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1970/02/18 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第4号
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1970/02/18 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第4号

#1
第065回国会 外務委員会 第4号
昭和四十六年二月十八日(木曜日)
   午後二時七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月十八日
    辞任        補欠選任
     黒柳  明君     峯山 昭範君
     野坂 参三君     岩間 正男君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         松平 勇雄君
    理 事
                石原慎太郎君
                長谷川 仁君
                山本 利壽君
                西村 関一君
    委 員
                木内 四郎君
                増原 恵吉君
                三木與吉郎君
                加藤シヅエ君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                峯山 昭範君
                岩間 正男君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       吉野 文六君
       外務省条約局長  井川 克一君
       外務省条約局参
       事官       山崎 敏夫君
       外務省国際連合
       局長       西堀 正弘君
       大蔵大臣官房審
       議官       吉田太郎一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
   説明員
       外務大臣官房領
       事移住部長    遠藤 又男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とスイスとの間の条約の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国政府とシンガポール
 共和国政府との間の条約の締結について承認を
 求めるの件(内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (インドシナ情勢に関する件)
 (沖繩米軍基地離職者の海外移住問題に関する
 件)
 (日米安全保障条約等に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松平勇雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 本日野坂参三君及び黒柳明君が委員を辞任され、その補欠として岩間正男君及び峯山昭範君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(松平勇雄君) 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件
 以上二案件を便宜一括して議題といたします。
 二案件につきましては、二月十六日、趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#4
○西村関一君 まず、スイスとの租税条約についてお尋ねをいたします。
 わが国は相当早くから、すでに昭和三十六年ごろからスイスとの間にこの種条約を締結するための交渉を行なってまいりましたが、今日まで約十カ年の年月がたっておりまして、その十カ年も締結することができなかったということは、どういう理由でございますか、まずその点をお伺いいたします。
#5
○政府委員(吉田太郎一君) 仰せのように昭和三十六年に第一回の交渉をスイスのベルンにおいて行なったわけでございます。そのときはやはり日本とスイス間の関係から申しまして、ロイアルティー及び利子、そういう投資所得に対する大幅な食い違いがございました。たとえば配当の親子間につきましては、日本側は一〇%、スイス側は五%にしてほしい、あるいは利子については、日本側は一五%を限度にする、スイス側は一〇%を限度にするという食い違いがございました。しかし、最も大きな食い違いはロイアルティー、工業所有権等の使用料に対する税率でございまして、スイスはこれを免税に扱うべきであるという主張がございました。これに対しましてわがほうは一五%という限度税率を設けるべきではないかということで交渉を行なったわけでございますが、それについてついに合意に達することができませんでした。しかし、その後も幾たびかの機会を見まして、両国間の接触は続けてまいりましたわけでございます。ただ、基本的にロイアルティーに対するスイス側の立場というものが非常にわが国の立場に歩み寄ったというのは、実は昭和四十四年でございます。ようやくその時点におきまして、これはおそらくスイスと日本との経済関係というものがより密接になってまいりまして、何らかの合意が必要になるのではないかというような、そういう背景がさらに濃くなってきたわけだろうと思いますが、わがほうの立場に歩み寄ったわけでございまして、その上で交渉再開を提案してきたというのが昨年でございます。そこで昨年の夏、東京におきまして正式の交渉といたしましては、第二回目の交渉ということで行なったわけでございますが、実質的な合意に達し、今日お手元にあるような条約案という形になったわけでございます。
#6
○西村関一君 ただいまの経過についてはよくわかりましたが、そのような経過を経まして、どのように処理をされてきたか。つまり、ロイアルティーの問題が、この条約を結ぶことによって、わが国にとってどういう利益をもたらすことになったか。どういう処理のしかたをしたらいいかということをお伺いいたします。
#7
○政府委員(吉田太郎一君) ロイアルティーに対する課税率は、今日の案で一〇%ということになっておるわけでございます。これはロイアルティーを、たとえばスイスから工業所有権を買い取りましたその使用料に対しまして、日本側が支払う場合に一〇%の限度においてこれを課税を行なう、こういうことでございます。それについてスイス側の当初の主張は、これを免税あるいは五%ということによって、五%ないし一〇%の課税権を放棄すべきではないかというのが主張であったわけでございます。これをわがほうは各国の租税条約における方針に従いまして一〇%ということで確立したわけでございます。
#8
○西村関一君 このスイスとの租税条約を締結することによりまして、わが国が受けるところの利害得失について説明をしていただきたいと思います。
#9
○政府委員(山崎敏夫君) この条約は、この前の提案理由及び補足説明でも申し上げましたように、OECDのモデル条約あるいはわがほうの条約締結のポリシーに従ってつくられておりますので、この条約は両方の利害が非常にバランスした条文上の規定になっておると思います。したがいまして、この条約によって相互に利益をする、お互いに二重課税を防止して経済交流を活発にするという目的に十分沿っておる次第でございます。
 それから内容につきましては、ただいま大蔵省の吉田審議官から御説明がありましたように、ロイアルティーの点につきましても、向こうの強い主張にもかかわらず、わがほうとしては、従来の方針どおり一〇%というものをとるということを確保した次第でございます。実際問題として、投資所得はスイスのほうが日本から多くを得ておりますので、その面でわがほうとしてはある程度の税率は軽減するとしても、この投資所得に対する課税権は十分確保し得たと思っております。他方、船舶と航空機によります国際運輸所得に関しましては、これは相互免税でございますが、これはどこの国とも日本としてはこの方針で臨んでおるわけでございますが、一般に日本のほうが出ていっている場合が多いのでございますけれども、スイスとの関係では、この前数字で御説明申し上げましたように、わがほうから船舶も航空機も行っておりません。これに反してスイス側の場合には、スイス・エアが週四便でございましたか、来ておりますので、その面ではスイス側としてはスイス・エアが免税になるという利益がございます。しかし、全体として見ますれば、両方の利益は非常にバランスした、いわばモデルにしていいような条約ではないかと存じます。
#10
○西村関一君 次に、シンガポールとの租税条約についてお伺いをいたします。
 この条約の提案理由の説明によりますと、昭和三十六年に調印され発動をいたしましたシンガポール自治州との租税条約、それが現状にそぐわないということから、シンガポール政府の申し入れを契機として新たに締結されるに至った。こういうふうにございますが、一体、旧条約との間に、現状にそぐわないというふうに考えられる点はどういう点でございますか。
#11
○政府委員(吉田太郎一君) これは先生、もう御承知のとおり、先方から廃棄を通告してまいりましたわけでございます。で、その現状にそぐわないという考え方は、むしろわがほうよりは先方の廃棄の意思の中に、その背景になっておるのだろうと考えるわけでございます。そこで、どういうことが現状にそぐわないだろうかということを推測いたしますと、まず一つは、シンガポールが独立国になったということだろうと思います。もう詳しく説明は省かせていただきますが、従来の条約は、シンガポール自治州とわが国との租税条約という形で整えられておるために、これが一つの先方にとってやはり問題であったろうと考えられるわけでございます。それからもう一つは、やはり実体的な関係があろうかと思います。それは、シンガポールはシンガポール自治州として経済活動を行なってまいりました。そのおもな経済活動の特徴は、主として通商関係と申しますか、あるいは商業活動と申しますか、そういうことが特徴になっていたかと思います。ただ現在、シンガポールの経済政策の意図は、これを工業化していこうという気持ちが非常に強いように見受けられるわけでございます。したがいまして、そういう趣旨を何らかの形で新しい条約をつくることによって生かしていきたい、こういう希望があったのではないかと、かように推測されるわけでございます。しかし、この条約自身は、先方の通告によって新しいものをつくろうではないか、こういう申し入れによって行なわれたというわけでございます。
#12
○西村関一君 この両条約についての質疑は次回に続けさせていただきたいと思います。本日はこの条約についての質疑はこの程度にさせていただきたいと思います。
#13
○委員長(松平勇雄君) 他に御発言もなければ、二案件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#14
○委員長(松平勇雄君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。卸質疑のある方は、順次御発言を願います。
#15
○西村関一君 昨今、中華人民共和国とわが国との交流が漸次盛んになってまいりました。また、政府の姿勢も従来よりはやや緩和されてきたというふうに見受けられるのでございます。しかし、中華人民共和国側の態度を観測いたしますと、いろんな新聞等の報道によりますというと、かなりきびしいものがあるやに見受けられるのであります。これは政府が政府間の交渉、折衝ということを言っておられますし、外務大臣は衆議院の予算委員会におきまして、与党の川崎議員に対して、もし機会があるならば、自分でよければ自分がみずから出かけて行って中国側と折衝する用意もあるというくらいに熱意を示しておられるのであります。私はそのことに対して、大臣の熱意に対して敬意を表するものでございますが、情勢は非常にきびしい。その情勢のきびしい原因がどこにあるかということでございますが、私はインドシナをめぐる諸情勢が一つの大きな原因になっていると思うのでございます。そのことを抜きにして中国との提携ということは、提携とまではいかなくても、話し合いはできないんじゃないか。インドシナ情勢に対して政府がはっきりした考え方を打ち出さなければ、特にアメリカ合衆国のやり方に対してはっきりした態度を打ち出さなければ、連絡をつける糸口が見つからないんじゃないかと、こういうふうに思うんでございます。
 そこで、私はインドシナ情勢に対して大臣にお伺いしたいんでございますが、もうすでにベトナムの戦争はインドシナ戦争にエスカレートしておる。ベトナムからカンボジア、ラオスに拡大いたしておる。そのような状態の中でこのベトナム戦争というのは、もはやこれはラオスが前線になっておる。ベトナムは後方になっている。そのもう一つうしろには中国がいるということを考えざるを得ないんでございます。そういう見地に立って現在のインドシナの情勢、インドシナ戦争の現状及び見通しに対して、政府はこの前のときにも大臣の見解がございましたけれども一、この点、もう少しはっきりこういう情勢の分析と、これに対する政府の考えをどのように打ち出していかれるつもりでありますか。特に中国関係、中国との連絡の関係において、インドシナ情勢をどのように分析し、対処していこうというお考えでございますか。その点からお伺いしてまいりたいと思います。
#16
○国務大臣(愛知揆一君) インドシナの情勢につきましては、政府としても非常な心配と関心を深くしておるわけでございます。中国との関係におきましては、御承知のように、いろいろの情勢がございますが、二月の八日以来だんだんこの中国のインドシナ情勢に対する態度というものがきびしくなってきているように見受けられるわけでありまして、一部情報では、何らかの形で介入されるのではないだろうかという見通しも報道しているくらいでございまして、これらの点については政府側としても非常に関心を深くせざるを得ないわけでございます。
 同時に、政府といたしましては、前回の当委員会でも申し上げましたが、外交ルートを通じまして、ラオスの状況がすみやかに戦闘状態から抜け出すこと、つまり、一切の外国軍隊の即時撤退ということを中心にしたジュネーブ協定による解決策というものを、とりあえず関係国の関心を深くして、その方向に向かっていくようにという日本政府の態度というものを関係国にそれぞれ明らかにいたしたわけでございます。そうして、特にその中で、インドネシア、マレーシアとの間では、そういった呼びかけに対する積極的な反響がございまして、三国政府から共同してあらためて呼びかけや工作をしようじゃないかということに大体なっております。そのほかアメリカにはもう当初からもちろんでございますし、前回にも申し上げましたように、それぞれの関係の国々に対しては積極的な工作を展開しつつある次第でございます。
#17
○西村関一君 インドシナ、ラオス問題に対するすみやかな和平を至らせるための政府の努力に対して、全然認めないわけではございませんけれども、六二年のジュネーブ協定によってこの問題の解決をはかる、つまり、すべての外国軍隊を撤退するということですが、その前の五四年のベトナム和平に関する――ベトナム戦争終結に関する五四年の七月のジュネーブ協定との関連は、どのようにお考えになりますか。
#18
○政府委員(須之部量三君) もちろん、五四年のジュネーブ協定がある意味では基礎になっているわけでございますけれども、五四年の協定ができまして、御存じのとおり、パテト・ラオ側との軍事的な総合、政治的な統合が思うようにまいりませんで、数年間にしてその五四年の協定が動かなくなってしまったということのために、あらためて六二年の会議になったことは、先生御存じのとおりでございます。集まりました当事国も、五四年の協定のときと六二年のときと違うわけでございますので、範囲が拡大されておりますので、私どもとしましては、現在は六二年の協定が基礎となって考えるべきものだというふうには考えております。
#19
○西村関一君 五四年のジュネーブ協定、これは、五四年には御承知のとおり二つの会議がジュネーブにおいて開かれました。ジュネーブ極東平和会議、それは四月だと思いますが、それに引き続いて七月のジュネーブ協定というふうに移行していったんでございますが、この条約は五四年の七月のジュネーブ協定に対する考え方、これがアメリカ側の考え方と、それからベトナム民主共和国側あるいは解放戦線南臨時政府側の考え方並びにカンボジア、ラオスにおけるところの民族自決の戦いをしているところの側の諸君との見解が食い違っておると、そういう点に対して、その問題をただアメリカ側の考え方を是認するという考え方に日本政府が立っていかれるということに一つの問題点があるんじゃないかと思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
#20
○政府委員(須之部量三君) もちろん、五四年の協定のときに、米国は当事国とはなっておりません。それはそのとおりでございますが、同時に、米国といたしましても、その五四年の協定が実施に移されることについては、米国としても協力するという態度は表明しているわけでございます。おそらく先生のおっしゃる意味は、あるいはベトナムの選挙が五四年の協定どおりに行なわれなかったところに問題があるのじゃないかということを御指摘になる御趣旨かとも思いますけれども、これは当時もいろいろな事情でできなかったということで、共同議長国のイギリスとソ連にも問題が出されたわけでございますけれども、諸般の事情で当時はそれが予定どおり行なわれなかったということで問題は解決されなかったわけでございます。双方にそれぞれの言い分はあるかと思いますが、その後、六二年ということになってまいりまして、これはすべての国がアメリカを含めまして受諾しておりますので、私どもとしては、六二年の協定というものが現在においてはラオス問題解決の基礎になるものというふうに考えておるわけでございます。
#21
○西村関一君 そういう政府の考えはいままでも何べんも聞きましたし、声明も出しておられるのでございますから、それはわかっておりますけれども、それでつまり、いわゆる北側がそれで満足して交渉に乗れるかどうか、問題はどのようにして悲惨な戦争をやめさせることができるかというところにあると思うのでございます。
 で、五四年七月のジュネーブ協定のときには、アメリカはこれにサインをしなかった、署名をしなかった。それで単独宣言を出しておるわけでございますが、そういうものでもってアメリカはその後のベトナム及びインドシナにおけるところの諸国に対する戦争に介入するということが許されると――これは五四年には署名しなかったのだから、そういうことがアメリカはもう責任ないのだということではないと思うのでございますが、その点は政府ではどういうふうに考えておられますか。
#22
○政府委員(須之部量三君) アメリカがその後介入しておりますのも、ラオスというよりはむしろベトナムのほうの問題になるかと思いますけれども、これは五四年協定に参加していなかったから全然自由行動があるのだということではなくして、やはり北越のほうからの侵入というものに対する南越政府からの援助要請ということに基づいて共同防衛ということで軍事行動をとっておるのだというのが、従来からのアメリカの態度であると考えておりますが、五四年協定にたまたま参加してなかったと。したがって、何でもかんでも自由なんだという考え方であるとは考えておりません。
#23
○西村関一君 あのときの単独宣言につきましては、やはりあれを見ればわかるように、ジュネーブ協定が締結された三つの休戦協定を、最終共同宣言の第一項から第十二項までをテーク・ノートするということを言っておるわけでございます。また、国連憲章の第二条第四項にも触れているのでございます。そういうことは別問題といたしましても、アメリカは五四年七月のジュネーブ協定に対して、これに拘束されるということは当然だと思うのでございます。ただ、ベトナムに対してアメリカが軍事力を投入したということの理由は、北からの侵略があったから、南の政府から頼まれてやったのだということを言っているのでございますが、こういうところに日本政府も、それはそうだということで是認してみられると思うのでございますが、国際法上そういうことがはたして許されるかどうか、こういうところに問題があると思うのでございます。つまり、集団安全保障という問題でございますが、そういう点に対して、アメリカのベトナムにとっておるところの態度、その延長として今日のラオス問題が起こっておるというふうに考えられるのでございますが、北からの浸透があるから、アメリカは南の政府の要請があるので、集団安全保障の立場から軍を投入し、軍事行動をしなければならなかったのだという言い分に対して、政府は現在もそれを是認しておられますか。
#24
○政府委員(須之部量三君) 私どもの考え方といたしましては、すでに大臣からも申し上げておるとおりでございますけれども、事実認識という考えで見てみますと、やはりホー・チミン・ルートというものがあり、最近そこを通ずる補給活動等が非常に活発になっておるということから、南越のほうとしてもやむを得ずに動いたのだというふうに関係国のほうでは言っておりますし、そういう事実はそうなんだろうと思うわけでございますけれども、ただ、私どものいまの関心事は、むしろ、先ほど大臣が述べたとおりでございます。むしろ、いかにしたならばいまの事態をおさめ得るかという点に重点を置いてものごとを考えてまいりたいという立場をいまとっておるわけでございます。
#25
○西村関一君 アメリカは単独宣言の中で、ジュネーブ協定を侵害するような新たな侵略に対しては重大な関心を寄せる。かつ、これを国際の平和及び安全に重大な脅威を与えるものとみなすということを言っているのでございますが、今日の米国のインドシナにおけるところの行動は、何か新たな侵略が起こったから、ベトナムにおいてあのような五十何万という大軍を入れ、苛烈な、朝鮮戦争のときにやった以上の、あるいは第二次世界大戦のときに投下した爆弾の数と比べて著しくたくさんの爆弾をあの狭いインドシナ半島にぶち込んでおる、そういうことの理由になるだろうかどうかというところに私は疑問を持っておるのでございます。どのような場合に武力を行使していい、国際法上あるいはまた国連憲章の条文に照らして、どういう場合に第三国が武力を行使していいということになりますか。アメリカ自身は、攻撃、侵略を受けていないのでございますから、どういう場合には武力を行使することが許されるとお考えになるか。
#26
○政府委員(井川克一君) 当事国は、国際連合憲章に基づきまして、その武力行使の場合が限定されているわけでございます。もとより制裁の場合もございまするが、現在一番問題となりますのは、第五十一条のいわゆる集団的・個別的自衛権の発動に基づくものだと思います。
#27
○西村関一君 五十一条の集団安全自衛の手段、これはアメリカは当事国じゃないわけです。なのにそれが許されるということはどういう根拠によりますか。
#28
○政府委員(井川克一君) ちょっと私、御質問の趣旨がわかりかねたのでございまするけれども、当事国、つまり集団的自衛関係に立つということ、その点につきまして西村先生のおっしゃいましたその当事国でないというところが実は私、わからないわけでございまするけれども、集団的自衛関係と申しますのは、もとより御存じのとおり、自国が侵略されたばかりでなく、集団的自衛関係に立つ国が侵略された場合に、自国に対する侵略と同様に認めて、集団的自衛権を行使するということになっております。
#29
○西村関一君 国連憲章の場合は、安保理事会がとる出動措置、これは憲章三十九条、四十二条に基づくもの、他の一つは個別的・集団的自衛権の行使――五十一条、いま言われたところでありますが、米国は北爆開始の翌年、すなわち一九六六年二月の四日に発表しましたベトナムの防衛へのアメリカの参加の合法性、これはいわゆる国務省の覚書でございます。それを見てみますると、その中に、南ベトナムに対して北ベトナムから武力攻撃が加えられたから、国際法は武力攻撃に対する個別的・集団的自衛権を認めているのだから、アメリカとしては当然のやるべきことをやったのだということを言っておるのでございます。ところが、この文書で、アメリカはSEATO条約によって南ベトナムを防衛するところの義務を負っていると述べておりますが、このSEATO条約も国連憲章五十一条の集団的自衛権を根拠としておるし、要は、国際法上、国連憲章上の個別的・集団的自衛権を根拠としているわけでございます。この米軍の行動が憲章五十一条に基づくところの自衛権の行使であるということをアメリカは言っておるのでございます。日本政府も国会におきましてしばしばこのアメリカの言い分を是認をする発言をしているのでございます。しかし、米軍が介入するようになりました北ベトナムからの浸透、いわゆる間接侵略、これがはたして自衛権行使の前提条件である武力攻撃に該当するかどうか。つまり、北からの浸透ということがはたしてこれに該当するかどうかということがまず問題にされなければならぬと思うのでございます。また、一九六五年の二月に北爆を開始しました理由として、当初米国は、南ベトナムにある米軍のブレーク基地その他への共産軍の攻撃に対する報復であるということを言っておりますが、しかし、これは明らかに国連憲章の報復を認めない精神と相反するのでございます。さすがに報復ということばを改めまして、自衛のためと言い直しておるのでございますが、そういうところにアメリカが、北側の浸透に対して、北側のやり方に対して捨てておけない、やっつけなければいけない、報復するのだと、これはまあ後に、いま申しましたように自衛ということばにかえておりますけれども、そういうところに問題があると思うのでございます。アメリカの掲げておりますところの個別的・集団的自衛権の行使というものをそのままうのみにすることには問題があると思うのでございますし、そのことを日本政府がそのまま受け入れてインドシナ情勢の解決に当たるということはやはり問題があるのじゃないかというふうに思うのでございます。
 このいわゆる国務省の覚書、いま申し上げました文章を見ましても、私はそれを全部調べたわけではございませんけれども、ICCの報告書を引用いたしております。しかし、この国際監視委員会の報告を公正に引用していないのでございます。アメリカが五四年以降南ベトナムに対してとってまいりましたやり方に対しまして、これは明らかにジュネーブ協定違反であるということをこの国際監視委員会の報告書には述べておる。そこの部分だけは故意に省いちゃって、アメリカに都合の悪いところは省いちゃって、アメリカの都合のいいところだけを取って、北からこういう侵略があったということだけを、ICCの報告をもってこの国務省の覚書というものがつづられておる。私もICCの報告書を全部は読んでおりません。非常に膨大なものでございますから、全部は読んでおりません。日本語の翻訳も出ておりませんし、読んでおりませんが、学者たちの調べたところをさらに見ますると、そういうことが言われておる。しかも、アメリカの学者の中からそういうことが言われておるのであります。私がいまここに持っております「ベトナム戦争と国際法」というフォーク氏が編さんしておるところのこの文章を見ましても、これは著名なアメリカの学者が名を連ねておるのでございます。ハンス・モーゲンソー氏をはじめいろいろな人たちが名を連ねておるのでございますか、そういうことを、私がいま指摘いたしましたような点を書物の中にも述べているのでございます。
 ですから、私は日本政府としては、アメリカ政府の言い分だけをそのまま受け取るのじゃなくて、もう少し問題の所在を突き詰めて検討して、そしてアメリカに対してもはっきりものを言うという姿勢が必要じゃないかと思うのでございます。そうでないと、どのような国際会議を開きましても、またどのような声明を出しましても、私は本来の解決にはほど遠いと思うのであります。この点につきましてまだ言い足りないところがたくさんございますけれども、アメリカが今日までやってきた、つまりフランスにかわってアメリカが、インドシナ、特にベトナムに肩がわりをしてきた。バオダイ、ゴ・ジン・ジエムに傾斜してきた。それからずっと今日までジュネーブ協定におきましては全く一つのベトナムである。五六年には統一選挙を行なって、軍事的境界線を取っ払ってなくしてしまって、そうして一つのベトナムをつくるということがあのジュネーブ協定のきめでございます。それをさせないように、させないようにしてきたのがアメリカである。つまり、事実上、南のベトナム共和国をつくりあげる、ゴ・ジン・ジエム以来今日まで政権は幾たびか変わりました。今日のチャン・チン・キエム政権にまでまいりますのには幾多の変遷がございました。そういうことがずっと続いておる。そういうことが昨年のカンボジアの問題、現在のラオスの問題とつながりがないとは言えない。それから六二年のジュネーブ協定だけを取り上げて、それで国際会議で解決しようということは、私は、ソ連、また五四年七月のジュネーブ協定に参加いたしました中華人民共和国は問題にしないと思うのでございます。そういう点に対して、もう少し政府の側におかれましても真剣な態度でこの問題の処理に当たっていただきたいと思うのでございますが、外務大臣の御見解を承りたいと思います。
#30
○国務大臣(愛知揆一君) 従来のこのジュネーブ会議の経緯、背景あるいは国連憲章等についての御意見、いろいろと承りまして、ありがとうございましたが、このいま政府としてとっておる政策という立場から申しますと、カンボジア進攻のときには、とにかく米軍がベトナムから撤退をするために、その手段としてこうこういうことをやったということは、それなりに理解ができるという趣旨のことをコンメントしただけでございまして、その後政府のとった態度は御承知のとおりと思います。当面のラオスにつきましては、政府がこの二月八日以来とっております態度は、特にこのラオスの現政権が北からも南からも承認をされ、そしてジュネーブ協定で守られておる。それから、日本はジュネーブ協定には参加しておりませんが、ラオス政府とは特に親交関係がある。こういう点に立ちまして、ラオス政府の公式な態度というのは、御承知のとおり、八日夜のラオス政府の公式な発表にもあらわれておりますように、こういう事態になったのは北からのかねて浸透があったことであるということを第一に指摘しておりますが、同時に、それだからといって、他の外国軍隊が自分の国の領域内に入ることを正当化することはできない、したがって、即時あらゆる外国軍隊の撤退を求める、そして自国の中立を維持し、主権を尊重し、内政に干渉しないでほしいと、こういう態度を明らかにしておりますので、そしてまた、特に日本政府に対しましても、ラオス政府としてのそういう態度が公式に日本政府にも伝わってまいっておりますので、その立場に立って、ラオス政府の声明に表明されているところのラオス政府の立場を全面的に支持する、そうして全面的に支持するということからいって、現にあるところのジュネーブ協定に基づくジュネーブ会議共同議長国あるいは国際監視団加盟国に対して、特にこの目的のために努力を新たにしてほしいと、また、必要ならばジュネーブ協定によるところの会議だけではなくて、このラオス政府のとっている立場を実現できるように、より広い国際会議等が必要ならば、それに対しても日本として協力をしたいという立場をとって、これを各国に申し入れているわけでありまして、先ほど申し上げました、特にジャカルタ会議の関係もありましたものですから、マレーシアとインドネシアの両国政府が特に日本と同じような立場、同じような見解に立って、それぞれ両国政府としてのでき得るだけの工作を展開しようという態度をとりつつあるわけでございます。いずれその経緯等につきましては、近日中にまたその詳細を公表することもできようかと思っておりますけれども、要するに、現に政府が、ラオスに起こった事態に対してとっている日本の政府の立場や政策というものはそこにあるということを特に申し上げておきたいと思うわけでございます。要するに、特にどこどこの国がこういう悪いことをしたとか、どこどこが協定違反であるとか違反でないとかということに特にコンメントするよりも、今後の事態に対して、特にラオスの場合においては、こういう環境とステータスがありますから、それを重んじ、かつ、その態度を支持するということが最も妥当な、また実際的な措置であろう、こういうように考えているわけでございます。
#31
○西村関一君 当面のラオスの戦争、インドシナ全体の戦争を一日も早くやめさせることができるかということに対する考え方は、私どもも政府の考え方と一致するところであります。その限りにおいては、私どもは政府に対して、野党の立場からもできることは協力していきたいというように考えるものでございます。私はアメリカのとっている態度が、国連憲章の精神からいって、国際法の立場からいって、特にジュネーブ協定の締結の経過からいって是認されるかどうかということに対して問題点を感じているわけです。時間がありませんから、その点について細部の質疑を行なうことができませんけれども、このまま推し進めていきますことは、私は武力の行使を慎むという国連憲章の精神に何といっても反すると言わなければならない。これは政府からいえば、北側に対しても同じことが言えると思うのでございますが、しかし、アメリカの軍事力と北側の軍事力と比べましたならば、それは比較にならない違いがあるわけなんです。それでも北側が強大なアメリカ側に対して、あのような三十年にわたるところの、これはずっとフランス統治時代から考えますと、民族自決の戦いを続けている。そのことに対して、その立場をもアメリカは理解しなければならないし、日本政府も理解しなければならない。そのお互いの立場を理解し合うことなくしては、大臣がいま言われましたように、一方だけを攻撃するということでは問題の解決にはならないことは言うまでもございませんが、特に私は、あのベトナムの人、あるいはラオスの人、カンボジアの人、それはラオスは、いまプーマ政権が正統の政権として日本と外交関係があるということでございますが、しかし、そう簡単なものではない。やはり一時はあの条約によって一つになったラオスが、すでにもうスファヌボン殿下は北のほうへ帰ってしまって干戈を交えている。必ずしもラオスは一本になってない。そういう状態で、非常に複雑な様相を示していることはいまさら私が申すまでもないことでございますが、そういうインドシナ情勢の中において、とにかく干戈に訴える、武力に訴えるということを慎むという国連憲章の精神に立ち返るためにはどうすればいいかということだと思うのでございます。そういう立場に立つときに、非武装平和憲法を持っている日本として、これはまあ、この憲法については問題にしておられる向きもございますけれども、現にあるのでございます。その非武装平和憲法に立つところの日本として、とにかく武力を行使することを慎むという国連憲章の精神に立って、どのようにして戦争をやめさせる方向に持っていくことができるかということを、これはもう与党とか野党とかいう立場を越えて、私はインドシナ情勢の問題に対して努力しなければいけない、こう思うのでございます。重ねて大臣のお考えを伺いたい。
#32
○国務大臣(愛知揆一君) いろいろごもっともな御意見であると承知いたしておりますので、そういう点を十分政府としても考慮の中に入れて今後まいりたいと思います。同時に、先ほど申しましたが、実はジャカルタ会議のときも、日本政府の態度としては、とにかく戦いをやめて和平を促進することに目的がある以上は、この際は、非難やあるいは対決のような姿勢が出ることはいずれの側に対してもこれは妥当ではないということで、参加した国々に対しましても大いにその立場を強調いたしたわけでございますから、あの会議についても、集まった国は一方的なものだけではなかったかとか、いろいろの御批判もございましたけれども、幸いにして非難とか対決とかというようなムードは一切押えて、そしてひたすらに現実の時点に立っての和平促進ということでコンセンサスをつくり上げたつもりでございますので、今回のラオスの場合におきましても、基本的な姿勢として、やはりいずれをも非難するとか、またさらにいささかでも対決的な空気が起こるようなことは徹底的に避けて、とにかく和平の促進ということに全力をあげていくという態度で、今回もいろいろのアピールの呼びかけをいたしておるわけでございます。ですから、その基本的な考え方からいえば、個々の事態についてのいろいろの御意見やコメントの底に流れている西村委員のお気持ちは私もよく理解できますが、当面の実際的な外交姿勢あるいはアプローチのしかたとしては、私はこの行き方に徹していきたいものだと、かように考えているわけでございますので、今回ラオスに事態が拡大いたしましてからも、そういう点で特に政府としては言動等について細心の注意を払っておるつもりでございます。
 なお、いま御提案も入れてのいろいろの御意見でございますが、十分に尊重してまいりたいと思います。
#33
○西村関一君 先ほどから申し上げておりますように、ラオスの問題はラオスの問題だけではない。インドシナ全体の問題である。その根源はベトナムの戦争がエスカレートしたものであるというふうに私は考える。これが解決のためには、いま大臣も御見解を述べていただきましたように、戦争に訴えるのじゃなくて、相手の立場も考えながら、話し合いによって解決する。つまり、もっと端的に言いますならば、パリ和平会談、これはベトナムの戦争を和平に導くための会議でございますが、これが百何回の会議をやりながら、まだ何らの解決への端緒を見つけていないということです。それからまた、ラオスにおきましても和平会談が行なわれておりますが、今回南ベトナム政府軍がラオスに侵入したことによってその会談がつぶれちゃったということでございます。ですから、軍事力に訴えて和平を促進する、つまりたきつけてしまって、これでもか、これでもか、参らぬか、参らぬかという状態で和平をもたらせるということは、これは間違いだと思う。その点を日本政府としてもよく御考慮いただきたいと思います。
 それからもう一つ伺いたいのは、当初ダレス氏がドミノ・セオリーということを言いました。つまり、共産主義がベトナムに入ってくる、ベトナムからラオス、カンボジアに入ってくる、インドシナ全体が共産化する、そのことのためにわれわれは南ベトナムを助けなければならないのだという考え方で、つまり、共産主義の浸透、これはSEATO条約の中にも共産主義の脅威ということがしばしば出てまいっております。そういうとらまえ方でインドシナの戦争を受け取っていることが妥当でございましょうか。これは私は、共産主義がいいか自由主義がいいかという点についてはみんなおのおの考え方があると思うのでございます。しかし、現実の世界は、共産主義といいましょうか、社会主義といいましょうかの考え方に立つ人たちによってつくられている国家、それから自由主義の立場に立つ人たちによってつくられている国家に分かれている。しかし、私はそれは平和共存でいかなければならないと思うのでございます。イデオロギーを越えて平和共存していかなければならないと思うのであります。全部が自由主義一色になる、全部が社会主義一色になるというのではなくて、現実はやはり平和共存していかなければならないと思うのでございます。そういう考え方がいまなおアメリカがインドシナ半島に対して事を進めていく上に、その根っこにあると思う。私は社会主義か自由主義かというようなことをいまここで論議するつもりはございませんけれども、とにかく平和ということを考えますときには、平和共存以外にないというふうに思うのでございます。そのためには、話し合い以外に手はない。武力に訴えるということはますます問題を大きくするだけのことだと私は思うのでございます。そういう点に対して特に私は、いわゆるアメリカ及びそのアメリカと同盟している国家の人たちが、共産主義者との戦いだという考え方、私は必ずしもそれは当たっていないと思う。むしろ彼らは共産主義者である以上に民族主義者である。自国の自主独立ということを願っている人たちであると思う。反共、滅共という立場でこのインドシナの問題を考えることは、私は必ずしも当を得ているとは思わないのでございます。平和共存でいかなければ問題は解決しないと思うのであります。その点に対して、もう一度お伺いをいたしておきたいと思います。
#34
○国務大臣(愛知揆一君) イデオロギーを越えて平和共存でということは、これはもう政府の申すまでもない基本的な考え方でございますから、これについて何らの疑念などを持っているわけではございませんし、また当面の問題にいたしましても、インドシナの問題についてやはりとっている基本的な態度は、先ほども申しましたように、双方がますます対決的なムードが出てくるとか、あるいは一方に偏して一方を非難するとかいうような態度でいったのでは、いつまでたっても戦闘行動というものはとめるわけにはいくまい、平和共存の状態はできまい、またラオスにしてもカンボジアにいたしましても、ジュネーブ協定のやはり精神というものは主権の尊重であり、そして内政不干渉であり、要するに、これは、それぞれの民族国家としてはそれぞれの国内の民族の考え方によってきめるべきものである、こういうことが中心の思想になっておりますから、これを支持し、かつその支持国がどんどんふえるということが一番望ましいことである。ですから、当面の対処策といたしましては、私は、西村委員のお考えになっている方向と政府のとっているいき方とは決して相反するものではない、いやむしろ同じ路線で考えているのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございまして、今日までの世界情勢に対するいろいろの批判とか見方、観察、そのしかたというものについては、いろいろの立場からの見解というものが私もあろうと思います。そういう点についての御意見につきましても、私どもとしては十分尊重して、今後に処する上の参考にしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
#35
○加藤シヅエ君 私は、外務大臣に、最初に沖繩の離職者がたくさん、特に軍の離職者がいまたいへんに多いというニュースを聞いております。そして軍の離職者の人々が中高年齢、特にこれといった技術も特技も持つ方が少ないというようなことで、なかなか今後の就職がむずかしい。本土に復帰されても、本土に来て就職することもむずかしいし、沖繩に残って就職することもむずかしいというような状態に置かれている。しかも、その数が、短い時間に、昨年は米軍が解雇した者が二千人、ことしは前半で三千人、こういうように、短い期間にたくさんの人が離職するということになりますと、これらの離職者が今後どうして生活したらいいかということで、たいへん心配なことであろうと察せられるわけでございます。それで、なかなかよい方法もないので、海外への移住というようなことを考える方が非常にふえてきた。四十五年度は、海外移住者全体約二百四十人の四割弱が沖繩から海外移住を希望した、あるいはそのほうに進んでいるというニュースを聞いたのでございます。それで、それに対しまして政府としては、沖繩から特に軍の離職者たちが海外に移住いたします場合に、どういうような対策を具体的にとっていらっしゃるか、特にそのことについては十分に心していただきたいわけでございます。
 私がこのことを大臣から伺い、かつ、その具体的ないろいろのことがもし伺えたら伺いたいと思いますのは、たしか前の外務大臣の時代であったかと思いますけれども、参議院の外務委員会で、海外移住の問題で、ドミニカに移住した人たちが、あちらで情報が不備であったために、また受け入れ態勢がいろいろの事情もあったためにたいへんな苦労をされまして、そのときに同僚委員及び公明党の委員の方が、たいへん詳しい資料に基づきまして、向こうでのどんなに困られたかというようなことについて詳しい質問があったわけでございます。私はその当時の速記録をもう一度読み直しましていろいろ感じたわけでございますが、移住される方々が向こうに行かれる前に、その移住者に対しての情報の提供あるいは現地の調査というようなものが非常に足りなかった。これはずいぶんと無責任なことではないかと私は思うわけでございます。それで、移住する方にとってみますれば、一家を引き連れて、何もかも払って、そうして向こうへ、もう生涯の土地と思って移住するのに、そこに行ったらもういたたまれないようなひどい状態であった。もう水がなくて、一日に三時間しか水がもらえないというような日が何日も続いたとか、もうたいへん物価が高いとか、持っていった船が非常に不適当であったために、漁業をするためだったけれども、漁業が全然できなかったとか、政情の不安があったとか、いろんな悪条件が重なったように聞いておりますけれども、そういうようなことは行く方にはほとんど責任がないので、事業団の方がそういうことをあらかじめ調査して、そこを世話をするのが事業団の仕事であろうと思います。したがいまして、今度は沖繩の離職者の方たちがみんなたいへんな決意でもってたくさんの人が海外へ移住したいということを希望しておられるというニュースを聞きましたので、これに対する外務大臣の、どういうようなことをお考えになってこれに対処なさいますか、また、それぞれの具体的な計画がございましたら、そういうところまで聞かしていただきたいと思います。
#36
○国務大臣(愛知揆一君) まず沖繩の離職者の問題は、たいへん政府としても心配しているところでございます。ことに最近は、御承知の全軍労の二日間にわたるストが行なわれましたし、また、第二次ストということも懸念されているわけでございます。それで、これに対しまして、まず解雇の量をできるだけ少なくすること、それから再就職、それから職業訓練のあっせんというようなことを、米側、それから琉球政府と共同いたしまして、いろいろと措置をいたしておるわけでございますし、それから内地の軍労務者と待遇が差別がございますので、今般のやむを得ず退職される方に対する退職金の差額については、政府としても相当の財政の緊急支出もすることを決意したような次第でございまして、まあ、できるだけのことを今後とも続けてまいりたいと思っております。
 それから、今後の全般的な対策なんでありますけれども、率直に言いまして、たいへんこれは政府としても微妙なところがございます。一口で申しますれば、それらの沖繩の方々の御希望に沿いたいということでございまして、先ほどちょっとお話がございましたが、実は本土におきましては、各方面で沖繩の人たちに働いてもらいたいという向きが相当にございますけれども、沖繩の県の方々の心情から申しますと、やはり第一義的には、沖繩でもって適当な仕事がほしい、沖繩に定着したい。このお気持ちをやはり政府としてはできるだけ尊重しなければならないと思いまして、積極的に本土への就職、吸引というようなことについては、政府としては積極的な姿勢はとっておりません。むしろ沖繩県復帰後の長期産業開発計画の中でできるだけこうした御希望を吸収していきたい、こういうふうに考えております。
 それからその次に移住の問題でございますが、これも、率直に申しますと、南米のある国などは、直接私にも、沖繩の方々の御希望があれば積極的に来ていただきたいという具体的な申し入れもあるのでございますけれども、これまたなかなか微妙な問題でございますので、海外移住ということについてまだ積極的な姿勢は示しておりません。しかし、沖繩の県民の方々の御希望、自主的、自発的に海外に出てお働きになりたいという御希望があれば、これにお手伝いをすることはもちろんいたしたいと思っております。で、現在はまだ復帰前でございますけれども、現に、先ほどもおあげになりましたように、若干の移住希望の方がございますが、復帰前でございますが、大体本土から移住する方と同等のお世話をすることにいたしております。これは今後ももちろん続けてまいりたい。それから、いろいろ御注意もございましたドミニカの問題等は、非常に不幸な体験でございますから、こういうことを二度と繰り返さないようにいたしたいと思いますが、これは沖繩の方に限らず日本の移住政策全般の問題でございまして、移住問題もだいぶ性格が変わってまいりまして、積極的な送り出しということよりも、出ていく方々の定着とその福利の増進ということに移住政策の重点というものはもう現に変えつつあるわけでございます。本土からの海外移住者の現状なども御承知のとおりでございまするが、一時に比べますと、人員からいえば格段に減っております。そしてまた、現在のような状況であれば、積極的に送り出すというようなことはあまり積極的に考えないでしかるべきかと思いますので、すでに事業団その他のお世話で出ていかれた方々のアフターケアに重点を指向していきたいということで、四十六年度の予算あるいは事業団の事業等についても、そういう点に配慮を加えておるわけでございます。しかし、もちろん、沖繩の方を含めて積極的に外へ出て大いに新天地を求めて働きたいと言われる方の場合には、できるだけの御援助をしたいというふうに考えておりますことはもちろんでございますけれども、移住問題全般については大体以上申しましたような状況であり、また、政府としての態度は以上申し上げましたようなところでございますが、なお、こまかい点につきましては遠藤部長からお聞き取りを願いたいと思います。
#37
○加藤シヅエ君 外務大臣のいまの御答弁の中に、いろいろできるだけのことをしたい御決意だというおことばがあったのでございますが、沖繩の軍離職者がもらえるお金と内地の同じような事情の場合との差額四百九十ドルでございますか、それを渡すのが非常におくれていて、ことに海外移住でもしようというような方々には、非常にお金の必要なときにもらっていないし、また間に合わないというようなこともたいへん困っているというような報道でございますが、その予算はどういうふうになっておりますのですか。
#38
○国務大臣(愛知揆一君) 基本のお金は、いま、これは直接雇用でございますから米側から支給されるわけでございますが、その本土との格差のあります分につきましては、その差額の退職金は、四十五年度の沖繩に関する総理府所管に調整費というのが十億円ございまして、その中から差額四百九十ドル相当額の総計が六億三千四百万円、この六億三千余万円をこの調整費の中から支出することにもう決定をいたしましたので、これは総理府でやっておりますので、現に交付いたしましたかどうですか、そこまでのところはまだ私確認いたしておりませんけれども、政府としての決定はもうだいぶ前にいたしましたから、もう渡り得る状況になっておるかと思います。なお、促進するようにいたします。
#39
○加藤シヅエ君 それでは、さらに部長からの御説明をお願いをいたしたいと思います。
#40
○説明員(遠藤又男君) 沖繩からの移住につきましては、日本と同じ扱いをいたしておりまして、海外移住事業団の事務所も那覇に置かれております。それで正確な情報の提供と希望者に対するお世話ということは、全く国内と同じ扱いでもうやっておるわけでございます。
 ただいまお話しのございました軍の離職者の問題につきましては、昨年度――昭和四十四年度は沖繩から百六十二人出ておりますけれども、その中には軍の離職者は入っておりません。それからあと、四十五年度は来たる三月で終わるんですけれども、これは二百人こすと思われますけれども、これはいままでのところは離職者が入っておりませんけれども、三月までのところでどうなるか、まだわかっておらない状況であります。
 いずれにせよ、沖繩からは戦後すでに一万九千人も移住で出ておりまして、特にこの数年間は、日本国内全部合わせて大体三〇%前後沖繩からということになっておるわけでございます。今年度につきましては、大体三〇%こすんじゃないかというふうに思われるわけでございます。戦前からの数を合わせますと、十六万以上の沖繩の方が行っておられますし、まあ艱難に耐えて、非常に意思強固に働く、粒々辛苦働くという特性を持っておられまして、移住に非常に向こうでの成績もあがっておるわけでございまして、今後ともその先輩たちに続いて、おそらく数多く出て行くんじゃないかと予想されますが、われわれといたしましても、さっき大臣から申し上げましたように、送り出しももちろんでございますが、現地の定着安定が十分にいきますようにお世話申し上げたい、移住事業団ともどもそういう方針でいるわけでございます。
#41
○加藤シヅエ君 一番おもな国としてはやはり南米でございますか。そして国の名前もどうぞおわかりでございましたら。
#42
○説明員(遠藤又男君) 沖繩の方が一番多く出て行く数のほうから申しますと、ブラジルが一番でございますが、それからペルー、アルゼンチン、ボリビアという順序になります。特にアルゼンチンの場合は、日本からの移住者全体の七〇%を沖繩の方が占めている。それからペルーの場合は六〇%、ブラジルは一〇%でございますが、そういうふうに非常に大きな比重を占めておるということでございます。
#43
○岩間正男君 まず最初に伺いたいのは、米第三海兵師団と第一海兵航空団によって編成されている緊急海兵派遣部隊というのは、これはアメリカの新しい、いわゆるニクソン・ドクトリンの中ではどんな任務を持った軍隊なんですか。
#44
○政府委員(吉野文六君) これは米国の軍隊でございますから、ことに沖繩に駐留している軍隊でございますから、日本政府としては何ら直接承知していることではございません。
#45
○岩間正男君 これは大臣も御存じないんですか。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) 沖繩は、申すまでもなくまだ返還前でございますから、まあ、よく私が申しますように、現在のところはむしろ米国本土並みですから、その軍隊の配置状況その他について責任を持って日本政府としてお答えをするだけの立場におらないわけでございます。
#47
○岩間正男君 これは重大問題ですね。現に岩国にいるんでしょう。岩国に来ているんですよ。その軍隊の性格が、大臣も御承知なかった、事務当局も御承知なかったということはたいへんだと思うんです。これは私たちでさえ知っているわけですね、ある程度は。これはニクソン・ドクトリンの中で、いわば五つの「とらの子」の軍隊じゃないですか。ポラリス原潜、C5Aギャラクシー、B52、第七艦隊、それにあわせてこの海兵隊、これが新しい戦略体制の中で、しかも、アジア人とアジア人を戦わせるという戦略が御承知のようにニクソン・ドクトリンのわけですが、その中で第一線に立つのは海兵隊、こういう性格の軍隊じゃないですか。この軍隊がどうするかということが非常に重大な問題になってくるので、私はこの前の予算委員会から質問を申し上げている。しかも、これはベトナムで御承知のように猛烈な動きを開始している。ところが御承知ない。御承知なくて、そしてこの海兵隊について、まあだいじょうぶだと、日本にもこれは現在入っている、こういうことではたいへんだと思うんですね。
 それで、これは岩国、それから東富士の状態についてお聞きしたいのですが、これは時間の関係からあとで詳しくお聞きすることにして、この前予算委員会で質問した。一月十五日に米海兵隊が、何回目になりますか、とにかく沼津の今沢海岸に上陸をいたしまして、約四百人ぐらいの海兵隊が入ったわけですね。その接岸して上陸するときの様子について、これは当然つかんでおられると思うんですが、日米合同委員会にも通知もあるだろうし、この情勢についてつかんでおられると思うんですがいかがですか。端的に答えてください、あるなしでけっこうですから。
#48
○政府委員(吉野文六君) われわれも、施設庁から連絡があった情報によりますと、米海兵隊が沼津の海岸に作戦演習のために上陸したということは承知しております。しかし、これは沼津の海岸の一部が、米国の施設として日本側が提供していることでありますから、特にその点について一々日本政府へは正式には合同委員会を通じての通報はございませんでした。
#49
○岩間正男君 これはたいへんですね。そうすると、合同委員会というのはどういうふうになるのかね、第六条による日米合同委員会は、施設・区域の使用状況、その中身については触れないということですね。しかも、通告があったのかないのかわからない。そこで、あなたはさっぱり具体的なことは言っていないわけだ。私が聞いているのは、どんな状況だろうか、たとえばここに抗議隊が行っていますね。ところがどうですか、非常に殺気立っておった。その後の情勢から考えると、これはラオスのああいう事件の中にやっぱり関係を持っておったということは明らかだと思うんです。あそこはスト初めてですから、戦車で抗議隊の中に突っ込んだでしょう。これはあぶなかったですよ。すわり込んでいたらおそらく死人が出たと思う。すわり込みでなかったから、そこのところをようやく避けて事なきを得たと聞いておる。そのとき四百人ぐらいの海兵隊が戦車の上に立ち上がって、大声で一斉にイエローと言い合ったというんだな。これは外務大臣、どのように考えますか。このような軍隊が、われわれの東京からわずか新幹線で一時間のところにこういう事態が起こっている。これはどうお考えになりますか。これはまさに人種差別、べっ視なんです。こんなことを、日本の基地に入ってくることを許すことができますか。
#50
○国務大臣(愛知揆一君) 事実が施設・区域内における演習ということであったようでありますが、若干のトラブルが起こったことは、防衛庁等から私も承知いたしております。事態はよく調べなければなりませんし、また十分注意を要することであるとは考えております。
#51
○岩間正男君 これは、ここのところに入ってきた軍隊の数ですね、これも私は施設庁からもらったんですが、兵器で見ますというと、百五十五ミリ榴弾砲六門、戦車が十六台、トレーラー三十三台、工事機械七台、無反動砲、小銃、機関銃、こういうものがありますね。写真があります。こういうふうに入ってきております。どうです、この姿。これがわれわれの首都からわずかに一時間足らずのところで起こっている事態です。これに対して、この具体的な内容に触れないで、そうしてこれは施設・区域を提供したんだから、われ関せずえん。報告も受けていない。こんなことで今後の日本のこの対処ができますか。報告だって施設庁を通じての報告なんでしょう。そういうことではこれはどうなるんです、一体。だから具体的にその内容を明らかにしてください。
#52
○政府委員(吉野文六君) この上陸地点は、施設として日本政府が先方に提供したものでございますから、理論的に言えば常時アメリカ軍が使ってさしつかえないものでございますが、上陸地点で、先方も常時使う必要がないものでございますから、ふだんはだれでもそこに入れるような状況になっておるところでございます。したがって、このような演習が行なわれるときには、前もって施設庁を通じて米側が通報してくるわけでございまして、このような通報は、日本政府としてもそういう関係で受けておるのでございます。
#53
○岩間正男君 これは、だから私は、この軍隊の性格というものを明確にしないで、それで無条件で貸したんだから、そこで何やってもいいということにいかぬでしょう。この軍隊の性格は、先ほど申しましたように、ニクソン・ドクトリン、新たなる戦略の「とらの子」の軍隊ですよ。そしてこれはベトナムで相当な大傷を受けた。それを全部東富士やあるいは国頭あたりの基地を使って再訓練やってるんですよ。最近はどうか。昨年二月に、米下院の歳出委員会でチャップマン海兵隊総司令官が証言をやっていますね。これは当然あなたたちも御存じだと思う。その中にこういうことを言っておる。海兵隊は「韓国、タイをはじめとする太平洋のいかなる地点にも緊張が高まるに応じて急速に展開できる」、さらにまた同じ証言で、「沖繩、日本への海兵隊の再配置は、太平洋全域での不測の事態に対応する海兵隊の能力を著しく強め、また改善した」、こういうふうに言ってるんですよ。このアジアのいわばなぐり込み隊だと思うんですが、こういうものの機能が著しく高まったんだ、こう言っている。これに対して、内容的には全然これはタッチしないというんですか。もう一つは、この中で重要な問題は、太平洋全域にこれは使うというので、そうすると、これは安保条約のワク内の軍隊だということにならないと思うのでありますが、この二点について、これは外務大臣の御答弁を願いたい。
#54
○国務大臣(愛知揆一君) この種の問題は、しばしばアメリカの軍当局などが言うておることでございますが、日本の本土において、そして返還後の沖繩においては安保条約の目的に応ずるように施設・区域を当方が提供するわけでございますから、その中での、たとえば訓練というようなことについては、こちらとしてアメリカ側が自由にやることは当然のことであると考えますけれども、その軍隊が安保条約交換公文によりまして、一定の装備、配置の変更、あるいは戦闘作戦行動に出るときには、これは事前協議の対象になる。そして事前協議の対象になった場合において、これは観念的な問題ですけれども、日本としてたいへんだということがあれば、これはイエスと言うこともあり得るということは従来から申し上げておるとおりでございまして、軍隊の装備等について、あるいは性格等については、両国政府で了解されている事項についての事前協議の対象になるもの以外については、安保条約の目的内において施設・区域が使われるということは、これは私は自然の成り行きであろうと考えます。
#55
○岩間正男君 安保条約のワク内といっても、これははっきりしているんじゃないですか。当然これは第六条の施設・区域の提供のこの条項によっていまの事前協議ということをあなたは問題にされているんですが、私はそれ以前の問題だと思うんです。安保全体のこれは問題だ。安保全体の中で、安保の目的というのは、日本の安全並びにアジアの安全、そういうことを言っていますが、太平洋全域の安全などということはうたっていない。これは安保国会の中でたいへんな論議を起こした問題でしょう、「極東」の範囲の問題は。ところが、チャップマンの証言によりますと、太平洋全域、いかなる太平洋の地域にも海兵隊を緊急派遣することができる体制をとっていると。ですから私は、ここのところは非常に論点が違ってくると思う。あなたはいつでも「事前協議」を持ってくれば万能だと思っています。ところが、事前協議は限定があると思うんです。こういうことでしょう。安保第六条、これは一体何をきめているんですか。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」となっている。それはすなわち、この「施設及び区域を使用することを許される」のは、日本の安全及び極東の平和及び安全の維持に寄与することを目的とする限り、これは米軍が使える。ことばをかえれば、日本の安全及び極東の平和及び安全の維持への寄与ということが施設・区域を使用するための要件になっている。これは当然のことだと思いますから、これは言うまでもなく、先ほどの外相の御答弁で、これによって施設・区域を使っておるんだということは、これはお認めになりますね。
 そこでお聞きしたいんですが、そうすれば、安保六条を認める限り――もちろんわが党はこれに反対しています。しかし、あなた方はこれを支持されている。支持された以上、日本の施設・区域を使用する米軍は、日本の安全、極東の平和、安全の維持への寄与を目的としたものでなければならないことは明らかだと思います。それをはみ出すものは施設・区域を使用する要件を欠くものだ。つまり、施設・区域を使用する資格がないということになると思う。外務大臣は、事前協議という制約があるから、それをもって十分じゃないかということを先ほどから言われたわけですか、事前協議ができるのは、施設・区域の使用を前提として初めてこれはなし得ることだ。だから、すなわち、事前協議は、「条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文」、に限定されているわけです。施設・区域の資格に欠けるものにとって、施設・区域の使用を前提とする事前協議などを問題にするということはおかしいですよ。それ以前の、安保の基本的な目的、性格、そういうものからこの問題を決定しなければならぬと、こういうふうに思う。いままでは、事前協議があれば何でもまかり通るような論議をやっていますが、それは間違いです。限定さるべきです。こういうことですから、私はこの点をはっきり明確にする必要があるのじゃないか。チャップマンの証言はまさにこのことを、太平洋のいかなる地域、太平洋全域にわたって、いまや緊急事態が起これば急速にこれに即応して展開することができる軍隊と。これは日本の本土においてもこの訓練をさしたり、しかも発進部隊の基地に許しておるということはどういうことになりますか。それで間違いないということになりますか。
#56
○委員長(松平勇雄君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#57
○委員長(松平勇雄君) 速記をつけてください。
#58
○国務大臣(愛知揆一君) 議論を正確にいたしますために、まず現状の沖繩については、アメリカの本土並みでございますから、これはまた別問題。それで返還後の場合と本土とが同じでございますけれども、安保条約の目的のために施設・区域を提供しておる、これは御承知のとおりでございます。それから、そこにおるところの軍隊の装備等について、核はいけませんとか、戦闘作戦行動の命令を受けて出ていくことはいけませんとか、つまり、事前協議の対象になるわけですね。そこに制約を置いておるわけでございますから、そのほかの装備というようなことについては制約は置いていないことは言うまでもないことであります。それから同時に、まあ軍隊の性格からいって能力というものはそれぞれにあると思いますけれども、その活動が制約されるというのが、私は安保のワク組みの中でその行動や装備が制約される、こういうことでございますから、返還後の沖繩ということになれば、本土と全く同じそういう解釈でいくべきものである、かように存じます。
#59
○岩間正男君 一点だけ。
 私は適用範囲のことを聞いている。この適用範囲は、いままでの国会の論議で、安保の適用範囲というものはずいぶん論議された。一カ月も論議されたもんです、いまから十一年前に。そのときは、政府は最後の統一見解として、フィリピンから北、そうして中国沿岸は含まない、沿海州は含まない、そういう地域をわざわざ統一見解として出したわけでしょう。ところが、それがいつの間にか破られて極東の範囲が広がっている。しかし、太平洋全域に及ぶそのような軍隊、それに緊急に即応できる「イオージマ」型強襲揚陸艦という、これには常時海兵隊は乗っているのでしょう。そうしてこれは遊よくしている。そうして緊急事態には直ちに上陸できる、その演習をやっているわけでしょう、東富士で。そうでしょう。何回もやっているわけですよ、もう。もう半年――延べ期間にするというと、一昨年の八月から昨年の八月、あなた方が出した資料によりますと百八十六日です。そうしてしかも、これは東富士演習場というものは、いまから三年前に自衛隊に返還したはずなんです。返還した基地を米軍が二条四項の(b)、こういうものを逆用して、そうしてこういう協定の中で全面的に使っているでしょう。農民との協定さえ破っている。そうして訓練をやっている。そういうことは少しもかまわないのですか。その軍隊が太平洋全域の中に及んでいる。だから、二つの問題があります、どうしたって。この性格そのものがはたして一体安保の目的に適用するのか。もう一つは、これは本土に展開する区域は太平洋全域で差しつかえないと、こうおっしゃるのですか。この点、明確に御答弁願いたいと思います。
#60
○国務大臣(愛知揆一君) 沖繩が返還になりましても、かねがねの政府の統一見解は変わりません。極東の範囲はあのとおりで、広げることは毛頭ございません。
 それからもう一つは、先ほどもちょっと申しましたが、その軍隊の能力ということからいえば飛べる能力も持っているかもしれませんけれども、それは安保のワク組みの中で――能力があるとしても、これを安保条約の適用、安保条約の性格のワク組みの中で制約をし、限定をするというのが安保条約の趣旨でございますから、そういう点は御心配ないと思います。
#61
○委員長(松平勇雄君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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