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1970/03/23 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 社会労働委員会 第14号
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1970/03/23 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 社会労働委員会 第14号

#1
第065回国会 社会労働委員会 第14号
昭和四十六年三月二十三日(火曜日)
    午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 倉成  正君
   理事 伊東 正義君 理事 佐々木義武君
   理事 増岡 博之君 理事 粟山 ひで君
   理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君
   理事 田畑 金光君
      有馬 元治君    梶山 静六君
      唐沢俊二郎君    小金 義照君
      斉藤滋与史君    田川 誠一君
      中島源太郎君    早川  崇君
      原 健三郎君    松山千惠子君
      向山 一人君    山下 徳夫君
      渡部 恒三君    川俣健二郎君
      小林  進君    島本 虎三君
      山本 政弘君    古寺  宏君
      古川 雅司君    渡部 通子君
      寺前  巖君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 野原 正勝君
 出席政府委員
        総理府人事局長 宮崎 清文君
        労働省労働基準
        局長      岡部 實夫君
        労働省労働基準
        局賃金部長   藤繩 正勝君
        労働省職業安定
        局長      住  榮作君
        労働省職業安定
        局失業対策部長 遠藤 政夫君
        建設省計画局宅
        地部長     朝日 邦夫君
 委員外の出席者
        議     員 川俣健二郎君
        議     員 田邊  誠君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十三日
 辞任         補欠選任
  後藤 俊男君     日野 吉夫君
    ―――――――――――――
三月十九日
 最低賃金法案(田邊誠君外六名提出、衆法第一
 四号)
 労働基準法の一部を改正する法律案(田邊誠君
 外六名提出、衆法第一五号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第六七号)
同月二十日
 保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案
 (小柳勇君外一名提出、参法第一七号)(予)
同月二十二日
 失業対策事業存続に関する請願(小林政子君紹
 介)(第二六〇〇号)
 同(中村重光君紹介)(第二六〇一号)
 同外三件(中村重光君紹介)(第二六七一号)
 同(井上普方君紹介)(第二七九二号)
 同(井野正揮君紹介)(第二七九三号)
 同(大出俊君紹介)(第二七九四号)
 同(川崎寛治君紹介)(第二七九五号)
 同(川俣健二郎君紹介)(第二七九六号)
 同(角屋堅次郎君紹介)(第二七九七号)
 同(木島喜兵衞君紹介)(第二七九八号)
 同(北山愛郎君紹介)(第二七九九号)
 同(黒田寿男君紹介)(第二八〇〇号)
 同(小林進君紹介)(第二八〇一号)
 同(河野密君紹介)(第二八〇二号)
 同(斉藤正男君紹介)(第二八〇三号)
 同(島本虎三君紹介)(第二八〇四号)
 同(田邊誠君紹介)(第二八〇五号)
 同(高田富之君紹介)(第二八〇六号)
 同(武部文君紹介)(第二八〇七号)
 同外一件(中村重光君紹介)(第二八〇八号)
 同(西宮弘君紹介)(第二八〇九号)
 同(華山親義君紹介)(第二八一〇号)
 同(細谷治嘉君紹介)(第二八一一号)
 同(美濃政市君紹介)(第二八一二号)
 同(八木昇君紹介)(第二八一三号)
 同(山本政弘君紹介)(第二八一四号)
 はり、きゅう、マッサージの健康保険取扱手続
 き簡素化等に関する請願(野田武夫君紹介)(
 第二六〇二号)
 同(前田正男君紹介)(第二六〇三号)
 同(前田正男君紹介)(第二六七七号)
 栄養士、管理栄養士の必置義務等に関する請願
 (長谷川峻君紹介)(第二六〇五号)
 同(小坂善太郎君紹介)(第二七四三号)
 同(野中英二君紹介)(第二七四四号)
 原爆死没広島中央電話局員遺族の援護に関する
 請願(砂原格君紹介)(第二六〇六号)
 終戦後外地死没満蒙開拓者遺族に対する処遇に
 関する請願(井出一太郎君紹介)(第二六〇七
 号)
 清掃事業の地方自治体直営化による転廃業者の
 補償救済に関する請願(石井桂君紹介)(第二
 六〇八号)
 同(川端文夫君紹介)(第二六〇九号)
 同(中村梅吉君紹介)(第二六一〇号)
 同(長谷川峻君紹介)(第二六一一号)
 同外一件(安倍晋太郎君紹介)(第二六七八
 号)
 同外三件(小澤太郎君紹介)(第二六七九号)
 同(勝澤芳雄君紹介)(第二六八〇号)
 同外一件(鯨岡兵輔君紹介)(第二六八一号)
 同(濱野清吾君紹介)(第二六八二号)
 同(天野公義君紹介)(第二七四五号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に
 関する請願(黒田寿男君紹介)(第二六一二
 号)
 同(津川武一君紹介)(第二六一三号)
 同(細谷治嘉君紹介)(第二六一四号)
 同(青柳盛雄君紹介)(第二六八七号)
 同(浦井洋君紹介)(第二六八八号)
 同(木島喜兵衞君紹介)(第二六八九号)
 同(小林政子君紹介)(第二六九〇号)
 同(田代文久君紹介)(第二六九一号)
 同(谷口善太郎君紹介)(第二六九二号)
 同(津川武一君紹介)(第二六九三号)
 同(寺前巖君紹介)(第二六九四号)
 同(土橋一吉君紹介)(第二六九五号)
 同(林百郎君紹介)(第二六九六号)
 同(東中光雄君紹介)(第二六九七号)
 同(不破哲三君紹介)(第二六九八号)
 同(松沢俊昭君紹介)(第二六九九号)
 同(松本善明君紹介)(第二七〇〇号)
 同(山原健二郎君紹介)(第二七〇一号)
 同(青柳盛雄君紹介)(第二七二七号)
 同(土橋一吉君紹介)(第二七二八号)
 同(井野正揮君紹介)(第二七二九号)
 同(浦井洋君紹介)(第二七三〇号)
 同(川崎寛治君紹介)(第二七三一号)
 同外二件(木島喜兵衞君紹介)(第二七三二
 号)
 同(田代文久君紹介)(第二七三三号)
 同(谷口善太郎君紹介)(第二七三四号)
 同(津川武一君紹介)(第二七三五号)
 同(林百郎君紹介)(第二七三六号)
 同(松沢俊昭君紹介)(第二七三七号)
 同(松本善明君紹介)(第二七三八号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案反対及び
 失業対策事業存続に関する請願(青柳盛雄君紹
 介)(第二六一五号)
 同(浦井洋君紹介)(第二六一六号)
 同(島本虎三君紹介)(第二六一七号)
 同(田代文久君紹介)(第二六一八号)
 同(谷口善太郎君紹介)(第二六一九号)
 同(寺前巖君紹介)(第二六二〇号)
 同(土橋一吉君紹介)(第二六二一号)
 同(林百郎君紹介)(第二六二二号)
 同(松本善明君紹介)(第二六二三号)
 同(山本政弘君紹介)(第二六二四号)
 同(米原昶君紹介)(第二六八三号)
 同(島本虎三君紹介)(第二六八四号)
 同(田邊誠君紹介)(第二六八五号)
 同(西宮弘君紹介)(第二六八六号)
 同外九件(河野密君紹介)(第二七四〇号)
 同(斉藤正男君紹介)(第二七四一号)
 同(田邊誠君紹介)(第二七四二号)
 失業対策事業就労者の待遇改善等に関する請願
 (不破哲三君紹介)(第二六七二号)
 高齢失業者等就労事業の実施に関する請願(田
 代文久君紹介)(第二六七三号)
 同(津川武一君紹介)(第二六七四号)
 同(寺前巖君紹介)(第二六七五号)
 医療事務管理士法の制定に関する請願外二件(
 久保田円次君紹介)(第二六七六号)
 看護婦不足対策に関する請願(川崎寛治君紹
 介)(第二七三九号)
 せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給
 付改善に関する請願(奥野誠亮君紹介)(第二
 七四六号)
 理学療法士、作業療法士の教育制度改善に関す
 る請願(相沢武彦君紹介)(第二七四七号)
 同(浅井美幸君紹介)(第二七四八号)
 同(新井彬之君紹介)(第二七四九号)
 同(有島重武君紹介)(第二七五〇号)
 同(伊藤惣助丸君紹介)(第二七五一号)
 同(小川新一郎君紹介)(第二七五二号)
 同(大久保直彦君紹介)(第二七五三号)
 同(大野潔君紹介)(第二七五四号)
 同(大橋敏雄君紹介)(第二七五五号)
 同(近江巳記夫君紹介)(第二七五六号)
 同(岡本富夫君紹介)(第二七五七号)
 同(沖本泰幸君紹介)(第二七五八号)
 同(鬼木勝利君紹介)(第二七五九号)
 同(貝沼次郎君紹介)(第二七六〇号)
 同(北側義一君紹介)(第二七六一号)
 同(桑名義治君紹介)(第二七六二号)
 同(小濱新次君紹介)(第二七六三号)
 同(古寺宏君紹介)(第二七六四号)
 同(斎藤実君紹介)(第二七六五号)
 同(坂井弘一君紹介)(第二七六六号)
 同(鈴切康雄君紹介)(第二七六七号)
 同(瀬野栄次郎君紹介)(第二七六八号)
 同(田中昭二君紹介)(第二七六九号)
 同(多田時子君紹介)(第二七七〇号)
 同(竹入義勝君紹介)(第二七七一号)
 同(鶴岡洋君紹介)(第二七七二号)
 同(鳥居一雄君紹介)(第二七七三号)
 同(中川嘉美君紹介)(第二七七四号)
 同(中野明君紹介)(第二七七五号)
 同(西中清君紹介)(第二七七六号)
 同(林孝矩君紹介)(第二七七七号)
 同(樋上新一君紹介)(第二七七八号)
 同(広沢直樹君紹介)(第二七七九号)
 同(伏木和雄君紹介)(第二七八〇号)
 同(二見伸明君紹介)(第二七八一号)
 同外一件(古川雅司君紹介)(第二七八二号)
 同(正木良明君紹介)(第二七八三号)
 同(松尾信人君紹介)(第二七八四号)
 同(松本忠助君紹介)(第二七八五号)
 同(宮井泰良君紹介)(第二七八六号)
 同(矢野絢也君紹介)(第二七八七号)
 同(山田太郎君紹介)(第二七八八号)
 同(和田一郎君紹介)(第二七八九号)
 同(渡部一郎君紹介)(第二七九〇号)
 同(渡部通子君紹介)(第二七九一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 勤労者財産形成促進法案(内閣提出第四五号)
 最低賃金法案(田邊誠君外六名提出、衆法第一
 四号)
 労働基準法の一部を改正する法律案(田邊誠君
 外六名提出、衆法第一五号)
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
 案(内閣提出第六六号)
     ――――◇―――――
#2
○倉成委員長 これより会議を開きます。
 勤労者財産形成促進法案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
#3
○山本(政)委員 この法案の提案理由の説明にこういうことが書いてあります。「西ドイツ等の先例に学ぶとともに、わが国の実態に即した勤労者財産形成政策について」云々ということが書いてあります。問題点は、ここに二つあると私は思うのです。一つは、西ドイツの先例、これはおそらく労働省ではよき先例というふうにお考えだろうと思う。もう一つは、「わが国の実態に即した勤労者財産形成政策」といっているが、これが実際にはわが国の経済条件に即しているかどうだろうかというところに問題があると思います。つまり私は、こういう二つの問題が出てくるだろうと思うのです。
 そこで、二番目のほうについてはあとでお伺いすることとして、「西ドイツの先例に学ぶ」、こうあるのですけれども、一体西ドイツの先例が、労働省のいうようによき先例かどうかということであります。一九六五年ドイツ経済研究所、これは西独にある経済研究所でありますが、ここから一つの論文が出ておる。「西ドイツの資産分配と有産化政策」ということで出されております。これは、西ドイツの資産形成配分の奇形的な状態を実証して、「結論として労働者有産化には重要産業国有化と民主的な共同決定権の強化が選ばれなければならない」、こういっております。
 私は、その前に、この西ドイツの法案が出た経緯というものが非常に疑問になってくるわけであります。一つは、西ドイツのこの財産形成法が出されたのは、一九六一年の総選挙を前にしてだということであります。フォルクスワーゲン社の民有化と株式の大衆公開を総選挙の前からずっと行なってきた。そうして総選挙の前になって三一二マルク法、つまり労働者有産化助成法というのを七月に制定しておる。もう一つは一九六五年、これは第二次の改正でありますけれども、このときにも総選挙があった。そうして国営の合同電気・鉱山株式会社を国民株の譲渡によって民有化した。そうして三一二マルク法の改正を意図した。これが第二次法改正だと思うのです。
 私は、どうもそういうことを考えますと、たいへん皮肉な言い方でありますけれども、参議院議員選挙を前にして労働省が一つのプロパガンダという意味を持ってやってきているのじゃないかという疑念を持たざるを得ない。もう一つは、これは前回の委員会で島本委員が別の表現で指摘しておりますけれども、四ドイツ経済の展開に対する勤労者の不平不満が、東独やその他の社会主義諸国の生産手段の社会化を基礎とする成果に直面した、そういうことで、連邦政府は、その影響を防止するために勤労者にべールをかぶせざるを得なかった、こういうふうにこの研究所のレポートはなっておる。この二点についてまず第一番にお伺いをしたいと思うのです。
#4
○岡部(實)政府委員 西ドイツにおきまして、いわゆる勤労者財産形成の制度を導入した経緯につきましては、西ドイツで共同決定法等、労使関係に関しまする労働組合の参加等の制度を導入して、そういった基盤あるいはそれらと一体的な形でこの財産形成の制度を導入してきたと思われます。そういう点におきましては、わが国のいまの労使関係の現状と必ずしも同一の基盤にあるものでないということは御指摘のとおりであります。
 それで、ドイツにおいてこの制度を導入したその評価については、ただいま御指摘のような評価もあろうかと思いますが、私どもドイツの先例についていろいろ勉強しましたのは、まさにドイツで行ないましたこの勤労者財産形成政策なるものが、日本のいまの勤労者のいろんな状態からいって――賃金は比較的順調に上昇してきておる、しかしながら、一方において資産というものが、国際的に見てもまだ非常に低い段階、したがいまして、今後経済の成長に見合いながら賃金を上昇さしていくということは当然必要であるけれども、それと同時に、やはり資産の面に着目をいたしまして、自主的に資産を持っていこうという努力に対しては、これを国としても援助し、奨励していくということが必要であろう、それからまた、そういう段階にきているのではないかということで、実は数年前から持ち家政策というものを中心とした財産づくりというような考え方を検討してまいったわけでございますが、今日の段階におきましては、持ち家と同時に資産の保有ということで、勤労者の財産づくりに国が援助政策をとっていくということが、日本の現状においても非常に必要であろう、こういう認識に立ったものでございまして、西独におけるその制度が――これは西独においてはいろいろそれなりの労使関係の中で生まれたものと思いますが、私どもはそのうちで資産の形成並びに持ち家という二つの制度を現段階において導入していくことが非常に重要な意味合いを持つであろう、こういうことで提出をいたしておるところでございます。
#5
○山本(政)委員 賃金の上昇、そして貯蓄並びに持ち家というものを勤労者に持たせることが必要だ、それが日本の現状から見ていいのだ、これは西独でも同じことをいっているのですよ。しかも、賃金の上昇からいっても、西独の場合は、御承知のように高度経済成長で賃金が上昇している。西独の政府というものはあなた方と同じような考え方でそういうことをおやりになった。私の聞きたいのは、西独の先例に学ぶ、こういっているのだけれども、その先例というものは、あなた方から言わせればよき先例だというふうにお考えなんだろうと思うけれども、決して成功しておらないじゃありませんか。成功しているのだというのなら、成功しているのかどうか、この辺を私はきちんとあなた方にお伺いしたいわけなんです。
#6
○岡部(實)政府委員 この制度が西独において十年前に行なわれまして、その後、先ほど御指摘のように、何回かの改正を経て今日の段階に至っております。この制度自体が、勤労者がこれを自主的にどう活用していくか、活用されるような制度でなければこれ自体有効な制度とはいえない。そういう意味で、当初西独におきましても、一部の労働組合は必ずしも十分この制度を利用するという段階には至ってないようでございましたが、最近におきましては、特に大きな、たとえば金属組合だったと思いますが、全面的にこの制度を活用するということに踏み切りまして、その後この制度を利用する数も非常にふえてまいっているという情報を得ておりますので、その限りにおいて、従来必ずしも十分利用されておらなかった制度が、今日は、理解を得、利用されているということではなかろうか、こういうふうに思います。
#7
○山本(政)委員 最近西独の有産化政策というものが若干改善されたということはあるいはそのとおりかもしれません。しかし、政府の提案をされたこの法案というのは、少なくとも三一二マルク法が制定された以前よりも下回っておる政策であるということはいえると思うのです。成功か失敗かということは、西独で政府のそういう政策担当者がちゃんと言っているから、これはあとでお話ししょうと思いますけれども、要するに西ドイツの労働者有産化政策というものは、あなた方の資料によれば、端緒は一九五七年十月の政府声明で、国民の多くに、国民全体に属するという感情を持たせるためには、国民各層に財産を分散することが必要である、こういっておる。これは基準局賃金部の資料の中にそう書いてある。そして目的は、一つは、勤労者の「財産を持とう」という自主的、自発的な意欲に基づいて勤労者の生活の安定をはかる、第二番目は、勤労者がみずからの財産を持つことによって、自由な市民としての自覚と責任が生まれることを期待する、第三番目は、企業体質の改善、経済成長のために必要な投資は、国民の大部分を占める勤労者の貯蓄が不可決であるが、貯蓄にささえられた経済成長によって賃上げと成長に伴う利益の配分にあずかる。まさにあなた方が御提案になったのとそっくりなんです。つまり、多少の字句を別にすれば、ここに書いてあることは、あなた方がいままでの委員会でおっしゃったことがこの三点にきわめて象徴的に集約されていると私は思う。そして、制度の類別としては、長期据え置き貯蓄の奨励、生命保険の奨励、住宅建設の奨励、株式保有の奨励、この四点、そしてそれを総括して勤労者の財産形成に対する使用者の援助の奨励、こういうふうになっている。きわめてよく似ているのですよ。そして、この政策を実行するために五十億二千五百万マルクというものを西独の政府はその当時支出したわけですね。中身については私は詳しいことを申し上げません。
 そこで、貯蓄奨励の効果は一体あったのかどうか。西ドイツのよき先例の中に、貯蓄奨励の効果があったかどうか。一九六三年のドイツ貯蓄金庫振替連盟年報というものがある。一九六三年の貯蓄金庫の貯蓄内容は、一口座当たりの金額が千マルク未満が口座数比で七一・七%、貯蓄の総額比からいえば八・八%であります。そして一口座当たり金額が一万マルク以上の口座数の比率が二・三%であります。そして貯蓄の総額比は三八・七%。そして第二番目には、全労務者世帯の四二%、つまりドイツの二百五十万世帯というものは貯蓄が皆無だったわけです。そして一九六四年に西独の労働大臣のブランクは「三一二マルク法の効果は赤面の至りである。」、ちゃんとここに「赤面の至り」と書いてある。公式にこう言っているのです。そうすると、西独の財産形成における貯蓄奨励の効果というものはなかったということでしょう。これが西独の先例をあなた方は学ぶという根拠になるのかどうか。この点どうなんです。
#8
○岡部(實)政府委員 先ほどちょっと触れましたように、この制度自体が当初必ずしも十分勤労者の理解を得なかった、そのために利用される度合いも少なかったように聞いておりますけれども、それが制度の改正と並行しながら、だんだんと最近においてはこの制度が利用され、ふえてまいっておる。そこで私ども、この制度を取り上げることにいたしましたのは、一つには、わが国における勤労者のいまの貯蓄の現況とそれから資産の保有の状況その他から見まして、いろいろの困難な事情はございましょうが、少なくとも現段階においては、勤労者は何らかの形で貯蓄をしている。しかも相当定期性預貯金等も現実にある。しかも低所得層においても相当な貯蓄があるという現状をにらみまして、さらには資産の保有状況が、国際的に見ても、たとえば賃金の国際比較に比べてさらに劣っているというような状況から見、貯蓄余力も今後徐々に加わってまいるであろうというような状況から、実はいまの勤労者がこの制度を活用して、自主的な貯蓄努力をさらに若干でも容易にしてまいるということが必要であろう、こういうことで踏み切ったわけでございます。
#9
○山本(政)委員 つまり、ここで初めて日本政府によって勤労者の財産形成が行なわれようとしているわけです。そのスタートに立つ場合に、あなた方の参考にしているのは三一二マルク法なんですよ。その後の第二次改正の六二四マルク法というものに照準を当ててどうだというふうになっていないのですよ、この法案の内容からいえば。焦点は三一二マルクという時点に焦点を当ててあなた方はこれをやっているわけなんです。そうすると、三一二マルク法というのは効果のないものだということをちゃんとブランクが言っているわけでしょう。あなたたちはそれを下回るそういう法案を出してきているのですよ。これは実際に勤労者の有産化計画になるのだろうかどうだろうか。その辺をお聞きしたいのですよ。
#10
○岡部(實)政府委員 御指摘のように、西独では当初この付加金のいわゆる割り増し金の支払われるその限度を三百十二マルクというものに押えておったわけです。それはまさに十年前のことでございまして、その後最近に至ってその倍の六百二十四マルクにふやしてまいった。そこでその辺をどう評価するかについては、いろいろ見方がございましょうが、私どもこの法案をつくるにあたって、西独と比較したのは、十年前の西独の賃金の状況、それとわが国の現在における賃金の全体の水準の状況等もにらみ合わせまして、いろいろな比較のしかたはありましょうが、ほぼ当時の西独の賃金水準と見合っているというようなところで押えたわけであります。なお、制度の中身につきましては、西独におきましては、ただいま勤労者の約五割近くが財産形成の制度を利用して何らかの形の貯蓄をやっておるという状況でございます。
 ただ、私どもその十年前の状況、それから十年後、今度直しました西独の状況と比べて、これはこの制度自体のいわば魅力をどこまで持たせるかということについては、御指摘のとおり、私どもできるだけ魅力を持たせるべきだということでいろいろ考えたわけでございますが、現段階におきましては、減税制度というものを中心にともかくスタートして、それで徐々に改善をしながらこの利用度を高め、真に効果ある財産形成を出現したい、こういうことで、スタートにおきましては、御指摘のように、見方によりましては必ずしも十分の魅力がないということを否定するものではございませんが、ともかくスタートをして、これをできるだけいいものに改善をしてまいる、こういうつもりで現在提案いたしておるわけでございます。
#11
○山本(政)委員 それじゃ、賃金部長でもいいですが、西独ではともかく貯蓄金庫以外に労務者及び職員は住宅建設貯蓄金庫とも住宅貯蓄の契約を結んでおる。私は新しい資料を持ちませんが、一九六六年でけっこうです。六五年に第二次の法改正が西独であったのだから。あるいは一九七〇年でもいいです。そのときの契約数は幾らになっていますか。それはあなたのほうで出るはずでしょう。
#12
○藤繩政府委員 ただいま御指摘の契約数そのものについてはちょっといま手持ちの資料がございませんが、この財産形成制度利用者の推移がございますので御披露申し上げますと、一九六三年が二十五万人でございます。一九六五年が二百二十万、一九六七年が三百七十万、一九六九年が五百万、ごく最近入りました一九七〇年の上期の情勢では七百万程度がこれを利用しておるという報告を受けております。
#13
○山本(政)委員 その中で労務者と職員と官吏というのがありますね、その区別はわかりますか。
#14
○藤繩政府委員 ただいま数字の内訳はちょっと資料を持ち合わせておりません。
#15
○山本(政)委員 だからそういうところに問題があると言うんですよ。つまり一九六三年、それから六五年くらいの場合には、要するに労務者といわれる人、ここではおそらく労働者でしょう、二〇%台なんですよ。そして職員は三〇%、官吏が一〇%以下です。そうすると、労働者というのが二〇%台だということは、必ずしもこの数字は労働者がずっとふえてきたということのあなたのおっしゃるような証明にはなりませんよ。職員数がこのうちで三分の一を占めていることがあるかもわからぬでしょう。つまり、ぼくに言わしたら、貯蓄可能な人が利用者として利用しているのじゃないかという疑問がわいてくるわけです。その辺のことはあなた方が数字的に論証してくれなければ議論にならぬでしょう。その点はどうなんですか。
#16
○藤繩政府委員 西ドイツの場合は、先生最初にお触れになりましたように、勤労者の中で貯蓄を実際にやっていない者もかなりございます。そこで、西ドイツ政府といたしましては、この財産形成政策のねらいの一つを、貯蓄ができない者に対して貯蓄を可能ならしめるという意図があったようでございます。わが国の場合は、先般来お答えいたしておりますように、現在の調査をもってしましても、勤労者の九九・七%が何らかの形で貯蓄をしております。階層別の分布を見ましても、かなり低い階層でも相当の割合で貯蓄をいたしておりますので、その辺の背景は、西ドイツとわが国では多少違うのではないか。いずれにしましても、わが国では現に多数の勤労者が貯蓄をしておる。それに対して何らかの形で援助の手を差し伸べるということは積極的な考え方ではないかというふうに思っておるわけであります。
#17
○山本(政)委員 その議論は少しあとでお尋ねしたい。
 西ドイツの株式保有の結果は、プロイセン鉱山株を二十一万六千人に、フォルクスワーゲン株を百五十万人に、これは額面百マルクです、これは御承知だと思うのです。そういう小口の株券として譲渡した。ところが、一九六〇年から六一年の株式相場の低落によってフォルクスワーゲンの国民株購入者百五十万人のうちの四〇%、つまり六十万人が株を手放しているわけです。バイエルンでは、バイエルンの工場の従業員が二千人バイエルンの株を手放している。これは一体どこに行ったんだろうか。全部金融機関に集中しているわけですね。この法案の中には有価証券とかなんとかというものがあるんですけれども、だからこれに対する結論というのは、社債その他有価証券形式の購入は労務者の家計では重視をされておらぬ。貯蓄形成の重点は貯蓄金庫への預金であるけれども、労働者にとってこのことは生産手段に対する所有権の形成を意味するものではないから、こういって、貯蓄というものは生活不安に対する予備あるいは比較的金額の大きな消費目的物を調達するための生活基金でしかない、というふうにこれは結論づけておるのですよ。貯蓄をしていると盛んにあなた方おっしゃるけれども、これはあとで触れますよ。触れますけれども、いま私が申し上げたのは、西独が成功したかということであります。それから、これは西独の経済省の委託によって、C・フェール教授は一九五〇年から一九六三年における資産形成の奇形的な構造というものを報告をしております。法人を含んでおりません、その報告は純資産の形成ということで、労務者の世帯は千六百マルク、職員、官吏が六千マルク、独立営業世帯が一万三千マルク、これだけしかありませんよ、こういっているのです。そして、全世帯の一七%の独立営業世帯が個人資産増加の四分の三を保有しておる、こういっておる。労務者とかあるいは職員世帯は、純収入の三・五%を貯蓄し得たにすぎない、こういっているのですね。しかし現実にはやはり西独は貯金をしているのだ。法人を除いた全資産というものを一〇〇とするならば、独立営業世帯というのが八六・五%、労務、職員世帯が一一・二%、年金需給者世帯が二・三%、こういう貯蓄の構成の割合になっているのです。つまり、労務職員世帯よりか独立営業世帯のほうが二十六倍も貯蓄をしているということです。だから、労働者のほうで、西ドイツの場合は貯蓄を可能にさせる、こうおっしゃったんだけれども、貯蓄を可能にすることが実は財産形成になるんじゃないですか、賃金部長。あなた方、財産形成のために貯蓄をさせる、そして、そのために減税をするんだ、こういっているんだけれども、同じじゃないですか。それは西ドイツがやった考えと、あなた方がおっしゃること、ただことばの上のまやかしではなくて、それは一九六五年と一九七〇年を比べれば西ドイツだって貯蓄がふえているだろうし、日本だってふえていますよ。それじゃ六一年の日本の貯蓄はどうなっているか。貯蓄が多少ふえれば多少の余裕ができるかもわからない。そのあとはなぜ貯蓄しなければならぬかという実態をお話しようかと思うのですけれども、そういう実態があるじゃありませんか。よく西独は失敗をしておる、こう言っておる。あなた方はよき先例としてこれを見習っているのかどうか。ともあれ私が申し上げたいのは、要するに独立営業世帯の平均貯蓄は労務、職員世帯の二十六倍だという、そういうようなこと、あるいは百万マルク以上の資産家の資産が――ドイツですよ、全資産が一九五三年、二二%だったのが、一九六〇年には四〇%になった。ところが、四万から十万マルク以下の資産というのは、一九五三年、三五%から一九六〇年、一六%に減っているんですね。労働者の貯金というのはふえてくるでしょう。しかしそれ以上にふえているのは一体どこがふえてきているか。ぼくが一番疑問に思うのは、こういう勤労者財産形成促進法というものが、一体西ドイツの失敗というようなこと――失敗といったらおかしいが、つまりうまくいっていないというようなことから考える、あるいは貯蓄というものが西ドイツでは期待されたほどされていないというようなことの反面に、百万マルク以上の法人の資産が一九五三年には二百八十億マルクから一九六〇年には六百二十億マルクになっているわけなんですよ。三倍近くになっている。これはその資産形成というのは考えようによっては労務者に不利に作用します。どこかのほうに有利に作用しているんじゃないか。結果的には、こういう法案をせっかくお考えになっても、決して有利に作用していないんじゃないだろうか、西ドイツの例から。この辺はどうお考えになっておるか。
#18
○岡部(實)政府委員 西ドイツの場合に、実は先般も西ドイツでこの法案を担当した労働省の次官に来てもらっていろいろ西独の実情等は聞いたわけでございます。その際も、ある制度が定着していくのに率直にいって相当時間がかかったんだ。それで当初は、先ほどの数字にもございますように、なかなか十分この制度が活用されない。また、もちろん制度自体の魅力がどの程度あるかというその相関関係にもなろうかと思いますが、いずれにせよ十年の歳月を経まして、今日では少なくとも当初に比べて相当な数の利用者が出てきておるということは、この制度がある時間をかけて定着してきたのではなかろうか。
 そこで、日本の場合におきまして、これがその意図に反して勤労者に不利に作用するのではないかという御質問でございますが、私どもは率直に、現在いろいろの形で貯蓄をされておる勤労者がこの制度を利用して、少しでも――十分な魅力とはいえないにしても、少しでもその貯蓄が有利になってくる。少なくとも税制においては有利になるということは間違いない。
 もう一つは、そのたまった金が、これがやはり勤労者のために十分還元されて使われるということを私どもはやはり考えなければならぬ。そこで、これもどの程度還元するかということについてまだ明確にあれしておりませんけれども、少なくとも従来一般勤労者に対します住宅ローンが一%程度にすぎないというようなことからいいますと、この財産形成貯蓄を通じて集まりました勤労者の預貯金が、事業団を通じまして持ち家建設のために還流してまいるということが確保されるならば、そういう面からも勤労者に一つの、いわゆる現状に比べて少しでも有利に作用していくんではなかろうか。なお、この中身の問題については、今後活用される状況を見ながら、さらにこれを改善して真に勤労者が喜んでこの制度を活用されるような状況に持っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#19
○山本(政)委員 私の記憶に間違いがあるかもわかりませんが、一九六五年に第二次改正がありましたね。三百十二マルクから六百二十四マルクになったわけです。そうですね。
#20
○藤繩政府委員 三一二マルク法が六二四マルク法になりましたのは昨年の改正でございます。社会民主党になってからのことでございます。
#21
○山本(政)委員 昨年、一九七〇年ですね。それまでにかなりな手直しがあったと思うのですけれども、一九六五年に、いま私が申し上げたように、西ドイツでは、生活不安に対する予備か、比較的金額の大きな消費目的物を調達するための生活基金でしかない。それでも労働者の大部分は調達額をあらかじめ貯蓄することができないで割賦払いを利用しなければならない。そして、いままでやってきたような財産形成政策について、特に株式保有の結末についての結果を大蔵大臣のドリンガーが報告して、これは失敗だ、こう言っている。そうすると、一九七〇年、昨年に改正されたというけれども、私は一歩譲って、倍になったのですから非常に大幅な改正があった、それから手直しも、これを見ますとかなり労働者に一応は有利な手直しになっておりますね。だけれども、それまでの間に、それまでの間というのはつまりこれはかなり難行苦行しておるわけですよ。これはお認めになるでしょう。どうなんです。
#22
○藤繩政府委員 いま先生、難行苦行とおっしゃいましたが、制度の発足にあたりまして、労使それぞれから制度に対する理解が十分でなかった、したがって、最初の加入は非常にわずかであったということは、先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、累次の改正を経まして、現在は二千二百万人の雇用労働者のうち一千万人が加入するところまで参ったわけでございます。もとよりヨーロッパにおきましてもこの西ドイツの勤労者財産形成政策についてはかなり議論がございまして、御指摘のような批判的な見解もあることは事実でございます。何と申しましても累次の改正を経まして、とにかく大幅な利用がなされているということは、やはり評価に値するのではないかというふうに私どもは考えているわけであります。
#23
○山本(政)委員 では重ねてお伺いしますけれども、あなた方は、一九七〇年に改正されたものを基準としてこの法案をおつくりになったのか、あるいは三一二マルク法を基法としてこの法案をおつくりになったのか、それだけひとつ聞かしてもらいたいと思います。
#24
○藤繩政府委員 西ドイツの財産形成法につきまして発足以来の経過を私どもは勉強してまいりましたが、昨年の改正は、御指摘のように減税対象額、去年から減税が付加金に変わりましたけれども、援助の対象額を年額三百十二マルクから六百二十四マルクに切りかえたわけでございまして、そういう意味では対象額をふやしております。それから、二、三の改正が行なわれておりますが、考え方の大きな根幹は動いておらないわけでございます。私ども、西ドイツの制度がそのままわが国に適用できるとは考えておらないわけでございまして、わが国流にいろんな点で考慮しなければならない。ただ当初、労働省の構想といたしましては、たとえば減税にしましてももっと思い切った所得控除、税額控除というような方式を考えておりましたが、これはいろんな折衝の結果、現在提案しておりますような利子に対する非課税というふうになったわけでございまして、私どもは現時点でこの制度の発足を見られれば、以後さらにその拡充について努力を重ねていかなければならないと思っているわけでございます。
#25
○山本(政)委員 この法案提案の経緯について、ここにこう書いてある。勤労者財産形成政策は、勤労者が自主的な努力によって、住宅、預貯金、有価証券等の財産を持ち、その長期的安定向上をはかることを減税その他の優遇措置によって奨励助長する、こういっておるんですね。
 政府の資料でお伺いいたします。あなた方は貯蓄ができたと言っているけれども、経済企画庁の国民所得統計年報、昭和四十五年版でありますが、この表に「実質国民総支出の対前年増加率とその構成」というのが昭和三十年から昭和四十二年まで出ている。昭和三十年の六三・七%を頂点にして個人消費支出はずっと減ってきているのですよ。家計消費支出も同じように六二・六%からずっと漸減して五〇・八%になっている。個人消費支出またはその大部分を占める家計消費支出は、いま申し上げたように減少の一途をたどっておるわけです。三十年から四十三年までで一一%減っているわけです。そして総固定資本形成は逆に増加しております。三十年から四十三年で倍増になっているわけです。特に企業設備は二・三倍になっているでしょう。政府関係の項目については、財貨サービス経常購入は減少ぎみであり、総資本形成の政府勘定は増加ぎみである、しかし差し引きは減少ぎみになっておるということからいえば、消費の比重が急速に減少しておる。そして投資、特に企業の設備投資の比重が急増しているということの証明にこの数字はなるじゃありませんか。そして一般家庭の消費が削られて、その分が企業の設備拡大に向けられているわけです。つまり、いままでの高度成長というのは、民間企業の商蓄積というものを中心にして展開されたわけでしょう。それはつまり生活水準の改善というものとかかわりがないということの証明になっているわけでしょう。あなた方は、貯金はふえていると言うけれども、しかし、総額における家計の比率では減ってきているというのが事実ですよ。これを一体あなた方はどういうふうに説明するのですか。貯金はもちろんありますよ、名目賃金が上がっておるのだから。多少貯金は上がってきておるかもしれないけれども、支出は減っておるという現実をあなた方はどう理解しているのですか。労働者というものはそんなに余裕があるとお考えになっているのか。実態としては余裕がないわけですよ。私に言わせたら無理やりに貯蓄している。労働者財産形成というのはその上にもう一つ無理やりに貯蓄させるという政策でしかないわけです。そうでなければ、家計費の支出がこんなにずっと少なくなるはずはないでしょう。一貫して少なくなっているわけです。あなた方はこれをどう理解するのですか。
#26
○藤繩政府委員 先生いま御指摘の数字は、国民所得統計に基づく支出の割合であろうかと思います。個人消費支出は、仰せのように、構成費としては、昭和四十年では五六・四%でありましたが、四十四年に五一・二%になっております。片や国内総固定資本形成は、昭和四十年に三〇・七%でありましたものが、昭和四十四年には三五・二%になっておるということでございまして、構成比に関しては御指摘のとおりでございます。
 ただ問題は、構成比の変化をもって勤労者の家計の状態をどう評価するかという問題になろうかと思いますけれども、勤労者の家計は、家計調査によりますと、御承知のように、一貫して全体の規模も大きくなっておりまして、また消費水準も高まっております。消費支出が年々指数を改訂して高まっていくにもかかわらず、さらに黒字率も増大し、その結果、全体としてエンゲル係数も一貫して減少しておるということは、やはり勤労者家計の少なくとも改善を物語っておるというふうに思うわけでございます。その構成比の割合の変化をどう評価するかという違いであろうかと思いますが、家計調査の結果はさようなことになっております。
#27
○山本(政)委員 そういう議論になるんだったら、それじゃこの数字は一体どうなるのですか。これは総貯蓄の構成ですよ。私に言わしたら、高度成長がなぜ可能であったかということをこの総貯蓄の構成がよくあらわしていると思うのです。第二表は、企業の貯蓄、つまり資本の減耗引き当てというか、資本の減価償却というか、あるいは法人留保分、これは高度成長期には増大しておるわけです。停滞期には減少している。しかし、平均すればほぼ同一水準で五〇%を保っておるわけですね。ところが、個人貯蓄は逆に高度成長期に減少しておりますよ。そして、停滞期には増大をしておるのです。ほぼ三〇%台。政府の経常余剰というのは、三十年半ばごろまでは増加傾向だったけれども、それから後は減少しておる。このことは、個人の貯蓄がほぼ同一水準を保っておる、そして高度成長というのは高蓄積を基盤にして展開している、こういうことが言えるわけで、個人の貯蓄というのは、ぼくに言わしたら、やはり企業のほうに回されているのだろうと思う。なぜこんなことを言うかというと、これは要するに財産形成によって集めたお金というのがそっちのほうに回されちゃたまらぬということを私は申し上げたいのであって、この点は一体どうお考えになりますか。
#28
○藤繩政府委員 ただいまの御指摘も構成比の変化であろうと思いますが、高度成長期に法人留保あるいは資本減耗引き当てがふえて、そしてそういうときに個人貯蓄の割合が減るではないか、やはり経済の変動によりまして、企業活動が盛んな場合にそれらの割合が高まる、そうすると、相対的に国民所得の面から見た百分比でございますから、個人貯蓄の割合は減るということはあろうかと思います。問題は、最後に先生が御指摘になりましたように、一般の勤労者が大幅な預貯金をいたしておりまして、現在あらゆる預貯金を含めまして百兆以上の預貯金があろうかと思いますが、現状のままで推移いたしますとすれば、先般来お答えをいたしておりますように、たとえば市中銀行の勤労者に還元される割合――市中銀行の貯蓄の還元割合を見ますと、住宅ローンの例をとれば、わずかに一%にすぎない。そこで私どもは、この制度によれば、ある程度まとまったものを、とにもかくにも勤労者の住宅建設というものに持ってきて投下できるという点は、従来の資金の流れに比べて非常な前進ではないかというふうに考えているわけでございます。
#29
○山本(政)委員 いまこの統計を見ますと、個人貯蓄は昭和三十年に三九・二%、それからずっと、だんだん減ってきて、四十三年は三一・七%になっておるのですね。額としてはなるほど大きくなっておるのですよ。それから率としては小さくなっておる。何でそうなるのですか。名目的には大きくなっておるのですよ。しかし、物価の上昇とかなんとかいうふうなことを考えたら、実質的には一つも大きくなっていないということなんですよ、この率からいったら。これは貯蓄率ですから、率からいったって減っているわけですよ。あなた方は、たくさんとにかく貯蓄がふえておるじゃないかと指摘しておるけれども、実際は個人貯蓄の率からいったって減ってきておるわけですよ。ただ多少賃金が上がったから額としては上がったかもわからぬけれども、しかし比率は減少しておるということは事実なんです。あなた方がいま主張されておることは、貯金だけのことから見ているけれども、ほかの諸条件は全部のけておるわけだ。土地も建築費も資材も全部のけてしまった段階では、なるほど名目的には金額はかなりな金額になっておると私も思いますけれども、あれを支出されるようになったら、そんなものは飛んでいってしまいますよ。これはぼくはあとでお伺いしたいのですけれども、そう思いませんか。
#30
○藤繩政府委員 先生の御指摘の数字は、国民所得統計の中で、資本形成といいますか、総貯蓄といいますか、その中で個人貯蓄とそれからたとえば社内留保等の企業の貯蓄といいますか、企業の割合がだんだんふえてきて、個人の割合が減っておるのではないか、こういう御指摘だろうと思います。これは統計が示すとおりでございますが、それの評価をどうするかの問題でございますが、非常な高度成長の結果、企業の社内留保等がふえまして、相対的にそういう関係になっておるというのは事実でございますけれども、しかしながら、割合の構成で言いますとそのとおりでございますが、しかしながら、個人あるいは勤労者の家計の中で貯蓄をする余裕の増加、あるいは貯蓄率そのものというものもまた一貫してふえておるわけでありまして、その点では私どもは、勤労者がいよいよ貯蓄の余力がなくなりつつあるというふうには思わないのでありまして、やはり少しずつ改善されてきている過程にあるのではないかというふうに考えております。
#31
○山本(政)委員 それではそこに総理府統計局の「貯蓄動向調査報告」というのがありますね、昭和四十四年の。あなたのおっしゃるように、総貯蓄率というのは二三・九%で高いわけです。総貯蓄率というのは、預貯金、土地、有価証券、全部含むはずですね。そうですね。そこにありますか。
#32
○藤繩政府委員 国民所得統計、総理府の家計調査によりますと、家計ベースで、全国の勤労者世帯の貯蓄率は、昭和四十五年二〇・三%になっております。
#33
○山本(政)委員 四十五年に二〇・三%といったら、四十四年に比べまして減っているわけでしょう。それはともかくとしまして、そこにあるかどうか知りませんが、総貯蓄率というのは、所得階層が上がるにつれて高くなっているのは事実でしょう。
#34
○藤繩政府委員 階層別の数字はここにございますが、総理府の家計調査によりまして、いまの二〇・三という平均貯蓄率を一、二、三、四、五と五分位であらわしますと、御指摘のように、収入階級が高くなるほど貯蓄率は高くなるわけでございまして、第一・五分位が一四・五、第二・五分位が一八・九、第三・五分位が二〇・八、第四・五分位が二二・五、第五・五分位が二四・四というふうになるわけでございます。
#35
○山本(政)委員 そうですね。そうすると、その貯蓄率というのは、あなた方は高いと思いますか、低いと思いますか。
#36
○藤繩政府委員 わが国の貯蓄率は、国際的に比較いたしますと非常に高いわけでございます。西ドイツがその次に高うございますけれども、ヨーロッパ諸国に比べてだいぶ高い。最近の比較できる時点で申しますと、これは国民所得ベースでございますから、いまの勤労者家計とは必ずしも正確にはリンクいたしませんが、昭和四十三年にわが国の個人貯蓄率は二〇・五を示しております。アメリカが六・七、イギリスが六・九、西ドイツが一六・〇、フランスが一一・五でございまして、その意味でも平均値が高い。したがいまして、いまの階層別にしてもかなり高いものであるというふうに評価してよろしいのではないかと思います。
#37
○山本(政)委員 そうすると、高蓄積というのは、これは法人の蓄積だけじゃなくて、個人の蓄積にもたよっているということが言えませんか。
#38
○藤繩政府委員 現在の個人の貯蓄は、多く銀行等に貯蓄されているのが現状でございまして、資金運用全体といたしましては、先ほど申し上げましたように、個人への還元が必ずしも十分でないというところから見ますと、資本に活用されているというか、そういうことはかなり大きく考えられるのではないかと思います。
#39
○山本(政)委員 そうしますと、高収入の人ほど貯蓄率が高いということは、これは普通の預貯金以外に、実物の投資といいますか、つまり固定資産貯蓄というか、そういうものも含めての貯蓄だというふうに考えていいわけでしょう。その点はいかがでしょう。
#40
○藤繩政府委員 そのとおりでございます。
#41
○山本(政)委員 そうすると、いま五段階にお分けになったその第五番目の階層というのは、つまり負債すなわち他人の貯蓄を利用しているということも言えますね。そういう傾向があるというふうに言える。この点はどうでしょう。負債率が高いんだから……。
#42
○藤繩政府委員 最近の家計調査の特徴といたしまして、片方で黒字率が高まり、また貯蓄率も国際的に見て相当高い割合を示す一方、ある程度の負債が見られるわけであります。これは御承知の、たとえばうち一軒を建てるにいたしましても、あるいは自動車を買うにいたしましても、割賦販売が非常に普及してきた、あるいはつとめ先の資金を借りるというようなケースがむしろ普通になってまいりました。そういった意味からかなりの負債もあるわけでございます。階層別の負債の分布は、貯蓄動向調査によりますと、昭和四十四年の負債現在高が、平均いたしまして二十二万四千円でございますが、この五分位階級に分けまして、第一階級が十万二千円、第二が十万五千円、第三が十六万一千円、第四が二十万八千円、第五が四十七万三千円、御指摘のように、階級が上になるに従って負債高も高まっていくというのは事実でございます。
#43
○山本(政)委員 だから、あなたのおっしゃるように、高所得者というのは土地や株式のように物価上昇に影響されない、つまり減価がないといったほうが正確かもわかりませんが、そういう貯蓄を行なっておる。しかし低所得者の場合は、その貯蓄が実際に資産となり得ているのかどうかということが問題になってくるわけですよ、現実には。インフレというのがあるのですから、勤労者がたくさん貯蓄をするようになったと言っているけれども、その貯蓄というのは実態として資産となり得ておるかどうかということが問題となるわけでしょう。あなた方は幾ら貯金がたくさんあるといったって、その貯金というのは、資産化される貯金ではないんですよ、真の意味での。だから、貯金がたくさんあるから家が建てらるような条件ということには現実にならぬわけですよ。ぼくの言いたいことはそこなんだ。最大の問題点はそこなんですよ。その点一体どうお考えになっていますか。
#44
○藤繩政府委員 傾向といたしまして、先生御指摘のような傾向があることは事実でございますが、ただ数字を見ますと、たとえば貯蓄の中で、いま資産ということをおっしゃいましたけれども、貯蓄の中で何を資産的なものと見るかという見方はいろいろあろうかと思います。たとえば定期性預金も資産的なものだというふうに見ますと、勤労者世帯の貯蓄の中で定期性預金は三一・六%を占めておりますが、それが第一・五分位で三五・二、第三・五分位で三四・一、第五・五分位ですと逆に二九・九ということであまり落差がございません。むしろ下のほうが少し高いということがございますが、逆の意味の通貨性預金は、御指摘のような傾向でございまして、全体の平均が一四・八%でございますが、第一・五分位が一八・九という値を示しますのに引きかえまして、第五・五分位では一二・三という値でございますから、低い階層のほうに通貨性預金が多いということは事実でございます。
 また、有価証券の例を見ますと、全体の平均では、勤労者の場合、貯蓄の中で二二・五%が有価証券でございますが、第一・五分位では七・二%の割合であるのに比べまして、第五・五分位では三一・七%になっておるということでございます。
#45
○山本(政)委員 ですから、私が申し上げたいのは、つまり高所得者の人たちは減価のない貯蓄というものをやることができるのだということなんですよ。それは事実なんです。だからその人たちは財産形成法によって土地取得をますます促進させることができるだろうと私は思う。だけれども、貯蓄というものが資産となり得ないというインフレ構造の中で、勤労者が幾ら貯金したってたかが知れているじゃないか。そして、あなた方のこの法案でそれをサポートしたって、そんなものは、島本委員だったかだれだったか、二階から目薬、こう言ったのですが、まさにそのとおりじゃないかと私は思うのです。だから、あなた方が一々言った数字というのは、勤労者は家をつくることができませんという例証でしかないでしょう。だから、それならこれで何とかいたしますからというならばそれなりの論旨は通っているけれども、しかしそれにしては、これでは家は建つはずがないですよ。あとでぼくは地価とかなんとかという話も申し上げますけれども、建ちようがないじゃありませんか。
#46
○岡部(實)政府委員 従来いわゆる日本の高度成長下におきまして、先生御指摘のように勤労者が必ずしも十分資産を持ち得るような状況になっておらぬ。ただ現実には、企業を通じていろいろな形の住宅貯蓄等もやっておりますが、しかし、ある程度たまっていよいよ建てようとすると、いろいろな物価上昇でできなくなるというのは、現実の姿としてはそういうことはいなめない事実であろうかと思います。
 そこで私ども、この法案は、それにもかかわらず個々の勤労者の家計その他を見ますと、貯蓄の目的別に見ますと、いまおっしゃったように、必ずしも資産形成のための貯蓄とはいえないものもあろうかと思いますが、しかし住宅を建てるためにいろいろ貯蓄をしていく、あるいは将来の老後の生活のためにいろいろ貯蓄していくんだというような動機も相当含まれているようでございます。そこで私どもは、そういう方々の貯蓄が、従来の一般的な減税措置だけでなくて、それにプラスアルファされた減税措置を少なくとも講じて、勤労者が貯蓄をする場合には一般よりもそれだけ有利になるのだ――その有利の度合いがこれで十分かどうかはまた議論のあるところでございますが、少なくとも有利にする、しかもその人たちの個々のペースで貯蓄をし、それを還元するということではなかなか問題の解決にならない。そこで各人の貯蓄を総合的に集めまして、それを雇用促進事業団に還元しながら、事業主等の援助も引き出しながら、共同して住宅の建設等にも当たっていく。そこにこの制度が、個々人ではなかなか住宅建設も及ばないところも、団体を通じあるいは事業主と協力して、この目的のためにいろいろな援助措置を講じていけば、何とか持ち家の建設も可能になり、資産の形成もできていく、こういうことで考えておるわけであります。
 ただ、それに十分なる制度的なメリットがその中に当然入っているのかということになりますと、私どももいまこれで十分満足すべきものだということは卒直に申し上げかねるわけでございますけれども、少なくともそういう方向で一歩踏み出して、この制度が活用されだすということに非常な意味合いがあるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
#47
○山本(政)委員 基準局長は頭がたいへんいいので、抽象的に抽象的にお話をして逃げようとしておる。だれだって自分の家を持ちたいと思うんですよ。だれだって自分の家を持ちたい。持ちたくない人はないはずです。ただ私の言いたいことは、低所得者の人たちは、土地とか有価証券の購入余力がありませんよ、これはあなた方もお認めになるでしょう、こう言っているのですよ。そして、いま預貯金をしている人は、もちろん家を持ちたいという希望を持っているけれども、現実には老後とか教育とか不時の出費の用意にしかそれは現実にはなっていないということなんだ。だから、家を建てる希望はあっても、それを建てる基盤というのはゼロ・にひとしい。そのゼロにひとしいやつに、ただ二階から目薬のようなこういう政策をやったって、それは効果はありはしないじゃないですか。もちろん、あなた方は家をお建てにならぬというわけじゃありません。それは幾らかは建つでしょう。幾らかは建つでしょうけれども、しかし、そのメリットと、勤労者のそういう無理に無理を重ねて預貯金をするということとのメリットを、一体あなた方はどうお考えになっているのかと言うのです。基本的には社会資本の投下ということが現実にはなかったわけでしょう。そういうものがこういうことをもたらしているわけなんですよ。だから、そういう答弁では、それは私に言わしたらすりかえでしかないということなんですよ。いいですか、これは経済白書からですが、普通預金の名目利回り、これは期間平均で二・二%ですよ。ところが、実質利回りは、消費者物価が上がるのですから、 マイナスの三%になっておるわけですよ。名目利回りは二・二%だけれども、実質利回りはマイナスでしかない。そういう条件の中に貯金をしたって、かなりな額だというのですけれども、一般的に考えたら、家を建てるということから考えたら、たいした金額じゃありませんよ。それが、利子はとにかくついたものの、実質の利子というのがマイナス三%だなんということならば家が一体建つのだろうかどうだろうか。そして、この程度のあなた方のやり方で実際に家が持てるのだろうか。五百万人そういうものにかりに入っても、その恩恵に浴する人は数万人くらいしかないでしょう。おそらく十万なんという数字にはならないと思うのですよ。それがはたしてあなた方のおっしゃる財産形成政策といえるのかどうか。定期預金の名目利回りが五・五%です。だけれども、消費者物価の上昇からいえば、これは〇%です。勤労者が持っておるというのは、あなた方からいわせれば普通預金と定期預金が主たるものだ、こう言っているけれども、片一方はマイナス三%、片一方は〇%、幾ら貯金してもマイナス三%か〇%にしかならぬものに対して、資材の値上がりとか土地の異常な高騰の中で、一体家を建てることができるのだろうかどうだろうか。つまり、あなた方のほうで出せというので、要するに銀行へ出したら、出したものが実際に見返りとして返ってこないじゃありませんか。これは数字がちゃんと示しているのです。皆さんのを集めて――それは集めればたくさんの金が集まるでしょうよ。だけれども、その恩恵に浴する人は何年待てばいいのかということです。そういうことになりかねないでしょう、こうなってきたら。あなたのおっしゃったように、貯金がたくさんあると言うけれども、その貯金は無利子かマイナスなんですよ。減価なんですよ。それでも勤労者というのは、とにかくはかない望みを持ちながら貯金をしているわけだ。しかし、そのはかない望みの前に、教育の問題とか育児の問題とか不時の出費の中にそれは費やされてくるということだって、これは事実ですよ。数字が出ている。そうすると、家というものは一向建ちつこないじゃないですか。それで建つ建つというのは幻想です。幻想を持たしているのがほくは財産形成政策じゃないかと言うのです。その点はどうなんですか。
#48
○岡部(實)政府委員 御指摘のように、現在のように物価が相当な速度で上昇している、あるいは住宅を建設するための用地がなかなか確保できないというような状況下で、はたして建てられるかということでございます。私どももこの勤労者財産形成政策がオールマイティのものであるということを申すわけでは決してございませんで、この法案の目的とするところを実現するためには、やはりこれと同時に各般の施策がこれに並行して行なわれるということは当然考えていかなければならないところでございまして、物価の問題につきましても、また直接関連いたしまする土地の問題につきましても、これは政府部内におきまして関係省と十分連絡をとりながら、現実にこの制度が少しでも活用され、実効があがるような措置を講じてまいりたい。
  〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
そういう意味で、非常に抽象的ではございますけれども、この法案の中に、国、地方公共団体のいろいろの責務、抽象的でございますが、これを具体化してやってまいりたいと考えております。いろいろな施策を講ずること、さらに財産形成の基本方針を策定する場合には、大蔵大臣並びに建設大臣等も十分かんでいただいて、それぞれの角度から、この政策が実現するにあたっての隘路をいろいろチェックしてまいるという努力が必要であろうかと思いますので、この実施にあたっては、御指摘のようにいろいろな条件を整備していくということは必要であろうと思います。そういうことについても最善の努力をしながら、総合的に少しでも実効を阻害するような要因は削っていくという方向で進めてまいりたいと思います。
#49
○山本(政)委員 たいへん失礼な申し分なんですけれども、基準局長、実際にそういうことができるかということに対してたいへんな疑問があるのですよ。それはいまも申し上げましたけれども、普通の貯金は名目利回りが二・二%、実質利回りがマイナス三%、それから定期預金は五・五%が名目利回り、実質利回りはゼロ、ところが、・株式の場合は名目利回りは一〇・三%、実質利回りが五・七%ですよ、これは経済白書がそういっているんだから。そして、土地の場合には名目利回り一八・一%、実質利回り二・九%、こういう実態というものを要するに是正しないで、あなた方がそんなことが言えるのかどうかという問題が一つ出てくる。
 もう一つは、「政府・民間企業設備」、これは国富の国際比較ですが、日本銀行の貯蓄時報に出ていますけれども、日本の場合には四四・八%、西ドイツの場合には二三・八%なんですよ。半分以下です。そして逆に、今度は個人の耐久消費財からいけば、日本は八・六%しかないけれども、西ドイツは一三・四%。だから、それは関係各省、大蔵大臣とも相談するとおっしゃるけれども、私に言わしたら社会資本といいますか、特にいま申し上げた住宅、そういうものの相対的な立ちおくれということがここで実証されているわけでしょう。この数字は実証しているわけでしょう。三月の二日でしたか、木村さんがそのことを指摘して、大蔵大臣があやまっていた。総理もそれを認めたと思うのですけれども、私が言いたいのは、経済構造とか経済運営とかいいますが、そういうものに対して基本的な考え方というものが直らぬ限りは、つまりあなた方のやり方というのは小手先でしかなくなってくるではないか。あなた方がどう強弁しようとも、それはきわめて限られた範囲でしか実施できないじゃないかという感じがするのですよ。
 しかも、たびたび申しますけれども、みすみす減価と知りつつ貯蓄をしている人たちに対して、もう一ぺん貯蓄をしろと、こう言うわけでしょう。私に言わしたら一そうの収奪ですよ。それで一体実施可能になるのだろうかどうだろうか。勤労者のおもな預金というのは、普通預金、定期預金、これはもう減価もしくは利殖率はゼロ、高額所得者の資産、さっきのあなた方の数字をお聞きしますと、株式や土地なんというものがたくさんある。そういうものは物価上昇の影響を受けない。そして、貯蓄したものは財政投融資として産業基盤の形成あるいは民間企業への設備投資、そういうものに貸し出されていく。これじゃ勤労者の貯蓄するという意味がなくなるだろう。本質を知ったら、勤労者なんてそういうことに対する貯蓄意欲というものは起こってこないだろうと思うのですよ。西ドイツで理解された、こうおっしゃる。だけど、いま申し上げましたように、西ドイツと日本の場合には配分が大幅に違っていますよ。まさに個人の場合と企業の場合とが逆転しているわけだ。そういう逆転というものを直さぬで、西ドイツのまねをしようといっても、本質的なものが違っている、要するに構成が違っているものに対して、そういうことをまねしても、どだいできっこないという感じがばくはするのです。そういうことをお考えにならないで、要するにこれを強行されようとするんだったら、これはたいへんおかしいんじゃないか。こんなものは勤労者に対する収奪以外の何ものでもないですよ。だから西ドイツのように――西ドイツがいいとは決して申しませんよ。しかし、少なくとも政府、民間企業の設備というものが、日本では四四・八%、西ドイツが二三・八%、これが逆転するぐらいのことになったのなら話は多少でもそれなりに理解をしたいと私はつとめますけれども、そうじゃないわけなんですよ。こういうことを直そうとしないで、それで財産形成ができますということは、これはまやかしだと思いますよ。この数字に対してどうあなた方はお考えなのか、それを聞かしてください。
#50
○藤繩政府委員 インフレの過程の中で資産保全が可能なのは一部の家計に限られている。経済の健全な発展と家計資産の健全性、家庭の経済生活の計画性を守っていくために、物価安定は国民的課題なのであるという、まさに先生がいま御指摘になった表現が、昭和四十五年の経済白書に出ておるわけでございます。そういう意味で、御指摘のとおりでございまして、物価安定というものが非常に重要であるという点では私どもも重々承知をいたしておるわけでございますが、ただ、実際に統計を見てみますと、たとえばわが国の勤労者の貯蓄率というものも年々上昇をいたしております。たとえば昭和三十年に九・二%であったものが、とにかく二〇%というところまで上がってきておるということでございます。
 そこで、全体の貯蓄の流れという点についても御指摘のような問題がございますが、この制度では、現に営々として行なっている勤労者の貯蓄に対して、とにかく現状よりもプラスアルファを加える、何らかの援助を加えるということと同時に、その資金の使い方についても改善を加えて、勤労者のほうに行くようにするということでございまして、現状に比べれば、私どもは、前進である、先生の御指摘の課題が、まさに非常に大きな課題であるということを私どもは全然否定はいたしませんが、現状よりはベターであるという判断でこれを出しておるわけでございます。
#51
○山本(政)委員 賃金部長は、貯金がふえているということでごまかしているわけですよ。これは私自身の実例です。私はいまでも借家ですけれども、私が来たときに、いまの土地というのは一万五千円ぐらいだった。いま坪二十万円ですよ。貯蓄がふえるよりか、要するに必要な土地を入手する額のほうがはるかに金額として高くなっているわけです。貯金がふえたからということは、土地が買え、家が建つということの例証にならぬのですよ。あなたは、貯蓄の額がふえたということでごまかしをされている。ぼくが言いたいのは、いま数字を申し上げましたけれども、社会資本というものは、日本が二六・三%、西ドイツは五二・二%なんですよ。この中に、つまり西ドイツの持ち家政策とかなにかが含まれているわけですね。それなら、少なくとも社会資本というものはここまでは引き上げられなければ、西ドイツがやってきたような方向を日本の財産形成というものはたどれないだろうとぼくは言っているわけです。条件がはるかに低いわけですよ。はるかに条件の高い西ドイツですらいろいろトラブルがあったわけでしょう。それでやっとここまできたわけでしょう。それよりか条件のはるかに悪いわが国が、西ドイツの条件をサンプルにしてやろうったって、それはやれっこないわけです。あなた方が土地の高騰に対して、貯蓄率が上がった、それに土地の高騰に見合うだけのものを何かつけ加えてやるというなら話は別ですよ。そんなことはできっこないわけです、この法案から見たら。ただその格差というものが少しは縮まってきているというだけの話で、それは議論にならぬでしょう、あなたのおっしゃることは。
#52
○藤繩政府委員 御指摘の点はまことにごもっともでございますが、私ども従来の高度成長のひずみということをずっと言い出してきているわけでございまして、そのことは、まさに御指摘のように、高度成長の過程において処すると、社会保障の面あるいは社会資本の充実の面あるいは公共投資というようなことが立ちおくれてきている。そこで、先般の閣議におきましても、新経済社会発展計画において、やはり立ちおくれた社会資本の充実あるいは公共投資の拡充をやらなければならないという政府全体の基本の姿勢が示されてきたわけでございます。したがいまして私ども、閣議決定したからすぐできるんだということを申し上げるわけではございませんが、先ほども申し上げましたように、この法案を出したからといって、客観的ないろいろな条件が整備されなければ所期の目的が達せられないということは、御指摘のとおりでございます。ただ私どもは、この法案を出し、この制度を世の中に提示することによりまして、やはりその立ちおくれの面も、いわば強弁するわけではございませんが、この制度をてことして、できるだけ推進をはかっていくということを、ともども努力をしてやっていくしかほかにないのじゃなかろうかということでありまして、実はこの制度を当初考えましたときに、たとえば土地の先行取得のための相当な経費も考えたり、あるいは一種のプレミアムというような制度も実は考えてみたわけでございますが、現段階において必ずしもそれを取り入れるに熟しておらないために、労働省がそういうことをいまここで一挙にやることは、実は今後の課、題として残したわけです。土地の問題等につきましては、これは政府の中でそれぞれ建設省その他が、いまの社会経済発展計画に基づきましていろいろ計画的に充実してまいることだと思いますし、それをさらに推進することによりまして、この法律に基づく制度が期せられるよう努力をしてまいりたいということでございますので、そういう角度から御理解を賜われば幸甚に存ずるわけでございます。
#53
○山本(政)委員 こういうことですよ。勤労者が、功成り名遂げてなんという言い方はおかしいけれども、まあ、一生ずっと働いてきて退職金をもらいますね。そうすると、「退職金の主要使途」というのがここにあります。あなたのおっしゃるように退職金を貯金をしたいという人が二二・一%、住宅の建築、購入というのが一九・一%、住宅の増改築、修理というのが一三・七%、土地の購入が五・八%。ところが、土地を含めて住宅に関する退職金の減価率というのが、国民生活研究所の統計で見ますと、一番使途目的の中では高いわけですね。一五%くらいですよ。そうすると、退職金は年々上昇していくだろうけれども、減価率というものは退職金の上昇率をはるかに上回っているわけですね。そうすると、いま政府が財産形成に、こういうことをやりながら、退職金も頭に入れながらということでかりにやっていったにしたって、勤労者か退職金に期待し得るような実質購買力があるかどうか、こういうことも実は問題になってくるだろうと思う。
 私は、いまのような土地とか住宅価格とかあるいは消費者物価の上昇が続いた場合には、退職金というものは大幅に削減されますよ。しかし、これは政府がいかに努力をしようとしても、これは企業のほうなんでありますから、あなた方の意図に反して――退職金をその意図に沿って大幅にふやしてくれなければ、やはりこれだって家は建たぬということになるでしょう。だから、ぼくは労働省の善意というものは買いますよ。しかし、幾ら善意があったって、そういう経済的な条件がないところに家は建てようがないということになりはしませんか。とすれば、やはり社会資本を充実させるという方向に向かわざるを得ない。しかしこれとて、たいへん失礼な言い方かもしらぬけれども、限度があるだろう。特に民間の人たちは退職金に依拠することがたいへん大きいということが数字に出ている。しかもその退職金が大幅に減価する、しかし政府によって規制することができないということになったら、勤労者は貯金だけさせられて、退職金をもらっても家が建たぬということになるじゃないか。だから、そういうことまでお考えになってこれをぴしっとされるなら話は別ですよ。しかし、私に言わせたらしり抜けじゃありませんか。肝心のところが抜けておって、そして財産形成をおやりなさいおやりなさい。ゼロとは言いませんよ。しかし、幾らかのものが建つことは事実だろうけれども、それをもってして財産形成であるというなら、これは羊頭狗肉じゃないかと私は言わざるを得ません。
#54
○岡部(實)政府委員 御指摘のとおりでございまして、いまお示しになりましたように退職金の減価率も、土地の購入の減価率が一番高い。住宅の建設購入がその次、一〇%をちょっとこえるというような数字もございます。それで、最近の土地の高騰その他による住宅比率も非常に高まってきておって、土地購入者の所得に対する倍率も二倍ないし三倍というような、公団住宅等にあってもそういうことになってきている。
 そこで、全般的に日本が非常に立ちおくれているのが住宅状況でございます。住宅の最近の建設計画によりましても相当な数をつくっていかなければならない。その中で非常に大きな比率を占めますのは公営住宅あるいは公共住宅あるいは賃貸住宅というようなことになろうかと思います。しかし同時にやはり勤労者の住宅に対するいろいろな考え方等の調査から見ましても、やはり何らかの形で持ち家を持ちたい、またそのために何としてでも努力を積み重ねていくんだということも現実にあるわけでございます。そこでその点を取り上げて、少なくとも勤労者についてはほかに生活を向上していく手段がないわけでございますから、やはり賃金の中から少しでも貯蓄をしていく、これをできるだけ有利にしてその貯蓄が集まったものをあとう限り多く勤労者に還元していく、そういうことで、共同して持ち家をつくり、生活向上をはかっていくということについて少なくともやはり何らかの制度としてこれを打ち立てなければならないということで、今回この制度をつくることに踏み切ったわけでございます。
 ただ、羊頭狗肉という御批判もあろうかと思いますが、実は政府各部門におきましてそれぞれの、たとえば土地その他の問題につきましては、やはり労働省がこれを一手にやるというわけにもなかなかまいりません。したがって法案としては、そのほうはひとつ政府の全般的な住宅建設計画の一環として考えてもらうということで、法案自体には直接これに触れなかった。ただ基本方針等でこれを随時明確にしながら具体的な施策を政府部内において十分効果あるものをとるということを前提とし、あるいは今後そういう方向で進めるのだということを前提としてお考えをいただきたいと思いますし、またそういうことが伴わなければ、仰せのようにこれ自体制度が十分に利用されない。つくってはみたけれども絵にかいたもちにすぎないんだということになりかねない。そういう要素も当然含んでおりますので、私どもは、そういうことにならないように、いろいろ御指摘の点について総合的な施策をとるように関係各省とも十分協力をしてやってまいりたい、こういうことに考えております。
#55
○山本(政)委員 これは去年だと思うのですけれども、建設省がまとめた四十四年の建築着工統計ですが、四十四年中に着工した住宅は百三十四万六千戸、四十三年よりは一二%ふえている。ところでこのうちで持ち家は六%増だけであって、全住宅に占める比率も四十二年に比べると四六%から四三%に落ちているわけです。四十一年から持ち家の建設ブームが来て、四十二年には総住宅の四九%を占めておったけれども、四十三年から足踏みして今度は逆にずっと下降現象を持ち家住宅というのはたどっているわけです。この原因を建設省の計画局長は、要するに問題は土地問題なんだ、年間二五%の急上昇をたどっておる地価、これを何とか解決しなければ持ち家なんということは考えることはできない、こう言っておるのですね。これは間違いございませんね。
#56
○朝日政府委員 ただいま先生仰せの二五%地価が上がっておるというその数字について、まず申し上げたいと思います。
 これは御承知のとおり地価形成の合理化のために地価公示法を制定をいたしまして、昨年の四月一日に第一回の地価公示をやっております。本年四月一日にも第二回の地価公示をいたす予定でただいま準備を進めております。そこで、ただいまの数字は地価公示の前提といたしまして、過去に建設省が東京、大阪、名古屋、このいわば三大都市圏で、東京でございますと東京駅からおおむね四十キロ圏内くらいのところで四百件ばかりの地価を調査いたしまして、それが四十四年一月一日現在で対前年比、東京都その周辺で二五・一%、大阪市及びその周辺で二四・五%、こういう騰貴率を示したという調査の結果の数字の御指摘だと思います。ただいま申し上げましたように、これはいわゆる三大都市圏の数字でございます。全国的な地価調査はただいま私どものほうで直接はいたしておりませんけれども、通常、日本不動産研究所の調査に基づきます全国市街地価格指数が引用される例が多いわけでございます。御参考にこれのほうの平均の騰貴率を申し上げますと――平均と申しますのは用途別の平均でございますが、四十三年三月から四十四年三月までの間に約一七%、これが四十四年三月から四十五年三月に至りますと一九%強という数字でございます。なお同じく不動産研究所の最近の調査によりますと、これは毎年三月と九月に調査いたしておる数字でございますが、昨年の三月から九月に至ります間には騰貴率はやや鈍化を示しているという結果に相なっております。なおただいま計画局長が、こういう地価の上昇がある限りは持ち家など望めない、こういうことをいっておるということでございますが、そのことは別といたしまして、地価の異常な上昇が、御指摘のとおり、住宅問題といわず経済活動全般につきまして非常にネックになると申しますか、問題でございますので、四十年以降四十三年あるいは昨年の八月と三回にわたりまして、関係閣僚によって構成されております地価対策閣僚協議会におきまして、諸般の――先ほど来、労働省側からもいろいろお話がございますように、一建設省あるいは一何々省ということでこの問題は解決するものでございませんので、関係の各省それぞれ自分の守備範囲におきます政策を実施しようということで決定をし、その決定された政策の実施を着々進めておるわけでございます。
 長くなりますが、たとえて申しますと、今日の地価問題の根源は、一つは土地利用の混乱が原因だ、こういう意見が多々ございます。これに対しましては、都市計画法の制定をいたしまして、ただいまこれも根幹になりますところの市街化区域の設定を鋭意進めておりまして、本年度中にほぼ七〇%ぐらいは線引き予定地域の線引きが完了するという状況でございますし、あるいはその市街化区域の中で、さらに建築基準法に基づきます用途地域の設定につきましては、これはここ一両年の間に――法律上は三カ年でやればいいということになっておりますけれども、それを一、二年の間になるべく早く設定をしていこう、こういうようなことをいたしておりますし、あるいはただいま申し上げた地価公示法の制定も、これも地価の適正な価格と申しますか、それを公的機関によって調査、公示をすることによりまして地価の目安にして安定をはかっていく、こういうような政策もございますし、建設省サイドで申しましても、いろいろと打てる手は打っておるということでございますので、ちょうどそういう意味におきましては、過去においていろいろと決定を見ました地価対策閣僚協議会の決定が実施の段階にある、こういうことでございまして、その成果についていま判断をする、批判をする段階にはないと思いますけれども、私どもといたしましても、できる限りそういった線に沿って努力をいたしておるところでございます。
#57
○山本(政)委員 いま宅地部長が引用した日本不動灘研究所の調べによりますと、六大都市の宅地の価格の指数は五〇〇ですよ。ところが、勤労者世帯の可処分所得、つまり家を買うとか土地を買うとかいう、そういう可能な所得ですね、これは指数からいえば二五〇しかない。そうすると、五〇〇と二五〇ですからちょうど半分ですね。その半分に対して、くどいようですけれども、この法案がどれほど役に立つのだろうか。百万円を限度として減税をする、こう言われておるけれども、そんなもので役に立ちますか。格差というものがだんだんこの調子でいけば、要するに上向線をずっとそのまま類進していけば、とてもじゃないが追いつかぬと思うのですよ。これは抽象的な表現じゃないのですよ。実感としてあなた方これが可能なのかどうなのか。
 ここに東京周辺住宅地の価格の表がありますが、これは建設省の土地鑑定委員会公示です。これを見ましても、住宅取得の前にまず地価の高騰が大きな障害になっていますよ。六大都市における宅地価格の上昇率は、建設省の数字と多少違うかもわかりませんけれども、三十年から三十五年の間に二六・四%上がっておる。三十五年から四十年の間に二四・七%、四十年から四十四年の間に一二・四%、そして四十四年は二〇・一%なんです。これは、地価高騰というのは一体何のために起ったのだろうといえば、私は、やはり経済成長、そしてそれに伴う人口、産業の都市への集中だ、こう思う。ですから、そういうことを考えると、需要増が片一方にある。そして利益率、つまり預貯金の利益率ですよ、そういうものを大幅にこえる地価上昇というものがある。そこに投機的な作用が動いてくる、こうなってくるのですよ。こういうものを克服することなしに、つまりいま申し上げたように、可処分所得が土地価格の上昇に比べればちょうど半分ですわ。こんなものは、これだけくらいの法案でできっこないですよ。各省が相談するって、いつそれができるのか、それだって見当がつかないでしょう、率直に言えば。いついつにやります、いついつにやって、それからいついつまでにどうしますということはいまのところあなた方が明言できないとすれば、私たちはこれを信用しろと言ったって信用するわけにまいらぬでしょう。それでもこの法案をつくったほうがプラスになるというふうにおっしゃるあなた方のお考え方が、私は理解できないのですよ。こんな懸隔があるものを、これくらいのところで埋め合わせてみて早く購入ができますということにはならぬでしょう。それはなるかならぬかだけ聞かしてもらいたいと思う。
#58
○岡部(實)政府委員 いろいろの御指摘になりました経済的な諸指数、指標等からいいまして、勤労者がこの制度を利用して持ち家を持つということが、これだけで容易であるということは決してございません。それは仰せのとおりでございます。ただ、土地の値上がりとか、あるいはたとえば勤労者のやはり希望する者には持ち家を持たせるのだという姿勢、またそれをこういう制度として打ち出していく、こうすることが、一つやはり目標を掲げて、それに対する努力を続けていく、その指標として掲げるということに一つまた意味があるのではなかろうか。それからもう一つは、ここでこの法案の一つの特徴と申しますか、これは国、地方公共団体及び事業主相互、この協力態勢をもとにして、そこでこの制度を展開していくというところにあろうかと思うのでありまして、土地の問題も各人が各様に、いろいろ住宅建設のための土地の取得に向かいますると、そこにはやはり民間の不動産業者あるいはデベロッパーというようなものがいろいろな形でその需要をさらに引き起こす、そのためにやはり土地価格の必要以上の高騰を導くというようなこともあろうかと思いますので、やはりこの制度を一つのてことして組織的に勤労者の持ち家のための政策を打ち出して、これを中心に土地問題その他も各政策を焦点を合わしていくということで、ひとつ問題をはっきりと提起したものであるということはいえるのではないか。具体的にそれじゃこれで何ぼ持ち家がつくられるのかということにつきましては、大ざっぱな試算はいろいろやっておりますけれども、御指摘のようにそう当初から非常な数を期待できない。そこでむしろこれと同時に、この持ち家の建設の隘路になります土地問題には私どもも建設省にも十分要請をして思い切った措置をとるように、今後この財産形成審議会を通じ、あるいは基本方針の作成にあたりまして、そこいらに重点を合わせながら進めてまいりたい、こう思っているところでございます。
#59
○山本(政)委員 問題提起だなどということでは、よけいおかしくなってくると思うのですよ。あなた方法案をおつくりになるのだから、勤労者の財産形成にこれだけ出せばこういうメリットが必ず出てきますということがなければおかしいので、問題を提起したということだけだというなら、この法案をつくる必要は何もないとぼくは思うのです。
 具体的なことを一つ申し上げましょうか。総理府統計局の家計調査で「全国勤労者世帯における所得・消費の推移」というのがあるのです。いいですか、これは全国平均です。実収入が九万七千六百二十六円、可処分所得が八万九千九百三十八円、そして消費支出が七万二千四十四円。だから簡単に言えば可処分所得の中から消費支出を抜いたもの、これをまるまる貯金して住宅、持ち家政策に協力しよう、こういうふうに考えるのはあたりまえですね、消費支出というのは教育とかいろいろほかの支出があるのだから。そうしますと、八万九千九百三十八円から消費支出の七万二千四十四円を引きますと、一カ月分の家を建て得る費用が出てくるわけですね。そうでしょう、まるまる貯金するのですから。年間にすると十二倍すればいいわけです。つまりその差額は一万七千八百九十四円ですから、それを十二倍すればいいわけですね。そうすると二十一万四千七百二十八円。とにかく子供さんも元気で、教育費もかさまぬ、そういう不時の支出が一切ないものとして、全部貯金に回して二十一万四千七百二十八円になるわけですよ。これを全部貯蓄をして百万円ためるとすれば、大体五年間かかるわけでしょう。そうですね。そうすると、物価上昇による減価というものは当然考慮されるわけですよ。そうしたら百万円の五年後の購買力は一体幾らになるんだ。この法案の中にはそれを補うだけのものがあるのかどうか。ないでしょう。そうしたら家は一向建たぬということになるじゃありませんか。これは簡単な数字ですよ。一切の不時の支出がないものとして、百万円ためるのには五年間かかります。これはちゃんとした官庁数字ですよ。五年後にそれが百万円以上になりますという保証は何もない。むしろ減価することになる。それをあなた方は、この法案をつくって、家が建てられるんだ、こう言う。私はそういう数字をごまかすことができないと思うのだけれども、なおかつそれで家が建つんだろうかということなんです。建たぬでしょう。年率かりに五%――もっと上昇するだろうと思うけれども、かりに五%物価が上昇するとすれば五、五、二五%、百万円のものは七十五万円にしかならぬわけじゃありませんか。それだけのものを保証して、なおかつ家を建て得るようなメリットというものをこの法案はつけ加えているかどうかというのです。つけ加えてないでしょう。提起だけじゃどうにもならぬですよ。要するに、勤労者は汗水たらして貯金をやって、不時のやつはちょっと別にのけて、そして家を建てるやつをまたそれで貯金をしなければならぬわけだ。この例でいけば、もう子供が病気になっても何したって一切知らぬ、そして家だけを建てる、それだけに貯金をするのだ。そして減価がある。この減価も何もこの法案は保証してないわけですよ。そういう法案というのが実は問題提起になっているのだろうかと私は言うのです。これは数字ですよ。
#60
○藤繩政府委員 先ほど来先生御指摘の現在の物価上昇、特に地価の上昇に伴います非常にきびしい条件につきましては私どもも全く同感でございまして、勤労者はいま自分の持ち家を持つために非常な努力をいたしておることは事実でございます。そこでいま御指摘のように、かような物価の上昇下でなおその条件はきびしくなるであろうという点もそのとおりだと思うのであります。したがいまして、先ほど局長からもお答えいたしましたように、なお個々の勤労者が自分の力で家を持つということがむずかしくなってまいっております。遺憾ながらそうなっておりまして、先ほど御指摘のように建設省の統計でも、持ち家の建設比率が下がっているということも事実でございます。そこでこの法案では、一般的な貯蓄が非常に広く勤労者の中で行なわれるわけでございますから、それについていままでのように単に産業資金にそれが流れていくという自然にまかせないで、その一部を一つの大きな資金源としてこれをまとまって流す。そして事業主あるいはその団体あるいは日本勤労者住宅協会、そういうところでまとまった住宅建設をやりまして、そしてこれをまた分譲するわけであります。その場合勤労者は、もとより一挙にこれを購入するという力は通常の場合なかなかないわけでありまして、これを割賦償還で受け入れるという形になるわけであります。実際の条件は今後定めてまいりたいと思いますが、やはり住宅金融公庫その他の融資の例にならいまして、たとえば木造でございますと十八年、耐火構造でございますと三十年というような非常な長期の、しかも政府がある程度利子補給をしまして低利の融資によってそういう建設を行ないまして、したがいまして建設主体は、当然勤労者に分譲するときもそれ以上の有利な割賦償還ということが期待されるわけでございます。そういういろいろな手だてによりまして困難な条件を克服しながらでも建てていくという努力を私どもはしていきたい、こういうふうに思っているわけでございまして、決して情勢を楽観しているわけではさらさらないわけでございます。
#61
○山本(政)委員 私は、あなたのおっしゃるように行ったって勤労者は、要するに割賦償還なんてできないと言っているのですよ。あなた、そう言ったって、どうやってそれをやるのですか、できっこないじゃありませんか。私はそのことを証明しますよ。「四十三年東京に於ける着工新設住宅の平均敷地面積及平均建坪」というのがここにあります。これは建築統計年報、それから住宅統計調査の表ですよ。住宅モデルの敷地が百五十平方メートル、建坪五十平方メートル、東京都心から四十キロです。だから通勤時間からすれば一時間半ぐらいかかるところですね。そこで建設費がどれだけかかるか。これは公の統計です。建設費がどれだけかかるかというと、土地代が百九十五万円、一平方メートル平均価格が一万三千円として。これはたいへん安いですね。建設省の地価調査によります四十二年の建設費が百四十四万七千九百五十円、つまり一平方メートルの建築費が二万八千九百五十九円、これもたいへん安いと思うのです。これは建設省の地代家賃調査です。それで合計しますと、建設費が三百三十九万七千九百五十円になる。いま考えたらこれはたいへん安い金額だと思うのです。それでその資金調達方法は、頭金として貯蓄現在高から支払う。これは自己資金から支払うわけですね。残りを銀行ローン、金利が九・四八%、十五年間元利均等方式の償還。これは不動産銀行で調べたもので、これが一番多いのです。こういう形式でかりに家を建てるとして、家計の中から建設が可能かどうか。東京都の生計調査年報、これによりますと、東京における一世帯当たり収入、階層別の借り入れ金に対する年間返済というのがここにあるのです。月平均収入がかりに四万円の人を標準にしましょうか。四十二年から四十三年にかけてで、平均年齢三十六歳、現在の貯蓄高が二十八万七千円。そうしますと三百三十九万七千九百五十円ですから三百十一万一千円借りなければならぬわけです。そうして残りがある。これを年間で返済をする、その返済額というのは三十八万九千四百円になるでしょう。わかりますね。それを結局返すわけですね。そしてこれには年間の貯蓄の純増と借金の返済四万六千円余があるだろうと見込まれている。そうしますとこの人は家を建てたから家賃、地代が要らぬだろうということになるわけです。それから貯金が若干ふえるだろう、こういうことになりますと、家賃、地代を払わぬでいい、そして年間の貯蓄純増プラス借金の返済ということになると一これはプラスしなければなりませんね。そうするとこの人は一年間にどれだけ返せるかというと四万一千二百円しか返せないのですよ。年間に返済しなければならぬ金は三十八万九千四百円。そうしたら借金して家は建てたけれども、お金が返せぬという現実になるじゃありませんか。東京都の調査によったら、こういうことで返せるのは十万円以上の収入がある人でないと返せないということになるのですよ。あなた方、家を建てなさい、家を建てなさいと言っているけれども、今度は建てた家の金を返せなかったらどうなるのですか。これは取られてしまうのですよ。借金を返せないのだったら、おまえたち住むことならぬ、こう言って取られてしまうわけだ。あなた方の計算からいくと、現実にそういうことになるのですよ。それでもこの持ち家制度というものは可能だとお考えになっておるのですか。考えないでやれといっても、考えないでやれないわけでしょう。三十六歳にもなって、借りた金を返す金がないとすれば一体どうするのか。せっかく無理して建てたけれども、これはまた出なければならぬということになりはしませんか。ぼくは、まず建てられないだろうということを最初申し上げた。今度は、建てたら建てたお金を返せないという状況にこの数字からいけばなるのですよ。これは四十二年から四十三年の統計です。四十五年になると給料が上がっておる、こうおっしゃるかもわからない。しかし資材も上がっておりますよ。土地も上がっているということになる。そうしたら依然として年賦償還をするだけのお金というものが出てこないということになるでしょう。それでもなおかつこれが可能なんですか。
#62
○藤繩政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、一般の勤労者が個人的な努力によりまして持ち家を建設するということになりますと、いまのように、たとえば銀行から住宅ローンを借りる。そうすると十五年で九・四八%、非常に高い金利の資金によって建設をしてそれを返さなければならぬ、こういうことになるわけでございます。そこで先ほど来御指摘のように、非常に条件がますますきびしくなってまいる。そこで困難な中でも持ち家を可能にいたしますためには、やはり低利、長期の割賦償還を可能ならしめる。しかも実際には住宅金融公庫とか住宅公団等々の制度もありますが、さらに企業が現にいろいろな形で持ち家援助政策というものをやっておりますが、その企業の努力もここで引き出すということによって何とかもう少し楽な条件で持ち家を可能ならしめる道はないかということで、この制度では全融機関に集まりました資金を事業団に集めまして、そして国からも出資金を出して利子補給をするというようなことで、六分五厘あるいは七分程度の、しかも先ほど申し上げましたように、木造でありますといままでの例で十八年、耐火構造で三十年というような非常に長期の資金を事業主あるいはその団体等々に貸します。また事業主が必ず何らかの援助をするということを条件にいたしまして、そこでさらに安い金利で勤労者の割賦償還を可能ならしめるというあらゆる方法を講じまして、個人で民間でやります場合に比べて少しでも楽な道をぜひ開拓したいということでこの制度を考えたわけでございます。
#63
○山本(政)委員 それじゃ、事業主はそういうあらゆる援助をするということがこの法案に盛り込まれておりますか。私が申し上げたいのは、そうやって援助した場合に、結局は返せなければ、全額退職金をやるやつを払えないものだけ退職金から取って、最終的には残りを退職金としてやるということになりかねないのです。あらゆる援助というのはここに出ておらぬじゃありませんか。
#64
○藤繩政府委員 この法案の九条の二項の二号に、貸し付けを受けようとする者、つまり事業主でございますが、それがその貸し付けにかかる資金によって建設しまたは購入する住宅の分譲にあたりましては、労働省令で定める必要な措置、つまり勤労者の負担を軽減するために必要な措置を講ずるということを条件にいたしております。そこではたとえば頭金について低利の融資をする、あるいはいま申し上げましたように、雇用促進事業団から借りてきた金利よりさらに安い金利にするために事業主が利子補給するとか、具体的内容は省令で定められるわけでありますが、そういった負担軽減の具体的な措置を講ずることを融資条件としまして、できるだけ楽な形に持っていきたい、こういうふうに考えております。
#65
○山本(政)委員 もう時間がきましたから、本会議後、いまあなたがおっしゃった点はもう一ぺんお伺いしたいと思います。
#66
○増岡委員長代理 この際、本会議散会まで休憩いたします。
   午後零時五十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時十四分開議
#67
○倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 勤労者財産形成促進法案について質疑を続けます。山本政弘君。
#68
○山本(政)委員 ちょっと話をもとに戻しますけれども、一九七〇年に六百二十四マルク、こういうふうに改正になりましたね。賃金部長の話によりますと、加入者が一千万をこえるというお話がありました。私の考えが間違っておるかどうかわかりませんけれども、つまりそれは利用者が大きくなったというけれども、いま数字を引っぱり出してみたら、それだけ富の偏在というものが大きくなっているわけですよ。加入者もなるほど大きくなってきた。貯蓄率も大きくなってきた。そして集めた金というものは、勤労者のほうに戻っていかないで――要するにこの西独の財産形成にいう、企業の体質を改善し、経済の安定成長をはかるために云々と書いてある――企業のほうに持っていかれているという事実がある。あなたとしても肯定するでしょう。そうしますと、それは勤労者のためになっているのではなくて、企業者のためになっておるということを実証しているということになるのです。この点をあなた方はどうお考えになっておりますか、それを伺います。
#69
○藤繩政府委員 西ドイツの制度と今度のわが国の制度と非常に違います点は、西ドイツは、先生御指摘のように、貯蓄銀行に預金をいたしておりますが、その預金の使途については、つまり普通の金融機関のような運用がはかられるわけでございまして、特段にたとえば勤労者の住宅建設に還元するとかどうとかいうひもはついていないわけでございますが、わが国の場合には、勤労者の貯蓄ということも財産形成でございますけれども、現状では持ち家という問題がわが国の場合に財産形成として非常に重要である。そこで、たびたびお答えいたしておりますように、普通の金融機関の流れではなかなかそれが変えられぬ。ほとんど一、二%くらいしか変えられぬ。そこで、せっかく勤労者の貯蓄ということがはっきりいたします蓄積があるわけでありますから、それを雇用促進事業団にできるだけ吸収いたしまして、そして持ち家分譲に向けるという点は、ユニークでもありますし、わが国の実情に合ったやり方だというふうに考えておるわけであります。
#70
○山本(政)委員 あとの質問のために参考になりますからもう一度確認いたしますけれども、そうすると西独と日本と違っているのは、いろいろあるでしょうけれども、一つのきわ立って違っている点は、あなたのおっしゃることによれば、たとえば融資をしたときの要するに利子率とかそういうものについては格段の考慮を払うという点に違いもあるわけですね。先ほど、休憩時間の前に、基準局長のほうから、銀行の貸し出し利率よりもはるかに下回るようなことも考えてみたい、そしてそのことについては、ひとつ各省とも相談をしてみたいという御答弁をいただいたと思うのですけれども、そういうことも含めて間違いございませんか。
#71
○藤繩政府委員 わが国の場合は、いま申し上げましたように、財産形成貯蓄とそれから持ち家建設とを結びつけております。西ドイツの場合には貯蓄は貯蓄で見ておりますので、そこが違うということでございます。金利についておっしゃいました点は、わが国の場合にはそうしたいということでございます。
#72
○山本(政)委員 休憩前に引き続いての質問ですけれども、繰り返しますけれども、東京における一世帯当たり収入階層別の借入金に対する年間返済の表がここに出ている。これは試算であります。これは東京都の家計年報ですね。そうすると、いまさっき私が申し上げたけれども、月収四万円ぐらいのところまでだったならば年間の返済額は三十八万九千四百円を必要とするけれども、現実には四万一千二百円しか返せない。四万円から五万円の場合には、貯蓄が高くなりますから若干借り入れ金が減ります。貯蓄の額からいえば四十一万七千円、したがって借り入れ金は二百九十八万一千円、年間の返済額は三十七万三千百円、こういうふうに減ってきます。要するに借り入れ金に対して年間の返済額は減ってきます。しかし、同時に、返済可能な年額というものは逆に今度はふえてきますね。そうでしょう。つまり給料が多くなるのですから、そして貯蓄がふえるから、借り入れる金は少なくなってくる。しかし、同時に、返済の能力としてはふえてくるということになりますね。いずれにしても、四万円から五万円の人たちは年間の返済額が三十七万三千百円だけれども、年間返済可能な金額が五万五千八百円しかない。これではなかなか追っつかない。それから月収五万円から六万円の人は年間返済額は三十七万三千七百円、しかし返済可能能力というものは年に四万六千三百円。こういうようにして、六万円から七万円、七万円から八万円、八万円から九万円というように、ずっと表を読んでいきますと、年間の返済額に対して返済可能金額は追いついていかないわけです。追いついていくのは、十万円以上取ったときに初めて追いついていける計算になるわけです。と申しますのは、そのときになると現在の貯蓄高が百四十万円ぐらいになるから、それをぶち込むわけですから、したがって借り入れ金は減る。百九十九万八千円に減る。そうすると、年間の返済額は二十五万百円ぐらいになる。そして返済可能金額というのは六十五万一千九百円と、ここで初めて勤労者は返済できる能力を持つことになる。とすると、先ほど申し上げたように、家は買うことができない、貯金というのは収奪をされる、そして、やっとこさ家を買ったときには、金を返せないから家を手放さなければならない、こういうことになってくるわけです。
 住宅統計調査報告、四十三年によりますと、東京の全世帯の約五〇%というのは月収六万円以下なんです。つまり返済不可能な人たちです。それから八〇%の人が月収十万円以下、そうすると、八〇%の人たちは返済不可能な人たちになるわけです。そうなりますね。月収十万円以上で初めて可能になるのだけれども、月収十万円以上で借家に住む世帯というのは、東京の全世帯の六・八%ですよ。そうすると、その六・八%の人たちについては、まあ持ち家をすることが可能になるわけですね。
 そうしますと、いろいろ御答弁がありましたけれども、問題点は法案との関係でこういうことが出てきやしないか。つまり、事業主が雇用促進事業団から融資を受ける、そして従業員の持ち家を建設する場合に、たとえ融資レートがあなた方のおっしゃるように銀行ローンより低率だったとしても、従業員は貯蓄による不足分を年賦償還するわけですから、いま申し上げたように、返済能力があるのは高所得従業員だという結論になってくる。一番住宅に困窮している一般従業員、つまり低所得の従業員というのは、そういう幻想のもとにとにかく貯金をしなければならぬ、こういうことになってくる。それは先ほど羊頭狗肉と申し上げましたけれども、政策的な欺瞞になりはせぬだろうか。つまり、あなた方はここで提言をなさったけれども、私は善意は疑いませんよ。しかし、せっかく提言をなさったけれども、結果的には政策的な欺瞞になりはせぬだろうかという疑問を非常に深くするわけです。その点に対して私に反論があればお聞かせ願いたいのです。
#73
○岡部(實)政府委員 反論ということではございませんけれども、いま具体的な例を設定されましての御質問でございます。私どもも実はこの制度は、現実にいま行なわれているいろいろな、たとえば企業内の従業員に対する持ち家住宅の建設の制度とか、あるいは事業主が自分の従業員に対するいろいろな福祉活動の援助とかいうような具体的な活動がそれぞれあるわけでございます。そういうものと、それから一方において、勤労者がみずから困難な中にも持ち家建設のための貯蓄をしているという事実もまたあるわけでございます。そういう事実をつかまえまして、その自主的な努力並びに事業主の勤労者に対しますいろいろな援助制度あるいは援助活動というものを結び合わせながら、何とかこれに対して援助措置を講じながら、いまなかなか困難なのを少しでもよくしていこう、こういうところに一つのねらいがあるわけでございまして、そういう意味で、この制度自体が現実のそういう姿に着目して組み立てられているのでございまして、私どもこれをほんとうに喜ばれる、もっと魅力ある制度にしたい、こういう改善努力は今後引き続いてやってまいりますけれども、現状におきましても少なくともプラスに作用し、現実のいろいろな勤労者自身の努力あるいは事業主の努力、これに援助をし、これを促進するという役割りは果たし得る、こういうふうに思っているわけでございます。
#74
○山本(政)委員 貯金がふえた、そういう現実に着目して労働省としては手伝いをしておる。それじゃ率直にお伺いをいたします。労働省としては、初年度にこれだけのものを建てたい、次年度に対してはこれだけのものを建てたい、こういう計画はお持ちでしたね。これは前の委員会で数字を発表なすったと思う。それをひとつ聞かしていただけませんか。
#75
○藤繩政府委員 この制度はわが国におきまして初めてのケースでございますので、率直に申し上げまして、将来の見通しを立てることはたいへんむずかしいわけでございます。そこで、前提を置いて試算いたしたのでありますが、加入人員が初年度五十万、その後毎年五十万ずつ増加するといたします。それから財産形成貯蓄額を一人当たり年間平均六万三千円程度というふうに見込みまして、財産形成貯蓄額が出てまいりますが、その残高の三分の一を期間十年の元金均等償還で金融機関から借り入れる、そしてこれを事業主またはその団体あるいは勤住協に貸し付ける。貸し付ける条件といたしまして、一戸当たり平均融資額は三百五十万円、平均償還期間二十五カ年、これは木造と耐火構造とありますが、償還期限平均二十五年程度で、元金均等償還で融資する。こういう前提を立てますと、財産形成貯蓄残高が初年度百五十八億円、ずっとだんだんふえていくということで、五年間の累計が三千三百億円ということになります。これで建ち得る住宅は初年度はごくわずかで千五百戸程度しか出てまいりませんが、五年間で累計二千五百になる。むしろ住宅建設は、その後において財産形成貯蓄が大きくなればさらに伸び得るものではないかというふうに考えております。
#76
○山本(政)委員 それでは重ねてお伺いいたしますけれども、その持ち家の土地はどれくらいの面積か、それから、その土地の建て坪はどれくらいか、それから、いまあなたのおっしゃったように、木造、耐火というのはどれくらいになるのか、これは具体的な計画はあるわけですか。
#77
○藤繩政府委員 具体的な計画はまだ持っておりませんが、いま三百五十万を融資すると申し上げましたのは、大体単価を五百万程度と見込みましてのことでございます。単価五百万円といいますのは、大体中都市程度のところで、三LDKくらいの中高層住宅というものがそのような金額になってきている。都市、特に大都市では、持ち家といいましても、いわゆる庭つき一戸建てというのはたいへんむずかしいものでございまして、やはり中高層のものを開発しなければならないというふうに考えておるわけでございます。そこで、土地も含めましての三DKないし三LDKというものを想定いたします場合に、大体その程度の価格でまかなえるのではないか。先般田邊委員からも資料が要求せられておりまして、お届けしてございますが、たとえば、それに出ております例でも、昭和四十五年の南青山の三DKの分譲価格が五百六十四万円、これは日本住宅公団の例でございます。それから、高幡台で三DKの価格が三百七十八万円というものでございますので、大体単価はその程度ではなかろうかと思います。
#78
○山本(政)委員 私は、持ち家というのは、先ほど申し上げましたように、高度成長によって大都市集中の結果がもたらされる、その大都市集中ということに対する住宅対策として、労働省が提唱なすっている持ち家政策というのが、やはり行なわれるべきだと思う。問題は、中都市とおっしゃったけれども、私はむしろ、中都市はここでは考慮に入れるべきでない――という言い方は極言過ぎるかもしれない。しかし、実際に必要なのは大都市でしょう。大都市だとすれば、あなたのおっしゃるように、庭つきでないと――持ち家というのは、一般の人の常識からいえば、勤労者の常識からいえば、庭つきがほんとうの意味の持ち家というように理解しがちだと思うのです。皆さんが持ち家だといったときに、一般的にぽんと頭に入ってくるのは庭つき一戸建てですよ。その点はどう思いますか。
#79
○岡部(實)政府委員 従来からの私どもの生活感覚からいいますとそういうこともございますが、最近の大都市におきまする一般住宅等も、土地の制約もございますので、高層住宅で、それを賃貸するかあるいは分譲するかというようなことで、それぞれが一戸建ち庭つきという感覚というか観念が、大都市におきましては事実実現がなかなかむずかしいということからも、変わってきておるのではないかということは言えると思いますし、また現実に、大都市で、私ども考えますと、やはり限られた土地に高層住宅を建てて、それを分譲していくという形が現実的な方法ではなかろうかということで、そこら辺を頭に描いております。
#80
○山本(政)委員 高層住宅に二年入った人たちはみんな、高層住宅というものはいいかげんに切り上げて、自分の庭つき住宅がほしい、こう言っているのですよ。これは生活実感から出てきているのです。あなた方、うそだとお思いになったら、高層住宅に住んでいる人たち全部にお聞きになってごらんなさい。異口同音に、高層住宅から早く出なければいかぬ、つまり鉄とコンクリートのジャングルの中では無味乾燥でしょうがない、こういうことを皆さん言っているわけです。だから、実感としては、私が申し上げたとおり、庭つき一戸住宅というのが勤労者の感覚なんですよ。しかし一歩譲りましょう。一歩譲って、中高層で日本住宅公団の例をおあげになったけれども、それなら持ち家政策だなんていってぎょうぎょうしくやる必要は何もない。やり方はもっとほかに幾らでもありますよ。そう思いませんか。中高層だなんて、こんなところに中高層を建てて、勤労者は持ち家住宅なんて感覚を持ちっこないです。
#81
○岡部(實)政府委員 庭つきで一戸建ちということが、私どもの持ち家という感覚からいうと望ましいと申しますか、そういう感覚も否定できないと思いますけれども、ヨーロッパ諸国の勤労者住宅の状況等も、やはり大都市におきましては高層アパートというのが一つのフォームになってきているようでございますし、それから、いまお話しの公営の筒層住宅を建てて、それを安く賃貸するなりあるいは分譲するなりという制度も大いに拡充してまいらなければ、とうていいまの住宅事情を満足させ得ない。ただ、それと同時に、やはり現実にそういうものを取得する場合においても、やはりみずからの努力によって少しでも積み立てをして、それをもととして住宅を持ちたい、こういう向きに対しては大いに援助政策もやっていく、両々相まって全体の住宅不足というものを、その需要を満たしていく、こういうことで、その辺は、私どももこれだけで、何べんも申しますように、すべてが解決されるとは思っておらないわけであります。
#82
○山本(政)委員 それじゃお伺いしますよ。南青山の日本住宅公団のが五百六十四万円、こういう話です。そうすると、第一点にお伺いしたいことは、たとえば東京の場合、そういうものがはたしてしかく簡単に、地価とかなんかというものを考えて得られるかどうかという問題、これがまず第一点。私個人の考えとしては得られないと思う。そういうことはなかなかむずかしい。そうすると、土地とかなんとかいうものを当然考えられて、東京から離れた郊外とか、あるいはもっと地方へ行かなければならぬ。あなた方はそういう建設可能なところは通勤時間はどれくらいとお考えになっているのですか。
#83
○藤繩政府委員 たまたまいま南青山の例を申し上げたわけでございますが、住宅公団の例で田邊先生の御要求で提出しております資料には、船橋の夏見台、町田の鴨川、北多摩郡の滝山、船橋の習志野台、それからいま申し上げました四十五年は高幡台、南青山、こういうものが載っております。それから、日本勤労者住宅協会が建てましたものは、四十三年は東十条、四十四年もやはり東十条、四十五年度が新大塚と府中でございます。
 そこで問題は、はたして土地が得られるかというわけでございますが、一応こういうふうに建っておることもございますが、おっしゃるように、そう容易にさら地があるというようなことはとうてい考えられない。そこで、個人で住宅を持つということが、先ほど来先生御指摘のように、たいへんにむずかしいわけでございます。できればいろいろな方法を考える。その一つの方法といたしまして、事業主またはその団体が持ち家を建てて分譲する、あるいはさらに、この法律でうたっておりますように、事業主が相互に協力をして、できるだけそういう土地を確保するということに一つの希望をつないでいるわけでございます。
 そこで、そういったことでやられましても、もとより中高層のものに東京近郊ではなる。その場合にはどのくらいの通勤時間を予定するかと申せば、滝山とか府中とかいう例を考えれば想像がつくような範囲になろうかと思います。
#84
○山本(政)委員 そうすると、だんだんとたいへん不便になっていくということは事実ですね。これが第一点。第二番目は、庭つきではない、こういうことも事実ですね。
 それからもう一点お伺いしますけれども、加入人員が最初の年が五十万人、五カ年で二百五十万人。西ドイツの方式を採用されるとすれば、皮肉な言い方をすれば、三百万人くらいになるかもわからない。そして五年後に二百五十万人に対して二万五千戸くらい、これしか建てられないということです。これでは一体、初年度は五十万人に対して千五百戸ですよ、五年たったら二百五十万人に対して二万五五尺これではたして勤労者の財産形成としてあなた方看板出して、ぴしっと勤労者にそういうことが言えるだろうか。私は、少なくとも二百五十万人に対して二十万とか三十万とか、つまり一割くらい建てられるというのだったらまだ話がわかる。しかし、二百五十万人の人たちから金を集めておって、そして建てた家というのは二万五千戸だ。しかもそれが五年間にです。これはちょっとぼくはそういうことでは財産形成政策の名にそむくものだと理解いたしますが、この点はどうなんでしょうか。
#85
○藤繩政府委員 この法案で財産形成というものを定義いたしておりますが、持ち家ももとより一つの財産でございますけれども、預貯金あるいは金銭信託、有価証券の購入、そのこと自体を財産と見ておるわけでございます。そこで問題は、現在の場合でも、預貯金等が非常に行なわれておっても、肝心の持ち家には還元されていない。それをできるだけ持ち家に還元しようというのがこのシステムでございます。
#86
○山本(政)委員 最初私は、住宅を建てるということはたいへん困難ではないですか、そして金を借りたその償還すら不可能になるのではないですか、こういう話をしたときに、西独は貯蓄と持ち家制度というものがあり、貯蓄というものを含めているのだけれども、私どもがやることは西独と違って持ち家だ、こうあなたはおっしゃったのです。貯蓄は除外されている。今度は逆に、あなたの論理は、持ち家制度もありますけれども、貯蓄というものも考えているのだ。論理の矛盾ですよ。そうじゃありませんか、議論としては。あなたはこの場合には甲だ、こう言っている。ぼくが甲と言えば乙があります。乙に対してどうだと言えば甲というものがあります、こう言っているのです。それは論理的に矛盾しているじゃありませんか。そうすると、これはときによって変更できるのですか。あなた方のこの法案というものは非常に融通無碍だということですか。論理的に矛盾しているじゃありませんか。その点はどうなんですか。
#87
○藤繩政府委員 先ほどお答えいたしましたのは、西ドイツは貯蓄一本やりである、わが国の場合は貯蓄をするが、それと同時に、せっかくそういう資金が滞留されるわけですから、それを住宅建設に回すというところがユニークであると申し上げたので、貯蓄を除外するという意味で申し上げたのではないと思うのでございますけれども、それにしましても、加入人員のわりに建設される住宅の量が非常に少ないではないかという御指摘であろうと思うのでございます。
 これは先ほど申し上げましたように、当初から五年後までを見通しておりますけれども、問題は、貯蓄そのものは、この法案にもありますように、一年間は引き出さないという条件がついているだけでありまして、非常に短期の資金である。片方、貸し出しますものは非常に長期な資金になる。その間のズレもございまして、そういった計算になりますけれども、将来加入人員がふえてまいりまして、ある一定の資金の滞留がはっきりしてまいりますならば、住宅に回す余力が出てくるであろう、またその見通しは、最初お答えしましたように、現段階では五年程度までしか見通せない、その先はなかなか見通し困難であるというふうに申し上げたわけであります。
#88
○山本(政)委員 だから、五年先までしか見通すことができないという意味だったら、二百五十万人しか見通しができない、そうしてその建てる家は二万五千戸までしか見通せないということになりやしませんか。そうすると、二百五十万人から収奪しておって、建ててあげるのは二万五千戸だというのでは、これは勤労者財産形成にはならぬじゃないですかというのが私の論旨なんです。その点どうなんですか。おかしいでしょう。二百五十万人から金を集めておいて、建ててやるのは二万五千戸、五年先の見通しはわかりません、そんなみみっちいものだったら財産形成にはならぬじゃありませんか。それの返答を私はいただきたいわけです。
#89
○藤繩政府委員 計算結果を見ますとそういうことになりますが、何せ、さっきお答えしましたように、一人当たりの年間の貯蓄金額を六万三千円程度に見込んでおります。貸すほうは三百五十万円程度貸すわけです。しかも非常に長期にわたって貸すわけでございますのでそういう結果になるわけでございます。問題は、今後どの程度貯蓄余力が出てきて、加入人員のみならず、貯蓄の水準がどうなるか、あるいはさっき申し上げたような資金の滞留状態、あるいはその融資の条件がどうなるかによって変動するものでございますが、五年までの非常に固く見込みました計算では御指摘のようになるわけでございます。
#90
○山本(政)委員 だから私は、先ほどから、貯蓄は減価もしくはゼロでございますよと言って、あなた方は肯定されたわけですよ。これから先もそういう見通しのほうが濃いのですよ。預貯金の実質利回りというものがプラスになるという可能性はいまのところ見通しが出てない。ゼロもしくはむしろマイナスになるという可能性のほうが強いわけです。これはずっとトレンドがそうなっておるのだから……。そうなると五年先は、そういう数字から推していったら、全く暗いということになるわけじゃないですか。
 それから、貯蓄がふえるとあなたは言うけれども、貯蓄がふえると同時に、インフレというものが出てきているわけですよ。去年は五・七%が七・四%ですか、先日修正されたのだけれども、ことしは五・八%ですか、しかしはるかにインフレというものは、確定利子貯蓄というのですか、それよりもこえているわけでしょう。それなら見通しは決して明るくないわけなんです。そうでしょう。そうしたら、極端な例を言いますと、五百万人になったときには、二百五十万人に対する二万五千戸ではなくて、その比率からいえばもっと――幾らの数字が出るかわからぬけれども、仮定の数字としてははるかに少ない数字が出やしないだろうか、そういう懸念すら実は出るわけですよ。そういう政策をあなた方がずっと貫いていかれようとされるのだったら、これはたいへんおかしいことになるのではないか。先ほどの話じゃないですが、収奪をしておって――収奪と言うのは悪いけれども、集めるだけ集めて、そして西ドイツではないけれども、企業の体質改善、経済の安定のためということに使われたら一体どうなるのだろうかということです。そうしたら、勤労者の財産形成なんということはできっこないはずなんです。
#91
○藤繩政府委員 先生がいま御指摘の物価の上昇、その中でも土地なり建築費が非常に上がっておるという点で貯蓄が減価をする、あるいは貯蓄をもとにした建設資金の能力といいますか、それが減価するだろうというのは御指摘のとおりだと思います。ただ問題は、一人当たり六万三千円と申し上げましたけれども、年々の勤労者の貯蓄そのものはふえておるわけでございまして、貯蓄動向調査で申し上げましても、三十九年に勤労者一人当たり五十三万円程度の貯蓄があったものが、四十四年には百十二万九千円になっておる。したがいまして、当時の三十九年の年間収入を五つに分けましたちょうど第三分位の平均貯蓄額四十七万円というのが、四十四年では第一・五分位の貯蓄額になっておるというようなことで、貯蓄の絶対額はふえるわけでございます。ですから、その辺は両方の要因があると思います。先生の御指摘の点を全然否定するつもりはございませんが、私どもは、いま先生が最後におっしゃいましたように、西ドイツのように、せっかく貯蓄をしてもそれがみんな産業資金に回ってしまうというのでは意味がない、まさにそういうことでございまして、現在の勤労者の貯蓄は大部分が通常の金融機関に預けられておって、そして産業資金に回っているわけでございますから、今度はその貯蓄をはっきりマークいたしまして、少しでも勤労者の持ち家建設に資したいというようなことを私どもはねらっておるわけでございます。
#92
○山本(政)委員 私もあなたのおっしゃることをそのまま否定しようとは思わないのです。貯蓄率は上がる、貯蓄率は上がりますけれども、一戸建ちの五百万円の単価というものは上がるのですよ。この上がる金額というものは貯蓄率を上回って上がるということは、さっき申し上げたように、そのトレンドから見て当然予想されると思うのですよ。片一方が上がって、単価がそのまま据え置きでやれるならば、それはあなた方がおっしゃるように可能だと思うのです。しかし、貯蓄率が上がると一緒に一戸当たりの単価というものもぐっと上がってくる。この単価の上がり方のほうがはるかに高いわけでしょう。そうすると、あなた方がお考えになっている二万五千戸すら、ぼくは不可能になりはせぬかと言っているのですよ。ましてや五年後の見通しというものがあなた方ないということになれば、これはたいへんじゃないかということです。もちろん私は、十年とか十五年とかいうことを申し上げているわけじゃありませんよ。しかし、そういうことになったらできっこないじゃないですかということを言っているわけです。それが一つ。
 それじゃ、貯金がある、貯金がふえるというのだったら、自己資金というものはどのくらいにお考えになっているのですか。当然自己資金というものを考えているはずなんです。自己資金を抜きにしてあなた方がそういうことができるというふうには私は思わない。その二点はどうなっているのですか。
#93
○藤繩政府委員 自己資金の点は、いま予定をいたしております計算では、融資を三百五十万円程度なされておるとこう申し上げましたので、百五十万円程度が頭金になるわけです。ただ、先ほども御説明しましたように、この融資は事業主ができるだけ具体的な何らかの援助措置をするということを条件にいたしておりますので、その頭金についても、事業主が融資をする、援助をするというようなことを私どもとしては期待をいたしております。
#94
○山本(政)委員 あなたがおっしゃったのは、それは期待でしょう。第三・五分位の人が七十何ぼとおっしゃいましたね。
#95
○藤繩政府委員 第三・五分位の人の四十年のときの貯蓄が四十七万三千円、それが四十四年で第一・五分位で四十七万一千円……。
#96
○山本(政)委員 そうしたら第三・五分位ではどういうことになりますか。
#97
○藤繩政府委員 第三・五分位で九十二万三千円になります。
#98
○山本(政)委員 そうすると、百五十万円の自己資金の中で九十万円しかない。百五十万円資金が要るうちに九十万円しかない。そうすると、残りの六十万円を民間なら民間企業に期待をするという、ぼくに言わせればたいへん無責任だが、そういうことを企業にあなた方確約できますか。民間の企業に、それだけの数字に従って、六十万なら六十万というお金を、民間企業から一個人の人たち、加入者全員に対してそういうことを保証させるという確信をあなた方はお持ちなんですか。期待でしかないわけでしょう。つまり幻想でしかないわけです。
#99
○岡部(實)政府委員 私どもは、先ほどもちょっと触れましたのですが、現実に事業主その他が――その他と申しますのはいろいろな団体でございますが、これらが現にその自分の事業に直接働いている勤労者、あるいはその団体に加盟している企業の勤労者に対しまして、何らかの形で福祉施設等といたしましてやはり住宅の問題に頭を悩ましているというのも現実の姿です。そこで、現実にはたとえば社内預金等におきましても、実は住宅建設のための預金という形が相当ある。これを全部ここに組み入れるという趣旨ではございませんが、そういう現実の姿は、これまた現実として存在する。ただ、そういう人たちの話を聞きましても、それがうまく総合的に結びついて、国もあるいは地方公共団体も、そういったような自主的、勤労者自身並びに事業主と一緒になった共同的ないろいろな努力に対して、もう一つ何らかの援助措置があるならば、これが現実の住宅の建設と結びつくんだという声も現実の声としてはあるわけでございます。したがいまして、それがどこまでいま可能かとおっしゃって数字的に洗っていきますと、いまの土地の高騰その他からいってネックが非常に大きいということではございますけれども、しかし一方において、そういう中でも現に各事業主の、たとえば中小企業も、協同組合がその所属の企業の従業員のための住宅建設にいろいろな形で融資を受けて――年から融資を受けたりしながら建てているという現状でございます。したがいまして、この制度を確立することによりまして、そういう現実の活動がさらに援助されて住宅建設に結びつくという可能性は非常にある。期待という幻想だと言われますけれども、それを現実に結びつけて運用するならば、相当程度の実効が期し得る。ただ、お話しのように、全体的に住宅建設の些末となるような土地問題その他について、政府としても当然各般の措置を講じなければならぬことは御指摘のとおりでございますが、それと同時に、現実のいまの各事業主あるいは勤労者の自主努力というものを見ますと、それに対して何らかの援助措置を講じて、そして一つの制度を打ち立てるということは、幻想でなくて期待が持てる一つの可能性を含んでいる、こういうふうに思います。
#100
○山本(政)委員 要するに、きちんとしたデータというものがさっぱり出てこぬで、抽象的に持ち家を持ちたいという期待、あるいはそういう努力に対して何とかしなければならぬ、こういう話ですが、しかし、何とかしなければならぬのだったら、私はこれ以上貯蓄なんということをさせないで、むしろあなた方のほうで思い切って出せるものをぽんと出していく。そのほうがぼくはほんとうだと思うのですよ。社内預金でこれだけ預金はしている、家を建るためだ、しかしそれじゃ不十分だから、もう百万でも二百万でも出しなさい、それにもう一つつける、こういうことなんでしょう。そういう意味からいえば、私はあなた方のおっしゃることのほうが実に身がってな言い方だと思う。
 それじゃちょっと聞きますけれども、ローンよりか安い、そういうもので貸したいと言っているけれども、利子は幾らにさせるつもりなんですか。
#101
○藤繩政府委員 雇用促進事業団で貸し出します場合の利子は今後具体的に決定をいたしていきたいと思いますが、ただ御承知のように類似の制度がいろいろございます。それらの制度と一応均衡をとることになると思いますので、一応私どもは大企業七分、中小企業六分五厘というようないままでの利率を採用することになるであろうというふうに予定をいたしております。
#102
○山本(政)委員 そうすると、ほとんど変わらぬということですよ。つまり、あなた方が銀行ローンよりか安い利率だと言ったって、目の子算用で私は申し上げるのですけれども、年に三千円くらいしか違わぬということになりませんか。私の目の子算用だから間違いかもわかりませんけれども、つまりあなた方が胸を張っておっしゃるほどの助けにはならぬということなんですよ。百万円に対して九分何厘でしょう、それを六分何厘にするというわけでしょう。約三%……。
#103
○藤繩政府委員 先ほど先生がおあげになりました例でも、民間の銀行ローンは十五年で九分四厘八毛という数字をおあげになりましたが、私どもの調査でも大体九分五厘、十年程度のものが多うございます。ただいま金利の点だけ申し上げましたが、貸し出し期間が非常に違いまして、民間の銀行ローンの場合は十年あるいは長くてもさっき先生御指摘の十五年程度が普通であろうと思います。この制度では、一般の住宅金融公庫等の例と同じように木造十八年、耐火構造三十年というようなかなり長い期間、平均して二十五年くらいの期間を予定しております。そういう意味ではまあ三百五十万円融資で試算をいたしましても、初回が、民間ローン十年、九・五%でございますと五万九千円、五年後で四万四千円くらいの月々の返還になりますが、この六・五%、三十年で計算いたしますと、初回が二万九千円、五年後で二万六千円という程度で、かなり大きな差が生じてまいります。
#104
○山本(政)委員 それじゃ、どうもすれ違いな議論みたいなことで残念なんですが、そうすると、いま一番持ち家を必要としている人は四万から六万くらいの月額の給与の人だと思うんですね。四万から六万くらいの人が一番家がなくて困っていると思うのです。データがありますよ。その人たちに、あなた方のおっしゃるようなそういうやり方で家が持たせられるとお思いになりますか。絶対に持たせられぬでしょう。うなづいておられるのだから、ちゃんと書類をお持ちになっている人がうなづいているのだから、それならこの持ち家制度というのは一番不必要な人に持ち家を持たせるということになるじゃありませんか。一番必要な人の四万から六万の人たちに持たせられないということになりますよ議論からすれば。そういう財産形成というもの、つまり持ち家制度というものがあるだろうかどうだろうか。必要な人にやらぬで、余欲のある人にはそういうことが可能だということは、これは政府の労働政策として誤りですよ。誤りでないんだったら、大臣首をお振りになるんだったら答えてください。一番必要な四万から六万の層というのは、あなた方の論理から推してみても、これは返せないですね。じゃ、その人たちの対策を抜きにして財産形成といえるかどうか。
#105
○岡部(實)政府委員 御指摘のように、この財産形成制度で考えている持ち家、住宅の建設促進は、前提といたしましてはまさに貯蓄余力があるということが前提になるわけです。これは仰せのとおりでございまして、したがいましてある程度の所得層以上でなければ、現実には貯蓄余力がないということもある程度あるわけです。そこで、住宅政策全体といたしましては、やはりそれぞれの層に見合った住宅政策をとらなければいけない。しかし現実に、これは何度も申し上げて恐縮でございますが、現実に何とか貯蓄をしながら自分の持ち家を持ちたいという人たちに対しまして、一つは減税措置で、そういう積み立てに対しまして少しでも有利にしていく、また集まった金をできるだけ事業団を通じて還元するように、一般の金融市場に流れないで還元できるように、その場合に金利も安くするように、利子補給もある程度考えていくというような制度を併用いたしまして、そういう自主努力をする人々について、少しでもその努力が援助されて実を結ぶようにと、こういうことでございますので、御指摘のように、その前提としては貯蓄余力のないところにそんなことをやってもしようがないじゃないか、こういうことは依然問題として残ることは私ども否定は申し上げません。それが所得水準でどのくらいになるのか、あるいはその場合に、現実にはたとえば中小企業の従業員である場合に、その協同組合組織がそういうものにどういう活動をしていくのか、それをさらに援助していくということもいろいろ考えられるということで、現実にはその辺の運用あるいは実効の面もあわせて考えていけば、少なくともこういう制度を発足させること、それは今後実績を見ながらさらに改善充実していくという前提ではございますけれども、一つの機能を十分営み得るもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
#106
○山本(政)委員 それじゃ、この段階の質問の最後ですけれども、そうすると労働省の財産形成政策というのは、さっきの数字からずっと洗ってみますと、十万円以上で貯蓄能力があってかつ返済能力がある人でないとつまり財産形成というものはやれないのだ、それ以下の貯蓄の能力のない人は、これはそのままほうっておく以外にないのだ、こういうふうに確認していいのですか。
#107
○岡部(實)政府委員 この制度で貯蓄減税ということを前提にいたしておりますので、貯蓄をみずからされないという場合には、これはこの援助制度が発動できないということがありますので、それでそういう趣旨で申したわけでございます。ただ、貯蓄余力がどのくらいあるのか、それからまた、貯蓄がたとえば少ない場合に、それを事業主がその分を補ってこの制度を活用していくということになりますれば、比較的少額の貯蓄でもそれが生かされていくということにもなると思いますし、運用といたしまして、いろいろ事業主の援助その他協力ということを規定しておりますのも、そういうような力を総合的に集めて現実の住宅建設と結びつけたい、こういう意図から出たわけでございます。
#108
○山本(政)委員 こういうことなんですよ、ぼくが言っているのは。つまり四万円の人でも貯蓄をしているんですよ。端数を省きますが、四万円の人は二十八万円やっている。四万円から五万円の人は四十一万、五万円から六万円の人は同じように四十一万やっている。六万円から七万円の人は五十五万、七万円から八万円の人は七十万円、八万円から九万円の人は七十五万、九万円から十万円の人は八十三万の貯蓄を持っているわけです。貯蓄をしたいけれどもできないというのが実態なら、その人たちに対しては一体どうなるのだろうと言っているのですよ。つまり、十万円以上の人たちは百四十万の貯蓄を持っているけれども、十万円以下の月収の人たちは、貯金はあるけれども、これには適用にならぬわけでしょう。そして、貯蓄能力というのはさほどない。これまでためるのはたいへんだったと思うのですよ。そういう人たちに企業のほうから、要するに援助をさせると言っているけれども、企業のほうは企業のほうで、そんなに当てにはならぬと思う。そうすると、この一番家のほしい階層の人たちで、あくせくとして貯金をやっている人たちに対する持ち家対策というのは、それじゃ皆無なんですかと言うのです。その人たちはこれをしないのだろうかと、こう言うのです。しかも、人数からいえば、この人たちが一番多い人数なんです。そのことをお伺いしているのです。
#109
○岡部(實)政府委員 貯蓄の現状の数字から申しますと、相当低所得層の方も、これは貯蓄の額はいろいろございましょうが、貯蓄はしている。そこで、低所得層あるいは中小企業等に働いている方については、これは事業が共同してこの制度を活用することに対して、これをこの制度の一つの大きな役割りとして組ましていく。そういう中におきまして、この制度が活用されていく道はあるであろうということを考えておるわけです。しかし、相対的に、全体がどの程度この制度を活用されるかは、この制度が勤労者にとって現実にいかなる魅力があるかにかかっておりますので、いまの段階において、少なくともこれを利用することが全然有利にならないということでは、この制度自体が全く活用されないということになろうかと思いますが、少なくとも、いまの勤労者個々人あるいは事業主が、先ほど申しましたような、勤労者のための持ち家建設のために、いろいろな現実に持ち家援助制度を実施しておる現状から見ますると、この制度をそういう事業主等においては十分活用していく余地があると思いますし、そういう制度と総合的にからみ合ってこの制度が活用されるということを期待しておるわけでございます。
#110
○山本(政)委員 それでは、どうも議論が平行線をたどっているようですけれども、各論にちょっと入ります。
 第三条に「持家の取得を促進するための施策を講ずるように配慮しなければならない。」こういっているのです。そうすると、国の施策というのは、たとえば公有地の払い下げなんかを含むのか。たとえば二円五十三銭なんという農地の問題がありましたけれども、公有地のそういう払い下げというものを含むのかどうか。それから、地方自治体などは一体どう関与しているのか。たとえば、地域ごとの事業主の団体の結成を指導するのか、しないのか。その辺は一体どうなんでしょうか。
#111
○岡部(實)政府委員 次の四条の「勤労者財産形成政策基本方針」というところで、現在の動向あるいは今後の進め方についていろいろ方針を立ててまいるということにしておりますが、その中には、土地問題についてどういう手当てをするか。国あるいは地方公共団体について、たとえば地方公共団体で、御存じのように住宅供給公社等の活動の一つとして、宅地造成その他もいろいろやっております。そういう活動とどう組み合わせていくかというようなことも考えていきたい。具体的には、基本方針の中でそれを検討しながら国はどういうことをしていくか、地方公共団体にはどういうことを協力を求めるかということも含めてやってまいる。そういうことで三条は、そういうことを宣言的に規定を置いたわけでございますが、基本方針の中でこれを具体化してまいりたいと思います。
#112
○山本(政)委員 それでは第六条に、相互銀行が対象となっていないような気がするのですね。相互銀行はどうなんでしょうか。
#113
○藤繩政府委員 お尋ねの点は、相互銀行はどうなるかということでございますが、これは銀行の中に含まれております。
#114
○山本(政)委員 第九条ですが、事業主とか勤住協への貸し付け条件は一体どうなるのですか。
#115
○藤繩政府委員 貸し付け条件につきましては、今後具体的に勤労者財産形成審議会等の御意見を伺いながらきめてまいることになるわけでございますが、ただ、先ほども申しましたように、たとえば利率などにつきましては、いままでのこの種の持ち家融資等の前例がございます。そういうものと大幅に変わったものが出てまいるということはおそらく考えられないわけでございますから、そういう意味で、一応大企業七分あるいは中小企業六分五厘といういままでの線で、それから融資期間にいたしましても、木造十八年、耐火構造三十年というような基準というようなものを参考にしながら、具体的に業務方法書等できめられていくと思います。
#116
○山本(政)委員 じゃ、最後に……。
 西ドイツの、企業の体質を改善し、経済の安定成長をはかる、そういう私の質問に対して、必ずしもそうではないんだというお答えがあったように思う。そうすると、金融機関の選定というのはぼくは自由であってもいいと思う。そうでしょう。そうすると、金融機関の選定ということに対して一体あなた方はどうお考えになっておるか。最後の質問です。
#117
○岡部(實)政府委員 御趣旨は、勤労者が貯蓄をしていく場合に、金融機関をどう選ぶかということにつきましては、これはもう第一義的には勤労者の自由に属するわけでございまして、金融機関と勤労者が、いわゆる財産形成貯蓄契約を結ぶわけでございますから、そういうことでは勤労者が自由に選び得るということのたてまえに法律上はなっておるわけでございます。
#118
○山本(政)委員 まあ、私の感想から言えば、いままでのお話を伺って、この法案はどう考えても、勤労者の資産形成あるいは持ち家取得について実効のある効果というものは期待できないような気がするんですよね。いままで数字もあげてみましたし、それに対するお答えもいただいたけれども、どう考えても、繰り返して申すようですけれども、これでは実際の効果というものは疑わしいと思います。
 そういうことに対して、最後に大臣、どういうふうにお考えになっていますか。私どものいまの議論のやりとりをお聞きになって、私はこれはもうこういう法案を出すべきでないと思うのですけれども、あなたのお考えをお聞かせ願いたい。
#119
○野原国務大臣 けさほど来の御議論、なかなか御熱心な御質問でございまして、とくと拝聴しておったわけでございます。しかし、勤労者がやがては自分の家を持ちたいという願望、また若いときから、まだ俸給は安いけれども、幾らかでも将来に備えて貯金をしようという旺盛な建設の気持ち、現在日本経済の成長は相当の賃金の上昇を見ております。これからますます西欧を追い越し、あるいはアメリカに迫ろうという点を考えますときに、そうした勤労者諸君の熱心な願望にこたえて、やはり勤労者みずからが自主的に貯蓄をしようというものに対してはできる限りの援助を国としてもなすべきである。同時にまた、持ち家等を持つ場合においては、国が積極的な援助として利子補給はもとよりのこと、土地の取得に対しましても当然国がもっともっと大幅の援助を行なう必要があると思います。
 どうも今回の法律案では、御指摘もございましたように、必ずしも当初考えておりましたような構想がそのまま実現できませんで、その点はまことに遺憾に考えておりますが、どうも西ドイツ等におきましても、一九六一年にこの法律ができた際においては、いささか不満足なものがあったと伺っております。その後幾たびかの改正を見まして今日のようなものになったわけでございます。私は、やはり勤労者の自主的な貯蓄を通じまして家を持ってもらうということの政策は、この法律が通りますと画期的なものとしてこれは大きく成長し発展をする。どうもいろいろなマイナス面やもの足らぬ面を強調されたかの御意見を承ったのでありますが、ものは考えようでございまして、いまにわかにこれはどうこうというわけにまいりませんで、先を楽しみにしてこれを大きく育てるという考え方でこの法案に対処してもらいたい。もとより出発点に際しまして十分なものでないことは重々承知しております。しかしこれは、この法案が成立をし施行されますと、やがてこれが――勤労者の方々にも御協力をいただき、みずから進んで御参画をいただけるという体制ができますと、またそこに大きな力が出てまいりますから、この財産形成の政策は、やがて大きな政策目標が達成されるのではないかというふうに考えまして、いまは多少御不満もございましょうけれども、この辺のところでひとつ御賛成をいただきたいものだと考えております。
#120
○山本(政)委員 若い人たちが熱心に家を持ちたいために貯金をしておると言うのだけれども、俸給の中から貯金をしておるということは家を持つだけではないのです。これはもうちゃんと出ているのです。あなたはさっきからの議論をお聞きになっていないのですよ。不時の出費の準備として日本の貯蓄傾向というものは非常に高いんだ、なおかつ家がはしいということなんです。それからもう一つは、西ドイツは一九六一年で出発をして一九七〇年にいいものになったと言うけれども、いいものになっていないのです。一九七〇年になったことは、勤労者の財産形成よりか企業のほうへ富が偏在したということがちゃんとここに出ているのですよ。そういうことを考えると、いまあなたがおっしゃっている財産形成というものは決して手放しで礼賛できないのです。もしこれをやるなら、先ほどの話じゃないですけれども、社会資本の投下というものをもっと思い切ってやらなければ、財産形成はとうていできっこないということですよ。それから、予算的に見てもずいぶんずさんだという感じがいたします。そういうことを申し上げまして、私は終わります。
#121
○倉成委員長 次に、田邊誠君。
#122
○田邊委員 各委員からそれぞれの立場で質問がございましたので、かなり審議が深まっておると思いますから、要約いたしまして概括的な質問をいたしたいと思います。
 今回の勤労者財産形成促進法案は、その手本とするところは西ドイツの財産形成政策であるといわれておりますが、その西ドイツの財産形成政策の内容について、すなわち一九五七年に第三次アデナウアー政権のもとでこの政策が発表されて以来、貯蓄割増金法を別にいたしますならば、三次にわたる改定がなされて今日に至っておるわけですけれども、その中心的な柱は一体何であったのか、簡単でけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
#123
○岡部(實)政府委員 西ドイツにおきましては、先生御案内のように、貯蓄割増金法によります一般貯蓄の割り増し制度、それから住宅建設割増金法によります住宅建設のための割り増し金、それをベースにいたしまして、勤労者に対しましては勤労者財産形成促進法によりまして、前二者の割り増し金にさらに加えまして割り増し金をつける。その場合に、年額六百二十四マルクまでの貯蓄に対しまして割り増し金をつける。たとえば貯蓄割増金につきましては二〇%ないし三〇%でありますのを、勤労者に対しましてはさらにその上積みとしてそれに三〇%ないし四〇%をつけ加えていく。住宅建設割増金につきましては二五−三五%につきましてさらに三〇ないし四〇%というような割り増し金をつける。こういういわゆる割増金制度がこの財産形成促進の基本になる制度と考えております。
#124
○田邊委員 あまり時間をとりたくございませんから、多くのやりとりは省きたいと思いますけれども、いま局長からお話のありましたとおり、貯蓄割増法を基本といたしまして、一つには長期の据え置きの貯蓄に対して減税と、奨励金を交付する。それから二つ目には、国有や公有の企業の株式に対して、特に低所得者層に対して優先的な価格により分配する。それと関連して三つ目には、従業員の持ち株に対する減税、四つ目は財産形成給付に対するところの減税や社会保険の免除等、いろいろ紆余曲折はありましたけれども、以上のような柱において西ドイツはこの財産形成政策を実施してきておる、こういうようにわれわれは見てとっているわけです。
 そこで、実は私は概括的な質問をする前に少し沿革的なことについて質問をいたしたいのですが、日本におけるところの財産形成政策については、昭和三十九年、当時の石田労働大臣の際に勤労者財産づくり懇談会をつくりまして、これに対していろいろと意見を徴し、十一月に答申があった。三十九年の十一月ごろ、勤労者財産づくり懇談会によるところのこの答申の柱は、西ドイツと比較いたしまして一体どういうものだと思いますか。
#125
○藤繩政府委員 当時財産づくり懇談会が発足いたしましたころは、財産形成といいましても、わが国では何といっても当面持ち家であろうということから、持ち家の取得をいかにすれば容易にし得るかという点に重点が置かれまして、たとえば住宅貯蓄減税でありますとか、そういった点の持ち家取得を容易ならしめる方途を検討すべきだという点が中心になったように記憶いたしております。
#126
○田邊委員 この答申は、いま部長から話のありましたとおり、持ち家住宅建設に対するところの助成が柱であったことは事実ですが、しかしそれ以外にも社宅や土地の払い下げに対する助成、それから従業員の持ち株制度に対する奨励の問題についても手をつける。最も注目すべきは、住宅用地に対する先行取得についていろいろと考えていかなくちゃならない、こういうことがいわれておったと思うのです。それはそのとおりですか。
#127
○藤繩政府委員 いま御指摘のようないろいろな点が問題にされておったと思います。
#128
○田邊委員 そこで、しばらくこの問題はとだえておりましたが、私がいま西ドイツの問題と三十九年の答申について幾らか触れましたのは、その後いろいろな変転がありまして、今回のようないわば最も形骸化した法律になってあらわれてきたわけですが、そこで昨年の六月に、その次に考えられるものとして、特に労働協約等の問題について後退した案が出されましたね。さらには八月に、やや具体的な問題について一つの案が出されてきたと思うのであります。このあなた方が考えられた昨年の八月現在における案の中で、今回提案されたものと最も変わっている点は一体何でございますか。
#129
○岡部(實)政府委員 まず減税措置についてでございますが、当時の構想は、減税は税額控除を原則として適用していく、今回はいわゆる少額利子に対する非課税という制度と、それからもう一つ住宅貯蓄のほうにつきましては、税額控除でございますが、一般の貯蓄につきましては利子等の非課税ということに変わりました。それからまた、当時は一定金額以下の人に対しましては、割り増し金という一種のプレミアム制度をつけようということでございましたが、その制度は今回取り上げておりません。それからさらに税の問題については、新しく住宅を取得するものばかりでなくて、すでに住宅を取得してあるものについての、その費用をいわゆる割賦償還等で払っているもの、それも減税の対象にしようということでございましたが、今回はそれを取り上げておりません。それから分譲住宅の建設のために、中退事業団を改組いたしまして特別の事業団をつくろうということでございましたが、今度はそういう特別の事業団でなくて、雇用促進事業団にその業務を取り扱わせるということにいたしました。それから、土地の先行取得のために一定の財政支出をしようということを計画いたしておりましたが、これは政府部内において、労働省が土地問題までもやるべきではなかろう、それは建設省が一本になってやるべきだということで、今回はこれを取り上げておりません。おもな点は以上のような点でございます。
#130
○田邊委員 その中で、あと大臣にお聞きをしますけれども、この中小企業退職金共済事業団を改組して勤労者の財産形成事業団をつくろうという考え方が、今回の雇用促進事業団に業務をやらせるということに変わったその真意というのは、一体何でございますか。
#131
○岡部(實)政府委員 当初実は私どもは、この法律によるいわゆる勤労者財産形成貯蓄を事業団自体が一つの基金的な機能を持つものとして、そこでファンドをためていこう、こういうふうに考えておりまして、それを、いまの中退事業団も退職金のためのファンドの積み立てという仕事をやっておりますので、それを大幅に発展的にそこにやらせようということでございましたけれども、途中から、実はいわゆる財形貯蓄なるものを事業団が単独で、あるいは独立してやっていきますことを考えた場合に、非常な膨大な人と機械設備その他の事務量を要することになる。そこで、むしろこれは一般の金融機関に特定の条件のもとでやらせることがよかろう、こういうことになりまして、一般の金融機関がそのいわゆる財形貯蓄をやるということにいたしました場合に、いわゆる財形貯蓄という銘柄をはっきりさせることと、もう一つは、たまった資金については、それを勤労者の住宅融資のほうに還元する、この二つの条件のもとに金融機関にやらせる。そこで雇用促進事業団は、従来ともいわゆる雇用促進住宅の建設あるいは各企業に対しまする福祉施設といたしましての住宅融資等をやっておりますので、そういう事業団のほうが仕事になじむであろうということで、実は本来的に一つの事業団をつくってやることも十分考えられるわけでございますが、当初におきましてはそれほどの事業量もないということで、とりあえずは従来の仕事になじむ雇用促進事業団において、一つの部でもつくってそこでやることが一つの現実的な処理であろう、こういうことになった次第でございます。
#132
○田邊委員 私は一々こまかくお聞きしませんけれども、大臣、いまお聞きしておっておわかりのとおり、西ドイツの財産形成政策の中身についてももちろんしかりですが、当初三十九年に構想を打ち出して、財産づくり懇談会で意見が出されてきたもの、あるいはつい最近は昨年の八月当時出されてきた事業団の創設なり、あるいはまた預貯金や住宅取得のための費用についての一定部分について、およそ二万四千円という話があったそうですけれども、所得税の免税の問題なりあるいは割り増し金の交付の問題なり、実はこういうことが構想として打ち出されておりましたね。あるいはまた事業団についても、一番問題なのは、いま論議がずっとありました中で、土地問題、地価問題、したがって土地の先行取得についてもひとつやらそうじゃないか。そうしてまた、土地に対する先行投資をやったものに対して、賃貸しをする、分譲をする、こういうようなことを考えようじゃないか、こういういわば財産形成では、西ドイツが苦しみながら、実はいろいろな労働組合等の反対があったにもかかわらず今日まできておる中の一番大きな柱というものは、いわば労働省が昨年までいろいろと考えておったと思うのです。これがいわば抜けておるということは、今度の法律の中で一番大きな柱が抜けておる、一番大きな骨が抜けておる、大骨小骨が全部抜けておると言っても過言でないような形で今度の法律案が提出されておる。私は、ここにいろいろな面における疑問や批判が出てくるのではないかと思うのです。ですから、小さく産んで大きく育てるというのではなくて、先細りするのではないか、あるいは変形するのではないか、曲がっていくのではないか、こういう心配があることは、私は当然だと思うのです。この批判に対して、あなた方は一体どう答えるのかということが、今回この問題を提起した側の大きな責任じゃないかと思うのです。まさに骨抜きの法案である、こういう批判を免れることはできない、こういうふうに思っておるわけですけれども、私がいま言ったような三十九年以来の、そうしてまた昨年八月の構想から大きく後退したこの事実について、大臣、一体あなたはどうお考えになりますか。
#133
○野原国務大臣 御指摘のとおり、当初の構想から見るとやや後退の感がございます。けれども、これは大きな飛躍をする前には一応腰をかがめることも必要でございます。むしろ将来の飛躍のための屈伸であるというように考えまして、これに対しては出発点に際して必ずしも万全ではなかったが、まずまずこの辺ならばどうやらやっていけるということを考えまして、この点に落ちついたわけでございます。
#134
○田邊委員 それは敵弾が来たから腰をかがめてよけたのではないのだ。あなたのは、大蔵省から言われたり財界から言われたものだから。そういうのは腰砕けというのです。大体そういうような形でもって出されたことに対して、われわれがなかなか賛成しがたいのは当然だろうと思うのですね。大臣、ひとつこの際、あなたはよく二枚腰でふんばっていただきまして、本当にこれはその次のクッションになるようなそういう状態をつくってもらわなければならぬ責任があるわけですから、これに対して十分お考え合わせいただきたいと思うのです。
 その次に、今度六億円の出資をするそうですね。これはどういうところから出てくるわけですか。
#135
○岡部(實)政府委員 六億円の中で、五億円は失業保険特別会計からでございまして、あと一億円は一般会計から雇用促進事業団に出資をいたします。
#136
○田邊委員 五億円を失業保険会計から出すということですが、これは一体どこに根拠を置いて出されるわけですか。失業保険法第二十七条の二に基づいてこれを出される、こういうような解釈が成り立つわけですか。
#137
○住政府委員 御指摘のように失業保険法の規定に基づきまして、福祉施設として出資をいたしたものでございます。
#138
○田邊委員 これは、私は失保法の改正のときもこの福祉施設という問題についてはいろいろと議論したわけですけれども、今回の場合、この失保特会から出すことについてかなり私は無理があるのじゃないかと思うのです。これはあなたもそうお考えではないですか。
#139
○住政府委員 失業保険特別会計からの出資につきましては、二十七条の二の規定によりまして、被保険者ないしは被保険者であった者の福祉について、いろいろな福祉施設の設置ができるようになっておりますが、この財産形成の対象となる労働者のほとんどの者が失業保険の被保険者ないしは被保険者であった者、こういうように考えておりますので、その福祉施設として出資が可能である、こういうように考えておるわけでございます。
#140
○田邊委員 これは私は今後将来にわたっていろいろな面に適用されると思うのですが、その中には国家公務員、地方公務員、公共企業体の職員も含まれておるわけですね。ですから、私はそれらを含めて直接的にしても間接的にしても、今度の持ち家政策を推進しよう、こういう考え方に立ちますると、私は失業保険の特別会計からこの種のものに対して出資をすることについては、これはかなり拡大解釈したというように思わなければならぬというように思うのですが、どうですか。
#141
○住政府委員 私ども、大部分が失業保険の被保険者もしくは被保険者であった者、こういうように考えております。六億全部が失業保険ではないのでございまして、一億が一般会計、こういうことでございますので、その間のバランスと申しますか、そういう関係は特に問題はないのではないか、こういうように考えておる次第でございます。
#142
○田邊委員 失保特会から出すのは、適当かどうかということを聞いておるのです。
#143
○住政府委員 失業保険の特別会計から出しました趣旨は、先ほど申し上げましたように失業保険の被保険者、こういう方々の福祉施設として出資ができる、こういうことで二十七条の二の規定に基づいて可能である、こういうように考えておるわけでございます。
#144
○田邊委員 一億円が公務員向けだとか、五億円が一般労働者向けなんというものじゃないのです。法の趣旨からいって、受け入れる側も包括的にものを判断しているから、出すほうもこれに対して、当然失保特会というものがほんとうに適切な意味において二十七条の二に当てはまっているものかどうかについて、私はかなり無理があると思うのです。全部が不適当だと言っているのじゃない。しかし、これはかなり拡大的な解釈を用いなければならなかったのじゃないかと思うのです。そういう意味ですから……。
#145
○住政府委員 国家公務員ないしは地方公務員につきましては、別な方途でこの法律に基づく財産形成が行なわれておりますので、その関係は特に問題はないと考えておるわけでございます。
#146
○田邊委員 私は失業保険の持つ意味から言って、大体福祉施設というものが設けられたときも、かなり抵抗があったことは事実なんです。ですから、そういうものをいわばさらに拡大をする、そういう一つの素地をつくることについては、私は疑問に思う点が多いと思うのです。ですから、今後の運用にあたっても、そういう意見がかなりあることを踏まえてもらわなければならないと思っておるわけです。
 それから、これは言われましたことですから繰り返す必要はないと思うのですけれども、今度の法律の提案が、財産づくり懇談会にはかって出されてきたわけですけれども、現在の法律規定によって、当然ならば労働基準審議会にはかられるべき性格のものである。一応形式的に説明はしたそうですけれども、ないしは、いま問題が出ました失保特会との関連から言えば、中央職業安定審議会に私ははかってしかるべきものじゃないかと思うのです。したがって、私的機関であるところの財産づくり懇談会によってその意見が出されたことをもとにした法律の提案というものは、私は手続を丁寧に正確にするとすれば、よりそういった道があったのではないかと思うのでありまして、一応今後のために念のためにお聞きしておきます。
#147
○岡部(實)政府委員 財産づくり懇談会では、御承知のように関係の方々多数会員としてお集まりいただきまして、私どもこういう制度はやはり関係者の総意というか、いろんな御意見を反映して制度はつくられるべきだということで、法的な機関ではございませんが、もっぱらそういう懇談会の席を通じましていろいろ御意見を承ってきたわけでございます。
 そこで、基準審議会の問題でございますが、基準審議会は御承知のように労働基準法によりまして、労働基準法の改正等に関して審議会の意見を聞くということになっております。これ自体は、基準法について直接何ら改正をし、あるいは変更を加えるものでございませんので、正式に意見を聞くというものではございません。しかし、基準審議会の各位もこの問題についていろいろ御関心があるということでございましたので、この法案を提出する前に一応御説明を申し上げた次第でございますので、実質的にはいろいろ御意見を承る機会は持ったというふうに考えております。
#148
○田邊委員 金融機関の問題で一番懸念されるのは、やはり投資信託なり株式なり、本来元本の保証のないところに対してこれが適用になるということ。それから特に法律ができますと、企業の側からその取引している銀行にどうしても預貯金をしいるような形の有形無形の抑圧というものがあってはならないと思うのですね。あるいは取引銀行なりから、かなり激しい勧誘の働きかけが出てくるのじゃないか。こういう誘導的なものに対して、私はやはり労働者を守っていかなければなならないというように思っておるわけですから、この勤労者の任意性の確保という問題と、この取引銀行のいわば信頼度、元本を確保できるということ、こういう一つの前提、こういったものに対して一体どういうふうに指導されるか、ちょっとつけ加えてお聞きをしておきたい。
 それから、もう一つついでにお聞きしておきたいのは、長期の貯蓄をいたすわけですが、途中でもっていろいろな事情の変更が起こってきます。生活の状態が変わってきたり、いろんな条件が起こってきますね。途中でもって投げ出さなければならぬというような事態が起こってくるのですね。そういう際に、実はいろんな紛争が起こりがちだと思うのですよ。さっき山本さんは退職をした際の問題についても質問していましたが、それを含めて私は、そういった途中において事情が変わってそれが続けられないというものに対する紛争、こういったものに対して適切に対処するという体制がないと困るのじゃないかと思うのです。これらも、どういうような行政指導をやっていこうとするのか。三つばかり、簡単でいいですから……。
#149
○岡部(實)政府委員 まずこの財形貯蓄の対象となりますものは、六条にございますように、金融機関と「締結した預貯金、合同運用信託又は有価証券で、政令で定めるもの」この中では特に有価証券等につきましては、御指摘のように、いやしくも資産形成として考えるに妥当なもの、したがいまして安定性のあるものということで、一般の株式等はこれを除外いたしました。投資信託だけに限って、一般の有価証券はこれをはずしていくという、安定性のあるものに限るということにいたしました。
 それからなお、この貯蓄契約でございますが、これは勤労者がどういう形のきめられました貯蓄を選ぶかということは、勤労者の選択にまかせる。勤労者は自分の好むところに従いまして金融機関といわゆる財形貯蓄契約を結ぶことになるわけでございます。ただ御指摘のように、それが賃金から控除して事業主が勤労者にかわって払い込むということになるために、そこにいろいろな問題が起こらないか、こういう御趣旨であろうかと思いますが、この控除につきましては、これは基準法の二十四条の規定がそのままかぶるわけでございまして、したがいまして労使の協定によって認められる場合にのみ控除するという手続を踏めるわけでございます。その場合に当然労働者の意向が労働組合なりその代表なりを通じて反映されるものと考えますし、そのように指導をしてまいりたい。
 それから貯蓄の途中で切れる場合でございますが、ここにございますように、一応現在は三年以上の期間にわたる定期ということを前提といたしまして、さらにその場合にも一年間だけ据え置きをしておく、六条の第二項のところに預け入れ等が行なわれてから一年間は払い出し、譲渡をしてはならないということで、比較的その辺の自由な引き出しも認めつつ一応の定期的な預貯金ということに考えておりますので、勤労者のほうの非常な負担になるものとは考えておらないわけでございます。
#150
○田邊委員 それでは、概括的な質問をさらにいたします。大臣に主としてお聞きをしますので、簡明にお答えをいただきたいのです。
 わが国のこの財産形成に対して一番問題になるのは、一体勤労者が貯蓄をする能力があるかいなかにかかっていると思うのですね。諸外国に比べてやはり賃金が非常に低い。こういった点から、この財産形成のための貯蓄をしろといいますけれども、なかなかそれができない。要は、その前提には賃金引き上げの要件が整わなければならないというように思っています。したがって、賃金の政策に対して一体政府はどういうような手当てを講じようとするのか、これがやはり前提だろうと思うのです。したがって現在勤労者が貯蓄をやっているといいまするけれども、実際には生活が非常に安定をしてない、あるいは子供の教育がなかなかでき得ない、老後の心配がある、病気になりやすい、いろいろな実はそういった社会保障の不備からくる、いわば自己防衛的なものが非常に多いわけであります。こういった現在の社会保障が非常におくれている、欧米に比べて三分の一にもならないようなそういう状態の中で、貯蓄をさらに奨励するような、結果としてそういう措置をとろうとするのは、やはり国がやるべき社会保障というのをいわば個人の責任でカバーしよう、こういうぐあいにわれわれは考えざるを得ないのですが、この二点に対して一体どういうお考え方を持ってあなたはおいでですか、お伺いしておきたい。
#151
○野原国務大臣 勤労者の財産形成を推進するためには、その源泉となる賃金の上昇が必要であることは言うまでもないことであります。ところで、賃金は本来労使の自主的な話し合いによって決定さるべき性格であると考えますが、わが国の賃金水準は、経済の高度成長に伴ってこのところ著しい改善を見せております。今後とも経済の安定成長をはかり、生産性の向上につとめることによって、なお引き続き賃金水準の大幅上昇をはかり、わが国の勤労者の生活水準をヨーロッパ並み、さらにはアメリカの水準に近づいていくことが望ましいと考える次第であります。この制度は、賃金水準の上昇により貯蓄余力もかなりできたと考える段階に達しましたので、上昇する賃金がすべてそのまま消費に振り向けられるというものではなく、できるだけ立ちおくれている資産面の充実のはかられるよう、勤労者が資産を保有しようとする自主的な努力を奨励助長し、豊かな安定した勤労者生活の実現に資したいと考えておるわけでございます。
 なお第二点でございますが、勤労者の住宅問題の解決のためには、公営住宅や公団賃貸住宅など公的な賃貸住宅の大量建設が必要なことは言うまでもないところでありますが、第二次住宅建設五カ年計画案におきましても、公的援助による住宅建設は三百八十万戸でございまして、賃貸住宅を中心に飛躍的拡大を期しているのは当然と考えております。
 しかしながら、住宅は勤労者にとって基本的な資産であり、持ち家のない勤労者の九五%が持ち家を希望するという現実にかんがみまして、持ち家を取得しようとする勤労者の自主的な努力に対しまして国が援助を与えることはぜひとも必要なことであると考えております。
 また、わが国の社会保障は歴史も浅く、今後年金制度も充実をはかるべきものと考えておりますが、われわれの生活のすべてを社会保障に依存することは不可能でありまして、人はそれぞれの努力によってみずからの生活の改善向上をはかるべきことは、けだし当然のことでございます。勤労者がみずから進んで賃金の一部を貯蓄に蓄積しようという努力に対しまして国が援助することは、社会保障の充実を否定するものではなく、両々相まって豊かな勤労者生活の実現をはかろうとするものでございます。
#152
○田邊委員 私は政府のPRを聞きたくて質問しているのではないのです。私の質問に対してだけ正しく答えてくれればいいわけですからね、したがって質問をひとつ省きましょう。
 まあ物価の問題は言わずもがなですから、これも質問するのがあるいは愚かもしれませんけれども、消費者物価はこの六年間に三九・八%、年平均六・六%、昨年一年間で七・七%上がったんですね。したがって貯蓄をしても、利子を含めてこれが価値は下がっておる、こういうかっこうですね。定期預貯金の利子平均は五・七五%、貯金の利子の平均は税抜きにいたしまして四・六%でありますから、いずれにいたしましても、貯蓄をしてもその貨幣価値は下がっているというわけですね。こういう実情であります。したがってこれは蟷螂のおのであろうと私は思うわけですが、やはり先立つものは、生活の安定のために何といっても抜本的な物価政策というものが先行しなければ、小手先の貯蓄奨励等をやってみても、生活の安定には役立たない。こういうことはおわかりのとおりだと思うのです。あなたはひとつ今度は政府を代表して、これに対して一体どういうお考えだか、この際承っておきたいのです。
#153
○野原国務大臣 勤労者財産形成の政策は、物価の安定という問題がきわめて重大でございます。したがって、これはわが国の経済の今後の発展の上に欠くことのできない最重要な問題であると考えます。したがってわれわれは物価の上昇をできるだけ安定せしむる、非常な物価高あるいはインフレの現象をできるだけ避けなければならぬ、こういう点から、今日、物価の安定にはことのほか重点を置いておるところでございます。その点で、物価の上昇は、まあせいぜい金利の幅程度以内ならばよろしいが、それを上回るようなことがあるとたいへん困るわけでございますから、そういうような政策を強力に進めたいと考えております。
  〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
#154
○田邊委員 もうあまり大臣にお聞きしないでおきましよう。さっきあなたのほうで住宅問題をお答えになったから質問しなかったのですが、地価の問題もお答えになりましたか。――これもちょっと言ってください。
#155
○野原国務大臣 地価の問題も、もとよりきわめて重大な問題でございます。地価が異常な高騰を示しておるという事実に対しましては、総力をあげて地価の安定をはかるべきだ。これは主として建設大臣の仕事だと思いますが、特に財産形成の施策には、建設、大蔵両大臣にも御参加を願いまして、さまざまな対策を講ずる方針でございます。
#156
○田邊委員 それでは、前提の問題は各委員の質問を総合することにいたしまして、具体的なことについてだけお伺いしていきましよう。
 今度つくられまする勤労者財産形成審議会の委員は二十人以内ということになっておりますが、これは具体的にはどういう構成をとるのですか。
#157
○岡部(實)政府委員 まだ最終的に二十名の内訳をきめておるわけではございませんが、これは当然労使の関係者並びにこの財産形成政策の推進のために必要だと思われる各界の有識者をもって構成をしてまいる、こういうつもりにしております。
#158
○田邊委員 勤労者財産形成政策の基本方針というものを定めるわけですが、いまお話がありましたとおり、物価政策なりあるいは土地政策なりということがはかられておらない中でありますから、国民は失望しておるわけでありますけれども、この基本方針はどういうふうに定めるお考えでございましょうか。
#159
○岡部(實)政府委員 基本方針は第四条にございます。その第二項で、「方針に定める事項」といたしましては、「勤労者の財産形成の動向に関する事項」と、「勤労者の財産形成を促進するために講じようとする施策の基本となるべき事項」、この二つの事項について基本方針を作成することになりますが、その具体的な中身といたしましては、勤労者財産形成審議会の意見を聞いてきめることになります。いまの事項に関連いたしまして、たとえば現在の貯蓄がどういうことになっているか、また奨励すべき貯蓄の範囲はどうあるべきか、奨励の手段はどうするかというようなこと、あるいは持ち家の促進につきまして現状の勤労者の住宅建計画がどういうことになっているか、今後こ設の制度がそれとからみ合いながらどういうふうな拡充計画をとるべきかというような点、その他企業からの援助措置をいろいろ規定しておりますが、具体的にどういうことを援助措置として考えていくべきか。その他の事項、この中には土地取得の問題等も当然含まれると思いますが、そういった基本となるべき事項について財産形成審議会の意見を聞きながら、当然関係大臣との間でも話をしながらきめていく、こういうことになろうと思います。
#160
○田邊委員 今度の制度は、当然と政府は言っておりまするけれども、事業主のいわば介入というのが必須的な要件になっておるのですね。ですからこれは、裏を返せば、企業の労務管理政策というものを補完するような形にとられるおそれがあると私は思うわけです。そういったことに対しては厳然たる施策をおとりになる気持ちはございますね。
#161
○岡部(實)政府委員 実はこの制度は、いわゆる勤労者、換言いたしますれば雇用労働者に対します特別の制度としておりますので、その対象となる勤労者の財産形成をはっきりさせますために、いわば事業主が賃金から控除して、勤労者にかわって貯蓄の預け入れをする、こういう制度にいたしましたので、一見事業主を通じてすべてが行なわれるというために、それが事業主のサイドに立っていろいろ運ばれるのではないかという御懸念でございますけれども、先ほどもちょっと触れましたが、その預け入れをするような場合にも、基準法二十四条の規定はそのまま適用になりますし、さらに預貯金等の通帳の管理については、やはり基準法十八条の規定をそのまま適用するということで、このために特別に企業サイドに片寄ってこの制度が運用されるということは考えておらない。そこで具体的には、この制度を取り運びます場合には、労使の間にいろいろな話し合いがあって、勤労者の好む方向に従いまして事業主もこの制度の運用のために協力をしていくということになると思いますし、またそういう方向で指導をしてまいりたいと思います。
#162
○田邊委員 それでは、法案に関連をいたしまして、私は各委員の質問を受けて、以下十間、確認を求めていきたいと思いますので、簡単でけっこうですから、ひとつ明確にお答えをいただいて締めくくりといたしたいと思うのです。
 第一は、この財産形成貯蓄というのは、勤労者が任意に金融機関に契約を締結することになっておりますけれども、これは事業主を通じての天引きである。したがって、一面を見れば強制的な貯蓄となる危険性をはらんでいると思うのです。強制貯蓄というのは当然基準法に禁止しているところでありますから、これは事業主が労働協約を締結する、そういう立場で労働組合と十分話し合いをする、そういう労働協約締結権をもととした制度にしなければならない、こういうふうにわれわれは考えておりますけれども、この点は一体どうですか。
#163
○野原国務大臣 財産形成貯蓄は、勤労者が全く自由な意思で金融機関等と契約を締結して行なうものであります。事業主は、勤労者が金融機関等と締結した契約の履行のためのサービスとして、勤労者の委託を受けて賃金から控除して、かわって払い込むにすぎないものであります。したがいまして、この制度を利用するかどうかは全く勤労者の任意にゆだねられておる、強制貯蓄には当たらないと考えております。
 言うまでもないことでありますが、事業主が労働契約に付随して貯蓄の契約をさせることは、労働基準法第十八条第一項の規定により禁止されております。また労働者が自由な意思で行なった場合でも、事業主がその委託を受けて預金の受け入れ、すなわち社内預金を行ない、または労働者の通帳を保管するなどの場合は、労働基準法第十八条第二項の規定によって、労使協定を締結し、労働基準監督署長に届け出なければならないことになっております。この財産形成貯蓄制度におきましては、社内預金は対象としておりません。また預金通帳は事業主が保管することのないように指導してまいる考えでございます。
#164
○田邊委員 第二間に予定しましたのは、第一問で一応趣旨はわかりまするから省きまして、第三問。
 この制度は、勤労者の貯蓄を出発点としてやっているわけですが、したがって、この貯蓄を原資とするところの利子の運用については当然勤労者の意向を十分反映できるような措置が必要である、こういうふうに思っているわけですけれども、そういう考え方に沿った具体的措置をおとりになる用意がございますね。
#165
○野原国務大臣 この法案の第十四条では、労働省に勤労者財産形成審議会を置き、勤労者の財産形成に関する重要事項を調査審議することとしております。その構成は勤労者を代表する者、事業主を代表する者及び学識経験者の三者で組織することになっております。勤労者の財産形成に関する重要事項のうちには、この法案に規定する具体的制度、すなわち勤労者財産形成貯蓄及び雇用促進事業団による持ち家融資の管理、運用を含めて、制度の実施と改正に関する基本的な事項は当然含まれているものでありまして、勤労者の意向はこの審議会の審議を通じて反映されることになるのであります。
#166
○田邊委員 第二問をお聞きをしておきましょうかね、第二間を簡単にお聞きをしますから。
 天引きというのは基準法上一応禁止をされておるわけです。したがって、これは問題じゃないかと思っていますけれども、どういう措置をおとりになるか。局長でいいですから……。
#167
○岡部(實)政府委員 賃金から控除しますのは、具体的には勤労者が各金融機関と財形貯蓄契約を結びました場合に、それに基づいて使用者側が賃金を支払う場合に控除して、勤労者にかわって金融機関に預け入れをする、その場合に基準法二十四条の手続が必要でございますので、労使協定等によってその控除をし得る協定を結び、その協定によりまして控除をしていくということになろうと思います。
#168
○田邊委員 総理府の人事局長にお聞きをします。
 公務員に対する今度の規定の適用についていろいろと実は問題があるわけなんですが、将来に向けてのいろいろな解決策を要望するという観点で質問するわけですけれども、一つは、共済組合等が労働金庫から貸し付けを受けるというためには、この共済組合が労金の会員になるという必要があるわけですね。この労金の会員となり得るように措置をしてもらいたいという要望が非常に強いわけですが、そのためには共済組合の施行規則の中の勘定科目に出資金の項を、労働金庫なりあるいはその他なりというものを設ける必要が当然私は出てくると思うのです。いろんな性格論やその他ございましょうけれども、私は、やはりこういう措置がとられてしかるべきではないかと思うのですが、あなたはいかがお考えですか。
#169
○宮崎(清)政府委員 この法律におきまして、公務員に関しましては若干の特例を設けておりますことはもう御承知のとおりだと思います。公務員の持ち家として分譲住宅の建設及び分譲につきましては、本法の十五条の規定によりまして、雇用促進事業団を経ることなく、直接に共済組合等が勤労者財産形成貯蓄契約を締結いたしました金融機関等から資金を調違いたしまして、これで持ち家をつくる、こういうことでございます。この場合に、ただいま御質問がございました共済組合等が労働金庫から分譲住宅の資金を借り入れることができない、一定の制約があるということは御指摘のとおりでございまして、この点につきましては、今後この法律によります財産形成貯蓄契約の具体的な運営状況等を勘案いたしまして検討をしてまいりたい、このように考えております。
#170
○田邊委員 私は、総理府はそういう立場でもって対処されることは一応常識的にはわかるわけですけれども、しかし今後に向けてさらに発展的な考え方を持ってもらいたいと思うのです。これは労働省が主体で出された法律なんですから、いまの御答弁ではいささか私どもは当を得ていないと実は思っておるわけですけれども、労働大臣はこれに対して一つのお考えをお持ちだろうと思うのですね。あなたは政府部内を取りまとめをされるところのどういうお考えをお持ちか、あなたの決意をお聞かせいただきたいと思う。
#171
○野原国務大臣 いろいろむずかしい問題もあるようでありますが、実現に向かって最善の努力をいたしたいと考えております。
#172
○田邊委員 もう一つ人事局長にお聞きしたいのは、公務員の持ち家として分譲する住宅の建設なり分譲については共済組合などが自分みずから行なうということになっておりますが、私はこれにはいろいろと意見があると思うのです。大いにやれという意見もありましょうし、そこまで手を出すのはどうか、あるいは事務的になかなか整わぬじゃないか、利子の問題もある、いろいろ問題がありまして、意見が多様だろうと思うのです。したがって、もちはもち屋といいましょうか、そういったところにまかせたらどうかという意見もかなりあるわけです。したがって、共済組合もやれるが、勤労者住宅協会も公務員についてやれるという形をとったほうがやはりいいのじゃないかと思う。そういった意味合いで、勤住協といわれるものに対して共済組合が委託をすることが可能のような道を開いておく必要はあるのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
#173
○宮崎(清)政府委員 ただいまの御質問は、公務員の分譲住宅の建設、分譲につきまして共済組合がそれをどのように具体的に行なっていくかという御質問であろうかと存ずるわけでございますが、この点につきましては今後共済組合連合会等とも十分協議いたし、さらに関係方面とも協議いたしまして検討いたしたいと考えております。
 なお、具体的な分譲住宅の建設あるいは分譲のやり方につきましては、必要とあればこれを法的機関に委託するというようなことも含めまして検討いたしたい、このように考えております。
#174
○田邊委員 大臣はさらに積極的な御意向をお持ちでありますならば、ひとつ表明していただきたいと思います。
#175
○野原国務大臣 関係方面と十分協議しまして、実現に努力したいと考えております。
#176
○田邊委員 さらに公務員については、この財産形成貯蓄を行なう場合に賃金控除というのが民間と違うわけです。二十四条協定と違うわけでありますが、やはりこの趣旨からいいましても、強制的な貯蓄にならぬためにも職員団体等と十分話し合いをして、その運営の適正化をはかることが必要ではないかというふうにわれわれは考えておるわけですけれども、いかがですか。
#177
○宮崎(清)政府委員 ただいま御指摘の公務員の財産形成貯蓄に関します預け入れ金額の控除措置でございますが、この法律の趣旨にのっとりまして、当該職員の意向も十分に参酌いたすとともに、他方、国または公共団体の場合には給与の支給事務上の問題もいろいろございますので、これらを勘案いたしまして、適正に運営いたすように努力いたしたいと思います。
#178
○田邊委員 それでは次にまいりましょう。
 この公務員問題についてもう一つの問題は、民間については雇用促進事業団が低利の融資を行なうことができまして、事業団には政府からの出資によって利子補給の措置が講じられていますけれども、公務員についてはこれと均衡をはかる意味において一体どういう措置をおとりになるお考えですか。
#179
○宮崎(清)政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、公務員につきましてはこの法律によります分譲住宅の建設及び分譲は共済組合及び連合会に行なわせることにいたしております。ところで、公務員につきましては、もうすでに御承知と存じますが、民間の勤労者といろいろ仕組みが違っておりますので、四十六年度につきましては特別な措置は講じておりません。しかしながら、もちろん民間の場合に比べまして、民間の勤労者より不利益な取り扱いをいたすことはできないわけでございまして、この点は今後民間とのバランスを考慮いたしまして十分に配慮いたしてまいりたい、このように考えております。
#180
○田邊委員 大臣、いま公務員についてはいろいろな問題があるわけですけれども、これらはやはり民間との均衡の問題やあるいはまた今後の事業運営の適正化をはかることや、あるいはまた民間労働者に比べて公務員が強制的な貯蓄にわたらないように、あるいは持ち家政策が十分に行なわれるように、そういうためにひとつ、これらに対して一体どういうふうな対処のしかたをするか、総括的にあなたのほうからお聞きしておきます。
#181
○野原国務大臣 御指摘のとおりいろいろ問題があると存じますが、御指摘のような点につきまして政府部内におきまして誠意をもって検討し実現に努力する考えでございます。
#182
○田邊委員 そこで、今度の貯蓄の場合は百万円まで、いわば利子について税をかけない、こういう形になっておりまするけれども、これはそのままで当然進むべきものじゃないのですね。これはまた、私は、大臣の御承知のとおり、最初の出発ですからだんだん充実させていくという形になろうと思いますので、当然この百万円の限度については引き上げる、こういう方向が近い将来実現するものと解釈をしておるわけですけれども、それはどうですか。
#183
○岡部(實)政府委員 御指摘の今回予定しておりますのは、少額利子の非課税の限度を百万円といたしております。しかし今後の貯蓄の状況その他によりまして、当然この限度の引き上げについても実績を見ながら改善のために努力をすべきものと考えております。
#184
○田邊委員 第十問は、この預貯金に対しては、当面は三分の一の協力を金融機関に求めているわけですけれども、これも貯蓄の状態がさらに改善をされ、進展をいたしていきますならば、この三分の一という度合いも当然引き上げられる、私は政府の考え方もそのとおりだろうと思っておるわけですけれども、念のために、この協力については将来この度合いを引き上げる、こういうことに確認をしてよろしゅうございますか。
#185
○岡部(實)政府委員 金融機関から集まった金を事業団のほうに還流させる、これはいま三分の一というお話でございましたが、これはいまのところまだ明確に三分の一ということにしているわけではございません。私どものつもりとしては、スタートでございますので、いろいろな見込みの立たないものがあるけれども、最低限三分の一は少なくとも当初から還流をしたい。そこで、なお今後の運用といたしましては、勤労者の貯蓄した金でございますので、それが勤労者のために有効に使えるように三分の一といわず、今後の状況によりましては、いろいろな計算のしかたもあろうかと思いますが、できるだけよけい勤労者の持ち家住宅の原資として使えるように考えてまいりたいと思っております。
#186
○田邊委員 さて、私は、当委員会においてもこの勤労者財産形成促進法案の審議の過程で質問のございました雇用促進事業団に関連をする問題について、この際四点について確認を求めておきたいと思います。
 第一は、先般来の本委員会の審議において、土地の取得等をめぐる雇用促進事業団の事業の執行について、国民の疑惑を招くような不当な取り扱いがあることが明らかになりましたけれども、労働大臣は事業団の今後の運営についてどのように改善をしていくお考えでありますか、あなたの明確なお考えをお伺いいたしたいと思います。
#187
○野原国務大臣 雇用促進事業団の今後の運営につきましては、姿勢を正し、再び世間の疑惑を招くことのないよう具体的改善措置を講ずる考えでございます。
#188
○田邊委員 それでは、この雇用促進住宅の管理については、たとえば中高年齢者福祉協会のような、いわば寄生虫的な団体が存在することは、これはきわめて不明朗なことであると私どもは考えておるのですけれども、この改善について労働大臣の所見を承りたい。
#189
○野原国務大臣 財団法人中高年齢者福祉協会を含めまして、事業団の組織全体について抜本的再検討を加え、整理統合を含め、所要の刷新措置を行なう考えでございます。
#190
○田邊委員 第三問は、昭和四十年当時のことでありますけれども、このような雇用促進事業団の運営について国民の疑惑を招いた責任はきわめて重大だろうと思うのです。したがって、労働大臣はこれらの事業に関して一体どういうような責任をお考えであるか、あなたの所見を承りたい。
#191
○野原国務大臣 国会で指摘のあった事件については徹底的に糾明を行なうとともに、その責任を明らかにするよう適切な措置を講ずる考えでございます。
#192
○田邊委員 最後に、こういうような問題を指摘をされました雇用促進事業団において、今度の法律によりますところの財産形成業務を実施をさせるわけでありますから、これは十分な責任体制を確立させることがぜひとも必要であろうと思うのです。国民はそういった意味合いで、やはり事業団の責任体制について私は明確な形というものを求めておると思いますが、ひとつ労働大臣の決意と所見を承っておきたいと思います。
#193
○野原国務大臣 雇用促進事業団の財産形成業務を担当する部門につきましては、他の部門から独立した組織として、その責任体制を明らかにする考えでございます。
#194
○田邊委員 終わります。
#195
○倉成委員長 これにて本案についての質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#196
○倉成委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。まず、山下徳夫君。
#197
○山下(徳)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております勤労者財産形成促進法案につきまして賛成の意を表するものであります。
 近年における目ざましい経済成長に伴って、わが国の賃金水準は年々大幅に上昇し、勤労者の生活も衣食の面ではかなりの改善を見ているのでありますが、貯蓄や住宅等の資産面での立ちおくれは争えないところであります。
 国民の大部分を占める勤労者に豊かな安定した生活を保障するためには、賃金の上昇もさることながら、勤労者がみずからの努力によって預貯金、有価証券、住宅等の財産を保有し、もって生活の長期的安定をはかるという積極的な機運を助長することが必要であり、このことがひいては経済社会の健全な発展につながるものと信ずるのであります。
 この法案は、勤労者がみずから進んで生活の安定と向上をはかろうとする努力に対して、国も企業も力を合わせて援助を行なおうとするものであり、特に国が勤労者に対して直接援助する道を開く意義は、まことに大きなものがあると存ずるのであります。
 勤労者がその勤労の成果である賃金のうちから営々として行なう貯蓄を援助するとともに、そのような援助を受けて行なわれる貯蓄の一部を勤労者の持ち家の建設資金に振り向け、政府がこれを援助する制度を創設することは、まことに画期的なことであり、勤労者に光を当てた新しい福祉対策として、勤労者の将来に希望を与えるものと信じます。
 この法案の内容につきましては、なお改善を必要とする点が残されていることはいなめないところであり、今後土地政策その他の施策の充実と相まって、改正をはかることが強く望まれるところであります。
 時あたかも一九七〇年代を迎え、本格的な勤労者財産形成政策の実現を目ざして、ここにその第一歩を踏み出すことはまことに時宜を得たものであり、ここに賛成の意を表する次第であります。(拍手)
#198
○倉成委員長 次に、山本政弘君。
#199
○山本(政)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、勤労者財産形成促進法案に対して反対いたします。
 わが国の国民の貯蓄率は、欧米諸国に比べると著しく高く、低所得層においてさえ、収入の一七%から二〇%もの貯蓄をしております。このように貯蓄率が高いのは、国民の家計に余裕があるからでは決してありません。貯蓄の目的の大半を占めるのは、不時の支出、すなわち病気・災害、子弟の教育、住宅の取得などとなっていることが明らかに示しているとおり、日常の支出を切り詰めて、不時の支出に備えているわけであります。これは社会保障の不備、教育・住宅政策が貧困であるがゆえに、国民個々人が、政府にたよらず、独力でこれらの問題の解決をしていく以外に方法がないという、政治不在の現実を示しているといわなければなりません。
 加えて、貯蓄はインフレ経済のもとで年々減価をしております。国民は損を承知で貯蓄をしいられているわけであります。このような政治・経済環境の根本的な是正がなくしては、勤労国民の貯蓄が財産として残っていくことはあり得ないといわなければなりまん。
 西ドイツにおいても、このような基本的政策が放置されていたために、財産形成政策二十年の歴史を持ちながら、今日では、富める者にはより多くの資産が集まり、勤労者は依然として資産を持ち得ないという、奇形的な結果をもたらしているのであります。
 持ち家の取得にいたしましても、住宅価格の上昇率は、賃金上昇率、預金利子率、退職金上昇率をはるかに上回っている現状では、わずかな収入の中から節約をして貯金をしているという勤労世帯にとっては、夢物語であるにすぎません。
 政府は、本法案の提案にあたって、インフレ経済を是正し、地価を抑制し、勤労者所得の向上をはかるという基本的政策の実行について、責任ある姿勢を示していないことを考えるときに、本法案は、勤労者の財産形成について、何ら実効ある結果を保障し得るものではないといわなければなりません。
 かえって、貯蓄奨励によって銀行資本の利益に資する傾きがあり、また、貯蓄及び住宅の取得が事業主を通じてのみ行なわれるという方式は、正常な労使関係を乱すおそれを残していると思います。
 以上のような観点から、私は本法案に対して強く反対の意思を表明いたします。(拍手)
#200
○倉成委員長 次に、大橋敏雄君。
#201
○大橋(敏)委員 私は、公明党を代表して、本案に対し賛成の意を表するものであります。
 近年わが国の賃金水準は次第に上昇し、勤労者の所得もわずかに向上しつつあるところでありますが、住宅その他の資産については、欧米諸国に比してきわめて低い水準にとどまっていることは否定できません。このため、勤労者が自主的な努力によって、住宅、預貯金あるいは有価証券等の財産を持ち、生活の長期的な安定向上を奨励助長するための制度として、今回政府は本案を提出したわけでありますが、本法案の内容をつぶさに検討し、また本委員会における各党委員の質疑を通じても明らかなごとく、本制度は、当初西ドイツにおける制度にならい労働省がまとめた構想から、大蔵省等との折衝の結果、大きくその内容の後退を余儀なくされ、財産形成貯蓄においては、わずかに利子等の非課税措置にとどまり、持ち家建設の推進においてもきわめて不十分な内容であって、当面勤労者に及ぼす恩恵は微々たるものであります。
 しかしながら、本制度は一応画期的な制度の創設であり、間もなく提案を予定されております附帯決議の内容を政府が十分に尊重し、今後着実な制度の発展をはかるよう強く期待し、本案に対する賛成の討論といたします。(拍手)
#202
○倉成委員長 次に、田畑金光君。
#203
○田畑委員 私は民社党を代表して、ただいま議題となっております勤労者財産形成促進法案について賛成の意を表します。
 この法律は、質疑応答を通じ、いろいろ不備、不完全であることは明らかになりましたが、しかし、制度発足の初歩の段階であるだけに、今後はこれらの是正に最善の努力を払うことを強く要請いたします。
 ただ、この法律の審議にあたって感ずることは、この十余年、日本経済は高度の成長を遂げてまいったわけでありますが、この間生産第一主義に走った結果が、公害問題の発生となり、またこの経済発展をささえたにない手である勤労者あるいは国民の所得の分配について、政府が何らなすことなかったことは、まことに遺憾な点であると考えております。
 しかも、今日、賃金、物価の悪循環を口実にして所得政策云々を取り上げておりまするが、われわれはこういう考え方については遺憾であり、またその時期でないことを強く警告したいと思っております。
 特に、この法律が将来その目的を達成するためには、特に持ち家政策等に関連して、土地の問題あるいは物価の安定――土地政策、物価政策がその基本であることを強く申し上げたいと思っております。
 ことにこの法律は、西ドイツの財産形成促進法にその範をとっておるのでありまするが、西ドイツにおける今日までの制度を振り返ってみますならば、貯蓄割増金法、住宅建設割増金法あるいは自己資金による増資及び自己株式の勤労者に対する譲渡に関する税法上の特別措置に関する法律あるいは国民株式の発行、そして先ほど来問題となっておりまする勤労者財産形成促進法、一九六一年に制定され、一九六五年に大改正になり、さらに、一九七〇年一月一日からさらに大幅な改善のもとにこの制度が発足いたしておりまするが、われわれは西ドイツの先例を学ぶならば、もっとこれらの広範な制度について、政府が即刻、日本の社会経済情勢に即して取り入れるべきは取り入れて、この法律を土台にして、さらに勤労者財産形成のために大きな前進をはかられるよう強く希望申し上げまして、私の賛成の討論を終わることにいたします。(拍手)
#204
○倉成委員長 次に、寺前巖君。
#205
○寺前委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっています勤労者財産形成促進法案に反対をいたします。
 第一の理由は、勤労者財産形成貯蓄契約制度により、労働者によって積み立てられた預金は、実にその三分の二が金融機関によって運用される計画となっており、勤労者はみずからの預金のわずか三分の一しか使えないことにされようとしているからであります。すなわち、この制度は勤労者の貯蓄により大銀行など金融機関がその利益の大部分を受けるもので、最近の物価高などから考えるとき、勤労者の利益になるところは、この法律ではどこにあるといえるのでしょう。
 第二の理由は、分譲住宅の建設に関する仕組みが民間と公務員の二本立てに分離される結果となっています。同時に、この制度のもとにおいては、労働者の自主的な金融福祉機関としての労働金庫は、公務員労働者に利用できないものとなります。
 さらに、政府がこの制度の優遇措置として四十六年度予算に計上した失業保険会計からの出資金は、民間労働者に対してだけ実施されるものであり、公企体、公務員労働者に対する優遇措置の準備が何ら明らかにされていません。失業保険会計をこのように使うこと自身問題ですが、こうしたことは民間労働者と公務員労働者の差別的な措置であります。また、公務員関係の措置が明らかでないことは、四十七年一月から発足される制度として、この法案が適正であるかどうかについて重大な問題点を持つものであります。
 第三に、事業主による賃金からの天引き控除を公然と導入しようとすることは、労働者の労働条件の最低基準をきめている労働基準法による賃金の全額支払いの原則に反するばかりか、労働者の自由意思を踏みにじり、資本家による労働者支配の強化に使われる結果となる可能性を多く持つからであります。
 以上、私は勤労者財産形成の名のもとに、金融機関に奉仕する結果となるこの法案に強く反対する意思を表明するものであります。
 なお、附帯決議案は、この法律の基本的構想を変えるものでない点を考えるならば、若干の改善方向を示したからといって、支持するわけにいかず、棄権をしたいと思います。
 終わります。
#206
○倉成委員長 これにて討論は終局いたしました。
 勤労者財産形成促進法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#207
○倉成委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#208
○倉成委員長 この際、本案について伊東正義君、田邊誠君、大橋敏雄君及び田畑金光君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。伊東正義君。
#209
○伊東委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
   勤労者財産形成促進法案に対する附帯決議
  政府は、勤労者財産形成促進制度の創設にあ
 たり、特に次の事項について配慮し、今後引き
 続き本制度の整備充実に努力すべきである。
 一 勤労者財産形成制度全般については、さら
  に積極的な改善に努めること。
   勤労者の持家建設の推進にあたり、適切な
  宅地の供給及び合理的な地価の形成等の土地
  対策及び物価対策が基礎的条件をなすことに
  かんがみ、これらの施策についても早急に検
  討すること。
   本制度の充実を図るため、出資の増額につ
  いて今後とも積極的に努力すること。
 一 雇用促進事業団の財産形成業務を担当する
  部門は、他の部門から独立した組織として、
  その責任体制を明らかにすること。
 一 事業主による賃金からの控除及び預入等の
  代行に伴い、取扱金融機関の選択については、
  勤労者の意に反することのないよう配慮する
  こと。
 一 勤労者財産形成審議会の構成、勤労者財産
  形成貯蓄及びこれを原資とする融資の運用に
  あたっては勤労者の意向を十分に反映させる
  こと。
 一 合同運用信託及び有価証券の範囲は、資産
  としての安全性を十分考慮して定めること。
 一 雇用促進事業団が行なう勤労者分譲住宅の
  建設資金の貸付けについては、その貸付け条
  件をつとめて長期低利なものとすること。
 一 本制度が中小企業における勤労者の持家建
  設に役立つよう、その運用において特段の配
  慮を加えること。
 一 雇用促進事業団の資金の調達については、
  勤労者財産形成貯蓄契約を締結した金融機関
  等に対し、必要な協力が得られるよう行政指
  導を行なうこと。
 一 公務員等に関する本制度の適用にあたって
  は、その具体的細目についてさらに検討し、
  適切有効な措置を早急に確立すること。
 一 勤労者の自主的な努力による財産形成と併
  行して、実質賃金の向上、公営住宅の建設等
  社会資本の充実及び社会保障に関する諸施策
  についても、さらにその充実を図ること。
 以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#210
○倉成委員長 本動議について採決いたします。
 本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#211
○倉成委員長 起立総員。よって、本案については、伊東正義君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
 この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。労働大臣野原正勝君。
#212
○野原国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしましてこれが実現に今後とも一そう努力いたしたいと存じます。
    ―――――――――――――
#213
○倉成委員長 おはかりいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#214
○倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
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#215
○倉成委員長 次に、田邊誠君外六名提出の最低賃金法案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。田邊誠君。
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#216
○田邊議員 私は提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました最低賃金法案につきまして、提案理由並びに内容について御説明申し上げます。
 申すまでもなく最低賃金制は、制度ができて初めのころは、欧米資本主義諸国で、極度に窮乏化した一部の極貧層の労働者救済のための社会政策として、また資本家の側からは、産業平和や社会緊張緩和のための手段として採用されてきたのであります。しかし第二次大戦後においては、最低賃金制は労働者の最低生活保障のための統一要求として掲げられるようになっております。
 本来、最低賃金制の目的は、労働者の最低生活水準を保障することであります。現在労働者の最低生活費はほぼ全国同水準となっております。また学卒労働者の初任給水準も労働市場の需給状況を反映して格差は縮小しつつあります。
 また最低賃金水準については産業別、規模別の格差も縮小しつつあり、このような現状のもとでは原則的には全国全産業一律の最低賃金が設定されなければなりません。
 今日わが国の経済情勢を見ますとき、国民総生産は自由主義諸国第二位の地位を占めるに至っています。
 しかるに国民一人当たりの所得は、国連統計によれば世界第十九位で中南米諸国並みの状態であります。すなわち、今日なお月二万円以下の低賃金労働者が膨大に存在し、このほか低い工賃のまま放置されている家内労働者は二百万世帯にも及んでいるのであります。
 こうした著しい生産と所得の不均衡を是正し、健康で文化的な労働者の生活を維持するに足る賃金を法的に保障することこそ最低賃金法の使命でなければなりません。
 すでに現行法実施以来十年余になりますが、現在、中小企業労働者千三百万人のうち、八〇%は日額七百円以下、月額に換算すると二万円以下という賃金なのであります。しかもこの膨大な低賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金にも悪影響を与え、今日のわが国労働者の生活を常に不安におとしいれているのみならず、法的最低賃金は、さらに米価の生産費に含まれる労働力の費用の基礎ともなり、農民の所得水準をも規制しているのであります。さらに生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連、低い国民生活水準のおもしとなっているのであります。まさに国民総生産第二位を誇るわが国の見せかけの繁栄を物語っていると申せましょう。現行最低法では最低賃金制度本来の役割を十分果たし得ないのはここに明らかであろうかと思います。
 今日、雇用情勢は逼迫の度を加え、人手不足の傾向は深まり、今後の企業の深刻な問題は労働力不足にあるとさえいわれています。いまや低賃金によって国際競争に立ち向かう時代は過ぎ去りました。
 今後のわが国経済は、先進国の名にふさわしい高度の技術によってその発展を期すべきであり、それは労働者の最低生活水準を保障することによってのみ可能であります。
 いまこそ真の最低賃金制を確立することは国家の急務であります。中小企業の上に大企業がそびえ立っている経済の二重構造を解消する方向もこれをおいてはありません。
 以下法案の内容について御説明申し上げます。
 まず第一に、最低賃金の適用方式は全国一律制にいたしたのであります。このことは特にわが国のように、産業別、業種別、地域別の賃金格差がいまだに存在し、低賃金労働者が多数存在する状態のもとでは、それぞれの最低賃金を定めることは最低賃金制度の効果を半減せしめるからであります。
 なお全国一律の最低賃金制の上に、労使の団体協約に基づいた産業別あるいは地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も積み上げることといたしました。
 第二は最低賃金の決定については、労働者の生計費(原則的には標準家族の必要生計費)と一般賃金水準等を考慮してきめることといたしました。
 第三に最低賃金の決定及び改正は行政委員会の性格を持つ最低賃金委員会に権限を持たせることとし、同委員会は労使同数の委員とその三分の一の公益委員をもって構成することといたしました。
 第四に最低賃金委員会は六カ月に一回必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表し、必要生計費が三%以上増減したときには最低賃金の改正を決定することといたしました。
 以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。
 今日までのにせ最低賃金法に対する汚名をそそぐために何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして提案説明を終わります。
     ――――◇―――――
#217
○倉成委員長 次に、田邊誠君外六名提出の労働基準法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。提出者川俣健二郎君。
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    ―――――――――――――
#218
○川俣議員 私は提案者を代表しまして、労働基準法の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
 今日、労働基準法に定められた労働者の権利の確保、及び労働者保護について、さまざまの問題点が指摘されています。
 その一つは、労働基準法が施行されてから二十四年が経過しましたが、いまだに、現実問題として労働基準法の恩恵を受けていない労働者があるということであります。もとより、法そのものは原則的に全労働者に適用されているには違いありませんが、企業が基準法に違反して労働を行なわせている場合でもこれをチェックする行政能力がないことがその原因となっているのであります。ちなみに、労働基準監督官は全国で二千七百名余りでありますが、この数は昭和二十年代と大差のない数であります。この間に事業所数は十倍以上に増加し、今日では一事業所の監督は十年に一度しかできないというのが実情なのであります。特に、事業所の大半を占める中小企業に雇用されている労働者は、今日労働基準法の恩恵から置き去りにされているといわなければなりません。
 次に、基準法の規定が必ずしも労働者の実態にあった保護を実現していない面があります。中でも労働環境が激変している現状を考えるときに、労働時間、休息、休暇に関しては、現行規定では労働者の健康を守り得ないと思うのであります。
 御承知のとおり、各企業では機械化がたいへん進んであります。自動車産業では五十秒に一台の割合で乗用車が生産されておりますが、この一例だけを見ましても生産設備の大型化、スピードアップがいかに進んでいるかがおわかりかと思います。このような職場で働く労働者は、極度の緊張に長時間さらされるわけで、その結果、疲労の累積が健康を著しく害しているのであります。国民生活白書は近年、神経系の障害を訴える者が増加しているのも、このような職場環境と無関係ではないと指摘しております。
 本来ならば、人間の生命、健康を第一義的に考えてまいりますと、健康の障害になるような生産形態は社会からなくすべきなのでありますが、直ちにそのような形での解決は困難でありますから、労働者に十分休養を与える形で健康を守っていくのが政府の責任であると思うのであります。労働基準法はこのほかにもまだまだ改正すべき点があるのでありますが、当面、労働時間の短縮は緊急を要する問題といわなければなりません。
 提案の理由は以上のとおりでありますが、次に法案の概要について御説明いたします。
 第一に、労働時間は一日八時間、一週四十時間をこえてはならないことといたしました。
 第二に、始業時間、休憩時間、終業時間は日常生活に支障のない形で定めなければならないことといたしました。
 第三に、深夜労働休日労働、時間外労働に対する割り増し賃金の割り増し率を大幅に引き上げることといたしました。
 第四に、年次有給休暇の日数をふやし、連続して休暇がとれるように改めることといたしました。
 何とぞ慎重審議の上、御賛同されるようお願いいたします。
     ――――◇―――――
#219
○倉成委員長 次に、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法案を議題とて提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣野原正勝君。
#220
○野原国務大臣 ただいま議題となりました中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 わが国の雇用失業情勢は、昭和三十年代後半以後引き続く経済の高度成長に伴い著しく改善され、近年においては労働力不足基調へと変わってまいりました。今後とも、経済はなお相当の成長を続けていくと予測されますので、多少の景気の変動があるとしましても、全体として労働力不足は一そう深刻化するものと思われます。しかしながら、その中でも年齢別、地域別に見ますとかなりの不均衡が見られ、中高年齢者や雇用機会の乏しい地域の失業者につきましては、年々改善されてきてはおりますが、なお、就職が必ずしも容易でないという状況が見受けられます。
 このような状況の変化に対処するため、失業対策制度のあり方について根本的に検討することが必要であると考えられましたので、昨年九月学識経験者を失業対策問題調査研究委員に委嘱し、客観的、専門的立場からの調査研究を依頼いたしました。同年十二月、その結果が報告されましたので、それを参考としつつ「今後の失業対策制度に関する基本構想」をまとめ、同月二十三日雇用審議会に諮問いたしました。
 この基本構想におきましては、さきに述べましたような雇用失業情勢の見通しを前提とし、中高年齢者が多年にわたる職業生活で得た知識と経験を生かすことが、中高年齢者自身にとっても、また、国民経済の観点から見ても肝要なことであるとの考えに立って、今後は、中高年齢者の雇用促進に重点を置き、これらの者が従来のように失業対策事業に依存することなくその能力を民間雇用において有効に発揮することができるようにするための特別の対策を講ずることとしております。
 一方、現在失業対策事業に就労している者につきましては、従来の経緯等にかんがみ、当分の間失業対策事業を継続実施して、これに就労させることとしております。
 雇用審議会におきましては、この基本構想について慎重な審議が行なわれ、去る二月十三日答申をいただきましたので、政府といたしましては、その御意見を尊重しつつ成案を固め、ここに中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法案として提案した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律は、中高年齢者等の就職がなお困難な雇用失業情勢にかんがみ、これらの者がその能力に適合した職業につくことを促進するための特別の措置を講ずることにより、その職業の安定をはかることを目的とするものであります。
 第二に、中高年齢者の雇用を促進するため、その適職、労働能力の開発方法等の研究、求人者等に対する指導及び援助、職業紹介施設の整備等の措置を講ずるとともに、中高年齢者に適する職種について雇用率を設定し、これが達成されるよう、事業主に対して、雇い入れの要請、給付金及び融資についての特別の配慮を行なう等中高年齢者の雇用を奨励するため必要な諸施策を講ずることといたしております。
 第三に、就職の困難な中高年齢者等の就職を促進するため、求職手帳を発給し、その有効期間中就職活動を容易にし、生活の安定をはかるため、所要の手当を支給しつつ、就職指導、職業訓練、職場適応訓練等を実施することにより就職の促進をはかり、このような対策を講じた後においても就職が困難な者につきましては、必要に応じ手帳の有効期間を延長することといたしております。
 第四に、中高年齢者等につきましては、一般的には以上の諸施策によって十分対処し得ると考えられますが、産炭地域等雇用の機会の乏しい地域の中高年齢者等につきましては、手帳の通常の有効期間が終わってもなお就職が困難な者も考えられますので、有効期間について特別の配慮を加えるほか、これらの者の雇用を促進するため、職業紹介、職業訓練等の実施、雇用機会の増大をはかるための措置等に関する計画を作成し、計画に基づき必要な措置を講ずるとともに、必要に応じ公共事業へ吸収させることとして、万全を期している次第であります。
 なお、雇用機会の増大をはかるための措置として当該地域の発展により雇用の機会が増大するまでの間、臨時に雇用の機会を与えることを目的として、予算措置により、特定地域開発就労事業を実施することといたしております。
 また、この法律案の附則におきまして、緊急失業対策法は、この法律の施行の際現に失業対策事業に使用されている失業者についてのみ、当分の間、その効力を有するものとし、この場合において、夏季または年末の臨時の賃金は支払わないものとするとともに、関係法律について所要の整備をいたしております。
 以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。
 何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#221
○倉成委員長 次回は明後二十五日午後零時十五分理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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