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1970/04/22 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 社会労働委員会 第11号
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1970/04/22 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 社会労働委員会 第11号

#1
第065回国会 社会労働委員会 第11号
昭和四十六年四月二十二日(木曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     鈴木 省吾君     徳永 正利君
     長屋  茂君     横山 フク君
     亀井 善彰君     塩見 俊二君
     安田 隆明君     山本  杉君
     増田  盛君     玉置 和郎君
     武内 五郎君     小野  明君
     瀬谷 英行君     占部 秀男君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     横山 フク君     丸茂 重貞君
     山本  杉君     二木 謙吾君
     玉置 和郎君     江藤  智君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         林  虎雄君
    理 事
                上原 正吉君
                高田 浩運君
                小柳  勇君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                江藤  智君
                黒木 利克君
                二木 謙吾君
                丸茂 重貞君
                山下 春江君
                佐野 芳雄君
   国務大臣
       労 働 大 臣  野原 正勝君
   政府委員
       労働省労政局長  石黒 拓爾君
       労働省労働基準
       局長       岡部 實夫君
       労働省労働基準
       局賃金部長    藤繩 正勝君
       労働省職業安定
       局長       住  榮作君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       労働大臣官房国
       際労働課長    大坪健一郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○勤労者財産形成促進法案(内閣提出、衆議院送
付)
○労働問題に関する調査(公共企業体等における
春季賃上げ闘争に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(林虎雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の変動について御報告いたします。
 昨二十一日、鈴木省吾君、長屋茂君、亀井善彰君、安田隆明君、増田盛君、武内五郎君及び瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として徳永正利君、横山フク君、塩見俊二君、山本杉君、玉置和郎君、小野明君及び占部秀男君がそれぞれ選任されました。
 また本日、横山フク君、山本杉君及び玉置和郎君が委員を辞任され、その補欠として丸茂重貞君、二木謙吾君及び江藤智君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(林虎雄君) 勤労者財産形成促進法案を議題とし、これより質疑に入ります。
 御質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○佐野芳雄君 私は、この法律案の審議に先立ちまして、まず初めに聞いておきたいのは、一九六一年のILO総会で採択された労働者住宅に関する勧告についてであります。今日まで、政府はどのようにこの勧告に善処してきたのか。勧告は条約との間に上下の序列をつけるのでなく、勧告の価値は、それがわが国で実際にどのように適用され、それが労働者の生活水準向上や、労働条件の向上にどれほど役立ったかということに真の価値があるのだと思います。ILOの理事国であり、しかも国民総生産世界第二位を誇る日本の現状の中で、勧告の示しておる事項をこの財産形成法の法律の作成にあたってどのように配意してきたのか、労働大臣の率直な御意見をお聞きしておきたいと思います。
#5
○国務大臣(野原正勝君) ILOの労働者の住宅に関する勧告がなされたことは御指摘のとおりであります。今回の勤労者財産形成促進法案は、こうした労働者住宅に関するILO二五号の勧告の線に沿い、その勧告を尊重して設けられたというふうに考えております。これは条約ではございませんが、勧告という形で採択になりましたが、この精神はあくまでも尊重したいと考えております。
#6
○佐野芳雄君 いま大臣は、その精神を尊重したいというふうに言われておるのですが、この勧告の前文では「国際労働機関憲章は、十分な住居の提供を達成するための計画を世界の諸国間において促進する国際労働機関の厳粛な義務を承認するフィラデルフィア宣言に掲げた目標を同機関が促進しなければならないことを定めているので、国際連合総会によって採択された世界人権宣言は、「すべて人は、自己及び家族の健康及び福祉(住宅を含む。)に十分な生活水準を保持する権利を有する。」ことを認めているので、国際連合及び国際労働機関は、千九百四十九年に経済社会理事会及び国際労働機関の理事会により留意された住宅及び都市村落計画の分野における国際連合及び専門機関の総合作業計画に示されるようにも国際連合が住宅及び都市村落計画の分野において一般的な責任を有すること及び国際労働機関が労働者住宅に関する問題について特別の関心を有することを認めたので、」ということで、この一般原則を実施するということを勧告しておるのですが、この一般原則の適用範囲のところで「この勧告は、筋肉労働者及び非筋肉労働者(自営業者及び老令者、退職者又は身体障害者を含む。)の住宅について適用する。」、こう規定しておりますが、この規定についても率直に認めるというふうにおっしゃるのですか、あるいはこの法案の作成について十分配慮したというふうに言われるのか、その点もう一ぺん聞いておきたいと思います。
#7
○政府委員(岡部實夫君) 御指摘の住宅に関する勧告は、きわめて広範な内容になっておりまして、いまおあげになりました前文及び適用範囲等につきましては、御指摘のとおりでございますが、国といたしましては、この勧告に盛られておりますいろいろの内容を、建設省を中心に、いわば住宅政策として十分尊重してまいっておるところでございますが、私どもの今回提案しておりますこの法案は、この中のいわゆる勤労者がみずからの力によって持ち家を建設していく、そういうものに対しまして国がいろいろな面で積極的に援助をしてまいるということが、この勧告の中の随所にございます、たとえば「労働者住宅計画は、住宅建築について、個人的、共同的及び公的な計画のため十分な余地を認めるべきである。」とかというようなことでございまして、公的住宅その他の政策と両々相まちまして、個人がみずからの力で住宅を、持ち家を建設しあるいは取得していくという部面に対しまして、この法案はそれを対象にいたしました部分でございまして、そのほかの部分につきましては、冒頭に申しましたように、いろいろな法律によりまして、建設省を中心に住宅政策の一環として行なっておる、そういう関係に相なると思います。
#8
○佐野芳雄君 そうすると、いまの大臣のILOの住宅勧告はその精神はあくまでも尊重するんだということとちょっと食い違いがあるように思うのですが、特にいま――あとでまた触れたいと思いますが、御答弁にあったように、もしそういうことであるなら、勧告のこの融資の項の中で「政府並びに使用者団体及び労働者団体は、協同組合及びこれに類する非営利の住宅協会を奨励すべきである。」と規定しておるのですが、今日、日本では住宅生活協同組合がそれに該当するわけですが、現に全国的に労働者の住宅建設に住宅協同組合が貢献していることは御承知のはずですが、その実際を無視していることになりはしないかと思うのですが、その点どうですか。
#9
○政府委員(岡部實夫君) この法案の中にも、雇用促進事業団を通しまして融資をいたします場合に、法律に基づいてつくられておりまする日本勤労者住宅協会を融資の対象として取り上げております。そのほか一般の――この法案に直接盛ってございませんけれども、その他の住宅融資の制度の中には、事業主、労働者、勤労者の団体その他も融資を受けられるという制度がございますし、またこの法案自体も事業主またその団体が融資の対象になる。これらは中小企業の場合事業主団体もこの対象になるということでございますので、この法案だけをとりましても、使用者団体、労働者団体等に対しましての融資の道が開かれておるということに相なって、そのほかの法律におきましても、いろいろな各機関によりまして、それぞれ関係の団体が融資の対象になっているということに相なっておるわけでございます。
#10
○佐野芳雄君 そうすると、たとえば勤住協が今度の法律の中に固有名詞として入っていることはわかるのですが、現実に全国で勤生協を通して公庫の融資を受けて仕事をやっているのは住宅協同組合であります。その住宅協同組合という固有名詞がなぜ入らぬのですか、その点。
#11
○政府委員(岡部實夫君) 法案作成にあたりまして、融資の対象になりますものをどこまで考えていくかということをいろいろ検討いたしまして、ただいま先生御指摘の住宅をつくるための協同組合はどう取り扱っていくかということも十分検討いたしました。そこで、ただいま私どもがこの御審議願っておる法案では、勤住協を対象に取り上たわけでございますが、それは実はこの制度が発足いたしまして、この融資に充てまする資金量が大体どの程度になるかということが必ずしもまだはっきりしない面もございます。それから一応私どものこの法案の立て方といたしましては、勤労者が自主的にみずからの持ち家をつくるための努力をすると同時に、事業主がこれに対して十分な協力援助をしていくというその事業主の力を引き出すということも一つの大きなねらいとしておりますもので、事業主、事業主の団体を対象にすると、そのほか、勤労者の住宅を建設しあるいはそれに提供するということを主たる目的といたしました団体。しかも法律による団体が一つございますので、これは当然対象にあげていく、また現実にいま御指摘の協同組合でございますが、これは勤住協等から委託を受けて現実に建設をしておるというような実態もございますので、スタートにおきましては、今後の資金量との見合いもございまして、一応対象を事業主、事業主団体及び勤住協ということにいたしまして、今後の資金源とのにらみ合わせ、また今後の運営の実態に即して、その勤労者住宅の審議会を設けることになっております。その辺でも、今後どういうふうに対象を考えていくかということも検討するということで、スタートにおきましては、ただいま申しましたように、いまの法案の姿にしたわけでございます。
#12
○佐野芳雄君 いまおっしゃっている勤住協の委託団体であるということは、住宅金融公庫に関して委託団体であって、年金事業団等の融資の問題は住宅協同組合が独自でやっているわけです、現実には。その点御承知なんでしょうな。単に勤住協の公庫の委託を受けてということを前提にするんなら別ですよ。そうでなしに、独自で年金事業団の融資を受けて住宅協同組合は仕事をしているわけです、年間二千戸なり二千五亘戸なり。その点は尊重しなければいかぬじゃないですか。
#13
○政府委員(岡部實夫君) ただいまの点は御指摘のとおりでございますが、私どものいまの法案提出の過程におきましていろいろ検討いたしましたのは、いろいろな団体が対象として考えられるわけでございますけれども、冒頭に申しましたように、融資の資金には限りがあることでございますし、その団体を当初におきましていろいろ広げるということが現実に必ずしも実効があがらないかもしれないというような懸念もございましたので、スタートにおきましては、最初に申しましたような対象に限りまして、今後の運営によりいろいろ検討を加えてまいる、こういうことにいたしたわけでございまして、いまの住宅生協が現実に年金事業団の対象になっていることを私ども軽視したつもりは毛頭ございません。
#14
○佐野芳雄君 軽視していないと言われるんですけれども、現実には軽視しているじゃないですか。ということは、御承知のように、勤住協は自分で仕事をしていないんですよ。いま、あなたの言われた委託を受けている住宅生協が全国の各府県で仕事をしているわけです。仕事をしている実態は住宅生協なんです。勤住協を対象の中に入れることはけっこうですが、これが住宅生協を抜かなければならぬはずはないんです。これは軽視しているんですよ、どうですか。
#15
○政府委員(岡部實夫君) 現実に住宅生協のうちの非常に多くの住宅生協が勤住協と緊密な関連に立ちまして、勤住協を通じての融資を現実に建設に向けておられることの実態はそのとおりでございますが、この制度自体につきましては、これは繰り返すようで恐縮でございますけれども、何せ発足の当初におきましては、限られた資金源でございますし、それをできるだけ有効に引き出していくということで事業主及び事業主団体をまず対象に考えていくということから、さらに勤労者の住宅そのものの建設、取得を目的とするものをともかくこれにひとつ加えていくということでスタートいたしましたので、いま仰せの住宅生協につきましては、現実には勤住協を通じて住宅建設に御協力をいただくことができるわけでございます。今後資金源の、資金の集まり方等によりまして十分その点は今後の課題として検討をさしていただきたい、こういうことでございますので御了承をいただきたいと思います。
#16
○佐野芳雄君 いろいろ使用者のほうの問題を前面に出されるんですけれども、ILO勧告でも、使用者が提供する住宅、これは融資の場合もある意味で含まれると思うのです。相当制限を受けていますね、制約をしていますね。もっと労働省としては、労働者の住宅は自主的に仕事をしているものについて奨励し、助長するという体制がとられないと、これは労働省の性格からもおかしいんじゃないかと思います。使用者の問題につきましては、御承知のように、勧告の中では相当制約をしているわけでしょう。しかも現実に住宅の仕事をしておるのは自主的にやっておる住宅生活協同組合なんだ。あなたは資金源の問題を言われましたけれども、私は、やはり十分尊重するということで配慮してもらわぬと困ると思います。いずれまたこのことはあとで触れますけれども、これはもう一ぺん再検討を要すると私は思います。
 それから、これをひとつ聞いておきたいんですが、私のいま手元に一九七〇年のILO総会の議題の資料として、勧告に対する報告書が出ているんですが、一九六九年に。これは六一年にこの勧告ができましてから一回だけですか、報告しているのは。
#17
○説明員(大坪健一郎君) 一回だけでございます。
#18
○佐野芳雄君 一回、そこでこの報告書を見て――全体を見ていないのですが、気になるのは、たとえばこういう報告書はILO事務局でわからぬでしょうけれども、たとえばこの十四に、「日本勤労者住宅協会法に基づく日本勤労者住宅協会、」これはいいと思うんです。その次に「住宅組合法に基づく住宅組合」、にこれはいま活動していない。名前はありますけれども。法律はありますけれども、実際にはないんでしょう。そういうないものを入れるということ自体が私はおかしいんじゃないかと、この報告を見て思うのです。それからそのあとに、いま御答弁があったのですが、「消費生活協同組合法に基づく労働者住宅生活協同組合のほか、」と、ちゃんとこの中に入っているのです。住宅協同組合と、あなた方のほうではILO事務局に出した報告書の中に明記しているでしょう。それがなぜ今度の法律に明記されないのか、こういう固有名詞として。
#19
○政府委員(岡部實夫君) この報告は、勧告全体に対しまする報告でございまして、この報告は広範な内容を持っておるものでございますので、単にこの勤労者財産形成の一環としての住宅、持ち家住宅建設の問題のみならず、いわゆる勤労者の住宅建設についての全般的な事項についての報告でございますので、その中では、ただいま先生御指摘のように、年金福祉事業団の資金は住宅生協のほうに当然その対象として流れていくということも含めましてここに書いたものでございますので、この今回提出しております法案は、この勤労者住宅のいろいろなもろもろの政策の中の一つということにお考えいただきたいと思うわけでございます。したがいまして、この報告は、この法案に直接関係あるものではございませんので、全般的な勤労者住宅の現在の姿を報告したものでございますので、その点御了解いただきたいと思います。
#20
○佐野芳雄君 了解せい了解せいと言われても、実際に仕事をしておるものを軽視しておいて了解することができるはずはないんですよ。そして労働省のほうでILO事務局に対して報告をしている報告事項にもこういう固有名詞として載っておるんだから、ですから他をもって言っちゃいかぬと私は思うのです。その点は十分考えてもらいたいと思います。
 それから、この際労働大臣にお聞きしておきたいと思うのですけれども、先ほど大臣は二五号勧告をあくまでも尊重するということを前提にしてこの法律をつくったと言われるのですが、そうすると、いまの局長の御答弁とは別に、一般原則の適用範囲の中に、先ほど申しましたように、「この勧告は、筋肉労働者及び非筋肉労働者(自営業者及び老令者、退職者又は身体障害を含む。)の住宅について適用する。」と明らかに規定しておるわけですね。ところがいまのようなお話になりますと、退職しておる者あるいは身体障害者、あるいは老齢者、あるいは自営業者というものは、今度のこの促進法には当てはまらなくなる。その点あなたが先ほどから言われておる一一五号勧告を尊重してということと背馳することになるのですが、その点どうですか。
#21
○国務大臣(野原正勝君) 一一五号の勧告を尊重すると申したのは、全部を尊重し、個々のケースについてことごとくそれを尊重するという意味を申したわけじゃございませんので、そういった勤労者のための住宅についてできるだけの配慮をすべきだということで、これは、勤労者住宅はやがてはそうした老齢者なりあるいは身体障害者にも及ぶんだという理想を考えておると思うのですが、現在の法律においてはそこまでは手が回っていない、はなはだ十分ではないと思っておりますが、現在の勤労者に対してできるだけの住宅問題等をやっていきたい、それにやぶさかでないということから、大きく見れば、勧告の精神を尊重したということになろうかと思います。個々のケースまで全部それを吟味して満足を与えるという意味で申したわけではございません。
#22
○佐野芳雄君 非常に何といいますか、たよりないというのか、ずるいというのか、答弁があるんですが、この法案ができるまでの経過については、昨年の五月に勤労者財産形成制度の創設が試案として発表されましてから、聞くところによりますと、何回か変貌をして、その内容、規模もかなり後退したものになったというふうに聞いておるんですが、一体、何回ぐらい最初の形成制度の創設の試案を発表してから変更、変遷がありましたか、その点をお聞きしておきたいと思います。ということは、いまのお話を聞いても、非常に後退しておるという感じを受けるわけなんです。そこで、最初の創設の試案を出したときから何回ぐらい法案の変遷があったのか、そういう状況が知りたいと思うんです。同時に内容、規模等についてかなり後退したと聞くんですが、この間の事情をひとつ説明していただきたい。
#23
○政府委員(岡部實夫君) お話の試案は、いろいろこの法案の作成にあたりまして関係者の御意見を承るというために、いわゆる「財産作り懇談会」というような形の御意見を承る場を設けまして、そこにおはかりをして、その際、試案といいますか、考え方をお示ししながら、それに対する御意見を承って最終法案をつくった、そういう形でございまして、まあ何回ということでは必ずしもはっきりはいたしませんが、最初に昨年の六月に案をまとめた構想をおはかりをいたしまして、それから最終的に関係各省その他との折衝も経て現在の法案の形になった。
 そこで、どういうふうに変わってきたかというところのおもなる点を申し上げたいと思いますが、まず第一の財産形成貯蓄に対しまするいわば援助措置と申しますか、恩典と申しますか、それにつきまして、昨年六月の構想では、財産形成貯蓄をしたものに対しましては税額控除をしていく、それと同時に、一定のものについては割り増し金制度もこれに併用していくということでございます。それを今回の法案では、利子等の非課税ということで対処していくということに変わったわけでございます。
 それから第二点は、住宅貯蓄に要する費用については、いわゆる財形貯蓄と同様の取り扱いをするということでございましたが、今回の場合には、一般の貯蓄の税控除と切り離しまして、これに対しましては、住宅貯蓄控除制度を、現在ございます制度を、これを一部改善をいたしましてこれの対象にしたということでございます。
 それからその次に、勤労者の分譲住宅の建設でございますが、これについては、当初は、勤労者が積み立てましたあるいは預金いたしましたものを勤労者財産形成基金というような形で、ファンドとして積み立てて、それから融資をしていく、こういう形にいたしたわけですが、最終的には雇用促進事業団を通して融資をする。それから一般の預貯金は一般関係の金融機関において取り扱う。したがいまして、雇用促進事業団が金融機関から一定のワクの原資を還元して、それを財源として融資をしていくと、こういうことにいたしております。
 それからなお、当初には、土地の先行取得というために、この基金あるいは事業団が直接資金をもって取得しよう、こういうことを考えておりましたが、これにつきましては、国の機関といたしましては、建設省が総合的に住宅用地の造成あるいは計画的な取得を進めていくということで、そのほうの計画に盛ることにいたしまして、こちらでは出さないというような点がおもなる点でございます。
#24
○佐野芳雄君 聞けば聞くほど後退の姿がはっきりしてくるわけなんですが、住宅問題は、戦後二十六年を経て、なおまことに深刻であり、ことに最近は核家族化の進行においてさらに住宅問題が別の意味において深刻さを増してきております。戦争が済んだときの住宅事情、住宅不足は、これは大金持ちも小金持ちも、金のない者も同じように住宅問題に悩んだのですが、すでに二十六年たって、ことにここ十年ぐらい前からは困っておるのは労働者だけなんです。しかも、労働者の流動化が非常に盛んになってきておるときに、いま言われるように総合対策のないままに、あるいは建設省もやっておる、どこもやっておる、あっちこっちゃっておるということで、あとでまた触れますけれども、雇用促進事業団というものの中にこういうふうな施策を織り込んでいくことに問題があるんじゃないかと思うのです。こういうふうな深刻な住宅問題を解決することが生産性を高めるためにも役立ち、労働者の流動化する中で一つの新しい文化的な生活をさすことが生産性向上につながるわけですから、そういうたてまえからするならば、そういう後退した形でなしに、もっと前向きで政府全体として住宅施策を考えるというふうになぜ労働省としてはしなかったのか、その点について聞いておきたい。
#25
○政府委員(岡部實夫君) 御指摘の点はたいへんごもっともでございます。私ども、この勤労者の住宅の問題については、実は最近の日本の経済情勢が非常に好転してまいり、持続的に高度の成長を続けてまいる、賃金も相当な上昇を続けておる、こういう中で、勤労者にとって足りないのは資産の問題だ、資産形成の問題だ。そのうちでも特に住宅問題は、一般に比べて勤労者の住宅保有の状態が見劣っておる、非常に劣っておる。この点について、私どもも、この際労働政策、広い意味の労働政策の一環として取り組んでまいらなければならない、そういうことから発足いたしたわけであります。
 そこで、冒頭に申しました当初の案では、先ほど御説明いたしましたように、これができるだけ勤労者に魅力あるものとすべきだという考え方からいろいろな案を考えてきたわけでございます。そこで第一は税の問題、減税の問題でございますが、これについては政府部内においてもいろいろな意見がございまして、税の減税、免税等についての公平の原則というようないろいろ議論もございます。そこで私どもは、一般と別に勤労者だけがこの恩典を受けるということのためには、ある程度その公平を破っても減税措置を勤労者に対してのみとる措置をつくるべきだ。この基本線は最後まで通したわけでございます。ただ、具体的にはどういう技術的な措置で税額控除の措置をするのか、あるいは今回提出しておりますような利子の非課税ということでやるのか、それらについてはいろいろ技術的な問題もございましたが、私ども、まず勤労者が一般に比べて特別な減税あるいは免税制度の恩典が受けられるということを、ともかく新しい制度として発足させたいということで、そのやり方につきましては、税額控除のほうが当初はいいと思っておりましたけれども、全体のいろいろ議論の中で、利子の非課税ということに落ちついたわけでございます。もちろんこの利子の非課税制度と税額控除の制度と、長い間積み立てをやった場合にどちらがどの程度有利になるかということについては、必ずしもにわかに計算できない点もございます。そこで私ども実施の状況を見まして、こういうような制度ではなお十分な魅力がないんだということがはっきりいたしますれば、これをさらに魅力あるものに改善をしていくということを基本的な立場といたしまして、今回ともかく勤労者に対しまして、みずからの努力によって住宅建設のための貯蓄をする、そういった者に対してはできるだけ援助をしていくと、こういう新しい制度をともかく発足させるということに重点を置きまして、いまの御提出しているような案になったわけでございます。そこで、今後ともこの制度がどう利用されるかということによって、この措置が生きるも死ぬもきまるわけでございます。したがいまして、このような制度が十分活用されるように期待いたしますが、その状況によりまして、さらにこの制度について改善すべきものは順次改善していく、しかもその改善をするためには労使並びに公益――専門家の集まりました勤労者財産形成審議会という審議会を設けまして、そこでの御意見も十分聞きながら、ここで基本的計画を策定し、さらにこの運用の実態も十分把握していただいて、今後の改善のための御意見を十分聞いてさらによりよいものにしてまいる、こういうことでございます。
#26
○佐野芳雄君 非常に魅力のない法案を出されておるわけですから、活用することについてもあとでお尋ねしますけれども、私は、そんなによい結果が出るようには実は思わぬのですが、まあいろいろ言っておられるのですからあとで聞きますが、この際、それでは法案の将来の展望について聞いておきたいと思うんです。この財産形成政策は、もともと西ドイツのものを参考としてつくったように聞いておるんですが、政府の目標は、やはり将来の活用される条件の中ではあるいは改正等も考えていくと言うのですが、なかなか困難だとは思うんですけれども、それにしても、そういうふうなお考えの前提に、政府の目標は西ドイツ並みの内容に充実していきたいというふうにお考えになっているんだと思いますが、もしそうだとするなら、この政策の将来の展望について説明してもらいたいと思います。
#27
○政府委員(岡部實夫君) この制度発足にあたりましては、御指摘のように、西ドイツで約十年前に発足いたしました勤労者財産形成政策を参考にいたしたわけでございますが、西ドイツと日本との場合には、やはり労働事情、労使関係の事情、あるいは住宅事情その他もだいぶ違っておりますので、これを日本の実情に即するように、まあ焼き直したと申しますか、して、日本の制度をいま御提案しておるわけでございます。
 そこで、将来の展望ということでございますが、問題は、やはりこの制度は勤労者自身がまずこの制度を利用してあるいは活用して持ち家住宅の建設に有効にこれを使うということにならないと意味ない。そのためには、ここでとっておりますいろいろな措置がはたして実情に即してうまく運用されるであろうかどうかということになろうかと思います。先ほど御説明申しましたように、住宅のための貯蓄をやっていく場合に、それが現在の経済情勢あるいは今後の経済情勢と見合って、ただいまとっておりまする少額利子の非課税制度あるいは住宅積み立ての減税制度だけで十分実施できるかどうかというようなことも考えられる。その場合に、たとえば西ドイツの場合には貯蓄の割り増し金法あるいは住宅建設の割り増し金法ということで、冒頭の減税措置からいまの財政措置に移ってきたようなこともございますので、これらの点については、この法案の施行と、この施行に伴いましての住宅あるいは一般の貯蓄の実績等十分見ながら、これが目的を十分果たし得るように常に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
#28
○佐野芳雄君 この法案は、労働省のほうで監督してあるいは推進しておやりになるということですので、この際労働大臣にお考えを聞いておきたいんですが、勤労者の住宅政策は、一一五号勧告が指摘しておりますように、本来的には社会施策の総合対策とし考えるべきものであると思うんです。勤労者の生活安定と向上には所得の向上、特に労働省の場合は――建設省の場合は、これは家が建てばいい、住宅問題が解決すればいいということも一応考えられるんですが、労働省としては、勤労者の生活安定、勤労者の生活向上ということが前提に考えられなければならぬと思うんですが、そうすると所得の向上、物価の安定、社会保障の充実強化はもちろんのこと、労働条件の改善、生活環境の整備等の施策が重要であると思うんですが、こうした施策は総合的、具体的に効果をあげていくという方向をとらなければならぬと思うんですが、したがって財産形成政策、この程度の政策それだけでは生活の安定と向上は期待できないと思うんですが、労働省の立場で、労働大臣としての所見と見解を聞いておきたいと思います。
#29
○国務大臣(野原正勝君) お説のとおり、勤労者の生活の安定と向上のためには、労働条件の改善、賃金水準の向上、社会保障や社会資本の充実、物価の安定等が今後とも多大の努力を傾注すべき問題であることはもちろんでございます。この法案はいささかもその必要性を否定するものではございません。しかしながら勤労者の生活の安定と向上をはかるためには、これらの施策の充実と相まって、賃金の水準の向上に比べて相対的に立ちおくれの著しい勤労者の資産の充実をはかることもまた肝要であろうと思います。勤労者財産形成促進制度は、このような観点から勤労者がみずからの努力によって資産を保有することを国が援助して、事業主の協力と相まって、より豊かな安定した勤労者の生活の実現に資そうとするものでございまして、この制度は勤労者の方々の御協力によって将来ますます拡充強化され、大きく勤労者の生活の安定に資することは間違いないというふうに考えております。
#30
○佐野芳雄君 大臣は間違いないと言われたけれども、この程度の援助政策で援助になっておるとお思いになるところに問題点があると思います。その点はあとで申し上げます。
 そこで、いま局長がいろいろお話しになっております点から総合いたしますと、今度のこの財産形成政策は、当面、預貯金を住宅建設に向けていくということが一つのねらいのように思われます。預貯金の場合は、御承知のように、物価の上昇に金利が追いついていけない、そういう状態に置かれているのですから、そこにも問題点があると思うのです。それから土地政策のない中で個人の努力によって土地の入手が非常に困難だ、これに対して総合的な対策、施策がない形での労働省のこういう政策は、一体どのように解決のめどがあるというふうにお考えになるのか。政府がこういう土地問題きわめて困難な土地入手等についても個人個人の努力にまつというふうな考え方でよいのかどうか、これに対してその方策をひとつ示してもらいたいと思います。
#31
○政府委員(岡部實夫君) 御指摘のように、今度の制度の一つの大きなねらいが勤労者の持ち家住宅の建設にあることは、御指摘のとおりでございます。そこで、第一点の現在のような経済情勢の中でこの制度がはたして有効に活用するかどうかというところでございます。もちろん物価がいろいろ上昇していく中で貯蓄をしていくということについては、それを減殺するような意味合いも当然経済的には持つわけでございますが、現実の姿は、物価三昇にもかかわりませず、相当な貯蓄が現実に行なわれている。しかし、当然物価の問題につきましては面政府の大きな施策といたしまして、これを抑制していく政策をとらなければならないことは申すまでもないわけでございます。直接住宅に関連いたしまして最も問題が大きいのは土地の問題であろうと思います。それはただいま先生の御指摘のとおり。そこで私どもは、当初の試案におきまして、土地の先行敢得についても独自の措置を考えていってはどうかということ下、試案を考えておりましたけれども、政府全体といたしまして、各省がそれぞれ必要により土地の手当てをしていくということでは.やはり政府の総合的施策の面からは必ずしも適切でないということもございまして、それらの点については、建設省の従来のいろいろな住宅の用地の建設に対する施策、これをさらに強化すべきだということにいたしまして、この法案の四条におきまして勤労者財産形成政策の基本方針を策定することになっておりますが、この中で労働大臣と大蔵大臣及び建設大臣、この三大臣をこの基本方針においてはいわば関係の、主管の大臣ということにいたしまして、特に土地、持ち家建設にからむいろいろな問題につきましての建設省の所管に関することについては、建設大臣がこの基本方針の策定にあたっても労働大臣と十分協力をしてこれに当たるというような手だてをいたしまして、私ども労働省だけでできませんことにつきましては、関係の各省と基本方針の策定を通じて、まず十分な連携をし、これの実施について協力を求めていく、こういう姿勢で進めてまいりたい。その中で、いま御指摘のような点は解決のために十分努力をし得るということに考えておるわけでございます。
#32
○佐野芳雄君 そうすると、住宅の一番基本になる問題点は土地の問題なんですよ。その土地は建設省に依存するのだということになると、労働省としての主体性がないことになっちゃう。その話はあとでしましょう。いま局長は預貯金の問題を非常に強調されておるのですが、昭和四十五年六月に行なわれた貯蓄増強中央委員会の貯蓄に関する世論調査、これによりますと、勤労者の貯蓄している目的は病気や不時の災害に備えてというのが七七・七%である。教育費や結婚資金に充てるというのが五一・七%、老後の生活安定のためというのが三八・三%である。そして土地、家屋の購入、住宅の修理改善のためというのは三四%なんです。こういう世論調査から見ると、土地家屋の購入、住宅の修理改善というのが三四%にすぎないということは、全くいわゆる勤労者の貯蓄意欲からははずれておるのです。だから病気や不時の災害に備えてとか、教育費や結婚資金に充てるとか、老後の生活の安定ということが普遍的問題なんです。ところが土地家屋の場合の三四%といいますけれども、これは全く住宅のための貯蓄というものは、住宅を求めることの必要な人たちだけの、住宅に困っている人たちだけのせっぱ詰まった状況下の貯蓄ということになる。だから広い意味における、あるいは一般的な労働者の生活向上のための貯蓄ということとは少し違った考え方を世論調査からも持たなければならぬと思いますが、その点どうなんですか。
#33
○政府委員(岡部實夫君) 御指摘の世論調査でございますが、いまお話しのように、全体の貯蓄の目的といいますか、動機からいいますと、土地家屋の購入等については三四%ということになっております。さらにこのいまの数字は、ここで議論申し上げるつもりはございませんが、たとえば三十八年当時が二七%くらいでございましたのが徐々に上がってきている。そこで、やはり最近の経済社会の情勢、全体の情勢の推移に応じまして、やはり勤労者も持ち家といいますか、住宅のための貯蓄をするという方向が強まってまいり、またそういうような余力も出てまいるのではないか、これは将来に対する見通しでございますが、そういうふうに考えております。それから一方、各企業その他で住宅に対しまする援助制度をいろいろやっております数字がございますが、これらは相当各企業によりまして、大半の企業が従業員のための持ち家援助制度を実施いたしております。住宅資金の融資とか、住宅積み立てとか、住宅分譲、宅地分譲あるいは給与住宅の払い下げ、これらにからみまして、勤労者が自主的な努力をいたしておることもまた事実でございますので、私どもは、そういった勤労者が現に住宅積み立てをやっておる、また企業あるいは事業主が何らかの形でこれらの勤労者の努力に対して援助または協力をやっておる、そういうところに着目をいたしまして、なお世論調査、また一方におきましていまの勤労者の持ち家比率は大体四六%くらいである、持ち家を持っておらない人で持ち家を持ちたいという希望が九〇%以上あるというような実態もございますので、そういった点に着目して、それに対して国、地方公共団体その他が十分援助の体制をつくっていくということが少しでも勤労者の持ち家を促進する刺激になるということが考えられると思いますので、この制度を採用し持ち家の建設の促進に資したい、こう考えておるわけでございます。
#34
○佐野芳雄君 いまのお話等考えながら、そうしてこの法律を逐条的に見ていくと、財産形成、財産を与えるということを含みとしながら、本来的には貯蓄のための貯蓄ではないかというふうにいま実は思うわけです。いま局長は、持ち家制度の希望がだんだんふえてきておる、これは確かにそうなんです。この持ち家の希望がふえておるということは借家がないということ。借家に入っても一畳千円とか千五百円。だから四畳半と六畳十畳ぐらいでも一万五千、権利金は別ですよ。あるいは二万円払わなきゃならぬ。あるいは子供があって十五畳も二十畳もほしいということになれば二万五千、三万払わなきゃならぬ。それなら住宅金融公庫に金を借りたり、事業主から金を借りて払っていっても、長い年月で返済のできる条件さえあれば家賃で払う金額で自分の家になるというふうなことが持ち家制度が出てきている現状だと思うんです。だから、持ち家制度それ自体を求めているんじゃないんです。私は、自分で住宅の問題をやっておりますが、本来的に言いまして、人間は一生のうちに三べん宿がえするんです。親の家に生まれた、親と一緒に住んでおる、結婚した、核家族が進行しておりますから自分で家を持つ。子供が大きくなってきた、狭うなったからもう一ぺんかえなきゃならぬ、持たなきゃならぬ。子供が成長して結婚して出ていったと。夫婦二人じゃ広いから狭い家をさがそうかということで、持ち家制度それ自体が一つのやっぱり社会問題になる傾向を持っているわけです。むしろILO勧告がいっておるように、住宅政策は国の責任だ。しかもこの責任を果たすことが生産性の向上にも役立つんだということになれば、特に人口、労働力の充足の現状から見ても、やはり政府としては、むしろ持ち家制度には執着するんではなしに――それは実情はわかりませんよ。それも正しいことではない、やむを得ず持ち家御度をやっておるんですから。だから中途はんぱなものの考え方なら私は賛成できないんですよ。その点どうですか。
#35
○政府委員(岡部實夫君) 勤労者の住宅問題につきましては、総合的な住宅政策の一環として当然考えていかなきゃならぬわけでございまして、御指摘のように、公営住宅あるいは公団の賃貸住宅等のいわゆる公的な賃貸住宅が大量に建設されなきゃならぬということもおっしゃるとおりでございます。政府の第二期の住宅建設五ヵ年計画案におきましても、法的な援助によるものの中で賃貸住宅は六割、そのほかが四割ということで賃貸住宅に力を入れておることも、まあそういう方向で進める一つのあらわれであろうかと思いますが、私どもがいま取り上げておりますのは、そういう全体的な公的住宅あるいは賃貸住宅の大量建設と相まちまして、現に個々の勤労者の方が持ち家住宅あるいは自分の住宅を持ちたいということで努力いたしております現実もこれまた否定できないところでございますので、そしていろんな形でいま現にそういう預貯金もしております。それが一般の、たとえば金融機関に積み立てられておる場合にはほとんど還元をされていないと。しかし、今回の制度によりましてそういう努力をされる向きについては、一つはまず減税で恩典を与え、また、集まった預貯金につきましては、一部を事業団が吸収をいたしまして、それを財源としてさらに住宅建設に還元していく。従来、一般の金融市場全体から見ますと、勤労者の住宅建設のほうにはわずか全体の資金量の一%しか還元されておらない。今度の制度が十分活用され、さらに相当な貯金ができ、これが雇用促進事業団に必要な資金量が還元されるならば、相当なメリットが出てくる。したがいまして、私どもは賃貸住宅の建設を決して否定するものじゃありません。むしろこれも大量建設をすべきだと思いますが、それと並行いたしまして、現実の持ち家の努力に対して、それが成果を生むような施策も当然これと相まってなすべきであろうということで、その点をねらっての財産形成促進制度の創設ということになっておるわけでございます。
#36
○佐野芳雄君 先ほどから局長は、原資が十分ないし、資金事情もはっきりしないと言われておりますが、そうすると、そういうふうな希望的なことだけ言っても、現実には行なえないということを前提にいまあなたは話されているわけですが、その点が一つです。
 それからいま住宅預金をした場合の恩典といいますか、減税措置ということをえらい強調されておるのですが、結局そういうことになりますと、住宅を提供すると言いながら、本質的には貯蓄のための住宅を奨励しておるあるいはそれを求めておるというふうに考えられるわけなんです。むしろこういうことも、ある意味において反対しませんけれども、積極的に賛成もできないんですが、雇用促進事業団法が生まれた時分から、多少事情は変わってきましたけれども、炭鉱離職者を救済するとかいう面があったと思いますが、こういうふうな賃貸し住宅を労働省としては考えるべきじゃないのかというふうに私は思うのですが、それは別としまして、原案によると、貯金の拘束期間が五ヵ年というふうに長かったが、現在の案では期間も三年と短くなっておるわけです。これではやはり貯蓄のための貯蓄という性格が強いのではないかと思うのですが、さらにたとえば六条の一、三年以上の期間にわたって定期的に預け入れること、六条の二、預け入れられた日から一年間は払い出しや譲渡はしない、六条の三、預け入れば勤労者と事業主との契約に基づき、賃金から天引きをして、事業主が預け、さらに六条の初めに、この勤労者財産形成貯蓄契約の対象は、金融機関、証券会社、預貯金、合同運用信託、または有価証券となっておるんですが、そうすると、この率も実はばらばらなんです。それから八条の元本百万円までは課税しない、これは現行の少額貯蓄非課税制度と別ワクとすると言っておるんですけれども、勤労者にとっては、少額貯蓄非課税限度の引き上げがすでにあるわけです。住宅貯蓄減税制度の拡大がすでに考えられておるわけです。そうすると、そういうものとダブって恩典があるならよろしいが、そうでなければそう大した魅力がないことになっちゃう、その点どうなんですか。
#37
○政府委員(岡部實夫君) 現実の預貯金の減税等につきましては、御指摘のように、一般の資産形成のための貯蓄につきましては、少額利子の非課税、これは一般の方が百万円、今回百五十万までになりますが、その別ワクとして、勤労者にはさらに百万の非課税の対象となるワクを設定した、それから住宅減税のほうにつきましても、これは住宅減税の現在のそっちのいろんな条件がございますが、そうではなくて、別にその上積みとしてのいわゆる財形貯蓄の一環としての住宅貯蓄は、その非課税については一般とは別に非課税の対象になる、こういうことになっておるわけでございます。
 そこで、いろいろな点の御指摘がございましたけれども、この私どもの基本としておりますのは、現実に貯蓄が行なわれている、それに対しまして少なくとも現在与えられていない恩典がここで与えられる、それから積み立てられました資金が少なくともそのうちの一部は雇用促進事業団を通じて還元されると、この二点については、この制度が従来にない新しい役割りを果たし得るということを考えておりまして、そういう点を見合いまして、この制度が十分意味合いを持つし、また持つように運営されていくべきだというふうに考えている次第でございます。
#38
○佐野芳雄君 私の持ち時間がもう大体来ておるようですから、あと一、二、御質問申し上げて、また次の機会にしたいと思うのですが、貯蓄の能力の問題なんですが、財源となる勤労者の貯蓄能力ですけれども、総理府統計によりますと、四十四年度の勤労者一世帯当たりの平均貯蓄額は八十五万四千円なんです。これも生命保険を除きますと六十二万四千円なんですね。そうすると、この金額では、一般的に見て、百万円貯蓄は無理だということになるのです。それから労働省の四十四年度の勤労者持ち家意識実態調査によりますと、三百人以下の企業で持ち家援助制度を採用しているのは、大企業に比して中小企業の場合少ない。実施されている企業で百人以上三百人が二三・九%、三十人から九十九人は一一%、とても百万円どころか、こういう制度ができても、ある程度大企業は適用を受けられることになっても、中小企業はあるいは無縁のものになるというふうに考えられないでもないと思うのです。したがって、貯蓄政策としても中小企業をのけものにするというようなことになるおそれもあるし、それ自体が中途はんぱではないかと思うのですが、その点はどうですか。
#39
○政府委員(岡部實夫君) 貯蓄の現状についての御指摘がございまして、現在勤労者世帯の貯蓄の現在高は、御指摘のように、四十四年の貯蓄動向調査報告によりますと百十二万九千円ということになっております。それにいたしましても、特別のワクを設定しても有効に活用できないのじゃないかという御指摘もございます。それからさらに特に収入の低いものについてはどうだろうかというような御指摘もございます。これらについては、勤労者世帯の貯蓄動向に対しまして見てみますと、貯蓄の額については、これはいろいろございますけれども、収入が非常に低い。たとえば年収三十万ないし五十万のところをとってみましても、九六%が貯蓄をしているという数字もございます。大企業については、それぞれ企業のほうのいろいろな制度も充実しておるようでございますが、やはり問題は、御指摘のように中小企業にあろうかと思います。そこで、たとえば中小企業につきましては、融資の利率を大企業に比べて低利にしてまいるというようなことも考え、さらに中小企業団体に対しましても十分その融資等によってめんどうを見ていくというようなことで、その運用にあたりまして、十分中小企業の方々も有効に活用できる方法を考えてまいるつもりでございます。
#40
○佐野芳雄君 あと二問ほどで次の機会に譲りたいと思いますけれども、現在の企業の中では社内預金制度が普及されているわけです。この制度は私も経験もあるのですが、四十年の不況時代に山陽特殊製鋼の倒産がございましたが、社内預金全額が設備投資に投入されておりまして、支払い準備もないというようなことで実は問題になったのですが、今度の財産形成法では社内預金は除外しているようですが、この財産形成政策の中に社内預金制度を今後どのように位置づけようとされておるのか、これを聞いてみたいと思うのです。
#41
○政府委員(岡部實夫君) 社内預金の制度につきましては、かねてからいろいろ御議論があるところでございます。私どもも、国会等の御論議もございまして、中央労働基準審議会等にもおはかりをいたしまして、この社内預金の制度についての取り組み方をいろいろ検討してまいっております。全般的には、やはり社内預金が十分労働者保護の立場から有効であるかどうかというような疑問もございますので、私どもは、この社内預金の制度につきましては、それが十分労働者の保護に合致するという線に沿ってこれを認めて、適正な規制をこれに加えていくということで従来からやってきておるのでございます。今回の法案におきましても、社内預金を法案の中で正式に取り上げることをいたしません。ただ、この「財産作り懇談会」等の御意見によりますと、社内預金のうちでも他の社内預金と明確に区別をされ、さらに保全措置を十分強化して、いわゆる持ち家住宅の建設のための預金ということについては、これが減税措置の対象になる得るように考慮すべきだという点もございますので、減税措置におきましては、一定の条件を満たしておるものは減税の対象とする。ただし、この法案によるいわゆる財産形成貯蓄としては、社内預金を取り上げないということにいたしております。こういう方針で今後も進めてまいりたいと思っております。
#42
○佐野芳雄君 それはそれでけっこうなんですが、そこで、持ち家建設するために、事業団からの貸し付け金利が安くないんですね。大企業七%、中小企業六・五%となっておりますが、この差も大企業と力のない中小企業の貸し付け金利の差額が〇・五%というのは、これは大企業に有利だと思うわけです。問題は、むしろそれよりも厚生年金の還元融資、住宅金融公庫の融資等は五・五%であるわけですが、非常に高いということでやはり魅力を薄くしていると思うんです。
 それからもう一つ問題は、雇用促進事業団は、失業保険資金を原資としているわけです。このような短期資金を原資にする事業団が長期の住宅資金の貸し付け業務を行なうことは問題ではないかと思うんです。むしろ大所高所から考えるなら、雇用促進事業団は事業団法の第一条の目的に掲げるように「雇用を促進し、もって労働者の福祉」に寄与する、その目的と今回の法案との関連がちょっと問題になると思うんです。むしろこの際、労働省が大所高所から考えるなら、所管は厚生省のほうの年金福祉事業団のほうの貸し付けを拡充するというふうに、資金の効率化を考えることが妥当ではないかと思うんですが、そういう点についてひとつ聞いておきたいと思うんです。
 それから労働省の立場ですと、この政策を遂行するためにあたっての金融機関を、当然労働省が管理監督しておる、しかも労働者が自主的に行なっている労働金庫を金融機関としては第一に考えるべきだと思うんです。証券会社、農協、信用組合、長期信用銀行など、雇用労働者と直接に関連のない金融機関ははずしていいわけです。だからそういう点についての労働省としての考え方を労働大臣から聞いておきたい。
#43
○国務大臣(野原正勝君) この財産形成政策の内容については、いろいろ御指摘がございましたが、これはやはり出発当初においてはこの程度でやむを得ず出発を余儀なくしたと思うのでございますが、将来はこの財産形成の資金というものの貸し出し等についてはもっと金利を下げる必要があるということを考えまして、これは当然国の出資による利子補給を与えるべきだと、勤労者のための財産形成、特に住宅資金である限りは長期低利の資金が必要であります。したがって、そういうものはできるだけもっと金利を下げる必要があろうと思います。こういう問題については、いずれその預金が貸し出しを得るまでの間にはまだ当分かかるわけでございますから、それまでの間にこの制度をむしろ拡充強化するというか、十分御検討いただいて、将来に備えたいというふうに考えております。
 さっき、この取り扱いについては、むしろ厚生省の機関のほうがいいんではないかという御意見もあったようでございますが、これはやはり多数の労働者の諸君の御協力を得まして、進んでみずからの預金を行ない、財産を形成しようという意欲を考えますときに、やはりこれは労働省が積極的に担当したほうがいいんではないかというふうに考えております。
 なお、これは雇用促進事業団の中の一部門として扱うことになったわけでございますが、本来は、当初の案にもありましたとおり、財産形成事業団をつくろうという案があったわけでございます。私どもは、むしろそのほうがいいといまだに思っておりますが、これもやはりいろんな関係で、当初の出発点においては雇用促進事業団の取り扱いということで、不本意ながら妥協したという経緯もございます。したがって、これは将来勤労者各位の御理解によってこの財産形成が大きく伸びていくと考えますときに、やはりこれは独立した一つの勤労者財産形成事業団のごときものとして、もっと強力な機関に変えていく必要があるんではないか。その際において、こうした勤労者のための諸施策を徹底して行なう。たとえば金利を下げるとか、あるいはまた土地の先行取得もその事業団において行なうとか、そういうような理想と考えておりました当初の案のごとき構想に立ち戻っていって初めてほんとうの財産形成の政策が行なわれるのではないかというふうに考えております。まあ、われわれはそういう将来の目標に向かって進みたい。ただし、この出発点にあたっては、まだそういった問題が必ずしも十分に各省間の合意を得るに至らないという点で、先ほど御指摘がございましたように、一歩後退したような案でスタートいたしますが、将来、大きな一つの力を持った勤労者のための対策が講ぜられるというふうに期待をいたしております。
 そういう観点から、この法案というものは、将来、十分な勤労者の方々の御支援、御支持を得て強化されるであろう、またそういうふうな努力を重ねてまいるべきものではないかというふうに考えております。そういう意味で御協力をいただきたいと思います。
#44
○佐野芳雄君 これで質問をきょうは終わりたいと思いますが、勤労者に対する施策は、勤労者のための、あるいは勤労者が自主的にやっておる組織に援助してやらせるということが基本だと私は思う。だから、勤労者の財産形成にとって大事な点ですから、勤労者自身が組織している労働金庫あるいは勤労者住宅協会、住宅生活協同組合などをもっと重視して、これらの機関に対して、労働省としては積極的に援助する。そのことが労働省の任務、労働者の財産形成を促進させていくことになると思うし、そういう必要があると思うんですが、しかも、それはILOの勧告で規定している、大臣が言っている趣旨でもあるわけですから、これをもっと尊重するということを前提に、もう一ぺん検討を加えていただきたいと思います。
 それから、きょうはもう時間ございませんからやめますが、次の機会に、公務員の共済組合の問題、それから民間と公務員との二本立ての問題、あるいは雇用促進事業団の現状でよいのかどうかというような問題については、この次の機会にお尋ねをしたいと思います。
 とりあえず、大臣のほうから、勤労者の盲主的につくっておる、労働者が自主的につくっておるそれぞれの事業機関に対して、もっと積極的に援助するというあるいは協力するという心がまえについてひとつ聞いておきたいと思う。これで私の質問を終わります。
#45
○国務大臣(野原正勝君) あくまでもこれは勤労者のための政策でございます。したがって、勤労者自身がつくっております労働金庫であるとかあるいは勤労者の住宅協同組合というふうなものを将来この制度の中にはっきりと取り上げていって、それらの方々の組織の全面的な協力を得て、この制度が一そう具体的に進行できますように今後検討いたしまして、できるだけそういった政策に近づいてまいりたいというふうに考えております。
#46
○渋谷邦彦君 ここに、一番最初の労働省でつくった案と今回提出された案と二つあるわけです。これを比較いたしますと、いまずっと質疑を聞いても、なるほどなと実感をもって味わったことは、極論すれば、これは骨抜きだと、こういう判断がなされると思うんです。で、私は、当初この案をつくったときには、なかなか労働省にも知恵者がいるなと思ったんです。にもかかわらず、なぜこんなふうに一体骨抜きになっちゃったのか。結局、いい着想を持ちながら、そしてまた、前向きで、労働者の、いわゆる勤労者のことを考えていこう、保護するために考えていこうという熱意が全然今回のつくり直された案には見られない。先ほどもちょっとその経過について答弁があったようでありますけれども、私としては、どうもその点についてはすっきりしないんです。どうしてこういうふうになったのか。これはおそらく政治折衝の段階であるいは無理やりに、労働大臣としては、政府全体の意向として引っ込めということで、のまされたんではあるまいかという感じがぬぐい切れない。その辺どうでございましょうか。
#47
○国務大臣(野原正勝君) 確かに御指摘のとおりな経緯もございました。まあ私どもとしては、この制度をまず発足させたいということがございます。非常に当初の案は理想に近い案であると思うのですが、問題は、この制度を発足いたしましても、それが貯蓄としてものをいうというか、相当の貯蓄額になるまでは必ずしもそれが実施に移されない、融資の対象にもそう大きく期待できないということから見まして、とにかくこの制度を発足させることが先決であろうというふうに考えます。同時に筋だけは、勤労者の預金については税額控除を強力に主張したわけでございますが、利子非課税というようなことになりまして、それから土地の先行取得などの必要のために政府の財政投資も要求したわけでございますが、それらの点についても非常に中途半端なわずかなものになりまして、利子補給の資金に充てるというふうなことで一応は出発をしたわけでございますが、この制度がやはり一日でも早く発足をして、制度として確立をしておくことが次の前提として大きくこれを飛躍し、発展せしむるのにいいのではないかというふうな判断、その点は一々の経緯は申し上げませんが、非常にむずかしい判断があったわけでございます。そういうことで、御指摘のような点もございまして、いささか後退を余儀なくされたということはいなめない事実でございます、率直に申し上げますが。これはこの制度が発足いたしましてもも先ほど佐野委員の御質問に最後にお答えを申し上げましたとおり、われわれは、これは必ず勤労者のために役立つ制度でなきゃならぬ、そのためには不断の努力、これは懸命の努力を払って今後より一そういい制度にだんだんと育てていくという必要があろう、それにはやはり皆さま方のたゆまざる御鞭撻も必要であろうと考えております。そういった面で多少不満ではございましたが、まあこれをこの際やめてしまうか、それともまだ多少不満足であるがスタートをするか、いずれを選ぶかというときになると、やはりわれわれも、どうも当初の理想案でなければ一切これは要らぬということで断固これをもうやめてしまうという気持ちになれませんので、多少不満ではあるがこの際スタートをしようというのが偽らざる心境であったわけでございます。
#48
○渋谷邦彦君 大臣は、多少不満であるとおっしゃいますけれども、これは大いに不満ですよ。冗談じゃありませんよ。おそらく、せっかく手がけた各担当者の方はもうがっくりしたのじゃないかと私は思うのですよ。それで、いま答弁のことばじりをつかまえて私は言うわけじゃございませんけれども、一体これからだんだんとどこに目標を置いてやっていくのかということも一つの疑問、ならば当初からどうして一体橋頭塗が築けなかったのか。おそらく予算折衝で刀折れ矢尽きたのじゃないか。なんとまあいくじがないのだろう、それほど大臣が勤労者のことに思いを至すならば、死にもの狂いで大臣の首をかけてでもやるべきじゃなかったか、こう私は思う。なぜ予算獲得ができなかったのか、この点、理由はどういうわけなんですか。
#49
○国務大臣(野原正勝君) そう言われれば、私の政治力がまことに弱かったということに尽きますが、しかし先ほどもちょっと触れましたように、オール・オア・ナッシングということになって選択を迫られる、まあ私も、この問題を通じまして予算の再折衝に入ったわけでございます。どうしてもこの制度は財産形成事業団をあくまでもつくらなければならぬ、同時に政府の財政資金を強力に要求するという態度を変えなかったわけでございますが、最後にやはり政府の財政資金を必要とする時期は、おそらく四十七年度になってから必要でございますので、四十六年度においては、まあ形だけでもあれば一応スタートできるという点で、まあこの点は多少主張を緩和してもやむを得ない、同時に事業団でありますが、これもそのスタートにおいては、独立した機関を必ずしも持つ必要はないという点で、雇用促進事業団の中に一部局を設けて取り扱いをせしむることも、これまた不可能ではないというふうなことを考えまして、事務当局とも特に打ち合わせました結果、この辺でやむを得ない――たいへん弱いようでありますけれども、ほんとうは弱いようで強いのであります。初めは処女のごとく終わりは脱兎のごとしということがありますが、弱いようにして入っていってあとから、これを成立したあとにおいてはこれにものを言わせようということがわれわれの作戦であったわけです。あまり作戦上のことを申し上げるのはどうかと思いますが、そういった意味で、この法案に関しましてはいささかどうも、確かにじくじたるものがございますけれども、決してわれわれの作戦が必ずしも誤っておったというふうではございません。また、私が必ずしも弱かったのではない、まあ弱いように見せかけておるけれども本来は相当強いものを持っておるということで、皆さま方の一そうの御鞭撻を仰ぎたいというふうに思います。
#50
○渋谷邦彦君 いや、大臣もなかなか政治家ですね。聞いていると、とにかく煙幕張られて、これ以上突っ込んでもらっちゃ困るというみたいな口吻がありますよ。しかし善意に解釈すれば、労働省が親心をもって今後の勤労者自身の生活の安定というか、一九七〇年代の課題とされている生きがいを感じていけるという、そういう方向に持っていこうとして取り組まれたに違いないと私は思うのです。ならば、当初の方針からなぜこんなに後退したのか。だれしもが抱くこれは疑問であって、おそらくこれからもこの疑問はぬぐい切れない、こう思いますよ。私は、いま段階的もけっこうだろうと思います。しかしその段階的というのは、ほんとうに勤労者の方々がよくやってくれたと、なるほど労働省というのはわれわれの味方だと、はたしてそういう時期がいつの日に到来するのかということも含めまして、やはりその希望を満たしてあげるのならば、次の機会をねらって当初の考えに戻したそういう施策を講ずべきではなかろうか、そういうふうに感じます。大体この法律案を見て、どこに恩典があるのか、何にもないのですよ。一体、ほかの既存の制度とどこが違うのか。先ほど岡部局長が一生懸命になって答弁していた。しかしたいへんこの答弁を聞いていても、苦しまぎれの答弁がずいぶんある。ほんとうに気の毒なくらいですよ。大臣がもっとがんばって予算折衝で獲得すればこんなことにはならないのに、別に弁護するわけではないけれども、こう思いますよ、実際。どこにも恩典がない、これは。それでなおかつ先ほどの質疑応答で感じました点で、一体、勤労者の定義というのはどういうことになっているのだろう、そういう疑問もわいてくる。大企業の傘下にあって、そこに従事している人たちは社内預金の制度もある。いろいろ恩典がありましても、そういう人たちは除外される。一体、じゃどういう人が対象になるのかということも問題でしょう。この辺はどういうふうに考えられてこれを設定されたのですか。
#51
○国務大臣(野原正勝君) 先ほどの御質疑でありますが、実は西ドイツなんかでもこの制度が、いまは大体いい形になりましたけれども、これもできるまでには十年かかっております。スタートから今日まで両三回の改正を経て、今日のような形になったわけでございますが、当初においてはいろんな批判もあり、かなり不満足な状態の中でスタートをした。そうして政府側の努力と、また勤労者の方々の御理解によって、十年の後にようやくにして今日のような財産形成制度という形が確立をした。私ども、この制度については、将来、やがてこれは大きな一つの力を持つに至る、間違いないと確信を持っております。スタートはやはりできるだけ抵抗を排してすんなりと言うが、これは将来必ずものを言うときがくるだろう、将来に期待しておるわけであります。そういう点で、すべて最後の判断を下したということも言えると思います。
 それから先ほどのお話でございますが、非常に不満足だらけという御指摘、ごもっともな点は私もよくわかります。それも、これはやはりこの制度がスタートをした後において、これが漸次多数の勤労者の声が背景となり、また国会の方々の御論議やら、いろいろな各方面の御意見等が、審議会等ですでにもう御不満の声も上がっておりますし、そういった世論がもうこの問題については決してほっておかない。より一そう強化しろ、よくしろというような御意見も当然上がってくると予想しておりますから、そういうことを考えに入れますと、これはやはりこの辺で、ここらあたりでスタートするのもやむを得ない。そこで、皆さん方が御不満だとおっしゃる、これはもう初めから考えております。御不満があるだろう、いろいろな御意見がある、それはむしろわれわれにとってはもっけの幸いというか、ありがたい御鞭撻であるというふうに受け取りました。これは直ちに、この秋の予算の問題には必ずこれが有形無形の大きな力になるわけであります。ともかくそういった形で、非常にこの制度そのものが難航しておったわけでございますが、実はこの制度は、わが日本でも、すでにこの論議が始まって以来というもの、かれこれ十年近くたっております。十年間というもの、いろいろな形で論議をされてきたけれども、ああでもない、こうでもないと日をつぶして、ついに発足できなかった。これが曲がりなりにもここに発足を見たということ、見ようとしているいま瞬間でございます。最近における勤労者の所得の水準も非常に上がってきております。すでに西欧の水準に近づこうとしている、あるいは追い越そうとしておるというふうな客観的なわが国の経済情勢を考えますときに、これはやはり勤労者の方々の住宅をほしいとか、持ちたいという願望をかなえてやるために、まず貯蓄を行なう、それに対してやはりできるだけの援助をする。その援助の方法については、まだ十分でないにしても、そういう政策がいままでなかったわけでございます。実は考えてみると、勤労者の財産形成について何らの特別な対策が今日までなかった。それが、御不満ではございましょうが、この法律にはあるわけでございます。ないのとあるのとは大違い。これは大きく見ればやはりこれはもう不満である、足りないということはわかりますが、いままでなかったものをここであらしめる。これはだんだんよくしていけばいいわけでありますから、その意味合いにおいてはまさに画期的なものではなかろうかと、そうも言いたくなるわけでございます。その点で御審議をいただいておるわけでございますが、まあ詳しいことはまた局長からよく答弁させますけれども、私の心境は、その意味においては、これはこの際ぜひ皆さま方の御審議をわずらわし、御鞭撻もいただきながら、より一そういいものにしていきたいという願望でございます。よろしくひとつ御協力を願います。
#52
○渋谷邦彦君 ないよりはあったほうがいい――あっても中身がないものはむだであるということもありますわな。
 それから、私の質問に対して一つ答弁が漏れているんですが、それはあとで答弁していただきますけれども、西ドイツの例をるる述べられて、そして日本としてもやっとこの理想形態にこぎつけた。ただ、先ほど来の御答弁の繰り返しの中で、ちらっとその作戦なるものの一端をお示しになったようでございますね。不満は不満として残るであろう、その不満というものが、世論が許さないだろう、世論がだんだんやかましくなってくれば、その中身を変えていくような方向に、政府としては自然にそういう行き方をするであろうというと、国民のほうに責任を転嫁したみたいなものの考え方になっているんですよね。そうではないでしょう、政治の本来の姿は。やはり最初から国民に期待される、そういう中身のあるものをつくるのが一番好ましい。大臣だっておそらくそういうかけ引きをもって、そうしてからくりがあるみたいなやり方をなさりたいというようなお気持ちはさらさらないだろうと私は思うんですが、しかし、いま聞いている範囲では、やはり国民のほうに責任をある程度押しつけておいて、ことばが適当ではないかもしれませんよ。その世論の形成を待って、漸次その中身を変えていくんだ、これはどうもいただけないと私は思います。これは感想ですから答弁要りませんが。
 そこで、先ほど私申し上げた勤労者のワクというのを一体どこに定めたのか。大臣が答弁できなきゃ岡部さんでもいい。
#53
○政府委員(岡部實夫君) 法案において「勤労者」と申しておりますのは、いわゆる賃金、給与等を得て働いている労働者ということで、一般的にいわゆる賃金労働者を全部対象にしているわけでございます。ただ、勤労者ということばを使いましたのは、法律用語として、労働者と言うと生産労働者に限定されるようなニュアンスがあるようなところもございますので、ホワイトカラー、ブルーカラーを一切含めまして勤労者全体を対象とする、こういうことにしております。
#54
○渋谷邦彦君 また次の機会に細部にわたる点を申し上げたいとは思いますけれども、もう一つ、きょうは、先ほども議論されました、やはりこの法律案の一番骨子になる持ち家制度というものでございますね、これは西ドイツの例とは全く違いまして、土地の取得が不可能であるということから始まるわけでございます。一体、その点については、最初のほうがこれまたよかったと、こう思うんですね。建設省に一切まかせてその土地を、国の一貫した施策としてそういう方向にいくんだということに合意されたようでありますけれども、この土地の問題の解決なくしては、もうどうしようもないと思うんですね。それは建設省におまかせすることもけっこうだろうと私は思うんです。一体、その辺をどういうふうな連携を取られてその土地の取得というものを考えておられるのかですね、労働省として、一体どこに主体性を持ってこれからそういう問題の解決に当たっていかれるのか、これは大きな問題だと思うのです。いまそのうしろに並んでいる若い労働省の人たちにしたって、一体退職したときに何ぼもらうのだ。そのときに家が建つか、建ちやしませんよ、いまの退職金では、はっきり申し上げて。土地がそれだけ暴騰しているわけです。じゃその土地を一体どういうふうに取得して――いいですか。政府のほうで、今度家を持ちたいという人たちに対し、長期低利でもけっこうでございましょう、とにかく安心のできる、そういう状態でその土地を貸与するなりあるいは分譲するなりされるのか、この辺が具体性が全然ないわけです。この具体的な方向というものが明示されない限り、先ほど私が申し上げておりますように、これは骨抜きと何ら変わりない。一体これで何の役に立つのだと、こんなふうにならざるを得ないわけです。だからやはり労働省としては、側面的に強力に土地の取得ということについて考えなければ何にもならないじゃないかと、このように感じられるのですが、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
#55
○国務大臣(野原正勝君) 確かに土地の問題を何とかしなければ結局どうにもならぬではないか、御指摘のとおりでございます。したがって、私どもは、当初においては、土地は財産形成の機関が先行取得をするという構想でございまして、その構想が一歩後退した形でございますが、これも先ほど申しましたように、やがて財産形成の政策が実施に移されて大きく拡大された場合においては、必ずこれは将来の理想としてそういった方向をとるべきであろうというように私は考えております。現在、そういった問題については、まだ明確になっておりませんが、これはやはり現在の土地制度というものについてはいろいろな問題点がございます。たとえば私の持論ではございますが、土地を譲渡をする、土地所有者から土地を譲渡していく際においては、必ずこの譲渡の段階において土地の高騰を来たす、いろいろな諸条件からして土地の値上がりは防ぎ得ないと。ただ、これは最近、総合農政等によりまして、かなり農村地域なんかでは、土地は実はある程度宅地にも転用し得る条件が出ております。ところがそういう場合において、土地を全部譲渡してそれを個々の住宅をつくる人たちの所有に帰するという形になりますと、やはりある程度地価が上昇いたします。その際において、私どもは、まあ農業団体などとも話し合っておるわけでございますが、これは土地の譲渡によらずに、土地を貸与、まあ借りて使用するという条件が、どういう条件ならばそれが可能であるか。実は非常にその土地を所有している方も、あまりむやみな地価の上昇を必ずしも喜んではいないという事実がございます。その土地があまり高くなったために土地を持っておった人たちがその分配の問題でトラブルが生じたり、いろんな問題でかえって好ましくないような状況も多々あるわけでございます。そういったこととからみまして、適正な価格で貸与するならば、これはそのほうがむしろいいと。ただ物価等との均衡上、一たん貸してしまったならばそれはもう絶対に上げることはできないということでは困る。ですから物価にスライドしたりという方法をとっていくとか、あるいはまた土地の賃貸については、それがあくまでも土地所有者に対していかなる状況のもとにおいてもそれが保証される、まあ不利益を来たさないというような諸条件を十分に満たしてやるという条件を整える必要もあるという、条件さえ合うならばここに新しい土地の利用というものが考え得る段階ではないか、むしろそのほうが好ましい。農業団体等では、そういった土地の長きにわたって、まあ譲渡によらずに使用せしむる、貸与するという方式についてもすでに検討をしておるわけでございます。
 そういうような土地問題に対する根本的な考え方というものを考えまして、新しい一つの土地制度に対する飛躍の段階が必要ではないかというふうに考えておるわけでございますが、こういった問題についてはまだ実は固まっておりません。けれども、しかし土地を持っておる側のきわめて有力な農業団体の中央機関等ともすでに話し合いをしておるわけでございますから、まあこれが一つの財産形成制度とどう結びついていったらいいかという問題については、今後十分検討の価値があるのではないか。そこらあたりにあるいは土地が非常に高騰するという現実と、現在農耕地などに使っておるという実際上の土地のまあ賃貸料というか、というふうなものとの比較において、必ずしもむやみに土地価格を高騰しないで済む方法がもしあるならば、新しい構想によってそういう方法を見きわめてまいりたい。それを具体的に取り上げていく可能性が皆無とはいえない、可能でもあろうというふうに考えておるわけであります。
#56
○渋谷邦彦君 結論からいえば、結局、現在の土地政策というものに対しての政府当局のこれという明確な方策といいますか、持ち合わせていない、もし他にそういう方途があればこれを聞いた上、十分検討していきたい、こうなりますとせっかくの持ち家制度、だれしもが望む事柄ではあるけれども、事実上これは不可能に近いと申し上げても決して言い過ぎではないのではないだろうか。この点については、きょうは時間の関係がありますので、次の機会にもっと詰めて私申し上げてみたいと思うのですが、持ち家、持ち家と言いますと非常に聞こえがいいのですよね。けれども、その場所はどういうところに一体つくらせようとしているのかということが一つの問題点であります。日本の場合は、家が建ってから道路が建設されるという、アメリカの行き方と全く逆なんです。常に道路の問題、下水の問題で地域住民からたいへんな不満が起こる。これが今日の実際の状態でございますね。ですからそういう点まで十分考慮しながら持ち家制度というものを考えもし、指導もし、そして啓蒙もしていくつもりなのかどうなのか。たいていはいま持ち家といえば、これは申し上げる必要はもちろんないことで、大臣御自身も十分御承知のことなんですが、大体東京を中心として考えてみた場合、いま安い土地というと、ずうっと三多摩の奥のほうまで行きませんと実際ありません。その奥のほうだって最近はもうたいへんな土地の値段になっている。いま御説明あったとおりであります。もしかりにそういうところに土地を取得して家が建ったとします。しかしその人が勤務している場所が都心であるといった場合、これはたいへんな生活に対する脅威であります。これも当然そういうからみというものを十分考えながらやはりこの土地の問題については国として考えていかなければ、とうてい解決のできる問題ではない、このように私は思いますよね。ですから、大臣は、そこまで十分その考え方を全部からみ合わせて、全部含んだ上でいま御答弁されたのかどうか、もう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
#57
○国務大臣(野原正勝君) まあ、こういった問題は非常に微妙なむずかしい問題になりましたので、ここで答弁はどうかと思いますが、とにかくまあ大都市の過密状態、これ以上大都市を過密状態にしていいかどうかという問題、したがって、そこまではこの政策としては、突っ込んだ問題としてはまあ結論を出していくわけにはまいらぬと思います。ただ大きく言うならば、大都市及びその周辺においてはマイホームでもって、かりに五十坪なり百坪なりの土地を各人が持って、そこへ平屋のあるいは二階建ての小住宅を建てるというふうな、庭つきの家をつくるというふうなわけにはいかない。やはりそこは将来高層建築の住宅でがまんしてもらうということになろうと思います。しかし、まあ地方の都市あるいは中小都市等においては、やはりできるならば相当の土地を持って庭もつくり、日当たりのいい、いい環境で生活をするという住宅をつくる。もちろんその際においては道路の問題であるとかあるいは水道の問題、下水道の問題等もございましょう。そういいった問題について、条件がいいならばそういうところに勤労者住宅ができるだけつくれるような条件を考えていきたい。ただ何せもう、東京の周辺のお話がございましたが、東京周辺においては、残念ながら勤労者のための住宅としては、まあやはり庭つきの住宅というわけにはいかない。したがって、できるだけ通勤のあまり難儀でない地域で高層の住宅地区にお住まいをいただくというふうなところで、これからの住宅問題、土地問題というものについては、そういう条件の中で考えていくということであろうと思います。事務当局の中に案があるかもしれませんが、私どもの考え方としましては、大まかに言ってそういう観点から考えてみたいというふうに思います。
#58
○政府委員(岡部實夫君) 補足的にちょっと。御指摘の点、私ども事務的には、実は当初は事業団、これを主管する事業団が直接土地を手当てをしていく、これが非常に確実じゃないかということで考えて案を出して折衝をしたわけであります。しかしながら、労働省の管理下にある団体が土地と申しますか、土地を直接手がけるということに対しまして、それが財産形成政策とどこまで本質的に結びつくかというような議論も非常にございまして、そこで、土地の問題については、それはもうどうしてもこの問題を解決しなければ持ち家住宅の建設が非常に困難だということはだれしも認めるところでございますが、ただ、労働省が直接それをやるということ、それが財産形成の制度とどこまで結びつくかというようないろいろな議論がありました末、私どもは、建設省がこの宅地問題については本来的に主管をしておりまして、いろいろな関係法律の施行によりましていろいろ現に実施しているところで、したがいまして、私どものほうの財産形成制度の中の一つである持ち家を建設していくという場合に、私どもが基本方針をつくってそれで進めていきたい。その場合に当然土地の問題が出てくるから、その中に建設省ないし建設大臣がかんで土地問題について協力をしてもらう。こういうことで、その土地の問題は、政府の担当する部局としては建設省にその主管をしてもらう。そのかわり、いま申しましたように、財産形成との関連では、ひとつその基本方針の策定にあたって建設大臣が当然協力し責任を持ってもらう。こういうことで、先ほども申しました第四条もそういう趣旨で挿入したわけでございます。なお、そのほか現実には、たとえば第三条で国及び地方公共団体の施策といたしまして、抽象的ではございますけれども、国と地方公共団体が「貯蓄の奨励及び持家の取得を促進するための施策を講ずるように配慮しなければならない。」、こういう規定によりまして、いわゆる持ち家の取得のネックとなりまする問題についても、たとえば地方の住宅供給公社等についても、この現実の基本計画がきまりました場合には、必要な地方公共団体に対しては協力を要請していくというようなことで具体的に進めてまいりたいと、こういうことで計画をしているところでございます。
#59
○渋谷邦彦君 きょうは時間切れでありますので、これでやめておきますけれども、最後に――いまの問題もちょっと保留しておきたいと思います。
 最後に一つだけ次の質問をする手がかりとして伺っておきたいと思いますが、預貯金の問題、これも当然この法律案の骨組みになっているわけです。先ほどデータを通して現在平均の預貯金額というものの答弁がありましたけれども、現実的な問題として預金している人なんかないですよ、ほんとに申し上げますと。またできる状態ではないです。そしてあえてここで述べる必要もないわけでありますけれども、現在の物価高でもう生活が非常に苦しいという、そういう生活環境の中にあって、どうして一体貯金や預金ができるのだろう。ねらいは私はまことにけっこうだと思うのですよ。しかし、現実の問題としては、そう簡単なものではございませんよ、これは。それをどう一体啓蒙されていくのかという問題がございます。これは銀行預託になれば、勘ぐれば銀行にもうけさせるばかりじゃないかというような感じも受けないわけでもないというようなことがありますので、次回は、そうした土地の問題と、それからいま申し上げた預貯金の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思いますので、その点明確な御答弁が願えるように申し上げて、きょうは打ち切らせていただきます。
#60
○委員長(林虎雄君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
    ―――――――――――――
#61
○委員長(林虎雄君) 次に、労働問題に関する調査を議題といたします。
 御質疑のある方は順次御発言を願います。
#62
○小柳勇君 労働大臣並びに労政局長に、本日、公労協関係の労働組合がストライキ宣言大会を開いて、賃金引き上げ問題の早期解決をはかろうといたしております。三公社五現業の組合でありますが、交通関係なりあるいは通信関係など、非常に国としても重要な産業でありますが、ストライキ宣言もいたして最大の決意をして賃金問題の解決をはかるのでありますが、大臣も閣議でいろいろ発言をしておられるようであります。また、労政局のほうも情勢をキャッチしておられると思うが、三公社五現業の組合に対する賃金引き上げの回答の時期は、一体いつごろであるか。まずその点をお伺いをいたします。
#63
○政府委員(石黒拓爾君) 三公社五現業の賃金要求に対します当局側の回答につきましては、これは当局が判断すべきことでございますが、従来、政府といたしましても、有額回答をできるだけ早く公社当局が出せるように援助をしてきた事実もございますが、本年におきましても、できるだけ早い機会にこれが出せますように、種々関係当局と労働省としては協議をしておるというのが現状でございます。
#64
○小柳勇君 大臣は昨日の閣議でも発言をしておられるようでありますが、まず一つは、時期的に鉄鋼の回答があったことが一つのめどであろうということと、有額回答であるということを発言しておられるようでありますが、回答の時期を鉄鋼の回答のあとに、鉄鋼に出されたそのあとに出すというようなことは、どういうことから御判断になっておるのか。それから回答する場合は、有額回答であるということはもちろん確認したいのでありますが、その二点について御答弁を願います。
#65
○政府委員(石黒拓爾君) 三公社五現業の賃金につきましては、ここ数年来の慣行といたしまして、民間の賃金がきまりました場合に、それを参考としてきめるというような慣行に相なっております。賃金決定につきましてそうであります以上、回答につきましても民間の動向を考慮に入れるということにならざるを得ないと思うわけです。そこで、大きな産業といたしまして鉄鋼のことがまず念頭に出るわけでございますが、そのほかの各産業も非常にことしは交渉がおくれているようでありますが、できるだけ民間の各産業の回答状況というものを考慮に入れて、しかも、できるだけ早い時期に回答いたしたいというふうに考えております。
#66
○小柳勇君 これも労働省の見解として、結局、二十一日の鉄鋼回答が一つの目やすになるだろうということが新聞に書いてありますが、たぶん大臣が御発言になったのじゃないかと思うけれども、鉄鋼回答が一つの目やすということのようですが、何かそういう点、情報が入っていますか。
#67
○政府委員(石黒拓爾君) 新聞に報道されましたのは、大臣が記者会見の際に発言されたことのようでありますが、その際の大臣の御発言は、鉄鋼回答が出たあとで、民間賃金の様子も見てできるだけ早い時期に、できれば四月中にでも回答をいたしたい、こういうふうに申したので、鉄鋼だけを特にそれに右へならえという趣旨で申されたのでないと考えます。
#68
○小柳勇君 それから有額回答については、当然、確認してよろしいですね。
#69
○政府委員(石黒拓爾君) 回答を出します以上は、ぜひとも有額のものにいたしたいと考えております。
#70
○小柳勇君 第二点は、一万五千円以上を組合が要求しております。物価上昇あるいは民間労働賃金の動向、あるいは若年労働力の不足などの点から見て、私は、妥当な要求であると考えておりますが、大臣、いかがでありますか。これは大臣から聞きましょう。
#71
○国務大臣(野原正勝君) 御承知のとおり、賃金の決定につきましては、三公社五現業の場合も含めて、原則として労使の自主的交渉にゆだねておりますが、その場合、労使がそれぞれの立場から、賃金のあり方について自己の主張を持つことは当然でございます。その内容の当否について述べることは差し控えたいと思いますが、政府としましては、労使双方が、今日国民経済の現状等を考えて、良識をもって自主的に話し合いを進めて、円満な解決が望ましいと考えておるわけであります。したがって、こういった問題につきましては、まあ均衡のとれた形で話がまとまることを期待しておると申し上げる以外にないというわけであります。
#72
○小柳勇君 それから三公社五現業で、経営状態の良否によって賃金格差があってはならないと私も考えますし、大臣もそのようにはっきり明言しておられます。それは確認していいですね。
#73
○国務大臣(野原正勝君) まあ、三公社五現業の各経営の内容等、みなそれぞれ様子が違っているわけでございますが、給与の問題につきましては、大きな格差があるべきものではなかろうと、常に私は申しております。そういうことでございまして、賃金の格差が大きく開くはずはなかろうう、また、そういうものがあることは好ましくないではないかということを申したことはございます。
#74
○小柳勇君 格差がないということを大臣も希望しておられる。そこで、これは最後でありますが、二十三日及び今月下旬も実力行使を含む強力な交渉をするということを聞いております。われわれとしても、できるだけ早期に賃金問題を円満に、平和的に解決するために努力をいたさなければなりませんが、労働大臣並びに労働省としての努力を期待するものでありますが、大臣の決意なり労政局長の見解を聞いておきたいと思うのです。
#75
○政府委員(石黒拓爾君) 三公社五現業につきましては、公労法の適用を受けておりまして、御承知のごとく、ストライキ等は禁止されておるものでございますので、私どもといたしましては、そういったストライキ等を行なわないことを切望しております。それにつけましても、早くしかるべき回答を出し、そうして円滑に交渉が進むということがきわめて望ましいことであると思っておりますので、その線で鋭意努力をいたしておるところでございます。
#76
○小柳勇君 質問を終わります。
#77
○委員長(林虎雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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