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1970/04/16 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 運輸委員会 第16号
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1970/04/16 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 運輸委員会 第16号

#1
第065回国会 運輸委員会 第16号
昭和四十六年四月十六日(金曜日)
    午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 福井  勇君
   理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君
   理事 徳安 實藏君 理事 村山 達雄君
   理事 斉藤 正男君 理事 松本 忠助君
   理事 河村  勝君
     稻村左近四郎君   小此木彦三郎君
      唐沢俊二郎君    國場 幸昌君
      菅波  茂君    關谷 勝利君
      谷垣 專一君    西村 英一君
      西銘 順治君    長谷川 峻君
      古屋  亨君    細田 吉藏君
      井岡 大治君    内藤 良平君
      和田 春生君    青柳 盛雄君
 出席国務大臣
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
 出席政府委員
        運輸大臣官房長 高林 康一君
        運輸省海運局長 鈴木 珊吉君
        運輸省船舶局長 田坂 鋭一君
        運輸省船員局長 佐原  亨君
 委員外の出席者
        運輸委員会調査
        室長      鎌瀬 正己君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  佐藤 孝行君     長谷川 峻君
  砂田 重民君    稻村左近四郎君
  中馬 辰猪君     西銘 順治君
  増田甲子七君     國場 幸昌君
  田代 文久君     青柳 盛雄君
同日
 辞任         補欠選任
 稻村左近四郎君     砂田 重民君
  國場 幸昌君     増田甲子七君
  西銘 順治君     中馬 辰猪君
  長谷川 峻君     佐藤 孝行君
  青柳 盛雄君     田代 文久君
    ―――――――――――――
四月十四日
 松本・東京間航空路線開設に関する請願(原茂
 君紹介)(第四六一二号)
 同(中澤茂一君紹介)(第四六六五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第七八号)
     ――――◇―――――
#2
○福井委員長 これより会議を開きます。
 船舶職員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。斉藤正男君。
#3
○斉藤(正)委員 法案審議に入る前に、法案にも関係がございますので、冒頭大臣に伺いたいと思うのです。
 船舶職員の職階制と申しますか、名前の呼び方に航海士、機関士、通信士とも甲乙丙というような呼び方があるわけでございますが、たとえば通信士についていうならば、電波法に基づく国家試験を受けて取得した免許は、一級、二級、三級というような呼び方がされております。私は、この甲乙丙という呼称について、最もスマートな船乗りというような感じからいたしますと、何かあまりにも閉鎖的な、封建的な、前近代的な感じを受けるのですけれども、大臣、この甲乙丙というような呼び方について抵抗を感じたことございませんか。
 もう一つは、この船舶職員というのは、通信は通信だけ、そして最高の職は通信長、機関は最高がやはり機関長、航海士だけがキャプテン、すなわち船長になれるというようなこと、またこの船舶職員法の組み立て、しかけもそういうようになっていて、それぞれ通信士は通信士の上級の取得はできる。その取得のしかたについては、これまた経験年数とか試験とかいう方法でとっております。機関についても同じ、航海についても同じでありますけれども、縦への昇進の道は開けているけれども、通信に職を持った以上、生涯最高の職階が通信長、キャプテンには絶対なれない、こういうこともきわめて閉鎖的であり、きわめて前近代的だというように思うのであります。私は、識見、技術あるいは経験年数等が十分であれば、たとえ通信の出身であっても船長になってよろしい、たとえ機関の出身であっても名船長になれるべきだと思う。
 私は、東大総長の学部別出身を調べてみたことがありますけれども、法学部出身でなければ東大総長になれないということは何もないのです。平賀さんの総長のよしあしは別として、造船学の泰斗が東大総長をつとめたことがある。私も学校の教員をやりましたけれども、体操の先生でも、国語の先生でも、算数の先生でも校長になれるのでありますが、船乗りに限ってその職場は、通信は通信、機関は機関、航海は航海、しかも最高の職である船長には航海出身でなければなれぬというこの閉鎖性、この前近代性、これは船舶そのものの特殊な形、あるいは業務というようなものからくるものであって、あたりまえだというようにお考えなのでありましょうか。それぞれ甲乙丙という呼称の封建性といいますか、前近代性といいますか、そういうものとの関連において、根強く船舶職員の間には、こういうものがあたりまえなことだ、常識だというようになっているとするならば、この際、こまかな改正もさることながら、抜本的に船舶職員法の検討をすべき段階ではなかろうかというようにも思うわけでございますけれども、まず冒頭、いままでの審議を通じていろいろのお考えを持っておると思いますけれども、アイデアマンとして評価の高い橋本大臣、私のお尋ねにひとつ明快なお答えをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#4
○橋本国務大臣 お話しのように、われわれも甲乙丙というつけ方を子供のときにやられたわけでありますが、近ごろは点数、五点とか四点とか三点とかに変わってまいりまして、お話しのように、あまりいい名前ではありません。これは古い一つの呼称の言い方でありましょうけれども、直ちに法改正の中でこれを変えていくかということになりますと、いろいろの問題がありましょうが、しかし、お考え方はもっともでありますし、私もあまりこの甲乙丙の使い方は好ましいと思っておりませんので、適当な機関によってこの問題もひとつ検討してもらって、将来やはり考えていくべき問題だろうと思います。
 それから、いわゆる機関士、通信士はいつまでも機関長あるいは通信長という以外に道がない。これもいろいろ問題があると思います。たとえば航海安全の問題になりますと、いわゆる通信士として、あるいは機関士として非常にエキスパートでありましても、全体の航海を見る場合にははたしてどうであろうかという問題がありますが、しかし、これらの問題も、だんだん時代が変わってまいりまして、いわゆる機械化されてまいりまして、コンピューターをいかに使うかとか、そういう能力が、だんだんこれからの大型船、小型船を問わず、そういう問題が出てまいろうと思います。それにいたしましても、やはり全般的な知識が必要でありますからして、したがって、船長にするために、従来試験がないようでありますけれども、あるいはそういうような試験制度といいますか、そういうことによって総体的な、総合的な経験と知識を持っておれば、なれるという道も考えていくことも将来あり得るのではないかと思いますが、なかなか重大問題でありますから、これは十分に関係方面と協議をし、かつまた、審議会あるいは調査会等でこれは相談しないと、一がいに直ちにこの点をそうすべきだという結論も出かねる状態であります。
 ただ、船長あるいは機関長あるいは通信長というもの、そういう者の待遇については、これはやはり違った待遇ではなしに、できるだけ――これはある意味においては三権分立みたいなものですから、総理大臣、議長及び最高裁判所長官というのは同じような高い地位にありますから、そういうものの考え方をやはり設定していくことによって、自分の職分を十分に守り得るということも一つの方法ではないかと思います。これらを含めてこれは検討してまいりたいと考えております。
 たいへん参考になりますので、これらを十分将来ともに検討してまいりたい、こう考えております。
#5
○斉藤(正)委員 大臣から答弁をいただいたわけですが、外国船舶等で、この甲乙丙というものをどういう呼び方をしているのか。あるいは聞くところによると、かつて船長以外に、これに該当するというような幹部の乗り組みをためしたいというようなことも、外国ではあるというように聞いているわけでございますけれども、船員局長あるいはそのほかの方でもけっこうでございますけれども、日本における甲乙丙といったような呼び方を、外国では一体どういうようにされているのか、おわかりになったら教えてください。
#6
○佐原政府委員 外国の制度すべてを網羅してお答えすることはちょっとできませんが、一、二の例で申しますと、遠洋船長、オーシャンゴーイングのキャプテン、それからコースタルのキャプテン、こういったような呼び方、それからその中の航海士の区分といたしましては、これは日本でも俗によく使われますけれども、ファースト、セカンド、こういった呼び方でございます。
#7
○斉藤(正)委員 日本の悪い伝統、悪い習慣として、技術者軽視ということがずっと続いておるわけであります。技術革新とか情報社会とかいろいろいわれておりますけれども、今日なおそうした技術者が優遇されていないということは、日本全体の風潮でもあるし、悪い傾向であろうと思うわけであります。私は、この際やはり思い切った対策を船舶職員から考えてみたらどうかと思う。通信士という崇高な仕事をし、そして高度な技術を持つ、あるいは機関士として複雑なメカニックに対処して全く新しい技術を身につけている諸君、いずれも技術者であります。この技術者の処遇にあたって、名は体をあらわすといいますけれども、呼び名一つでも、やはりそれに報いる、それに相当した呼称といったようなものがあっていいのじゃないか。きわめて私の質問そのものが原始的であり、素朴であり、かえってそういうことを聞くことがあるいは封建的過ぎるかもしれませんけれども、そういう考え方を持っておるわけでございますので、大臣のお答えにありましたように、なるべく早い機会に、こういうことも含めて御検討をいただきたい。
 質問の要点に入りたいと思うわけですが、すでに同僚各位からお尋ねがされておりまして、ほぼ明確になっておりますけれども、念のためもう一度確認をする意味でお尋ねをいたしたい。
 昭和三十二年の船舶職員法の改正は、その第一条「目的」において、従来の「この法律は、船舶職員として船舶に乗り組ますべき者の資格を定め、」ということで、船の乗り組み員としての資格を規制するということが目的であった旧法を、「もって船舶の航行の安全を図ることを目的とする。」ということで、あえて船舶航行の安全を目的に挿入いたしておるのであります。このことは、船舶と乗り組み員の安全確保に、より積極的な姿勢を見せたということで、高く評価すべきものであったと思います。したがって、船舶職員法の資格と配乗の改正は、相応する安全上の考慮と措置がなされなければならない。今回の改正は、試験制度の簡素化と配乗の緩和のみがあげられているのでありまして、このことによって、船舶の安全性を高める具体的かつ積極的な措置はないというように思います。
 したがって、安全を担保する法の目的からいたしますれば、どうも船舶職員法の第一条の目的からいいましても離反するものではないか。目的ではこういうことをうたっておるけれども、実際は違ってきているのではないかと思います。特に、乙種の職員の従事範囲の拡大によって、はたして安全航行がはかられるかどうか、きわめて疑問だと思います。従来の答弁で、これでもだいじょうぶです、最低限を規定しているんですから、上位の者が下位の船に乗るのは差しつかえないのだという言い方でありますけれども、やはり最低限を規定するといいましても、これによっていわゆる資格の低い人が格の高い船へ乗ることになるのですから、安全性という点については、最も心配し懸念されるところでありますけれども、局長、御確答をいただきたい。
#8
○佐原政府委員 昭和三十二年の法律のことを先生おっしゃいましたが、実は二十六年のときにそういうふうに変わったわけでございます。それはどちらでも同じことでございますが、第一条の目的に明示はいたしませんでしたけれども、やはり資格の規制ということは、その根底には船の安全ということを考えての法律でありますが、特に、二十六年で法律の性格が変わったものではないというふうにわれわれは了解しております。
 それから、資格を下げても安全上だいじょうぶかという点でございますが、一般的に甲板、機関、通信を含めて今度緩和が行なわれるわけでございますけれども、往年のきわめて原始的な船内労働、経験と勘でやっておった船内労働当時に比べますと、いわゆる船舶の近代化によりまして、非常に自動化機器が導入されてまいりました。船員の労働自体がある意味で、いろいろな意味で余力が出てきた。余力をもってほかの仕事に精力を回し得るということで、資格が下がっても安全性は阻害されない、こういう考え方で今度の改正がはかられておるわけでございます。
 通信士につきましては、何度も申しましたけれども、甲が乙になるわけでございますから、甲のほうがそれはより相対的には安全性が高いわけでございますが、乙になっても、いろいろな意味で航行の安全上支障はないということで、郵政とわれわれのほうと意見が合致したわけでございます。
#9
○斉藤(正)委員 いま、電波法を所管している郵政と、船舶職員を所管する運輸省との間に合意が成立したというお話でありますけれども、この合意はきわめて最近のことであって、電波法を所管いたしております側はなかなか合意しなかった、かなりちゅうちょをしたというように聞いておりますが、その点は一発でオーケーでございましたか。
#10
○佐原政府委員 この問題は、相当前から問題がございまして、乙にしたらどうか、乙にしても支障はないのではないかという意見は前々からございました。ただ通信の技術のチェックは、電波法系統で免状付与を行なっておりますので、電波法の無線従事者操作範囲令でその通信操作範囲がきまっておったわけでございます。それが変わらない限り、幾ら運輸省がこの職員法を変えようといたしましても変えられない、そういう状態で数カ年きた。今度の審議会のあとで、再度これが問題になったあとで、安全上もう一ぺんどうなのかということで郵政省との相談をしたところが、政令を変えましょう、こういうことになって、そういうきっかけで今度の法律改正が行なわれた、こういうわけでございます。
#11
○斉藤(正)委員 いまのお答えでも明らかなように、長年問題になってきて、国家試験による一、二、三といったような電波法の資格を、甲、乙、丙に当てはめてきたわけでありますが、少なくも乙通の従事範囲を拡大するということにつきましては、やはり実全性の問題その他で長い時間がかかった。ほかにも理由はあると思いますけれども、やはり電波法を管理する郵政といたしましても、政令の改正にあたって、この法律が法案として運輸省から国会へ提出される段階になって、言うならばぎりぎりになって合意になったというように私は解釈をいたすわけでございますので、たとえば、次のような問題についてお答えいただければと思うわけであります。
 最近といいましてもここ数年でありますけれども、相次いで近海区域を就航する船舶の遭難事故が続出いたしておるわけであります。たとえば山東丸、いわき丸、弥彦丸、第五真盛丸等々、すべて近海区域を航行する船舶であり、船舶職員法によれば、船長、航海士、機関長、機関士はすべて乙種でよい船舶であります。実際にこれらの船舶にどのような資格の職員が乗船していたのか。たとえば乙種でよい船でありますけれども、甲種の職員がどの程度乗っていたという実績をお持ちでございましょうか。もしお持ちにならないとするならば、日本船の海難は乙種以下の免状を持つものが非常に多いわけでございまして、この資料もどういうわけか、意図的ではないと思いますけれども、トン数別の海難状況の報告書はございますけれども、船員の資格別の海難統計はないのであります。何トンの船がどの程度遭難したかというのはございますけれども、甲乙丙の資格別に遭難の現状というものが分析されていない。私どもはむしろそういうものをほしいのでして、遭難というのはトン数には関係ない。大きい船ほど安全で小さい船ほど安全性がないということでもないし、大きい船でも問題になっている海難事故は頻発したし、小さい船であっても必ずしも海難にあってばかりいるわけではない。問題は、乗り組んでいる資格別の統計といったようなものもほしいわけでございますけれども、この山東丸、いわき丸、弥彦丸、第五真盛丸等々に、甲種の資格を持った航海士なりあるいは通信士なり機関士が乗っていたのかどうかというようなことは、概略おわかりになりますか。
#12
○佐原政府委員 いま具体的に列挙されました船に、どういう資格者が乗っておったかということは、ちょっといまわかりかねます。後ほど調べてお答えいたしたいと思います。
 ただ、まことに先生おっしゃるとおりでございまして、現在海難統計を保安庁でやっておりますが、その資格別の分類はなされておりませんので、われわれもそれをつかみたいということで相当努力いたしましたけれども、統計のやり方自体を変えませんと把握できません。保安庁のほうへその旨を申し入ればいたしておりますが、もし少し年次がたてば、そういった統計もでき上がるかと思いますけれども、現時点ではちょっと不可能でございます。
#13
○斉藤(正)委員 ここに四十五年十二月、海上保安庁警備救難部航行安全課発行の四十四年度の「要救助海難統計の考察」というものの抜粋がございます。一般船舶の資格別海難発生率は、海技免状総受有者対操船者の千分率であらわしてありますけれども、甲種の場合は二・一%、乙種が五・八%、丙種が三・九%となっておりまして、乙種の事故率が甲の二・一、丙の三・九に対し五・八という数字になっている。責任ある政府当局の資料によりましても、乙種の資格を持っている人がお乗りになっている船の海難事故が多いことは明らかであります。これは数年間の統計でもございませんので、確かな資料になるかどうかということは別といたしましても、具体的にこういう数字であらわれているということは、私どもとしては反省しなければならぬ、こういうように思っております。
 本年二月二十日の日本海事新聞によりますと、海上保安庁警備救難部長貞広豊氏は、「船舶の安全はまず第一義的にいかに人的原因、すなわち乗組員の不注意の過失によるものが多いか、ひるがえって考えてみると、乗組員の資質の向上と注意力の向上によって海難の大半は防止することが可能である」こういうように断言をされておるのであります。海上保安庁警備救難部長のお書きになったものでございますから、統計その他をしんしゃくをしてこういう文章表現をされたと思います。乗り組み員の皆さん方にしてみれば、いかに資格を向上しても、いかに注意をしていても、不可抗力だという海難事故も確かにございましょう。しかしながら、乗り組み員の資質の向上と注意力の向上によって海難の大半は防止することが可能だということを断言しているわけでございますし、「これがためには、船舶関係者としても乗組員の生活環境の改善、即ち船舶の運航管理と乗組員の労務管理、教育等に十分意を払うべきは勿論である」こういうことも言っているわけでございます。
 こういうことから考えますと、先ほど申し上げました資格別遭難の統計、それからその道の責任者の論文等々からいたしましても、今度の場合は機械的な範囲の拡大でございまして、乗り組み員の資質の向上とは逆行しているのじゃないか。海難警備に当たる海上保安庁等々といたしましては、これはまたたいへんなことだ、事故がなければいいがというようにお考えになっているんじゃないかと思うわけでございますけれども、私は、先ほど申し上げましたわずかな統計やその道の方の論文等々からお考えになって、船舶航行の安全という点から、乙種資格者の拡大というようなことを、なお責任をもって問題ないと断言できるでございましょうか。
#14
○佐原政府委員 いまの統計、ちょっと私、手元にございませんので、詳細存じ上げませんが、おそらく乙種船長の乗っている船という意味ではなかろうかというふうにうかがいますが、まあ通信士の仕事も航行の安全に非常に関係ございますけれども、直接船舶の操縦に当たる甲板の問題と、それから、もっぱら情報活動に従事する通信の場合とでは、やや趣を異にする面があろうかと思います。通信技術の点につきましては、二級で近海全区ができるということで、まあ近海一区と近海全区を比べましても業務の質、量とも大差はない、二級の能力があれば近海全区ができる、こういうふうに電波監理局も考えておりますので、その意味ではだいじょうぶであると私は信じます。
#15
○斉藤(正)委員 そういう答弁をいただいて、事故があったときにあなたを追及する気持ちはありませんけれども、まあ提案者としては、だいじょうぶだと言わなければ出せるものじゃありませんから、そういうお答えをされると思いますけれども、私は統計その他科学的な、あるいは数のあらわすものが、局長の御答弁の反対にならなければ幸いであることを、ただ祈るだけであります。
 そういうことから、もう少しお尋ねしてみたいのでありますけれども、やはり「要救助海難統計の考察」というパンフレットから引例いたしますと、遭難隻数は減少したが、トン数は逆に三倍に増加している。要するに、沈んだ船とか遭難した船は数としては減っている、しかしトン数はふえている、こういうことであります。三倍もふえている。一般船舶では、千トン以上の階層におけるトン数は二八九の指数となっている。これは指数が昭和三十五年を一〇〇とした場合ですから、約三倍になっているということも出ているわけであります。しかも、船齢五年未満の船舶、きわめて新しい船でありますが、その事故は三四%にも達しているのは、最近著しく増加する船腹に対して、海技従事者の供給不足が反映しているものと思われるが、提案理由にある、最近における船腹量の著しい増加、船舶の近代化の進展によって、資格軽減すれば海難事故を増加させるということは、せっかくのお答えでありますけれどもまず間違いなかろう、この法律の改正が不幸な結果をもたらす根拠になりはしないか、こういう心配があるわけですけれども、この点をひとつ頭に置いて、以下私がお尋ねしたい点をお答え願いたい。
 一つは、従事範囲の拡大に伴う海技従事者の再教育が必要だ、これはいままでもたびたび言われました。特に、この甲機につきましてはいろいろな政府の手だてもありますけれども、通信につきましての現状、さらに、今日並びにごく近い将来何をやろうとしているのか。文部省が電波高校を専門学校にしたということは、これも関係省の話し合いでやりましたというようなことなのか。運輸省がもっぱら率先して、しかも独自にこういうものをやりたいと思っているというようなものがあるのかどうなのか。
 二番目は、別表によりますと、別表第一の三千トンを五千トンとした。なぜここで二千トンふやしたのか。それじゃ四千五百トンならいいですかとか、あるいは四千トンならいいですかということになりますけれども、何か根拠があって三千トンを一躍五千トンにしたと思うのです。ただ何となくじゃ説明にならぬし、理論にならぬ。
 それから三番目に、乙種の職員の試験科目に英語が入っていない。これはこの間も聞かれました。国際航海にもかかわらずおかしい、こういうように思う。参考人の意見や質問へのお答えにも、この通信関係者はもうあらゆることをやらなければならぬ、トンツートンツーやっているだけじゃないんです、こういう意見がありましたけれども、一体こういう点についてどのように考えでございましょうか。
#16
○佐原政府委員 第一の再教育の点でございますが、何回も申しますけれども、通信の技能、技量につきましては、電波監理局系統がチェックをするわけでございます。われわれのほうは、一級通信士なり二級通信士の資格をとった人に対して、海技知識としての船舶職員試験をやるということでございますので、技量の点の再教育ということになりますとどうしても郵政省系統になって、われわれの管轄ではないと思います。
 第二の、三千トンを五千トンという点でございますが、これは先生のおっしゃるように、科学的根拠と言われてもちょっとございません。船舶職員法自体が、非常に形式的に、類型的にくくりまして、積み木細工のように資格制度を定めておるわけでございます。なぜ五千トンにしたかと言われましても、明確な科学的な答弁はできませんが、ただ、船舶乗り組み員の経験からいたしまして、いま乗っている船が大体倍になりますと、運転感覚が非常に狂ってくるというようなことを申しております。そういったような意味で、労使の経験者が集まった席上で、これはある程度経験によって出された数字ではなかろうかと、こう言わざるを得ないと思います。
 第三番目は英語の点でございますが、これも制度としてはまことに不備な点かもしれませんが、通信士のほうは二級の試験で英語をうんと要求しております。甲板、機関のほうは、乙種免許者には英語を課しておりません。これは実は職員法の別表をごらんになればわかると思いますが、乙免というのは、内航の資格でかなり数多く出しておりますけれども、内航の船長には必ずしも英語は必要ではない。最大公約数をとりますと、内航の船長にも英語を出して、それで免状がとれなかったということになってもはなはだまずい、こういう問題もございますので、現状では出しておりませんが、ただ、国際航海をする船長が英語を心得るのはあたりまえのことで、その辺は社内の教育にお願いしておる。しかし、いまの制度がこのままでいいかどうかというのは問題がございますので、今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
#17
○斉藤(正)委員 やはり三千トンを五千トンにした理論的根拠なんてないんですね。ただ何となくだ。こういうものは法律上、制度上きわめて困るんですよ。それは船種別、あるいは船の年齢別、あるいは目的別、あるいは乗り組み員の資格別というようなものを、過去の統計あるいは近代化の状態、そういうものを総合勘案して、倍の六千トンではだめだけれども、四千トンでも少しぬるい、その中間の五千トンをとりましたというようなものがなければ、ただ何となく五千トンです、こういう言い方は、少なくも提案者の政府としては無責任だ、もっと根拠ある理由を示して、自信と確信をもって御提示を願いたいというように思うわけでありますけれども、政府のおっしゃることはまあその辺だろうと思います。
 そこで、もう一点だけ伺っておきたいのですが、先ほども触れられまして、学校のほうは文部省、電波法に基づく試験その他は郵政省というようなことでございましたから、通信士の再教育の問題等についても運輸省としてはどうにもならぬというお答えは、どうにもならぬと思うのですよ。やはり所管が郵政省であるならば、少なくも船舶乗り組み員である通信士につきましては、運輸省が十分郵政省と連絡、協調の上でやってあげるのがたてまえだ。せっかく郵政で養成してもらったのをこっちはもう横取りしているわけですよ、簡単に言うならば。そうして一は甲に、二は乙に、三は丙にという資格で船へ乗らしているわけでしょう。もとが郵政だから、再教育も何もかも郵政でやってもらうのでは、あまりにもギブ・アンド・テークじゃない。それはもう強奪主義だ。また行政当局としても、船に乗っている以上うちの職員ですよ。郵政省の職員じゃない。そういう点につき、甲機の皆さんに対する国の措置に対しまして、通信の皆さんには運輸省は冷淡だ、私はそう思うのですけれども、その辺はいかがでございますか。
#18
○佐原政府委員 役所の所管の問題でいろいろ微妙な点がございますが、先生おっしゃるとおりに、通信士だから運輸省は何も知らぬ、何もしなくてもいいという気持ちは毛頭ございませんので、郵政当局あるいは文部当局と十分協議をいたしまして、再教育の点も検討させていただきたいと思います。
#19
○斉藤(正)委員 きわめて不十分でございますが、なおお尋ねしても解明できない点もございますし、平行線でございますのでこの辺で終わりますが、最後に大臣に、いま私の主として局長に対するお尋ね、やりとりの中から、多少大臣もお感じになっている点もあると思うのですけれども、要するに花形産業である造船、そして海運、この本質的な不況だといわれている今日でも、造船と海運はよろしいということになっておるわけであります。したがって、新造船はますますふえるでありましょうし、またタンカーあるいはコンテナ船その他特殊な船を含めて、きわめてメカニックな合理化、近代化された船ができていくわけであります。その要請にこたえて、船舶職員も当然養成されなければなりません。しかし、いま局長からお答えをいただきましたように、まだまだ運輸省がやるべき制度上の問題、あるいは生涯教育を通じた再教育の問題等々、きわめて不十分ではなかろうか。もし今度の改正によって海難事故がふえるというようなことになりますれば、これは事志と違ってたいへんなことになりはしないか。ひいては国際信用を落とすというようなことにもなりかねないというように思います。したがって、こうした船舶職員の養成あるいは再教育というような問題を含めて大臣の御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#20
○橋本国務大臣 いろいろと貴重なる御意見を拝聴いたしましたが、お話しのように、これからの船の内容等も近代化されてまいりますので、これは無線通信士に限らず、全体的に教育の内容は積極的に向上させなければならぬと考えております。それらの点につきましては、最善の措置を将来ともに講じてまいりたい、かように考えます。
#21
○斉藤(正)委員 終わります。
#22
○福井委員長 ほかに質疑はありませんか。――なければ、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
    ―――――――――――――
#23
○福井委員長 ただいま委員長の手元に、宇田國榮君、加藤六月君、徳安實藏君及び村山達雄君から、自由民主党提出にかかる修正案が提出されております。修正案はお手元に配付してあるとおりであります。
 この際、提出者から趣旨の説明を求めます。加藤六月君。
#24
○加藤(六)委員 私は、自由民主党を代表して、船舶職員法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、修正案を朗読いたします。
   船舶職員法の一部を改正する法律案に対する修正案
  船舶職員法の一部を改正する法律案の一部を
 次のように修正する。
  別表第三の改正規定中「削る」を「削り、同表平水区域又は沿海区域を航行区域とする船舶であって旅客船以外のものの項中「乙種船舶通信士」を「乙種船舶通信士(近海区域を航行区域とする総トン数五千トン以上の船舶であって国際航海に従事するものにあっては、甲種船舶通信士)」に改める」に改める。
 本修正案の内容は、旅客船以外の近海区域を航行区域とする船舶のうち、総トン数五千トン以上の国際航海に従事する船舶については、通信長の資格を甲種船舶通信士とするものであります。
 修正案の趣旨について申し上げます。
 本改正法案におきましては、旅客船以外の近海区域を航行区域とする船舶の通信長の資格は、すべて乙種船舶通信士とすることとしているのでありますが、これら近海区域船のうち、総トン数五千トン以上の国際航海に従事する大型船舶におきましては、それ以外の船舶におきますよりも、通信業務の内容がより複雑、困難であるなどの実情にかんがみ、通信長の資格を甲種船舶通信士とすることが適当でありますので、本修正案のとおり修正することが適当と考えるものであります。
 以上のとおりでありますので、修正案に御賛成くださいますようお願い申し上げ、趣旨の説明を終わります。
#25
○福井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#26
○福井委員長 これより船舶職員法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
 まず、宇田國榮君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#27
○福井委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次いで、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#28
○福井委員長 起立多数。よって、船舶職員法の一部を改正する法律案は、宇田國榮君外三名提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 おはかりいたします。
 ただいま修正議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○福井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#30
○福井委員長 この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。橋本運輸大臣。
#31
○橋本国務大臣 船舶職員法の一部を改正する法律案につきまして、慎重に御審議の上ただいま御採決をいただきましたこと、まことにありがとうございます。
 本法の施行にあたりましては、当委員会の審議の経過にかんがみ、また当委員会において修正案成立の経過に照らしまして、御趣旨を体し万全を期してまいる所存でございます。
#32
○福井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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