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1970/02/16 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第3号
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1970/02/16 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第3号

#1
第065回国会 外務委員会 第3号
昭和四十六年二月十六日(火曜日)
   午前十時三十六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         松平 勇雄君
    理 事
                石原慎太郎君
                長谷川 仁君
                山本 利壽君
                西村 関一君
    委 員
                鹿島守之助君
                梶原 茂嘉君
                木内 四郎君
                杉原 荒太君
                増原 恵吉君
                三木與吉郎君
                森 元治郎君
                黒柳  明君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       吉野 文六君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  井川 克一君
       外務省条約局外
       務参事官     山崎 敏夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とスイスとの間の条約の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国政府とシンガポール
 共和国政府との間の条約の締結について承認を
 求めるの件(内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (当面の日ソ問題に関する件)
 (中国代表権問題に関する件)
 (沖繩の施政権返還交渉問題に関する件)
 (インドシナ情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松平勇雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件
 以上二案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#3
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、スイスとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、かねてよりベルン及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十六年一月十九日に東京において本大臣とスイス側シュターデルホファー駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。
 この条約は、本文二十八個条からなり、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は、次のとおりであります。
 事業利得につきましては、相手国にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当については一五%、利子及び使用料については一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生等の受け取る報酬、手当等につきましては、原則として滞在地国で免税としております。
 この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一そう促進されるものと期待されます。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 わが国とシンガポールとの間には、昭和三十六年四月十一日に署名され同年九月五日に発効した、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール自治州政府との間の条約がありましたが、同条約の発効後五年以上を経過した昭和四十五年三月二十八日に至り、シンガポール政府は、同条約はシンガポールの独立前に締結されたものであって現状にそぐわないものとなったとして、わが国に対してその規定に従って同条約を終了せしめる意思を通告するとともに、新条約を締結するための交渉を開始したい旨申し入れてまいりました。これにより旧条約は、その規定に従って、昭和四十六年一月一日以後に開始する年度の租税について効力を失いましたが、政府は、昭和四十五年八月以来東京及びシンガポールで新条約の締結交渉を行ないました結果、昭和四十六年一月二十九日にシンガポールにおいて、日本側在シンガポール奈良大使とシンガポール側ホン大蔵大臣との間でこの条約の署名を行なった次第であります。
 この条約は、本文二十七カ条及び附属議定書からなり、そのおもな内容は、次のとおりであります。すなわち、事業所得につきましては、相手国にある支店等の恒久的施設に帰属する所得についてのみ相手国において課税できるものとし、国際運輸所得につきましては、船舶、航空機ともに相互に免税としております。配当及び利子に対する課税につきましては、源泉地国の税率は一五%をこえないものとしておりますとともに、政府、中央銀行等の受け取り利子及び産業的事業からの受け取り利子は源泉地国において免税としております。また、使用料につきましては源泉地国において免税としており、さらに、政府職員、短期滞在者、教授、学生等の受け取る報酬、手当等につきましては、原則として滞在地国で免税とされます。
 この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じて、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、安定した基礎の上に引き続き促進されるものと期待されます。
 以上、二件につきまして御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(松平勇雄君) 引き続き補足説明を聴取いたします。
 山崎条約局参事官。
#5
○政府委員(山崎敏夫君) スイス及びシンガポールとの間の租税条約に関しまして簡単に補足説明を申し上げます。
 最初に、スイスとの租税条約でございますが、これはただいま提案理由でも御説明がありましたように、OECDで作成されましたモデル条約案にできるだけ沿っておりますので、内容に関しましては特に補足して申し上げることはございません。この条約が御承認いただけますならば、欧州のおもな国との租税条約は全部締結されたこととなる次第であります。
 次に、スイスとの間の経済関係について簡単に御説明いたしたいと思います。お配り申し上げました資科の一番最後に「参考」として書いてございますが、貿易関係は、一九六九年におきまして、わがほうの輸出は約一億一千七百万ドル。おもな品目としては電気製品、真珠、カメラ、乗用車等であります。輸入のほうは一億四千九百万ドルで、おもな品目としては時計、加工機械、医薬品、染料等であります。輸出入は大体バランスいたしております。
 企業進出に関しましては、一九七〇年の統計によりますと、わが国からスイスへは現地法人が十七、支店が一つ、駐在員事務所が十九進出しております。スイスからわが国へ来ておりますのは、現地法人が百三十六、支店が二十五でありまして、かなり多いのであります。
 それから船舶、航空機の往来でありますが、わが国からスイスへは船舶、航空機とも行っておりません。それからスイスからわが国へは、船舶といたしましてはスイス船会社の配船はございませんが、スイス船籍のものがわが国には一九六九年度において六隻来ております。それから航空機のほうは、スイス・エアが一週四便運航いたしております。
 次に、投資所得といたしましては、統計は少し古いのでありますが、一九六五年度において、ごらんいただきますように、わがほうの支払いの面では配当、利子及び支店収益が約三百六十万ドルございます。それから特許権使用料、これは多いのでありますが、千百十万ドルくらいございます。受け取るほうは少のうございまして、配当、利子及び支店収益が一万ドルちょっと、特許権使用料は四十万ドル程度でございます。
 それから国費留学生は、一九七〇年度においてわが国からスイスへは三名、スイスからわが国へは一名でございます。
 次に、シンガポールとの租税条約でございますが、この条約は、先ほど御説明がありましたように、旧条約にかえて新条約を締結しようとするものでございます。この新条約は、そのスタイルはOECDモデル条約に近くなっておりまして、内容的にもアップツゥデートになっております。ただ、しさいに実体を見ますと、旧条約と大きな差はございません。ただ、シンガポールが発展途上国であるということを考慮いたしまして、旧条約同様、いわゆるみなし税額控除制度というものを設けております。これによって、シンガポール政府がその経済開発促進のために遂行しております投資奨励策にこたえようとしているわけでございます。
 次に、わが国とシンガポールとの間の経済関係につきまして若干の御説明を申し上げます。
 これもお手元にあります資料に書いてございますが、貿易関係は、一九六九年におきまして、輸出は約三億一千三百万ドルにのぼりまして、おもな品目としましては合成繊維及び織物、それから鉄鋼、機械等であります。輸入は約六千六百万ドルで、石油製品、非鉄金属くず等であります。
 企業進出は、一九七〇年の統計によりますと、わが国からシンガポールへは、現地法人が四十四、支店が十八、駐在員事務所が五十二にのぼっております。シンガポールからわが国へ来ておりますのは、現地法人は一つ、支店は二であります。
 それから船舶、航空機の往来でありますが、わが国からシンガポールへ行っておりますのは、船舶は、一九六九年の統計で九百八十四隻にのぼっております。そのうち定期船は七百九十五隻であります。航空機は、わが国からシンガポールに一週五便運航しております。シンガポールからわが国へは船は来ておりませんが、航空機は週七便来ております。
 それから投資所得に関しましては、これも統計がちょっと古くて一九六五年のものでございますが、わが国がシンガポールに支払っておりますのは特許使用料で九千ドル程度であります。受け取っておりますのは配当、利子及び支店収益で十三万四千ドル、それから特許使用料は十三万八千ドルであります。
 それから国費留学生は、シンガポールからわが国へは、一九七〇年度までに総計で三十四名参っております。
 以上をもって補足説明を終わらせていただきます。
#6
○委員長(松平勇雄君) 以上をもって説明は終了いたしました。二案件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(松平勇雄君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
#8
○森元治郎君 初めに日ソの関係で大臣にお伺いしたいと思うのは、大臣が欧州での公館長会議、あるいは国連出席の途中にモスクワにお立ち寄りになってお話し合いがあった以後、公式の大きな動きはないようでありますが、このごろあたりの情報では、ソビエトのほうも佐藤総理のおいでを願いたい、また、向こうのポドゴルヌイ議長ですか、日本を本年後半訪問したいというようなことが報ぜられている。日ソ関係は、何か問題があるとちょっとさわるけれども、どうも水っぽい領土問題をはさんで双方がすくんでいるような状態が慢性的に続いていると思うんですが、このような動きを見てくると、また接触するチャンスが盛り返ってきたと思うんです。対ソ外交を見ておれば、ソ連が動き出さない限りなかなか進まない。こちらから持ちかけたときにはうまくいかないが、向こうから手を出してきたときには何か結果が出るように思えますので、大臣も、政府としても領土問題をかかえ、その他の懸案もあり、この際接触を始めると思うのだが、どういう態度でソ連のこの動きを受けとめて、迷路に入ってしまっている領土問題などを含めて関係を緊密にする方針であるか、抱負を伺います。
#9
○国務大臣(愛知揆一君) 日ソ関係につきましては、政府としても終始大きな関心を持って日ソ間の親善友好関係を増進したいと考えておるわけでございます。最近の状況を申し上げますと、まず、私は決して悪くはないということが言えると思いますけれども、ただ、わが国の民族的な要請であるところの領土問題ということにつきましては、依然として取っかかりができないという状況でございます。ここ一年間ぐらいの間の状況を振り返ってみましても、一般的にはソ連政府としても日本側に対しまして決して悪くない。むしろ、日本との関係を改善したいという積極的な意欲はあらゆる接触の機会に示されておることを感得することができます。ごく最近におきましては、今回、長い間駐ソ大使として努力しておりました中川大使が転勤することになりましたが、その離任に際しましても、ポドゴルヌイ議長をはじめ、ソ連の要路の人たちは非常な好感を示しております。そして、たとえば日本の総理大臣との対話も持ちたい、できるならばソ連を訪問されることも期待するというような態度を示しておるわけでございます。それから、一面におきましては、かねがね当委員会でも非常な御熱意で御論議があります安全操業問題につきまして、政府といたしましてもずいぶんこれに対しても努力を続けてまいりましたが、ようやくことしになりましてから、モスクワで会談が開かれることになりました。いわば第一ラウンドを終わりまして、現在、日ソ両方の主張の間にはまだ相当の開きがございますから、できるだけすみやかに第二ラウンドを開始いたしまして、安全操業問題についての双方の見解をできるだけすみやかに調整をし、歩み寄りをはかりたいということで現に努力を続けておる、こういうような状況でございます。この安全操業につきましても、とにかく、いわばテーブルに着いて、そして話し合いが始まったということについては、やはりソ連側としても一歩前進と申しますか、そういうことは見受けられる。いろいろこまかいことは省略いたしますが、大体の空気はそのような状況であります。
#10
○森元治郎君 いま懸案になっておるもの、あるいは交渉に入らないが問題として浮かび上がっているものなどはどんなものがあるか。たとえば安全操業をはじめ、もちろん北方領土問題もあるだろうし、文化協定の問題もあるだろうし、科学技術協力協定のようなものもあるだろうし、そんなものをひとつ列挙してもらいたいと思います。
#11
○国務大臣(愛知揆一君) 何と申しましても最大で一番こちらとして強く要請しなければならないのが領土問題であって、領土問題が片づけば何どきでも平和条約の締結をする用意があるということが日本政府の態度でありますことは御承知のとおりでございます。それから、いますでに話し合いが始まりました安全操業問題、そのほかいまおあげになりました文化取りきめ、それから貿易経済関係。この貿易経済関係については相当程度に両方の話し合いの場を持ち、また、話し合いは相当友好的に進められつつあります。それから、科学技術協力協定の締結をソ連側は非常に熱心でございますし、日本側といたしましては、こういう科学技術協力協定については、政府と政府との間の協定ということはあまり例もございませんので、若干日本側に、必ずしもソ連側の言うような要請にはそのままには応諾し得ないところもあろうかと思いますが、これが懸案と言えば懸案でございます。
 そのほか小さなことはたくさんございますけれども、大体懸案として相当努力を要すると思いますものは、以上申し上げましたような問題でございます。
#12
○森元治郎君 この北方領土問題は、ときどき政府が声明したり、国会で答弁をしたり、国連総会で総理がしゃべったり、いろいろ領土にからんだ話はありますが、そのときぽっきりであとがとだえてしまうのですね、この問題に関する限り。これは外国の例を見ると、いろいろむずかしい問題に非常に考え抜いた手紙の往復という外交をやっておりますね。書簡の往復。つい最近も朝日新聞の夕刊で見たら、例の「ドゴール回顧録」の一部に、ドイツとの関係改善のためにはアデナウアーとは十五回も会い、四十回も書簡の往復をしたということが出ておりますが、一ぺん外に出ると要らざる反響もありますが、コンフィデンシャルな、愛知外務大臣が練りに練ったようなそういう手紙あるいは総理の手紙といったようなものは、外交交渉のない間にも絶えず打開の努力、応急手段としては非常にいいと思いますが、これまでに、表面化しない裏面で心情を述べ、日本の主張を述べ、ソ連の同調を求めるような書簡外交をやっておられましたか、北方領土問題、日ソ関係調整について。
#13
○国務大臣(愛知揆一君) 書簡の交換ということもございましたが、現在までのところは、主として、あらゆる接触の機会をとらえて、領土問題について繰り返し繰り返し日本側の主張というものを詳細にわたって説得をすることに執拗に努力を続けておる、それに重点を置いてきておるわけでございます。しかし、ただいまお話しになりましたようなことも非常に大切なことであると思います。ことにソ連側の最近の態度というものが、ソ連政府の見解として必ずしも出ない場合でありましても、報道関係その他からしばしば出ますことは、ことに昨年の暮れあるいはことしになりましてから一月あたりまでのところは、領土問題に関連して、領土問題を日本側が主張するのは一部復讐主義者だけであって、その復讐主義者の主張に政府や公の機関や、あるいは場合によっては国会が動きを示していることは理解のできないことであるということが、しばしばソ連のそういったような言論機関などの主張にあらわれておりますことにもかんがみまして、この領土問題に対する日本側の取り上げ方、対ソ交渉のやり方ということについてはやはりよほどくふうが要ると思います。強硬でなければなりませんし、同時に理詰めでなければなりませんし、同時に日本側の国民の心情というものの理解を求めるということについての根強い継続的な努力というものがどうしても必要である。そして、何しろ先方の理解なくしてはこの話し合いを進めていくわけにはまいりませんですから、いま一方において、とにかくその話し合いに応じてくるムードをつくるということが現在のところでは一番必要なことではないだろうかとも考えておるわけでございますが、ただいまのような御意見につきましては、政府としても十分ひとつ大きな参考として考えさしていただきたいと思います。
#14
○森元治郎君 この北方領土問題が横たわっているので、両方で接触したくてもすくんでいるというようなのが現段階だと思うが、向こうがおいでくださいと言う。北方領土などの話し合いなどから見れば、これは当然応ずべきだろうと思いますが、なかなかそういうことを言うことは少ないんで、その応ずる場合に、一体、ただ領土返せ返せだけなのか、大きな日ソ関係打開の方策を打ち出すのか。いろいろ方法があろうと思うんです。佐藤さんがいつか言っておられたのは、領土問題はにっちもさっちもいかないと言ってもしかたがないではないかという態度であり、ソ連側もまた、グロムイコ外相は外相定期協議で当然日本に来る番であるにもかかわらず、足かけ二年も来ない。これはやはり日本に行けば領土問題が出る。これに答えなければならぬ。相当激しいやりとりをすれば双方の感情を悪くする。したがって、たじろぎということではないかと思うんです。こっちのほうもたじろぎ、むこうもたじろいでいる。これが現状だろうと思うのですが、幸い、さっき大臣がおっしゃったようなムードのきっかけが出てきたようでありますから、これは乗り出さなければいけないと思う。だから、行くということは政府としては真剣に考え実行するつもりであるかどうか。それから、やはりその際は領土問題はどういう持ち出し方をするか。その二点をまず伺います。
#15
○国務大臣(愛知揆一君) かつて御報告もいたしたと思いますけれども、昨年コスイギン首相に私が直接会う機会がありましたときにも、日本の総理大臣と会って話をしてみたいという意思表示はしておりますくらいですから、このソ連側の気持ちというものは十分にそしゃくをして対応していきたいものだと考えております。もちろん、コスイギン首相の私への話は、ソ連を訪問してくれとか、あるいは自分が日本に行くとかいうようなことではなくて、その場所とか時期とかは別問題として、とにかく会ってみたいということであったわけでございますけれども、そういう空気は確かにあるわけであります。これは十分政府としても考えていきたいものだと思っております。
 同時に、御質問の第二点に関連いたしますけれども、ソ連側としても、お話にありますような点もあるのではなかろうかと思いますが、ポドゴルヌイ議長がごく最近中川大使に漏らしておるところも、特定の問題というようなことに限定しないでというようなことも触れておるところから見ましても、会うについては、あるいは訪ソするということについては、こちら側がどういうふうなかまえ方で行くかということについても、十分いろいろな状況を想像しながら、一番日本の総理として考えなければならない大事な点をよく整理をし、十分の根回しをしてからやるべきものではなかろうかということも同時に考えております。つまり、領土問題等についてのアプローチをどういうふうにやっていったらいいかということがまた非常に大切なことであると思いますから、いま直ちにいつごろ訪ソするというようなことを断定的にまだ申し上げる時期ではないと思いますが、しかし、ソ連側のそういう好意と申しましょうか、会ってみたい、招待したいというような意図に対しては十分こちらも受け入れて検討しなければなるまい、こういうふうな気持ちでおります。
#16
○森元治郎君 いま、「根回し」あるいは「整理して」という御答弁がありましたが、確かにそのとおりで、この日ソ関係みたいな場合を見ると、大ものですね、いわゆる信用のある大ものの派遣による、高いところの話のできる人、これは私も一生懸命考えてみたが、事務的知識を持った人はいるが、世界的声望のある大ものというのはなかなかちょっと見つからないんですが、高いところから話を持っていかなければ領土問題でも前進しないと思うんです。しかも、その人が単なる個人ではだめであって、たとえば共産圏がその人と話をする場合に、政府とか国の代表、これに話をすれば国の中枢へまっすぐ通るんだという人でなければ、向こうは本心をあかさない、会いたがらないというのが一つの慣例になっております。私はときどきトロヤノフスキー大使と会うんですが、かつて、思いつきでありますが、おじいちゃんの石坂泰三、なかなか国際感覚もあり、あまり政治のほうにも欲もない。年はとってもぼけていないようだ。あの辺で大きな話をひとつ、領土問題含めてしゃべらせてみてはどうかという話を持ち出したこともあります。何かそういうふうな政府対政府ではなくて――もちろん政府をバックにした大ものを派遣する。それが根回しの一つになる。こういうことも大事じゃないかと思うんですね。もう愛知さんも御存じの昔の日ソ国交回復の糸口となった後藤新平さんとヨッフェの会談でもわかるように、ああいう会談が相互に行なわれるようになると、このむずかしい領土問題打開の糸口ができるんじゃないかと思うのです。いかがでしょう。
#17
○国務大臣(愛知揆一君) まことにごもっともな御意見だと思います。これは先ほども申しましたように、先方に対してもいかに日本の民族的な問題として領土問題を考えているかというようなことも、高い総合的な立場から先方に理解を進めるということが確かに非常に大きな役割りを持つべきやり方であろうと思いますので、現在まででも相当の程度に、政・財界と申しますか、その他各界の交流もかなりひんぱんで、たとえば国会方面でも相当の交流があるわけでございますけれども、さらに、ただいまのお話のようなまた別な意味で、また別に高い立場でアプローチするということも確かに一つの方法であろうと考えます。
#18
○森元治郎君 私はそういうことを申し上げるのはどうも日本の外交を見ていると一つのことにスティック・ツーというか、こだわるんですね。日独同盟といえば日独同盟、日英同盟といえば日英同盟、日米安保といえば日米安保。ほかを忘れちゃうんですね。外交というのは全世界のすみずみまでずっと目をみはって、絶えずバランスをとりつつ行くんだろうと思うんですけれども、いま中共問題というともう北京のほうへ向いちゃってほかは忘れちゃう。沖繩返還といえば沖繩のほうを向いている。そうじゃなくて、それと同時に、関連のある、一番隣であるソ連、ことにフルシチョフが歯舞、色丹返還を約束しておきながら、あとになってから、安保条約廃棄、米軍撤退――日本から撤退し安保条約がなくなったならばというような条件をつけて、鳩山さんが行ったときの話し合いをこわしてしまったような経過もあるんですね。ですから、こういう話を持ち出すには非常に時期はいいと思うのです。いまようやく沖繩返還もあり、返還後政府はどうするか知りませんが、このまま安保条約が続くものとも思わない。おそらく上のほうでは返還後の安保条約をどうするかの考えも相談もしていると思うんだが、いま、沖繩返還が糸口について、米軍も少し撤退するというような形になったときに、ソ連との話し合いを持ち出すにはいい時期だと思うんです。いずれにしても、まんべんなく目を配って外交をやることが大事だと思うので、一つにこだわらないという心がまえが大事だと思うんです。大臣も御同感だと思うんですが、どうでしょう。
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 全く同感でございます。私、たとえばそういう御意見を承りましてから、ほかのことを申し上げて恐縮なんでありますけれども、たとえば中近東の問題にいたしましても、いま具体的に石油問題といいますと、にわかに石油についてどうだこうだという議論がありますけれども、かねがねこうした問題を見ておりました者といたしましては、やはりもっとわれわれの努力が足りなかったのではないか。しかし、率直に言って、世間ではそれほど日本に直接関係のある問題としては、ともすれば従来は見ていただけなかったような気もいたすわけでございますが、私はある意味で、この石油問題というような、全く日本の国民生活に直接関係のあるこれほどの問題がOPEC問題で登場してきたということは、今後の日本の外交が多面的で多様的でなければならないということをわれわれに教えてくれた一つの教訓ではないかとさえ思っておりますので、多面的、多様的な外交というものを、常にあらゆる面に目を配って、前進していくということがほんとうに大切なことである。少し、ある種の問題だけに限定されて、論議がそこに十分過ぎるくらいにときとしては集中していき、ともするとその他の方向を見失うおそれが今後起きないようにしたいものだというふうに考えておる次第でございます。
#20
○森元治郎君 とにかく、どうも対ソ関係というと、問題になったときだけで、あとは性に合わないと思うのかどうかしらぬが、とだえちまうんですね。私は、大臣がヨーロッパ経由で国連に行ったときに感じたんですが、ああいう立ち寄り方はもうとるべきじゃないと思うんです。というのは、ちょっとお葬式に行ったついでに隣の家に寄るような寄り方は、大問題をしゃべるときにはやっぱりよくないと思うんです。やはり相談があれば、お葬式のついでに、近いからしばらくなんていうごあいさつじゃなくて、ずばりまっすぐモスコーを目ざして行ってお話をする、何度でも身軽に動くということが大事だと思うんです。ですから、これからの対ソ問題についても、じっくり腹がまえをして、しばらく法理論もやらないから、領土問題の法理論も展開し、政治論も展開し、一ぺんこつんと自分の主張をぶちまけて相手の反響も見、その上に立ってこの問題をどう大きく処理していくかということが大事だと思うんです。大臣相手にお説教したみたいで済みませんけれども、ちょこちょこと行って済むような相手じゃないんです。大臣の御答弁にもあったように、「強硬に執拗に」という、これが対ソ外交の基本ですから、その心がまえで、しかもおどおどしないで――向こうを訪問してけんかになるよりはと、東京にいて、西の方面で沖繩が返ったから今度は北方領土だなんて何ぼどなったって聞こえやしませんから、やはり乗り込んでぶつかるものはぶつかり、その上でどこかで合意の方向に向かう糸口を見つけていくという心がまえが大事であり、それはいまやるときだと思う。ことに、中国代表権の問題なんかで感ずることは、国連のソ連側の演説などを見ると、何かすっきりしないようなところがある。今度、グロムイコが佐藤さんににわかに会いたいというようなことを出してきたのは、何かそんなことにも関係があるのじゃないかと勘ぐりをしてみたり、いろいろおもしろい私は動きだと思うので、これをのがさず、真剣に、近い機会になるべく早く接触されることがよいだろうと思います。これは意見でありますから、御答弁は要りません。
 そこで、これは自分の感想を述べただけで、この中国代表権の問題、台湾の問題に関連して国会でもいろいろ、昨年の暮れの総会以来論議をされていますが、そのほうの論議でちょっとはっきりと気になることが一つあるのは、大臣は国連総会のあとこの委員会でお述べになったと思うが、いまの三分の二の重要事項方式というものはこれは考えなければならぬじゃないかといったような御発言がありましたね。ところが、その後、衆議院あたりの予算委員会だったと思うのですが、重要事項でいくんだというような御答弁があったと思うのです。何か、あのときは驚いちゃって、もうこの手ではだめだ、よく考えなければならぬ、よく考えてみたらやっぱりこのほうがいいということになったのか、そんな印象を受けるのですが、私の受け取り方が間違っておれば問題になりませんけれども、そういうふうに感じたのですけれども、いかがですか。
#21
○国務大臣(愛知揆一君) 中国の代表権問題を国連でどういうふうに扱ったらいいかということについてはいろいろの考え方がございますし、それを各角度から検討をいたして、そして最善の道を発見しようとして現に検討中でございまして、政府としてどういう方向がベストであるかということについては、本会議の席でも申し上げましたように、まだきめ切らないわけでございます。したがって、そのときどきの私が申しましたことも、断定的にこれがこう、これがこうと言っているわけではございませんで、そういう方法もあり得ようかと、あるいはまた、それと違った方法もあり得る。実は昨日、衆議院の外務委員会でもいろいろの方法を提示されて、まあ、たとえば三つなり四つなりの方法が、たとえば決議案の形として考えられ、そのいずれをとるかコンメントせよという趣旨の御質疑がございましたときも、私は前もってお断わりをいたしまして、まだ私自身として意見を申し上げるわけにはまいりません、ただ、この考え方に対しては、他の国の中に、これは好ましい意見かもしれない、あるいは、これはこういう点が欠点があるというようなことを耳にいたしますと、そういう各国の中のある種の意見というものを客観的に申し上げたわけでございまして、要するに、政府としては、どういうふうな態度をとるかというふうなことについては全然まだ未決定でございます。ただ、国連憲章にもございますように、この種の問題はそもそもが重要な問題として扱わなければならないという趣旨は、国連憲章の中を流れている――私はあえて条文を取り上げて申すわけじゃございませんが――考え方ではなかろうかと、こういうふうに考えるわけでございます。
#22
○森元治郎君 そうすると、きょう現在は、まだあなたはきめ切れていない。重要の事項に属する問題であるという従来の態度は、きょうまでまだおろしていないわけだ。
#23
○国務大臣(愛知揆一君) はい。
#24
○森元治郎君 そこで、何回聞いても、考えても私わからないんですが、ひとつきょうは御説明を伺いたいと思うのですがね、この問題、代表権問題、台湾問題を取り扱うときに、例の政府三原則――信義と安全保障と国益、この点からこの問題を処理しなければならぬという三原則みたいな――答弁を要約すると三原則になるのですね。これを少し説明してもらいたいのですよ。たとえば信義といったような問題。これ全部が相関関係ありますが、一つ「信義」を切り離しまして、政府が言う「信義」とは一体どういうことをさしているのか、もう一回説明していただきたい。
#25
○国務大臣(愛知揆一君) まあ、これは一般の原則的な問題でありますが、たとえば、ある国と日本が成規の手続を経て条約を結んだ、あるいは約束をしたということを尊重していかなければならないということも一つの信義であろうと思います。それから、ある一つの問題に対して友好国との間にいろいろと相談をし、あるいは協議をしてコンセンサスをまとめてきたということに対して、かりに、そういう考え方は新しい時代になったら変えていかなければならないというような場合に、いままで相談し合ってコンセンサスをつくり上げていたようなところとの信義からいって、そういう国々との間の理解、納得、そして同意を取りつけていくというふうに考えるということも、やはり原則的には国際信義の問題ではなかろうかと思っております。そうふうに国際的な信義ということは考えなければならないのではないかと思います。
#26
○森元治郎君 それを推し進めていけば、台湾が非常に国際場裏――国連はもちろん国際関係において不利になっても最後まで捨てない、何と言われようと、台湾がとことん消えてしまうまで一緒にいかなければならぬということになりますか。あるいは、大勢が中共を国連に入れるということにきまり、日本がもう数少ない、あるいはひとりの国になってもやむを得ないのか。大勢がそうなればやむを得ないと言って大勢に従って、たとえば中共の国連加盟は認めるし、代表権も、いまの条約があるけれども、これを切りかえて北京に持っていくということになるのか、大勢がそうなったら。どこまで一体信義というものは行くんでしょうか。調子の悪いときといいときと二色ありますよね。世間がほめるのは、その人がつらいときには守ってやるというのがいいとほめられるわけですね。一体、どっちなんでしょう。大勢がそうなってもこれにへばりついていくのか、大勢がそうなれば、台湾にも因果を含めて別れて北京に切りかえる。いや、だれが何と言っても同甘共苦、お前と心中するのだというところまで行くのか、どの辺でしょうね。
#27
○国務大臣(愛知揆一君) 一つは、いまもお断わりいたしましたように、一般的な原則として国際信義というものはこう考えるべきものではないかということをいま申し上げたわけでございまして、同時に、いま台湾の問題ということに限定しての御質問でございますが、これに対しては国際信義ということ、それから日本の国益ということ、あるいはアジアの緊張緩和ということ、先ほどもおっしゃいましたが、私ども三原則と言っているわけではございませんが、これらのいろいろの要件を考えて、最も妥当であるという結論を出さなければならないということで、やはり総合的に相関的に考えなければなるまいと思います。ですから、三つの原則であるとするならば、その一つの原則とあとの二つの原則とをからみ合わせ、にらみ合わせて最も妥当な結論を出さなければならないというような私は複雑な問題であると、こういうふうに考えるわけでございます。
#28
○森元治郎君 私は三原則と申し上げたが、どうもこれは原則としてはおかしいので、国と国とのつき合いに国際信義を大事にし、国の利益から問題を見、安全保障を考えるというのは、これはわかり切ったことでして、何も台湾問題に限らず、すべての問題に通ずる原理だと思うのですね。だから、三原則と申し上げるのもおかしいくらいですが、やはり「大義親を滅す」なんということばは、お互いに年とっているからわかりますよね、若い人はわからないかもしれないが。封建道徳からいえば「大義親を滅す」ということもあるのですね。親子の縁よりは君の義のために親を滅するのですよ。そういうこともあるわけですよ、そうでしょう。
#29
○国務大臣(愛知揆一君) それはまあ一つの人生観としてはそういうこともあるかと思います。しかし、やはり外交政策というか国際政治の面は、しかく簡単に割り切れるものではないのではないかと思います。しかし、やはり国際政局の中に立って日本がどうやっていくかということについては、やはり折り目、けじめは正しくしていく。そしてやはり信義を守る国であるということのたてまえというものは大切なものではないだろうか。しかし同時に、これは繰り返すようですが、日本の国益ということ、それから世界情勢の中で緊張を緩和するというこれまた非常に大切な命題でありますから、それにも相かなうような方向を選択するというところにむずかしさと特殊性があるのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
#30
○森元治郎君 まあ、そうであってしかるべきであると思うのですよね。信義だ信義だと言って演説ばかりやっている頭のいい自民党の代議士がおるから、聞いている人は、ことに水戸のほうは信義の国ですから、信義というのはそんなものかと思って、そういう考えを起こすまじめな中年以上の人もいるわけですよ。ところが、大臣のいまのお話を聞くと、やわらかい解釈で、その中には安全保障もあれば国益もあるのだ、それをにらみ合わせてと言う。そうでなくてはならないと思うので、ぜひひとつそういうふうにやってもらいたいと思います。
 もう一つ、これおかしなことに感ずることは、答弁の中にこういう答弁がずっとあるのですね。いつかストップするかと思うと依然続いているので伺うのですが、どっちが代表だかおまえのほうできめてくれというような、そういう趣旨の答弁があるわけですよ、北京と台湾について。これはおかしいと思うのです。結んだときは、「おまえが代表だ」と思って結んだんじゃないですか。代表だと思って結んだから法的戦争状態も終わっているのだ、賠償も済んだのだという議論も出てくると思うのですよ。それを、その相手を何と思って手を組んでいるのか。もとは代表だと思って当時は日華平和条約を結んだはずだと思うのですよね。ところが、情勢がだんだん変わってきたら、おまえのほうでどっちかにきめてくれれば、信義も立つし非常にありがたいのだといったような、こんな無責任な外交はないと思うのですよ。何としかられようと、自民党としては――自民党としてはですよ――いまは弱くなって本土は押えていないけれども、やはり当時は形式的に中国の代表だったのですよ、一応形式的に、いままでの経過から見れば。それをいつのまにかこんなふうな答弁になってしまって、一体だれと日華平和条約を結んだのか。台湾中華民国と結んだのか。「台湾」とくっつけなければならない。台湾中華民国とくっつけたというのならわかりますが、どっちかとるといえば、「どっちか」はどうですか。
#31
○国務大臣(愛知揆一君) これも繰り返すことになって恐縮ですが、一九四五年の降伏文書署名は一これはことばの便宜上、国民政府と北京政府と言わしていただきましょう――国民政府と締結をしているわけでございますね。そうして、条約というものは国と国とが結ぶものであって、その国の機関としての国民政府と日本国政府とが結んだものでありますから、ですから、この日華平和条約においては、私いつも御説明いたしておりますが、第一条とか第四条とかいうようなものは、その中で一番はっきりしている点だと思います。戦争状態の終結とか、あるいは前の条約の有効性、無効性の問題とか、こういうものは国を代表する機関としての政府との間に結んだものですから、これは国と国との約束としては有効である、こういう見解をとっておりますから、したがって、現にそれが続いておる。ただここで、長くなって恐縮なんですが、北京政府はそのことを認めていない、このことも日本としては承知しております。「日本政府としては承知いたしております」、こういうふうに必ずつけ加えて申し上げておる次第であります。それからただいまの御質問で、「どっちか」とおっしゃられれば、日華平和条約は明らかに国民政府ですから、国民政府を相手にしている。しかし、現実の事態は、二十年余にわたりまして中国本土において中華人民共和国政府が成立をしております。この事実というものも相当長い間にわたって続いてきている。この事実は明らかに客観的な事実でございますから、これに対してどうするかということについては、私が正確に申しまして、こういう事態においては、事柄の筋合いとして、これはやはり一つの国の中で争いが起こって、事実上二つのこういう存在ができているのですから、これは当事者同士で話し合いを持って解決すべき筋合いのものである。その話し合いができればその結果を尊重する。ただ、両当事者の話し合いが、武力を使って決着をつけるということだけは、これは隣国として困ることであるし、また国際政治の面からいっても、これは絶対に回避すべきものであるということを心から希望している。まあ、これがこの複雑な、また、世界史上にも最近のこういう状態というものはいまだかつてなかったと言ってもいいと思いますが、こういう、いまだかつてなかったような複雑な状態に対していかに対処していくかということについては、やはり非常な英知が必要なところではないだろうかというふうに考えるわけでございます。
#32
○森元治郎君 私はこんな考えを持っているのですが、一九四九年、蒋介石の政権が台湾に渡った。同時に、あとを継いだ中共が北京で独立を宣言した。なるほどもう傾きつつある、つぶれかかった蒋介石政権ではあるが、当時はまだ国際的には中華民国という、蒋介石という政権は世界的にも一応通用していたが、しかも、こっちは占領下であった。何ら意見を言う立場にないのでああいう日華平和条約を結んだ、中国の代表と。しかし、だんだん時間がたつにつれて、実質は、中華民国という蒋介石が押えているはずの実体は、もうそれはうわべだけであって、もはや向こうに変わってしまったのだから、北京のほうをすなおに承認しても、信義にも何にも反しない。簡単に考えますとね。形式は、もうあのときは蒋介石はつぶれたとは言えないと思うのです。というのは、台湾は日本がつぶれたときにすぐ飛んできて、接受式をやったのは蒋介石であり、また国際的にも、講和会議のメンバーとしても呼ばれて、ミズーリ号にも来て、日本の占領政策にも参加した。実体はつぶれつつありましたが、当時はまだ小さいといっても一応国際的な評価はあったわけですから、当時は私はやむを得ないと思うが、それがだんだん時間がたってきてみると、それは単なるうわべだけで、中国の代表というものはうわべだけであるから、実体である北京を承認しても、信義にも反しないし、国益にも合うし、話し合いによっては安全保障の道も確保できるだろうと、私は簡単にずばり考えるのですがね。少し苦しくなってくると、二つどっちかで相談しろといったような行き方は、これは非常にまずいんで、責任回避みたいな印象をわれわれは受けるのです。私は何ともならぬからそっちでやってくれ、こういうことでは国と国との関係は成り立たない、そんな不信用な国では。こういう答弁は私はおかしいだろうと思います。
 私は、きょうの質問は、いままでの国会でいろいろな場合に聞き残した、ちょっとわからないところがあったので伺ったので、よく伺った上で勉強して、あらためて御質問します。
 そこで、これも経過を伺っておきたいのですが、沖繩の返還交渉ですね、一生懸命進めて、だいぶ早く進んでいるようです。参議院選挙前に、五月とか六月ごろに調印までいくのでしょう。そこで伺いたいのは、基地の整理縮小という問題ですね。しろうと一般の人は、返還というのだからみんな返ってくるんだろうと思っているのですね。ところが、あけてみたら基地抜き返還、基地はみんな取られちゃう、いままでどおり。残ったのは、あまり要らない、人の住めない、経済活動のできない、民生の安定にも役立たないような、山とかあるいは砂地みたいなものだけ残って、返ってくるといって一体何が返ってきたんだという感じを持つと思うのです、国民は。一体どのくらい返るのですか。整理縮小になって、これは取り返した、これは取り返せるぞ。私は、この前も大臣に目玉商品ということばを使いましたが、返ってきた、ほらと見せるものは何ですか。あけてみたら同じじゃないか。何も返ってこない。返還交渉というものは、基地抜き返還になってしまうのではないかというふうに感ずるのですが、実体はそうじゃない、森君、こんな目玉商品があるぞというのがあったらひとつ列挙してもらいたい。
#33
○国務大臣(愛知揆一君) これは、返還協定の作業はいま一生懸命やっておりまして、それこそおそくも夏ごろまでには何とか調印といいますか、署名にこぎつけたいと思っております。その時期に、いま仰せになりましたようなことを、こういうふうになりますよということを、私は何とかしてごらんになっていただけるようにしたい。そして実際問題としては、返還が来年の某月某日に行なわれるわけですが、その某月某日には、いままでかってに使っていたところが、今度は日本のものに返って、そして日本政府があらためて安保条約の目的に沿うものとして日本政府側から提供をする。そして、その提供する地域・施設はこれこれでありますということを明瞭にいたしたい、こういうふうに考えております。目玉商品という、目玉地域・施設というものについては、いま私どもも一生懸命それを頭に入れて交渉、話し合いの最中で、大いにいま努力をしておるところでございます。ただいまここに、どことどこが目玉と思ってこれが提供しないことになりましたということをまだ申し上げられないのでありますけれども、今後まだ大いに折衝を煮詰めまして、いまお話しになっているようなことをぜひ実現したい、こういうふうに考えております。
#34
○森元治郎君 まあ、伝え聞くところによると、せっかく何かやったことを国民に見せなければならぬというので、一生懸命折衝中であることは風のたよりに聞くわけです。いまのお話だと、ちょっと待っててくれ、そしてどのくらいをいいものを取ってみせるかお待ち願いたいというふうな思わせぶりみたいだったんですが、期待していいですか。あまり期待するとろくなことはないから、たいへんは期待しませんが、返還協定までにまとまる、調印までにまとまるのですか、実際に返る――七二年でしょう――までに返るのか。いろんな方法はあると思うのです。サインした段階できまる場合と、現実に施設が返る時期と、さらにまた計画的に年次別といいますか、こういうふうな順序で、この基地とこの基地というような計画が提示されるのか。その方法はどうなんですか。
#35
○国務大臣(愛知揆一君) その点も非常にわれわれとしては苦心しております点でございます。協定の調印の時期に、こうこういうふうにするつもりでありますということを私は国民の方々に説明を十分できるようにはしたいと思っております。それから、返還の時期になりますと、その某月某日以降はこちらが日米合意によって安保条約に沿って施設・区域を提供することになりますから、返還の某月某日に性格が一変するわけでございます。そして地位協定もずばりその瞬間から適用になるわけでございますから、本土並みの手続によって提供すべきものはこれこれである。そのときに施設・区域等が非常に具体的に明らかになる。
 それから、ただいまもお話がございましたが、その後におきましても日米合同委員会というものが、施設・区域には全部対象として日米合同委員会の職責がそこで行なわれるわけですから、返還になりまして以降におきましても不要のものはその後におきましてもさらに返還がされることになる。こういう段取りになるのがいま考えております大体の段取りでございます。
#36
○森元治郎君 そうすると、かりに七二年の七月一日に返還される。これを某月某日と仮定してというんでは話がわからないから七月一日と仮定するが、それまでの間、まだ向こうの施政のもとにある間の基地の話し合いというのはどういうふうにするんですか。七月一日施政権が返ったあとは安保条約に従って地位協定に従いこれを取り扱っていく。その前は、きょうの段階の交渉は何に従って交渉しているんですか。ただ向こうの言いなりになって、これはあなたに返してやりますよ、ああそうですかということなのか。七月一日以前は、きょうの段階はどういうふうなことになるのか。
#37
○国務大臣(愛知揆一君) X日以前、つまり今日からX日に至りますまでの間は準備期間、予定期間ということが言えるかと思います。X日以降になればこうこういう施設・区域は、提供予定地とでも申しましょうか、常識的なことばですけれども。ですから、現在やっております交渉はX日以降は本土並みになることを前提にいたしまして、そしてX日以降の施設・区域はこうこうであるぞということの立場に立ってアメリカ側と交渉をしている、これが今日の状況でございます。
#38
○森元治郎君 ちょっとわからないんですが、そのX日以降はこれは日本の施政権が働くわけですね。それから、日本の安全保障の見地その他から考えて、これはあなたに提供してもよろしい、これは遠慮してくれ、だめだ、いろんな方針がありますが、その前はいわゆる安保条約があそこの施設に働いてない。向こうの準領土みたいなときには安保条約の見地から交渉はできないんで、向こうの言いなりで、この基地を返す、返さないと言われても、やむを得ません、そうですがと言って交渉しているんですか。いまの段階です。
#39
○国務大臣(愛知揆一君) そうじゃないんです。このX日というものは想定されているわけですね。まだ七月一日とかなんとかになっておりませんけれども、X日以降においては日本側が米側と相談の上で安保条約の目的に沿うようなところを日本側が提供するわけですから、X日以降はそうなるということを米側も前提にして、こういう施設・区域はその目的に沿うか沿わないか、それからさらにもっと言えば、当委員会でも申し上げておりますように、沖繩県民の民生向上のために特に必要だと思われるようなものは提供したくないわけです、こちらは。そういうことをも踏んまえてX日以降の法体系といいましょうか、それを日米双方とも頭に置いていま交渉している、こういう状況でございます。
#40
○森元治郎君 それから、本土並みといいますが、いまの基地の大きさ、沖繩は神奈川県ぐらいあるんですかね。それの一三%とか、二百八平方キロぐらいの広さを持っている。本土並みという原則からいうならば、沖繩だけが、あけてみたならば非常に基地の重みが向こうにかかり過ぎている。今度は三沢が引くの、あそこの航空隊が引くのと、引いている。そしてあっちのほうだけに重みがなったならば、国民から見ても、沖繩に住んでいる人たちから見ても、本土並みとは違うんじゃないかという考えを持つだろうと思うんですよね。本土並みという原則があるならば、やはりうんと圧縮して、相当強硬に要求して減らすべきだと思うんですがね、どうなんでしょう。
#41
○国務大臣(愛知揆一君) 本土並みということは、さらに重大なことは、これもよく御承知のとおりでございますけれども、安保条約関連取りきめが全部かかりますから、よく話題になりますような、戦争に巻き込まれる、日本を含む極東の安全ということの範囲を飛び抜けて戦争に巻き込まれるおそれがありはしないかということが、安保条約関連取りきめの適用によって封殺される。このことが私は一番大事な「本土並み」の内容であると思います。
 それから、その次に、本土と同様の程度に、まあ面積的な割合もできるだけ縮小していくということがもちろん望ましいことでございますけれども、これは本土の中におきましても、各県、各市町村それぞれの状態を考えてみれば、いわゆる基地がその行政区域の中に占めているところの割合というものは非常に違いがあるわけでございますから、そういう点はやはり考慮に入れていただかなければいかぬのではないかと思いますけれども、考え方としては、森さんのおっしゃるような考え方でいま一生懸命やっているわけです。ことに先ほど申しましたように、沖繩県民の方々からいって、こういうところは県民の福祉のために絶対に必要だというようなところは、これはひとつ提供するものの中からはずしたいというようなこともその点から来ている基本的な考え方であります。
#42
○森元治郎君 終わりにもう一回同じことを確認しますが、われわれは、基地と称せられるものが、相当現地住民から見て、われわれの期待に沿えるようなものを返してもらえるのだということを楽しみにしてよろしいのかどうか、もう一回ひとつ確認をしておきます。なるほどよくやった、これこれを取ったということを結果として期待していいかどうか、もう一回伺って終わります。
#43
○国務大臣(愛知揆一君) 御期待に沿うようにこの上ともできるだけの努力をしてまいりたいと思います。ただ、先ほどもお話がございましたように、この問題は何か無条件返還といいましょうか、という意味は、安保条約とかなんとかということも込めて全部がきれいな、米軍も要らない、自衛隊も要らない基地というものは一つもなくなってしまうんだ、そういうこととえて混淆された議論になりますから、私は安保条約、本土並みの適用ということの説明、それからそのワク組みの中において、いま森さんのおっしゃいましたような楽しみにしてくださるという御趣旨には政府として十分の努力をいたしたい。かように申し上げておきたいと思います。
#44
○黒柳明君 短時間で、また引き続いて沖繩の基地の態様ですけれども、十日前ですかアメリカの新聞が、SR71型が、中国の上空ないし沿岸ですか、その辺ははっきりしなかったんですけれども、偵察飛行を行なっている、沖繩には現にそのSR71型がまだ駐留しているというようなことがありましたが、返還後来年のX日、それ以後、こういう沖繩基地から発進して中国の沿岸ないしは上空ないしは奥深く――奥深くということは、これは人口衛星が発達しておりますから考えられないにしても、そういうことは許されるんですか。
#45
○国務大臣(愛知揆一君) これは「本土並み」でございますから、たとえばこれは一昨年になりましょうか、日本海における事件のときに、いわゆる捜索とか遭難に対するレスキューであるとかいうことは事前協議の対象にはなりませんという政府の見解を申し上げたわけでございます。そういう範囲内のことであれば、「本土並み」でございますから、沖繩から出かける場合でありましても事前協議の対象にならない。これは沖繩が特殊のものであるということじゃなくて、沖繩は完全な本土並み。本土のいわゆる基地からの行動であっても事前協議の対象にならないというものがあるわけでございますから、その本土で事前協議の対象にならないものは沖繩においても本土と同様に事前協議の対象にならない。
#46
○黒柳明君 捜索ないし救助活動、こういうものは、大臣がいまおっしゃったとおりだと思うんですがね。米紙が伝えているのは、何らかの軍事目的を持った偵察、そういうもので飛行されている。そういうものが沖繩を発進して偵察する。二月二日だと思ったですけれども、二日か三日……。
#47
○国務大臣(愛知揆一君) やはり、これは日本海におけるあのときにも、これは本会議等でも政府の見解を明白にいたしましたが、単純な偵察というものは、捜索それからレスキューと同じように、これは事前協議の対象にならない。
#48
○黒柳明君 そうですか。「単純」ということばですけれども、捜索ないしレスキューは、これはもう完全に一つ目的があるわけですよ。だけど、偵察というのははっきりした明確な目的がないわけですよ。その中にはいわゆる軍事目的が含まれている。ここに問題があるわけですね。ですから、「単純」とおっしゃったその大臣のおことば、どういう意味かわかりませんけれども。
#49
○国務大臣(愛知揆一君) 正確に言えば公海上の偵察、これは入らない。これは日本海のときの政府の見解として申し上げたとおりでございますから、私、いま常識的なことばで「単純」と申しましたが、公海上の偵察。
#50
○黒柳明君 そうすると、結論的には、要するに領海内ないしは上空、そういう偵察は許されない。こういうことで解釈して当然よろしいわけですね。
#51
○国務大臣(愛知揆一君) 公海上における偵察。
#52
○黒柳明君 領海内ないしその上空における偵察飛行は許されない、沖繩から発進することは。
#53
○国務大臣(愛知揆一君) これは受けるほうから申しますと、領空、領海の侵犯ということになろうかと思います。で、領空、領海の侵犯ということは、一面から言えば、戦闘作戦行動ということに、ぴしっとなるかどうかは別といたしまして、まあそうなる可能性の大きいものでしょう。その場合は戦闘作戦行動であるとすれば、これは事前協議の対象になります。
#54
○黒柳明君 そうすると、B52三機ですか、いま駐留しているのは。その発進はどうなりますか、返還後は。
#55
○国務大臣(愛知揆一君) B52は現在は沖繩にいないと思います。
#56
○黒柳明君 一機もいませんか。もう三機もいなくなる……。
#57
○国務大臣(愛知揆一君) 最後に残っておりました、修繕のために残留しておったのがおりましたが、これも退去いたしましたから、現在B52はおりません。
#58
○黒柳明君 そうすると、せんだって予算委員会で総理が、事前協議の公表権はない、こういわれましたですね。公表権――公にあらわす権、これはないと。今度は返還後核の再持ち込みですけれども、そういうことは当然常識的にあり得ないと、こう思うのですけれども、まだ疑惑が残っておる。この点について、まあ、あのときマスコミでもいろいろ問題点が指摘されたわけですけれども、核の再持ち込みのおそれとアメリカ国内における原子力法の関連。要するに、総理大臣は、核を持ち込むとか持ち込まないとか、そういうことを協議する、しないという通告を向こうから受けたからと、こういうことを公表することもできない。それ以前の問題として、アメリカの原子力法という国内法でそういう原子力については公開しない、秘密である。そうなると、その以前において、そういうことはあり得ないのじゃないか。この点についてはどうでしょうか。
#59
○国務大臣(愛知揆一君) 原子力法その他の法律はございますけれども――これは常識的にお答えいたします。法律の条文に照らしては条約局長のほうが正確だと思いますから、条約局長にあれですが、こういうふうに御理解を願って間違いないと思いますのは、要するに、アメリカの国内におきましては、核の問題は大統領の権限に属しておって、これは通常の兵器のように公開あるいは情報の提供ということが原則的に禁ぜられておりますけれども、大統領はこの核の問題につきまして、たとえば日本国の佐藤総理大臣に話すとか、あるいはその話した結果を、かくかくこういう経緯でありましたということをその権限によって公表することは当然できるわけでございます。通常の場合は、そういうことをあまり米側としては欲していないであろうということは言えましょうけれども、しかし、もしそれが厳格にそうであるならば、共同声明あるいは両国のそのそもそもの一九六〇年以来の両国政府の了解などに核のことが出てくるはずもないわけでございますから、これはアメリカの国内法とは別に考えてよろしかろうかと思います。
#60
○黒柳明君 そうすると、大統領から、ないしは大統領を通じて、何らかの意味で総理大臣なり日本政府なりに事前に公開する。「公開」ということばがこれに当てはまるかどうかわかりませんけれども、これを「公開」とは言わないかもわかりませんけれども、要するに、総理大臣でも外務大臣でも、日本政府に公開する、こういうことは望ましいと。要するに、国内における原子力法というものは絶対に国外に対して秘密保護ではなくして、大統領の権限によって日本政府に、まあ再持ち込みが万が一あった場合には、そういう協議をしたい、事前通告があると、こういうふうに考えられるわけですか。
#61
○国務大臣(愛知揆一君) それはですね、何と申しましょうか、私はまず第一にその核持ち込みなんということはあり得ない、まあ持ってくるはずはないと思いますから、それが前提なんでございますが、あとは観念的あるいは法律的な問題だと思います。私が申しましたように、たとえばこの間他の委員会でマクマホン法というものが論議にのぼりましたけれども、このマクマホン法という法律でわが国がこれで拘束をされることはない、これが日本政府としての見解でございます。同時に、マクマホン法というものは技術・情報、そうした扱い方についての法律でございます。ですから、先ほど私が「常識的」と申しましたのは、大統領の権限によって他国の政府に、自分としてこれはこういうふうな情報を提供したということを公開されるということはあり得ることだと思います。絶対にないということはないと思いますが、しかし、そこまで問題はいかないと思います。
#62
○黒柳明君 時間がありませんので、まだこれは煮詰めたいのですが、予算委員会の場もあるししますので。要するに、わが国は拘束されない、これはいいと思うのですよ。向こうのアメリカ政府――これはアメリカの国内法ですから、アメリカの国内法で要するに公開しないということなんじゃないですか。それを今度、外務大臣のおっしゃるのは、大統領の権限で、これをわが国に要するに再持ち込みの危険性があるか、可能性があるかどうか。これはないことを希望しますけれども、そういうことを公開あるいは通告する、そういう可能性はあると。要するに、原子力法というものは公開しないという原則を越えてそれを公開する可能性がある、こういうふうに判断されているわけですか。
#63
○国務大臣(愛知揆一君) こう申せば一番よろしいと思うのですね。マクマホン法あるいは原子力法というものがアメリカにあることによって、その法律の拘束を受けるから、日本側に何らかの相談があったときに、その相談のあった事実も日本側から公表することができないことがあり得るのかと、こういう設問ですね。それに対して、必ずしもそうではない、日本側としてマクマホン法とか原子力法に拘束される、アメリカの国内法で拘束されることはないと。ですから、大統領自身なり、あるいは大統領が命じた者によって、これはこういうふうに通報した事実があるとか、あるいは断わられた事実があるとかということを公表されるということは法律的には可能である。ただ、そこにはいろいろの問題もまたございますね。アメリカ国内のいろいろなあれがありますから、たとえばアメリカの戦略戦術体系として、核というものがどこにあるか、どこにないかというようなことは言いたくないというような戦略上の要請ということもございましょうから、その辺はアメリカの問題だと思いますけれども、日米関係において、アメリカにこういう法律があるからといって、大統領が日本に対して言ったことを、日本側が拘束されて公表できないということはないであろうと、こう申し上げればいいのではないかと思います。
#64
○黒柳明君 ちょっと何かこう論旨がはっきりしませんが、また予算委員会で煮詰めたいと思います。
 それから前回の予算委員会で、総理大臣が、要するに返還は、基地の中の核の有無についてやっぱりこれは点検すべきだ、こういうようなことを発言しておりますけれども、当然毒ガスについてもそうせざるを得ないと思うのですけれども、その点は来年のX日に迫った返還される時点において、従来は米軍基地の立ち入り検査なんというのは国内でもやるとかなんとかといったってやられていませんけれども、毒ガスと核の問題については、総理が前予算委員会で言ったように、やるという方向でいますか。
#65
○国務大臣(愛知揆一君) 方法論はともかくといたしまして、核がないのだということを日本政府として確信を持って国民に対して御説明をするということについては、もう万全の措置を講じたいと思います。
#66
○黒柳明君 その万全の措置の中に、要するに何らかの意味の日本政府独自の立ち入り検査も含む、こういうことも考えていいわけですか。
#67
○国務大臣(愛知揆一君) その方法論等ははっきり申し上げることはできませんけれども、要するに、いま申しましたように、日本政府として確信を持って公表ができるようにいたしたいと思います。
#68
○黒柳明君 時間がないので、先ほどの森さんがおっしゃった基地の縮小の問題ですけれども、もうすでにメースB、それから私どもが一昨年沖繩の基地を点検したときに、ナイキ基地はほとんど撤去されていた。現在それが二年になりますが、そのままですね。メースBももう撤去されているわけですね。それもそのままになっていますね。
 それから中部の問題になるのは、那覇空港、これは返還してもらいたいとか、あるいは前のサービスエリアは縮小してもらいたいとか、こういうようないろいろ見解を持っていると思うのですけれども、すでに撤去したメースB基地とかナイキ基地というのは当然これは今回の協定の中では返還されることは一〇〇%間違いないんじゃないかと、こう思うのですけれども、そういうことについてはどうなんですか。
#69
○国務大臣(愛知揆一君) それについては、いま十分協議をいたしておるのですけれども、あまりこまかいことになっても……。まだはっきりしませんけれども、たとえばメースBの基地にしてもナイキの基地につきましても、これは観念的な問題ですけれども、核のためとかいうのではなくて、たとえば一つの貯蔵庫にしましても、ほかのものを詰めるために転用するとかなんとかということはあり得ると思うのですね。そういうことについてはまだ細部にわたりましていろいろ検討の余地があると思います。
#70
○黒柳明君 ですから、そういうところを転用するということの可能性もあると思うのです。先ほども言ったように、住民の福祉のための役に立てたい。ぜひ住民がこういうふうにしてもらいたい、こういう要望の強いところは当然そうさせるべきじゃないかと思います。要するに、転用というのは、本来の目的が終わったわけですから、しかも、二年間も遊んでいるわけだ。もしも、これから日米間で煮詰められるとは思いますけれども、メースBの基地やナイキ基地の中で全部が全部住民の福祉のために必要だというのは、これは疑問だと思いますけれども、要するに、そういう転用なんというのは断じて禁止しなければならないと思うのですよね、転用するなんというのは。ですから、これは観念的なことじゃなくて、そういう、しかも二年も三年も、一年半も遊んでいるそういうようなところは、もうこれは返させる、こういう大前提のもとでやはり協定をつくりませんと、いま森さんのおっしゃったような、何だ、あけてみたら基地は全然縮小されてないんじゃないか。少なくともなくなって遊んでいるところは、これは絶対返還させますよ、そんなことはちゅうちょなく御答弁があっても私はいいと思うのですけれども。
#71
○国務大臣(愛知揆一君) これはきちっとまだきまっておりませんから答弁がもたもたするのですけれども、たとえば、観念的な問題ですけれども、ある場合には、やはり自衛隊が移駐いたしますと、自衛隊がなるべく経費を節減して、もう不要になったものを転用して自衛隊に使わせるというような、今度はこちらの内部の問題もあろうかと思いますので、その辺のところをもう少し協議をいたしましてから結論づけたいと思います。
#72
○黒柳明君 最後にもう一問。
 そうすると、安保条約が向こうに適用されるわけですね。そのもとに基地や何か整備されるわけですが、そうすると、二4(a)、二4(b)――要するに地位協定の変更というのは絶対にあり得ないのですか。要するに、自衛隊の移駐が本土であれば向こうがだんだん撤退して使わなくなったところを緊急なんかのときに使うというような場合に、自衛隊が二4(a)、二4(b)なら二4(a)、二4(b)を、これはやはりそういうところは使わないなら使わない。何か向こうが既得権を保持するような、そういう使い方じゃなくて、これはいけないと思います。要するに、自衛隊なんかに使わせたくないけれども、もうこれは自衛隊が使うのだ、そういうことになりますと、二4(a)とか二4(b)とかいうものは、ある場合においては向こうにおいては適用されない地位協定を初めからつくることができるじゃないか。要するに、地位協定の何らかの変更というものが考えられるのじゃないか、こう思うのです。
#73
○国務大臣(愛知揆一君) この問題もしばしば率直に申しておりますように、これはある意味では私ども考えがかた過ぎるのかもしれませんけれども、とにかく返還ということがすべての細部にわたってたいへんな事業でございますものですから、将来の問題として地位協定の改正ということは考えなければならないとは私考えておりますが、返還の問題とこれはこんがらかりますと、率直に申しますと、地位協定を変えて、もっと何かいわゆる改悪になるのではないかというような疑惑や懸念が起こるということもまた政治的に私は非常に心配なものですから、いま返還協定を本土並みにずばりと何らの変更もなしというこの原則をとにかく返還のときには貫いてまいりたい。そうして、別個の将来の問題として、必要ならば地位協定というものを改善することを考えたいと、こういう態度で一貫しておるわけでございます。
#74
○西村関一君 時間があと十分しかありませんから、私はいろいろ質疑を通して政府の所見を詳しく聞く機会がございません。次の機会に譲りたいと思いますけれども、残っておりまする十分間の貴重な時間でございますから、私は特に大臣にお聞きしておきたいと思うことがございます。
  〔委員長退席、理事山本利壽君着席〕
それは、次の機会まで世界、特にアジアの情勢がどのように変化するかわからないということを思いますと、どうしてもいま聞いておかなければならぬという気がするのであります。そのことは、言うまでもなくインドシナ半島の情勢でございます。これはまことに憂慮すべき状態に、ますます深刻な状態に立ち至っておるように考えるのでございます。これに対しまして私は、野党の立場でなくて、日本国政府が友邦として条約を結んで協力態勢にあるところのアメリカ合衆国に対して、このインドシナ情勢をめぐって日本国政府としては特にアメリカ側に対してどのようなサゼスチョンをしておられるか、また、していかれるかということを伺っておきたいのであります。
 このままでいきますと、ますますインドシナの戦闘はエスカレートする。もはやインドシナ三国の国境はほとんどあってなきがごとき状態で戦争が拡大されておるのでございますから、こういう状態を一日も早くなくするために。ハリ和平会談も行なわれておると思うのでございますが、百回以上回を重ねておりますけれども、何ら進展を見ないという状態でございます。そうこうしておりますうちに、いまこのように論議をいたしておりまする間にも非常に苛烈な戦闘が行なわれておるし、非常に残酷な事態が繰り広げられておる。何としても一日も早くこの戦争をやめさせるために、われわれとしては打つべき手を打っていかなければならないのじゃないかと思うのです。政府としてはこれに対してどうお考えになっておられますか。
 この前新聞で報道されておりましたが、アメリカのエイケンという上院議員が、新しいこれに対するインドシナ諸国の会議を開くということについての提案をいたしておりますし、国務長官もこれに賛意を表している。新聞報道では、日本政府としては何らそういうことに対して申し入れを受けていないということが書いてございましたが、これは十二日の新聞でございます。その後、こういうようなことについても呼びかけがあったのかどうか。そういうことも含めまして、日本政府としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。どのようにして、両側の和平に対する意見の食い違いを調整していくか。どこに争点があって、どういうふうにこれを調整することができるかということに対してお考えを持っていらっしゃると思うのでございますが、そういう点をお伺いしておきたいと思います。
#75
○国務大臣(愛知揆一君) 基本的には政府も全く同じ考え方を持っております。それで、実は具体的な行動も、すでに二月八日以後、外交的なチャンネルを通しまして、できるだけ活発な行動を政府として開始をしております。まず基本といたしましては、ラオスのプーマ政権というものは、共産圏であろうが自由主義国であろうが、全部が支持をしておる中立政権であります。それから、一九六二年のジュネーブ協定に日本は参加しておりませんけれども、やはり北も南も東西もみな参加しておるわけでございますから、
  〔理事山本利壽君退席、委員長着席〕
日本政府としては、友好関係が特にあるところのラオス政府の意向も十分にくみまして、これは直接盛んに連絡もいたしておりますが、二月八日の夜でございましたかに内外に声明されたラオス政府の声明の趣旨を支持してすみやかにジュネーブ協定が守られるように関係各国が動き出すことを提唱しているわけでございます。相手国といたしましては、英ソ両共同議長国、それから国際監視団のカナダ、ポーランド、インド、それから特にジャカルタ会議で日本と行動をともにしてくれましたマレーシアそれからインドネシア政府、それから当時者であるアメリカ政府、これはもちろんでございますが、こういうところに対しまして日本政府としてはジュネーブ協定の実現、すなわち即時一切の外国軍隊の撤退、そうしてラオスの主権の尊重、内政不干渉ということを、せっかく現にあるところの六二年以来の協定並びに組織を動かしていきまして、それから、もしそれで足りない場合は別にもっと広い国際会議を開くこともけっこうである。日本としてジュネーブ協定参加国ではないが、なし得ることは何でもやるという積極的な意思表示をいたしました。特にジャカルタ会議からの縁もございますから、マレーシアとインドネシアに対しては、特にひとつ日本と同じ立場、見解に立って行動に移るように、要請と申してもよろしいと思いますが、要請をしておるわけでございます。基本的にはこうした考え方にはどこの国も異存はないようではございますけれども、ただ、それぞれの国の立場あるいは意見などがございまして、まだなかなかにほんとうのコンセンサスによるところの動きが活発になるところまでいっておりませんので、今後一そう努力を続けて、何とかしてラオスの事態というものが一日もすみやかに平静化することについて最大の努力をいたしたいと考えております。
#76
○西村関一君 私は、冒頭に申し上げましたように、この質問は次回に保留したいと思います。基本的な政府の考えをいま承ったのでございますが、きょう御答弁をいただく時間がございませんが、一九六二年のジュネーブ協定と五四年のジュネーブ協定との関係をやはり突き詰めていかないと問題の根本的な解決にならないというふうにも考えるのでございます。五四年以来の情勢の変化につきまして、今日こういう段階に立ち至っているということも含めてこの次にいろいろ政府の見解を承りたいと思います。きょうはこれだけにしておきます。
#77
○委員長(松平勇雄君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十分散会
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ソース: 国立国会図書館
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