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1970/03/26 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第10号
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1970/03/26 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 外務委員会 第10号

#1
第065回国会 外務委員会 第10号
昭和四十六年三月二十六日(金曜日)
   午後一時十六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         松平 勇雄君
    理 事
                石原慎太郎君
                長谷川 仁君
                山本 利壽君
                西村 関一君
    委 員
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                増原 恵吉君
                三木與吉郎君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                浅井  亨君
                岩間 正男君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省経済局長  平原  毅君
       外務省条約局外
       務参事官     山崎 敏夫君
       外務省国際連合
       局長       西堀 正弘君
       大蔵大臣官房審
       議官       吉田太郎一君
       労働大臣官房長  道正 邦彦君
       労働省労働基準
       局長       岡部 實夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小倉  満君
   説明員
       外務省アメリカ
       局外務参事官   橘  正忠君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○最低賃金決定制度の創設に関する条約(第二十
 六号)の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出、衆議院送付)
○開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決
 定に関する条約(第百三十一号)の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際労働機関の総会がその第三十二回までの会
 期において採択した諸条約の一部改正で条約の
 運用に関する報告の国際労働機関の理事会によ
 る作成に関する規定の統一を目的とするものに
 関する条約(第百十六号)の締結について承認
 を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国と
 の間の条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (中国代表権問題に関する件)
 (インドシナ情勢に関する件)
 (沖繩の施政権返還交渉に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松平勇雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 最低賃金決定制度の創設に関する条約(第二十六号)の締結について承認を求める件
 開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第百三十一号)の締結について承認を求めるの件
 及び
 国際労働機関の総会がその第三十二回までの会期において採択した諸条約の一部改正で条約の運用に関する報告の国際労働機関の理事会による作成に関する規定の統一を目的とするものに関する条約(第百十六号)の締結について承認を求めるの件
 以上三案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#3
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました「最低賃金決定制度の創設に関する条約(第二十六号)の締結について承認を求めるの件」につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、一九二八年六月十六日に国際労働機関の第十一回総会で採択されたものであります。その内容は、労働協約その他の方法により賃金を有効に規制する制度が存在しておらず、かつ、賃金が例外的に低い若干の産業分野の労働者のために最低賃金決定制度を創設しまたは維持すべきこと、並びに各国は、最低賃金決定制度の性質、形態等を決定する自由を有するが、制度の適用にあたっては関係労使等と協議すべきこと、制度の運用への労使の参与は平等であるべきこと、及び、決定された最低賃金率は関係労使を拘束することを条件とするものであること等最低賃金決定制度に関し基本的と考えられる原則について規定したものであります。
 わが国におきましては、主として最低賃金法により、条約にいう最低賃金決定制度は確立されているところであり、また、条約において規定される最低賃金決定制度に関する諸原則もすべて充足されているところでありますので、この条約を締結し右の事実を国際的に確認することは、わが国の最低賃金制度の推進をはかる上からも、また、労働問題の分野におけるわが国の国際的地位を高める上からも、きわめて有意義であると考えます。
 次に、「開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第百三十一号)の締結について承認を求めるの件」につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、一九七〇年六月二十二日に国際労働機関の第五十四回総会で採用されたものであります。
 この条約は、その前文にもありますとおり、一九二八年の最低賃金決定制度条約等を補足するものであり、一般的に適用されますが、開発途上にある国の必要を特に考慮したものであって、その内容は、雇用条件に照らし対象とすることが適当である賃金労働者のすべての集団について適用される最低賃金制度を設置すべきこと、及び、一九二八年の最低賃金決定制度条約に規定されておりますような最低賃金決定制度に関する諸原則に加え、最低賃金の水準の決定にあたって考慮すべき要素等について規定したものであります。
 わが国におきましては、主として最低賃金法により条約にいう最低賃金制度は確立されているところであり、また、条約において規定される最低賃金決定制度に関する諸原則もすべて充足されているところでありますので、この条約を締結し右の事実を国際的に確認することは、一九二八年の最低賃金決定制度条約の締結と相まって、わが国の最低賃金制度の推進をはかる上からも、また、労働問題の分野におけるわが国の国際的地位を高める上からも、きわめて有意義であると考えます。
 最後に、「国際労働機関の総会がその第三十二回までの会期において採択した諸条約の一部改正で条約の運用に関する報告の国際労働機関の理事会による作成に関する規定の統一を目的とするものに関する条約(第百十六号)の締結について承認を求めるの件」につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、一九六一年六月二十六日に国際労働機関の第四十五回総会で採択されたものであります。その内容は、一九四九年の第三十二回総会までに採択された諸条約につきましては、理事会は、それぞれの条約に定める五年または十年の期間ごとに、当該条約の運用に関する報告を総会に提出し、また、当該条約の改正問題を総会の議題とすることの可否を検討することになっているものを、理事会が必要と認めるときにこれを行なうことに改めるものであります。これにより理事会による前記の諸条約の運用報告の作成及び改正問題の検討が第三十四回総会以後に採択された諸条約と同様に弾力的かつ効率的に行ない得るように在りますことは、きわめて望ましいものと認められます。
 わが国は、この条約による修正の対象となる条約のうちすでに二十四の条約を批准しておりますが、これらの二十四の条約についてこの条約に規定する修正を認めることが必要であり、また、今後この種の条約でわが国が未批准のものを批准する場合にもこの条約による修正を認めておく必要があると考えます。
 以上、三件につきまして御承認を求める次第であり、ます。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(松平勇雄君) 引き続き補足説明を聴取いたします。
 山崎条約局参事官。
#5
○政府委員(山崎敏夫君) ILOの三条約につきまして一括して簡単に補足説明を申し上げます。
 まず、最低賃金決定制度の創設に関する条約――第二十六号条約でありますが――この条約は、最低賃金制度に関する基本的な諸原則を規定したものでありまして、かつ、ILOの基本条約の一つでもありますので、政府といたしましては、昭和三十四年に最低賃金法が制定されました当時から、早急に批准する方針でございましたが、同法に規定されている業者間協定方式につきまして第二十六号条約の規定に厳密に適合するかどうかにつきまして疑義を表明する向きもありましたので、しばらく批准を見合わせておりました。しかるに昭和四十三年の最低賃金法の改正によりこの方式が廃止されまして、さらに中央最低賃金審議会の最低賃金制度のあり方についての最終答申も昨年九月に出されましたので、本条約の批准を行なうため今回国会に提出いたした次第であります。
 次に、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第百三十一号条約)は、昨年の総会で採択されたばかりでありまして、第二十六号条約が採択されました一九二八年以降の世界各国における最低賃金制度の趨勢にかんがみ、同条約を補足するため作成されたものであります。この条約は、その表題にも見られますように開発途上にある国の必要をも考慮したものでございますが、内容的には、先進国であると開発途上国であるとを問わず、すべてのILO加盟国に適用できる条約でございまして、第二十六号条約において規定されておりますような最低賃金決定制度に関する諸原則に加えて最低賃金の水準の決定にあたって考慮すべき諸要素等についても規定しております。この第百三十一号条約につきましても国内法との適合について問題はございませんので、今般第二十六号条約とあわせて批准の手続を進めることが適当であると考えた次第であります。
 最後に第百十六号条約につきまして申し述べます。この条約は、先ほどの提案理由でも明らかなとおりきわめて技術的なものでありまして、要するに、条約の運用に関する理事会の総会に対する報告及び条約改正問題を総会の議題とすることを弾力的に行なうことによって理事会及び事務局の負担の軽減をはかろうとするものであります。したがいまして、この条約の批准につきましても、その改正の対象の一つとなっております第二十六号条約を今回国会に提出する機会にあわせて国会の御承認を求めることとした次第であります。
#6
○委員長(松平勇雄君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。
 御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#7
○西村関一君 三条約につきまして一括して質疑をいたします。
 最低賃金決定制度に関するこの条約は、一九二八年にILOにおいて採択され、一九三〇年に効力を生じてからでも四十年を経過し、すでに七十八カ国がこれに批准をしているものでございますが、わが国がこれまでこの条約を批准しなかったのはどういう理由からでございましょうか。
#8
○政府委員(西堀正弘君) 仰せのとおり、本条約が成立いたしましてから四十数年わが国は批准いたさなかったわけでございますが、その理由につきましては、先ほど山崎参事官からちょっと触れましたとおりでございます。詳細な国際法上の問題につきまして、要すれば労働省のほうから御説明を願ったほうがいいかと存じますけれども、ごく簡単に申し上げますると、法律的には国内法の整備が完了いたしまして、理論上もそれから実際上も全く疑問点が解消したというのが実は昨年の九月であった次第でございます。それから政治的には、同様に昨年の九月に中央最低賃金審議会におきまして、今後の最低賃金制度のあり方につきまして政・労・使の間にコンセンサスが成立いたしました。さらに昨年の十二月回審議会におきましてこの第二十六号条約の批准を進めることにつき賛同が得られた。こういう事情でございまして、今回、何らの疑問ないし問題点なく批准について国会の御承認を求めることができるようになった次第であります。
#9
○西村関一君 今回各方面のコンセンサスを得て批准に踏み切ったということはけっこうでございますが、なぜ四十数年間も批准に踏み切れなかったかということにつきまして、労働省からお答えをいただきたいと思います。
#10
○政府委員(岡部實夫君) この条約は四十年前に採択をされましたことは御指摘のとおりでございまして、国内の労働関係は、これはまた御存じのごとく、戦前におきましてはいわゆる近代的な労働諸立法の整備も十分なされておらない状態でございました、率直に申しまして。それで、最低賃金制度の問題につきましては、戦後具体的にいろいろな各方面の要望もあり、最低賃金制度をわが国に導入するということについての問題が現実な具体的な問題になってまいりました。私どもも、いろいろな機関を通じて御意見をまとめながらどういう形のものをつくったらいいかということに相当長い年月を要したわけでございますが、昭和三十四年に初めて最低賃金法を制定する運びになったわけでございます。それからさらに、今日まで相当時間を経過したわけでございますが、その三十四年のときの立法におきましては、わが国の最低賃金制がいわゆる業者間の協定による最低賃金の実施ということを中核としたものでございまして、条約に示された実効ある最低賃金の制度として示されたところと比べまして、特に労働者、使用者の参加という面から見まして若干疑点が残されて、かつ、それが指摘されてまいったわけでございます。そこで、そういう疑問がある段階で条約の批准をすることは妥当でないということで、中央最低賃金審議会にさらにその問題を預けましていろいろ御審議を願った。そこで、四十三年に至りましてそういう疑点のあるところを全部廃止いたしまして、新しくいわゆる労働協約の拡張適用にある方式と最低賃金審議会方式、この二本立てにいたしまして、労使が平等の立場でその決定に参与するという仕組みを入れた新しい立法を修正してつくったわけでございます。そこで、さらにこの具体的な運営につきましても中央最低賃金審議会からいろいろ方針が出されておりまして、それらの運用の実体面ともあわせまして、先ほど国連局長から話がございましたように、条約の条項と完全に要件を満たすということに相なりました。中央最低賃金審議会の御意見も承りその賛同を得まして本日提出したわけで、そのおくれました理由は以上のような経緯でございます。
#11
○西村関一君 次に、百三十一号条約についてでありますが、「開発途上にある国のことを特に考慮した」ということでございますが、どういう点が考慮されたのでありますか。
#12
○政府委員(西堀正弘君) 実はこの表題を読みますというと、「開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約」とありますので、非常に開発途上にある国に関する条項が所々方々に出てくるような実は印象をお与えしたかと存じますけれども、その意味におきまして、この表題、若干これについて言いますれば、ミスリーディングではないかと、私考えるんでございますけれども、実はこの開発途上国に関連する条項と申しますのは、この条約の第三条、五ページにございますところの(b)項に、「経済的要素」とございまして、その中に「経済開発上の要請」という要素が入れてございます。要するに、最低賃金の決定基準の一要素としてこの「経済開発上の要請」というものを考慮するのだ。もちろんそれは、その第三条の前文のところにございますけれども、「国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り、次のものを含む。」、こういった前文がかぶっておりますので、わが国のような場合にはこれはかから良いわけでございますけれども、したがいまして、この「開発途上にある国を特に考慮した」という条項は、この第三条の(b)項の一項目である「経済開発上の要請」、これがある、これだけでございます。
#13
○西村関一君 第三条(b)項とわが国との関係はどういうところにありますか。
#14
○政府委員(西堀正弘君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、「最低賃金の水準の決定にあたってその考慮すべき要素」として、この第三条に(a)項と(b)項があげられているわけであります。しかも、その考慮するにあたりましては、それぞれの「国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り」次の要素を考慮する、こういうことになっておりますので、わが国のような先進国の場合におきましては、この「経済開発上の要請」といった要素は考慮の外である。また、現実問題といたしましても、わが国の国内法でありますところの最低賃金法におきましては「経済開発上の要請」といった要素は考慮する中に入っていないのでございます。国内法のほうにおきましても三条に考慮すべき要素が掲げられておりますけれども、この「経済開発上の要請」という要素は国内法においても入れてない次第でございます。
#15
○西村関一君 まあ、まことに素朴な質問でおそれ入りますが、いまの御説明によりますと、この百三十一号条約を特にわが国が批准しなければならない理由はどこにあるのですか。
#16
○政府委員(西堀正弘君) これは百三十一号条約の前文をお読みいただくとはっきりするのでございますけれども、第一ページのうしろのほうから二行目でございますが、この百三十一号条約は第二十六号条約を補足するものである。また、この百三十一号条約の第六条でございますが、「この条約は、現存するいずれの条約をも改正するものとみなしてはならない」と規定されておりますとおり、第二十六号条約は従来どおりの効力を持ってこの百三十一号条約と併存し、そうして批准のために引き続き開放されているわけでございます。で、要するに、この百三十一号条約は第二十六号条約が一九二八年に採択されましてから相当の時間経過いたしておりますので、この際、この最低賃金関係諸条約とともにこれらの条約を再確認の上若干補足をする、いわば補完をする、しかも、その開発途上にある多くの加盟国の事情も考慮して、もちろん、その条項は、いま申し上げましたようにわずか一項目ないし一要素でございますけれども、そうして採択されたものであり、したがいまして、わが国の現行国内法には、先ほど説明がありましたとおり、すでにこの条約の内容を充足しているところでございますので、かねてからの懸案の第二十六号条約の批准の機会に合わせましてこの百三十一号条約も批准いたしまして、そうしてわが国の最賃関係諸条約批准問題に一応のけりをつけよう、こう考えた次第でございます。
#17
○西村関一君 この条約を批准するにあたって国内法との関係において問題はない、こういうことが理由にあげられておりますが、ILO諸条約を批准することについて国際的に日本はどのくらいの水準にありますか。ILO条約は百三十何本かあると思うのですが、そのうち、さっきの趣旨説明の中にも、わが国が批准しているILO関係の条約については何本あるというお話があったように記憶しておりますが、正確にその点おっしゃってくれませんか。何本のうち何本批准しているか。
#18
○政府委員(西堀正弘君) 昨年の秋に行なわれました第五十五回のILOの総会までにILOは百三十四の条約を採択いたしております。で、このうちわが国がすでに批准を了しましたものは二十六でございます。したがいまして、現在三つの条約について御審議をお願いいたしておりますので、これを批准いたしますというと二十九ということになるわけでございます。そういたしますと、採択された条約が百三十四でございますから、わが国の未批准の条約は百本余りあるわけでございます。この中には、ただし、その採択後数十年を経てもまだ発効していないといった条約もございます。それから、その内容が別の条約、それから改正条約によって置きかえられてすでに廃棄されてしまった条約、これは入ろうにもその条約は加入のためにオープンされておりませんで、もう廃止されてしまった条約、それからまた非本土地域関係――と申しますことは、植民地を有するような国についてのみ適用のある、いわばわが国に全く関係のない条約、そういったものもございます。そういった条約が約四十本ございまするので、したがって、先ほど申しました、わが国の批准をしていない条約が百本あまりと申しましたけれども、正確に申しますと、これらの条約を差し引きますと、批准の可能性につきまして政策上検討の対象となり得るものは約六十本ということになるわけでございます。
 それから、先生お尋ねの、そのほかの諸国と比べて一体わが国の批准状況はどうであろうかという御質問に対しましては、ILOの加盟国は現在百二十一カ国ございます。で、そのILO条約の平均の批准数は、本年の一月一日現在で三十強でございます。例をあげてみますと、ILO理事会の常任理事国の批准数は、たとえばフランスの八十一、それからイタリアの六十七、イギリスの六十五、ドイツの四十をはじめとしてかなり高いことはいなめない事実であります。したがいまして、いま国会で御承認を求めているものを入れてわが国は二十九でございますから、いわば百二十一カ国の全加盟国の条約批准数の平均にはようやくかつかつで達するといった状況でございますが、しかし、ここでひとつぜひお聞き取り願いたいと思うことがあるのでございますが、それはILO条約、特にその初期に成立いたしましたものは、一般にヨーロッパ諸国の特殊な労働慣行を反映いたしておりますために、その趣旨について問題がなくても、細部において技術的な問題を含むものが少なくないわけでございます。ヨーロッパ域外諸国、たとえば米国は、いままでに批准いたしましたものは七、カナダは二十四、それからインドは三十といったように、既批准条約数が軒並みに少ないという事実がございます。さらにまた、わが国におきましては、ほかの条約の場合においてもそうでありますように、ILOの条約を批准する前に、当該条約を厳密に解釈いたしまして、国内法が条約に適合しているということを確認し、また、労働者、使用者、政府――政・労・使の三者の間で十分に了解に達した上で批准するという慣行がございます。したがいまして、わが国は批准の速度は決して速いとは申せませんけれども、着実に批准問題を推進しているということもまた事実でございます。いずれにいたしましても、今後のわが国の立法政策にも照らしまして、国内法の整備に合わせてその批准に積極的態度をもって取り組んでいきたいと考えておる次第でございます。
#19
○西村関一君 ILOの条約が成立してから、ヨーロッパの特殊事情ということが多分にその要素の中にあるということでございまするが、具体的に申しますとどういうものがあるのですか。労働省からお答え願えませんか。
#20
○政府委員(岡部實夫君) 労働慣行といたしまして、たとえば一番典型的なのは休暇等の問題でございまして、これは最近有給休暇の条約等も採択されましたけれども、非常に長期間連続して休暇をとるというような、これは一般慣行といたしましても相当あります。そういうようなことで、日本は休暇を続けて長い期間一ぺんにとるというような制度は必ずしも習熟しておらぬ。それからあとは、直接にいろいろ関連いたしまする、たとえば労働基準法の関係等からいきますと、これは母性保護等の問題につきましては、基準法で原則的には大体ILOの条約の基準とマッチいたしておりますけれども、ただ、その適用にあたりまして、細部について、日本の慣行、労使間のいろいろな取りきめによって例外が認められるような規定がありましたが、そういうような規定が排除されている。そういう具体的適用の細部についていろいろな違いがあるというようなことがいわれております。
#21
○西村関一君 いま例としてあげられました女性労働の慣行について、わが国と違うことはどういうことですか。
#22
○政府委員(岡部實夫君) 母性保護につきましては、原則が産前産後の休暇十二週を原則としてとるということになっております。ただ、わが国の場合には、その原則はそのとおりでございますけれども、例外として、産後についての五週間後は、本人が請求した場合には就労させることができるというようなことを規定しております。そこいら辺の細部の規定が必ずしも一致しておらないということです。
#23
○西村関一君 それは基準局長として、わが国国内法規に従って女性労働者の立場を保護されているという点に立っておられると思うのでございますが、女性労働者の側からはこの問題に対して要求などは出ておりませんですか。
#24
○政府委員(岡部實夫君) この問題につきましてはいろいろ意見がございます。一つは、やはり最近の女性の職場進出、あるいは職場における女性の地位の向上、確保という要請が非常にございまして、そういう意味では、あるいは管理監督的なものについては、自分の判断によってそういったいわゆる保護規定についての適用もある程度緩和することが望まれるというような意向もございまして、またもう一つには、それとは別の意味でいろいろ例外規定というのは排除して厳密に適用すべきだという両方の意見がございます。
#25
○西村関一君 まあ、いずれの場合でも両方の意見があるわけですね。それはやはり女性労働者を保護するという立場から労働基準局が置かれておると思うんですね。そういう立場から客観的に見て、ILO条約――国際労働機関が国際的な視野に立って出している条約は一応国際的な水準に立つ取りきめだと思うんでございます。そういうものと、日本では国内法並びに国内慣行というものが合致しないから問題があるんだ、批准が進まないんだということではちょっと納得がいかないんでございますが、そういうことと、もう一つは、西堀局長の御答弁の中に、従来から三者構成ですね、労働者、使用者側、公益側という三者の意見がまとまらないので踏み切れなかったというような御答弁もありましたが、その点、諸外国の例はどうでございますか。
 局長、どうですか、この二つの点。
#26
○政府委員(岡部實夫君) 最初の点は、いろいろの意見があることは御指摘のとおりでございますが、特に基準法の問題につきまして、全般的にいまいろいろ研究会で研究をお願いしておりますが、たとえばいまの母性保護の問題につきましても、どこまで母性保護を貫いていくのかということとの関連、たとえばいまの基準法では有害業務についての女子の就業制限を年少者と同じ規定をしておるわけでございます。しかし、だんだん作業もいろいろ機械化されてまいった場合に、必ずしも女子を年少者と同じような角度から一定の就業制限をすることが妥当であるかどうかというような意見もいろいろ出ておりますが、要は、そういう女性の職場におけるいろいろな職業につく機会がふえてまいる。また、それを確保すると同時に、女性労働者の保護をどうするかという、その両方の接点といいますか、調整の問題になってまいると思いますので、方向といたしましては、女性労働者の保護をどうはかっていくかという基本はございますけれども、それと同時に、就労の場における具体的な調整ということもあわせて考えていくべきであろうというふうに思っております。
 それから第二の点につきましては、労働関係の諸立法並びに制度につきましては、ほとんとが関係者の参与または参加というふうなものを得て、あるいはその意向が十分反映するような形で進められてまいっておるわけです。本件の問題につきましても、最初の立法ができましたときから、三者――公益、労使、三者の代表による審議会を設けておりまして、基本的な重要事項につきましては、すべてその審議会の意見を聞いてやっておるということでございますので、その審議会の意見も、先ほど申しましたように、批准をすることは妥当であろう、こういうことになったことを申し上げております。諸外国におきましては、やはり労働関係の問題については、おおむね三者の意見をいろいろ調整しながらやっておるところでございます。それぞれの制度はそれぞれの国の実情に適してやっております。
#27
○西村関一君 いまの労働省の答弁からいきますと、西堀さんの言われた点は、日本が批准がおくれておる理由の半分は成り立たない、外国も同じことだということが言えると思うのでございます。そういうことになると思うのでございますが、私は調整ということは必要だと思います。調整は必要だと思いますけれども、どちらかといえば、母性保護、女性労働者の保護、これは少年と同様には扱えないということでございますけれども、また、母性を保護していく、女性労働者の母性を保護していくということは、違った意味において大事だと思うんですが、調整は必要だと思いますけれども、そういうことについて、私は法規には詳しくございませんけれども、国内法ではどうなっておりますか。
#28
○政府委員(岡部實夫君) 女性につきましては、労働時間の問題、特に深夜業を禁止するとか、それから、先ほどちょっと触れました有害業務についての就業の制限とか、そういうことがございます。たとえば、もう一つ生理休暇等についても一応の規定を置いておりますが、これらは法的に規定しておるのは諸外国にはほとんど見られないというようなものもございます。いずれにいたしましても、女性保護の点につきましては、現行基準法では、いま申しましたような時間あるいは仕事の中身、それから母性としての保護というような面について、ただいま申しましたような保護規定を置いております。
#29
○西村関一君 私の質問は、ILO関係の諸条約の批准がまだ諸外国と比べて十分でないと、批准の速度が十分でないという点から、どういう点が引っかかっておるんですか、どの点にどういうふうに引っかかっておるんですかということからいまのような問題が出てきたと思うのでございます。そういう点につきましてお答えを求めておるわけです。とにかく百三十四本のうち、いま審議をいたしております条約を除けば二十六という数でございます。ILO条約のうちまだたくさん残っておるわけなんでございます。少なくともいまの御説明によりますと、四十本を除いても六十本残っておる。そういうもののうちどの条約を今後締結していこうという考えでおられますか、どういう予定がありますか、その点を伺っておきたいと思う。
#30
○政府委員(道正邦彦君) わが国がILOの憲章を認めまして加盟国になっております以上、できるだけ多くの条約を批准することは当然だと思います。ただ、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、国内法との関係でなかなか問題が多い条約もございます。ただ、中にはそう大きな抵触なしに批准に踏み切れるものもございます。現に私どももそういう条約について検討いたしております。一例を申し上げますると、一九六四年、四十八回の総会で「雇用政策に関する条約」(百二十二号)というのが採択されておりますが、雇用条約につきましては若干検討を要する点がございますけれども、近い将来に批准に踏み切れるだろうと考えております。同じように、その他若干の条約につきましていま検討を急いでおりまして、なるべく早い機会に国会の御承認を得、批准に踏み切りたいと考えております。
#31
○西村関一君 いま官房長の言われた検討中の条約はどういうものがありますか。
#32
○政府委員(道正邦彦君) ただいま申し上げました「雇用政策に関する条約」(百二十二号)、ほかには、たとえば、「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」、これは百十一号条約でございますが、あるいは「業務災害の場合における給付に関する条約」(百二十一号)、それから「社会保障の最低基準に関する条約」(百二号)、「農業における労働監督に関する条約」(百二十九号)、「農業に於ける最低賃金決定制度に関する条約」(九十九号)等でございます。
#33
○西村関一君 強制労働の廃止に関する条約については労働省としてはどういうふうな見解を持っておられますか。
#34
○政府委員(道正邦彦君) 題名の示しますとおり、強制労働がいいわけはございませんので、強制労働の廃止という趣旨につきましては私ども全く異論がないわけでございます。ただ、公務員関係の規定等につきまして、ものによりまして、罰則に懲役刑等が含まれておるものもございまして、このILOの解釈によりますと、そういう懲役というものは強制労働に入るというような解釈もなされておるようでございますので、そういう点につきまして、国内法との関係で批准に踏み切られないと申しますか、さらに検討を要する事項がございます。そういう意味でいま直ちに批准には踏み切れないというのが現状でございます。
#35
○西村関一君 私は、この条約の批准について問題があることは幾らか承知しているつもりでございますが、しかし、少なくとも国際労働機関のILOですから、いろんな各国の事情があるにしても、特にわが国の事情があるにしても、政府の方針もあり直ちに批准に踏み切るという結論が出ないことはわかっておりますけれども、よく検討していただきたいと思います。よろしいですか。
#36
○政府委員(道正邦彦君) 私どもも、条約の批准を検討する場合には各方面の御意向も十分承って作業をいたしておりまするけれども、なかんずく国会の御意向は最重点にいたしまして今後も作業を続けてまいりたいと考えます。
#37
○西村関一君 次に、最低賃金とは何であるかということでございますが、いろいろ解釈があると思いますが、この点、労働省としては最低賃金とは何であるかということについての見解を述べていただきたい。
#38
○政府委員(岡部實夫君) 私ども最低賃金法によりまして考えておりまする「最低賃金」は、この法律によりまして最低賃金が適用される、その示されるその額を下回って適用労働者に賃金を支払ってはならないという、使用者がその適用を受けている労働者に支払う最低額の賃金のことを「最低賃金」と称しております。
#39
○西村関一君 どうも私には労働法規の解釈についてはふなれですからよくわからないのですが、一体どういう層にあるところの労働者を対象にしておられるのですか。たとえば学歴からいうならば、義務教育を終えた者であるとか、業種からいうならばどのくらいの業種に働いている労働者を対象にしているのか、あるいはまた、最低賃金というのは、国民所得の水準、平均賃金、そういうものを基準にして考えているのか、しろうとにもわかるようにひとつ説明していただきたい。
#40
○政府委員(岡部實夫君) 私どもは、賃金は、日本のいまの労働関係諸法規におきましては、原則として、労使が自主的に交渉によってきめていくということを前提といたしております。それに対しまして最低賃金法においては、そういう労使のきめる賃金について、その下ざさえをするという意味で、それ以下の賃金を支払ってはならないという額を示しておる。その額につきましては、いまどこを基準にというお話でございますが、最低賃金法の第三条のところで、「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならない」ということになっておりまして、具体的には中央審議会からこれを具体化するいろいろな考え方が示されております。法律的には、それを受けましてたとえば第十一条に、労働大臣が労働協約に基づく地域的な最低賃金を審査してきめる場合の制度、それから十六条には、賃金審議会によってやはり最低賃金をきめるという、この二つの制度を置いておるわけです。具体的には、産業別あるいは職種別または地域別にある労働者の集団ごとに最低賃金がきめられるということにいまなっておるわけでございます。そこで、そのグループごとに、そのグループに適用される最低賃金の額を、さっきの三条の規定によりまして、どこに定めるかということをきめるわけで、したがいまして、一がいにどの労働者の層をということは申し上げられませんが、最低賃金制度の実態から申しまして、通常労働者の賃金よりも著しく不当に低いようなことを引き上げるという意味でございますので、低所得層のところが現実には対象になる。ただ、日本の賃金の構成はいわゆる年功序列というような形になっておりますので、初任給等の例がその一つの基礎的な資料として十分活用されてまいると、こういうことになろうかと考えます。
#41
○西村関一君 地域的、集団的グループの、まあ平均以下のものはいけない。それを平均以下にならないようにするということはわかります。これはだれがきめるのですか。自主的に労働者と雇用主とが話し合ってきめるということなんですか。
#42
○政府委員(岡部實夫君) 二つの方法がございまして、一つは、十一条によりまして、「一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の大部分」がある協定の適用を受けまして、労働協約の適用によって最低賃金がきめられている場合に、それを労働大臣が、または地域別には各都道府県ごとには労働基準局長がそれをオーソライズしてその最低賃金をきめる方式と、もう一つは、二都道府県以上にまたがるものは中央の最低賃金審議会、一都道府県内のものにつきましては都道府県の労働基準局長が、事業、職業または地域について、賃金の低廉な労働者――これは十六条にございますが――低廉な労働者の保護をはかるために必要な場合に最低賃金を決定する、その場合には、それぞれの中央及び地方の最低賃金審議会の議を経てきめると、こういうことになります。
#43
○西村関一君 最低賃金決定制度は、業者間協定からいまの労働協約に移り、さらに最賃法の十一条方式というものがありますね。それによって中立委員、労働者、使用者からなる三者構成の審議会の答申に従って決定する審議会方式に移行しておるというふうに理解しているんですが、そうなんですか。
#44
○政府委員(岡部實夫君) 最初の法律のときには業者間協定でございました。その制度は廃止いたしまして、労働協約を拡張して適用していく方式――いまの十一条方式でございます。それと、十六条の審議会方式と、この二つに移行したわけでございます。
#45
○西村関一君 そういうやり方で、平均よりもひどく下回るような賃金にならないようにそれらの機関を通して最低賃金を決定していく、こういうふうに理解してよろしいですか。
#46
○政府委員(岡部實夫君) ただいま申しましたように、第一には、地域ごとには、その地の、ある産業等で非常に低廉の労働者の賃金があるという場合に、それを引き上げる必要があると認めたときに、そこに最低賃金制をしいていくということでございます。
#47
○西村関一君 その場合に、その地域や職域のグループの中で、平均賃金と最低賃金との格差というものがあると思います。そういうものをどのように取り扱っていくというのでしょうか。諸外国ではそういう場合にどうしているのか、そういう点も含めてお伺いしたい。
#48
○政府委員(岡部實夫君) 現実には、最賃法の第三条で、最低賃金をきめる場合の考慮すべき事項、いわば要素をきめております。その中に、「労働者の生計費」、それから「類似の労働者の賃金」、それから「事業の賃金支払能力」、この三つをあげております。現実には、たとえば何々県の機械金属労働者の最低賃金制度と、こういうことになるわけでございます。そこで、機械金属の労働者の賃金の統計資料、それから一般的な標準生計費等の資料等を参考にいたすわけでございます。その場合に、いまお話しの平均賃金の統計数字も当然参考にされてくる。ただ、最低賃金の意味合いから申しまして、平均賃金をそのままとるということではないわけでございます。
#49
○西村関一君 生活費の重要な要素になります物価ですね、物価の変動によって、一度きめた最低賃金というものが変わるものでしょうか。つまり、物価にスライドして最低賃金が上がるものでしょうか、どうでしょうか。
#50
○政府委員(岡部實夫君) ただいま、最低賃金そのものをきめる場合にはスライド制を採用いたしておりません。したがいまして、物価が上昇したからそれにスライドして上がるという性格のものではございませんが、きめられた最低賃金につきまして関係者が改定を申し出る、その他の法的な手続が法律によって規定されておりますので、それらの意見により、あるいは労働大臣また労働基準局長がイニシアをとって、実情に沿わなくなった最低賃金を改定していくという法律的な手続が定められて、それによって行なうことになっております。現実に、一定の期間ごとに改定をされておる実情でございます。
#51
○西村関一君 ILOの百三十五号勧告というのがありますね。これによりますと、最低賃金の随時調査、定期的調査、再検討などはどのような形で実際に行なわれているんですか。
#52
○政府委員(岡部實夫君) 勧告につきましては、いろいろなことが出ておりますが、最低賃金の水準を決定するための基準と、それから、さらにその制度の運用についていろいろございまして、最低賃金の調整ということで、最低賃金の額について生計費その他経済的条件の変化を考慮に入れて随時調整すべきであるということが示されております。そこで、これは勧告でございまして、私ども、この勧告も尊重しながら、いま言った、現実にどういう運用のしかたで調整をしていくかということが、先ほど申しました法律上改定の手続を規定いたしましたりいたしておりますが、それと同時に、当然のことでございますが、賃金がきめられたつど報告を受け、それを全国に知らせる等、その資料が十分活用されるようにいたしておるわけでございます。
#53
○西村関一君 一九七〇年の最低賃金決定条約(百三十一号)の第三条の中で、(a)項には、賃金決定の基準として「労働者及びその家族の必要」という表現があるんです。これは日本の賃金決定の基準と違っていると考えられるんですが、これはどういう考え方に基づいておるのでしょう。
#54
○政府委員(岡部實夫君) 「労働者及びその家族の必要」ということでございますが、わが国の最賃法は「生計費」ということになっておりまして、御指摘のように、規定の上からは「家族」ということを正式に規定はいたしておりません。ただ、現実にこの法律自体が運用されるにあたりましては、「生計費」と、それから、ここにございます「類似の労働者の賃金」というようなものを要素に入れる。「生計費」の場合には、当然、その世帯のある者については世帯の生計費ということになってまいると思うんです。ただ、仰せのように、先ほどもちょっと申し上げましたが、実際には、私ども最低賃金を現実に決定する場合には、日本の賃金制度が、先ほども申し上げましたように、年功序列型にもなっております。そのために、初任給、単身者の賃金のところが最低賃金と見合うようなケースが多いわけです。したがいまして、そういう点をとることが普通のケースになっております。ただ、御指摘の、最近の雇用事情その他から、単身者を中心にということも必ずしも十分でございませんので、現実には、年齢別に、あるいは家族構成別の賃金の指標等も押えながら、現実に運営しておる次第でございます。
#55
○西村関一君 最近は労働事情の変化によりまして、高年者の再就労ということもいわれておるし、行なわれておる。やはりいま審議しており、ますところの百三十一号条約の中の「家族の必要」という点について、いま最賃法の中の文言と実際の慣行と合わせてお話しになりましたが、労働条件は変わってきておりますから、この条約を批准するにあたってそういう点も考慮しなけりゃいけないんじゃないか。いかがですか。
#56
○政府委員(岡部實夫君) この条約の規定そのものは、「考慮すべき要素には、国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り、次のものを含む」と、こうなっておりますので、文言上は、この次の要素をどういうふうに組み合わせてつくるかは、国内の法にまかされているということになろうかと思います。
 そこで、現実には、しかし、ここに掲げられている要素は非常に最低賃金額を決定する場合に参考とすべきものであると思いますので、現実の運営にあたりましては、ただいま御指摘のような点を十分考慮に入れて決定をしてまいる。一部にはもうすでにそうやっておりますが、今後さらにそういう方向で運営してまいりたいと思います。
#57
○西村関一君 第三条の(b)項には「経済的要素」というのがありますが、これはどういうことを意味しているんですか。
#58
○政府委員(岡部實夫君) 「経済的要素」につきましては、これはこの条約が審議される過程並びに報告書等から推定いたしますと、全般については、専門家会議の報告書等においては、支払い能力、直接間接に支払い能力の反映する諸要素を言うものだと。ただ、どうしてそういう支払い能力というようなことをはっきり言わないかということについては、たとえば最低賃金の決定のための運用上の基準として厳密性を欠くと。で、支払い能力というのは、全体としての経済との関連において解釈されるべきであるというような報告書が出ておりますので、この「経済的要素」というのは、そういったことを経済全体の関連においてここで触れているというふうに思われます。
#59
○西村関一君 ただいまの説明は開発途上国ならば私は当てはまると思うのです。しかし、今日わが国は経済成長をなし遂げたといわれておる。そういう時点にあるわが国といたしまして、この最賃法の第三条の中に最低賃金の決定の原則というのがありますね。それによりますと、「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」というふうに規定されておりまして、経営者側の事情もその中に考慮されている、こういうふうに考えられるわけなんです。今日、いま申しましたように、経済成長を遂げた日本の実情から見て、もはや過去のものになっているんじゃないか、むしろそういうことにこだわる必要はないんじゃないか。そういうものにこだわらずに、元来の最低賃金決定の本質に返ってきめなければならぬのじゃないかと思いますが、いかがですか。
#60
○政府委員(岡部實夫君) その点につきましては、二つの点からこのように規定をしたわけでございます。一つは、賃金の基本的なあり方は、先ほど冒頭に申しましたように、労使が団体交渉等によってきめるということが一つの貫かれた原則になっております。そのうちで特に著しく不当に低いというようなものについては、これは労使の自主性にまかせるべきでない、それは介入をして下ざさえをすべきだということがございます。したがって、その下ざさえをする場合には、一つは、やはり各企業と申しますか、その支払い能力があると。要するに、交渉できめられる場合には、当然その支払い能力を考慮してきめられるわけでございますから、そういうことは考慮しなければならない。ただその場合に、個々の企業の独自のいわば単独の支払い能力だけを考えることは、これは片手落ちだ。そこで「通常の事業」と、こう書いてございますのは、経済的な発展段階に応じて当然各企業が要請される支払い能力あるいは期待されるべき支払い能力というものがあり得るという前提に立ちまして、経済全体との関連で支払い能力を規定すると、こういう趣旨でございますので、各事業の支払い能力、個別の事業の支払い能力だけを考えるということではございませんので、条約の趣旨もほぼそういうところと同一な方向で規定されておるものと思っております。
#61
○西村関一君 われわれが公害国会できめました法律でも、企業の利益とか経済的要素というものは取り除いていこう、そういうことを優先したのでは公害の問題は解決できないという立場をとっておるわけなんです。最低賃金の問題にしても、最低賃金法の解釈にしてもそういう方向でいかなければならぬ。経済大国であると言っているわが国において、そういう方向で、いま大体おっしゃったように、個々の企業に対してじゃなくて、全体押しなべて、その地域やそのグループの状態をながめて考えていくんだと、そういう方針で地方の基準局にそういう指示をしておるということなんです。そういう方向で臨んでおられるというふうに理解してよろしいですか。
#62
○政府委員(岡部實夫君) そのとおりでございます。
#63
○西村関一君 さきにもちょっと触れましたが、現在この審議会方式によってどのくらいの労働者が適用を受けておりますか。十六条方式と十一条方式の利害得失についてお述べをいただきたい。あわせて諸外国の賃金決定制度についてもお答えを願います。
#64
○政府委員(岡部實夫君) 四十五年十二月三十一日現在の資料によりまして、十二月末現在で、審議会方式によりますものが三百六十二件、九百十二万五千人の労働者が適用になっており、それから協約によりますものが四件、九千人で、合計で三百六十六件で九百十三万四千人ということになっておりまして、この数字でもおわかりいただけますと思いますが、現実には協約拡張適用の方式はほとんど活用されておらない状況でございます。で、利害得失というお話でございますが、これはまあその地域あるいは産業、職業等の実情でどちらが有効に最低賃金制度として作用するかということから考えなければならないと思いますが、現在の日本の実情では、どうも審議会方式が現実的に有効な方式としてとられていると判断せざるを得ないと思います。ただ、私どもは、今後の最賃の進め方について、十一条による労働協約を労使が自主的にどんどん締結してこれを拡張して適用していくという制度がもっともっと活用されてしかるべきではないかというふうに考えておりますので、賃金審議会等におきましても、私どもとしては、どうしたらそのいわゆる自主的な協約を基礎とする最賃制ができるかということについての御検討を願っているわけでございます。
 それから、主要国における最低賃金の概要でございますが、典型的なイギリスの場合には、これはイギリスは基本的には労働協約が賃金をきめるという立場で、したがいまして、自主的な交渉機関が存在しない、または存在してもその目的が十分でない場合に、産業別に賃金審議会できめるということで、産業別に賃金審議会――業種別にと申したらいいかと思いますが――五十四の業種に最低賃金審議会が設けられて、約三百三十三万人の労働者が適用になってるということでございまして、現実には性、職種、地域などによって差異が設けられておりますが、各業種の成人男子労働者十八歳ないし二十一歳の年齢を基準とすることとしてきめられていることが多いように聞いております。そのほかの国については、それぞれ地域別にきめたりあるいは職業別にきめたりしておりますので、あと御必要によりまして資料で御説明いたしたいと思います。
#65
○西村関一君 この二十六号条約と百三十一号条約とでは約四十年の年月の開きがございます。最賃制度の運用に関しまして、何か基本的な考え方の変化があるのでしょうか、どうでしょうか。その点、お伺いいたします。
#66
○政府委員(岡部實夫君) この百三十一号条約が検討される前に、その専門家会議でいろいろ検討しておりますが、そのときに出されましたのは、最低賃金制度についてはこれがさらにもう少し実効ある形のものを考えられないだろうかということと、特に戦後ILOの加盟諸国に開発途上国が数多く参加いたしました。開発途上国においては、経済開発をするにあたってやはり最低賃金制というようなものを採用することが、そういう制度を採用することが健全な経済発展にも資するゆえんであるというような議論が出されておる。その二つの点から最低賃金については一般に適用される原則についてもう少しはっきりさせるものをつくると。それと同時に、開発途上国に関するものとあわせて考慮すべきだというような二つの要素から、百三十一号条約の採択というふうに進んでいった経緯がうかがわれるわけでございます。
#67
○西村関一君 百三十一号条約承認後は、第一条第3項により、「この条の規定の適用上最低賃金制度の対象とされない賃金労働者の集団をその対象とされない理由を付して列記するものとし、その後の報告において」云々ということがうたわれている。これはいずれILOにも報告することになると思いますが、現在のわが国の最賃法適用外の労働者というのはどういうことになっておりますか伺っておきたいと思います。
#68
○政府委員(岡部實夫君) 最賃法の適用外の労働者は、一般的に申しまして、国家公務員、地方公務員、これのうちでも単純労務者等は適用されることになりますが、それと、それから家族従業者、家事使用人、それからいわゆる家内労働者でございます。家内労働者については家内労働法で別の規定をいたしております。そういったものが適用が除かれているわけであります。
#69
○西村関一君 施政権復帰後の沖繩の雇用関係における最賃制は、この条約の発効後においてはもちろん適用を受けると理解してよろしいですか。
#70
○政府委員(西堀正弘君) 仰せのとおりでございます。
#71
○委員長(松平勇雄君) 他に御発言もなければ、三案件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#72
○委員長(松平勇雄君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより三案件について一括討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、最低賃金決定制度の創設に関する条約(第二十六号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#73
○委員長(松平勇雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第百三十一号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#74
○委員長(松平勇雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、国際労働機関の総会がその第三十二回までの会期において採択した諸条約の一部改正で条約の運用に関する報告の国際労働機関の理事会による作成に関する規定の統一を目的とするものに関する条約(第百十六号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#75
○委員長(松平勇雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、三案件についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#76
○委員長(松平勇雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#77
○委員長(松平勇雄君) 速記をつけて。
    ―――――――――――――
#78
○委員長(松平勇雄君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件につきましては、去る二十三日に趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#79
○西村関一君 現行の日米租税条約は、日米間の経済交流における新しい事態の発生に応じ、これまで三回にわたり部分改訂を行なってきたわけでありますが、今回はこのよう丘改訂の手続によらず、全くの新条約として締結することとなったようでございますが、その理由は何でございましょうか。
#80
○政府委員(山崎敏夫君) 現行日米租税条約は、昭和二十九年に署名されまして、翌三十年に発効したものでございますけれども、この条約はわが国が締結いたしました最初の租税条約でございまして、その後御指摘のとおり三回にわたり一部改訂が行なわれたわけでございますが、新しい国際課税の原則に照らして考えますと、まだ十分とは言いがたい点があったのでございます。ところで、わが国は、米国と租税条約を締結いたしました後に、ヨーロッパ諸国、アジア諸国等と条約を締結いたしまして、今国会に提案し御承認をお願いしておりますものを含めますと、二十五ヵ国と租税条約を締結してきている次第でございます。その間に昭和三十八年にOECDのモデル条約案も公表されました。そういう経験とOECDのモデルというものを考慮いたしまして、その後はできるだけこのOECDモデル条約案に沿って条約を締結し、また既存の条約を改訂してきている次第でございます。そこで、この日米租税条約に関しましても、このような方針に従いまして、今後の日米間の経済関係の緊密化に伴う課税関係を一そう明確にするためには、条約の内容について全面的に検討を加えまして新しい条約を締結することとした次第でございます。
#81
○西村関一君 この日米租税条約締結の初期のころには、いわゆるエンタイア主義――総合主義をもってやっておりましたが、その後OECDのモデルに従って帰属主義――アトリビュータブル主義というものに改めました。今回の条約におきましてもエンタイア主義からアトリビュータブル主義に改められた。この方針の変更につきまして、どういう理由があったのか。また、これによりますというと、この切りかえによりまして、課税上、具体的にどのような相違が生じますかお伺いします。
#82
○政府委員(吉田太郎一君) 御承知かと思いますが、エンタイア主義と申しますのは、一方の締結国の企業が相手国で課税を受けます場合に、その企業が支店を置いているのが通常でございますが、その支店に帰属する所得のみならず、その企業の本店とその国との取引全部の所得について課税せられるというのが総合主義でございます。アトリビュータブル主義と申しますのは、その支店に本来帰属すべき所得のみについてこれを課税するというのがアトリビュータブルあるいは帰属主義と呼んでいるわけでございます。国際交流が緊密になってまいりますに従いまして二国間の課税状況が重複する場合が非常に多くなってまいるわけでございますが、基本的にはやはりその両者の重複課税を避けるという意味からいたしますと、その課税原則を、厳格にルールをつくるということが望ましいことは申すまでもございません。そういう考え方からいたしまして、国際的な考え方の基調はこれを帰属主義に置くというのが、昭和三十年代の中ごろから後半にかけてOECDなどで数次にわたり研究された結果でございます。その結果、最も望ましい課税原則としては、事業所得課税についてはアトリビュータブル主義をとるということになったわけでございます。本来、いわば先進国同士の間でございます場合には、お互いにその課税方法等についてある程度のルールが一致しておるということが一般的であると思います。えてして、後進国との関係におきましては、その課税権の制限を受けることについて、やはりその経済の流れが非常に一方的になります場合、これを拡張的にみなし課税をするという現象が起こってまいるわけでございまして、その場合に、その課税関係が非常に複雑になり重複の課税を受けるという問題が起こってくるのが最も一般的な現象かと思います。で、日米の間におきましては双方とも同じような課税原則に立っておりますわけでございますので、いままでエンタイア主義をとっております場合におきましても、それほどの実際的な問題は起こっておりませんでした。ただ、これをさらに条文上明確にすることによって不当な摩擦を避けようというのがこれの効果かと考えております。
#83
○西村関一君 いまの御説明によりますと、エンタイア主義でなくてアトリビュータブル主義ということに切りかえられたということですが、摩擦を避ける上からもいいのだからそうしたと。現在残っている、わが国と条約を締結している国でエンタイア主義に立って条約を締結している国はパキスタンと韓国だと思います。これらの両国に対するこの種の条約についても改訂されるお考えがあるのですかどうですか。
#84
○政府委員(吉田太郎一君) パキスタンとの条約につきましては、このパキスタンとの条約が昭和三十四年に締結された条約でございます関係上、これがエンタイア主義という形での原則の上に事業課税が行なわれているわけでございます。そこで、わが国といたしましては早くからこの事業課税の方式を含めて条約全体をOECDの考え方に沿った方向で解決しようということで交渉を申し入れてまいったわけでございます。特に昨年八月外務大臣がパキスタンを訪問されました際に、その改訂申し入れにつきまして先方は前向きの姿勢を示しております。したがいまして、遠からず改訂交渉に入れるのではないか、かように考えております。
 韓国につきましては、これは御指摘のようにエンタイア主義ということでなっておるわけでございます。ただ、エンタイア主義から来るところの、先ほど御説明いたしました、複雑かつ重複する課税関係をできるだけ排除するという意味から、所得についてこれを両国間でどう案分するかということにつきまして非常に詳細なルールを条約できめておるわけでございまして、理念的にはエンタイアということになっておりますが、現実的には、これを相互の重複が行なわないような課税のルールを条約上きめておりますので、現在のところでは、特にこれで問題は起こっていないと考えております。ただ、これが昨年十月に発効いたしました条約でありますだけに、いまこの時点においてさらにこれを改訂するということは不適当ではなかろうか、かように考えております。
#85
○西村関一君 次に、現行条約では、相手国及び関連第三国での船舶等の登録を要件として、企業の運航益についてのみ相互に免税としておりますが、今回の条約では、運航益の免除に加えて、裸用船料及び船舶等の譲渡益をも相互免税の対象とし、国際運輸所得の相互免税の範囲を拡大するとともに、日本の企業の場合には、船舶、航空機の登録地が日本であるといなとにかかわらず、たとえば日航がチャーターした米国機を運航して得た利益につきましても米国で免税されるということにいたしております。この点は今回の改正の主要な点の一つであると指摘されておりますが、このような改正が加えられるに至ったいきさつ、並びに、これによって税収上どの程度の違いが生じてまいりますか、お伺いしたいと思います。
#86
○政府委員(吉田太郎一君) 御指摘のように、いままでは、自国に、あるいは特定の第三国に登録されました船舶の運用益のみが相互で免税にされるということになっておったのが、その登録の要件というものがわが国の企業の運営する船舶、航空機についてははずされたという意味におきまして、これは結果としてはわがほうに有利な形の条約になったわけでございます。もともとわが国企業が運営する船舶、航空機というものについて登録がはずされた、そして米国企業の運営する航空機、船舶については登録要件をそのまま残しておると申しますのは、これは米国の国内政策の要請からそれを米国側がよしとしたためにこのような形になったわけでございます。で、そういう意味からいたしますと、わがほうが有利なことになっております。ただこの場合に、現実の問題といたしまして、それではわが国が米国以外のところ、あるいはわが国に登録されていない船舶、航空機をどれだけハイヤーしておるかと申しますと、大体用船料は約二億八千万ドルを支払っておるわけでございます。それから、そのうちアメリカ側については幾らかちょっと不明でございますが、大体支払い額二億八千万ドルの三分の一程度を支払っているということではなかろうか、かように推測をいたしております。
#87
○西村関一君 今日、米国は沖繩乗り入れの航空路を有しているが、これについての返還後における取り扱いに関しましてはまだ最終的な結論を政府は出しておらないと思いますが、返還協定の調印も間近に迫っておりますから、これに対する政府の態度をこの際お伺いしておきたいと思います。
#88
○説明員(橘正忠君) ただいまお話しございましたように、何ぶん航空機の問題も沖繩の返還交渉と関連して折衝中のところでございますので、返還後どうなりますか、ただいまのところはきまっておらない状態でございます。
#89
○西村関一君 まだきまってない。もうすぐに協定に調印されるときが迫っているのですから、これは早くきめておかないと、この条約の審議にあたっても、どうするのかということを聞いておかないと、ちょっと困ると思ったので質問したのです。いつごろまでにこの方針はきめられるのですか。外務省、まだめども何もついてないということなんですか。
#90
○説明員(橘正忠君) ただいま鋭意交渉を重ねている段階でございます。
#91
○西村関一君 次に、租税条約におきまして二国間の利害が最も鋭く対立いたしますのは投資所得に対する課税についてであると言われておりますが、今回の日米条約によりますと、配当、利子、使用料に対する税率はいずれも現行どおりに据え置かれております。このことは改訂交渉において何ら利害の対立がなかったというふうに理解してよろしいですか。
#92
○政府委員(吉田太郎一君) 仰せのように、投資所得に関する課税関係というのが非常に重要な部分でございます。それで日米間の交渉の過程におきましても、この投資所得については議論が進められたわけでございます。ただ、基本的に申しますと、OECDモデルに従って行なわれているのが一般であると申し上げて差しつかえなかろうかと存じます。と申しますのは、配当の場合に一五%、それから利子について一〇%というところはOECDモデルどおりでございます。ただ違います点は、ロイアルティー――使用料につきましては、これは国際交流を緊密化させていくという見地から相互免除というのがOECDのモデルでございます。これにつきましてわが国は、いままでわが国の経済的な状況等からこれに留保をいたしておりましてまいったわけで、一〇%という課税をしたわけでございます。当然米国側におきましてもこの一〇%をできるだけ引き下げてほしいという申し入れはしましたわけでございます。ただ、その間わが方といたしましては、いましばらくと申しますか、現在のところ、ほかの国一般、わが国の条約方針といたしましてロイアルティーについては一〇%の課税をするという方針で交渉をいたしました結果、お手元のようなわが国条約例に基づく一〇%が規定されているわけでございます。ただ、今後の考え方といたしまして、やはりわが国の国際的な地位が今日のようなことになってまいりますし、また、国際化された経済の中での課税関係を最もよくわが国の実情にこれからふさわしくしていくためには、このロイアルティーについては、今後の問題としてはやはりOECDモデルの方向に進めていかなくてはならないと考えております。これまでの交渉と申しますか、今次の改訂交渉におきましては従来どおりということにしたわけでございます。
#93
○西村関一君 配当所得に対しましては親子会社間の場合は一〇%、その他の場合は一五%の税率が適用される。親子会社関係にあるものが相対的に有利に扱われることになりますが、その前提となる親子会社関係にあるかどうかということをきめる要件ですね、これは今回の条約では大幅に緩和されておる。すなわち、現行条約では、親子会社間の要件を持ち株比率百分の五十としているのに対して、今回の条約では、配当支払い法人の株式の百分の十を所有すればいいということになっておって大幅に緩和されておる。これに伴うところの利益はもちろん日米両企業が同様に受けるわけでありますが、米国からわが国への企業の進出が圧倒的に多い今日の経済関係におきまして、この条約によりまして利益を受けるのは日本よりはむしろ米国ではないかというふうに考えますが、その点いかがでございましょう。
#94
○政府委員(吉田太郎一君) 御指摘のように、一〇%の持ち株比率ということになりました結果、従来よりも親子間という条件が適用される部分が拡大されたわけでございます。ただ、現状におきましても大部分のものが二五%以上の関係にあるようでございますが、しかし、お説のように、二五%以下一〇%に至るまでのものにも拡張されることは事実でございます。ただ、親子間の軽減税率をなぜ適用いたしますかというのは、これは全く支店として進出してまいりました企業、それから現地法人として進出してまいりました企業との間の税負担をイコールに均分するという趣旨でございます。したがいまして、税制としては、その子会社として進出するかあるいは支店として進出するかという、それぞれの企業の法人に対してできるだけ中立的であろうというたてまえから軽減税率を適用しておるわけでございます。そういう基本的な考え方からいたしますと、できる限り現地法人というものの範囲を広くしていくということがむしろより中立的な税制の立場を及ぼし得る問題ではなかろうか。かりにこれを一〇%を二五%にした場合には、二五%までのものは今度は支店のほうが有利になるというようなことにもなりかねないわけでございます。ただ、一〇%が非常に従来の条約例に見ない低い率ではないかという御指摘もあろうかと思いますが、日米の関係、あるいはわが国が、たとえば今日天然資源開発のための海外投資準備金という税制をとっております場合に、海外に進出する法人と日本法人との関係も持ち株比率一〇%であればこれを親子間と見るというように考えておるわけでございまして、そういう意味からいたしますと、親子関係を適用していくことが広く在るということが両国間の課税の有利、不利という問題にはさしてならない問題ではなかろうか、かように考えております。
#95
○西村関一君 次に、学生についての課税は、現行条約では、その滞在期間及び所得の多少にかかわらず滞在地国で免税としておりますが、今回の条約では滞在期間は五年間に限り、一課税年度について二千ドル以下は免税としておる。このように、今回の条約におきましては、期間の制限と金額の制限を設定しておりますが、その理由は何ですか。
#96
○政府委員(吉田太郎一君) 従来の条約には、学生に対する課税については実は原則として課税される。もしも学生が向こうで収入を得る場合には、これが課税関係が発生するような規定になっておったわけであります。しかも、その学生の滞在というところが「一時的に滞在する」学生、かような条文になっておったわけでございます。その場合にやはり事実上は向こうでアルバイトをしていく、向こうで得た収入で学資に充てるというケースがかなりあり得ると考えますので、それについてはむしろその程度の制限内で免税にしてあげるべきではなかろうか、かような趣旨で、年間二千ドルはまあ通常のアルバイトとして妥当なところではないかという意味で、これはむしろ拡張をした、かように考えております。それから期間につきましては、先ほど申しましたように、「一時的に滞在する」というようなことしか書いてございませんで、その期間はなかったわけでございます。いま留学する場合は、もちろん期間はまちまちではございますが、修士課程あるいは博士課程に在ります場合にはかなり長期間滞在せざるを得ない。そういう意味からいたしますと、やはり五年間はこれを保障してもらいたい、かような考え方で五年間免税にするという期間の制限を設けたわけでございます。
#97
○西村関一君 今回の日米租税条約は返還後の沖繩にも何らの特例なしに適用されるものと理解してよろしいですか。この条約の米国側の批准の状況はいかがでしょうか。
#98
○政府委員(山崎敏夫君) この日米租税条約は、現在のところ、この第二条に規定されておりますように、「「合衆国」とは、アメリカ合衆国をいい」ということになっておりまして、日本国については、「地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう」ということになっておりまして、沖繩は現在のところ日本の法令が施行されておりませんので、いずれにいたしましても、アメリカの側から見ても日本の側から見ても、この条約は現在のところ沖繩には適用されないわけでございます。ただ、将来沖繩が日本に返還されました場合には、そこには日本の租税に関する法令が施行されるわけでありますから、それは全面的に日本の法令が施行されるというわけでございます。その場合には、もちろんわがほうといたしましては、日本の法令が全面的に施行されるということで臨みたいと考えております。
#99
○西村関一君 もちろん現在、批准されたらすぐ沖繩に適用するということはあり得ないわけですが、返還後の沖繩に何らの特例なしに適用されるかどうかということを伺っているのですが、まあ、念のためにもう一度お答えを願います。
#100
○政府委員(山崎敏夫君) そういう方針で臨んでおります。
#101
○委員長(松平勇雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#102
○委員長(松平勇雄君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#103
○委員長(松平勇雄君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○委員長(松平勇雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#105
○委員長(松平勇雄君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#106
○森元治郎君 一つは小さい問題ではあるが、けさの新聞で、鶴岡千仭君が、ガットのことで、国際法委員会ですか、のためにアフリカのほうを旅行する。来月一日から八月の四日まで、たいへん長いんですね。どういう御旅行なんですか。
#107
○国務大臣(愛知揆一君) 鶴岡大使の海外出張は、御承知のように、彼は国際法委員会――ILC、これのメンバーであります。そこでILCがジュネーブで四月の二十六日から七月の三十日まで、これはお説のとおりだいぶ長い期間ですが、会議がございます。それに日本政府を代表して出かけるわけですが、ちょうど、こういって出かけるときに、ガット三十五条の問題が、御承知のように、ございます。そこで、その行きます前とあとに、第三十五条の対日援用の撤廃を要請するためにアフリカの諸国を歴訪してもらおうと、こう考えたわけで、実は、ほかの人もちょっと考えてみたんですけれども、ちょうどこの四月の二十六日から七月三十日までジュネーブへ行ってなければなりませんので、その前後を利用して同君にやってもらうことが一番よいという判断で、これは、ここへ経済局長来ておりますが、経済局長の意見具申に基づいてさようにいたしたわけでございます。
#108
○森元治郎君 この前の松井明さんの大使のころも、アフリカの東側の方面におもに行っておるのですが、それは国連の代表権問題に関する各国の態度がいろいろ微妙なんで、視察をして工作もしたんでしょうから、鶴岡君も、二人ともフランス語で、あの辺はフランス語が大体通用語だし、国連でやる重要事項指定方式にしろ、あるいはアルバニアのいわゆるアルバニア案にしろ、つばぜり合いになってきましたから、一票が非常に大きな比重になってきましたから、こういう工作も兼ねておやりになるんだろうと思うのですが、どうでしょう。
#109
○国務大臣(愛知揆一君) これはただいま御説明したとおりでございます。日にちもだいぶ長く、ジュネーブにおらなければなりませんし、その前後を利用して東西アフリカに寄ってもらう。第三十五条問題、これは経済局長からもお聞き取り願いたいと思います。これは大事な問題ですし、やはり有能で顔のきく人に交渉させることが日本の国益のために適当であるという判断に立って、私もこれを承認決定いたした次第であります。
#110
○森元治郎君 鶴岡さんを出さなくても、まだ外務省にたくさんおるから……。そこでアフリカのどういうところを回りますか、期間、国々、日程。
#111
○政府委員(平原毅君) 予定といたしましては、四月一日に東京を出発されまして、四月二十四日にはジュネーブに到着されます。したがって、今回の三十五条ミッションに関しましては、前後含めまして二十四日間でございます。訪問いたします国は最初にアルジェリア、これは三十五条援用国ではございませんけれども、実質上の差別をいたしまして、関税の面におきまして日本だけ三倍の関税を課しておる国でございます。したがいまして、三十五条ではございませんが、差別問題をこの際話していただく。次に四月五日セネガルに着く。次いで七日にモーリタニア、十日にはガンビア、十三日にはガーナ、十四日にはダオメー、十六日にはトーゴ、十八日には中央アフリカ、二十日にはカメルーン、翌二十一日ガボン、ガボンからジュネーブにいらっしゃる。こういうことになっております。
#112
○森元治郎君 国連局長、これらの国々の代表権問題に関する投票はどういうことになっておりましたか。
#113
○政府委員(西堀正弘君) たいへん申しわけございませんが、本日国際情勢の審議があると存じませんでしたので書類を持ってまいりませんでしたので、したがいまして、投票態度、たいへん申しわけございませんけれども、ただいま申し上げるわけにまいりません。
#114
○森元治郎君 こういう国へ行って代表のガット以外のお話をしても決して悪くはないんであるから――そうでしょう――お話して決して悪くない。そうやることが、政府がよく言っている「国際信義」。台湾が願わくば負けてくれとは思わないでしょう。いまの場合は台湾をあくまで擁護していくのだという国際信義からすれば、ふらふらしている国はぜひ手前どもに投票してくれとお願いし、向こうのほうの反対派に対しては、それじゃまずいじゃないかと説得をし、これが、やっぱり国の金を使って海外旅行されるんですから、少なくとも政府が派遣するのですから、ですから、やらせて悪くはないし、国際信義に合うと思うのです。そういうことは一切しない、言わないということを口どめをされておるのですか、そういうことはないんでしょう。
#115
○国務大臣(愛知揆一君) ただ、鶴岡君は国連常駐代表は免ぜられたわけです。それから出張命令は、ただいま申しましたように、ガット三十五条の援用撤廃要請、それから国際法委員会に政府代表としての出席、これが閣議決定を通じての命令でございます。
#116
○森元治郎君 そうすると、この話は向こうからすればとにかく、こちらからは一切ないものと、当然ないものだと、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。
#117
○国務大臣(愛知揆一君) 出張の命令は、ただいま申しましたような要務命令を出している次第でございます。
#118
○森元治郎君 当然これはどこの国でも、自分の方針が確たるものを持っておれば、あるいは大きく転換しようとするならば、堂々とおやりになって一向さしつかえないのですよ。野党が何を言おうと自分の方針をやろうというのは、これは自分の政策に信念を強く持っておられる場合は、当然これはやるべきであって、何も遠慮する必要は毛頭ない。たまたまガット三十五条や国際法委員会の会議であって、これには命令していないということでありますから、さように聞いておきます。
 代表権の問題はあまり大き過ぎて広いのでこの程度にして次に移りますが、ベトナムの戦争の経過いまラオスのほうからだいぶ撤退をして、南ベトナム軍がラオスから自分の国境内に大きく撤退をしているように新聞は伝えておりますが、戦況はチェポンあたりのホーチミン・ルートまで行って、そして帰ってきて、この間の動きから見て、この方面の戦闘はおさまり、平和の方向に向いつつあるように伝えておりますが、戦闘の状況について知らせてください。
#119
○政府委員(須之部量三君) 最近のラオスからの撤兵の問題、これはもう私ども実情としましていろいろな新聞報道その他の点ではもちろん承知しておりますし、考慮しておりますけれども、具体的にどの程度の戦闘が行なわれ、どういうことになっておるのかということは必ずしもつまびらかにしておりません。ただ、双方の言い分がか在り食い違っておりますし、二、三日前にはニクソン大統領あるいはレアード国防長官等の記者会見等々も行なわれておりますし、それによりますれば、撤兵それ自体は大体初めから五週間ないし八週間の作戦というふうに考えておったということ、しかし、他方北越側の反撃が非常に激しかったということ、それから、一応いわゆるホーチミン・ルートの破壊という所期の目的は一応達したということで撤兵したということを言っております。それから他方、もちろん北側の発表文等々も承知しております。
 私ども公平に見まして、今度の作戦自体につきましては、相当双方に損傷も激しかったし、ただ、その戦闘の結果が、インドシナ問題という大きな問題の大きな推移の中でどう評価せらるべきかという点は、やはりまだ戦闘の直後でございますし、いましばらく時間をかけた上でないと正当な評価はできないというふうに考えるわけでございます。
 それで、米側の最近のレアード長官の談話の中にもありましたけれども、おそらく今後もゲリラ活動並びにハラスメント等々のことは続くであろうと言っておりますが、私どもとしても、戦闘がどう動くか独自に十分に判断するだけの資料もございませんけれども、戦闘の状況ということに関する限り、ことにベトナム内に関する限り、大体従来どおりの大規模な戦闘はなしに推移するという状況が続くのではないかというふうには考えております。
#120
○森元治郎君 すると、ずっとベトナム戦争の、新聞の紙面から見ていた感じでは、
  〔委員長退席、理事長谷川仁君着席〕
もうこれは単なる果てなき人の殺し合いだけに終わっているのじゃないか。何ら新しい目標もなく、ただ押しつ押されつの感じを強く受けるわけです。普通ならばもうやめろということを強く外側からもあらためて声を大にして双方に呼びかけるべきときに来たような感じがするのです。いたずらな人の殺し合い。だから、そういう時期に来たように思う。戦争そのものも、申し上げましたように、何らいずれの決着にも向きそうな様子もない。日本政府としても、戦争の成り行きをただ新聞で見ているだけではなくて、もうこの辺で真剣になってともかくも戦争をやめるのだという声を強く打ち出しても支持者が多いのじゃ互いかと思うのですが、パリ会談も中絶のままであるようではありますが、それは当事者同士というのはなかなかむずかしいから、日本あたりもちょうどいいあんばいあたりのところにいるのですから、それを言って効果のある情勢が何か強く生まれてきたような感じがしますが、大臣はそんなお感じがありませんか。
#121
○国務大臣(愛知揆一君) 戦闘状態がどういうふうな見込みで、どういうふうに評価されているかということについては、なかなかわかりませんですね、現状は。これはいまアジア局長の申し上げたとおりであると思います。同時にしかし、これはどういうふうにごらんになっているかわかりませんが、私は、日本政府の最近とってきた態度というようなものも相当な効果を示してきていると思っております。
  〔理事長谷川仁君退席、委員長着席〕
 つまり、ラオスに例をとるならば、日本が外国軍隊の撤退ということをはじめとして、ラオスの中立の維持、領土保全等々のジュネーブ協定の精神によるところの処理の方法が最もプラクティカルである。また、これがラオスの現政権を南北ともに承認している現状において最もやりやすい考え方であるということを中心にした考え方でアピールをしております。その受けた反響は、カンボジアのときのジャカルタ会議のときよりももっと強かったということは、先般の当委員会でも私申し上げたとおりでございます。ラオスの現政権としては、少なくともこれによって自信を回復した。それからソ連その他に与えた影響というものもかなりなものであったように見受けられる。そういうふうなムードというか環境というものがだんだん戦争を少なくともエスカレートしない、デスカレートする方向に向かってきた、こういうふうに考え、かつ、この考え方をなお一そう、まことに日本としては私は微力であると思いますけれども、誠意のある、また国際的ないろいろのムードづくりをすることについては、及ばずながら大いに努力を続けるべきである、かように考えております。
#122
○森元治郎君 要するに、一つには、北側にしろあるいはアメリカにしろ、以前ほどそう敵意を燃やして相手をせん滅してしまうおうというような意気込みではいまのところないように思う。ただ戦闘だけを続けているような感じを受けるわけです。この際、何べんやってもいいんですから、イギリスとかソ連とかカナダ――今度日本がポーランド、インドなどにやはり働きかけて、何回でもいいんですから、また同時にこの際、さらにアメリカと北側との話し合いをぜひ進めていく。戦争の火を交えることの停止に向かって一段の努力をすべきときに来たようにわれわれは判断するという呼びかけをしてもいいと思う。いまのところは、宣伝戦半分あるいは六分、武力が四分あるいは半々くらいのところに来て、少しくたびれたというのが双方の様子に見えると思うんです。ここに強く打ち出して、あらためてもう一回パリでは同じテーブルについてそして話をしてくれということを言うべきムードが出てきたように私は強く感ずるんです。いまのところ、ですから、カンボジアのときおとりになった方針は、それはそれとしてけっこうなものとしても、この際、南北べトナム――アメリカ、南ベトナム、北に向かってそういうふうなステップをとる非常にいい時期に来ているんじゃないかと判断する。もう一回お伺いします。
#123
○国務大臣(愛知揆一君) 私はそういうふうに見ております。そして、少なくとも、二月初め以来わが国がとってきた態度というものも相当に私は評価され、また、こういう状況が出てきたことにもある程度のかかわりが私はあるように思いますから、その上に立って今後とも、先ほど申し上げましたように、この戦争がデスカレートするようにできるだけの日本としての努力を続けるべきであると思います。
#124
○森元治郎君 ですから、この委員会の審議のみならず、何らかの機会に、外務省の専属の記者団もおることですから、そういうようなときに、少しまとまった形式をとった大臣の声明のような形も、これは一つの、主張する場合に世界の評価が高くなると思うのですね。質問に応じて、そのとおり、それ以上にやっているんだということよりは、たまにはそういう声を大にしておやりになったほうが外に向かっての効果はずっと大きいと思うのです。これは十分大臣に考えてもらいたいと思う。
 そこで、私こういう質問をしたのはどういうことかというと、日米安保条約は、これ相互援助条約ではありませんから、アメリカがどういう作戦をしようとも、日本に教える義務もないし、相談する義務はない。日本はそれを聞く権利も権利としては持ってないということですね。いまニクソン・ドクトリンによって、アジアの国々がそれぞれ自分のことは自分でしなさい、われわれは遠くのほうにいて、そして事あるときにはこれを応援する。自分のことは自分でやれというのが一番やさしい、世間的ことばで言うニクソン・ドクトリンだと思う。しかしながら、事を起こすのは、力もあり援助をする立場にあるアメリカが事を起こす。起こした結果は、自分はいや応なしにこれに引きずり込まれる。そうしちゃ、これは例ですけれども、十七度線をかりに越えたとか、あるいはもっとほかのところに戦線を広げていったとか、まあ困ったなと思っても、若干の抗議めいた注意は与えられるかもしれぬが、それ以上のことはできない。押え切れない。しかし、結果は極東の平和と安全、日本の安全にも響いてくる。非常に日本にとっては不利な条件。アメリカに言わせれば、それが不利ならば、おれがあぶないときはおまえ援助しろ、NEATO条約のようなものにしたらいいじゃないかと言われるかもしれぬ。しかし、日本はそれはやれ互い立場です。ここに、アメリカが事を起こした結果だけをこっちが受け取って、まさかアメリカがやったことがかりに多少間違っておっても――大きく間違えば別ですよ――多少間違っておっても、これをがまんしてこれと協力し、支援しなければならぬということは、非常に日本にとってもアジアの国々にとってもまずいことであろうと思うのです。そこで、私は、相互援助条約のような形式にせよと言って御質問しているのではなくて、たまたま例の事前協議のようなものがあります。相互援助のような例とか、事前協議のような例がありますが、何かアメリカが事をするときには、やはり日本に相談をする。安保条約にはもちろん「随時に協議する」ということはあります。ありますが、これが、随時であるような、してもいいような、しないでもいいような、少し弱い。だから、今後は日本によく相談をしてやるというような、何かの大きな取りきめといいますか、約束、紳士的約束、そんなようなものでもないと、私は非常に不安でならないと思うのです。朝起きてみたら、アメリカ軍が、ことにペンタゴンの兵隊さんたちが前線で事を起こし、これに政府が引きずられる。引きずられなければよござんすが、引きずられた場合、みすみすこちらもそれに一緒に引っぱっていかれるということは、極東の平和と安全にとって、日本のためにもならないので、いまあるようなああいう事前協議、交換公文形式は別としても、これからは極東の日本に日本の安全はまかせると言った以上、何か新しい手を打つようなときにはもう十分相談をするのだということがないと、事が起きてからただ引きずられるだけ、友好国がやるのだから友好国に協力しなければならぬというのでは、非常に日本の平和と安全にも大きな影響がある。そういうふうなステップを、この沖繩返還が実現することを機会に、ひとつ話し合いをすべきではないかという感じを強く持つのですが、いかがでしょうか。
#125
○国務大臣(愛知揆一君) まあ、いろいろと御心配の点もわからないではない、御意見はいろいろと伺いましてわれわれもよく考えてみたいと思いますが、いま具体的に示唆されたようなステップをとるつもりはございません。
#126
○森元治郎君 ということは、日本の平和と安全にとって非常にまずいことになりはせぬかというわれわれの危惧に対してはどういうふうな判断、お答えをされますか。
#127
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、いまのこの体制、ワク組みで、日本が一夜にして安全を妨害されるとか戦争に引きずり込まれるとか、そういうようなおそれは、全然ないと考えておりますから、具体的にそういうふうな話し合いを始めるとかなんとかという必要は認めません。
#128
○森元治郎君 まあ、いま戦争が――戦争とかあるいは台湾海峡で何か起こるという、ピストルを撃つような簡単なことではないから、いまの大臣の言うような答弁の趣旨になるかもしれぬが、大きく見て、日本は向こうに何も言える立場にないのですから、いまの安保条約が最初の締結したときの精神のとおりに、一応おれはおまえのほうを見てやるという、その第一回の最初の安保条約の精神は受け継がれておる。われわれが見てやるからおまえは自分で自分の努力をせよというあの第一回の安保条約。その結果、今日までの自衛隊の拡大を生み、一応まあ自衛力というものをつくってきたわけなんでしょうが、それにしてもアメリカがどう動くかということは、やはり事前に十分日本側に心を打ち明け、行動そのものが、宣戦布告の日取りをどうするなんという、そういうこまかいことでなくて、気持ちを絶えず連絡をとる必要がある。いまのところでは、ベトナムの撤兵にしろ、向こうのプログラムだけで、一体どうなるのかということをそれは聞く立場にもない。これではほんとうの信頼関係というものも生まれないんじゃないか。やはりもっと積極的にいつでも事前に絶えず日本に話をしてもらえるようなことにならないと私は不安をぬぐい切れないと、こういうことを申し上げているわけです。安保条約があるからそれはすぐやめてしまえと言っても、きょう、いま、われわれの力ではそれをやめさせるわけにもいかないとすれば、きょう、あすはやはり政府の施策に待つほかはないんですから。私は戦争というものを見ていて、ことにベトナム戦争は、大きくアメリカが介入してからやがて十二年くらいになるわけです。六四年でしたか、トンキン湾のあの決議以来もう相当になっている。昭和六年満州事変から大東亜戦争にいくのも十数年。こう長くだらだらやっていくと、思わぬところから思わぬことになりがちだ。早く火は完全に消してしまわないと、いつとんだところで燃え上がるかわからぬと思うので私はこういうことを申し上げているわけです。急な外交的ステップをとって交渉に入って大きな政治的事前協議について相談しましょうということをアメリカといまやれということを私は言っているのではなく、何か一部大きなことを知らされていないんでは私は不安心だから、そういうことのないように十分政府は留意すべきではないかというのが質問の趣旨です。
#129
○国務大臣(愛知揆一君) ひとつとっくり御意見を承りまして、考えるべきことは考えてまいりたいと思います。ただ私は現在のワク組みで心配ないと思いますし、日本の安全ということに関する限りは、その考え方も政策も十分の協議が行なわれておると思います。まあ私は、聞きようによっては、何かベトナムの戦争に対して日本が責任があって、あるいは日米共同してどうにかしなきゃなるまいというような御意見のようにも聞こえるような点がありますので、そういう点についてとっくりとひとつ御意見を伺いまして、もし考えるべきことがございましたら積極、消極両面で考えるべきことは十分考えてまいりたいと思います。
#130
○森元治郎君 いま大臣が何か言われたようなことは毛頭ありません。ただ私は、友だち同士で一緒に歩いていても、ある国は隣とけんかばかりやっている。腕力ばかり強くて、隣からぽかりとやられると、そのそばに突っ立っているやつも巻き込まれますから、いつでも手をしっかり握ってよくやっていかぬと、思わぬことに巻き込まれるのじゃないかということを、過去のずっと終戦後からアメリカと手をつないでいる日本の現状を見て心配するわけです。条約が平等であったらばそういうことはないでしょう。NATOの国々相互間のような関係にあるならば別ですが、日本とアメリカは特殊な関係ですから、置いていかれてかってなことをされはせぬかという心配もある。これは悪い意味ではなくて、心配もあるわけです。それを申し上げたわけであります。
#131
○委員長(松平勇雄君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#132
○委員長(松平勇雄君) 速記を起こして。
#133
○岩間正男君 沖繩返還協定の調印に関しての問題で伺いたいんですが、これは五月から六月の間ぐらいと聞いておりますが、それはそれでよろしゅうございますか。
#134
○国務大臣(愛知揆一君) 返還協定の調印の時期でございますか。これは率直に申しまして、まだそこまでいってないわけなんです。ですから、いま何月ごろと申し上げるところまでまだ中身の話が十分できておりませんですから、したがいまして、おそくても夏ごろまでと申し上げていることに変わりはございません。
#135
○岩間正男君 午前中の沖特で山中長官は、五月か六月ごろということを言明されたらしいんですね。ですからお聞きしているんですが、そうすると非常に時間がないんですね。そうすると、いまたくさんの問題が懸案になっていると思うんですが、その中で、たとえば最近問題になっている特殊部隊の問題、特殊の施設の問題、こういうものについてどうするかという問題は、これは全く性格さえもまだ明らかになっていない。そういう問題があると思うんですね。そうすると、そのときこれは間に合わないという事態が起こりかねないと思うんですが、そのときはどうするんです。
#136
○国務大臣(愛知揆一君) 返還の時期は来年のある時期ですが、それまでには十分話を煮詰めていきたいと思っております。
#137
○岩間正男君 そうすると、返還協定の条文の問題になりますが、未解決の問題は引き続き継続協議するとかなんとかということで一つの箱の中に入れてしまうと、そういう方式もこれは考えておられるということですか。つまり、継続審議方式といいますかね、未解決の問題はその中に全部一括して入れる。そういう形で文言の中にうたっていく。そういうことを考えておられるわけでしょうか。いまのお話だと、来年の返還のときまでは約一年ある、その間煮詰めていくんだということになると、調印は五月、六月にやるということになりますと、その方式でもとらなければならぬということになりますが、それをお考えになっていらっしゃるんですか。
#138
○国務大臣(愛知揆一君) 協定に載るべきものと、それから協定以外のものと、日本の国内の立法の問題と、いろいろあるわけですから、協定調印後返還の時期までに十分準備を進めていくべきものもたくさんあると思います。ですから、可能性の問題としては、いまお尋ねになったようなことは排除できないと思います。
#139
○岩間正男君 いまのような方式はおとりにならないということですか。
#140
○国務大臣(愛知揆一君) いや、可能性の問題としてはそういうこともあり得るかと思います。
#141
○岩間正男君 そうですか。これは問題が未解決で持ち越される、その前に調印される。これは非常に問題を残すわけになりますね。まあ、いずれ予算委員会で継続してはっきりしましょう。五分間という時間ですから打ち切っておきます。
#142
○国務大臣(愛知揆一君) 一言だけ申し上げておきますが、協定できまったって実際の具体的な措置が進まぬこともありますから、そういう可能性を全然排除できないということを申し上げたわけです。
#143
○岩間正男君 そのことを私言っているんではなくて、原則として、たとえば特殊部隊、特殊施設なんかの場合は、どうしても原則はやっぱり触れていかぬとまずいわけですよ。これは何らかの形で協定には文言としてうたわれなければ不明瞭になるわけですから。そうすると、原則がきまってそれが具体的になるまでにはある程度の時間、経過措置があるということは、これは私たち否定できない事実だと思いますが、そこまで協定としては明確にされていないとまずい、こういうことなんですから、そういうことの可能性もあると、そういうことですね。
#144
○国務大臣(愛知揆一君) その協定にそういう暫定――何と言うんですかな――そういうことは考えておりません。
#145
○岩間正男君 そうすると、未解決の問題は、これはなかなか、私は不明瞭だと思うんです。
#146
○委員長(松平勇雄君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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