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1970/03/16 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 産業公害対策特別委員会 第6号
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1970/03/16 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 産業公害対策特別委員会 第6号

#1
第065回国会 産業公害対策特別委員会 第6号
昭和四十六年三月十六日(火曜日)
    午前十時四分開議
 出席委員
   委員長 小林 信一君
   理事 始関 伊平君 理事 古川 丈吉君
   理事 山本 幸雄君 理事 渡辺 栄一君
   理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君
   理事 寒川 喜一君
      伊藤宗一郎君    木部 佳昭君
      浜田 幸一君    林  義郎君
      藤波 孝生君    松本 十郎君
      阿部未喜男君    山口 鶴男君
      古寺  宏君    田畑 金光君
      米原  昶君
 出席政府委員
        内閣官房内閣審
        議官      城戸 謙次君
        厚生省環境衛生
        局公害部長   曾根田郁夫君
        通商産業省公害
        保安局公害部長 森口 八郎君
 委員外の出席者
        厚生省環境衛生
        局公害部公害課
        長       山本 宣正君
        参  考  人
         金沢大学教授
         財団法人日本
         公衆衛生協会
         イタイイタイ
         病およびカド
         ミウム中毒症
         鑑別診断研究
         班班長    高瀬 武平君
        参  考  人
        (岡山大学教
        授)      小林  純君
    ―――――――――――――
委員の異動
 三月十六日
 辞任         補欠選任
  土井たか子君     山口 鶴男君
  西田 八郎君     田畑 金光君
同日
 辞任         補欠選任
  山口 鶴男君     土井たか子君
  田畑 金光君     西田 八郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 産業公害対策に関する件(群馬県安中市におけ
 るカドミウム公害問題)
 産業公害対策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 産業公害対策に関する件について調査を進めます。
 ただいま御出席の参考人は金沢大学教授、財団法人日本公衆衛生協会イタイイタイ病およびカドミウム中毒症鑑別診断研究班班長高瀬武平君でございます。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。
 本委員会におきましては産業公害対策樹立のため調査を進めておりますが、群馬県安中市におけるカドミウム公害問題について忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。
 なお、参考人の御意見の開陳は、おおむね二十分以内といたしまして、あとは委員の質疑の際にお答えくださるようお願い申し上げます。
 それでは、高瀬参考人にお願いいたします。
#3
○高瀬参考人 それでは申し上げます。
 昭和三十年ごろ、富山県に初めてイタイイタイというのが注目されまして、それで地元の萩野先生がその問題に取り組んでおられました。私どもは、金沢の大学におりましたですが、それは初めは知りませんでした。それで個人的に、また昭和三十六年には学会で萩野先生が問題を出されまして、実は三十八年と思いましたですが、文部省に機関研究というものができました。私その文部省のほうの委員長をしております。これが三年間続きましたですが、その後は研究費が打ち切られましたので、三年で終わっております。同時に厚生省にもそういう班ができまして、そちらの班はやはり金沢大学の平松教授が班長になりまして、私とその厚生省のほうの班と、両方がほとんど毎回合同の委員会を開きまして、その研究をしておりました。大体これも三年間だと記憶しておりますが、そのときはもちろんこの金沢大学の班員は――それから地元の萩野先生は当然でありますが、富山の県立病院あるいは高岡の農協病院、そのほか岐阜大学の先生、いろいろな人が入っておられます。東京の河野先生という人も班の中に入っておられます。そういう少なくとも何らか手がけておられた先生を全部班に入っていただきまして、そうしてそのころ大体三年われわれはそれを相手に研究いたしました。私はそのとき萩野先生にお願いしまして、確実なイタイイタイ病という患者を四人私のところに入院させていただきました。それはその当時はだいぶ症状もよくなっておりましたですが、間違いのないイタイイタイ病というふうに萩野先生がおっしゃられたのを入院さしていただきまして、それでその患者を診療したことがございます。もちろんそのときは、病理の先生も、それから内科の先生も、衛生、公衆衛生、婦人科、そのほか理学の分析の先生も入っていただきました。そういうふうな研究をしておりまして、この四人の患者はだいぶよくなりました、軽快をしておった時期でございましたが、公衆衛生、衛生の方には、その発生地区の疫学調査、それから栄養とか、いろいろな広範な調査をしていただきました。そのときに、まあ大ざっぱでございますが、イタイイタイ病というのは、大体カドミウムが一つの原因ではなかろうか。それが別の何らかの因子とまざって、そうしてああいう症状を起こすのではなかろうか。そのときの検査では、じん臓の精検もいたしまして、じん臓の尿細管の再吸収障害であろうという、大体のところまではわかったように思っております。
 で、カドミウムと何らかプラスアルファのものが作用しまして、じん臓の細尿管の再吸収障害を起こす、それが、原因はわかりませんが、低燐血症の方向に働きますと、そこで初めて骨の変化を起こす。骨の変化は、病理学的には骨軟化症という変化でございますが、そういう変化が起こって、初めてあの富山県の地区に見られるイタイイタイという病像が完成するのではなかろうか。大体そういうふうなことがわかったつもりでおります。先ほど言いましたように、そのときにも、私どもは研究費が打ち切られましたから、文部省というのは研究費を三年間しか出しませんので、三年間たちますと打ち切らざるを得ないような状況になるのでございますが、それで私どもは、その辺のところで、実は私はそれからカドミウムという問題、あるいはイタイイタイという問題、そういうものから自然に遠ざかっておりました。しかし、実験的には、たしか金沢大学の衛生の教室あたりではやはり手がけておられたと思います。
 そうこうしているうちに、カドミウムあるいは慢性カドミウム中毒あるいはイタイイタイというのが社会的にたいへん問題になりまして、実は昭和四十四年だと思いましたが、財団法人の日本公衆衛生協会ですか、その中に公害調査研究委託費というものがあるのでございますが、その委託研究班として、カドミウムの問題についてのイタイイタイ病及びカドミウム中毒症鑑別診断班というものが一つできまして、その最初から私は班長としていままで現在に至っておるわけでございます。
 それで、実は私の専攻は臨床でございまして、そうして整形外科でございます。じん臓その他のことになりますと、私ども知識が少ないので、多くは基礎学者あるいは内科の医者、そういう人、それから疫学のほうの関係の人、そういうふうな人に入ってもらって、たしか現在は十三名かと思いますが、研究班会議を開くたびにその人数が変わります。機関としてはたしか十三名と思いましたが、問題があるたびに、たとえば安中の問題でございますと、安中の付近のそれに関係しておる先生あるいは群馬大学の先生、そういう方々に入ってもらって班会議を開いております。私が班長ということですから、その意見をまとめるという役目をしているわけでございます。大体以上でございます。
    ―――――――――――――
#4
○小林委員長 以上で、高瀬参考人の意見の陳述は終わりました。
 これより高瀬参考人に対する質疑に入ります。
 理事会の申し合わせにより、参考人に対する質疑は、お約束の持ち時間を厳守していただくようお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
#5
○林(義)委員 きょうは、高瀬参考人においでいただきましていろいろお話をするわけでございますが、質問を始めるにあたりまして、私は、なくなられて遺体を発掘されたところの、中村さんの霊に対しまして、まず御冥福をお祈りしたいと思います。
 この政治の場において、私人のそういった遺体の問題を取り上げるということは、われわれ日本人の常識からすると、何か、きわめて残酷のような気がいたしますが、やはり真相を究明するというのが最適の問題である、これはどうしても政治の場においても取り上げていかなければならない問題ではないかと私は思うのでございます。本来なら、私は、学問の場においてこれが取り上げらるべきが筋であろうと思いますけれども、これほどの大社会問題になっておりますカドミウム公害の問題でございますし、世の多くの疑惑を一つでも晴らすということは、私は政治の役目であろう、こういうふうに考えております。
 きょうは時間も非常に短いようでございますので、高瀬さんには政治的ないろいろな問題とか、そういった問題は抜きにいたしまして、まず事実の問題を少しお話をしていただきたい。学説におきましてもいろいろと学説があるようでございますが、その辺につきましてもできましたならば御教示をいただきたいと思います。
 私といたしましては、この問題の解決にあたりましては、独善におちいってはいけない、また、いかなる権威にも屈してはいけない、何ごとにも恐れない、しかしながら、何ものも全部疑ってみるというような、真理を追求する精神こそがほんとうに必要だろうと思うのでございます。私は、こういった点につきまして、ほかの同僚諸君からもおそらく御質問があると思いますけれども、私の質問を始めたいと思います。
 まず第一にお尋ねしたいのは、先ほど高瀬先生からお話がございました、鑑別診断研究班でございますが、これは公衆衛生協会でございますか、財団法人だと思いますが、その財団法人でつくられた班でございます。実は、今回の問題につきまして一番問題になっておりますのは、小林教授の新聞発表でございまして、この研究班の中になぜ小林教授やそのほか久保田医師等を入れなかったのかどうか。
 それからもう一つ問題になりますのは、新聞等で拝見いたしますと、安中に行かれて、おかあさんを呼んでお話を聞いておられない。一体これはどういうことなのか。やはり事態の真相を究明するにあたりましては、そういった点も当然に配慮してしかるべきではなかったかと思いますが、その辺につきまして、高瀬参考人でもけっこうでございますし、あるいは厚生省のほうでもけっこうでございますが、お答えをいただきたいと思います。
#6
○高瀬参考人 私どものは、鑑別診断ということでございまして、すべて臨床的にものを究明していきます。私どもは小林教授の意見は尊重しますし、いまもって信用をしております。小林先生はたしか分析学者と聞いております。ですから、その分析の値を私どもは信用する、それだけでございまして、それ以上のことは必要ないと私は思います。そのとおり私どもは信用しておりますから。
 それから、おかあさんでございますね。これは地元のほうから文書による資料が出ております。医学的判断を行なう場合に、生前の資料、特にカルテあるいは検査所見とか、診察された医者の証言というふうなものを最優先すべきだと私ども考えておりまして、それで実はおかあさんから聞くこともさることながら、いまのところすべて文書による資料を採用しております。私は政治とかそういうものはちょっとわかりませんが、特にこういうふうな問題はものごとが誤り伝えられ、あるいは人の記憶というものは非常にたよりないことがございますので、それですべて文書による資料によって検討をする、そういう立場をとっておりまして、今度はおかあさんのことは聞いておりません。そういう理由でございます。
#7
○林(義)委員 私は、小林教授をなぜ呼ばなかったかというのは若干疑問に思うのです。と申しますのは、確かに厚生省でも小林教授の出された内容につきましていろいろ再度にわたって質問をしておられると思いますが、そういった点につきましても相当な検討を加えなくちゃいかぬ。それでないとほんとうの真実の究明ということはできないのではないか。そういった点がはっきりされないうちにいろいろ決断するということは少し即断ではないかと私は思うのでございますが、そういった意味におきましてもやはり小林教授を呼んでこの研究班の中に入れて、どういうふうな分析法が行なわれたかということをやっていただいたほうが事態の究明にはよかったのではないだろうか、こう思いますけれども、高瀬班長さんのほうからそういった申し入れをされたことがあるのかないのか、その辺についてもお尋ねをいたしたいと思います。
#8
○高瀬参考人 私のほうから特別申し込みをしておりません。というのは、私のほうの臨床の関係する鑑別診断班のほかに、第二部として慢性カドミウム中毒並びにイタイイタイ病に関する分析法の研究班という班が別にございます。この班の班員の数は私いまちょっと記憶しておりませんが……。それからもう一つ別の班がございます。これは主として疫学研究をやっておる班でございますが……・。
#9
○林(義)委員 高瀬さんけっこうです。ほかの班があるのですね。
#10
○高瀬参考人 ですから、基礎的なデータはそういうところで検討をしていただきたいと私思います。
#11
○林(義)委員 参考人に非常に失礼ですが、時間が非常に限られておりますので……。
 実は生前のカルテをいろいろ御検討になったということですが、このカルテというものは、あとで尿たん白とかいろいろな問題が出てまいりますが、それにつきまして、いわゆる精密診断なのか、定期診断なのか、中村さんがいろいろな病院に行かれて診断を受けられたそのカルテというのは、相当精密なものであるのか、いわゆる普通の健康診断的なものかどちらか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
#12
○高瀬参考人 それは、たしか健康診断の資料も検討いたしております。それからもう一つは、御本人があちこちの病院にかかっておられます。たとえば高崎市の佐藤先生のところにかかっておる。あるいは眼科のお医者さんのところにもかかっております。別のお医者さんです。それから県立高崎病院、安中の永山医院、安中の上杉医院、そういうところで、症状を訴えてかかっておられますから、そこでは十分検討してあるものと考えて、そのカルテを資料として私どもの班で検討したわけです。
#13
○林(義)委員 問題は、尿たん白検査の結果の問題でございますけれども、群馬大学の野見山助教授の説によりますとズルフォサリチル酸法ではカドミウム中毒の尿たん白は検出しにくい。三塩化酢酸法というのですか、何かそういうふうな尿たん白の検査方法がありまして、それでないとはっきりしたことが出てこない。何かスウェーデンの学者か何かも、そういうふうな意見を持っておるというような話でございますが、いままでありましたところの検査の結果でもって、いかなる形でも尿たん白が出てないということが医学的に一体言えるのか。これは臨床の問題でございますから、むしろ先生から直接にお話を聞いたほうがいいと思いますけれども、七回ぐらいやってたん白が出なかったということであれば、まずたん白は出ないというふうに判断していいのか。いろいろ検査方法が違いますとたん白が出るのかどうか、あるいは検出されるのかどうかという点を御開示いただきたいと思います。
#14
○高瀬参考人 中村さんについては、たしか九回の検査が行なわれておったと思います。そのうち検査方法の明記されてあるのが七回でございます。それでズルフォサリチル酸という方法でございますが、これは頻回に検査いたしますれば、臨床的には慢性カドミウム中毒であるじん障害の有無ということを判断するのには十分だろうと思います。
 ところで、研究班でトリクロル酢酸法というのを使っておるのでございますが、これは、研究班では非常に多数の患者を一ぺんに取り扱います。しかも、それが、異なった検査機関がやっております。それで、そういう一回検査でやる場合には、私どもの研究班では、最も見のがしが少ないということで、TCA法を採用しておるわけでございます。
 なお、実際は九回でございますが、検査方法が記載してあるだけで七回でございますが、これがすべてマイナスということでございますから、臨床的にはじん障害が存在しなかったということをわれわれ研究班としては推定しておるわけでございます。
 それで、カドミウムの場合の障害というのが、これは急性と慢性とございますが、現在までにそういう障害が知られております。急性の場合には、フュームを吸いますとか、あるいはじんあいを吸いますとか、そういう場合にはこれは呼吸器の症状が出てまいります。急性気管支炎あるいは肺水腫というふうなものが出てきて当然と思います。中村さんの場合には、そういうカルテを見ますと、そういう記載はございません。ですから、急性のそういうものは、われわれはないものと考えてよかろうと思います。
 急性の場合でございますが、さきに言いましたのは、気道から入った場合でございますが、間違って口から入る場合がございます。これは、ほとんど急性胃腸炎の症状でございます。たいてい多くの場合は、腹痛ということでやってまいります。大量のものが入りますと、多くの場合吐いてしまいますから、それでたいした問題は起こらないのが普通でございます。
 それから慢性の中毒でございますが、これは現在はっきりしておるのは、このカドミウムを取り扱う工場作業員に見られる中毒症状でございます。おもにカドミウムが気道から入る、空気のところから入る、こういう場合でも、従来知られておる事実は、二、三年の労働期間ではあまり起こっておりません。大体八、九年以上でございます。
 それからおもな症状は、吸入部位であります呼吸器のせきとか、たんとか、今度は慢性気管支炎とか、肺気腫、肺繊維症というふうなものでございます。それといま一つは、じん臓の症状がおもでございます。もちろんその場合に、軽度の貧血とか、あるいは全身がだるいということもあることがありますが、普通は臨床的には問題になりません。慢性のカドミウム中毒によるじん臓障害で最も初発しやすいという症状は、尿のたん白の陽性でございます。それが出ないというときには、たとえじん障害がありましても、臨床的には問題になるほどのことはないとわれわれは臨床の方面では見ております。
 で、中村さんの場合、先ほど言いましたように、七回もたん白が出ないということでございますから、慢性カドミウム中毒によるじん障害の存在は考えにくい。あるいはその慢性カドミウム中毒があったとはいえないという見解を私どもは持っておるわけでございます。
#15
○林(義)委員 実は、研究班の中で、新聞を見ますと、従来の日本人のじん臓のカドミウム濃度が最高値一九、五〇〇PPMということで、あるいは二〇、〇〇〇PPMというデータも大体持っておるわけですが、これと今度の二二、四〇〇PPMとが、そんなにたいしたことがなくて、そう違わないのだという説を新聞で見ましたけれども、
 一体そういった点につきましては、班長としての先生はどういう御見解を持っておられるのか、聞かしていただきたいと思います。
#16
○高瀬参考人 結論的に申しますと、何ともないのかもしれません。何ともあるのかもしれません。それは私のところでは、まだわかっておらないのです。たしかいまおっしゃったのは、シュレーダーという人が書いておる報告だろうと思いますが、たしかじん臓から一九、五〇〇あるいは日本でも吉村という方は、脳溢血で死にましたたしか四十七歳の女でございますが、脳溢血と心臓で死にました患者で、死後二時間で剖検をしておりますが、その値では二〇、〇〇〇PPMという値を出しております。別にじん臓障害がない患者でございます。ですから、たとえばこのシュレーダーという人の報告したものでございますと、一九、〇〇〇というのは、それは高いほうでございまして、低いほうは一、三五〇という値がございます。ですから一八、〇〇〇ぐらいの個人差があるということだろうとわれわれは考えておるのであります。
 で、そういう個人差がある場合に、それならば、この二〇、〇〇〇と二二、四〇〇の中村さんの場合、その間に、それに問題をわれわれは医学的な評価ができるかどうか、まだ最高どれだけというこれというものが、数が少なくてわれわれはつかめ得ません。
 それからもう一つは、中村さんの場合には、死後たしか一年半くらいでございます。カドミウムの定量検査をやる場合に、普通死後剖検をしまして、すぐその生材料をはかりまして、そうして直ちにディープフリーザーにかけまして凍結して保存しておく、これが常識でございます。それをやらない場合、たとえば医学常識として解剖した場合には、標本をフォルマリンに貯蔵しますが、フォルマリンに貯蔵しますと、もうすでに値が変わってくるという試料がございます。ですから、中村さんの場合にどういう状況であったかわかりませんが、死後一年半ということになりますと、研究班としては、これを検討の対象にするのはちょっとむずかしいという結論でございます。特に中村さんの場合には、あの肝臓、人間のからだで一番大きい臓器でありますが、頭の二倍くらいある、あの肝臓が厚さ一センチくらいになっている、そういう変化を受けております。
 それからもう一つは、反対のじん臓はどうなっているかわからぬというような変化でございまして、普通ならば、そういうものを検査します場合に、その臓器がじん臓ならじん臓であるというためには、組織検査をしまして、これはじん臓であるという確証がなければならぬわけでございます。実は、そういうようなことを厚生省を通じて照会をしましたのでございますが、小林さんからは返事がいただけない。そういうことでございますから、その値はもちろんわれわれは信用しますが、それを臨床的にどう評価するかということは困難である、そういう結論でございます。
#17
○林(義)委員 実は研究班の十三名の方ですが、中にはいろいろな先生がおられますが、今回の結論を出されましたのは、この十三人全員の一致した御見解なのかどうかということをまずお尋ねしたいと思います。
#18
○高瀬参考人 これは私のほうから、あの最後の見解でございますが、黒板に書かせまして、そして一字一句検討しまして、全員賛成でございます。もちろん野見山先生もその席には出ておられます。
#19
○林(義)委員 実は、これは医者としての先生にお尋ねしたいのですが、重要な解剖実施には、遺体とか臓器とかの状況を記録するために、いろんな写真をとったりなんかすることが必要であるし、また各臓器の重量を全部はかってくるのが常識だと聞いておるのです。それは医者としての当然のことじゃないかと私は思っておりますが、その辺をどういうふうにお考えなのか。
 それからまた、今回の場合一年半もたった臓器の場合でございますので、そういったものが一体どういうふうな形でそういうふうになっているかというようなことがわからないような状況もあるだろうと思います。そういったときには、何か臓器診断というようなかっこうの特別なものがあるのかどうかという点、これは二点でございます。
 それから第三番目に、やはりいろいろな分析をするにあたっては公正を期すというか、いろいろの相対的な問題があると思います。特に非常にむずかしい分析をされるわけでございますから、クロスチェックと申しますか、いろんな方々が検査をして、それでお互いの検査結果を――全然独自に検査をして、その上で彼我を相互比較するということが、これはむしろ常識だろう、あるいはモラルでもあろう、こういうふうに私は考えるのですが、その辺につきまして、先生の医学界あるいはそういった学者としての考え方をお尋ねしたいと思います。
#20
○高瀬参考人 これは、医学界とか学者とか、そういう問題でございません。初歩的な問題でございます。写真をとるのは、これは当然な話です。
 それから臓器診断、これは先ほどちょっと言いましたのですが、特に死後経過をしたものは、自分は何をはかったかという臓器の診断を病理的に検査をする、これも初歩的な、常識であります。
 それからクロスチェックも、これもわれわれは常識として、現在研究班で尿の検査をやります場合に、アトランダムにやっております。たとえばイタイイタイ病地区の、イタイイタイの小便とそうでない小便、それを全然番号だけにしまして、別の遠いところへ持っていきます。そこでまたチェックして、同じ成績が出たものを、われわれは採用しています。これは当然な話でありまして、お答えするほどのことでもないことです。
#21
○林(義)委員 どうもありがとうございました。時間が過ぎましたというメモが回ってまいりましたので、最後に一問だけ質問させていただきます。
 カドミウム中毒というものとイタイイタイ病の関係について、イタイイタイ病というのはやはり骨が痛い痛いということだろうと思うのです。そういったものとカドミウム中毒というものとの関係は、一体どういうふうになっているのか。そもそも中毒というのは、医学的にいったらどういうことなのか。何でも金属が入ってくれば中毒ということにはならないと思うのです。ある一定のところまでいって、相当な症状が出てくれば中毒ということになるだろうと私は思うのです。さらにそれがたくさん入ってくると、急性のものになるとかなんとかということになるだろうと思います。われわれしろうとでございますから、その辺につきまして先生からお教えいただきたいと思います。特にこの問題につきましては、カドミウムだけではない。水銀、鉛などいろいろな重金属についても中毒症状があると思いますが、一体、その辺についての先生のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
 もう一つの問題は、申し上げるまでもないのですが、指曲がり病、指が曲がっているとかなんとかというような病気と、今回のカドミウム中毒との関係、一体この辺につきまして先生はどういうふうに考えておられるのか、この辺をお尋ねしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#22
○高瀬参考人 その問題、実は大事な問題があるかと思いますが、カドミウムが蓄積した、イコールカドミウム慢性中毒、さらにエスカレートして、イコールイタイイタイ病、こういう公式があるように私感ずるのでございますが、医学的に申しますと全く別個のものでございます。先ほどちょっと申しましたですが、イタイイタイ病というのは、カドミウムはある主因をつくっておるだろうと思います。しかし、それだけではない。何らかのアルファ、または幾つかのアルファがあるんだろうという想像をしております。それは、私どもにはわかりません。それをわれわれが何らかチェックしたいということでやっておるわけでございます。
 イタイイタイ病には、判然と骨に類骨組織というものができるわけです。これは化骨しない組織。カドミウム中毒は、急性の場合は別としまして、慢性の場合でございますというと、これはまず起こるのがじん障害でございます。じん障害は、先ほど言いました尿細管の再吸収障害でございます。もちろんイタイイタイにもそういう所見はございます。だからイコールというわけにはいかないのです。
 といいますのは、こういう症例があります。イギリスのたしかブラックという学者でございますが、これは一九六七年に発表した本でございますけれども、四十九歳の女でございまして、おなかのがんが疑われる。そしてある薬を飲んでおった。ところが、そのある薬というのはカドミウムであった。間違いであった。それを一週間に二グラム、約二年間飲んでおります。その人はわれわれが慢性カドミウム中毒の初期の症状と思われるたん白尿と尿細管の障害を起こしております。ただし、そこには骨の障害というものは載っておりません。あったのかないのかわかりません。載っておりません。これはイギリスのマンチェスター大学の内科の教授でございます。それですから、イタイイタイ病と慢性カドミウム中毒というものは、われわれは別のものと考えております。
 それからもう一つ中毒の問題でございますが、これはたいへんむずかしい問題だろうと思いますが、カドミウムに例をとりますと、カドミウムがある、幾らあってもかまわぬのです。われわれは、それをあるというだけでは臨床は中毒とは認めないという考えでおります。というのは、そのために障害が起こっておる、そうしてその人が症状を訴えておる、あるいはそのために生命が短縮されるというようなことが起こった場合に、われわれは初めて中毒という名前を使うので、からだの中に入るのは、たとえば口からおしりまでは廊下のようなものですから、これは幾らものがあってもかまわぬわけです。たとえばじん臓あたりでございましても、じん臓は排せつ器官でございますから、そこへどんどんたまって外へ出ていくということは、臨床からいえば、かえってありがたい道を通っておるというふうに考えてもよろしゅうございます。ですから、中毒ということを、われわれはそういうふうに、あるから中毒というふうに考えないで、そのためにどういう症状が起こっておる、どういう違和を訴えておる、あるいはその人の生命に対してどういう影響を与えておる、そういうことでわれわれは中毒と考えております。よろしゅうございますか。
#23
○林(義)委員 たいへん時間をとりまして申しわけありませんが、いろいろとお尋ねしたいこともたくさんあるのです。しかし、与えられた時間がこれでございましたので、私のいろいろな考え方は、あとでいろいろとほかの各同僚議員からもお話があると思います。その辺はまとめて別の機会に私は議論いたしたいと思っております。どうもありがとうございました。
#24
○小林委員長 島本虎三君。
#25
○島本委員 高瀬参考人に、私は医者の立場ではなく、長い間この産業公害対策委員会の中で公害に対処してまいりました一人の人間としていろいろ先生に聞いてみたいと思います。この点は意外にもしろうと的な質問になりますから、その点わきまえて懇切にお教え願いたいと存じます。
 まず、その前に、今回の中村登子さんの霊に心から哀悼の意を表して質問を展開いたします。
 まず先生にお伺いいたしますが、先般四十六年三月七日に「安中市故中村登子氏遺体カドミウム検出問題について」という中毒症鑑別診断研究班からのこの発表がございます。これによりますと「厚生省、群馬県、東邦亜鉛株式会社安中製錬所嘱託医等から提出された資料に基づいて検討した結果は、次のとおりである。」こういうようなことが1から4にわたってそれぞれ出されておるのであります。いろいろと問題が出された中でこの結論を得たということ、すなわち「故人は、生前の二年間に数か所の医療機関で少なくとも七回の尿検査を受けているが、いずれも尿蛋白は証明されてない。慢性カドミウム中毒の初期症状の一つとされている腎障害は存在しなかったものと推測される。」すべてのわれわれがいろいろなデータによって調べたものと違う結論が、その他2、3、4にも出されておるわけであります。
 それで、一つの先生に対する疑問でございますけれども、このような安中製錬所嘱託医等から出されたその他の資料でございますか、その資料そのものに疑問はなかったものかどうかという点が一つであります。それと、データについてはこれで十分だとお思いになってこの結論が出たのかどうか。これが一つ前提として私は疑問なんでございます。考えようによってはこれから問題が出発するのでありますが、こういうような資料の不足の結論によって決定されるということになりますと、これまた少し疑義があるのでありまして、この点ひとつ先生の御見解を賜わりたいと思います。
#26
○高瀬参考人 資料が悪いとおっしゃるのですか。
#27
○島本委員 いろいろ出された資料、これに疑問がなかったかということです。それと同時に、データについてこれで十分とお思いであったのかどうか、また不足と思わなかったか、この二点でございます。
#28
○高瀬参考人 先生の資料と違うとおっしゃるのでございますが……。
#29
○島本委員 違うと言っておるのじゃないのでございまして、私しろうとだからということを前提にして言いましたが、先生が結論を出された安中製錬所嘱託医等その他から出された資料、これによって結論を出すのは疑問がなかったかどうか。三回目でございます。それと、データについてはこれで十分だとお思いになったのか、それで結論を出されたのか、このことなんでございます。
#30
○高瀬参考人 あとのほうから申し上げます。
 データはまだそれ以上のデータを要求してございます。それですから、そのデータが出ればまたそのときに検討するということを申し合わせておるはずでございます。ですから、総括的に今後も引き続き資料を収集してさらに検討を行なうというふうに、現在はここに出ておるデータでもってこれだけの意見を出したわけでございます。
 もう一つは資料が十分であるかどうかという問題のようでございますが、われわれは慢性カドミウム中毒を考える場合に、尿の性状、これが一番大事と考えております。それで尿の性状は、御本人が生前診療を受けられたお医者さんのところ、そこのデータ、これ以外にないということでございますから、これで全部だと思っております。それからあと安中の労働組合ですか、それから安中の嘱託医、それから群馬労働基準局、それからあそこの群馬大学の野見山教授、嘱託医はちょっと申しおくれましたが須藤先生です。それから安中製錬所、これは会社でございます。そういう資料を検討したのでございまして、これは大体必要な資料がそろっておると私どもは思っております。ただ、それが十分であるかどうかということについては問題がございます。それですから、この最後の、総括的に今後も引き続き各種の資料を収集するということを心がけておるわけでございます。
#31
○島本委員 それで先生にこの点もあわせてお伺いいたしたいのですけれども、すなわちイタイイタイ病とカドミウムの慢性中毒症とは別である、こういうようなただいま御意見の御開陳がございました。それと、中村登子さんが生前に奇怪な苦痛を感じ始めたころ、医者は腸のかいようだと診断した、こういうような報告があるわけであります。そして日記の中には痛みが私をさいなむ、自分の腸や胃を引きずり出してやりたい、こういうようなのも一節にあるわけでございます。そういうようなことから、その前後に、関係者はイタイイタイ病の症状が存在していたのに気がついておった。まして死体解剖した結果、やはりじん臓の中から二二、四〇〇PPMのカドミウムが検出された。ずっと臨床的に見ますと、何か一貫性があるように私どもは考えられるのでございます。しかし、先生のほうのこの報告によりますと、不十分だと申しながらも与えられた資料によりましては、カドミウムの初期症状の一つとされているじん障害は存在しなかったものと推測されるということになると、これが中毒でもない、それからその他の2、3、4は資料が不足であるというようなことのようでございます。そうなりますと、結局この結論は、どうも推移する一定の流れから臨床的に見ます場合には、先生としてはどのようにお考えでしょうか。いま私が申したのは、この順を追ってずっと言ってみました。当然われわれしろうとは、これはいわばカドミウムの患者じゃないかというふうな一つの推定に達するわけであります。先生のほうは達しないようであります。この点は私は疑問なんでございますが、ひとつ先生の御意見を発表願いたいと思います。
#32
○高瀬参考人 ちょっとお伺いしたいのですが、カドミウムの患者というのはどういうことでございましょうか、いまおっしゃった。
#33
○島本委員 いわゆるイタイイタイ病患者をわれわれは俗にカドミウムの中毒患者と言っておるわけです。それとまた違うといえば、違った範囲で答えてもらえばいいのですが、先生のお考えの、たとえばイタイイタイ病じゃない、慢性中毒とは別だ、こういうのであれば、専門的な見地からこれは高い格調で答えられてもけっこうであります。
#34
○小林委員長 質問者に対して御質問なさるときに、やはり一応委員長から許可されてからお願いしたいと思います。
#35
○高瀬参考人 どうも失礼しました。
 私どもは、カドミウムの急性中毒、慢性中毒、それからイタイイタイ病というものは、ある点では症状は似ておるけれども、ある点では違っておるということで、別の考案方法を考えておるわけでございます。それでいまこういう質問をしたわけでございます。というのは、先生のお考えになっておるのはイタイイタイ病を考えておられるのか、カドミウムの慢性中毒を考えておられるのかということでございます。もしもカドミウムの慢性中毒がございますと、先ほど前の先生にお答えしたように、最初にあらわれるのがじんの障害であります。じんの障害といいますと、たん白尿でございます。中村さんの場合はたん白尿の検査方法が明記されておる方法で七回ということで、いずれも陰性でございます。ですから、そこに書いたように、「初期症状の一つとされておる腎障害は存在しなかった」というふうに私どもは結論したのでございます。
 それからじん臓にカドミウムが非常に多いということでございますが、これは先ほども一応申し上げましたけれども、日本人で全然じん障害のない人でも二〇、〇〇〇PPMという値のものもございます。ただ中村さんの場合には、死後時間があまりに経過をしておる。ほかの臓器が非常に変化をしておる。じん臓も変化をしておる。ですから、その分析データはそのまま私どもは信用するわけでございますが、それを臨床的に検討できるかどうか、比較の対象になるかどうかということで、われわれは比較検討の対象にするには現在のところデータ不足で無理であるという結論がまとまったわけでございます。
#36
○島本委員 では、お伺いしますが、昭和四十六年一月十五日に解剖された執刀者久保田重則さん、この所見に対して先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
#37
○高瀬参考人 一言で申し上げますと不十分でございます。それで検討がやはり困難でございます。
#38
○島本委員 一言で申し上げまして不十分だということはわかりました。もしそれを数点にわたって、この点、この点というのがありましたならば、ちょっとお知らせ願いたいと存じます。
#39
○高瀬参考人 まず、各臓器の重量がはかってございません。それからあとは肉眼的な所見だけでございます。病理的な所見がこれについておりません。大きい点はその二点でございます。それから特にそういうものが疑われた場合には、骨をとってほしいわけでございます。骨がとってございません。大体そういうことでございます。
#40
○島本委員 臓器の重量をはかっておらない、これは病理的な所見がない、それから骨をとってほしいものである、こういうようなことを御発表になりました。この「参考事項」の最後に、「当墓地は僅かに周囲より高く、水はけもよく、比較的乾燥地であり、棺は地下約二米の所に安置されており、地下水は全く見られず、周囲の土はよく乾燥していた。ロープをもって棺ごと外部に引きあげたが、棺は安全に保存されており、これをこわすのに、かなりの力と時間を要した。内部は清潔で土砂の侵入もなく、遺体は衣類も殆ど腐敗しておらず、前記の状態に保たれていた。」良好な状態に保たれておった、こういうような「参考事項」も付記されておるのであります。こういうような中で、少なくとも二二、四〇〇PPM検出されたということになりまする場合には、方法いろいろ違いがあろうかと存じます。しかし、このことに対してもやはりある程度の疑問とともに、これは先生から言わしむればイタイイタイ病かカドミウムの慢性中毒かいずれか、こういうようなものをはかるのに出たデータによって、これは十分でなくても、結果がそれだけあった場合にはある程度の推定、またはっきりした決定とまではいきませんけれども、推量はできるのじゃないか、こう思われるのであります。しかし、これは不完全であるということでありますから、その場合には、われわれとしては不完全な資料によって専門家の皆さんに聞きただす何ものもありません。
 ただ私の疑問をひとつ率直に申し上げさしてもらうと、こういうような状態でもし結論を出したとすると、その結果のいかんを問わず、企業サイドと思われる、こういうような疑念をお持ちにならなかったかということを、しろうととして私はそれを感じます。このままの不足な状態であるならば、出さなければいいのじゃなかろうかと思うのです。これは間違いかもしれません。しかしながら、その不完全な状態で出して、ある程度の否定を伴うとすれば、喜ぶのは企業サイドであるとすると、そのサイドに立った結論だということを推定されるんですから、この点は私としては十分理解することは、先生、残念ながら困難なんであります。
 それとお聞きしておきたいのは、このズルフォサリチル酸法というのとトリクロル酢酸法というのと、このやり方が違うようでありますが、結果に相違というものがはっきりあるものでしょうかないものでしょうか。多数扱う場合のその取り扱い方なんかも伺いまして、その結果データとして出すそのデータに違いが生ずるものでしょうかどうか、この点ひとつ御意見を賜わりたいと思います。
#41
○高瀬参考人 ただいま企業サイドとかなんとかおっしゃいましたですが、私どもはそういうことばは何の話ですか、ちょっと……(発言する者あり)私どもがおそれるのは、ただ学問だけであります。それ以外何も考えておりません。その政治とか行政とか、そういうものはひとつも考えておりません。
 それから、実際は私どもは中村さんというものを問題にするのは、これは感情として非常にいやでございます。しかし、私どもは厚生省、群馬県あるいは東邦亜鉛労働組合、あるいは国会もあるかもしれませんが、そういう要請があったからやりましたんでございまして、私どもはこういうことにタッチしたくないんでございます。もうすでに御本人はなくなっておられます。それをあとから追跡して云々ということは、もう非常に困難な仕事でございます。好んでやったわけじゃございません。
#42
○島本委員 もう時間も来たようでありますが、そういうようなことに対しての見解が若干違います。私は、不完全であるから、不完全なものに対しては出さないほうが学者的良心じゃなかったかと言っている。それをそういうようなものに対して不完全な結論を出したならば、結局いずれか側につくと思われるような誤解を受けるんじゃないかということを言っているのです。先生の見解と違ったのは、もう残念でありますけれども、私のほうがよほど先生に対しては良心的に考えてやったはずであります。
 そういうようなことで、一つ最後にお伺いしたいのですが、これは小林先生なんかと共同調査をしたり、共同分析をしたら、そういうようなことに対してはやはりいい結論が出るんじゃないかと思われますが、この点等についてはいかがでしょう。
#43
○高瀬参考人 何かしかられましたが、企業サイドとかいうお話でございましたですが、あとのほうの共同研究でございますが、私どもは臨床班でございますから、もし共同研究があるならば、たしか基礎研究をやっておる慶応大学の土屋教授が班長でございます。その方に意見を聞いてみます。
#44
○島本委員 終わります。どうもありがとうございました。
#45
○小林委員長 山口鶴男君。
#46
○山口(鶴)委員 時間がありませんからきわめて簡単にお尋ねをいたしたいと思います。
 臨床の権威であられる高瀬先生でありますから、私ども学問的なことはわかりませんが、そこで、お尋ねいたしたいことは、結局尿たん白が、九回はかってみたがマイナスである。そのうち検査方法は七回がズルフォサリチル酸法であったということであります。そこで、この中村登子さんを解剖されました国鉄新鶴見鉄道診療所の久保田所長の言によりますと、十二指腸かいようはなかったというのですね。で、カルテを受理しておられるようでありますが、佐藤病院その他のカルテでは、結局尿たん白がマイナスであり、病名としては十二指腸かいようだ、こう言っておられるわけですね。ところが、解剖された久保田所長は十二指腸かいようは認められなかった、こう言っておられる。そこに私は臨床的に疑問があると思うのです。なぜ久保田所長をお呼びになってその点究明をなされませんでしたか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#47
○高瀬参考人 まず、私を臨床の権威とおっしゃいましたが、これは反対でございます。権威でありませんからたぶん私は班長となったんだろうと思います。権威でありますとその意見に班を引っぱっていきます。それですから権威ではございません。これは反対でございます。
 それから、たん白の問題でございますが、たん白が、七回検査をしてマイナスであるということでございますが、たん白が……ちょっと質問していいですか。
#48
○小林委員長 質問に対する質問……。
#49
○山口(鶴)委員 いや、後段の質問が重要ですから……。
#50
○高瀬参考人 たん白が……これはどういう趣旨だったですか。十二指腸かいようですか。
#51
○山口(鶴)委員 十二指腸かいようは認められなかったと久保田所長は言っておられる。カルテとの関連の問題です。
#52
○高瀬参考人 十二指腸かいようというのは、これはたしか生前の診療のカルテでございます。久保田先生のは、これはなくなってからのものでございます。それで胃とか腸のかいようが数日にしてどこへいったかわからぬというのは常識でございます。私自身でも大量に、洗面器に何ばいか血を吐いて三日目に胃袋を取りまして、肉眼的にどこにかいようがあるかわからぬというのを数例持っております。人間の胃腸というのは刺激を非常にひんぱんに受けるところであります。熱とか、機械とか、あるいは物理的とか、化学的とか、そういうふうな、それですからしょっちゅう起こってしょっちゅうなおっていくのが普通であります。これが自然の形であります。なおらぬのが初めて手術その他の対象になるわけであります。ですから、先ほど言いましたように大出血を起こして三日目にその手術をしてかいようがどこにあるかわからぬ、これは何もふしぎでないので、普通のことでございます。ですから、ましてこの場合、この久保田さんは先ほど言いましたように病理検査をしてございません。肉眼的にかいようがないというのは当然あり得ることでございます。
#53
○山口(鶴)委員 厚生省が、今回の中村登子さんのことに関連をいたしまして、今後措置すべき事項として七点あげておられるわけです。当然鑑別班にも厚生省が今後措置すべき事項ということについては御連絡があったと思います。小林教授から詳細なデータの提供をお願いすること。それから解剖所見の詳細を久保田所長より入手すること。生前の症状について詳細に調査すること。作業場の環境条件、従業員の健康状態について労働省と連絡をとって入手すること。昭和四十六年二月四日、安中地区に長年居住している小川さんという方が死亡されたということが朝日新聞に報道されましたが、おなくなりになったのは二月一日のようでございますが、この解剖所見を群馬大学医学部から入手すること。最終的には厚生省のカドミウム中毒鑑別診断研究班で総合検討してもらうこと。以下七項は、安中、高崎の要観察地域の住民の検診についてさらに進める。こういうことがあるわけでございます。そうしますと、私ども厚生省の態度を拝見をいたしまして、一から五項までの事項をきちっといたしました上で、最終的にこの鑑別班の鑑定をお願いするということだろうと思うのですが、いままでのお話を聞きますと、どうも小林教授の資料の提供なり、久保田所長の詳細な解剖所見なりということにつきましては、やや欠けている点があるのじゃないのか。もっとこれらの方々の資料提供の御努力をお願いし、これらの方々に御出席をいただいて、その上で、この小川さんの解剖所見等も入手した段階で、この鑑別班で最終結論をお出しになることが筋ではないかと思うわけです。厚生省からこのような措置すべき事項について御連絡を受けましたか。受けたといたしますならば、なぜ一から五項までの手続が十分でないうちにこの最終結論をお出しになる、急がれた理由が私どもとしては疑点なのであります。この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
#54
○高瀬参考人 その急いだという理由でございますが、私いまはっきり記憶しておらぬのでございますが、たしか労働組合が非常に不安を持っておるということがそのときに問題になったように記憶しております。ですから、結論を出さなくていいものならば、私どもとしてはまことにありがたい、たいへん困難なものでございますから。しかし、わかったところだけは結論を出そうという班の意見だったように記憶しております。
#55
○山口(鶴)委員 そうしますと、労働組合が急いで出してくれというから急いだということですか。私どもが社会労働委員会で現地に参りまして、労働組合は事実を正確に究明していただきたいということを文書で私どもに要求をされました。で、厚生省から御連絡があったはずでしょうから、なぜ一項から五項までの措置すべき事項をたんねんに詰めないうちに急がれたか、労働組合が急げと言ったから急いだということでは私は非常におかしいと思うんですね。いかがですか。
#56
○高瀬参考人 労働組合が急げと申しません。不安を持っておるという話でございます。
#57
○山口(鶴)委員 それでは、なぜ厚生省が措置すべき事項の一項から五項まで――労働組合が不安がっているから急いだというのですが、なぜ厚生省の措置すべき事項については詰めなかったのですか。
#58
○高瀬参考人 小林さんのほうは、これは厚生省から二回照会しておりますが、最後のは御返事がございません。実はまだ……。
#59
○山口(鶴)委員 久保田所長はどうですか。
#60
○高瀬参考人 久保田さんのほうは、そのときに厚生省の話では、これ以上はないのだという話でございます。
 それから作業場はあのときに再現をしていただきまして、それを私ども見ましたし、それからあそこの話によりますと、カドミウムは九九・九九という値だそうでございます。それで、これはソ連の文献でございますが、ソ連の文献では、金属カドミウムは無害であるという文献もございます。しかし私どもは、そういうことを根拠にしてそれを問題にしないというのではない、やはり問題にしていこうと思っております。
#61
○山口(鶴)委員 どうも私の質問、厚生省が措置すべき事項、一項から五項まであげておりますのを十分詰めることなく、労働組合が不安がっておるからということだけで急いだということについては納得をいたしません。この点だけ申し上げまして質問を終わっておきます。
#62
○小林委員長 岡本富夫君。
#63
○岡本委員 参考人の先生には非常にお忙しいところを来ていただきましたが、先生にいろいろとお聞き申し上げたいのは、今度のこの研究班のいろいろな状態ですか、スピードの調査、こういうことを見まして、また伊香保温泉におけるところの姿、これを見ますと、厚生省あるいはいろいろな役人が五十何人も集まった中でやられておりまして、先生方のお話しされる会場のすぐ近所に朝日新聞が入ったというので、非常に隠しマイクなどをさがしたりした異常な中でおやりになったので、先生にこんなことをお聞きするのは私ども非常につらいのでありますけれども、やはり事態は、私どもは再びこういうふうな、中村登子さんのような状態があってはならない。再びこういう事件を起こしてはならないという立場からお聞きするわけでございます。そこで、学問はやはり人類の生存、そういうふうな必要のためにあると思いますので、そういった面から、どうかひとつ、再びこういった事件が起こらないように、こういう立場でお答えをいただきたい、こう思うのであります。
 そこで第一点は、先ほども少し話がありましたが、今度の研究班が使われました資料、これはほとんど厚生省がそろえたようでございますが、そこで、その資料の中で、佐藤病院の資料あるいはまた永山病院のカルテ、あるいはまた会社嘱託医のカルテ、こういうものを土台にしてやっていらっしゃるし、また、その研究班の会合は秘密会だと私は伺っておりますが、その中に会社の嘱託医やら、あるいは佐藤先生なんかが入っておるというようなことを伺っておりますが、そこで、なぜ遺族の話を聞いてやっていただかなかったか。私の横におりますのはお医者さんでございますけれども、いろいろな診断をなさるときには、子供の場合は必ずおかあさん、あるいはまたそうした遺族の、または親御さんのお話を聞いてあげるのが普通ではなかろうか、こういうふうに思いますので、その点が一点と、それからもう一点は、尿検査にそうした症状がなかったというお話でございますけれども、たん白が出なかったということでありますが、この七回の検査は、同じ場所でおやりになったものをお使いになったのか、これについてひとつお尋ねいたします。
#64
○高瀬参考人 遺族の問題でございますが、先ほどもお答えしましたけれども、私どもは慢性カドミウム中毒ということを問題にしてやっております。ですから、その最初の症状が尿のたん白の出現でございます。それで尿のたん白がこの程度、あちこちで調べた――いま、そのあちこちというのをさがしておりましたのですが、そういうことでありますから、カドミウム中毒の初期症状である尿のたん白が出ておらなかったということで、その母親、すなわち遺族に聞く必要は、その点だけを考慮するならば、聞かなくてもよかろうという班員の一致した意見でございます。もちろん班員の中には、実際にイタイイタイ病をおやりになっておる萩野先生も入っておられます。
 それから尿の七回の場所でございますが、ちょっと資料が……。
#65
○小林委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#66
○小林委員長 速記を始めて。
#67
○岡本委員 まあ、そう言って、あっちこっちでやっていらっしゃるということでありますので、精密検査ではなかった、また会社の嘱託医にしましても、集団検診のような状態でありますので、おそらくカドミウムというものを頭に置かずに検診をなさったものではないか、こういうように思われるわけでありますが、それについての先生の御見解をお伺いします。
#68
○高瀬参考人 たぶんおっしゃるとおりと思います。しかし、慢性カドミウム中毒の初期症状は尿のたん白が出るということでございまして、これはズルフォサリチル酸法あるいはTCA法、これでひっかけることができるわけでございます。
#69
○岡本委員 そこで、尿にそうしたたん白が出ない場合もあるということが文献の中に出ております。その点についてはいかがでございましょうか。
#70
○高瀬参考人 たん白の出ない場合もございます。それは急性中毒、それから非常に初期ならば、たぶん障害を起こさない程度ならば、出ないだろうと思います。報告では、急性中毒の場合は出ておりません。
#71
○岡本委員 次に、先生から先ほど、骨には異常が認められなかったので、こういうお話でございますけれども、一九二〇年、ドイツの有名なバーベル博士の論文を見ますと、慢性カドミウム中毒についても骨に異常が認められなかったというような、世界的な文献がございますが、これについてはいかがでございましょうか。
#72
○高瀬参考人 私も同意見でございますが、慢性カドミウム中毒には、骨には所見がございません。イタイイタイがあるのです。
#73
○岡本委員 イタイイタイ病と慢性カドミウム中毒と、どういうふうに違うのでしょうか。
#74
○高瀬参考人 これは先ほどお話ししたと思いますが、慢性カドミウム中毒というものは、現在はっきりしておりますのは、カドミウムを取り扱う工場作業員でございます。そして、主としてカドミウムが経気道的に入ってくる場合でございます。この場合、報告されておる文献によりますと、大体二、三年の労務期間では起こってはおりません。八、九年以上でございます。大体、八、九年というところ、それでその主要な症状は、カドミウムの侵入部位である呼吸器の症状で、慢性でございますからせき、たん、あるいは慢性気管支炎、肺気腫、肺繊維症、こういうようなもので、そのほかに軽い貧血とか肝障害が訴えられたり、全身倦怠が訴えられたりすることがございます。
 ところで、慢性カドミウム中毒によるじん障害で最も掌握しやすいのが尿のたん白でございます。たん白が陽性になることでございます。それが出ないときには、たとえじん障害があったとしても――非常にまれには糖尿がある場合、アミノ酸尿がある場合、こういうときにはたん白が出る場合がないこともございませんが、臨床的には大体問題になるほどのことはございません。
#75
○岡本委員 先生、あまり時間がありませんので、学問的なことは本職におまかせいたしますから……。
 それで、先生は先ほどこうした今度の結論のようなものを出したというけれども、これはデータが若干不足だった、あるいはまた小林先生の意見は尊重する、こういうようなこともありまして、先ほどのお答えによりますと新しく追加検討もするんだということであります。こういう先生の御意見と、それから先生があの目先にお帰りになって、あと土屋さんと重松さんがその結論を発表したわけですけれども、これではもう二度とやらないんだというようなことを言っておったそうでありますけれども、先生のお話を聞きますとそうでないんだ、新しい事実が出てくればもう一度おやりになるんだということでありますから、ほんとうはこれは結論でないんだ、こういうように私ども受け取ってよろしゅうございましょうか。したがって、あとでいろいろこれはやはりカドミウム中毒であったというような資料が出てきますと、そういうようにもう一度白だったのが黒になった、こういう答えになる場合があるのでございましょうか。それについてひとつ最後に……。
#76
○高瀬参考人 それは学問の世界では普通でございます。自分のやったのが日がたって自分の成績をひっくり返す、あるいは自分の師匠のやったものをひっくり返す、これは新しい諸元なり基礎が、あるいは根拠がありますれば当然でございます。
#77
○岡本委員 最後に、いまのはほんとうの結論ではないんだ、先ほどお話を聞いたのは、いろいろと資料が出てきたらちゃんともう一度やるということでありますから、そういうように承っておきまして、本職のほうにバトンタッチいたします。
#78
○高瀬参考人 古寺宏君。
#79
○古寺委員 私は専門家ではございませんけれども、先ほど先生からお話がございましたシュレーダーのデータでございますが、一九、五〇〇PPM、藤坂さんという方は健康な方であった、じん障害はなかった、死因は脳卒中であるというようなお話でございました。この解剖所見によりますと生前から高度のネフローゼがあった、こういうことが明らかになっておりますが、この点についてはお調べになっておられますか。
#80
○高瀬参考人 私は吉村寿人さんのをたしか二〇、〇〇〇PPMと申しましたんですが、あれは京都府立大学と思いましたが、吉村寿人さんの成績です。それには心臓のたしかアポプレキシーとペリカルディジス、それからジストロフィァということに診断はなっております。この人が死後二時間ですが、じん臓で二〇、〇〇〇PPM、そういう成績だと思います。厚生省はたしかシュレーダーの成績で一九、五〇〇というのを出しておりますが……。
#81
○古寺委員 先ほどじん障害がないというお話でございましたが、実際にじん障害があった、解剖所見でそういうことが明らかになった場合には、これは診断をする場合、やはり解剖所見というものも尊重しなければならないと思うのですがどうでしょうか。
#82
○高瀬参考人 当然でございます。ただこの場合、イタイイタイ病の四体を解剖してカドミウムのあがったのがございます。それによりますと、これは確実なイタイイタイ病でございますが、肝臓が最も多い。次にすい臓、次にじん臓、じん臓が最も少ない。イタイイタイ病でないのも三十何人でございますか、石崎教授の成績でございますが、イタイイタイ病でないものの成績では、じん臓が最も多い。次はすい臓、次は肝臓、こういう順番で、確実なイタイイタイ病のパターンとそうでないのとはパターンが少し違うようになりますが、これはしかし研究班で検討しておりませんので、まだ研究班の結論としては申し上げることができません。ただし、そういうパターンの違いがあるようでございます。
#83
○古寺委員 今度の鑑別診断の基礎になりました尿検査の問題でございますが、いままで鑑別診断班が用いております尿たん白検査方法は、先ほどから何回もお話がありましたようにTCAを用いております。私のほうで調べました調査の資料によりますと、先生が参考にされた、鑑別診断班が参考にされたいわゆる尿検査というものは、PHも調べていない、そういうような前処理もやっていない。そういうような検査の成績で判断をされておりますが、これは基礎としては非常に薄弱ではないか、こう思うわけでございます。こういう限定された資料に基づいて尿たん白がマイナスである、陰性である、またじん障害がなかった、こういう判定をすることは非常にむずかしいのじゃないか、こう思うわけでございます。じん障害がなかったと判断されたその根拠でございますが、その点についてお伺いしたいと思います。
#84
○高瀬参考人 じん障害はなかったとは申しておりません。慢性カドミウム中毒の初期症状であるじん障害はなかった、こういうふうにわれわれは理解しております。
 それからPHとか、前処理の問題でございますが、これは鑑別診断班ではじんの障害、いわゆる慢性カドミウム中毒の初期症状の一つであるじん障害を見つけるためにこれを使っております。各地方でこれを使っていて、それが間違いだ、これで逃がしたというのがまだ一例もないのでございます。それから先に行きますと、PHはもちろんのこと、ディスク、それから電気泳動法、ゲルろ過法、これも二五、五〇、一〇〇、二〇〇というふうな非常に込み入ったことをやっております。もちろん、それでカドミウムの慢性中毒の初期症状をどう鑑別するかという問題でありまして、それでいま研究班がそこの意見を統一するということで、先ほど申しました土屋教授の班に依頼しておるわけでございます。もしもそういうPHでわかったり、そういうようなことがありましたら、私知らしていただきたいのでございますが、私どもは非常に仕事が楽になるのでございます。
#85
○古寺委員 この尿たん白につきましては、当然二時間、二十四時間の尿をとらえて、そうしてたん白のテストをやるべきだと思うのですが、そのカルテの内容をよく見ておりませんので、おそらく患者さんが通院した際に検査をしたデータではないか、こう思うわけでございます。したがいまして、私はその場合には陽性に出る場合も陰性になる場合も考えられるわけです。そういういわゆるデータに基づいて判断をするということは、非常に危険があるんじゃないか、そう思っていま質問を申し上げたわけでございます。
 次に、死後相当の年月を経過しておりますので、当然病理学的な所見というものは、これはなかなか報告もされておりませんし、むずかしい問題だと思いますが、重金属の定量分析については、これは死後相当の年月を経過しても十分にできるのではないか、私はそういうふうに判断するのですが、いかがでございましょうか。
#86
○高瀬参考人 重金属の分析は、いつでもできると思います。ただし、それをわれわれが生前の値として採用できるかどうかというところに問題があるわけでございます。
#87
○古寺委員 ちょっと時間がないのであれでございますが、この鑑別診断班が安中におきまして対象地域をきめてやっております。健康な地域と、それから汚染地域をきめてやっております。ところが、いままで対象としておった地域が非常に汚染をされておる、こういう場合には、当然いままでやった成績というものは、これはもう一回検討する必要があると思う。この点と、さらにただいままでのお話を承りますと、まだ結論が出ていないようでございますが、今後いろいろな、小林先生あるいは久保田先生等の意見、あるいはさらにでき得る限りの資料が集まった場合には、現在までの結論をひるがえす、検討する、こういうお考えはお持ちでございましょうか。
#88
○高瀬参考人 対象地域の問題でございますが、これはカドミウムがあるということになれば――カドミウムがないところはないのだと私は思っております。一番よくあるのは、皆さんお吸いになるたばこでございますが、これはバージニアの葉といえども相当量がございます。ですからカドミウムがないところはないと思います。ある人によりますと、一級酒の酒、注射のブドウ糖、これにもカドミウムがあるという成績を出しております。(古寺委員「それを聞いているのじゃない。安中の場合を聞いているのです」と呼ぶ)もちろん安中でもそういう場合がありましたら、どんどん地域を広げてやってもらいます。
#89
○古寺委員 いま御質問申し上げているのは、いままで汚染されないという地域と汚染された地域を比較対照して、いろいろ結果を、成績を出しておられます。ところが、汚染されていない地域がより以上に汚染されておった場合には、いままでのデータというものについては再検討する必要があるのじゃないか、こういうことをお尋ねしておるわけでございます。
#90
○高瀬参考人 それにつきましては、私どもは尿の中のカドミウムを三十ガンマ・パー・リッターというところに置いております。これは労働災害のほうから言いますと非常に低いほうでございます。ただし、最近は三十をもっと下げまして、十ガンマ・パー・リッターというところでスクリーニングにかけております。ですから、そういうふうにわれわれの検査方法もだんだん精密といいますか、安全係数の大きいところへ持っていってやっておりますから、それでデータが違いますと、当然その結論も違うことはあってもいいと思います。それでよろしゅうございますか。
#91
○古寺委員 もう一つ残っておるのですが、いままでの限定された資料で出された鑑別班の結論というものを、今後いろいろまた事実がはっきりした場合には、この結論というものを変更する御意思がおありかどうかということをお尋ねしております。
#92
○高瀬参考人 それは、結論は、意思でもって変更するのじゃないのです。資料によって別の根拠が出てきたならば、当然――これは先ほど言いましたように、自分で自分の意見を後年変更する、自分の師匠の意見を逆転させる。これはわれわれの世界では、当然の常識でございます。別の根拠が出れば別に変わります。
#93
○古寺委員 時間ですから……。
#94
○小林委員長 田畑金光君。
#95
○田畑委員 全くのしろうとでありますので、われわれの理解できる範囲でお尋ねをしたいと思うのでございますが、新聞などの伝うるところによりますと、今回の鑑別診断研究班による本調査というものは、きわめて短い期間で結論が出されていて信憑性に乏しいものである、こういう見方もあるわけであります。しかも、これだけ非常に社会的な関心の深い問題について、研究班が半日の調査で結論を出されたというようなことも聞くわけでありますが、この本調査の前に研究班独自の予備調査などの慎重な処理を踏まれて結論を出されたのであるかどうか。この点をひとつまず承りたいと思います。
#96
○高瀬参考人 わずかの期間ということでございますが、この問題については、班員の多くは、昭和三十八年から取り組んでおります。それから萩野先生になりますと、もうすでに昭和二十年ごろから取り組んでおられます。そうして、その先生方の意見を基礎にして私どもは最終の結論を出すのでございます。ですから、この予備調査といいますと、それは全部われわれのディスカッションがこの基礎になっておるわけでございます。そうして私は、昭和三十八年以来文部省の班長、四十四年以来厚生省のほうののこの鑑別診断の班長でございますが、それがわれわれの知識としては全部予備調査と言ってもいいくらいに私は考えるのでございますが、ただ中村さんの問題に対しては、これは出てきた資料をそのまま全部私どもは信用しております。それでそのデータによりまして、従来からのそれぞれ知識のある方が集まって討論をしていただいた、こういうわけでございます。
#97
○田畑委員 先ほどの質問の中でも明確にこれは御答弁がございましたが、今回のこの鑑別診断班が結論を出されるまでにはいろいろ内部に意見もあったようなことを聞いておるのでございますが、最終的には全員一致であった、こういうことでありますが、その点あらためてもう一度承りたいと思うわけであります。
 と申しますことは、これは特にイタイイタイ病の権威者である萩野博士も参加されて、萩野博士もこの見解には賛成された、こういう御答弁でございますが、たしか中村さんについては、急性カドミウムの中毒症で、新型のイタイイタイ病である、こういうようなことを萩野博士がかつて語られた、こういうことも伝えられておるわけでありまするし、また小林教授は、中村さんについて分析の結果、脱灰症状あるいは骨軟化症の症状を持っていた、こういうようなことなども言われておりまするが、こういう点について臨床学の立場からどのようにお考えになっておるのか。また研究班としては、これらの問題についてどういう論議の経過を経て、意思の統一、意見の一致を見たのであるか。この辺もお聞かせをいただきたいと思います。
#98
○高瀬参考人 研究班の中に内紛があったということでございますが、これはどういうことか、実態は私にはわかりませんが、これは学会でも、研究班でも、われわれの常識としては、議論をする場合にはもう白熱的な議論をやります。ほとんどつかみ合わんばかりの議論をやります。これはもう常識になっております。ですから、それを内紛ととられますというと、ちょっと心外かと思うのでございます。これは学会なんかをごらんになるとおわかりだろうと思いますが、非常な猛烈な見解でお互いにやります。しかし、それが終わりますというと、別に、和気あいあいたるものでございます。ただ私どもは、学問に対して白熱的になるわけでございます。
 それから亜急性カドミウム中毒ですか、こういうものが労働組合の文書の中に出ておるということを初めて知りました。そしてあの班会議の当日もそれが問題になりまして、いかなるカテゴリーのものを亜急性カドミウム中毒かということで、これも白熱的な論議がかわされました。最終的に申し上げますと、これは、萩野先生はあれは雑談である、こういう結論でございます。ですから特別の根拠はないということでございます。私はそうとっております。
 それからもう一つは小林教授が脱灰現象が起こっておるからイタイイタイである。これは私は反対でございます。脱灰現象はこれはだれでも起こります。脱灰現象が起こった、イコールイタイイタイ、こういう簡単な形でものごとが解決されれば非常に簡単でございますが、イタイイタイはそうでなしに骨軟化というものがありまして、そこに類骨組織というものが証明できなければ、われわれは診断をつけられぬと思います。先ほども痛いという問題が問題になりましたのですが、痛いというものは、これは本人が感ずることでございまして、実際は、はずかしいことでございますが、医者は痛いというものを客観的にはかるものさしを持っておりません。非常にこれは困難なことでございます。医者の不勉強だろうと思うのですが……。
#99
○田畑委員 じん臓ならじん臓を灰にして分析をする、そういう場合に、やはりその組織を組成する構成部分の違いによっても分析値は違ってくる、こういうようなことを聞くわけでございまするが、小林教授が二二、〇〇〇PPMと、こう発表されておるわけで、これは午後小林教授にお尋ねするわけでありまするが、最高なのか、あるいは平均値をさしておるのか、その辺がつまびらかでないのでございまするが、研究班としては、この点はどのような理解の上に立って結論をまとめられたのか、この点を承りたいと思います。
#100
○高瀬参考人 組織の部分によって差がある、これは当然でありまして、普通じん臓をはかりますというと、少なくも二カ所、髄質と皮質に分けてはかっておるのが普通でございます。ただし小林教授のデータでは、じん臓とあるだけでございまして、どこだかこれはわかりません。
 それからこれが最高であるかという問題でございますが、私はこれにはちょっとお答えできません。最高であるかもしれませんし、ないかもしれません。これから今後どういうデータが出てくるかということでございますが、特に私どもは今度厚生省に要請して、これからいろいろな病気でなくなった人の臓器のカドミウムを詳細にはかってもらうという計画を進めております。それによってものが言えるかと思うのでございますが、いままではあまりに資料が少ないわけであります。そういう成績がそろいますというと、あるいは最高であるのか、最高に近いのか、あるいは平均値であるのかという問題が議論せられるだろうと思います。
#101
○田畑委員 班長さんはじめお医者さんの研究班でありまするから、私はこう考えるのでありますが、この中村さんの遺体を出されたときの立ち会いとして、国鉄の新鶴見鉄道診療所の久保田所長が参加しておられるわけでありますが、久保田所長もこれはお医者さんであるわけであります。せめて研究班が久保田所長のお話をじかに聞いて、そうして検討されることぐらいはできなかったのかどうか、こういうことを私は疑問に思っておるわけであります。ことに久保田所長の談話によれば、これは私は新聞の記事を参考にして申し上げるわけでありますが、臓器の腐敗はほとんど見られなかった。あまりきれいな遺体が残っているのでびっくりした。棺の内部は清潔であった、こういうようなことも語っておられるわけです。また小林教授は、切り口が桃色であざやかであった、こういうことを臓器について言っておられるわけでありまするが、臨床医学者の立場から見まして、こういう見解についてどのようにお考えになっておるのか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
#102
○高瀬参考人 それでございますが、先ほどから何べんも申し上げますように、清潔という場合、あるいは何でございますか、切り口が赤かったというのですか、実は常識である写真がないのでございます。それともう一つは、内臓が清新であったというわけでございましょうか、肝臓は青紫色で厚さ約一センチに萎縮しておる。厚さ十数センチあるものが一センチくらいに変化しておるのでございますが、じん臓でも約七センチ、四センチ、二・五センチということでございますから、かなり小さくなっておると思います。ただ惜しいことには写真と重量がないのでございます。それがあると、私どもはもう少しものが言えるものではないかと思っております。
#103
○田畑委員 時間が参りましたので、最後にもう一つだけお尋ねをいたしますが、これは私、この間の社会労働委員会でも、労働省でございましたか、労働安全衛生の関係で質問をしたわけでありますが、二月の十五日に群馬の労働基準局が安中製錬所を抜き打ち検査をした。監督官が十二名で抜き打ち検査をやっておるわけでありますが、この検査の結果、群馬大学が、群馬大学も参加して調査しておりますが、この群馬大学の調査の結果についてでございますが、中村さんの作業所を復元した。六尺施盤六百二十回転、一立方メートル当たりカドミの飛散量が四・七ないし六・二マイクログラム。これは日本産業衛生協会とか、アメリカの衛生専門官の回答で示されている数字からすればカドミは非常に低い数値である。ただし、これは一部の調査の結果が結論として出ておるだけで、全容については明らかではない、こういうようなことが、この間の社労で私の質問に対し労働省から答えておりますが、ここで私がお尋ねしたいことは、この中村さんの病気というものは、粉じんや粉末吸飲によるいわゆる呼吸器系統からきた急性の中毒症である、こういうようなことなどを小林教授が述べておられますが、やはりこういう問題については臨床医学者として医家の皆さんの意見というものがまた権威のあるものだと考えておりますので、この程度のカドミ発生の職場から、あるいは三年足らずの作業期間でございまするが、急性中毒症などが出たような事例があるのかどうか、この点について、単に日本だけでなく広く世界の事例等についてあればお教えをいただきたい。また先生の見解を承りたいわけです。
#104
○高瀬参考人 コミッティ・オン・スレッショールド・リミット・バリューズという、これはアメリカのでございますが、それによりますと、工場では〇・〇五から一・四ミリグラム・パー・立米、その範囲内では異常がない、ヒュームなり、じんあいでございますが、そういうふうなのがございます。ところが安中のほうでは六マイクログラムというのが出ております。一方はミリグラムでございます。全く雲泥の差でございます。ですから、この工場の安全基準から申しますというとあの値ではほとんど問題がないかと、これは想像でございますが……。
#105
○小林委員長 米原昶君。
#106
○米原委員 時間もあまりありませんし、同僚委員が私の聞きたい点もかなり聞きましたから、できるだけ重複を避けて簡単に質問いたします。ただ、医学の専門的な知識はほとんどありません。ただ、一般の人が非常に今度の結果については何とも割り切れないような感じを持っておるわけであります。簡単明瞭に一般の人にわかるように話していただきたいと思います。
 私は公明新聞で読んだのですが、小林教授が公明新聞の三月十日付に発表した厚生省研究班に対する反論が出ております。この反論を見ますと、厚生省に知らせた分析結果には生試料から灰がどのくらいとれたかというデータも含まれていろとあります。じん臓の場合一・二四%の灰がとれたといっておりますが、公明新聞二月一日付に発表されている小林教授のデータには生試料についてのデータは含まれておりません。厚生省環境衛生局公害部公害課の二月八日付の「安中市における中村登子さんの遺体カドミウム検出について」という文書は、公明新聞の二月一日付のデータだけをもとにして議論しているように思います。厚生省は小林教授に分析データ等の資料を送付してくれるように依頼しているようですが、あなたは小林教授の別の詳細なデータを見ておられますか。もし見ておられるのであれば、それには生試料についてのデータが含まれていますか。そのデータを公表していただきたいのであります。
#107
○高瀬参考人 小林教授が厚生省へ御報告なさった別の詳細なデータというものは、あるのかないのか私は見ておりません、どこに発表されたか、実は不勉強で……。よろしいですか。できれば、教えていただきたい。
#108
○米原委員 わかりました。いいです。
 では、その点は小林教授がそういうふうに言っておられるのを聞いたのです。そういうのを持っておられるのかどうかということを聞いたわけで、御存じなければそれでいいです。
 その次は、先ほど島本委員からお尋ねがあったのだけれども、答えていられないので、この点もう一度はっきり聞きたいのです。尿たん白を検出する場合に、カドミウム患者の尿にトリクロル酢酸を使ってたん白が検出されるのに、ズルフォサリチル酸では全く検出されないということがあり得るのかどうかということです。中村登子さんの場合、この想定に該当すると思いますが、どうでしょうか。
#109
○高瀬参考人 その先に、私どもはすべて活字になった資料を根拠にしております。談話というものは、この場合検討の対象にしない、これはあやふやでございますから、そういうことでございます。それは前でございますが……。
 それから尿たん白の場合でございますが、ズルフォサリチル酸によるか、TCAによるか、マスとして異常をひっかける場合に、私どもはTCAというものを使っておりますのでございますが、ズルフォサリチル酸ではまれには出ないこともあると思います。しかし、この場合は九回検査方法が記載されただけで、六回、七回ですか、そういう連続した検査がございますので、そのつど出ないということになりますというと、私どもはそれにある程度の信頼をおくわけでございます。
#110
○米原委員 いや、いまお聞きしたのは、トリクロル酢酸を使ってたん白が検出されるのに、ズルフォサリチル酸では全く検出されない、こういうことがあり得るわけですか。
#111
○高瀬参考人 それはこの前のあれでは議論の対象になっておりませんでした。それはあると思います。しかし、一回の検査というものでやる場合には、これはいろいろなことがあると思います。連続数回の検査がいずれも陰性ということでありますから、私どもはその成績を信用したということでございます。
#112
○米原委員 どうもそういうのでは、私たちしろうとにはほんとうに事実に基づいたというふうに思えなくなりますね。
 それで、もう一つ聞きたいのですが、厚生省の研究班のほうでは、小林教授のカドミウムの分析結果は、死後長期間を経た遺体についてのものだから、評価の対象にならないというふうにもうきめつけておられます。はたして一般的にそう言えるのかどうか、そういう根拠や実例があるのかどうかという点も、ごく簡単でいいですから、はっきりさせてください。
#113
○高瀬参考人 一般的には剖検をしましてすぐホルマリンにつけて保存した材料、それでやってもなまからすぐとったのとは成績が違うというデータが出ております。ですから、死後たちましたものを生前に換算して検討をするということは私はできません。
#114
○米原委員 つまり、一般的にはそういうことはもう全然根拠にならないというふうにおっしゃるわけですか。一般的にはそういうことは正しくないのだ、一般的な議論としては、そうおっしゃるわけですか。
#115
○高瀬参考人 どうも言葉が足りませんで……。
 もしもその間の変化が具体的につかめますならば、それは対象になります。何がどれだけ変化したということがわかりますというと、当然評価の対象になり得ると思います。
#116
○米原委員 簡単ですが、研究班、今回の調査によって、先ほどからの説明を聞いていますと、一体どういう調査計画を立てて調査に当たられたのか私はよくわからないのです。何を発見するためにあすこに行かれたのか、スケジュールや目的、こういうものはどういうところにあったのか。先ほどからも議論にありますが、新聞報道に出ておるところを見ましても、製錬所の所長の説明を三十分聞いて工場視察は四十分、これで十分だというわけですね。ほかからいままで出ておる資料を見られただけ。当然しろうととして考えるのは、疑点があったら小林教授とも協議して一つ一つ解明して結論を出すべきなのに、協議もしないうちに否定的な見解をぽんと発表されておる。そして研究班が伊香保温泉で討議されて結論を出されたというのですが、現在公害に対する政治姿勢ということが問題になっておるときにどうもその結論というものが、私たちしろうとが考えると、もちろん小林教授の見解が全部正しいという結論をいま私たち持っているわけじゃございません。科学的にはもっといろいろな点を明確にしなければいけないでしょう、おそらく。そういう点からすれば、今度の意見の相違が出ておるわけですけれども、これを水かけ論に終わらせてはならないと思うのです。この際双方とも学問的な検討にたえる詳細なデータを公表して、学術討議で明確な結論を出してほしいと思う。このことこそ、今日のような不幸を二度と繰り返さない前提だと思うのです。そういう点についてどうお考えになりますか、最後にお聞きしたいと思います。
#117
○高瀬参考人 たいへんいい御意見でございますが、実は公開で一度研究会を開こうという考えを私は持っております。ただし、班員の中には、それに反対の方もおります。私はできれば近い将来に公開で研究会をやりたい、できれば四月ないし五月という予定にして、この衛生協会のほうでございますかそこへ申し込んでこの具体的な案をつくってくれるということを依頼しております。ですからわれわれは先ほども言いましたように、別な新しい根拠が出れば別の結論になる、なり得るということはこれは当然あり得ることでございます。もしも資料がそれだけ、現在のものでございましたらこれより何ほどの発展があろうかということはこれは疑問に思っておりますが、そういうふうな資料がございましたらなるべく私なりあるいはこの班員なりにお知らせしていただきたいものでございます。(「完全な基礎をどこに置くかが問題だ」と呼ぶ者あり)ですから、完全なものというのは、御本人がなくなっておられますのでこれはちょっと無理かと思いますが、なるべくその完全を期するということは、これは大事なことでございますから、そういう意味で、談話というようなことでなしに、できれば活字になったものがあれば、私どもはそれをどんどん採用していきたい。私どもはさきに言いましたように、ただ学問だけを対象としておりますので、社会学というものはどうもふえてでございますし、わかりません。たいへん御無礼なことを言ったかもしれませんが、そういう点でお許し願いたいのでございますが、私どもの性格といいますか、特に大学におる者は確実なデータを、ですから学会でしゃべったということじゃ、われわれはこれをデータとしておりませんので、しゃべったことが活字になって初めてデータとして採用される、これはわれわれの常識でございまして、なるべく活字になったものを、私どもも不勉強でございますから、あるいは忙しくて朝から晩までこういうことをやっておりませんので、そういう点で抜けることはあるかと思います。そういう活字になったものがございましたらどうぞお示しを願いたいのでございます。
#118
○米原委員 時間が参りましたからこれでやめますけれども、学者としてそういうふうにいろいろなデータを詳細に検討してやるのだという態度はもちろんそうでなくちゃならぬと思うのですが、それだけに、ああいうようなデータが十分でないと思えるような結論を早急に発表するということは、これは企業サイドに立ったんだというふうに見られてもやむを得ないと思う。今後は慎重な態度をとっていただきたいということを申し述べまして私の質問を終わります。
#119
○小林委員長 これにて高瀬参考人からの意見の聴取は終わりました。
  この際、高瀬参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 高瀬参考人には御多用中のところ長時間にわたりまして貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
#120
○小林委員長 ただいま御出席の参考人は岡山大学教授小林純君でございます。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 本委員会におきましては産業公害対策樹立のため調査を進めておりますが、群馬県安中市におけるカドミウム公害問題について忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げます。
 なお、参考人の意見の開陳は、おおむね二十分以内といたしまして、あとは委員の質疑の際にお答えくださるようお願い申し上げます。
 それでは、小林参考人にお願いいたします。
#121
○小林参考人 私、岡山大学の小林でございます。
 この前の私が分析いたしました安中の中村登子さんの分析のことにつきまして、私に意見を述べるようにというお話でしたので、ただいまその私の見解を述べさせていただきます。
 まず、中村登子さんというのは、御承知のとおり二十八歳の女性でありまして、そしてお墓は製錬所から大体一キロぐらい離れました農地の中にあります小高いところにあったようです。その墓地に、二メートル以上の非常に深い、私ども普通で考えるよりは非常に深いところに葬られておりましたし、私は現場に立ち合いませんでしたが、土は相当乾燥しておった状態だというふうに聞いております。で、私は部屋におりましてこの切り取られましたサンプルを拝見したわけですが、非常にきれいでした。私は、一年以上も土の中で埋まっている方ですから、相当いたんでいるんじゃないかと思っておったわけでありますが、登子さんの内臓、肝臓もじん臓も、非常に新鮮そのものでありました。私、実はびっくりしたわけであります。切り口はピンク色といいますか肉色をしておりまして、全然腐ったりなんかした部分はございませんでした。ちゃんと生のような、非常にしっかりとした状態で私の部屋まで持ってこられたわけであります。ですから、一部で伝えられておりますように、臓器が腐っておったというような事実は全然ございません。そういうことで、まず非常に、意外と新鮮であったということを申し上げます。どうしてそんなに新鮮に保たれておったのかということは私よくはわかりませんが、たとえば最近カキやいろいろな果物類が時期はずれまで炭酸ガスの中に貯蔵されておる場合がございます。全く半年から、炭酸ガスの中で、何ともならないで新鮮な状態で貯蔵されております。ちょうど何かの作用によりまして、非常に深い乾燥した土の中にありました関係で、たまたま腐らないで保存されたんだというふうに私は受け取っております。
 それから、分析いたしますのに、まず生の試料を一定量はかり取りまして、そしてそれを百度で乾燥いたします。時間をかけて乾燥いたしますと、水分が蒸発いたしまして、乾燥物が残ります。そのときの水分の量をまず測定します。つまり乾燥物の量をてんびんではかりますと、減っただけが水分の量になります。それから今度はそれを四百五十度の電気炉に入れまして、一昼夜、二十四時間かけまして焼きます。これが非常に高い温度をかけますと、カドミウムは御承知のように気散いたしますから、なるべくくすべ焼きに近い状態で、カドミウムが逃げないようにと思いまして、四百五十度という比較的低い温度で長時間かけて灰にいたします。そしてその灰の量を再びてんびんではかったわけでございます。そういたしますと、水分の量がわかりますし、それからまた乾燥物の量もわかります。それから乾燥物の中に入っておった有機物の量、つまり焼いたときに減りました量はこれは有機物に相当いたしますから、有機物の量がわかります。それからまた無機物、つまり残った灰が最終的に無機物として残りますから、この無機物の量もみなわかります。そして、それぞれのパーセント、比率を求めてみますと、大体アメリカのシュレーダーが発表しております新鮮な人体の内臓の平均値、非常にたくさんの人体をシュレーダーとティプトンの二人は分析しておりますので、その平均値と比べますと、平均値と非常によく一致しております。ですから、科学的の分析にいたします材料としましては、全く異常がなかった。特に無機物質でありますカドミウム、こういった重金属の分析には何ら異常のない試料であったということがいえるわけであります。病気が何であったかというようなことを解剖によって突きとめようとするような場合には、もちろんこの組織がちょっとでもいたみ、細胞の形がくずれたりしますと、病気がわからなくなりますから、いわゆる病院で行ないます病理解剖のときにもこれはもちろん新鮮な材料でなければわからなくなってしまいます。少しでもいためば、もはやその病気は何であったか、どこの組織がおかされておったかということは、肉眼的にも顕微鏡的にもわからなくなるおそれがありますが、しかし、このように重金属とか、そのほかの無機物質は、そういうことに全然左右されないでちゃんと残ります。ですからたとえ腐ったり、ミイラになって乾燥しようとも、その重金属の量は全然死んだ直後と何ら変わることはないはずであります。それから、かりに、もしも万一お腹の中が腐ったといたしますならば、内臓はもうどろどろになります。そして黒くなってしまいまして、液体の、どろのような状態になってしまいます。それは魚やいろいろな動物が死んだ内臓をごらんになってもそうです。腐った場合はそのようになります。そうしますと今度はじん臓もほかの内臓も一緒くたになってしまいます。そうしますと、私が分析しましたようにじん臓だけが二二、〇〇〇PPMで、ほかの臓器は数百PPMである、こういうようなことは起き得なくなってまいりまして、全体がまざり合いまして低い値になってしまう。じん臓だけが二二、〇〇〇PPMというものは出てこなくなります。それからまたかりに墓地のどろや土がまざったといたしますならば、このどろは一メートルも掘れば一PPMぐらいしかカドミウムを含んでおりませんので、こういった土なんかが遺体にまざりましたら当然二二、〇〇〇PPMというのは非常に薄められてまいります。ですから、厚生省が発表なさっておられますように、非常に古くなったり腐ったりあるいはどろがまざったりというようなことは否定されるわけであります。もしもそういうふうに腐ったりどろがまざって、なお二二、〇〇〇PPMあったといたしましたならば、これは生前はもっと高かった、逆の結果になってくるわけであります。
 それから分析方法につきましては、これは厚生省へも大体私のほうで報告してあります。先ほど申しましたように生のサンプルの前例をとりまして乾燥して、そうして水分をはかり、それから四百五十度で灰にしまして、それからその灰を酸に溶かしまして、それから実は酸に溶かしただけでなくてもう少し有機物、つまりカーボンが残っているように見えましたので、硝酸や過塩素酸を使いまして十分に焼き切りまして、十分な灰にして、それからこれはいま現在の標準分析法と考えられておりますジチゾンという試薬を使いましてカドミウムや亜鉛なんかを抽出いたしまして、そうしてさらに抽出された金属を原子吸光分析装置にかけて測定したわけであります。これは最近そういう装置ができまして、非常に簡単にカドミウムの分析ができるようになったのであります。人体や農作物、どろなんかのカドミウムの分析は、私は昭和三十四年からいたしております。だれよりも早くからカドミウムの分析を手がけておりますし、それからまた富山のイタイイタイ病の患者を分析しましてカドミウムが大量にあるということを見つけ出したのも私であります。ですから、カドミウムの分析にかけましては、こういう原子吸光のような便利な機械ができる前、非常に分析が困難であった時代から私は手がけた経験を持っておりますから、現在二二、〇〇〇PPMということについては絶対の自信を持っております。
 初めデータが出ましたときに、ほかの臓器は別といたしまして、じん臓から二二、〇〇〇という値が出ました。非常に高いと私は思いました。高過ぎるのではないかというふうに考えました。もしか計算が途中で違っているんじゃないかというようなことも疑ってみました。それで分析者をかえまして、また別の二人の分析者に別々にその分析をやり直してもらいました。クロスチェックしたのでありますが、二二、〇〇〇PPMという値は絶対に狂いがないということがはっきりとわかったのであります。
 先ほども申しましたのですが、私は電気炉で灰にするときのしかたがまだ不完全で、少し有機物、カーボンが残っておった。もしもティプトンがやっているくらい――ティプトンという人は乾燥物から灰が平均して四・六%ですか、いまはっきり覚えておりませんが、ティプトンはわりあいに灰が少なくとれたということは、十分電気炉で焼いて完全な灰にした、私のほうでは灰が五・三%とれたということは、ちょっとカーボンが残っておった。もしもこれをティプトンと同じようにもうちょっと十分に灰化しておったら、おそらく三〇、〇〇〇PPMという値が出た。灰の中のカドミウムの量は三〇、〇〇〇になったであろうと思われます。そういうぐあいに有機物が少し残っておるものですから、あとで硝酸や過塩素酸で焼き切っておりますが、その焼き切る前の灰に対するPPMが二二、四〇〇PPMであったわけであります。
 それから厚生省から開かれました文書は、二回にわたってきております。
 第一回目は、臓器別、それからその臓器別の名前、それから分析に用いた各臓器のどういう部分をとったか、それからまた各臓器が損壊または腐敗した状態をA、B、Cで示せとか、あるいは生の重量や灰の重量、それから今度は生重量中のカドミウムや亜鉛の定量値だとか、いろいろなことを聞いてこられましたのですが、その中で、切り取った部分とか、大きさ、そういったものは解剖に当たられました久保田先生が解剖所見として厚生省に報告されております。ですからこのいたみ方、そういったことは全部久保田先生から報告されておりますので、私はこの各臓器から出ました分析のデータに必要あるいは参考となると考えます数字だけを全部回答いたしました。生の中に幾ら、灰の中に幾らありましたと、各臓器別にお答えをいたしたわけであります。
 それから、そうしますとそれを受け取った、それじゃ次に今度はこういうことを知らしてくれというようなことがありまして、たとえば肺やじん臓は片一方しかとっておらぬじゃないか、そうすれば片一方はまだ残っているのかというようなことも聞いてこられましたが、これは久保田先生から御回答されておるんでして、私はその墓地に立ち会っておりませんから、私が答える筋合いのものではない。
 それから試料が全部私の手元で灰にされて分析に使用されたというが、その灰が少し残っておらないかというような質問もございました。しかしながら、これは中村登子さんの両親の意向で、娘の遺体の分析は私だけにしてほしいという希望が最初からございました。まだ独身の娘のからだをいろいろな人にたらい回しにしてほしくないというのは、これは当然の希望だと考えました。ですから、厚生省から求められましたときにはすでにそういう試料は残っておらなかったわけであります。
 それで今度は、そのまた同じ二回目の質問状の中に、生の材料は幾らあったのかというようなことを聞いてこられておったわけでありますが、これは久保田先生から、おおよそじん臓や肝臓やいろいろな臓器をこのようにしてこのぐらいの大きさのものを切り取った、こういうことがはっきりと伝えてありまして、たとえばじん臓ですと、皮質の部分と髄質の部分でカドミウムの分布状態が違います。ですから久保田先生のほうでは、この皮質から髄質を貫通しまして、つまり表から背中の側に貫通して、そしてこういうふうにじん臓は切り取ってあるということを久保田先生から厚生省へ報告してありました。ですから、決してそのじん臓のカドミウムが濃いと思われるような偏在した場所だけを切り取ったものではなく、貫通して表から裏に通して切り取ったものであります。ですからその試料中にカドミウムが偏在したところをねらったというような意図は一切ございません。当然均一な試料をとったということであります。ですから私が生の材料を何グラムとったかということを、私が回答しなかった、だからおまえのデータは信用ならぬということは、これは全然話にならないのであります。
 私どもが申しますPPMあるいはパーセント、もっとわかりやすくいえばパーセント。一〇、〇〇〇PPMが一%ですから、これは濃度をさしておるわけです。ですからもとの試料が何グラムであったかということは関係ないわけです。お米の中からかりにとんでもない、五PPMというカドミウムが出たというときに、そのお米が一升であったか二升であったかということは関係ないわけです。実際の分析には五グラムか十グラム使って、そしてパーセントとかPPMという値を出すわけであります。いままで厚生省が安中その他いろいろなところで調査なさいました成績表を見ましても、とりましたどろやお米や農作物や、いろいろなものを何グラムずつもともと採取したかということは一切記録がしてありません。ですから、もしも私が、そのもとの試料の重さを言わなければ信用ならぬとおっしゃるのであれば、厚生省のいままで発表なさったデータはすべて信用できないということをいっていることになると思います。ですから生試料の全量を回答しなかったというだけでPPM、濃度が信用ならぬということは全く問題外でございます。
 私の時間が参りましたそうですので、ここで御質問にお答えする形でお話し申し上げたいと思います。
#122
○小林委員長 以上で小林参考人の意見の陳述を終わりました。
    ―――――――――――――
#123
○小林委員長 これより小林参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のお申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
#124
○林(義)委員 きょうは小林先生に来ていただきましてお話を聞くことになっておりますが、私もこの問題非常にむずかしい問題で、たいへんな社会的な大問題になっていると同時に、学問的にもいろいろとやっていかなくちゃならぬ問題です。私は、小林先生の「水の健康診断」という本でございますが、これが出ましてさっそくに読ませていただきました。先生が長年にわたって勉強しておられる非常な御苦心の結果、ほんとうに長い間ほとんど孤独の立場においてやっておられたという点に対しまして、私心から敬意を表したいと思います。先生は特にカドミウムの問題を中心にして書いておられますが、そのほかにも稲の問題であるとかノリの問題であるとか、いろいろな点につきましての先生の御見解、この中で非常によくわかりました。私も非常に益するところがあったと思って感謝しております。
 きょうはあまり党派的な話ではなくて、少し学問的な話、もう少しはっきり具体的な話を追及していきたいと思います。それでないと、この問題いろいろと政治的な判断あるいは思惑に基づいた判断をいたしますと非常に困ることになりますので、私はそういった点から純客観的な話を詰めていく必要があるだろう。私は政治家ですから、やはり場合によっては政治的ないろいろな判断をすることもありますが、本日はそういうことを抜きにして、先生からほんとうに真実はこうだということをぜひ話していただきたいと思います。なお、時間があまり実はないようでございますので、私も質問は簡単にいたしますが、小林先生もぜひ簡単に要領よくお答えいただきたいことをまずお願いしたいと思います。
 いまもお話ございましたが、小林先生のところに送られてきたじん臓のサンプルはピンク色をしたものであって、非常に新鮮であったというお話でございます。ところが久保田先生の解剖所見のほうを見ますとそうはなっていない。たとえば肝臓の問題につきましても、右じんの「割面は僅かに赤味を帯びた淡青紫色であった。」こういうふうにしてございます。淡青紫色というのは紫がかったような色でございまして、先生からピンク色であった、新鮮なものであったというふうなお話がございましたが、ちょっとこれはあまりにも表現が違う。先生がごらんになるのと久保田先生がごらんになるのとだいぶ違うので、なぜそういうことになったのだろう。
 なお、解剖所見のあとに、最後に「岡山大学中島助手がドライアイスの入った容器に入れて岡山に持ち帰った、」こういうふうなお話でございますが、一体ドライアイスで持ち帰るその途中で何かそういうふうな異変が起きるものなのかどうか、その辺を一ぺんお尋ねしたいと思います。
#125
○小林参考人 実は色の問題について御質問なんですが、実際腐っておれば色は黒くなります。大体内臓が腐りますと、もうべとべとになりまして黒くなっちゃいます。久保田先生は、切り口はたしか赤味を帯びていた、しかし表面は紫色に見えたとおっしゃっているのじゃないかと思うのですが、とにかく私どもわりあいに色彩については科学的に測定したわけではなくて、紫色といっても赤紫の場合もありますし、どうして色彩についてそうなったか。これは肉眼で見た、科学的にはかった色じゃないわけです。ですから色が少々久保田先生と私とで違って見たといっても、久保田先生は現場でごらんになった、私は実験室で持ち帰られたものを見ましたので、私はとにかく切り口はピンク色あるいは肉色という、ハムのようなああいう色の受け取り方をしております。
#126
○林(義)委員 どうもそこが、特に肝臓の問題につきましてもずいぶん違いますし、右じん臓につきましても、「表面は青色を帯びた黄褐色で、ほぼ原形をとどめていた。この右腎を」、云々「割面は僅かに赤味を帯びた淡青紫色であった。」こういうふうに書いてありますが、その辺がどうも私ははっきりわからないのですが、その辺は先生にお尋ねしません。あとでまた厚生省なり何なりに聞いてみたいと思っておりますが、その辺に一つ問題があることと、実は週刊文春の三月八日号に出ておったのですが、昨年相当前から何か発掘の計画があったというお話でございますが、先生、その辺について、相当前から何か話があったということは御存じでございますか。
#127
○小林参考人 私は実は昨年のしまいごろ、登子さんのおかあさんから、実はうちの墓地を掘るという話が出ているんだけれども、ほんとうにあなたが分析してくださるんでしょうか、それともうそなんでしょうかといって問い合わせがありました。それで実は私ちょうどそのとき留守でして、助教授の森井ふじさんという女の人ですが、その方が、いや、私のほうで分析いたしますということをお返事したことがありますのと、それからことしの正月の初めごろに、掘りましょうということについてお打ち合わせしたことはございます。
#128
○林(義)委員 週刊文春の記事によりますと、何か昨年の十一月に発掘して解剖を一月にやったというようなことが出ておるのです。どうもそういうことはちょっと常識的に考えられない。特にお寺の中で、墓地の中でやったわけでしょう。ですから、掘り上げてきてすぐに解剖しないとおかしいことですが、何かその辺は少し究明しておく必要があるだろうと思いますが、その辺は先生、究明することについてどうですかということです。
#129
○小林参考人 私はこの問題については、一切直接タッチしておりませんので……。
#130
○林(義)委員 はい、わかりました。
 それでは、実は先ほどの色の問題に返りますが、解剖のときには遺体の状況とか臓器の状況をあとの記録として残しておかれることは常識であろう、先ほどほかの先生にお聞きしたのですが、初歩的な常識であるというようなお話でございましたが、そういったときの写真をとっておられないかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
#131
○小林参考人 実は私はこういう大きな問題になると初めから予想してなかったわけでして、また二〇、〇〇〇PPMが出ることも予想しておりませんで、もの好きなお仕事のお手伝いというくらいのつもりでしたから、実際のところ、そんなに証拠写真をとるとかという気持ちは初めはなかった。二〇、〇〇〇PPMが出て初めてびっくりしたような次第ですので、何も写真とかそういうものをとっておりません。
#132
○林(義)委員 それからさっきの公述の中にございましたけれども、各臓器の重量の問題でございますが、これは自分のところで重量を出して厚生省に送るというお話でございますが、当然パーセンテージ、PPMという形で比率を出しておられるわけですから、分子と分母がなければ出ないわけですね。ですから先生のところにはその重量というものはお持ちなんでございますか。
#133
○小林参考人 もちろんそうです。
#134
○林(義)委員 ですから、それはできましたらこの委員会に資料を出していただくわけにはいかないだろうかということでございます。
#135
○小林参考人 私はどうしてその試料の重さが必要なのか、大体解剖した方がこのくらいのかたまりをとりましたと書いておるわけです〇一番少ない試料でも四十グラム近くあったと思います。もっと多いのもありました。ですから解剖としては、シュレーダーなんかがやっているのはもっとサンプルは小さいですよ。私どもはずっと大きい、均一な部分がとれたと思っております。ですから、シュレーダーのサンプルに比べれば、ずっと大きな部分をとったことは確実で、ですからそれをお聞きになってみても、とにかく私が先ほど言いましたように、濃い部分も薄い部分も貫通してサンプルがとってある。ですから均一ですし、非常に少量過ぎて針の先ほどしかとらなくて、そこがたまたま濃かったということはないということは、先ほどから申し上げたとおりです。
#136
○林(義)委員 実は、その辺がどうもいろいろと問題になっているようでありますし、できましたらそういう資料も、当然のことですから、分子と分母がなかったらパーセントは出ないのですから、先生のほうからすればあるいはそんなものは必要じゃないじゃないかということかもしれないけれども、先生の本の中にも書いてあります。何か鉱毒説をやられるときに一ぺんは負けたんだ、そのときには必要な条件は出したけれども十分条件でなかった、こう書いてありますね。ですからやはり十分条件というようなかっこうで出していただいたほうが私はいいと思うのですが、どうしても先生がお出しにならないというなら、これはまたあとでお話ししたいと思いますが……。
#137
○小林参考人 いまのお話は全くのしろうと談義で、分析をする以上は、みなもとのサンプルの重さをはかって、そして出てきた重金属のミリグラム数をはかって計算をして、PPMなりパーセントを出すわけです。そうであれば、シュレーダーもそんなものは出しておりません。ティプトンも出しておりません。それから厚生省自身もいままでどろの分析も米の分析も、すべてお米を何升とって出てきたとは何も書いてないわけです。なぜそういうことにおこだわりになるか私にはわからないから御回答してないわけです。
#138
○林(義)委員 ほかの問題に移ります。
 臓器の中のカドミウム分析をされるにあたりまして、クロスチェックを当然やらなくちゃいかぬと私は思うのです。クロスチェックをやるということにつきましては、小林先生も全く同意見だろうと思うのです。この本の中にもそういうふうに書いてありますし、いろいろな形で研究しなくちゃならぬ。それで一体どういうふうな形でクロンチェックをおやりになったのか。さっきのお話では先生の分析の方法、これもたいへんにむずかしい方法だそうでございまして、先生がわざわざアメリカに行って勉強してこられた、こういうふうなお話ですが、前処理の段階がありますね。それから原子吸光分光光度法ですか、そういうのがあります。それから湿式灰化法というのがあります。大ざっぱにいいましてその三つの分析方法があると思うのですけれども、その三つについてどういうふうな形でクロスチェックをおやりになったのかということが第一点。
 それからもう一つは、分析でございますから、これは私、全くしろうとで申しわけないのですが、分析をやれば当然誤差というものはあるだろうと思うのです。この分析の一般的な誤差の範囲というのはどのくらいなのか。それから三人でクロスチェックをおやりになったとすれば、三人の先生方の数値がどのくらいになっているのか、その辺の数字をお示しいただきたいと思います。
#139
○小林参考人 私の部屋は、実は昔から分析に非常に力を入れてきたということは、私の本をごらんいただきますとわかります。私は分析で生きてきて、分析で人がやってこなかったことを開発してここまで到達してきたわけであります。ですから私は、とにかく重金属の分析についてはだれにも負けない自信を持っております。それで私の部屋は、それに書いておるように、私だけが分析をやってきただけじゃない。現在助教授の人も、京都大学の分析化学の部屋で長年、ほとんど生涯を過ごしてきた人です。それからまたクロスチェックに参加した別の方も、岡山大学の理学部の化学を卒業し、大学院も出て、それから私の部屋で数年間分析に従事してきた人ですから、これはもう絶対にしろうとがやったのではありません。しかも私がそこでカドミウムの検出が非常にむずかしかったと書いておりますのは、スペクトログラフ法と申しまして、現在は原子吸光といって非常に簡単な装置が出ておりますが、その当時はそういう簡単な装置がなくて、非常な苦労をしたことをここで書いてあるわけです。ですから、その当時にイタイイタイ病患者からカドミウムを見つけ、だれにもできないことを見つけ出したわけです。その後分析方法はどんどん進歩しておりますが、私どもはだれよりも早く、どこよりも早く原子吸光をジャーレルアッシというアメリカの会社ですがそこのを入れて使っておるわけです。こういうことになりますと、いまのように二二、〇〇〇などということになりますと、だれがやってもそんなに違いません。たとえば、パーセントが非常に少ないのを――原子吸光の最適濃度というものがあるわけです。装置の最適濃度があるわけです。それより非常に薄いところを無理してその機械ではかったりする場合は誤差が出ます。しかし、こういうぐあいに非常に濃度が高いときは非常に分析がやりやすい。だれがやっても同じ値が出ます。もちろん三けた目はかわりますよ。この機械の性能の範囲においてかわります。だけれども、こういうぐあいに非常に濃度が高い場合は分析が楽です。だからたとえば内臓に〇・三PPMとか〇・二PPMだとか非常に少ない場合は困難が伴います。個人誤差が伴います。だけれども、含有量がこんなに多くなれば、その灰をどなたがやってもほぼ同じ値が出ます。ですから二二、〇〇〇が狂うことは絶対にございません。
#140
○林(義)委員 いまお話がありましたのは、例のまん中の原子吸光分析装置というやつだと思うのです。前処理の段階と、それからあとの、何といいますか、硝酸か何かで焼くやつですね、その方法と、それぞれもやはりいろいろと誤差が出るだろうと思うのです。やはり先生さっきお話しになったように、前処理の段階だって四百五十度の熱で一昼夜かけて焼くのだ、こういうことになりますと、これはせとものを焼くときだって、相当にいろいろのものが出てきますからね。常識的に考えると、そこでも非常に誤差が出てくるのじゃないかと思うのです。そういったものの段階でも誤差が出てくる。それからいろんな人の作業によって違いが出てくる。それからまん中の本体の操作におきましては、これは先生のいまのお話のように、あまり誤差が出てこない、百の単位での誤差だろう、こういうお話でございます。あとの段階の湿式灰化法の問題、この辺でもやはり相当に誤差が出てくるのじゃないか。これは、私しろうとですからなにしておきたいのですけれども、そういった点はどうですか。
#141
○小林参考人 これは初めから申しましたとおり、私最初からこんな高い値を期待していなかった、何ら私の意図は入っておらないということを申し上げておきます。これはもうほんとうに私もちょっと余興のようなつもりでお引き受けして、あまり高い値が出たのでびっくりしたので、ちっとも私の手かげん、さじかげんは入っておりません。その点は十分お含み置き願いたいと思います。
 それから焼き方は、乾式というのは電気炉で焼くから乾式です。湿式と申しますのは、硝酸やなんかを使って煮沸して焼きますから湿式と申します。湿式のほうはカドミウムが逃げないのです。温度が低いですから、百度余りで加熱しますから、カドミウムなんか逃げないのです。有機物を完全に除きます。乾式というのは、温度をかけますから、うっかりしたら、安中の煙突からカドミウムが逃げたように、逃げやすい。だから電気炉ではちょっと手前でやめた。あとは硝酸で焼き切りました。しかし硝酸で焼いたら灰の量が測定できないのです。溶けてしまいますから、重さがわからない。だから乾式で電気炉で焼いたときの灰をはかりました。それから今度はもう硝酸なんかで焼き切ってすぐ分析に使っているから、その灰に対するカドミウムの二二、〇〇〇PPMというのは、電気炉で焼いたまだ不完全な状態に対する二二、〇〇〇PPMしかはかれなかったということです。ですから、もしも電気炉でもうちょっと完全に灰化しておけば、あるいは三〇、〇〇〇PPMになったかもしれないというお話を申し上げたわけです。
#142
○林(義)委員 その辺まだたくさん質問もしたいのです。はっきりわからない点がありますが、実は時間も、予鈴も鳴っているようでございますので……。
 お尋ねしたいのですが、中村さんと一緒にカドミウム箔製造作業をやっておられたところからカドミウム中毒症は全くないということもいわれております。それから骨にカドミウムの蓄積が少なかったということについて、先生は一体どういうようにこの問題をお考えになるか。何かさっきも先生おっしゃったように、道楽といっては語弊があるけれども、ちょっとやってみようと思ってやったところが、たいへんなものが出たということでございまして、ほかの人のところには、実はそういった症状というのはあまり出てないというような点もあるようでございますが、その辺につきましては、先生はどういうふうにお考えでございますか。あるいはその質問はすべき問題ではないかもしれませんけれども……。
#143
○小林参考人 私は御承知のように分析屋でして、公害関係の分析によって私の自信のあるところだけしかその本にも書いてないわけで、病気の問題については触れてないわけです。ですから、これは誤差もあったでしょう。個人的な相違もあったでしょうし、抵抗力とか、いろいろな相違もあったかもしれませんし、あるいは登子さんのほうがより一そう熱心に旋盤をいじったかもしれないし、そこら辺私には何ともわかりかねますので、ただこういうデータが出たということを私は自信を持ってお答えするだけです。
#144
○林(義)委員 「水の健康診断」の八六ページに、先生が一ぺん学会でやったのだけれどもとうとう負けちゃったという話がありますね。それから一〇七ページに先生がとうとう四十年の三十五回日本衛生学会総会において、私が鉱毒否定説を論破した、こういうふうに書いてあるのです。先生のお考えからしますと、カドミウム中毒というものは一体どういうものであるかというのをごく簡単にお話しいただけませんか。論破したということだけ書いてあって、どういったものがカドミウム中毒かということが書いてないものですから、ちょっとおそれ入ります。
#145
○小林参考人 八六ページの負けたというのは私が負けたというのじゃないわけです。私はこの当時大いに証明実験をやっておったわけです。萩野先生が私の分析したイタイイタイ病の患者からカドミウムがたくさん出たというデータを持ち出して、論争して負けたということを申し上げているので、実はカドミウムがたくさん出たから直ちにそれがイタイイタイ病の原因であるというのは飛躍である。カドミウムによってほんとうに骨が溶けるのかどうか、そこまで突きとめないで、ただカドミウムが人体から出たからイタイイタイ病の原因だと萩野さんがおやりになったから、それで負けたということがここに書いてある。それで私は、それでは科学的にまだ証明が足らない、どうしてもカドミウムが骨を溶かすということを証明しなければならない。そこでネズミにカドミウムを与えたわけです。えさに少量ずつ入れて与えました。そうしたらネズミの骨が溶け出した。というのは、骨はカルシウムと燐が主成分ですから、骨が溶ければ溶けたのは当然ふんか尿に出ていくはずだ。食ったえさの中のカルシウムよりは、ふんや尿に出たカルシウムのほうが多いはずですね。それをネズミを二百二十五匹使って四年半かかっています。そうやって冷暖房のついた部屋で、これはたいへんなアメリカの金をもらってやったわけですが、たいへんな実験です。そうしてふん尿を一匹ごとに、一週間ごとに分析して、カルシウムの出方を調べたら、食ったよりは非常にたくさんのカルシウムが出た。それはカドミウムを与えたときに限って、亜鉛や鉛のときはそうならなかった。したがって、骨を溶かしたのはカドミウムが犯人である。だから、カドミウムを食べれば骨が溶けるということはもう事実だ。そういうことが私の証明の一つになっておるわけですね。
 それから、そのほかに稲の公害を私は農林省時代に昭和十八年に調べておる。稲の公害は、戦争中で鉱山が大乱掘をして、排水処理が一番悪かった時期ですね。このときの稲の被害とイタイイタイ病の患者の発生した場所とが完全に一致した。これも一つの証明になって、結局原因が一つであったということがいえる。
 それから第三番目としては、ほかのカドミウム汚染地区でも患者がおるということで、長崎県の対馬へ萩野さんをお連れして見てもらったところが、ほんの少数ではあるけれども、患者がおった。
 こういうことを証明して、その三つの実験結果と、それからまたイタイイタイ病が発生した地区の水田の泥や農作物、それから患者の中に非常にたくさんのカドミウムがあった、そういうことなどを総合いたしまして、科学的な証明をして、それで論争をして学会で勝ったということをここで書いておるわけです。お読みいただけば御理解いただけると思います。
#146
○林(義)委員 先生のお考えは、カドミウム中毒というものは骨の中にたまる。さっきの高瀬先生のお話を聞くと、じん臓に対していろいろなにがある、こういうふうな話でございまして、どうも骨にたまるというような話だとちょっと違う学説だと思うのですけれども、そういった点が一つ問題があるのじゃないかと思うのです。この辺またやりますと時間もないし、だいぶ時間がないというお話ですから、私はやめておきます。
 最後に聞いておきたいのは、ティプトンの分析した五十七歳の京都の婦人の方で一九、五〇〇PPMという人について、何か肝臓障害があったということが判明したということを言っておられますが、さっきもちょっと問題になったのですが、一体京都の御婦人はじん臓障害があったのかどんかはっきりわからないというような話がありますが、その辺先生がお調べになっておられるものがあればちょっと教えていただきたいと思います。
#147
○小林参考人 この方は、京都大学の内科の刈米先生、いまおやめになっていらっしゃる先生らしいのですが、刈米先生のお部屋でしばらく入院しておって、それからなくなって、それから遺族の希望によって解剖されまして、じん臓障害があった。ここにちゃんとその解剖された先生の所見がございますので、それから内科の先生の所見ももっと詳しいのがありますので、それをごらんいただきますと、かなり長い前からじん臓が悪かったということがわかります。ネフローゼというのですか、それからじん砂があったとか、いろいろ書いてございまして、じん臓障害があったわけでございます。それは確実です。
#148
○小林委員長 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#149
○小林委員長 速記を続けてください。
 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後一時一分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時五分開議
#150
○小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 小林参考人に対する質疑を続行いたします。島本虎三君。
#151
○島本委員 きょうは、小林先生、忙しいところわざわざ参考人として御出席くださいまして、日ごろ先生の研究家としての態度に心から敬意を表しております。
 なお、きょうは、私ども自分らの経験を通じ、いま問題になっておりますイタイイタイ病とカドミウムの中毒患者、この問題等につきまして、具体的にお伺いしたいと思うわけでありますので、ひとつ先生の、――医者でもございませんけれども、いままで一生懸命に公害に取っ組んでおった者であるということで、ひとつわかるようにお知らせ願いたい、こういうふうに思うわけであります。
 まず、先生にお伺いしたいのは、先生は、かつてイタイイタイ病及びカドミウムの中毒患者鑑別診断研究班の一人だった、もとその班員だったということを聞いておったのでございます。いまこの結論に対して、双方ともに御意見の開陳を願うことに相なったわけなのでありますけれども、先生は以前班員であって、いまそうじゃない、この辺に何か一つのいきさつがあるのでございましょうか。まず、その辺から先生にお伺いしたいと思うのであります。
#152
○小林参考人 ちょっとそのお答えを申し上げます前に、先ほど倉敷へ電話いたしまして、私の研究所でじん臓の生重量がずいぶん問題になっている、実は申し上げる分析は、あれは濃度ですから、生重量は、何にも問題はないと思って私はお答えしなかったわけですけれども、電話で調べてもらいました。その結果、三十三・九一一グラムであったということを申し上げておきます。ですから、それから計算していけば、生重量から今度灰が幾らとれ、そうしてカドミウムが幾らとれたということは、厚生省に差しあげた報告書から全部わかるはずであります。それから、ほかの臓器、肝臓なんか、もっとたくさんとってありますが、じん臓は三十三・九一一グラムでありましたことを申し上げておきます。別に何にも隠す必要はありません。このことは、どうしてお聞きになるのか、何でこだわられるのか、私どもふしぎに思っておったわけです。せっかくそういうお尋ねでしたから、お答え申し上げます。
 ただいまイタイイタイ病とカドミウムについて、私が昔厚生省の委員ではなかったか、こういう御質問がございました。事実そうなんです。厚生省に公害課ができましたのは、昭和三十九年のことであります。その当時は、まだ公害問題がやかましくなかった。公害課のお仕事もひまそうに見えておった当時です。その年の十一月ごろに、私は公害課へ、イタイイタイ病というのが富山にあって、これは神岡鉱山から流したカドミウム公害だということを、私の研究結果を幻灯によりまして、ずっと説明いたしました。そこに杉山課長補佐という方がおられまして、その方に詳しく説明いたしましたら、課長補佐はびっくりいたしまして、イタイイタイ病のことも何も御存じない様子でして、あなたの言うお話はよくわかった、しかしながら、そのあなたの言うのは、金へんの、鉱山の鉱の字を書いた鉱毒である、それから自分の公害課の看板は、公の字を書いた公害課という看板がおれの部屋にかかっているのだ、それで、おまえの言う鉱毒は、おれの部屋の扱う公害だろうかという御質問が出ました。そういう時代があったわけです。
 杉山課長補佐は非常に熱心な方でして、それから直ちに現場に見にいかれ帰ってこられまして、年が明けましてから、おまえを委員にしてひとつこの問題を研究するということで、微量金属の人体に及ぼす影響だったか、ちょっと会の名前を忘れましたのですが、鉱山による微量金属が人体に及ぼす影響とか、そういうような会合になったわけです。その鑑別診断という名前じゃなくて、そういうことで私を委員にしてくださって――ただし神岡鉱山とイタイイタイ病との関係は、厚生省としてはあまり問題が大きくて賠償金がからむので手をつけることはできない。しかしながら、ほかの似たような鉱山地区に同じような患者がおるかどうかを調べよう。それについては明らかにその鉱山による鉱毒を調べるということは全然隠して、秘密にして老人病を調べるということで長崎県の対馬と――私が「水の健康診断」というこの本を岩波書店から百五十円で出しておりますが、これの一一三ページからそのことが、ずっといきさつが出ておりますから、お読みいただけば時間が節約になると思うのですが、そういうようなことで私は委員としまして二年間、もっと続いたんですが、とにかく二年間はほかの鉱山を調べた。それから四十二年度において園田大臣のころ、とうとう神岡鉱山の鉱毒じゃないかということを正面切って調べまして、それから四十三年の五月に園田大臣の声明になる、こういうようないきさつがありまして、それからその後に安中の調査なんかやりまして、そのころは私も当然委員として参加いたしておりました。
 で、安中においては煙の汚染が非常にひどい。神通川の場合は川水の汚染だけれども、安中の場合は煙の汚染だということを委員会でも発言してまいったんですが、四十四年の三月に至りまして厚生省では見解を発表なさいました。神通川地区の住民に比べれば安中の人たちのカドミウムの摂取量は五分の一にすぎない、だから直ちにイタイイタイ病が発生するおそれはないというようなことの見解を発表されました。そのときから私と意見が食い違ってまいりまして、それから私に対しては厚生省からは音信不通になってしまったわけです。それから、まあ結局一方的に音信不通になりまして、今度来ました音信は、この中村登子さんについての音信が来ただけでございます。
 そういうことでまあ厚生省と見解が、安中では煙による汚染を考えたら安中の人のほうがカドミウムの摂取量は現在の神通川流域の人たちよりも多いんだ、厚生省の五分の一というのは、神通川流域のカドミウム汚染を過大評価しておる、安中のほうを過小評価しておるということを、私は実際の分析データに基づきまして参議院の産業公害対策特別委員会において述べたわけでありまして、厚生省の間違いを指摘してきたわけでございます。それ以後厚生省からは縁を切られたわけでございます。
#153
○島本委員 よくわかりました。それではそういうような意味で厳正にひとつ御批判賜わりたいと思います。
 この報告書、これは「安中市故中村登子氏遺体カドミウム検出問題について」というこの研究班からの報告書、これ先生お読みになっておられると思います。この報告書が出てから現地では意外に混乱しておる。したがって、本日の先生をはじめとしてのいわゆる参考人の意見の開陳、これはまことに重要なんでございまして、私も先生の研究態度にはふだんから心から敬意を表しておるものでありますけれども、あわせてこの報告書が出された、これに対する先生の忌憚のない御意見を賜わりたいと思います。
#154
○小林参考人 この出されました報告書は、最近私ほかのほうを通じましていただいております。一とおり目は通しました。いろいろ矛盾な点があります。科学的に考えてみましてどうも納得のいかない点がございます。それはまあいろいろの新聞なんかにも一部報道されておると思います。たとえば二〇、〇〇〇PPMというじん臓中のカドミウムというのは正常な範囲の最高限度である、こういうようなことが厚生省のこの発表にうたってあるらしい。ですけれどもこの一九、五〇〇PPM、これがシュレーダーやティプトンが分析しましたおそらく最高の値である。世界最高の値であったと思われるわけです。それを今度安中の登子さんの二二、四〇〇PPMが抜いたわけですから、一応現在までに分析されたデータでは最高の値が出た。
 ところが厚生省においては、その一九、五〇〇PPMというのがすでにシュレーダーらによって分析されている、だから正常な範囲内の最高限度である、こういう発言をされておる。ところが一九、五〇〇PPMというのは私のほうではちゃんと調べてございます。それは京都府に住んでおった女性でありまして、五十七歳で死にまして、そしてちょうどシュレーダーが日本にやってこられました。日本人の人体を分析用にもらい集めるために昭和三十二年にシュレーダーが日本に参りまして、そのときに私はシュレーダーと帝国ホテルで会いまして、カドミウムの話を伺ったことも私の先ほど申しました本に出ておるとおりなんです。そのときシュレーダーは京都と東京と千葉とで合計たしか二十六人分の内臓をもらって帰りましたか、あるいはティプトンに送るかいたしております。小さなびんに詰めて内臓を送っておるわけです。
 その成績によりますと、京都で解剖された解剖番号が八三〇九、この人は藤坂さんという人なんですが、女性でいま言いましたように五十七歳でじん臓に一九、五〇〇PPMそれからその藤坂さんのじん臓の亜鉛は二七、〇〇〇PPMと出ております。それからほかにも一〇、〇〇〇PPMをこす人がございます。それから肝臓では一番高いのは二八、〇〇〇PPMという人がおります。これも京都で解剖された男の人です。そのようにしまして、日本の二十六人分の分析値から見ますと、日本人にはカドミウムなんかが非常に多い、外国の平均に比べまして、特にアメリカの非常にたくさんの分析値に比べまして非常に多いというデータが出ております。
 その間藤坂ぎんさんを解剖されました先生の解剖所見がちゃんと京都大学の記録になっておりますので、私は京都大学の記録のコピーをいただいております。それからさらにまたこの方は京都大学の刈米先生という先生について内科にしばらく入院しておられました。その刈米先生の所見もまた私のほうでコピーが全部とってございます。
 それによって見ますと、この一九、五〇〇P、PMという方は、これは結論として、いろいろな内臓についての所見が出ておりますが、じん臓につきましては「うっ血、細尿管上皮の混濁、一部腫脹、空胞化、崩壊している。集合管のじん砂が散見されている。ネフローゼの像である。」そういうふうにじん臓につきまして書いてございます。それからじん臓や肝臓、甲状腺、副じんが萎縮しておったということ。それから右のじん臓にじんう結石が見られたということもありますし、それから胃腸の慢性炎があったとか、いろいろなことが出ております。
 ですからこの人は正常でなかった。じん臓、内臓が正常でなかった。にもかかわらず厚生省ではそういった一九、五〇〇PPMの人のその生前の環境とか病状、そういったものを全くお調べにならないで、目下アメリカのシュレーダーのほうへそれを照会中であるというふうにお書きになって、そしてそれは正常人であったというふうに決断が下されておるわけであります。ですから厚生省の、まだ照会中であってその人がどういう病気の人であったか何にもわからないうちに、これは正常な範囲の最高限度である、だから登子さんの値は正常範囲であるというような推定を下されておるわけであります。これは一例であります。
 ですから今度の場合、私どもが大学でやったその分析値と、それから町の医者ないしは鉱山側のお医者さんが見た所見と比べて、そのお医者さんの意見にばかり従って結論をお出しになり、私に何らの意見もお尋ねにならなかったということは、むしろ大学を信用しないで町医者を信用し、あるいは企業側の医者を私以上に信用されたのではないか、こういうような感じもするわけであります。私としましては、もう少し登子さんの病状なんかにつきまして――病気の原因は全くわからない。わかるのは、小林のデータの間違いだけがわかるのだ、こういうような結論をお出しになったことに対しまして、私は非常に不満に感じております。
#155
○島本委員 私も前からちょっと調べまして、その点疑問でございます。それで先生のほうから厚生省に一応「群馬県安中市中村登子氏遺体臓器中カドミウム等重金属のデータについて」という報告書が出ているのであります。この内容等についてもいろいろ専門的にわたるのでありますけれども、これは臓器の重量をはかっていないという点、内臓の所見だけであるという点、病理的所見がないという点、骨をとってほしいものであるという点、この四点にわたって先ほどいろいろな御意見の開陳があったわけでございます。それは御承知のように高瀬参考人からであります。それでわれわれも、もしそうであるならば先生が考えているような貴重なデータと厚生省が要求されるデータとどこかで一致さして、はっきりした点の究明ができないものであるかという点を先ほどから考えておったわけであります。しかし、これによりますと、なかなか困難なようなのでございます。しかしながら、一方はあると言い、一方はないと言い、こういうようなことでは私ははっきりしないと思うのであります。それで、先生の貴重なデータ、日ごろのいろいろな御研さん、こういうようなものとあわせて、カドミウムをはじめとして公害の排除のために今後役立つのであるならばこういうような論争もまことに貴重な結果を招来するものであると思います。したがって、資料をお互いに公開して、あるいは求めに応じては公開論争をして、ここに明らかにすることが今後の日本の、ことにカドミウムの問題についての解決の一助になるのではなかろうか、いまこういうように思ったわけであります。これは今後のためにまことに貴重であろうかと思いますが、先生この点についての御意見を賜わりたいと存じます。
#156
○小林参考人 私は、カドミウムにつきまして、もちろん医者でありませんから医学的なことはしろうとでございますが、しかしながら、カドミウム公害あるいはその住民たちが住んでいる周囲の環境のカドミウム公害、こういうことに関しましては自分の専門であり、また私はそういうことはだれにも劣らないつもりでおります。ですから、厚生省のいろいろのカドミウム汚染とか、それによって起きる病気の会議、そういったものには私どもも当然参加させるべきであるというように私は考えております。
 スウェーデンのカドミウム公害で非常に有名なフリーベルグ教授、ピスカドール教授、お二人が去年の秋私の部屋に見えまして、一日費やして私の研究をスライドによって説明しましたところ、非常に興味を持ちまして、もう汽車に乗る時間がぎりぎりになって、たしか日が暮れてから立たれたのですが、ぎりぎりになるまで討論されまして、私は、実に外国の学者はえらい、非常に科学的に純真な立場で討論する、ディスカッションをやるということに非常に敬服したわけでございます。
 ところが、日本の学者の場合は、横の連絡が全く悪い。ほんとうに純真な意味での科学的な論争をしないで、どうも都合が悪いからこれはオミットする、これは都合がいいから入れるというような、感情あるいは利害といったものがからまっているのじゃないか。もう少し学者は学者らしく、良心によって、ほんとうの科学的な結果だけをお互いに話し合うことができれば、日本のカドミウム公害に限らず、すべての公害論争は非常に進展していくのじゃないかと考えます。
#157
○島本委員 最後に、これは私の疑問であります。
 先ほどの参考人の御意見で、カドミウムを多量に摂取しても身体に影響のないデータもあるというような報告がございました。これはわれわれの考えと逆になるわけでございますが、こういうようなデータがやはりあるのでございましょうか。先生知っておられるならひとつお知らせ願いたいと思います。
#158
○小林参考人 実は、私もちょっと複写したものを拝見したことがございます。黒部市が配布したパンフレットは、カドミウムはおそれるに足りない、何らカドミウムは心配ないというような趣旨のパンフレットのようでございました。私はこういうことは学者がすべきことでないと思います。もちろんパンフレットを配ったのは学者じゃありません。ただその内容が、学者のお話しになったことを書いておられます。ところが私どもは、実際にカドミウムを食べた場合に、内臓でどういうことが起きるかということをはっきりと突きとめた上で、そうしてカドミウムはだいじょうぶだとおっしゃるならば問題ないわけですが、神通川で起きました骨のあのイタイイタイ病、あれだけがカドミウム障害として最後に起きる病気なのであるか、あるいは中村登子さんのように、胃腸その他内臓に非常な大きな痛みを感じるのもカドミウムのせいであるのか、あるいはまたじん臓からたん白が出たりしまして、じん臓障害が出るのがカドミウム中毒であるのか、まだ医学的にカドミウム障害というものは非常にわからない点がたくさんあるわけです。
 それから、特にレントゲンで骨の障害を検診なさっておられますが、レントゲン写真というのは非常に敏感な検出法ではない。骨のカルシウムの大体三〇%くらいが溶け出して初めてレントゲンでようやくわかるのだそうです。これは岡山大学の整形外科の小山教授がいつもおっしゃることですが、三〇%以上、四〇%近くも骨が溶けて初めてレントゲンでわかるのだ、だから一〇%や二〇%の骨がカドミウムによって溶けたってレントゲンでわかりっこないんだ、こういうことになるわけであります。ですからいま厚生省がおやりになっております、骨をレントゲンで見てだいじょうぶだったからカドミウムの心配はないという考え方も、反省する必要がありますし、カドミウムによる障害というものをもう少し総合的に考えて、人体のどういう部分に障害が起きるのか、あるいはまた文献によれば脳下垂体にカドミウムによる障害が起きるとか、あるいは生殖器官に障害が起きるとか、いろいろな文献がございます。ですからそういうことを全部調べ上げ、そうしてまたカドミウムが多い食物を食べたときには、からだへそれだけカドミウムが蓄積してまいりますから、そういう蓄積量というものも発病と関係があるわけですから、そういうすべての点をよく考慮し、すべてが判明した上でカドミウムの心配はないとおっしゃるのであればけっこうですが、いまの状態では、まだカドミウム障害というものはお医者さんのほうでよくわかっておらないように思います。
 それからまたたん白尿が出ないから、直ちにそれをもってカドミウムによるじん臓の障害は全然ないと言い切ることができるかどうか。たとえば外国の文献によりますと、ズルフォサリチル酸、日本の一部の病院なんか使っております、今度登子さんの尿の検出にも使われたのですが、それによって必ずつかまるとは限らないように文献には出ております。ですからズルフォサリチル酸法によって登子さんの尿にたん白を検出されなかったからといって、カドミウムによる障害を全面的に否定するということは間違いであり、登子さんが、内臓のあれだけの苦痛を訴えて長い間わずらい、そして悲観のあまり自殺しておるのですから、そこら辺がカドミウムと関係があったかなかったかを突きとめる必要があったのじゃないか、そうすれば、厚生省の今回の見解は、どうもその病気の原因を全然抜きにして見解が発表された点に、やはり問題点が残っておるような感じがいたします。
#159
○島本委員 では、これでやめます。先生の日ごろの御研さんと今後の御健闘を祈って、私の質問を終わります。
#160
○小林委員長 山口鶴男君。
#161
○山口(鶴)委員 先ほど、じん臓の試料の重量につきまして、三十三・九一一グラム、こういう御発表ございましたが、この御発表と、さらに解剖所見にかかわる部分は、これは久保田所長さんの、いわばお医者さんの側が明らかにすべき問題であるということを言われましたが、そういたしますと、厚生省が二度にわたりまして小林先生の御見解を求めたことにつきましては、三十三・九一一グラムと、それからあとは久保田所長のいわば発表すべき事項ということを含めますと、すべてお答えになっているというふうに了解してよろしゅうございますか。
#162
○小林参考人 そのとおりでございます。
 それから、先ほど申し忘れましたのですが、登子さんはまる十年間この製錬所につとめておる。最初の二年半ぐらいの間が旋盤工をして、カドミウムを箔にしておった。その後は事務員に回されてほかの部屋におったらしいのですから、結局七年以上はほかの仕事をしておった。それでもうだんだん痛みが増してきて、そしてお医者さんに、死ぬる年か、あるいはその前の年に見てもらったら、たん白尿が出ていなかったということになりましたとしましても、だから旋盤工をしていた当時とはずいぶんそこに年代のかけ隔たりがあります。私のサンプルが一年半たっているということをおっしゃる以上は、こういうカドミウムの汚染を一番ひどく受けていたときを全然見ていないで、それから六年も七年もたった後を見て、それじゃ年代的な隔たりのあるということをどうしてお考えにならなかったのか、こういうことも私としては質問をしたくなるところでございます。
#163
○山口(鶴)委員 そこで、小林先生にお尋ねしたいと思うのですが、この中村登子さんの体内に異常に高いカドミウム、また異常に高い亜鉛も検出をされたわけでありますけれども、カドミウムは融点、沸点ともに非常に低い金属でありますが、このカドミウムが、小林先生の言われましたように、一つはこの安中地区、要観察地域に中村さんお住まいだったわけでありますから、当然水や食物からこの体内に摂取されるということは考えられます。
 また、私も実は昭和四十四年三月、厚生省見解が出ました直後、排煙について厚生省が全く触れていないことはおかしいということを、実は委員会で指摘をいたしました。当時の斎藤厚生大臣が、それが落ちていることはまことに申しわけない、今後の調査にこれを加えるということで、答弁をいただいた経過もあるわけでありますが、当然空気中に含まれるカドミウムを摂取したであろうということは考えられる。しかし同時に、これだけの大量のカドミウムが体内に蓄積されたわけでありますから、作業中これが体内に入るということも考えられるわけでございまして、小林先生としては、カドミウムがどういう経路で中村さんの体内に入ったとお考えでございますか。この点、ひとつ御見解を承りたいと思います。
#164
○小林参考人 中村登子さんのお住まいになっていましたうちは、大体製錬所から一キロぐらいというふうに聞いております。ですから、当然これは汚染を受けた農地の中にあったわけです。その辺の農作物がかなり、米にしましてもあるいは野菜にしましても、これはこの煙から落ちてくるわけですから、その畑のほうへも汚染が及びまして、神通川の場合は水からきただけですから、水田だけで済みましたけれども、安中の場合は山の上だってどこだってカドミウムが飛んでいったわけですから、いろいろな野菜やいろいろな農作物が汚染されておる。そうしてまた、それをふだんの呼吸によって吸っていたということは、それはあの辺の地区の住民の方と全く同じ環境であった、そういう意味からも体内へ集積したと思われます。
 そのほかにやはり登子さんはカドミウムの旋盤工であったということは、これはやはり大きな原因の一つになっていただろうと考えます。そうしてわずか二年半で、あれだけ、学校に行っていたときは健康だった人が、からだの異常を訴えて、そうして部屋を変えてもらったということからいたしますと、やはり登子さんはほかの住民以上にカドミウムを鼻から吸ったのだ。それにはやはり旋盤でつくりますときの粉じんか、あるいは何か旋盤が熱を持って――カドミウムというのは少し加熱するとヒュームになって、煙になって、ガスになって出ますから、それを吸うか何かしまして、その二年半の中に相当たまっていった。しかしながら、肺臓にたまったカドミウムというのは、だんだんと血液によって溶かされまして、そうして最終的にはじん臓にたまっていって、そうしてつとめ始めてから十年たって自殺されて、その時点において私が分析したと同じような結果になったわけでございます。ですから、そのときは肺臓の中のカドミウムはかなり減っておったわけですね。いまのように安中の住民が呼吸器障害を訴える人が多いとすれば、当然登子さんもその初期においては呼吸器障害が、あるいは気がついたかっかないか知りませんが、あったのじゃないかと考えられます。
#165
○山口(鶴)委員 私も大体そういう経過ではないかとしろうとながら考えたわけでありますが、小林先生の御見解をいただきましてこの点は了解をいたします。
 さて、そこで先ほど島本委員から、当初小林先生は厚生省の鑑別班にお入りになっておられた。しかし安中、対馬、鶯沢の厚生省見解、昭和四十四年の三月出たわけでありますが、それ以後音信不通になった、こういうお話でありますが、特に先生が安中、対馬、鶯沢、これらの昭和四十四年三月厚生省見解を出しました際に、他の鑑別班の班員の皆さんと意見の対立した点、また厚生省の見解と大きく食い違った点、それから先ほど先生が言われたことの中に、私はきわめて重要な問題があったと思うのですが、それは神通川の場合は、これは鉱山保安法適用企業ですから無過失賠償責任、したがって、これが明らかになると損害補償が大きくなるというお話、心配のことばを役人の方が漏らしておったということを言われたのですが、安中、対馬、鴬沢、これもいずれも鉱山保安法適用の企業でございまして、そういう意味では同じだと思うのですが、そういう意味で損害補償云々というようなことについて、これらの地域についてもお話があったかどうか。神通川と同じようなきわめて遺憾な考え方が漏らされたことがあったのかどうか。この点もあわせてひとつお聞かせをいただきたい。
#166
○小林参考人 厚生省の調査班に私が入っておりました当時、別段班員同士の間で何ら意見の食い違いはありませんでした。特に安中で煙による汚染が相当注目されなければならないということを私が申し上げましたときには、これは昭和四十三年だったでしょうか、そのときには重松班長は爆弾声明だといって非常に喜ばれたわけです。安中の汚染が排水だけではなくて、煙の汚染を調査しなければならないといって、私が野菜なんかの一つのデータを見せましたときに、そういって重松班長は喜ばれたわけでありまして、何ら班の中でその意見の食い違いはなかったわけであります。特にイタイイタイ病の園田声明が出ます前の一年間というものは、みんなもうそれこそ一生懸命で神通川の調査をやったわけです。その間はみんな一致してあの声明にこぎつけたわけです。ですから、何らそこに意見の食い違いはなかったのですが、その後におきまして、だんだん厚生省の橋本公害課長さんの考えが退却していったわけなんでして、それはどういう内部事情があったのか私にはわかりませんが、そのことは私の本の中で「公害行政の後退」ということで書いております。園田大臣のあの声明は政治的発言である、科学的な飛躍であるとかいろんなことをおっしゃいますし、それからまたイタイイタイ病裁判がちょうど四十三年の三月から始まっておりまして、園田大臣の声明は四十三年五月だったと思いますが、それからちょっとあとの四十三年七月ごろにはイタイイタイ病裁判は勝負がつかぬ、どんなに訴訟をやったって勝負がつかぬ、十年戦争をやったってだめだというて私におっしゃいました。私はそんなことはない、カドミウムによって骨が溶けることは私のほうで証明済みです、絶対にそんなことはないというて非常に長い間論争したことがあります。ところが現実においてはもはや訴訟を始めて三年間で富山のイタイイタイ病は結審になっているわけですね。そのように班の内部同士では別段意見の食い違いはなかったけれども、調査班の発表があると、十日か一週間ぐらい後に今度は厚生省見解というのが出てくるわけでして、それを基礎にして厚生省がいろいろと見解を発表されます。その見解の中には今度は私どもが考えもしなかったふうな見解が出てくるわけで、その見解と私とは意見が食い違って、先ほど言いましたような五分の一だ、いやそうじゃない、こういうようなことになりまして、それから私はオミットされたかっこうになったわけです。
#167
○山口(鶴)委員 そうしますと、特に神通川の際のような補償云々という話は安中、鴬沢、対馬の場合はなかった、こう了解してよろしゅうございますか。
 それからついでにいま一つ聞きますが、上田喜一さんという東京歯科大学の教授が、衛生学の方だそうですが、一年五カ月の期間がたっている、そして問題は、遺体がひどく変化を受けたり――まあこれはないということですが、あるいは無機質のナトリウムやカリウムなどが水溶性の形で遺体から外部に出ていたとすればデータは狂ってくるということを言っておられるわけです。小林先生は、乾燥した過程で水分の量、それから焼きましたわけですから、その減量によって無機質、有機質、これについては把握しておられる、こういう先ほどのお話でございましたが、確かに塩化ナトリウムあるいは塩化カリウムというものは非常に水溶性でありますので、遺体からそういった水溶性のものが流れ出して、それがもしかりに判断に影響があるとすれば、この点は一体どうか、その御見解を承りたいと思うわけですが、この点、何といいますか、無機質のバランスを調べれば水溶性のものが出ているか出ていないかはわかる。先生は先ほどシュレーダーの分析結果の比較のお話をされました。物質のバランスはとれておるから問題ないだろうというお話をされたわけですが、そうならば、この水溶性のものが流れ出して幾らかデータに狂いを生じたということはないのではないだろうかと思いますが、念のため、そういう疑問が提出されておりますので、塩化カリウム、塩化ナトリウム等、水溶性のものについて溶け出したおそれというものは、先生の分析結果から一体どうなのかということを……。
#168
○小林参考人 先ほど申しましたようにナトリウム、カリウム、そういう水溶性のものを含めましての無機性分の合計ですね、これはノルマルな値であったということを申しておるわけです。それから御承知のように、じん臓は寝かせた場合は下側になるわけで、わりあいに水溶性のものが、下から上に行くか上から下に行くかそれはわかりませんが、かりに上から下へおりていくものとすればじん臓のほうが下にあるわけです。だからナトリウム、カリウムが減ったとも必ずしも言えない、ふえることさえこれも考えなければいけないわけで、これはちょっと減ったということも言えないし、それからナトリウム、カリウムだけでは灰の中の量を左右する大きな量ではないわけですね。そういういろいろなことからして、これはちょっとまあ話としてはけっこうですけれども、実質的には、だからナトリウムやカリウムはお互いにまざり合うようなことは多少はあったかもしれませんが、しかし、臓器が完全に分離できたということから考えて、そんなに好都合にじん臓からだけナトリウム、カリウムが出るということはちょっと考えられないと思います。
#169
○山口(鶴)委員 最後に一つだけ承っておきたいと思うのですが、実はこの中村さんの死亡がもしカドミウムの原因であるということになれば、当然労災適用ということになるわけであります。しかるに、鑑別班がきわめて急いで否定的な見解をお出しになったわけですが、さらにこれは再検討する用意があると言っておられるわけですが、そこでお尋ねしたいのは、先ほど先生が、去年の暮れに中村さんのお母さんのほうから、教室のほうにお電話があって、この分析を小林先生がやっていただけますかというお話があったということであります。私は思うのですが、もちろん先生はこのカドミウム分析におきましては日本の権威でありまして、私ども疑いをはさむものではありません。ただ結局中村さんの労災適用その他の問題を考えました場合に、できれば厚生省からあまり文句がつかぬような手だてもすることが必要であったのではないだろうかという感じも一面いたすのであります。
 したがいまして、そこでお尋ねしたいのでありますが、やはりクロスチェックということで厚生省もこだわっておるようでありまして、そういった経過からいきまして、また小林先生が厚生省から疎外されていった経過のお話もあったわけでございますが、そういう中で、たとえばこの中村さんのお母さんに対して、資料を私ももちろん分析するけれども、他の機関に委託をしてクロスチェックをしたほうがやはりいいのではないかというような御指導を、先生が電話に出たわけじゃないようでございますが、先生がおったとするならば、そういう御指導をするおつもりがあったかどうか。
 さらに今後この問題を究明いたします場合に、もちろん先生の分析の結果は私ども尊敬するわけでありますが、厚生省等がよけいな口出しをせぬでも済むように、あるいは将来他の機関によるクロスチェックも考えられたらどうかということを、この御遺族の方に対して御助言なさるおつもりというものはございますかどうか、この点を承りまして私の質問を終わっておきたいと思います。
#170
○小林参考人 実はいまお話しのような遠い先まで考えていなかったわけでして、お引き受けいたしますと――中村さんのほうでは私にどうしても分析してほしいという御意向のようでしたし、分析をしてもらえるのかとおっしゃるから、分析をして差し上げますということを申し上げたわけでして、そんなに高い値がそのとき出るなんていうことは夢にも考えていませんから、もちろんサンプルの写真もとらなければ、やってみてびっくりしたような次第です。そしてまたほかの人が入れかわってやってみたわけです。そしてデータが出たからといって、これはやはり私どもとしては学問的なデータでありまして、それを中村さんがそういう労災関係の補償金ですか、そういうものをおもらいになるために自分がデータを出しているということはいま初めて伺って知ったような次第でして、そういういろいろなことまで考えていなかったし、またこういう厚生省から反論が出たり、私がここへ呼ばれたりする、そういうことが起きようとは夢にも考えていないで、ただ、ああいうデータを出しましただけなんです。ですから、その点は情勢というものを私ここまで考えていなかったということを申し上げておきます。私どもとしてはもうこれで十分信用のできるデータを出したんだということで、もう済むんだと思っておったわけです。
 それから先ほど申しましたように、中村さんからは、自分の娘の遺体、しかも若い娘の遺体であるから、ほかの人の手に渡ることをきらっておられたようだということを、先ほど申しましたとおり、私は念頭に置いておったわけです。
#171
○山口(鶴)委員 終わります。
#172
○小林委員長 岡本富夫君。
#173
○岡本委員 先生たいへんお忙しいところ、長時間ありがとうございます。
 私はけさ午前中の高瀬参考人にも申しましたように、再びこうしたところの中村登子さんのような被害者が出ないようにということで学問があろうと思いますので、やはりどうしてもはっきりしたところの究明をしなければならぬということで来ていただいておるわけでございます。
 普通こういった研究班、先生も厚生省のこの研究班に入っていらっしゃったのですが、今度の中村登子さん事件の状態を見ますと、非常なスピードでやっていらっしゃる。わずか一日半あまりの時間で結論を出しているというような状態でありますが、普通こんなむずかしいものをわずかな資料で、要するに小林先生もお呼びにならない、それに反して今度は佐藤というお医者さんあるいはまた会社の嘱託医、こういう人たちには会っているというような片手落ちな姿でもってこうした結論をお出しになったことがいままでございましたでしょうか、その点について……。
#174
○小林参考人 これは、あったと思います。たとえば四十四年の三月二十七日に厚生省がやはり見解を発表されまして、ちょうどその同じ日に私は九州の日本衛生学界総会で、安中の煙によるカドミウムというのは非常に汚染が大きいという例として、桑の葉が煙突からの距離別によってカドミウムの含有量が非常に違うということを発表していた、その同じ日に厚生省は安中の煙の関係を度外視して、そうして神通川に比べたらカドミウムの摂取量は安中のほうは五分の一だというようなことを発表されております。安中の煙は注意しなければならないという発表を九州でしておるちょうど同じ日に、東京においては安中は、煙のほうは全然度外視して、お米だけを分析した結果から、だいじょうぶだ、こういう発表をされております。これがもう私とは全くうらはらの結果になっておるわけでして、今度だけじゃないような気がいたします。
#175
○岡本委員 そこで、私が不審に思いますのは、今度の研究班が中村登子さんの御遺族の方、特におかあさんにお会いになっていない、また当時の症状を日記にたくさん託していらっしゃるのです。腸を五臓を地面に引き出してたたきつける、これが四十年十月、また四十四年には、日ごとに痛み全身に広がり不安カドミウムによる、こういうような歌も出しているのですが、先生はこういった登子さんの日記あるいはまたその当時の症状を、登子さんのおかあさんからお聞きになったことがございましょうか。
#176
○小林参考人 実は私日記や新聞記事なんかでよく拝見したほうなんです。で、腰のあたりとかおなかの中がものすごく痛んで、臓腑を引きずり出して地べたへたたきつけたいという日記が私の記憶に残っておるわけですが、ずいぶん長い間内臓が痛んだらしい。そういうことは、私、もちろん医者ではありませんが、ドイツのバーベルというプロフェッサーであり、ドクターですが、その人が「慢性カドミウム中毒」という総説的な論文を一九五一年に出しておりまして、それを読んでみますと、どうも中村登子さんのように、内臓が非常に痛むという症状、腹痛ですね、そういうものを書いておりました。ですから、もちろん肩甲骨が痛むとか、いろいろなことも出ておりますが、おなかがひどく痛むということもバーベルという人の本に出ております。それからまたたん白尿が必ずしも出るとは限らないというようなことも書いてあります。この人は先ほど申しましたフリーベルグやピスカドールの論文をも引用しておるようで、これは総説として書かれたものです。ですから、私自身はよくわからないわけですが、そういうことも書かれております。中村さんの日記とあわせまして、やはりだからカドミウム中毒の、心配、関係というものもあったのではないかというふうに解釈しております。
#177
○岡本委員 そこで、実は先ほどの参考人の高瀬先生は、小林先生のほうで試料に使ったところのじん臓、このじん臓が一センチに収縮していた、大きなやつが一センチに収縮しておった、だからそういう試験片は信用できないというような意見開陳がありました。久保田先生の所見を見ますと、右じんを約七センチかける四センチかける二・五センチくらいに切除した、ということは、一センチではなかった、もっと大きかったのだということを、ここであらわしておると思うのですが、先生が持って帰ってごらんになったこの右じん臓の資料の厚みというものは、一センチ、そんな薄いものではなかった、ごらんになったんですから、よくおわかりになるでしょう。
#178
○小林参考人 別に厚みをはかっておりませんですが、一センチというのは薄過ぎると私も考えております。先ほど申しましたとおり、あれだけの重量を切り取ったわけでして、一センチといったら――ずいぶんあれだけの重量になると、面積が今度大きくなってくるわけでして、私どもは一センチよりまだ厚かったと思っております。
 それからこれはいまの御質問と関係があるかないかわかりませんが、生に換算しましたら二八〇PPMです。これは大体生から灰が八十分の一ほどとれます。一・二四%だけ灰がとれましたから、つまりなまに換算すれば二二、〇〇〇が大体八十分の一くらいになるわけですね。そうしますと、二八〇PPMという数字になります。そうすれば、一見しまして、二〇、〇〇〇が今度二八〇になれば、非常に薄いような感じがいたしますけれども、これはティプトンやシュレーダーが分析した値も、生に換算すれば数十PPMにしかならないのでありまして、やはり多い点においては全く変わらない。それから生でじん臓中に二八〇PPMということは、神岡鉱山なんかの鉱石中のカドミウムと大体同じ値である。神岡鉱山の鉱石は亜鉛が五%くらい、カドミウムは二百分の一くらいですね、ですから、二五〇PPMくらいしかない。登子さんの生のじん臓が神岡鉱山の鉱石中のカドミウムと匹敵するくらいあったわけです。ですから、これはたいへんな量だと思うわけです。
 それからいまのようにじん臓はとにかく薄くなっていたかもしれませんが、裏、表を通じてずっと切り取ったわけですから、中の部分も外の部分も均等に取って分析されたわけです。
#179
○岡本委員 当時で申しますと、発表された伊香保温泉のときに、相当新聞記者の方々もこの点について突っ込んだらしいのですけれども、大きいやつがぐっと収縮されたものだから非常に濃度が濃いのだというような説明をされて、なるほどそうかというように、間違ったというような意見もございますので、そこで、こうした、先ほどからも再々お話がありましたが、たとえばじん臓が少し収縮しておったということによりましても、決して中の、何といいますか、カドミウムの量というものは、PPMというのはパーセントですが、これは変わらないのかどうか、これは非常にわれわれはしろうとでございますのですが、その点についてもう一度ちょっとわかりやすく……。
#180
○小林参考人 PPMと申しますのは、たびたび申しましたように濃さ、濃度を示しているわけですから、形とは何も関係ないわけです。ですから、収縮しておっても、その収縮したものを分析しまして、水分も、有機物も、無機成分も、カドミウムを全部測定してシュレーダー、ティプトンの値と比べてみれば、水分も、有機物も、無機成分の含有量も、みんなほとんど同じであった。そして、カドミウムはそのように高かったということを申しておるわけでして、じん臓の形が変形しようと、それはカドミウムの濃度とは何にも関係のないことなのです。誤解のないようにひとつお願いをいたします。
#181
○岡本委員 そこで次に、先生も安中にお行きになったと思うのですが、安中の東邦亜鉛で、今度三十分ばかり研究班が会社側からいろいろ話を聞き、それからあと四十分ばかり十万坪の工場の中を視察しているわけでありますが、このカドミウムの現場に中村登子さんが働いていたということは、これはもう否定できない事実だと思うのですが、その間で、一人で部屋に働いていたことがあるのですが、その一人の部屋が先生の二二、四〇〇PPMの発表と同時に会社側は取りこわしている、こういう事実が、われわれは調べておるわけですけれども、それはそれとして、先生がこの工場にお行きになったときに、そういうところをごらんになったり、あるいはまた登子さんが作業をしておったところの旋盤ですか、この旋盤は、前の旋盤はもうないわけでありますが、今度新しい旋盤で再現してみせたというようなことをいいますけれども、こういうところもこの前に安中にお行きになったときにごらんになったかどうか、これをひとつ……。
#182
○小林参考人 私は神岡鉱山には数回、戦争中にも、昭和十八年の鉱毒のときにも参りましたし、それからまた戦後も参りまして、中をよく拝見しましてよく知っておりますが、東邦亜鉛のほうへは一度も中へ入れてもらったことがないわけです。いつももう外を見て、四無作業というでかでかと文字が書いてあるのを遠くから遥拝しただけで、全然中を拝見しておりませんので、いまおっしゃるようなことは私全然わからないのです。
#183
○岡本委員 そこで、先生が厚生省の研究班の中にいらっしゃったころに、群馬県の安中付近のお米をはかったデータを出していらっしゃるのですが、そのお米の数値が土壌と――非常に土壌が高いのに、米の数値が低いというようなことが、先生の本の中にも出ておりましたが、あれはどういうわけでそういうように数値が低いのか、その点についてひとつ……。
#184
○小林参考人 私は昭和三十四年に安中の製錬所によります被害地のお米を分析してカドミウムが一・二〇PPMあるということをすでに分析しております。その三十四年というのはイタイイタイ病の人を分析するより一年前のことでした。ですから、イタイイタイ病というものを全然知らないで、お米のカドミウムを全国的にわたって分析しましたら、群馬県から送られた安中の下流の米に一・二あったのですね。そういうことを知っております。それは昭和三十四年で、まだ東邦亜鉛が非常に小さい製錬所であった時代なんです。そのときにすでに一・二あったわけですね。
 それから、いま言います昭和四十三年に安中の米を厚生省の調査班で採集しまして、そしてクロスチェックして分析したわけです。私はその採集のとき、つまり四十三年のお米の収穫どきに現場へ立ち寄る、こういうことで厚生省の研究班の中では打ち合わせができておったのですが、直前になりまして、私に来てもらっては困るという、班長から電話がありました。切符まで買っておったのを取り消しまして、安中へ行けないことになったのです。そうして四十三年のお米を、とにかく私を除外してほかの人たちがお米を取りまして、そうしてその取ったお米を一応玄米でしたか、精白したか、何か先方でされまして、そうしてクロスチェック用だといって各研究機関へ分けて分析したわけです。ところが、その四十三年のお米は非常にカドミウムが少ないのです。一PPMを当然こしているはずだと思われるところ、つまり水田のどろを分析してみますと、神通川なんかどころじゃない。たしか五〇か六〇PPMの水田のどろがあるのです。にもかかわらず、その同じどろのところで取れたお米が一PPMもないのです。で、とにかくそういう結果が出まして、そうして四十三年度の報告として四十四年度の春研究班はとにかくそのデータを出して、どろの中のカドミウムは意外と多い、非常に多い。調査した地区の中で一番多いけれども、米の中には、意外に安中の場合は少なかった、そういう報告を調査班が出したわけであります。私もそのお米を分析した結果においては確かに低いのです、非常に低かったです。そしてまたその低い結果を基礎として、それから一週間くらいたって、後だったでしょうか、厚生省は、だから安中の人たちの摂取するカドミウム量は神通川より少ないのだ、神通川の米は平均しても一PPMだけれども、安中のは平均したら、〇・四PPMしか米がカドミウムを持っていない。だから、食品からカドミウムを摂取する量は神通川のほうが多いのだ、現在の安中のほうが少ないのだ、しかも、神通川の人たちは、昔神通川に非常にたくさんの高濃度のカドミウムが溶けておって、それを飲んだというて、過去にそんな高濃度はなかったはずなのに、非常に高濃度を推定してつくり上げて、神通川のが五倍だ、安中は五分の一だと、こういう発表をされたわけです。
 ところで、私のほうでその後に安中の農家の人たちからお便所の大小便をつぼから集めまして分析してみますと、神通川の同じ農家、同じ被害地の農家の人たちのつぼから取った大小便に比べて、カドミウムが非常に多い。三倍から多い値が出ました。結局、だから安中のほうがカドミウムの摂取量は神通川より多いのだ、厚生省が五分の一だと言うけれども、実際は多いのだということを突きとめたわけであります。
 それから、厚生省のいま申しました四十三年の米を分析したその翌年の米は、何とそれが一PPMをこえてしまっているわけなんです、四十四年の米は。こえてしまっている。四十三年だけは一PPMより――一番多いのでも一PPMなかった。四十四年になると、それが一PPMをこえてしまって、その結果、四十五年のお米は、田植えはせっかくいたしましたけれども、草刈り機で夏の間に刈り取ってしまった。これは四十四年の米が一PPMをこしているから、どうせ四十五年の米もつくってもだめだということで、草刈り機でもうすっかり稲を刈り取ってしまったわけですね。この製錬所の下側の稲をずっと刈り取ったわけですね。としますと、四十三年の厚生省が調査したときだけは何ゆえか一PPMをこす米が全然一点もなかった。しかもまた三十四年、製錬所が非常に小さかったときにすでに一・二PPMというお米があったわけです。そうしますと、私としては一そうしてまたその四十三年のお米の現場での採集に私が立ち会ってはならぬと言われたことなんかを考えあわせますと、私は何となくふに落ちないものがございます。
#185
○岡本委員 最後に一点だけ。
 それで今度のこうした非常に早い機会に厚生省の研究班が見解を述べておる。私その場に立ち会った人たちにちょっと聞きますと、久保田工場長から何か早く結論を出してくれと言われたというようなこともいわれております、あいさつがあったらしいのですけれども、こういうことを考えますと厚生省が企業寄りではなかろうかと非常に懸念をするわけでありますが、今度の安中のカドミウム公害について厚生省の種々の見解を述べておられることに対して、従来の厚生省の態度ということを勘案されまして先生のその辺の感触を若干お述べいただきたい、こう思うのです。
#186
○小林参考人 ただいま申し上げましたように安中を非常に過小評価した事実がございます。それからまた厚生省の前の公害課長は四十三年の十二月には安中へ行きまして、安中市の広報機関を通じて安中のカドミウム公害は心配要らないということを発表しておられます。そういうようなこともありますし、それからまた私が、四十三年だったでしょうか、単独に部屋の助手を連れて厚生省の調査と無関係に安中へ参りまして、いろいろな農作物を集めて持ち帰って分析したことがございます。そのときに、たまたま私は日曜日にサンプルを集めてすぐ月曜日に帰る予定でしたところ、安中の農業協同組合長がぜひ市長に会ってくれというて、組合長がわざわざ自動車で市役所まで私たちを運んでくれましたので、それでお会いに行きましたところ市長さんは何かいないというお話で、助役さんかどなたかにお会いして一応の経過報告をしました。そこへ群馬県の共産党の議員さんが二人入ってこられまして、私の話を聞いておられました。それから私は帰ったわけです。安中から東京へ帰りまして、東京の宿からすぐ厚生省の公害課のほかの方へちょっとお電話しました。ところが、橋本公害課長があなたに用事があるからと言ったと言われて、受話器を橋本公害課長がとられまして私におっしゃるには、あなたはきょう共産党の議員と一緒に調査行動をされたそうですね。実はあの人たちは企業の妨害をしてきて非常に困っているんだから、ああいう人たちと行動をともにしないでほしい、実は東邦亜鉛の本社、東京にあるんだと思うのですが、本社からそういうふうに人が私のところまでわざわざ言ってきた、だからあなたに忠告します、こう言われるものですから、いやそれは違います。今度の調査は私の研究室の助手を連れていって調査したのでして、調査現場にはそんな他人は一切おりませんでした。市役所、市長室へ行ったときにたまたまそういう人たちが来ただけで、何も関係なかったのです、そういうことを申し上げたのですが、結局、だから市役所へ行ったということがすぐ東邦亜鉛の製錬所のほうへ連絡され、そして本社へ連絡され、本社から公害課長へだれか人が言ったんだなということが推察できるわけでして、何だかえらい厚生省の方が公害企業と結びついているという印象を私は持ったわけであります。
 ずっといままで述べましたその経過なんかをお考えいただきましても、少し厚生省は患者の側に、いわゆる公害によって病気が起きないように特に考慮を払い研究をしていただくのが厚生省のほんとうの職務である。私は昔、農林省の公害担当官をした時代がございますので、私はいつもそう思っております。別に企業をつぶすというのじゃございません。企業に早くから公害が起きないような設備をしてもらい、そして注意してもらって被害を最小限に食いとめて、早く公害をなくし、早くから公害病が起きないようにつとめるのが企業の責任である、私はそう考えておりますから、両方の、被害者にも加害者にもガラス張りで私の行なってきましたことはすべて申し上げてきたつもりでございます。
#187
○小林委員長 古寺宏君。
#188
○古寺委員 ただいまいろいろと先生からお話を承りましたが、生前の診断なり、あるいはまた公害防止がきちんとできておればこういうような問題は発生しなかったでありましょうし、あるいはまた厚生省ももっと積極的にこの問題と取り組んでいれば、こういうような問題は未然に防止できたのではないか、そういうふうに私も感じております。実は安中市の汚染の現状を見ましても、最初から見ますと、もう全市さらには隣の高崎市まで汚染地域が広がっているような実情でございます。これはまことに残念なことではございますが、こういう問題を解決するためにも、きょうはいろいろとまた先生の御意見を承りたいと思うわけでございます。
 今度のカドミウム中毒症鑑別診断研究班が発表しております第四番目に、「遺体諸臓器のカドミウム量については、死後長期間経過後の測定成績であり、現時点においては、評価の対象とすることはむずかしい。」こういうふうに見解を発表いたしておりますが、この点についてはいかがでございましょうか。
#189
○小林参考人 先ほど申し上げましたように、組織解剖をします場合には、もちろん解剖されたその日のうちに目で観察し、また顕微鏡で材料を調べなければ細胞や組織が変化いたします。ですから、それは即時調べる必要があることは当然です。しかしながら、重金属とか無機物というものは、どこへも逃げ隠れしないものでして、永久に保存されるものです。ですから、これはなぜ現時点では評価の対象とされないのか、私はその理由をお尋ねしたいほうなのであります。これは絶対に、腐ろうとミイラになろうと、無機物はどこへも逃げも隠れもしない。そしてまた腐った場合にはじん臓だけが高いということじゃなくて、全体が一緒になって混合してしまいますから、当然値が低くなってまいるわけでありまして、私どものように、じん臓が非常に高い値が出たということは、すなわちじん臓の中のカドミウムがまだ腐らないで完全な状態で保存されておったということを証明していることになるわけであります。ですから、もしそれが古くなっていたんでおっても、なおそういう高い値が出たんだということになりますれば、結局もっと高い値がもとあったということになって、厚生省でおっしゃることとは逆の結果になってしまうわけでございます。
 それから、いまお話が出ましたように、やはり公害の場合は未然に予防する、早期に原因を発見して早期に対策を立てる、こういうことが一番重要でありまして、そういうことをすれば企業としても最小限の経費で済むわけです。一たんこれがイタイイタイ病とか水俣病のような大きな社会問題になりますと、これはたくさんの人が死ぬわけですし、その償いはとても大きなものになって企業を圧迫することになります。しかしながら、最初からそういうものを流さないようにしておったならば、これは非常なわずかな経費で済んだわけです。
 たとえば現在神岡鉱山は大きなダムをつくりまして、そのダムの中へ排水を全部ポンプで送り込んでおります。これを始めてから神通川は実質的にはカドミウムはゼロになっております。もしこれを初めからやっておったら、イタイイタイ病は発生しなかった。完全に、やろうと思えばできたわけなんですね。現在それをやっておるわけです。ですから、結局それを知らないで、たれ流しにして患者が発生し、そうして大きな事故になって、それでようやく原因がわかったものですから、その償いが非常に大きくなった。ですから、これからの工場、企業というものは、やはり公害というものをまず考えて他人に迷惑をかけないように、万全の策を講じていかれる必要があるというわけでして、安中におきましてももし私がカドミウム汚染を見つけ出さなかったならば、安中の被害はまだふえております。あるいはイタイイタイ病が出たかもわかりません。ですから、私が早くそれを予知しまして、早くそれを教えてあげたのですから、私は公害企業からほんとうをいえば被害が軽くて済んだという意味で喜んでもらわなければいけない。それがどうして私がきらわれるのであるか、その理由がわからないわけです。
#190
○古寺委員 そういたしますと、重金属の分析の場合には、そのサンプルは時間が経過しても関係ない、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
#191
○小林参考人 ですから先ほど申し上げましたように、内臓は全部が腐って一緒になってしまえばじん臓だけが高い値を保つことはできない。ほかの周囲の臓器はみんなカドミウムが少ないのですから、一緒になってしまって分けてとることができなくなるわけです。ですから、じん臓からそういう非常な高濃度が出たということは、はっきりと肉眼で見たのもそうだったのですが、じん臓、肝臓、そういった臓器がはっきりともう区別してとることができたからああいう高い値が出たので、ですからこの重金属の量というのは、古いから信用ならぬというお説は全く通らないということを申し上げておるわけです。
#192
○古寺委員 先ほどからのいろいろお話を承っておりますと、先生の測定なさったデータあるいは解剖所見等について、不審な点については鑑別診断研究班のほうからは全然照会がなかった、こういうふうにお聞きしたのでございますが、そうでございましょうか。
#193
○小林参考人 先ほど申しましたように、私のほうとは全く音信不通が何年か続いたわけでありまして、今度登子さんの事件に関しまして公害課長から二通の手紙を受け取っただけです。それは先ほど申しました質問状でありました。答えなかったのは生の重量なんかを答えなかった。あとは大体解剖所見については久保田先生からお答えになっておりますし、それから生重量に対しては幾ら、乾燥重量に対しては幾ら、あるいは灰重量に対しては幾らということはわかるような分析表にして厚生省へお答えしてあります。ですから、そういうやりとりはありましたが、今度の伊香保ですか、そこで会議があるというようなことは私は何にも知りません。呼ばれもいたしませんし、ああいう発表が出ることも何にも知らなかったわけです。
#194
○古寺委員 きょうもちょっと午前中もお話があったのですが、サンプルが灰の状態であるかあるいは生の状態であるかによって数値が違う、こういうようなことをおっしゃる方もいるのですが、そういう点はどうでございましょうか。
#195
○小林参考人 生ということは水分があることです。それから有機物があることです。それから灰もその中にありますね、無機物があるわけです。それから今度は一たん乾燥して水を除き、それからまた有機物を焼いて除きますと灰だけが残ります。その灰というのは、もとの全体からいいますと、さっき言いましたように八十分の一になっております。その中のカドミウムの量は減りもふえてもしていないわけですから、結局生の場合に対してカドミウムは、濃度からいえば灰の中の濃度のほうが八十倍濃くなる。これはもう当然のことです。ですから、灰で比較すれば二二、四〇〇PPMというのがいままでの最高の値でありますし、生にすれば今度は二八〇PPM、つまり八十分の一の濃さに今度は薄くなってまいります。それでもやはりティプトンの成績では数十PPMですから同じことです。高いという点においては全く変わらないことがわかります。
#196
○古寺委員 そうしますと、三月七日の厚生省の見解というのは非常に非科学的な見解である、そういうふうに受け取れるわけでございますが、現在イタイイタイ病の裁判の判決が間近であるということを承っております。この裁判の過程におきまして、厚生省と小林先生の間にいろいろと論争があったようでございますが、その内容についてお聞かせ願いたいと思います。
#197
○小林参考人 実は私はイタイイタイ病の人たちに裁判をなさいということをすすめました。それは昭和四十二年の六月です。ちょうど金沢大学で陸水学会がありまして、そこで私はイタイイタイ病はカドミウム公害だという講演をいたしました。そのあとで富山に参りまして、婦中町のたしか公民館でした。そこでイタイイタイ病患者や遺族の人たちに集まってもらいまして、夕方でしたが、カラースライドをたくさん使いまして、イタイイタイ病はこのとおり神岡鉱山による公害ですということを私の実験の結果をよくわかるようにかみ砕いてお話しました。そうしてあなた方がもしもイタイイタイ病が鉱毒であるということを自分の経験上知っており、またそれをそう信じるのであれば、私は科学的な裏づけは全部責任を持ちます、だから裁判をなさいといって、私は四十二年の六月におすすめしたわけです。
 それで、そのときに皆さん非常に消極的な態度でしたから、私は、もしも裁判に負けたらその経費は全部私が私財をなげうって弁償しますということをはっきり皆さんの前で申し上げております。そのことは、現在あの地区の住民あるいはイタイイタイ病裁判の弁護団たち、そういう事実があったことをよく承知しておられます。それから四十三年の三月ですか、初めて少数の人が裁判に踏み切りました。
 それから園田大臣の声明が先ほど申しましたように四十三年の五月にありました。それから今度四十三年の七月には当時の公害課長と私とで、裁判に私は勝ちます。絶対これだけの科学的な論拠があるのですから勝ちます。骨がカドミウムによって溶けることは実証済みですから、勝ちます。ところが、橋本公害課長は、いやいや、まだもっと詳しい医学的なメカニズムがわかってないから、裁判はどろ沼だ、結局勝負がつかない十年戦争だから和解かなんかしたほうがいい、こういうことで、全然裁判に勝ち目がないということをおっしゃって、四十五分間私はたしか橋本公害課長と論争したわけです。結局もの別れになりました。しかしながら、御承知のようにとうとう裁判を一番最初に始めた人からいっても三年、あとで追加された人たちからいえば、もっと短時日で結審にこぎついたわけです。だから勝負のつかないどろ沼戦争でないということがわかったわけですね。
 こういうふうにどうもいままでの厚生省の姿勢というものは、私はどこまでもガラス張りでやるもんですから、どうも何か厚生省の方はいろいろとお考えがあってお話になっているのだと思いますけれども、私はどこまでも科学的にガラス張りで、とにかく自分がやったことは絶対に正しいという信念のもとにやってきておりますし、それは農林省で昭和十六年公害の担当官になりまして、以来一切そういう精神は曲げたことがないわけです。ですから、いつも企業の側、被害者両方が納得いくように十分に説明をして、そうしていままでにたくさんの公害問題を解決してまいりました。しかしながら、今度のイタイイタイ病、つまりカドミウム公害に関しては、非常に私もてこずりました。こんなにてこずる研究は私初めてで、たいていもうほんの数日で企業と被害者とはどちらも納得して了解してくれました。たとえば福山で起きたシアンによる農作物の被害とか、あるいは岡山県で起きましたニッケルによるメッキ工場の排水ですが、こういうものでも、あるいはそのほかいろいろたくさん扱ってまいりましたが、たいてい短時日の間に解決、済んでおります。しかし、どういうわけか、カドミウム公害というのは天下の四大公害といわれる中で一番企業と厚生省の圧力が私に振りかかってくるような感じがして、ほかの大きな公害、水銀とかそういうものよりもどうもカドミウムは何かしら圧力が非常に私に及んでくるように感じ取っております。
#198
○古寺委員 それから、これももう何べんもお話が出ましたが、一九、五〇〇PPMの藤坂さんという方の測定値と、それから中村登子さんの測定値を比較をいたしておるようでございますが、この点については、先ほど先生からお話がございましたように、正常人ではなかった、健康な人ではなかった、ネフローゼその他のいろいろな症状があった、そういう方を健康人とみなして比較をするということが鑑別診断研究班の中でも行なわれたようでございますが、これは非常に何か調査が不十分である、こういうふうに思われます。
 ところが、一方先生のほうに対しましては、写真とか資料が必要ではないか、こういうこともいわれているわけなんでございますが、こういう点についてはいかがでございましょうか。
#199
○小林参考人 厚生省では、その一九、五〇〇PPM、これをラウンドナンバーでいいますと二〇、〇〇〇PPMですが、それはこの厚生省の発表の一部に書いてあります。注としまして「これらの分析調査対象者の職業歴、死因等について、目下これら研究に関与された国立公衆衛生院山県登放射線衛生学部長を通じ米国へ照会中である。」こういうふうにしてありまして、ですから、一九、五〇〇PPMの人はどういう職歴でありどういう病気で死んだかということがまだ目下照会中である。だから健康な人だということはわかっていない。にもかかわらず、これが正常値であるというふうにもう一方ではきめてしまってあるということは、この調査班がいかに結論を急いだか、いかに結論を先に出したかということが考えられるわけでありまして、早計といわざるを得ない。確かにこの人はじん臓障害があったことがはっきりしているわけですから、それを全然度外視したことは、結論を急ぎ過ぎたのではないかというふうに考えます。
 それから、写真の件ですが、それはいまから考えればカラーフィルムで現物の写真をとっておけばよかったと思います。しかしながら、分析してしまってから二二、〇〇〇が出てしまったわけです。そして、かりにこれがそのときのですと言っても、それは違う写真じゃないかと言われればそれまででもありますし、とにかくそれは、こんなに高い値が出るとはこちらも予想しないことでしたから、証拠物件として写真はとっておりません。
#200
○古寺委員 では時間でございますので終わります。
#201
○小林委員長 田畑金光君。
#202
○田畑委員 小林先生に二、三お尋ねいたしますが、こういうむずかしい問題は、しろうとで、質問自体がなかなかむずかしいのでございますが、ただお話を承って私が感じたことについて二、三お尋ねしたいと思うのでございます。
 教授のお話によれば、中村さんのじん臓にあれだけのカドミが出たということは、大気の汚染であるとか、水であるとか、土壌であるとか、こういう環境によるものが非常に大きかろう、こういうお話でございます。全く同感でございます。そうしますと、そのような土壌の汚染された地下に一年有半ありましたその遺体というのは大気、土壌汚染の影響がないものかどうか。教授のお話によれば、その地域は乾操した土地である、そうしてまた埋めたところが二メートル半、三メートルの非常に深いところにあったので、臓器も非常にきれいであった、こういうお話でございますが、私が現地で、行ってみたところでは、そのお墓は中村さんのうちの近くで、道路からずっと下で、水田のすぐわきで、言うならば私もああいうところに埋葬されていだとすると、これは相当土壌の汚染その他の影響があるなという感じをしろうと目で見たわけであります。前段は環境の汚染を肯定されて、あとの遺体については環境の汚染とは関係ないということでは、いささかしろうとから聞いていても疑問を感ずるわけでありますが、この点についていま一度お考えを承りたいと思います。
#203
○小林参考人 ただいま、なくなって埋葬されましてから後の間に、大気や土壌による汚染あるいは地下水による汚染がなかったか、こういうお話なんですが、これは私自身は現場を知りません。ただ、解剖をされました久保田さんのお話では、土はかわいた状態であった、それから地下水は全然なかったということをおっしゃっております。それから大気の汚染というのは、これは二メートルも下まで大気の汚染は影響しません。安中付近の土を見ますと、大体上の十センチが汚染されています。これは煙からずっとカドミウムや亜鉛が降ってきますから、上の十センチぐらいが――いままで掘りくり返したことがない土の話ですが、上の十センチくらいが一番汚染され、それからその次の二十センチぐらいが汚染されて、三十センチ以下の深いところになりますともう自然状態の量になりましてカドミウム汚染はありません。大体一PPMあるいはそれ以下です。ですから、埋葬されておりました土地も、大体一キロも煙突から距離が離れておりますから、表面は二〇PPMぐらいまでカドミウムがあったかもしれません、しかし、下のほうは一PPMあるいはそれ以下です。そうすれば、どろがまざることによって人体のほうへカドミウムが行くのじゃなくて、どろがまざることによって、そのまざったものを私のほうが分析すれば二二、〇〇〇PPMは出ない、下がってくるわけです。どろのほうが非常に低い、一万分の一か二万分の一しかカドミウムを持っていないのですから、そのどろがからだとまざれば、これは当然分析値は非常に下がってくるはずです。だから、土による汚染があるかないかということは、私ども分析者として一番心配したところです。もしも土が入っていたら、砂でもついていたらえらい値が下がるということで、私どもはだからそれは一番心配しておったわけです。そういうことで不自然な値が出ることは一番心配しておった。それが二二、〇〇〇出たということはどろがまざっていなかったわけでして、もしもこれにどろの汚染があったらこれが下がってしまうわけです。そうだったら二二、〇〇〇よりもほんとうはもっと高かったということになります。それから水なんかによってからだが水浸しになったりしていれば、当然それは腐敗します。それが全然腐敗されていなかった。どういうわけかとにかく私は理由は知りません。よく最近くだものなんかが半年くらい炭酸ガスの中へ貯蔵されて全然いたまないで市販されている状態を考えまして、何かそういうような現象でもあったのじゃないだろうかと想像しております。そういうことで、大気汚染はそんな地下何メートルも届きません。十センチか二十センチまでしか大気汚染は届きません。重金属は粉じんですから、どろの中をくぐって下までは溶けてはまいりません。それは塩や砂糖でしたら溶かしたものをかければ相当下まで行きますけれども、カドミウムのような重金属はそんなに動きません。ですからそういうどろによる汚染は一応なかったと信じております。それは間違いありません。
#204
○田畑委員 けさほどの質問でも参考人にお尋ねをしたわけでありますが、じん臓を分析するについてもこのような組織構成は部分によって、やはりとったところによって分析の結果が違う、こういうようなお話でございましたが、教授が中村さんのじん臓を分析された場合に、何個くらいの試料で、あるいは何回くらいの分析の結果が二二、四〇〇PPMという数字になっておるのか。これは最高値なのか、あるいは平均値なのか、そのあたりをひとつお聞かせを願いたいと思います。
 同時にまたこれは、教授のような権威のある人がおやりなさるだけに、人体を発掘してその臓器を調べられるような場合は、われわれしろうとから見ると少なくとも写真ぐらいはとっておいて、これは学会に発表され、一般の国民に公開されることでありましょうから、そういう用意周到な準備の上に立って人体の分析などはなさるのが、われわれの常識からいってほんとうではなかろうかなという感じがするのでございますが、教授はこういうような場合等については、いままでもやはり写真などはとらぬでただ分析して結果を発表する、こういうことだけでなさっておられるのか、この辺もちょっとあわせてお聞かせいただきたいと思うのです。
#205
○小林参考人 まず、じん臓の中に均一にカドミウムなんかの重金属があればいいけど、均一でなかったのじゃないか。その中のごく一部分をとってたまたまこういうところへぶつかったのじゃないかという御質問が第一の御質問のようであったわけですが、これは解剖所見に出ておりますように、じん臓の上から下といいますか、裏表を突き抜けてメスで切り取ってあるわけです。実はじん臓が薄いにしましても、表面の皮質という部分がカドミウムがわりあいにたくさんありまして、中の髄質のほうが少ないのです。それをこういうぐあいに三十何グラム切り取ってあるわけです。ですから一般に分析されるサンプルは、普通シュレーダーなんかはそんなにたくさんとらない。私どもはだからそういう均一になるように、表から裏まで中心部を突き抜けて三十何グラムとっておりますから、これはもう均一な部分がとれたということに分析学の上でなるわけです。決して不均一の針の穴ほどのものをとって分析したのじゃないわけです。
 それから何回やったかということは、三回分析しております。これは原子吸光というものの結局精度といいますか、二二、四〇〇PPMといいましても、最終のけたは少したよりない。ですから三けたはちょっと無理なんです。有効数字が二二四と出て、あと〇〇とつきますけれども、二二四の三けたは違います。だから二二五に出たり二二三に出たりします。だけど、そのくらいの誤差はありますけれども、全体の平均をとっておるわけで、決して最高値とかそういうものをとったわけではありません。ですから三回やりまして、その平均をとって、そして私どもが一番心配したのは計算違いがあるのじゃないかということです。あまり高いから計算違いを心配したのです。ですから、特にそういう点で注意して分析してあります。ですから大体二二、〇〇〇はこれは間違いない。平均値をとってあるということ。
 それから写真は、先ほど申しましたように、こんな高い値が出るとは知らずにこちらは灰にしてしまった。灰にして、そうして酸に溶かして、それから分析した。そうしたらこういう高い値が出たということですから、あとになって、いまおっしゃられれば写真をとっておけばよかったと思いますけれども、私どもサンプルについて、大体は写真をとったことないのです。いろいろなサンプルを分析しますけれども、あらかじめ写真をとって分析したことは、ずいぶん、何千というサンプルを分析しておりますけれども、写真をとったことはいままでありません。もう来次第すぐ分析にかかってしまったわけです。
#206
○田畑委員 こういう大きな問題も出てくるわけでありまするから、これからはひとつ写真ぐらいはとって分析していただくように、私のほうからこれはお願いしておきます。
 それからけさほどの、これは参考人のお話にもございましたのでお尋ねをするわけでありまするが、この二二、四〇〇PPMという数字は、正常な日本人のじん臓の中から出た含有カドミの量から見ますと、驚くべき高濃度であろうと、われわれしろうとから考えるわけでありまするが、ただ小林教授の最近の著作で、「水の健康診断」によりますと、アメリカの先ほど来いろいろ話が出てくるシュレーダー博士とかティプトン博士等々の研究によれば、正常な日本人の十八体のじん臓の中にもカドミの量最高一九、五〇〇PPMがあるということを先生の本の中にも書いてあるわけでありまするが、これ等の関係をどのように理解すればよろしいのか、このあたりひとつ御説明をいただければありがたいと思うのです。
#207
○小林参考人 私の本の中には、日本人にカドミウムの含有量が多いということは書いたかもしれませんが、一九、五〇〇PPM、シュレーダーの分析値を本に書いた記憶はありません。ただ富山のイタイイタイ病でなくなった患者の方から最高一四、〇〇〇、図で示してありまして、それしかありません。ですから一九、五〇〇というのは私の本とは関係ないですね。
 それから写真というのは、いまのように分析したあとでこういう大きな問題になったから実は私も困っているのです。そうなれば写真をとっておけばよかったということになるので、初めはこんなことは全然考えてもいなかったわけですから、写真もとらなかったわけです。
#208
○田畑委員 先生のお話しのように、カドミの蓄積のプロセスというのがじん臓の中に二二、四〇〇PPMを蓄積されたということは、作業環境としてきわめて多量のカドミの粉じんあるいはヒュームの発生、こういうようなことが一つの原因であったろう、こういうようなことを考えるわけでありますが、ただこれも実は過般の社会労働委員会で、先般労働省の科学調査団の調査の結果によりますと、中村さんが働いていらした作業環境をもう一度再現をして、カドミの飛散の状態を調べてみたところが、一立方メートル中四・七ないし六・二マイクログラム飛散していた、こういうようなことが明らかになっておるわけでありまするが、この程度の飛散の量では、二年半の仕事でカドミを呼吸器から吸収をして、カドミの急性中毒症などは考えられないというようなけさの話でございましたが、この点について教授は、粉じん、粉末吸引による亜急性中毒症というようなお話をなさっておるようでありますが、この点について見解をあらためて聞かしていただければありがたいと思います。
#209
○小林参考人 外国におきましては、カドミウムを使います工場で、いまのようなカドミウムの蒸気だとか、粉じんを吸って障害が起きたという例が、非常にたくさん発表されております。日本でも当然あっていいはずなんですね。どうも日本は、まだ企業内部のそういうことは企業のお医者さんが発表しにくい。外国では、企業内のお医者さんが堂々と発表できる。ガラス張りで発表できる。日本では、企業内のお医者さんはそういうことを発表できない。したがいまして、そういう犠牲者があっても、もうやみからやみへ葬られてしまうのではないか。だから、日本も先進国の一つになったのですから、この際はもう少し外国並みに、企業のお医者さんもひとつガラス張りで発表すれば、カドミウム中毒が日本にあったからといって――これは世界一の亜鉛、カドミウムなんかを製錬している工場のことですから、一人ぐらいそういう人があったって、これはふしぎじゃないわけでして、そうやって企業の内部の人たちの、労働者の健康を保つ意味でも、企業はこういうことをもみ消すよりはむしろ自分でこういうことはなかろうかということを初めから注意して、予防につとめるべきであろうと私は思うのです。日本の企業はもうそこまで進んでおるのです。非常な新しい設備を持って、よその国に比べても決して設備でも、またいろいろな点でも、コストでも劣っていない。非常に日本は企業は進んでいるのですから、どうぞひとつ――われわれ個人もまだ水洗便所でなくても、たれ流しのいわゆるくみ取り便所でも満足しておるくらいでして、企業それ自体もおそらくまだそういう精神が抜け切っていない、昔の気持ちがあるのではないかと思いますけれども、どうぞ日本も先進国になって、企業がそういう労働者の健康のために、一番注意をまっ先に払っていただくような時代が来ることを、私は望みたいと思っております。
 それから、登子さんは二十八歳です。カドミウムは、シュレーダー、ティプトンによりますと、年齢とともにじん臓に集積をするということをいっております。一九、五〇〇が出た人は五十七歳の女性です。年齢からいえば倍も違う。ですから、そういう年齢差というものを考えて、カドミウムが年齢とともに蓄積するという性質を持っておることを考えますと、登子さんの二二、四〇〇PPMというのは異常に高い値である、五十七歳の一九、五〇〇PPMを引き出して比べるわけにいかない。年齢差というものも考えていただかなければならない。そうなれば、やはり企業内部の環境汚染があったということを、私は考えざるを得ないのであります。
#210
○田畑委員 先生のお話もごもっともだと思いますが、これもこの間の社労委員会で、私の質問で明らかにした点でありますが、全国七カ所の要観察地域について一次検診、二次検診、精密検診を経て中央鑑別診断班まで行った事例はどれくらいあるのか、こういう私の問いに対しまして、安中市の場合は四十三年に九百九十五名を検診して九名が第二次検診を経て中央鑑別班の診断に移った。昭和四十四年六百八名、これが第一次検診、第二次検診を経て中央鑑別診断班に行ったのが三十一名。これは安中の場合でございますが、しかし幸いにカドミ中毒の患者認定には至らなかった、こういう、これは厚生省からの答弁でございますが、さらに今後要注意者については追跡検査をする、こういうことになっておりますが、こういう厚生省の発表等については、教授はどのように評価なさっておられますか。
#211
○小林参考人 私は先ほど申しましたように、お医者でありませんからよくわかりませんが、しかしながら、まだカドミウムによるからだのいろいろな場所に起きる障害というものは、十分に把握されておらない。たとえば骨に異常がないといっても、レントゲンでわかるのは三〇%も四〇%も骨に脱灰が起きて初めてわかる。わかったときにはもうずいぶんと手おくれであるということですから、私はそういうレントゲンなんか、あるいはいろいろな方法で鑑別診断なさっておられますけれども、やはり、先ほど言いましたように、脳下垂体にもカドミウム中毒の場合は異常が起きるし、あるいは生殖器官やいろいろなところにも異常が起きるし、またほかの内臓にも異常が起きるのではないかというような文献からしまして、まだ十分にカドミウム中毒というものは把握されていない。ですからいまの鑑別診断も一応のルールをつくっておやりになっておるけれども、これで全部をつかんでおるかどうか、私にはよくわからないのではないかという感じがいたします。
#212
○田畑委員 時間も参りましたので、もう一点教授にお尋ねしますが、私が二月九日、社会労働委員会の各党代表で安中に参りまして、東邦亜鉛の工場などを見ましたが、このとき、群馬県知事の神田さんにお会いしたわけです。その神田知事がこういうことを申すわけですね。県としては小林教授を知っていない。また発表になっておるが、その資料も受けていない。ついては政府において小林教授を呼ぶなり、というと、本日のようなこういうようなことだと思いますが、資料の提出を求めるなどして、厚生省の研究班でさらにひとつこの問題をオーソライズしてもらいたい、このような注文がございましたが、これは神田知事だけでなく、一般の人方も同じ気持ちを持っておる、こう思うのです。私は、そういう意味でこのような貴重な分析の結果、分析それ自体を私たちはかれこれ言っておるわけではございません。小林教授の権威ある、そしてまたわが国の最高の分析学者であるということも承知しておりまするから、それだけにその権威ある分析の結果というものが、どうして堂々とクロスチェックを経て天下にその信を問わないのか、こういう点を私たちは残念に思っておるわけなんです。先ほどのお話によりますと、両親の方から、娘の分析は私だけにとどめておいてほしい、こういうお話があったとお答えがございましたが、そういうようなことがあったにいたしましても、なおかつこれは科学の問題だと思います。科学の分野、科学の世界の問題でありまするから、Aの教授が分析されようとBの教授がそれを分析しようとも、真実は一つだと思います。数字は厳粛であって一つでなければならぬ、こう思うのです。そういうことで、このような非常に社会的な反響の多い科学的な分析値を発表される場合には、やはり比較分析というようなことが、これは世の常識ではなかろうか。したがって、このような重大な問題については、当然試料等が保有されて、証拠として教授以外の第三者の分析にも十分提供されて、したがって、結論的には中村さんのじん臓には二二、四〇〇PPMの異常なカドミウムが蓄積されていたのだ。これはどこかにその原因があるのか。これに対する対策を厚生省とか政府とか言わずして先生方のような権威者の頭脳を網羅してこの問題の解決に当たるのがほんとうじゃなかろうか、こういう感じがするわけです。ことに午前中の参考人はお医者さんでございましたが、一応厚生省の鑑別班はあのような見解の発表はしたけれども、今後新しい資料が出て、新しい検討の結果、私たちの出した結論も変わることもあり得るということをはっきり言っておりました。やはり小林教授におかれても、この問題については、教授の分析されたその分析試料などは公開をされて、第二、第三の小林教授の手によっても、分析の結果同じような結論になったのだ、こういうぐあいにひとつ持っていかれるように配慮していただければ、私はありがたいと思いまするし、そうすることによって初めて――この問題をめぐっていろいろ不安もあるわけでありまするから、神田群馬県知事の私たちに対する問いかけは、安中市民だけでなく、あるいは東邦亜鉛の従業員だけでなく、安中市民はじめ地域の住民にとっては非常なこれは不安の問題でございまするから、その不安を解消するためには、やはりそれだけの配慮が必要である、こういうことが知事の言わんとする真意だと私は理解いたしましたが、この点について、私は今後そのような気持ちでこの問題に取り組んでいただきたいと思っております。教授からの、いろいろ厚生省の官僚的な、セクト的な問題の処理等についてはよくわかりましたが、厚生省とかなんとかいうのではなくして、やはり国民のために、科学のために、真実のために、それだけはひとつぜひ教授としてもやっていただきたい、このことを強く私はお願い申し上げておきますが、見解をもう一度承っておきたいと思います。
#213
○小林参考人 ごく簡単にお答え申し上げます。
 先ほど申しましたように、いままで厚生省は私とは音信不通です。厚生省の都合の悪いことを私が発表した、研究したというだけの理由で音信不通です。そういうところへ何もクロスチェックする――向こうは、厚生省自体が私に何の相談もなしに、いろいろな見解を発表してきておる。それで厚生省は、ではそういう見解について私とクロスチェックしたかというと、全然しておらない。一方的な発表です。それが厚生省がこういうことに限ってクロスチェックさせろと言ってきたって、これは私は納得いかない。それから原子吸光でやります最近のカドミウムの分析法というものは、だれがやっても二二、〇〇〇PPMは大体二二、〇〇〇PPMに出ます。これは絶対にいまの装置は進歩しております。非常に操作は簡単になっております。ですから何もそんなにクロスチェックをしなくても十分に――これは私どもの大学の研究の仕事として実はやったわけであります。こういう問題にずっとかかわりができると初めから思ってやったことじゃないわけでして、これは私どもの研究としてやったことなんです。頼まれましたから、一応そういうサンプルならやってみようと思ってやった結果が、こういう結果になったわけです。ですから、初めからこういうことになろうとは全く予想しておらなかった。そしてまたその両親からも、私の分析を信頼する、ほかへ回さないでほしいという希望がありましたから、ですから私のほうで全部使って分析を行なったわけですし、私の部屋で十分クロスチェックしております。これ全部理学部の化学の分析化学を出身した人で、長年の経験を持った人たちだけがやったわけで、私どもは大学の研究を、データを一度も曲げたことはありません。また、厚生省の研究班に加わっておりました当時、私もクロスチェックに参加しておりますが、私のデータが違ったという例は一ぺんもありません。みなクロスチェックが私とよく合ったというふうに研究班の発表がされております。そういうぐあいでありまして、いまおっしゃったことにつきましては、どうも私がクロスチェックしなかったから悪いとおっしゃいましたけれども、値については絶対に間違いないということを申し上げておきます。
#214
○田畑委員 私はこれで質問を終わるわけでありますが、ただ、教授にお願いしたいことは、私は厚生省に資料を渡してくれと言っておるのではなくして、分析学者というのは教授のほかにまだやはり日本の学界にもおありだと思いますので、やはりそういう大学の教室なり、あるいは学会なら学会相互の中で、お互いこういうような試料の交換などなされて、ひとつ天下にこのような問題があるぞということをお問いになったらどうじゃろうか。われわれはけさほどのお医者さんの参考人に対しましても、あなた方の研究班の中にも小林教授のような人を入れて、堂々とひとつ意見を戦わして、初めてその結論が権威があるのじゃないのかと申し上げましたが、それと同じ意味において教授に申し上げておるわけでございまするから、その点ひとつ頭に入れておいていただきたいと思います。
 質問を終わります。
#215
○小林参考人 ですから私はデータを曲げたりするようなことは全然きらいですから、いままでもそういうことをいたしたことはありません。ですから今回もそれはクロスチェックはしませんでしたけれども、私は正しい値を研究室の名誉にかけて出したつもりでおりますから、これはもう確信を持っておりますということを申し上げておきます。
#216
○小林委員長 林義郎君。
#217
○林(義)委員 午前中の質問で時間がなくなりましたので、申しわけないのですが、もう少しお話を承りたいと思います。
 先ほど午後、三十三・九一一グラムというお話がございました。これは分析にお使いになる臓器の一部を切ったものの目方だと私は思いますが、そうでございますね。ですが、午前中参考人からお話を聞いたときに、実は久保田さんの解剖のときの状況がきわめて不完全である。おそらく先ほど来小林先生が言っておられるように、初めからそんなに出ると思ってなかったからということもあっただろうと思いますが、もしも岡山大学のほうで全体の量なり持っておられれば、それをぜひ数字を示していただきたい。それから三十三・九一一グラムというのはじん臓の目方だと思いますが、そのほかのものにつきましても、先ほどの午前中の参考人の御意見もありましたけれども、そういったものをやはりはっきり出していただくことが――先ほど小林先生おっしゃいましたように、問題はガラス張りの中で解決していかなければいかぬ。岡山大学としては、小林先生の教室の中ではまさにガラス張りの中でやっておるのだ、こういうお話でございますので、ぜひこれは出していただきたい。だいぶ厚生省のほうといろいろと感情的なおしこりもあるようでありますが、私はやはり真実を追求することが一番必要だと思います。そのためにはやはりいろいろなことを出していただく。厚生省のほうからもいろいろなことを出していただかなければいかぬ。私はこれがほんとうの対策ではないだろうかと思っています。この辺につきましての先生のお考えを聞きたいと思います。
#218
○小林参考人 ですから、厚生省は私のデータを最初から批判するような気持ちでおられた。いままでが音信不通であり、そしてまた、たったの一日で一九、五〇〇PPMのカドミウムの人がほんとうにどういう病気で死んだのか、じん臓が悪かったかどうかもわからないで、もうそれは正常な人だったというふうに結論されて、われわれのデータを批判されております。ですから私も音信不通の厚生省から聞かれても、私としてはデータがもう確実で、濃度を示しているだけなんですからね。じん臓全部取ったとか、あるいは一部取ったとか、そんなことを何もお答えする必要はないと思っておったから、お答えしないわけです。
#219
○林(義)委員 厚生省のほうにお答えにならなくても、午前中高瀬参考人からいろいろお話を聞きますと、そういった問題がありますから、あるいは先生のほうでは必要でないとおっしゃるかもしれないけれども、ほかのほうでは必要だと思いますので、ひとつガラス張りということを先生さっきおっしゃいましたから、やはりあるものはぜひ出していただきたい。そうでないとなかなか事態の究明ができない、私はそういった品物だろうと思うのです。そういったことをぜひお願いをしたいと思います。私は厚生省に対してどうだこうだということではないのです。やはり国民に対してこの問題をはっきりしなければいかぬ。できるだけやはりいろいろ持っているところをはっきりしないと、お互いに疑心暗鬼の中でこういった問題を処理するということは、非常に困ることだと思うのです。いまも田畑先生もおっしゃいましたけれども、私も全く同感でございまして、そういうことをぜひ重ねて要望しておきたいと思います。
 次に、そういった点に関連しまして、先ほど数字的にナトリウムが云々と、水溶性のものを含めていろいろ問題がございます。そういったふうないろいろな議論もあるようでございますから、その辺をはっきりするためにも出していただきたいし、それからもう一つは、死後一年半たってから死体をあげて究明するわけでございますから、死亡直後のものとはやはり違うということは、これははっきりしているだろうと思うのです。ただ、見たところで違わないかどうかということは、その辺は解剖の所見等ではっきりしてないわけでございますから、そういった点の究明をしていくことが私は非常に必要なことだろう、明らかに事実は事実だということではっきりしていくことが一番の大切なことだろう、こう考えておりますので、この点を小林先生にぜひお願いしたいと思います。
 それから、小林先生さっきおっしゃいましたけれども、実はお話を聞いておりまして、小林先生一体カドミウム中毒というものを、学説的にどういうふうに考えておられるのか、私はちょっとわからなくなったのです。大体わかっておったつもりなんですが、何かわからなくなったので聞きたいですが、先ほど山口先生ですか、お話が出ました。そのときに、肺臓に入って血液の中に入る。それがだんだんとじん臓にたまってくるということである。それで中毒になるのだ、こういうふうなお話がありましたけれども、小林先生はカドミウム中毒というものは一体どういう病気だということを考えておられるのか、ちょっとお話していただきたいと思います。
#220
○小林参考人 私はカドミウム中毒につきましては、医者でないからよく知らないということは最初から申し上げております。しかしながら、神通川流域ではああいうぐあいにおばあさんたちが非常に骨をおかされた病気になっておりますし、それからほかのカドミウム中毒の外国の文献なんかを見ますと、骨が痛んだり、それから骨は痛んでもレントゲン写真には写らなかったとか、そういう文献もありますし、それから胃腸が痛いと非常に腹痛を訴えたとかいうような文献がありますから、それを申し上げました。それからまたじん臓の障害によってたん白尿が出る。けれども出ない場合もある。それからズルフォサルチル酸法というのは不適当だという文献もあるということを文献によって申し上げたわけであります。
#221
○林(義)委員 それで非常によくわかったのですが、要するにカドミウム中毒というものは分析、先生のほうは分析学でございますね。分析でいろいろやっている科学者である。それから臨床の問題がございます。それからほんとうの疫学の問題があるし、公衆衛生学、私はいろいろな分野があるだろうと思うのです。私もそのほうの分野は専門ではありませんから、どんな分野があるかよく知りませんが、たくさんの分野があるだろうと思う。たくさんの分野があって、いろいろなそれぞれの専門家がおられるだろうと思うのですね。その専門家のいろいろな協力によってこの問題は解決しなければいかぬ。私はそういった問題だろうと思う。分析のほうからおっしゃって、カドミウムがあるというのは、カドミウムが非常に入っている、二二、四〇〇PPM入っている、あったということでございますね。それだから、したがってすぐ病気だという結論にはならない、それは医学の問題である、こう考えてよろしゅうございますか。
#222
○小林参考人 ですから、私は腹痛なんかのような症状もカドミウム中毒の場合の文献にはありますということを申し上げました。登子さんについては、じん臓から非常に高濃度が出たということを申し上げているわけです。
 それから先ほどのサンプルの量は、じん臓が一番問題になっておりますから、先ほど倉敷等に電話をして、そのときのじん臓の重さを聞いて御回答申し上げました。しかし、ほかの臓器はもっと多い、そういうことを申し上げておきます。
#223
○林(義)委員 それで非常によくわかりました。何か新聞に、小林先生の名前でカドミ中毒ではないかとか中毒症状であるとか、いろいろ出ておるのもありますから、きょうはその辺が非常にはっきりしたと思います。やはりその辺を論理の問題としてひとつはっきりしておかなければいかぬだろう。それで、これは小林先生を前に置いて恐縮でございますけれども、やはりもち屋はもち屋ということもありますから、長年いろいろカドミウムを研究しておられる方、公衆衛生学の問題もあるし、臨床の方もあるし、疫学の研究をやっておられる方もある、そういったいろいろな方々がぜひ集まって、公開の場においてもけっこうですし、そういった専門家のお集まりによって、ぜひカドミウムの問題の研究に当たっていただきたい。その場合におきましては、先生からもあらゆるデータを腹蔵なく出していただくことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
#224
○小林参考人 いまの点で簡単に申し上げますが、企業とか、被害者とか、そういう利害から離れて、学者同士の純ガラス張りな、純学問的な討論をして、それで日本の学問あるいは公害の予防とか、そういうことに役立てることは非常にけっこうなことだと私思っております。いま私どもがむしろ一方的に追い出されておるようなかっこうになっておるわけです。そういうお話、私は非常に賛成ですし、外国人も、どうして日本人は学者同士がそういう横の連絡がとれないのだろうかといってふしぎがっております。ですから、私はそういうことは非常にけっこうなお話だと思います。
#225
○小林委員長 これにて参考人からの意見の聴取は終わりました。
 この際、小林参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 小林参考人には御多用中のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。
     ――――◇―――――
#226
○小林委員長 この際、産業公害対策に関する件について質疑を許します。寒川喜一君。
#227
○寒川委員 たいへん先輩、同僚の皆さんに相すまないのですが、若干時間をいただきまして塩化ジフェニールの、いわゆる俗にいうカネミの問題について質問をいたしたいと思います。
 この問題につきましては、昨年西日本一帯で被害のございましたカネミ事件に関連をして、九州大学の油症治療研究班並びに福岡第一薬科大学が、人体実験を通して明らかにいたされましたことを先月の二十五日に発表をされ、翌日の二十六日に日本の五大新聞に全部報道をされておるわけでございますが、まず厚生当局に伺いたいことは、この事実を知っておるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
#228
○山本説明員 お尋ねの件につきまして、私ども新聞報道を通じましてそのことを伺いました。さっそく九州大学の倉恒教授等にこの問題につきましていろいろと問い合わせまして御所見を伺っておるわけであります。
#229
○寒川委員 その結果、先生方が主張されておりますように、俗に商品名でカネクロールといっておりますが、こういう被害が――しろうと目には日常使っておりますカーボン紙、しかもこれは白色でございますので、このために人体に著しい影響を及ぼすという認識では使用をしておらないのではないか。増田助教授の人体実験でも、終日これに手を触れて作業をしております場合、何ぼあとで石けん水で洗っても、七五%近くはもうすでに人体に吸収をしてしまっておって、そういうものが随時積み重ねられていくと著しい影響があるというこの結果報告、このことをあなた方は第二点としてお認めになっておられるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
#230
○山本説明員 毒物の問題につきましては、それがどういつだ経路で吸収されて人体に障害を与えるかということが非常に重要な点だと存じます。確かにこの塩化ジフェニールというものが、たいへん化学的に安定な物質でございまして、石けん等の洗浄ではよく除去しきれないということも伺っております。しかし、これが皮膚等を通じて身体に吸収されるものかどうか、あるいはまた指先等に多少ついておりますと、それが経口的に入るというおそれもあるわけでございます。したがいまして、この問題につきましてのこれからの研究を慎重に進めていかなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。
#231
○寒川委員 慎重に検討というような問題が、本朝来から起こっておるカドミウムの問題でも、やはり慎重の期間の問題だと私は思います。したがって、私のお聞きしたいのは、具体的に手を打っておられるのか。この新聞の報道によりましても、四月上旬衛生学会に発表をして、通産、厚生両省に対して厳重な規制の警告をする、こういう発表を両先生がされておるわけでございます。いわゆるお役所仕事で慎重、検討ということでは、毒物性の問題については、もうすでにカネミの事件で立証されておることでございますし、繰り返して申し上げることになりまするが、いわゆるインキを使っておりますものは、最近では樹脂加工によって手につかないというようなことでもよごれるのじゃないかというような不安がございまするが、いわゆるカネクロールのほうは、全く白色で、しかも、最近は二重に合わすのではなくて、一枚の用紙で目的を果たすようなことを考えておるやに仄聞をいたしております。そうなってくると、好むと好まざるとにかかわらず、人体に著しい影響を持つ、こういった状態にあると認識して私はいいのではないかと思いまするが、具体的にどうされておるのか、お聞きをしたいと思います。
#232
○山本説明員 現在までにとの物質が、いわゆる感圧紙というものとして使われておるわけでございますが、その感圧紙による事故例等は、いままでは一応聞いておらないわけでございます。しかし、カネミライスオイル中毒の場合には、一時に約二グラムぐらいという大量の塩化ジフェニールが摂取されたということがありまして、あのような事件が起こったわけでございますので、毒性につきましては必ずしも否定ができない面があろうかと思います。したがいまして、現在こういったものをどういった面で使っておるかと申しますと、税務署あるいは警察庁等の官公庁あるいは銀行等の事務所、そのほかいろいろこういったような複写をする事務処理の上で使っておるわけでございます。したがいまして、この問題につきまして、私、公害課長としてお答え申し上げておりますが、問題はむしろ健康管理の面について、事業場等で使う問題でございますので、労働省なり、またこの生産の問題に関係いたします通産省なりとも十分連絡をとっていきたいと思います。私ども厚生省といたしましては、国民に健康上の不安ということがあるわけでございますので、その健康上の影響の問題についての研究を即刻に進める。その進める方法といたしましては、内外のいろいろ文献を集めての検討と同時に、そのほかの吸収問題等についての研究も進めたいということで、現在も学者の先生方にお話しをかけている、こういうことでございまして、先ほど慎重にと申し上げましたが、手をつける姿勢をとっておるということを申し上げたわけであります。
#233
○寒川委員 当然に熱心にやっていただくと思いますけれども、お話を聞いた範囲内では、私はやはりベースとして一般から批判されるお役所仕事の域を出ておらないのではないかというような感じを持ちます。幸いにしてそうでなければけっこうなんですけれども、やはりこういうことが公になり、現実にデータに基づいてやっておられる以上は、急遽九州に飛んで、要らぬ出張だったら一ぱいされる場合だってあるのですから、やはりそういう取り組み方の問題だと思います。ひとつ誠心誠意やってもらいたいと思います。
 そこで、次に通産にお伺いをしたいのですが、私が聞いておりますことを申し上げて、あなた方のほうで調査されたことと合っておるかどうか伺いたい点がございます。と申しますのは、先ほどこれの使用の問題について官庁とか銀行とかいうよようなお話がございましたけれども、むしろ一般商社が非常に大きなウエートで使っておる。しかもこの作業というものは、特定の方々が終日やはり伝票整理をしていくとかいうような形で、作業過程の中で結局有毒物を体内に自然的に吸収をしている。こういうことに関連をいたしまして、このカネクロール系統のものが生産金額にして大体二十億くらいですか、それからそれ以外のものが五億くらいだというような感じで聞いておりまするが、そういう面で実際はどうなんでしょうか、お伺いをしたいと思います。
#234
○森口政府委員 お答え申し上げます。
 複写紙は指定統計がございませんので、官庁の統計上つかまえられません。したがいまして、メーカー団体等から報告をとって調べました次第でございます。複写紙系統は実は二つございまして、一つは、御指摘のカネクロールを使用しております複写紙、それからもう一つは、カネクロール系統のものを使用しない、ケミシート系と申しますか、ケミシート系の複写紙でございます。このうち、お尋ねのカネクロール系を使用しております複写紙は、金額にいたしまして約百六十億円、約四万トンというように推定をいたしております。それからケミシート系の複写紙は、約五千トン、十五億円というように推定をいたしております。
#235
○寒川委員 ありがとうございました。そうすると、十倍以上あるということは間違いございませんですね。
 そこで私が次にお伺いをしたいのですが、これも私の調査によりますると、ケミシートの系統はほとんど中小企業がやっておられて、カネクロールは大手がおやりだと聞いておりまするが、間違いないかということが第一点。
 それから同時に、大手の企業はどの程度あるのか、名前等はけっこうでございまするが、どの程度が大手としてシェアを持っておるのか、お伺いしたいと思います。
#236
○森口政府委員 カネクロール系の複写紙を生産しておりますのは大手企業でございまして、四社ございます。それからケミシート系の複写紙を生産をいたしておりますのは、お話しのとおり主として中小企業でございます。
#237
○寒川委員 そこで、厚生省に注文をしておきたいと思います。
 先ほど来から公害の問題で議論をしておる中に、いわゆる企業サイドとかいろいろなことを言っておることに関連をして、やはり大企業に遠慮をしておるということですね。そういう姿勢があればこういったような問題は私は片づいていかないと思うのです。いわんや中小企業はこのことのために、そういう毒性の入っておらないものを生産をしておっても、新聞にばあっと全部出てしまうと、同じものをつくっておるというような形でやはり巻き添えを食って、ただでさえ最近のような中小企業の景気後退の中における経営と申しましょうか、そういう問題で困難をきわめておるわけでございまして、小さいところが大新聞にこういったごつい広告を出して、これにはばく大な金が要っておると思いますね、御存じだと思いますけれども。そうしないと、売り上げが著しい影響を持つ、こういうような心配をしておることについて、一体厚生省自身はそういうことを知っておるのか、同時に、通産自体はこの問題に対して早急にどういう取り組み方をしようとされておるのか、両省から見解を聞きたいと思います。
#238
○曾根田政府委員 先生の御指摘はまことにもっともでございまして、私どもも早急に検討を始めると先ほどお答えいたしましたが、実は昨日すでに電話で役所の方にこの点の検討を依頼してございます。役所の部内のことをいいましてたいへん恐縮でございますけれども、これは私のところ以外の局にも関係いたしておりますので、関係局ともさらにもう一度打ち合わせをいたしまして、早急に結論を出すように努力したいというふうに考えております。
#239
○森口政府委員 カネクロール系の複写紙が有害であるかどうか、これは厚生省のほうの御判定をまたなければならない問題かと存じますけれども、いずれにいたしましても、長期間使っておりますと、あるいは問題が起こるかもしれないということは当然のことでございますが、懸念をされるわけでございます。私のほうでも二月の二十六日の新聞紙を見まして、関係の四社を招致いたしたわけでございます。そのときにメーカーとしては安全を期するために他の製品に切りかえるということも検討いたしておるというような話でございましたので、先ほど申し上げたような観点から、それではほかの製品に至急切りかえるということを考えてみたらどうであろうかということで、メーカーの四社に話をしたわけでございます。メーカーのほうでもこれを受けまして、現在すでに逐次新しい製品の切りかえを進めておりまして、おそくとも三月の末までには工場段階での切りかえは完了するというように私のほうは考えております。もっとも流通段階に在庫が若干ございますので、完全に切りかわるのはやはり数カ月後というように見込まれますけれども、カネクロール系の製品を使わない無害な製品に切りかえるというようなことを現在メーカーを指導してやらせておる次第でございます。
#240
○寒川委員 そこで、これは私要望しておきますけれども、私の承知しておる範囲内では、そう簡単に無害のものにかえるということはパテントの関係があって困難だと聞いております。したがって、新製品がほんとうの意味で開発されたのであれば、これは日本のために喜ぶべきことだと思いまするが、そういったことをほっかぶりでやるのではなくして、厚生省と十分連絡をとってやってもらわないと、大企業がすることだからということで遠慮しておったのでは、公害の問題はいつまでたってもやはり片づかない。したがって、特に厚生省自体がやはりイニシアチブをとる、そういうような決意を持っておるかどうか。
 なお、現在大企業がやっておりますものについてはアメリカのNCRの特許を使っておるようでありまするけれども、他の二社は幸いにしてアメリカの特許の問題が解除されて使えるというような形で使っておるやにも私は聞いております。したがって、そういうようなことで、通産当局は通産当局として公害の問題もさることながら、大企業保護に立って、これくらいであればよかろうというようなことでは、やはり日本の産業技術というものが発展せない、私はこんな感じを持っておりまするが、そういう点について両当局から最後にひとつ考え方、決意をお聞きをして質問を終わります。
#241
○曾根田政府委員 再度役所の内部のことで恐縮でございますけれども、これは関係局が幾つかございまして、私のほうがあっせんといいますか、仲に入りまして、公衆衛生局と科学技術参事官室がいわば世話人となって省内の研究体制を固める。それからきのう東京歯科大学の上田教授に実は毒性の検査を、一般的な検査を頼んでおりますけれども、その研究の一環としてこの問題もお願いしたいという電話連絡をいたしてございます。そういうことで、省内の体制を固め、また関係局等とも十分連絡をとりまして、できるだけ早く結論を急ぎたいというふうに考えております。
#242
○森口政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、害が少ないからというわけでそのままにしておこうという考え方は毛頭ございません。したがいまして、製品の切りかえ等を指導いたしておりますが、厚生省等と連絡をいたしまして問題のないように善処いたしたいと存じます。
#243
○寒川委員 いまちょっと気にさわるようなことをおっしゃられたのですが、害がないって、害があると九大の先生なり、福岡第一薬科大学の増田助教授が言っておるわけなんです。それに反論する資料が通産にあるのであればそういう答弁をしたらよろしいですよ。だからやはりあなた方の、通産の公害部の姿勢が、だから企業サイドだとこういわれるわけなんです。御承知のようにこういうものが発達してきて、期間がまだそうだってないでしょう。だから、そういうことがさつきのカドミウムの問題と同じように、二年、三年だからこれは議論があるけれども、八年たってきたら重大な健康上の支障があるということはもう定説になっておるのです。この問題についても私はいまあなたのような姿勢では、ぼくは大企業を相手にして片づいていかぬと思うのです。したがって、そういうことをひとつ十分配慮して、一般の可憐な若い女性なりがこのことのために身体の健康をむしばまれるというようなことのないように、ひとつ十分注意をしてやってもらいたいと思います。終わります。
#244
○小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後四時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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