件費は七千億でございます、全体の経費一兆円のうち七千億でございます。その七千億に対して一億の教育費を使うということは、決して私は多過ぎないと思います。もちろん経費が非常に苦しい時代でございますから、ある程度の節約はいたしますけれども、場合によっては超勤を予算上振りかえて、そして教育費に充てるということも許されていることで、しかしその場合に、いまの具体的事象はそうであるとは私は申しません。ただ、教育費というものは七千億の人件費に対して一億程度の生産性向上運動のための費用で、これは必要だというふうに私は思います。
 こまかいことにつきましては理事から答弁させます。
#154
○島本委員 生産性運動について組合がはっきり承認したわけじゃない。それに対しても、これは超過勤務をしたとして、しない者にこれをやって、そしてそれも総体的にやったならまだしも、特定の職場のところにだけそれをやって、そしてその中から不足分を徴収した。しかし徴収されたほか、少なくて千五百円、多い人は九千円ほどもらっているのです、その職場では。そしてそういうような職場、いわば鉄労のほうの人たちが多い職場、そしてまた未加盟者の多い職場、そういうようなところに、その一つの職場を指定してそれをやっている。超勤をやらないのにやったことにして支出させた。それは正しいといま総裁はおっしゃった。これ間違いございませんね。
#155
○磯崎説明員 私の申し上げ方がはっきりしなかったためにおしかりを受けたかと思いますが、私は、超勤をしないのに超勤を払ったことが正しいとは申しておりません。
#156
○島本委員 そういうようにして払った、これに対してどうなんだというのです。不正でしょう。しかし、今後やはりそういうようなことをやらせるのですか、マル生運動に対しては。マル生運動であるならば、超勤しない者でもしたことにして、いかなる名目をつけてこれをやっても、経費の支出は認めるんだ、こういうようなことですか。そこをはっきりしておいてください。
#157
○真鍋説明員 各現場におきまして他企業見学等非常に希望が多いということで、各所属長が他企業見学を行なうことは間々あるわけでございます。ただ、いまのお話しのように超過勤務を命じていないのに、から超勤でそういった費用を、他の目的の費用をまかなうということは、明らかに私どものほうの事務上のミスの形でございます。十分、私どもは注意をしなければいけない問題だと思っております。
#158
○島本委員 それはもうすでにはっきりしておるように、組合が賛成したのではないのです。しないのにやっておるから、初めからそういうようにしてやることは当然だと思っての行為です。ですからそういうようなのはあくまでも不正である。不正なことでさえもマル生運動をやるためには認めておるという当局の行き方、これは私は将来、これからの国鉄再建の一つの原動力になる考え方とは考えられません。
 総裁、この際ですからはっきりしておいてもらいたい。もう一回言うが、こういうような不正な支出をしても、マル生運動のためには正当支出として認めておられるのですか、おられないのですか。
#159
○磯崎説明員 もちろん不正な支出は何の運動の目的のためでも不正でございます。ただ、したがって、もし必要だとすれば管理局長の許された範囲内で予算の流用をした上でやるべきだ、こういうように考えます。
#160
○島本委員 同じことを何回も繰り返させないでください。
 その場合は、マル生運動のためであるならば、超勤をしないにもかかわらずしたことにして、その経費を取って充てることは当然である、こういうように考えておるということですか。そこのところ大事なので、その点はっきりさせてください。不正を正なりと認めるということですか。
#161
○磯崎説明員 たびたび申し上げておりますけれども、マル生運動なるがゆえに不正が正なりということではございません。
#162
○島本委員 もう一回……。
#163
○磯崎説明員 マル生運動なるがゆえに、生産性運動なるがゆえに、不正のことが正しくなるということはございません。
#164
○島本委員 したがって、そういうような不正な支出をしたということが現実にあります。これは生産性運動のためにやっておる事実がありますから、今後こういうようなことをなくするのはもちろん、その事実を調べて、当然処罰の対象になるのではなかろうかと思います。これも処分の対象になりませんか。
#165
○磯崎説明員 各管理局長に日常許しております予算の流用ということがございます。その見地から見ないと、いまここで伺って直ちにそれが処分だ、処分でないということはお答えいたしかねる次第でございます。
#166
○島本委員 そこなんですよ。認めてある権限、認めてない権限があっても、組合と協議してやれば――それは協議して一致しないままに特定の利益誘導するかのように、特定の職場に超過勤務もしてないのにさしてやって、そうしてマル生運動の資金をそこから出してやる、そのほかの問題に対しては、ちゃんとそれをもらっているから、特定の人に対してはほんとうに利益誘導というか、ほんとうにめんどうを見てやっているようなものじゃありませんか。これはそんなことも認められているというならば、これはもうやむを得ません。私はあくまでもこれは背任であり、そういうような支出は不当である、こういうように思います。これを十分に私としては、調査して今後この問題は、結論は――いま総裁の言うことに対して、私は納得できません。その処置について、あとから文書をもって――私は要求しておきます。
 総裁、あなたは、もう国鉄の再建をいまいろいろと申されました。しかし、人間関係をはっきりさして、そしてこれから協力を求めた上に立ってやっていく、この姿勢を確立していくということをるる申されました。しかし、私は念のためにあなたに一言だけ申し上げたい。
 あなたが副総裁になったのは、昭和三十八年五月だと思いますが、そうですか。――たぶんそうだと思います。そのころ、私も第一回目に当選してきておったころです。あなたは私の部屋へ就任のあいさつに参りました。私もちょうどその場所にあったビールで、あなたの就任をお祝いいたしました。そして、今後国鉄のためにがんばるようにという、私は激励さえいたしました。三十八年の総選挙に私は次点落選のうき目をみました。三十九年に、正月にこっちへ来たついでに、私は国鉄当局を訪問し、あなたに面会を求めたところが拒否されました。もう一回翌月に参りまして、そしてついでにもう一回参りまして、二度目の訪問をしたけれども、二回目も拒否されました。よいときばかり、都合のいいときばかり自分はそれを利用しようとする。そして、一たんそれが落選をしたり、不要なものになった場合には目もくれない。これが官僚の持っている冷たさ、官僚の持っている一つの合理性と申しますか、上からの権力には弱いけれども、そのものはまことに冷たい存在である。こういうようなことがもしあるとするならば、これからの再建は私は不可能だと思います。私はこのことだけはいまだに忘れておらないのです。こういうようなことが、国鉄に働く皆さんに同じような気持ちが伝わる、こういうようなことを一番おそれるのです。いまの不正流用の問題、こういうようなこととあわせて、何かそういう影がちらっといたしております。ほんとうに皆さんが国鉄を再建し、そのために、けさごろ発表されたとの声明に基づいて、あなたがやろうとするならば、もっとその考え方の根本を改めて、そして人を信頼するなら不当労働行為はやらない、あくまでも話し合いの上に立って、その先頭に立ってやる、これだけの意欲を持ってください。私は、三十八年のこのことだけはいまだに忘れないのです。これが一つ一つの国鉄の労働者の上に、こういうようなことの何分の一かがはね返っているとすると、これは容易なことじゃないのです。一言苦言を呈しておきます。
 これで質問を終わります。
#167
○谷垣委員長代理 後藤俊男君。
#168
○後藤委員 まず最初に、労働大臣にお尋ねいたしますが、九月の三日の日でございますが、社会労働委員会で、この国鉄のマル生問題を通ずる不当労働行為の問題について約二時間にわたりまして、いろいろとわれわれは追及をいたしたところでございますが、その一番最後の段階におきまして、私は労働大臣に、数えれば切りがないほど不当労働行為の実証がある。この事実に基づいて、労働大臣として直ちに国鉄総裁に、不当労働行為をやってはいけませんよ、これを強く勧告すべきではないかということを、最後に労働大臣に質問をいたしました。ところが、そのとき労働大臣のお答えとしまして、おまえはそういうことを言うけれども、不当労働行為をやってはいかぬということは、ちゃんと法律に書いてある。そんなことは国鉄当局も百も御承知である。そんなことをいまさら労働大臣が勧告する必要もない、こういう答弁をなさったことは、九月三日の社会労働委員会を振り返っていただくと、御記憶があろうと私は思います。
 そこで、最近の新聞なり、さらにまた、先ほどの田邊議員のほうの質問に基づきまして一刻も早く正常なる労使の体制に戻したい、一生懸命におれも努力したい、こういうふうな話がありました。九月三日から今日まで指折り数えれば一カ月余りだと思います。その当時の心境と現在の労働大臣の心境というのは変わったわけでございますけれども、そういうふうな心境に現在お変わりになっておるというのは、一体何が原因で労働大臣の気持ちがそういうふうにお変わりになったのか、この点をまず第一番に労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
#169
○原国務大臣 お答え申し上げます。
 九月の三日の当委員会で、後藤さんの御質問にお答えして答弁したことは、お説のとおりでございます。それから日米経済閣僚会議あるいはアジア労働大臣会議等も間にはさまりまして、もう少し早く、いろいろ事態の把握をいたしたいと思っておりましたが、その後一カ月ほどの間にいろいろ私の耳に入ってきたり調査したりあるいは先々週の金曜日、十日ほど前に国労と動労の委員長、副委員長等が、労働省にも来られて、実情をお聞きいたしました。その間に非常に――私も、いままではそれほど不当労働行為等のことは問題になっていませんでしたから、十分事情を把握いたしておりませんでしたが、その後十日ほど前に直接にも聞くし、諸般の情勢も私の耳に入ってくるし、等々によりまして、事態は非常に急迫しており、労使間の不信感は予想以上に深刻になっておる、また、感情的に非常にもつれておる、先鋭化しておる。だからこのまま放置すべきではない。これはできれば仲介の労に入りたい。これはもう全く労働問題と化しておるからというので、私が諸般の情勢を判断して仲介に乗り出そうとして、過般、国鉄当局、三労働団体から事情を聴取いたしました。それを聴取するについても、運輸大臣等の了解も得て聞きまして、ようやく先週末に事情聴取を終わったばかりでございまして、そういう事態の変化を認めましたので、ぜひ仲介の労をとって、御説のごとく、第一は両者の不信感を払拭いたしたい、これがすべての出発点になると思います。それから第二は、さいぜんからお話もありましたが、自主的に労使が話し合えるように持っていきたい、こういうところでございます。
#170
○後藤委員 重ねて労働大臣に簡潔にお尋ねしますが、いまの話を聞いておりますと、それでは九月三日の社会労働委員会におきましては、現在マル生問題が中心になって職場でいろいろな問題が起きておるわけでございますけれども、その当時におきましても、その実情を把握なしに御返答願った、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
#171
○原国務大臣 あの当時からそういう不当労働行為等の問題があることは知っておりましたが、現在考えているほど、それほど深刻なものであるということはその当時考えておりませんでした。
#172
○後藤委員 次に国鉄総裁にお尋ねいたします。
 九月三日の社会労働委員会におきまして、ぜひひとつ国鉄総裁に御出席をいただきたい、これを強く要請したことは総裁も御承知だと思います。そこで非常に重要な、のっぴきならぬということで山田副総裁が出て、国会で約二時間御答弁なされました。その冒頭におきまして山田副総裁に念を押したのですが、あなたは国鉄総裁を代表して答弁されるのですか、これを確認いたしましたら、山田副総裁としましては、そのとおりです、総裁を代表して答弁をいたしますと、これは質問をする前にはっきりと確認をいたしまして、質問に入ったようなわけでございます。
 そこで、この九月三日の質問につきましてはここに私も議事録を持っておるわけでございますけれども、おそらく総裁としても大綱は御承知だと思うのですが、あのことにつきまして、現在といえどもおれのかわりとして山田副総裁が答弁したのであるし、全く自分の意思と一緒である、間違いない、こういうふうに確認をしてよろしゅうございますか、その点をお尋ねいたします。
#173
○磯崎説明員 九月三日の委員会に私はやむを得ない用事で欠席いたしまして、山田副総裁が出席いたしました。その速記録を私も拝見いたしました。もちろん私のかわりに出ているのでございますから、私が責任を負います。ただことばの中に、どういうことばが出てくるかわかりませんけれども趣旨としては私の考え方とそう違ったことはない。まあ人間でございますから、表現は多少違うかもしれませんが、考え方としては、私のかわりでございますから、そう変わりない、こういうふうに思います。
#174
○後藤委員 次は、真鍋常務理事にお尋ねいたします。
 この間実は天王寺鉄道管理局のほうへ私も調査に行ってまいりました。昨年の十一月でございますか、真鍋常務理事が天王寺局に出張されて、管理体制の強化の問題でございますか、これらにつきましてかなり広範な管理者を集められまして、マル生運動を中心とする部下の育成と申しましょうか、そういうことをおやりになったということを聞いておるのですが、その点は間違いございませんか。
#175
○真鍋説明員 私が天王寺管理局に出張いたしましたのは、運転事故防止という見地からの運転監査に参ったわけでございます。これは本社の各局のチームが十名前後の数になったかと思いますけれども、天王寺管理局管内の各現場を運転監査という形で見まして、最終の日に講評をいたしました。これはあくまで運転事故防止ということを一つの見方にいたしましての講評でございまして、いまいわれております生産性運動とは全く関係もございませんし、私はその中で生産性運動あるいは生産性教育ということに触れたこともございません。
#176
○後藤委員 いま言われましたように運転事故の防止監査ですか、それとあわせて労務監査に行かれた。これは間違いないと思うのです。そのときに天王寺管理局が「管理体制の強化について」という書面を出しております。これは真鍋常務理事も十分御承知だと思います。その中をずっと読んでみますると、これはもう前の議員が何回もいろいろ繰り返しましたから、もう一ぺん繰り返してどうこうということを言おうとは思いませんけれども、どの条文をとってみましても、もう不当労働行為です。
  〔谷垣委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
これはまことにひどいことが書いてあるわけなんです。そんな書面は知らぬとあんたはおっしゃる。それならこれは天王寺管理局長の責任になるわけですけれども、とにかくあなたが運転監査なり労務監査に行かれましたときに、管理体制の強化という問題につきましてやられまして、そのことが天王寺鉄道管理局から各管理者に出されておるわけなんです。
 その中身を一、二御紹介申し上げますと、「組合員の批判勢力育成が不十分だ」批判勢力の育成を十分やらなければいかぬ。さらにまた「組合介入、要注意職員チェックは自信をもってやる」組合介入については自信を持ってやりなさい、こういう条項もあるわけなんです。それからまたさらに「職員の意識を変え、労働組合の体質改善に全力をあげる必要がある」こういう一文もあります。さらにまた「総裁は再建に協力しない職員と労働組合と対決する方針である」これもその中の一条文にあるわけでございます。
 さらにその他を全部読んでみましても、午前中からいままで論議された中身がほとんどこの中に全部盛られておる。しかもこれは、あなたが天王寺の鉄道管理局に行かれて管理者の体制を強化するということで演説なされたのか講演なされたのか、部長は部長で集め、現場長は現場長で集め、なかなか入念な集会が行なわれておるというふうなことを私は聞いておるわけでございます。
 そこで、その中の一つの問題としまして、こういう条文があるわけなんです。「処分は小さなものでも見逃すことなく厳格に行う」こういう一条文があるわけです。どんな小さいことでも処分は徹底してやりなさい、こういう条文があるわけなんですが、このことは一体どういうことを意味しておるのか。私の聞きたいのは、管理者のほうは少々なことがあってもやらなくてもよろしいけれども、国鉄労働組合、動力車労働組合であったらいかに小さいことでも徹底的に処分をしなさい、こういうことを意味しておるのか、どういうことを意味しておるのかお尋ねいたしたいと思います。
#177
○真鍋説明員 天王寺の運転監査におきましては、本社の各局が見ました運転監査につきましての講評をいたしたということでございます。ただその中で職場管理の乱れておりますところにつきましては、運転事故防止という見地からは職場管理の規律というものをしっかりやらなければいけないというのが、これは基本でございまして、そういう意味のことは申しましたけれども、いまお話のございましたような形のものにつきましては、私いまお伺いするのが初めてでございます。どういう意味でそういうことばが現にそういう時点で出されたかということ、あるいはそういうことがほんとうにおっしゃいますような形で何らかのものが流れたかということも私は承知しませんけれども、全く知らない話で初めて聞いたことでございます。
#178
○後藤委員 いま真鍋常務は、こういう書面が流れておることば初めて聞いたということですが、これは約三時間前からいろいろな書面を提示しながら申しましたのを、総裁をはじめ全部がそれは初めてじゃ、それは初めてじゃということで全部が初めてになっておりますから、これだけを知っておるということにもこれはいくまいと思うのですが、それはそれで私はいいと思うわけなんです。ところが、いまはからずも言われましたように、「管理体制の強化」この中においていろいろな項目がいわれております。これはもう午前中の議員なり、先ほどの議員から話がありましたから、私は繰り返す必要はございません。不当労働行為ははっきりいたしております。ただ、私が聞きたいのは、いかに小さい処分といえども厳重に行なわなければいけないということを、あなたはわざわざ天王寺に行って、処分問題もやっぱりさわっておられると思うのです。それで私はこの間、天王寺管理局へ調査に行きました。行って驚いたことがあるわけなんです。こんなことをやっておきながら、一切処分は行なわれておらない。なぜ一体これの処分が行なわれておらないのだというところを、現場の現場長さんなりその駅の駅長さんにも私は話を聞きました。その駅の駅長さんは来年退職らしいのですけれども、まあとにかく早いところ処分をしてもらいたいと思って局のほうへいうておるのですが、なかなか局は処分をしてくれませんのや、駅長さん自体がそういう答えをしておるわけなんです。さらにまた職場のほうに入って見ますると、どういう言い方をしておるかと申しますると、いまこれから私が言わんとする問題に対しましては、国鉄労働組合も一つの大きな問題として提起をしておるわけなんです。ところが、御承知のように、天王寺の管理局はマル生運動の中心という形で、不当労働行為で最近次から次へと脱退が続いておることはあなたも御承知のとおりだと思います。そこでその駅において、いま申し上げました国鉄労働組合の追及によって処分者が出るということになると、国鉄労働組合が点数をかせぐことになる、そうなると、せっかく脱退して第二組合、第三組合へ来た人がまたもとに戻ってしまう。だから少々の悪いことをやったところで、国鉄労働組合が追及する以上はがんとして処分を行なわない。そういう空気を職場の中につくる必要があるということが当局の腹の中にありまして、ことしの六月に起きた事件でありながら、いまだに全然処分が行なわれておらない。これが私がこれから言おうとする問題に対する現在の情勢だと思って、私は職場で握ってきたわけです。その問題につきましては、時間が十分ございませんから、私も簡潔にこれは申し上げますけれども、亀山の駅なんです。おそらく真鍋常務なり総裁の耳にも私は入っておるんではないかと思うのですが、団体募集の問題です。これは六月の十四日です。六月の十四日でございますから、現在よりも四カ月前ですね。その団体募集が百人の団体募集であった。ところがマル生運動で局のほうからは早くやれ早くやれということで、けつをたたかれる。ところがその団体を募集しても、百名なかなかできない。八十名ようやくできた。ところが、八十名しかできませんので団体募集がこれは成り立ちませんというわけにいきませんもので、そこで駅長さんなり首席助役さんが考えましたのは、二十名ひとつ架空の人員をつくろうじゃないか。ところが、架空の人員をつくると運賃を一体だれが出すんだ。これを残りの八十名のお客さんに負担させるわけにはまいらぬ。それならひとつ国鉄の割引証を使おうじゃないか。その当時国鉄の割引証は七割引きだったと私は聞いてまいりました。そうしますと残りの三割さえ負担すればいいのだ。こういうことで二十枚の国鉄の割引証をその団体に使ったわけなんです。そこで私はその二十枚の、使っていけないところの割引証をどうして集めたのだろうかと思って調査をしました。ところが驚きましたのは、その二十枚の中の一枚というのは公安室長が出しておるわけなんです。公安官の任務はどうあるべきかということは、いまさら私は申し上げませんけれども、さらにまた残りの三枚につきましては車掌区長、首席助役、庶務助役、これらの人の割引証を、私が聞いたところにおきましては、亀山車掌区の首席助役が、区長やら庶務助役さんのおらぬときに、印鑑がありますから、その印鑑をちょっと使って、知らない間に割引証を三枚そろえて出してしまった。残りの十六枚につきましてはその駅におきまして集めて二十枚にしたわけなんです。ですからいま申し上げましたように、百人の団体に八十人のお客はできたけれども二十人ができぬものですから、使っていけないところの職員の割引証を架空の人員に充てるような形で使って、残りの三割の金の捻出を考えたわけなんです。ところが駅長さんにいたしましても助役さんにいたしましても、残りの三割の運賃というのはなかなか自腹を切ることができない。そこでさらに頭をひねったわけなんですね。頭をどうひねったかと申しますと、その八十名の中でさらに職員の割引証を七枚利用したわけなんです。そうしますると、こまかい計算はいずれにいたしましても、七枚使いますると二十人分の三割分のお金が、これは浮いてくるわけなんですね。それで埋め合わせて、その団体というのは財政的にもけつを合わせたような形で行なわれたわけなんです。ところがこの問題が現在亀山市会で問題になっておるわけなんです。国鉄の団体募集というのは一体何だ、国鉄再建云々ということをいわれておるというようなことで亀山の市会でこれは問題になっております。さらに私が聞くところによりますと、警察官も二回入って調査をいたしております。調査はいたしておりますけれども、先ほど言いましたように、包み隠すというような形で現在のところは何ら処分が行なわれずに、そのままあの問題は一体どうなるのだろうかということで放置されておる、これが実態なんです。さらにまた私が驚きましたことは、車掌区の首席助役さんがみずからそういうことをやりまして、そういう行動をとったということはもう天下周知の事実にこれはなっておるわけでございますけれども、それが六月なんです。ところが乗車証の割引期間というものは九月一ぱいでございますから、これは間違っておれはああいうことをやったのだから慎まなければいけないというならば、まだまだかわいいところがあるわけでございますけれども、そうではなしに、残っておる十五枚というのもこれは全部とってしまっておる。これはあつかましいにもほどがある。一般職員が自分の割引証を人に渡してそれで旅行をしたとしたら、一体これはどうなるのでしょうか、国鉄の乗車証の規程があると私は思います。これは直ちに処分ですよ。直ちに処分されるわけなんですよ。にもかかわらずいま申し上げましたように詐欺行為というのか、あるいは不正使用というのか、国鉄の乗車証の規程の面から考えましても、就業規則の面から考えましても、これは重大なる問題だと私は考えております。この点に対しまして総裁、さらには真鍋常務理事も十分御承知だと思うわけでございますけれども、現在どういうことになっておるのだ、この事件をどうごらんになっておるのだ、これを一体どう始末するつもりであるか、この三点についてお尋ねいたします。
#179
○真鍋説明員 ただいま天王寺管理局での、処分を細大漏らさずやるようにというようなことがあったというふうに最初のなにでございました。これにつきましては、私はどのような形でそういうものが出ておるかは存じませんので、これにつきましては十分調査をいたしたいということであります。
 それから後段にございました亀山駅で、乗車証を使用いたしまして、不足分の団体の数を合わしたというような形のものが出たということを私は新聞で見ました。これにつきまして、現在天王寺管理局に照会して調査をいたしておりますけれども、もし事実のようなことがありといたしますなれば、これは乗車証の規程に違反をいたしております。そういう意味におきましては、そういうものについて十分調査をいたしまして、私どもとしては適正な措置をとらざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
#180
○後藤委員 それは真鍋さん、あなた、かっこうのいいことを言われますけれども、これは六月の事件なんですよ。私は現場へ行って駅長さんに聞いたんですよ。こんなひどいことをあなた方はおやりになって、まだ実際何のケリもついておらぬですか。もう調査は全部終わりまして、管理局から処分がくるのを待っておりますけれども、全然その処分がきませんのや。現在あなたは調査中と言われますが、調査はもうとっくに終わっておるわけなんです。あなた方の気持ちの調査が終わっておらぬわけなんです。こんなものは総裁に聞くまでもなく、これくらい悪質なやり方はないと私は思います。現場長としましても、事実とするなら、公安室長にしましても、さらにまた車掌区の区長、首席、庶務助役にいたしましても、さらにまたこのことに奔走したところのある組合の役員がおいでになるわけなんです。これらの人がマル生運動の中心母体になり、不当労働行為の中心になってちょうちん持ちをやっておる人なんです。でありますから、処分というのは、調査中でございます、調査中でございます、人のうわさも七十五日でずっとずらしてしもうて、むにゃむにゃにしてしまおう、そのことがいいんだということでいままで四カ月間放置されておるわけなんです。これは六月十四日の事件なんです。当時は新聞にも報道されました。こんなことをあなたはやっておられまして、管理者一体の原則であるとかあるいは国鉄再建であるとか――こういうところこそ私は厳重に取り締まる必要があると思うのですよ。組合がちょっとやればすぐ処分だ、管理者が適当にやればなかなか処分はしない、そういうものの考え方というのは私は間違いだと思います。その職場におきましては、現在のところでも非常に不明朗な空気で一ぱいなんです。やはり国鉄再建のためには職場を明朗化させる、もっと公平な目で見て仕事を行なっていく、これは私はだれが考えても当然必要なことだと思うのです。四カ月前の問題をまだ調査中、調査しなくても、私が調査しただけでもこれははっきりしているのです。私は一時間か一時間半で間違いのない調査をしました。駅長さんも自分でそう言うておる。間違っておりました、ひどいことをやりました、処分を待っています、何で管理局は処分してくれぬのやろう、ただし私は来年は退職でございます、こういうことを言っておりましたけれども、そこまで言っておるものを、なぜ一体放置しておくのかということなんです。一方におきましては、ちょっとしたことでもすぐ処分を行なう。これがいまの国鉄の管理体制であるといっても私は間違いないのじゃないかと思うのです。そうでないというのなら、なぜ一体こんな大きな問題を四カ月間も放置されるんですか。総裁いかがですか。
#181
○磯崎説明員 その亀山の事件は、私も多少耳にしたことがございます。新聞にたしか出ておったと思いますので知っておりますが、現時点でどこまでそれが進んでいるか存じませんが、これは非常にけしからぬことでございまして、いわゆる調査というような段階でなしに、即刻調べましてしかるべき措置をいたします。
#182
○後藤委員 いま総裁は、直ちに調べて、調査して、と言われますけれども、知らなかったというなら、人間ですから知らぬ場合も私はあり得ると思うのです。これが新聞に出ましたのは六月の十五日。六月に新聞の記事になっておると思うのです。総裁がその新聞を見たのは六月なんですよ。そう私は記憶しておるわけなんです。それだったら、こんな問題は、あなたの気質としても、なかなかあなたはきちっきちっとやるほうでございますから、こんな問題をなぜ長いこと、四カ月も五カ月も捨ておいて、いまになって、もう一ぺん、調査がどれだけ進んでおるかわかりませんけれども、調査をいたしまして――ここで私がこの問題を追及しなかったら、もうこれでしまいということになるのじゃないですか。国鉄再建にそれだけ真剣に取り組んでおられる総裁とするんなら、総裁らしからぬ行動だと私は思うのです。もう調査するまでもなくはっきりしておるじゃないですか。やってはいかぬ人の割引証をとってきて団体で使わして、さらにまたほかに七枚使って金を浮かしてこっちの三割を穴埋めする。それを取り締まるべき公安室長あたりがその割引証を出しておるわけなんだ。車掌区で出しておる。あとの十六枚はその辺で適当に集める。それで局のほうにはりっぱに団体募集をやりました、ああそうか、マル生運動をおまえのところはようやっておってくれる――それが実態だといっても私は間違いないと思うのです。
 ですから、この問題については、もう一ぺん総衛にお尋ねいたしますけれども、調査がしてないものならやむを得ませんけれども、いままで四カ月も五カ月も放置しておくということは、これは一つの問題があると思います。調査されました結果、これを一体どういうふうに、あなたの言われる、いわゆる処置をされるか。どういうふうにこの問題を処置をされるか、総裁としての決意と申しましょうかお考え方をここではっきりとひとつ言明をしていただきたいと思います。
#183
○磯崎説明員 事前に御連絡がございますれば十分検討してまいったのでございますが、ただいまはこの席で初めて伺ってまいりましたので、私もいつ新聞に出たか記憶がないぐらいでございます。しかし、その事実、そう別に時間のかかることじゃないと思います。また事実関係も、先生のおっしゃるごとくであれば非常に簡単だと思います。したがいまして、乗車証規程によりましてこれはきちっと始末いたします。
#184
○後藤委員 では、いまの問題については、ぜひひとつ早急に調査をしていただいて、規程に違反するところがあれば厳重に処分をしていただく、こういうことで確認をしてよろしゅうございますか。
#185
○磯崎説明員 乗車証規程に違反する点がありましたならば、その規程によりまして処分いたします。
#186
○後藤委員 次には、先ほど自民党の有馬議員の質問に対しまして真鍋常務は、こういうふうに答えました。国鉄といたしましては昇給であるとかあるいは昇格であるとかあるいは功労章であるとか、こういうものにつきましては組合別に差別をしようというような考え方は持っておりませんと、これは午前中の自民党の有馬議員の質問に対しまして真鍋常務は明瞭にお答えになりました。さらにまた、九月三日のこの社会労働委員会におきましても、私は、静岡管理局内のいま申し上げました問題につきまして、私のほうの資料に基づいて質問をいたしました。ところが、山田副総裁としてもあるいは真鍋常務といたしましても、そういうことは一切やっちゃおりません、国労だからすべらせるの、鉄労だから合格させる、そういうようなことは一切やってはおりませんとこれは九月三日の日にもあなたは言明されたし、総裁代理の山田副総裁も言明しておられたわけなんです。それから一カ月以上たちましたきょうも、やはり同じように言明しておられるわけなんです。
 そこで、私は九月三日の社会労働委員会におきまして資料を要求いたしましたら、この功労章の表彰の資料と、さらに、抜てき昇給の、これは人名ではなしに数ですね、さらに助役試験の実績表、これは静岡管内の実績表を私は手元にいただきました。そこで、いま申し上げました問題は続いてあとから追及いたしますけれども、もう一つの資料を私は要求してあるわけなんです。御承知のように、静岡の運転所におきまして暴力問題が起きました。この問題に対して公安官が組合員を逮捕して警察に渡した。これらの実情に対する資料はいただきました。あの際要求していただいておらないのは、公安官というのは一体労働運動に対してどういう方針で対処すべきであるか、これは私はことではっきり要求いたしておりますし、議事録にもはっきり載っておるわけなんです。ところがいまだにその資料は私のところへ届いておりません。どこかほかのところへお届けになったのか、あるいはこれは要求しおったけれども出す必要がないというのでおやめになったのか、あるいは国会の問題だけれどもお忘れになったのか、いずれによりましてこの資料を提出してないのか。これはもう簡潔でけっこうですからお答えいただきます。
#187
○真鍋説明員 御要求の資料につきましては、全部提出してあるそうでございます。その提出いたしております資料の一番最後に、公安官の職務についての当局見解をつけておるということでございます。
#188
○後藤委員 いま私が資料要求しましたことに対して、警察官のほうは別紙できちっときているわけなんです。警察官が労働運動に対してどういう方針をとるべきである、これははっきりしております。で、いま申し上げましたところのこの公安官の労働運動に対する態度というか方針というか、これに対しては二、三日前にもあなたのほうの政府関係の人に要求したわけなんです。おおそうだ、あれがあったとこう言われながら、いままだ私のほうに届いておらぬわけなんです。これはひとつ早急に、この問題はまだまだ沖繩国会を通じてこれからでございますから、あわてる必要がございませんので、ぼつぼつやってください。その資料を早く私の手元のほうへ出していただくように、ひとつお願いしたいと思います。
 それで私は先ほどの問題に帰るわけでございますけれども、先ほどあなたが組合別に差別をしておらぬと、こう有馬議員にお答えになりましたね。ところが九月三日の静岡管内の関係につきましては、私はここで質問をいたしました。あなたがお答えになったのは、現場の実情を全部調べてお答えになったのか、調べずに適当に有馬議員にお答えになったのか。調べられたとするならば、どこの管理局の分を調べたらこういう実績になっておった、だからおれはこういうふうに調べたんだ。どういうことなのか、それに対する回答をいただきたいと思います。
#189
○真鍋説明員 組合別に差別をいたしませんということは、そういうふうな指導をやっておるということでございます。ただ結果として組合別にもしこれを調べました場合にどういうことになっておるかということとの関連で申し上げたことでないわけでございますけれども、結果としてどういうふうに、たとえば案分するとか、たとえば組合別に何らかの配慮をしながらそういった抜てきあるいは昇職、昇格等を行なわないいということがたてまえでございまして、もしそういうことを調べるとすれば特別の調べようでなければ私どものほうは調べようがないということを申し上げたわけでございます。
#190
○後藤委員 それじゃ真鍋さん、あたが午前中にお答えになったのは、適当にお答えになったということですか。自分はこう思っておる、各現場ではどういうようにやっておるかということを、ここまで問題になっておるのに全然お調べにならずに、まあ国会でこういうふうな質問があったらこう言うておけばいいわい、そういうことで有馬議員にお答えになったのですか。そうとしか私には思えないわけなんです。そうじゃないというのなら、どこをお調べになったか。これは特に現在、あなたはあとから言われると思うけれども、国鉄労働組合が何名で、動力車労働組合が何名で、鉄道労働組合が何名かということを、あなたのほうが今日かえって神経を使っておるわけなんですよ。現場へ行きますと、それは現場長さんに聞いたほうが早いのです。それぐらい神経を使っておられるわけなんです。九月三日に追及をしましたことについても全くあなた方無関心で、それならば静岡管内の、この前私が問題にしました点につきまして調べたことがありますか。これは功労章の問題だけを私は言います、時間がもうありませんから。
 静岡の動力車関係の職場だけを簡潔に申し上げますよ。動力車の所属の組合員が千二百九十五人おられるわけなんです。その中で表彰を受けた人は、わずかに一人です。一人ですからこれ以下はございませんね。国鉄労働組合所属の組合員は千八百五十八人、これまた一人です。あなた方一人以下に減らそうと考えたんだけれども一人以下ということにはなりませんから。それから鉄道労働組合は二百六十五名。この中で功労章の表彰が二十八名なんです。機関区別に言いましょうか。二十八名なんです。これが実態なんですよ。静岡管内における運転関係の職場ですね。この前のときにも、はからずもそうなりました、はからずもそうなりました、とあなたは言われました。はからずにならこういうふうにはならぬわけなんです。国鉄総裁から真鍋常務が、特に昇給のときにはそういう点に十分神経を使っておやりなさいよ、表彰のときにはそういうふうにやれよという、そういう面が非常に徹底しておるということの証明になると思うのです。これは常識的に考えても、千三百人からおるところで一人、千九百人からおるところで一人、二百六十人しかおらぬところで二十八名、これが功労章の表彰の実績になっておるわけなんです。これがまた全部一カ所におられて、はからずもこうなったというのならそれは私も別にとやかく常識を逸したようなことは言おうとは思いませんけれども、沼津機関区から静岡運転所、浜松機関区、豊橋機関区、伊那松島機関区、それから富士電車区、それから沼津に静岡、浜松、豊橋、二俣、こういうところは全部、動労、国労というのがなしです。あとが全部鉄労なんです。これが実績なんです。さらにまた助役試験の問題、この前もここで言いました。助役試験を受ける前は動労、国労がちっとはおりますけれども、合格してしまうと、まだ助役に昇職する前からもう全部鉄労です。これは静岡管内全部調査をいたしました。さらにまたあなたのほうからもらった資料とも照会をいたしましたら、実績は組合の調査と全然変わっておりません。さらにまた、その他の抜てき昇給です。特に先ほど申しました書面の管理体制の強化の中でも、抜てき昇給については十分神経を使ってやれよという指示が現場長にいって、そのとおりやっておるわけなんです。ほとんど抜てき昇給は、国労、動労に所属する者は一切なし、こう申し上げても過言じゃないわけなんです。しかもこれは、私は一つの職場を調査して言っておるわけじゃございません。静岡鉄道管理局の管内における運転関係の十幾つの職場を全部調査したらこういう結果になっわけなんです。これでも真鍋常務、先ほど言われた組合別に差別をしておらぬ、そういうことが言えますか。言えるなら言えるで、言える実績を私は説明していただきたいのです。この問題を取り上げるのは、私は二回目でございますから。さらにまた九州のほうの佐伯支部その他の動労の職場におきましても、同じようなことがいえるわけなんです。私は、その実績を一々ここで申し上げて、こういうとこをやっておるのだということをはっきり申し上げたいけれども、その時間がないからそこまで具体的に言いませんけれども、こういうことを現場でやらしておきながら、ここでは、組合差別は一切いたしておりません。われわれが質問をいたしますのは、あなたの気持ちを聞いておるわけじゃないのですよ。現場長に、昇給なり、そういうことを現在どういうふうにやらしてきたか、そのことを聞いておるわけなんです。真鍋常務、いかがですか。
#191
○真鍋説明員 功労章あるいは助役の任用試験等におきましては、こういうことがあろうかと思います。
 功労章におきましては、主としまして運転関係でありますと、検査長あるいは指導機関士等、言うならば職長クラス、フォアマンクラスが勤続年数も多く、その層から登用されて功労章の受賞になっておる者が多いわけでございます。あるいは助役登用試験におきましても同じでございますが、こういった職長クラスは、比率でいいまして鉄道労働組合に所属している者が多いと思うのでございます。したがいまして、結果としては多くなることはあり得るかと思います。しかし、組合別に見ましてそういった差別をつけて登用あるいは受賞するということは全くないということでございます。
#192
○後藤委員 いま真鍋常務は、そういう差別をいたしておりませんと、相変わらず言っておられますが、そうしますと、私の説明がわからぬわけですか。あなた、聞こえないのですか。静岡管内では、運転関係でこういうふうになっております、これは明らかにもう組合差別です。千三百人もおるところで一人しかいない、千九百人もおるところで一人しかいない、二百六十五人おるところで二十八人ある。はからずもそうなった。はからずもそうなったということは、十幾つの職場で一つか二つの職場がそうなったというなら、これこそはからずもだと私は思うのですが、はかりもはかりで大はかりをして、そして全部の職場にそういうふうな差別待遇、不当差別を行なっておるわけなんです。それをあなたは平然として、午前中に有馬議員に、差別はいたしておりませんと言われるわけなんです。それが私はわからぬわけです。現実と合っておらぬところに、私は問題があると思う。なおあなたが差別しておらぬというのなら、こういうふうでございますから差別しておらぬという、はっきりした証拠を出してください。私は別に資料も何もなしで追及しておるわけじゃないのですよ。全部現場のあれを調査しまして、そしてもう二十近い職場全部がそういうことになっておるわけなんです。これであなた方がここでのほほんと、組合差別はいたしておりません――九月三日もそうだし、きょうの答弁でもそうなんです。そんなことが、一体ありますか。差別しておらぬのならおらぬで、こういうことでしておりませんと、もう少しはっきりしたものを出して説明してください。ここでどうしてもできぬというのなら、静岡管内をもう一ぺんあなた方御調査になって、おまえはそう言うけれども違っておる、こういうふうだというふうな説明になるかもわかりませんけれども、ただ私は午前中のあなたの話を聞いておって、よう平然とあんなことが言えるな――聞いておるほうの有馬議員も、へい、さようでございますか、こういうことになるわけです。それは、いまの話じゃないが、有馬議員のほうは調査をしておられぬから、静岡管内の功労章なり抜てき昇給なり助役試験はうまくいっておるのだということで、もう現在はおいでにならぬが、お帰りになっているわけなんですよ。いかがです。
#193
○真鍋説明員 功労章につきましては、再三申し上げておりますように、勤務成績が特によい者の洗いまして、そういった者の中で功労章受賞を選考いたしております。この場合には組合別ということはございませんで、勤務成績を主として見ておるということでございます。また助役登用試験につきましても同じでございまして、勤務成績あるいは職務能力、そういった経験等を十分に考査して助役登用をしたということでございます。
 結果としてどういう形になったかということは、私どものほうで承知し、あるいはこれらを調べるということはいたしておりませんけれども、もし組合別にそういったものを調べるということになりますれば、私どものほうも調査いたしまして資料提出をいたしたいと思うわけでございます。
#194
○後藤委員 同じ答弁を何べん聞いても、私は別に納得できぬわけでございますけれども、豊橋電力区の会議におけるテープがあるわけなんです。これはテレビでも流しておったと思いますし、また二、三の機会にこれが発表されておったと私は思うわけでありますけれども、あの中身を見ましても、えさの問題が問題になっていますね。えさ、ですよ。国鉄の労働者というのは、えさ扱いなんです。えさがあったら、鶏じゃないけれども寄ってくるが、えさがないと寄ってこぬ。電力区長が、何とかそのえさをもらえぬだろうか、えさのことは心配するな、おれがえさを出す――それは組合員の全然聞いておらぬところだから、そういうことをあなた方の当局の管理者のほうは言われたのだろうと思いますけれども、えさとは、一体何ですか。魚釣りの話なら別ですよ。少なくとも職場でいま再建で一生懸命に働いておる労働者をつかまえて、鶏か犬ぐらいにしか思っておらぬじゃないですか、えさ、えさということは。そういう考え方の人が管理者の中には非常に多いわけなんです。
 さらにまた、この間の九月の初旬の話でありますけれども、これは私はここに全部資料を持っておりますが、美濃太田車掌区の問題です。ある職員の家へ鉄労の組合員とさらに助役さん、これらの人がそこの家庭訪問をして、国労を脱退しなさい、脱退しないと、先ほどの話じゃございませんが、助役にはなれませんぜ、試験にも合格しませんぜ、さらには遠いところへ転勤させられますよ、こういう話をしておるところへ、その駅の分会の分会長が情報によってそれを気づいて、その会議をやっておるところへ飛び込んだわけなんです。飛び込んだら、一番驚いたのはだれかというと、そこに入っておった助役さんが驚いて隣の家に飛び込んだわけです。しかも、隣の家に飛び込むのにくつぐらい脱いで入ればいいのに、くつをはいたままで隣の家の座敷に飛び込んだ。これは大問題になりました、隣の家の人が警察へ訴えますと。ところが、ちょうど、はからずもその隣の家が国鉄の委員長の家だったそうでございます。はからずもというのはこういうときに使うことばでございます。それで、いまのところは警察問題にはなっておらぬように私は聞いておりますけれども、これは九月の五、六日の話でございますから、非常に最近の話なんですよ。なぜ一体逃げるんですか。不当労働行為をやっておらぬものなら逃げる必要がない、堂々とそこで受けて立つ必要があったと私は思うのです。隣の家へくつばきで飛び込んだ。それ以外にもまた佐伯機関区なりその他の機関区、あの方面の機関区へ行きますと、不当労働行為の問題が、先ほどの島本委員の話じゃございませんけれども、数えればきりがないほどあるんです。数万とは言いませんけれども、数千あるのです、現在。いま私が申し上げました美濃太田の問題につきましては聞いただけでこっけいじみておりまして、それくらい一生懸命に車掌区の助役さんあたりはやっておられる。逃げるのにも一生懸命なんですね、これは。こういうことの結果、私が先ほど申し上げました抜てき昇給なり功労章なり助役試験に影響さしておるわけなんです。その結果というのが、先ほど私が申し上げましたような実績としてこれがあらわれておるわけなんですね。ただ私はここで真鍋常務に、この問題についてさらに一歩進んでお話を聞きたいと思うのですが、こういう実績において、鉄道職員の、職場で働いておる人々が、組合差別によって昇給をけられたり、あるいは昇給したりするようなことになりますと、これはたいへんな問題でございます。そういうことのないように、いま申し上げました方向に対する、昇給の問題、功労章の問題、その他試験の問題につきまして、労使の間ではっきりした協定を結ぶ、そこまでの決意があるかどうかということが第一点。
 さらに第二点としては、これはまだまだほかにも実績がたくさんございます。いわゆるあなた方のほうの不当労働行為によりまして昇給をけられておる人、あるいは不当労働行為によりまして試験の合格が不合格になっておる人、あるいは不当労働行為によりまして功労章をはずされた人、それらの人々が、確かに不当労働行為によってそうなったんだということになった場合には、それに対する損害賠償を一体どういうふうにお考えになっておるか。これは職場におきましても非常に関心の深い問題なんですよ。この問題について総裁いかがですか。
#195
○磯崎説明員 不当労働行為による差別扱いの問題だと思います。これは先ほど真鍋理事が申しましたとおり、たとえば組合別に割り当てて何人やるとかいう性格のものでは私は絶対ないと思います。これはやはり功労章と申しますのは、多年国鉄に勤務して、そして中堅として後輩の指導に当たり、そして業務の中心になっている人に対して特別に賞として差し上げるものです。また試験その他についても、これは業務の遂行上の必要性あるいは仕事の内容の近代化等による試験でございまして、そういった点について組合ごとに差別をするということは考えられないことでございます。それがいまのお話のように、あるというふうなお話もいま承っております。これらにつきましては、もう少し具体的な問題として調査された上で、そうして両方で話し合った上で、第三者の機関の判定があった場合には、その時点において考えるということになると私は考えております。
#196
○小沢(辰)委員長代理 後藤君に申し上げますが、約束の時間が来ておりますから最後の質問にしてください。次にまだきょうはだいぶありますから、よろしく。
#197
○後藤委員 いま総裁が、そういうことはあり得ないと言われましたね。だからあなた国会に出てきてくださいということを私はいままで言っておったわけなのです。しかも、あり得ないとあなた言われると、これは黙って下がるわけにいかぬわけです。それじゃ私の実績がうそかということなんですよ。おまえ、でたらめのものを資料にして言っておるんだ、こういうことなでのす、あり得ないということは。それならば、総裁に私はお尋ねしますが、先ほど申しましたように、動労が千三百で国労が千八百、千九百近く、鉄労の人が二百六十五人だ、その中で千数百おる組合からはわずかに一人、これはどこかの機関で一人だけ選ばれたわけなのです。あとは全部、総ゼロということなのです。ところが、鉄労におる人は二十八名表彰を受けておるわけなのです。そんなことはあり得ないと総裁は言われたが、あり得ないといったところであり得るのですよ、現に。あなた国鉄総裁でしょうが。もしあったらどうしますか。あなたはあり得ないと言われましたが、実績を調べてあったと、それははからずもとあなた言いたいような顔をしていらっしゃるけれども、私が先ほど言うておるように、二十近い機関があるわけなのです。その中の二つや三つがいま言ったような形になるのならば、はからずもそうなりましたの理屈が通ると思うのです。全部の業務機関がそういう扱いを受けておるわけなのです。そうしてその実績がいま言ったような形になっておるわけなのです。ところが、そんなことはあり得ないと総裁は言われるのでしょう。あり得ないことがあり得ておるわけなので、私は資料に基づいて説明しておるわけなのです。あなたのほうは資料も何も言わずに、自分の感じで言っておられるのでしょう。おれは国鉄総裁だけれども現場の事情は知らぬとおっしゃるならば別ですよ。私はこれら職場の現状を、現場長がどういうことをやっておるかとういことをもっと詳細に調べる必要があると思う。いまも話が出ましたように、一人、一人というのは、動労、国労に一人ありますが、マル生運動やっている人だけが一人ずつ入っておるわけなのです。その中心になって世話役をやっておる人だけなのです。あとは全部、成績がよかろうが悪かろうが、国労だということでもう全部、試験でも何でも落選、じゃない、落ちてしもうておるわけなのです。それがはっきり現場で、ほとんど国鉄の全職場でこれがやられておるわけなのです。そんなことあなたがあり得ないということをいまごろ言うておると笑われますよ。それは、ものの考え方に意見の相違というのは私はあると思うのです。見解の相違というのは私は認めます。総裁は総裁なりに、マル生運動を通じて一生懸命に再建問題をやっておられる。その問題とこの問題とは違うのです。これはもちろんマル生に通じてこういう結果になっておるのですけれども、おるものをあなたはおらぬと言うのですからね。実績がそうなっておるじゃないですか。そんなことはあり得ないとは、一体あなたは何をもってあり得ないと言われるのですか。そこを明確にしてください。
#198
○磯崎説明員 そこの誤解があると困りますのではっきり申し上げておきますけれども、先ほど先生の御質問は、初めから組合別にある数を割り当てる、あるいは組合別にきめているのじゃないかというふうなお話でございましたから、それはあり得ないということを申し上げたわけでございます。ただ結果につきましては、いまおっしゃったような結果が現実にあるとおっしゃるのですから、それはあると思います。しかし先生のおっしゃったのは、初めから組合側に、国労はだめだ、動労はだめだ、どこがだめだというふうなきめ方をしているのじゃないかとおっしゃったから、そういうことはいたしておりませんというふうに申し上げたのでございまして、結果の問題は、これは先ほど申しましたように、ことに功労章につきましては、先ほど申しました中にある職種がございます、いわゆるフォアマン級の人の中から選ぶということになっておりますので、ただ数だけではいかない点があると思います。やはり結果でもってごらんをいただきたいことと、いろいろ、これは公にしてもかまいませんが、功労章につきましてはいろいろ選考の基準がございます。それによって選考いたします。それから御承知の功績章のほうは、これは年数だけでまいります。そういった違いがございます。それらにつきましても、功績章は功績章で大体年数を中心として表彰する。功労章は功労章でその職員のメリットでもって表彰する。こういう立て方でざざいまして、初めから組合ごとに変えるというふうな、たとえば初めから動労はゼロだ、国労はゼロだというふうなやり方等でやっているわけではない、それはあり得ないと申し上げたのでございまして、その点は誤解があれば御了承願いたいと思います。
#199
○後藤委員 総裁、いまあなたの言われたことは、それはあたりまえのことなんです。国鉄当局として、昇給については国鉄労働組合はゼロ、動力車労働組合はゼロ、鉄労だけは昇給させろ、こんなことを最初からやっていたら大問題になりますよ。それをうまく包み隠して、そうではないような顔をして現場長にそういうふうにやらしておる。そのことを私は指摘しておるわけなんです。総裁の命令なり真鍋常務の命令で抽象的には指示はされておりましても――具体的にそんなことをやっておると私は最初から言うておりません。そうではなしに、現場長のほうへちゃんと労働組合はどういう所属であってどうだ、これをはっきり考えて抜てき昇給をやりなさい、助役試験しかり、功績章の問題においても考えよ。それだけではなしに、昇格問題から、あるいは車掌の中から専務に昇格する問題から、まだまだたくさんの資料があるわけなんですよ。実績がそうなっておるわけなんです。そういう考え方ではなしに、普通にやっておるのなら当然昇給しておる人、功労章をもらう人、助役試験に受かる人があるわけなんです。あなた方の考え方が間違っておる関係で落とされておる人があるわけなんです。
 私はある家庭の話を聞きました。ある家庭へその機関区の助役さんが訪問されたわけなんです。そこで一体何を話をされたかというと、あなたの主人を助役にしたいから、ひとつ、国労におったのではなれぬから、鉄労のほうに行くようにと。そこへ主人が帰ってまいりまして一緒に話を聞く。助役さんがいわゆる不当労働行為、家庭訪問。これは資料で言うまでもなく、現在はっきりしておるだけでも五百件から六百件というのが、証人が全部あるわけなんです。そこで、その奥さんがどう言われたかというと、おとうちゃん、そんな組合をかわらぬことには助役になれぬようなことでは、おとうちゃん間に合わぬから、助役にしてもらわぬでもけっこうですからやめなさい。そばで聞いておりました奥さんが、はからずも、その機関区の助役さんにそう言われたのです。こんなものはほんの一例にしかすぎませんけれども。だから先ほど総裁が言われたように、そんなことはやっておりません、実績としてもそんなことは出ておらぬはずだ、あなたが言われるのは私はそう解釈しておるのです。どんなかっこうであろうと組合差別をしておらぬのなら、実績において組合差別は出ておらぬはずだと思うのです。実績においてそういう結果が出ておるというのは、何らかのやり方でちゃんとそういうふうにやられておるということなんです。ですから、この問題は、ここでさらに追及いたしておりましてもこれは押し問答のような形になりますけれども、ぜひひとつ、あなたのほうで静岡管内における、この間は運転関係の職場全部の資料をいただきましたけれども 管内全部の資料をあなたのほうで調査されまして、そんなことはあり得ないと総裁が言われたのですから、あり得ないという裏づけをつけて御返答をいただきれい、こう思います。
 それから最後、時間が来ましたので終わりますけれども、冒頭私は総裁に確認をいたしました。九月三日、山田副総裁は、絶対に不当労働行為はやっておりません、これははっきり言い切られました。万一、不当労働行為が行なわれた、そういうことがあった場合には、ケース・バイ・ケースになりますけれども、適当に処分をいたします。これははっきり九月三日の社会労働委員会で言明されておるわけなんです。この考え方は、冒頭確認はいたしましたが、さらに具体的に、最後でございますから、総裁の気持ちを確認しまして終わりたいと思います。
#200
○磯崎説明員 前回のときに副総裁が、処分ということを申したそうでございます。先ほど冒頭、先生の御質問で私申し上げたとおり、多少のことばの使い方の違いはあります。それは人間が違いますからやむを得ないという点はお許し願いたいと思います。しかし私がけさから申しておりますのは、ケース・バイ・ケースで適当な措置をとる、こういうふうな広い意味で申しております。したがって、九月三日でございましたか、あのときの処分と申しましたことばは、いわゆる懲罰規程による云々という処分でなしに、処置という意味であるというふうに私は解釈いたしております。それは総裁として私はそういうふうに解釈いたしております。
#201
○小沢(辰)委員長代理 久保三郎君。
  〔後藤委員「まだまだ」と呼ぶ〕
#202
○小沢(辰)委員長代理 時間ですから。それなら久保さんに申し上げますが、久保さんの時間割りのうちでひとつ御了解願って、やってください。それでないと、きょうはもう八時までびっしりなんですから、一人が時間を守りませんと……。久保さん了解しますか。
#203
○久保委員 了解です。
#204
○後藤委員 それでは総裁、いまあなたは違うと言われましたけれども、処置というのと処分というのとは違いますよ。山田副総裁は、議事録は読みませんけれども、ケース・バイ・ケースによりまして適当なる処分をいたします。これはもう当然のことであるし、これくらいはっきり答弁されたことはないわけなんですよ。人間が違うからものの言い方が違うということでは、これは通りませんよ。はっきり処分すると言われたのです、九月三日に。しかも、総裁の代理でやられたのですよ。再度お答え願います。
#205
○磯崎説明員 私は午前中も申し上げましたとおり、不当労働行為をやった者につきましては、ケース・バイ・ケースで適当な措置をとると、初めからそういうふうに申し上げております。したがって、先ほど後藤先生の冒頭の御質問につきましても、若干の表現の違いがあるかもしれませんということを申し上げたわけでございます。
#206
○後藤委員 もう時間ですから、私は次の久保議員のほうに引き継ぎますけれども、ただ、一口言いたいのは、人間によって違うからというそれは、表現のしかたが違うという場合もあると思います。それは白いと言うか白色と言うか、そういう表現のしかたならあるだろうと思うのです。処置と処分というのは、これは明確に違うのですよ。処置の中にはいろいろな処置が入っておるわけなんです。その点は、九月三日の副総裁の言明というのははっきり議事録にも載っておりますから、私は今後ともこれを確認して、その上に立って今後の話を進めていく、このことだけは十分申し上げて、私の質問を終わります。
  〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
#207
○森山委員長 久保三郎君。
#208
○久保委員 けさから同じような問題を繰り返し質問しておるわけなんでありますが、時間も限られておりますから、多少重複しますがお尋ねをしたいのであります。
 そこで、運輸大臣には御多忙の中をわざわざ出席してもらったのであります。いずれあなたには運輸委員会の中で十分お尋ねしたいと思うのですが、さしあたり本日は初めて国鉄におけるいわゆるマル生問題の政治的な議論の場所でありますので、国鉄の経営の監督の立場にある政府を代表してといえば運輸大臣でありますから、今日の事態についていかようにあなたは思っておられるのか、これを聞きたいだけなんであります。と申し上げますのは、なるほど運輸大臣とも御相談の上に労働大臣はいま仲介に乗り出そうということでありますから、これは別に私は問題はないと思うんです。しかし、もはやマル生問題というのは単に国鉄内部におけるところの労使の問題だけじゃなくて、社会的な問題になったと私は断定していいと思うんです。そういう観点からするならば、当然あなたはものを言う時期であろうと、こういうふうに思いますので、一言お答えをいただきたい。
#209
○丹羽国務大臣 ただいまの御質問でございますが、ただいまの現時点におきます国鉄の労使の問題につきましてどういうふうに考えるかと、こういう御質問でございます。私も新聞紙上その他におきまして、いろいろ最近の国鉄の労使の間に問題が起こっていることを承知いたしました。しかもそのことが不当労働行為に及ぶというようなことが再三報じられておりますので、そのつどそういったような事態がないようにということは注意していたつもりでございますが、最近非常にそういう問題がやかましくなりまして、実は憂慮していた次第でございます。ところが、労働大臣からこれらの問題につきまして、今日国鉄の置かれている地位、そうして今日この国鉄の財政再建問題をめぐりまして、一面におきまして増収をはかり、また企業の合理化をはかり、また一面国民の足としての国鉄の使命感に徹するという点におきまして、何と申しましても、そのことにつきまして、生産性運動が国鉄の使命感に燃えてやっておるということの妥当性は認めるといたしましても、労使間におきましていろいろの紛争が起こり、そうして労使の協調が破られることは非常にこれは好ましくないことでございます。国鉄再建にも響くことなので、何とかいたしまして、これらの点におきまして労使の協調が得られるような方策を各方面から慎重に聴取いたしまして、また検討いたしまして、そうして私といたしまして監督官庁としての指導をしてまいりたい、こういうふうにせっかく思っておるととろでございます。
#210
○久保委員 いまのお答えでありますが、いままでやっているマル生運動、これの妥当性は認めるものの、労使の協調が破れることについてははなはだ遺憾であるというお話でありますが、マル生運動とは国鉄特有の生産性運動というものでありまして、言うならば、一般的な生産性運動とは違った性格のものでありますので、ことさらに世間も最近ではマル生と言ってきているんだろうと、てまえどもは思うのであります。百歩譲って、生産性向上という純粋な運動というか、そういうものであるとするならば、当然その一つの大きな柱は労使の協調であります。運動を認めるけれども、労使協調が破れるという、そういう矛盾した考え、見方が出てくること自体に問題が私はあると思うのであります。その点は十分御認識をいただくと同時に、四十五年度新たに任命された国有鉄道の監査委員の報告書の冒頭には、あなたがいまお述べになった、妥当性を認めたところの生産性運動が定着しつつあると、こう書いて報告されております。しかし残念ながら、今日的課題、問題になっている、社会問題になっているマル生に伴うところの職場における陰惨な空気あるいはこの問題点については一言も触れておらないのはたいへん残念だと思うし、これでは監査委員の役目は立たぬと思うのでありますが、あなたは監査委員会に対して再度、この国鉄内部におけるマル生問題にからんでの不当労働行為、あるいは労使協調が、あなたのおっしゃるとおり破られている事態について監査をお命じになりますか、いかがでしょうか。
#211
○丹羽国務大臣 ただいまのお話でございますが、ただいま御指摘ございましたように、あくまでも生産性向上運動というものは、そのもとといたしまして、私は、労使協調の実があがらなければいかぬ、こういうふうに思っている次第でございます。その点につきまして、ただいま不当労働行為が問題となっておりますことは、まことに私は遺憾に存じている次第でございます。
 実は、先般も私、そういう点につきましては、厳正に公平な、あらゆる意見を聴取して、そうして自分の処置を考えたいということを述べた次第でございますが、私はそのつもりでこれからも労働大臣とも十分連絡を密にいたしまして、それらの、私がただいま申しました労使協調を基本とするということを根本といたしまして、これからの指導をやってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
 また監査委員の点につきましては、私即刻これから検討いたしまして、そうしてまた処置してまいりたい、問いただすべき点があれば問いただしていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
#212
○久保委員 時間がありませんし、冒頭申し上げたような事情でありますから、これ以上運輸大臣から御答弁を本日はいただきませんけれども、最後に申し上げておきますが、労使協調についてどうしてやるべきかということについて、私は御注文を申し上げているのじゃなくて、今日起きておる事態についてどういうふうにお考えであるか、どう措置されるかということをお尋ねしているのであります。近い機会にまたお尋ねすることにして、きょうは国鉄総裁せっかくお見えでありますから、総裁並びに、労働大臣もおいででありますので、その方々にお尋ねをすることにしますから、御退席になってけっこうです。
 次に、国鉄総裁にお尋ねしたいのでありますが、きょうお出しになった声明について、これは一番新しい公式の見解でもあろうかと思うので、これに関連してお伺いするのでありますが、私は、いままでの質疑応答を聞いておりますと、不当労働行為については、思想はどんな思想を持っても自由だ、それをたとえば言っても、その影響がなかったり、事実があらわれてこなければいいのだというような思想が、どうも真鍋常務の答弁の中にもあるように思うのであります。そういうことでいくならば、これは不当労働行為なんというのはほとんどなくなってしまうのですね。いわゆる利益誘導による組合の切りくずし、実際に世間で言う、われわれが言うところの不当労働行為ということが、国鉄内部では二万件以上出ておると思うのです。約三万件あるのじゃなかろうかと思うのです。ただし当事者が、これを不当労働行為といって公労委等に提訴の手続をとっていなかったり、あるいはそういうものを問題にしないまま、すなおに利益誘導にひっかかって移動していくというのがたくさんあると思うのですね。そういうことについていま職場の中ではたいへんいろいろな問題が出てきているので、この問題についてどうするかが議論の焦点だと私は思っているのです。しかもものの考え方自体についても、私はこの際お尋ねしたいので、実はお願いしているわけです。私は、御承知かもしれませんが、すでに新聞に載りましたが、ここにテープ一巻持ってきております。お許しをいただければ――これを翻訳をして印刷したものがございます。これを翻訳したものがこれだけになるのです。紙数にして原稿用紙で百四十三枚程度のものがこのテープに入っている中身なんです。この中身はいままで同僚の諸君からいろいろ議論された裏打ちをするようなものがあるわけです。そういうものを土台にして、これから二、三点お伺いするのでありますが、さっき申し上げたように、きょうのあなたの声明についてひとつ解釈をお願いしたいと思うのです。
 まず第一、この事態の受けとめ方でありますが、「昨今の情況に鑑み、更めて」云々とおっしゃっているが、「昨今の情況に鑑み、」というのはいかなる状況と受けとめておられるのか、いかがでしょう。
#213
○磯崎説明員 それは国鉄をめぐりますいろいろな新聞の記事あるいは世論、社説その他私どもに寄せられます国民的な声、そういうものをばく然とまとめまして「昨今の情況」というふうな表現をしたわけでございます。
#214
○久保委員 いま新聞の記事その他いろいろなものをさしておいでになりますが、それでは新聞のこれまでの論調あるいは事実の報道、こういうものは連日どの新聞でも書かないものはなかったほど書いています。これについて、新聞の報道の中身、論説、こういうものについて国鉄当局はどういうふうに受けとめておられますか。先回りして申し上げてたいへん恐縮なんでありますが、ついおとといでありますか、現場のある機関区の首席助役が公開の席で演説するのをたまたま私も同席して聞いておりました。この中身は、一言で言うならば被害者意識であります。新聞に毎日たたかれているという被害者意識だけが先行しておりました。それからこのテープレコーダーでとられた会議の内容でも、能開派の課長を中心として新聞の論調に対して、たたかれているという被害者意識が先行しております。と同時に、新聞はおもしろくおかしく書かなければ売れないんだからというような考えというか、ことばまでこの中に出ているわけであります。そういうふうにこれは「昨今の情況」ということで泣く子と地頭には勝てないという考えであるから「昨今の情況」と、まさか考えてはおられないと思うのでありますが、私は真剣にいまこそ国鉄の最高首脳部として考える時期ぞと思うのです。もはや時期はおそいかもしらぬ。しかしおそくともいま踏みとどまってこの今日的な実情を十分受けとめて再建の道を考えるという時期に達していると思うのですが、そういう受けとめでこれを出されたのかどうか、先回りして恐縮でありますが、お答えをいただきたい。
#215
○磯崎説明員 「昨今の情況」というきわめて簡単な表現になっておりますけれども、私といたしましては先ほど申しましたとおり、国鉄を取り巻くさまざまな環境と申しますか、それはこの労働問題に限らず、やはりいろいろのことが、ことに財政問題が始終新聞に出、また論説にも取り上げられておりますし、また労働問題自身でも社会面並びに社説等に取り上げられております。そういうものを全部総合し、冒頭に書きましたように、おかげさまでどうやら未来に多少の明るい曙光を見出しつつも、現時点はいまだかつて直面したことのないような難局にあるという冒頭の二行をも含めまして、私は「昨今の情況」と申したわけでございますので、先生のおっしゃったように単に新聞でたたかれるから、あるいは単に悪口を言われるからというふうな小乗的な気持ちではございません。やはりいまおっしゃたような、創業百年を迎えていまここで何とかしなければ国鉄はだめになってしまうというようなある程度の切迫した気持ちと、それからやっと国民に認めていただいた新幹線を中心とする二十一世紀の鉄道の問題、それらを総合的に取りまとめ、ここでもってどうしても国民の御協力をいただかなければならない、こういう切迫した気持ちを実は申したわけでございます。
#216
○久保委員 いまのお話の中で、新しいこれからの輸送機関としての新幹線を認めてもらった。なるほど、世界にも冠たる新幹線だとわれわれは誇りにもしています。しかしこの不当労働行為というふうなものは極端な言い方をすれば、先ほど私が言うように実際は二万件以上も出ているのですね。しかも公労委の救済命令というものが出た。これはほんの氷山の一角といってもいいと思うのですね。一部だと思うのです。ごく一部です。われわれが現場においていろいろ訴えを聞き、材料を集めてきた中で――いままでもお話があったとおりなんです。これは何百件あるかわかりません。しかもこれは前近代的ないわゆる労務管理の中から出てきたものでありまして、マンモス企業、世界の企業といわれるような国鉄がいかに左前になったとはいうものの、貧すれば鈍するの一語で片づけるような問題ではないと思うのです。技術は世界最高の水準、労務管理は世界最低の労務管理では、これは恥ずかしいのではないかと私は思うのです。それもいわゆるマル生運動というものの中から熾烈に出てきたことは事実であります。これは一件や二件は、マル生運動でそのまま伸びているものがあるかもしれません。しかし、全部が全部と言っていいほど不当労働行為を伴っているのが、いわゆる国鉄内部におけるところのマル生運動なんであります。このマル生運動の受けとめ方自体に私は問題があろうかと思うのですね。この声明にもあるとおり、不当労働行為と純粋な生産性運動、こういうような区別をここでおっしゃってはいるけれども、実際はいままでの質問にもあったとおり、これは混同されて一緒になっているということです。だから「再建を図る所存を新たにいたしました。」というふうに声明なさるのならば、いままでやってきたマル生運動を否定してかかることが立ち直りの第一歩であると私は思うが、いかがでしょう。
#217
○磯崎説明員 久保先生のそういう御意見も、おっしゃることは私はよくわかります。ただ、私といたしましては、この第二番目に書きましたように、いままでの純粋な生産性運動というものがいわゆる不当労働行為によって歪曲された事例があった、これが非常に遺憾だ、そしてここでもって生産性運動というものを、その次に書いておりますとおり、ほんとうに純粋な、国鉄を愛し、そして、国鉄の利用者に対して誠意を持つという理念に立った生産性運動に戻すのだと申しますか、いままで不当労働行為という何か來雑物があったために非常に純粋のものがゆがめられておった、それをもとの筋に戻すのだという意味で、私は再度ここに書いたわけでございまして、もちろん再建をはかる所存を新たにする、同時にその過去の歪曲された生産性運動というものをここでもって純粋なものに立ち直らしたという気持ちでございまして、その点先生のおっしゃることと、私は何か通じているところがあるというふうな気がいたすわけでございます。
#218
○久保委員 いまのお話でありますが、生産性運動という名のつくものは一切ここで遮断したらどうかと私は極端なことを言っているのですよ。生産性本部と、間に契約がなされているそうでありますが、契約も切ってください。マル生の機構も全部取っ払ってもらいたい。そしてあらためて、あなたのおっしゃるとおり再建の道を考えましょうというのなら、これは問題の解決の第一歩だと思うのです。労働大臣も聞いてほしいと思うのです。いかに抗弁しようとも、いままでの生産性運動が純粋であったと言われても、だれも、世間も、国鉄の中でも承知する者はいないのですよ。その事態を「昨今の情況に鑑み、」ということで受けとめてほしいと私は思うのです。これは実際いってつらいだろうと思うのです。あなたの立場に私が置きかえられれば、やはりいままでやってきたことがまるっきりだめだといわれた。どうもこれは困った話ですよ、実際言って。しかし、この際やはりあなたは、ここに書いてある「私は自らの責任において全力をあげて労使相互の不信を払拭し、」こう言っているが、あなた自身の責任でやられたというのならば、ぜひそういうふうに思い直してほしいと思うのです。これは誤りであった。いやであろうけれども、これは誤りであった。あなた自身の責任でやれぬというのなら、これは別であります。どうお考えになりますか。いかがでしょう。
#219
○磯崎説明員 久保先生のおっしゃることは、私よくわります。私自身としてはそこに書きましたとおり、私自身の責任、いわば先ほどからいろいろ、何となく下の者がかってにやっているんじゃないかというふうなお話もございました。そういう問題全部含めまして私自身がこの問題に取り組むという意味でございます。したがって今後の生産性運動にはそういう來雑物は入らない、入れないというふうな確固たる気持でもってやっていきたいという意味でございます。先生のおっしゃることは、ここで生産性運動という名前を捨て、実を捨てて新しい観念を打ち出せ、こういう御助言だと私は思いますけれども、私といたしましては、ここまでやってきて、そして必ずしも不当労働行為を伴っていない純粋な生産性運動も相当ございます。若い諸君の中には全くそういう問題と関係なしに、国労でも動労でも鉄労でもどの組合に属しておっても、まじめに生産性運動を真剣にやっておる者が相当おります。そういう者は全く不当労働行為と関係なしにいわばやっているわけでございまして、極端に申しますれば、先ほどからのお話で不当労働行為と関連して組合を移ったとか移らないという問題は、やはりその人の個人的な利害関係などが先にきている話だと思います。そうでなしに、ほんとうに国鉄のために挺身するんだというふうな気持ちで生産性運動をやっている職員がたくさんあるということをぜひ御理解願いたいと思います。私自身も相当そういう職員を知っております。ほんとうにそれは若い諸君でございます。先ほどおっしゃったような管理職になるかならないかというところでなしに、ほんとうに若い、まだ入ってせいぜい五年か七、八年ぐらいのところでございますが、そういう連中がまじめにやっている姿をぜひ見てやっていただきたいというふうに思います。それから派生してきている問題は、私は全力をあげて間違いのないように、従来のような歪曲された形にならないような形でもって全力をあげてまいりたいというのが私どもの気持ちでございます。
#220
○久保委員 あなたのいまの後段の話は、あなたはやはり雲の上の人かなという感じをいまお聞きしながら感じたんですよ。私もそういうふうな気持ちは尊重します。いいと思うのですよ。しかしあなたが見ているのは多少違うのじゃないか。少し違う。私は国鉄にも関係したことがある一人として申し上げますが、若い人で純粋に生産性向上をやっている人がいる、いるでしょう、それは。しかしそれは得てして言うならノンポリといわれる者の部類に属するものが多いんですよ。しかし私は非難しようとは思いません。しかしそういうものがいるから、生産性運動は続けるということじゃないんでしょう。積極的に国鉄のことを思い、一生懸命やろうという若い諸君がいるならけっこうじゃないですか、それはそれで。何でそれをマル生とくっつけなければならないのか私は疑問に思うのですよ。あなたのここの声明で書かれているとおり、再建の道は「各自の信念と自覚によってのみ発展させねばならないと考えます。」とおっしゃっています。そのとおりなんですよ。なぜそれにマル生というものをくっつけなくちゃいけないのか。いままでいいにつけ悪いにつけ国鉄は一家といわれたじゃないですか。つい最近までそうじゃないですか。それはこのことじゃないですか。だれがそういうものに大きなみぞを入れたかというと、マル生という、だれが命令するかわからぬような形の運動が入ってきてからじゃないでしょうか。私はそれは再思三考してもらいたいと思うのです。
 それからあなたのおっしゃる国民への誠意というものは何でしょうか。さっき後藤君があげたものや同僚諸君があげたような事例が国民への誠意でしょうか。私はちっとも誠意でなくて、不誠意そのものだと思う。金をごまかし、差別をつけて職場の中を暗くしていくことは、国民への誠意でも国鉄再建への道でもありません。まさに獅子身中の虫だと思います。それを取り払ってもらうのがあなたの責任だと私は思うのですが、どうでしょうか。極端な言い方をしました。しかし私はずいぶん冷静に全部見ていました。まさかそんなことはないだろう、こういうふうな見方をずいぶんしてきました。膨大な、ここにある資料そのものでも何百件というものがあるのですよ。なるほどあなたがおっしゃる純粋につき合っている若い諸君もいるだろう。しかしそれはほんの一部であって、大半がこれの中に入っている。職場の中で二万人以上も異動すればどんなことになりますか。同じ職場の中で、たとえばヤードの入れかえ作業をするのが二つに分かれていた場合に、突放車に乗って、一人がつかまえられないでいるのに、次のやつが背を向けるというような事態になったらどうなるか。だれがそんなふうに区別したのか。休憩所でもなぜそんなふうに区別したか。旗振る人は一人しかいないのになにする人は二人、思想も感情も違って、しかしそれがむき出しになっている職場がたくさんある。北海道でもあった。そんな職場をだれがつくったか。真鍋さん、あなたが当面の責任者だ。答えてほしい。マル生運動がいまでも正しいと思うか。あなたはこれでも抗弁するのか、答弁してほしい。
#221
○真鍋説明員 生産性運動につきましては、何回も申し上げておりますように、生産性運動そのものは先ほど総裁が申しましたように、いまや国鉄の、特に若い連中の生きがい論になっております。またこれにつきましては、私どもは生産性運動につきましての教育を各学園でやっておりますけれども、これにつきましても正しい方向について、国鉄再建の生きがい論ということでやっております。労使協調という中で初めて国鉄の再建ができるのだということは私どもも信念として持っておるわけでございます。ただ、先生がおっしゃいますような軌道をはずれた面での問題につきましては、私どもは十分反省いたしまして、それらのものを指導していく、注意していくということは今後ともしっかりやっていきたいと思うわけでございます。
#222
○久保委員 いまや本音とたてまえを一緒にして答えてもらいたい。こういう印刷物を持って車掌区長が車掌のうちを回っているのです。奥さんまでがだまされた、返してくれと言うのです。ところがこの区長は知りませんと言っている。あなたの答弁と同じだ。証拠さえ残らねば、知らぬ存ぜぬの一点ばりでやっていけば不当労働行為などは出ないんだ、知恵をしぼってやれという。このテープレコーダーの中に入っているとおりなんです。そういうのが一部でもあったら責任をとるのがあたりまえですよ。中小企業だってやらないような不当労働行為をたくさんやっていて、公労委からも救済命令が出てきて、これに服するというのならば、このマル生にからんだ不当労働行為をやってきた元凶はだれなんだ、その責任をまず現場末端の責任とあわせてとってもらいたいと私は思うのです。いかがですか、真鍋さん、あなたはそのほうの担当の常務だから、常務から先に聞こう。あなたはどういう責任を感じていますか。
#223
○真鍋説明員 生産性運動につきましては、何回も繰り返し私どもの所信を申しておるとおりなんです。ただ不当労働行為につきましてそういった事態があるということにつきまして、これは公労委でも私どもは争点として争っておるわけでございますけれども、今回公労委での命令につきまして、私どもは受けるという立場に立ちまして、その点につきましての私どもの指導の至らなかった点、それにつきましては十分反省いたしまして、これにつきましての十分の指導をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  〔「そんな答弁を繰り返してもだめだ」「理事会を開け」と呼び、その他発言する者多し〕
#224
○森山委員長 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#225
○森山委員長 速記を始めて。
 暫時休憩いたします。
   午後四時二十三分休憩
     ――――◇―――――
   午後四時三十八分開議
#226
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国鉄当局より発言を求められておりますので、これを許します。真鍋理事。
#227
○真鍋説明員 国鉄におきまして不当労働行為が大きく問題になっております今日の事態は、労務担当としまして不徳のいたすところでありまして、きわめて遺憾に存じます。
#228
○久保委員 いまの御答弁、最初からすなおにお出しになることが、これは私に対する答弁じゃなくて、これまで騒がれて、しかも、あなたらは自分で経営していると思っているかわかりませんけれども、国鉄というのは国民からあなた方に一応預けているだけなんでありますから、何か問題があれば、国民のほうを向いてものを言わなければならぬということをぜひ考えてもらいたいと思うのですよ。新聞にたたかれたなどという被害者意識ばかりが先になっちゃって、そして経営は、国鉄はおれのものだという考え方からくるから、言うなら自分の思想と同じにならない者はけしからぬという立場、そこから差別が出てくる、そういうことが一つは今日のこの結果を招いたと思うのです。それからもう一つは、マル生というか、正しくは生産性運動だろうと思うのでありますが、これが国鉄で変形してマル生となった。原因は二つあると思う。私の見方からいけば、一つは危機意識というものが徹底して、下部まで通り過ぎるくらいに通っちゃって、国鉄の危機意識――これはそれなりの、実際にそういう事態でありますから、徹底されるのはけっこうでありますが、危機意識だけでは残念ながら働く意欲がなくなっていくのであります。そこで考えついたのは、やる気を起こそうということだと私は見ております。こうべをたれたかっこうで日がな毎日を過ごす職員が多くなってきた。まかり間違えば重大事故も起こりかねない事態が各所にあります。そういうときに、だれが考えたか知らぬが、やる気を起こそうということで、一発これはてこ入れをしなければならぬなと感じたのだろうと思うのであります。しかし、そこまではこれは純粋だが、国鉄というのは御承知のように管理者も、中間職というかそういうものは、いうならば下部から、下からだんだん上へ上がっていく階梯職なんですね。もちろんきょうおいでになっている総裁や真鍋常務というのは、これはエリートコースでありまして、国鉄一家の中でも選考学士といわれる特殊部類に属しております。これは最初から経営者として育てます。そういうものを管理者一体の意識だといって下部の駅長や助役あるいはその下、そういうものまでずっとおろしていく。もちろんこれがいい悪いはここで議論する余地はありませんけれども、言うなら軍隊組織と全く同じような形になっているわけです。これは軍隊ということばは悪いけれども、そういう命令がすっと下まで、すなおにというか、率直に通っていく、早く通っていく、正確に通らなければならぬというのが国鉄のまあ一つの組織上必要だ。これはそうなんです。汽車を動かすのでありますから、ちょっと待っててくれというわけにはいきませんから、いいも悪いも上の命令はやはり肯定していくというのが、そういうのが古いしきたりであり、組織だ。だからマル生もそのとおり上から下まですっと通っていったのであります。最初はやる気を起こそうというグループだというのが、なかなかそう簡単にはいかない、現代の世相からいって。それで言うならばどうしたらいいか。片方労働組合は、ストライキの是非は別として、ストライキに追い込められる。そういう弱さを持っていて、これは何とかせねばならぬというように、下部の、末端の管理者は一番困っているはずであります。上からは何とかせい、下からは突き上げられる。そこで結局、マル生運動に事かけて組織を切りくずす以外にないということが上からちょっと出てきたから、そのまますなおに通っていったと私は見るのです。だからその根源をひとつ、いやでもあろうがメスを入れて剔抉なければ問題の解決にはなりませんということですよ、これは。いやであろうけれども、それをやらなければだめだ。それをそのままにしておいて、ただ単に新しい観点から、原点に立って前進をしますということでは、問題は私はちっとも解決しないと思うのです。だからあらためて申し上げますが、いまのマル生、いままでやってきたマル生はこの際一ぺんピリオドを打ったらどうですかと再度申し上げたい。ピリオドを打ってくれ、そうしてその組織も一ぺん御破算にしてもらいたい。能開発はなぜ生産性運動をやらねばならぬのかということであります。しかもこの声明にも書いてあるとおり、あなたのおっしゃっているように、各位の信念と自覚によってのみ発展するということを基調にしていらっしゃる。そのとおりなんです。そうだとするならば、なぜマル生の教育をくっつけなくちゃいけないのか。思想教育は経営者としてやらねばならぬのか。それは許された限界であるのかどうか、私は疑問に思います。しかも、もし単純にやる気を全職員に起こすというならば、石田総裁の例を引くまでもありませんけれども、簡単、率直に、だれもが、知恵があるもなきも、全部わかりやすい、たった一つのことばでもって四十七万を引き連れるくらいの雅量があって私はいいと思うのであります。あなたを信頼させる道は決して思想教育やマル生運動で持てるものでは私はないと思うのです。どうか、そのことはひとつ考えてもらいたいと思う。だからこれはひとつ、おのれおのれというか、おのおの考えは違うということがありますから、私があなたに強要するわけにはいきませんけれども、もはやいままでのような御答弁で事をこのまま過ごしていく時代では私はないと思うので、再度申し上げます。
 マル生運動というか、いままでの、従来の運動はやめなさい。それが不当労働行為にかかわるものであろうがなかろうが、一たんやめて出直しをはかるべきだ。しかも、生産性本部との委託契約があるそうでありますが、なぜ他人から教育されなければあなた方部下職員を指導できないのでしょうか。私はふしぎです。選考学士といわれる諸君が経営者の重任に六百から七百選ばれ、みんなどこの部署にもかなめとしてすわって君臨している。君臨していれば、その責任においてこれを指導するのがあたりまえではないですか。現場に起きた事故一つとってみても、管理者といわれる選考学士の諸君は、責任をとる必要はどこまでもない。いつも責任をとるのは現場末端の、あなたの管理者一体意識ということで、いわゆる一緒のものだと意識させられている下部末端の駅長、助役、運転助役、そういう者が責任をとっていかなければならぬのです。責任のある個所は明確にしなければならない。だから、真鍋常務も今日の事態を起こしたことについて、先ほどは責任を感じておられるようだが、責任をとってほしい、こういうふうに私は要望します。
 それから次に時間もたくさん残っていませんから申しますが、あらためて聞きます。生産性運動は、いままでのやつ、おやめになりますか。くどいようですがおやめになって新しく出直してほしいが、どうだろうか。能開発はやめたらどうだろうか、いかがでしょう。
#229
○磯崎説明員 たいへん切々たる御助言ありがとうございました。私もずいぶん考えました。しかし、現時点におきまして、私の考えは、いままでの歪曲された生産性運動をまさに清算し、そうして新しいほんとうに国鉄本来、そうしてまた国鉄の最も純粋な生産性運動を中心としてやはりこれから私は再建をやっていくという気持ちに変わりございませんで、重ね重ね御助言賜わりましてまことにありがとうございましたけれども、私も十分考えまして、この道をもう少し歩ましていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
#230
○久保委員 時間もありませんから、真鍋さんに聞きます。
 あなたは、総務部長会議をやったことについてさっき答弁されましたね。時間もありませんから簡単にお答えいただきたい。あなたはさっきの答弁のとおりでありますか。不当労働行為をやっちゃいかぬぞという訓示をしただけでありますか。それだけですか。私がとっているテープコーダーの中は、総務部長会議がありましたが、その席上でもどういう話があったかというと、従来の方針には変わりはないのだ、決して方針に変わりはないということを強調していますので、現場長の諸君お願いしますということを能開の課長が言っている。そうだとするならば、あなたはわれわれ自身をだましたことになる。人一人をだます、政治家をだますということは簡単かもしれぬが、世間はごまかされませんぞ。総務部長会議を何のためにやった、何のためにおやりになった、軌道修正のためにやったのじゃないのか。不当労働行為だけをやめろと言ったのか。不当労働行為はやっちゃいけないけれども、やむにやまれずやるのだ、うまくやれというのが訓示か聞きたい。返事してください。
#231
○真鍋説明員 二回の総務部長会議におきまして申しましたのは、生産性運動については国鉄再建のこの際、労使協調という中で広めていくことになっている問題でありますし、われわれはこれについては推進していこうではないか。もう一つ、不当労働行為につきましては、これはあくまで法律に違反をしております不当労働行為にあたるものについては十分注意をして、そういう行為にあたる行為のないようにということを再三注意をいたしております。これにつきましては、出席しております総務部長のどの総務部長に聞いていただきましても、その趣旨は徹底しておると思います。
#232
○久保委員 いまの答弁、そんなもので私が引っ込むと思うのですか。真鍋さん、現場長はどう受け取っているのかということですよ。私がいま言ったとおりに受け取っている。不当労働行為をしても、証拠さえ残さなければ、それで忘れたと言えば、そして知らないと言えば、何をやってもいいということなんだ。しかもこの会議は、静岡の例の救済命令が出た日にやっているのです。承知の上でやっているのだ。この発言について先ほど総裁はまことに遺憾であると言う。意思に反してやったことであると言う。経営の最高責任者の意思に反してやったことは、そのまま見のがすわけにいかないと思うのですが、即刻これは罷免だと思うが、どうか。
#233
○磯崎説明員 午前中にも申し上げましたとおり、私は責任者でございまして、私の公的な意思は末端まで浸透しなければならないというふうに考えております。したがって、私の意思に反して、また私の意思を無視して下部職員がやったことにつきましては、私はそのままに放置するわけにはまいりません。いかなる処置をするか、これは私におまかせ願うということにいたしまして、私もほってはおけないということをはっきり申し上げておきます。
#234
○森山委員長 そろそろ時間ですから、締めくくりをお願いします。
#235
○久保委員 次には、このマル生課長が会議で発言していることから類推すると、こういう方針は本社の方針なんですね。この中にこういう発言があるのです。最近、前の大野課長が変わったが、方針が後退したように思うけれども、これはどうなんだろうかという現場長の質問に答えていわく、ちっとも方針は変わりはありません、しかも今度の課長は大野さんよりすごいんだという話です。前段の話が話ですから、不当労働行為はやむにやまれずやるんだ、大事業の前には元気を出して、勇気を出してやれ、こう言っている。だから、これは、大野課長は従来からそういう指導方針だったし、今度の課長はもっとすごいというんだから、そのとおり本社の意思であるのかどうか真鍋さん簡単にお答えいただきたい。
#236
○真鍋説明員 能力開発課長は転勤をいたしましたが、これにつきまして、生産性教育については変わらない、生産性運動につきましても、従来の軌道につきましてはずれたものについては十分注意いたしますけれども、本来の生産性運動については今後も続けていくのだというようなことをそのところでは言っておるのではないかと思います。そういう意味におきまして、不当労働行為につきましてはあくまで法律に違反をいたしておりますので、それにつきましては十分注意するわけでございますけれども、教育並びに生産性運動につきましては引き続きやっていくということを言っておるわけでございます。
#237
○久保委員 総裁、もう時間がありませんからあなたに最後にお聞きします。
 いまの真鍋さんのような答弁を聞きに私はここに出てきたんじゃないのですよ。不当労働行為はやっちゃいかぬなどというのは、何もここでいまさら議論する必要はないことなんです。戦後の労働法ができたときからきまっているのですよ。そんなものをあらためて訓示しなければならぬところに問題があるんじゃないですか。それにちっとも言及されないで、単に平面的な答弁をされておる。こういうことでいいのかどうか。ここのテープレコーダーにあることが本社の方針でないというなら、本社の方針というよりは最高責任者である総裁の意思でないというならば、経営陣の中にはあなたの意思に反して、意思に関係なく動く神経がある。いわゆる迷走神経、そういうものが動いていることを私は指摘せざるを得ない。うわさによれば、国鉄の経営陣の中には下克上の機運が最近みなぎったといわれる。それは何かというと、重役より調査役のほうが上だという。それが証拠に、たとえば各局の調査役などが、先ほど来同僚の皆さんからも話があったように、調査役と称するものが先頭になって不当労働行為を指導しておる。もしもこれがあなたの御意思でないとするなら、国鉄再建はまさにこの迷走神経を切って捨てることだと思います。その勇断こそ、今日国民に勇気を持って発表なさることじゃないでしょうか。下克上がある、そういうことでいいのかどうか。あるいは外部からの勢力によって経営の方針がゆがんだとさえいわれておる。それでいいのだろうか。私はこんなことでは国鉄は食いつぶされる、そういう心配があります。いかがでしょうか。迷走神経は切って捨てますか、処分は必ずしますか。
#238
○磯崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、またけさの私の談話にも書きましたとおり、非常に大きなずうたいでございます。一朝一夕にして、手のひらを返したように直るというふうにいまこの時点では申し上げかねますが、私は全力をあげて、私自身の責任で、いま先生のおっしゃったようなことを実行してまいりたいというふうに思っております。その意味で今後若干時間を拝借いたしまして、いまのあるいは部内の下克上の風潮、あるいはそういった組織を乱るような風潮に対しましては断固たる措置をとることをはっきり申し上げておきます。
#239
○久保委員 一言だけ言います。いずれにしましても、来年度国鉄の予算が組めるかどうかの問題、いやその予算の問題じゃない、これから国鉄をどうするかの問題は、再建整備法ができてもこの二年間空転している。いままさに国鉄はその問題に、労使一体になって怒りを発するときなんだ。世間からも相手にされない。これからの国鉄再建に話が行ったときに、だれが味方してくれます。前近代的な、最低の、不当労働行為なんぞがみなぎっていて、何が生産性運動かといわれている、そういうものに味方する国民が幾人いるであろうか、私は心配であります。この信頼を回復するのに、そんなに長い時間かけたんではだめだと思います。もちろん巨体である。時間のかかることも知っています。しかし、その時間をかけることが決してプラスじゃない。いまこそやはり荒削りでもいいから、気がついて、やらなければならぬことを実行するのが、あなたの今日の責任だと私は思うので、最後に申し上げておきます。
 以上です。
#240
○森山委員長 次に、大橋敏雄君。
#241
○大橋(敏)委員 きょうは朝から国鉄の生産性向上運動にまつわる不当労働行為の問題で、同僚議員が数々の事例を持ち出して指摘したわけでございますが、私はそれを聞いておりましてほんとうに遺憾でならない。常識では考えられないような事柄が、北は北海道から南は九州の果てまで起こっている。これは、国鉄総裁がきょうの談話の中にも「現実は有史以来の難局に直面しております」とおっしゃっているとおりだと思いますね。もともと、このマル生運動というものはILOの、いわゆる人間尊重の労使関係を実現しようという、つまりフィラデルフィア宣言に基づいたものでございましょう。また、総裁自身もこのようなことをおっしゃっていますね。私はこれは新聞で拝見したわけでございますが、国鉄におけるマル生運動とは、組合員以前の、国鉄職員としての自覚と心がまえをつくる手段であると、このような発言をなさっていることを拝見いたしました。ですから、なるほど先ほどから総裁おっしゃるとおり、マル生運動、いわゆる生産性向上運動がILOで示しているような精神に立脚している限りにおいては、これには何も問題はないと思うのですけれども、その実態は、朝からいままで指摘されたような、想像もつかないような不祥事が起こっているわけでございます。したがいまして、総裁があくまでもマル生運動と不当労働行為とは別問題だと、このようにおっしゃってみても、あくまで国民の立場からこの事態をながめてまいりますと、国鉄というものは、表面的には確かにマル生運動は国鉄の再建のためには絶対必要な運動であるといいながら、その内情、内実というものは、いわゆる国労だとか、あるいは動労だとかの組合の体質を変えるというやり方であると、このように感ぜざるを得ないわけであります。
 私は思うのでございますが、先ほどのILOの精神、また、あなた自身のおっしゃっている純粋なマル生運動というものを実現しようと思うならば、差別だとか、あるいは不当労働行為の中には、決してそういうものは望めないということをここではっきりしてもらいたいわけです。明るい職場、そして希望に満ち満ちた職場をつくり上げるためには、また国鉄再建のためには、冒頭に申し上げましたILOの精神そのもので進んでいくべきだと思うのであります。
 そして、この一連の不祥事というものは、いままでいろいろ指摘された問題はそのまま私も認めるわけでございますが、それ以外に、実はマル生運動が取り入れられてから、あちらこちらに国鉄職員の自殺者が出ております。これは御承知だろうと思うのです。きょう国鉄総裁にいろいろ同僚議員が指摘しましたら、初めて聞いております、初めてでございますということが多かったわけでございますが、自殺者の報告は当然あっていると思うんです。たとえば、これは国労の調査なさった自殺者リストの内容でございますけれども、過去一年間において五人の自殺者が出て、十一人の強度のノイローゼ者が出ているわけであります。これがマル生運動とは全然無関係だといえるかどうか。私の知る限りにおいては、宇都宮市で九月の二十七日、自殺なさっている方がおります。これは東北線の東大宮操車場駅の助役さんだそうですが、四十二歳でございます。これはガス自殺をなさったようでございます。また、新潟県ではまだ二十四歳という若い青年が首をくくって自殺なさっております。また、旭川の客貨車区のある方は、八月の十日に、やはり四十七歳という年でこれまた自殺なさっております。そのほかに、九州の鹿児島のほうでは、生産性運動南九州大会というのが九月の二十五日に開かれているわけでございますが、この大会をめぐって大乱闘が起こっておりますね。たいへんなけが人が出ているようでございます。また八月二十六日には、これは動労の明石支部の青年部長をやっていらっしゃる方が職制にハンマーで頭をなぐられて出血、重傷で入院した、こういう問題も起こっているわけでございますが、私はこういう一連の不祥事というものも最終的にはやはり総裁の責任であろうと思うのです。これに対してどうお考えになっているか、まずお聞かせ願いたいと思います。
#242
○磯崎説明員 いまいろいろお話がございましたが、その中でまず具体的にお取り上げになりました自殺者の問題、これは私も非常に残念に思い、また悲しい気持ちで一ぱいでございます。ただ、私も実は近親にそういう経験を持っておりますけれども、自殺いたしますには非常に複雑ないろいろな原因がございまして、端的に何であるというふうなことをきめるのは、いささか死者にとって酷であるというふうに思います。したがいまして、私のほうが実は過般の自殺者につきましてこういう原因だということを申したということを聞きまして、けしからぬ、そういう死者の霊に対して失礼である。たとえどんなことが言われても、当方でもってこういう推測でこうだろうと思うというふうなことを絶対言ってはいかぬということをかたく戒めたわけでございますけれども、私は、なくなった方は原因のいかんを問わず静かにしておいてあげるのが、一番御遺族にとってもいいことだというふうに思いまして、私のほうはその点につきましてはただ弔意を表するのみというふうにいたしたいと思っておりまして、私はこの席でどうだこうだと言うことをはばからしでいただきたいと思います。
 次の、部内の職員が二つなり三つに分かれていろいろ相争うということは、これも非常に感心しないことでございまして、何とかその間のコンセンサスを求めて、そして同じような方向に、立場が違い、考え方が違っても、少なくとも国鉄職員として国鉄をどうしたらいいか、自分の職場がどうあるべきかということについての観念は持ってみるべきだというふうに思います。したがいまして、今後私は、組合員なり、また組合に入っていない者も若干おりますが、こういった多数の、何と申しますか、思想的と申しますか立場の違った職員であっても、やはり何か通ずるものがなければいけない、これは国鉄職員としての最小限度の共通意識であるというふうに思います。それだけは伸ばしていくと申しますか、それだけは大いに今後伸ばして、みんなの共通の場を持たなければならぬ、心の共通の場を持たなければいけないというのが私の気持ちでございまして、部内で相争うことはまことに見苦しく、また私としても実に申しわけないことだというふうに思っておる次第でございます。
#243
○大橋(敏)委員 人間がいわゆる自殺を決意するということは、その人が精神異常でない限り、ばかでない限りは、これはもうほんとうに想像もつかないほどの重大なる問題でございます。それがこのように過去一年の間に五人も出てきたということは、今回の不当労働行為等にからんで出てきた、これは事実でございます。この点について総裁は、不当労働行為等のいわゆる責任当事者については適せるな処置をとるとおっしゃたように、このような犠牲者に対してもそれなりの措置をとっていただきたいというのが私の偽らざる心境でございます、と申しますのは、このリストを発表したときに、そこにすわっていらっしゃる真鍋さんだと思いますが、このようなことをおっしゃっているのです。国鉄は「四十五万の職員がおれば多少の自殺者が出るのやむをえないと思う。しかし組合がいうような原因によるものとは考えない。むしろ組合の突上げやつるし上げに問題があると聞いている。」というようなことをおっしゃったらしいのですが、そうなんですか。
#244
○真鍋説明員 私もその記事を読みました。それは私が申し上げたこととだいぶ違った形で出ております。私の申し上げましたのは、国鉄に自殺者という不幸な者が出ますのは、統計では年間で二十名前後のものがあるわけでございます。これらの不幸な、みずから自分の命を断つというようなものをゼロにしたい、そういった者がない職場にしたいということでございますけれども、国鉄の力だけではどうにもならない面があるということを申し上げたわけでございます。
#245
○大橋(敏)委員 あなたは、世の中には、国鉄のみならず自殺者はあるものだ、今回このリストに載っている五名の方も一般的な自殺だ、それを今度の運動の一環として起こったというのならば、むしろ逆に組合の問題であるというふうにおっしゃったんでしょう。
#246
○真鍋説明員 そのような意味で言ったわけではございません。この不幸な、みずから命を断つというような形で事故を起こしました者につきましては、私どももそのつど一応の調査はいたしております。それにつきましては、たとえばマル生であるというようなことで命を断ったとは必ずしも思えない者が多いわけでございます。しかし一応の調査でございまして、ただいま総裁が申し上げましたように、私どもはそれ以上立ち入って調査をいたしていないというだけでございます。
#247
○大橋(敏)委員 実は、きょう私が非常に不可解に思ったことは、朝から五時間、六時間とこうして同僚議員がその責任を追及してまいりました国鉄側から、何らかの深い反省と陳謝のことばがあるであろう、それは当然の話だ、このように思いながら聞いていたわけでございますが、何らそういう姿はなく、先ほど同僚議員に指摘されて、休憩のあとでやっとその気持ちを披露なさったということですね。これと、いまの新聞記事の内容は多少違うとおっしゃいますけれども、私は新聞記者があなたの発言をこのように受け取った、その気持ちがわかるような気がするのであります。結局、労務担当の最高責任者である真鍋常務理事が、それこそもっと人間性に満ちあふれて運営に当たらない限りは、この大きな問題の解決はないのだ、私はそこまで考える次第でございます。
 そこで総裁にお尋ねいたしますけれども、マル生運動の軌道そのものは変えません、変える筋合いはございません、しかしながら、いわゆる不当労働行為等をやった、そういう問題については遺憾に思います、その点については適切な措置をとるとおっしゃった。私は、あなたが考えていらっしゃるそのこと、いわゆる意思が、末端と言っていいのかどうかわかりませんが、いわゆる職制等におりるまでにはかなり歪曲されている、ゆがめられていっている、それじゃ、ゆがめるだれかがいるのだろうということを考えざるを得ません。これは今後国鉄内部でいろいろと調査せんさくなさっていくと思いますけれども、必ずやそういうものに該当する者が出てくるはずでございます。その場合、これはそれこそ重大なる措置をとらなければならぬ。これが問題解決の大きなポイントではないかと私は思うのでございます。その点についてどうお考えになっておりますか。
#248
○磯崎説明員 先ほど久保先生の御質問にお答えいたしましたように、私は国鉄の最高責任者でございまして、私が公に持つ意見並びに私が公に考えている問題というものはそのまま末端まで浸透しなければいけない。誇張されてもいけないし、縮小されてもいけないし、まして歪曲されてはいけないというふうに私は思います。従来の職制ですと、私は大体そういうふうにいっていると思ったのでございますけれども、不幸にして今回の事件は例外であったか、あるいはたまたまの例であったかは別といたしましても、私の意に反した結果が出たということにつきましては、私は非常に遺憾に思っております。今後中間でそういう意見の歪曲あるいは過大視、過小視というような変形が起こらないようにどういうふうにしたらいいか、結局人と人が話し合って伝わっていくものでございますから、とかく主観が入りやすいというふうなこともございますが、また全部が全部なかなか書けない気持ちをどうやって通じるかというふうな問題もあると思います。しかし、要するに、やはり私自身がそういう問題の第一線に立ってやる以外にないというふうに考えているわけでございます。
#249
○大橋(敏)委員 それではそれを望むといたしまして、そういう措置と同時に、先ほど申し上げましたこういう運動や、あるいは不当労働行為等の事柄に苦悩してなくなっていったと思われるその遺家族の方々に対しては特段の配慮を示していただきたい。これは私の強い要望でございます。
 それからもう一つ、確認の意味でお尋ねしますが、去る八日、公労委のいわゆる救済命令が出たわけでございますが、ちょうどその日に総裁は労働省で記者会見をなさっておりますね。そのときの記事がやはり新聞に出ているわけでございますが、いろいろと記者のほうから質問された中に、とまごました質問に対しては、そんな次元の低い問題に答えなくてはいけないのですか、というような発言をなさっているようでございます。私はこの記事を見たとき、ははあ、国鉄のこの問題というのは、やはり総裁の一念にあるんだな、このように感じたわけでございます。ところが、きょういただきましたこの談話を見ると、態度といいますか、気持ちがずいぶん変わっているように感ずるわけです。八日の時点では、また事態の真実性を正しく掌握なさっていなかったのでこういうことをおっしゃったのか、それとも、そんな次元の低い問題に答えなくてもいい云々とおっしゃったことは、このこととは全然別問題だったのか、その点をちょっと聞かしておいていただきたいと思います。
#250
○磯崎説明員 午前中もお答え申し上げましたが、あの日はちょうど私、午後二時まで参議院の委員会に出ておりまして、それからすぐ労働大臣にお目にかかったあとすぐ記者会見したわけでございます。したがって、午前十一時過ぎに出ました公労委の決定はほとんど見るひまがございませんでした。どういう内容が出たか、ほんとうにぱらっと見た程度でございまして、その点について何を聞かれても答弁するだけの余裕がございません。これは全く時間的に余裕がなかったわけでございます。したがって話は、主として大臣とお目にがかった話をいろいろしたわけでございます。実は話が非常に長くなりまして、一時間半の記者会見をいたしました。私もそれだけの長い記者会見を初めていたしました。長くなりますので話も
 いろいろ出てまいりますし、途中話が多少雑談的になったこともございます。そういうような記者会見でございまして、その次元が低い、高いという問題につきましても、ほっと話が変わったものですから、私もついていけなかったという意味でそう申したわけでございます。その後、先ほど申しましたとおり、土曜、日曜じゅう考えまして、また命令書をよく読みまして、そして、先ほど久保先生御指摘のいろいろな客観情勢を考えた上できょうの午前九時半の談話になったわけでございます。その点多少私の心の変化があることは事実でございますが、八日の点はそういうような次第でございます。
#251
○大橋(敏)委員 それではきょうの談話の確認の意味にもなるのですけれども、昭和四十五年五月二十八日ないし四十六年三月三日付で国労あるいは国労静岡地本が国鉄と静岡鉄道管理局を相手どって公労委に救済申し立てをしていたわけでございますが、それはたしか六件七項目だったと聞いておりましたけれども、そのうちの五件六項目は組合側が主張していたような不当労働行為であった、公労委もこれを認めて、国鉄総裁が組合に陳謝をするよう救済命令書を交付しているわけでございますが、これは両方とも公労委が認定したそのままをお受けになったと理解していいわけですね。と同時に、そうであれば、当然行政訴訟等を起こそうということはないと思いますけれども、確認の意味でこれも含めて答えていただきたいと思います。
#252
○磯崎説明員 けさほどの談話の中に、命令書を受諾し、実行するとはっきり書きましたのはその意味でございまして、今後提訴などをする意思は毛頭ございません。
#253
○大橋(敏)委員 要するに、公労委の認定というものはいわゆる公的第三者機関でございまして、事態収拾の判断基準というものが示されたといっても過言ではなかろうと私は思うのであります。ところが、きょうの答弁を聞いておりますと、だいぶ態度が変わったようではございますけれども、これまでは国鉄側には不当労働行為は存在しない、また不当労働行為とマル生運動とは全く別の次元の問題であるというように突っぱっていらっしゃったわけでございます。それに対して国労、動労等のほうは、いま先輩あるいは同僚議員がいろいろ質問しておりました内容を聞いてまいりますと、マル生運動と不当労働行為というものは不可分の関係にある、こういう認識の上に立ってものごとを処置していかないと、ほんとうの意味の解決はない。だから、先ほどもマル生運動はやめろということを言っておりました。あるいは、違法行為者の処分あるいは労使関係正常化の前提条件というのは、そういうものをきちっと整理しない限りはりっぱな解決はない、こういうふうに先ほどからずっと指摘されていたわけでございます。
 私は次のように考えるわけです。きょう総裁がおっしゃるように、確かに純粋な生産性向上運動、このマル生運動というものがまずはっきりと文章になって示されなければならないと思うのですね。マル生運動とはかくかくこうしたものであるというものを示すべきである、それが国鉄総裁の意思である、これをまずはっきりしなければならぬと思うのです。それから、もしこれを歪曲した者は厳重なる処分に付すということを附則につけ加えるべきだと思うのです。そして労使がほんとうに話し合えるようなムードといいますか、ルールを確立していかなければほんとうの解決はない、こう思うのでございますが、その点についてどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
#254
○磯崎説明員 生産性運動を国鉄に導き入れましたときの形につきましては、実はいま手元に余部を持っておりませんけれども、国鉄としての一つのまとまった考え方を持っております。これは文章にいたしまして現場に流しておりますけれども、そのこと以外の問題がそれにつけ加わって出てきたことが今回の問題だというふうに考えます。したがって、私どもは、詳しい理論はともかくといたしまして、多数の職員のコンセンサスといたしましては、きわめて簡単に申しますれば、国鉄を利用してくれる人に対する誠意と、それから国鉄企業に対する愛情、この二つが私のほうに導入いたしました生産性運動の基調であり、国鉄職員として、お客さまから月給をいただいている以上、そのことだけは最小限度心にかまえておかなければならないものだというふうに私は考え、それからあとの発展は各自がいろいろな角度でそれを発見していくというふうに考えておるわけでございます。
#255
○大橋(敏)委員 総裁は、聞くところによりますと、非常に頭脳明晰な方で、かみそりの刃みたいに切れる方である、人員整理等の名人であるということも聞いておりますが、それだけに、国鉄総裁の意思というものがはっきりしておらないと、これは両刃の剣になりますね。赤字解消の一環として十万人の人員整理をしなければ大幅な赤字解消にはならないと、あらゆるところでよく発言なさっていることを耳にするわけでございますが、さらに、この人員整理は私にしかできないとも言っておられることを私は聞いたわけでございますけれども、現在のこのような国鉄の事態を引き起こしている大きな原因は、ある意味では総裁のそのような考えの中にあるのではないか、私はこのように感ずるわけです。いま私が申し上げましたような、十万人の人員整理、これ以外に大幅な赤字解消のめどは立たない、この考えというか信念といいますか、変わりはございませんか。
#256
○磯崎説明員 その点、国鉄再建についての具体的方策でございますけれども、御承知のとおり、国鉄の再建のための臨時措置法もすでにつくっていただいておりまして、もちろん部内の努力として人員の削減ということはやらなければなりませんけれども、それだけでもって国鉄が再建できるなどとは毛頭考えておりません。先ほど来申しておりますように、どうしても利用者に協力いただかなければならない場合もあるし、また一般の納税者と申しますか、政府からどうしてもしばらくの間援助をしていただかなければならないとともございます。そういった国鉄をめぐるいろいろな方々から各般の御協力、御支援を得て、初めて国鉄再建ができるのであって、やはり国鉄自身の努力と、利用者にお願いする御協力と、それから納税者にお願いする御協力と、この三本が一つの柱になって、初めて国鉄の再建ができるというふうに考える次第でございますけれども、最近の国鉄をめぐるそういった情勢は非常にきびしく、ことに、たとえば貨物輸送で申しますれば、最近の不況を反映して非常に収入が落ちているというふうな問題もございますし、今後、さっき久保先生もおっしゃいましたが、来年度の予算編成につきましては全く頭を悩ましているところでございまして、どうしても千数百億の金が足りないというふうな事態でございます。これをどうやって政府あるいは地方自治体にお願いするかということ、それらが総合的になって初めて再建の緒に踏み出すということになると考えておるわけでございます。
#257
○大橋(敏)委員 時間に制限がございますので、その問題は後日に譲るといたしまして、先ほどの話にちょっと返りますが、マル生運動の基本的理念ですね。これをはっきりしなければならぬと言いましたところ、これはすでにはっきりしているのだ、途中でいろいろなものがつけ加わっているのだ、こういう話がございましたけれども、確かに国鉄のマル生運動はすなわち職員管理である、こういう見方がなされるようなところがたくさんあるわけですね。たとえば昨年仙台の鉄道管理局内でつくられた文書の骨子になっていることとして次のようなことがいわれているわけでございます。つまりその内容を見ていきますと、マル生の名をかりた職員管理である。すなわちそれが不当労働行為なんだと受け取れるような中身になっているのです。たとえば国鉄再建運動はある意味では職員管理の問題である、再建に協力する職員を全局的に組織していく、こういうことが仙台鉄道管理局内でつくられた文書の骨子になっているというのですね。ということは、暗に国労の組織の破壊をねらったものではないか、このようにうかがえるわけです。われわれの第三者的な立場から見た場合、よりよくそれが感じられるわけですね。むしろこれが国鉄の本音ではないかとぐらいに思われているわけですよ。こういう事柄は総裁の意思とは反したものであるということであろうと思いますが、もしそうであるならば、こういう文章は一切抹消させるお気持ちがあるかどうか、その点についてお尋ねいたします。
#258
○磯崎説明員 私の意思は先ほどから申し上げているとおりでございますけれども、生産性運動が職員管理である、職員管理が即国鉄再建である、しかく簡単なものではないと私は考えております。もちろん職員管理、職場管理をきちっとしなければ再建につながらないことも確かでございます。またそのためには、生産性の向上をはからなければならないことも確かでございます。したがってそういう意味で、国鉄の再建のためには職場管理もきちっとしなければいけないし、あるいは近代化、合理化、あらゆることをやって初めて、しかも外から御協力を得てできるんだ、こういうふうな考え方でございます。
#259
○大橋(敏)委員 それじゃもう一つ具体例を出しますが、これは秋田管理局内の例でありますけれども、そこには「基本勤務考課表」というのがあるんだそうですね。その中身が十項目に分かれているんだそうでございますが、たとえばそれが点数方式になりまして、三十点満点になっているんだそうです。そして忙しいときなど進んで居残りをして仕事をするかというような一つの項目になって、自主的にやる、これが三点だそうです。指示すればやるというのが二点、全然やらないというのが一点。それから違法な組合の闘争指令に従うか、絶対に従わないというのが三点、はっきりしないというのが二点、従うというのが一点。それからリボン、ワッペン、ビラ張り、これは絶対やらないというのが三点、注意すればやめるというのが二点、やるというのが一点。こういうふうなのが十項目にわたってあるんだそうでございますけれども、こういう中身からいきますと、確かに特定の労働組合を想定してつくられているような中身なんですね。こういういわゆるよい職員とか、あるいは悪い職員とかといとものをたて分けていくような事柄自体が、マル生運動の趣旨に合っていないと思うのですね。マル生運動というものは、みんなが心を合わせて真の目的に乗り出していこう、前進していこうというのがマル生運動の本来の趣旨でございまして、これがいい職員である、悪い職員である、しかもたとえば国労にいたり、動労にいたりすると、悪い職員であるというような雰囲気をもたらしていくようなことになっていたのでは、これは問題が大きくならざるを得ません。しかしそういうふうに思われるような事柄があちらにもこちらにもあるんですよ。
 実は山口県にも実例がございます。これは車掌をなさっている人ですけれども、現在国労でしょう、つとめていらっしゃるのですけれども、優秀な車掌とそうでないというその判断の基準がどこにあるかというと、どの組合に入っているかというのできめられるというのですね。そして、しかも優秀な車掌さんということになれば、昇給や昇格がスムーズにいく、そしてすばらしい優秀な汽車に乗せてもらえる、いわゆる特急だとか急行に乗せてもらえるんだというような雰囲気ができ上がっているというわけですよ。これは問題なんですね。だから今回あなたがほんとうにこれを解決し再建しようと思われるならば、これはこまかいことのようでございますけれども、重大な問題ですから、こういうものもそれこそ全部払拭して解決していかなければならぬと思うのですが、その御決意はおありかどうか。
#260
○磯崎説明員 職員の何と申しますか、さっきおっしゃった勤務評定でございますか、それにはいろいろの方法があると思います。やはりさっき申しましたとおり、国鉄職員である以上、汽車を動かしてお客さんを運んでそして運賃をいただく、それが商売の根本でございます。ですから、この仕事の根本に反対であるというふうなことでは、これはもう国鉄職員としての資格がなくなってくるというふうに考えなければいけません。これは、どの組合に属していようと同じことでございまして、そういう意味で、私は組合でもって、組合ごとにどうこうということではなしに、国鉄職員としてどうあるべきかというたてまえから今後の問題を考えなければいけないというのが私の考え方でございます。
#261
○森山委員長 時間が……。
#262
○大橋(敏)委員 最後に一言、労働大臣にお尋ねいたします。
 今回の、今回のというよりも、国鉄内に起こっております労使の紛争といいますか、不祥事件、あらゆる問題、この根本原因は、労使の不信感が大きなもとになっているということを、先ほどからもおっしゃておりましたけれども、この労使の不信感の回復の最大のポイントは何か、どうすればこれがとれると思われているか、それをお答え願いたいことが一つ。
 それから労働行政全般を指導、監督なさっていく労働大臣の立場から、今回の国鉄内に起こりましたこういう一連の事件を通しまして、労働者を守る意味からも、何といいますか、公務員の労働基本権の中で団体交渉権とか争議権が過去には保障されておりましたけれども、昭和二十三年以来、これが剥奪されているわけでございます。これは自由な話し合いがないという立場からもいろいろな問題が起こってくるわけでございますので、この際、こうした公務員の団体交渉権だとかあるいは争議権――これはもちろん現在すでに組合をつくっている、そういう立場から考えてけっこうだと思います。というのは、公務員といっても私企業的なこまかい企業もございますし、そういうものまで含めていくと非常にややこしくなりますから、現在すでに組合をつくっているというような、こうした公務員の団体交渉権あるいは争議権を回復させる意思はないかどうか、これも含めてお答え願いたいと思います。
#263
○原国務大臣 大橋さんにお答え申します。
 本日、この委員会としていろいろ論議されました、そして双方に非常に不信感がある、わけても労働組合のほうが国鉄当局に対して非常なる不信感を抱いておるということが、この質疑応答を通してよくわかりました。その不信感のポイントは何であるか。やはりマル生運動に籍口して不当労働行為がしばしば行なわれておったということに基因すると思います。
 第二に官公労のスト権についてでございますが、公共企業体等の職員が争議行為を行なうことは、法律によって禁止されておることは御承知のとおりであります。なぜ禁止しているか。このことは、国民生活全体の利益の保障という見地からやむを得ないことと考えられます。それで、これについてスト権を回復するとかいう考えがあるかないかということの中心でございますが、この官公労のスト権については現在公務員制度審議会で審議をしていただいているところでございます。最終的にはその公務員制度審議会の結論を待つべきものであると思います。その結論が出た時点で、その結論を参酌して考慮していきたい、こう思っております。
#264
○大橋(敏)委員 一言最後に言わしていただきますが、国鉄の労使の調停に、仲介に乗り出された大臣でございますし、先ほどおっしゃったポイントは労使の不信感である、これは不当労働行為等をやるからそうだとおっしゃいます。これを解決していくためには労使のいわゆる恒常的な話し合いの場といいますか、こういうルールを確立しないとだめだと私は思うのであります。それをあわせて指導されていくことを希望して、私の質問を終わります。
#265
○森山委員長 次に、和田春生君。
#266
○和田(春)委員 けさほど来この問題をめぐって実に長いやりとりが続いているわけでございますけれども、私が考えますのに、今回の問題にはいろいろな背景や複雑な条件がからみ合っているわけでございまして、またこれまでの経緯もからみ合っておりますから、決して単純なものではないというふうに考えるわけであります。また生産性運動をめぐる紛争につきましても、ここでもっぱら質疑応答の主題になっておりましたけれども、そういういろいろな条件とのからみ合いの中における一角にすぎないと考えるわけです。ただいま労働大臣は、労使の間に不信感がある、その不信感の原因はマル生運動にからんで不当労働行為等が発生したことである、こういう趣旨のことをただいま述べられました。はたしてそうでございましょうか。マル生運動が起きなかった前には、国鉄の労使の間には信頼感があってしっかり結びつけられておったという事実があったんでありましょうか。私は長い労働運動の歴史を通じて、そうは断定できないと考えるわけであります。ただ、マル生運動が今日の事態における一つのきっかけになったと考えることはできると思います。したがって、私の見るところ、ささやかな経験ではございますけれども、戦後四分の一世紀を労働運動に従事をしてまいりまして、中労委、公労委等の場におきましてもいろいろ仕事をしてまいりましたけれども、私が事実を通じ、自分の経験から判断するところによれば、生産性運動をやめたからといってこの事態が改まるというふうにも考えられないわけであります。したがって、この種の問題をどう解決するかということを議論するためには、その背景にある大事なポイントというものを避けて議論のやりとりを進めたのでは、ほんとうのところは見つからないのではないか、そういうふうに考えているわけです。したがいまして、そういう私の見方、考え方というものを前提にいたしまして、主として労働大臣並びに総裁に御質問をいたしたいと考えるわけであります。その質問の前提に、これはいままで申し述べられた磯崎総裁並びに真鍋常務理事の御答弁の内容について賛成するとか反対するというのではなく、非常に多くのやりとりがございました。したがって、私なりに今後の論議を進める前提として、このように理解をして間違いがないかという、いままでお述べになった話の内容の事実について、まず最初に確認しておきたいと思います。
 第一点は、国鉄当局の態度として、生産性運動に名をかりた不当労働行為をやることは間違っておる、まことにそれは遺憾である、それらの行為を絶対やらないようにしたい、こういう意思表示があったと思います。
 第二に、不当労働行為として公労委の命令が出たものについては、個々の事実について争わず、大局的見地に立ってこれを受ける、このような意思表示がなされたと考えております。
 第三点は、いろいろ指摘された不当労働行為の疑惑ある事件については、十分調査の上、まずい点があれば、それぞれの事例に応じて適当な措置をとる、今後の措置についてそういうお約束があったと理解をいたしております。
 第四に、問題のマル生運動については、当局が考えている正しい生産性運動とは、国鉄利用者に対する誠実なサービスと、国鉄に対する職員の愛情を育てることに目的があるから、これをやめる考えはない、こういう意思表示が繰り返されておりました。ただ、不当労働行為やそれに類似する行為によって純粋な生産性運動が歪曲されている点があるので、これを改めて正しい生産性運動推進のために努力をしていきたい。
 多くのことが述べられましたけれども、御答弁を聞きながらメモしたところを要約すれば、大体そういうふうに内容を端的に私としては理解をしたのですが、いま申し上げたような理解で進んで差しつかえがないかどうか、議論を進めていいかどうか、これは賛成か、反対かは別であります。
 まず最初に確認をいたしたいと思います。これはどちらでもけっこうです。
#267
○磯崎説明員 いまおっしゃった点に集約できるというふうに考えております。
#268
○和田(春)委員 それでは、次に労働大臣にお伺いいたしたいと思います。
 ここではもっぱらわれわれ同僚議員と国鉄の首悩部との間のやりとりになっておりますけれども、事の当事者は国鉄当局と国鉄の労働組合であります。われわれは第三者である。これははっきりした事実でございますが、したがってこの問題を解決しようとすると、直接の両当事者が非常に重要になってまいります。新聞の伝えるところにより、本朝来からの意思表明によりましても、労働大臣は、仲介に乗り出す、こういう意思をお持ちでございますから、労働大臣もまた当事者であると考えるわけであります。ただ、ここに残念ながら、国鉄には御承知の四つの組合があります。国労、動労、施労、それから鉄労、そのいずれの組合の代表者も参考人として来ておりませんので、これらの組合の代表者と会った労働大臣に確かめたいのです。
 労働大臣はそれぞれの労働組合からの意見をお聞きになっております。新聞の伝えるところによりますと、国労と動労は、生産性運動そのものをやめることを要求をしておる、それが問題解決のポイントだ、こういうふうに、端的にいえば、強く主張をしている。一方、鉄労等は、生産性運動のやり方についてはいろいろ意見があるけれども、生産性運動は積極的に進めよ、これに協力するという態度をとっておる。問題の不当労働行為については、この点は各組合とも意見が一致しておるようでありまして、そういうことは絶対やめさせるべきだ。鉄労の側は、そういう不当労働行為が行なわれるということは、われわれにとっても迷惑である、こういう意思表示をしたというふうに伝えられておりますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
#269
○原国務大臣 労働組合に私がお会いしましたのは、国労、動労及び鉄労、三つでございまして、おもなる組合は三者と心得ております。それで国労及び動労におきましては、生産性運動から派生して不当労働行為が起こっておる、この点を非常に強調されました。不当労働行為は、私が会ったときには、もう公労委の注意が出たあとでございましたので、この点については十分改めるように――不当労働行為については、あったように認めざるを得ないようになってきたから、今後やらないようにすることが当然である、こういうふうに言いまして、そこでも生産性運動については、むしろ非常にまぎらわしいマル生運動は、不当労働行為を惹起するおそれがあるから、やめたほうがよろしいと思うという、これは国労及び動労両者からの意見がございました。しかし私は、やはりいわゆる国鉄の生産性向上運動はどうも当然のことであって、まぎらわしくなったけれども、マル生運動から派生して不当労働行為が出てきたことははなはだ遺憾であるが、その不当労働行為さえしないとすればいいのではないか、こういうことを私も申し上げておきました。それからもう一つの鉄労のほうにおきましては、生産性向上運動は当然じゃないか、それは御承知のとおりである。といって、あなた方のほうは不当労働行為がいいというんでもないのであろう。それは各組合を通じて不当労働行為のないように望んでおるところである、こういうような大体のあらましでございました。
#270
○和田(春)委員 多少詳しく御説明いただきましたけれども、いまのお答えで、大体確認したとおりだというふうに私は理解をするわけです。そうすると、いわゆる生産性運動と不当労働行為をつくっている事実関係といいますか、そういうものについての当事者である当局と三つの組合、これらの意見というものを考えてみます場合に、まず不当労働行為そのものについては、当局も、そういうことがあれば、これはまことに遺憾である、こういうことでございましたし、公労委から発せられました命令についても、これを受けるという態度を表示いたしておりました。先ほども、今後どうかわかりませんが、少なくともこの公の席上で総裁並びに常務理事は、そういうことを絶対やらさない、こういうことを表明をいたしております。三つの組合とも不当労働行為は迷惑であるという形になると、今後事実が起きるかどうかということ、あるいは過去に起こった事実についての処理をどうするかということについては問題は残るにいたしましても、不当労働行為そのものについては両当事者の間に問題がないということになると思うのです。労働大臣が仲介をされるといいますが、不当労働行為については仲介の余地はないと思う。はっきりしているので、悪いものは悪いのです。やらしちゃいけない。やめさせるのがあたりまえなのでありまして、それをあいまいにするというのがいけないのですから、これは仲介の余地のない問題なんです。過去においては事実問題の処理、今後においてはやるかやらないか。やらない、こういう点でこれははっきりしていると思う。そうすると、残ってくる問題は生産性運動についてでありますが、当局は、不当労働行為や類似行為によって歪曲された生産性向上運動というものはまずいけれども、純粋の生産性向上運動、つまり利用者に対する誠実なサービスや職員の国鉄に対する愛情を育てる、そういうような面の生産性運動は積極的に進めると言っている。国労と動労はそういう生産性運動そのものが今回のいろいろな紛争の原因であるから、これをやめさせろ、そういうことを要求している。一方の鉄労の労働組合は、生産性運動は、進め方については当局の間においていろいろ意見のやりとりもあり、協議はするにしても、生産性運動を積極的に進める原則については賛意を表しているわけであります。
 さて、そうなると、生産性運動というものについては、やり方の問題をどうするということはあるにしても、それ自体取り上げれば進めるか進めないか、二者択一でございます。賃金ならば両者の主張を足して二で割る、首切りならば緩和をするとかどうするとかいう中間的措置もありましょうけれども、生産性の運動というものについてはそういう二者択一になってくる。
 そこで、労働大臣に確かめたいのですけれども、先ほど仲介をされるという中でこの問題に触れられましたが、一体何を仲介されようとしているのか。その点、大臣の所見についてお伺いしたい、こう思うわけです。
#271
○原国務大臣 いま仲介に入っておる最中でございまして、事情聴取を先週の終わりに終わったばかりでございますが、私の一番望んでおりますのは、今日の労使関係が乱れておるその根本は、労使間の不信感のはなはだしいことであります。感情はきわめて先鋭化して対立しておるということを感じました。わけても国鉄当局と国労及び動労の関係でございます。でありますから、これを除くような仲介をいたしたい。それがいま、不当労働行為についてはもう仲介しなくてもわかっているとおっしゃいましたが、やはり仲介する以上は不当労働行為が将来とも起こらないように十分くぎを打っておくことも、また一つのお互いの信頼感を回復するゆえんではなかろうかと思います。そういう点、具体的にはまだ相談中でまとまっておりませんが、きょうの本委員会等の皆さん方の質疑応答等も参考にして善処いたしたい、こう思っております。
#272
○和田(春)委員 不当労働行為は、先ほど来の各議員の質疑でも明らかなように、いいとか悪いとかの問題ではなくて、悪いにきまっているわけでございまして、先ほど来この議場においても、そういうことはやってはならぬ、そういうことがあれば、やめるということが公に確認をされているわけでありますから、労働大臣がさらにその上に重ねてくぎを打たれるということもけっこうではあると思いますけれども、いまの紛争については仲介ということとはいささか違うのじゃないか。それが仲介をされる。しかも政府を代表する労働大臣が乗り出されたわけです。そのことについて事情聴取が終わっただけで、これから考えるということなんですけれども、それはこれからその内容をいま言えとまで、そういう皮肉な質問はいたしません。しかし、私はどうも新聞を通じてみても、けさほど来の大臣の何とかの御答弁を聞いておりましても、一体何をどういう立場で仲介されるのかということがよくわからないのです。公労委ならば不当労働行為について審査をやりまして、事実があればそれに対して命令を出せばよろしいわけです。事実がないと判断すれば申し立てば却下されるわけですね。労使紛争のいろいろな労働条件については、両者の意見を聞いて足して二で割るか、あるいはどちらかに寄るかは別として、中間をとるということがある。しかし、生産性運動は、すべての当事者がそれを進めるという原則についてはお互いに了解をしている、しかし、どういう方法で進めるかという進め方の問題について意見がいろいろ違っておって、両者の協議の中でごたごたをしておるというようなことであるならば、私は仲介、こういうことも労働大臣がするのがいいか悪いかは別でありますが、成り立つと思うのです。しかし、先ほど来私はそのために初めから何度も確認したのですが、当局はけさほど来の野党議員の追及に対しましても、不当労働行為はやめる、不当労働行為で歪曲された生産性運動は遺憾である。しかし、当局の考えている純粋な生産性向上運動はあくまで進めるのだということを言っておられるわけです、いい悪いは別にしても。そういう趣旨を明確に何度も繰り返し表示されておるわけです。組合が三つあるうち二つは、そういう生産性向上運動そのものをやめさせろ、こう言っておるわけです。一つの組合は、生産性向上運動に対しては、これに原則的に協力するという立場をとるから、それは進めてもらいたい、こう言っておるわけです。そうすると、労働大臣の仲介というのは、単に労使の争いに対しての仲介だけではなく、労働組合同士の意見の違いというものもそこに介在をしておるわけなんですから、一体労働大臣としてどういうお考えとどういう基本的な態度をもってこの問題について仲介をされようとするのか。また先ほど来労使関係の正常化を願うということをあなたはおっしゃっておりますけれども、あなたの考えていらっしゃる労使関係の正常化というものは一体どんなものであるのか。そういう点について、仲介に乗り出すという決意を示し、事情聴取をした以上、どんな答えを出すかは別として、基本態度については明らかにしていただく必要があると思うのです。
#273
○原国務大臣 まことにごもっともなお話でございます。具体的にいまどうするかとか、どういう申し合わせをするとかいうことは、さいぜんからしばしば申し上げておったように、まだ先週の土曜日にこれを聞いたばかりで、きのう一日置いて本日のこれでございます。また労働省当局でも相談いたしておりませんので、その事情聴取した事実を踏まえ、また本日のこの委員会における諸委員の質疑応答も参考にして、その案を出したいと思っております。
 それでは不当労働行為はやらぬと言うから、ほうっておいてもいいじゃないかとおっしゃるような意味ですが、私はそうではないと思う。不当労働行為はやらぬと言うたところが、やはり将来ともやらぬというくぎをさすことは、その不信感を払拭するのに非常に役立つと思います。
 それから生産性運動が類似行為にならないようにどういうふうに直すか。いままでのやり方と変わってどういうやり方をこれからやるか。ただ純粋にやる、生産性の本質をやるという――口ではそうですが、具体的に、それではいままでとどういうふうに違うようにやるかというようなところまでもやらないと、あまり抽象論ばかりでは効果が薄いと思いますから、ぜひ労使関係のまず不信感をできるだけなくして、将来とも相手を信頼していけるというところまで私はできたら煮詰めていきたい。それが第一であります。それにはかなり具体的なものを持っていかないと、ただ信頼せい信頼せいというだけでは――かなり深刻なる不信感を持っております。そのことを進めていきたい。
 それからまた生産性運動についても、これをどういうふうにいままでと違って、直してやるならやる――やると言っておるわけですが、やるなら不当労働行為に落ち込んでいかないようにするにはどうするかというようなところまでも私たちも研究するし、国鉄当局も研究していただいて、そういうところに進めていきたい。いずれもうちょっと研究してからでないと、ただいま具体的にこれ以上材料はございませんが……。
#274
○和田(春)委員 不当労働行為はもうほうっておいてもいいというふうに言っておるのじゃなかろうかというような、それはあとで議事録を調べてもらってもわかります。完全にあなたの聞き違いなんですよ。ところが先ほど来仲介をするということについて、生産性の問題について言っているわけです。不当労働行為についてはやってはいかぬ、やらないということについては少なくとも意見が一致しているから、くぎを打つことは、それはむだとは言わないのです。やらせないようにすることは、それはけっこうだと言っているのですよ。生産性運動の問題について、生産性運動を進める。それはどういう中身でどういう形で進めるかということについての労使間の意見の対立とか食い違いとかいうものがある場合には、仲介とか調整ということもできるだろうけれども、片方はやると言っている、片方はやめちまえと言っている。しかも労働組合の中で一つの組合は、それを進めることに賛成だと言っているというのです。したがって、そういう問題について大臣はいろいろ研究をされるということですから、私は大臣を責めようと思っているわけではないのです。解決するために協力をいたしたいと考えているわけですけれども、へたな扱いをいたしますと、これは冒頭に申し上げましたように決して問題の解決にはならない。新たな紛争の種をそこに巻き起こす、大きな火種をつくることにもなるわけであります。一般に国鉄の進めてまいりました生産性運動にからむ不当労働行為というものが非常に大きくクローズアップされている。そしてその不当労働行為は生産性向上運動が根底にあるからだ。したがって、これをやめてしまえばこの問題自体は解決をし、一つの答えが出る。そういう印象を与えているかもしれませんけれども、国鉄労使関係の実態と現に起こっている問題というものを具体的に把握をして考えた場合に、そういうことでは解決をしない。むしろそれをやることによって労使だけではなく、労労の関係も含めていろいろな新しい問題が起こる。仲介に乗り出す以上御研究されるというわけでありますから、私は十分研究してもらいたいと思いますけれども、その辺の配慮というものを十分にして、軽率な答えは出さないようにしてもらわないと、労働大臣のねらいとは違った結果になるおそれがある。そのことを頭に置いているから、いまこの点を何度もお尋ねしているわけでございます。いま言っていることは御理解願えましたでしょうか。
#275
○原国務大臣 いま和田さんのおっしゃったことよく理解をいたしまして、そういうせっかくやったことですから、効果があがるように十分慎重に考慮してやりたいと思っております。
#276
○和田(春)委員 その点大臣の御答弁をいただきましたので、先へ進めたいと思うのですが、冒頭にも申し上げましたように、この紛争には単に生産性の運動だけではなく、いろいろな問題がかかっているわけであります。それは一つには労使を含む日本の国鉄の体質という問題があると思うのです。率直にわれわれ民間人から言わせれば、この問題はたいへん重要だと思います。それから国鉄を包んでいる法律、制度、そういうような環境条件というものがいろいろな面でがんじがらめにしている。さらにまた、生産性運動の起こる以前から国鉄における労使問題と労働運動の歴史の経過の中に深いかかわり合いを持つ問題がある。このことは、国鉄の労働運動並びに労使問題を率直に見詰めてきた者であるならば、起きている事態に対する賛否や、それの解釈に対しての意見の食い違いがあっても、いま言ったような問題は、今日の国鉄におけるいろいろな問題についてかかわり合いを持ち、これを無視して解決策は出し得ないということについては、私はおそらく同意を得られると思います。実は世論を喚起するというときも、そういう問題を広く取り上げて、この解決に臨むキャンペーンを行なわれる。私は、実は政府当局もあるいは国会においてもマスコミも含めて、やはり正確にそういう点を追及していくことが必要だというふうに痛感をしているわけでございます。
 そこで、さらにまたそれにからんで、すでに累積赤字は数千億を数えている。明年度は償却前に赤字になるかもわからない。そしていまだに、これは国会にも責任があるわけですが、国鉄の再建策というものがはっきりきまらない。そういう中で、先ほども指摘されましたけれども、職員に対する十万人とか十一万人とかの首切りがあるとかないとか、こういうような問題が話として出てくる。そのことの真否というよりも、そういう国鉄を包むいろいろな条件というものが、国鉄職員の将頼性に対する不安感というものをいろいろな面で引き起こしている、こういうことも私は否定できない、こういうふうに考えるわけであります。
 そこで、政府を代表して労働大臣が仲介に乗り出しだわけでありますから、やはりこういうような今日の紛争や問題の背景になっていること、遠因、誘因、直接のきっかけというものを総合的に判断をしながらよい方向に事態を持っていくということのためには幾つかの措置が必要だ、こういうふうに考えるわけです。
 その具体的な問題について、四つ五つ、それぞれお伺いをいたしたいと思いますけれども、まず私は、いま申し上げましたような前提条件に対する認識について、労働大臣のお考え方を端的にお伺いしたいと思うのです。
#277
○原国務大臣 和田さんのおっしゃった前提条件、ごもっともだと存じます。
#278
○和田(春)委員 それでは、いまのマル生運動や不当労働行為という問題に非常に身近な具体的な問題からお伺いしたいと思うのですが、大臣も、これは国鉄当局も御承知のように、現在公労法によりまして、使用者側の利益を代表する者の範囲、これが定められておりまして、それによって組合員と非組合員の区別がつけられております。国労、動労、鉄労等に所属する組合員以外、組合員になってはならない。非組合員の範囲とされた者は、一応たてまえとしては使用者の利益を代表する者、こういうことになっているわけであります。ところが公労法の旧法の第四条におきましては、ただし書きがございまして、「管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取扱う者は、組合を結成し、又はこれに加入することができない。」こういうふうになっておったわけですね。ILO条約八十七号批准によりまして、このただし書きは削除されました。そして職員の組合より除く者の範囲については、つまり労働組合法にいう使用者の利益を代表する者については、公労委によってその範囲が定められるということになるわけです。
 そこで、これは大臣にお伺いする前に国鉄の真鍋さんにお伺いいたしたいのですけれども、この措置によって使用者の利益を代表する者として、組合に加入できない者として指定されている人数は、国鉄全部で大体何人おりますか。
#279
○真鍋説明員 非組合に指定されております者は、約五万でございます。五万弱と申し上げるのが正確でございます。
#280
○和田(春)委員 大臣、これをお聞きください。五万人おるのです、使用者の利益代表者が。国鉄の職場は、私も運輸委員会等で問題に関連しておりますから承知しているところによりますと、約八千あるといわれております。八千の職場があるにいたしましても、少なくとも使用者の利益代表であるとして組合員の範囲からのけられた者が五万人おるわけです。そして実情を知っている人はだれでも承知していることですけれども、同一の人物がある現業に行くと使用者の利益代表になる。転勤になって非現業に行くと、たちまち組合員になる。そういう状況が今日の中では行なわれておるわけです。一般に企業別の労働組合におきまして――民間の実情をそのまま国鉄に当てはめるわけにいかないと思いますが、国鉄もいかに巨大といえ国鉄の現職職員だけで組織されているのが組合員の現状でございまして、一部の幹部だけが非職員であります。そういうような場合に、これだけのたくさんの国鉄職員の一割をこえる、いわゆる使用者の利益代表というものが職場におる。そこに、先ほど来いろいろと追及をされておりまして、その中に、当局からの答弁の中にも、善意でやっておっても不当労働行為になる場合があり得るから気をつけろということを言っておるということがあった。また、こちらからの質問でも、たとえ善意でやっても結果が悪ければ何にもならぬじゃないか、こういう指摘があったのですけれども、こういう国鉄の労使関係、その中で使用者の利益代表というのは、企業の組織における指揮命令の関係ではないわけなんです。これは、団体的な労働関係における使用者側の利益を代表一するかいなかということが根本的なけじめなんですけれども、このように非常に使用者の利益代表の範囲を広げ過ぎておる。そのために、職務上の指揮命令とか、あるいは国鉄一家と言っているような仲間意識とか、そういうものが末端において混乱をしておって、不当労働行為というものについても発生しやすい素地がある、あるいは無意識のうちにそういうものが行なわれる、今日まで行なわれてきた。しかし、それは労使の対立が先鋭にならないときには見のがされておった。先鋭になったときに、たまたま同じことであっても、それが一つの対立抗争の口火として取り上げられる、そういう傾向があるのではないか。もしそうであるとするならば、このような公労委の決定によるのでありますから、政府が直接干渉するわけにいかないけれども、少なくとも国鉄の団体的労使関係を正すためには、使用者の利益代表の範囲というものをここで洗い直すということが、あらゆる問題をひっくるめてけじめをつける上において必要ではないか。私は、労働運動の経験ないしは労使関係の諸問題を多く扱ってきた立場から、そのことを感ずるわけです。この点について、ひとつ大臣の御所見をお伺いしたい。
#281
○原国務大臣 これは非常に専門的になりますので、専門家の労政局長から答弁させます。
#282
○石黒説明員 使用者の利益代表者の数は、五万人という非常に多い数になっております。これは経過的にいろいろございますことは御承知のとおりでございますが、一つは国鉄の職場が小さく分かれておるということにも大いに関係があるものと存じます。公労委の決議に従って労働大臣が自動的にきめる、この手続自体私どもは民主的なものであるというふうに考えておりますので、いま直ちにこれを洗い直すという予定はございません。
#283
○和田(春)委員 石黒さん、たいへん秀才官僚的御答弁でおそれ入りましたけれども、私はそういうことを期待をして言ったわけではないので、結局もとの公労法で管理または監督の地位にある者、機密の事務を扱う者はみなのけろと、非常に明確になっておった。それがずっとしっぽを引いておって、職場はたくさんあるけれども、御承知のように、いわゆる団体的労働関係における使用者の利益代表というのは、本来の筋である職務上の指揮命令ではない。たとえば海上において数万トンの船の船長が、労働組合に入っているという事実がある。何も問題が起こっていないわけです。それは職務上の指揮命令は、最高の命令権を持っている社長にかわって命令するかもしれない。責任をどうするとか、あるいは労働時間をどうするとか、首切りをどうするとか、そういうような問題を決定するということについて直接の決定権がなければ、組合に入っておっても一つも差しつかえない。これは一つの極端なほうの例を言っているわけですけれども、そういう点を考えると、いまマル生運動なるものをめぐっての不当労働行為がどうのこうのと――不当労働行為というのは、大体が団体的労使関係における不介入の原則の問題である。そうするとその団体的労使関係における使用者の利益代表の範囲というものがあまりに広過ぎるということは、それ自体が不当労働行為ないしは類似行為というものをわりあい安易に引き起こし、それが正常な関係においてはあまり悪いとは考えられない、そういう事態を起こしていることになるのではないか。そういうことを考えると、ここでさらにすぐ洗い直せとは言いませんけれども、少なくとも労働大臣が乗り出されたわけです。そしてそういう問題を私から指摘されているわけです。すぐ同意しろとは言いませんけれども、十分検討される必要があるのではないかと私は思います。
 ここではっきり言いますけれども、いまは端的に言って国労、動労から出て鉄労に行ったほうがいいじゃないか、こういうような事実がある、けしからぬ、こういうふうに言われているわけです。全くこれはけしからぬと思う。法のたてまえから言えば介入であります。しかし鉄労が前の新国労のその前の少数派の運動でやっているときには、逆のことの事実が幾らでもあったじゃないですか。いま鉄労なんかの少数派の組合に行くと、仲間から村八分になるから、行かぬほうがいいということが職制においてやられておった事実がある。それは否定できない。しかしそれは私は、悪意で不当労働行為をやろうと思ってやっておったのではないと思う。そういうときには、駅長さんとか助役さんとかが自分の仲間意識で、先輩として、おまえそんなことを言ってつらい思いをするのはぐあいが悪いから、国労から脱退して新国労に行かないほうがいいよ、様子を見ておったほうがいいじゃないか、職場でごたごたを起こすなというくらいの気持ちでやっておったと思うんですよ。それが裏返しになっておった。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことがないというなら、そういう事実は幾らもある。(「何を言っているか」と呼ぶ者あり)何を言っているかという考え方自体がいけない。そういう問題は、結局団体的労使関係における使用者の利益代表というもののけじめがついていないということが問題の一つだといっていいわけですから、そういうことについてやはり今後の国鉄の労使関係をすっきりさせるためには、労働省としても、この際突っ込んで検討される必要があるんじゃないか、このことを申し上げているわけです。
#284
○石黒説明員 たいへん貴重な御意見を承らしていただきまして、お礼を申し上げたいと存じます。
 まあ、各産業ごとに利益代表者の範囲は非常に違っている、これは歴史的経過を踏まえての問題でございまして、急にこれをどうこうというのは非常にむずかしいかと存じます。また不当労働行為云々の問題につきましても、あくまで管理者が多いからということだけでやるよりは、そういうお話のようなことよりは、むしろ従来からの国鉄一家意識というようなものがそういう原因になることはあり得ることであると考えておりますが、いずれにいたしましてもたいへん鋭い御指摘でございまして、私ども将来、公労法につきましては、永遠に変わらない法律は考えておりませんので、十分に検討いたしたいと思っております。
#285
○和田(春)委員 その問題はそれといたしまして、第二点をお伺いしたいのですが、御承知のように日鉄法の第九条と公労法の第八条、これがありますために、国鉄におきましては、つまり国鉄の管理・運営事項というものは、いわゆる理事会の専権事項、当局側の決定すべき事項であって、労働組合は団体交渉という手段では介入できないというたてまえに、この二つの法律からされているわけです。午前中からのやりとりにおきましても、いまの生産性運動をやるにしても、やめるにいたしましても、やり方を変えるにいたしましても、いずれにしても労使の協力、こういうものが大前提になることは間違いのないことだと思うんです。そういうような労使が合意をする、あるいは協力をして進めるというためには、当然労使が協議しなければならぬ。それは国鉄の経営方針、管理・運営事項に関することを団体交渉の対象にするというところまで、当然進むと考えられていいと思うわけです。これはなかなかけじめがつけにくい。ここからここまでは管理・運営事項で、これから先はそうではないという問題ではないわけです。特に当局の経営哲学ないしは経営方針というものが根本にからんでまいりますと、その間における労使協力が必要になってくると思います。最終の決定権は、もちろん国鉄の総裁を中心とする理事会が握るといたしましても、その決定に至るプロセスで労働組合と当局側との間にこの種の経営方針、管理。運営事項について交渉、協議が行なわれるということが必要だと思います。その点が法律のたてまえで制限をされているために、現に賛成をしている鉄労との間には経営懇談会、こういう形で持たれておりますけれども、そのことについて、原則論で議論のある国労、動労との間には慣習的に、非公式に説明会が行なわれている程度だ、こういう説明がございました。その事実は、私どももこの問題の調停、仲裁に参加をいたしまして、知っているわけです。そういう点で、これはまず最初に、国鉄の総裁にお伺いしたいのですけれども、先ほど来、生産性運動推進に対する信念を述べられておった。しかし、そのために私は労使の協力はぜひ必要だと思う。そういう点で、この日鉄法の九条並びに公労法の第八条について、でき得べくんば改正をしてもらいたい、こうい御意向があるのかどうか。
 次に労働大臣に、いま言ったような問題点を意識した場合に、この問題についても法改正を考えて、民間における生産性運動が労使協議を基礎にして、比較的円満に、多くいっているという事実にかんがみて、公共企業体においてもある程度幅をもって行なわれるように措置するお考えがおありかどうかお伺いをいたしたい、こういうふうに考えます。
#286
○磯崎説明員 その点につきましては、午前中有馬先生からの御質問もございましたけれども、私ども実際、昭和二十二、三年ごろ経営協議会――これは、まだ組合が一つしかなかった時代、国鉄労働組合の前身の国鉄総連合といっていた時代でございますが、その時代に経営協議会を持ったことがございます。そのときの経験を、ちょうど、私出席しておりましたけれども、いろいろ考えてみますと、非常にやはり考え方が違って、全体として結局団体交渉の場になってしまって、なかなか結論が得られなかった。結局、やむを得ず第三者の方に来ていただいて調停をはかるというふうな、非常にめんどうな手続になったことを覚えておりますが、今後、いまの一応四組合を擁しまして、それらと同じ丸いテーブルに着いて議論することは、私は非常にいまの時点でむずかしいと思います。しかし、考え方としては、やはりドイツ流の経営参加的な考え方、これはドイツで実際やっておるわけでございますが、そういう考え方にいずれの時期にはなるのかとも思いますけれども、いまの時点で抽象論として、四組合同じテーブルに着いて国鉄の経営の議論をするということは非常にむずかしい事態だと思っております。しかし、これは世の中が変わりますから、必ずしもいつまでもそうだとは思いませんけれども、現時点では公労法の八条、国鉄法の九条、これはいずれも国鉄の責任においてやる以外しかたがないのじゃないかというふうな考え方でおります。
#287
○原国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、国鉄当局と労働組合との管理・運営事項についての団体交渉は、これは禁止しておるところであります。ただし、双方において協議する気持ちになるし、そういう雰囲気が出てくるならば、管理・運営事項についても協議をされたり、相談されることはけっこうなことだと思います。
#288
○和田(春)委員 抽象的にことばの上で話せば、いまの大臣のおっしゃることになるのですが、これは初めて起きた問題ではなくて、すでに多くの実際上の経験があるわけです。それをここまでは管理・運営事項だから団体交渉の対象にならない。だから、これは単に懇談なり協議の範囲にとどめるのだ、ここから先は団体交渉であるからやっていいとか、そういう区別のつけにくい問題が事実上出てくるわけです。そこで、こういう法律の規定がありますと、むしろ当局側はそれをたてにとって、これからはどうされるか知りませんが、いままでは生産性運動を積極的に進めると言われるわけですから、これまではその種の問題については管理・運営事項であるから、組合側からいろいろ言ってくるけれども交渉の対象にはできないという形で、当局の一方的な意思が押しつけられる、それが職員の反発を招く、そういう事例はやはりあったと思う。民間の場合はその点が幅がありますから、適当にそれをミックスして問題を処理していくという形で成果をあげている面がある。どこかにおいてけじめは必要かもわかりませんが、少なくとも現在の日本国有鉄道法と、それから公労法の関係条項というのは、あまりにもそれをシビアに考え過ぎておる。問題解決のために新しく考え直す必要はございませんでしょうか、こういうことを伺っているわけです。
#289
○石黒説明員 御指摘のような点は確かにございます。ただしかしながら、管理・運営は団体交渉の対象にならないという規定が入りましたのには、歴史的ないきさつがありますことは御承知のとおりでございます。管理・運営について、もしこれが管理・運営であるかいなか、すなわち団交の対象であるかいなかということが争いになる場合には、もちろん公労委によって裁定されるのでございますが、私の知るところでは、少しずつではございますが、この点について弾力的な考え方が入ってきておるように思いまして、当面といたしましては、さらにこれを実際の運用におきまして適当に解決することに努力したいと思っております。
#290
○和田(春)委員 そういう点に解釈の幅を持って弾力的に運営をするということが政府並びに国鉄当局に共通した態度であるならば、いまよりもある程度事態を改善する方向に努力ができると私は思いますけれども、やはり突き進んでいきますと、これは国鉄の管理者側、いわゆる理事者側の責任問題というものもありまして、どうしてもそこに壁ができてくるということは否定できない。そういう面で、この面につきましても労働大臣が仲介に乗り出すという以上、関連事項としてやはり検討してもらわなくてはならない問題であるというふうに考えるわけであります。
 それから、これは先ほど来質問が少し出ておったのですけれども、いまの国鉄の労使関係というものを非常にむずかしいものにし、民間には見られない暗いものにしているという大きな要因は、言うまでもなく、当局側の当事者能力の欠如、それから団体行動権を大きく制約している公労法に大きな理由があるように私は思います。本来生産性向上運動においても、これはことで同僚議員から何度も指摘されておりますように、成果配分という概念も生産性向上運動には入ってくるわけです。この点は確かに国鉄の場合には、生産性向上運動を進めて合理化、近代化を正しく進めることによって赤字の増大を食いとめるとか、あるいは破局的な状態をある程度防止するという意味においては、国鉄職員も含めての目に見えざる成果の配分があったという説明はできるかもわかりませんけれども、生産性向上運動における成果配分というものはもう少し直接的な、もう少し具体的に目に見える形で、これに協力する従業員に対してそれぞれに応分に応ずるという概念が入っているということは皆さん御存じのとおりであります。ところがそこまでいきますと、現在の国鉄当局には当事者能力がありません。これははっきりしているわけです。賃金、労働条件についても、ごくささいな、どうでもいいと言ったら悪いですけれども、たいしたことでないことはきめますけれども、それ以上になると全部予算上あるいは法制上の制約がかかってきている。そこで生産性運動を何とか国鉄再建のためにやらなくてはならぬという形になると、そういう具体的な見返りのものというのは重点が置きにくいから、勢い精神的な面に重点を置いた運動に発展せざるを得ない。これはだれが当局者の立場に立っても、この運動に着目すればそうなる傾向が現在の国鉄の当事者能力の不足、制約を受けた労使関係の中にあるというふうに考えるわけです。
 そこでこれを打開するためには、このような国鉄の労並びに使双方についての関係を制約している法制面にメスを入れる必要があるというふうに考えます。具体的な問題については続けてお伺いいたしますけれども、そういう点について労働大臣はどうお考えになっているか、所見をお伺いしたいと思うのです。
#291
○原国務大臣 この法改正については、さいぜんも申し上げましたとおり、いま公務員制度審議会において審議が進められております。その結論が出た時点において、それを参酌して法改正等について考慮いたしたい、こう思っております。
#292
○和田(春)委員 公制審で審議していることは承知でございますが、いまから結論を予測しては不謹慎かもわかりませんけれども、在籍専従を五年にするということぐらいで、労働基本権の問題についてはあの機構では答えが出ません。いまの日本の審議会ないしはいろいろな関係をいいますと――審議会の第三者的機能というものを私も尊重いたします。敬意を表しますけれども、やはり政府の積極的なイニシアチブというか、そういう考え方がたいへん大切ではないかという点でお伺いをしているわけです。
 そこで具体的な問題について私の意見を述べて労働大臣の所見を伺いたいと思うのですけれども、まずいま言ったように国鉄の労働者にはストライキ権が与えられていないわけです。そこでさっきからの不当労働行為の問題なんかも、もし民間でストライキ権が有効に使われるというならば、賃金問題なんかで電車や東海道線が全部ストップするというような大きな争議は問題だけれども、部分的においては、もしほんとうに使用者側に不当労働行為があれば、ストライキないしは直接の団体行動でもってこれを解決するということがかなり可能な場合があるわけです。組合側が非常に弱過ぎて、そういう解決の能力がないという場合には、労働委員会に不当労働行為の申し立てがあがってくる、こういうことになると思う。私自身でいえば、一度もそんな問題は労働委員会に持っていったことはありません。直面した不当労働行為は全部実力で解決してきました。それはストライキ権が背景にあるからです。ところが国鉄においてはそれがないのです。そのために、黙っておれば泣き寝入りしなければいけない。一々公労委に持っていくということはなかなかたいへんだ。そこで、いろいろ陰湿な関係になってくるということがあるのではないでしょうか。そういう点を考えると、全面的なストライキ権を与えるということは問題ですけれども、国民生活の安危に関係のあるようなストについては、たとえばインジャンクション制度を導入する。そういうようなことを前提にして、もう少し国鉄の労働者にいわゆる争議権を含めた団体行動権を与えるということについて、労使関係を正常化するための必要な手段として政府側はお考えになる、そういう考え方はございませんでしょうか。大臣にお伺いいたします。
#293
○石黒説明員 たいへん貴重な御意見で、しばしばそういう御意見、各方面から寄せられております。しかし現在のところ、国鉄がストライキをやるということはあまりにも影響が大きいということで、これを制限つきでありましても認めるということにつきましては、国民感情的に非常にまだ難点があるのじゃなかろうかというふうに考えております。
#294
○和田(春)委員 国鉄のストライキは禁止されておりますけれども、事実上行なわれているのですよ。これはもう現実なんですね。その事実をもう少し秩序立てるということが必要なんじゃないでしょうか。そういう意味で申し上げているわけです。むしろ先ほど言ったような争議差しとめ命令、緊急な事態については法律でそういう措置があれば、それに反したことは違法行為に明確になるわけです。そうでない限りにおいては、部分的な問題は大臣解決でやれる、こういうわけですから、国民感情というようなものをここに引き合いに出して抵抗するのではなくて、労使関係を健全にしていく、新しい事態に直面する国鉄の立場に立ってぜひ考え直してもらいたいと思うのです。ただし、そうするとは言えないと思いますから、腹の中ではそうしてもいいというふうに思っているのじゃないかと思うのですけれども、その辺は、追及はこの場では避けておきたいと思います。
 そして一方、国鉄の当局側についても、労使関係における主として物の面なんですけれども、当事者能力というものが非常に欠けているわけでございまして、特にいまの財源というような問題が出てまいりますと、準禁治産者もいいところくらいで、かけ声をかけて、一方国会に早く立ててくださいと言ってお願いをする以外、総裁としてはなかなかやれる余地がない。勢いこまかいことになってくる。そういう意味でもっと当事者能力を与えて裁量の幅を広げるということが必要なんではないか。これは法律の改正によらずしても、行政措置ないしは扱いの上でかなりのものができると思うのです。そういうふうにすることによって、公共事業としての制約はあるにいたしましても、労使の間が自前の関係で自主的に問題を解決できる、そういう気風をつくってやるということが今後の国鉄の再建にとっても非常に大事である。そういうようなかっこうになっていけば、私はこのマル生運動とか、それに伴う不当労働行為なんということは、何十万もおるのですから部分的には起こるかわからぬけれども、それは簡単に解決のできる程度の問題であって、本質的には組合運動の立場が違い、いろいろな立場が違っても、そういうふうな労使関係に進むと思うのです。それを抜きにして、小手先だけで不当労働行為はいかぬのだ、マル生運動はやめろと議論をしておったのでは、なかなかうまくいかないのじゃないか、そういうふうに考えますので、当局の当事者能力、もっと総裁や首悩部に自由裁量の幅を認めてやる、そして責任制をはっきりさせる、こういう考え方は、これは労働省の問題ではないと思うのですけれども、内閣の国務大臣として原さんにお伺いをいたしたい、こう思います。
#295
○原国務大臣 これは非常に重大な問題でございまして、公務員制度審議会においても非常に議論を戦わしておりまして、そういうふうになること自体が悪いことではないと思いますが、そう簡単にも、私が行ったほうがいいといっても、直ちに当事者能力をふやすというところまでどうも力及ばず、公務員制度審議会の答申が出ますから、そのときに御趣旨の点もよく体して善処いたしたいと思います。
#296
○和田(春)委員 どうもそういう答弁が国会でしばしば出るものですから、審議会というのは政府や官僚の隠れみのだ、こういう悪口を言われるのですよ。いまその数十万の職員をかかえて、日本の動脈の国鉄がどうなるかという問題でしょう。そして現在のいろいろな紛争を通じてどっちがいいとか悪いとかいうのは、それぞれの立場において異論がありますよ。しかしこの紛争という事態を解決をしなければいかぬ。しかし、先ほど来私が四点ばかり問題を出しました。それは今回の問題の遠因であり、誘因であり、背景なんです。私は決してこの問題は、生産性運動を当局がやめなさい、かりに磯崎さんが、そんな言うならめんどうくさいからやめましようか、やめますとその壇上でお約束になっても、いまの問題は解決しませんよ。それはそういういろいろなもろもろの問題がからみ合っておる、その氷山の一角としてマル生とからむ不当労働行為というものが顔を出しておる。そういう事実認識に立って労働大臣は仲介に乗り出すとおっしゃったわけです。したがって、いまここで明確なお答えができなくとも、私が指摘したような問題、賛否はいろいろあると思いますが、マスコミの方々も含め、与野党の議員も含め、この際、やはりみんなで考え直してみよう、そして国民の足である国鉄に、こんな陰惨な状況というものが起こらないようにしよう、そういう積極的な意思があって初めて間違った労働運動に反省を求める。使用者側の間違った態度があればそれを改めてもらう、そういうことがいえると思うのですね。したがって、そういう点についてあまり官僚的な逃げ答弁ではなくて、やはり原労働大臣、せっかく乗り出されたのですから、もっとはっきりした見解をお述べください。その結果、労働大臣首になってもよろしいじゃないですか。それが問題の解決にプラスになるわけです。ぜひお伺いをしたい。
#297
○原国務大臣 御趣旨の点はいろいろ大いに参考になりました。また当事者能力の点は労働省としては、それは私はいい案だと思いますが、財政当局もありまして、労働大臣が言うぐらいなことでなかなか簡単につき合いそうもありませんので、ただし御趣旨の点は非常に参考になりましたので、よく考えてみたいと思います。
#298
○和田(春)委員 ここでそれははっきり約束しろと言っても水かけ論争になりまして、私の持ち時間も尽きると思いますので、その問題についてはいまのあなたの御答弁を善意に解釈をいたしまして、そして一応努力をされるものと了解をしておきたいと考えるわけです。
 今度は、そういう仲介ということをきっかけにいたしまして、政府の労働政策に言及したわけですが、国鉄の当局側について具体的な問題で二つ、三つ確かめてみたいと思うことがあるわけです。
 先ほど来、しばしば明白な不当労働行為であると言い、あるいはマル生運動、生産性運動は歪曲した不当労働行為ないしはそれに似たような行為である、こういうようなことが言われております。それに関連して当局側もお答えがございましたし、質問の議員の方のほうからもそういう意見もありましたけれども、組合同士がお互いの運動方針を批判するのは自由だと思います。労働組合が当局の経営方針や態度について批判をし、意見を言うのも自由だと思う。同時に、当局といえどもこの労働運動にいろいろな意見を述べ、それに対して批判をするというのも言論の自由だと思う。ただ当局がそれを言う場合に、先ほどからいろいろ事実があるというふうに指摘をされております。私はその事実を確認しているわけではございませんけれども、かなりはっきりした証拠を出されていたわけですけれども、この組合から出てこの組合へ行けとか、その組合に入っちゃいかぬとか、そういうことを言えば疑う余地なく、先ほどの使用者の利益代表の範囲の問題はたな上げしておいても、法律上不当労働行為になる、明白な事柄だと思うのです。そんなことを言われれば、脱退しろと言われた組合は迷惑千万だと思う。入れと言われたほうの組合も、当局に手伝ってもらって組合員が入ったといわれたのでは、これは迷惑千万だ。お互いに迷惑千万なんです。そこで先ほど来、国鉄の職員にその総裁の意思というものを徹底させるという場合に、単に精神規定や訓示ではなくて、明確に、少なくとも国鉄の職員でいまの法律のたてまえの毛とで、組合員に入ってはならない、組合員の範囲から除くといわれておる者が、具体的な個々の組合の名前をあげて、あれに入るな、これに入れ、そういうことを一切言うな、簡単にして明瞭なそういう文書による指示を流せば、事は非常に明らかになりますし、それに違反してやったのなら違反したやつが悪いのですから、そういう措置を、あまりめんどうくさいことじゃなくて、簡明直截にそういう点の措置をとるというお考えはありませんか。総裁にお伺いします。
#299
○磯崎説明員 いまの先生のお話でございますが、実はそういうような非常にわかりやすい疑義のないようなものができたら非常にいいと思うのでございますけれども、実際にはなかなかデリケートで、字句に直しますと、そう簡明直蔵にいかない面もあるし、またそれを一歩踏みはずしますと不当労働行為になるということで、非常にむずかしい問題だと思います。そういう意味で、今後そういうふうなものができるかどうかいろいろ書いてみたいと思っておりますけれども、はたして実際外へ出し得るものかどうか、若干疑問があるというふうに考えます。
#300
○和田(春)委員 私の言っていることは、そのまま文書にしても絶対不当労働行為にならないと思うのですね。つまり非組合員、当局の職制というのは、あの組合に入れとか、この組合から出ろとか、あるいはそういうことは絶対に言ったりやったりしちゃいかぬということをはっきり書けば――その点について疑いが出ているわけでしょう。当局は労使関係を正常化すると言っているけれども、実際はそうは言いながら裏があるのじゃないか。いまも話が出ておりましたけれども、いろいろ言われているわけです。だから、裏のないように、そういうことを言うな。ぼくはばっちりやればいいと思うのですね。一番これがりっぱなあかしになると思いますし、総裁の意向を端的にあらわす、そしてそれに反する行為というものはできない、そういうような点を私はやはりお考えになる必要があるように思うのです。これは使用者の利益代表の範囲というような問題――いろいろあればあるだけ、ともすればそういうことがいわゆる悪いという意識なしに、無意識のうちに行なわれるということが、先ほど石黒さんも指摘された国鉄一家意識や、五万人も当局の利益代表者と称する人々がおる、こういうものが国鉄の持っている体質の中に介在しているわけですから、私はそれをはっきりすることが大事だと思いますので、ぜひ検討願いたい。
 それからもう一つは、生産性向上運動は純粋な形で進めたいとおっしゃっていらっしゃる。これはやめろという意見もいろいろございました。しかし、進めるか進めないかについては、これは強制する権限はないわけですから、おやりになるという形になりますれば、進められるわけであります。それは経営者としての態度だと思うのです。その場合に、先ほど申し上げましたように、当局が一方的にプランをきめてそれを押しつける、こういう形では、民間の経験に徴しても、かなりいい労使関係の間でも問題を起こしているわけです。少なくとも国鉄の四つある組合、主要な組合は三つですけれども、そのうちの一つは生産性運動の原則には賛成しているわけです。しかし、いまのやり方そのものについては一から十まで肯定しているわけではなくて、もっといろいろ協議をしてもらいたい、こういう考え方もあると思うのです。また国鉄の再建の上に不当労働行為というものが介在して、歪曲された生産性向上運動では困るけれども、再建の過程として、おっしゃるような趣旨の利用者に対する誠実なサービスであるとか、職員の国鉄に対する愛情であるとかということも含めての運動であるというならば、原則的に反対にはならないはずである。方法論についての議論だと思うのです。
 そこで、もっと大胆に、組合から要求をされてそれに応ずるというのではなくて、当局側からむしろそういう問題に対する労使協議というものを持ちかけていく、そしてどういう方法でやれば同意ができるのか。そういう点は積極的に経営者側から組合側に呼びかけるという積極性が、おやりになるということならば、私は必要だと思うのです。やめちまえという前提に立てばそういう議論はなかなか出てこないと思うのですけれども、総裁はあくまでも生産性向上運動は進めるとおっしゃっている。それに従ってそれのうらはらの関係としていまおっしゃったようなことをより積極的に進めるというお考えがあるかどうか、その点をお伺いしたい。
#301
○磯崎説明員 現在におきましても、それほどの濃度ではございませんけれども、ある程度の説明等のことはしているようでございます。しかし、それでもってはたして足りるかどうか、いま先生の御趣旨のような方向で、もう少し濃度の濃いやり方をしなければいけないのじゃないかということも考えられますので、もう少し具体的に検討してみたいというふうに思っております。
#302
○和田(春)委員 その点はぜひ具体的に検討して、当局側も正常な労使関係に取り組んでいただきたいと考えます。
 それからもう一点は、いろいろと新聞においての報道を通じて、ここの質問を通じても問題になっていることは、いわゆる昇給、昇格あるいは功労、そういうような当局の一般的な人事管理という問題について不当な差別を受けているのではないか。ある組合に入っているがためにそのチャンスが与えられなかった、ある組合に入っておればそのチャンスが与えられているようである。そしてそういう問題がいろいろからんでいるということに対する不信感、あるいは受ける従業員、職員の側からいけば、一つの被害意識と言ってもいいと思うのですけれども、そういうものがかなり根強くあるように指摘されております。どれだけそれが事実あるかは私は職場を一つ一つ歩いて聞いたわけではないからわかりませんけれども、そういう問題が指摘されている以上は、そういう昇給、昇格とか、あるいは功績であるとか功労であるとか、そういう者に賞を与える賞罰の基準というものについて疑問のないような形ではっきり文書で明示をしておく、そういうことが必要なのではないかと思うのですが、そういう点について、いままで国鉄の労使関係と職場の末端において、どういう扱いにされておるか、お伺いしたいと思うのです。
#303
○真鍋説明員 昇職、昇格の基準につきましては、長年労使間で争ってきた論争の一つでございます。これは先般公労委の調停にかかりまして、労使でよく話し合いをしなさいということで持ち帰って、現在協議をしておる最中の問題でございます。これにつきましては、勤務成績、勤続年数、在職年数等を総合的に検討いたしまして、それでそれぞれの昇職、昇格の者をきめるというような形で現在はいっておるわけでございます。ただ、勤務成績、勤続年数あるいは在職年数等をどういうようなウエートで、あるいはどういうような形で総合的にきめるかということについては労使で意見が分かれておるところでございます。私どもは、この現在労使で協議をしておりますことにつきましては、できるだけ早く意見の一致を見たいということで考えておるわけでございます。
#304
○和田(春)委員 いま、できるだけ早く労使の意見の一致を見たいということですけれども、これが当面の紛争の一つの火だねになっている以上、事の当否は別といたしまして、やはりそういうルールをちゃんと整えるということがたいへん必要であると思います。協議が整わない場合にどうするか、それは当局側の一方的見解でも私はやむを得ないと思うのです。組合が賛成するか反対するかは別なんです。やはり明確にしておく。とかく何か自由裁量で、表面に出ている簡単な文句以外に何か見えざる手が動くのではないかという疑心暗鬼があると、民間企業でもしばしばあるのですけれども、肝心の昇給とか昇格とか、あるいは功績を賞するとかいうことがかえって裏目に出るということがあるわけでありますから、これはやはり明確な形でやって、その運用基準というものを明らかにするということが大事だと思うのです。ぜひそれを早くやっていただきたい。
 それからもう一点、そういうことについて録音テープをとったとか、いろいろなことがあります。これは組合側としては対抗手段としてやったのでしょうけれども、そういうことが職場で行なわれていると、これは信頼関係をつくるというよりも、いや盗んだ、盗まれた、うまくやれ、まずかったということになれば、かえって陰湿な労使関係をつくる。したがって、組合員側が昇給、昇格やそういう賞罰に対する不服がある場合の不服審査の機構というものを確立する。そして、そこで労使の協議が整わない場合は上級委員会に持っていく。そしてそれがだめなときは直ちに公労委にかけて、公労委の第三者の公正な判断を求める。そういうルールをつくると同時に、実際にそのルールがスムーズに運用されるということが不信感解決の基礎的な条件だと私は思います。そういう点、私も公労委の委員をいたしておりまして、実態を知っておりますけれども、国鉄の労使関係の間においてはかなりおくれているように思うのです。やはりこれも人事管理をしている当局側が積極的にお進めになる必要があると思うわけですが、その点について所見を承いたいと思うわけです。
#305
○真鍋説明員 現在労使間で紛争が起こり、苦情が起こります場合には、苦情処理委員会等を設けて、その場で労使で協議することになっております。制度はそのようになっておりますけれども、おっしゃいますように、有効に使われているとは言えないかと思います。御意見、十分参酌いたしまして、私どもも有効なそういった制度ができますように労使間で話し合いをしたいというふうに思っております。
#306
○和田(春)委員 そういうようなはっきりした制度をつくり、それを運用しておれば、その結果、どっかの組合に昇格者が多かった、どっかの組合に少なかった、非組合員が多かったとか少なかったとか、それは結果として生まれたという場合にも大方が納得できると思うのですけれども、仕組みは一応形だけはあるけれども、実際運用されていないというところに、そういう結果として生じたと当局が言われたことについて、それは結果として生じたのではない、意識的にやったのだろう、こういう議論もあるわけですから、この問題はぜひ早急に取り上げていただきたい。これを問題解決の方法として提案をしておきます。
 最後に、これは労働大臣にお伺いしておきたいと思うのです。
 私が冒頭に申し上げましたこの問題は、大臣が先ほどちょっと一言漏らされたように、生産性運動に基づく何かそれとからんで出てきた不当労働行為、それだけのような単純な問題ではありません。まさに制度やあるいはいろいろな仕組みや、過去の経緯や運用の問題や、労使関係のいろんな問題にからんだ事柄が、職員の国鉄の将来に対する先行き不安と非常にきびしい現在の国鉄の条件、その中における何とかしなければならないという当局の姿勢、そういうものがからみ合ってふき出していると思うのです。
 したがいまして、仲介をされるという以上、あまり単純に問題を考えることなく、お考えになっているとは思いませんけれども、そういう背景にまで目をやって、いま直ちに問題を解決しなくても、将来における大局的な解決に導く、そういう決意と大胆な姿勢をもって取り組んでいただきたい。このことを強く希望し、原労働大臣のそれに対する御所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
#307
○原国務大臣 いまの和田さんの御意見、同感でございまして、単純に考えずに、諸般の事情等々、原因等も考えまして、大局的見地から仲介の労をとりたいと思っております。
#308
○和田(春)委員 質問を終わります。
#309
○森山委員長 次に、寺前君。
 時間をひとつよろしくお願いいたします、あとの方がいますから。
#310
○寺前委員 要領よくひとつ総裁、答えてください。
 いまお手元に渡した資料、非常に見にくいですが、私も先ほどもらったところなんです。これは何かというと、東京の田端電力区のある職制の机の上に置いてあった指導原簿です。総裁、よろしいか。その指導原簿というのは、一人一人の労働者、それがどういう人間かということをずっと書いてある。これは年じゅう置いてあるわけです。年じゅう調査してどうこうしようというわけです。その指導原簿の右のまん中辺を見てください。何と書いてある。思想欄があるでしょう。総裁、日常ふだんに思想を調査するということを指導の基本に置いておる原簿があるということについて、あなたはどう思われます。
#311
○磯崎説明員 私、実はよく見えないのでたいへん申しわけないのですが、田端電力区とおっしゃいましたけれども、どうもよくわかりません。「思想」と書いてあるのは見えます。
#312
○寺前委員 見えるでしょう。どう思います。
#313
○磯崎説明員 その「思想」という意味、ちょっとこのものを一体何に使っておるかよくわかりませんけれども、「思想」という意味は、これは思想原簿じゃないのでしょう、指導原簿でございましょう。しかし、「思想」と書いてございますことは、どういうことをこの「思想」という字で表現しているのか、考え方なのか、また具体的にどういうことが書いてあるのか、それによるのでありまして、まさか思想調査なんということをいまやれるはずがないわけでございますから、そういう意味で、「思想」という字で表現されておる内容はちょっと私にはわかりかねますが、いわゆる思想でしたら、これは意味がないことだと思います。
#314
○寺前委員 あなた、こんなものが何を意味しておるのかわからぬというようなことでは、どうもならぬじゃないですか。「思想」という欄があったら、思想調査をやるということ以外に何もないじゃないですか。適切でなかったら適切でないと、はっきり言ったらどうなんです。言えないようなことで、あなた、どうして指導できますか。これは基本問題だ。ことばで言って、その思想という言い方に問題があって、あれは違いましたとか――さっきも話がありました、北海道の話で。そんな問題じゃないのでしょう。日常ふだんに机の上に置いてある。一人一人の労働者について、年じゅうそういうふうに見ているのじゃないか。そんなやり方でいいのか、これは許されるのか、はっきりしましょうや。
#315
○磯崎説明員 この原簿がどこにございましたのかよく知りませんが、「思想」という意味は、いま先生のおっしゃるようないわゆる思想調査ということでなしに、まあものの考え方とかいうふうなことを表現したのであって、現場の末端でございますから、先生方のお使いになるような非常に正確な法律的な表現で書いたものだとは私、思いません。だから、具体的に、しからばこの内容がどういうふうに書かれているのか、自分は何主義だ、何主義だということを書かれているのか、その辺は見ないとちょっとわかりませんが、その「思想」という字は、そう憲法上の思想という意味で書いたものではないというふうに私は思います。
#316
○寺前委員 それではあなたはこういう「思想」ということばを書いた調査を幾らやってもかまわぬというわけだな。厳密でないのだから何をやったってかまわぬ、解釈はまた別なんだ、こういうことか。
#317
○森山委員長 寺前君、もう少し発言につきまして、検事のような口調でお話しにならないように忠告いたします。
#318
○寺前委員 悪かったから悪いとはっきり言えばいいのだ。
#319
○磯崎説明員 いま突然見せていただきまして、私も非常に目が遠いものですからよく見えなくて、すぐお答えするということとすれば、その「思想」という字の内容が、現場の末端で使っている字でございますから、そう先生方のおっしゃるほど正確なものじゃないということを申し上げたので、間違っているという表現がよければ間違っているというふうに私は申し上げます。
#320
○寺前委員 私はこれは重要だと思うのですよ。平気で日常ふだんに置いてある中で思想の調査をやるということ、思想欄があるということ、これは間違いだということではっきり摘発しなかったら、私はうそだと思うのだ。のらりくらりと、解釈がどうのこうのというようなことを言っておって、私は、これは憲法のもとにおいてのあなたの活動だというふうに言えないと思う。撤回させるようにすぐに指導してもらいたい。調査して、委員会に報告してもらいます。答弁を求めますよ。どうです。
#321
○磯崎説明員 この「思想」という字がどういうふうな具体的内容をもって使われているのか、さっそく調べてみます。
#322
○寺前委員 時間の制限を受けておりますので、次にいきます。
 自殺者が七人出たとか、強度のノイローゼが十二人だとか、公労委への提訴が七十九件出ているとか、きょうもずいぶんいろんな問題が提起されました。そこで、あなたはいつの時点にたいへんな不当労働行為が起こっているのだということを知りましたか、聞きたいと思います。
#323
○磯崎説明員 いつの時点と申しますと、一番いろいろ話が出ましたのは最近でございます。その中で純粋に不当労働行為と認定されましたのは、去る八日の公労委の決定でございます。その前にいろいろ新聞等で出たことは知っております。しかし、実際にいまおっしゃったような不当労働行為であるという認定を受けたのは、去る八日でございます。
#324
○寺前委員 それでは、その認定が出るまでは不当労働行為が起こっているというふうには思わなかった、こういうように解釈していいですね。
#325
○磯崎説明員 不当労働行為については、いろいろ話はございましたけれども、私は思っておりませんでした。
#326
○寺前委員 それじゃ、ちょっと聞いてみたいのですが、不当労働行為が起こっているというふうに思えなかったというのは、話は一ぱいあるのに思わなかったというのは、報告がみんな不当労働行為としての報告になっていなかったというのか、あなた自身が聞く耳がなかったのか、それとも両方一緒か、どの部類に属しますか。
#327
○磯崎説明員 御承知のとおり、不当労働行為は第三者の機関の認定によってきまるわけでございます。したがって、私自身のほうに上がってくる報告というのはそうたいして数がございません。たとえば新聞に出たもの、これはどうだということを聞く程度でございますが、両者から聞くわけでございませんし、私自体としては認定の権限がないわけでございまして、ただ事情を聞くだけでごございます。
#328
○寺前委員 あなたは裁定が、認定が出るまではこれは不当労働行為かどうかは知らなかった、こういうことですが、問題が起こっているのですよ。たとえばこれは東京の渋谷の駅ですか、自殺者が出た。そうしたら、その自殺者に、従来行ったことのないようなえらいさんの、管理局長とか運輸長とか、そういう人の花輪が出てきた。これはたいへんな問題になっていればこそ、そういう人たちの花輪が出るのでしょう。そこまで問題になっているのでしょう。これはたいへんな問題だということを、あなたは国鉄を預かっている総裁として意識して、自分の手で調べ直すということを考えなかったのですか。
#329
○磯崎説明員 先ほども公明党の先生に申し上げましたとおり、私は自殺者という非常に気の毒な人に対しまして、その真因をせんさくして一方的にそれを押しつけるというふうなことは死者に対する礼を失すると考えております。したがいまして、自殺者が出て、その原因が何であるかというふうなことを究明することは避けております。それは私自身の考え方でございます。
#330
○寺前委員 避けている――あなた、自殺者の問題だけじゃないですよ。新聞にはいろんな記事がたくさん出ておりますよ、自殺者だけでなくてマル生運動に伴っての。これだけ事態が発生しておったら、自分のやってきたことを再検討してみるという必要があったのじゃないか。再検討する気はなかった、初めて第三者機関であるところのあの認定が出て考え直す――あなた、これは総裁として適切な態度だと思いますか。
#331
○磯崎説明員 私としては生産性運動を進めている責任者として考えておった態度でございます。
#332
○寺前委員 労働大臣に聞きたいと思います。
 あなた、閣僚として総裁を内閣で任命しているのですが、事態が深刻なこれだけの問題を投げかけておりながら、総裁が認定までも、部下から出してきたところの報告、それだけでは不安だというふうに考えないという総裁のあり方について、あなたはどう思います。これが適当な総裁の態度だというふうに思いますか。あなたは閣僚の一員として任命しているのですから。
#333
○原国務大臣 総裁の表現はいろいろありましたが、それは全然無関心であったわけでもなく、おそらく関心を持って知っておられたのであろうと察せられるところでございます。
#334
○寺前委員 大臣、認定まで、不当労働行為が起こっているということについて疑問視していないというような総裁のあり方について、あなた、これは困った総裁だなあというふうに思うか思わぬかくらいははっきりしたらどうですか。あなた自身も、これはたいへんだと思って乗り出したのでしょう。あなたが乗り出すよりもあとですよ、総裁がたいへんだという認定のもとにおいて考えだしたのは。あなたのほうが、直接握っていない国鉄の中における姿について、これはたいへんだと思ったのと違うのですか。そうしたら、あなたとしても、総裁、それじゃ困るじゃないかということを言ってしかるべしだと思うのですが、どうですか。
#335
○原国務大臣 私も事態の重大を考えるし、総裁もおそらく――どういうふうに考えておったか、いまの表現ははっきり聞いておりませんでしたが、十分総裁の注意を喚起しようと思い、それで先週の金曜日に総裁を招致して、労働省で事情をはっきり聞きました。そのときも、事態は深刻であるということは総裁自身もよく承知しておりまして、それからいろいろ事態の収拾については私のほうでひとつ考えるからという話をしたような次第であります。
#336
○寺前委員 どうも閣僚のほうもたよりないし、本人のほうもたよりないが、先ほど総裁は曲解があったのだ、こう言われた。どうして曲解が生まれたのですか。原因があるでしょう。どうして曲解を生ましたのですか。あなたには、部下が悪いのだ、おれは何ともないのだ、曲解が生まれているのだ。さてそれじゃ、曲解はなぜ生まれたのか。はっきりしてもらいましょうか。
#337
○磯崎説明員 私が曲解と申しましたのは、けさの私の談話の中に、これまで純粋な生産性運動がいわゆる不当労働行為によって歪曲して理解された事例があったことは云々と、それを申したわけでございます。
#338
○寺前委員 あなたのいま言ったことはわからない。曲解が生まれたというのは、問題点があるから曲解を生むようになったのでしょう。あなたの指導したマル生運動といわれる内容が曲解を生むようなものではないのだ、ところが曲解が生まれたのだ。それならば、その曲解がどの点から生まれてきたのか。これは一番末端の人の中から、何も知らぬ人から生まれたというのじゃないのでしょう。日常的に、系統的に、組織的に行なわれたのでしょう、上級幹部が全部指導したのだから。しかもその流れはいまだに――新聞にも載った茨城県のあのテープの事件のように、うまくやれという言い方でいまだに流れているのでしょう。上級幹部によってやられている。曲解が生まれているといって、あなた通用しますか。ここをこうやったのが曲解を生んで悪かったというのか。何もわからぬじゃないですか。どこに曲解が生まれた問題点があるのか。私は、上級幹部の諸君たちは、曲解が生まれた、歪曲しておったといわれたって、納得できないだろうと思いますよ。どう考えたって、マル生運動そのものがこれを必要としているのじゃないですか。そうでないというのだったら、どこから曲解が生まれたのか、はっきりしてごらんなさい。はっきりしないですよ。
#339
○磯崎説明員 先ほどの私の談話の中に、談話をごらんくださいますとわかりますが、いわゆる不当労働行為によって曲解が――歪曲されたことは事例があったということを申しておるわけでございます。いわゆる不当労働行為によって生まれた、こういうふうに言っているわけでございます。
#340
○寺前委員 私は与えられている時間があと三分だ。非常に制限されておりますので、もうあれですが、労働大臣、私は国民にとって非常に重要な問題だと思うのです。立川の駅の諸君に聞いてみたら、電車運転している諸君がこう言っていますよ。マル生運動で諸君たちはほかのことに気をとられるな、まじめに一生懸命車を走らせろ。そうかと一生懸命動かさんならぬと思っておった。ところが、電車を運転しておる横へずっと職制が入ってきて、組合を脱退せいと言う。ほかのことを考えるなというので、一生懸命ほかのことを考えないでいるのに、また職制が入ってくる。これは一体どういうことなんだという笑い話をこの前しました。たいへんなことが起こっておるのでしょう。これはどうなるか、中央線は一分数十秒間隔で走っておるのです。その横へ来てこんな話をしておるのでしょう。私は、国民の安全輸送をする立場からも、いま進められているところの指導は、職場が暗くなるだけじゃなくして、そういうことでノイローゼをつくっているという事態は非常に不安ですよ。しかも総裁自身が、この間まで事態がたいへんだということを知らなかった、こう言うのでしょう。こんな事態のままで、しかも現場においてはうまくやれというだけの指導がいま先行しておるとしたならば、いまの日本の国鉄全体が非常に不安な状態にありますよ。これは佐藤内閣としても検討しなければならない重大問題ですよ。一国鉄総裁の問題じゃなくなりましたよ。このまま国鉄総裁を残しておいていいのかどうか。
 さらに、私は、内閣として検討してもらわなければならないのは、国鉄の財政再建計画そのものがたいへんな事態をつくっているのだということにもう一度メスを入れ直さなかったならば、あすこの労働者が悪いんだとか、いやこれは財政がうまくいかないから、こういうふうにもうからぬところの路線についてははずさなければならないのだとか、そんなことだけでやっておったらたいへんな事態になるという具体的な証拠が今日生まれてきておるのですよ。だから、内閣として、いま進めているところのマル生運動のとの指導の総裁のやり方に対してメスを入れるということと同時に、再建計画そのものにメスを入れて、そうして国民に安心してもらいたいということの態度を内閣として提起しなければならないところに来ておると思うのです。総裁は、事故が起こらない限り私の耳には入ってこないということを先ほど言われた。事故が起こったらたまったものじゃありません。大臣、あなたの最後の見解を聞いて、私は終わりたいと思います。
#341
○原国務大臣 けさからいろいろ申し上げておりますように、事態の重大なることは私もそれを察知いたしまして、みずから進んで、運輸大臣の了承、官房長官の了承もとって、事態の収拾に乗り出そうとしておるところであります。そして、先週当局及び三労働組合からその事情を聴取し、本日のこの委員会にも臨んでいろいろ参考に御意見を拝聴いたしました。それらを踏まえまして仲介の労をとりたい。各位の御協力をお願いするところであります。
 再建計画ももっと考えるべきである、そういう御意見もよく拝聴いたしました。対策を考えていきたいと思っております。
#342
○森山委員長 次に、古川雅司君。
  〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
#343
○古川(雅)委員 最近、千葉県の市原市の三井造船千葉造船所で、放射性同位元素イリジウム一九二を使って船体検査をしておりました中国エックス線会社の作業員が、放射線源の入っているホルダーを紛失いたしまして、これを拾った同じ造船所の下請会社の工員がアパートに持ち帰りまして被曝した事件がございました。これは長崎、広島の原爆、第五福竜丸事件に次ぐ三度目の、非常に大量な放射線を被曝したという事故でありまして、いま放射性同位元素の安全管理のずさんさが非常に問題化しているところでございます。
 これはこの造船所の会社の中で拾得をしたというところから事故が出発をいたしておりますので、労働省の基準局のほうでも当然事故の詳細については掌握をしていらっしゃると思いますが、この被曝患者は現在放射線医学総合研究所に入院加療中でありますけれども、まず最初に労働省にお伺いいたしたいのは、この本人から労災保険の適用の申請が出ました場合、労働省としてはどういう見解でこれをお取り計らいになるお考えか、その点から伺わさしていただきたいと思います。
#344
○岡部説明員 ただいま御指摘の具体的な事件に関しまする、すなわち三井造船、いまの御指摘のテッケン工業、中国エックス線株式会社の放射線の被曝者は、実はただいま御指摘のように、その従業員の方がうちへ持ち帰って、うちでたまたま遊びにこられた方も被曝したということがございますので、その辺業務上の被曝ということの認定ができます方については、当然労災補償の対象になりますけれども、業務上に基因しないということになりますと、労災保険としては、具対的にどういう認定を下すか、その事実関係を十分見た上でなければにわかに申し上げられない、こういうことでございます。
#345
○古川(雅)委員 この被曝をいたしました五人のうちの一人、すなわち放射線体を拾得した本人は、作業中の時間に捨得したということでございまして、いま局長のお答えになりました業務上、その時間の中でありますので、そういう場合に業務上と認定できないかどうか、その点をもう少し核心に触れてお答えいただけないでしょうか。
#346
○岡部説明員 ただいま御指摘の、従業員の方で被曝をされた方は、配管検査現場の近くで仕事をしておられた天草工務店の労働者の尺某さんという方でございまして、この方については、少なくとも放射線が発生する可能性のある現場でのことでございますので、業務上と申しますか、作業上における被曝ということにはなろうかと思います。したがいまして、ただ具体的に業務に直接基因するかどうかということについては、具体的な事案について認定をいたさなければならないと思いますので、ここで直ちに業務上に該当するとまではちょっと申し上げられないわけであります。
#347
○古川(雅)委員 いま被曝をした方は、そんなものを下宿に持って帰ったことがいけないといってしまえばそれまででございますが、しかし、非常に特異な事件でございますし、またこの症状が今後の加療いかんにもよりますが、おそらく原爆被爆者と同じような非常に悲惨な今後の経過をたどるのではないか、そういうことを憂慮するわけでございまして、労働省におきましても、これはひとつ格別の御配慮をいただいて労災申請に対する手段をお願いしてまいりたいと思います。
 いずれにいたしましても、この放射性物質に対する安全管理の精神が非常に薄らいでいるということがこの事件をもって指摘をされたわけでございますが、基準局からいただきましたデータによりましても、昭和四十五年度に定期監督の実施事業数七十三万余カ所の中で、違反事業数が十六万四千余カ所ございました。その中でいわゆる電離放射線関係の違反事業場数が三百十八もございます。これは一つ注目すべきことであると思います。ことに監督の手法としては、監督指導計画の作成をして電離放射線関係事業場等、有害物質取り扱い事業場を中心に選定して監督指導を行なっているとありますけれども、今回の事故の経緯を見てまいりますと、その点非常になまぬるいのではないか。特にこの放射線を扱いましたさまざまの器具が最近非常に出回っておりますので、今後こういった器具を使用する事業場に対しては相当強力な監督の措置がとられなければならないと思いますが、安全管理の面で基準局としてその点どうお考えであるか、お伺いをいたしたいと思います。
#348
○岡部説明員 御指摘のように、放射性物質を取り扱う事業場の完全な掌握、把握ということが必ずしも十分でなかったわけでございまして、したがいまして、本年の九月に有害物質の総点検をやりますにあたりまして、その一環といたしまして工業用の非破壊検査事業場等を重点といたしまして、全国一斉にいわゆる放射線障害が起こる可能性のある事業場について点検をいたしまして、その結果はまだ詳細が出ておりません。十一月中旬以降にその結果がまとまって出てまいりますので、それによりまして今後の対策の強化について十全の策を考えてまいりたい、こう思っております。
#349
○古川(雅)委員 きょうは特に科学技術庁から放射線安全課長においでをいただいているわけでございますが、今回の事件に際しましては、さっそく事態の掌握をなさって私のほうにも御報告をいただいております。特にここで問題になりますことは、この放射線体が紛失してから三日間、この中国エックス線会社が事態を隠していたというそのことによってこうした大きな被曝事故を起こしてしまったわけでありまして、この点非常に残念だと思うわけであります。ここで科学技術庁における放射性物質の取り扱いについて大きな問題があると思いますので、二、三お伺いしたいのでございますけれども、これは新聞の報道によりますと、放射性物質を取り扱う事業所は大体二千二百に達している。しかもその安全管理を調べる科学技術庁の放射線検査官はたったの十七人でしかない。これに一つ問題があると思いますし、この放射性物質を利用しているのは、こうした造船会社における器具のほかに、そのほかの工場、それから病院等でも使用しているわけでありまして、非常に各方面にわたっているところから、監督官庁の違いで安全管理が非常に統一性を欠いているという点が指摘をされております。
 そこで科学技術庁として、これまで直接その監督、管理に当たってこられたわけでございますが、その辺の問題点について、特に今後の問題点として所見を承っておきたいと思います。
#350
○児崎説明員 今回大きく国民の方に不安を起こしました本回の事件につきましては、担当課長として深くおわびいたします。
 ただいま御質問のありました、いままでの科学技術庁における放射性同位元素等の使用の監督等についてどうやっておったか、それから将来どうするかということにつきまして、いままで、使用の申請が出ますと、これを書面の上で十分に検討いたしまして、使う人及び周辺に対して放射線障害が起こり得ないというふうな使用者だけに対して許可をおろしてまいりました。この許可をおろすにあたりましては、科学技術庁のほかに関係行政機関と協議をするという法律になっておりますので、たとえば病院であれば厚生省、あるいは大学関係であれば文部省というふうな関係行政機関と協議し、かつ、許可をおろした時点においては国家公安委員会並びに消防庁長官のほうに対して、こういった事業所に対して許可をおろしたというふうなことをいたしておるわけでございます。
 なお、許可をおろしますと、その事業所の使っておる使用の状態それから施設、こういったものが当初の計画どおりに行なわれておるかどうかについて立ち入り検査をいたしております。立ち入り検査は、まず重点といたしまして、新しく許可をおろした事業所、それから二番目には、過去立ち入り検査をいたしましてまあ不備あるいは適正でない指摘事項が多かったところ、こういったところを重点にし、それから最初の立ち入り検査のあと数年たったところをやるというふうな、地域的に重点を設け、またその年に業種別に重点を設けて、立ち入り検査の実効をあげるようにいたしておるわけでございます。
 本回のようなこういう非破壊検査業界に対しては、実は昨年ごろからその実態等について問題があるという認識を持っておりまして、すべての事業所に対してこの一年の間に全部立ち入り検査をいたしまして、そうして法律に求められておるところの管理の状態、それから教育訓練その他を見てまいったわけでございますが、今回、中国エックス線の実情を見ますと、そういうふうな体制の面においては整っておりましたけれども、現場における教育が徹底しておらなかったという点におきまして、事故を見つけたあと三日ほど自分たちだけでさがしてしまった。それから、むしろ事故を起こす前に点検をすべきというふうにきまっており測定器もあったわけでございますが、その点検を怠ったということで、今回の事故を起こしました。われわれども、これから先もさらにこう、った規定の順守と、特に現場における教育訓練、こういったことをさせることを強く関係方面に指示することになっておるわけでございます。
#351
○古川(雅)委員 今回の事故におきましては、特に中国エックス線会社の管理のずさんさが指摘されておりまして、業務上過失傷害の疑いも出ているというふうに伺っておりますけれども、科学技術庁としては、安全管理の体制それから被曝管理について、担当責任者の出頭を求め、改善すべき点がある場合にはその改善策等について指導を行なっているというような事後の方策をしるしていらっしゃいますが、このようなずさんな管理を続けていたのでは、今後ますます同じような事故が発生するおそれがあるのではないか一特に今回の場合には、紛失をしてから三日ほどひた隠しに隠して会社の中だけで内密にさがしていた。これが非常に大きな問題になっているわけでありまして、そのような会社を認めてきたこと自体にも一つ問題がありますし、また被曝したこの作業員自体がいまこうして入院加療しておりますけれども、何らその医療についてまた自後の生活保障がされていないという点は、これは監督官庁として、責任官庁として何らかの責任をお感じになって、今後の特にこの被爆者の自後の措置については慎重にお考えいただきたい点なんでございますが、この辺はいかがでございますか。
#352
○児崎説明員 今回中国エックス線が犯しました法律違反につきましては、使う場合の使用の基準とそれから保管の基準と、二つがこの法律違反に問われておりまして、これは市原署において捜査を開始し、こういった罰則については司法関係部署の判断におまかせしておることでございますが、科学技術庁といたしましては、すでに与えてある許可を取り消す、あるいは使用の停止をするというふうな行政処分につきまして、慎重にただいま検討いたしております。
 なお、ただいま放医研に入って精密検査を受けておる五人の被害者に対しましては、治療費の負担その他生活費等の部分も含めて最善の努力をすることを、中国エックス線の社長に対して確約させておる次第でございます。
#353
○古川(雅)委員 この問題は今後の事態にも関連がございますので、いま御答弁をいただきました事項につきましては、委員会を通して私のほうへ御報告をいただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
#354
○児崎説明員 ただいま申し上げましたことについて決定次第、先生の御趣旨に沿う措置をいたしたいと考えます。
#355
○古川(雅)委員 いま、一つの労働災害として私はこれをとらえているわけでございますが、事例を申し上げたわけでございます。申すまでもございませんが、特に最近、一九七〇年代は人間尊重のときであるし、労働災害防止対策は、これはもう政治責任の問題であるという、そういう世論がわき起こっております。私もそのとおりであると思います。現に昨昭和四十五年度にも、労働災害によりまして休業八日以上が三十六万四千人、死亡が六千人をこえております。軽傷を含めますと、これはもう百七十万人をこえるという膨大な数でございまして、しかもその犠牲者のほとんどが一家の生活の柱であるという点が特に問題ではないか。また、これも申し上げるまでもありませんが、災害は非常に大型化し、非常に多様化しているということでございまして、この意味では、すでに労働基準法研究会の報告に基づきまして、労働省のほうから八月二十日でございましたか、新たに労働災害の防止のためのいわゆる独立法としての立法措置を考えている。これは仮称だと思いますが、労働安全衛生法の準備をしていらっしゃるということでございます。
 この点に少し触れさせていただきたいのでありますが、まず最初に、これは立法の準備をしていらっしゃるわけでございますけれども、すでに私どもの手元に、新法に基づいて実施する主要な施策の内容をおおまか御連絡をいただいておりますので、その二、三の項目にわたってお伺いをしてまいりたいと思います。
 いま、いわゆるこの労働安全衛生法の立法化の準備にあたって、国民が一番心配していることは、今後の具体的な立法作業の中で、労働省が施策の内容をどこまで貫き通せるかということに非常に関心を持たれているわけです。というのは、今回の立法にあたっては非常に労働省も意欲的に労働者のサイドでいろいろな項目を織り込んでいるわけでございますけれども、今度の構想をもとにして労働大臣が諮問機関である中央労働基準審議会にかけて、その答申を得た上で最終的に法案をまとめる、そして国会に提出するということではございますけれども、労働災害が起こったとき、経営者の責任を重視して、刑事、行政双方の処罰をしようとしておる点、あるいはまた最近非常に激増しております下請企業の労働者の災害についても、親企業にある程度のいわゆる無過失責任制度を確立しようとしている、こういう点から経営者側からかなり強い反発、抵抗が起こるのではないか、これが大方の見方であります。こういった世論の中で、こうした心配がほんとうに持たれるような現状であるかどうか、これをお答えいただくのは少しまとはずれかもしれませんけれども、以下お伺いしていく点について一番これがポイントになると思いますので、いわゆる企業の成長を守るという立場、そういう立場からどうしても、従来言われてきたように、通産省あたりがこの新法の成立にあたってはなかなか了解しないのではないか、そういう懸念が持たれておりますけれども、その辺の不安について局長並びにできれば大臣からも御所見を承っておきたいと思います。
#356
○岡部説明員 ただいま私ども次の通常国会に出すべく準備をいたしておりまする安全衛生に関しまする特別立法の内容としては、ただいま先生御指摘のように、災害防止に関する事業者責任をいろいろな形で明確にしていく、その事業者責任に基づく安全管理体制を確立していくというような問題、それからまた生産設備あるいは機械等の製造段階からの安全性の確保というような点を考えておりますが、それらについては、ただいまもお触れになりましたように、事業主のサイドあるいは生産行政と申しますか、そういうサイドからの意見がいろいろあろうかと思います。しかしながら、私どもは労働者の安全衛生を守るために、従来どういうことが欠けておったかということから出発いたしますと、どうもただいま申し上げましたようなことをもう少しはっきりしていかなければならないというふうに考えておりますので、関係者に十分説明をし、その理解を得るべく努力いたしますれば、御理解いただける点が十分あろうかと思いまして、私どもは、過去の安全衛生行政の経験に基づいて、足らざるところを補うという意味で、新しい法律の中身について関係者の十分な理解を得るべく最大の努力をして、できるだけこの法律を真に安全衛生の確保に役立つような中身のものにしてまいりたいというふうに考えております。大臣も私どもを非常に督励してくださっておりますので、政治の面におきましても十分やっていただけるものと期待しておりますが、まず私、事務の段階で関係者の御協力を得るべく最善の努力を現にいたしております。今後も続けてまいりたいと思っております。
#357
○原国務大臣 御説、同感でございまして、ぜひこの法律案を特別法として通常国会で成立させたいといま事務的に進めておるし、通産省と連絡をさしておるところであります。
 いま民間で安全衛生懇話会というのができておりまして、これは私どもがすすめてやったのじゃなくて、民間の、その中に二十二の有力会社の社長、これはトップクラスの人が入って、すでにもう数回会合いたしまして、中央労働災害防止協会の三村起一さん、前田一さん等が音頭をとって、そしていま申しました労働安全衛生法について、私どもはその趣旨を説明して、局長から詳しく内容も説明して、だんだんそれも了解してもらうし、この安全衛生懇話会を通してでも、これは財界人が二十二社、有力なものは全部入っております。それらの方々も、いま時宜に適したものをやっていただきたい、こういうこともありますから、産業界のほうはその懇話会に推進してもらうし、通産省のほうは私自身も乗り出してもう少し話が事務的にまとまってきたり、まとまらぬ場合においても、田中通産大臣に直接会ってこれを推進いたしたいと思っております。
#358
○古川(雅)委員 その点について深く追及いたしましても始まりませんが、いずれにいたしましても、これまでの経緯から、どうしても通産省サイドあるいは業界、財界サイドに押しまくられてしまう、せっかくのこうした立法の趣旨がゆがめられてしまう、そういうことが往々にしてあることを非常に不安に思うわけでありまして、その点、今後強力に労働災害の防止に実効のある立法準備を進めていただきたいと思います。
 ただいまの局長と大臣の御答弁をそのまま受けさしていただきまして、ここにいただきました労働安全衛生法、仮称でございますけれども、その制定にあたって、この新法に基づいて実施する主要な施策の内容の二、三にわたって一応お伺いをしておきたいと思うのでございます。
 その第一項目に、「事業者責任の確明化と事業所における安全衛生管理組織の確立」をあげていらっしゃいます。ここで一つお伺いしておきたいのですが、これまでの事故の実態におきましては、トップマネージャーの責任が追及されないで終わっているというきらいが常につきまとっていたわけでございますが、この点についてはいかがでございましょう。
 これとあわせて、第八項目になると思いますけれども、ちょっとさっき申し上げましたとおり、いわゆる「特殊な労働関係下における労働災害の防止の徹底」というところでございますが、下請企業における親企業の無過失責任制の問題でございます。これはあわせて、こうした責任体制の所在、この点をどこまで明確に貫けるか、この辺が一番の焦点になると思うのでございますけれども……。
#359
○岡部説明員 ただいま御指摘の「事業者責任の明確化と安全衛生管理組織の確立」、それと特に重層下請等の関係があるところにおける元請事業責任者の責任の問題でございますが、これはまず安全衛生の確保の責任が事業経営者にあるというたてまえのもとに、その事業経営者の安全衛生管理の確保に対する責任が明確に分担されていくということをはっきりさせていく。したがいまして、たとえばある工場における安全衛生の経営サイドの責任者はだれになるのかということをはっきりさせるということにしてまいりたい。ただばく然と社長にあるというだけではこれは済まされない。最終的には経営の最高責任者にございましても、たとえばある工場における経営サイドの責任者はだれかということを明確にしておく必要があろう。そういうことから、この安全衛生確保の立場から、事業の経営者がどういう形で安全衛生の責任を持っていくのかということを明確にしてまいりたいということでございます。したがいまして、重層下請にある場合には、その下請関係にある事業の経営の責任者がその安全衛生についても責任を持っていくということを基本の体制としていくということをはっきりさせてまいりたい、こういうことでございます。
#360
○小沢(辰)委員長代理 古川君に申し上げますが、だんだん時間も切迫していますから、結論に入ってください。
#361
○古川(雅)委員 それにつきましては、「総括安全衛生管理者制度等の導入」というふうにうたっていらっしゃいますけれども、この点、職務内容あるいは資格区分については明確にしていくお考えでございますか。
#362
○岡部説明員 ただいま申し上げましたように、最終的に事業経営者に責任がございますが、現実にはその事業事業における安全管理の経営サイドの総括の責任者を明確にしていくということが必要であろう。そういうことで、いま申しました総括安全管理者というのは、経営サイドにおいての安全衛生に関する総括の責任者、こういうことにしてまいりたいと考えております。
#363
○古川(雅)委員 それから「危害防止基準の明確化と技術指針、快適基準の作成」という項目がございますが、いわゆる順守した場合、特典というものをお考えになっておるかどうか。これは後に安全衛生融資制度等をあげていらっしゃいますけれども、その他返還条件等で特典を与え得るものかどうか、それが一点。それから「危険な機械類あるいは有害物の事前規制の徹底」という項目がございますが、これはいわゆる有害物等を取り扱う事業所に対する規制を今後徐々に強めていくと思いますけれども、これとあわせて、いわゆる付近の住民の健康といった点についてもこの安全衛生法の立法準備にあたって検討されるお考えがあるかどうか。あわせて、先ほど放射線物質についての事故の例をあげましたけれども、これはこの法の中で安全対策をお考えになっていくことになるかどうか。その点非常に取り急ぎましたけれども、あわせてお伺いしておきたいと思います。
#364
○岡部説明員 第一の「危害防止基準の明確化と技術指針、快適基準の作成」、これはこの法律では従来どおりいわゆる最低基準の順守ということを明確にいたしますが、同時に具体的に安全衛生の確保をはかるための技術的な援助が必要になる。特に中小企業等におきましては、そういう問題が出てまいりますので、その場合には中小企業を特に重点といたしまして、技術的な援助を進めてまいる。その際、その技術的な指針に基づいてたとえば生産設備を改善するという場合に、その必要な資金がないというようなときには、安全衛生融資制度を活用してそれの裏づけをして、その設備改善に必要な資金源も援助をしていくというようなことを連係づけてやってまいることが効果があろうかと思いまして、そういう手法を取り入れてまいるつもりでおります。
 それから、危険な機械あるいは有害物の事前規制、これはここにございますように、ボイラー、クレーン等の特定の機械についてはすでに検査体制がございますが、さらにそれを製造段階のチェックを相当強化してまいる。それから有害物質につきましては、すでに特定化学物質等障害予防規則を出しましてやっておりますが、そういう方向でさらに具体的な数値を設けてこれを規制してまいるということにしていきたいと思います。
 なお、これと関連して放射線物質の問題につきましては、現在電離放射線障害防止規制がございますが、これを基本的にはこの有害物質の取り扱いの法体制の中に取り組んで、それの実施規則として考えてまいるというふうにしていきたいと思っております。
#365
○古川(雅)委員 非常に短時間に断片的にお伺いをいたしましたけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたとおり、今回労働省が非常な勇断をもって労働基準法にメスを入れるわけでありまして、それだけに他の官庁や企業、財界あたりから非常な反発を受けたり、そしてまた現在当局が意図していらっしゃる立法の趣旨にそぐわない、そうした法律案となってあらわれてくるのではないか、そういう不安が非常に強いものですから、以上いろいろお伺いした次第であります。
 労働災害の激増にかんがみまして、いずれにいたしましても生きた法律として労働災害の防止、激減に寄与する立法の準備がさらに積極的に進められることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
#366
○小沢(辰)委員長代理 古寺君。
#367
○古寺委員 労働大臣は朝からたいへんお疲れでございましょうが、あと一人でございますので、何ぶんひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
 最初にお尋ねしたいのは、ドル・ショックの影響で出かせぎ求人の取り消しが相次いでおります。東北地方におきましては、御承知のように、減反、休耕によりまして出かせぎの希望者が急増しているわけでございます。出かせぎによらなければ生活が成り立たない、こういうような方々もいらっしゃるわけでございますが、こういう季節労務者に対して労働省としては今後どういう対策をお考えになっているか、承りたいと思います。
#368
○原国務大臣 お尋ねのように、ドル・ショックに伴いまして来年度の新規学卒者に対する予約を取り消すことが非常にふえてまいりまして、現在五万人ぐらい取り消しがあるような実情でございます。
  〔小沢(辰)委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕
しかし、いわゆる求人倍率というのは非常に高くて五倍ぐらいになっておりますから、したがって、取り消しがありましても、失業のほうへは少なくとも――新規学卒者ではございませんが、いまお尋ねのそういう季節労務者等については、これからの採用、就職に若干の障害が生ずることが予想されます。いまお尋ねのように、それが出てしまってからでは非常に手落ちになりますので、そういうことも予測されますので、労働省におきましては十月一日から省内に臨時労働対策本部というのを設けまして、そういう季節労働者を含めた一般の労働対策に対して、新たなる事態に直面して万般の策を進めておる最中でございます。
#369
○古寺委員 労働大臣の構想としては、お考え方としては、こういう季節労務者、出かせぎ労務者に対する求人の条件が非常にきびしくなっており、また一方では求人数が非常に激減をしておりますが、こういう方々に対するいわゆる対策というものはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#370
○道正説明員 お答え申し上げます。
 出かせぎ関係につきまして、現在ドル・ショックの関係で問題があることは先生御指摘のとおりでございます。御承知のように、出かせぎの中にはいわば夏型――夏出かせぎに行かれる方と、これから冬出かせぎに出られる方とございます。夏型の方は、これはドル・ショック以前でございますので、出かせぎも終わりに近づくということでございますが、問題はこれから出てこられる冬型の方々でございます。いままで冬型の出かせぎにつきましては、建設業と製造業があるわけでございますが、労働条件等々は一般的に製造業のほうがいいわけでございまして、希望も多いわけでございます。建設関係はこれから景気浮揚策等も講ぜられますので、いままでと比べて著しく求人が減るというふうなことはおそらくないのではなかろうかというふうに考えられますが、問題は製造業関係でございます。
 御指摘のように、不況ムードであったところへドル・ショックでございますので、求人はかなり減っておるようでございます。東北地方等の例で申し上げますならば南の方、福島、山形あるいは宮城、秋田等で求人がいわば一ぱいになりまして、北のほうがどうも求人が来ないというふうな現象が起きております。それで現在、秋田県あるいは青森県当局とも連絡をいたしまして優良求人の開拓につとめ、少しでも条件のいいところへ出かせぎの方々が就労していただくように、現在鋭意検討を進めているところでございます。
#371
○古寺委員 いま大臣から新規卒業者の問題についてお話がございましたが、中卒の場合でございますけれども、求人の取り消しあるいは就職時期の繰り下げ等の問題が起こっているということを聞いております。特に青森県、岩手県、秋田県というのは、全国的に見ても、高校の進学率が最も低いわけでございます。さらにまた大学の今年度の進学率は二六・八%と聞いておりますが、高校の新規卒業者に対しても今後こういう問題が起こり得る可能性があるわけでございますけれども、これに対して労働省はどういうふうな見通しを持っておられるか、承りたいと思います。
#372
○道正説明員 御指摘のように、中卒、高卒につきましても、昨年に比べますると、求人はかなり減っております。しかしながら、全体として見ますならば、就職ができないというような事態にはなるまいというふうに考えられます。しかしながら、たとえばいままででございましたならば、親御さんのうちから、しかも条件のいい企業に就職ができたというような方々が、必ずしも理想的なあるいは期待しておったような労働条件の企業に就業できないというような事態が局所的に起きてくると思います。そういう点につきましては、学校当局あるいは職安等と連絡をいたしまして、極力御本人の希望に即したような職業紹介につとめるということで努力を重ねているところでございます。
#373
○古寺委員 それでは、具体的にはどういうような措置を現在講じておりますか。
#374
○道正説明員 具体的には先ほど申し上げましたようなことで、安定所あるいは学校当局も重大な関心を持っておりますし、あるいは県当局も重大な関心を持っておりまして、これは一人一人の職業紹介でございまして、きめのこまかい職業紹介に鋭意努力するということで、全国に課長会議等もやりまして指令をいたしております。
#375
○古寺委員 現在の職業紹介の内容というものは非常に満足のいくような状態ではないわけです。そこに持ってきてこういうような問題が急速に起きてきたわけでございますので、いま御答弁のあったようなわけにはいかぬ、こういうように考えられるのですが、これは後ほどまた触れることにいたしまして、出かせぎの方々の中で労働災害を受けながらも、下請企業あるいは孫請企業というのですか、こういう企業で働いているために責任の所在がはっきりしない、自分が医療費を負担しなければならないというような例がたくさんございますけれども、こういう点について今後救済策というのはどういうふうにお考えでしょうか。
#376
○岡部説明員 出かせぎの方が働いておられる事業で一番大きいのは建設業でございまして、建設業におきましては、ただいま御指摘のような重層下請等が常態になっておりますために、そこで働いてけがをされた方あるいはなくなられた方についての補償が十分でない。そこで、私どもは、労災保険につきましては、これは出かぜぎの方であろうと一般の方であろうと同一に労災保険のほうの適用になるわけでございまして、したがいまして、その補償については差別なく当然支給されるというようなことでございます。
 ただ、たまたま御指摘のように、下請業者が必ずしも十分把握されないとかあるいは下請業者との間の契約が明確でない等のために、支給について手続上いろいろ問題が起こるというようなことはございます。したがいまして、私どもは、まず出かせぎの方が入職するにあたって労働条件の明確化その他これをはっきりつかまえまして、災害等の起こった場合にその業者との関係があいまいなために補償が受けられないというような事態を事前に食いとめるという努力を最善にしてまいりたいというふうに考えております。
#377
○古寺委員 それはあくまでも就労者の側の立場で、いま御答弁があったと思うのですが、当然親元の企業がこういうような責任というものは負うべきものである、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
#378
○岡部説明員 その点につきましては、たとえば労災保険の保険料の納付等につきましては、明確に親元の、元請の企業が一括して責任をもってやるという体制で進めてまいる。したがいまして、支給にあたっても、そこに働く出かせぎ者と直接の企業との関係が必ずしも明確でない場合におきましては、当然親元までさかのぼってその責任が追及される、こういうことになろうかと思いますが、まず直接の雇用関係というのが前提になりますので、その辺の明確化を第一義に進めてまいる、こういうことに現実にはしてまいる必要があろうと考えます。
#379
○古寺委員 この十年間に労働災害によって死傷を受けた人が四百万人いる、こういうふうにいわれております。四十五年度一年間で見ましても百七十万人の方々が労災保険の給付を受けております。こういうことはまさに太平洋戦争にも匹敵するような膨大な数字であるというふうに私は考えるのですが、労働大臣はこの労働災害の防止というものを本気でおやりになるお考えを持っているのかどうか、承りたいと思います。
#380
○原国務大臣 産業の安全衛生は、さいぜんも申し上げたように、もうわが佐藤内閣においても至上の課題として受けとっております。過般アメリカに日米経済閣僚会議で行った際にも、向こうの労働省と日本の労働省で安全衛生について共同研究をやるというきめをいたしまして、コミュニケにもそれを述べております。それほど熱心に私どもはやっておりますし、閣議においても過般私はこれを取り上げて、いま申した年間百六十万、七十万の労働災害がある、交通災害は百万人である、こういうことも閣議で申し上げ、了承を得ております。
 さらに、この災害の防止は具体的にどうするか。それは一つは、安全衛生法を単独法として通常国会に提出いたします。もうちょっと明確に積極的に取り組む所存で、その単独法を提出する考えであります。
 第二は、これをふだんから取り締まりや監督をよくしませんと、口ばかりではだめでございますので、労働基準監督官をふやしたいと思っております。これは参議院においてもしばしばその要請がございまして、それでこの間も私も行政管理庁へ出向いて行政管理庁長官中村氏にお会いしまして、向こう五年間に千名を増員してもらいたいという要請をいたしました。行政管理庁長官も趣旨はよくわかったというところまで話がいっております。直ちに五年間で一千名になるか、あるいはどうなるか、これから予算折衝の時点において何回も訪問してこの了承を取りつけ、さらにこれは予算にも関係しますので、そのうちに大蔵省へも行って、この話をぜひ実現いたしたいと強く要請しておるところであります。
#381
○古寺委員 いまさら申し上げるまでもなく、四十七年の四月一日から労災保険と失業保険の五人未満の事業場の適用拡大に伴って労働保険料の徴収一元化の準備が行なわれることになっています。この徴収一元化によって業務量というものは非常に膨大になるわけです。中央職業安定審議会で、前の大臣の時代に千名の増員は必要である、また、以前に社会労働委員会においてもこういうことを言明していらっしゃいます。ところが、今日に至ってなおこの千名の増員というものは実現していないわけです。先ほども申し上げましたように、戦争を上回る死傷者を出しておきながら、しかも今後この徴収一元化によってますます増員が必要になるのに、なぜ今日までこの問題を放置してきたのか。これは大臣から御答弁願います。
#382
○原国務大臣 安定審議会でそういう増員をするということを事務的に言明したそうでございまして、私どもも決して忘れているわけでございませんので、行政管理庁長官にもそういう申し入れをいたし、懇談をいたし、その趣旨は賛成ということを取りつけまして、来年度も二百名――五年間で千名ですから、まず二百名増員の予算要求もいたしております。真剣に取り組んでこれを実現いたしたい、こう思っておる次第でございます。詳細は事務当局から説明させます。
#383
○道正説明員 ただいま大臣からお答えいたしましたとおり、徴収一元化の法案の御審議を安定審議会でお願いいたしました過程におきまして、事務的に一元化のために約千名の増員が必要になるであろうということを試算しました数字を申し上げた経緯がございます。しかしながら、今後の具体的な定員特に来年度の定員につきまして、一ぺんに千名の増員が要ることになるわけではございませんので、先般成立いたしました失業保険法、労災保険法の一部改正法案の附則にございますように、段階的に適用拡大していくわけでございます。
 一方徴収一元化、いままで方々に適用しておりました労働保険を統合いたしまして、一本にして取るというような事務の合理化、あるいは従来基準局系統におきましては、機械化が徹底いたしておりませんで、郵送等を行なっておりました、これもオンラインシステムを完成するとかそういう努力を一方で行ないながら、来年度から始まります適用拡大の実績等に見合いまして、必要な増員もあわせて要求してまいるという考えでございます。
#384
○古寺委員 五人未満事業の適用拡大によって、労災は百万から二百万、失業保険は六十四万から二百二十四万というふうに二倍、三倍半に事業場が拡大するというふうに予想されております。ところが、第二次公務員削減計画によって千九百八十九名の削減を行なうということを聞いております。こういう人員の増員もはからずに、一方では削減をしてどうしてこの労働保険の一元化というものを実現していくのか。労働大臣は日本のこういう労働行政については非常に前向きの姿勢で一生懸命災害防止でもなんでもおやりになるという先ほどお話がございました。しかし、現実問題としてこういう計画を見た場合に、はたして日本の労働行政というものが今後国民が期待しているような姿になり得るかどうかということは、これはまことに疑問でございます。とういう点について、青森県の例で申し上げますというと、七・五%の削減率でいきますと、九名が削減になることになっております。ところが、青森県は御承知のように、青函トンネルの工事、あるいはむつ小川原湖の開発等いろいろな問題がございます。さらに先ほど申し上げた出かせぎの問題、新規中卒、高卒者の就職の問題、そういうようないろいろな問題が累積をしております。さらに出かせぎ者の賃金不払いあるいは行くえ不明、新しい事態に即応した新規求人の開拓、いろいろな問題がございます。こういう場合に人員を削減してはたしてその労働者の方々のほんとうに願っている労働行政というものが実現できるかどうか、こういう点についてどういうお考えを基本的にお持ちになっているのかどうか。これは大臣から御答弁を願いたいと思います。
#385
○道正説明員 数字にわたる点もございますので、私から事務的に御説明申し上げまして、後ほど大臣にお答えいただきたいと思います。
 先生ただいま御指摘のように、来年四月一日以降、五人未満の零細企業につきましても失業保険、労災保険が全面的に適用になっていくわけでございます。その進め方につきましては、先ほどお答えいたしましたように、段階的にやるということもこれは法律で定められておるわけでございます。現在、労災保険法の適用事業所は百二十万ございます。それから失業保険が七十万でございます。今後五人未満に適用が拡大されますときに約百万の事業所が入ってまいります。これをほうっておきますと、百二十万プラス七十万に百万ふえますが、労災と失保別々でございますから二百万ふえるわけでございまして、たいへんなことになるわけでございます。しかるがゆえに徴収を一元化いたしまして、その間、事務の合理化、簡素化をはかっていこう、こういう趣旨で一元化法ができていることは御承知のとおりでございます。それにいたしましてもかなりの事務量になりますので、先ほどお答えいたしましたように、段階的に適用拡大してまいります過程におきまして必要な増員は要求をしていくということを考えております。
 そういう事態であるのに定員削減を受けるのはけしからぬ、こういう御指摘であったと思います。御指摘のように、八月十日に第二次の定員削減が閣議決定になりました。労働省関係といたしましては、ちょっとこまかくなりまして恐縮でございますが、千五百人余の削減がありまして、そのほかに第一次定員削減、四十六年で終わる三年間でやることがきまっておりましたものが実行不可能でございまして、これが残っているわけでございます。それが上積みされまして、先生先ほどおっしゃいましたような七%をこえる削減になったのでございます。この辺のところはわれわれといたしましては必ずしも満足しているわけではございません。ただ、八月十日の閣議決定の際に決定のされました中身といたしまして、各省庁の長は特別の事情があれば別途行管長官と協議をするという除外規定を閣議決定の中に一緒にいたしております。われわれといたしましては、できない定員削減はできません。そういうことで、閣議決定でございますから、今後その趣旨に沿いまして鋭意努力はいたしますけれども、組織維持上必要最小限度の新規の就職者を迎える必要がございます。そういうこともございまして、その辺は今後の実情に応じまして行管当局とも折衝いたしまして、業務遂行に支障のないように人員の面でも配意してまいりたいと考えている次第でございます。
#386
○原国務大臣 いま詳細数字にわたって官房長から御説明したとおりであります。私も労働者五人未満の事業所にいままで失業保険や労災保険が適用されていなかったのを新たに適用することになって、非常にすばらしいことだと思っております。
 ただ、問題になるのは、人員が滅ってこれを一元化するだけではうまく運営ができないであろうということが問題になってまいります。そこで、いま官房長から申しましたように、これは適当な理由があればこれを行政管理庁長官と相談して善処するというところまでは入っていなかったのですが、労働省でがんばってその一項目は申し合わせるようになっております。ですから、これから私自身もこの線についても交渉いたしまして、毎年段階的にこれも仕事がふえますから、人員も段階的に毎年若干ずつふやしてまいりたい。
 第二点は、もっと機械化やコンピューター等々を使うところをもって足らざるところを補って、御心配のないようにという考えであります。
#387
○古寺委員 大臣は閣議にも出席なさっておられたのでしょう、どうですか。
#388
○原国務大臣 そうです。
#389
○古寺委員 そうしますと、私が先ほど申し上げましたように、本気で大臣が日本の労働行政を前向きの姿勢でよくしようというお気持ちというものが具体的にあらわれておらない、そういうふうに私は思うわけです。たとえば、かりに一元化の問題で、機械化をいたしましてコンピューターを入れたとしても、地方はいままでと同じような人員が必要になるわけです。本省は確かに合理化されて非常に便利になるかもしれません。しかしながら、地方の実情というものは、いままでと何ら変わりがない。また地方の職安の実態を見ましても、あまりにも業務量が多くて病人がふえておる。こういうような、実情に沿ぐわないいわゆる削減計画というものを労働大臣が了承したということは、本気でやる気がないとしか考えられないわけです。また、やる気があったとしても、それだけの人員がなければ、これは十二分にやれないわけです。そういう面について、きょうは時間がございませんが、大臣のほんとうの決意というものをきょうはお聞かせを願いたい、こう思うわけです。
#390
○原国務大臣 行政上支障を来たすことのないよう、いまお説もございましたので、行政管理庁長官ともあらためてこれを折衝するし、また機械の使えるものは使うし、青森県等においてもそういう人員の不足によって支障を来たすことのないよう、さらに検討を進め、善処いたしたいと思います。
#391
○古寺委員 以上で終わります。
#392
○増岡委員長代理 次回は、明十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
   午後八時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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