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1970/03/24 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 物価等対策特別委員会 第5号
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1970/03/24 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 物価等対策特別委員会 第5号

#1
第065回国会 物価等対策特別委員会 第5号
昭和四十六年三月二十四日(水曜日)
   午後二時十八分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐田 一郎君
    理 事
                小枝 一雄君
                山下 春江君
                佐野 芳雄君
    委 員
                上原 正吉君
                櫻井 志郎君
                高田 浩運君
                山本  杉君
                横山 フク君
                田中寿美子君
                阿部 憲一君
                渡辺  武君
   国務大臣
       国 務 大 臣  佐藤 一郎君
   政府委員
       公正取引委員会
       事務局長     吉田 文剛君
       経済企画庁調整
       局長       新田 庚一君
       経済企画庁国民
       生活局長     宮崎  仁君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
       常任委員会専門
       員        宮出 秀雄君
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       大蔵大臣官房審
       議官       中橋敬次郎君
       厚生省環境衛生
       局乳肉衛生課長  神林 三男君
       農林省畜産局参
       事官       斎藤 吉郎君
       通商産業省企業
       局次長      井上  保君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○当面の物価等対策樹立に関する調査
 (物価対策の基本方針に関する件)
 (公正取引委員会の物価対策関係業務に関する
 件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(佐田一郎君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。
 当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価対策の基本方針に関する件及び公正取引委員会の物価対策関係業務に関する件を一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次発言を願います。
#3
○阿部憲一君 佐藤長官にお尋ねしたいと思いますが、長官が前々回の当委員会で物価安定の対策を御説明になりましたが、その裏づけとして、強力に物価を安定するための予算、強力に推進するための予算ということで御所見を話されておりますが、その中で、一般会計とそれから特別会計に分けて、どのくらいのトータルになりましょうか。
#4
○政府委員(宮崎仁君) 数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。
 四十六年度物価関係経費としてまとめておりますのは、一般会計、特別会計合わせて八千百七十五億四千四百万円でございますが、このうち、一般会計が六千六百九十億五千六百万円、特別会計が千四百八十四億八千八百万円、こうなっております。このほか、財政投融資がございます。
#5
○阿部憲一君 これは、申すまでもなく、予算の額だけで物価が安定するというふうには一がいに申せませんけれども、それだけで見る限りは相当の金額になっていると思います。そして、二、三年来の傾向を見ましても、物価対策費としての関係の予算としては年々増額しておるわけでございます。しかし、物価の上昇については、予算の額がふえる割合に、それだけの予算を使っていても案外実効があがってないんじゃないかと思いますけれども、この辺について長官の御所見を承りたいと思います。
#6
○国務大臣(佐藤一郎君) 率直に言いますと、いま阿部先生がおっしゃいましたように、予算と物価との関係というのは、なかなか私はむずかしいんじゃないかと思うんです。ここにわれわれいつもお求めに応じて出しておりますのは、ですから、物価関係予算というふうに特に銘打ってございます。それで、物価と予算とが一番直接に関係しますのは、価格差補給金のようなものですね、それだけの予算を出すと、もしこの予算がなくなればこれだけ上がるだろうというようなものは一番端的な関係になるんですけれども、そのほかのものは、ごらんになりますとおわかりのように、農業関係で言えば、農業基盤の整備費ということで、それこそ各種の土地改良事業とかいうようなものがみんな入っております。それで、こうしたものは、低い生産性部門、特に農業部門の生産性を高めるということが、やはり今後における農産物のコストを安くする理由だという意味で、長期的な意味でもってこれの支出を考えておる、こういうので、したがって、毎年毎年出ておる、あるいはまた住宅の建設予算が出ております。これなんかも物価に関係あるということで一応出しているんですけれども、これが住宅政策の遂行上必要な経費である、そういうようなことを考えてみますと、そして何かの理由でこの経費の項目が減りますと、それじゃ物価に対する関心が弱まったかというと、そうも言えない、そういう意味で、私は、物価関係を論ずるときに、物価関係予算の評価というものについては多少問題があるんじゃないかというふうに、かねがね感じておるようなわけでございます。
 そういう意味で、それぞれ本来の目的を持った予算があわせて物価にも関係がある、こういうようなことで集計している場合が相当ありますからして、よく中身を見ませんと一がいには議論はできない。まあ、これらの経費はいずれも経済成長に伴って当然予算規模が拡大し、また、全体の予算規模に伴って、もしくはそれ以上に伸びが伸びるということもありますし、場合によっては一般の伸び率に及ばないものも出てくるわけでありますが、それによって物価がどうということが端的に直結して議論できるかどうか、どうもそこのところは私も疑問を持っておりますが、しかし、いずれにしても、やはり経済政策の運営上物価というものはすべての問題に関係を持っている結果として、当然、財政支出の枢要な項目についてそれが同時に物価にも関係がある、こういうことで、年々、経済成長あるいは財政の支出の伸びに応じたところの伸び、もしくはそれ以上程度の伸びを見ております。逆に言いますと、経済成長があまりに伸びて、また、それに伴って予算も伸びるとなかなか物価の安定が困難である、こういうようなことから、むしろ財政需要としての物価への影響といった面を強く考えるべきかというような議論がときどき出てくるような始末であります。私は、物価関係の予算につきましても、そういう意味では、ある意味で長い目でもって考えなければならない要素が非常に多いということと、その関係が必ずしも直接的でないということで、ごく短い一年度なら一年度とった場合の物価ということをどの程度結びつけて考えていくのか、なかなか私はここらは判断がむずかしいと思っております。
 しかし、いずれにしましても、これらのものはやはり物価に相当影響をもたらすのでありますから、そういう意味において好影響をもたらしていることは私は確かであると思いますから、正確なはかり方はできませんけれども、やはり生産性も上あがってまいる、あるいは直接的に関係がある財政補給金のような性格がある、そういうようなものでそれぞれの経費について効果をある程度見ることはできる。ただ、全体の予算の規模が上がってきますから、すぐに物価にそれが反映しないという議論については多少割り引きをして考えるのもやむを得ないと考えておるのでございまして、むしろ、それ以外の本来の物価政策というものを中心にして考えていく、予算の関係について、どっちかというと少し長い目でもって、長期的な対策という見地から評価をしていただくということになるのではなかろうか、こういう感じを持っております。
#7
○阿部憲一君 ただ、私お伺いしたいのは、この前、物価対策としての御意見として、物価対策関係の予算がふえたということで、いかにもこれからの物価対策に寄与するんじゃないかというような印象を強く与えたような感じがしましたので、それで、特に前年度比二五%増しである、こういうふうに長官は申されておりますが、いままでと違って、もっとパーセンテージをふやしたんだと、こういうことは、いま申されたように、長期間に見て初めて実効があがるというような関係の内容のものであるというようなことよりも、むしろ、去年よりも二五%も増したんだから今度は実はもっと物価を安定させる姿勢をいくのだというような印象が強くなると思うので、ちょっとお伺いしたわけなんですけれども、おっしゃることはよくわかります。
 ただ、全体の予算がふくらんでいるわけですから、その中の物価対策予算も膨脹してくるのはあたりまえだとも言えるわけです。それだけに、逆に言うならば、長官のお立場として、物価関係予算をうんと取ろうというだけの、それだけの効果があったかどうか、あるかどうかということだと思います。ことに、この予算の中で、拝見した中では、構造対策費が非常に相当な額になっております。これは、いま長官が言われたように、すぐに短期間でもって実効が出るような性質のものでないということはよくわかっていますけれども、このような予算の費用まで物価対策予算だというように言っておられること自身が、私、ちょっと間違っているんじゃないか、むしろ、これは物価抑制にも役立つけれども、いまの構造対策費などは物価対策費の中に本来ならば入れないほうがいいくらいの性質のものじゃないかとも思うわけでございます。それで、むしろ、私は、このような総花的に物価対策費の増額が、前年度の二五%ふえたんだというようなことを言うことではなくて、いま長官もちょっとお触れになっておりますが、物価対策の、たとえばまあ、いま最も焦点になっている生鮮食料品の供給安定を確保する、これをひとつ来年度には重点的に行なう、そのために予算を集中的にふやしたんだ、こういうふうなやり方にすべきじゃないかと、こう思うわけでございます。この辺のところ、いかがでございますか。
#8
○国務大臣(佐藤一郎君) 実は、私も阿部委員と同じような感じを持っているのです。昨年も、物価の関係で予算要求しますときに、それはまあ住宅も大事ですから、住宅がふえたり、それから、いま御指摘のような構造対策の経費もいいんですが、昨年一年やはり野菜のような関係で非常に物価問題で撹乱された経過もありますから、特に野菜の供給安定というようなことを中心にした経費にできるだけ重点を置いて――これは私のほうの省ではございません、農林省なら農林省で、他省ですけれども、われわれもそばから相当応援いたしまして、そしてこの予算の成立の過程において非常に注意を払ってまいったわけであります。そういう意味で、おっしゃるように、この中でも特に中身というか、中心というか、そうした感じの経費というものをできるだけ重点的にとるというところに努力をいたしたわけでございます。
 それで、この構造対策の経費を物価対策に含めることがいいかどうかは、実は議論がございます。私も、一体八千億というような関係費を出すことが適当かどうかについては、昨年就任のときから疑問を呈しておりまして、国会に資料の提出要求がございますと、そのときに一体どういう範囲のものを出すべきか、これはやはり慎重にしなければいかぬということで検討したことがあるんうですが、どうも、こういうものは過去の習慣といいますか、やはり過去との比較といいますか、継続性ということもまた無視できない関係がございまして、まあ、前年も大体こういうことでやったんだから、その比較においても広い範囲でもって出すほうがかえって国会の要求にかなうというような判断もありまして、結局、従来とあまり変わらない形で、多少それでも従来のものを圧縮させまして出したわけですが、一面、物価対策につきましては、いつですか、大川報告というような問題もありましたように、構造対策といいますか、資源配分といいますか、こうしたものが相当重要な観点を持ってきつつある際でもありますので、まあ、これを入れることが間違いというわけにはならないので、やや広義ではありますけれども、広い観点からこういうように従来の経緯も頭に入れて出しております。まあ、これの中身をごらん願いますときには、いま阿部先生おっしゃいましたように、その中でもやはり特に重点を置いて考えるべき問題を中心にして見ていただくということになろうかと思うのであります。
#9
○阿部憲一君 そういうことから見ますと、私いま申し上げましたように。予算の額が二五%ふえたということでなくて、中身の問題になると思いますが、それで、その中身の問題ですけれども、いまお尋ねしましたように、いま物価の動向でもって最も緊急の施策を講じなければならないというのは、流通対策じゃないかと思います。ことに生鮮食料品の流通機構を改善しなければならない、こういう問題だと思いまするが、これに対する予算は、一般会計でもって九十四億しか載せていないと思うのであります。全体の八千億というような数字から見ますと、非常に僅少じゃないか、しかも、これが最も緊急の対策費として言われているのに、わずか九十四億しかないというのは、ちょっと私、過小じゃないかと思うわけでございます。ですから、全体の総額の関係予算が多いということで、肝心なところが非常に欠けておる。要するに、重点的な予算の立て方をしていないというふうにも思いますが、これはいかがですか。
#10
○国務大臣(佐藤一郎君) 確かに、今日流通対策が非常に重要なわけであります。そこで、政策の重点をこういうところに置かなければいかぬと思いますが、いまの御指摘のように、ここで一般会計に載せておりますのは、例の卸売市場法案を現在農林水産委員会でもって御審議を願っている関係の経費というようなものが載っており、それを中心にしてございますから、九十四億というようなことになっております。これでもおわかり願うように、流通問題というのは、一面においては、もちろん予算の関係もございますけれども、むしろ、今日、制度的な関係といいますか、メカニズムといいますか、そうしたものがやはり非常に多うございまして、これは必ずしも財政支出を伴わなければならないということでない性格の対策費とか、相当あると思います。そういう意味において、一般会計からの支出の割合が、わりあいにほかのいわゆる構造対策のようなものと比べて少なくなりがちであるという、これはある程度やむを得ないところでございます。
 ただし、財政投融資におきましては、事柄の性格上、相当の金額を出しております。これは、流通というよりも、あるいは輸送と言ったほうがいいかも知れませんが、輸送関係の経費であるとか、そうした広義の流通関係の財政投融資は、これは相当に出ております。ですから、そこいらを勘案してごらんいただくといいと思うのですが、もし、一般会計の支出なり、あるいは財政投融資の支出なりでもってその支出をし、その結果非常に流通コストの軽減その他に大きな効果をもたらすということが的確に判断されて、しかも、その経費が財政支出なり財投で出すことが適当であるというたぐいのものでございましたら、われわれとしては、これはできるだけやはり力を入れて出していかなければならない、こういうふうに考えております。
#11
○阿部憲一君 確かに、それは長官の言われるように、財政だけでなくて、財政投融資も含めてあるいは検討すべきだと思いますけれども、しかし、私どもしろうとから見ました場合に、いまの予算を拝見した場合に、物価対策費としてあげておる中で最も私たちが緊急だと思っているものに対する額が非常に少ないという感じを受けているわけでございます。そして、それに関連しますが、いまの野菜なんかの流通経路を短縮するというような方向で現実にはどういうことが行なわれているかと申しますと、いわゆる直売方式による現地の売り場が開放されて、それで非常に飛ぶように売れているということは御承知かと思いますが、また、こういうことに対しての何か施策と言いましょうか、いいじゃないかというようなこととか、それから、さらに、かつて生活協同組合を育成するなんということを政府でもおっしゃっていらした、それに対する、何というか、施策の推進と申しますか、援助と言いましょうか、そういうこと。それから、さらにまた、前の委員会でもちょっと触れましたけれども、輸入品の流通機構、これを考慮しなければならぬ。それから、これも前回ちょっと申し上げたのですけれども、米がいよいよ秋には自由化される、物価統制令からはずすと。そうすると、政府のいまの対策としては、米の流通を整備するというようなことを言っておりますけれども、それについても、これはもちろん農林省の関係でございましょうけれども、相当の予算が要るんじゃないかというふうにも思われます。そういった、いまの当面した問題をちょっと考えただけでも、いまの九十四億というような数字と比べて見ますと、いかにもまだ対策に対しては本腰を入れてないんじゃないかというような感じがするのですけれども、長官、いかがですか。
#12
○国務大臣(佐藤一郎君) 私、よく前から話しているのですけれども、物価だけでなくて、中小企業対策なんかもそうなんですけれども、一般会計から税金でもって出す補助金とか、そういう税金でもって出す支出というもの、これは一般会計中心でありますから、財政というと、とかく一般会計だけで見られがちなんですけれども、そいつはいわゆるしろうととしての常識ですけれども、必ずしも正鵠を得ているとは言えない。それぞれのものの性質に応じて、財政融資で出すことが適当なものがある。中小企業対策なんかも、むしろ税金でもって補助金を出すということは必ずしも適当でない。それよりは、税金なり金融の面でもってめんどうを見てあげるということが中小企業対策の中心なんですが、物価なんかも、一般会計から税金でもって補助金で出すという、それに適したケースというのは必ずしも多くはございません。先ほどの、農業生産を近代化するとか、そういうような構造対策を中心にしたものについては、これは十分考えられるのですが、流通機構を取り上げて、それに税金で補助金を直接に投入するというようなことに適当なケースというものは、なかなか選択が困難でございます。勢い、財政投融資が中心になるのですから、これにもいろいろ、ここにございますけれども、一例をあげれば、国民金融公庫でございましたか、従来なかったんですけれども、八百屋さんなんかの関係のために三百億以上の融資のワクを設けたりしておりますけれども、こういうような形での支出のしかたというものが、わりあいに低減をしているケースが多いわけでございます。そういうことで、勢い財政投融資に重点が移っておる、こういうことでありまして、これらのところは、いまの日本の財政のメカニズムと言いますか、財政のあり方を前提にして御吟味を願うという以外にはないのではなかろうかと考えております。
 それで、直売については、国民金融公庫の小売り市場の貸し付けなんかがそれに該当するようなものになっておりますけれども、おっしゃるように、一般会計でいま補助金を出してやるという形はとっておりません。
 また、生協でありますが、この生協の考えについては、御存じのように、いろいろな考え方がございます。それで、私は、生協というものをやはり政府としてあまり抑圧をしていくというようなものの考え方はとるべきでない、特に物価対策ということも頭に入れながら、秩序ある正しい方向に生協というものを伸ばしていく、これは私は現在の時勢に最も適合した方法の一つであるというふうに考えております。ただ、御存知のように、中小企業問題等も確かに関連もございます。やはり、よく言われるように、その際にあまり財政的な取り扱いにアンバランスがあるということは、これはまた他の面で納得させないところが出てくるわけです。ですから、私はむしろ、現在生協問題で大事なのは、制度的な問題についてよく議論がありますように、たとえば兵庫県の生協は大阪府に乗り出してはいけないとか、そういういろんな法的な地域制限その他の制限がございます、そうしたものをできるだけこの際自由にして、そうして生協というものをあまり巨大化して、それはそれでまた弊害をもたらさないような限度のもとにおいて、もっと自由に伸ばすという意味において制度的改正は重点的に考えていいんじゃないか、あまり財政援助を生協にだけやるというようなことになると、これは、中小企業は中小企業で、おれたちと同じイコール・フットでもってやるべきじゃないかという議論もかねがねある際でもありますから、生協自体を伸ばすことはわれわれもいいんですけれども、そのやり方についてはいろいろとそれに応じた考え方があるんじゃなかろうかというふうに私は考えているわけなんです。
 それから輸入でございますけれども、輸入の自由化がせっかく行なわれたけれども、流通機構が不備なために十分に価格が下がってこない、これは確かにございます。過去においても、バナナにいたしましても、それからレモンにいたしましても、自由化をいたしましてからずいぶんいわゆる価格のレベルは下がりました。そういう意味でもって、自由化の影響というものは、やはりそれなりの非常に顕著なメリットを持ったわけでございますけれども、しかし、御指摘になったように、問に流通機構がございまして、それの運営が適正でないために、さらにもっと下がるべきものを阻害するとかいうようなことがないとは私も言えないと思います。一、二そういうような例もあるわけでありますから、そういう点については、流通機構について、これは関係各省とも相談をして、そうした阻害要因をなくするように持っていきたい。まあ、特によく問題になっておりますのは、自由化はされておるんですけれども、たとえば台湾のように、相手が国営貿易といいますか、一手販売である、そういうことのためにどうしても売手市場になってくる。そうしてそれに対抗するために、こちらのほうとしても、あまり個々ばらばらな取引をさせるということは好ましくないというので、組合等を結成させまして、そしてやる。ところが、その組合を結成させたのはそういう意味であったのにかかわらず、その組合の運営の結果として、今度は、この自由化の効果というものを阻害するような運営が行なわれはしないか、こういうような点は、よく実態を調べないと、なかなかその結論が出ないのであります。われわれも、いまそれを調査をしているものもございますが、関係各省と相談して、的確に、ここにポイントがあるということがわかれば、そこのところを何とか運営を直さしていく、あるいは機構そのものを変えていく、こういうような方法をとっていこうと、こういう考え方で臨んでおります。ただ、よく言われますように、国際的な関係のいわゆるソール・エージェンシーというような関係になってくると、これはなかなか、いま国内だけの問題として処理できない問題を含んでおりますから、これは今後の宿題として、どういうふうにそういう問題は扱うかということを検討しなければならないと、こういうふうに考えておるわけであります。
 米につきましては、これは物統令廃止後の米の値段をできるだけ安定させるのは、これは政府の義務でありますからして、これをいかにしてやるか、いま食糧庁とも相談をしておるところであります。むしろ、これは制度的な問題が多いと思います。金も出さなければどうにもならぬということで、制度的な問題が多いと思いますが、それでも、もし必要な場合においては金の問題も起こってくる。特に売却の操作ということになれば、直接食管の予算の運用にも響いてくる問題でございますから、財政支出に関連がないわけではございませんけれども、これはいま制度的な点を中心にして検討しておる、こういう段階でございます。
#13
○阿部憲一君 牛乳の問題で、ちょっと質問したいと思いますが、農林省の方いらっしゃいますか。
 最近、牛乳の値上げの動きが見られるようになっておりますが、生産者のほうでも、飲用向けそれから加工用向け、ともに引き上げる、そういう要求をしております。また、大手の牛乳のメーカーも、小売値段を上げようと、こういうふうな方向で検討しておりますように私には見受けられるのでございますけれども、この動きについてちょっと御説明を願いたいと思います。
#14
○説明員(斎藤吉郎君) いま先生おっしゃいましたように、牛乳の価格につきまして、いわゆる生産者の段階の加工原料乳と、それから飲用に回りますところの飲用乳価、それから、いま申しました末端にまいりますまでの、業者が製造いたしまして末端に小売りをいたします小売りの段階の値段、これらのいろいろな価格につきまして、いまおっしゃいましたような動きがいろいろと伝えられておりますことは事実でございます。ただし、政府がこの価格について何らかの一つの決定をいたしますのは、先生御案内のとおり、いわゆる加工用の原料乳の価格についてでございまして、それ以外の価格につきまして、これは生産者の、飲用に回りますところの飲用乳価につきましても、それから末端の小売りまでの価格につきましても、これは一応それぞれ関係者の間で相談をして決定をしていく、こういう方式をとっておるわけであります。
 それで、政府が介入と申しますか、きめることになっておりますいわゆる加工原料乳の保証価格、これにつきましては、御案内のとおり、今月の二十七日土曜日に、畜産振興審議会の酪農部会、そこでおはかりをいたしまして、その御答申を得て、慎重に月末までに決定をいたしまして、四月以降これを実施するという形で段取りを進めているところでございます。
#15
○阿部憲一君 牛乳のこれは、お米と比較しましても、まだまだ消費量が伸びていくと思いますので、ほかの農産物に比べましても非常に有望な事業ではないかと思うわけでございます。ところが、現在は食生活が変化しまして、消費が伸びていっても、また一方、清涼飲料にだいぶ押されておりまして、まあ夏になれば需要がふえるというようなことですが、しかし、これが値段が下がるといいましょうか、安定すればいいんですが、相当需要が上がると値段が上がる、値段が上がるとまた需要が減退するということを繰り返しているわけですけれども、このようなことからも、私は値上げの気配があるということは非常にマイナスだと思いますが、その辺のところはこれからよく対策を誤らぬようにしていただきたいと思いますが、それにつきまして、近年の需給状況と、それから畜産振興事業団ですか、この在庫状況なんかについて知りたいんですけれども、時間もないので、ごく簡略にお願いします。
#16
○説明員(斎藤吉郎君) 簡単に、最近の牛乳、乳製品の需給の関係について御説明いたします。
 昭和四十三年、四十四年にかけましては、対前年度比で約一二%の増というような、きわめて高い伸び率でもって生産が進められておりました。しかし、四十五年に入りましてから、その伸びがやや縮小傾向をたどっております。最近、生乳の生産の状況では、ことにいわゆる市乳地帯、おもに飲用乳の地帯でございますが、市乳地帯におきましてはその停滞が非常に顕著でございまして、一部の地域では前年の生産水準を下回るというようなところも出ております。もちろん、北海道とか九州とかいう、いわゆる加工原料乳の地域では、非常な伸びを依然として維持をしておりますけれども、全体といたしましては、四十五年度の全国の生乳の生産量は対前年比で約五%増という程度にとどまっております。二、三年前の十何%ということに比べますと、約半分というような伸び率でございます。一方、牛乳ないし乳製品につきましての需要でございますが、これは飲用、飲むほうの消費の伸びがやはり四十三年からずっと引き続いて停滞をしております。そこで、何といたしましても、需要の拡大ということに政策の中心を置きまして、いわゆる学校給食の牛乳供給量を大幅に伸ばす、いわゆる政策需要を中心にいたしまして、その需要の増進対策を推進してまいったわけでございます。四十五年度においても、その伸びはやはりだいぶ落ちてまいりました。ほぼ生産の伸びと匹敵いたしますところの五%程度の期待が持てるという状況でございまして、二、三年前の、生産も消費もいずれも一〇%をこえるというような伸びをみたころから比べますと、いわば低位安定という形で推移しておるというのが現在の状況でございます。
 そこで、さらに、ただいまのお話の、畜産振興事業団が保管しております乳製品のことでございます。これは、現在の状況を申し上げますと、バターが、畜産振興事業団が買い上げて持っておりますバターが五千九百八十八トンございます。それから脱脂粉乳が二万五千二百ということで、これを乳の量に換算いたしますと約二十五万トンということになるわけでございます。
#17
○阿部憲一君 そうすると、あれですか、畜産振興事業団のほうのストックというのは、ふえているんですか、それとも減っているんですか。その点、どうですか。
#18
○説明員(斎藤吉郎君) ただいま申し上げまた払のは、四十三年度、四十四年度にわたって畜産振興事業団が買い上げましたおもなものの数量でございまして、実は、これの価格が、やや昨今、先ほど申し上げました数量の減退傾向というようなことから、脱脂粉乳の価格が強くなっておりますので、最近、脱脂粉乳につきまして千トン程度の放出を行なったところでございますが、売れ方があまりはかばかしくございませんで、実際に売れましたのは十五トン程度であるわけでございますが、その程度のものが出たということで、四十三年以来、そのものが最後になってかかえております。
#19
○阿部憲一君 そうすると、一応市況は低迷しているわけですね。
 加工用の原料乳につきましては、不足払い制度によって生産者に交付金を出しておりますね、その交付の対象となる加工用の原料乳としての数量ですね、これはどういうふうに御決定なされておりますか。
#20
○説明員(斎藤吉郎君) 昭和四十五年度のいわゆる不足払いの対象にいたしますところの限度数量というものをきめておりますが、これが百四十五万五千トンでございまして、四十四年には百三十五万トンでございましたが、さらに約十万トン程度四十五年度ふやしておるわけでございますが、これはいわゆる加工原料乳地帯の、これに回るであろうところを需給推算等をいたしまして毎年きめております。明年度は、やはり今度の保証価格をきめますときの今月末の審議会で同時にきめる、こういうことでございます。
#21
○阿部憲一君 ちょっと伺いますが、そうすると、酪農家ですね、生産者は、生乳を乳業メーカーに持っていくためには、その用途を飲用牛乳向けと加工向けと、別々に分ていくわけですか。
#22
○説明員(斎藤吉郎君) 先生御案内のとおり、牛乳の消費と申ますか、生産から加工、流通にわたります過程におきまして、まず飲用乳という、いわゆる先取りというかっこうになりまして飲用乳に持っていきまして、飲用乳の余りが必然的に加工のほうに回るという形でございます。飲用乳価と加工原料乳とは価格が別でございます。
#23
○阿部憲一君 そこのところがちょっと何ですが、同じ生産者が、飲用としては非常に高い値段で売れる、加工用とすれば、それが安く引き取られる、しかも、牛乳の内容というもの自体にはあまり変わりがないというような状態であるわけですから……、と思いますが、そうでございますね。
#24
○説明員(斎藤吉郎君) そこで、いま先生のおっしゃいましたように、飲用乳価と加工用の乳価と、これは現在おおむね飲用乳向けに回りますほうがキロ当たり約十円程度高いというのが一般でございます。これは、いま申し上げましたように、そういうことで、飲用乳価のほうは個別の――個別のと申しますか、生産者と消費者と申しますか、製造業者の、この間できめておるわけでございますが、いわゆる加工原料乳につきましては、そういうことではやはりいまおっしゃいましたように安いということで、これは逆に言いますと、製造業者のほうからは製造のいわゆるコスト計算の上からこの程度の乳価しか払えない、いわゆるバターでありますとか、チーズあるいは各種の粉乳類でございますとか、そういうものの原価計算の上から出てくるわけでございまして、製造業者のほうから払われるところの支払い乳価には、そういったほうから制約がございます。しかし、逆に、生産者のほうから申しますと、生産費のほうからのコスト計算で、ある程度のものがないと引き合わないというかっこうになります。したがいまして、その生産費計算から出ましたコスト価格と、それから支払い得る支払い乳価というものの差額、その差額を不足払いという形で国が財政負担をして、これを埋めるという形をとって再生産の保証をするというかっこうをとっておりますので、実際上はそういう形できまりますので、再生産には支障がないという形になっております。
#25
○阿部憲一君 その、再生産には支障がないだけの保証をするというのですけれども、一応生産者の立場に立ちますと、同じ生産したものを飲用に回わせば十円高く売れる、原料用に回わせば十円だけ損をする。じゃ、その十円を、原料に回わした場合、加工に回わした場合、それだけを埋め合わしてもらう、保証してもらうということになれば、これはどういうふうな銘柄であろうと生産者には損得ないのですが、そういう機構じゃなくて、それだけの十分の再生産だけの保証はするけれども、飲用牛乳に回した分との差というものは出てくるというようなふうに思われますが、その点はどうですか。
#26
○説明員(斎藤吉郎君) これは、いま申し上げましたように、いわゆる加工原料乳地帯の生産者に対しますところの一つのてこ入れ措置でございます。そういうことによって牛乳生産の拡大をはかるという措置でとっておる政府の財政施策でございます。そこで、それではどれだけのところまでを見るかということになりますと、これはやはり生産費の保証をするという形以上には出られないということでございまして、他方、飲用乳のほうは、いま申しましたように、飲用乳の需要がこれまたなければ飲用のほうに回すというわけにいきませんので、結局は、最終的には需要の拡大ということを先ほども申し上げたわけでございまして、政策的な需要の拡大ということにつとめておるわけでございます。いわゆる学校給食の範囲も拡大させる、あるいは一八〇ccで給食いたしておりましたものを昨年から二〇〇ccに拡大をするというようなこともやり、さらに、何と申しましても、需要の拡大には末端の流通関係の特段の改善が必要なわけでございまして、いわゆるワンウェー容器、あのびんのまま運びまして、また運んで帰ってくるというようなのは、末端の人手、労賃が高くなりまして、現在ではなかなかこの辺がネックになっておりますので、そういったことで、ひとつ紙袋等の容器等も使うというようなことで、流通面の改善から、さらに需要の拡大、合理化というようなことをやりまして、全体の中で酪農全部がいい方向に進んでいくという形に持っていきたいというのが現在の方針でございます。
#27
○阿部憲一君 そうすると、ある程度この需要のアンバランスというものがあって、そのために飲用と加工用とに分けられると。そうすると、これはあくまで生産者のほうの自由でなくて、それを分けるのは、結局、メーカーのほうがチェックして分ける、はっきり言うならば、安いほうの加工のほうをたくさん買って、なるべく飲用のほうは買わないという操作はメーカーがやれるということでございますね。
#28
○説明員(斎藤吉郎君) そういうことではございませんで、結局、先ほど申し上げましたように、いわゆる北海道でございますとか九州とかという、そういういわゆる非常に酪農の中心地帯、そこではどうしても非常にたくさん牛乳ができるわけでございます。飲用乳というのは、やはり消費するところと大体結びつきまして場所的に近間でないと――これからはいろいろとその辺も改善されまして、遠くから運ぶというような技術革新等も出てくるわけでございますけれども、現在までのところ、やはり牛乳の主産地というところでは、地場で消費し切れないわけでございます。当然、そこでは消費し切れない飲用にいくのはおのずから限度があるわけでございます。それ以上できたものは、やはりこれは何らかのめんどうを見ませんと酪農が立ちいかない、そういうことから発想されてできている制度でありますので、別にメーカーが種わけをして、かってに安い乳代を払う、そういうことではないわけでございます。
#29
○阿部憲一君 そうすると、メーカーといいましょうか、それは自由にかってにチェックしてないというけれども、メーカーは、御承知のように、なるべく安いのを買おう、それは企業として当然だろうと思います。そうすると、安い原料向けでも、生産者としてはそちらに売らなければならないと思う。高い飲用に回すのは生産しただけ全部回せない、しかたなしにそれを加工用に回すという実態であるわけですね。そうすると、何といいましょうか、飲用は高いのだといっても、これはただ、何といいましょうか、値段があるだけであって、現実に取引売買の対象にならぬというケースも相当あるわけですね。乳をしぼったって、しかし、それが全部加工用だよと言われた場合に、加工用に全部回さなければならない、飲用のほうはただ価格があるだけであって、そっちへは回せないという事態もあるわけですね。
#30
○説明員(斎藤吉郎君) そういうことはございませんで、やはり飲用乳は飲用乳としてそれだけの需要がございますれば、これはメーカーとしてつくらないわけにいかないわけでございます。結局、必要といいますか、先ほど申しました需要のある分は当然つくる。それが、先ほど申しましたように、生産量の中で飲用向けに回るのが先取りになるわけでございます。飲用需要がない、まずここまで飲用需要にとって、そのあと――これはマクロの話になりますけれども、残りました分が加工用に回る、加工用に回るものが、先ほど申しましたようなことで、メーカーサイドだけの支払い乳代だけでは生産が償えないということではいけないので、その差額を財政的に見るということでございまして、その間に、有利不利、いわゆるその安くと申しますか、加工原料乳用の価格で買ったものを任意に飲用のほうに使うということはできないようなふうに、この数量のチェックは、はっきりしておるわけでございます。
#31
○阿部憲一君 そうすると、いま言われるように、マクロ的には、数量を飲用と加工用と分けておるわけです。しかし、ミクロの場合、個々の酪農家生産者にとっては、そうした区別をしてないわけですね。
#32
○説明員(斎藤吉郎君) これは、たまたま一戸一戸の酪農家がメーカーとやり合うということではございませんで、やはり酪農の関係の農協もできております。それから指定生産者団体という団体もできておりまして、それらの間で、いわばそうした形でもってことしの数量をきめるという取りきめをやって、その上でやっておりますので、そういう、たまたまきょう持っていったらば安いほうに向けられちゃったというような、そういうものではないわけです。
#33
○阿部憲一君 期間的にも、そうすると、何トンという取りきめはないわけで、ただ価格だけはきめられている、これが実情でございますね。
#34
○説明員(斎藤吉郎君) その団体といわゆるメーカーとの間できめまして、値段と数量とを個々の数量積み上げの上で決定をしておりますので、年間の交渉の過程で、はっきりきまっておる、こういうことであります。
#35
○阿部憲一君 そうすると、個々の農家にとっては、結局、団体でもってできるだけ有利にといいましょうか、メーカーと契約してもらうということになりますね。ところが、現実に、飲用と加工用の場合ですね、どちらかというとメーカーとしてだと思いますが、そうなりますと、メーカーの立場から有利にしなければならない、まあ有利にしたいということがございますので、そうすると、勢い、加工原料のほうをたくさん確保して、なるべく飲用は引き取りたくないというのがメーカーのほんとうの気持ちじゃないかと思います。ですから、どうなんですか、こういうことはありませんか。結局は、団体の契約する場合も数量をきめると言いましたね。数量をきめるときも、メーカーとしてはなるべく値段の安い加工用のほうを多く取ろうというふうなことになりませんか。
#36
○説明員(斎藤吉郎君) そういうことはございませんで、やはり商売でございますから製品を売らなければならないので、飲用乳、飲用のいわゆる市乳が需要があれば、これはそれだけ生産をするわけでございまして、その安い原料のほうを買って、バターだけの脱粉をつくっても、売れなければ、これは先ほど先生もおっしゃいましたように、事業団の手持ちのほうがはけない、滞貨になっておるということを申し上げまして、低迷だなと、こうおっしゃったわけでございますが、まさにそういうことでございまして、たくさんつくってかかえるというような話になっても、これはまことに会社としても困るわけでございます。そういうことではございませんで、つまり、飲用と加工とをどっちが有利であるというような観点からは、製造メーカーもそういうことでは考えてはおらないというぐあいに御了解いただきたいと思います。
#37
○阿部憲一君 メーカーが、飲用としての分と、それから加工用としての分と購入するとしまして、数量はわかりませんか、全体でけっこうですから。数量がわからなければ、私のほうで調べたのを……。いいですか。
#38
○説明員(斎藤吉郎君) 四十五年の数字はまだ概数でございますので、四十四年で申し上げますと、生産量が全体で四百五十万九千トンでございます。そのうち飲用向けに回りましたものが二百四十二万二千トンでございます。それから、乳製品のほうに回りましたものが百八十三万五千トンという数字になっております。その他若干の地場消費その他、いろいろございます。
#39
○阿部憲一君 私どもの調べたところでは、乳業メーカーが生産者から飲用として、飲用向け生乳として引き取った量よりも、メーカーが飲用牛乳として出荷した量のほうが多いわけですね。というのは、これは数字は四十四年度には大体十六万一千トンとなっていますし、四十五年度は二十三万一千トンという数字が出てきているわけです。これは、言うならば、なるほどいまあなたが言われたように、生乳のほうの売れ行きが悪いということよりも、逆に、売れ行きが悪いから引き取らないで、むしろ加工のほうに回すというようなことになって、生乳としての場合、牛乳の需要は非常に多い、それだけれども、いま私が再三申し上げましたように、メーカーのそろばんからいえば、なるべく加工用として買い取ったほうが得なわけでございますから、飲用に回す分を実は加工用として買い取って、それを今度は加工して、さらに飲用として回している。その数字が私が申し上げた十六万一千トンに該当するのではないか、こう思うのです。いかがですか。
#40
○説明員(斎藤吉郎君) まことにことばが足りないので、あるいは先生から誤解をいただいたと思うのです。いわゆる加工用といっておりますのは、バターでございますとか、粉乳とか、そういうものに回す牛乳、加工用原料乳。いま先生が問題にされましたのは、やはり飲用牛乳のなまの純粋の牛乳、加工牛乳の、このお話が多少一緒になってしまったんじゃないかというぐあいに考えられるのでございまして、そういうことでございまして、個々のいわゆる統計等に出てまいります飲用牛乳、なま牛乳と加工乳、この区分と、先ほど来申し上げておりますところの加工用原料乳というのは違うものでございます。そういうことでございますので、いわゆる加工乳という形でありますのは、いわば別のことばでは還元乳といったようなことで、いわゆるバターとか脱粉等をもとに還元いたしましてつくる牛乳と、こういうことでございます。
#41
○阿部憲一君 そうすると、何といいましょうか、還元乳の場合には、それは一たんバターにしたものを、また牛乳に再生するといいますか、還元する。そういうことは、あるいは費用その他がかかりまして、牛乳として売ったらば損になる、こう思いますけれども。いまあなたの言われる添加物を加えて、それで、牛乳といいますか、加工乳として売る。そういうふうにとれるわけですね。そうすると、いわゆる原料乳として買った牛乳を、いわゆる加工乳として、なま乳で売るよりは多少高く売ることができるのです。ですから、原料乳として買ったのに多少加工して、それを今度は加工乳として売ることは一向差しつかえないわけですか。
#42
○説明員(斎藤吉郎君) 結局、何といいましょうか、やはり牛乳には、先生も御案内のとおり、季節性がございまして、さらに生鮮のものでございますから、どうしてもなま乳をずっと常に年間平均してきちんと持っておるという形はできないわけでございます。そこで、一部のものは――一部と申しますか、生産が落ちます時期がございます。そして生産が追いつかない。いわゆる市乳地帯、ここでは季節的にやはり品がかれるということがございます。しかし、やはりそこでも、飲むほうは年間を通じて飲みたいという需要があるわけでございます。その辺の季節的な数量の不足を補うために、やはり、その程度に対してのそういう加工形式での還元乳というものの存在も一がいに否定するわけにはいかない面がございます。しかしながら、これはやはり消費者の方の御選択の自由、御選択によるということで、この点は、御案内のとおり、紫色のフードをかけましたものが、純粋牛乳と申しますか、そういうあれではない、つくったものではない牛乳であるということを表示いたしまして、さらに、御案内のとおり、キャップのシールのところに、加工乳は加工乳という表示をするという形で、消費者の方の御選択に待つという形でやっておるわけでございます。ところが、これ、だんだんその状況を見てみますと、確かに一時非常に加工乳が伸びた時代があります。しかし、現在は逆にどんどん加工乳が減りまして、生産者の御努力というか、消費者の嗜好というか、それが、いわゆるピュアーな新鮮な牛乳、本物の牛乳、そちらに向いているわけで、その形があらわれておる。ごく一部そういう形にあるというふうに、現在変わりつつあるという現状でございます。
#43
○阿部憲一君 そうすると、加工乳として買ったのを、いまのように加工乳として売ることはかまわないのですね。いや、添加物を加えて。それは現在そうやっているわけでしょう。
#44
○説明員(斎藤吉郎君) 先ほど申しましたように、飲用牛乳の中の加工乳でございますが、それに使います原料の牛乳は、やはり飲用牛乳と同じ飲用に買ったものであります。別のいわゆる乳製品をつくるための加工原料乳とは違うということでございます。
#45
○阿部憲一君 そうすると、私が先ほど来言っていますように、メーカーが、同じ牛乳なんですから、たとえばそれを飲用として買う場合と加工用の原料乳として買うという場合、その間に値段の上で非常にうま味があるということはないわけでございますか。
#46
○説明員(斎藤吉郎君) さようでございます。
#47
○阿部憲一君 そうすると、還元乳と称するものは非常に少ないわけですが、数量的には、季節やいろいろなものによって変わると思いまするけれども、年間にどのくらいのものがあるものなんですか。
#48
○説明員(斎藤吉郎君) ただいま数量的にきちんとしたものをちょっと持ち合わしてございませんけれども、これで御了承願えるかどうかと思うのでございますが、ただいま申し上げました牛乳と加工乳、この伸びの比率でございますけれども、四十一年には、いわゆる牛乳のほうが前年対比一一〇%の伸び、これに対して加工乳のほうが一二三・七%というふうに、加工乳の伸びのほうが非常に大きくあったわけでございます。この傾向は四十二年ごろまで同じで、やはり加工乳のほうが伸びております。しかし、四十三年以降これが逆になりまして、飲用乳のいわゆる生鮮牛乳のほうが前年対比四十三年には一〇八%の伸びに対しまして、加工乳のほうは一〇七・三%、ここで初めて逆転をいたしまして、自来四十四年、四十五年をとってみましても、ことに四十五年におきましては、生鮮牛乳のほうが一一四・七%対前年の比率に対しまして、加工乳のほうはわずかに一〇一・二%というふうに、全くその地位が逆転をいたしまして、こうした傾向が現在まで続いておるわけでございます。
#49
○阿部憲一君 加工乳のほうが減っていくという現象はわかりましたけれども、しかし、本来、言うならば、加工乳のほうをメーカーとしてはよけい売りたい。それのほうがやはり――何と申しましょうか、飲用牛乳は値段がきめられておりますが、加工乳の場合には添加物等いろいろなくふうによってある程度操作ができるということでありますけれども、これは厚生省の問題になるかもしれませんが、何と言いましょう、いるいろな添加物を加えるというようなことを抑止するというようなことについて、どういうふうにお考えになっていますか。
#50
○説明員(神林三男君) 現在、牛乳には一切他物を添加することは法令で禁止されておるわけでございます。加工乳につきましては、微量栄養素として、たとえばビタミンA、あるいはビタミンB2、D、あるいはミネラルというようなものは、いま微量栄養素として添加を認めておるわけでございますが、いま先生のおっしゃるとおり、われわれとしても、こういうものは、牛乳そのものが本来栄養食品でありますから、今後これは必要最小限に限定をするべく、いま検討をしておる最中でございます。
#51
○阿部憲一君 まあ、御承知かと思いますけれども、英国などでは、食料薬品法でもって、添加物その他についてこういうふうに規定しておりますね。「何人といえども、人間が消費するための乳に水や着色剤あるいは粉乳や練乳や再製された液体を加えてはならない」とありますが、わが国の乳等省令も、消費者の希望するほんとうの牛乳が消費者に飲めるように改正すべきであると思いますけれども、それに対して御意見をあわせいただきたい。
#52
○説明員(神林三男君) 先ほどもお答え申しておるとおり、やはり日本ではどうしても需給という問題がございまして、夏場になりますと、牛乳――牛乳というのは、われわれがびんに入ったのを飲むあの牛乳の形になったものでございますが、牛乳あるいは加工乳の消費量というものがふえるわけであります。これは、そういう需給のアンバランスがどうしてもございますものですから、普通の牛乳だけということではちょっとむずかしかろう。やはり加工乳の形のものをどうしても飲まざるを得ないだろう。したがって、純衛生的な観点から加工乳というものをきめまして、そうしてそれを取り締まっていく必要はあるかと考えておりますが、先ほどもお答えいたしましたように、微量栄養素についてはある程度限定をしていきたい、そんなふうに考えておるわけであります。
#53
○阿部憲一君 話を最初に戻しまして、私いろいろメーカーのことについて伺ったわけでありますが、幸いにも、還元乳ですか、それが少ないということや、それから加工用牛乳というのですか、それを買っていながら、不正なというか、不当な価格で還元して売るということは現実にないというふうに見受けられますので、実態はよくわかりませんけれども、そういうふうに一応了解するといたしまして、要は、最初の値上げの問題についてなんです。
 いまの牛乳市場は、御承知のように、大手三社が、ほとんど市場の六〇%ですか、これを独占している。寡占状態にあるわけです。そうすると、この値段というものは、大手三社の考え方、意思によって引き上げることができる、こういう状況にある。いわゆる管理価格が形成されやすい状況にあるわけでございます。したがいまして、いま最初に申し上げましたように、牛乳の値上げというような動きがあることに対しましては、まあ実際値上げしょうと思うと、わりあい簡単に、それこそ値上げが実施できるという状況でございます。もちろん、牛乳の需給状態という問題がございましょうけれども、しかし、値上げしょうと思えばすぐできる。この値上げを、物価の面から言いましても当然これは抑止していくべきだと思うのです。牛乳の実際の消費の面から言いましても、これ以上値段を引き上げるべきではない、こう思いますが、そういう値段の引き上げを抑止する方法として、どういうことをお考えになっておりますか。
#54
○説明員(斎藤吉郎君) これは、牛乳の価格と申しますのは、先生御案内のとおり、結局、末端小売り価格になるわけでございますが、その過程におきまして、生産者、いわゆる処理のメーカー、それから末端の販売の小売りという形の、それぞれの積み重ねの上で最末端の小売り価格というものになるわけでございます。そこで、いろいろとその各段階を通じましての問題があるわけでございまして、やはり何と言いましても、それぞれの段階におきましてコストを合理化の方向でもって軽減していくというのが、価格の問題を解決していく道である、こういうぐあいに考えるわけでございまして、この点については、今後ともさらにいろいろと各段階の指導を集中強化していきたいというぐあいに考えております。ただ、最初の生産者のところでございますが、これはいろいろと生産費がございます。この生産費の中で、いろいろと値上がりをしている項目もあるわけでございます。それと合理化のメリットというものがどういう形でもってなるか。生産費の問題からやはり出発するわけでございます。その辺をただいま検討いたしまして、先ほど申しましたいわゆる加工原料乳向けの保証価格、それに対します不足払いの価格をきめて数量をきめるということを、この二十七日の畜産振興審議会の酪農部会に出すわけでございます。そのときにそういうことをお示しいたしまして、委員の方々の御討議をいただいて御答申を得て、その辺のところをも考えていく、こういうことになるわけであります。そういうことと御了解いただきたいと思います。
#55
○渡辺武君 私は、現在の物価値上がりの根源の一つでありますインフレーションの問題について伺いたいと思います。
 最初に、いろいろ事実を確かめたいと思いますので、企業の――全産業でよろしゅうございますけれども、使用総資本に対する自己資本の比率ですね。いわゆる自己資本比率がどうなっているか。特に、物価の値上がりが激しくなった昭和三十五年以降どんな傾向をたどっているか、その点について、まず伺いたいと思います。
#56
○政府委員(新田庚一君) 昭和三十五年度の自己資本比率は二〇・七%、最近の数字としては、四十四年度では一六・八%になっております。
#57
○渡辺武君 昭和三十五年度が二〇・七%で四十四年度が一六・八%その間ほぼ一貫してずっと低下しているという傾向だと思いますが、どうですか。
#58
○政府委員(新田庚一君) 四十年度が一九%、四十一年度が一八・四、四十二年度が一七・五、四十三年度が一六・九ということで低下しております。
#59
○渡辺武君 そうしますと、企業が使っている総資本の中で企業の自己資本の占める比率がずっと下がっているということは、これは企業が、いわば他人資本ですね、外部資本に非常に大きく依存している、しかもその依存の傾向がますますひどくなっているということを裏から物語っているというふうに見て差しつかえないのじゃないかというふうに思いますが、念のために、日本の戦前の自己資本比率はどのような状態であったのか、それから外国ではこの自己資本比率はどのくらいの数字を示しているか、その辺も伺いたいと思います。
#60
○政府委員(新田庚一君) 戦前の昭和九年の数字で申し上げますと、六〇・六%という数字がございます。それから外国との比較でございますが、一九六八年の数字でございますが、アメリカが五五%、四ドイツが四一・六%という数字でございます。
#61
○渡辺武君 イギリスはわかりませんか。
#62
○政府委員(新田庚一君) 五三・一%でございます。
#63
○渡辺武君 戦前に比べても、また外国の例に比べましても、現在の日本の企業の自己資本比率はわずか一六・八%というのは、これはまことに異常じゃないだろうか、こういうふうに思われます。
 きょうは通産省からおいでいただいておりますけれども、このような低い自己資本比率ですね、これを正常だというふうに思っていらっしゃるかどうか、まず、その点、伺いたいと思います。
#64
○説明員(井上保君) 先生御指摘のとおり、世界の主要国との率から見ますると非常に低いわけでございますけれども、それぞれその国の、どう言いますか、戦後における経済の置かれておる環境と申しますか、そういうものから出てきておることでありまして、日本といたしましては、その辺はやむを得なかったものと、こういうふうに考えます。
#65
○渡辺武君 やむを得なかったということと、これでいいか悪いか、正常かどうかということは私は違うと思うのです。もう一度伺いたいのですが、これでいいと思っていらっしゃるのかどうか。また、なぜこの事態が起こったのか、その辺もあわせて伺いたい。
#66
○説明員(井上保君) 必ずしもこれは十分ではないということでございまして、従来とも、自己資本比率の向上ということはいろいろの機会にそういうことが実現されるように努力してまいっておりますが、そういうふうにわが国の自己資本比率が低いことの原因でございますけれども、御承知のとおり、戦後、蓄積をほとんど失ったという状態が発生しておりまして、主として金融機関の資金調達に依存しておって高度成長をしてきたというような非常にやむを得ない事情がございます。そういうことで、さっき申し上げましたように、やむを得なかったというふうに考えております。
#67
○渡辺武君 そうしますと、高度成長するのに主として金融機関の資金調達に依存して他人資本をかき集めたというふうにおっしゃいますが、この資金需要の中心ですね、起動力といいますか、一番の中心は一体何でございますか。
#68
○説明員(井上保君) これは、どう申しますか、戦後、国民の貯蓄性向は必ずしも十分ではなかったように思いますけれども、その後だんだんと貯蓄性向が年を追って高くなってまいりまして、最近約二〇%程度の貯蓄性向になっているというようなことでございます。そういうような国民の貯蓄性向の高いというところにも大きく依存しておると、このように考えております。
#69
○渡辺武君 ちょっと質問の趣旨がおわかりにならなかったと思いますので、私、質問し直しますが、企業はこうして他人資本をかき集めて、主として何に使ったのですか。
#70
○説明員(井上保君) これは、いろいろと戦争で非常に大きな生産力の被害を受けた。経済の高度成長をするために主として設備投資のほうへ金が向いたわけであります。
#71
○渡辺武君 先ほど好ましい事態ではないとおっしゃいましたけれども、従来、この自己資本比率を、いわば高めるために、どんなような指導をしてこられたのですか。これを伺いたいと思います。
#72
○説明員(井上保君) たとえば、増資の問題であるとか、あるいは内部留保の蓄積であるとか、そういうところで処理してまいったわけであります。
#73
○渡辺武君 それでは次に質問を移しますが、このような、いま御答弁にはっきりとあらわれておりますように、大企業を中心とする日本の企業が設備投資を中心として高度成長を続けた、そのために、通産省自身さえ好ましくないと言明するような異常な資金需要を起こした、こういうことですね。それが金融機関の資金調達に依存したということを言われたわけですけれども、それでは、金融機関のほうはどうなのか、それを伺いたいと思います。
 まず、預金に対する貸し出しの率、普通これを預貸率というふうに呼んでいるかと思いますけれども、その預貸率ですね。同じように、昭和三十五年度以降どんなような傾向をたどっているのか、これも伺いたいと思います。都市銀行でいいです。
#74
○説明員(中橋敬次郎君) 都市銀行の預貸率についてながめてまいりますと、大体三十五年ぐらいには九八・三%の状況でございました。ところが、その後、三十六年から三十九年ぐらいまでは大体一〇〇%をこえまして、多いときには一〇五%の状況でございます。その後漸次この預貸率は下がってまいりまして、九七%あるいは九六%台に下がってまいっております。もちろん、その間数字の変動はございますが、四十四年の下期で申し上げれば、その比率は九七・二%となっております。
#75
○渡辺武君 いまお答えいただいた預貸率は、預貸率の中でもいわゆる平残預貸率とか限界預貸率とかございますが、どちらのほうでしょうか。また、普通言われている平残預貸率というのはどういうことなのか、限界預貸率というのはどういうことなのか、あわせてちょっと伺いたい。
#76
○説明員(中橋敬次郎君) ただいま申し上げましたのは、それぞれの期別の末日におきますところの残高をとりまして、その残高のそれぞれの貸し出しなり預金の比率をとったものを申し上げたわけでございます。それに対しまして平残預貸率というのがございます。平残預貸率は、それぞれの期中におきますところの平均残高をとりまして、それの貸し出し金なりあるいは預金の比率をとったものでございます。それからもう一つ、限界預貸率というものがございます。それは残高でございませんで、その期中におきますところの増加額を、それぞれ貸し出し金なり預金をとりまして、それぞれの比率を示したものでございます。
#77
○渡辺武君 そうしますと、先ほど明らかになりましたように、企業が高度成長を目ざして、設備投資を中心として銀行からの資金調達に依存して猛烈な借り入れをやった、こういうことですね。ところが、その反映として、銀行のほうは、預金に対する貸し出しが非常に高いということになるんじゃないかと思うんですね。そこで、いまおっしゃった預貸率が一〇〇%以上という事態ですね、これは一体どういうことを物語っているのか、伺いたいのです。
#78
○説明員(中橋敬次郎君) 預金を上回りますところの貸し出しでございますが、それをまかなうためには、日本銀行からの借り入れ金なりあるいはコールマネーを取ったりしまして、その貸し出しをまかなうわけでございます。
#79
○渡辺武君 質問の趣旨がよくわかっていただけないと思いますが、いわゆる銀行のオーバーローン、オーバーローンといいますね。銀行というものは、私が申し上げるまでもなく、私しろうとで、なんですけれども、まあ自分の資本もあるでしょうけれども、主として動かしている金は、これはもう預金者からの預金が、これが資金源だと思いますね。これを資金源として使っているのに、貸し出しが資金源を上回っている、一〇〇%以上、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。つまり、銀行がいわゆるオーバーローンをやっている、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#80
○説明員(中橋敬次郎君) 銀行がオーバーローンをやっておったというのは、先ほど申しましたように預貸率が非常に高かった時期を一番ピークにいたしておるわけでございますが、そのときには資金源を上回っておったというふうにただいま御指摘がございましたけれども、預金を上回って貸し出しておったわけでございます。預金を上回っての資金というものは一体どこから供給を受けておったかということを申しますと、それは、日本銀行なり、あるいは他の金融機関というふうなものからコールを取りまして、まかなっておったという状況でございます。
#81
○渡辺武君 それでだいぶはっきりしました。そうすると、企業の他人資本への過度な依存、好ましくない依存、これは銀行のオーバーローンがそれをささえておった。ところが、その銀行のオーバーローンが日銀の貸し出しによってささえられておった、こういう関係が明らかになったと思うんですけれども、大蔵省はこの銀行のオーバーローンについてこれまでどんな指導をされてこられたのか。特に、いまここで問題になっております預貸率については、どの程度の指導基準を持たれてこられたか、それを伺いたいと思います。
#82
○説明員(中橋敬次郎君) オーバーローンは、かねて昭和三十年代、先ほど申しましたような高い預貸率を示したころから問題になっていったわけでございます。それに対しまして、昭和四十年前後でございますけれども、金融制度調査会におきましても、金融機関のオーバーローン問題をどういうふうに是正するかということで、いろいろ議論がなされております。それによりますところの方針といいますのは四十年の七月に出ておりますけれども、共同準則というものを銀行融資に設けまして、金融機関は、先ほど申し上げました限界預貸率というものをさしあたって指標にいたしまして、限界預貸率を、従来の残高預貸率を上回らないようにするということをまず原則に立てて、極力預貸率の改善に努力するというふうに、そういうふうにすべきだという御答申が出たわけでございます。答申に相前後いたしまして、銀行協会のほうでもそれぞれ議論をいたしまして、この限界預貸率をまず指標として、こういうオーバーローンの是正につとめようということになりまして、毎年二回、先ほど申しましたような預貸率というものをそれぞれの金融機関から、銀行協会の共同準則を守ろうというので、事務局に提出をいたして、それぞれ預貸率の改善ということに努力をいたしておるわけでございます。大蔵省といたしましても、その預貸率というものを、一体どういうふうに推移しておるのかということを見ながら、オーバーローン是正に努力をしてまいったわけであります。
#83
○渡辺武君 大蔵省銀行局の、金融年報の別冊であります「銀行局現行通達集」というのがございますが、それをめくってみておりますと、まず預貸率の改善について最初の通達が出されたのは、普通銀行の場合、昭和二十六年ということになっているようですね。そうして、特にその後何回となく預貸率改善についての通達が出されておりますけれども、昭和三十二年の十一月二日の通達、さらにそれを一部改正して、四十三年九月二十八日の通達には、こういうことが書かれている。「当面、預貸率を八〇%以内に止めることを規準とし、」云々と、こういうふうに書かれているのですね。この預貸率というのは、「預金の平均残高に対する貸出金の平均残高の比率」ということですから、先ほど御説明があった平残預貸率のことかと思うのです。大体このことはそのとおりだと思いますけれども、どうでしょうか。
#84
○説明員(中橋敬次郎君) そういうことがあったようでございます。
#85
○渡辺武君 そうしますと、平残預貸率の指導基準が八〇%以下というふうに理解しますが、先ほどの御説明では、限界預貸率は平残預貸率を上回らないようにするというのが指導基準だというふうにおっしゃいましたが、したがって、これまた八〇%以下というふうに理解してよろしゅうございますか。
#86
○説明員(中橋敬次郎君) 四十年に限界預貸率をもって――それまでの残高預貸率をいわば改悪をしないようにということをいたしましたものですから、端的に申しますれば、先ほどの八〇%は平残預貸率でございますし、四十年に問題にいたしましたのは限界預貸率でございますから、すぐさま八〇%を四十年の限界預貸率の指標にしたということには当たらないと思うのです。しかし、その後、昭和四十一年ごろから、限界預貸率は一体どの程度に押えていったらいいのかということも銀行で議論が行なわれまして、限界預貸率を九〇%を目標に押えていこうということにしたことがございます。
#87
○渡辺武君 そうしますと、平残預貸率は八〇%以下、限界預貸率は九〇%以下というのが指導基準だということになろうかと思うのですけれども、そこで、先ほど御説明をいただきました平残預貸率ですね。――先ほどおっしゃった数字は末残の預貸率ですか。そうすると、平残預貸率はどのくらいになっているか。一番最近のもので、最近改善されたとおっしゃいましたが、どのくらいになっているか、また、限界預貸率はどのくらいになっているのか、これについておっしゃっていただきたい。
#88
○説明員(中橋敬次郎君) 平残預貸率について申しますと、三十五年から三十八年、九年あたりまで、一〇〇%をこえた率を示しております。一番高いときが一〇九・何%あるいは一一〇%という率を示しております。その後順次改善いたしまして、四十二年まで一〇〇%をこえておりましたけれども、四十三年度からは一〇〇%を割っております。先ほどに対比して申しますれば、四十四年度の下期におきましては九八・〇九、こういう率を示しております。それから限界預貸率でございますけれども、これも平残でとりました限界預貸率で申し上げますと、三十五年から三十七年あたりまで一〇〇%をこえたときがございました。その後三十九年におきましても一〇〇%をこえましたが、その後は大体低い率を示しております。ただ、これは限界部分のものでございますので非常にふれが多うございまして、ある年は五〇何%ということを示しております。先ほどに対比いたしまして、四十四年の下期を見ますと一〇〇・八という率を示しております。
#89
○渡辺武君 そうしますと、平残預貸率の指導基準は八〇%以下ということになっているのに、かつては一〇〇%以上であって、そうして昭和四十三年の上期から一〇〇%を割ってきている。割ってきているけれども、まだ八〇%には達していませんね。それから限界預貸率のほうも、いまのおことばですと、下がってきているが、四十四年下期が一〇〇・八、これまた九〇%をはるかに上回るという状況だと思うのですね。
 私は、先ほど申しましたように、昭和二十六年に最初の通達が出て、ずっと銀行局としては指導されてこられたと思う。確かに預貸率が最近に至っては低下していることは数字がはっきり示しておりますけれども、それでもなおかつ指導基準を上回っている。この事態は私はやっぱり無視することはできないと思うのですね。これは依然として銀行のオーバーローンが引き続き行なわれているということを示すものだというふうに理解すべきだと思いますが、この点、どうですか。
#90
○説明員(中橋敬次郎君) その点に関しましては、依然として都市銀行のオーバーローンの状況というのが変わっていないと言わざるを得ません。しかし、まあそれを一体、過去におきますところの平残預貸率八〇%あるいは四十年におきますところの限界預貸率九〇%の指導と違っておるのは、はたして指導が徹底していなかったのかどうかという問題になるかと思いますけれども、これはやはり金融の客観情勢を考えてみなければなりません。特に都市銀行におきますところの資金偏在ということが最近非常に言われております。これは何かと申しますれば、結局、全金融機関の中におきまして一体都市銀行がどれくらいの預金というものを集め得られるのか、また、都市銀行に対しまして各種の企業がどのような資金の需要を持っておるかということとのかみ合わせでございます。それは、最近十年間におきまして、都市銀行の預金のシェアというのが実は一〇ポイントダウンをしております。その一〇ポイントダウンした預金というのが、都市銀行以外の各種の金融機関に預金をされておるわけでございます。先ほど通産省からお話もございましたように、わが国民の貯蓄性向というのが非常に高いのでございますから、かなり貯蓄というものがあるわけでございます。それが一体どこに預金をされておるのかというのが一番大きな問題であります。もちろん、それは預金なのか、あるいは社債等のものに振り向けられるのか、はたまた株式に振り向けられるのかという問題でございますが、いま御指摘のような預金だけに限って考えてみましても、都市銀行におきます預金のシェアが減って、その部分がかなり他の種類の金融機関に入っておるという面がございます。しかし、依然としまして資金需要というのは都市銀行に対して強いわけでございます。そういたしますと、どうしても都市銀行が強い資金需要をまかないますためには、まず、他の金融機関からの預金をコールマネーという形でもって導入してくる必要がございます。あるいはまた、日本銀行からの貸り入れ金でもってこれをまかなわなければならないという問題がございます。そこで、最近におきますところの急速な経済成長をまかないます資金需要を都市銀行において処理いたしますためには、どうしても預金だけに依存できませんで、先ほど申しましたように、預金以外の資金源にたよらざるを得ないものがございまして、そういうわけでございまして、その数字を示すものが先ほど来申した預貸率になっておると思います。
#91
○渡辺武君 そうしますと、かなりまだ旺盛な資金需要があって、それをまかなうために、預貸率も指導基準以上でなおオーバーローンを続けておる。しかも、それを何とか、言ってみれば、つじつまを合わせるために日本銀行からも借り入れをどんどんやるし、さらにまた、コールその他も、その他の金融機関からコールその他集めておるということになろうかと思います、いまの御答弁は、まとめてみますと、ちょっと首をかしげておられるようですが、そう理解していいんじゃないですか、どうですか。
#92
○説明員(中橋敬次郎君) つじつまを合わせて預貸率が高いということは、いささか……。資金需要、全金融機関を通じますところの資金需要を考えれば、そうせざるを得なかったということでございます。
 あわせまして、つけ加えさせていただきたいのは、行政指導、先ほど御指摘のありました八〇%なり九〇%の問題を機械的にこの段階においても適用をするのがいいのかどうかという問題でございます。実は八〇%という率を考えましたのは、先ほど御指摘のように、昭和三十年代の初めでございましたし、八〇という数字を出しましたときにも、実は三〇というものを流動性資産でもって持つべきであるとか、あるいは一〇%程度は自己資本で持つべきであるとかという、ごく概略の数字ででき上がっておよるうでございます。はたして流動性資産比率というものを一体三〇がいいのか、あるいはまた流動性資産比率というものを非常に重視すべきであるのかという問題、これはまさに、全体の資金の流れというよりは、個別の金融機関の健全性という問題になるのでございまして、その問題を考えます場合には、現在日本銀行がやっております資金ポジションという観点からのいろいろな貸し出し抑制という問題も考えなければならないわけでございまして、先ほど来御指摘のように、八〇%あるいは九〇%、こういうものを踏みにじって、しかもつじつまを合わせているというのは、現在の大きな資金の流れからいいますと、一がいにそういう御批判は当たらないのじゃないかと思っております。
#93
○渡辺武君 そんなことおっしゃってもだめですよ。この通達が出ましたのは、先ほど私が申しましたように四十三年九月の二十八日です。その通達でさえも、はっきり言っているんですよ。「当面預貸率を八〇%以内に止めることを規準とし」と、はっきり言っている。ですから、昭和三十年代の基準だというようなことは、とうていこれは言えませんよ。四十三年といえば、ほんのまだ二、三年前のことです。ですから、まだ預貸率が八〇%をこえておる、平残預貸率が。これがやはり、オーバーローンが行なわれておる、あなた方の指導基準以上にやられているということをはっきり示しておるわけだから、その点、やっぱり率直に私は認める必要があると思います。
 さて、その八〇%という指導基準でも、ちょっとしろうとが聞くと、たとえば預金高が百億円あって、八〇%といえば八十億円貸しているだけ、だからだいじょうぶだというような感じがするのですけれども、しかし、私はそうじゃないと思う。つまり、預金というのは、これは貸し出しの変形になっているのが非常に多いのじゃないか。つまり、銀行が貸し出しをする、しかし一ぺんに金を全部すぐ渡すわけではない。したがって、それは当座預金になり、あるいはその他預金にしておいて、口座をつくって、そこの預金に金額を合計上しておく、そうして小切手を出すなり手形を振り出すなりして、逐次その預金が減っていく、こういう形なんですね。そこで伺いたいのですけれども、いわゆる債務者預金というのがありますね。銀行から金を借りている人が預金をしている、これは大体貸し出し総額のどのくらいを占めておりますか。
#94
○説明員(中橋敬次郎君) ちょっと正確な数字が手元にないのでございますが、大体金融機関で四割くらいが債務者の預金になっておると思います。
#95
○渡辺武君 金融制度調査会が調べた資料を私読みましたら、四七・六%という数字が出ているのです。まあ同じ四割台ですけれども、どうも五割台に近いほうの数字ですね。つまり、金を借りている人が預金するというのは、その預金というのは大体ほんとうは預金じゃない。銀行が貸し出しという形でもって、いわば創造したところの信用ですね、それが預金という形で出ている。それがほぼ貸し出し高の半分を占めておる、こういうような状況でしょう。ですから、預金の八割が貸し出しだから銀行経営は健全だなんということは私は言えないと思う。やはり相当のオーバーローンが行なわれているということだと思います。
 そこで、念のために伺いますけれども、先ほどちょっとおっしゃった流動性資産比率ですね。あるいは支払い準備率、さらには準備預金準備率、これらはどういうことになっているのか。また、どうも私しろうとで、あまり実態について知りませんので、この流動性資産比率というのは一体どういうものなのか、支払い準備率というのはどういうものなのか、その点についてもあわせて御説明をいただながら最近の数字をおっしゃっていただきたい。
#96
○説明員(中橋敬次郎君) 流動性資産比率と申しますのは、預金の平残を分母にいたしまして、分子に流動性の資産を持ってきたものでございます。流動性の資産と申しますのは、金融機関でいえば、現金あるいは金銭信託、コールローン、有価証券等でございます。その流動性資産の比率というのを申し上げますと、大体これはそう大きな変動はございませんで、三十年代から二〇%台を占め、現在一番近い、先ほどに対応しまして申し上げれば、四十四年の下期は二三・三六というパーセンテージでございます。
 それから、それに対しまして支払い準備率と申しますのも、ほぼ流動性資産比率に近いものでございます。預金の残高を分母にとりまして、いわば支払い準備に充て得る資産、現金、預金、コールローン、債券、銀行引き受け手形を分子にいたしましての率でございます。この率もそう大きな変動はございませんで、大体二〇%台を占めております。四十四年下期におきますれば二二・六二%でございます。
 ちょっと付言さしていただきますと、先ほど債務者預金の率で御指摘がございましたけれども、債務者預金を持っておるということが、きわめて銀行にとって不健全であるかのようなお話もございましたけれども、私どもは必ずしもそうは思っておりません。金融機関は、やはり貸し出しをいたしますし、預金を預かる機関でございますので、当然、債務者の預金というものも、かなりのウエートを持って預け入れられておるものと思っております。御指摘のような問題は、やはり支払い準備率であろうと思います。支払い準備に十分対応できないようになりますれば、これは金融機関としても一大事でございますから、支払い準備を、常に定期性預金なりあるいは要求払い預金に対応いたしまして、過去の経験値等から十分持っておるということが一番金融機関の日常の業務を遂行する上に必要なものであろうと思いまして、私どもはこの支払準備率というものを適正に持つように心がけておる次第でございます。
 それから最後に、準備預金の問題でございますけれども、この準備預金は、少し先ほどの流動性比率なり支払い準備率とは違った観点でございまして、これはむしろ金融機関と日本銀行との問で、いわば景気調整と申しますか、そういう観点から、ある一定の量の預金を強制的に金融機関から日本銀行に積ませておるものでございます。普通銀行でございますれば、預金残高が千億円超と、それからそれ以下のもので率を違えておりますし、相互銀行とか信用金庫でございますれば、預金残高が二百億円超のものについてだけその準備預金を積ませるという制度でございます。そのほかにも、あわせまして、農林中金からも積ませております。その率を申し上げますと、普通銀行で、千億円超のものに対しましては、定期性預金にして〇・五%、その他の預金につきまして一・五%程度でございます。それ以外の預金の少ない普通銀行であるとか、あるいは相互銀行、信用金庫、農林中金につきましては、それぞれの率の半分、すなわち〇・二五%あるいは〇・七五%ということになっております。
#97
○渡辺武君 いろいろこまかいことを伺って恐縮なんですけれども、先ほどの御答弁の中にちょっと私了解しかねるところがあるので、その辺を一、二伺いながら先に進みたいと思います。
 債務者預金ですね。これは必ずしも銀行経営の不健全さを示すものではないという御答弁だったのですけれども、私もそれは、銀行というところはもとより信用の創造をやるのが主要な業務の一つですから、したがって、債務者預金があるということそのものが、これが銀行経営の不健全さということを言おうとするのではないのです。そうじゃない。問題は、あなた方がこの辺までという指導基準をつくっている、その上にまだとどまっているというような預貸率があるわけです。オーバーローンが行なわれておるのですよ。そういう条件のもとで、しかも債務者預金の比率も約五〇%に近いというような状況は、これはやはり何といっても、銀行経営という点からいっても不健全だし、私がこれから問題にしようとしている通貨信用の過度な膨張という点からいっても、これは無視できない問題だということを申し上げているのですね。
 それから、流動性資産比率と支払い準備率の御説明がありましたが、その分子の中で、割られるほうの中で、これには日本銀行への銀行の預金ですね、これも入っているのじゃないですか。それがちょっと漏れていたように思いますが……。
#98
○説明員(中橋敬次郎君) 両方とも預金でございまするので、その中には日本銀行に対する預け金も入っております。
#99
○渡辺武君 それで、次に伺いますけれども、流動性資産比率についての指導基準、先ほど三〇%というようなことをおっしゃったようですけれども、そうですが。
#100
○説明員(中橋敬次郎君) それは、八〇という先ほどの預貸率を考え出しますときに、八〇というのは一体どういうふうに算出すべきかという点で、自己資本を一〇と置きまして、預貸率を八〇としますと、差額の三〇というものを流動性で持っておるべきではないかということから、八〇と三〇と自己資本比率の一〇というのが頭の中で考えられまして、八〇をきめましたときに用いられたものであります。
#101
○渡辺武君 そうしますと、頭の中で考え出したとおっしゃいますけれども、あなた方はやはり行政官庁ですから、その三〇%というのが預貸率八〇%に対応するやはり指導基準だというふうに理解していいのじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
#102
○説明員(中橋敬次郎君) ですから、先ほど来申し上げておりますように、当時は、預金を一〇〇といたしまして、自己資本を一〇としまして、片一方に貸し出し金を八〇と置きまして、流動性資産を三〇と置いた算式で一応指導したわけでございます。その数字をそのままその後も機械的に適用するのがいいのかどうかということは、るる申し上げたとおり、それぞれの資金需要に対応して脅えるべき問題だと思いまして、それが過度に信用を供与しますとか、あるいは個々の金融機関の資産内容を非常に不健全にしておるという場合には、日本銀行の景気調整の観点からしますところの各種の指導を通じまして、これを是正してまいればよろしいのではないかというふうに現在考えております。
#103
○渡辺武君 そうしますとね、端的に申し上げますけれども、結局のところ、先ほどおっしゃった流動性資産比率指導基準は三〇%なんだけれども、昭和四十三年の上半期は二二・五三%、四十四年の下半期は二三・三六%、やはりここも、あなた方が目ざしているところよりもはるかに低い。一方では、預貸率がはるかに高くて、オーバーローンの傾向は依然として解消していない。その反映として、流動性資産比率は非常に低いし、それからまた支払い準備比率も非常に低い、こういうことになるんじゃないですか。
 念のために伺いたいのですけれども、外国では一体どの程度の流動性資産比率を考えているのか、あるいはまた支払い準備比率を考えているのか、その辺を伺いたい。
#104
○説明員(中橋敬次郎君) 外国の数字はちょっといま手元に持っておりませんが、流動性資産比率と預貸率の関係というのは、先ほど来御説明いたしておりますように、実はうらはらの問題でございまするので、預貸率が非常に高ければ流動性資産比率というのは低いということが言えるわけでございます。私どもは最近いろいろ勉強をしておりますけれども、支払い準備率というのを、先ほどちょっと触れましたように、重視してまいりたいと思っておりますけれども、これは、わが国の中で申せば、実はすでに法的な規制を持っておるものもございます。相互銀行でございますとか信用金庫でございますとかでは支払い準備のほうから押えておりまして、定期性預金に対しては一〇%、要求払い預金に対しては三〇%ということを指導の基準にいたしておりますから、それを突っ込みますと、あながち先ほど申した支払い準備率の二〇何%というのはそんなに低過ぎるというふうに考えておりません。
#105
○渡辺武君 ちょっとあなた方、まあ銀行経営という見地から考えていらっしゃるから、そうたいした問題はないと、あれだけでっかい銀行がつぶれることはあるまいと思っているかもわからぬですけれども、私ども、やはり銀行経営という見地からではなくて、国民生活という見地から、ものを考えなければならぬと思う。国民といえば、銀行に預金をしている預金者もありますけれども、特に私がきょう議論しているのは物価の問題です。企業が、先ほども明らかにしましたように、めちゃくちゃに資金をかき集めて設備投資をやる、高度成長をやる、その資金の手当てをどこがやっているのか。銀行がオーバーローンでどしどしここに金をつけている。そのために、預貸率も高くなれば、それからいま言ったような流動性資産比率もぐっと低くなっている。こういうことを直さなければ、通貨や信用の過度な膨張、これに伴って起こるインフレーション、物価の上昇、これは押えることができないんですよ。だから私はしつこくあなたにお尋ねしている。その点は重要視してもらわなければ困る。特に先ほど御説明の中から落ちていたから私伺ったのですけれども、支払い準備率あるいはまた流動性資産比率、これの分子のほうですね、預金高で割られる分子のほう、日本銀行に対する銀行の預け金が含まれているわけでしょう。もし日本銀行が市中銀行に対して過度な信用膨張を押えるために、準備預金準備率、これももう少し高いところに置いて、そして十分な預金をさせておく、さらにはまた銀行自身も日銀預け金をさらにふやして過度な信用膨張をとめるというような手段を講ずれば、私は、あるいはこの銀行のものすごいオーバーローンというのはもっと是正されるんじゃないかという気がするのです。いまおっしゃった準備預金準備率が、現在預金残高千億円以上の普通銀行で、定期性預金が〇・五%、その他の預金が一・五%、こんなもの、問題にならないじゃないですか。これ、わしは日本銀行調べで調べてみましたけれども、定期性預金の場合、昭和三十六年十月一日が一%だったのです。ところが、いまは〇・五%に下げられて、その他の預金の場合は、昭和三十六年当時は三%、これが下五%にまで下げられて、一方で通貨信用の過度な膨張が行なわれて、物価が上がっているにもかかわらず、締めなければならないところを、かえってゆるめちゃって、準備預金準備率をずっと引き下げているというのが現状だと思う。こんな金融上の指導をやられていれば、当然のことながら、銀行はうけに乗って過度の信用膨張をやるにきまっている。この準備預金準備率も、外国に比べて非常に低いのではないでしょうか。さっき言った流動性資産比率、これなども、金融制度調査会は、外国に比べて非常に低いという趣旨のことを強調している準備預金準備率も特に外国に比べて低いのではないですか、どうでしょう。
#106
○説明員(中橋敬次郎君) おっしゃいますように、準備預金制度を各国の例と比べてみますと、その率というのは低いほうでございます。これは一体どういうことか、もちろん、導入しましたとき以後日が短いという点とあわせまして、やはり先ほど来御指摘のような日本銀行と各種金融機関との間の貸し出しの問題がございますから、これを上げれば、また貸し出しがふえざるを得ないという点になる点もあわせて考えなければならないと思います。
 それで、先ほど御指摘のように、都市銀行のオーバーローンだけに着目をせられましていろいろ御意見がございますようでございますけれども、これは、初めのほうで私申し上げましたように、都市銀行につきましては資金偏在という問題がございますので、やはりこれも全金融機関についてあわせて考えていただかなければならない問題を含んでおるのです。そこのところのあわせというものがたまたま預貸率という形で出ておるということで、都市銀行だけに着目していただきませんで、全体をお考えいただきたい。その基本には、やはり二〇%という世界に冠たる貯蓄性向というものが今日の経済成長を可能ならしめたという問題があるわけでございます。それから、過度の信用膨張がありますというときには、これは全体としての観点から申せば、日本銀行が公定歩合の引き上げなり資金の抑制ということを従来もやってまいりまして、そのときそのときの調節作用を営んでまいったわけでございますから、個別の金融機関の健全性という問題は先ほど来るる申し上げたとおりでございますし、全体の資金の需給という観点からは、日本銀行のそういう調節作用というものに期待をすべき問題だと考えておるのであります。
#107
○渡辺武君 そんなことをおっしゃってはだめです。たとえば、資金偏在があるとおっしゃいましたけれども、地方銀行の偏在預貸率を見ても、四十五年上半期は八五・六九%、あなた方からいただいた資料だから、これは私間違いないと思います。つまり、指導基準以上です。やはりこれは、全体を含めて、都市銀行も含めた普通銀行全体の預貸率、数字は申しませんけれども、ほとんど都市銀行同ぐくらいです。金融機関全体としてやはりオーバーローンの傾向を示していることは数字がはっきり示しているから、言いわけしたって、すぐにばれちゃいますよ。
 それからもう一つ、日本銀行の話が出ましたが、その点について、きょうは日本銀行からおいでいただいていないので、詳しくは質問できませんけれども、私予算委員会の一般質問で日本銀行総裁にいろいろ伺いまして、日本銀行総裁の御答弁はこうなんです。銀行預貸率が非常にオーバーローンの傾向を持っている、これは従来日本銀行の貸し出しがそれをささえていたということは認める、しかし最近はその預貸率は下がっている、その下がっている理由としてあげられるのは、日本銀行が昭和三十七年以来、例の金融調節方式と称して、国債、政保債などを中心として大規模な買いオペレーションを始めた、つまり、資金の供給方式は従来貸し出しという形でもって供給した、これが銀行の過度な信用膨張をささえておった、ところが今度はもう足りなくなって、国債、政保債などの買いオペレーションをやって、日本銀行が今度は前面に出てどんどん通貨信用の膨張を始める、こういうことにささえられて預貸率の多少の改善というものが行なわれてきている――ですから、いまあなたが市中銀行の範囲内でおっしゃったことも、日本銀行を含めての金融機関全体ということになれば、これは大企業を中心とする高度成長のための過度の資金需要をまかなうために猛烈な通貨信用の膨張が行なわれているということは、決してあなたの言いわけで否定することはできない。
 しかも、私、質問の中で明らかにしましたけれども、この買いオペレーションに使われているオペ玉、国債や政保債、これは経済の必要上から生まれたものじゃない。国債の場合だと、政府が税金を取り立ててそれを使う、それだけじゃ足りないで、つくり出したものが国債ですからね。いわば、それを日本銀行が買い入れて、そうして資金を、通貨信用をどんどん市中にばらまくということは、再生産の外から通貨なり信用なりを注入するということにならざるを得ない。ここに、いまの日本の通貨信用の膨張の大きな原因があるんです。私は日本銀行が一番大きな責任者だと思いますけれども、同時に、やはり、市中銀行をこういう状態に置き、あるいはまた企業のオーバ一ボローイング、これを野放しにしておる、これはそれぞれの担当官庁の責任だと私は思う。
 そこで、実際そういう通貨信用の過度の膨張がどういう現象をあらわしているのか、これをこれから質問の中で明らかにしたいと思うです。
 私、実質国民総生産の中に占める総通貨の割合について資料をお願いしてございます。総通貨と申しますのは、現金通貨と預金通貨、すなわち、当座預金、普通預金などの手形や小切手の発行の基礎になる預金ですね。この二つを合計したものが総通貨ということになりますが、実質国民総生産の中にこの総通貨の占める割合がどんなふうになっているのか、それをまず伺いたいと思います。
#108
○説明員(中橋敬次郎君) お尋ねが実質国民総生産と総通貨の関係でございますので、それをお答えいたしますと、実質国民総生産を分母に置きまして、総通貨を分子に置きました率でございますが、三十五年は二〇・四%でございます。それから大体漸次上がってまいりまして、四十四年におきましては三六・一%となっております。
#109
○渡辺武君 いま御答弁いただいたこの簡単な数字で非常に明確だと思うんですけれどもね。昭和四十年ごろになるまでは、大体実質国民総生産の中に占める総通貨の割合は二〇%台ですね。ところが、昭和四十年以降になりますと三〇%台になってきている。それがずっとふえて、四十四年は三六・一%、こういうことになっているわけですね。これは一体何を示すのか。どんなふうにお考えになりますか。私は、言ってみれば、同じ国民総生産を生み出すために必要な通貨信用の量がますますふえてきているということを示している、別のことばで言えば、再生産過程の中における滞留する日本銀行券及び預金通貨、これがますます大きくなってきているということを意味していると思いますけれども、どうでしょうか。
#110
○説明員(中橋敬次郎君) 通貨供給量と経済の動きというものを一体どういうふうに考えたらいいのかというのは非常にむずかしい問題だと思います。現在、アメリカでもいろいろそういった機運から政策も行なわれているようでございますけれども、実はその点に関してはかなり異論のあるところでございます。
 それから、国民総生産と通貨供給との関係を考えます場合には、私どもは、先ほどの問題がむずかしいということを前提としながらも、やはり経済活動の反映としての通貨供給必要量というのが出てくるんではないかということを、まず第一に考えるわけでございます。それから、通貨供給量は、何と言いましても、やはり価格を中心といたします取引量の反映でございますから、名目国民総生産との関連をまず考えてみたほうがいいんではないかと思います。現に、名目国民総生産と現金通貨との関連は、これは一定の率、ほぼ七%前後の数字をずっと相関的に示しておるわけでございます。それからまた、預金通貨と申しますのは、これは個々の企業の経済活動とも非常に関連をいたしておりますから、かなりぶれがあるわけでありますから、そういう観点から見まして、付加価値を総体的に示しますところの国民総生産、それを名目的にとらえまして、それと預金通貨の関係を考えますと、かなり生産が高度になってまいりますと、迂回生産的なものがウエートとして高まってくる。したがいまして、預金通貨の名目国民総生産に対します率というのは漸次ふえてくるのがおおむねの傾向のようでございます。特に成長の高い西欧の国を見ましても、名目国民総生産と預金通貨の量との比率は漸次上がってきておるわけでございます。わが国におきましてもそういう数字を示しております。それで、そういうことが基本となりまして、先ほどお尋ねの実質国民総生産と総通貨との数量比というものも漸次上がってきておるのではないかというふうに考えられます。
#111
○渡辺武君 私が実質国民総生産で計算しておりますのは、つまり、一定の生産物、これが流通しなければならぬが、その一定の生産物の流通にどのくらいの、言ってみれば通貨や信用が必要なのか、これがやはり問題だと思うのですよ。大体、通貨の回転率、これについては確たる統計がない。確たる統計がないけれども、通貨の回転率が低下しているということを証明するようなものもまたない。大体これは一定しているというふうに見て差しつかえない。あるいはさらに通貨の回転率は早まっているかもわからない。それにもかかわらず、一定の生産物が実質国民総生産にあらわれ、一定の生産物が流通するのにますます多くの通貨信用が必要になってきているということは、それだけ通貨や信用が膨張している、そうして再生産過程の中に滞留しているということを証明する以外の何ものでもないのですよ。いま名目国民総生産でおっしゃいましたけれども、名目国民総生産を基準にしたって、傾向は同じでしょう。どうですか。いまあなたのほうからいただいた統計を見てみますと、名目国民総生産の中に占める総通貨の比率は、昭和三十五年で二六・七%。それからずっと昭和三十七年まで二〇%台で、それから三十八年に三〇%になってきているというのが傾向でして、国民総生産、これの流通にあたって必要な通貨信用の量はますますふえているということを示していると思う。しかも、あなたのおっしゃった、名目国民総生産の中に占める総通貨、さらには現金通貨、預金通貨ですね、これの占める比率がどんなふうに動いているのか。これは、あなた方が信奉している近代経済学では、マーシャルのKと言いまして、これが一定であればいい、しかし、これがふえたり減ったりするというようなことで、これは不安定なものだ、言ってみれば、通貨の過度の膨張というようなことを示すものだ、というような表現をしているわけですね。私はマルクス経済学の立場に立っておりますけれども、近代経済学だってそういうことを言っておる。その不正常さがはっきりあらわれている。
 どうも経済企画庁長官にせっかくおいでいただいて、あまり御質問申し上げないで失礼しました。なぜこういうふうに再生産過程の中に通貨信用が滞留をする傾向を持っているのか、これは非常に重要な問題だと思う。同時に、これはあとから申し上げたいと思いますけれども、この再生産過程の中に通貨信用がずっと滞留するに伴って、通貨価値が低落して、消費者物価が上昇するという傾向があらわれております。これもはっきり数字的に証明できる。なぜそういうことが行なわれるのか。私は、いろいろありますけれども、最も重要な原因の一つは、現在の日本銀行券が兌換されていない、不換銀行券だというところにあると思いますけれども、現在の銀行券は兌換されておりましょうか、どうでしょうか。
#112
○国務大臣(佐藤一郎君) もちろん、兌換されておりません。
#113
○渡辺武君 そうしますと、不換銀行券ということになりますが、不換銀行券が過度に膨張した場合は、一体どういう現象が起こるのか。
#114
○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、不換銀行券と言うと、何か非常に、昔の経済史ですか、を思い出させるように、不健全な印象を受けますけれども、まあ今日においては世界各国いずこにおいても、まず不換紙幣で、不換銀行券でございます。御存じのように、これをいわゆる管理通貨と称しておるわけであります。近代の経済政策の運営のもとにおきましては、かつてのわれわれ人類の経験に基づきまして、昔われわれが経済史で学んだような意味の不換という意味における不換銀行券、そういうような意味で考える必要はない。管理通貨というものが、第二次大戦後、先進経済国を中心にして確立してまいってきております。でありますから、問題は、その運営がどうあるべきか、こういうことであろうと思うのであります。
#115
○渡辺武君 こういうことを私は伺っているのですよ。現在管理通貨だということは、それはもとより私も承知しております。私は別に、銀行券が兌換されていないから不健全だというようなことを言おうとしているのではない。それは歴史的な一つの傾向ですから、しかも、資本主義が上昇期にあるときと違って、独占資本主義の段階になってきて、資本主義の危機が非常に深刻になってまて、各国とも資本主義から離脱しなければならぬというような事態に立ち至って、そして、おっしゃるような管理通貨、不換銀行券の流通する時代に入ってきているわけですから、ほかの国でやっているからといって、それで不健全じゃないという証拠にはさっぱりならぬですわ。しかし、私の伺っているのは、つまり、そういう金に兌換されない銀行券が過度に流通過程にほうり込まれた場合に、物価という点でどういう現象が出るのか、あるいは貨幣価値という点でどういう現象が出るのか、そのことを伺っているのです。あわせて、金に兌換されている場合には、同じ問題で、どういうような現象が起きてくるのでしょうか。
#116
○国務大臣(佐藤一郎君) いわゆる兌換をしない不換銀行券、かりにそういうことばを使いましても、諸外国が同じようなことであるからといって、日本がそれをまねする必要がないというお話でしたが、これは第二次大戦以後のいわゆるIMFを中心とするところの一つの通貨体制、金融体制、それに基づく一環でございまして、決して日本だけが独自の方法をとり得るというわけのものでも私はないだろうと思います。今日の事態というものは、やはり世界的な規模においてこうした管理通貨の体制が確立されておる。そしてその中において、もちろん、国によって通貨あるいは金融の運営というものが比較的うまくいっておるところと、いっていないところとあるわけでございまして、そこに通貨価値の比較の問題が起こり、御存じのように、国際通貨の問題が起こっているわけであります。
 そこで、日本の場合を考えてみますると、やはり、先ほどからお話がありますが、今日までの世界が目を見張るような急激な高度の経済成長というものをささえてきた一つの重要なメカニズムであるということにおいては、これは否定することのできない事実であると私は思います。ただ、その場合に、先ほどから話がありますように、それが健全であるかないか、一体、通貨の面からだけインフレ的な要素が出てきたのかどうかという判断になると、これは私はいろいろの議論があると思うのであります。確かに成長の速度が早まるに従って、また成長に必要な通貨の供給というものもふえてまいっております。そうしてまた、特に賃金の急激な上昇というようなことで、これはまたキャッシュの必要もさらに生じてくる、あるいは先ほど出た迂回生産の問題もございましょう。あるいはまた賃金の上昇を契機とするところのいわゆる消費財生産部門におけるところの消費物価の上昇、こういうふうなものはやはりまた通貨をさらに必要とする。いろいろと原因はあると思うのであります。そこらの原因を究明していくということは、率直に言って、いろいろな複雑な原因が錯綜しておりますから、私はなかなかむずかしいのではなかろうかと思います。
 一面において、確かに今日まで通貨というものは経済の需要に応じて出ていくものである、それはむしろ受動的なものである、こういう考え方が支配的であったわけであります。そうして、日本においては、御存じのように、非常に二重構造というものが確立しておりまして、これがまた、いわゆる急激な高度成長とともに表に出てまいり、そうしてそれの矛盾というものが各般の面にあらわれてきておる、こういうようなこともわれわれは無視することができない問題でございます。いわゆる需要あるいは供給、そうした面からの分析も必要でしょう。
 それからまた、私も、通貨について、非常に健全であったとか、これが締まり過ぎておったとかいうことは決して言えないにしても、また一面、金融だけでなく、財政と金融とを総括的に見てみなければならない点もあり、先ほど何か、国債の発行が多くて、これがインフレの原因であるというようなお話もありましたけれども、私はむしろ逆で、世界経済を見渡しまして、そういう国債の発行高というものはいまの日本においては過小という議論も十分成り立ち得るのであります。しばしば財政の揚げ超という問題も、したがって議論になっておりまして、そうしてそのしわが金融に寄るという面もずいぶんあったわけであります。しかし、総じて、それらの成長をやはり基本的にささえておったものは高い貯蓄性向である、そうしてそれらがやはり企業その他に引き込まれ、この成長をささえておる、そういうことも言るわえけでありまして、総体的に経済の運営というものを、いろいろな面から見て、できるだけ健全性を保つようにやってまいる。私どもも、今日までの高度成長が決して健全であると必ずしも言っているわけではありません。それであるからこそ、この際、従来の高度成長あるいは量的な成長一点張りというようなやり方というものをひとつ考えてみよう、軌道の修正を行なわなければならない、こういうふうに考えている際でございます。
 ただ、まあ、先ほど私もちょっと、不換ということばが出たものですから、気になったのですが、何か非常に不健全であるということを渡辺さんが立証されようとしているようでありますけれども、まあ日本の経済運営は、今日世界を見回しまして、一番ましなほうじゃないでしょうか。それが対外通貨価値にもあらわれている。まあ、非常に理想的な点からいったら満点というわけにはまいりません。これは大いにまだまだ直さなければならない点があるのですけれども、しかし、同時にまた、総体的に見てみますと、比較的余裕のある経済運営を今日までは少なくともやってきた。今後できるだけ問題を是正していく、こういうことがいわゆる安定成長である、こう考えております。
#117
○渡辺武君 るる御説明をいただきましたけれども、私のお伺いしたことについては何も御答弁になっていないんですね。それじゃ困るんですよ。やはり委員会というのは一定の時間の中でものごとを明らかにしていくことが必要なんで、ですから、伺ったことに対して端的にお答えいただきたいと思うんです。しかも、不換銀行券が過度に増発された場合に、一体通貨価値なり物価なり、これにはどういうふうな現像が起こるのかということを伺っているんですね。物価問題の担当大臣としては、こういう問題は一番やっぱり原則的な問題ですし、はっきりと御答弁いただけなければ、今後の質問の出発点だって、御答弁いかんによってどういうふうに質問していいかわけがわからぬですからね、その辺が大事なんですよ、一番原則的な点が。ですから、そこをそらさないで……。もう一回はっきり申しますと、この不換銀行券が過度に増発された場合、その場合に通貨価値、物価などにはどういう影響があるのか、また、金と兌換されている場合はその同じ場合どういうような影響があるのか、この点を伺っているんです。端的にひとつお答えいただきたい。
#118
○国務大臣(佐藤一郎君) 何か試験を受けているような感じだったものですから略しましたが、もちろん、原理的に見て過度と――まあその過度というのが問題なんでして、一体どういう尺度で過度であるかどうかを判断するか、こういうことになろうと私は思うんです。
 そこで、そういうことを前提にしてもちろん、過度であるということがはっきりいたしますれば、これはもう渡辺さんが御存じのように、やはり通貨の価値というものは落ちてまいりますし、物価も上がってまいる。これはいわば当然のことだろうと思います。先ほどお答え漏れいたしましたけれども、金の兌換の問題も、これはもちろん今日現実問題としては起こりませんけれども、もし論理として取り上げれば、当然これはデフレ的な影響を持ってまいる、これはもう当然のことでございます。
#119
○渡辺武君 金と兌換されている場合はデフレ的傾向が出てくるとおっしゃるおことばは、全くこれは間違っていると思います。しかし、まあその問題はいまの質問の主要な問題じゃありませんので、長官が言われました不換銀行券が過度に出された場合通貨価値は下がり物価が上がるというふうにおっしゃったそのおことばから出発して、さらに、もう時間もなにですけれども、二、三質問さしていただきたいと思います。
 私は、先ほど申しましたように、企業が高度成長のためにどんどん外部資本にたよって資金需要を起こしている。これを銀行がオーバーローンでささえている。これを日本銀行が貸し出しやオペレーションでもって資金をつけてささえている。現在の日本銀行券というものは、これは不換銀行券です。そのために、過度な増発が行なわれて、過度な増発が行なわれているがゆえに、これは金に兌換できないですから、品物とかえてはじめてそれが貨幣であることが実証されるような関係になっている。これ自体としては紙切れにすぎない。金と違って価値がないわけですから、流通過程に滞留していかざるを得ない傾向を持っている。だから、さっき言ったように、流通過程に滞留する。そうして通貨価値が落ち、物価が上昇するという関係が生まれてくる。これが現在の消費者物価上昇の主要な原因の一つになっている。
 私ちょっと時間をいただきまして、その関係を図にしてまいりましたけれども、これは横軸が昭和三十五年から四十五年までの十年間。縦軸は、これはパーセンテージです。いま申しました総通貨、それから現金通貨、預金通貨、これの対前年比の伸び率ですね、これをグラフにとって、この赤い太い線が総通貨です。赤い細い線が現金通貨、それから赤い点線が預金通貨です。それから消費者物価指数の対前年比増加率、これをごらんいただければわかります。この辺と、それからこの辺がちょっとずれております。それは、物価というものは、長官もおっしゃいましたように、通貨の面からだけで上がっているわけじゃない。独占価格の問題もあれば、政府の公共料金の問題もあります。さらにはまた需給関係の問題もありましょう。しかし、その主要な要因の一つとして通貨の問題があるということは、通貨の増発が行なわれたときには物価が傾向的に上がっている、通貨の増発が少ないときには上がり方が少ない、こういう傾向が実に明瞭にこの統計の中に出ている。理論的にも、いま長官自身もお認めになったように、日本銀行券のような不換銀行券が増発されれば、通貨価値は下がり、物価は上がるという傾向が出ている。それがはっきりと出ている。過度にかどうかという問題だとおっしゃいましたけれども、過度であることは、さっきの私の質問ではっきりしているでしょう。外国にも戦前にもないような自己資本比率の低下が行なわれ、ものすごい資金需要が出てきている。これを、預貸率のべらぼうな高さという形で銀行のオーバーローンがささえている。それを日本銀行の過度な信用膨張がささえている。過度にきまっているのですよ。そのことからいまの物価の上昇が出てきている。この点に立って物価政策を考えていただきませんと、有効な物価政策として役に立っていかないと私は思う。今後一体この面で長官はどういう物価対策をお立てになるおつもりなのか。
 私は、申し上げるまでもなく、第二次物価問題懇談会、それからまた、その後身である物価安定推進会議、ここでも、この間の予算委員会でもはっきり読み上げましたけれども、いままでのような構造政策だけじゃもう片づかない、こう言っているのです、はっきり。金融財政が、これが物価に非常に大きな影響を与ている。だから、この面から物価対策をやらなければだめだということをはっきり言っているじゃないですか。
 いま私は、長い時間かけて、るるその点を実証してきました。一体長官として、どういうような物価対策をこの面から講じられるのか、その点を伺いたいと思う。
#120
○国務大臣(佐藤一郎君) いまのお示しになりました通貨の発行状況、通貨のよけいに出るときには物価が上がっている、こういう問題は、これはもうみなひとしく認めているところです。問題は、それがいずれが原因であり、いずれが結果であるかということの論点は必ずしも明確でない。物価が上がり、需要が上がり、物価が上がり、そうして通貨が増発されたのじゃないか。でありますから、いずれが原因で、いずれが結果であるか。ですから、そのグラフだけ見たのでは私は結論は出ないと思います。しかし、いずれにしましても、もしも、おっしゃられるように過度の通貨増発ということがあれば、それはやはり最もわれわれとしても警戒しなければならないことです。そういう意味におきまして、われわれは、まあ過度の通貨増発という問題よりも、むしろ、需要が非常に強過ぎる、これは高い経済成長からして出てきたところの高い需要、この需要というものがあまり強過ぎるために方々にいろいろな弊害をもたらしてくる、そうしてまた、物価高もその一つでございますけれども、そういう観点から、総需要の抑制ということを考えていっておるわけでございます。でありますから、その手段として、財政金融の調節ということをわれわれとしても当然考えなければなりません。そういう意味において、私たちも渡辺さんのおっしゃる気持ちはよくわかります。ただ、理論的に言いますと、アメリカでも現在御存じのように論争があるわけです。そうして、アメリカの場合には、たとえば年間四%しか通貨の供給量をふやさないと、いろいろと議論があり、またそれを実行している面もあるわけです。しかし、はたしてそれが経済政策の運営として非常にうまくいっておる、理想的にいっておるかどうかという判断になりますと、これはいろいろ批評もあるところでございます。アメリカは、御存じのように、低成長と高物価、こういうものが同時両立しておりますけれども、こうしたものに対しても、現在までの政策というものがいろいろと批評を受けているわけです。われわれとしては、やはりそうしたことも十分頭に置きながら、しかし過度の需要はこれを抑制してまいる、そういう意味において総需要の抑制をする、その手段としての財政金融の調節ということは十分にこれは有効に駆使していかなければならない、そういう考え方を持っています。
#121
○渡辺武君 あと一問だけ、時間が来ましたので。
 その総需要抑制政策なんかについて幾つかの点を伺いたいと私は思っておりましたが、きょうはそれをやめざるを得ません。しかし、この点だけを申し上げたいと思うのです。いま長官は、需要と供給の関係で物価が上がっているんだということをおっしゃいました。確かに、物価の上昇に需要と供給の関係が影響を持っていることは、これは否定すべくもありません。しかし、それは現在の日本では、いわば副次的要因にすぎない。なぜかと言えば、景気がいいときでも物価は上がる、景気が悪くても、在庫がたくさん出ちゃって、需給関係が緩慢になっちゃって困っているときだって、物価は上がるんですね。いまは需給関係が主要因ではないと長官自身もおっしゃっている。アメリカは不況下の物価高とかなんとか言っておりますが、つい最近の日本だってそういう現象が出てきた。昨年は不況、不景気だと言いながら、物価は七・七%も上がっていくというような状況でしょう。需給関係から説明したら、これは間違ってまいりますよ。いまスタグフレーションということばが出ておりますけれども、まさにこのことを示していると思う。ですから、私が先ほど申しましたように、現在の消費者物価の上昇の主要な要因として、過度な通貨信用膨張、これから来る貨幣価値の低落、これが一つの重要な要因だということをはっきりとかんでいただきたいと思う。その上でひとつ政策を立ててほしいと思う。総需要抑制政策というのは、いまおっしゃった需要供給の関係を非常に大きく見て、そこから出発している。だから、やっても効果がないのですよ。そうでしょう。あなたは総需要抑制政策をいままでやってきたけれども、物価は上がっているんじゃないですか。私は予算委員会で、はっきりと証明しました、あなた方のつくっていただいた統計で。佐藤内閣になってからこそ物価の上昇率が高くなっている。そういう事態が総需要抑制政策をやったって出てくるという理由は、それが、原因の認識から、政策から間違っているから、そういうことになっているんじゃないんですか。その点をよく見て、どういうふうになされるのか、よくひとつ考えて政策を立ててほしいと思うのです。
 それから、せっかく通産省、大蔵省からおいでいただいているので、最後に一言ずつ伺いたいんですが、先ほどもちょっと伺いましたが、企業のオーバーボローイング、これが、いまお聞きいただいておわかりと思いますけれども、現在の消費者物価値上がりのいわば根源になっているんです。高度成長を目ざし、高利潤を目ざし、設備投資をやって、銀行からどんどん借りる、それが過度な通貨信用の膨張、そうして消費者物価の値上がりの根源になっているわけですけれども、その方面から今後どういうような対策をお立てになるのか、それを伺いたい。
 それから大蔵省のほうには、先ほど申しました銀行のオーバーローン、これを物価対策という見地からどういうように是正するのか、いままで預貸率の改善ということでやってこられたと言いすすけれども、あまり効果があがってないですね。どういうふうにやるのか、その点も伺いたいと思います。で、預貸率の改善、流動性資産比率の改善、特に先ほど申しましたように、準備預金比率を私は少なくとも外国並みくらいに引き上げて、そうして銀行のオーバーローンの傾向をその面からも是正すべきだというふうに思いますけれども、それについてどんなふうにお考えになるのか、それを伺いたいと思います。
#122
○説明員(井上保君) 物価上昇の原因でございますが、いろいろいま御議論がございましたように、新通貨主義的な議論、あるいは生産性格差の議論であるとか、あるいはデマンドプルの議論、コストプッシュの議論、いろいろたくさんあると思います。とにかく、通産省といたしましては、まあ多くの投資による生産効果も、先ほどございましたように、供給面からのインフレの抑制という効果もあると思いますし、特に流通段階、あるいは中小企業、特に生産性が非常にその他のものと比べまして十分に上がっていないという部門もございますので、そこら辺に焦点を合わせまして、今後いろいろな意味で生産性向上をはかりまして、何といいますか、消費者物価、あるいは卸売り物価上昇の抑制をしていきたい、こういうふうに考えております。
#123
○説明員(中橋敬次郎君) 金融機関のオーバーローンの問題につきましては、先ほど来るる申し上げたとおりでございまして、一つには、個々の金融機関の健全性という問題からアプローチしていかなければならないと思っております。それにつきましては、総体として預貸率を見る問題と、支払い準備率をどういうふうに考えていったらいいかという問題を今後も検討すべきものだと考えております。
 それから物価との関連でございますけれども、これも、先ほど来いろいろ申し上げましたように、また、経済企画庁長官からもるるお話しございましたように、いろいろの要因がございまして、金融面から申せば、やはり財政金融の総体的な調整、それからまた、日本銀行の通貨供給をどういうふうにやっていったらいいかという問題も、あわせて検討しなければならない問題だと思っております。
 それから最後に、預金準備率でございますけれども、これは実は金融調節のいろんな方式の一つの手段でございますので、そういう観点から今後もなお検討をしていかなければならない問題だろうと考えております。
#124
○委員長(佐田一郎君) 両件に関する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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