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1970/05/20 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第7号
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1970/05/20 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第7号

#1
第065回国会 法務委員会 第7号
昭和四十六年五月二十日(木曜日)
   午前十時十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     剱木 亨弘君     赤間 文三君
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     赤間 文三君     剱木 亨弘君
 四月十二日
    辞任         補欠選任
     渡辺一太郎君     小林 武治君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     江藤  智君     玉置 和郎君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     玉置 和郎君     江藤  智君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     山高しげり君     市川 房枝君
 五月四日
    辞任         補欠選任
     後藤 義隆君     植木 光教君
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     江藤  智君     八田 一朗君
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     八田 一朗君     江藤  智君
     市川 房枝君     山高しげり君
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     植木 光教君     井川 伊平君
 五月十九日
    辞任         補欠選任
     井川 伊平君     赤間 文三君
 五月二十日
    辞任         補欠選任
     井野 碩哉君     後藤 義隆君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                上田  稔君
                鈴木 省吾君
                亀田 得治君
    委 員
                江藤  智君
                木島 義夫君
               久次米健太郎君
                後藤 義隆君
                松澤 兼人君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  植木庚子郎君
   政府委員
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  貞家 克已君
       法務省民事局長  川島 一郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       吉田  豊君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   長井  澄君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   瀬戸 正二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   参考人
       日本弁護士連合
       会修習委員会副
       委員長      磯村 義利君
       東京弁護士会司
       法制度臨時措置
       委員会委員長   井上 峯亀君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○検察及び裁判の運営等に関する調査(裁判官の
 新任及び再任等当面の司法問題に関する件)
○民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月四日、後藤義隆君が委員を辞任され、その補欠として植木光教君が、同月十八日、植木光教君が委員を辞任され、その補欠として井川伊平君が、昨十九日、井川伊平君が委員を辞任され、その補欠として赤間文三君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(阿部憲一君) 理事の補欠選任についておはかりいたします。
 委員の異動に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、この際補欠選任を行ないたいと存じます。
 選任につきましては、先例により委員長にこれを御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 それでは理事に上田稔君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(阿部憲一君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 本日、検察及び裁判の運営等に関する調査として、裁判官の新任及び再任等、当面の司法問題に関する件について日本弁護士連合会修習委員会副委員長磯村義利君、東京弁護士会司法制度臨時措置委員会委員長井上峯亀君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 なお、その手続等につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(阿部憲一君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 この際、参考人の方々に対しまして委員を代表し、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は、裁判官の新任及び再任等当面の司法問題に関する件について御意見を賜わり、委員会の審議の参考にいたしたいと存じております。何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。なお、議事の都合上、御意見はそれぞれ十分ないし十五分程度お述べをいただき、そのあと委員の質疑にお答えをお願いいたしたいと存じます。また、御発言の際は、そのつど委員長に許可を受けることになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず磯村参考人からお願いいたします。
#9
○参考人(磯村義利君) ただいま委員長から与えられましたテーマにつきまして二、三感想を申し上げたいと思います。
 本日は裁判官の新任、再任等についてというお話でございますが、これはつまり裁判官をつくることに関する問題というふうに思うんですが、裁判官をつくるということについては基本問題、どういう人に裁判官になってもらうべきか、ここから出発して問題は考えるべきではないかと思うんであります。これは私が考えますには、二つ大事な要件がございまして、一つは、その人個人が法技術、人格にすぐれた人である、これは申すまでもないことであって、私どもがここで言うことはございませんが、もう一つの点は、近ごろよく言われますところの法曹一元ということでありまして、裁判官は弁護士から採用する、これが絶対に必要であると思うんでございます。この弁護士の経験がある人を裁判官にするということについては、相当前から議論がありまして、これに賛成するという意見はこれは圧倒的に多いわけでございます。ところがなかなか実現までには至らないんですが、その長所、短所についても議論し尽くされておりますので、ここで私がこまかいことを皆さんに申し上げる必要はないと思うのでございますが、世間で言われております長所のほかに、私は見のがしてならなら点は、この弁護士から裁判官を採用することにいたしますと、その裁判官は民衆の雰囲気といいますか、そういう民衆くささというものをつけて任官される、そこが私は大事だと思うんです。民衆味を帯びた裁判官であるということでございます。
 たとえて申しますと、この国会の議員の先生が、これは前身はあるいは実業をおやりになっておる、あるいは官吏でおありになる、こういう方でありますがこれが国会議員になるためには選挙運動をされて、その結果当選しておいでになるわけでございます。選挙運動ということになりますと、これは、皆さまお願いいたしますということを、諸先生が頭を下げて民衆に、一カ月まあ、行をなさる。私はこれによって、前は官吏でいばっておっただけの人が、民衆という何か、ろ過器にかけられて、民衆くささを身につけておいでになる。これによって私は国会の皆さまは人民に近い親しい雰囲気を身におつけになる、ここが私は国会議員の大切なところであると思うのです。官吏をそのまま参議院議員に任命するというような昔の考えは私はよくないと思う。その点は議員が民衆くささを身につけていらっしゃらない点が任命制の短所だと思う。
 で、裁判官も私はそれと同じように考えておりまして、弁護士として人民のために人民と一緒になって仕事をしたということによって、民衆の体臭を身につけて裁判官になる、この点が法曹一元の、まあ人があまり言わないところではございますが、私が考える一番大きな長所であると思うのでございます。
 で、わが憲法の規定を見ますと、「裁判官の任期を十年とする」と書いてございます。十年とするということは、十年使ったならばあとどうするのかといいますと、十年たったならば免職する。――この規定は、あとの生活を何も考えない規定ではないかというふうに考えられるんですが、これはいま私が申しました法曹一元ということを基礎に置いて、その前提のもとにできておる規定と考えないと理解ができないのでございます。弁護士から裁判官を採用して、十年裁判官で使う、国家が使う。そうして十年たったならば、その裁判官はもう一回弁護士に帰る。帰るんですが、帰るときに、普通の日本の弁護士ですと、十年裁判官やっておりますと、従来持っておった民間との関係はなくなってしまう、地盤はなくなる。で、もう一回弁護士をやるといっても、しばらくの間はお客がない、全然ぐあいが悪いんであります。それはアメリカのローファームということを予想しておって、そうして、裁判官をやめた弁護士はもとの古巣の法律事務所へ帰って、そこでしばらくは養ってもらう、こういうことを前提に置いて、十年たって裁判官の首を切っても、その裁判官は弁護士としてまたやっていけるんだと、こういうことを基礎に置いての規定に憲法は違いないのでございます。そういう基礎がないのに、十年で首を切るということにするんでは、あの法律はおかしい、憲法の条項はおかしいわけでございます。
 そこで、この憲法がわれわれが守るところの基本の法典であって、あの憲法の、裁判官十年の規定も、これは守らなければならないというふうに考えるならば、すべからくいまのように十年たって任期がなくなる、その裁判官があとどうするか、そこまで考えた方法を講じて裁判官を使ってもらわないと困ると思うのでございます。
 たとえば、十年たって裁判官を退職した人については相当な収入があるに至るまではほとんど俸給に近い給与、恩給といいますか、これを支給するというふうに考えてもらわないと、憲法の十年の任期規定というものはほんとうは動かない、ほんとうは動かないままで十年の規定が生きているということになりますと、いろいろそこにむずかしい問題が起きて、近ごろ議論されているような点も起きるかと思うのであります。
 私はこの法曹一元ということを達成しませんと、ほんとうの意味の国民のための、人民のためのりっぱな裁判所というものはできないと思います。これを万難を排してやるということに先生方に御賛成いただいて、ほかの点はとにかく、これだと、そのために障害になることはすべて排除するというお考えで今後立法をお願いしたいと、いままで法曹一元の運動をいろいろやりましたが、この席をかりて感想として申し上げるわけであります。
 これを基礎にいたしまして、きょうのテーマについて考えてみますと、裁判官に採用するかどうか――司法研修所を卒業いたしました者を裁判官に採用するかどうかということについては、これはりっぱな人に裁判官になってもらわなければならないと、こういう点からしてもう一度これはふるいにかけて、裁判官として適当な者だけ採用するということでないと私は困ると思うのでございます。司法研修所を出たから全部採用しろというのは私は筋が通らない、こう思うのでございます。
 それから再任の問題でございます。先ほどの憲法の条文で十年たって身分を失なうところの人を、これをもう一回裁判官にするかどうかという点については、これは先ほども言いましたように、憲法の精神は十年限り、十年たったならばやめてもらうというのが憲法の立法の精神ですから、それを生かす方法をとってもらいたい。そのためには先ほど私が申しましたように、十年で退職したならば、これは俸給にひとしいほどの恩給を与えると、こういうことにすれば円滑にいくと思います。現在のように十年たってやめるけれども恩給というような制度はほとんどないと思うのでございます。そこで十年たったから憲法の精神だからやめろ、こういって切り捨てるのではこれは当人にとって気の毒であるし、そういう運命をになった裁判官になるという人はこれはちゅうちょするわけです。
 で、私としては、いまのように判事補といって若いときに採用して、これをキャリアシステムによってだんだん月給を上げていって、そして使っていくという制度は反対でございます。弁護士として相当年数を経た者を、そうしてりっぱな人だけを採用して、待遇の上下というものはその後はないことにしたいのですが、いまのように研修所を出たての者を採用するということを、やむを得ない制度として暫定的に行なうというのならば、これは新任のときにふるいをかけて、そうして極力りっぱな人物だけを採用してもらいたい、こう思うのであります。再任の問題はいまのように憲法の条項と、それから現実の手当てとが食い違うためにここでキャップが生じて、十年たった裁判官当人にとっても、あるいは人事行政をやる最高裁判所にとっても、そこに矛盾のようなものが生じている。これはむずかしい問題を生ずるわけでございます。最高裁判所が十年たってこの人は再任の必要がない、こう思っても、いままで裁判官を十年やってきて、さて弁護士として生きるだけの能力のない、あるいは余地がない、たくわえがない。それは能力があっても弁護士としてすぐ生活できるわけではございません。そういう点を十分考えてやらなければならないという点でギャップがございます。そのギャップをこれは最高裁の人事をやる人は行政の面で考えて埋めるようにやらなければならないと思うのでございます。
 私の冒頭意見はこの程度でございます。
#10
○委員長(阿部憲一君) ありがとうございました。
 次に井上参考人にお願いいたします。
#11
○参考人(井上峯亀君) 私は東京弁護士会の井上峯亀でございます。
 私は、いまの参考人の方のお話とちょっと観点を異にしまして、本年起こりました再任拒否、それから不採用、それから罷免の問題について私の所属の弁護士会の司法制度臨時措置委員会でいろいろ調査をしました、この実態を、御報告いたしたいと存じます。
 昭和四十四年の九月に、平賀書簡という問題が起こりまして、いわゆる司法権の独立の危機が叫ばれまして、全国の弁護士会から司法の独立を守るべきであるという声が高くなりまして、昭和四十五年の十二月、日弁連の臨時総会で、裁判官の思想、良心の自由と司法権の独立を保持すべきであるという決議が行なわれました。そこで、日本弁護士連合会長は、昭和四十六年一月二十七日、最高裁判所長官あてに、第十三期裁判官の再任、それから第二十三期司法修習生の裁判官採用にあたって、思想、信条、団体加入等を理由として差別が行なわれないようにという要望書を提出したのでございます。ところが、三月三十一日に至りまして熊本地方裁判所の宮本判事補が再任指名簿から除外され、また二十三期生中七名が新任不採用と決定されました。
 そこで、全国十三の弁護士会と三弁護士会の有志合計三十八名が連絡をとりまして、現地の熊本に集まりまして、再任拒否に関する弁護士会合同調査団というものを結成しまして二日間にわたり調査を行なうに至ったのでございます。調査の主眼は、宮本裁判官の適格性と、それから再任拒否の理由とうわさされている事実、二点にしぼりまして調査をいたしました。
 宮本裁判官の適格性ということにつきましては、四月五日付の熊本県下の裁判官二十九名による最高裁判所に対する要望書によってみますると、勤務状態、健康、人柄、有能な人物であるということが明確にあらわされております。さらに裁判所の職員九名に対して宮本裁判官はどんな態度だ、どんな人だということも調査しましたところが、考え方がすなおで非常に温厚であるということであります。また、熊本県弁護士会所属の弁護士九名に対しまして調査しましたところ、非常に宮本裁判官は慎重で、訴訟指揮は迅速適切であるということでございました。また、その前任地である東京地方裁判所におきましては、代行の指名によりまして司法修習生の経理実務修習の指導を担当した、それからさらに司法研修所の研究員に内定した、こういった事実からしても、その適格性は十分であると考えられます。
 さらに再任拒否をうわさされている理由、これが問題なのでございますが、宮本判事補は、昭和三十四年か三十五年ごろ、司法修習生時代に青法協に加入しましたが、何ら積極的な活動がなかっということ、それからまたそして任官に際しても青法協加入のことは問題にされなかったという点でございます。さらに、平賀書簡公表問題でございますが、公表には何ら関与していないということを本人は明言しております。ただ陪席を一時つとめた関係上、年賀状のやりとりくらいはあったということを述べております。さらにもう一つ重大なことは、東大事件の欠席裁判問題でございますが、東京地方裁判所の刑事第十六部におきまして、被告人不在の、欠席のままの裁判は行なうべきでないということを、合議のときに述べたそうでございますが、結局合議の結果は欠席裁判は許さるべきじゃないという結論に達したということでございます。これは裁判官の独自の考えでございまして、何ら非難すべき点はないと考えるのでございます。
 かようにして考えますると、結局青法協の会員のみが理由と認められるし、もしそれでないとすれば私は再任指名権の乱用であると私どもはそう理解したのでございます。これにつきましては、「再任拒否問題調査報告書」というのを皆さまに御配布申し上げましたが、ひとつ御一覧を願いとうございます。
 さらに二十三期修習生の拒否問題につきまして、これもこの調査報告書を皆さまに御配付申し上げましたが、これに詳しく書いてございますからごらん願いとうございますが、その要旨を申し上げますると、昭和四十五年三月、第二十二期修習生の任官志望者の中から三名が採用されなかったという事態が生じまして、それから第二十三期生の中からも任官を拒否されるのではないかという不安が巻き起こったのでございます。その後本年の初頭の石田長官の発言、岸事務総長談話、司法行政事務協議会なとの一連の事実から任官差別の危惧の念が広がったのであります。本年三月三十一日、裁判所任官志望者六十二名のうち七名が任官志望者名簿から除外されるに至りました。
 そこで東京弁護士会の当委員会は、拒否された七名について二日間にわたり詳細な事情調査を行なったのでございます。各人別の事情につきましてはやはり報告書に各人別に明記してございますからひとつ御一覧願いとうございます。そしてその調査の、どういう方法によって調査をしたかというと、まずその青法協加入その他の活動状況、それから第二として任官志望に至る事情、それから成績についての本人の意見と任官拒否についての感想、面接の内容その他、以上について詳細調査いたしました。さらに二十三期クラス委員会発行の「二三期任官拒否問題資料集」を参考に、また、当委員会の照会した弁護士、実務修習指導担当弁護士の各人の評価、これを参考にして作成されたものでございます。なお、調査の公正を期するために、この本件の調査については、司法修習委員会の委員長も立ち会って調査いたしました。
 これより先、昭和四十五年十一月には、二十三期生のうち四百三十五名の連署をもって分離修習、任官差別を許さぬ会を結成して、最高裁あて任官差別反対の要望書を修習生から提出されたのでございます。
 それからその調査した事実の結果は、要するに、任官を拒否された七名はそれぞれ青法協の会員であり、あるいは分離修習、任官差別を許さぬ会の会員として積極的に活動しておると、それから検察の取り調べ修習を拒否したという事実もあります。さらに、研修所の七月入所の勧告を拒絶して入所した東大卒業生、あるいは各種のデモに参加したり、要するに団体加入その他の言動において最高裁判所や研修所の意に沿わない足跡を残しておると、司法行政を通じての統制に服しがたいとみなされた人であると判断されるに至りました。
 特に申し上げたいことは、面接の状況と二回試験の成績。これは採用された者に対しては志望する任地や家族関係を主として質問しておるが、拒否された七名については、任地、家族関係についてはほとんど触れず、冒頭から二回試験や他の法律問題を質問し、いずれも答え方が結局だめだというらく印を押しておるということでございます。このように特異な質問形式による成績の悪いことを自認させるように追い詰めているというのが実情でございます。
 結局、結論として、現行司法研修制度の基本理念は、裁判官、検察官、弁護士の別なく、法曹三者を統一して平等に養成することにあります。したがいまして、二年間の修習を終了し二回試験に合格した者は法曹三者のいずれにもなり得る資格と能力を持っておるとわれわれは理解しております。したがいまして、裁判官を志望するならば全部採用すべきであると考えられます。ことに裁判官不足のおりから成績を考慮すべきものではないと考えられます。これは裁判官になりましても三年ごとに研修が行なわれ、若干の成績の悪い者でも十分均等化されると私は考えております。
 任官拒否の理由は、要するに、最高裁は発表されませんが、調査の結果によりますと、団体加入その他を念頭に置きまして、思想、信条により最高裁の期待する裁判官像にふさわしくないものとして差別した疑いが濃厚であるという結論に達しました。
 さらに、阪口司法修習生罷免処分実態調査報告でございますが、四月二十二日、阪口徳雄君、それから司法研修所弁護教官九名、二十三期司法修習生六名より各人別に事実を調査いたしました。事実認定とその評価の資料としては次のものを用いました。一つ、委員会が直接本人から聴取しな事実。終了式当日の研修所の状況、終了式当日の状況を撮影したニュース・フィルム、TBS放映のものを八ミリカメラで撮影したものでございます。さらに終了式の開始前から終了後までの式場で録音した録音テープ。さらに阪口司法修習生に研修所から交付された辞令、試験合格通知、身分証明書、カリキュラム、その他の書類。本件は事実関係が最も重要でありまするので、公正を期するため、司法修習委員会の正、副委員長同席のもとに調査が行なわれたのでございます。「終了式開始迄の事実経過」、「終了式の状況」、「罷免の発令があるまでの経過」。矢口人事局長の国会答弁と本件調査との相違点については報告書に詳細記載してございますので省略さしていただきます。
 結局本件における阪口君の行為はその当否については問題なしとはしません。しかしながら阪口君は全修習生を代表したクラス委員長としての半ば公的なものであり、終了式をさせるどころか修習生の要望を反映させ、混乱なく終了させるためにとられたものであります。終了式での混乱は中島事務局長の終了式終了の宣言により惹起されたものであることは撮影したフィルム、録音によって明白であります。さらに当日報道陣の終了式における取材活動は全く自由に放任されており、研修所でこれを制限していない、これが一つの大きな混乱の原因になったものと考えられます。さらに阪口君罷免の手続において、最高裁はもちろん司法研修所でも全く本人に何らの弁解の機会を与えられておりません。阪口君の行為は、行為に問題があるといたしましても、修習生として品位をはずかしめる行為に該当するということでありましょうか。教官会議の大勢が罷免に当たらないとしていることは当然考慮されなければならないと考えます。要するに、終了式当日阪口君のとった行動は、その動機、目的、その具体的行動から見て、これをもって極刑ともいうべき罷免処分はきわめて不当であると判断したのでございます。
 以上、調査の結果を報告しましてお答えといたします。
#12
○委員長(阿部憲一君) ありがとうございました。
#13
○委員長(阿部憲一君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、井野碩哉君が委員を辞任され、その補欠として後藤義隆君が選任されました。
    ―――――――――――――
#14
○委員長(阿部憲一君) 以上をもちまして参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
#15
○亀田得治君 お二人の方に大事な点だけお聞きいたしたいと思います。時間の関係もありますから質問事項を先に一緒に申し上げます。磯村参考人に対しては三点ほど聞きたいと思います。
 まず最初に、法曹一元に対する見解ですね、率直にお話しがありましたが、この点は実は私もたいへん同感なんです。なかなか――そういう方向でやっているが、現実はなかなかうまく進んでおらないというのが御存じのとおりの状態です。したがってそういう前提のもとでひとつ御判断、お答えを願いたいと思います。
 その第一は、司法研修所を出たら、すぐそれを全部採用する必要がない、出たからといって必要がないというふうな意味のことをちょっとおっしゃったように思うのでありますが、その点について若干もう少しお聞きしたいのは、司法研修所の終了をするということは、これは法曹として適格だという、こういうふうに制度上なっておるわけですね。だから、その点がやはり非常に大事な基礎じゃないかと思うのです。したがって、その法曹の人が、あるいは弁護士、検察官、裁判官が、どこに行くかということを希望する場合には、ともかく行き得るんだということが私は一つの前提になっていると思うのですね、現在の制度では。関係者もこういう問題の起こらぬときにはみんなそう考えておるのが現実だと思うのです。そういう状態の中で、特定の人に対して特別な差別扱いをする。少なくともその点は許されないのじゃないか、こういうふうに考えるのです。磯村さんの場合には、研修所を終了されましても、相当大幅に最高裁が採否をきめていいというふうに聞き取れたのですが、その点にも問題はありますが、しかし特定の人をねらって差別扱いをする、こういうことは許されぬのじゃないか。差別扱いのしたかもいろいろあろうと思いますが、たとえば試験のやり方ですね、やり方。これは採用のための面接でしょうから多少の違いはあっていいと思いますが、相手によってあっていいと思いますが、それがはなはだしく違うというようなことは許されないことじゃないかというふうに思いますね、そういう点についてのひとつ御所見をもう少しお聞かせを願いたい。
 それから再任の点ですね。再任の点についても現在の制度がどうなっておるか、これは御説明もあり、われわれもそれは十分承知しておることであります。しかし実際上の慣行としては、やはり法曹一元が実現しておらない現在においては、特別な事情がなければ再任されていくんだ、これが一般の考えですね。そういう中で理由も明確にない。むしろその明確にされない理由を追及していくと、団体加入、しかも宮本判事補の場合には、それほど積極的な活動ではなかった、その団体の加入、それしか考えられないといったような状態での再任拒否というものは、私はきわめて適当じゃないと、こう思うんですが、これは裁判官にも御承知のとおり思想、信条、団体加入の自由等はこれは認められておるわけです。そのことは最高裁自体も理論としてはそのとおり認めておることです。認めておるから説明がしにくいということにもなっているのだと思いますが、いずれにしても、調査していきますと青法協加入ということしか出てこない。こういうふうな状態での再任拒否というものは私は不当じゃないかと思うのですが、もう少しその点についての御所見をお願いしたいと思います。
 それから井上さんに若干補足してお聞きいたしますが、宮本判事補について在野法曹の皆さんがいろいろ調査をされましたが、その中で熊本の裁判官たちが宮本さんについての評価をいたしておるわけです。これは非常に重要だと私思いますので、その点をひとつはっきりしてほしいと思います、それが一つ。
 もう一つはこの阪口修習生罷免問題ですが、あの事件が起きたあとに研修所の教官会議が持たれたはずであります、最高裁の決定が出る前に。その研修所の教官会議でも阪口君の扱いについて相当議論になったようですが、どういう結論であったのか、これもたいへん大事なことだと思います。直接現場にタッチしておる教官の皆さんの意見ですからきわめて私は大事だろうと思います。
 それから第二は最高裁当局では、阪口罷免について不利益処分を受ける阪口君の弁解を全然聞かなかったわけですね。そういう機会を与えなかったわけですね。これは報告書にもそれはまずいという指摘はありますが、これは法曹の常識として一体どういうふうにお考えになるか、この点をもう少しざっくばらんにお聞かせを願いたい。
 それから第三は、最高裁が衆議院で説明したところによりますと、そういう動機などを阪口君から聞いても聞かぬでも、それはもう罷免に値するのだ、こういうような意味のことを発言されている。私、速記録で読みまして、これはどうも裁判官らしくないなあと。それは現行犯でみんながそれを見ておるのだから、それはもう事実そのもので、もうはっきりしているのだ、どんな動機があろうが背景がどうであろうが、そんなことはかまわぬのだ。これでは私は、法曹としてもう暴論というか、これは殺人事件でありましても、動機なり、殺人の結果、むしろ死刑に値するというふうなおそれのある場合には、むしろその動機と――殺人そのものは明確である、そのままいけば死刑に値するかもしれないといったような事件であれば、なおさら動機についても吟味をし、あるいは動機の点からいってもこれはどうも許しがたい、それではやはり予定どおり死刑だ、これが私は裁判官の普通の常識であり、扱いと思うんですね。その阪口君にしてみれば、これは一種の死刑に値する処分です。自分が法曹になろうとしているわけですから、それを罷免されるのですから、まあ罷免の効果について若干意見の違いもありますが、一応形の上では罷免、法曹から追放、これは死刑に値するものなんですね。それが、動機とかそういうもののいかんにかかわらず、結論は変わらぬのだから、そんなことは聞く必要がないのだといわんばかりの表現を用いておられる。この点についてひとつ、何ですね、あなたがいろいろお調べになった結果を参考にして御所見をお願いしたいと思います。
 それからなおこのいま私が特に御意見をお願いした点、これはひとつ磯村さんにも法曹の立場から御所見を伺いたいと思います。
 それから報告書にもありますが、衆議院では、最高裁当局は、「阪口君がマイクをわしづかみにした」、こういう表現が出ておるんですね。この報告書ではそういうものではない。食い違いの点が他にもいろいろありますが、これは非常に私は一つの全体の雰囲気を決する点じゃないかというふうにも思いますので、井上さんがテレビなりいろんなものを参考にされて、そうして下された結論ですね、をもう少し詳しく御説明を願いたい。
 それと、混乱といいますが、時間の問題ですね。衆議院では、十分間、問題になった時間は十分足らず、こういうふうに説明されておるんですが、あなたのほうの調査報告書によりますと、開会の宣言があって事務局長が終了宣言をするまでこれは一分十五秒程度と、これは録音テープで全部はかったのだから間違いないのだというような意味のことが書かれておるのですが、この点ですね。これもはなはだ大事な点だと思います。一分余りいろんなことをやった、十分間もいろんなことをやっておった、こういうのと、あるいは最高裁のほうは午後釈明を求めるつもりでありますが、終了宣言があってその後混乱をした、それまで全部含めていろんなことを計算されておるのかもしれませんが、その辺のことを、午後の質疑とも関係がありますので。おそらく皆さんのほうでも、若干その点は詳しく検討されたと思いますが、できるだけ詳しくお聞かせを願いたいと、こういうふうに思います。
 一応以上で、お答えを聞いた上でさらにまたお尋ねをすることがあればいたしたいと思います。
#16
○参考人(磯村義利君) いまの御質問に対しまして申し上げます。
 第一の点、司法研修所を卒業しました者が、裁判官を志望した場合に、全部採用すべきでないか、こういうお話でございます。これらの点について、司法研修所を卒業する者は、法曹――裁判官、検察官、弁護士としての資格が平等にあるのじゃないか、こういうお話はまさにそのとおりでございます。それから最高裁で裁判官希望者に対して採用の面接をいたしましたときに、一部の者に差別的な質問のしかたをしたということがあれば、これは私もよくないと思います。とにかく志願してきた人は同じ形でもって同じ内容の試験、面接をすべきでございます。その点は、まさに亀田先生と私は全く同じでございます。問題は、裁判官を志望してきたならば全部採用すべきじゃないかと、こういう点でございますが、私の考えでは、裁判官は、弁護士、検察官に比べて一段上のランクに置きたいのでございます。法曹一元は、そういう趣旨で先ほど申し上げたわけでございます。したがって、弁護士、検察官になる資格が、あるいは裁判官になれる資格があるということでもってこれを全部採用する、欠員もあるからということになりますと、私の考えております裁判官のイメージに合わない人を採用する結果になると思いますので、現行制度のもとにおいても、裁判官は一段上のもの、これは現在の給与体系においても、ほんのわずかでございますが、裁判官は、検察官よりも上位にランクされておるはずでございます。そういう点で、志望者の中で、裁判官にふさわしいかどうかはもう一度審査して、そして希望者は全部よければけっこうでございますが、そうでなければある程度のランクに達した者だけ採用する、これは欠員があって困る点はそのとおりでございますが、それがいいと思います。それからその採用する者が、現在の法規のもとでは、最高裁判所が任用権を持っております。これがいいか悪いかはこれは国会でおきめになったことで、議論の問題ではございません、現実の問題ですから。採用権者に採用の検査はさせる以外に方法はないと思うのでございます。これが第一点でございます。
 今度第二点の判事補の再任の問題でございます。これはいまの亀田先生のお話は、いろいろ調査していくとどうも特定の団体に加入しているということが理由で再任を拒否したらしい、それは不当ではないか、こういう御趣旨と承りましたが、これはそういう趣旨で再任を最高裁がしかったのかどうか、最高裁はその点は何にも言っておりません。そこで私が考えますと、どうい理由によって最高裁が採用しなかったのかということ、これはまあ不明でございますが、この宮判事補を再任しなかったのがいいか悪いかとい問題になりますと、最高裁判所が人事行政をやるについて持っておったところの材料を全部これ公開してもらって私に見せてもらわないと、私しては再任を拒否したのがいいか悪いかという断は申し上げかねますということでございます
 それから、修習生の罷免の問題でございますが、この罷免をするについて、本人の弁解を聞かなかったという点は、私も欠点であると思います。これはほんの形式だけでもいいんです。君何かあれについて言うことはないかと、どんなとを言うにしろ、形式だけでもいいから、言う会はやっぱり与えるべきであると、私もそう思います。その点は欠点であると思うんです。それら、罷免という処置をしましたが、私が調査しました、事実聞きました事柄によって判断いたしますと、罷免は重過ぎると思います。私の考えは、六カ月の停学ぐらいが相当であるというふうに判断しておりますが、最高裁は罷免という処置をした。その点では私の意見と食い違うと思います。お答えといたします。
#17
○亀田得治君 磯村さんに、ちょっといまのお答えに関連して引き続いてお聞きしたほうが尋ねやすいのでしますが、最高裁が、司法試験を通つきた者をふるいにかけることはしかたがない、こうおっしゃっておるんですが、その際、たとえ裁判官の激職にとても耐えられそうではない、体的に。そういうことなら、これは当然あり得ることですが、いま問題になっておるのは、団体加入とか、思想、信条ですね、こういうことを由にしてはねられておるわけですね。はねられておるほうはそう見ておるわけですね。そうしてその疑いが濃いのではないか、いろんな調査の結果。これは常識的にも見られておるわけです。かし、最高裁はそれは説明せぬものですから、厳密にいえば、あなたがおっしゃったように、最高裁の資料を一切見せてもらわなければ、本件についてはなかなか言いにくいということはいえるでしょうが、一般的にいいまして、したがって七名の問題から若干離れて、一般的に見て、特に裁判官の活動に、身体にも、精神的にも支障がないが、団体加入なり、思想、信条、そういうことを理由にして適格者であるのに採用しない、これは私は不当だと思うんですが、その点はどういうふうにお考えですか。
#18
○参考人(磯村義利君) この思想、信条という、いまお話がありましたが、これは裁判官も人間でございます。それから、社会生活をいたしておりますので、思想、信条は当然持っております。そして、その自由は憲法が保障しておって、どういう思想、信条を持っておる者は、よくないとか悪いとかいうことは法律で区別してはいけないことになっております。ですから、これをもとにして、裁判官の採否をきめるというのは私もいけないと思います。この点は御同感でございます。ただ、現実に問題になりました七名の者が、これが思想、信条だけで不採用になりましたのかということになりますと、やはりいまのように材料不足でございまして、私も正確なルートでないことで、実は不適格者があるんだと、こういうことを聞いておることもございますので、これは判断いたしかねます。
#19
○亀田得治君 井上さんの質疑が入ってくるとかえって中断しますから、続けてもう一度聞きますが、宮本判事補の場合には、たぶん青法協加入だろうということが一般に推定されておるんですが、しかし最高裁は、それははっきり言われたことがありません。たまたま下田裁判官が新潟で、宮本裁判官のことについて具体的におっしゃったわけですね。青法協加盟ということも一部の理由だが、そのほかのこともあるように言われたわけです。これは宮本裁判官のことについて直接発言されておるわけですね。だから、これは一種のそういう意味では推定じゃなしに、決定者の発言ですから、大きな材料と見ていいと思うんです。そこで、思想、信条で区別してはならないと。これは裁判官の場合には身分保障は私は特に必要だと思うんですが、これが政府の言いなりに思想統制されるようなことになったら、行政訴訟なんか無意味になってしまいますからね。私そこが大事な点だと思うんです、政治権力との間で。特にそのことを心配して、憲法が保障しているんだと思います。だから思想、信条が裁判の実際の進行に妙な形であらわれるとすれば、これはまたそれで取り扱う方法がいろいろあるんですが、裁判官の思想、信条というものを大事にしなきゃならぬ、したがってそれを理由に差別待遇は許されない、これは一般的にいまあなたおっしゃったのですが、一般的にそう言えることであれば、たとえ一部であっても、そのことを理由にすることは私は間違いじゃないか、こうお聞きしたいわけです。これは下田裁判官が、宮本判事補についてそう具体的におっしゃっておるわけです。資料があるものとして、ひとつ御見解を承っておきたいのですが、どうでしょう。
#20
○参考人(磯村義利君) いまの再任拒否問題で、再任をしなかった理由に、青法協加入もその一つの理由であるということを下田裁判官言ったそうですが、いま亀田先生のお話によりますと。で、それが思想、信条を理由にしたことになる。つまり、青法協を理由にしたことは、イコール思想、信条を理由にしたことになるのか、ここに問題点があると思うのです。青法協なる団体がどういう団体であるか、その点に問題がかかってくるわけです。この団体が政治活動を大いにやる団体である。そうしてそれを推進していくということになって、それに加入してどの程度の行動をしているか、こういう事態の認定によりまして、思想、信条の問題と離れて政治団体の加入になるのかどうか、思想、信条だけの問題で、これで差別するのはこれはよくない。しかし、最高裁の言っておりますのは、青法協加入も一つの理由だ、青法協加入ということと、思想、信条の自由と同じになるかどうか。亀田先生はあるいは同じになるようなお考えでいまの御質問になったようですが、私は同じかどうか断定するだけの材料を持っておりません。
#21
○亀田得治君 宮本裁判官の場合の、青法協との関係は、ほんの加入しておるという程度の非常に薄い状態のようですね。したがって、私は実際的には即思想、信条と、それしか考えられないというふうにも思っておるわけですが、その基礎の材料をお互いに持っているわけじゃありませんから、これ以上、議論になるようなことはやめておきたいと思います。
 じゃ、どうぞ、井上さん。
#22
○参考人(井上峯亀君) 井上でございますが、お答え申し上げます。
 宮本判事補の「熊本県下二十九裁判官の要望書」というのは、この拒否問題調査報告書の末尾のほうに全文を、これは現地で入手しまして掲載してございますから、ごらんくださればおわかりになろうと思いますが、要するに、この中に、「同裁判官は、勤務状態、健康、人柄について全く問題がないばかりか、他人の意見に十分耳を傾け、資料文献を渉猟して事実認定をし、すぐれた法理論を形成する卓越した人であり、自分が誉められることを本気で嫌い、かつ暖かい思いやりとユーモアのある言動の一致した良心的な人で、私達が日頃敬愛しているところであり、職員の人望も厚いことを熟知しているものであります。」と、こうこの中に一文がございますが、これでひとつ御了承願いとうございます。
 それから阪口君の問題でございますが、教官会議の模様につきまして、これは厳密には詳細に言えないそうですが、私たちが立ち会って聞いた九名の弁護教官から聞いた話では、研修所では罷免すべしという説と、それから終了延期すべしという説と、それから厳重なる注意処分という三つについて無記名投票が行なわれたそうでございます。しかし、この報告書にも書いてありまするとおり、罷免処分にするというのは、少数であったということでございました。それから最高裁に弁解の機会を与えられなかったことは、これは非常に遺憾なことであろうと思いますし、私どもはむしろ最高裁よりも研修所がどうして阪口君の弁解を聞かなかったかということを私は非常に遺憾に思っております。と申しまするのは、式の終了を宣言しまして、その後修習生が集会をやり、続いて最高裁にデモに行ったのでございまするが、阪口君だけは、おそらく研修所から何か釈明を求められるだろうと思って一人研修所に残っていたということでございます。それから現行犯的なものだから別に聞く必要はないという矢口人事局長のお話のようでございまするが、やはりこれはもう罷免というような大きな処分をするのには、動機とか、目的とかいうものを大いにしんしゃくすべきものと考えなければならないものだと思います。
 ここで私は一つ申し上げたいことは、クラス委員長とか何とかというのがございまするが、これは研修所が始まってからずっと各クラスで現在では三名ずつ、研修所で三名ずつ委員を出せというので、三名ずつの委員を出させます。選挙あるいはアイウエオ順で何か出させるようでございます。現在十組ございまして、したがって、いま委員が三十名いるわけでございます。その委員の三十名が互選をして初めて委員長ができるのでございます。この委員長が阪口君なのでございます。
 さて、そのクラス委員というのはどういうことかというと、司法研修所と各クラスあるいは全修習生との連絡あるいは協議、いろいろ行事とか何かについて打ち合わせしたいことがある、打ち合わせ連絡の場である、機関である、そう私は考えている。したがって、半ば公的なものであるということを私は申し上げたのでございます。
 それからマイクを乱暴に握り取ったとか何とかという表現がございまするが、これは出席した教官連中もひとしく無理して取ったというようなことは、もぎり取ったとかというような、そういう態度ではなかったということを一致して申しておりました。
 それから式の時間でございまするが、これは録音テープでわれわれがとりましたので、連合会の調査によりますと、一分二十四秒になっておりまするが、私の調査では、委員会の調査では一分十五秒でございます。これは違うとすれば九秒違うわけですけれどもこれは録音テープによって私どもは計算し、かつ二十三期の修習生がみずから時計ではかった時間だということ、それもあわせて御報告申し上げておきます。以上でございます。
#23
○亀田得治君 その録音テープというのは、当日あらかじめ用意してあったものですか。
#24
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 当日、われわれは図面まで書いて実は調査しましたのでございますが、それから八ミリもかけてやったのでございますが、式辞を述べる演壇があり、その斜めうしろに所長席があって、そうしてテープとマイクというのは式辞を述べるところにございました。
#25
○亀田得治君 それではそのマイクは研修所側が置いたものですか、あるいは何かいろいろ紛糾しそうだというので、修習生かだれかが置いて用意したものですか。
#26
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 それはいずれも研修所が設けたもので、修習生は何らそれに関与しておりません。
#27
○亀田得治君 そうすると、そういう録音のしかたは、録音は、普通そのような行事で、いつも行なわれるとおりにとられていたと、そういうことですね。その式だけに特にその録音をとったわけではないですね。
#28
○参考人(井上峯亀君) それは私のほうではわからない、毎年やりましたかどうかわかりませんが、このたびのなには録音をとっておりました。修習生がみずから提供したものでございます。
#29
○亀田得治君 わかりました。
 それから多少こまかいことになりますが、確かめておきたいと思うのですが、二回試験終わって面接ですね。面接の際に、相当差別的な質問があったようですが、極端なのは、同じ答えを言うても――答えがAとBと二つあるといたします、答え方が。どちらを言うても、ある人にはそれはだめだ、つまり目っこを入れられている人にはそんな答えではだめだ。それからもう一人の目っこを入れられている人が反対の答えをしているんだが、やはり同じようにそれはだめだ、というようなことがあったようですね。なぜそういうことがわかるのかというと、どうも特別の人をねらい撃ちしょうとしているという雰囲気があったものだから――面接試験が終わったあと、全部の修習生が記憶の新しいうちにということでメモをとったようですね。これは七名の方だけではなしに、これはほかの人も、これはほかのパスしている職員といえども今度の措置には非常に不公平なものがあるというふうに感じておるものですから、その点ではみんな、任官を拒否されるされないにかかわらず、ほとんど意見は一致しているわけですね、そういう差別はすべきではないと。その試験の中身ですね、これは最高裁は、おそらく説明にならぬと思いますから、あなたに聞くわけですが、そういう極端な事例があったように聞きますが、どうか。
 それともう一つは、この一つの答えをする。そういうことでは、それは致命的だというふうなことを任官を拒否された方が言われておるが、しかし任官された人が同じ答えをしておってもそんなことは言われておらない。致命的なものであれば両方に言わなければいかんわけですね、致命的なんだから。そういうことが調査の中であったのかどうか。その二つをお答えしておいてほしいのです。
#30
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 まあこれに一々各人別のがございまするが、要するに、特異な質問があったということは、これはこの全文を読んでいただければ読み取っていただけると思います。それから特殊な問題として、私もやはり司法研修所の教官をした経験がございまするが、現在、実務修習におきましては、東京の例をとりますと、刑事裁判一年四カ月の間に、二週間だけ家庭裁判所へ実務修習で配属されます。ところが、その落第生の一人には、実務修習わずか二週間の何に、家裁の事件について非常に難解な質問をしている。これはちょっと考えものだと考えております。
#31
○後藤義隆君 私は委員の後藤義隆ですが、お二人の先生にお聞きいたしますが、まず磯村先生からお聞きいたしたいと思います。それでこの項目だけをあげてずっとお聞きいたしますから、メモをとっていただいたほうがいいと思いますが……。
 いま問題になっておる司法権の独立の問題に関しては、裁判官の新任、再任並びに法曹養成中の者について関係があると思いますが、三者関係があると思いますが、これらの三者は一応別々に考える必要がある、こういうようなふうに私は考えるわけであります。裁判官に新任されるかどうかの関係にある者、すなわちいまだ裁判官ではない者は、司法官が有しておる司法権の独立関係の外にあると、こういうようなふうに私は考えております。それから、まだ裁判官に任名しておらない者の思想、信条、団体加入の自由は、一般人の自由であって、特に司法官の有する自由ではない、自由の性質が違っておると、こういうようなふうに私は考えております。
 それから、まあ略してまいりますが、下級裁判所の裁判官の再任の規定は、憲法第八十条に「その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。」とあって、憲法八十条に任期は十年と定められております。また、各種委員会の委員の任期、各種議会の議員の任期、地方自治体の首長の任期、これはいずれも法律で任期を定められておりまして、その任期中は完全に権利義務を持っておりますが、任期が終われば当然その地位を去りまして、その権利義務を失うことになっております。旧憲法時代には裁判官の任期は終身であったが、新憲法の第八十条では任期を十年と区切ってありますが、これはアメリカの影響を受けておりまして、アメリカでは裁判官の任期を十年によって選出する州が多いからである、これは選挙によって選出する州が多いからであると、こういうようなふうに私は了解しております。下級裁判所の裁判官が新任されて十年の任期中は、憲法、裁判所法、裁判官弾劾法等によって思想、信条、団体加入はもちろん罷免、転任、転所についても一般の行政官等にはみることのできない手厚い保護を受けておるが、これは十年の任期中、すなわち裁判官として身分のある間は保障されておるのであって、十年の任期が切れれば一般人としての基本的人権のみを有しておるにすぎないのである、こういうようなふうにまあ私は考えております。
 それから下級裁判所の裁判官の任期が経過すれば、本人あるいは外部が再任を希望いたしましても、新任の場合と全く同様であって、任命権者の自由で、裁判官として好ましくないと思えば任名する必要はなく、最高裁判所が好ましくない者の任命を強制されることは憲法第八十条に違反し、最高裁判所の権限を侵すことで、その好ましくない理由を、本人並びに外部に発表する理由はなく、また、公表せないことが普通であって、本人並びに外部の者がその公表を迫る権利はないものである、こういうようなふうにまあ私は解しております。このことは各種委員会の委員、あるいは各種議会の議員並びに地方自治体の首長が任期が終了すれば再任されるかどうかということと全く同様である、こういうようなふうにまあ憲法上の規定から見て私は当然である、こういうようなふうに考えています。
 それから本件の問題になっておるものでありますが、青法協と裁判官の選任の問題について考えてみますと、裁判官の再任拒否が青法協会員なるがゆえに拒否されたのは不当であると言う人がありますが、その者が裁判官として好ましくなければ再任を拒否することは当然であることはいままで私が述べたとおりでありますが、再任希望者中青法協会員四人がありまして、このうち三人は再任の予定であって一人だけが拒否の予定であった点から見ても、青法協会員なるがゆえに拒否するのではなく、他の青法協会員と異なり、他に裁判官として再任することが好ましくない理由があるのではないか、そう考えることがわれわれは当然ではないか、こういうようなふうにまあ考えます。
 それから司法修習生罷免の問題は、裁判官の新任、再任の問題とは私はその趣旨を異にしておる、こういうようなふうに考えております。司法修習生はまだ法曹人ではなく、将来法曹人となる期待を持っている一般人にしかすぎません。その者の罷免は独立権を持つ裁判官と同一に論ずることはできない問題であります。しかし最高裁判所の管轄に属しておる司法修習所のできごとでありますから、司法の独立が及ぶかどうかの問題はあると思います。いずれにしても、多数の研修生中一人だけ罷免されたことは、将来法曹として好ましくないと認められた点を強く反省する必要があるんじゃないか。こういうようなふうに私は考えております。それは、磯村先生にお聞きしたことでありますが、一応それについて磯村先生の御見解を承りたいと思います。
#32
○参考人(磯村義利君) いまの後藤先生のお話は、私は異議を述べる点はございません。全面的に賛成いたします。ただ、少し、ニュアンスの点でちょっと補足させていただきたいという点がございます。
 それは、裁判官の再任の問題でございますが、十年たてば当然資格はなくなる。これはまさにそのお説のとおりで、法律論としてはそうだと思います。それから、資格はなくなるけれども、再任することができると憲法にございます。ここが、冒頭にも申しましたのですが、現在は、十年たって、その人が裁判官の資格を失いますと、直ちに路頭に迷うわけであります。アメリカのように、ローファームがございまして、そこへ帰って、そこでまた仕事をするということならばいいのですが、法律上、十年たてば資格はなくなるのだから知らぬと、これはできますが、そこは考えてやらないと、司法官になり手がなくなってしまいます。そこで、私が考えますところでは、もしこの人は再任すべきでないということを人事行政者が考えましたならば、たとえば、一年ぐらい前から、内内に、君は今度の再任はあるいはむずかしいかもしれない。ひとつ次の進路を考えてみたらどうだろうと、のみならず、あるいはこういうところへ世話してあげると。ある弁護士事務所へつとめるとか、そういうぐらいの親切をもってやってもらいたい。これを私は後藤先生の御見解につけ加えさしていただきたい。ほかの点は全く賛成いたします。
#33
○後藤義隆君 いまお話がございましたし、先ほど亀田先生の御質問に対してお答えがありましたが、私も初めからしまいまで臨司の委員でありまして、司法一元化については私も賛成であります。そして、日弁連はおおむね臨司の答申には反対の意見が多いようでありますが、臨司のこともよく存じておりますが、私どもは憲法というものを非常に重要視いたしまして、そうして、他のそういうようなふうな、現在の裁判官を救済する方法、それはやはり別個に考えなければならないけれども、いまの憲法を曲げて考えることは私は適当でないと思う。これは社会秩序を乱すことになるからやはり適当でない。
 これは申し上げていいかどうかわからないけれども、いまの裁判官に対しては、私個人としては、国会議員が相当な多題の報酬を受けておりますが、それと同額でなくても、それと同じようなふうに、あなたからもちょっとお話があったけれども、十年たって裁判所の判事になれば、なった人も、あるいはそれから五年、十年たった人も、全部同額の報酬を支払うことが適当ではないか。そして、所長とかあるいは高等裁判所の長官とかも、それは職務手当を支払うことはいいけれども、やはり国会議員と同じようなふうに、キャリアのある人でも、ない人でも、十年たった以降は同じにしたらどうか、これは私の個人的考えで、外部にまだ発表はしておりませんが。そこで、いまの裁判官を救済する方法は考える必要があるが、しかし、それが、いま裁判官を救済する方法がないからといって、憲法を曲げて考えることは、私は適当でないのじゃないかというようなふうに考えておりますが、その点はどうですか。
#34
○参考人(磯村義利君) 私も同意見でございます。
#35
○後藤義隆君 それから、井上先生にお聞きいたしますが、これは主として、阪口君でありますか、阪口君に関することでありまして、先生は非常にお詳しくお調べになっておられますが、先ほど先生のお答えの中に、罷免がよいと言う教官もあれば、しかし、罷免というのは適当でない、よくない。それでもって、これは延期しょうと言う人もあった。それから、厳重な注意を与えてそれでいいじゃないかと言うような人もあった。人数などは言わないけれども、そういうふうに言われておったわけでありますが、そうしてみると、何人あるか知らぬけれども、数百人のうちでもって一人だけが罷免された。何か、ほかの、数百人の別個の人とはおのずからそこに違うのじゃないか、こういうようなふうに考えますが、そうして、いま先生のお話しになったようなふうに、その卒業式の会場でもって、とにもかくにもそこを混乱に――そんな、わずか一分か一分何秒でもって式を終わるということは、これは異常の状態です。そういうようなふうな異状な状態をかもし出したということは、それから終了宣言したかせぬかは別として、とにかく異常な状態です。それをかもし出したということは阪口君がやったことであって、そういうようなふうなことはやはり私は司法修習生として好ましくないことじゃないかと、こういうようなふうに考える。そこでもって、教官の人も、罷免はひど過ぎるからほかの方法をというようなふうなお話があったのでありまするが、ところが、この人が弁護士に――裁判官や検察官になればもちろんのこと、それがかりに民間人の弁護士になっても、法廷でもってそういうような態度があらわれたならばはたしてこれが法秩序が保てるかどうかということを先生からひとつお考えを願いたい。
 それと同時に、これは私は調べてみたのですが、司法修習生の規定の中に、罷免よりほかに、軽いところの、卒業を延期するとか、あるいは厳重注意をするとかいうようなふうな規定があるか。全然そういう規定がありません。これは弾劾裁判所の、判事を罷免するときと同じでございます。罷免か、しからずんば無罪放免か、両方でございます。そこでもって、先生はそういうようなふうなお話があったが、ほかの人でもってそういうようなふうに言われたかしらぬが、やはり私は、それを措置するところの最高裁判所では、罷免するか、それとも、要するに、これを無罪放免に――無罪放免ということばは適当ではないが、そのままにするかというだけであって、罷免はちょっと、少しは重いかもしらぬけれども、しかしそのままそれをほうっておくわけにはいかぬというようなふうなことになれば、どちらかをせにゃならぬということになれば、最高裁判所は、それなら罷免のほうが適当だというようなふうになったのじゃないか。こういうふうに私は考えるわけでありますが、その点について先生の御意見を伺いたいと思います。
 なお、それから、いままでは、司法修習生は、中へ入って二年たてば、おおむねもうそこを卒業して、そうして、判事になるか、検事になるか、あるいは弁護士になるか、なっておった。通例の人が、それが多いようであります。そこでもって、われわれ外部から見たならば、非常にむずかしい試験を通って司法修習生に、研修所に入った人が、それからあとは、ややもすると、何か、おざなりでもって、二年たちさえすれば卒業するのだというふうな安易な気持ちでもっておる人が多いのじゃないか。やはりこれは、先ほど磯村先生からもお話があったが、他の一般の行政官とは違って、非常に高いところの手当を受け、待遇を受けておる。いろいろなこれは手当を受けておるわけでありまするので、そこでもって、やはり私は、これを厳重に試験する必要が、監督する必要があるのじゃないか。一般の者よりももっとする必要があるのじゃないか、こういうようなふうに考えるわけでありますけれども、それと同時に、その中にもちろん含まれますが、名前をあげて悪いのですけれども、研修所に入った人は、そこでもってところてん式に押し出されるよりも、やはり厳重な公務員としての品格を養うということが非常に私は必要じゃないか、こういうふうに考える。これが大切なことであります。最高裁判所に課せられた大きな重大な任務ではないか。こういうようなふうに考えておりますが、阪口君という名前は一応伏せます、取り消しますが、その中でもって適当でないと思われるものがあれば、最高裁判所が適当でないと思うものがあれば、これは罷免をするということはやむを得ないのじゃないかというふうに考えておりますが、その点についてどうでしょうか、先生の御意見を伺いたい。
#36
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 まず罷免の問題でございますが、確かに研修所規則には罷免だけしか処罰の規定はございません。ただしここに入って私は十数年たつのですが、私の任期中あるいはその後にも修習生に落ち度があって、所長の戒告とか、いわゆる厳重処分とかいうことが、規定にはありませんが行なわれております。実際にはそういうのがたびたび行なわれております。あるいは実務修習中に事故があれば、その地方裁判所所長が戒告するというような処分が行なわれているということは事実でございます。
 それから試験でございますが、これは先生のおっしゃるとおり、法曹人としての品位を大いに保つ必要があろうと思います。したがって試験も筆記試験と口述試験それから教養と、こう三つに分かれて相当程度の高い試験が行なわれている。また、それでその二回試験を非常にみな気にしておるものですから、弁護士を志望しようと何しようと、やはり二回試験を目ざして実務修習中並びに後期に入っても、やはり一生懸命に勉強しております。私の時代でございまするが、後期に入ってきますると、たとえば寮の窓の電気の消えるのが十二時以前には一つもないというような状況でございます。一生懸命でございます。
#37
○後藤義隆君 いま先生のお話でもって大体わかりましたが、実は私も司法試験が非常にむずかしくて、それを通ることが非常に困難であるし、それを一生の目的にしておるのだということはよく私も知っておりますから、それで最高裁判所の方にはだれにも聞いておりません。これはわれわれが、政党が、あるいはまた国会が、あまりかれこれ圧力を加えることは司法の独立を侵すことになるからと思って私はこれは遠慮しております。
 ところが、日弁連の前会長をしておったことがある幹部の人と、それから東京弁護士会の若い人――あまり若くもないが、相当の年齢の人でありますが、私が懇意にしておるから、この前、私の部屋に呼んでこういうことを聞いたのです。いまのままでいったならば、その司法官試補の人がはたして三年後に簡易裁判所から判事になれるかどうかもわからない。最高裁と角を突き合わして意見の衝突があったままでは、なれるかどうかもわからない。それからまた、阪口君――阪口君というのは一応取り消しますけれども、司法研修所でもって罷免になったものが、これでもってそのままになってほかに転職をしなければならぬということは、あまりに何か個人的に考えて気の毒じゃないか。それでもってそこをなんです、判事補の人は三年以内に、これは三年が二年になるか一年になるかわかりませんが、三年以内に、ほんとうに謹慎して、そうしてほかの青法協の人と同じような、差別をつけられないようなふうに謹慎してりっぱになって、最高裁判所からこれを認められて判事に任命されるようなふうに努力したらどうか。あなた方もまあ日弁連の幹部だから、こういうふうなぐあいにやったらどうかということを私は申し上げました。そうしたら、その人はもちろん個人的の意見でありますが、私もそう思っておりますということを言うのです。それから司法研修所を罷免された人も、これはあるいはあなたのいまのお話のとおりに、再入所を許してもらって、そして半年の後になるか、あるいはこれは一年後になるかしらぬが、ほんとうにいままでやったことが何百人のうちでもって、自分だけ一人が罷免になったのだから、それはやはりあそこが悪かったのだということをよく反省して、そして再入所を許してもらうようなふうに努力をして、そういうようなぐあいにひとつやったらどうなんだと言ったら、なるほどそのとおりです、私どももなるべくそのほうがいいと思いますということを言っておったが、そういうことができるならば、あなたは御異存はありませんか。
#38
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 現在の制度では、おそらく入所して、要するに、裁判所法の六十七条ですか、にございます二年間の修習、それから二回試験の合格ということが、二つの条件になっておりまするから、先生の言われるような半年であるいは一年で終了するということは、これは実際上不可能と考えられます。
#39
○上田稔君 磯村参考人にお尋ねをまず申し上げたいと思います。私は法律家ではございませんので、そういう点におきましてはしろうとでございますので、あるいは質問が当を得ておらないかもしれませんが、その点はひとつお許しをいただきたいと考えます。
 第一にお尋ねをいたしたいのは、先生から法曹一元化についての非常に御高説を承りました。この点についても私もそれはそういうふうにあるべきじゃなかろうかと思うのでございますが、その点につきまして、臨時司法制度調査会というのがあるそうでございますが、その調査会におきまして、現在では時期尚早である、基盤となる諸条件がまだ整備されていないから尚早である、こういうようなことが結論として出されておると聞くのでございますが、その諸条件というのは、先ほど先生が言われた裁判官をやめた人が、十年でやめた人が、弁護士になられたときに、収入が非常に変わってくる、こういうことであるのでございましょうか。あるいはそのほかの理由でございますのですか、御存じでございましたらお教えをいただきたい。そうしてまた、もしそれが理由であれば、そういうものについては弁護士会としては御調査になっておるのか、まあたとえば裁判官をおやめになる、その場合の収入が減るというようないままで事例が、もうお年寄りになった場合にあるのだろうと思いますが、そういうようなときにはどうなっておるのか、そういうようなこともお調べになったのか、そういう点を第一点としてお伺いをいたしたいのでございます。
 それから第二番目でございますが、裁判所法の第六十八条でございますか、司法修習生のことについて御質問をいたしたいと思うのでございますが、この六十八条によりますと、罷免のことがきめられておるのでございますが、「行状がその品位を辱めるものと認めるとき」「罷免することができる。」、こういうことになっておる。それ以外の処罰規定はまずないということのようでございます。しかしこれはいまここで問題になったのではなくて、以前にもこういう問題についてはいろいろ議論をされたのではなかろうかと思うのでございますが、弁護士会におきまして、以前に懲罰規定以外の規定を、もう少し緩和したようなものといいますか、分限、懲戒についての規定をつくったらどうだろうかというようなことが問題になって、そのときに弁護士会が反対をされたというようなことを聞いておりますのですが、それは、もし御存じでございましたら、どういう理由であろうか、また、これは今後どういうふうに考えられるか、そういうことを第二番目にお聞きをいたしたいと思います。
 それから第三番目に、面接をやって口頭試問をおやりになる。このときの質問というものは平等でなければいけない、こういうようなことでございましたが、なるほど口頭試問というものは筆記試験とは違うのでございまして、私は平等というわけにはやはりいかないので、どこの会社の試験でも、どこの官庁の試験でも、面接試験をするときにおきましては、やはりその御本人が入ってこられた、御本人を見て、あるいはいろいろ調書を見て、そしてこの方にこういうことをひとつ聞いてみようじゃないか、この点が弱点じゃなかろうか、あるいはこういうことを勉強してこられたのだから、そういう点を聞こうじゃないか。私は、口頭試問というものは、内容はおのおの異るのがあたりまえであって、そして、その中からいろいろくみ取っていって採点をするのが普通ではないか、それが常識じゃなかろうか、こう思うのでございます。研修生の面接のときの口頭試問というものは、平等でなければいけないものでございましょうか。その点についての御意見を承りたい。
 この三点につきまして、磯村参考人にお伺いをいたしたい。
#40
○参考人(磯村義利君) 第一点の法曹一元について、前に臨司という委員会制度ができて、報告書ができて、その内容をいま上田先生御指摘になりましたが、そのときはいま御指摘になりましたように、法曹一元は望ましい制度であるけれども、時期尚早であるという結論になっておりますが、その理由は、私は詳しいことはいま覚えておりませんが、私に言わせれば、これはへ理屈であって、法曹一元をぜひ実現しようという熱意がこの臨司の報告書の中になかったのです。やろうと思えば蛮勇をふるってやらないと、事柄の改革というものはできませんので、この法曹一元は蛮勇を持ってやる。ことに財政的な方面にそういうことで国会がやってくださればできる問題だと、私はそう思っております。
 それから二番目の、裁判所法で罷免の条項について、罷免以外に処罰がないという問題でございますが、これは条文には、なるほどいまおっしゃったとおり、罷免という以外の処罰なり懲戒の方法は書いてございません。書いてございませんけれども、書いてないからといってそれ以外の監督、懲戒ができないということはないと思うのでございます。たとえば学校教育法という法律を見ますと、これは大学が学生を懲戒することができるという条文だけであって、退学ができる、停学ができる、授業停止ができる、こういうこまかいことはございません。各大学によってあとのところはきめておるわけでございます。教育機関あるいはある種の団体において、その団体員に対して懲戒権というものは、これは条文がなくても、特殊な方法は別として、通常考えられる懲戒はできると思います。たとえば私が先ほど申し上げました六カ月の停学というような処置は阪口修習生に対して私は可能であったと思います。この条文は罷免だけしかないからほかの条項もつけ加えよう、こういう疑義が起きて、前に問題になったことがございます。そのときは弁護士会のほうで反対をいたしました。その弁護士会が反対をしましたのは裁判官の懲戒でしたか、あれには罷免しかない。修習生はそれに準ずるものだからそれ以外のこまかい懲戒はいけないのだ、こういう議論をたしか出したと思いますが、私はその議論には賛成いたしませんでした。
 それから三番目に、口頭試問のときに人によって違えてかまわない、むしろそれが口頭試問の本質ではないかというお話でございますが、本質はなるほど、おっしゃったとおりでございます。ところが、この口頭試問、試問を受ける人が、本件の問題になっております場合は、司法研修所をまさに卒業しようという人たち、これらは大学で法律を勉強しまして、それから司法試験に合格して研修所で二年修習をした、これから法曹になろうという連中で、これらの人は全部いわばうるさ型の人なんです。それらの人に対する処置としては私は、外見上は平等によそおって口頭試問をなさるというのが適当な処置である、こういうふうに思います。
#41
○上田稔君 ただいま御答弁をいただいたのでございますが、この司法修習生の分限懲罰規定を整備しようということにつきましては、弁護士会から反対がそのときにあったということですが、私はそういうことではないというようなお答えにお聞きしましたのですが、弁護士会としてそういうふうに全体で反対をされたものでございますので、最高裁が、たとえばほかの罷免以外の懲戒処分を出せば、これはまたけんけんがくがくのいろいろな御意見がむしろ出てくるのではなかろうかと思うわけですが、その点をひとつお聞きいたしたい。
 それから次に、口頭試問は、最終の口頭試問だからそれは何も聞かないのだ、ということでございましたが、そういうような口頭試問ならもうおやめになったほうがいいのであって、私はその実習の期間において実際に実務実習なんかもおやりになって、そうしていろいろな実際の試験におあたりになった、そういうことであれば、そういうものについてお聞きをするのが、これはあたりまえのことであって、私たちが、たとえば建設省のほうで筆記試験をいたしますときに、そのときには、卒業するときに実習に行って、そしてこういうような点を勉強しましたということが書いてあれば、当然そのことについて詳しく質問をするということになると思うのでございますが、こういう点でひとつ御意見を承りたいと思います。
#42
○参考人(磯村義利君) まず懲戒の問題でございますが、条文に、罷免しかないのに、ほかの処置をするということを、もしやれば、また、そこで問題が起きて、紛議、問題の種になるのじゃないか、こういうお話でございますが、その点はまさにそのとおりでございますし、また、そういう議論が起きて問題にはなると思いますが、私はその不利と申しますか、その不便よりも、そういう条文がないからといって、ほんとうは罷免すべからざるもの、私に言わせれば、六ケ月の停学にすべきものを、罷免という実質上の不利を与える、条文がないために本人にそういう特殊な不利を与える結果になるほうが、結果は悪いと思うのでございます。その意味で、条文はなくても、正しいことならそれはやる、議論が起きてもやむを得ない。こういうふうに考えてもらったほうがいいのではないかというように思います。
 それから口頭試問の点は、ちょっと上田先生と私と議論の問題があるいは違うかと思うのですが、これは最高裁判所で、判事補に採用するかどうか、つまり司法研修所を卒業することになった人々について、裁判官にするかどうかについての口頭試問の問題として私はお答え申し上げたわけでありますが、上田先生は、司法研修所の卒業試験のことをあるいはおっしゃっているのではないかと思いましたが、私は最高裁判所で、裁判官に採用するかどうかの前提として、口頭試問する場合のこととしてお答えしております。その場合は、試問を受ける人が、二年間同じかまのめしを食って、同じ教育を受けた友だち同士ですから、おまえはどういう種類の質問を受けたか、おれはこういう質問を受けたという情報の交換をすぐするわけです。そういうことと、さっき申し上げましたように、議論好きの人々でございますから、形の上でも公平をよそおう必要があるんじゃないかというふうに思います。
#43
○上田稔君 ただいまの磯村先生の、第二問についての、例の最高裁で、もっといろいろなことができるじゃないかということと、それからいまの阪口さんの場合には、これはちょっと見解が違うんだ、こういうことでございますが、最高裁としては、おそらくその罷免に該当すると思われたのでございましょうけれども、その下のものというものについてやったほうがいいんじゃないかという、これは個人的の御見解だろうと思うのでございますが、この辺になってくると、いろいろ御意見があろうかと思います。
 それから第三番目の問題について、私が言いましたのは、これはやはり採用試験でございまして、たとえば公務員でございますと、御存じのように、上級職とか、中級職とかいろいろな試験をもうすでに通ってきておるわけでございます。その者をここのこの省に採用しようか、そういうときに面接試験を行なうわけでございます。そういうことでございますので、幾分それは内容が違うかと思いますが、一番最後の試験といいますか、採用するかどうかというものであるという点においては、まあ同じようなものだと思うのでございます。そういうふうに、いろいろ人にはお考えがあろうかと思いますが、私はそういういろいろその方がやってこられた研修の実際の面をお聞きをしてみたり、いろいろ変えるのが普通ではないかと思うのでございます。
 さて、次に、井上参考人にお考えをお聞きいたしたいのでございますが、裁判所というところは、どうも私ら平民にとりましては、なかなか行きにくいところでございまして、入りますと、どうもおそれをなすというような、威厳のあるところでございます。この威厳というものはどこから出てくるのだろうか、こう申しますと、いろいろな秩序があって、きめられたことはこれはやらなくちゃいけない。それにちょっと違いますと、お前は早々退室してくれということも言われる。こういうことは、なぜそういうふうなことになっているのだろうかと私も考えたのでございますけれども、これはもともと原告と被告というのは相対立して、私はこうだ、こっちはこうだと、こういう対立したことを裁判をされるというものでありますので、ルールをつくって一人一人にお聞きをしていったり、あるいは判断をしていったりするときに、ルールをきめておかないと、そのルールが乱されたら、その裁判をすることができないのじゃないか。また検察側になられる方もやっぱりルールを、そういうルールを守って、そうして裁判官にお話をされないと、そうでないとやっぱり裁判が乱れてくる。弁護士の方でもやはりそうだ。被告のかわりになって、あるいは原告のかわりになっておやりになる。そういうときにルールが乱れたらこれは裁判ができない。したがって裁判官というもの、あるいはそれに、裁判官につながる検察側あるいはまた弁護士、こういう方々、司法の関係の方というものはルールを守られなければいかぬのじゃなかろうかと、私はしろうとなりに思うわけでございます。そのルールを乱すような人がもしありとすれば、その方は司法の方としては該当しないのではなかろうか、こういうふうに思うのが――これは一般の私らしろうとでございますが、そういうふうな感じなんです。この場合におきまして、法廷の秩序ということが、やっぱり一番大事なんじゃなかろうか、そういうものの欠けておる方は、修習生としては、やっぱり不適格じゃなかろうかというふうに思うのでございますが、御意見はいかがでございましょうか。
#44
○参考人(井上峯亀君) お答えいたします。
 私は修習を修了したものはだれでも裁判官になれるというのがまず原則であろうと思うのでございます。ルールを守るということ、これは当然のことでございます。しかし、といってルールを守らないからたちまち罷免かあるいは身分を剥奪する、弁護士の身分を剥奪するとか、そういうこととはちょっと意味が違うと思うのでございます。おのずからそこに度合いがあろうと思うのでございます。
#45
○上田稔君 そうしますと、ルールは少々くらい乱してもよろしい、裁判のときでもルールを少々くらい乱してもいいのだ、こういうことだとちょっと私は納得ができないのでございますが、そういうやっぱりルールを乱すような方が司法におられますと、そういう考え方が――特にこれは研修生としての最後の私は行事になっている、そのときに、これはルールを立ててこういうふうにしようということになっておったと思うのです。そのルールを乱すというようなことになったら、最後の、研修生としての最後の一日というか、あと何日あるのだか知りませんが、そういうときにやっぱり落第をしてしまう、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
#46
○参考人(井上峯亀君) お答えいたします。
 そのルールを守るということは大切であるということは、これは私は同感でございます。ただ、その処分の内容が、その地位を奪うのかどうかということとは、これはおのずから差があろうと思います。その点でございます。御了承願います。
#47
○上田稔君 もう一つ伺います。
 ルールを守らないということはその品位をはずかしめるものではない、ルールを乱すくらいのことは。これは法廷の秩序を乱しても、そんなことぐらいは品位をはずかしめるものではないと、こういうふうにお考えになるわけでございますか。
#48
○参考人(井上峯亀君) お答えいたします。
 司法修習生の場合、ルールを乱した場合、それはどうあるべきかということでございまするが、もちろん本件の阪口君の場合は、先ほども申し上げましたように問題はある、われわれも大いに遺憾であるということは申しております。ただしそれが直ちに罷免に、弁解の機会も与えられずに罷免されるということは非常に不当であるということを申し上げたわけでございます。
#49
○上田稔君 そうしますと、先ほど磯村先生にお聞きをしたのでございますが、あのときに罷免以外の、司法研習生の分限並びに懲戒の規定の整備ということ、これについては相当御賛成であって、弁護士会が反対しておった人がたくさんあったのだけれども、このことについては井上先生は御賛成だ、お二人とも御賛成で、そういうもっと別の懲戒規定というようなものを、何かつくればいいじゃないか、つくっておけばよかったのじゃないか、いまないからけしからぬじゃないか、こういうようなことでございますか。
#50
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 それは先ほども申し上げましたように、罷免だけということになっておりまするが、従来の慣行からして厳重注意処分とか、始末書を書くとか、いろいろな処分が行なわれていたということを申し上げます。
#51
○上田稔君 停職というようなものもあったのでございますか。
#52
○参考人(井上峯亀君) ええ、私の在職中にもございました。それは研修所長の前へ本人を呼び出して、あるいは担当の教官が立ち会って、口頭による譴責、あるいは書面による譴責ということも行なわれております。それからさらに実務修習地へ参りますと、そこで起こった事件だとすると、その実務修習地の所長がみずから呼んで、口頭あるいは書面による注意処分ということもやっておりました。そういう事例もございました。
#53
○上田稔君 そういう軽微なものはあったようですが、もうちょっと重いようなものはいままであまりなかったわけでございますか。罷免といまの厳重注意というような間のものは、あまりなかったわけでございますね。
#54
○参考人(井上峯亀君) 私は三年の任期でございましたから十分な事例はございませんが、それでもある地方裁判所の所長から書面による戒告とか、それから所長の戒告、それから始末書、この三点経験いたしました。
#55
○上田稔君 どうもありがとうございました。
#56
○亀田得治君 十二時過ぎましたので、基本的なことについてお二人に重ねてお伺いしたいと思います。
 それは現在新任問題とか、再任問題とかいろんな問題が起き、それに関連していろんな法律論等もなされておると思うのですが、事の起こりをずっと振り返ってみますと、裁判所において、たとえば公安事件あるいは行政事件、そういう事件で政府側を負かす、こういう事件があったわけですね。そういうことに関連して、たとえば国家公安委員長なりあるいは法務大臣がどうも裁判所はおかしい、偏向しているのじゃないかというふうな発言等が出、そうして自民党の中に司法制度調査会といったようなものが昭和四十四年に設けられる、この辺が現在問題になっている事の起こりなんですね。弁護士会なり公正な立場の法律家としては、そういう気に食わない裁判があったからといって、それに対して政治権力を背景にして圧力がかかってくることでは、これはたいへんだ、これも端的に言ってそういう問題なんですね。そのことを日弁連はじめまじめな法曹の方は、政治的立場のいかんを問わず、これは心配しているわけですね。政治的立場のいかんを問わず大事な点です。だからおそらくその点をやはりしっかり守らなければならぬということは、お二人とも私は確信を持っておられると思いますが、しかしその点について、最高裁なり政府等に対してその意図を聞きましても、抽象的な答弁が返ってくるだけで、その抽象的な答弁は日弁連と同じで、やはり司法の独立、こういうことを言っておる。しかし実際の現象はそうじゃない。別なことが発言される。そうして、それが現実化されようとしておる。それを心配しておるのですね。やりとりをしていると抽象論に終わってわからぬ。そこで、そうは言いましても、やはりしろうとながらにも一般の国民の方は、何かそういう大きな政治権力を背景にして押しておるのじゃないかという感じも持っておることも事実だと思いますね。
 その辺のことを幾らやりとりしても水かけ論にもなろうかと思いますから、具体的な問題を聞くわけですが、五月十四日に、下田裁判官が新潟で発言をいたしましたね。これはマスコミでも重大なニュースとして取り上げております。新聞によって書き方は若干違いますが、しかしいずれの新聞でもはっきり言えることは、体制に批判的な方は裁判官をやめるべきだ、こういう発言をしておるのですね。現在の新任問題なり再任問題についての決定者の一人なんです。再任拒否、新任拒否について最高裁判所は何らいままで答えておらぬのですが、決定者の一人がこういう発言をしておるのですね。私はこういう発言、これが私は現在の最高裁の本音じゃないかと思うのです。本音がたまたま出たのだと思うのです。ということになりますと、これはたいへんな問題ですね。裁判官は憲法並びに憲法違反でないと確信する法律、この二つに従って処理していくわけで、幾ら政府のやることでも憲法違反だ、あるいは法律であっても、その疑いがあるということになれば、それは採用しない。当然なことですね。これを保障しておるところがいまの憲法の大事な点でしょう。その根幹に触れてくるような考え方をお持ちになっておる。それを実はみんなが心配しておる。
 で、今回の国政調査の問題でもそうですね。国政調査がなぜこれだけ難航するか、やはり最高裁なり政府にそういう一連の考え方がある。それで、多数によって国政調査の場を少なくしている。今日まで立法と司法との関係、国会の国政調査権で問題になったことはたびたびありますが、それは裁判官の法廷の指揮なり判決についての問題ですね。で、そういう問題についても、憲法の規定上は国政調査の対象は何ら限定されておらないというふうにいままでは言われてきております。国会においてもこれは確認したことがあるはずです。それが急に最近になって、何か裁判所だけが特に司法行政の面においてすら特殊地域であるかのごとき議論までが出てくる。なぜそういうふうになるのか、根本は、現在の日本の裁判官は、私はそういう意味では非常に責任を果たしておられると思うのです。いろいろな人がおられますよ。いろいろな人がおったほうがいいわけですね。ぐあいが悪ければ上級審で破棄したらいいわけですから。そういう現在の司法界の状態、ときどき政府が負けると、これはけしからぬ、問題の起こりはそこから来ているわけですよ。下田裁判官の発言はまさしくその本心を暴露したものです。新任とか再任は別にしましょう。現在任務についておる裁判官についても、そのような者はやめるべきだと、私は暴論だと思うのです、これは。罷免に値するですよ、こんなことを言うのは。憲法体制をそれこそみずからくずすものです。ただ弾劾といっても、現在では多数党が多数の委員であるわけですから実行できないのですよ。それをいいことにしてこういう乱暴なことを言うということは、現在職務にまじめについておる裁判官に非常な私は危惧の念を与えると思うのです。だから、この下田裁判官の発言をどういうふうにお二人の方はお感じ取っておられるか、ここでざっくばらんにお聞きしたい、こまかいことは別にして。
#57
○参考人(磯村義利君) 下田裁判官が体制に反対の人はやめるべきだと、こういう発言をしたと仮定いたします。で、これを評価するには、下田さんにあなたの発言の趣旨はどうかと、もう一ぺん聞いてからほんとうは評価をしたいわけでございますが、もしこの発言の趣旨が、憲法に反対の人はやめるべきである、こういう意味で下田さんが言ったとすれば、私は下田発言に賛成いたします。それ以外の意味において、亀田先生が例にあげられたように、政府に反対の人はやめるべきだと、こういう趣旨で下田さんが発言したとすれば、これはよくない議論でございます。私はそう思います。
#58
○参考人(井上峯亀君) お答え申し上げます。
 全く亀田先生のお考えどおり私も同感でございます。五月八日に行なわれました日弁連の総会においても関連決議として、「われわれは司法権の独立を守り抜くことが国民から課せられた重大な責務であることを深く認識し、右決議の実現と最高裁判所の姿勢を正すため、この一連の事態の真相を広く国民に訴え、国民とともに全力をつくすことを決意する。」と、この決議がございますが、これに尽きると思います。弁護士は、弁護士法第一条によりまして、人権の擁護と社会正義の実現という大きな使命が課されております。さらに、その第二項に持っていって、「法律制度の改善に努力しなければならない。」と、こう書いてあります。したがいまして、もし下田最高裁判官の発言が、政府を批判しない裁判官というようなことであれば、われわれは敢然として司法権独立のために戦わねばならないと考えております。
#59
○亀田得治君 議論を参考人の方とするのはなるべく避けるべきですが、下田裁判官があのようにおっしゃったのは、問いただせば、私は憲法に批判的な人ということは言わないと思います。やはり憲法に反対の人はやめるべきだ、そういう意味だと言うかもしれません。しかし、その場合にも下田さんのおっしゃるのは、政府のいう憲法解釈ですよ、政府のいう憲法解釈。非常に違ったものがそのうしろにありますよね。結局政府の見解だと思うのです、憲法というものがついてくるだけである。しかし、一方のほうでも、憲法を守る、政府の解釈によってくずすことは許さぬと、こういって憲法ということをがんばっているわけなんです、御存じのとおり。青法協だってそうなんです。したがって、きれいごとは抜きにして、結局政府にたてつく裁判官、これは好ましくない、そんな者はやめたらいいんだ。やめて政治運動をやったらいいんだと。いわんや、新任、再任――いまの裁判官でもやめろというのですから、新任、再任にそれを持ち込んでくるということは、そういう立場の人からいうたら、これは当然な措置になってくるかもしれません。しかし、そうなると、これはもう裁判官画一化されてしまってたいへんだと、日弁連の私はああいう異常な総会決議がされたことは結局はそこだと思うのですね。それをさせちゃいかぬということじゃないですか、私はそういうふうに理解しているのですが、もうきれいごとは抜きにして、これは両方とも開き直ると憲法と言いますよ。
 まあ、これくらいにしておきます。
#60
○委員長(阿部憲一君) これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人には御多忙のところ、長時間にわたりましてありがとうございました。委員を代表して厚く御礼を申し上げます。
 それではしばらく休憩いたしたいと思います。
   午後零時三十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時九分開会
#61
○委員長(阿部憲一君) 法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。
 御質疑のある方は順次御発言願います。亀田君。
#62
○亀田得治君 午前中、参考人から、現在問題になっておる再任、新任拒否の問題について、また、阪口問題についても意見を聞いたわけです。
 まあ最終的な、結論的な、また、理論的な問題についてはまああとに回しまして、若干この三つの問題について、事実関係についてひとつお尋ねをしたいと思うんです。
 従来、よく人事の秘密だとかいろいろなことを言うて、なかなかお答えにならぬわけですが、しかし、皆さんも若干は衆議院でお話もしておるわけだし、また関連して外にも、たとえば下田裁判官から話が出ておるわけですね。できるだけそういう点に関連させて聞きますから、その程度のことはやはりはっきりお答え願わないと私いかぬと思うのです。そういう意味でひとつできるだけ簡潔にお願いします。時間はあまりとらぬつもりですから。
 まず、阪口問題に関する部分ですが、衆議院における事務総長の、羽田野委員に対するお答えによりますと、阪口君が、式の当日、前に出て、「マイクをわしづかみにした」と、こう会議録に載っておるのですね。「わしづかみ」、こういうことばが非常に印象的なわけです。しかし、本日来られた井上参考人らが調査した結果によりますと、それは非常に違うということです。で、井上参考人からいただいた調査の結果の資料によりますと、阪口君が前へ出てきて、二回おじぎをして、そうしてマイクを貸してほしいと、こういうふうに阪口君が言うたところ、壇上に立っていた所長は、その声が十分聞こえないようなしぐさをした。まあ手を耳のほうにでもやったのかしりませんが、そういう表現になっておりますね。そうして、所長は、ちゃんと立ったまま、にこにこ笑っていた。特に制止をしない。こう立って、こういうふうにして、こうやっておったんでしょう。だから、したがって阪口君としては、二回おじぎをして、マイクを貸してくれと言うたんだから、積極的に賛意は表さぬでも、まあしかたないわいと、了解を得たというふうに思ったようだ。いわんやわしづかみと、こういうことは絶対ありません。きょうおっしゃっておるわけですが、非常に違うわけですね。違う点がまだたくさんあるのですが、特徴的な点を申し上げますと。これはどうなんですか、真相は。
#63
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) ただいま阪口問題の事実関係につきまして、衆議院で私自身がお答えしたように仰せになりましたけれども、私ではございませんです。人事局長が答えたのでございます。それと、事実関係でございますので、ひとつ所管の局長からお答えしたいと思います。
#64
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) わしづかみというふうに、私が、衆議院の法務委員会で申し上げましたところが、問題にされたようでございますが、そのときの状況を正確に申し上げさせていただきますと、当日研修所長から最高裁にあてまして、こういうトラブルがあったということの正式の文書による報告がございました。で、その文書による報告の内容を私自身といたしましてはかいつまんで申し上げたつもりであったわけでございますが、その文書を朗読したわけではございませんので、その間少しやや妥当を欠く面もあったかと思います。お尋ねでございますので、短いものでございますので、そのところを朗読さしていただきましてお答えにかえさせていただきたいと思います。
 「(別紙)」でございますが、「予定よりやや遅れて十時三十分ごろ事務局長が開式を宣し、司法研修所長が式辞を述べるため登壇した。ところがその発言前に、前から七、八列目の中央に座っていた阪口徳雄が立ち上り、所長に向い、「任官拒否された修習生に十分ぐらい発言の機会を与えてもらいたい云々」と言い、周囲の者もこれに和し「そうだ、そうだ」という発言、拍手などで式場は騒然となったので、所長は手をあげておだやかに阪口を制し、事務局長は進行係用マイクで「まず、式辞を聞きなさい。」と二度か三度注意した。しかし、彼等はこれを聞かず、中には阪口に対し「マイクでやれ」「前に出てやれ」と声援する者あるいは「止めろ」と叫ぶ者もあった。阪口は自席を離れ、演壇の下に進み出て、演壇用マイクを無断で抜き取り、演壇を背にして修習生に向い、マイクをもつて演説を開始し、式場はますます騒然となった。
 所長は、一言の式辞も述べないままこの事態では到底終了式を続行する可能性がないものと判断して自席に戻ったので、事務局長は進行係用のマイクを持って所長席の近くに行き、所長の指示を仰ぎ「終了式はこれで終了する。」と宣した。しかし、数名の修習生はこれを不満とし、自席を離れて事務局長を取り囲み、「どうして止めるのか」と抗議し、さらに所長、教官の退席を阻止しようとする修習生も若干名あったが、事務局職員が数名でスクラムを組み通路を確保したので、所長、教官も次第に退席し、その後は修習生だけで抗議集会を行なった。」というのが研修所の報告でございます。
 事実は、正確にはこのとおりであるというふうに御承知おきをいただきたいと思います。
#65
○亀田得治君 研修所から来た報告書はこのとおりであるという意味ですね。その報告書はそれはいつ来たのですか。
#66
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 事件のございましたのが四月の五日でございまして、四月の五日に報告を受領いたしております。
#67
○亀田得治君 四月の五日に来た報告書のとおり、なぜ衆議院でお答えにならなかったのです。
#68
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 当日、報告書をまだ持参いたしておりませんでしたので、大体の記憶に基づき申し上げたわけでございます。
#69
○亀田得治君 そうすると、衆議院の法務委員会でお答えになったのと若干違いますね、いまの報告書だけでも。
#70
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) わしづかみという点は、御承知のように、演壇が一段高いところにございまして、その演壇の、いわゆる学校の講義をするような、一段と高い壇がございまして、その上にいわゆる演壇があるわけでございます。で、演壇の上に、ここにございますようなマイクが据えられておって、それがちょうどその席で式辞を述べられる所長に合うようにしつらえてあるのでございます。で、阪口修習生は、床から手を伸ばすと言うと語弊がございますが、手を伸ばしまして、そのマイクの音を吸収する部門を台から抜いて持ちまして、それで演壇を背にしてそれを口の近くに持っていって、発言を行なったということでございます。それをどのように表現するかという問題でございますが、私といたしましては、衆議院では先ほども御指摘がございましたような、まあわしづかみということばを使ったわけでございますが、必ずしもそう故意に間違えて、別な印象を与えるというような意味で申し上げたわけでは決してないわけであります。
#71
○亀田得治君 故意かどうかは知りませんが、それは行動の表現としては、非常に違った印象を与えることはこれは事実なんです。しかも、ただいまの報告を見ても、阪口君が演壇の前へ行って、二回おじぎをして、そうしてマイクを貸してくれと言うた。そういったようなことは一つも出てきません。きわめて一方的な報告なんです。そうして、私がいま申し上げる阪口君の行動は、これはやはり権威のある弁護士会という機関がやはり調べておることです。これは重大問題ですからね。いいかげんな報告は弁護士会としてもなさるはずはありません。この報告書を見ると、どうも事実がはっきりしない。意見が二つある、見方が二つあるというところは、そのまま書いてあって、それくらいやはり最高裁の問題ですから、厳密に書いてある。それには、阪口君がマイクを持つ前に、二回おじぎをして、そうして、貸してください、こう言っておる。そういうことなんか全然抜けておる。それは人事局長は知らぬことなんです。それだからいかぬと言うのです。ちゃんと実際の所長等がきて事情を明らかにしなければ基礎がはっきりしないじゃないか。私たちが言うておるのは、そういうことなんです。まあここだけにこだわっているわけにもまいりませんから……。
 それからもう一つは、例の時間のことなんですがね。問題になった時間というのは、十分足らず、こう衆議院で人事局長はおっしゃっておるんですが、録音テープで、きちんと時間をはかると、ただいまから開会をします、と言うてから、これで終了します、と言うまで、一分十五秒というのと、二十四秒というのと二つ数字が出ておりますが、ともかく一分余りなんです、一分余り。混乱したのは、そのあとで、そのあとだと、これは非常に大きな違いなんですね。これはどうなんですか。
#72
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 時間の点でございますが、実は衆議院で非常にそれは短い時間であったという趣旨のことを申し上げるつもりでおったわけでございまして、十分足らずと申し上げた私の真意は、非常に短い時間ということを申し上げる趣旨であったわけであります。一分二十四秒であるとか、十五秒であるとかというような参考人からの供述が、午前中にございましたけれども、この点は、その時間を正確にはかったものが、研修所側としては何もございませんわけでございます。何か録音をしておったというようなことでございますが、これは、私ども聞いております範囲では、私的なものであるようでございます。もしそういうものがございまして、そしてそれがはかった結果、正確にはいま申し上げたような、参考人がおっしゃいましたような時間であるならば、私どもそれが正確なのではなかろうか、というふうに考えます。そういう観点から申しますと、衆議院で申し上げました時間に関する限りは、私の申し上げたのは、正確ではなかったということになるわけでございます。ただ、故意に違ったことを申し上げようという趣旨ではございませんで、非常に短い時間であったという趣旨のことを申し上げるつもりでございました。こういうふうに御了承いただきたいと思います。
#73
○亀田得治君 その点は、そういうふうにお認めいただければけっこうですが、混乱したのは、ともかく式が終了したのちだと、といいますのは、それは当然われわれとしても予想できることですが、当日は、最高裁としては終了式はやらぬつもりだったんでしょう、朝までは。どうもこういうふうに私たちは思うのです。混乱するかもしれぬと、証書だけは個別に出そうと、そういうお考えであったようですが、しかし修習生のほうが逆にやはり終了式をやってくれと、ただ終了式の持ち方について、終了式が済んでから、責任者に、任官拒否の理由を聞こうじゃないかというのが初めの案であったようです。ところが、いや、それは終了式が済んでからだと、責任者はスーツと帰ってしまうから、それはだめだ、やはり終了式の中でそのことをしてもらおうじゃないかと、こういうことにまた変わってしまったようですね。
 いずれにしても、終了式の中でそうやって、そのために非常にごたごたするという場合には、ともかく裁判所側の、研修所側の意向に従って、こちらの意見をあくまでも通さないで、終了式はともかく済まそうと、そういう条件つきの決定をしておるようですね。これはみんなで公開で討議をしておるのですから、おそらく研修所側も知っておると思いますがね。そういうクラス委員会の決定を修習生の皆さんに伝えるのは講堂で伝えておるわけです。研修所側の職員ももうそれを聞いておるわけですからね。そういうことなんですから、修習生のほうは、ことさらに混乱におとしいれるというふうな気持は私はなかったんじゃないかと思っておる。そこまでむしろ、逆に言うてみれば努力しておるわけです。非常にむずかしいかもしれぬが一式は式として持ちたいというのが修習生の偽らざる気持ちです。皆さんのほうはむしろ安易に考えて、そんなめんどうくさいものならやめておこうというのが最初の腹のようであったと思う。その点はむしろ逆ですね。修習生のほうが努力をしてでもやろうと、そういう気持ちでおるのに、ちょっと予定どおりいかぬからといって事務局長が、これで終了と、ポンとやったものだから、混乱させないで式を終わらせようと思っていた人が怒るのは、これはあたりまえですね。しかもそういう情報が最高裁のほうに入っておるはずですな。研修所側に入っておるはずなんです。その辺のところをちょっと説明してください。その終了式についてどういう態度でいたのか、そしてまた修習生側のそういうクラス委員会の決定、これは公でやっているんですから情報を得ていたのかどうか、得ておると思いますが得ていたなら何もそんなポツンと切る必要はないわけですね。その辺のところを参考に聞かしてください、どういうふうになっていたのか。
#74
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 当日、御承知のように、裁判官希望者の中から七名の不採用者が出まして、修習生がそのことで非常に、何らかの話し合いをしたい、あるいは希望を述べたいという気持ちを持っておるということはあったようでございます。しかし、半面また一部の修習生が、終了式を行なわせないというような激しい動きも一面にはあったようでございます。現に当日は、門前で、式をさせないでおこうというようなビラ配りをやり、あるいは構内でもトラブルを起こすというようなことがあったようでございますし、十時に予定しておりました終了式の開始も、そんなことで、先ほど朗読いたしましたように、三十分くらいまで延びてしまったというようなこともあったようでございます。ただ、修習生の全体の気持ちとして、終了式をやはり挙行してほしい、やってほしいということでありましたし、また研修所側といたしましても、最後の締めくくりでございますので、やはりできることなら所長が式辞を述べて、そうしてそこで終了証書を代表に手渡して、無事に式を終えたいという気持ちを持っておったようでございます。所長のおつもりでは、これは後ほど伺ったことでございますが、大体式辞に二十分から二十五分予定し、証書の授与に五分くらい、合計大体三十分くらいで式を終了するという予定で始めたもののようでございます。式の始まります前の状況というのはいま申し上げたようなところでございます。
#75
○亀田得治君 一部には終了式をぶっこわすという意見もあったことはそのとおりのようですが、しかし結局は、それは少数意見として納得されて、そうして終了式はやはり持とう、むしろ積極的にそういうふうになり、そのことが研修所側に伝わって、式を開くかどうかためらっていた研修所側も、そういう情報を得て、終了式をやるということに踏み切ったんじゃないですか、実際は。
#76
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そういった空気も、研修所側にも、キャッチできたわけでございますし、また研修所側といたしましても、できることなら終了式をやりたい。これは二年間修習をした最後の締めくくりでございますので、これはどうしてもやりたいという気持ち、その二つのものが合致して、結局、終了式を行なうということになったのだというふうに承知いたしております。
#77
○亀田得治君 まあそうだと思います。そうすると、クラス委員会の意思統一の結果の結論ですね。これは研修所側にはちゃんと伝わっておるわけでしょう。傍聴の職員なり、適当な方法で伝わっているんでしょう。修習生がどういうふうに意思統一を考えたかということは伝わっておるんでしょう。
#78
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) わずかの時間の間のことでございますので、そういった修習生を全部を代表した意見が、正式に伝えられたかどうかということになりますと、必ずしもそうでないようでございますが、修習生全体が、式を静粛に受けるつもりのようであるということは、係から研修所の主催者の側には、報告はあったようでございます。
#79
○亀田得治君 そこまでおっしゃってもらえば、これはもうクラス委員会の決定、また、総会でそのことを確認したということが、それは伝わっておるに違いないと思うのですよ。だから、そういう前提に立ちますと、阪口君が発言をしたら、そそくさと終了を宣言してしまう。これは少し扱いとして気短か過ぎるんじゃないかというふうに私は思うのです。修習生のほうが適当な時期に何かの言いがかりをつけて混乱させ、ぶっこわすんだという方針であれば、もうそこまでいかぬうちに、これは始まっちゃった、じゃここでちょん。それも一つの考え方かもしれませんけれども、そうじゃないんですからね。その点はなはだ私は急ぎ過ぎておると思うのですね。その点どういうふうに思っていますか。なかなか自分の事務局長の措置を多少非難するのはしにくいだろうと思うが、しかしこれは修習生が全部見ておる問題なんですからね。やっぱり最高裁の局長ともなればもっと正直にきちんと答えるものだということでやってもらえませんとね。
#80
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 研修所におきます終了式が、二年間の修習を終わって、法曹として巣立つ重要な厳粛な式であるということは申すまでもないことだろうと思います。で、実は昨年、終了式に際しまして、これは少数であったようでございますが、一部の修習生が足で床を鳴らしまして騒がしい行為に出たということがあったのでございます。私どもは、これは非常に遺憾なことであると考えておりましたが、今回の終了式に当たりましても、その終了式開始までのいろいろな状況からいたしまして、あるいはまあその程度のことも起こり得るのではないかということは、所長以下関係の教官方は非常に心配をされておったようでございますが、しかし、まあ修習生の大勢が静かに式を受けるということであるようでございますので、でき得べくんば、やはり終了式というものを厳粛に行ないたいということで、終了式が始められたということでございます。
 で、先ほども朗読をいたしましたように、所長がまず壇に上がって式辞を述べようということで、壇に上がられましたその直後に、まず中ほどから立ち上がりまして、八列目の中央の阪口君が立ち上がりまして、発言を求めたということでございますが、まあ考えてみますればこういったこともすでにきわめて異例のことであるわけでございます。まず所長が、式辞を述べられて、それらの次には、終了証書を交付するということが、これが終了式の最大の眼目であるわけでございますが、その所長がまだ式辞もお述べにならないうちに、終了証書を授与される側の修習生である阪口修習生が、しかも七、八列目の中央から立ち上がって、そういった発言をするということ、これはきわめて異例のことでありまして、足で床を鳴らすといったような、そういったこととは、この点だけとらえてみましても、比較にならないことであるわけでございます。で、それに対しまして周囲の者が、先ほど読みましたように、そうだそうだという発言をし、拍手をするということになりますと、これは昨年の喧騒といったものをすでに越えているわけでございます。で、それに対して所長は、もう、手をあげて、こういうふうなしぐさをなさったということであるようでございます。しかし事務局長もまた進行係用のマイクで、静かにして式辞を聞きなさい、ということを注意したようでございますが、これすら実際はなかなか聞きとれなかったという、それほどに、すでに修習生の不規則な発言というものが、やかましかったようでございます。で、その中で、阪口君に、マイクでやれ、前に出てやれということになって、そうして阪口君が自席を離れまして、その離れたのも、決して休みの時間とか、式の始まる前ということではなくて、所長が演壇に上がって、これから式辞を述べようとされるその前の時間に、自席を離れて出て行きまして、そうして発言さしてくれ、あるいはマイクを貸してくれと言ったということのようでございますが、所長のお話ではほとんどそういったことは聞きとれない。で、所長は何か耳に手を当てるようなしぐさをされて、どういうことかというようなしぐさをされたようでございますが、次の瞬間には、先ほど申しましたように、マイクを抜き取って、そうして式辞を述べようとしておられる所長に背中を向けて、そのマイクを持って修習生のほうを向いて演説を始めるということに至りましては、もはやこれ以上式を続行するということはできないというふうに所長は判断されました。で、所長はそのときに、もうこれではとても終了式を円満に続行することはできないというふうに判断したので、壇をおりて自席に戻ったのだということを、後ほど言っておられるわけでございます。
 そういう状況でございますので、私どもとしては決してこの式を中止すると――事務局長はことばとしては終了式はこれで終了するということばを使ったようでございますが、これはそのとおりのようでございますが、その意味は決して、ちょっと混乱の様子が見えたので、いち早く予定の行動に従って式をやめた、といったようなものでは全然ないわけでございまして、だれが見ましてもそれ以上式を続行するということ――まだ続行といいましても式に入ってないといってもいい状況でございますが、続けるということはできないというふうに判断された、これが実情でございます。
#81
○亀田得治君 そこで、さっきからお尋ねしておるのは、式が始まった――当初のクラス委員会の案では、式が終了後に理由を聞こう、そういうことだったが、それは式が済んでしまったら、責任者は帰ってしまってだめだ、やはり式の中で十分間くらいそのことについて発言しよう、こういうふうにきまっておるのですね。その情報が入っていたかということなんです。式の中で発言を求める、それは入っているはずなんですよ、情報が。
#82
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 式開始直後に発言をしようという情報は入っておりません。
#83
○亀田得治君 いや、開始後でなくても、ともかく式が終わらぬうちにそのことを要求しようと、この情報は入っているんでしょう。そういうふうにあなた、クラス委員会が特にきめているのだから……。
#84
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 終了式の終了後に、クラス別の懇談会をやるのが通例でございますが、その前に、何か修習生が、全部の集まりをさせてほしいといったような希望は前にあったようでございますが、これは事務局長を通じて正式にそういうことは認められないという返事をいたしております。で、その後クラス委員が教官に、式の中で任官を拒否された者に発言をさしてほしいというようなことを言ったということがいわれておるようでございますが、これは教官にも確めたのでございますが、そういったことを聞いたことはないということでございます。
#85
○亀田得治君 まあその時の情勢として、そういう情報が入っておると見るのが普通ですわね。修習生がどういう動きをやっているのだろう、これは研修所側でも非常に関心があることだし、修習生側の意向が固まったということで、研修所だってちゃんとそれじゃ式を開こうと、こうなっておるのですから、その大事な部分が抜けておるなんという、そんなことはありっこないですよ。しかし、それはなかなかお認めになりたがらぬようですがね。だから、そういう情報が入っておれば、これは予定どおり発言してきたなというぐらいのところでいいですわね、実際は。だから、はなはだ私は軽率だと思うのです、こういうことは。これはやはりいろいろな経過をたどってこうなってきておるわけですから、形だけをそう頭から否定するということもやはりどうかと思うのです。
 そこで、次に移りますが、こういうふうにして終了式が終わったあと、研修所側でいろいろな経過をたどったようですが、研修所の教官会議で、投票によって、阪口君の処分について投票したようですが、罷免というのは少数であったというふうに、教官から直接お調べになった報告では、なっているのですが間違いありませんか。
#86
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その点つきましては、教官の会議の内容を無記名で投票を行なったということであるようでございますので、その内容については申し上げかねるわけでございます。
#87
○亀田得治君 まあ、何票とまで聞いているわけではないのです。とにかく少数であったということは聞いておられるでしょう。
#88
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 相当な分をすべきである、というような意見が、絶対多数を占めておった、ということは申し上げられるかと思います。
#89
○亀田得治君 私の聞いておるのは、罷免ですよ。相当のところを聞いているのじゃないのです。罷免が問題になっているのです。
 言いたくないようですから、次に移りますが、これは人事局長ちょっと言い過ぎていると思いますが、動機などは聞く必要がない、現行犯だからはっきりしている。これはちょっと、その日は、局長は、少し何か家を出るときに、きげんの悪いことでもあったのかどうか知らぬけれども、私は裁判官としてちょっと言い過ぎだと思います。これは現行犯でもね、現実にそこで動いている行動は現行犯だからみんなわかるでしょう。しかし、なぜそういうことになってきたかということは、やはり本人に動機なり何なり聞いてみなければわからぬですよ。しかもこういうちゃんと二回も試験を通って将来法律家になろうという人のことですから、こういう人について、少し手落ちがあったと言われるなら了とするが、そんなものは聞く必要もない、聞いても聞かぬでも結論は一緒だ。これじゃ、ちょっと乱暴過ぎると思いますが、これはどうですか、事務総長は。
#90
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 現行犯だからという理由だけではございませんので、そのときの所長のお話によりますと、所長はじめ、教官、それから事務職員全部がその事実を確かめた、そういうふうに私は聞いております。
#91
○亀田得治君 ところが事実を確かめたという、その事実自身になかなか報告のとおりではない、疑いを持たれる点があるのですね、さっき申し上げておるように。いわんや事実ではない、その奥の部分ですね。これは何人といえどもわかりゃせぬですよ、説明聞かなければ。だから、これは人事局長が、あれだけ衆議院で言い切っていることを、なかなか訂正しにくいだろうが、これは私は今後ともあってはいかぬと思います、そんな乱暴は。
 宮本判事補のことでひとつ聞きますが、その理由等について――宮本判事補の再任をしなかった理由等について一切お述べにならぬ。本人が人事局長にも会いましたね、そのときもおっしゃらない。したがっていろいろな推測が出るわけですが、ところが、下田裁判官によると、青法協加盟者であるということは、それは一部の理由だと、宮本判事補について。そういうことを五月十四日新潟でしゃべっておりますね。宮本判事補についてしゃべっているんですよ、一般的な話じゃなしに。一部の理由であるというのは、これは事実ですか、どうなんですか。
#92
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 下田裁判官がそういうことをお話しになったということでございますが、実は私も午前中に亀田委員の御発言を伺いまして、帰って新聞等を見たわけでございますが、下田裁判官はそういった御発言はないのでございますが、ちょっとお確かめいただきます。
#93
○亀田得治君 五月十五日の毎日の夕刊です。「悪法といえども法を守るのが裁判官のつとめで、宮本判事補再任拒否は、青法協が全面的な理由でない。」、一部の理由にしておるという意味ですね。一般的にいままで再任なり新任拒否について、青法協だけで再任拒否はしないと、こういうことを言ってきましたが、宮本判事補という、特定の具体的な氏名を出して説明をされたのは、これが初めてだと思うのです。だから聞くわけです。そうすると、一部その理由が入っておるのかと聞くわけです。
#94
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 下田裁判官がどのようにおっしゃいましたかということは別にいたしまして、宮本判事補を判事の再任名簿に登載しなかったということの理由でございますが、これはやはり宮本判事補が判事として適任ではないというふうな御判断を、裁判官会議でいただいた結果によるものであるということを申し上げるよりほかないわけでございます。ただ、青法協会員という理由だけで、指名からはずすというようなことをしたものではないということは、これまでも総長がしばしば御回答でも申し上げております。そういうこともございまして、具体的事実に当てはめて、一般論も決してそれを踏みにじっておるものではないんだという趣旨をつけ加えて、理由を私どもその範囲で申し上げるということになるわけでございます。
#95
○亀田得治君 しかし、青法協を相当部分の理由にしておるというふうに、普通の日本語の解釈ならとられますわね。そうですかと聞いているのです。そんなことは聞かぬだってあたりまえのことなんですがね。それが全面的な理由でないと。全面的じゃないというのですから、じゃ相当部分の理由にしておるというふうにとるのは、これはあたりまえですね。それで間違いないですねと、こう聞いている。そうですとおっしゃってもらえばいい。ややこしいこと言わぬでもいい。
#96
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 再任するかどうかということは、全人格的な評価でございまして、人格、識見、能力、経歴あらゆるものが要素になってくるわけでございます。で、ただやはり青法協の会員であるということを理由にして名簿に載せなかったのだということを推測的にいろいろの観点から疑惑をいわば持たれておりますので、私どもはそういったことはやはりできるだけ否定すべきであると考え、しかし一方、人事は機密でございますので、こういう理由であるんだということを申し上げることはいたしかねる、そのことの二つを結びつけまして、全人格的に名簿に載せなかったということになるんだ。ただそれは、青法協会員ということだけを理由にするものではないということを申し上げてきたわけで、これ以上やはり人事の機密ということで申し上げることは避けさしていただきますというお答えになるわけでございます。
#97
○亀田得治君 最高裁は、思想、信条、これによって裁判官の差別待遇はしないでしょう。どうなんですか。
#98
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 思想、信条による差別ということはいたさない。それは明白でございます。
#99
○亀田得治君 それから政治団体の加入の有無によってしますか。積極的な活動はもちろん禁止されておりますよ。これは法律もちゃんとある。単なる加入だけです。差別扱いできますか。
#100
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 政治的な団体に加入しておるということだけで名簿に登載しないことはしないということも申し上げているとおりでございます。
#101
○亀田得治君 宮本判事補の場合は、青法協に加入はしておりますが、非常に積極的な活動を、中でしておる人でもない。したがって法律にいう、いわゆる政治活動について積極的に活動をした、そういう条項に当たる行動はないと思うのです。ところが、そのほかには何も思い当たるものはないようですね。ないのですよ。ただ、本人も言うし、客観的に調べた諸君もそう言うわけです。そうすると、結局一部の理由だと、青法協加入というのは一部の理由だと言っておりますが、結局それが全面的な理由じゃないか。ほかに何もないのですから、説明もされないのだから、とらざるを得ないわけです。個人的な人柄なり、あるいはいままでの裁判官としての行動、それに対する同僚裁判官あるいは弁護士会などの評価も出ております。それはむしろ積極的に、りっぱな裁判官だという評価が逆に出ているくらいなんです。そうなると、青法協加入しか考えられない。それが一部であるということはどうも、さっきからのやりとりで大体はっきりしておると思います。一部ではなしにそれが全部じゃないか。私の言いたいのは、たとえ一部としてもおかしいじゃないか。理論的に成り立たぬことを一部の理由に採用することもおかしいじゃないかと思っているのですが、一部ならいいと言うのですか。
#102
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一部ならいいとか、全部ならいけないということを申し上げているわけではございません。それから宮本裁判官の採用にならなかった理由が、弁護士会等ではいろいろとお調べになったようでございますし、御本人もいろいろおっしゃっているようでございますが、私どもはそういうこととは関係なく慎重にあらゆる観点から審議しておきめいただいたことでございます。この点につきましては、本人がどう言っておるか、弁護士会の御調査でどうなっておるかというふうにおっしゃられましても、何ともそれについてはお答えをいたしかねる次第でございます。
#103
○亀田得治君 この七名の新任拒否の関係で一、二点聞いておきたいと思いますが、午前中にもお聞きした点ですが、不採用になった二人について、一方はAと答え、一方はBと答える。その答えとしては、AかBしかない問題なんですが、両方ともそういう考えじゃだめだと、こういうふうに言われておるんですが、これは試験の中でそういうことが行なわれておるんですか。
 それからもう一つ。一緒に聞きましょう、時間を節約するために。任官試験のできばえなどを面接のときに聞かれたようですが、不採用になった人に、こういうことができなければこれは致命的だと、任官はあきらめろという、引導を渡すような言い方をされたが、しかし同じ答えをしておって、ちゃんと採用になっておる者もおる。これは六十何名がみんなことしの空気を察知して、済んでからすぐ記憶の新しいうちにということで、メモをとったりして、それをずっと比較しての話ですから、そうしてこういう法律的な素養のある人ですから、そんなに私は間違いはないと思います。で、こっちはあんた致命的なら、ほかの人も致命的じゃなきゃいかぬでしょうが、それほど強くないような追及がこれはたくさんされたようですが、そういうのは抜きにしておきましょう。この二つだけはとにかく私は納得のできないやり方だと思うんですね。何かこの七名の者について、ことさらにけちをつけて、そうして思想とか、信条とか、団体加入とか、そういうことじゃなしに、おまえ成績が悪いからだめなんだぞ、というふうに納得させるための面接をやったような感じがするわけですね、比較すると。なかなか最高裁もやるものだなとぼくは思うんですがね。しかしあとの結論は別として、私がいま二つ事例をあげた、そういうことがあったんですか。
#104
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように、法律の議論というのは、必ずしも答えが合わなければいけないというものでもないわけでございます。場合によりましては、別の答えが出ましても、その出し方いかんによっては、やはりまずいということもあること、これはまあ亀田委員十分御承知のことだろうと思います。致命的ということばをどの程度に使ったか、私も試験の面接に立ち会っておりましたので、そういうことばも使われたという記憶はございますが、正確には記憶いたしておりませんが、必ずしも、そういったことばを質問する側から出したといたしましても、そういった場合だけに限られておったわけでもないような記憶を持っておりますので、特段に致命的というようなことばを特殊の場合に、特殊の意味を込めて使ったというようなことではなかったというふうに記憶をいたしておるわけでございます。
 それから、あとのほうのお尋ねの問題でございますが、どうして採用しなかったかということになりますと、これはまた採用の理由のところにまいってくるわけでございますが、かりに申し上げますと、非常に成績のいい方に対してはそういった成績のほうの問題はあまり聞かない。成績のあまりよくない方については、勢い法律の問題を中心に伺うといったようなことが、それぞれあるわけでございますので、一がいに、この不採用になりました七名の方についてだけ、そういうような他ときわ立って違ったやり方をしたというものではない、これだけは申し上げられるかと思うのであります。
#105
○亀田得治君 まあ、理屈のつけようは、これはいろいろ言えるんで、それは法律問題ですから、結論が合っておればそれですべて同じだということも言えない場合もあります。しかし、私がいま設例しておるのは、AかBか二つしか結論が予想されないやつなんですね。だから、そういう場合には、答えのいかんにかかわらず、その答えを言うまでの道筋が問題だとか、それはまあちょっとへ理屈だと思うのです。で、とにかくそういう修習生の諸君が疑いを持つような質問ぶりなり、面接のしかたというものは実際おかしいと思うのですね。七名については、たとえば任地問題とか、住む場合の家族関係とか、そういうことはあまり聞かなかったようですね、初めから七名については。それ以外の人にはいろいろ聞いたようです。だから、七名は初めから問題にしておらぬのでしょう。そういう関係をほとんど聞かれた人もあるが、全く形式的でちょっと聞く程度。すぐ問題に移っていって、おまえの成績は悪いぞ。こういうふうに白状させるまで追及していくというふうなやり方をやったようですね。家族関係とか任地とかそういう関係はあまり聞かなかったのでしょう、七名については。どうなんですか。
#106
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 家族関係とか、任地のことを、この七名の方を特に意識して別の聞き方をしたということの記憶はございません。主として私がそういった関係は現実には聞いております。ただ、私の方針といたしまして、あまり任地の問題ですとか、そういったことは根掘り葉掘り、新任の方にどこを希望するが、あるいはそれ以外の希望地は行かないのかといったようなことを、根掘り葉掘り聞くということは全般的にはいたしておりませんので、特にこの七名についてそれを飛ばしたというようなことはないという記憶でございます。特に東京、大阪、名古屋といったような大きなところを希望しておられるような方につきましては、そういう希望地を聞いてみてもしょうがないことでございますし、そういった希望どおりのそのやり方も、実際問題としては欠員等の関係でできないものでございます。できるだけそういったことは全般的に聞かないで、こちらに一任していただきたいという方針をとって今度は面接をいたしましたので、何も七名の方に限らず、全般についてそういったことはあまりお聞きしていないはずでございます。
#107
○亀田得治君 まあ具体的な関係事項はこの程度にしておきましょう。
 そこで、午前の最後にも参考人の意見を聞きましたが、いまともかく司法の独立ということが専門家だけじゃなしに、国民の皆さんの関心を集めておるのは、裁判官だけはやはり忠実に憲法に従って、良心に従って、そうして行動をしていってもらいたい。政府といえども、これは間違ったことをやることがあるわけでして、そういうことがあれば、裁判所に持っていけば、刑事事件であっても、あるいは民事事件であっても救ってもらえる。これが新憲法下の裁判所の非常に大きな特色でもあり、また、民主主義の最後のとりでとも言われておるゆえんでもあるわけでしょう。それが侵されやせぬかという心配があるわけですね。そのもとの起こりは、これは皆さん自身がよく知っているように、いろんな行政事件、公安事件等で政府側が敗訴するといったような際に、国家公安委員長とか、法務大臣が裁判所の判決を非難しましたわけです。これでは考えなきゃいかぬとか、そういうような空気の中から裁判所に対するいろんな多数党側からの調査活動というものが始まってきたことは、これはまぎれもない事実なんです。最高裁判所が、初めはそういう出発点で、調査会をつくるようなことはどうも司法の独立から言って思わしくないというふうな意向を表明したこともありました。ありましたが、最近はもうそれに押されてしまったんだね。むしろ政府が考えておることを、最高裁長官がみずから先頭に立って、どんどんやっていくというふうな事態ですね。だから、政府のほうは、あるいは向こうはよくやっておる、あれだけやっていれば、こっちから干渉する必要はない、三権分立だ、この領域には入ってはならないと、今度は逆に、国会まで、シャットアウトされるというふうなかっこうが出てきておるわけですね。裏では、政府に迎合するような方向をとりながら、表では、司法権の独立だ、ほかのものは関与せぬでほしい、こう言いましても、国民が考えておるのはそういうことじゃなしに、三権分立とかそういう形式論じゃなしに、それでは自分たちの基本的人権が権力者から侵された場合に、はたして守ってもらえるのかどうか、このことを危惧しておることと思うのです。
 これは私は公安事件や、行政事件には、裁判官のこの点についての姿勢によって、結論は非常に変わってくると思うのです。それは国民が心配するのはあたりまえだし、いわんや法曹の人が、まじめに人権ということを考える法曹であれば、これは政治的には、左であろうが、右であろうが、みんな心配するのはあたりまえだと思うのです。問題の本質はそこなんですね。そこにあるんです。そういう立場に立って再任拒否と新任拒否がやられたから、それでこれが大問題になっておる。まあ法律の理屈から言うと、ともかく十年切れたんだから、採用する、しないはおれのかってだ、それはそう言っても、いままでの慣例等に反するんじゃないか、まあ理屈は両方からつけられますが、そういう区々たる理屈の問題では、これは片づかぬのですね。最高裁判所が、政府の権力からきちんとした姿勢を守っていくという姿勢がくずれてきているんじゃないか。最高裁判所の裁判官の任命の問題、こういうことももちろんみんな関連して考えておりますよ。
 佐藤総理になってから、もうすでに十四名裁判官を任命したわけでしょう。ほとんど佐藤総理の息がかかっておる。初めはしかし外部の意見も聞きながら、佐藤総理もやったようですが、下田裁判官の任命などは全くそうじゃない、これは。これはおそらく安保問題とか、自衛隊の第四次防衛力整備計画とか、そういったようなことに関連して憲法第九条とかさらに問題になってきやせぬか、そんなことを考えておるのかもしれません、佐藤総理としては。強引に下田裁判官をもってきたようですね。だから、表向き聞けば、もう最高裁は決してそんな政府の言いなりになっておらぬとおっしゃるでしょうが、そうじゃないですよ。そこをみんなが心配しておる。だから、たまたまそのことを発言したのは、この下田判事ですよ。これはその意味ではきわめて正直な人です。思っておることをずばり言ったんです。ともかく体制を批判するような人は裁判官をやめたほうがいいでしょう、こうおっしゃるわけですからね。新任、再任そんなことはあたりまえのことで、現在おる人でもそんな人はやめてもらったほうがいいんだと、こういう考えで再任問題、新任問題を実際は扱っているんじゃないですか。だから政府からはきわめてほめられるわけです。その点どういうふうにお考えですか。
 そうしていま日弁連なりいろいろな方がこの司法権の独立の問題について心配しておる。何を心配しておるのか、そこをどういうふうに理解しておるのですか。皆さんは、日弁連会長の談話があったりいろいろしますと、いや、ことさらに誹謗しておるとか、疑惑を起こさせるようなことをしておるとか、いろいろなことを言いますが、そうではないのです。皆さんの体制がいま私が言うたような方向に動いておる。それに対してほんとうに心配しておるんじゃないですか。誹謗でもなんでもない。そういう事実を心配しておる。下田裁判官が十五人の裁判官の一人としてたまたまそのことをはっきりおっしゃっておるわけです。これを見ればやはりわれわれが心配しておったとおりのことを現在の最高裁の諸君は考えておるんだと思わざるを得ないわけですね。こういうことになりますと、これはどうしてもやはり再任なり新任なりそういうことを決定していく最高裁の長官が出てきて、ほんとうは十五人なら十五人来ていいですよ。出てきて、考えを述べるべきなんです。民主主義の基本に触れる重大な問題なんです。あなたにそんな考えを求めても、これは第一、人のことだし、始まる前にちょっと相手がおかしいと申しましたのはそういうことなんでしてね。これだけみんな心配しておるのですから、長官がどうして出てこないのですか。国会に何も出てはならぬと書いてない。国民がこれだけの疑惑を持っておれば進んで来るべきでしょう。人が批判をすれば要らぬことを言うなと、弁護士会が言えば、在野の分を守れと、そういうことではいかぬのですよ。それはやはり国民の信頼感がなかったら、そうして幾ら現在はこういうふうに批判を封じておっても、第一国民が信頼しないのです。
 たとえばここにも新聞を持ってきておりますが、四月十三日、京都の清田祐一郎外一名、これは公安事件の被告人ですが、一審無罪、二審有罪で、上告を取り下げましたね。その取り下げ書の中で、こんなことを言っておりますよ。「最高裁は最近、憲法で保障された思想、信条、結社、表現の自由を否定し、裁判官の再、新任拒否、司法修習生のひ免などを行なってきた。もはや人権擁護の府でなく、人権弾圧機関に堕落した。このような状況のもとでは公正な審判を受けることは期待できない。最高裁の腐敗、堕落に抗議し、無意味な上告を取下げる。」と、こういうことを被告人から突きつけられておる。それは極端な人だろうというふうに考えたら間違いですよ。大なり小なりそういう気持ちはあります。私は最高裁判所のためにこのことを言っている。一時はそういう批判を封じ、一方的に押し切っていっても、それは長続きするものじゃないんですよ、そんなことは。だれも最高裁に事件を持ち込まぬで、別個のところで解決をはかるようになったらこれはどうするんです。これはちょっとお答え願えるわけにもいかぬでしょうが、まあ最高裁判所長官によく伝えておいてください。
 この民主主義の世の中に、批判を受けないというような存在がどこにあるのですか、あり得るわけがないですよ。国会は国権の最高の府だといったって、これはみんな選挙によって洗礼を受けるわけだ。行政関係の人は絶えず国会で審議の対象になるわけです。それは権限はみな独立よ。国会は国会の権限、行政官は行政官持っております。最高裁だって特別の権限を持っているでしょう。ひとり最高裁だけが批判を受けない、そんなことはあり得ないじゃないですか。だから一から十までこまかい問題について長官に出てこいなんていうことを言っているわけじゃない。これほど基本に触れる問題であればはっきりすべきじゃないか。下田裁判官のような考え方が正しいというふうに十五名の裁判官が考えているなら、そのことを言うたらいいでしょう。そうでないなら、ない。何にも言わないで、そして抽象的に自分だけが公正で、りっぱで、ほかのやつはみんな誤解をしておる、誹謗をしておる、国民を特に誤らすようなことを言う。まるで、戦時中軍部を批判すると、軍部がやったような、ものの言い方に少し似てきておりますね。はなはだ私は遺憾と思う、遺憾千万だ。
 で、最高裁の内部でこういう人権侵害がある――民間で人権侵害があったら、普通は裁判所に持っていかなければいかぬでしょう。最高裁の中での人権侵害だから、結局は、最後には、最高裁が裁くんでしょう。だから、そこだけはもう全くの特殊地帯ということになってしまうんですね。論理的にもおかしいでしょう。だからもっと謙虚に――ちょっと思い上がり過ぎていますわ。だから、阪口君の処分にしたって、ああいう軽卒な、事実を間違えたようなことを土台にして、そして軽卒な処分というものが行なわれているんですよ。まあ何か弁解したかったら事務総長しなさい。特に求めません。私は、長官と総理に対して、このことは私の十八年間の最後の質問として――私も十八年間人権問題では全身全霊、全力を打ち込んできたつもりなんです。その最後の質問として聞きたいと思ったんたが、二人とも来ないのでしかたがない。あなた、何か私の誠意にこたえられるお答えができるようでしたら、何かおっしゃってください。
#108
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いろいろ御意見がございましたが、特に下田裁判官の発言について一言申し上げなければならぬと思いますが、最高裁判所の裁判官が五月になりますと、例外なくそれぞれ各地へ視察に出かけられます。その際、各裁判官から、出張先から、私のほうにいろいろな事務に関する連絡がございますが、下田裁判官からの、その事務連絡の中で、新聞の記事に触れられましたが、それで下田裁判官のお話によりますと、自分は新聞記者と直接話したわけではない、裁判官との懇談会で話したことが、また聞きで新聞記者が記事を書いたものだろうと思うので、あの記事全部について自分は責任を持つわけにはいかない。ただ、あの中に書いてありますことで、いわゆる体制云々の問題がございますが、これは、裁判官は憲法と法律にのみ拘束される、これは下田裁判官が御就任以来の下田裁判官の最も大切な信条とされて、ときどき話しておられるのでありますが、裁判官は憲法と法律のみに拘束される、したがって、裁判官は現憲法による法体制下にあるのだ、だから、これを批判すべきものではないのだ、こういうことを言われたのであります。ことに、悪法の問題もございましたが、これも、どんな法律でも、いわゆる違憲審査権によって違憲と判断されない限りは法律として有効として取り扱うべきだ、こういう趣旨で懇談会のときに話したことはある。こういうことでございまして、いまおことばにありましたように、いわゆる政治体制とか、そういう意味のことを下田裁判官は考えてお話しになったわけではございません。下田裁判官も、それから他の最高裁判所の十五人の裁判官たちもどなたも、一番大事な、裁判官は、その良心に従い、独立して職務を行ない、憲法と法律のみに拘束される、この憲法の規定を尊重してすべてのことに当たってあられるわけでございます。
 そのことだけ一言申し上げておきます。
#109
○亀田得治君 下田裁判官が直接記者会見したものではないということは、これはちゃんと新聞にそう書いてあります。裁判官との懇談会の席上で言われたことが伝わったんだ、それは私そういうように理解しております。だけれども、ただいま憲法のことを言われましたが、結局政府の考えておる憲法解釈ですね、そういう意味です。それから、その政府の考えておる憲法解釈が間違いだ。たとえば憲法第九条、これについては大きな二つの流れがあるわけですね。政府の考えと違った考えを持っておる諸君も、憲法を守るという立場で考えておる。下田裁判官が言われておるのは、政府の考えておる憲法、そのことが前提なんですよ。そうでなければ政治運動なんということは出てきやせぬでしょう。だから、そういう政府の政策をともかく頭から是認して、それにいやなやつはやめてしまえというような、そういう言い方なんというのはむちゃくちゃですよ。憲法自身にそれじゃ反対していると、そんな人はほとんどないでしょう。そんなことは問題でないでしょう、いま。非常に極端な人は若干あるかもしらぬが、ぼくら普通につき合っている人でそんな人知りゃせぬ。だから、憲法と言いますが、結局政府の考えなんです。それはいやなやつはやめろというのと同じ意味なんですよ、中身は。これは新潟ですからね。たとえば、いまあそこで小西裁判やっていますね、自衛隊法の違憲問題。おそらくそういうことも多少意識されて言っているのじゃないかと思う。もしそんなことを意識しておったとしたら、裁判官みずからが、平賀事件じゃないが下級審の裁判に干渉していることになるわけですね。ともかく、みんなそこを心配しているのですよ。裁判所がもっとほんとうの意味で独立でしゃんとしておってもらわなければ困ると、それはあなた火のないところに煙は立つわけはないでしょう。それはみんな、そうそうたる一流の人が、みんな心配して出しているのです。裁判官自体も出しているじゃありませんか。甘く考えちゃいかぬよ。まあこれで最後にします。
#110
○松澤兼人君 いま、亀田君が言われた下田裁判官のこと、勇気があってよろしいという話ですが、最高裁の裁判官が地方に出られ、裁判官会議に出席していろいろと訓辞といいますか、あるいは最高裁の意向というものを発表されることが例だと思いますけれども、それは最高裁の裁判官が地方へ行ったときに、結局憲法と良心のワクの中におさまっておれば、どういうことを発言してもかまわないということなんですか。
#111
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) できるだけ、地方においでになる機会に現地の一線の裁判官といろいろな話し合いをなさりたいということでございまして、今回の下田裁判官のおいでになったときも、そういったことで、現地の裁判官と談笑裏にいろいろなお話をなさったということのようでございます。
#112
○松澤兼人君 そうすると、最高裁の裁判官として地方の裁判状況の視察、懇談というような席で発言されることは、全くその裁判官の個人的な意見と考えていいのですか。
#113
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まあ、事の性質によりますけれども、大体御自分の日ごろのお考え等をお話しになるということではなかろうかと思います。ただ、物事によりましては、それは実はこういうことなんだということで御説明に、いわゆる最高裁の一般的にきまっておる線といったようなものを、御説明になることもあるやに承っております。
#114
○松澤兼人君 いま、事務総長のお話では、下田発言の真意というものが事務総長には連絡があったというお話を聞きましたけれども、事務総長としては別段逸脱をしたというような気持ちはないのですか。世論の批判を受けるとか、あるいはまた最高裁の裁判官の心がまえとしてちょっと逸脱しているというような、そういう考えはないわけですか。
#115
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 下田裁判官の発言が裁判官として逸脱していると、そういうふうには考えません。
#116
○松澤兼人君 下田裁判官が帰ってきてから事務総長に連絡があった。しかし最高裁の長官には何か連絡があったのです。それは事務総長を通じて長官に話があるのですか。
#117
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 下田裁判官は、昨日お帰りになりましたので、まだそういうお話しをしたことはございません。先ほど申し上げましたのは、下田裁判官が、何日でしたか、出張先から私あての電話の形でございます。
#118
○松澤兼人君 もし個々の最高裁の裁判官が不適当と思うような発言をもしされたとすれば、それはどういうチェックを最高裁としてなさるわけですか。かりに普通の常識といいますか、そういうものから逸脱したような発言をなされたとき、あったときというような場合にはどういうことになるのか。別段処分とか何とか、そういうことはないのですか。
#119
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは一般的に最高裁の裁判官といえどもやはり服務という点の問題はございますが、もしそういうことがあればということでございますが、非常に仮定的なお尋ねでございますので、ちょっとそのことには直接はお答えいたしかねますが、お互いにこういうことはやらないようにしようとか、言わないようにしようということでお話し合いをいただけるというふうに考えております。
#120
○松澤兼人君 かりに、仮定の問題ですから、逸脱するような発言があったとすれば、そんなことはもうやらないようにしようという話は裁判官会議で話が出るのか、長官から。あるいはまた長官個人としてその当の裁判官に話があるのか、あるいは事務総長が、これはどうもいろいろ問題があるようだから今後気をつけてくれというようなことを事務総長からおっしゃるのか。その辺のところはいままでそういうことはなかったろうと思いますけれども、まあ服務規律といいますか、職制の問題として何かチェックする方法というものはあるはずだと思うのです。
#121
○最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 例年裁判官が各地へ御出張になりますと、裁判官会議または裁判官懇談会の席において出張先のいろいろな事情を報告されるわけでございます。
#122
○松澤兼人君 私はその体制に反対する者は裁判所を出ていけというような、まあそういう政治的なことも問題だと思いますけれども、現に熊本地方裁判所から宮本判事補の不再任ということはどういうわけですかと、事務的に最高裁に連絡があったというお話しを聞いているのですが、それに最高裁からは回答がなかったのでしょう。それは人事の問題だから言えないということが理由だと思うのですけれども、回答していないのです。これはおそらく地裁の所長個人という資格で伺い、あるいは連絡をしたわけでなくて、地裁の所長という資格で最高裁に説明を求めているのに、最高裁としては回答しなかった。これはどういうわけですか。
#123
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 四月三日に閣議がございまして、十四日付で一般的に同期の人たちが再任になりましたわけでありますが、宮本判事補は再任の名簿に載っておりませんでしたので、十三日限りで任期終了による退官ということになったわけでございます。で、私どもは四月十三日に到達いたします正式の書面でもって宮本判事補は適任ではないということで再任の名簿からはずされたものであるという趣旨の正式の通知を所長、長官にいたしております。それ以前に新聞等で、いろいろと不再任になったのではないかといったようなことで新聞が書き立てておった時期が一時期ございましたが、そのことについてのあれはどうであるかといったような照会に対して、私どもこれは、あれは新聞の問題であるということで、回答するというようなことはいたしませんでしたけれども、正式にはちゃんと不再任のことについては所長、長官あての通知を出しております。
#124
○松澤兼人君 再任の名簿に載せなかったということは回答、連絡があったと思うのです。その理由は述べてないんでしょう。
#125
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その理由はいま申し上げましたように、判事として適任ではないという慎重な判断に基づいて名簿に載らなかったものであるという、ただ青法協会員というだけの理由で載せかなかったものではないということで通知を出しております。
#126
○松澤兼人君 官本判事補も、直接人事局長のところに来て、その理由を明らかにしてくれと、こう言ったけれども、あなたは、理由は言えないと言って、その理由を説明しなかったんでしょう。
#127
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございます。
#128
○松澤兼人君 それは人事局長がその職責上言えないということでなく、最高裁全体としてその理由は言えないということでしょう。
#129
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございます。
#130
○松澤兼人君 そうすれば下田裁判官が新潟で、青法協を何とかかんとか言うような、そういうようなことを言うことも、理由の一つを明らかにしていることじゃないんですか。
#131
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その点でございますが、実は私どもそういうようなことをお話になったというふうには承っていないわけでございます。
#132
○松澤兼人君 それじゃ新聞の報道が誤りだということになりますね。かりにももし下田裁判官が、青法協云々ということで、そればかりが全面的な理由でないということを言ったとしても、それは再任できなかったということの一つの理由でしょう。その理由はどこまでも人事の秘密として最高裁自身が他に説明する性質のものではないでしょう。それを最高裁の裁判官が、たとえその新聞の記事どおりでなくとも、やはり一部の理由として青法協の問題があるんだというよう’なことを、におわせるだけでも、これは最高裁の人事秘密の原則といいますか、慣例から逸脱していることじゃないですか。
#133
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) しばしば事務総長のあの当時の公式発表にもいたしましたように、適任でないということで載せなかったということと、それは青法協会員であるということだけを理由とするものではないということ、このことは私どもその限度におきまして申しておるわけでございまして、もし裁判官が御出張等をいただいてお話しになるといたしましても、その限度でお話をいただくというふうに確信をいたしておるわけでございます。
#134
○松澤兼人君 その限度でお話ししていただくということですけれども、ただ不適格であるから再任しないんだということでなくて、多少ニュアンスがあるにしても理由の一つとして下田裁判官がそれを公の席上か、あるいは秘密の席上か部内の席上で発表したということは、これはやはり最高裁全体の人事秘密ということの原則あるいは慣例を逸脱したことにならないですか。
#135
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 松澤委員のお尋ねでございますが、私ども下田裁判官からそういったふうなことを述べたというお話を承っておりませんので、どうもそういうことをおっしゃったのではなかったんじゃないかというふうに現在でも考えておるわけでございます。
#136
○松澤兼人君 それだから亀田君が言うように、総長あるいは人事局長相手にこういう問題幾らやったってしょうがない。もしできるならば下田最高裁の裁判官を呼んで、あなたはどういうことを言ったんですか、何か速記でもあるんですか、あるいはマイクでもあったかどうかというようなことを聞けば明らかになるでしょう。言わないことだと思いますということで、それでこの国会における審議というものはそこでピリオドを打たれて、そこから先にいかないことになるでしょう。
 私は最高裁の裁判官を初めとして裁判官が一般に街頭に出てというか、あるいは裁判所の外で発言することは、これはほんとうに慎重に考えてもらわなければ、とりょうによっては非常にこれは最高裁判所の慣例あるいは原則から逸脱したことになりはしないか、今後の問題もありますので私は特に言っておく。最高裁の裁判官が地方で言ったことは、あれは個人の問題だ、そうして問題になれば、そういうことを言ったのじゃないと思います、ということでおしまいになってしまう。やはり地方に行って、最高裁の裁判官が話をする場合には、ちゃんと書いたものを持っていって、それを読む程度の、長官にかわって地方の裁判所を視察する、あるいは連絡する、意見交換するわけですから、確固たる最高裁判所の方針というものを持っていって話をするのがあたりまえで、個人の考え、あるいは個人のニュアンスでもって、そのときそのとき裁判官会議で話をされるということは、これは非常に危険なことだと思います。それは憲法と良心の範囲内で言われることだと思いますけれども、それでも、とりょうによっては今回の下田発言のように、いろいろとられるわけですから、そうかといって下田裁判官は呼べない、あるいは長官は呼べないということで、いつでもあなた方を相手にして論議する。それから先は全く雲の上というか、かすみの向こうでわれわれはつかまえようがない。今後のこともありますからそういうことのないように、ひとつはっきりとした意見だけを述べるようにしてもらいたい。
#137
○亀田得治君 最後と言いましたが――例の下田発言ですね。これは新潟の裁判官が中心だと思いますが、裁判官全部集まったんですか。
#138
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように、新潟には地裁と家裁とございまして、全部で十八名の方がお集まりになったというふうに聞いておりますが、それが全員であるかどうかということになりますと、おそらく支部の方等はおいでになっていなかった方もあるというふうに考えられます。
#139
○亀田得治君 例の自衛隊法違反で起訴されておる小西裁判ですね。この担当の裁判長は出ておりましたか。
#140
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その点はつまびらかにいたしておりません。
#141
○亀田得治君 さっき支部の判事はおらぬのじゃないかというところから推測すると、本庁の方はおそらくいたように思えますね。もし、担当裁判長のいるところで、新聞に伝えられるような発言が、下田裁判官からあったとすると、私はこれは重大だと思うんですね。その新潟の小西裁判というのは天下周知の事実ですから、下田裁判官も十分知っておるはずです。その担当裁判長は、やはり現在の憲法体制と自衛隊との関係というものを法律的に非常にいま苦慮しながらまじめに取り組んでおるんですね。その人を目の前にして、あのような発言があったということになると、私はこれは平賀書簡と同じように、裁判の干渉にもつながる重大な問題だと思いますね。だから、それは調べてください。出席者、どの程度言うたかということは、これはまたニュアンスがあるでしょうが、だれとだれが出席したかということは、これはもう客観的な事実だから差しつかえないでしょうね、形式的な客観的な事実だから、だからこれは国会が終わるまでにひとつ調べて知らしてください。よろしいな、念を押しておきましょう。
#142
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 出席者のことでございますので、できるだけ早く調べて御報告申し上げます。
#143
○委員長(阿部憲一君) 私から最高裁に二、三ちょっとお尋ねしたいと思います。
 いま論議されました今回の宮本判事補再任拒否の問題及び阪口修習生罷免等の最高裁の措置というのはその対象とされた者の人間性を無視し、また説得性を欠いたものであって、非常に遺憾に思う次第でございます。法に関与する者はもとより一般国民に多大な影響を与えております。最高裁はこれに対してほとんど国民の納得のいくような対応策を講じていない、そのように思うわけでございますが、裁判官は本来沈黙が美徳だと、このように言われておりますけれども、これが現実においては東京地方裁判所、その他全国各地の下級裁判所において、直接裁判実務に従事する者の多くが最高裁の措置に対して、要望書を提出していることは、下級裁判所の裁判官に対し、人間としての心理的動揺を生ぜしめておるものだと思うわけでございます。司法権の独立というのは、立法権、行政権に対してであって、国民に対する独立ではないはずでございます。その国民が疑惑を抱いていることを晴らすことが、私は当然の責務じゃないかと思いますが、この国民の声にお答えすべきだと思いますが、このようなことから私ちょっとお尋ねした。最高裁のおとりになっている態度というものについて弁解なり何なりしていただきたいと思います。
#144
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 決して自分のやっていることが他の批判を一切許さないというような、いわば独善的な態度でおるわけでは決してないわけでございますが、事、裁判官のいずれも人事の問題でございますので、裁判の独立ということと最も密接に関連いたしております問題として、あとう限り慎重に私どもも取り扱っております。また、十五人の裁判官の方々も最大限度の慎重さをもって事をお取りはからいいただいておるわけでございまして、不幸にしてこのような事態が生じましたけれども、これは慎重に御審議いただいた結果のものでございまして、ただ事柄が人事でございますので、いま直ちにこういった事情によるものである、こういう事由によるものであるといったことを申し上げかねるという点において非常に残念なものがございますけれども、今後の人事行政といったものをごらんいただけば、おのずと決してそのような疑惑を持たれるような意味のものではないということをおわかりいただけるというふうに確信をいたしておるわけでございます。今後ともいやが上にも慎重な扱いをいたしていきたいということが私どもの念願でもございます。
#145
○委員長(阿部憲一君) 今後の何といいましょうか、最高裁の態度というものによって、この問題を理解してほしい、そういうことでございますね。それは前にそういう御言明があったので、知らないことはなかったわけですけれども、問題は、単に裁判所の内部の人事問題としてではなくて、やはりそれだけ国民の大きな問題として取り上げられているわけですから、私はむしろ最高裁として国民のある程度納得のいくような、要するに、国民の声に応じたような措置をとっていただきたい。こういうことから申し上げたわけでございます。
 現に先ほども問題になりましたが、日弁連が、この間臨時総会をして、当問題についての決議もしておりますことは御承知のとおりだと思います。このような問題に対しても、私の知っている範囲におきましては、最高裁当局におきましては、ほとんど黙殺といいましょうか、態度をとっておられる。このようなことについてもいま私が申し上げました一環の、要するに、国民に対して最高裁の態度というものが、何か納得できないわけでございますが、このいまの日弁連に対してもやはり何といいましょうか、悪く言えば、黙殺というようなことでいかれる予定でございますか、お聞きいたします。
#146
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) やはり、その御趣旨となさるところは私どもも十分わかるわけでございます。御批判として受けるべき点は十分受けなければいけないとは思っております。ただ、これに対して私どもがまたさらにお答えをするといたしましても、しょせん先ほども繰り返して申しておりますように、その知りたいとおっしゃる理由ということにつきまして申し上げかねるわけでございますので、むしろこの際は、沈黙を守らしていただいたほうがいいのではないか。そして今後の私どものやることをごらんいただきたいという気持ちでございます。
#147
○委員長(阿部憲一君) いまの沈黙を守らしていただきたいということも、御方針の一つとして全然理解できないというわけじゃございませんけれども、しかし今度は被害者と申しましょうか、今度の事件によって非常に不利益な処分をされた者がおりますが、その人からいままでの最高裁の態度といたしましては何も聞かぬ、弁明は一つも聞かぬ、こういうふうな態度というのは私はこれはちょっと、何といいましょうか、民主主義の現在の時代のあり方でなくて、むしろ封建時代の大名か何かの、要するに、何といいましようか、切り捨てごめん式なような感じさえも持つわけでございまして、もう少し何とか時代にふさわしいといいましょうか、もっとほかのことばで言うならば、国民がある程度納得できるような態度が、いわゆる処分についての説明というものができなかったものか、それを非常に残念に思うわけでございますが、いまこの問題についても、私たとえば先ほどから問題になっておりますけれども、宮本氏の問題なんかにつきましても、再任拒否をやったわけですけれども、これについても理由はおっしゃらない。それならば一体、今後もおそらくこういう問題起こると思いますが、再任拒否、たとえば十年で任期が切れた場合に再任拒否というのはあり得るんだと実例をもって示されておるわけですから、そうしたらその基準と申しましょうかそういうものを、何も今度の宮本判事補の問題だけではなくて、一応の基準というものはかくあるべきだ、たとえば青法協云々だとか、あるいは裁判の過程においてこれこれのミスがあったものはだめだとか、そういったような基準というものは設けられないものですか。
#148
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむずかしい問題でございまして、ことに裁判官の資格、その中にも判事補の資格、簡易判事の資格、判事の資格、いろいろなものがございます。そういつたものを一つの基準でつくっていくということは、実際問題としては不可能なことであるということでございます。非常に残念なことでございますが、何か尺度があってそれを示し得れば非常に私どももやりやすいわけでございますが、そういうふうにはなかなかいくものではないというふうに思うわけでございます。ただ、再任拒否の問題等は何も実は今回初めてこういったことがあったわけではございません。再任制度というものができましてその運用が始まりました三十二年以来、大体年に一件ぐらいの割合で再任しないという問題はこれまでもあったわけでございまして、何も事あらためて今度起こった問題ではないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、この機会にこういった制度というものを私どもとしては十分なお検討いたしまして、なお若い裁判官の方々にも、こういった制度の真の意味というものの理解を浸透させていきたいというような措置も十分講じていきたいと考えているわけでございます。
#149
○委員長(阿部憲一君) 裁判官がたとえば十年近くになるという場合に、いま申し上げましたように何の基準というものも知らない。それならば結局どうするかというと、定年間近になったいわゆるサラリーマンと同じように、ただお上の言うことを、上の人の言うことを唯々諾々として聞かなければならない。これはサラリーマンの場合ならば直接社会に影響は少ないと思いますけれども、事が裁判官である場合には、それがために何といいましょうか、判断を間違えるというようなことさえも考えられると思いますけれども、このようなことから私はやはり、かりにいまのように十年でいわゆる再任拒否されるケースというのは非常に少ない。前例はあるけれども、非常に少ないというふうに言われるのですけれども、これをもっと一般的に解釈するならば、任期が切れる、それならば、裁判所の自由判断でかりに言うならば、三人や五人じゃなく、もっと多数の人を再任拒否できるようなことも想定されるのじゃないかとさえ思うわけでございますが、そこで、そういうような場合、あるいはまた自分が任意に退官する場合もありましょうけれども、十年たって。その場合の救済措置といいましょうか、そうしたやめた人に対しては非常に大きな犠牲があるわけです。ことにやめさせられた方はたいへんですけれども、自分で任意に十年たったからやめようという自発的にやめた場合も、次のたとえば、弁護士を開業するなり何なりにしても、非常に大きな不利に遭遇するわけです。このようなことに対しての救済措置といいましょうか、こういうようなものをどの程度いまお考えになり、また現在どの程度あるわけでありますか。ちょっと教えていただきたい。
#150
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 任期終了という任期制度というのは非常に特殊な制度でございます。で、裁判官の場合は、一般の場合でございますと、相当な高い官職、たとえば、国家公務員でございますと人事官でございますとか、会計検査院の検査官とか、いろいろな非常に高い官職の方でございますが、裁判官の場合は、若い修習を終わりました裁判官から十年ごとに任期があるということで非常な特色をなしておるわけでございます。で、任期終了の際には、退職金等も実は相当多い退職金を支給すると、一般の場合よりも多い退職金を支給するということに相なっております。そういう点で全然特色がないというわけではございませんけれども、今日のところ、裁判官の給与といったようなものも私どもの必ずしも満足のいく体系ではございませんが、午前中の参考人のお話等でもお話が出ましたように、別個の観点から考えていくということも、今後の問題としてはまた必要ではなかろうかというふうに考えております。
#151
○委員長(阿部憲一君) 救済につきまして、もう一言お伺いしたいと思いますけれども、阪口修習生の問題ですけれども、この事情につきましては午前中お聞き及びのような、弁護士代表の方からもお話がありました。また、午後になりましても、先ほど来亀田先生、それから皆さん方からのお話がありまして、大体の見当というのはおぼろげながら一応ついたと思いますけれども、したがって、それを総括的に見ますと、結局、阪口氏はとにかく自分の個人プレーじゃなかったということははっきりしたと思います。要するに、修習生の中の一応の委員長といいますか、そういう代表という立場で行動したというふうに解釈される。そうしますと、代表として行動した人が、代表であったがために、しかも自分が進んでリーダーになったのではなくて、要するに、代表としての範囲内においてかりに今度の行動をしたといった場合には、本人に非常に同情の余地があると思います。これは単に当事者の方だけではなくて、一般国民も阪口君に対する同情というものは相当深刻なものだと思いますし、また、今回の問題がこのように国民に大きな波紋を投げかけたということも、一つはそのようなことも原因じゃないかと思うわけでございます。そんなことから私はいまちょっとお伺いしたいのは、阪口修習生ですね、二年の修習課程を終えたこの人に対する救済方法、これは最高裁としてお考えですか。
#152
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私どもは阪口修習生の終了式というものを混乱におとしいれた行為というものが、法曹という観点から、最も法曹に必要である正義を守り秩序を維持するという観点から眺めて遺憾であるということを言っておるわけでございます。その点につきましての御本人がやはりそうであったということをお考えにならない限りは、どうにもしようがない問題ではなかろうかというのが私どもの偽らざる考えでございます。
#153
○委員長(阿部憲一君) そうすると、救済方法についてお考えになってないけれども、救済措置というものはあり得るのだということでございますね。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
#154
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 司法試験は合格しておられます。それの合格、司法試験の合格という問題まで、このことによって消えておるのではないということでございます。
#155
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#156
○委員長(阿部憲一君) 民事訴訟法等の一部を改正する法律案、民法の一部を改正する法律案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、以上、三案を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。植木法務大臣。
#157
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいま議題に供せられました三つの法律案につきまして提案の理由を御説明申し上げます。
 まず第一に民事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。
 この法律案は、民事裁判手続の合理化をはかるため、簡易裁判所における訴訟上の和解に関する請求異議の訴え等の事物管轄の整備及び裁判書、調書、訴状等における署名押印形式の簡略化について、民事訴訟法等の一部を改正しようとするものであります。
 次に、この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、簡易裁判所において成立した訴訟上の和解に関する請求異議の訴え等の事物管轄の改正であります。すなわち、現行民事訴訟法におきましては、簡易裁判所において成立した訴訟上の和解に関する請求異議の訴え等は、その請求の価額がいかに多額のものでありましても、すべてその和解が成立した簡易裁判所の専属管轄とされておるのでありますが、これを改めて、その請求の価額が三〇万円をこえる場合には、これに関する請求異議の訴え等の管轄裁判所を地方裁判所とすることといたしました。
 第二は、裁判書、調書、訴訟等における署名押印を記名押印で足りるものとする改正であります。
 すなわち、裁判関係文書のうち、刑事裁判の分野におきましては、昭和二十六年の刑事訴訟規則の改正により、すでに決定書、命令書等につきまして、署名押印にかえて記名押印で足りるものとされております。これに反しまして、民事裁判関係文書につきましては、内容の簡単かつ画一的な決定書、命令書等もすべて裁判官の署名押印を必要とされ、事件数の増加と相まって、民事裁判手続の近代化、迅速化を阻害する一因ともなっております。
 そこで、これを改めて、決定書、命令書、調書、訴訟等につきまして、署名押印にかえて記名押印または認印で足りることといたしました。
 以上がこの法律案の要点であります。
 次に、民法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
 この法律案は、民法の一部を改正して、新たに根抵当に関する規定を設けようとするものであります。御承知のとおり、根抵当は、継続的な取引から生ずる多数の債権を一定の金額の限度まで担保するため、あらかじめ不動産の上に設定される特殊な抵当権でありまして、古くから判例によってその有効性を認められ、各種の経済取引において広く利用されているものでありますが、民法に明文の規定が置かれておりませんために、その法律関係については不明確な点が多く、利用上も種々の支障を生じております。そこで、この法律案は、民法に根抵当に関する規定を新設して、根抵当に関する法律関係を明確にするとともに、関係者間の利害を調整する等の措置を講じ、もって根抵当取引の円滑化及び合理化をはかろうとするものであります。
 次に、この法律案の要点を申し上げます。
 第一に、根抵当権は、設定行為をもって定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を担保する抵当権であるとして、その意義を明確にするとともに、特別の規定のない限り、抵当権に関する一般規定が適用されることといたしております。
 第二に、根抵当権によって担保される債権の範囲については、従来、一定の契約から生ずる債権に限るとする説、無制限にこれを定め得るとする説など、多数の説に分かれておりましたが、この法律案においては、原則として、一定の種類の取引から生ずる債権を担保することとし、必要に応じてこれを変更することを認めることといたしております。
 第三に、根抵当権により担保される金額の限度、すなわち極度額については、従来、元本極度額及び債権極度額の二とおりの定め方がありましたが、この法律案においては、法律関係の簡明をはかる趣旨から、後者の債権極度額の定め方に統一することといたしております。
 第四に、根抵当権の処分については、従来から問題とされておりました順位の譲渡、放棄等の処分を禁止するとともに、他方において、根抵当権に特有の譲渡の制度を認め、また、抵当権一般に通ずる制度として、順位の変更の規定を新設して、利用の便宜をはかることといたしております。
 第五に、根抵当権設定者等の保護をはかるため、一定の要件のもとに、元本債権の確定の請求を認め、また、元本債権の確定後の根抵当権については、極度額の減額の請求、極度額に相当する金額の払い渡しを条件とする根抵当権の消滅の請求を認めることといたしております。
 その他、共同根抵当、元本債権の確定の原因及び時期、根抵当取引の当事者の一方につき相続または法人の合併があった場合の法律関係などについても、所要の規定を設けて、これを明確にするとともに、関係者の利害の調整をはかることといたしております。
 最後に、必要な経過規定を設けるとともに、関係法律に所要の改正を加えることといたしております。
 以上がこの法律案の要点であります。
 最後に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について所要の整理を行なおうとするものであります。
 すなわち、簡易裁判所の所在地はこの法律の別表第四表のとおり、また、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の管轄区域は同表第五表のとおり定められておりますところ、茨城県北相馬郡取手町を取手市とする旨の、町を市とする処分が行なわれたことにより、取手簡易裁判所の所在地を表示した別表第四表の記載が現状に合致しないこととなったのをはじめといたしまして、最近おびただしい数にのぼる市町村の廃置分合及びその名称変更などが行なわれましたため、右の取手簡易裁判所ほか五つの簡易裁判所の所在地及び立川簡易裁判所ほか六十六の簡易裁判所の管轄区域を示した別表の記載が、行政区画等の現在の表示と一致しない結果となっております。そこで、この際、これらの別表の記載を行政区画等の現在の表示と一致させるため、所要の改正を行なおうとするものであります。
 以上が下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ以上三つの法律案につきまして、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#158
○委員長(阿部憲一君) 三法案についての審査は、次回に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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