1971/10/12 第66回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第066回国会 社会労働委員会 第7号
#1
第066回国会 社会労働委員会 第7号昭和四十六年十月十二日(火曜日)
午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 小沢 辰男君 理事 澁谷 直藏君
理事 谷垣 專一君 理事 増岡 博之君
理事 田邊 誠君 理事 大橋 敏雄君
理事 田畑 金光君
秋田 大助君 梶山 静六君
小金 義照君 田川 誠一君
橋本龍太郎君 向山 一人君
渡部 恒三君 大原 亨君
川俣健二郎君 小林 進君
島本 虎三君 山本 政弘君
古寺 宏君 古川 雅司君
西田 八郎君 寺前 巖君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 斎藤 昇君
委員外の出席者
環境庁水質保全
局長 岡安 誠君
大蔵省主計局主
計官 渡部 周治君
大蔵省理財局資
金課長 福島 量一君
文部省初等中等
教育局特殊教育
課長 寒川 英希君
文部省大学学術
局大学病院課長 甲斐 安夫君
厚生政務次官 登坂重次郎君
厚生大臣官房長 高木 玄君
厚生大臣官房企
画室長 柳瀬 孝吉君
厚生省公衆衛生
局長 滝沢 正君
厚生省環境衛生
局長 浦田 純一君
厚生省医務局長 松尾 正雄君
厚生省薬務局長 武藤g一郎君
厚生省社会局長 加藤 威二君
厚生省児童家庭
局長 松下 廉蔵君
厚生省保険局長 戸澤 政方君
厚生省年金局長 北川 力夫君
厚生省援護局長 中村 一成君
水産庁次長 藤村 弘毅君
通商産業省公害
保安局長 久良知章悟君
通商産業省公害
保安局公害防止
指導課長 根岸 正男君
海上保安庁警備
救難部長 貞広 豊君
労働省労政局福
祉共済課長 金丸 明君
建設省都市局下
水道部長 久保 赳君
社会労働委員会
調査室長 濱中雄太郎君
―――――――――――――
委員の異動
十月十二日
辞任 補欠選任
八木 昇君 大原 亨君
同日
辞任 補欠選任
大原 亨君 八木 昇君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
厚生関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
#2
○森山委員長 これより会議を開きます。厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出があります。これを許します。橋本龍太郎君。
#3
○橋本(龍)委員 明年度の予算編成を控えて八月末厚生省から大蔵省に提出された概算要求を中心にして、厚生省の来年度予算編成についての考え方、また、その中身等について質問をいたします。持ち時間が限られておりますので、できるだけ簡潔に御答弁を願います。まず最初にお尋ねをしたいのは、今回提出をされた概算要求を貫く厚生省としての基本的な考え方についてであります。また、その中の重点の置き方についてであります。いまさら私から申し上げるまでもなく、この概算要求提出後いわゆるドル・ショック等の問題から状況不況といわれるような状態を招き、現在いかにして景気浮揚を策するかということが真剣に議論をされております。そうした情勢の中で、はたして厚生省としては、今回提出をされておる概算要求、その主要な柱について考え方を改める必要はないのか。ドル・ショック等が予測されていなかった時点においてまとめられた考え方をそのままに踏襲していくことで問題はないのかどうか、その点が私の疑問とする最初のものであります。
今後、経済情勢は相当微妙な動向を示すことが予測されています。ことに、こうした状況の中で、従来往々にして景気不況の中でその刺激を策する場合には、公共事業費関係に対する重点投資という考え方が打ち出され、戦後約二十六年間という長い期間の不況切り抜けの方策とされてきました。現在の状況の中で、けさの新聞等にも一部報ぜられております臨時国会に提出予定の補正予算の中にも、景気浮揚策としての中心は、一つは減税策、一つは公共事業という考え方のようであります。この公共事業重点という考え方をとっていった場合に、はたして厚生省の社会保障予算を編成していく上においてどのような影響が出てくるか、これらの点は私どもとしても真剣に考えなければなりません。もし景気刺激の一手法としての公共事業費関係への重点投資策を政府が採用されるならば、わが国の社会保障また社会福祉関係の充実に相当大きな影響を及ぼすことも考えられます。そうした中でもし政府全体の姿勢というものが公共事業に重点を置き始めた場合、厚生省としてはどのような考え方をとっていかれるおつもりか。私はこうした点をまず最初にお尋ねをし、同時に、来年度予算編成における主要な厚生省の施策についてその概要説明を聞き、自後の質問を続行したいと思います。登坂次官からそれらの点について厚生省の基本的な考え方をお示しをいただきたい。
#4
○登坂説明員 橋本さんにお答え申し上げます。お説のとおり、はからずもドル・ショックという異常な経済変動下におきまして、国民のひとしく憂うるところは同じであろうかと存じます。そこで、厚生省といたしましては、来年度の予算においては、今日まで日本の経済発展に伴っておくれているのは社会資本の不足であるということはもう通例になっております。そういうことでありまするから、厚生省の見地からするなれば、社会福祉関係における公共投資の充実 こういうことを前提にして来年度の予算を編成いたしたわけでございます。特に重点施策におきましては老人対策、幼児対策あるいは難病奇病等そういう不治の病の方々に対する配慮、及び国民皆保険のもとにおける医療の充実、それから国民生活環境の充実等々に予算の重点施策を置いたのであります。
しかるところ、このたびのドル・ショックにおいてそういう施策に変更を加える必要があるかどうかということは、これは当然われわれとしても考えざるを得ないところでございます。今日までの景気対策というのはおもに公共事業関係に重点を置いた施策になっておりまするが、われわれといたしましては、社会福祉事業も、減税やあるいはその他の公共事業によって景気が刺激される反面、物価高とかあるいは生活力のひよわい点にそのひずみがきてはならない、こう思うわけでございます。そこで来年度の予算の編成にあたりまして、施行期日を十月からとかあるいは何月からというような、若干規制がありまするが、そういう方面についても、なるべく早期に繰り上げて実施するというようなことも考えなければいけないと思うのでありまするが、とりわけこのたび追加予算といたしまして二百十三億ほど、社会福祉施設の緊急整備を中心とした予算を追加計上いたしまして社会資本の福祉事業関係の充実に当たったわけでございます。今後とも御趣旨に沿ったような点は十分配慮しながら善処してまいりたいと思います。
#5
○橋本(龍)委員 次官、もう一度確認をさせていただきますが、そうしますと、明年度予算編成時において、現在提出をしておられる概算要求の主要な柱について、その限りにおいては厚生省としては変更の必要はない、従来から国民福祉というものに中心を置いて概算要求をしてきておるので、このドル・ショック以後の状況不況の中においても、政策的な柱において変更する必要はないというふうに受けとめてよろしいか。#6
○登坂説明員 ただいまのところ追加予算をもってなすべきものは二百十三億、緊急整備の社会福祉事業の公共事業関係についてとりあえず補足いたしました。なおまた、来年度の予算についていわゆる社会保障、老齢福祉年金とかその他の年金についてまた考えられるものがあれば考えたい、こう思うわけでございまするが、いまのところ厚生省といたしましては、特別にさしあたり早急にしなければならないとは考えていませんが、今後の推移を見守って善処したい、こう思うわけでございます。#7
○橋本(龍)委員 私は率直に申し上げまして、今回の景気浮揚策として補正予算に盛り込まれるであろうといわれている中間管理職層の所得を中心とした所得減税及び公共事業費の増大による浮揚効果という、従来からとり続けてきた景気浮揚策というものに今日の時点において疑問を持っております。そうした点からいきますと、いま年金の増額分の繰り上げ支給等考え得るものがあればという政務次官の御答弁であります。それはそれとして私も拝聴させていただきます。そうしますと、現在概算要求に盛り込まれておるものの一部に、あるいは予算編成時における厚生、大蔵両省の折衝の中において一部変更を加えられるものがあるかもしれない。それは内容そのものではなく、実施月の繰り上げによる変更であるというようにただいまのお答えはちょうだいをいたしました。そうしますと、次にお尋ねをしたいことは、本年十月八日に国民年金審議会の有澤会長から厚生大臣あてに提出をされました意見書、またそれを受けて、先般来新聞に報ぜられている一連の厚生省の行政姿勢についてお答えをいただきたいと思うのであります。この意見書の中には、「現下の経済状勢にかんがみ、政府は、所得税の早期減税を実行しようとしている。しかしながら、この措置によって恩恵を受けない多数の国民があるので、福祉年金増額の早期実施をはじめ社会保障の面においても有効適切な施策を講ぜられるよう要望する。」とされております。いまの御答弁の趣旨も確かにこれに沿ったものでありましょう。
昨日の読売新聞にこのような記事が出されておりました。一部補正関連の論議でありますが、見出しを「福祉年金を大幅増 厚相折衝へ 低所得者対策優先」という見出しのもとに、「ドル・ショックによる深刻な国内経済を打開するため、景気浮揚策として社会資本の充実、大幅減税の声があがっているが、斎藤厚相は「このさい社会福祉最優先の姿勢を強めるべきだ」と決意し、当面の社会福祉施策について、具体案づくりを事務当局に指示した。厚相は「減税より低所得者対策」の立場にたち――福祉年金増額の繰り上げ実施2生活保護費、世帯更生資金の大幅増額――などを実現させれば、景気浮揚対策にもつながるとしている。」という書き出しであります。
私ははっきり申し上げまして、補正予算の中で生活保護費とか世帯更生資金の増額というものが行なわれることが実際に即した対策であるかどうかには多少疑問を持ちます。しかし、福祉年金増額の繰り上げ実施というのは非常にこれは国民にも大きな関心を呼ぶものであろうと思います。所得減税というものは確かに国税負担層以上の国民にとっては一つの恩典であります。しかし、国税負担層以下の所得の方々に対しましては、これは何らの影響を持たない。また、公共事業費の増大による各種工事の即時実施といったようなものも、国税負担層以下の国民の所得に直接結びつくケースというものは比較的少ないわけでありまして、むしろその関連の企業、またその関連企業に直接雇用されている人々の生活安定の上には役に立つにしても、国民全体に与える景気浮揚策としてば第二義、第三義的なものでございます。その中で福祉年金増額の繰り上げ実施というような考え方を厚生省がとられるということであれば、これは私どもとしても非常に関心の強く寄せたい部分でありますし、また考え方としても支持をいたしたい部分であります。おそらく補正関連論議とはいいながら、実施月度、支給月度から見て、本年度の補正予算の中に金額を直接盛り込むべき必要はない。しかし、実質国民全体に与える影響というものはきわめて大きい一つの新しい考え方でありましょう。
この記事の中にも「現在のような経済情勢のときこそ“守りの社会保障”から“攻めの社会保障”へ、行政方針を変えるべきだ」という意見、こうした考え方が厚生省の中にも強まっておるというふうに書かれています。去る八日には総理が、第八回生命保険大会の席上において、国内景気に深刻な影響が心配されているが、その中において国民福祉を最優先させるという意見を強調されました。また、首相の諮問機関である経済審議会の木川田会長からも「当面の重大事態に際しての会長談話」というものが発表され、社会資本の充実というものを主張されている。こうした状況を受けて、厚生省としては各種福祉年金の繰り上げ支給あるいは増額の繰り上げ実施といったようなものを真剣に打ち出されるおつもりがあるのかどうか、これを私はぜひこの際確認をしておきたいと思います。
これは国民の中に相当大きな反響を呼ぶでありましょう。母子の方に対しても、お年寄りに対しても、あるいはからだの障害に悩まれている方々に対しても、これは大きな恩典であります。厚生省がこうした姿勢を貫いていかれるならば、おそらく与野党を問わず国会においても厚生省の姿勢をバックアップするに何ら異論はないと思う。こうした点について次官から厚生省としての態度を明確にしていただき、それによって今後私どもも厚生省のその努力というものを助けてまいりたいと考えます。いかがですか。
#8
○登坂説明員 橋本さんにお答えいたします。まことに現在の景気対策、そういうものに対しましてお説のとおりと思います。今日政府の経済見通しなり今後の財政全般の施策に即応した態度を、経済企画庁においてもただいま再検討に入ったと聞いております。まだ具体的な結論を得ておりませんが、これは財政措置とも関連のあることでございますから、厚生省としてはいずれの事態においても前向きに検討しなければならない、こう思っておる次第でございます。
#9
○橋本(龍)委員 いまの姿勢を厚生省として将来ともにとり続けることを期待します。関連して明年度の財政投融資についての厚生省の考え方についてこの際明らかにしておいていただきたい。
#10
○登坂説明員 お答えいたします。来年度の財政投融資につきましては、やはりおくれた社会資本の充実を早急にしなければならないという見地から、社会福祉資本の早急の整備、いわゆる五カ年計画なりその他いろいろ老人対策、幼児対策あるいは医療機関の整備充実あるいは環境整備のごみ処理の問題等を含め、水道財源確保あるいは医療センター、各種社会事業関係について大幅な財政投融資を考えて、約八千億以上の予算をただいま大蔵省に要求中でございます。いずれにいたしましても、一般財源だけではなかなかできませんので、そのむずかしい問題は、財政投融資のほうでできるだけひとつ厚生省の社会福祉関係の事業に対して充足して早急の整備をはかりたい、こう考えておる次第でございます。
#11
○橋本(龍)委員 大蔵省御出身の登坂次官の御努力に待つところが非常に大だと思いますけれども、どうか財投原資においても十分な仕事のできる体制をおつくりいただきたい。特にお願いを申し上げておきます。いまお話の中にも触れられましたが、来年度の大きな厚生行政の一つの柱として老人対策というものをあげられました。老人対策を大きく打ち出す、これははなはだけっこうなことであり、また必要なことでもあります。そうしますと、その老人対策の中に、大きく考えて柱として二つのものが考えられる。一つはお年寄りに対する医療の確保であり、一つはお年寄りに対する生活保障あるいはお年番りに対する経済的なささえのものであります。そうしますと、その老人対策という一つの大きな厚生省の柱の中で、たとえば老齢福祉年金の改善については一体どのように考えておられるのか。また、その将来についてはどのような見通しを持っておられるのか。また、時間の関係がありますからまとめてお尋ねいたしますけれども、老人医療の無料化、公費負担ということが非常に強く叫ばれております。その老人医療の無料化についての具体的な考え方、その方法というものをお示しをいただきたい。
同時に、現在各都道府県あるいは各市町村で自発的にすでに老人医療の無料化、老人医療の公費負担という制度を発足をさせております。その内容にはそれぞれ相当な格差があります。いずれにしても相当な勢いでむしろ自治体が今日まで先行している。厚生省として案をまとめられて老人医療の無料化を発足させた際、たとえば年齢あるいはその他の要因において、自治体においてすでに実施をされている案が厚生省においてつくられた案よりも先行している場合、前進している場合には、厚生省としてはどのような態度をおとりになるのか、これが一つの問題点であります。全国一律に厚生省としての考え方を強制をされて、自治体がそれ以上に自分のところの財政努力等によって先行したものをつくっている場合に、それをレベルを下げさせても一律化する、あるいは厚生省としてしいていかれようとするその老人医療無料化の方向の上に、さらに自治体としての努力が重なった場合には、それはそれとして許容されるのか、この点をぜひ明らかにしていただきたい。同時に、この老人医療の公費負担あるいは無料化というものを、それこそ大きな懸案になっております医療保険の抜本改正の中にいかに位置づけていかれるおつもりなのか、医療保険制度との関連はどうなっているのか、これらの点についてまとめてお答えをいただきたい。
#12
○登坂説明員 お答えいたします。老人福祉の問題については、国民ひとしく重大関心事でお説のとおりであります。私どもの老人対策についての基本的な考え方は、まず経済的な問題と一つは医療の問題、こう二つに分かれるかと存じます。
まず経済的な問題及び環境の問題については、このごろ核家族といわれまして、老人に対する経済的援助というものは、わが子でもなかなかできない、こういう現状でありまするから、できる限り老人には経済的な不安を与えない、こういう方向で処理したい、こう思う次第でございます。
その点で来年度の予算におきましては、本年度は二千三団円月額、御承知のとおりでございますが、来年度は千三百円アップいたしまして三千六百円、また漸次増額いたしまして五千円までの目標を急ぎたい、こう思っておるわけでございます。なお、老人の生活環境についても、さびしがられないように、あるいは生活の光明を失わないような老人ホームとか、老人の環境を明るくするような施設を増強したい、こう思って、ただいま整備を急いでおるわけでございます。
次に、お尋ねの医療の問題でございまするが、医療の問題については、今日自治体で積極的に老人医療の無料化を、七十歳以上あるいは七十五歳以上あるいは六十五歳以上等、いろいろ各自治団体によって差があるようでありまするが、政府といたしましては、来年度はとりあえず七十歳以上の老人医療の無料化を念願いたしておりまして、ただいま予算を汁上中であります。
そこで、その医療の支給の方法でありまするが、これを抜本改正に加えて老人医療体系というものを別建てにするか、あるいは現在の国民健康保険の七割給付にプラス三割を公費負担にするか、こういうことで議論がありまするが、とりあえずは公費負担三割、そして保険にプラスいたしまして老人医療の無料化をはかりたい、かように考えておる次第でございます。
#13
○橋本(龍)委員 いまの自治体が国の行政施策よりも先行していた場合、これはどうお取り扱いになりますか。#14
○登坂説明員 自治体の一部にはあるいは先行した六十五歳以上の老人に対する医療の問題等もあるやに聞き及んでおりますが、政府といたしましては、大多数この七十歳以上の老人医療の無料化ということを念願いたしておりまして、その自治体の進んでいる方々のいままでの施策に対しましては、自治体の御方針におまかせすることで、政府といたしましては、大多数が七十歳で全員これに各地区とも全県下において吸収されるものと思いまして、そういう自治体の進んでいるものは自治体の従来の御方針におまかせ申し上げたい、かように存じております。#15
○橋本(龍)委員 つまり、国の老人医療の公費化、無料化の方針以上に自治体の施策が進んでいる場合には、その上積みは認めていくお考えと理解いたします。そういたしますと、もう一つの問題点があります。現在、いま次官のお答えにもありました核家族化等の影響から、いわゆるひとり暮らし老人というものが非常にふえている。あるいはまた寝たきり老人等も非常に大きな問題になってきております。そうしますと、こうしたお年寄りを受け入れていくいわゆる老人福祉施設の整備というものがもう一つの大きな老人対策の柱にならなければなりません。この場合に、必ずしも老人福祉施設ばかりとは申しませんが、厚生省としては社会福祉施設の整備に関しての長期目標というものをどのように立てておられるのか、そして、その中で来年度末までにどの程度整備をされる御予定か、これを明らかにしていただきたいと思うのであります。ただ、先ほどの補正予算論議の中にもありましたように、建物をつくる、施設をつくること自体は金の問題であります。必ずしもそれほど大きな苦労は必要といたしません。しかし、こうした施設には絶対に欠くことができないものが実は優秀な職員の確保ということであります。今日、相当多くの民間社会福祉施設にわが国の福祉行政というものはその一部をゆだねております。本来国が全部を行なうのが望ましいというような意見もあります。しかし、私は必ずしも福祉施策というもの、また福祉施設というものの運営を、全部国があるいは自治体が行なうことがべストであるとは思わない。民間の有志の方々によるあたたかい愛情を持った、規格化されない福祉施設というものの意義は十分認めてまいりますが、そうした民間社会福祉施設等の状況を見てまいりましても、職員の確保ということが一つの大きなネックになって、せっかくの建物が十分に活用されていないケースが多分にあるわけであります。
その優秀な職員の確保を行なう上に支障を来たしている最大の問題は、現在の福祉施設につとめておられる職員に対する処遇の問題であります。言いかえれば、社会福祉施設を整備していくということは、それに伴って優秀な職員の確保が行なわれなければならない。優秀な職員の確保を行なうためには、現在の社会福祉施設に働いている人々の処遇を改善しなければなりません。その処遇改善というものが一つの前提にならなければならぬわけでありますけれども、その中で特に民間社会福祉施設の場合には、いわゆる定期昇給財源をどのように確保してやるかというのが一つの大きな問題点であります。この社会福祉施設の整備に伴って、定期昇給財源というものを厚生省は予算化していかれる御意思はあるのか、また、あるとすればどの程度のものを考えておられるのか、この点を明らかにしていただきたい。
同時に、現在の老人医療の無料化等、老人対策というものを大きく打ち出していった場合には、現在の特別養護老人ホーム等の充足状況、これは決して十分に対処できるものであるとは私どもには思えない。また、国公立病院の整備状況の中で、老人に対するベッドの確保、こうしたものもきわめて多くの問題があるように思います。こうした老人福祉施設あるいは国公立病院におけるベッドの確保、こうした点での充足状況というものはどの程度に現状を把握しておられるか、また、将来に対してどういう考慮を払っておられるか、十分な考慮が払われているかどうか、それらの点についてまとめてお答えをいただきたい。
#16
○登坂説明員 お答えいたします。まことに老人問題、これは緊急に整備しなければならない、こう厚生省としては前向きに考えております。特に整備計画については五カ年計画を実施中でございまして、その五カ年内には全部を完了したい、昭和五十年度を目途といたしております。
なおかつ、施設で働く人、お説のとおり私もいままで社会事業というのは奉仕の精神だとかいって一般社会に甘えていたような感じがいたしまするが、今日、社会政策上これは当然の政府の責任において、そういういままでの考え方、いわゆる奉仕の精神に甘えるというようなことがあってはいけない。積極的にこれは政府の責任において、そういう施設で働く方々に対しましては給与体系も十分考えなければならない、こう存じておりまして、来年度予算においては、定期昇給分を二・一%ぐらいかと思いましたが、財源措置を考えておりまして、従来つまみ金で考えておりましたいわゆる不安定な給与体系をここに確立したいと思って踏み出したわけでございます。なお、こまかい事務的な問題は事務当局から答えさしてもよろしゅうございます。
以上、お答えいたします。
#17
○加藤説明員 職員の給与改善につきましては、ただいま政務次官から申し上げましたように、来年度の予算要求の私ども社会局における最重点的な項目の一つというぐあいに考えております。それで社会福祉施設に働く職員の職務の特殊性というものに着目いたしまして、その特殊性にふさわしい給与の引き上げを行なっていきたいというのが第一のねらいでございます。そのほか、国家公務員等に比べまして、中堅職員の給与が非常に低いという実態もございますので、中堅職員の給与を特に引き上げていくという点、それから御指摘の定期昇給財源、定期昇給についても、これも社会福祉施設に働く職員の非常に昔からの強い要望でございまして、いろいろむずかしい点はございますけれども、来年度はぜひその実現のために強力に大蔵省と折衝してまいりたいと思います。大体二%程度でございますが、財源としては約十九億を要求いたしておるわけでございます。それから、老人医療を実施いたしますについての受け入れ施設につきましては、これは一つは医務局のほうでございますが、老人用のたとえば精神病棟、あるいは老人の機能回復訓練のためのリハビリテーション施設というようなものにつきまして、医務局のほうでできるだけ整備をしてもらうということと同時に、社会局といたしましては、特別養護老人ホームの重点的な整備ということを、今後の施設整備五カ年計画のうちでも特に特別養護老人ホームについて重点的に整備をしていくということによりまして、老人医療の無料化と相まってその受け入れ体制の万全を期してまいりたいというぐあいに考えております。
#18
○橋本(龍)委員 昨年、本委員会において超党派で心身障害者対策基本法が制定をされ、すでに一年以上の時日が経過いたしました。その成果というものは来年度予算の要求内容の中にどのように反映されているのか、これをぜひこの機会に明らかにしていただきたい。同時に、これはむしろ厚生省以外、たとえば労働省等、他省のほうが問題が多いのでありますけれども、この基本法の趣旨に照らした場合、現行の法体系の中で、基本法の趣旨に必ずしも沿わないものが相当数あるはずであります。厚生省所管の中を洗っていっても、あるいは児童福祉法、身障者福祉法、精薄者福祉法、老人福祉法、母子保健法はじめ各法律を洗っていきますと、必ずしもこの基本法と合致しない部分があるはずであります。また、おとなと子供に対する施策の食い違い等の問題点もあるはずであります。私は寡聞にして、この基本法が制定されて以来今日まで、この基本法の内容にのっとって関係諸法律が改正をされたという事例を聞きません。厚生省所管の法律に、基本法の成立によって改正を要するものがなければこれは幸いであります。もしあるとするならば、今後一体どのようにその改正の作業を実施されていくおつもりなのか、これはぜひこの機会に明らかにしていただきたい。
従来、ややもすると行政当局は議員立法というものにあまり重きを置かず、政府提出案件というものに考え方の中心を置いていたきらいがあります。そうしてその結果、いろいろな問題点も出てきたことも、例を拾うなら枚挙にいとまがありません。この心身障害者対策基本法というものが本委員会を中心として超党派で生み出されて一年以上の日時を経過して、今日までの間に、この基本法にのっとっての法改正というものが行なわれた形跡を見ないということは、私は、院の立場としてきわめて遺憾に思います。もしそうした訂正を必要とする法律がなければ幸いであります。あるならば、今後どういうふうにしてその改正の手順をお進めになるおつもりか。
#19
○登坂説明員 お尋ねの心身障害児、これは最も不幸な気の毒な病状でございまして、これは早急にやらなければならない。従来厚生省の中においても、重点施策として重度心身障害児対策を推し進めておるわけでございます。予防あるいはリハビリテーションあるいは医療関係、そういうものについて、十分とは言いませんけれども、従来の整備をますます充実させなければいけないという考え方で現在施行しておるわけでございますが、障害児の中にはいろいろの病名あるいはいろいろのケースが複雑多岐で、ほんとうに日夜困難をきわめておる病状を救うためにはまだまだ足りない、こう思っております。来年度の予算に対しましても、重度心身障害児に対しましては、難病奇病の中の一つに入れまして、相当に予算の配慮をいたした所存でございます。またその事務的な問題については関係各局長から説明させます。#20
○加藤説明員 身体障害者対策、これは障害児も含めまして、来年度では一応約七十八億の予算要求をいたしたいというぐあいに考えております。特に社会局関係といたしましては、先生御承知のように、じん臓の機能障害者に対する人工透析医療、こういうものに更生医療の中で取り組んでいこうという考え方でございます。こういう考え方は、やはり先生御指摘の心身障害者対策基本法の精神を受け継いで身体障害者福祉法を充実していこうという対策の一つでございます。そのほか、たとえば重度身体障害者の福祉対策といたしまして、いわゆる療護施設という、寝たきりの身体障害者を終身めんどうを見るというような施設、こういう施設の運営を来年度から開始をいたしたいというぐあいに考えております。その他いろいろございます。それから重度身体障害者のその他のいろんな福祉施設の整備ということもあわせて行なってまいりたいというぐあいに考えております。先生の御指摘のもう一つの問題点といたしまして、心身障害者対策基本法ができて、その後身体障害者福祉法とかその他の法律の改正というものが全然ないではないかという御指摘でございますが、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、たとえば人工じん臓を更生医療に取り入れていくという場合には、私どもといたしましては、やはり身体障害者福祉法の改正が必要だと思います。私どもはそういう改正を次の通常国会に出す用意をいたしております。そのほか、先ほども申し上げましたように、療護施設、寝たきりの身体障害者を死ぬまでめんどうを見るという療護施設という考え方も、現在の身体障害者福祉法にのっとります施設の中にはないわけでございます。こういうものも身体障害者福祉法の中に取り入れていくという改正をあわせてやっていきたいというぐあいに考えておりますので、私どもといたしましては、この次の通常国会には、いま先生の御指摘のような心身障害者対策基本法を受けまして、それに必要な改正を身体障害者福祉法の改正という形で持っていきたいというぐあいに考えております。
#21
○松下説明員 ただいまの心身障害関係、総括的にはいま社会局長から申し上げたとおりでございますが、児童家庭局の所管いたします心身障害児、それから精神薄弱者の施策につきまして御説明申し上げます。心身障害児対策といたしましては、まずそういう人たちができるだけ発生しないようにするという意味での発生予防、早期治療対策、それから在宅の心身障害児の対策、それから施設の増強、その三つの柱を立てまして来年度施策を伸ばしてまいりたいという考え方でございます。
発生予防、早期治療対策につきましては、まず発生防止に関する諸般の研究費、これの大幅な増額をいたしたい、そういうことが一点。それから、代謝異常の児童に対する養育医療の給付をいたしておりますその人員の増でありますとか、あるいは、いま社会局長から御説明がありました点と平仄を合わせる育成医療に関して、後天性の心臓障害あるいは人工じん臓による透析、そういうものを児童についても新たに行なうということ、あるいは補装具の交付、そういったものを考えておるわけでございます。
それから、二番目の在宅心身障害児の対策といたしましては、心身障害児の小規模通園事業を行なう、あるいは在宅の重度の障害児に対する宿泊訓練を行なう、あるいはまた用具の給付を行なう、そういったこと。それから、大きな問題といたしまして、これは障害年金と軌を一にするものでございますが、特別児童扶養手当の額を増額いたしますと同時に、障害範囲を拡大いたしまして、障害福祉年金と同じ範囲のものに給付できるようにいたしたい、そういったことを考えておるわけでございます。
施設対策といたしましては、先ほど社会局長から総括的に御説明申し上げましたとおりでございますので、省略させていただきます。
以上申し上げましたような点を加えまして、児童の医療関係につきましても、じん炎、ネフローゼ等の治療も公費で行なえるようにいたしたい。また、心身障害児のうちで特に問題になっておりますいわゆる動く重症児に対する対策も講じてまいりたい、そういうような幅広い施策を考えております。
なお、基本法との関係におきます法律改正につきましては、御案内のように、児童福祉法はきわめて幅の広い守備範囲を持っておる法律でございまして、相当のところまでは予算の増額によりまして行政措置をもって行ない得る部面もございます。対策の内容と法律の内容とをにらみ合わせまして今後必要な改正を加えてまいりたい。また、いま申し上げました特別児童扶養手当につきましては、この対策が行なわれます場合には、当然基本法に沿った改正が必要になるわけでございます。
#22
○橋本(龍)委員 環境衛生局長、多少こまかい問題になりますので、環境衛生局長から御答弁を願いたいと思います。環境庁が発足をし、公害対策全般については、環境庁が一元的に行政を行なうことになっておりますものの、厚生省としては、国民の健康を預かる立場から、むろんこれに積極的に協力はしてもらわなければならぬ。しかし、その協力をするだけではなくて、生活環境の改善というもの自体は、依然として厚生省は真剣に取り組んでいただかなければならない、従来以上に大切な問題であります。今日、環境衛生局として、生活環境の整備についておそらく一応の具体案をお持ちであろうと思う。その具体的な構想をこの機会に述べてもらいたい。特に、その中で、激増している廃棄物関係の処理についての長期的な見通しと対策を明らかにしていただきたい。
廃棄物と一般にいいましても、いわゆる産業廃棄物として扱われる一連のもの、あるいは粗大ごみ、生活廃棄物、種々のものがありますが、その中で一番大きく今日問題になりつつあるのがプラスチック関係であります。そのプラスチック関係の中でも、完全に炉の整備等が行なわれれば何ら問題を起こさずに焼却することのできるポリエチレン系統のもの、ポリスチレン系統のもの、どれだけ炉の構造を改善しても決して生活環境のプラスにならない有機塩素系のガスを発生する塩化ビニールのようなもの、いわゆるプラスチックの中にも多様な種類がある。こうしたものについて今後どのような処理の構想を持っておられるのか、この点を明らかにしていただきたい。
#23
○浦田説明員 環境庁が発足いたしましてから、公害の直接的な行政は環境庁に一元化されたわけでございますが、厚生省といたしましては、国民の健康を預かる立場から、これに積極的に協力することはもちろんでございますが、御指摘のように、ことに所管の生活環境施設の改善につきましては、従前以上に努力してまいりたいと考えております。この具体的な対策の進め方といたしましては、そのうち、まず廃棄物関係でございますが、これは御案内のように、昨年末の臨時国会におきまして、従来の清掃法を全面的に改正いたしまして、廃棄物の処理及び清掃に関する法律というふうに改め、この九月二十四日にはその政省令も制定されまして実施される段階になったわけでございます。私どもはこれを根拠といたしまして、従来取り上げてなかった産業廃棄物につきましても事業者の責任というものを明定いたし、さらに廃棄物の実態の変遷に伴いまして、従来市町村単位でもって処理されておりました清掃行政につきましても、都道府県が関与いたしまして、都道府県の範囲内におきましてその処理体制、計画を立て、おのおの事業者あるいは市町村、地方自治体といったものがそれぞれの責任範囲において全体の廃棄物の処理に当たるということにしたわけでございますが、これらを遂行するために、従来ございました五カ年計画をさらに改めまして、長期計画をもって当たりたいと考えております。
そのうち、産業廃棄物につきましては、その中には都市施設から出るものも含まれておりますので、これらに対する施設の年次的な計画、整備を進めてまいりたい。また、一般家庭ごみとして、従来市町村でもって行なわれておりますごみの処理につきましては、御指摘のプラスチック等の増量に伴いましていろいろと設備の高度化が要望されておりますので、これに対応するための付加的な能力の整備、それから御指摘の、場合によりましては燃焼の過程で生じまする種々の有害物の除去施設、こういったものについての整備をはかってまいりたいということで、いま、来年度の予算要求を踏まえまして、今年度の実績は、ごみにつきましては十七億余でございましたけれども、数倍の予算を要求し、年次的に計画を進めてまいりたいと考えております。
それから、水道につきましても、ただいま生活環境審議会のほうに水道の将来計画というものについて諮問いたしまして、これらにつきましても年次的に長期計画を立てて対処してまいりたいと考えております。
#24
○橋本(龍)委員 なおこまかく聞きたい点がありますけれども、あと二十五分しかなくなりましたので、その部分は後日に譲ります。先ほど政務次官の御答弁の中に、厚生省として、来年度予算においての一つの新しい大きな柱として難病奇病対策を取り上げるというお話がありました。難病奇病対策、確かにこれはけっこうであります。そうして、こういうものを一つの柱として取り上げていかれるということはたいへんけっこうであります。難病奇病対策ということばの中に、具体的には一体どの病気をどのようにして取り上げるのか、これはぜひこの機会に明らかにしていただきたい。同時に、この難病奇病対策というものは、実際の医療の面においては医療保険の体系の中で行なわれるつもりなのか、あるいは公費医療の考え方をとっていかれるのか、この点もぜひ明らかにしていただきたいのであります。
たとえば、先年来、いわゆる難病奇病として本委員会等においても議論の行なわれてきたものを考えてみても、スモン病あり、あるいはべーチェット病あり、実際にほとんど患者は発生しておらなかったようでありますが、カシンベック病がある、あるいは多発性硬化症のようなものもあります。また、はたして奇病という定義に当てはまるかどうかは別として、毎年三千五百名に近い新規患者を発生させ、そのうちの二千人余りが毎年死亡していく小児ガンのようなものもあります。また、公害に基因する疾病ではあるけれども、現在治療の方法のほとんど立たないといってもよいいわゆる水俣病、有機水銀中毒症あるいはイタイイタイ病、カドミウム中毒症、また有機塩素系農薬の取り締まりの一原因になりました、今日も食品衛生の上で大きな問題となっている有機塩素系の農薬、あるいはその他の薬品による中毒症の後遺症、いわゆる公害に基因する疾病の中で完全に難病として扱われるべきであろうと思われる性格のものもあります。
また、むしろ労働災害に基因する疾病ではありますが、やはり非常に回復の困難な白ろう病のようなもの、あるいは一酸化炭素中毒による後遺症、これも難病であります。厚生省として考えられる難病奇病というものは一体どのようなものを考えておられるのか。こうした柱を立てられることはこれは前進であります。しかし、その中に盛り込まれるものが一体何なのか、そして、その病気に対して具体的にどのような範囲をどのように取り上げていかれようというのか。これによっては、せっかくつくった難病奇病対策という一つの柱自体が死んでしまうこともあり得るわけです。これは公衆衛生局長、あなたからこまかい点についてもはっきり答えていただきたい。
#25
○滝沢説明員 難病奇病、これは一般的にそのような表現が使われておりますが、われわれが考えております対策、特に予算上特定する疾患というような名称を使いまして、今後懇談会を設置いたしまして、学者の御意見を十分拝聴し、当面研究効果のあがる、または社会的に問題の多い疾患、必ずしも確定的な原因が究明できてないけれども、ほぼ治療方法等については従来かなりの成果をあげているというような問題につきましては、学者の御意見によっては、これはむしろこちらを取り上げるべきであるというようなことで、いわゆる難病奇病と、一般的ではなくてそういう意味で疾患を特定するというような考え方に立ちまして対策を講じてまいりたい。しかしながら、現状で問題になっております、われわれが特定疾患として取り上げるべきではなかろうかと考えておりますものとしてはスモン、ベーチェット、あるいはおあげになりましたカシンベック、それから多発性の硬化症、いわゆる膠原病、自己免疫性の疾患といわれておりまして、解明が十分できておらない、治療についてもきわめて困難な――若干効果のある治療法はございますけれども、これを生涯続けるということになりますと非常に問題が多いのでございまして、そういう意味ではさらに進めた治療法の開発が必要であるというような意味の疾患等を掲げまして一応予算要求をし、対策室を設置いたしまして、一元的に厚生省もこれらの不明ないしは治療方法の未確立の疾患に対処してまいる、こういう考え方でございます。
したがって、具体的にご指摘の、まず公費によってこれをどう処理するか、公費負担の問題でございますが、この点に関連しましては、やはり公費で負担する以上、診断方法等が確立して甲乙どちらがこの疾患であり、どちらがこの疾患でないという鑑別的な診断の確立が基本でございますので、まずその点が当面の調査研究の重点事項になろうかと考えております。したがいまして、考え方としては、やはり抜本改正にからんで、これらの高額医療あるいは長期療養医療というものをどうするかということとからむものと考えまして、われわれは、当面特定の疾患については、スモン病と同様の治療研究の形のもとに患者の負担の軽減等に、あるいは治療研究の促進の上にこの措置が役立つような方向を考えておりまして、正式の公費負担というものは、これらの鑑別診断等が確立し、ほぼ治療の方法等が確立した暁において抜本問題とからんで検討されるべきものと考えております。
小児ガンについて具体的な御指摘でございますが、小児ガンにつきましては、ガン研究一般費約四億の中で当面取り組んでおりますし、ガンそのものの原因は必ずしも解明されてはおりませんが、診断は、・基準はほぼ確立されておりますので、これは具体的にもはや対策に入り得るものでございますので、御承知のとおり、四十六年度より児童局におきまして小児ガンの対策に取り組んでおりますので、当面は、われわれの特定疾患の中では、いま申し上げましたように、従来谷間になっておって対策が具体的に講じられ得ない疾患というものを、一応優先的に取り上げてまいりたいということでございます。
公害の関係につきましても、環境庁の研究費の性格は、カドミウムの問題にいたしましても、あるいは水俣病の問題にいたしましても、主としてそれらの物質の生体内における動向分析、あるいは診断基準の確立、分析方法の標準化というような基本的な研究が主でございますので、治療方法につきましてさらに進展を必要とするならば、この特定疾患対策の中で取り上げるには十分検討に価すると思いますけれども、現状においては、いわゆる対症療法等がほぼ確立しているために救済法等によって措置されておりますので、これは一応懇談会等の御意見を闘いた上、いわゆる治療方法の確立の上でまだ未開拓の分野がございますればそれに取り組みたいという考え方でございます。
その他白ろう病、一酸化炭素中毒の問題につきましても、すでにある程度の原因は解明されており、治療方法等につきましても、これらの白ろうあるいは一酸化炭素中毒等の問題についてリハビリテーション等の問題もございますけれども、ほぼ医療になじんだ制度としてそれぞれに行なわれておりますので、当面特定疾患としては、最終的には懇談会の御意見によりますけれども、われわれの行政判断としては、一応これらの問題は除外していくという考え方でございます。したがいまして、総括的には非常に現状までに実体も必ずしも解明されておらない、それから治療方法、原因等についてもさらに突っ込んだものを必要とする、こういうようなことで、社会的に問題の多い、谷間になっておる具体的な施策の不十分な問題を取り上げてまいる、こういう考え方に立つわけでございます。
#26
○橋本(龍)委員 ちょっと待ってください。いまのあなたの答弁でちょっとひっかかるのですが、谷間になっているものを中心にすると言われた。確かにそれはけっこうです。しかし、いまあなたが特定疾患として対象にあげられた中で、それでは一つの例としてカシンベック病をとってみましょう。去年あなた自身が私に国会で答弁をさせたのは、新聞にたいへん大きくカシンベック病の脅威が書かれたけれども、現実に国内にはカシンベック病の患者はありませんという趣旨の答弁をさせられた。千葉大学の滝沢教授等の方々が主張はされたけれども、多摩川の水の影響によるカシンベック病の患者は発生しなかった。だから多摩川の水は飲用に供してもよろしいんだ、言いかえれば患者がない病気だという答弁をあなたは私にさせた。国内に患者が出ていないものを特定疾患として取り上げられるわけですか。そして現実に、あなたは治療方法の確立等云々と言いますけれども、それでは有機水銀中毒症の場合に治療方法は確立されておりますか。確立されていないじゃないか。カドミウム中毒についても治療方法は確立されているか。確立していないじゃないですか。どうして現実に発生していないといわれる病気を特定疾患の中にわざわざあげられるか。なるほど、確かに公害に基因した疾病には違いない。しかし、現実に患者を持っている、治療方法そのものが決して確立されていないものが入っている。もう一回聞かしてもらいたい。#27
○滝沢説明員 カシンベックにつきましては、確かに先生おっしゃるとおり、現状においてはわが国にカシンベック病が確実にあるという学会全体の公認されたものはございません。しかしながら、いわゆる飲料水の中に特定物質が多いために骨などに障害をもたらすであろうと思われる疾患というものは、熊本の阿蘇山ろく等にも最近問題になっているケースがございまして、ややお答えとしては、おっしゃるとおりカシンベックそのものをずばりこの特定疾患に取り上げるというふうに受け取られた面がございますけれども、私は代表的にはカシンベックのようないわゆる飲料水に基因するところの特定疾患というようなものも、問題としてはやはり懇談会の御意見を徴した上で考える範囲の中に入れておるという考え方を申し上げたわけでございます。それから、公害関係の問題につきましては、カドミウムを体内から排出してしまう、アメリカなどでそのような研究等もなされておると聞いておりますが、そのような基本的な治療方法は確かに未確立ではございますけれども、カドミウムにいたしましても、あるいは水銀中毒等にいたしましても、それが神経性の疾患として――あるいは有機塩素の問題にいたしましても、からだに分布していく、あるいは体内にどういうふうにして蓄積されていくか、これらの解明は環境庁のほうの研究費に盛り込まれておりますが、それに伴う対症療法的な問題については、ほぼ原因――原因と申しますか、その有害物質と身体障害との関連は解明できているわけであります。したがいまして、救済措置という形で医療のめんどうは見ておる、こういうことでございますから、さらに突っ込んだ基本的な治療方法、いわゆる根本的な治療方法というものは未確立でございますので、この点について公害関係疾患といえども、治療方法のさらに一段と進んだ解明が必要であるということについて決して否定するものではございませんが、これらの方法の学者の御意見、これらの問題について取り組む可能性、そういう問題について御意見がはっきりとしてまいれば、われわれとしては特定疾患として治療研究の面で取り上げるにやぶさかでないという考えを持っておるわけでございます。
#28
○橋本(龍)委員 いまの御答弁、私はもうひとつ納得できないものがある。現在なお、有機水銀中毒患者として態本県あたりで認定されている方々もふえている。また、有機塩素系の農薬による眼病その他の問題も別個にある。こうした点からいけば、なお私はこの難病奇病対策については議論したい点がありますけれども、その議論はあとに譲りましょう。またあらためてやらしてもらいます。次に、次官、医療保険の抜本改正というものは来年度予算中にどのように取り上げられるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。同時に、医療保険の抜本改正にあたって欠くことのできない医療関係者の確保をはじめ、医療の供給体制の確立というものがどうしても必要でありますけれども、厚生省として来年度の予算編成に対してどのような構想を持っておられるか、これをお尋ねをしたい。
同時に、国民の健康管理について厚生省としては現状どのような構想を持っておられるのか。そして、国民の健康管理そのものの体制整備についてどのように来年度の予算編成に盛り込んでいかれるお考えかをこの機会にお尋ねをいたしておきたい。
同時に、もう一つの問題点として、現在一医師の不足解消を補うために国立大学の医学部の新設等が論議をされております。文部省の概算要求の中には新しい医学部の創設に対する調査費というものも組まれている。また、既存の医学部における学生の定員増、講座の増その他のものも盛り込まれておりますけれども、これは私ども見ておりまして、必ずしも現実の医師不足の状況を解消していくことに役立つものばかりとは思えません。講座の新設が予定をされておるものを見てまいりましても、非常にばらつきがある。こうした文部省の大学学術局の中において医療の供給体制の基本となる医師の養成計画をつくっていく上において、言いかえれば、来年度の文部省の医学部関係の概算要求をつくられるその過程において、厚生省としては意見を文部省に対して持ち込まれたのか、厚生省として現実にこういう方面に力を入れてもらいたいという点を要請されたのか、そしてそれが聞き入れられてきたのかどうか、この点を、ぜひ明らかにしていただきたいのであります。
これは一つ理由があります。文部省の大学学術局という局の中に実はお医者さんが一人もおらぬ。技官が一人もいない。そのために、国立大学の医学部関係者から医学部としての一つの構想を持ち込んでも、なかなか理解をしてもらえないという声をずいぶん聞かされました。そのために大学設置審議会の中に医務局長に入ってもらい、新設大学そのものについては私学についての意見を厚生省として申し述べてもらっておりますが、なお細部にわたっての議論がされておるかどうか、これはきわめて心配な部分があります。この点がどのように処置されたのか、これらを明らかにしていただきたい。
#29
○登坂説明員 医療保険の抜本改正につきましては、目下社会保障制度審議会、社会保険審議会等から答申をいただいておりまするが、ただいま検討中で、早急に結論を出したい、こう思っておるわけでございます。医療の問題については、国民の健康を保持する上において、国民健康の管理体制の強化、それから医療供給の充足化、そういう問題が取り上げられるのでありますが、健康管理体制については、国民がいついかなる場合でも――今日までは治療に重きを置いたのでありますが、今後、予防体制とかリハビリテーションとか、そういうようなものが十分受けられるようなそういう管理機構の充実強化をはかりたい、こういうふうに進めております。また、医療機関の充実においては、先ほど御指摘のありましたとおり、お医者さんの増強、これは文部省等にもうちの事務当局が十分連絡をとりつつ、医科大学の新設等にあたりましては、審議委員の一人となって十分連絡をとっておるというようなわけでございます。また、看護婦その他医療従事者については十分これが養成に補助、手当を加えまして、今度の予算請求の中においても十分配慮いたした所存でございます。こまかい数字的な問題は事務当局から説明させます。
#30
○松尾説明員 特に、国立大学医学部等の設置につきましては、ただいま政務次官からもお答えがございましたように、積極的に文部省との間に十分な連絡をとってまいりたい、こういう態度でございます。具体的には、今年度医科大学あるいは医学部の設置調査会というものが文部省に設けられてございます。その中には、私並びに国立病院長の代表も加わっておりまして、先般九月十七日に医師の養成についての中間報告が出てまいりました。この中間報告に盛られました基本的な数字は、厚生省が提案したものがそのまま採用されておる、こういうことでございます。また、医学部の設置または増設に関連いたしまして、教育の効果をあげるためのいわゆる教育関連病院整備という思想につきましても、中間報告で具体的に反映させていただいた、こういうような次第でございます。#31
○橋本(龍)委員 実は、これは私自身が厚生省の政務次官としておりました間に起きた問題でありまして、非常に情けない思いをしたわけであります。先般厚生省の薬務局の中で汚職問題が起きたということが新聞に報ぜられました。前に同じような問題が起こり、相当大きな方針の変更等を行なって、再びこうした問題が起こらないようにと努力をしていた中で、再び汚職問題が起きたということを伝えられたことは非常に私どもとしては残念であります。しかし、なお捜査そのものが中断をした形で詳細が不明な状況であります。いまこの問題を私は聞こうとは思いません。しかし、薬務行政の中での一つの大きな問題点として、これが明らかになった時点においてあらためてこの点について私は厚生省の見解をただしたいと思います。もう一つの大きな問題として、昨年来非常に大きな国民的な関心を呼んできた医薬品の安全チェックあるいは食品の安全チェック、これが現在どのような状況にありますか。また、来年度の予算においてどのように考えておられるのか。同時に、もう一つお尋ねをしたいのは、昨年の毒劇法改正に伴って、従来できなかった家庭用品、日常品についての安全チェックも厚生省として行なえるようになったはずでございます。この作業状況はどのように進んでおるか、この二点についてお答えを願いたい。
#32
○武藤説明員 まず医薬品の問題からお答えいたします。医薬品の安全性につきましては、現在承認の段階でいろいろの毒性その他の厳重な審査を行なっておりますし、それから新薬につきましては、承認後も副作用報告義務を三年間企業に課しております。それから、市場に流通しております医薬品につきましては、現在約二百の大学病院、国立病院で副作用のモニター制度を実施しているほか、外国からもいろいろ情報の収集をはかりまして、その評価につきましては薬事審議会の安全特別部会にはかってそれぞれの行政措置を行なっております。このほか、来年度におきましては、さらに国際的なレベルにおきますもっと的確な情報を反映せしめるということで、WHOの医薬品の国際モニター制度にも加盟を現在WHOから勧奨されておりますので、これに加盟することを現在予算対策とともに検討をいたしております。
それから第二点として、いま先生から御指摘のありました毒劇法の改正によります家庭用品の安全の問題でございますが、現在トイレとかタイル用の洗剤と衣料用の防虫剤につきまして、その中に含まれております薬品、具体的には劇物であります塩酸とかDDVP、そういったようなものについての基準を現在つくっておりまして、近く公布する予定でございます。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
将来の問題は、来年度の予算ともからみますが、五カ年計画を立てまして、子供の衣類とかあるいは下着類、それから台所の洗剤用品あるいは塗料、そういった家庭用品につきまして毒性試験あるいは皮膚試験等の試験を行なって、漸次法律に基づく安全基準をつくっていきたい、かように考えておりますし、まず来年度の計画としましては、有機燐化合物についての安全基準をつくりたい、かように考えております。
#33
○浦田説明員 食品関係の安全問題につきましては、御案内のように、かねてその添加物あるいは残留農薬の許容量等について検査を進めてきておるところでございます。現在までに三十七年以来すでに食品添加物につきましては三十六品目の削除が終わっております。ただいまいわゆる総点検という形でもって、とりあえず緊急のものにつきましては昭和四十八年度までにさらに二十五品目、その試験項目は慢性毒性あるいは催奇形性あるいは代謝毒性といったものを中心として現在その調査を進めているところでございます。来年度につきましては、予定といたしまして十四品目、二十一項目についての試験をやっていきたいと考えております。残留農薬の許容量の設定でございますが、現在までに十四食品、九農薬についての許容量がすでに設定されております。今後昭和四十八年度を目標といたしまして、さらに五十二食品、うち来年度の予定といたしましては二十食品について同様設定してまいりたいと考えております。乳肉関係の食品につきましては、昭和四十六年に牛乳の中のBHCその他の暫定基準を設定いたしましたが、引き続きまして食肉あるいは卵、魚介類等についても同様に安全基準の設定に努力してまいりたいと考えております。なお、近ごろ普及してまいりました冷凍食品、これらの安全基準についても一応設定いたしましたが、引き続き来年度取りかかりたいと考えております。
それから先ほど薬務局長のほうから……(橋本(龍)委員「簡単に」と呼ぶ)環境衛生局の関係といたしましても、たとえば洗剤、近ごろ問題になっておりますたん白分解酵素を含んでおるようなものに問題があるようでございますので、これについても検討していきたいということで、これらに対する研究費あるいは研究体制の強化拡充もつとめてまいりたいと思います。
#34
○橋本(龍)委員 沖繩関係まで質問をさせていただきたいと思いましたが、もう時間がありませんので、沖繩関係はむしろ臨時国会においてあらためてさせていただきます。最後に、戦争犠牲者援護について、次年度以降どのような計画をお持ちであるか、そして、特に原爆被爆者対策にどのような構想、方針を今後お持ちか、並びに遺骨収集あるいは海外慰霊碑の建立等についての今後の見通し、これらの点についてお答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
#35
○登坂説明員 遺家族援護、戦争犠牲者等については、これは国民ひとしく重大関心事であり、厚生省としても所管省といたしまして、戦争犠牲者がその後できるだけ社会のあたたかい配慮を受けるように、政府としても十分考えて、戦傷病者及び遺家族年金等について年々できるだけの配慮をいたしておるわけでございます。また、遺骨収集等の問題については、連絡あり次第、できるものは可能な限り遺骨の収集に当たって、本年度もソ連あるいはただいま南方方面にも行っておるわけでございます。今後遺骨の収集にあたりましては、遺族の心情をくみ取って、できるだけ手厚く処理したい、こう思っております。
なお、慰霊碑等の建設にあたりましても、墓参、慰霊碑等の建設にはできる限り配慮いたしたい、可能なものは逐次進めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
具体的な問題は援護局長から御説明申し上げます。
#36
○中村説明員 明年度の予算要求といたしましては、遺骨収集につきましては、マリアナ諸島、カロリン諸島、西マレーシア、ジャワ等につきましての遺骨収集、それから、遺骨収集が事実上できませんビルマ地区につきましては、戦跡慰霊巡拝の計画を持っております。なお、慰霊碑の建設につきましては、海外の戦没者の慰霊のために、今後主要なる戦域に国といたしまして慰霊碑を建設いたしたいという計画を持っておりますが、明年度は、第一年度といたしましてフィリピン方面に慰霊碑を建設するということを計画いたしまして、予算を要求いたしておるところでございます。
#37
○橋本(龍)委員 終わります。#38
○小沢(辰)委員長代理 次に、川俣健二郎君。#39
○川俣委員 児童手当制度が来年一月一日からいよいよ発足するわけでございます。局長も政務次官もこの間御就任になられまして、これに対してどういうお考え、抱負を持っておられるかということを中心に質問したいと思います。あとで大臣がお見えになるまで所要時間がございますから、お見えになったら、大臣の一言の回答で私の質問を終わりたいと思います。そこで、児童手当制度ができ上がったとはいうものの、これは長年の懸案事項のシステムでございます。わが社会党が昭和二十四年ごろ叫んだばかりじゃなく、与野党を通じて、たった一つの社会保障制度で、世界には方々にあるんだが、わが日本の国にはないんだということで、いろいろな方面で検討され、ようやくやっとでき上がった。でき上がったものを広げてみると、児童手当制度をつくってもらった盛り上がりが全国的にさっぱりない。それはなぜかというと、せっかくの制度はできたが、もらえる人が少ないということでございます。そこで、せっかくつくる制度なら、このくらいの内容は制度として盛ったほうがいいんじゃないかということを私たちが追及した。ところが、前の厚生大臣の内田さんの苦心談、苦衷談もあわせて、まずようやくやっと制度をつくるということだけにとどまらざるを得ないんだ、まあ子供は小さく産んで大きく育てるんだということで、よろしくというごあいさつででき上がった制度でございます。ところが、一応小さく産んで大きく育てるということは、附帯決議も委員会の名においてなりましたが、これから運用の中でどんどん大きく成長させるんだという裏があるわけでございます。したがって、新しく就任された局長は、これに対していろいろな抱負、方針というものをお持ちだろうということで期待しておるわけでございます。それに対して一言、まず局長のほうから、どうこれから先この児童手当を大きく育てようとされておるのか、お話し願いたいと思います。
#40
○松下説明員 ただいま川俣先生から御指摘がございましたように、この児童手当法の成立にあたりまして、衆議院、参議院両院の社会労働委員会におきましてそれぞれ貴重な附帯決議をつけて可決していただいておりますことは、私もよく承知いたしております。また、当時の内田大臣がその場合に、いま御指摘のような省としての方針を申し上げていることもおっしゃるとおりでございます。私どもといたしましても、この制度を担当するものの一人といたしまして、そういった御趣旨に沿って今後この制度を育ててまいりたい。具体的な問題といたしましては、この附帯決議の中に盛られておりますような支給対象の児童の範囲の問題、あるいは心身障害児の問題、そういったようないろいろの支給に対する制約というような点につきましては、今後の検討を必要とする問題であろうと存じます。
ただ、いまお話しのことばをお借りしますれば、現在のところはまだ児童手当は生まれたというか、制度は成立しておりますけれども、支給開始は来年の一月ということで、いわば妊娠中といったような状況でございまして、やはりこの制度がほんとうに発足いたしました後において、この制度の実施の状況、社会の反響等を見きわめながら、社会のニードにできるだけ近づけられるような育て方をしていかなければならないというふうに考えております。
来年度の予算要求におきましては、所得の状況、物価の状況等を勘案いたしまして、所得制限の引き上げは予定いたしておりますが、その他の部面につきましては、いま先生も御指摘のようにユニークな制度でございまして、いままでの諸種の社会保障制度とはかなり違っておる点もございますので、まずこれを円滑に施行いたしまして、この対象になる人たちの中で支給漏れが起こらないように、また、できるだけ簡便な手続で支給を受けることができますように、そういった点を中心といたしましてさしあたっての運用をいたしてまいりたい、そういうふうに考えております。なお、今後の施行の状況と見合いまして、制度の改善等につきましては、御指摘のような点を十分に考慮いたしまして伸ばしてまいりたい、そのように覚悟いたしております。
#41
○川俣委員 産む前の妊娠中だというお話ですから、それじゃ出産準備というのがあると思うのです。来年の一月出産を前にしていろいろその施行準備というのがあると思います。何しろ新しい制度であるし、それから問題は国家予算でぽんとやるというわけでもないし、企業主との関係もあるし、市町村、自治体との関係もあるし、そういった面はかなり局長の手元で準備をなされておるだろうと思いますが、その辺どういうようなことをなされておるか、少しお聞かせ願えればと思います。#42
○松下説明員 御指摘のように、わが国では全く新しい、いわばよくいわれております第三の社会保障制度という性格のものでございまして、国の費用、それから企業主の拠出、都道府県の負担、市町村の負担、そういった四者が経費を分担いたしまして、しかも被用者と被用者以外のものとに分けまして支給が行なわれるというような制度になっておりますので、都道府県、それから市町村、実施に当たりますその地方公共団体はもちろんでございますが、また、拠出をしていただく事業主の関係、あるいはその拠出金の徴収の事務を行ないます社会保険事務所等の関係、そういった関係者にも、法律が制定されますと同時に実際的な準備を開始いたしまして、数度通達も出し、また会議等も行ないまして、特に支給に当たります市町村段階の事務が円滑、的確に行なわれますように準備を進めておるところでございます。具体的には、政省令はいろいろ他省との関連もございまして、九月四日の制定でございますが、この政省令を制定いたします前に、すでにこの大方針につきましては次官通牒等も地方に出すというようなこともいたしまして、周知徹底をはかるという措置をとっており、また、この申請の手続にいたしましても、一月からの受給権者について三月に支給するというたてまえでございますし、また各市町村にあるいろんな帳簿等が活用できるところは、できるだけ申請者が手間が省けるように重ねて申請に添付する必要かないというような簡便な方法をとりますと同時に、また、こういう新しい制度について一ぺんに申請するということはなかなか望みがたい点も考慮いたしまして、ことしの十月からは市町村におきましても申請を受け付けることができるような措置をとっております。
どの程度の申請がなされておるかという点は、まだ詳しい報告を受けておりませんが、市町村によりましては、すでに申請がなされておるところもあるようでございまして、こういった点、関係者全部に対して、また受給権者に対しましては、市町村を通じまして全部の受給権者に児童手当に関するリーフレットを印刷いたしまして、それが配付されるような措置をとる等いろいろな方法をとりまして、漏れなく受給することができるような手段を講じておる段階でございます。
なお、これからが一番大事な時期でございますので、引き続きましてあらゆる広報手段、媒体を通じまして、この制度の周知徹底をはかってまいりたい、そのように考えております。
#43
○川俣委員 その準備の問題ですけれども、結局申請漏れというのは非常にあるんじゃないかということは、この制度化の前にいろいろ論議されたわけでございます。たいへんこまかくなる質問ですが、その申請漏れを救済するにも限度があるんだ、いついつ幾日までに来ない場合はこれはしようがないんだという基準と期限があるはずです。そういったメジャーを厚生省はどのように考えておるかということ、それから、もう一度確認しますと、市町村の準備体制は、一応行政指導としては滞りなくやっておると判断していいのかどうか、この二つをまずお伺いしたい。#44
○松下説明員 第一のお尋ねの点の、申請者がどこが限度になるかという点でございますが、これはもう法律の内容で明らかなとおり、申請した日の翌月から資格のある人につきましては支給されることになっておりますので、まあおくれますと、おくれた月の分だけもらえないという問題はございますけれども、別にいつまでに締め切るというようなリミットはございません。ただ、先ほど申し上げましたように、知らなかったために、一月からもらえる人が二月からあるいは三月からしかもらえないようになるということはたいへん申しわけないことでございますので、私どもといたしまして、このようなリーフレットを、全受給権者にまで行き渡るように、すでに市町村に発送いたしております。各市町村に対しましても、ブロック会議等で県を通じましてできるだけの周知徹底をはかりまして、十月からの受付期間を設けるというような方法によりまして、発足当初におきましてはできるだけ受給漏れのないような手段をとりたい。十分な手だてがもう済んでおるかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、できるだけのことはしておるつもりですけれども、こういうのはやはり全国民対象でございますから、いままでやっただけで十分だとは申せないと思います。これからも引き続きまして、私どもなし得る限りのことは続けていきまして徹底をはかりたいと思っております。
#45
○川俣委員 その申請漏れと救済なんですが、たとえば東京都など都市の場合はかなりリーフレットでPRされるだろう。ところが、山間村落に行くと、特に農村地帯の山奥は、貧乏人の子だくさんじゃないのですが、子供はうじゃうじゃいるわけです。そういった場合に、たとえば一月、二月、三月という三カ月分を三月に支給するということです。ところが、二月に申請をしたので一月分はオミットされる、こういうようになるのか、それとも、先ほどおくれた月分だけは残念ながら云々というその云々ですけれども、これは運用の妙味で法律解釈を拡大してできることだと思います。そこでわれわれも、これは市町村だけじゃなくて、自治体だけじゃなくて、いろいろとみんなで指導していかなければならぬと思います。PRもしなければならぬと思います。政治家も演説でそういう指導をしていかなければならぬと思います。その場合に、そういう一カ月くらいおくれたというものを救済するという運用の柔軟性を持つというように解釈していいのかどうか。#46
○松下説明員 ちょっと、いま申し上げましたのは法律全般の原則論だけに触れまして、当初のいま御指摘のような救済措置について御説明を落としまして申しわけございません。制度の発足当初におきましては、十月まで申請の時期を繰り上げて受け付けますと同時に、反面、いま先生のおっしゃったような、やはり地域によりましてはどうしてもおくれる事情もあるということも考慮いたしまして、三月一ぱいまでに請求いたしました場合には、発足の当初におきましては、一月から受給資格のある人は一月までさかのぼりまして漏れなく支給するという措置をとるようにいたしております。御指摘のとおりでございます。御説明がおくれまして申しわけございません。#47
○川俣委員 それは議事録にとどめていただけばその問題はけっこうです。それから、この制度ができ上がって、もちろん前向きの制度ですから困る人はいないと思います。ただ、困る人は、出さなければならない企業、特にどちらかというと繊維会社なんかのように若い女の子なんかをたくさん雇っているところは出す分は多いのだが、自分の従業員には返ってくるというあれが少ないわけです。いろいろとでこぼこがあると思います。
それからもう一つの問題は、これは私が本会議でも時の内田厚生大臣に答弁を伺って碓認したことですが、たとえば公務員に扶養家族手当というものがあるわけです。民間にもあるわけです。ところが、この児童手当をくれることによりまして、民間のある企業の場合は、児童手当が国からもらえるならば社内におけるものはもぎ取るのだというようなざわめきがあるわけです。そこで、この問題をどのように処理するかということは、この制度ができる前に論争があったわけです。
そこで、まず第一番に、公務員の問題に対して厚生省はどのように行政指導をやろうとするのか、厚生省独自の考え方をまず出してもらいたいと思います。これはもちろん大蔵省とかあるいは人事院とか、いろいろな面の干渉があると思います。ただ、この児童手当というものは、元来子供というのは国と親が半々扶養するのだという理念から発していることから考えると、いままであった制度をなくしてよろしいということにはならないわけでございます。これは前の厚生大臣も本会議で答弁したわけでございますから。したがって、既存の扶養手当との関係をどのように処理し指導していこうとするのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
#48
○松下説明員 いま御質問のございました児童手当と民間給与の中におけるいわゆる家族給あるいは公務員の扶養手当との関係でございますが、これは法律制定の際にもいろいろ御説明申し上げておりますように、児童手当は、いま先生御指摘のような精神でございまして、全国民に対して、被用者であってもなくてもこれは平等に支給する、同じ条件で同額のものを支給するというたてまえのものでございます。したがって、これは給与あるいは賃金とは異質のものでございまして、国あるいは地方公共団体もあるいは事業主も一緒になって、次代をになう子供の健全育成ということのために協力するのだという性質のものでございます。したがって、私どもの考え方といたしましては、これは賃金あるいは給与の問題とは全然別次元の問題である。ですから、児童手当の側におきまして、民間の賃金の家族給あるいは公務員の扶養手当等とにらみ合わせまして児童手当を調整するというようなことは、もちろん毛頭考えておりませんし、法律でもこのようなことは触れられておりません。ただ、実際問題といたしまして、事業主負担、あるいは公務員の場合には全額国あるいは地方公共団体の負担というような制度をとっておりますたてまえ上、同一の支給対象に対してというような考え方が出てまいりますと、諸外国の例等を見ましても、家族給のほうで調整が行なわれておるというようなことはあり得るわけでございます。そういった問題につきましては、公務員の場合であれば、これは給与の体系の中の問題、あるいは民間賃金であれば、これは賃金体系全体の中におきまして、原則といたしまして使用者と労働者との間の交渉によってきまるべき問題、そのように考えておりまして、児童手当の側として容喙すべき性質のものではないというのが基本的な考え方でございます。
#49
○川俣委員 大体わかりました。そこで、もう少し核心に触れたいのですけれども、局長の個人的な見解でよろしゅうございますから。たとえばこれを賃金の面から、人事院あたりから、児童手当法に基づく児童手当の支給対象となる子供は扶養親族としないというようなことの解釈が出たとすれば、一応あなたの個人的な見解でけっこうですから、これに対してどういうような理念をお持ちですか。
#50
○松下説明員 私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような児童手当の性格から考えまして、これはもっぱら公務員の給与の体系の問題というふうに考えておりますので、人事院あるいは給与決定に関する当局におきまして、そういった考え方がなされるということがかりにございましても、これは、私どもの立場からは、是非の意見を述べるべき性格のものではないのではないか、そのように考えておる次第でございます。#51
○川俣委員 給与の問題に云々ということを厚生省が述べるべきではないという見解は、理論としてはわかると思います。ただし、企業のほうから見ますと、この拠出制の金額というのは、どこの子供にやるのかわからないのを賃金の比率で出してやるわけです。そうしますと、これから局長が大きく育てよう、成長させようという段階において、その賃金の問題とこの問題というものは当然からんでくるわけでございます。したがって、厚生省のほうとしては述べるべきものじゃないというように解釈するけれども、一応論陣を張るというわけじゃないけれども、理論づけはしておかなければならぬと思います。位置づけはしておかなければならぬと思います。そういう意味において、あなたの個人的な見解でもけっこうですからということをもう一度お願いしたいのですが。#52
○松下説明員 別に児童家庭局長たる立場だからこう申し上げておるというだけのことではないのでございまして、先ほど先生御質問いただきましたように、個人的見解も含めていいからということでございますが、やはり私ども担当して、児童手当制度の諸外国の例等を、至らないながらいろいろ勉強いたしまして、給与と児童手当の問題、社会保障と賃金の体系の問題ということになろうかと思いますが、やはりこれは切り離して考えるべきものではないか。児童手当のサイドにおきましては、国民全般の立場から見ましてどのような児童手当が支給されることが適当であるか。これは給与をもらっている人も自営業の人も同じように対象になるわけでございます。したがって、額の決定等につきましても、一般的な生活水準等を考慮に入れまして、そういった配慮をなしておるわけでございます。そういった面から申しますと、給与がどのようにきめられるか、賃金がどのように決定されるかということは、これはやはり基本的には労働法と申しますか、そういった雇用関係に伴う一つの契約事項の内容という性質のものでございますので、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりまして恐縮でございますが、児童手当のサイドからは、これはどちらでもいいというような言い方はちょっと適当でないかもしれませんけれども、是非の議論をすべき性質のものではないと、私自身もさように考えております。#53
○川俣委員 どうも国会の質疑応答というのは、少し縮こまっているような気がするのですよ。というのは、あなたが答えたからというのでこれを制度化しなければならないとか、その方向に進まなければならないということじゃないと思うのですよ。やっぱり個人的な見解はどうかということを質問されたら、ある程度それに答えてもいいのだろうと思います。そこで、それでは観点を変えて質問しますが、児童手当制度が日の目を見るおくれの一つは、事業主負担というのがひっかかったからだと思います。これも一つの理由だったのだと思います。しかし、事業主のほうから見ると、どこの子供にいくかわからないやつを、賃金の何%かを国にやるのだったら、税金で取ってくれればいいじゃないか。どこの子供にやるものかわからないものだったら、何も国のほうにやらないで自分の従業員の子弟の家族手当をふやす方向にいくのだ、これは当然の意欲だと思います。そこで、この程度の個人的な見解なら述べてもいいと思いますからお伺いいたしますよ。児童手当というのは、そもそも国の立場から、金額は別として、義務教育が終わるまでの子供だったら、何人の子供でも、一人おっても、二人おっても、三人おっても、平等に国庫負担としてやるべきだというように私は思うわけです。ところが、これは財源の問題でやっぱり事業主のほうから負担してもらわなければならないというように解釈したのは、局長の見解として、財源がないから事業主のほうにお願いしようとしたのか、児童手当制度というのは、従業員を使っておる事業主も一枚加わってもしかるべきなんだという理論性からこういう制度になっているのか、その辺はどういうように解釈されますか。
#54
○松下説明員 いま御質問のありました点、諸外国の制度等を見ましても非常にいろいろになっております。むずかしい問題であろうと思いますが、日本の今後の労働力の需給事情あるいは人口構成等を考えてまいりますと、今後の労働力、特に若年労働力の逼迫というようなことも問題になり、また、先ほどから御議論がありましたような、老人が非常にふえる、もう何年かたちますと、非常に少数の労働力をもちまして老人を含めた全国民を養っていかなければならない。これは国全体としてもそういう事情があるわけでございますし、企業の立場からいたしましても絶対数が減るということは、これはいかんともしがたい問題でございますから、どうしても良質の労働力を得なければならない。もちろん人を物質視するわけではございませんが、人格形成というような点も含めて、ほんとうにりっぱな人たちが労働力として働いてもらわなければならないというような事情が生じてまいる、すでに生じておるわけでございます。そういったような点から考えますと、今後できるだけりっぱな人を育てていくということは、国全体としても御指摘のように必要なことでございますが、また、企業という人を使う立場から申しましても、現在自分のところで使われておる職員に対して手厚く家族給等を支給するということは、これは労働政策としては一つの考え方かと存じますけれども、同時に、国全体といたしまして、事業主が全部出し合って、それによって全国民の子供をより健全に、よりりっぱな人間に育てていくということに協力するということは、これはやはり企業の長期的な立場から申しますと必要なことではないか。また、諸外国の事情等から見ましても、企業の拠出によりまして、むしろ全国民の児童手当がまかなわれておるという例は相当多数あるわけでございます。そのような事情から見まして、今後の制度の改正を考えてまいりますと、やはりできるだけ財源の配分というのは多様性を持ち、そのときどきの経済の状態に即応し得るような弾力性を持って改善をはかっていくということが必要であろうと考えられますので、やはり企業の拠出、まあその配分をどうするかということは、いろいろな考え方があろうと思いますが、ある程度の拠出をお願いするということは、初めに御指摘のありました児童手当制度を健全に大きく育てていくという将来の見通しのためにも必要なことであろう、そのように考えております。#55
○川俣委員 だいぶあなたの見解を聞かしていただきましたけれども、まあ私はそのように望むわけですよ。ところが、なかなか現実はそう甘いものじゃないと思います。たとえばいま三千円で、しかも第三子が五歳以下で、これを全部に厚生省がいま提案しておる制度が完全に実施されるのは、四十九年四月一日が完全実施になるわけです。おそらくいまの金額の十倍近い金額になると思います。そうしますと、これから大きく育てよう、多額の金額がほしいというときに、それと同じ比例で事業主のほうから拠出させなければならぬわけです。これをいまの局長の考え方を推していけば、事業主だって健全な子供を育てる義務があるんだという修身教育はわかるとしても、なかなか現実はそううまくいかないと思います。したがって私は、諸外国の例、諸外国の例と言いますけれども、ここでは諸外国の例を分析する時間は私はありません、資料はありますけれども。おたくのほうはもっと資料はあると思います。ただ、たてまえは子供というのは親が半分育てるんだ、国が半分育てる義務があるんだという理念から発しなければだめなんですよ。と思います、私は。企業もある程度責任があるというところに無理があると思います、これから成長させようとするときに。ですからやはりある程度、軌道修正を局長すべきだということを言うのじゃないけれども、これから大きく育てるのなら、やはり国全体のかけ合うところは大蔵省であって事業主じゃないと思います、方向としては。こういうことを言うと、社会党の川俣、あれは事業主を擁護しているんだろうかということをあなた感じているかもしれないが、そうじゃないですよ。私は、早く育てろ、大きくするためには財源の一元化ということを考えなければならないから言うのです。それを事業主が抵抗するからなかなか子供の児童手当が育たないんだというところに持っていかれると困るんですよ。そこで、ここで論争しようと思うのじゃないけれども、局長どうですか、もう一言。そういう考え方もあるのだということを私は思うんですけれども、おたくはどう思いますか。#56
○松下説明員 いま先生が御指摘になりましたような考え方も児童手当につきましてはあろうかと存じます。ただ、社会保障制度を含めまして、国家財政がこれだけ伸びてまいっております時点におきまして、いまのお話のように今後の制度を伸ばしていきます上に、やはり私どもといたしましては、できるだけ財源は多面的に求めることが望ましい。また、企業の立場といたしましても、同じことの繰り返しになりましてたいへん恐縮でございますが、先ほど御指摘になりましたような、むしろ非常に若い労働者をたくさん雇用しておるというような企業におきましては、今後の育っていきます子供の数から考えまして、直ちに優秀な労働力を必要とする事態になるということは目に見えておるわけでございまして、やはり企業も全体として日本の今後の子供を健全に育てていく。国の責任とおっしゃることは、ことばといたしましてはそのとおりだと思うのですけれども、その場合における公的な責任というのは、単に国が一般の税金をもってというだけでなしに、国民全体が子供の健全育成に関心を持ち、また利害関係を持つ国民の中の全体の者が協力してこの制度を育てていく、そういう方向で考えるべきものではないか、そのように考えております。#57
○川俣委員 この論争は一応やめますけれども、ただ一言、若い労働力を多くかかえておる事業主はどうしてもやはり子供がいるんだ、育ち盛りの子供が。したがって従業員に児童手当が行くようになるのだということにもなると思います。そういう考え方を持っておるから、既存の家族手当、扶養手当というのはもぎ取られるという方向に行っているわけですよ。私の言うのはそこなんですよ。そこで、きょうはこの論争はやめますが、事業主負担という問題からしますと、中小企業、特に零細企業にこの制度ができたというのでかなり弱っている企業があるやに方々から聞いておるわけです。この面についてどういうように具体的に指導していこうとするのか。こういう制度ができたために拠出しなければならないから、これはたいへんだという零細企業が出てくるわけです、大企業は別として。それに対して局長はどうお考えですか。
#58
○松下説明員 いま御指摘のような点も考慮されたかと思いますが、現在、先ほど先生がおっしゃいましたように段階実施というたてまえをとっておるわけでございます。したがいまして、事業主が拠出いたします標準報酬に対する率、これは初年度におきましては大体標準報酬の千分の〇・五というような程度でございまして、たとえば五万円の標準報酬のものにつきまして約二十五円という程度の額でございます。これは満年度になりましても、現在の額が大体全体の三〇数%でございますので、大体その三倍ぐらい。毎年の給与の改善等を見越してまいりますと、おそらく千分の一・五以内でまかなえるような見通しでございます。そういった面で被用者分の七〇%、七割ということを言っておりますために、事業主の方の中でも相当多額の拠出を必要とするというふうにお考えの方もおありのようでございますが、実情といたしましては、現在いろいろな厚生年金、健康保険等の社会保険制度で事業主の拠出しております額に比べまして、率なり額といたしましてはかなり低い程度のものでございます。そういった点と、それから制度のたてまえといたしましては、厚生年金保険の保険料を原則として厚生年金保険と同一の徴収方法をとります。事業主の範囲もそれに限られておりますために、ごく零細な五人未満の企業につきましては拠出の義務は課せられていないというような実情でございまして、そういった点をいま十分に、社会保険事務所あるいは県を通じて事業主の方にもPRに努力いたしまして御理解を得るようにつとめておる段階でございます。#59
○川俣委員 わかりました。そこで、まあいろいろなトラブルが起きると思いますから要望しておきますけれども、零細企業になればなるほど困る、弱る場合があると思います。たいした額じゃないと局長はおっしゃるけれども、零細企業というのはたいへんなわけですからね。それにもう日々このように倒産があるわけです。これに不況、ドル・ショック、いろいろと出てくるときに、児童手当の拠出ということになるわけですから、そこでいろいろなトラブルが出てくると思います。何だ君は、児童手当の拠出の場合出さないで逃げてしまったのか、倒れたとか、こういった面がいろいろと出てくると思いますから、厚生省なら厚生省というワクの中じゃなくて、通産省その他といろいろと関係の出てくる問題が起こると思います、この児童手当制度というのは。ですから、その面を非常に気を使って、出産前に準備をしていただきたいと思います。これを要望しておきます。
それから、自治体の動きですけれども、国で制度化するのを待ちくたびれて、かなり制度化した自治体があるわけです。何百と数えられるくらいあるわけです。そこで、もし国のこういう制度ができるまでという条件つきでやっている自治体と、それから、そういう条件をつけないで何となく自然とできた自治体とあるわけです。そこで、局長のほうにそういう資料がどの程度来ているか、まだ全部来てないかわからねけれども、自治体の方向としては、国の制度ができたら直ちにやめるという態勢が強いのか、その辺をちょっとお伺いしたいんですが……。
#60
○松下説明員 国の制度が立法されますまでに私どものところに報告がありました児童手当に類する制度をとっております地方公共団体は、都道府県、市町村合わせまして二百八十九でございます。おっしゃるとおり相当の数にのぼっております。そういった地方公共団体の実施しております児童手当の内容を見ますと、大体のところが――東京都が大体国の制度に、今度行なわれます法律の制度に近い給付内容を持っておりますが、まあ所得制限、年齢等は国より低いわけでございますけれども、三子から三千円という制度を持っております以外には、大体におきまして四子から二千円、所得制限をしましてそんな程度の制度が多いわけでございます。したがって、国の制度が実施されますと、大体国の制度のほうが給付の内容が厚い形になります。そういった点から、しかもその支給の主体がほとんど法律上市町村になっておりまして、いままでに行なわれております児童手当も大部分が市町村単位の実施でございます。そういったような点から申しまして、市町村におきましては、市町村自身の負担も加わって国の制度を実施するわけでございますから、自然吸収的に国の制度のほうに肩がわりされるというところが多いように承知いたしておりますし、私どもといたしましても、新しい制度を全国均一の制度といたしましてできるだけ早く伸ばし、定着さしていきたいという趣旨も含めまして、地方公共団体に対しましても、この国の制度に一元化し実施することが望ましいという趣旨のお願いをいたしておる次第でございます。#61
○小沢(辰)委員長代理 川俣君に申し上げますが、予定の時間があと五、六分ですから、大臣もおいででございますので、ひとつお願いをいたします。#62
○川俣委員 国の制度に対する一元化という方向の指導はいいと思います。ところが、これは自治体が非常に早のみ込みしまして、厚生省の局長あたりにそういう方針を演説されると、これはやはり制度イコール国の制度ができたらすぐにやめなければならないというようにうのみにしちゃう自治体があるわけです。これはかなりうちのほうにもあるわけです。そこで国の制度より低いほうは吸収できると思います。高いところは、まだ国の制度が低いわけだから……。ただ、そういうような指導をする場合に、まだ国の制度というのは小さいので、既存の制度が大きければ、五千円のところはまだ二千円の差があるのだから、それを直ちにやめろというような指導じゃないのだということも、あわせてきめこまかに指導をしてもらいたい、こう要望いたしておきます。それから、所得制限の問題は、さっき局長から出たのですが、この所得制限の問題についての解釈は、これはかなりの幅があると思います。そこで、これは法律規則で二百万というものが動かされないというふうに解釈しておるのか。それとも、これから徐々に厚生省の中で政令で直していけるというふうに解釈しておるのか。それからもう一つは、はたして直していこうという意向なのか。この三つです。
#63
○松下説明員 御案内のように、所得制限の額につきましては、これは法律自体の事項ではございませんで、政令に委任されております。初年度におきまして、大体扶養家族五人ある家庭で約二百万ということを政令で規定いたしたわけでございまして、初めに申し上げましたように、来年度の予算要求といたしましては、この所得制限の引き上げを要求いたしております。これはやはり所得の状況、賃金ベースとかあるいは生活実態等を考慮いたしまして、福祉年金等と同じように毎年これは引き上げていくべきものであるというふうに考えておりますし、今後の運用といたしましてもさよう努力いたしたいと思っております。#64
○川俣委員 そこで、時間が参りましたので、大臣にそれこそ抱負をお伺いしておきたいと思います。児童手当制度、先ほどから局長とやりとりしておるわけでございます。政府のほうとしては、まあ小さく生んで大きく育ててみたらということで苦心談の一端を伺いながら、この制度化というのはでき上がったわけです。これが来年一月一日からいよいよ発足するわけです。ところが、満年度が四十九年の四月一日ですけれども、この制度ができたからというので、何もこの制度で動くしか方法がないのだということではないと思います。
そこで、新大臣に伺いたいのは、いまの所得制限にしろ、かなりこれからいじらなければならないし、大きく育てるのには早く栄養を与えなければならないわけなんで、この児童手当というのは、まず三千円の問題、それから第三子しかくれないという問題――五歳の問題は、もう来年一年だけでございますけれども、これはまた上がります。そういったような問題をたくさんかかえております。三千円の児童手当、これはちょっと、こういうのがまず一般の空気です。そこで大臣は、四十九年の四月一日以前にいろいろな財源とか、あるいは事業主の理解度とか、あるいはインフレその他で物価の値上がりということを勘案して、これを満年度前にさらに検討していくという前向きの姿勢で厚生行政を局長にやらせようとするのか、その辺を大臣から最後にお伺いしておきたいと思います。抱負の一端をよろしくお願いしたいと思います。
#65
○斎藤国務大臣 ただいまお尋ねのように、児童手当を満年度までの間にあるいは三千円の額を引き上げるとか、あるいは満年度の四カ年をもっと詰めるとかというようなことにつきましては、これからの日本の物価、生活水準等を勘案して考えてまいらなければなりませんので、そういう事情が起こればなるべくそういうようにしてまいりたい、かように思いますが、ただいまのところ、まず制度の円滑な実施ということを主にしてやってまいりまして、今後の経済情勢、社会情勢の変化に応じてしかるべき措置をとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。#66
○川俣委員 どうもありがとうございました。終わります。#67
○小沢(辰)委員長代理 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。午後零時五十分休憩
――――◇―――――
午後一時三十六分開議
#68
○澁谷委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。大原亨君。
#69
○大原委員 厚生大臣は、先般沖繩へ視察に行かれたわけですが、沖繩の社会保障や社会福祉をごらんになりまして、いままでのそういうアメリカの軍政下の政治についてどういう感想をお持ちになりましたか。私は先般実際に行って、五日間ほど調査いたしましたが、まず、いままでのあり方についての意見をお聞かせいただきたい。#70
○斎藤国務大臣 私は、沖繩を視察をいたしまして感じましたのは、ただいま仰せのような社会福祉関係においては本土よりも非常におくれている、そういう一語に尽きるのじゃないか、かように思います。#71
○大原委員 私も実際に現地に行ってみまして、アメリカが百万の沖繩の同胞に対しましての生活問題について、いかに無関心であるというか、差別的な意識を持ってやっておったかということがはっきりいたします。たとえばアメリカの軍人や軍属や家族に対しましては、伝染をしたり影響のあるようなハンセン氏病とか性病などという問題につきましては、かなり敏感に対応しているようであるけれども、本来の社会保障やあるいは社会福祉の問題については、軍政下においてはほとんど配慮していない。こういう現実の上に立って私どもは本土復帰の問題を議論いたしておるわけでありますが、私どもは第二次大戦においても犠牲となった沖繩の同胞、また米軍占領下においても基地のウエートが非常に大きい。たとえばコザ市とか北谷村などの現地に行ってみましても、北谷村などの実例をいうと、七五%は軍事基地である。残りの二五%が山であり、谷であり、そこにわが同胞が住む、こういう実情でもあります。そういう基地の中の沖繩であったわけであります。それを政府は、言うなれば核抜き本土並みということを言っておりますが、どういう形で本土に返るのか。社会保障や一番おくれておる社会福祉、こういう問題について日本の政府はどのような方針でこれを受け入れるのか、こういう点については私はきわめて重要な問題であると思う。いろいろな外交上、防衛上の議論もありますが、社会保障や社会福祉の問題は沖繩の同胞からいえば非常に切実であり、問題であると思うわけでありますが、この復帰にあたってそれらの問題について、対応する基本的な考え方について厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。#72
○斎藤国務大臣 一日も早く少なくとも本土並みに引き上げたい、この一語に尽きると思います。#73
○大原委員 きょうは返還協定に伴う、あるいは国内の諸施策について、全般的な問題についての質問はやりません。きょうやりましたら沖繩返還国会は用事がなくなって、早く通してくれということになりますから、そういう出過ぎたことはやりませんが、しかし当面時間的に急ぐ問題で、早く方針を議論したほうがお互いにいい、そういう現状の上に立ちまして、政治上のそういう責任があるわけですから、そういう問題について端的に問題点をお伺いいたします。第一は、これは厚生省の管轄ではありません、労働省の管轄ですが、きょうは大蔵省も労働省も見えているはずですが、失業保険には余裕財源があるのでありますが、その余裕財源は一体幾らであって、この余裕財源の運営の中において、御承知のように労働金庫の労働者の福祉活動のほうに二億数千万円ほど余裕資金を運営いたしておるわけであります。これは失業保険の余裕財源を労働金庫に運営をして、預託いたしまして、労働者の福祉活動に対しまして援助するということは、これは非常によき前例であり、何でもかんでも本土並みだというので、本土に返るときにそういう既得権とか従来のよき善政を本土の悪い例にならう必要はないと私は思うのであります。そういう実態と、この労働金庫に運営されておりますその資金の本土復帰に伴うそういう事実に対しまして、どういう対策をもってこれに臨むか、こういう考え方についてお答えをいただきたいと思います。
#74
○金丸説明員 ただいまの御指摘の点につきまして御報告申し上げます。先生ただいま御指摘のとおり本土ではそういうことをやってないわけでございますが、現在琉球政府におきましては、失業保険特別会計から沖繩県労働金庫に対して預託金を約二億七千万円ほどいたしております。これが本土に復帰いたしますと、本土の法令のもとにおきましては失業保険特別会計の余裕金、積み立て金、これはすべて資金運用部のほうへ預託する、こういう法制に相なるわけでございます。したがいまして、何らの措置を講じないとしますならば、現在預託しております沖繩県労働金庫に対する預託金二億七千万円というものは資金運用部のほうへまいるわけであります。
ところで、私どもとしましては、とにかく現実に復帰前にそういう制度をやっておる。これを復帰だからといって直ちに即刻引き揚げるということについては相当な混乱が出てまいりますので、さようなことではいかぬというふうに考えまして、実は大蔵省その他関係省庁に対しまして、何とかこれをある一定期間存続させるということで、具体的には資金運用部から沖繩県を通じまして同額を沖繩県労働金庫のほうへ貸し付けをいたす、こういう方向で目下大蔵省その他関係省庁と折衝中でございます。
#75
○大原委員 大蔵省の理財局は、この現実に対してどのような考えを持って対処せんといたしておるのか、ひとつ見解をお聞きしたいと思います。#76
○福島説明員 お答え申し上げます。ただいま労働省のほうから答弁がありましたように、沖繩の失業保険特会から現在沖繩労働金庫に預託されておりますほぼ二億七千万円の金額につきましては、御案内のように今度本土に復帰いたしますと、本土の法令が適用になりまして、現在の本土の失保会計と同様の扱いになりまして、労金への預託部分も資金運用部のほうへ預託されるということになろうかと思うわけでございます。ただ、ただいま労働省のほうからお話もございましたように、これがために沖繩労働金庫の経営その他に非常に重大な影響を及ぼすということでありますならば、これをいかに摩擦なく、かつ法令の許容する範囲で措置するかということについて、労働省側とも目下検討中でございます。
#77
○大原委員 失業保険の余裕金を労働金庫に預託をしているということについては、その現実を尊重しながら措置をする、こういうふうに考えてよろしいかどうか。#78
○福島説明員 そのとおりでございます。#79
○大原委員 あなたは大臣でないから、ちょっとお答えがむずかしいかもしれないけれども、失業保険にいたしましても、あるいは国民年金や厚生年金の積み立て金にいたしましても、これは今日開発銀行とか輸出入銀行等の余裕財源を大企業のほうに回していくというのではなしに、国民の福祉、生活の向上のほうに資金の流れを変えていくということが、私は大きな方針としては必要だと思うわけです。零細な国民の保険料や失業保険その他の余裕財源等を大蔵省が一手に引き握って、そうしてこれが輸出入銀行その他開発銀行等を通じて大きなところに流れていく、こういう資金の流れを変えるということが、いまの円・ドルショックに対する対応策としては大切だと思うわけであります。その例からいっても、失業保険の余裕財源を労働金庫等に出していくということは、たとえば住宅活動、福祉活動等をいたしておるわけですから、これは私は当然の改革のしかたではないかと思う。沖繩復帰に伴ってこういうことは思い切ってやることはやるべきだ。少なくともそういうことの議論は、全面的な議論はともかくとして、暫定措置としてそのことの現実は認めて措置をするという、そういうことは私は可能であると思うけれども、いかがですか。#80
○福島説明員 先ほども申し上げましたように、現実に沖繩労働金庫に二億七千万余りの金額が預託されている事実は尊重しつつ、現実に沖繩労働金庫の経営なり、あるいは沖繩の労働者の方々の福祉向上に役立つような方途で、この現実を尊重しながら対応策を考えてまいりたいということを考えているわけでございまして、現実に本土に復帰した際に、本土の資金運用部からダイレクトに沖繩の労働金庫に預託をするということは、現行法令上できないことであるというふうに考えております。#81
○大原委員 だから、暫定措置としてそういう措置ができるように法律上の措置をとればできるじゃないか。それが暫定法というのじゃないですか。そしてそれができ得るならば、私はよき前例としてはどうか、こう思うわけです。これはあなたに聞いたって答弁はわかっておるから、私は強く要望しておきます。これはあらためて将来問題にする、こういうことです。次に、医療保険の問題です。医療保険は、これは本土の政府がやっておる医療保険は、三千億円の赤字です。政府管掌健康保険は、政府管掌中心に、日雇い等入れて赤字が大きくなっておるわけですが、沖繩の医療保険は御承知のように黒字であります。その黒字は幾らあるかということが一つ。
それからもう一つは、この黒字を復帰に伴う措置として本土に巻き上げるのかどうか、黒字を巻き上げて本土で使うのか、財政調整とかいろいろなことを言っておるようだから。一番安易な方法をやるのかどうか、こういう点を含めて、ひとつ担当者からお答えいただきたい。
#82
○渡部説明員 お答え申し上げます。沖繩県に対しましては、健康保険法をはじめといたします医療保険の各法を復帰と同時に即時新規に適用するという方針で臨んでいるわけでございますか、そういう意味で、従来琉球政府の実施しておりました沖繩の医療保険制度に基づきます積み立て金につきましては、われわれといたしましては、原則的には、これは本土の特別会計に受け入れるということでなくて、従来の積み立て金でございますので、これは沖繩県に帰属せしめるのが適当であろうという考えを持っておりますが、この問題につきましては、実は現在、沖繩のその積み立て金は沖繩の資金運用部の原資となりまして、沖繩県の一般会計の赤字ファイナンスに使われているというような実情もあるやに聞いておりますので、そういう意味において琉球政府の一般的な赤字処理の問題ということに関連いたしておりますので、そういう問題も十分検討の上、最終的な結論を出したい、かように考えております。
#83
○大原委員 金額は幾らあるかということですが、これは渡部主計官からお答えいただきたい。それからついでに、これは時間をかけて議論すれば幾らでも材料はあるわけですけれども、沖繩の被用者保険の黒字については、これはいままでの問題等から本土のほうの会計に入れるというふうなことはしない、こういう方針でやるのだ、こういう考えでよろしいか。#84
○渡部説明員 お尋ねの積み立て金でございますが、四十六年三月末現在で沖繩の医療保険法に基づく積み立て金は二千二百三十四万ドル、邦貨換算約八十億円、かように聞いております。なお、この積み立て金の処理をどうするか、本土の積み立て金に繰り入れるかどうかという点につきましては、先ほどお答え申し上げましたように本土の健康保険の積み立て金に繰り入れるということはしないで、原則的には沖繩県に帰属せしめるのが適当であろう、こう考えておりますが、先ほど申しましたように一般会計の赤字処理との問題がございますので、その点の関連を十分検討いたしまして、最終的な結論を出してまいりたい、かように考えております。
#85
○大原委員 この医療保険の黒字と一般会計の赤字は、どういう関係があるのか。#86
○渡部説明員 一般会計の赤字処理の問題は、この健康保険積み立て金と直接関係はないわけでございますが、先ほど言いましたように、この沖繩の医療保険の積み立て金は沖繩県の資金運用部の原資となりまして、それが沖繩県の赤字ファイナンスに使われておるという実情がございますので、最終的にはやはりその沖繩県の赤字を日本の国がどう見るかという問題ともひっかかってまいるものですから、そういう赤字処理の問題と一連的に検討するということの関連において最終的な結論が出される。しかし、この問題の筋といたしましては、先ほどから申し上げておりますように、短期保険の性格上、従来積まれております積み立て金は沖繩県に帰属させるのが筋ではなかろうか、かように考えておるということでございます。#87
○大原委員 厚生大臣の見解……。#88
○斎藤国務大臣 ただいま大蔵省の主計官が答えましたとおり、これは沖繩の医療保険のために将来確保いたしたい、かように思います。#89
○大原委員 沖繩の医療費についてですが、沖繩の一人当たりの医療費あるいは医療保険費、家族を含めて約四十五万人ぐらいだと思いますが、一人当たりの医療保険の給付費、これは幾らになっておりますか。それともう一つ、本土の一人当たりの医療費、本土の医療保険の一人当たりの給付費、これを比較をして御答弁をいただきたいと思います。
#90
○戸澤説明員 一人当たり医療給付費について申し上げますと、沖繩のほうは四十五年におきまして一人当たり一万一千円、それに対しまして本土のほうは四万九千六百七十五円というふうになっております。#91
○大原委員 それは医療給付費だね。#92
○戸澤説明員 そうです。#93
○大原委員 医療費は……。#94
○戸澤説明員 現金給付費と合わせますと沖繩のほうは三万三千四百三円、本土のほうは五万四千七百四十三円となっております。#95
○大原委員 これは大臣もお聞きのように、医療給付費の面で言うと、沖繩の一万一千円に対しまして本土が四万九千円ですね、この医療給付費の格差というのはどこから出ておるというふうにお考えですか。#96
○戸澤説明員 現在沖繩で実施されております医療保険の内容は、いわゆる療養費払いでございまして、またその償還率は七割でございます。それからまた、現金給付につきましても、いわゆる傷病手当金というようなものがございません。そういったところからしまして、医療の受診率も低く、一人当たりの医療給付費も低くなっておるということから出る差であろうと思います。#97
○大原委員 医療機関や医師の数の比較をひとつお答えいただきたいと思います。#98
○松尾説明員 医師の数で申しますと、四百八十二人で、人口九万対五十一人、本土は百二十六・一人でございます。約半数以下ということでございます。歯科医師につきましても、人口十万対約十三・九人、本土が三十六・四人でございます。それから看護婦等につきましても、人口十万対九十五・八人、本土が二百七十五・三人という形で、かなりの格差がございます。それから病床につきましては、大体人口並みにいたしまして本土の約六〇%というところでございます。#99
○大原委員 医療機関の医師の数が非常に少ない、看護婦やその他の医療従事者が少ない、また本土の現物払いに対しまして療養費払い、七割給付、こういうふうなこと等が全部重なっておると思うわけですね。ですから、本土並み本土並みといっても、何でもかんでも本土のものを――本土の医療保険などというのは模範にも何もならぬわけだから、言うなれば支離滅裂、でたらめということだから、私はやはり沖繩のそういうような実情に沿いながら、本土のいい点は取り上げていく、そういうことで、やはり暫定措置といういわゆる立法上の便法もあるわけですから、そういう考え方を機械的に本土に一致させるというふうなことをしたって、一ぺんに医療機関や医師の数がふえるわけじゃないわけですから、医療に対するサービスが悪ければ、機会が少なければ医療費が少なくなるということも当然のことですから、そういう問題を考えながら、最も現実に即して沖繩県民の医療保障をよくするためにはどうしたらいいかという考え方でこの問題に対処すべきではないか。厚生大臣、基本的にあなたのお考えをお聞かせいただきたい。あなたは現地に行って見られておるのですから。#100
○斎藤国務大臣 大原委員のおっしゃるとおりに考えます。ただ国師あるいは看護婦、その他医療従事者の数を急速にふやすということも、これはなかなかむずかしいわけでございますが、一日も早く本土よりもこちらのほうの充実をはかっていくということが必要だ、かように考えます。また医療保険の制度その他につきましても、現状に即するように、必要なれば暫定的に特例を設けるということも必要であろう、かように考えております。#101
○大原委員 私は現地へ行きまして、これらの大きな問題、大筋の問題では議論をいろいろいたしてきました。これは厚生大臣も現地へ行かれたので御承知だと思うわけです。一つは、やはり被用者保険と国民健康保険の問題、二本立ての問題があると思うのですが、国民健康保険についてまずお尋ねいたします。
先般、これは国民健康保険は実施されていなかったわけですが、琉球立法院においてはあのような結果になって、本土よりも違うような決定がなされているということは、御承知のように県単位で、政府の管轄の範囲内で国民健康保険を運営していくというふうな立法がなされたようであります。私はこれは一つの大きな合理性を持っていると思うわけです。それを市町村というふうに本土並みにするというよりも、県単位でやりながら、県単位で民主的に運営をしていく、こういうことが私はいいと思うわけですが、この点については厚生大臣はどういう見解を持っておられますか。
#102
○斎藤国務大臣 県単位でやるか市町村単位でやるか、それぞれ一利一害がある、かように考えます。しかしながら沖繩の実情に即して立法院がこれがよろしい。こう考え、そうして琉球政府もさようだということになれば、私は沖繩の一番いい方法を選んだ、こう考えますから、したがってその結論を尊重をして、当分の間特例を認めてまいりたい、かように考えます。#103
○大原委員 これは具体的なお答えですが、もう一つは被用者保険の問題です。いまの沖繩の医療保険という制度は、たとえば家族は七割給付になっておる。そういう点は本土の五割給付よりもいいわけであります。ただし、本人が七割ですから、本土の一部負担を考えてみましても悪いわけであります。それから、療養費払い、あと払いという方式は、チェックするのにいいという考え方もあるでしょう。これは保険局や厚生省の中にも根強くあるでしょう。しかし、あるでしょうが、現物払いがいいにこしたことはないわけであります。現物払いがいいにきまっておるわけであります。特にこれは、低所得階層等はいまの沖繩における一人当たりの医療費と一人当たりの医療給付費のギャップを見ても、そのことがはっきりわかるわけであります。ですから医療費保障といたしますと、現物払いがいいわけであります。傷病手当も当然出すべきです。そういうことを考えて、黒字も八十億円近くあるわけですから、私は独自の形でひとつ考えることはできないか、こういう点を考えるわけですが、こまかな点は別にいたしまして、大筋において厚生大臣はどういうお考えですか、お聞かせいただきたい。#104
○斎藤国務大臣 被用者保険につきましては、かねてから本土並みにしたいという現地の要望でもあったようでございまするし、さように進んでおりまするから、いまその方向で進んでおります。ただ療養費払いがいいか、あるいは現物給付がいいか、いまおっしゃるように、これは現物給付に沖繩も復帰時までには変更を見るであろうと考えまするし、復帰後は現物払いでまいりたい、かように考えます。#105
○大原委員 沖繩の被用者保険は現在千分の三十の保険料でありますが、それであっても医療の機会が均等に保障されていないという点等もあって、これは黒字が出ておるわけでありますが、これを政府管掌でしたら千分の七十に上げますか。千分の三十を千分の七十に上げますか、いかがですか。#106
○戸澤説明員 現在沖繩の医療保険料率は千分の三十でございますけれども、これは保険料の対象となる賃金がいわゆる総賃金、総報酬制をとっております。したがいまして、これを日本で行なっております、いわゆる標準報酬に換算して料率を算定しますと、大体千分の四十になります。それを内地並みに上げるとなれば千分の七十になるわけでありますが、今後内地並みに本人の給付率も上げ、また現物給付にするというようなことになりますれば、医療機関の整備とも相まって受診率もふえ、医療費も相当かさむということが予想せられますので、一応原則的には内地並みの保険料を適用いたしたいというふうに現在のところは考えております。#107
○大原委員 医者の数も半分以下だし、ベッドにいたしましても少ないわけですし、看護婦にしても少ないわけです。僻地もたくさんありますし、島もあるわけです。それから医介輔とか歯科介輔とかいう特別な制度があるわけですが、しかしそういう医療サービスが悪いのに、供給面が不満足であるのに、それは千分の三十は、今度は総報酬だから千分の四十に修正いたしましても、その千分の四十を一ぺんに千分の七十に上げるんですか。そうしたら医療機関とか医者の数なんかをどういう予定でふやすか、ひとつ御答弁いただきたい。#108
○戸澤説明員 被用者保険の被保険者の九割近くは那覇、コザ、あの辺に住んでいる者が大部分でございまして、比較的医療機関の多いところでございますので、被用者保険につきましては、その給付の内容が内地と近いような給付が行なわれるのではないかというふうに考えられますので、現在のところ一応内地並みの保険料率の上で上げたいというふうに考えておるわけでございます。#109
○大原委員 被用者が医療給付を受ける医療機関については、医者の数等についても内地並みにする、こういうことですか。これは、私は具体的な例をあげればまださらに問題はあるわけですが、これは何でもそういうふうに保険料を上げていく。そんなことをやったら大騒ぎになりますよ、この問題は。ですから、私は医療というものは、特に沖繩は離れているところですから、具体的にどういう暫定措置、移行措置をとるかということを実情に即してやるべきである、こういう考えを私は一貫して持っているわけですよ。いろいろな意見はあるけれども、公務員その他意見があることは知っているけれども、これはそのほうが合理的であり、県民の支持も得るし、そうあるべきだということを言っているわけです。何でもかんでも機械的にやるということは、私は考え方を改めるべきである。厚生大臣、もう一度御答弁いただきたい。#110
○斎藤国務大臣 現状に即してやるべきだという御意見は、私も全く同感でございます。したがいまして、いままでの療養費給付を現物給付に改める。その場合の点数をどうするか。これも現状に即してきめる必要があろうと思います。それからまた、いま保険局長がお答えしましたように、被用者保険の被保険者のおられる地方は大体医師の数も相当多いところであって、医師不足のために医療が受けられないという地域はまあ少ないであろうと思いますが、それもどの程度であるかということも現実によく把握をいたしまして、そしていまの診療報酬の支払いがどう変わっていくかということと勘案をし、現状に即しまして過大に保険料が上がらないように、もし必要があれば暫定措置をとる必要があるであろう、かように考えております。今後十分検討をいたしてみたいと思っております。
#111
○大原委員 こまかな議論はあとへ回しますけれども、これは問題であるということを指摘をしておきます。それから医師あるいは医療従事者の養成ですが、これは文部省は見えておりますね。――医師の養成ですが、琉球大学にいま保健学部があるわけです。
〔澁谷委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕
琉球大学は当然に国立大学に移管になると思いますが、その保健学部をさらにもう一つ学部を設けるか、あるいは拡大強化するかは別にいたしまして、医師の養成もできるような医学部に持っていくという考え方を厚生省や文部省は持っておるかどうか。けさほども議論があったと思うが、文部省はどうも医師の養成については非常に認識不足だ、医師の技官もいないし、認識不足だということがいわれておるわけです。それはまあ別にいたしまして、先ほどから申し上げているように、沖繩の社会保障と社会福祉は全く植民地的な水準なのですね。そこでさらに基地が温存されて、そして経済大国が軍事大国に向かっているという議論があるときに、沖繩の福祉の問題が解決できないような復帰のしかたというものは、全くこれは問題にならぬと思うわけです。そういう点から考えてみますと、琉球大学を国立に移管をいたしまして、保健学部で看護婦さんや保健婦さんを養成するということはいい制度ですから、これは置いておいて強化して、さらに医師や歯科医師、薬剤師等を養成する医学部や薬学部等を補強をしていくという方針を率先してとるべきである。そういうことであって、専門家を得ることはむずかしいということは私は承知をしておるが、しかし、やはり沖繩の現地に即して教育や研究がなされるということが私は沖繩の将来の医療保障や社会福祉の前進のために非常に大きく役立つと思う。この点について、私は考えがあってしかるべきであると思うけれども、厚生大臣と文部省の考え方をお聞きしたいということが一つであります。
もう一つ、医務局、厚生省がこれを立案する際に私は頭を切りかえる問題が一つある。医大の付属病院が非常に金がかかるということでありますが、しかしそれは移管される国立病院や県立病院等を充実させて、そこにりっぱな医師を送りながら、そこのお医者さんが専門家として大学の教授ができるわけですから、そういうやり方が最近新しく議論をされているわけです。ですから単なる機械的に付属病院を本土並みに設けるということではなしに、移管をされる国立病院や県立病院を充実させて教育病院の役割りを果たす、そこには教授と兼任できるようなそういうスタッフを充実させる、こういう点等を考えながら沖繩の医療の向上について考えるべきであると思うが、厚生省と文部省の見解を伺いたい。
#112
○斎藤国務大臣 国立大学の医学部の研修病院として必ずしもその付属病院でなくて、利用できる公立病院その他研修病院として適当なものは、それを利用することが適当であるということは私も全く同意見でございまして、そのように文部省には話を進めているわけでございます。なお沖繩の国立大学に移管された場合には、そこに医学部を設けてもらいたい、これも私は同意見でございまして、文部省にはそのように話を進めてまいりたいと、かように考えております。#113
○甲斐説明員 医師不足の問題につきましては先ほど来御討議になったとおりでございまして、私どもとしましては昭和二十八年来、留学生を受け入れるという形で医学生を採用してまいっておりまして、当初できましたのは数名程度でございましたが、ここ数年におきましては、大体五十名から七十名程度の留学生という形での受け入れをやっておるわけでございます。大体一大学並みということになろうかと思いますが、四十六年度におきましても国費留学生のみで六十名を受け入れるという形の処理をいたしておるわけでございます。ところで保健学部のお話しございましたけれども、実は保健学部は四十三年度からスタートしておるわけでございますが、その時点における議論といたしましては、医師養成はいまそういう形でやっておる。そこで当面沖繩住民のために最も必要な措置としては、予防医学あるいは健康管理という面で保健学部を設置してはどうかということで設置されたわけでございます。そういう意味合いにおきましていまや三年次を経過しておりまして、まだ完成には至っておらないわけでございますが、私どもといたしましては、そういった住民の要望を踏まえまして、これからはやはり保健学部の整備をがっちりするということがまず先であろうかと思います。それとあわせまして、ただいま先生御指摘の医学部の問題も、これは医師の定着策その他パラメディカルの問題、それから医師の適正配置というような問題等々もからむと思いますが、あわせまして検討させていただきたいというふうに思っておるわけであります。
#114
○大原委員 前向きに検討するという答弁ですが、そうではなしに、いまはそういう現実を踏まえておるわけですから、特に福祉の問題は優先するということでやるべきであるという考え方ですから、特に医療の問題は最低の県民の要求ですから、そういう点においては、うんと本土と離れておるということもあって、やはり留学生の制度を設けましても沖繩に帰ってお医者さんをやるという保証は何もないわけですよ。ですから大学院等を将来設ける等も含めて、やはり現地で教育をし研究をし治療に当たるということが、私はほんとうに沖繩の人々の最低の要求に応ずる道ではないか。ですから、そのことは前向きに検討するというふうな大臣答弁というようなことでなしに、もう少し具体的な方向づけをすべきである。医者、歯科医師の養成、それから保健婦、看護婦の養成その他含めてそうですね。これはひとつ厚生大臣いかがですか。あなたは国務大臣として、しかも厚生行政を担当している責任者として、この際ひとつはっきりお答えいただきたい。#115
○斎藤国務大臣 文部省はただいま答弁されたとおりでありますが、私といたしましては、今後さらに文部大臣と、また大蔵当局とも話をいたしまして、できるだけすみやかに医学部設置の実現をはかりたいと、かように考えます。#116
○大原委員 公共投資をどんどんやるべきだ、それは住民福祉を中心とした公共投資をやるべきだ、こういうことからいいましても、ただ沖繩の復帰問題からいいましても、りっぱな大学をつくるということ、りっぱな医学部をつくるということは、これは非常に大切なことです。それで、ましてや医療保険について、保険局長は保険料を被用者については千分の三十を七十にしようということを言っておるわけですが、そういうことは本土並みにせぬでもいいのであって、そういうことではなしに、中身を充実させることが必要ではないか、こう思います。これはあとに尾を引く問題といたしまして、これから十分議論を続けていきたい。それから沖繩には准看護婦の制度があるわけでありますが、看護婦養成についてもひとつ総合的な計画を、しっかりした計画をつくりて――医療従事者の中身はそれでもいいから、とにかくどさくさの間にやるんだ、こういう面について本土の先べんをつけるんだということは私は許されないことではないかと思うわけです。看護婦養成について、准看護婦の問題も含めて若干の長期的な考え方についてお答えをいただきたい。#117
○松尾説明員 看護婦につきましても、御指摘のようにやはり沖繩の医療機関の今後の推移というものを見ながら需給関係の計画を立てるべきだと存じます。一応、私どももここ数年間のうちの大体の需給の見通しというものは立てておるわけでございます。ただもう一つ問題がございますのは、沖繩に特有の制度といたしまして、いわゆる臨時准看制度というものがございます。この点の御指摘であろうと存じますけれども、これは五年間の時限でもって琉球政府が認めておるものでございますが、八カ月の講習をもって、その終了した人たちに沖繩県の准看護婦の試験を受けさせる、こういうものでございます。復帰後におきましては、当然私どもはそれはそのままの形で沖繩県における限り准看護婦として働いていくというふうに処置をしたいと思います。しかしながら、御承知のとおりただいまの八カ月というコースでございますから、本土並みの准看とはレベルが違っております。これには復帰後一定の厚生大臣の行ないます講習を行なうということによって、本土並みの准看扱いをする、こういうことで対処してまいりたいと思っております。#118
○大原委員 ただいま臨時准看の制度は現在あるわけですが、これを再教育いたしまして准看以上に引き上げていく、それから新しく看護婦の養成計画をつくる、こういうことが両々相まって初めて医療従事者の資質の向上ということになるわけですから、機会の均等ということになるわけですから、安きにつくということで単に現状を肯定するということだけではだめだ。そういう計画をきちっと立てるべきであると思うが、いかがですか。#119
○松尾説明員 まったくそのとおりでございまして、ただいまコザあるいは那覇に高等看護学院がございます。こういうものをやはり早急に整備いたしまして拡充をしたい、こういうこと炉ございますし、また、らいの療養所自身にもいま養成施設がございません。これについても国立移管の暁においてそれを整備する。また療養所自体におきましても、国立療養所におきましてもそういう施設を整備したい、こういうふうに考えております。それからなお、准看護婦から看護婦になりますその進学課程、進学コースにつきましても計画をもってこれを整備したい、かように考えておりますので、具体的に御指摘のような線を整備計画として充実したいというふうに考えております。#120
○大原委員 結核や精神病についてはこまかいことは言いませんが、本土よりも若干改善された措置がなされておる。本土でも議論されておることは、結核や精神病を家族にかかえると、たとえ結核のいろんな治療薬が出たにいたしましても、これはたいへんなことである。精神病に至っては特にそうである。特に沖繩等では精神病の罹患率が高いわけですが、これは本土よりもいい制度をやっておるわけですから、これはいい制度として存続すべきであると思うが、いかがですか。#121
○滝沢説明員 結核につきましては全面公費負担によりまして、保健所を中心に指定医療機関等を設けないいまの段階で保健所が公的な措置として結核治療を実施いたしております。精神衛生につきましても、御指摘のとおり費用の負担について、沖繩精神衛生法の四十五条によりまして、同意入院にも公費負担の制度がございますが、われわれが今回復帰に際しまして、それぞれ対策が決定されました段階で決定いたしました方向といたしましては、結核については従来の沖繩の公費負担による医療を受け継ぎ、なおでき得る限り早い機会に指定医療機関等を設けまして、本土と同様の結核予防法による措置をいたしたいというふうに考えております。精神衛生法につきましても、現在入所している者につきましては、その実績をそのまま保障する考え方でございますし、通院医療等につきましても公費負担を導入いたしまして措置いたすような考え方に立っております。#122
○大原委員 それからハンセン氏病についても触れたいのですが、時間の関係で社会福祉施設の問題について、この格差の現状と、これが是正をいたします総合計画について聞きたいと思うのです。私も現地へ参りまして、いわゆる社会福祉施設と称せられる老人福祉施設や身体障害者更生援護施設やあるいは児童福祉施設、保育所の問題、婦人保護施設その他精神薄弱者、母子福祉、こういうもの等で三十に及ぶような福祉施設が本土には設けられておるわけです。本土でもこの問題非常に欠陥だらけであって足りないわけでありますが、しかし沖繩は社会福祉施設の全体で見てみますと、日本の全国平均でいいますと四百六十二カ所、それらの福祉施設があるわけですが、沖繩には百二十七カ所しかない。類似県をとってみましても二百九十六カ所あるわけですが、しかし沖繩は百二十七カ所である、こういうふうに本土と沖繩の格差は大きいわけです。個々に取り上げて、この後には当然議論すべきでありますが、その格差を是正するという総合計画を、直ちにはできないにいたしましても、五カ年計画等で実施をして、そしてその格差を是正するために、早急に具体的な方針を立てて、そして受け入れ体制をとるべきであると思いますがいかがですか。
#123
○加藤説明員 沖繩におきまする社会福祉施設の立ちおくれにつきましてはただいま先生御指摘のとおりでございまして、私どもも本土における社会福祉施設の充実はもちろんでございますが、さらに非常に立ちおくれております沖繩の社会福祉施設の整備には格段の努力を払う必要があるというぐあいに考えております。それで本土におきましては四十六年から五十年までの五カ年計画、約三千億の金を使って社会福祉施設を整備しようという計画を一応持っておりますが、沖繩につきましても、これは四十七年度から五十一年度までの五カ年計画というものを一応私どもといたしましては事務的に策定をいたしております。それでそれを児童とそれから社会局“両方の関係の施設を合わせまして、五年間に約六十六億程度のものを整備してまいりたいというぐあいに考えております。私どもはこういう沖繩に対する施設の整備を促進しますためには、国庫補助の割合というものを本土よりもはるかに――はるかにと申しますか、引き上げて、そしてなるべく沖繩の地元負担というものを少なくすることが、こういった施設の促進のために必要であろうというぐあいに考えますので、そういう方向で努力をしてまいりたいと思います。#124
○大原委員 いまお話しあったように、福祉施設についてはやはり費用負担の問題があるわけです。地元負担をたくさんかけてワクを与えたのではしようがないわけです。ですからそういうことを配慮しながら、本土のそういう福祉施設との間における格差、こういうものを明確にしながら、必要でないものはともかくといたしまして、必要なものは新しいものであっても福祉施設を総合的に充実強化すべきである。そういう点について、はっきりした現状の認識と計画を示してもらいたい。いよいよこれから沖繩国会に入るわけですが、そういう問題が問題である。そういう点を資料としても出してもらいたい、こういう点を強く要望をいたしておきます。それから、大蔵省の渡部主計官に聞くのですが、この間厚生省から、復帰に伴う予算上の措置について、昭和四十六年度の予算額と四十七年度の要求額をここへ表として出しておるわけですね。他のことについてもそうですが、社会福祉施設や社会保障の問題については、四十七年度の予算要求は一般的な考え方でなたをふるって査定をするということは間違いである。パーセンテージなどについて規制するということはもってのほかであるけれども、厚生省の説明を聞くと、あたかも四十七年度の予算要求がほとんど満額、一〇〇%実現できたような前提で説明をして、もっともらしいことを言って何とか切り抜けようという安易な気持ちがあるように見える。しかし、大蔵省が予算全体でこの問題を扱う場合に、特に社会保障や社会福祉の問題については、いままで議論をしたようなそういう実情と、沖繩県民の正当な要求というものを十分理解をした上で、そういう予算措置を講ずべきであると私は思うが、大蔵省はこれに対してどういう考えを持っておるか、お聞かせいただきたい。
#125
○渡部説明員 お答え申し上げます。沖繩の福祉向上のために来年度予算におきましては、われわれとしましても厚生省当局と十分話し合いを重ねまして、沖繩県の実情に即した予算措置を講ずるよう前向きに検討したい、かように考えております。
#126
○大原委員 いまの段階ではっきり言うわけにはいかぬと思うのですが、一応いまの段階では大臣答弁のような答弁を了承しておきますが、きょう私が申し上げましたことは――まだ生活保護の問題とかたくさんあるわけです。特に私が強調したいのは福祉事務所や保健所の問題です。これが建設にあたっては地元負担その他の問題もあるし、スタッフの充実の問題もある。日本では保健所は空洞化しておるわけですよ。しかし、沖繩においては保健所は大きなよりどころになる。ほかのほうが非常に貧弱であるからよりどころになるという実情があるわけです。保健所等のこれからの充実、そういう問題についても私は格段の努力をしてもらいたいと思います。これは要望です。
全体で、最初に申し上げましたように、やはり今日まで二十数年間沖繩同胞は、社会保障や社会福祉の政治の最低の要求の問題につきましては、全く放置されておったのが実情であると思います。ですからこの問題については、まず私どもは、基地の中の沖繩であるけれども、沖繩においてそういう社会保障、福祉の水準を模範的に引き上げていくのだ、こういう観点でこの問題と取り組む必要があるのではないか、これが二十五年間空白にして、そして戦争の犠牲を放置しておりましたそういう人々に対する私どもの政治の上の当然の責任ではないかと思うわけです。そういう点では他のほうの大臣などと同じようにのんべんだらりとこういう問題と取り組むのではなしに、医療保険の問題で非常に忙しいわけだけれども――あまりメリットのある忙しさじゃないけれども、とにかく忙しい。忙しいということはわかるが、こういう問題について、基本的な態度について十分議論をされて、これからの沖繩国会における審議に臨んでもらいたい。これは総理大臣以下全部考え方を統一して臨んでもらいたい。その前提として、きょうは若干の点について指摘をしながら質問をいたしたわけでありますが、最後に厚生大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
#127
○斎藤国務大臣 大原委員のお考えと全く同意見でございます。とにかく戦時中、戦後、いままでの沖繩県民の方々の状態を拝見をいたしますと、復帰をいたしました以上は、社会福祉の面におきましても、あるいは産業基盤の面におきましても、一日も早く本土より以上の状態にすることが、これは本土の責任である、かように私も感じますし、また内閣全体もそういう姿勢であるわけでありまして、近く沖繩国会に諸法案等も提案をいたしますが、そういうつもりで提案をいたすわけであります。社会福祉関係におきましても、あるいは補助率その他の点についても、本土よりもよくめんどうを見るべきものは見るという姿勢で臨む予定でございます。#128
○増岡委員長 代理 次に、島本虎三君。#129
○島本委員 きょうは私の場合は特に産業廃棄物及び清掃に関する法律の実施、これを中心にして厚生省並びにその関係省庁の皆さんの意見も聞いておきたい、こういうふうに思って出てまいりました。まず厚生大臣でございますが、厚生大臣の場合には、特に私が言う必要はございませんが、公害の問題は、環境庁ができるまでの間、ほとんど業務は厚生省がやっておったわけであります。そしてその他それぞれの各省庁に対して公害に関しての、いわば指導権というようなものがあえてあるとすれば、厚生省が持っておった、まさに重要な地位にあったわけであります。環境庁ができてから、現在、それぞれのスタッフをその方面に送りました。ただ大事な点の一つとしては、御存じのように、産業廃棄物の処理及び清掃法、こういうような法律の実施は厚生省でやっておるわけです。厚生省も国民の全体に通ずるこういうような問題についてはっきりした考えと指導力を発揮するのでなければ、これまた公害に対しての行政はうしろ向きになります。環境庁は環境保全のことを一生懸命やる。しかし、いわゆる排出された公害あるいは今後排出されるであろう公害に対して、まず自分の分掌の中ではっきりした態度を持たなければならない。各省庁の中で、厚生省の立場は重要であります。それで、廃棄物の処理及び清掃法に対しましての政令、省令並びにこれに類する細則は全部できて、これを実施に移してありますかどうか。また、これを移すにあたっての厚生省の一つの決意をまず先に伺っておきたい、こう思うわけであります。
#130
○浦田説明員 昨年末の臨時国会で成立いたしました廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、その段階で政令は九カ月以内ということで定められたわけでございまして、その後作業を進めまして、先般九月二十二日に関係の政省令ができ上がりまして、九月二十四日から全面的に適用されることになったわけでございます。しかしながら、一部の廃棄物の処理基準その他につきましては、なお若干の猶予期間を設けてやるというものがございます。#131
○島本委員 その一部というのはどういうようなものですか。#132
○浦田説明員 たとえば廃油の処理の場合、焼却施設を設けて廃油を処理する場合でございますが、これが四十八年の三月三十一日まで、有機性の汚泥の焼却あるいは汚泥の焼却につきましては四十七年の六月三十日まで、廃プラスチックあるいはゴムくずにつきましては、破砕または焼却して処理することになっておりますが、これにつきましては、四十八年三月三十一日までといったようなものでございます。#133
○島本委員 そういうふうにして肝心の、廃棄物の中でもいま一番問題になっているその処理については、ずっと年限が残されている、あとのほうにずれている、こういうふうになってくると、厚生省所管にかかるこういうようなものの扱いは、法律ができても、実施段階に移るまでの間に、相当間があるということになってしまうのじゃないかと、こう思うんです。こういうようなことで、この問題に取り組んでいるのだということに対しては、どうも疑義があるんですね。もっと早くこれができないのですか。ことに、いろいろなセルロイドのようなものですか、こういうようなものに対しても、すでに技術が開発されて、水と熱を加えることによって石油にまで還元できるということが、けさあたり新聞に発表されているんです。これの処理をずっと先に残しておく、どうもこういうような考え方は、私としては納得できないわけです。赤どろの問題に対しては、どういうふうになっておりますか。#134
○浦田説明員 赤どろにつきましては、これは産業廃棄物といたしまして、その中で汚泥という取り扱いで、海洋への投入、その他につきまして、一定の条件はつけますけれども、原則的には、その性質からいきまして投入処分可能なものというふうに考えておりますが、この海洋投棄の方法とか、あるいは海域などにつきましては、これは御案内のように、海洋汚染防止法の施行令によって規定されることになっておりますので、それに従っていくという考えでございます。#135
○島本委員 鉱滓ではなくて、それは汚泥である。したがって、海洋に投棄しても差しつかえないものである、こういうふうなことをきめたと承りました。先般の国会では、私が言う必要もございませんが、すでに海洋汚染防止法が制定されたわけです。この海洋汚染防止法で、いろいろな規制がされましたが、これはまた油を中心にして政省令にゆだねる点が多過ぎるわけです。赤どろを投げてもよろしいということ、海洋汚染防止法との関係で、海洋を汚染しないという根拠をはっきりさしていただきたいと思います。
#136
○浦田説明員 赤どろの主成分でございますが、これは先生御案内のところでございますけれども、酸化鉄、それから酸化アルミニウム、酸化珪素がおもでございます。これはいずれもその性状からいきますと、天然に、海底に堆積しております赤粘土というものと類似しているというふうにいわれております。したがいまして、もちろん、廃棄物処理法の中ではできるだけ陸上処理するようにというきめがございますけれども、その廃棄物としての性質に関する限りでは、海洋への投入処分は一応可能なものではないかというふうに考えております。#137
○島本委員 それで、海洋汚染防止法によって、海洋を汚染しない、こういうような一つの根拠をあげてもらいたいということです。海洋汚染防止法は運輸省関係ですか、それともこれは水産庁関係ですか。この法律の所管はどっちですか。その所管のほうからまず答弁してもらいます。#138
○岡安説明員 いま、海洋汚染防止法の所管というお話でございましたけれども、海洋汚染防止法は運輸省の所管でございます。ただ、お話しの処分等の基準に関しましては、環境庁がその最終処分の基準につきましてはつくるということになっておりますが、環境庁と運輸省と共同で海洋汚染防止をはかっていくというような関係になろうかと思っております。#139
○島本委員 「微細泥土は底棲動物の呼吸口に纏着して窒息死させ、また海藻に纏着すれば腐欄死させることも、またプランクトンに纏着すれば、土粒子と一緒になって沈降し、海底の泥土と化する。これはみな淡水性の微細泥土が、海水中で凝集する際の障害機構である。単なる河川流下の泥土などと、軽視するわけにはいかない。この微細泥土の問題はその後、水力発電所の堰堤排出泥土の浅海障害として現われた。」こういうような一つの論文もございます。そうすると、これはもう水中を逆に汚染する、大きく言うと海洋を汚染する、こういうようなことにならないかどうか。また、この及ぼすところ、水産動植物に影響ありというふうに当然考えられるのじゃなかろうか。これに対して水産庁並びに運輸省、保安庁、両方の御高見を、この際ですから、ひとつ拝聴させていただきたいと思います。#140
○藤村説明員 水産庁といたしましては、赤泥の処理は陸上処理を原則としてやってもらいたいという立場をとっておりますが、やむを得ず海洋投棄を行なう場合には、水産動植物への影響がありますので、この影響について、現在、東海区水研を中心といたしまして、北海道区水研、東北区水研の協力を得まして実験をやっておりますと同時に、従来の各種の調査報告の分析、検討を行なっております。また、実際に海洋投棄をして、それの追跡等の調査をいたしまして、影響を調査している段階でございます。#141
○島本委員 こういうような状態なのに、海へ捨ててもこれはもう影響ない、汚濁に関係ない、こういうような結論をお出しになった厚生省、この根拠を、この際ですからひとつはっきり承っておきたいのです。これは厚生省ですか、環境庁ですか。――どっちでもいいです。#142
○岡安説明員 いま水産庁のほうからお話がございましたとおり、赤どろにつきましては、処分は陸上処理をたてまえといたしております。陸上処理が非常に困難であるというようなときに限りまして海洋投棄を認めるということにいたしておりますが、その際におきましても、まずいろいろ条件がございまして、水産動植物の生育環境に支障が生じないように、そういうような捨て方を、場所なり方法なりにおいてするというようなこととか、さらに赤どろがすみやかに海底に沈降し、堆積するような措置を講ずるということを条件にいたしまして海洋投棄を認めるということにいたしておりますので、いまお話のとおり捨て方、また捨てる場所等によりまして水産動植物に影響があるというような場合には、それは捨てさせないというような指導をいたしたい、かように考えておるのでございます。#143
○島本委員 捨てさせないということは、陸上処理の機能を持たない場合には操業停止ということになるわけですが、それくらいの強い覚悟をお持ちですか。#144
○岡安説明員 私が申し上げましたのは、そういう方法なり、そういう場所を選ばなければ捨てさせないということを申し上げたわけでございまして、そういうような影響のない海面、またそういうような影響のない方法をもって投棄をすればこれは可能であるということを申し上げたのでございます。#145
○島本委員 水産庁もいらっしゃいますが、これは襟裳岬から恵山岬を一線に結んで、大体その地点へ投げる初めの構想であったようです。しかしそれよりもっと沖のほうに持っていって投棄してもよろしいという構想がまた出されたわけです。北海道を離れれば離れるだけこれは青森に近くなるのでありまして、北海道から離れさえすれば、青森に近い近海へこれを捨ててもよいということになっては、これはたいへんじゃないかと思うのです。この辺は、捨ててもいいという場所があるとするならば、日本の近海ならばどの辺なんだ、どういうところへ捨てればいいのだ。日本海溝、ほとんど関係のないようなその辺まで持ってきて、技術的な検討等もして、全然水産動植物に関係ないようにして捨てさせる、こういうようなことまで技術指導は当然していかなければならないはずのものであると思うのです。そうでないと、これはとんでもないことになるわけでありますけれども、当然場所も考えるとするならば、その辺も考えているだろうと思うのです。これは海に捨てさせてもいいのだという見解を出した厚生省の根拠を知りたいのです。こういうふうにして捨てるといろいろと障害が起きるのです。なぜ厚生省のほうではこの廃棄物処理清掃法によって出す場合には海に捨ててもよろしいという見解に踏み切ったか。かつて公害防止の第一線に立った厚生省が、今度は公害排出を認める立場に立つというのは、これはちょっとおかしいのではないかと思うのですがね。これは環境庁の圧力によってそういうふうにさせられたのかどうか、この辺も重大であります。環境庁がそういう圧力を厚生省にかけて海に捨てさせるようにきめたのかどうか。これも聞き方によってはとんでもない大きい問題なんであります。環境庁ができて日本の公害がますます激烈になった、中小企業基本法ができて中小企業の倒産がますます増加した、農業基本法ができていよいよ日本の農業は斜陽化した、労働基準法ができていよいよ日本の労働基準行政が弱化した、いろいろ基本法ができたあとにはこういうふうに退歩した現象が皮肉にもあらわれてきているのです。環境庁ができて環境を汚染したということになったら、とんでもない世界の笑いものになるのです。そういうような見解を踏まえて、やはり投げると決定するまでの間、これは相当慎重に考えなければならないはずの問題であると思うのです。投げさせないという基本的な考え方はあるけれども、もうすでにいままで投げておる各会社やその工場の数が多過ぎて、これは禁止するわけにはいかない。そこでそういうような措置をとったのじゃないか、私、そういうふうに同情もしないわけではないのであります。一体これはどういうことなんでしょうかね。厚生省の御高見をもう一回拝聴させてください。#146
○岡安説明員 この産業廃棄物の政令といいますか、それは一般的には厚生省の所管でございますけれども、先ほど申し上げたと思いますけれども、最終処分の基準につきましては環境庁が一応所管ということになっておりまして、厚生省その他関係官庁とも十分御相談をいたしまして、この政令の中に組み入れたという経緯でございます。環境庁といたしましても、七月一日に発足いたしたわけでございますけれども、この処分の基準につきましては、この法律ができましてから、厚生省が生活環境審議会等でいろいろ御審議を願いました結果もございますし、また環境庁といたしましても中央公害対策審議会の廃棄物に関します部会に諮問をいたしまして、その御答申を得てこのような基準をつくったわけでございます。もちろん私どもは、廃棄物の処分によりまして二次公害、環境の汚染が起こることを防止しなければならないという立場でもって各種の廃棄物の処理の基準をつくったわけでございまして、赤どろにつきましても、私どもはこの投棄によりまして二次汚染、環境汚染が起きないようにという配慮をいたしたつもりでございます。なるべくならば、これはやはり陸上処分が望ましいというふうに考えておりますけれども、赤どろの性質等につきまして、先ほど厚生省からお答えございましたとおり、処分の場所、また方法等を厳重に規制をいたしますれば、必ずしも海洋の汚染につながらないで海洋を投棄場所にすることができるというふうに考えまして、こういう基準をつくった次第でございます。#147
○島本委員 日本国じゅうでアルミナを生産している会社の数と、その月間の排出する赤どろはどれほどになっておりますか、通産省。#148
○久良知説明員 現在アルミニウムの生産工場は十二工場ございまして、生産量は四十五年で約七十八万トンでございますが、このアルミニウムの精錬に使いますアルミナの生産工場は、現在三会社、三工場が操業いたしております。年率にいたしましてアルミナの生産量は、昭和四十五年で見ますと百三十五万トンでございますので、ただいま先生の御質問の月間幾らかという点につきましては約十一万トン強である、そういうふうになるわけでございます。ただいまのアルミナの生産に対しまして、赤どろは年間で乾量に換算いたしまして約八十六万トンでございますので、乾量に換算しまして月間では約七万トン強という数字になるわけでございます。
#149
○島本委員 それらの廃棄物は、現在どういうふうにして全部処理されておりますか。#150
○久良知説明員 ただいまアルミナの生産工場が三工場あると申し上げたわけでございますが、そのうちの二工場につきましては、これは海洋へ投棄をいたしております。一工場は海面の埋め立てに赤泥を使用いたしております。#151
○島本委員 現在建設中の三井アルミにおいては、これは公害防止の見地から海洋投棄計画を変更して陸上処理することになった、こういうような報告が来ておりますが、いまの報告の中にはこの三井は入っていますか。#152
○久良知説明員 現在アルミナを生産し、赤泥の処分をやっております工場が三工場でございまして、三井アルミにつきましては、これは明年から開始をする工場でございますので、ただいま私のお答え申し上げた工場の中には入っておりません。#153
○島本委員 じゃ、その三つというのはどことどこですか。#154
○久良知説明員 三工場と申しましたのは、日本軽金属の清水工場、昭和電工の横浜工場、住友化学の菊本工場、この三工場でございます。#155
○島本委員 その住友化学ではどういうふうにして処理していますか。#156
○久良知説明員 住友化学の菊本工場は、投棄量が年間乾量にいたしまして二十九万トンでございますが、工場から約十キロメートル離れました多喜浜塩田あとにパイプで流送をいたして埋め立てを行なっているものでございます。塩田あとの面積は約六十九万平米というふうに聞いております。#157
○島本委員 やりようによっては、陸上処理もそういうふうにして可能なんですがね。なるべくこれは陸上処理させるように指導して、水質汚濁または海洋汚染、こういうようなことをさせないようにするほうが、これからの一つの行政としてのやり方だと思っているのです。ことにこういうような問題については、私が言うまでもなく、水産庁自身では漁業を守る立場、漁民を守る立場から、当然これに対してはひとつはっきりした見識を持っていつも臨まれなければならないはずなんでありますが、どうもこの辺に対しては受け身のように思いますが、この点では私どもは残念でしようがありません。海洋に投棄する場合を考えると、どういう方法が漁業に被害がない方法ですか。#158
○藤村説明員 先ほど申し上げましたように、現在東海区水研で調査中でございますし、現在やっております日軽金あるいは昭和電工の投棄方法につきましても、実際に立ち会いましてその方法を調査いたしておりますが、またこれと別に、北海道庁といたしまして、赤泥処理対策調査委員会というものをつくりまして調査をいたしておりまして、その中で赤泥の物理的調査、科学的調査、赤泥の処理方法それから赤泥の海洋投棄による水産生物への影響というものを調査いたしておりますので、この委員会と十分連絡をとりまして、投棄方法あるいは投棄場所について検討をいたしておるところでございます。#159
○島本委員 これは一言でいいんです。もし海洋投棄をしなければならないような状態でも、海洋汚染にはならないこと、それから海中の動植物に影響のないこと、こういうような投棄方法をとるのでなければならないと思います。これは単に日本だけの問題じゃなく、いま日本の海洋汚染は、油濁防止の問題と一緒に世界から指弾されているのであります。そういうような状態の中で再び海洋投棄を認めるというような行き方はとるべきじゃない。もしやむを得ずとる場合でも、いまのように全然海洋汚染をしない、水質を汚染しない、水産動植物には一切影響ない、この二つの原則だけはっきり確立してからでないと、これは許可すべきじゃない、こういうように思うわけであります。この点では環境庁どういうふうに考えておりますか。#160
○岡安説明員 私どももそういうふうに考えまして、そのように指導いたしたいと考えております。#161
○島本委員 じゃ、その結論が出るまでの間は一切させないということですね。#162
○岡安説明員 現在早急に処分を予想されますのは、北海道におきます日軽金の工場でございますけれども、これにつきましては、先ほどお話ございましたとおり、北海道庁で陸上処分の方法――かりに陸上処分が不可能なような場合には、どういうような方法でどういう場所で海洋投棄をするか、その場合に海洋汚染がないように、また水産動植物に影響のないように、そういう方法を検討中であります。それらの結論を待ちまして、いまお話がありました原則に照らしまして、原則に合致した場合にのみ海洋投棄を認めるという方向で指導をするつもりでございます。#163
○島本委員 いますでに日軽金の清水工場と昭和電工の横浜工場では、三宅島沖へ黒潮に乗せてこれを投棄しているようでありますが、これは現在までやっておって、これが世界の指弾を受けるような一つの原因であるということ。これからの問題については陸上処理を強行するが、いままでやってきたこういうようなものに対して陸上処理に転換させるような指導を考えるかどうか、これはひとつどっちからでもいいのですが、この際ですからはっきり伺っておきたいのであります。#164
○岡安説明員 やはり海洋投棄につきましては、今回の政令によりまして陸上処理が不可能な場合、非常に困難な場合に限りまして海洋投棄を認めるという原則でございますので、現在海洋投棄をいたしております物質、また工場につきましても、当然陸上処理が可能であるならばそのように切りかえるというふうに指導すべきであり、私どももそういうふうに指導いたしたいというふうに考えております。#165
○島本委員 現在はそのまま流しているのです。しかしこれからのところ、もししょうがなくても、原則として水産動植物に関係ないこと、それから水をよごさないこと、こういう条件でこれをやらせるというのです。いままで海に投げておった昭和電工並びに日軽金清水工場の問題についても、今後そうきめたならば、現在やっているものを、この措置を行なわせるようにしないといけないのではないかということなんです。現在あるものに対してほとんど法律は底抜けなんです。私もそういう点からしてこれはほんとうに残念なんです。どうも現在あるものに対しては弱過ぎるのですよ、既設の官庁は。自然公園法なんかりっぱな法律があるのです。それでも今度は自然保護法という法律をつくらなければならないような状態になっているのです。なぜかというと法律に抜け穴があって、現行法ではどうにもならないからです。ですからそういうようなことをしないで、現行法を十分改正するなりして、こういうようなしり抜けになる点を防ぐのでなければだめだということですよ。私はその点だけは強力に要請しておきたい、こういうように思うのです。こういうようなことになってまいりますと、きょうわざわざ保安庁からも来ていただいておりますけれども、海洋汚染防止法、これを実施するにあたって最近いろいろと問題が起きているようですね。どっかで船が転覆したり、転覆じゃありませんが、座礁したり油を流したりしている。しかし、これはどういうようなものですか。海洋汚染防止法の中には漁業についての保護がほとんどうたわれておらぬようです。海はよごす、よごすことに対しては処理するが、よごされる側に立つ職業、漁業に対しての保護が抜けておるようであります。それから同時に廃棄物の対象、その投棄場所、方法、こういうようなものが全部政令にゆだねられておりますから、これは今度厚生省のほうのいわば廃棄物の処理及び清掃法、この決定によらなければならないわけであります。全部それと一緒のやり方をするわけです。そうするとどこか一つゆるい基準で認めてしまうと、あとは右へならえでずっといってしまう。法律はできても水はきれいにならないということになってしまうのです。抜け穴が多過ぎるのです。そして今度政令だけでなくて、石油業者などの廃油処理施設の設置、これを義務づけるという、こういうような一つの重大な点が抜かされてあるのです。義務づけられないから、簡単に沖へ行って投げてしまう、海はやはりよごされる、これがやはり一つの海洋汚染防止法の欠陥なんです。その欠陥の法律をもって海をきれいにしようとするのがいまの保安庁の行き方なんです。現行法並びに行政的な指導によって、この点万全を期し得られましょうかどうか。ひとつ申しわけありませんが、貞広警備救難部長の御高見をこの際拝聴させてください。
#166
○貞広説明員 ただいま申されますように、船から油でよごしたり、廃棄物が海に流れてよごれたり、そういったことはございます。しかしながら、海難等でやむを得ない場合のほか、私どもではただいま、海洋汚染防止法で手ぬるい点もございますけれども、そのうちにそれぞれの取り締まり基準も明確にされることでございまするので、それまでの間私どもではでき得る限り精一ぱいの努力を続けておる次第であります。そういう取り締まりの基準ができるまでの間といえども、そういう関係の省庁と連絡を密にして、基準ができたならば、施行前であっても行政指導によって海洋の汚染の防止に精一ぱいの努力をしてまいりたい、かように考えております。#167
○島本委員 海洋汚染そのものは最近のような情勢ではいろいろと、これは水を汚染するだけではなく、水産資源を枯渇させ、赤潮その他の原因にもなっておる。工業がこれだけ発展し、この狭い島でやっておるのですから、当然そういうようなことは予想されておったところなんです。しかしながら、法律のほうが事象が発生してから、あとを追っかけるようにこれを行なわれておる。しかし、考えようによっては、これはすべて資源として考えて指導すべきなんです。赤どろとして投げるから、これは問題になる。これは資源に還元できないかどうか。たとえばかつてはカドミウム、こういうようなものも知らないで流しておった。戦争中はものすごく流しておったらしい。いまはああいうふうにイタイイタイ病が発生している。しかし、いまやカドミウムそのものは、原子力の平和利用に対しての中性子制御材としても、それからまたメッキその他のいろいろの重要な一つの金属として、神岡鉱山では全日本の生産量の約一九%を生産するに至っておるわけであります。そういうふうにして考えると、病気にさしたり公害だと思わせるのがおかしいのであります。ですから、いまのこの産業廃棄物また一般の清掃、こういうような法律の中で、これはすべて資源であるという考えに立って、もっともっとこれを検討した上に立って科学的な処理、また科学的な一つの資源としての開発、こういうようなものをいまや考える段階にきているのではないか、こういうふうに思うわけであります。この方面はどうも足りないのではないか。この際ですから、各省庁――厚生省を中心にして十分スタッフを動員してこれを考えてやってほしい。やはり硫黄山がつぶれる。こういうふうにして中近東のほうから硫黄分の多い油が来る、それをなまだきすると一酸化炭素その他、いろいろな公害病を発生する。発生させないために脱硫装置をする。純粋な硫黄がとれる。そのために硫黄山がつぶれる。これはどうも回り回ってきているようでありまして、行政や政治の手が届かない、こういうふうにやってきてますが、資源そのものを考える場合には、公害として投げてしまうものはすべて資源でありますから、閣議にはかって、この点等も十分考えて――清掃方面の担当はこれも斎藤厚生大臣、医療行政だけではございませんから、この方面にもひとつ十分活を入れて、そうして資源の再生、こういうような見地からもう一回厚生省を中心にして考えていってほしい。このことを一つ要望しておきたいと思うのであります。これは厚生大臣に高邁なる御見解をひとつ表明願って、この辺にしておきたいと思うのであります。#168
○斎藤国務大臣 産業廃棄物あるいは家庭廃棄物においても同様でありますが、これを処理、実行するのは一応厚生省の所管になっておりますが、その面から考えましても、つくづくただいまおっしゃったとおりに私は考えます。先般の宮崎の一日内閣におきましても私は、これから、ことに二十一世紀の日本の資源ということを考えると、資源は非常に大事なものであるから、これらを再生、そして再使用するという方向に進まなければならないということも申しました。また政府におきましても、その気持ちでいろいろ再使用という面を研究し、その方向に進もうという姿勢を示しているのであります。ただ今日は、実験上はできても、それでは採算に合わぬというようなことで捨ててしまう面が多いわけでありますが、これらの点は将来の資源を考えますと、採算に合わぬものも、これは採算に合うような政策をとってやるべきではなかろうか。通産大臣や企画庁長官にもその点を進言をいたしておりまするし、同感であるということで、その方向に進もうといたしておるわけでございます。#169
○島本委員 大体基本的な問題だけきょうはここで厚生省の意見を中心にして聞きました。そういうようなことで今後厚生省も一念発起してがんばるようでありますから、私はこれで了解して質問はやめておきたい、こういうように思うわけであります。しかし、やめると言うと皆さん方にやっとするので、この点だけは私は少しどうも不愉快であります。しかし、皆さんのこれからの健闘と大いにがんばってやってもらいたい、このことだけは心から要請いたします。環境庁だって、最近少し弱過ぎる。環境保全に対してだけは力を入れているけれども、出ている公害に対してはまだまだ少し力が足りない。かつては橋本厚生次官がいたころには、この問題に対しての努力、取り組みのしかたは異常なるものもあったわけです。しかし最近は、どうもこの点は私としてはうしろ向きとは言わぬけれども、まだまだ少し足りないきらいがある。これは遺憾である。水産庁に至っては、自分が、水産庁そのものは漁業と漁民を保護する立場にありながら、最近は少し熱心になってきたけれども、いままではあまり熱心じゃない。ことに通産省に至っては、産業優先がもうすでに去年の暮れに消えたということをいつの間にか忘れてしまって、最近はまた産業に対してゆらりゆらりと、優先論は唱えないまでも、行動にあらわしている。これはなかなかいけない。それと同時に、この広い海洋をいろいろと巡視し、なお海洋汚染防止法を実施するたてまえに立っている運輸省並びに海上保安庁、遠慮しがちであってだめなんです。予算とスタッフの要求は遠慮しないでやるべきです。これは必ず、五%削れと言うと、運輸省で削られるのは全部保安庁じゃないか。こういうようなことについて技術陣を動員して、海洋の保全のために全きを期するその姿勢はなっておらない。もっと強い強い態度で今度皆さん一致して当たるようにしなければならないし、今後は公害というようなものは資源として十分活用することを閣議にかけて、そしてこれからの日本の公害を全面的に、災いを転じて福にする、こういうようなことで大臣にがんばってもらいたいことを心から要請し、期待し、お願いして、これでやめます。
#170
○増岡委員長代理 次に、古寺宏君。#171
○古寺委員 最初に厚生省のじん不全対策についてお伺いをいたしたいと思います。厚生省は人工じん臓整備五カ年計画という構想をお持ちのようでございますが、その内容についてかいつまんで御説明を願いたいと思います。
#172
○松尾説明員 人工じん臓の計画につきましては、学会等の意見を十分徴しました上で立案をしておるわけでございまして、大きな柱といたしましては、何よりもやはり人工じん臓、人工透析の装置を全国的に整備をするということが第一でございます。それから第二の点といたしましては、こういう装置を新しく使うにあたって専門家の養成ということが必要であろう、そういう専門家の養成も実施に移したい。それからさらに、その効果自体をわよりよくいたしますために、これは学会と相談をいたしまして、いわば使用基準とでもいうべきそういう指針をつくっていく、こういうことが第三の点でございます。それから第四点といたしましては、御承知のとおり、しばしば御指摘にもございましたとおり、健康保険の本人を除きますれば、かなりの自己負担がかかる、このためにせっかくの装置も使えない、こういう問題がございますので、それの費用負担をしていく、こういうことが骨子でございます。#173
○古寺委員 厚生省の五カ年計画の基礎になりました調査の内容でございますが、非常にこれは実態からかけ離れた、実態の調査が不十分な上に立った計画であるというふうに考えられるわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。#174
○松尾説明員 現在、じん臓疾患によりますところの死亡者、約一万一千名でございます。アメリカあたりでの人工じん臓の適用率はこの死亡率をもとにした場合に約二〇%、こう踏んでおるわけでございます。しかし、日本のじん疾患のタイプはアメリカとやや違う、こういう点がございますので、じんの専門学会の方々と御相談をいたしまして、アメリカよりも高い適用率の三〇%というところから算出いたしておるわけでございます。それに基づきまして、現有の台数を引いた残りの整備をする、こういう計画であります。なお、五カ年計画と申しますようなことが、五年たってすべて必要な台数が全部整備されるというふうにとられがちでございますけれども、これはそういう性質のものではございませんので、その年に必要とするものについてはすべてこれの装置が間に合う、こういう形で整備をしなきゃならない。その年、その年に整備をしていくということが必要でございますので、そういう意味で計画をしておるものでございまして、必要数を五年たったら全部そこへようやく到達するという通常の計画とはその点違っておるわけでございます。#175
○古寺委員 かりに一万一千名といたしますと、その三〇%が人工じん臓によって生命を延ばすことができると仮定いたしますならば、一年間に三千三百台の人工じん臓というものが必要になるわけでございますが、これに対して現在わが国にある人工じん臓の数というものはわずかに六百六十六台でございます。こういう点からいたしますと、毎年二千五百名以上の方々が人工じん臓がないために不幸な転帰をとっておられる。これを一日も早く救済するためには、早急にそれだけの台数、施設、また人工透析を行なえる医師の養成やあるいは透析士の訓練というものも必要になってくるわけでございますが、そういう点から考えますならば、今回の厚生省の構想というものは非常にこの実情からかけ離れた、そういう構想のように考えられるわけでございますが、その点についてはいかがでございましょうか。#176
○松尾説明員 おっしゃるような数でございまして、その数を現有台数を含めまして来年なら来年にすべての患者に適用する、そういう計画を組んでおるわけでございます。なお、台数につきましては、最近御承知のとおり、多人数同時使用のような装置ができておりますので、私どもとしては一台の装置というもので四人用ということを考えて、ただいまのような対象患者をその年にすべて適用するようにしたい、こういう計画でございます。なお、その中で御指摘のように、それによって翌年まで生存していかれるという方はそのままその装置を翌年も使わなければなりません。したがって、そういう累積をずっと積み重ねていきまして、各年における必要台数というものを整備する、こういう計画でやっておりますので、漏れのないような形で計画をつくったつもりでございます。#177
○古寺委員 厚生省では三〇%というふうに人工透析の対象をお考えでございますが、私も今回ヨーロッパを回りまして、いろいろ各国の人工じん臓の実態を調査しながら、向こうの専門家ともいろいろお話をしてまいったのでございますが、八〇%は救済できる、こういうふうに対象になるということをお話ししている専門家も相当いるわけでございますが、そういう点をはたして厚生省は考慮に入れてこの計画をお考えになっておるのかどうか。アメリカのデータによってこういう構想を立てられたというお話でございますが、もしかりに八〇%の人が人工じん臓によって救えるとするならば、これは非常に残念なことになると思うのでございますが、その点はいかがでございましょう。#178
○松尾説明員 先ほど申しましたように腎学会の専門家の方々にお集まりをいただきまして、ことしのいわゆる検討費の中でいろいろ検討していただいたわけでございます。その際に、いま申しましたように、アメリカにおける委員会等の一つの意見というものが死亡数を基準にした場合の二〇%ということで現在行なわれておる。しかし日本のタイプというものは、多少そのじん臓の病型が違っておるという点を十分考慮して三割という線を出したわけでございます。おそらくいまの日本の学会の意見としましては、ただいま申し上げたような数値が一番妥当な線であろうかと思われます。ただ将来人工じん臓の適用の基準なり幅なりというものが、現在のようなやり方よりも変わってくるということであれば、またその率も変わるかと思いますけれども、そのときはやはりそういう段階に応じて修正をすべきだと存じます。#179
○古寺委員 この人工じん臓の施設をつくる場合には相当の費用が必要でございます。現在愛知県等において私的の病院においても人工じん臓のセンターをつくっているようでございますが、こういう施設に対しては全くいままで国からの助成がございません。今後こういうような人工じん臓のセンターをつくる場合にどのくらいの助成をなさるお考えであるか、御見解を承りたいと思います。#180
○松尾説明員 来年度予算で私どもが考えておりますものは、人工じん臓の整備といたしまして約五億五千万でございます。一台約五百二十五万円程度の装置を標準にして考えております。それの三分の一というようなものをそういう公的な医療機関に補助したい、こういうふうに考えておるわけでございます。#181
○古寺委員 そういたしますと、これは人工じん臓の装置のみの予算であって、考え方であって、施設に対する予算の考え方は全然持っていないわけでございますか。#182
○松尾説明員 現段階といたしましては装置だけを考えております。#183
○古寺委員 そういたしますと、かりに人工じん臓が機械を購入できたといたしましても、施設がなければこれは人工透析を行ない得ないわけでございます。施設をつくる場合に、センターをつくる場合には非常にばく大な費用がかかるわけでございますが、そういう点についてはどういうふうに対処なさるお考えですか。#184
○松尾説明員 施設の中で、たとえば公的な機関がいろいろな、それに付帯いたしますところの建物とか部屋をつくるとかいうようなことであれば、一般の公的な場合でございますと、当然これを融資の対象にしていく、こういうことであろうかと思います。#185
○古寺委員 次に、人工じん臓の国産化がなかなか進んでいないようでございますが、各国の人工じん臓を見ますと、最近は非常に小型のものが開発されております。こういうものを購入することによって、いままでのような大きな施設でなくても人工透析が安い費用で行なえるようになると思うのでありますが、わが国の人工じん臓の開発については、どういうふうにこれを推進していらっしゃるでしょうか。#186
○松尾説明員 現在、わが国の使用台数からいいますと、約六割が外国製品だということになっております。御指摘のとおり、やはり国産化という問題と、それからさらに小型化という問題が当然必要な要請でございます。したがいまして、私どもは、昭和四十四年度の新医療技術の研究費以来約五百万から九百万という研究費を出しまして、国産の人工じん蔵の開発研究、あわせて小型化の研究というものの助成をしてまいっておるわけでございまして、今後もさらにこういうことを引き続いてやってまいりまして、国産の優秀な機械の推進をはかりたい、かように思っております。#187
○古寺委員 せっかく人工じん臓センターができましても、一カ月に人工透析の費用が四十万円から五十万円くらい必要であるというふうにいわれております。このいわゆる人工透析に対する費用については、今後全額公費負担でこれを軽減するお考えをお持ちのようでございますが、その点はどうでございましょう。#188
○松尾説明員 最初に柱で申し上げましたように、人工透析をいたします場合の自己負担というものが非常に大きい。これが障害になるわけでございますので、いわゆる社会保険の本人の場合は別といたしまして、自己負担のある部分については、その部分を公費で見よう。それの具体的なやり方といたしましては、更生医療並びに子供の場合には育成医療というもののワクの中でこれを見ていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。#189
○古寺委員 昨日、厚生省のいろいろな計算の基礎になった考え方をお聞きしたのでございますが、いままでは人工透析を受ける方は、健康保険の本人あるいは労災保険、生活保護の適用を受けている方が大部分を占めております。さらに、一部の相当ゆとりのある方は家族負担でもって人工透析を受けているようでございますが、そのほかの、いわゆる健康保険の家族あるいは国民健康保険の被保険者等におきましては、ほとんどが人工透析を受けられないというような実情でございますが、そういう点についても厚生省は十分に検討をなさったんでしょうか。#190
○松尾説明員 御指摘のように、現状では被用者の本人が受けている場合が非常に多いという実態でございます。しかしながらこういう制度ができれば、当然そうでない方が受けてくるわけでございますので、私どものいまの積算といたしましては、現状よりもさらに自己負担の方が多くなるということで、対象人員の約三分の一というものが自己負担のある人として大体計算をいたしております。〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
#191
○古寺委員 そこで厚生大臣にお尋ねしたいのですが、今日までわが国の人工じん臓の開発あるいはじん不全対策というものがおくれているために、わが国の国民はじん不全のために非常に犠牲になってまいったわけでございますが、この点について厚生大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、承りたいと思います。#192
○斎藤国務大臣 ただいま古寺委員のおっしゃいますように、厚生省といたしましても、私といたしましても、やはりこのじん不全等に対する施策を強力に推進しなければならない、かように思いまして、ただいま医務局長が答えましたとおり、これらに要する機械設備それからまた治療費等におきましても、いままでになく画期的に今後推進してまいりたい、かように考えております。#193
○古寺委員 次に慢性じん炎並びにネフローゼの対策はどういうふうになっているのか、お伺いしたいと思います。#194
○松下説明員 じん炎、ネフローゼにつきましては、これは十分な対象数はいまのところ正確に把握いたしておりませんけれども、学者の推計で考えますと、約五千人の児童がじん炎、ネフローゼ――現在一括してネフローゼ症候群と呼ばれることが多いように伺っておりますが、そういった患者がおるというふうに伺っております。現在の体制といたしましては、軽症な者あるいは予後が十分でない者、回復期の者につきましては虚弱児施設の中で若干お世話をしておるという実情もございますけれども、なお先生御指摘のように現在の体制は十分でない。しかも慢性の疾病でありますので、非常に治療も長くかかる。その間学齢の児童につきましては、学校へ通うことができないということで健全育成上いろいろな問題点がございますので、来年度におきまして、このネフローゼ児に対する療育の給付を行ないたいということで予算を要求いたしまして、そういった対策をとりたい。なお実態につきましても、できるだけ早く来年度において実態調査をいたしまして、確たる資料を得て対策を進めてまいりたい。また、こういった慢性疾病につきましては早期の発見ということがきわめて重要でございますので、三歳児の検診の際に、いままで行なっておりませんでした尿の検査もできるだけ父兄の協力を得て行なうようにいたしまして、早期に発見いたしまして早い治療ができるような対策を講じたい。そういった一連の施策を進めてまいりたいと考えております。#195
○古寺委員 厚生省ではネフローゼ、慢性じん炎で入院している患者さんを六百四十床来年の予算として対象にするように考えているようでございます。ただいま五千人というようなお話がありましたが、このネフローゼの子供さんを持っていらっしゃる方たちの会では、七千名はネフローゼのお子さまがいらっしゃるということを言っておるわけでございます。こういう点、実際に会のほうで調べている数字と厚生省がつかんでいる数字が非常にかけ離れております。しかも厚生省が考えている療育給付は、当然この入院している方々が対象になるわけでございます。そういたしますと、かりに七千名といたしますならば、わずかにその一〇%に満たない方々だけが救われるということになりますが、こういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。#196
○松下説明員 先生おっしゃいましたように、私も初めにおわび申し上げたわけでございますが、五千人という数は、これは学問的な推計でございまして、実態調査をまだ十分にいたしておりませんので、その点におきましてはそう違いはないかと思いますが、いろいろな考え方もあろうかと存じます。それでその点につきましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ早く実態調査をいたしまして、正確な数を把握いたしまして施策を進めたいと思っております。なお予算の積算で考えております六百四十名でございますが、これはネフローゼの患者全部の中には自宅療養をしておられる方もあり、また学齢前の子供さんもある。まあネフローゼの患者についてできるだけたくさんの方を治療できるように進めていくのが本旨でございますし、私どももそういう努力をいたさなければならないと思っておりますが、さしあたって一番児童の健全育成の上で必要だと考えて手をつけたいと思いますのは、学齢にありまして、しかも相当症状が重いために入院しておる――長期にわたる疾病でざいますので、しかも慢性病でございますから、ある程度入院しながら教育を受けることが可能な子供さんがあるわけでございまして、そういった人たちにつきましては、いわゆるベッドスクール、特殊学級が併設されております。病院におきまして治療を受けながら教育を同時に受けるということが、その子供さんの将来のために健全育成という点から最も望ましいことであるという考え方を持ちまして、結核の子供さんと同じように、そういった施設を持っておる療養所に入っておられる子供さんについて、教育と並行して療育を行なっていくという考え方で当初の積算を行なっております。
こういった点につきましては、御指摘のようにネフローゼの患者はまだ多いわけでございますので、これを何とか制度化いたしまして、これを皮切りとして施設の充足と並行いたしまして伸ばしていかなければならない、さように考えております。
#197
○古寺委員 文部省にお尋ねしたいのですが、先日も大阪の方々が養護学校がないために非常に困っていらっしゃるという陳情等がございましたが、文部省では養護学校、特殊学級に対するいわゆる構想、計画というものはどういうふうにお考えでしょうか。#198
○寒川説明員 ネフローゼなどの病弱児に対します教育につきましては、御承知のとおり、病弱の養護学校あるいは一般の小中学校に置かれます病弱の特殊学級、あるいは病状によりまして普通学級で特別の配慮のもとに教育するということになっておる次第でございます。そこで現在、病弱の養護学校は全国に四十一校ございます。病弱の特殊学級は三百九十一学級ございます。ここに就学している子供は約六千人でございます。これはネフローゼだけではございませんで、いわゆる慢性疾患の子供を含めましての数字でございます。従来から文部省といたしましては養護学校なり病弱学級の設置の促進につとめておるところでございますが、先生御指摘のとおりまだまだ不十分でございます。そこで来年度以降新たな特殊教育の拡充整備計画を立てまして、四十七年度を初年度とする年次計画によりまして、病弱の養護学校につきましては初年度十三校設置することにいたしておりまして、病弱の特殊学級につきましては来年度八十学級の設置に要する施設及び設備費の補助をいたしますとともに、これに必要な教員定数の確保、給与費等の予算の計上をし、これを目下要求いたしている次第でございます。
まだ都道府県立の病弱の養護学校を設置していない県が二十七県ございます。そこでこの病弱の養護学校未設置県の解消ということが私どもの当面の課題でございまして、四十七年度及び四十八年度の二年間に未設置県をなくするという計画を立てております。またこの未設置県解消にあわせまして、四十九年度からは養護学校における義務教育を実施に移すというふうな措置もとってまいりたいということで、そのための準備を目下検討し、進めているところでございます。
#199
○古寺委員 いま大臣もお聞きになったと思いますが、未設置県が二十七県もある。そういたしますと、こういう県にいるネフローゼの子供さんはこういう制度をつくってもその恩恵を受けられないわけです。さらにまた、こういう施設がないためにたまたま自宅で療養をしておる、通院加療をしておる人に対しても、全然恩恵がないわけでございますが、数にいたしましても大体七千名でございます。こういう子供さんを持っていらっしゃる父兄の方々から、この医療費を何とかして全額公費で見てもらえないか、こういう切なる要望があるわけでございますが、この点についてひとつ大臣から御答弁を願いたいと思います。#200
○斎藤国務大臣 慢性じん炎、ネフローゼ等に対する治療費の公費負担につきましては前向きに考えたい、かように思って来年度予算も要求をいたしているわけでございまして、ただいまおっしゃいますとおりに、これらの児童並びに児童を持つ家庭の事情を見聞きいたしますると、いまおっしゃる点は全くごもっともでありまして、私も深くその点を感じているわけでございます。#201
○古寺委員 まあ心臓病の場合にも育成医療があるわけですが、都道府県によっては所得制限があるためにこういう恩恵を受けられないというケースがあるようでございます。この点について、ネフローゼの場合、慢性じん炎の場合はそういうような心配がないかどうか、承っておきたいと思います。#202
○松下説明員 児童福祉法に基づきます措置の一般的なやり方といたしまして、いま先生御指摘のように原則として公費で負担するわけでございますが、こういった措置に要する費用の最も効率的な使用をはかるという意味と、それからやはり子供の健全育成ということは、児童福祉法にも明記されておりますように国や地方公共団体が保護者とともに行なうべきものである、まず保護者が児童の健全育成をはかるべきであるという第一義的な責任を負っておるというような趣旨からいたしまして、妥当な範囲で、父兄が負担能力がある場合には父兄から一部または全部の徴収をいたしております。ただ、いま先生御指摘のようにこれは非常に高額の経費を要する。いまのお話の心臓の手術でもそうでございます。ネフローゼの治療もそうでございます。先ほど申し上げた育成医療によるじん透析なんかも御指摘のとおりでございますので、そういった全体の所要経費と本人の所得あるいは社会一般の水準等考慮をいたしまして、そういった徴収の基準につきましては、先生の御意見のように、無理のないように毎年検討してまいりたい、そういうふうに考えております。
#203
○古寺委員 日本の実情を見ましても、人工透析は夜間に行なわれている例が非常に多いわけです。これはやはり健康保険の本人でありませんと、なかなかこの人工透析の費用が高いために受けられない。それで職場にいながら夜、一週間に二回ないし三回この人工透析を受けている方が非常に多いようでございますが、今後この夜間透析の解消の問題こういう方々をどういうふうにして一日も早く社会復帰さしていくか、これは非常に負担が大きいわけでございます。さらにまたスウェーデンやフランスの例を見ますと、二カ月ぐらい家族と一緒に入院をし、訓練をして、家庭透析も行なわれているようでございますが、今後の夜間透析並びに家庭透析に対する厚生省のお考えというものを承りたいと思います。#204
○松尾説明員 実態といたしまして、夜間透析も行なわれておると存じます。私どももいろんなこういう対策を能率的にやるために夜間透析という問題も検討いたしてみましたけれども、やはりいろんな面に無理がかかり過ぎております。特に慢性のじん炎をわずらっておられる患者さんは、ほかの健康体の方のように強い体力ではございませんので、これはやはり原則として昼間にやるべきだ、こういう形で今後は進めたい、そういう考えで計画をいたしたつもりでございます。それから第二の点でございます家庭透析の問題、これも確かに将来、先ほど来御指摘のような小型化というようなものが出てまいりますれば、考え得る一つの方向であろうと思いますけれども、日本でそれが大きく伸びてくるということはまずいまの段階ではあまり考えられないのではなかろうか。むしろやはり正式にきちんとした医療機関にたよって受けるということが本道ではなかろうか、さように考えております。
#205
○古寺委員 時間がないので、一応人工じん臓の問題はきょうはこれぐらいにしておきますが、前の内田厚生大臣は人工じん臓の問題については非常に熱心に施設等も見学になったようでございますが、今後斎藤厚生大臣も実際にこの施設を御見学になり、また実際に人工透析を受けている方方、またネフローゼで困っている子供さんを持っている父兄の方々ともお会いになって、その実態というものを十分に認識をしていただいて、ひとつ今後この問題に対処をしていただきたい。要望を申し上げる次第でございます。次に、国保の問題について二、三点お伺いしたいのですが、斎藤厚生大臣は前の厚生大臣時代に、国民健康保険の標準保険料制度を昭和四十七年からお始めになるというような構想を御発表になったわけでございます。しかしながら今日までまだこれが実現していないために、各市町村間のアンバランス、格差というものが非常に大きくなってきているわけでございます。しかも最近におきましては各市町村の病院あるいは診療所等が、医師の供給体制の不備から財政的な赤字が非常に増大いたしておりまして、その経営が非常に苦しくなっている、こういうような実情でございますが、この点についての厚生省のお考え、また大臣のお考えを承りたいと思います。
#206
○斎藤国務大臣 古寺委員は私がまだじん不全の人工透析を見たことがない、ネフローゼの何かを知ったことがないようにおっしゃいますが、私はたびたび視察をし、たびたび接しておりますので、その点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。それから国保の各市町村間の財政調整、この点につきましてはいわゆる国保の標準報酬のあり方という点につきまして、先般関係審議会からも答申をいただきました。できるならば次の通常国会にその財政調整に関する法案を提案いたしまして、来年度から実施のできるようにいたしたい、かように思います。
#207
○古寺委員 いま市町村立病院並びに国保の直営診療所の赤字の問題を申し上げたのですが、これに対しては御答弁がなかったのですが、青森県の一つの町立病院の例でございますが、毎年二千万円から三千万円の赤字が累積されております。こういう点について何とか財政的な援助をしてもらえないかというのが各市町村の強い要望でございますが、こういう面については厚生大臣はどういうふうにお考でしょうか。#208
○斎藤国務大臣 公立病院の赤字の現状は、ところによって相当ひどいものがございます。ただいま保険の診療報酬のあるべき姿、またいままでよりもどの程度改善をし、また増したらいいかという審議を中央医療協議会にやってもらっておりますが、これによってそういった点が相当緩和をされる、場合によればなくなるということを期待をいたしております。そのほかに、公立病院としての特殊の使命を持っておりますものにつきましては、それに応じて国の補助なり助成を考えてまいりたい、かように考えております。
#209
○古寺委員 時間になりましたので、きょうはこれで終わります。#210
○森山委員長 次に、古川雅司君。#211
○古川(雅)委員 私は、本日は赤潮に関する総合対策の促進につきまして、厚生省をはじめとする関係各省庁の今後の対策について若干お伺いをしてまいりたいと思います。すでに御承知のとおり、赤潮の発生海域は年々拡大をいたしまして、なおかつ最近は季節的に長期化、不定期の傾向を示しております。したがって、漁業被害も非常に増大をしております。沿岸漁業者にとってはこれはきわめて深刻な問題でありまして、将来に大きな不安をもたらしている状況でございます。さきに科学技術庁から発表されたのでございますが、この発生要因については、いわゆる赤潮が発生するメカニズムでございますが、これは徳山湾における赤潮調査の結果によりますと、都市下水、工場排水等による海水の中のいわゆる栄養が豊富になって、そして発生しやすい環境をつくるのだと、ほぼ断定に近い結論を出していらっしゃいます。したがいまして、今後この発生要因についてはさらに研究、調査が続けられると思いますけれども、その今後の対策について疑問視する点もございますので、順次お伺いをしてまいりたいと思います。
これは水産庁の南西海区水産研究所の村上環境研究室長の見解でございますが、ただいま申し上げたことの繰り返しになりますが、ことに瀬戸内海で発生している赤潮は原生動物による悪性のものが多く、その原因としては屎尿投棄など人為汚染があげられる、工場排水の規制をきびしくするとともに屎尿投棄の全面禁止が必要だということを、かつてからいろいろ結論づけまして訴えているところであります。昨年末の公害国会以来この赤潮対策については強く叫ばれているところでありますが、最初に厚生省から順次お伺いをしてまいりたいのでございますけれども、この屎尿の海洋投棄の制限についての検討、ことに瀬戸内海では現在大阪湾、備後灘、広島湾、及び周防灘で屎尿の投棄が行なわれているわけであります。この屎尿の海洋投棄も赤潮発生の主要な原因の一つでありまして、これは早急に制限をしなければならないところであります。内田前厚生大臣も屎尿の海洋投棄について、これは全面禁止するということをはっきり明言していらっしゃるわけでありますが、まず厚生省で掌握をしていらっしゃいますこの屎尿の海洋投棄の量でございますが、大体どのくらいでございますか。全国的な面の数字とまたこの瀬戸内海に関係の分と分けてひとつお答えいただきたいと思います。
#212
○浦田説明員 屎尿の海洋投棄の実態でございますが、昭和四十四年度の数字で申し上げますと、海洋処分は全国的には日量一万三千四百十キロリットルでございます。瀬戸内海の実情を申し上げますと、これは少し新しくなりましたが、昭和四十五年三月末で日量約三千キロリットルという数字でございます。#213
○古川(雅)委員 この海洋投棄を全面禁止していく前提として、屎尿処理の施設の建設が重大な関連を持ってくると思うのでありますが、来年度予算への予算要求書によりますと、昭和四十七年度計画処理量は大体五千キロリットル・パー・デー、こういうふうに置いております。この予算要求がそのまま通るかどうか、今後の厚生省の御努力にかかっているわけでございますが、大体このうち瀬戸内海分がどのくらいというふうに計画を立てていらっしゃるのか。こうしたスピードでいけば、前厚生大臣が表明したように屎尿の海洋投棄を全面的に禁止できるのは一体いつごろになるか、実際問題としていつごろに全面禁止ができるか。こういった点についてお答えをいただきたいと思います。#214
○浦田説明員 瀬戸内海関係で申し上げますと、現在関係市町村でもって投棄しております量は、先ほど申しましたように、四十五年三月で日量三千キロリットル余りでございますが、その該当市町村の整備の計画でございまして、すでに計画をしております量が、このうち二千三百十五キロリットルでございます。これは四十八年までに大体整備の計画を持っておるところでございます。したがいまして、残り約一千七百キロリットル余につきまして問題が依然としてその後に残るわけでございますが、いまのところ長期計画の中では大体昭和五十年度というところで考えておりますが、さらに地元市町村の実態その他も勘案いたしまして、この最終年次ができるだけ早く繰り上がるように努力してまいりたいと考えております。#215
○古川(雅)委員 ことに瀬戸内海は黒い運河と化して、すでに瀕死の状態である、死の海になるのもそう遠い先のことではないということが非常に問題になっているわけでありまして、これは七月でございますが、新聞の報道によりますと、佐藤首相みずからのお声がかりで、いわゆる瀬戸内海環境保全対策推進会議が開かれたわけであります。この会議で確認されたことは、瀬戸内海を屎尿の捨て場としない。もう一ついわゆる工場の排水のたれ流しを強力に規制するということがつけ加えられておりますが、屎尿の捨て場にしないということをここで非常に強く確認をしておるわけでございます。この屎尿の海洋投棄の全面禁止に至るこの計画の促進について、全面的な計画の中で特に瀬戸内海についていまの御答弁では非常にあいまいな感じがするのですが、もっと重点的に計画を進めるべきではないか。むしろ現在お持ちになっている計画を繰り上げて、この屎尿処理施設の建設を急ぐべきではないかということが考えられますが、その点どのように御検討なさっていらっしゃいますか。#216
○斎藤国務大臣 ただいまおっしゃいましたように、特に瀬戸内海の環境汚染がはなはだしい、これを一日も早く清浄化しなければならないということで、総理の指示によりまして瀬戸内海の環境整備に関する関係各省間の委員会がようやくできました。そこで屎尿処理がそのうちの一番大きな点を占めております、もちろん工場排水その他もございますが。屎尿処理につきましては屎尿の終末の処理施設、そのほかに下水の施設と相またなければなりません。近くその計画の案をつくりまして、そして実行可能な限り一日も早く下水、屎尿処理を完備するようにというので、ただいま関係各省でこれから計画を立て、作業に入ろうといたしているわけでございますので、最後の結論はいましばらくお待ちいただきたいと存じます。#217
○古川(雅)委員 この屎尿の処理でございますけれども、ここに一つの疑問が残るのは、今日まで屎尿処理施設のほとんどがいわゆる消化方式、活性汚泥方式をとってきたわけでございます。ところが専門家の説明によりますと、事この赤潮対策に限っては、この活性汚泥方式をとったのでは何ら効果はない。これは下水処理のほうにも関連してくるわけでございますけれども、処理されて放流する水の中に含まれている栄養塩類でございますが、これは赤潮対策としてはむしろマイナスになるくらいだというような見解が出ておりますが、その辺をどう受けとめて今後の屎尿処理の技術的な問題に取り組んでいかれるか。施設の建設を急げと申し上げた反面でそういうことを申し上げると、何か矛盾をしているようでありますが、この赤潮対策については、この点今後大きなひっかかりになると思うのでございますが、いかがでございますか。#218
○浦田説明員 現在の屎尿処理施設で行なわれております、あるいは下水等の処理場で行なわれております処理技術が、その処理後の放流水が結局海洋の富栄養化の原因になるではないかという御指摘でございます。確かに、その限りで見ます場合には、現在の処理方式でもってしてはのがれない、たとえば燐酸分とかあるいは窒素分とかいうものがあることは事実でございます。しかしながら、屎尿処理施設あるいは下水等の処理施設というものが全然無意味か、富栄養化について無意味あるいはマイナスかという御指摘については、これはたとえは悪うございますけれども、現在のように屎尿がなまのままで投入されておる、あるいは陸上に不法投棄されまして、それが末は海洋に注ぐといったような状態に比べますれば、これは問題にならないくらいはるかに有用なわけでございます。ただいまやっております活性汚泥方式がその大部分でございますが、こういった生物処理方式というものが決して無意味というわけではございません。しかしながら、さらにこのような方式をもっていたしましても、処理後の放流水については問題が残っておるということは事実でございます。これらにつきましては、いわゆる三次処理方式というものを用いまして、すでに下水道でもそういったことで計画を進めておると聞いておりますが、屎尿処理施設につきましても、この点については早急にこの技術の具体化というものに取りかからなくてはならない。しかし当面するところは、やはりいま行なわれております直接海洋に投棄するといったことはできるだけすみやかに禁止しなくてはならない、並行して技術的な開発も進めてまいりたいと考えております。#219
○古川(雅)委員 水産庁においでをいただいておりますが、特に赤潮の漁業被害という点で、被害の状況をどのように掌握をしていらっしゃるか、その実態を御説明いただきたいと思います。#220
○藤村説明員 ただいま先生御指摘のように、赤潮の発生は年々ふえておりまして、そのふえておる例を申しますと、たとえば昭和四十二年に四十八件瀬戸内海で起こっておりますのが、四十五年には七十九件になっておりまして、発生日数につきましても、四十二年四十八件全部で四百七十五日、それが四十五年には七十九件で千六百一日、一件当たりの平均にいたしますと、四十二年は十日でございますが、四十五年には二十日になっております。それで、そのうち漁業に直接被害を与えたという報告がありますものは、四十二年に四十八件のうち八件、四十五年に七十九件のうち三十五件でございまして、これの実際の漁業の被害金額というものは、漁業に及ぼす影響が直接的なものと間接的なものがございまして、たとえば養殖魚に及ぼした影響で、昨年の八月から九月にかけまして、広島県、山口県の沿岸に発生しました赤潮で養殖中のハマチが三十六万匹、養殖クルマエビが五十七万尾斃死をしたというような、明らかな斃死をした例がありますと金額が明瞭にわかるのでございますが、その他の天然のもの、あるいは間接に漁場が荒廃したとか、あるいは卵が死んで資源が減少した稚仔魚の影響、どういうふうな影響を及ぼしたかというようなことで被害金額が幾らぐらいになったかということは的確に集計してございません。本年につきましては、六月から瀬戸内海中部、特に備後灘、燧灘等で漁場的に鞭毛藻類によります赤潮の発生がありまして、定置網に入った魚が死んだというような報告がありましたが、昨年度のような大きな被害が与えられたという報告はまだ受けておりません。#221
○古川(雅)委員 この被害の実態については掌握の非常にむずかしい点もあるということは、これは決して了解できないわけではありませんけれども、最初に私は水産庁にお問い合わせをいたしましたが、水産庁ではこうした赤潮の漁業被害についてその実態を掌握していないのだというような御返事を電話でいただいているのでございますが、いま御報告いただきました数字等につきましては、これは水産庁でみずからお調べになったことでございますか。またハマチ等のいわゆる養殖魚の被害の実数と、あわせて赤潮で死んだ魚が岸に打ち上げられます打ち上げ魚といいますか、そういったものもこれは数として掌握するのは非常にむずかしいかと思いますが、そういうことを含めて、概算として大体どのくらいの被害に当たるかということは御説明いただけますでしょうか。#222
○藤村説明員 ただいま申し上げました数字は、瀬戸内海水産開発協議会というのがございまして、一府十県の県並びに県漁連で構成しておりまして、これの事務局を水産庁の瀬戸内海漁業調整事務局というところで受け持って事務を担当しております。そこで調べました数字が先ほど申し上げました数字でございまして、被害の実態につきまして金額が幾らというのは、個々のものについて何年何月どういうところにこれだけあったということを例示的に調査しておりまして、集計は出しておりませんので、おそらく電話で先生に申し上げたのはそういうことを申し上げたのだろうと思います。いま私が申し上げたのも、その点で全部の集計はできておりません。〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
#223
○古川(雅)委員 私も「瀬戸内海の赤潮、現状と対策」という、いま御答弁のありました瀬戸内海水産開発協議会からの資料はいただいております。こうしたところから資料が上がってくる、それを何かじっと待っているような感じがいたしますけれども、この赤潮の漁業被害の重大さに対してむしろ水産庁のほうから積極的に調査を推進する、あるいは実情を掌握するといったような点が見られなかった、非常に積極性に欠けている。大問題になって騒ぎ出してから、特に国会等でこうして問題になってからその掌握につとめていたような感を受けるのですが、これは言い過ぎでありましょうか。いずれにいたしましても、こういった点からいたしますと、今後ますます広がってまいりますこの赤潮の被害に対して、これにどう対処していくかということが、非常に民間団体あるいは地方の県あたりに依存する結果になってしまうのではないかと思います。その点が一点と、今後漁業被害に対して水産庁が積極的に指導あるいは助成していくことになると思いますけれども、赤潮の襲来に対する予知装置といいますか、早期発見のための予防体制の確立といった点、どのように対処していらっしゃいますか、お考えになっておりますか。その点、お伺いしたいと思います。#224
○藤村説明員 第一点につきまして、ただいま申し上げました先生お持ちの資料も、それは実は瀬戸内海開発協議会がつくったものでございますが、その事務局が水産庁の事務局でございまして、そこで集計いたしたものでございます。あと若干、御指摘のように後手になる点もございますが、私ども決しておろそかにしているつもりはございません。それから第二番目の件でございますが、赤潮に対してどういう対策を講じるかという点でございますが、現在発生機構等については、先ほど御指摘のとおり、ほぼ解明がされていると私どもも考えております。機構だけは解明されて、その原因、対策等についてまだ不十分な点がございますので、四十四年度までは九大あるいは水産大学校に委託をして調査をいたしておりますが、四十五年度から水産庁が、南西海区水産研究所が中心になりまして、広島大学、水産大学校あるいは各県の水産試験場の協力を得まして、赤潮の多発水域の環境条件、生理、生態、繁殖条件等の検討を行ないまして、四十六年度はこの調査を引き続き行ないますと同時に、環境庁の特別研究促進調整費によりまして、調査をいたしております。
その調査の項目でございますが、漁業の経営の安定をはかるということで、赤潮多発海域における環境条件の調査で、特に窒素とか燐の測定により発生の予察技術を開発したい。燐がどれくらいになって、あるいは窒素がどれくらいになったときに発生しそうになるかということが予察できるかどうかというような技術の開発、それから水産生物は、何らかの薬品を投入しまして赤潮被害の防除ができないかというような研究、あるいは人造藻場あるいは水中林をつくりまして窒素、燐等をそれによって吸収さして、抑制技術の開発というようなことを検討いたしていきたいと考えております。同時に、来年度から漁海況予報事業の一環といたしまして、こういう主要な沿岸浅海漁場に自動観測装置を設置したり、飛行機観測によって赤潮の予見ができないかというような研究をいたしてまいりたいというふうに考えております。
#225
○古川(雅)委員 最近、沿岸漁民にとりましては、こうしたハマチなどの養殖漁業に活路を開こうとしている、そういう実態もありますし、したがいまして赤潮の被害というのはたいへんな脅威になっているわけであります。過ぎてしまったことではありますけれども、今日まで海洋汚染の一つのバロメーターになる赤潮の異常な発生は、いわゆる汚染対策として見舞金とか補償金、それから漁業権の買い上げ、そういった点に手を打たれておしまいになってしまった、こういうことが繰り返されてきたために、瀬戸内海自体を、いわゆる自然の自力回復能力を失った死の海に追い込みつつあるというふうに私たち判断をいたしております。そういった点、漁民を守る立場にある水産庁としては、非常に今日まで事の成り行きにまかせてきたという点で怠慢ではなかったのか、そういう感を深くするわけであります。過ぎてしまったことでとやかく申し上げてもしかたありませんけれども、今後引き続いて発生してまいります有形無形の漁業被害に対して、その生活権を守っていくという点でどうお考えか、時間がございませんので簡単に端的にお答えをいただきたい。なおかつ、この瀬戸内海の汚染は今日もなおかつ増大しつつあるわけでございますから、瀬戸内海がいわゆる漁業資源の内海として今後希望が持てるものかどうか、それとも今日新聞等で盛んに報道されているように、このまま死の海として、漁場としては全く不適格になっていく、それはやむを得ないというふうに判断をしていらっしゃるのか、水産庁としてはいかがでございましょう。
#226
○藤村説明員 私どもといたしましては瀬戸内海を魚族の宝庫と考えておりますし、今後もそれを維持していきたいと考えております。いままで研究が多少立ちおくれておりました点は私どもも認めまして、これから十分な研究を続けていきたいと考えております。そこで、瀬戸内海をどのようにして守るかということでございますが、水質汚濁防止法、海洋汚染防止法等の公害関係の法律の適正な運用によりまして水質を維持していきたいというのが第一でございますし、もう一点は、現在三十八年から行なっておりますが、瀬戸内海栽培漁業センターというのがございまして、そこで稚魚の大量生産をやりまして、現在までは大量生産をやっておりますのはクルマエビでございますが、今後は魚族につきましても大量生産をやって瀬戸内海の資源を維持増大してまいりたいと思っております。
#227
○古川(雅)委員 せっかく建設省からもおいでをいただいているわけでございますが、下水処理の問題が一つのまた大きな赤潮発生の要因になっております。下水の整備計画また下水処理の今後の計画につきましては、瀬戸内海について特に緊急に配慮して今後計画を変更なさるというようなお考えはございませんでしょうか。#228
○久保説明員 下水道整備計画のうち、瀬戸内海対策について傾斜的に変更するつもりはないか、こういう御趣旨かと思いますが、実は第三次の下水道整備五カ年計画は、今年の八月二十七日に閣議決定になったわけでございます。その総額二兆六千億の中身でございますが、これは全体的に日本全国の中で公害対策基本法によりまして、水質にかかわる環境基準がきめられている水域が八十二水域ございまして、その八十二水域の環境基準を完全に達成するには、実は二兆六千億では若干足らないわけでございますが、二兆六千億の中で特に水質環境基準が定められている水域に重点を指向いたしまして、二兆六千億のうち約一兆九千億近くでございますが、それが八十二水域関係に投資をされるということで閣議の決定がなされております。そこで、この瀬戸内海でございますが、瀬戸内海に流入する地域といいますとかなり広うございますが、十一府県に及ぶ水域でございまして、それらのうちすでに環境基準がきめられているものが九水域でございます。したがいまして私どものほうでは、その九水域並びに瀬戸内海に流入する河川で環境基準がきめられているものに一応予定をしております投資額が六千二百億でございます。したがいまして、全体の五カ年計画の中ではかなり瀬戸内海対策に下水道投資が傾斜的に入っている、かように考えるところでございますが、なお、この五カ年計画の実施にあたりましては、水質環境基準の達成を目途に、その時点時点での水質環境というものに対応するように実は考えてまいりたいというふうに思っておりますので、今後の瀬戸内海の各水域の水質基準の制定のされ方、そういうものに見合って下水道の投資を考えていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。#229
○古川(雅)委員 時間の関係でより深くお伺いできないのがまことに残念でありますが、次に問題の工場廃液でございますけれども、通産省においでをいただいております。瀬戸内海に外洋から入ってまいりますいわゆるきれいな海水の量は、大体どのくらいと推定していらっしゃるか、また瀬戸内海に流れ込む工場廃液はどのくらいであるとつかんでいらっしゃるか、まずその点からお伺いしてまいりたいと思います。
#230
○根岸説明員 ただいまの瀬戸内海にどのくらい水が入るか、これは非常にむずかしい御質問でございまして、いろいろ専門の先生方の試算があるわけでございますが、海水の全部の交換に約六十年とか、あるいはある先生の試算では二十年とかいういろいろの説があるわけでございまして、ですからどのくらい出入りするかということについてはちょっといまわれわれとしてはお答えできないような状態でございます。それから、こういうような問題につきましては、瀬戸内海の水理模型をつくりまして、どういうふうに水が交換しているかというようなことを今後確かめることによりまして、そういう数量的なものの相関関係が出てまいるのではないかというふうに考えております。それからいま瀬戸内海に全部入っております工場排水の量、これはちょっと私も計算しておりませんのでいますぐお答えできませんが、後ほどまた先生のお手元のほうに集計いたしましてお届けしたいと思います。
#231
○古川(雅)委員 流れ込む工場廃液の量がおわかりにならないということでございますが、建設省の下水道部のほうでは概算を発表していらっしゃるようでございます。ここで申し上げてもいいのですけれども、つかんでいらっしゃらないということですか、いまは御存じないということですか。――時間の関係で続けてお伺いいたします。いずれにしても、工場廃液が何といっても海洋汚染の大きな問題になっておるわけです。ことに瀬戸内海のように外海からの海流の交換の少ないところでは大きな問題になっているわけでありまして、建設省の下水道部のほうのデータによりますと、排出水量のうち工業用水は大体千十八万立方メートル・パー・デーというような数字を御報告いただいております。こうした工場廃液が海洋を汚染し、また赤潮の大きな一つの原因になっていくことについて、まだ余裕がある、少ないくらいだということは決しておっしゃらないと思いますけれども、それを確認さしていただきたいのと、いま御答弁の中にありました瀬戸内海の大型水理模型をつくるということで、いま通産省と工業技術院のほうで計画をしていらっしゃるそうですが、ここでちょっと私気にかかることは、学術的な追求はけっこうでございます。それに加えて、今後の埋め立て計画や工場排水放流計画に役立てて海の汚染を未然に防ぐのがねらい、というふうに述べていらっしゃいますが、さらに今日に加えて工場のいわゆる廃液の放流をまだまだ進めていくというような意図がここにあるわけでございますけれども、こういった報道によって、一体こういう模型をつくって学問的に原因を、あるいは瀬戸内海の実態をきわめるのはいいけれども――これは十二億の予算をかけるわけでございますが、そういった点はわかるけれども、事、瀬戸内海の海水汚染防止という点では、あるいは赤潮の総合対策としては、何らこれは意味がないじゃないか。口の悪い人に言わせれば、学者のおもちゃを一つつくってやるだけじゃないかというような、そういう極端な議論もあります。私はそこまでは言いませんけれども、むしろこうした模型をつくってさらに今後の埋め立て計画を考えるとか、工場の設置地点を考えるということになると、この点にひとつ不安があるのでございますけれども、瀬戸内海の汚染防止のこれまでの数々の会合等あるいは学者の意見によっては、工場廃液を強力に規制しなければならないという強い態度を示している中で、通産省としてはその点をどう御説明なさいますか、お願いいたします。
#232
○根岸説明員 最初のほうの御質問で、こういう量が多いと思うか少ないと思うかというお話でございますが、排水の質によって多い少ないの議論が出てくるところではないかと思います。それで、瀬戸内海の水理模型の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、まず第一にこういう模型をつくって何をするかということは、その水域――とにかくたとえば瀬戸内海の中で水島とか坂出とかいろいろ工場地域があるわけでございますが、その前面海域の水の交換がどのようになっているかということについてはある程度それぞれ調べてまいるわけでございますが、瀬戸内海がいま申し上げたように全体としての交換が相当時間がかかるということでございまして、前面海域だけの関係では、なかなかその工場立地について、あるいはその排水の処理あるいは規制等につきましてどの程度が一番いいのかということの総合的な判断につきましては完全とはいえないということで、瀬戸内海全部の水の交換あるいは拡散という現象について、どのように動いておるかということを確めるということが目的でございます。
それで、その結果、一体これが行政にどうアプライされるのかということでございますが、当然、その結果、先ほど申し上げましたように非常に水の交換が悪い、あるいはもうこれ以上排水を出す場合、その中の質の問題に今度は入ってくるわけでございまして、現在立地されている工場を全部とめるというわけにもまいりませんので、当然その排水に対する規制の強化という形でまたあらわれてまいると思います。
それから埋め立てあるいはその他の問題でございますが、これは埋め立て地の形あるいは排水口の排出放流方向というようなことを十分配慮いたしますと、非常に交換がよくなるという現象があるわけでございまして、たとえば、現在立地されている工場についても、これは埋め立ての形をいまさら変えるのはなかなかむずかしい問題があるかもしれませんが、排水の処理についてそういう物理的な形をいろいろ配慮するとか、それから今後各府県でいろいろ御計画になっている工場立地の御計画についても、それについては具体的なデータを提供することによって、あるいはそういう埋め立て計画をやめるとかあるいは変更するとかいうようなことにデータが御利用いただけるというふうに考えておる次第でございます。
#233
○古川(雅)委員 最後に、科学技術庁と環境庁にお伺いをいたします。赤潮の発生要因については、これまで研究が進められてまいりましたけれども、いわゆる要因が複雑であって、これが赤潮の原因だというふうに一元的には断定ができない。今後の研究によって、それがどういう割合に入り組んで赤潮が異常発生をするかという点をこれから調べていくというような御説明も一応伺ったわけでありますが、今後の研究によって、これがこれぐらいの割合で赤潮がこのように起こるのだという結論を出し得るかどうか、そういった点、ひとつ専門的になりますが、簡単に御説明をいただきたいと思います。
環境庁に対しては、たくさんお伺いしたかったわけでありますが、時間の関係で一つだけ気になる点をお伺いしておきたいと思います。大石長官や小沢次官が瀬戸内海の各現地へ参りまして、盛んに威勢のいい発言をいたしておりますが、これらの対策によって、おもに調査あるいは研究、実態の掌握ということに尽きているような感じを私は受けるわけでございますけれども、一体赤潮というのがなくなるほど海洋汚染が減少し得るのかどうか。研究とか実態の掌握で終わってしまうのではないか。漁業被害の例一つをとってみても漁民の不安は、苦しみは、そしてまたどこへ訴えていったらいいかわからないというそういう心配は、続いていくのじゃないかという気が一ついたします。きょうは長官お見えになっておりませんけれども、その点はっきりと今後の姿勢についてお伺いしたいと思います。なお新聞には「公害はもはや責任論でなく、企業を含めた国民一人ひとりが公害を発生させないという自覚を持つ必要がある。道路にゴミを棄てる行為や木の枝を折る自然破壊もすべて公害だ。人間は有毒ガスの排出をストップすることはできても、自ら空気をきれいにするわけにはいかない。」このような発言が新聞に報道されておりますけれども、何かこうした海洋汚染の問題一つにしても、企業の責任やあるいは政治責任をほかすようなそうした発言も最近気になっているところでありますが、環境庁に対するこの赤潮防止のための総合対策が大きく期待をされているときだけに、いまお伺いしました点についてだけでけっこうでございますので、今後の決意、方向をお示しいただきたいと思います。
以上で私の質問を終わります。
#234
○藤村説明員 科学技術庁の特別調整費で従来水産庁で研究いたしておりましたが、これからは水産庁独自の経費あるいは環境庁の経費で水産庁水研あるいは水試、大学の協力を得まして赤潮の発生の仕組み、原因の解明をぜひやるつもりでおります。#235
○岡安説明員 環境庁につきましての御質問でございますが、まず赤潮対策といたしましては、御質問の中にもございましたとおり、科学技術庁が四十二年以来四十四年まで調査をいたしておりますし、今年度も水産庁が中心になりましてさらにその究明を深めております。また環境庁といたしましても、来年度もさらに引き続き補足調査といいますか、それをさらに進めたいと思っております。なかなか困難な点がございますので、完全に究明をいたすというためには多少の時日が要るかと思いますけれども、私どもは原因の完全な究明とその対策の立案というところまで進めたいと考えております。なお、環境庁といたしましては、瀬戸内海につきましては水の問題が中心でございますので、水の問題を、現状よりも悪くしない、さらにできるだけ早くよくいたしたいということと、水以外の環境全般につきましてもさらに私どもは瀬戸内海の現状を維持してまいりたいと思っております。
さらに、それができるかという御質問でございますけれども、私どもはしなければならない、そのためにあらゆる努力を傾注いたしたいというふうに考えている次第でございます。
#236
○小沢(辰)委員長代理 次に、西田八郎君。#237
○西田委員 沖繩の復帰が目前に来ておるわけでありますが、いずれにしましても、十六日からの臨時国会におきまして返還協定案の審議が行なわれることになるわけでありますけれども、その前に、沖繩は長い間アメリカの施政権下にありまして異民族の支配を受けていたわけであります。その間における国民生活、わけて社会福祉関係、特に医療関係が本土に比べましていろいろな格差が出てきておると思いますので、それらの点について、政府の復帰対策要綱第一次案、第二次案、第三次案まで審議されましたけれども、この復帰対策要綱の中では具体的なものがほとんど欠けておりまして、きわめて抽象的にしか提示されておりません。ところが私ども政党として、あるいはその他の関係で沖繩の実態をいろいろ調べもし、また現地に出向きまして関係者といろいろと話をしてまいりました中におきましても、相当困惑といいますか、よくなることに対しての歓迎の意はあったとしても、それが一体どういうふうな形でどう処置されていくのか、そういった点についての若干の不安も残っておるわけであります。したがいまして、そうした点について逐次お伺いをしていきたいと思います。まず保険関係でありますけれども、本土の場合はいま医療保険に対する審議会等の答申が出されまして、厚生省もそれに合わしていろいろと抜本改正の対策を立てておられるわけでありますが、それに先立って沖繩の保険制度との違いを一体どのようにして今後統合させていくのか。もちろん本土法の適用をはかるというふうに復帰要綱では提示されておりますけれども、一体どのようにはかっていかれるのか、それらの点についてひとつお伺いいたしたいと思います。
#238
○斎藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、沖繩の実情と本土の実情が相当違っております。しかしながら被用者保険につきましては大体本土の制度によるように、これは地元のほうの希望のようでもございますので、これはその方向でまいりたい、かように思います。しかしながらいわゆる保険料が本土のように千分の七十でいいかどうか、もう少し現状に合うように下げる必要があるかどうかという点は検討してまいりたいと思います。それから国民健康保険は、御承知のように現在はございません。先般立法院において、沖繩県を単位にする国民健康保険の法案が通過をいたしましたので、たぶんこの方向で沖繩は国民保険をやることに決定されると思います。そうなりましたならば、これが沖繩の実情に沿うものと考えますから、これを当分の間認めてまいりたい、かように思います。
なお診療報酬は、沖繩は療養費払いであります。本土は御承知のように現物給付であります。これはやはり現物給付に直すほうがよかろう。その点数をどうするかということにつきましても、今後沖繩と十分打ち合わせて実情に合うように検討してまいりたい、かように思います。
#239
○西田委員 ただいまも被用者保険についてはたいして相違がないというお話でございましたけれども、しかしこれは各国家公務員、地方公務員あるいは公共企業体等のいわゆる準公務員、それらの人たちの共済制度というものと、それから健康保険法による被用者保険とではいろいろ格差もあるわけですし、さらには沖繩の労働者の賃金というものと日本の労働者の賃金との格差があると思うのです。したがって標準報酬月額によってきめられるとはいうものの、保険料が全部において千分の四十違うということはかなり大きな開きになってくると思う。そういう点からいくと、現在の保険料等を負担する賃金の負担そのものからいきまして、かなり過重負担になるのではないかというふうに考えられるわけです。それらの保険料率の本土統合ということについてどういうような処置を考えておられるのか、これはいきなり該当するわけにいきませんが、その場合に、どうされるかが一つ。もう一つは、船員保険のように、現在適用を受けていない保険があります。それは失業保険その他を含みまして船員保険法は成り立っておるわけでありますが、それが該当されるということになりますと、労働者の負担は本土の各種保険料を合算すれば、たいして変わらないと思いますけれども、事業主負担は非常に大きな負担になってくるわけであります。したがって、そうしたものをどういうふうにして解消をはかっていかれるのか、それらの点について具体的なことがおわかり――おわかりというよりも、考えておられる点がありましたらお聞かせを願いたいと思います。#240
○斎藤国務大臣 実情は、ただいま西田委員のお述べになりましたとおりでございます。したがいまして、先ほど申しますように、療養費払いを現物給付に直した場合に、どの程度の医療費の負担になるであろうか、さような場合に、どの程度の保険料を取るのが適当であろうか、かような見地から考えまして、そうして適当と思われるところにきめてまいりたい、本土と違ってもやむを得ない、かように考えております。船員保険も同様でございまして、おっしゃるとおり本土並みにすれば、非常に事業主負担が高くかかりますので、現状とそう違わないようにしながら、医療の給付を十分にやれるようにという方向で、具体的に復帰までにきめてまいりたい、かように思います。#241
○西田委員 大体その期限といいますか、これはのんべんだらりと引っぱっておくわけにはまいらないと思います。十年も十五年も二十年もというぐあいにまいらないと思うのですが、一体その期限はどのくらいの年限を予定されておられるのか、お伺いしたいのです。#242
○斎藤国務大臣 特例を設ける期限につきましては、やはり沖繩の経済状態の上昇と、また勤労者なり事業主の所得の上昇というものとを考え合わしてまいらなければならぬと思いますので、したがって、いま直ちに何年ということを申し上げかねると思いますが、そう十年も二十年もかからないのではなかろうか、少なくとも沖繩の経済状態、福祉状態、すべての状態が本土並みに一日も早くというのが政府の方針でもありまするし、また本土国民の念願でもあると思いますから、特例はそう長くする必要はなかろう、かように考えます。#243
○西田委員 それでは、経済の発展の度合いが本土並みということですが、本土におきましても過疎県といわれる県と、工業県といいますか、過密県というか、非常に大きな格差があるわけでありますけれども、大体どの辺に尺度を置かれるのか。たとえば類似する人口の県ということになれば、徳島、高知、滋賀等が入ってくるわけでありますけれども、そういうところにその尺度を置かれるのか、どの辺にその尺度を置かれるのか、東京並みということになるのか、全国平均ということになると、かなり高くなると思いますが、その尺度を一体どこにお置きになるのか。#244
○斎藤国務大臣 なかなかむずかしい問題だと存じます。人口においては滋賀県は相当低いわけでありますけれども、経済水準は必ずしもそう低くはないのじゃなかろうか、かように思うわけでございますので、本土の平均並みという程度を目標にと、われわれは考えておりますが、事態の推移によりまして、十分検討を重ねてまいりたいと思います。#245
○西田委員 その点はやはり尺度を、対象になるものをはっきりきめておかないと、簡単に本土並みだと言われても、その本土の一番悪いところへ合わして本土並みだと言われれば、きわめて短い期間にこれは達成できましょうし、さらに高いところをとられるということになれば、期限が非常に長くかかると思われますので、その点は、ひとつ的確に判断をしていただいて、誤りのないようにしていただきたいと思います。次に国民健康保険、これはことしも立法院で可決されたようでありますけれども、まだサインがおりていないということで、施行はされていないように聞いておるわけでありますが、かりにこの国民健康保険が適用されるようになりますと、やはり市町村に保険業務を担当する吏員を置かなければならぬわけであります。ところが実際現在は、そういうことをやっておりませんので、非常にこの辺については戸惑うのではないか、したがって、これに対する事前の教育なり、あるいはまた市町村の研修なりというものを行なう必要があるのではないかと思うのですが、そうしたことはもうすでに準備をしておられるのかどうか、お伺いをいたします。
#246
○戸澤説明員 お話しのとおり、県単位の政府管掌経営となりましても、実際の被保険者の資格認定とか保険料の徴収とかそういう事務は市町村に委任するということが多かろうと思いますので、市町村の担当職員の研修訓練ということが必要になってくるわけでございます。〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
これはこれまでの医療保険法につきましても、社会保険庁の職員について、本土のほうへ交代でもって集めて講習会をして、またこちらから指導者が行って教育したりして、かなりの効果をあげております。それと同じような方法をもって計画的に研修訓練をする予定でおります。すでにもう本名に勉強に来ておる職員もおるようなわけであります。
#247
○西田委員 それでは保険局長に確認をいたしておきますが、切りかえになって、そのことのために過渡的段階だというようなことで、問題が――通常ハプニングだといわれるものは別といたしましても、問題なく移行できるという自信はあるわけですね。#248
○斎藤国務大臣 具体的の点は、要すれば保険局長から御説明をいたしますが、先般も私は沖繩に参りまして、主席なり関係局長とも話し合いました。沖繩側としては、はたして本土復帰までに実施できるかどうか非常に危ぶむ、こういっておるのですよ。しかしながら、できるだけこちらも技術的その他の援助もするから、本土復帰のときには実施のできるようにしてもらいたい、こういって、準備を一日も早く進めることを申しておきました。ひょっとすると、本土復帰のときにはまだ実施の準備段階ということになるかもしれないけれども、しかしそうならぬようにいたしたい、こういうような現状でございまして、事務当局としては、そういうことにならぬようにいろいろと支援をし、やっておるわけでありますが、まだ立法院できめられた法律を、いよいよ実施をしようというところまで腹がきまっていないようでありますし、そのままで実施できるかどうか、さらに手直しをする必要があるのではないかというような検討もしているようでございます。いずれにしても沖繩として早くやりたいということは、沖繩県民のためでもありますし、またわれわれの考えでもありますので、本土復帰までには実施のできるようにこちらも援助をしたい、こう思っております。#249
○西田委員 沖繩本島の場合は、かなり交通網も発達をしておりますし、その他あらゆる水準も高いので、これは実施についてそう困難は伴わないと思いますけれども、普通先島といわれる離島関係はたいへんだと思うのです。たとえば先日のドルの交換にいたしましても、やはり九日に一斉に行なわれなかった離島関係がたくさん残っておるわけであります。したがって、こういう問題、自分の持っておる銭のことでさえそういうことですから、医療機関の整備、特に保険の整備ということになってくると、そう簡単にはやれないと思うのです。したがって、いまの大臣のおことばを信用いたしまして、ひとつそういうことでそごを来たさないように、沖繩県民が復帰と同時に皆保険の恩恵に浴せるような、そういう措置を、万全を期してひとつ準備をとっていただきたいということを要望いたしておきたいと思います。次に問題になりますのは、やはり医療が、そうして国民健康保険法が適用され、県民皆保険という制度になってまいりますと、供給体制の問題が出てくると思うのでございます。
先日も名護の市役所を訪問いたしまして、市長といろいろ話しておったのですが、りっぱな総合病院がありますにもかかわらず、救急患者が出たときには車で三時間も走らなければならない那覇まで連れていかなければならぬ、こういう御報告がございました。それはなぜかというと、保険制度がないということも一つの問題でございましょうが、もっと問題は、やはり医療従事者の不足という問題があろうと思うのです。したがいまして、そうした点から考えますと、まず第一番にこの供給のほうの体制というものが一体どのようになっておるのか、それを本土との比較においてどうすればいいというふうにお考えになっておるか、ひとつ伺いたいわけであります。
#250
○松尾説明員 ただいま御指摘のように、沖繩における医療の供給体制はたいへんまだ低いものでございまして、医者の数におきましても大体人口比にいたしまして本土の半分以下、歯科医師も約三分の一、看護婦にいたしましてもやはり三分の一程度でございまして、ベッド数も大体人口当たり六〇%程度の状態でございます。したがいまして、これは保険の問題のまた前提条件ともなる問題だと存じますけれども、やはりできるだけ早くこの水準を上げたい。そのためには、一つはかようないろいろな公的な医療機関を整備いたしまして、内容を充実をするということが必要であろうかと思います。特に、沖繩出身の方で本土の医学部に留学をしている方も相当おられますけれども、そういう十分な、勉強できるような施設がないということが、帰ることをはばんでおるという理由でもあるようでございますので、できるだけそういうような医療機関の内容を充実しておくということが第一番かと思います。それから、それをもってしても、なお当分の間は十分な体制ができないと思います。したがいまして、専門医あるいは僻地という方向につきましては、本土からの派遣医師という体制で進まなければならないかと思います。同時にしかし、看護婦その他の職員につきましても、現地で積極的に養成をするという体制をとるべきでございますので、さっそく既存の施設の増設でございますとか、あるいは新しく国立療養所等になりましたときの正式機関の療養所等にも、そういう養成施設を付置するというようなことをやってまいりまして、解決をはかりたいと思います。特に、問題は僻地を相当かかえているその僻地の問題でございますが、これにつきましては、やはり各種の輸送手段というものを強化いたしまして、十分その中心と連絡がつくような形で対処するようにはかってまいりたい。大体大筋でございますが、そういうような考え方で進めたいと思っております。#251
○西田委員 そういうふうにして網羅的に、抽象的に説明されると、確かにこれはもうよくなるんだなというような気になるのですけれども、実際に病院一つ建てるにしましても、何億という金が要るのではないかと思うのです。したがって、そうした点で現地まかせになれば、これはとてもじゃないが、沖繩の現状からいきまして困難な問題であろうと思うのです。手に負えない問題だと思うのです。したがって、やはりおくれている部分については二十五年間というもの、四半世紀というものは本土の犠牲になってきたわけでありますから、したがって、それらに対するあたたかい施策というものが必要だと思うのです。そのためには、すでにもう厚生省等においては公的病院を一体どれだけ建設するか、あるいはまたその医療従事者の養成についても、現在ある大学の保健学部を医学部に昇格させるとか、あるいは看護学校を増設するとか、いろいろな具体的な計画があると思うのですけれども、もしそれをお持ちであればひとつお聞かせをいただきたい。#252
○松尾説明員 確かに整備をいたす際に現地の力が弱いという点がございますので、やはり補助、助成をいたすにいたしましても、本土よりも高い率で助成をすべきだと存じます。ことに公的医療機関につきましても、各種の医療整備、特に政府立の病院もあるわけでありますが、そういったものを具体的に個所数をあげて、それの整備をはかりたい。また、ガンとか救急的なものにつきましても、いわゆる本土式のセンター的なものがまだ十分整備されておりません。こういうものにつきましても必要な整備をはかりたいと思います。また、先ほど来話題に出ておりました人工じん臓等もやはり本土並みに整備をしたいと思っております。そのほか、看護婦の養成施設ということにつきましても、やはり高い補助率で適用したい、こう考えておるわけでございまして、私どもは大体医療関係の整備につきましては四分の三の補助率ということでまいりたい、こう考えております。そのほかに、慢性疾患等の国立療養所というようなもの、たとえば精神病とか結核でございますけれども、こういう、やはり沖繩県として将来にわたって維持するということがあるいは困難ではなかろうかと思うものにつきましては、らい療養所を含めまして国立に移管する、国自身の手でやってまいりたい、かように考えておりますので、大体そういうことを中心にして、高い補助率でカバーをしてまいりたいと思っておるわけでございます。#253
○西田委員 私の手元に医療施設の比較を示しました推移をあげたものがあるわけでございますけれども、病院を例にとってみますと、沖繩の場合政府立が十、その他が九ということになっております。これは、全国平均でいきますと、政府立というか、公的なものが一県当たり十六、その他が百四十九。これを島根、徳島、香川、高知等、いわゆる人口の類似するところで平均をとってまいりますと、公立のものが九、その他のものが七十四ということになっておりまして、この差というものは非常に大きいものがあるわけであります。こうした点、先ほど本土並みという話もあったわけでありますけれども、かりに類似県平均ということにいたしましても、たいへんなことになると思うのです。この中には私立病院が含まれておりますけれども、現状からいって私立病院を建設するということはきわめて困難ではなかろうか、勢い公的病院ということになるのではなかろうかと思うのですけれども、せめてこれの半数ぐらいまでの設備はしなければならぬと思うのです。そういう点についてはどうお考えになっておりますか。#254
○松尾説明員 病院の数を増設するということも、ただいまあげられましたような数字から見て、当然の一つの帰結であろうかと存じますが、反面御承知のとおり、政府立の病院の中でも、建物は建てましたけれども職員が得られないというような関係で、閉鎖をして、まだ使用していないものもあるように聞いております。したがいまして、建物だけを建てるという計画よりも、やはり人とあわせてこれを拡充していくということが必要ではなかろうか、特に新設をいたしますよりも、私どもはやはり既存のものを強化して、まずそこに人が定着するような対策をとるべきではなかろうか、かように考えておりますので、そういう方向でとりあえずは手をつけたい、こう思っておるわけでございます。#255
○西田委員 私の質問をする事項について先に触れられたわけであります。その施設数というものを一体どれくらい置かれて、それに対する医療従事者はどれくらい必要になるのか、それに対する養成はという質問を私はする予定をしておったわけですけれども、先にその面に触れられたわけですが、それでは一体それらの医療従事者、いわゆる医師から看護婦に至るまでの間をどのような計画で、どうしてふやしていかれるおつもりなのか、また、文部省の方お見えになっておると思うのですが、文部省としては、現在の沖繩にある大学ですね。これは琉球大学と沖繩大学ですか、あるわけですけれども、医学部を設ける意思があるのかどうか、医学部設置のめどはどれくらいに置いておられるのか、それらの点についてひとつお伺いをいたしたい。#256
○松尾説明員 医師自体をどの程度ふやすかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、先ほど来申し上げましたように、できるだけ本土に来ておられる方が復帰するような条件をまず考えなければなりませんし、また、こちらからもできるだけ向こうに送るということを当面やらなければならないと思うのでございます。ただ、看護婦等につきましては、これは十分現地において養成が可能でございます。現在約九百名程度の看護職員がいるわけでございますが、私どもがいままで沖繩で伸びてまいりました医療機関の伸び方等を基準にしながら一応の充足を考えてまいりますと、昭和五十一年程度で約二千三百名ほどの看護婦が必要だというふうに考えられます。したがいまして、現在約九百でございますので、それをそれまでの間に少なくとも二千三百程度のものは確保したい。そういう計画のもとに、ただいまございますような政府のいろんな看護学院、こういうものの増設でございますとか、先ほど来申しましたそういう養成所の新設というものをあわせてやってまいりたいと思っております。#257
○西田委員 文部省……。#258
○甲斐説明員 先ほどお答えいたしましたことと重複になって恐縮でございますけれども、医師の不足の問題につきましては、先生御案内のとおりでございまして、私どもといたしましては昭和二十八年以来留学生という形で逐次内地に送り込んで医師の養成をはかってきたという経緯がございますが、ことにここ数年におきましては、五十名ないし七十名という数の医学生を養成しているというのが現状になっているわけでございます。かつて昭和四十一、二年ごろでございましたか、やはり医学部設置の問題が相当大きく取り上げられまして、その際のお考えとしましては、いまのような留学生による医師の育成ということもございまして、一方においてはやはり予防医学を主体といたしました健康管理の面を相当積極的にやるべきであろうということで、保健学部の設置ということに相なったわけでございまして、昭和四十三年からスタートをしているわけでございますが、いまなおこれは完成途上にございまして、これからまだ大いに整備しなければならぬという面を持っているわけでございます。
なおまた、付属病院の設置という問題がございまして、現に琉球大学において建物の建築が行なわれておるわけでございますが、これができますと、それに対してもちろん琉球内だけでの充足では足りないわけでございまして、本土から相当の医師を送り込む、あるいは教官としての医師を送り込む必要があろうかと思います。したがいまして、そういった点を当面整備を促進しなくてはならないということはあるわけでございますが、それとからみまして、医学部設置の問題についても検討してまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
#259
○西田委員 本土からかなりの医療従事者を送り込まなければならぬということですが、逆に沖繩の実情から見ますと、私は本土へ上がってくるほうが多いのではないか。現在はいわゆる特殊な環境にありますので、旅券が必要になりますので、なかなか旅券も交付されないという事情もあって来られないけれども、本土復帰と同時に、有能な人たちがどんどんと逆に本土へ上がってくるんじゃないかという気もするわけであります。また本土におきましても、医師、看護婦等の数は非常に少ないということで、昨年も保助看婦法の改正を政府としては出されたようないきさつがあるわけですね。ですから、そのように足らぬところを補うどころか、こちらまで補っていかなければならぬし、さらに本土におきましては、無医地区というのが相当残っておるわけでございまして、それらの対策をどうするかという問題もあるわけです。したがって、本土から私はそうした医療従事者を沖繩に送るということは、むしろ逆であって、むずかしいのではないか。やはり現地養成というのが非常に重要になってくるわけでありますけれども、いまのようなことではたして自信が持てるのかどうか。大学の付属病院にしましても、建物はできたけれども、医師がおらぬのでまだ開院をできないというような状況にあるし、先ほど言うた名護の総合病院にしましても、やはり医師が不足しておるというのが大きな原因になっておるわけですよ。だからそういう点ほんとうにできるのですか。ちょっとその点疑問に思うのですけれども……。#260
○甲斐説明員 御案内のように、確かに困難な事情がいろいろあろうかと思いますが、やはり少なくとも保健学部としてスタートしたことでございますし、また付属病院の建物も建築途上ではございますが、われわれとしては何とかして整備してまいりたいと思っているわけでございます。#261
○西田委員 これは水かけ論のような形になって、文部省としてはそうした医療従事者の増員をはかるための処置をとっていきたい。またそれで充足さしていきたい。私のほうではとてもそんなことは間に合わぬのではないかという心配があるわけです。したがってここでは何か緊急に方法を考えなければならぬと思うわけでありますが、この点に触れていきますと、国の根本的な医療問題ということにも触れなければならぬし、その場合現在本土の各大学におきまして、国立大学あるいは都道府県立大学ですね。官立、公立大学におきまして医学部を設置したいというけれども、医学部がどうしても設置できないようなところもあるわけです。どうしてそれができないのか。これは非常にいろいろな事情があるようでありますけれども、この医学部に入学するための費用がばく大な費用が要るというようなこともからみ合わせまして、私はこれは重要な問題だと思うのですけれども、ここではこの問題は論議せずに、また後の日に厚生大臣に医療全般にわたってのいろいろな施策について伺いたいと思うわけですけれども、実は私は沖繩の医療供給体制、特にその医療従事者の養成という問題については大きな不安を持っておるわけであります。しかも現在までなかった保険制度というものが実施されるようになると、そうした医療需要というものは非常にふえてくるということを想定しなければならないので、そうした面からもぜひともひとつ早急に対策を立てて、しかるべき機会にひとつお示しをいただきたいというように思うわけであります。そこでいま私申し上げました介輔制度というものを一体どういうふうに位置づけていかれるのか、将来それはどうされるおつもりなのか、ひとつお伺いをいたしたい。
#262
○松尾説明員 現在医介輔が五十二名、歯科介輔が十六名、こういう状態でございまして、これは沖繩特有の制度でございますけれども、二十年間の歴史というものを持って、ある一定の条件の中で認められてきているわけでございます。この問題については、ただいまも御指摘のような沖繩の特殊な医療の状況というのがございますので、また従来からの実績というものも持っておられるわけでございますから、復帰の際にはやはり現状のままで、その人のいる限り存続をする、こういう形で進めたいと思っております。#263
○西田委員 それはしたがって本土にはない制度ですね。そのまま残していこう、こういう考え方ですね。次に、私は沖繩で聞いてびっくりしたのですけれども、結核が非常に蔓延というと語弊がありますけれども、結核患者が非常に多いということと、らい患者が非常に多い。こういうことでその対策に政府としても非常な苦慮をしておられるようであります。特にそれぞれハンセン氏病予防法あるいは結核予防法ですか、それらの法律が制定されましたのが、本土よりも約五年おくれております。また精神障害者の対策法にしましても十年ほどおくれておりまして、それらのおくれた分が非常に目立っておるわけであります。湿性、乾性というようなことばが私ら子供の時分によく使われたのですけれども、他人にうつすその危険性、おそれのある患者が在宅療養をしているということも聞きました。これらについて一体どういうふうにして処置をしていかれるのか、お伺いをいたしたいと思います。
#264
○滝沢説明員 お尋ねの結核、精神、らい、ともどもに問題がございまして、特に結核はBCGを使っておりません関係で、免疫学的には非常に反応の強い状態の結核の体質といいますか県民の体質が残っておりますので、本土では少なくなりました小児結核であるとかいろいろなものが、むしろまだ沖繩には見られるというような質的な問題がございますが、量的には、死亡率その他がかえって本土より低いとか、いろいろ対策はかなり充実した面がございます。精神については患者数が非常に多い。ベッドは少ない。これに対する対策が今後は重要でございます。お尋ねの主体でございますらいにつきましては、確かにらい収容所は千三百くらいの収容力を旧国立時代から持っておりますけれども、ここにただいま九百名ちょっとの患者がおります。それとほぼ同数の在宅患者がおりますけれども、沖繩のハンセン氏病予防法では、感染のおそれのない者が在宅治療できるということになっております。この点については復帰に際しても、われわれは日本のらい予防法でも感染のおそれのある者を収容するということで、その裏から言って、感染のおそれのない沖繩のらい患者の在宅治療というものは、これはむしろ国際的に見て、在宅治療というものを、感染のおそれのない者に早期発見した場合にはやるべしということになっておりますので、その施策を踏襲して在宅治療ができるようにしたい。ただ問題は、感染のおそれがあるかないかという点で専門医の不足の状態がございますので、これは数年来かなり強力に医療援助をいたしておりますし、今後も、らいの専門医は特殊な専門医でございますので、強力に援助を継続して、学童の検診等によりましても、かなりまだ発見できますので、そういう問題も含めまして、早期に発見した場合はいわゆる社会的な断絶を防ぎ、むしろ社会復帰がすみやかにいき、なおかつ、らいの治療ができるということであれば、在宅治療というものは推進してまいる。ただ問題は、感染のおそれがあるということの判定そのものが問題でございますが、この点については一応従来の沖繩のハンセン氏病の対策、あるいは現地にもかなりの能力のある専門医がおりますけれども、大体感染のおそれがないという判定の上に在宅治療をいたしておると、われわれは信じておりますので、その点についてはなお確認をしながら沖繩の実情に沿った対策を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
#265
○西田委員 進めてまいりたいというその対策を聞いておるわけなんですよ。対策を進めておられることは十分わかるわけです、この復帰要綱の中にも書かれてあるわけですから。だから、それを具体的にどうしていくかということですよ。ずっといまお伺いしてきたとおり、医療従事者の数も足らぬ、医師も足らぬ、看護婦も足らぬ、病院も不足しておる、こういう中でどういうふうにしてそれを処置していかれるのか。これをより具体的にお答えがいただければ……。#266
○滝沢説明員 具体的な在宅治療の実態でございますが、これは沖繩に癩予防協会というものがございまして、これが琉球政府の委託を受けまして、宮古、八重山等の離島におきましては在宅治療の投薬、それから健康管理等をいたしております。本島においては主として愛楽園を中心にいたしておりますし、また那覇市内にもスキンクリニックと申しまして、そのような相談機関を設けております。これについてわれわれは、一応来年度の沖繩対策の予算要求としては、引き続きその癩予防協会を通じて、らいは国が直接治療にタッチすべき疾患でございますので、これに委託費を予算措置いたしまして、引き続きその問題が円滑に実施できますように考えております。それから沖繩県自体に、本土の場合も県の職員の中にらいの担当の専門職員が置いてあったのでありますが、これはいま廃止されて、一般的な予防対策で行なわれておりますが、でき得れば沖繩に対してはそういう人の面も強化してまいりたいということで対策は考えております。もちろん二カ所のらい療養所は国立に移管されるということで、医務局のほうとしても、それに対応した本土並みの職員内容、実施内容等も要求されておるという具体的な内容でございます。
#267
○西田委員 医療制度でまだほかにも若干聞きたいことがございますが、時間の関係もありますので、いまの点をもって……。次に、老人あるいは子供の保育その他について二、三お伺いをいたしたいと思うのですけれども、現在那覇あるいはコザ等のいわゆる開けた地域におきましては、かなり核家族化というものが進んでおるわけですけれども、農村地帯、特に北部へ行きますと、まだ家族同居のいわゆる古い家制度というものが残っておりまして同居が多いわけですけれども、今後経済開発が行なわれるというようなことになり、かつまたあまり好ましくないことで、現地の経済界等においてはその点非常に警戒をしておりますけれども、今後本土に向かって就職をする若い人たちがふえてくると思うのであります。そうしますと、その老人というものに対してよほど手厚い対策を立てていかないと、たいへんなことになるのではないかというような印象を、私は受けて帰ってきたわけでありますけれども、その面から考えまして、老人施設といいますか、老人対策というものが日本の本土の状況からながめてみまして非常におくれているように思います。これに対して一体どういう処置をしていこうと思われるのか、お伺いいたしたいと思います。
#268
○加藤説明員 沖繩におきます社会福祉施設につきましては先ほども申し上げましたけれども、本土に比べまして、老人福祉施設ばかりではございませんで、全体的に申しまして非常におくれておるというのが実態でございます。それで施設全体といたしましては、これは四十六年四月の数字でございますけれども、百三施設ということになっております。そういうことでございますが、しかしこれは大体沖繩に匹敵いたしますところの、たとえば高知県とかあるいは徳島県、鳥取県等に比べましても半分以下でございます。そういうことで、いま先生の御指摘がありましたとおり、確かに本土に復帰いたしますと、若い人がどんどん本土のほうに渡ってくるという傾向は強まるものというぐあいに考えられるわけでございまして、そういう意味におきまして老人ホーム等の充実ということを特に重点を置いてやってまいりたいというぐあいに考えております。来年度はとりあえず私どものほうで考えておりますのは、それぞれ特別養護老人ホームあるいは養護老人ホーム一カ所ずつの補助を考えておりますが、今後ともできるだけ充実をはかってまいりたいというぐあいに考えております。#269
○西田委員 ぜひひとつそれは、本土も老人対策は非常におくれておるわけでありまして、まだまだ老人が安心して老後を安んずるというような状態にはなっていないわけでありまして、これから老人福祉年金やあるいは国民年金そのものの額の引き上げ等も考えていかなければならぬわけですけれども、それ以下にある状態でありますから、早急にそうしたことについて、ひとつ対策を樹立し、また重点施策の一つとしてお取り上げをいただきたいと思うのです。最後にお伺いしたいのは、いま保育事業振興法という法律をもって各地域に保育所の設置を行なわれておるわけでありますが、幼稚園との関係でなかなかうまくいかないというようなことを聞いてきたわけでありますが、この保育施設も今後きわめて重要になってくると思われます。経済開発とあわせまして当然これは問題になってくるのではないかということは、結局主婦労働というものがふえてくると思いますし、いずれは基地も返ってくれば農業が整備されてくるということになってくると、主婦の労働というものが家内労働を含めてかなりふえてくる。そうした場合の子供の保育という問題が重要な問題になってくるし、特に市のように人口の密集しているところはいいとしても、非常に人口が散在し、広域な範囲にわたって形成している町村等においては、この問題は非常に重要な問題だし、かつまた町村だけでは解決するのが非常に困難な問題ではなかろうかと思うのですが、こうした問題について、一体どう考えておられるのか。現在ある法律をそのまま引き継いでやっていくつもりなのか、それとも、本土に照らして、本土法の適用をもってそれにかえていこうとされておるのか、ひとつお伺いをいたしたい。
#270
○松下説明員 沖繩の児童福祉全般につきましても、本土に比べておくれておる面が多うございまして、先ほど社会局長から申し上げましたように、昨年度末におきまして社会福祉施設、児童福祉施設を含めまして百三カ所でございます。児童福祉施設、今年度でだいぶ増強を考えておりまして、それを加えましても、特に御指摘の保育所は九十数カ所になる予定でございますが、それでもなお御指摘のように、本土の平均的な需要に比べましてかなり足りないということは考えられる状態でございます。実は、そういった実情もさらに詳しく把握したいということで、担当の母子福祉課長を沖繩に派遣いたしまして、ちょうど帰ってきたばかりでございまして、まだ詳しい報告は受けておりませんが、実情をよく調査いたしまして、今後の方策といたしましては、やはり本土におきます児童福祉法を適用して優先的に保育所の増強をはかる、同時に特別な対策といたしましても、実情に照らしましてできるだけ手厚い施策をとっていくというような形で、いま御指摘のような収容状況等にらみ合わせまして、早急にニードを満たしていくような増強をはかりたいと考えております。#271
○西田委員 関連しまして、児童手当はどうなりますか。#272
○松下説明員 児童手当は、復帰の時点におきまして当然本土の児童手当法がそのまま施行になるわけでございますので、復帰の日程とにらみ合わせまして、十分な準備をしまして漏れのないように施行してまいりたいと考えております。#273
○西田委員 時間が来ましたので終わりますが、最後に大臣にお願いをいたしておきたいのですけれども、各係官、大臣もみずからお認めになっておりますように、確かに社会福祉を含め、特に医療制度が沖繩の場合おくれておる。これはお認めになっておるとおりであります。しかし、それを本土並みにする場合、復帰をされて一年やそこらは沖繩という特殊な扱いをできたとしても、だんだんとそれが慢性化してまいりますと、沖繩も一つの県であるという考え方に立って、おそらく全国都道府県知事会議あるいはその他の関係者の会議等においても、なぜ沖繩だけをという声が必ず出てくると私は思うのです。そうしたときにせっかくの施策もうまくいかないということが考えられますので、ぜひともこうした問題については、先ほどお話しになりましたような、一つの基準というか水準をこの程度ということに定めて、そこへいくまでは国が復帰に際して約束をした条件だ、こういうことでぜひともひとつお守りをいただきたいと思うわけであります。これから公共投資等をふやし、沖繩の経済発展のためにいろいろな施策が講じられていくことと思いますけれども、それらの過程の中で、沖繩は少しよくなってきたじゃないかというようなことで、それらの考えておられる施策が中座をしたり、もしくはその場限りで打ち切りになったりしたのでは、せっかくのわれわれの好意もまた政府の施策も用をなさないわけでありますから、その点ひとつ十分にお守りをいただくようにお願いをしておきまして、私の質問を終わります。
#274
○森山委員長 次に、寺前巖君。#275
○寺前委員 沖繩の麻薬対策を、復帰を前にして、また復帰後はどういうふうにおやりになるのか、その一点にしぼってお聞きしたいと思います。私、最近沖繩へ行ってきましたが、沖繩の麻薬禍は容易ならぬ事態にきているのではないかと思います。従来は沖繩が麻薬の密輸ルートの中継基地という役割りを持っていたように思いますが、例のベトナム侵略戦争以後の基地の実態から、麻薬の売買や流通の手助けというだけではなくして、沖繩自身において麻薬の中毒患者が激増してきているの、が実態ではないかと思うのです。
麻薬というものは私自身も直接は知りません、一般市民にもあまり関係がないように見られますけれども、しかし、現に起こっている沖繩の事態、たとえば女子高校生の刺傷事件というのが四十四年の末にありましたし、あるいはまた、ことし一年間を見ても、麻薬をめぐっての死亡者が四人もすでにあらわれてきているという、ホステスの錯乱自殺とかあるいはお互いに致死量をこえるところの麻薬を打つという事件をめぐって、いろいろな問題が起こってきております。まさに犯罪の陰には麻薬ありといわれる実態がかなりはびこっているように思います。同時に、麻薬の常習者というのは無限に麻薬の常習をしていくところから、金づるとしての性格を持ってきております。したがって、こういう実情を見るときに、沖繩の基地の機能と日本本土全体の機能との比較をしても、特殊な麻薬の実態が沖繩には生まれてくるというふうにいわなければならないのではないでしょうか。
そこで、私があそこで聞いていた話を通じましても、たとえば高等学校で子供が種をまいて水をせっせとやっているという事態を見て、先生も一緒になって、子供が感心なのがおるといって水をまいて手伝ってやっておったら、その種は大麻の種であったというような例が幾つかの高等学校からも聞かれました。また、アパートにおいても特飲街の女の人が大麻の栽培をやっているという事態も聞きました。かなり広範な人々の間にこれが広がっているという伝播性という問題は、またおそろしい問題だと私は思います。
そこで、私は第一番目に局長さんにお伺いしたいのは、麻薬の中毒患者の実態が正確につかまれているのかどうか、そして同時に、この麻薬の対策が現地ではどういうふうにされているのか、いまの体制のままで復帰前の状態はいいのかということについて、最初に聞きたいと思います。
#276
○武藤説明員 沖繩の麻薬の実態並びにそれについての対策の御質問でございます。実態いかんということにつきましては、沖繩の警察及び取締官によりまして送致されました件数を見ますと、四十五年度におきまして、送致件数は五十二件、送致人員は四十八人、こうなっております。年次的に見ますと、四十一年あたりは全然なかったようでございまして、あと四十二年、四十三年、四十四年と年を経るに従いまして送致件数なり送致人員はふえておりますので、取り締まりが強化されたこともありましょうけれども、先生御心配のように、実態はやはり油断ならない状態になってきておると、こういうふうに私は考えております。乱用者がどのくらいあるかということにつきましては、正確な、内地におきますようにいろいろ相談員によるチェック等が行なわれておりませんけれども、いわゆる推定でございますけれども、五千人くらいの乱用者がいるのではなかろうかというふうに私どもは情報を得ております。したがいまして、先ほど先生おっしゃったように、従来は東南アジアからの密輸基地的な性格から、いまいろいろ事例をあげられましたような青少年あるいは米基地関係の接客等の商売に携わる者、そういう者に蔓延しているおそれがある。また一部にそれがあるということは私は言えるのではなかろうかと、かように思います。
#277
○寺前委員 麻薬の常習の実態調査を系統的にやる体制をつくらないことには、系統的に監察していかないことには、これを減らすということはできないと思うのです。先ほどの報告の中にありましたように、相談員によるチェックがやられていないというお話がありました。私は、いま日本本土と違って沖繩の、この麻薬の発生源というのが、東南アジアを通じての密輸ルートの線もないではないと思います。あると思いますが、主要な要素というのは、明らかに急速にふえてきている事態から考えて、基地機能との関連を見ないわけにはいかない。とすると、私はもっと実態調査に対して系統的な調査をする必要があると思うのです。さらにまた私の聞いてきた範囲では、あそこの取締官、取締員、相談員の体制は非常に不備である。取締官も毒劇物の兼務をした取締官が配属されておる、あるいは取締員にしても薬務課長、監視係長の二人だ、定数は五人もあるけれども、こういう実態だと、はたしてこれがたいへんな事態にある沖繩の対策として、これでいいんだろうか、私は復帰を前にして、いま予算措置を含めて厚生省当局が、この問題を重視してどのような体制と予算的な裏づけと、そして系統的な、この実態把握をやろうとしておられるのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。#278
○武藤説明員 現体制は、先生御調査のような状態でございます。警察当局も防犯担当の者が主として当たっておるようでございまして、これも必ずしも十分ではないと私は言えると思います。したがいまして、復帰にあたりましてどういうような体制をとるかということで、現在財政当局にいろいろ予算を要求しておりますが、その概要を一応御披露いたしますと、私どもとしては九州地区麻薬取締官事務所の沖繩支所というものを設置して取り締まり体制をやりたい。それから内地におきましても、この麻薬の関係は、たとえば税関でありますとか、海上保安庁でありますとか、警察関係でありますとか、そういうものとの総合的な捜査体制、水ぎわ体制というものが必要でございます。そういう体制を十分はかる必要がある。それからそういう取り締まり体制のほかに、やはり麻薬中毒者の措置入院制度というものを――現在もちろん内地においてはだんだん少なくなってきておりますけれども、そういう措置をとる必要がある。これについての予算措置等も要求しております。それから先ほど触れましたように、内地におきましては、大都市におきましては相談員というものを置いて、いろいろ接触して、絶えず中毒者あるいは回復者あるいは経験者等の更生指導等をはかっておりますが、こういうものの専門相談員を、当然行なう必要があるということをやりたいと思います。そのほか、かつて内地におきまして、麻薬が三十六、七年、非常に全盛をきわめた時代におきまして、現在でも引き続いておりますけれども、麻薬に対する啓発指導は非常に必要なことでございまして、こういう点につきましても予算措置を十分講じていきたい、かように考えます。これはただ復帰と同時の措置でございます。それまでに、それではどういう措置をとるかということでございます。これにつきましては、やはり米軍におきましても、先生御承知のように、本国におきましても、帰還兵によるいろいろの影響が起きて、非常に米国も困っているようでございますが、そういう点から、たびたび私どものほうに、日本はどうしてこの麻薬を撲滅したかということを絶えず専門家なり、あるいはそういう政府の派遣の方が見えまして、私もたびたびお会いしまして、いままでの経過を話した経験がございますけれども、そういう点を米軍のほうでも相当真剣に考えておられるようでございます。したがいまして、これから復帰体制まではやはり――ちょうど内地においてもかつて行なわれ、また現在行なっておりますように、米軍の捜査機関とも十分な連絡をとって、基地そのものにおきます外人のいろいろの問題を強力に解決してもらうということを現地の、たとえば沖繩の警察なり、あるいは薬務課等に積極的に行なうように指導すると同時に、内地におきます東京におきましても、そういう沖繩につきましての協力体制をとってもらうように、あるいは強力に行なってもらうように、厚生省からも東京にある、そういう捜査機関に強力に申し入れて準備を進めたいと、かように考えております。
#279
○寺前委員 いまのお話を聞いておったら、私は非常に不安です。復帰前にいま起こっておる事態は、系統的な実態の調査もない。しかも警察の諸君が言っておるのでも、五千人からの沖繩の人たちの常用者があるだろう、基地の関係はそれとは別に、十万からおる米軍関係の軍人なり家族の中の、公式に言っておるのでも五%がその被害を受けておる。反戦グループの諸君たちの話によれば七%という話も出ているし、記者会見で言っている、ある米軍の人の話を聞いたら五割が常用者であるということも言われているし、アメリカの本土においても問題になっておる。基地の中におる諸君たち自身がこのような実態にあるし、それから沖繩の人たち自身の中でも五千人からの人の間に問題になっておる。それに対して琉球政府に、警察当局にやってもらうことを期待しておるという態度で済ますのか、私は、日本政府がはっきりと復帰を前にして処置をしていくという実態調査のために、これこれのことをやる、あそこの係官の実態が不十分である。専門的な能力を必要としますから、これに対して専門的な能力を持った人を派遣してやるということ、あるいは、あそこの青年に対してむしばんできている事実から見ても、これらの中に対してのもっと、たとえば先ほどハンセン氏の話がありましたが、ハンセン氏の場合だったらいろんな本をつくって、子供たちにまで、かかったときにはこうしなさいという資料を出しています。いろんな教育をやっております。私は真剣になって、この沖繩でいま発生している麻薬は一般化していないけれども、危険な事態に流れてきているということを考えたときに、復帰前にもっと積極的な手を出していただきたい、そういうふうに思います。私は、基地の問題は第二の問題として質問したいと思いますので、とりあえず実態の把握、係官の強化、あそこにおけるところのこれを援護する予算的な措置、諸政策を緊急に考えていただきたいと思うのですが、大臣、いかがでございましょう。#280
○斎藤国務大臣 寺前委員のお説、ごもっともと存じます。琉球政府とよく連絡をいたしまして、できるだけ万全を期してまいりたいと思います。#281
○寺前委員 私が言った点をもう一度再検討していただいて、局長さんやってください。私は、第二に、沖繩の麻薬問題の大きな位置を占めるのは基地の問題だと思います。基地から流れ出てくる、基地が隠れみのになっているということは、公然と現地の新聞にも書かれております。ここの問題をどう対処するのか。この問題は、私は一番大きい問題だと思うのです。ここは、小さい島に、日本本土全体におる米軍の数に匹敵する数がおって、沖繩の人々とこん然一体となっている姿がある。そこへこの基地だけを除いたところの対策をいかにやっておっても、発生源がこの基地を通じて流れてくるとするならば、基地の中におけるところの対策をアメリカ軍に期待しているというのだったら、従来と少しも変わらないということになると思うのです。従来、どんどんこの基地を通じて流れてきている。基地の中の米軍自身の体制が、取り締まれないという問題が起こってきている。われわれの政府の側からするならば、基地内におけるところの対策はこうしてくれという意見があってしかるべしだと思うのですが、局長さん、どうでしょう。
#282
○武藤説明員 米軍基地等の関係につきましては、これは内地においてもかつて同様でございました。過去におきまして、内地におきましては日米間の強力な協力関係によりましてここまでこぎつけたわけでございます。したがいまして、沖繩におきましても当然過去努力した以上の努力をしなければ、私はなかなか解決できないんじゃないか、かように考えます。それから、先ほど専門官の教育等にもこまかい配慮が必要であるということでございます。これは警察と私のほうで東南アジアのセミナーを毎年いままで行なってまいりましたけれども、ここ二、三年前から沖繩の方にも来ていただきまして一緒に研修を行なったという事実が一つございます。そのほか、いろいろの御意見につきましては、ただいま大臣がお話しになりましたように、十分前向きに検討いたしたい、かように考えます。
#283
○寺前委員 基地の中に対するチェックの問題については、私はもう少し積極的に検討する必要があるんじゃないかと思うのです。一般的に、外国からわれわれのところへ来るこの船に危険な状態が発生していると見たときには、乗り込んで調査をすると思うのです。ところが、現に危険な状態が米軍を通じてなされてきている。これに対しては何もチェックせぬと、期待をするということだったら、いままでどおりであって、沖繩の姿は変わらない。だから、米軍であってもチェックをするという機能を、日本政府の側が日本の国民を守る立場からやる必要があるのじゃないか。たとえばの例、一番受け身の例から考えても、一人の米軍人を通じて常用者が明らかになった場合には、その常用者をめぐって持ち込まれているという事実が一人を通じてでも明らかになった場合には、その部隊の日本国内におけるところの移動を押えてしまうという責任をとらす。私はもっと具体的にいろいろ検討する必要があると思うのです。この米軍を通じて入ってくる問題に対して、どういうチェックをやる必要があるかということを、今日までアメリカとの間に交渉されたのか、あるいは交渉はしていないんだったら、いま考えていることはこういうことなんだという点があるならば聞かしていただきたいと思うのです。#284
○武藤説明員 一月ほど前だと思いますが、立川の基地との関係で、私どものほうの関東麻薬取締事務所が大がかりな大麻事件を米軍のほうと協力関係によりましてあげた事件がございます。これは先生の期待される一つの姿だろうと思います。こういうようなことを積極的に、復帰後におきましてはもちろんのこと、その事前にもそういうふうな、復帰前は米軍自身の捜査体制の強化、その後は日米間の協力体制の強化ということをはかっていくべきだ、かように私は考えております。#285
○寺前委員 私は局長さんからもう少し積極的な意見が聞けるのじゃないかと思ったんですが、ほかの一般的な外国との関係においては、直接チェックをして、捜査に乗り込んでいくという事態があります。アメリカの軍用機を使ったらこれはチェックができない、飛行場に入ってきても。あるいはまたアメリカの基地から出てくる場合にもチェックできない。全くおすがりするよりしかたがない。この体制を変える必要があると思うのです。簡単にいうならば、私たちは基地そのものが問題あるとしても、軍用機の名をかりてチャーターした飛行機であっても、これはチェックをしてしまう。基地の場合であるならば、チェックができないんだったら外へ出さない。そうしなかったら信用がおけないのじゃないか。私はもう少し積極的に水ぎわ作戦というのを日本の国民の立場に立って検討していただきたい。これが一つです。第二番目に、ちょっとお聞きをしたいのですが、九日の日にボストンで行なわれた反戦集会で、ベトナム、ラオスに送られていた元軍曹、コーン・ウイザーズという青年が、いま沖繩にある米陸軍第一特殊部隊、いわゆるグリーンベレーの一員としてベトナムに派遣され、ラオスに派遣されて、私のやった仕事は、メオ族の訓練は週二回もやればせいぜいで、メオ族からCIAの資金でアヘンを買い付けることがおもな仕事の一つになった。CIAの連絡員を通じて伝えられ、CIAの飛行機を通じて代金を支払い、エア・アメリカ航空機でラオスの基地から運び出していったということを言っております。とするとわれわれは、沖繩に来ている軍隊そのものが、たいへんな事態を生んでいるという問題に対するチェックをやることを積極的に考えてもらうと同時に、現に沖繩にあるグリーンベレーの部隊、すなわち米陸軍第一特殊部隊に対して居残ってもらうわけにはいかないという態度をとってもらわないことには、公然とCIAとしての買い取りをやって仕事をしているということを認めることになると思うのです。そんなことは絶対にございませんという証拠が明らかにされない限り、私はその部隊をここに置いておくということは許されないと思うのですが、これは政治的な問題でありますので、大臣の御所見を承りたいと思います。
#286
○斎藤国務大臣 寺前委員のおっしゃるように、これは一つの政治的な問題だと存じます。外務省を通じましてよく事情を究明いたしますとともに、これが日本国民に及ばないような完全な措置をとるように外務省を通じまして十分話をいたしたいと思います。#287
○寺前委員 いまの問題について大臣に再度お聞きしたいと思うのですが、米陸軍第一特殊部隊がこのような活動をやっているということを否定する材料がない限り、公然とCIAとしてアヘンを集めた部隊を認めることができないという態度を明確にアメリカ側に要求してもらえますか。#288
○斎藤国務大臣 公然とCIAがアヘンの買い付けをやり、それを本土に持ち込んでいる、あるいは沖繩に持ち込んでいるということであれば厳重な抗議はしなければならぬと思いますが、そういう事実があるかないかという点も、新聞にはおっしゃるように出ておったようでありますが、これも十分究明をした上でなければならぬと思います。#289
○寺前委員 私は、日本国民が米軍を通じて持ち込まれてきているこの麻薬の実態から一日も早く安心することのできる体制に入れるために、積極的に復帰前におけるところの対策を明確にしていただくことをお願いいたしまして、発言を終わりたいと思います。#290
○森山委員長 本日はこれにて散会いたします。午後六時三分散会