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1970/05/22 第65回国会 参議院 参議院会議録情報 第065回国会 内閣委員会 第21号
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1970/05/22 第65回国会 参議院

参議院会議録情報 第065回国会 内閣委員会 第21号

#1
第065回国会 内閣委員会 第21号
昭和四十六年五月二十二日(土曜日)
   午前十時四十六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十一日
    辞任        補欠選任
     石原幹市郎君     金丸 冨夫君
 五月二十二日
    辞任        補欠選任
     金丸 冨夫君     石原幹市郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田口長治郎君
    理 事
                塚田十一郎君
                安田 隆明君
                足鹿  覺君
                上田  哲君
    委 員
                源田  実君
                佐藤  隆君
                長屋  茂君
                渡辺一太郎君
                山崎  昇君
                峯山 昭範君
                松下 正寿君
                岩間 正男君
   政府委員
       内閣審議官    城戸 謙次君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        相原 桂次君
   参考人
       神戸大学教授   西原 道雄君
       東京大学教授   浮田忠之進君
       日本消費者連盟
       代表委員     岩田 友和君
       早稲田大学教授  野村 平爾君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○環境庁設置法案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田口長治郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 環境庁設置法案を議題といたします。
 ただいま本案審査のため、神戸大学教授西原道雄君、東京大学教授浮田忠之進君、日本消費者連盟代表委員岩田友和君、早稲田大学教授野村平爾君、四参考人が出席されております。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は御多忙のところわざわざ本委員会に御出席賜わりありがとうございました。
 それでは、初めに四参考人から御意見を承った後、各委員から質疑を行なうことにいたします。
 まず、西原参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(西原道雄君) 西原でございます。
 最初にお断わりしておきますが、実はこの法案について意見を言えという連絡がまぎわになってあったものですから、この法案の中の個別的な問題についてまだ十分に検討が行き届いておりません。そこで、きょうはできれば、ふだんから考えております一般的なことを中心にして意見を申し述べたいと思います。
 公害問題、広くは環境問題、人間の住む環境が汚染されていく、これに対して何か対策を打たなければならないということは、現在世界の大多数の国で非常に強く叫ばれております。日本ももちろんその例外ではない、そういう意味で世界的な傾向と共通点を持っているわけですが、ただ日本独特のといいますか、多少違った事情があるのではないか。それは欧米各国においては広い意味での地球的な汚染とか、そういう広範囲の自然環境の汚染ということに重点が置かれておるのに対して、日本で現在特に重視されるべき問題としては、公害と申しましても人間の生命、身体に直接大きな脅威をもたらすような、相当範囲とはいっても比較的局地的な一、二の府県とか、一つの川の流域の住民の間に被害が及ぶようなもの、極端なものになりますと、犯罪的ということばさえ使われておるわけですが、そういう非常に深刻な被害をもたらす公害が多いところを特に問題の中心に置くべきであるというようなことが、日本の特徴として特に言えるのではないかと思います。
 さて、人間の住む環境を維持し、あるいは汚染された環境を回復するために何が必要か、どうすればいいかということを考える場合、やはりわが国で現在考えるべきことといいますと、つまり当面の課題、刻下の急務としては、やはりいろいろある公害のうちで特に産業公害というものに対する対策が重要ではないかと思います。また、いろいろある方法の中で、公害の発生者、発生源に対する規制、あるいはすでに発生した場合には、その責任をどうやってとらせるかという責任の追及ということが中心になるべきではないかと思います。そういう目的のために、現在の制度、あるいは現在の法律にどういう欠陥があるかということをいろいろ見てみますと、公害に対処するための機関、機構の面での欠陥というものも幾つか目につくものがあります。たとえば公害対策をとるべき権限あるいは責任、こういうものの各行政機関における配分のしかた、分担のしかたが必ずしも適当でないという面があると思います。それが役所のセクショナリズムというようなものと結びついて対策がうまくいかないというような弊害がいろいろ出てきております。そういう意味で公害対策あるいは大きな広い展望としては、日本の国土全体の環境の維持ということになるかと思いますが、そういう目的のために総合的な施策が必要であることは言うまでもありません。対策をとるべき機関も統合するか、あるいは少なくとも十分な連絡が必要であります。ただし、連絡といってもいろいろなタイプの連絡があると思います。どういう立場から公害対策を進めていくか、それをはっきりさせた上で、その目的により適合したような調整のしかた、統合のしかたが必要であります。たとえば公害対策を進めていく場合に、被害者の立場に立って公害がなるべく発生しないようにする立場と、発生する側、公害発生者の側に立って発生者の利益というものを考える立場とがあって、その中間をとるというようなやり方では、これは意味がないと思うわけであります。そこで、これから先考えられますいろいろな機構、新しく設置される機構、あるいは連絡調整の機関などが適当かどうかということを考える場合、そういうものをつくることによって、住民の立場に立って十分な規制が行なえるようなものかどうかということを、まあそういう見地から評価しなければならないと思うわけであります。現在設置されようとしております環境庁、これがそういう方向へ向かっての一歩であるならば、現段階においていかに不完全であろうと、あるいは欠陥があろうとも、それは将来是正すべきものとして一応評価できるのではないかと思います。しかし、もしもこういう機構を新しくつくるということが、その内容がかりに中途はんぱなものであるとして、将来の統合、あるいはよりよい対策をとるための機構をつくる場合に、かえってじゃまになるというようなことがあれば、むしろ現在中途はんぱな手は打たないほうがいいということも考えられるわけであります。
 今回できます環境庁というのは、そこに公害対策をとるいろいろな権限をすべて集中する統合した機関ではなくて、むしろ連絡調整を目的としたものではないかと思うわけです。その意味では、現状と法案を一べつした印象を申しますと、現状と大差ないのではないかという気がするわけです。また連絡調整という場合に、先ほど申しましたように、公害対策に対して、むしろいままでじゃまになっておったような側面、そういうものと、公害対策を少しでも進めていこうとする方向との中をとる。そういう意味での調整になるとすれば、あまり好ましくないのではないかということを思うわけであります。そこで、住民の立場に立って十分な規制を行なうための機関、あるいはそういう立場からの連絡調整ということを考えた場合、問題を環境の問題全般というよりも、もう少し狭くしぼりまして、国民の生命とか、身体の健康の保護、維持、こういう見地に立った場合には、たとえば現在すでにある機関としまして、厚生省というようなものを中心に考えて、なぜ厚生省中心の機関ではまずいのか、現在どういう権限が不足しているのか、どういう点で他の省庁との連絡が不十分なのかという点について、十分に検討していく必要があるのではないかと思います。法案の内容について十分研究が行き届いてはおりませんので、断定的にこれではいかぬという批判は避けたいと思いますが、そういう点についてはたして十分な考慮がなされているかどうか、多少懸念を感じないでもないわけであります。
 それから、この法案によりまして設置されるものに国立の公害研究所というものがあります。公害問題というものは関連する分野、部門が非常に広いわけです。従来の学問の体系からいっても、個々の分野、法律とか、経済とか、医学とか、特定の分野だけを専攻していたのでは公害問題に十分対処できない。もっと総合的な見地から公害問題に取り組む機関が必要であるということは、だれしも異存のないところだと思います。そこで、そういう意味から申しますと、公審に関して研究する機関が一つでもできることは非常に望ましい気がするわけであります。ただし、目前の利害、当面の利害ということを離れまして、大所高所から長期的な計画を立てる、学術研究として公害問題に取り組んでいくという場合、はたしてここで予定されているような国立公害研究所というような構想が望ましいのか、あるいは大学というところが適当かどうかわかりませんけれども、大学とか、あるいは大学を越えた独自の研究機関というもの、たとえば文部省という所管の中にそういう機関をつくるという方法も考えられるのではないか、そういう方法と、こういう国立公害研究所、ここで考えられているところの研究所との比較、どちらがいいかという点について十分に検討がなされたかどうか、私は事情をよく存じませんが、必ずしもこういう構想が望ましいと言えない面があるのではないかという気がするわけであります。
 以上、非常に不十分な知識に基づいて意見を述べましたために、抽象的になり過ぎ、あるいは誤解に基づく意見などもあるかもしれません。もし、ここでつくられようとする機関、環境庁というものが、非常に重要な機関、将来わが国の環境問題を改善していくためにその一歩を築くような重要な機関であるとすれば、これがどのようなものとしてまとめられるかということは、国民にとって非常に重要な意義を持つわけであります。したがって、ここで掲げられている構想について、もう少し国民的な規模での討議、批判にさらす期間を置いて、つまり法案のままの段階でもう少し期間を置いて、いろいろな面から検討を加えるチャンスをふやした上で実現に移すという方向が望ましいのではないか。その意味で、現在抱いている感想といたしましては、こういうものをいますぐ放置するということはやや時期尚早ではないかという気がするわけであります。
 以上であります。
#4
○委員長(田口長治郎君) 浮田参考人。
#5
○参考人(浮田忠之進君) ただいま御紹介にあずかりました東京大学の浮田でございます。
 私の専門は衛生化学及び生化学でございまして、今回の環境庁設置法案というきわめて法律的な問題に関しましては全くのしろうとでございますが、いままでに私が専門の分野におきまして公害という問題にある程度かかわってまいりました経験は少しございます。それと、それからただいま西原さんが申されましたように、実は参考人としてここへ参りますことになりましたのが、昨日のお昼にそういうことで依頼するということで、わりあい急なことでございまして、私といたしましても、この法案の設置理由などに関しまして目を通しましたのが昨晩というような状況でございます。それで、はたして私がここで申し上げますことが妥当なことが申し上げられるかどうか、非常に私もその危惧を抱いているわけでございますけれども、私、順次、設置基準を拝見いたしまして、そして私がその場その場で私の経験に照らして感じましたことを申し上げて責めをふせがしていただきたい、こういうふうに思っております。
 で、この法案を拝見いたしまして、まずその基本的な考え方は、自然環境の保護、それから基準の設定、監視測定、取り締まり、そういうことが一つあるのである。それから環境保全に関する基本的政策の企画、立案、推進ということがある。それから国立公害研究所の設立及び公害研修所の設立、そういうことがあるというふうにうたわれております。もちろん私は――ちょっとこれの意見を申します前に、非常にかけ離れたことを申しますが、実は月の世界の探険ということがアポロ計画で行なわれたことは皆さまよく御承知でございますが、そのときに月に水がないというインフォメーションがもたらされましたときに、私は月にはおそらく生物はいないであろうというふうに直感したわけでございます。それはいまわれわれが生物と学問的な概念で考えておりますものは、たとえばバクテリアでありますと八五%が水でありますし、われわれ人間のからだは約六五%が水であります。ですから、それが生を全うするためには非常にきれいな水、汚染されない水というものがいかに必要であるかということは、その一事実をもっても明らかであります。そして、また水は水素と酸素でできているものでございまして、われわれが空気の中で生きているということはきれいな空気が要る、酸素が要る、そういうことから考えますと、環境汚染ということは、われわれが健康な人生を全うするためには必須条件である、そういう基本的理念から、私、自分も専門的な見地で仕事をしてまいりましたが、それに関連していま環境庁の基本的考え方に照らして考えてまいりますときに、自然環境の保護、非常にけっこうなことであると思います。それから基準設定、監視測定、これもけっこう、これはどうしてもなされなければならない。しょっちゅうわれわれの住むまわりにある水とか、あるいは空気がどういうふうにきれいであるかということの監視であり、きたないものがあればそれを測定する、そういうことはけっこうであります。
 ただその次に、取り締まりということが書いてございます。それからもう少し下がりますと、政策の企画、立案、推進ということがございます、基本的政策に。これと先ほどの基準設定、監視測定との間の関連が非常に重要でないかという感じがいたします。
 それをもう少し詳しく申し上げますと、国立公害研究所の設置の考え方の中に、「公害の人の健康及び生活環境に及ぼす影響の研究」ということがうたわれておりますが、衛生学的に申しますと、現在の学問のレベルというものは、既知の汚染物質、公害の原因物質、もうわかっているものが幾つかございます。それと人のからだとの、われわれはインタラクションと言っておりますが、相互作用、それが人のからだに入ったときにどういうことが行なわれているかということを綿密に調べ上げて、そういう学者がこまかい知識を持っているかというと、これは非常に残念なことでございますけれども、わかっていることのほうが少ないと申しましても過言ではないと思います。
 それからそのほかに未知の汚染源というものが必ずある。われわれ科学者は自然現象に対してあくまでも謙虚でなければならないわけでございまして、われわれがいま知識として知っていることは自然現象の数万分の一にしか過ぎないということは過言ではないと思います。そういうことから水の汚染源、つまりこれからどういうことが出てくるかわからない、どういうものが公害源になるかわからないというそういう因子も含んでおります。それで公害の人の健康や生活環境に及ぼす影響ということになってまいりますと、先ほどの監視測定の結果とにらみ合わせてどういうことが起こってくるかと申しますと、危険の予測ということがまずいつのときにも起こってまいります。それはあくまでも予測でありまして、危険が起こってからであれば、これはしようがないので、それで私がどういうことを申し上げようとしているかと言いますと、先ほどの取り締まりということにフィードバックする、つまり危険が起こりつつあるのじゃないか、あるいは危険らしいことがにおわれるというときにその予測をどう判断するか。そうしてそれをどういうふうに取り締まるかという、そこが非常に機能的に行なわれない限り、幾ら大きな省庁をつくりましても私は無意味である、こういうふうに考えます。
 それから、その次に内容の概略というところにまいりまして、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、その他公害防止に関する諸法律、公害防止事業団の監督、こういうことをやるのである、施行するというふうに書いてございますが、それは非常にけっこうなことであります。
 その次に、関係行政機関の長に対して重要事項について勧告をする、内閣総理大臣に対して意見を具申するということがございます。先ほど私が申し上げましたところとこのところが非常に関連があると私は思うのであります。つまり、勧告をした場合のそのあとの話がどうなるかということでございまして、もし勧告されたところが、いやそうじゃないと思う、そうじゃないんだ、私はそうは思わない、こういった場合に、その勧告は無効になる。つまり勧告したその効果は出ない。しかし、そのときにもしこの環境庁の勧告というものに科学的な基礎がちゃんとあって勧告ということになっているとすれば、それではそのノーという理由はどうであるかということを聞けるはずであります。どうしてノーなんだということが聞ける。ノーと言う場合には、それはそれなりの科学的なと申しますか、サイエンティフィックな理由をつけてノーと言ってほしい。そういうつまりレスポンスとそれからオブリゲーション、そういう意味の権限でなければ、これは何にもならないのであるということを感じました。
 そのあとは非常に行政的なことでございますから、一応私にはどれがそれを実行されたときにどういうふうになるかというこまかい点は専門外のことでわからないのでございますが、全体をすっと読ましていただきましてまず感じましたことはその二点でありまして、つまりもっともっと研究をしなくちゃならない。つまりわからないことのほうがたくさんあるということを自覚していただきたいということ。それは公害源と人のからだとの反応、それがからだに入ったら人のからだはどういうふうになるか、そこがもっと、もう少しこまかく言いますと、急性毒性と慢性毒性とございます。大量の害毒が一度にたくさん入ったときに急性毒性、慢性毒性というのは非常に少しずつじりじりとからだに入ってくる場合、そういうことも、その次に話を持っていきましても二つに分かれる。そういうことに関してすべてがわかっているのではない、わかっていることのほうが少ないんだということを認識していただきたい。であるから、そこで測定とか、研究とか、それから出てくる結果というものは危険の予測という形で出てくるであろう。そうすると、その危険の予測ということに対して行政的にどういうレスポンスがあるか、どういうふうにそれを取り締まられるか、それを取り締まるためにはどういう権限がこの環境庁にあるのかということ、私はその三点が、専門外の私がこの法案を拝見いたしましてもう少し詳しく知りたいと思った点でございます。
 以上をもちまして私の意見を終わらしていただきます。
#6
○委員長(田口長治郎君) 日本消費者連盟代表委員岩田参考人。
#7
○参考人(岩田友和君) 日本消費者連盟の岩田でございます。
 私は市民活動に携わっている者の立場から、今回の環境庁設置をめぐります問題について意見を申し上げたいと思います。
 環境保護行政体系が曲がりなりにもまとまってきたということについては、それぞれの御努力に対して敬意を表します。いわゆる行政面でのまとまりというのは、こうしたいろいろな公害問題とか、世論の高まりとかいう中でないとなかなかまとまりにくい。そういう各省庁の縄張りだとか、いろいろなものがありますからまとまりにくい。そういう経過を考えますと、暫定的にも前進だと認めることはできるわけであります。しかし、昨年来いわゆる公害国会と言われたほどのウエートから考えますると、いわゆる総理府の外局としての環境庁をつくるというとらえ方は、いろいろな事情があるんでしょうが、本来、環境保全省というようなかなり強力な権限を持った行政体系が必要ではなかったのかというふうに感ぜざるを得ないわけであります。
 それから、私どものもう一人の委員に、二年ほど前まで経済企画庁の国民生活局の参事官をいたしておりました竹内というのがおりますが、いわゆる総理府外局の中につとめた者の率直な意見として言えば、こうした体系をまとめることまでは何とかできたが、ややもすると仏つくって魂入れずといいますか、そういうことばがありますように、形式だけに終わりはせぬだろうかという率直な心配が持たれるのであります。いわゆる経済企画庁においてもそうでしたが、こうした外局が新しくできるということになりますれば、勢い、いままで所管をしていた各省庁からの出向者によって事務官僚は埋められるわけであります。経済企画庁がプロパーを生み出すために苦悶をいたしましたように、いわゆる内部の統制力というよりは、出向してきた親官庁について非常に出向してきた官僚が気を使い、内部ではそういう出身省印のエゴイズムのぶつかりが出てくる。そこにはこの環境庁が設置されようとしている目的について、あるいはまたは住民の健康というような種類の問題を飛び越えてしまった、いわゆる言い争いが出がちな状態が予測されるわけでありまして、こういうことは絶対に防止をしてもらいたいというふうに思うわけです。で、われわれの経験からいきますれば、だれがこの環境庁のそうした混乱を押えていくのかということになりますれば、心はり勢いそこの長に当たります方の政治力といいますか、それからいままでの実力といいますか、そういうものに有形無形に左右される。なまじっかな方がなれば各官庁から逆に無視されてしまうということになりかねない。せっかくここまで、環境庁という段階であっても、まとめてこられた努力が実を結ぶためには、ぜひそうした人選の面では副総理級の実力者を充てて、どうしても国民の健康阻害の問題を公害から守っていくという積極的な姿勢を示してもらいたいものだというふうに思っているわけであります。
 それから二、三私どもが常日ごろ環境の問題について感じています点を申し述べますと、こうした行政の中でさらに強化をしてもらいたいと思っている点の一つは、海岸環境の保全の問題であります。海岸環境の保全の問題については、運輸省と建設省の間でなかなかしっくりいかないという話を、私どもはいろいろな人との触れ合いの中で聞いてまいりました。特にマスコミ関係の方々のことばの中で再三聞かされてきたところであります。で、こういうのはいわば政治的に目立たない、そういうようなメリットが少ないということで放置されがちなんです。
 それからもう一つは、海洋保全をことばとして非常に打ち出しているけれども、やっていることは逆です。海岸を簡単にどんどん埋め立てて工業用地にする。たとえば最近の鹿島の例などはそういうことの象徴のようなものでありまして、それは産業の発展と海の関係というのは切り離しては考えられないほどの密接なことは承知しておりますが、やはりそれはそれなりに、そのために海岸が破壊され、海洋が汚染されるというようなことがあってはならないわけであります。本日もNHKのニュースで、茨城県の鹿島において、基準を取り違えて行政を指導していたために汚染が起こっていたということが発見されたということで、こうしたニュースを聞きますたびに、行政の取り組んでおる姿勢を住民の側からは疑問視せざるを得ないわけであります。あれだけの基準をつくり、論議を詰め、そういう中で担当する人たちの不勉強というものに不安を感じてまいりますので、やはりこうした面についての徹底的な強化策、教育というような問題を、ぜひ行政に当たる人たちの教育を含めて、やはりきちっとしていってもらわなければ困るという感を強くするわけであります。
 それからその次は、都市の環境保全について、はたしてどれほど環境庁が今後チェックしていけるだろうかという点についても、その権限がどのくらいあるだろうかという点では率直に疑問を持たざるを得ません。私どものほうにもラルフ・ネーダーをはじめ海外の活動家が立ち寄りまして、そのつど意見交換をいたしますが、外国で考えられないようなことが、先ほどの海岸線の問題にしろ、道路の問題にしろ、都市環境の問題にしろ行なわれていると指摘されることは非常に残念なわけであります。そういう面では、この環境庁設置の問題が発足をしていく中でそれに御留意をいただいて、その面の権限を強化していただきたいと思うわけであります。
 それから、浮田先生もおっしゃっておられましたが、いわゆる勧告というような種類のものについて、こうしたあまり権限を持たない姿勢の中で勧告をいたしましても力がないということは、物価問題における経済企画庁の実績を見ても明らかなわけであります。説得をするだけでありまして、それを拒否されればどうしようもないというところで、やるはやったんだというところで行政の官僚の方々は責任を回避することはできるでありましょうけれども、それをしわ寄せを受ける住民の側からの感覚から申しますれば、それで済まされてはたまったものではないというふうに考えるのは自然の成り行きであります。したがって、そういう中からやはり政治不信なりいろいろなものが巻き起こっているという現実を冷静に見ていただくなら、やはりこういうことをこそ通じて国民の健康を心配している政治の姿勢というものをお示ししてもらいたいものです。そのためには、もう少し勧告が強力に行なえるように権限を付与していくべきだと考えております。浮田先生同様に、拒否理由を明示する義務を与えるべきだと私どもも考えてまいりました。
 それから、環境汚染の中で私どもが特に気にしておりますものの中に、自動車の排気ガス、騒音の問題がございます。で、よく日本はまだアメリカに比べて自動車の普及率は少ないのだという御意見を聞くことがあって驚くわけでありますが、それらのことごとを言われる方々は、たとえば一九六九年に日本では七人に一台しか自動車を持っていない。アメリカは二人の人がいれば一台は持っておる。そういう例をよく引用されるわけであります。ところが、半面、一平方キロメーター当たり同年の比率で見てみますれば、アメリカでは九・九台、日本は二一・六台というもう破壊的な状況がここで生まれているわけであります。土地の狭さを論ぜずして、一人当たりの持ち台数でものごとを比べてくる、こういう統計の用い方にはちょっと疑問を持つわけであります。とにかく御承知のように、見る限り車で埋まるであろうというような状態の中で、これから吐き出されます排気ガスの問題、それから、その燃料として使っておりますガソリンに含まれる鉛の問題、特にハイオクタン・ガソリンの鉛害については昨年も大問題になった経験を持っている。しかも、ハイオクタン・ガソリンを適用できる車種は全体の自動車の車種から申しますれば一四%足らずであると運輸省も認めているところでありまして、こういうようなものは即刻禁止をしていくぐらいの、環境を守るために禁止をしていくぐらいの強い姿勢がほしいと思っておりましても、なかなかそういうところには行政の手が届いていかない。いわゆる民間で使わない運動を起こしていくしかないというところで足踏みをしている。またこれだけふえてしまっている車を今後も野放しにしておいていいのかという問題も当然出てくるわけでありまして、ここいらのところについての対策については、やはりアメリカと比べましても、電気自動車の問題にしろ何にせよ、おくれてきているのではないかというふうに感じているわけであります。
 それから、農薬の規制の問題についても、思い切って戦前の水準まで農薬の制限を戻せという声が出ておりますくらいに非常に深刻で、人間の母乳の中から反応が出るというような事態に立ち至っているこの中で、まだまだこれらの問題についての対策は立ちおくれておりますし、ぜひそういう問題について、新しくできる環境庁がかなり主導権を握れるような体制を組んでいただかないと、せっかくのものがだめになるのではないだろうか。あまり成果を果たし得ないのではないかとすら考えるわけであります。
 そのほかに、合成洗剤による上水道不足の問題あり、水質の問題ありで、われわれは不安な日々を送っておりますので、ぜひそういう点についても特に対策を急いでもらわなくちゃならないというようなことを日ごろ主張してまいりました。
 で、まとめて申しますれば、これらに対するいままで行なわれております取り締まり体制というのが非常に手ぬるい。で、これを専門に取り扱う環境庁ができるのでありまするから、それであれば、いままでの各種法律の中で定められておりますペナルティをもう少し強化していく必要があるだろう。で、私どもは、本質的には官庁が取り締まり権をうんと持って民間を取り締まっていくという体制については好ましいとは考えておらないわけでありますけれども、当面の処置として、企業なり、それから先ほど鹿島の例で申し上げました行政の怠慢なりの中から生まれてくる住民に対するしわ寄せ、これを当面きちっと姿勢を正させるためにはペナルティの強化はやむを得ないのではないか。あまりにも現在は軽過ぎるというふうに思うために、罰が強いから守るというふうには一がいに移行していかないと思いまするが、とにかく失ないつつある環境を回復するというこのお仕事のために、どうしてもそういう面の強化が必要である。
 それから、さらに最後に申し上げたいのは、予算面の強化であります。これはたしか従来までの慣例で申しますると、当初に予算がきめられますと、その次の年から三割以内とかという形で予算が頭打ちをされてしまってくる。これは公正取引委員会等の予算の要求、その他のいきさつから私どもはよく知っておるわけでありますが、現在のこの公害対策に当初組まれました予算のうち、下水道費を除きまするとたいした額ではなくなってしまうわけであります。したがって、新しく環境庁を設置をする。そして、ここに示されたような内容を逐次強化してやっていくという限りにおきましては、その財政的な慣例の特例を設けまして、少なくとも五年間程度、三割以内の上昇しか認めないというようなことのないように、やはりこの面には必要経費がそういうワクを越えて付加されて実行できるというような体制に持っていってもらいたい。そのためには予算の慣例に拘束されないという、そういう特別な御配慮を特にきめておいてもらう必要があるだろうというふうに感じております。昨日、環境庁設置の問題について意見をというお話がありまして、とりあえず、従来から取りまとめてありました意見だけを申し上げましたので、まだ十分ではないと思いますが、要は、仏つくって魂入れずということばが示しますようなことにならないために、どうか、せっかく先生方が慎重審議なさってまとめられた環境庁のこの機能が十分に発揮されまするように、予算の面から、人材の面から、いままでの苦い経験を十分に御検討いただいて、有効な処置がとれる、適切な権限を持った、そうした行政体系の組み上げをぜひこの際に環境庁について行なっていただきたいというふうに望む次第でございます。
 以上で私の意見を終わりたいと思います。
#8
○委員長(田口長治郎君) 早稲田大学教授野村参考人。
#9
○参考人(野村平爾君) 野村でございます。三人の参考人からそれぞれ申されました点で、ある程度まで私の考え方はその中にも含まれております。したがいまして、ごく簡単に結論的なことを申し上げさしていただきたいと存じます。
 私も昨日初めてこの法案のほうを見ました。従来は新聞等でその経過が伝えられているのを知っていた程度にしかすぎません。したがって、必ずしも的確ではないと思います。で、非常に不満足な点が幾つかありましたにもかかわらず、公害対策関係法というのが昨年の国会で成立をいたしましたが、この法律が実効を果たしていくためには、それに伴う行政機構がなければならないということになるわけであります。もちろん、それぞれの法律には担当省庁がもうきまっておったわけでありますけれども、ばらばらな形でやられるよりは、それが統合された形で行なわれるということの必要性ということはだれしも一般的には賛成であろうというふうに思います。その意味におきましては、私は環境庁ができたことが、一般論として何もいけないとか何とかいうことは絶対に申しません。むしろ、こういうものはあるべき姿だろうというふうに考えております。ただ、そういうものができました場合に、ほんとうにその機能を発揮し得るかどうかという点が一番問題であろうかと思う。で、その意味におきましては、ただいまの参考人のお話の中にもありましたように、実際に各法律における担当省庁というものがすべて今度は改正によりまして環境庁のほうへ移ってくるような形をとっておりますから、形の上では環境庁が公害問題については権限を持ったと、こういうことになるわけです。そこで、そういう省庁というものの権限が環境庁に移った場合に、その環境庁がどれだけ力を発揮し得るか、そこが問題ではないだろうか。御承知のとおり、定員法のワクがございます。したがって、増員ということは考えられません。したがって、各省庁からの今度出向人事というような形でこれは埋められるんではないかというふうに私は想像をいたしております。もしそうであるとすれば、ただいまのお話にありましたように、一応ある省庁から出向と同じような形でこちらへ移って、またもとへ戻るというような形になりますと、やはり自分の本来育った省庁の考え方というものに拘束をされるというのは人情として当然ではないだろうか。そういうことから、ここでもって企画立案をする場合にも、あるいは環境基準を定めるというような場合にもそこに一つの調和が自然と生まれてしまいはしないか、このことに対して私は一番懸念を抱いております。これを何とか環境庁では本来の人事のあり方として考え直してもらわないと、この法案ができても内容が生きない、機能が果たせないというような、そういう心配を私は一つ持っております。
 それから、財源問題についてただいまお話がございましたが、私もそのことは考えております。九百数十億しかない公害予算だと伝えられておりましたが、そのうちの六百億以上が下水関係の予算である。そうしますと、三百億ばかりのものが実はこの下水関係のことを除いて公害の予算だ、こういうことになってきやしないか。そのときに、はたして今日のこの著しい意味における環境破壊が起こっておるという状態、それに対処することができるのであろうかという、こういう心配を私は禁ぜられないものであります。その意味におきましては、やはり一つの省庁ができました以上、それに対して十分な目的を達成し得る予算というものを組むべきであるということです。
 なお、この問題について大事な問題としましては、環境破壊ということに対してはどこから問題が提起されているかというと、これは実は残念ながら指導的地位にある人々のほうから問題が提起されたり、あるいは研究者のほうから問題が提起されたりしているよりも、実は住民のほうから問題が提起されているんであります。そこで、そういう住民の意思をどうしてくみ上げて行政を行なっていくかということが非常に大事な問題になるんではないか。こういうことについてさまざまな審議会その他の機構ができますが、こういうものに対する考え方というものを少し充実させていただけないだろうかというような希望を私は禁ぜられないものでございます。
 それから第三点といたしまして、とりあえず私はここで、先ほど西原参考人も申しておりましたが、国立公害研究所の問題でございます。国立公害研究所につきましては、どうもこの条文を拝見いたしますと、これは現在の公害対策の技術の研究所になっております。ところが実際問題として公害に対処していくためには、基礎的な研究というものと、こういう技術的な研究というものをどう接合させていくかという、ここのところに一番大きな問題点がありそうに思われる。いままでの基礎研究というものと、技術の開発の研究というものとの間にやはり連絡のなかったということが、科学技術の発展に対する跛行性とでも称すべきものを実は生み出しているんではないだろうか。国立公害研究所ができました場合に、単に発生している公害に対処するための技術の研究ということが中心になる、そのほかには試験研究やあるいは調査というようなことが目的になっているというにとどまるように私は見えるわけです。そこで、こういう基本的な基礎的な研究というものはどこでやられておるかというと、残念ながら日本ではそれがまだやられているところがないと言ってよろしいのではないか。これは浮田さんなんかにもやはり伺いたいところですが、実はいまの学問体系その他から見て、公害に対処する環境保全のための科学の総合的な研究というものが非常におくれている。これが個々の技術面における研究の中で公害を発生させたという場合に、今度それに取り組むやり方というものがいつも後手後手に回ってくる原因ではないだろうかと私は考えるわけです。したがって、国立公害研究所というものを設けるならば、その研究所というもののあり方については、もう少し私は本格的に取り組んでいただきたかったという印象をぬぐえないのであります。そうでないならば、やはり十分な研究というものがそこから出てくるのでなければ、環境庁が環境基準というものをつくるとか何とかいいましても、科学的な基礎を持たない基準というようなものが生まれてきて、要するに、妥協の結果としての一定の限界がそこにあらわれるということにしかすぎないようなことになりはしないか。その意味におきまして、この公害研究所というのは総理府令できまることに法律ではなっておりますが、総理府令の内容というものについて、私はもう少し皆さん方が御討議になって、そうして注文すべきものは注文しておくということが大事なのではないだろうかということを私は痛切に感じております。もちろん文部省のほうでは、公害問題については現在のところ、特定研究か何かでもって、これに対処するという方針をとっておられるようであります。しかしながら、これは環境保全という意味から言ったら、相当継続的な研究というのがやっぱり必要なんではないだろうかということです。そこで、この国立公害研究所というものをどういうようにしていくかということ、これについて、たとえば高エネルギーに関する物理学研究所というようなものが、いま文部省のほうでもって共同利用の国立研究所として立案されているわけですけれども、こういうようなところで一番問題になってくるのは、そういうところの人々がほんとうの意味で科学的な研究をなし得る体制というものを同時に研究所は持たないとだめなんじゃないか。研究所が一つの行政目的、あるいは担当大臣の意向に沿うような研究だけやっていたんでは、やはり科学として、ほんとうに環境の保全に奉仕し得るような、そういう科学というものはなかなか発展しづらいのではないか。そこをやはりこの国立公害研究所については私は特に審議していただきたい、こういうふうに考えております。
 あとは、ほかの方たちがお述べになりました点に私は決して反対をするものでもございませんし、同じような意見を持っておりますので、時間の関係上あまり私はしつこく立ち至って申し上げたくないというふうに思います。西原公述人が環境庁について若干不安を表明されました。これはその内容がこの形でスタートしたときに、はたして所期の目的を達し得るかという点にあったんだろうと思う。私はその意味におきまして、そういうふうにもし西原公述人が考えておるんだとすれば、何も今日やめろとか何とかいうことよりも、内容をどうするかという点に中心点があったんだろうと、こう考えまして、その意味においても賛成をいたしたい、こういうふうに考える次第でございます。
 以上をもちまして、私の公述を終わりたいと思います。
#10
○委員長(田口長治郎君) ありがとうございました。
 それでは、御質疑のある方は発言を願います。
#11
○足鹿覺君 すわったままで恐縮ですが、参考人の各位もおすわりになったままでよろしくお願いします。
 各参考人の本法案に対する評価なり問題点は、大体においてよく共通した点があると思うわけです。西原参考人が、もっと住民の立場に立って、相当の期間を置いて、住民の声を聞き、これを反映し、十分内容のあるものにすべきであるという御意見については私も全く同感でございます。残念ながら現在の国会の状態のもとで、この参考人の意見聴取すら非常な困難を克服して、お互いが本日御多忙の中を繰り合わせ御出席をいただくような手配が、やっと一昨日きまり、昨日手配をした。こういう事情にあることを私どもとしてはまず御了解を願い、にもかかわらず、非常に御検討いただいて有益な御意見を承ったことについて、委員の一人として敬意と感謝をささげる次第でありますが、この共通点の一番大きな問題は、たとえば産業公害なら産業公害というものに対する一定の基準ができ、その基準に違反をした場合におけるところの勧告権の発動、あるいはその効果といったことについては、各参考人が共通して、現在の規定では不十分ではないか、単に連絡調整の機能しか持っておらないような面もあるのではないか、こういった意味の御趣旨の御発言があったように思うのであります。
 そこで、一つこの点についてお伺いをいたしたいのでありますが、内閣法第六条は、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」ということになっておるのであります。環境庁設置法は、この第六条の第五項によると、内閣法第六条の規定にあった閣議にかけて決定する事項、こういうことに基づいて勧告がなされる。で、こういう与えられた条件の中で、これらの問題については根本的にさかのぼって、このようなあり方が妥当であるかどうかということが一つあると思うんです。で、環境庁はそういう条件の中で、これを是正することなく、国民の一応の期待を背負って発足せんとしておるわけでありまして、六条による内閣総理大臣が閣議にかけてこれを決定し指揮監督しろというようなことでは、閣議に異論ができたときには環境庁長官はなかなか困った立場に置かれてくる。そこで勧告権のあり方なんであります。どうしたらいいか。現在の科学技術庁設置法は同様のことをきめておるわけでありまして、これらの点について私どもの党の立場としましては、このような条項を削除するということを、いままで科学技術庁設置法の審議の際には修正案を出したのでありますが、否決をされて現在のままになってきておる、こういう経過があるわけであります。今度の環境庁の勧告権の運用を見ますと、各大臣が、案件のいかんにかかわらず、内閣総理大臣に提出をする閣議を求めることができるということになっておる。この現在の内閣法のあり方のたてまえからいうと、勧告の成果については、かりに長官がこれが不満で、もしくは所期の目的に沿わないという場合において、さらにまた総理大臣に提出する閣議にかけてこれを決定し、総理大臣の指揮監督を具申する、こういう非常にややこしい形式をとっていかざるを得ない。これでははたしてこの勧告というものの効力、また適切な時期、発動の形態というものに非常に大きな問題点があるのではないか。これは各参考人の御意見に大体共通しておるのではなかろうかと思う。こういう点について皆さんのどうすればいいか、そういう点についての御所見を各参考人から第一点として伺いたいと思います。
#12
○参考人(岩田友和君) すわったままで失礼します。
 勧告を行なう場合にそういう手続上のふくそうさが時期をおくらせるという例は当然あると思うのであります。で、同じ外局でありますが、公正取引委員会においては勧告における独自の権限を付与されている、いわゆるそれに近いものがこの公害から住民の健康を守るという役目を持つ環境庁には当然付与されるべきではないか。やはり私は先ほどほかの参考人も言われましたが、機能的に動く、そして適切な時期にその勧告が出されていくことが、それは企業にとっても必要なことであり、住民にとっても必要なことである。いわゆる政治的な取り扱いの中でうやむやにされることが、逆にあとに、ぼやで済んだものが大火になるというおそれは十分あるわけであります。いまや住民運動はそういうところにかなりな組織力を持ってきておりまするから、それを持たすことが逆に企業と住民の間に、または行政と住民の間に要らざるトラブルを起こしてくる危険を感じます。したがって、少なくとも人間の命を守る最大のテーマを与えられている環境庁において勧告を行なう場合には、公正取引委員会の権限に準ずる取り扱いを特に認めるべきであるというふうに私は考えます。
#13
○参考人(西原道雄君) 先ほどこの環境庁設置法案を一べつした範囲内では、現在できようとする環境庁の構想に対して私がそれほど大きな期待を持っていないと、こう率直に感想を申し上げたわけですけれども、もちろん私の予測を裏切って、これが公害対策のために非常に効果を発揮してくれるということがあれば喜ばしいと思います。
 さて、御質問の趣旨の中に、内閣法の六条の規定に基づく総理大臣の指揮監督権が、有効な公害対策を環境庁がとろうとする場合にじゃまになるのではないか、そういう懸念に対してどう思うかというようなことがあったと思います。私はこれまで総理大臣のこの規定による指揮監督がどのように行なわれていたか、各省庁が適切な行政をやろうとする場合に、これによって阻害されたものはどういう例があるのかということを詳しく存じませんので、一がいには答えを出せないと思います。つまりどういう指揮監督をするか、閣議でどういう意見が出るかということによって違ってくると思うわけであります。もともと環境庁の事務の中に関係行政機関の調整という要素が非常に多く盛り込まれているように思います。そうだとすると、実際問題としては環境庁の判断自体の中に各省庁の意向を調整したようなものが自然と入ってくるんじゃないか、だから実際問題としては大差ない。もしも閣議でそういう意見が出てくるとすれば、つまり環境庁が国民の側に立って適切な対策をとろうとする場合に、それのじゃまになるような意見が出てくるとすれば、どういう省庁から出てくるのかわかりませんけれども、そういうものが出てくるということ自体が根本的な問題ではないかというふうに考えます。ですから、ほんとうはそういうところを取り除いていくような努力というものが望ましいわけです。規定として確かにおっしゃったような危険性はあります。削除したほうがいいかどうかということは、つまりそういう危険性がどの程度現実に出てくるかということによってきまるのではないかと思いますので、そういうことも考えられる、そういう場合には削除したほうがいい。いま断定的なお答えとして、これはやめてしまえということはちょっと申し上げかねる次第であります。
#14
○参考人(浮田忠之進君) 私、法律あるいは行政の仕組みということに関しましてはしろうとでございますので、いまの御質問に対しまして申し上げられることは、先ほど言いましたように、環境庁における勧告の重みということが、その背後にある研究データの積み上げ、これが非常な、だれが見てもまさにそのとおりであるという結論を生み出せるような勧告ということであることが望ましいわけで、それが一たん出ましたならば、それがどういうふうな仕組みで実行に移されるかというそのプロセスは私にはよくわかりませんけれども、それを批判する力が政治に携わられる方にやはりあるはずであるということを私たちは期待するわけであります。それで、それが何と申しますか、いま西原参考人も申されましたように、不当な理由でそれが否定されるというようなことがあるとすれば、それは政治の不信ということにつながるであろうということと、それからいまの御質問に対して思い出すことで、私の経験から申し述べたいと思いますことは、たしか昭和四十一年に私たちが研究しましたことで、日本人の髪の中の水銀の量が外国よりも三倍多いということ、この研究はそれを意図してやった研究ではなくて、他の理由から始まった研究の副産物としてそういうことがわかったということを、衆議院の特別委員会の席でございましたか、御説明申し上げましたことが、その後わりあい時間を経ずに、水銀性農薬は昭和四十三年以降は使わないことにしようという行政措置が講ぜられたという経験がございます。それは非常に私たちにとってはありがたかったわけでございます。そういうふうな学問的な裏づけ、勧告にそれが非常にしっかりしているということと、それからもう一つは、政治に携わられる方のそういう事柄に対する御見識ということと、それからもう一つ大きな力になるのはこれは世論であろうと思います。その世論の力も非常に大きいわけで、その世論が非常に正しい世論であるということが必要であると思いますけれども、何よりも私が望ましく思いますことは、そういう事柄を運んでいくための方法論とか、プロセスということでなしに、事実に即した行政の結果というものが正しく出てくるというところに期待したい。私は法律論的にはしろうとでございますので、科学者としてそういうことを申し上げたいと思うわけであります。
#15
○参考人(野村平爾君) ただいまの問題につきましては、この第六条の三項、四項、五項という、ここにかかわってきているわけでありますが、環境保全のために特に重要だと考える事項について関係行政機関の長に対して勧告をするわけで、こういうのがどういう場合に起こるのだろうかということを実は私も考えているわけですが、たとえば自然公園法につきましてはこれは環境庁のほうに移ったわけです。しかし、環境保全について国有林の管理というものは農林省の林野庁のほうに残っている。こういったようなときに、おそらくこの環境保全のためにそこで使っている除草剤なり何なりというものについてはこうしてほしい、こういうような勧告がこれは実は出てくるのじゃないか。実はそういうふうに私想像したわけです。そうすると、とりあえず、ただいま、先ほど申されたように公取委員会みたいなものを別につくって、行政機関でない個々のものがやっていることについて判断を下すという場合には、これは特別委員会形式でいってよろしいだろうと思う。しかし、そうでなくて、行政機関が指導してやっていることに対しては、それは環境保全上適切でないというのなら、やっぱりその行政機関の長に対して言うよりほかしようがない、こういうような問題が出てくるわけです。そこで、それについての意見があったらやっぱり内閣で調整をするという形が起こるのではないだろうか、だから、法律の形式としては特に悪いとは私は考えません。要するに、それを実行していく主体がほんとうに環境保全ということに対してどんなような考え方を持っているかという姿勢の問題が重要ではないだろうかというような感じがいたしておるので、技術的にすぐにこれがいけないという形にはならないのではないかという、これはちょっと御質問の趣旨に反しているかもしれませんけれども、私はそんなような考え方なんです。つまり、内閣におきまして各省庁の大臣を任命する、任命されたもので内閣を構成している、これは統一的な動き方をしなければならないという形になるわけです。したがって、そのときに環境保全の所管事項について、環境庁の長官があそこのやり方は適切でないというような意見で勧告をした。しかし、それに対してどうも反対意見があってなかなか調整がつかないというときには、結局、内閣自体の中でこれは調整しなければならない、こういう形になってくるわけです。その調整をした結果が、もし浮田参考人のおっしゃったように、適切でなければそういう内閣は国会において批判されなければならない、私はそういう仕組みであろうかというふうに考えるわけなんです。要するに、こういうことに臨む内閣の姿勢そのもの、政府の姿勢そのものが重大なんです。そのときの考え方がどういう考え方に立って政治をやっているのかというところに問題点がありそうに思われるわけです。
#16
○足鹿覺君 他の委員からも御質問があろうと思いますし、参考人も時間の御都合があるそうでありますから、もう一点だけ。つまり西原参考人からも、相当期間、国民の声を聞いたらよかろう、時期尚早ではないか、こういう御意見も出ました。これに備えて、本法には審議会の設置が定められております。すなわち、中央公害対策審議会、自然公園審議会、中央鳥獣審議会の三審議会が置かれることとなっております。特に中央公害対策審議会は六十名という大きな機構になるようであります。目下のところ、岩田さんがおっしゃったように、住民運動がこれは大きな背景をなして、そうしてここまで大きな世論のバックアップを得て今日に至ったと思うのです。ところが、この中央公害対策審議会の従来の委員は二十名、今度これを六十名にしよう、自然公園と中央鳥獣審議会を付属する、こういうことなんです。問題は、国民の声を聞き、地域住民の声がどのように反映するかは、許された現在の規定の範囲内においては、この公害対策審議会、自然公園審議会、中央鳥獣審議会の三つの審議会の構成メンバー、またその性格、その機構、運用、これに依存をしていかざるを得ない。これについての各参考人の、住民参加がたてまえであり、国民の声を聞くのには、この構成は行政官庁の代表をもって従来のようなものがつくられたのでは意味をなさない、かような考え方に立って私はお尋ねをいたすわけでありますが、これに対する御所見ですね。いかにあるべきか、中央公害対策審議会その他の構成、運用、その権限、機能、こういったようなものについての御所見があれば、この際具体的な事例等を引用なさって御意見をお聞かせ願いたい。私が内閣法の問題を例にいたしましたのは、野村参考人にも他の参考人にも御了解願いたいのは、たとえば、いまそういうような問題が起きた。したがって、石原産業のような、ああいうような問題、産業公害が国会で大きな問題になって、そうしてようやくこれが世論の反撃と批判によって刑事問題としても世論がわいたことは御承知のとおりであります。不十分ではあるが、国会は大きな役割りを果たしておると思います。しかし、環境庁そのものの中に設けられる付属機関の運用と構成によっては、住民の声の反映のしかたが違う、これについての御所見を承っておきたい。
 以上でございます。
#17
○参考人(野村平爾君) 私は従来の審議会という形式はあまり信用しておらない。あれは政府の一方的任命にかかわりますから、大体政府の事務官僚のほうで選ばれるわけです。ですから、そこの声を大体反映するような人を選んでいるという、妙な言い方でありますが、大体そういう傾向を持っております。で、もちろん時としては、かなり有益な議論を述べられる研究者もその中に含まれる場合がありますけれども、全体として見ると非常に弱いという、全体の力としては弱くなってくる、こういうような印象をぬぐい得ないのであります。したがって、公害問題などについての審議会というものは、そういうことに関する専門家並びに被害者の代表のような人、これをぜひ含めなければならぬ。そういう声を実際に科学的にも審議会の中で検討して、調査すべきものは調査をすることによって結論を出していくという、そういう形が私は必要ではないだろうか。それでないと、緊急の場合についてはすぐに手を打つということもできましょうけれども、長い将来の問題にかかわるようなものについて審議会が答申をするというような場合については、いま言ったくらいの幅と度量とをやはり持たせなければ、審議会の持つ役割りというものは果たせないのではないかというふうに考えております。
#18
○参考人(岩田友和君) ほぼ野村先生と同じ意見を私どもも持っておりまして、いまは住民サイドにおいては具体的な問題をストレートに代議士先生を通じて国会の場で展開をする、石原産業もそうであります。いわゆるそういう方式をとっているわけでありまして、中には経済面においては各消費者団体が出ておりますが、これも最近は出しているところでも疑問を持ち始めているくらい。というのは、答申が一度も尊重されたことがない。一生懸命住民意見として、消費者意見として意見を述べて、そうして意見のまとまりをかなりの時間をかけてしたのにもかかわらず、たとえば経済企画庁に対する答申においても、それが内閣サイドにおいて、または行政サイドにおいて実行に移された例というのはまずないと言っていい状態であります。したがって、これは一種のセレモニーだ。消費者も入って意見をまとめているのだという隠れみのに使われることになると迷惑である。そういう住民も入れて審議した結果、意見は聞いているのだということだけで、隠れみのにされるのだったら、もう少しすっきりせぬければいけぬかという論議さえあるくらいであります。しかし、事、公害に関する問題でありますから、当然、野村先生が言われましたように、それでわずらっている者、そういう人たちの立場は十分反映されるべきが至当だと思います。他の先生方、その審議会のメンバーについても理解をしてもらうこともこれもまた大切な要件だと思いますから、したがって、審議会が運営されるのであれば、野村先生が言われたのと同じように、その構成は十分考えられてしかるべきだというふうに私も考えます。
#19
○参考人(浮田忠之進君) 中央公害対策審議会というその審議会のあり方及びそこで行なわれることがどういうことであるかということにかかっていると思うのでありますが、野村、岩田両参考人がいまおっしゃいましたように、従来の私の非常に乏しい知識からいたしましても、審議会というもののあり方は非常に形式的であるということであると思います。で、公害というような非常に大きな広い範囲を含んだ事柄に対して、ただ人数をふやしたと、つまり審議会の人数がふえたから、そこで十分――そのふやし方にもよるけれども――できるであろうというだけの御説明では、どうお答えしていいかよくわからない。それは、その内容がどういう機能をどういうふうにするか、そしてどういう議題を審議するかというそれぞれのことによっても非常に質的にその審議会のあり方が違ってくるであろうと思うのであります。ですから、一がいに先ほど申されましたように二十人が六十人になるからいいであろうということでは全くお答えのしようがないということであります。
#20
○参考人(西原道雄君) 環境の悪化あるいは公害の激化に対して住民運動というものが非常に強い抵抗を示し、それが対策を推進する重要な原動力となってきたということは今日各方面から指摘されているところであります。それを何とか建設的に今後の制度をつくる際に、あるいは制度を運用していく際に取り込む、つまり住民の意識を、意見を取り入れるような制度をつくるということになりますと、これが非常にむずかしいわけであります。国民の代表ということですと、国会、その他議会というものがそれ自体国民を代表しているわけであります。それにもかかわらず、公害問題に関して住民の意見を尊重せよということが言われているのは、何かそういう従来のルートだけで足りない面、あるいは不完全なルートが特に公害問題というような局面で強くあらわれてきているんじゃないかと思うわけであります。で、問題ごとに住民一般ではなくて、被害を受けている住民ということですと、その地域、被害を受けている場所が明らかな場合には、その地域ごとに被害者の代表を入れる、その意見を取り込むような機関をつくるということは、地方自治体レベルではかなり有効なのではないかと思います。しかし、全国的な機関として、しかも一時的なものではなくて、問題別ではなくて、恒久的な制度としてつくるということになると非常にむずかしい。したがいまして、私どもも何とかいい制度はないかといろいろ考えているんですけれども、どうにも的確なお答えができない。今後とも何か考えていきたいとは思っております。ただ、やはり現在存在するいろいろな機関ですね。たとえば中央公害対策審議会とか、そういった各機関の構成メンバーなり、そのメンバーの活動なりに対して、これは制度的というんじゃなくて、外からいろいろ批判を加えていくということによって少なくとも好ましい方向に運用していくということしかないんではないかと現段階では考えております。
 ただ一つだけつけ加えておきますと、住民の声といいましてもいろいろある。住民代表といっても選び方自体に問題が出てくる。正しい住民の声というものは何かということが問題になるわけですけれども、正しい声が出るためには住民がいろいろな問題について十分な知識を持っていかなければならない。だから、制度的に考えられることは、少なくとも十分な知識、つまり自分たちの意見をどういう形ででも、公式でも非公式でも、どういう形ででも表明できるようなチャンス、そういう基礎を与えるということであります。それは要するに公害問題に関する各種の資料の公開ということではないか、こまかい技術的な話になりますけれども、たとえば環境庁というようなものをつくるというような話が出たとき、なぜこういうものをつくるのか、従来の行政機関の区分けのしかた、連絡のしかた、権限の配分のしかた等々でどういうまずい点があるのか、それをこういうふうに改善すれば、修正すればどういう効果があがると期待しているのかというような立法理由といいますか、そういう点についても、現在出されているよりももっと詳細なものを出す、そうすると、批判してくれと言わなくても国民のほうで自由に批判できることになる。だから、いま申し上げられることは材料をともかく提供してくださいということであります。
#21
○足鹿覺君 ありがとうございました。
#22
○峯山昭範君 非常に時間がございませんので端的に申し上げたいと思うのでありますが、今回の環境庁設置につきましては、もうすでに同僚委員から種々質問がございました。それで、それぞれ参考人の皆さんの問題点等も大体浮き彫りにされてまいりました。私たちはいま皆さんから出ました一つ一つの問題につきましては、これから審議の段階を通じて明らかにしていきたいと思っております。確かに皆さんおっしゃるように、いま西原参考人がおっしゃいましたように、この設置法の法案そのものを見ただけではもう何にもわからない、現実そのとおりであります。確かにこの中を見ましても、局の下はもう課も、人数も何もわからない。研究所そのものについても、名前だけ書いてあるけれども、いつできるのか、何のことやらさっぱりわからない。こんなものを見て審議せよということ自体、私たち自身も非常に憤慨をしているわけです。たとえば、昨年公害立法を、十四法を立法されましたけれども、ほとんどの問題が政令とか省令にまかされておりまして、そういうものもいま準備はしているらしいけれどもなかなかできない。ほんとうに、ことしの六月中にはできるということでありますけれども、本来ならば、この環境庁設置法と同時にそういうようなものも出てきて、そしてほんとうは詳細にそういうようなものも検討していかなければいけないと私たちは思っております。いま種々問題が出てまいりましたが、時間ございませんので、その中で二、三、焦点をしぼって質問をしたいと思います。
 一つは、先ほどから内閣法の六条の勧告の問題についていろいろ質問がありました。確かに環境庁長官ができまして、内閣法に基づいて総理大臣に勧告する場合に、これは先ほどから浮田先生もおっしゃいましたように、勧告の重みというのが私はどうしても大事だと思うんです。勧告の重みをちゃんとするためには、どうしてもこれは研究データの積み上げというのは必要だろうと思います。しかしながら、現実に私たちは公害の問題をいままでこの内閣委員会におきましてもずいぶん取り上げてまいりました、所管の委員会でありませんけれども。それぞれ、省庁の設置法の審議等におきましても公害の問題と積極的に取り組みましたし、また公害の委員会におきましても取り組んでまいったわけでありますが、そこでどうしてもいつも問題になるのは、たとえばPCBの問題一つにしましても、重金属の問題一つにしましても、すべて研究設備が完備をしておらないわけです。たとえば水産庁が先般から問題になっております東京湾におけるPCBの汚蝕、魚のなまの肉の中からいわゆる一二〇PPMなんというPCBが発見された。こういうふうな話が出てまいりましても、それじゃ水産庁はどうだ、どこで分析し、どこで調査するんだと言いますと、調査するところはないんです。あっちこっち依頼していると言うけれども、忙し過ぎてなかなか分析結果が出てこない。それ自体どうしても一つの手が打てないわけです。そういうような点から言いまして、私たちは、確かに環境庁ができてもいま御心配の点は私たちも全く同意見でありまして、心配していることばかりであります。かえって、このことがあるために、いわゆる公害問題をちゃんと前進させるために阻害になりはしないかということも心配していることの中の一つであります。そういうような意味におきまして、私が質問したいことは、第一点は、要するにこの公害問題を推進していくに当たって、先ほど野村参考人からもお話ありましたが、いわゆる公害あるいは環境保全、まあ人間の生命を守るというふうな問題が趣旨であると私は思いますが、そういうふうな面のいわゆる技術的な研究並びに基礎的な研究、こういうようなものはこれは確かに必要だと思います。これを今後どういうぐあいに進めていけばいいか、これは私は非常に重要な問題であると思っておりますんですが、それぞれ概略、先ほどの御意見はお伺いしましたが、皆さんにお一人ずつ御意見をお伺いしておりますと非常に時間が長くなりますので、まあ衛生化学の立場から東大の浮田先生に、公害に関するいわゆる研究設備の問題並びにこういう基礎的な研究の今後のあり方、そのほか先生先ほどお話がございましたが、水銀とか、毛髪等の研究等も相当進んでいらっしゃるそうでありますが、そういうものも含めまして、確かに私たちの目の前に見えておるところの公害というのは、これは非常にわかりやすいのでありますが、食品公害等、目に見えない公害というのが相当私たちの身辺に迫っておると思うんです。そういうようなものの公害、公害といっていいかどうかわかりませんが、そういうようなものについてもそういう立場での研究が必要じゃないか。また、そういうようなものをどういうぐあいに環境庁の中に取り入れていくかということも私は大事だろうと思います。そのほか環境庁の中に入っていない問題の中で、農薬とか、あるいは薬の問題等もあります。こういうような問題等も環境庁の権限から一部はずされている問題もあります。こういうような問題については、私はこれから環境庁の問題について、実は内閣委員会として正式に審議はこれはまだ一回もやっていないわけです。これから私たちは、会期末でございますが、とにかくできるだけ何とかして十分な審議をやりたいと思っておりますんですが、そういうような問題を明らかにしていく上におきましても、そういうような御意見をお伺いしておいたほうがどうしても必要であると思っておりましたんですが、そういうような点を含めまして御意見をお伺いしたいと思うのであります。
 それから、さらに予算の問題等もあるわけでありますが、もう確かに先ほど参考人の方がおっしゃいましたが、国の予算の面におきましても四十六年度、確かに十四法通って、ことしは公害の問題相当力を入れるであろうと思っておりましても、実際、予算そのものは九百三十一億、下水道の問題を引きますと三百億足りない。東京都の千二百億、少ない少ないと言われております大阪府におきましても二百四十六億という予算を用いておるわけです。そういう点におきましても国の予算というものはまるきりなってない。そういう点から言いまして、私は、たとえばニクソン大統領が宇宙開発の次はガンをやる。陣頭指揮でやるというような、そういうような姿勢は全くないわけです。ガンのためには四億ドル投入して大統領自身が先陣を切ってやるという、日本の国内においてはそういうようなあれがない。そういうようなこともありますのですが、こういう問題についてはこれから審議の段階において明らかにしていきたいと思うのでありますが、こういうような研究を進めていく上において、いわゆる予算といいますか、こういうような態勢はどうなっているのか、お金というとおかしいですけれども、たとえば分析装置というものは一体どの程度かかるものなのか。またどういうふうな機械装置といいますか、研究のいろんな分析の機械等の設備をするにあたって、一カ所でどのくらい費用がかかるものなのか、概略でけっこうでございますから、お聞かせいただければ幸いと思います。以上です。
#23
○参考人(浮田忠之進君) ただいまの御指名によるところ、少し私のお答えを申し述べますと、ただいまおっしゃいましたように、いまの公害という一つのことばで言いあらわされる中には非常にたくさんの事柄が含まれておりまして、これの対策ということは非常にむずかしい、たとえばいまPCBのことを申されましたが、PCBというものが公害源物質として非常に重要なもので、危険なものであるということがわかってきた。これすら非常に最近であるということを見ましても、おそらく研究ということを考えますと、公害に関する研究というものは、基礎的研究はその公害としてあらわれている、そうして取り上げられているその事件に追いまくられているという状態で私はあろうと思います。それで、まあ何と申しますか、機構的に非常に整備された状態で公害に対処する研究が行なわれているかというと、これは決してそうでないということになると思います。それで、それでは一体何が一番必要であろうかということになるわけですが、科学的にはこれがほんとうの公害源物質であるか、あるものがそういう判断をしますためには、その分析のデータというものが何よりも必要であろう、これはおそらく山登りをする人が詳しい地図を持つ、そうしてないと山登りができないということと同じことでありまして、正確な地図を持つことが重要であると同様に、正確な分析データが必要である、では、それをつくるのにはどうすればいいかということでございますが、これは分析方法が確立しておりましたならば、それはすぐいまにもできますけれども、大体いまの現状を見ておりますと、新しい公害源物質が出てきましたときに、それに対応する分析方法は必ずしも確立されていない。そこで、その基礎的な研究から始めねばならないということが非常に多いわけであります。この場合に最も重要なことはダブルチェック――先ほどどなたかおっしゃいましたが、ダブルチェックあるいはトリプルチェック――ダブルと申しますと二カ所で、トリプルと申しますと三カ所あたりで同じものを同じ方法で分析する、あるいは違う方法で分析したときにその結果が全く同じであるというような基礎が必要であります。それでありますから、もしあるAという物質に対するそういうことができる体制をひとつつくらねばならない。そうして、出てきましたデータが出てまいりますと、一体そのデータ結果は、数字はどういうことを意味しているかということでありまして、それは公害でありますから、人体に対してどのくらいの、Aという物質がどういう危険性があるかということであります。それから医学的、薬学的な事柄に入っていきます。初めは分析的な事柄で、その次は医学、薬学的な事柄になります。それで、それの判断をするためには、薬理学のような学問、あるいは衛生化学のような学問が必要でありまして、それなりのやはり高い見識を持った学者をそろえて、そうして、そこの判断を仰ぐ、そうして、これは日本だけでなしに、国際的にもこれが正しい見解である。科学的な結論であるというものをまず出さなくちゃいけないだろうと思います。
 それで、それが一番基本になって、それから、今度は社会的ないろいろの事象に対処するための材料は、それくらいの正確度を持った科学的なデータというものをもとにしないといけないと思うのでありまして、それで、もし国がそういうものを完備しようという意図を持たれますならば、それは非常に大きな投資をなされなければならない。おそらくいまの議員の先生の御質問は、それでは、それには幾らぐらいの金を用意したらいいのかという御質問が含まれておりますけれども、私はいまのところ、それは非常に残念でございますけれども、どのくらいの規模でそれに取りかかられるつもりであるかということから始まっていくことで、予算の概略というものは、残念ながら申し上げる用意はございません。しかし、予算の概略というものよりも、もっと大切なことは、一体何をやるか、何をどのくらいの程度にやるかということのまず計画を立てろということのほうが大切であろうと、こういうふうに思うのであります。それで、御質問に対してまともなお答えになっているかどうかわかりませんけれども、非常におくれている。すべての科学が公害に対する基礎科学、応用科学ともに非常におくれている。それから、未知の公害源物質が続々と、何と申しますか、化学工業の発達のスピードの早さということとともに、未知の公害物質が続々と出る傾向があるというのが現状であると、そういう私は感じを持っております。それで、それでは基礎研究、先ほど野村参考人が申されましたが、基礎研究が大切だと申されましたのは、まさに私が申し上げているようにその基礎研究が行なわれていない、公害源物質というものが非常にたくさんあるという、非常に残念な状態でございます。ですから、こういう処置をとればすぐに公害の対策、環境を守る対策が効果があがるというふうに考えます前に、非常に綿密なそういう計画をもっと立ててみるという一つのステップがあるということが非常に重要であると思います。抽象的なお答えでございますが、学問は現実よりもはるかにおくれているというのが実情であるということを申し上げたいと思います。
#24
○岩間正男君 きょうはお忙しいところどうもありがとうございました。お聞きしたいことはたくさんあるわけでございますが、先生方お急ぎでございますから、簡単にお聞きを申し上げたいと思います。
 今度のこの公害対策をほんとうに血の通ったものにするかどうか、それには組織運営を民主化する、それから十分に予算をつける、この二点が非常に重大な問題だと思うわけでございます。今度の環境庁のこの設置の問題は、むろん昨年の公害国会にこたえるというような意味を含ませておるとは思うんですが、同時に、大臣をつくる、一つの機構をつくる、こういうような目先のこれは目的もあったんじゃないかというような疑いもあるわけですね。こういう中で先ほど西原参考人から申されましたが、この組織運営をどうするか、この機構の問題、非常に重大だと思うのであります。先ほどのお話によりますと、どうも機構上にいろいろな欠陥を持っている。権限、責任、それから各行政庁間のこれらの分担が必ずしも適当でない、こういうことを指摘されたわけでありますが、このような問題について具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。非常に心配されているのは、たとえば昨年つくられました沖繩・北方対策庁というのがございます。これを、私は沖繩に行きまして、ここで実際実態を調べようと思っていろいろな資料を要求したんです。ところが実際は連絡調整機関、それも全くもう屋上屋を重ねるようなものなんですね。たとえば、一体いままでどんな被害を受けたことがあるかどうか、この調査があるかどうか、あるいは土地の接収状況はどうなっているか、そういう資料ももらいたい。ところが、その資料というのは自分で調べるんじゃないんですね。全部これは各官庁のいままで調べたものを連絡調整でもらってくる、そういうことですから、実際は責任もない、こういう官庁になる危険が非常にあるんじゃないか。第二の、だから沖繩・北方対策庁のようなこういうものをつくったんじゃ、全然いまのこの急迫している問題にこたえることができないんだ、こういうふうに感ずるわけでございますね。この点について御意見を聞かしていただきたいと思います。
 次に、先ほど野村参考人から予算の問題について出されました。これは全く公害対策の血液ともいうべきものだと思うんです。全く絶対量が不足していることは、もうほんとうに、今度のこれは地方選の中なんかでも明らかにされた問題だと思うんです。東京都よりも三百億も少ない、そういう予算を組んで、その中身というものは先ほども話されましたように、まあ水道が三分の二もとっているということですから、全くこれは申しわけ予算と言われてもしかたがない。先ほども国立公害研究所の問題について基礎的研究をここでほんとうに確立する必要がある、単なる技術的研究だけじゃこれは話にならぬ、こういう御指摘がありました。これは最近の大学や学術研究の中に根本的に横たわっておる問題だと思うんですが、そういうものがまた持ち越されて、これはつくられるかどうか。これは全く予算が取れるかどうかという問題とイコールであると思うんです。そういう点から、これに対して、これは非常に大きなこの法案の背景になる問題でありますが、これはいろいろ申し上げている時間の余裕がございませんので、次の一点について野村参考人にお聞きを申し上げたいと思います。
 それは環境庁は直接の地方行政機構を持たない。それで直接の公害行政は都道府県を中心とする地方公共団体が担当することになるわけです。これは地方自治法の精神と公害の特質からしてこれはよいことであると思います。問題は財政を中心とするその財政がきわめて不十分ながら、政府段階では環境庁が公害行政を担当する、財政は各省にまかされておる。特に地方財政については自治省が首根っこを押えている現状ですね。公害の防止に関する地方自治体の事業に対する国の特別援助も自治省が主管である、こういうことになっているわけです。したがいまして、ほんとうにこの行政体制の機能を発揮することができるかどうかということは、現在これは公害行政だけの問題ではありませんけれども、自治省の権限という、存在というものをここで再検討する必要があるんじゃないか、そうしてほんとうに公害行政をまかなうに足るそういうような財政援助というものを、地方公共団体のさらに自主性をほんとうに育てるというような方向に持っていく必要があるんじゃないか、この問題が現実に横たわっている問題だというふうに思いますので、時間の関係から以上申し上げました二点についてお伺い申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
#25
○参考人(野村平爾君) 野村です。
 第一点は、具体的に権限分配等についてどういう問題があるかという御質問だったと思います。実はそれほど詳しく調べておりませんが、先ほど一つ例を私はあげましたが、たとえば国有林の開発というようなことは、これは林野庁でやるわけです。ところが、そういうところでやることが自然の景観あるいは環境の保全というものに影響を及ぼしてくるというのは、今度、環境庁のおそらく仕事になるのじゃないか。そういうようなまだ各省庁に分かれている権限の分配というのが、通産関係でも建設関係でも非常に多いのではないか、こういうふうに考えております。そこらをどういうふうにしていくのかというのは非常にこれは問題であるし、それから経済の発展との調和というものに対して環境保全を優先させていった、この優先させていった基本の考え方というものを実際に生かすならば、そこのところの調整はまさに単なる調和ではなくて、やはり環境保全ないしは生命並びに健康の保護の優先というところに置かなくてはならないはずだ。それを一体、今度行政機構の中でどんなふうにこの調整をするかという、これが宿題であろうかと思うのです。これはこの規定を見ただけではどうも明瞭でないということを私は先ほど申し上げたわけです。あまりその詳しい実例を検討しておりませんので、申しわけない、お答えにならないかと思います。
 それから第二点として、公害防止あるいはその財源問題ということについて考えたときに、非常に全体として公害にさかれる予算が少ないというのは、御指摘のとおり私も申しましたのですが、一体これをどうしたらいいのかということになりましたときに、税制そのものに対するやはりひとつメスを入れていく必要があるのではないかというようなことが考えられるのと、もう一つは、全体の財政計画をどういうふうに組んでいくかという、そういう問題にこれはかかわってくるだろうというふうに思うのです。全体としての予算の組み方ということにつきましては皆さん方で御検討になっておられるわけですが、ただ、私非常に思いつき的なことを申し上げるようですけれども、企業それ自体が自分で公害を出さないように、やはりこの際防止措置を講ずるということは、これは当然の義務だと思うのですが、その場合に一番問題になりますのは、いまの日本の企業の形態でありますが、非常に独占的な大きな企業になりますと、たいてい幾つかの下請、系列化された中小企業を持っております。公害を出していくところほどちらかというとその中小企業の面に多いのだ。そういうときに一体それを補てんするのは国民全般から集めた財政的なものでもってバックアップするのか、それとも特別な財源というものを企業の中に求めるようにするのかという、そこのところをもう少し考えていただきたいというような気がするわけです。なぜかというと、非常に大きな企業でありますと、社交費とか、あるいはその中に含まれるのでしょうが、政治献金とか、そういうものがかなり膨大なものが出ておるわけです。それからまた、東邦亜鉛の場合なんか無配当についに落ちたというようなことが言われておりますけれども、公害発生をしていると思われる企業でなおかつ十分な配当もできているというところもあるわけなんです。したがって、そういうところからひとつ財源を持って、中小企業をただ下請価格において圧迫することでなくて、やはりみずからの責任において系列会社の企業の公害の防止にも努力するといったようなことをやらないといけないんじゃないか。それをやるためのやっぱり法的措置というものを、どういうふうに講ずるかというのが新しい課題でありそうに思います。
 それからもう一つは、とりあえずは中小企業に対する援助ということは、これは欠かせないだろうと思う。公害防止のために、そういうことをやらなくちゃならないだろうと思いますけれども、たとえば、都市、それから産業中心地というようなところでは地価が非常に高騰してきております。こういう土地の譲渡税のようなものはむしろ財源として公害防止のために投入する。つまり産業立地をしましたり、それから何ですね、そこへ人口が集まったりしますと、当然に土地価格というやつは暴騰してくる。そういうようなところから土地の譲渡税みたいなものをどういうふうに処理していくかというのは、税制の問題としてはやはりこれは考えていただいたらどうだろうか。そんなことでないと、なかなかこの公害に対する財源というもののめどというものが、各省庁の予算のぶんどり合いというような中では、なかなか生まれないのではないかというような私のこれはごく思いつきでございますが、そういった感じを持っております。
#26
○参考人(西原道雄君) 重複しますので最初の御質問だけお答えしたいと思います。
 つまり機構面でどういう欠陥があるか具体的に話せ、こういう趣旨だったと思います。ところが、それに対して私必ずしも的確にお答えできません。これが私の不勉強のせいであるとすれば反省しなければならないわけですけれども、おそらく国民の大多数がよく知らない。それが先ほど申しましたように、公害問題に関していろいろな資料を公開してほしいといった趣旨であります。つまり機構がどうなっているのか、どこに欠陥があるのかつかむのがむずかしいという状態であります。たとえば、一つの川をとりまして、隅田川なら隅田川、淀川なら淀川、この川の水をきれいにしようとすればどうするか、こういう簡単な問題一つ考えましても、その川を汚染しているものがたくさんあるわけです。そういうものに対して、一つの役所が統一的な責任でもって規制していけるかというと、そうではない。川の場合ですと、厚生省とか、農林省とか、建設省とか、水産庁とか、いろいろ関係してくると思いますけれども、規制する場合にも、基準がばらばらであるというような状態だと思います。これが今後よくなっていくか、たとえば、環境庁というようなものができたことによって改善されていくか、もしそれが非常に改善されていくとすれば、これはうれしいことなんですけれども、どうもすぐにそういう期待を持つのは無理じゃないかと思われる面があるわけです。ばらばらより統一したのがよいのはもちろんです。ただ、統一させ方が問題でして、現在いままでのところ、いろいろな監督官庁があって、いろいろ違った基準で規制している。たとえば、お互いに話し合って調整して、まん中辺の基準でもって規制するということになったのでは住民としては満足いかない。統一的にはなりましたけれども、満足がいかないということになります。ですから、単に統一的に行なうというだけではなくて、どういう方向で、どういう基準で公害対策を進めていくかということまで考えなければならないと考えております。そういうわけで、あまり具体的な例をあげられませんけれども、御了承願います。
#27
○委員長(田口長治郎君) 四参考人には長時間にわたりありがとうございました。
 暫時休憩いたします。
   午後零時四十五分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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